特表2021-524983(P2021-524983A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-524983溶融流体電極装置における熱暴走状態を緩和するための装置、システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-524983(P2021-524983A)
(43)【公表日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】溶融流体電極装置における熱暴走状態を緩和するための装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/39 20060101AFI20210820BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20210820BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20210820BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20210820BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20210820BHJP
【FI】
   H01M10/39 Z
   H01M4/40
   H01M4/38 Z
   H01M10/613
   H01M10/615
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-563482(P2020-563482)
(86)(22)【出願日】2019年4月12日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月9日
(86)【国際出願番号】US2019027356
(87)【国際公開番号】WO2019221860
(87)【国際公開日】20191121
(31)【優先権主張番号】15/982,494
(32)【優先日】2018年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520421950
【氏名又は名称】ビサーズ バッテリー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】特許業務法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】テノーリオ、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ビサーズ、ダニエル、アール
【テーマコード(参考)】
5H029
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK05
5H029AL12
5H029AL13
5H029AM11
5H029BJ22
5H029CJ02
5H029CJ30
5H029DJ02
5H029HJ14
5H031AA05
5H031CC05
5H031HH06
5H031KK00
5H031KK06
5H050AA19
5H050BA19
5H050CA11
5H050CB12
5H050GA02
5H050GA28
5H050GA29
5H050HA14
(57)【要約】
熱暴走緩和システムは、熱電池内の熱暴走を防止するために熱電池内の流体電極材料を冷却する。熱暴走トリガーに応答して、該熱暴走防止システムは、流体正極材料及び流体負極材料の少なくとも一方を冷却する。いくつかの状況では、該流体電極材料を十分に冷却し、該電極材料を固体状態にする。
【選択図】【図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体負極材料及び流体正極材料を含む、流体電極材料
流体負極材料の少なくとも一部から形成された流体負極、流体正極材料の少なくとも一部から形成された流体正極、及び前記流体負極と流体正極との間の固体電解質を含む、反応チャンバ、
前記流体負極及び流体正極を流体状態に維持するように構成された、加熱システム、及び
熱暴走トリガーに応答して、前記流体電極材料の少なくとも一部を冷却するように構成された、熱暴走緩和システム
を含む、装置。
【請求項2】
前記熱暴走緩和システムが、前記流体電極材料の少なくとも一部を該流体電極材料の少なくとも一部の融点より低い温度に冷却し、前記流体電極材料の少なくとも一部を固体状態にするように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記熱暴走緩和システムが、前記流体負極材料の少なくとも一部及び前記流体正極材料の少なくとも一部を冷却するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記熱暴走緩和システムが、前記流体負極材料の少なくとも一部を該流体負極材料の少なくとも一部の融点より低い負極凍結温度に冷却し、前記流体正極材料の少なくとも一部を該流体正極材料の少なくとも一部の融点より低い正極凍結温度に冷却するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記熱暴走緩和システムが、前記冷却伝熱流体が前記少なくとも一部の流体電極材料と熱伝導することを可能にする領域に冷却伝熱流体を導くように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記反応チャンバを収容し、前記流体電極材料の少なくとも一部と熱伝導する電池筐体をさらに含み、ここで前記熱暴走緩和システムが、前記冷却伝熱流体を該電池筐体と熱伝導する領域に導くように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記熱暴走緩和システムが、
前記電池筐体と熱伝導する、伝熱要素、及び
前記熱暴走トリガーに応答して冷却伝熱流体を前記伝熱要素に導くように構成された、冷却伝熱流体送出機構
を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記熱暴走緩和システムが、
熱少なくとも1つのパラメータに基づいて暴走トリガーが発生したこと決定するように構成された、制御部
をさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのパラメータが、少なくとも1つの電池動作パラメータを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの電池動作パラメータが、温度、電圧、電流、水分、圧力及び電力出力のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのパラメータが、少なくとも1つの環境パラメータを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの環境パラメータが、温度、湿度、圧力、非加速、加速、電池の接地方向及び外部システムによって提供される値のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記伝熱要素が、前記電池筐体と熱伝導する冷却コイルを含み、前記冷却伝熱機構が、前記熱暴走トリガーに応答して前記冷却伝熱流体を前記伝熱要素を通って導くように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項14】
前記流体電極材料の少なくとも一部が、前記反応チャンバの中にある、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記流体電極材料の少なくとも一部が、前記反応チャンバの外にある、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記流体電極材料の少なくとも一部が、電極材料リザーバの中にある、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記流体電極材料の少なくとも一部が、流体電極材料を電極材料リザーバから反応チャンバに移動させるように構成された流体電極送出システムの中にある、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記流体電極材料の少なくとも一部が、前記装置内の前記流体電極材料の全てを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記流体負極がリチウムを含み、前記流体正極材料が硫黄を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記固体電解質が、ヨウ化リチウムを含む、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記熱暴走緩和システムが、前記熱暴走トリガーに応答して、前記流体負極の少なくとも一部を600°F(315.5℃)より低い温度に冷却するように構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記流体負極がナトリウムを含み、前記流体正極材料が硫黄を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
熱電池の電極材料を加熱し、該電極材料を流体状態にするように構成された、加熱システム、及び
熱暴走トリガーに応答して、前記電極材料の少なくとも一部を冷却するように構成された、熱暴走緩和システム
を含む、装置。
【請求項24】
前記電極材料が、流体負極材料及び流体正極材料を含み、前記装置が、前記流体負極材料の少なくとも一部から形成された流体負極、前記流体正極材料の少なくとも一部から形成された流体正極、及び該流体負極と該流体正極との間の固体電解質を含む、反応チャンバをさらに含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記熱暴走緩和システムが、前記流体電極材料の少なくとも一部を該流体電極材料の少なくとも一部の融点より低い温度に冷却し、前記流体電極材料の少なくとも一部を固体状態にするように構成されている、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記熱暴走緩和システムが、前記流体電極材料の少なくとも一部を、燃焼温度より低い温度に冷却するように構成され、ここで該流体電極材料が空気中で可燃性である、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
電極材料の融点より高い温度に加熱されたときに熱電池内の流体電極を形成する電極材料を該電極材料の融点より高い温度に加熱すること、
少なくとも1つのパラメータを評価し、熱暴走トリガーが満たされたか否かを決定すること、及び
熱暴走トリガーが満たされたことの決定に応答して、前記電極材料をその融点より低い温度に冷却すること
を含む、方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つのパラメータが、少なくとも1つの電池動作パラメータを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの電池動作パラメータが、温度、電圧、電流、水分、圧力及び電力出力のうちの少なくとも1つを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのパラメータが、少なくとも1つの環境パラメータを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの環境パラメータが、温度、湿度、圧力、非加速、加速、電池の接地方向及び外部システムによって提供される値のうちの少なくとも1つを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記電極材料が、リチウムを含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
本願は、シリアル番号15/982,494の米国特許出願「溶融流体電極装置における熱暴走状態を緩和するための装置、システム及び方法」(2018年5月17日に出願、代理人整理番号VBC005号)の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の技術分野】
【0002】
本発明は、一般に流体電極を備えた高温電池に関し、より具体的には溶融流体電極を備えた高温電池における熱暴走状態を緩和する方法、装置及びシステムに関する。
【発明の背景】
【0003】
一般的には、電池は正極(cathode)、負極(anode)及び電解質を含む。典型的には、電池はその電極内に電池の端子へ電流を導く集電体を含む。電極材料を加熱し、一方または両方の電極が流体状態に維持される電極として流体を使用する試みがなされてきた。これらの電池は、しばしば熱電池または高温電池と呼ばれる。例えば、該装置は、しばしば液体-金属電池や再充電可能な液体-金属電池と呼ばれる。残念ながら、数十年の研究開発にもかかわらず、例えば、ナトリウムと硫黄、またはリチウムと硫黄のような高重量エネルギー密度(kWh/kg)の電気化学的結合を用いた安全な、かつ信頼性できる熱電池はまだ製造されていない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
理解すべきこととして、図面は単に例示のためのものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。さらに、該図面中の構成要素は必ずしも縮尺どおりではない。該図面には、同様の参照番号は異なる視点からの対応部分を示す。
【0005】
図1】は、熱暴走防止システムと共に使用するのに適した電池装置の例のブロック図である。
【0006】
図2】は、熱電池のための熱暴走防止システムの例のブロック図である。
【0007】
図3A】は、伝熱要素が冷却コイルを含む管状構造を有する電池の例の側面図である。
【0008】
図3B】は、伝熱要素が冷却コイルを含む管状構造を有する電池の例の図3A中の線A-Aに沿った断面からとった正面図である。
【0009】
図3C】は、伝熱要素が冷却コイルを含む管状構造を有する電池の例の図3B中の線B-Bに沿った断面からとった側面図である。
【0010】
図4】は、伝熱要素が冷却コイルを含み、加熱システムが加熱コイルを含む管状構造を有する電池の側面図である。
【0011】
図5A】は、伝熱要素が冷却コイルを含む平面式熱電池の平面式管状構造の例の斜視図である。
【0012】
図5B】は、該電池の断面の正面図である。
【0013】
図6】は、伝熱要素が冷却コイルを含み、加熱システムが加熱コイルを含む平面構造を有する該電池の斜視図である。
【0014】
図7】は、少なくとも一つの電極材料の一部が電極材料リザーバ内に維持される熱暴走緩和システムを備えた高温電池システムの例の図解である。
【0015】
図8A】は、電池筐体がドーナツ状をしている電池例の斜視図である。
【0016】
図8B】は、電池筐体がドーナツ状をしている電池例の断面の正面図である。
【0017】
図8C】は、電池筐体がドーナツ状をしている電池例の断面の正面図である。
【0018】
図9】は、熱電池における熱暴走を緩和するための手順の例のフローチャートである。
【発明の詳細な説明】
【0019】
熱電池は、他種の電池よりもいくつかの利点を有する。熱電池(高温電池)の比較的低コスト、高エネルギー密度及び高電力密度は、これらの種類の電池をいくつかの用途にとって非常に魅力的である。残念ながら、装置の安全性上の問題により、これらは広く採用されていない。熱電池は、高エネルギー化学のため、火災及び爆発の危険性を有してきた。従来の熱電池の設計では、第3材料によって分離された流体(即ち、溶融)材料の2つのプールが含まれる。もし該第3材料が故障し、溶融した材料が混合して反応することが可能になれば、短時間に大量な熱エネルギーが放出される。これらの状態は、しばしば危険な火災または爆発をもたらす。第二次世界大戦中に熱電池が始まった以来、安全な熱電池に対する需要が存在しているが、この厳しい制限は依然として今日も続いている。数十年の試みはなされてきたが、結果としてこの問題に対する適切な解決策はまだない。例えば、いくつかの試みとして、重力フロー電池の設計では、溶融活性物質の1つが、より小さな反応チャンバの物理的に上方に位置する大きなリザーバに含まれ、該反応チャンバの壁が固体電解質である。該固体電解質の他方の側には、他の溶融活性物質の大きなリザーバがある。該固体電解質が故障し、2つの溶融活性物質が混合できる場合には、2つの溶融活性物質が混合した際の化学反応によって形成される固体生成物が、他の溶融活性物質の他の大きなリザーバと物理的に上に位置する大きなリザーバからの活性物質の流れを制限することが期待される。この重力フロー電池設計の試みは失敗した。なぜなら、上部リザーバからの流れを遮断するように意図された固体生成物が、熱電池の動作温度では充分に速く合体しない。従って、2つの溶融活性物質の混合は、該設計によって遅くなるのみで、熱暴走事象を防止するのに不十分である。他の試みとして、固体電解質の故障が熱暴走事象を引き起こさないように、化学的に溶融活性材料を金属ハロゲン化物に変更することである。残念ながら、該技術は、特定のエネルギー密度(kWh/kg)及び体積エネルギー密度(kWh/l)を減少させるコストになるため、多くの用途にとって熱電池が実施可能な解決策ではなくなった。
【0020】
熱電池に関する研究はこの高い危険性に拒まれてきた。例えば、1993年ある大手自動メーカーが熱ナトリウム-硫黄電池を使用した電気自動車車両を開発した。試験中、充電の際に車両2台が炎上した。この火災のため、該メーカーは熱ナトリウム-硫黄電池のプログラムを終了させた。また、安全な熱電池が電気自動車産業及び他の産業に提供され、多大な利点を有することにもかかわらず、米国エネルギー部門が熱電池に関する研究への援助を終了させた。火災の危険性を抑えることができれば、熱電池が比較的な軽量及び低コストであるため、これらの装置は、明らかに電気自動車への応用の最良の選択である。
【0021】
本明細書に記載の技術によれば、熱電池の熱暴走事象の可能性を防止または少なくとも緩和するために、その火災の危険性は、電池の少なくとも一部を冷却することによって最小化される。潜在的な熱暴走状況を検出した場合に応答して、少なくとも1つの電極材料の融点より低い温度を有する冷却伝熱流体が、電池内の1つ以上の領域に誘導され、少なくとも1つの電極材料を冷却させ、またはその温度を制限する。一例では、少なくとも1つの流体電極は、流体電極材料の融点以下に冷却され、凍結になる(即ち、電極材料を固体状態にする)。
【0022】
従来の電池の性能を最適化するために、温度管理及び冷却技術が提案されている。しかし、従来の冷却技術は、電極材料が固体から液相に加熱される相転移流体電極を有する装置には対処していない。より具体的には、従来の冷却技術は、相転移流体電極を含む熱電池における熱暴走事象を防止または停止する目的で実施していない。数十年の研究にもかかわらず、熱電池の危険性に関する懸念事項に関して、少なくとも1つの流体電極材料を冷却することによって、熱流体電極の電池における熱暴走事象を回避することは示唆されていない。
【0023】
図1は、熱暴走防止システム101と共に使用するのに適した電池装置100の一例のブロック図である。この例では、電池装置100は、固体電解質108によって分離された流体電極104と106を有する反応チャンバ102を含む。図1の図解は、本例の一般原理を示し、特定の形状、相対寸法、距離、または表現された構成要素の他の構造的詳細を必ずしも表すものではない。いくつかの状況では、2つ以上のブロックの構造は、単一の構成要素または構造で実施することができる。さらに、図1の単一のブロックで実施されるように記載された機能は、別の構造で実施されてもよい。図1の電池装置100は、熱暴走防止システム101との使用に適した電池の一例である。図1の例では、両電極が加熱されて流体状態になるが、いくつかの他の状況では、電極のうちの一方のみが加熱されて流体状態になってもよい。
【0024】
本明細書で検討されるように、材料が、ある領域から別の領域へと流れることを可能にするため、十分に液化された持続性を有するときに、流体状態にある。言い換えると、流体材料の粘度は、該材料がある領域から別の領域へと誘導され、圧送され、または流れることができるようなものである。しかし、流体材料は、少なくとも部分的に固体であるいくつかの成分を有してもよく、一方、他の成分は液相にある。その結果、流体材料は、必ずしも全てが液相にある必要はない。本明細書で検討されるものとして、材料は、それが流れないように十分に固化されている非流体の状態にある。言い換えると、非流体状態にある材料の粘度は、該材料が、ある領域から別の領域へと誘導されないか、圧送されないか、または流れないようなものである。しかし、非流体材料は、他の成分が固相にあることと同時に、液相にもあるいくつかの成分を有してもよい。本明細書で参照されるように、固体電解質は、固体相にある電解質構造を形成する任意の材料、混合物、化合物、または他の材料との組み合わせである。本例は固体電解質を含むが、検討された技術を用いていくつかの状況で他種の電解質を使用することができる。
【0025】
電池装置100は、少なくとも固体電解質108で負極領域110から分離された負極領域110と正極領域112を有する反応チャンバ102を含む。負極領域110は、負極材料114を含み、正極領域112は、正極材料116を含む。加熱システム118は、動作中に、反応チャンバ102内の正極材料及び負極材料を加熱する。本明細書の例では、固体電解質108を固体状態に維持しながら、電極材料114と116を加熱して電池100を動作させる際に、電極材料114と116を流体状態に維持する。従って、反応チャンバの動作温度は、本例の固体電解質108の融点よりも低い。加熱システム118は、電極材料114と116を流体状態にするために反応チャンバ102の加熱を促進する1つ以上の加熱要素を含む電気加熱システムであってもよい。いくつかの状況では、他種の加熱システム118を使用することができる。以下に説明するように、例えば、加熱伝熱流体を搬送する加熱コイルを使用し、反応チャンバを含む電池筐体を加熱することができる。従って、加熱システムは、固体電解質108が固体状態に維持されながら、負極材料114及び正極材料116が流体状態になるように反応チャンバを加熱する。
【0026】
固体電解質108は、少なくとも負極材料114の陽イオン、及び比較的大きくて、かつ反応チャンバ102内の材料に対して化学的に安定であるように選択された陰イオンを含む。負極材料114のいくつかの例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムが含まれる。陰イオンのいくつかの例としては、塩素、臭素及びヨウ素の陰イオンが含まれる。いくつかの状況では、他の材料、例えば、陰イオンがより複雑なベータアルミナ及びベータ"アルミナを使用することができる。
【0027】
負極領域110内の流体負極材料114は、電池100の流体負極104を形成する。正極領域112内の流体正極材料116は、電池100の流体正極106を形成する。流体電極104と106及び電極材料は、一つ以上の要素を含んでもよい。例えば、正極領域112は、電池100の動作から生じるいくつかの反応生成物を含んでもよい。第1集電体120は、流体負極104内に配置され、第2集電体122は、流体正極106内に配置される。各電極104、106内の適切に配置された集電体120と122によって、電気エネルギーは、固体電解質108を介して、流体負極104と流体正極106の間の電池内で発生する電気化学反応から利用され得る。従って、図1の例における反応チャンバ102の動作は、従来の熱電池の動作と類似している。しかし、従来の熱電池に優る重要な利点としては、電池が熱暴走事象になること、またはその継続を防止する熱暴走防止システム101を含むことである。少なくとも1つの流体電極材料は防止温度に冷却され、それによって、電池内の任意の材料または電池内の任意の材料と電池の外部の任意の材料との間の望ましくない反応が安全な閾値に妨げられる。一例では、各電極材料は、電極材料の融点以下に冷却され、両方の電極材料が凍結する。即ち、反応チャンバ内の電極材料は、電極材料を固体状態にするために十分に冷却される。いくつかの状況では、電極材料は、電極材料の融点温度よりも高いが、望ましくない反応が起こりにくい防止温度より低い温度に冷却される。リチウム流体電極を備えた電池装置100の一例では、リチウムを含む電極材料は、600°F(315.5℃)以下の温度に冷却される。溶融リチウムは、600°F(315.5℃)より低い温度の空気中では燃焼しないが、600°F(315.5℃)の温度、またはそれより高い温度の空気中では燃焼する。従って、いくつかの状況では、リチウム電極材料を600°F(315.5℃)以下の温度に冷却することは、リチウムを空気と反応させないように保護するのに十分であり、熱暴走状態を回避するか、または少なくとも最小化するのに十分である。冷却される電極材料としては、電池システム内の任意の場所にある電極材料が含まれてもよい。電池が、電池100内の他の構成要素中の流体電極材料を含む場合には、それが、反応チャンバ内にのみのものではない。
【0028】
上述したように、電池装置100は、異なる材料及び電気化学結合を用いて実施することができる。一例では、負極はリチウム(Li)を含み、正極は硫黄(S)を含む。このような実施形態における好適な固体電解質108の一例は、ヨウ化リチウム(LiI)である。他の例では、ナトリウム-硫黄(Nas)電池はナトリウム(Na)を含む流体負極及び硫黄(S)を含む流体正極を含む。他の材料も電極に使用することができる。さらに、いくつかの状況では、電極材料は、複数の元素を含む混合物または化合物を含んでもよい。例えば、一部の液体金属電池では、流体正極として硫黄とリンの溶融混合物を用いることができる。
【0029】
負極領域及び正極領域の動作温度または温度範囲は、いくつかの要因に基づいて選択することができる。例えば、負極材料の融点、正極材料の融点、負極材料の沸点、正極材料の沸点、正極材料と得られる化学種の共晶点、及び固体電解質の融点。本明細書で検討される例の場合、固体電解質108にわたるの温度勾配を回避するために、加熱システム118は、反応チャンバ102の負極領域110及び正極領域112を同じ温度に維持する。いくつかの状況では、反応チャンバの2つの領域を異なる温度に維持してもよい。
【0030】
本明細書で検討されるように、熱暴走事象は、電池内の温度を増加させるのに十分な熱を放出する電池材料のうちの少なくとも1つで望ましくない反応が起こる事象であり、電池の材料のさらなる望ましくない反応または望ましくない相変化を促進するあらゆる事象である。例えば、熱暴走は、さらなる望ましくない反応につながる可能性のある電池の構造を溶融することができる。いくつかの状況では、反応は非常に迅速に起こり、破滅的な結果を引き起こす可能性がある。熱暴走事象の一例では、電池内の分離成分の破損は、流体正極材料が流体負極材料と混合することを可能にする。例えば、固体電解質中の破損は、2つの電極材料を混合させることができる。2つの材料間の発熱反応は、しばしば火災につながる熱量を放出する。いくつかの状況では、熱暴走事象は、電池の外部の水または酸素と反応する流体電極から生じ得る。電池の動作中に、熱暴走防止システム101は、1以上のパラメータを監視して、熱暴走防止措置を開始すべきか否かを判断する。1つまたは複数のパラメータは、測定及び/または計算されたパラメータであってもよく、電池動作及び環境パラメータに関連する電池動作パラメータであってもよい。監視できる電池動作パラメータのいくつかの例には、温度、電圧、電流、水分、圧力、電力出力、及びこれらのパラメータの経時的または電池の部分にわたる変化が含まれる。環境パラメータのいくつかの例には、水の存在、外部温度、電池の脱加速度/加速度、電池の接地方向、電池を収容する車両の車両システムのような電池に関連する他のシステムによって提供される外部パラメータが含まれる。例えば、車両システムは、車両の事故検出及び急速な減加速度に関連するパラメータを提供することができる。基準は、熱暴走事象トリガーが発生したか否かを決定するために、測定されたパラメータの組合せ及び数、及び/または任意の数の計算値のいずれにも適用される。従って、熱暴走トリガー事象または危険事象が発生したか否かを決定するために、一つ以上のパラメータが評価される。比較的簡単な状況では、例えば、流体電極の温度が閾値を超えた場合、熱暴走防止システム101は、熱暴走トリガー事象が発生したことを決定する。熱暴走トリガー事象が発生したとの判定に応答し、熱暴走防止システム101は、電池装置100の少なくとも一部を冷却することを含む熱防止手順を開始する。
【0031】
図2は、熱電池用熱暴走防止システム101の一例のブロック図である。上述したように、熱暴走防止システム101は、電池の運転中に電極が流体状態にあり、かつ加熱されて流体になる固体電解質によって分離された流体電極を含む熱電池と共に使用するのに適している。上述のように、熱電池は、電極材料を流体状態にするのに十分な温度まで電極材料を加熱する加熱システム118を含む。熱暴走事象を防止または阻止にするために、熱暴走防止システム101は、少なくとも1つの流体電極材料を冷却する。いくつかの状況では、システム101は、電極材料を凍結するのに十分低い温度まで電極材料を冷却することができる。従って、このような実施形態では、熱暴走防止システム101は、電極材料の少なくとも1つを電極材料の融点以下に冷却し、該電極材料を固体状態にする。本明細書で説明する例では、両方の電極は動作中に流体状態にあるが、熱暴走防止システム101は、動作温度において一つの液体電極のみを含む熱電池と共に使用することができる。図2の例では、電極材料202は、電池内のすべての流体電極材料を含む。従って、これは、反応チャンバ内の2つの流体電極、及び任意のポンプ、リザーバ、及び電池内にあってもよいチャンネル内の任意の他の電極材料含む。上述したように、冷却される流体電極材料は、電池内のどこであってもよい。図2は、電極材料を単一のブロックとして示しているが、電極材料は、複数の材料(例えば、正極材料及び負極材料)ならびに電極材料の個別及び別個の部分を含むことができる。しかし、いくつかの状況では、冷却される電極材料202は、電池に含まれる全電極材料の一部のみを含むことができる。従って、図2に示す流体電極ブロックは、一つの位置にある材料の単一の部分、異なる位置に分散された材料の複数の部分、または特定の実施に応じて電池内の一つの位置における電極材料の全てを表すことができる。加熱システム118は、流体電極材料202を表すブロックの一側に示されているが、加熱システム118は、電池内の流体電極材料に対して多数の位置に配置されてもよい。
【0032】
本明細書の例では、熱暴走防止システム101は、熱伝導性界面206を介して電極材料202に熱的に結合された熱伝導要素204を含む。熱暴走トリガーに応答して、冷却伝熱流体208は、伝熱要素204に向けられ、流体電極材料202から冷却伝熱流体208への伝熱を促進し、電極材料202を冷却する。伝熱要素204は、多数の構成または構造のいずれかを有することができる。いくつかの状況では、伝熱要素204は、流体電極材料202と熱伝導する熱伝導性構成要素と接触している。従って、伝熱要素204は、例えば、電極材料202を収容するチャンバ壁の隣に配置することができる。いくつかの状況では、伝熱要素204は、電極材料202内に配置することができる。伝熱要素204は、例えば、電極材料202に埋め込まれた熱交換導管を含むことができる。伝熱要素204は、流体電極材料からの伝熱に関する機能に加えて、他の目的を果たすことができる。一例では、伝熱要素204は、熱暴走トリガーに応答して、冷却伝熱流体208が容器壁の隣の空間に注入される流体電極材料202を収容する筐体(容器)の壁である。従って、熱暴走緩和システム101は、冷却伝熱流体208を、冷却伝熱流体が少なくとも1つの流体電極材料と熱伝導することを可能にする電池100内の領域に導く。
【0033】
本明細書の例では、冷却伝熱流体208は、電池の通常動作中に冷却伝熱流体リザーバ210に保持される。熱暴走トリガーが検出されると、冷却伝熱流体208は、冷却伝熱流体リザーバ210から伝熱要素204に向けられる。図2の例では、制御部212は、熱暴走トリガー事象が発生したか否かを決定するために、1つ以上のパラメータを監視する。トリガーが発生したことを決定することに応答して、制御部212は、冷却伝熱流体送出機構214に、冷却伝熱流体208を伝熱要素204に供給させる。本明細書の例では、制御部212は、加熱システム118もオフにする。いくつかの状況では、制御部212もまた、電池を切断するか、そうでなければ電池に電力を供給することを不能にする。例えば、制御部212は、熱暴走トリガーの検出に応答して遮断器またはスイッチを開放することができる。制御部112は、任意の制御部、プロセッサ、電気回路、論理回路、処理回路、または本明細書に記載された機能を管理するとともに、熱暴走緩和システム101の全体的な機能をいくつか容易にする構成を提供するプロセッサである。くつかの状況では、制御部212は、他の熱電池部品の機能も管理する。
【0034】
冷却伝熱流体を導く適切な技術の一例としては、1つ以上のポンプを用いて冷却伝熱流体を圧送することが含まれる。いくつかの状況では、冷却伝熱流体は重力を用いて伝熱要素204に向けられる。例えば、冷却伝熱流体リザーバは、バルブが開放されて、冷却伝熱流体208が伝熱要素204に流れることができるように、伝熱要素の上方に配置することができる。従って、冷却伝熱流体送出機構214は、冷却伝熱流体208を伝熱要素に供給して流体電極材料202を冷却する任意の要素、装置またはシステムを含む。いくつかの状況では、制御部212は、省略され、また冷却伝熱流体送出機構214と一体化されてもよい。そのような状況の一例では、冷却伝熱流体送出システム214は、閾値温度に達したときに開き、冷却伝熱流体208が伝熱要素204に流れることを可能にする温度感知バルブを含む。
【0035】
制御部212は、熱暴走トリガーが発生したか否かを決定するために、少なくとも1つのパラメータ216を評価する。しかし、熱暴走トリガーは、任意の数の要因、パラメータ、及び基準に基づいてもよい。上述したように、該1つ以上のパラメータは、測定及び/または計算されたパラメータであってもよく、電池の動作及び環境パラメータ220に関連する電池動作パラメータ218であってもよい。監視することができる電池動作パラメータ218のいくつかの例には、温度、電圧、電流、水分、圧力、電力出力、接地方向、ならびにこれらのパラメータの経時的または電池の部分にわたる変化が含まれる。従って、電池動作パラメータは、電池構成要素に接続され、またはそれに近接して接続された1つまたは複数のセンサ222によって提供される値を含むことができる。センサ222は、電圧計、電流計、湿度センサ、水分センサ、圧力センサ、熱結合、ジャイロスコープ、及び加速度計等の装置を含むことができる。
【0036】
上述したように、環境パラメータ220は、外部温度、水分レベル、電池の減速/加速、電池の接地方向、及び電池を含む車両の車両システム等の電池に関連する他のシステムによって提供される外部パラメータを含むことができる。例えば、車両システムは、車両の事故検出及び急速な減速に関連するパラメータを提供することができる。基準は、熱暴走事象トリガーが発生したか否かを決定するために、測定されたパラメータの任意の組み合わせや数、及び/または任意の数の計算された値に適用される。複数の熱暴走トリガーが個々のパラメータまたはパラメータの組み合わせから識別できるように、基準を適用することができる。例えば、第1熱暴走トリガーは、流体電極材料の温度にのみ基づくことができ、第2熱暴走トリガーは、温度の急激な上昇、水分閾値を超える水分パラメータのようなパラメータの組合せに基づくことができる。いくつかのパラメータは2つ以上のトリガーに適用することができる。例えば、一つのトリガーは、最大閾値を超える電極材料の温度によって満たされることができ、第2のトリガーは、電池を通る電流が電流閾値を超えるとき、該電極材料の温度は、他の閾値を超えることによって満たすことができる。別の例では、一つのトリガーは、固体電解質の破損を示す閾値を下回るセルを横切る電圧によって満たすことができる。従って、トリガー基準は、電池動作パラメータ及び外部パラメータを含むパラメータの任意の組合せ及び数に基づくことができる。
【0037】
冷却伝熱流体208は、流体状態で維持することができ、伝熱要素204に供給することができる任意の材料である。いくつかの状況では、冷却伝熱流体を周囲温度に維持することができる。しかし、他の状況では、冷却伝熱流体は周囲温度以下に冷却される。例えば、いくつかのシリコン伝熱流体は、-40℃に冷却することができ、また、The Dow(登録商標) Chemical Companyによって製造されたSYLTHERMTMシリコーン伝熱流体のような液体状態に維持することができる。このような状況において、冷却伝熱流体リザーバ210は、蒸発器及び凝縮器を通して冷媒を循環させる冷凍システムの一部である要素を含むことができる冷却要素を有する。他の状況では、逆熱結合が、冷却要素を提供することができる。冷却伝熱流体の選択は、典型的には、少なくとも熱力学的特性及び他の電池成分に対する化学的安定性に基づく。流体電極材料のいずれかと反応できる材料は、電池内に破損が生じた場合に材料が混合する可能性のために、典型的には望ましくない代替物である。例えば、溶融リチウムと水が高い反応性を有するので、液体リチウムを含む電極を有する電池において水を含む冷却伝熱流体を回避することができる。
【0038】
冷却伝熱流体リザーバ210が冷凍システムの一部であるか、または冷凍システムに接続される状況では、冷却伝熱流体は、伝熱要素204を通過した後にリザーバ210に戻すことができる。伝熱流体帰還導管224は図2に破線で示され、そのような帰還経路が任意であることを示している。冷却伝熱流体208を冷却する冷凍システムは、既知の技術に従って、圧縮機、蒸発器及び凝縮器を通って循環される冷媒を含むことができる。
【0039】
熱暴走緩和システム101は、電池構造ならびに他の設計上の考慮に依存し得る多数の構造及び構成のいずれかを有することができる。2つの適切な電池構成の例は、管状構造及び平面構造を含む。電池反応チャンバの管状構造は、典型的には、円筒形の固体電解質によって分離された流体電極の同心円筒を含む。平面構造を有する反応チャンバを有する電池は、典型的には、平坦な固体電解質によって分離された流体電極の平坦な部分を含む。後述するように、冷却コイル内の伝熱流体を有する熱暴走緩和システム101は、平面及び管状の両方の電池構造とも使用できる。
【0040】
図3A図3B及び図3Cは、伝熱要素204が冷却コイル302を含む管状構造を有する電池300の例の異なる視野からの図解である。図3A図3B及び図3C中の図解は、例示の一般原理を示し、必ずしも縮尺どおりではなく、必ずしも特定の形状、相対寸法、距離、または表現された構成要素の他の構造的詳細を表すものではない。電池300は、反応チャンバ102が電池筐体306内の管状反応チャンバ304である電池100の一例である。明確にするために、加熱システムは、図3A図3B及び図3Cには示されていない。いくつかの状況では、加熱システム118は、巻かれて、かつ電池筐体306と接触する電気加熱コイルを含んでもよい。図4を参照して以下に説明する例では、加熱システム118は、加熱コイルを介して加熱伝熱流体が流れる冷却コイル302の隣に配置された加熱コイルを含む。
【0041】
図3Aは側面図である。図3B図3A中のA-A線に沿った断面からとった正面図である。図3Cは該例の図3BのB-Bに沿った断面からとった側面図である。冷却コイル302は、冷却伝熱流体208を収容し、流体電極材料の冷却を促進することができる、管、パイプ、導管、または他の同様の機構の任意のシステムである。図3A図3B及び図3Cの例では、単一の冷却管が、電池反応チャンバ304の電池筐体306の周りに巻かれ、筐体306と熱伝導する。いくつかの状況では、複数の冷却コイルを使用することができる。例えば、外部筐体308が電池300及び冷却コイル302を囲み、外部筐体と電池筐体306との間に真空310が形成される。明確にするために、図中の冷却コイル302は、冷却コイル302のコイル間の空間で示されている。多くの状況では、冷却コイル302のコイルは、コイル間の空間を除くように互いに隣接して配置される。他の空間を使用することができ、全てのコイルの間で必ずしも均一でなくてもよい。図3Aには外部筐体308は点線で示され、その透明な外観を示している。真空310は、電池300の周囲に絶縁性の熱ジャケットを提供し、動作中に電池300からの熱の損失を低減する。従って、冷却コイル302は、外部筐体308と電池筐体306との間の真空310内に配置され、外部筐体308とは物理的に接触しない。いくつかの状況では、冷却コイル302は、外部筐体308に接触することができる。さらに他の状況では、電池300及び/または電池300に関連する他の構成要素の周囲に追加の絶縁ジャケットを形成するために、1つ以上の追加筐体を使用することができる。冷却コイル302は、外部筐体308を通過して延び、熱暴走緩和システム101の他の構成要素に接続する入力312及び出力314を含む。集電体120と122はそれぞれ、筐体306と308を貫通する端子接続部316と318に接続される。
【0042】
動作中、冷却伝熱流体208は、冷却コイル302の入力312を通って、冷却コイル302を通って、または出力314を通って、圧送され、流れ、または導入される。上述のように、冷却伝熱流体208は、熱暴走トリガーに応答して冷却コイル302内に圧送される。電池反応チャンバ304からの熱は、電池筐体306を通って、冷却コイル302の壁を通って、冷却伝熱流体208に伝導する。
【0043】
一例では、電極材料202が十分に冷却されるまで、トリガーに応答して冷却コイルを介して冷却伝熱流体208が循環される。このような例では、冷却伝熱流体208は、冷却コイル302を介して圧送され、冷却機構(図示せず)に戻され、再び冷却コイル302の入力を通して圧送される。冷却伝熱流体208は、周囲温度または周囲温度以下の温度に冷却することができる。周囲温度に曝された熱交換器を用いて冷却伝熱流体208を冷却することができる。
【0044】
別の例では、冷却伝熱流体208は、冷却伝熱流体208を連続的に循環させ、冷却することなく、冷却コイル302内に推進される。このような技術は、冷却伝熱流体208の熱容量、温度及び体積は、電池300からの熱を吸収した後、冷却伝熱流体208を再冷却することなく、電池反応チャンバ304を安全な温度に冷却するのに十分である場合には適切である。このような状況では、電池近傍の冷却コイル302は、空であってもよいし、冷却伝熱流体が注入される前に流体を含んでいてもよい。冷却コイル302は流体を含む場合には、冷却伝熱流体208が入力312を通って冷却コイル302に圧送されながら、該流体は出力314を通って圧送される。冷却伝熱流体208がトリガーの前に空である場合、冷却伝熱流体208がトリガーに応答して冷却コイル302内に放出されると、コイル内の真空が冷却伝熱流体を冷却コイル302に吸引するように、冷却用コイル302内に真空を形成することができる。
【0045】
上述したように、管状構造は、典型的には、流体電極材料及び固体電解質の同心円筒形部分を含む。図3A図3B及び図3Cの例では、流体負極104が筒状の反応チャンバ304の最外筒部を構成している。従って、流体負極104は電池筐体306に最も近接し、流体正極106は筒状構造の中心に最も近い。このような配置は、正極材料が好ましい前に負極材料を冷却することが好ましい場合がある。
【0046】
図4は、伝熱要素204が冷却コイル302を含み、加熱システム118が加熱コイル402を含む管状構造を有する電池300の側面図である。図4の中には、冷却コイル302は白色実線で示され、加熱コイル402は黒色実線で示されている。冷却コイル302及び電池300は、上述のように動作する。加熱伝熱流体は、加熱コイル402を通って流れ、電池300をその動作温度に加熱する。加熱コイル402は、管状コイル、チューブ、パイプ、導管、または電池筐体306の周囲に巻き付けられ、加熱コイル402の壁を通って、電池筐体306を通って、反応チャンバ304への伝熱を促進する他の同様の機構である。図4の例の場合、加熱コイル402のコイルは、冷却コイル302のコイル間に配置される。いくつかの状況では、他の構成は使用可能である。
【0047】
動作中、加熱器(図示せず)は、加熱伝熱流体403を十分に高温に加熱する。次いで、加熱伝熱流体は、加熱コイルの加熱コイル入力404を通って、または加熱コイル402のコイルを通って圧送されるか、または他の方法で流される。加熱伝熱流体403は、加熱コイル出力406を出て、加熱器に戻される。図4の例では、加熱コイル402との間で加熱伝熱流体を搬送するために使用されるチャンネルは、加熱コイル402と同じである。言い換えると、加熱コイル402は、筐体を介して加熱器に延在する。いくつかの状況では、他種のチャンネルを使用することができる。チャンネルまたは導管を絶縁して熱損失を低減することができる。適切な絶縁の一例は、追加の真空ジャケットを含む。伝熱は、加熱伝熱流体403から、加熱コイル402を通って、電池筐体306を通って、筐体306を備えた反応チャンバ材料へと発生する。加熱コイル402と筐体306表面との間の界面を通る伝熱を改善するために、技術を使用することができる。例えば、加熱コイル402は、加熱コイル402の筐体表面との接触面積が大きくなるように、矩形断面を有していてもよい。従って、このような"平坦化された"加熱コイルは、筐体306とより接触している。インターフェースを介した伝熱を増加させる技術の別の例では、筐体306上の波形表面、加熱コイル402、またはその両方を使用することが含まれる。さらに別の例では、加熱コイルの内部は、伝熱流体と加熱コイル402との間で接触する伝熱流体の増大した表面領域に突出する要素を有するように構成することができる。筐体306壁についても同様の技術を使って筐体と反応チャンバ材料との間の表面積の接触を増大させることもできる。
【0048】
いくつかの状況では、複数の加熱コイルを使用して、反応チャンバ102をより均一に加熱することができる。例えば、一方向(例えば、図4中の左から右)に伝熱流体流を有する第1加熱コイルを、その逆方向(例えば、図4中の右から左)に伝熱流体流を有する第2加熱コイルと組み合わせることができる。
【0049】
従って、電池の動作中、加熱コイル402は、反応チャンバを動作温度まで加熱する。制御部212は、パラメータ216を監視し、熱暴走トリガーが発生したか否かを決定するためにトリガー基準を適用する。トリガーが発生したと判定することに応答して、制御部212は、加熱コイルに電池反応チャンバ304の加熱を停止させ、冷却コイル302に電池反応チャンバ304を冷却させる。ここでは、冷却コイルを加熱コイル402とは別体としたが、いくつかの状況では、同じコイルを用いて電池300を加熱して冷却するようにしてもよい。例えば、加熱された伝熱流体は、動作中にコイルを通って流れて電池を加熱することができ、熱暴走トリガーに応答して、加熱された伝熱流体を冷却伝熱流体に置き換えることができる。このようなシステムの伝熱流体を管理する適切な技術の一例では、バルブ及びポンプを用いてコイルを介して適切な伝熱流体を分流させることが含まれる。
【0050】
図5Aは、伝熱要素204が冷却コイル502を含む、平面的な熱電池500の平坦な管状構造の一例の斜視図である。図5Bは、電池500の断面正面図である。電池500は、電池100の一例であり、そこで、反応チャンバ102は、電池筐体506内の平坦な反応チャンバ504である。反応チャンバ504の平面構造は、典型的には、平坦な固体電解質108によって分離された平坦な流体正極106及び平坦な流体負極104を含む。構成要素は、密閉された電池筐体506に収容される。明確にするために、加熱システム118は、図5A及び図5Bには示されていない。いくつかの状況では、加熱システム118は、電池筐体506に巻き付けられて接触する電気加熱コイルを含むことができる。図6を参照して以下に説明する例では、加熱システムは、加熱コイル502に隣接して配置され、加熱コイルを通って加熱伝熱流体が流される加熱コイルを含む。
【0051】
冷却コイル502は、冷却伝熱流体208を収容し、流体電極材料の冷却を促進することができる、管、パイプ、導管、または他の同様の機構の任意のシステムである。図5A及び図5Bの例では、単一の冷却管が、電池反応チャンバ504の電池筐体506の周りに巻かれ、筐体506と熱伝導する。いくつかの状況では、複数の冷却コイルを使用することができる。この例では、外部筐体508が電池500及び冷却コイル502を囲み、外部筐体508と電池筐体506との間に真空510が形成されている。明確にするために、図中の冷却コイル502は、冷却コイル502のコイル間の空間で示されている。多くの状況では、冷却コイル502のコイルは、コイル間の空間を除くように互いに隣接して配置されている。他の空間を使用することができ、必ずしも均一でなくてもよい。外部筐体508は、図5Aに点線で示されていて、部筐体508の透明な外観を示している。真空510は、電池300の周囲に絶縁性の熱ジャケットを提供し、動作中に電池500からの熱の損失を低減する。従って、冷却コイル502は、外部筐体508と電池筐体506との間の真空510内に配置される。いくつかの状況では、一つ以上の追加筐体を用いて、電池500の周囲に追加の絶縁性の熱ジャケット及び/または電池500に関連する他の要素を形成することができる。冷却コイル502は、外部筐体508を貫通し、熱暴走緩和システム101の他の構成要素に接続する入力512及び出力514を含む。集電体120と122は、筐体506と508を通って延びる端子接続516と518にそれぞれ接続される。
【0052】
図5A及び図5Bを参照して説明した例では、電池筐体504及び外部筐体508は、丸い角を有するほぼ矩形の角柱である形状を有する。いくつかの状況では、他の形状を使用することができる。例えば、外部筐体508は、いくつかの状況では円筒形であってもよい。
【0053】
動作中、冷却伝熱流体208は、冷却コイル502の入力512を通って、冷却コイル502を通って、出力514を通って、圧送され、流れ、または導入される。上述したように、冷却伝熱流体208は、熱暴走トリガーに応答して冷却コイル502に圧送される。電池反応チャンバ504からの熱は、電池筐体506を通って、冷却コイル502の壁を通っ
て、冷却伝熱流体208を伝導する。
【0054】
一例では、冷却伝熱流体208は、電極材料が十分に冷却されるまで、熱暴走トリガーに応答して、冷却コイルを通って循環される。このような例では、冷却伝熱流体208は、冷却コイル502を通って汲み上げられ、冷却機構(図示せず)に戻され、再び冷却コイル502の入力を介して圧送される。冷却伝熱流体208は、周囲温度または周囲温度以下の温度に冷却することができる。熱交換器を用いて冷却伝熱流体208を冷却することができる。
【0055】
別の例では、冷却伝熱流体208は、冷却伝熱流体208を連続的に循環させ、冷却することなく、冷却コイル502内に推進される。このような技術は、冷却伝熱流体の熱容積、温度及び体積は、電池500からの熱を吸収した後に冷却伝熱流体208を再冷却することなく電池反応チャンバ504を安全な温度に冷却するのに十分である場合には、適切である。このような状況では、電池近傍の冷却コイル502は空であってもよいし、流体を含んでいてもよい。冷却コイル502が流体を含む場合、冷却伝熱流体208が入力512を介して冷却コイル502に圧送されるとき、流体は出力514を通って送り出される。冷却コイル502がトリガーの前に空である場合、熱暴走トリガーに応答して冷却コイル502に冷却伝熱流体208が放出されるときに、冷却コイル502内に真空を形成することができる、コイル内の真空は冷却伝熱流体を冷却コイル502内に吸引する。図2を参照して説明したように、冷却伝熱流体リザーバ210は、冷却コイル502に注入されるまで冷却伝熱流体を貯蔵するために使用することができる。
【0056】
反応チャンバ504の平面構造は、典型的には、平坦な固体電解質によって分離された2つの平坦な流体正極及び平坦な流体負極を含む。図5A及び図5Cの例では、流体負極104は、平坦な反応チャンバ504の上部を形成し、流体正極106は、平坦な反応チャンバ504の下部を形成する。いくつかの状況では、この2つの電極は、逆にすることができる。また、電池500は、動作中に両方の平面電極がアースに対して垂直に延びるように回転させることができる。
【0057】
図6は、伝熱要素204が冷却コイル502を備え、加熱システム118が加熱コイル602を含む平面構造を有する電池500の斜視図である。図6には、冷却コイル502は白色実線で示され、加熱コイル602は黒色実線で示されている。冷却コイル502及び電池500は、上述のように動作する。加熱伝熱流体は、加熱コイル602を通って電池500を電池500の動作温度に加熱する。加熱コイル602は、管状コイル、チューブ、パイプ、または電池筐体506の周囲に巻き付けられ、加熱コイル602の壁を通って、電池筐体506を通り、反応チャンバ504への加熱伝熱流体からの伝熱を促進する他の同様の機構である。図6の例では、加熱コイル602のコイルは、冷却コイル502のコイル間に配置される。他の構成は、状況によっては使用可能である。
【0058】
動作中、加熱器(図示せず)は、加熱伝熱流体を十分に高温に加熱する。そして、該加熱伝熱流体は、加熱コイルの加熱コイル入力604と加熱コイル602のコイルを介して圧送されるか、または他の方法で流される。加熱伝熱流体は、加熱コイル出力606を出て、加熱器に戻される。図6の例では、加熱コイル602との間で加熱伝熱流体を搬送するために使用されるチャンネルは、加熱コイル602と同じである。言い換えると、加熱コイルは、筐体を介して加熱器に延在する。状況によっては、他種のチャンネルを使用することができる。上述したように、断熱は、熱損失を最小化するために有用な場合があり、いくつかの状況では、伝熱を増加させるために技術を使用することができる。
【0059】
従って、電池の運転中、加熱コイル602は反応チャンバを動作温度に加熱する。制御部は、パラメータ216を監視し、熱暴走トリガーが発生したか否かを決定するためにトリガー基準を適用する。トリガーが発生したことを決定することに応答して、制御部212は、加熱コイルに電池反応チャンバ504の加熱を停止させ、またはそうでない場合には加熱コイルを停止させ、冷却コイル502に電池反応チャンバ504を冷却させる。本明細書の例では、冷却コイルは加熱コイル602から分離されている。いくつかの状況では、同じコイルを使用して電池500を加熱及び冷却することができる。例えば、運転中に加熱された伝熱流体をコイルに流して電池を加熱し、熱暴走トリガーに応答して、加熱された伝熱流体を冷却伝熱流体に置き換えることができる。このようなシステムの伝熱流体を管理する適切な技術の一例では、バルブ及びポンプを使用して、コイルを介して適切な伝熱流体を分流させることが含まれる。
【0060】
図3A図3B図3C図4図5A図5B及び図6を参照した説明が、電池反応チャンバを冷却することを目的としているが、この技術は、ポンプ、バルブ、配管及び電極材料を管理するためのリザーバを含む、熱電池の他の部分に適用することができる。
【0061】
図7は、少なくともの電極材料の一部が電極材料リザーバ702に保持されている例のための熱暴走緩和システム101を含む高温電池システム700の図解である。図7の図は、本例の一般原理を示し、特定の形状、相対寸法、距離、または表現された構成要素の他の構造的詳細を必ずしも表すものではない。いくつかの状況では、2つ以上のブロックの構造は、単一の構成要素または構造で実施することができる。さらに、図7の単一のブロックで実施されるように記載された機能は、別個の構造で実施されてもよい。一般に、図7の例では、電極材料の一部は、反応チャンバとは別のリザーバ内に維持され、電極材料分配機構は、必要に応じて、流体電極材料を反応チャンバに移動させる。この例では、電池内の負極材料の一部は、固体状態でリザーバ702に維持される。リザーバ内の負極材料は、必要に応じて加熱され、反応チャンバ102に向けられる。電極材料分配機構は、必要に応じて、流体電極材料を反応チャンバに移動させる。そのような技術は、米国特許出願シリアル番号15/982,497号、「溶融流体電極装置の運用ための装置、システム及び方法」、代理人整理番号VBC006(2018年5月17日出願)に詳細に議論されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。図7の例では、反応チャンバ、電極材料分配機構、及び電極材料リザーバは、それぞれ別個の筐体内に収容されていてもよく、独立して加熱及び冷却される。筐体、冷却コイル及び各構成要素の加熱コイルは、図7中に同様の寸法の同様の図で示されているが、筐体は、異なる幾何学的形状、寸法及び構成であってもよい。これらの構成、寸法及び機構を加熱及び冷却システムに使用することができる。図7の例は、単一の電極の一部電極(即ち、流体負極)を選択的に加熱することを論じているが、図7を参照して説明した技術を適用して、両方の電極材料を選択的に加熱することができる。また、各流体電極材料のための複数のリザーバを用いて流体状態における電極材料の総量をさらに制限することができる。
【0062】
図7の例では、反応チャンバ102は、電池筐体306内に維持され、ここで、冷却コイル302及び加熱コイル402は、電池筐体306の周りに巻き付けられ、電池筐体306と外部筐体308との間の真空310内に配置される。冷却コイル構成を有するこのような反応チャンバの動作は上で論じられている。
【0063】
電極リザーバ筐体704は、反応チャンバ102内の電極材料とは別個に負極材料を保持するための容器を形成する。冷却コイル706及び加熱コイル708は、電極リザーバ筐体704の周りに巻き付けられ、電極リザーバ筐体704と外部筐体710との間の真空内に配置される。
【0064】
電極材料送達システム712は、電極材料リザーバ702と反応チャンバ102との間の流体電極材料の流れを制御するためのポンプ及びバルブのような構成要素を含む。電極材料送達システム712は、電極材料送達システム筐体714に含まれる。冷却コイル716及び加熱コイル718は、電極材料送達筐体714の周りに巻き付けられ、電極材料送達筐体714と外部筐体720との間の真空内に配置される。従って、筐体704と714、外部筐体710と720、加熱コイル708と718及び冷却コイル706と716の構成及び動作は、反応チャンバに関して上述した技術に従って行われる。
【0065】
加熱伝熱流体送出機構722は、加熱器724と加熱コイル402、708、718との間の伝熱流体の流れを制御する。加熱伝熱流体送出機構722は、加熱器724によって加熱された伝熱流体を加熱コイル402、708及び718のいずれかまたは全てに導くように構成要素を操作して設定可能な任意の数のポンプ及びバルブを含むことができる。加熱伝熱流体送出機構722はまた、加熱コイル402、708及び718のいずれかまたは全てへの流れを制限することができる。加熱器724及び加熱伝熱流体送出機構722は、制御部726からの制御信号に応答する。
【0066】
制御部726は、本明細書に記載された機能を実施するために電池構成要素を制御することができ、電池システム700の全体的な動作を容易にすることができる構成要素の任意の制御部、プロセッサ、プロセッサ構成、電子回路セット、回路または他の組み合わせである。制御部726は、センサ及び他の機器からの入力を評価し、加熱システム、熱暴走緩和システム101及び電極材料送達システム712を含む電池システム700の動作を管理することができる。
【0067】
熱暴走緩和システム101の一部を除いて、電池システム700の全ての構成要素は、本例のシステム筐体728内に収容される。適切なシステム筐体728の一例は、真空730の内部を有する密閉された円筒形のタンクまたは胴体を含む。真空730は、部品間の熱伝導を低減し、部品の絶縁性を改善する。制御部726は、電池システム700内のどこにでも配置及び/または分散することができるが、適切な位置の一例は、システム筐体728の壁の内部を含む。このような構成は、外部環境からの保護を提供し、他の構成要素からの伝熱を最小限にする。
【0068】
動作中、加熱システム118は、加熱器伝熱流体を加熱コイル402に導くことにより、反応チャンバを適切な動作温度に維持する。負荷が電池700に置かれると、制御部726は、1つ以上の要因またはパラメータを監視し、リザーバ内の電極材料が流体状態に維持されるべきか否かを判定し、反応チャンバ102に供給されるよう準備される。流体電極材料は、制御部726からの制御信号に応答して、電極材料供給システム712によってリザーバ704から反応チャンバ102に向けられる。電池の充電サイクル中、電極材料は、リザーバ704に圧送される。一例では、流体負極材料は、充電サイクル中にリザーバに戻され、流体正極材料は、正のリザーバから正極領域へと閉じたループを通して連続的に圧送され、リザーバに戻るようになっている。このような構成は、リチウム硫黄熱電池に好適な場合がある。なぜなら、放電時には、リチウムイオンが負極領域から、前記固体電解質を介して、前記正極領域へと移動し、一方、放電時にはその反対の方向で移動する。リチウム電極材料は、放電中にリザーバから負極領域に圧送され、リチウムを補充し、充電サイクル中にリザーバに圧送される。放電中に正極領域にリチウムポリスルフィド生成物(LinSm)が形成され、正極材料の体積が増加する。正極材料リザーバと正極領域との間の流体正極材料の連続サイクルは、性能を改善するリチウムポリスルフィド生成物の濃度を減少させる。充電中、流体正極材料がリザーバを通って循環されると、リチウムは負極領域に戻り、正極材料中のリチウムポリスルフィド生成物の濃度は減少する。
【0069】
図7の例では、制御部726は、制御部212の機能を実施する。上述したように、1つ以上のパラメータを評価し、熱暴走トリガーが発生したか否かを判定する。トリガーに応答して、制御部726は、少なくとも、冷却伝熱流体送出機構732に制御信号を供給して、冷却コイル302を介して冷却伝熱流体を導く。しかし、本例では、冷却伝熱流体を全ての冷却用コイル302、706、716に向けて反応チャンバ102、電極材リザーバ704、電極材料送出系712を冷却する。さらに、加熱器724を無効にし、加熱伝熱流体送出機構722を制御して加熱伝熱流体を加熱コイル402、708、718に導くように制御する。この例では、電池内の全ての電極材料は、熱暴走事象の検出に応答して材料を凍結させるために、電極材料の融点以下に冷却される。いくつかの状況では、流体電極材料の一部のみを冷却及び/または凍結することができる。
【0070】
熱暴走緩和システム101全体をシステム筐体728内に実施することができるが、熱暴走緩和システム101は、例ではシステム筐体728の外側に配置された凝縮器736を有する冷却システム734を含む。冷却システム734は、システム筐体728の外部に実施された凝縮器736と、圧縮機(図示せず)と、熱交換器738内の蒸発器(図示せず)とを含む冷凍システムを含むことができる。冷却伝熱流体は、熱交換器738を通って流れ、そこで蒸発器によって冷却される。冷媒は、熱交換器を通って循環され、そこで冷却伝熱流体から熱を吸収し、冷却システム技術により凝縮器736を通過する。上述のように、熱暴走緩和システム101は、熱交換器を通して冷却伝熱流体を連続的に循環させることなく、電極材料を安全な温度に冷却するための適切な量の冷却伝熱流体を含むことができる。そのような場合、冷却剤リザーバを使用して、所望の温度で冷却伝熱流体を貯蔵し、維持することができる。他の状況では、冷却伝熱流体は、熱暴走トリガーに応答して電池構成要素の冷却過程中に循環される。
【0071】
いくつかの状況では、冷凍システムを使用することなく、熱交換器をシステム筐体728の外部に実施することができる。例えば、冷却伝熱流体は、システム筐体728の外部の熱交換器を介して圧送され、伝熱流体を冷却することができる。
【0072】
ワイヤ、チューブ、コイル、導管、または他の装置がシステム筐体728の壁を通って延びる場合、システム筐体728は、内部に真空を維持するための気密シールを含む。いくつかの状況では、複数のワイヤ、コイル、導管等を同じ開口部及びシールを通して通過させることによって、シールの数を最小化するのに費用効率がよい。例えば、冷却システム734、電池ーコネクタ740及びセンサワイヤから制御部726への一部は、単一の開口及びシールを通過することができる。
【0073】
図8Aは、電池筐体802がドーナツ状である一例の斜視図である。図8Bは、電池800の断面側面図である。図8Cは、電池800の断面正面図である。図8A図8B及び図8Cは、本例の一般原理を示すものであり、必ずしも縮尺どおりではなく、必ずしも特定の形状、相対的な大きさ、距離、または表現された構成要素の他の構造的詳細を表すものではない。明確にするために、加熱システム118及び熱暴走緩和システムは、図8A図8B及び図8Cには省略されている。一例では、これらの構成要素は、上述した技術に従って、冷却コイル及び加熱コイルを用いて実施することができる。
【0074】
電池筐体802のドーナツ状構造は、筐体802の中空の円筒形中心804をもたらす。このような形状は、いくつかの状況では、いくつかの有益な特性を提供することができる。いくつかの状況では、例えば、電池800は、固体電解質108と流体電極104、106との間の界面の表面積を増大させる比較的大きな直径を有することができる。加えて、比較的大きな構造は、中空の円筒状中心804内の他の電池構成要素の位置決めを可能にする。例えば、リザーバ702及び電極材料送出機構712は、中央804内に配置することができる。追加の加熱コイル及び冷却コイルもまた、中央804内に配置することができる。明瞭にするために、中心804内の構成要素間の相互接続、ならびにそれらの構成要素と反応チャンバとの間の相互接続は、図8Cには示されていない。このような配置は、反応チャンバ102と他の構成要素との間の分離を提供し、また、中空中心内の構成要素の構造的な保護を提供する。
【0075】
電池筐体802は、外部筐体308内に収容される。真空310は、電池筐体802と外部筐体308の内部の外部筐体壁との間に維持される。
【0076】
図9は、熱電池における熱暴走を緩和する手順の一例のフローチャートである。この例では、この手順は、上述の熱暴走緩和システム101によって実施される。この方法は、いくつかの状況では、他の装置及びシステムによって実施されてもよい。図9のステップは、図示されたステップとは異なる順序で実施することができ、いくつかのステップは、一つのステップに組み合わせることができる。追加のステップを実施してもよく、いくつかのステップを省略してもよい。例えば、ステップ908とステップ910は、多くの状況で同時に実施される。
【0077】
ステップ902では、電極材料を加熱し、それを流体状態にする。この例では、電池の反応チャンバ内の全ての電極材料を、負極材料及び正極材料を含む電池の動作温度内の温度に加熱する。電池がリチウム硫黄熱電池である場合、電極材料は、375℃〜425℃範囲の温度に加熱される。
【0078】
ステップ904では、パラメータを受信する。上述したように、パラメータは、電池動作パラメータと、車両システムのような別のシステムからのパラメータを含む環境パラメータとの任意の組み合わせを含むことができる。該パラメータは、センサによって提供される値、計算されたパラメータ、及び他のシステムによって提供されるパラメータであってもよい。この例では、制御部はパラメータを受信する。
【0079】
ステップ906では、熱暴走トリガーが満たされたか否かが判定される。この例では、制御部は、パラメータを評価し、1つ以上の熱暴走トリガーが発生したか否かを決定するための基準を適用する。トリガー事象が熱暴走状態にあることを示す任意の事象であるトリガー事象を識別するために、熱暴走状態に入る、または熱暴走状態に入る可能性閾値よりも高い任意の数のパラメータ及び基準を評価することができる。上述のように、1つの基本的な熱暴走トリガーは、電極材料の温度が閾値を超えたことを検出することを含むことができる。少なくとも1つのトリガーが満たされたと判定された場合、手順はステップ908に続く。そうでない場合には、手順はステップ902に戻り、電極材料の加熱が継続し、電池が動作する。
【0080】
ステップ908では、電極材料の加熱を停止する。この例では、制御装置は加熱システム118を停止させる。加熱システム118が電気加熱コイルを含む場合、電気加熱コイルを通る電流は切断される。加熱コイルを流れる加熱伝熱流体を用いて電極材を加熱するシステムでは、加熱伝熱流体が加熱コイルを流れることなく停止する。
【0081】
ステップ910では、冷却伝熱流体を電極材料に近い領域に向けて電極材料を冷却する。上述したように、電極材料を冷却するために、電極材料の近傍に冷却伝熱流体を配置するために、多くの技術のいずれかを使用することができる。一例では、電池筐体と外部筐体との間の真空ジャケットは、冷却伝熱流体で満たされる。別の例では、冷却伝熱流体は、電池筐体の周囲に巻き付けられた冷却コイルを介して注入、または圧送される。
【0082】
理解されるべきこととして、例によって、本明細書に記載された方法のいずれかの特定の行為または事象は、異なる順序で実施したり、追加したり、合併したり、または完全に除外したりすることができる(例えば、方法の実施には、記載された全ての行為または事象が必要であるわけではない)。また、ある例では、行為または事象は、逐次的にまたは逆でもなく、同時に実施されてもよい。さらに、本開示の特定の態様は、明確にするために単一のモジュールまたは構成要素によって実施されるものとして記載されているが、理解されるべきこととして、本開示に記載された機能は、構成要素の任意の適切な組み合わせによって実施されてもよい。
【0083】
明らかに、当業者は、これらの教示に鑑みて、本発明の他の実施形態及び修正を容易に行うであろう。以上の記載は例示であり、限定的なものではない。本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。該特許請求の範囲は、上記明細書及び添付図面に関連して見たときに、そのような実施形態及び修正を全て含む。従って、本発明の範囲は、上記の記載を参照して決められるべきではなく、その代わりに、添付の特許請求の範囲及びそれに相当する全ての物を参照して決められるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
【国際調査報告】