(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
対象においてMAP感染又はMAP感染に関連する状態若しくは症状を治療又は予防する方法での使用のための、MAP P900のN末端領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチン。
対象においてMAP感染又はMAP感染に関連する状態若しくは症状を治療又は予防する方法での使用のための、配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチン。
配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含む2つ以上のポリペプチド、又は前記ポリペプチドをコードする2つ以上のポリヌクレオチドを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン。
アミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含むポリペプチド、及びアミノ酸配列MVINDDAQRLL[pS]QRを含むポリペプチドを含む、請求項9に記載の使用のためのワクチン。
以下のポリペプチド又はポリヌクレオチド:アミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含むポリペプチド、又は前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、アミノ酸配列VTTLADGGEVTWAIDを含むポリペプチド、又は前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及びアミノ酸配列EVVVAQPVWAGVDAGKADHYを含むポリペプチド、又は前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのうちの少なくとも2つを含む、請求項9又は10に記載の使用のためのワクチン。
アミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELIを含むポリペプチド、アミノ酸配列VTTLADGGEVTWAIDLNAを含むポリペプチド、及び/又はアミノ酸配列MTVTEVVVAQPVWAGVDAGKADHYを含むポリペプチドを含む、請求項11に記載の使用のためのワクチン。
ポリペプチドが少なくとも1つの追加のMAPポリペプチド、又はその断片のアミノ酸配列をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン。
少なくとも1つの追加のMAPポリペプチド若しくはその断片のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は追加のMAPポリペプチド若しくはその断片をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン。
追加のMAPポリペプチドが、ahpCポリペプチド、gsdポリペプチド、p12ポリペプチド、及びmpaポリペプチドのうちの少なくとも1つである、請求項15又は16に記載の使用のためのワクチン。
(a)ahpCポリペプチドが、配列番号22の配列、配列番号22の全長にわたって配列番号22と70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、又はエピトープを含む配列番号22の少なくとも8個のアミノ酸の断片を含み、
(b)gsdポリペプチドが、配列番号24の配列、配列番号24の全長にわたって配列番号24と70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、又はエピトープを含む配列番号24の少なくとも8個のアミノ酸の断片を含み、
(c)p12ポリペプチドが、配列番号26の配列、配列番号26の全長にわたって配列番号26と70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、又はエピトープを含む配列番号26の少なくとも8個のアミノ酸の断片を含み、及び/又は
(d)mpaポリペプチドが、配列番号30の配列、配列番号30の全長にわたって配列番号30と70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、又はエピトープを含む配列番号30の少なくとも8個のアミノ酸の断片を含む、
請求項17に記載の使用のためのワクチン。
ポリペプチドが、配列番号41に示すアミノ酸配列であって、但しアミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含むペプチドがN末端に付加されている、若しくは7位と8位、199位と200位、442位と443位、577位と578位、及び/若しくは820位と821位の間に挿入されている、アミノ酸配列、又は配列番号42に示すアミノ酸配列であって、但しアミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含むペプチドがN末端に付加されている、若しくは7位と8位、199位と200位、442位と443位、582位と583位、及び/若しくは825位と826位の間に挿入されている、アミノ酸配列を含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン。
ポリヌクレオチドが、前記ポリペプチド、又は前記ポリペプチドのうちの少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列の2つ以上のコピーを含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン。
MAP感染に関連する状態又は症状が、腸の慢性炎症、クローン病、ヨーネ病、潰瘍性大腸炎、乾癬、甲状腺炎、サルコイドーシス、パーキンソン病、多発性硬化症、1型糖尿病、関節炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、慢性腸炎、アルツハイマー病、多発性硬化症、突発性肺繊維症、らい病及び/又は慢性疲労性症候群である、請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン。
方法が、MAPに対する活性を有するさらなる治療剤又はMAP感染に関連する状態の治療で使用されるさらなる治療剤を対象に投与するステップを含む、請求項1〜24のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン。
アミノ酸配列MVINDDAQRLLSQR、並びにahpCポリペプチド、gsdポリペプチド、p12ポリペプチド、及び/又はmpaポリペプチドを含む、ポリペプチド。
配列番号41に示すアミノ酸配列であって、但しアミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含むペプチドがN末端に付加されている、若しくは7位と8位、199位と200位、442位と443位、577位と578位、及び/若しくは820位と821位の間に挿入されている、アミノ酸配列、又は配列番号42に示すアミノ酸配列であって、但しアミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含むペプチドがN末端に付加されている、若しくは7位と8位、199位と200位、442位と443位、582位と583位、及び/若しくは825位と826位の間に挿入されている、アミノ酸配列を含む、請求項30〜32のいずれか一項に記載のポリペプチド。
アミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含むペプチドが、請求項26〜29のいずれか一項に記載のペプチドである、請求項30〜32のいずれか一項に記載のポリペプチド。
配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンベクター。
ポリヌクレオチドが、アミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含むポリペプチドをコードする、又は請求項36に記載のポリヌクレオチドである、請求項37に記載のワクチンベクター。
対象における、MAP感染又はMAP感染に関連する状態若しくは症状を治療又は予防する方法での使用のための、アミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRからなるペプチド、請求項26〜29のいずれか一項に記載のペプチド、請求項30〜35のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項36に記載のポリヌクレオチド、又は請求項37〜40のいずれか一項に記載のワクチンベクター。
MAP感染又はMAP感染に関連する状態若しくは症状を治療又は予防する方法であって、有効量の、配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含むポリペプチド、若しくは前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、アミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRからなるペプチド、請求項26〜29のいずれか一項に記載のペプチド、請求項30〜35のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項36に記載のポリヌクレオチド、又は請求項37〜40のいずれか一項に記載のワクチンベクターを、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法。
MAP感染又はMAP感染に関連する状態若しくは症状を治療又は予防することにおける使用のためのキットであって、(i)配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含むポリペプチド、若しくは前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、アミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRからなるペプチド、請求項26〜29のいずれか一項に記載のペプチド、請求項30〜35のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項36に記載のポリヌクレオチド、又は請求項37〜40のいずれか一項に記載のワクチンベクターのうちの少なくとも1つ、及び(ii)同時、逐次、又は個別使用のための少なくとも1つの他の治療剤を含む、キット。
【発明を実施するための形態】
【0017】
配列表の簡単な説明
配列番号1及び2は、それぞれMAP P900タンパク質のN末端領域の核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号3及び4は、それぞれ短鎖及び長鎖A0Xペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号5及び6は、それぞれ短鎖及び長鎖A0Xペプチドのアミノ酸配列であり、リン酸化部位を示す。
配列番号7及び8は、それぞれ短鎖及び長鎖A1ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号9及び10は、それぞれ短鎖及び長鎖AN末端ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号11及び12は、それぞれA1短鎖ペプチドに連結したA0X短鎖ペプチド及びA1長鎖ペプチドに連結したA0X短鎖ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号13及び14は、それぞれA1短鎖ペプチドに連結したA0X長鎖ペプチド及びA1長鎖ペプチドに連結したA0X長鎖ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号15及び16は、それぞれA0X短鎖ペプチドに連結したAN短鎖ペプチド及びA0X長鎖ペプチドに連結したAN短鎖ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号17及び18は、それぞれA0X短鎖ペプチドに連結したAN長鎖ペプチド及びA0X長鎖ペプチドに連結したAN長鎖ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号19及び20は、それぞれA1長鎖ペプチドに連結したA0X長鎖ペプチドに連結したAN短鎖ペプチド及びA0X長鎖ペプチドに連結したAN長鎖ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号21及び22は、MAP ahpC遺伝子のそれぞれ核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号23及び24は、MAP gsd遺伝子のそれぞれ核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号25及び26は、MAP p12遺伝子のそれぞれ核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号27及び28は、トランケート型MAP p12遺伝子のそれぞれ核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号29及び30は、MAP mpa遺伝子のそれぞれ核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号31及び32は、核酸配列がヒトでの使用のためにコドン最適化された、MAP ahpC遺伝子の改変バージョンのそれぞれ核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号33及び34は、核酸配列がヒトでの使用のためにコドン最適化され、22位のシステイン残基を除去するためにN末端がトランケートされている、MAP gsd遺伝子の改変バージョンのそれぞれ核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号35及び36は、核酸配列がヒトでの使用のためにコドン最適化された、MAP p12遺伝子の改変バージョンのそれぞれ核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号37及び38は、核酸配列がヒトでの使用のためにコドン最適化された、トランケート型MAP p12遺伝子の改変バージョンのそれぞれ核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号39及び40は、核酸配列がヒトでの使用のためにコドン最適化され、いくつかの膜貫通領域が除去された、MAP mpa遺伝子の改変バージョンのそれぞれ核酸及びアミノ酸配列である。
配列番号41は、内部トランケート型HAVワクチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号42は、HAVワクチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号43は、全長MAP P900タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号44は、A4ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号45は、リン酸化A4ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号46は、別の箇所がリン酸化された(alternatively phosphorylated)A4ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号47は、二重リン酸化A4ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号48は、A3ペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号49は、HAVワクチンの核酸配列である。
配列番号50は、P900のN末端領域由来のペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号51は、P900の細胞外領域の部分のアミノ酸配列である。
配列番号52は、P900の細胞外領域由来の3つのペプチドを含むポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号53は、P900の膜貫通領域のアミノ酸配列である。
配列番号54は、P900のマイコバクテリア内領域(intramycobacterial region)のアミノ酸配列である。
配列番号55は、P900のマイコバクテリア内領域変異体のアミノ酸配列である。
配列番号56は、P900の膜貫通領域及びマイコバクテリア内領域のアミノ酸配列である。
配列番号57は、P900の膜貫通領域及びマイコバクテリア内領域変異体のアミノ酸配列である。
配列番号58は、P900の細胞外領域、膜貫通領域、及びマイコバクテリア内領域の部分を含むポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号59は、P900の細胞外領域、膜貫通領域、及びマイコバクテリア内領域変異体の部分を含むポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号60は、P900の細胞外領域、膜貫通領域、及びマイコバクテリア内領域由来の3つのペプチドを含むポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号61は、P900の細胞外領域、膜貫通領域、及びマイコバクテリア内領域変異体由来の3つのペプチドを含むポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号62は、N末端に配列番号59を付加したHAVワクチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号63は、HAVX1ワクチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号64は、N末端に配列番号58を付加したHAVワクチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号65は、N末端に配列番号58を付加した内部トランケート型HAVワクチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号61は、N末端に配列番号59を付加したHAVワクチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号63は、HAVX2ワクチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号64は、N末端に配列番号60を付加したHAVワクチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号65は、N末端に配列番号60を付加した内部トランケート型HAVワクチンポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号70は、2Aペプチドのコンセンサスアミノ酸配列である。
配列番号71は、2Aペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号72〜146は、実施例に記載のペプチド及びポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0018】
ワクチン
本発明は、対象においてMAP感染又はMAP感染に関連する状態若しくは症状を治療又は予防する方法での使用のための、配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを提供する。
【0019】
ワクチン中のポリペプチドは、配列番号2の9〜71、10〜70、12〜65、15〜60、18〜55、20〜50、25〜45、又は30〜40個の連続するアミノ酸を含み得る、からなり得る、又はから本質的になり得る。
【0020】
ポリペプチドは、配列番号2由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸の2個以上のストレッチ(stretch)を含み得る。例えば、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列由来の9個以上の連続するアミノ酸の1、2、3個以上のストレッチを含み得る。アミノ酸の各連続するストレッチは、9〜30個のアミノ酸のストレッチ、例えば、12〜25、13〜24、14〜22、又は15〜20アミノ酸長であり得る。配列番号2由来の連続するアミノ酸は、互いに直接結合することができ、又は連続するアミノ酸のストレッチ間にリンカーを含むことができる。好ましくは、ペプチドリンカー(例えば、別のアミノ酸配列)を使用して、アミノ酸の連続するストレッチを結合する。
【0021】
ワクチンは、配列番号3(MVINDDAQRLLSQR)のアミノ酸配列及び/又は以下に記載したペプチド若しくはポリペプチドのいずれか1つ以上を単独で、又は組み合わせて含む、からなる、又はから本質的になるポリペプチドを含み得る。特に、ワクチンは、以下のアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む、からなる、又はから本質的になるポリペプチドを含み得る:MVINDDAQRLLSQR(配列番号3)、MVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELI(配列番号4)、MVINDDAQRLL[pS]QR(配列番号5)、VTTLADGGEVTWAID(配列番号7)、VTTLADGGEVTWAIDLNA(配列番号8)、EVVVAQPVWAGVDAGKADHY(配列番号9)、MTVTEVVVAQPVWAGVDAGKADHY(配列番号10)及びVDAGKADHY(配列番号50)。これらのアミノ酸配列の2つ以上がポリペプチド内に存在する場合、それらは、互いに直接結合することができ、又はポリペプチドは、1個以上の追加の連結アミノ酸、例えば1〜20、2〜15、3〜10、若しくは4〜8アミノ酸を含むことができる。例えば、A又はAAは、VTTLADGGEVTWAID(配列番号7)、VTTLADGGEVTWAIDLNA(配列番号8)のアミノ末端を別のアミノ酸配列に結合させるために使用され得る。アミノ酸は、任意の順序で結合することができる。いくつかの実施形態では、それらは、P900で生じる順序で結合される。
【0022】
いくつかの実施形態では、ワクチン中の、又はワクチンによってコードされるポリペプチドは、配列番号10、配列番号4、及び配列番号7のいずれか2つ又は全てのアミノ酸配列を、任意の順序で含む。これらの配列は、互いに直接隣接していてもよく、又はそれらを結合する1個以上の追加のアミノ酸を含んでもよい。いくつかの実施形態では、配列番号10、配列番号4、及び配列番号7は、この順序で結合することができる。これらの場合、ポリペプチドは、正常なマイコバクテリア外領域の全体のアミノ酸配列:
MTVTEVVVAQPVWAGVDAGKADHYCMVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELIAAVTTLADGGEVTWAID(配列番号51)
を含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、ワクチン中の、又はワクチンによってコードされるポリペプチドは、配列番号3、配列番号50、及び配列番号7のアミノ酸配列を、任意の順序で含む。例えば、配列番号3、配列番号50、及び配列番号7は、この順序で結合することができる。これらの配列は、互いに隣接していてもよく、又はそれらを結合する1個以上の追加のアミノ酸を含んでもよい。例えば、ポリペプチドは、アミノ酸配列:
MVINDDAQRLLSQRVDAGKADHYAVTTLADGGEVTWAID(配列番号52)
を含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、ワクチンは、P900の膜貫通ストレッチの全て又は一部を形成するアミノ酸配列をさらに含み得る。例えば、ワクチンは、上記の1つ以上のアミノ酸配列に加えて、アミノ酸配列
LNAGGAALLIALLIAAGQRLLY(配列番号53)を含むポリペプチドを含み得る。ポリペプチドは、膜の細胞質側で、膜貫通ストレッチと隣接する1個以上のアミノ酸をさらに含み得る。例えば、ワクチンは、アミノ酸配列IPGRTVHHAAGSYRGE(配列番号54)、その変異体、IPGATVHHAAGSYRGE(配列番号55)、又はそれらのいずれかの任意のN末端断片を含み得る。ポリペプチド中で、アミノ酸配列である配列番号54若しくは配列番号55、又はそれらのN末端断片は、好ましくは、配列番号53のアミノ酸配列のC末端に隣接している。例えば、ポリペプチドは、アミノ酸配列
LNAGGAALLIALLIAAGQRLLYIPGRTVHHAAGSYRGE(配列番号56)
LNAGGAALLIALLIAAGQRLLYIPGATVHHAAGSYRGE(配列番号57)を含み得る。配列番号54又は配列番号55のN末端断片は、1〜15アミノ酸長、例えば2〜14、3〜10、4〜9、5〜8、6又は7アミノ酸長であり得る。
【0025】
ワクチンは、例えば、アミノ酸配列:
MTVTEVVVAQPVWAGVDAGKADHYCMVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELIAAVTTLADGGEVTWAID
LNAGGAALLIALLIAAGQRLLYIPGRTVHHAAGSYRGE(配列番号58)、
MTVTEVVVAQPVWAGVDAGKADHYCMVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELIAAVTTLADGGEVTWAID
LNAGGAALLIALLIAAGQRLLYIPGATVHHAAGSYRGE(配列番号59)、
MVINDDAQRLLSQRVDAGKADHYAVTTLADGGEVTWAID
LNAGGAALLIALLIAAGQRLLYIPGRTVHHAAGSYRGE(配列番号60)、又は
MVINDDAQRLLSQRVDAGKADHYAVTTLADGGEVTWAID
LNAGGAALLIALLIAAGQRLLYIPGATVHHAAGSYRGE(配列番号61)
を含むポリペプチドを含み得る又はコードし得る。
【0026】
配列番号58及び配列番号59は、推定トランスポザーゼの活性部位メカニズムの手前で停止する、P900配列の正常なマイコバクテリア外領域、膜貫通領域(配列番号53)、及び第1のマイコバクテリア内部分(配列番号54又は配列番号55)を表す。それは既知の毒性を有しておらず、MAP感染中にin vivoで豊富に発現される。配列番号60及び配列番号61は、P900の正常な配列を攪乱し、N末端エピトープ(配列番号3)に重点を置き、膜貫通配列(配列番号53)に入る直前にさらなるエピトープ(配列番号7/配列番号8)を暴露する。本発明者らは、初めて、P900の細胞外アミノ末端が、少なくとも3つの免疫原性領域を含むことを示した。これらの免疫原性領域は、配列番号3及び4(本明細書ではA0Xと呼ばれる)(リン酸化されて配列番号5及び6(本明細書ではA0XPと呼ばれる)を形成することができる);配列番号7及び8(本明細書ではA1と呼ばれる);並びに配列番号9及び10(本明細書ではANと呼ばれる)である。
【0027】
好ましい実施形態では、ワクチンはA0Xペプチドを含む、又はA0Xペプチドはワクチン配列にコードされ、天然のアミノ酸型で発現される。ワクチン接種及び発現後、セリンは示したようにリン酸化され得る。ペプチドのリン酸化及び非リン酸化型の両方が、同じMAP感染細胞内及び同じ細胞表面上に存在し得る。同様に、ワクチン接種した対象は、免疫系にリン酸化及び非リン酸化型の両方を提示し得る。天然のペプチド又はそのリン酸化誘導体のいずれかに特異的な蛍光モノクローナル抗体によるそのような細胞の染色は、抗体が相互排他的であり、MAP感染細胞の細胞質及び表面に広がる別々の標識されたペプチドクラスターを明らかにすることを示す。抗体及び細胞媒介性免疫に広く暴露されるにもかかわらず、これらのマイコバクテリアペプチドは、ワクチン接種していないMAP感染宿主により認識されない。ワクチン接種は、ワクチン接種後にP900のカルボキシ末端部分でそうであるように、アミノ末端ペプチドの免疫認識の遮断を解放する。
【0028】
A0Xのセリンリン酸化には重要な種差がある。A0XPに対するモノクローナル抗体は、合成MVINDDAQRLLpSQRに対してマウスを免疫し、クローン選択することによって作製した。これらの抗体は、リン酸化A0XPが、腸の血管内の免疫細胞にわずかに見られる以外、正常又は炎症ヒト腸組織の切片に見られないことを実証した。しかしながら、A0XPは、循環ヒトWBCに対して強陽性である。一方で、ウシ、ヒツジ、ヤギ、及びシカでは、A0XPは、循環WBCと同様に、腸の細胞で強陽性であった。A0XPの合成ポリマー及び適切なアジュバントを使用して、動物におけるMAP感染に対する追加の免疫化の使用を検討する場合、これらの新たな知見を考慮に入れることができる。
【0029】
好ましい実施形態では、ワクチンはA0Xペプチドを含む、又はA0Xペプチドはワクチン配列内にコードされ、天然のアミノ酸型で発現され、A0XペプチドはそのN末端のシステイン残基に隣接しない。例えば、A0Xペプチドは、ワクチン中のペプチド又はポリペプチドのN末端にある。P900中のA0Xペプチドアミノ酸配列の隣に存在するシステイン残基は、P900を膜に係留すると考えられる。このN末端のシステイン残基がないA0Xペプチドの発現は、免疫系に対するペプチドの視認性(visibility)を改善する。
【0030】
ワクチンは、場合によりA0Xペプチドに加えて、A1ペプチドを含み得る。A1ペプチドは、MAPの外側表面に近接して結合しており、そのカルボキシ末端は、その第1の膜貫通部分の外側層に入る(上記でハイライトした)。それは強固な抗原であり、MAP及び近縁のマイコバクテリウム・アビウムの有用なマーカーである。免疫原性を最大にするためには、A1のアミノ末端に隣接するP900アミノ酸配列に存在する2つのアラニン残基は、A1に含めず、その結果ペプチド免疫原はVTTで始まる。しかしながら、A1ペプチドは、2つのN末端のアラニン残基をさらに含み得る。本発明者らは、トランケート型組換えP900によって免疫した後、合成15merのペプチド抗原のカスケードに対してスクリーニングしたマウス及びウサギにおいてA1が免疫原であることを発見した。
【0031】
ワクチンは、場合によりA0X及び/又はA1ペプチドに加えて、ANペプチドを含み得る。P900の他のアミノ末端ペプチドとは異なり、ANペプチド配列の自然発生の抗体認識が、低いものの、MAP感染宿主に一般的に見られる。ワクチンの免疫原として合成ANペプチドを使用する場合、最初のMTVTを取り除いて、免疫原性を改善する。免疫原としてペプチドを使用する場合、C末端のCysを除去して架橋結合を防ぐことができ、又は担体分子、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)若しくはウシ血清アルブミンへのマレイミド結合と共に使用することができる。
【0032】
使用され得るポリペプチドの特定の例は、以下のアミノ酸配列:
(i)MVINDDAQRLLSQRX
2VTTLADGGEVTWAID(配列番号11)、
(ii)MVINDDAQRLLSQRX
2VTTLADGGEVTWAIDLNA(配列番号12)、
(iii)MVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELIX
2VTTLADGGEVTWAID(配列番号13)、
(iv)MVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELIX
2VTTLADGGEVTWAIDLNA(配列番号14)、
(v)EVVVAQPVWAGVDAGKADHYX
1MVINDDAQRLLSQR(配列番号15)、
(vi)EVVVAQPVWAGVDAGKADHYX
1MVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELI(配列番号16)、
(vii)MTVTEVVVAQPVWAGVDAGKADHYX
1MVINDDAQRLLSQR(配列番号17)、又は
(viii)MTVTEVVVAQPVWAGVDAGKADHYX
1MVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELI(配列番号18)、
(ix)EVVVAQPVWAGVDAGKADHYX
1MVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELIX
2VTTLADGGEVTWAIDLNA(配列番号19)、及び
(x)MTVTEVVVAQPVWAGVDAGKADHYX
1MVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELIX
2VTTLADGGEVTWAIDLNA(配列番号20)
[式中、X
1はペプチドリンカー又はCであり、X
2はペプチドリンカー、A又はAAである]
の1つを含むポリペプチドを含む。ペプチドリンカーは、以下に記載するペプチドリンカーのいずれかであってよい。
【0033】
ポリペプチドは、配列番号3〜10の1つ以上を含み、配列番号3、4、5、6、7、8、9又は10のアミノ酸配列の領域の外側で配列番号2に少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失又は付加を有する、配列番号2の変異体であり得る。
【0034】
ワクチン中のポリペプチドは、少なくとも1つの追加のMAPポリペプチド、又はその断片のアミノ酸配列をさらに含み得る。ワクチンは、少なくとも1つの追加のMAPポリペプチド若しくはその断片のアミノ酸配列、又は追加のMAPポリペプチド若しくはその断片をコードする少なくとも1つのさらなるポリヌクレオチドをさらに含み得る。
【0035】
上記のポリペプチドは、一実施形態では、「自己切断」ペプチドにより、追加のポリペプチドに結合され得る。「自己切断」ペプチドは、翻訳中にそれが含有されるポリペプチドの切断を媒介するペプチドである。自己切断ペプチドの一例は、2Aポリペプチドである。2Aペプチドは、真核細胞における翻訳中にポリペプチドの切断を媒介する、18〜22アミノ酸長のウイルスペプチドである(Liuら、2017 Scientific Reports 7:2193)。2Aペプチドは、そのウイルスゲノムに2Aペプチドを含む、任意のウイルス由来であり得る。2Aペプチドは、典型的には、保存配列GDVEXNPGP(配列番号70)を含む。2Aペプチドの一例は、配列APVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号71)を有する。
【0036】
少なくとも1つの追加のポリペプチドは、例えば、ahpCポリペプチド、gsdポリペプチド、p12ポリペプチド、及び/又はmpaポリペプチドであってよい。特に、P900の細胞外アミノ末端P900ペプチドをコードする核酸配列の発現は、p12ポリペプチドと組み合わせて使用する場合、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2007/017635に記載のHAVワクチンへと導入する場合に、P900システムの無効化を促進する。
【0037】
ahpCは、多くの病原性マイコバクテリアにより共有される分泌成分である。それは、MAPのマクロファージ内で生存する能力に関与し、微生物が休眠状態に入るときに上方制御される。MAP ahpC遺伝子及びタンパク質の核酸及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号21及び22に示す。本発明での使用のため、この配列、又は以下に述べるその変異体が使用され得る。例えば、MAP ahpC遺伝子配列は、以下にさらに述べるようにコドン最適化され、哺乳動物、特にヒトでの使用により好適なものにすることができる。1つの好適な改変ahpC配列及びコードされるタンパク質は、それぞれ配列番号31及び32に示す。
【0038】
gsdは、予測シグナル配列及び脂質アシル化部位を有するGS病原性エレメント(pathogenicity element)によってコードされるグリコシルトランスフェラーゼである。マイクロアレイ解析は、それが、細胞内環境で上方制御されることを示す。それは、微生物細胞表面上で発現され、GDPフコースを末端付近のラムノースへと移動させて、誘導体化フコースによりMAP上の表面糖ペプチド脂質にふたをし、そのZN陰性状態の病原体に不活性で、疎水性で、かつ高耐性の細胞表面をもたらすと予測される。MAP gsd遺伝子及びタンパク質の核酸及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号23及び24に示す。本発明での使用のため、この配列、又は以下に述べるその変異体が使用され得る。例えば、MAP gsd遺伝子配列は、以下にさらに述べるようにコドン最適化され、哺乳動物、特にヒトでの使用により好適なものにすることができる。他の改変を行うことができ、例えばアシル化部位である可能性がある部位が除去され得る。1つの好適な改変gsd配列及びコードされるタンパク質は、それぞれ配列番号33及び34に示す。
【0039】
p12は、細胞内で同様に上方制御されるIS900によりコードされるp43のカルボキシ末端の17kDaの断片である。それは、細胞表面上にあることが強く予測され、MAP及びp43.rec.Ecoliの両方において、特定のタンパク質分解性切断及び細胞外ドメイン放出の基質である。MAP p12遺伝子及びタンパク質の核酸及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号25及び26に示す。本発明での使用のため、この配列、又は以下に述べるその変異体が使用され得る。例えば、MAP p12遺伝子配列は、以下にさらに述べるようにコドン最適化され、哺乳動物、特にヒトでの使用により好適なものにすることができる。1つの好適な改変p12配列及びコードされるタンパク質は、それぞれ配列番号35及び36に示す。
【0040】
mpaもまた、MAPの表面上で発現され、病原体に特有であると考えられる。それは、アセチラーゼ、並びに10個の膜貫通領域及び大きな細胞外ペプチドループを有する予測孔(pore)分子の両方である。MAP mpa遺伝子及びタンパク質の核酸及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号29及び30に示す。本発明での使用のため、この配列、又は以下に述べるその変異体が使用され得る。例えば、MAP mpa遺伝子配列は、以下にさらに述べるようにコドン最適化され、哺乳動物、特にヒトでの使用により好適なものにすることができる。他の改変を行うことができ、例えば膜貫通領域を除去して、タンパク質の疎水性を低減することができる。1つの好適な改変mpa配列及びコードされるタンパク質は、それぞれ配列番号39及び40に示す。
【0041】
好適なahpCポリペプチドは、配列番号22又は配列番号32のアミノ酸配列を有し得る。好適なgsdポリペプチドは、配列番号24又は配列番号34のアミノ酸配列を有し得る。好適なp12ポリペプチドは、配列番号26又は配列番号36のアミノ酸配列を有し得る。好適なmpaポリペプチドは、配列番号30又は配列番号40のアミノ酸配列を有し得る。或いは、好適なahpC、gsd、p12、又はmpa配列は、これらの特定の配列のうちの1つの変異体であり得る。例えば、変異体は、上記のアミノ酸配列のいずれかの置換、欠失、若しくは付加変異体であってもよく、又は、本明細書に記載のそれらのいずれかの断片であってもよい。
【0042】
特定の実施形態では、ahpCポリペプチドは、配列番号22の配列、配列番号22の全長にわたって配列番号22と70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、又はエピトープを含む配列番号22の少なくとも8個のアミノ酸の断片を含み得る。好ましくは、ahpCポリペプチドは、配列番号32に示すアミノ酸配列を有する。gsdポリペプチドは、配列番号24の配列、配列番号24の全長にわたって配列番号24と70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、又はエピトープを含む配列番号24の少なくとも8個のアミノ酸の断片を含み得る。好ましくは、gsdポリペプチドは、配列番号34に示すアミノ酸配列を有する。p12ポリペプチドは、配列番号26の配列、配列番号26の全長にわたって配列番号26と70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、又はエピトープを含む配列番号26の少なくとも8個のアミノ酸の断片を含み得る。配列番号10の断片は、好ましくは、配列番号44、45、46若しくは47、及び/又は配列番号48を含む。好ましくは、p12ポリペプチドは、配列番号36又は配列番号37又は配列番号44、45、46、若しくは47、及び/又は配列番号48に示すアミノ酸配列を有する。mpaポリペプチドは、配列番号30の配列、配列番号30の全長にわたって配列番号30と70%を超えるアミノ酸配列同一性を有するその変異体、又はエピトープを含む配列番号30の少なくとも8個のアミノ酸の断片を含み得る。好ましくは、mpaポリペプチドは、配列番号40に示すアミノ酸配列を有する。
【0043】
P900タンパク質の細胞外アミノ末端ペプチドの、p12ポリペプチドを含むMAPワクチンへの導入は、P900タンパク質システムの両端を完全に無効にするように作用する。したがって、好ましい実施形態では、ワクチンは、配列番号2の少なくとも9個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド及び配列番号10の少なくとも9個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド、又は配列番号2の少なくとも9個の連続するアミノ酸及び配列番号10の少なくとも9個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド、又は前記ポリペプチド(複数可)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む。例えば、ワクチンは、配列番号3〜10のいずれか1つを含む、からなる、若しくはから本質的になるポリペプチド及び配列番号44〜48のいずれか1つを含む、からなる、若しくはから本質的になるポリペプチド、又は配列番号3〜10のうちの少なくとも1つ及び配列番号44〜48のうちの少なくとも1つを含むポリペプチド、又は前記ポリペプチド(複数可)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを含み得る。好ましい実施形態では、ワクチンは、配列番号3又は4を含む、からなる、若しくはから本質的になるポリペプチド及び配列番号44〜47のいずれか1つを含む、からなる、若しくはから本質的になるポリペプチド、又は配列番号3若しくは4及び配列番号44〜48の1つを含むポリペプチド、又は前記ポリペプチド(複数可)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む。
【0044】
特定の実施形態では、ワクチンは、アミノ酸配列:
を含む、からなる、又はから本質的になるポリペプチドを含み得る。ワクチンは、
上記アミノ酸配列(配列番号41)であって、但し配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含むペプチド、好ましくはアミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含む、からなる、若しくはから本質的になるペプチドがN末端に付加されている、若しくは7位と8位、199位と200位、442位と443位、577位と578位、及び/若しくは820位と821位の間に挿入されている、アミノ酸配列、又は、
であって、但し配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含むペプチド、好ましくはアミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含む、からなる、若しくはから本質的になるペプチドがN末端に付加されている、若しくは7位と8位、199位と200位、442位と443位、582位と583位、及び/若しくは825位と826位の間に挿入されているもの
を含む、からなる、又はから本質的になるポリペプチドを含むことができる。
【0045】
特定の実施形態では、ワクチンは、アミノ酸配列:
を含む、からなる、又はから本質的になるポリペプチドを含み得る。
【0046】
ワクチンは、本明細書に記載のいずれか1つ以上のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸ワクチンであり得る。ワクチンは、本明細書に記載のいずれか1つ以上のペプチド又はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の2つ以上のコピー、例えば3、4、5以上のコピーを含むポリヌクレオチドを含み得る。
【0047】
ペプチド
本発明は、免疫原性MAPペプチドを提供する。本発明は、配列MVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELI(配列番号4)又は(配列番号6)を含む、最大100アミノ酸のペプチドを提供する。本発明のペプチドは、26〜100、30〜95、35〜80、40〜75、45〜70、50〜65、55〜60アミノ酸長を有し得る。ペプチドは、P900の断片であってよい。
【0048】
本発明のペプチドは、アミノ酸配列:VTTLADGGEVTWAID若しくはVTTLADGGEVTWAIDLNA、及び/又はVDAGKADHY、EVVVAQPVWAGVDAGKADHY若しくはMTVTEVVVAQPVWAGVDAGKADHYをさらに含み得る。本発明のペプチドは、配列番号11〜20のいずれか1つのアミノ酸配列を含み得る。配列番号1〜20のいずれか1つ内のペプチドリンカーは、以下に記載のペプチドリンカーのいずれかであり得る。
【0049】
ペプチドは、配列番号4又は配列番号6のアミノ酸配列を含み得る、からなり得る、又はから本質的になり得る。
【0050】
ポリペプチド
一態様では、本発明は、1つ以上の追加のMAPポリペプチド又はそれらの断片に融合したMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。追加のMAPポリペプチドは、一実施形態では、P900のC末端細胞外領域の全て又は一部を含む断片であり得る。あるいは、又はさらに、少なくとも1つの追加のMAPポリペプチドは、異なるMAPタンパク質の全て又は一部から構成されていてもよい。
【0051】
配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、上記のポリペプチドのいずれかであり得る。好ましい実施形態では、このポリペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列、配列番号7に示すアミノ酸配列、及び/又は配列番号9に示すアミノ酸配列を含む。特に好ましい実施形態では、このポリペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列を含む。
【0052】
本明細書に開示のp12ポリペプチドは、MAP P900のC末端細胞外領域を含む。したがって、一実施形態では、追加のMAPポリペプチドはp12ポリペプチド又はその断片若しくは変異体である。本明細書に開示のp12ポリペプチドのいずれか1つが使用され得る。例えば、p12ポリペプチドの断片は、配列番号48及び/又は配列番号44〜47のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含み得る、から本質的になり得る、又はからなり得る。
【0053】
追加のMAPポリペプチドは、ahpCポリペプチド、gsdポリペプチド、p12ポリペプチド、及び/又はmpaポリペプチドであり得る。一実施形態では、ポリペプチドは、アミノ酸配列MVINDDAQRLLSQR、並びにahpCポリペプチド、gsdポリペプチド、p12ポリペプチド、及びmpaポリペプチドのいずれか1つ又は任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、MVINDDAQRLLSQRアミノ酸配列のセリン残基がリン酸化され得る。
【0054】
ahpCポリペプチドは、本明細書に記載のahpCポリペプチドのいずれかであり得る。gsdポリペプチドは、本明細書に記載のgsdポリペプチドのいずれかであり得る。mpaポリペプチドは、本明細書に記載のMPAポリペプチドのいずれかであり得る。
【0055】
好ましい実施形態では、N末端P900ポリペプチドは、単一の融合タンパク質中で、4つのポリペプチド、ahpC、gsd、p12、及びmpaのいずれか1つ以上と共に提供される。そのような融合タンパク質内の4つのポリペプチド配列は、本明細書に記載のポリペプチド又は変異体のいずれかであり得る。4つのポリペプチドは、融合タンパク質内で任意の順序で提供され得る。一実施形態では、それらは、N末端P900-ahpC-gsd-p12-mpaの順で提供される。
【0056】
一実施形態では、融合タンパク質内に存在するahpC、gsd、p12、及びmpaポリペプチドは、配列番号32、34、36、及び40に示すものである。
【0057】
代替の実施形態では、ポリペプチドは、非共有結合によって連結されていても連結されていなくてもよい2つ以上の別々のポリペプチド分子内に存在し得る。例えば、ポリペプチドは別々に提供されてもよく、又は2つ、3つ以上の別々の融合タンパク質ポリペプチド分子で提供されてもよい。例えば、N末端P900ポリペプチドは、1つの分子として提供されてもよく、ahpC、gsd、p12、及びmpaは融合タンパク質として提供されてもよい。
【0058】
融合タンパク質では、リンカー配列は、必要なポリペプチド配列を分離することができ、及び/又はペプチドのN末端若しくはC末端に追加の配列が存在してもしなくてもよい。典型的には、融合タンパク質は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のそのようなリンカーを含む。リンカーは、典型的には、1、2、3、4又はそれ以上のアミノ酸長である。したがって、ペプチドでは、1つ、2つ、3つ又は全てのポリペプチド配列は、互いに連続していてよく、又は例えばそのようなリンカーによって互いに分離されていてもよい。
【0059】
ペプチド及びポリペプチドは、対象においてMAPに対する免疫応答を誘導する場合に使用され得る。
【0060】
一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号41のアミノ酸配列であって、但し配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列、好ましくはアミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含むペプチドが、7位と8位、199位と200位、442位と443位、577位と578位、及び/又は820位と821位の間に挿入されている、アミノ酸配列を含む。
【0061】
別の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号42のアミノ酸配列であって、但し配列番号2に示すMAP P900の領域由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸のアミノ酸配列、好ましくはアミノ酸配列MVINDDAQRLLSQRを含むペプチドが、7位と8位、199位と200位、442位と443位、582位と583位、及び/又は825位と826位の間に挿入されている、アミノ酸配列を含む。
【0062】
配列番号41又は42のいずれかでは、MQIFVKLリーダー配列が、任意の他の好適なリーダー配列によって置き換えられ得る。同様に、PALRIPNPLLGLDタグは、任意の他のタグによって置き換えられ得る。配列番号2由来の少なくとも9個の連続するアミノ酸の挿入は、配列番号41若しくは42の指定した位置の1つ以上に直接行われてもよく、又はペプチドリンカーが、挿入配列の一端若しくは両端に含まれてもよい。
【0063】
変異体
「ポリペプチド」は、その最も広範な意味で本明細書で使用され、2個以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、又は他のペプチド模倣体の化合物を指す。用語「ポリペプチド」は、用語「ペプチド」と同義的に使用される。したがって、用語「ポリペプチド」は、短いペプチド配列並びにより長いポリペプチド及びタンパク質も含む。本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」は、天然及び/又は非天然若しくは合成アミノ酸のいずれかを指し、グリシン及びD又はL型光学異性体の両方、並びにアミノ酸類似体及びペプチド模倣体を含む。
【0064】
ポリペプチドの変異体は、配列表に示す配列から1、2、3、4、5、最大10、最大20、最大30個、若しくはそれ以上のアミノ酸置換及び/又は欠失を含み得る。「欠失」変異体は、個々のアミノ酸の欠失、アミノ酸の小さな群、例えば2、3、4、若しくは5個のアミノ酸の欠失、又はより大きなアミノ酸領域の欠失、例えば、特定のアミノ酸ドメイン若しくは他の特徴の欠失を含み得る。「置換」変異体は、好ましくは、1個以上のアミノ酸の同じ数のアミノ酸との置き換え、及び保存的アミノ酸置換を含む。例えば、アミノ酸は、類似の特性、例えば、別の塩基性アミノ酸、別の酸性アミノ酸、別の中性アミノ酸、別の荷電アミノ酸、別の親水性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸、別の極性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸、又は別の脂肪族アミノ酸を有する代替のアミノ酸と置換され得る。好適な置換を選択するために使用され得る20個の主なアミノ酸のいくつかの特性は以下の通りである:
【0066】
好ましい「変異体」は、天然に存在するアミノ酸の代わりに配列中に見られるアミノ酸がその構造類似体であるものを含む。配列中に使用されるアミノ酸は、ペプチドの機能が顕著な悪影響を受けない限り、誘導体化又は改変、例えば標識化もされ得る。
【0067】
上記の変異体は、ペプチドの合成中に、又は産生後の改変により、又はペプチドが組換え型である場合には、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、若しくは酵素切断、及び/又は核酸のライゲーションの公知の技術を使用して調製され得る。
【0068】
好適な変異体は、MAP以外のマイコバクテリア由来の天然に存在するポリペプチドの配列を含み得る。例えば、変異体ahpCポリペプチド配列は、MAPと異なるマイコバクテリア系統に由来し得る。そのような天然に存在する変異体は、好ましくは、MAPに対して作用することができる免疫応答を刺激する能力を維持する。すなわち、変異体ポリペプチドに対する免疫応答は、MAPポリペプチド並びに使用する変異体ポリペプチドに対して反応する。
【0069】
好ましくは、本発明による変異体は、例えば配列番号2、22、32、24、34、26、36、30又は40と、60%を超える、若しくは70%を超える、例えば75若しくは80%、好ましくは、85%を超える、例えば90若しくは95%を超えるアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有する(以下に記載する検定により)。アミノ酸同一性のこのレベルは、全長ポリペプチドのサイズによって、配列の全長にわたって、又は配列の一部、例えば20、30、50、75、100、150、200、又はそれ以上のアミノ酸にわたって見ることができる。
【0070】
アミノ酸配列に関連して、「配列同一性」は、以下のパラメーターによりClustalW(Thompsonら、1994、上記)を使用して評価した場合、表示した値を有する配列を指す:
ペアワイズアライメントパラメーター-方法:正確(accurate)、マトリクス:PAM、ギャップオープンペナルティ:10.00、ギャップ伸長ペナルティ:0.10、
マルチプルアライメントパラメーター-マトリクス:PAM、ギャップオープンペナルティ:10.00、%アイデンティティーフォーディレイ(% identity for delay):30、ペナライズエンドギャップ:オン、ギャップセパレーションディスタンス:0、ネガティブマトリクス:なし、ギャップ伸長ペナルティ:0.20、残基特異的ギャップペナルティ:オン、親水性ギャップペナルティ:オン、親水性残基:G、P、S、N、D、Q、E、K、R。特定の残基における配列同一性は、単に誘導体化されている同一の残基を含むことが意図される。
【0071】
配列番号2、22、32、24、34、26、36、30又は40に示す野生型MAPタンパク質配列のいずれかに特定の改変を行うことができる。例えば、免疫原としての変異体タンパク質の全体的な特性の改善を試みるために改変を行うことができる。
【0072】
一実施形態では、野生型タンパク質は、欠失又は置換によりアシル化部位を除去するよう改変され得る。そのようなアシル化部位は、タンパク質の全体的なコンフォメーションに影響を及ぼし得る。例えば、システイン残基を除外又は置換することによって、アシル化部位を取り除くことにより、タンパク質内の有効なエピトープの提示が最適化され得る。例えば、配列番号24に示す野生型MAP gsd配列は、22位にシステイン残基を含む。配列番号34の変異体では、N末端のトランケーションによりアミノ酸配列が改変され、その結果このシステイン残基はもはや存在しない。同様に、配列番号22に示すP900のN末端断片は、25位にシステイン残基を含む。このシステインは、好ましくは、欠失されるか、又は1個以上のアミノ酸によって、例えばペプチドリンカーによって、置換される。そのような改変は、野生型タンパク質又は変異体若しくは断片配列、例えば本明細書に記載のコドン最適化配列のいずれかに対して行われ得る。
【0073】
別の実施形態では、野生型MAPタンパク質は、交差反応する可能性のあるエピトープを無効に、又は除去するよう改変され得る。例えば、本発明のポリペプチドがヒトでの使用を目的とする場合、交差反応する可能性のあるヒトエピトープ、例えば、ヒトタンパク質の類似の配列と交差反応し得る抗体をヒト患者において生成する配列を無効に、又は除去するようポリペプチド配列を改変し得る。したがって、そのような交差反応性を避けるが、抗MAP免疫応答を生成する能力を維持するように、MAP配列に対して改変を行うことができる。
【0074】
例えば、野生型MAP gsd配列内の、239位及び241位のリシン残基(配列番号24を参照)は、それぞれアスパラギンによって置換され得る。同等の置換が、本明細書に記載の変異体又は断片gsd配列のいずれかにおいて行われ得る。例えば、配列番号34の変異体配列では、216位及び218位のリシン残基は、アスパラギンと置き換えられ得る。これは、gsdポリペプチドをコードする核酸配列を改変することによって達成され得る。例えば、配列番号33のgsdポリヌクレオチド配列では、646位〜648位、及び651位〜654位のAAGコドンがAATによって置き換えられ得る。これは、配列番号33の最適化されたヒトコドン使用を維持し、ヒトエピトープと交差反応する可能性をさらに除去する。
【0075】
同様に、改変はMAP ahpC配列に対して行われ得る。配列番号22の野生型ahpC配列では、29位のリシンはトレオニンで置き換えられ得、31位のプロリンはロイシンで置き換えられ得る。同等の置換が、本明細書に記載の変異体又は断片ahpC配列のいずれかにおいて行われ得る。例えば、配列番号32の改変変異体配列では、28位のリシン及び30位のプロリンで同じ置換が行われ得る。これは、ahpCポリペプチドをコードする核酸配列を改変することによって達成され得る。例えば、配列番号31のahpCポリヌクレオチド配列では、82位〜84位のAAAコドンがACAによって置き換えられ得、88位〜90位のCCCコドンがCTCによって置き換えられ得る。これは、配列番号31の最適化されたヒトコドン使用を維持し、ヒトエピトープと交差反応する可能性をさらに除去する。
【0076】
同様に、タンパク質の疎水性を低減し、したがってエピトープの表面提示の最適化を助けるよう、改変が行われ得る。例えば、配列番号30の野生型mpa配列は、10個の膜貫通領域を含む。タンパク質の疎水性を低減するため、これらの領域の1つ以上、又はこれらの領域の一部が取り除かれ得る又は置換され得る。例えば、1つ、それ以上又は全ての膜貫通領域が欠失され得る。そのような領域は、完全に又は部分的に欠失することができ、場合により、タンパク質の膜貫通配列の末端からのアミノ酸残基を残さない、又は1、2つ、若しくはそれ以上のアミノ酸残基を残す。したがって、1つの改変は、1つ以上の疎水性アミノ酸の欠失又は置換であり得る。この例は、変異体ポリペプチドの膜貫通領域から1つ又は2つのアミノ酸のみを残し、ほとんどの膜貫通配列が欠失されたMAP mpaの変異体である、配列番号40に見られる。別の例は、配列番号22の4つのN末端アミノ酸残基、MTVTの欠失である。
【0077】
ポリペプチド「断片」は、トランケーションにより、例えば、ポリペプチドのN及び/又はC末端からの1つ以上のアミノ酸の除去により、作製され得る。最大10、最大20、最大30、最大40個又はそれ以上のアミノ酸が、この方法でN及び/又はC末端から除去され得る。断片はまた、1つ以上の内部欠失によっても生成され得る。例えば、本発明の変異体は、非エピトープアミノ酸の非存在下で、領域の全長ポリペプチドからの2つ以上のエピトープ領域からなり得る又は含み得る。好ましくは、N末端P900、ahpC、gsd、p12、又はmpaポリペプチドの断片は、非改変MAPポリペプチドに対する免疫応答を誘導することができる少なくとも1つのエピトープを含む。そのような断片は、配列番号2、22、32、24、34、26、36、30、若しくは40の配列に由来してよく、又は本明細書に記載の変異体ペプチドに由来してよい。好ましくは、そのような断片は、8〜150残基長の間、例えば8〜50又は8〜30残基である。あるいは、本発明の断片は、より長い配列であってよく、例えば、全長ポリペプチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を含む。
【0078】
好ましくは、変異体はその機能性変異体である。特に、変異体ポリペプチドは、非改変MAPポリペプチドに対する免疫応答を刺激する能力を保持すべきである。一実施形態では、機能性変異体ポリペプチドは、抗原として作用することができるべきであり、元のポリペプチドからの少なくとも1つの機能性エピトープを含むべきである。
【0079】
「抗原」は、個体において免疫学的応答を誘発することができる任意の作用物質、一般に巨大分子を指す。本明細書で使用する場合、「抗原」は、一般に、1つ以上のエピトープを含有するポリペプチド分子又はその部分を指すために使用される。さらに、本発明の目的のため、「抗原」は、ポリペプチドが十分な免疫原性を維持する限り、天然の配列に対し改変、例えば欠失、付加、及び置換を有する(一般に、性質は保存される)ポリペプチドを含む。これらの改変は、例えば部位特異的変異誘発により意図的であってよく、又は例えば抗原を産生する宿主の突然変異により偶発的であってもよい。
【0080】
目的の抗原に対する「免疫応答」は、その抗原に対する液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答の個体での発生である。「液性免疫応答」は、抗体分子によって媒介される免疫応答を指すが、「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球及び/又は他の白血球によって媒介されるものである。
【0081】
本明細書で使用する場合、用語「エピトープ」は、一般に、免疫受容体、例えばT細胞受容体及び/又は抗体によって認識される標的抗原上の部位を指す。好ましくは、それは、タンパク質由来の、又はタンパク質の一部としての短いペプチドである。しかしながら、用語はまた、糖ペプチド及び炭水化物エピトープを有するペプチドを含むことも意図する。単一の抗原分子は、いくつかの異なるエピトープを含み得る。用語「エピトープ」はまた、生物体全体を認識する応答を刺激するアミノ酸の改変配列又は炭水化物も含む。
【0082】
選択されたエピトープがMAPに特異的である、又はMAPの病原性に関与する場合、それは有利である。例えば、エピトープを認識する免疫受容体及び/又は抗体がMAP由来のこのエピトープのみを認識し、他の非関連タンパク質、特に非関連生物由来のタンパク質若しくは宿主タンパク質のエピトープを認識しない場合、それは有利である。エピトープがMAPの病原性に関与する場合には、そのようなエピトープに対する免疫応答が、病原性MAP感染を標的とするために使用され得る。
【0083】
あるエピトープは、他のマイコバクテリア上の同等のエピトープにも関連し得る。例えば、MAP感染を患っている多くの個体は、二次共病原体として、マイコバクテリウム・アビウムにも感染している。他のマイコバクテリウム・アビウム複合体は、クローン病、ヨーネ病、潰瘍性大腸炎、乾癬、甲状腺炎、サルコイドーシス、パーキンソン病、多発性硬化症、1型糖尿病、関節炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、慢性腸炎、アルツハイマー病、多発性硬化症、突発性肺繊維症、らい病及び/又は慢性疲労性症候群に存在又は関与し得る。MAPで発現されるタンパク質の多く、例えばAhpCは、マイコバクテリウム・アビウムで発現されるものと非常に類似している。本発明のポリペプチドが、MAPに加えて、マイコバクテリウム・アビウムに対して作用する免疫応答を刺激することができる1つ以上のエピトープを含む場合、さらに、二次的な治療効果が達成され得る。
【0084】
エピトープは、ペプチド若しくはポリペプチドのアミノ酸及び対応するDNA配列の知識から、並びに特定のアミノ酸の性質(例えば、サイズ、電荷等)及びコドンディクショナリーから、過度の実験なしに、同定され得る。例えば、Ivan Roitt、Essential Immunology、1988; Janis Kuby、Immunology、1992 例えば、pp. 79-81を参照されたい。目的のタンパク質又はエピトープが応答を刺激するかどうか決定するいくつかのガイドラインは、ペプチド長を含む:ペプチドはMHCクラスI複合体に適合するように少なくとも8又は9アミノ酸長であり、MHCクラスII複合体に適合するように少なくとも8〜25、例えば少なくとも13〜25アミノ酸長であるべきである。これらの長さは、ペプチドがそれぞれのMHC複合体に結合するための最小値である。細胞がペプチドを切断することがあるため、ペプチドは、これらの長さよりも長いことが好ましい。ペプチドは、免疫応答を生成するのに十分に高い特異性で様々なクラスI又はクラスII分子に結合することを可能にする適切なアンカーモチーフを含有すべきである。これは、目的のタンパク質の配列を、MHC分子と結合するペプチドの公開された構造と比較することにより、過度の実験なしに、行うことができる。したがって、当業者は、タンパク質配列を、タンパク質データベースに列挙された配列と比較することによって、目的のエピトープを確かめることができる。
【0085】
したがって、好適なエピトープは、日常的に使用される方法、例えば、mpaの5番目の細胞外ループにおける強いT細胞エピトープGFAEINPIA(ペプチド9.1)を同定するための、
図3及び4で実証されたものにより、同定され得る。そのような方法では、目的のポリペプチド配列の断片である短いペプチドのライブラリーが生成され、これらのペプチドのそれぞれが、全長ポリペプチドに対する免疫応答を同定するそれらの能力について個別に評価され得る。ライブラリーのメンバーが群又はプールにおいて評価されてもよく、又はライブラリーの個々のメンバー、例えば単一のプールの個々のメンバーが別々に評価されてもよい。
【0086】
さらなる例では、配列番号32、34、36、及び40の個々のタンパク質のエピトープスキャンは、いくつかの予測されるクラスI及びクラスIIエピトープを明らかにした。
【0087】
配列番号32のahpC変異体配列では、予測される強力なクラスIIエピトープは、アミノ酸48〜56、90〜101、及び161〜169で同定された。本発明のahpCポリペプチド、例えばahpC変異体又は断片ポリペプチドは、好ましくは、少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、又は3つ全てのこれらのエピトープを含む。
【0088】
配列番号34のgsd変異体配列では、予測されるクラスIエピトープは、アミノ酸1〜32、58〜68、99〜119、123〜147、159〜169、180〜194、及び200〜231で同定され、予測される強力なクラスIIエピトープは、アミノ酸64〜76、95〜110、192〜206、及び223〜240で同定された。本発明のgsdポリペプチド、例えばgsd変異体又は断片ポリペプチドは、好ましくは、少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個又は全てのこれらのエピトープを含む。
【0089】
配列番号36のp12変異体配列では、予測されるクラスIエピトープは、アミノ酸33〜56及び98〜117で同定され、予測される強力なクラスIIエピトープは、アミノ酸3〜10で同定された。本発明のp12ポリペプチド、例えばp12変異体又は断片ポリペプチドは、好ましくは、少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、又は3つ全てのこれらのエピトープを含む。
【0090】
配列番号40のmpa変異体配列では、予測されるクラスIエピトープは、アミノ酸130〜160で同定され、予測される強力なクラスIIエピトープは、アミノ酸56〜64及び150〜160で同定された。本発明のmpaポリペプチド、例えばmpa変異体又は断片ポリペプチドは、好ましくは、少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、又は3つ全てのこれらのエピトープを含む。
【0091】
実施例に示すように、特定の強力なT細胞エピトープが、mpaポリペプチド配列で同定されている。このエピトープは、アミノ酸配列GFAEINPIAを有し、配列番号30のアミノ酸357〜365及び配列番号40のアミノ酸177〜185に位置する。この配列は、配列番号42の構築物でアミノ酸761〜769に見出される。好ましいmpaポリペプチド配列は、GFAEINPIAを含む配列である。そのような配列はまた、1つ、2つ、又は3つ全ての上記の予測されるクラスI及びクラスIIエピトープも含み得る。
【0092】
このエピトープは、mpaの5番目の細胞外ループに位置すると考えられる(
図5A)。したがって、好ましいmpaポリペプチドは、5番目の細胞外ループの配列を維持し得る。したがって、mpaポリペプチドは、アミノ酸配列GFAEINPIA及びmpaの5番目の細胞外ループからの隣接アミノ酸も含み得る。好ましくは、この5番目の細胞外ループは、免疫系によって認識されるのに好適な形態及びコンフォメーションで、本発明のポリペプチド中に存在する。
【0093】
本発明の、又は本発明での使用のためのペプチド又はポリペプチドは、さらなる追加の配列、例えば、以下に記載のポリヌクレオチド及びベクターによってコードされるものを含み得る。例えば、それは、追加のエピトープ、治療用ポリペプチド、アジュバント、又は免疫調節分子を含み得る。
【0094】
ポリペプチドは、リーダー配列、すなわちポリペプチドの標的化又は制御において機能するポリペプチドのアミノ末端又はアミノ末端付近の配列を含み得る。例えば、体内の特定の組織にそれを標的化する、又は発現時にポリペプチドのプロセシング若しくはフォールディングを補助する配列が、ポリペプチド中に含まれ得る。様々なそのような配列が、当技術分野で周知であり、例えば、ポリペプチドの所望の特性及び産生方法に応じて、当業者(skilled reader)によって選択され得る。
【0095】
ポリペプチドは、ポリペプチド、又はポリペプチドの発現の同定又はスクリーニングのためにタグ又は標識をさらに含み得る。好適な標識は、放射性同位体、例えば
125I、
32P、若しくは
35S、蛍光標識、酵素標識、又は他のタンパク質標識、例えばビオチンを含む。好適なタグは、通常のスクリーニング方法で同定され得る短いアミノ酸配列であってよい。例えば、短いアミノ酸配列には、特定のモノクローナル抗体によって認識されるものが含まれ得る。
【0096】
配列番号40又は41に示す配列は、配列番号32、34、36又は37、及び40の4つの改変ポリペプチド、並びに追加の配列、例えばユビキチンリーダー配列及びpKタグを含む。
【0097】
本発明のペプチドは、本明細書で定義する場合、化学的に改変(修飾)、例えば翻訳後修飾され得る。例えば、それらはグリコシル化されてもよく、又は改変アミノ酸残基を含んでも良い。それらは、アミド及びポリペプチドとのコンジュゲートを含む様々な形態のポリペプチド誘導体であり得る。
【0098】
化学的に改変されたペプチドはまた、官能性側基(functional side group)の反応により化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有するものも含む。そのような誘導体化された側鎖基は、アミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基、及びホルミル基を形成するよう誘導体化されたものを含む。遊離カルボキシル基は、塩、メチル及びエチルエステル、又は他の種類のエステル、又はヒドラジドを形成するよう誘導体化され得る。遊離ヒドロキシル基は、O-アシル又はO-アルキル誘導体を形成するよう誘導体化され得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、N-im-ベンジルヒスチジンを形成するよう誘導体化され得る。ペプチドはまた、リン酸化、例えば3アミノリン酸化及びグリコシル化、例えばマンノシル化によっても改変され得る。
【0099】
化学的に改変されたペプチドとしては、20種の標準アミノ酸の天然に存在するアミノ酸誘導体を1個以上含有するものも含まれる。例えば、4-ヒドロキシプロリンをプロリンの代わりに用いてもよいし、ホモセリンをセリンの代わりに用いてもよい。
【0100】
本発明のペプチド又は本発明のワクチン中の1つ又は複数のポリペプチドは、N末端及び/若しくはC末端で改変され得る、並びに/又は担体分子にコンジュゲート若しくはカップリングされ得る。ペプチド/ポリペプチドは、例えば、細菌サッカライド又は担体タンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)又はオボアルブミン(OVA)にコンジュゲートされ得る。ペプチドは、N末端若しくはC末端でビオチン化されてもよく、N末端若しくはC末端でアミド化されてもよく、及び/又はN末端若しくはC末端に付加されたペプチドタグを有してもよい。ペプチドタグは、例えば、ポリリジン、例えば分岐状ポリリジン八量体、又は細胞透過性ペプチド、例えばオリゴ-アルギニン(例えば、ポリアルギニン八量体又は九量体)であり得る。好ましくは、ペプチドはN末端でビオチン化され、C末端にアミド基又は分岐状ポリリジン八量体を有する。1個以上の追加のアミノ酸残基が、場合により、他の末端改変に加えて、N末端及び/又はC末端に付加され得る。例えば、1個以上の、例えば2個のアラニン残基をN末端に付加して、免疫原性及び特異性を増加させることができ、並びに/又は荷電残基、例えばGKKをN末端、若しくは好ましくはC末端に付加して、疎水性を低減することができる。残基、例えばGKKが、1つの末端に付加される場合、鏡像(mirror image)残基、例えばKKGが他の末端に付加され得る。
【0101】
ペプチドリンカー
本発明のペプチド及びポリペプチドは、1つ以上のペプチドリンカーによって結合された2つ以上、例えば3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上のMAPポリペプチドの断片を含み得る。ペプチドリンカーは、例えば、任意の好適なマルチエピトープワクチンリンカーであってよい。リンカーは、例えば、1〜15アミノ酸長、例えば2〜10、3〜6、又は4〜5アミノ酸長であってよい。好適なリンカーの具体的な例としては、GGG、GG、SGSG、AG、GGGS、AAY、ジリシンリンカー(KK)EAAAK、AAY及びHEYGAEALERAGが挙げられる。
【0102】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明のペプチド又はポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド構築物にも関する。例えば、上記のペプチド又はポリペプチドのいずれか、例えば融合タンパク質をコードする単一の核酸分子が提供され得る。本発明のワクチンは、本明細書に記載のポリヌクレオチドのいずれか1つ以上を含み得る。
【0103】
用語「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」は本明細書で交換可能に使用され、任意の長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、又はそれらの類似体のポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマーが挙げられる。本発明のポリヌクレオチドは、単離又は精製形態で提供され得る。
【0104】
選択されたポリペプチドを「コードする」核酸配列は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合に、in vivoでポリペプチドへと転写(DNAの場合)及び翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、5'(アミノ)末端の開始コドン及び3'(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンにより決定される。本発明の目的のため、そのような核酸配列は、限定はされないが、ウイルス由来のcDNA、原核生物若しくは真核生物mRNA、ウイルス又は原核生物DNA若しくはRNA由来のゲノム配列、及び合成DNA配列さえも含むことができる。転写終結配列は、コード配列の3'に位置し得る。
【0105】
したがって、一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号21、31、23、33、25、35、29、39、41、62、63、64、65、67、68及び69に示す配列のいずれか1つの全て又は一部を含む核酸配列を含む。ポリヌクレオチド中の核酸配列は、或いは、これらの特定の配列の1つの変異体であり得る。例えば、変異体は、上記の核酸配列のいずれかの置換、欠失、又は付加変異体であり得る。4つの遺伝子のうちの1つの変異体は、配列表に示す配列から1個、2個、3個、4個、5個、最大10個、最大20個、最大30個、最大40個、最大50個、最大75個、又はそれ以上の核酸置換及び/又は欠失を含み得る。
【0106】
好適な変異体は、配列番号1、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、62、63、64、65、67、68及び69に示すMAPポリヌクレオチドの1つと少なくとも70%相同であってよく、好ましくは、それらと少なくとも80又は90%、より好ましくは少なくとも95%、97%、又は99%相同であってよい。相同性を測定する方法は、当技術分野で周知であり、本発明の文脈で、相同性が核酸同一性に基づいて算出されることは、当業者には理解されるであろう。そのような相同性は、少なくとも15個、好ましくは少なくとも30個、例えば少なくとも40個、60個、100個、200個又はそれ以上の連続するヌクレオチドの領域にわたって存在し得る。そのような相同性は、非改変MAPポリヌクレオチド配列の全長にわたって存在し得る。
【0107】
ポリヌクレオチド相同性又は同一性を測定する方法は、当技術分野で公知である。例えば、UWGCG Packageは、相同性を算出するために使用することができる(例えば、そのデフォルト設定で使用される)BESTFITプログラムを提供する(Devereuxら(1984) Nucleic Acids Research 12、p387-395)。
【0108】
PILEUP及びBLASTアルゴリズムもまた、例えば、Altschul S.F. (1993) J Mol Evol 36:290-300; Altschul, S, Fら(1990) J Mol Biol 215:403-10に記載のように、相同性を算出する又は配列を並べるために使用され得る(典型的には、そのデフォルト設定で)。
【0109】
BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターにより公開されている(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。このアルゴリズムは、データベース配列において同じ長さのワードと共に整列化した場合に、ある正の値の閾値スコアTとマッチする、又はそれを満たす、クエリ配列中の長さWの短いワードを同定することによって、ハイスコア配列ペア(high scoring sequence pair)(HSP)を最初に同定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と称される(Altschulら、上記)。これらの最初の隣接ワードのヒットは、それらを含有するHSPを見つけるために検索を開始するためのシード(seed)として機能する。累積アライメントスコアが増加可能な限り、ワードヒットは各配列に沿って両方向に伸長される。各方向へのワードヒットの伸長は、1つ以上の負のスコアの残基アライメントの蓄積のために、累積アライメントスコアがゼロ以下になった、又はどちらかの配列の末端に達した場合に中止される。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、T、及びXがアライメントの感度及び速さを決定する。BLASTプログラムは、ワードの長さ(W)11、BLOSUM62スコア行列(Henikoff及びHenikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919を参照されたい)アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、及び両鎖の比較をデフォルトとして使用する。
【0110】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析を行う、例えば、Karlin及びAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照されたい。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小総和確率(smallest sum probability、P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間のマッチが偶然生じたものである確率の指標を提供する。例えば、第1の配列の第2の配列と比較した最小総和確率が、約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、及び最も好ましくは約0.001未満である場合、ある配列は別の配列と類似しているとみなされる。
【0111】
相同体は、典型的には、バックグラウンドを大幅に超えるレベルで、関連するポリヌクレオチドとハイブリダイズする。相同体とポリヌクレオチドの間の相互作用により生成されるシグナルレベルは、典型的には、「バックグラウンドハイブリダイゼーション」よりも少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍強い。相互作用の強さは、例えば、プローブを、例えば
32Pで放射線標識することにより測定することができる。選択的ハイブリダイゼーションは、典型的には、高ストリンジェンシーな培地の条件(例えば、約50℃〜約60℃にて、0.03M塩化ナトリウム及び0.003Mクエン酸ナトリウム)を使用して達成される。
【0112】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、5×SSC、0.1% SDS及び100μg/ml変性サケ精子DNAを含み得、洗浄条件は、37℃にて2×SSC、0.1% SDS、続いて68℃にて1×SSC、0.1% SDSを含むことができる。適切なハイブリダイゼーション条件を定義することは、当業者の範囲内である。例えば、上記Sambrookらを参照されたい。
【0113】
相同体は、3個、5個、10個、15個、又は20個以上の個数未満の変異により関連するポリヌクレオチドの配列と異なり得る(そのそれぞれは、置換、欠失又は挿入であってよい)。これらの変異は、相同体の、少なくとも30個、例えば、少なくとも40個、60個、又は100個以上の連続するヌクレオチドの領域にわたって測定され得る。
【0114】
一実施形態では、変異体配列は、遺伝子コードの冗長性により配列表に示す特定の配列と異なり得る。DNAコードは、4つの基本の核酸残基(A、T、C及びG)を有し、これらを使用して3文字のコドンを「綴る」が、これらは生物の遺伝子にコードされるタンパク質のアミノ酸を表す。DNA分子に沿ったコドンの直鎖状配列は、これらの遺伝子によってコードされるタンパク質(複数可)のアミノ酸の直鎖状配列へと翻訳される。コードは、高度に縮重しており、61個のコドンが20個の天然アミノ酸をコードし、3個のコドンが「終止」シグナルを表す。したがって、ほとんどのアミノ酸は、1個より多くのコドンによりコードされ、実際、いくつかは4個以上の異なるコドンによりコードされる。本発明の変異体ポリヌクレオチドは、したがって、本発明の別のポリヌクレオチドと同じポリペプチド配列をコードし得るが、同じアミノ酸をコードする異なるコドンの使用により異なる核酸配列を有し得る。
【0115】
一実施形態では、ポリヌクレオチド構築物のコード配列は、哺乳動物細胞における高発現遺伝子のコドン使用により密接に類似するように最適化され得る。所与のアミノ酸をコードするのに1個より多くのコドンが利用可能である場合、生物のコドン使用パターンは非常に非ランダムであることが観察されている。異なる種は、それらのコドン選択に異なるバイアスを示し、さらに、コドンの使用は、単一の種において、高レベル及び低レベルで発現される遺伝子間で明らかに異なり得る。このバイアスは、ウイルス、植物、細菌、及び哺乳動物細胞で異なり、いくつか種はランダムコドン選択から離れた他よりも強いバイアスを示す。
【0116】
例えば、ヒト及び他の哺乳動物は、特定の細菌又はウイルスほどバイアスが強くない。これらの理由のため、例えば、哺乳動物細胞で発現されるマイコバクテリア遺伝子が、効率的な発現のために不適当なコドン分布を有することが可能である。発現を起こそうとする宿主に稀に観察されるコドンのクラスターの、異種DNA配列での存在は、その宿主での異種発現レベルが低いことを予測すると考えられる。
【0117】
したがって、本発明のポリヌクレオチドでは、コドン使用パターンは、標的生物、例えば哺乳動物、特にヒトのコドンバイアスをより密接に表すよう、MAPにおいて自然に見出されるものから変更され得る。「コドン使用係数」は、所与のポリヌクレオチド配列のコドンパターンが標的種のものにどのくらい密接に類似しているかの尺度である。コドン頻度は、多くの種の高発現遺伝子の文献に由来し得る(例えば、Nakamuraら、Nucleic Acids Research 1996、24:214-215を参照されたい)。61個のコドンのそれぞれのコドン頻度は(選択されたクラスの遺伝子の1000個のコドン当たりの出現数として表される)、20個の天然のアミノ酸のそれぞれについて正規化され、その結果各アミノ酸で最も頻繁に使用されるコドンの値が1に設定され、より少ない共通コドンの頻度は、ゼロ〜1の間になるように調整される。したがって、61個のコドンのそれぞれは、標的種の高発現遺伝子について、1以下の値を割り当てられる。その種の高発現遺伝子に対して、特定のポリヌクレオチドのコドン使用係数を算出するため、特定のポリヌクレオチドの各コドンについて調整された値が記録され、これら全ての値の相乗平均を求める(これらの値の自然対数の合計をコドンの総数で割り、真数を求めることによる)。係数は、ゼロ〜1の間の値であり、係数が高いほど、ポリヌクレオチドのより多くのコドンが「頻繁に使用されるコドン」である。ポリヌクレオチド配列のコドン使用係数が1の場合、全てのコドンが、標的種の高発現遺伝子について「最も頻繁な」コドンである。
【0118】
本発明により、本発明のポリヌクレオチドのコドン使用パターンは、好ましくは、標的生物の高発現遺伝子において、相対同義コドン使用頻度(relative synonymous codon usage、RSCU)値が0.2より低いコドンを除外する。RSCU値は、観察されたコドン数を、そのアミノ酸の全てのコドンが同等に高頻度で使用された場合に予想される数で割ったものである。本発明のポリヌクレオチドは、通常、0.3より高い、好ましくは0.4より高い、最も好ましくは0.5より高い、高発現ヒト遺伝子に対するコドン使用係数を有する。ヒトのコドン使用表は、GenBankにも見出すことができる。
【0119】
したがって、本発明のポリペプチドをコードする特定のポリヌクレオチド配列は、治療しようとする種に基づいてコドンを最適化するように変更され得ることがわかり得る。この例として、配列番号21、23、25、及び29に示すMAP配列は、配列番号31、33、及び35のポリヌクレオチドにおいて、ヒト使用のためにコドン最適化されている。そのような改変は、そのようなポリヌクレオチドの、ヒト細胞においてそれらのコードするタンパク質を発現する能力を改善し得る。
【0120】
ポリペプチドに関連して上記で説明したように、本発明のポリヌクレオチドはまた、コードされるポリペプチドにおいて交差反応する可能性のあるエピトープを無効にする又は除去するよう改変され得る。
【0121】
本発明によるポリヌクレオチド「断片」は、トランケーションにより、例えば、ポリヌクレオチドの一端又は両端からの1つ以上のヌクレオチドの除去により作製され得る。最大10個、最大20個、最大30個、最大40個、最大50個、最大75個、最大100個、最大200個又はそれ以上のアミノ酸が、この方法でポリヌクレオチドの3'及び/又は5'端から除去され得る。断片はまた、1つ以上の内部欠失によっても生成され得る。例えば、本発明の変異体は、非エピトープアミノ酸の非存在下で、本発明の全長ポリペプチドからの2つ以上のエピトープ領域からなる又はそれらを含むポリペプチドをコードし得る。好ましくは、ahpC、gsd、p12、又はmpaポリヌクレオチド配列の断片は、非改変MAPポリペプチドに対する免疫応答を誘導することができるエピトープをコードする少なくとも1つの領域を含む。そのような断片は、配列番号21、31、23、33、25、35、29、若しくは39の配列に由来してもよく、又は本明細書に記載の変異体ポリヌクレオチドに由来してもよい。好ましくは、そのような断片は、24〜500残基長の間、例えば24〜400、24〜300、24〜100、100〜200、又は200〜400残基である。あるいは、本発明の断片は、より長い配列であってよく、例えば、本発明の全長ポリヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を含む。
【0122】
本発明のペプチドは、したがって、それをコードし、発現することができる、ポリヌクレオチドの形態から産生されてよく、又はその形態で送達されてよい。本発明のポリヌクレオチドは、例としてSambrookら(1989, Molecular Cloning - a laboratory manual; Cold Spring Harbor Press)に記載されるように、当技術分野で周知の方法によって合成することができる。実質的に純粋な抗原調製物は、標準的な分子生物学的手段を使用して得ることができる。すなわち、上記の部分をコードするポリヌクレオチド配列は、組換え法を使用して、例えば抗原を発現している細胞由来のcDNA及びゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、又はポリペプチドのコード配列を、それを含むことが公知のベクターから取り出すことにより得ることができる。さらに、標準的な技術、例えば、フェノール抽出及びcDNA又はゲノムDNAのPCRを使用して、所望の配列を、それを含有する細胞及び組織から直接単離することができる。例えば、DNAを得る及び単離するために使用される技術の説明については、上記のSambrookらを参照されたい。ポリヌクレオチド配列は、クローニングではなく合成によっても産生することができる。
【0123】
特定の核酸分子を単離するさらに別の便利な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による。Mullisら、(1987) Methods Enzymol. 155:335-350。この技術は、DNAポリメラーゼ、通常、熱安定性DNAポリメラーゼを使用して、DNAの所望の領域を複製する。複製しようとするDNAの領域は、複製反応をプライミングする、所望のDNAの反対端及び反対鎖に相補的な特定の配列のオリゴヌクレオチドにより特定される。複製の第1のラウンドの産物は、それ自体次の複製の鋳型であり、したがって、複製の連続サイクルの反復は、使用されるプライマー対によって範囲が定められたDNA断片の幾何級数的増幅をもたらす。
【0124】
配列が得られると、標準的なクローニング又は分子生物学技術を使用して、それらを連結して、核酸分子を提供することができる。あるいは、配列は、クローニングではなく合成によって産生することができる。ヌクレオチド配列は、特定の所望のアミノ酸配列に適切なコドンで設計され得る。本明細書で説明したように、通常、配列が発現される対象とする宿主にとって好ましいコドンを選択する。完全な配列は、次いで、標準的な方法によって調製された重複するオリゴヌクレオチドからアセンブルされ、完全なコード配列へとアセンブルされてもよい。
【0125】
ベクター
本発明の核酸分子は、挿入した配列に作動可能に連結されており、したがって、標的とした対象種においてin vivoで本発明のポリペプチドの発現を可能にする制御配列を含む発現カセットの形態で提供されてもよい。次いで、これらの発現カセットは、典型的には、核酸免疫化のための試薬としての使用に好適であるベクター(例えば、プラスミド又は組換えウイルスベクター)内で提供される。そのような発現カセットは、宿主対象に直接投与することができる。あるいは、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターは宿主対象に投与することができる。好ましくは、ポリヌクレオチドは、遺伝子ベクターを使用して調製及び/又は投与する。好適なベクターは、十分な量の遺伝情報を担持することができ、本発明のポリペプチドの発現を可能にすることができる任意のベクターであってよい。
【0126】
本発明は、したがって、そのようなポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む。そのような発現ベクターは、分子生物学の分野では日常的に構築され、例えば、プラスミドDNA、及び本発明のペプチドの発現を可能にするために必要であり得る、正しい方向に配置されている適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサー、及び他のエレメント、例えばポリアデニル化シグナルなどの使用を含み得る。他の好適なベクターは、当業者には明らかであろう。これに関するさらなる例として、Sambrookらに言及する。
【0127】
したがって、本発明のポリペプチドは、そのようなベクターを細胞に送達し、ベクターからの転写の発生を可能にすることによって提供され得る。好ましくは、ベクターにおける本発明の又は本発明での使用のためのポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現を提供することができる制御配列に作動可能に連結されており、すなわちベクターは発現ベクターである。
【0128】
「作動可能に連結されている」とは、記載した構成成分が、それらの通常の機能を果たすように構成されているエレメントの配置を指す。したがって、核酸配列に作動可能に連結されている所与の調節配列、例えばプロモーターは、適切な酵素が存在する場合、その配列の発現を引き起こすことができる。プロモーターは、それが機能して発現を指示する限り、配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在する翻訳されていないが転写される配列は、プロモーター配列と核酸配列の間に存在してもよく、プロモーター配列は、依然としてコード配列に「作動可能に連結されている」と考えることができる。
【0129】
多数の発現システムが、当技術分野で記載されており、そのそれぞれは、典型的には、発現制御配列に作動可能に連結されている目的の遺伝子又はヌクレオチド配列を含有するベクターからなる。これらの制御配列は、転写プロモーター配列並びに転写開始及び終結配列を含む。本発明のベクターは、例えば、複製起点、場合により前記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、及び場合によりプロモーターのレギュレーターと共に提供されるプラスミド、ウイルス又はファージベクターであってよい。「プラスミド」は、染色体外遺伝エレメントの形態のベクターである。ベクターは、1つ以上の選択可能マーカー遺伝子、例えば、細菌性プラスミドの場合アンピシリン耐性遺伝子、又は真菌ベクターについては耐性遺伝子を含有し得る。ベクターは、例えば、DNA若しくはRNAの産生のため、in vitroで使用することができるか、又は宿主細胞、例えば哺乳動物宿主細胞をトランスフェクト若しくは形質転換するために使用することができる。ベクターはまた、in vivoで使用する、例えばポリペプチドのin vivoでの発現を可能にするのに適していてもよい。
【0130】
「プロモーター」は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び制御するヌクレオチド配列である。プロモーターは、誘導性プロモーター(プロモーターに作動可能に連結されているポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、共因子、制御タンパク質等により誘導される場合)、抑制性プロモーター(プロモーターに作動可能に連結されているポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、共因子、制御タンパク質等により抑制される場合)、及び構成的プロモーターを含み得る。用語「プロモーター」又は「制御エレメント」は、全長プロモーター領域及びこれらの領域の機能性(例えば、転写又は翻訳を制御する)セグメントを含むことが意図される。
【0131】
プロモーター及び他の発現制御シグナルは、発現が設計される宿主細胞と適合するように選択することができる。例えば、酵母プロモーターは、出芽酵母(S.cerevisiae)GAL4及びADHプロモーター、分裂酵母(S. pombe)nmt1、及びadhプロモーターを含む。哺乳動物プロモーター、例えばβアクチンプロモーターが使用され得る。組織特異的プロモーターが特に好ましい。哺乳動物プロモーターは、重金属、例えばカドミウムに応答して誘導することができるメタロチオネインプロモーターを含む。
【0132】
一実施形態では、ウイルスプロモーターを使用して、ポリヌクレオチドからの発現を駆動する。哺乳動物細胞発現のための典型的なウイルスプロモーターは、SV40ラージT抗原プロモーター、アデノウイルスプロモーター、モロニーマウス白血病ウイルス長い末端反復配列(MMLV LTR)、マウス乳房腫瘍ウイルス(mouse mammary tumor virus)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、SV40初期プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)を含むアデノウイルス、HSVプロモーター(例えば、HSV IEプロモーター)、又はHPVプロモーター、特にHPV上流制御領域(URR)を含む。これら全てのプロモーターは、当技術分野で容易に入手できる。
【0133】
一実施形態では、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。好ましいプロモーターエレメントは、イントロンAが欠けているが、エキソン1を含む、CMV最初期(IE)プロモーターである。したがって、ポリヌクレオチドからの発現は、hCMV IE初期プロモーターの制御下にあり得る。hCMV最初期プロモーターを使用する発現ベクターは、例えば、pWRG7128、並びにpBC12/CMV及びpJW4303を含む。hCMV最初期プロモーター配列は、公知の方法を使用して得ることができる。天然のhCMV最初期プロモーターは、標準的な技術を使用して、ウイルスの試料から直接単離することができる。例えば、US5,385,839は、hCMVプロモーター領域のクローニングについて記載している。hCMV最初期プロモーターの配列は、GenBank #M60321(hCMV Towne株)及びX17403(hCMV Ad169株)で入手可能である。したがって、天然の配列は、公知の配列に基づくPCRプライマーを使用するPCRによって単離し得る。DNAを得る及び単離するために使用される技術の説明については、例えば、上記のSambrookらを参照されたい。好適なhCMVプロモーター配列はまた、既存のプラスミドベクターから単離し得る。プロモーター配列はまた、合成によっても産生することができる。
【0134】
本発明のポリヌクレオチド、発現カセット、又はベクターは、非翻訳リーダー配列を含み得る。一般に、非翻訳リーダー配列は、約10〜約200ヌクレオチド、例えば約15〜150ヌクレオチド、好ましくは15〜約130ヌクレオチドの長さを有する。例えば、15、50、75、又は100ヌクレオチドを含むリーダー配列が使用され得る。一般に、機能性非翻訳リーダー配列は、リーダー配列と作動可能に連結しているコード配列の発現のための翻訳開始部位を提供することができるものである。
【0135】
典型的には、転写終結及びポリアデニル化配列も存在し、翻訳終止コドンに対し3'に位置する。好ましくは、コード配列に対し5'に位置する翻訳の開始の最適化のための配列も存在する。転写終結因子/ポリアデニル化シグナルの例としては、上記のSambrookらに記載のようにSV40由来のもの、並びにウシ成長ホルモン終結因子配列が挙げられる。スプライスドナー及びアクセプター部位を含有するイントロンも、発現カセット又はベクターへと設計され得る。
【0136】
発現システムは、「エンハンサー」と称される転写モジュレーターエレメントを含むことが多い。エンハンサーは、広義にはシス作用因子として定義され、プロモーター/遺伝子配列に作動可能に連結されている場合、その遺伝子配列の転写を増加させる。エンハンサーは、他の発現制御エレメント(例えばプロモーター)よりも目的の配列からかなり離れた位置から機能することができ、目的の配列に対していずれの方向で位置する場合でも作動することができる。エンハンサーは、ポリオーマウイルス、BKウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス、サルウイルス40(SV40)、モロニー肉腫ウイルス、ウシパピローマウイルス、及びラウス肉腫ウイルスを含む、多数のウイルス源から同定されている。好適なエンハンサーの例は、SV40初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復配列(LTR)由来のエンハンサー/プロモーター、及びヒト又はマウスCMV由来のエレメント、例えばCMVイントロンA配列に含まれるエレメントを含む。
【0137】
本発明によるポリヌクレオチド、発現カセット、又はベクターは、シグナルペプチド配列をさらに含み得る。シグナルペプチド配列は、通常、プロモーターとの作動可能な連結で挿入され、したがって、シグナルペプチドが発現され、プロモーターと同様に作動可能に連結されているコード配列によってコードされるポリペプチドの分泌を促進する。
【0138】
典型的には、シグナルペプチド配列は、10〜30アミノ酸、例えば15〜20アミノ酸のペプチドをコードする。アミノ酸は、大部分が疎水性であることが多い。典型的な状況では、シグナルペプチドは、発現する細胞の小胞体へとシグナルペプチドを有する成長ポリペプチド鎖(growing polypeptide chain)を向かわせる。シグナルペプチドは、小胞体で切断され、ゴルジ装置を介してポリペプチドの分泌が可能になる。
【0139】
抗ウイルス又は抗細菌活性を示すことが公知のポリペプチド、免疫調節分子、例えばサイトカイン(例えば、TNF-アルファ、インターフェロン、例えばIL-6、及びIL-2、インターフェロン、コロニー刺激因子、例えばGM-CSF)、アジュバント、並びに共刺激及びアクセサリー分子(B7-1、B7-2)をコードする核酸は、本発明のポリヌクレオチド、発現カセット又はベクター中に含むことができる。あるいは、そのようなポリペプチドは、例えば、本発明の分子を含む製剤で別々に提供することができるか、又は本発明の組成物と同時に、逐次的に、若しくは別々に投与することができる。in vivoでのある部位での免疫調節分子と本発明のポリペプチドの同時提供は、免疫応答の増強を補助し得る特定のエフェクターの生成を増強し得る。免疫応答の増強の程度は、使用される特定の免疫刺激分子及び/又はアジュバントに依存し得る。なぜなら、異なる免疫刺激分子は、免疫応答を増強及び/又は調節するための異なるメカニズムを誘発し得るからである。例として、異なるエフェクターメカニズム/免疫調節分子は、限定されないが、補助シグナルの増大(IL-2)、プロフェッショナルAPCの動員(GM-CSF)、T細胞頻度の増加(IL-2)、抗原プロセシング経路及びMHC発現への効果(IFN-ガンマ及びTNF-アルファ)、並びにTh1応答からTh2応答への免疫応答の転換が挙げられる。オリゴヌクレオチドを含有する非メチル化CpGは、Th1応答の優先的な誘導因子でもあり、本発明での使用に好適である。
【0140】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、発現カセット、又はベクターは、アジュバントをコードする、又はそうでなければアジュバントが提供される。本明細書で使用する場合、用語「アジュバント」は、抗原特異的な免疫応答を、特異的又は非特異的に、変更する、増強する、指示する、再指示する、強化する、又は開始することができる任意の物質又は組成物を指す。
【0141】
好適なアジュバントは、ADP-リボシル化細菌毒素であってよい。これらは、ジフテリア毒素(DT)、百日咳毒素(PT)、コレラ毒素(CT)、大腸菌易熱性毒素(LT1及びLT2)、シュードモナス(Pseudomonas)・エンドトキシンA、シュードモナス・エキソトキシンS、バチルス・セレウス(B.cereus)細胞外酵素、バチルス・スファエリクス(B.sphaericus)毒素、ボツリヌス菌(C. botulinum)C2及びC3毒素、クロストリジウム・リモサム(C. limosum)細胞外毒素、並びにウェルシュ菌(C. perfringens)、クロストリジウム・スピリフォルマ(C. spiriforma)、及びクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)由来の毒素、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)EDINを含む。ほとんどのADP-リボシル化細菌性毒素は、A及びBサブユニットを含有する。
【0142】
目的のポリヌクレオチドは、本発明のペプチドの産生においてin vitro又はin vivoで使用することができる。そのようなポリヌクレオチドは、クローン病又はMAPの発現により特徴付けられる別の疾患若しくは状態の治療のために投与することができ、又はそのための医薬の製造に使用することができる。
【0143】
遺伝子治療及び核酸免疫化は、1つ又は複数の抗原のin vivoでの発現のための、1つ以上の選択された抗原をコードする核酸分子の宿主細胞への導入を提供する手法である。遺伝子送達の方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,339,346号、同5,580,859号、及び同5,589,466号を参照されたい。核酸分子は、例えば標準的な筋肉内若しくは皮内注射、経皮的粒子送達、吸入、局所的、又は経口、鼻内若しくは粘膜投与法によって、レシピエント対象へと直接導入することができる。あるいは、分子を、対象から取り出した細胞内にex vivoで導入することができる。この後者の場合、核酸分子によってコードされる抗原に対して免疫応答を開始することができるよう、目的の核酸分子を含有する細胞を対象に再導入する。そのような免疫化において使用される核酸分子は、一般に本明細書では「核酸ワクチン」と称する。
【0144】
これらの送達技術はそれぞれ、十分な量の治療用又は抗原性の遺伝子産物を提供するために、トランスフェクトされた細胞における核酸の効率的な発現を必要とする。トランスフェクション効率、及び目的の遺伝子又は配列が転写され、mRNAが翻訳される効率を含む、いくつかの要因が、得られる発現のレベルに影響を及ぼすことが公知である。
【0145】
宿主細胞によって産生される作用物質は、使用するポリヌクレオチド及び/又はベクターに応じて、分泌されてもよく、又は細胞内に含有されてもよい。当業者には理解されるように、本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターは、特定の原核生物又は真核生物細胞膜を通してのベクターから発現されたポリペプチドの分泌を指示するシグナル配列を有するように設計され得る。
【0146】
本発明のベクター及び発現カセットは、「裸の核酸構築物」として直接投与することができ、好ましくは宿主細胞ゲノムに相同な隣接配列をさらに含む。本明細書で使用する場合、用語「裸のDNA」は、ベクター、例えば、本発明のポリヌクレオチドをその産生を制御するための短いプロモーター領域と共に含むプラスミドを指す。ベクターが送達ビヒクルで運ばれないため、それは、「裸の」DNAと呼ばれる。そのようなベクターが宿主細胞、例えば真核細胞に侵入すると、それがコードするタンパク質は、細胞内で転写及び翻訳される。
【0147】
本発明のベクターは、したがって、プラスミドベクター、すなわち、自律的に複製する、染色体外環状若しくは線状DNA分子であってよい。プラスミドは、追加のエレメント、例えば複製起点、又は選択遺伝子を含み得る。そのようなエレメントは、当技術分野で公知であり、標準的な技術の使用に含まれ得る。多くの好適な発現プラスミドが、当技術分野で公知である。例えば、1つの好適なプラスミドは、pSG2である。このプラスミドは、元々、ストレプトマイセス・ガナエンシス(Streptomyces ghanaensis)から単離されたものである。長さ13.8kb、HindIII、EcoRV、及びPvuIIの単一の制限部位、並びにプラスミドの非必須領域の欠損の可能性により、pSG2は、ベクター開発のための好適な基本レプリコンである。
【0148】
あるいは、本発明のベクターは、当技術分野で公知の様々なウイルス技術、例えば組換えウイルスベクター、例えばレトロウイルス、単純ヘルペスウイルス及びアデノウイルスなどによる感染を使用して好適な宿主細胞へと導入することができる。
【0149】
一実施形態では、ベクター自体が組換えウイルスベクターであり得る。好適な組換えウイルスベクターとしては、限定されないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、又はパルボウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターの場合、ポリヌクレオチドの投与は、標的細胞のウイル感染により媒介される。
【0150】
哺乳動物細胞にトランスフェクトするために、多数のウイルスベースのシステムが開発されている。
【0151】
例えば、選択された組換え核酸分子は、当技術分野で公知の技術を使用して、ベクターに挿入し、レトロウイルス粒子としてパッケージすることができる。次いで、組換えウイルスを単離し、in vivo又はex vivoのいずれかで対象の細胞へと送達することができる。レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)に基づき得る。レトロウイルスベクターでは、1つ以上のウイルス遺伝子(gag、pol及びenv)が、一般に目的の遺伝子と置き換えられる。
【0152】
多数のアデノウイルスベクターが公知である。アデノウイルスサブグループCの血清型2及び5が、ベクターとして一般に使用される。野生型アデノウイルスゲノムは、およそ35kbであり、そのうち最大30bpを外来DNAによって置き換えることができる。制御機能を有する4つの初期転写単位(E1、E2、E3及びE4)、及び構造タンパク質をコードする後期転写物がある。アデノウイルスベクターは、不活性化したE1及び/又はE3遺伝子を有し得る。欠けている遺伝子(複数可)は、次いで、ヘルパーウイルス、プラスミドのいずれかによりトランスに供給されるか、又はヘルパー細胞ゲノムへ組み込まれ得る。アデノウイルスベクターは、E2a温度感受性突然変異体又はE4欠失を使用し得る。最小のアデノウイルスベクターは、逆位末端配列(ITR)及び導入遺伝子の周辺のパッケージング配列のみを含有することができ、全ての必要なウイルス遺伝子はヘルパーウイルスによってトランスに提供される。好適なアデノウイルスベクターは、したがってAd5ベクター及びサルアデノウイルスベクターを含む。例えば、任意の既存のアデノウイルス免疫に対して交差反応性を最小にしたヒトでの使用のための、オックスフォード大学によって開発されたサル由来非複製ワクチンベクターであるChAdOx2(Morrisら、Future Virol. 2016; 11(9):649-659)が使用され得る。いくつかの実施形態では、上記のポリペプチド、例えば配列番号41及び62〜69のいずれか1つに示す配列を有するポリペプチドなどのいずれか1つをコードするポリヌクレオチドは、(Morrisら、Future Virol. 2016; 11(9):649-659)に記載のHAVを含有しMap遺伝子、AhpC、Gsd、p12、及びmpaを発現するHAV ChAdOx2ワクチン構築物と同じ方法で、ChAdOx2ベクターに挿入され得る。
【0153】
ウイルスベクターは、ワクシニアウイルス及びトリポックスウイルス、例えば鶏痘ワクチンを含む、ポックスファミリーのウイルスにも由来し得る。例えば、改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)は、正常なヒト組織を含む、ほとんどの細胞型で複製しないワクシニアウイルスの系統である。したがって、本発明のポリペプチドを送達するために、組換えMVAベクターを使用することができる。
【0154】
さらなる種類のウイルス、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)又は単純ヘルペスウイルス(HSV)もまた、好適なベクターシステムを開発するために使用することができる。
【0155】
ウイルスベクターの代替として、本発明の核酸分子を送達するためにリポソーム調製物を代わりに使用することができる。有用なリポソーム調製物は、カチオン性(正に荷電)、アニオン性(負に荷電)、及び中性の調製物を含むが、カチオン性リポソームが特に好ましい。カチオン性リポソームは、プラスミドDNA及びmRNAの細胞内送達を媒介し得る。
【0156】
ウイルスベクターシステムの別の代替として、本発明の核酸分子を、微粒子担体にカプセル化、吸着、又は会合させることができる。好適な微粒子担体は、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来するもの、並びにポリ(ラクチド)及びポリ(ラクチド-co-グリコリド)に由来するPLG微小粒子を含む。他の微粒子システム及びポリマー、例えば、ポリマー、例えばポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジン、並びにこれらの分子のコンジュゲートも使用され得る。
【0157】
一実施形態では、ベクターは、標的化ベクター、すなわち細胞に感染若しくはトランスフェクト若しくは形質導入する、又は宿主及び/若しくは標的細胞で発現される能力が、宿主対象内の特定の細胞型、通常共通若しくは類似の表現型を有する細胞に限定される、ベクターであってよい。
【0158】
一実施形態では、本発明のベクターは、単一の発現カセットを含んでよく、そこから単一のポリペプチド配列が発現され得る。あるいは、本発明のベクターは、2つ以上の発現カセットを含んでよく、それぞれ異なるポリペプチドを発現することができ、その結果ベクターは全体として全ての必要なポリペプチドを発現することができる。ポリペプチドがベクター中の1つより多くの遺伝子座から発現される、又は複数の別々の分子として発現される場合、複数の配列の発現は、好ましくは、全てのポリペプチドが一緒に発現されるよう調和される。例えば、同じ又は類似のプロモーターを使用して、様々な構成成分の発現を制御することができる。誘導性プロモーターを使用し、それにより様々なポリペプチド構成成分の発現を調和することができる。
【0159】
細胞系
本発明はまた、本発明のペプチドを発現するように改変された細胞も含む。そのような細胞は、一過性、又は好ましくは安定した高等真核細胞系、例えば哺乳動物細胞若しくは昆虫細胞、下等真核細胞、例えば酵母、又は原核細胞、例えば細菌細胞を含む。本発明のペプチドをコードするベクター又は発現カセットの挿入によって改変され得る細胞の特定の例としては、哺乳動物HEK293T、CHO、HeLa及びCOS細胞が挙げられる。好ましくは、選択される細胞系は、安定なだけでなく、ポリペプチドの成熟グリコシル化及び細胞表面発現を可能とするものである。発現は、形質転換した卵母細胞で達成され得る。好適なペプチドは、トランスジェニック非ヒト動物、好ましくはマウスの細胞で発現され得る。本発明のペプチドを発現するトランスジェニック非ヒト動物は、本発明の範囲内に含まれる。本発明のペプチドはまた、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞又はメラニン保有細胞でも発現され得る。
【0160】
本発明のそのような細胞系は、本発明のポリペプチドを産生するために、通常の方法を使用して培養してもよく、又は本発明のポリペプチドを対象に送達するために治療的若しくは予防的に使用してもよい。例えば、本発明のポリペプチドを分泌することができる細胞系は、対象に投与され得る。あるいは、本発明のポリヌクレオチド、発現カセット、又はベクターを、ex vivoで対象由来の細胞に投与し、次いで細胞を対象の体内に戻すことができる。
【0161】
例えば、ex vivo送達及び形質転換細胞の対象への再移植のための方法は公知である(例えば、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、及び核への直接マイクロインジェクション)。
【0162】
医薬組成物
上記のペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はベクターを含む組成物の製剤化は、標準的な医薬製剤化学及び方法論を使用して実行することができ、これらは全て、当業者が容易に入手できる。例えば、1つ以上の本発明の分子を含有する組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤又はビヒクルと組み合され得る。補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質等は、賦形剤又はビヒクル中に存在し得る。これらの賦形剤、ビヒクル及び補助物質は、一般に、組成物が投与される個体において免疫応答を誘導しない医薬用作用物質であり、過度な毒性なく投与され得る。薬学的に許容される賦形剤としては、限定されないが、液体、例えば、水、食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロール、及びエタノールが挙げられる。薬学的に許容される塩、例えば、無機酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩等、並びに有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、及び安息香酸塩等もそれに含まれ得る。薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、及び補助物質に関する徹底的な考察は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)で入手可能である。
【0163】
そのような組成物は、ボーラス投与又は連続投与のために好適な形態で調製、パッケージ化、又は販売され得る。注射可能組成物は、単位剤形、例えばアンプル又は保存剤を含有する複数回投与用容器中で調製、パッケージ化、又は販売され得る。組成物としては、限定されないが、懸濁液剤、溶液剤、油性又は水性ビヒクル中の乳剤、ペースト剤、及び移植可能持続放出又は生分解性製剤が挙げられる。そのような組成物は、限定されないが、懸濁化剤、安定化剤、又は分散剤を含む、1つ以上の追加の成分をさらに含み得る。非経口投与のための組成物の一実施形態では、活性成分は、再構成された組成物の非経口投与の前に好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)で再構成するために、乾燥(例えば、粉末又は顆粒)形態で提供される。医薬組成物は、滅菌された注射可能な水性又は油性懸濁液剤又は溶液剤の形態で調製、パッケージ化、又は販売され得る。この懸濁液剤又は溶液剤は、公知の技術にしたがって製剤化することができ、活性成分に加えて、本明細書に記載の追加の成分、例えば、分散剤、湿潤剤、又は懸濁化剤を含み得る。そのような滅菌された注射可能な製剤は、非毒性の非経口で許容される希釈剤又は溶媒、例えば水又は1,3-ブタンジオールを使用して調製され得る。他の許容される希釈剤及び溶媒としては、限定されないが、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、及び固定油、例えば合成モノ-又はジ-グリセリドが挙げられる。
【0164】
有用な他の非経口投与可能な組成物は、微結晶形態で、リポソーム調製物中に、又は生分解性ポリマーシステムの構成成分として、活性成分を含むものを含む。持続放出又は移植のための組成物は、薬学的に許容されるポリマー又は疎水性物質、例えば乳剤、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、又は難溶性塩を含み得る。
【0165】
核酸の取り込み及び/又は発現の特定の促進薬(「トランスフェクション促進剤」)も、組成物に含めることができ、例えば、促進薬、例えば、ブピバカイン、心臓毒、及びショ糖、並びに核酸分子の送達に通常使用されるトランスフェクション促進ビヒクル、例えばリポソーム調製物又は脂質調製物である。アニオン性及び中性リポソームは、広範に利用可能であり、核酸分子の送達のために周知である(例えば、Liposomes: A Practical Approach、(1990) RPC New Ed.、IRL Pressを参照されたい)。カチオン性脂質調製物も、核酸分子の送達に使用するための周知のビヒクルである。好適な脂質調製物は、リポフェクチン(Lipofectin(商標))の商標名で入手可能なDOTMA(N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)、及びDOTAP(1,2-ビス(オレイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン)を含み、例えば、Felgnerら、(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7416; Maloneら、(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6077-6081;米国特許第5,283,185号及び同第5,527,928号、並びに国際公開第90/11092号、同第91/15501号及び同第95/26356号を参照されたい。これらのカチオン性脂質は、好ましくは中性脂質、例えばDOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)と併せて使用され得る。上記脂質又はリポソーム調製物に付加することができる、さらに他のトランスフェクション促進組成物には、スペルミン誘導体(例えば、国際公開第93/18759号を参照されたい)、並びに膜透過性化合物、例えばGALA、グラミシジンS及びカチオン性胆汁酸塩(例えば、国際公開第93/19768号を参照されたい)が挙げられる。
【0166】
あるいは、本発明の核酸分子を、微粒子担体にカプセル化、吸着、又は会合させることができる。好適な微粒子担体は、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来するもの、並びにポリ(ラクチド)及びポリ(ラクチド-co-グリコリド)ポリマーに由来するPLG微小粒子を含む。例えば、Jefferyら、(1993) Pharm. Res. 10:362-368を参照されたい。他の微粒子システム及びポリマー、例えば、ポリマー、例えばポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジン並びにこれらの分子のコンジュゲートも使用され得る。
【0167】
製剤化された組成物は、免疫学的応答を開始するのに十分な量の、目的の分子(例えば、ベクター)を含む。適切な有効量は、当業者によって容易に決定され得る。そのような量は、通常の試験により決定され得る比較的広範な範囲にあるだろう。組成物は、約0.1%〜約99.9%のベクターを含有することができ、当業者に公知の方法を使用して、対象に直接投与されるか、又は代替として、対象由来の細胞へとex vivoで送達され得る。
【0168】
一態様では、ワクチンはペプチドワクチンであってよい。一実施形態では、ワクチン中のペプチド(複数可)は、任意の好適な送達システム、例えば乳剤ベースの送達システム、リポソームベースの送達システム、ビロソームベースの送達システム、トランスファーソーム(transfersome)ベースの送達システム、アーケオソーム(archeosome)ベースの送達システム、ニオソーム(niosome)ベースの送達システム、コクリエート(cochleate)ベースの送達システム及び/又は微粒子送達システムを使用して送達され得る。
【0169】
ペプチドはアジュバントと共に投与されてもよく、又はワクチンはアジュバントを含んでもよい。アジュバントは、例えば、フロイント完全アジュバント(CFA又はFCA)、フロイント不完全アジュバント(IFA又はFIA)、Montanide(商標)ISA 720、ISCOMs、ISCOMATRIX(商標)から選択され得る。微粒子送達システムは、アジュバントとしても働き得る。微粒子送達システムは、ナノ粒子を含み得る。ナノ粒子は、例えば、天然のポリマー、例えば、アルブミン、コラーゲン、デンプン、キトサン若しくはデキストラン、又は合成ポリマー、例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド、若しくはポリグリコール酸(polyglocolic acid)(PGA)及びそれらのコポリマー、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)PLGA、ポリ(e-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ヒドロキシブチレート)(PHB)及びそれらのコポリマーから作製される。あるいは、ナノ粒子は、カーボンナノチューブ、二酸化ケイ素ナノ粒子、デンドリマー、フェリチンナノ粒子、ペプチドナノ担体、金ナノ粒子、リポソーム-ポリカチオン-DNA(LPD)複合体、オリゴサッカライドエステル誘導体(OED)微小粒子及び組合せシステムであり得る。
【0170】
治療方法
本明細書に開示のワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及びベクターは、MAPによる感染の治療若しくは予防、又はMAP感染に関連する任意の疾患、状態若しくは症状、すなわち、MAP感染の直接的若しくは間接的な結果である、又はMAPの存在が寄与する疾患若しくは状態の結果生じる、任意の疾患、状態若しくは症状の治療若しくは予防に使用され得る。MAPは、多くの特定の医学的状態、例えば、炎症性腸疾患及び過敏性腸症候群を含む、腸の慢性炎症に関連することが公知である。例えば、MAP感染は、慢性腸炎、例えば家畜のヨーネ病(パラ結核症)並びにヒトのクローン病及び過敏性腸症候群を引き起こし得る。MAPに関連する他の疾患又は状態としては、限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、1型糖尿病、甲状腺炎、関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、サルコイドーシス、突発性肺繊維症、慢性疲労症候群、及び慢性自己免疫炎症性要素による他の複合障害が挙げられる。本明細書に開示のワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及びベクターは、したがって、これらの特定の状態のいずれかの予防又は治療に使用され得る。
【0171】
治療される対象は、いくつかの例では、MAP感染の臨床診断により同定され得る。一実施形態では、MAP感染は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際特許出願第PCT/GB2018/050075号に記載のモノクローナル抗体を使用するヒト及び動物のMAP感染のための臨床応用可能な簡単な診断によって検出される。例えば、マルチコピーのIS900コードタンパク質の到達可能なアミノ末端及びカルボキシ末端細胞外ドメインにおける特定のペプチド配列を標的とする相互排他的なモノクローナル抗体の1つ又は2つの対が、対象由来の試料においてMAPを検出するために使用され得る。この診断試験において、対の一方の抗体は、天然のペプチド配列を、他方はそのリン酸化誘導体を認識する。2つ以上の差次的にフルオロフォア標識されたモノクローナルの同時使用により、MAP感染宿主細胞の細胞質に広がり、感染した細胞表面上に示されるMAPの明るい鮮明な画像が初めて得られる。診断方法は、例えば、MVINDDAQRLLSQR及びMVINDDAQRLL[pS]QRを対象とするモノクローナル抗体対並びに/又はYLSALVSIRTDPSSR及びYLSALVSIRTDPS[pS]Rを対象とするモノクローナル抗体対を使用し得る。抗体は、例えば、同じ又は異なるフルオロフォアで標識され得る。
【0172】
特定の共局在するモノクローナル抗体のこれらの対を使用する血液試料のフローサイトメトリーは、MAPに感染した循環白血球及びそれらのサブタイプの定量を可能にする簡単で正確な検出方法を提供する。組織試料、例えば内視鏡下生検及び外科的に切除された組織におけるこれらのフルオロフォア標識された抗体の使用は、明るく光るMAP感染細胞及びそれらの分布の強い画像並びに宿主細胞サブタイプを明らかにする。
【0173】
これらの特定の試薬、及び結果生じる血液及び組織における新しい臨床MAP試験は、クローン病を有する全員がMAPに感染していることを示した。該方法及び試薬は、初めて、ヒト及び動物におけるMAP感染の診断及び定量のための簡単で正確な試験を提供する。それらはまた、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、1型糖尿病、甲状腺炎、関節リウマチ、乾癬、強直性脊椎炎、サルコイドーシス、突発性肺繊維症、慢性疲労症候群、及び慢性自己免疫炎症性要素による他の複合障害のような、MAPが病原体候補である他の疾患を有する人々由来の血液及び組織試料を臨床スクリーニングするために適用することもできる(Hui KYら、 2018; Sci. Transl. Med. 10、eaai7795; Hutlova Aら、2018. The EMBO Journal e98694)。
【0174】
したがって、本発明は、治療方法、特にMAP感染に関連する又はMAP感染によって引き起こされる疾患、障害、又は症状を治療又は予防する方法での使用のための本明細書に開示のワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物に関する。本発明のこれらの分子は、したがって、そのような疾患、障害、又は状態を治療又は予防するための医薬の製造においても使用され得る。したがって、本発明はまた、MAP感染又はMAP感染に関連する状態若しくは症状を治療又は予防するための医薬の製造における、本発明によるワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド又はワクチンベクターの使用も包含する。特に、本発明の分子は、好ましくは哺乳動物、例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ又はヤギにおける腸の慢性炎症の治療又は予防のために提案される。したがって、本発明はまた、任意のそのような疾患、障害、又は症状を治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象に、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、発現カセット、ベクター、細胞、抗体又は組成物を投与するステップを含む方法も提供する。
【0175】
本発明は、ワクチン接種法に広く適用可能であり、予防及び/又は治療ワクチン(免疫治療ワクチンを含む)の開発に関連する。治療に対する本明細書の全ての言及は、治癒的、緩和的、及び予防的治療を含むと認識されるべきである。
【0176】
本発明にしたがって、ペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、又はワクチンは、組成物、例えば、限定されないが、MAP感染に関連する状態を予防及び/又は治療する医薬組成物又はワクチン組成物又は免疫治療組成物の一部として単独で用いることができる。組成物の投与は、「予防」又は「治療」目的のいずれかのためであり得る。本明細書で使用する場合、用語「治療(therapeutic)」又は「治療(treatment)」は、以下のいずれかを含む:感染又は再感染の予防;症状の低減又は除去、及び病原体の低減又は完全な除去。治療は、予防的(感染前)又は治療的(感染後)に行ってもよい。
【0177】
予防又は治療は、限定されないが、本発明のポリペプチドに対して効果的な免疫応答を誘発すること、並びに/又はMAP感染から生じる若しくはMAP感染に関連する症状及び/若しくは合併症を緩和すること、低減すること、治癒すること、若しくは少なくとも部分的に阻止することを含む。予防的に提供される場合、本発明の組成物は、典型的には、任意の症状の前に提供される。本発明の組成物の予防投与は、任意の後の感染又は疾患を予防又は改善するためのものである。治療的に提供される場合、本発明の組成物は、典型的には、感染又は疾患の症状の発症時に、又は発症直後に提供される。したがって、本発明の組成物は、MAPへの予期される暴露若しくは関連疾患状態の発症前、又は感染若しくは疾患の開始後のいずれかに提供され得る。
【0178】
ワクチンは、典型的には、MAPによるワクチン接種チャレンジ後に、ワクチン接種されていない対象と比較して、ワクチン接種対象ではMAP量を低減する場合、予防的に有効であると考えられる。対象が、ワクチン接種前にMAPに感染している場合、ワクチンは、典型的には、ワクチン接種前と比較してMAP量が低減される場合、有効であると考えられる。血液中又は組織中のMAP量が、決定され得る。MAP及び/又はMAP構成成分、例えば、ペプチド又はタンパク質は、細胞の表面上又は細胞内の細胞質内に存在し得る。MAP発現は、抗体染色によって決定され得る(WO2018/130836)。
【0179】
ワクチンの有効性は、任意の好適な方法で決定され得る。例えば、サイトカイン発現、T細胞活性化、抗体産生及び/又は末梢血単核細胞(PBMC)MAP死滅(killing)の変化が、ワクチンの有効性の決定に使用され得る。サイトカイン発現がモニターされる場合、例えば、抑制性サイトカイン産生、例えばIL-10産生の減少は、望ましい効果である。ワクチンのエピトープに特異的なT細胞の生成は、例えば、ワクチンに存在するペプチドによるex vivoでのT細胞の刺激、及び例えば、ELISpot又はELISAアッセイを使用するIFN-γ放出の検出により検出され得る。ワクチンのポリペプチドに特異的な抗体、例えば、ワクチンに存在する1つ以上のペプチドに対する抗体を検出するための好適なアッセイは、当技術分野で公知である。同様に、PBMC MAP死滅をモニターするためのex vivoアッセイは公知である。
【0180】
治療される対象
本発明は、特に、MAPによる感染に関連する疾患又は他の状態の治療又は予防に関する。これらの治療は、MAPによる感染に感受性の任意の動物で使用され得る。
【0181】
治療される対象は、限定されないが、ヒト、及び非ヒト霊長類、例えばチンパンジー及び他の類人猿及びサル種を含む他の霊長類;家畜動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマ;飼育哺乳動物、例えばイヌ及びネコ;げっ歯類、例えば、マウス、ラット及びモルモットを含む実験動物;飼育、野生及び猟鳥を含むトリ、例えばニワトリ、ターキー、及び他のキジ目のトリ、カモ、及びガン等を含む、任意の脊索動物亜門のメンバーであり得る。用語は、特定の年齢を示さない。したがって、成体及び新生個体の両方が含まれることが意図される。これら全ての脊椎動物の免疫系は同様に機能するため、本明細書に記載の方法は、上記の脊椎動物種のいずれかでの使用を意図する。哺乳動物の場合、対象は、好ましくはヒトであるが、家畜、実験室対象、又はペット動物であってもよい。
【0182】
治療される対象は、したがって、MAPによる感染に感受性である任意の脊椎動物であってよい。家畜、例えばウシ、ヤギ、及びヒツジ、霊長類、例えばマカク及びヒト、アルパカ、レイヨウ、ロバ、ヘラジカ、ウマ、シカ、イヌ、アレチネズミ、及びウサギを含む他の哺乳動物、並びにニワトリを含むトリを含む、多くの動物が、そのような感染が可能であることが当技術分野で示されている。本発明の組成物は、したがって、任意のそのような種の治療で使用され得る。
【0183】
組合せ治療
一実施形態では、MAP感染又はMAP感染に関連する状態を治療又は予防する方法は、MAPに対する活性を有するさらなる治療剤又はMAP感染に関連する状態の治療で使用されるさらなる治療剤を対象に投与するステップを含み得る。
【0184】
さらなる治療剤は、別のポリヌクレオチド、ベクター又はポリペプチドであり得、例えば、1つ以上の抗微生物剤、例えばリファブチン及びクラリスロマイシンを含む組合せが、単独又は1つ以上の追加の治療剤との組合せのいずれかで患者に投与される。治療は、予防的又は治療的MAPワクチンであり得る。治療は、抗MAPモノクローナル抗体、例えば本明細書に記載の抗体及びペプチドを対象に投与する受動免疫治療を含み得る。
【0185】
治療剤は、例えば、MAPに対する活性を有する作用物質、又はMAP感染に関連する状態の治療で使用される作用物質であり得る。好ましくは、本発明のワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド又はワクチンベクターが、他の治療剤の抗MAP効果を増加させるのに十分な量で投与されるか、又はその逆である。多くの他の作用物質は、MAP又はMAP感染に関連する状態の治療で使用され得る。これらは、リファマイシン、例えばリファブチン及びリファキシミン、クラリスロマイシン並びに他のマクロライド、アザチオプリン、メトトレキセート、ヒュミラ、6-メルカプトプリン並びに/又はインフリキシマブを含む。様々な抗結核薬もまた使用され得る。
【0186】
他の治療剤は、本発明のワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はワクチンベクターの分子の効果を増強する作用物質であり得る。例えば、他の作用物質は、ポリペプチドに対する免疫応答を増強する免疫調節分子又はアジュバントであり得る。あるいは、他の分子は、攻撃、例えば免疫系からの攻撃に対する、対象に存在するMAPの感受性を増加させ得る。
【0187】
一実施形態では、したがって、本発明のワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はワクチンベクターは、1つ以上の他の治療剤と組み合わせた治療のために使用される。
【0188】
ワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はワクチンベクターは、別々に、同時に、又は逐次的に投与され得る。ワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はワクチンベクターは、同じ又は異なる組成物中で投与され得る。したがって、本発明の方法では、対象は、さらなる治療剤によっても治療され得る。
【0189】
したがって、本発明のワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はワクチンベクター、及び1つ以上の他の治療分子も含む組成物が製剤化され得る。例えば、本発明のベクターは、1つ以上の他の抗原又は治療分子をコードする別のベクターと共に製剤化され得る。本発明のワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はワクチンベクターは、あるいは、1つ以上の治療タンパク質と共に製剤化され得る。
【0190】
本発明はまた、MAP感染又はMAP感染に関連する状態若しくは症状を治療又は予防するための医薬の製造における、追加の治療剤と組み合わせた、本発明によるワクチン、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はワクチンベクターの使用も包含する。
【0191】
送達方法
製剤化されると、ワクチン組成物は、様々な公知の経路及び技術を使用して、in vivoで対象に送達され得る。例えば、組成物は、注射可能溶液剤、懸濁液剤又は乳剤として提供され、従来の針及びシリンジを使用して、又は液体ジェット注射システムを使用して、非経口、皮下、上皮、皮内、筋肉内、動脈内、腹腔内、静脈内注射によって投与され得る。組成物はまた、皮膚若しくは粘膜組織に局所的に、例えば、経鼻的に、気管内に、腸に、直腸的若しくは経腟的に、投与する、又は呼吸器若しくは肺投与に好適な微粉化スプレー剤(finely divided spray)として提供され得る。他の投与様式は、経口投与、坐剤、及び能動又は受動経皮送達技術を含む。特に、本発明との関連では、組成物は、消化管に直接投与され得る。
【0192】
あるいは、組成物は、ex vivoで投与することができ、例えば、形質転換した細胞の対象への送達及び再移植が公知である(例えば、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、及び核への直接的なマイクロインジェクション)。
【0193】
送達レジーム(regime)
組成物は、投与製剤に適合する量で、並びに予防及び/又は治療に有効な量で、対象に投与される。適切な有効量は、比較的広い範囲となるが、通常の試験によって当業者により容易に決定され得る。「Physicians Desk Reference」及び「Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics」は、必要量を決定するために有用である。
【0194】
本明細書で使用する場合、用語「予防又は治療有効用量」は、本発明のポリペプチドの1つ以上のエピトープに対する免疫応答を誘発する、及び/又は疾患、例えばMAP感染に関連する炎症性腸疾患の症状及び/又は合併症を緩和する、低減する、治癒する、又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量の用量を意味する。
【0195】
予防又は治療は、単一の時点での単回直接投与又は場合により複数の時点での複数回投与により達成され得る。投与は、単一又は複数の部位へと送達することもできる。当業者は、投与量及び濃度を送達の特定の経路に適合するように調整することができる。一実施形態では、単一用量は単回で投与される。代替の実施形態では、いくつかの用量が、同時だが、例えば異なる部位で、対象へと投与される。さらなる実施形態では、複数用量は複数回投与される。そのような複数用量は、バッチで、すなわち同時に異なる部位での複数回投与により投与され得る、又は複数回のそれぞれに1投与で、個々に投与され得る(場合により、複数の部位に)。そのような投与レジームの任意の組合せが使用され得る。
【0196】
一実施形態では、本発明の異なる組成物が、同じ治療レジームの一部として異なる部位に、又は異なる時に投与され得る。抗原を送達するのに使用するベクターを変えることにより、抗原に対して改善された免疫応答を生成することができることが公知である。一部の例では、抗体及び/又は細胞性免疫応答が、「プライム」及び「ブースト」として逐次的に投与される2つの異なるベクターを使用することによって改善され得ることが証明されている。
【0197】
例えば、本発明の同じペプチド、ポリペプチド、又はポリヌクレオチドは、1つの組成物中で「プライム」として投与され、その後次いで、異なる組成物中で「ブースト」として投与されてよい。「プライム」及び「ブースト」のために使用される2つのワクチン組成物は、異なってよい。例えば、それらは、ポリヌクレオチドを含むベクターの選択が異なってよい。例えば、それぞれ、プラスミドベクター、ポックスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又は本明細書に記載の他のベクターから選択された2つ以上の異なるベクターが、逐次的に投与され得る。
【0198】
一実施形態では、「プライム」は、プラスミドベクター、例えばpSG2中の本発明のポリヌクレオチドを投与することにより行われる。次いで、「ブースト」は、その後に、ポックスウイルスベクター、例えばMVA中の本発明のポリヌクレオチドを使用して行われる。
【0199】
代替の実施形態では、「プライム」は、アデノウイルスベクター、例えばAd5中の本発明のポリヌクレオチドを投与することによって行われる。次いで、「ブースト」は、その後に、ポックスウイルスベクター、例えばMVA中の本発明のポリヌクレオチドを使用して行われる。
【0200】
「プライム」のために使用されるワクチン組成物と「ブースト」のために使用されるワクチン組成物とは、一方の組成物はペプチド又はポリペプチドを含み得、他方の組成物はポリヌクレオチドを含み得るという点で異なってもよい。例えば、一実施形態では、「プライム」は、ペプチド又はポリペプチドを投与することによって行われてもよく、「ブースト」は、ポリヌクレオチドを使用することによって行われてもよい。この特定の例としては、「プライム」は、ペプチド又はポリペプチドを投与することを含み得、例えば、ペプチドは配列番号3〜6のいずれか1つに示す配列を含む、から本質的になる、又はからなり、「ブースト」は、P900のN末端断片を含むポリヌクレオチド、例えば、P900のN末端断片、並びにahpCポリペプチド、gsdポリペプチド、p12ポリペプチド、及びMPAポリペプチドの1つ以上を含むポリヌクレオチドを投与することによって行われてもよい。ポリペプチドは、配列番号41及び配列番号42に示す特定の配列の1つであって、但しMAP P900 N末端断片が、ahpCポリペプチドとgsdポリペプチドの間、gsdポリペプチドとp12ポリペプチドの間、p12ポリペプチドとmpaポリペプチドの間、ahpCポリペプチドの前及び/又はmpaポリペプチドの後の接合部に挿入されている、配列を有し得る。そのような免疫化プロトコールは、特に、MAP P900 N末端断片のリン酸化形態、例えば配列番号4又は6に示すアミノ酸配列を含む、からなる、又はから本質的になるペプチドが使用される場合、家畜、例えばウシ又はヒツジを免疫するのに特に有益であり得ることが想定される。
【0201】
そのようなプライム-ブーストプロトコールでは、プライム及び/又はブーストの1回以上の投与が実施され得る。例えば、プライム及び/又はブーストステップは、単回投与を使用して、又は異なる部位及び/若しくは異なる時での2回以上の投与を使用して達成され得る。一実施形態では、異なる時での2回投与がプライムステップのために与えられ、後に単回投与がブーストステップのために与えられる。
【0202】
異なる投与は、同じ時に、同じ日、1日、2日、3日、4日、5日又は6日空けて、1週間、2週間、3週間、4週間又はそれ以上空けて実施され得る。好ましくは、投与は、1〜5週間空けて、より好ましくは2〜4週間空けて、例えば、2週間、3週間又は4週間空けて実施され得る。そのような複数回投与のスケジュール及びタイミングは、当業者により通常の試験によって、特定の1つ又は複数の組成物のために最適化され得る。
【0203】
投与のための投与量は、組成物の性質、投与の経路、並びに投与レジームのスケジュール及びタイミングを含むいくつかの因子によるであろう。本発明の分子の好適な用量は、投与当たり最大15μg、最大20μg、最大25μg、最大30μg、最大50μg、最大100μg、最大500μg又はそれ以上ほどであり得る。本発明のいくつかの分子、例えば、プラスミドについては、使用する用量はより多く、例えば、最大1mg、最大2mg、最大3mg、最大4mg、最大5mg又はそれ以上であり得る。そのような用量は、選択された経路による投与のために適切な体積を可能にするのに好適な濃度の液体製剤で提供され得る。ウイルスベクターの場合、約10
6、10
7、10
8、10
9、10
10又はそれ以上のpfuの用量が投与当たり与えられ得る。例えば、本発明のベクターの10
9pfu又は25μgの用量が、複数の部位及び/又は複数の時に50μl用量で投与され得る。
【0204】
キット
本発明はまた、容器中にキットの形態でパッケージ化されている、本発明の治療での使用に好適な本明細書に記載の構成成分の組合せにも関する。そのようなキットは、本発明の治療を可能にする一連の構成成分を含み得る。例えば、キットは、本発明の2つ以上の異なるベクター、又は本発明の1つ以上のベクター、並びに同時投与、又は例えばプライム及びブーストプロトコールを使用する逐次若しくは個別投与に好適な1つ以上の追加の治療剤を含み得る。キットは、場合により、他の好適な試薬(複数可)、対照(複数可)、又は説明書等を含有し得る。
【実施例】
【0205】
<実施例1:仔ウシにおけるhAd5 HAVプライム及びMVA HAVブーストワクチン接種の有効性>
BBSRCによる資金提供を受けた、実験的MAP感染に対する保護におけるHAVワクチン接種の試験が、ロンドン大学セントジョージ校、オックスフォード大学ジェンナー研究所、エディンバラ大学ロスリン研究所、北アイルランドの動物保健福祉及び農業食品及び生物科学研究所により実施された(2010〜2014年)。
【0206】
いずれかの末端にリーダーペプチド及びPKテイル(PK tail)(太字)を有するHAVワクチンインサートのアミノ酸配列を以下に示す。上記のその4つのMAP遺伝子、1589c(AhpC)、1234(Gsd)、2444c(p12)、及び1235(mpa)由来の配列は、その間にペプチド配列を含む。HAVワクチン構成成分の間の接合部は、
*で印をつける。
【0207】
下線を引いた配列は、p12、IS900エレメントのプラス鎖によってコードされるP900タンパク質のカルボキシ末端領域のものである。HAV内のp12部分は、短い細胞質ドメイン、続いてハイライトした予測される膜貫通様配列、続いてP900タンパク質の残りの細胞外部分を有する。P900の細胞外カルボキシ末端部分は、MAP細胞によって排出され、タンパク質限定分解によってさらに切断され、エキソソーム様小胞内で宿主細胞間を輸送される。HAVワクチンのIS900由来構成成分は、4HAVワクチン構成成分の最高レベルの細胞の免疫原性を有する。
【0208】
6頭のホルスタイン種(Holstein Friesian)の仔ウシに、1mLの滅菌PBS中の10
9個のウイルス粒子(vp)のhAd5 HAV(WO2007/017635に記載のAhpC、gsd、p12、及びmpa抗原発現アデノウイルスワクチン)のプライム用量を、皮内注射(id)により頚部の皮膚へと接種した。5頭の対照の仔ウシには、同じ用量の緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するhAd5を接種した。6週目に、試験群の仔ウシには、idにより1mLの滅菌PBS中の10
9プラーク形成単位(pfu)のMVA HAVのブースト用量を接種した。対照の仔ウシには、同じid用量のMVA GFPを接種した。
【0209】
12週目に、全ての動物に、2日連続して20mlのPBS中で経口にて与えることにより、5×10
8個の生きた毒性MAP株R0808を接種した。次いで、それらを38週間追跡調査した。研究の期間にわたって、ワクチン接種の有害作用又は炎症性疾患はいずれの動物でも見られなかった。各プライム及びブーストワクチン接種、並びにMAPチャレンジの前後で、血液及び糞便試料を採取した。観察は、38週間の期間、毎月の血液及び糞便試料採取とともに続けられ、その最後に動物は安楽死させた。
【0210】
経口MAPチャレンジ直後、対照群の全ての動物は、それらの糞便にMAPを放出し、試験の間中続いた。全ての試験動物で、HAVワクチン接種は、試験の間中、検出可能なMAPの糞便への放出を予防した。試験群の6頭全ての仔ウシが応答し、対照群には見られなかった、PPD-J刺激後のPBMCによるIFN-γ放出の増加を示した。これは、対照群には存在しなかった、CD4+IFN-γ+及びCD8+IFN-γ+分泌細胞の割合の上昇を伴った。HAVワクチンペプチドに対する特異的な細胞性免疫応答は、ブーストの2週間後、HAVワクチン接種した全ての動物で見られたが、対照動物では見られず、試験の間中、それは維持された。
【0211】
MAPの経口投与の直前に、対照仔ウシ由来のPBMCのMAPを死滅させる能力の臨床検査は、HAVワクチン接種した仔ウシ由来のPBMCのものと同じであった。チャレンジの1週間以内に、対照仔ウシ由来のPBMCのin vitroでのMAPを死滅させる能力は、劇的に30%低下したが、HAVワクチン接種した仔ウシでは変化しなかった。同時に、HAVワクチン接種した仔ウシの5/6及び対照仔ウシの4/5由来の循環PBMCは、MAPについてPCR陽性であった。
【0212】
対照仔ウシ由来のPBMCのMAPを死滅させるin vitroでの能力の著しい欠損は残存し、14週目までに血液中にMAP陽性PBMCを有するこれらの動物の割合は4/5のままであった。同時に、ワクチン接種した仔ウシの血液中のMAP陽性PBMCは、2/6まで減少した。血液のこれらの傾向は継続し、MAP感染後19週にわたる研究の後半、3/5の対照動物が恒常的にMAP陽性となり、他の2頭は断続的に陽性となった。対照的に、HAVワクチン接種した仔ウシの4/6由来のPBMCは、一貫してMAP陰性のままであった。他の2頭の動物はそれぞれ、観察期間の最後19週にわたって、MAP PCR検査5回のうち1回だけが陽性であった。対照群の動物には存在しなかった、HAV特異的ペプチド抗原による刺激に対するPBMCのELISpot応答は、全てのワクチン接種した動物で研究中存続した。
【0213】
検死では、4個の腸間膜リンパ節(MLV)及び脾臓からの組織と共に、十二指腸からの2個、空腸からの6個、及び回腸からの3個を含む小腸の全長にわたる11部位から全層組織試料を採取した。検死での、組織におけるMAP量は、特異的qPCRによって測定した。5頭の対照仔ウシでは、試料1グラム当たり最大5logの微生物量で、全ての組織試料がMAPについて陽性であった。群として、これらの組織試料のは、全部で十二指腸から10個、空腸から30個、回腸から15個、腸間膜リンパ節(MLN)から20個、及び5個の脾臓についてそれぞれ1個の試料を含んだ。
【0214】
対照的に、6頭のHAVワクチン接種した仔ウシでは、十二指腸からの12個の組織試料のうち10個、空腸からの36個のうち28個、回腸からの18個のうち12個、MLNからの24個のうち7個、及び脾臓からの6個のうち3個が、MAPについて陰性であった。残りのMAP陽性試料では、HAVワクチン接種は、対照群の相当する試料よりも実質的に低い微生物量を伴った。他の慢性的な腸のヒトの病原体、例えば結核、エルシニア(Yersinia)、ラジオネア(Legionella)、及びその他と同様に、MAPは、MLNに存続する能力を示すが、それに対しさらなる戦略が考案され得る。
【0215】
この研究は、仔ウシにおいてMAP感染に対する保護的役割におけるHAVワクチン接種の能力を試験するために必然的に設計された。仔ウシの対照群及びHAVワクチン接種した群の両方とも、MAPチャレンジ後、血液中でMAP陽性となった。全ての対照仔ウシは、研究の間中、血液中でMAP陽性のままであり、それらの糞便にMAPを放出した。全てのHAVワクチン接種した仔ウシは、血液からMAPを除去したと考えられ、検出可能な糞便への放出を遮断した。
【0216】
<実施例2:MAP抗体の開発段階>
段階1.P900におけるマウス抗体結合ペプチドドメインのマッピング
IS900(NCBIアクセッション番号: AE016958.1)は、1985年の終わりにMAPの3つのクローン病分離株において本発明者と同僚らによって発見された1451〜53bpのDNA挿入エレメントである(E. Green et al Nucleic Acids Research 1989;17: 9063-73)。それは、MAPゲノム全体にわたって高度に保存された部位に挿入された14〜18の同一コピーでMAP中に存在する。この多コピーエレメントはそれ自身のプロモーターを有し、ヒトにおいて豊富に発現され、幅広い病原性表現型に寄与する。
【0217】
IS900のプラス鎖には406アミノ酸のタンパク質(P900)が予測される。その全長アミノ酸配列はMAPに特有であるが、P900分子の大部分をカバーする、近縁のマイコバクテリア及び放線菌におけるP900の「類似物」が存在する。
【0218】
IS900のプラス鎖によってコードされる全長P900タンパク質は大腸菌細胞にとって有毒である。P900のアミノ酸49〜377からなる、より毒性の低いトランケート型を作製し、大腸菌において組換えタンパク質として発現させた。
【0219】
遊離組換えタンパク質は十分な免疫応答を誘導しないことが分かったため、10匹のマウスを、磁気ビーズに付着させた組換えトランケート型P900タンパク質で免疫した。免疫したマウス由来の血清を、固定化P900に対するELISAによってスクリーニングし、4匹の陽性マウスを同定した。これらのマウス由来の脾臓細胞をハイブリドーマ融合に使用し、10個の親クローンを得た。ELIAAVTTLADGGEV...から...DRKRTEGKRHTQAVLまでのトランケート型P900アミノ酸配列に及ぶ、10アミノ酸ずつ重複する64個の合成15アミノ酸ペプチドのライブラリーに対して、これら及びその逐次(successive)サブクローンに由来する上清をスクリーニングした。抗体はすべてIgMであり、クローンは最終的に不安定であることが判明した。所望のモノクローナル試薬を得ることができなかったにもかかわらず、8個のペプチド又はペプチドクラスターが、トランケート型P900タンパク質内で免疫原性のものとして同定された。ペプチドライブラリーにおいて、これらにはペプチドNo.2-VTTLADGGEVTWAID、27-NKSRAALILLTGYQT、41-AKEVMALDTEIGDTD、42-ALDTEIGDTDAMIEE、及び配列GRISGNLKRPRRYDRRLLRACYLSALVSIRTDPSSRTYYD内のクラスターが含まれていた。
【0220】
段階2.ウサギにおけるP900配列に対するポリクローナル抗体の調製、並びにヒト及び動物におけるその試験
ポリクローナル抗体調製
A1-VTTLADGGEVTWAIDLNA、A2-NKSRAALILLTGYQTPDA、A3-NLKRPRRYDRRLLRAGYL、及びA4-YLSALVSIRTDPSSRとして指定される、最初のペプチドを同定した。これらを、ポリリジンコア上の合成分岐オクタペプチド免疫原として調製し、ウサギを免疫するために使用した。ポリクローナル抗体の適切な力価が、A1、A3、及びA4について容易に達成された。A2はウサギにおいて免疫原性ではなかった。A2はまたMAPにおいて細胞内のものであり、それ以上研究しなかった。
【0221】
フロイント完全アジュバント(結核菌(M. tuberculosis)H37Ra、Difco、USA)と反応するA1及びA3血清中の抗体を、過剰量の抗原を用いて完全に抽出した。A4のアジュバントとしては、フロイント不完全抗原のみを使用した。ウサギポリクローナル試薬A1、A3及びA4は、それらの標的配列を検出する能力、ひいてはヒト及び動物組織並びにヒト血液中のMAP免疫反応性を調べる予備的研究に適用した。
【0222】
ヒト組織におけるMAP免疫反応性
当初の研究では、英国のロンドンのセントトーマス病院の内視鏡クリニックに通うクローン病(CD)と診断された14人の患者と、スクリーニング又は経過観察のために通う炎症性腸疾患のない(nIBD)10人の対照患者から新鮮な腸粘膜生検を得た。倫理的承認は現地の倫理委員会によって与えられた(EC03/053)。生検をJung組織凍結液に包埋し、内視鏡検査室にて液体窒素中で瞬間凍結した。それらは次に実験室に運ばれ、そこでコード付与されて使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0223】
続いて、配置された生検を6μm切片にカットし、PTFE被覆スライド上に載せ、1:400〜1:800の希釈度にてA1、A3及びA4ポリクローナル抗体で染色した。宿主細胞表現型マーカーは、T細胞についてはCD3、単球/マクロファージについてはCD8、B細胞についてはCD19、好中球についてはCD66b、樹状細胞についてはCD83、グリア細胞についてはPgP9.5、内皮についてはCD31であった。二次抗体は、ウサギ抗マウスTRITC(R0270 Dako、英国)、ウサギ抗マウスFITC(F0261、Dako)、ブタ抗ウサギTRITC(R0156、Dako)、ブタ抗ウサギFITC(F0205、Dako)及びヤギ抗マウスFITC(F0479)であった。スライドをPBS中で3回洗浄し、フルオロマウント剤(F4680 シグマ-アルドリッチ、英国)中にマウントし、続いてカバーガラスを載せた。
【0224】
抗体A1、A3及びA4を単独で1:500〜1:800の濃度で使用した結果、上皮内及びその下にある固有層内の細胞が染色された。次いで、抗体を、TRITC(赤色)で標識されたA1とFITC(緑色)で標識されたA3又はA4とを対にして使用した。
【0225】
A1部位は、第1膜貫通領域に隣接するP900タンパク質の細胞外アミノ末端ドメイン上、かつ微生物細胞の表面すぐ上に位置する。A1ペプチドはMAPに付着したままであるようだった。
【0226】
A3及びA4部位は、システイン344のいずれかの側の、より長いカルボキシ末端細胞外ドメインの中央に位置する。カルボキシ末端ドメインは、第2膜貫通領域の近くに付着又はタンパク質限定分解切断によって放出され得る。
【0227】
カルボキシ末端ペプチドがまだ付着している状態でA1(赤色)及びA4(緑色)を使用すると、同じ細胞内だけでなく、感染細胞の細胞質内のサブミクロン粒子上にも共局在(金色)が生じた。カルボキシ末端の放出により、金色から橙色へ、さらに赤色への漸進的勾配を示す色の変化、及び罹患細胞の細胞質における放出されたペプチド(緑色)の可視的な移動がもたらされた。他の細胞は緑色のみを含むように見え、それは放出されたカルボキシ末端ペプチドがそれ自体MAPを含まない他の細胞に移動する能力を示唆していた。これは、エンドソームと一致する、緑色で満たされた細胞間小胞の組織中での出現によって支持された。
【0228】
表面上皮において、MAPは、腸細胞に、並びにリンパ球及びマクロファージと一致する上皮内細胞に感染することが見られた。MAPは、杯細胞の粘液胞の基部の周囲の「ネックレス(necklace)」内にしばしば密集し、緑色のカルボキシ末端ペプチドを放出することが見られ、これは細胞質内でこれらの細胞の頂端に移動し、また粘液胞自体の内部にも移動することが見られた。
【0229】
MAPはまた、固有層内で広く細胞に、特に陰窩の基部の周囲の細胞のクラスターに感染することも見られた。MAPクラスターに隣接するTリンパ球の存在が頻繁に認められたが、染色されたものには特にマクロファージ、多形体(polymorph)及びBリンパ球が含まれ、Tリンパ球は含まれなかった。
【0230】
内視鏡粘膜生検における多くのMAP感染が、クローン病患者14人全員に見られた。免疫反応性MAPのわずかなクラスターが、10人の対照被験者のうち8人に見られた。他の2人の対照被験者はMAP染色を全く含まなかった。使用する緩衝液に特異的ペプチドを添加すると、対応する抗体による組織の染色が完全にブロックされた。他のペプチドを使用しても抗体結合には影響がなかった。共局在化と合わせて、この特異的ブロックにより、MAP検出システムの精度と特異性が補強された。
【0231】
ヒト組織におけるA1抗体のMAPへの結合の、PCRによる検証:
A1免疫反応領域のレーザー顕微解剖プレッシャーカタパルティング(LMPC)を行い、組織における抗体認識がMAPの存在と一致するかどうかをIS900 PCRを用いて決定した。炎症性腸疾患のない11人の同意した患者及び4人の対照被験者から新鮮な内視鏡粘膜生検を得た。組織を液体窒素中で瞬間凍結し、6μmのクリオスタット切片を前述のように切断した。通常のH&E染色のために、切片をPTFE被覆顕微鏡スライドに移した。LMPC用のものをPEN膜スライド(Carl Zeiss MicroImaging GmbH、ドイツ)上に固定化した。
【0232】
A1ウサギポリクローナル抗体を用いて、ウサギ免疫グロブリンに対するビオチン化アルカリホスファターゼHタグ付き二次抗体を使用して、切片において免疫反応性MAP領域を同定した。スライドをPBS中で洗浄した後、Vectastain Universal ABC-APキット(Vector Laboratories UK)を、製造元の使用説明書に従って免疫反応性MAP領域の位置決定のために使用した。Vector Blue Alkaline Phosphatase Substrate Kit 1(Vector Laboratories UK)を用いて、二次抗体の位置を決定した。
【0233】
Zeiss PALM MicroBeamレーザー顕微解剖システムを使用して、レーザー顕微解剖及びプレッシャーカタパルティングを用いて免疫反応性(IR)及び非免疫反応性(nIR)MAP領域を単離した。顕微解剖の前に、切除領域が容易に分離するように切片が完全に風乾することを確実にするように、特に注意を払った。IR及びnIR領域を視覚的に同定し、接着剤キャップチューブ(adhesive cap tube)を選択領域の上に配置した。試料を接着剤チューブのキャップ上に積み重ねた。記載されているようにDNA抽出を行った(T. Bull et al. 2003 J Clin Microbiol 2003; 41:2915-23)。簡単に説明すると、200μLのマイコバクテリウム溶解緩衝液(MLB)、8.6mlの分子生物学グレード(molecular grade)の水、800μLの5M NaCl、1Mの10×Tris-EDTA(TE)及び600μLの10%SDSを各チューブに加え、37℃で一晩インキュベートした。MLB中の、10μLの10mg/mlプロテイナーゼK(シグマ)、5μLの100mg/mlリゾチーム(シグマ)及び4μLの120mg/mlリパーゼ(シグマ)を各チューブに添加し、さらに3時間37℃でインキュベートした。試料をLysing Matrix Bリボライザーチューブに移し、400μLの1×TEを加えた。FastPrepリボライザー機器上で、チューブに対して6.5ms
2で45秒間機械的に破砕を行った。標準フェノール-クロロホルム-イソアミルDNA抽出手順を実施した。精製したDNAを50μLの1×TEに再懸濁した。2μLの鋳型DNAを用いたネステッドPCRは、L1及びL2第1ラウンドプライマー並びにAV1及びAV2第2ラウンドプライマーを用いて行った。予想された298bpのPCRアンプリコンを1%アガロースゲル電気泳動を用いて可視化した。アンプリコンの混入を排除するために、記載されているように細心の注意を払った。
【0234】
4人の対照被験者全員が、IS900 PCRによる試験の結果が陰性であった。CD群の11人の患者のうち7人に由来する免疫反応性領域が、IS900 PCRによりMAPについて陽性であり、5人についてはアンプリコンのシーケンシングによって確認した。CD患者においてサンプリングされた全てのnIR領域はPCR陰性であった。MAPについてIS900 PCRによる試験の結果が陽性であった7人の患者全員が、アザチオプリン単独による治療を受けていた。4つのPCR陰性試料は、ヒュミラ又は6-メルカプトプリン及びインフリキシマブと組み合わせたアザチオプリンによる治療を受けているクローン病患者に由来した。
【0235】
段階3.選択されたA0、A1、A3及びA4部位内の最適化P900ペプチド配列びリン酸化誘導体に対するマウスモノクローナル抗体及の調製。
この段階では、配列MVINDDAQRL、P900の細胞外アミノ末端ドメイン中の残基26〜39、を含む、A0と命名されたモノクローナル抗体産生のためのさらなる標的部位を導入した。この配列との同一の一致はNCBIデータベースにはほとんど見出されなかった。
【0236】
マウスモノクローナル抗体の産生を、最初に以下の方法で試みた。各々の場合においてKLHに結合するための単一Cysチオールを組み込んだ免疫原ペプチドを、A0(MVINDDAQRL-C)、A3(C-NLKRPRRYDR)及びA4(C-VSIRTDPSSR)について調製し、各群において5匹のマウスを免疫した。各群のマウスの一部では免疫学的応答が良好であったが、組織中のそれらの天然の標的を認識するモノクローナルは得られなかった。これは、ELISAのスクリーニング及びクローン選択のための標的ペプチドが、ELISAプレートウェル上に直接コーティングされて専ら使用されていることによるものであることが判明した。このことによりかなりのアーティファクトがもたらされ、プロジェクトは全体として失敗となった。
【0237】
一方、本発明者は、ELISAのスクリーニングに用いられる標的合成ペプチドは、アルファ-nビオチン化し、ストレプトアビジンでコーティングされたウェルに付着させることが必須であることを見出した。これにより、付着した可動性ペプチドの立体的接近性が増し、液相中で抗体に対するペプチドの適切な配置を採用することが可能になった。ELISAにおけるこの形態の標的ペプチドへの抗体結合と標的組織中の天然ペプチドへの抗体結合との間に密接な相関性があった。
【0238】
ELISAウェルにおいて必須のストレプトアビジンコーティング及びビオチニル-ペプチド固定化を採用し、次のプロジェクトを通して使用した。このプロジェクトの間、マウス血清及び培養上清が参照ペプチドへの結合に関して選択されたが、陰性ペプチドへの結合に関しては選択されなかった。選択された試料は、その後、MAPに感染したヒト及び動物の組織及び細胞に対する免疫蛍光法によって試験された。
【0239】
免疫原はペプチド配列A0X MVINDDAQRLLSQR-C、A1 VTTLADGGEVTWAID-C、及びXA4 YLSALVSIRTDPSSR-Cを使用して合成し、各場合において、標準的方法を用いて、Cysチオールを使用してKLHに連結した。これらの構築物を使用して、5〜10匹のBalbCマウスの群を免疫した。免疫化に対する良好な血清学的応答が全ての群で起こり、有望な候補クローンが各群について得られた。インビトロ免疫化を含む免疫化プロトコルへの追加、及び異なる免疫原付加物を用いた免疫化による追加免疫、並びに多くのさらなる作業にもかかわらず、適切であり最終的である、安定なIgGクローンを得ることはできなかった。
【0240】
次のプロジェクトで最初に使用した材料は以下の通りであった:
免疫原ペプチド A0 ac-MVINDDAQRL-8分岐ポリリジン8量体
参照ペプチド ビオチニル-MVINDDAQRL-アミド
陰性ペプチド1 ビオチニル-MVINDDLQR-アミド
陰性ペプチド2 ビオチニル-MVINNDAE-アミド
免疫原ペプチド A1 ac-VTTLADGGEVT-8分岐ポリリジン8量体
参照ペプチド ビオチニル-VTTLADGGEVT-アミド
陰性ペプチド1 ビオチニル-VATMADGGEVT-アミド
陰性ペプチド2 ビオチニル-VTRLADGGEVT-アミド
免疫原ペプチド A3 ac-NLKRPRRYDR-8分岐ポリリジン8量体
参照ペプチド ビオチニル-NLKRPRRYDR-アミド
陰性ペプチド1 ビオチニル-NLKRPRR-アミド
陰性ペプチド2 ビオチニル-NLRRPRRYHR-アミド
陰性ペプチド3 ビオチニル-NLHRPRRYHR-アミド
陰性ペプチド4 ビオチニル-NMRRPRRYNR-アミド
陰性ペプチド5 ビオチニル-NLRRPKRYNR-アミド
陰性ペプチド6 ビオチニル-NLQRPRRYNR-アミド
免疫原ペプチド A4 ac-VSIRTDPSSR-8分岐ポリリジン8量体
参照ペプチド ビオチニル-VSIRTDPSSR-アミド
陰性ペプチド1 ビオチニル-VSIRTDP-アミド
陰性ペプチド2 ビオチニル-SIRSDPSSR-アミド
陰性ペプチド3 ビオチニル-YSIRSDPASR-アミド
陰性ペプチド4 ビオチニル-VSVRYDPSSR-アミド
陰性ペプチド5 ビオチニル-IAIRTDPASR-アミド
【0241】
5匹のスイスウェブスターマウスの群を1日目にフロイント完全抗原中の免疫原ペプチド構築物で免疫し、続いて14日目及び21日目にフロイント不完全抗原を用いて2回のブースター接種(booster shot)を行った。ブースティングは続けられたが、4群のいずれも満足に応答していないことが明らかだった。新鮮なペプチド免疫原ac-MVINDDAQRL-C、ac-VTTLADGGEVT-C、ac-NLKRPRRYDR-C、及びac-VSIRTDPSSR-Cを合成し、C-を介してKLHに結合し、続いて免疫化を行った。
【0242】
A0及びA1群における一過的な反応は維持されなかった。両者は死亡し、終結した。
【0243】
A3及びA4群の各々において1匹のマウスに由来する血清が、融合及び親クローンの開発に進むのに十分な力価を達成した。その後A3について満足なサブクローンが得られず、このプロジェクトは終了した。A4について、参照ペプチドを認識し、5つの陰性ペプチドのいずれも認識しない満足なサブクローンが達成され、最終生産及びプロテインAアフィニティー精製により得られた。
【0244】
この段階では、3つのさらなる改変をプロトコルに導入した。
1.Balb/Cマウスの使用。
2.尾静脈の基部に免疫原を投与し、続いて鼠径部リンパ節からプールした細胞を直接融合する技術の採用。
3.以下の新しいペプチド免疫原を用いた、再設計されたプロジェクト。
免疫原ペプチド A0X C-MVINDDAQRLLSQR-アミド
参照ペプチド ビオチニル-MVINDDAQRLLSQR-アミド
陰性ペプチド1 ビオチニル-MVINDDLQRIILFL-アミド
陰性ペプチド2 ビオチニル-MSINDDAQKLKDRL-アミド
免疫原ペプチド A0XP C-MVINDDAQRLL[pS]QR-アミド BSAコンジュゲート
参照ペプチド ビオチニル-MVINDDAQRLL[pS]QR-アミド
陰性ペプチド1 ビオチニル-MVINDDAQRLLSQR-アミド
免疫原ペプチド XA1 ac-AAVTTLADGGEVTWAIDGKK-C BSAコンジュゲート
参照ペプチド ビオチニル-KKGAAVTTLADGGEVTWAID-アミド
陰性ペプチド1 ビオチニル-KKGAAGTTLADGGEVTWAID-アミド
陰性ペプチド2 ビオチニル-KKGSTVATMADGGEVTWAID-アミド
陰性ペプチド3 ビオチニル-KKGQAVTRLADGGEVTWAVD-アミド
陰性ペプチド4 ビオチニル-KKGFEVTTLADGTEVATSPL-アミド
【0245】
この部位におけるアミノ末端への2つのアラニン残基の付加は、免疫原性及び特異性を増大させるように設計された。免疫原ペプチドのカルボキシ末端における荷電した-GKK残基の付加は、その疎水性の増加を解消するように設計された。免疫原ペプチドがカップリング反応中にミセルを形成した場合、システインチオールに隣接した荷電GKK部分があれば、BSAへのその接近性にとって好都合であろう。参照ペプチドのアミノ末端に鏡像KKG-を含めれば、標的配列それ自体に特異的な抗体の選択に好都合であろう。
【0246】
免疫原ペプチド XA4P C-YLSALVSIRTDPS[pS]R-アミド BSAコンジュゲート
参照ペプチド ビオチニル-YLSALVSIRTDPS[pS]R-アミド
陰性ペプチド1 ビオチニル-YLSALVSIRTDPSSR-アミド
陰性ペプチド2 ビオチニル-YLSALYSIRSDPA[pS]R-アミド
陰性ペプチド3 ビオチニル-YLSALVSVRYDPS[pS]R-アミド
陰性ペプチド4 ビオチニル-YLSAQIAIRTDPA[pS]R-アミド
【0247】
A0X、A0XP、XA1、A4及びXA4Pの5つのプロジェクト全部が、ELISAによる参照ペプチド認識、及び陰性対照ペプチドとの限定的な結合又は結合しないことによるクローン選択、続いて、選択されたクローン上清の組織及び細胞への結合による組織及び細胞の染色を組み込んでおり、首尾良い結果がもたらされた。アフィニティー精製されたA0X、A0XP、XA1、A4及びXA4Pモノクローナルが得られた。
【0248】
<実施例3:ヒト及び動物由来の試料における、並びに食品安全性における、MAP感染の検出及び評価のための診断技術の使用>
1.ヒト腸組織に感染するMAPの検出及び測定
クローン病及び過敏性腸症候群などのいくつかの他の障害を有する45人に由来する内視鏡生検を調べた(Scanu et al. Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis infection in cases of Irritable Bowel Syndrome and comparison with Crohn’s disease and Johne’s disease: common neural and immune pathogenicities. J Clin Microbiol 2007: 45:3883-90)。試料を直ちにホルマリンで固定し、続いて標準的処理及びパラフィン組織病理学ブロックへの包埋を行った。予備的研究を行い、2μm切片が最適であると同定した。切片を標準的な抗原賦活化プロトコルで処理した。次いで、それらを500分の1〜5000分の1の範囲の希釈率のモノクローナル抗体で染色した。一次抗体の直接フルオロフォア標識、並びにフルオロフォアで標識された二次抗体の使用の両方を用いた。一次抗体A0X、A0XP、XA1、A4、XA4Pの各々を単独で使用して組織を染色し、×100及び×200の倍率でZeiss AxioSkop 2顕微鏡を使用して観察することでMAPの分布の全体像を得た後、×400及び×1000で観察した。ヒトにおけるMAPは、チール-ネルゼン(Z-N)染色陰性形態であり、0.3〜1μmのサイズ範囲にあるようである。十分な解像度を得るためには、より高い倍率が必要である。
【0249】
A0X、XA1、A4及びXA4Pはすべて、ヒトの腸における、より具体的には試験されたクローン病の45人すべての腸の内視鏡生検におけるMAPを染色した。しかし、A0XPによるヒト腸組織の染色は、血中にA0XP陽性細胞を含む組織血管の内腔からの時折の蛍光シグナルを除いて、ヒトにおいては見られなかった。動物とは異なり、A0Xのリン酸化はヒトの腸では広く起こらないようである。しかし、リン酸化AOXPは、MAP感染においてヒト血中に見られる。A0X、A0XP、XA1、A4及びXA4PによるMAPの染色は、MAP感染したヒト血中で、及び試験されたクローン病のすべての人において見られる。
【0250】
抗体はまた組み合わせて使用し、共焦点顕微鏡で観察した。好ましくは抗体を対で使用した。好ましい対は、親MAP分子のアミノ末端に由来するA0XP又はXA1とA0Xの対、及びカルボキシ末端に由来するXA4PとA4の対であった。好ましい対はまた、それぞれ赤色又は緑色のフルオロフォアで標識された、A0XとA4の対、及びXA1とA4の対であった。試薬が、同じ細胞というだけでなく、感染細胞の細胞質内のサブミクロンMAP粒子上で、特異的に細胞質内に共局在した場合、これは金色の染色をもたらした。そのような共局在により、MAP検出の特異性の強力な確証が提供された。
【0251】
A4とXA1、及びA4とA0Xを含む抗体対の使用により、当該方法のさらなる態様が明らかになった。これは、A0X及びXA1はMAP生物自体に付着したままであるか、又は放出されて細胞内に留まるか、又は細胞表面に提示されるようであるのに対して、A4はしばしばMAPから放出されて細胞表面に提示され、また感染細胞から放出されて細胞間を移動するためである。A0X又はXA1が赤色のフルオロフォアで標識され、A4が緑色のもので標識されている場合、緑色に標識されたA4が他の細胞へと移動してそこに入るにつれて、元の金色の共局在は次第に減損して橙色に変化し、その後、赤色になる。細胞間小胞の存在と一致して、A4の緑色で満たされた膜結合構造が見られた。
【0252】
クローン病患者全員に由来する生検試料が、試験の結果、MAP陽性であった。これは粘膜区画の細胞、特に上皮細胞の基底部分、及び杯細胞の粘膜の基底部分を囲む細胞質において観察された。粘膜区画中の他のMAP含有細胞は、上皮内マクロファージ及び樹状細胞、並びに上皮内リンパ球であった。MAPを含有する細胞及び遊離桿菌はまた、管腔粘膜ゲル層中に観察された。固有層では、MAP感染はマクロファージ、多形体(polymorph)及びBリンパ球でよく見られた。Tリンパ球がそれ自体関与していることは滅多に見られなかったものの、頻繁にMAPで満たされたマクロファージに隣接して存在した。MAP陽性細胞は小血管の内腔の中で頻繁に見られた。十二指腸生検では、ブルンナー腺のMAP染色は、MAPで満たされたマクロファージが時折見られるだけであったが、腺細胞自体は感染していなかった。しかし、MAP含有細胞は、ブルンナー腺の間質性結合組織中に存在していた。組織内の細胞内のAOXPは核の周囲に集中しているようであった。ヒト組織中のMAPのこれらの画像は、定量化のため、及びMAP感染量の監視の実現のために適用可能である。
【0253】
クローン病患者4人からは外科切除試料も入手できた。これらの試料では、腸のより深い層から漿膜までだけでなく、より大きな血管、リンパ管、腸管外ファットラッピング(fat wrapping)及び腸間膜の局所リンパ節の検査も可能であった。生検組織と同様に、これら4人の患者の各々の粘膜及び粘膜下組織は、MAPについて強く陽性であった。MAP感染がリンパ管、筋層間の組織及び漿膜自体を含む腸の壁を通って広がったこともまた見出された。いくつかの切片では、染色されたMAP生物で満たされたリンパ管が見られた。
【0254】
クローン病の病理学的特徴の1つが自己免疫性とされる血管炎であることは長い間知られていた。診断用抗体によって、そのような血管の肥厚した壁がMAPで広範に浸潤されており、それはまた周囲の血管周囲結合組織も冒すことが示された。クローン病の別の特徴的な病理学的特徴は、腸の周りの脂肪組織の増加である。これは、回腸末端で特によく見られ、「ファットラッピング」と呼ばれる。この脂肪の脂肪細胞は、炎症マーカーCRP(C反応性タンパク質)の豊富な供給源であることが知られている。当該診断方法によって、この組織中の脂肪細胞の薄い細胞質が広範にMAPに感染していることが示された。脂肪内の間質性結合組織の細胞においても大量のMAPが見られた。MAPはまた、局所リンパ節も冒すことが見られた。
【0255】
検査された過敏性腸症候群(IBS)と診断された5人全員の腸組織もまた、CDと非常によく似た様式でMAPに広く感染していることが見られた。腸内視鏡生検の陽性MAP染色はまた、甲状腺炎及び乾癬の場合にも見られた。
【0256】
2.動物腸組織
すべてヨーネ病(JD)と診断された3頭の雌牛、1頭のヒツジ、1頭のヤギ、1頭のアカシカ及び2頭のダマジカ由来の腸組織試料を調べた。剖検試料を処理し、ヒトについて記載したように一次抗体で染色した。全ての動物由来の組織は、MAPに広範に感染しており、これはほとんどの場合、チール-ネルセン陽性表現型で存在していた。ヨーネ病と診断されたこれらの動物の腸内のMAPは、A0X、A0XP、A4、及びXA4P抗体、並びにXA1で染色した。動物におけるMAPの顕微鏡による外観は、通常、古典的Z-N陽性マイコバクテリア表現型のものであったが、本研究のモノクローナル抗体はまた少微生物(paucimicrobial)型の病原菌を実証した。
【0257】
ヨーネ病の動物におけるMAPの感染量は、広く認められている一般的な多細菌性(pluribacillary)型のJDと一致して、ヒトにおいて見られるものよりも多かった。MAP表現型自体はZN陽性細胞と一致していた。粘膜及び固有層及び腸の全ての層が広範囲に冒されていた。MAP感染白血球で満たされた微小血管系から生じる細胞の帯が見られた。さらに、血管炎性血管及び血管周囲組織の肥厚した壁には、ヒトに見られたようにMAP感染細胞が浸潤していた。MAP感染は神経血管束においても見られ、神経節細胞並びに神経鞘が冒されていた。これは、CDと診断されたヒトと同様に、JDと診断された動物の腸神経系へのよく記載されている損傷と一致する。これら5つの反芻種とヒトの腸組織との間の顕著な違いは、AOXPがこれらの動物の腸組織に広く存在するが、ヒトの腸組織には存在しないようであったことである。
【0258】
3.ヒトの血液
ヒト腸組織における場合とは異なり、A0Xのリン酸化型であるA0XPは、ヒトの血中で広く発現している。AOXP (MVINDDAQRLL[pS]QR)は、IS900タンパク質の細胞外アミノ末端領域中のAOXペプチドのセリンリン酸化型である。XA4P (YLSALVSIRTDPS[pS]R)は、IS900タンパク質の細胞外カルボキシ末端領域中の、その2つの隣接するセリン残基の遠位がリン酸化されているA4ペプチドである。CDでは、A0XPとXA4Pの両方が、ヒト血中のMAP含有細胞内及びその表面上に発現される。
【0259】
これは、アミノ末端細胞外ドメイン上のA0X/A0XP及びカルボキシ末端細胞外ドメイン上のA4/XA4Pを用いたフローサイトメトリーにおける使用のための、2対の立体的に接近可能な相互排他的な抗体をP900ポリペプチド上に提供する。各対は基質及び生成物として動的平衡状態で存在し、その合計は細胞内MAPに感染した末梢血白血球集団のパーセンテージを決定するための頑健なシグナルを提供する。A0X/A0XPは、MAPに付着したままであるか、又は細胞内及び感染した宿主細胞の表面上に放出され得る。A4/XA4Pは同様のシグナルを提供するが、A4はMAP感染細胞から出て細胞間を移動し得るため、A4/XA4Pを含む細胞集団は、MAP生物を含む集団に加えて、A4/XA4Pを細胞間移動によって獲得したさらなるより小さな集団を含む。
【0260】
探索的研究の中で、通常のEDTA臨床血液試料に対するフローサイトメトリーを、直接フルオロフォア標識されたA0X-FITC/A0XP-PC5.5及びA4-FITC/XA4P-PC5.5を使用してクローン病の42人に対して行った。すべての人が試験の結果MAP陽性であり、MAP陽性の全循環白血球集団の割合は3.9%〜47.1%の範囲であった。主要な血球系統の表現型マーカーの使用は、宿主細胞の種類による分類を可能にする。これらの割合は、A0X/A0XPよりもA4/XA4Pの方が一般的に大きかった。比率A0X/A0XP及びA4/XA4Pは、リン酸化活性の尺度を提供した。XA4P/A4の比率が高いと、クローン病患者はより高い活性状態にあると評価される傾向があった。そのような人々では、血中において、分離されたA4/XA4Pの塊で完全にコーティングされた無傷の単球を見ることができた。
【0261】
クローン病の連続した24人の患者で2回目のフローサイトメトリーを行い、MAPを含む全循環白血球の割合(%)を決定した。
【0262】
血液試料を標準のEDTAバキュテナーチューブに回収した。次いで、100μlの血液を必要数の12×75mm丸底ファルコンチューブに加えた。これらを5μlのヒトSeroblock(バイオラッド)と共に5分間インキュベートした。白血球集団のゲーティングを可能にするために、抗ヒトCD45 APCコンジュゲート抗体(Beckman Coulter)を全てのチューブに加えた。次いで、チューブの半分(「表面染色」とラベルされた)を、暗所にて室温で15分間、抗MAPモノクローナル抗体で処理した。次いで、0.5mlのOptiLyse C(Beckman Coulter)赤血球溶解緩衝液をこれら全てのチューブに加えて、暗所にて室温で10分間インキュベートした。次いで、細胞を0.5mlのPBSを加えることによって洗浄し、5分間325Gで遠心分離し、上清を捨てた。
【0263】
次いで、すべてのチューブを100μlの固定液A(Thermo Fisher Scientific)で5分間固定し、次いで上述のように洗浄した。抗MAP抗体で染色されていないチューブ(「透過処理済み」とラベルされた)を、ペレットにInvitrogen透過処理液B(Thermo Fisher Scientific)を加えてインキュベートし、抗MAPモノクローナル抗体を加えて、暗所にて室温で15分間インキュベートし、続いて上述のようにPBS洗浄した。次いで、全てのチューブをフロー緩衝液(PBS(Ca及びMgを含まない)、0.2%アジ化ナトリウム及び2%ウシ血清アルブミン(BSA))で1mlにした。次いで、試料をCytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter)上に取得し、SSC vs CD45でゲーティングを行い、続いてCytExpertソフトウェア(Beckman Coulter)を用いてデータを分析した。
【0264】
クローン病の24人における第2の試験の結果を下の表に示す(表2)。18歳〜49歳の間の8人の女性と16人の男性がいた。行に沿った表中の数字は、対応するMAP抗体であるA0X単独、A0XP単独、又はA0X + A0XPの両方、並びにA4単独、XA4P単独、又はA4 + XA4Pの両方によって染色された各人における全循環白血球集団の%を示す。A0抗体はA4抗体よりも長い間それらの標的ペプチドに付着したままであるため、個々の人におけるA0データの合計が、MAPを含有する循環WBCの%の尺度として採用された(強調された中央列)。この合計は、クローン病の進行、臨床経過及び治療に対する応答によって異なり、この特有の多コピー挿入エレメントによってなされる病原性への寄与に対し、直接的なアクセスを提供する。
【0265】
A4、XA4P及びA4 + XA4Pに由来するフローサイトメトリーデータは、P900のインビボ機能のさらなる側面を記録することによって、MAPの病原性への推定上の寄与について、第2の直接的洞察を提供する。それは、付着した、及び放出されたカルボキシ末端の両方のリン酸化及び移動を、本研究のように下流セリンのリン酸化、及び上流パートナーのリン酸化、並びに二重リン酸化の存在と効果と共に、観察できることである。
【0266】
表1では、表左側のP900の細胞外アミノ末端上のモノクローナル抗体A0X及びA0XP、並びに右側のP900の細胞外カルボキシ末端上のA4及びXA4Pの使用に基づく、クローン病の24人の患者から得られたフローサイトメトリーデータがまとめられている。各行における各患者についてのデータは、白血球の表面への結合(surf)と全透過化細胞への結合(perm)に分かれる。MAPに感染した細胞の総割合は、A0X単独、A0XP単独、及びA0X + AOXPによって同定された別々の透過化細胞集団におけるパーセンテージ%の合計(強調表示)によって与えられる。A0XペプチドはA4ペプチドよりも長く宿主細胞内マイコバクテリア細胞に結合したままである傾向があるため、これは好ましい測定である。表の右側は、A4、XA4P、及びA4 + XA4P染色細胞集団を用いた結果である。この研究では、XA4Pにおける遠位セリンの強く予測されるリン酸化が使用されるが、同様の研究では、対のリン酸化近位セリン又は二重リン酸化を標的としてもよい。
【0267】
詳細を見ると、データの持つ可能性が集約される。24人の患者群にわたる%全MAP感染量(loading)は1.52%〜48.9%の範囲であり、現段階では疾患の活性と共に変化するようである。MAP陽性細胞の%におけるピーク又は谷は、抗MAP治療の開始に続く可能性がある。より多くの人々が試験されるにつれてより多くのデータが得られるようになり、特に「自己免疫及び自己炎症性」群の様々な疾患に関して明らかとなり、個々の細胞種の感染量へのアクセスが可能となるだろう。リン酸化事象の臨床相関の研究及び異なる治療の効果の監視からも、より多くのデータが得られるだろう。
【0268】
データは、それらの表面上にA0X/A0XP又はその両方を有する細胞の割合が約半分であることを示す。透過処理された細胞では、A0X/A0XPを用いた全細胞パーセンテージは、A4/XA4Pを用いたものとほぼ一致しているが、細胞表面上のA4/XA4Pの合計は、A0X/A0XPを用いた場合よりもかなり少ない。これは、細胞表面からのA4/XA4Pのより大きな欠損と一致するであろうものであり、これはその認識されているより大きな移動度と一致している。これらのリン酸化事象の影響の研究は、より大規模な臨床研究を必要とする。
【0269】
フローサイトメトリーシステムは、クローン病におけるパラ結核症感染に向けて開発される最初の例である。これは現在、特に乾癬、甲状腺炎、パーキンソン病、1型糖尿病、関節炎、強直性脊椎炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、多発性硬化症、サルコイドーシス、特発性肺線維症及び/又は慢性疲労症候群を含む他の疾患におけるMAP感染を研究するために使用することができる。これらの他の疾患、特に「自己免疫状態」と同様に、クローン病では、MAPの存在が疾患の発症又は進行に寄与しているか否かは、特定の抗MAP療法が疾患の寛解又は治癒につながるか否かから分かる。現在、MAPに対する治療的T細胞ワクチンは臨床試験の初期段階にある。
【0270】
【表2】
【0271】
3.2 細胞診断
末梢血から単離した細胞を、2つの直接コンジュゲートされたモノクローナル抗体:AOX(FITC/緑色) + AOXP(Cy5.5/赤色)、又はA4(FITC/緑色) + XA4P(Cy5.5/赤色)の組み合わせで染色した。共焦点画像を、Leica SP-2共焦点顕微鏡を用いて観察し、記録し、そしてJPEG形式で保存した。
【0272】
結果:末梢血細胞はその染色パターンにおいてかなりの不均一性を示し、細胞は陰性、単一抗体のみ陽性、又は両抗体陽性であった。この後者の観察は、蛍光レポーター分子の明確な共局在によって実証される。陽性細胞の表現型はまだ確立されていないが、DIC(微分干渉コントラスト)イメージング及びフローサイトメトリーデータは、陽性細胞は起源が非リンパ球性であることを示す。
【0273】
4.動物の血液
4.1 ネコ
飼い猫(ネコ1)が、体重減少、下痢、膨隆腹及び全身の不調により、体調不良になった。臨床的に罹患した動物の腹部の超音波スキャンは、結腸全体の壁の肥厚を示した。獣医による内視鏡検査及び生検は、臨床的及び組織学的に動物が炎症性腸疾患を有することを示した。4ヶ月の期間にわたる2つのEDTA血液試料に対してフローサイトメトリーを行った。ネコにおいてMAPに感染した全循環白血球の割合は7.6%及び9.8%であった。ネコ1由来の内視鏡生検試料の免疫蛍光顕微鏡検査により、ヨーネ病を有する動物とクローン病を有するヒトの両方において見られたものと類似した組織学的外観を有するMAPの存在が確認された。
【0274】
この期間中、新しい子猫(ネコ2)が同じ家族に導入された。ブリーダーからの購入時には臨床的に良好な状態であった。家族への導入の1週間後、子猫は血性下痢を発症した。通常の便微生物学検査は陰性であった。4ヶ月の期間にわたる2つのEDTA血液試料に対してフローサイトメトリーを再度行った。MAPに感染した循環白血球の割合は16.4%及び14.3%であった。これらのデータから、両方の動物が全身性MAP感染を有することが確認された。
【0275】
4.2 乳牛
EDTA血液試料を4頭の乳牛から採取した。これらの動物は、20年以上ヨーネ病の臨床例が知られていない閉鎖的な乳牛群の一部であった。群からの個々の乳試料の断続的ELISA試験により、4頭の試料採取した雌牛のうちの1頭は2回の陽性ELISA測定値を有しており、他の2頭の試料採取した雌牛は複数回の陰性結果の中で1回の陽性ELISA測定値を有していたことが示されていた。4頭目の雌牛では、乳のELISA測定値は全く上昇していなかった。A0X/A0XP対及びA4/XA4P対のモノクローナル抗体を用いて、4つの血液試料に対してフローサイトメトリーを実施した。結果は、細胞内MAPに感染したこれらの動物における全循環白血球集団の割合が、10.9%、36.3%、40.1%及び45.2%であることを示した。これらの結果は、重大な全身性MAP感染が無症状状態で持続する能力をさらに示すものである。それらはまた、本診断技術がこれらの病原体によってもたらされる動物及びヒトの健康に対する長期的脅威の真の規模を明らかにすることができると共に、従来の診断方法よりもはるかに高い感度を有することを実証する。
【0276】
5.ヒトの母乳
3ヶ月齢の男児が直腸出血及び腹痛の症状を呈した。彼は、複数の生検を伴う上部及び下部消化管内視鏡検査を含めて検査され、それにより、8ヶ月でクローン病の診断の確立がもたらされた。次いで要求され行われた、彼のパラフィン包埋組織病理学的ブロックに対するMAP試験では、胃及び十二指腸の、並びに回腸末端から直腸までのすべての生検における、MAPの広範な感染が示された。クローン病ではなかった彼の母親は、彼女自身の乳以外に何も彼に与えたことがなかった。しかし、彼女はクローン病に遺伝的に関連している自己免疫性甲状腺炎と診断されていた。彼女が要求した、搾乳された母乳の50ml試料のMAP試験により、遠心ペレット中に豊富なMAP感染細胞が示された。
【0277】
6.乾癬におけるヒトの皮膚試料
各々乾癬と診断された成人2名から、局所麻酔下で3〜4 mmパンチ生検全層皮膚試料が採取された。試料は乾癬性皮膚病変の中央領域から採取され、追加試料が正常な皮膚と重なる病変の周辺から採取された。病変間の正常な皮膚試料も得られた。標準的な手順に従って、試料をホルマリン固定し、処理し、通常の組織病理学的ブロックに包埋した。2μmの切片をカットし、ベクタボンド顕微鏡スライド上に固定し、抗原賦活化処理を行い、XA1/A4モノクローナル抗体で染色し、共焦点顕微鏡により検査した。
【0278】
乾癬病変内から採取した生検は、両方の成人でMAPが陽性であった。XA1及びA4の金色の共局在は、肥厚した上皮層中の炎症細胞において見られ、染色は角質層にも残っていた。染色は基底層においても顕著であった。陽性MAP染色は、網状組織内の炎症性細胞及び真皮内の炎症性細胞全体に広がっていた。MAP陽性細胞は、毛包の周りにも見られた。付随する顕著な特徴は、毛嚢脂腺単位内のMAPの存在であった。
【0279】
皮脂腺の異常は乾癬斑の表層の乾燥した、鱗状の性質に寄与し得る。真皮におけるさらなる顕著な特徴は、MAPが神経血管束を冒していたことであり、これらの病原体の共局在性XA1/A4染色が、肥厚した動脈壁及び血管周囲結合組織内にあった。隣接神経束のMAP染色も見られた。乾癬斑の周辺で採取した生検の染色は、MAP染色が斑と正常な皮膚との間の境界で止まっていることを示した。MAPはまた、プラーク間の正常に見える皮膚の生検にも存在しなかった。これは乾癬斑の形成におけるMAPの役割と一致するだろう。
【0280】
7.関節炎における滑膜関節液中のMAP陽性細胞の割合の測定
乾癬を有する成人女性が、彼女の右膝関節に不快感と急性の滲出を示した。過去に外傷の経験はなかった。関節は熱を持ち膨張していたが、急激な圧痛はなかった。他の関節には影響がなかった。淡黄色でありわずかに乳白色の液体の20ml試料を吸引し、細胞を遠心分離により分離した。これらを洗浄し、フルオロフォア標識されたAOX/AOXPで染色し、フローサイトメトリーで調べた。関節液中のMAP含有細胞の割合は8.56%であった。これは、当時の彼女の血中のMAP陽性末梢白血球の%と同程度であった。
【0281】
<実施例4:新しいChAdOx2ワクチンの構築>
上記の結果に基づき、実施例1に記載のhAd5 HAVワクチンを、アミノ末端に追加のMAPペプチドを含むように開発した。2つの新しいワクチンであるHAVX1及びHAVX2を産生した。HAVX1及びHAVX2は、5遺伝子ワクチンであり、一方HAV(Bullら、2007 PLoS ONE 2(11): e1229; Bullら、2014 Veterinary Research 45:112;上記の実施例1)は、4遺伝子ワクチンである。HAVX1は、配列:
MTVTEVVVAQPVWAGVDAGKADHYCMVINDDAQRLLSQRVANDEAALLELIAAVTTLADGGEVTWAID
LNAGGAALLIALLIAAGQRLLYIPGATVHHAAGSYRGE-続いて2A配列(APVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP)-続いてHAV(配列番号41)
をコードする。
【0282】
HAVX1は、推定トランスポザーゼの活性部位メカニズムの手前で停止する、P900配列の正常なマイコバクテリア外領域、膜貫通領域、及び第1のマイコバクテリア内部分を表す。公知の毒性はなく、in vivoで豊富に発現される。
【0283】
HAVX2は、配列:
MVINDDAQRLLSQRVDAGKADHYAVTTLADGGEVTWAID
LNAGGAALLIALLIAAGQRLLYIPGATVHHAAGSYRGE-続いて2A配列(APVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP)-続いてHAV(配列番号41)をコードする。
【0284】
HAVX2は、正常な配列を攪乱し、N末端エピトープに重点を置き、それが膜貫通配列に入る直前にさらにT細胞エピトープを暴露する。
【0285】
これらの再配置はリスクを導入するとは予測されず、新しいChAdOx2 HAVX1及びChAdOx2 HAVX2ワクチン構築物の安全な操作と両立し得る。