特表2021-524287(P2021-524287A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-524287改善されたポリヌクレオチド配列検出法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-524287(P2021-524287A)
(43)【公表日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】改善されたポリヌクレオチド配列検出法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6851 20180101AFI20210816BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20210816BHJP
【FI】
   C12Q1/6851 ZZNA
   C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2021-525387(P2021-525387)
(86)(22)【出願日】2019年7月19日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月2日
(86)【国際出願番号】GB2019052017
(87)【国際公開番号】WO2020016590
(87)【国際公開日】20200123
(31)【優先権主張番号】18184575.1
(32)【優先日】2018年7月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/083227
(32)【優先日】2018年11月30日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521027629
【氏名又は名称】バイオフィデリティ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】バームフォース,バーナビー
(72)【発明者】
【氏名】フレイリング,キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】シルバ−ウェザリー,アナ
(72)【発明者】
【氏名】ストラレク−ヤヌツキーヴィチ,マグダレーナ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QR07
4B063QR08
4B063QR14
4B063QR15
4B063QR16
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
所定の核酸分析物において、ターゲットポリヌクレオチド配列を検出する方法であって: a. 分析物を、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAにアニーリングさせて、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端が分析物ターゲット配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成し; b. 第一の中間産物を、Aの3’端から3’−5’方向に、加ピロリン酸分解酵素で加ピロリン酸分解して、部分的に消化された鎖Aおよび分析物を生成し; c. (i)Aに一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBをアニーリングさせ、そしてBに対して、5’−3’方向に、A鎖を伸長するか;または(ii)3’および5’端の連結を通じてAを環状化するか;または(iii)Aの3’端を連結プローブオリゴヌクレオチドCの5’端に連結し;各場合で、オリゴヌクレオチドAを生成し; d. Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そしてAの多数コピーまたはAの領域を生成し;そして e. 多数コピー由来のシグナルを検出し、そして分析物におけるポリヌクレオチドターゲット配列の存在または非存在をそこから推測する工程によって特徴づけられる、前記方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の核酸分析物において、ターゲットポリヌクレオチド配列を検出する方法であって:
a. 分析物を、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAにアニーリングさせて、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端が分析物ターゲット配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成し;
b. 第一の中間産物を、Aの3’端から3’−5’方向に、加ピロリン酸分解酵素で加ピロリン酸分解して、部分的に消化された鎖Aおよび分析物を生成し;
c. (i)Aに一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBをアニーリングさせ、そしてBに対して、5’−3’方向に、A鎖を伸長するか;または(ii)3’および5’端の連結を通じてAを環状化するか;または(iii)Aの3’端を連結プローブオリゴヌクレオチドCの5’端に連結し;各場合で、オリゴヌクレオチドAを生成し;
d. Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そしてAの多数コピーまたはAの領域を生成し;そして
e. 多数コピー由来のシグナルを検出し、そして分析物におけるポリヌクレオチドターゲット配列の存在または非存在をそこから推測する
工程によって特徴づけられる、前記方法。
【請求項2】
連結前に、Aがまず5’−3’方向に伸長されることで特徴づけられるc(ii)またはc(iii)を使用する、請求項1に請求するような方法。
【請求項3】
連結および随意に伸長が、連結前にAがアニーリングする、さらなるスプリントオリゴヌクレオチドDの添加を通じて行われ、Dが、Aの3’端に相補的なオリゴヌクレオチド領域およびオリゴヌクレオチドCの5’端またはAの5’端のいずれかに相補的な領域を含むことで特徴づけられる、請求項1または2に請求するような方法。
【請求項4】
オリゴヌクレオチドDが、3’修飾のため、またはDの3’端およびAの対応する領域の間のミスマッチを通じてのいずれかで、Aに対する伸長を経ることが不可能であることで特徴づけられる、請求項3に請求するような方法。
【請求項5】
工程(c)の後で、反応混合物をエキソヌクレアーゼで処理して、実質的に非連結核酸物質も消化し、そしてc(ii)を使用する場合、オリゴヌクレオチドCが、3’−5’エキソヌクレアーゼ消化から該オリゴヌクレオチドを保護する3’または内部修飾をさらに含むことでさらに特徴づけられる、請求項1〜4に請求するような方法。
【請求項6】
工程(d)の前にエキソヌクレアーゼを非活性化することでさらに特徴づけられる、請求項5に請求するような方法。
【請求項7】
c(i)を使用する請求項1に請求するような方法であって、Bが(i)Aの3’端に相補的なオリゴヌクレオチド領域および(ii)Aまたはターゲット配列に実質的に相補的でない5’の隣接オリゴヌクレオチド領域を含み、そして工程(d)で用いるプライマーオリゴヌクレオチドの1つがAの伸長された領域にアニーリングすることで特徴づけられる、前記方法。
【請求項8】
プローブオリゴヌクレオチドAが、エキソヌクレオリシス(exonucleolysis)に耐性である5’端を有し、そして工程(a)および(b)の後に、そこから産生される反応媒体を、5’−3’エキソヌクレアーゼで処理して、このエキソヌクレオリシスに耐性を与えられていない核酸分子も実質的に除去することで特徴づけられる、先行する請求項いずれかに請求するような方法。
【請求項9】
用いるエキソヌクレアーゼが、5’リン酸基の存在に少なくとも部分的に依存する活性を有し、そして消化がキナーゼおよびリン酸ドナーの存在下で行われることで特徴づけられる、請求項8に請求するような方法。
【請求項10】
工程(b)がホスファターゼの存在下で行われることで特徴づけられる、先行する請求項のいずれか一項に請求するような方法。
【請求項11】
工程(a)および(b)が反復されて、分析物から、部分的に消化されたプローブAの多数のコピーを生成することでさらに特徴づけられる、先行する請求項のいずれか一項に請求するような方法。
【請求項12】
工程(b)の後で、ピロホスファターゼの添加によって、加ピロリン酸分解反応を停止することで特徴づけられる、先行する請求項のいずれか一項に請求するような方法。
【請求項13】
工程(e)が、1つまたはそれより多いオリゴヌクレオチド結合色素または分子プローブを用いて、多数コピーから得られるシグナルを検出する工程を含むことで特徴づけられる、先行する請求項のいずれか一項に請求するような方法。
【請求項14】
工程(d)および(e)が同時に行われることで特徴づけられる、先行する請求項のいずれか一項に請求するような方法。
【請求項15】
工程(d)におけるアンプリコンの生成から生じる、長期間に渡るシグナルの増加を用いて、分析物中のターゲット配列の濃度を推測することで特徴づけられる、請求項14に請求するような方法。
【請求項16】
工程(a)の前に、(i)分析物および随意にバックグラウンドゲノムDNAで構成される生物学的試料を、増幅サイクルに供することによって、分析物のアンプリコンを産生し、そして(ii)工程(i)の産物を、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼで消化する工程によって、生物学的試料から一本鎖分析物を得る、ここで使用するプライマーの1つにエキソヌクレアーゼブロッキング基が含まれることで特徴づけられる、先行する請求項のいずれか一項に請求するような方法。
【請求項17】
工程(a)の前に、(i)分析物および随意にバックグラウンドゲノムDNAで構成される生物学的試料を増幅サイクルに供することにより分析物のアンプリコンを産生する工程によって生物学的試料から一本鎖分析物を得る、ここで使用するプライマーの1つを他のもの(単数または複数)より過剰に導入することで特徴づけられる、請求項1〜15のいずれかに請求するような方法。
【請求項18】
工程(i)で用いる増幅法が、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を示すポリメラーゼを使用し、そして工程(i)の後で、産物をプロテイナーゼと反応させて、ポリメラーゼを破壊し、そして次いで、この反応の産物を加熱することによってプロテイナーゼを破壊することで特徴づけられる、請求項16または17に請求するような方法。
【請求項19】
デオキシチミジン三リン酸の代わりにデオキシウリジン三リン酸を用い、そしてUTP−DNAグリコラーゼの存在下で、工程(i)を実行することで特徴づけられる、請求項16〜18に請求するような方法。
【請求項20】
各々、異なるターゲット配列に対して選択され、そして各々、同定領域を含む、多数のプローブAを使用することで特徴づけられ、そして工程(d)で増幅する領域にこの同定領域が含まれることでさらに特徴づけられる、先行する請求項のいずれかに請求するような方法。
【請求項21】
工程(d)で生成するアンプリコンが由来する、プローブ(単数または複数)A、およびしたがって、分析物中に存在するターゲット配列が、同定領域(単数または複数)の検出を通じて推測されることでさらに特徴づけられる、請求項20に請求するような方法。
【請求項22】
分子プローブを用いるかまたは配列決定を通じて、同定領域(単数または複数)の検出を行うことで特徴づけられる、請求項21に請求するような方法。
【請求項23】
(e)が:
i. 1つまたはそれより多いオリゴヌクレオチド蛍光結合色素または分子プローブを用いて、Aの多数コピーまたはAの領域を標識し;
ii. 多数コピーの蛍光シグナルを測定し;
iii. 変性条件のセットに多数コピーを曝露し;そして
iv. 変性条件への曝露中に、多数コピーの蛍光シグナルにおける変化を監視することによって、分析物中のポリヌクレオチドターゲット配列を同定する
工程をさらに含む、請求項22に請求するような方法。
【請求項24】
工程(a)の前に、分析物を多数の反応体積に分割し、各々の体積が、異なるターゲット配列を検出するために導入された、異なるプローブオリゴヌクレオチドAを有することで特徴づけられる、請求項1〜19に請求するような方法。
【請求項25】
異なるプローブAが共通のプライミング部位を含み、工程(d)における増幅のために、単一のまたは単一セットのプライマーを用いることを可能にすることで特徴づけられる、請求項20〜24に請求するような方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌、感染性疾患および移植臓器拒絶の同定に用いられるものを含めて、多数の診断マーカーの存在に関して試験するために適した、改善されたポリヌクレオチド配列検出法に関する。これはまた、確実に、そして低コストで、マーカーパネルを同定しなければならないコンパニオン診断試験にも有用である。
【発明の概要】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、確実に検出され、そして/または定量化されうるレベルまで、実験室試料および診断試料に存在するDNAまたはRNAを増幅するための、周知であり、そして強力な技術である。しかし、低レベルのこうした分子を含有する分析物試料を調べる目的のために適用した場合、いくつかの限界に悩まされる。第一に、この技術は、単一ターゲット分子と同程度に少ない分子を検出可能であるが、試料中に存在する他の核酸配列の望ましくない増幅のため、偽陽性結果を生じる傾向がある。このため、反応を開始するために用いるオリゴヌクレオチドプライマーの選択が重要となり;これは次に、必要なレベルの特異性を持つプライマーを設計することを比較的複雑にする。その結果、現在、市場で入手可能であるPCRに基づく多くの試験は、限定された特異性を有する。
【0003】
第二の欠点は、PCRに基づく方法の多重化が、実際のところ、プライマー−プライマー相互作用の回避のために、最大、数十のターゲット配列(しばしば10未満)に限定され、比較的狭い操作ウィンドウの必要性を生じることである。
【0004】
別の問題は、PCR反応は、指数関数方式でサイクリングするため、ターゲットの定量化が困難なことであり;反応効率の小さな変動が、生成される検出可能な物質の量に多大な影響を有する。したがって、適切な対照および較正が整っていても、定量化は、典型的には、ほぼ1/3からほぼ3倍の正確さに限定される。
【0005】
最後に、PCR増幅法による研究のためにターゲティングされる領域中の突然変異は、望ましくない副作用を有しうる。例えば、ターゲット生物が、試験プライマーによってターゲティングされる遺伝子領域中の突然変異を経て、多数の偽陰性が生じたため、FDAに認可された試験が撤回されなければならなかった例があった。逆に、特定の一塩基多型(SNP)を増幅のためにターゲティングした場合、野生型変異体が存在すると、PCR法は、しばしば、偽陽性を生じるであろう。これを回避するには、非常に注意深いプライマー設計が必要であり、そしてさらに多重化の有効性が限定される。癌試験/スクリーニングまたはコンパニオン診断において一般的な要件であるような、SNPパネルに関する検索の際には、これは特に関連する。
【0006】
発明の要旨
本発明者らは、現在、これらの限界の多くを克服するため、本発明者らの以前の配列決定特許(例えばWO 2016012789を参照されたい)に使用する加ピロリン酸分解(pyrophosphorolysis)法を用いた本発明者らの経験をもとに、新規方法を開発している。これを行う際、加ピロリン酸分解の二本鎖特異性;すなわち、一本鎖オリゴヌクレオチド基質、あるいはブロッキング基またはヌクレオチドミスマッチを含む二本鎖基質では効率的に進行しない反応であることを利用する。したがって、本発明にしたがって、所定の核酸分析物において、ターゲットポリヌクレオチド配列を検出する方法であって:
a. 分析物を、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAにアニーリングさせて、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端が分析物ターゲット配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成し;
b. 第一の中間産物を、Aの3’端から3’−5’方向に、加ピロリン酸分解酵素で加ピロリン酸分解して、部分的に消化された鎖Aおよび分析物を生成し;
c. (i)Aに一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBをアニーリングさせ、そしてBに対して、5’−3’方向に、A鎖を伸長するか;または(ii)3’および5’端の連結を通じてAを環状化するか;または(iii)Aの3’端を連結プローブオリゴヌクレオチドCの5’端に連結し;各場合で、オリゴヌクレオチドAを生成し;
d. Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そしてAの多数コピーまたはAの領域を生成し;そして
e. 多数コピー由来のシグナルを検出し、そして分析物におけるポリヌクレオチドターゲット配列の存在または非存在をそこから推測する
工程によって特徴づけられる、前記方法を提供する。
【0007】
本発明の方法を適用してもよい分析物は、探しているターゲットポリヌクレオチド配列(単数または複数)を含む核酸、例えば天然存在または合成のDNAまたはRNA分子である。1つの態様において、分析物は、典型的には、該分析物および他の生物学的物質を含有する水溶液中に存在し、そして1つの態様において、分析物は、試験の目的のための関心対象ではない他のバックグラウンド核酸分子とともに存在するであろう。いくつかの態様において、分析物は、これらの他の核酸構成要素に比較して、少量で存在するであろう。好ましくは、例えば、分析物が細胞性物質を含有する生物学的標本に由来する場合、方法の工程(a)を実行する前に、これらの他の核酸および無関係な生物学的物質のある程度またはすべては、試料調製技術、例えば濾過、遠心分離、クロマトグラフィまたは電気泳動を用いて、除去されているであろう。適切には、分析物は、哺乳動物被験体(特にヒト患者)から採取された生物学的試料、例えば血液、血漿、痰、尿、皮膚または生検に由来する。1つの態様において、生物学的試料は、存在する細胞も破壊することによって分析物を放出させるため、溶解に供されるであろう。他の態様において、分析物は、試料自体の中で、すでに遊離して;例えば血液または血漿中に循環している細胞不含DNAとして存在してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の反応産物のゲル電気泳動画像。オリゴヌクレオチド2の存在下で、オリゴヌクレオチド1はオリゴヌクレオチド2から融解する長さまで分解され、長さおよそ50ヌクレオチド短くなったオリゴヌクレオチドが残ることがわかる。逆に、オリゴヌクレオチド3の存在下では、オリゴヌクレオチド1の3’端での単一ヌクレオチドミスマッチのため、加ピロリン酸分解は観察されない。オリゴヌクレオチド4〜6の存在下では、オリゴヌクレオチド1の加ピロリン酸分解は、一塩基ミスマッチの位まで進行し、この位で停止して、短くなったオリゴヌクレオチドが残り、該オリゴヌクレオチドはさらには分解されない。
図2】実施例2の反応産物のゲル電気泳動画像。短くなったオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)が、連結反応によって効率的に環状化され、そして続くエキソヌクレアーゼ消化後に残存する一方、短くなっていないオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)は環状化されず、そして効率的に消化されることがわかる。
図3】実施例3の反応産物のゲル電気泳動画像。実施例2において、短くなったオリゴヌクレオチドが存在し、そして環状化されている場合、この増幅によって、多量の産物が産生されることがわかる。逆に、実施例2において、短くなっていないオリゴヌクレオチドが存在し、そして環状化が起こらない場合、DNAの観察可能な増幅はなかった。
図4】実施例4に記載するように測定した蛍光トレース。加ピロリン酸分解が、ピロリン酸またはイミド二リン酸の存在下で進行するが、これらの非存在下では進行しないことがわかる。同様に、ポリメラーゼが存在しない比較実験において、蛍光シグナルは生成されなかった。ピロリン酸の存在下での加ピロリン酸分解は、遊離ヌクレオチド三リン酸を生じる一方、イミド二リン酸の存在下での加ピロリン酸分解は、ベータおよびガンマリン酸の間のOの位置にN−H基を含む修飾遊離ヌクレオチド三リン酸(2’−デオキシヌクレオシド−5’−[(β,γ)−イミド]三リン酸)を生じる。
図5】EGFR遺伝子に生じうる3つの異なる突然変異:(i)T790M(エクソン20)、(ii)C797S(エクソン20)および(iii)L861Q(エクソン21)に関するプライマーを用いた、実施例5のローリングサークル増幅から産生される増幅産物に関する融解ピーク結果。温度を95℃まで上昇させ、測定を0.5℃間隔で行った。(iv)において、融解ピークの位置を用いて、どの突然変異、すなわちT790M、C797SまたはL861Qが存在するかを同定可能である。
図6】実施例7に記載するような、0.1%および0.5%突然変異体アレル頻度(MAF)での上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン19突然変異の単一ウェル10重検出に関する、野生型(WT)結果を超えるシグナル。
図7】実施例7に記載するような、単一ウェル中、0.1%および1%で、T790M(i)およびC797S(ii)EGFR突然変異の同時検出および同定のための、2色での野生型結果を超えるシグナル。
図8】(i)実施例8に記載するような、アッセイおよび対照プローブ由来のL858R EGFR突然変異の存在下で観察される、野生型を超えるシグナル、ならびに(ii)各試料に関するアッセイプローブのものから対照プローブシグナルを引いた結果。
図9】本発明の方法の工程a〜bの1つの態様。工程aにおいて、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAは、ターゲットポリヌクレオチド配列にアニーリングして、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端がターゲットポリヌクレオチド配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成する。本発明のこの単純化された態様において、ターゲットにアニーリングしていないAが、どのように方法のさらなる工程に関与しないかを例示するため、存在するAの2つの分子および1つのターゲットポリヌクレオチド配列がある。工程aのこの例示的例において、Aの3’端はターゲットポリヌクレオチド配列にアニーリングする一方、Aの5’端はアニーリングしない。Aの5’端は、5’化学ブロッキング基、共通プライミング配列およびバーコード領域を含む。工程bにおいて、部分的に二本鎖である第一の中間産物は、Aの3’端から3’−5’方向で、加ピロリン酸分解酵素で加ピロリン酸分解されて、部分的に消化された鎖A、分析物、および工程aでターゲットにアニーリングしなかった未消化A分子を生じる。
図10】本発明の方法の工程c(i)およびdの1つの態様。工程c(i)において、Aを一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBにアニーリングさせ、そしてA鎖をBに対して5’−3’方向に伸長して、オリゴヌクレオチドAを生成する。この例示的例において、トリガーオリゴヌクレオチドBは5’化学ブロックを有する。方法の工程b由来の未消化Aは、トリガーオリゴヌクレオチドBにアニーリングするが、Bに対して5’−3’方向に伸長して、工程dの増幅プライマーのターゲットである配列を生成することが不可能である。工程dにおいて、Aを、少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そして多数コピーのAまたはAの領域を生成する。
図11】本発明の方法の工程c(ii)およびdの1つの態様。工程c(ii)において、AをスプリントオリゴヌクレオチドDにアニーリングさせ、そして次いで、3’および5’端の連結によって環状化する。工程dにおいて、ここで環状化されたAを、少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そして多数コピーのAまたはAの領域を生成する。この例示的例において、スプリントオリゴヌクレオチドDは、3’修飾(この例における化学物質)によって、またはDの3’端およびAの対応する領域の間のヌクレオチドミスマッチを通じて、Aに対して伸長することが不可能である。工程dにおいて、Aを、少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そして多数コピーのAまたはAの領域を生成する。
図12】本発明の方法の工程c(iii)およびdの1つの態様。工程c(iii)において、スプリントオリゴヌクレオチドDの3’領域は、Aの3’領域にアニーリングする一方、スプリントオリゴヌクレオチドDの5’領域は、連結プローブCの5’領域にアニーリングする。したがって、第二の中間産物Aは、A、C、および随意に5’−3’方向でのAの伸長によって形成されてCの5’端に連結される中間体領域で構成されて、形成される。この例示的例において、連結プローブCは、3’化学ブロッキング基を有し、したがって、増幅工程dの前に、3’−5’エキソヌクレアーゼを用いて、非連結Aも消化することも可能である。工程dにおいて、Aを、少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そして多数コピーのAまたはAの領域を生成する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明にしたがって、所定の核酸分析物において、ターゲットポリヌクレオチド配列を検出する方法であって:
a. 分析物を、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAにアニーリングさせて、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端が分析物ターゲット配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成し;
b. 第一の中間産物を、Aの3’端から3’−5’方向に、加ピロリン酸分解酵素で加ピロリン酸分解して、部分的に消化された鎖Aおよび分析物を生成し;
c. (i)Aに一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBをアニーリングさせ、そしてBに対して、5’−3’方向に、A鎖を伸長するか;または(ii)3’および5’端の連結を通じてAを環状化するか;または(iii)Aの3’端を連結プローブオリゴヌクレオチドCの5’端に連結し;各場合で、オリゴヌクレオチドAを生成し;
d. Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そしてAの多数コピーまたはAの領域を生成し;そして
e. 多数コピー由来のシグナルを検出し、そして分析物におけるポリヌクレオチドターゲット配列の存在または非存在をそこから推測する
工程によって特徴づけられる、前記方法を提供する。
【0010】
本発明の方法を適用してもよい分析物は、探しているターゲットポリヌクレオチド配列(単数または複数)を含む核酸、例えば天然存在または合成のDNAまたはRNA分子である。1つの態様において、分析物は、典型的には、該分析物および他の生物学的物質を含有する水溶液中に存在し、そして1つの態様において、分析物は、試験の目的のための関心対象ではない他のバックグラウンド核酸分子とともに存在するであろう。いくつかの態様において、分析物は、これらの他の核酸構成要素に比較して、少量で存在するであろう。好ましくは、例えば、分析物が細胞性物質を含有する生物学的標本に由来する場合、方法の工程(a)を実行する前に、これらの他の核酸および無関係な生物学的物質のある程度またはすべては、試料調製技術、例えば濾過、遠心分離、クロマトグラフィまたは電気泳動を用いて、除去されているであろう。適切には、分析物は、哺乳動物被験体(特にヒト患者)から採取された生物学的試料、例えば血液、血漿、痰、尿、皮膚または生検に由来する。1つの態様において、生物学的試料は、存在する細胞も破壊することによって、分析物が放出されるように、溶解に供されるであろう。他の態様において、分析物は、試料自体の中で、すでに遊離して;例えば血液または血漿中に循環している細胞不含DNAとして存在してもよい。
【0011】
1つの態様において、分析物中のターゲットポリヌクレオチド配列は、癌性腫瘍細胞のDNAまたはRNA内の遺伝子または染色体領域であり、そして1つまたはそれより多い突然変異;例えば1つまたはそれより多い一塩基多型(SNP)の形の突然変異の存在によって特徴づけられるであろう。したがって、本発明は、疾患の再発を監視する際に有用であろう。治療後に疾患から解放されたと宣言されている患者を長期間監視し、疾患の再発を検出してもよい。これは、非侵襲性に行われる必要があり、そして血液試料からのターゲット配列の高感度検出を必要とする。同様に、いくつかの癌に関しては、治療後、患者において残存する残渣癌細胞がある。患者血液中に存在するこれらの細胞(または細胞不含DNA)のレベルを、本発明を用いて監視すると、疾患の再発または現在の療法の失敗、そして代替療法へのスイッチの必要性の検出が可能になる。
【0012】
1つの態様において、ターゲットポリヌクレオチド配列の検出は、疾患治療中の患者試料の反復試験を可能にし、療法に対する耐性の発展を早期に検出することを可能にするであろう。例えば、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、例えばゲフィチニブ、エルロチニブは、非小細胞肺癌(NSCLC)の第一選択の治療として一般的に用いられる。治療中、腫瘍は、しばしば、治療に対する耐性を与える、EGFR遺伝子中の突然変異(例えばT790M、C797S)を発展させるであろう。これらの突然変異の早期検出は、患者の代替療法への転換を可能にする。
【0013】
1つの態様において、分析物中のターゲットポリヌクレオチド配列は、胎児起源のDNAまたはRNA内の遺伝子または染色体領域にあり、そして1つまたはそれより多い突然変異;例えば1つまたはそれより多い一塩基多型(SNP)の形の突然変異の存在によって特徴づけられるであろう。したがって、本発明は、他の利用可能な試験技術よりも、妊娠のより初期の段階で、非常に低いアレル割合の突然変異を検出するために使用可能である。
【0014】
別の態様において、ターゲットポリヌクレオチド配列は、得られる遺伝情報以外は健康である個体に由来する遺伝子またはゲノム領域にあってもよく、価値あるコンパニオン情報を生成し、ヒト集団内の1つまたはそれより多い定義される群に渡って医学的または療法的結論を引き出すことを補助しうる。
【0015】
さらに別の態様において、ターゲットポリヌクレオチド配列は、感染性疾患に特徴的であってもよく;例えば細菌またはウイルスの遺伝子または染色体領域に特徴的なポリヌクレオチド配列である。
【0016】
1つの態様において、ターゲットポリヌクレオチド配列は、ドナーDNAに特徴的であってもよい。移植された臓器が患者によって拒絶される場合、この臓器由来のDNAは、患者の血流内に脱落する。このDNAを早期検出すれば、拒絶の早期検出が可能になるであろう。これは、ドナー特異的マーカーのカスタムパネルを用いて、またはあるものはドナー中に存在し、そしてあるものはレシピエントに存在する、集団に一般的であることが知られる変異体のパネルを用いることによって、達成可能である。したがって、長期に渡る臓器レシピエントのルーチンの監視が、請求する方法によって可能である。
【0017】
さらに別の態様において、プローブおよびトリガーオリゴヌクレオチド(以下を参照されたい)の異なる組み合わせを用いる多様なバージョンの方法を平行して使用して、多数のターゲット配列;例えば、癌の供給源、癌の指標または感染の多数の供給源に関して、分析物を同時にスクリーニングすることが可能になる。このアプローチでは、方法の平行適用によって、工程(d)で得られる増幅された産物を、1つまたはそれより多いオリゴヌクレオチド結合色素または配列特異的分子プローブ、例えば分子ビーコン、ヘアピンプローブ等で構成される検出パネルと接触させる。したがって、本発明の別の側面において、ターゲットポリヌクレオチド配列に関して選択的である1つまたはそれより多い化学的および生物学的プローブと、あるいは増幅されたプローブ領域を同定するための配列決定の使用と組み合わせた、少なくとも1つのプローブおよび随意に以下に定義するトリガーオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0018】
本発明の方法の工程(a)は、所定の試料中のその存在を探している分析物と、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAをアニーリングさせる工程を含む。1つの態様において、このオリゴヌクレオチドは、プライミング領域および検出しようとするターゲットポリヌクレオチド配列に相補的である3’端を含む。この手段によって、少なくとも部分的に二本鎖である第一の中間産物を生成する。1つの態様において、過剰なAの存在下で、そして分析物および任意の他の核酸分子を含有する水性媒体中で、この工程を行う。
【0019】
1つの態様において、工程(e)における検出のために分子プローブを用いようとする場合、プローブオリゴヌクレオチドAは、ターゲット配列に相補的な領域の5’側にオリゴヌクレオチド同定領域を含むように設定され、そして使用される分子プローブは、この同定領域にアニーリングするよう設計される。1つの態様において、Aの相補領域のみが、ターゲットにアニーリング可能であり;すなわち他の領域はいずれも、工程(b)を行う温度で、安定な二重鎖が存在するために十分な、分析物との相補性を欠く。ここで、そして全体に、用語「十分な相補性」によって、所定の領域が分析物上の所定の領域と相補性を有する限りにおいて、相補性領域は長さ10ヌクレオチド以上であることを意味する。
【0020】
1つの好ましい態様において、Aの5’端またはプライミング領域の5’側の内部部位は、エキソヌクレオリシスに耐性を与えられる。この手段によって、そして工程(b)の後で、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼを、随意に、存在する任意の他の核酸分子を消化する一方、Aおよび部分的に消化された鎖Aを含む物質も損なわれていない(intact)状態で残す目的のため、反応培地に添加してもよい。適切には、エキソヌクレオリシスに対するこの耐性は、必要なポイントで、オリゴヌクレオチドA内に1つまたはそれより多いブロッキング基を導入することによって達成される。1つの態様において、これらのブロッキング基は、ホスホロチオエート連結および当該技術分野に一般的に用いられる他の主鎖修飾、C3スペーサー、リン酸基、修飾塩基等により選択されてもよい。さらに別の態様において、Aは、以下にさらに記載するトリガーオリゴヌクレオチドの3’および5’端のいずれかまたは両方に関して、オリゴヌクレオチドフラップミスマッチを有する。
【0021】
1つの態様において、同定領域は、ユニークな配列を有し、そして工程(e)において、増幅された構成要素Aに適用される配列特異的分子プローブを用いて、間接的に同定されるか、またはこれらの構成要素の配列決定によって直接同定されるように適応されている、バーコード領域を含むかまたはこうしたバーコード領域内に包埋されているであろう。使用してもよい分子プローブの例には、限定されるわけではないが、分子ビーコン、TaqMan(登録商標)プローブ、Scorpion(登録商標)プローブ等が含まれる。
【0022】
方法の工程(b)において、第一の中間産物の二本鎖領域は、そのA鎖の3’端から3’−5’方向に加ピロリン酸分解される。その結果、A鎖は次第に消化されて、部分的に消化された鎖を生成し;以後これをAと称する。プローブオリゴヌクレオチドが誤って非ターゲット配列にハイブリダイズした場合、加ピロリン酸分解反応が、ミスマッチでも停止し、方法の続く工程が進行することを防ぐ。別の態様において、Aが、分析物またはその中のターゲット領域と安定な二重鎖を形成するために十分な相補性を欠くようになるまで、この消化を続ける。この時点で、多様な鎖は次いで、融解によって分離し、それによって、一本鎖型のAを生じる。典型的な加ピロリン酸分解条件下では、この分離は、分析物およびAの間に、6〜20の間の相補的ヌクレオチドが存在する場合に起こる。
【0023】
適切には、加ピロリン酸分解工程(b)は、加ピロリン酸分解活性を示すポリメラーゼおよびピロリン酸イオンの供給源の存在下で、20〜90℃の範囲の温度で、反応媒体中で行われる。ポリヌクレオチドの消化に適用されるような、加ピロリン酸分解反応に関するさらなる情報は、例えば、J. Biol. Chem. 244(1969)pp.3019−3028または本発明者らの以前の特許出願に見られうる。
【0024】
1つの態様において、加ピロリン酸分解工程(b)は、過剰なポリピロリン酸の供給源の存在によって駆動され、適切な供給源には、3つまたはそれより多いリン原子を含有する化合物が含まれる。
【0025】
1つの態様において、加ピロリン酸分解工程(b)は、過剰な修飾ピロリン酸の供給源の存在によって駆動される。適切な修飾ピロリン酸には、架橋酸素の代わりに置換された他の原子または基を持つもの、あるいは他の酸素上に置換基または修飾基を含むピロリン酸(またはポリピロリン酸)が含まれる。当業者は、本発明の使用に適した修飾ピロリン酸の多くのこうした例があることを理解するであろうし、その限定されない選択は:
【0026】
【化1】
【0027】
である。
1つの好ましい態様において、ピロリン酸イオンの供給源は、PNP、PCPまたはトリポリリン酸(PPPi)である。
【0028】
さらに、限定されるわけではないが、加ピロリン酸分解工程(b)で用いるためのピロリン酸イオンの供給源の例は、WO2014/165210およびWO00/49180に見られうる。
【0029】
1つの態様において、過剰な修飾ピロリン酸の供給源は、Y−Hとして示されることも可能であり、式中、Yは一般式(X−O)P(=B)−(Z−P(=B)(O−X))−に対応し、式中、nは1〜4の整数であり;各Z−は、−O−、−NH−または−CH−より独立に選択され;各Bは独立にOまたはSのいずれかであり;X基は、−H、−Na、−K、アルキル、アルケニル、または複素環基より独立に選択され、但し、ZおよびBの両方が−O−に対応し、そしてnが1である場合、少なくとも1つのX基はHでない。
【0030】
1つの態様において、Yは、一般式(X−O)P(=B)−(Z−P(=B)(O−X))−に対応し、式中、nは1、2、3または4である。別の態様において、Y基は、一般式(X−O)P(=O)−Z−P(=O)(O−H)−に対応し、式中、X基の1つは−Hである。さらに別の好ましい態様において、Yは、(X−O)P(=O)−Z−P(=O)(O−X)−−に対応し、式中、X基の少なくとも1つは、メチル、エチル、アリルまたはジメチルアリルより選択される。
【0031】
別の態様において、Yは、一般式(H−O)P(=O)−Z−P(=O)(O−H)−に対応し、式中、各Zは、−NH−または−CH−または(X−O)P(=O)−Z−P(=O)(O−X)−−のいずれかであり、式中、X基はすべて、−Naまたは−Kのいずれかであり、そしてZは−NH−または−CH−のいずれかである。
【0032】
別の態様において、Yは、一般式(H−O)P(=B)−O−P(=B)(O−H)−に対応し、式中、各B基は、独立に、OまたはSのいずれかであり、少なくとも1つはSである。
【0033】
Yの好ましい態様の特定の例には、式(X1−O)(HO)P(=O)−Z−P(=O)(O−X2)のものが含まれ、式中、ZはO、NHまたはCHであり、そして(a)X1はγ,γ−ジメチルアリルであり、そしてX2は−Hであるか;または(b)X1およびX2はどちらもメチルであるか;または(c)X1およびX2はどちらもエチルであるか;または(d)X1はメチルであり、そしてX2はエチルであるかまたはその逆である。
【0034】
1つの態様において、工程(b)は、ホスファターゼ酵素の存在下で行われ、加ピロリン酸分解反応によって産生されたヌクレオシド三リン酸が、加水分解によって連続して除去される。別の態様において、ピロホスファターゼ酵素を工程(b)の後に添加して、残渣ピロリン酸イオンを加水分解して、それによってさらなる加ピロリン酸分解が後の工程で起きないことを確実にする。別の態様において、工程(a)および(b)を反復し、したがって、各ターゲット分子から、Aの多数コピーが生成される。これは、続く工程を行う前にまたは行っている間に起こってもよい。工程(d)において増幅と組み合わせる場合、この反復は、方法の感度および信頼性のさらなる改善を導き、そして最初の直鎖増幅を導入することによって、ターゲットポリヌクレオチドのより正確な定量化が可能になる。
【0035】
1つの好ましいが非必須の態様において、工程(b)の終了時、あるいは工程(c)の前または後に、AまたはA鎖(5’ブロッキング基が存在する)で構成されるもの以外の、存在する残渣核酸物質が分解されることを確実にする目的で、5’−3’方向活性を有するエキソヌクレアーゼを添加する、中間工程が導入される。別の態様において、このエキソヌクレアーゼは、工程(d)を行う前に非活性化される。さらに別の態様において、このエキソヌクレオリシスを実行する前または実行中、存在する核酸物質のすべては、例えばキナーゼおよびリン酸ドナー、例えばATPを用いて、5’端でリン酸化されて、特定のタイプの5’−3’エキソヌクレアーゼによるエキソヌクレオリシスを開始するために必要なリン酸化端部位が産生される。
【0036】
工程(b)の後、または適切な場合、上述の中間工程の後、Aは、1つの態様(i)において、一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBにアニーリングして、やはり部分的に二本鎖である第二の中間産物を生成する。1つの態様において、Bは、Aの3’端に相補的なオリゴヌクレオチド領域で構成され、Aに実質的に相補的でない隣接オリゴヌクレオチド領域をその5’端に含む。ここで、そして全体で、用語「実質的に相補的でない」または同等の表現は、所定の隣接領域が、A上の所定の領域に相補性を有する限りにおいて、相補性領域が長さ10ヌクレオチド未満であることを意味する。その後、工程(c)において、この第二の中間産物のA鎖は、5’−3’方向に伸長されて、Bおよび伸長されたA鎖で構成される、第三の中間産物を生成する(以後、Aと称する)。
【0037】
別の態様において、Bは(i)Aの3’端に相補的なオリゴヌクレオチド領域;(ii)Aの5’端に相補的なオリゴヌクレオチド領域、および随意に(iii)これらの2つの領域の間の中間オリゴヌクレオチド領域を含み、そしてBは、その3’端の1つまたはそれより多いヌクレオチドミスマッチまたは化学修飾の存在のいずれかの存在のため、Aに対する伸長を経ることが不可能である。別の態様において、Bは3’端および内部の両方で修飾されて、他のオリゴヌクレオチドがこれに対して伸長されることを防ぐ。
【0038】
これらの態様のどちらにおいても、Bは、適切に、各々独立に、最大150ヌクレオチド、典型的には5〜100ヌクレオチド、そして最も好ましくは10〜75ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチド領域で構成される。1つの態様において、Bのすべての領域は、独立に、10〜50ヌクレオチドの範囲の長さを有する。別の好ましい態様において、Bの5’端またはそれに隣接する領域もまた、上述のタイプのブロッキング基で保護され、エキソヌクレオリシスに対して耐性にされる。いくつかの態様において、Bの5’端は、それ自体の上に畳み込まれて、二本鎖ヘアピン領域を生成する。さらに別の態様において、Bの3’および5’端の両方は、A対応鎖の末端に対して、1つまたはそれより多いヌクレオチドミスマッチを有する。
【0039】
別の態様において、工程(c)は、あるいは、(ii)Aの2つの端を、リガーゼの存在下でともに連結して、A鎖が伸長されず、むしろ環状化される、第三の中間産物を生成する。この連結は、典型的には、Aの3’および5’端に相補的な領域を有する、スプリントオリゴヌクレオチドDの添加を通じて行われ、そのため、Dにアニーリングした際に、Aの3’および5’端が連結可能なニックを形成するか、または続く連結前に充填可能なギャップを形成するようになる。この態様において、環状化Aは、事実上、続く工程の目的のため、Aになる。別の態様において、A鎖は、5’−3’エキソヌクレアーゼおよび鎖置換活性を欠くポリメラーゼを用いて、5’−3’方向になお伸長され、そして次いで環状化され、そのため、この伸長されそして環状化された産物が、事実上、Aになる。別の態様において、Aの3’および5’端、または伸長されたAは、必ずしもオリゴヌクレオチド領域を含まなくてもよい架橋基によってともに連結される。
【0040】
第三の中間産物が環状化されたA鎖を含む場合、工程(c)において生成される反応混合物を、エキソヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼの組み合わせで処理して、環状化されていない残渣核酸構成要素を消化することが好適である。その後、別の態様において、エキソヌクレアーゼは、工程(d)を行う前に非活性化される。
【0041】
別の態様(iii)において、スプリントオリゴヌクレオチドDの5’端領域の少なくとも一部に、またはターゲットオリゴヌクレオチドに相補的な5’領域を有する連結プローブC、リガーゼ、ならびに随意に、鎖置換能および5’−3’方向エキソヌクレアーゼ活性の両方を欠くポリメラーゼの存在下で、工程(c)を行う。こうした手段によって、A鎖がA、C、および随意に、Aの5’−3’方向の伸長によって形成されてCの5’端と結合する中間領域で構成される、第二の中間産物を形成する。こうした態様において、少なくとも、AのCへの連結が起こる部位を含むAの領域を増幅するように、工程(d)で使用するプライマー(以下を参照されたい)を選択する。この態様において、本発明者らは、増幅前に、3’−5’エキソヌクレアーゼを用いて、非連結Aを消化可能であるように、C上に3’ブロッキング基を含むことが好適であることを見出した。使用可能な適切なポリメラーゼには、限定されるわけではないが、Hemo KlenTaq、MakoおよびStoffel断片が含まれる。
【0042】
1つの態様において、工程c(ii)またはc(iii)を使用する場合、Aは、随意に、連結前に5’−3’方向に伸長される。1つの態様において、この随意の伸長および連結は、ターゲットオリゴヌクレオチドに対して行われる一方、別の態様において、これらは、伸長および/または連結前に、AがアニーリングするさらなるスプリントオリゴヌクレオチドDの添加を通じて行われる。1つの態様において、Dは、Aの3’端に相補的なオリゴヌクレオチド領域、およびオリゴヌクレオチドCの5’端またはAの5’端のいずれかに相補的な領域を含む。別の態様において、Dは、3’端修飾のため、またはDの3’端およびAの対応する領域の間のヌクレオチドミスマッチを通じて、Aに対して伸長不能である。
【0043】
続く工程(d)において、多数の、典型的には数百万のコピーが作製されるように、A鎖またはその望ましい領域が増幅を経るようにされる。これは、Aおよび続いてそれに由来する任意のアンプリコンを、例えば順方向/逆方向またはセンス/アンチセンス対の形で提供され、これらの上の相補領域にアニーリング可能である、一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングすることによって、達成される。プライミングされた鎖は次いで、増幅のための起点になる。増幅法には、限定されるわけではないが、熱サイクリングおよび等温法、例えばポリメラーゼ連鎖反応、レコンビナーゼポリメラーゼ増幅およびローリングサークル増幅が含まれ;これらのうち最後のものは、Aが環状化されている場合に適用可能である。これらの手段のいずれによっても、Aの多くのアンプリコンコピーおよびいくつかの場合、その配列相補体が迅速に生成されうる。これらの増幅法のいずれかを実行するための正確な方法論は、一般の当業者に周知であり、そして使用する正確な条件および温度管理体制は、一般文献で容易に入手可能であり、そちらを参照されたい。特に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の場合、方法論は、一般的に、ポリメラーゼおよび多数の単一ヌクレオシド三リン酸の供給源を用いて、相補鎖が産生されるまで、5’−3’方向にA鎖に対してプライマーオリゴヌクレオチドを伸長し;産生された二本鎖産物を脱ハイブリダイズし、A鎖および相補鎖を再生し;A鎖およびそのアンプリコンのいずれも再プライミングして、そしてその後、これらの伸長/脱ハイブリダイズ/再プライミング工程を複数回反復して、信頼可能に検出されうるレベルまで、Aアンプリコンの濃度を増大させる工程を含む。
【0044】
最後に、工程(e)において、アンプリコンを検出し、そして得られる情報を用いて、元来の分析物にポリヌクレオチドターゲット配列が存在するかまたは存在しないか、および/またはそれに関連する特性を推測する。例えば、この手段によって、癌性腫瘍細胞に特徴的であるターゲット配列を、探している特定のSNPを参照して検出してもよい。別の態様において、ウイルスまたは細菌のゲノム(その新規突然変異を含む)に特徴的であるターゲット配列を検出してもよい。例えば、オリゴヌクレオチド結合色素、配列特異的分子プローブ、例えば蛍光標識分子ビーコンまたはヘアピンプローブを含めて、アンプリコンまたは同定領域を検出する多くの方法を使用してもよい。あるいは、当該技術分野に使用されるかまたは報告される直接配列決定法の1つを用いて、Aアンプリコンの直接配列決定を行ってもよい。オリゴヌクレオチド結合色素、蛍光標識ビーコンまたはプローブを使用する場合、刺激性電磁放射の供給源(レーザー、LED、ランプ等)、および放出された蛍光を検出し、そしてそこから、特に設計されたアルゴリズムを用いて、マイクロプロセッサまたはコンピュータによって分析可能であるデータストリームを含むシグナルを生成するように配置された光検出装置を含む配置を用いて、アンプリコンを検出することが好適である。
【0045】
本発明の1つの特異的明示において、各々、異なるターゲット配列に関して選択的であり、そして各々同定領域を含む、多数のAプローブを使用する。1つの態様において、その結果、工程(d)において増幅される領域には、この同定領域が含まれる。別の態様において、工程(d)で生成されるアンプリコンを、次いで、同定領域(単数または複数)の検出を通じて推測する。次いで、同定は、分子プローブまたは配列決定法、例えばサンガー配列決定法、Illumina(登録商標)配列決定法または本発明者らが先に記載している方法の1つを用いる工程を含んでもよい。別の明示において、工程(a)の前に、分析物を多数の反応体積に分けて、各体積は、異なるターゲット配列(単数または複数)を検出するように設計された、異なる単数のプローブオリゴヌクレオチドAまたはその複数のものを有する。別の好ましい態様において、異なるプローブAは、単一のまたは単一セットのプライマーを増幅工程(d)に用いることを可能にする共通のプライミング部位を含む。
【0046】
いくつかの態様において、標準的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、または等温増幅、例えばローリングサークル増幅(RCA)を通じて、増幅工程(d)を行ってもよい。いくつかの態様において、RCAは、指数関数的RCA、例えば高分岐RCAの形であってもよく、これは、多様な異なる長さの二本鎖DNAを生じうる。いくつかの態様において、異なる長さを有する異なる産物を生じうる異なるプローブを提供することが望ましい可能性もある。
【0047】
いくつかの態様において、工程(e)は:
i. 1つまたはそれより多いオリゴヌクレオチド蛍光結合色素または分子プローブを用いて、Aの多数コピーまたはAの領域を標識し;
ii. 多数コピーの蛍光シグナルを測定し;
iii. 変性条件のセットに多数コピーを曝露し;そして
iv. 変性条件への曝露中に、多数コピーの蛍光シグナルにおける変化を監視することによって、分析物中のポリヌクレオチドターゲット配列を同定する
工程をさらに含む。
【0048】
いくつかの態様において、工程(e)は、融解曲線分析を用いた検出および分析の形を取ってもよい。融解曲線分析は、加熱中の二本鎖DNAの解離特性の評価であってもよい。試料中の50%のDNAが2つの別個の鎖に変性する温度は、融解温度(Tm)として知られる。温度を上昇させるにつれて、二本鎖は解離し始め、二本鎖DNAの異なる分子は、組成(G−C塩基対は、A−Tの間の2つのみに比較して、3つの水素結合を有し、したがって、G−Cを分離させるには、A−Tよりもより高い温度が必要である)、長さ(より多くの水素結合を含む二本鎖DNAのより長い長さは、より短いものよりも、2つの別個の一本鎖に完全に解離するまでに、より高い温度を必要とするであろう)および相補性(多数のミスマッチを含むDNA分子は、マッチした塩基対の間の水素結合をより少なくしか含有しない性質のため、より低いTmを有するであろう)に基づいて、異なる温度で解離する。
【0049】
いくつかの態様において、挿入蛍光剤の存在下で増幅工程(d)を行ってもよい。したがって、融解曲線分析を行う場合、反応産物のTm(およびしたがって同一性)、そしてしたがってターゲットポリヌクレオチド配列を示す、蛍光の変化を監視する。刺激性電磁放射の供給源(レーザー、LED、ランプ等)、および放出された蛍光を検出し、そしてそこから、特に設計されたアルゴリズムを用いて、マイクロプロセッサまたはコンピュータによって分析可能であるデータストリームを含むシグナルを生成するように配置された光検出装置を含む配置を用いて、蛍光の変化を検出してもよい。
【0050】
挿入蛍光剤は、二本鎖DNAに特異的な色素、例えばSYBRグリーン、Evaグリーン、LGグリーン、LCグリーンプラス、ResoLight、ChromofyまたはSYTO9であってもよい。当業者は、本発明に使用してもよい多くの挿入蛍光剤があり、そして上記リストは、本発明の範囲を限定するとは意図されないことを認識するであろう。挿入蛍光剤は、蛍光標識DNAプローブであってもよい。本発明の1つの態様において、近位プローブ、フルオロフォアを含むもの、他の適切な消光剤を用いて、ターゲット増幅配列に対するDNAプローブの相補性を決定してもよい。
【0051】
本発明の別の側面において、所定の核酸分析物において、ターゲットポリヌクレオチド配列を同定する方法であって:
a. 核酸分析物を、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAにアニーリングさせて、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端が分析物ターゲット配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成し;
b. 第一の中間産物を、Aの3’端から3’−5’方向に、加ピロリン酸分解酵素で加ピロリン酸分解して、部分的に消化された鎖Aおよび分析物を生成し;
c. (i)Aに一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBをアニーリングさせ、そしてBに対して、5’−3’方向に、A鎖を伸長するか;または(ii)3’および5’端の連結を通じてAを環状化するか;または(iii)Aの3’端を連結プローブオリゴヌクレオチドCの5’端に連結し;各場合で、オリゴヌクレオチドAを生成し;
d. Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そしてAの多数コピーまたはAの領域を生成し;
e. 1つまたはそれより多いオリゴヌクレオチド蛍光結合色素または分子プローブを用いて、Aの多数コピーまたはAの領域をラベリングし;
f. 多数コピーの蛍光シグナルを測定し;
g. 多数のコピーを変性条件セットに曝露し;そして
h. 変性条件への曝露中の多数コピーの蛍光シグナルの変化を監視することによって、ターゲットポリヌクレオチド配列を同定する
工程によって特徴づけられる、前記方法を提供する。
【0052】
いくつかの態様において、温度を変化させる、例えば二本鎖が解離し始める点まで温度を増加させることによって、変性条件を提供してもよい。さらにまたはあるいは、また、条件が酸性であるかまたはアルカリ性であるようにpHを変化させることによって、あるいは添加剤または剤、例えば強酸または塩基、濃縮無機塩または有機溶媒、例えばアルコールを添加することによって、変性条件を提供してもよい。
【0053】
第一の側面の方法と関連してまたは独立に使用してもよい、本発明のさらなる側面において、分析物を増幅し、そして典型的にはかなり過剰に存在するバックグラウンドゲノムDNAから分析物を分離するように設計された、一連の予備工程によって、上述の生物学的試料から、一本鎖型の分析物を調製してもよい。この方法は、一般的に、一本鎖ターゲット分析物の産生に適用可能であり、そしてしたがって、該方法が本発明の第一の側面の方法の一部と統合されるかまたはこれをさらに含む場合以外の状況で有用である。したがって、(i)分析物(単数または複数)の対応する二本鎖型で構成される生物学的試料、および随意にバックグラウンドゲノムDNAを、増幅周期に供することによって、分析物(単数または複数)のアンプリコンを産生する工程によって特徴づけられる、ターゲットポリヌクレオチド領域で構成される核酸の少なくとも1つの一本鎖分析物を調製するための方法を提供する。1つの好ましい態様において、ポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、およびプライマーの1つが5’−3’エキソヌクレアーゼブロッキング基を含む少なくとも1つの対応するプライマー対の存在下で、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、増幅を行い、そして(ii)随意に、工程(i)の産物を、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼで消化する。1つの態様において、方法はさらに、(iii)工程(ii)の産物をプロテイナーゼと反応させてポリメラーゼを破壊して、そしてその後、(iv)工程(iii)の産物を、50℃を超える温度に加熱することによって、プロテイナーゼを非活性化する工程を含んでもよい。
【0054】
1つの好ましい態様において、工程(i)〜(iv)を本発明の第一の側面の方法の工程(1)の前に行って、生物学的試料に由来するターゲット配列を検出する統合法を生じる。別の態様において、生物学的試料は、工程(i)を行う前に、細胞溶解を経ている。
【0055】
工程(i)の1つの態様において、ヌクレオシド三リン酸は、天然存在DNAに特徴的な4つのデオキシヌクレオシド3リン酸の混合物である。好ましい態様において、デオキシヌクレオシド三リン酸の混合物は、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)の代わりにデオキシウリジン三リン酸(dUTP)を含み、そして工程(i)はさらに、酵素dUTP−DNAグリコラーゼ(UDG)の存在下で行われて、以前のアッセイからの混入アンプリコンも除去する。さらに別の態様において、高忠実度ポリメラーゼ、例えば商標名Phusion(登録商標)またはQ5のもとで販売されるものを工程(i)で用いる。
【0056】
1つの態様において、限定された量のプライマーおよび過剰な増幅周期を用いて、工程(i)を行う。この手段によって、分析物の最初の量に関わらず、固定された量のアンプリコンが産生される。したがって、続く工程前の分析物定量化の必要性が回避される。工程(ii)の必要性を取り除く利点を有する、工程(i)の別の態様において、2つのプライマーの一方が他方より過剰に存在するプライマー対の存在下で増幅を行い、1つのプライマーが完全に利用されたら、一本鎖アンプリコンの生成を生じる。
【0057】
工程(ii)の1つの好ましい態様において、5’プライマーは、ホスホロチオエート連結、反転塩基、DNAスペーサー、および当該技術分野に一般的に知られる他のオリゴヌクレオチド修飾より選択されるエキソヌクレアーゼブロッキング基でブロッキングされる。別の態様において、対である他のプライマーは、5’端にリン酸基を有する。
【0058】
1つの態様において、工程(iii)において、使用するプロテイナーゼはプロテイナーゼKであり、そして80〜95℃の温度に最大30分間加熱することによって、工程(iv)を行う。別の態様において、工程(ii)の後であるが、工程(b)の前のある時点で、反応媒体をアピラーゼまたは他のホスファターゼで処理して、存在しうる残渣ヌクレオシド三リン酸も除去する。
【0059】
本発明のさらなる側面において、加ピロリン酸分解工程(b)を、二本鎖特異的エキソヌクレアーゼを用いたエキソヌクレアーゼ消化工程で置き換える、代替態様を提供する。当業者は、二本鎖特異的エキソヌクレアーゼには、とりわけ、3’−5’方向に読むもの、例えばExоIII、および5’−3’方向に読むもの、例えばラムダExoが含まれることを理解するであろう。
【0060】
この側面の1つの態様において、工程(b)の二本鎖特異的エキソヌクレアーゼは、3’−5’方向に進行する。こうした態様において、本発明の方法は:
a. 分析物を、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAにアニーリングさせて、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端が分析物ターゲット配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成し;
b. 第一の中間産物を、Aの3’端から3’−5’方向に、二本鎖特異的エキソヌクレアーゼで消化して、部分的に消化された鎖Aおよび分析物を生成し;
c. (i)Aに一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBをアニーリングさせ、そしてBに対して、5’−3’方向に、A鎖を伸長するか;または(ii)3’および5’端の連結を通じてAを環状化するか;または(iii)Aの3’端を連結プローブオリゴヌクレオチドCの5’端に連結し;各場合で、オリゴヌクレオチドAを生成し;
d. Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そしてAの多数コピーまたはAの領域を生成し;そして
e. 多数コピー由来のシグナルを検出し、そして分析物におけるポリヌクレオチドターゲット配列の存在または非存在をそこから推測する
工程によって特徴づけられる。
【0061】
この側面の1つの態様において、工程(b)の二本鎖特異的エキソヌクレアーゼは、5’−3’方向に進行する。こうした態様において、本発明の方法は:
a. 分析物を、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAにアニーリングさせて、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの5’端が分析物ターゲット配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成し;
b. 第一の中間産物を、Aの5’端から5’−3’方向に、二本鎖特異的エキソヌクレアーゼで消化して、部分的に消化された鎖Aおよび分析物を生成し;
c. (i)Aに一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBをアニーリングさせ、そしてBに対して、5’−3’方向に、A鎖を伸長するか;または(ii)3’および5’端の連結を通じてAを環状化するか;または(iii)Aの5’端を連結プローブオリゴヌクレオチドCの3’端に連結し;各場合で、オリゴヌクレオチドAを生成し;
d. Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そしてAの多数コピーまたはAの領域を生成し;そして
e. 多数コピー由来のシグナルを検出し、そして分析物におけるポリヌクレオチドターゲット配列の存在または非存在をそこから推測する
工程によって特徴づけられる。
【0062】
工程(b)が二本鎖特異的5’−3’エキソヌクレアーゼを利用する、本発明の態様において、ターゲット分析物に相補的であるのはAの5’端であり、そして共通プライミング配列およびブロッキング基は、ターゲットに相補的な領域の3’側に位置する。工程(e)における検出のために分子プローブを用いようとする、さらなる態様において、プローブオリゴヌクレオチドAは、ターゲット配列に相補的な領域の3’側に、オリゴヌクレオチド同定領域を含むように設定され、そして使用する分子プローブは、この同定領域にアニーリングするように設計される。
【0063】
工程(b)が二本鎖特異的5’−3’エキソヌクレアーゼを利用する、本発明の態様において、工程b.の後に、存在する他の核酸分子も消化する一方、Aおよび部分的に消化された鎖Aを含む物質も損なわれないままに残す目的のため、3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼを、随意に反応混合物に添加してもよい。適切には、エキソヌクレオリシスに対するこの耐性は、先に記載するように達成される。
【0064】
各々異なる分子プローブ等に関連している、多数の異なるA、および随意にB、CまたはD構成要素を用いることによって、複数の異なる分析物を含む反応混合物に、本発明の方法を適用してもよいことが認識されるであろう。こうした多重化法において、所定の癌または多数の感染性疾患等に特徴的である多数のターゲット領域の検出が可能になる。1つの態様において、生成されるすべての異なるA鎖は、共通プライマー部位を有するが、異なる同定領域を有し、1つまたは単一セットのプライマーを増幅工程(d)で用いることが可能になることが好ましい。
【0065】
本発明の別の側面において、哺乳動物被験体、特にヒト患者を、感染性疾患、癌の存在に関して、あるいはコンパニオン診断情報を生成する目的のために、スクリーニングするための、上記の方法の使用を提供する。
【0066】
本発明のさらなる側面において、上述のような方法で使用するための対照プローブを提供する。本発明の態様には、単数または複数の特異的ターゲット配列の存在が、蛍光シグナルの生成によって解明されるものが含まれる。
【0067】
こうした態様において、試料中に存在する非ターゲットDNAから生成される、あるレベルのシグナルが必然的に存在しうる。所定の試料に関して、このバックグラウンドシグナルは、「真」のシグナルよりも後に開始するが、この開始は、試料間で多様でありうる。正確には、低濃度の単数または複数のターゲット配列の存在の検出は、したがって、その非存在下で、どのシグナルが予期されるかの知識に頼る。企図される試料に関しては参照が入手可能であるが、患者由来の真の「ブラインド」試料に関しては当てはまらない。対照プローブ(E)を利用して、各アッセイプローブに関する予期されるバックグラウンドシグナルプロファイルを決定する。対照プローブは、試料中に存在すると予期されない配列をターゲットとし、そして次いで、このプローブから生成されるシグナルを用いて、ターゲット配列の非存在下での試料からのシグナル生成の予期される速度を推測してもよい。
【0068】
したがって、所定の核酸分析物において、ターゲットポリヌクレオチド配列を検出する方法であって:
a. 一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAを試料に添加して、ターゲット分析物とアニーリングさせて、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端が分析物ターゲット配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成し;
b. 第一の中間産物を、Aの3’端から3’−5’方向に、加ピロリン酸分解酵素で加ピロリン酸分解して、部分的に消化された鎖Aおよび分析物を生成し;
c. (i)Aに一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBをアニーリングさせ、そしてBに対して、5’−3’方向に、A鎖を伸長するか;または(ii)3’および5’端の連結を通じてAを環状化するか;または(iii)Aの3’端を連結プローブオリゴヌクレオチドCの5’端に連結し;各場合で、オリゴヌクレオチドAを生成し;
d. Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そしてAの多数コピーまたはAの領域を生成し;
e. 多数コピー由来のシグナルを検出し;
f. ターゲット配列に少なくとも部分的にミスマッチしている3’端領域を有する第二の一本鎖プローブオリゴヌクレオチドEを用いて、試料の別個のアリコットを用いるかまたは同じアリコット中でそして第二の検出チャネルを用いるかのいずれかで、工程(a)〜(e)を、続いてまたは同時にのいずれかで反復し;
g. (f)の結果から、試料中のターゲット分析物も非存在下で、Aから生じると予期されるバックグラウンドシグナルを推測して;そして
h. (e)で観察される実際のシグナルと、(g)で推測される予期されるバックグラウンドシグナルの比較を通じて、分析物中のポリヌクレオチドターゲット配列の存在または非存在を推測する
工程によって特徴づけられる、前記方法を提供する。
【0069】
いくつかの態様において、本発明記載の工程(e)における方法は:
i. 1つまたはそれより多いオリゴヌクレオチド蛍光結合色素または分子プローブを用いて、Aの多数コピーまたはAの領域を標識し;
ii. 工程(d)で産生された多数コピーの蛍光シグナルを測定し;
iii. 変性条件のセットに多数コピーを曝露し;そして
iv. 変性条件への曝露中に、工程(f)の産物に対して行った同じ測定に比較して、多数コピーの蛍光シグナルにおける変化を監視することによって、増幅された産物の存在を検出し、そして該産物を同定する
工程によって起こる。
【0070】
1つの態様において、対照プローブ(E)およびAを試料の別個の部分に添加する一方、別の態様において、EおよびAを試料の同じ部分に添加し、そして異なる検出チャネル(例えば異なる有色色素)を用いて、それぞれのシグナルを測定する。次いで、Eによって生成されたシグナルを利用して、試料中のポリヌクレオチドターゲット配列の非存在下で、Aによって生成されると予期されるバックグラウンドシグナルを推測し、そしてこれに関して修正してもよい。例えば、バックグラウンドシグナルの修正は、Aから観察されるものから、Eから観察されるシグナルを減算することを伴うか、または多様な条件下で、AおよびEによって生成される相対シグナルの較正曲線を用いた、Aから観察されるシグナルの較正を通じてもよい。
【0071】
1つの態様において、単一のEを用いて、産生されうるアッセイプローブすべてを較正してもよい。
1つの態様において、別個のEを用いて、最初の増幅工程で生成された試料DNAの各アンプリコンを較正してもよい。各アンプリコンは、関心対象の多数の突然変異/ターゲット配列を含有してもよいが、単一アンプリコンに対してアッセイプローブのすべてを較正するために、単一のEで十分であろう。
【0072】
さらなる態様において、各ターゲット配列に関して、別個のEを用いてもよい。例えば、C>T突然変異をターゲティングする場合、患者に生じていることが知られていない同じ部位のC>G突然変異をターゲティングするEを設計してもよい。多様な条件下で、Eによって生成されるシグナルプロファイルを較正反応において評価して、そしてこれらのデータを用いて、変異体が存在しない場合のC>T変異体をターゲティングするアッセイプローブから予期されるシグナルを推測してもよい。
【0073】
本発明の方法の1つの態様は、図9〜12に見られうる。図9において、工程a〜bの1つの態様を例示する。工程aにおいて、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAは、ターゲットポリヌクレオチド配列にアニーリングして、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端がターゲットポリヌクレオチド配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成する。本発明のこの単純化された態様において、ターゲットにアニーリングしなかったAが、方法のさらなる工程に、どのように関与しないかを例示するため、存在するAの2つの分子および1つのターゲットポリヌクレオチド配列がある。工程aのこの例示的例において、Aの3’端はターゲットポリヌクレオチド配列にアニーリングする一方、Aの5’端はアニーリングしない。Aの5’端は5’化学ブロッキング基、共通プライミング配列およびバーコード領域を含む。
【0074】
工程bにおいて、部分的に二本鎖である第一の中間産物を、Aの3’端から3’−5’方向に、加ピロリン酸分解酵素で加ピロリン酸分解して、部分的に消化された鎖A、分析物および工程aでターゲットにアニーリングしなかった未消化A分子を生成する。
【0075】
図10において、工程c(i)〜dの1つの態様を例示する。工程c(i)において、Aを一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBにアニーリングさせて、そしてA鎖をBに対して5’−3’方向に伸長してオリゴヌクレオチドAを生成する。この例示的例において、トリガーオリゴヌクレオチドBは5’化学ブロックを有する。方法の工程b由来の未消化AはトリガーオリゴヌクレオチドBにアニーリングするが、Bに対して5’−3’方向に伸長して、工程dの増幅プライマーに関するターゲットである配列を生成することは不可能である。
【0076】
工程dにおいて、Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングして、そして多数コピーのAまたはAの領域を生成する。
図11において、工程c(ii)〜dの1つの態様を例示する。工程c(ii)において、AをスプリントオリゴヌクレオチドDにアニーリングさせて、そして次いで、その3’および5’端の連結によって環状化する。工程dにおいて、ここで環状化されているAを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングして、そして多数コピーのAまたはAの領域を生成する。この例示的例において、スプリントオリゴヌクレオチドDは、3’修飾(この例においては化学物質)のため、またはDの3’端およびAの対応する領域の間のヌクレオチドミスマッチを通じて、Aに対して伸長することは不可能である。
【0077】
工程dにおいて、Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングして、そして多数コピーのAまたはAの領域を生成する。
図12において、工程c(iii)〜dの1つの態様を例示する。工程c(ii)において、AをスプリントオリゴヌクレオチドDにアニーリングさせて、そして次いで、3’および5’端の連結によって環状化する。工程dにおいて、ここで環状化されているAを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングして、そして多数コピーのAまたはAの領域を生成する。この例示的例において、スプリントオリゴヌクレオチドDは、3’修飾(この例においては化学物質)のため、またはDの3’端およびAの対応する領域の間のヌクレオチドミスマッチを通じてのいずれかで、Aに対して伸長することは不可能である。
【0078】
工程dにおいて、Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングして、そして多数コピーのAまたはAの領域が生成される。
野生型DNAの少なくとも一部をブロッキングし、Aのターゲットポリヌクレオチド配列のみへのアニーリングを促進することによって、本発明の方法の特異性を改善してもよい。ブロッキングオリゴヌクレオチドを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の特異性を改善してもよい。用いられる一般的な技術は、PCRプライマー間でアニーリングし、そしてPCRポリメラーゼによって置換されるかまたは消化されることが不可能である、オリゴヌクレオチドを設計することである。オリゴヌクレオチドは、非ターゲット(通常、健康な)配列にアニーリングするように設計される一方、ターゲット(突然変異体)配列にはミスマッチ(しばしば一塩基で)である。このミスマッチは、2つの配列に対して異なる融解温度を生じ、オリゴヌクレオチドは、PCR伸長温度では、非ターゲット配列にアニーリングしたままである一方、ターゲット配列からは解離するように設計される。
【0079】
ブロッキングオリゴヌクレオチドは、しばしば、PCRポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性による消化を防止するか、またはターゲットおよび非ターゲット配列の間の融解温度差異を増進させるような修飾を有してもよい。
【0080】
ロックド核酸(LNA)または他の融解温度改変修飾のブロッキングオリゴヌクレオチド内への取り込みは、ターゲットおよび非ターゲット配列に対するオリゴヌクレオチドの融解温度の差異を有意に増加させうる。
【0081】
したがって、ブロッキングオリゴヌクレオチドを用いる本発明の態様を提供する。ブロッキングオリゴヌクレオチドは、消化されずまた置換されないことを確実にするために、加ピロリン酸分解(PPL)反応に耐性でなければならない。これは、いくつかの異なる方法で、例えば3’端のミスマッチを通じるか、あるいはホスホロチオエート結合またはスペーサーなどの修飾を通じるかのいずれかで、達成可能である。
【0082】
ブロッキングオリゴヌクレオチドを用いる、本発明のこうした態様または側面において、所定の核酸分析物において、ターゲットポリヌクレオチド配列を検出する方法は:
a. 一本鎖ブロッキングオリゴヌクレオチドを少なくとも非ターゲットポリヌクレオチドのサブセットにアニーリングさせ;
b. 分析物ターゲット配列を、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAにアニーリングさせて、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端が分析物ターゲット配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成し;
c. 第一の中間産物を、Aの3’端から3’−5’方向に、加ピロリン酸分解酵素で加ピロリン酸分解して、部分的に消化された鎖Aおよび分析物を生成し;
d. (i)Aに一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBをアニーリングさせ、そしてBに対して、5’−3’方向に、A鎖を伸長するか;または(ii)3’および5’端の連結を通じてAを環状化するか;または(iii)Aの3’端を連結プローブオリゴヌクレオチドCの5’端に連結し;各場合で、オリゴヌクレオチドAを生成し;
e. Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そしてAの多数コピーまたはAの領域を生成し;そして
f. 多数コピー由来のシグナルを検出し、そして分析物におけるポリヌクレオチドターゲット配列の存在または非存在をそこから推測する
工程によって特徴づけられる。
【0083】
1つの態様において、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、3’端でのミスマッチを通じて加ピロリン酸分解に耐性であるように作製される。別の態様において、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、3’ブロッキング基の存在を通じて耐性であるように作製される。別の態様において、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、スペーサーまたは他の内部修飾の存在を通じて耐性であるように作製される。さらなる態様において、ブロッキングオリゴヌクレオチドには、融解温度を増加させる修飾または修飾ヌクレオチド塩基の両方が含まれ、そして加ピロリン酸分解に耐性を与えられる。
【0084】
本発明は、ここで、以下の実験データを参照しながら例示される。
【実施例】
【0085】
実施例1: 単一ヌクレオチドミスマッチに対する加ピロリン酸分解特異性
以下のヌクレオチド配列:
【0086】
【化2】
【0087】
式中、A、C、GおよびTは、DNAの適切な特徴的核酸塩基を所持するヌクレオチドに相当する
を有する一本鎖の第一のオリゴヌクレオチド1(配列番号1)を調製した。
【0088】
5’から3’方向に以下のヌクレオチド配列:
【0089】
【化3】
【0090】
式中、オリゴヌクレオチド2には、オリゴヌクレオチド1の3’端の52塩基に相補的な52塩基領域が含まれ、そしてオリゴヌクレオチド3〜6には、それぞれ、1位、10位、20位および30位で単一ヌクレオチドミスマッチを含む同じ領域が含まれる
を有する一本鎖オリゴヌクレオチド2〜6(配列番号2〜6)のセットもまた調製した。
【0091】
次いで、以下の配合:
20μL 5x緩衝剤 pH8.0
10μLオリゴヌクレオチド1、3000nM
10μLオリゴヌクレオチド2、3、4、5または6、3000nM
2.5U Mako DNAポリメラーゼ(例えばQiagen Beverly)
10μL無機ピロリン酸、6mM
0.04Uアピラーゼ
100μLまでの水
ここで、5x緩衝剤は以下の混合物を含んだ:
50μL酢酸Trizma、1M、pH8.0
25μL水性酢酸マグネシウム、1M
25μL水性酢酸カリウム、5M
50μL Triton X−100界面活性剤(10%)
1mLまでの水
に由来するものに対応する組成を有する反応混合物を調製した。
【0092】
次いで、混合物を37℃で120分間インキュベーションすることによってオリゴヌクレオチド1の加ピロリン酸分解を行い、そして生じた反応産物を、ゲル電気泳動によって分析した。
【0093】
この分析の結果を図1に示し、この図において、オリゴヌクレオチド2の存在下で、オリゴヌクレオチド1はオリゴヌクレオチド2から融解する長さまで分解され、長さおよそ50ヌクレオチド短くなったオリゴヌクレオチドが残ることがわかる。逆に、オリゴヌクレオチド3の存在下では、オリゴヌクレオチド1の3’端での単一ヌクレオチドミスマッチのため、加ピロリン酸分解は観察されない。オリゴヌクレオチド4〜6の存在下で、オリゴヌクレオチド1の加ピロリン酸分解は、一塩基ミスマッチの位まで進行し、この点で停止して、さらには分解されない短くなったオリゴヌクレオチドが残る。
【0094】
実施例2: 分解されたプローブの環状化および非環状化DNAのエキソヌクレアーゼ消化
以下のヌクレオチド配列:
【0095】
【化4】
【0096】
式中、A、C、GおよびTは、DNAの適切な特徴的核酸塩基を所持するヌクレオチドに相当し、そしてPは5’リン酸基に相当し、そしてオリゴヌクレオチド1は、適切なターゲットオリゴヌクレオチドに対するオリゴヌクレオチド2の加ピロリン酸分解を通じて得られるであろうような、短くなったオリゴヌクレオチド2を含む
を有する、一本鎖の第一のオリゴヌクレオチド1(配列番号7)および2(配列番号8)を調製した。
【0097】
以下のヌクレオチド配列:
【0098】
【化5】
【0099】
式中、/3ddC/は、3’ジデオキシシトシンヌクレオチドに相当し、そしてオリゴヌクレオチド3は、オリゴヌクレオチド1の3’端およびオリゴヌクレオチド2の内部領域に相補的な5’端、ならびにオリゴヌクレオチド1および2の5’端に相補的な3’端を有する
を有する、第三の一本鎖オリゴヌクレオチド3(配列番号9)もまた調製した。
【0100】
次いで、以下の配合:
20μL 5x緩衝剤 pH8.0
10μLオリゴヌクレオチド1または2、3000nM
10μLオリゴヌクレオチド3、3000nM
7U大腸菌(E. coli)リガーゼ
100μLまでの水
ここで、5x緩衝剤は以下の混合物を含んだ:
50μL酢酸Trizma、1M、pH8.0
25μL水性酢酸マグネシウム、1M
25μL水性酢酸カリウム、5M
50μL Triton X−100界面活性剤(10%)
1mLまでの水
に由来するものに対応する組成を有する反応混合物を調製した。
【0101】
次いで、混合物を37℃で30分間インキュベーションすることによって、オリゴヌクレオチド連結を行った。
次いで、以下の配合:
20μL 5x緩衝剤 pH8.0
125UエキソヌクレアーゼIIIまたは同等の体積の水
100μLまでの水
ここで、5x緩衝剤は以下の混合物を含んだ:
50μL酢酸Trizma、1M、pH8.0
25μL水性酢酸マグネシウム、1M
25μL水性酢酸カリウム、5M
50μL Triton X−100界面活性剤(10%)
1mLまでの水
に由来するものに対応する組成を有する、第二の反応混合物を調製した。
【0102】
次いで、第一および第二の反応混合物を合わせて、そして生じた混合物を37℃で30分間インキュベーションして、非環状化DNAのエキソヌクレアーゼ消化も可能にした。次いで、生じた溶液をゲル電気泳動によって分析した。
【0103】
この分析の結果を図2に示し、ここで、短くなったオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)が、連結反応によって効率的に環状化され、そして続くエキソヌクレアーゼ消化でも残る一方、短くなっていないオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)は環状化されず、そして効率的に消化されることがわかる。
【0104】
実施例3: 環状化プローブの増幅
以下のヌクレオチド配列:
【0105】
【化6】
【0106】
式中、A、C、GおよびTは、DNAの適切な特徴的核酸塩基を所持するヌクレオチドに相当する
を有する、一本鎖のオリゴヌクレオチドプライマー1(配列番号10)および2(配列番号11)の対を調製した。
【0107】
次いで、以下の配合:
20μL 5xPhusion Flex HF反応緩衝剤
0.1μLの実施例2由来の最終反応混合物
100μLまでの水
に由来するものに対応する組成を有する反応混合物を調製した。
【0108】
以下の配合:
20μL 5xPhusion Flex HF反応緩衝剤
10μLベタイン、2.5M
10μLオリゴヌクレオチド1、3000nM
10μLオリゴヌクレオチド2、3000nM
10μL dNTP、2mM
2U PhusionホットスタートFlex DNAポリメラーゼ
100μLまでの水
に由来するものに対応する組成を有する、第二の反応混合物もまた調製した。
【0109】
次いで、第二の反応混合物を、0.1μLの第一の反応混合物と合わせ、そして生じた混合物を98℃で1分間、その後、30周期の(98℃x20秒間;55℃x30秒間;68℃x30秒間)に供し、ポリメラーゼ連鎖反応を通じて指数関数的増幅が起こることを可能にした。
【0110】
次いで、生じた反応産物をゲル電気泳動によって分析し、その結果を図3に示す。この分析から、実施例2において短くなったオリゴヌクレオチドが存在し、そしてこれが環状化された場合、この増幅によって多量の産物が産生されることがわかる。逆に、短くなっていないオリゴヌクレオチドが、実施例2において存在せず、そして環状化が起こらなかった場合、DNAの観察可能な増幅はなかった。
【0111】
実施例4: ピロリン酸類似体を用いた加ピロリン酸分解
以下のヌクレオチド配列:
【0112】
【化7】
【0113】
式中、A、C、GおよびTは、DNAの適切な特徴的核酸塩基を所持するヌクレオチドに相当し;Fは慣用的なアミン付着化学反応を用いてAtto 594色素で標識されたデオキシチミジンヌクレオチド(T)に相当し、そしてQはBHQ−2消光剤で標識されたデオキシチミジンヌクレオチドに相当する
を有する、一本鎖の第一のオリゴヌクレオチド1(配列番号12)を調製した。
【0114】
以下のヌクレオチド配列:
【0115】
【化8】
【0116】
式中、オリゴヌクレオチド2がオリゴヌクレオチド1にアニーリングした際、オリゴヌクレオチド1の3’端が後退して、加ピロリン酸分解のターゲットとなる一方、オリゴヌクレオチド2の3’端が逆方向末端ヌクレオチドの存在によって加ピロリン酸分解から保護されるように、Xは、反転3’dTヌクレオチドに相当する
を有する、別の一本鎖オリゴヌクレオチド2(配列番号13)もまた調製した。
【0117】
次いで、以下の配合:
20μL 5x緩衝剤 pH8.0
10μLオリゴヌクレオチド1、1000nM
10μLオリゴヌクレオチド2、1000nM
2.5U Mako DNAポリメラーゼ(例えばQiagen Beverly)
10μL無機ピロリン酸、6mM、またはイミド二リン酸、10mM、または水
100μLまでの水
ここで、5x緩衝剤は以下の混合物を含んだ:
50μL酢酸Trizma、1M、pH8.0
25μL水性酢酸マグネシウム、1M
25μL水性酢酸カリウム、5M
50μL Triton X−100界面活性剤(10%)
1mLまでの水
に由来するものに対応する組成を有する反応混合物を調製した。
【0118】
次いで、混合物を37℃で75分間インキュベーションすることによって、オリゴヌクレオチド1の加ピロリン酸分解を行った。オリゴヌクレオチド1が進行性に加ピロリン酸分解されるにつれて、蛍光色素分子は消光剤から分離し、そして次いで蛍光シグナルを生成することが可能になった。インキュベーション中のこの蛍光の増大を、CLARIOStarマイクロプレート読み取り装置(例えばBMG Labtech)を用いて監視し、そしてこれを用いて、無機ピロリン酸、イミド二リン酸または水の存在下でのオリゴヌクレオチドの加ピロリン酸分解速度を推測した。
【0119】
この実験の結果を図4にグラフで示す。ここから、ピロリン酸またはイミド二リン酸の存在下で、加ピロリン酸分解が進行するが、非存在下では進行しないことがわかる。同様に、ポリメラーゼが存在しない比較実験においては、蛍光シグナルは生じなかった。ピロリン酸の存在下での加ピロリン酸分解は、遊離ヌクレオチド三リン酸を産生する一方、イミド二リン酸の存在下での加ピロリン酸分解は、ベータおよびガンマリン酸の間に、Oの代わりにN−H基を有する、修飾遊離ヌクレオチド三リン酸(2’−デオキシヌクレオシド−5’−[(β,γ)イミド]三リン酸)を生じる。
【0120】
実施例5: 融解曲線分析
本発明の方法を行って、ヒトEGFR遺伝子で生じうる3つの異なる突然変異:T790M(エクソン20)、C797S(エクソン20)およびL861Q(エクソン21)の存在を検出し、そして同定した。
【0121】
野生型ゲノムDNAを含有する6つの試料を調製した。これらの試料のうち3つには、これらの試料中の最終突然変異アレル割合が1%になるように、関心対象の3つの突然変異の各々に関する単一合成突然変異配列でスパイク処理した。各試料に、異なる単一突然変異の検出のために設計されたプローブオリゴAを添加した:
【0122】
【化9】
【0123】
無機ピロリン酸イオンおよびMako DNAポリメラーゼの添加を通じて、試料を加ピロリン酸分解に供し、そして41℃でインキュベーションした。プローブオリゴの加ピロリン酸分解後、大腸菌リガーゼおよび以下の配列:
【0124】
【化10】
【0125】
を含むスプリントオリゴの添加を通じて、連結を行った。
連結後、以下の配列を有するdNTP、BstLF DNAポリメラーゼ、Sybrグリーン挿入色素、突然変異特異的順方向プライマーおよび普遍的逆方向プライマーの添加を通じて、試料を、高分岐ローリングサークル増幅に供し、その後、60℃で70分間インキュベーションした。
【0126】
【化11】
【0127】
次いで、試料の温度を70℃から95℃に上げ、そして0.5℃ごとに蛍光測定を行った。生じるデータ曲線を差異化して、融解ピークを生じ、その結果を図5に示す。したがって、有意な融解ピークの存在を用いて、所定のプローブによってターゲティングされる突然変異の存在を推測する一方、このピークの位置を用いて、突然変異の性質を同定することも可能であることがわかる。
【0128】
実施例6: 適用および使用
以下に記載する以下の適用は、本発明の方法をどのように適用しうるかのいくつかの例を提供する。
【0129】
比較診断
本発明の方法を用いて、試料における特定の遺伝子マーカーを検出してもよく、これは適切な療法の選択のガイドを補助するために使用されうる。これらのマーカーは腫瘍特異的突然変異であってもよいし、または野生型ゲノム配列であってもよく、そして組織、血液または任意の他の患者試料タイプを用いて検出されてもよい。
【0130】
耐性監視
疾患の治療中の患者試料の反復試験によって、療法に対して発展する耐性の早期検出が可能になりうる。この適用の例は、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤(例えばゲフィチニブ、エルロチニブ)が第一の治療として一般的に用いられる、非小細胞肺癌(NSCLC)である。治療中、腫瘍はしばしば、EGFR遺伝子中に突然変異(例えばT790M、C797S)を発展させ、これが薬剤に対する耐性を与える。これらの突然変異の早期検出は、代替療法(例えばTagrisso)への患者の転換を可能にしうる。
【0131】
典型的には、耐性開始に関して監視される患者は、反復組織生検を行うには病状が悪すぎる可能性もある。反復組織生検はまた、費用が高く、侵襲性であり、そして関連するリスクを持つ可能性もある。血液から試験することが好ましいが、妥当な採血試料においては、関心対象の突然変異は非常に低コピー数でしか存在しない可能性もある。したがって、監視は、定期的に実行可能であるように、単純でそして費用効率的である、本発明の方法を用いた、血液試料由来の高感度試験を必要とする。
【0132】
再発監視
この適用例において、治療後に疾患がないと宣言されている患者を、長期に渡って監視して、疾患の再発を検出してもよい。これは、非侵襲性に行われる必要があり、そして血液試料からのターゲット配列の高感度検出を必要とする。本発明の方法を用いることによって、定期的に実行可能である、単純でそして低コストの方法を提供する。ターゲティングされる配列は、関心対象の疾患に一般的であることが知られる遺伝子突然変異であってもよいし、または寛解前の腫瘍組織における変異体の検出に基づいて、特定の患者に関して設計されるターゲットのカスタムパネルであってもよい。
【0133】
最小残渣疾患(MRD)監視
治療後、患者に残る残渣癌細胞があるいくつかの癌に関しては、これが癌および白血病の再発の主な原因である。MRD監視および試験は、いくつかの重要な役割:治療が癌を根絶させたかまたは痕跡が残っているかを決定すること、異なる治療の有効性を比較すること、患者寛解状態を監視すること、ならびに白血病の再発を検出すること、およびこれらの必要性を最適に満たすであろう治療を選択することを有する。
【0134】
スクリーニング
疾患の早期検出のための集団スクリーニングは、特に癌診断において、かねてからの目的である。困難な点は2点である:あまりにも多い偽陰性を伴わずに、疾患の確実な検出を可能にするマーカーパネルの同定、ならびに十分な感度および十分に低いコストの方法の開発である。本発明の方法を用いて、PCRに基づく試験よりもより大きな突然変異パネルに取り組むが、配列決定に基づく診断法よりもはるかに単純なワークフローおよびより低いコストであることが可能である。
【0135】
臓器移植拒絶
移植された臓器がレシピエントによって拒絶される場合、この臓器からのDNAがレシピエントの血流内に脱落する。このDNAの早期検出によって、拒絶の早期検出が可能になる。ドナー特異的マーカーのカスタムパネルを用いて、または集団において一般的であることが知られる変異体のパネルを用いることによって、これを達成してもよく、こうした変異体のうちいくつかは、ドナーに存在し、そしていくつかは、レシピエントに存在する。長期に渡る、臓器レシピエントのルーチンの監視は、本明細書に開示する本発明の低コストおよび単純なワークフローによって可能になりうる。
【0136】
非侵襲性出生前試験(NIPT)
胎児DNAが母体血液中に存在することは長い間知られており、そしてNIPT市場は現在、配列決定を用いて突然変異を同定し、そして特定の染色体のコピー数をカウントして、胎児異常の検出を可能にする企業によってかなり飽和している。本明細書に開示するような本発明の方法は、非常に低いアレル割合の突然変異を検出する能力を有し、胎児DNAのより早期の検出を潜在的に可能にする。所定の集団における共通の突然変異の同定は、母体または胎児DNAのいずれに存在してもよい突然変異をターゲティングするか、または妊娠のより早期段階での異常の検出を可能にするアッセイを開発することを可能にするであろう。
【0137】
実施例7: 単一ウェル多重化技術
いくつかの例において、任意の1つのターゲットの存在を同定すべきであるが同一性は同定しなくてもよい、突然変異またはターゲット配列の群がある。他のものにおいては、突然変異または配列の存在および同一性の両方に関する情報が必要である。どちらの場合も、多数のターゲットが単一反応体積においてアッセイされるように、反応を多重化することが有益である。これは、プロセスの効率の改善を導き、一度にプロセシング可能な試料の数またはアッセイ可能なターゲットパネルのサイズのいずれかを増加させる。ターゲット配列の存在が必要であるが同一性は必要でない場合、多重化は、多数のターゲットに関するプローブを単一反応体積に組み合わせる程度に単純でありうる。標準的PCRに勝る本発明の方法の1つの重要な利点は、1つの単一セットのプライマーを用いて、「活性化された」プローブ(A)すべてを、反応の最終工程で増幅可能であることである。
【0138】
EGFR遺伝子上のエクソン19欠失を用いて、本発明者らは、単一反応において、0.1%突然変異体アレル頻度(MAF)で10倍多重化検出を立証した。
各々、0.1%または0.5%の10の異なるエクソン19欠失の1つをスパイク処理した野生型(WT)DNAを含む、20の試料を調製した。WT DNAのみを含むさらなる試料を対照として用いた。すべての10の異なるエクソン19突然変異の検出のためのプローブをすべての試料に添加し、そして標準条件を用いて、反応を行った。結果(図6を参照されたい)は、0.5%および0.1%MAF両方で各突然変異の明らかな検出を示す。
【0139】
標準技術である、挿入色素、標識プローブ(Taqman、Scorpion、ステム−ループプライマー)、分子ビーコン、または当業者に知られるであろう任意の他の標準技術を用いて、検出を行ってもよい。
【0140】
ターゲットの同一性が必要である場合、多色系を用いて、どのプローブが活性化されているか(A)同定する可能性が最も高い。これは必然的に、異なるターゲットに関するプローブ中に、異なる「バーコード」配列があるプローブ設計を必要とし、これを次いで、同定のために用いる。次いで、先に論じるように同定を行ってもよい。
【0141】
1色を用いた10重多重化検出と同様に、本発明者らはまた、現在の方法の直鎖およびローリングサークル増幅実施の両方で(前者はTaqmanプローブを用い、後者はステム−ループプライマーを用いる)、単一ウェルにおける2色検出を立証している。この例において、T790M突然変異またはC797S突然変異のいずれかを、0%、0.1%および0.5%のアレル割合で含有する試料を調製した。加ピロリン酸分解および続く連結後、異なるフルオロフォアで標識した突然変異ターゲティングプローブAに特異的なプライマーまたはプローブを用いて、試料をローリングサークルまたは直鎖PCR増幅に供した。標識ステム−ループプライマーを用いたローリングサークル増幅の結果を図7に示し、ここで、T790M突然変異の存在下で、Cy5検出チャネルにおいてシグナルが生成される一方、C797S突然変異を含有する試料においてTexasRedチャネルでシグナルが観察されることがわかる。
【0142】
実施例8: バックグラウンドシグナル較正のための対照プローブの使用
各々、最終濃度100nMのヒトEGFR遺伝子のエクソン21のL858R突然変異領域の野生型配列を含む、合成オリゴヌクレオチド1(配列番号24)を含む、3つの試料1〜3を調製した:
【0143】
【化12】
【0144】
EGFR遺伝子の同じ領域に由来し、そしてさらにL858R突然変異を含む、以下の配列を有する、合成「突然変異体」オリゴヌクレオチド2(配列番号25)を調製した:
【0145】
【化13】
【0146】
オリゴヌクレオチド2を試料2および3に、それぞれ、100pMおよび1nM最終濃度で添加して、試料2中のL858R突然変異部位を含む分子が0.1%であり、そして試料3中のものの1%がこの突然変異を含むようにした。次いで、各試料を2つの反応体積に分けた。第一の反応体積に、アッセイプローブオリゴヌクレオチド3(配列番号26)を10nM最終濃度で添加して、該配列は、突然変異L858R配列領域に完全にマッチする3’端を含む一方、第二の体積には対照プローブオリゴヌクレオチド4(配列番号27)を同じ濃度で添加し、該配列は、L858R突然変異領域以外は同じ配列を含み、該領域において、突然変異体および野生型アレルの両方に対してミスマッチである配列を含んだ:
【0147】
【化14】
【0148】
次いで、反応体積を、0.6mMピロリン酸イオンおよび37.5U/mL Mako DNAポリメラーゼの添加および41℃30分間の加熱を通じて、加ピロリン酸分解に供した。この反応後、50U/mL熱安定性無機ピロホスファターゼおよび100U/mL大腸菌リガーゼとともに、スプリントオリゴヌクレオチド5(配列番号28)を各反応体積に10nM最終濃度に添加して、そして加ピロリン酸分解されたプローブも、37℃10分間のインキュベーションを通じて環状化した。次いで、大腸菌リガーゼを95℃10分間の加熱を通じて不活性化した。
【0149】
【化15】
【0150】
この後、エキソヌクレアーゼIIIおよびT5エキソヌクレアーゼの添加および30℃5分間のインキュベーションを通じて、試料をエキソヌクレアーゼ消化に供した後、95℃に5分間加熱することを通じて、エキソヌクレアーゼを不活性化した。
【0151】
次いで、各試料に、200nM最終濃度の2つのプライマーオリゴヌクレオチド6(配列番号29)および7(配列番号30)、0.4mM dNTP、320U/mL BstLF DNAポリメラーゼおよび0.5x最終濃度Sybrグリーン挿入色素を添加した。
【0152】
【化16】
【0153】
試料を60℃で80分間インキュベーションし、そして各試料中のSybrグリーン色素からの蛍光を1分あたり1回測定した。このインキュベーションの結果を図8(i)に示し、ここで、アッセイプローブの存在下で、蛍光シグナルは、L858R突然変異の存在に依存する一方、対照プローブから観察されるシグナルは、この突然変異の存在からは独立であり、そして突然変異の非存在下でプローブから観察されるシグナルに緊密にマッチすることがわかる。図8(ii)は、3つの試料各々に関するアッセイプローブシグナルからの対照プローブシグナルの減算の結果を示す。参照試料の使用を伴わずに、0.1%アレル割合が下限であるL858R突然変異の定量的検出は、したがって、この技術を通じて可能である。
【0154】
本発明の多様なさらなる側面および態様は、本開示を考慮して、当業者に明らかであろう。
「および/または」は、本明細書において、他方を伴うまたは伴わない、2つの明記する特徴または構成要素の各々の特異的開示として解釈されるものとする。例えば「Aおよび/またはB」は、各々が本明細書に個々に示されるのと同様に、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびBの各々の特異的開示として解釈されるものとする。
【0155】
背景が別に示さない限り、上に示す特徴の説明および定義は、本発明の任意の特定の側面または態様に限定されず、そして記載されるすべての側面および態様に等しく適用される。
【0156】
当業者は、本発明が例として、いくつかの態様に言及して記載されてきているが、開示する態様に限定されず、そして付随する請求項に定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、代替態様が構築可能であることをさらに認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2021524287000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021年6月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の核酸分析物において、ターゲットポリヌクレオチド配列を検出する方法であって:
a. 分析物を、一本鎖プローブオリゴヌクレオチドAにアニーリングさせて、少なくとも部分的に二本鎖であり、そしてAの3’端がターゲットポリヌクレオチド配列と二本鎖複合体を形成する、第一の中間産物を生成し;
b. 第一の中間産物を、Aの3’端から3’−5’方向に、加ピロリン酸分解酵素で加ピロリン酸分解して、部分的に消化された鎖Aおよび分析物を生成し;
c. (i)Aに一本鎖トリガーオリゴヌクレオチドBをアニーリングさせ、そしてBに対して、5’−3’方向に、A鎖を伸長するか;または(ii)3’および5’端の連結を通じてAを環状化するか;または(iii)Aの3’端を連結プローブオリゴヌクレオチドCの5’端に連結し;各場合で、オリゴヌクレオチドAを生成し;
d. Aを少なくとも1つの一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドでプライミングし、そしてAの多数コピーまたはAの領域の多数コピーを生成し;そして
e. 多数コピー由来のシグナルを検出し、そして分析物におけるターゲットポリヌクレオチド配列の存在または非存在をそこから推測する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
c(ii)またはc(iii)を使用し、そして連結前に、Aがまず5’−3’方向に伸長される、請求項1方法。
【請求項3】
連結が、連結前にAがアニーリングする、さらなるスプリントオリゴヌクレオチドDの添加を通じて行われ、Dが、Aの3’端に相補的なオリゴヌクレオチド領域およびオリゴヌクレオチドCの5’端またはAの5’端のいずれかに相補的な領域を含む請求項1方法。
【請求項4】
オリゴヌクレオチドDが、3’修飾のため、またはDの3’端およびAの対応する領域の間のミスマッチを通じてのいずれかで、Aに対する伸長を経ることが不可能である請求項3方法。
【請求項5】
工程(c)の後で、工程(c)より生成した反応混合物をエキソヌクレアーゼで処理して、実質的に非連結核酸物質消化し、そしてc(ii)を使用する場合、オリゴヌクレオチドCが、3’−5’エキソヌクレアーゼ消化から該オリゴヌクレオチドを保護する3’または内部修飾をさらに含む請求項1方法。
【請求項6】
工程(d)の前にエキソヌクレアーゼを非活性化する請求項5方法。
【請求項7】
c(i)を使用する請求項1方法であって、Bが(i)Aの3’端に相補的なオリゴヌクレオチド領域および(ii)Aまたはターゲットポリヌクレオチド配列に実質的に相補的でない5’の隣接オリゴヌクレオチド領域を含み、そして工程(d)で用いるプライマーオリゴヌクレオチドの1つがAの伸長された領域にアニーリングする前記方法。
【請求項8】
プローブオリゴヌクレオチドAが、エキソヌクレオリシス(exonucleolysis)に耐性である5’端を有し、そして工程(a)および(b)の後に、そこから産生される反応媒体を、5’−3’エキソヌクレアーゼで処理して、このエキソヌクレオリシスに耐性を与えられていない核酸分子実質的に除去する請求項1の方法。
【請求項9】
工程(b)がホスファターゼの存在下で行われる請求項1の方法。
【請求項10】
工程(a)および(b)が反復されて、分析物から、部分的に消化されたプローブAの多数のコピーを生成する請求項1の方法。
【請求項11】
工程(b)の後で、ピロホスファターゼの添加によって、加ピロリン酸分解反応を停止する請求項1の方法。
【請求項12】
工程(e)が、1つまたはそれより多いオリゴヌクレオチド結合色素または分子プローブを用いて、多数コピーから得られるシグナルを検出する工程を含む請求項1の方法。
【請求項13】
工程(d)および(e)が同時に行われる請求項1の方法。
【請求項14】
工程(d)におけるアンプリコンの生成から生じる、長期間に渡るシグナルの増加を用いて、分析物中のターゲットポリヌクレオチド配列の濃度を推測する請求項13の方法。
【請求項15】
分析物が一本鎖であり、そして工程(a)の前に、該分析物は、
(i生物学的試料を、増幅サイクルに供することによって、分析物のアンプリコンを産生し、そして
(ii)工程(i)の産物を、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼで消化する
工程によって、得られる分析物を含有する生物学的試料に由来する、ここで工程(i)で使用するプライマーの1つにエキソヌクレアーゼブロッキング基が含まれる請求項1の方法。
【請求項16】
デオキシチミジン三リン酸の代わりにデオキシウリジン三リン酸を用い、そしてUTP−DNAグリコラーゼの存在下で、工程(i)を実行する、請求項15の方法。
【請求項17】
分析物が一本鎖であり、そして工程(a)の前に、該分析物は、(i生物学的試料を増幅サイクルに供することにより分析物のアンプリコンを産生する工程によって得られる分析物を含有する生物学的試料に由来する、ここで使用するプライマーの1つを他のもの(単数または複数)より過剰に導入する請求項1の方法。
【請求項18】
増幅が3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を示すポリメラーゼを使用し工程(i)の後で、工程(i)の産物をプロテイナーゼと反応させて、ポリメラーゼを破壊し、そして次いで、この反応の産物を加熱することによってプロテイナーゼを破壊する請求項17の方法。
【請求項19】
増幅が3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を示すポリメラーゼを使用し工程(i)の後で、工程(i)の産物をプロテイナーゼと反応させて、ポリメラーゼを破壊し、そして次いで、この反応の産物を加熱することによってプロテイナーゼを破壊する、請求項17の方法。
【請求項20】
デオキシチミジン三リン酸の代わりにデオキシウリジン三リン酸を用い、そしてUTP−DNAグリコラーゼの存在下で、工程(i)を実行する、請求項17の方法。
【請求項21】
各々、異なるターゲットポリヌクレオチド配列に対して選択的であり、そして各々、同定領域を含む、多数のプローブAを使用、そして工程(d)で増幅する領域にこの同定領域が含まれる請求項1の方法。
【請求項22】
分析物中に存在するターゲット配列の存在が、同定領域(単数または複数)の検出を通じて、工程(d)で生成するアンプリコンより推測される、、請求項21の方法。
【請求項23】
分子プローブを用いるかまたは配列決定を通じて、同定領域(単数または複数)の検出を行う請求項22の方法。
【請求項24】
(e)が:
i. 1つまたはそれより多いオリゴヌクレオチド蛍光結合色素または分子プローブを用いて、Aの多数コピーまたはAの領域の多数のコピーを標識し;
ii. 多数コピーの蛍光シグナルを測定し;
iii. 変性条件のセットに多数コピーを曝露し;そして
iv. 変性条件への曝露中に、多数コピーの蛍光シグナルにおける変化を監視することによって、分析物中のターゲットポリヌクレオチド配列を同定する
工程をさらに含む、請求項23の方法。
【請求項25】
異なるプローブAが共通のプライミング部位を含み、工程(d)における増幅のために、単一のまたは単一セットのプライマーを用いることを可能にする、請求項21の方法。
【請求項26】
工程(a)の前に、分析物を多数の反応体積に分割し、各々の体積が、異なるターゲット配列を検出するために導入された、異なるプローブオリゴヌクレオチドAを有する、請求項1の方法
【国際調査報告】