(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本開示は、抗ネガティブ免疫チェックポイント抗体と組み合わせた、抗グロボ系列抗原(グロボH及びSSEA−4)抗体による、がん患者の処置であって、阻害されたT細胞活性をレスキューする処置に関する。
がんを処置するための方法であって、それを必要とする対象へと、抗グロボ系列抗原抗体を含む治療有効量の医薬組成物を、抗ネガティブ免疫チェックポイント抗体と組み合わせて投与するステップを含む方法。
グロボ系列抗原が、段階特異的胚抗原4(Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)又はグロボH(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)である、請求項1に記載の方法。
免疫チェックポイント抗原分子が、PD−1/PD−L1抗原、CTLA−4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)、LAG−3(Lymphocyte Activation Gene 3)、TIGIT(T−cell ImmunoGlobulin and Immunoreceptor Tyrosine−based inhibitory motif domain)、Ceacam 1(Carcinoembryonic antigen−related cell adhesion molecule 1)、LAIR−1(leukocyte−associated immunoglobulin−like receptor−1)又はTIM−3(T cell Immunoglobulin and Mucin domain−3)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
抗PD−1/PD−L1抗体が、Bavencio(アベルマブ)、Opdivo(ニボルマブ)、Keytruda(ペムブロリズマブ)、Imfinzi(デュルバルマブ)及び/又はTecentriq(アテゾリズマブ)である、請求項5に記載の方法。
がんが、乳がん、肺がん、食道がん、直腸がん、胆管がん、肝がん、口腔(buccal)がん、胃がん、結腸がん、鼻咽頭がん、腎がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、膵がん、精巣がん、膀胱がん、頭頸部がん、口腔(oral)がん、神経内分泌がん、副腎がん、甲状腺がん、骨がん、皮膚がん、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫又は脳腫瘍からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
抗グロボ系列抗体及び/又は少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤が、マウス抗体、組換え抗体、ヒト化抗体若しくは完全ヒト抗体、キメラ抗体、多特異性抗体、特に、二特異性抗体又はこれらの断片から選択されるモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
抗グロボ系列抗原抗体又はこの断片が、表1〜2に明示された配列番号1〜108を含むヒト化抗体又は表6〜9に明示された配列番号109〜182を含む抗SSEA4抗体である、請求項1に記載の方法。
免疫チェックポイント阻害剤が、請求項3に記載の抗原(PD−1/PD−L1、CTLA−4、LAG−3、TIGIT、Ceacam 1、LAIR−1又はTIM−3)に結合する抗体又はこの断片である、請求項9に記載の方法。
抗ネガティブ免疫チェックポイントの遮断と組み合わせた、グロボ系列抗原のターゲティング(抗グロボH抗体又は抗SSEA−4抗体による)が、協同的に、相加的に、及び/又は相乗的に作用して、T細胞の不活化をレスキューし、治療有効性を改善する、請求項1に記載の方法。
T細胞の不活化をレスキューするための方法であって、それを必要とする対象へと、抗グロボ系列抗原抗体を含む治療有効量の医薬組成物を、抗ネガティブ免疫チェックポイント抗体と組み合わせて投与するステップを含む方法。
がんの増殖/進行を減少させ及び/又は阻害するための方法であって、それを必要とする対象へと、抗グロボ系列抗原抗体を含む治療有効量の医薬組成物を、抗ネガティブ免疫チェックポイント抗体と組み合わせて投与するステップを含む方法。
抗ネガティブ免疫チェックポイント抗体阻害剤が、Keytruda(ペムブロリズマブ)及び/又はOpdivo(ニボルマブ)から選択される抗PD−1抗体と、Bavencio(アベルマブ)、Imfinzi(デュルバルマブ)及び/又はTecentriq(アテゾリズマブ)から選択される抗PD−L1抗体とを含む、請求項19又は20に記載の方法。
グロボ系列抗原が、段階特異的胚抗原4(Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)又はグロボH(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)である、請求項19又は20に記載の方法。
二重ネガティブ免疫チェックポイント分子ターゲティングを伴う医薬組成物であって、抗グロボ系列抗原抗体と、抗ネガティブ免疫チェックポイント抗体との組合せと;薬学的に許容される担体と
を含む医薬組成物。
免疫チェックポイント分子が、PD−1/PD−L1抗原、CTLA−4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)、LAG−3(Lymphocyte Activation Gene 3)、TIGIT(T−cell ImmunoGlobulin and Immunoreceptor Tyrosine−based inhibitory motif domain)、Ceacam 1(Carcinoembryonic antigen−related cell adhesion molecule 1)、LAIR−1(leukocyte−associated immunoglobulin−like receptor−1)又はTIM−3(T cell Immunoglobulin and Mucin domain−3)からなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
グロボ系列抗原が、段階特異的胚抗原4(Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)又はグロボH(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)である、請求項24に記載の組成物。
抗グロボ系列抗原抗体又はこの断片が、表1〜2に明示された配列番号1〜108を含む抗グロボH抗体又は表6〜9に明示された配列番号109〜182を含む抗SSEA4抗体である、請求項24に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示は、がん患者を処置するための、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体と組み合わされた、抗グロボH抗原抗体又は抗SSEA−4抗原抗体に関する。
【0045】
したがって、本開示は、がん上のグロボ系列抗原が、微小環境へとシェディングされ、T細胞へと組み込まれるという発見に基づく。T細胞の活性化は、グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドの組込みの後において阻害された。グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドの、T細胞への組込みを阻害するための、抗グロボH抗体又は抗SSEA−4抗体の添加は、グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドにより誘導される免疫抑制を阻害しうる。PD−1/PD−L1のエンゲージメントは、TCRによるシグナル伝達経路を抑制した。グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドの、T細胞への添加は、TCRによるシグナル伝達をさらに阻害する。グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドの組込みは、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体が、PD−1/PD−L1のエンゲージメントによる抑制(すなわち、免疫チェックポイント作用)を遮断する結果である、TCRによるシグナル伝達の波及効果を低減した。抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体を伴う、抗グロボH抗体又は抗SSEA−4抗体の添加は、グロボHセラミド又はSSEA−4セラミド及びPD−1/PD−L1のエンゲージメントにより抑制された、TCRによるシグナル伝達を相乗的に反転させる。グロボH抗原又はSSEA−4抗原を発現するがんは、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、神経膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔(oral)がん、頭頸部がん、鼻咽頭がん、食道がん、胃がん、肝がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵がん、腸がん、結腸直腸がん、腎がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、口腔(buccal)がん、口腔咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんを含むがこれらに限定されない。
【0046】
<定義>
本明細書において使用された「抗原」という用語は、免疫応答を誘発することが可能な、任意の物質として規定される。
【0047】
本明細書において使用された「免疫原性」という用語は、免疫原、抗原又はワクチンが、免疫応答を刺激する能力を指す。
【0048】
本明細書において使用された「エピトープ」という用語は、抗体又はT細胞受容体の抗原結合性部位に接触する、抗原分子の部分として規定される。
【0049】
本明細書において使用された、「ワクチン」という用語は、全病原生物(死滅させられた、又は弱毒化された)又はこのような生物の構成要素であって、それら生物が引き起こす疾患に対する免疫を付与するのに使用される、タンパク質、ペプチド又は多糖などの構成要素からなる抗原を含有する調製物を指す。ワクチン調製物は、天然調製物、合成調製物又は組換えにより由来する調製物のうちのいずれか1つを含みうる、又は除外しうる。組換えにより由来する調製物は、例えば、組換えDNA技術により得られうる。
【0050】
本明細書において使用された「抗原特異的」という用語は、特定の抗原又は抗原の断片の供給が、特異的な細胞増殖を結果としてもたらすような、細胞集団の特性を指す。
【0051】
本明細書において使用された、「CD1d」という用語は、多様なヒト抗原提示細胞の表面上に発現された糖タンパク質の、CD1(cluster of differentiation 1)ファミリーのメンバーを指す。CD1dが提示された脂質抗原は、ナチュラルキラーT細胞を活性化させる。CD1dは、糖脂質抗原が結合する、深い抗原結合溝を有する。樹状細胞上に発現されたCD1d分子は、C34などのGalCer類似体を含む糖脂質に結合し、これらを提示しうる。
【0052】
本明細書において使用された、「グリカン」という用語は、多糖又はオリゴ糖を指す。本明細書において、グリカンはまた、糖タンパク質、糖脂質、糖ペプチド、糖プロテオーム、ペプチドグリカン、リポ多糖又はプロテオグリカンなど、複合糖質の炭水化物部分を指すのにも使用される。グリカンは通例、単糖間のO−グリコシド連結だけからなる。例えば、セルロースとは、β−1,4連結されたD−グルコースから構成されるグリカン(又は、より詳細に、グルカン)であり、キチンとは、β−1,4連結されたN−アセチル−D−グルコサミンから構成されるグリカンである。グリカンは、単糖残基のホモポリマーの場合もあり、ヘテロポリマーの場合もあり、直鎖状の場合もあり、分枝状の場合もある。グリカンは、糖タンパク質及びプロテオグリカンにおける場合と同様に、タンパク質に接合されて見出される場合もある。グリカンは、一般に、細胞の外部表面において見出される。O結合型グリカン及びN結合型グリカンは、真核生物において、極めて一般的であるが、また、原核生物においても、それほど一般的でないが、見出されうる。N結合型グリカンは、シークォンにおけるアスパラギンのR基窒素(N)に接合されて見出される。シークォンとは、Asn−X−Ser配列又はAsn−X−Thr配列[配列中、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である]である。
【0053】
本明細書において使用された「〜に特異的に結合すること」という用語は、結合対(例えば、抗体及び抗原)の間の相互作用を指す。多様な場合において、「〜に特異的に結合すること」は、1リットル当たり約10
−6モル、1リットル当たり約10
−7モル若しくは1リットル当たり約10
−8モル又はこれ未満のアフィニティー定数により実現されうる。
【0054】
本明細書において使用された、「フローサイトメトリー」又は「FACS」という用語は、流体の流れの中に懸濁された粒子又は細胞の物理的特性及び化学的特性を、光学的検出デバイス及び電子的検出デバイスを介して検討するための技法を意味する。
【0055】
本明細書において使用された、糖酵素という用語は、少なくとも、部分的に、グロボ系列の生合成経路内の酵素を指し;例示的な糖酵素は、アルファ−4GalT酵素;ベータ−4GalNAcT−I酵素又はベータ−3GalT−V酵素を含む。
【0056】
「単離」抗体とは、その天然環境の構成要素から同定及び分離並びに/又は回収された抗体である。この天然環境の夾雑構成要素は、抗体の研究的使用、診断的使用又は治療的使用に干渉する材料であり、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性溶質又は非タンパク質性溶質を含みうる。一実施形態において、抗体は、(1)例えば、ローリー法により決定される通り、抗体の重量により、95%超まで精製され、一部の実施形態において、重量により、99%超まで精製され、(2)例えば、スピニングカップ型シークェネーターを使用することにより、N末端のアミノ酸配列若しくは内部アミノ酸配列のうちの、少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製される、又は(3)例えば、クーマシーブルー若しくは銀染色を使用して、還元条件下若しくは非還元条件下において、SDS−PAGEにより、均質になるまで精製される。抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないので、単離抗体は、組換え細胞内の抗体をインサイチューで含む。しかし、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0057】
本明細書により、互換的に使用された、「支持体」又は「基質」という用語は、1つ以上の分子が、直接的に、又は間接的に、結合された、接合された、合成された、連結された、又は他の形で会合させられた、1つ以上の構成要素を含む、材料又は材料の群を指す。支持体は、生物学的材料、非生物学的材料、無機材料、有機材料又はこれらの組合せから構築されうる。支持体は、特定の実施形態内の、その使用に基づき、任意の適切なサイズ又は立体配置でありうる。
【0058】
本明細書で使用された、「標的」という用語は、アッセイ内の、目的の種を指す。標的は、天然に存在する場合もあり、合成の場合もあり、これらの組合せ場合もある。標的は、変更されていない(例えば、生物内において、又はこの試料中において、直接利用される)場合もあり、アッセイに適切な形で変更されている(例えば、精製、増幅、濾過されている)場合もある。標的は、適切な手段を介して、ある特定のアッセイ内の結合メンバーに結合されうる。標的の非限定例は、特異的な抗原決定基(ウイルス上、細胞上又は他の材料上の抗原決定基など)と反応性の、抗体又はこの断片、細胞膜受容体、モノクローナル抗体及び抗血清、薬物、オリゴヌクレオチド、核酸、ペプチド、補因子、糖、レクチン、多糖、細胞、細胞膜及び細胞小器官を含むがこれらに限定されない。標的は、アッセイに応じて、任意の適切なサイズでありうる。
【0059】
本明細書において使用された「実質的に同様な」、「実質的に同じ」、「同等な」、又は「実質的に同等な」という語句は、当業者が、2つの値の間の差違を、前記値(例えば、Kd値、抗ウイルス効果など)により測定される生物学的特徴の文脈内において、生物学的有意性及び/又は統計学的有意性をほとんど有さない、又は有さないと考えるほどに、2つの数値(例えば、分子と関連する、一方の数値及び参照/比較対照分子と関連する、他方の数値)の間の、十分に高度の類似性を表す。前記2つの値の間の差違は、例えば、参照/比較対照分子についての値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満及び/又は約10%未満である。
【0060】
したがって、本発明の抗がん抗体は、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域と組み合わされて、本発明の抗体へと組み込まれうる、非マウス由来、好ましくは、ヒト由来の、重鎖定常領域又は軽鎖定常領域、フレームワーク領域又はこれらの任意の部分を含む。
【0061】
本発明の抗体は、インビトロにおいて、インサイチューにおいて、かつ/又はインビボにおいて活性である、少なくとも1つのグロボH及び/又はSSEA−4を発現するがん細胞を、モジュレートする、減少させる、アンタゴナイズする、和らげる、緩和する、遮断する、阻害する、失効化させる、かつ/又はこれらに干渉することが可能である。
【0062】
本発明の抗体は、本明細書において記載された、2C2(ATCC受託番号:PTA−121138下において寄託された)と名指されたハイブリドーマ、3D7(ATCC受託番号:PTA−121310下において寄託された)と名指されたハイブリドーマ、7A11(ATCC受託番号:PTA−121311下において寄託された)と名指されたハイブリドーマ、2F8(ATCC受託番号:PTA−121137下において寄託された)と名指されたハイブリドーマ又は1E1(ATCC受託番号:PTA−121312下において寄託された)と名指されたハイブリドーマにより産生された抗体に由来する、重鎖若しくは軽鎖の、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)又はこのリガンド結合性部分を含む、任意のタンパク質又はペプチドを含む。抗体は、抗体断片、抗体変異体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び組換え抗体などを含む。抗体は、マウスにおいて発生させる場合もあり、ウサギにおいて発生させる場合もあり、ヒトにおいて発生させる場合もある。
【0063】
「抗体」という用語は、抗体、消化断片、抗体模倣体を含む、又は各々が、本発明の抗がん抗体に由来する、少なくとも1つのCDRを含有する、単鎖抗体及びこの断片を含む、抗がん抗体又は指定されたこの断片若しくは部分の構造及び/又は機能を模倣する、抗体の部分を含む、指定された部分及びこの変異体を包含することが、さらに意図される。
【0064】
例えば、機能的断片は、グロボHを発現するがん細胞に結合する抗原結合性断片を含む。例えば、グロボH発現がん細胞又はこの部分に結合することが可能な抗体断片であって、Fab断片(例えば、パパイン消化による)、Fab’断片(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)及びF(ab’)
2断片(例えば、ペプシン消化による)、facb断片(例えば、プラスミン消化による)、pFc’断片(例えば、ペプシン消化又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元及び再凝集による)、Fv断片又はscFv断片(例えば、分子的生物学法による)を含むがこれらに限定されない抗体断片が、本発明により包含される(例えば、Colligan、「Immunology」、前出を参照されたい。)。
【0065】
抗体の抗原結合性部分は、炭水化物抗原(例えば、グロボH、SSEA−4)に特異的に結合する、抗体の部分を含みうる。
【0066】
本発明のヒト化抗体は、抗体が、その元の結合能を保持しながら、ヒト抗体により近似するように、非抗原結合性領域(及び/又は抗原結合性領域)内のアミノ酸配列が変更された、非ヒト種に由来する抗体である。
【0067】
ヒト化抗体は、抗原への結合に、直接関与しない可変領域の配列を、ヒト可変領域に由来する同等な配列により置換えることにより作出されうる。これらの方法は、重鎖又は軽鎖のうちの少なくとも1つに由来する可変領域の全部又は一部をコードする核酸配列を、単離するステップと、これらを操作するステップと、これらを発現させるステップとを含む。このような核酸の供給源は、当業者に周知である。次いで、ヒト化抗体又はこの断片をコードする組換えDNAが、適切な発現ベクターへとクローニングされうる。
【0068】
本発明のヒト化抗体は、当技術分野において周知の方法により作製されうる。例えば、非ヒト(例えば、マウス)抗体が得られたら、可変領域がシーケンシングされ、CDR残基及びフレームワーク残基の位置が決定される(Kabat,E.A.ら(1991)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication第91−3242号;Chothia,C.ら(1987)、J.Mol.Biol.、196:901〜917)。軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードするDNAは、任意選択的に、対応する定常領域へとライゲーションされる場合があり、次いで、適切な発現ベクターへとサブクローニングされうる。CDRグラフト抗体分子は、CDRグラフティングにより作製される場合もあり、CDR置換により作製される場合もある。免疫グロブリン鎖の、1つ、2つ、又は全てのCDRが置換えられうる。例えば、特定の抗体のCDRの全てが、非ヒト動物(例えば、マウスなど)CDRの、少なくとも一部に由来する場合もあり、CDRのうちの一部だけが、置換えられる場合もある。抗体の、所定の炭水化物抗原(例えば、グロボH)への結合に要求されたCDRを保持することだけが必要である(Morrison,S.L.、1985、Science、229:1202〜1207;Oiら、1986、BioTechniques、4:214;米国特許第5,585,089号;同第5,225,539号;同第5,693,761号及び同第5,693,762号;EP519596;Jonesら、1986、Nature、321:552〜525;Verhoeyanら、1988、Science、239:1534;Beidlerら、1988、J.Immunol.、141:4053〜4060)。
【0069】
本明細書で開示された、1つ又は2つの可変領域を、ヒト、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、サル、類人猿、ゴリラ、チンパンジー、アヒル、ガチョウ、ニワトリ、両生類、爬虫類及び他の動物を含むがこれらに限定されない、少なくとも1つの、異なる種に由来する配列により置換えられた、他の領域と共に含む、抗体又はこの抗原結合性部分もまた、本発明により包含される。
【0070】
キメラ抗体は、異なる部分が、異なる動物種に由来する分子である。例えば、抗体は、マウスmAbに由来する可変領域と、ヒト免疫グロブリン定常領域とを含有しうる。キメラ抗体は、組換えDNA法により作製されうる(Morrison、ら、Proc Natl Acad Sci、81:6851〜6855(1984))。例えば、マウス(又は他の種)の抗体分子をコードする遺伝子を、制限酵素により消化し、マウスFcをコードする領域を除去する。次いで、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の同等な部分が、組換えDNA分子へと代入される。キメラ抗体はまた、マウスV領域をコードするDNAが、ヒト定常領域をコードするDNAへとライゲーションされうる、組換えDNA法によっても創出されうる(Betterら、Science、1988、240:1041〜1043;Liuら、PNAS、198784:3439〜3443;Liuら、J.Immunol.、1987、139:3521〜3526;Sunら、PNAS、1987、84:214〜218;Nishimuraら、Canc.Res.、1987、47:999〜1005;Woodら、Nature、1985、314:446〜449;Shawら、J.Natl.Cancer Inst.、1988、80:1553〜1559;国際特許公開第WO1987002671号及び同第WO86号/01533;欧州特許出願第184,187号;同第171,496号;同第125,023号及び同第173,494号;米国特許第4,816,567号)。
【0071】
例えば、抗体は、全長の場合もあり、抗体断片から形成された、Fab、F(ab’)2、Fab’、F(ab)’、Fv、単鎖Fv(scFv)、二価scFv(bi−scFv)、三価scFv(tri−scFv)、Fd、dAb断片(例えば、Wardら、Nature、341:544〜546(1989))、単離CDR、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子及び多特異性抗体を含むがこれらに限定されない、抗原結合性部分を有する、抗体の1つの断片(又は複数の断片)を含む場合もある。組換え法又は合成リンカーを使用して、抗体断片を接続することにより作製された単鎖抗体もまた、本発明により包含される(Birdら、Science、1988、242:423〜426;Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1988、85:5879〜5883)。
【0072】
本発明の抗体又はこの抗原結合性部分は、単一特異性の場合もあり、二特異性の場合もあり、多特異性の場合もある。多特異性抗体若しくは二特異性抗体又はこれらの断片は、1つの標的炭水化物(例えば、グロボH)の、異なるエピトープに特異的な場合もあり、1つを超える標的炭水化物に特異的な抗原結合性ドメイン(例えば、グロボH及びSSEA−4に特異的な抗原結合性ドメイン)を含有する場合もある。一実施形態において、多特異性抗体又はこの抗原結合性部分は、少なくとも2つの、異なる可変ドメインを含み、この場合、各可変ドメインは、別個の炭水化物抗原又は同じ炭水化物抗原上の、異なるエピトープに特異的に結合することが可能である(Tuttら、1991、J.Immunol.、147:60〜69;Kuferら、2004、Trends Biotechnol.、22:238〜244)。本抗体は、別の機能的な分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質へと連結される場合もあり、これらと共に共発現される場合もある。例えば、抗体又はこの断片は、第2の結合特異性を伴う、二特異性抗体又は多特異性抗体を作製するように、別の抗体又は抗体断片など、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合又は他の方式により)1つ以上の他の分子的実体へと、機能的に連結されうる。多特異性抗体若しくは二特異性抗体又はこれらの断片は、1つの標的炭水化物(例えば、グロボH)の、異なるエピトープに特異的な場合もあり、1つを超える標的炭水化物に特異的な抗原結合性ドメイン(例えば、グロボH及びSSEA−4に特異的な抗原結合性ドメイン)を含有する場合もある。一実施形態において、多特異性抗体又はこの抗原結合性部分は、少なくとも2つの、異なる可変ドメインを含み、この場合、各可変ドメインは、別個の炭水化物抗原又は同じ炭水化物抗原上の、異なるエピトープに特異的に結合することが可能である(Tuttら、1991、J.Immunol.、147:60〜69;Kuferら、2004、Trends Biotechnol.、22:238〜244)。本発明の抗体は、別の機能的な分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質へと連結される場合もあり、これらと共に共発現される場合もある。例えば、抗体又はこの断片は、第2の結合特異性を伴う、二特異性抗体又は多特異性抗体を作製するように、別の抗体又は抗体断片など、1つ以上の他の分子的実体へと、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合又は他の方式により)機能的に連結されうる。
【0073】
抗体の軽鎖可変領域又は重鎖可変領域は、3つの、相補性決定領域又はCDRと称された、超可変領域により中断された、フレームワーク領域(FW)を含む。本発明の1つ態様に従い、抗体又はこの抗原結合性部分は、以下の構造:
リーダー配列−FW1−CDR1−FW2−CDR2−FW3−CDR3−
[配列中、本発明の、FW1、FW2、FW3、CDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は、開示されている]
を有しうる。
【0074】
特異的なアミノ酸が、置換された、欠失させられた、又は添加された、抗体又はこの抗原結合性部分もまた、本発明の範囲内にある。例示的な実施形態において、これらの変更(すなわち、保存的置換、保存的欠失又は保存的付加)は、エフェクター機能又は結合アフィニティーなど、ペプチドの生物学的特性に、実質的な影響を及ぼさない。アミノ酸の変更を、保存的変更又は非保存的変更として分類する目的のために、アミノ酸は、以下:疎水性、中性、酸性及び塩基性の通りに群分けされうる。保存的置換は、同じ群内のアミノ酸の間の置換を伴う。非保存的置換は、これらの群のうちの1つのメンバーの、別の群のメンバーとの交換を構成する。Ngら(「Predicting the Effects of Amino Acid Substitutions on Protein Function」、Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.、2006、7:61〜80)は、当業者が、タンパク質の機能を変化させないアミノ酸置換を予測し、選択することを可能とする、多様なアミノ酸置換(AAS)の予測法についての概観を提示している。
【0075】
別の例示的な実施形態において、抗体は、抗体の、抗原に対する結合アフィニティーを改善するなどのために、CDR内に、アミノ酸置換を有しうる。さらに別の例示的な実施形態において、選択された、少数の、アクセプターフレームワーク残基は、対応するドナーアミノ酸により置換えられうる。ドナーフレームワークは、成熟ヒト抗体のフレームワーク配列若しくはコンセンサス配列、又はヒト生殖細胞系列抗体のフレームワーク配列若しくはコンセンサス配列でありうる。表現型的にサイレントのアミノ酸置換をどのようにして施すのかについての指針は、Bowieら、Science、247:1306〜1310(1990);Cunninghamら、Science、244:1081〜1085(1989);Ausubel(編)、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、Inc.(1994);T.Maniatis、E.F.Fritsch及びJ.Sambrook、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989);Pearson、Methods Mol.Biol.、243:307〜31(1994);Gonnetら、Science、256:1443〜、45(1992)において提示されている。
【0076】
本発明の1つ態様に従い、本明細書において記載されたアミノ酸置換は、Kabatによる番号付けスキームに対応する位置においてなされる(例えば、Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。
【0077】
本明細書において使用された、「正常レベル」とは、例えば、正常患者又は正常患者の集団に由来する試料中のTACAに結合した抗体のレベルの測定値に基づく、参照値又は参照範囲でありうる。「正常レベル」とはまた、例えば、正常患者又は正常患者の集団に由来する試料中のTACAの測定値に基づく、参照値又は参照範囲でもありうる。
【0078】
本明細書において使用された、「対象」とは、哺乳動物である。このような哺乳動物は、家畜、農場動物、実験において使用される動物、動物園動物を含む。一部の実施形態において、対象は、ヒトである。
【0079】
「グロボ系列関連障害」という用語は、典型的に、経路の異常な機能又は提示により特徴づけられた、又は寄与された障害を指す、又はこれについて記載する。このような障害の例は、がんを含む、過剰増殖性疾患を含むがこれらに限定されない。過剰増殖性疾患及び/又は過剰増殖性状態の例は、脳がん、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝がん、胆管がん、膵がん、結腸がん、腎がん、子宮頸がん、卵巣がん及び前立腺がんを含むがこれらに限定されない、新生物/過形成及びがんを含む。一部の実施形態において、がんは、脳がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん又は膵がんである。他の実施形態において、過剰増殖性の疾患状態は、乳房、卵巣、肺、膵臓、胃、結腸及び直腸、前立腺、肝臓、子宮頸部、食道、脳、口腔及び腎臓と関連する。
【0080】
一実施形態において、本開示は、それを必要とする対象の処置における、抗新生物剤の治療有効性を決定するための方法であって、(a)対象に由来する試料を用意するステップ;(b)対象から回収された試料を接触させるステップ;(c)腫瘍関連抗原(TACA)又は抗体のうちの1つ以上の結合についてアッセイするステップ及び(d)新生物に対する処置における、抗新生物剤の治療効果を、グリカンの検出についてのアッセイ値に基づき決定するステップを含む方法を提示する。本開示は、がんの検出における、リンカー−糖コンジュゲート(例えば、グロボH)の組合せ使用における、驚くべき相加的有効性及び/又は相乗的有効性並びに有用性の証拠を提示する。これは、本明細書のリンカー及びコンジュゲートが、グロボ系列糖タンパク質と関連する、決定基及び分子をターゲティングする、任意の治療剤のための、コンパニオンの診断用組成物及び診断法として有用であることの基礎を提示する。コンパニオンの診断法及び診断使用としての本開示(例えば、OBI−822、OBI−833及びOBI−888)と組み合わせた使用に適する抗新生物剤を含む、例示的な治療法及び治療用組成物については、例えば、それらの各々の内容が、参照により本明細書に組み込まれた、特許公開第WO2015159118号、同第WO2014107652号及び同第WO2015157629号の開示において記載されている。
【0081】
本明細書において使用された、「〜に特異的に結合すること」という用語は、結合対(例えば、抗体及び抗原)の間の相互作用を指す。多様な場合において、「〜に特異的に結合すること」は、1リットル当たり約10
−6モル、1リットル当たり約10
−7モル若しくは1リットル当たり約10
−8モル又はこれ未満のアフィニティー定数により実現されうる。
【0082】
本明細書において使用された、「実質的に低減された」又は「実質的に異なる」という語句は、当業者が、2つの値の間の差違を、前記値(例えば、Kd値)により測定された、生物学的特徴の文脈内において、統計学的有意性を有すると考えるような、2つの数値(一般に、分子と関連する一方の数値、及び参照/比較対照分子と関連する、他方の数値)の間の、十分に高度の差違を表す。2つの値の間の差違は、例えば、参照/比較対照分子についての値の関数として、約10%を超える、約20%を超える、約30%を超える、約40%を超える、及び/又は約50%を超える。
【0083】
本明細書において使用された、「結合アフィニティー」とは、一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合性部位と、その結合パートナー(例えば、抗原)との、非共有結合的相互作用の全合計の強度を指す。そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書において使用された、「結合アフィニティー」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)の間の、1:1の相互作用を反映する、内因性の結合アフィニティーを指す。分子Xの、そのパートナーYに対するアフィニティーは、一般に、解離定数(Kd)により表されうる。アフィニティーは、本明細書において記載された方法を含む、当技術分野において公知の、一般的な方法により測定されうる。低アフィニティー抗体は、一般に、抗原への結合が緩徐であり、たやすく解離する傾向があるのに対し、高アフィニティー抗体は、一般に、抗原への結合が迅速であり、結合を長く維持する傾向がある。当技術分野において、結合アフィニティーを測定する、様々な方法が公知であり、これらの方法のうちのいずれかが、本発明の目的のために使用されうる。以下において、具体的な、例示的実施形態が記載される。
【0084】
ある特定の実施形態において、本発明に従う「Kd」又は「Kd値」は、以下のアッセイに記載される通りに、目的の抗体のFab形及びその抗原により実施される、放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。Fabの、抗原に対する、溶液中の結合アフィニティーは、Fabを、非標識抗原の滴定系列の存在下、最小濃度の
125I標識抗原で平衡化し、次いで、結合した抗原を、抗Fab抗体によりコーティングされたプレートにより捕捉する(Chenら(1999)、J.Mol Biol、293:865〜881)ことにより測定される。アッセイのための条件を確立するために、マイクロ滴定プレート(Dynex)を、一晩にわたり、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中に5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)によりコーティングし、その後、PBS中に2%(w/v)のウシ血清アルブミンにより、室温(約23℃)において、2〜5時間にわたりブロッキングする。非吸着性プレート(Nunc;カタログ#269620)内において、100pM又は26pMの
125I抗原を、目的のFabの系列希釈液と混合する(例えば、Prestaら(1997)、Cancer Res.、57:4593〜4599における、抗VEGF抗体である、Fab−12についての評価と符合する)。次いで、目的のFabを、一晩にわたりインキュベートするが、インキュベーションを長時間(例えば、65時間)にわたり持続させて、平衡への到達を確保することもできる。その後、室温におけるインキュベーション(例えば、1時間にわたる)のために、混合物を、捕捉用プレートへと移す。次いで、溶液を除去し、プレートを、PBS中に0.1%のTween−20により、8回にわたり洗浄する。プレートを乾燥させたら、ウェル1つ当たり150μlのシンチレーション剤(MicroScint−20;Packard)を添加し、プレートを、Topcountガンマカウンター(Packard)上において、10分間にわたりカウントする。最大結合の20%以下の結合をもたらす、各Fab濃度を、競合的結合アッセイにおける使用のために選択する。別の実施形態に従い、Kd又はKd値は、25℃、抗原CM5チップを約10応答単位(RU)で固定化して、BIAcore(商標)2000又はBIAcore(商標)3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用する、表面プラズモン共鳴アッセイを使用することにより測定される。略述すると、供給元の指示書に従い、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5;BIAcore Inc.)を、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボキシイミドヒドロクロリド(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性化させる。5μl/分の流量における注入の前に、抗原を、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8により、5μg/ml(約0.2μM)へと希釈して、約10応答単位(RU)のカップリングタンパク質を達成した。抗原を注入した後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基をブロッキングする。各実験において、タンパク質を固定化させずに1つのスポットを活性化させ、エタノールアミンによりブロッキングして、参照を減算するために使用した。反応速度の測定のために、Fabの2倍の系列希釈液(0.78nM〜500nM)を、0.05%のTween 20(PBST)を伴うPBS中、25℃、約25μl/分の流量において注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、単純な一対一のラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Software version 3.2)を使用して、会合センサーグラムと解離センサーグラムとを同時に当てはめることにより計算する。平衡解離定数(Kd)は、比である、koff/konとして計算する。例えば、Chen,Y.ら(1999)、J.Mol Biol、293:865〜881を参照されたい。オン速度が、上記の表面プラズモン共鳴アッセイによる10
6M
−1秒
−1を超える場合、オン速度は、濃度を増大させる抗原の存在下、25℃において、PBS、pH7.2中に20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の、蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmのバンドパス)の増大又は減少であって、ストップフロー装備型分光光度計(Aviv Instruments)、又は攪拌式キュベットを伴う、8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計において測定される増大又は減少を測定する、蛍光クェンチング法を使用することにより決定されうる。
【0085】
また、本発明に従う「オン速度」又は「会合速度(rate of association)」又は「会合速度(association rate)」又は「kon」も、供給元の指示書に従い、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボキシイミドヒドロクロリド(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)において、25℃で、固定化抗原CM5チップを用いてBIAcore(商標)2000又はBIAcore(商標)3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用する、上記において記載された同じ表面プラズモン共鳴法により決定されうる。5μl/分の流量における注入の前に、抗原を、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8により、5μg/ml(約0.2μM)へと希釈して、約10応答単位(RU)のカップリングタンパク質を達成した。抗原を注入した後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基をブロッキングする。反応速度の測定のために、Fabの2倍の系列希釈液(0.78nM〜500nM)を、0.05%のTween 20(PBST)を伴うPBS中、25℃、25μl/分の流量において注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、単純な一対一のラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Software version 3.2)を使用して、会合センサーグラムと解離センサーグラムとを同時に当てはめることにより計算する。平衡解離定数(Kd)は、比である、koff/konとして計算した。例えば、Chen,Y.ら(1999)、J.Mol Biol、293:865〜881を参照されたい。しかし、オン速度が、上記の表面プラズモン共鳴アッセイによる、10
6M
−1秒
−1を超える場合、オン速度は、濃度を増大させる抗原の存在下、25℃において、PBS、pH7.2中に20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の、蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmのバンドパス)の増大又は減少であって、ストップフロー装備型分光光度計(Aviv Instruments)、又は攪拌式キュベットを伴う8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計により測定される増大又は減少を測定する、蛍光クェンチング法を使用することにより決定されうる。
【0086】
本明細書において使用された、「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を運ぶことが可能な核酸分子を指すことを意図される。1つの種類のベクターは、さらなるDNAセグメントがライゲーションされうる、環状の二本鎖DNAループを指す、「プラスミド」である。別の種類のベクターは、ファージベクターである。別の種類のベクターは、さらなるDNAセグメントが、ウイルスゲノムへとライゲーションされうる、ウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内の自己複製が可能である(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムへと組み込まれ、これにより、宿主ゲノムと共に複製されうる。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動的に連結される遺伝子の発現を方向付けることが可能である。本明細書において、このようなベクターは、「組換え発現ベクター」(又は、単に、「組換えベクター」)と称される。一般に、組換えDNA法において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは、最も一般に使用されるベクターの形態であるので、本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」とは、互換的に使用されうる。
【0087】
本明細書において互換的に使用された、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」とは、任意の長さのヌクレオチドポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくは修飾塩基及び/又はそれらの類似体の場合もあり、DNAポリメラーゼ若しくはRNAポリメラーゼによりポリマーへと組み込まれうる、任意の基質の場合もあり、合成反応を介するヌクレオチドの場合もある。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含みうる。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリーの前に施すこともでき、アセンブリーの後施すこともできる。ヌクレオチドの配列は、ヌクレオチド以外の構成要素により中断されうる。
【0088】
本明細書において使用された、「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一本鎖であり、典型的には、約200ヌクレオチド未満の長さであるが必ずしもそうでない、合成のポリヌクレオチドを一般に指す。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、相互に除外的でない。ポリヌクレオチドについての上記の記載は、オリゴヌクレオチドにも同等かつ十分に適用可能である。
【0089】
本明細書において使用された、「抗体」(Ab)及び「免疫グロブリン」(Ig)は、同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体が、特異的抗原に対する結合特異性を呈するのに対し、免疫グロブリンは、抗体、及び一般に抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系により、低レベルにおいて産生され、骨髄腫により、高レベルにおいて産生される。
【0090】
本明細書において使用された、「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味において、互換的に使用され、モノクローナル抗体(例えば、全長モノクローナル抗体又は無傷モノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を呈する限りにおける、二特異性抗体)を含み、また、本明細書において、詳細に記載された、ある特定の抗体断片も含みうる。抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体及び/又はアフィニティー成熟抗体でありうる。
【0091】
本明細書において使用された、抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。これらのドメインは、一般に、抗体の、最も可変的な部分であり、抗原結合性部位を含有する。
【0092】
本明細書において使用された、「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分が、抗体間の配列において大幅に異なり、各特定の抗体の、その特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかし、可変性は、抗体の可変ドメインを通して、均等に配分されているわけでない。可変性は、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方において、相補性決定領域(CDR)又は超可変領域と呼ばれる、3つのセグメントに集約されている。可変ドメインのうちの、より高度に保存的な部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれている。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、大部分が、ベータシート構造を接続し、場合によって、ベータシート構造の部分を形成するループを形成する、3つのCDRにより接続された、ベータシートの立体構成を採用する、4つずつのFR領域を含む。各鎖におけるCDRは、FR領域により一体に近接して保持され、他の鎖に由来するCDRと共に、抗体の抗原結合性部位の形成に寄与する(Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)を参照されたい。)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関与せず、抗体の、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用への参与など、多様なエフェクター機能を呈する。
【0093】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる、2つの同一な抗原結合性断片であって、各々が、単一の抗原結合性(binding)部位、及びたやすく結晶化する能力を反映する呼称である残りの「Fc」断片を伴う、抗原結合性(binding)断片をもたらす(produces)。ペプシン処理は、2つの抗原結合性(combining)部位を有し、抗原を架橋することがやはり可能な、F(ab’)
2断片をもたらす(yield)。
【0094】
「Fv」とは、完全な抗原認識部位及び抗原結合性部位を含有する、最小の抗体断片である。二本鎖Fv分子種において、この領域は、緊密な非共有結合的会合下にある、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。単鎖Fv分子種において、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が、二本鎖Fv分子種における構造と類似の「二量体」構造において会合しうるように、可撓性のペプチドリンカーにより、共有結合的に連結されうる。各可変ドメインの3つずつのCDRが相互作用して、VH−VL二量体の表面上において、抗原結合性部位を規定するのは、この立体構成においてである。併せて、6つのCDRは、抗原結合特異性を、抗体に付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRだけを含むFvの半分)であってもなお、結合性部位全体より小さなアフィニティーにおいであるが、抗原を認識し、抗原に結合する能力を有する。
【0095】
「Fab」断片はまた、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における、抗体のヒンジ領域に由来する1つ以上のシステインを含む少数の残基の付加により、Fab断片と異なる。Fab’−SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が、遊離チオール基を保有する、Fab’のための、本明細書における呼称である。F(ab’)
2抗体断片は、元は、それらの間にヒンジシステインを有する、Fab’断片の対として作製された。また、抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0096】
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」とは、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる、2つの顕著に異なる種類のうちの1つへと割り当てられうる。
【0097】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスへと割り当てられうる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらのクラスのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1及びIgA
2へとさらに分けられうる。ブリンと称される免疫グロブリンの異なるクラスに対応する、重鎖定常ドメインは、異なるクラスに割り当てられる。免疫グロブリンの異なるクラスの、5つの三次元構成が周知であり、例えば、Abbasら、「Cellular and Mol.Immunology」、4版(2000)において、一般に記載されている。抗体は、抗体の、1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有結合的会合又は非共有結合的会合により形成される、より大型の融合分子の部分でありうる。
【0098】
「全長抗体」、「無傷抗体」及び「全抗体」という用語は、下記において規定される抗体断片でなく、その実質的な無傷形態にある抗体を指すように、本明細書において互換的に使用される。用語は特に、Fc領域を含有する重鎖を伴う抗体を指す。
【0099】
本明細書において使用された、「抗体断片」は、無傷抗体の部分だけを含み、この場合、部分は、無傷抗体に存在する場合に、この部分と通常関連する機能のうちの、少なくとも1つであり、かつ、これらの大半又は全部に及ぶ機能を保持する。一実施形態において、抗体断片は、無傷抗体の抗原結合性部位を含み、これにより、抗原に結合する能力を保持する。別の実施形態において、抗体断片、例えば、Fc領域を含む抗体断片は、FcRnへの結合、抗体半減期のモジュレーション、ADCC機能及び補体への結合など、無傷抗体に存在する場合に、Fc領域と通常関連する生体機能のうちの少なくとも1つを保持する。一実施形態において、抗体断片は、インビボ半減期が、無傷抗体と実質的に同様である、一価抗体である。例えば、このような抗体断片は、インビボにおける安定性を断片に付与することが可能なFc配列へと連結された、抗原結合性アームを含みうる。
【0100】
本明細書において使用された「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体を指す、すなわち、集団を構成する個別の抗体は、少量において存在しうる、可能な天然に存在する突然変異を除き、同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、個別の抗体の混合物でないものとしての抗体の特性を指し示す。このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、この場合、標的結合性ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの、単一の標的結合性ポリペプチド配列の選択を含む工程により得られたものであることが典型的である。ある特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、天然配列を除外しうる。一部の態様において、選択工程は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールなど、複数のクローンから固有のクローンを選択することでありうる。選択された標的結合性配列は、例えば、標的に対するアフィニティーを改善し、標的結合性配列をヒト化し、細胞培養物中のその産生を改善し、インビボにおけるその免疫原性を低減し、多特異性抗体を創出するなどするように、さらに変更される場合があり、変更された標的結合性配列を含む抗体もまた、本発明のモノクローナル抗体であることを理解されたい。典型的には、異なる決定基(例えばエピトープ)に対して方向付けられた、異なる抗体を含むことが典型的なポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原における、単一の決定基に対して方向付けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には、他の免疫グロブリンにより夾雑されていないという点でも有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られたものとしての抗体の特性を指し示すものであり、任意の特定の方法による抗体の作製を要求するとはみなされないものとする。例えば、本発明に従い使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohlerら、Nature、256:495(1975);Harlowら、「Antibodies:A Laboratory Manual」、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2版、1988);Hammerlingら、「Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas」、563〜681(Elsevier、N.Y.、1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい。)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、Nature、352:624〜628(1991);Marksら、J.Mol.Biol.、222:581〜597(1992);Sidhuら、J.Mol.Biol.、338(2):299〜310(2004);Leeら、J.Mol.Biol.、340(5):1073〜1093(2004);Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101(34):12467〜12472(2004)及びLeeら、J.Immunol.Methods、284(1〜2):119〜132(2004)を参照されたい)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードする、ヒト免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の一部又は全部を有する動物において、ヒト抗体又はヒト様抗体を作製するための技術(例えば、WO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;WO91/10741;Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255〜258(1993);Bruggemannら、Year in Immunol.、7:33(1993);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;Marksら、Bio.Techlonogy、10:779〜783(1992);Lonbergら、Nature、368:856〜859(1994);Morrison、Nature、368:812〜813(1994);Fishwildら、Nature Biotechnol.、14:845〜851(1996);Neuberger、Nature Biotechnol.、14:826(1996)並びにLonberg及びHuszar、Intern.Rev.Immunol.、13:65〜93(1995)を参照されたい。)を含む、様々な技法により作製されうる。
【0101】
本明細書のモノクローナル抗体は、より詳細に、重鎖及び/又は軽鎖の部分が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくは抗体サブクラスに属する抗体における、対応する配列と同一又は相同である一方、鎖の残りの部分は、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくは抗体サブクラスに属する抗体における、対応する配列と同一又は相同である、「キメラ」抗体のほか、所望の生体活性を呈する限りにおいて、このような抗体の断片(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855(1984))も含む。
【0102】
本発明の抗体はまた、本発明の抗体から作出された、キメラ化モノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体も含む。
【0103】
抗体は、全長の場合もあり、抗体断片から形成された、Fab、F(ab’)
2、Fab’、F(ab)’、Fv、単鎖Fv(scFv)、二価scFv(bi−scFv)、三価scFv(tri−scFv)、Fd、dAb断片(例えば、Wardら、Nature、341:544〜546(1989))、CDR、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子及び多特異性抗体を含むがこれらに限定されない、抗原結合性部分を有する、抗体の1つの断片(又は複数の断片)を含む場合もある。組換え法又は合成リンカーを使用して、抗体断片を接続することにより作製される単鎖抗体もまた、本発明により包含される(Birdら、Science、1988、242:423〜426;Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1988、85:5879〜5883)。
【0104】
本発明の抗体又はこの抗原結合性部分は、単一特異性の場合もあり、二特異性の場合もあり、多特異性の場合もある。
【0105】
IgG(例えば、IgG
l、IgG
2、IgG
3、IgG
4)、IgM、IgA(IgA
l、IgA
2)、IgD又はIgE(全てのクラス及びサブクラスが、本発明に包含される)を含む、全ての抗体アイソタイプが、本発明に包含される。抗体又はこの抗原結合性部分は、哺乳動物(例えば、マウス、ヒト)抗体又はこの抗原結合性部分でありうる。抗体の軽鎖は、カッパ型の軽鎖の場合もあり、ラムダ型の軽鎖の場合もある。
【0106】
参照抗体により作製される抗体の、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%(又は上記において列挙された値のうちの2つの間の範囲の任意の数)が相同である、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う抗体はまた、炭水化物抗原(例えば、グロボH、SSEA−4)にも結合しうる。相同性は、アミノ酸配列のレベルにおいて存在する場合もあり、ヌクレオチド配列のレベルにおいて存在する場合もある。一部の態様において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列に対する、列挙された相同性を有する抗体の配列は、天然に存在する抗体配列を除外する。一部の態様において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列に対する、列挙された相同性を有する抗体の配列は、天然に存在する抗体配列を含む。
【0107】
ある特定の実施形態において、CDRは、配列の変異を有する。例えば、CDR内の全残基のうちの、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ若しくは8つの残基又は20%未満、30%未満若しくは約40%未満が置換された、又は欠失させられたCDRが、炭水化物抗原に結合する抗体(又はこの抗原結合性部分)内に存在しうる。
【0108】
抗体又は抗原結合性部分は、ペプチドでありうる。このようなペプチドは、生物学的活性、例えば、炭水化物抗原への結合を呈するペプチドの、変異体、類似体、オーソログ、相同体及び誘導体を含みうる。ペプチドは、1つ以上のアミノ酸の類似体(例えば、天然に存在しないアミノ酸、非類縁の生物学的系だけにおいて天然に存在するアミノ酸、哺乳動物系に由来する修飾アミノ酸などを含む)、置換された連結のほか、当技術分野において公知の、他の修飾を伴うペプチドを含有しうる。
【0109】
特異的アミノ酸が置換された、欠失させられた、又は付加された、抗体又はこの抗原結合性部分もまた、本発明の範囲内にある。例示的な実施形態において、これらの変更は、結合アフィニティーなどの、ペプチドの生物学的特性に対して、実質的な効果を及ぼさない。別の例示的な実施形態において、抗体は、抗体の、抗原に対する結合アフィニティーを改善するなどのために、フレームワーク領域にアミノ酸置換を有しうる。さらに別の例示的な実施形態において、選択された、少数の、アクセプターフレームワーク残基は、対応するドナーアミノ酸により置換えられうる。ドナーフレームワークは、成熟ヒト抗体のフレームワーク配列若しくはコンセンサス配列、又はヒト生殖細胞系列抗体のフレームワーク配列若しくはコンセンサス配列でありうる。表現型的にサイレントのアミノ酸置換をどのようにして施すのかについての指針は、Bowieら、Science、247:1306〜1310(1990);Cunninghamら、Science、244:1081〜1085(1989);Ausubel(編)、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons,Inc.(1994);T.Maniatis、E.F.Fritsch及びJ.Sambrook、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989);Pearson、Methods Mol.Biol.、243:307〜31(1994);Gonnetら、Science、256:1443〜、45(1992)において提示されている。
【0110】
抗体又はこの抗原結合性部分は、誘導体化される場合もあり、別の機能的分子へと、連結される場合もある。例えば、抗体は、別の抗体、検出用薬剤、細胞傷害剤、医薬剤、別の分子(ストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグなど)との会合を媒介しうる、タンパク質若しくはペプチド、アミノ酸リンカー、シグナル配列、免疫原性担体、又はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ及びブドウ球菌のプロテインAなど、タンパク質の精製において有用なリガンドなど、1つ以上の他の分子的実体へと、(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的相互作用などにより)機能的に連結されうる。1つの種類の誘導体化タンパク質は、(同じ種類又は異なる種類の)2つ以上のタンパク質を架橋することにより作製される。適切な架橋剤は、適切なスペーサー(例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)又はホモ二官能性(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)により隔てられた、2つの顕著に異なる反応性基を有する、ヘテロ二官能性の架橋剤を含む。このようなリンカーは、Pierce Chemical Company、Rockford、Illから市販されている。タンパク質が誘導体化されうる(又は標識されうる)のに有用な検出用薬剤は、蛍光化合物、多様な酵素、補欠分子群、発光材料、生物発光材料及び放射性材料を含む。非限定的な、例示的蛍光検出用薬剤は、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン及びフィコエリトリンを含む。タンパク質又は抗体はまた、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出用酵素によっても誘導体化されうる。タンパク質はまた、補欠分子群(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチン)によっても誘導体化されうる。
【0111】
本抗体又はこの抗原結合性部分の、機能的に活性の変異体をコードする核酸もまた、本発明に包含される。これらの核酸分子は、中程度の厳密性条件、高度の厳密性条件又は極めて高度の厳密性下において、本抗体又はこの抗原結合性部分のうちのいずれかをコードする核酸とハイブリダイズしうる。ハイブリダイゼーション反応を実施するための指針は、参照により本明細書に組み込まれた、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons、N.Y.、6.3.1〜6.3.6、1989において見出されうる。本明細書において言及される、具体的なハイブリダイゼーション条件は、以下の通り:1)中程度の厳密性のハイブリダイゼーション条件:約45℃における、6倍濃度のSSCに続く、0.2倍濃度のSSC、0.1%のSDS中、60℃における、1回以上の洗浄;2)高度の厳密性のハイブリダイゼーション条件:約45℃における、6倍濃度のSSCに続く、0.2倍濃度のSSC、0.1%のSDS中、65℃における、1回以上の洗浄;3)極めて高度の厳密性のハイブリダイゼーション条件:65℃における、0.5Mのリン酸ナトリウム、7%のSDSに続く、0.2倍濃度のSSC、1%のSDS中、65℃における、1回以上の洗浄である。
【0112】
本抗体又はこの抗原結合性部分をコードする核酸は、適切な発現系において発現されうる発現ベクターへと導入されるのに続き、発現された抗体又はこの抗原結合性部分の単離又は精製が行われうる。任意選択的に、本抗体又はこの抗原結合性部分をコードする核酸は、無細胞翻訳系において翻訳されうる(米国特許第4,816,567号;Queenら、Proc Natl Acad Sci USA、86:10029〜10033(1989))。
【0113】
本抗体又はこの抗原結合性部分は、所望の抗体の軽鎖及び重鎖(又はこれらの部分)をコードするDNAにより形質転換された宿主細胞により作製されうる。抗体は、標準的な技法を使用して、これらの培養物上清及び/又は細胞から、単離及び精製されうる。例えば、宿主細胞は、抗体の軽鎖、重鎖又はこれらの両方をコードするDNAにより形質転換されうる。組換えDNA技術はまた、結合に必要でない(例えば、定常領域)軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの、一部又は全部を除去するのにも使用されうる。
【0114】
本核酸は、原核細胞及び真核細胞、例えば、細菌細胞、(例えば、E.コリ(E.coli))、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を含む、多様な、適切な細胞において発現されうる。当技術分野において、多数の哺乳動物細胞系が公知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な不死化細胞系を含む。細胞の非限定例は、サル腎臓細胞(COS、例えば、COS−1、COS−7)、HEK293、ベビーハムスター腎臓(BHK、例えば、BHK21)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、NSO、PerC6、BSC−1、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、HepG2)、SP2/0、HeLa、Madin−Darbyウシ腎臓(MDBK)、骨髄腫細胞及びリンパ腫細胞の親細胞、派生体及び/又は操作された変異体を含むがこれらに限定されない、哺乳動物由来である、又は哺乳動物様の特徴を有する、全ての細胞系を含む。操作された変異体は、例えば、グリカンプロファイル修飾誘導体及び/又は部位特異的組込み部位誘導体を含む。
【0115】
本発明はまた、本明細書において記載された核酸を含む細胞も提供する。細胞は、ハイブリドーマの場合もあり、トランスフェクタントの場合もある。
【0116】
代替的に、本抗体又はこの抗原結合性部分は、当技術分野において周知の固相プロシージャにより合成されうる(「Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach」、E.Atherton及びR.C.Sheppard、Oxford University Press、IRL刊(1989);「Methods in Molecular Biology」、35巻:「Peptide Synthesis Protocols」(M.W.Pennington及びB.M.Dunn編)、7章、「Solid Phase Peptide Synthesis」、2版、Pierce Chemical Co.、Rockford、IL(1984);G.Barany及びR.B.Merrifield、「Peptides:Analysis,Synthesis,Biology」、E.Gross及びJ.Meienhofer編、1巻及び2巻、Academic Press、New York(1980)、3〜254頁;M.Bodansky、「Principles of Peptide Synthesis」、Springer−Verlag、Berlin(1984))。
【0117】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態において、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域に由来する残基が、所望の特異性、アフィニティー及び/又は能力を有する、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長動物など、非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域に由来する残基により置換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によって、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基が、対応する非ヒト残基により置換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体において見出されない残基を含みうる。これらの修飾は、抗体の効能をさらに精緻化するようになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つであり、典型的に、2つの可変ドメインであって、超可変ループのうちの、全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちの全て又は実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFRである、可変ドメインのうちの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域(Fc)のうちの少なくとも一部、典型的に、ヒト免疫グロブリンのFcのうちの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、Jonesら、Nature、321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature、332:323〜329(1988)及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596(1992)を参照されたい。また、以下の総説論文:Vaswani及びHamilton、Ann.Allergy,Asthma & Immunol.、1:105〜115(1998);Harris、Biochem.Soc.Transactions、23:1035〜1038(1995);Hurle及びGross、Curr.Op.Biotech.、5:428〜433(1994)並びにこれらの中において引用されている参考文献も参照されたい。
【0118】
本明細書において使用される場合の、「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」という用語は、配列が超可変的である、抗体可変ドメインの領域、及び/又は構造的に規定されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つの超可変領域:VHにおける3つ(H1、H2、H3)及びVLにおける3つ(L1、L2、L3)を含む。多数の超可変領域の描示が使用されており、本明細書に包含される。Kabatによる相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づき、最も一般に使用されている(Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。これとは別に、Chothiaは、構造ループの位置に言及している(Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.、196:901〜917(1987))。
【0119】
「フレームワーク」残基又は「FW」残基とは、本明細書において規定された、超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0120】
「Kabatによる可変ドメイン残基の番号付け」又は「Kabatによるアミノ酸位置の番号付け」という用語、及びこれらの変化形は、Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)における抗体の集成のうちの、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインについて使用されている番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用すると、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVRの短縮又はこれらへの挿入に対応する、より少数のアミノ酸又はさらなるアミノ酸を含有する場合がある。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後における、単一のアミノ酸の挿入(例えば、Kabatに従う残基52a)及び重鎖FRの残基82の後における残基の挿入(例えば、Kabatに従う残基82a、82b及び82cなど)を含みうる。Kabatによる残基の番号付けは、所与の抗体について、抗体の配列相同性領域における、「標準的な」Kabat番号付け配列とのアライメントにより決定されうる。
【0121】
本明細書において使用された、「単鎖Fv」抗体断片又は「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、この場合、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーであって、scFvが、抗原への結合に所望の構造を形成することを可能とするポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの総説については、Pluckthun、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」、113巻、Rosenburg及びMoore編、Springer−Verlag、New York、269〜315頁(1994)を参照されたい。
【0122】
本明細書において使用された、「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合性部位を伴う、小型の抗体断片であって、同じポリペプチド鎖(VH−VL)において、軽鎖可変ドメイン(VL)へと接続された、重鎖可変ドメイン(VH)を含む断片を指す。同じ鎖における2つのドメイン間の対合を可能とするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補性ドメインと対合し、2つの抗原結合性部位を創出するように強いられる。ダイアボディについては、例えば、EP404,097;WO93/1161;及びHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448(1993)においてより十全に記載されている。
【0123】
本明細書において使用された、「ヒト抗体」とは、ヒトにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を所有し、及び/又は本明細書において開示された、ヒト抗体を作るための技法のうちのいずれかを使用して作られた抗体である。詳細に述べると、ヒト抗体についてのこの定義は、非ヒト抗原結合性残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0124】
本明細書において使用された、「アフィニティー成熟抗体」とは、その1つ以上のHVRにおける、1つ以上の変更であって、これらの変更を所有しない親抗体と比較して、抗体の抗原に対するアフィニティーの改善を結果としてもたらす変更を伴う抗体である。一実施形態において、アフィニティー成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位、なお又はピコモル単位のアフィニティーを有する。アフィニティー成熟抗体は、当技術分野において公知の手順により作製される。Marksら、Bio/Technology、10:779〜783(1992)は、VHドメイン及びVLドメインのシャッフリングによるアフィニティー成熟について記載している。CDR残基及び/又はフレームワーク残基に対するランダム突然変異誘発については、Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci.USA、91:3809〜3813(1994);Schierら、Gene、169:147〜155(1995);Yeltonら、J.Immunol.、155:1994〜2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.、154(7):3310〜9(1995)及びHawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889〜896(1992)により記載されている。
【0125】
本明細書において使用された、「遮断抗体」又は「アンタゴニスト抗体」とは、それが結合する抗原の生物学的活性を、阻害又は低減する抗体である。ある特定の遮断抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的又は完全に阻害する。
【0126】
本明細書において使用された、「アゴニスト抗体」とは、目的のポリペプチドの機能的活性のうちの、少なくとも1つを模倣する抗体である。
【0127】
本明細書において使用された、「障害」とは、本発明の抗体による処置から利益を得る、任意の状態である。「障害」は、哺乳動物に、問題の障害への素因を与える病理学的状態を含む、慢性障害及び急性障害又は慢性疾患及び急性疾患を含む。本明細書において処置される障害の非限定的な例は、がんを含む。
【0128】
本明細書において使用された、「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、何らかの程度の、異常な細胞増殖と関連する障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、がんである。
【0129】
本明細書において使用された、「腫瘍」とは、悪性であれ、良性であれ、全ての新生物性細胞増殖(growth及びproliferation)を指し、全ての前がん性細胞及び前がん性組織並びにがん性細胞及びがん性組織を指す。本明細書において言及される通り、「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」及び「腫瘍」という用語は、相互に除外的でない。
【0130】
本明細書において使用された、「がん」及び「がん性」という用語は、哺乳動物における生理学的状態であって、典型的に、調節不能の細胞増殖(growth/proliferation)により特徴づけられた生理学的状態を指す、又はこれについて記載する。がんの例は、癌、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫及び白血病を含むがこれらに限定されない。このようながんのより特定の例は、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、消化器がん、膵がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎がん、肝がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、白血病及び他のリンパ増殖性障害並びに多様な種類の頭頸部がんを含む。
【0131】
本明細書において使用された、「処置」とは、処置される個体又は細胞の、天然の経過を変更しようとする試みにおける、臨床的介入を指し、予防のために実施される場合もあり、臨床病態の経過中に実施される場合もある。処置の所望の効果は、疾患の発症又は再発の防止、症状の緩和、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的帰結の減弱、炎症及び/又は組織/器官損傷の防止又は減少、疾患の進行速度の減少、疾患状態の改善(amelioration)又は軽減、及び寛解又は予後の改善(improved)を含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、疾患又は障害の発症を遅延させるのに使用される。
【0132】
本明細書において使用された、「抗体−薬物コンジュゲート(ADC)」とは、化学療法剤、薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌由来、真菌由来、植物由来、若しくは動物由来の、酵素的に活性の毒素、又はこれらの断片)、又は放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)などの細胞傷害剤へとコンジュゲートされた抗体を指す。
【0133】
本明細書において使用された、「T細胞表面抗原」とは、MHC関連ペプチド抗原の特異的認識のためにT細胞により使用された、全てのT細胞の主要な規定的マーカーである、T細胞抗原受容体(TcR)を含む、当技術分野において公知の、代表的T細胞表面マーカーを含みうる抗原を指す。TcRと関連する例は、TcRの、そのコグネイトのMHC/抗原複合体への結合の後における、細胞内シグナルの伝達に参与する、CD3として公知のタンパク質複合体である。T細胞表面抗原の、他の例は、CD2、CD4、CD5、CD6、CD8、CD28、CD40L及び/又はCD44を含みうる(又はこれらを除外しうる)。
【0134】
本明細書において使用された、「個体」又は「対象」とは、脊椎動物である。ある特定の実施形態において、脊椎動物は、哺乳動物である。哺乳動物は、農場動物(ウシなど)、競技動物、愛玩動物(ネコ、イヌ、及びウマなど)、霊長動物、マウス及びラットを含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態において、脊椎動物は、ヒトである。
【0135】
本明細書において使用された、処置を目的とする「哺乳動物」とは、哺乳動物として分類される、任意の動物であって、ヒト、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなど、家畜及び農場動物並びに動物園動物、競技動物又は愛玩動物を含む。ある特定の実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0136】
本明細書において使用された、「有効量」とは、投与時において、かつ必要な時間にわたり、所望の治療結果又は予防結果を達成するのに有効な量を指す。
【0137】
本発明の物質/分子の「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重並びに個体において所望の応答を誘発する物質/分子の能力などの因子に従い変動しうる。治療有効量はまた、物質/分子の、任意の毒性作用又は有害作用が、治療的に有益な効果により凌駕される場合の量でもある。「予防有効量」とは、投与時において、かつ必要な時間にわたり、所望の予防的結果を達成するのに有効な量を指す。予防用量は、対象において、疾患の前又はその早期に使用されるので、予防有効量は、治療有効量未満となることが典型的であるが、必ずしもそうでない。
【0138】
本明細書において使用された「細胞傷害剤」という用語は、細胞の機能を阻害若しくは防止し、かつ/又は細胞の破壊を引き起こす物質を指す。用語は、放射性同位元素(例えば、At−211、I−131、I−125、Y−90、Re−186、Re−188、Sm−153、Bi−212、P−32、Pb−212及びLuの放射性同位元素)、化学療法剤(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロランブシル、ダウノルビシン、又は他の挿入剤)、核酸溶解性酵素などの酵素及びこの断片、抗生剤並びに細菌由来、真菌由来、植物由来又は動物由来の低分子毒素又は酵素活性毒素などの毒素であって、これらの断片及び/又は変異体を含む毒素並びに下記において開示された、多様な抗腫瘍剤又は抗がん剤を含むことが意図される。他の細胞傷害剤については、下記において記載される。腫瘍殺滅剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0139】
本明細書において使用された、「化学療法剤」とは、がんの処置において有用な化合物である。化学療法剤の例は、チオテパ及びシクロホスファミドであるCYTOXAN(登録商標)などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ及びウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチオールメラミンを含めたエチレンイミン及びメチルメラミン;アセトゲニン(とりわけ、ブラクタシン及びブラクタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、マリノール(登録商標));ベータ−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体であるトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(このアドゼレシン合成類似体、カルゼレシン合成類似体及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体である、KW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生剤(例えば、カリケアミシン、とりわけ、カリケアミシンガンマII及びカリケアミシンオメガII(例えば、Agnew、Chem.Intl.Ed.Engl.、33:183〜186(1994)を参照されたい。);ジネミシンAを含むジネミシン;エスペラミシンのほか;ネオカルチノスタチン発色団及び関連の色素タンパク質である、エンジイン抗生剤発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシンであるADRIAMYCIN(登録商標)(モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生剤;メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎皮質抗体;フォリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシン及びアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;phenamet;ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(とりわけ、T−2毒素、ベルカリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセルであるTAXOL(登録商標)(Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、パクリタキセルのCremophor非含有アルブミン操作ナノ粒子製剤であるABRAXANE(商標)(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Ill.)及びドセタキセルであるTAXOTERE(登録商標)(Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France);クロランブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤であるRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン(XELODA(登録商標));上記のうちのいずれかの、薬学的に許容される塩、酸又は誘導体のほか;シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニゾロンによる組合せ療法の略号であるCHOP並びにオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))が、5−FU及びロイコボリンと組み合わされた処置レジメンの略号であるFOLFOXなど、上記のうちの、2つ以上の組合せを含む。
【0140】
<医薬組成物>
一部の実施形態において、本発明は、本明細書において記載された、抗体又はこの抗原結合性部分、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。薬学的に許容される担体は、生理学的に適合性のある、任意の溶媒及び全ての溶媒、任意の分散媒及び全ての分散媒、任意の等張剤及び全ての等張剤並びに任意の吸収遅延剤及び全ての吸収遅延剤などを含む。一実施形態において、医薬組成物は、対象におけるがん細胞を阻害するのに効果的である。一部の実施形態において、製剤は、2つ以上の治療剤を含有する、組合せ製剤である。
【0141】
<投与経路>
本医薬組成物の投与経路は、静脈内投与、筋内投与、鼻腔内投与、皮下(subcutaneous)投与、経口投与、局所投与、皮下(subcutaneous)投与、皮内投与、経皮投与、皮下(subdermal)投与、非経口投与、直腸内投与、脊髄投与又は表皮投与を含むがこれらに限定されない。
【0142】
<製剤>
本組合せ療法の医薬組成物は、個別の単剤療法として調製される場合もあり、又は注射の前に先立ち、溶液若しくは懸濁液としての注射剤、又は液体媒体中の、溶解若しくは懸濁に適する固体形態としての注射剤として、共製剤化される場合もある。医薬組成物はまた、固体形態においても調製される場合もあり、乳化される場合もあり、有効成分が、持続送達のために使用される、リポソーム媒体中又は他の粒子状担体中に封入される場合もある。例えば、医薬組成物は、油エマルジョン、油中水エマルジョン、水中油中水エマルジョン、部位特異的エマルジョン、長時間貯留型エマルジョン、粘着性エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロスフェア、ナノスフェア、ナノ粒子並びに酢酸エチレンビニルコポリマー及びHytrel(登録商標)コポリマーなど、非吸収性の不透過性ポリマー、ハイドロゲルなどの膨潤性ポリマー又はコラーゲンなどの吸収性ポリマー並びに医薬組成物の持続放出を可能とする、吸収性縫合糸を作るのに使用されたものなど、ある特定のポリ酸又はポリエステルなど、多様な、天然ポリマー又は合成ポリマーの形態でありうる。
【0143】
当然ながら、インビボ投与のために使用される医薬組成物は、無菌でなければならず、無菌化は、従来の技法、例えば、滅菌濾過膜を介する濾過により達成されうる。抗体の濃度を、いわゆる高濃度液体製剤(HCLF)に至るように上昇させることは、有用な場合があり、このようなHCLFを作出するための、多様な方式が記載されされている。
【0144】
医薬組成物は、組合せとして共投与される場合もあり、かつ/又はさらに別の治療剤と混合される場合もある。組合せ生成物は、2つ以上の成分の混合物の場合もあり、共有結合的に接合される場合もある。ある特定の実施形態において、抗体はまた、がんワクチン、例えば、ジフテリア毒素アジュバント及びサポニンアジュバントとコンジュゲートされた、グロボHとの組合せにおいても投与されうる。さらなる治療剤は、任意選択的に、同じ医薬調製物の構成要素と同時に投与される場合もあり、本発明の、特許請求された抗体の投与の前又は後に投与される場合もある。このような剤形を調製する、実際の方法は公知である、又は当業者により改変される。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、21版を参照されたい。
【0145】
<投与及び剤形>
医薬組成物は、対象の年齢、体重及び状態、使用された特定の組成物及び投与経路、医薬組成物が、予防的目的のために使用されるのか、治癒的目的のために使用されるのかなどに対して適切な、スケジュール及び適切な期間にわたり、単回投与による処置において投与される場合もあり、複数回投与による処置において投与される場合もある。例えば、一実施形態において、本発明に従う医薬組成物は、毎月1回、毎月2回、毎月3回、隔週(qow)、毎週1回(qw)、毎週2回(biw)、毎週3回(tiw)、毎週4回、毎週5回、毎週6回、隔日(qod)、毎日(qd)、毎日2回(qid)又は毎日3回(tid)投与される。
【0146】
本発明に従う、抗体の組合せ療法の投与の持続期間、例えば、医薬組成物が投与される期間は、例えば、対象の応答など、様々な因子のうちのいずれかに応じて変動しうる。例えば、医薬組成物は、約1秒間以上〜1時間以上、1日間〜約1週間、約2週間〜約4週間、約1カ月間〜約2カ月間、約2カ月間〜約4カ月間、約4カ月間〜約6カ月間、約6カ月間〜約8カ月間、約8カ月間〜約1年間、約1年間〜約2年間又は約2年間〜約4年間以上の範囲の期間にわたり投与されうる。
【0147】
投与の容易さ及び投与量の均一性のために、単位剤形にある、経口組成物又は非経口医薬組成物が使用されうる。本明細書において使用された、単位剤形とは、処置される対象のための単位投与量として適する、物理的に個別の単位であって、各単位が、要求された医薬担体と会合して、所望の治療効果をもたらすように計算された、所定量の活性化合物を含有する単位を指す。
【0148】
細胞培養物アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための、投与量の範囲を処方するのに使用されうる。一実施形態において、このような化合物の投与量は、毒性を、ほとんど、又は全く伴わない、ED
50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられた剤形及び利用された投与経路に応じて、この範囲内において変動しうる。別の実施形態において、治療有効用量は、まず、細胞培養物アッセイから推定されうる。用量は、細胞培養物中において決定された、IC
50(すなわち、症状の、最大半量の阻害を達成する、被験化合物の濃度)を含む、循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて処方されうる(Sonderstrup、Springer Sem.Immunoathol.、25:35〜45、2003;Nikulaら、Inhal.Toxicol.、4(12):123〜53、2000)。
【0149】
本発明の抗体又は抗原結合性部分の、治療有効量又は予防有効量のための、例示的な、非限定的な範囲は、体重1kg当たり約0.001〜約60mg、体重1kg当たり約0.01〜約30mg、体重1kg当たり約0.01〜約25mg、体重1kg当たり約0.5〜約25mg、体重1kg当たり約0.1〜約20mg、体重1kg当たり約10〜約20mg、体重1kg当たり約0.75〜約10mg、体重1kg当たり約1〜約10mg、体重1kg当たり約2〜約9mg、体重1kg当たり約1〜約2mg、体重1kg当たり約3〜約8mg、体重1kg当たり約4〜約7mg、体重1kg当たり約5〜約6mg、体重1kg当たり約8〜約13mg、体重1kg当たり約8.3〜約12.5mg、体重1kg当たり約4〜約6mg、体重1kg当たり約4.2〜約6.3mg、体重1kg当たり約1.6〜約2.5mg、体重1kg当たり約2〜約3mg又は体重1kg当たり約10mgである。
【0150】
医薬組成物は、有効量の、本抗体又はこの抗原結合性部分を含有するように製剤化され、この場合、量は、処置される動物及び処置される状態に依存する。一実施形態において、本抗体又はこの抗原結合性部分は、約0.01mg〜約10g、約0.1mg〜約9g、約1mg〜約8g、約2mg〜約7g、約3mg〜約6g、約10mg〜約5g、約20mg〜約1g、約50mg〜約800mg、約100mg〜約500mg、約0.01μg〜約10g、約0.05μg〜約1.5mg、約10μg〜約1mgのタンパク質、約30μg〜約500μg、約40μg〜約300μg、約0.1μg〜約200μg、約0.1μg〜約5μg、約5μg〜約10μg、約10μg〜約25μg、約25μg〜約50μg、約50μg〜約100μg、約100μg〜約500μg、約500μg〜約1mg、約1mg〜約2mgの範囲の用量において投与される。任意の特定の対象のための、具体的な用量レベルは、特異的なペプチドの活性、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食餌、投与回数、投与経路及び排出速度、薬物の組合せ並びに治療を受ける、特定の疾患の重症度を含む、様々な因子に依存し、不要な実験を伴わずに、当業者により決定されうる。
【0151】
本明細書において使用された、「ワクチン」という用語は、全病原生物(死滅させられた、又は弱毒化された)又はこのような生物の構成要素であって、生物が引き起こす疾患に対する免疫を付与するのに使用される、タンパク質、ペプチド又は多糖などの構成要素からなる抗原を含有する調製物を指す。ワクチン調製物は、天然の場合もあり、合成の場合もあり、組換えDNA技術により導出される場合もある。
【0152】
本明細書において使用された、「〜に特異的に結合すること」という用語は、結合対(例えば、抗体及び抗原)の間の相互作用を指す。多様な場合において、「〜に特異的に結合すること」は、1リットル当たり約10
−6モル、1リットル当たり約10
−7モル若しくは1リットル当たり約10
−8モル又はこれ未満のアフィニティー定数により実現されうる。
【0153】
本明細書において使用された、糖酵素という用語は、少なくとも、部分的に、グロボ系列の生合成経路内の酵素を指し;例示的な糖酵素は、アルファ−4GalT酵素;ベータ−4GalNAcT−I酵素又はベータ−3GalT−V酵素を含む。
【0154】
<組合せに適する、OBI−888(グロボH抗体)の例についての記載>
ある特定の実施形態において、抗体は、OBI−888(抗グロボHモノクローナル抗体)である。例示的なOBI−888は、それらの内容が、参照によりその全体において組み込まれた、PCT特許公開(WO2015157629A2及びWO2017062792A1)、特許出願において記載されている通りである。
【0155】
本発明は、当技術分野において公知の技術と組み合わせた、本明細書に記載され、可能とされる、炭水化物抗原に結合する可変ドメインを含む、グロボH抗体又はこの抗原結合性部分、これらの抗体のコンジュゲート形、これらと関連する、コード核酸又は相補性核酸、ベクター、宿主細胞、組成物、製剤、デバイス、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、及びこれらを作る方法並びに使用する方法を提供する。抗体又はこの抗原結合性部分は、約10
−7M以下、約10
−8M以下、約10
−9M以下、約10
−10M以下、約10
−11M以下又は約10
−12M以下の解離定数(K
D)を有しうる。抗体又はこの抗原結合性部分は、ヒト化抗体又はこの抗原結合性部分の場合もあり、キメラ抗体又はこの抗原結合性部分の場合もある。
【0156】
一実施形態において、本発明は、配列番号3において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0157】
別の実施形態において、本発明は、配列番号4において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0158】
さらに別の実施形態において、本発明は、配列番号3において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン、及び配列番号4において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0159】
第4の実施形態において、本発明は、重鎖領域を含み、重鎖領域が、それぞれ、配列番号5、6及び7に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つの相補性決定領域(CDR)、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。例示的な実施形態において、重鎖は、リーダー配列と、前記CDR1との間に、配列番号87と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワークをさらに含む。別の実施形態において、重鎖は、前記CDR2と、前記CDR3との間に、配列番号89と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワークをさらに含む。さらに別の例示的な実施形態において、重鎖は、重鎖の、前記CDR1と、前記CDR2との間に、配列番号11と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワークをさらに含み、この場合、フレームワークは、9位にグリシンを含有し、抗体又はこの抗原結合性部分は、グロボHなどの炭水化物抗原に結合する。
【0160】
第5の実施形態において、本発明は、軽鎖領域を含み、軽鎖領域が、それぞれ、配列番号8、9及び10に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。例示的な実施形態において、軽鎖は、リーダー配列と、前記CDR1との間に、配列番号88と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワークをさらに含む。別の例示的な実施形態において、軽鎖は、軽鎖の、前記CDR2と、前記CDR3との間に、配列番号90と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワークをさらに含む。さらに別の例示的な実施形態において、軽鎖は、軽鎖の、前記CDR1と、前記CDR2との間に、配列番号12と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワークをさらに含み、この場合、フレームワークは、12位にプロリンを含有し、抗体又はこの抗原結合性部分は、グロボHに結合する。さらに別の例示的な実施形態において、軽鎖は、軽鎖の、前記CDR1と、前記CDR2との間に、配列番号12と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワークをさらに含み、この場合、フレームワークは、13位にトリプトファンを含有し、抗体又はこの抗原結合性部分は、グロボHなどの炭水化物抗原に結合する。
【0161】
第6の実施形態において、本発明は、重鎖領域と、軽鎖領域とを含み、重鎖領域が、それぞれ、配列番号5、6及び7に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、軽鎖領域が、それぞれ、配列番号8、9及び10に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0162】
一部の実施形態において、重鎖領域を含み、重鎖領域が、配列番号5、6又は7から選択されるアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗体又はこの抗原結合性部分が提供される。他の実施形態において、軽鎖領域を含み、軽鎖領域が、配列番号8、9又は10から選択されるアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗体又はこの抗原結合性部分が提供される。
【0163】
本発明はまた、配列番号13において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分へも方向付けられる。
【0164】
本発明はまた、配列番号14において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分へも方向付けられる。
【0165】
本発明はまた、配列番号13において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン及び配列番号14において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分へも方向付けられる。
【0166】
例示的な実施形態は、重鎖領域を含み、重鎖領域が、それぞれ、配列番号15、16及び17に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。別の例示的な実施形態は、軽鎖領域を含み、軽鎖領域が、それぞれ、配列番号18、19及び20に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0167】
別の例示的な実施形態は、重鎖領域と、軽鎖領域とを含み、重鎖領域が、それぞれ、配列番号15、16及び17に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、軽鎖領域が、それぞれ、配列番号18、19及び20に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0168】
一部の実施形態において、重鎖領域を含み、重鎖領域が、配列番号15、16又は17から選択されるアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗体又はこの抗原結合性部分が提供される。他の実施形態において、軽鎖領域を含み、軽鎖領域が、配列番号18、19又は20から選択されるアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗体又はこの抗原結合性部分が提供される。
【0169】
本発明の1つの実施形態は、配列番号21において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分である。
【0170】
本発明の別の実施形態は、配列番号22において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分である。
【0171】
本発明のさらに別の実施形態は、配列番号21において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン、及び配列番号22において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分である。
【0172】
例示的な実施形態は、重鎖領域を含み、重鎖領域が、それぞれ、配列番号23、24及び25に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。別の例示的な実施形態は、軽鎖領域を含み、軽鎖領域が、それぞれ、配列番号26、27及び28に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0173】
別の例示的な実施形態は、重鎖領域と軽鎖領域とを含み、重鎖領域が、それぞれ、配列番号23、24及び25に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、軽鎖領域が、それぞれ、配列番号26、27及び28に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0174】
一部の実施形態において、重鎖領域を含み、重鎖領域が、配列番号23、24又は25から選択されるアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、CDRを含む、抗体又はこの抗原結合性部分が提供される。他の実施形態において、軽鎖領域を含み、軽鎖領域が、配列番号26、27又は28から選択されるアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、CDRを含む、抗体又はこの抗原結合性部分が提供される。
【0175】
本発明はまた、配列番号29において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分も開示する。
【0176】
本発明はまた、配列番号30において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分も開示する。
【0177】
本発明はまた、配列番号29において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン、及び配列番号30において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分も開示する。
【0178】
例示的な実施形態は、重鎖領域を含み、重鎖領域が、それぞれ、配列番号31、32及び33に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。別の例示的な実施形態は、軽鎖領域を含み、軽鎖領域が、それぞれ、配列番号34、35及び36に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0179】
別の例示的な実施形態は、重鎖領域と軽鎖領域とを含み、重鎖領域が、それぞれ、配列番号31、32及び33に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、軽鎖領域が、それぞれ、配列番号34、35及び36に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0180】
一部の実施形態において、重鎖領域を含み、重鎖領域が、配列番号31、32又は33から選択されるアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗体又はこの抗原結合性部分が提供される。他の実施形態において、軽鎖領域を含み、軽鎖領域が、配列番号34、35又は36から選択されるアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、CDRを含む、抗体又はこの抗原結合性部分が提供される。
【0181】
本発明の1つの実施形態は、配列番号37において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0182】
本発明の別の実施形態は、配列番号38において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0183】
本発明の別の実施形態は、配列番号37において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメイン及び配列番号38において示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインを含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0184】
例示的な実施形態は、重鎖領域を含み、重鎖領域が、それぞれ、配列番号39、40及び41に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。別の例示的な実施形態は、軽鎖領域を含み、軽鎖領域が、それぞれ、配列番号42、43及び44に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を開示する。
【0185】
別の例示的な実施形態は、重鎖領域と軽鎖領域とを含み、重鎖領域が、それぞれ、配列番号39、40及び41に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、軽鎖領域が、それぞれ、配列番号42、43及び44に明示されたアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む、抗体又はこの抗原結合性部分を提供する。
【0186】
一部の実施形態において、重鎖領域を含み、重鎖領域が、配列番号39、40又は41から選択されるアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗体又はこの抗原結合性部分が提供される。他の実施形態において、軽鎖領域を含み、軽鎖領域が、配列番号42、43又は44から選択されるアミノ酸配列と、約80%〜約100%相同であるアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗体又はこの抗原結合性部分が提供される。
【0187】
本発明は、本明細書において記載された、抗体又はこの抗原結合性部分と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0188】
本発明はまた、グロボHを発現するがん細胞を阻害する方法であって、それを必要とする対象へと、本明細書において記載された、抗体又はこの抗原結合性部分の有効量を投与するステップを含み、グロボHを発現するがん細胞が阻害される方法も提供する。
【0189】
本発明はまた、2C2(American Type Culture Collection(ATCC)受託番号:PTA−121138下において寄託された)、3D7(ATCC受託番号:PTA−121310下において寄託された)、7A11(ATCC番号:PTA−121311下において寄託された)、2F8(ATCC受託番号:PTA−121137下において寄託された)及び1E1(ATCC受託番号:PTA−121312下において寄託された)と名指されたハイブリドーマクローン並びにこれらから産生された抗体又は抗原結合性部分も提供する。
【0190】
本抗体又はこの抗原結合性部分は、グロボHに、約10
−7M未満、約10
−8M未満、約10
−9M未満、約10
−10M未満、約10
−11M未満又は約10
−12M未満の解離定数(KD)により、特異的に結合する。一実施形態において、抗体又はこの抗原結合性部分は、1〜10×10
−9以下の解離定数(KD)を有する。別の実施形態において、Kdは、表面プラズモン共鳴により決定される。
【0191】
クローン2C2により産生される抗体の、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%相同である、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を伴う抗体はまた、炭水化物抗原(例えば、グロボH)にも結合する。相同性は、アミノ酸配列のレベルにおいて存在する場合もあり、ヌクレオチド配列のレベルにおいて存在する場合もある。
【0192】
一部の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性部分は、例えば、ハイブリドーマである2C2、ハイブリドーマである3D7、ハイブリドーマである7A11、ハイブリドーマである2F8及びハイブリドーマである1E1により産生された、抗体の、可変重鎖及び/又は可変軽鎖を含み、表1に示される。
【0193】
関連する実施形態において、抗体又はこの抗原結合性部分は、例えば、ハイブリドーマである2C2、ハイブリドーマである3D7、ハイブリドーマである7A11、ハイブリドーマである2F8及びハイブリドーマである1E1から産生された、抗体の、可変重鎖のCDR及び/又は可変軽鎖のCDRを含む。これらのハイブリドーマクローンに由来する、可変重鎖及び可変軽鎖の、CDR及びフレームワークは、表1に示される。
【0195】
本発明はまた、炭水化物抗原に特異的に結合する、本抗体又はこの抗原結合性部分をコードする核酸も包含する。一実施形態において、炭水化物抗原はグロボHである。
【0196】
さらに別の実施形態において、炭水化物抗原はSSEA−4である。核酸は、本抗体又はこの抗原結合性部分を産生する細胞において発現されうる。
【0197】
ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性部分は、以下:
配列番号3(ハイブリドーマである2C2);配列番号13(ハイブリドーマである3D7);配列番号21(ハイブリドーマである7A11);配列番号29(ハイブリドーマである2F8)又は配列番号37(ハイブリドーマである1E1)
のうちのいずれかと、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を含む、可変重鎖領域を含む。
【0198】
ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性部分は、以下:
配列番号4(ハイブリドーマである2C2);配列番号14(ハイブリドーマである3D7);配列番号22(ハイブリドーマである7A11);配列番号30(ハイブリドーマである2F8)又は配列番号38(ハイブリドーマである1E1)
のうちのいずれかと、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を含む、可変軽鎖領域を含む。
【0199】
本発明の一態様において、非修飾抗体又はこの抗原結合性部分は、重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、それぞれ、配列番号91、92及び93に明示されたアミノ酸配列と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0200】
一部の実施形態において、非修飾抗体又はこの抗原結合性部分の重鎖可変領域は、(i)重鎖の、リーダー配列と前記CDR1との間に、配列番号94と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワーク、(ii)重鎖の、前記CDR1と前記CDR2との間に、配列番号95と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワーク又は(iii)重鎖の、前記CDR2と前記CDR3との間に、配列番号96と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワークから選択される、少なくとも1つのフレームワークをさらに含む。
【0201】
他の実施形態において、重鎖可変領域(配列番号95)のフレームワーク2内のアミノ酸残基46(又はフレームワーク2のC末端から6番目のアミノ酸残基)は、グリシンであり、置換されていない。配列番号95のアミノ酸残基の位置は、下記において例示される。
【0203】
本発明の別の態様において、非修飾抗体又はこの抗原結合性部分は、軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号97、98及び99に明示されたアミノ酸配列と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0204】
一部の実施形態において、非修飾抗体又はこの抗原結合性部分の軽鎖可変領域は、(a)軽鎖の、リーダー配列と前記CDR1との間に、配列番号100と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワーク、(b)重鎖の、前記CDR1と前記CDR2との間に、配列番号101と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワーク又は(c)軽鎖の、前記CDR2と前記CDR3との間に、配列番号102と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有するフレームワークから選択される、少なくとも1つのフレームワークをさらに含む。他の実施形態において、アミノ酸残基45及び/又はアミノ酸残基46が置換されていない条件下において、軽鎖(配列番号101)のフレームワーク2内のアミノ酸残基45(又はフレームワーク2のC末端から4番目のアミノ酸残基)は、プロリンであり、かつ/又は軽鎖のフレームワーク2内のアミノ酸残基46(又はフレームワーク2のC末端から3番目のアミノ酸残基)は、トリプトファンである。配列番号101のアミノ酸の位置は、下記において例示される。
【0206】
本発明の非修飾抗体はまた、腫瘍の炭水化物又はこの断片に結合するヒト化抗体も含む。一実施形態において、ヒト化抗体は、配列番号103と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%若しくは約100%相同であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び/又は配列番号104と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%若しくは約100%相同であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0207】
本発明の非修飾抗体はまた、腫瘍の炭水化物又はこの断片に結合するキメラ抗体も含む。一実施形態において、キメラ抗体は、配列番号105と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%若しくは約100%相同であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び/又は配列番号106と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%若しくは約100%相同であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0208】
表2は、非修飾抗体の、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、CDR及びFWのアミノ酸配列並びに修飾抗体の、1つの例示的な実施形態を示す。
【0210】
本記載及び当技術分野の教示に従い、一部の実施形態において、本発明の修飾抗体が、例えば、1つ以上のCDR内に、野生型の対応抗体と比較して、1つ以上の変更を含みうることが想定される。修飾抗体は、それらの非修飾野生型対応物と比較して、治療有用性に要求された実質的に同じ特徴を保持する。しかし、本明細書において記載された位置における、ある特定のアミノ酸残基の変更は、それが作出された非修飾野生型抗体と比較して、腫瘍関連炭水化物に対する結合アフィニティーが、改善又は最適化された修飾抗体を結果としてもたらすことが考えられる。一実施形態において、本発明の修飾抗体は、「アフィニティー成熟」抗体である。
【0211】
変更の、1つの種類は、野生型/非修飾抗体のCDRの、1つ以上のアミノ酸残基を置換して、修飾抗体を作出することを伴う。このような修飾抗体は、ファージディスプレイベースのアフィニティー成熟法を使用して、簡便に作出されうる。略述すると、各部位において、全ての可能なアミノ酸置換を作出するように、いくつかの超可変領域部位(例えば、6つ〜7つの部位)に突然変異が導入される。このようにして作出された抗体は、線維状ファージ粒子から、各粒子内にパッケージングされた、ファージコートタンパク質(例えば、M13の、第III遺伝子の産物)の、少なくとも一部の融合体として提示される。次いで、ファージディスプレイされた変異体は、それらの生物学的活性(例えば、結合アフィニティー)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる超可変領域部位を同定するために、抗原への結合に、著明に寄与する超可変領域残基を同定するように、走査突然変異誘発(例えば、アラニン走査)が実施されうる。代替的に、又は加えて、抗体と抗原との接触点を同定するように、抗原−抗体複合体の結晶構造を解析することも有益でありうる。このような接触残基及び近傍残基は、本明細書において詳説された技法を含む、当技術分野において公知の技法に従う置換のための候補である。このような修飾抗体が作出されたら、変異体のパネルが、本明細書において記載された技法を含む、当技術分野において公知の技法を使用するスクリーニングにかけられ、1つ以上の、妥当なアッセイにおいて、優れた特性を伴う修飾抗体が、さらなる開発のために選択されうる。
【0212】
修飾抗体はまた、例えば、Marksら、1992(可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)のドメインシャッフリングによるアフィニティー成熟)又はBarbasら、1994;Shierら、1995;Yeltonら、1995;Jacksonら、1995及びHawkinsら、1992(CDR残基及び/又はフレームワーク残基の、ランダム突然変異誘発)により記載された方法によっても作製されうる。
【0213】
本発明の一態様において、本発明の修飾抗体又はこの抗原結合性部分は、重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、それぞれ、配列番号91、92及び93に明示されたアミノ酸配列と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み;この場合、アミノ酸残基28、31、57、63又は105から選択される、少なくとも1つのアミノ酸残基が、非修飾抗体内に存在するアミノ酸と異なる、別のアミノ酸により置換されており、これにより、非修飾抗体の結合アフィニティーを、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%、約600%又は約700%増大させる。
【0214】
一実施形態において、修飾抗体の重鎖可変領域は、以下のアミノ酸置換:
(a)CDR1内のアミノ酸残基28(セリン)が、中性アミノ酸が、セリン若しくは疎水性アミノ酸でないという条件下において、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、
(b)CDR1内のアミノ酸残基31(トレオニン)が、塩基性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、
(c)CDR2内のアミノ酸残基57(アスパラギン酸)が、中性アミノ酸、塩基性アミノ酸若しくは疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、
(d)CDR2内のアミノ酸残基63(プロリン)が、疎水性アミノ酸が、プロリンでないという条件下において、中性アミノ酸、塩基性アミノ酸若しくは疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、又は
(e)CDR3内のアミノ酸残基105(アスパラギン酸)が、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸若しくは中性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換
のうちの少なくとも1つを含む。
【0215】
20のアミノ酸は、その側鎖に従い、4つのクラス(塩基性、中性、疎水性及び酸性)へと分けられる。表3は、アミノ酸の4つのクラスを一覧する。
【0217】
実施形態は、重鎖領域内に、以下のアミノ酸置換:(a)CDR1内のアミノ酸残基28(又はCDR1のN末端から3番目のアミノ酸残基)が、塩基性アミノ酸、セリン、グリシン若しくはグルタミン以外の中性アミノ酸、又はイソロイシン、ロイシン、メチオニン若しくはトリプトファン以外の疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、(b)CDR1内のアミノ酸残基31(又はCDR1のN末端から6番目のアミノ酸残基)が、ヒスチジン以外の塩基性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、(c)CDR2内のアミノ酸残基57(又はCDR2のN末端から6番目のアミノ酸残基)が、中性アミノ酸アスパラギン若しくはトレオニン以外の、塩基性アミノ酸又はイソロイシン、プロリン若しくはバリン以外の疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、(d)CDR2内のアミノ酸残基63(又はCDR2のC末端から5番目のアミノ酸残基)が、アスパラギン、グルタミン若しくはトレオニン以外の中性アミノ酸、塩基性アミノ酸又はプロリン若しくはメチオニン以外の疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換又は(e)CDR3内のアミノ酸残基105(又はCDR3のN末端から6番目のアミノ酸残基)が、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸又はロイシン以外の疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換のうちの少なくとも1つを伴う、修飾抗体を含む。
【0218】
表4は、修飾抗体の、重鎖可変領域のアミノ酸置換の例を提示する。各置換について、第1の文字は、非修飾抗体のアミノ酸を指し示し、数は、Kabatによる番号付けスキームに従う位置を指し示し、第2の文字は、修飾抗体のアミノ酸を指し示す。例えば、アミノ酸残基28におけるセリンは、リシン(S028K)又はアルギニン(S028R)、チロシン(S028Y)、フェニルアラニン(S028F)により置換され、アミノ酸残基31におけるトレオニンは、リシン(T031K)又はアルギニン(T031R)により置換され、アミノ酸残基57におけるアスパラギン酸は、グリシン(D057G)、セリン(D57S)、グルタミン(D057Q)、ヒスチジン(D057H)又はトリプトファン(D57W)により置換され、アミノ酸残基63におけるプロリンは、ヒスチジン(P063H)、アルギニン(P063R)、チロシン(P063Y)、アラニン(P063A)、ロイシン(P063L)又はバリン(P063V)により置換され、アミノ酸残基105におけるアスパラギン酸は、アルギニン(D105R)、グリシン(D105G)、トレオニン(D105T)、メチオニン(D105M)、アラニン(D105A)、イソロイシン(D105I)、リシン(D105K)又はバリン(D105V)により置換されている。
【0220】
本発明の別の態様において、本発明の修飾抗体又はこの抗原結合性部分は、軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号97、98及び99に明示されたアミノ酸配列と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み;この場合、アミノ酸残基24、32、49、53又は93から選択される、少なくとも1つのアミノ酸残基が、非修飾抗体内に存在するアミノ酸と異なる、別のアミノ酸により置換されており、これにより、非修飾抗体の結合アフィニティーを、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約150%、約200%、約300%、約400%、約500%、約600%又は約700%増大させる。
【0221】
一実施形態において、修飾抗体の軽鎖可変領域は、以下のアミノ酸置換:
(a)CDR1内のアミノ酸残基24(アルギニン)(又はCDR1のN末端から1番目のアミノ酸残基)が、中性アミノ酸若しくは疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、
(b)CDR1内のアミノ酸残基32(メチオニン)(又はCDR1のC末端から2番目のアミノ酸残基)が、疎水性アミノ酸がメチオニンでないという条件下において、中性アミノ酸若しくは疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、
(c)CDR2内のアミノ酸残基49(アラニン)(又はCDR2のN末端から1番目のアミノ酸残基)が、中性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、
(d)CDR2内のアミノ酸残基53(ロイシン)(又はCDR2のN末端から5番目のアミノ酸残基)が、中性アミノ酸若しくは塩基性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、又は
(e)CDR3内のアミノ酸残基93(アスパラギン)(又はCDR3のN末端から6番目のアミノ酸残基)が、中性アミノ酸が、アスパラギン、塩基性アミノ酸若しくは疎水性アミノ酸でないという条件下において、中性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換
のうちの少なくとも1つを含む。
【0222】
実施形態は、軽鎖領域内に、以下のアミノ酸置換:(a)CDR1内のアミノ酸残基24が、トレオニン以外の中性アミノ酸又はメチオニン、プロリン若しくはバリン以外の疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、(b)CDR1内のアミノ酸残基32が、セリン若しくはトレオニン以外の中性アミノ酸又はメチオニン、ロイシン若しくはトリプトファン以外の疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、(c)CDR2内のアミノ酸残基49が、それが、アスパラギン又はトレオニンでないという条件下において、中性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換、(d)CDR2内のアミノ酸残基53が、アスパラギン若しくはセリン以外の中性アミノ酸又はアルギニン以外の塩基性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換又は(e)CDR3内のアミノ酸残基93が、中性アミノ酸がアスパラギンでないという条件下において、中性アミノ酸により、又は疎水性アミノ酸がバリンでないという条件下において、塩基性アミノ酸若しくは疎水性アミノ酸により置換された、アミノ酸置換のうちの少なくとも1つを伴う、修飾抗体を含む。
【0223】
表5は、修飾抗体の、軽鎖可変領域のアミノ酸置換の例を提示する。例えば、Kabatによる番号付けスキームを使用すると、24位におけるアミノ酸残基は、グリシン(R024G)、セリン(R024S)又はトリプトファン(R024W)により置換され、32位におけるアミノ酸残基は、グリシン(M032G)、グルタミン(M032Q)又はバリン(M032V)により置換され、49位におけるアミノ酸残基は、グリシン(A049G)により置換され、53位におけるアミノ酸残基は、リシン(L053K)、グルタミン(L053G)又はトレオニン(L053T)により置換され、93位におけるアミノ酸残基は、アルギニン(N093R)、グルタミン(N093Q)、セリン(N093S)、トレオニン(N093T)、フェニルアラニン(N093F)、ロイシン(N093L)、メチオニン(N093M)により置換されている。
【0225】
一実施形態において、修飾抗体は、
(a)それぞれ、配列番号91、92及び93に明示されたアミノ酸配列と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、以下のアミノ酸置換:
(i)CDR1内のアミノ酸残基28が、リシン(S028K)、アルギニン(S028R)、チロシン(S028Y)若しくはフェニルアラニン(S028F)により置換された、アミノ酸置換、
(ii)CDR1内のアミノ酸残基31が、リシン(T031K)若しくはアルギニン(T031R)により置換された、アミノ酸置換、
(iii)CDR2内のアミノ酸残基57が、ヒスチジン(D057H)、グリシン(D057G)、セリン(D057S)、グルタミン(D057Q)若しくはトリプトファン(D057W)により置換された、アミノ酸置換、
(iv)CDR2内のアミノ酸残基63が、ヒスチジン(P063H)、アルギニン(P063R)、チロシン(P063Y)、アラニン(P063A)、ロイシン(P063L)若しくはバリン(P063V)により置換された、アミノ酸置換、
(v)CDR3内のアミノ酸残基105が、アルギニン(D105R)、グリシン(D105G)、トレオニン(D105T)、メチオニン(D105M)、アラニン(D105A)、イソロイシン(D105I)、リシン(D105K)若しくはバリン(D105V)により置換された、アミノ酸置換
のうちの少なくとも1つを含む重鎖可変領域並びに/又は
(b)それぞれ、配列番号97、98及び99に明示されたアミノ酸配列と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、以下のアミノ酸置換:
(i)CDR1内のアミノ酸残基24が、グリシン(R024G)、セリン(R024S)若しくはトリプトファン(R024W)により置換された、アミノ酸置換、
(ii)CDR1内のアミノ酸残基32が、グリシン(M032G)、グルタミン(M032Q)若しくはバリン(M032V)により置換された、アミノ酸置換、
(iii)CDR2内のアミノ酸残基49が、グリシン(A049G)により置換された、アミノ酸置換、
(iv)CDR2内のアミノ酸残基53が、リシン(L053K)、グルタミン(L053G)又はトレオニン(L053T)により置換された、アミノ酸置換、
(v)CDR3内のアミノ酸残基93が、アルギニン(N093R)、グルタミン(N093Q)、セリン(N093S)、トレオニン(N093T)、フェニルアラニン(N093F)、ロイシン(N093L)若しくはメチオニン(N093M)により置換された、アミノ酸置換
のうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域を含む。
【0226】
別の実施形態において、修飾抗体は、
(a)それぞれ、配列番号91、92及び93に明示されたアミノ酸配列と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、以下のアミノ酸置換:
(i)CDR1内のアミノ酸残基28が、アルギニン(S028R)により置換された、アミノ酸置換、
(ii)CDR1内のアミノ酸残基31が、アルギニン(T031R)により置換された、アミノ酸置換、
(iii)CDR2内のアミノ酸残基57が、グリシン(D057G)により置換された、アミノ酸置換、
(iv)CDR2内のアミノ酸残基63が、チロシン(P063Y)により置換された、アミノ酸置換、
(v)CDR3内のアミノ酸残基105が、アルギニン(D105R)により置換された、アミノ酸置換
のうちの少なくとも1つを含む重鎖可変領域並びに/又は
(b)それぞれ、配列番号97、98及び99に明示されたアミノ酸配列と、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%相同であるアミノ酸配列を有する、3つのCDRである、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、以下のアミノ酸置換:
(i)CDR1内のアミノ酸残基24が、トリプトファン(R024W)により置換された、アミノ酸置換、
(ii)CDR1内のアミノ酸残基32が、グルタミン(M032Q)により置換された、アミノ酸置換、
(iii)CDR2内のアミノ酸残基49が、グリシン(A049G)により置換された、アミノ酸置換、
(iv)CDR2内のアミノ酸残基53が、リシン(L053K)により置換された、アミノ酸置換、
(v)CDR3内のアミノ酸残基93が、アルギニン(N093R)により置換された、アミノ酸置換
のうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域を含む。
【0227】
<組合せに適する、OBI−898(SSEA−4抗体)の例についての記載>
組合せについての、ある特定の実施形態において、抗体は、OBI−898(抗SSEA−4モノクローナル抗体)である。例示的なOBI−898は、それらの内容が、参照によりその全体において組み込まれた、PCT特許公開(WO2017172990A1)、米国特許公開(US2018339061A1)、特許出願において記載されている通りである。
【0228】
広域スペクトルにわたるがんの診断及び処置における使用のためのマーカーへと方向付けられた、抗体法及び抗体組成物が提供される。抗SSEA−4抗体が開発され、本明細書において開示された。使用法は、限定せずに述べると、がん治療及び診断法を含む。本明細書において記載された抗体は、広域スペクトルにわたる、SSEA−4発現がん細胞に結合することが可能であり、これにより、がんの診断及び処置を容易とする。抗体によりターゲティングされうる細胞は、皮膚、血液、リンパ節、脳、肺、乳、口腔、食道、胃、肝臓、胆管、膵臓、結腸、腎臓、子宮頸部、卵巣、前立腺などにおける癌などの癌を含む。
【0229】
本開示の、例示的なSSEA−4抗体及び結合性断片は、段階特異的胚抗原4(SSEA−4)が、広域スペクトルにわたるがんにおいて多く発現されるが、正常細胞上においては発現されないという発見に基づく。SSEA−4を発現するがんは、乳がん、肺がん、食道がん、直腸がん、胆管がん、肝がん、口腔(buccal)がん、胃がん、結腸がん、鼻咽頭がん、腎がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、膵がん、精巣がん、膀胱がん、頭頸部がん、口腔(oral)がん、神経内分泌がん、副腎がん、甲状腺がん、骨がん、皮膚がん、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫又は脳腫瘍を含むがこれらに限定されない。
【0230】
一態様において、本開示は、SSEA−4に特異的な、抗体又はこの結合性断片を特色とする。抗SSEA−4抗体は、Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1に結合する。
【0231】
ある特定の態様において、本開示は、(American Type Culture Collection(ATCC)受託番号:PTA−122679下において寄託された)1J1、(ATCC受託番号:PTA−122678下において寄託された)1G1、(ATCC番号:PTA−122676下において寄託された)2F20と名指されたハイブリドーマクローン並びにこれらから産生された抗体又は抗原結合性断片を提示する。
【0232】
一態様において、本開示は、配列番号111において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の配列相同性を有するアミノ酸配列から構成された重鎖可変ドメイン(VH)及び/又は配列番号112において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有するアミノ酸配列から構成された軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗体又は抗原結合性断片を提示する。一部の態様において、配列番号111において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の配列相同性を有するアミノ酸配列から構成された、重鎖可変ドメイン(VH)のアミノ酸配列は、天然に存在する配列を含む、又はこれを除外する。一部の態様において、配列番号112において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の配列相同性を有するアミノ酸配列から構成された、軽鎖可変ドメイン(VL)のアミノ酸配列は、天然に存在する配列を含む、又はこれを除外する。
【0233】
ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合性断片は、それぞれ、明示される通りの(i)〜(iii):
(i)配列番号121から選択されるH−CDR1;
(ii)配列番号123から選択されるH−CDR2;
(iii)配列番号125から選択されるH−CDR3
から選択される、H−CDR1、H−CDR2及びH−CDR3をさらに含み、それぞれ、(iv)〜(vi):
(iv)配列番号114から選択されるL−CDR1;
(v)配列番号116から選択されるL−CDR2及び
(vi)配列番号118から選択されるL−CDR3
から選択される、L−CDR1、L−CDR2及びL−CDR3を含む。
【0234】
ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、重鎖領域を含み、重鎖領域は、配列番号121、123又は125から選択されるアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有する、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、軽鎖領域を含み、軽鎖領域は、配列番号114、116又は118から選択されるアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有する、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合性断片は、天然に存在する配列を除外する。ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合性断片は、天然に存在する配列を含む。
【0235】
ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合性断片は、それぞれ、明示される通りの(i)〜(iv):
(i)配列番号120から選択されるH−FW1;
(ii)配列番号122から選択されるH−FW2;
(iii)配列番号124から選択されるH−FW3、
(iv)配列番号126から選択されるH−FW4
から選択される、H−FW1、H−FW2、H−FW3及びH−FW4をさらに含み、それぞれ、(v)〜(viii):
(v)配列番号113から選択されるL−FW1;
(vi)配列番号115から選択されるL−FW2;
(vii)配列番号117から選択されるL−FW3、
(viii)配列番号119から選択されるL−FW4
から選択される、L−FW1、L−FW2、L−FW3及びL−FW4を含む。
【0236】
一態様において、本開示は、ATCC受託番号:PTA−122679下において寄託された、1J1と名指されたハイブリドーマによって産生された抗体又はこの抗原結合性断片を提示する。
【0237】
一態様において、本開示は、ATCC受託番号:PTA−122679下において寄託された、1J1と名指されたハイブリドーマを提示する。
【0238】
ある特定の態様において、本開示は、配列番号129において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の配列相同性を有するアミノ酸配列から構成された重鎖可変ドメイン(VH)及び/又は配列番号130において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有するアミノ酸配列から構成された軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗体又は抗原結合性断片を提示する。一部の態様において、配列番号129において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の配列相同性を有するアミノ酸配列から構成された、重鎖可変ドメイン(VH)のアミノ酸配列は、天然に存在する配列を含む、又はこれを除外する。一部の態様において、配列番号130において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の配列相同性を有するアミノ酸配列から構成された、軽鎖可変ドメイン(LH)のアミノ酸配列は、天然に存在する配列を含む、又はこれを除外する。
【0239】
ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合性断片は、それぞれ、明示される通りの(i)〜(iii):
(i)配列番号139から選択されるH−CDR1;
(ii)配列番号141から選択されるH−CDR2;
(iii)配列番号143から選択されるH−CDR3
から選択される、H−CDR1、H−CDR2及びH−CDR3をさらに含み、それぞれ、(iv)〜(vi):
(iv)配列番号132から選択されるL−CDR1;
(v)配列番号134から選択されるL−CDR2及び
(vi)配列番号136から選択されるL−CDR3
から選択される、L−CDR1、L−CDR2及びL−CDR3を含む。
【0240】
ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、重鎖領域を含み、重鎖領域は、配列番号139、141又は143から選択されるアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有する、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、軽鎖領域を含み、軽鎖領域は、配列番号132、134又は136から選択されるアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有する、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合性断片は、天然に存在する配列を含む、又はこれを除外する。
【0241】
ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合性断片は、それぞれ、明示される通りの(i)〜(iv):
(i)配列番号138から選択されるH−FW1;
(ii)配列番号140から選択されるH−FW2;
(iii)配列番号142から選択されるH−FW3、
(iv)配列番号144から選択されるH−FW4
から選択される、H−FW1、H−FW2、H−FW3及びH−FW4をさらに含み、それぞれ、(v)〜(viii):
(v)配列番号131から選択されるL−FW1;
(vi)配列番号133から選択されるL−FW2;
(vii)配列番号135から選択されるL−FW3、
(viii)配列番号137から選択されるL−FW4
から選択される、L−FW1、L−FW2、L−FW3及びL−FW4を含む。
【0242】
一態様において、本開示は、ATCC受託番号:PTA−122678下において寄託された、1G1と名指されたハイブリドーマによって産生された抗体又はこの抗原結合性断片を提示する。
【0243】
一態様において、本開示は、ATCC受託番号:PTA−122678下において寄託された、1G1と名指されたハイブリドーマを提示する。
【0244】
ある特定の態様において、本開示は、配列番号147において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の配列相同性を有するアミノ酸配列から構成された重鎖可変ドメイン(VH)及び/又は配列番号148において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有するアミノ酸配列から構成された軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗体又はこの抗原結合性断片を提示する。一部の態様において、配列番号147において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の配列相同性を有するアミノ酸配列から構成された、重鎖可変ドメイン(VH)のアミノ酸配列は、天然に存在する配列を含む、又はこれを除外する。一部の態様において、配列番号148において明示されたアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の配列相同性を有するアミノ酸配列から構成された、軽鎖可変ドメイン(VH)のアミノ酸配列は、天然に存在する配列を含む、又はこれを除外する。
【0245】
ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、それぞれ、明示される通りの(i)〜(iii):
(i)配列番号157から選択されるH−CDR1;
(ii)配列番号159から選択されるH−CDR2;
(iii)配列番号161から選択されるH−CDR3
から選択される、H−CDR1、H−CDR2及びH−CDR3をさらに含み、それぞれ、(iv)〜(vi):
(iv)配列番号150から選択されるL−CDR1;
(v)配列番号152から選択されるL−CDR2及び
(vi)配列番号154から選択されるL−CDR3
から選択される、L−CDR1、L−CDR2及びL−CDR3を含む。ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、重鎖領域を含み、重鎖領域は、配列番号157、159又は161から選択されるアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有する、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、軽鎖領域を含み、軽鎖領域は、配列番号150、152又は154から選択されるアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有する、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合性断片は、天然に存在する配列を含む、又はこれを除外する。
【0246】
ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合性断片は、それぞれ、明示される通りの(i)〜(iv):
(i)配列番号156から選択されるH−FW1;
(ii)配列番号158から選択されるH−FW2;
(iii)配列番号160から選択されるH−FW3、
(iv)配列番号162から選択されるH−FW4
から選択される、H−FW1、H−FW2、H−FW3及びH−FW4をさらに含み、それぞれ、(v)〜(viii):
(v)配列番号149から選択されるL−FW1;
(vi)配列番号151から選択されるL−FW2;
(vii)配列番号153から選択されるL−FW3、
(viii)配列番号155から選択されるL−FW4
から選択される、L−FW1、L−FW2、L−FW3及びL−FW4を含む。
【0247】
一態様において、本開示は、ATCC受託番号:PTA−122676下において寄託された、2F20と名指されたハイブリドーマによって産生された抗体又はこの抗原結合性断片を提示する。
【0248】
一態様において、本開示は、ATCC受託番号:PTA−122676下において寄託された、2F20と名指されたハイブリドーマを提示する。
【0249】
ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、それぞれ、明示される通りの(i)〜(iii):
(i)配列番号175から選択されるH−CDR1;
(ii)配列番号176から選択されるH−CDR2;
(iii)配列番号177から選択されるH−CDR3
から選択される、H−CDR1、H−CDR2及びH−CDR3をさらに含み、それぞれ、(iv)〜(vi):
(iv)配列番号180から選択されるL−CDR1;
(v)配列番号181から選択されるL−CDR2及び
(vi)配列番号182から選択されるL−CDR3
から選択される、L−CDR1、L−CDR2及びL−CDR3を含む。ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、重鎖領域を含み、重鎖領域は、配列番号175、176又は177から選択されるアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有する、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、軽鎖領域を含み、軽鎖領域は、配列番号180、181又は182から選択されるアミノ酸配列に対する、少なくとも約80%の相同性を有する、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、抗体又は抗原結合性断片は、天然に存在する配列を含む、又はこれを除外する。
【0250】
ある特定の実施形態において、例示的な抗体又はこの抗原結合性断片は、1つ以上の炭水化物抗原に結合することが可能な可変ドメインを含む。
【0251】
ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、炭水化物抗原である、SSEA−4(Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1)(六糖であるSSEA−4)をターゲティングする。
【0252】
ある特定の実施形態において、抗体又はこの抗原結合性断片は、
(a)全免疫グロブリン分子;
(b)scFv;
(c)Fab断片;
(d)F(ab’)
2又は
(e)ジスルフィド連結されたFv
から選択される。
【0253】
ある特定の実施形態において、抗体は、ヒト化抗体である。
【0254】
ある特定の実施形態において、抗体は、IgG又はIgMである。
【0255】
一態様において、本開示は、抗体又は抗原結合性断片と;少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提示する。
【0256】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1つの、さらなる治療剤をさらに含む。
【0257】
一態様において、本開示は、がん細胞の増殖を阻害するための方法であって、有効量の、例示的な医薬組成物を、それを必要とする対象へと投与するステップを含み、がん細胞の増殖が阻害される方法を提示する。
【0258】
ある特定の実施形態において、本開示は、対象におけるがんを処置する方法を提示する。方法は、それを必要とする対象へと、本明細書において記載された、有効量の、例示的な抗体を投与するステップを含む。
【0259】
ある特定の実施形態において、がんは、乳がん、肺がん、食道がん、直腸がん、胆管がん、肝がん、口腔(buccal)がん、胃がん、結腸がん、鼻咽頭がん、腎がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、膵がん、精巣がん、膀胱がん、頭頸部がん、口腔(oral)がん、神経内分泌がん、副腎がん、甲状腺がん、骨がん、皮膚がん、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫又は脳腫瘍からなる群から選択される。
【0260】
一態様において、本開示は、対象におけるがんを病期分類するための方法であって、
(a)SSEA−4の発現を検出する1つ以上の抗体を、対象から得られた、細胞試料又は組織試料へと適用するステップ;
(b)1つ以上の抗体の、細胞試料又は組織試料への結合についてアッセイするステップ;
(c)結合を正常対照と比較して、対象におけるがんの存在を決定するステップ;及び
(d)対応する抗体結合の、正常のベースライン指標と比較した相対レベルに基づき、病期を分類するステップ
を含む方法を提示する。
【0261】
<SSEA−4をターゲティングする抗体>
本開示の1つの態様は、SSEA−4関連抗原をターゲティングする、新たな抗体を特色とする。
【0262】
mAbである、1J1(ATCC受託番号:PTA−122679)とは、ハイブリドーマ細胞系(ATCC受託番号:PTA−122679)により産生されたモノクローナル抗体である。本明細書において記載された抗体は、抗体である1J1と同じ、VH鎖及びVL鎖を含有しうる。1J1と同じエピトープに結合する抗体もまた、本開示の範囲内にある。
【0263】
例及びそれらのアミノ酸並びに核酸の構造/配列が、下記に提示される。
【0265】
mAbである、1G1(ATCC受託番号:PTA−122678)とは、ハイブリドーマ細胞系(ATCC受託番号:PTA−122678)により産生された、マウスモノクローナル抗体である。本明細書において記載された抗体は、抗体である1G1と同じ、VH鎖及びVL鎖を含有しうる。1G1と同じエピトープに結合する抗体もまた、本開示の範囲内にある。
【0266】
例及びそれらのアミノ酸並びに核酸の構造/配列が、下記に提示される。
【0268】
mAbである、2F20(ATCC受託番号:PTA−122676)とは、ハイブリドーマ細胞系(ATCC受託番号:PTA−122676)により産生されたモノクローナル抗体である。本明細書において記載された抗体は、抗体である2F20と同じ、VH鎖及びVL鎖を含有しうる。2F20と同じエピトープに結合する抗体もまた、本開示の範囲内にある。
【0269】
例及びそれらのアミノ酸並びに核酸の構造/配列が、下記に提示される。
【0271】
SSEA−4 898ヒト化クローンの例及びそれらのアミノ酸配列が、下記に提示される。
【0273】
本開示の1つの態様は、SSEA−4に特異的な、新たな抗体を特色とする。抗SSEA−4抗体は、Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1(六糖であるSSEA−4)に結合する。
【0274】
<宿主動物の免疫化及びハイブリドーマ技術>
一実施形態において、本明細書において記載された抗体のうちのいずれも、全長抗体の場合もあり、この抗原結合性断片の場合もある。一部の例において、抗原結合性断片は、Fab断片、F(ab’)
2断片又は単鎖Fv断片である。一部の例において、抗原結合性断片は、Fab断片、F(ab’)
2断片又は単鎖Fv断片である。一部の例において、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体又は単鎖抗体である。
【0275】
本明細書において記載された抗体のうちのいずれも、(a)組換え抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体断片、二特異性抗体、単一特異性抗体、一価抗体、IgG
1抗体、IgG
2抗体又は抗体の誘導体であること;(b)ヒト抗体、マウス抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体、抗体の抗原結合性断片又は抗体の誘導体であること;(c)単鎖抗体断片、マルチボディ、Fab断片並びに/又はIgGアイソタイプ、IgMアイソタイプ、IgAアイソタイプ、IgEアイソタイプ、IgDアイソタイプ及び/若しくはこれらのサブクラスの免疫グロブリンであること;(d)以下の特徴:(i)がん細胞のADCC及び/若しくはCDCを媒介すること;(ii)がん細胞のアポトーシスを誘導及び/若しくは促進すること;(iii)がん細胞の標的細胞の増殖を阻害すること;(iv)がん細胞の食作用を誘導及び/若しくは促進すること並びに/又は(v)細胞傷害剤の放出を誘導及び/若しくは促進することのうちの1つ以上を有すること;(e)腫瘍特異的炭水化物抗原である、腫瘍関連炭水化物抗原に特異的に結合すること;(f)非がん細胞上、非腫瘍細胞上、良性がん細胞上及び/又は良性腫瘍細胞上において発現される抗原に結合しないこと並びに/又は(g)がん幹細胞上及び通常のがん細胞上において発現される腫瘍関連炭水化物抗原に特異的に結合することのうちの1つ以上の特徴を有する。
【0276】
好ましくは、抗体の、それらのそれぞれの抗原への結合は、特異的である。「特異的」という用語は、一般に、結合対の、1つのメンバーが、その特異的結合パートナー(複数可)以外の分子への著明な結合を示さず、例えば、本明細書において指定された分子以外の、他の任意の分子との交差反応性が、約30%未満、好ましくは、20%、10%又は1%である状況を指すのに使用される。
【0277】
抗体は、その標的エピトープに、高アフィニティー(低KD値)により結合するのに適し、好ましくは、KDは、ナノモル単位の範囲以下である。アフィニティーは、例えば、表面プラズモン共鳴など、当技術分野において公知の方法により測定されうる。
【0278】
<例示的な抗体調製物>
本明細書において記載された、グロボHエピトープ及びSSEA−4エピトープに結合することが可能な、例示的抗体は、当技術分野において公知である、任意の方法により作られうる。例えば、Harlow及びLane(1988)、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、New Yorkを参照されたい。本発明は、炭水化物抗原(例えば、グロボH)に特異的に結合する抗体を発現するハイブリドーマを作るための方法を提供する。方法は、以下のステップ:動物を、炭水化物抗原(例えば、グロボH)を含む組成物により免疫化するステップ;脾臓細胞を、動物から単離するステップ;ハイブリドーマを、脾臓細胞から作出するステップ及びグロボHに特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択するステップを含有する(Kohler及びMilstein、Nature、256:495、1975;Harlow,E.及びLane,D.、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1988)。
【0279】
一実施形態において、炭水化物抗原は、マウスを皮下免疫化するのに使用される。1回以上の追加投与が施される場合もあり、施されない場合もある。血漿中の抗体の力価は、例えば、ELISA(酵素免疫測定法)又はフローサイトメトリーによりモニタリングされうる。十分な力価の抗炭水化物抗原抗体を伴うマウスは、融合のために使用される。マウスは、屠殺及び脾臓の摘出の3日前に、抗原を追加投与される場合もあり、されない場合もある。マウス脾臓細胞が単離され、PEGにより、マウス骨髄腫細胞系へと融合される。次いで、結果として得られるハイブリドーマが、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングされる。細胞が播種され、次いで、選択用培地中において、インキュベートされる。次いで、個々のウェルに由来する上清が、ELISAにより、ヒト抗炭水化物抗原モノクローナル抗体についてスクリーニングされる。抗体を分泌するハイブリドーマが、再度繰り返してスクリーニングされ、抗炭水化物抗原抗体についてなおも陽性である場合、限界希釈によりサブクローニングされる。
【0280】
アジュバントは、炭水化物抗原のうちの1つ以上の免疫原性を増大させるのに使用されうる。アジュバントの非限定例は、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、MF59(4.3%w/vのスクアレン、0.5%w/vのポリソルベート80(Tween 80)、<0.5%w/vのトリオレイン酸ソルビタン(Span85))、CpG含有核酸、QS21(サポニンアジュバント)、−ガラクトシル−セラミド又はこれらの合成類似体(例えば、C34;US8,268,969を参照されたい。)、MPL(モノホスホリルリピドA)、3DMPL(3−O−脱アシル化MPL)、Aquillaからの抽出物、ISCOMS(例えば、Sjolanderら(1998)J.Leukocyte Biol.、64:713;WO90/03184;W096/11711;WO00/48630;W098/36772;WO00/41720;WO06/134423及びWO07/026190を参照されたい。)、LT/CT突然変異体、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLG)マイクロ粒子、QuilA、インターロイキン、フロイントアジュバント、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−nor−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDPと称された、CGP11637)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PEと称された、CGP19835A)及び、<2%のスクアレン/Tween 80エマルジョン中に、細菌から抽出された、3つの構成要素である、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコール酸、細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含有する、RIBIを含む。
【0281】
抗SSEA−4抗体に対する、例示的なポリクローナル抗体は、従来の任意の方法により、血清中の所望の抗体の増大について検討される免疫化哺乳動物から、血液を回収し、血液から、血清を分離することにより調製されうる。ポリクローナル抗体は、ポリクローナル抗体を含有する血清を含むほか、ポリクローナル抗体を含有する画分は、血清から単離されうる。
【0282】
ポリクローナル抗体は、一般に、宿主動物(例えば、ウサギ、マウス、ウマ又はヤギ)において、対象とする抗原及びアジュバントの、複数回にわたる皮下(sc)注射又は腹腔内(ip)注射により惹起される。二官能性薬剤又は誘導剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介するコンジュゲーション)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl
2などを使用して、対象とする抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、スカシガイヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又はダイズトリプシン阻害剤へとコンジュゲートすることは、有用でありうる。
【0283】
任意の哺乳動物が、所望の抗体を作製するための抗原により免疫化されうる。一般に、ロデンティア(Rodentia)目、ラゴモルファ(Lagomorpha)目又はプリマテス(Primates)目の動物が使用されうる。ロデンティア(Rodentia)目の動物は、例えば、マウス、ラット及びハムスターを含む。ラゴモルファ(Lagomorpha)目の動物は、例えば、ウサギを含む。プリマテス(Primates)目の動物は、例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis)、アカゲザル、ヒヒ及びチンパンジーなど、カタリニ(Catarrhini)目のサル(旧世界ザル)を含む。
【0284】
当技術分野において、動物を抗原により免疫化するための方法が公知である。抗原の腹腔内注射又は皮下注射は、哺乳動物の免疫化のための標準的な方法である。より具体的に述べると、抗原を、適量のリン酸緩衝生理食塩液(PBS)中、生理食塩液中などにおいて希釈し、懸濁させることができる。所望の場合、抗原懸濁液は、フロイント完全アジュバントなど、適量の標準的なアジュバントと混合し、エマルジョンへと作り、次いで、哺乳動物へと投与しうる。1mg又は1μgのペプチド又はコンジュゲート(それぞれ、ウサギ用又はマウス用)を、3容量のフロイント不完全アジュバントと組み合わせることにより、動物を、抗原、免疫原性コンジュゲート又は免疫原性誘導体に対して免疫化する。
【0285】
力価がプラトーに達するまで、適量の、フロイント不完全アジュバントと混合された抗原を、4〜21日ごと、複数回にわたり投与することにより、動物に追加投与しうる。フロイント完全アジュバント中に、元の量の5分の1〜10分の1のペプチド又はコンジュゲートを、複数の部位における皮下注射することにより、動物に追加投与する。7〜14日後、動物から採血し、血清を、抗体力価についてアッセイする。免疫化のために、適切な担体もまた使用しうる。上記の通りの免疫化の後、血清を、標準的な方法により、所望の抗体量の増大について検討する。好ましくは、動物に、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるタンパク質へと、かつ/又は異なる架橋試薬を介してコンジュゲートされたコンジュゲートを追加投与する。コンジュゲートはまた、組換え細胞培養物中において、タンパク質融合体としても作ることができる。また、アラムなどの凝集剤も、免疫応答を増強するのに使用すると適切である。
【0286】
過去20〜30年間にわたり、ヒトへの、インビボにおける治療適用のためのキメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体を調製するための、多数の方法が開発されている。最もよく使用され、実績のある方法は、ハイブリドーマ法を使用して、マウスmAbを調製し、次いで、mAbの、VHドメイン及びVLドメインのフレームワーク領域並びに定常ドメインを、ヒトの、VHドメイン及びVLドメインの、最も相同なヒトフレームワーク領域並びに所望のヒト免疫グロブリンのγアイソタイプ及びサブクラスの定常領域へと転換することにより、mAbをヒト化することである。臨床において使用されるXolairなど、多くのmAbは、ヒトγ1サブクラス及びヒトκアイソタイプによる、ヒト化mAbであり、この方法を使用して調製される。
【0287】
ある特定の実施形態において、抗体は、従来のハイブリドーマ技術(Kohlerら、Nature、256:495(1975))により作製されうる。ハイブリドーマ法において、マウス又は、ハムスター若しくはウサギなど、他の適切な宿主動物は、本明細書の上記において記載された通りに、免疫化のために使用されたタンパク質に特異的に結合する抗体を産生する、又はこれらを産生することが可能なリンパ球を誘発するように免疫化される。代替的に、リンパ球は、インビトロにおいても免疫化されうる。
【0288】
モノクローナル抗体を調製するために、抗原により免疫化された哺乳動物から、免疫細胞が回収され、上記において記載された通り、血清中の、所望の抗体のレベルの上昇について点検され、細胞融合にかけられる。細胞融合のために使用される免疫細胞は、好ましくは、脾臓から得られる。上記の免疫細胞と融合される、他の好ましい親細胞は、例えば、哺乳動物の骨髄腫細胞、より好ましくは、薬物による融合細胞の選択のために獲得された特性を有する骨髄腫細胞を含む。
【0289】
好ましい骨髄腫細胞は、融合が効率的であり、選択された抗体産生細胞による、安定的、かつ、高レベルの、抗体の産生を支援し、HAT培地などの培地に対して感受性の骨髄腫細胞である。これらの中において、好ましい骨髄腫細胞系は、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、Calif.USAから入手可能な、MOPC−21マウス腫瘍及びMPC−11マウス腫瘍並びにAmerican Type Culture Collection、Rockville、Md.、USAから入手可能な、SP−2細胞に由来するマウス骨髄腫細胞系などのマウス骨髄腫細胞系である。また、ヒト骨髄腫細胞系及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系も、ヒトモノクローナル抗体の作製について記載されている(Kozbor、J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」、51〜63頁(Marcel Dekker,Inc.、New York、1987))。
【0290】
上記の免疫細胞及び骨髄腫細胞は、公知の方法、例えば、Milsteinらによる方法(Galfreら、Methods Enzymol.、73:3〜46、1981)に従い融合されうる。ポリエチレングリコールなど適切な融合剤を使用して、リンパ球が骨髄腫細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding、「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」、59〜103頁(Academic Press、1986))。細胞融合により結果として得られたハイブリドーマは、それらを、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有する培地)など、標準的な選択培地中において培養することにより選択されうる。細胞の培養は、典型的に、HAT培地中において、数日間〜数週間にわたり持続され、所望のハイブリドーマ(非融合細胞)を除き、他の全ての細胞が死滅するのに十分な時間である。次いで、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞をスクリーニング及びクローニングするように、標準的な限界希釈が実施される。
【0291】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞は、融合されていない親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する、1つ以上の物質を、好ましくは含有する、適切な培養培地中に播種され、増殖させられる。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素である、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的に、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する物質である、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含む。
【0292】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地が、抗原を指向するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が、免疫沈降又はインビトロ結合アッセイにより決定される。酵素免疫測定法(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び/又は免疫蛍光法における吸光度の測定は、本発明の抗体の抗原結合活性を測定するのに使用されうる。ELISAにおいて、本発明の抗体を、プレート上に固定化し、本発明のタンパク質を、プレートへと適用し、次いで、抗体産生細胞の培養物上清又は精製抗体など、所望の抗体を含有する試料を適用する。次いで、一次抗体を認識し、アルカリホスファターゼなどの酵素で標識された二次抗体を適用し、プレートをインキュベートする。次に、洗浄の後、p−ニトロフェニルリン酸などの酵素基質を、プレートへと添加し、吸光度を測定して、試料の抗原結合活性を評価する。この方法において、C末端断片又はN末端断片など、タンパク質の断片が使用されうる。BIAcore(Pharmacia)は、本発明に従う抗体の活性を評価するのに使用されうる。モノクローナル抗体の結合アフィニティーは、例えば、Munsonら、Anal.Biochem.、107:220(1980)のスキャッチャード解析により決定されうる。
【0293】
上記において記載された方法を含む従来の方法のうちのいずれかを適用して、本明細書において記載されたエピトープに結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が、さらなる特徴づけのために同定及び選択されうる。
【0294】
所望の特異性、アフィニティー及び/又は活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンは、限界希釈手順によりサブクローニングされ、標準法により増殖させられうる(Goding、「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」、59〜103頁(Academic Press、1986))。この目的に適する培養培地は、例えば、D−MEM培地又はRPMI−1640培地を含む。サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーなど、従来の免疫グロブリン精製手順により、培養培地、腹水又は血清から適切に分離される。
【0295】
加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍として、インビボにおいて増殖させられる場合もある。例えば、得られたハイブリドーマは、その後、マウスの腹腔へと移植される場合があり、腹水が採取される。
【0296】
得られたモノクローナル抗体は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、プロテインAカラム若しくはプロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー又は本発明のタンパク質がカップリングされたアフィニティーカラムにより精製されうる。本発明の抗体は、本発明のタンパク質を精製及び検出するためだけでなく、また、本発明のタンパク質のアゴニスト及びアンタゴニストのための候補物質としても使用されうる。加えて、この抗体は、本発明のタンパク質と関連する疾患のための、抗体による処置へも適用されうる。
【0297】
<組換え技術>
このようにして得られたモノクローナル抗体はまた、遺伝子操作法を使用して、組換えにより調製される場合もある(例えば、Borrebaeck C.A.K.及びLarrick J.W.、「Therapeutic Monoclonal Antibodies」、MacMillan Publishers LTD、United Kingdom刊、1990を参照されたい。)。抗体をコードするDNAは、抗体を産生するハイブリドーマ又は免疫化リンパ球などの免疫細胞からクローニングされ、適切なベクターへと挿入され、組換え抗体を調製するように、宿主細胞へと導入されうる。本発明はまた、上記において記載された通りに調製された、組換え抗体物も提供する。
【0298】
得られた抗体が、ヒト体内へと投与される場合(抗体による処置)、免疫原性を低減するために、ヒト抗体又はヒト化抗体が好ましい。例えば、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物は、タンパク質、タンパク質発現細胞又はこれらの溶解物から選択される抗原により免疫化されうる。次いで、抗体産生細胞が、動物から回収され、骨髄腫細胞と融合され、タンパク質に対するヒト抗体が調製されうるハイブリドーマを得る。代替的に、抗体を産生する免疫化リンパ球などの免疫細胞は、がん遺伝子により不死化され、モノクローナル抗体を調製するために使用されうる。
【0299】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、たやすく単離及びシーケンシングされうる。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの、好ましい供給源として用いられる。単離されたら、DNAは、発現ベクター内へと入れられ、次いで、組換え宿主細胞内の、モノクローナル抗体の合成を得るように、E.コリ細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はこれ以外に、免疫グロブリンタンパク質を産生しない、骨髄腫細胞などの宿主細胞へとトランスフェクトされる。抗体をコードするDNAの、細菌内の組換え発現についての総説論文は、Skerraら、Curr.Opinion in Immunol.、5:256〜262(1993)及びPluckthun、Immunol.Revs、130:151〜188(1992)を含む。
【0300】
上記において記載されたハイブリドーマ細胞により産生される抗体をコードするDNAは、遺伝子操作抗体を産生するように、常套的な技術を介して遺伝子改変されうる。ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体及び二特異性抗体などの遺伝子操作抗体は、例えば、従来の組換え技術を介して作製されうる。次いで、例えば、ヒト重鎖定常ドメイン及びヒト軽鎖定常ドメインをコードする配列により、相同なマウス配列を置換すること(Morrisonら(1984)、Proc.Nat.Acad.Sci.、81:6851)により、DNAが修飾される場合もあり、免疫グロブリンのコード配列を、非免疫グロブリンポリペプチドをコードする配列の全部又は一部へと共有結合的に接合することにより修飾される場合もある。このようにして、標的抗原への結合特異性を有する、「キメラ」抗体又は「ハイブリッド」抗体などの遺伝子操作抗体が調製されうる。
【0301】
当技術分野において、「キメラ抗体」の作製のために開発された技法が周知である。例えば、Morrisonら(1984)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81、6851;Neubergerら(1984)、Nature、312、604及びTakedaら(1984)、Nature、314:452を参照されたい。
【0302】
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドが、抗体の定常ドメインにより置換され、又は抗体の1つの抗原結合性部位の可変ドメインにより置換され、別の抗原に対する特異性を有する、1つの抗原結合性部位及びそれとは異なる抗原結合性部位に対する特異性を有する、1つの抗原結合性部位を含むキメラ二価抗体が創出される。
【0303】
キメラ抗体又はハイブリッド抗体はまた、合成タンパク質化学において公知の方法であって、架橋剤を伴う方法を含む方法を使用して、インビトロにおいて調製されうる。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して構築される場合もあり、チオエーテル結合を形成することにより構築される場合もある。この目的に適する試薬の例は、イミノチオレート(iminothiolate)及びメチル−4−メルカプトブチルイミデートを含む。
【0304】
当技術分野において、非ヒト抗体をヒト化するための方法が周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された、1つ以上のアミノ酸残基を有しうる。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と称されることが多く、これは、典型的に、「移入」可変ドメインから採取される。ヒト化は、Winterらによる方法(Jonesら、Nature、321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature、332:323〜327(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534〜1536(1988))に従い、齧歯動物CDR又は齧歯動物CDR配列により、ヒト抗体の対応する配列を置換することにより、本質的に実施されうる。したがって、このような「ヒト化」抗体とは、実質的に無傷に満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種に由来した、対応する配列により置換されている、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際、ヒト化抗体は、典型的に、一部のCDR残基と、おそらく、一部のFR残基とが、齧歯動物抗体内の、類似の部位に由来する残基により置換されている、ヒト抗体である。
【0305】
ヒト化抗体を作るのに使用される、軽鎖及び重鎖両方の、ヒト可変ドメインの選出も、抗原性を低減するのに極めて重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従い、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列が、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに照らしてスクリーニングされる。次いで、齧歯動物の配列に最も近接するヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受容される(Simsら、J.Immunol.、151:2296(1993);Chothiaら、J.Mol.Biol.、196:901(1987))。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定の亜群についての、全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する、特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用されうる(Carterら、Proc.Natl.Acad Sci.USA、89:4285(1992);Prestaら、J.Immnol.、151:2623(1993))。
【0306】
抗原に対する高アフィニティー及び他の好適な生物学的特性を保持しつつ、抗体がヒト化されることは、さらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法に従い、親配列及びヒト化配列についての三次元モデルを使用する、親配列及び多様な概念上のヒト化産物についての解析工程により、ヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された、候補免疫グロブリン配列についての、蓋然的な三次元コンフォメーション構造を例示及び提示する、コンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示についての精査は、候補免疫グロブリン配列の機能化において可能性の高い、残基の役割についての解析、すなわち、候補免疫グロブリンが、その抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基についての解析を可能とする。このようにして、標的抗原に対するアフィニティーの増大など、所望の抗体特徴が達成されるように、FR残基は、レシピエント配列及び移入配列から選択され、組み合わされうる。一般に、CDR残基は、抗原への結合に対する影響に、直接、かつ、極めて実質的に関与する。
【0307】
代替的に、免疫化時に、内因性免疫グロブリン産生の非存在下において、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生することが可能な、トランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することもできる。例えば、キメラ/生殖細胞系列突然変異マウスにおける、抗体重鎖接合領域(J
H)遺伝子のホモ接合性の欠失が、内因性抗体産生の完全な阻害を結果としてもたらすことについて記載されている。ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子アレイの、このような生殖細胞系列突然変異マウスへの導入は、抗原投与時における、ヒト抗体の産生を結果としてもたらす。例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255〜258(1993);Bruggermannら、Year in Immuno.、7:33(1993)を参照されたい。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーからも導出されうる(Hoogenboomら、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol.、222:581〜597(1991))。
【0308】
また、本明細書において記載された、抗SSEA−4抗体(重鎖、軽鎖、又はこれらの両方を含む)をコードする核酸、核酸のうちの1つ以上を含む発現ベクターなどのベクター及びベクターのうちの1つ以上を含む宿主細胞のうちのいずれも、本開示の範囲内にある。一部の例において、ベクターは、本明細書において記載された、抗グロボH抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸を含む。一部の例において、ベクターは、本明細書において記載された、抗SSEA−4抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする、ヌクレオチド配列を含む核酸を含む。他の例において、ベクターは、それらの発現が、単一のプロモーターにより制御される場合もあり、2つの個別のプロモーターにより制御される場合もある、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方をコードする、ヌクレオチド配列を含む。本明細書においてまた、例えば、本明細書において記載された、組換え技術を介して、本明細書において記載された、抗グロボH抗体及び抗SSEA−4抗体のうちのいずれかを作製するための方法も提示される。
【0309】
抗体を調製するための他の技術
ある特定の実施形態において、完全ヒト抗体は、特異的なヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された、市販のマウスを使用することにより得られうる。また、より所望される免疫応答(例えば、完全ヒト抗体)又はよりロバストな免疫応答をもたらすようにデザインされたトランスジェニック動物も、ヒト化抗体又はヒト抗体の作出のために使用されうる。このような技術の例は、Amgen,Inc.(Fremont、Calif.)製のXenomouse(登録商標)並びにMedarex,Inc.(Princeton、N.J.)製のHuMAb−Mouse(登録商標)及びTC Mouse(商標)である。代替的に、抗体は、ファージディスプレイ技術を介して、組換えにより作製できる。例えば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同第5,733,743号及び同第6,265,150号並びにWinterら(1994)、Annu.Rev.Immunol.、12:433〜455を参照されたい。代替的に、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら(1990)、Nature、348:552〜553)は、インビトロにおいて、ヒト抗体及びヒト抗体断片を、非免疫化ドナーに由来する免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからもたらすのにも使用されうる。
【0310】
無傷抗体(すなわち全長抗体)の抗原結合性断片は、常套的な方法を介して調製されうる。例えば、F(ab’)
2断片は、抗体分子のペプシン消化により作製される場合があり、Fab断片は、F(ab’)
2断片のジスルフィド架橋を還元することにより作出されうる。
【0311】
代替的に、本明細書において記載された、抗グロボH抗体及び抗SSEA−4抗体は、McCaffertyら、Nature、348:552〜554(1990);Clacksonら、Nature、352:624〜628(1991)及びMarksら、J.Mol Biol.、222:581〜597(1991)において記載されている技法を使用して作出された、抗体ファージライブラリー(例えば、単鎖抗体ファージライブラリー)からも単離されうる。その後の刊行物は、鎖シャッフリングによる高アフィニティー(nM範囲)のヒト抗体の作製(Marksら、Bio/Technology、10:779〜783(1992))のほか、極めて大規模なファージライブラリーを構築するための戦略としての、コンビナトリアル感染及びインビボにおける組換え(Waterhouseら、Nuc.Acids.Res.、21:2265〜2266(1993))について記載している。こうして、これらの技法は、モノクローナル抗体を単離するための、従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する、実行可能な代替法である。
【0312】
本明細書において記載された通りに得られた抗体は、均質となるまで精製されうる。例えば、抗体の分離及び精製は、一般のタンパク質のために使用される分離法及び精製法に従い実施されうる。例えば、抗体は、アフィニティークロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動及び他の分離法及び精製法(「Antibodies:A Laboratory Manual」、Ed Harlow及びDavid Lane、Cold Spring Harbor Laboratory、1988)であるがこれらに限定されない分離法及び精製法の、適切に選択され、組み合わされた使用により、分離及び単離されうる。上記の通りに得られた抗体の濃度は、吸光度の測定、酵素免疫測定法(ELISA)などにより決定されうる。アフィニティークロマトグラフィーを除く、例示的なクロマトグラフィーは、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィーなど(「Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual」、Daniel R.Marshakら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1996)を含む。クロマトグラフィー手順は、HPLC、FPLCなどの液相クロマトグラフィーにより実行されうる。
【0313】
抗体は、当技術分野において周知の方法を使用して特徴づけられうる。例えば、1つの方法は、抗原が結合するエピトープを同定すること又は「エピトープマッピング」である。例えば、Harlow及びLane、「Using Antibodies,a Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1999の11章において記載されている、抗体−抗原複合体の結晶構造の分解、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ及び合成ペプチドベースのアッセイを含めて、エピトープの、タンパク質上の位置をマッピングし、特徴づけるための多くの方法が当技術分野において公知である。加えて、エピトープマッピングは、抗体が結合する配列を決定するのに使用されうる。エピトープは、直鎖状エピトープ(例えば、アミノ酸の単一の連なりの中に含有される直鎖状エピトープ)の場合もあり、単一の連なり(一次構造の直鎖状配列)の中に必ずしも含有されない可能性がある、アミノ酸の三次元的相互作用により形成される、コンフォメーショナルエピトープの場合もある。長さが変動するペプチド(例えば、少なくとも4〜6アミノ酸の長さ)が、単離又は合成され(例えば、組換えにより)、抗体を伴う結合アッセイのために使用されうる。別の例において、抗体が結合するエピトープは、標的抗原配列に由来する重複ペプチドを使用し、抗体による結合を決定することによる、体系的スクリーニングにおいて決定されうる。遺伝子断片発現アッセイに従い、標的抗原をコードするオープンリーディングフレームが、ランダムに、又は特異的遺伝子構築により断片化され、発現された抗原の断片の、被験抗体との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えば、PCRにより作製され、次いで、放射性アミノ酸の存在下、インビトロにおいて、タンパク質へと転写及び翻訳されうる。次いで、抗体の、放射性標識された抗原断片への結合が、免疫沈降及びゲル電気泳動により決定される。ある特定のエピトープはまた、ファージ粒子の表面上において提示された、ランダムなペプチド配列の、大規模ライブラリー(ファージライブラリー)を使用することによっても同定されうる。代替的に、重複ペプチド断片の規定されたライブラリーは、単純な結合アッセイにおいても、被験抗体への結合について調べられうる。
【0314】
さらなる例において、エピトープの結合に要求され、十分であり、かつ/又は必要な残基を同定するように、抗原結合性ドメインに対する突然変異誘発、ドメインスワッピング実験及びアラニン走査突然変異誘発が実施されうる。例えば、ドメインスワッピング実験は、標的抗原の突然変異体であって、候補抗体に対する結合エピトープ内の多様な残基が、近縁であるが、抗原的に顕著に異なるタンパク質(ニュートロフィンタンパク質ファミリーの別のメンバーなど)に由来する配列により置換えられた(スワッピングされた)突然変異体を使用して実施されうる。抗体の、突然変異体の標的タンパク質への結合を評価することにより、特定の抗原断片の、抗体の結合に対する重要性が評価されうる。
【0315】
代替的に、抗体(例えば、本明細書において記載されたMC45抗体)が、他の抗体と同じエピトープに結合するのかどうかを決定するように、同じ抗原に結合することが公知である、他の抗体を使用しても、競合アッセイが実施されうる。競合アッセイは、当業者に周知である。
【0316】
例示的であり、適切な、一般的抗体作製法についてのさらなる態様
当技術分野において、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体並びにこれらの断片を、動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ又はウマ)において作る方法が周知である。例えば、Harlow及びLane(1988)、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、New Yorkを参照されたい。「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子のほか、Fab、F(ab’)
2、Fv、scFv(単鎖抗体)及びdAb(ドメイン抗体;Wardら(1989)、Nature、341、544)など、これらの断片を含む。
【0317】
本明細書において開示された組成物は、本開示を読んだ当業者に同定可能な、さらなる活性薬剤、担体、媒体、賦形剤又は補助剤と併せて、医薬組成物中に組み入れられうる。
【0318】
医薬組成物は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む。このような医薬組成物中において、本明細書において開示された組成物は、「活性薬剤」ともまた称された、「活性化合物」を形成する。本明細書において使用された、「薬学的に許容される担体」という表現は、医薬の投与と適合性の、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。また、補助的な活性化合物も、組成物へと組み込まれうる。医薬組成物は、その意図された投与経路と適合性となるように製剤化される。投与経路の例は、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口(例えば、吸入)投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与及び直腸内投与を含む。非経口適用、皮内適用又は皮下適用のために使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分:注射用水、生理食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの滅菌希釈液;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸、クエン酸又はリン酸などの緩衝剤及び塩化ナトリウム又はデキストロースなど、張性を調整するための薬剤を含みうる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基により調整されうる。非経口調製物は、アンプル内、ディスポーザブルのシリンジ内又はガラス製若しくはプラスチック製の、複数回投与用のバイアル内に封入されうる。
【0319】
少なくとも1つの抗SSEA−4抗体又は抗SSEA−4抗体をコードする配列を含む、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物が提供される。ある特定の実施形態において、組成物は、医薬組成物でありうる。本明細書において使用された組成物は、1つ以上のSSEA−4に結合する1つ以上の抗体及び/又は1つ以上のSSEA−4に結合する1つ以上の抗体をコードする配列を含む、1つ以上のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、当技術分野において周知の緩衝剤を含む、薬学的に許容される賦形剤など、適切な担体もさらに含みうる。
【0320】
一実施形態において、抗SSEA−4抗体は、モノクローナル抗体である。別の実施形態において、抗SSEA−4抗体の断片(例えば、Fab断片、Fab’−SH断片及びF(ab’)
2断片)が提供される。これらの抗体断片は、酵素による消化など、従来の手段により創出される場合もあり、組換え技術により作出される場合もある。このような抗体断片は、キメラ抗体断片の場合もあり、ヒト化抗体断片の場合もあり、ヒト抗体断片の場合もある。これらの断片は、下記に示される診断目的及び治療目的に有用である。
【0321】
当技術分野において、目的の抗体が得られうる、ファージディスプレイライブラリーを作出するための、様々な方法が公知である。目的の抗体を作出する、1つの方法は、Leeら、J.Mol.Biol.(2004)、340(5):1073〜93において記載されている、ファージ抗体ライブラリーの使用を介する。
【0322】
本発明の抗SSEA−4抗体は、コンビナトリアルライブラリーを使用して、1つ以上の、所望の活性を伴う合成抗体クローンについてスクリーニングすることにより作製できる。原則として、合成抗体クローンは、ファージコートタンパク質へと融合された、抗体可変領域の多様な断片(Fv)を提示するファージを含有する、ファージライブラリーをスクリーニングすることにより選択される。このようなファージライブラリーは、所望の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによりパニングされる。所望の抗原に結合することが可能なFv断片を発現するクローンを、抗原へと吸着させ、これにより、ライブラリー内の非結合性クローンから分離する。次いで、結合性クローンを、抗原から溶出させ、さらなる抗原吸着/溶出サイクルにより、さらに濃縮することができる。本発明の抗SSEA−4抗体のうちのいずれかは、適切な抗原スクリーニング手順をデザインして、目的のファージクローンについて選択するのに続き、目的のファージクローンに由来するFv配列と、Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、NIH Publication第91−3242号、Bethesda Md.(1991)、1〜3巻において記載されている、適切な定常領域(Fc)配列とを使用して、全長抗SSEA−4抗体クローンを構築することにより得られうる。
【0323】
抗体の抗原結合性ドメインは、約110アミノ酸の、2つの可変(V)領域であって、1つずつが、軽(VL)鎖及び重(VH)鎖に由来し、いずれもが、3つの超可変ループ又は相補性決定領域(CDR)を提示する、V領域から形成される。可変ドメインは、VHとVLとが、短い可撓性ペプチドを介して共有結合的に連結された、単鎖Fv(scFv)断片として、ファージ上に機能的に提示される場合もあり、Winterら、Ann.Rev.Immunol.、12:433〜455(1994)において記載される通り、それらが各々、定常ドメインへと融合され、非共有結合的に相互作用する、Fab断片として、ファージ上に機能的に提示される場合もある。本明細書において使用された、scFvをコードするファージクローン及びFabをコードするファージクローンは、まとめて、「Fvファージクローン」又は「Fvクローン」と称される。
【0324】
VH遺伝子及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、個別にクローニングされ、ファージライブラリー内において、ランダムに組み換えられ、次いで、Winterら、Ann.Rev.Immunol.、12:433〜455(1994)において記載されている通り、抗原結合性クローンについて検索されうる。免疫化供給源に由来するライブラリーは、ハイブリドーマの構築を要求せずに、免疫原に対する、高アフィニティー抗体を提示する。代替的に、Griffithsら、EMBO J、12:725〜734(1993)により記載される通り、免疫化を伴わずに、広範にわたる、非自己抗原に対するヒト抗体と、また自己抗原に対するヒト抗体とによる、単一の供給源をもたらすように、ナイーブレパートリーもクローニングされうる。最後に、ナイーブライブラリーはまた、Hoogenboom及びWinter、J.Mol.Biol.、227:381〜388(1992)により記載されている通り、幹細胞に由来する、再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダムな配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度に可変性のCDR3領域をコードし、インビトロにおける再配列を達成することを介して、合成によっても作製できる。
【0325】
マイナーコートタンパク質である、pIIIへの融合により、抗体断片を提示するのに、繊維状ファージが使用される。抗体断片は、例えば、Marksら、J.Mol.Biol.、222:581〜597(1991)により記載されている通り、VHドメインとVLドメインとが、同じポリペプチド鎖上において、可撓性のポリペプチドスペーサーにより接続された、単鎖Fv断片として提示される場合もあり、例えば、Hoogenboomら、Nucl.Acids Res.、19:4133〜4137(1991)において記載されている通り、一方の鎖が、pIIIへと融合され、他方の鎖が、細菌宿主細胞のペリプラズムへと分泌され、ここで、Fab−コートタンパク質構造のアセンブリーが、野生型コートタンパク質の一部を置換することにより、ファージ表面上に提示される、Fab断片として提示される場合もある。
【0326】
一般に、抗体遺伝子断片をコードする核酸は、ヒト又は動物から採取された免疫細胞から得られる。抗SSEA−4クローンに好適なバイアスのかかったライブラリーが所望される場合、抗体応答を発生させ、脾臓細胞及び/若しくは循環B細胞又は他の末梢血リンパ球(PBL)が、ライブラリー構築のために回収されるように、対象が、SSEA−4により免疫化される。一実施形態において、抗ヒトSSEA−4クローンに好適なバイアスのかかったヒト抗体遺伝子断片ライブラリーは、SSEA−4による免疫化が、SSEA−4に対するヒト抗体を産生するB細胞をもたらすように、機能的なヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを保有する(保有し、かつ、機能的な内因性抗体産生系を欠く)トランスジェニックマウスにおいて、抗ヒトSSEA−4抗体応答を発生させることにより得られる。ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスの作出については、下記に記載される。
【0327】
抗SSEA−4反応性細胞集団についてのさらなる濃縮は、SSEA−4特異的抗体を発現するB細胞を単離するのに適するスクリーニング手順であって、例えば、SSEA−4アフィニティークロマトグラフィーによる細胞の分離又は蛍光色素標識されたSSEA−4への細胞の吸着に続く、蛍光活性化細胞分取(FACS)を介する手順を使用することにより得られうる。
【0328】
代替的に、非免疫化ドナーに由来する、脾臓細胞及び/若しくはB細胞又は他のPBLの使用は、可能な抗体レパートリーの、より良好な表示をもたらし、また、SSEA−4が抗原性でない、任意の動物(ヒト又は非ヒト)種を使用する、抗体ライブラリーの構築も可能とする。インビトロにおける抗体遺伝子の構築を組み込むライブラリーのために、再配列されていない抗体遺伝子セグメントをコードする核酸をもたらすように、幹細胞が対象から採取される。目的の免疫細胞は、ヒト種、マウス種、ラット種、ウサギ目動物種、オオカミ科動物種、イヌ科動物種、ネコ科動物種、ブタ科動物種、ウシ科動物種、ウマ科動物種及び鳥類種など、様々な動物種から得られうる。
【0329】
抗体の可変遺伝子セグメント(VHセグメント及びVLセグメントを含む)をコードする核酸は、目的の細胞から回収され、増幅される。再配列されたVH遺伝子ライブラリー及びVL遺伝子ライブラリーの場合、所望のDNAは、Orlandiら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、86:3833〜3837(1989)において記載される通り、ゲノムDNA又はmRNAを、リンパ球から単離するのに続き、再配列されたVH遺伝子及びVL遺伝子の5’端及び3’端にマッチするプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、これにより、発現のための、多様なV遺伝子レパートリーを作ることにより得られうる。V遺伝子は、Orlandiら(1989)及びWardら、Nature、341:544〜546(1989)において記載されている通り、成熟Vドメインをコードするエクソンの5’端におけるバックプライマーと、Jセグメントに基づくフォワードプライマーとにより、cDNA及びゲノムDNAから増幅されうる。しかしまた、cDNAから増幅するために、バックプライマーが、Jonesら、Biotechnol.、9:88〜89(1991)において記載されている通り、リーダーエクソンに基づき、フォワードプライマーが、Sastryら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、86:5728〜5732(1989)において記載されている通り、定常領域に基づく場合もある。相補性を最大化するため、Orlandiら(1989)又はSastryら(1989)において記載されている通り、プライマー内に縮重が組み込まれうる。ある特定の実施形態において、例えば、Marksら、J.Mol.Biol.、222:581〜597(1991)による方法において記載されている通り、又はOrumら、Nucleic Acids Res.、21:4491〜4498(1993)による方法において記載されている通り、免疫細胞の核酸試料中に存在する、全ての利用可能なVH及びVL構成を増幅するために、各V遺伝子ファミリーへとターゲティングされたPCRプライマーを使用することにより、ライブラリーの多様性が最大化される。増幅されたDNAを、発現ベクターへとクローニングするために、Orlandiら(1989)において記載されている通り、稀少な制限部位が、PCRプライマー内に、一方の端部におけるタグとして導入される場合もあり、Clacksonら、Nature、352:624〜628(1991)において記載されている通り、タグ付けされたプライマーを伴う、さらなるPCR増幅により導入される場合もある。
【0330】
合成により再配列されたV遺伝子のレパートリーは、インビトロにおいて、V遺伝子セグメントから導出されうる。ヒトVH遺伝子セグメントの大半は、クローニング及びシーケンシングされ(Tomlinsonら、J.Mol.Biol.、227:776〜798(1992)において報告されている)、マッピングされており(Matsudaら、Nature、Genet.、3:88〜94(1993)において報告されている);Hoogenboom及びWinter、J.Mol.Biol.、227:381〜388(1992)において記載されている通り、これらのクローニングされたセグメント(H1ループ及びH2ループの全ての主要なコンフォメーションを含む)は、多様な配列及び長さのH3ループをコードするPCRプライマーにより、多様なVH遺伝子レパートリーを作出するのに使用されうる。また、Barbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4457〜4461(1992)において記載される通り、単一の長さの、長いH3ループに焦点を当てた、全ての配列多様性を伴うVHレパートリーも作製できる。ヒトVκセグメント及びヒトVλセグメントは、クローニング及びシーケンシングされており(Williams及びWinter、Eur.J.Immunol.、23:1456〜1461(1993)において報告されている)、合成軽鎖レパートリーを作るのに使用されうる。VH及びVLのフォールドの範囲並びにL3及びH3の長さに基づく、合成によるV遺伝子レパートリーは、大幅な構造的多様性を有する抗体をコードする。V遺伝子をコードするDNAの増幅に続き、Hoogenboom及びWinter、J.Mol.Biol.、227:381〜388(1992)による方法に従い、インビトロにおいて、生殖細胞系列のV遺伝子セグメントが再配列されうる。
【0331】
抗体断片のレパートリーは、VH遺伝子レパートリーと、VL遺伝子レパートリーとを、いくつかの方式により、一体に組み合わせることにより構築されうる。各レパートリーは、異なるベクター内において創出される場合があり、ベクターは、例えば、Hogrefeら、Gene、128:119〜126(1993)において記載されている通り、インビトロにおいて組み換えられる場合もあり、Waterhouseら、Nucl.Acids Res.、21:2265〜2266(1993)において記載されている通り、インビボにおいて、コンビナトリアル感染、例えば、loxP系により組み換えられる場合もある。インビボにおける組換え法は、Fab断片の2本鎖としての性質を利用して、E.コリの形質転換効率により付与される、ライブラリーサイズに対する制限を克服する。ナイーブVHレパートリーと、ナイーブVLレパートリーとは、一方はファージミドへ、他方はファージベクターへと、個別にクローニングされる。次いで、各細胞が、異なる組合せを含有し、ライブラリーサイズが、存在する細胞の数(クローン約10
12個)だけにより制限されるように、2つのライブラリーが、ファージミド含有細菌へのファージ感染により組み合わされる。VH遺伝子及びVL遺伝子が、単一のレプリコンへと組み換えられ、ファージビリオンへと共パッケージングされるように、いずれのベクターも、インビボにおける組換えシグナルを含有する。これらの巨大ライブラリーは、アフィニティーの良好な、多数の、多様な抗体を提供する。
【0332】
代替的に、レパートリーは、例えば、Barbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:7978〜7982(1991)において記載されている通り、同じベクターへと逐次的にクローニングされる場合もあり、例えば、Clacksonら、Nature、352:624〜628(1991)において記載されている通り、PCRにより一体にアセンブルされ、次いで、クローニングされる場合もある。PCRアセンブリーはまた、VH DNAと、VL DNAとを、可撓性のペプチドスペーサーをコードするDNAにより接合して、単鎖Fv(scFv)レパートリーを形成するのにも使用されうる。さらに別の技法において、Embletonら、Nucl.Acids Res.、20:3831〜3837(1992)において記載されている通り、「細胞内PCRアセンブリー」も、VH遺伝子と、VL遺伝子とを、リンパ球内において、PCRにより組み合わせ、次いで、連結された遺伝子のレパートリーをクローニングするのに使用される。
【0333】
ライブラリーのスクリーニングは、当技術分野において公知の、任意の技法により達成されうる。例えば、SSEA−4標的は、吸着プレートのウェルをコーティングし、吸着プレートへと固定された宿主細胞上において発現させるのに使用される場合もあり、細胞分取において使用される場合もあり、ストレプトアビジンコーティングビーズによる捕捉のために、ビオチンへとコンジュゲートされる場合もあり、ファージディスプレイライブラリーをパニングするための、当技術分野において公知の、他の任意の方法において使用される場合もある。
【0334】
ファージライブラリー試料は、ファージ粒子のうちの少なくとも一部の、吸着材との結合に適する条件下において、固定化されたSSEA−4と接触される。通常、pH、イオン強度、温度などを含む条件は、生理学的条件を模倣するように選択される。固相に結合したファージは、洗浄され、次いで、例えば、Barbasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:7978〜7982(1991)において記載されている通り、酸により溶出させる、又は、例えば、Marksら、J.Mol.Biol.、222:581〜597(1991)において記載されている通り、アルカリにより溶出させる、又は、例えば、Clacksonら、Nature、352:624〜628(1991)による抗原競合法と類似の手順における、SSEA−43/抗原の競合により溶出される。ファージは、単一ラウンドの選択において、20〜1,000倍に濃縮されうる。さらに、濃縮されたファージは、細菌培養物中において増殖させられ、さらなるラウンドの選択にかけられうる。
【0335】
選択の効率は、洗浄時における解離反応速度及び単一のファージ上の複数の抗体断片が、同時に、抗原とエンゲージメントしうるのかどうかを含む、多くの因子に依存する。解離反応速度が大きな(かつ、結合アフィニティーが小さな)抗体は、短い洗浄、多価ファージディスプレイ及び固相内の抗原の、高コーティング密度を使用することにより保持されうる。高密度は、多価相互作用を介してファージを安定化させるだけでなく、解離したファージの再結合に好適でもある。解離反応速度が小さな(かつ、結合アフィニティーが良好な)抗体の選択は、Bassら、Proteins、8:309〜314(1990)及びWO92/09690において記載されている、長い洗浄及び一価ファージディスプレイ並びにMarksら、Biotechnol.、10:779〜783(1992)において記載されている、抗原の、低コーティング密度を使用することにより促進されうる。
【0336】
SSEA−4に対するアフィニティーがわずかに異なっていてもなお、アフィニティーの異なるファージ抗体の間において選択することが可能である。しかし、選択された抗体のランダム突然変異(例えば、上記において記載されたアフィニティー成熟法の一部において実施される)は、多くの突然変異体であって、大半が抗原に結合し、少数が高アフィニティーにより結合する突然変異体をもたらす可能性が高い。SSEA−4が限定量の場合、最高度のアフィニティーのファージも、競合に耐えない場合がある。全ての高アフィニティー突然変異体を保持するため、ファージは、過剰量のビオチニル化SSEA−4と共にインキュベートされうるが、SSEA−4の、目標となるモルアフィニティー定数より低いモル濃度のビオチニル化SSEA−4と共にインキュベートされる場合もある。次いで、高アフィニティーの結合性ファージは、ストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズにより捕捉されうる。このような「平衡捕捉」は、それらの結合アフィニティーに従い、アフィニティーがわずか2倍の、突然変異体クローンの、低アフィニティーであり、極過剰量のファージからの単離を可能とする感度により、抗体を選択することを可能とする。また、固相に結合したファージの洗浄において使用される条件も、解離反応速度に基づき区別するように操作されうる。
【0337】
抗SSEA−4クローンは、選択されうる。一実施形態において、本発明は、SSEA−4リガンドと、SSEA−4との結合は遮断するが、SSEA−4リガンドと、第2のタンパク質との結合は遮断しない、抗SSEA−4抗体を提供する。このような抗SSEA−4抗体に対応するFvクローンは、(1)抗SSEA−4クローンを、上記のB(I)(2)節において記載されたファージライブラリーから単離し、集団を、適切な細菌宿主内において増殖させることを介して、単離されたファージクローン集団を、任意選択的に増幅し;(2)それらに対する遮断活性及び非遮断活性のそれぞれが所望される、SSEA−4及び第2のタンパク質を選択し;(3)抗SSEA−4ファージクローンを、固定化されたSSEA−4へと吸着させ;(4)過剰量の第2のタンパク質を使用して、任意の所望されないクローンであって、第2のタンパク質の結合決定基と重複する、又は共有される、SSEA−4の結合決定基を認識するクローンを溶出させ;(5)ステップ(4)に続き、吸着を維持したクローンを溶出させることにより選択されうる。任意選択的に、本明細書において記載された選択手順を、1回以上にわたり繰り返すことにより、所望の遮断/非遮断特性を伴うクローンが、さらに濃縮されうる。
【0338】
本発明のFvクローンをコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、ハイブリドーマ又はファージDNA鋳型から、重鎖及び軽鎖の、目的のコード領域を特異的に増幅するようにデザインされた、オリゴヌクレオチドプライマーを使用することにより)、たやすく単離及びシーケンシングされる。単離されたら、DNAは、発現ベクター内に入れられ、次いで、組換え宿主細胞内の、所望のモノクローナル抗体の合成を得るように、E.コリ細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は、これ以外に、免疫グロブリンタンパク質を産生しない、骨髄腫細胞などの宿主細胞へとトランスフェクトされる。抗体をコードするDNAの、細菌内の組換え発現についての総説論文は、Skerraら、Curr.Opinion in Immunol.、5:256(1993)及びPluckthun、Immunol.Revs、130:151(1992)を含む。
【0339】
本発明のFvクローンをコードするDNAは、全長重鎖及び/若しくは全長軽鎖又は部分長重鎖及び/若しくは部分長軽鎖をコードするクローンを形成するように、重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域をコードする、公知のDNA配列(例えば、適切なDNA配列は、Kabatら、前出から得られうる)と組み合わされうる。IgG定常領域、IgM定常領域、IgA定常領域、IgD定常領域及びIgE定常領域を含む、任意のアイソタイプの定常領域が、この目的のために使用される場合があり、このような定常領域が、任意のヒト種又は動物種から得られうることが理解される。1つの動物(ヒトなど)種の可変ドメインDNAに由来し、次いで、「ハイブリッド」の全長重鎖及び/又は全長軽鎖のためのコード配列を形成するように、別の動物種の定常領域DNAへと融合されたFvクローンは、本明細書において使用された、「キメラ」抗体及び「ハイブリッド」抗体の定義に含まれる。一実施形態において、全てのヒト全長重鎖及び/若しくはヒト全長軽鎖又はヒト部分長重鎖及び/若しくはヒト部分長軽鎖のコード配列を形成するように、ヒト可変DNAに由来するFvクローンが、ヒト定常領域DNAへと融合される。
【0340】
ナイーブライブラリーによりもたらされた抗体(天然又は合成)は、中程度のアフィニティーの抗体でありうるが、また、Winterら(1994年)、前出において記載されている通り、アフィニティー成熟も、二次ライブラリーを構築し、ここから再選択することにより、インビトロにおいて模倣されうる。一部の態様において、抗体は、天然に存在する抗体配列を除外しうる。一部の態様において、エラープローンポリメラーゼ(Leungら、Technique、1:11〜15(1989)において報告されている)を、Hawkinsら、J.Mol.Biol.、226:889〜896(1992)による方法又はGramら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:3576〜3580(1992)による方法において使用することにより、突然変異は、インビトロにおいて、ランダムに導入されうる。加えて、アフィニティー成熟は、例えば、目的のCDRにわたり、ランダムな配列を保有するプライマーを伴うPCRを、選択された個別のFvクローン内において使用して、1つ以上のCDRにランダムに突然変異を導入し、高アフィニティークローンについてスクリーニングすることによっても実施されうる。WO9607754(1996年3月14日に公開された)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域内において突然変異誘発を誘導して、軽鎖遺伝子のライブラリーを創出するための方法について記載した。別の効果的な手法は、Marksら、Biotechnol.、10:779〜783(1992)において記載されている通り、非免疫化ドナーから得られた、天然に存在するVドメイン変異体のレパートリーを伴うファージディスプレイにより選択されたVHドメイン又はVLドメインを組み換え、数ラウンドにわたる鎖リシャッフリングにおいて、高アフィニティーについてスクリーニングすることである。この技法は、アフィニティーが10
−9Mの範囲の抗体及び抗体断片の作製を可能とする。
【0341】
抗SSEA−4抗体を作出する、他の方法
当技術分野において、抗体のアフィニティーを発生させ、評価する、他の方法が周知であり、例えば、Kohlerら、Nature、256:495(1975);米国特許第4,816,567号;Goding、「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」、59〜103頁(Academic Press、1986);Kozbor、J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」、51〜63頁(Marcel Dekker,Inc.、New York、1987);Munsonら、Anal.Biochem.、107:220(1980);Engelsら、Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.、28:716〜734(1989);Abrahmsenら、EMBO J.、4:3901(1985);Methods in Enzymology、44(1976);Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855(1984)において記載されている。
【0342】
一般的な方法
一般に、本発明は、アフィニティー成熟SSEA−4抗体を提供する。これらの抗体は、SSEA−4に対するアフィニティー及び特異性を増大させている。このアフィニティー及び感受性の増大は、本発明の分子が、(a)本発明の分子の感受性の増大及び/又は(b)本発明の分子による、SSEA−4への緊密な結合により利益を与えられる適用及び方法のために使用されることを可能とする。
【0343】
一実施形態において、SSEA−4抗体は、1つ以上のSSEA−4活性の部分的又は全面的な遮断が所望される、SSEA−4媒介性障害の処置に有用である。一実施形態において、本発明の抗SSEA−4抗体は、がんを処置するのに使用される。
【0344】
本発明の抗SSEA−4抗体は、質量分析又は遺伝子操作を必要とせずに、免疫沈降、ELISA又は免疫顕微鏡法など、簡略かつ常套的な生体分子アッセイにおける、エピトープの、高感度かつ特異的な検出を可能とする。次に、これは、これらの経路の正常な機能の観察及び解明、経路の機能が異常な場合の検出のいずれにおいても、著明な利点を提供する。
【0345】
本発明のSSEA−4抗体はまた、疾患の発症及び発症機序における役割を決定するのにも使用されうる。例えば、上記において記載された通り、本発明のSSEA−4抗体を使用して、1つ以上の疾患状態と相関させることができるTACAが、、正常において、一過性に発現されるのかどうかを決定するのに使用されうる。
【0346】
本発明のSSEA−4抗体は、本発明の抗SSEA−4抗体が特異的ではない、SSEA−4の正常な活性には干渉せずに、1つ以上のSSEA−4の調節が異常である、又は機能が異常である疾患を処置するのに、さらに使用されうる。
【0347】
別の態様において、本発明の抗SSEA−4抗体は、多様な細胞型内及び組織内のがん状態を検出するための試薬としても有用である。
【0348】
さらに別の態様において、本抗SSEA−4抗体は、活性遮断パターンが、本発明の対象の抗体の活性遮断パターンと類似する、SSEA−4アンタゴニストを開発するのに有用である。例えば、本発明の抗SSEA−4抗体は、同じ、SSEA−4への結合特徴及び/又はSSEA−4経路の遮断能を有する、他の抗体を決定及び同定するのに使用されうる。
【0349】
さらなる例として述べると、本発明の抗SSEA−4抗体は、本明細書において例示された抗体と実質的に同じ、SSEA−4の抗原決定基であって、直鎖状エピトープ及びコンフォメーションエピトープを含む抗原決定基に結合する、他の抗SSEA−4抗体を同定するのに使用されうる。
【0350】
本発明の抗SSEA−4抗体は、SSEA−4が関与する生理学的経路に基づくアッセイであって、1つ以上の結合パートナーの、SSEA−4への結合を遮断するのに、抗体と同様の薬理学的効果を呈する、SSEA−4の低分子アンタゴニストについてスクリーニングするアッセイにおいて使用されうる。
【0351】
抗体の作出は、当技術分野における、常套的な技術であって、ハイブリドーマ法及び結合剤分子についてのファージディスプレイライブラリーのスクリーニングなど、本明細書において記載された技術を含む技術を使用して達成されうる。当技術分野において、これらの方法は、十分に確立されている。
【0352】
略述すると、本発明の抗SSEA−4抗体は、コンビナトリアルライブラリーを使用して、1つ以上の所望の活性を伴う、合成の抗体クローンについてスクリーニングすることにより作製できる。原則として、合成の抗体クローンは、ファージコートタンパク質へと融合された、抗体可変領域の多様な断片(Fv)を提示するファージを含有する、ファージライブラリーをスクリーニングすることにより選択される。このようなファージライブラリーは、所望の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによりパニングされる。所望の抗原に結合することが可能なFv断片を発現するクローンを、抗原へと吸着させ、これにより、ライブラリー内の非結合性クローンから分離する。次いで、結合性クローンを、抗原から溶出させ、さらなる抗原吸着/溶出サイクルにより、さらに濃縮することができる。本発明の抗SSEA−4抗体のうちのいずれかは、適切な抗原スクリーニング手順をデザインして、目的のファージクローンについて選択するのに続き、目的のファージクローンに由来するFv配列と、Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5版、NIH Publication第91−3242号、Bethesda Md.(1991)、1〜3巻において記載されている、適切な定常領域(Fc)配列とを使用して、全長抗SSEA−4抗体クローンを構築することにより得られうる。
【0353】
一実施形態において、本発明の抗SSEA−4抗体は、モノクローナル抗体である。また、本発明の範囲内に、本明細書において提示された、抗SSEA−4抗体の抗体断片であって、Fab断片、Fab’断片、Fab’−SH断片及びF(ab’)
2断片並びにこれらの変化形などの抗体断片も包含される。これらの抗体断片は、酵素による消化など、従来の手段により創出される場合もあり、組換え技術により作出される場合もある。このような抗体断片は、キメラ抗体断片の場合もあり、ヒト抗体断片の場合もあり、ヒト化抗体断片の場合もある。これらの断片は、本明細書に明示された、実験目的、診断目的及び治療目的に有用である。
【0354】
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団から得られうる、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量において存在しうる、可能な天然に存在する突然変異を除き、同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、個別の抗体の混合物でないものとしての、抗体の特性を指し示す。
【0355】
本発明の抗SSEA−4モノクローナル抗体は、当技術分野において公知の様々な方法であって、Kohlerら、Nature、256:495(1975)により初めて記載されたハイブリドーマ法を含む方法を使用して作製される場合もあり、代替的に、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号)により作製される場合もある。
【0356】
ベクター、宿主細胞及び組換え技術
本発明の抗体の、組換えによる作製のために、本発明の抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクターへと挿入される。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、たやすく単離及びシーケンシングされる。多くのベクターが、利用可能である。ベクターの選出しは、使用される宿主細胞に部分的に依存する。宿主細胞は、原核生物由来の細胞又は真核生物(一般に、哺乳動物)由来の細胞を含むがこれらに限定されない。IgG定常領域、IgM定常領域、IgA定常領域、IgD定常領域及びIgE定常領域を含む、任意のアイソタイプの定常領域が、この目的のために使用される場合があり、このような定常領域が、任意のヒト種又は動物種から得られうることが理解される。
【0357】
原核宿主細胞を使用する抗体の作出
ベクターの構築
本発明の抗体のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組換え技術を使用して得られうる。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離及びシーケンシングされうる。代替的に、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成器又はPCR法を使用しても合成されうる。得られたら、ポリペプチドをコードする配列は、原核宿主内において異種ポリヌクレオチドを複製し、発現させることが可能な、組換えベクターへと挿入される。当技術分野において利用可能であり、公知である、多くのベクターは、本発明の目的のために使用されうる。適切なベクターの選択は、ベクターへと挿入される核酸のサイズ及びベクターにより形質転換される、特定の宿主細胞に主に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅若しくは発現又はこれらの両方)及びそれが宿る、特定の宿主細胞に対するその適合性に応じて、多様な構成要素を含有する。ベクターの構成要素は、一般に、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合性部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸インサート及び転写終結配列を含むがこれらに限定されない。
【0358】
一般に、レプリコンと、宿主細胞に適合性の種に由来する制御配列とを含有するプラスミドベクターは、これらの宿主との関係において使用されうる。ベクターは通常、複製部位のほか、形質転換細胞内の、表現型による選択をもたらすことが可能な、マーキング配列も保有する。例えば、E.コリは、典型的に、E.コリ種に由来するプラスミドである、pBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)耐性及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、これにより、形質転換細胞を同定するための、容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体又は他の微生物性プラスミド若しくはバクテリオファージはまた、微生物により、内因性タンパク質を発現させるために使用されうるプロモーターを含有する場合もあり、これを含有するように修飾される場合もある。特定の抗体を発現させるために使用されるpBR322誘導体の例については、Carterら、米国特許第5,648,237号において詳細に記載されている。
【0359】
加えて、レプリコンと、宿主微生物に適合性の制御配列とを含有するファージベクターも、形質転換ベクターとして、これらの宿主との関係において使用されうる。例えば、λGEM(商標)11などのバクテリオファージは、E.コリLE392など、易感染性の宿主細胞を形質転換するのに使用されうる、組換えベクターを作るのに利用されうる。
【0360】
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド構成要素の各々をコードする、2つ以上のプロモーター−シストロン対を含みうる。プロモーターとは、その発現をモジュレートするように、シストロンに対して上流(5’側)に位置させた、非翻訳の調節配列である。原核生物のプロモーターは、典型的に、誘導可能なプロモーター及び構成的プロモーターの、2つのクラスへと分けられる。誘導可能なプロモーターとは、培養条件の変化、例えば、栄養物質の存在若しくは非存在又は温度の変化に応答して、シストロンの転写レベルの上昇を、その制御下において誘発するプロモーターである。
【0361】
様々な潜在的宿主細胞により認識される、多数のプロモーターが周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素による消化を介して、供給源DNAから、プロモーターを取り出し、単離されたプロモーター配列を、本発明のベクターへと挿入することにより、軽鎖又は重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に連結されうる。天然のプロモーター配列及び多くの異種プロモーターの両方が、標的遺伝子の増幅及び/又は発現を方向付けるのに使用されうる。ある特定の実施形態において、異種プロモーターは、一般に、天然の標的ポリペプチドのプロモーターと比較して、発現された標的遺伝子の転写の増大及び収率の上昇を可能とするので利用される。
【0362】
原核宿主を伴う使用に適するプロモーターは、しかし、細菌内におけるPhoAプロモーター(他の公知の細菌プロモーター又はファージプロモーターなど)も同様に適する。それらのヌクレオチド配列は公表されており、これにより、当業者が、要求された、任意の制限部位をもたらす、リンカー又はアダプターを使用して、それらを、標的軽鎖及び標的重鎖をコードするシストロンへと、作動可能にライゲーションすることを可能とする(Siebenlistら(1980)、Cell、20:269)。
【0363】
本発明の一態様において、組換えベクター内の各シストロンは、発現されたポリペプチドの、膜を隔てた移行を方向付ける、分泌シグナル配列の構成要素を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成要素の場合もあり、ベクターへと挿入された標的ポリペプチドDNAの部分の場合もある。本発明の目的のために選択されたシグナル配列は、宿主細胞により認識及びプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)シグナル配列であるものとする。異種ポリペプチドに対して、天然のシグナル配列を認識及びプロセシングしない、原核宿主細胞のために、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は耐熱性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から選択される原核生物のシグナル配列により置換される。本発明の一実施形態において、発現系の、両方のシストロンにおいて使用されたシグナル配列は、STIIシグナル配列又はこの変異体である。
【0364】
本発明に従う免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質内において生じることが可能であり、したがって、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を要求しない。この点において、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は、細胞質内において、機能的な免疫グロブリンを形成するように、発現され、フォールディングされ、アセンブルされる。ある特定の宿主株(例えば、E.コリtrxB株)は、ジスルフィド結合の形成に好適な細胞質条件を提供し、これにより、発現されたタンパク質サブユニットの、適正なフォールディング及びアセンブリーを可能とする(Proba及びPluckthun、Gene、159:203(1995))。
【0365】
本発明の抗体はまた、分泌され、適正にアセンブルされた、本発明の抗体の収率を最大化するために、発現されるポリペプチド構成要素の定量比がモジュレートされうる発現系を使用することによっても作製されうる。このようなモジュレーションは、ポリペプチド構成要素について、翻訳強度を同時にモジュレートすることにより、少なくとも部分的に達成される。
【0366】
翻訳強度をモジュレートするための1つの技法は、Simmonsら、米国特許第5,840,523号において開示されている。この技法は、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)の変異体を利用する。所与のTIRについて、翻訳強度が、ある範囲にある、一連のアミノ酸配列変異体又は核酸配列変異体が創出され、これにより、特異的な鎖の所望の発現レベルについて、この因子を調整するための、簡便な手段をもたらしうる。TIR変異体は、アミノ酸配列を変更しうる、コドン変化を結果としてもたらす、従来の突然変異誘発法により作出されうる。ある特定の実施形態において、ヌクレオチド配列の変化は、サイレントである。TIR内の変更は、例えば、シグナル配列の変更と共に、シャイン−ダルガーノ配列の数又は間隔の変更を含みうる。突然変異体のシグナル配列を作出するための1つの方法は、コード配列の起始部における「コドンバンク」であって、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)「コドンバンク」の作出である。これは、各コドンの3番目のヌクレオチド位置を変化させることにより達成されうるが;加えて、ロイシン、セリン及びアルギニンなど、一部のアミノ酸は、複数の、第1の位置及び第2の位置を有し、これが、バンクを作るのに複雑性を付加しうる。突然変異誘発のこの方法については、Yansuraら(1992年)、METHODS:A Companion to Methods in Enzymol.、4:151〜158において詳細に記載されている。
【0367】
一実施形態において、その中の各シストロンのTIR強度が、ある範囲にあるベクターのセットが作出される。この限定的なセットは、各鎖の発現レベルについての比較のほか、多様なTIR強度の組合せの下における、所望の抗体産物の収率についての比較も提供する。TIR強度は、Simmonsら、米国特許第5,840,523号において詳細に記載されている通り、レポーター遺伝子の発現レベルを定量化することにより決定されうる。翻訳強度の比較に基づき、所望の個々のTIRは、本発明の発現ベクター構築物内において組み合わされるように選択される。
【0368】
本発明の抗体を発現させるのに適する原核宿主細胞は、古細菌及びグラム陰性菌又はグラム陽性菌などの真正細菌を含む。有用な細菌の例は、エシェリキア(Escherichia)属(例えば、E.コリ)種、バチルス(Bacillus)属(例えば、B.スブティリス(B.subtilis))種、エンテロバクター(Enterobacteria)属種、シュードモナス(Pseudomonas)属(例えば、P.エルギノーサ(P.aeruginosa))種、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、セラチア・マルセスケンス(Serratia marcescans)、クレブシエラ(Klebsiella)属、プロテウス(Proteus)属、シゲラ(Shigella)属、リゾビア(Rhizobia)属、ビトレオシラ(Vitreoscilla)属、又はパラコッカス(Paracoccus)属を含む。一実施形態において、グラム陰性菌細胞が使用される。一実施形態において、E.コリ細胞が、本発明のための宿主として使用される。E.コリ株の例は、W3110株(Bachmann、「Cellular and Molecular Biology」、2巻(Washington,D.C.:American Society for Microbiology、1987)、1190〜1219頁;ATCC受託番号:27,325)及び、遺伝子型W3110を有する33D3株を含むその派生株を含む。E.コリ294(ATCC:31,446)、E.コリB、E.コリRV308(ATCC:31,608)などもまた適する。これらの例は、限定的なものでなく、例示的なものである。当技術分野において、上述の細菌のうちのいずれかの派生株であって、規定された遺伝子型を有する派生株を構築するための方法が公知であり、例えば、Bassら、Proteins、8:309〜314(1990)において記載されている。一般に、細菌による、細胞内のレプリコンの複製能力を検討して、適切な細菌を選択することが必要である。例えば、E.コリ、セラチア(Serratia)属種又はサルモネラ(Salmonella)属種は、pBR322、pBR325、pACYC177又はpKN410など、周知のプラスミドがレプリコンをもたらすのに使用される場合に、宿主として使用されるのに適しうる。典型的に、宿主細胞は、最小量のタンパク分解酵素を分泌するものとし、さらなるプロテアーゼ阻害剤が、細胞培養物中に組み込まれうることが所望される。
【0369】
抗体の作製
宿主細胞は、上記において記載された発現ベクターにより形質転換され、プロモーターを誘導する、形質転換細胞を選択する、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように改変された、従来の栄養物質培地中において培養される。
【0370】
形質転換とは、DNAが、染色体外エレメントとして、又は染色体への組込みにより複製可能となるように、DNAを、原核宿主へと導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、このような細胞に適切な標準的技法を使用してなされる。細胞壁による実質的な障壁を含有する細菌細胞のために、塩化カルシウムを用いるカルシウム処理が、一般に使用される。形質転換のための別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用される、さらに別の技法は、電気穿孔である。
【0371】
本発明のポリペプチドを作製するのに使用される原核細胞は、当技術分野において公知であり、選択された宿主細胞の培養に適する、培地中において増殖させられる。適切な培地(media)の例は、必要な栄養補充物質を加えた、ルリア培地(broth)(LB)を含む。ある特定の実施形態において、培地(media)はまた、発現ベクターを含有する原核細胞の増殖を、選択的に可能とするように、発現ベクターの構築に基づき選び出される、選択用薬剤も含有する。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞を増殖させるために、アンピシリンが、培地へと添加される。
【0372】
炭素供給源、窒素供給源及び無機リン酸供給源のほかに、また、任意の必要な補充物質も、適切な濃度において、単独で、又は複合窒素供給源など、別の補充物質又は培地との混合物として導入する形で含まれる。任意選択的に、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコール酸、ジチオエリトリトール及びジチオトレイトールからなる群から選択される、1つ以上の還元剤を含有しうる。
【0373】
原核宿主細胞は、適切な温度において培養される。E.コリを増殖させるために、例えば、増殖は、約20℃〜約39℃、約25℃〜約37℃及び約30℃を含むがこれらに限定されない温度範囲においてなされる。培地のpHは、主に、宿主生物に応じて、約5〜約9の範囲の、任意のpHでありうる。E.コリにおいて、pHは、約6.8〜約7.4又は約7.0でありうる。
【0374】
誘導可能なプロモーターが、本発明の発現ベクター内において使用される場合、タンパク質の発現は、プロモーターの活性化に適する条件下において誘導される。本発明の一態様において、PhoAプロモーターが、ポリペプチドの転写を制御するために使用される。したがって、形質転換された宿主細胞は、誘導のための、リン酸限界培地中において培養する。一実施形態において、リン酸限界培地は、C.R.A.P培地である(例えば、Simmonsら、J.Immunol.Methods(2002)、263:133〜147を参照されたい。)。当技術分野において公知の通り、用いられるベクター構築物に従い、他の様々な誘導剤も使用されうる。
【0375】
一実施形態において、発現された、本発明のポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムへと分泌され、ここから回収される。タンパク質の回収は、一般に、浸透圧ショック、超音波処理又は溶解などの手段による、微生物の破壊を伴うことが典型的である。細胞が破壊されたら、細胞破砕物又は全細胞は、遠心分離又は濾過により除去されうる。タンパク質は、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーにより、さらに精製されうる。代替的に、タンパク質は、培養培地へと移され、その中において単離される場合もある。細胞は、培養物から除去され、培養物上清は、さらなる精製のために、濾過及び濃縮されうる。発現されたポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウェスタンブロットアッセイなど、一般に公知の方法を使用して、さらに単離及び同定されうる。
【0376】
本発明の一態様において、抗体の作製は、発酵工程により大量に行われる。組換えタンパク質の作製のために、多様な大スケールの、流加発酵手順が利用可能である。大スケールの発酵は、少なくとも1000リットルの容量、例えば、約1,000〜100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、攪拌用インペラーを使用して、酸素及び栄養物質、とりわけ、グルコース(一般的な炭素/エネルギー源)を分配する。小スケールの発酵とは、一般に、容積が約100リットルを超えず、約1リットル〜約100リットルの範囲にわたりうる発酵槽内の発酵を指す。
【0377】
発酵工程において、タンパク質発現の誘導は、典型的に、細胞が、適切な条件下において、細胞が早期定常相にある(例えば、OD550を、約180〜220とする)、所望の密度まで増殖させられた後に開始される。当技術分野において公知であり、上記においても記載された通り、用いられるベクター構築物に従い、様々な誘導剤が使用されうる。細胞は、誘導前に、短時間にわたり増殖させられうる。細胞は通例、約12〜50時間にわたり誘導されるが、これより長い誘導時間が使用される場合もあり、これより短い誘導時間が使用される場合もある。
【0378】
本発明のポリペプチドの作製収率及び作製品質を改善するために、多様な発酵条件が改変されうる。例えば、分泌される抗体ポリペプチドの、適正なアセンブリー及びフォールディングを改善するために、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD及び/又はDsbG)又はFkpA(シャペロン活性を伴う、ペプチジルプロピルcis,trans−イソメラーゼ)など、シャペロンタンパク質を過剰発現させる、さらなるベクターが、宿主原核細胞を共形質転換するのに使用されうる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞内において産生される異種タンパク質の、適正なフォールディング及び可溶性を容易とすることが裏付けられている(Chenら(1999)、J Bio Chem、274:19601〜19605;Georgiouら、米国特許第6,083,715号;Georgiouら、米国特許第6,027,888号;Bothmann及びPluckthun(2000)、J.Biol.Chem.、275:17100〜17105;Ramm及びPluckthun(2000)、J.Biol.Chem.、275:17106〜17113;Arieら(2001)、Mol.Microbiol.、39:199〜210)。
【0379】
発現された異種タンパク質(とりわけ、タンパク質分解に感受性の異種タンパク質)のタンパク質分解を最小化するため、タンパク分解酵素について欠損する、ある特定の宿主株が、本発明のために使用されうる。例えば、宿主細胞株は、Protease III、OmpT、DegP、Tsp、Protease I、Protease Mi、Protease V、Protease VI及びこれらの組合せなど、公知の細菌プロテアーゼをコードする遺伝子内に、遺伝子突然変異を施すように改変されうる。いくつかのE.コリプロテアーゼ欠損株が利用可能であり、例えば、Jolyら(1998年)、前出;Georgiouら、米国特許第5,264,365号;Georgiouら、米国特許第5,508,192号;Haraら、Microbial Drug Resistance、2:63〜72(1996)において記載されている。
【0380】
一実施形態において、タンパク分解酵素について欠損し、1つ以上のシャペロンタンパク質を過剰発現させるプラスミドにより形質転換されたE.コリ株が、本発明の発現系内の宿主細胞として使用される。
【0381】
抗体の精製
一実施形態において、本発明において作製された抗体タンパク質は、さらなるアッセイのための、実質的に均質な調製物を得るように、さらに精製され、使用される。当技術分野において公知の、標準的なタンパク質精製法が用いられうる。以下の手順:免疫アフィニティーカラム上又はイオン交換カラム上の分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上又はDEAEなどのカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿及び、例えば、Sephadex G−75を使用するゲル濾過は、適切な精製手順を例示する。
【0382】
一態様において、固相上に固定化されたプロテインAが、本発明の抗体産物の免疫アフィニティー精製のために使用される。プロテインAとは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)に由来する、41kDの細胞壁タンパク質であって、抗体のFc領域に、高アフィニティーにより結合する細胞壁タンパク質である(Lindmarkら(1983)、J.Immunol.Meth.、62:1〜13)。プロテインAが固定化される固相は、ガラス表面若しくはシリカ表面を含むカラム又はCPG(controlled pore glass)カラム若しくはケイ酸カラムでありうる。一部の適用において、夾雑物の非特異的付着を防止する可能性が高まるように、カラムが、グリセロールなどの試薬によりコーティングされる。
【0383】
精製の第1ステップとして、上記において記載された細胞培養物に由来する調製物を、プロテインAが固定化された固相へと適用して、目的の抗体の、プロテインAへの特異的結合を可能とすることができる。次いで、固相を洗浄して、固相に非特異的に結合した夾雑物を除去する。最後に、目的の抗体を、固相から、溶出により回収する。
【0384】
真核宿主細胞を使用する、抗体の作出
ベクターの構成要素は、一般に、以下:シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター及び転写終結配列のうちの1つ以上を含むがこれらに限定されない。
【0385】
(i)シグナル配列構成要素
真核宿主細胞における使用のためのベクターはまた、シグナル配列又は、目的の成熟タンパク質若しくは成熟ポリペプチドのN末端において特異的切断部位を有する、他のポリペプチドも含有しうる。選択された異種シグナル配列は、一般に、宿主細胞により認識及びプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)異種シグナル配列である。哺乳動物細胞の発現において、哺乳動物シグナル配列のほか、ウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルも利用可能である。
【0386】
このような前駆体領域のDNAが、リーディングフレーム内において、抗体をコードするDNAへとライゲーションされる。
【0387】
(ii)複製起点
一般に、複製起点構成要素は、哺乳動物の発現ベクターに必要とされない。例えば、SV40の起点は、初期プロモーターを含有するためだけに使用されうることが典型的である。
【0388】
(iii)選択遺伝子構成要素
発現ベクター及びクローニングベクターは、選択用マーカーともまた称される、選択遺伝子を含有しうる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生剤又は他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート又はテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)該当する場合、栄養要求性欠損を相補する、又は(c)複合培地から得られない、死活的な栄養物質を供給するタンパク質をコードする。
【0389】
選択スキームの1つの例は、宿主細胞の増殖を止める薬物を利用する。異種遺伝子による形質転換に成功した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、これにより、選択レジメンを経て存続する。このような優性選択の例は、薬物である、ネオマイシン、ミコフェノール酸及びヒグロマイシンを使用する。
【0390】
哺乳動物細胞に適する選択用マーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII(例えば、霊長動物メタロチオネイン遺伝子)、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなど、抗体核酸を取り込む、コンピテント細胞の同定を可能とする、選択用マーカーである。
【0391】
例えば、DHFR選択遺伝子により形質転換された細胞はまず、DHFRの競合的アンタゴニストである、メトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地中において、形質転換細胞の全てを培養することにより同定されうる。野生型DHFRが用いられる場合に適切な宿主細胞は、例えば、DHFR活性を欠損させたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(例えば;ATCC:CRL−9096)を含む。
【0392】
代替的に、抗体、野生型DHFRタンパク質及び、アミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)など、別の選択用マーカーをコードするDNA配列により形質転換又は共形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生剤、例えば、カナマイシン、ネオマイシン又はG418など、選択用マーカーのための選択用薬剤を含有する培地中の細胞増殖により選択されうる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
【0393】
(iv)プロモーター構成要素
発現ベクター及びクローニングベクターは通例、宿主生物により認識され、目的のポリペプチド(例えば、抗体)をコードする核酸に作動可能に連結された、プロモーターを含有する。プロモーター配列は、真核生物について公知である。事実上全ての真核遺伝子は、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置する、ATに富む領域を有する。多くの遺伝子の転写の始点から70〜80塩基上流に見出される、別の配列は、CNCAAT領域[配列中、Nは、任意のヌクレオチドでありうる]である。大半の真核遺伝子の3’端に、ポリAテールの、コード配列の3’端への付加のためのシグナルでありうる、AATAAA配列がある。これらの配列の全ては、真核発現ベクターへと適切に挿入される。
【0394】
哺乳動物宿主細胞内のベクターからの抗体ポリペプチドの転写は、例えば、このようなプロモーターが、宿主細胞系に適合性であるという条件において、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(Adenovirus 2など)、ウシパピローマウイルス、ニワトリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びサルウイルス40(SV40)など、ウイルスのゲノムから得られたプロモーター、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーター若しくは免疫グロブリンプロモーターから得られたプロモーター又は熱ショックプロモーターから得られたプロモーターにより制御されうる。
【0395】
SV40ウイルスの、初期プロモーター及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点もまた含有する、SV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの即初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用して、哺乳動物宿主内において、DNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号において開示されている。この系の改変については、米国特許第4,601,978号において記載されている。また、単純ヘルペスウイルスに由来する、チミジンキナーゼプロモーターの制御下、マウス細胞内の、ヒトβ−インターフェロンcDNAの発現についての、Reyesら、Nature、297:598〜601(1982)も参照されたい。代替的に、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列も、プロモーターとして使用されうる。
【0396】
(v)エンハンサーエレメント構成要素
高等真核生物による、本発明の抗体ポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列を、ベクターへと挿入することにより増大させられうることが多い。今や、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン及びインスリン)に由来する、多くのエンハンサー配列が公知である。しかし、真核細胞ウイルスに由来するエンハンサーを使用することが典型的である。例は、複製起点の後期側(100〜270bp)にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーを含む。また、真核プロモーターの活性化のための増強エレメントについて、Yaniv、Nature、297:17〜18(1982)も参照されたい。エンハンサーは、ベクターの、抗体ポリペプチドコード配列の5’側の位置へとスプライスされる場合もあり、3’側の位置へとスプライスされる場合もあるが、一般に、プロモーターの5’側の部位に位置させる。
【0397】
(vi)転写終結構成要素
真核宿主細胞内において使用される発現ベクターはまた、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含有することが典型的である。このような配列は、一般に、真核生物DNA若しくは真核生物cDNA又はウイルスDNA若しくはウイルスcDNAの、5’側非翻訳領域から得られるが、場合によって、3’側非翻訳領域からも得られる。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分内のポリアデニル化断片として転写される、ヌクレオチドセグメントを含有する。1つの、有用な、転写終結構成要素は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026及びその中において開示されている発現ベクターを参照されたい。
【0398】
(vii)宿主細胞の選択及び形質転換
本明細書のベクター内において、DNAをクローニングする、又は発現させるのに適する宿主細胞は、本明細書において記載された、高等真核細胞であって、脊椎動物宿主細胞を含む、高等真核細胞を含む。培養物(組織培養物)中の脊椎動物細胞の繁殖は、常套的な手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40により形質転換された、サル腎臓CV1細胞系(COS−7;ATCC:CRL1651);ヒト胚由来腎臓細胞系(293細胞又は懸濁培養物中において増殖させるためにサブクローニングされた293細胞;Grahamら、J.Gen Virol.、36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK;ATCC:CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/DHFR−(CHO;Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4;Mather、Biol.Reprod.、23:243〜251(1980));サル腎臓細胞(CV1;ATCC:CCL70);アフリカグリーンモンキー腎臓細胞(VERO−76;ATCC:CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA;ATCC:CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK;ATCC:CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A;ATCC:CRL1442);ヒト肺細胞(W138;ATCC:CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562;ATCC:CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.、383:44〜68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞及びヒトヘパトーマ細胞系(Hep G2)である。
【0399】
宿主細胞は、抗体の作製のための、上記において記載された発現ベクター又はクローニングベクターにより形質転換され、プロモーターを誘導する、形質転換細胞を選択する、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように改変された、従来の栄養物質培地中において培養される。
【0400】
(viii)宿主細胞の培養
本発明の抗体を作製するのに使用された宿主細胞は、様々な培地中において培養されうる。ハムF10(Sigma)、最小必須培地(MEM)(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及びダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma)など、市販の培地は、宿主細胞の培養に適する。加えて、Hamら、Meth.Enz.、58:44(1979)、Barnesら、Anal.Biochem.、102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号若しくは同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195又は米国特許再交付第30,985号において記載されている培地のうちのいずれも、宿主細胞のための培養培地として使用されうる。これらの培地のうちのいずれかは、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン又は上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸など)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生剤(GENTAMYCIN(商標)薬など)、微量元素(通例マイクロモル範囲の最終濃度において存在する無機化合物として規定される)並びにグルコース又は同等のエネルギー源を補充されうる。また、他の任意の必要な補充物質も、当業者に公知の適切な濃度において組み入れられうる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に対して既に使用された培養条件であり、当業者に明らかである。
【0401】
(ix)抗体の精製
組換え技術を使用する場合、抗体は、細胞内において産生される場合もあり、培地へと直接分泌される場合もある。抗体が、細胞内において産生される場合、最初のステップとして、宿主細胞又は溶解された断片である粒子状破砕物は、一般に、例えば、遠心分離又は限外濾過により除去される。抗体が、培地へと分泌される場合、このような発現系に由来する上清は、一般に、まず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon限外濾過ユニット又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮される。タンパク質分解を阻害するように、PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が、前出のステップのうちのいずれかに組み入れられる場合があり、偶発性の夾雑物の増殖を防止するように、抗生剤が組み入れられうる。
【0402】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製されうるが、アフィニティークロマトグラフィーが、一般に、許容可能な精製法である。プロテインAなどのアフィニティー試薬の、アフィニティーリガンドとしての適性は、抗体内に存在する、任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1重鎖、ヒトγ2重鎖又はヒトγ4重鎖に基づく抗体を精製するのに使用されうる。(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.、62:1〜13(1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3のために推奨される(Gussら、EMBO J.、5:1567〜1575(1986))。アフィニティーリガンドが接合されるマトリックスは、アガロースであることが極めて多いが、他のマトリックスも利用可能である。CPG(controlled pore glass)又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなど、力学的に安定なマトリックスは、アガロースにより達成されうる流量より大きな流量及びアガロースにより達成されうる加工時間より短い加工時間を可能とする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製のために有用である。また、イオン交換カラム上の分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリン上のクロマトグラフィー、アニオン交換樹脂上又はカチオン交換樹脂上(ポリアスパラギン酸カラムなど)のSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGE及び硫酸アンモニウム沈殿など、タンパク質精製のための他の技法も、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0403】
任意の予備的精製ステップに続き、目的の抗体と夾雑物とを含む混合物は、必要に応じて、例えば、pHを約2.5〜4.5の間とする溶出緩衝液を使用し、一般に、低塩濃度(例えば、約0〜0.25Mの塩)において実施される、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーを介する、さらなる精製ステップにかけられうる。
【0404】
当技術分野において、研究、検査及び臨床使用における使用のための抗体を調製するための、一般的な技法及び方法が十分に確立され、上記とも符合し、かつ/又は目的の特定の抗体に適切であると、当業者にみなされていることに留意されたい。
【0405】
活性アッセイ
本発明の抗体は、それらの物理的特性/化学的特性及び生物学的機能について、当技術分野において公知の、多様なアッセイにより特徴づけられうる。
【0406】
本開示の抗体又は抗原結合性断片、これらの変異体又は誘導体はまた、抗原に対する、これらの結合アフィニティーとの関係においても、記載又は指定されうる。抗体の、炭水化物抗原に対するアフィニティーは、任意の適切な方法(例えば、Berzofskyら、「Antibody−Antigen Interactions」、「Fundamental Immunology」、Paul,W.E.編、Raven Press:New York、N.Y.(1984);Kuby,Janis、「Immunology」、W.H.Freeman and Company:New York、N.Y.(1992)及び本明細書において記載された方法を参照されたい。)を使用して、実験により決定されうる。特定の抗体−炭水化物抗原間相互作用について測定されたアフィニティーは、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)下において測定される場合、変動しうる。したがって、アフィニティー及び他の抗原結合性パラメータ(例えば、K
D、K
a、K
d)の測定は、好ましくは、抗体及び抗原の標準化溶液並びに標準化緩衝液によりなされる。
【0407】
本抗体又はこの抗原結合性部分は、インビトロ及びインビボにおける、治療的、予防的及び/又は診断的な有用性を有する。例えば、これらの抗体は、例えば、がんを処置し、阻害し、がんの再発を防し、かつ/又はがんを診断するように、インビトロ又はエクスビボにおいて、培養物中の細胞へと投与される場合もあり、例えば、インビボにおいて、対象へと投与される場合もある。
【0408】
精製された抗体は、N末端シーケンシング、アミノ酸解析、非変性サイズ除外高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィー及びパパイン消化を含むがこれらに限定されない、一連のアッセイによりさらに特徴づけられうる。
【0409】
必要な場合、抗体は、それらの生体活性について解析される。ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、それらの抗原結合活性について調べられる。当技術分野において公知であり、本発明において使用されうる、抗原結合アッセイは、限定せずに述べると、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素免疫測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、ナノ粒子イムノアッセイ、アプタマーイムノアッセイ及びプロテインAイムノアッセイなどの技法を使用する、任意の直接的結合アッセイ又は競合的結合アッセイを含む。
【0410】
抗体断片
本発明は、抗体断片を包含する。ある特定の状況において、全抗体でなく、抗体断片を使用することが有利である。小サイズの断片は、急速なクリアランスを可能とし、充実性腫瘍への接近の改善をもたらしうる。
【0411】
抗体断片を作製するための、多様な技法が開発されている。従来、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解性消化を介して由来する(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods、24:107〜117(1992)及びBrennanら、Science、229:81(1985)を参照されたい。)。しかし、今やこれらの断片は、組換え宿主細胞により、直接産生されうる。Fab抗体断片、Fv抗体断片及びScFv抗体断片は、全て、E.コリ内において発現され、E.コリから分泌され、このため、これらの断片の、大量の作製を、容易に可能とする。抗体断片は、上記において論じられた、抗体ファージライブラリーから単離されうる。代替的に、Fab’−SH断片は、E.コリから直接回収され、F(ab’)
2断片を形成するように、化学的にカップリングされうる(Carterら、Bio/Technology、10:163〜167(1992))。別の手法に従い、F(ab’)
2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離される場合もある。インビボ半減期が延長されたFab断片及びF(ab’)
2断片であって、エピトープ残基に結合するサルベージ受容体を含む断片については、米国特許第5,869,046号において記載されている。当業者には、抗体断片を作製するための、他の技法も明らかである。他の実施形態において、選択される抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。Fv及びsFvは、定常領域を欠く、無傷の結合性(combining)部位を伴う、唯一の分子種であり、このため、インビボにおける使用時に、非特異的結合(binding)を低減するのに適する。sFv融合タンパク質は、sFvのアミノ末端又はカルボキシ末端における、エフェクタータンパク質の融合をもたらすように構築されうる。「Antibody Engineering」、Borrebaeck編、前出を参照されたい。例えば、抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号において記載されている、「直鎖状抗体」でもありうる。このような直鎖状抗体断片は、単一特異性の場合もあり、二特異性の場合もある。
【0412】
ヒト化抗体
本発明は、ヒト化抗体を包含する。当技術分野において、非ヒト抗体をヒト化するための、多様な方法が公知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された、1つ以上のアミノ酸残基を有しうる。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と称されることが多く、これは、典型的に、「移入」可変ドメインから採取される。ヒト化は、Winterらによる方法(Jonesら(1986年)、Nature、321巻:522〜525頁;Riechmannら(1988年)、Nature、332巻:323〜327頁;Verhoeyenら(1988年)、Science、239巻:1534〜1536頁)に従い、超可変領域配列により、ヒト抗体の対応する配列を置換することにより、本質的に実施されうる。したがって、このような「ヒト化」抗体とは、実質的に無傷に満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種に由来する、対応する配列により置換されている、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際、ヒト化抗体は、典型的に、一部の超可変領域残基と、おそらく、一部のFR残基とが、齧歯動物抗体内の、類似の部位に由来する残基により置換されている、ヒト抗体である。
【0413】
ヒト化抗体を作るのに使用される、軽鎖及び重鎖両方の、ヒト可変ドメインの選出しも、抗原性を低減するのに重要でありうる。いわゆる「ベストフィット」法に従い、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列が、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに照らしてスクリーニングされる。次いで、齧歯動物の配列に最も近接するヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワークとして受容される(Simsら(1993)、J.Immunol.、151:2296;Chothiaら(1987)、J.Mol.Biol.、196:901)。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定の亜群についての、全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する、特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用されうる(Carterら(1992)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285;Prestaら(1993)、J.Immunol.、151:2623)。
【0414】
一般に、抗原に対する高アフィニティー及び他の好適な生物学的特性を保持しつつ、抗体がヒト化されることが、さらに所望される。この目標を達成するために、1つの方法に従い、親配列及びヒト化配列についての三次元モデルを使用する、親配列及び多様な概念上のヒト化産物についての解析工程により、ヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された、候補免疫グロブリン配列についての、蓋然的な三次元コンフォメーション構造を例示及び提示する、コンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示についての精査は、候補免疫グロブリン配列の機能化において可能性の高い、残基の役割についての解析、すなわち、候補免疫グロブリンが、その抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基についての解析を可能とする。このようにして、標的抗原に対するアフィニティーの増大など、所望の抗体特徴が達成されるように、FR残基は、レシピエント配列及び移入配列から選択され、組み合わされうる。一般に、超可変領域残基は、抗原への結合に対する影響に、直接、かつ、極めて実質的に関与する。
【0415】
本発明のヒト抗SSEA−4抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択される、Fvクローンの可変ドメイン配列を、上記において記載された、公知のヒト定常ドメイン配列と組み合わせることにより構築されうる。代替的に、本発明の抗SSEA−4ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によっても作製されうる。ヒトモノクローナル抗体の作製のための、ヒト骨髄腫細胞系及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系については、例えば、Kozbor、J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」、51〜63頁(Marcel Dekker,Inc.、New York、1987)及びBoernerら、J.Immunol.、147:86(1991)により記載されている。
【0416】
免疫化時に、内因性免疫グロブリン産生の非存在下において、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生することが可能な、トランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することもできる。例えば、キメラ/生殖細胞系列突然変異マウスにおける、抗体重鎖接合領域(J
H)遺伝子のホモ接合性の欠失が、内因性抗体産生の完全な阻害を結果としてもたらすことについて記載されている。ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子アレイの、このような生殖細胞系列突然変異マウスへの導入は、抗原投与時における、ヒト抗体の産生を結果としてもたらす。例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255(1993);Bruggermannら、Year in Immunol.、7:33(1993)を参照されたい。
【0417】
遺伝子シャフリングもまた、ヒト抗体を、非ヒト抗体、例えば、齧歯動物抗体から導出するのに使用されうるが、この場合、ヒト抗体は、非ヒト出発抗体と同様のアフィニティー及び特異性を有する。「エピトープインプリンティング」ともまた呼ばれる、この方法に従い、上記において記載された、ファージディスプレイ法により得られた、非ヒト抗体断片の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域が、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーにより置換えられ、非ヒト鎖/ヒト鎖によるscFvキメラ又はFabキメラの集団を創出する。抗原による選択は、非ヒト鎖/ヒト鎖によるキメラscFv又はキメラFabの単離を結果としてもたらし、ここで、ヒト鎖は、初代ファージディスプレイクローン内において、対応する非ヒト鎖を除去したときに破壊された、抗原結合性部位を回復する、すなわち、エピトープが、ヒト鎖パートナーの選出しを統御する(刷り込む。)。残存する非ヒト鎖を置換えるために、工程が繰り返されると、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開された、PCT WO93/06213を参照されたい。)。従来の、非ヒト抗体の、CDRグラフティングによるヒト化と異なり、この技法は、非ヒト由来のFR残基又はCDR残基を有さない、完全ヒト抗体をもたらす。
【0418】
二特異性抗体
二特異性抗体とは、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、二特異性抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。ある特定の実施形態において、結合特異性のうちの一方は、特異的リシン連結を含む、SSEA−4に対するものであり、他方は、他の任意の抗原に対するものである。ある特定の実施形態において、二特異性抗体は、2つの異なるリシン連結を有する、2つの異なるSSEA−4に結合しうる。二特異性抗体は、全長抗体として調製される場合もあり、抗体断片(例えば、F(ab’)
2二特異性抗体)として調製される場合もある。
【0419】
当技術分野において、二特異性抗体を作るための方法が公知である。従来、二特異性抗体の、組換えによる作製は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づき、この場合、2つの重鎖は、異なる特異性を有する(Milstein及びCuello、Nature、305:537(1983))。免疫グロブリン重鎖と免疫グロブリン軽鎖とのランダムな取合せのために、これらのハイブリドーマ(クァドローマ)は、そのうちの1つだけが、適正な二特異性構造を有する、10の異なる抗体分子の、潜在的な混合物をもたらす。通例、アフィニティークロマトグラフィーステップによりなされる、適正な分子の精製は、いくぶん煩瑣であり、産物の収率も低率である。同様の手順は、1993年5月13日に公開された、WO93/08829及びTrauneckerら、EMBO J.、10:3655(1991)において開示されている。
【0420】
異なる実施形態に従い、所望の結合(biding)特異性(抗体−抗原間結合性(combining)部位)を伴う抗体の可変ドメインが、免疫グロブリン定常ドメイン配列へと融合される。融合は、例えば、ヒンジ領域、CH2領域及びCH3領域のちの少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。ある特定の実施形態において、軽鎖の結合に必要な部位を含有する、第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合体のうちの少なくとも1つの中に存在する。免疫グロブリン重鎖融合体と、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖とをコードするDNAが、別個の発現ベクターへと挿入され、適切な宿主生物へと共トランスフェクトされる。構築において使用される、不等比の3つのポリペプチド鎖が、最適の収率を提供する実施形態において、これは、3つのポリペプチド断片の、相互の比率を調整するのに、大きな柔軟性をもたらす。しかし、少なくとも2つの、等比のポリペプチド鎖の発現が、高収率を結果としてもたらす場合、又は比が、特段の重要性を有さない場合、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を、1つの発現ベクター内に挿入することも可能である。
【0421】
一実施形態において、二特異性抗体は、一方のアームにおける、第1の結合特異性を伴う、ハイブリッド体の免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにおける、ハイブリッド体の免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)とから構成される。免疫グロブリン軽鎖の、二特異性分子の半分だけにおける存在は、容易な分離の方式をもたらすので、この非対称性構造は、所望の二特異性化合物の、望ましくない免疫グロブリン鎖の組合せからの分離を、容易とすることが見出された。この手法は、WO94/04690において開示されている。二特異性抗体の作出の、さらなる詳細については、例えば、Sureshら、Methods、in Enzymology、121:210(1986)を参照されたい。
【0422】
別の手法に従い、組換え細胞培養物から回収される、ヘテロ二量体の百分率を最大化するように、抗体分子対の間のインターフェースが操作されうる。インターフェースは、抗体定常ドメインのうちの、CH3ドメインの、少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子のインターフェースに由来する、1つ以上の小型のアミノ酸側鎖が、大型の側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)により置換えられる。大型のアミノ酸側鎖を、小型の側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)により置換えることにより、大型の側鎖と相補的な、同一又は同様なサイズの「空隙」が、第2の抗体分子のインターフェース上に創出される。これは、ホモ二量体など、他の望ましくない最終産物に対する、ヘテロ二量体の収率を増大させるための機構をもたらす。
【0423】
二特異性抗体は、架橋抗体又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲート内の抗体のうちの一方が、アビジンへとカップリングされ、他方が、ビオチンへとカップリングされうる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を、望ましくない細胞へとターゲティングする(米国特許第4,676,980号)ことが提起されており、HIV感染の処置のため(WO91/00360、WO92/00373及びEP03089)にも提起されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を使用して作製できる。当技術分野において、適切な架橋剤が周知であり、多数の架橋法と共に、米国特許第4,676,980号において開示されている。
【0424】
また、二特異性抗体を、抗体断片から作出するための技法についても、文献に記載されている。例えば、二特異性抗体は、化学連結を使用して調製されうる。Brennanら、Science、229:81(1985)は、無傷抗体を、タンパク質分解により切断して、F(ab’)
2断片を作出する手順について記載している。近接のジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィドの形成を防止するように、これらの断片を、ジチオール複合体化剤である、亜ヒ酸ナトリウムの存在下において還元する。次いで、作出されたFab’断片を、チオニトロ安息香酸(TNB)誘導体へと転換する。次いで、Fab’−TNB誘導体のうちの一方を、メルカプトエチルアミンによる還元を介して、Fab’−チオールへと再転換し、等モル量である、他方のFab’−TNB誘導体と混合して、二特異性抗体を形成する。作製された二特異性抗体は、酵素を選択的に固定化するための薬剤として使用されうる。
【0425】
近年の進展は、二特異性抗体を形成するように、化学的にカップリングされうる、Fab’−SH断片の、E.コリからの直接的回収を容易としている。Shalabyら、J.Exp.Med.、175:217〜225(1992)は、完全ヒト化二特異性抗体である、F(ab’)
2分子の作製について記載している。各Fab’断片が、E.コリから個別に分泌され、インビトロにおいて、二特異性抗体を形成するように、指向性化学的カップリングにかけられる。このようにして形成された二特異性抗体は、HER2受容体を過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞に結合することが可能であるほか、ヒト細胞傷害性リンパ球の、ヒト乳腺腫瘍標的に対する溶解活性を誘発することも可能であった。
【0426】
また、二特異性抗体断片を、組換え細胞培養物から直接、作り、単離するための、多様な技法についても記載されている。例えば、二特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して作製されている(Kostelnyら、J.Immunol.、148(5):1547〜1553(1992))。Fosタンパク質及びJunタンパク質に由来するロイシンジッパーペプチドが、2つの異なる抗体のFab’部分へと、遺伝子融合により連結された。抗体のホモ二量体が、単量体を形成するように、ヒンジ領域において還元され、次いで、抗体のヘテロ二量体を形成するように、再酸化された。この方法はまた、抗体のホモ二量体を作製するためにも利用されうる。Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448(1993)により記載されている、「ダイアボディ」技術は、二特異性抗体断片を作るための、代替的な機構を提供している。断片は、同じ鎖上の2つのドメインの間の対合を可能とするには短すぎるリンカーにより、軽鎖可変ドメイン(VL)へと接続された、重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つの断片のVHドメイン及びVLドメインは、別の断片の、相補的なVLドメイン及びVHドメインと対合するように強いられ、これにより、2つの抗原結合性部位を形成する。また、単鎖Fv(sFv)二量体の使用を介して、二特異性抗体断片を作るための、別の戦略も、報告されている。Gruberら、J.Immunol.、152:5368(1994)を参照されたい。
【0427】
二価を超える抗体も想定されている。例えば、三特異性抗体も調製されうる(Tuttら、J.Immunol.、147:60(1991))。
【0428】
多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体より急速に内部化(及び/又は異化)されうる。本発明の抗体は、3つ以上の抗原結合性部位を伴う多価抗体(IgMクラス以外の抗体である)(例えば、四価抗体)でありうるが、これは、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により、たやすく作製されうる。多価抗体は、二量体化ドメイン及び3つ以上の抗原結合性部位を含みうる。二量体化ドメインは、例えば、Fc領域又はヒンジ領域を含む(又はこれらからなる)。この状況において、抗体は、Fc領域と、Fc領域に対してアミノ末端側にある、3つ以上の抗原結合性部位とを含む。一実施形態において、多価抗体は、例えば、3つ〜約8つ又は4つの抗原結合性部位を含む(又はこれらからなる)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(例えば、2つのポリペプチド鎖)を含み、ここで、ポリペプチド鎖は、2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖は、VD1−(X1)n−VD2−(X2)n−Fc[配列中、VD1は、第1の可変ドメインであり、VD2は、第2の可変ドメインであり、Fcは、Fc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1及びX2は、アミノ酸又はポリペプチドを表し、nは、0又は1である]を含みうる。例えば、ポリペプチド鎖は、VH−CH1−可撓性リンカー−VH−CH1−Fc領域鎖又はVH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含みうる。本明細書の多価抗体は、少なくとも2つ(例えば、4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドもさらに含みうる。本明細書の多価抗体は、例えば、約2つ〜約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含みうる。本明細書において想定された、軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、任意選択的に、CLドメインをさらに含む。
【0429】
抗体変異体
ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗体のアミノ酸配列修飾が想定される。例えば、アミノ酸配列修飾は、抗体の結合アフィニティー及び/又は他の生物学的特性を改善するのに所望でありうる。抗体のアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチド変化を、抗体核酸へと導入することにより、又はペプチド合成により調製される。このような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失及び/又はこれらへの挿入及び/又はこれらの置換を含む。最終構築物が、所望の特徴を保有するという条件において、最終的な構築物に到達するように、欠失、挿入及び置換の任意の組合せがなされうる。アミノ酸変化は、この配列が作製される時点において、対象抗体のアミノ酸配列内に導入されうる。
【0430】
突然変異誘発に好ましい位置である、抗体のある特定の残基又は領域の同定に有用な方法は、Cunningham及びWells(1989)、Science、244:1081〜1085により記載されている通り、「アラニン走査突然変異誘発」と呼ばれる。本明細書において、標的残基の残基又は群(例えば、arg、asp、his、lys及びgluなどの帯電残基)が同定され、アミノ酸の、抗原との相互作用に影響を及ぼすように、中性アミノ酸又は負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)により置換えられる。次いで、置換の部位において、又は置換の部位に代えて、さらなる変異体又は他の変異体を導入することにより、置換に対する機能的な感受性を顕示するアミノ酸位置が精緻化される。したがって、アミノ酸配列の変異を導入するための部位は、所定であるが、突然変異自体の性質は、所定である必要がない。例えば、所与の部位における突然変異の効能を解析するために、ala走査又はランダム突然変異誘発が、標的コドン又は標的領域において行われ、発現された免疫グロブリンが、所望の活性についてスクリーニングされる。
【0431】
アミノ酸配列の挿入は、長さが1残基〜100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲の、アミノ末端融合体及び/又はカルボキシル末端融合体のほか、単一又は複数のアミノ酸残基の、配列内挿入を含む。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を伴う抗体又は細胞傷害性ポリペプチドへと融合された抗体を含む。抗体分子の、他の挿入変異体は、抗体のN末端又はC末端の、酵素への融合体(例えば、ADEPTの場合)又は抗体の血清中半減期を延長するポリペプチドへの融合体を含む。
【0432】
別の種類の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子内の、少なくとも1つのアミノ酸残基が、異なる残基により置換えられている。置換突然変異誘発のために、最も大きな目的の部位は、超可変領域を含むが、また、フレームワークの変更も想定される。
【0433】
抗体の生物学的特性の実質的な修飾は、(a)置換領域内のポリペプチド骨格の構造であって、例えば、シートコンフォメーション若しくはヘリックスコンフォメーションとしての構造の維持;(b)標的部位における分子の電荷若しくは疎水性の維持又は(c)側鎖のバルクの維持に対する、それらの効果が、著明に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性(A.L.Lehninger、「Biochemistry」、2版、73〜75頁、Worth Publishers、New York(1975)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非帯電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(O)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
に従い群分けされうる。
【0434】
代替的に、天然に存在する残基は、一般的な側鎖特性に基づく群:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向性に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
へと分けられる場合もある。
【0435】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを、別のクラスのメンバーと交換することを伴う。また、このような置換残基は、保存的置換部位へと導入される場合もあり、残りの(非保存的)部位へと導入される場合もある。
【0436】
1つの種類の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の、1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般に、結果として得られた変異体であって、さらなる開発のために選択された変異体の生物学的特性は、それらが作出された親抗体と比べて修飾されている(例えば、改善されている)。このような置換変異体を作出するための、簡便な方式は、ファージディスプレイを使用するアフィニティー成熟を伴う。略述すると、各部位における全ての可能なアミノ酸置換を作出するように、いくつかの超可変領域部位(例えば、6つ〜7つの部位)に突然変異が導入される。このようにして作出された抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内にパッケージングされた、ファージコートタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)のうちの、少なくとも一部との融合体として提示される。次いで、ファージディスプレイされた変異体が、本明細書において開示される通り、それらの生体活性(例えば、結合アフィニティー)についてスクリーニングされる。修飾のための候補超可変領域部位を同定するために、抗原への結合に著明に寄与する、超可変領域残基を同定するように、走査突然変異誘発(例えば、アラニン走査)が実施されうる。代替的に、又は加えて、抗原−抗体複合体の結晶構造を解析して、抗体と抗原との接触点を同定することも有益でありうる。このような接触残基及び隣接残基は、本明細書において詳述された技法を含む、当技術分野において公知の技法に従う置換のための候補である。このような変異体が作出されたら、変異体のパネルが、本明細書において記載された技法を含む、当技術分野において公知の技法を使用するスクリーニングにかけられ、1つ以上の、妥当なアッセイにおいて、優れた特性を伴う抗体が、さらなる開発のために選択されうる。
【0437】
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当技術分野において公知の様々な方法により調製される。これらの方法は、天然供給源(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)からの単離又はオリゴヌクレオチド媒介型(又は部位指向)突然変異誘発、PCR突然変異誘発及び、抗体の、既に調製された変異体バージョン又は非変異体バージョンに対する、カセット型突然変異誘発による調製を含むがこれらに限定されない。一部の態様において、核酸分子は、天然に存在する配列を除外する。
【0438】
1つ以上のアミノ酸修飾を、本発明の抗体のFc領域内に導入し、これにより、Fc領域変異体を作出することが所望でありうる。Fc領域変異体は、ヒンジシステインの、1つ以上のアミノ酸位置を含む、1つ以上のアミノ酸位置における、アミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG
1、IgG
2、IgG
3、又はIgG
4のFc領域)を含みうる。
【0439】
イムノコンジュゲート
別の態様において、本発明は、化学療法剤、薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌由来、真菌由来、植物由来若しくは動物由来の酵素活性毒素又はこれらの断片)又は放射性同位元素(すなわち、放射性コンジュゲート)などの細胞傷害剤へとコンジュゲートされた抗体を含む、イムノコンジュゲート又は抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。
【0440】
細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤、すなわち、がんの処置において、腫瘍細胞を死滅させる、又は阻害する薬物を局所送達するための、抗体−薬物コンジュゲートの使用(Syrigos及びEpenetos(1999)、Anticancer Research、19:605〜614;Niculescu−Duvaz及びSpringer(1997)、Adv.Drg Del.Rev.、26:151〜172;米国特許第4,975,278号)は、コンジュゲートされていない、これらの薬剤の全身投与が、許容不可能なレベルの毒性を、消失が求められている腫瘍細胞のほか、正常細胞にも結果としてもたしうる場合(Baldwinら(1986)、Lancet(1986年3月15日):603〜05頁;Thorpe(1985)、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、「Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications」、A.Pincheraら(編)、475〜506頁)に、薬物部分の、腫瘍へのターゲティング送達及び腫瘍細胞内の蓄積を可能とする。こうして、毒性を最小としながら、有効性を最大とすることが探索される。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれも、これらの戦略において有用であると報告されている(Rowlandら(1986)、Cancer Immunol.Immunother.、21:183〜87)。これらの方法で使用される薬物は、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート及びビンデシンを含む(Rowlandら(1986年)、前出)。抗体−毒素コンジュゲート内において使用される毒素は、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リシンなどの植物毒素、ゲルダナマイシンなどの低分子毒素(Mandlerら(2000)、Jour.of the Nat.Cancer Inst.、92(19):1573〜1581;Mandlerら(2000)、Bioorganic & Med.Chem.Letters、10:1025〜1028;Mandlerら(2002年)、Bioconjugate Chem.、13:786〜791)、メイタンシノイド(EP1391213;Liuら(1996年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:8618〜8623)及びカリケアミシン(Lodeら(1998)、Cancer Res.、58:2928;Hinmanら(1993)、Cancer Res.、53:3336〜3342)を含む。毒素は、それらの細胞傷害効果及び細胞増殖抑制効果を、チューブリンへの結合、DNAへの結合又はトポイソメラーゼの阻害を含む機構により及ぼしうる。一部の細胞傷害薬は、大型の抗体又はタンパク質受容体のリガンドへとコンジュゲートされると、不活性又は低活性となる傾向がある。
【0441】
抗体の誘導体
本発明の抗体は、当技術分野において公知であり、たやすく利用可能な、さらなる非タンパク質性部分を含有するように、さらに修飾されうる。一実施形態において、抗体の誘導体化に適する部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマー)及びデキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、(酸化ポリプロピレン/酸化エチレン)コポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール及びこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中のこの安定性のために、製造における利点を有しうる。ポリマーは、任意の分子量のものであることが可能であり、分枝状の場合もあり、非分枝状の場合もある。抗体へと接合されるポリマーの数は変動する場合があり、1つを超えるポリマーが接合される場合、ポリマーは、同じ分子の場合もあり、異なる分子の場合もある。一般に、誘導体化に使用されたポリマーの数及び/又は種類は、改善される抗体の、特定の特性又は機能、抗体の誘導体が、規定された条件下の治療において使用されるのかどうかなどを含むがこれらに限定されない検討項目に基づき決定されうる。
【0442】
別の実施形態において、抗体と非タンパク質性部分とのコンジュゲートであって、放射線への曝露により選択的に加熱されうるコンジュゲートが提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kamら、Proc.Natl.Acad.Sci.、102:11600〜11605(2005))。放射線は、任意の波長であることが可能であり、正常細胞に有害でないが、非タンパク質性部分を、抗体−非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅させられる温度まで加熱する波長を含むがこれらに限定されない。
【0443】
医薬製剤
一実施形態において、本発明は、本明細書において記載された、抗体又はこの抗原結合性部分と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。別の実施形態において、医薬組成物は、本抗体又はこの抗原結合性部分をコードする核酸と、薬学的に許容される担体とを含む。薬学的に許容される担体は、生理学的に適合性のものなど、任意の溶媒及び全ての溶媒、任意の分散媒及び全ての分散媒、任意の等張剤及び全ての等張剤並びに任意の吸収遅延剤及び全ての吸収遅延剤を含む。一実施形態において、組成物は、対象におけるがん細胞を阻害するのに効果的である。
【0444】
本医薬組成物の投与経路は、静脈内投与、筋内投与、鼻腔内投与、皮下(subcutaneous)投与、経口投与、局所投与、皮下(subcutaneous)投与、皮内投与、経皮投与、皮下(subdermal)投与、非経口投与、直腸内投与、脊髄投与又は表皮投与を含むがこれらに限定されない。
【0445】
本発明の医薬組成物は、溶液若しくは懸濁液として、又は注射の前における、液体媒体中の、溶解若しくは懸濁に適する固体形態としての注射剤として調製されうる。医薬組成物はまた、固体形態においても調製される場合もあり、乳化される場合もあり、有効成分が、持続送達のために使用される、リポソーム媒体中又は他の粒子状担体中に封入される場合もある。例えば、医薬組成物は、油エマルジョン、油中水エマルジョン、水中油中水エマルジョン、部位特異的エマルジョン、長時間貯留型エマルジョン、粘着性エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロスフェア、ナノスフェア、ナノ粒子並びに酢酸エチレンビニルコポリマー及びHytrel(登録商標)コポリマーなど、非吸収性の不透過性ポリマー、ハイドロゲルなどの膨潤性ポリマー又はコラーゲンなどの吸収性ポリマー並びに医薬組成物の持続放出を可能とする、吸収性縫合糸を作るのに使用されたものなど、ある特定のポリ酸又はポリエステルなど、多様な、天然ポリマー又は合成ポリマーの形態でありうる。
【0446】
本抗体又はこの抗原結合性部分は、哺乳動物対象への送達のための医薬組成物へと製剤化される。医薬組成物は、単独において投与される場合もあり、かつ/又は薬学的に許容される媒体、賦形剤若しくは担体と混合される場合もある。適切な媒体は、例えば、水、生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びこれらの組合せである。加えて、媒体は、保湿剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤又はアジュバントなど、少量の補助物質を含有しうる。薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の医薬組成物の吸収速度又はクリアランス速度を、安定化させる、又は増大若しくは減少させるように作用する、生理学的に許容される化合物を含有しうる。生理学的に許容される化合物は、例えば、グルコース、スクロース若しくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸若しくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、デタージェント、リポソーム型の担体又は賦形剤又は他の安定化剤及び/若しくは緩衝剤を含みうる。他の、生理学的に許容される化合物は、保湿剤、乳化剤、分散剤又は保存剤を含む。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Science」、Mack Publishing Company、Easton、Pa.(「Remington’s」)の21版を参照されたい。本発明の医薬組成物はまた、薬理学的薬剤、サイトカイン又は他の生物学的応答修飾剤などの補助物質も含みうる。
【0447】
さらに、医薬組成物は、中性形態又は塩形態の医薬組成物へと製剤化されうる。薬学的に許容される塩は、酸付加塩(活性ポリペプチドの遊離アミノ基により形成される)を含み、例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデリン酸などの有機酸により形成される。遊離カルボキシル基から形成された塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化鉄などの無機塩基及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基にも由来しうる。
【0448】
このような剤形を調製する、実際の方法は、当業者に公知である、又は当業者に明らかである。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Science」、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、21版を参照されたい。
【0449】
医薬組成物は、対象の年齢、体重及び状態、使用された、特定の組成物及び投与経路、医薬組成物が、予防的目的のために使用されるのか、治癒的目的のために使用されるのかなどに適切なスケジュールにより、これらに適切な期間にわたり、単回投与による処置において投与される場合もあり、複数回投与による処置において投与される場合もある。例えば、一実施形態において、本発明に従う医薬組成物は、毎月1回、毎月2回、毎月3回、隔週(qow)、毎週1回(qw)、毎週2回(biw)、毎週3回(tiw)、毎週4回、毎週5回、毎週6回、隔日(qod)、毎日(qd)、毎日2回(qid)又は毎日3回(tid)投与される。
【0450】
本発明に従う、抗体の投与の持続期間、すなわち、医薬組成物が投与される期間は、例えば、対象の応答など、様々な因子のうちのいずれかに応じて変動しうる。例えば、医薬組成物は、約1秒間以上〜1時間以上、1日間〜約1週間、約2週間〜約4週間、約1カ月間〜約2カ月間、約2カ月間〜約4カ月間、約4カ月間〜約6カ月間、約6カ月間〜約8カ月間、約8カ月間〜約1年間、約1年間〜約2年間又は約2年間〜約4年間以上の範囲の期間にわたり投与されうる。
【0451】
投与の容易さ及び投与量の均一性のために、単位剤形にある、経口組成物又は非経口医薬組成物が使用されうる。本明細書において使用された、単位剤形とは、処置される対象のための単位投与量として適する、物理的に個別の単位であって、各単位が、要求された医薬担体と会合して、所望の治療効果をもたらすように計算された、所定量の活性化合物を含有する単位を指す。
【0452】
細胞培養物アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための、投与量の範囲を処方するのに使用されうる。一実施形態において、このような化合物の投与量は、毒性をほとんど又は全く伴わない、ED
50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられた剤形及び利用された投与経路に応じて、この範囲内において変動しうる。別の実施形態において、治療有効用量は、まず、細胞培養物アッセイから推定されうる。用量は、細胞培養物中において決定された、IC
50(すなわち、症状の、最大半量の阻害を達成する、被験化合物の濃度)を含む、循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて処方されうる(Sonderstrup、Springer Sem.Immunopathol.、25:35〜45、2003;Nikulaら、Inhal.Toxicol.、4(12):123〜53、2000)。
【0453】
本発明の抗体又は抗原結合性部分の、治療有効量又は予防有効量のための、例示的な、非限定的な範囲は、体重1kg当たり約0.001〜約60mg、体重1kg当たり約0.01〜約30mg、体重1kg当たり約0.01〜約25mg、体重1kg当たり約0.5〜約25mg、体重1kg当たり約0.1〜約20mg、体重1kg当たり約10〜約20mg、体重1kg当たり約0.75〜約10mg、体重1kg当たり約1〜約10mg、体重1kg当たり約2〜約9mg、体重1kg当たり約1〜約2mg、体重1kg当たり約3〜約8mg、体重1kg当たり約4〜約7mg、体重1kg当たり約5〜約6mg、体重1kg当たり約8〜約13mg、体重1kg当たり約8.3〜約12.5mg、体重1kg当たり約4〜約6mg、体重1kg当たり約4.2〜約6.3mg、体重1kg当たり約1.6〜約2.5mg、体重1kg当たり約2〜約3mg又は体重1kg当たり約10mgである。
【0454】
医薬組成物は、有効量の、本抗体又はこの抗原結合性部分を含有するように製剤化され、この場合、量は、処置される動物及び処置される状態に依存する。一実施形態において、本抗体又はこの抗原結合性部分は、約0.01mg〜約10g、約0.1mg〜約9g、約1mg〜約8g、約2mg〜約7g、約3mg〜約6g、約10mg〜約5g、約20mg〜約1g、約50mg〜約800mg、約100mg〜約500mg、約0.05μg〜約1.5mg、約10μg〜約1mgのタンパク質、約30μg〜約500μg、約40μg〜約300μg、約0.1μg〜約200μg、約0.1μg〜約5μg、約5μg〜約10μg、約10μg〜約25μg、約25μg〜約50μg、約50μg〜約100μg、約100μg〜約500μg、約500μg〜約1mg、約1mg〜約2mgの範囲の用量において投与される。任意の特定の対象のための、具体的な用量レベルは、特異的なペプチドの活性、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食餌、投与回数、投与経路及び排出速度、薬物の組合せ並びに治療を受ける、特定の疾患の重症度を含む、様々な因子に依存し、不要な実験を伴わずに、当業者により決定されうる。
【0455】
本発明の抗体を含む治療用製剤は、所望の程度の純度を有する抗体を、任意選択的な、生理学的に許容される担体、賦形剤、又は安定化剤(「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、16版、Osol,A.編(1980))と、水溶液、凍結乾燥製剤又は他の乾燥製剤の形態で混合することにより、保管用に調製される。許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられる投与量及び濃度において、レシピエントに対して非毒性であり、リン酸、クエン酸、ヒスチジン及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム塩化物;フェノール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール;メチルパラベン又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール及びm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリシンなどのアミノ酸;単糖、二糖及び、グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む、他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体)並びに/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0456】
本明細書の製剤はまた、処置される特定の適応に対する必要に応じて、互いに対して有害な影響を及ぼし合わない、相補的活性を伴う活性化合物を含むがこれらに限定されない、1つを超える活性化合物も含有しうる。このような分子は、意図される目的に効果的な量において、組合せの中に適切に存在する。
【0457】
有効成分はまた、例えば、コアセルベーション法により、又は界面重合により調製された、マイクロカプセル、例えば、それぞれ、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)内又はマクロエマルジョン中の、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル内又はゼラチンマイクロカプセル内及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内にも封入されうる。このような技法は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、16版、Osol,A.編(1980)において開示されている。
【0458】
インビボにおける投与のために使用される製剤は、滅菌製剤でなければならない。これは、滅菌濾過膜を介する濾過により、たやすく達成される。
【0459】
持続放出調製物が調製されうる。持続放出調製物の、適切な例は、本発明の免疫グロブリンを含有する、固体の疎水性ポリマーによる半透性マトリックスであって、成型品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態にあるマトリックスを含む。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸(glutamic acid)とγエチル−L−グルタミン酸(glutamate)とのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーと、酢酸ロイプロリドとから構成される、注射用マイクロスフェア)などの、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸などのポリマーが、100日間を超えて、分子の放出を可能とするのに対し、ある特定のハイドロゲルは、タンパク質を放出する期間が短い。封入された免疫グロブリンは、長時間にわたり体内にとどまるが、37℃の水分へと曝露される結果として、変性又は凝集し、生体活性の喪失及び可能な免疫原性の変化を結果としてもたらす場合がある。関与する機構に応じた、安定化のための、妥当な戦略が案出されうる。例えば、凝集機構が、チオ−ジスルフィド交換を介する、分子間S−S結合の形成であると発見されれば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含量を制御し、適切な添加剤を使用し、特異的なポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成されうる。
【0460】
使用
本発明の抗体は、例えば、インビトロ、エクスビボ及びインビボの治療法において使用されうる。本発明の抗体は、インビトロ、エクスビボ及び/又はインビボにおける特異的抗原活性を、部分的又は完全に遮断する、アンタゴニストとして使用されうる。さらに、本発明の抗体の少なくとも一部は、他の種に由来する抗原活性も中和しうる。したがって、本発明の抗体は、例えば、抗原を含有する細胞培養物中、ヒト対象又は、本発明の抗体が交差反応する抗原を有する、他の哺乳動物対象(例えば、チンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザル及びアカゲザル、ブタ又はマウス)における、特異的抗原活性を阻害するのに使用されうる。一実施形態において、本発明の抗体は、抗原活性が阻害されるように、抗体を抗原と接触させることにより、抗原活性を阻害するために使用されうる。一実施形態において、抗原は、ヒトタンパク質分子である。
【0461】
一実施形態において、本発明の抗体は、抗原活性が有害である障害を患う対象において、抗原を阻害するための方法であって、対象における抗原活性が阻害されるように、対象へと、本発明の抗体を投与するステップを含む方法において使用されうる。一実施形態において、抗原は、ヒトタンパク質分子であり、対象は、ヒト対象である。代替的に、対象は、本発明の抗体が結合する抗原を発現する哺乳動物でもありうる。なおさらなる対象は、抗原が導入された(例えば、抗原の投与により、又は抗原のトランス遺伝子の発現により)哺乳動物でありうる。本発明の抗体は、ヒト対象へと、治療目的のために投与されうる。さらに、本発明の抗体は、抗体が交差反応する抗原を発現する非ヒト哺乳動物(例えば、霊長動物、ブタ又はマウス)へと、獣医学的目的のために投与される場合もあり、ヒト疾患の動物モデルとして投与される場合もある。後者に関して、このような動物モデルは、本発明の抗体の治療有効性の評価(例えば、投与量及び投与の時間経過についての検査)に有用でありうる。本発明の抗体は、SSEA−4及びSSEA−4化タンパク質の異常な発現及び/又は活性と関連する疾患、障害又は状態であって、がん、筋障害、ユビキチン経路関連の遺伝子障害、免疫/炎症性障害、神経障害及び他のユビキチン経路関連障害を含むがこれらに限定されない、疾患、障害又は状態を処置する、阻害する、これらの進行を遅延させる、これらの再発を防止する/遅延させる、これらを改善する、又は防止するのに使用されうる。
【0462】
一態様において、本発明の遮断抗体は、SSEA−4に特異的である。
【0463】
ある特定の実施形態において、本発明の抗体を含むイムノコンジュゲートであって、細胞傷害剤とコンジュゲートされたイムノコンジュゲートが、患者へと投与される。ある特定の実施形態において、イムノコンジュゲート及び/又はそれが結合させられる抗原は、それらの細胞表面上に、SSEA−4と関連する、1つ以上のタンパク質を発現する細胞により内部化される結果として、それが会合する標的細胞の殺滅における、イムノコンジュゲートの治療有効性の増大をもたらす。一実施形態において、細胞傷害剤は、標的細胞内の核酸をターゲティングする、又はこれに干渉する。このような細胞傷害剤の例は、本明細書において言及される化学療法剤(メイタンシノイド又はカリケアミシンなど)、放射性同位元素、又はリボヌクレアーゼ若しくはDNAエンドヌクレアーゼのうちのいずれかを含む。
【0464】
本発明の抗体(及び補助療法剤)は、非経口手段、皮下手段、腹腔内手段、肺内手段及び鼻腔内手段並びに、局所処置に所望される場合、病変内投与を含む、任意の適切な手段により投与されうる。非経口注入は、筋内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与又は皮下投与を含む。加えて、抗体は、特に、抗体の用量を減じる、パルス注入により、適切に投与される。投与は、任意の適切な経路を介することが可能であり、例えば、投与が短期であるのか、長期であるのかに部分的に応じて、注射(例えば、静脈内注射又は皮下注射)を介しうる。
【0465】
抗体の調製及び投与において、本発明の抗体の結合標的の位置が検討されうる。結合標的が、細胞内分子である場合、本発明のある特定の実施形態は、結合標的が位置する細胞へと導入される、抗体又はその抗原結合性断片を提供する。一実施形態において、本発明の抗体は、細胞内において、イントラボディーとして発現されうる。本明細書において使用された、「イントラボディー」という用語は、Marasco、Gene Therapy、4:11〜15(1997);Kontermann、Methods、34:163〜170(2004);米国特許第6,004,940号及び同第6,329,173号;米国特許出願公開第2003/0104402号並びにPCT公開第WO2003/077945号において記載されている通り、細胞内において発現され、標的分子に選択的に結合することが可能な、抗体又はその抗原結合性部分を指す。イントラボディーの細胞内発現は、所望の抗体又はその抗原結合性部分をコードする核酸(抗体又は抗原結合性断片をコードする遺伝子と通常関連する、野生型のリーダー配列及び分泌シグナルを欠く)を、標的細胞へと導入することによりなされる。マイクロ注射、遺伝子銃注射、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム及び、目的の核酸を保有する、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター及びワクシニアベクターによるトランスフェクションを含むがこれらに限定されない、核酸を細胞へと導入する任意の標準的な方法が使用されうる。SSEA−4への細胞内結合及び1つ以上の、SSEA−4媒介性細胞内経路のモジュレーションが可能な、1つ以上のイントラボディーを発現させるように、本発明の抗SSEA−4抗体の全部又は一部をコードする、1つ以上の核酸が、標的細胞へと送達されうる。
【0466】
別の実施形態において、内部化抗体が提供される。抗体は、抗体の、細胞への送達を増強する、ある特定の特徴を保有する場合もあり、このような特徴を保有するように修飾される場合もある。当技術分野において、これを達成するための技法が公知である。例えば、抗体のカチオン化は、その細胞への取込みを容易とすることが公知である(例えば、米国特許第6,703,019号を参照されたい。)。また、リポフェクション又はリポソームも、抗体を細胞へと送達するのに使用されうる。抗体断片が使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する、最小の阻害性断片が、一般に有利である。例えば、抗体の可変領域配列に基づき、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子がデザインされうる。このようなペプチドは、化学合成される場合もあり、かつ/又は組換えDNA技術により作製される場合もある。例えば、Marascoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:7889〜7893(1993)を参照されたい。
【0467】
モジュレーターポリペプチドの、標的細胞への侵入は、当技術分野において公知の方法により増強されうる。例えば、HIV Tat又はAntennapediaホメオドメインタンパク質に由来する配列など、ある特定の配列は、異種タンパク質の、細胞膜を隔てた効率的な取込みを方向付けることが可能である。例えば、Chenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1999)、96:4325〜4329を参照されたい。
【0468】
結合標的が脳内に位置する場合、本発明のある特定の実施形態は、血液脳関門を越える抗体又はその抗原結合性断片を提供する。ある特定の神経変性疾患は、抗体又は抗原結合性断片が、脳へとたやすく導入されうるように、血液脳関門の透過性の増大と関連する。血液脳関門が無傷を維持する場合、血液脳関門を隔てて分子を運ぶための、当技術分野において公知のいくつかの手法であって、物理的方法、脂質ベースの方法並びに受容体及びチャネルベースの方法を含むがこれらに限定されない手法が存在する。
【0469】
抗体又は抗原結合性断片を、血液脳関門を隔てて運ぶ、物理的方法は、血液脳関門を全体として迂回する方法又は血液脳関門内に開口部を創出する方法を含むがこれらに限定されない。迂回法は、脳への直接的注射(例えば、Papanastassiouら、Gene Therapy、9:398〜406(2002)を参照されたい。)、間質内注入/対流増強型送達(例えば、Boboら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:2076〜2080(1994)を参照されたい。)及び送達デバイスの、脳内への植込み(例えば、Gillら、Nature Med.、9:589〜595(2003)及びGliadel Wafers(商標)、Guildford Pharmaceuticalを参照されたい。)を含むがこれらに限定されない。関門内に開口部を創出する方法は、超音波法(例えば、米国特許公開第2002/0038086号を参照されたい。)、浸透圧法(例えば、高張性マンニトールの投与による(Neuwelt,E.A.、「Implication of the Blood−Brain Barrier and its Manipulation」、1及び2巻、Plenum Press、N.Y.(1989)))、例えば、ブラジキニン又は透過剤A−7による透過化(例えば、米国特許第5,112,596号、同第5,268,164号、同第5,506,206号及び同第5,686,416号を参照されたい。)及び血液脳関門を夾叉するニューロンへの、抗体又は抗原結合性断片をコードする遺伝子を含有するベクターのトランスフェクション(例えば、米国特許公開第2003/0083299号を参照されたい。)を含むがこれらに限定されない。
【0470】
抗体又は抗原結合性断片を、血液脳関門を隔てて運ぶ、脂質ベースの方法は、抗体又は抗原結合性断片を、血液脳関門の血管内皮上の受容体に結合する、抗体又は抗原結合性断片へとカップリングされた、リポソーム内に封入する方法(例えば、米国特許出願公開第20020025313号を参照されたい。)及び抗体又は抗原結合性断片を、低密度リポタンパク質粒子(例えば、米国特許出願公開第20040204354号を参照されたい。)又はアポリポタンパク質E(例えば、米国特許出願公開第20040131692号を参照されたい。)によりコーティングする方法を含むがこれらに限定されない。
【0471】
抗体又は抗原結合性断片を、血液脳関門を隔てて運ぶ、受容体及びチャネルベースの方法は、グルココルチコイド遮断剤を使用して、血液脳関門の透過性を増大させる方法(例えば、米国特許出願公開第2002/0065259号、同第2003/0162695号及び同第2005/0124533号を参照されたい。);カリウムチャネルを活性化させる方法(例えば、米国特許出願公開第2005/0089473号を参照されたい。)、ABC薬物輸送体を阻害する方法(例えば、米国特許出願公開第2003/0073713号を参照されたい。);抗体をトランスフェリンによりコーティングし、1つ以上のトランスフェリン受容体の活性をモジュレートする方法(例えば、米国特許出願公開第2003/0129186号を参照されたい。)及び抗体をカチオン化する方法(例えば、米国特許第5,004,697号を参照されたい。)を含むがこれらに限定されない。
【0472】
本発明の抗体組成物は、「医薬品の製造及び品質管理に関する基準」に準拠する方式において、製剤化、投薬、及び投与される。この文脈において検討される因子は、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与法、投与のスケジュール指定及び医療従事者に公知の他の因子を含む。抗体は、問題の障害を防止又は処置するのに現在使用されている、1つ以上の薬剤と共に製剤化される必要はないが、任意選択的に、これらと共に製剤化される。このような、他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する本発明の抗体の量、障害又は処置の種類及び上記において論じられた、他の因子に依存する。他の薬剤は、一般に、本明細書において記載された、同じ投与量において、かつ、同じ投与経路により使用される、又は本明細書において記載された投与量の約1〜99%により使用される、又は経験的/臨床的に適切であると決定された、任意の投与量において、かつ、任意の経路により使用される。
【0473】
疾患を防止又は処置するために、本発明の抗体の適切な投与量(単独において使用された場合の投与量又は、化学療法剤など、他の薬剤と組み合わせて使用された場合の投与量)は、処置される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的のために投与されるのか、治療目的のために投与されるのか、既往の治療、患者の臨床歴及び抗体への応答並びに主治医の判断に依存する。抗体は、患者へと一度に投与するのにも、一連の処置にわたり投与するのにも適する。疾患の種類及び重症度に応じて、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1mg/kg〜10mg/kg)の抗体が、例えば、1回以上にわたる個別投与によるのであれ、連続注入によるのであれ、患者への投与のための、初期の候補投与量でありうる。典型的な、1つの、毎日の投与量は、約1μg/kg〜の範囲でありうる。数日間以上にわたる場合、状態に応じて、処置は、一般に、疾患症状の、所望される抑制が生じるまで、持続される。抗体の、1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲である。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgのうちの1つ以上の用量(又はこれらの任意の組合せ)が、患者へと投与されうる。このような用量は、間欠的に、例えば、毎週又は3週間ごとに(例えば、患者が、約2〜約20回又は、例えば、約6回にわたる抗体の投与を施されるように)投与されうる。初期の高負荷用量に続き、1回以上にわたる低用量が投与されうる。例示的な投与レジメンは、初期負荷用量約4mg/kgに続き、毎週の維持用量約2mg/kgの抗体を投与することを含む。しかし、他の投与レジメンも、有用でありうる。この治療の進捗状況は、従来の技法及びアッセイにより、容易にモニタリングされる。
【0474】
製品
本発明の別の態様において、上記において記載された障害の処置、防止及び/又は診断に有用な材料を含有する製品が提供される。製品は、容器及び容器上における表示又は容器と関連するパッケージ添付文書を含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどを含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。容器は、それ自体において、又は別の組成物と組み合わされた場合に、状態を処置、防止及び/又は診断するのに有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は、静脈内注射用溶液バッグの場合もあり、皮下注射用注射針により穿刺可能な止栓を有するバイアルの場合もある)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明の抗体である。標識又はパッケージ添付文書は、組成物が、選択された状態を処置するために使用されることを指し示す。さらに、製品は、(a)組成物がその中に含有された、第1の容器であって、組成物が本発明の抗体を含む容器と;(b)組成物がその中に含有された第2の容器であって、組成物がさらなる細胞傷害剤又はこれ以外の治療剤を含む容器とを含みうる。本発明のこの実施形態における製品は、組成物が、特定の状態を処置するのに使用されうることを指し示す、パッケージ添付文書もさらに含みうる。代替的に、又は加えて、製品は、静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩液、リンゲル液及びデキストロース溶液など、薬学的に許容可能な緩衝液を含む、第2の(又は第3の)容器もさらに含みうる。製品は、販売上の観点及び使用者の観点から所望される、他の材料であって、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、注射針及びシリンジを含む材料もさらに含む。
【0475】
ある特定の実施形態において、処置される対象は、哺乳動物である。ある特定の実施形態において、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態において、対象は、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ又はヤギなどの馴致動物である。ある特定の実施形態において、対象は、イヌ又はネコなどの愛玩動物である。ある特定の実施形態において、対象は、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ又はヤギなどの家畜である。ある特定の実施形態において、対象は、動物園動物である。別の実施形態において、対象は、齧歯動物、イヌ又は非ヒト霊長動物などの研究用動物である。ある特定の実施形態において、対象は、トランスジェニックマウス又はトランスジェニックブタなどの非ヒトトランスジェニック動物である。
【0476】
医薬組成物及び製剤
本明細書において記載された抗体を調製した後、「あらかじめ凍結乾燥させた製剤」が作製されうる。製剤を調製するための抗体は、本質的に純粋であることが好ましく、本質的に均質である(すなわち、夾雑タンパク質などを含まない)ことが所望される。「本質的に純粋な」タンパク質とは、組成物の総重量に基づき、重量により、少なくとも約90%のタンパク質、好ましくは、重量により、少なくとも約95%のタンパク質を含む組成物を意味する。「本質的に均質な」タンパク質とは、組成物の総重量に基づき、重量により、少なくとも約99%のタンパク質を含む組成物を意味する。ある特定の実施形態において、タンパク質は、抗体である。
【0477】
あらかじめ凍結乾燥させた製剤中の抗体の量は、所望の投与容量、投与方式などを考慮に入れて決定される。選択されたタンパク質が、無傷抗体(全長抗体)である場合、約2mg/mL〜約50mg/mL、好ましくは、約5mg/mL〜約40mg/mLであり、最も好ましくは、約20〜約30mg/mLが、例示的な出発タンパク質濃度である。タンパク質は一般に、溶液中に存在する。例えば、タンパク質は、pH緩衝溶液中に、pH約4〜8において存在することが可能であり、好ましくは、約5〜7において存在しうる。例示的な緩衝剤は、ヒスチジン、リン酸、トリス、クエン酸、コハク酸及び他の有機酸を含む。緩衝液濃度は、例えば、緩衝液及び製剤(例えば、復元製剤)の所望の等張性に応じて、約1mM〜約20mM又は約3mM〜約15mMでありうる。下記において裏付けられる通り、ヒスチジンは、凍結乾燥保護特性を有しうるので、好ましい緩衝液は、ヒスチジンである。コハク酸は、別の有用な緩衝液であることが示された。
【0478】
凍結乾燥保護剤が、あらかじめ凍結乾燥さられた製剤へと添加される。好ましい実施形態において、凍結乾燥保護剤は、スクロース又はトレハロースなどの、非還元糖である。あらかじめ凍結乾燥させた製剤中の凍結乾燥保護剤の量は、一般に、復元されると、結果として得られる製剤が等張性となるような量である。しかしまた、高張性の復元製剤も、適切でありうる。加えて、凍結乾燥保護剤の量は、凍結乾燥時に、許容不可能な量のタンパク質の分解/凝集が生じるほどに少なすぎてはならない。凍結乾燥保護剤が、糖(スクロース又はトレハロースなど)であり、タンパク質が、抗体である場合、あらかじめ凍結乾燥させた製剤中の、例示的な凍結乾燥保護剤濃度は、約10mM〜約400mMであり、好ましくは、約30mM〜約300mMであり、最も好ましくは、約50mM〜約100mMである。
【0479】
タンパク質の、凍結乾燥保護剤に対する比は、タンパク質と凍結乾燥保護剤との各組合せについて選択される。タンパク質濃度が高濃度である、等張性の復元製剤を作出するための、選択されたタンパク質としての抗体及び凍結乾燥保護剤としての糖(例えば、スクロース又はトレハロース)の場合、凍結乾燥保護剤の、抗体に対するモル比は、1モルの抗体に対して、約100〜約1500モルの凍結乾燥保護剤であることが可能であり、好ましくは、1モルの抗体に対して、約200〜約1000モルの凍結乾燥保護剤、例えば、1モルの抗体に対して、約200〜約600モルの凍結乾燥保護剤でありうる。
【0480】
本発明の好ましい実施形態において、あらかじめ凍結乾燥さられた製剤に、界面活性剤を添加することが所望であることが見出されている。代替的に、又は加えて、界面活性剤が、凍結乾燥製剤及び/又は復元製剤へと添加される場合もある。例示的な界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20又は80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);Triton;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン又はステアリールスルホベタイン;ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン又はステアリールサルコシン;リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン又はセチルベタイン;ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノールアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン又はイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピルベタイン);ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン又はイソステアラミドプロピルジメチルアミン;ココイルメチルタウリンナトリウム又はココイルメチルタウリン二ナトリウム並びにMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.、Paterson、N.J.)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びエチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68など)などの非イオン界面活性剤を含む。添加される界面活性剤の量は、界面活性剤が、復元されるタンパク質の凝集を低減し、復元後における、粒子状物質の形成を最小化するような量である。例えば、界面活性剤は、あらかじめ凍結乾燥さられた製剤中に、約0.001〜0.5%の量において存在することが可能であり、好ましくは、約0.005〜0.05%において存在しうる。
【0481】
本発明のある特定の実施形態において、凍結乾燥保護剤(スクロース又はトレハロースなど)と、増量剤(例えば、マンニトール又はグリシン)との混合物が、あらかじめ凍結乾燥さられた製剤の調製物中において使用される。増量剤は、その中に過剰なポケットなどを伴わずに、均一な凍結乾燥ケーキの作製を可能としうる。
【0482】
それらが、製剤の所望の特徴に有害な影響を及ぼさないという条件において、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、16版、Osol,A.編(1980)において記載されているものなど、他の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤も、あらかじめ凍結乾燥さられた製剤中(及び/又は凍結乾燥製剤中及び/又は復元製剤中)に組み入れられうる。許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤は、用いられた投与量及び濃度において、レシピエントに対して非毒性であり、さらなる緩衝剤;防腐剤;共溶媒;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ポリエステルなどの生体分解性ポリマー並びに/又はナトリウムなどの塩形成対イオンを含む。
【0483】
本明細書において記載された、医薬組成物及び製剤は、好ましくは、安定である。「安定な」製剤/組成物とは、その中の抗体が、保管時に、その物理的及び化学的な、安定性及び完全性を、本質的に保持する製剤/組成物である。当技術分野において、タンパク質の安定性を測定するための、多様な解析法が利用可能であり、「Peptide and Protein Drug Delivery」、247〜301、Vincent Lee編、Marcel Dekker,Inc.、New York、N.Y.刊(1991)及びJones,A.、Adv.Drug Delivery Rev.、10:29〜90(1993)において総説されている。安定性は、選択された温度において、選択された時間にわたり測定されうる。
【0484】
インビボにおける投与のために使用される製剤は、滅菌製剤でなければならない。これは、凍結乾燥及び復元の前に、又は凍結乾燥及び復元の後に、滅菌濾過膜を介する濾過によりたやすく達成される。代替的に、混合物全体の無菌性は、タンパク質を除く成分を、例えば、約120℃において、約30分間にわたり、オートクレーブにかけることにより達成されうる。
【0485】
タンパク質、凍結乾燥保護剤及び他の任意選択の構成要素を一体に混合した後、製剤は、凍結乾燥させる。Hull50(登録商標)(Hull、USA)凍結乾燥器又はGT20(登録商標)(Leybold−Heraeus、Germany)凍結乾燥器など、多くの異なる凍結乾燥器が、この目的のために利用可能である。凍結乾燥は、製剤を凍結させ、その後、一次乾燥に適する温度において、凍結させられた内容物から、氷を昇華させることにより達成される。この条件下において、生成物温度は、製剤の共晶融点又は崩壊温度を下回る。典型的に、一次乾燥のための保管温度は、典型的に、約50〜250mTorrの範囲である、適切な圧力下において、約−30〜25℃の範囲となる(一次乾燥時に、生成物が凍結を維持するという条件において)。製剤、サイズ及び試料を保持する容器の種類(例えば、ガラスバイアル)並びに液体の容量が、主に、乾燥に要求される時間であって、数時間〜数日間(例えば、40〜60時間)の範囲でありうる時間を指示する。二次乾燥段階は、主に、容器の種類及びサイズ並びに用いられるタンパク質の種類に依存して、約0℃〜約40℃において実行されうる。しかし、本明細書において、二次乾燥ステップは、必要でない場合もあることが見出された。例えば、凍結乾燥のうちの、全水除去期を通した保管温度は、約15〜30℃(例えば、約20℃)でありうる。二次乾燥に要求される、時間及び圧力は、例えば、温度及び他のパラメータに依存して、適切な凍結乾燥ケーキをもたらす時間及び圧力となる。二次乾燥時間は、生成物中に所望される、残りの水分レベルにより指示され、典型的に、少なくとも約5時間(例えば、10〜15時間)を要する。圧力は、一次乾燥ステップ中に用いられる圧力と同じでありうる。凍結乾燥条件は、製剤及びバイアルサイズに応じて変動しうる。
【0486】
場合によって、移替えステップを回避するために、タンパク質製剤は、タンパク質の復元が実行される容器内において凍結乾燥させることが所望でありうる。この場合の容器は、例えば、3、5、10、20、50又は100ccのバイアルでありうる。一般的な仮定として述べると、凍結乾燥は、その水分含量が約5%未満であり、好ましくは、約3%未満である凍結乾燥製剤を結果としてもたらす。
【0487】
所望の段階において、典型的に、タンパク質を患者へと投与する段階において、復元製剤中のタンパク質濃度が、少なくとも50mg/mL、例えば、約50mg/mL〜約400mg/mL、より好ましくは、約80mg/mL〜約300mg/mLとなり、最も好ましくは、約90mg/mL〜約150mg/mLとなるように、凍結乾燥製剤は、希釈剤により復元される。復元製剤中の、このような高タンパク質濃度は、復元製剤の皮下送達が意図される場合に、特に有用であると考えられる。しかし、静脈内投与など、他の投与経路のために、復元製剤中の、より低濃度のタンパク質(例えば、復元製剤中に、約5〜約50mg/mL又は約10〜約40mg/mLのタンパク質)も所望でありうる。ある特定の実施形態において、復元製剤中のタンパク質濃度は、あらかじめ凍結乾燥さられた製剤中の濃度より、著明に高濃度である。例えば、復元製剤中のタンパク質濃度は、あらかじめ凍結乾燥さられた製剤の約2〜40倍(times)、好ましくは、3〜10倍(times)であることが可能であり、最も好ましくは、3〜6倍(times)(例えば、少なくとも3倍(fold)又は少なくとも4倍(fold))でありうる。
【0488】
復元は、一般に、完全な水和を確保するように、約25℃の温度においてなされるが、所望に応じて、他の温度も用いられうる。復元に要求される時間は、例えば、希釈剤の種類、賦形剤及びタンパク質の量に依存する。例示的な希釈剤は、滅菌水、静菌性注射用水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩液)、滅菌生理食塩液、リンゲル液又はデキストロース溶液を含む。希釈剤は、任意選択的に、防腐剤を含有する。例示的な防腐剤については、上記において記載されており、ベンジルアルコール又はフェノールアルコールなど、芳香族アルコールが、好ましい防腐剤である。用いられる防腐剤の量は、異なる防腐剤濃度は、タンパク質に対する適合性について評価し、防腐剤の有効性試験を行うことにより決定される。例えば、防腐剤が、芳香族アルコール(ベンジルアルコールなど)である場合、防腐剤は、約0.1〜2.0%、好ましくは、約0.5〜1.5%、しかし最も好ましくは、約1.0〜1.2%の量において存在しうる。好ましくは、復元製剤は、バイアル1つ当たりの粒子6000個未満を有し、これらは、>10μmのサイズである。
【0489】
治療用途
本明細書において、このような処置を必要とする対象へと、本明細書において記載された、1つ以上の抗体を含む、治療有効量の組成物を投与するステップを含む治療法について記載される。
【0490】
ある特定の実施形態において、処置を必要とする対象(例えば、ヒト患者)は、がんを伴う、がんを有することが疑われる、又はがんの危険性があると診断される。がんの例は、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝がん、胆管がん、膵がん、結腸がん、腎がん、子宮頚がん、卵巣がん及び前立腺がんを含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態において、がんは、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん又は膵がんである。一部の好ましい実施形態において、がんは、脳がん又は多型性神経膠芽腫(GBM)である。
【0491】
好ましい実施形態において、抗体は、SSEA−4を発現するがん細胞をターゲティングすることが可能である。ある特定の実施形態において、抗体は、がん細胞上のSSEA−4をターゲティングすることが可能である。ある特定の実施形態において、抗体は、がん内のSSEA−4をターゲティングすることが可能である。
【0492】
処置は、腫瘍サイズの低減、悪性細胞の消失、転移の防止、再発の防止、播種性がんの軽減若しくは殺滅、生存の延長及び/又は腫瘍の、がんへの進行までの時間の延長を結果としてもたらす。
【0493】
ある特定の実施形態において、処置は、さらなる治療を、前記対象へと、抗体の前記投与の前、前記投与の間、又は前記投与の後に投与するステップをさらに含む。ある特定の実施形態において、さらなる治療は、化学療法剤による処置である。ある特定の実施形態において、さらなる治療は、放射線療法である。
【0494】
本発明の方法は、初期段階腫瘍を処置及び防止し、これにより、いっそうの進行段階への進行を防止する結果として、進行がんと関連する罹患率及び死亡率の低減をもたらすのに、特に有利である。本発明の方法また、例えば、原発腫瘍を除去した後に遷延する休眠腫瘍である、腫瘍の再発又は腫瘍の再増殖を防止するのにも、腫瘍の発生を低減又は防止するのにも有利である。
【0495】
本明細書において記載された方法により処置される対象は、哺乳動物、より好ましくは、ヒトでありうる。哺乳動物は、農場動物、競技動物、ペット、霊長動物、ウマ、イヌ、ネコ、マウス及びラットを含むがこれらに限定されない。処置を必要とするヒト対象は、乳がん、肺がん、食道がん、直腸がん、胆管がん、肝がん、口腔(buccal)がん、胃がん、結腸がん、鼻咽頭がん、腎がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、膵がん、精巣がん、膀胱がん、頭頸部がん、口腔(oral)がん、神経内分泌がん、副腎がん、甲状腺がん、骨がん、皮膚がん、基底細胞癌、扁平上皮癌、黒色腫又は脳腫瘍を含むがこれらに限定されないがんを有する、これらの危険性がある、又はこれらを有することが疑われるヒト患者でありうる。がんを有する対象は、常套的な医学的検査により同定されうる。
【0496】
本明細書において使用された、「有効量」とは、単独において、又は1つ以上の、他の活性薬剤と組み合わせて、対象に治療効果を付与するのに要求される、各活性薬剤の量を指す。当業者により認識されている通り、有効量は、処置される特定の状態、状態の重症度、個々の患者のパラメータであって、医療従事者の知見及び専門知識の範囲内にある、年齢、健康状態、体格、性別及び体重、処置の持続期間、存在する場合、併用療法の特性、具体的な投与経路などの因子を含むパラメータに応じて変動する。これらの因子は、当業者に周知であり、常套的な実験だけにより対処されうる。個々の成分又はこれらの組合せの最大用量、すなわち、穏当な医学的判断に従う、安全最高用量を使用することが一般に好ましい。しかし、患者が、医学的理由、心理的理由又は事実上他の任意の理由のために、低用量又は忍容可能用量を主張することが、当業者により理解される。
【0497】
半減期など、経験的な検討項目は、一般に、投与量の決定に寄与する。例えば、抗体の半減期を延長し、抗体が宿主の免疫系に攻撃されることを防止するように、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体など、ヒト免疫系に適合性の抗体が使用されうる。投与頻度は、治療の経過にわたり、決定及び調整される場合があり、一般に、がんの処置及び/又は抑制及び/又は改善及び/又は遅延に基づくが、必ずしもこれらに基づかない。代替的に、本明細書において記載された抗体の、持続放出製剤も、適切でありうる。当技術分野において、持続放出を達成するための、多様な製剤及びデバイスが公知である。
【0498】
一例において、本明細書において記載された抗体の投与量は、抗体の1回以上の投与を施された個体において、経験的に決定されうる。個体は、漸増させた投与量の抗体が施される。抗体の有効性を評価するために、常套的な慣行に従い、疾患(例えば、がん)の指標が追跡されうる。
【0499】
一般に、本明細書において記載された抗体のうちのいずれかを投与するための、初期候補投与量は、約2mg/kgでありうる。本開示の目的のために、典型的な毎日の投与量は、上記において言及された因子に応じて、約0.1μg/kg〜3μg/kg〜30μg/kg〜300μg/kg〜3mg/kg〜30mg/kg〜100mg/kg以上のうちのいずれかの範囲でありうる。数日間以上の長期にわたる繰返し投与のために、状態に応じて、症状の所望の抑制が生じるまで、又はがん若しくはその症状を緩和するのに十分な治療レベルが達成されるまで、処置が持続される。例示的な投与レジメンは、約2mg/kgの初期用量に続いて、毎週の維持用量約1mg/kgの抗体又は約2mg/kgの初期用量に続いて、隔週の維持用量約1mg/kgを投与することを含む。しかし、他の投与レジメンも、当業者が達成したいと望む薬物動態的減衰のパターンに応じて有用でありうる。例えば、毎週1〜4回の投与が想定される。ある特定の実施形態において、約3μg/mg〜約2mg/kg(約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg及び約2mg/kgなど)の範囲の投与が使用されうる。ある特定の実施形態において、投与頻度は、毎週1回、2週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと若しくは10週間ごと又は毎月1回、2カ月ごと又は3カ月以上ごとの間隔である。この治療の進捗状況は、従来の技法及びアッセイにより、容易にモニタリングされる。使用される抗体を含む、投与レジメンは、時間と共に変動しうる。
【0500】
本開示の目的のために、本明細書において記載された抗体の、適切な投与量は、用いられる特異的抗体(又はその組成物)、がんの種類及び重症度、抗体が予防目的のために投与されるのか、治療目的のために投与されるのか、既往の治療、患者の臨床歴及び抗体への応答並びに主治医の判断に依存する。本明細書において記載された抗体の投与は、あらかじめ選択された期間にわたり、本質的に持続的な場合もあり、例えば、がんの発症の前に、発症時に、又は発症の後における、間隔を置いた一連の投与の場合もある。
【0501】
本明細書において使用された、「〜を処置すること」という用語は、1つ以上の活性薬剤を含む組成物の、がん、がんの症状又はがんに対する素因を有する対象への、がん、がんの症状又はがんに対する素因を治癒させる、治す、緩和する、軽減する(relive)、変更する、修復する、改善する(ameliorate)、改善する(improve)又はこれに影響を及ぼすことを目的とする、適用又は投与を指す。
【0502】
がんを緩和することは、がんの発症若しくは進行を遅延させること又はがんの重症度を軽減すること(reducing)を含む。がんを緩和することは、必ずしも、治癒結果を要求しない。本明細書において使用された、がんの発症「を遅延させること」とは、がんの進行を延期し、妨害し、遅らせ、妨げ、安定化させ、かつ/又は先送りすることを意味する。この遅延は、処置されるがん及び/又は個体の履歴に応じて、多様な長さの時間の遅延でありうる。がんの発症「を遅延させる」る、若しくは緩和する、又はがんの発病を遅延させる方法とは、所与の時間枠内における、がんの1つ以上の症状の発症の可能性(危険性)を、方法を使用しない場合と比較して低減し、かつ/又は所与の時間枠内における、症状の程度を、方法を使用しない場合と比較して軽減する方法である。このような比較は、典型的に、統計学的に有意な結果をもたらすのに十分な、多数の対象を使用する臨床研究に基づく。
【0503】
がんの「発症」又は「進行」とは、がんの、初期の顕在化及び/又はその後の進行を意味する。がんの発症は、検出可能な場合があり、当技術分野において周知の、標準的な臨床的技法を使用して評価されうる。しかし、発症とはまた、検出不能な進行も指す場合がある。本開示の目的のために、発症又は進行とは、症状の生物学的経過を指す。「発症」は、発生、再発及び発病を含む。本明細書において使用された、がんの「発病」又は「発生」は、初回の発病及び/又は再発を含む。
【0504】
医療技術分野の当業者に公知である、従来の方法は、処置される疾患の種類又は疾患の部位に応じて、医薬組成物を対象へと投与するのに使用されうる。この組成物はまた、他の従来の経路を介して、例えば、経口、非経口投与される場合もあり、吸入スプレーにより投与される場合もあり、局所、直腸内、鼻腔内、口腔内、膣内投与される場合もあり、植込み式レザバーを介して投与される場合もある。本明細書において使用された、「非経口」という用語は、皮下注射法又は皮下注入法、皮内注射法又は皮内注入法、静脈内注射法又は静脈内注入法、筋内注射法又は筋内注入法、関節内注射法又は関節内注入法、動脈内注射法又は動脈内注入法、滑膜内注射法又は滑膜内注入法、胸骨内注射法又は胸骨内注入法、髄腔内注射法又は髄腔内注入法、病変内注射法又は病変内注入法及び頭蓋内注射法又は頭蓋内注入法を含む。加えて、医薬組成物は、対象へと、1カ月、3カ月若しくは6カ月にわたるデポ注射用の材料及び方法又は生体分解性の材料及び方法などを使用する、注射用デポ投与経路を介して投与されうる。
【0505】
注射用組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール及びポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)など、多様な担体を含有しうる。静脈内注射のために、水溶性抗体は、抗体と、生理学的に許容される賦形剤とを含有する、医薬製剤が注入される、点滴法により投与される場合がある。生理学的に許容される賦形剤は、例えば、5%のデキストロース、0.9%の生理食塩液、リンゲル液又は他の適切な賦形剤を含みうる。筋内調製物、例えば、抗体の適切な可溶性塩形態による滅菌製剤は、注射用水、0.9%の生理食塩液又は5%のグルコース溶液などの医薬賦形剤中に溶解され、投与されうる。
【0506】
「化学療法剤」とは;がんの処置において有用な化合物である。化学療法剤の例は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、メルタンシン(DM1)、アントラサイクリン、ピロロベンゾジアゼピン、α−アマニチン、ツブリシン、ベンゾジアゼピン、エルロチニブ、ボルテゾミブ、フルベストラント、スニチニブ、レトロゾール、メシル酸イマチニブ、PTK787/ZK 222584、オキサリプラチン、ロイコボリン、ラパマイシン、ラパチニブ、ロナファルニブ(SARASAR(登録商標)、SCH66336)、ソラファニブ、ゲフィチニブ、AG1478、AG1571、アルキル化剤;スルホン酸アルキル;アジリジン;エチレンイミン;メチルメラミン;アセトゲニン;カンプトテシン;ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065;クリプトフィシン;ドラスタチン;デュオカルマイシン;エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコチクチイン;スポンジスタチン;クロランブシル;クロルナファジン;シクロホスファミド;エストラムスチン;イホスファミド;メクロレタミン;塩酸メクロレタミンオキシド;メルファラン;ノベムビシン;フェネステリン;プレドニムスチン;トロホスファミド;ウラシルマスタード;カルムスチン;クロロゾトシン;ホテムスチン;ロムスチン;ニムスチン;ラニムスチン;カリケアミシン;ジネミシン;クロドロネート;エスペラミシン;ネオカルチノスタチン発色団;アクラシノマイシン;アクチノマイシン;アントラマイシン;アザセリン;ブレオマイシン;カクチノマイシン;カラビシン;カルミノマイシン;カルジノフィリン;クロモマイシン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン;デトルビシン;6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン;ドキソルビシン;エピルビシン;エソルビシン;イダルビシン;マルセロマイシン;マイトマイシン;ミコフェノール酸;ノガラマイシン;オリボマイシン;ペプロマイシン;ポトフィロマイシン;ピューロマイシン;ケラマイシン;ロドルビシン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;ツベルシジン;ウベニメクス;ジノスタチン;ゾルビシン;メトトレキサート;5−フルオロウラシル(5−FU);デノプテリン;プテロプテリン;トリメトレキサート;フルダラビン;6−メルカプトプリン;チアミプリン;チオグアニン;アンシタビン;アザシチジン;6−アザウリジン;カルモフール;シタラビン;ジデオキシウリジン;ドキシフルリジン;エノシタビン;フロクスウリジン;カルステロン;プロピオン酸ドロモスタノロン;エピチオスタノール;メピチオスタン;テストラクトン;アミノグルテチミド;ミトタン;トリロスタン;フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシン;アンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド;シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド;パクリタキセル;ドセタキセル;クロランブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン;カルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド;イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;XELODA;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド;カペシタビンを含む。
【0507】
「生物学的治療剤」とは、がんの処置において有用な、生物学的分子である。化学療法剤の例は、PD−1アンタゴニスト、PD−1抗体、CTLAアンタゴニスト、CTLA抗体、インターロイキン、サイトカイン、GM−CSF、受容体チロシンキナーゼ(RTK)に干渉する薬剤、哺乳動物のラパマイシン標的(mTOR)阻害剤、ヒト表皮増殖因子受容体2(HER2)阻害剤、表皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、インテグリン遮断剤、CDK4/6阻害剤、PI3K阻害剤、mTOR阻害剤、AKT阻害剤又は抗グロボ系列抗原抗体を含む。
【0508】
「抗グロボ系列抗原抗体」は、抗グロボH抗体又は抗SSEA−4抗体を含む。
【0509】
組合せに適する、OBI−868(グロボHセラミド又はSSEA−4セラミド)の例についての記載
ある特定の実施形態において、グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドの構造は、それらの内容が、参照によりその全体において組み込まれた、特許出願である、PCT特許出願(WO2017041027A1)において記載されている通りである。
【0510】
グロボH及びSSEA−4(炭水化物グリカンのグロボ系列)並びにシアリルルイスA(SLe
a)、ルイスA(Le
y)、シアリルルイスX(SLe
x)及びルイスX(Le
x)とは、がん細胞の表面上において発現され、乳がん、膵がん、胃がん、結腸直腸がん、肺がん、口腔がん、卵巣がん及び前立腺がんを含む、広範囲にわたる、異なるがんの種類に特異的な抗原である。
【0511】
グロボHは、多様な種類のがん、とりわけ、乳がん、前立腺がん及び肺がん上において、高度に発現された、抗原性炭水化物のファミリーのメンバーである、構造(Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glc)を有する六糖(Kannagi Rら、J Biol Chem、258:8934〜8942、1983;Zhang SLら、Int J Cancer、73:42〜49、1997;Hakomori Sら、Chem Biol、4:97〜104、1997;Dube DHら、Nat Rev Drug Discov、4:477〜488、2005)である。グロボHは、がん細胞表面上において、糖脂質として発現され、おそらく、糖タンパク質として発現される(Menard Sら、Cancer Res、43:1295〜1300、1983;Livingston PO、Cancer Biol、6:357〜366、1995)。乳がん患者の血清は、グロボHエピトープに対する、高レベルの抗体を含有する(Menard Sら、Cancer Res、43:1295〜1300、1983)。
【0512】
一態様において、本開示のグロボHセラミド及び/又はSSEA−4セラミドは、グリカン、例えば、グロボ系列グリカン(グロボ系列スフィンゴ糖脂質抗原)及び/又は腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)の、効率的な検出及び結合を容易としうる、リンカー組成物及びその使用法に関する。
【0513】
TACAは、2つのクラス:糖タンパク質抗原及び糖脂質抗原へと分けられうる。糖タンパク質抗原は、例えば、(1)例えば、α−2,6−N−アセチルガラクトサミニル(Tn)抗原、トムセン−フリードライヒ(TF)抗原及びシアリル−Tn(sTn)抗原を含みうる、又はこれらを除外しうる、ムチン並びに(2)ポリシアル酸(PSA)を含みうる、又はこれらを除外しうる。糖脂質抗原は、例えば、(1)例えば、グロボH、SSEA−3(又はGb5)、SSEA−4、Gb3及びGb4を含みうる、又はこれらを除外しうる、グロボ系列抗原;(2)例えば、ルイスx(Le
x)、ルイスy(Le
y)、ルイスa(Le
a)、シアリルルイスx(sLe
x)及びシアリルルイス(SLe
a)を含みうる、又はこれらを除外しうる、血液型決定基並びに(3)例えば、GD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1及びNeu5GcGM3を含みうる、又はこれらを除外しうる、ガングリオシドを含みうる、又はこれらを除外しうる。
【0514】
一態様において、本発明は、様々な適用において使用されうるリンカーを提供する。例えば、本発明のリンカーは、分子を、表面、固体表面、粒子、アレイ又はビーズを含みうる、又はこれらを除外しうる基質へと接合するのに使用されうる。一部の態様において、リンカーは、炭水化物と相互作用する、第1の部分と、表面と相互作用する、第2の部分とを含みうる。
【0515】
一部の態様において、本開示は、リンカー及びリンカー−グロボ系列グリカンコンジュゲート又はリンカー−他TACAコンジュゲート、リンカー−グロボ系列糖タンパク質コンジュゲートを含む、リンカー−TACAを含みうる、又はこれらを除外しうる、リンカーとグリカンとのコンジュゲート並びにこれらを作る方法及び使用する方法を提示する。例示的な、グロボ系列のグリカンは、SSEA−4及びグロボHを含みうる、又は除外しうる。例示的な、グロボ系列の糖タンパク質は、ペプチド又はタンパク質へと接合された、SSEA−4及びグロボHを含みうる、又は除外しうる。さらなるTACAグリカンは、例えば、Le
y、SLe
a及びSLe
xを含みうる、又はこれらを除外しうる。TACAはまた、例示的なグリカンのうちのいずれかの、n−ペンチルアミン官能化変異体、例えば、SSEA−4、Gb3、Gb4、グロボH、Le
y、SLe
a及びSLe
xの、n−ペンチルアミン官能化変異体も含む。
【0516】
一部の態様において、本開示は、リンカーにより基質へとコンジュゲートされたグリカンを含む、基質へとコンジュゲートされたグリカンを提示する。
【0517】
本発明の別の態様は、被検試料中の、乳がんを含むがんを検出する方法であって、(a)被検試料を、グロボH、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a及びSLe
xを含むグリカンへと、共有結合的に接合されたリンカーと接触させるステップ;(b)被検試料中の抗体が、グロボH、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a及びSLe
xと関連する分子/決定基に結合するのかどうかを決定するステップを含みうる方法である。
【0518】
一部の態様において、本開示は、疾患診断、再発モニタリング及び薬物発見における使用のための、複数のビーズであって、各ビーズが、各ビーズ上又は各ビーズ内に、固有の識別子を有し、ビーズnが、複数のG1−A−Z部分[式中、G1は、1つのTACAである]を含み、ビーズnが、複数のGn−A−Z[式中、Gnは、G1 TACAと実質的に同じである、第2のTACAである]を含む、複数のビーズに関する。
【0519】
一態様において、本開示は、式:G−A−Z−X(式1)[式中、Gは、グリカンであり;Aは、エステル又はアミドを含む部分であり;Xは、基質、例えば、表面、固体表面、透明の固体、非透明の固体、選択された波長の可視光又は非可視光に対して透明の固体、粒子、アレイ、マイクロバブル又はビーズ、コーティングされた基質、コーティングされた表面、ポリマー表面、ニトロセルロースによりコーティングされた表面又はビーズ表面;基質へと接合されたスペーサー基又はリンカーを、基質へと接着させるための基を伴うスペーサー基であり;Zは、1つ以上の脂質鎖、脂質鎖を伴う、1つ以上のスペーサー基である]の化合物に関する。
【0520】
一態様において、本開示は、以下の式:
【0521】
【化1】
を有する化合物を特色とする。
【0522】
一態様において、本開示は、以下の式:
【0523】
【化2】
を有する化合物を特色とする。
【0524】
一態様において、本開示は、以下の式:
【0526】
【化4】
又は水素であることが可能であり、C2は、キラル又は非キラルであることが可能であり、C3は、示される通りのキラリティーを有し、[脂質鎖]は、任意の、C4〜C16の、直鎖状又は分枝状の、アルキル鎖又はアルコキシ鎖であることが可能であり、mは、1〜10の範囲の整数値を有することが可能であり;TACAは、以下:グロボH、SSEA−3(又はGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a若しくはSLe
x及び/又はこれらのn−ペンチルアミン官能化変異体のうちの1つから選択される]
を有する、例示的なG−A−Z化合物を特色とする。上記において指し示された通り、この式は、例示的なG−A−Zである。
【0527】
一態様において、例示的なG−A−Z化合物は、以下の式:
【0528】
【化5】
[式中、C2は、キラル又は非キラルであることが可能であり、C3は、示される通りのキラリティーを有し、[脂質鎖1]は、任意の、C4〜C16の、直鎖状又は分枝状の、アルキル鎖又はアルコキシ鎖であることが可能であり、[脂質鎖2]は、水素又は少なくとも1つのヒドロキシ部分を含む、C4〜C16である、任意の不飽和アルキル鎖であることが可能であり、mは、1〜10の範囲の整数値を有することが可能であり;TACAは、以下:グロボH、SSEA−3(又はGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a若しくはSLe
x及び/又はこれらのn−ペンチルアミン官能化変異体のうちの1つから選択される]
を有する。
【0529】
一態様において、mは、5であることが可能であり、[脂質鎖1]は、以下の式:
【0530】
【化6】
[式中、nは、7を含む、1〜10の整数であり、波線は、[脂質鎖1]へと接続された、カルボニル炭素への結合を表す]
でありうる。
【0532】
【化7】
[式中、C2は、キラル又は非キラルであることが可能であり、C3は、示される通りのキラリティーを有し、mは、1を含む、1〜10の範囲の整数値を有することが可能であり;TACAは、以下:グロボH、SSEA−3(又はGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a若しくはSLe
x及び/又はこれらのn−ペンチルアミン官能化変異体のうちの1つから選択される]
に従う化合物が提供される。
【0534】
【化8】
[式中、本明細書においてはまた、「脂質」とも称された、[脂質鎖]は、任意の、C4〜C16の、直鎖状又は分枝状の、アルキル鎖又はアルコキシ鎖であることが可能であり、mは、1〜10の範囲の整数値を有することが可能であり;TACAは、以下:グロボH、SSEA−3(又はGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a若しくはSLe
x及び/又はこれらのn−ペンチルアミン官能化変異体のうちの1つから選択される]
に従う化合物が提供される。
【0536】
【化9】
[式中、
キラル炭素原子C1は、ラセミ炭素原子又はキラル炭素原子であり;
R1及びR2は、アルキル、アリール、ハロ、ヘテロアリール、ハロアルキル、ベンジル、フェニルであることが可能であり、R1及びR2が、環状結合を形成しうるように、相互連結されており;
n=7を含む、n=4〜9の範囲の整数であり;
TACAは、グロボH、SSEA−3、Gb3、Gb4、SSEA−4、Le
y、SLe
a及びSLe
x並びに/又はこれらのn−ペンチルアミン官能化変異体のうちの1つから選択される]
に従う化合物が提供される。
【0538】
【化10】
[式中、
キラル炭素原子C1は、ラセミ炭素原子又はキラル炭素原子であり;
n=7を含む、n=4〜9の範囲の整数であり;
TACAは、グロボH、SSEA−3(又はGb5)、Gb3、Gb4、SSEA−4、Le
y、SLe
a若しくはSLe
x及び/又はこれらのn−ペンチルアミン官能化変異体のうちの1つから選択される]
のうちのいずれか1つに従う化合物が提供される。
【0539】
一態様において、本明細書の化合物を調製する方法であって、アミド結合を形成するように、脂質鎖1又は脂質鎖2が、ペンチルアミン官能化グロボHと反応させられる方法が提供される。
【0541】
【化11】
[式中、
mは、1〜10の範囲の整数値を有することが可能であり;
Vは、酸素又は炭素であることが可能であり;
qは、1〜3の範囲の整数値を有することが可能であり;
TACAは、以下:グロボH、SSEA−3(又はGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a若しくはSLe
x及び/又はこれらのn−ペンチルアミン官能化変異体のうちの1つから選択される]
に従う化合物が提供される。
【0542】
一態様において、アレイ内の感度を改善する方法であって、本明細書で開示されたリンカーの使用を含む方法が提供される。
【0543】
一態様において、本開示は、がんの診断法であって、(a)がんを有することが疑われる対象に由来する、抗体を含有する試料を用意するステップ;(b)試料を、1つ以上のTACAを含むアレイと接触させるステップ;(c)1つ以上のTACAに結合した、試料中の抗体の複合体を形成するステップ;(d)1つ以上のTACAに結合した抗体の量を検出するステップ及び(e)前記1つ以上のTACAに結合した抗体の正常レベルと比較した、前記1つ以上のTACAに結合した前記抗体の量に基づき、対象の疾患状態を決定するステップを含む診断法に関する。一部の態様において、正常レベルは、例えば、正常患者又は正常患者の集団に由来する試料中の抗体に結合したTACAのレベルの測定値に基づく、参照値又は参照範囲でありうる。一部の態様において、検出されたTACA結合性抗体は、循環抗体である。一態様において、検出は、少なくとも1つのTACAに対する、少なくとも1つの抗体の決定を含む。一部の態様において、アレイ上のTACAは、Tn、TF、sTn、ポリシアル酸、グロボH、SSEA−3、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
x、Le
y、Le
a、sLe
x、SLe
a、GD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1又はNeu5GcGM3のうちの1つ以上から選択されうる。
【0544】
一態様において、試料は、体液(血清、唾液、リンパ節液、尿、膣スワブ又は口腔スワブ)である。
【0545】
一態様において、本開示は、TACA結合パートナーについての、グリカン結合パートナーのスクリーニングライブラリーに関する。一部の態様において、分子又はライブラリーは、例えば、抗体、ナノボディー、抗体断片、アプタマー、レクチン、ペプチド、又はコンビナトリアルライブラリー分子を含みうる。一態様において、前記TACA結合パートナーを同定するための、前記ライブラリーのスクリーニングは、本明細書で開示された、TACAグリカンアレイの使用を含む。
【0546】
一部の態様において、TACA結合パートナーは、多様な適用において使用されうる。例えば、一態様において、本開示は、それを必要とする対象の疾患状態を決定するための方法であって、(a)対象に由来する試料を用意するステップ;(b)試料を、1つ以上のTACA結合パートナーと接触させるステップ;(c)TACAと、結合パートナーとの結合の特異性を測定するステップ及び(d)発現された、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)のレベルを検出するステップを含む方法に関する。
【0547】
TACA結合パートナーは、例えば、それを必要とする患者、例えば、TACAを発現するがん、腫瘍、新生物又は過形成を有する患者を処置するための治療剤として使用されうる。
【0548】
一態様において、検出は、TACAの検出を含む。一態様において、前記TACAの検出は、TACAグリカンアレイの使用を含む。
【0549】
一部の態様において、方法は、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、神経膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔(oral)がん、頭頸部がん、鼻咽頭がん、食道がん、胃がん、肝がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵がん、腸がん、結腸直腸がん、腎がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、口腔(buccal)がん、口腔咽頭がん、喉頭がん及び/又は前立腺がんのうちの1つ以上から選択される試料をアッセイするステップを含む。一態様において、方法は、乳がん、卵巣がん、肺がん、膵がん、胃(stomach(gastric))がん、結腸直腸がん、前立腺がん、肝がん、子宮頸がん、食道がん、脳がん、口腔(oral)がん及び/又は腎がんのうちの1つ以上から選択される試料についてアッセイするステップを含む。一部の態様において、方法は、乳房、卵巣、肺、膵臓、胃、結腸及び直腸、前立腺、肝臓、子宮頸部、膀胱、食道、脳、口腔及び/又は腎臓の、がん、新生物、過形成のうちの1つ以上を検出するステップを含む。
【0550】
一態様において、疾患状態のうちの1つ以上は、B細胞リンパ腫、黒色腫、神経芽細胞腫、肉腫、非小細胞肺癌(NSCLC)により特徴づけられる。
【0551】
一態様において、本開示は、それを必要とする対象の処置における、抗新生物剤の治療有効性を決定するために、本開示の新規のアレイを使用する方法であって、(a)対象に由来する試料を用意するステップ;(b)試料を、TACAアレイと接触させるステップ;(c)TACA又は抗体のうちの1つ以上の結合についてアッセイするステップ;及び(d)新生物に対する処置における、抗新生物剤の治療効果を、グリカンの検出についてのアッセイ値に基づき決定するステップを含む方法に関する。
【0552】
一態様において、それを必要とする対象の処置時における、抗新生物剤の治療有効性を決定するために、本開示の新規のアレイを使用する方法であって、(a)処置の前に、対象に由来する試料を用意するステップ;(b)試料を、TACAアレイと接触させるステップ;(c)処置の前に、TACA結合性部分の力価についてアッセイするステップ;(d)抗新生物剤の投与の後における、1つ以上の対象に由来する試料を用意するステップ;(e)1つ以上の試料を、TACAアレイと接触させるステップ;(f)1つ以上の試料中の、TACA力価についてアッセイするステップ;及び(g)新生物に対する処置における、抗新生物剤の治療効果を、TACA力価の変化に基づき決定するステップを含む方法が提供される。一部の態様において、TACA結合性部分は、抗体でありうる。
【0553】
一態様において、抗新生物剤は、ワクチンを含む。ワクチンは、担体タンパク質へとコンジュゲートされた、炭水化物抗原又は炭水化物の免疫原性断片を含みうる。一部の態様において、炭水化物抗原又は炭水化物の免疫原性断片は、グロボH、段階特異的胚抗原3(SSEA−3)、段階特異的胚抗原4(SSEA−4)、Tn、TF、sTn、ポリシアル酸、グロボH、SSEA−3、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
x、Le
y、Le
a、sLe
x、SLe
a、GD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1又はNeu5GcGM3を含みうる。一態様において、担体タンパク質は、KLH(Keyhole limpet hemocyanin)、DT−CRM197(ジフテリア毒素交差反応性物質197)、ジフテリアトキソイド又は破傷風トキソイドを含む。一態様において、ワクチンは、医薬組成物として提供される。一態様において、医薬組成物は、グロボH−KLH及びさらなるアジュバントを含む。一態様において、さらなるアジュバントは、サポニン、フロイントアジュバント又はα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)アジュバントから選択される。一態様において、医薬組成物は、本明細書において記載された、OBI−822/OBI−821を含む。一態様において、抗新生物剤は、1つ以上の炭水化物抗原に結合することが可能な、抗体又はこの抗原結合性部分を含む。
【0554】
一態様において、それを必要とする対象は、がん、癌、新生物又は過形成のうちの1つ以上を有することが疑われる。一態様において、がんは、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、神経膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔(oral)がん、頭頸部がん、鼻咽頭がん、食道がん、胃がん、肝がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵がん、腸がん、結腸直腸がん、腎がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、口腔(buccal)がん、口腔咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんからなる群から選択される。
【0555】
本発明のアレイ上において使用されたグリカンは、2つ以上の糖単位を含みうる。本発明のグリカンは、直鎖状及び分枝状のオリゴ糖のほか、天然に存在するグリカン及び合成のグリカンを含みうる。本発明のグリカン内に、アロース、アルトロース、アラビノース、グルコース、ガラクトース、グロース、フコース、果糖、イドース、リキソース、マンノース、リボース、タロース、キシロース、ノイラミン酸又は他の糖単位を含む、任意の種類の糖単位が存在しうることが想定される。このような糖単位は、様々な置換基を有しうる。例えば、糖単位上に、典型的に存在する置換基の代わりに、又はこれらに加えて存在しうる置換基は、アミノ、カルボキシイオン及びその塩(例えば、ナトリウムカルボン酸)を含むカルボキシ、チオール、アジド、N−アセチル、N−アセチルノイラミン酸、オキシ(=O)、シアル酸、硫酸イオン及びその塩を含むスルフェート(−SO4−)、リン酸イオン及びその塩を含むホスフェート(−PO4−)、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級アシル及び/又は低級アルカノイルアミノアルキルを含む。脂肪酸、脂質、アミノ酸、ペプチド及びタンパク質もまた、本発明のグリカンへと接合される。一部の態様において、グリカンは、グロボH、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a、SLe
x又はこれらの任意の組合せを含みうる、又はこれらを除外しうる。一部の態様において、グリカンは、グロボH、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a、SLe
xの、n−ペンチルアミン官能化変異体又は官能化グリカン変異体及び/若しくは非官能化グリカンの任意の組合せを含む、又はこれを除外する。
【0556】
別の態様において、本発明は、固体基質及び固体支持体上の、膨大な、規定されたグリカン位置を含み、各グリカン位置が、これへと接合された、1つの種類のグリカン分子の、複数のコピーを含む、固体支持体の領域を規定し、本明細書において記載された通り、グリカンが、リンカーにより、マイクロアレイへと接合されたマイクロアレイを提供する。これらのマイクロアレイは、例えば、約1つ〜約100,000の間の、異なるグリカン位置又は約1つ〜約10,000の間の、異なるグリカン位置又は約2つ〜約100の間の、異なるグリカン位置又は約2〜約5の間の、異なるグリカン位置を有しうる。一部の態様において、アレイへと接合されたグリカンは、グリカンプローブと称される。
【0557】
別の態様において、本発明は、被験分子又は被験物質が、本発明のアレイ上又はマイクロアレイ上に存在するグリカンに結合しうるのかどうかを同定する方法を提供する。方法は、アレイを、被験分子又は被験物質と接触させるステップと、被験分子又は被験物質が、グリカンライブラリー内又はアレイ上のグリカンに結合するのかどうかを観察するステップとを伴う。一部の態様において、本開示は、本明細書において記載された通り、ライブラリー内の被験分子又は被験物質に関する。
【0558】
別の態様において、本発明は、被験分子又は被験物質が、どのグリカンに結合しうるのかを同定する方法であって、グリカンが、本発明のアレイ上に存在する方法を提供する。方法は、アレイを、被験分子又は被験物質と接触させるステップと、被験分子又は被験物質が、どのグリカンアレイに結合しうるのかを観察するステップとを伴う。
【0559】
各グリカン位置における、グリカンの密度は、誘導体化されたグリカン位置へと適用された、様々な濃度のグリカン溶液によりモジュレートされうる。
【0560】
本発明の別の態様は、リンカー分子を介して、アレイへと接合された分子のライブラリーを含みうる、分子のアレイに関し、この場合、切断型リンカーは、以下の構造:
G−A−Z−X 式1
[式中、Gは、グリカンであり;Aは、エステル又はアミドを含む部分であり;Xは、基質、例えば、表面、固体表面、透明の固体、非透明の固体、選択された波長の可視光又は非可視光に対して透明の固体、粒子、アレイ、マイクロバブル又はビーズ、コーティングされた基質、コーティングされた表面、ポリマー表面、ニトロセルロースによりコーティングされた表面又はビーズ表面;基質へと接合されたスペーサー基又はリンカーを、基質へと接着させるための基を伴うスペーサー基であり;Zは、1つ以上のリンカーである]
を有し、前記リンカーは、脂質鎖、脂質鎖を伴う、1つ以上のスペーサー基を含みうる。
【0561】
一部の態様において、アレイは、基質及び固体支持体上の、膨大な、規定されたグリカン位置を含み、各グリカンプローブの位置が、これへと接合された、1つの種類の、類似するグリカン分子の、複数のコピーを有する、固体支持体の領域を規定する。
【0562】
一部の態様において、AとXとの相互作用は、共有結合の場合もあり、ファンデルワールス相互作用の場合もあり、水素結合の場合もあり、イオン結合の場合もあり、疎水性相互作用の場合もある。
【0563】
本発明の別の態様は、被検試料中の分子が、分子のアレイに結合しうるのかどうかを調べる方法であって、(a)アレイを、被検試料と接触させるステップ及び(b)被検試料中の分子が、アレイへと接合された分子に結合するのかどうかを観察するステップを含みうる方法である。
【0564】
本発明の別の態様は、どの分子構造が、被検試料中の生体分子に結合するのかを決定する方法であって、分子のアレイを、被検試料と接触させるステップと、アレイを洗浄し、切断型リンカーを切断して、アレイへと接合された分子の分子構造についての、構造的解析又は機能的解析を可能とするステップとを含みうる方法である。例えば、生体分子は、抗体、受容体又はタンパク質複合体でありうる。
【0565】
本発明の別の態様は、被検試料中の、乳がんを含むがんを検出する方法であって、(a)被検試料を、グロボH、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a及びSLe
xを含むグリカンへと、共有結合的に接合されたリンカーと接触させるステップ;(b)被検試料中の抗体が、グロボH、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a及びSLe
xと関連する分子/決定基に結合するのかどうかを決定するステップを含みうる方法である。
【0566】
一態様において、本開示は、以下の式:
【0567】
【化12】
を有する化合物を特色とする。
【0568】
本発明の一般的態様
したがって、本開示は、がん上のグロボ系列抗原が、微小環境へとシェディングされ、T細胞へと組み込まれるという発見に基づく。T細胞の活性化は、グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドの組込みの後において阻害された。グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドの、T細胞への組込みを阻害するための、抗グロボH抗体又は抗SSEA−4抗体の添加は、グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドにより誘導される免疫抑制を阻害しうる。PD−1/PD−L1のエンゲージメントは、TCRによるシグナル伝達経路を抑制した。グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドの、T細胞への添加は、TCRによるシグナル伝達をさらに阻害する。グロボHセラミド又はSSEA−4セラミドの組込みは、抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体が、PD−1/PD−L1のエンゲージメントによる抑制(すなわち、免疫チェックポイント作用)を遮断する結果である、TCRによるシグナル伝達の波及効果を低減した。抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体を伴う、抗グロボH抗体又は抗SSEA−4抗体の添加は、グロボHセラミド又はSSEA−4セラミド及びPD−1/PD−L1のエンゲージメントにより抑制された、TCRによるシグナル伝達を相乗的に反転させる。グロボH抗原又はSSEA−4抗原を発現するがんは、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、神経膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔(oral)がん、頭頸部がん、鼻咽頭がん、食道がん、胃がん、肝がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵がん、腸がん、結腸直腸がん、腎がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、口腔(buccal)がん、口腔咽頭がん、喉頭がん及び前立腺がんを含むがこれらに限定されない。
【0569】
組合せ療法における、チェックポイント阻害剤の非限定例についての記載
免疫チェックポイント系を阻害/遮断する分子である、免疫チェックポイント阻害剤が、進行型新生物のための効果的な治療として勃興しており、これらの中には、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)及びプログラム細胞死タンパク質1(PD−1)を遮断し、いくつかの腫瘍のために使用されている治療用抗体が存在する(Topalian SLら、Nat Rev Cancer、2016年5月、16(5):275〜87)。B7/CD28ファミリーの受容体のメンバーであるPD−1(プログラム細胞死タンパク質、CD279)は、それらの発現が、遺伝子機構と、後成的機構との相互関係により精細に調節されたT細胞、B細胞、NK細胞及び骨髄由来サプレッサー細胞を含む活性化白血球の細胞表面上において発現された単量体の分子である。PD−1の公知のリガンドは、PD−L1及びPD−L2である(Farkona S.ら、BMC Med.、2016年5月5日、14:73)。
【0570】
PD−L1(プログラム細胞死タンパク質リガンド1、B7H1、CD274)は、T細胞、B細胞、骨髄細胞及び樹状細胞を含む造血細胞上及び非造血細胞(肺細胞、心臓細胞、内皮細胞、膵島細胞、角化細胞など)上並びに、とりわけ、がん細胞上、低レベルにおいて発現され、細胞が活性化されると、上方調節される。PD−L2(プログラム細胞死タンパク質リガンド2、B7−DC、CD273)は、マクロファージ上、樹状細胞(DC)上、活性化CD4+/CD8+リンパ球上及び一部の充実性腫瘍(卵巣癌、小細胞肺がん、食道がん)上において発現される。PD−L1及びPD−L2の発現はまた、正常線維芽細胞上及びがん関連線維芽細胞上においても検出されている。PD−L1及びPD−L2のいずれも、さらなる受容体と相互作用する:PD−L1は、CD28リガンドである、CD80と相互作用し、PD−L2は、マクロファージ上及び他の細胞型上において発現された、反発型ガイダンス分子(RGM)bと相互作用する。PD−1の細胞質テールは、免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)及び免疫受容体チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)を含有する。Tリンパ球内において、PD−1の、このリガンドとの相互作用は、PD−1の細胞内テールにおける、2つのチロシンのリン酸化;PD−1のITSM細胞質領域への、SH2ドメイン含有タンパク質チロシンホスファターゼ(SHP−1及び/又はSHP−2)の動員を結果としてもたらし、次いで、T細胞受容体の下流のシグナルを阻害し、これにより、T細胞の増殖及びサイトカインの産生を阻害する。PD−1はまた、T細胞に対して、他の影響も及ぼす;例えば、PD−1の誘発は、Akt経路及びRas経路を阻害することにより、ユビキチンリガーゼの構成要素である、SKP2の転写を抑制する:これは、サイクリン依存性キナーゼの阻害剤である、p27(kip1)のSKP2媒介性分解を結果として損ない、これにより、細胞周期の進行の遮断を結果としてもたらす。加えて、PD−1は、1つを超える機構により、アポトーシスを促進しうる。T細胞の活性化を、直接阻害するほか、PD−L1によるPD−1の誘発は、エフェクターT細胞を、能動的に抑制する、末梢性寛容の鍵となるメディエーターである調節性T細胞(Treg)の発生を誘導しうる。PD−1の誘発によるTregの誘導は、PD−1に誘導された、PTENの活性により、そのレベルが、低度に保たれた、ホスホAktなど、鍵となるシグナル伝達分子のモジュレーションにより媒介される。いくつかの種類のがん細胞は、確かに、PD−L1を発現する。さらに、腫瘍微小環境内の、非新生物性細胞(内皮細胞、白血球、線維芽細胞)もまた、PD−L1を発現しうる。これは、腫瘍微小環境内の、非新生物性細胞が、腫瘍浸潤性PD−1+ Tリンパ球(TIL)に対して、寛容であり、かつ/又はTregの発生を誘導することを示唆し、実際、一部のがんの種類(黒色腫、腎癌腫、非小細胞肺がんなど)に罹患した患者の、抗PD−1/PD−L1モノクローナル抗体(mAb)による処置が、腫瘍の増殖を低減しうることを、ますます多くの証拠が指し示している。
【0571】
現在、100を超える臨床試験が、様々ながんにおける、PD−1及びPD−L1の遮断の、臨床的有効性について探索しつつある。しかし、極めて有望な結果にもかかわらず、a)全ての腫瘍の種類が、抗PD−1 mAb又は抗PD−L1 mAbに対して、著明な応答を示すわけではないこと及びb)応答性がんのサブセットにおいても、全ての患者が、応答性であるわけではなく、一部の応答は、極めて部分的であることが明らかである。これらの証拠の断片は、研究の現段階における、応答の耐久性についての不確実性と共に、抗PD−1/PD−L1 mAbと、他の経路に作用するツールとの、効果的な治療的組合せに対する必要を指し示す(Topalian SLら、Cancer Cell、2015年4月13日;27(4):450〜61)。
【0572】
免疫チェックポイント阻害剤は、ヒトにおいて、ある程度の抗腫瘍活性をもたらすことが公知であるが、この部分的な抗腫瘍活性は、処置された対象のうちの一部において観察されるに過ぎない。チェックポイント阻害剤は、タンパク質、アミノ酸残基を含むポリペプチド及びモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を含みうる、又は除外しうる。本明細書において記載された組成物は、1つを超えるチェックポイント阻害剤を含みうる、又はこれらと共に投与されうる。一部の実施形態において、チェックポイント阻害剤は、CD28/CTLA−4を含む、T細胞調節因子のファミリーのいずれかにおいて見出されたリガンド又はタンパク質に結合する。チェックポイント阻害剤の標的は、免疫系のエフェクター細胞上又は調節性細胞上(例えば、T細胞上)において発現された受容体又は共受容体(例えば、CTLA−4;CD8);抗原提示細胞の表面上において発現された(すなわち、PD−1、PD−2、PD−L1及びPD−L2を含みうる、又は除外しうる、活性化T細胞の表面上において発現された)タンパク質;代謝性酵素又は、腫瘍及び腫瘍浸潤性細胞の両方により発現された、代謝性酵素(例えば、IDO1及びIDO2などのアイソフォームを含む、インドールアミン(IDO));免疫グロブリンスーパーファミリーに属するタンパク質(例えば、また、LAG3としても公知の、リンパ球活性化遺伝子3);B7スーパーファミリーに属するタンパク質(例えば、B7−H3又はこの相同体)を含みうる、又は除外しうる。B7タンパク質は、活性化抗原提示細胞上及び活性化T細胞上のいずれにおいても見出されうる。一部の実施形態において、2つ以上のチェックポイント阻害剤は、組み合わされる、又は併せて対にされる。例えば、抗原提示細胞上において見出された、B7ファミリーのチェックポイント阻害剤は、T細胞の表面上において発現された、CD28阻害剤又はCTLA−4阻害剤と、対にされて、これらの2つの種類の細胞の間の活性を減少させるように、共阻害性シグナルをもたらしうる。共受容体とは、外部のリガンドへの結合の後に、内部の細胞過程を調節しうる、同じ細胞上に配置された、2つの異なる受容体の存在を指す。共受容体は、刺激性の場合もあり、阻害性の場合もある。共受容体は、場合によって、アクセサリー受容体又は共シグナル伝達受容体とも呼ばれる。本明細書において使用された、「共阻害性」という用語は、1つを超える分子が、細胞の表面上における、これらのそれぞれの受容体に結合し、これにより、細胞内過程が生じることを、緩徐化させる、又は阻止する結果を指す。
【0573】
ある特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体若しくは抗CTLA−4抗体又はPD−1、PD−L1若しくはCTLA−4の阻害剤など、PD−1経路又はCTLA−4経路を阻害する、阻害性受容体のアンタゴニストを含みうる。PD−1阻害剤又はPD−L1阻害剤の例は、限定せずに述べると、ラムブロリズマブ(抗PD−1 Ab、商標名:Keytruda)又はピジリズマブ(抗PD−1 Ab)、Bavencio(抗PD−L1 Ab、アベルマブ)、Imfinzi(抗PD−L1 Ab、デュルバルマブ)及びTecentriq(抗PD−L1 Ab、アテゾリズマブ)など、ヒトPD−1を遮断するヒト化抗体のほか、ニボルマブ(抗PD−1 Ab、商標名:Opdivo)などの完全ヒト抗体を含みうる。他のPD−1阻害剤は、限定せずに述べると、B7−DC−Ig又はAMP−244としてもまた公知の、PD−L2 Fc融合タンパク質を含む、可溶性PD−1リガンドの提示並びに、現在、治療における使用のための探索下及び/又は開発下にある、他のPD−1阻害剤を含みうる。加えて、免疫チェックポイント阻害剤は、限定せずに述べると、デュルバルマブ及びMIH1並びに現在探索下にある、他のPD−L1阻害剤など、PD−L1を遮断する、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体を含みうる。一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA−4抗体、抗PD−L1抗体又は抗PD−1抗体である。一部の実施形態において、PD−1阻害剤又はCTLA−4阻害剤は、限定せずに述べると、ラムブロリズマブ(抗PD−1 Ab、商標名:Keytruda)又はピジリズマブ(抗PD−1 Ab)、ニボルマブ(抗PD−1 Ab、商標名:Opdivo)、チシリムマブ(抗CTLA−4 Ab)、イピリムマブ(抗CTLA−4 Ab)、MPDL3280A、BMS−936559、AMP−224、IMP321(ImmuFact)、MGA271、インドキシモド及びINCB024360など、ヒトPD−1を遮断するヒト化抗体を含む。
【0574】
組合せ療法
したがって、抗ネガティブ免疫チェックポイントの遮断と組み合わされた、抗グロボH抗体による、グロボHセラミドの枯渇は、免疫抑制の克服において、効果的でありうる。本発明者らの知見は、ネガティブ免疫チェックポイントの遮断を伴う、グロボ系列抗原(グロボH又はSSEA−4による)のターゲティングが、T細胞を、不活化からレスキューするように、協同的に、相加的に、かつ/又は相乗的に作用することを支援する。
【0575】
したがって、本発明の第1の実施形態は、抗グロボH抗体及び/若しくは抗SSEA−4抗体又はこれらの断片と、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤とを含む組合せに関する。ある特定の具体的な実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗ネガティブ免疫チェックポイント抗体である。
【0576】
本開示は、抗腫瘍免疫処置を必要とする対象のための、組合せ療法のための方法であって、対象が、チェックポイント阻害剤のモジュレーションの増強又は増大を介した、有効性の増大又は腫瘍応答の改善を必要とする方法を提示する。
【0577】
一態様において、組合せ療法は、個別の単剤療法製剤又は組み合わされた共製剤として、同時に、又は逐次的に投与される。投与の順序は、最大の治療有効性を達成するために、時差が設けられる場合もあり、入れ子とされる場合もある。一態様において、治療剤は、ワクチンであり、チェックポイント阻害剤は、PD−1阻害剤である。
【0578】
一態様において、処置の有効性は、1)T細胞による抗腫瘍活性の増大、腫瘍の退縮又は腫瘍体積の減縮又は腫瘍の壊死の増大により増強される。特定の実施形態において、前記チェックポイント阻害剤は、PD−1チェックポイント阻害剤、PD−L1チェックポイント阻害剤又はCTLA−4チェックポイント阻害剤である。
【実施例】
【0579】
[実施例1] 多様ながん細胞から、ヒトCD3+ T細胞への、グロボH又はSSEA−4のシェディングの裏付け
ヒトがん細胞系(全て、ATCC、Manassas、VAから購入された、HCC1428、MDA−MB−231、SKOV−3、ACHN又はNCI−H526)を、24ウェルプレート内の、ATCCが示唆した、完全増殖培地中に、個別に播種し、5%のCO
2と共に、37℃において、3日間にわたりインキュベートした。インキュベーション3日後、ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を添加し、5%のCO
2、37℃において、2日間にわたり、がん細胞を伴い、又はこれを伴わずに培養した。がん細胞、がん細胞を伴い、かつ、これを伴わずに培養されたPBMCを、それぞれ、細胞表面における、Alexa Fluor 488コンジュゲート抗グロボH、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗SSEA−4及びAPC/Cy7コンジュゲート抗ヒトCD3モノクローナル抗体(BioLegend,Inc.;カタログ#:344818)による、複数回の染色のために採取した。
図1における結果は、グロボH又はSSEA−4が、腫瘍細胞から、ヒトT細胞へとシェディングされうることを示した。
【0580】
[実施例2] グロボ系列のスフィンゴ糖脂質によるT細胞の活性化の抑制の裏付け
Jurkat/NFAT−Re Luc細胞(Promega,Inc.、カタログ#:G7102)を、48ウェル培養プレート内において、多様な濃度の、化学的に合成された、グロボHセラミド(GHCer)又はSSEA−4セラミド(SSEA4Cer)を伴い、又はこれを伴わずに、18〜24時間にわたりプレインキュベートした。細胞を回収し、6時間にわたる活性化のために、37℃のインキュベーター内において、抗ヒトCD3(ウェル1つ当たり100ng)(BioLegend,Inc.;カタログ#:317326)及び抗ヒトCD28(ウェル1つ当たり300ng)(BioLegend,Inc.;カタログ#:302914)により、一晩にわたりコーティングされた、白色平底96ウェルアッセイプレート(Greiner Bio−one GmbH;カタログ#:655073)へと移した。アッセイプレートを、インキュベーターから取り出し、15分間にわたり、室温(22℃〜25℃)へと平衡化させた。75μLの、Bio−Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega,Inc.;カタログ#:G7940)を添加し、プレートを、RTにおいて、15分間にわたりインキュベートした。マイクロプレートリーダーである、SpectraMax L(Molecular Device,LLC.)を使用して、発光を測定した。光電子増倍管(PMT)の感度を、オートレンジとして設定し、570nmにおいて較正した。誘導倍率を、RLU
activated/RLU
unstimulatedにより計算した。
図2における結果は、GHCer又はSSEA4Cerが、抗CD3/28による刺激に対する、Jurkat T細胞の活性化を、用量依存的に抑制することを示した。
【0581】
[実施例3] グロボHセラミドにより誘導されたT細胞の不活化の、抗グロボH抗体による反転の裏付け
40、20及び5μMのGHCerを、10μMの、抗グロボH抗体である、OBI−888と共に、RPMI−1640培地(Life Technologies、カタログ#:A1049101)を、0.5%の超低IgGウシ胎仔血清(Hyclone、カタログ#:SH30898.03)と共に含有するアッセイ培地中、37℃において、3時間にわたりインキュベートした。試料を、5000×gにおいて、5分間にわたり遠心分離し、上清を採取し、Jurkat/NFAT−Re Luc細胞と共に18〜24時間にわたりインキュベートした。細胞を回収し、白色平底96ウェルアッセイプレートへと移し、37℃のインキュベーター内において、6時間にわたる活性化のために、抗ヒトCD3(ウェル1つ当たり100ng)及び抗ヒトCD28(ウェル1つ当たり300ng)により、一晩にわたりコーティングした。アッセイプレートを、インキュベーターから取り出し、15分間にわたり、室温(22℃〜25℃)へと平衡化させた。75μLの、Bio−Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬を添加し、プレートを、RTにおいて、15分間にわたりインキュベートした。マイクロプレートリーダーである、SpectraMax Lを使用して、発光を測定した。光電子増倍管(PMT)の感度を、オートレンジとして設定し、570nmにおいて較正した。誘導倍率を、RLU
activated/RLU
unstimulatedにより計算した。
図3に明示された結果は、OBI−888(例示的な抗グロボH抗体)が、抗CD3/28により活性化されたJurkat T細胞に対する、GHCerにより誘導された免疫抑制を反転させうることを示した。
【0582】
[実施例4] SSEA−4セラミドにより誘導されたT細胞の不活化の、抗SSEA−4抗体による反転の裏付け
40、20及び10μMのSSEA4Cerを、5μMの、抗SSEA−4抗体である、OBI−898と共に、RPMI−1640培地(Life Technologies、カタログ#:11875093)を、0.1%の超低IgGウシ胎仔血清(Hyclone、カタログ#:SH30898.03)と共に含有するアッセイ培地中、37℃において、5時間にわたりインキュベートした。試料を、7000×gにおいて、5分間ずつ、2回にわたり遠心分離し、上清を採取し、Jurkat/NF−κB−Re Luc細胞(Signosis,Inc.、カタログ#:SL−0050−NP)と共に、18〜24時間にわたりインキュベートした。細胞を回収し、白色平底96ウェルアッセイプレートへと移し、37℃のインキュベーター内において、6時間にわたる活性化のために、抗ヒトCD3(ウェル1つ当たり100ng)及び抗ヒトCD28(ウェル1つ当たり300ng)により、一晩にわたりコーティングした。アッセイプレートを、インキュベーターから取り出し、15分間にわたり、室温(22℃〜25℃)へと平衡化させた。75μLの、Bio−Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬を添加し、プレートを、RTにおいて、15分間にわたりインキュベートした。マイクロプレートリーダーである、SpectraMax Lを使用して、発光を測定した。光電子増倍管(PMT)の感度を、オートレンジとして設定し、570nmにおいて較正した。誘導倍率を、RLU
activated/RLU
unstimulatedにより計算した。
図4に明示された結果は、OBI−898(例示的な抗SSEA−4抗体)が、抗CD3/28により活性化されたJurkat T細胞に対する、SSEA4Cerにより誘導された免疫抑制を反転させうることを示した。
【0583】
[実施例5] TCRによるシグナル伝達に対する阻害の増強における、グロボ系列スフィンゴ糖脂質の、PD−1/PD−L1のエンゲージメントとの相乗的応答の裏付け
多様な濃度の、GHCer又はSSEA4Cerを、PD−1エフェクター細胞(PD−1/PD−L1 Blockade Bioassayキット、Promega、カタログ#:J3011)と共にインキュベートし、次いで、37℃において、24時間にわたりインキュベートした。PD−L1+標的細胞(PD−1/PD−L1 Blockade Bioassayキット、Promega、カタログ#:J3011)を、96ウェルプレート内に播種し、37℃において、5%CO
2と共に、24時間にわたりインキュベートした。PD−L1+細胞によりコーティングされたプレートに由来する増殖培地を、GHCer又はSSEA4Cer/エフェクター細胞のRxnにより置換え、6時間にわたりインキュベートした。プレートを、周囲温度へと、10分間にわたり取り出した。Bio−Glo(商標)試薬を添加し、15分間にわたりインキュベートし、次いで、ルミノメーターにより読み取った。
図6における結果は、GHCer又はSSEA4Cerが、PD−1/PD−L1のエンゲージメントと共に、相乗的に作用して、TCR活性化型シグナル伝達経路を抑制することを示した。
【0584】
[実施例6] PD−1/PD−L1のエンゲージメントにより阻害された、TCRによるシグナル伝達の、Keytruda又はTecentriqによる解放の、グロボHセラミドによる低減
40μMのGHCerを、PD−1エフェクター細胞(PD−1/PD−L1 Blockade Bioassayキット、Promega、カタログ#:J3011)と共にインキュベートし、次いで、37℃において、5%CO
2と共に、24時間にわたりインキュベートした。PD−L1+標的細胞を、96ウェルプレート内に播種し、37℃において、5%CO
2と共に、24時間にわたりインキュベートした。PD−L1+細胞によりコーティングされたプレートに由来する増殖培地を、2μMの抗PD−1 mAbである、Keytruda又は2μMの抗PD−L1 mAbである、Tecentriqを伴う、GHCer/エフェクター細胞のRxnにより置換え、37℃において、5%CO
2と共に、6時間にわたりインキュベートした。プレートを、周囲温度へと、10分間にわたり取り出した。Bio−Glo(商標)試薬を添加し、15分間にわたりインキュベートし、次いで、ルミノメーターにより読み取った。
図7における結果は、GHCerの、エフェクター細胞への組込みが、PD−1/PD−L1のエンゲージメントにより阻害された、TCRによるシグナル伝達の、Keytruda又はTecentriqによる解放を低減したことを示した。
【0585】
[実施例7] PD−1/PD−L1のエンゲージメントにより阻害された、TCRによるシグナル伝達の、Keytruda又はTecentriqによる解放の、SSEA−4セラミドによる低減
40μMのSSEA4Cerを、PD−1エフェクター細胞(PD−1/PD−L1 Blockade Bioassayキット、Promega、カタログ#:J3011)と共にインキュベートし、次いで、37℃において、5%CO
2と共に、24時間にわたりインキュベートした。PD−L1+標的細胞を、96ウェルプレート内に播種し、37℃において、5%CO
2と共に、24時間にわたりインキュベートした。PD−L1+細胞によりコーティングされたプレートに由来する増殖培地を、2μMの抗PD−1 mAbである、Keytruda又は2μMの抗PD−L1 mAbである、Tecentriqを伴う、SSEA4Cer/エフェクター細胞のRxnにより置換え、37℃において、5%CO
2と共に、6時間にわたりインキュベートした。プレートを、周囲温度へと、10分間にわたり取り出した。Bio−Glo(商標)試薬を添加し、15分間にわたりインキュベートし、次いで、ルミノメーターにより読み取った。
図8における結果は、SSEA4Cerの、エフェクター細胞への組込みが、PD−1/PD−L1のエンゲージメントにより阻害された、TCRによるシグナル伝達の、Keytruda又はTecentriqによる解放を低減したことを示した。
【0586】
[実施例8] グロボHセラミド及びPD−1/PD−L1のエンゲージメントによる、TCRによるシグナル伝達の阻害の、Keytruda又はTecentriqと組み合わされた、抗グロボH抗体による反転
GHCerを、99%RPMI 1640/1%FBS(PD−1/PD−L1 Blockade Bioassayキット、Promega、カタログ#:J3011)を含有するアッセイ培地中に、10μMのOBI−888と共に、37℃において、4時間にわたりインキュベートした。試料を、8000×gにおいて、5分間ずつ、2回にわたり遠心分離し、上清を採取し、PD−1エフェクター細胞と共に、24時間にわたりインキュベートした。PD−L1+標的細胞を、96ウェルプレート内に播種し、37℃において、5%CO
2と共に、24時間にわたりインキュベートした。PD−L1+細胞によりコーティングされたプレートに由来する増殖培地を、2μMのKeytruda又は2μMのTecentriqを伴う、GHCer/エフェクター細胞のRxnにより置換え、37℃において、5%CO
2と共に、6時間にわたりインキュベートした。プレートを、周囲温度へと、10分間にわたり取り出した。Bio−Glo(商標)試薬を添加し、15分間にわたりインキュベートし、次いで、ルミノメーターにより読み取った。
図10における結果は、OBI−888が、Keytruda又はTecentriqと共に、相乗的に作用して、GHCer及びPD−1/PD−L1のエンゲージメントにより阻害された、TCRによるシグナル伝達をレスキューすることを示した。
【0587】
[実施例9] SSEA−4セラミド及びPD−1/PD−L1のエンゲージメントによる、TCRによるシグナル伝達の阻害の、Keytruda又はTecentriqと組み合わされた、抗SSEA−4抗体による反転
SSEA4Cerを、アッセイ培地中に、5μMのOBI−898と共に、37℃において、4時間にわたりインキュベートした。試料を、8000×gにおいて、5分間ずつ、2回にわたり遠心分離し、上清を採取し、PD−1エフェクター細胞と共に、24時間にわたりインキュベートした。PD−L1+標的細胞を、96ウェルプレート内に播種し、37℃において、5%CO
2と共に、24時間にわたりインキュベートした。PD−L1+細胞によりコーティングされたプレートに由来する増殖培地を、2μMのKeytruda又は2μMのTecentriqを伴う、SSEA4Cer/エフェクター細胞のRxnにより置換え、37℃において、5%CO
2と共に、6時間にわたりインキュベートした。プレートを、周囲温度へと、10分間にわたり取り出した。Bio−Glo(商標)試薬を添加し、15分間にわたりインキュベートし、次いで、ルミノメーターにより読み取った。
図11における結果は、OBI−898が、Keytruda又はTecentriqと共に、相乗的に作用して、SSEA4Cer及びPD−1/PD−L1のエンゲージメントにより阻害された、TCRによるシグナル伝達をレスキューすることを示した。
【0588】
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【0589】
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