(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
多様ながんで発現されるある特定のバイアンテナ型ルイス抗原に特異的に結合することが可能な、ヒト化抗体、その抗原結合性断片、および抗体コンジュゲートが本明細書で開示される。ここで開示される抗体は、様々ながんを含む疾患の処置または検出のために、抗原を発現する細胞を標的化するのに有用である。開示された抗体およびその抗原結合性断片を生産するための、ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞も提供される。医薬組成物、処置および検出の方法、ならびに抗体、抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、および組成物の使用も提供される。
配列番号35に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;および配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、前記抗体またはその抗原結合性断片が、
Fuc4(Galβ1→3GlcNAc)2[I]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc]2[II]を含むバイアンテナ型LeB/LeB抗原に、
Fuc4(Galβ1→4GlcNAc)2[III]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc]2[IV]を含むバイアンテナ型LeY/LeY抗原に、
Fuc2(Galβ1→3GlcNAc)[Fuc2(Galβ1→4GlcNAc)][V]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][VI]を含むバイアンテナ型LeB/LeY抗原に、
およびFuc2(Galβ1−4GlcNAc)[Fuc2(Galβ1−3GlcNAc)][VII]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][VIII]を含むバイアンテナ型LeY/LeB抗原に
特異的に結合することが可能であり、
前記抗体またはその抗原結合性断片が、Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc[IX]を含むモノアンテナ型Lex抗原にも、[Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc]2[X]を含むバイアンテナ型Lex抗原にも、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc[XI]を含むモノアンテナ型LeA抗原にも、Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc[XII]を含むモノアンテナ型H抗原2型にも、(Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc)2[XIII]を含むバイアンテナ型H抗原2型にも、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc[XIV]を含むモノアンテナ型H抗原1型にも特異的に結合しない、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(VH CDR1);配列番号3に記載のアミノ酸配列、または配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(VH CDR2);配列番号4に記載のアミノ酸配列、または配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(VH CDR3)を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに
(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列、または配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(VL CDR1);配列番号7に記載のアミノ酸配列、または配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(VL CDR2);および配列番号8に記載のアミノ酸配列、または配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(VL CDR3)を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(VH CDR1);配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(VH CDR2);配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(VH CDR3)を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(VL CDR1);配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(VL CDR2);および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(VL CDR3)を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、前記抗体またはその抗原結合性断片が、
Fuc4(Galβ1→3GlcNAc)2[I]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc]2[II]を含むバイアンテナ型LeB/LeB抗原に、
Fuc4(Galβ1→4GlcNAc)2[III]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc]2[IV]を含むバイアンテナ型LeY/LeY抗原に、
Fuc2(Galβ1→3GlcNAc)[Fuc2(Galβ1→4GlcNAc)][V]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][VI]を含むバイアンテナ型LeB/LeY抗原に、
およびFuc2(Galβ1−4GlcNAc)[Fuc2(Galβ1−3GlcNAc)][VII]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][VIII]を含むバイアンテナ型LeY/LeB抗原に
特異的に結合することが可能であり、
前記抗体またはその抗原結合性断片が、Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc[IX]を含むモノアンテナ型Lex抗原にも、[Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc]2[X]を含むバイアンテナ型Lex抗原にも、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc[XI]を含むモノアンテナ型LeA抗原にも、Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc[XII]を含むモノアンテナ型H抗原2型にも、(Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc)2[XIII]を含むバイアンテナ型H抗原2型にも、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc[XIV]を含むモノアンテナ型H抗原1型にも特異的に結合しない、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
配列番号35に記載のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;および配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、前記抗体またはその抗原結合性断片が、
Fuc4(Galβ1→3GlcNAc)2[I]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc]2[II]を含むバイアンテナ型LeB/LeB抗原に、
Fuc4(Galβ1→4GlcNAc)2[III]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc]2[IV]を含むバイアンテナ型LeY/LeY抗原に、
Fuc2(Galβ1→3GlcNAc)[Fuc2(Galβ1→4GlcNAc)][V]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][VI]を含むバイアンテナ型LeB/LeY抗原に、
およびFuc2(Galβ1−4GlcNAc)[Fuc2(Galβ1−3GlcNAc)][VII]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][VIII]を含むバイアンテナ型LeY/LeB抗原に
特異的に結合することが可能であり、
前記抗体またはその抗原結合性断片が、Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc[IX]を含むモノアンテナ型Lex抗原にも、[Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc]2[X]を含むバイアンテナ型Lex抗原にも、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc[XI]を含むモノアンテナ型LeA抗原にも、Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc[XII]を含むモノアンテナ型H抗原2型にも、(Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc)2[XIII]を含むバイアンテナ型H抗原2型にも、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc[XIV]を含むモノアンテナ型H抗原1型にも特異的に結合しない、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
ヒト化抗体である、請求項6もしくは7に記載の単離された抗体、または請求項1から5もしくは8のいずれか一項に記載の単離された抗体もしくはその抗原結合性断片。
Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、単鎖Fv(ScFv)抗体、およびダイアボディから選択される、請求項1から5、8、または9のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合性断片。
請求項1から10のいずれか一項に記載の単離された抗体もしくはその抗原結合性断片、または請求項19もしくは請求項21から35に記載の抗体コンジュゲート;および薬学的担体を含む医薬組成物。
前記抗体またはその抗原結合性断片が、ヒンジ領域中に還元されたジスルフィド架橋を含み、前記還元されたジスルフィド架橋が、前記マレイミド基にカップリングされている、請求項22から25のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
前記ペイロード分子が、チューブリン標的化抗有糸分裂剤、ペプチドベースの毒素、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体、抗生物質、ピリミジン合成阻害剤、代謝拮抗物質、DNAアルキル化剤、およびトポイソメラーゼ阻害剤から選択される治療剤である、請求項29に記載の抗体コンジュゲート。
前記ペイロード分子が、メイタンシノイド、オーリスタチン、ドキソルビシン、カリケアマイシン、PBD二量体、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、およびモノメチルオーリスタチンF(MMAF)から選択される、請求項30に記載の抗体コンジュゲート。
前記検出可能なインジケーターが、放射性核種、色素、放射性金属、蛍光性部分、MRI造影剤、マイクロバブル、カーボンナノチューブ、金粒子、フルオロデオキシグルコース、酵素、発色団、および放射線不透過性マーカーから選択される、請求項32に記載の抗体コンジュゲート。
マレイミドで標識されたDOTA、N−ヒドロキシスクシンイミド−DOTA、およびデスフェリオキサミン(DFO)から選択される放射性核種のキレート化剤をさらに含む、請求項33または請求項34のいずれかに記載の抗体コンジュゲート。
前記被験体が、胃がん、結腸がん、乳がん、肺がん、リンパがん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮がん、および扁平上皮癌から選択されるがんを有するかまたはそれを有する疑いがある、請求項36に記載の方法。
前記がんが、胃腺癌、粘液性胃腺癌、未分化型胃腺癌、印環細胞胃癌、結腸腺癌、浸潤性乳管癌、肝細胞癌、肺腺癌、扁平上皮癌、転移性リンパ節腺癌、粘液性卵巣腺癌、膵管腺癌、膵乳頭状腺癌、前立腺腺癌、および類内膜癌から選択される、請求項37に記載の方法。
投与することが、静脈内、非経口、胃内、胸内、肺内、直腸内、皮内、腹腔内、腫瘍内、皮下、経口、局所、経皮、嚢内、髄腔内、鼻内、および筋肉内から選択される経路によって投与することを含む、請求項36から38のいずれか一項に記載の方法。
がんの処置、診断、または検出における使用のための、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体、請求項16もしくは17に記載の宿主細胞、請求項19もしくは21から35のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート、または請求項20に記載の組成物。
がんの処置、診断、または検出のための医薬の調製における使用のための、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体、請求項11もしくは12に記載のポリヌクレオチド、請求項13から15のいずれか一項に記載の組換えベクター、請求項16もしくは17に記載の宿主細胞、請求項19もしくは21から35のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート、または請求項20に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0051】
配列の簡単な説明
配列番号1は、抗体hBBC.10.1FQの重鎖可変(VH)ドメインのアミノ酸配列である:
【化1】
【0052】
配列番号2は、抗体IMH2/BBC、抗体hBBC.8、抗体hBBC.9、抗体hBBC.9.1、抗体hBBC.10、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQの重鎖相補性決定領域1(VH CDR1)のアミノ酸配列である:
【化2】
【0053】
配列番号3は、抗体hBBC.9.1、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQのVH CDR2のアミノ酸配列である:
【化3】
【0054】
配列番号4は、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQのVH CDR3のアミノ酸配列である:
【化4】
【0055】
配列番号5は、抗体hBBC.10、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQの軽鎖可変(VL)ドメインのアミノ酸配列である:
【化5】
【0056】
配列番号6は、抗体IMH2/BBC、抗体hBBC.8、抗体hBBC.9、抗体hBBC.9.1、抗体hBBC.10、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQの軽鎖相補性決定領域1(VL CDR1)のアミノ酸配列である:
【化6】
【0057】
配列番号7は、抗体IMH2/BBC、抗体hBBC.8、抗体hBBC.9、抗体hBBC.9.1、抗体hBBC.10、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQのVL CDR2のアミノ酸配列である:
【化7】
【0058】
配列番号8は、抗体IMH2/BBC、抗体hBBC.8、抗体hBBC.9、抗体hBBC.9.1、抗体hBBC.10、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQのVL CDR3のアミノ酸配列である:
【化8】
【0059】
配列番号9は、[VL−VH]方向での抗体hBBC.10.1由来の単鎖断片可変(scFv)のアミノ酸配列である:
【化9】
式中、「x」は、括弧内に示される配列
【化10】
の1個、または2、3、4、5、6、7、8、9、10個、もしくはそれよりも多くの反復であってもよい。
【0060】
配列番号10は、抗体hBBC.10.1の全長重鎖(HC)のアミノ酸配列である:
【化11】
【0061】
配列番号11は、抗体hBBC.10、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQの全長軽鎖(LC)のアミノ酸配列である:
【化12】
【0062】
配列番号12は、抗体hBBC.10.1の重鎖可変(VH)ドメインをコードするヌクレオチド配列である:
【化13】
【0063】
配列番号13は、抗体IMH2/BBC、抗体hBBC.8、抗体hBBC.9、抗体hBBC.9.1、抗体hBBC.10、hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQの重鎖相補性決定領域1(VH CDR1)をコードするヌクレオチド配列である:
【化14】
【0064】
配列番号14は、抗体hBBC.9.1、抗体hBBC.10、および抗体hBBC.10.1FQのVH CDR2をコードするヌクレオチド配列である:
【化15】
【0065】
配列番号15は、抗体hBBC.10.1および抗体hBBC.10.1FQのVH CDR3をコードするヌクレオチド配列である:
【化16】
【0066】
配列番号16は、抗体hBBC.10、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQの軽鎖可変(VL)ドメインをコードするヌクレオチド配列である:
【化17】
【0067】
配列番号17は、抗体IMH2/BBC、抗体hBBC.8、抗体hBBC.9、抗体hBBC.9.1、抗体hBBC.10、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQの軽鎖相補性決定領域1(VL CDR1)をコードするヌクレオチド配列である:
【化18】
【0068】
配列番号18は、抗体IMH2/BBC、抗体hBBC.8、抗体hBBC.9、抗体hBBC.9.1、抗体hBBC.10、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQのVL CDR2をコードするヌクレオチド配列である:
【化19】
【0069】
配列番号19は、抗体IMH2/BBC、抗体hBBC.8、抗体hBBC.9、抗体hBBC.9.1、抗体hBBC.10、抗体hBBC.10.1、および抗体hBBC.10.1FQのVL CDR3をコードするヌクレオチド配列である:
【化20】
【0070】
配列番号20は、[VL−(L)−VH]方向での抗体hBBC.10.1由来の単鎖断片可変(scFv)をコードするヌクレオチド配列である:
【化21】
式中、「x」は、括弧内に示される配列
【化22】
の1個、または2、3、4、5、6、7、8、9、10個、もしくはそれよりも多くの反復であってもよい。
【0071】
配列番号21は、抗体hBBC.10.1の全長重鎖(HC)をコードするヌクレオチド配列である:
【化23】
【0072】
配列番号22は、抗体hBBC.10.1および抗体hBBC.10.1FQの全長軽鎖(LC)をコードするヌクレオチド配列である:
【化24】
【化25】
【0073】
配列番号23は、例示的なスペーサーアミノ酸配列
【化26】
である。
【0074】
配列番号24は、例示的なスペーサーアミノ酸配列
【化27】
である。
配列番号25は、フレキシブルなポリリンカーアミノ酸配列
【化28】
である。
【0075】
配列番号26は、フレキシブルなポリリンカーアミノ酸配列
【化29】
である。
【0076】
配列番号27は、抗体IMH2/BBCのVLドメインのアミノ酸配列である:
【化30】
【0077】
配列番号28は、抗体IMH2/BBCのVHドメインのアミノ酸配列である:
【化31】
【0078】
配列番号29は、ヒトアクセプターフレームワークAAS01771.1のVLドメインのアミノ酸配列である:
【化32】
【0079】
配列番号30は、ヒトアクセプターフレームワークCAD89404.1のVHドメインのアミノ酸配列である:
【化33】
【0080】
配列番号31は、抗体hBBC.8のVLドメインのアミノ酸配列である:
【化34】
【0081】
配列番号32は、抗体hBBC.8、抗体hBBC.9、および抗体hBBC.10のVHドメインのアミノ酸配列である:
【化35】
【0082】
配列番号33は、抗体hBBC.9および抗体hBBC.9.1のVLドメインのアミノ酸配列である:
【化36】
【0083】
配列番号34は、抗体hBBC.9.1のVHドメインのアミノ酸配列である:
【化37】
【0084】
配列番号35は、抗体hBBC.10.1のVHドメインのアミノ酸配列である:
【化38】
【0085】
配列番号36は、[VH−VL]方向での抗体hBBC.10.1由来の単鎖断片可変(scFv)のアミノ酸配列である:
【化39】
式中、「x」は、括弧内に示される配列
【化40】
の1個、または2、3、4、5、6、7、8、9、10個、もしくはそれよりも多くの反復であってもよい。
【0086】
配列番号37は、[VH−(L)−VL]方向での抗体hBBC.10.1由来の単鎖断片可変(scFv)をコードするヌクレオチド配列である:
【化41】
式中、「x」は、括弧内に示される配列
【化42】
の1個、または2、3、4、5、6、7、8、9、10個、もしくはそれよりも多くの反復であってもよい。
【0087】
これらのおよび他の配列は、添付の配列表に提供される。
【0088】
詳細な説明
本開示は、多様ながんで発現されるある特定のルイス抗原に特異的に結合することが可能なヒト化抗体およびその抗原結合性断片に関する。より具体的には、本明細書で初めて記載され、以下でより詳細に提示されるように、本キメラ、ヒト化抗体は、意外なことに、がん細胞上で発現されるある特定のバイアンテナ型ルイス
B/Y抗原に優れた特異性で結合し、in vivoでロバストな抗腫瘍活性を有する。加えて、ここで開示される抗体は、有利には、配列番号27に記載のアミノ酸配列を有するVLドメインおよび配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するVHドメインを含むBBC抗体と比較した場合、驚くほど低減した(例えば、統計学的に有意なように減少した)モノアンテナ型ルイスB抗原(これは健康な組織で発現される)への結合を有する。本明細書で開示される抗体は、抗体BR96によって認識されるモノアンテナ型Le
Y抗原と異なる抗原に結合し、理論に制限されることは望まないが、本抗体は、BR96と比較した場合、治療的適用におけるがん細胞のより安全でより特異的な標的化を可能にし得る。さらに、本開示の抗体および抗原結合性断片は、抗原を発現するがん細胞にも結合し、効率的にかつ安定してこのような細胞のリソソームに内在化し、非ヒト霊長類モデルにおいて、治療用量で安全に忍容される。
【0089】
ある特定の好ましい実施形態によれば、さらに非限定的な理論によると、ここで開示される抗体およびその抗原結合性断片の有益な使用は、がん、例えば、様々な胃がん、卵巣がん、肺がん、前立腺がん、膵臓がん、および他のがんなどを診断および/または処置する方法に関する。本明細書において、これらのおよび関連の実施形態をより詳細に開示する。
【0090】
ポリペプチドおよびタンパク質
用語「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」ならびに「糖タンパク質」は、同義的に使用され、いかなる特定の長さにも限定されないアミノ酸のポリマーを指す。用語は、ミリスチル化、硫酸化、グリコシル化、リン酸化、およびシグナル配列の付加または欠失などの改変を排除しない。用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、各鎖がペプチド結合による共有結合で連結されたアミノ酸を含む、アミノ酸の1つまたは複数の鎖を意味する場合があり、前記ポリペプチドまたはタンパク質は、ネイティブのタンパク質、すなわち、天然に存在し、詳細には、組換えられていない細胞、または遺伝子操作された、もしくは組換え細胞によって生産されたタンパク質の配列を有する、ペプチド結合によって互いに非共有結合および/または共有結合で連結された複数の鎖を含んでいてもよく、ネイティブのタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、またはネイティブ配列からの1つもしくは複数のアミノ酸の欠失、それへの付加、および/もしくはその置換を有する分子を含む。したがって、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、1つの(「単量体」と称される)または複数の(「多量体」と称される)アミノ酸鎖を含んでいてもよい。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、具体的には、本開示の抗体および抗原結合性断片、または抗体もしくはその抗原結合性断片からの1つもしくは複数のアミノ酸の欠失、それへの付加、および/もしくはその置換を有する配列を包含する。
【0091】
「アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、天然に存在するおよび合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と類似した方式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされたもの、ならびに後で改変される、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、およびO−ホスホセリンであるアミノ酸である。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基礎的な化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα炭素を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)を指す。このようなアナログは、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基礎的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似した方式で機能する化学化合物を指す。
【0092】
「変異」は、本明細書で使用される場合、それぞれ参照または野生型核酸分子またはポリペプチド分子と比較した場合の核酸分子またはポリペプチド分子の配列における変化を指す。変異は、配列中に、ヌクレオチドまたはアミノ酸の置換、挿入または欠失を含む、いくつかの異なるタイプの変化をもたらすことができる。
【0093】
用語「ポリペプチド断片」は、天然に存在するまたは組換え生産されたポリペプチドの、アミノ末端の欠失、カルボキシル末端の欠失、および/または内部の欠失もしくは置換を有するポリペプチド(これは、単量体であっても、多量体であってもよい)を指す。「連続するアミノ酸」は、本明細書で使用される場合、開示されたアミノ酸配列の途切れない直鎖状部分に相当する、共有結合で連結されたアミノ酸を指す。ある特定の実施形態では、ポリペプチド断片は、少なくとも5〜約500アミノ酸長のアミノ酸鎖を含んでいてもよい。ある特定の実施形態では、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、または450アミノ酸長であることが理解される。
【0094】
本明細書で言及される用語「単離されたタンパク質」および「単離されたポリペプチド」は、対象タンパク質またはポリペプチドが、(1)典型的に自然状態で共に見出され得る少なくとも一部の他のタンパク質もしくはポリペプチドを含んでいない、(2)同じ供給源由来の、例えば同じ種由来の他のタンパク質もしくはポリペプチドを本質的に含んでいない、(3)異なる種由来の細胞によって発現される、(4)自然状態で会合するポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、もしくは他の材料の少なくとも約50パーセントから分離されている、(5)自然状態で「単離されたタンパク質」もしくは「単離されたポリペプチド」に会合し得るタンパク質もしくはポリペプチドの部分と(共有結合または非共有結合の相互作用で)会合していない、(6)自然状態で会合していないポリペプチドと(共有結合または非共有結合の相互作用で)作動可能に会合している、または(7)自然状態で存在しないことを意味する。このような単離されたタンパク質またはポリペプチドは、ゲノムDNA、cDNA、mRNAもしくは他のRNAによってコードされていてもよいし、または人工ペプチドおよびタンパク質合成に関するいくつかの周知の化学的性質のいずれかに従った合成起源のものであっても、またはそれらの任意の組合せであってもよい。ある特定の実施形態では、単離されたタンパク質またはポリペプチドは、その使用(治療、診断、予防、調査またはそれ以外での)に干渉し得る、その天然環境で見出されるタンパク質またはポリペプチドまたは他の汚染物質を実質的に含まない。
【0095】
ポリペプチドは、タンパク質のN末端に、翻訳と同時に(co−translationally)または翻訳後にタンパク質の移動を方向付けるシグナル(またはリーダー)配列を含んでいてもよい。ポリペプチドはまた、ポリペプチド(例えば、ポリ−His)の合成、精製もしくは同定を容易にするために、または固体支持体へのポリペプチドの結合を強化するために、リンカーまたは他の配列に、インフレームで融合していても、コンジュゲートしていてもよい。「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、単一の鎖中に少なくとも2つの別個のドメインを有するタンパク質を指し、ドメインは、天然にはタンパク質中で一緒に見出されない。融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、PCRを使用して構築され得るか、組換え作出され得るなど、またはこのような融合タンパク質は、合成することができる。融合タンパク質は、他の構成成分、例えばタグ、リンカー、または形質導入マーカーをさらに含有していてもよい。融合ドメインポリペプチドは、N末端および/またはC末端でポリペプチドに接合されていてもよく、非限定的な例として、当業者によく知られているような、免疫グロブリン由来の配列、例えばIg定常領域配列もしくはその部分、親和性タグ、例えばHisタグ(例えば、ヘキサヒスチジンまたは他のポリヒスチジン)、FLAG(商標)もしくはmycまたは他のペプチド親和性タグ、検出可能なポリペプチド部分、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)もしくはそのバリアント(例えば、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、他のエクオリンまたはその誘導体など)、または他の検出可能なポリペプチド融合ドメイン、酵素もしくはその部分、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)または他の公知の酵素による検出および/もしくはレポーター融合ドメインなどを挙げることができる。追加の検出可能な部分は、本明細書で論じられる。
【0096】
システイン含有ペプチドは、確立された手法に従って、このようなポリペプチドの、ジスルフィド架橋された二量体、三量体、四量体またはそれよりも高次の多量体への即座のアセンブリーが許容されるように、ポリペプチド、例えば本開示の抗体またはその抗原結合性断片のNおよび/またはC末端に接合することができる融合ペプチドとして使用され得る。例えば、鎖間のジスルフィド架橋を形成することが可能なシステイン残基を含む、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーメンバー由来の配列を含有する融合ポリペプチドが、同様にS−S連結された多量体を操作するための他の戦略も周知である(例えば、Reiter et al., 1994 Prot. Eng. 7:697;Zhu et al., 1997 Prot. Sci. 6 :781;Mabry et al., 2010 Mabs 2:20;Gao et al., 1999 Proc. Nat. Acad. Sci. USA 96:6025;Lim et al., 2010 Biotechnol. Bioeng. 106:27)。また、本明細書に記載される抗体および抗原結合性断片などの所望のポリペプチド上への融合ドメインとしての多量体のアセンブリーを促進するペプチド配列をグラフティングするための代替アプローチも企図される(例えば、Fan et al., 2008 FASEB J. 22:3795)。
【0097】
ポリペプチド改変は、多種多様な周知の手法に従って生合成的および/または化学的に実行してもよく、担体タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)または他の分子)へのコンジュゲーション、および固体支持体への共有結合または非共有結合での固定化も含み得る。担体への化学的または生合成的なコンジュゲーションは、ある特定の実施形態によれば、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片に対して多価のコンジュゲートの生成のために企図される。
【0098】
検出可能なインジケーター部分(時にはレポーター部分と称される)、例えばフルオロフォア(例えば、FITC、TRITC、テキサスレッドなど)を用いた検出可能な標識化も企図される。具体的な目的のために選択することができる広範な検出可能なインジケーター(比色インジケーターを含む)の例は、Haugland, 2005 The Handbook: A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies−Tenth Ed.、Invitrogen Corp./Molecular Probes(商標)、Eugene、OR;Mohr, 1999 J. Mater. Chem., 9: 2259−2264;Suslick et al., 2004 Tetrahedron 60:11133−11138;および米国特許第6,323,039号に記載されている。(例えば、Fluka Laboratory Productsカタログ、2001 Fluka、Milwaukee、WI;およびSigma Life Sciences Researchカタログ、2000、Sigma、St.Louis、MO.も参照)。検出可能なインジケーターは、蛍光インジケーター、発光インジケーター、リン光性インジケーター、放射測定インジケーター、色素、酵素、酵素の基質、エネルギー移動分子、または親和性標識であり得る。
【0099】
本明細書において企図されるある特定の実施形態における使用のための他の検出可能なインジケーターとしては、親和性試薬、例えば抗体、レクチン、免疫グロブリンFc受容体タンパク質(例えば、Staphylococcus aureusプロテインA、プロテインGまたは他のFc受容体)、アビジン、ビオチン、他のリガンド、受容体もしくは対抗受容体またはそれらのアナログもしくは模倣体などが挙げられる。このような親和性手法のために、イムノメトリック測定のための試薬、例えば好適に標識された抗体またはレクチンを調製してもよく、例えば、放射性核種(例えば、
76Br、
78Zr、
18Fl)で、フルオロフォアで、親和性タグで、ビオチンもしくはビオチン模倣配列で標識されたもの、または抗体−酵素コンジュゲートとして調製されたものが挙げられる(例えば、Weir, D.M., Handbook of Experimental Immunology, 1986, Blackwell Scientific, Boston;Scouten, W.H., 1987 Methods in Enzymology 135:30−65;Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, 1988 Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY;Haugland, Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies−Tenth Ed., 2005 Invitrogen Corp./Molecular Probes(商標)、Eugene、OR;Scopes, R.K., Protein Purification: Principles and Practice, 1987, Springer−Verlag, NY;Hermanson, G.T. et al., Immobilized Affinity Ligand Techniques, 1992, Academic Press, Inc., NY;Luo et al., 1998 J. Biotechnol. 65:225およびそれらで引用された文献を参照)。
【0100】
ペプチドリンカー/スペーサー配列は、必要に応じて、各ポリペプチドが確実にその二次および/または三次構造にフォールディングするために十分な距離で複数のポリペプチド構成成分を分離するためにも用いることができる。このようなペプチドリンカー配列は、当分野において周知の標準的な技術を使用して融合ポリペプチドに取り込むことができる。
【0101】
ある特定のペプチドスペーサー配列は、例えば、(1)フレキシブルな伸長したコンフォメーションをとる能力;(2)第1および第2のポリペプチド上の機能的なエピトープと相互作用することができる二次構造をとることができないこと;ならびに/または(3)ポリペプチドの機能的なエピトープと反応し得る疎水性もしくは電荷を有する残基の欠如に基づき選択することができる。ある特定の実施形態では、ペプチドスペーサー配列は、例えば、Gly、AsnおよびSer残基を含有する。他の中性に近いアミノ酸、例えばThrおよびAlaもスペーサー配列中に含まれていてもよい。スペーサーとして有用に用いられ得る他のアミノ酸配列としては、Maratea et al., Gene 40:39 46 (1985);Murphy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8258 8262 (1986);米国特許第4,935,233号、および米国特許第4,751,180号で開示されたものが挙げられる。スペーサーの他の例示的および非限定的な例としては、例えば、Glu−Gly−Lys−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser−Glu−Ser−Lys−Val−Asp(配列番号23)(Chaudhary et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1066−1070 (1990))およびLys−Glu−Ser−Gly−Ser−Val−Ser−Ser−Glu−Gln−Leu−Ala−Gln−Phe−Arg−Ser−Leu−Asp(配列番号24)(Bird et al., Science 242:423−426 (1988))が挙げられ得る。
【0102】
一部の実施形態では、第1および第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、立体的な干渉を防ぐのに使用することができる非必須のN末端アミノ酸領域を有する場合、スペーサー配列は必要ではない。2つのコード配列は、任意のスペーサーなしで直接的に、あるいは例えば、単一の反復で存在する、または1〜5回もしくはそれよにも多く、またはそれより多く繰り返される場合、五量体Gly−Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号25)で構成されるフレキシブルなポリリンカーを使用することによって融合されていてもよい;例えば、配列番号26を参照されたい。ある特定の例示的および非限定的な実施形態では、ペプチドスペーサーは、1〜5アミノ酸の間、5〜10アミノ酸の間、5〜25アミノ酸の間、5〜50アミノ酸の間、10〜25アミノ酸の間、10〜50アミノ酸の間、10〜100アミノ酸の間、またはその間の任意の範囲のアミノ酸であり得る。他の例示的な実施形態では、ペプチドスペーサーは、長さが約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれよりも多いアミノ酸を含む。
【0103】
ある特定の実施形態によれば、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片のアミノ酸配列改変も企図される。改変としては、例えば、保存的および非保存的アミノ酸置換が挙げられる。「保存的置換」は、特定のタンパク質の特定の特徴(例えば、特異的な結合活性などの結合活性)に顕著に影響を与えないかまたは変更しないアミノ酸置換を指す。一般的に、保存的置換は、置換されたアミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられている置換である。保存的置換としては、以下の群の1つに見出される置換が挙げられる:群1:アラニン(AlaまたはA)、グリシン(GlyまたはG)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT);群2:アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはZ);群3:アスパラギン(AsnまたはN)、グルタミン(GlnまたはQ);群4:アルギニン(ArgまたはR)、リシン(LysまたはK)、ヒスチジン(HisまたはH);群5:イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、メチオニン(MetまたはM)、バリン(ValまたはV);および群6:フェニルアラニン(PheまたはF)、チロシン(TyrまたはY)、トリプトファン(TrpまたはW)。加えて、または代替として、アミノ酸は、類似の機能、化学構造、または組成(例えば、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、または硫黄含有)によって保存的置換の群に分類することができる。例えば、脂肪族の分類は、置換の目的のために、Gly、Ala、Val、Leu、およびIleを含み得る。他の保存的置換の群としては、硫黄含有:Metおよびシステイン(CysまたはC);酸性:Asp、Glu、Asn、およびGln;小さい脂肪族の、非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、およびGly;極性の負電荷を有する残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、およびGln;極性の正電荷を有する残基:His、Arg、およびLys;大きい脂肪族の非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、およびCys;ならびに大きい芳香族の残基:Phe、Tyr、およびTrpが挙げられる。追加の情報は、Creighton (1984) Proteins, W.H. Freeman and Companyに見出すことができる。
【0104】
例えば、抗体またはその抗原結合性断片の結合親和性および/または他の生物学的な特性を改善することが望ましい場合がある。アミノ酸配列バリアントは、例えば、コードするポリヌクレオチドに適切なヌクレオチド変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。このような改変としては、例えば、抗体またはその抗原結合性断片のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/またはそれへの挿入、および/またはその置換が挙げられる。最終的な構築物が所望の特徴を有する(例えば、本明細書に記載されるバイアンテナ型ルイス抗原への特異的な結合を保持しながらも、本明細書の他所で記載されるようなモノアンテナ型Le
XもしくはLe
AまたはH抗原に検出可能に結合しないか、あるいはそれへの結合の統計学的に有意な減少を示す)という条件で、最終的な抗体または抗原結合性断片バリアントに到達するように、欠失、挿入、および置換の任意の組合せを作製することができる。アミノ酸変化は、抗体またはその抗原結合性断片の翻訳後プロセスを変更する、例えばグリコシル化部位の数または位置を変化させることもできる。
【0105】
代表的な抗体またはその抗原結合性断片の3次元構造の決定は、選択された天然または非天然のアミノ酸での1つまたは複数のアミノ酸の置換、付加、欠失または挿入が、そのようにして得られた構造的なバリアントがここで開示される種の空間充填特性を保持するかどうかを決定する目的のために実質的にモデル化することができるように、慣例的な手法を介して行うことができる。例えば、Donate et al., 1994 Prot. Sci. 3:2378;Bradley et al., Science 309: 1868−1871 (2005);Schueler−Furman et al., Science 310:638 (2005);Dietz et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 103:1244 (2006);Dodson et al., Nature 450:176 (2007);Qian et al., Nature 450:259 (2007);Raman et al. Science 327:1014−1018 (2010);Marcos et al., 2017 Science 355:201、およびそれらで引用された文献を参照されたい。例えば本明細書で提供される抗体および抗原結合性断片の合理的設計のための、これらのおよび関連する実施形態で使用することができるコンピューターアルゴリズムの一部の追加の非限定的な例としては、VMDが挙げられ、これは、3Dグラフィックスおよびビルトイン型のスクリプティングを使用して、大きい生体分子系を表示する、アニメーション化する、および分析するための分子可視化プログラムである(ks.uiuc.edu/Research/vmd/における、Theoretical and Computational Biophysics Group、University of Illinois at Urbana−Champagneに関するウェブサイトを参照)。
【0106】
他の多くのコンピュータープログラムが当分野において公知であり、当業者に利用可能であり、これらは、エネルギー最小化コンフォメーションの空間充填モデルから原子の寸法(ファンデルワールス半径)を決定することを可能にする;異なる化学基に対して高親和性の領域の決定を模索し、よれによって結合を強化するGRID、数学的アライメントを計算するモンテカルロ検索、ならびに力場の計算および分析を評価するCHARMM(Brooks et al. (1983) J. Comput. Chem. 4:187−217)およびAMBER(Weiner et al (1981) J. Comput. Chem. 106: 765)(Eisenfield et al. (1991) Am. J. Physiol. 261:C376−386;Lybrand (1991) J. Pharm. Belg. 46:49−54;Froimowitz (1990) Biotechniques 8:640−644;Burbam et al. (1990) Proteins 7:99−111;Pedersen (1985) Environ. Health Perspect. 61:185−190;およびKini et al. (1991) J. Biomol. Struct. Dyn. 9:475−488も参照)。多様な適切なコンピューターを使用するコンピュータープログラムも、例えばSchroedinger(Munich、Germany)から市販されている。
【0107】
抗体
本発明のある特定の好ましい実施形態は、
Fuc
4(Galβ1→3GlcNAc)
2[I]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc]
2[II]を含むバイアンテナ型Le
b/Le
b抗原に、
Fuc
4(Galβ1→4GlcNAc)
2[III]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc]
2[IV]を含むバイアンテナ型Le
Y/Le
Y抗原に、
Fuc
2(Galβ1→3GlcNAc)[Fuc
2(Galβ1→4GlcNAc)][V]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][VI]を含むバイアンテナ型Le
B/Le
Y抗原に、
およびFuc
2(Galβ1−4GlcNAc)[Fuc
2(Galβ1−3GlcNAc)][VII]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][VIII]を含むバイアンテナ型Le
Y/Le
B抗原に
特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片であって、
抗体またはその抗原結合性断片が、Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc[IX]を含むモノアンテナ型Le
x抗原にも、[Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc]
2[X]を含むバイアンテナ型Le
x抗原にも、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc[XI]を含むモノアンテナ型Le
A抗原にも、Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc[XII]を含むモノアンテナ型H抗原2型にも、(Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc)
2[XIII]を含むバイアンテナ型H抗原2型にも、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc[XIV]を含むモノアンテナ型H抗原1型にも特異的に結合せず、ある特定のさらなる特に好ましい実施形態では、本明細書に記載されるある特定の他のバイアンテナ型またはモノアンテナ型ルイス抗原に特異的に結合しない、抗体またはその抗原結合性断片に関する。
【0108】
用語「抗体」(Ab)は、本明細書で使用される場合、所望の生物学的活性を示す、例えば、ここで開示されるバイアンテナ型ルイス抗原に特異的に結合する能力を保持する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性または三重特異性抗体)、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、および抗体断片を含む。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書において「抗体」と同義的に使用される。
【0109】
基礎的な抗体単位は、2つの同一な軽(L)鎖および2つの同一な重(H)鎖で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。各L鎖は、少なくとも1つの(および典型的には1つの)共有結合のジスルフィド結合によってH鎖に連結され、一方で2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに連結されている。各HおよびL鎖は、規則的に間隔を開けた鎖内のジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(V
H)を、それに続いて、αおよびγ鎖のそれぞれに対して3つの定常ドメイン(C
H)ならびにμおよびεアイソタイプに対して4つのC
Hドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(V
L)を、それに続いてその他方の末端に定常ドメイン(C
L)を有する。V
Lは、V
Hと共にアライメントされ、C
Lは、重鎖の第1の定常ドメイン(C
H1)と共にアライメントされる。特定のアミノ酸残基が、軽鎖および重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられる。V
HおよびV
Lの対合は、一緒になって単一の抗原結合性部位を形成する。
【0110】
任意の脊椎動物種由来のL鎖は、それらの定常ドメイン(C
L)のアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに別個のタイプの一方に割り当てることができる。それらの重鎖の定常ドメイン(C
H)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つのクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらはそれぞれアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と名付けられた重鎖を有する。γおよびαクラスはさらに、C
H配列および機能における比較的わずかな差に基づきサブクラスに分けられ、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2を発現する。複数のIgアイソタイプをコードする哺乳動物は、アイソタイプクラススイッチングを受け得ることが理解される。
【0111】
IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドと共に、基礎的なヘテロ四量体単位の5つからなり、それゆえに、10個の抗原結合性部位を含有するが、分泌されたIgA抗体は、重合して、J鎖と共に基礎的な4鎖単位の2〜5つを含む多価集合体を形成することができる。IgGの場合、4鎖単位は、一般的に、約150,000ダルトンの分子量を有する。抗体の異なるクラスの構造および特性について、例えば、Basic and Clinical Immunology, 8th edition, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow (eds.), Appleton & Lange, Norwalk, Conn., 1994, page 71, and Chapter 6を参照されたい。
【0112】
可変(V)ドメインは、抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義する。V
Hドメインをコードする遺伝子配列は、可変(V)、多様性(D)、および接合(J)セグメントの複数のコピーを有する。V
Lドメインをコードする遺伝子配列は、VおよびJセグメントの複数のコピーを含有する。V
HおよびV
L領域は、遺伝子再構成(すなわち、体細胞組換え)を受けて、抗体において多様な抗原特異性を発展させる。用語「可変」は、Vドメインのある特定のセグメントが、配列において、抗体間で広く異なっている事実を指す。
【0113】
しかしながら、可変性は、可変ドメインの110アミノ酸のスパンにわたり均一に分布していない。その代わりに、V領域は、「高度可変領域」と呼ばれる極端な可変性の短い領域によって分離された15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチからなる。これらの高度可変領域は、親和性の成熟プロセスの間の体細胞超変異の結果であり、それらは、典型的にはそれぞれ9〜18アミノ酸長である。しかしながら、それらは、特定のエピトープに応じて長さが4〜28アミノ酸の範囲であることが見出されている。例えば、長さが少なくとも22または23アミノ酸までのCDR3領域が記載されている。例えば、Morea V, et al., J Mol Biol. 275(2):269−94 (1998)およびKabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition. NIH Publication No. 91−3242 (1991)を参照されたい。抗体アミノ酸位置(例えば、CDR配列)は、公知の番号付けスキーム、例えばKabat、Chothia、IMGT、および/またはEU番号付けスキームに従って決定することができる。
【0114】
ネイティブの重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、4つのフレームワーク領域(FR)を含み、これらの大部分はβ−シート配置をとっており、β−シート構造を接続する、一部の場合、その一部を形成するループを形成する3つの高度可変領域(相補性決定領域(CDR)としても公知であり、以下でさらに定義される)によって接続されている。各鎖における高度可変領域は、FRによって、一部の場合、他の鎖からの高度可変領域で、近接して一緒に保持され、抗体の抗原結合性部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、または定常領域ドメインと細胞表面Fc受容体(FcR)との相互作用を含む場合がある他のメカニズムにおける抗体の参加を示す。
【0115】
用語「高度可変領域」は、本明細書において使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。高度可変領域は、一般的に、「相補性決定領域」もしくは「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、Kabatの番号付けに従って決定され得る通り、V
Lにおいておよそ残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、ならびにV
Hにおいておよそ28〜36(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3);Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照;ならびに/またはKabatにより定義される通りCDRを同定するための当分野において公知の手法、例えばMartin, ”Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains”, In Antibody Engineering, R. Kontermann and S. Dubel, 2001, Springer−Verlag, Berlin, Germany, pages 422−438によって記載されたものに従って)、および/または「高度可変ループ」からの残基(例えば、V
Lにおいて残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびにV
Hにおいて26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901−917 (1987))を含む。
【0116】
「単離された抗体」は、その天然環境の構成成分から分離および/または回収されたものである。その天然環境の汚染物質構成成分は、抗体の診断または治療的使用に干渉し得る材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。好ましい実施形態では、抗体は、(1)ブラッドフォード法によって決定した抗体の95重量%よりも多く、最も好ましくは99重量%よりも多くなるように;(2)スピニングカップシークエネーターの使用によってN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に;または(3)クーマシーブルーもしくは銀染色を使用した還元もしくは非還元条件下でのSDS−PAGEによって均一に精製される。単離された抗体は、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成成分が存在しないため、組換え細胞内のin situの抗体を含む。しかしながら、通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0117】
「無傷の」抗体は、抗原結合性部位、ならびにC
Lおよび少なくとも重鎖定常ドメイン、C
H1、C
H2およびC
H3を含む抗体である。定常ドメインは、ネイティブ配列の定常ドメイン(例えば、ヒトネイティブ配列の定常ドメイン)またはそれらのアミノ酸配列バリアントであり得る。好ましくは、無傷の抗体は、1つまたは複数のエフェクター機能を有する。
【0118】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合または可変領域を含むかまたはそれからなるポリペプチドである。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)
2、およびFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(米国特許第5,641,870号;Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057−1062 [1995]を参照);単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0119】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一な抗原結合性断片、および容易に結晶化する能力を反映する名称の、残りの「Fc」断片を生じる。Fab断片は、H鎖(V
H)の可変領域ドメインと一緒にL鎖全体、および1つの重鎖の第1の定常ドメイン(C
H1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して1価であり、すなわち単一の抗原結合性部位を有する。抗体のペプシン処理は、2価抗原結合性活性を有する2つのジスルフィドで連結されたFab断片にほぼ対応する単一の大きいF(ab’)
2断片を生じ、依然として抗原を架橋することが可能である。FabおよびF(ab’)
2はどちらも、「抗原結合性断片」の例である。Fab’断片は、抗体のヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む、C
H1ドメインのカルボキシ末端に追加の少数の残基を有することによりFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を有する本明細書におけるFab’の名称である。F(ab’)
2抗体断片は元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生産された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0120】
「Fc」断片は、ジスルフィドによって一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分(すなわち、IgGのCH2およびCH3ドメイン)を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって決定される。Fcドメインは、細胞受容体、例えばFcRによって認識される抗体の部分であり、そこに補体活性化タンパク質であるC1qが結合する。本明細書で論じられるように、改変(例えば、アミノ酸置換)は、Fc含有ポリペプチド(例えば、本開示の抗体)の1つまたは複数の官能性を改変する(例えば、改善する、低減する、または消失させる)ために、Fcドメインに行うことができる。
【0121】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合性部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、強い非共有結合での会合での1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの高度可変ループ(それぞれHおよびL鎖からの3つのループ)が発生する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのみのCDRを含むFvの半分)でさえも、抗原を認識および結合する能力を有するが、典型的には結合部位全体よりも低い親和性である。
【0122】
「単鎖Fv」は、「sFv」または「scFv」とも略記され、単一のポリペプチド鎖に接続されるV
HおよびV
L抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、V
HおよびV
Lドメインの間に、sFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの総論に関して、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer−Verlag, New York, pp. 269−315 (1994);Borrebaeck 1995、下記を参照されたい。
【0123】
用語「ダイアボディ」は、Vドメインの鎖間の、ただし鎖内ではない対合が達成され、結果として2価断片、すなわち2つの抗原結合性部位を有する断片が生じるように、V
HおよびV
Lドメインの間に短いリンカー(約5〜10残基)を有するsFv断片(上記の段落を参照)を構築することによって調製された小さい抗体断片を指す。二重特異性のダイアボディは、2つの抗体のV
HおよびV
Lドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444−6448 (1993)により詳細に記載されている。他の抗体断片およびそれを含む分子としては、例えば、直鎖状抗体、タンデムscFv、scFv−Fc、タンデムscFv−Fc、scFv二量体、scFv−ジッパー、ダイアボディ−Fc、ダイアボディ−CH3、scダイアボディ、scダイアボディ−Fc、scダイアボディ−CH3、ナノボディ、TandAb、ミニボディ(minibody)、ミニ抗体、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、scFab、Fab−scFv、Fab−scFv−Fc、scFv−CH−CL−scFv、およびF(ab’)2−scFv2が挙げられ、これらも全て、本明細書において企図される。
【0124】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合性断片は、多重特異性抗体、例えば二重特異性または三重特異性抗体である。二重特異性抗体の形式は、例えば、Spiess et al., Mol. Immunol. 67(2):95 (2015)、およびBrinkmann and Kontermann, mAbs 9(2):182−212 (2017)に開示されており、その二重特異性形式およびその作製方法は、参照により本明細書に組み込まれ、例えば、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、DART、ノブ−イントゥー−ホール(Knobs−Into−Holes)(KIH)アセンブリー、scFv−CH3−KIHアセンブリー、KIH共通軽鎖抗体、TandAb、トリプルボディ(Triple Body)、TriBiミニボディ、Fab−scFv、scFv−CH−CL−scFv、F(ab’)2−scFv2、4価HCab、イントラボディ(Intrabody)、CrossMab、二重作用Fab(DAF)(ツーインワン(two−in−one)またはフォーインワン(four−in−one))、DutaMab、DT−IgG、チャージペア(Charge Pair)、Fab−アーム交換、SEEDボディ、トリオマブ(Triomab)、LUZ−Yアセンブリー、Fcab、κλ−ボディ、オルソゴナルFab、DVD−IgG、IgG(H)−scFv、scFv−(H)IgG、IgG(L)−scFv、scFv−(L)IgG、IgG(L,H)−Fv、IgG(H)−V、V(H)−IgG、IgG(L)−V、V(L)−IgG、KIH IgG−scFab、2scFv−IgG、IgG−2scFv、scFv4−Ig、Zybody、およびDVI−IgG(フォーインワン)が挙げられる。
【0125】
用語「ポリクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、特異的な抗原の1つよりも多いエピトープを認識する抗原特異的抗体の集団から得られた抗体を指す。「抗原」または「免疫原」は、適応免疫系によって認識されるペプチド、脂質、多糖またはポリヌクレオチドを指す。抗原は、自己または非自己分子であってもよい。抗原の例としては、これらに限定されないが、細菌細胞壁構成成分、花粉、およびrh因子が挙げられる。特異的な抗体によって特異的に認識される抗原の領域は、「エピトープ」または「抗原決定基」である。単一の抗原が、複数のエピトープを有していてもよい。
【0126】
用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、わずかな量で存在し得る潜在的な天然に存在する変異を除いて、集団を構成する個々の抗体が同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原性部位に対して向けられている。さらに、異なるエピトープに対して向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一のエピトープに対して向けられる。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、他の抗体で汚染されることなく合成することができる点で有利である。修飾句「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)によって初めて記載されたハイブリドーマ手法によって調製してもよいし、または細菌、真核動物もしくは植物細胞における組換えDNA方法を使用して作製してもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624−628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581−597 (1991)に記載される技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0127】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種由来の、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかまたはそれに相同である一方、鎖の残りが、別の種由来の、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかまたはそれに相同である「キメラ抗体」、ならびに所望の生物学的活性を示す限り、このような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号;同第5,530,101号および同第7,498,415号;ならびにMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851−6855 (1984)を参照)。例えば、キメラ抗体は、ヒトおよび非ヒト残基を含んでいてもよい。さらに、キメラ抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見出されない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練させるためになされる。さらなる詳細に関して、Jones et al., Nature 321:522−525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323−329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593−596 (1992)を参照されたい。キメラ抗体は、霊長類化およびヒト化抗体も含む。
【0128】
「ヒト化抗体」は、一般的に、非ヒトである供給源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有するヒト抗体とみなされる。これらの非ヒトアミノ酸残基は、典型的には可変ドメインから得られる。ヒト化は従来、Winterおよび共同研究者の方法(Jones et al., Nature, 321:522−525 (1986);Reichmann et al., Nature, 332:323−327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534−1536 (1988))に従って、非ヒト可変配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって実行される。したがって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインよりも実質的に少ないものが、非ヒト種からの対応する配列により置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号;同第5,530,101号および同第7,498,415号)。一部の場合では、「ヒト化」抗体は、非ヒト細胞または動物によって生産されるものであり、ヒト配列、例えばH
Cドメインを含む。
【0129】
「ヒト抗体」は、ヒトによって天然に生産された抗体中に存在する配列のみを含有する抗体である。しかしながら、ヒト抗体は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載される改変およびバリアント配列を含む、天然に存在するヒト抗体に見出されない残基または改変を含んでいてもよい。これらは、典型的には、抗体の性能をさらに洗練または強化するためになされる。一部の場合では、ヒト抗体は、トランスジェニック動物によって生産される。例えば、米国特許第5,770,429号;同第6,596,541号および同第7,049,426号を参照されたい。
【0130】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(ネイティブ配列のFc領域またはアミノ酸配列バリアントのFc領域)に起因し得る生物学的活性を指し、抗体アイソタイプに応じて様々である。抗体のエフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が挙げられる。Fc官能性を改変する(例えば、改善する、低減する、または消失させる)ためのアミノ酸改変(例えば、置換)としては、例えば、T250Q/M428L、M252Y/S254T/T256E、H433K/N434F、M428L/N434S、E233P/L234V/L235A/G236+A327G/A330S/P331S、E333A、S239D/A330L/I332E、P257I/Q311、K326W/E333S、S239D/I332E/G236A、N297Q、K322A、S228P、L235E+E318A/K320A/K322A、L234A/L235A、およびL234A/L235A/P329G変異が挙げられ、これらの変異は、InvivoGen(2011)によって公開された「Engineered Fc Regions」で要約され、注釈が付けられており、オンライン、www.invivogen.com/PDF/review/review−Engineered−Fc−Regions−invivogen.pdf?utm_source=review&utm_medium=pdf&utm_campaign=review&utm_content=Engineered−Fc−Regionsで利用可能であり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
抗体またはその抗原結合性断片の「機能的な断片またはアナログ」という語句は、全長抗体またはその抗原結合性断片に共通の定性的な生物学的活性を有する化合物である。
【0132】
指定された抗体またはその抗原結合性断片の「生物学的な特徴」を有する抗体またはその抗原結合性断片は、それを他の抗体または抗体由来の結合性断片から区別する、その抗体、その抗原結合性断片の生物学的な特徴の1つまたは複数を有するものである。例えば、ある特定の実施形態では、指定された抗体の生物学的な特徴を有する抗体またはその抗原結合性断片は、指定された抗体が結合するものと同じエピトープに結合するおよび/または指定された抗体と共通のエフェクター機能を有する。
【0133】
抗体は、本明細書で使用される場合、検出可能なレベルで、好ましくは、約10
4M
−1よりも大きいかもしくはそれに等しい、または約10
5M
−1よりも大きいかもしくはそれに等しい、約10
6M
−1よりも大きいかもしくはそれに等しい、約10
7M
−1よりも大きいかもしくはそれに等しい、または10
8M
−1よりも大きいかもしくはそれに等しい親和定数K
aで抗原と反応する場合、抗原に「免疫特異的な」、「特異的な」または「特異的に結合する」と言われる。その同族抗原に対する抗体の親和性も通常、解離定数K
Dとして表され、ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、10
−4M未満かもしくはそれに等しい、約10
−5M未満かもしくはそれに等しい、約10
−6M未満かもしくはそれに等しい、10
−7M未満かもしくはそれに等しい、または10
−8M未満かもしくはそれに等しいK
Dで結合する場合、本開示のルイス抗原に特異的に結合する。抗体および抗原結合性断片の親和性は、従来の技術、例えば、Scatchard et al.(Ann. N.Y. Acad. Sci. USA 51:660 (1949))によって記載された技術を使用して、または表面プラズモン共鳴(SPR)によって(例えば、Hearty et al., 2012 Meths. Mol. Biol. 907:411)、等温滴定熱量測定(ITC)によって(例えば、Dam et al., 2008 J. Biol. Chem. 283: 31366)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって(例えば、Bobrovnik, 2003 J. Biochem. Biophys. Meths. 75(3): 213)、または当業者によく知られている他の手法によって、容易に決定することができる。
【0134】
抗体のその抗原、細胞または組織に対する結合特性は、一般的に、例えば、免疫蛍光ベースのアッセイ、例えば免疫組織化学(IHC)および/または蛍光活性化セルソーティング(FACS)を含む免疫検出方法を使用して決定および評価することができる。抗体の抗原への結合を決定する他の方法としては、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、等温滴定熱量測定(ITC)、および表面プラズモン共鳴(SPR)技術が挙げられる。
【0135】
「担体」は、本明細書で使用される場合、用いられる投薬量および濃度でそれに曝露される細胞または哺乳動物にとって非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む。生理学的に許容される担体は、多くの場合、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、緩衝液、例えばリン酸、クエン酸、および他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリシン;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールもしくはソルビトール;塩を形成する対イオン、例えばナトリウム;ならびに/または非イオン界面活性剤、例えばポリソルベート20(TWEEN(登録商標))、ポリエチレングリコール(PEG)、およびポロキサマー(PLURONICS(登録商標))などが挙げられる。
【0136】
ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
さらなる態様では、本開示は、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体およびその抗原結合性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供し、それを含むベクターも提供する。ポリヌクレオチドを含む核酸は、DNAまたはRNAを含んでいてもよく、全体的または部分的に合成であってもよい。
【0137】
用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書で言及される場合、一本鎖または二本鎖核酸ポリマーを意味し、具体的には、DNAの一本鎖および二本鎖の形態を含む。ポリヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、またはin vitroの翻訳によって生成され、断片は、ライゲーション、切り出し、エンドヌクレアーゼ作用、またはエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成され得る。ある特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、PCRによって生産される。ポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチド(例えばデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチド)、天然に存在するヌクレオチドのアナログ(例えば、天然に存在するヌクレオチドのα−鏡像異性体の形態)、またはその両方の組合せである単量体で構成されていてもよい。さらなる実施形態では、ポリヌクレオチドを含むヌクレオチドは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの改変された形態であってもよい。
【0138】
用語「天然に存在するヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。用語「改変されたヌクレオチド」は、改変または置換された糖基(例えば、ブロモウリジン、アラビノシド、または2’3’−ジデオキシリボースで改変された)などを有するヌクレオチドを含む。用語「オリゴヌクレオチド連結」は、オリゴヌクレオチド連結、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート(phoshoraniladate)、ホスホロアミデートなどを含む。例えば、それらの開示が、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、LaPlanche et al., 1986, Nucl. Acids Res., 14:9081;Stec et al., 1984, J. Am. Chem. Soc., 106:6077;Stein et al., 1988, Nucl. Acids Res., 16:3209;Zon et al., 1991, Anti−Cancer Drug Design, 6:539;Zon et al., 1991, OLIGONUCLEOTIDES AND ANALOGUES: A PRACTICAL APPROACH, pp. 87−108 (F. Eckstein, Ed.), Oxford University Press, Oxford England;Stecら、米国特許第5,151,510号;Uhlmann and Peyman, 1990, Chemical Reviews, 90:543を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドまたはそのハイブリダイゼーションの検出を可能にするために、検出可能な標識を含んでいてもよい。
【0139】
用語「単離されたポリヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、ゲノム、cDNA、もしくは合成起源のポリヌクレオチド、またはそれらの一部の組合せを意味するものとし、その起源によって、単離されたポリヌクレオチドは、(1)単離されたポリヌクレオチドが自然状態で見出されるポリヌクレオチドの全部もしくは一部と会合しないか、(2)それが自然状態で連結されていないポリヌクレオチドに連結されているか、または(3)より大きい配列の一部として自然状態で存在しない。
【0140】
本明細書で示されるヌクレオチド配列への言及は、文脈上そうではないことが必要でない限り、特定された配列を有するDNA分子を包含し、かつUでTが置換された特定された配列を有するRNA分子を包含する。
【0141】
用語「作動可能に連結した」は、用語が適用される構成成分が、好適な条件下でその固有の機能を実行することを可能にする関係にあることを意味する。例えば、転写制御配列がタンパク質コード配列に「作動可能に連結した」とは、制御配列の転写活性に適合した条件下で、タンパク質コード配列の発現が達成されるようにそれにライゲーションされていることである。
【0142】
用語「制御配列」は、本明細書で使用される場合、それがライゲーションされている、または作動可能に連結されているコード配列の発現、プロセシングまたは細胞内局在化に影響を与えることができるポリヌクレオチド配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物に依存し得る。特定の実施形態では、原核生物のための転写制御配列は、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含み得る。他の特定の実施形態では、真核生物のための転写制御配列は、転写因子、転写エンハンサー配列、転写終結配列およびポリアデニル化配列のための認識部位の1つまたは複数を含むプロモーターを含み得る。ある特定の実施形態では、「制御配列」は、リーダー配列および/または融合パートナー配列を含んでいてもよい。発現制御配列としては、適切な転写開始、終結プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的なRNAプロセシングシグナル、例えばスプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質内のmRNAを安定化させる配列;翻訳効率を強化する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を強化する配列;ならびに場合によってはタンパク質分泌を強化する配列を挙げることができる。発現制御配列は、それらが目的の遺伝子、およびトランスで、または遠くから作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列と連続している場合、作動可能に連結されている可能性がある。
【0143】
発現は、これらに限定されないが、転写、翻訳、およびイントロンが存在する場合、RNAスプライシングなどのプロセスを含む。
【0144】
当業者に理解されるように、ポリヌクレオチドとしては、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドなどを発現する、またはそれらを発現するように適合させることができる、ゲノム配列、ゲノム外の、およびプラスミドによってコードされた配列、ならびにより小さい操作された遺伝子セグメントを挙げることができる。このようなセグメントは、天然に単離されても、当業者によって合成的に改変されてもよい。
【0145】
同様に当業者によって認識されるように、ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードまたはアンチセンス)または二本鎖であってもよく、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であってもよい。RNA分子としては、イントロンを含有し、1対1の方式でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含有しないmRNA分子を挙げることができる。追加のコードまたは非コード配列は、必ずしもそうでなくてもよいが、本開示によるポリヌクレオチド内に存在していてもよく、ポリヌクレオチドは、必ずしもそうでなくてもよいが、他の分子および/または支持材料に連結されていてもよい。ポリヌクレオチドは、ネイティブ配列を含んでいてもよいし、またはこのような配列のバリアントもしくは誘導体をコードする配列を含んでいてもよい。
【0146】
それゆえに、これらの、および関連する実施形態によれば、本開示は、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドも提供する。
【0147】
他の関連する実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を有していてもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される方法(例えば、後述するような標準的なパラメーターを使用したBLAST分析)を使用して本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片をコードする配列などの参照ポリヌクレオチド配列と比較して、少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%またはそれよりも高い配列同一性を含むポリヌクレオチドであり得る。当業者は、コドンの縮重、アミノ酸の類似性、リーディングフレームの位置決めなどを考慮に入れることにより、2つのヌクレオチド配列によってコードされたタンパク質の対応する同一性を決定するために、これらの値を適切に調整することができることを認識している。
【0148】
典型的には、ポリヌクレオチドバリアントは、好ましくは、バリアントポリヌクレオチドによってコードされた抗体またはその抗原結合性断片の結合親和性が、本明細書で具体的に記載されたポリヌクレオチド配列によってコードされた抗体またはその抗原結合性断片と比べて(例えば、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン重鎖および配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン軽鎖を含む、本明細書でhBBC.10.1として言及される抗体と比べて)実質的に減少しないように、1つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含有する。
【0149】
ある特定の他の関連する実施形態では、ポリヌクレオチド断片は、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片をコードする配列に同一または相補的な配列の様々な長さの連続するストレッチを含んでいても、それから本質的になっていてもよい。例えば、本明細書で開示される抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれらのバリアントをコードする配列の、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、200、300、400、500もしくは1000、またはそれよりも多い連続するヌクレオチド、ならびにそれらの間の全ての中間の長さを含むかまたはそれから本質的になるポリヌクレオチドが提供される。「中間の長さ」は、この文脈において、引用された値の間の任意の長さ、例えば50、51、52、53など;100、101、102、103など;150、151、152、153など;200〜500にわたる全ての整数を含む;500〜1,000などを意味することが容易に理解されると予想される。ここで記載されるポリヌクレオチド配列は、一方または両方の末端で、ネイティブ配列に見出されない追加のヌクレオチドによって伸長されていてもよい。この追加の配列は、本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドのいずれかの末端、または本明細書に記載される抗体もしくはその抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドの両方の末端において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチドからなっていてもよい。
【0150】
別の実施形態では、中程度から高いストリンジェンシー条件下で、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合性断片、またはそれらのバリアントをコードするポリヌクレオチド配列、またはそれらの断片、またはそれらの相補配列にハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドが提供される。ハイブリダイゼーション技術は分子生物学分野において周知である。例示の目的のために、本明細書で提供されるポリヌクレオチドの他のポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを試験するための好適な中程度にストリンジェントな条件は、5×SSC、0.5%のSDS、1.0mMのEDTA(pH8.0)の溶液中で事前に洗浄すること;50℃〜60℃、5×SSCで、一晩ハイブリダイズすること;続いて、0.1%のSDSを含有する2×、0.5×および0.2×SSCのそれぞれで、65℃で20分、2回洗浄することを含む。当業者は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、例えばハイブリダイゼーション溶液の塩含量および/またはハイブリダイゼーションが実行される温度を変更することによって、容易に操作することができることを理解する。例えば、別の実施形態では、好適な高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションの温度を例えば60℃〜65℃または65℃〜70℃に上げることを除き、上述のものを含む。
【0151】
ある特定の実施形態では、上述のポリヌクレオチド、例えば、ポリヌクレオチドバリアント、断片およびハイブリダイズする配列は、本明細書に記載されるバイアンテナ型ルイス抗原に結合する抗体またはその抗原結合性断片をコードする。他の実施形態では、このようなポリヌクレオチドは、少なくとも約50%、少なくとも約70%、ある特定の実施形態では、少なくとも約90%が、ここで開示されるルイス抗原に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、またはそれらのバリアント、ならびに本明細書で具体的に記載された抗体またはその抗原結合性断片(例えば、抗体hBBC.10.1)をコードする。さらなる実施形態では、このようなポリヌクレオチドは、本明細書で具体的に記載された抗体またはその抗原結合性断片よりも大きい親和性でここで開示されるルイス抗原に結合する、例えば、少なくとも約105%、106%、107%、108%、109%、または110%で定量的に結合する抗体もしくはその抗原結合性断片、またはそれらのバリアント、ならびに本明細書で具体的に記載された抗体またはその抗原結合性断片をコードする。
【0152】
本明細書の他所で記載されるように、ここで開示される抗体またはその抗原結合性断片の3次元構造の決定は、選択された天然または非天然のアミノ酸での1つまたは複数のアミノ酸の置換、付加、欠失または挿入が、そのようにして得られた構造的なバリアントがここで開示される種の空間充填特性を保持するかどうかを決定する目的のために実質的にモデル化することができるように、慣例的な手法を介して行うことができる。例えば親和性が維持されるかまたはより優れた親和性が達成されるように、抗体またはその抗原結合性断片内の適切なアミノ酸置換(またはアミノ酸配列をコードする適切なポリヌクレオチド)を決定するための多様なコンピュータープログラムが当業者に公知である。例えば、Donate et al., 1994 Prot. Sci. 3:2378;Bradley et al., Science 309: 1868−1871 (2005);Schueler−Furman et al., Science 310:638 (2005);Dietz et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 103:1244 (2006);Dodson et al., Nature 450:176 (2007);Qian et al., Nature 450:259 (2007);Raman et al. Science 327:1014−1018 (2010);Marcos et al., 2017 Science 355:201、およびそれらで引用された文献を参照されたい。
【0153】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドまたはその断片は、コード配列それ自体の長さに関係なく、他のDNA配列、例えばプロモーター、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、多重クローニング部位、他のコード化セグメントなどと組み合わせてもよく、その結果それらの全体の長さが大きく異なる場合がある。したがって、ほとんど全ての長さの核酸断片が用いることができることが企図され、全体の長さは、好ましくは、調製の容易さおよび意図した組換えDNAプロトコールでの使用によって限定される。例えば、全体の長さが、約10,000、約5000、約3000、約2,000、約1,000、約500、約200、約100、約50塩基対の長さなど(全ての中間の長さを含む)の例示的なポリヌクレオチドセグメントが、有用であると企図される。
【0154】
ポリヌクレオチド配列を比較するとき、2つの配列は、後述するように、2つの配列中のヌクレオチドの配列が最大限一致するようにアライメントされたとき、同じである場合、「同一である」と言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウにわたり配列を比較して、配列類似性の局部的領域を同定し、比較することによって実行される。「比較ウィンドウ」は、本明細書で使用される場合、少なくとも約20個、通常30〜約75個、40〜約50個の連続する位置のセグメントを指し、2つの配列を最適にアライメントした後、配列を、同じ数の連続する位置の参照配列と比較することができる。
【0155】
比較のための配列の最適なアライメントは、デフォルトパラメーターを使用した、バイオインフォマティクスソフトウェア(DNASTAR,Inc.、Madison、WI)のDNASTAR(登録商標)LasergeneパッケージにおけるMegalignプログラムを使用して実施することができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかのアライメントスキームを具体化する:Dayhoff, M.O. (1978) A model of evolutionary change in proteins − Matrices for detecting distant relationships。Dayhoff, M.O. (ed.) Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, Washington DC Vol. 5, Suppl. 3, pp. 345−358;Hein J., Unified Approach to Alignment and Phylogenes, pp. 626−645 (1990);Methods in Enzymology vol. 183, Academic Press, Inc., San Diego, CA;Higgins, D.G. and Sharp, P.M., CABIOS 5:151−153 (1989);Myers, E.W. and Muller W., CABIOS 4:11−17 (1988);Robinson, E.D., Comb. Theor 11:105 (1971);Santou, N. Nes, M., Mol. Biol. Evol. 4:406−425 (1987);Sneath, P.H.A. and Sokal, R.R., Numerical Taxonomy − the Principles and Practice of Numerical Taxonomy, Freeman Press, San Francisco, CA (1973);Wilbur, W.J. and Lipman, D.J., Proc. Natl. Acad., Sci. USA 80:726−730 (1983)。
【0156】
代替として、比較のための配列の最適なアライメントは、SmithおよびWatermanの局部的同一性アルゴリズム、Add. APL. Math 2:482 (1981)によって、NeedlemanおよびWunschの同一性アライメントアルゴリズム、J. Mol. Biol. 48 :443 (1970)によって、PearsonおよびLipmanの類似性検索方法、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 : 2444 (1988)によって、これらのアルゴリズムのコンピューター化されたインプリメンテーション(Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ、Genetics Computer Group(GCG)、575 Science Dr.、Madison、WIにおける、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA)によって、または検査によって実施することができる。
【0157】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの1つの好ましい例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれAltschul et al., Nucl. Acids Res. 25:3389−3402 (1977)、およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403−410 (1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST2.0は、2つまたはそれよりも多いポリヌクレオチド間のパーセント配列同一性を決定するために、例えば本明細書に記載されるパラメーターを用いて使用することができる。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは国立バイオテクノロジー情報センターを通じて公開されている。1つの説明に役立つ例において、累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメーターM(マッチする残基の対の場合のリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチの残基の場合のペナルティースコア;常に<0)を使用して計算することができる。各方向におけるワードヒットの伸長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下する場合;1つもしくは複数の負のスコアが付けられた残基のアライメントの累積により、累積スコアがゼロまたはそれ未満になった場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合、中断される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとして、11のワード長さ(W)、および10の期待値(E)、ならびにBLOSUM62スコア行列(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照)アライメント、50の(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4および両方の鎖の比較を使用する。
【0158】
ある特定の実施形態では、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20個の位置の比較のウィンドウにわたり2つの最適にアライメントされた配列を比較することによって決定され、2つの配列の最適なアライメントのために、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列の一部が、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較した場合、20パーセントもしくはそれ未満、通常5〜15パーセント、または10〜12パーセントの付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでいてもよい。パーセンテージは、両方の配列中に同一な核酸塩基が存在する位置の数を決定して、マッチした位置の数を得ること、参照配列中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)でマッチした位置の数を割ること、および結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0159】
遺伝子コードの縮重の結果として、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片をコードする多くのヌクレオチド配列があることが、当業者によって認識される。一部のこのようなポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片をコードするネイティブまたは元のポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列に対する最小の配列同一性を有する。それにもかかわらず、コドン使用頻度の差のために様々であるポリヌクレオチドが、本開示によって明示的に企図される。ある特定の実施形態では、哺乳動物の発現のためにコドン最適化された配列が特に企図される。コドン最適化は、公知の技術およびツールを使用して、例えば、GenScript(登録商標)OptimiumGene(商標)ツールを使用して実行することができる。コドン最適化された配列としては、部分的にコドン最適化された配列(すなわち、少なくとも1つのコドンが、宿主細胞での発現のために最適化されている)および完全にコドン最適化されている配列が挙げられる。
【0160】
それゆえに、別の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片のバリアントおよび/または誘導体の調製のために、変異誘発アプローチ、例えば部位特異的変異誘発を用いることができる。このアプローチにより、ポリペプチド配列における特異的な改変は、それらをコードする基礎となるポリヌクレオチドの変異誘発を介して作製することができる。これらの技術は、例えば、ポリヌクレオチドに1つまたは複数のヌクレオチド配列変化を導入することによって、前述の考察の1つまたは複数を取り入れた配列バリアントを調製および試験するための率直なアプローチを提供する。
【0161】
部位特異的変異誘発は、所望の変異のDNA配列、ならびに横断する欠失ジャンクションの両側に安定な二重鎖を形成するのに十分なサイズおよび配列複雑性のプライマー配列を提供するのに十分な数の隣接するヌクレオチドをコードする特異的なオリゴヌクレオチド配列の使用を介して、変異体の生産を可能にする。変異を、選択されたポリヌクレオチド配列中に用いて、ポリヌクレオチドそれ自体の特性を改善する、変更する、減少させる、改変する、もしくはそれ以外の方法で変化させる、および/またはコードされたポリペプチドの特性、活性、組成、安定性、もしくは一次配列を変更することができる。
【0162】
ある特定の実施形態では、本発明者らは、本開示に従って、コードされたポリペプチドの1つまたは複数の特性、例えばルイス抗原への結合親和性を変更するための、本明細書で開示される抗体もしくはその抗原結合性断片、またはそれらのバリアントをコードするポリヌクレオチド配列の変異誘発を企図する。部位特異的変異誘発の技術は、当分野において周知であり、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの両方のバリアントを作り出すのに広く使用される。例えば、部位特異的変異誘発は、DNA分子の特異的な部分を変更するのに使用されることが多い。このような実施形態では、典型的には約14〜約25ヌクレオチドまたはその程度の長さを含むプライマーが、変更される配列のジャンクションの両側の約5〜約10個の残基と共に用いられる。
【0163】
当業者によって理解されるように、部位特異的変異誘発技術は、多くの場合、一本鎖および二本鎖形態の両方に存在するファージベクターを用いてきた。部位指定変異誘発において有用な典型的なベクターとしては、M13ファージなどのベクターが挙げられる。これらのファージは、商業的に容易に入手可能である。二本鎖プラスミドも、プラスミドからファージに目的の遺伝子を移動させるステップを排除した部位指定変異誘発で慣例的に用いられる。
【0164】
一般的に、本明細書に従った部位指定変異誘発は、まず、一本鎖ベクターを得ること、または配列内に所望のペプチドをコードするDNA配列を含む二本鎖ベクターの2つの鎖を融解させることによって実行される。所望の変異した配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーは、一般的に合成によって調製される。次いでこのプライマーを一本鎖ベクターとアニールさせ、変異を有する鎖の合成を完了させるために、DNA重合酵素、例えばE.coliポリメラーゼIクレノー断片にさらす。このようにして、1つの鎖が元の変異していない配列をコードし、第2の鎖が所望の変異を有するヘテロ二重鎖が形成される。次いでこのヘテロ二重鎖ベクターを使用して、適切な細胞、例えばE.coli細胞に形質転換し、変異した配列編成を有する組換えベクターを含むクローンを選択する。
【0165】
部位指定変異誘発を使用した選択されたペプチドをコードするDNAセグメントの配列バリアントの調製は、有用な可能性がある種を生産する手段を提供するが、これは、ペプチドおよびそれをコードするDNA配列の配列バリアントを得ることができる他の方法があるため、限定を意味しない。例えば、所望のペプチド配列をコードする組換えベクターは、配列バリアントを得るために、変異誘発物質、例えばヒドロキシルアミンで処理されていてもよい。これらの方法およびプロトコールに関する具体的な詳細は、その目的のためにそれぞれ参照により本明細書に組み込まれるMaloy et al., 1994;Segal, 1976;Prokop and Bajpai, 1991;Kuby, 1994;およびManiatis et al., 1982の教示に見出される。
【0166】
用語「オリゴヌクレオチド指定変異誘発手順」は、本明細書で使用される場合、その最初の濃度と比べた特異的な核酸分子の濃度の増加、または検出可能なシグナルの濃度の増加、例えば増幅をもたらす、鋳型依存性プロセスおよびベクター媒介性伝播を指す。用語「オリゴヌクレオチド指定変異誘発手順」は、本明細書で使用される場合、プライマー分子の鋳型依存性伸長を含むプロセスを指すことが意図される。鋳型依存プロセスという用語は、RNAまたはDNA分子の核酸合成を指し、その場合、核酸の新たに合成された鎖の配列は、相補的塩基対合の周知のルールによって規定される(例えば、Watson, 1987を参照)。典型的には、ベクターによって媒介される手法は、DNAまたはRNAベクターへの核酸断片の導入、ベクターのクローン増幅、および増幅した核酸断片の回収を含む。このような手法の例は、その全体が具体的に参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,237,224号によって提供される。
【0167】
ポリペプチドバリアントの生産のための別のアプローチでは、反復的配列組換えを、米国特許第5,837,458号に記載されたように、用いることができる。このアプローチでは、組換えおよびスクリーニングまたは選択の反復サイクルは、例えば増加した結合親和性を有する個々のポリヌクレオチドバリアントを「進化させる」ために実行される。ある特定の実施形態は、本明細書に記載される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、プラスミド、ベクター、転写または発現カセットの形態の構築物も提供する。
【0168】
用語「ベクター」は、コーディング情報を宿主細胞に移動させるのに使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)を指すのに使用される。用語「発現ベクター」は、宿主細胞の形質転換に好適であり、挿入された異種核酸配列の発現を指示および/または制御する核酸配列を含有するベクターを指す。抗体またはその抗原結合性断片をコードする発現ベクターとしては、ウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターまたはγ−レトロウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルスおよびアルファウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純疱疹ウイルス1型および2型、エプスタイン−バーウイルス、サイトメガロウイルス)およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘およびカナリア痘瘡)を含む二本鎖DNAウイルスなどが挙げられる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血病肉腫、哺乳動物のC型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV−BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルス(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields et al., Eds., Lippincott−Raven Publishers, Philadelphia, 1996)が挙げられる。
【0169】
「レンチウイルスベクター」は、本明細書で使用される場合、遺伝子送達のためのHIVベースのレンチウイルスベクターを意味し、これは、組み込み型または非組み込み型であってもよく、比較的大きいパッケージング容量を有し、様々な異なる細胞型を形質導入することができる。レンチウイルスベクターは通常、3つの(パッケージング、エンベロープおよびトランスファー)またはそれよりも多いプラスミドのプロデューサー細胞への一過性トランスフェクションの後に生成される。HIVのように、レンチウイルスベクターは、ウイルス表面糖タンパク質と細胞表面上の受容体との相互作用を介して標的細胞に侵入する。侵入のときに、ウイルスRNAは逆転写を受け、これは、ウイルス逆転写酵素複合体によって媒介される。逆転写の生成物は、二本鎖の直鎖状ウイルスDNAであり、これは、感染細胞のDNAへのウイルス組込みのための基質である。
【0170】
ある特定の関連する実施形態によれば、本明細書に記載される1つまたは複数の構築物を含む組換え宿主細胞;抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれらのバリアントをコードする核酸;およびコードされた生成物を生産する方法が提供され、この方法は、そのためにコードする核酸を発現させることを含む。発現は、適切な条件下で、核酸を含有する(例えば、本開示のベクター中に)組換え宿主細胞を培養することによって都合よく達成することができる。発現による生産の後、抗体またはその抗原結合性断片は、任意の好適な技術を使用して単離および/または精製し、次いで要求に応じて使用することができる。
【0171】
多様な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のための系が周知である。好適な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、酵母およびバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現のための当分野において利用可能な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(例えば、HEK細胞、例えばHEK293−c18細胞)、NSOマウス黒色腫細胞などが挙げられる。一般的な好ましい細菌宿主は、E.coliである。
【0172】
E.coliなどの原核細胞におけるペプチドの発現は、当分野において十分に確立されている。総論に関して、例えばPluckthun, A. Bio/Technology 9: 545−551 (1991)を参照されたい。培養での真核細胞における発現も、抗体またはその抗原結合性断片の生産の選択肢として当業者に利用可能である。近年の総論、例えばRef, M. E. (1993) Curr. Opinion Biotech. 4: 573−576;Trill J. J. et al. (1995) Curr. Opinion Biotech 6: 553−560を参照されたい。
【0173】
必要に応じて、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および他の配列を含む適切な調節配列を含有する好適なベクターを、選択または構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス、例えばファージ、またはファージミドであり得る。さらなる詳細について、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 2nd edition, Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば核酸構築物の調製における核酸の操作、変異誘発、シーケンシング、細胞へのDNAの導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析のための多くの公知の技術およびプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology, Second Edition, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1992、またはその後続のアップデートで詳細に記載される。
【0174】
用語「宿主細胞」は、本明細書に記載される抗体およびその抗原結合性断片の1つまたは複数をコードする核酸配列が導入された、またはそれに導入させることが可能な、ならびに選択された目的の遺伝子、例えば任意の本明細書に記載される抗体または抗原結合性断片をコードする遺伝子をさらに発現するかまたは発現することが可能な細胞を指すのに使用される。用語は、親細胞の後代を含み、選択された遺伝子が存在する限り、後代が、形態学的に、または遺伝学的な構成において元の親と同一であるかどうかは問わない。したがって、このような核酸を宿主細胞に導入することを含む方法も企図される。導入は、任意の利用可能な技術を用いることができる。真核細胞の場合、好適な技術としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、レトロウイルスもしくは他のウイルス、例えばワクシニア、または昆虫細胞の場合、バキュロウイルスを使用する、リポソーム媒介性トランスフェクションおよび形質導入を挙げることができる。細菌細胞の場合、好適な技術としては、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを使用するトランスフェクションを挙げることができる。導入に続いて、例えば遺伝子発現のための条件下で宿主細胞を培養することによって核酸からの発現を起こしても、または核酸からの発現を可能にしてもよい。一実施形態では、核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば染色体)に組み込まれる。組込みは、標準的な技術に従ってゲノムとの組換えを促進する配列の包含によって促進することができる。
【0175】
本発明は、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片などの特定のポリペプチドを発現させるために、発現系において上述したような構築物を使用することを含む方法も提供する。用語「形質導入」は、通常ファージによる、1つの細菌から別の細菌への遺伝子の移動を指すのに使用される。「形質導入」は、レトロウイルスによる真核細胞配列の獲得および移動も指す。用語「トランスフェクション」は、細胞による外来または外因性DNAの取り込みを指すのに使用され、細胞膜の内部に外因性DNAが導入された場合、細胞は「トランスフェクトされ」ている。いくつかのトランスフェクション技術が当分野において周知であり、本明細書で開示される。例えば、Graham et al., 1973, Virology 52:456;Sambrook et al., 2001, MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratories;Davis et al., 1986, BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, Elsevier;およびChu et al., 1981, Gene 13:197を参照されたい。このような技術は、1つまたは複数の外因性DNA部分を好適な宿主細胞に導入するのに使用することができる。
【0176】
用語「形質転換」は、本明細書で使用される場合、細胞の遺伝学的特徴における変化を指し、細胞は、新しいDNAを含有するように改変された場合、形質転換されている。例えば、細胞が形質転換され、その場合、その細胞は、そのネイティブの状態から遺伝子改変される。トランスフェクションまたは形質導入の後、形質転換するDNAは、細胞の染色体への物理的組込みによって細胞のDNAと組換えられてもよいし、または複製されることなくエピソームのエレメントとして一時的に維持されてもよいし、またはプラスミドとして独立して複製されてもよい。細胞の分裂に伴いDNAが複製される場合、細胞は安定して形質転換されたとみなされる。用語「天然に存在する」または「ネイティブの」は、例えば核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などの生物学的材料と共に使用される場合、自然状態で見出され、ヒトによって操作されていない材料を指す。同様に、「天然に存在しない」または「非ネイティブの」は、本明細書で使用される場合、自然状態で見出されない、またはヒトによって構造的に改変もしくは合成された材料を指す。
【0177】
本発明のいくつかの実施形態の実施は、それとは反対であることが具体的に示されない限り、当分野の技術の範囲内であるウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学および組換えDNA技術における従来の方法を用いることが理解され、それらの多くは、例示の目的のために後述される。このような技術は、文献で詳細に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology or Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York, N.Y.(2009);Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, 3
rd ed., Wiley & Sons, 1995;Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd Edition, 2001);Maniatis et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual (1982);DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II (D. Glover, ed.);Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, ed., 1984);Nucleic Acid Hybridization (B. Hames & S. Higgins, eds., 1985);Transcription and Translation (B. Hames & S. Higgins, eds., 1984);Animal Cell Culture (R. Freshney, ed., 1986);Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984)および他の類似の参考文献を参照されたい。
【0178】
ここで開示される実施形態のある特定のものは、炭水化物によって定義される抗原性の構造に向けられた特異的な免疫学的な結合活性(例えば、抗体結合活性)の検出および特徴付けに関する。当業者は、同族炭水化物抗原の精密な構造的な特徴付けを含む、炭水化物特異的な免疫学的試薬を生成および試験する様々な手法があることを理解する。このような技術の非限定的な例は、Haji−Ghassemi et al., 2015 Glybiol. 25:920;Dingjan et al., 2015 Mol. Immunol. 67(2 Pt A):75−88;Soliman et al., 2017 Curr. Opin. Struct. Biol. 44:1−8;およびHakomori, 2001 Adv. Exp. Med. Biol. 491:369−402;およびそれらで引用された文献に記載されている。それらで、および他所でも、炭水化物によって定義される抗原の供給源、ならびにその調製、単離、および構造的な特徴付けのための方法の説明も見出すことができる。このようなアプローチの例示的な、および非限定的な適用が本明細書で開示され、本開示は、そのようにして限定されることは意図されず、当分野においてグリコシルトランスフェラーゼとして公知の生合成酵素の優れた特異性の活用によるものを含む、構造的に定義された炭水化物抗原の合成による調製も企図される。例えば、Wu et al., Universal phosphatase−coupled glycosyltransferase assay, Glycobiology 21(6): 727−733, 2011;Becker et al., Fucose: biosynthesis and biological function in mammals, Glycobiology 13(7): 41R−53R, 2003;de Vries et al., Fucosyltransferases: structure/function studies, Glycobiology 11(10): 119R−128R, 2001を参照されたい。
【0179】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に関して、標準的な技術を使用することができる。酵素反応および精製技術は、製造元の仕様書に従って、または当分野において一般的に達成されるようにして、または本明細書に記載される通りに実行することができる。
【0180】
これらのおよび関連の技術および手順は、一般的に、従来の当分野において周知の方法に従って、ならびに様々な一般的な、および本明細書全体にわたり引用され論じられているより具体的な参考文献に記載されたようにして実行することができる。具体的な定義が提供されない限り、本明細書に記載される分子生物学、分析化学、合成有機化学、ならびに医薬および製薬化学と関連する、ならびにそれらの実験手順および技術において利用される命名法は、周知であり、当分野において一般的に使用されるものである。組換え技術、分子生物学的、微生物学的、化学的な合成、化学分析、医薬調製物、製剤、および送達、ならびに患者の処置に関して、標準的な技術を使用することができ、本明細書においてさらに記載される。
【0181】
組成物
ある特定の態様では、本開示は、抗体およびその抗原結合性断片、ならびにそれらのバリアント、ならびにそれを含む組成物を提供する。ある特定の実施形態では、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン重鎖および配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン軽鎖を含む、単離された抗体が提供される。
【0182】
ある特定の実施形態では、配列番号35に記載のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;および配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、抗体またはその抗原結合性断片が、
Fuc
4(Galβ1→3GlcNAc)
2[I]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc]
2[II]を含むバイアンテナ型Le
B/Le
B抗原に、
Fuc
4(Galβ1→4GlcNAc)
2[III]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc]
2[IV]を含むバイアンテナ型Le
Y/Le
Y抗原に、
Fuc
2(Galβ1→3GlcNAc)[Fuc
2(Galβ1→4GlcNAc)][V]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][VI]を含むバイアンテナ型Le
B/Le
Y抗原に、
およびFuc
2(Galβ1−4GlcNAc)[Fuc
2(Galβ1−3GlcNAc)][VII]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][VIII]を含むバイアンテナ型Le
Y/Le
B抗原に
特異的に結合することが可能であり、
抗体またはその抗原結合性断片が、Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc[IX]を含むモノアンテナ型Le
x抗原にも、[Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc]
2[X]を含むバイアンテナ型Le
x抗原にも、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc[XI]を含むモノアンテナ型Le
A抗原にも、Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc[XII]を含むモノアンテナ型H抗原2型にも、(Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc)
2[XIII]を含むバイアンテナ型H抗原2型にも、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc[XIV]を含むモノアンテナ型H抗原1型にも特異的に結合しない、単離された抗体またはその抗原結合性断片が提供される。
【0183】
他の実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合性断片は、(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(VH CDR1);配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(VH CDR2);配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(VH CDR3)を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(VL CDR1);配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(VL CDR2);および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(VL CDR3)を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、抗体またはその抗原結合性断片は、
Fuc
4(Galβ1→3GlcNAc)
2[I]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc]
2[II]を含むバイアンテナ型Le
B/Le
B抗原に、
Fuc
4(Galβ1→4GlcNAc)
2[III]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc]
2[IV]を含むバイアンテナ型Le
Y/Le
Y抗原に、
Fuc
2(Galβ1→3GlcNAc)[Fuc
2(Galβ1→4GlcNAc)][V]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][VI]を含むバイアンテナ型Le
B/Le
Y抗原に、
およびFuc
2(Galβ1−4GlcNAc)[Fuc
2(Galβ1−3GlcNAc)][VII]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][VIII]を含むバイアンテナ型Le
Y/Le
B抗原に
特異的に結合することが可能であり、
抗体またはその抗原結合性断片は、Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc[IX]を含むモノアンテナ型Le
x抗原にも、[Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc]
2[X]を含むバイアンテナ型Le
x抗原にも、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc[XI]を含むモノアンテナ型Le
A抗原にも、Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc[XII]を含むモノアンテナ型H抗原2型にも、(Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc)
2[XIII]を含むバイアンテナ型H抗原2型にも、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc[XIV]を含むモノアンテナ型H抗原1型にも特異的に結合しない。
【0184】
ある特定のここで開示される実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合性断片は、モノクローナルである。
【0185】
ある特定のここで開示される実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト化されている。
【0186】
ある特定の実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合性断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、単鎖Fv(ScFv)抗体、およびダイアボディから選択される。
【0187】
ある特定のさらなる他の実施形態では、配列番号35に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;および配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片であって、抗体またはその抗原結合性断片が、
Fuc
4(Galβ1→3GlcNAc)
2[I]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc]
2[II]を含むバイアンテナ型Le
B/Le
B抗原に、
Fuc
4(Galβ1→4GlcNAc)
2[III]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc]
2[IV]を含むバイアンテナ型Le
Y/Le
Y抗原に、
Fuc
2(Galβ1→3GlcNAc)[Fuc
2(Galβ1→4GlcNAc)][V]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][VI]を含むバイアンテナ型Le
B/Le
Y抗原に、
およびFuc
2(Galβ1−4GlcNAc)[Fuc
2(Galβ1−3GlcNAc)][VII]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][VIII]を含むバイアンテナ型Le
Y/Le
B抗原に
特異的に結合することが可能であり、
抗体またはその抗原結合性断片が、Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc[IX]を含むモノアンテナ型Le
x抗原にも、[Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc]
2[X]を含むバイアンテナ型Le
x抗原にも、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc[XI]を含むモノアンテナ型Le
A抗原にも、Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc[XII]を含むモノアンテナ型H抗原2型にも、(Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc)
2[XIII]を含むバイアンテナ型H抗原2型にも、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc[XIV]を含むモノアンテナ型H抗原1型にも特異的に結合しない、単離された抗体またはその抗原結合性断片が提供される。
【0188】
ある特定の実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合性断片は、(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(VH CDR1);配列番号3に記載のアミノ酸配列、または配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(VH CDR2);配列番号4に記載のアミノ酸配列、または配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(VH CDR3)を含む免疫グロブリン重鎖可変領域;ならびに(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列、または配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(VL CDR1);配列番号7に記載のアミノ酸配列、または配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(VL CDR2);および配列番号8に記載のアミノ酸配列、または配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(VL CDR3)を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む。
【0189】
他の実施形態では、単離された抗体またはその抗原結合性断片は、以下の(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、もしくは(vi):(i)配列番号2に記載のアミノ酸配列のバリアントを含むVH CDR1であって、変異が、Kabatの番号付けに従って33位におけるY→A置換からなる、VH CDR1;(ii)配列番号4に記載のアミノ酸配列のバリアントを含むVH CDR3であって、変異が、Kabatの番号付けに従って104位におけるY→A置換からなる、VH CDR3;(iii)配列番号4に記載のアミノ酸配列のバリアントを含むVH CDR3であって、変異が、Kabatの番号付けに従って106位におけるH→A置換からなる、VH CDR3;(iv)配列番号6に記載のアミノ酸配列のバリアントを含むVL CDR1であって、変異が、Kabatの番号付けに従って30位におけるY→A置換からなる、VL CDR1;(v)配列番号7に記載のアミノ酸配列のバリアントを含むVL CDR2であって、バリアントが、Kabatの番号付けに従って50位におけるG→A置換からなる、VL CDR2;もしくは(vi)配列番号8に記載のアミノ酸配列のバリアントを含むVL CDR3であって、変異が、Kabatの番号付けに従って93位におけるT→S置換からなる、VL CDR3、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0190】
本明細書に記載される実施形態のいずれかでは、単離された抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号27に記載のアミノ酸配列を有するVLドメインおよび配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するVHドメインを含むBBC抗体と比較した場合、モノアンテナ型ルイスB抗原またはモノアンテナ型ルイスYへの低減した(例えば、統計学的に有意なように減少した)結合を有していてもよい。
【0191】
ある特定のさらなる実施形態では、本明細書に記載されるCDR(すなわち、本明細書に記載されるアミノ酸置換を有するCDRバリアントを含む、それぞれ配列番号2、3、4、6、7、および8に対して少なくとも90%の同一性を有するCDR)を含み、配列番号35に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる免疫グロブリン重鎖可変領域;および配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99パーセントの同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、単離された抗体または抗原結合性断片が提供される。
【0192】
scFvを含むがこれに限定されない、抗体またはその抗原結合性断片、例えば本明細書に記載されるものは、ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるルイス抗原に特異的に結合することが可能な融合タンパク質中に含まれていてもよい。一部の実施形態では、融合タンパク質は、宿主細胞、例えば、T細胞、NK細胞、またはNK−T細胞の表面での発現が可能であり、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合性断片を含む細胞外構成成分、および適切なシグナルを受けると細胞(例えば、免疫系細胞、例えばT細胞)において免疫学的応答を直接的または間接的に促進することが可能なエフェクタードメイン(例えば、CD27、CD28、4−1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD79A、CD79B、CARD11、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、HVEM、ICOS、Lck、LAG3、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、Wnt、ROR2、Ryk、SLAMF1、Slp76、pTα、TCRα、TCRβ、TRIM、Zap70、PTCH2、またはそれらの任意の組合せ由来のエフェクタードメイン)を含む細胞内構成成分を含み、細胞外構成成分および細胞内構成成分は、膜貫通ドメイン(例えば、CD8膜貫通ドメイン、CD4膜貫通ドメイン、CD27膜貫通ドメイン、またはCD28膜貫通ドメイン)によって接続され、細胞内構成成分は、必要に応じて、CD27、CD28、4−1BB(CD137)、OX40(CD134)、またはそれらの組合せから選択される共刺激ドメインまたはその一部を含む。ある特定の実施形態では、本開示の抗体または抗原結合性断片を含む融合タンパク質の細胞外構成成分は、免疫グロブリンタンパク質由来のポリペプチド;例えば、IgG4ヒンジ−CH2−CH3を含む。
【0193】
これらのおよび関連する実施形態では、抗原結合性断片は、本明細書に記載される抗原結合性断片、例えばscFvを含んでいてもよく、細胞外構成成分は、例えばキメラ抗原受容体分子(CAR)中に、ヒンジを含むコネクター領域をさらに含んでいてもよく、このような分子は、細胞性免疫療法における使用のためにT細胞、NK細胞、またはNK−T細胞などの宿主細胞の細胞表面上で発現させることができる。CAR分子および設計の原理は、例えば、Sadelain et al., Cancer Discov., 3(4):388 (2013);Harris and Kranz, Trends Pharmacol. Sci., 37(3):220 (2016);Stone et al., Cancer Immunol. Immunother., 63(11):1163 (2014); Xu et al., 2018 Oncotarget 9:13991;Androulla et al., 2018 Curr. Pharm. Biotechnol. Volume 19 (April 2018);Wu et al., 2016 Expert Opin. Biol. Ther. 16:1469;Ren et al., 2017 Protein Cell 8:634に記載されており、それらのCAR分子、CAR設計、およびCAR設計の原理は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0194】
本開示の抗体またはその抗原結合性断片;およびそれに連結されたペイロード分子を含む抗体コンジュゲートも本明細書で提供される。背景として、抗原を特異的に標的化するモノクローナル抗体は、治療的または検出可能なペイロード分子を抗原発現部位、例えば抗原を発現する腫瘍細胞に送達するための担体分子として使用することができる。抗体コンジュゲートによる抗原への結合は、例えば、疾患、例えばがんの処置、または検出、イメージング、またはモニタリングのための、罹患した細胞または組織への細胞傷害性ペイロードまたは検出可能な部分の標的化された送達を可能にし得る。ある特定の実施形態では、抗体コンジュゲートは、抗体コンジュゲートによる結合の後またはその際に、抗原を発現する標的細胞によって内在化される。標的細胞のサイトゾルまたはリソソーム区画への内在化は、例えば、標的細胞への細胞傷害性のダメージを引き起こすために、標的細胞へのペイロード分子の選択的な放出を許容することができる。
【0195】
ペイロード分子を抗体またはその抗原結合性断片にカップリングして、本開示の抗体コンジュゲートを形成するための様々な技術を使用することができる。一部の実施形態では、抗体コンジュゲートは、リンカーによって抗体またはその抗原結合性断片に共有結合で連結されているペイロード分子を含む。細胞傷害または抗増殖剤を含む抗体コンジュゲート(例えば、抗体薬物コンジュゲート)で使用されるリンカーは、典型的には、ペイロード分子が担体分子から放出されるメカニズムに従って組織化された2つの群のうちの1つに分類される有機化合物である。切断可能なリンカーは、標的細胞の固有の特性に従って選択的に分解または切断されるように設計される:切断可能なリンカーの3つのタイプは、プロテアーゼ感受性リンカー(それによって、腫瘍細胞リソソーム中に存在するプロテアーゼによる、リンカー、例えば、バリン−シトルリンまたはフェニルアラニン−リシンジペプチドまたはテトラペプチドを含むリンカー(例えば、GFLGまたはALAL)の切断が、ペイロード分子を放出する);サイトゾルのpHと比べてより低いpHのエンドソームおよびリソソーム区画によって選択的に加水分解される酸不安定性基を含有する、pH感受性リンカー;ならびに細胞内グルタチオンによって還元されるジスルフィド架橋を含む、グルタチオン感受性リンカーである。切断不可能なリンカーは、ペイロード分子を放出するための抗体コンジュゲートの非特異的な分解を頼る。
【0196】
特異的なリンカー、ペイロード、リンカーの化学的性質、ならびに関連するメカニズムおよび方法は、Nareshkumar et al., Pharm. Res. 32:3526−3540 (2015)に開示されており、その組成物、方法、および技術は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、抗体コンジュゲートは、切断可能なリンカーおよび切断不可能なリンカーから選択されるリンカーを含む。さらなる実施形態では、リンカーは、プロテアーゼ感受性リンカー、pH感受性リンカー、またはグルタチオン感受性リンカーから選択される切断可能なリンカーである。具体的な実施形態では、切断可能なリンカーは、バリン−シトルリンジペプチドを含むプロテアーゼ感受性リンカーである。
【0197】
リンカーは、任意の適切な技術またはメカニズムを使用して抗体またはその抗原結合性断片に接続またはカップリングすることができる。一部の実施形態では、リンカーは、抗体またはその抗原結合性断片のヒンジ領域中の還元されたジスルフィド架橋と反応することが可能なマレイミド基(必要に応じてペグ化した)を含む。リンカーへのコンジュゲーションに好適な担体分子(すなわち、抗体またはその抗原結合性断片)上の他の部位は、組換え技術、例えば、部位特異的なコンジュゲーションのためにシステイン残基または非天然アミノ酸を導入することを使用して、導入または操作することができる。このような改変を導入するための方法としては、例えば、PCT公報WO2012/032181号の実施例6.3〜7に記載される方法が挙げられる。
【0198】
一部の実施形態では、リンカーは、選択的な切断反応を助けるために、自壊性基または自壊性スペーサーとも称される自己破壊基をさらに含む。ある特定の実施形態では、自己破壊基は、パラアミノベンジルアルコール(PABC)である。
【0199】
抗体コンジュゲートを生成するのに有用なクリックケミストリーとしては、Meyer et al., Bioconjug. Chem. 27(12):2791−2807 (2016)に記載されるものが挙げられ、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0200】
本明細書に記載される抗体コンジュゲートのいずれかにおいて、ペイロード分子は、治療剤および検出可能なインジケーターから選択され得る。がん療法に好適な治療剤としては、Parslow et al., Biomedicines 4 :14 (2016)で開示されたものが挙げられ、そのペイロードおよびADC設計の原理は、参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、ペイロード分子は、チューブリン標的化抗有糸分裂剤、ペプチドベースの毒素、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体、抗生物質(例えば、カリケアマイシン)、ピリミジン合成阻害剤(例えば、5−フルオロウラシル)、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート)、DNAアルキル化剤、およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、ドキソルビシン)から選択される治療剤である。さらなる実施形態では、ペイロード分子は、メイタンシノイド、オーリスタチン、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、およびモノメチルオーリスタチンF(MMAF)から選択される。
【0201】
他の実施形態では、ペイロード分子は、検出可能なインジケーターである。抗体コンジュゲートにおける使用に好適な検出可能なインジケーター、ならびに関連する標識付け戦略およびイメージング技術(例えば、PET、MRI、NIR)としては、Friese and Wu, Mol. Immunol. 67(200):142−152 (2015)およびMoek et al., J. Nucl. Med. 58:83S−90S (2017)で開示されたものが挙げられ、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、検出可能なインジケーターは、放射性核種、色素、放射性金属、蛍光性部分、MRI造影剤、マイクロバブル、カーボンナノチューブ、金粒子、フルオロデオキシグルコース、酵素、発色団、および放射線不透過性マーカーから選択される。具体的な実施形態では、検出可能なインジケーターは、
68Ga、
64Cu、
86Y、
89Zr、
124I、
99mTc、
123I、
111In、
177Lu、
131I、
76Br、
78Zr、
18F、および
124Tから選択される放射性核種である。ある特定のこのような実施形態では、抗体コンジュゲートは、マレイミドで標識されたDOTA、N−ヒドロキシスクシンイミド−DOTA、およびデスフェリオキサミン(DFO)から選択される放射性核種のキレート化剤をさらに含む。
【0202】
本開示の抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲート;および薬学的担体を含む医薬組成物も本明細書で提供される。
【0203】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される抗体または抗原結合性断片をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、本明細書で開示される特異的なヌクレオチド配列と比較した場合、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する配列バリアントを含む、ポリヌクレオチドを提供する。ある特定の実施形態では、本開示の抗体もしくは抗原結合性断片(例えば、scFv、Fab、F(ab’2)断片、Fv断片、またはダイアボディを含む)をコードする、または抗体もしくは抗原結合性断片の一部(例えば、重鎖、軽鎖、VH、VL、またはCDR)をコードするポリヌクレオチドは、配列番号12〜22または37のいずれか1つと比較した場合、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、宿主細胞、例えば哺乳動物細胞中での発現のためにコドン最適化されている。上述の実施形態のいずれかでは、ポリヌクレオチドは、組換えベクターで提供することができる。ある特定の実施形態では、ベクターは、抗体またはその抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結した発現制御配列を含む。ある特定のこのような実施形態では、ベクター(例えば、組換えベクター)は、発現制御配列がプロモーターを含む発現ベクターである。
【0204】
別の態様では、本明細書に記載される組換えベクターまたは発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。関連する態様では、抗体またはその抗原結合性断片を生産するための方法であって、抗体またはその抗原結合性断片が、
Fuc
4(Galβ1→3GlcNAc)
2[I]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc]
2[II]を含むバイアンテナ型Le
B/Le
B抗原に、
Fuc
4(Galβ1→4GlcNAc)
2[III]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc]
2[IV]を含むバイアンテナ型Le
Y/Le
Y抗原に、
Fuc
2(Galβ1→3GlcNAc)[Fuc
2(Galβ1→4GlcNAc)][V]または[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][VI]を含むバイアンテナ型Le
B/Le
Y抗原に、
およびFuc
2(Galβ1−4GlcNAc)[Fuc
2(Galβ1−3GlcNAc)][VII]または[Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc][Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc][VIII]を含むバイアンテナ型Le
Y/Le
B抗原に
特異的に結合することが可能であり、
抗体またはその抗原結合性断片が、Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc[IX]を含むモノアンテナ型Le
x抗原にも、[Galβ1→4(Fucα1→3)GlcNAc]
2[X]を含むバイアンテナ型Le
x抗原にも、Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc[XI]を含むモノアンテナ型Le
A抗原にも、Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc[XII]を含むモノアンテナ型H抗原2型にも、(Fucα1−2Galβ1−4GlcNAc)
2[XIII]を含むバイアンテナ型H抗原2型にも、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc[XIV]を含むモノアンテナ型H抗原1型にも特異的に結合せず、
方法が、本開示の宿主細胞を、抗体またはその抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞による発現に十分な条件および時間で培養し、それによって、抗体またはその抗原結合性断片を含む培養物を得ること;ならびに培養物から、抗体またはその抗原結合性断片を回収することを含む、方法が提供される。
【0205】
疾患を検出および処置するための方法および使用
ある特定の実施形態では、ここで開示される抗体、その抗原結合性断片、および抗体コンジュゲートは、本明細書に記載されるルイス抗原の発現(例えば、過剰発現)によって特徴付けられる疾患を検出または処置する方法において有用である。
【0206】
医学分野の当業者によって理解されるように、用語「処置する」および「処置」は、被験体(すなわち、ヒトまたは非ヒト動物であり得る患者、宿主)の疾患、障害、または状態の医学的管理を指す(例えば、ステッドマン医学大辞典を参照)。一般的に、適切な用量および処置レジメンは、抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートの1つまたは複数を、治療的または予防的な利益を提供するのに十分な量で提供する。治療的処置または予防もしくは防止的な方法の結果生じる治療的または予防的な利益としては、例えば、改善された臨床転帰が挙げられ、目的は、望ましくない生理学的な変化もしくは障害を防止もしくは遅滞もしくはそれ以外の方法で低減すること(例えば、未処置対照と比べて統計学的に有意なように減少させること)、またはこのような疾患もしくは障害の拡大もしくは重症度を防止するか、遅滞させるかもしくはそれ以外の方法で低減することである。被験体を処置することによる有益な、または所望の臨床結果としては、処置しようとする疾患もしくは障害に起因するかまたはそれに関連する症状の除去、減弱、または軽減;症状の出現の減少;生活の質の改善;より長い無病状態(すなわち、被験体が、疾患の診断がなされる根拠となる症状を呈する見込みまたは傾向を減少させること);疾患の程度の縮減;安定化された(すなわち、悪化しない)疾患の状態;疾患進行の遅延または減速;疾患状態の好転(amelioration)または緩和;および検出可能かまたは検出不能かどうかにかかわらず、寛解(部分かまたは完全かにかかわらず);あるいは全生存が挙げられる。
【0207】
「処置」はまた、被験体が処置を受けなかった場合に予想される生存と比較して、生存を延長することを意味する場合もある。本明細書に記載される方法および組成物を必要とする被験体としては、すでに疾患または障害を有する被験体、ならびに疾患もしくは障害を有する傾向がある、またはそれを発症するリスクがある被験体が挙げられる。疾患もしくは障害の出現もしくは再発の見込みを低減させる処置を必要とする被験体、または予防的処置を必要とする被験体としては、疾患、状態、または障害の重症度を低減させる、または部分的もしくは完全に回避する、または不十分もしくは完全に防止する(例えば、疾患または障害の出現または再発の見込みを減少させること、それとしては、完全な防止を挙げることができるが、必ずしも必要ではない)被験体を挙げることができる。本明細書に記載される組成物(および組成物を含む調製物)および方法によって提供される臨床上の利益は、実施例に記載されたように、利益を得るために組成物の投与が意図される被験体におけるin vitroのアッセイ、前臨床研究、および臨床研究の設計および実行によって評価することができる。
【0208】
例えば、ある特定の実施形態では、がん(すなわち、本明細書に記載されるルイス抗原を発現するがん)を処置または検出するための方法であって、本開示の医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法が提供される。「がん」は、本明細書で使用される場合、罹患した細胞の異常な、または制御されていない増殖(例えば、過剰増殖)によって特徴付けられる状態を指し、これは、第1の組織または部位から、体内の隣接するまたは遠隔の、組織(単数または複数)または部位への悪性の拡散によって特徴付けられる場合もある。
【0209】
方法の特定の実施形態では、被験体は、胃がん、結腸がん、乳がん、肺がん、リンパがん、肝臓がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮がん、および扁平上皮癌から選択されるがんを有するかまたはそれを有する疑いがある。さらなる実施形態では、がんは、胃腺癌、粘液性胃腺癌、未分化型胃腺癌、印環細胞胃癌、結腸腺癌、浸潤性乳管癌、肝細胞癌、肺腺癌、扁平上皮癌、転移性リンパ節腺癌、粘液性卵巣腺癌、膵管腺癌、膵乳頭状腺癌、前立腺腺癌、および類内膜癌から選択される。本明細書に記載される抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートの、純粋な形態での、または適切な医薬組成物での投与は、類似の有用性を供給するための薬剤の容認された投与様式のいずれかを介して行うことができる。医薬組成物は、抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを、適切な生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と合わせることによって調製することができ、固体、半固体、液体またはガス状の形態を含有する微粒子(例えば、微小液滴)の形態、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア、およびエアロゾルで調製物に製剤化されてもよい。加えて、他の薬学的に活性な成分(本明細書の他所で記載されるような他の免疫抑制性薬剤を含む)ならびに/または好適な賦形剤、例えば塩、緩衝液および安定剤が、必ずしもそうでなくてもよいが、組成物内に存在していてもよい。
【0210】
正確な投薬量および処置の持続時間は、処置されている状態または疾患の関数で有り得、公知の試験プロトコールを使用して経験的に、または当分野において公知のモデル系で組成物を試験し、それから外挿することによって決定してもよい。対照臨床試験を実行してもよい。投薬量も、軽減させようとする状態の重症度により変更することができる。医薬組成物は、一般的に、望ましくない副作用を最小化しながらも治療上有用な効果が発揮されるように製剤化および投与される。組成物は、1回投与してもよいし、または時間間隔で投与されるいくつかのより少ない用量に分割してもよい。任意の特定の被験体に対して、個体の必要性に従って経時的に具体的な投薬量レジメンを調整することができる。
【0211】
組成物の「有効量」は、投薬量および必要な期間で、本明細書に記載される所望の臨床結果または有益な処置を達成するのに十分な量を指す。有効量は、1回または複数の投与で送達することができる。投与が、疾患または疾患状態を有することがすでにわかっているか、または確認された被験体に対する場合、用語「治療量」は、処置への言及で使用することができ、それに対して「予防有効量」は、疾患のまたは疾患状態の出現の見込みおよび/または重症度を低減させる(例えば、未処置の状態と比べて統計学的に有意なように)有益な、および/または保護的な過程として、疾患または疾患状態(例えば、再発)に罹りやすいかまたはそれを発症させるリスクがある被験体に有効量を投与することを記述するのに使用することができる。
【0212】
様々な実施形態では、本開示の抗体コンジュゲートは、本明細書に記載される検出可能なペイロードを含み、in vivo、in vitro、またはex vivoのいずれかでがんなどの疾患を検出するのに使用することができる。これらの、および他の実施形態のある特定のものでは、本明細書に記載される抗体(すなわち、1つまたは複数の抗体)またはその抗原結合性断片は、直接的または間接的に検出することができる検出可能な標識にコンジュゲートされる(例えば、共有結合で)。本開示では、開示されたモノクローナル抗体、その抗原結合性断片、および抗体コンジュゲートのいずれかは、検出可能な標識に連結されていてもよい(例えば、抗体コンジュゲートの検出可能な、または治療用ペイロード分子に加えて)。「直接の検出」では、たった1つの検出可能な抗体、すなわち検出可能な一次抗体が使用される。したがって、直接の検出は、検出可能な標識にコンジュゲートされる抗体は、第2の抗体(二次抗体)の添加を必要とすることなく、それ自体を検出することができることを意味する。
【0213】
「検出可能な標識」は、試料中の標識の存在および/または濃度を示す(例えば視覚的に、電子的に、またはそれ以外の方式で)検出可能なシグナルを生産することができる分子または材料である。検出可能な標識は、ペプチドにコンジュゲートされると、特異的なペプチドが結合する標的の位置を特定する、および/または定量化するのに使用することができる。それによって、試料中の標的の存在および/または濃度は、検出可能な標識によって生産されたシグナルを検出することによって検出することができる。検出可能な標識は、直接的または間接的に検出することができ、異なる特異的な抗体にコンジュゲートしたいくつかの異なる検出可能な標識は、1つまたは複数の標的を検出するのに、組み合わせて使用することができる。
【0214】
直接的に検出することができる検出可能な標識の例としては、蛍光色素および放射性物質および金属粒子が挙げられる。対照的に、間接的な検出は、一次抗体の適用の後に、1つまたは複数の追加の抗体、すなわち二次抗体の適用を必要とする。したがって、検出は、検出可能な一次抗体への二次抗体または結合剤の結合の検出によって実行される。二次結合剤または抗体の添加を必要とする検出可能な一次結合剤または抗体の例としては、酵素で検出可能な結合剤、およびハプテンによって検出可能な結合剤または抗体が挙げられる。
【0215】
一部の実施形態では、検出可能な標識は、第1の結合剤(例えば、ISH、WISH、またはFISHプロセスにおける)を含む核酸ポリマーにコンジュゲートされる。他の実施形態では、検出可能な標識は、第1の結合剤(例えば、IHCプロセスにおける)を含む抗体にコンジュゲートされる。
【0216】
本開示の方法で使用される抗体、抗原結合性断片、および抗体コンジュゲートにコンジュゲートされ得る検出可能な標識の例としては、蛍光標識、酵素標識、放射性同位体、化学発光標識、電気化学発光標識、生物発光標識、ポリマー、ポリマー粒子、金属粒子、ハプテン、および色素が挙げられる。
【0217】
蛍光標識の例としては、5−(および6)−カルボキシフルオレセイン、5−または6−カルボキシフルオレセイン、6−(フルオレセイン)−5−(および6)−カルボキサミドヘキサン酸、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、ならびにCy2、Cy3、およびCy5などの色素、AMCA、PerCPを含む必要に応じて置換されているクマリン、R−フィコエリトリン(RPE)およびアロフィコエリトリン(APC)を含むフィコビリンタンパク質、テキサスレッド、プリンストンレッド、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびそのアナログ、ならびにR−フィコエリトリンまたはアロフィコエリトリンのコンジュゲート、無機蛍光標識、例えばコーティングされたCdSeナノ微結晶のような半導体材料をベースとする粒子が挙げられる。
【0218】
ポリマー粒子標識の例としては、蛍光色素を埋め込むことができる、ポリスチレン、PMMAもしくはシリカの微粒子もしくはラテックス粒子、または色素、酵素もしくは基質を含有するポリマーミセルもしくはカプセルが挙げられる。
【0219】
金属粒子標識の例としては、金粒子およびコーティングされた金粒子が挙げられ、これらは、銀染色によって変換することができる。ハプテンの例としては、DNP、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ビオチン、およびジゴキシゲニンが挙げられる。酵素標識の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(ALPまたはAP)、β−ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(acetylglucosamimidase)、β−グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチンオキシダーゼ、ホタルルシフェラーゼおよびグルコースオキシダーゼ(GO)が挙げられる。ホースラディッシュペルオキシダーゼのために一般的に使用される基質の例としては、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、ニッケル増強ジアミノベンジジン、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、ベンジジンジヒドロクロリド(BDHC)、Hanker−Yates試薬(HYR)、インドファンブルー(IB)、テトラメチルベンジジン(TMB)、4−クロロ−1−ナフトール(naphtol)(CN)、アルファ−ナフトールピロニン(アルファ−NP)、o−ジアニシジン(OD)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、2−(p−ヨードフェニル)−3−p−ニトロフェニル−5−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)、テトラニトロブルーテトラゾリウム(TNBT)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−ベータ−D−ガラクトシド/フェロ−フェリシアニド(BCIG/FF)が挙げられる。
【0220】
アルカリホスファターゼのために一般的に使用される基質の例としては、ナフトール−AS−B1−ホスフェート/ファストレッドTR(NABP/FR)、ナフトール−AS−MX−ホスフェート/ファストレッドTR(NAMP/FR)、ナフトール−AS−B1−ホスフェート/−ファストレッドTR(NABP/FR)、ナフトール−AS−MX−ホスフェート/ファストレッドTR(NAMP/FR)、ナフトール−AS−B1−ホスフェート/ニューフクシン(NABP/NF)、ブロモクロロインドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−b−d−ガラクトピラノシド(BCIG)が挙げられる。
【0221】
発光標識の例としては、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、1,2−ジオキセタンおよびピリドピリダジンが挙げられる。電気化学発光標識の例としては、ルテニウム誘導体が挙げられる。放射性標識の例としては、ヨウ化物、コバルト、セレン、トリチウム、炭素、硫黄およびリンの放射性同位体が挙げられる。
【0222】
検出可能な標識は、本明細書に記載される抗体、抗原結合性断片、および抗体コンジュゲートに、または目的の生物学的なマーカー、例えば、抗体、核酸プローブ、もしくはポリマーに特異的に結合する他の任意の分子に連結されていてもよい。さらに、当業者であれば、検出可能な標識は、第2および/または第3および/または第4および/または第5の結合剤または抗体などにもコンジュゲートしていてもよいことを認識し得る。さらに、当業者であれば、目的の生物学的なマーカーを特徴付けるために使用される各追加の結合剤または抗体が、シグナル増幅ステップとして役立ち得ることを認識し得る。生物学的なマーカーは、例えば光学顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、電子顕微鏡法を使用して、視覚的に検出してもよく、検出可能な物質は、例えば色素、コロイド状金粒子、発光試薬である。生物学的なマーカーに結合した視覚的に検出可能な物質もまた、分光光度計を使用して検出することができる。検出可能な物質が放射性同位体である場合、検出は、オートラジオグラフィーによって視覚的、またはシンチレーションカウンターを使用して非視覚的であってもよい。例えば、Larsson, 1988, Immunocytochemistry: Theory and Practice, (CRC Press, Boca Raton, Fla.);Methods in Molecular Biology, vol. 80 1998, John D. Pound (ed.) (Humana Press, Totowa, N.J.)を参照されたい。
【0223】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、本明細書に記載されるルイス抗原の発現に関連する疾患を検出または診断する方法で使用され、方法は、抗体、抗原結合性断片、もしくは抗体コンジュゲートを、疾患を有する疑いがある、もしくは有するリスクがある被験体からの試料と接触させること、ならびに試料中の抗体:抗原複合体の形成を検出すること、ならびに/または試料中の抗体、抗原結合性断片、もしくは抗体コンジュゲートの特異的な結合を検出することを含む。ある特定の実施形態では、試料は、血液(例えば、末梢血)、組織、腫瘍、またはそれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態では、診断または検出方法は、ex vivoまたはin vitroで実行される。
【0224】
検出可能なペイロードまたは検出可能な標識での抗体コンジュゲートのin vivoの検出のための方法としては、Friese and Wu, Mol. Immunol. 67(200):142−152 (2015)およびMoek et al., J. Nucl. Med. 58:83S−90S (2017)に記載されたものが挙げられ、これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを検出することは、陽電子放射断層撮影(PET)、磁気共鳴画像法(MRI)、近赤外画像法(NRI)、X線コンピューター断層撮影(CT)、単一光子放射コンピューター断層撮影(SPECT)、光学イメージング、超音波診断法、またはそれらの任意の組合せを実行することを含む。
【0225】
好ましい投与様式は、処置しようとする状態の性質によって決まり、状態は、ある特定の実施形態では、その程度、重症度、出現の見込みおよび/または持続時間が、本明細書で提供されるある特定の方法に従って減少させる(例えば、未処置対照などの適切な対照の状況と比べて、統計学的に有意なように低減させる)ことができる有害な、または臨床的に望ましくない状態を指す。投与の後、検出可能に、このような状態を低減する、阻害する、少なくとも部分的に防止する、その重症度もしくは出現の見込みを減少させる、またはこのような状態を遅延させる量、例えば、腫瘍負荷の部分的もしくは完全な低減、または転移性の拡散の部分的もしくは完全な低減が、有効であるとみなされる。関連分野における当業者は、本明細書に記載される組成物の投与の臨床的な妥当性を示すことができる、および/またはそれを適合させることができるいくつもの診断の、外科的および/または他の臨床的な基準について精通している。例えば、Hanahan and Weinberg, 2011 Cell 144:646;Hanahan and Weinberg 2000 Cell 100:57;Cavallo et al., 2011 Canc. Immunol. Immunother. 60:319;Kyrigideis et al., 2010 J. Carcinog. 9:3;Park et al. 2009 Molec. Therap. 17:219;Cheever et al., 2009 Clin Cancer Res 15 (17):5323−5337;Lu et al., 2013 Curr. Pharm. Biotechnol. 14:714−22;Layke et al., 2004 Am. Fam. Physician 69:1133049;Bunn, 2012 Arch. Pathol. Lab. Med. 136:1478−81;Manne et al., 2005 Drug Discov. Today 10:965;Schmoll et al. (Eds.), 2009 ESMO Handbook of Cancer Diagnosis and Treatment Evaluation, CRC Press, Boca Raton, FL;Faix, 2013 Crit. Rev. Clin. Lab. Sci. 50(1):23−36 (”Biomarkers of Sepsis”);Wiersinga et al., 2014 Virulence 5(1):36−44 (”Host innate immune responses to sepsis”);Hotchkiss et al., 2013 Nat. Rev. Immunol. 13:862;Aziz et al., 2013 J. Leukoc. Biol. 93(3):329;Beyrau et al., 2012 Open Biol. 2:120134;Fry, 2012 Amer. Surg. 78:1;Kellum et al., 2007 Arch. Intern. Med. 167(15):1655;Remick, 2007 Am. J. Pathol. 170(5):1435;Hotchkiss et al., 2003 New Engl. J. Med. 348:138−150;Humar et al., Atlas of Organ Transplantation, 2006, Springer;Kuo et al., Comprehensive Atlas of Transplantation, 2004 Lippincott, Williams & Wilkins;Gruessner et al., Living Donor Organ Transplantation, 2007 McGraw−Hill Professional;Antin et al., Manual of Stem Cell and Bone Marrow Transplantation, 2009 Cambridge University Press;Wingard et al. (Ed.), Hematopoietic Stem Cell Transplantation: A Handbook for Clinicians, 2009 American Association of Blood Banks;およびそれらで引用された文献を参照されたい。
【0226】
したがって、これらのおよび関連する医薬組成物を投与する典型的な経路としては、これらに限定なく、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、直腸、膣、および鼻内が挙げられる。非経口という用語は、本明細書で使用される場合、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または輸注技術を含む。医薬組成物は、本発明のある特定の実施形態によれば、そこに含有される活性成分が、患者への組成物の投与の際に生物学的に利用可能になるように製剤化される。被験体または患者に投与される組成物は、1つまたは複数の投薬量単位の形態をとっていてもよく、例えば、錠剤が単一の投薬量単位であってもよく、エアロゾルの形態での本明細書に記載される抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートの容器が、複数の投薬量単位を保持していてもよい。このような剤形を調製する実際の方法は公知であるか、または当業者には明白である;例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000)を参照されたい。投与される組成物は、いずれの場合においても、本明細書の教示に従って目的の疾患または状態の処置のための治療有効量の本開示の抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを含有する。ある特定の実施形態では、投与することは、静脈内、非経口、胃内、胸内、肺内、直腸内、皮内、腹腔内、腫瘍内、皮下、経口、局所、経皮、嚢内、髄腔内、鼻内、および筋肉内から選択される経路によって投与することを含む。
【0227】
医薬組成物は、固体または液体の形態であってもよい。一実施形態では、組成物が例えば錠剤または散剤の形態になるように、担体は微粒子である。担体は、液体であってもよく、組成物は、例えば経口用の油、注射用の液体、または例えば吸入投与において有用なエアロゾルである。経口投与が意図される場合、医薬組成物は、好ましくは固体または液体の形態のいずれかであり、半固体、半液体、懸濁物およびゲルの形態が、本明細書において固体または液体のいずれかとして考慮される形態に含まれる。
【0228】
経口投与のための固体組成物として、医薬組成物は、散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム、カシェ剤などに製剤化することができる。このような固体組成物は、典型的には、1つまたは複数の不活性希釈剤または食用担体を含有する。加えて、以下:バインダー、例えばカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えばデンプン、ラクトースまたはデキストリン、崩壊剤、例えばアルギン酸、アルギン酸ナトリウム、Primogel、トウモロコシデンプンなど;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはSterotex;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリン;矯味矯臭剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料;および呈色剤の1種または複数が存在していてもよい。カプセル、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、医薬組成物は、上記のタイプの材料に加えて、液体担体、例えばポリエチレングリコールまたは油を含有していてもよい。
【0229】
医薬組成物は、液体、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、液剤、乳剤または懸濁剤の形態であってもよい。液体は、2つの例として、経口投与または注射による送達のためであり得る。経口投与が意図される場合、好ましい組成物は、本化合物に加えて、甘味剤、保存剤、色素/着色剤および風味増強剤の1種または複数を含有する。注射によって投与されることが意図された組成物では、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝液、安定剤および等張剤の1種または複数が含まれていてもよい。
【0230】
液体医薬組成物は、それらが液剤、懸濁剤または他の類似の形態であるかどうかにかかわらず、以下のアジュバント:滅菌希釈剤、例えば注射用水、塩類溶液、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム、不揮発性油、例えば、溶媒または懸濁媒として役立ち得る合成モノまたはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば酢酸、クエン酸またはリン酸、および張度調整のための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースの1つまたは複数を含んでいてもよい。非経口調製物は、アンプル、使い捨てのシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックで作製された複数用量バイアル中に封入されていてもよい。生理食塩水が好ましいアジュバントである。注射用医薬組成物は、好ましくは滅菌されている。
【0231】
非経口または経口投与のいずれかが意図された液体医薬組成物は、好適な投薬量が得られるような量の、本明細書で開示される抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを含有すべきである。典型的には、この量は、組成物中、少なくとも0.01%の抗体または抗原結合性断片である。経口投与が意図される場合、この量は、組成物の重量の0.1〜約70%の間であるように変更することができる。ある特定の経口用医薬組成物は、約4%〜約75%の間の抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを含有する。ある特定の実施形態では、本発明による医薬組成物および調製物は、希釈の前に、非経口の投薬量単位が、0.01〜10重量%の間の抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを含有するように調製される。
【0232】
医薬組成物は、局所投与を意図していてもよく、この場合、担体は、好適には、液体、乳剤、軟膏剤またはゲルの基剤を含んでいてもよい。基剤は、例えば、以下:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、希釈剤、例えば水およびアルコール、ならびに乳化剤および安定剤の1種または複数を含んでいてもよい。増粘剤は、局所投与のための医薬組成物中に存在していてもよい。経皮投与が意図される場合、組成物は、経皮パッチまたはイオン導入デバイスを含んでいてもよい。医薬組成物は、例えば坐剤の形態での直腸投与を意図していてもよく、この形態は、直腸中で溶融し、薬物を放出する。直腸投与のための組成物は、好適な刺激の少ない賦形剤として油性基剤を含有していてもよい。このような基剤としては、これらに限定なく、ラノリン、カカオバターおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0233】
医薬組成物は、固体または液体投薬量単位の物理的形態を改変する様々な材料を含んでいてもよい。例えば、組成物は、活性成分の周りにコーティングシェルを形成する材料を含んでいてもよい。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には不活性であり、例えば、糖、セラック、および他の腸溶コーティング剤から選択することができる。代替として、活性成分は、ゼラチンカプセルに包まれていてもよい。固体または液体形態の医薬組成物は、本発明の抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートに結合し、それによって化合物の送達を助ける作用物質を含んでいてもよい。この能力において作用し得る好適な作用物質としては、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体、1種または複数のタンパク質またはリポソームが挙げられる。医薬組成物は、エアロゾルとして投与することができる投薬量単位から本質的になっていてもよい。エアロゾルという用語は、コロイド状の性質のものから加圧したパッケージからなる系の範囲の多様な系を表すのに使用される。送達は、液化もしくは圧縮ガスによって、または活性成分を分配する好適なポンプシステムによってもよい。エアロゾルは、活性成分を送達するために、単相、二相、または三相系で送達されてもよい。エアロゾルの送達は、必要な容器、活性化剤、バルブ、サブ容器などを含み、これらが一緒になってキットを形成することができる。当業者は、過度の実験をすることなく、好ましいエアロゾルを決定することができる。
【0234】
医薬組成物は、医薬品分野において周知の手法によって調製することができる。例えば、注射によって投与されることが意図された医薬組成物は、本明細書に記載される抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲート、ならびに必要に応じて塩、緩衝液および/または安定剤の1つまたは複数を含む組成物を、溶液が形成されるように滅菌した蒸留水と合わせることによって調製することができる。均一な溶液または懸濁物の形成を容易にするために、界面活性剤が添加されてもよい。界面活性剤は、水性送達系中での抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートの溶解または均一な懸濁が容易になるように、ペプチド組成物と非共有結合で相互作用する化合物である。
【0235】
組成物は、治療有効量で投与され、治療有効量は、用いられる具体的な化合物の活性;化合物の代謝的安定性および作用の長さ;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、および食事;投与の様式および時間;排泄速度;薬物の組合せ;特定の障害または状態の重症度;ならびに被験体が受けている療法を含む多様な要因に応じて様々である。一般的に、治療上有効な1日用量は(70kgの哺乳動物の場合)、約0.001mg/kg(すなわち、0.07mg)〜約100mg/kg(すなわち、7.0g)であり;好ましくは治療有効用量は(70kgの哺乳動物の場合)、約0.01mg/kg(すなわち、0.7mg)〜約50mg/kg(すなわち、3.5g)であり;より好ましくは治療有効用量は(70kgの哺乳動物の場合)、約1mg/kg(すなわち、70mg)〜約25mg/kg(すなわち、1.75g)である。
【0236】
本開示の抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを含む組成物は、1つまたは複数の他の治療剤の投与と同時に、その前に、またはその後に投与することもできる。このような併用療法としては、本発明の化合物および1つまたは複数の追加の活性薬剤を含有する単一の医薬投薬製剤の投与、ならびにそれ自体別個の医薬投薬製剤中に、本発明の抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートおよび各活性薬剤を含む組成物の投与を挙げることができる。例えば、本明細書に記載される抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートおよび他の活性薬剤は、錠剤もしくはカプセルなどの単一の経口投薬組成物中で一緒に患者に投与されても、または各薬剤が、別個の経口投薬製剤中で投与されてもよい。同様に、本明細書に記載される抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートおよび他の活性薬剤は、単一の非経口投薬組成物中で、例えば塩類溶液もしくは他の生理学的に許容される溶液中で一緒に患者に投与されても、または各薬剤が、別個の非経口投薬製剤中で投与されてもよい。別個の投薬製剤が使用される場合、抗体および1つまたは複数の追加の活性薬剤を含む組成物は、本質的に同じ時間に、すなわち並行して、または時間をずらして別々に、すなわち逐次的に、あらゆる順番で投与することができる;併用療法は、全てのこれらのレジメンを含むことが理解される。
【0237】
したがって、ある特定の実施形態では、1つまたは複数の他の治療剤と組み合わせた、この開示の抗体、その抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートの投与も企図される。このような治療剤は、当分野において、本明細書に記載される特定の疾患状態、例えばがんのための標準的処置として容認され得る。企図される例示的な治療剤としては、サイトカイン、増殖因子、ステロイド、NSAID、DMARD、抗炎症薬、化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、干渉RNA、刺激性免疫チェックポイント分子のアゴニスト、がんを標的とする別の抗体、抗原結合性断片、もしくは抗体コンジュゲート、または他の活性および補助的な薬剤が挙げられる。
【0238】
用語「免疫抑制薬剤」または「免疫抑制剤」は、本明細書で使用される場合、免疫応答の制御または抑制を補助するために阻害シグナルを提供する1つまたは複数の細胞、タンパク質、分子、化合物または複合体を指す。例えば、免疫抑制薬剤としては、免疫刺激を部分的もしくは完全にブロックする;免疫活性化を減少させる、防止する、もしくは遅延させる;または免疫抑制を増加させる、活性化する、もしくは上方調節する分子が挙げられる。標的化するための(例えば、免疫チェックポイント阻害剤で)例示的な免疫抑制剤としては、PD−1、PD−L1、PD−L2、LAG3、CTLA4、B7−H3、B7−H4、CD244/2B4、HVEM、BTLA、CD160、TIM3、GAL9、KIR、PVR1G(CD112R)、PVRL2、アデノシン、A2aR、免疫抑制サイトカイン(例えば、IL−10、IL−4、IL−1RA、IL−35)、IDO、アルギナーゼ、VISTA、TIGIT、LAIR1、CEACAM−1、CEACAM−3、CEACAM−5、Treg細胞、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0239】
免疫抑制薬剤の阻害剤(免疫チェックポイント阻害剤とも称される)は、化合物、抗体、抗体断片もしくは融合ポリペプチド(例えば、Fc融合物、例えばCTLA4−FcまたはLAG3−Fc)、アンチセンス分子、リボザイムもしくはRNAi分子、または低分子量有機分子であり得る。本明細書で開示される実施形態のいずれかでは、方法は、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを、以下の免疫抑制構成成分のいずれか1つの1種または複数の阻害剤と共に、単独で、または任意の組合せで投与することを含んでいてもよい。
【0240】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、PD−1阻害剤、例えばPD−1特異的抗体、例えばピディリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、MEDI0680(以前はAMP−514)、AMP−224、BMS−936558、もしくはその抗原結合性断片、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。さらなる実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、PD−L1に特異的な抗体、例えばBMS−936559、デュルバルマブ(MEDI4736)、アテゾリズマブ(RG7446)、アベルマブ(MSB0010718C)、MPDL3280A、もしくはその抗原結合性断片、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0241】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、LAG3阻害剤、例えばLAG525、IMP321、IMP701、9H12、BMS−986016、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0242】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、CTLA4の阻害剤と組み合わせて使用される。特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、CTLA4に特異的な抗体もしくはその結合性断片、例えばイピリムマブ、トレメリムマブ、CTLA4−Ig融合タンパク質(例えば、アバタセプト、ベラタセプト)、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0243】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、B7−H3に特異的な抗体またはその抗原結合性断片、例えばエノブリツズマブ(enoblituzumab)(MGA271)、376.96、またはその両方と組み合わせて使用される。B7−H4抗体結合断片は、例えば、Dangaj et al., Cancer Res. 73:4820, 2013に記載されたように、そのscFvまたは融合タンパク質であっても、加えて米国特許第9,574,000号ならびにPCT特許公報WO2016/40724号A1および同WO2013/025779号A1に記載されたものであってもよい。
【0244】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、CD244の阻害剤と組み合わせて使用される。ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、BLTA、HVEM、CD160の阻害剤、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。抗CD160抗体は、例えば、PCT公報WO2010/084158号に記載されている。
【0245】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、TIM3の阻害剤と組み合わせて使用される。ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、Gal9の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0246】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、アデノシンシグナル伝達の阻害剤、例えばデコイアデノシン受容体と組み合わせて使用される。ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、A2aRの阻害剤と組み合わせて使用される。
【0247】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、KIRの阻害剤、例えばリリルマブ(BMS−986015)と組み合わせて使用される。ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、阻害性サイトカイン(典型的には、TGFβ以外のサイトカイン)またはTregの発生もしくは活性の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0248】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、IDO阻害剤、例えばlevo−1−メチルトリプトファン、エパカドスタット(INCB024360;Liu et al., Blood 115:3520−30, 2010)、エブセレン(Terentis et al., Biochem. 49:591−600, 2010)、インドキシモド、NLG919(Mautino et al., American Association for Cancer Research 104th Annual Meeting 2013;Apr 6−10, 2013)、1−メチル−トリプトファン(1−MT)−チラパザミン、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0249】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、アルギナーゼ阻害剤、例えばN(オメガ)−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME)、N−オメガ−ヒドロキシ−ノル−l−アルギニン(ノル−NOHA)、L−NOHA、2(S)−アミノ−6−ボロノヘキサン酸(ABH)、S−(2−ボロノエチル)−L−システイン(BEC)、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0250】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、VISTAの阻害剤、例えばCA−170(Curis、Lexington、Mass.)と組み合わせて使用される。
【0251】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、TIGITの阻害剤、例えば、COM902(Compugen、Toronto、Ontario Canada)など、CD155の阻害剤、例えば、COM701(Compugen)など、またはその両方と組み合わせて使用される。
【0252】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、PVRIG、PVRL2の阻害剤、またはその両方と組み合わせて使用される。抗PVRIG抗体は、例えば、PCT公報WO2016/134333号に記載されている。抗PVRL2抗体は、例えば、PCT公報WO2017/021526号に記載されている。
【0253】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、LAIR1阻害剤と組み合わせて使用される。
【0254】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、CEACAM−1、CEACAM−3、CEACAM−5の阻害剤、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0255】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、刺激性免疫チェックポイント分子の活性を増加させる薬剤(すなわち、アゴニストである)と組み合わせて使用される。例えば、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートは、CD137(4−1BB)アゴニスト(例えば、ウレルマブなど)、CD134(OX−40)アゴニスト(例えば、MEDI6469、MEDI6383、またはMEDI0562など)、レナリドマイド、ポマリドマイド、CD27アゴニスト(例えば、CDX−1127など)、CD28アゴニスト(例えば、TGN1412、CD80、またはCD86など)、CD40アゴニスト(例えば、CP−870,893、rhuCD40L、またはSGN−40など)、CD122アゴニスト(例えば、IL−2など)、GITRのアゴニスト(例えば、PCT特許公報WO2016/054638号に記載されるヒト化モノクローナル抗体など)、ICOS(CD278)のアゴニスト(例えば、GSK3359609、mAb88.2、JTX−2011、Icos 145−1、Icos 314−8、またはそれらの任意の組合せなど)と組み合わせて使用することができる。本明細書で開示される実施形態のいずれかでは、方法は、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを、単独の、または任意の組合せでの、前述のもののいずれかを含む刺激性免疫チェックポイント分子の1つまたは複数のアゴニストと共に投与することを含んでいてもよい。
【0256】
ある特定の実施形態では、併用療法は、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲート、およびがんによって発現されるがん抗原(すなわち、同じまたは異なる抗原)に特異的な別の抗体、その抗原結合性断片、もしくは抗体コンジュゲート、放射線処置、外科手術、化学療法剤、サイトカイン、RNAi、またはそれらの任意の組合せの1つまたは複数を含む二次療法を含む。
【0257】
ある特定の実施形態では、併用療法の方法は、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを投与すること、および放射線処置または外科手術をさらに投与することを含む。放射線療法は、当分野において周知であり、X線療法、例えばガンマ放射線照射、および放射性医薬品療法が挙げられる。被験体における所与のがんを処置するのに適切な外科手術および外科的技術は、当業者に周知である。陽子線療法(proton therapy)は、Thariat et al., Bull. Cancer pii:S0007−4551(1)300001−8 (2018)に総論されている。
【0258】
ある特定の実施形態では、併用療法の方法は、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲートを投与すること、および化学療法剤をさらに投与することを含む。化学療法剤としては、これらに限定されないが、クロマチン機能の阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害薬、DNA傷害剤、代謝拮抗物質(例えば葉酸拮抗剤、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、および糖修飾されたアナログ)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(例えば挿入剤)、およびDNA修復阻害剤が挙げられる。例示的な化学療法剤としては、これらに限定なく、以下の群:代謝拮抗物質/抗がん剤、例えばピリミジンアナログ(5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)およびプリンアナログ、葉酸拮抗剤および関連する阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン);天然産物を含む抗増殖/抗有糸分裂剤、例えば、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、微小管破壊剤、例えばタキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビン、エピジポドフィロトキシン(epidipodophyllotoxin)(エトポシド、テニポシド)、DNA傷害剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン(merchlorehtamine)、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テモゾロミド(temozolamide)、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびエトポシド(VP16));抗生物質、例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン;酵素(L−アスパラギナーゼ、これはL−アスパラギンを全身で代謝し、自身でアスパラギンを合成する能力を有さない細胞を欠乏させる);抗血小板剤;抗増殖/抗有糸分裂性アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよびアナログ、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)およびアナログ、ストレプトゾシン)、トラゼン(trazenes)−ダカルバジン(dacarbazinine)(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂性代謝拮抗物質、例えば葉酸アナログ(メトトレキセート);白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモンアナログ(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビンの阻害剤);線維素溶解剤(例えば組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレフェルジン(breveldin));免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生性化合物(TNP470、ゲニステイン)および増殖因子阻害剤(血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体ブロッカー;酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ);キメラ抗原受容体;細胞周期阻害剤および分化誘導物質(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド(eniposide)、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT−11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(methylpednisolone)、プレドニゾン、およびプレドニゾロン(prenisolone));増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導物質、毒素、例えばコレラ毒素、ヒマ毒、シュードモナス外毒素、Bordetella pertussisアデニル酸シクラーゼ毒素、またはジフテリア毒素、およびカスパーゼ活性化剤;ならびにクロマチン破壊剤が挙げられる。
【0259】
サイトカインは、抗がん活性に対する宿主免疫応答を操作するのに使用することができる。例えば、Floros & Tarhini, Semin. Oncol. 42(4):539−548, 2015を参照されたい。免疫の抗がんまたは抗腫瘍応答を促進するのに有用なサイトカインとしては、例えば、単独で、またはこの開示の本開示の抗体、抗原結合性断片、もしくは抗体コンジュゲートとの任意の組合せでの、IFN−α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、IL−24、およびGM−CSFが挙げられる。
【0260】
がん抗原に特異的な天然または組換えTCRおよびCARを発現するT細胞、NK細胞、またはNK−T細胞を含むものを含む、ならびにこのような細胞のレシピエントへの養子移入を含む細胞免疫療法は、がんのための新興の治療法である(例えば、Bonini and Mondino, Eur. J. Immunol. 45(9):2457−69 (2015)およびMetha and Rezvani, Front. Immunol. 9:283 (2018)を参照)。ある特定の実施形態では、本開示の抗体、抗原結合性断片、または抗体コンジュゲート(または医薬組成物)を受ける被験体は、がんを標的化する細胞免疫療法を受けたことがあるか、または受けている(すなわち、並行して、同時に、または逐次的に)。
【0261】
本明細書に記載されるルイス抗原の発現(例えば、過剰発現)によって特徴付けられる疾患を処置する、検出する、または診断することにおける使用のための、ここで開示される抗体、抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および組成物のいずれかも本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、疾患は、がん、例えば本明細書で開示される任意のがんである。ある特定の実施形態では、抗体、抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、または組成物は、本明細書に記載される任意の併用療法で使用される。
【0262】
本明細書に記載されるルイス抗原の発現(例えば、過剰発現)によって特徴付けられる疾患の処置のための医薬の調製における使用のための、ここで開示される抗体、抗原結合性断片、抗体コンジュゲート、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および組成物のいずれかも本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、疾患は、がん、例えば本明細書で開示される任意のがんである。ある特定の実施形態では、医薬は、本明細書に記載される任意の併用療法を含むか、またはそれらで使用される。
【0263】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容が明らかにそうではないことを指示しない限り、複数形の指示対象を含む。さらに、選択接続詞(例えば、「または」)の使用は、選択肢のいずれか一方、その両方、またはそれらの任意の組合せを意味すると理解されるべきである。
【0264】
本明細書全体を通じて、文脈上別の意味で解釈すべき場合を除き、言葉「含む(comprise)」、「有する(have)」、または「有する(has)」、「有すること」、「含む(comprises)」もしくは「含むこと」などの変化形は、述べられた要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含を必然的に伴うが、いずれの他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群も除外されないことが理解される。本説明では、任意の濃度の範囲、パーセンテージの範囲、比率の範囲、または整数の範囲は、別段の指定がない限り、列挙された範囲内の任意の整数値、および適切な場合は、それらの分数(例えば整数の10分の1および100分の1)を含むと理解されるものとする。また、いずれの物理的な特色、例えばポリマーのサブユニット、サイズまたは厚さに関する本明細書で列挙されたいずれの数値範囲も、別段の指定がない限り、列挙された範囲内の任意の整数を含むと理解されるものとする。
【0265】
用語「約」は、本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、示された範囲、値、または構造の±20%以下を、またはある特定の実施形態では、別段の指定がない限り、示された範囲、値、または構造の、±50、45、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、10、9、8、7、6、または5%以下を意味する。
【0266】
加えて、本明細書に記載される構造および置換基の様々な組合せから導出される個々の化合物、または化合物の群は、各化合物または化合物の群が、あたかも個々に記載されたのと同じ程度に本出願によって開示されることが理解されるべきである。したがって、特定の構造または特定の置換基の選択は、本開示の範囲内である。
【0267】
用語「から本質的になる」は、「含む」と同等ではなく、特許請求の範囲の特定された材料もしくはステップ、または特許請求された主題の基礎的な特徴に著しく影響を与えない材料もしくはステップを指す。
【0268】
本明細書中の各実施形態は、明示的にそうではないことが述べられていない限り、あらゆる他の実施形態に必要な変更を加えて適用されるものとする。
【実施例】
【0269】
(実施例1)
キメラBBC抗体の生成
抗体可変領域のcDNAの単離
配列番号27に記載のアミノ酸配列を有するVLドメインおよび配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するVHドメインを含むマウスIMH2/BBC抗体を発現するハイブリドーマ細胞を、Dr.S.Hakomori(Cancer Research 52:3739−3745 (1992))から得た。cDNA合成のためのRNAを調製するために、9×10
6個のハイブリドーマ細胞をまず、低速の遠心分離(300gで5分)によって収集し、続いて「total RNA miniprep purification kit」(商標)(GeneMark(商標)、GMbiolab Co.Ltd.、Taichung City、Taiwan、ROC)を製造元のプロトコールに従って使用してRNAを単離した。次いでIMH2をコードする抗体遺伝子を、SMART RACE cDNA Amplification Kit(商標)(Takara/BD Biosciences−Clontech、Palo Alto、CA)を、供給元の推奨されたプロトコールと比較してわずかな改変を加えて使用して、精製したRNAからクローニングした。
【0270】
簡単に言えば、第1の鎖のcDNA合成およびdCテール付加の後、IMH2の軽鎖可変領域を特異的にコードするcDNAを、キットによって供給されたプライマーおよび定常領域中の公知のマウスカッパ鎖配列に基づき設計された特異的なプライマーを使用した2回のPCRによって単離した。第1のPCRは、94℃で30秒および72℃で1分の5サイクル;それに続いて94℃で30秒、67℃で30秒および72℃で1分の5サイクルで行った。94℃で30秒、62℃で30秒および72℃で1分を含む追加の27サイクルのPCR反応を追加して、増幅の成功を確認した。次いで、94℃で5分の予熱ステップ、それに続いて、94℃で30秒、54℃で30秒および72℃で1分の35サイクル、ならびに72℃で3分の最終的な伸長ステップを含む第2のネステッドPCRを実行して、忠実度をさらに改善した。
【0271】
重鎖遺伝子のためのクローニング戦略はわずかに異なっていた。まず、PCR反応に使用する一本鎖cDNA鋳型を、定常ドメイン1(CH1)に対するマウスIgG3特異的プライマーを用いてRNAから調製した。次いで遺伝子の単離を、以下の通り単回のPCRによって実行した:94℃で5分の予熱、94℃で30秒、62℃で30秒、72℃で1分を含む35サイクルのPCR反応、それに続いて、NUPプライマー(SMART(商標)RACE増幅キット、Clontech、Palo Alto、CA)およびマウスCH1ドメインに対するネステッドプライマーの存在下での72℃で5分の最終的な伸長ステップ。次いで、軽鎖および重鎖断片の両方の可変領域をコードするcDNAを、PCR精製キット(GeneMark(商標)GMbiolab Co.Ltd.、ROC)を使用して精製し、陽性クローンの同定および配列決定のために、yT&Aクローニングベクター(Yeastern Biotech(商標)、Taipei、Taiwan、ROC)に導入した。
【0272】
抗体発現プラスミドの構築
本明細書で言及される抗体を「BBC」抗体として生産するための発現プラスミドを構築するために、PCRプライマーおよび上述のyT&Aベクターにクローニングした抗体遺伝子を使用して、成熟(リーダーペプチドなしの)重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNAのみを調製した。PCRを以下の通りに実行した:94℃で5分の予熱、94℃で30秒、65℃で30秒および72℃で60秒を含む35サイクルのPCR反応、ならびに72℃で3分の最終的な伸長ステップ。PCR反応中、VH cDNAの5’(NheI)および3’(ApaI)末端ならびにVL cDNAの5’(NheI)および3’(BsiWI)末端に制限酵素認識配列を取り込んで、後続の発現プラスミドの操作を容易にした。次いで増幅したcDNA断片を、重鎖のための制限酵素ApaI/NheIおよび軽鎖遺伝子のためのNheI/BsiWIで逐次的に消化した。ゲル精製の後、回収したVHおよびVL cDNAを、同じ制限酵素クローニング部位でpGNX−RhcG1(VH)またはpGNX−Rhckベクター(VL)にライゲーションして、それぞれ発現ベクターpGNX−RhcG1−BBCおよびpGNX−Rhck−BBCを得た。挿入されたcDNA配列を、多重クローニング部位上流のプライマーを使用して確認した。
【0273】
抗体の一過性の生産
キメラBBC抗体の一過性の生産のために、HEK293−c18細胞を、ポリエチレンイミンの存在下で、重鎖および軽鎖をコードするpGNX−RhcG1−BBCおよびpGNX−Rhck−BBC発現プラスミドでコトランスフェクトした。分析のために、トランスフェクション後7日目の最後に培養上清を収集した。
【0274】
(実施例2)
ヒト化BBC抗体の生成
BBC抗体(実施例1で上述された)のヒト化された形態を生産するために、相同なヒト抗体配列(ヒトアクセプター)を選択して、CDRグラフティングを実行した。簡単に言えば、NCBIタンパク質データベースを検索して、BBC抗体の重鎖(配列番号28)および軽鎖(配列番号27)可変領域に対して最大の相同性を示す配列の位置を特定することによって、可能性があるヒトアクセプター配列を同定した。ヒトアクセプターフレームワークCAD89404.1(Vh)およびAAS01771.1(Vl)を選択した(
図1)。しかしながら、ヒトアクセプターフレームワークに非ヒトCDR配列を直接挿入することは、結合親和性の喪失をもたらし得る。結合親和性は、フレームワーク残基をヒトアクセプターから移動させて非ヒトドナー配列に戻した後、回復させることができる。好ましい復帰変異は、元のCDRコンフォメーションを維持することによって結合親和性を回復させる。
【0275】
CDRグラフティング後に結合親和性を回復させるために、BBC結晶構造データに基づいて、Accelrys Discovery Studio(商標)(BIOVIA、San Diego、CA)ソフトウェアを使用して、抗体の3Dモデルをまず構築した。次いで復帰変異にとって重要なアミノ酸を、以下のように構造を検査することによって予測した:
【0276】
1.ヒト化フレームワークにおける変化した残基の変異エネルギー(安定性のための)を計算した。変異エネルギーの正の値は、変異の不安定化効果に一致し、逆もまた同様である。
【0277】
2.フレームワーク残基とCDR領域との間の空間的な距離を検査した。CDRに最も近い残基を考慮に入れた(4Å以内)。
【0278】
3.重鎖可変領域と軽鎖可変領域の界面に位置する残基を検査した。これらの残基は、重鎖と軽鎖の組み立てに寄与しており、そのため、抗体構造に著しい影響を与えることができた。
【0279】
最初に、予測基準に基づき10個の影響力のある位置(軽鎖中の3個および重鎖中の7個)を復帰変異のために選択した。加えて、選択されたヒト重鎖鋳型の70位(Kabatの番号付けに従って)におけるメチオニン(M)残基は、低頻度のモチーフのようであり、そのため、その部位を高度に保存されたイソロイシン(I)で置き換えた(
図1;復帰変異した残基(ヒトアクセプター→hBBC.8)は、以下の表3において下線を引かれる;Met→Ile残基は、表3では太字のイタリックで下線で示され、
図1では囲まれている)。これらのアミノ酸の変換により、「hBBC.8」ヒト化抗体が生産された。
【0280】
追加の変化を導入して、抗体をさらに改善した。まず、マウスおよびヒト配列間で変動するhBBC.8軽鎖中の2つの位置(R66およびF71)を変異させて、「hBBC.9」(F71Y変異を含有する)および「hBBC.10」(F71YおよびR66G変異を含有する)を生産した(
図2A;表3において、太字およびイタリックで示され、下線なしの残基)。
図2Bに、BBCならびに生成したヒト化バリアントhBBC.9およびhBBC.10のAGS細胞への結合を示す。簡単に言えば、AGSヒト胃がん細胞株(ATCC CRL−1739;ATCC、Manassas、VA)をF12培地中で規則的に維持し、10%の透析したウシ胎仔血清を補充した。細胞結合研究を実行するために、100μlのPBS中のおよそ3×10
5個の細胞を、等しい体積の希釈した抗体と混合した。室温で1時間のインキュベーションの後、各試料に2mlのPBSを添加し、未結合の抗体をすすぎ落とした。遠心分離に続いて、回収した細胞ペレットを、PBSで1:200に希釈した200μlのフルオレセイン(FITC)−AffiniPure(商標)ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ Fragment Specific(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA、カタログ番号109−095−098)に直接再懸濁した。室温で30分間のインキュベーションの後、PBS洗浄を繰り返して、未結合の二次抗体を排除した。集めた細胞を200ulのPBSに再懸濁し、BD FACSCanto(商標)フローサイトメーターシステム(BD Biosciences、San Jose、CA)で分析した。さらなる分析を実行して、免疫原性の可能性がある配列を同定した。
【0281】
重鎖または軽鎖における追加の変異は、さらなるバリアント「hBBC.9.1」および「hBBC.10.1」(以下の表3において、太字で下線を引かれ、イタリックではない残基)を生産した。具体的には、BBCおよびhBBC.8抗体の、ならびにシミュレートした抗原/抗体複合体の結晶構造を分析した。軽鎖および重鎖CDR領域中のいくつかの残基(Kabatの番号付けに従って特定した位置)を、単一部位のアミノ酸置き換えに関して同定した。抗体軽鎖または重鎖遺伝子の指定された位置におけるアミノ酸の切り替えを、特異的に設計されたプライマーを用いた2回のPCR反応によって実行した。発現ベクターへの変異した抗体cDNA断片の挿入を容易にするために、PCR反応中に各末端に制限部位(cDNA鎖には5’NheIおよび3’ApaI、軽鎖cDNAには5’NheIおよび3’BsiWI)を組み入れた。第2のPCR反応の後、DNA断片を生産し、NheI/ApaIまたはNheI/BsiWIで切断し、それぞれ重鎖および軽鎖遺伝子構築のためのpGNX−RhcG1およびpGNX−Rhckベクターの同じ部位にライゲーションした。表1に、変異した部位および変化を示す。
表1. hBBC.8の単一の部位変異
【表1】
【0282】
いくつかの変異体が、AGS細胞結合アッセイにおいて、キメラ抗体(BBC)の活性の1/2に等しいかまたはそれよりも大きいin vitroにおける結合活性を示した(
図2C、表2も参照)。加えて、表2で示されるように、ELISAアッセイにおいて、一部の変異体もまた、1価ルイスB構造との交差反応性の低減(BBCと比較して1/8の強度に等しいかまたはそれ未満)により、特異性の改善を示した。1価ルイスBは、正常なヒト組織で発現される血液型抗原である。
表2. BBC CDR変異体の結合活性
【表2】
(=)BBCと比べて結合活性の変化なし
(−)BBCと比べて結合活性の減少
(+)BBCと比べて結合活性の増加
【0283】
hBBC.8がBBCと比較しておよそ1/3のAGS細胞結合活性を示し(
図2B)、異種移植片マウスモデルにおいて非常に優れた腫瘍阻害を示したことから(実施例6を参照)、これらの単一のアミノ酸で置き換えられた抗体変異体は、抗腫瘍活性を示す可能性を有する。表1に、これらの分析されたクローンの位置およびアミノ酸の置き換えを要約する。親和性および/または特異性の改善に関するそれらの能力をさらに確認するために、合計7つの単一の変異部位(表2)を選択して、ヒト化抗体鋳型において評価した。これらは、AGS細胞への抗体結合に対するそれらの効果に関して試験された5つの単一の残基の置換(軽鎖中に3つおよび重鎖中に2つ)(
図2C)、精製Le
Bと比較したAGS細胞への抗体結合の特異性に対するそれらの効果に関して試験された2つの重鎖の単一の残基の置換、および同様に分析された2つの重鎖の二重の残基の置き換え(
図2D)を含んでいた。
【0284】
図2Eに、親和性(AGS細胞結合アッセイ)および特異性(ルイスb ELISAアッセイ)に関する、構築された様々なヒト化BBCバージョンの元のキメラ形態とのさらなる比較を示す。
【0285】
hBBC.9のEpibase分析(Applied Protein Services、Lonza Biologics、Cambridge、UK)によって、重鎖領域における強い免疫原性リスクを有する領域を予測した。可能性のある免疫原性の問題を最小化するために、重鎖のフレームワーク3領域中の6個の追加のアミノ酸変化(78位、80位、82〜84位、および86位)を含めて、これらの位置で参照ヒト化抗体とマッチさせた(
図3)。これらの変換により、「hBBC.10.1FQ」のための重鎖フレームワークを得た。表3に、この実施例に記載される様々な重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を要約する。
表3.抗体VHおよびVL領域のアミノ酸配列
【表3-1】
【表3-2】
【0286】
(実施例3)
HBBCエピトープの特徴付け
BBCおよび本明細書に記載されるバリアントを、グリカン結合モノクローナル抗体として設計した。親IMH2(BBC)抗体の公開された特異性データに基づいて(Ito et al., Cancer Res. 52:3739, 1992)、生成したBBC抗体の標的エピトープは、Le
BおよびLe
Y抗原に関連するという仮説を立てた。以下のエピトープの特徴付け研究を、hBBC.10.1を使用して実行した。hBBC.10.1は、以下の実施例および参照される図では「hBBC」とも称される。
【0287】
免疫精製
結腸直腸細胞がん株Colo−205からのGSL由来グリカンを単離し、BBCを使用して免疫精製した。未結合の、および溶出した画分中のグリカンを過メチル化し、
図4Aおよび4Bで示されるように、MALDI−MS分析を用いてプロファイリングした。未結合画分のグリカンプロファイルは、インプットされたグリカンプロファイルに類似していたことから、COLO205からのほとんどのGSL由来グリカンがBBCに結合しなかったことが示される。しかしながら、溶出した(BBC結合した)画分において、Fuc
4(LacNAc)
3LacグリカンはもっぱらBBCによって精製した。具体的には、驚くべきことに、hBBC精製グリカンは、I−分岐抗原でのMS/MS実験におけるLe
BおよびLe
Yフィンガープリント断片の両方の観察に基づいて、バイアンテナ型Le
B/Y(すなわち、Le
B/Le
B、Le
B/Le
Y、またはLe
Y/Le
Y)を有していたが、それに対して、未結合画分中のグリカンは、直鎖状の構造、潜在的にLe
B−Le
A−Le
A−Lacであったことが見出された。この結果から、I抗原におけるバイアンテナ型Le
B/YはBBCのエピトープであることが示された。
【0288】
この結果はさらに、I抗原におけるバイアンテナ型Le
B/Yの糖脂質発現のために選択された細胞株NCI−N87およびSW1116のGSL由来グリカンからのBBC結合グリカンの免疫精製によって裏付けられた。予想通りに、BBCは、モノ、バイ、およびトリフコシル化されたグリカンではなく、テトラフコシル化されたGSL由来グリカンFuc
4(LacNAc)
3Lacに結合した(
図5A〜5B)。MSMSシーケンシングを介して、NCI−N87およびSW1116 GSLのBBC結合グリカンは、I抗原保有バイアンテナ型Le
B/
Yであることが確認された(
図6Aおよび6B)。
【0289】
Fuc
4(LacNAc)
3Lacに加えて、多重フコシル化(4つのフコース残基が、BBCによる結合のための最小必要条件である)を特色とするNCI−N87およびSW1116からのGSL由来グリカンの群を精製した。NCI−N87 GSLの2つの優勢なBBC結合グリカンであるFuc
4(LacNAc)
4LacおよびFuc
6(LacNAc)
4→5LacをMSMSを使用してシーケンシングし、バイまたはトリアンテナ型Le
Yを有するI抗原保有グリカンであることを決定した(
図7Aおよび7B)。さらに、放出されたAGS細胞株由来のN−グリカンをBBCで免疫精製したところ、富化されたN−グリカンは、バイまたはトリアンテナ型Le
Yを有する構造であることが見出された(
図8Aおよび8B)。この結果は、富化されたI抗原と一致する。
【0290】
これらのデータは、Le
B/YがBBCの結合単位であることを示す。しかしながら、モノアンテナ型ルイス
B/Yは、BBCとの強い結合を得るには十分ではない。独特なI抗原および完全に末端がフコシル化された(fucoyslation)N−グリカンは、多価Le
B/Yを提供したが、これは、BBCの強い結合エピトープであることを示す。比較可能な免疫精製研究をhBBCでも実行し、BBCと類似のグリカン富化特異性が示されたが(データを示さず)、これは、hBBCおよびBBCは類似のエピトープを共有することを示した。
【0291】
等温滴定熱量測定
等温滴定熱量測定(ITC)を実行して、hBBCと、一連のLe
Y−Gal、Le
B−Gal、Le
A−Gal、およびLe
X−Galの直鎖状グリカン、ならびにLe
Y/Le
Y−ASGP、Le
X/Le
X−ASGP、H−ASGP、Le
Y/Le
Y−I抗原、およびLe
Y/Le
B−I抗原の分岐状グリカンとの間の結合親和性を分析した。BR96抗体(米国特許第5,491,088号Aに記載される;米国特許第5,792,456号Aに記載されるバリアント)を対照として含めた。hBBC免疫精製実験からの特徴付けられたグリカンは限られた量で存在していたため、様々なLe
BおよびLe
Y関連グリカンを商業的供給源(Elycityl SA、Crolles、France)から得るか、または当分野で確立された手法に従って社内で酵素的に合成した(例えば、Wu et al., 2011 Glycobiology 21(6): 727−733;Becker et al., 2003 Glycobiology 13(7): 41R−53R;de Vries et al., 2001 Glycobiology 11(10): 119R−128R。
【0292】
簡単に言えば、等温滴定熱量測定(ITC)のために、pH7.2の濾過したPBSを社内で調製し、1回のITC注入内で同じバッチの緩衝液を使用した。mAbを、50μMのタンパク質濃度を含むpH7.2の濾過したPBS緩衝液で事前に交換した。計算の標準としてガラクトースを用いたパルスアンペロメトリック検出(HPAEC−PAD、例えば、Rothenhofer et al., 2015 J. Chromatogr. B Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. 988:106)単糖分析での高性能陰イオン交換によって、グリカン抗原の量を定量化した。定量化したグリカン抗原をpH7.2の濾過したPBS(mAb溶液調製のためのものと同じバッチ)に溶解させ、各注入に対して60μLの溶液を使用した。
【0293】
ITC実験をMicroCal iTC200システム(Malvern Instruments Ltd、Malvern、UK)で実行した。iTC200の試料セルにmAb溶液(50μM)をロードした後、システム温度を25℃に設定した。システム温度が25℃に達した後、シリンジにグリカン抗原溶液をロードし、mAbを充填した試料セルにゆっくり下げた。実験パラメーターは、以下:注入回数:20;セル温度:25℃;参照パワー:6μcal/s;初期の遅延:60s;試料セル濃度:50μM;撹拌速度:750rpmの通りであり、測定されたグリカン抗原濃度でインプットされたシリンジ濃度を用いた。注入パラメーターは、以下:注入体積:2μL;持続時間:4s;間隔:150s;充填期間:5sの通りであり、第1の注入体積を1μLに調整した。全ての設定を確認したら、実験を開始し、得られたデータを、iTC200のためにOriginによって加工した。滴定曲線を、One Set of Sitesフィッティングモデルを用いて、100回の反復を繰り返してフィッティングして、最良のフィッティング結果を得た。その結果、KおよびK
Dを計算した。
【0294】
図9A、9B、10A〜10C、および11A〜11Fに、hBBC抗体を用いた様々なグリカン抗原のITC滴定グラフを示す。
図12A〜12Cに、BR96抗体を用いた様々なグリカン抗原のITC滴定グラフを示す。簡単に言えば、ITC分析は、hBBCが、Le
B−Gal(KD=26.2μM)に対して、Le
Y−Gal(KD=80.6μM)よりも高い特異的な結合親和性を有することを示した。さらに、hBBCは、バイアンテナ型構造(Le
Y/Le
Y−ASGP、Le
Y/Le
Y−I抗原、およびLe
Y/Le
B−I抗原)に対して、単鎖Le
Y−Gal抗原に対してよりも強い結合親和性を示した。Le
Y/Le
Y−ASGP、Le
Y/Le
Y−I抗原およびLe
B/Le
Y−I抗原に対するhBBCの結合親和性は類似しているようであったことから、バイアンテナ型グリカンエピトープの場合、Le
YおよびLe
B側鎖は、特異的な結合への同等な寄与を有することが示唆される。さらに、
図11A〜Fで示されるように、テトラフコシル化されたLacNAc部分が欠如したグリカン抗原は、単鎖かまたはバイアンテナ型の形態(Le
X−Gal、Le
A−Gal、H−抗原I型、H抗原II型、H−ASGP、およびLe
X/Le
X−ASGP)かにかかわらず、hBBCとの特異的な結合を示さなかった。これらの結果は、I型またはII型連結のいずれかを有するテトラフコシル化されたLacNAcが、hBBCによる特異的な結合に必要であることを示す。まとめると、免疫精製データと一致して、ITCの結果は、hBBCが、Le
Yおよび/またはLe
Bを含有する構造を含むエピトープに結合することを示した(表4;グリカンは以下のように描写される:白丸=Gal;塗りつぶしの丸=Man;塗りつぶしの四角=GlcNac;閉じた三角形=Fuc)。BR96対照は、バイアンテナ型Le
Y/Le
Y−I抗原およびバイアンテナ型Le
Y/Le
Y−ASGPと比較した場合、単鎖Le
Y−Galのよりわずかに高い結合親和性に類似していたことを示し(
図12A〜12C)、これは、BR96が、単鎖およびバイアンテナ型Le
Yグリカンの間で特異的な選択性を有さないことを示唆している。したがって、hBBCは、BR96と比較した場合、独特なエピトープ特異性を有する。
表4.等温滴定熱量測定の結果
【表4-1】
【表4-2】
【0295】
これらの結果は部分的に、hBBCエピトープを特徴付ける。しかしながら、自由に流動するhBBCと固定されたグリカンとの相互作用は、エピトープについての追加の情報を提供する;それゆえに、表面プラズモン共鳴(SPR)およびELISA実験で、hBBCを一連の固定されたグリカンを用いて試験した。表5に示されるように、ストレプトアビジンでコーティングされた分析表面およびビオチンコンジュゲートグリカン(SPRのためには、Le
Y−Gal−ビオチン、Le
B−Gal−ビオチン、Le
Y/Le
Y−ASGA−ビオチン、およびLe
B/Le
B−ASGA−ビオチン;ELISAのためには、Le
Y−Gal−ビオチン、Le
B−Gal−ビオチン、Le
Y/Le
Y−ASGA−ビオチン、Le
B/Le
B−ASGA−ビオチン、3−Le
Y/6−Le
B−ASGA−ビオチン、および3−Le
B/6−Le
Y−ASGA−ビオチン)を利用した(表4の場合と同じグリカンの描写)。
表5. SPRおよびELISAに使用したグリカン抗原の構造およびMW
【表5-1】
【表5-2】
【0296】
表面プラズモン共鳴
Le
Y−Gal−ビオチン、Le
B−Gal−ビオチンおよびLe
Y/Le
Y−ASGA−ビオチンに対するhBBCの結合親和性を、ストレプトアビジンでコーティングされたチップ上での表面プラズモン共鳴(SPR)によって分析した。簡単に言えば、HBS−EP+緩衝液(GE Healthcare)をランニング緩衝液として使用してBiacore T100を使用した。ビオチン化グリカンを10pMに希釈し、標準的手順に従ってセンサーチップSA(GE Healthcare)に固定した。グリカンを10μL/分の流量で60s固定した。hBBCまたはBR96の緩衝液を、Zeba脱塩スピンカラム(7KのMWCO、0.5mL、ThermoFisher)でHBS−EP+緩衝液に交換し、HBS−EP+緩衝液で480、240、120、60、および30nMに連続的に希釈した。単一サイクルの動態分析を実行した。抗体を、30μL/分の流量で150sグリカンに会合させ、300s解離させた。チップを、50μL/分の流量で120s、2MのMgCl
2で再生した。Biacore T200評価ソフトウェア(GE Healthcare)を用いてデータを評価した。2状態の反応をカーブフィッティングのために使用し、ka、kdおよびKDの最良適合値を得た(表6)。
図13Aおよび13Bに、様々なグリカン抗原に対するhBBCおよびBR96の結合を示すSPRセンサーグラムを提供する。
表6. SPRの結果の要約
【表6】
【0297】
SPRは、バイアンテナ型Le
Y/Le
Y−ASGA−ビオチンが、単鎖Le
Y−Gal−ビオチンと比較してhBBCに対してより高い親和性を呈示したことを示し、これは、ITCの結果と一致していた。加えて、バイアンテナ型Le
B/Le
B−ASGA−ビオチンは、単鎖Le
B−Gal−ビオチンと比較してhBBCに対してより高い親和性を呈示した。これもまた、Le
Y抗原について観察された傾向に一致する。hBBCは、Le
Y−Gal−ビオチンと対比してLe
B−Gal−ビオチンに対してより高い親和性を呈示したが、これは、ITCの結果と同程度である。SPRは、hBBCが、Le
B/Le
B−ASGA−ビオチンに対して、Le
Y/Le
Y−ASGA−ビオチンよりも高い結合親和性を有することも示したが、これは、hBBCが、Le
Bベースの抗原に対して、Le
Yベースの抗原よりも高い親和性を有するという観察と一致していた。Le
B/Le
B−ASGAおよびLe
Y/Le
Y−ASGAから得られたhBBCの同程度のKD値はさらに、hBBCが、多重フコシル化された、すなわち2価ルイスBまたはルイスY構造と特異的に会合することを示す。注目すべきことに、2つの抗原から類似したKD値が得られたが、Le
B/Le
B−ASGAに対するhBBC応答は、Le
B−Galに対する応答よりも強かった(センサーグラム)。Le
B/Le
B−ASGAは、hBBCに対して最大の親和性の構造であると考えられる。
【0298】
比較によって、BR96は、Le
Y−Gal−ビオチンおよびLe
Y/Le
Y−ASGA−ビオチンに対して、よりわずかに高い親和性を示したが、それが構造的に類似した抗原Le
Y/Le
Y−ASGPになる場合、ITCからの結果と同程度である。まとめると、SPRデータは、ITC実験からのデータと高度に一致していた。
【0299】
間接ELISA
ELISAによって抗体結合親和性を評価するために、ビオチン化グリカン抗原を、PBS緩衝液で十分な濃度に希釈した。100μLの希釈抗原溶液を、ストレプトアビジンでコーティングされた96−ウェルアッセイプレートに適用し、振盪機中37℃で3.5時間インキュベートした。プレートを、PBST(PBS緩衝液中の0.05%Tween(登録商標)−20)で洗浄して、過量のグリカン抗原を除去した。希釈剤(PBS緩衝液中の0.1%BSA)で連続的に滴定された一次抗体をアッセイプレートに適用し、振盪機中37℃で1時間インキュベートした。PBST洗浄に続き、100μLのHRPコンジュゲート抗ヒトIgG抗体溶液(SouthernBiotech、希釈剤での1:15,000希釈)を、振盪機中のアッセイプレート中37℃で1時間インキュベートした。過量の二次抗体を洗い落とした後、100μLのTMB試薬を適用し、37℃で15分インキュベートし、続いて50μLの0.5NのHClでクエンチした。VERSA maxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で、OD値を450nmで検出し、650nmでの値を減算した。データを、Softmax Pro(Molecular Devices)で処理した。
【0300】
Le
Y/Le
Y−ASGA対Le
Y−Gal
hBBCおよびBR96の結合活性を、Le
Y−Gal−ビオチンでコーティングされた、およびLe
Y/Le
Y−ASGA−ビオチンでコーティングされた、ストレプトアビジンでコーティングされたELISAプレートで試験した。コーティングされた抗原の量は、
図14Aおよび14Bに示した通りである。hBBCは、Le
Y−Galよりもはるかに強くLe
Y/Le
Y−ASGAに結合することを示した。BR96は、Le
Y/Le
Y−ASGAよりもはるかに良好にLe
Y−Galに結合した点で、hBBCとは反対のパターンを示した。要するに、間接ELISAは、ITCおよびSPR実験と類似した結合親和性結果を提供した。
【0301】
Le
B/Le
B−ASGA対Le
Y/Le
Y−ASGAおよびLe
B−Gal
次に、hBBCを、Le
B/Le
B−ASGA−ビオチン、Le
Y/Le
Y−ASGA−ビオチン、およびLe
B−Gal−ビオチンでコーティングされた、ストレプトアビジンでコーティングされたELISAプレートに対する結合に関して試験した。コーティング抗原の量は、
図15に示した通りである。間接ELISAの結果は、hBBCが、Le
B/Le
B−ASGAに、Le
Y/Le
Y−GalおよびLe
B−Galよりも大幅に強い結合を示したことであった。
【0302】
抗原結合ELISA
異なるグリカン抗原へのhBBCの相対的な結合親和性を評価するために、抗原結合ELISAを開発した。簡単に言えば、hBBCを連続的に滴定し、異なるグリカン抗原でコーティングされたストレプトアビジンで官能化した96−ウェルアッセイプレートに適用した。グリカン抗原へのhBBCの結合を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヒトIgG特異的抗体を用いて検出し、続いてTMB試薬中で発色させた。マイクロプレートリーダーを使用した450nmにおける吸光度は、その抗原に結合したhBBCの量に比例していた。相対的な親和性を、ODをhBBC濃度の関数としてプロットすることによって決定した。
【0303】
抗原の調製
ビオチン化ルイスYペンタオース、Le
Y−Gal−sp3−ビオチンを、Elicityl(Crolles、France)から購入した。ルイスBペンタオースをElicitylから購入し、さらに社内でビオチン化した(Le
B−Gal−LC−ビオチン)。他の4つのビオチン化グリカン:Le
Y/Le
Y−ASGA−ビオチン、Le
B/Le
B−ASGA−ビオチン 3−Le
Y/6−Le
B−ASGA−ビオチン(Le
Y/Le
B−ASGA−ビオチン)、および3−Le
B/6−Le
Y−ASGA−ビオチン(Le
B/Le
Y−ASGA−ビオチン)を、一連の酵素によるグリコシル化とそれに続く化学的ビオチン化を介して合成した(表5)。ビオチン化グリカンを、薄層クロマトグラフィー(TLC)およびエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)によって分析して、純度が少なくとも95%に達し、コンジュゲートしていないビオチンを含んでいなかったことを確かめた。ビオチン化グリカンの定量化のために、HPAEC−PAD単糖分析を適用した。
【0304】
抗体
抗原結合ELISAにおいて、hBBCを使用した。
【0305】
ELISA
ビオチン化グリカン抗原をPBS緩衝液で18.7nMに希釈した。100μLの希釈した抗原溶液を、ストレプトアビジンでコーティングされた96−ウェルアッセイプレートに適用し、振盪機中37℃で3.5時間インキュベートした。プレートをPBST(PBS緩衝液中の0.05%Tween(登録商標)−20)で洗浄して、過量のグリカン抗原を除去した。希釈剤(PBS緩衝液中の0.1%BSA)で連続的に滴定された一次抗体をアッセイプレートに適用し、振盪機中37℃で1時間インキュベートした。PBST洗浄に続き、100μLのHRPコンジュゲート抗ヒトIgG抗体溶液(SouthernBiotech、希釈剤での1:10,000希釈)を、振盪機中のアッセイプレート中37℃で1時間インキュベートした。過量の二次抗体を洗い落とした後、100μLのTMB試薬を適用し、37℃で15分インキュベートし、続いて50μLの0.5NのHClでクエンチした。VERSA maxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で、OD値を450nmで検出し、650nmでの値を減算した。データを、Softmax Pro(Molecular Devices)で処理した。
【0306】
結果
図16Aに、データを示す。抗原結合ELISAにおいて、hBBCが、Le
B/Le
B−ASGA、Le
Y/Le
Y−ASGA、3−Le
Y/6−Le
B−ASGA−ビオチン、および3−Le
B/6−Le
Y−ASGA−ビオチンに結合した場合、OD値は、低い抗体濃度の狭い範囲(0.4〜4μg/mL)内で増加し、それに対して、hBBCのLe
Y−GalおよびLe
B−Galとの結合は、見たところより弱いようであったが、これは、1つのグリカンにおける2価Le
Y、Le
B、Le
B/Le
Y、またはLe
Y/Le
Bが、単一のルイス
Y/B部分がもたらしたよりも高いhBBCへの結合親和性をもたらしたことを示す。
【0307】
抗原結合親和性の直接比較:hBBC.10.1対BBC
実験の目的は、抗原結合ELISAによって、hBBC.10.1の抗原親和性を、原型となったBBC抗体の抗原親和性と比較することであった。
【0308】
抗原の調製
ビオチン化ルイスYペンタオース、Le
Y−Gal−sp3−ビオチンを、Elicitylから購入した。ルイスBペンタオースをElicitylから購入し、さらに社内でビオチン化した(Le
B−Gal−LC−ビオチン)。他の4つのビオチン化グリカン:Le
Y/Le
Y−ASGA−ビオチン、Le
B/Le
B−ASGA−ビオチン 3−Le
Y/6−Le
B−ASGA−ビオチン(Le
Y/Le
B−ASGA−ビオチン)、および3−Le
B/6−Le
Y−ASGA−ビオチン(Le
B/Le
Y−ASGA−ビオチン)を、一連の酵素によるグリコシル化とそれに続く化学的ビオチン化を介して合成した(表5)。ビオチン化グリカンを、TLCおよびESI−MSによって分析して、純度が少なくとも95%に達し、コンジュゲートしていないビオチンを含んでいなかったことを確かめた。ビオチン化グリカンの定量化のために、HPAEC−PAD単糖分析を適用した。
【0309】
抗体
抗原結合ELISAにおいて、BBCおよびhBBC.10.1を使用した。
【0310】
抗原結合ELISA
96−ウェルのEvenCoat(商標)ストレプトアビジンマイクロプレート(R&D Biosystems、MN、カタログ番号CP004)を、3.73pmol/ウェルの量でのPBS中の様々なビオチン化グリカンと共に、4℃で一晩インキュベートした。PBS/0.05%Tween(登録商標)20(Sigma、カタログ番号P1379−500mL)で3回洗浄した後、100μLの希釈したBBCまたはhBBC.10.1抗体を、抗原でコーティングされたウェルに添加し、次いで37℃で1時間インキュベートした。ウェルをPBS/0.05%Tween(登録商標)20で3回洗浄し、続いて100μLの10000倍希釈したマウス抗ヒトIgG(Fc)−HRP(Southern Biotech、カタログ番号9040−05)と共に37℃で1時間インキュベートした。洗浄した後、発色のために、100μlのSureBlue(商標)Reverse TMB(KPL、カタログ番号53−00−03)を37℃で添加し15分おいた。0.5NのHClを添加することによって反応を止めた。VERSAMAX(商標)マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、San Jose、CA)で、650nmの参照を用いて、450nmの波長で、吸光度を読み、データを、SoftmaxPro(商標)ソフトウェア(Molecular Devices)で処理した。
【0311】
結果:
BBC(
図16B)およびhBBC.10.1(
図16C)の抗原結合ELISAは、hBBC.10.1が、BBCと比較した場合、単鎖グリカン抗原(Le
B−GalおよびLe
Y−Gal)に対してより低い親和性を有し、および両方の抗体が、バイアンテナ型グリカン抗原(Le
B/Le
B−ASGA、Le
Y/Le
Y−ASGA、3−Le
Y/6−Le
B−ASGA、および3−Le
B/6−Le
Y−ASGA)に対して高親和性を有していたことを示した。これらのデータから、hBBC.10.1は、BBCよりも優れた、単鎖抗原とバイアンテナ型抗原との間の結合選択性を有していたことが示唆された。
【0312】
まとめ
この実施例に記載されるエピトープの特徴付け実験から、hBBCは、がん細胞株由来のバイアンテナ型およびトリアンテナ型Le
Y/BI抗原に、さらにバイアンテナ型およびトリアンテナ型Le
YN−グリカンにも特異的に結合したことが示された。さらに、hBBCによって認識されたエピトープは、ジフコシル化LacNAc主鎖を含んでいた。バイアンテナ型Le
B/Le
B−ASGAが、hBBCとの最も強い結合親和性を有する抗原であった。バイアンテナ型Le
Y/Le
Y−ASGA、Le
Y/Le
B−ASGA、およびLe
B/Le
Y−ASGAは、単鎖Le
B−GalおよびLe
Y−Gal抗原と比較して、hBBCに対しても高親和性を示した。また、抗原が単鎖構造であるか、またはバイアンテナ型構造であるかにかかわらず、単独でLe
Bをベースとする抗原も、hBBCに対して、単独でLe
Yをベースとする抗原よりも高い親和性を示した。最終的に、hBBCの結合挙動(動態)およびエピトープは、BR96のそれらと異なっていた。
【0313】
(実施例4)
標的細胞におけるhBBCの内在化
抗体は、機能的なペイロードを所望の部位に送達するための担体として使用することができる。例えば、一部のがん療法は、内在化としても公知のエンドサイトーシスを介して細胞傷害性薬物(すなわち、抗体−薬物コンジュゲートまたはADC)を腫瘍細胞に送達するために、抗原特異的抗体を使用する。一部の現行のADCは、内在化後にリソソーム区画で切断され、それによって薬物を選択的に放出する切断可能なリンカーを含み、血清中での薬物の安定性を増加させるという追加の利益を有する。
【0314】
hBBCが効果的にがん細胞に内在化したかどうかを試験するために、以下の実験を実行した。最初に、従来の内在化アッセイにおいて、培養中、AGS胃がん細胞にhBBC抗体を添加し、結合を4℃で1時間実行して、特異的な抗体/受容体相互作用を生じさせたが、エンドサイトーシスを止めた。次いで、非特異的に結合した抗体を洗い落とし、細胞を37℃に移行して正常なエンドサイトーシスを生じさせた。0分および30分で、細胞を固定し、Alexa488コンジュゲート抗ヒトIgG抗体を使用してhBBCを検出した(
図17、左側のパネル)。F−アクチンをファロイジンローダミンによって標識した(右側のパネル;共分布した染色は、黄色の蛍光シグナルとして出現した)。
図17で示されるように、hBBCは、0分で細胞膜を染色し、次いで内在化を受け、37℃のインキュベーション後(30分、透過処理した細胞)、サイトゾルの核周辺の小胞に局在化した。サイトゾルのシグナルは、極めてわずかな膜のシグナルしか検出することができない(30分、透過処理していない細胞)透過処理していない対照によってさらに実証された。これらのデータは、hBBCは30分以内に効果的にAGS細胞に内在化することを示す。
【0315】
第2の実験において、hBBCのリアルタイム細胞内局在化を検査した。簡単に言えば、AGS細胞にhBBC抗体を添加し、37℃で4または8時間インキュベートして、内在化を促進した。次いで細胞を固定し、Alexa488コンジュゲート抗ヒトIgG抗体(
図18、左のパネルに示される抗ヒトIgG)を使用してhBBCのリアルタイム局在化を検査した。リソソームを抗Lamp−1抗体によって標識し、続いて抗ウサギIgG抗体によって標識した(中央のパネルに示される)。
図18で示されるように、4または8時間のインキュベーションの後、hBBCはLamp−1と共局在化しており(統合;右のパネル)、これは、内在化したhBBCが、リソソーム区画に局在化されていることを示す。さらに、hBBCは、少なくとも8時間、リソソーム区画中で明らかな分解なしに安定化することができる。これらの結果は、hBBCが、抗原標的化コンジュゲート、例えばADCなどで使用するための有用性を有することを示す。
【0316】
(実施例5)
ヒト組織試料中のhBBCの免疫染色
健康なおよびがん性組織の試料を得、標準的なプロトコールに従って、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片でhBBC10.1での免疫染色を実行した。それぞれ表7および8に、健康なおよびがん性組織の染色結果を要約する。
表7.様々なヒト正常組織のhBBC.10.1免疫染色
【表7-1】
【表7-2】
【0317】
表8.ヒトがん性組織におけるhBBC免疫染色
【表8】
【0318】
加えて、様々なヒトがん細胞株をhBBC.10.1で染色して、エピトープ発現パターンを決定した。表9に、結果を要約する。
表9.ヒトがん細胞株におけるhBBCエピトープ発現
【表9】
【0319】
(実施例6)
結腸がんの異種移植片モデルにおけるhBBCの抗腫瘍活性
一連のin vivoの動物研究を実施して、異種移植片SCIDモデルにおけるhBBCの腫瘍阻害効果を評価した。研究は、胃がん細胞株AGS、TSGH9201由来の、および結腸がん細胞株COLO201、COLO205、DLD−1由来のヒトがん細胞を導入することを含んでいた。hBBC.10.1は、COLO205を除く全ての細胞株に対して強から中程度の結合レベルを示した(実施例5の表9)。hBBC.10.1を全ての異種移植片研究に使用し、BR96を対照として使用した。
【0320】
DLD−1およびCOLO205異種移植片モデルにおけるhBBC.10.1のin vivoの抗腫瘍活性
この研究の目的は、DLD−1およびCOLO205異種移植片モデルにおいて高用量のhBBC.10.1の腫瘍阻害効果を検査することであった。簡単に言えば、ヒト結腸がん細胞株DLD−1およびCOLO205を、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA、USA)から得た。細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したRPMI1640培地中で増殖させ、細胞培養物を、5%CO
2雰囲気下の加湿したインキュベーター中37℃で維持した。継代5〜8での細胞を、腫瘍接種のために使用した。
【0321】
特定病原体除去(SPF)の雌CB17重症複合免疫不全(SCID)マウスをBioLASCO(Taiwan)から購入し、あらゆる実験操作の前に少なくとも1週間順応させた。マウスを、12:12時間の明暗サイクル下で、50±10%の湿度で温度制御された環境(22±2℃)における個別換気ケージ(IVC)中に収容した。全ての実験は、台湾の農業委員会によって定められた規制および動物保護法に従って実行した。
【0322】
がん細胞を、50%のBD Matrigel(カタログ番号354248)を含有する氷冷した無血清培地中に5×10
6/200μLの細胞密度で再懸濁し、6〜8週齢のSCIDマウスの側腹領域に皮下注射した。腫瘍サイズを、ノギス(Laser Tools and Technics(LTT)、Hsin Chu City、Taiwan、150×0.05mm)で毎週測定し、腫瘍の重量を、「mgでの重量=(幅
2×長さ)mm
3/2」として推定した(Ito et al. (1992) Cancer Res. 52:3739)。腫瘍の重量が150〜200mgに達したら、マウスを、各群が同等の腫瘍サイズを有する9つの群(n=群あたり6匹)に無作為に分け、抗体処置を開始した。腫瘍を有するSCIDマウスに、hBBC.10.1(ロット:17001)を、50mg/kgで6週間、週あたり1回腹腔内注射した。食塩水を腹腔内注射した腫瘍を有するSCIDマウスを、陰性対照として役立てた。
【0323】
DLD−1およびCOLO205異種移植片実験からの結果をそれぞれ
図19Aおよび19Bに示す。hBBC.10.1は、対照と比べて、COLO205腫瘍成長ではなくDLD−1腫瘍成長を効果的に阻害することができた。これらのデータは、COLO205ではなくDLD−1細胞に結合するhBBC.10.1の観察された能力と一致する。
【0324】
胃腺癌の異種移植片モデルにおけるhBBCの抗腫瘍活性
この研究の目的は、AGS異種移植片モデルにおける0.008〜1mg/kgの範囲の低用量でのhBBC.10.1およびBR96の抗腫瘍有効性を比較することであった。簡単に言えば、ヒト胃腺癌細胞株AGS(CRL−1739)を、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA、USA)から得た。AGS細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したハムF−12K培地中で増殖させ、細胞培養物を、5%CO
2雰囲気下の加湿したインキュベーター中37℃で維持した。継代5〜8でのAGS細胞を、腫瘍接種のために使用した。
【0325】
特定病原体除去(SPF)の雌CB17重症複合免疫不全(SCID)マウスをBioLASCO(Taiwan)から購入し、あらゆる実験操作の前に少なくとも1週間順応させた。マウスを、12:12時間の明暗サイクル下で、50±10%の湿度で温度制御された環境(22±2℃)における個別換気ケージ(IVC)中に収容した。全ての実験は、台湾の農業委員会によって定められた規制および動物保護法に従って実行した。
【0326】
AGS細胞を、50%のBD Matrigel(カタログ番号354248)を含有する氷冷した無血清培地中に5×10
6/200μLの細胞密度で再懸濁し、6〜8週齢のSCIDマウスの側腹領域に皮下注射した。腫瘍サイズを、ノギス(Laser Tools and Technics(LTT)、Hsin Chu City、Taiwan、150×0.05mm)で毎週測定し、腫瘍の重量を、「mgでの重量=(幅
2×長さ)mm
3/2」として推定した[Ito et al. (1992) Cancer Res. 52:3739]。腫瘍の重量が150〜200mgに達したら、マウスを、各群が同等の腫瘍サイズを有する9つの群(n=群あたり6匹)に無作為に分け、抗体処置を開始した。腫瘍を有するSCIDマウスに、hBBC.10.1(ロット:17001)またはBR96(ロット:17001)のいずれかを、1、0.2、0.04、または0.008mg/kgで6週間、週あたり1回腹腔内注射した。第1の用量は、予め決定された用量の1.5倍で与えられる。食塩水を腹腔内注射した腫瘍を有するSCIDマウスを、陰性対照として役立てた。
【0327】
hBBC.10.1で処置した、およびBR96で処置したマウスに関する結果を、それぞれ
図20Aおよび20Bに示す。1および0.2mg/kgの用量を毎週投与したところ、hBBC.10.1およびBR96の両方が、対照と比較して腫瘍成長を大幅に阻害した。しかしながら、どちらの抗体も、より低い用量(0.04および0.008mg/kg)で阻害効果を示すことができなかった。倫理上の検討事項により、腫瘍負荷が体重の10%よりも大きくなったときマウスを屠殺した。食塩水またはより低い用量の抗体を受けた一部のマウスは、接種後60日でこのエンドポイントに到達したため、60日目までに作成されたデータに対してのみ統計的分析を実行した。対照的に、より高い用量(1および0.2mg/kg)のhBBC.10.1またはBR96が投与されたAGS腫瘍を有するマウスでは、体重の10%への腫瘍成長が効果的に遅延された。この用量応答研究は、hBBC.10.1が、AGS腫瘍を有するマウスにおいてBR96と同等の抗腫瘍有効性を有することを示す。
【0328】
hBBC.10.1の抗腫瘍有効性を、本開示の他の生成されたhBBC抗体の抗腫瘍有効性と比較した。1つの実験において、収集したAGS細胞をPBSで2回洗浄し、25%のBD Matrigel(商標)(BD Biosciences、カタログ番号354248)を含有するPBS中に5×10
6/200μLの細胞密度で再懸濁した。その後、200μLのAGS細胞懸濁物を、雌SCIDマウス(6〜8週齢)の側腹領域に皮下注射した(細胞5×10
6個/マウス)。腫瘍サイズを、ノギス(Laser、150×0.05mm)で毎週測定し、腫瘍の重量を、「mgでの重量=(幅
2×長さ)mm
3/2」として推定した[Hisashi Ito et al. (1992)]。腫瘍の重量が150〜200mgに達したら、マウスを、各群が同等の腫瘍サイズを有する6つの群(n=群あたり6匹)に無作為に分け、抗体処置を開始した。腫瘍を有するSCIDマウスに、hBBC.8または変異体(hBBC.9、hBBC.9.1、hBBC.10.1)を、0.25mg/kgの用量で6週間、週あたり2回腹腔内注射した。加えて、hBBC.8を、より高い用量で、2mg/kgで試験した。食塩水を腹腔内注射した腫瘍を有するSCIDマウスを、陰性対照として役立てた。
図20Cに、データを示す。hBBC.8、hBBC.9、およびhBBC.9.1で抗腫瘍効果が観察されたが、効果はhBBC.10.1よりも多少弱かった。hBBC.10.1(0.25mg/kg)と同等の抗腫瘍活性が、hBBC.8で、より高い用量(2mg/kg)で観察された。
【0329】
hBBC.10.1も、抗腫瘍活性に関してhBBC.10.1FQと比較した。簡単に言えば、収集したAGS細胞をPBSで2回洗浄し、25%のBD Matrigel(商標)(カタログ番号354248)を含有するPBS中に5×10
6/200μLの細胞密度で再懸濁した。その後、200μLのAGS細胞懸濁物を、雌SCIDマウス(6〜8週齢)の側腹領域に皮下注射した(細胞5×10
6個/マウス)。腫瘍サイズを、ノギス(Laser、150×0.05mm)で毎週測定し、腫瘍の重量を、「mgでの重量=(幅
2×長さ)mm
3/2」として推定した[Hisashi Ito et al. (1992)]。腫瘍の重量が150〜200mgに達したら、マウスを、各群が同等の腫瘍サイズを有する3つの群(n=群あたり8匹)に無作為に分け、抗体処置を開始した。腫瘍を有するSCIDマウスに、hBBC.10.1またはhBBC.10.1FQのいずれかを、0.25mg/kgの用量で6週間、週あたり1回腹腔内注射した。第1の用量は、予め決定された用量の1.5倍で与えられる。食塩水を腹腔内注射した腫瘍を有するSCIDマウスを、陰性対照として役立てた。データ(
図20D)は、hBBC.10.1FQが、よりわずかに強い抗腫瘍活性を有していたことを示す。
【0330】
後続の実験において、AGS異種移植片腫瘍から単離した異種移植片AGS(xAGS)細胞は、AGS細胞株細胞と比較した場合、少なくとも2倍のhBBCエピトープを発現することが示された(データは示さず)。xAGS細胞は、親細胞株と比較した場合、hBBCによってより強力なADCCおよびCDC活性も惹起した(データは示さず)。hBBCは、
図21で示されるように、標的xAGS細胞に対して、BR96と対比して多少弱い直接の死滅効果を有していた(PI染色)。
【0331】
胃癌の異種移植片モデルにおけるhBBCの抗腫瘍活性
この研究の目的は、TSGH9201異種移植片モデルにおける0.04〜10mg/kgの範囲の低用量でのhBBC.10.1およびBR96の抗腫瘍有効性を比較することであった。簡単に言えば、ヒト胃癌細胞株TSGH9201(カタログ番号60146)を、Food Industry Research and Development Institute(FIRDI、Hsinchu、Taiwan)のBioresource Collection and Research Center(BCRC)から得た。2回の蛍光活性化セルソーティング(FACS)(BD FACSJAZZ(商標)セルソーター、BD Biosciences、Singapore、カタログ番号655486)、それに続く抗hBBC(ロット:B24)、次いで200倍希釈したフルオレセイン(FITC)−AffiniPure(商標)ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ Fragment Specific(Jackson ImmunoResearch Inc.、West Grove、PA、カタログ番号109−095−098)での染色の使用によって、hBBCエピトープのより高度な発現を有するTSGH9201細胞を富化した。親のTSGH9201細胞と比較して、hBBCエピトープの発現レベルは、TSGH9201(2s)と名付けられた富化された細胞においてほぼ4倍に富化された(示されていない)。親および富化された細胞の両方を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、および1mMピルビン酸ナトリウムを補充したRPMI−1640培地(Gibco)中で増殖させた。細胞培養物を、5%CO
2雰囲気下の加湿したインキュベーター中37℃で維持した。継代5〜8でのTSGH9201(2s)細胞を、腫瘍接種のために使用した。
【0332】
特定病原体除去(SPF)の雌CB17重症複合免疫不全(SCID)マウスをBioLASCO(Taiwan)から購入し、あらゆる実験操作の前に少なくとも1週間順応させた。マウスを、12:12時間の明暗サイクル下で、50±10%の湿度で温度制御された環境(22±2℃)における個別換気ケージ(IVC)中に収容した。全ての実験は、台湾の農業委員会によって定められた規制および動物保護法に従って実行した。
【0333】
TSGH9201(2s)細胞を、25%のBD Matrigel(カタログ番号354248)を含有する氷冷した無血清培地中に5×10
6/200μLの細胞密度で再懸濁し、200μLの細胞懸濁物を、6〜8週齢でSCIDマウスの側腹領域に皮下注射した。腫瘍サイズを、ノギス(Laser Tools and Technics(LTT)、Hsin Chu City、Taiwan、150×0.05mm)で毎週測定し、腫瘍の重量を、「mgでの重量=(幅
2×長さ)mm
3/2」として推定した[Ito et al. (1992) Cancer Res. 52:3739]。腫瘍の重量が150〜200mgに達したら、マウスを、各群が同等の腫瘍サイズを有する3つの群(n=群あたり5匹)に無作為に分け、抗体処置を開始した。hBBC.10.1およびBR96のin vivoの有効性を評価するために、腫瘍を有するSCIDマウスに、hBBC.10.1(ロット:B24)またはBR96(ロット:T05)のいずれかを、10mg/kgで6週間、週あたり1回腹腔内注射した。第1の用量は、示された用量の1.5倍で与えられる。より低い用量でのhBBC.10.1およびBR96の抗腫瘍活性を比較するための第2の研究において、腫瘍を有するSCIDマウスに、hBBC.10.1(ロット:17001)またはBR96(ロット:17001)のいずれかを、10、1、0.2、または0.04mg/kgで6週間、週あたり1回腹腔内注射した。第1の用量は、示された用量の1.5倍で与えられる。食塩水を腹腔内注射した腫瘍を有するSCIDマウスを、陰性対照として役立てた。
【0334】
図22に、結果を示す。hBBC.10.1およびBR96の両方が、食塩水群と比較して、10mg/kgの毎週用量で、腫瘍成長を大幅に阻害した。
【0335】
結腸直腸腺癌の異種移植片モデルにおけるhBBC.10.1の抗腫瘍活性
この研究の目的は、1)COLO201異種移植片の腫瘍成長を阻害するhBBC.10.1の能力を検査すること;ならびに2)COLO201異種移植片モデルにおける0.008〜1mg/kgの範囲の用量でのhBBCおよびBR96の抗腫瘍活性を比較することであった。
【0336】
簡単に言えば、腹水由来のヒト結腸直腸腺癌細胞株COLO201(CCL−224)を、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA、USA)から得た。COLO201細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、および1mMピルビン酸ナトリウムを補充したRPMI−1640培地(Gibco)中で増殖させた。細胞培養物を、5%CO
2雰囲気下の加湿したインキュベーター中37℃で維持した。継代5〜8でのCOLO201細胞を、腫瘍接種のために使用した。
【0337】
特定病原体除去(SPF)の雌CB17重症複合免疫不全(SCID)マウスをBioLASCO(Taiwan)から購入し、あらゆる実験操作の前に少なくとも1週間順応させた。マウスを、12:12時間の明暗サイクル下で、50±10%の湿度で温度制御された環境(22±2℃)における個別換気ケージ(IVC)中に収容した。全ての実験は、台湾の農業委員会によって定められた規制および動物保護法に従って実行した。
【0338】
COLO201細胞を、氷冷した無血清培地中に2×10
6/200μLの細胞密度で再懸濁し、200μLの細胞懸濁物を、6〜8週齢でSCIDマウスの側腹領域に皮下注射した。腫瘍サイズを、ノギス(Laser、150×0.05mm)で毎週測定し、腫瘍の重量を、「mgでの重量=(幅
2×長さ)mm
3/2」として推定した[Ito et al. (1992) Cancer Res. 52:3739]。腫瘍の重量が150〜200mgに達したら、マウスを、各群が同等の腫瘍サイズを有する対照群と処置群(n=群あたり6匹)とに無作為に分け、抗体処置を開始した。2つの研究を実行して、COLO201腫瘍成長の阻害に対するhBBCのin vivoの有効性を評価した。
【0339】
第1の研究において、腫瘍を有するSCIDマウスに、hBBC.10.1(ロット:B26)を、2〜50mg/kgの範囲の用量で6週間、週あたり2回腹腔内注射した。第1の用量は、示された用量の1.5倍で与えられる。
図23に、第1の研究からの結果を示す。2〜50mg/kgでのhBBC.10.1処置が、食塩水群と比較して、腫瘍成長を大幅に阻害した。腫瘍は、急速に収縮し、最終的に、hBBC投与後のわずか1週間で、すなわち腫瘍接種後の2週間で消失した。
【0340】
第2の研究において、より低い用量でのhBBC.10.1およびBR96の抗腫瘍活性のさらなる比較を実施した。腫瘍を有するSCIDマウスに、hBBC.10.1(ロット:17001)またはBR96(ロット:17001)のいずれかを、1、0.2、0.04、および0.008mg/kgで6週間、週あたり1回腹腔内注射した(7日目から開始)。第1の用量は、示された用量の1.5倍で与えられる。食塩水を腹腔内注射した腫瘍を有するSCIDマウスを、陰性対照として役立てた。精製された抗体hTKH2.2(ロット:1020429)は、陰性対照抗体として含まれ、これは、HEK293細胞中での一過性発現によって社内で生産されたヒト化抗STn抗体である。
図24Aおよび24Bに、第2の研究からの結果を示す。hBBC.10.1およびBR96の両方は、1または0.2mg/kgの毎週用量で、食塩水およびhTKH2.2対照群と比較して腫瘍成長を大幅に阻害したが、それより低い用量(0.04および0.008mg/kgのhBBC.10.1;0.04mg/kgのBR96)は、腫瘍成長の遅延に対して効果を示した。倫理上の検討事項により、腫瘍負荷が体重の10%よりも大きくなったときマウスを屠殺した。食塩水またはより低い用量のhBBC.10.1もしくはBR96を受けた一部のマウスは、接種後49日でこのエンドポイントに到達したため、49日目までに得られたデータに対してのみ統計的分析を実行した。
【0341】
この用量応答研究は、hBBC.10.1が、COLO201腫瘍を有するマウスにおいてBR96と同等の抗腫瘍有効性を有することを示す。
【0342】
(実施例7)
霊長類およびヒト組織中のhBBCの免疫染色
ヒトおよびカニクイザル(Macaca fascicularis)由来の対応する健康な組織で、hBBC.10.1免疫染色を実行した。簡単に言えば、標準的なプロトコールに従って、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を使用して、2μg/mlのhBBC.10.1で染色を実行した。結果は、表10に要約し、ヒト組織とカニクイザル組織との間で類似した染色パターンを示した。
表10.ヒトおよびカニクイザル組織のhBBC.10.1免疫染色
【表10】
【0343】
(実施例8)
霊長類モデルにおけるhBBC.10.1の安全性および忍容性研究
カニクイザルにおける単回の静脈内(iv)ボーラス注射後のhbbc.10.1の忍容性および許容される用量範囲を評価するために、単回用量の忍容性および用量範囲発見研究を実行した(非glp)。簡単に言えば、雄および雌カニクイザル(Macaca fascicularis)を、各群中に1匹の雄および1匹の雌の4つの群に割り当てた。群1〜4の動物は、それぞれ0、50、200、および300mg/kgのhbbc.10.1の用量レベルを受けた。群2および3における動物には、遅いi.v.ボーラス注射を介して少なくとも5分の持続時間にわたり1回投薬した。群1および4における動物には、ポンプおよびプライミング済みの輸注ラインを使用した20分(±1分間)のi.v.輸注によって1回投薬した。投薬のおよそ24時間後、剖検を実行した。剖検中、全体の観察および臓器の重量を記録し、組織病理学のために組織を集めた。集めた組織の一部をスライドに加工処理して、顕微鏡で検査した。
【0344】
結果から、hBBC.10.1は、カニクイザルにおいて、用量範囲50〜300mg/kgから十分に忍容されたことが示された。200および300mg/kgを受けた動物の盲腸および/または結腸で最小の出血が観察されたが、これは試験物に関連する可能性がある。他の可能性のある試験物に関連する変化は、200mg/kgを受けた1匹の動物の胃における慢性および急性炎症、200mg/kgを受けた1匹の動物における十二指腸の陰窩における好中球の浸潤、および300mg/kgを受けた1匹の動物における回腸の絨毛萎縮である。50mg/kgを受けた動物(群2)で異常な知見は観察されなかった。
【0345】
上述の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書で参照される、および/または出願データシートで列挙される、米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および特許以外の刊行物の全ては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、よりさらなる実施形態を提供するために、様々な特許、出願および公報の概念が用いられるように、必要に応じて改変することができる。
【0346】
これらおよび他の変化は、上記の詳細な説明に照らして、実施形態になすことができる。一般的に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書中および特許請求の範囲中で開示された具体的な実施形態に限定すると解釈されるべきではないが、このような特許請求の範囲の権利が及ぶ均等物の全範囲と共に全ての可能な実施形態を含むと解釈されるものとする。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。