(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-524786(P2021-524786A)
(43)【公表日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】カーペット基布地用不織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 27/02 20060101AFI20210820BHJP
D04H 3/011 20120101ALI20210820BHJP
【FI】
A47G27/02 E
D04H3/011
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-565919(P2020-565919)
(86)(22)【出願日】2019年6月11日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月25日
(86)【国際出願番号】KR2019007015
(87)【国際公開番号】WO2019245217
(87)【国際公開日】20191226
(31)【優先権主張番号】10-2018-0070113
(32)【優先日】2018年6月19日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジョン−スン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒ−ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン−シン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウ−ソク
【テーマコード(参考)】
3B120
4L047
【Fターム(参考)】
3B120AA20
3B120AA34
3B120AD07
3B120BA21
3B120CA13
3B120DB03
4L047AA21
4L047AA28
4L047AA29
4L047AB03
4L047CC10
(57)【要約】
本発明は、両面の色が異なり、機械的物性が向上したカーペット基布地用不織布およびその製造方法に関し、具体的には、不織布の両面のうちのいずれか一面が白色から灰色の範囲に、その反対の面が暗い灰色から黒色の範囲になり、カーペットの色相に応じて多様な色相の不織布を別途に作ることを必要とせず、不織布の在庫管理が容易であり、カーペットパイル糸と基布地用不織布とで色相のバランスがとれ、カーペット製造工程の効率性を向上させることができるカーペット基布地用不織布およびその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面層および第2面層を含んでなる不織布において、
前記第一面層および第2面層は、融点250℃以上の第1ポリエステルとカーボンブラックとを含む第1フィラメントと、融点190℃以下の第2ポリエステルを含む第2フィラメントとの含有量比が95:5〜85:15重量%の混繊糸を含んでなり、
前記第一面層における前記カーボンブラックの総含有量は計0.06〜0.15重量%であり、
前記第2面層における前記カーボンブラックの総含有量は0.3〜0.5重量%であることを特徴とするカーペット基布地用不織布。
【請求項2】
前記第一面層を構成する第1フィラメントは、前記カーボンブラックを0.07〜0.15重量%含み、
前記第2面層を構成する第1フィラメントは、前記カーボンブラックを0.37〜0.5重量%含むことを特徴とする請求項1に記載のカーペット基布地用不織布。
【請求項3】
白色度(White Index)が、前記第一面層は5.3〜17.0であり、前記第2面層は4.0〜5.2であることを特徴とする請求項1に記載のカーペット基布地用不織布。
【請求項4】
カーペットを製造するためにタフティングをする場合に、タフティングの前後の引張強度の減少率が70%以下であることを特徴とする請求項1に記載のカーペット基布地用不織布。
【請求項5】
第1フィラメント用としての、カーボンブラックが含まれている融点が250℃以上の第1ポリエステルと、第2フィラメント用としての、融点が190℃以下の第2ポリエステルとをそれぞれ溶融し、紡糸ノズルを通じて吐出させて、前記第1フィラメントに対する第2フィラメントの含有量比が95:5〜85:15重量%となるように混繊紡糸して、第1列のウェブ用混繊糸を製造する段階;
第1フィラメント用としてのカーボンブラックが含まれている融点250℃以上の第1ポリエステルと、第2フィラメント用としての融点190℃以下の第2ポリエステルをそれぞれ溶融し、紡糸ノズルを通じて吐出させて、前記第1フィラメントに対する第2フィラメントの含有量比が95:5〜85:15重量%となるように混繊紡糸して、第2列のウェブ用混繊糸を製造する段階;
前記第1列のウェブ用混繊糸を積み重ねて第1列のウェブを形成し、その上に前記第2列のウェブ用混繊糸でもって第2列のウェブを積み重ねて、前記第1列および第2列が積層されたウェブを形成する段階;および
前記積層されたウェブについて、スムーズ(smooth)ロールによるカレンダー工程を経て、熱風で熱接着して不織布を製造する段階;を含み、
前記第1列のウェブは、前記カーボンブラックを0.06〜0.15重量%含み、前記第2列のウェブは、前記カーボンブラックを0.3〜0.5重量%含むことを特徴とするカーペット基布地用不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2018年6月19日付の韓国特許出願第10−2018−0070113号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、両面の色が異なり、機械的物性が向上したカーペット基布地用不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カーペットは、多様な色相とパターンを形成し、柔らかい触感に起因して、ホテル、オフィス、家庭、自動車などで美的効果を奏する装飾だけでなく、快適性、防汚および遮音などの目的で用いられている。
【0004】
カーペットは、タフティング(Tufting)工程(不織布にカーペット糸(BCF yarn)を植える工程)と、カーペット糸を固定し形態安定性を付与するバックコーティング(Back Coating)工程(Tuftingされた不織布の裏面にPVC、PE、EVAまたはSBRなどの調液を多様な層(Layer)構成でコーティングした後に硬化させる工程)を経てカーペット用生地に作られる。
【0005】
カーペットの製造において、基布地は、カーペットの審美的外観品質を決定するカーペット糸を固定する役割と、製品の歩行性、遮音および保温性の役割を果たす樹脂層(layer)の支持体としてカーペットの品質を左右する重要な要素である。
【0006】
カーペットの製造工程全体において、基布地の受ける物理的、熱的外力は高い。タフティング工程で針(Needle)によって穴が空いて損傷を受け、バックコーティング工程で樹脂素材がついた状態で、加熱および冷却(Cooling)工程を経ることで熱的外力を受ける。
【0007】
したがって、カーペット用基布地は製品の不良に直接的に影響するので、カーペット用基布地は物理的損傷を受けた場合にも、カーペット糸の配列形態を維持しなければならず、熱的環境で形態変形があってはならない。
【0008】
また、審美的性能の向上により、既存のカーペットと差別性を与えるための開発に向けて、多様な色相のカーペット糸を適用して、カーペットの色相に応じてカーペット糸の間に見える基布地も多様な色相で要求されるため、ポリマーのカーボンブラック(carbon black)の含有量を調節して、白色(white)から黒色(black)の範囲の製品を要求している。したがって、カーペットメーカーでは、カーペット製品に応じて、基布地も色相ごとに在庫量を管理しなければならないという問題点を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国登録特許第1778177号(両面の色相が異なる不織布の製造方法)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、カーボンブラックの含有量が異なるフィラメントを紡糸して不織布の両面の色相が異なるように構成されており、低融点コポリエステルを混繊紡糸することで、タフティングの後の機械的特性に優れたカーペット基布地用不織布を提供する。
【0011】
また、本発明は、カーボンブラックの含有量が異なるフィラメントを紡糸して不織布の両面の色相が異なるように構成されており、低融点コポリエステルを混繊紡糸することで、タフティングの後の機械的特性に優れたカーペット基布地用不織布の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書では、第1面層および第2面層を含んでなる不織布において、前記第1面層および第2面層は、融点250℃以上の第1ポリエステルとカーボンブラックとを含む第1フィラメントと、融点190℃以下の第2ポリエステルを含む第2フィラメントとの含有量比が95:5〜85:15重量%の混繊糸を含んでなり、前記第1面層における前記カーボンブラックの総含有量は計0.06〜0.15重量%であり、前記第2面層における前記カーボンブラックの総含有量は0.3〜0.5重量%であることを特徴とするカーペット基布地用不織布を提供する。
【0013】
また、本明細書では、第1フィラメント用としての、カーボンブラックが0.07〜0.15重量%含まれ融点が250℃以上の第1ポリエステルと、第2フィラメント用としての、融点が190℃以下の第2ポリエステルとをそれぞれ溶融して紡糸ノズルを通じて吐出させて、前記第1フィラメントに対する第2フィラメントの含有量比が95:5〜85:15重量%となるように混繊紡糸することで、第1列のウェブ用混繊糸を製造する段階;第1フィラメント用としてのカーボンブラックが0.37〜0.5重量%含まれ融点が250℃以上の第1ポリエステルと、第2フィラメント用としての、融点が190℃以下の第2ポリエステルをそれぞれ溶融し、紡糸ノズルを通じて吐出させて、前記第1フィラメントに対する第2フィラメントの含有量比が95:5〜85:15重量%となるように混繊紡糸することで、第2列のウェブ用混繊糸を製造する段階;前記第1列のウェブ用混繊糸を積み重ねて第1列のウェブを形成し、その上に前記第2列のウェブ用混繊糸でもって第2列のウェブを積み重ねることで、前記第1列および第2列が積層されたウェブを形成する段階;および前記積層されたウェブをスムーズ(smooth)ロールによるカレンダー工程を経て、熱風で熱接着して不織布を製造する段階;を含み、前記第1列のウェブは、前記カーボンブラックを0.06〜0.20重量%含み、前記第2列のウェブは、前記カーボンブラックを0.3〜0.5重量%含むことを特徴とするカーペット基布地用不織布の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、不織布の両面においていずれか一面が白色から灰色の範囲に、その反対の面が暗い灰色から黒色の範囲になり、つまり、相対的に一面の明るい色とその反対の面の暗い色を示すので、両面の色相に差があるカーペット基布地用不織布およびその製造方法を提供することができる。
【0015】
具体的には、カーペットパイル糸の暗いかまたは明るい色相に合わせて不織布の両面のいずれかの一面を選択的に容易に使用するので、カーペットの色相に応じて多様な色相の不織布を別途に作ることを必要とせず、不織布の在庫管理が容易であり、カーペットパイル糸と基布地用不織布とで色相のバランスがとれ、カーペット製造工程の効率性を向上させることができるカーペット基布地用不織布およびその製造方法を提供することができる。
【0016】
また、カーペット製造工程で外力(物理的、熱的)が加えられても形態変形が小さくて、機械的特性に優れたカーペット基布地用不織布およびその製造方法を提供することができる。
【0017】
さらに、低融点コポリエステルの含有量の調節によってフィラメントの自律度を高めて、タフティングする際にフィラメントの損傷を低減することで、不織布とカーペットにおける強度減少率の低下を防止したカーペット基布地用不織布およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の具体的な実施形態によるカーペット基布地用不織布およびその製造方法に関してより詳しく説明する。
【0019】
本明細書において、第1および第2の用語は、多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0020】
本発明は、不織布を構成する2種類のフィラメントのうち、第1フィラメントは、融点250℃以上、または255℃以上であるポリエステル熱可塑性樹脂で形成され、第2フィラメントは、融点190℃以下、または185℃以下、または180℃以下であるコポリエステル熱可塑性樹脂で形成される。特に、第1フィラメントにカーボンブラックを含有させることで、不織布における色相が調節されるようにする。
【0021】
前記第1フィラメント成分である第1ポリエステルは、融点の変化を与えずに樹脂固有の融点を有する一般のポリエステルであり、融点が250℃以上であれば、通常の製造方法で製造される繊維用途のものを制限なく使用可能であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリナフタレンテレフタレート(polynaphthalene terephthalate)などを使用することができる。
【0022】
不織布において、前記第1フィラメント成分である第1ポリエステルは、不織布加工およびカーペットの成形時に高温環境下で引張力が与えられた場合、熱収縮率が低く、かつ、バックコーティング材料に似た比率で適当に伸びることで、所望の製造幅の形態を維持できるという役割を果たす。
【0023】
一方、前記第2フィラメント成分である第2ポリエステルは、融点190℃以下の低融点ポリエステルで、例えば、アジピン酸(adipic acid)が共重合されたポリエステル、イソフタル酸(isophthalic acid)が共重合されたポリエステル、アジピン酸とイソフタルとが共重合されたポリエステルであってもよい。
【0024】
また、低融点ポリエステルは、前記一般ポリエステルと同じ種類のポリエステルに、アジピン酸またはイソフタル酸などの添加剤が重合過程で混合されて、融点が190℃以下に調整された共重合体であることが好ましいが、これは、熱融着段階で低融点のポリエステルが溶融して一般ポリエステル繊維を互いに接着させる過程で、同一素材の一般ポリエステルと容易に結合することが可能で接着力を向上させ、不織布の強度を向上させ、収縮率を低下させるのにも効果的である。
【0025】
ここで、第2ポリエステルの融点が190℃を超えると、一般的な成形温度、例えば、180℃以下での成形時に不織布の熱間伸び率が低下して、スジ(Yarn Row)、破れおよびシワなどの成形不良の問題点を誘発することがある。
【0026】
一方、フィラメント紡糸は、第1列と第2列とに区分されて行われ、カーボンブラックは、前記第1フィラメントに含まれて不織布の色相を調節する役割を果たすことができる。
【0027】
ここで、第1列と第2列を構成する第1フィラメントのカーボンブラックの含有量を異なるように調節することによって、第1列のウェブと第2列のウェブの色相の差によって、両面の色が異なる不織布ウェブが形成される。
【0028】
以下、本発明による両面の色相が異なり、機械的特性が向上したカーペット基布地用不織布の製造方法を説明する。
【0029】
第1フィラメント用としてカーボンブラックが0.06〜0.15重量%、または0.07〜0.15重量%含まれている融点が250℃以上の第1ポリエステルと、第2フィラメント用として融点190℃以下の第2ポリエステルをそれぞれ溶融し、紡糸ノズルを通じて吐出させて、前記第1フィラメントに対する第2フィラメントの含有量比が95:5〜85:15重量%、または94:6〜86:14重量%となるように混繊紡糸して、第1列のウェブ用混繊糸を製造する段階を行うことができる。
【0030】
この際、第1フィラメントにおけるカーボンブラックの含有量が増加するほど、不織布ウェブの色相が白色(white)から黒色(black)へと濃くなる。
【0031】
一方、第1フィラメントにおけるカーボンブラックの含有量が0.07重量%未満から減少するほど、不織布ウェブの色相は白色(white)に変化する。
【0032】
本発明において、第2フィラメントは、融点190℃以下のポリエステルからなり、後述する熱接着工程で熱風によって軟化または溶融して、周辺のフィラメントを結合させて不織布における強度および剛性を付与する。
【0033】
一方、第1列のウェブ用混繊糸において、前記第1フィラメントに対する第2フィラメントの含有量の比は95:5〜85:15重量%、または94:6〜86:14重量%でありうるのであり、ここで、第2フィラメントの含有量の比が5重量%未満の場合に、不織布ウェブにて熱風によってフィラメント間の接着がされない部分が多くなることから、不織布の形態が良好に形成されないのであり、カーペットの製造後に、成形工程にて均一な変形が行われず、引き裂けなどの問題が発生しうる。
【0034】
また、第2フィラメントの含有量比が15重量%を超える場合に、不織布の接着剤成分の含有量が過剰で不織布の弾性が少なくなり(脆く(brittleに)なる)、タフティング時にフィラメントの損傷が増加して、タフティング後に基布地の機械的物性が急激に減少することがある。
【0035】
一方、第1フィラメント用としての、カーボンブラックが0.3〜0.5重量%、または0.37〜0.5重量%含まれている融点250℃以上の第1ポリエステルと、第2フィラメント用としての、融点190℃以下の第2ポリエステルをそれぞれ溶融し、紡糸ノズルを通じて吐出させて、前記第1フィラメントに対する第2フィラメントの含有量比が95:5〜85:15重量%、または94:6〜86:14重量%となるように混繊紡糸して、第2列のウェブ用混繊糸を製造する段階を行うことができる。
【0036】
この際、第1フィラメントにおけるカーボンブラックの含有量が0.5重量%を超えると、カーボンブラックが異物として作用してフィラメントの形成を妨げて糸切れなどの問題を生じることがあり、これによって紡糸が可能でないことがある。特に、第1列のウェブと第2列のウェブとで色相の差を発現するためにそれぞれの列に含有されるカーボンブラックの含有量にて差を設けなければならない。
【0037】
一方、第2列のウェブ用混繊糸において、前記第1フィラメントに対する第2フィラメントの含有量比は95:5〜85:15重量%、または94:6〜86:14重量%でありうるのであり、ここで、第2フィラメントの含有量比が5重量%未満の場合に、不織布ウェブにて熱風によってフィラメント間の接着がされない部分が多くなって不織布の形態が良好に形成されないのであり、カーペットの製造後に、成形工程で均一な変形が行われないことで、引き裂けなどの問題が発生しうる。また、第2フィラメントの含有量比が15重量%を超える場合に、不織布の接着剤成分の含有量が過剰で不織布の弾性が少なくなり(脆く(brittleに)なる)、タフティング時にフィラメントの損傷が増加して、タフティング後に基布地の機械的物性が急激に減少しうる。
【0038】
本発明にしたがい混繊紡糸の形態で紡糸されたフィラメントは、高圧の空気延伸装置を用いて紡糸速度が4,500〜5,500m/minとなるように十分に延伸させることで、通常の4〜10デニールの繊度を有するフィラメントを製造することができる。
【0039】
以後、前記第1列のウェブ用混繊糸をコンベヤネット上にウェブの形態で積み重ねて第1列のウェブを形成し、その上に前記第2列のウェブ用混繊糸でもって第2列のウェブを積み重ねて、前記第1列および第2列が積層され、第1面層および第2面層で構成されたウェブを形成する段階を行うことができる。
【0040】
以後、前記積層されたウェブについて、加熱されたスムーズ(smooth)ロールによるカレンダー工程を経て厚さを調節し、熱風で熱接着することで不織布を製造する段階を行うことができる。
【0041】
一方、上述のように、前記カーペット基布地用不織布は、両面のうちの、いずれか一面が白色から灰色の範囲に、その反対の面が暗い灰色から黒色の範囲になる。
【0042】
一例として、最小直径が40mm以上の大きさを有する試験片に対して、X−rite社のColor−Eye 7000A機器を用いて測定した白色度(White Index;WI)値が、前記第1面層は5.3〜17.0、または5.5〜16.5であってもよいし、前記第2面層は4.0〜5.2、または4.2〜5.2であってもよい。
【0043】
つまり、相対的に一面は明るい色を示し、その反対面は暗い色を示すことができて、両面の色相に差があるカーペット基布地用不織布を提供することができる。
【0044】
また、前記カーペット基布地用不織布は、カーペットを製造するためにタフティングを行う場合に、タフティングの前後の引張強度の減少率が70%以下、または68%以下であってもよい。
【0045】
この時、引張強度は、後述する実験例のように、KS K 0521法を用いて、横×縦=5×20cmの大きさの試験片を、インストロン社の測定装置を用いて、上/下5×5cmのジグに挟んだ後、引張速度200mm/分で測定できる。
【0046】
前記タフティング前・後の引張強度の減少率が70%以下の場合、形態安定性が良好でBCF糸を固定させ、コーティング工程間の張力による不織布の損傷および形態変形を防止することができる。
【0047】
本発明は、以上で説明したように、融点が異なり、カーボンブラックを含有するフィラメントと含有しないフィラメントとの混繊紡糸と、カーボンブラックの含有量が異なる2層構造のウェブ積層によって不織布を製造することにより、不織布の製造が紡糸から連続した工程で行われ、不織布において両面の色相が異なっていながらも、低融点コポリエステルの含有量調節により、タフティング工程による機械的特性が損傷しない不織布を提供することが可能になる。
【0048】
以下、本発明を下記の実施例と比較例に基づいてより詳しく説明する。
【0049】
ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明が下記の実施例によって限定されるものではなく、本発明の技術的な思想を逸脱しない範囲内で置換および均等な他の実施例に変更できることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0050】
[実施例1]
第1フィラメントを成形するために、カーボンブラックの含有量が0.07重量%となるようにカーボンブラックをサイドフィードした255℃の融点のポリエチレンテレフタレート押出溶融物、および第2フィラメントを成形するために、アジピン酸とイソフタル酸とが共重合されて180℃の融点を有するポリエチレンテレフタレート押出溶融物をそれぞれ連続押出機の下端の紡糸ノズルを通じて吐出させ、混繊紡糸して、第1列のウェブ用混繊糸を製造した。
【0051】
第1フィラメントを成形するために、カーボンブラックの含有量が0.5重量%となるようにカーボンブラックをサイドフィードした255℃の融点のポリエステル押出溶融物、および第2フィラメントを成形するために、180℃の融点の低融点コポリエステル押出溶融物をそれぞれ連続押出機の下端の紡糸ノズルを通じて吐出させ、混繊紡糸して、第2列のウェブ用混繊糸を製造した。
【0052】
この際、混繊紡糸は、第1フィラメントと第2フィラメントとの含有量比が90:10wt%となるようにし、延伸して製造される混繊糸フィラメントの繊度が8デニールとなるように、吐出量と口金の紡糸ノズル数を調節した。
【0053】
また、紡糸ノズルから放出された連続フィラメントを冷却風で固化させた後、高圧の空気延伸装置を用いて紡糸速度が5,000m/minとなるように延伸させた。
【0054】
以後、通常の開繊法によってコンベヤネット(net)上に前記第1列のウェブ用混繊糸を積み重ねて、第1列のカーボンブラックの含有量が0.063重量%となるように第1列のウェブを形成し、その上に第2列のウェブ用混繊糸でもって第2列のカーボンブラックの含有量が0.45重量%となるように第2列のウェブを積み重ねて、第1列による第一面層および第2列による第2面層が積層されたウェブを形成した。
【0055】
このように積層されたウェブは、加熱されたスムーズ(smooth)ロールによるカレンダー工程を経て平滑性と適正な厚さを付与し、熱風で熱接着して、単位面積あたりの重量が120g/m
2のカーペット基布地用スパンボンド不織布を製造した。
【0056】
[実施例2〜4]および[比較例1〜4]
前記実施例1において、前記混繊糸の混繊比率、第1列および第2列のカーボンブラッ
クの含有量を下記表1に記載のようにしたことを除けば、実施例1と同様の方法を用いてカーペット基布地用スパンボンド不織布を製造した。
【0058】
前記実施例および比較例のカーペット基布地用スパンボンド不織布およびタフティング後の不織布に対する特性を下記の試験方法により測定し、その結果を表2に示した。
【0059】
この時、タフティングは、ループ(Loop)形態でゲージ(10ea/inch)、BCF yarn高さ(3mm)の条件で実施した。
【0060】
<試験方法>
1.引張強度(単位:Kg.f/5cm)および引張伸び率(%)
KS K 0521法を用いる。
【0061】
横×縦=5×20cmの大きさの試験片を、インストロン社の測定装置を用いて、上/下5×5cmのジグに挟んだ後、引張速度200mm/分で測定する。
【0062】
2.白色度(White Index;WI)
X−rite社のColor−Eye 7000A機器を用いて測定する。
【0063】
評価試験片は最小直径40mm以上を用い、それぞれの試料に対して3回測定を行った後に、その平均値を示す。
【0064】
測定値(WI)の数値が高いほど、白色(white)を意味する。
【0066】
前記表2の結果から、本発明によるカーペット基布地用不織布は、第1面層が白色から灰色の範囲に、第2面層が暗い灰色から黒色の範囲になり、第1面層と第2面層とで明確に対照される、相対的に明るい色と暗い色の異なる色相とを示すので、カーペットの最終色相に合わせて明るい色または暗い色を示す面を選択して用いることが可能になることが確認される。
【0067】
一方、混繊糸における第2フィラメントの含有量が少なくなると(比較例3参照)、不織布の引張強度が低下し、多くなると(比較例4参照)、タフティング後に引張強度の減少率が大きくなって、タフティング後の物性が低下する。
【0068】
また、第1フィラメントにおけるカーボンブラックの含有量が多くなると(比較例2参照)、糸切れと紡糸ノズルの目詰まりが発生して紡糸がまともに行われず、このことに起因して不織布ウェブの成形が行われないことが確認される。
【国際調査報告】