【実施例】
【0075】
以下の実施例は、単に例示を目的としたものにすぎず、特許請求された本発明を限定するものと解釈すべきではない。意図される発明を成功裏に同様に実施可能にしうる当業者の利用可能なさまざまな代替技術及び手順が存在する。
【0076】
実施例1:CARmRNAの調製
図1に模式的に表されるCD19CARの各変異体をコードするDNA配列をin silicoで設計し、de novoで合成し、mRNA発現ベクターpXT7(GeneArt,Life Technologies)にサブクローニングした。SalI制限酵素(New England Biolabs)による消化により10マイクログラム(μg)のプラスミドを線状化し、製造業者の説明書に従ってQIAgenゲル精製キット(QIAgen)を用いて精製した。
【0077】
製造業者の説明書に従ってT7 mMessage mMachine Ultra転写キット(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)を用いて、mRNAのin vitro合成の鋳型として線状化DNAを使用した。このキットは、mRNAのポリAテールの長さを増加させるポリアデニル化伸長工程を含むので、in vivoでの安定性を増強する。
【0078】
陰性対照として緑色蛍光タンパク質(GFP)のmRNAを調製するとともに、6つのCD19CAR変異体のmRNAを調製した。CD19CAR変異体はすべて、抗CD19scFv領域(αCD19−scFv)(配列番号11)とCD8由来のヒンジ領域(配列番号3又は4)とを含む細胞外ドメインと、CD28由来の膜貫通ドメイン(配列番号7によりコードされる配列番号6)と、を含有していた。CD19CARの細胞内ドメインは、以下の通りであり、
図1に模式的に示される。すなわち、CAR3zは、CD3ζシグナリングドメインを含有し、CARFcReは、FcεRIγシグナリングドメイン(配列番号1)を含有し、CAR28_3zは、CD3ζシグナリングドメインに融合されたCD28シグナリングドメインを含有し、CARBB_3zは、CD3ζシグナリングドメインに融合された4−1BBシグナリングドメインを含有し、CAR28_BB_3zは、CD3ζシグナリングドメインに融合された4−1BBシグナリングドメインに融合されたCD28シグナリングドメインを含有し、CARBB_3z_28は、CD28シグナリングドメインに融合されたCD3ζシグナリングドメインに融合された4−1BBシグナリングドメインを含有していた。
【0079】
より特定的には、
図1のCD3ζシグナリングドメインを有する第一世代CARは、配列番号16(ヒト)の核酸配列を有していた。FcεRIγシグナリングドメインを有する第一世代CARは、配列番号12の核酸配列及び配列番号10のアミノ酸配列を有していた。CD28/CD3ζシグナリングドメインを有する第二世代CARは、配列番号17の核酸配列を有し、4−1BB/CD3ζシグナリングドメインを有する第二世代CARは、配列番号18の核酸配列を有していた。CD28/4−1BB/CD3ζシグナリングドメインを有する第3世代CARは、配列番号19の核酸配列を有し、4−1BB/CD3ζ/CD28シグナリングドメインを有する第3世代CARは、配列番号20の核酸配列を有していた。FcεRIγシグナリングドメインを有するさらなる第一世代CARは、配列番号25のアミノ酸配列を有していた。
【0080】
実施例2:NK−92細胞へのCD19CARmRNAのエレクトロポレーション
5%ヒトAB血清(Valley Biomedical,Winchester,VA)と、500IU/mL IL−2(Prospec,Rehovot,Israel)と、が補足されたX−Vivo10培地(Lonza,Basel,Switzerland)中でNK−92細胞を成長させた。NK−92細胞に対する製造業者のパラメーター(1250V、10ms、3パルス)に従ってNeon(商標)エレクトロポレーションデバイス(Life Technologies,Carlsbad,CA)を用いて、且つ100μlの体積中で5μgのmRNA/10
6細胞を用いて、細胞にmRNAをエレクトロポレートした。エレクトロポレートされた細胞を培地(上記のものと同一)中に20時間(h)維持した。
【0081】
eF660で標識された抗scFv抗体(eBioscience,San Diego,CA)を用いたフローサイトメトリーにより、NK−92細胞表面上のCD19CAR発現を決定した。
図2Aは、NK−92細胞集団における指定のCD19CARの%発現を示す。
図2Bは、指定のCD19CARがエレクトロポレートされた細胞のメジアン蛍光強度(MFI、−バックグラウンド)を示す。
図2A及び2Bから分かるように、CARFcReは、予想外なことに、細胞表面にCD19CARを発現する細胞のパーセント(75.2%)が最高であるとともにさらに最高のMFI(組換え細胞上に発現されたCARの量)を有し、28_3zがそれに続いた(61.7%)。
【0082】
実施例3:癌細胞系に対するCD19CAR発現NK−92細胞の細胞傷害性
エレクトロポレーションの20時間後、フローベースin vitro細胞傷害性アッセイを用いて、in vitroでの標的癌細胞に対するCAR発現NK−92細胞の効能を試験した。96ウェルプレート中でさまざまなエフェクター対標的比(5:1〜0.3:1)で、エフェクター細胞(CD19CAR又はGFPを発現するNK−92)と、PKHGL67標識(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)標的細胞(K562、又はSUPB15、B−ALL、CD19
+)と、を混合し、37℃で4hインキュベートした。ヨウ化プロピジウム(PI)(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を細胞に添加し、2h以内にAttuneフローサイトメーター(Life Technologies,Carlsbad,CA)を用いてサンプルを解析した。細胞傷害性は、PKH陽性標的集団内のPI陽性細胞の%により決定した。
【0083】
模範的結果は、
図3A及び3Bに提供される。
図3Aから分かるように、NK−92細胞は、CD19CAR発現にかかわらずK562細胞を死滅させるのに有効である。そのため、組換え細胞は、細胞傷害性を失わないであろうことに留意すべきである。これとは対照的に、GFP発現NK−92細胞は、癌細胞系SUP−B15を死滅させる効率が悪かった。SUP−B15は、CD19陽性の急性リンパ芽球性白血病細胞系であり、NK−92媒介細胞傷害性に対して耐性である。
図3Bから容易に分かるように、試験されたいずれのCD19CARの発現も、対照(GFP発現NK−92細胞)と比較してSUP−B15細胞株に対する細胞傷害活性の増加をもたらす。驚くべきことに、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARは、第2及び第3世代CARに類似したさらにはそれよりも優れた細胞傷害性を呈した。FcεRIγシグナリングドメインは、他のシグナリングドメインとの組合せではなく単一ユニットとして存在したにすぎないので、かかる所見はとくに予想外である。かかる配置は、CART細胞で使用したとき、望ましい標的化細胞傷害性の提供に失敗した。
【0084】
脱顆粒は、NK−92細胞の分泌顆粒からの溶解性タンパク質(たとえばパーフォリン及びグランザイム)の放出に必要とされるクリティカルな工程である。脱顆粒は、NK−92による標的細胞の認識により開始される。構築物の脱顆粒を試験するために、96ウェルプレート中でさまざまなエフェクター対標的比(5:1〜0.3:1)でエフェクター細胞(NK−92)と非標識標的細胞(SUP−B15)とを混合し、抗CD107a(FITCコンジュゲート、BD Pharmingen,San Jose,CA)を各ウェルに添加した。CO
2インキュベーター中37℃でプレートをインキュベートし、1時間後、モネンシン(Golgi−stop)をウェルに添加した。37℃でプレートをさらに3hインキュベートし、フローサイトメトリー(Attune,Life technologies,Carlsbad,CA)によりサンプルを解析した。エフェクター+標的サンプルの%CD107a陽性からNK−92細胞単独の%CD107a陽性を減算することによりパーセント脱顆粒を決定した。模範的結果は、
図4に提供される。
【0085】
実施例4.CD19CAR発現NK−92細胞の表面発現及び癌細胞系に対する細胞傷害性.
本発明者らは、各種CAR構築物の発現レベルを定量し、経時的に発現の耐久性を調べた。
図5の結果から分かるように、さまざまなCD19CAR構築物でトランスフェクトされたNK−92細胞は、72時間までそれぞれのCARを検出可能レベルで細胞表面上に発現した。予想外なことに、
図5から容易に分かるように、Fcイプシロン細胞質シグナリングドメインを含むCAR構築物は、実質的により長い継続時間の発現を有していた。また注目すべきこととして、FcεRIγシグナリングドメインのほかに1つ以上のシグナリングドメイン(たとえば、本明細書に提示された例ではCD28シグナリングドメイン)を追加しても、発現の継続時間に悪影響を及ぼさないことが観測された。実際に、FcεRIγシグナリングドメインとCD28シグナリングドメインとを有するCARでは、発現の継続時間は経時的にさらに増加するが、CD3ゼータシグナリングドメインを有するCAR構築物は、72時間の時点で及びそれ以前でさえも発現の劇的な低減を有していた。
【0086】
さらに、
図5の結果から同様に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCAR構築物の発現量はまた、CD3ゼータシグナリングドメインを有する対応する構築物よりも初期に有意に高かった。
【0087】
本発明者らは、次いで、FcεRIγシグナリングドメインを有するCAR構築物の長期にわたるより強い発現が、より高い細胞傷害率に結び付くかの試験を開始した。24時間及び48時間でのSUPB15CD19
+細胞の模範的試験結果は、
図6に表される。結果から分かるように、試験されたCAR構築物はすべて、24時間でほぼ同程度の(最大)細胞傷害性を示した。しかしながら、48時間では、CD19/CD3ゼータは、細胞傷害性の際立った減少を示した。注目すべき点として、FcイプシロンベースCARは、エレクトロポレーションの48時間後、細胞傷害活性のごくわずかな減少を示したにすぎず、
図5の長期にわたる発現結果に対応した。そのため、FcεRIγシグナリングドメインを有するCAR構築物は、実質的な臨床効果があると考えられる長期にわたる細胞傷害性を呈したことを認識すべきである。
【0088】
有利なことに、トリシストロニックRNA構築物は、優れた機能活性を有する実質的量の所望のCARを生成可能であった。かかる構築物は、CAR発現が一過性であるべき場合にとりわけ有益である。これとは対照的に、標的化CAR構築物の以下の実施例及び関連する機能データは、線状化DNAベクター構築物からのものであり、トランスフェクト細胞によるゲノムへの線状化DNAのインテグレーションを可能にして特異的CARの非一過的発現の手段を提供する。
【0089】
実施例5.トリシストロニック発現カセットのマップ。
図7は、代表的なトリシストロニック発現カセットにより生成されるDNA及びタンパク質産物を図式的に示す。
図8は、発現カセットを有するプラスミドの線状化形態を示す。
【0090】
配列番号28は、
図8に類似した構築物であるpNEUKv1_CD19CAR_CD16(158V)_ERIL−2ベクターの一部の模範的核酸配列である。配列番号29は、CD19CAR_P2A_CD16(158V)タンパク質を表す模範的トリシストロニックタンパク質(
図7に類似する)である。同様に、配列番号31は、コドン最適化CD33ScfV−P2A−CD16−IRES−erIL2トリシストロニック配列の模範的核酸配列であり、一方、配列番号32は、CD33CAR−P2A−CD16ペプチドを示す。
【0091】
作製されたそのほかのさらなる構築物として、配列番号24は、CD19K_膜貫通及びシグナリングドメインの模範的アミノ酸配列であり、配列番号26は、15AD23HC_1805843_CD19K_Eps(879〜1319)の模範的核酸配列であり、且つ配列番号27は、CD28膜貫通ドメインを含まなかった15AD23HC_1805843_CD19K_Epsの模範的核酸配列である。
【0092】
実施例6.癌細胞系に対するCD33−CAR発現NK−92細胞の細胞傷害性
以下の実施例は、対照(非改変)NK−92細胞による特異的溶解(細胞傷害性)に対して耐性である細胞をCAR発現NK−92細胞により効率的に死滅させることが可能であることを実証するために提供される。本実施例では、細胞は、CD33を発現するTHP−1細胞であった。NK−92細胞は、
図8及び9に示されるように、CD33に特異的に結合する細胞外結合ドメインと、FcεRIγシグナリングドメインと、を有するCARを発現するように改変された。
【0093】
図9Aは、CD33陽性(CD33+)THP−1細胞が対照NK−92(aNK)細胞による細胞傷害性(特異的溶解)に対しては相対的に耐性であるが、CD33に特異的に結合するCARを発現するNK−92細胞(CD33−CAR/NK−92細胞)と共にTHP−1細胞を培養したときは高パーセントの特異的溶解が存在することを示すin vitroデータを提供する。さらに、CARを発現する改変NK−92細胞が相対的に低いエフェクター:標的比で死滅を呈したことに留意すべきである。
図9Bは、K562細胞が対照aNK細胞及びCD33−CAR/NK−92細胞の両方により効率的に死滅されることを示すin vitroデータを提供する。
【0094】
実施例7:FcεRIγシグナリングドメインを有するHER2−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗HER2scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたHER2−CARは、配列番号37の核酸配列を有していた。
【0095】
そのように構築されたHER2.CAR−t−haNK細胞の機能について、標準的カルセインAMベース細胞傷害性アッセイを用いてBT−474細胞に対して試験した。模範的結果は
図10に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するHER2.CAR−t−haNK細胞は、BT−474標的細胞に対して有意な細胞傷害性を呈した。
【0096】
さらなる実験では、本発明者は、
図36に例示されるようにHER2.CAR−t−haNK細胞でのHER2.CARの発現を実証した。HER2.CAR−t−haNK細胞のナチュラル細胞傷害性は
図37の結果に示され、一方、CAR媒介細胞傷害性の結果は
図38に示される。HER2.CAR−t−haNK細胞のADCCの模範的データは
図39のグラフに示される。
【0097】
実施例8:FcεRIγシグナリングドメインを有するCD30−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗CD30scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたCD30−CARは、配列番号38の核酸配列を有していた。
【0098】
CD30−CARの発現は
図46の結果で実証され、一方、組換え細胞のナチュラル細胞傷害性の結果は
図47に示される。CAR媒介細胞傷害性は
図48の結果で実証され、一方、ADCCの模範的結果は
図49のデータに示される。
【0099】
実施例9:FcεRIγシグナリングドメインを有するEGFR−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗EGFRscFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたEGFR−CARは、配列番号39の核酸配列を有した。
【0100】
そのように構築されたEGFR.CAR−t−haNK細胞の機能について、標準的細胞傷害性アッセイを用いてA−549細胞に対して試験した。模範的結果は
図14に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するEGFR.CAR−t−haNK細胞は、A−549標的細胞に対して有意な細胞傷害性を呈した。EGFR.CAR−t−haNK細胞でのEGFR−CARの発現は
図31に示され、一方、ナチュラル細胞傷害性の結果は
図32に示される。EGFR.CAR−t−haNK細胞のCAR媒介細胞傷害性の模範的結果は
図33及び
図34に示され、一方、EGFR.CAR−t−haNK細胞のADCCの結果は
図35に示される。
【0101】
実施例10:FcεRIγシグナリングドメインを有するIGF1R−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗IGF1RscFvを含み、CD8ヒンジは、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたIGF1R−CARは配列番号40の核酸配列を有し、IGF1R−CARとCD16とIL−2
ERとをコードするトリシストロニック構築物は、
図61にも模式的に例示される配列番号53の核酸配列を有していた。
【0102】
そのように構築されたIGF1R.CAR−t−haNK細胞の機能について、第2世代CAR(CD28/CD3z)と比較して標準的細胞傷害性アッセイを用いてMDA−MB−231細胞に対して試験した。模範的結果は
図18に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するIGF1R.CAR−t−haNK細胞は、MDA−MB−231標的細胞に対して第2世代CARの細胞傷害性に匹敵する有意な標的特異的細胞傷害性を呈した。
【0103】
実施例11:FcεRIγシグナリングドメインを有するCD123−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗CD123scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたCD123−CARは、配列番号41の核酸配列を有していた。組換えNK細胞を発現するCD123−CARのCAR媒介細胞傷害性のデータは
図44に示され、
図45は、組換えNK細胞を発現するCD123−CARのADCCの模範的データを示す。
【0104】
実施例12:FcεRIγシグナリングドメインを有するPD−L1−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗PD−L1scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたPD−L1−CARは、配列番号42の核酸配列を有していた。
【0105】
そのように構築されたPD−L1.CAR−t−haNK細胞の機能について、標準的細胞傷害性アッセイを用いてSUP−B15.PD−L1
+細胞に対して試験した。模範的結果は
図12に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するPD−L1.CAR−t−haNK細胞は、SUP−B15.PD−L1
+標的細胞に対して有意な細胞傷害性を呈した。
【0106】
そのように構築されたPD−L1.CAR−t−haNK細胞の機能について、標準的細胞傷害性アッセイを用いてU251細胞に対してさらに試験した。模範的結果は、非トランスフェクトhaNK細胞と共に
図13に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するPD−L1.CAR−t−haNK細胞は、U251標的細胞に対して標的特異的且つ有意な細胞傷害性を呈したが、haNK対照細胞は、同一U251細胞に対して実質的にまったく細胞傷害性を有していなかった。
【0107】
PD−L1に対する標的細胞特異性に関するそのほかのさらなる実験では、本発明者らは、一般的細胞傷害性の対照としてのhaNK細胞と共にPD−L1.CAR−t−haNK細胞を用いていくつかのPD−L1陽性腫瘍細胞系を試験した。
図19から容易に分かるように、PD−L1.CAR−t−haNK細胞は、多種多様な腫瘍細胞(肺、乳房、泌尿生殖器の腫瘍細胞、及びそのほか頭頸部小細胞癌、脊索腫)にわたり優れた細胞傷害性を有していた。注目すべきこととして、PD−L1.CAR−t−haNK細胞は、細胞の大多数(>85%)を死滅させるのに4時間未満を必要とし、対照haNK細胞は12時間超を必要とした。
【0108】
図20は、各種他の対照細胞(指定のhaNK細胞)と比較して、MDA−MB−231細胞に対するPD−L1.CAR−t−haNK細胞の細胞傷害性をさらに例示する。データから分かるように、5:1のE:T比で、PD−L1.thaNKによるMDA−MB−231溶解はセツキシマブにより改善され、且つhaNK活性はセツキシマブ及びa−PD−L1の添加により改善された。プレーンPD−L1.thankは、haNK及びhaNK+セツキシマブと比較して細胞傷害活性を改善し、プレーンPD−L1.thankによる死滅は、haNK+PD−L1抗体と同程度であったが、PD−L1.thank+セツキシマブは、haNK+セツキシマブ及びhaNK+PD−L1よりも性能が優れていた。1:1のE:T比では、PD−L1.thaNK活性は、セツキシマブの有無によらず同一であり、且つPD−L1.thaNKは、hankによる内因性及びADCC媒介性死滅よりも性能が有意に優れていた。haNK活性は、セツキシマブ及びa−PD−L1の添加により改善された。
【0109】
さらなる実験では、本発明者らは、
図40に例示されるようにPD−L1.CAR−t−haNK細胞でのPD−L1.CARの発現を実証した。PD−L1.CAR−t−haNK細胞のナチュラル細胞傷害性は
図41の結果に示され、一方、CAR媒介細胞傷害性の結果は
図42に示される。PD−L1.CAR−t−haNK細胞のADCCの模範的データは
図43のグラフに示される。
【0110】
実施例13:FcεRIγシグナリングドメインを有するCD33−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗HER2scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたCD33−CARは、配列番号43の核酸配列を有していた。
【0111】
そのように構築されたCD33.CAR−t−haNK細胞の機能について、標準的細胞傷害性アッセイを用いてTHP−1細胞に対して試験した。模範的結果は
図11に示される。データから容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するCD33.CAR−t−haNK細胞は、THP−1標的細胞に対する有意な細胞傷害性を呈した。NK−92細胞でのCD33CARの強い発現を表すさらなるデータは、
図27に提示される。K562細胞に対するCD33.CAR−t−haNK細胞のナチュラル細胞傷害性は
図28に示され、
図29はTHP−1細胞に対するCAR媒介細胞傷害性の結果を表す。
図30は、リツキシマブを併用してSUP−B15CD19
KO/CD20
+に対するCD33.CAR−t−haNK細胞のADCCのさらなる結果を示す。
【0112】
実施例14:FcεRIγシグナリングドメインを有するgp120−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗gp120scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたgp120−CARは、配列番号44の核酸配列を有していた。
【0113】
本発明者らは、そのように生成された細胞が
図53から分かるように有意量のCD16及びgp120CARを発現することをさらに実証した。gp120CARへのGP120の結合は、対陰性対照としての非組換えaNK細胞と対比して
図54で実証される通り示された。対応している間、そのように生成された細胞のナチュラル細胞傷害性は
図55に示され、一方、対応するADCCデータは
図56に示される。
【0114】
実施例15:FcεRIγシグナリングドメインを有するB7−H4−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗B7−H4scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたB7−H4−CARは、配列番号45の核酸配列を有していた。
【0115】
実施例16:FcεRIγシグナリングドメインを有するBCMA−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗BCMAscFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたBCMA−CARは、配列番号46の核酸配列を有していた。
【0116】
BCMA発現は、
図50の模範的結果に示されるように確認され、且つCAR媒介細胞傷害性は、
図51に示されるように標的細胞に対して実証された。同様に、
図52の結果から分かるように、組換え細胞は、標的細胞に対する抗体としてリツキシマブを用いて有意なADCCを有していた。
【0117】
実施例17:FcεRIγシグナリングドメインを有するGD2−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗GD2scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたGD2−CARは、配列番号47の核酸配列を有していた。
【0118】
実施例18:FcεRIγシグナリングドメインを有するFAP−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗FAPscFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたFAP−CARは、配列番号48の核酸配列を有していた。FAP−CARの発現は
図57のデータに示され、且つ標的細胞に対するFAP.CAR細胞傷害性は
図58の結果で実証された。
【0119】
実施例19:FcεRIγシグナリングドメインを有するCSPG−4−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗CSPG−4scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたCSPG−4−CARは、配列番号52の核酸配列を有していた。CSPG−4−CARの発現はFACS解析で確認され、且つ模範的結果は
図59に示される。このように構築された細胞はまた、
図60の模範的データに示されるように有意な細胞傷害性を呈した。
【0120】
実施例20:FcεRIγシグナリングドメインを有するCD20−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する第1世代CARを構築した。これは、CD8ヒンジに結合された抗CD20scFvを含み、D8ヒンジは、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そのように構築されたCD20−CARは、配列番号51の核酸配列を有していた。
【0121】
NK−92細胞でのCD20CARの発現は、
図25の結果に示される。容易に分かるように、CD20.CARは、組換え細胞の大多数で強く発現される(以上に述べた線状化DNAのCD16と共に)。
図26は、CD20
+標的細胞に対するCD20.CARNK細胞の細胞傷害性の模範的結果を表す。
【0122】
実施例21:FcεRIγシグナリングドメインを有するCD19−CAR
本実施例では、本発明者らは、FcεRIγシグナリングドメインを有する以上に記載の第1世代CARを使用した。これは、CD8ヒンジに結合された抗CD19scFvを含み、CD8ヒンジは、続いて、FcεRIγシグナリングドメインに結合されたCD28膜貫通ドメインに結合された。そして機能試験のために線状化DNAでNK−92細胞をトランスフェクトした。
【0123】
そのように構築されたCD19.CAR−t−haNK細胞の機能について、標準的細胞傷害性アッセイを用いて一般的細胞傷害性を決定するためにK562細胞に対して試験した。模範的結果は
図15に示される。容易に分かるように、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するCD19.CAR−t−haNK細胞は、K562標的細胞に対する有意な細胞傷害性を呈した。さらなる実験セットでは、対照としてのaNK細胞と比較してSUP−B15細胞を用いて標的特異的細胞傷害性を決定した。模範的結果は
図16に示される。もう一度述べるが、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するCD19.CAR−t−haNK細胞は、有意な標的特異的細胞傷害性を呈した。そのうえさらに他の一実験セットでは、SKBr3細胞を使用し、抗体としてハーセプチン及びリツキサンを用いて、標的特異的ADCCを決定した。模範的結果は
図17に示される。この場合も、FcεRIγシグナリングドメインを有するCARを発現するCD19.CAR−t−haNK細胞は、有意な抗体及び標的特異的ADCCを呈した。
【0124】
図21は、対照と対比してNK−92細胞でCD16とIL−2
ERとをコードするセグメントを含む線状化DNAからのCD19.CAR発現を模範的に例示する。
図25から分かるように、発現は、大多数の細胞にわたり非常に強かった。K562細胞に対するCD19.CARt−haNK細胞のナチュラル細胞傷害性及びSUP−B15細胞に対する標的化細胞傷害性の追加の結果は、
図22及び
図23に表される。SUP−B15CD19
KO/CD20
+細胞に対するCD19.CARt−haNK細胞のADCCの模範的さらなる結果は
図24に示される。
【0125】
実施例22:NSGマウスにおけるヒト異種移植モデルでのPD−L1標的化t−haNK細胞の抗腫瘍活性
確証されたPDL1陽性異種移植モデルとしてMDA−MB−231及びHCC827を使用し、さまざまな製剤、投与レベル、及び投与経路(IV及びIT)でPDL1t−haNK細胞の効能を評価した。
【0126】
動物:動物型:NSGマウス(JAX)、雌、9〜10週齢、MDA−MB−231モデル用動物数:24(フレッシュ細胞)、及びHCC827モデル用:24(フレッシュ細胞)+6(凍結保存細胞)。使用した腫瘍モデルは次の細胞系:MDA−MB−231(ヒト乳腺癌)及びHCC827(ヒト肺腺癌)であり、接種経路は両方の側腹の皮下であり、治療開始時の平均腫瘍負荷はMDA−MB−231では約100mm3及びHCC827では約75〜80mm3であった。
【0127】
治療品:抗PD−L1t−haNKは、濃度:5E7細胞/mL又は2E7細胞/mLで新たに調製され照射されたものであり、媒体対照は、X−VIVO(商標)10培地であり、投与方法は、記載のごとくIV及びITであった。IV NK投与の投与量は、200μL中1E7細胞/回(新たに調製された細胞)、200μL中4E6細胞/回(凍結保存細胞)であり、IT NK投与(フレッシュ細胞のみ)では、用量は50μL中2.5E6細胞/腫瘍/回であった。投与頻度は、4週連続で週2回(M/Th又はT/F)であり、投与の初日は1日目として定義された。
【0128】
MDA−MB−231の試験設計は、以下の表3に記される(この試験は27日目に終了し、その時、A、C、及びD群の何匹かの動物は>2000mm3の総腫瘍体積に達した)。
【0129】
【表5】
【0130】
HCC827の試験設計は、以下の表4に記される(この試験は29日目に終了し、その時、生存動物は再目的化され、他の研究に移された)。
【0131】
【表6】
【0132】
結果:新たに調製されたPD−L1t−haNK細胞(1E7細胞/回)は、MDA−MB−231及びHCC827の両方のモデルで際立った長期持続性の腫瘍成長阻害をもたらした。
【0133】
MDA−MB−231:腫瘍静止:16日目のTGI:84%(ピーク)、26日目のTGI:79%(最終測定)。
【0134】
HCC827:腫瘍退縮:16日目のTGI:120%(ピーク)、29日目のTGI:84%(研究終了時)。
【0135】
凍結保存PDL1t−haNK細胞(4E6細胞/回)もまた、X−VIVO(商標)10培地と比較して腫瘍成長抑制で統計的に有意な効能を示した:26日目のTGI:60%(ピーク)及び29日目のTGI:40%(研究終了時)。
【0136】
新たに調製されたPDL1t−haNK細胞(1E7細胞/回)はまた、以下の表5に示されるようにMDA−MB−231モデルで転移疾患負荷の有意な減少をもたらした。
【0137】
【表7】
【0138】
媒体中に存在した可視肝臓小結節の数:29±9、PD−L1t−haNK群中:0(対応のない両側t検定によるP=0.0116)。
【0139】
実施された実験に基づいて、1E7細胞/回の投与レベルの新たに調製されたPD−L1t−haNK細胞の4週間にわたる週2回のIV投与は、試験された皮下異種移植モデルの両方で際立った抗腫瘍効能を示した。すなわち、治療は、MDA−MB−231腫瘍保有マウスでは腫瘍静止をもたらし、16日目のピークTGIは84%及び試験終了時のTGIは79%であり(両時点で二元配置ANOVAによるP<0.0001であり、続いてチューキー検定による多重比較を行った)、HCC827モデルでは腫瘍退縮をもたらし、16日目のピークTGIは120%及び試験終了時のTGIは84%であった(P<0.0001)。4E6細胞/回の投与レベルの凍結保存PD−L1t−haNK細胞の4週間にわたる週2回のIV投与は、HCC827腫瘍モデルで有意な治療効能をさらに示し、ピークTGIは60%(P<0.0001)及び試験終了のTGIは40%(P<0.01)に達した。2.5E6細胞/用量/腫瘍の投与レベルの新たに調製されたPD−L1t−haNK細胞の4週間にわたる週2回のIT投与は、HCC827腫瘍の成長を効果的に抑制し、20日目に70%のピークTGI及び試験終了時に49%(p<0.001)のTGIをもたらした。
【0140】
新たに調製されたPD−L1t−haNK細胞のIV投与(1E7細胞/回)を受けた動物で顕著な有害反応が観測された。新たに調製されたPD−L1t−haNK細胞とは対照的に、凍結保存細胞(より低レベルの4E6細胞/回で投与した)は、IV投与後、動物に安全であることが分かった。PD−L1t−haNK細胞は、2つの皮下腫瘍モデルで顕著な効能を実証した。より低い4E6細胞/回レベルで投与された凍結保存細胞はまた、腫瘍成長抑制に有意な効能を示し、動物に安全であることが分かった。
【0141】
当然ながら、本明細書に提供されるすべての核酸配列に対して、対応するコードタンパク質も明示的に本明細書で企図されることを認識すべきである。同様に、すべてのアミノ酸配列に対して、対応する核酸配列も本明細書で企図される(いずれかのコドン使用頻度で)。
【0142】
本明細書に引用される特許出願、刊行物、参照文献、及び配列アクセッション番号はすべて、その全体が本願をもって参照により組み込まれる。
【0143】
とくに定義がない限り、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。
【0144】
本明細書及び以下の特許請求の範囲では、以下の意味を有すると定義されるものとするいくつかの用語を参照する。
【0145】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としたものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本明細書で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、とくに文脈上明確に示されてない限り、複数形も含むことが意図される。
【0146】
本明細書に記載の数値(たとえば、範囲を含めてpH、温度、時間、濃度、量、及び分子量)はすべて、当業者が遭遇する測定値の通常の変動を含むものと理解される。そのため、本明細書に記載の数値は、±0.1〜10%、たとえば、±0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%の変動を含む。必ずしも明記されるわけではないが、数値表示はすべて、「約」という用語が先行しうることを理解すべきである。そのため、約という用語は、その数値の±0.1〜10%、たとえば、±0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%の変動を含む。また、必ずしも明記されるわけではないが、本明細書に記載の試薬は、単に模範的なものにすぎず、かかる等価物は当技術分野で公知であるものと理解すべきである。
【0147】
当業者であれば理解されるであろうが、あらゆる目的で、とくに記載の説明の提供に関連して、本明細書に開示された範囲はすべて、範囲の端点を含むとともに、範囲の端点間のすべての値を含む。また、本明細書に開示される範囲はすべて、いずれの可能な部分範囲及びその部分範囲の組合せもすべて包含する。いずれの列挙された範囲も、十分に記述されてその範囲が少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などされうるものとして容易に認識可能である。たとえば、限定されるものではないが、本明細書で考察される各範囲は、下3分の1、中3分の1、上3分の1に容易に分解可能である。当業者であれば同様に理解されるであろうが、「〜まで」、「少なくとも〜」などの表現はすべて、列挙された数を含み、以上で考察したように後続的に部分範囲に分解可能な範囲を意味する。最終的に、当業者であれば理解されるであろうが、範囲は各個別のメンバーを含む。そのため、たとえば、1〜3細胞を有する群は、1、2、又は3細胞を有する群を意味する。同様に、1〜5細胞を有する群は、1、2、3、4、又は5細胞を有する群を意味し、他も同様である。
【0148】
また、必ずしも明記されるわけではないが、本明細書に記載の試薬は、単に模範的なものにすぎず、かかる等価物は当技術分野で公知であるものと理解すべきである。
【0149】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」とは、続いて記載される事象又は状況が発生可能又は発生不能でありその記載がその事象又は状況が発生する場合と発生しない場合とを含むことを意味する。
【0150】
「comprising(〜を含む)」という用語は、組成物及び方法が、列挙された要素を含むが、他を除外しないことを意味することが意図される。組成物及び方法の定義に用いられるときの「Consisting essentially of(〜から本質的になる)」とは、組合せに本質的に有意な他の要素を除外することを意味するものとする。たとえば、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、特許請求された本発明の基本的且つ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない他の要素を除外しないであろう。「Consisting of(〜からなる)」とは、列挙された以外の痕跡量超の他の成分及び実質的な方法工程を除外することを意味するものとする。これらの移行句の各々により規定される実施形態は、本開示の範囲内にある。
【0151】
本明細書で用いられる場合、「免疫療法」とは、単独又は組合せにかかわらず標的細胞に接触したときに細胞傷害性を誘導しうる改変又は非改変のNK−92細胞、天然に存在する又は改変されたNK細胞又はT細胞の使用を意味する。
【0152】
本明細書で用いられる場合、「ナチュラルキラー(NK)細胞」とは、特異的抗原刺激の不在下で且つ主要組織適合複合体(MHC)クラスによる制約を受けずに標的細胞を死滅させる免疫系の細胞のことである。標的細胞は、腫瘍細胞又はウイルス保有細胞でありうる。NK細胞は、CD56の存在及びCD3表面マーカーの不在により特徴付けられる。
【0153】
「内因性NK細胞」という用語は、NK−92細胞系から識別される、ドナー(又は患者)に由来するNK細胞を意味するものとして用いられる。内因性NK細胞は、一般に、NK細胞が富化された不均一細胞集団である。内因性NK細胞は、患者の自家又は同種治療が意図されうる。
【0154】
「NK−92」という用語は、Gongら(1994)に記載のきわめて強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を意味し、その権利はNantKwestが所有する(これ以降では「NK−92(商標)細胞」)。不死NK細胞系は、元々は非ホジキンリンパ腫を有する患者から得られた。とくに指定がない限り、「NK−92(商標)」という用語は、元のNK−92細胞系さらには改変されたNK−92細胞系(たとえば、外因性遺伝子の導入により)を意味することが意図される。NK−92(商標)細胞及びそれらの模範的且つ非限定的改変体は、米国特許第7,618,817号明細書、同第8,034,332号明細書、同第8,313,943号明細書、同第9,181,322号明細書、同第9,150,636号明細書、及び米国出願第10/008,955号明細書(それらはすべてその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、たとえば、野生型NK−92(商標)、NK−92(商標)−CD16、NK−92(商標)−CD16−γ、NK−92(商標)−CD16−ζ、NK−92(商標)−CD16(F176V)、NK−92(商標)MI、及びNK−92(商標)CIが挙げられる。NK−92細胞は当業者に公知であり、かかる細胞はNantKwest,Inc.から容易に入手可能である。
【0155】
「aNK」という用語は、Gongら(1994)に記載のきわめて強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を意味し、その権利はNantKwestが所有する(これ以降では「aNK(商標)細胞」)。「haNK」という用語は、Gongら(1994)に記載のきわめて強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を意味し、その権利はNantKwestが所有し、細胞表面上にCD16を発現するように改変されている(これ以降では「CD16+NK−92(商標)細胞」又は「haNK(登録商標)細胞」)。いくつかの実施形態では、CD16+NK−92(商標)細胞は、細胞表面上に高親和性CD16レセプターを含む。「taNK」という用語は、Gongら(1994)に記載のきわめて強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を意味し、その権利はNantKwestが所有し、キメラ抗原レセプターを発現するように改変されている(これ以降では「CAR改変NK−92(商標)細胞」又は「taNK(登録商標)細胞」)。「t−haNK」という用語は、Gongら(1994)に記載のきわめて強力なユニーク細胞系に由来するナチュラルキラー細胞を意味し、その権利はNantkWestが所有し、細胞表面上にCD16を発現するように且つキメラ抗原レセプターを発現するように改変されている(これ以降では「CAR改変CD16+NK−92(商標)細胞」又は「t−haNK(商標)細胞」)。いくつかの実施形態では、t−haNK(商標)細胞は、細胞表面上に高親和性CD16レセプターを発現する。
【0156】
「改変NK−92細胞」とは、外因性遺伝子又はタンパク質、たとえば、Fcレセプター、CAR、サイトカイン(たとえばIL−2若しくはIL−15)、及び/又は自殺遺伝子を発現するNK−92細胞を意味する。いくつかの実施形態では、改変NK−92細胞は、Fcレセプター、CAR、サイトカイン(たとえばIL−2若しくはIL−15)、及び/又は自殺遺伝子などのトランスジーンをコードするベクターを含む。一実施形態では、改変NK−92細胞は、少なくとも1つトランスジェニックタンパク質を発現する。
【0157】
本明細書で用いられる場合、「非照射NK−92細胞」とは、照射されていないNK−92細胞のことである。照射は、細胞を成長不能及び増殖不能にする。最適な活性を保持するために照射と注入との間の時間を4時間以下にすべきであるので、NK−92細胞は、患者の治療前に治療施設で又はどこか他の地点で照射されるであろうと想定される。代替的に、NK−92細胞は、他の機序により増殖を防止しうる。
【0158】
本明細書で用いられる場合、NK−92細胞の「不活性化」とは、それを成長不能にすることである。不活性化はまた、NK−92細胞の死を意味しうる。NK−92細胞は、治療適用で病理診断に関連する細胞のex vivoサンプルを効果的にパージした後、又は生体内に存在する多くの又はすべての標的細胞を効果的に死滅させるのに十分な時間で哺乳動物の体内に存在した後、不活性化しうると想定される。不活性化は、NK−92細胞が感受性である不活性化剤を投与することによりに誘発しうるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
本明細書で用いられる場合、「細胞傷害性」及び「細胞溶解性」という用語は、NK−92細胞などのエフェクター細胞の活性を記述するために用いられるとき、同義であることが意図される。一般的には、細胞傷害活性とは、さまざまな生物学的、生化学的、又は生物物理学的機序のいずれかにより標的細胞を死滅させることを意味する。細胞溶解とは、より具体的には、エフェクターが標的細胞の形質膜を溶解してその物理的完全性を破壊する活性を意味する。この結果、標的細胞の死滅を生じる。理論により拘束されることを望むものではないが、NK−92細胞の細胞傷害作用は、細胞溶解に起因するものと考えられる。
【0160】
細胞/細胞集団に対する「死滅」という用語は、その細胞/細胞集団の死をもたらし得るいずれのタイプの操作も含むことを指す。
【0161】
「Fcレセプター」という用語は、Fc領域として知られる抗体の一部に結合することにより免疫細胞の保護機能に寄与するある特定の細胞(たとえばナチュラルキラー細胞)の表面上に見いだされるタンパク質を意味する。細胞のFcレセプター(FcR)への抗体のFc領域の結合は、抗体媒介食作用又は抗体依存細胞媒介細胞傷害性(ADCC)を介して細胞の食細胞活性又は細胞傷害活性を刺激する。FcRは、それらが認識する抗体のタイプに基づいて分類される。たとえば、Fcγレセプター(FCγR)は、抗体のIgGクラスに結合する。FCγRIII−A(CD16とも呼ばれる、配列番号34)は、IgG抗体に結合してADCCを活性化する低親和性Fcレセプターである。FCγRIII−Aは、典型的にはNK細胞に見いだされる。NK−92細胞は、FCγRIII−Aを発現しない。Fcイプシロンレセプター(FcεR)は、IgE抗体のFc領域に結合する。
【0162】
本明細書で用いられる場合、「キメラ抗原レセプター」(CAR)という用語は、細胞内シグナリングドメインに融合された細胞外抗原結合ドメインを意味する。CARは、T細胞又はNK細胞で発現されて細胞傷害性を増加させうる。一般的には、細胞外抗原結合ドメインは、対象の細胞に見いだされる抗原に特異的なscFvである。CAR発現NK−92細胞は、scFvドメインの特異性に基づいて、ある特定の抗原を細胞表面上に発現する細胞を標的とする。scFvドメインは、腫瘍特異的抗原及びウイルス特異的抗原をはじめとするいずれかの抗原を認識するように工学操作可能である。たとえば、CD19CARは、いくつかの癌により発現される細胞表面マーカーCD19を認識する。
【0163】
本明細書で用いられる「腫瘍特異的抗原」という用語は、癌細胞又は新生物細胞には存在するが癌細胞と同一の組織又は系統に由来する正常細胞では検出不能な抗原を意味する。本明細書で用いられる腫瘍特異的抗原はまた、腫瘍関連抗原、すなわち、癌細胞と同一の組織又は系統に由来する正常細胞と比較してより高レベルで癌細胞に発現される抗原を意味する。
【0164】
本明細書で用いられる「ウイルス特異的抗原」という用語は、ウイルス感染細胞には存在するがウイルス感染細胞と同一の組織又は系統に由来する正常細胞では検出不能な抗原を意味する。一実施形態では、ウイルス特異的抗原は、感染細胞の表面上に発現されるウイルスタンパク質である。
【0165】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、同義的に用いられ、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド又はそれらのアナログのどれかの任意の長さのポリマー形のヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドは、いずれかの3次元構造を有しうるとともに、いずれかの既知又は未知の機能を発揮しうる。ポリヌクレオチドの例としては、限定されるものではないが、次のもの、すなわち、遺伝子又は遺伝子断片(たとえば、プローブ、プライマー、EST、又はSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、いずれかの配列の単離されたDNA、いずれかの配列の単離されたRNA、核酸プローブ及びプライマーが挙げられる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドやヌクレオチドアナログなどの改変ヌクレオチドを含みうる。存在する場合、ヌクレオチド構造の改変は、ポリヌクレオチドのアセンブリー前又はアセンブリー後に付与可能である。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド成分が介在可能である。ポリヌクレオチドは、標識成分のコンジュゲーションなどにより重合後にさらに改変可能である。この用語はまた、二本鎖分子及び一本鎖分子の両方を意味する。とくに明記されていない限り又は必要とされない限り、ポリヌクレオチドである本発明のいずれの実施形態も、二本鎖形態と、二本鎖形態を構成することが知られている又は予測される2つの相補的部分の一本鎖形態の各々と、の両方を包含する。
【0166】
ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基、すなわち、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ポリヌクレオチドがRNAであるときはチミンの代わりにウラシル(U)の特異的配列で構成される。そのため、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表現である。
【0167】
「相同性」又は「同一性」又は「類似性」とは、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性を意味する。相同性は、比較を目的としてアライメントしうる各配列中の位置を比較するにより決定可能である。比較される配列の位置が同一塩基又はアミノ酸により占領されるとき、分子はその位置で相同である。配列間の相同性の程度は、配列により共有されるマッチ位置又は相同位置の数の関数である。
【0168】
本明細書で用いられる場合、「パーセント同一性」とは、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列同一性を意味する。パーセント同一性は、比較を目的としてアライメントしうる各配列の位置を比較するにより決定可能である。比較された配列の位置が同一塩基又はアミノ酸により占領されるとき、分子はその位置で同一である。相同ヌクレオチド配列は、本明細書に示されるヌクレオチド配列の天然に存在する対立遺伝子変異体及び突然変異をコードする配列を含む。相同ヌクレオチド配列は、ヒト以外の哺乳動物種のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。相同アミノ酸配列は、保存的アミノ酸置換を含有する並びにポリペプチドが同一結合及び/又は活性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、相同アミノ酸配列は、15以下、10以下、5以下、又は3以下の保存的アミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列は、本明細書に記載の配列に対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、若しくは少なくとも85%、又はそれを超えるパーセント同一性を有する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列は、本明細書に記載の配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。パーセント同一性は、たとえば、スミス・ウォーターマンアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482−489)を用いるGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for UNIX,Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)によりデフォルト設定を用いて決定可能である。パーセント配列同一性の決定に好適なアルゴリズムとしては、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムが挙げられ、それぞれ、Altschul et al.(Nuc.Acids Res.25:3389−402,1977)及びAltschul et al.(J.Mol.Biol.215:403−10,1990)に記載されている。BLAST解析を実施するソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を介してパブリックに利用可能である(インターネットのncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、及びXは、アライメントの感度及びスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、及び両方の鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列用として、BLASTPプログラムは、ワード長3及び期待値(E)10及びBLOSUM62スコアリング行列(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915,1989を参照されたい)アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4をデフォルトとして用いる。
【0169】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、特定種における発現に対してコドン最適化され、たとえば、マウス配列は、ヒトにおける発現にコドン最適化可能である(コドン最適化核酸配列によりコードされるタンパク質の発現)。そのため、いくつかの実施形態では、コドン最適化核酸配列は、本明細書に記載の核酸配列に対して少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも80%、若しくは少なくとも85%、又はそれを超えるパーセント同一性を有する。いくつかの実施形態では、コドン最適化核酸配列は、本明細書に記載の配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
【0170】
「発現する」という用語は、遺伝子産物(たとえばタンパク質)の生成を意味する。発現を参照するときの「一過性」という用語は、ポリヌクレオチドが細胞のゲノムに導入されないことを意味する。発現を参照するときの「安定な」という用語は、ポリヌクレオチドが細胞のゲノムに導入されるか又はトランスジーンの発現を維持するためにポジティブ選択マーカーが利用される(すなわち、ある特定の成長条件下で利益に与る細胞により発現される外因性遺伝子)ことを意味する。
【0171】
「サイトカイン(cytokine)」又は「サイトカイン(cytokines)」という用語は、免疫系の細胞に影響を及ぼす生物学的分子の一般的クラスを意味する。模範的サイトカインとしては、限定されるものではないが、インターフェロン及びインターロイキン(IL)、とくにIL−2、IL−12、IL−15、IL−18、及びIL−21が挙げられる。好ましい実施形態では、サイトカインはIL−2である。
【0172】
本明細書で用いられる場合、「ベクター」という用語は、たとえばトランスフォーメーションのプロセスにより許容細胞内に配置されたときにベクターが複製されうるようにインタクトレプリコンを含む非染色体核酸を意味する。ベクターは、細菌などのある細胞タイプでは複製しうるが、哺乳動物細胞などの他の細胞では複製能力が制限されるか又はまったくない。ベクターは、ウイルス又は非ウイルスでありうる。核酸を送達するための模範的非ウイルスベクターとしては、ネイキッドDNA、単独又はカチオン性ポリマーとの組合せでカチオン性脂質と複合体化されたDNA、アニオン性及びカチオン性リポソーム、不均一ポリリシン、規定長オリゴペプチド、ポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーで縮合されたDNAを含むDNA−タンパク質複合体及び粒子(いくつかの場合にはリポソームに含まれる)、並びにウイルスとポリリシン−DNAとを含む三元複合体の使用が挙げられる。一実施形態では、ベクターはウイルスベクター、たとえばアデノウイルスである。ウイルスベクターは当技術分野で周知である。
【0173】
本明細書で用いられる場合、タンパク質発現を参照するときの「標的化」という用語は、限定されるものではないが、細胞内又はその外部の適切な行き先にタンパク質又はポリペプチドを方向付けることを含むことが意図される。標的化は、典型的には、ポリペプチド鎖中のアミノ酸残基のストレッチであるシグナルペプチド又は標的化ペプチドを介して達成される。これらのシグナルペプチドは、ポリペプチド配列内のいずれかの位置に配置可能であるが、多くの場合、N末端に配置される。ポリペプチドはまた、C末端にシグナルペプチドを有するように工学操作可能である。シグナルペプチドは、ポリペプチドを細胞外セクション位置に向けて形質膜、ゴルジ、エンドソーム、小胞体、及び他の細胞区画に方向付けることが可能である。たとえば、C末端に特定アミノ酸配列(たとえばKDEL)を有するポリペプチドは、ER管腔内に保持されるか又はER管腔に戻るように輸送される。
【0174】
本明細書で用いられる場合、腫瘍の標的化を参照するときの「標的化する」という用語は、NK−92細胞が腫瘍細胞(すなわち標的細胞)を認識し死滅させる能力を意味する。これとの関連で「標的化された」という用語は、たとえば、NK−92細胞により発現されたCARが腫瘍により発現された細胞表面抗原を認識し結合するに能力を意味する。
【0175】
本明細書で用いられる場合、「トランスフェクトする」という用語は、細胞への核酸の挿入を意味する。トランスフェクションは、細胞への核酸の進入を可能にするいずれかの手段を用いて実施しうる。DNA及び/又はmRNAは、細胞にトランスフェクトしうる。好ましくは、トランスフェクト細胞は、核酸によりコードされる遺伝子産物(すなわちタンパク質)を発現する。
【0176】
「自殺遺伝子」という用語は、トランスジーンを発現する細胞のネガティブ選択を可能にするトランスジーンを意味する。自殺遺伝子は、安全系として使用され、選択剤の導入により遺伝子を発現する細胞の死滅を可能にする。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子、ニトロレダクターゼ遺伝子、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)gpt遺伝子、及びE.コリ(E.coli)Deo遺伝子をはじめとするいくつかの自殺遺伝子系が同定されている(たとえば、Yazawa K,Fisher W E,Brunicardi F C:Current progress in suicide gene therapy for cancer.World J.Surg.2002 July;26(7):783−9も参照されたい)。一実施形態では、自殺遺伝子はチミジンキナーゼ(TK)遺伝子である。TK遺伝子は、野生型又は突然変異TK遺伝子(たとえば、tk30、tk75、sr39tk)でありうる。TKタンパク質を発現する細胞は、ガンシクロビルを用いて死滅させうる。