(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-524860(P2021-524860A)
(43)【公表日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】消化酵素の腸内放出のための製剤、調製方法およびガレヌス製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/54 20060101AFI20210820BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20210820BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20210820BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20210820BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20210820BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20210820BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20210820BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20210820BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20210820BHJP
A61K 9/30 20060101ALI20210820BHJP
A61P 1/00 20060101ALN20210820BHJP
A61P 1/14 20060101ALN20210820BHJP
【FI】
A61K38/54
A61K47/44
A61K47/06
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/14
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/30
A61P1/00
A61P1/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2021-500358(P2021-500358)
(86)(22)【出願日】2019年3月14日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月17日
(86)【国際出願番号】FR2019050557
(87)【国際公開番号】WO2019180351
(87)【国際公開日】20190926
(31)【優先権主張番号】1870330
(32)【優先日】2018年3月23日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520364923
【氏名又は名称】エネアファーム
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】イウアラレン, カリム
(72)【発明者】
【氏名】レイナル, ローズ−アンヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
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4C084NA03
4C084NA13
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA691
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の消化酵素の製剤であって、製剤が固体脂質粒子を含み、
固体脂質粒子が、
− サイズが50μm〜1200μmであり、
− 厳密に疎水性であり、
− 水、有機溶媒、界面活性剤化合物およびポリマーを含有せず、
− 少なくとも1種の消化酵素、
− 厳密に疎水性の、非吸湿性のワックス状マトリックスを含み、
前記少なくとも1種の消化酵素が、
− 製剤の各固体脂質粒子中に均一に分布し、
− ワックス状マトリックスの内部に向かう分布勾配を伴わずに分布し、
− 製剤の質量の0.1%〜90%を占め、
製剤の融点が20℃〜65℃である、
製剤に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の消化酵素の製剤であって、製剤が固体脂質粒子を含み、
固体脂質粒子が、
− サイズが50μm〜1200μmであり、
− 厳密に疎水性であり、
− 水、有機溶媒、界面活性剤化合物およびポリマーを含有せず、
− 少なくとも1種の消化酵素、
− 厳密に疎水性の、非吸湿性のワックス状マトリックスを含み、
前記少なくとも1種の消化酵素が、
− 製剤の各固体脂質粒子中に均一に分布し、
− ワックス状マトリックスの内部に向かう分布勾配を伴わずに分布し、
− 製剤の質量の0.1%〜90%を占め、
製剤の融点が20℃〜65℃である、
製剤。
【請求項2】
固体脂質粒子が、サイズが150μm〜800μm、特に250μm〜550μmであることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
融点が20℃〜55℃であることを特徴とする、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
ワックス状マトリックスが、植物ワックス、ミツロウ、変性ミツロウ、パラフィンおよびパラフィン誘導体、オゾケライト、ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸エステル、トリグリセリド、トリグリセリド誘導体、パーム油ならびにカカオバターからなる群から選択される少なくとも1種の脂肪性物質からなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
脂肪酸または脂肪酸エステルを、製剤の0.5%〜75%の質量割合で含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
各固体脂質粒子が消化酵素を1種のみ含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
製剤が固体脂質粒子の混合物の形態であり、各固体脂質粒子が消化酵素を1種のみ含み、固体脂質粒子の混合物が消化酵素の混合物を形成することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製剤を含むガレヌス製剤であって、滑沢剤、均一化剤、薬学的に許容される結合剤、安定剤、分解剤、崩壊剤、着色剤、保存剤、甘味剤、希釈剤および増粘剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加化合物を含有することを特徴とする、ガレヌス製剤。
【請求項9】
前記追加化合物が、ガレヌス組成物における質量割合が約0.1%〜99%であることを特徴とする、請求項8に記載のガレヌス製剤。
【請求項10】
粉剤、錠剤、ロゼンジ剤、ゲルカプセル剤およびウエハーカプセル剤からなる群から選択される形態であることを特徴とする、請求項8または9に記載のガレヌス製剤。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製剤を調製するための方法であって、以下の工程:
− a/ワックス状マトリックスを撹拌しながら溶融した後、ワックス状マトリックスの温度を、ワックス状マトリックスの融点より少なくとも3℃高い温度に低下させる工程、
− b/前記少なくとも1種の消化酵素を、溶融したワックス状マトリックスに添加しおよび分散させる工程、
− c/形成された混合物を、ワックス状マトリックスの融点より少なくとも15℃低い温度に冷却することによって固化する工程、
− e/固化した混合物の融点より少なくとも10℃、好ましくは20℃低い温度で機械的粉砕を行い、それにより粉末形態の固体脂質粒子の製剤を形成する工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
予備粉砕工程d/を含むことを特徴とし、かつ固化工程c/、予備粉砕工程d/および粉砕工程e/のうち少なくとも1つの工程が、ドライアイスまたは液体窒素で冷却することによって行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の消化酵素の腸内放出のための製剤に関する。本発明は、少なくとも1種の消化酵素を胃の通過中に保護するためのおよび腸内消化機能をin vivoで回復させるための、胃保護製剤と呼ばれるこのような製剤を対象とする。
【0002】
FR2913884は、非イオン性疎水性ガレヌス系について開示している。
【0003】
本発明は、水を含有せず、界面活性剤を含有せず、乳化剤を含有せず、微量の溶媒も含有せず、微量のせん断減粘性親水性ポリマーも含有せず、膵外分泌活性の欠損を補って腸内で膵外分泌酵素活性を確立するための少なくとも1種の酵素を含有する、固体で厳密に疎水性の、非吸湿性の、非注射用脂質粒子形態のこのような胃保護製剤を対象とする。このような製剤、およびこのような製剤の経口投与を目的としたガレヌス形態は、膵外分泌不全を処置することを目的とする。
【0004】
膵外分泌不全(EPI)の処置は、膵臓による外分泌消化酵素産生の欠如を克服するために、膵酵素(PERT)またはパンクレアチンを経口投与することに基づく。
【背景技術】
【0005】
薬物であるパンクレリパーゼは、主に3つのクラスの酵素:リパーゼ、プロテアーゼおよびアミラーゼ、さらにそれらの種々の補助因子および補酵素の組合せである。これらの酵素は、膵臓で天然に産生され、脂肪、タンパク質および炭水化物の消化に必要である。薬用のパンクレリパーゼは、一般的にブタの膵腺から調製される。パンクレリパーゼの他の供給源、例えば、US6 051 220、US2004/0057944およびWO2006/044529に記載されるものを使用することができる。酵素は、脂肪のグリセロールと脂肪酸への、デンプンのデキストリンと糖への、およびタンパク質のアミノ酸とアミノ酸由来物質への加水分解を触媒する。天然の膵酵素は極端に酸感受性であり、したがって膵外分泌酵素を補うために膵酵素を経口供給すると問題が生じる。このような経口供給される酵素は、胃を通過する際に分解する。リパーゼは酸によって媒介される不活性化に最も感受性である。腸管に到達可能な消化酵素の経口投与を可能にするために、US8221747およびUS8246950に記載されるポリマーコーティングによる、種々の製剤化方法が業界で開発されている。
【0006】
コーティング技術または「ポリマーコーティング」は、特許WO00/30617およびWO02/092106に記載されるように、有効成分の周りに、それを外部媒体から隔離するようにポリマーまたは混合物の隔離化合物の外層を生成することからなる。この外層を作製するために、多数の天然または合成ポリマー化合物が使用されている。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース、CMC、HPMCフタレートなどのセルロース誘導体およびこれらの生成物の混合物だけでなく、アクリレートポリマーおよびその誘導体が主に顕著なものである。この技術は、徐放形態の調製および胃保護に関して興味深い結果をもたらした。このような水中製剤は依然として経時的に不安定であるため、シロップ剤および懸濁剤などの水性形態の調製とは適合しない。
【0007】
しかし、文献World J. Gastroenterol. 2014 September 7; 20(33): 11467-1148で指摘されるように、パンクレリパーゼに使用されるこれらの製剤には一定の難点がある。これらの製剤を使用した生成物の治療応答は低い。平均粒径は1.5mmより大きく、胃で食物との分離を生じ、腸管での混合を不十分にさせる。最後に、腸への酵素放出が不十分であり、非常に緩徐である。
【0008】
したがって、粒径が1.5mm未満であり、処置との良好なコンプライアンスを確保するために、患者、特に小児患者による容易な摂取と適合性である、パンクレリパーゼおよび/または膵酵素を迅速かつ完全に放出する腸溶製剤に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、これらの難点を克服することを対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明はまた、
− 胃で遭遇する状態からの消化酵素の保護(胃保護)、
− 味がマスキングされた即時水性形態の調製を可能とする、味のマスキング、
− 腸内への迅速な放出、
− 粘膜刺激作用のマスキング
を可能とする、消化酵素の投与のための新規な製剤を提案することを対象とする。
【0011】
本発明は、製剤、特に少なくとも1種の消化酵素の腸内放出のための製剤であって、製剤が固体脂質粒子を含み、
固体脂質粒子が、
− サイズが50μm〜1200μm(マイクロメートル)であり、
− 厳密に疎水性であり、
− 水、有機溶媒、界面活性剤化合物およびポリマー、特に表面ポリマーを含有せず、
− 少なくとも1種の消化酵素、特に、パンクレリパーゼ、膵酵素およびそれらのアナログからなる群から選択される少なくとも1種の消化酵素、ならびに
− 厳密に疎水性の、非吸湿性のワックス状マトリックスを含み、
前記少なくとも1種の消化酵素が、
− 製剤の各固体脂質粒子中に均一に分布し、
− ワックス状マトリックスの内部に向かう分布勾配を伴わずに分布し、
− 製剤の質量の0.1%〜90%を占め、
製剤の融点が20℃〜65℃である、
製剤に関する。
【0012】
本発明者らは、全く予想外なことに、厳密に疎水性の固体脂質粒子が、腸溶性の、すなわち、消化酵素の保護を可能とし、固体脂質粒子構造が胃相中で実質的に変更されない、膵消化酵素または膵酵素アナログを迅速に放出する製剤の調製に安定に使用できることを発見した。
【0013】
本発明による製剤は、経口送達される消化酵素を胃相中で保護すると同時に、腸消化管での迅速かつより完全な放出を可能とする能力を有することを特徴とする。リパーゼの存在にもかかわらず、系は依然として安定かつ機能性であると同時に、味および匂いをマスキングする。
【0014】
本発明は、腸内で膵外分泌酵素機能を再確立するための1種以上の酵素を含有する、固体で厳密に疎水性の脂質粒子形態の製剤に関する。
【0015】
本発明による固体脂質粒子形態の製剤は、
− 厳密に疎水性かつ非吸湿性のワックス状マトリックスを含み、
− 厳密に疎水性であり、胃保護されており、
− 微量の水性または有機溶媒も含有せず、
− 界面活性剤または両親媒性もしく洗浄剤化合物を含まず、
− ポリマー、特に表面ポリマーおよびこのようなポリマー剤の残留物を含まない
ことを特徴とする。固体脂質粒子は、このようなポリマーを使用する必要なく生成され、
− 前記少なくとも1種の消化酵素が、半径方向の勾配を伴わずにワックス状マトリックス中に均一に分布することを特徴とし、
− 生体適合性かつ腸内分散性であり、
− 非経口投与することができず、
− 単独でまたは混合物として、前記少なくとも1種の消化酵素、特にパンクレリパーゼ、または1種以上の膵酵素もしくは膵臓抽出物、または同様の酵素、ならびに任意選択で補助因子および補酵素を含有し、
− 胃保護をもたらす他に、前記少なくとも1種の消化酵素の安定性を向上させ、腸内への放出を促進すると同時に、味および匂いを確実にマスキングすることが可能である。
【0016】
有利には、製剤は固体脂質粒子のみからなり、固体脂質粒子は、少なくとも1種の消化酵素、および厳密に疎水性の、非吸湿性のワックス状マトリックスのみから形成される。
【0017】
有利には、固体脂質粒子は、サイズが150μm〜800μm、特に250μm〜550μmである。固体脂質粒子は厳密に疎水性であり、腸内の消化機能を再確立するための1種以上の酵素を含有する。
【0018】
有利には、製剤は、融点が20℃〜65℃、特に、融点が20℃〜55℃、好ましくは30℃〜50℃、さらにより好ましくは32℃〜48℃である。
【0019】
有利には、ワックス状マトリックスは、融点が20℃〜65℃、特に、融点が20℃〜55℃、好ましくは30℃〜50℃、さらにより好ましくは32℃〜48℃である。
【0020】
以下の記載では、用語「脂質粒子」および「脂質顆粒」は同じ意味を有すると理解される。
【0021】
毒性、生体適合性、免疫原性の欠如および生体分解性の点で経口吸収と適合性である、好適な組成を有するワックス状マトリックスが選択される。ワックス状マトリックスの成分は、形成される固体脂質粒子が、前記少なくとも1種の消化酵素を組み込む、味をマスキングする、安定化する、および放出する特性を有するように、食品医薬品局が発行するGRASリストに定義されるものなどの既に経口投与に使用されている成分から選択される。
【0022】
少なくとも1種の消化酵素は、パンクレアチンとしても公知のパンクレリパーゼである。本記載を通して、用語「パンクレリパーゼ」および「パンクレアチン」は、アミラーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼ酵素の複数種の酵素の混合物を表す。パンクレリパーゼまたはパンクレアチンは、膵臓から抽出することによって得ることができる。パンクレリパーゼまたはパンクレアチンは、人工的に生成することもでき、膵臓以外の供給源、例えば、微生物、植物または他の動物組織から得ることもできる。膵臓抽出物に由来する場合、パンクレリパーゼは補助因子を伴う。パンクレリパーゼは、例えば、Nordmark ArzneimittelまたはScientific Protein Laboratoriesから市販されている。
【0023】
有利には、かつ本発明によると、前記少なくとも1種の製剤化された消化酵素は安定化している。
【0024】
本発明による製剤の一実施形態では、前記少なくとも1種の消化酵素はリパーゼを含む。用語「リパーゼ」は、脂質のグリセロールと単純脂肪酸への加水分解を触媒する酵素を表す。
【0025】
本発明を実施するのに好適なリパーゼの例は、動物リパーゼ、例えば、ブタまたはウシ起源のリパーゼ、細菌リパーゼ、例えばシュードモナス属(Pseudomonas)菌由来のリパーゼ(シュードモナス属(Pseudomonas)リパーゼ)、真菌リパーゼ、植物リパーゼ、組換えリパーゼ、化学修飾リパーゼ、またはこれらの混合物を含む。
【0026】
本発明による製剤の一実施形態では、少なくとも1種の製剤化された消化酵素はアミラーゼを含む。用語「アミラーゼ」は、デンプン、例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、γ−アミラーゼ、酸性α−グルコシダーゼおよび唾液アミラーゼを分解するグリコシドヒドロラーゼ酵素を表す。
【0027】
本発明による製剤に使用することができるアミラーゼは、動物アミラーゼ、細菌アミラーゼ、真菌アミラーゼ、例えば、アルペルギルス(Aspergillus)菌由来のアミラーゼ、麹菌(Aspergillus oryzae)由来のアミラーゼ、植物アミラーゼ、化学修飾アミラーゼ、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0028】
本発明による製剤の一実施形態では、少なくとも1種の消化酵素はプロテアーゼである。用語「プロテアーゼ」は、タンパク質のアミノ酸間のペプチド結合を切断する酵素、例えば、プロテイナーゼ、ペプチダーゼまたはタンパク質分解酵素を表す。プロテアーゼは、それらの触媒型、例えば、アスパラギン酸ペプチダーゼ、システイン(チオール)ペプチダーゼ、セリンペプチダーゼ、スレオニンペプチダーゼ、アルカリまたはセミアルカリプロテアーゼ、中性プロテアーゼおよび新規のペプチダーゼによって一般的に特定される。
【0029】
本発明による製剤に使用することができるプロテアーゼの例として、プロテアーゼの種類を限定することなく、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼを挙げることができる。本発明による製剤は、単独でまたは混合物として、少なくとも1種の動物プロテアーゼ、少なくとも1種の細菌プロテアーゼ、少なくとも1種の真菌プロテアーゼ、少なくとも1種の植物プロテアーゼ、少なくとも1種の組換えプロテアーゼ、少なくとも1種の化学修飾プロテアーゼを含んでもよい。
【0030】
本説明では、用語「組換え酵素」は、DNA組換えによって、細菌、酵母、真菌、植物または動物の宿主細胞の中のいずれか1つから選択される好適な宿主細胞によって産生される酵素、あるいは酵素の天然の配列に相同もしくは実質的に同一であるアミノ酸配列を含む、または天然の酵素をコードする核酸に相同もしくは実質的に同一である核酸を含む組換え酵素を表す。
【0031】
本発明による製剤は、1種以上のリパーゼ、1種以上のアミラーゼ、1種以上のプロテアーゼ、酵素の種々の種類の1種または2種またはそれぞれを含む混合物を含んでもよい。
【0032】
一実施形態では、前記少なくとも1種の消化酵素は、種々のリパーゼ、例えば、リパーゼ、コリパーゼ、ホスホリパーゼA2、コレステロールエステラーゼ、プロテアーゼ、例えば、トリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼAおよび/またはB、エラスターゼ、キニノゲナーゼ、トリプシン阻害剤、アミラーゼならびに任意選択でヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼまたはデオキシリボヌクレアーゼを含むブタまたはウシの膵臓抽出物である。一実施形態では、前記少なくとも1種の消化酵素は、ヒトの膵液と実質的に同様の混合物である。また別の実施形態では、少なくとも1種の消化酵素はパンクレリパーゼUSPである。
【0033】
本発明の組成物および形態のリパーゼ活性は、投与単位用量あたり約100〜100000IU、特定の実施形態では500〜25000IUであってもよい。
【0034】
本発明による組成物のアミラーゼ活性は、治療単位または単位用量あたり100〜320000IU、好ましくは1500〜75000IUである。
【0035】
本発明の組成物または形態のプロテアーゼ活性は、単位用量あたり100〜180000IU、好ましくは1000〜80000IUであってもよい。
【0036】
一実施形態では、リパーゼ活性は約400〜500IUであり、アミラーゼ活性は約1750〜2750IUであり、プロテアーゼ活性は約1200〜2000IUである。
【0037】
一実施形態では、リパーゼ活性は約4000〜5000IUであり、アミラーゼ活性は約17500〜27500IUであり、プロテアーゼ活性は約12000〜20000IUである。
【0038】
別の実施形態では、リパーゼ活性は約10000〜12500IUであり、アミラーゼ活性は約22000〜90000IUであり、プロテアーゼ活性は約17000〜75000IUである。
【0039】
また別の実施形態では、リパーゼ活性は単位用量あたり約12500〜15500IUであり、アミラーゼ活性は約25000〜90000IUであり、プロテアーゼ活性は約26000〜100000IUである。
【0040】
また別の実施形態では、リパーゼ活性は単位用量あたり約17000〜25000IUであり、アミラーゼ活性は約40000〜185000IUであり、プロテアーゼ活性は約30000〜125000IUである。
【0041】
したがって、本発明の主題の1つは、腸内の膵外分泌酵素機能を再確立するための、固体脂質粒子の形態の、ワックス状マトリックス中の消化酵素の製剤である。
【0042】
本発明による製剤の固体脂質粒子のワックス状マトリックスは、非水溶性であり、室温で固体であり、界面活性剤化合物、溶媒残留物および水を全く含まない疎水性化合物、または疎水性化合物の混合物からなる。したがって、いかなる加水分解または酸化反応も回避される。例として、疎水性ワックス、または疎水性ワックス、植物ワックス、動物ワックスならびに合成および/もしくは鉱物ワックスの混合物を挙げることができる。ワックス状マトリックスは、融点、硬度、物理化学的特性および生体分解性などの生物学的特性を調整するために、少なくとも1種の油および少なくとも1種の疎水性化合物を含んでもよい。粒子は、可溶型もしくは不溶性添加剤、または鉱物粒子などの活性剤をさらに含有してもよい。本発明によると、融点が20℃〜65℃、好ましくは32℃〜48℃の混合物がワックス状マトリックスとして使用される。
【0043】
C8〜C30脂肪酸のトリグリセリド、分画トリグリセリド、変性トリグリセリド、合成トリグリセリド、トリグリセリド混合物、中鎖および長鎖トリグリセリドならびに構造化トリグリセリドが使用されてもよい。高分子量の脂肪アルコール、好ましくは直鎖および飽和の炭化水素系鎖を含む脂肪酸、C12〜30の偶数の炭素原子を含む脂肪酸、高分子量の酸およびアルコールのエステル、特にC8〜C30脂肪酸およびC2〜C32アルコールのエステルなどの他のワックスを使用することもできる。いずれの場合でも、得られる混合物は特に室温で固体であり、界面活性剤化合物を含まないこと、疎水性の挙動、非水湿潤性、および吸湿性がないことによって特徴付けられる。本発明に使用されてもよい脂肪酸は、中和されていない非イオン化脂肪酸(すなわち、−COOHのカルボン酸形態のみを取る)である。
【0044】
有利には、ワックス状マトリックスは、植物ワックス、特にカルナウバワックス、キャンデリラワックス、エスパルトグラスワックス、オリーブワックス、ライスワックス、ホホバワックス、水素添加ホホバワックスおよび花のアブソリュートワックス、ミツロウ、変性ミツロウ、パラフィンおよびパラフィン誘導体、オゾケライト、ポリオレフィン、中和されていない非イオン化脂肪酸(すなわち、−COOHのカルボン酸形態のみを取る)、炭素原子数が4〜30の直鎖脂肪酸のエステル、特にラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステルおよびステアリン酸エステルからなる群から特に選択される脂肪酸エステル、トリグリセリド、トリグリセリド誘導体、パーム油およびカカオバターからなる群から選択される、少なくとも1種の脂肪性物質を含み、特にそれからなる。
【0045】
ワックス状マトリックスは、リストを限定することなく、以下のトリグリセリドおよび誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のワックスを含み、特にそれのみからなる:トリベヘネート(tribehenate)、グリセリルトリブチレート、グリセリルトリカプロエート、グリセリルトリカプリレート、グリセリルトリカプレート、グリセリルトリウンデカノエート、グリセリルトリラウレート、グリセリルトリミリステート、グリセリルトリパルミテート、グリセリルトリステアレート、グリセリルトリミリストレエート、グリセリルトリパルミトレエート、グリセリルトリオレエート、グリセリルトリリノレエート、グリセリルトリリノレネート、グリセリルトリカプリレート/カプレート、グリセリルトリカプリレート/カプレート/ラウレート、グリセリルトリカプリレート/カプレート/リノレエート、グリセリルトリカプリレート/カプレート/ステアレート、グリセリルトリカプリレート/ラウレート/ステアレート、グリセリル1,2−カプリレート−3−リノレエート、グリセリル1,2−カプレート−3−ステアレート、グリセリル1,2−ラウレート−3−ミリステート、グリセリル1,2−ミリステート−3−ラウレート、グリセリル1,3−パルミテート−2−ブチレート、グリセリル1,3−ステアレート−2−カプレート、グリセリル1,2−リノレエート−3−カプリレート。パーム油、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、エスパルトグラスワックス、カカオバター、オゾケライト、オリーブワックス、ライスワックス、水素添加ホホバワックスまたは花のアブソリュートワックスなどの植物ワックスもまた挙げることができる。また、ミツロウおよび変性ミツロウが天然起源のワックスとして使用されてもよい。本発明に従って使用されてもよい脂肪酸は、酸の形態(すなわち、−COOHのカルボン酸形態)、例えば、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸である。これらの脂肪酸の塩は石鹸を形成するため、ワックス状マトリックスの濡れ性を促進することから、いかなる態様でも使用することができない。
【0046】
前記少なくとも1種の消化酵素のマトリックスへの溶解度または分散を向上するために、油の添加が必要なことがある。これによって融点を調整することができる。植物油、ある特定の魚油、水素添加植物油および部分的に水素添加された植物油などの油状トリグリセリドも挙げることができる。
【0047】
また、トリグリセリドから本質的になる「ハードファット(Fat hard)」と表される市販の医薬化合物が使用されてもよい。その中にモノグリセリドおよびジグリセリドの微量の残留物が存在する可能性があるため、この製品をマトリックスの出発材料として使用可能にするためには、厳密に疎水性かつ非濡れ性であることが実際に順守されているか、そのとき検査する必要がある。名称Suppocire(登録商標)AM、CM、DMおよびDの製品についても同様である。
【0048】
上述のワックスに加え、本発明による固体脂質粒子のワックス状マトリックスは、油または混合物、例えば、疎水性シリコーン油、スクアレン、それらの誘導体およびそれらのエステルを含有してもよい。
【0049】
オレイルアルコール、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、中和されていない非イオン化脂肪酸(すなわち、−COOHのカルボン酸形態)および脂肪アルコールなどの他の油状化合物が使用されてもよいが、得られる混合物は、疎水性の挙動、水との混和性がないことによって特徴付けられなければならない。当業者であれば、ワックス状マトリックスの成分について、ワックス状マトリックスの加熱による融点は種々の化合物の分解温度を超えてはならないことを理解している。
【0050】
パラフィンなどの他の化合物がワックス状マトリックスに添加されてもよい。タルク、カオリンまたはマイカ、着色剤ならびにワックス状マトリックスの外観、色、密度および硬度を調整するための薬剤などの充填剤を挙げることができる。ワックス状マトリックスは、ワックス状マトリックスに分散した形態もしくは溶解した形態であってもよい、もしくは両方の形態であってもよい消化酵素または消化酵素の混合物を含有する。
【0051】
本発明の特定の実施形態によると、ワックス状マトリックスは、ワックスの混合物から形成されてもよい。
【0052】
有利には、また本発明によると、製剤は、脂肪酸(中和されていない非イオン化、すなわち、−COOHのカルボン酸形態)または脂肪酸エステルを、製剤の0.5%〜75%、好ましくは製剤の1%〜30%の質量割合で含有する。本記載を通して、用語「脂肪酸」は、1種以上の中和されていない非イオン化脂肪酸(すなわち、−COOHのカルボン酸形態)を意味する。
【0053】
有利には、また本発明によると、各固体脂質粒子は消化酵素を1種のみ含む。
【0054】
有利には、また本発明によると、製剤は固体脂質粒子の混合物から形成され、各固体脂質粒子は消化酵素を1種のみ含み、固体脂質粒子の混合物は消化酵素の混合物を形成する。
【0055】
本発明はまた、本発明による製剤を含むガレヌス製剤に関する。
【0056】
有利には、ガレヌス製剤は、本発明による製剤、ならびに滑沢剤、特にタルク、均一化剤、特にシリカ、薬学的に許容される結合剤、安定剤、分解剤、着色剤、保存剤、甘味剤および増粘剤、特に少なくとも1種のセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の追加化合物を含む。
【0057】
有利には、前記追加化合物は、ガレヌス組成物における質量割合が約0.1%〜99%、好ましくは3%〜32%である。
【0058】
有利には、ガレヌス製剤は、粉剤、特に水を添加することによって分散体を再構成するための粉剤であって、サシェ剤、またはガラス製もしくはポリマー製もしくは金属製ボトルの形態のユニット容器または複数の容器に入った粉剤、錠剤、ロゼンジ剤、特に凍結乾燥によって得られるロゼンジ剤、ゲルカプセル剤またはウエハーカプセル剤、特に、ブリスターパックまたは包装袋に包装された錠剤、ロゼンジ剤、ゲルカプセル剤またはウエハーカプセル剤からなる群から選択される形態である。
【0059】
用語「活性化合物を含有する混合物」または「活性剤を含有するマトリックス」または「活性剤を含有する生成物」は、溶融後に、ワックス状マトリックスの構成成分、疎水性添加物および前記少なくとも1種の消化酵素を混合した結果物を表す。
【0060】
本発明はまた、本発明による製剤を調製するための方法に関する。
【0061】
好ましい実施形態では、製剤は、以下の工程を含む方法によって調製される:
− a/ワックス状マトリックスを撹拌しながら溶融した後、ワックス状マトリックスの温度を、ワックス状マトリックスの融点より少なくとも3℃高い温度に低下させる工程、
− b/前記少なくとも1種の消化酵素を、溶融したワックス状マトリックスに添加しおよび分散させる工程、
− c/形成された混合物を、ワックス状マトリックスの融点より少なくとも15℃低い温度に冷却することによって固化する工程、
− e/(前記少なくとも1種の消化酵素を含有するワックス状マトリックスの)固化した混合物の融点より少なくとも10℃、好ましくは20℃低い温度で機械的粉砕を行い、それにより粉末形態の固体脂質粒子の製剤を形成する工程。
【0062】
有利には、本発明による方法は、工程c/の終わりに形成される冷却された混合物を予備粉砕する工程d/を含む。
【0063】
本発明による方法では、工程a/で、添加物を溶融した後撹拌し、温度を、最終混合物の融点より少なくとも3℃、好ましくは5℃高い温度まで低下させることにより、疎水性マトリックスを調製する。
【0064】
工程b/で、溶融したマトリックスに消化酵素を添加しおよび分散させる。
【0065】
工程c/で、マトリックスを回収し、得られた混合物の融点より少なくとも15℃低い温度まで冷却することによって固化する。
【0067】
工程e/で、マトリックスの融点より少なくとも10℃、好ましくは20℃低い温度で粉砕を行う。
【0068】
工程f/で、粉砕されたパンクレリパーゼ粉剤を回収する。
【0069】
本発明による方法の工程b/では、前記少なくとも1種の消化酵素を、事前に溶融された、疎水性ワックス状マトリックスと呼ばれるワックス、またはワックスと厳密に疎水性である添加物との混合物に、有効成分として分散させる。前記少なくとも1種の消化酵素は、酸素および水とのいかなる接触からも、およびより一般的には、いかなる外部化学的ストレスからも保護される。前記少なくとも1種の消化酵素を、特にワックス状マトリックスの融点より少なくとも3℃、好ましくは5℃高いが、依然として前記少なくとも1種の消化酵素の分解温度または不活性化温度より低いワックス状マトリックスの温度で、ワックス状マトリックスに添加する。次に、前記少なくとも1種の消化酵素を含有する得られる液体ワックス状マトリックスを冷却することによって固化し、その後予備粉砕する。
【0070】
次に、固化された混合物を粉砕して、粒径が制御された、すぐに使用できる粉剤を得る。この固体脂質粒子の粉剤は、その厳密に疎水性の性質のために、消化酵素に対するいかなるリスクも伴わずに水に分散させることができる。
【0071】
したがって、この製剤の調製方法は迅速であり、消化酵素のいかなる化学修飾も、固体脂質粒子もしくは消化酵素の結晶のいかなる表面処理も必要としない。これは、消化酵素が、製剤の種々の構成成分の混合の全く最初の段階から製剤に組み込まれることを可能にする。これは、安価で実行が容易である。本発明による製剤を調製するための方法の実施は、いかなる乳化剤または両親媒性生成物の添加も伴わず、その除去が依然として常に困難であり、その使用がますます制限されているいかなる有機溶媒も必要としない。この方法は、いかなるせん断減粘性付与剤も用いない。この方法は、プロセスの間に水または水性組成物とのいかなる接触も伴わず、水溶性消化酵素のこの水性組成物への溶解および水溶性消化酵素の抽出を回避する。消化酵素は、前記粒子の表面にあったとしても、濃度勾配を伴わず、特に半径方向の濃度勾配を伴わずに、固体脂質粒子のワックス状マトリックスに一様に分布する。
【0072】
ワックス状マトリックスの種々の成分と前記少なくとも1種の消化酵素の混合は、サーモスタット調節反応器または溶融槽で行われる。すべての成分の分散に好適な機械的撹拌を用いて、最も融点が高いワックス状マトリックスの成分を最初に溶融する。
【0073】
したがって、このプロセスは迅速であり、長時間の困難な撹拌工程を必要としない。
【0074】
次に、混合物を直ちに冷却し、感受性の消化酵素を保護して、ワックス状マトリックスおよび消化酵素から形成された固相を得る。本発明の特定の実施形態によると、1kg未満の量では、分散した消化酵素を含有する溶融したワックス状マトリックスの冷却は、接触冷却プレートに広げることによって行われてもよい。120秒未満で固化が達成され、必要であればその後プレートを冷却室に入れて工程を遮断することができる。
【0075】
より多量の場合、連続冷却システムを通過させることで冷却を行ってもよい。溶融した生成物を、液滴、フィラメントまたはフィルムの形態で冷却室を通過するステンレス鋼ベルトコンベヤーに置き、冷却室の出口において固形で回収する。冷凍シリンダーを備えたものなどの他のシステムが使用されてもよい。
【0076】
マトリックスの冷却温度は、混合物の融点より少なくとも15℃低い温度に制御される。本発明の一実施形態によると、冷却温度は−195℃〜30℃、好ましくは−10℃〜5℃である。
【0077】
そして、ワックス状マトリックスを接触または対流によって冷却した後、予備粉砕システムに注ぎ、ミルに正確に供給するために、好ましくは40mm未満のサイズの断片を得る。この目的のために、予備粉砕または任意の他の好適なシステムが使用されてもよい。ある特定の固化された混合物は脆弱であり、1つの工程において同じ機械で、しかし異なる速度で予備粉砕および粉砕することができる。
【0078】
有利には、また本発明によると、固化工程c)、予備粉砕工程d)および粉砕工程e)のうち少なくとも1つは、ドライアイスまたは液体窒素で冷却することによって行われる。
【0079】
本発明による最終工程では、予備粉砕されたマトリックスを、粉砕によってサイズを縮小して粉剤にする。ハンマー、ナイフ、ローター、ボールまたはジェットミルなどの多数のミルを使用することができる。ワックス状マトリックスの粉砕を容易にするために、一実施形態は、マトリックスを冷却硬化して脆化することからなる。この操作は、粉砕工程の前または間に行われる。
【0080】
粉砕の終わりに得られるワックス状マトリックスを含む固体脂質粒子の粉剤は、直接包装することができる。本発明によるこの粉剤は、粒径が50〜1200ミクロン(μm)、好ましくは150〜800ミクロン(μm)である。好ましい実施形態では、粉剤は、粒径が250〜550ミクロン(μm)である。
【0081】
本発明による製剤の調製は、ワックス状マトリックスを液体またはゲル化水性相に分散する工程を伴わない。本発明による製剤および固体脂質粒子は、表面および深部に水を含まず、かつ前記少なくとも1種の消化酵素と相互作用し、その物理化学安定性に影響を及ぼし、貯蔵期間および充填度を低減させるおそれがあるいかなる水溶性ポリマーの残留物、特に水溶性表面ポリマー、特にせん断減粘性ポリマーも含まない。
【0082】
本発明はまた、本発明による製剤を含むガレヌス製剤を包含する。有利には、また本発明によると、ガレヌス製剤は、滑沢剤、均一化剤、薬学的に許容される結合剤、安定剤、分解剤、着色剤、保存剤、甘味剤および増粘剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加化合物を含有する。
【0083】
有利には、また本発明によると、前記追加化合物は、ガレヌス組成物における質量割合が約0.1%〜99%である。ワックス状マトリックスの充填容量は、重量に対して0.1%〜90%に及んでもよい。当業者であれば、これらの成分が本発明によるワックス状マトリックスに組み込まれるとき、方法が実行可能になるように好適な疎水性ワックス状組成物が選択されるべきであることを理解している。
【0084】
ガレヌス製剤は、粉剤、ゲルカプセル剤、ウエハーカプセル剤、錠剤、錠剤、特に口内分散性錠剤、ロゼンジ剤、特に凍結乾燥によって得られるロゼンジ剤、または水性懸濁剤などの従来のガレヌス形態であってもよい。ガレヌス製剤は、液体形態を得るために、サシェ剤またはボトルに包装された分散性粉末の形態で提示されてもよい。
【0085】
有利には、ガレヌス製剤は、滑沢剤、例えばタルク、均一性増強剤、例えばシリカ、薬学的に許容される結合剤、安定剤、分解剤、崩壊剤、着色剤、保存剤、甘味剤、希釈剤および増粘剤、例えばセルロース誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の追加化合物または添加剤を含有する。
【0086】
好適な結合剤の例としては、デンプン、ラクトース、糖アルコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、セルロース、変性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸などの糖、ポリビニルピロリドン(PVP)およびこれらの混合物が挙げられる。
【0087】
挙げることができる好適な崩壊剤の例には、第二リン酸カルシウム、アルギン酸、HPC、CMC、膨潤性イオン交換樹脂、アルギネート、ホルムアルデヒドカゼイン、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、セルロース、カルボキシメチルデンプンナトリウム、グリコール酸デンプンおよびこれらの混合物が含まれる。好適な滑沢剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、タルク、ワックス、Sterotex(登録商標)およびこれらの混合物が挙げられ;均一性促進剤の例としては、コロイド状二酸化ケイ素、タルクなどの粉末およびこれらの混合物が挙げられる。
【0088】
例として挙げることができる希釈剤には、微結晶性セルロース、例えばDFE Pharma製Pharmacel112、デンプン、リン酸カルシウム、Pharmatolなどのラクトース、スクロース、炭酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールおよびこれらの組合せが含まれる。別の実施形態では、本発明の経口組成物または経口投与形態は、微結晶性セルロース、デンプンおよびラクトースなどの希釈剤の組合せを含んでもよい。
【0089】
希釈剤の質量割合は、ガレヌス製剤の約0.1%〜99%、好ましくは3%〜32%であってもよい。
【0090】
別の実施形態では、本発明の経口組成物または経口投与形態は、微結晶性セルロースとデンプングリコール酸ナトリウム、またはクロスカルメロースナトリウムとクロスポビドンなどの分解剤の組合せを含んでもよい。
【0091】
崩壊剤の質量割合は、ガレヌス製剤の約0.1%〜25%、好ましくは0.5%〜6%であってもよい。
【0092】
本発明によって得られる粉剤は、単位形態または複数形態、例えば、袋、ボトル、サシェ剤またはブリスターパックの形態で包装されてもよい。
【0093】
本発明はまた、組合せでまたは別々に、上記または下記で言及される特性のすべてまたは一部によって特徴付けられる製剤、このような製剤を調製するための方法およびガレヌス製剤に関する。その与えられる正式な提示にかかわらず、別段明示的に示されない限り、上記または下記で言及される種々の特性は、厳密にまたは密接に互いに関連するとみなされるべきではなく、本発明は、これらの構造的もしくは機能的特性の1つのみ、またはこれらの構造的もしくは機能的特性の一部分のみ、またはこれらの構造的もしくは機能的特性の1つの一部分のみ、またはそうでなければ、これらの構造的もしくは機能的特性のすべてもしくは一部分の任意の群、組合せもしくは並列に関するものであり得る。
【0094】
本発明の他の目的、特性および利点が、本発明の可能性のある実施形態のいくつかに関する以下の説明、およびいかなる暗示的な限定も伴わずに示される実施例を読むことで明らかになる。
【0095】
以下の実施例は本発明を例示する。以下の実施例の一部では、10個の試料に対して味マスキングおよび匂いマスキング試験を行った。試験生成物は一度も吸収されていない。
【0096】
結果は以下の尺度に従って表される。
− 1.有効成分の味は検出されない、
− 2.有効成分の味がわずかに感知される、
− 3.有効成分の味が検出される、
− 4.有効成分の味は依然として許容される、
− 5.有効成分の味は許容されない。
【0097】
試験値は、最大合計10(/10)から得られる評点の平均を取ることによって計算する。
【0098】
リパーゼ活性は、国際薬剤師・薬学連合/欧州薬局方(以下FIP/Ph.Eurと略記する)の方法に従って決定する。この標準的な分析方法では、試験する試料のリパーゼの加水分解活性を、オリーブ油(USP)を基質として使用して決定する。オリーブ油のトリグリセリドから遊離した遊離脂肪酸を、水酸化ナトリウム溶液を用いて9.0の一定のpHで滴定する。試料のリパーゼ活性を、試料がオリーブ油エマルションを加水分解する速度と、参照標準である膵臓粉末の懸濁液が同じ条件下で同じ基質を加水分解する速度を比較することによって決定する。
【実施例】
【0099】
実施例1
安定化された、味マスキングされた、胃保護された迅速放出パンクレアチン製剤の調製
組成:
【0100】
融点が最も高い化合物を、5リットルのサーモスタット調節反応器内でその融点より5℃高い温度にし、種々の化合物を融点が最も高いものから最も低いものへと徐々に添加する。混合物の温度を徐々に下げ、得られた新規の混合物の融点、この場合48℃より3℃高い温度を維持する。パンクレアチンを最後に添加する。アンカー型スピンドルを備えた撹拌システムを200rpmの速度で使用して、溶融したワックス状マトリックスにパンクレアチンを分散させる。次に、T25Turraxターボミキサーを4500rpmで使用して6分間撹拌を行い、完全分散体を得る。
【0101】
パンクレアチンを含有するワックス状マトリックスを、温度0℃の、ドクターブレードを備えた回転シリンダーに注いで固化する。
【0102】
次に、回収した平均サイズ4mmの断片をドライアイスで冷却する。混合物を予備粉砕し、ステンレス鋼Retsch GMナイフミルを使用して粉砕する。
速度:3000(rpm)、
時間:90秒
粒径:平均直径565ミクロン(μm)。
【0103】
次に、パンクレアチンを含むこの粉剤を、味試験において評価する。味試験の結果は平均値1.20である。
【0104】
平均値が2未満であるため、パンクレアチンの味および匂いは検出不可能であり、さらに粘膜刺激の感覚が観察されない。
【0105】
実施例2
腸内への放出が促進された、胃保護された、安定化された、味マスキングされたパンクレアチンを含有する粉剤の調製
この製剤化は、膵外分泌不全を処置するための生成物の生成を目的とする。
【0106】
組成:
【0107】
実施例1に記載のプロトコールに従って粉剤を調製する。得られる粉剤は、味試験におけるスコアが1.2で、パンクレアチンの味が検出されないことによって特徴付けられる。
【0108】
得られる粉剤は、味試験におけるスコアが5で、顕著なミント味によって特徴付けられる。
【0109】
実施例3
消化酵素が充填された粒子を含有する、経口経路の水分散性粉剤の調製
組成:
【0110】
組成物の構成成分をTurbula粉末ミキサー(WAB France)に入れる。混合後、粉末を0.25g単位でサシェ剤に分割する。50mlの水に溶解し、水性分散体を再構成する。分散体に行った味試験では、有効成分は検出されない。
【0111】
実施例4
パンクレリパーゼを含有する粒子の調製
組成:
【0112】
融点が最も高い化合物であるDUB PPトリグリセリドを、500mlのサーモスタット調節反応器内で50℃にし、種々の化合物を融点が最も高いものから最も低いものへと徐々に添加する。混合物の温度を徐々に下げ、その後45℃に維持する。組成物の添加中、3枚刃インペラーの撹拌速度は100rpmである。
【0113】
パンクレアチンを最後に添加する。T25Turraxブランドのターボミキサー撹拌システムを6000rpmの速度で使用して、パンクレアチンを液相に分散させる。マトリックスを、直径55cmのステンレス鋼回転ドラムに注ぐことにより固化し、回転ドラムは温度−10℃に維持され、5rpmで回転し、表面で固化したマトリックスを取り外すための接線ブレードを備える。回収した平均サイズ25mmの断片を、ドライアイスを共充填したRetsch GM200ナイフミルを使用して、以下の条件で予備粉砕した後粉砕する:
− 予備粉砕:1500rpmで20秒
− 粉砕:3000rpmで70秒
【0114】
このようにして得られる粒子は、平均サイズが482ミクロン(μm)である。
【0115】
0.1Nの塩酸溶液での安定性試験:時間の関数としてのリパーゼの活性の変化をモニタリングすることにより、製剤の安定性を決定する。結果を時間の関数として初期活性に対するパーセンテージとして表し、以下の表1に並べる。リパーゼ活性は、0.02NのNaOH溶液を添加することによってpH7に中和した後で決定する。
【0116】
本発明に従って製剤化されるパンクレアチンは、撹拌しながら(30rpm)、0.1Nの塩酸媒体中37℃で1時間インキュベーション後、そのリパーゼ活性を少なくとも95%保持する。
【0117】
腸内pH条件下でのリパーゼの放出速度試験。オリーブ油のトリグリセリドから遊離した脂肪酸を、9.0の一定のpHで37℃において溶液(0.02NのNaOH)を用いて滴定することによって加水分解し、リパーゼ活性を測定する。基質は、400mlの調製に適合した「FIP リパーゼ」プロトコールに従って調製した薬局方のオリーブ油溶液である:
− 基質240ml、そのうち24.5%のオリーブ油はアカシアガムで乳化した;
− H
2Od:140ml
− タウロコール酸ナトリウム溶液(0.5%):20ml
− パンクレアチン量:500IU。
【0118】
結果を下の表2に並べる。結果は遊離した脂肪酸のミリモル(mmol)で表す。
【0119】
20分で、本発明による製剤5では、「腸溶コーティング」と呼ばれるコーティングに基づく市販のパンクレアチン製剤より4倍高い量の脂肪酸が遊離する。
【0120】
本発明は、上述のもの以外の多数の変形形態および適用の対象となり得る。特に、言うまでもなく、別途指示がない限り、上述の実施形態のそれぞれの種々の構造的もしくは機能的特性は、互いに組み合わされるおよび/または厳密かつ/もしくは密接に関連するとみなされてはならず、対照的に、単純な並列とみなされなければならない。さらに、上述の種々の実施形態の構造的および/または機能的特性は、任意の異なる並列または任意の異なる組合せの完全または部分的な対象となり得る。
【国際調査報告】