(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-524805(P2021-524805A)
(43)【公表日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】炭酸塩鉱物化
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20210820BHJP
B03B 5/34 20060101ALI20210820BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20210820BHJP
B03C 1/30 20060101ALI20210820BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20210820BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20210820BHJP
C01F 5/24 20060101ALI20210820BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B03B5/34ZAB
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/30 Z
B01D53/78
B01D53/62
C01F5/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2021-512971(P2021-512971)
(86)(22)【出願日】2019年5月8日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月28日
(86)【国際出願番号】AU2019050423
(87)【国際公開番号】WO2019213704
(87)【国際公開日】20191114
(31)【優先権主張番号】2018901561
(32)【優先日】2018年5月8日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520434891
【氏名又は名称】ミネラル カーボネーション インターナショナル ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】230111590
【弁護士】
【氏名又は名称】金本 恵子
(72)【発明者】
【氏名】ベネラール エマッド
(72)【発明者】
【氏名】ブレント ジオフリー フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ケネディー エリック マイルス
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ティモシー ケニルワース
(72)【発明者】
【氏名】レイソン マーク スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】シュトッケンフーバー マイケル
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4D071
4G076
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
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4D071AA53
4D071AB23
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4G076AA16
4G076AB01
4G076AC01
4G076AC04
4G076BA34
4G076BC02
4G076BE11
4G076CA02
(57)【要約】
本発明は、二酸化炭素の回収、隔離および利用のための統合プロセスであって、a)水性液と活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含む粒子状固体とを含む水性スラリーを生成するステップと;b)溶解段階において、CO
2含有ガス流を水性スラリーと接触させ、鉱物からマグネシウムを溶解させて、マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液およびマグネシウム枯渇固体残渣を含むスラリーを生成するステップと;c)ステップb)からのマグネシウム枯渇固体残渣の少なくとも一部を、マグネシウム枯渇固体残渣を微細粒度分画および粗大粒度分画に分離する粒度分級プロセスに供するステップと;d)ステップc)からの粗大粒度分画の少なくとも一部を、粒度縮小プロセスに供して、粒度縮小分画を生成するステップと;e)ステップd)からの粒度縮小分画を含む水性スラリーを生成し、ステップb)を繰り返すステップであって、ステップc)からの微細粒度分画の使用を含まない、ステップと;f)沈殿段階において、b)およびe)で溶解したマグネシウムイオンから炭酸マグネシウムを沈殿させるステップとを含む方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素の回収、隔離および利用のための統合プロセスであって、
a) 水性液と活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含む粒子状固体とを含む水性スラリーを提供するステップと、
b) 溶解段階において、CO2含有ガス流を、前記鉱物からマグネシウムを溶解させてマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液とマグネシウム枯渇固体残渣とを含むスラリーを提供するために、前記水性スラリーと接触させるステップと、
c) ステップb)からの前記マグネシウム枯渇固体残渣の少なくとも一部を、前記マグネシウム枯渇固体残渣を微細粒度分画と粗大粒度分画とに分離する粒度分級プロセスに付すステップと、
d) ステップc)からの前記粗大粒度分画の少なくとも一部を、粒度縮小分画を提供するために、粒度縮小プロセスに付すステップと、
e) ステップd)からの粒度縮小分画を含む水性スラリーを提供して、ステップb)を繰り返すステップであって、ここで、本ステップe)はステップc)からの微細粒度分画の使用を含まない、ステップと、
f) 沈殿段階において、ステップb)およびe)で溶解したマグネシウムイオンから炭酸マグネシウムを沈殿させるステップと
を含む統合プロセス。
【請求項2】
前記マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液が、大気圧付近、大気圧またはそれを超える圧力のインプットCO2含有ガス流が供給された1以上の反応器内で、前記活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を溶解し、その後、別の沈殿段階において、液体への部分真空または大気圧未満の圧力の印加による溶解したCO2の除去により液体中のpHシフトを誘発し、それにより炭酸マグネシウムを沈殿させることにより生成される、請求項1に記載の統合プロセス。
【請求項3】
前記CO2含有ガス流が、炭化水素燃焼プロセス、焼成プロセスまたは化学プロセスからの排ガスを含む、請求項1または2に記載の統合プロセス。
【請求項4】
ステップc)からの水性スラリーの形態の微細粒度分画の少なくとも一部を、溶解段階において使用するステップe’)をさらに含み、この溶解段階は、前記微細粒度分画からマグネシウムを溶解させてマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液とマグネシウム枯渇固体残渣とを含むスラリーを生成するために、CO2含有ガス流を前記水性スラリーと接触させることを含み、ここで、このステップにおいて使用されるCO2含有ガス流は、ステップb)において使用されるCO2含有ガス流より高いCO2濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の統合プロセス。
【請求項5】
ステップf)が、ステップb)、e)およびe’)において溶解したマグネシウムイオンから炭酸マグネシウムを沈殿させることを含む、請求項4に記載の統合プロセス。
【請求項6】
前記粒度分級プロセスが、重力または遠心力を使用して粒子を異なる粒度分画に分離するプロセスを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の統合プロセス。
【請求項7】
前記沈殿段階が、水性液中のマグネシウムイオンが固体炭酸マグネシウムまたは水和形態の炭酸マグネシウムとして溶液から沈殿するプロセスを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の統合プロセス。
【請求項8】
任意の溶解段階からのマグネシウム枯渇固体残渣が、任意の後続処理の前に、鉄リッチ部分を抽出するために湿式磁気分離プロセスに付される、請求項1から7のいずれか一項に記載の統合プロセス。
【請求項9】
各溶解段階における圧力が100〜20000kPaの範囲内であり、温度が20℃〜185℃の範囲内である、請求項1から8のいずれか一項に記載の統合プロセス。
【請求項10】
ステップb)が、2以上の溶解反応器内で行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の統合プロセス。
【請求項11】
請求項1に記載のプロセスを実行するように構成される反応器システムであって、1以上の溶解反応器、1以上の沈殿反応器、1以上の粒度分級機および1以上の粒度縮小装置を備える反応器システム。
【請求項12】
前記1以上の溶解反応器を出るスラリーが、固体を液体から実質的に分離する分離機内で分離プロセスに付され、それによりスラリーを、マグネシウムイオン濃縮水性液を含む流れとマグネシウム枯渇固体残渣を含む流れとに分離するように構成されている、請求項11に記載の反応器システム。
【請求項13】
1以上のハイドロサイクロンを備える粒度分級機を備える、請求項11または12に記載の反応器システム。
【請求項14】
粒度分級機が、質量中央直径が10〜250ミクロンの範囲内である粒子を含む粗大粒度分画と質量中央直径が1〜50ミクロンの範囲内である粒子を含む微細粒度分画とを生じ、前記粗大分画の質量中央直径は、前記微細分画の質量中央直径より常に少なくとも5ミクロン大きい、請求項11から13のいずれか一項に記載の反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の回収、隔離および利用(CCSU)のためのプロセスならびにこのプロセスを実践するのに好適な反応器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大気から隔絶された貯蔵部内に二酸化炭素ガスを隔離することは、大気への二酸化炭素排出を低減する地球規模の試みにおいて不可欠な要素として広く認識されている開発途上の技術である。大気中二酸化炭素濃度の急速な増加は、温室効果ガスとしてのその特性ならびに地球温暖化および気候変動の現象に対するその寄与に起因して問題となっている。二酸化炭素の回収および隔離(CCS)のためのプロトタイプの実証設備はいくつかの国に存在し、商業規模の運転も近年行われはじめた。発電用の石炭燃焼等における燃焼排ガスからの二酸化炭素の回収および濃縮のための様々な技術が存在するが、最新の設備は、適切な地下貯蔵部への加圧二酸化炭素の注入による地下隔離を利用している。これは一般に地中隔離として知られている。これは、大気から好適に隔絶された枯渇した石油もしくはガス貯蔵部またはその他の地下多孔質層(underground porous formations)において行うことができる。これらの貯蔵部または層は、陸地または海の下に位置し得る。二酸化炭素ガス用の別の可能な地下貯蔵部は、いわゆる塩水性帯水層である。深い海底への直接的な二酸化炭素貯蔵もまた調査されているが、大規模での実証はいまだ成功していない。
【0003】
二酸化炭素隔離の別の研究分野は、炭酸塩鉱物化(mineral carbonation)として知られるものであり、二酸化炭素はアルカリまたはアルカリ土類金属酸化物またはケイ酸塩鉱物と化学反応して安定な固体炭酸塩を形成する。この手法は、in−situ炭酸塩化(carbonation)に対してex−situ炭酸塩鉱物化として知られ、二酸化炭素は地下鉱物層内に堆積され、既存の地下層内の好適な鉱物とより長い時間をかけて反応する。本発明は、炭酸塩を形成するケイ酸塩鉱物の炭酸塩鉱物化による二酸化炭素隔離のex−situ手法に関連する。
【0004】
炭酸塩鉱物化は、他の二酸化炭素隔離の方法に勝る多くの潜在的利点を有する。これには、形成された炭酸塩の恒久性および安定性ならびに二酸化炭素ガスの漏出リスクの排除が含まれる。さらに、地中隔離に好適な地下サイトは、二酸化炭素排出源の近くになければならない全ての場所に存在するわけではない。また、炭酸塩鉱物化の化学反応は、炭酸塩の形成に起因する発熱性のエネルギー放出により、熱力学的に有利である。炭酸塩鉱物化に必要なケイ酸塩原鉱は豊富であり、世界中に広く分布している。これらの鉱物は、容易に採鉱することができ、既知の微粉化および他の処理技術に供することができる。それらは一般に無害であり、環境および安全性のリスクは容易に管理され得る。特に、蛇紋岩として広く知られているケイ酸マグネシウム鉱物は、既知の化石燃料埋蔵量に由来する二酸化炭素の全地球規模排出量を隔離するのに十分な量で入手可能であると推定されている。
【0005】
O’Connorら、2005−Aqueous Mineral Carbonation: Mineral Availability, Pre−treatment, Reaction Parametrics and Process Studies、DOE/ARC−TR−04−002−Albany Research Center、Albany、OR、USAに記載のもの等のいわゆる一段階炭酸塩化プロセスは、一段階での活性化鉱物からのマグネシウムの溶解および炭酸マグネシウムの沈殿を含み、それにより未反応の鉱物、炭酸マグネシウムおよびシリカの混合物が生成される。この混合物は、実用的な生成物への分離が困難である。マグネシウムから炭酸マグネシウムへの変換度もまた制限されている。
【0006】
いわゆる二段階または多段階炭酸塩化プロセスは、別々のマグネシウム溶解および炭酸マグネシウム沈殿の段階を含む。マグネシウム溶解段階は、二酸化炭素(CO
2)含有ガス流を使用する。Mercierら(US9440189B2)およびWernerら(Flue gas CO
2 mineralization using thermally activated serpentine: from single− to double−step carbonation、Physical Chemistry Chemical Physics 16 (2014) 24978〜24993ページ)を含む様々な研究者が、そのようなプロセスを記載している。
【0007】
溶解用の酸源としてCO
2を使用した鉱石の炭酸塩化の既存の多段階プロセスは、固体鉱物からマグネシウムを大量に浸出させることができず、したがって大量のマグネシウム分画がCO
2との反応に利用されないため、比較的非効率的である。これは、マグネシウムの利用が不十分であることからより大量の鉱物を処理しなければならないため、プロセスコストを増大させる。
【0008】
この背景に対して、以前に記載のものよりも効率的にCO
2を炭酸塩中に隔離し、シリカリッチ生成物を生成する新たな統合プロセスを提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、経済的価値のある生成物を生成しながら、二酸化炭素ガスを恒久的および安全に回収および隔離するための方法を提供することを目的とする。本発明は、特に、二酸化炭素およびケイ酸マグネシウムの供給原料から固体炭酸塩およびケイ酸塩への化学変換のための効率的で経済的に実行可能な統合プロセスに関連し、それにより、大気中に放出される二酸化炭素の量の低減が可能になると同時に、経済的な実用性および価値を有する生成物、特に炭酸マグネシウムおよびシリカが生成される。この生成物の利用により、本発明の方法は、CCSではなく二酸化炭素の回収、隔離および利用(CCSU)として分類される。
【0010】
本発明は、二酸化炭素の回収、隔離および利用のための統合プロセスであって、
a) 水性液と活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含む粒子状固体とを含む水性スラリーを提供するステップと、
b) 溶解段階において、CO
2含有ガス流を、前記鉱物からマグネシウムを溶解させてマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液(magnesium ion enriched carbonated aqueous liquid)とマグネシウム枯渇固体残渣(magnesium depleted solid residue)とを含むスラリーを提供するために、前記水性スラリーと接触させるステップと、
c) ステップb)からの前記マグネシウム枯渇固体残渣の少なくとも一部を、前記マグネシウム枯渇固体残渣を微細粒度分画(fine particle size fraction)と粗大粒度分画(coarse particle size fraction)とに分離する粒度分級プロセスに付すステップと、
d) ステップc)からの前記粗大粒度分画の少なくとも一部を、粒度縮小分画(particle size reduced fraction)を提供するために、粒度縮小プロセス(particle size reduction process)に付すステップと、
e) ステップd)からの粒度縮小分画を含む水性スラリーを提供して、ステップb)を繰り返すステップであって、ここで、本ステップe)はステップc)からの微細粒度分画の使用を含まない、ステップと、
f) 沈殿段階において、ステップb)およびe)で溶解したマグネシウムイオンから炭酸マグネシウムを沈殿させるステップと
を含む統合プロセスを提供する。
【0011】
本発明はまた、本発明のプロセスを実行するように構成される反応器システムを提供する。反応器システムは、1以上の溶解反応器、1以上の沈殿反応器、1以上の粒度分級機および1以上の粒度縮小装置を備える。
【0012】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体にわたり、文脈により異なる意味が必要とされない限り、「含む/備える(comprise)」という用語、および「含む/備える(comprises)」および「含む/備える(comprising)」等の変化形は、述べられた整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の除外を意味しないことが理解される。
【0013】
本明細書における、任意の先行する出版物(またはそれから得られた情報)または知られている任意の事項への言及は、先行する出版物(またはそれから得られた情報)または知られている事項が、本明細書が関連する努力傾注分野における共通した一般的知識の一部を形成することの承認または容認または任意の示唆形態として解釈されず、また解釈されるべきではない。
【0014】
添付の非限定的図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1のプロセスを例示するフローシートである。
【
図2】実施例2のプロセスを例示するフローシートである。
【
図3】実施例3のプロセスを例示するフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、粒子状形態の活性化鉱物からの溶解により、マグネシウムイオンが水性液中に供される。本発明は、鉱物から溶解するマグネシウムの量を増加させ、それにより後続の沈殿段階における炭酸マグネシウムとしての沈殿に利用可能なマグネシウムイオンの相対量を増加させることを意図するステップを使用する。
【0017】
本発明は、活性化ケイ酸マグネシウム鉱物(粒子状形態)を含む水性スラリーをCO
2含有ガス流と接触させる最初の溶解段階を使用する。これは、鉱物からマグネシウムを溶解させて、マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液およびマグネシウム枯渇固体残渣を含むスラリーを供給する。本発明は、マグネシウム枯渇固体残渣からマグネシウムをさらに溶解させるための、マグネシウム枯渇固体残渣の後続の処理を含む。したがって、マグネシウム枯渇固体残渣は、粒度分級プロセスに供され、それにより固体残渣は粗大粒度分画と微細粒度分画とに分配される。次いで、粗大粒度分画は、粒度縮小プロセスにおいて、平均粒度を低減して粒度縮小分画を供するように処理される。次いで、粒度縮小分画は、溶解反応に供され、マグネシウムイオンを含む水性液を生成する。粒度分級プロセスからの微細粒度分画は、最初の溶解段階に戻されずに、最終生成物として収集されてもよく、または、CO
2濃度が最初の溶解段階での濃度より高い別の溶解段階に送られてもよい。これにより、2つの大きな利点が提供される。第1に、微細粒度分画は粒度縮小プロセスに送られず、したがって、粗大分画のみが粒度縮小に供されることにより、粒度縮小プロセスへの負荷が低減される。第2に、微細粒度分画は、そのマグネシウムの多くをすでに最初の溶解段階において溶解させており、したがってシリカリッチの有用な最終生成物を構成し得るか、または、それをCO
2濃度が最初の溶解段階での濃度より高い別の溶解段階に送ることにより、残留する厄介なマグネシウムを最初の溶解段階よりも容易に溶解し得る。これらの溶解段階および場合により1以上の追加の溶解段階において溶解したマグネシウムは、炭酸マグネシウムの沈殿に使用される。
【0018】
本発明による方法は、最初の溶解段階において、例えば炭化水素燃焼プロセスもしくは焼成プロセスに由来する排ガスからのCO
2含有ガス流または石油精製等の、化学プロセスに由来するCO
2含有流を使用し得る。そのような流れ中のCO
2の濃度は、混入した水または水蒸気を除いて、2〜95体積%の範囲内であってもよいが、より典型的には、2〜60体積%、2〜50体積%、2〜40体積%、2〜30体積%、2〜20体積%または5〜20体積%の範囲内である。微細粒度分画を処理する後続の溶解段階におけるCO
2の濃度は、微細粒度分画が沈殿段階から放出されたリサイクルCO
2を含むため、より高くなり得る。この濃度は、混入した水または水蒸気を除いて、40〜100体積%の範囲内であってもよいが、より典型的には、50〜100体積%、60〜100体積%、70〜100体積%、80〜100体積%、90〜100体積%または95〜100体積%の範囲内である。
【0019】
最初の溶解反応により、水性液中にマグネシウムイオンならびに炭酸および重炭酸対イオンが供される。異なる溶解段階(反応器)が使用される場合、各段階(反応器)により生成されるマグネシウムイオン濃縮水性液を、沈殿の前に合わせてもよい。しかしながら、これは必須ではない。
【0020】
粒度縮小プロセスの重要性は、これによって粒子の表面積対体積比が増加し、かつ、部分的に溶解した粒子が破壊されて最初の溶解段階で溶解していなかった鉱物が露出し、それにより粒度縮小前には利用可能ではなかったマグネシウムが、(溶解)反応に利用可能となることである。
【0021】
本発明によれば、粒度縮小分画を、最初の溶解段階に戻してもよくまたは異なる溶解段階(すなわち異なる溶解反応器内)で別に処理してもよい。粒度縮小分画からのマグネシウムの溶解は、水性スラリー(水性液と活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含む粒子状固体との水性スラリー)をCO
2含有ガス流と接触させる最初の溶解反応と同じまたは異なる種類の反応によって発生させてもよい。
【0022】
本発明の利益は、出発活性化鉱物の供給原料からのマグネシウムの溶解によりおよび粒度縮小分画からのマグネシウムの溶解により生成されたマグネシウムイオン含有水性液を、炭酸マグネシウムの沈殿に使用することにより達成される。熱力学的な考慮点により、マグネシウムが炭酸マグネシウムとして沈殿され得る程度が決定される。
【0023】
さらなる粒度分級、粒度縮小および溶解段階を使用して、鉱物からマグネシウムをさらに抽出することが可能である。全体としてのプロセスは、連続的にまたはバッチ式で行うことができる。各溶解段階は、活性化鉱物のマグネシウム含量を徐々に低減する。
【0024】
上述のように、本発明によれば、最初の溶解段階後に得られた固体残渣は粒度分級プロセスに供され、(比較的)微細径分画および(比較的)粗大径分画が得られる。粗大径分画は、微細粒度分画の質量中央直径(D
50)より実質的に大きい、本発明においては少なくとも5ミクロン大きい質量中央直径(D
50)を有する。粗大粒度分画の少なくとも一部が粒度縮小プロセスに供され、次いで溶解段階で再利用される。一実施形態においては、微細径分画の少なくとも一部もまた、第1の溶解段階と異なる溶解段階で再利用される。
【0025】
本発明において、炭酸塩鉱物化は、二酸化炭素が活性化ケイ酸マグネシウム鉱物の供給原料からのマグネシウムと反応して炭酸マグネシウムおよびシリカを形成するプロセス全体を指す。活性化ケイ酸マグネシウム鉱物への言及は、粉砕または加熱またはその両方により活性化されたケイ酸マグネシウム鉱物を指す。本発明においては反応は水性液中で生じるものであり、溶解段階においてケイ酸マグネシウムからマグネシウムが水性液中に浸出し、沈殿段階において少なくとも1つのそのような液体から炭酸マグネシウムが沈殿する。
【0026】
溶解段階への言及は、(マグネシウム)金属イオンが固体鉱物から水性液中に浸出するプロセス段階を指す。水性液への言及は、水が主要構成成分(50質量%超)である液体を含む。水性液は、副次構成成分(50質量%未満)として、固体等の溶解種または水混和性液を含んでもよい。海水、ブラインおよび塩水がこれに含まれる。水性液への言及はまた、水に溶解したCO
2等の気体種ならびに炭酸および重炭酸イオンも包含する。水性液への言及は、さらに、水に溶解した酸または酸塩を包含する。水性液は、本明細書に記載の成分の組合せを含んでもよい。
【0027】
水性液は、当然ながら、溶解していない粒子状固体も含む。粒子状固体は、少なくとも活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含む。水性液中のその粒子状固体は、水性スラリーをもたらす。1以上の他の粒子状固体もまた、水性液中に存在し得る。粒子状固体は、一般に、水性液中に懸濁状態で存在する。
【0028】
マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液への言及は、マグネシウムイオンが重炭酸および炭酸対イオンと共に溶液中に存在する液体を含む。
【0029】
最初の溶解ステップおよび場合により後続の溶解ステップにおいて使用されるCO
2含有ガス流は、同じまたは異なるソースに由来してもよい。ガス流は、炭化水素燃焼プロセスからの排ガスもしくは焼成プロセスからのCO
2含有ガス流を含んでもよく、あるいは、炭化水素燃焼、酸化もしくは改質プロセスからまたは天然ガス処理から回収された比較的高純度のCO
2流であってもよい。そのような流れは、2〜100体積%の範囲内のCO
2濃度を含み得る。回収プロセスは周知であり、アミンまたは他のCO
2吸収剤もしくは吸着剤あるいは排ガスからCO
2を分離するための選択膜あるいは、例えばいわゆるオキシ燃料燃焼による、燃焼前回収(pre−combustion capture)の使用を含んでもよい。溶解ステップにおいて使用されるCO
2含有ガス流は、沈殿ステップから放出およびリサイクルされたCO
2を含んでもよい。
【0030】
一実施形態において、CO
2含有ガス流を使用する代わりに、酸または酸塩を含む液体を使用して、粒度縮小分画からマグネシウムをさらに溶解させ、マグネシウムイオン濃縮水性液を生成してもよい。酸処理段階において使用される酸または酸塩は、HNO
3、H
2SO
4、HCl、NaHSO
4、HBr、HF、HI、HClO
4、H
3BO
3、H
3PO
4、CH
3COOH、HCOOHまたはHO
2C
2O
2Hから選択され得る。
【0031】
粒度縮小プロセスへの言及は、摩砕(attrition grinding)等の粉砕プロセス、および撹拌ミルまたは粉砕媒体を組み込んだ他のミル等の他の周知の粉砕プロセスを含む。
【0032】
粒度分級プロセスへの言及は、スパイラル分級機、サイクロンまたはハイドロサイクロンを含む、重力または遠心力を使用して粒子を異なる粒度分画に分離するプロセスを含む。使用される粒度分級プロセスに応じて、次の溶解段階を行う前に粗大粒子分画を水性スラリーに配合することが必要となり得る。粒度分級プロセスが粗大径粒子分画のスラリーを生成する場合、そのスラリーは、次の溶解段階において直接使用してもよい。
【0033】
沈殿段階への言及は、水性液中のマグネシウムイオンが、固体炭酸マグネシウムまたは水和形態の炭酸マグネシウム(水和形態の炭酸マグネシウムとしては、ハイドロマグネサイト、ダイピング石(dypingite)およびネスケホン石(nesquehonite)もしくはそれらの混合物が含まれる)として溶液から沈殿するプロセスを含む。CO
2含有ガス流を活性化鉱物粒子の水性スラリーと接触させることにより溶解が達成された場合、沈殿は、圧力および温度等のプロセス条件を変更して沈殿を誘発することにより生じ得る。酸または酸塩を含む液体を使用することにより溶解が達成される場合、沈殿は、液体のpHを上昇させて液体をCO
2含有ガス流と接触させることにより生じ得る。
【0034】
ここで、文脈から別の意味が明らかでない限り、炭酸マグネシウムへの言及は、マグネサイトおよび水和形態の炭酸マグネシウム(水和形態の炭酸マグネシウムとしては、ハイドロマグネサイト、ダイピング石およびネスケホン石またはそれらの混合物が含まれる)を含む。
【0035】
分離機または分離プロセスへの言及は、重力、遠心力または物理的障壁(例えば、スラリーを固体リッチ流と固体枯渇流(solid−depleted stream)とに実質的に分離する膜)を使用するプロセスを含む。そのようなプロセスは、沈降槽、ハイドロサイクロン、フィルター、遠心分離機等およびそれらの組合せを含む。
【0036】
本発明の方法において供給原料として使用される最初の粒子状固体は、例えばかんらん石、蛇紋岩、ダナイトまたはそれらの混合物等の、ケイ酸マグネシウム鉱物を含む。固体は、質量中央直径(D
50)が5〜250ミクロン、好ましくは10〜150ミクロンの範囲内である粒径まで粉砕してもよい。粉砕の前または後に、鉱物を溶解に向けて活性化させるために加熱してもよい。一部の供給原料は加熱を必要としない場合があり、粉砕により十分に活性化される場合があり、それにより活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を含むものとなる。
【0037】
ケイ酸マグネシウム鉱物は、粒子状鉱物を高温(例えば570℃〜700℃の範囲内)に加熱して、脱ヒドロキシル化ケイ酸マグネシウム(dehydroxylated magnesium silicate)を含む活性化粒子状固体を形成することにより活性化してもよい。活性化粒子状固体は、脱ヒドロキシル化ケイ酸マグネシウムを含み、通常200℃未満まで冷却されてから水性液(例えば水)と混合され、水性スラリーをもたらす。この実施形態において、加熱された活性化固体からの熱は、例えば別のプロセス流の加熱または発電用蒸気の生成等の、有益な用途のために回収してもよい。
【0038】
任意の溶解段階からのマグネシウム枯渇固体残渣は、任意の後続処理の前に鉄リッチ部分を有用な生成物として抽出するために、湿式磁気分離プロセスに供してもよい。
【0039】
任意の溶解段階からのマグネシウム枯渇固体残渣はプロセスから収集され、その中のシリカは、磁気分離に供されるか否かに関わらず別の有用な生成物を構成し得る。マグネシウム枯渇固体残渣は、シリカ生成物をさらに精製するために、例えば酸による浸出等の、さらなる化学処理に供してもよい。
【0040】
本プロセスの各段階の圧力および温度は、各ステップにおける反応を最適化するために変更してもよい。絶対圧力は5kPa〜20000kPaの範囲内に、温度は10℃〜200℃の範囲内に維持されてもよい。好ましくは、各溶解段階における圧力は100〜20000kPaの範囲内であり、温度は20℃〜185℃の範囲内である。好ましくは、沈殿段階における圧力は5〜5000kPaの範囲内であり、温度は20℃〜150℃の範囲内である。溶解が酸または酸塩の溶液を使用する場合、圧力は100〜200kPaの範囲内であってもよく、温度は20℃〜120℃の範囲内であってもよい。
【0041】
一実施形態において、本発明は、マグネシウムイオン濃縮炭酸液が、大気圧付近、大気圧またはそれを超える圧力の投入CO
2含有ガス流が供給された1以上の反応器内で活性化ケイ酸マグネシウムを溶解し、その後、別の沈殿ステップにおいて、液体への部分真空または大気圧未満の圧力の印加による溶解したCO
2の除去によって液体中のpHシフトを誘発し、それにより炭酸マグネシウムが沈殿するすることにより生成される、プロセスを提供する。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、本発明のプロセスを実行するように構成される反応器システムを提供する。反応器システムは、1以上の溶解反応器、沈殿反応器、粒度分級機および粒度縮小装置を備える。粒度縮小分画を最初の溶解段階において使用された溶解反応器にリサイクルすることにより、単一の溶解反応器を使用して本発明を実践することが可能である。
【0043】
一実施形態において、溶解反応器を出るスラリーは、固体を液体から実質的に分離する分離機内で分離プロセスに供され、スラリーがマグネシウムイオン濃縮水性液を含む流れとマグネシウム枯渇固体残渣を含む流れとに分離される。次いで、固体残渣は、溶解反応に使用される前に、粒度分級および粗大分画の粒度縮小に供されてもよい。これは、粒度縮小分画の水性スラリーとしての再構成(reformulating)を含んでもよい。別の実施形態において、粒度分級は、溶解反応器を出るスラリーを使用して、すなわちマグネシウムイオン濃縮水性液からマグネシウム枯渇固体残渣を分離することなく行われる。
【0044】
しかしながら、別の実施形態において、システムは、例えば液体/固体分離プロセス等の、前処理および後処理ユニット操作と共に、直列または並列構成で配置された各種反応器の2つ以上を備えてもよい。この場合、各脱気/沈殿反応器内で遊離した二酸化炭素は、1以上の溶解反応器にリサイクルされ、プロセス効率を高めることができる。実施形態において、濃縮CO
2流を別々の反応器内で活性化鉱物供給原料と反応させて、または1以上の溶解反応器にリサイクルして、後続の脱気ステップを介して炭酸マグネシウムを形成することができ、それにより本発明の1つの有用な生成物としての炭酸マグネシウムの形成を最大化することができる。
【0045】
一実施形態において、粒度分級機は、1以上のハイドロサイクロンを含む。
【0046】
一実施形態において、粒度分級プロセスは、質量中央直径が10〜250ミクロン、好ましくは15〜100ミクロンの範囲内である粒子を含む粗大分画、および質量中央直径が1〜50ミクロン、好ましくは2〜20ミクロンの範囲内である粒子を含む微細分画をもたらし、粗大分画の質量中央直径は、微細分画の質量中央直径より、常に少なくとも5ミクロン大きい。一実施形態において、粒度分級プロセスは、質量中央直径が微細分画の質量中央直径より5〜200ミクロン、好ましくは15〜150ミクロン大きい粒子を含む粗大径分画をもたらす。
【0047】
一実施形態において、粒度縮小プロセスは、粗大分画中の粒子の質量中央直径を10〜99%、好ましくは30〜95%低減する。したがって、粒子の質量中央直径が100ミクロンである粗大分画は、1〜90ミクロン、好ましくは5〜70ミクロンの範囲内の粒子の質量中央直径を有するものまで低減される。
【0048】
一実施形態において、粒度縮小プロセスは、粉砕媒体を有する少なくとも1つの撹拌ミルを含む。
【0049】
一実施形態において、粒度分級の結果として得られた微細粒度分画は、第2の溶解反応器に供給され、圧縮された別のCO
2含有ガス流と接触する。この溶解反応器内では、鉱物からマグネシウムがさらに溶解する。この溶解反応器には、濃縮CO
2含有流を供給してもよく、これは微細粒子からマグネシウムをさらに溶解させる効果を有する。生成されたマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液は、次いで沈殿反応器に送出してもよい。一実施形態において、マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液は、別の溶解段階からの別のマグネシウムイオン濃縮水性液と合わされる。最初の溶解段階から得られたマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液は、微細な粒度縮小分画と共に後続の溶解反応器に送出することも可能である。溶解の効果は、溶液中の全マグネシウムイオン濃度を増加させることである。
【0050】
本発明は、以前の炭酸塩鉱物化プロセスに勝る大きな改善を提供し得、プロセス全体を予測され得るものよりもエネルギー的および経済的に有利にし、ひいては以前のプロセスより競争力のあるものにする。したがって、本発明は、二酸化炭素から安定な炭酸マグネシウムへの変換のより有利な手段を提供し得、それにより大気中に放出される二酸化炭素量の低減を可能にする。本発明の実施形態は、ex situ炭酸塩鉱物化に従来使用されていた条件と比較して、エネルギー的に有益な(圧力および温度の)操作条件下で実践し得る。本発明の実施形態は、従来のプロセスにおいて別途許容されていたものより高いレベルの酸性および/または他の不純物を含有する二酸化炭素含有ガス流を使用して実践し得る。
【0051】
ここで、以下の限定されない実施例を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0052】
<実施例1>
図1は、本発明の実施形態を例示するプロセスフローシートを示す。簡略化のため、中間の熱交換機、ポンプ、その他のプロセスユニットは省略されている。そのような中間のユニットは、プロセスのある特定の点で必要となることが、当業者に理解される。
【0053】
図1は、単一の溶解段階および単一の沈殿段階を有するプロセスを示す。これは、活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を生成するためにケイ酸マグネシウム鉱物供給流が加熱される活性化プロセス(1)、活性化鉱物の水性スラリーを供給するために水が活性化ケイ酸マグネシウム鉱物と混合されるスラリー補給槽(2)、スラリーがCO
2含有ガス流(3)と接触する溶解反応器(4)を示す。ここで、CO
2含有ガス流は、排ガス回収プロセスからの比較的高純度のCO
2を含む。ここで、ケイ酸マグネシウム鉱物供給流は、37ミクロンの質量中央粒子直径を有する。溶解反応器(4)を出るスラリーは、スラリーをマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液とマグネシウム枯渇固体残渣とに実質的に分離する分離機(5)に移される。固体残渣は粒度分級機(6)に供給され、これはアンダーフローとして示される粗大粒度流(coarse size particle stream)およびオーバーフローとして示される微細粒度流(fine size particle stream)を供する。ここで、粗大粒子流は、50ミクロンの質量中央粒子直径を有し、微細粒度流は、12ミクロンの質量中央直径を有する。
【0054】
粗大径粒子流は、粒度縮小(ミリング)プロセス(7)に供給され、質量中央粒子直径の80%の低減がもたらされ、したがって直径が10ミクロンまで低減され、次いでこの粒度縮小流は、鉱物からのマグネシウムのさらなる溶解のために溶解反応器(4)に戻される。
【0055】
分離機(5)からのマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液は、沈殿反応器(8)に供給され、そこで炭酸マグネシウムの沈殿が生じる。
【0056】
<実施例2>
図2は、本発明のさらなる実施形態を例示するプロセスフローシートを示す。簡略化のため、中間の熱交換機、ポンプ、その他のプロセスユニットは省略されている。そのような中間のユニットは、プロセスのある特定の点で必要となることが、当業者に理解される。
【0057】
図2は、20ミクロンの質量中央粒子直径を有する活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を生成するためにケイ酸マグネシウム鉱物供給流が粉砕される活性化プロセス(1)、活性化鉱物の水性スラリーを供給するために水が活性化ケイ酸マグネシウム鉱物と混合されるスラリー補給槽(2)、スラリーが大気圧を超えて圧縮しておいたCO
2含有ガス流(3)と接触する溶解反応器(4)を示す。ここで、CO
2含有ガス流は、8体積%のCO
2濃度を有する排ガスを含む。溶解反応器(4)を出るスラリーは、スラリーをマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液およびマグネシウム枯渇固体残渣に分離する分離機(5)に移される。固体残渣は粒度分級機(6)に供給され、これはアンダーフローとして示される粗大粒度流およびオーバーフローとして示される微細粒度流を供する。ここで、粗大粒度流は30ミクロンの質量中央粒子直径を有し、微細粒度流は6ミクロンの質量中央直径を有する。
【0058】
粗大粒度流は、粒度縮小(ミリング)プロセス(7)に供給され、質量中央粒子直径の60%の低減がもたらされ、それにより12ミクロンの質量中央粒子直径を有する粒度縮小流が生成され、次いでこの粒度縮小流は、スラリー補給槽(2)に戻され、したがってその後鉱物からのマグネシウムのさらなる溶解のために第1の溶解反応器(4)に返送される。
【0059】
この実施例では、粒度分級機(6)を出る微細粒子流は、シリカ濃縮固体を含む生成物流を構成する。この流れを、高価値生成物を生成するためにさらに処理してもよい。特に、これを、湿式磁気分離機内で処理して、有用な生成物となり得る鉄リッチ分画を除去してもよい。磁気分離後に残ったシリカリッチ分画は、別の有用な生成物ともなり得、または、例えば化学処理により、さらに処理もしくは精製してもよい。化学処理は、任意の残留金属の酸浸出を含んでもよい。
【0060】
分離機(5)から得られたマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液は、沈殿反応器(8)に供給され、そこで炭酸マグネシウムの沈殿が生じる。沈殿反応器(8)からの流出スラリーは、分離機(10)で固体リッチ流および液体リッチ流に分離される。固体リッチ流は第2の生成物流を構成し、ここでは、有用な生成物の1つである水和炭酸マグネシウム、ネスケホナイトを含む。ここで、温度等のプロセス条件の変更によって、異なる形態の水和炭酸マグネシウム生成物が生じ得る。
【0061】
この実施例では、沈殿反応器(8)からCO
2ガスが放出され、液体pHの増加をもたらし、マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液からの炭酸塩の沈殿を誘発する。放出されたCO
2は再圧縮され(9)、溶解反応器に再び供給される。
【0062】
<実施例3>
図3は、本発明のさらなる実施形態を例示するプロセスフローシートを示す。簡略化のため、中間の熱交換機、ポンプ、その他のプロセスユニットは省略されている。そのような中間のユニットは、プロセスのある特定の点で必要となることが、当業者に理解される。
【0063】
図3は、45ミクロンの質量中央粒子直径を有する活性化ケイ酸マグネシウム鉱物を生成するために、ケイ酸マグネシウム鉱物供給流が加熱および粉砕される活性化プロセス(1)、活性化鉱物の水性スラリーを供給するために、水が活性化ケイ酸マグネシウム鉱物と混合されるスラリー補給槽(2)、スラリーが、圧縮された(3)CO
2含有ガス流と接触する第1の溶解反応器(4)を示す。ここで、CO2含有ガス流は、炭化水素燃焼プロセスからの排ガスを含む。マグネシウムイオン濃縮炭酸液およびマグネシウム枯渇固体残渣を含み、溶解反応器(4)を出るスラリーは、ハイドロサイクロン粒度分級機(6)に移され、これはアンダーフローとして示される粗大粒度流およびオーバーフローとして示される微細粒度流を供する。ここで、粗大粒度流は、80ミクロンの質量中央粒子直径を有し、微細粒度流は、25ミクロンの質量中央直径を有する。
【0064】
粗大粒度流は、粒度縮小(ミリング)プロセス(7)に供給され、質量中央粒子直径の50%の低減がもたらされ、したがって直径が40ミクロンまで低減され、次いでこの粒度縮小流は、スラリー補給槽(2)に戻され、その後鉱物からのマグネシウムのさらなる溶解のために第1の溶解反応器(4)に返送される。
【0065】
微細粒子流は第2の溶解反応器(4A)に供給され、圧縮された(9)別のCO
2含有ガス流と接触する。この反応器内のCO
2は、本質的に純粋であり、したがって第1の溶解反応器(4)内のCO
2よりもはるかに高濃度である。第2の溶解反応器(4A)内では、鉱物からマグネシウムがさらに溶解する。第2の溶解反応器を出るスラリーは、分離ユニット(5)に供給され、そこでシリカリッチ生成物を含む固体残渣から水性液が分離される。分離されたマグネシウムイオン濃縮炭酸水性液は、一連の沈殿反応器(8)に供給され、そこで炭酸マグネシウムの沈殿が生じる。
【0066】
この実施例では、沈殿反応器(8)からCO
2ガスが放出され、液体pHの増加をもたらし、マグネシウムイオン濃縮炭酸水性液からの炭酸塩の沈殿を誘発する。放出されたCO
2は再圧縮され(9)、第2の溶解反応器(4A)に再び供給される。
【0067】
この実施例では、シリカ濃縮固体を含む分離機(5A)から生成物流が生成される。この流れは、高価値生成物を生成するためにさらに処理してもよい。特に、これは、有用な生成物となり得る鉄リッチ分画を除去するために、湿式磁気分離機内で処理してもよい。残留したシリカリッチ分画は、別の有用な生成物であってもよく、または例えば任意の残留金属の酸浸出により、さらに処理もしくは精製してもよい。沈殿反応器(8)を出るスラリーを分離機(10)内で固体リッチ流および液体リッチ流に分離することにより、沈殿反応器(8)から第2の生成物流が生成される。固体リッチ流は、水和炭酸マグネシウムを含み、別の有用な生成物を表す。
【0068】
<実施例4>
分離効率に関する経験的予測モデルの検証を可能にし、本発明により必要とされるようなスラリーのより粗大な分画およびより微細な分画への分離に関するハイドロサイクロンの有効性を実証するために、商業用ハイドロサイクロンを使用して、水中の粒子状活性化蛇紋岩鉱物を含むスラリーに対し試験を行った。
【0069】
ハイドロサイクロンリグは、それぞれ相互交換可能なオーバーフローおよびアンダーフロー出口サイズを有する直径1〜4インチの範囲の4つのサイクロンを収容する。この構成は、分離条件に柔軟性を与え、分離の目的に応じて異なる粒度での分離を可能にするために選択されたが、これはまた集められた実験データに基づいて調整可能であった。ハイドロサイクロンの実験計画は、サイクロンサイズ、オーバーフローおよびアンダーフローサイズ、固形分ならびに供給流速の全ての可能な組合せを使用して、ハイドロサイクロンの操作範囲の完全なマッピングを提供するように策定された。分割比、オーバーフローおよびアンダーフローの濃度、オーバーフローおよびアンダーフローの平均直径、ならびに粒度分布全体に対するこれらのパラメータの変更の影響を測定した。Plittの経験的モデルを使用して分離を予測し、実験結果を用いてモデル予測と比較した。
【0070】
提供されたサイクロンは、提供された異なるセットのオーバーフローおよびアンダーフローサイズを使用して、非常に異なる分離を供することが判明した。10m
3/時間および28質量%固体供給での4インチサイクロンにおける生成物の質量中央直径(d
50)および固形分に対するサイクロンオーバーフローおよびアンダーフロー出口サイズの影響を示す
図4に示されるように、サイクロンを1つだけ使用すると、使用されるオーバーフローおよびアンダーフロー出口のサイズに応じて粒度および固形分に関して極めて異なる分離を得ることができた。
【0071】
異なるサイクロンサイズおよび流速の範囲を用いた全範囲のプロセス条件を使用すると、さらにより異なる分離が得られた。分離条件の範囲にわたり集められたデータは、また、全般的に、このモデルが全ての変数について得られた分離を良好に予測したことを裏付けていた。このモデルを使用して、どの操作条件がある特定の所望の分離をもたらすかを決定することができると結論付けられた。
【0072】
次いで、このモデルを使用して予測する能力を、異なる供給流による別の試験セットで試験した。これは、非常に幅広い粒度分布を有する粗大供給スラリーを分離して、少なくとも80%の20ミクロン未満の粒子(p80)を有するオーバーフロー(微細)分画を得ることを目的として行った。これらの基準を使用して、分離のための最善の条件を成功裏に予測するためにモデルを使用した。試験は、7.5m
3/時間のスラリー流速および28質量%の固形分で、0.75インチのオーバーフローサイズおよび0.312インチのアンダーフローサイズを有する3インチサイクロンを使用した。分離は、測定オーバーフローサイズp80が12ミクロンという目標を達成した。
図5は、供給流、アンダーフローおよびオーバーフローの粒度分布と共に、アンダーフローおよびオーバーフローの予測粒度分布を示す。供給流は29.8ミクロンのp80を有し、オーバーフローは12.1ミクロンのp80を有し、アンダーフローは55ミクロンのp80を有していた。測定結果と予測結果とがほぼ一致していることは、本発明に従いハイドロサイクロンシステムを使用して実際に粗大粒子および微細粒子の所望の分離を確実に達成することが可能であることを示している。
【0073】
ここで生成されたより粗大な流(アンダーフロー)は、55ミクロンのp80を有し、本発明に従い、再粉砕プロセスに供してから溶解反応器にリサイクルすることができた。商業用撹拌ミルを使用して同様の流に対し試験を行い、粒度の実質的な低減の達成に成功した。より微細な流は、本発明に従い、第2の溶解反応器に向かわせることができた。
【国際調査報告】