(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-524363(P2021-524363A)
(43)【公表日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】一酸化窒素のパルス送達のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20210816BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
A61M16/00 315
A61B5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2021-514952(P2021-514952)
(86)(22)【出願日】2019年5月17日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月14日
(86)【国際出願番号】US2019032887
(87)【国際公開番号】WO2019222640
(87)【国際公開日】20191121
(31)【優先権主張番号】62/672,867
(32)【優先日】2018年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520448289
【氏名又は名称】ベレロフォン・セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】シャー,パラグ
(72)【発明者】
【氏名】デッカー,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】レナード,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ズゼビチウス,ドナタス
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS08
4C038ST01
4C038SU06
(57)【要約】
パルス用量の一酸化窒素を、単回の呼吸毎の合計吸息時間の少なくとも最初の3分の2の間に、治療上妥当な時間供給するための方法が記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある用量の一酸化窒素を、必要とする患者に送達するための方法であって、
a)合計吸息時間を含む、前記患者における呼吸パターンを、呼吸感度制御を含むデバイスを使用して検出するステップと、
b)呼吸パターンを、前記用量の一酸化窒素を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと、
c)前記用量の一酸化窒素を、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で前記患者に送達するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記用量の一酸化窒素が、合計吸息時間の最初の3分の1以内に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記用量の一酸化窒素が、合計吸息時間の最初の3分の2以内に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記用量の一酸化窒素が、合計吸息時間の最初の2分の1以内に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
一酸化窒素の用量の少なくとも50パーセントが、合計吸息時間の最初の3分の1以内に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
一酸化窒素の用量の少なくとも90パーセントが、合計吸息時間の最初の3分の2以内に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
一酸化窒素の用量の少なくとも70パーセントが、合計吸息時間の最初の2分の1以内に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
一酸化窒素が、ある時間にわたって一連のパルスで送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
呼吸感度制御が調整可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
呼吸感度制御が固定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
一酸化窒素の送達が抗菌効果を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
患者における心肺疾患を治療するための方法であって、
a)前記患者における呼吸パターンであって、合計吸息時間および合計呼息時間を有する呼吸パターンを、呼吸感度制御を含むデバイスを使用して検出するステップと、
b)呼吸パターンを、ある用量の一酸化窒素を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと、
c)前記用量の一酸化窒素を、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で、治療上有効な量の一酸化窒素を前記患者に送達するために必要とされる時間送達するステップと
を含む方法。
【請求項13】
心肺疾患が、特発性肺線維症(IPF)、肺高血圧症もしくは肺動脈性高血圧症(PHまたはPAH)、I〜V群の肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫合併肺線維症(CPFE)、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性高山病、または他の肺疾患からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
心肺疾患が、I〜V群の肺高血圧症(PH)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
換気が不十分な(a)肺領域および(b)肺胞の10%未満が、一酸化窒素に曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ある用量の一酸化窒素を、必要としている患者に送達するためのプログラム可能なデバイスであって、
a)送達部分、
b)一酸化窒素を含む薬剤カートリッジ、
c)酸素供給源、
d)呼吸感度設定を含む前記患者の呼吸パターンを検出するための呼吸感知部分、
e)一酸化窒素の用量を決定するための呼吸検出アルゴリズム、および
f)前記用量の一酸化窒素を一連のパルスを介して患者に投与するための部分
を含むデバイス。
【請求項17】
呼吸感度が、固定されているか、または最低感度の値から最高感度の値まで調整可能である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
呼吸感度設定が、最高感度で固定されている、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
薬剤カートリッジが交換可能である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項20】
経鼻送達部分が、鼻腔カニューレ、フェイスマスク、噴霧器、および鼻吸入器からなる群から選択される、請求項16に記載のデバイス。
【請求項21】
一酸化窒素のパルスを患者に送達するタイミングを決定するための呼吸検出アルゴリズムであって、アルゴリズムが閾値感度および傾斜アルゴリズムを使用し、傾斜アルゴリズムが、圧力降下速度が最小閾値に達する際に呼吸を検出するアルゴリズム。
【請求項22】
ガスを対象に投与する方法であって、対象による吸息を検出した際に、対象にパルス用量の第1のガスを投与するステップを含む方法。
【請求項23】
患者に投与されるパルス用量の合計回数の50%を上回る回数が、検出された吸息の合計吸息時間の最初の2分の1の間に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第2のガスを対象に投与するステップをさらに含み、パルス用量の第1のガスの投与によって、第2のガスの投与に関連する圧力センサーとの干渉が最小限に抑えられる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
第1のガスが一酸化窒素であり、第2のガスが酸素である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
一酸化窒素の用量が治療上有効な用量である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本出願は、概して、治療上の処置を必要としている患者への一酸化窒素の投与、特に、一酸化窒素のパルス送達のための装置および方法に関する。
関連出願の相互参照
[002]この国際PCT出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている、2018年5月17日に出願された米国特許仮出願第62/672,867号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
[003]一酸化窒素(NO)は、吸入すると、肺の血管を拡張させる作用を示すガスであり、血液の酸素化を改善し、肺高血圧症を軽減する。このため、一酸化窒素は、病態、例えば、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫合併肺線維症(CPFE)、嚢胞性線維症(CF)、特発性肺線維症(IPF)、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性高山病、または他の肺疾患による息切れ(呼吸困難)を発症している患者の吸息呼吸相における治療用ガスとして提供される。
【0003】
[004]適切な条件下で投与される場合、NOは治療上有効である可能性があるが、正しく投与されなかった場合には有毒にもなり得る。NOは、酸素と反応して二酸化窒素(NO
2)を形成するが、NO送出管内に酸素または空気が存在する場合、NO
2が形成される可能性がある。NO
2は、多くの副作用を招く可能性のある有毒ガスであり、Occupational Safety&Health Administration(OSHA)は、一般産業におけるその許容曝露限界をわずか5ppmと規定している。このため、NO療法の間、NO
2への曝露を制限することは望ましい。
【0004】
[005]NOの有効な投与は、薬物の量および送達のタイミングを含む、多くの異なる可変要因に基づく。米国特許第7,523,752号、第8,757,148号、第8,770,199号、および第8,803,717号、ならびにNO送達デバイスの設計に対する意匠特許第D701,963号を含む、NO送達に関連する複数の特許が付与されており、その全ては参照により本明細書に組み込まれている。さらに、US2013/0239963およびUS2016/0106949を含む、NO送達に関連する係属中の出願があり、その両方とも参照により本明細書に組み込まれている。これらの特許および係属中の公報をふまえても、治療用量による利益を最大限に高め、潜在的に有害な副作用を最小限に抑えるため、精密に制御された方式で、NOを送達する方法および装置はいまだに必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[006]本発明のある実施形態において、ある用量の一酸化窒素を投与する方法が記載されている。本発明のある実施形態において、少なくとも単回のパルス用量は、肺疾患の症状を治療するか、または軽減するために患者に投与され、治療上有効である。本発明のある実施形態において、2回以上のパルス用量の総量は、肺疾患の症状を治療するか、または軽減するために、治療上有効である。
【0006】
[007]本発明のある実施形態において、一酸化窒素は、定期的に、1日当たり最低5分から1日当たり24時間送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素は、患者の都合に合わせて、例えば、睡眠中のある時間にわたって送達されてもよい。本発明のある実施形態において、一酸化窒素のパルス投与は、ある時間にわたって均等または不均等に間隔をあけてもよい(例えば、10分間、1時間、または24時間)。別の実施形態において、治療上有効な用量の一酸化窒素の投与は、一定時間連続的であってもよい。
【0007】
[008]一実施形態において、方法には、患者の呼吸パターンを検出することが含まれる。本発明のある実施形態において、呼吸パターンには、合計吸息時間(例えば、患者の単回呼息の持続時間)が含まれる。本発明のある実施形態において、呼吸パターンは、呼吸感度制御を含むデバイスを使用して検出される。本発明のある実施形態において、呼吸パターンは、ある用量の一酸化窒素の投与タイミングを算出するためのアルゴリズムと相関している。本発明のある実施形態において、パルス毎の一酸化窒素の量を投与するために必要な、一酸化窒素含有ガスの体積が算出される。ある実施形態において、一酸化窒素は、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で患者に送達される。
【0008】
[009]本発明のある実施形態において、一酸化窒素用量は、治療用量の一酸化窒素を患者に送達するために十分な時間にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、デバイスは、治療用量の一酸化窒素を患者に送達するために十分な合計時間を算出する。本発明のある実施形態において、治療用量の一酸化窒素を患者に送達するために必要とされる合計時間は、少なくとも部分的に、前記患者の呼吸パターンに左右される。
【0009】
[0010]本発明のある実施形態において、一酸化窒素は、合計吸息時間の最初の3分の1の間に送達される。ある実施形態において、一酸化窒素は、合計吸息時間の最初の2分の1の間に送達される。ある実施形態において、一酸化窒素は、合計吸息時間の最初の3分の2の間に送達される。
【0010】
[0011]本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも50パーセント(50%)は、合計吸息時間の最初の3分の1の間に送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも70パーセント(70%)は、合計吸息時間の最初の2分の1の間に患者に送達される。ある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の3分の2の間に患者に送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の3分の1の間に患者に送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の全用量は、合計吸息時間の最初の2分の1の間に患者に送達される。
【0011】
[0012]本発明のある実施形態において、デバイスの呼吸感度制御は、調整可能である。本発明のある実施形態において、呼吸感度制御は、固定されている。本発明のある実施形態において、呼吸感度制御は、最低感度から最高感度までの範囲で調整可能であり、それにより、最高感度設定は、最低感度設定よりも呼吸を検出する感度が高い。
【0012】
[0013]本発明のある実施形態において、心肺疾患の症状を治療するか、または軽減する方法が記載されている。本発明のある実施形態において、この方法は、患者の呼吸パターンを、呼吸感度制御を含むデバイスを使用して検出することを含む。本発明のある実施形態において、呼吸パターンには、合計吸息時間の測定値が含まれる。本発明のある実施形態において、呼吸パターンは、ある用量の一酸化窒素の投与タイミングを算出するためのアルゴリズムと相関している。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも50パーセント(50%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも70パーセント(70%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。
【0013】
[0014]本発明のある実施形態において、デバイスは、治療上有効な量の一酸化窒素を患者に送達するために必要な合計時間を算出する。本発明のある実施形態において、治療上有効な量の一酸化窒素を送達するために必要な合計時間は、呼吸パターン、患者に送達されるガス中の一酸化窒素濃度、パルス用量の体積、および一パルスの持続時間のうちの1つまたは複数に左右される。
【0014】
[0015]本発明のある実施形態において、肺疾患は、特発性肺線維症(IPF)、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫合併肺線維症(CPFE)、嚢胞性線維症(CF)、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性高山病、または他の肺疾患から選択される。本発明のある実施形態において、心肺疾患は、I〜V群の肺高血圧症(PH)のような他の肺疾患と関連する肺高血圧症である。
【0015】
[0016]本発明のある実施形態において、ある用量の一酸化窒素を送達するためのプログラム可能なデバイスが記載されている。本発明のある実施形態において、デバイスは、経鼻送達部分、一酸化窒素を含む薬剤カートリッジ、酸素供給源、患者の呼吸パターンを検出するための呼吸感知部分、患者に送達される一酸化窒素の用量を決定するための呼吸検出アルゴリズム、および該用量の一酸化窒素を呼吸パターンの吸息部分と相関する一連のパルスを介して患者に投与するための部分を含む。本発明のある実施形態において、デバイスの呼吸感知部分は、調整可能な、または固定された呼吸感度設定を含む。本発明のある実施形態において、経鼻送達部分は、鼻腔カニューレ、フェイスマスク、噴霧器、または鼻吸入器である。本発明のある実施形態において、呼吸検出アルゴリズムは、閾値感度および傾斜アルゴリズムを使用する。本発明のある実施形態において、傾斜アルゴリズムは、圧力降下速度が閾値レベルに達する際に検出される呼吸を計数する。
【0016】
[0017]種々の実施形態は上記されており、以下でより詳細に説明されるであろう。記載されている実施形態を、以下に記載される通りのみではなく、本発明の範囲に従った他の適当な組合せで組み合わせることがあると理解されるであろう。
【0017】
[0018]前述では、本発明の特定の特徴および技術的な利点を幾分大まかに概説した。開示された特定の実施形態が、本発明の範囲内で、他の構造もしくは工程を修正するか、または設計するための基礎として容易に利用され得ることは、当業者によって評価されるべきである。このような同等の構成が、添付の特許請求の範囲に明記された本発明の趣旨および範囲から逸脱しないことも、当業者によって認識されるべきである。
【0018】
[0019]前述の課題を解決するための手段に加えて、以下の発明を実施するための形態は、添付の図面と共に読まれることで、より良く理解されるであろう。
[0020]上記で列挙された本発明の特徴が詳細に理解され得るように、上記で簡潔に要約された本発明のより詳細な説明は、そのいくつかが添付の図面に例示されている実施形態を参照することによって得られることがある。しかし、添付の図面は、本発明の典型的な実施形態のみを例示するものであり、このため、本発明が他の等しく有効な実施形態を含み得ることから、本発明の範囲を限定すると判断されるものではないことは留意するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】[0021]単回の呼吸の測定を示すグラフである。
【
図2】[0022]本発明に従って患者に送達された一酸化窒素のパルスの測定を示すグラフである。
【
図3】[0023]合計吸息時間に対する一酸化窒素の送達の割合として呼吸の検出を示すグラフである。点線は、実施形態1における呼吸感度設定の10のうちの8(例えば、最大感度の80%)を表し、実線は、実施形態1における呼吸感度設定の10のうちの10(例えば、最大感度)を表し、破線は、実施形態2における10に固定された呼吸感度設定を表す。破線は、一酸化窒素の用量の約93%が、合計吸息時間の最初の33%(すなわち最初の3分の1)の間に送達されること、および一酸化窒素の用量の100%が、合計吸息時間の最初の50%(すなわち最初の2分の1)の間に送達されることを示す。実線は、一酸化窒素の用量の約62%が、合計吸息時間の最初の33%(すなわち最初の3分の1)の間に送達されること、約98%が、合計吸息時間の最初の50%(すなわち最初の2分の1)の間に送達されること、および100%が、合計吸息時間の最初の67%(すなわち最初の3分の2)の間に送達されることを示す。点線は、一酸化窒素の用量の約17%が、合計吸息時間の最初の33%(すなわち最初の3分の1)の間に送達されること、約72%が、合計吸息時間の最初の50%(すなわち最初の2分の1)の間に送達されること、および約95%が、合計吸息時間の最初の67%(すなわち最初の3分の2)の間に送達されることを示す。
【
図4】[0024]
図3に記載された結果の組合せを表現する図である。
【
図5A】[0025]
図5Aおよび
図5Bは、呼吸検出と一酸化窒素の送達のアルゴリズムを表現する図である。
図5Aは閾値アルゴリズムを示す。
【
図5B】[0025]
図5Aおよび
図5Bは、呼吸検出と一酸化窒素の送達のアルゴリズムを表現する図である。
図5Bは傾斜アルゴリズムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0026]別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての特許および公報は、その全体が参照によって組み込まれる。
【0021】
[0027]いくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明が、以下の説明に明記された構成または工程段階の詳細に限定されるものではないことは理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であるとともに、様々な方法で実践するか、または実行することができる。
【0022】
[0028]本明細書全体を通した「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、または「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。このため、本明細書全体を通して様々な箇所における「1つまたは複数の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、または「ある実施形態において」などの語句の出現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を意味していない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適当な方法で組み合わされる場合がある。
【0023】
[0029]本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書で説明されているが、これらの実施形態が、本発明の原理および用途を単に例示するものであることは理解されるべきである。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置に対する様々な修正および変形を行うことが可能であることは、当業者にとって明白であろう。このため、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内である修正および変形を含むことが意図される。
定義
[0030]「有効量」または「治療上有効な量」という用語は、本明細書に記載される化合物または化合物の組合せの量であって、以下に限定されないが、疾患の治療を含む、意図された用途に効果を示すために十分な量を指す。治療上有効な量は、意図された用途(in vitroまたはin vivo)、治療する対象および病状(例えば、対象の体重、年齢、および性別)、病状の重症度、投与の方法などによって変更されることがあり、当業者によって容易に決定され得る。この用語は、標的細胞における特定の反応(例えば、血小板粘着能の低下および/または細胞遊走の減少)を引き起こすであろう用量にも適用される。具体的な用量は、選ばれた特定の化合物、準拠される投与レジメン、化合物が他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与タイミング、投与される組織、および化合物が運ばれる物理的送達システムによって変更されるであろう。
【0024】
[0031]本明細書で使用する場合、「治療効果」という用語は、治療的利益および/または予防的利益を包含する。予防効果には、疾患もしくは状態の出現を遅延させることもしくは排除すること、疾患もしくは状態の症状の発症を遅延させることもしくは排除すること、疾患もしくは状態の進行を緩やかにすること、止めること、もしくは後退させること、またはその任意の組合せが含まれる。
【0025】
[0032]「間質性肺疾患」または「ILD」の病態には、以下に限定されないが、特発性間質性肺炎(IIP)、慢性過敏性肺炎、職業性または環境性肺疾患、特発性肺線維症(IPF)、非IPFのIIP、肉芽腫性(例えば、サルコイドーシス)、ILDに関連する結合組織疾患、およびILDの他の形態を含むILDの全てのサブタイプが含まれる。
【0026】
[0033]本発明の態様を説明するために、例えば、投与範囲、製剤の構成成分の量などの範囲を本明細書で使用する場合、範囲の全ての組合せおよび下位の組合せならびにその場合の特定の実施形態を含むことが意図されている。数または数値範囲に言及する場合における「約」という用語の使用は、言及された数または数値範囲が、実験のばらつき内(すなわち、統計的実験誤差内)の概数であり、このため、この数または数値範囲は変動することがある。この変動は、前述の数または数値範囲の通常0%〜15%、好ましくは0%〜10%、より好ましくは0%〜5%である。「含んでいる(comprising)」という用語(および「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「有している」または「含んでいる(including)」などの関連用語)は、例えば、記載される特徴「からなる」もしくは「から本質的になる」物質の任意の組成物、任意の方法、または任意の工程の実施形態のような実施形態を含む。
【0027】
[0034]誤解を避けるために、本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明される特定の特徴(例えば、整数、特性、値、使用、疾病、式、化合物、または群)は、それと矛盾しない限り、本明細書に記載される他のいかなる態様、実施形態、または実施例にも適用できると理解されるべきであることは、本明細書で意図されている。したがって、このような特徴は、本明細書で定義される定義、請求項、または実施形態のいずれかに関連して適切であれば、使用されることがある。本明細書(任意の添付の請求項、要約、および図を含む)で開示される特徴の全て、および/または同様に開示される任意の方法または工程の段階の全ては、特徴および/または階段の少なくともいくつかが互いに相容れない組合せを除く、任意の組合せで組み合わせてもよい。本発明は、開示されるいかなる実施形態のいかなる詳細にも限定されるものではない。本発明は、本明細書(任意の添付の請求項、要約、および図を含む)で開示される特徴のうちの任意の新規のものもしくは任意の新規の組合せ、または同様に開示される任意の方法または工程の段階のうちの任意の新規のものもしくは任意の新規の組合せに及ぶ。
【0028】
[0035]本発明に関して、特定の実施形態において、ある用量のガス(例えば、NO)は、患者による吸息の間にパルスで患者に投与される。驚くべきことに、一酸化窒素の送達は、合計呼吸吸息時間の最初の3分の2以内に、精密で正確に行われることが可能であり、患者は、このような送達による利益を得ることが見出されている。医薬品の損失および有害な副作用のリスクを最小限に抑えるこのような送達は、パルス投与の有効性を高め、ひいては、有効であるために、患者に投与する必要のあるNOの全体的な量をよい少なくする結果となる。このような送達は、種々の疾患、例えば、以下に限定されないが、特発性肺線維症(IPF)、I〜V群の肺高血圧症(PH)を含む肺動脈性肺高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫合併肺線維症(CPFE)、嚢胞性線維症(CF)、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性高山病、または他の肺疾患の治療のために有用であり、例えば、肺炎の治療における抗菌としても有用である。
【0029】
[0036]このような精度は、換気が不十分な肺領域の部分のみをNOに曝露するという点で、さらに有利である。低酸素症およびヘモグロビンの障害も、このようなパルス送達を用いることで減少する可能性があるが、NO
2への曝露もより限定的なものとなる。
本発明のデバイス
[0037]特定の実施形態において、本発明は、デバイス、例えば、ある用量のガス(例えば、一酸化窒素)を必要としている患者に送達するためのプログラム可能なデバイスを含む。デバイスは、送達部分、患者に送達するための圧縮ガスを含む薬剤カートリッジ、呼吸感度設定を含む患者の呼吸パターンを検出するための呼吸感知部分、圧縮ガスをいつ患者に投与するかを決定するための少なくとも1つの呼吸検出アルゴリズム、および該用量の一酸化窒素を1回または複数回の一連のパルスを介して患者に投与するための部分を含むことができる。
【0030】
[0038]特定の実施形態において、薬剤カートリッジは交換可能である。
[0039]特定の実施形態において、送達部分は、経鼻カニューレ、フェイスマスク、噴霧器、および鼻吸入器のうちの1つまたは複数を含む。特定の実施形態において、この送達部分は、1種または複数の他のガス(例えば、酸素)を患者に同時に投与することを可能にする第2の送達部分をさらに含むことができる。
【0031】
[0040]特定の実施形態において、また本明細書の別の箇所で詳述されるように、デバイスは、閾値感度および傾斜アルゴリズムのうちの1つまたは両方を用いるアルゴリズムであって、傾斜アルゴリズムが、圧力降下速度が既定の閾値に達した際に呼吸を検出するアルゴリズムを含む。
【0032】
[0041]本発明のある実施形態において、機械的に、パルス用量のガスは、排出されない場合、他のガスセンサーにおいて通常問題を引き起こすベンチュリー効果を低下させることができる。例えば、本発明のパルス用量を用いない場合、O
2を、NOのような別のガスと同時に投与する際に、O
2背圧センサーが、O
2の送達を無効にすることがある。
呼吸パターン、検出、およびトリガー
[0042]呼吸パターンは、個人、時間帯、活動のレベル、および他の可変要因に基づいて変動する。このため、個人の呼吸パターンを予め決定することは困難である。そのため、呼吸パターンに基づいて患者に治療法を届ける送達システムは、有効であるために、可能性のある呼吸パターンの範囲に対処可能であるべきである。
【0033】
[0043]特定の実施形態において、患者または個人は任意の年齢であり得るが、より特定の実施形態において、患者の年齢は16歳以上である。
[0044]本発明のある実施形態において、呼吸パターンには、本明細書で使用される通り、単回の呼吸に対して決定される合計吸息時間の測定値が含まれる。しかし、文脈によって、「合計吸息時間」は、療法の間に検出された全ての呼吸における全ての吸息時間の総和を指すこともある。合計吸息時間は、観察されるか、または算出される場合がある。別の実施形態において、合計吸息時間は、シミュレートした呼吸パターンに基づいて検証された時間である。
【0034】
[0045]本発明のある実施形態において、呼吸検出には、少なくとも1つのトリガーが含まれ、いくつかの実施形態では、一緒に機能する少なくとも2つの個別のトリガー、すなわち、呼吸レベルトリガー(breath level trigger)および/または呼吸傾斜トリガー(breath slope trigger)が含まれる。
【0035】
[0046]本発明のある実施形態において、呼吸レベルトリガーアルゴリズムは、呼吸検出のために使用される。呼吸レベルトリガーは、圧力の閾値レベル(例えば、閾値陰圧)が吸息に達した際に呼吸を検出する。
【0036】
[0047]本発明のある実施形態において、呼吸傾斜トリガーは、圧力波形の傾斜が吸息を示す際に呼吸を検出する。呼吸傾斜トリガーは、場合によっては、特に短くて浅い呼吸の検出に使用する場合に、閾値トリガーよりも正確である。
【0037】
[0048]本発明のある実施形態において、これら2つのトリガーの組合せによって、特に複数の治療用ガスが患者に同時に投与されている場合に、概してより正確な呼吸検出システムが提供される。
【0038】
[0049]本発明のある実施形態において、呼吸レベルおよび/または呼吸傾斜を検出するための呼吸感度制御は固定されている。本発明のある実施形態において、呼吸レベルまたは呼吸傾斜のいずれかを検出するための呼吸感度制御は、調整可能であるか、またはプログラム可能である。本発明のある実施形態において、呼吸レベルおよび/または呼吸傾斜を検出するための呼吸感度制御は、最低感度から最高感度までの範囲で調整可能であり、ここで、最高感度設定は、最低感度設定よりも呼吸を検出する感度が高い。
【0039】
[0050]少なくとも2つのトリガーが使用される特定の実施形態において、各トリガーの感度は、異なる相対的レベルで設定される。少なくとも2つのトリガーが使用される一実施形態において、1つのトリガーは、最大感度に設定され、もう1つのトリガーは、最大感度より低く設定される。少なくとも2つのトリガーが使用され、また1つのトリガーが呼吸レベルトリガーである一実施形態において、この呼吸レベルトリガーは、最大感度に設定される。
【0040】
[0051]しばしば、患者の吸入/吸息の全てが検出され、ガス(例えば、NO)のパルス投与に対する吸入/吸息イベントとして分類されるわけではない。検出の過誤は、特に複数のガスが患者に同時に投与されている場合、例えば、NOと酸素の組合せ療法で生じる可能性がある。
【0041】
[0052]本発明の実施形態および特に、呼吸傾斜トリガーを単独でまたは別のトリガーと組み合させて組み入れている実施形態は、吸息イベントの正しい検出を最大限に高めることが可能であり、それによって、タイミングにおける誤認または過誤による無駄を最小限に抑えつつ、療法の有効性および効率を最大限に高める。
【0042】
[0053]特定の実施形態において、患者へのガス送達のための時間枠にわたる患者の合計吸息回数の50%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の75%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の90%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の95%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の98%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の99%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の75%〜100%が検出される。
投与量および投与レジメン
[0054]本発明のある実施形態において、患者に送達する一酸化窒素は、1リットル当たりNO約3〜約18mg、1リットル当たりNO約6〜約10mg、1リットル当たりNO約3mg、1リットル当たりNO約6mg、または1リットル当たりNO約18mgの濃度で製剤化される。NOは、単独でまたは代替のガス療法と組み合わせて投与されることがある。特定の実施形態において、酸素(例えば、濃縮された酸素)は、NOと組み合わせて患者に投与され得る。
【0043】
[0055]本発明のある実施形態において、ある体積の一酸化窒素は、呼吸当たり約0.350mL〜約7.5mLの量で投与される(例えば、単回のパルスで)。いくつかの実施形態において、単回のセッション過程の間、各パルス用量における一酸化窒素の体積は同じであってよい。いくつかの実施形態において、ガスを患者に送達するための単回の時間枠の間、いくつかのパルス用量における一酸化窒素の体積は異なってもよい。いくつかの実施形態において、ガスを患者に送達するための単回の時間枠の過程の間、呼吸パターンをモニターしつつ、各パルス用量における一酸化窒素の体積を調整してもよい。本発明のある実施形態において、肺疾患の症状を治療するか、または軽減する目的のために、パルス単位(「パルス用量」)で患者に送達される一酸化窒素(ng)の量は、以下の通りに算出され、ナノグラムの値に四捨五入される:
用量ug/kg−IBW/時間×理想体重kg(kg−IBW)×((1時間/60分)/(呼吸数(bpm))×(1,000ng/ug)。
【0044】
[0056]例として、100ug/kg IBW/時間の用量における患者Aは、理想体重が75kgであり、呼吸数が1分間当たり20呼吸(または、1時間当たり1200呼吸)である:
100ug/kg−IBW/時間×75kg×(1時間/1200呼吸)×(1,000ng/ug)=1パルス当たり6250ng
[0057]特定の実施形態において、60/呼吸数(分)の変数は、投与イベント時間といわれることもある。本発明の別の実施形態において、投与イベント時間は、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、または10秒である。
【0045】
[0058]本発明のある実施形態において、単回のパルス用量によって、患者に治療効果(例えば、治療上有効な量のNO)がもたらされる。本発明の別の実施形態において、2回以上のパルス用量の総量によって、患者に治療効果(例えば、治療上有効な量のNO)がもたらされる。
【0046】
[0059]本発明のある実施形態において、一酸化窒素の少なくとも約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、約500、約510、約520、約530、約540、約550、約560、約570、約580、約590、約600、約625、約650、約675、約700、約750、約800、約850、約900、約950、または約1000パルスが、1時間毎に患者に投与される。
【0047】
[0060]本発明のある実施形態において、一酸化窒素療法セッションは、時間枠にわたって生じる。一実施形態において、時間枠は、1日当たり少なくとも約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。
【0048】
[0061]本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療は、最短の治療過程の時間枠の間に実施される。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約10分、約15分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、または約90分である。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、もしくは約7日間、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、もしくは約8週間、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18、もしくは約24ヵ月である。
【0049】
[0062]本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療セッションは、1日当たり1回または複数回実施される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療セッションは、1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、または6回を超えてもよい。本発明のある実施形態において、治療セッションは、月1回、2週に1回、週1回、1日置きに1回、1日1回、または1日に複数回実施されてもよい。
NOパルスのタイミング
[0063]本発明のある実施形態において、呼吸パターンは、ある用量の一酸化窒素を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと相関している。
【0050】
[0064]吸入/吸息イベントを検出する精度は、さらに、単回の検出された呼吸の合計吸息時間における特定の時間枠にガスを投与することで、ガス(例えば、NO)パルスのタイミングによって、その有効性を最大限に高める。
【0051】
[0065]本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも50パーセント(50%)は、各呼吸の合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも60パーセント(60%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも75パーセント(75%)は、各呼吸の合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも85パーセント(85%)は、各呼吸の合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも92パーセント(92%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも95パーセント(95%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも99パーセント(99%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の90%〜100%は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。
【0052】
[0066]本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも70パーセント(70%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。さらに別の実施形態において、パルス用量の少なくとも75パーセント(75%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも80パーセント(80%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも95パーセント(95%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の95%〜100%は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって送達される。
【0053】
[0067]本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも95パーセント(95%)は、合計吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の95%〜100%は、合計吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。
【0054】
[0068]集計した場合、療法セッション/時間枠にわたる複数回のパルス用量の投与も、上記の範囲に該当し得る。例えば、集計した場合、療法セッションの間に投与された全パルス用量のうちの95%を超える用量は、検出された全呼吸のうちの全吸息時間の最初の3分の2にわたって投与された。より高い精度の実施形態において、集計した場合、療法セッションの間に投与された全パルス用量のうちの95%を超える用量は、検出された全呼吸のうちの全吸息時間の最初の3分の1にわたって投与された。
【0055】
[0069]本発明の検出方法の精度の高さをふまえると、パルス用量を、吸息のうちの任意の特定の時間窓の間に投与することが可能である。例えば、パルス用量を、患者の吸息の最初の3分の1、中間の3分の1、または最後の3分の1に定めて投与することが可能である。あるいは、吸息の最初の2分の1または2番目の2分の1を、パルス用量を投与するための標的に定めることが可能である。さらに、投与するための標的を変更してもよい。一実施形態において、吸息時間の最初の3分の1を、1回または一連の吸息に対する標的とすることが可能であり、ここで、2番目の3分の1または2番目の2分の1を、同じまたは異なる療法セッションの間の続く1回または一連の吸息に対する標的としてもよい。あるいは、吸息時間の最初の4分の1が経過した後に、パルス投与を開始し、中間の2分の1(次の2つの4分の1)の間継続して、パルス投与が、吸息時間の最後の4分の1の開始時に終了するように定めることが可能である。いくつかの実施形態において、パルスは、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、もしくは750ミリ秒(ms)遅延する場合があるか、または約50〜約750ミリ秒、約50〜約75ミリ秒、約100〜約750ミリ秒、もしくは約200〜約500ミリ秒の範囲で遅延する場合がある。
【0056】
[0070]吸入の間にパルス投与を利用することは、パルス投与されたガス、例えば、NOへの曝露から、換気が不十分な肺領域および肺胞の曝露を低減する。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の5%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の10%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の15%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の20%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の25%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の30%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の50%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の60%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の70%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の80%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の90%未満がNOに曝露される。
【0057】
[0071]本発明の好ましい実施形態は、本明細書で示され、説明されているが、このような実施形態は、例としてのみ提供されており、その他に本発明の範囲を限定することを意図するものではない。記載される本発明の実施形態に対する種々の代替は、本発明を実施する際に採用されることがある。
【実施例】
【0058】
[0072]本明細書に包含される実施形態は、以下の実施例を参照しつつ、ここで説明される。これらの実施例は、例示のみの目的で提供され、本明細書に包含される開示は、決してこれらの実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提示される教示の結果として明らかとなるありとあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。
【0059】
[0073]
実施例1
適切なトリガー/アーミング閾値(Arming Thresholds)のための精密な呼吸感度の測定
[0074]呼吸を検出するために閾値アルゴリズムを用いるデバイスを、この実施例(実施形態1)で使用した。閾値アルゴリズムは、圧力を用いて呼吸を検出し、これは、呼吸を検出し、計数するためには、特定の閾値を下回る圧力降下が吸息に認められなければならないということである。圧力閾値は、実施形態1のデバイスの検出感度を変更する結果として、修正され得る。いくつかの呼吸感度設定を、本実施例で試験した。1を最低感度、10を最高感度とした1〜10の設定を試験した。cmH
2Oに示されるトリガー閾値は、一酸化窒素が送達される閾値レベルである。同じくcmH
2Oに示されるアーミング閾値は、デバイスを一酸化窒素の次の送達に備える閾値レベルである。このデータを以下の表1に示す。
【0060】
[0075]以下の表1は、本実施例で収集されたデータセットを示す。呼吸感度設定の変動は、最低感度設定(1)で−1.0から最高感度設定(10)で−0.1までのトリガー閾値(cm H
2Oで測定)の上昇をもたらした。さらに、アーミング閾値(cm H
2Oで測定)は、感度設定1から設定6まで0.1の値を維持し、その後10までの各感度設定において0.02ずつ低下した。これは、最高感度の呼吸感度設定によって、呼吸をより正確に検出でき、それによって、より短い時間窓、すなわち、呼吸の吸息部分におけるより早期に、一酸化窒素のより正確なパルス送達がもたらされることを示唆する。これらのデータに基づいて、感度設定8および10における追加の試験を行った。
【0061】
[0076]
【0062】
【表1】
【0063】
[0077]結論として、より高い呼吸感度設定は、より低いトリガー閾値およびより高いアーミング閾値と相関し、一酸化窒素の短くて精密なパルスを、療法の治療過程にわたって送達するためにデバイスを調整する。
【0064】
[0078]
実施例2
種々の呼吸パターンに対するデバイスの試験
[0079]上記の通り、一酸化窒素の正確で適時な送達は、本発明にとって重要である。デバイスが、ガスの精密な用量を、精密な時間窓以内に送達するかを確認するため、人工肺および鼻モデルを使用して、10通りの異なる呼吸パターンを試験した。シミュレートした10通りの異なる呼吸パターンを分析し、呼吸パターンに、呼吸数(8〜36bpm)、換気量(316〜912mL)、および吸息:呼息(I/E)比(1:1〜1:4)の変動がみられた。これらの変動的な呼吸パターンは、16歳以上という対象の年齢から予想されるパターンであり、表2に要約される。実際条件を可能な限り模倣した。
【0065】
[0080]
【0066】
【表2】
【0067】
[0081]2つのデバイス実施形態が試験された−実施形態1を、感度レベル8および感度レベル10で試験し、他のデバイス実施形態(実施形態2、さらに傾斜アルゴリズムを含む)を、感度レベル10で試験した。この調査は、2つのパートから構成された。パート1では、シミュレートした10通りの異なる呼吸パターンを用いて、吸息呼吸開始から一酸化窒素の送達開始の間の遅延時間を測定した。この遅延時間は、2つのデータポイントを使用して測定される−吸息開始(
図1、ポイントA)から同時に送達バルブが開く呼吸検出(
図1、ポイントB)の間の時間。パート2では、表2における同じ呼吸パターンに及ぶ送達されたパルスの持続時間および体積を測定した。ガスパルスの持続時間を、呼吸検出およびガス送達の開始に相当する送達バルブの同時開弁(
図2、ポイントA)からガス送達の完了(
図2、ポイントB)まで測定する。送達されたパルスの体積は、パルスの持続時間にわたるガス流量の積算によって測定される。さらに、遅延時間を測定したパート1からのデータとパルスの持続時間を測定したパート2からのデータを、時に「送達されたパルス幅」といわれる、用量送達時間を算出するために加算する。
【0068】
[0082]パート1:吸息開始からNO送達開始の間の遅延時間の測定。試験のこの部分は、6mg/L(4880ppm)と入力された薬物濃度を用いて、75ug/kg−IBW/時間の用量で実施された。この試験は、窒素のみを使用して行われた。パート1の主要出力は、吸息開始からバルブの開弁/呼吸検出の指標の間の持続時間である。
図1のポイントAは、肺の空気流量が休止線(resting line)のすぐ上に上昇したポイントである。バルブの開弁時点は、
図1のポイントBとして示され、検出器における急激な電圧降下として表示される。ポイントAからポイントBの間の時間間隔は、バルブの遅延時間、すなわちトリガー遅延であり、各呼吸パターンに対して算出される。合計吸息時間は、ポイントAからポイントC(吸息の終了時点である)までの間隔に相当する。
【0069】
[0083]パート2:送達されたパルスの持続時間および体積の測定。調査のこのパートでは、同じ呼吸パターンを使用した。10、15、30、および75ug/kg−IBW/時間の用量を試験した。デバイスを、各用量、患者IBW、および呼吸数(1分間当たりの呼吸)に対してプログラムした。得られたパルスガス流量を、流量計によって特定した。パルスの持続時間は、バルブの開弁が示唆され、検出器における急激な電圧降下として表示され、
図2のポイントAに相当するポイントから、
図2のポイントBでガス流量がベースラインに戻る時点の間の時間である。送達されたパルスの体積は、パルスの持続時間の間の積算されたガス流量である。パルスの持続時間を、パート1からのパルスの遅延時間に加算して、用量送達時間、すなわち「送達されたパルス幅」を得た。
図1は、パート1の結果を示す。
図1には、4つのパネルが示されている。2番目および4番目のパネルは、それぞれ流量制御バルブの作動に相当する呼吸検出および呼吸パターンの描写を示す。ポイントAは吸息の開始を示し、ポイントBは流量バルブの開弁に相当する呼吸検出を示し、ポイントCは吸息の終了を示す。このデータから、ポイントAからBの間の遅延時間を算出することができる。
【0070】
[0084]
図2は、パート2の結果を示す。
図2には、4つのパネルが示されている。2番目および3番目のパネルは、それぞれ流量制御バルブの作動に相当する呼吸検出およびパルスガス流量の描写を示す。ポイントAは流量バルブの開弁に相当する呼吸検出を示し、ポイントBはパルス流動の終了を示す。このデータから、ポイントAからBの間のパルスの持続時間を算出することができる。
【0071】
[0085]以下の表3は、
図3および
図4に描写された結果を要約する。
【0072】
【表3】
【0073】
[0086]
図3は、表3に記載される各デバイスにおける呼吸検出数の結果を描写する。実施形態2、すなわち
図3の四角/点線データは、一酸化窒素の少なくとも93%が呼吸の吸息部分の最初の3分の1以内で送達されることを示す。一酸化窒素の100%は、呼吸の吸息部分の最初の2分の1以内で送達される。それに比べて、感度設定8の実施形態1では、一酸化窒素の少なくとも17%が呼吸の吸息部分の最初の3分の1以内で送達され、少なくとも77%が呼吸の吸息部分の最初の2分の1以内、少なくとも95%が呼吸の吸息部分の最初の3分の2以内に送達される。感度設定10の実施形態1は、一酸化窒素の少なくとも62%が呼吸の吸息部分の最初の3分の1以内で送達され、少なくとも98%が呼吸の吸息部分の最初の2分の1以内、100%が呼吸の吸息部分の最初の3分の2以内に送達される結果を示した。
図4は、3つ全ての試験を組み合わせたデータ曲線を描写する。
【0074】
[0087]このデータから、より多くの一酸化窒素は、治療の過程の間、より短い時間にわたってパルス毎により精密に送達されているため、単回の治療の過程にわたって、一酸化窒素のより少ない用量が必要とされていると結論付けられる。一酸化窒素のより少ない用量は、全体的により少ない薬物の使用に繋がり、有害な副作用のリスクの低下にも繋がる。
【国際調査報告】