(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-524333(P2021-524333A)
(43)【公表日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】ガス状媒体の流れを制御するためのシステムを用いた治療方法及び機器
(51)【国際特許分類】
A61H 33/02 20060101AFI20210816BHJP
【FI】
A61H33/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-571707(P2020-571707)
(86)(22)【出願日】2019年7月11日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月8日
(86)【国際出願番号】FR2019051745
(87)【国際公開番号】WO2020012131
(87)【国際公開日】20200116
(31)【優先権主張番号】1856414
(32)【優先日】2018年7月12日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520497988
【氏名又は名称】ディーティーエーメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】デュファイ,フランソワ
【テーマコード(参考)】
4C094
【Fターム(参考)】
4C094EE01
4C094EE16
4C094FF02
4C094FF05
4C094FF09
4C094GG01
(57)【要約】
本発明は、個人の身体部位用の位置決めゾーン(Z)をカバーが有するように個人の前記身体部位の上又は周囲に配置可能なカバーを含む治療機器であって、カバーが、ガス状媒体用の入口(8)と、カバー内に存在するガス状媒体を排出するための出口とを備える、治療機器に関する。本発明によれば、機器は、入口(8)を通ってカバー内に流入するガス状媒体を位置決めゾーン(Z)の外側に導いてカバー内に存在するガス状媒体を均質化するようにガス状媒体の流れを制御するための制御システム(11)を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の身体部位を位置決めするための位置決めゾーン(Z)をカバー(2)が有するように前記個人の身体部位の上又は周囲に配置可能な前記カバーを含む治療機器であって、前記カバー(2)が、ガス状媒体用の入口(8)と、前記カバー内に存在する前記ガス状媒体を除去するための出口(9)とを備え、前記治療機器が、前記入口(8)を通って前記カバー内に流入する前記ガス状媒体を前記位置決めゾーン(Z)から離れる方向に導いて前記カバーの内側に存在する前記ガス状媒体を均質化するように前記ガス状媒体の前記流れを制御するためのシステム(11)を含むことを特徴とする、治療機器。
【請求項2】
前記流れ制御システム(11)が、前記カバーの内側の前記ガス状媒体の前記流れ方向を前記位置決めゾーン(Z)から離れる方向に修正して乱流状態を生じさせる偏向器(12、121)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の治療機器。
【請求項3】
前記偏向器(12)が、前記ガス状媒体を前記カバーの前記内面の方に向けるための配向面(12a)であって、前記入口(8)を通って前記カバー内に流入する前記ガス状媒体が導かれる前記配向面(12a)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の治療機器。
【請求項4】
前記偏向器(121)が、前記入口(8)に取り付けられたエルボを備えた管を含むことを特徴とする、請求項2に記載の治療機器。
【請求項5】
前記偏向器(121)が、前記流れの向きを調整するために管の軸線を中心に回転する能力を有するように取り付けられたエルボを備えた前記管を含むことを特徴とする、請求項4に記載の治療機器。
【請求項6】
前記カバー(2)が、前記個人の身体部位用の前記位置決めゾーン(Z)を視認するための視認装置(7)を備えることと、前記流れ制御システム(11)が、前記視認装置(7)の曇りを除去するために前記ガス状媒体を前記視認装置(7)に向けて導くことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の治療機器。
【請求項7】
前記入口(8)及び前記出口(9)が横並びに異なる方向に位置決めされることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の治療機器。
【請求項8】
前記入口(8)及び前記出口(9)が、前記カバーに対して取り外し可能である本体上に作製されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の治療機器。
【請求項9】
前記治療機器が、前記カバーに作製された窓、又は撮像を伴う若しくは伴わない光学系を視認装置(7)として含むことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の治療機器。
【請求項10】
前記入口(8)が、液状媒体を供給する源に接続されるように設計されることと、前記カバー(2)には、前記液状媒体を除去するための排出口が設けられ、この出口が、前記ガス状媒体用の前記出口(9)又は前記カバーに作製された追加の出口(19)に相当することとを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の治療機器。
【請求項11】
個人の身体部位の上又は周囲に配置されたカバー(2)を含む治療機器であって、ガス状媒体用の入口(8)と、前記カバー内に存在する前記ガス状媒体を除去するための出口(9)とを備える前記治療機器を使用して損傷組織を治療するための方法であって、前記方法は、前記個人の身体部位が位置決めされる前記ゾーン(Z)から離れる方向に前記ガス状媒体を導いて前記カバーの内側に存在する前記ガス状媒体を均質化するように前記ガス状媒体の前記流れを制御することからなることを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記方法が、前記カバーの内側の前記ガス状媒体の前記流れに乱流を生じさせることからなることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、視認装置(7)の曇りを除去するために、前記個人の身体部位を視認するための前記視認装置(7)に向けて前記ガス状媒体を導くことからなることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記カバーの前記入口(8)を通して液状媒体を注入することと、前記ガス状媒体排出口を通して又は前記液状媒体専用の追加の出口(19)を通して前記カバーから液状媒体を除去することとからなることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記個人の身体部位が位置決めされる前記ゾーン(Z)に前記液状媒体を注入するために前記入口(8)に取り付けられたエルボ(121)を備えた管の向きを決めることからなることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人及び動物における治療用途、美容用途、並びに化粧用途での身体の局所的、全身的、治癒的又は予防的治療、より詳細には、破壊を伴う又は伴わない、物質の損失を伴う又は伴わない、損傷組織の治療の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
損傷組織又は創傷を治療するために、先行技術では、包帯の適用が提案されており、包帯と創傷との接触の問題及び微生物増殖の危険性が提起されている。
【0003】
これらの問題を回避するために、先行技術では、損傷組織をガス状媒体にさらすことを目的とする種々の治療機器が提案されている。例えば、欧州特許出願公開第2309954号では、治療すべき個人の身体部位の上又は周囲に配置可能なカバーを含む治療機器が説明されている。このカバーは、ガス状媒体用の入口と、カバーの内側に存在するガス状媒体を除去するための出口と、を備える。
【0004】
米国特許出願公開第2005/191372号では、室と、一酸化窒素源と、制御弁と、ポンプとを含む、ガス状一酸化窒素での治療のための装置が説明されている。室は、任意の形状を有し、任意の材料で作ることができ、ガス用の入口及び出口を含む。好ましくは、この入口及びこの出口は、ガスが室を通過するのにかかる時間を増加させるために、ある程度の距離を隔てて位置決めされる。制御システムは、弁及びポンプにおけるガスの流れを制御する。
図2に描かれている実施形態によれば、治療すべきゾーンに一酸化窒素を導くために入口にノズルが固定される。
図4に描かれている実施形態によれば、室は、前記室の内側に乱流条件を作り出すための撹拌機をさらに含む。したがって、撹拌機は、治療すべきゾーンの辺りの一酸化窒素を入れ換える。
【0005】
仏国特許出願公開第3052662号では、混合ガス生成装置と、治療用筐体と、追加のガス及び/又はエアロゾルを追加するための装置と、制御ユニットとを含む、創傷治療密閉具用の混合ガスを生成するためのシステムが説明されている。治療用筐体は、治療ゾーンを生成するために患者の身体部位の上及び/又は周囲に配置されるように設計される。治療用筐体は、混合ガス用の入口及び出口を含む。制御ユニットは、混合ガス生成装置を制御し、且つ送達すべき混合ガスの流量、温度及び組成を定める。
【0006】
欧州特許出願公開第2260825号では、患者を治療するための、ガスと液体とで構成された、混合ガスを生成するための装置が説明されている。第1の実施形態によれば、その装置は、混合ガス用の入口及び出口を備えた、治療すべきゾーンを覆うための手段と、接着部と、ガス源及び液体源と、特に圧力及び温度を制御する制御手段とを含む。混合ガス入口は、逆止効果を与えるための弁を含み得る。
【0007】
米国特許第4224941号では、接着性圧定布と、円筒部品の側部の一方を介して接着性圧定布に接続され且つ側部の他方がバッグに接続された円筒部品と、前記バッグ上に位置する、混合ガス用の入口及び出口と、を含む、患者の皮膚に混合ガスを投与するための装置が説明されている。入口は、コネクタを介して混合ガス源に接続される。
【0008】
損傷組織をガス状媒体にさらす機器が、カバーの内側に広がる雰囲気を制御する装置を伴うことは、先行技術の文献から明らかである。特に、治療用の温度窓は概して狭いので、温度を制御する必要がある。さらに、組織は、長期間にわたって高温にさらされてはならない。加えて、治療域では、好気性細菌若しくは嫌気性細菌の増殖を抑制するために又はさらには排除するために酸素濃度を制御することが重要である。
【0009】
注入したガス状媒体の湿度もまた、損傷組織の再生を最適化するように制御される。概して、ガス状媒体の温度、湿度及び組成などのパラメータは、損傷組織に施すべき治療を最適化するように制御される。
【0010】
実際には、カバー内に注入されたガス状媒体の種々のパラメータの制御にもかかわらず、損傷組織に対する変化は、適用される治療に期待される変化と一致しないことが分かっている。期待される成果のそのような歪みは別として、患者は、多くの場合、治療が行われている間に苦痛又は不快を感じる。
【0011】
出願人は、出願人の功績として、治療で得られた欠陥は、採用されたパラメータから生ぜず、むしろ治療用カバーの内側でガス状媒体が適用される条件に関連付けられることを発見した。具体的には、損傷組織に接触し且つ既知の治療用カバーの内側に広がる雰囲気が、パラメータであって、その値が採用値又は設定値と一致しないパラメータを呈することが分かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、損傷組織をカバーの内側のガス状媒体にさらすことを目的とする治療機器であって、ガス状媒体の適用条件によって施される治療の最適化が可能となるように設計される治療機器を提案することによって先行技術の欠点を克服することを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのような目的を達成するために、本発明による治療機器は、個人の身体部位を位置決めするための位置決めゾーンをカバーが有するように前記個人の身体部位の上又は周囲に配置可能なカバーを含み、カバーは、ガス状媒体用の入口と、カバー内に存在するガス状媒体を除去するための出口とを備える。本発明によれば、この機器は、入口を通ってカバー内に流入するガス状媒体を位置決めゾーンから離れる方向に導いてカバーの内側に存在するガス状媒体を均質化するようにガス状媒体の流れを制御するためのシステムを含む。
【0014】
本発明による治療機器は、ガス状媒体が直接患者の皮膚に、特に直接損傷組織に達することを防止し、このことは、創傷の乾燥が創傷の治癒を妨げるので創傷の乾燥を防止して創傷の治癒を可能にする。
【0015】
本発明による機器は、ガス状媒体が損傷組織に接触する前にカバー内のガス状媒体を均質化する。乱流状態に従って、カバーの内側のガス状媒体の流れによって、カバーの内側に存在する雰囲気を均質化することが可能となる。この均質化は、損傷組織に接触する雰囲気のパラメータが、採用値又は設定値と一致する値を有することを可能にし、この均質化は、これらのパラメータの変動にかかわらず得られる。
【0016】
治療用カバー内のガス状媒体のこれらの適用条件の使用は、治療が施されている間に患者が苦痛又は不快を全く感じないことを意味する。
【0017】
実施形態の1つの有利な特徴によれば、流れ制御システムは、カバーの内側のガス状媒体の流れ方向を位置決めゾーンから離れる方向に修正して乱流状態を生じさせる偏向器を含む。
【0018】
第1の実施形態によれば、偏向器は、ガス状媒体をカバーの内面の方に向けるための配向面であって、入口を通ってカバー内に流入するガス状媒体が導かれる配向面を有する。
【0019】
第2の実施形態によれば、偏向器は、入口に取り付けられたエルボを備えた管を含む。有利には、エルボを備えた管は、流れの向きを調整するために管の軸線を中心に回転する能力を有するように取り付けられる。
【0020】
実施形態の好ましい変形例によれば、本発明による治療機器のカバーは、前記個人の身体部位用の位置決めゾーンを視認するための視認装置を備え、且つ流れ制御システムは、視認装置の曇りを除去するためにガス状媒体を視認装置に向けて導く。
【0021】
具体的には、ガス状媒体の湿度レベル及び筐体の内側と外側との温度差は、特に視認装置が曇るのを促進する状態を生じさせる。
【0022】
ガス状媒体を視認システムの方に向かわせることによって、カバーの内側と外側の温度にかかわらず、治療の全期間にわたって治療監視を効果的に実行できるように曇るのを回避又は排除することが可能となる。
【0023】
本発明による治療機器は、カバーに作製された窓、又は撮像を伴う若しくは伴わない光学系を視認装置として含み得ることに留意されたい。
【0024】
加えて、本発明による治療機器は、以下の追加の特徴、すなわち、
入口及び出口が横並びに異なる方向に位置決めされること、
入口及び出口が、カバーに対して取り外し可能である本体上に作製されること
の少なくとも1つ及び/又は他の特徴の組み合わせをさらに含み得る。
【0025】
本発明による治療機器は、損傷組織をガス状媒体にさらすことを目的とする。加えて、本発明による治療機器は、創傷の洗浄を容易にし且つ/又は前記創傷から滲出した基質を排除するために治療用カバー内に液体を取り込むように設計される。この方法は、薬液注入として知られている。別の用途では、治療用カバー内に注入される液体は、治療的状況において創傷に直接接触させる医薬品であってもよい。
【0026】
この目的で、治療用カバーの入口は、液状媒体を供給する源に接続されるように設計され、且つ治療用カバーには、液状媒体を除去するための排出口が設けられ、この出口は、ガス状媒体用の出口又は治療用カバーに作製された追加の出口に相当する。
【0027】
本発明による治療機器は、損傷組織をガス状媒体にさらすだけでなく、液状媒体にもさらすことを目的とする。
【0028】
本発明の別の目的は、個人の身体部位の上又は周囲に配置されたカバーを含む治療機器であって、ガス状媒体用の入口と、カバー内に存在するガス状媒体を除去するための出口とを備える治療機器を使用して損傷組織を治療するための方法を提案することである。
【0029】
本発明によれば、方法は、前記個人の身体部位が位置決めされるゾーンから離れる方向にガス状媒体を導いてカバーの内側に存在するガス状媒体を均質化するようにガス状媒体の流れを制御することからなる。
【0030】
有利には、方法は、カバーの内側のガス状媒体の流れに乱流を生じさせることからなる。
【0031】
好ましくは、方法は、視認装置の曇りを除去するために、個人の身体部位を視認するための視認装置に向けてガス状媒体を導くことからなる。
【0032】
補完的な方法によれば、液状媒体は、カバーの入口を通して注入され、且つ液状媒体は、ガス状媒体排出口を通して又は液状媒体専用の追加の出口を通してカバーから除去される。
【0033】
一実施態様によれば、方法は、前記個人の身体部位が位置決めされるゾーンに液状媒体を注入するためにカバーの入口に取り付けられたエルボを備えた管の向きを決めることからなる。
【0034】
種々の他の特徴は、本発明の主題の実施形態を非限定的な例として描いた、添付の図面を参照して後述する説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明による治療機器の一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に図示する治療機器の実施形態の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、個人の脚の一部を治療するように設計された、本発明による治療機器の側断面図である。
【
図4】
図4は、本発明による治療機器の下部を上から見た図である。
【
図5】
図5は、本発明による治療機器の下部を示す、線V−Vに沿って部分的に切断された斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明による治療機器の下部を示す、線VI−VIに沿って部分的に切断された斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明による治療機器の他の実施形態を示す。
【
図8】
図8は、ガス状媒体と液状媒体とを用いる、本発明による治療機器の別の実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図は、一般的な意味でガス状媒体を用いて治療すべき損傷組織を有する個人の身体部位3の上又は周囲に配置可能な、治療用カバー2を含む本発明による機器1を描いている。
図1〜
図6に図示する例では、治療用カバー2は、治療すべき個人の身体部位の周囲、特に個人の脚3の周囲に配置されるように意図されている。
図7及び
図8は、治療用カバー2が、個人の腕又は胸部などの、個人の身体部位3の上に配置可能である別の実施形態を図示する。
【0037】
当然ながら、本発明による治療機器1は、形状及び寸法が治療すべき身体部位3に適したカバー2を含む。治療すべき身体部位3が何であろうと、治療用カバー2は、この治療用カバー2の内側に存在するガス状媒体に前記個人の身体部位の損傷組織が接触できることを確実にするための位置決めゾーンZを有する。位置決めゾーンZは、治療すべき損傷組織が占める容積に対応し、場合により、治療する必要はないが、損傷組織の周囲又は延長部に位置する身体部位が占める容積に対応することが理解されるべきである。治療用カバー2の寸法決めでは、治療すべき身体部位3がこのゾーンZを占める場合に、カバーが、ガス状媒体に対して、損傷組織に治療を施すのに適した容積を有するように、この位置決めゾーンZが考慮される。
【0038】
図1〜
図6に図示する例では、治療用カバー2は、腕又は脚の通路用に一端部が開口した、細長いケーシングの形態をとり、その一方で、
図7及び
図8に図示する例では、治療用カバー2は、個人の身体部位に載置される釣鐘の形態をとる。
図1〜
図6に図示する例では、治療すべき身体部位3を位置決めするための位置決めゾーンZは、
図3に図示するように、治療用カバー2の内部容積内にこのカバーからある程度の距離をおいて位置し、脚が占める容積に対応する。
図7及び
図8に図示する例では、治療用カバー2を閉鎖する、この位置決めゾーンZは、治療用カバーに対向して又は面して延び、且つ胸部の表面又は腕の表面と一致する。
【0039】
図1〜
図6に図示する例では、治療用カバー2は、例えば、底部外殻2aと上部外殻2bとで構成された剛性ケーシングの形態をとり、これらの外殻は、治療すべき身体部位3の導入のための通路5を通してアクセス可能な閉じた筐体を形成するように、外殻の壁によって、互いに組み付けられるように意図されている。細長いカバー2はまた、通路5が内部に作製される近位端部2pと、近位端部2pに対向して位置する遠位端部2dとを有する。
図7及び
図8に図示する例では、治療用カバー2は、半球形状の外殻の形態をとる。
【0040】
実施形態の好ましい変形例によれば、カバー2は、前記個人の身体部位3の位置決めゾーンZを視認するための装置7を備える。
図1〜
図6に図示する例によれば、カバー2は、上部外殻2bに作製された窓、より具体的には、上部外殻2bの上面に作製された窓を視認装置7として含む。窓7の存在によって、損傷組織の状態を観察して損傷組織の経過を監視することが可能となる。
図7及び
図8に図示する例では、カバー2は、視認装置を形成するために透明又は半透明材料から作られる。当然ながら、
図7及び
図8に図示する釣鐘状の筐体に窓を作製することも考慮され得る。
【0041】
治療用カバー2は、図面に図示するような窓とは異なる種類の視認装置7を備え得る。例えば、視認装置は、CCDセンサ、内視鏡、カメラ又は光ファイバなどの、撮像を伴う又は伴わない光学系の形態で製造されてもよい。
【0042】
従来の方式では、治療用カバー2は、ガス状媒体用の入口8と、カバー2内に存在するガス状媒体を除去するための出口9とを備える。入口8によって、例えば、酸素富化空気又は酸素希薄空気などの、任意の好適な性質のガス状媒体を治療用カバー2に導入することが可能となる。典型的には、入口8は、描かれていないがそれ自体が既知である治療機であって、例えば、温度、湿度、酸素濃度又は圧力などの種々のパラメータが制御されるガス状媒体が治療用カバー内に注入されることを可能にする治療機に接続された外部回路に接続される。
【0043】
図1〜
図6に図示する例では、入口8は、治療機に接続された外部回路に接続されるように、上部外殻2b上で、遠位端部2dにおいて、治療用カバーの外側に開口する。
【0044】
出口9は、描かれていない外部回路を介して、治療用カバー2内に循環を生じさせるために治療用カバー2内に含まれる雰囲気の一部が除去されることを可能にする吸引システムに接続される。出口9は、入口8を通って流入したばかりのガス状媒体ではなく、むしろカバーの内側に広がる均質な雰囲気を取り出すように構成される。
図1〜
図6に図示する例では、出口9は、治療用カバーの側壁の各々に作製されたダクト10の形態で作られ、その入口が、近位端部2pに位置し、且つ共通の出口を通して、上部外殻2b上で、遠位端部2dにおいて、治療用カバー2の外側に開口する。実施形態のこの変形例によれば、入口8及び出口9は、上部外殻2b上で、治療用カバーの外側に横並びに開口する。
【0045】
本発明によれば、機器1は、治療用カバー2の内側のガス状媒体の流れを制御するためのシステム11であって、入口8を通ってカバー内に流入するガス状媒体を位置決めゾーンZから離れる方向に導いてカバー2の内側に存在するガス状媒体を均質化するように設計されたシステム11を含む。それゆえ、治療用カバー2は、治療用カバー2内のガス状媒体の流れを制御するシステム11を備える。
【0046】
流れ制御システム11は、ガス状媒体を位置決めゾーンZから離れる方向に導き、これによって、ガス状媒体が患者の皮膚、特に損傷組織に直接高速で衝突するのを防止する。ガス状媒体を位置決めゾーンZから離れる方向に、すなわち、治療すべき前記個人の身体部位から離れる方向に向かわせることで、創傷の乾燥を防止して創傷の治癒を可能にする。説明の以下の部分で解説するように、流れ制御システム11は、ガス状媒体を特に治療用カバー2の方に向かわせる。したがって、入口8を通って流入するガス状媒体は、直接カバーに向けて導かれる。
【0047】
流れ制御システム11はまた、ガス状媒体が損傷組織に接触する前にカバーの内側のガス状媒体を均質化する。流れ制御システム11は、カバーの内側に存在する雰囲気を均質化するために、治療用カバー2内のガス状媒体の流れに乱流を生じさせる。乱流状態にあり且つ位置決めゾーンZから離れる方向へのガス状媒体の流れを有することによって、ガス状媒体が損傷組織に接触する前に均質な雰囲気を得ることが可能となる。この結果、損傷組織に接触する雰囲気は所望のパラメータに従う。
【0048】
ガス状媒体の流れを制御するためのシステム11は、ガス状媒体を位置決めゾーンZから離れる方向に導いてカバー2の内側に存在するガス状媒体を均質化するのに好適な任意の方式で製造されてもよい。概して、流れ制御システム11は、カバー2の内側のガス状媒体の流れ方向を位置決めゾーンZから離れる方向に変えて乱流状態を生じさせる偏向器を含む。
【0049】
図1〜
図6に図示する実施形態では、制御システム11は、入口8を通って治療用カバー内に流入するガス状媒体が導かれる偏向器12を含む。ガス状媒体は、乱流状態を確保するのに適した速度で治療用カバー2内に流入する。通常、ガス状媒体は、入口8において、流入する流れが治療用筐体の容積全体に広がることを可能にするのに十分に高い速度を有する。
【0050】
図2、
図4及び
図6でより具体的に明らかであるように、入口8は、上部外殻2bに作製され且つ治療用カバーの外側に開口するウェル13を含む。このウェル13はまた、底部外殻2aにも作製され、治療用カバー2の内側に開口する偏向ダクト14によって延長される。この偏向ダクト14は、偏向器12と上部外殻2bの内面15との間に画定される。偏向器12は、遠位端部2dにおける、治療用カバー2の内側に作製される。
【0051】
実施形態の1つの有利な特徴によれば、偏向器12は、ガス状媒体を治療用カバーの内面の方に向けるための配向面12aを有する。図示の例では、偏向器12は、ガス状媒体の流れが、上部外殻2bの下部から上部に、遠位部2dから近位部2pに、上部外殻2bの内面を辿るようにガス状媒体を導く。
【0052】
有利には、偏向器12は、治療用カバーの壁15に面して位置し偏向ダクト14を画定する配向面12aを有する。この配向面12aは、入口8の軸線Bに対して10°〜170°の角度をなす延在軸線Aを有する。
【0053】
実施形態の別の有利な特徴によれば、偏向器のこの配向面12aは、平面状又は曲線状であり、且つ折り返し縁部を有しても有しなくてもよい。
【0054】
治療用カバー2が視認装置7を備える例では、流れ制御システム11は、視認装置の曇りを除去するために、ガス状媒体を視認装置に向けて導く。
図1〜
図6から明らかであるように、入口8からのガス状媒体の流れは、窓7を軽くかすめて窓7の曇りを除去するように導かれる。
【0055】
治療用カバー2の遠位端部2d内に流入したガス状媒体は、上部外殻2bの壁の方に上部外殻2bの下部から上部に向かわされ、治療用カバーの近位部2pに向けて導かれ、
図3に示すような乱流を呈することが、前述の説明から明らかである。治療用カバー2内に存在するガス状媒体の取り出しは、出口9に接続されたダクト10を通して、近位部2pにおいて実施される。
【0056】
図7及び
図8に図示する実施形態では、流れ制御システム11は、ガス状媒体を受け入れるためのエルボ12
1であって、ガス状媒体を位置決めゾーンZから離れる方向に導いてカバー2内に存在するガス状媒体を均質化するために入口8に取り付けられたエルボ12
1を備えた管又はダクトを偏向器として含む。この実施形態によれば、治療用カバー2は、個人の身体に当接するリム2rが設けられた、細長い形状又は半球形状の中空ケーシングの形態をとる。このリム2rは、例えばストラップ又はカフ18を使用して機器を身体に固定するために使用することができる。
【0057】
治療用カバー2には、ガス状媒体を位置決めゾーンZから離れる方向に導いてカバー2の内側に存在するガス状媒体を均質化するために取り付けられた、エルボ12
1を備えた管又はダクトを備える入口8が設けられる。位置決めゾーンZが、治療用カバーが支持されるリムを通る平面内に延在するので、入口8は、管がカバーの壁の方に向けられた状態で、このリムの近傍に、すなわち、支持リム2rを通る平面とは反対方向に作製される。エルボ12
1を備えた管又はダクトは、治療用カバー2内に乱流を起こすのに好適な速度でガス状媒体を送達する。
【0058】
エルボ12
1を備えた管又はダクトは、
図7及び
図8に図示する例では、窓を形成するように設計された治療用カバー2の全て又は一部からなる視認装置に向けてガス状媒体を導くように設計される。
【0059】
実施形態の1つの有利な特徴によれば、入口8及び出口9は、治療用カバー2の内側でガス状媒体が循環することを可能にするために、横並びであるが、異なる方向に位置決めされる。そのような配置では、入口8及び出口9は、治療用カバー2に対して取り外し可能に取り付けられた、描かれていない、本体上に配置される。したがって、この入口8及び出口9は、治療すべき身体部位に適した形状を有する異なる治療用カバー2に取り付けることができる。
【0060】
治療機器が個人の身体部位を視認するための装置を含む例では、方法は、視認装置の曇りを除去するために個人の身体部位を視認するための装置に向けてガス状媒体を導くことからなる。
【0061】
本発明による治療機器1は、カバーの内側で損傷組織がガス状媒体にさらされることを可能にし、その一方で、施される治療がガス状媒体の適用条件によって最適化されることを確実にすることが、前述の説明から明らかである。有利な一実施形態によれば、本発明による治療機器1はまた、創傷の清浄化に関連する生理的液体又は特定の治療の場合の活性薬液などの、任意の種類の液状媒体も治療用カバー2に取り込まれることを可能にする。
【0062】
図8に図示するこの実施形態によれば、治療機器1の入口8は、液状媒体供給源に接続されるように設計される。液状媒体の注入は、ガス状媒体を注入するために使用され且つこの液状媒体供給源にも接続される外部回路を使用して達成することができる。液状媒体は、液状媒体供給源と連通する特定の回路であって、ガス状媒体を注入するために使用される外部回路に入口8の上流側で接続された回路を使用して注入されてもよい。
【0063】
カバー2には液状媒体用の排出口が設けられ、この排出口は、個人の腕に装着されたカバーによって図面に図示するようなガス状媒体出口9に、さもなければ、液状媒体の取り出し専用の追加の出口19に相当する。この追加の出口19は、当然ながら、個人の胸部に装着されたカバーによって図面に図示するようにカバーの最も低い箇所に配置される。当然ながら、カバー2は、リム2rに付け加えられたストラップ若しくはカフ18及び/又はシールストリップを使用して、個人の身体部位に流体密に取り付けられる。
【0064】
この実施形態の1つの有利な特徴によれば、偏向器を形成するエルボ12
1を備えた管又はダクトは、カバー2の内側の流れの向きを調整するために管又はダクトの軸線を中心に回転する能力を有するように取り付けられる。エルボ12
1を備えたこの管又はダクトは、カバーから突出するエルボ12
1を備えた管の延在部に確実に取り付けられた刻み付きリング20などの任意の好適な手段を使用してカバーの外側から操作することができる。この刻み付きリング20は、カバー上に固定して流体密に取り付けられた継手21上で回転するように案内される。
【0065】
刻み付きリング20を使用して、入口8は、使用者によって用いられる流体基板(液体又はガス)に基づいて上方に(窓に向けて)又は下方に(創傷に向けて)向きを決めることができる。エルボ12
1を備えた管又はダクトの延長部は、入口8の向き決めを容易にするために延長部を長さ方向に延出させることができるように伸縮性を有し得ることに留意すべきである。
【0066】
液体(薬液及び/又は洗浄液など)が投与される場合、本発明による治療機器は、創傷の清浄化を容易にするために、又は治療要素若しくは抗菌要素を創傷に適用するために、液体の流れが創傷上に導かれることを可能にする。したがって、ガス状媒体入口8は、あらゆる種類の液体、すなわち、創傷の清浄化に関連する生理的液体、特定の治療の場合の活性薬液を注入するために使用され得る。
【0067】
本発明による機器は、前記個人の身体部位が位置決めされるゾーンZから離れる方向にガス状媒体を導くようにガス状媒体の流れを制御することからなるが、さらには、カバーの入口8を通して液状媒体を注入することと、ガス状媒体排出口9を通して又は追加の出口19を通してカバーから液状媒体を除去することとからなる、損傷組織を治療する方法を実施する能力を与える。方法は、有利には、損傷組織を有する個人の身体部位が位置決めされるゾーンZに液状媒体を注入するための、入口8に取り付けられた、エルボ12
1を備えた管又はダクトの向きを決めることからなる。
【0068】
本発明は、本発明の範囲から逸脱することなく本発明に種々の修正を加えることができるので、説明され描かれている例に限定されるものではない。
【国際調査報告】