特表2021-525895(P2021-525895A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-525895核状態のフォノン媒介励起及びフォノン媒介脱励起のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-525895(P2021-525895A)
(43)【公表日】2021年9月27日
(54)【発明の名称】核状態のフォノン媒介励起及びフォノン媒介脱励起のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G21G 1/10 20060101AFI20210830BHJP
【FI】
   G21G1/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2021-516864(P2021-516864)
(86)(22)【出願日】2019年6月3日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月5日
(86)【国際出願番号】US2019035147
(87)【国際公開番号】WO2019236455
(87)【国際公開日】20191212
(31)【優先権主張番号】62/680,579
(32)【優先日】2018年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/679,974
(32)【優先日】2018年6月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/681,088
(32)【優先日】2018年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/806,071
(32)【優先日】2019年2月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/822,790
(32)【優先日】2019年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/822,970
(32)【優先日】2019年3月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2018/035883
(32)【優先日】2018年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】520475621
【氏名又は名称】メッツラー,フローリアン
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】メッツラー,フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲルシュタイン,ペーター
(57)【要約】
本発明は、第1の原子核グループを含むイオンビームを生成するデバイスと、第2の原子核グループを含む凝縮物質媒体とを備える、エネルギー粒子を生成するシステムに関する。第1の原子核グループの幾つかの原子核が凝縮物質媒体内に注入され、第1の核反応を受け、それによって、第1のエネルギーを解放するように、イオンビームは、凝縮物質媒体と相互作用するように構成される。イオンビームは、凝縮物質媒体内で高周波数フォノンを生成するように更に構成される。高周波数フォノンは、第2の原子核グループと相互作用し、第1の原子核グループの第1のエネルギーを第2の原子核グループに移動させることと、第2の原子核グループに第2の核反応を受けさせてエネルギー粒子を放出させることとによって、第2の原子核グループの核状態に影響を及ぼすように構成される。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の原子核グループを含むイオンビームを生成するデバイスと、
第2の原子核グループを含む凝縮物質媒体と、
を備え、
前記第1の原子核グループの幾つかの原子核が前記凝縮物質媒体内に注入され、第1の核反応を受け、それによって、第1のエネルギーを解放するように、前記イオンビームは、前記凝縮物質媒体と相互作用するように構成され、
前記イオンビームは、前記凝縮物質媒体内で高周波数フォノンを生成するように更に構成され、
前記高周波数フォノンは、前記第1の原子核グループ及び前記第2の原子核グループと相互作用し、前記第1の原子核グループの前記第1のエネルギーを前記第2の原子核グループに移動させることと、前記第2の原子核グループに第2の核反応を受けさせてエネルギー粒子を放出させることとによって、前記第2の原子核グループの核状態に影響を及ぼすように構成される、エネルギー粒子を生成するシステム。
【請求項2】
前記第1の核反応は、前記第1の原子核グループの前記原子核のうちの幾つかの核融合を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記イオンビームは、100 eV〜2000 eVの範囲にあるエネルギーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記放出されたエネルギー粒子を検出する粒子検出器を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記凝縮物質媒体は真空チャンバー内に収容される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記凝縮物質媒体はリチウムフォイルを含み、前記第2の原子核グループはLi-6核を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の原子核グループは重水素(H-2)核及びプロチウム(H-1)核を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記放出される荷電粒子は、三重水素(H-3)核及びヘリウム-4(He-4)核を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の原子核グループは重水素(H-2)核及びプロチウム(H-1)核を含み、前記第2の原子核グループはLi-6核を含み、前記第1の核反応は、5.5 MeVのガンマ線の放出をもたらす前記H-2核及び前記H-1核の核融合を含み、前記第2の核反応は、1.1 MeVのエネルギーを有するエネルギー粒子の放出をもたらす前記Li-6核の崩壊を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の原子核グループは重水素(H-2)核及びプロチウム(H-1)核を含み、前記第2の原子核グループはPb-204核を含み、前記第1の核反応は、5.5 MeVのガンマ線の放出をもたらす前記H-2核及び前記H-1核の核融合を含み、前記第2の核反応は、7.3 MeVのエネルギーを有するエネルギー粒子の放出をもたらす前記Pb-204核の崩壊を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の核反応は、前記第2の核反応によって生成される前記エネルギー粒子の前記エネルギーよりも低いエネルギーを有するエネルギー粒子を更に放出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
第1の原子核グループを含むイオンビームを生成することと、
第2の原子核グループを含む凝縮物質媒体を準備することと、
前記第1の原子核グループの幾つかの原子核が前記凝縮物質媒体内に注入され、第1の核反応を受け、それによって、第1のエネルギーを解放するように、前記イオンビームを前記凝縮物質媒体と相互作用させることであって、前記イオンビームは、前記凝縮物質媒体内で高周波数フォノンを生成するように更に構成されることと、
前記高周波数フォノンを前記第2の原子核グループと相互作用させ、前記第1の原子核グループの前記第1のエネルギーを前記第2の原子核グループに移動させることと、前記第2の原子核グループに第2の核反応を受けさせてエネルギー粒子を放出させることとによって、前記第2の原子核グループの核状態に影響を及ぼすことと、
を含む、エネルギー粒子を生成する方法。
【請求項13】
前記第1の核反応は、前記第1の原子核グループの前記原子核のうちの幾つかの核融合を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記イオンビームは、500 eV〜1000 eVの範囲にあるエネルギーを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記放出されたエネルギー粒子を検出する粒子検出器を設けることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記凝縮物質媒体は真空チャンバー内に収容される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の原子核グループは重水素(H-2)核及びプロチウム(H-1)核を含み、前記第2の原子核グループはLi-6核を含み、前記第1の核反応は、5.5MeVのガンマ線の放出をもたらす前記H-2核及び前記H-1核の核融合を含み、前記第2の核反応は、1.1 MeVのエネルギーを有するエネルギー粒子の放出をもたらす前記Li-6核の崩壊を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の原子核グループは重水素(H-2)核及びプロチウム(H-1)核を含み、前記第2の原子核グループはPb-204核を含み、前記第1の核反応は、5.5 MeVのガンマ線の放出をもたらす前記H-2核及び前記H-1核の核融合を含み、前記第2の核反応は、7.3 MeVのエネルギーを有するエネルギー粒子の放出をもたらす前記Pb-204核の崩壊を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の核反応は、前記第2の核反応によって生成される前記エネルギー粒子の前記エネルギーよりも低いエネルギーを有するエネルギー粒子を更に放出する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
第1の原子核グループ及び第2の原子核グループを含む凝縮物質媒体と、
前記凝縮物質媒体内に高周波数フォノンを生成するように構成されるフォノン発生器と、
を備え、
前記第1のグループの前記原子核のうちの幾つかは、第1の核反応を受け、それによって、第1のエネルギーを解放し、
前記高周波数フォノンは、前記第1の原子核グループ及び前記第2の原子核グループと相互作用し、前記第1の原子核グループの前記第1のエネルギーを前記第2の原子核グループに移動させることと、前記第2の原子核グループに第2の核反応を受けさせてエネルギー粒子を放出させることとによって、前記第2の原子核グループの核状態に影響を及ぼすように構成される、エネルギー粒子を生成するシステム。
【請求項21】
前記第1の核反応は、核分裂、核融合、又は放射性崩壊のうちの1つを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記エネルギー粒子は荷電粒子を含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[同時係属中の関連出願の相互参照]
本出願は、2018年6月4日に出願された、「System and method for generating photon emission from atomic nuclei」と題する国際非仮出願PCT/US2018/35883号の利益を主張する。この国際出願の内容は、引用することにより明示的に本明細書の一部をなす。
【0002】
本出願は、2018年6月3日に出願された、「Methods and systems for phonon-nuclear coupling based effects」と題する米国仮特許出願第62/679,974号の利益を主張する。この米国仮特許出願の内容は、引用することにより明示的に本明細書の一部をなす。
【0003】
本出願は、2018年6月4日に出願された、「Methods and systems for affecting nuclear reaction rates in condensedmatter media」と題する米国仮特許出願第62/680,579号の利益を主張する。この米国仮特許出願の内容は、引用することにより明示的に本明細書の一部をなす。
【0004】
本出願は、2018年6月5日に出願された、「System, method and apparatus for generating energetic particles」と題する米国仮特許出願第62/681,088号の利益を主張する。この米国仮特許出願の内容は、引用することにより明示的に本明細書の一部をなす。
【0005】
本出願は、2019年2月15日に出願された、「System and Method for Causing Phonon-Nuclear Interactions withMacroscopic Effects」と題する米国仮特許出願第62/806,071号の利益を主張する。この米国仮特許出願の内容は、引用することにより明示的に本明細書の一部をなす。
【0006】
本出願は、2019年3月23日に出願された、「System and Method for Nuclear Excitation Transfer」と題する米国仮特許出願第62/822,790号の利益を主張する。この米国仮特許出願の内容は、引用することにより明示的に本明細書の一部をなす。
【0007】
本出願は、2019年3月24日に出願された、「System and Method for Measuring Vibrations in Condensed Matter」と題する米国仮特許出願第62/822,970号の利益を主張する。この米国仮特許出願の内容は、引用することにより明示的に本明細書の一部をなす。
【0008】
本発明は、原子核を励起及び脱励起するシステム及び方法に関し、特に、荷電粒子放出の生成等の用途を包含するフォノン媒介核励起移動を介して原子核との間で励起エネルギーを移動させるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0009】
原子核は、物質の巨視的な特性を決定し、核分裂及び核融合等の核反応を通じて解放することができるその構成核子の間の結合エネルギーを含むので、科学的及び実用的に強い関心を引き続けている。それらの重要性にもかかわらず、原子核の多くの面の理解は不十分なままである。これには、核の詳細な構造だけでなく、核とそれらの環境との間の相互作用の範囲が含まれる。原子核に関する今日の知識が不完全であることは、広範囲の核種にわたる経験的に知られている放射崩壊率を高精度で予測する今日の核構造モデルの失敗に反映されている。
【0010】
図1を参照すると、原子核の励起及び脱励起は、通常、光子を介したエネルギーの吸収若しくは放出、又は、特に中性子、荷電粒子、若しくは光子等のエネルギー粒子101を介したエネルギーの吸収若しくは放出を通じて起こる。エネルギー粒子101と原子核102との間の相互作用は、励起核104を生成する。励起核104は、短時間の後に崩壊し、反応生成物106の生成をもたらす。反応生成物106は、新たな粒子109及び他の核108a、108bを含む。
【0011】
この手法は多くの制約を有する。すなわち、原子核を励起するのに十分なエネルギー準位にある光子を生成するには、関連コストを伴い及び低効率である大きな粒子加速器の使用を必要とする傾向があり、多くの核プロセスのスケーラビリティ及び関心のあるアプリケーションが妨げられる。同様に、適切なエネルギー準位にある中性子の生成は、複雑かつ非効率的であることが多い。加えて、高エネルギーの光子及び中性子は、シールドするのが困難である可能性があり、したがって、人間に対して危険を表すだけでなく、周囲に不要な放射線照射をもたらす可能性がある。危険レベルを低下させ、スケーラビリティ及び経済性を改善する可能性を有する、原子核との間で励起エネルギーを移動させる代替のメカニズムが、複数の領域及び産業にわたる広範な用途に有用であるであろう。
【発明の概要】
【0012】
概して、1つの態様において、本発明は、第1の原子核グループを含むイオンビームを生成するデバイスと、第2の原子核グループを含む凝縮物質媒体とを備える、エネルギー粒子を生成するシステムを特徴とする。前記第1の原子核グループの幾つかの原子核が前記凝縮物質媒体内に注入され、第1の核反応を受け、それによって、第1のエネルギーを解放するように、前記イオンビームは、前記凝縮物質媒体と相互作用するように構成される。前記イオンビームは、前記凝縮物質媒体内で高周波数フォノンを生成するように更に構成される。前記高周波数フォノンは、前記第2の原子核グループと相互作用し、前記第1の原子核グループの前記第1のエネルギーを前記第2の原子核グループに移動させることと、前記第2の原子核グループに第2の核反応を受けさせてエネルギー粒子を放出させることとによって、前記第2の原子核グループの核状態に影響を及ぼすように構成される。
【0013】
本発明のこの態様の実施態様は、次の特徴の1つ以上を含むことができる。前記第1の核反応は、前記第1の原子核グループの前記原子核のうちの幾つかの核融合を含む。前記イオンビームは、100 eV〜2000 eVの前記範囲にあるエネルギーを含む。前記システムは、前記放出されたエネルギー粒子を検出する粒子検出器を更に備える。前記凝縮物質媒体は真空チャンバー内に収容される。前記凝縮物質媒体はリチウムフォイルを含み、前記第2の原子核グループはLi-6核を含む。前記第1の原子核グループは重水素(H-2)核及びプロチウム(H-1)核を含む。前記放出されるエネルギー粒子は、三重水素(H-3)核及びヘリウム-4(He-4)核を含む。前記第1の原子核グループは重水素(H-2)核及びプロチウム(H-1)核を含み、前記第2の原子核グループはLi-6核を含み、前記第1の核反応は、5.5 MeVの核結合エネルギーの解放をもたらす前記H-2核及び前記H-1核の核融合を含み、前記第2の核反応は、1.1 MeVのエネルギーを有するエネルギー粒子の放出をもたらす前記Li-6核の崩壊を含む。前記第1の原子核グループは重水素(H-2)核及びプロチウム(H-1)核を含み、前記第2の原子核グループはPb-204核を含み、前記第1の核反応は、5.5 MeVの核結合エネルギーの解放をもたらす前記H-2核及び前記H-1核の核融合を含み、前記第2の核反応は、7.3 MeVのエネルギーを有するエネルギー粒子の放出をもたらす前記Pb-204核の崩壊を含む。前記第1の核反応は、前記第2の核反応によって生成される前記エネルギー粒子の前記エネルギーよりも低いエネルギーを有するエネルギー粒子を更に放出する。前記エネルギー粒子は、特に、荷電粒子、中性子、又は光子である。
【0014】
概して、別の態様において、本発明は、次のものを含む、エネルギー粒子を生成する方法を特徴とする。最初に、第1の原子核グループを含むイオンビームを生成すること。次に、第2の原子核グループを含む凝縮物質媒体を準備すること。次に、前記第1の原子核グループの幾つかの原子核が前記凝縮物質媒体内に注入され、第1の核反応を受け、それによって、第1のエネルギーを解放するように、前記イオンビームを前記凝縮物質媒体と相互作用させること。前記イオンビームは、前記凝縮物質媒体内で高周波数フォノンを生成するように更に構成される。最後に、前記高周波数フォノンを前記第2の原子核グループと相互作用させ、前記第1の原子核グループの前記第1のエネルギーを前記第2の原子核グループに移動させることと、前記第2の原子核グループに第2の核反応を受けさせてエネルギー粒子を放出させることとによって、前記第2の原子核グループの核状態に影響を及ぼすこと。
【0015】
概して、別の態様において、本発明は、凝縮物質媒体と、フォノン発生器とを備える、エネルギー粒子を生成するシステムを特徴とする。前記凝縮物質媒体は、第1の原子核グループ及び第2の原子核グループを含む。前記フォノン発生器は、前記凝縮物質媒体内に高周波数フォノンを生成するように構成される。前記第1のグループの前記原子核のうちの幾つかは、第1の核反応を受け、それによって、第1のエネルギーを解放する。前記高周波数フォノンは、前記第1の原子核グループ及び前記第2の原子核グループと相互作用し、前記第1の原子核グループの前記第1のエネルギーを前記第2の原子核グループに移動させることと、前記第2の原子核グループに第2の核反応を受けさせてエネルギー粒子を放出させることとによって、前記第2の原子核グループの核状態に影響を及ぼすように構成される。前記第1の核反応は、核分裂、核融合、又は放射性崩壊のうちの1つを含む。
【0016】
図面を参照して、同様の符号は幾つかの図面にわたって同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】エネルギー粒子を介してエネルギーを核状態へ及び核状態から移動させることによって原子核をそれぞれ励起及び脱励起するプロセスを概略的に示す図である。
図2】新たな一組の反応生成物をもたらす、本発明による、ドナー核とアクセプター核との間の核励起移動プロセスを概略的に示す図である。
図3】本発明による、Fe-57 14.4 keV核遷移に影響を及ぼす2つのFe-57核(核A 301及び核B 302)の間の核励起移動を概略的に示す図である。
図4】Co-57核がベータ崩壊を受けるFe-56核、Fe-57核、及びCo-57核を含む振動する原子格子を概略的に示す図である。
図5】以前のCo-57核がベータ崩壊を受けた後、現在、励起Fe-57*核である、図4の振動する原子格子を概略的に示す図である。
図6図4及び図5の振動する原子格子を概略的に示すとともに、励起Fe-57*核から基底状態Fe-57核(移動によって励起を受ける)への核励起のフォノン媒介移動を示す図である。
図7図4図5及び図6の振動する原子格子を概略的に示すとともに、(フォノン媒介核励起移動を介して励起を以前に受けた後の)通常の光子放出を介した励起Fe-57*核の脱励起を示す図である。
図8】フォノン媒介核励起移動を介した光子放出の空間分布及び角度分布の変化を生成及び監視する例示的な装置を示す図である。
図9】注入されるH-2核及び入射するエネルギーH-2核(イオンビームボンバードメントを介する)並びに格子欠陥(同じくイオンビームボンバードメントを介する)を有するLi-6核及びLi-7核を含む振動する原子格子を概略的に示す図である。
図10】2つのH-2核が核融合反応を受け、He-4核及び核結合エネルギー(24 MeV)の量子の解放をもたらす、図9の振動する原子格子を概略的に示す図である。
図11】核融合反応から解放された核結合エネルギーがフォノン媒介核励起移動を介してLi-7核に移動し、それによって、Li-7核を励起状態にする、図9及び図10の振動する原子格子を概略的に示す図である。
図12】(フォノン媒介核励起移動を介して励起を以前に受けた後の)励起Li-7核が壊変による崩壊を受け、運動エネルギーを有するH-3核及びHe-4核(エネルギー粒子)になる、図9図10及び図11の振動する原子格子を概略的に示す図である。
図13】フォノン媒介核励起移動を介したエネルギー粒子放出を生成及び監視する例示的な装置を示す図である。
図14】フォノン媒介核励起移動を介してD+D核融合(24 MeV)から核励起を受け取った後に壊変するときに初期質量数Aの核から放出されるアルファ粒子の計算された運動エネルギーをグラフによって示す図である。
図15】フォノン媒介核励起移動を介してD+D核融合(24 MeV)から核励起を受け取った後に壊変するときに初期質量数Aの核から放出される中性子の計算された運動エネルギーをグラフによって示す図である。
図16】フォノン媒介核励起移動を介してD+P核融合(5.5 MeV)から核励起を受け取った後に壊変するときに初期質量数Aの核から放出されるアルファ粒子の計算された運動エネルギーをグラフによって示す図である。
図17】フォノン媒介核励起移動を介してD+P核融合(5.5 MeV)から核励起を受け取った後に壊変するときに初期質量数Aの核から放出される陽子の計算された運動エネルギーをグラフによって示す図である。
図18】フォノン媒介核励起移動を介してD+P核融合(5.5 MeV)から核励起を受け取った後に壊変するときに初期質量数Aの核から放出される中性子の計算された運動エネルギーをグラフによって示す図である。
図19】回転の増加(すなわち、より高いエネルギー回転状態の占有)を通じて変形核を分裂させるプロセスを概略的に示す図である。
図20】核分裂を誘起する際の原子核における高エネルギー回転状態の「ラダー(ladder)」及びそれらの役割をグラフによって示す図である。
図21】コヒーレント核分裂の過程におけるEとIとの間の関係をグラフによって示す図である。
図22】フォノン核カップリング強度決定要因、具体的には、フォノン核カップリング強度、核励起移動の形式(modality)及び結果として生じる効果に対する、変化するフォノン核カップリング行列要素の大きさの相対的な影響の定性的な概略を提供する図である。
図23】フォノン核カップリング強度決定要因、具体的には、フォノン核カップリング強度、核励起移動の形式及び結果として生じる効果に対する、核遷移量子のサイズの相対的な影響の別の定性的な概略を提供する図である。
図24】核励起移動ベースのアプリケーションシステムのシステム設計、及び具体的には格子構成を特徴付ける核励起移動パラメーターを決定及び最適化するための依存関係の概略のブロック図である。
図25】核励起移動ベースの荷電粒子生成システムの設計プロセスを要約したブロック図である。
図26】核励起移動ベースのシステムの一般設計プロセスを要約したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
その内容が引用することにより明示的に本明細書の一部をなす国際特許出願PCT/US2018/35883号には、本発明者らの実験によって最初に実証され、特徴付けられたフォノン核相互作用に基づく核励起移動のためのシステム及び方法が記載されている。
【0019】
本発明は、原子核を励起及び脱励起するシステム及び方法に関し、特に、荷電粒子放出の生成等の用途を包含するフォノン媒介核励起移動を介して原子核との間で励起エネルギーを移動させるシステム及び方法に関する。具体的には、本発明は、フォノン相互作用を介してエネルギーの励起核状態への移動及び励起核状態からの移動からもたらされる新規な用途を教示する。
【0020】
1.序論
フォノン核相互作用は、核が原子格子内で振動するときと同様に、核が加速又は減速されるときに原子核内部の核子間相互作用の必要とされるブースト補正に続いて起こる。フォノンとしても記載される格子振動と内部の核状態との間に結果として生じるカップリングは、エネルギーがその内部において無放射で移動することができる量子システム(quantum system:量子系)(影響を受ける核及びフォノンを含む)の一時的な形成をもたらす。カップリングされた核及びフォノンモードのそのような量子システムの形成の1つの結果は、図2に示すように、核励起移動202として記載されるプロセスである、1つのグループの核(ドナー)104から別のグループの核(アクセプター)204へのエネルギーの移動である。量子システムのコヒーレンスが十分長く維持されるとき、エネルギーは、中間の非共鳴状態(仮想状態としても記載される)も占有することができ、核からフォノンモードへ及びその逆へ移動することができる。
【0021】
フォノンは、固体の原子格子等の凝縮物質内の原子又は分子の周期的弾性配置における原子の集団励起と定義される。フォノンは、振動モードに関連したエネルギーの量子とみなすことができる。振動モードは、接続原子の周期運動の特定の空間的出現を表す。励起モードには、その励起モードの周波数、振幅、及び対応する総エネルギーが関連付けられる。量子力学的には、励起モードの総エネルギーは、フォノンをエネルギーの量子として含むとみなすことができる。フォノンモードという用語は、そのようなモードを指すのに用いられる。フォノンエネルギーは、原子の空間構成に依存するフォノンモードの周波数に比例する。励起フォノンモードにおけるフォノンの数は、励起フォノンモードの総エネルギーをフォノンエネルギーによって除算したものである。励起フォノンモードの総エネルギー(したがって、フォノンの数)は、振動振幅の平方に比例する。
【0022】
核励起移動への類似物質のプロセスは電子的励起移動である。核励起移動は、本発明までは検討されていなかったが、電子的励起移動は、十分に確立されており、広く応用されている。電子的励起移動は、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET:Forster Resonance Energy Transfer)の名称で最もよく知られている。FRETでは、原子又は分子は、別の原子又は分子にもカップリングする(仮想)光子にカップリングする。同時に、それらは、エネルギーがその内部において無放射で移動することができる量子システムを形成する。FRETは通常光子媒介であることを考えると、原子レベルでのそのようなエネルギー移動も、フォノン媒介を通じて発生することが提案されていた。論文審査のある学術専門誌における例は1950年代に遡り、媒介フォノンのエネルギーが、移動される励起エネルギーよりも大幅に低いときであっても、励起移動が予想される、フォノン媒介電子的励起移動を記述するモデルを含む。一般的な光子媒介電子的励起移動及びフォノン媒介電子的励起移動、並びに具体的なFRETが、最近数十年にわたって受け入れられてきたにもかかわらず、核励起移動及び関連したアプリケーションは、本開示まで可能であると考えられていなかった。
【0023】
2. 概略
上記セクションは、フォノン媒介核励起移動を、原子核が励起フォノンモードと、励起フォノンモードを介して他の原子核とにカップリングされる量子システムにおける無放射エネルギー移動の形態として紹介している。
【0024】
したがって、核励起移動は、多くの有用なアプリケーションの基礎をなすことができる。これは、一般原理の例示を目的としたものであるが、図1に示す多くの一般的な核分裂反応における最初のステップのように、中性子101を吸収した後に励起状態104のままにある核102からの核励起の移動を検討すると明らかになる。通常の核分裂反応では、励起核104は、その後、通常、同じく図1に示す中性子109等の他の壊変生成物を伴うより小さな核108a、108bに分裂する。しかしながら、図2に示すように、核分裂反応が起こる前に、励起核104(ドナー)の励起エネルギーが別の核204(アクセプター)に移動されると、その場合、新たに励起されたアクセプター核204は崩壊又は核分裂を受け、その結果、異なる一組の特徴的生成物206が生じる。ここでは、ドナー核102による中性子101の吸収は1次反応とみなすことができ、アクセプター核204の崩壊は2次反応とみなすことができるのに対して、2次反応は、アクセプター核204への核励起の無放射移動202によってトリガーされる。巨視的には、このプロセスの結果として、このプロセスでない場合には通常の核分裂と、したがって、通常予想される核分裂生成物106とが得られるシステムから異なる一組の反応生成物206が得られる。核励起エネルギーをこのように他の核に移動させることは、この移動が、長寿命アクチニド、危険な中性子等の非所望の反応生成物の回避をもたらすとき、又は、この移動が、特定のエネルギーにあるエネルギー粒子等の所望の反応生成物の生成をもたらすときに特に有用である。
【0025】
核励起移動がどのように及びどれだけ効率的に適用され、核励起移動を用いるシステムの特定の工学技術及び設計目的を達成するのかは、そのようなシステムの実施態様に依存する。そのようなシステムのコアでは、核が格子(又は秩序が失われている場合にはアモルファス構造)に配置されている。第2に、フォノンは、核と核との間のカップリング、及び、核とフォノンモードとの間のカップリングを有する量子システムの形成をもたらす核の配置において生成される。結果として生じるフォノン核カップリングの強度は、エネルギーが移動することができる速度を決定する。他のエネルギー移動及び変換チャネルが利用可能であることと組み合わせると、これは、システム内の利用可能なエネルギーが向かう場所及びどのような巨視的な効果が生じるのかを決定する。
【0026】
フォノン核カップリング強度及びエネルギー移動の代替チャネルは、格子のフォノンモード及びそれらの励起、量子システム及びそれぞれのモードにおけるフォノンエネルギー、カップリングされた量子システムのコヒーレンスが維持される時間の長さ、量子システムに参加する核のフォノン核カップリング行列要素(本明細書では、簡潔にカップリング行列要素とも記載される)、並びに(参加する核のエネルギー準位及び関連する断面積を決定する)それらの核種と、それらの距離及び格子サイト占有率と、(核の数の増加とともにカップリング強度を増加させるディッケ(Dicke)超放射に起因した)それらの数と、代替のエネルギー移動及び変換チャネルを提供する量子システム内の他の核の参加(すなわち、ドナー核がカップリングすることができる構造の関連部分におけるそれらの存在)とを含む格子(又はアモルファス構造)内の核の配置等の複数のパラメーターに依存する。
【0027】
核励起移動の異なる形式及び核励起移動の原理を利用する関連するアプリケーションモードの体系的な概略を次のセクションにおいて示す。このセクションには、上述したパラメーター並びにそれぞれの動作レジーム及びアプリケーションモードとのそれらの関係のより詳細な論述を含む、そのようなアプリケーションの実施態様並びに関連するエンジニアリング態様及び設計態様の開示に関するセクションが続く。このセクションは、それぞれのアプリケーションに一般に好まれる適した格子構成及び核種等の物質及び構造の選択、提示される例示的な実施形態をより広い範囲のエネルギー粒子生成に関連したアプリケーションに適合させる特定の設計方法、核励起移動ベースのシステム全般の一般的な設計方法、並びに他の設計態様及びアプリケーションに関連した態様を案内する開示を含む。エネルギー粒子は、特に荷電粒子、中性子、及び光子を含む。
【0028】
様々な異なる表記が、水素の同位体を記述するのに共通に用いられる。本明細書では、プロチウムの表現P及びH-1は、中性子を有しない水素核を記述するのに用いられ、重水素、重陽子の表現D及びH-2は、1つの中性子を有する水素核を記述するのに用いられ、三重水素、三重陽子の表現T及びH-3は、3つの中性子を有する水素核を記述するのに用いられる。
【0029】
3. 核励起移動の形式及びアプリケーション
3.1. 角度異方性及び非局在化
核励起移動の最も単純な出現は、双方の核が共有フォノンモードを通じてカップリングされる同じ核種の励起核及び基底状態核を有するシステムを含む。この場合に、核励起は、励起状態核から基底状態核に中間状態を介して移動することができる。そのような形態の核励起移動の一例を図3に示す。図3は、1つの核Aの14.4 keV励起状態の励起エネルギーが、フォノン媒介核励起移動を介して、同じ格子の一部である(及び移動中にその格子内の同じカップリングされた量子システムの一部である)核Bに無放射で移動されるFe-57核のエネルギー図を示している。この図は、原子物理学及び生物物理学においてエネルギー遷移を示すために頻繁に用いられる視覚ツールであるヤブロンスキー図の基本設定に従っている。
【0030】
同一出願人の国際特許出願PCT/US2018/358831号に記載されているように、そのようなシステムにおける核励起移動は、核位相コヒーレンスに起因した角度異方性(フォノン核カップリング強度が比較的弱く、励起移動が共鳴状態にあるとき)及び放出の非局在化(フォノン核カップリング強度が比較的強く、励起移動が非共鳴状態にあるとき)等の効果をもたらすことができる。
【0031】
これは、国際出願PCT/US2018/35883号及びMetzler 2019「Experiments to Investigate Phonon-Nuclear Interactions」(MIT Dspaceにおいて入手可能なMIT Nuclear Science &Engineering Departmentにおける論文)において報告されているように、Fe-57*(励起状態)及びFe-57(基底状態)を用いた本発明者らの実験で実証されている。図4図7は、上記構成を有するシステムにおける核励起移動を更に示している。
【0032】
図4は、Co-57核(核A)301がベータ崩壊を受け、その結果、電子304が放出される、Fe-56核、Fe-57核、及びCo-57核を含む振動する原子格子303を示している。図5は、以前のCo-57核301がベータ崩壊を受けた後、現在励起状態のFe-57核(Fe-57*の表記も用いて記載される)301である、図4の振動する原子格子を示している。ベータ崩壊後まもなく、励起Fe-57*核は、通常ならば、その核のサイトからの等方性の光子放出を介してその基底状態に脱励起する。その結果生じる光子は、その後、核A301のロケーションから発生する光子放出として観測することができる。この図において核と相互作用する上述した励起フォノンモードは、他の結果を可能にする。1つの代替の結果を図6に示す。図6は、図4及び図5の振動する原子格子を示すとともに、励起Fe-57*核301(核A、ドナー核)から基底状態Fe-57核302(核B、アクセプター核)への核励起のフォノン媒介移動を示している。ドナー核301の励起エネルギーは、共通のフォノンモードによって媒介される核励起移動305を介して基底状態アクセプター核302に移動する。この基底状態アクセプター核は、この場合に、ドナー核から脱励起したものと同じエネルギー量子に核励起として対応することができる。このようになるのは、ドナー核及びレシーバー核が同じ核種(Fe-57)であるときに、双方のエネルギー準位が同一であるからである。この例では、現在の励起Fe-57*核Bは、その後、通常どおりに(放射崩壊を介して)脱励起し、核Bのサイトから光子を放出する。図7は、図4図5及び図6の振動する原子格子を示すとともに、通常どおりの光子放出306を介した励起Fe-57*核の脱励起を示している。核Bからの光子放出306は、核Aからの放出と異なるロケーションから発生するものとして実証される。
【0033】
国際出願PCT/US2018/35883号に記載されている例示的な実施形態では、フォノン生成は機械的応力によってトリガーされる。本出願では、フォノン生成、すなわち、フォノンモードの励起、ひいては、格子核を伴うカップリングされた量子システムの形成が機械的応力の代わりにレーザーを介して行われる代替の実施形態を図8に示す。この代替の例示的な実施形態は、以下のセクション4.1.2.において詳細に説明する。
【0034】
3.2. 2次反応/崩壊を通じた核反応生成物の変化
同等のエネルギー準位を有する整合する核が、カップリングされた量子システムにおいてドナー励起のアクセプターとして利用可能でない場合(又は十分に整合しない核が利用可能である場合)には、他の核種の核が、励起エネルギーのアクセプターとして働くことができる(それらがカップリングされた量子システムの一部である限り、かつ、それらへのエネルギー移動がシステムにおけるエネルギー移動の最も高速な経路を表す限り)。ドナーエネルギー量子とアクセプターエネルギー量子との間の差は、周囲の格子内のフォノンの放出又は吸収によって補償することができる。その上、システムにおける核とフォノンモードとの間のフォノン核カップリング強度は、エネルギー移動及び変換のどのチャネルが最も高速であり、したがって、好ましくは、その結果として、どの核又はフォノンモードが励起エネルギーを授受するのかを決定する。
【0035】
核励起移動のそのような入射における受け取り核が非常に不安定であり、エネルギー量子を受け取った後まもなく量子システムにおいてコヒーレンスを(例えば、崩壊を介して)破壊する場合には、この形態の核励起移動は、インコヒーレント核励起移動と記載される。この形態の核励起移動を示すシステムの例示的な実施形態を以下に説明する。換言すれば、このプロセスは、ドナー核を伴い、結果として、励起エネルギー量子をもたらす1次反応と、アクセプターへの励起エネルギーの移動によって引き起こされるアクセプター核を伴う2次反応との2つの核反応のカップリングを表す。
【0036】
この手法は、様々な望ましいエンジニアリングの成果を取り扱うことができる多数の用途に用いることができる。これらは、特定の所望の荷電粒子放出又は中性子放出をもたらすアクセプター核の壊変、或いは、特定の荷電粒子放出又は中性子放出の回避を含むが、これらに限定されるものではない。
【0037】
前者の場合(所望の反応生成物の生成)については、直接的な電気変換メカニズムを含む例示的なシステムが、特定のエネルギー範囲にある荷電粒子を必要とし得る。核励起移動が起こる格子に、所望のエネルギー範囲にある荷電粒子放出をもたらす核種のアクセプター核を含めることによって、そのような例示的なシステム設計要件が対処される。
【0038】
後者の場合(非所望の反応生成物の抑制)については、抑制しない場合には核融合反応、核分裂反応、又は崩壊反応を受けるシステムにおいて核に起因した中性子放出を示すと予想される例示的なシステムが、中性子放出を示さないことが所望され得る。中性子放出は、核励起移動が起こる格子に、抑制しない場合に励起が中性子放出をもたらすドナー核から励起を受け取る核種のアクセプター核を含めることによって回避され、この場合に、これらのアクセプター核は、中性子放出以外(或いは、回避される中性子放出のエネルギー範囲以外)の反応生成物とともに崩壊又は壊変する。
【0039】
図9図12は、荷電粒子生成をもたらす形式「インコヒーレント核励起移動」の核励起移動の1つの例を更に示している。一例は、核結合エネルギーが(中性子発生装置に一般的であるように)2つの重水素核H-2 + H-2の核融合を通じて解放されるシステムである。図9は、Li-6核及びLi-7核を含むとともに、核(既に注入されている)601及び核(入射するエネルギー核)604(イオンビームボンバードメントを介する)によって示すような注入されたH-2核及び入射するエネルギーH-2核と、格子欠陥605によって示すような格子欠陥(同じくイオンビームボンバードメントを介する)とを有する、振動する原子格子603を示している。図10は、2つのH-2核(604及び601)が、He-4核608と、核結合エネルギー量子(この場合、24 MeV)607の解放とをもたらす核融合反応を受ける、図9の振動する原子格子を示している。通常、すなわち、核励起移動がない場合には、核融合反応は、約0.8 MeVの運動エネルギーを有するHe-3核及び約2.5 MeVの運動エネルギーを有する中性子、又は、約1 MeVの運動エネルギーを有するH-3核及び約3.0 MeVの運動エネルギーを有するH-1核、又は、24 MeVの光子を生じると予想される。一方、核融合反応を受ける核が、解放される核結合エネルギーを受け取ることができる格子内の他の核とフォノン核カップリングを介してカップリングされる場合には、核融合反応から生じるエネルギー量子をLi-7核602等のアクセプター核に無放射で移動させることによって、中性子及びガンマ放出を回避することができる。図11は、核融合反応から解放された核結合エネルギーがフォノン媒介核励起移動を介してLi-7核602に移動し、それによって、そのLi-7核602が励起状態になる、図9及び図10の振動する原子格子を示している。図12は、励起Li-7核602(フォノン媒介核励起移動を介して励起を以前に受けた後のもの)が壊変による崩壊を受けて、運動エネルギーを有するH-3核及びHe-4核(すなわち、エネルギー粒子)609になる、図9図10及び図11の振動する原子格子を示している。入射するエネルギー粒子(核604等の水素イオン)はkeV及びサブkeVの範囲の運動エネルギーを有することを考えると、その結果生じるエネルギー粒子(核609等)は、(プロセスにおける核結合エネルギーの解放に起因した)MeV範囲のエネルギーを有する。
【0040】
この例では、リチウムフォイルが、原子格子を提供するのに用いられ、Li-7核が、アクセプター核として働き、励起状態に置かれることによって核融合反応から移動されるエネルギーを受け取る。H-2 + H-2→He-4核融合反応の場合には、このエネルギー量子は、総計が、近くのLi-7核に移動される約24 MeVになり、図12に示すように、H-3核及びHe-4核を生じるこのLi-7核の壊変をもたらす。
【0041】
上記例は、2次反応を受けることができるアクセプター核を提供する水素化リチウム格子を備えるシステムの場合を説明している。このアプリケーションは、他の物質を含むシステムに一般化することができる。原理上、システム設計者は、フォノン媒介核励起移動ベースのアプリケーションについて核種のチャートにわたって物質を検討する必要がある。核種は、他のそのようなパラメーターの中でも特に、それらのエネルギー準位及び関連する崩壊モード/崩壊系列、それらの化学特性、並びにそれらのコストに基づいて選ぶことができる。
【0042】
具体的には、他の実施形態では、以下の核種及びそれらの同位体のうちの1つ又は幾つかが原子格子内のアクセプター核として用いられる。H, Li, Be, B, C, N, O, Na, Mg, Al, Si, P, S, Cl, K,Ca, Sc, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, As, Se, Br, Rb, Sr, Y, Zr,Nb, Mo, Tc, Ru, Rh, Pd, Ag, Cd, In, Sn, Sb, Te, I, Cs, Ba, La, Ce, Pr, Nd, Pm,Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, W, Re, Os, Ir, Pt, Au, Hg, Tl,Pb, Bi, Po, At, Fr, Ra, Ac, Th, Pa, U, Np, Pu, Am, Cm, Bk, Cf, Es, Fm。
【0043】
核励起移動ベースのアプリケーションの原子格子内の核の配置は、「格子構成」として記載され、異なるアプリケーション及びシステムのそれぞれの実施形態に適した格子構成を設計するプロセスが、具体的なシステム設計プロセス及び一般的なシステム設計プロセス並びにシステムに含まれる核種の選択基準及び他のシステムパラメーターの詳細な論述を含めて、以下に説明される。
【0044】
概括的に言えば、図14(アルファ)及び図15(中性子)は、H-2+ H-2→He-4反応から核質量数Aを有する核種のアクセプター核への解放された結合エネルギーの移動から生じる2次反応生成物の概略を提供する。それぞれの物質がアクセプター核として格子に組み込まれ、格子が、インコヒーレント励起移動をエネルギー移動の最も高速な、したがって、好ましいチャネルとするのに十分大きなフォノン核カップリング強度を有するカップリングされた量子システムを維持する場合における、放出される粒子の予想エネルギー準位が示されている(フォノン核カップリング強度及び実施態様の論述については以下を参照)。図16(アルファ)、図17(中性子)、及び図18(陽子)は、H-1 + H-2→He-3反応から解放される核結合エネルギーの、核質量数Aを有するシステムの格子内のアクセプター核への移動から生じる、可能性のある2次反応生成物(すなわち、それぞれの運動エネルギーを有するエネルギー粒子)の類似物質の概略を示している。これらのグラフは、核励起移動ベースの粒子生成システムの格子構成において用いられる物質の選択肢を特徴付ける)。所望のエネルギー粒子出力エネルギーを有するエネルギー粒子生成システムのシステム設計プロセス及び選択基準の詳細な説明は、以下のセクション4.8において提供される。
【0045】
3.3. より軽い核種に向かうコヒーレント核分裂及び変換
上記で説明した壊変反応(Li-7→H-3及びHe-4等)は、より軽い核種に向かう非対称核分裂反応又は変換とみなすことができる。なぜならば、このプロセスは、これらの反応を受ける核の核種の変化をもたらすからである。そのような壊変/核分裂反応は、より重い核種が関与するときは対称又は近対称である可能性は低い。1次核反応からより重い核種のアクセプター核に移動されるエネルギーは、通常、対称核分裂又は近対称核分裂をもたらすそのようなアクセプター核において比較的高いエネルギー準位(数十MeV程度)に達するほど十分高くなる可能性は低い。学術文献には、高エネルギー回転状態にある核の核分裂及びそれらの状態に続いて起こる異なるタイプの核分裂が記載されている。具体的には、核分裂をもたらす回転状態は、以下の式として記述することができる。
【数1】
【0046】
図19は、回転増加を通じた(すなわち、高エネルギー回転状態の占有を通じた)変形核610から分裂核610へのプロセス600を原理的に示している。そのような回転状態の「ラダー」を図20に示す。図20において、矢印651は、関係している核のスピンを本質的に上昇させることによるますます高い回転状態の占有を表す。対称核分裂又は近対称核分裂が目的である場合には、そのような回転状態のラダーにおけるより高い状態が占有されることになり、その結果として、そのような核に移動されるエネルギー量子はより大きくなる。
【0047】
他の核からインコヒーレント核励起移動を介して移動されるエネルギーは、通常、そのような回転状態のラダーにおけるより高い回転状態に達するほど十分に大きなものではない。一方、コヒーレント核励起移動は、十分な大きさのエネルギー量子を蓄積して移動させる可能性を与える。すなわち、コヒーレント核励起移動は、占有される高エネルギー(数十MeV)の非共鳴状態に対して、コヒーレンスが十分長い期間にわたって維持され、フォノン核カップリング強度が十分強い励起移動である。非共鳴状態にあるそれぞれのエネルギー量子が十分大きいとき、それらのエネルギー量子は、アクセプター核に移動し、核分裂をもたらす上記回転状態のうちの1つを占有することができる。この手法は、より重い核種の対称核分裂又は近対称核分裂が設計目的である場合に推進されることになる。図21は、変形核602から核分裂を受ける核610へのステージにわたるコヒーレント核分裂の過程におけるEとIとの間の関係を定性的に示している。
【0048】
そのようなコヒーレント核励起移動を達成するには、比較的強いフォノン核カップリングが必要とされる(それぞれのフォノン核カップリングが比較的弱い場合には、アクセプター核のより低い状態の占有が代わりに予想される。これは、壊変をもたらし、より高い回転状態の占有から生じる比較的対称的な核分裂生成物ではなく、比較的非対称的な核分裂生成物をもたらす)。
【0049】
コヒーレント核励起移動を通じた対称核分裂反応及び近対称核分裂反応は、強いフォノン核カップリング強度を予め想定しているので、解放される核結合エネルギーは、インコヒーレントに放出されず、代わりに、コヒーレントにダウンコンバート及び移動して、フォノンモードを更に励起することが可能である。強いフォノン核カップリング強度を有する格子構成をどのように設計するのかに関する更なる説明については、本明細書におけるセクション4を参照されたい。
【0050】
荷電粒子放出及び中性子放出を通じてより軽い核種に向かう限られた変換(すなわち、この場合、反応によって影響を受ける核内の核子の数の削減が小さい)と比較して、コヒーレント核分裂は、より軽い核種に向かうそのような変換においてより大きな下方ステップの可能性を提供する。
【0051】
3.4. より重い核種に向かう変換
核励起移動は、強いフォノン核カップリングが提供される場合には、より重い核種に向かう変換も可能にする。そのような場合には、1つ又は複数の中性子の質量エネルギーと同等のエネルギーの対応する移動が、コヒーレント中性子移動として記載することができるプロセスであるドナー核内の中性子の除去及びアクセプター核内の中性子の形成をもたらすような十分に高いエネルギーの非共鳴状態を占有することができる。高いフォノン核カップリング強度を有するフォノン媒介核励起移動によって誘起されるコヒーレント中性子移動は、このように、元のアクセプター核よりも重い核種の核の生成をもたらすことができる。
【0052】
4. 実施態様
4.1. 例示的な実施形態
本明細書におけるこの説明は、より広い本発明の主題の1つ以上の特定の実施形態の理解を提供するために十分詳細に提示される。これらの説明は、本発明の主題を明示的に説明された実施形態及び特徴に限定することなく、それらの特定の実施形態の特定の特徴を詳しく述べるとともに例示している。これらの説明を考慮して検討を行うことによって、本発明の主題の範囲から逸脱することなく、追加の及び同様の実施形態及び特徴が誘発される可能性が高い。用語「ステップ」は、プロセス又は方法の特徴に関連して明示的に用いられる場合もあるし、暗示される場合もあるが、順序又はシーケンスが明記されていない限り、そのような明示又は暗示されたステップの間の特定の順序もシーケンスも意味するものではない。
【0053】
図面及びこれらの説明に明示又は暗示された寸法は、例示を目的として提供されている。したがって、図面及びこれらの説明の範囲内にある全ての実施形態が、そのような例示的な寸法に従って構成されるとは限らない。図面は、必ずしも一律の縮尺であるとは限らない。したがって、図面及びこれらの説明の範囲内にある全ての実施形態が、図面における相対的な寸法に関して図面の見掛けの縮尺に従って構成されるとは限らない。ただし、各概略図面について、少なくとも1つの実施形態は、図面の見掛けの相対的な縮尺に従って構成される。
【0054】
4.1.1. 例示的な実施形態1
核励起移動に誘起された2次反応を通じた核反応生成物の変化を示すシステムの例示的な実施形態を以下で詳細に説明するとともに、図13に示す。
【0055】
この例示的なシステム500は、サンプルアセンブリ510と、粒子検出器502と、イオン源504によって生成されるH及びDイオンビーム505とを含む。サンプルアセンブリ510は、真空チャンバー506と、真空チャンバー506内でサンプルホルダー507上に支持されるサンプル508とを含む。
【0056】
1つの例では、真空チャンバー506は、ステンレス鋼製であり、複数のフランジ付きポートが設けられた18インチ外径のLesker社のSP1800SEP真空チャンバー等の球形真空チャンバーである。真空チャンバー506内では、イオン源の動作を可能にする十分に低い圧力において、水素(H-1)核及び重水素(H-2)核を含むイオンビーム505が、金属フォイルサンプル508に誘導される。適した真空チャンバー動作圧力は、イオンビームがオフにされる10-7トル及びイオンビームがオンにされる10-5トルまでである。この動作圧力は、真空チャンバー506のポートに設置された真空圧力計512を介して監視される。真空は、Edwards社から提供されているnEXT 400ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ511によって引き込まれる。
【0057】
1つの例では、サンプルホルダー507は、取り付けられた50 mm×50mm×5 mmプレートを有するステンレス鋼のロッドであるとともに、サンプルホルダーは、真空チャンバー506の内部においてチャンバーのポートのうちの1つに取り付けられ、取り付けられたサンプルをチャンバー506の幾何学的中心に位置決めすることができるようにチャンバーの中心まで延在する。1つの例では、サンプル508は、Li-6核及びLi-7核(天然リチウム)を含む金属フォイルを含み、50 mm×50 mm×0.1 mmの寸法をとる。サンプルは、機械式圧力を介して金属クリップによってサンプルホルダープレートに取り付けられる。
【0058】
システムは、イオンビーム505が500 eV〜1000 eVの範囲のエネルギーで金属フォイル標的508に到達するように構築及び動作される。適したイオンビーム発生器504は、Oxford Applied Research社から提供されているDC25イオン源である。このイオン源は、1O eV〜100O eVの範囲にわたる平行ビームエッチング、支援蒸着、及びスパッタリングの用途に一般に用いられる。1つの例では、イオン源は、0.1 mAのビーム電流において動作される。別の例では、ビーム電流は、(以下で説明するような)所望の効果を最大にするために0.01 mA〜10 mAの範囲で変動される。イオン源504は、Oxford Applied Research社から提供されているNW63CF付属物設置フランジを介して真空チャンバーのポートに設置され、真空球体の幾何学的中心にあるサンプルホルダー507上のサンプル508を狙う。サンプルは、金属フォイルサンプル508の表面とイオンビーム505とが45度の角度をなすような角度で位置決めされる。DC25のイオンビームのビーム直径は、真空の長さ100 mmにおいて25 mmである。1つの例では、イオン源504は、50%水素ガス及び50%重水素ガスの混合物を用いて動作される。別の例では、イオン源は、100%重水素ガスのガス比を用いて動作される。別の例では、ガス比は、(以下で説明するような)所望の効果を最大にするために、100%水素ガス及び0%重水素ガスから0%水素ガス及び100%重水素ガスまで段階的に調整される。
【0059】
システムの動作中に放出される荷電粒子は、Ortec社から提供されているRシリーズ検出器等のシリコンベースの表面バリア荷電粒子検出器502を用いて検出される。1つの例では、600mm2の検出器サイズを有するOrtec社のRシリーズ検出器が、サンプルホルダー507と同様にホルダーロッドを介して真空チャンバー506の内部に検出器502をしっかりと固定して設置するステンレス鋼検出器ホルダー509上に設置される。検出器ホルダー509は、ポートフランジの内部のマウントを介して真空チャンバーに取り付けられる。検出器502は、真空チャンバーの幾何学的中心にあるサンプルホルダー507上のサンプル508の方向に向いている。1つの例では、真空チャンバー506内の検出器502の位置は、検出器が、一方の球面方向において45度及び他方の球面方向において0度の弧によって真空チャンバー506の円周上でイオン源504から離隔されるような位置である。サンプル金属フォイル508は、イオンビーム504に対して45度の角度に方位付けされている(上記説明参照)ので、検出器502の表面と金属フォイルサンプル508の表面とは、この構成では平行である。1つの例では、検出器502の表面とサンプル508の表面との間の距離は50 mmである。別の例では、検出器502の位置は、(以下で説明するような)所望の効果の観測結果を最大にするために変動される。検出器502は、チャンバーポート内の電気フィードスルーを介して、真空チャンバー506の外部に配置されたOrtec142前置増幅器に接続され、その後、Ortec672スペクトロスコピー増幅器及びOrtec428バイアス電源に接続される。スペクトロスコピー増幅器の出力は、OrtecEASY-MCA8kマルチチャネルアナライザーを介してデジタル化及びビン化される。このアナライザーは、USBを介してWindowsコンピューターに接続され、このコンピューターでは、Ortec Maestroソフトウェアが、スペクトル当たり1分にわたるカウントの累積値を有する荷電粒子スペクトルを表示及び記録する。この1分スペクトルは、その後、後処理においてより長い期間にわたって更に蓄積される。1つの例では、システムが動作される12時間期間にわたる全ての1分スペクトルは合算され、累積スペクトルが形成される。スペクトロスコピー増幅器の利得は、1MeV〜20 MeVの範囲の荷電粒子放出をシステムの動作中に監視することができるように設定される。検出サブシステムは、約5.4 MeVのアルファ粒子を放出するAm-241較正源(Eckert & Ziegler社から入手可能)を用いて較正することができる。1つの例では、加えて、Thermo Scientific社から提供されているFHT 762 Wendi-2広エネルギー中性子検出器等の中性子検出器503が、真空チャンバー506の隣(チャンバーの外部)にチャンバーの50 cmの距離内に配置される。
【0060】
イオン源504が動作され、水素核及び重水素核を用いてサンプル508をボンバードすると、それらの核のうちの幾つかは金属フォイル内に注入される。エネルギーイオンを用いた注入及びその後のボンバードメントの結果、入射するH-2発射物及びH-1発射物のうちの幾つかは、それぞれの低エネルギー核融合反応断面積に従って、金属フォイル格子に注入されたH-2イオン及びH-1イオンのうちの幾つかと融合する。加えて、イオンビームボンバードメントは、THzレジームにおけるフォノンを含めて、金属フォイル508の格子内に高周波数フォノンを生成し、したがって、フォノン核カップリング強度を局所的に増加させ、核励起移動、すなわち、解放された核結合エネルギーの、このエネルギー解放が発生する核から周囲の格子内の他の核への移動を容易にする。
【0061】
フォノン核カップリング強度が十分に高い金属フォイルサンプル508の領域では、核融合反応から解放された結合エネルギーが、フォノン媒介核励起移動を介して金属フォイルの格子内のLi-6核及びLi-7核に移動する。励起状態のLi-6核及びLi-7核のその後の崩壊は、これらの核種のそれぞれの一時的な励起からのそれらの崩壊から通常予想される核反応生成物をもたらし、荷電粒子検出器502及び中性子検出器503を用いて測定される。その結果、この例示的な実施形態は、1次核反応からの通常予想される反応生成物を削減又は抑制しながら、1次核反応(水素核融合反応)が2次核反応(励起Li-6及びLi-7の壊変)からの反応生成物をもたらすシステムを記述している。
【0062】
より一般的に言えば、この例示的な実施形態では、フォノン媒介核励起移動は、(第1の核反応[第1のエネルギーを有するエネルギー粒子]から第2の核反応/壊変の反応生成物[第2のエネルギーを有するエネルギー粒子]への)核反応生成物の変化をもたらす。
【0063】
他の例示的な実施形態では、サンプルは、以下の元素及びそれらの同位体のうちの1つ又は幾つかの核を含む。H, Li, Be, B, C, N, O, Na, Mg,Al, Si, P, S, Cl, K, Ca, Sc, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, As, Se,Br, Rb, Sr, Y, Zr, Nb, Mo, Tc, Ru, Rh, Pd, Ag, Cd, In, Sn, Sb, Te, I, Cs, Ba,La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, W, Re, Os, Ir,Pt, Au, Hg, Tl, Pb, Bi, Po, At, Fr, Ra, Ac, Th, Pa, U, Np, Pu, Am, Cm, Bk, Cf,Es, Fm。
【0064】
4.1.2. 例示的な実施形態2
フォノン媒介核励起移動を通じた核反応生成物及び関連する効果の変化を示すシステムの代替の例示的な実施形態を以下でより詳細に説明するとともに、図8に示す。この例では、1次核反応(第1の核反応としても記載される)は放射性同位体のベータ崩壊である。以下で説明する動作のような核反応生成物及び関連する効果を変化させるシステムの動作がない場合に、このベータ崩壊反応の結果は、崩壊する核のサイトからのその後の等方性の光子放出である。以下で説明するシステムは、この反応の結果を、異方性の光子放出及び崩壊する核と異なる他の核(すなわち、格子内の他のサイトにある核)からの光子放出に変更する。一般原理(上記セクション3.1.により詳細に説明されている)を強調するために主要な態様に縮約された形態によるこのメカニズムの図については図4図7を参照されたい。
【0065】
図8を参照すると、光子生成のシステム400は、サンプルアセンブリ410と、ピンホール光学機器409を有するエネルギー分散型X線カメラ402と、波長可変テラヘルツ(THz)レーザー404とを含む。サンプルアセンブリ410は、真空チャンバー406と、真空チャンバー406内でサンプルホルダー407上に支持されるサンプル408とを含む。サンプル408は、放射性Co-57核、Fe-56核、Fe-57核及び励起Fe-57*核を含む金属フォイルを含む(励起Fe-57*核は、崩壊するCo-57核から生じる)。レーザー404は、サンプル408上に誘導されるレーザービーム405を放出する。レーザービーム405は、フォノン誘起核エネルギー移動に寄与するフォノン源を提供する。
【0066】
真空チャンバー406と、真空ポンプ411と、真空計412とを含む真空チャンバー構成は、上記セクションにおける例示的な実施形態1において説明したものと同一であり、10-3トルの真空圧力において動作される。
【0067】
サンプルアセンブリ410は、プレートの形態のサンプル408を含む。1つの例では、サンプル408は、細長いプレートであり、3"×6"×5/32"の寸法を有する。1つの例では、サンプル408は、圧延低炭素鋼製の鋼鉄プレート(McMaster-Carr社の部品番号1388K546)である。1つの例では、サンプル408は、天然鉄製のプレートである。1つの例では、プレートサンプル表面の幾何学的中心に放射性基材が置かれる。プレート上に放射性基材を置くことは、真空チャンバーの外部でサンプルサブシステムの準備中に、すなわち、サンプルがその後サンプルホルダー上に設置され、真空が引き込まれる前に行われる。具体的には、約250 μCiの放射能壊変速度を有する0.1 M HC1溶液内の57CoCl2の0.05 ml液滴(Eckert& Ziegler社から提供されている)が用いられる。この溶液の液滴は、1時間にわたって蒸着するように放置され、鋼鉄プレートの表面上に約12 mmの直径を有する灰色のリングを形成する。サンプルアセンブリは、この時、下にあるプレートに接着している蒸着した57CoCl2溶液のリング形状基材を含む。この基材は、核励起源として働く減少する数の放射性Co-57核を含む。この基材は、崩壊するCo-57核から生じる励起Fe-57*核と、以前のCo-57崩壊からの基底状態のFe-57核との安定した短寿命の存在も提供する。下にあるプレートには、鉄内のFe-57の自然発生に起因した更なる基底状態Fe-57核が存在する。
【0068】
1つの例では、サンプル408は、Fe-57核及びCo-57核を含む合金製のプレートである。1つの例では、サンプルは、左半分等のサンプルの1つの領域が高濃度のFe-57核を有し(その領域ではCo-57核の数よりも3倍高い)、右半分等のサンプルのもう1つの隣接する領域が高濃度のCo-57核を有する(その領域ではFe-57核の数よりも3倍高い)ように作製される。
【0069】
1つの例では、サンプルホルダー407は、ステンレス鋼のロッドであるとともに、サンプルホルダーは、真空チャンバー406の内部においてチャンバーのポートのうちの1つに取り付けられ、取り付けられたサンプルを真空チャンバー406の幾何学的中心に位置決めすることができるようにチャンバーの中心まで延在する。1つの例では、サンプルは、機械式圧力を介して金属クリップによってサンプルホルダープレートに取り付けられる。
【0070】
レーザー404は、1 Thzよりも高く15 Thzよりも低い調節可能な周波数範囲を有する量子カスケードレーザーである。このレーザー電力は1 mWよりも大きい。レーザー404は、サンプルホルダー407によって保持されたサンプル408の中心を狙うように真空チャンバー406のポートに設置され、システムの動作中に設定周波数でサンプル格子内にフォノンを生成する。1つの例では、レーザーは、真空チャンバーの外部に設置され、レーザービームは、窓を通って真空チャンバーに入射する。
【0071】
エネルギー分散型X線カメラ402は、真空チャンバー406の1つのポートに設置され、真空チャンバーの中心の方向に向いている。1つの例では、X線カメラ402は、1024ピクセル×1024ピクセルの解像度及び25 μmのベリリウム窓を有する、Andor社から提供されているiKon Mカメラである。
【0072】
サンプル408は、サンプル408の表面がカメラ402の窓の表面と平行になるように位置決めされる。カメラの窓の表面とサンプル表面との間の距離は50 mmであり、鉛(Pb)ピンホール光学機器409が、カメラ402とサンプル408との間の中間に位置決めされる。鉛ピンホール光学機器409は、中心に0.5 mmのホールを有する50 mm×50 mm×1 mmの鉛プレートからなるとともに、このホールは、プレートの幾何学的中心に各側から中間までプレートを押圧して貫通する2つの円錐形に形成された突き錐を用いてプレートの両側からプレートに穿孔される。カメラ402、カメラセンサー(カメラ窓の背後にある)の中心がピンホールの中心及びサンプル表面の中心と一直線をなすような、ピンホール光学機器409におけるピンホール及びサンプル408は、カメラ窓表面及びサンプル表面に垂直な軸に沿って整列される。この構成では、レーザー404は、レーザービーム405がサンプル408の表面の幾何学的中心に当たるような角度に置かれる。
【0073】
システムの動作中、レーザー404が作動され、したがって、サンプルの格子内にフォノンを生成し、X線カメラ402が、サンプルからの光子放出のX線画像が連続して記録するのに用いられる。1つの例では、X線カメラ402は、各ピクセル上のスペクトル(すなわち、エネルギー)情報を取得するためにその最速の読み出し速度で動作され、したがって、個々の光子エネルギー帯の個々の画像の生成が可能になる。1つの例では、レーザー404は、レーザーの調節可能な周波数範囲を段階的に走査することによって動作される。この構成では、レーザー周波数のステップ変更が12時間に1回行われる。ステップ変更とステップ変更との間では、レーザーは固定周波数で動作される。レーザー404の動作中、X線カメラ402は、空間解像度及び時間解像度(及び幾つかの例ではエネルギー解像度)を用いてサンプルからの放出を記録する。カメラの露出は、(カメラの仕様が許す限り)継続する。カメラからの画像データは、1分に1回読み出されて記憶され、12時間の期間等のより長い時間の期間にわたって合算され、長露出画像が形成される。サンプル放出のそのような画像データは、レーザーの動作の前後においても取得される。画像データは、サンプル408からの光子放出の空間分布及び角度分布を表す。
【0074】
異なる周波数(レーザー周波数、すなわち、格子内のフォノン周波数に対応する)にわたる動作前の画像、動作中の画像、及び動作後の画像を比較すると、X線画像は、フォノン媒介核励起移動によって引き起こされる光子放出の空間分布及び角度分布に関して変化を示す。
【0075】
放出の角度分布の変化は、影響を受ける核の核位相コヒーレンス、したがって、それらの核からのそれぞれの光子放出のコリメーションをもたらす核励起の共鳴励起移動によって引き起こされる。放出の空間分布の変化は、核励起の非共鳴励起移動によって引き起こされる。この非共鳴励起移動では、光子放出が、(ベータ崩壊からの核エネルギー解放が最初に発生した核から或る距離にある)最終のアクセプター核において発生するまで、核励起エネルギーが、幾つかの場合には巨視的な距離にわたって、核から核に複数回移動する。
【0076】
より一般的に言えば、この例示的な実施形態では、フォノン媒介核励起移動は、(Co-57核のサイトからの等方性光子放出から他の核のサイトからの異方性光子放出への)核反応生成物の変化をもたらす。
【0077】
他の例示的な実施形態では、サンプルは、以下の元素及びそれらの同位体のうちの1つ又は幾つかの核を含む。H, Li, Be, B, C, N, O, Na, Mg, Al, Si, P, S, Cl, K, Ca, Sc, Ti, V, Cr, Mn,Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, As, Se, Br, Rb, Sr, Y, Zr, Nb, Mo, Tc, Ru, Rh, Pd,Ag, Cd, In, Sn, Sb, Te, I, Cs, Ba, La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho,Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, W, Re, Os, Ir, Pt, Au, Hg, Tl, Pb, Bi, Po, At, Fr, Ra,Ac, Th, Pa, U, Np, Pu, Am, Cm, Bk, Cf, Es, Fm。
【0078】
4.2. フォノン核カップリング強度パラメーター
上記説明が示すように、核励起移動のどの形式(インコヒーレント核励起移動、共鳴核励起移動、非共鳴核励起移動等)が所与の構成において現れるのか、したがって、どの効果(光子放出、核の壊変及び荷電粒子放出の変化等)が現れるのか、したがって、どのアプリケーションを所与のシステムにおいて実施することができるのかは、そのシステムにおけるフォノン核カップリング強度と、エネルギー移動が起こるカップリングされた量子システムのコヒーレンスが維持される時間の量とに決定的に依存する。フォノン核カップリング強度は、次のパラメーターとともに増大する。すなわち、核と相互作用するフォノンモードの数と、核と相互作用するフォノンモードにおけるエネルギー(フォノン周波数及びフォノン振幅に依存する)と、それぞれのカップリングされた量子システムに参加する核の数とともに増大し、カップリングされた量子システムに参加する核の核遷移エネルギーとは反比例して増大する。フォノン核カップリング強度は、それぞれの励起移動に関与する核の核遷移の初期状態と最終状態との間のカップリングを記述する特性カップリング行列要素にも依存する(これらの要素とともに増大する)。これらの依存関係を図24に示す。すなわち、核遷移エネルギー及びフォノン分極は、カップリングされた量子システムにおける核の数とともにカップリング行列要素の大きさに影響を与え、フォノンエネルギーは、それぞれのフォノン核カップリング強度に影響を与える。図24において、実線矢印は依存関係を表し、非実線矢印は、依存関係ペア(すなわち、実線矢印の両端の2つのブロック)における従属変数及び独立変数がどのように相関するのかを示す。実線矢印803によって表すような、核遷移エネルギーとこれによる影響を受けるそれぞれのカップリング行列要素との間の関係803の場合に、上向きの非実線矢印802及び下向きの非実線矢印801は、他の全てのファクターが一定に保持されるとき、高い核遷移エネルギーほど、より小さなカップリング行列要素になることを記述している。
【0079】
核遷移エネルギー及びカップリング行列要素等のシステム設計決定に含まれる主要なファクターの重要な定性的依存関係を図22及び図23に示す。これらの2つの図において、励起フォノンモードにおけるエネルギー、フォノンモード特性、及び格子構成は一定とみなされる。この背景状況を前提として、図22における表は、カップリング行列要素の大きさの相対変化が、対応するフォノン核カップリング強度、核励起移動形式、及び関連する効果にどのように影響するのかを定性的に示している。同様に、図23における表は、核の核遷移量子の相対変化(すなわち、異なる核遷移エネルギーを有する異なる核種を互いに比較したときの相対変化)が、フォノン核カップリング強度、核励起移動形式、及び関連する効果にどのように影響するのかを定性的に示している。
【0080】
シミュレーションを通じてそれぞれのパラメーターを定量的に推定する手法を以下で更に説明する。フォノン核カップリング強度特性に関する更なる詳細については、Hagelstein博士の「Phonon-Mediated NuclearExcitation Transfer」(Hagelstein 2018)に関する2018年の論文及びMetzler博士の2019年の論文「Experiments to Investigate Phonon-Nuclear Interactions」(Metzler 2019 - MIT Dspaceにおいて入手可能なMITNuclear Science & Engineering Departmentにおける論文)を参照されたい。これらの論文の双方は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0081】
4.3. フォノン核カップリング強度のアプリケーションへのマッピング
フォノン核カップリング強度が比較的弱い場合には、共鳴核励起移動を予想することができる。すなわち、初期状態と最終状態との間でエネルギーは格子と交換されない。換言すれば、共鳴核励起移動中に、フォノンは、エネルギー移動のみを媒介し、システム内の付加的なエネルギーを直接放出も吸収もしない。アプリケーションの観点から、この形態の核励起移動は、アクセプター核が核位相コヒーレンスを示すので、角度異方性を引き起こす。フォノン核カップリング強度がより強い場合には、非共鳴励起移動が発生する可能性がある。すなわち、初期状態と最終状態との間の状態変化に加えて、システム内のエネルギーを1つ以上のフォノンモードによって吸収又は放出することができる。アプリケーションの観点から、非共鳴励起移動は、放出の非局在化として現れる可能性があり、インコヒーレント励起移動に関するセクションにおいて上述したように、2次核反応/崩壊をトリガーする。更により強いフォノン核カップリング強度は、エネルギーが、アクセプター核において回転高エネルギー状態等の比較的高いエネルギー核状態に最終的に移動することができる非共鳴状態で蓄積するので、コヒーレント励起移動を可能にする。用途の観点から、これは、コヒーレント核分裂及び中性子移動を可能にする。高エネルギー核状態に影響を及ぼす可能性を有する強いフォノン核カップリング強度によって可能にされる別の用途は、準安定状態での一時的なエネルギー蓄積である。
【0082】
4.4. カップリング行列要素の決定
異なる物質の特性フォノン核カップリング行列要素の大きさは、所与の格子構成において達成可能なフォノン核カップリング強度の範囲を決定することに関係している。後者は、次に、核励起移動の実現可能なモードを決定し、したがって、所与のシステムにおいて実施することができるアプリケーションモードの範囲を決定する。異なる物質のカップリング行列要素は、第1原理計算から求めることもできるし、測定を通じて経験的に求めることもできるし、それらの組み合わせによって求めることもできる。
【0083】
国際出願PCT/US2018/35883号及びMetzler 2019に記載されている実験及び測定は、現象の経験的証拠を提供し、カップリング行列要素の最初の推定を可能にしたので、核励起移動の探求において極めて重要であった。これらの実験は、基底状態のFe-57核の局所的なBCC格子に組み込まれた励起状態のFe-57*核のカップリング行列要素の最初の推定をもたらした。実験結果に基づいて、本発明者らは、約V=1.6×10-8 eVの構成における対応するフォノン核カップリング行列要素を推定する。
【0084】
核構造モデルに基づくフォノン核カップリング行列要素の第1原理計算の詳細なステップは、Hagelstein 2018に記載されている。
【0085】
4.5. フォノン特性のモデリング及びエンジニアリング
特定の格子構成(すなわち、格子内の核の配置)等の所与のシステム構成における、異なる形態のフォノン生成に基づくフォノンモード及び予想されるフォノンエネルギーは、物性物理学の標準的な計算ツール(例えば、Quantum Espressoコード集合体を含む)を用いることによってモデリング及びシミュレーションすることができる。特定のフォノンモード及びフォノンエネルギー等の特定のフォノン特性を有するナノ構造の作成は、その見識が核励起移動ベースのシステムの設計に応用されているフォノンエンジニアリングの分野における刊行物によって説明されている。
【0086】
さらに、特定の核反応が、例えば、Pd格子又はNi格子における水素核融合反応等の特定の実施形態において(すなわち、そのような実施形態の格子又はアモルファス構造において)(例えば、第1のエネルギーを提供する1次反応として)用いられる場合には、システム設計者は、水素核の近接(したがって、トンネリング確率及び核融合断面積の増加)を可能にするそれぞれの格子内のそのような核のサイト占有を可能にするために、格子内の空格子点の生成も考慮する必要がある。空格子点は、イオン注入及び電気化学同時析出を介することを含む複数の既知の方法で格子内に生成することができる。
【0087】
4.6. アップステッピング(up-stepping)及びダウンステッピング(down-stepping)のためのステッピングストーン(stepping stone);格子壊変の回避
上記で論述したように、フォノン核カップリングが十分強い場合には、非共鳴励起移動が、励起フォノンモード(すなわち、格子の振動モード)への核励起エネルギーの移動及びその逆の移動を可能にする。一方、格子の振動モードによって上記のように吸収されるエネルギーが、格子原子間の結合を破壊するほど十分大きい場合には、格子は、核励起移動を介して受け取るエネルギーの結果として壊変することができる。
【0088】
ほとんどのアプリケーションでは、この結果は、システムの部分的な破壊を表すので、望まれていない。格子壊変を回避するために、細分された核励起の中間アクセプターを格子構成に含めることができる。これらの中間アクセプター核は、その場合、ドナー核から励起を受け取り、このエネルギーをインコヒーレントに(例えば、より低いエネルギーにあるエネルギー粒子放出を通じて)、又は、エネルギーをフォノンモードに移動させることによってコヒーレントに放出することができる。アプリケーションの観点から、特定の設計目的に応じて、前者の結果又は後者の結果のいずれかが好ましいものとすることができる(例えば、直接的な電気変換が用いられる場合には、熱を介した荷電粒子が好ましいものとすることができる)。このエネルギー量子の「ダウンステッピング」を可能にする中間アクセプター核は、受け取ったエネルギーの格子内のより広い範囲の核への移動(すなわち、このエネルギーの濃度の削減)を可能にし、それによって、格子の一部が、そうでない場合にはそれぞれの原子結合を大規模に破壊するエネルギー量子の吸収から壊変する可能性が低減される。「ステッピングストーン」として特に適している中間アクセプターは、Hg-201等の核である。
【0089】
中間「ステッピングストーン」及び大きなエネルギー量子との間の段階的なアップコンバージョン及びダウンコンバージョンの概念は、格子統合(lattice integration)を回避することだけにとどまらない。「ステッピングストーン」核は、例えば、コヒーレント核分裂を誘起する過程においてより高いエネルギー状態を得ようとするとき等には、アップコンバージョンも容易にする(上記コヒーレント核分裂に関するセクション参照)。「ステッピングストーン」核は、所与のシステムにおける好ましい移動チャネル及び変換チャネルを変更し、したがって、所望のエネルギーフローを容易にするのにも用いることができる。
【0090】
4.7. フォノン核カップリング強度及びフォノンエネルギーのランプアップ(ramping up:上昇)
上述したように、好ましい移動チャネル及び変換チャネル並びに関連するエネルギーフローは、格子構造の構成(格子構成)及びシステムにおける対応するフォノン核カップリング強度による影響を受ける。
【0091】
より高いフォノンエネルギー準位がより高いフォノン核カップリング強度をもたらす。さらに、高いフォノン核カップリング強度が、核励起エネルギー(例えば、解放された核結合エネルギーからのもの)がフォノンモードにコヒーレントに移動し、フォノンエネルギー準位を更に増加させることができる状況をもたらす。これは、次に、フォノン核カップリング強度を増加させ、これによって、よりコヒーレントな核励起移動及びフォノンエネルギー等の関連する増加をもたらすことができる。この原理は、フォノンレーザー、すなわち、正のフィードバックループがシステム内でフォノンエネルギーの段階的な増加をもたらすプロセスを効果的に表す核励起移動ベースのシステムのアプリケーションモードの基礎をなす。
【0092】
上記内容は、幾つかのフォノン媒介核励起移動ベースのシステムが、正のフィードバックループに起因して自己持続型で動作する前に、初期刺激、すなわち、フォノンエネルギーの初期増加を必要とすることを意味する。フォノンエネルギーの増加を通じてフォノン核カップリング強度をランプアップするそのような初期刺激は、レーザー、機械的応力、イオンビーム、電気パルスを含む複数の異なるフォノン発生器から得ることができる。解放される核結合エネルギーが励起フォノンモードにコヒーレントに移動する核融合反応等の核反応も、フォノンエネルギーの増加を可能にする。フォノンエネルギーの増加(上述した方法のいずれかによるもの)は、次に、システム内のフォノン核カップリング強度を増加させることができ、これは、他のモードの核励起移動及び関連する2次反応を更に可能にすることができる。
【0093】
4.8. 荷電粒子生成システムの設計方法
異なる核種からの核は、フォノン媒介核励起移動を介した核励起の受け取り等を通じて励起状態に置かれると、その結果、異なる粒子種及び粒子エネルギーを伴って壊変する。したがって、エネルギー粒子生成のシステムを設計するときに、システム設計者は、アクセプター核(フォノン媒介核励起移動を介して移動されるエネルギーのアクセプター)としてシステムに組み込まれる核の核種を検討する必要がある。換言すれば、異なるアクセプター核は、異なる放出粒子及び粒子エネルギーをもたらす。出力生成物が特定のエネルギー帯内にある運動エネルギーを有するエネルギー粒子を含むシステムを設計することは、直接的な電気変換等における広範なアプリケーションに有用である。
【0094】
代替の実施形態では、格子構成においてアクセプター核として用いられる核は、以下の元素及びそれらの同位体のうちの1つ又は幾つかを含む。H, Li, Be, B, C, N, O, Na, Mg,Al, Si, P, S, Cl, K, Ca, Sc, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, As, Se,Br, Rb, Sr, Y, Zr, Nb, Mo, Tc, Ru, Rh, Pd, Ag, Cd, In, Sn, Sb, Te, I, Cs, Ba,La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, W, Re, Os,Ir, Pt, Au, Hg, Tl, Pb, Bi, Po, At, Fr, Ra, Ac, Th, Pa, U, Np, Pu, Am, Cm, Bk,Cf, Es, Fm。
【0095】
特定のエネルギー帯内にある運動エネルギーを有する荷電粒子が所望される場合には、システム設計者は、核励起移動が可能にした励起を介した壊変が、所望のエネルギー範囲にある運動エネルギーを有する荷電粒子を与える核種を検討する必要がある。図14図18は、質量数Aの範囲にわたる核種の核の壊変から生じるエネルギー粒子の予想される運動エネルギーの概略を提供する。図14図18の各グラフにおいて、y軸は、所与の1次核反応についてのそれぞれの粒子の運動エネルギーを示し(この情報のグラフタイトルを参照)、x軸は、y軸上の対応するエネルギーの運動エネルギーを有するエネルギー粒子を与える対応する核の質量数Aを示す。
【0096】
システム設計者は、y軸上で所望のエネルギー範囲を選択し、x軸上の対応するセクションにおいて初期質量数Aの対応する核種を特定する必要がある。
【0097】
幾つかの適した候補が見つかった場合には、移動速度を決定する候補核の光壊変断面積(photodisintegration cross section)、ひいては、システムの効率並びに候補核種のコスト及び化学特性等の他のパラメーター等の2次ファクターを検討する必要がある。
【0098】
ステップの中でも特に、所望の荷電粒子エネルギーの核種の特定をもたらすシステム設計プロセスの要約は、図25に整理して示されている。
【0099】
4.9. 一般的な設計方法
上記設計プロセスは、より広い範囲の入力、出力、及び機能を有する核励起移動ベースのシステムの設計のより一般的な設計プロセスの特定の場合(特定の運動エネルギーを有する荷電粒子の荷電粒子生成)をカバーする。
【0100】
セクション3において説明したように、核励起移動ベースのシステム及びそれらのシステムを設計する方法は、広範囲のアプリケーション及び達成可能な設計目的を可能にする。実践者は、物質の利用可能性、それらの化学特性、それらのコスト、危険性、及び製造性等の様々なファクター;所望の出力生成物(荷電粒子、他のエネルギー粒子、熱等);反応をトリガー及び刺激するのに必要とされる機器に基づいてシステムを設計したい。他の設計制約は、システムのサイズ、信頼性、効率、及びロバスト性を更に含むことができる。
【0101】
本明細書に提示した方法及びシステムは、特定の場合及び実施形態におけるエンジニアリング目的及び設計目的に応じて変化し得る広範囲の具体的な実施形態を包含する。広範囲の出現及び可能な実施形態のために、あらゆる実施形態が本明細書において詳細に説明されているわけではない。そのために、このセクションは、汎用の設計手法、すなわち、実践者が、目標及び制約の広いパラメーター空間に及ぶことができる特定の設計目的に到達するためのプロセスを提示する。
【0102】
代替の実施形態では、格子構成において用いられる核は、以下の元素及びそれらの同位体のうちの1つ又は幾つかを含む。H, Li, Be, B, C, N, O, Na, Mg, Al, Si, P, S, Cl, K, Ca, Sc, Ti, V, Cr, Mn,Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, As, Se, Br, Rb, Sr, Y, Zr, Nb, Mo, Tc, Ru, Rh, Pd,Ag, Cd, In, Sn, Sb, Te, I, Cs, Ba, La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho,Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, W, Re, Os, Ir, Pt, Au, Hg, Tl, Pb, Bi, Po, At, Fr, Ra,Ac, Th, Pa, U, Np, Pu, Am, Cm, Bk, Cf, Es, Fm。
【0103】
実践者は、それに応じて、結果の実施形態を検討及び設計する必要がある。すなわち、
1.所望の入力反応が何であるのか及び所望の出力生成物が何であるのか?
2.上記問いにおいて定義される結果を達成するために、どの物質をアクセプター核として考えることができるのか?
3.例えば、アップステッピング又はダウンステッピングのステッピングストーン(セクション4.6.参照)として、他のどの核をシステムの構造/格子構成において検討すべきか?
4.上記問いの回答に関連して、対応するフォノン核カップリング強度のどの大きさが、エンジニアリング制約及び設計制約(上記に列挙した可能性のある制約等)内に含まれる物質について達成可能であるのか? 所望の入力反応及び出力生成物を達成するには、フォノン核カップリング強度のどの大きさが必要とされているのか?
5.インコヒーレント核励起移動が十分であるか又はコヒーレント核励起移動が必要とされているか(インコヒーレント励起移動が十分である場合には、その実施がより簡単であるためにインコヒーレント励起移動が通常好ましい)?
6.何が所望されているのか並びにドナー核及びアクセプター核の必要とされる格子構成は何であるのか? それらの比率及び距離はいくらであるのか?
7.格子のフォノンモードは何であるのか? どのフォノンモードがカップリングに関与し、励起されるべきか? 所望される達成可能なフォノンエネルギーはいくらであるのか? 上記問いに関連した設計選択肢はフォノン特性にどのように影響するのか?
【0104】
この問いのカタログ及び開示されたシステム設計プロセスに反復的に取り組むことによって、実践者は、所望の出力生成物を達成するシステム構造及び格子構成、入力反応並びにフォノン生成メカニズムを設定することができる。
【0105】
所望のシステム結果をもたらす一般的なシステム設計プロセスの要約は、図26に整理して示されている。
【0106】
4.10. フォノン核カップリング強度及びその結果生じるエネルギー移動チャネルのモデリングベースの決定
凝縮物質動態及び異なるエネルギーの核状態とのカップリングを検討するシミュレーションは、所望の設計目的に対応する特定の格子構成の識別及び生成に役立つ(aid)ことができる。そのようなシミュレーションは、フォノン核カップリング強度の決定及び好ましいエネルギー移動チャネル、すなわち、好ましい所与のシステムにおけるエネルギー経路の決定に役立つ(aid)。
【0107】
シミュレーションの出発点は、核及び電子の集合体を原子格子として記述する以下のモデルである。
【数2】
【0108】
第1項における行列Mは、異なる内部核状態エネルギーを対角要素として含む。非共鳴状態占有の間に核子間結合エネルギーの変化によって引き起こされる核状態エネルギーのシフトは、以下の式のように、調整(調整されない場合に存在する破壊的な干渉効果に対抗するもの)によって対処される。
【数3】
【0109】
上記ハミルトニアンは、核の間、電子の間、及び核と電子との間のクーロン相互作用項を更に含む。電気双極子及び磁気双極子の相互作用は、既存の項を通じて含まれる。フォノン核カップリングを引き起こす相対論的ブースト相互作用は、a*cP相互作用として現れる。したがって、このハミルトニアンは、固体の用途において用いられる類似のハミルトニアンを拡張したものを表す。
【0110】
電子の部分と核の部分とを分離することによって、モデルが簡単化される。その結果得られるモデルは、以下の式のように、埋込み原子理論(embedded atom theory)におけるような原子間ポテンシャルのモデルに類似している。
【数4】
【0111】
このモデルは、以下の式のように、フォノンモードと内部核遷移との相互作用に焦点を当てるように更に縮約することができる。
【数5】
【0112】
上記モデルは、フォノン媒介核励起移動ベースのシステムの所望のアプリケーションモード及び設計目的に整合した格子構造の特定の構成を更に特徴付けるフォノン核カップリング強度の第1原理計算の基礎としての機能を果たす。
【0113】
4.11. 開示されたシステムの設計の変形形態
他の実施形態は次のものの1つ以上を含む。具体的には、アクセプター核として、システムのフォノン担持格子の格子構成又はアモルファス構造において用いられる物質は、次の元素及びそれらの同位体のうちの1つ又は幾つかとすることができる。H, Li, Be, B, C, N, O, Na, Mg, Al, Si, P, S, Cl, K, Ca, Sc, Ti, V, Cr, Mn,Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, As, Se, Br, Rb, Sr, Y, Zr, Nb, Mo, Tc, Ru, Rh, Pd,Ag, Cd, In, Sn, Sb, Te, I, Cs, Ba, La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho,Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, W, Re, Os, Ir, Pt, Au, Hg, Tl, Pb, Bi, Po, At, Fr, Ra,Ac, Th, Pa, U, Np, Pu, Am, Cm, Bk, Cf, Es, Fm。
【0114】
格子又はアモルファス構造内の核の配置は、格子又はアモルファス構造がフォノンに耐えることができ、格子核へのフォノンのカップリングを可能にすることができる格子又はアモルファス構造内の核の構成を含む。これは、空格子点及び転位等の欠陥を有する格子構成を含む。
【0115】
フォノン生成のメカニズムは、フォノン、具体的には、周波数>1 THzのフォノンを原子格子又はアモルファス構造内に生成する全ての方法を含む。
【0116】
初期核励起(第1のエネルギー)を生成するメカニズムは、特に核融合、核分裂、アルファ崩壊及びベータ崩壊を含む、原子を励起する全ての方法を含む。
【0117】
本発明の幾つかの実施形態が説明された。それにもかかわらず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態も添付の特許請求の範囲の適用範囲内にある。
【符号の説明】
【0118】
図面訳
図1
After the reactionbetween an energetic particle 101 and a nucleus 102, there is an excitednucleus 104 for a short time before reaction products 106 are created. エネルギー粒子101と核102との間の反応後、反応生成物106が生成される前の短時間の間、励起核104が存在する

図2
In nuclear excitationtransfer 202, transfer of nuclear excitation to another nucleus 204 becomes apreferred path compared to otherwise expected energy transfer and emission paths. 核励起移動202において、別の核204への核励起の移動が、そうでない場合に予想されるエネルギー移動経路及び放出経路と比較して好ましい経路となる
Nuclear excitation transfer 核励起移動
Result: different setof reaction products 206 結果:異なる一組の反応生成物206

図3
beta decay ベータ崩壊
(excited) (励起)
stable 安定
(ground state) (基底状態)
nuclear excitationtransfer 核励起移動
Nucleus A 核A
Nucleus B 核B

図4
Illustration ofnuclear excitation transfer modality “non-resonant nuclear excitation transfer”leading to spatial changes in a sample’s photon emission (1) サンプルの光子放出の空間変化をもたらす核励起移動形式「非共鳴核励起移動」の図(1)
Beta-decay ベータ崩壊
Phonons in thelattice are represented by off-equilibrium positions of nuclei in the lattice 格子内のフォノンは格子内の核の非平衡位置によって表される

図5
Illustration ofnuclear excitation transfer modality “non-resonant nuclear excitation transfer”leading to spatial changes in a sample’s photon emission (2) サンプルの光子放出の空間変化をもたらす核励起移動形式「非共鳴核励起移動」の図(2)
Phonons in thelattice are represented by off-equilibrium positions of nuclei in the lattice 格子内のフォノンは格子内の核の非平衡位置によって表される

図6
Illustration ofnuclear excitation transfer modality “non-resonant nuclear excitation transfer”leading to spatial changes in a sample’s photon emission (3) サンプルの光子放出の空間変化をもたらす核励起移動形式「非共鳴核励起移動」の図(3)
305 Excitationtransfer 励起移動
Phonons in thelattice are represented by off-equilibrium positions of nuclei in the lattice 格子内のフォノンは格子内の核の非平衡位置によって表される

図7
Illustration ofnuclear excitation transfer modality “non-resonant nuclear excitation transfer”leading to spatial changes in a sample’s photon emission (4) サンプルの光子放出の空間変化をもたらす核励起移動形式「非共鳴核励起移動」の図(4)
306 Photonemission 光子放出
Phonons in thelattice are represented by off-equilibrium positions of nuclei in the lattice 格子内のフォノンは格子内の核の非平衡位置によって表される

図8
402 Energy dispersive x-ray camera エネルギー分散型X線カメラ
404 TunableTHz laser 波長可変THzレーザー
405 Laserbeam レーザービーム
406 Vacuumchamber 真空チャンバー
407 sampleholder サンプルホルダー
408 Fe-56,Fe-57 and Fe-57* (Co-57) sample Fe-56、Fe-57及びFe-57* (Co-57)サンプル
409 Pbpinhole Pbピンホール
411 Vacuumpump 真空ポンプ
412 Pressuregauge 真空計

図9
Illustration ofnuclear excitation transfer modality “incoherent excitation transfer” leadingto changes in nuclear reaction products (charged particle production) (1) 核反応生成物の変化(荷電粒子生成)をもたらす核励起移動形式「インコヒーレント励起移動」の図(1)
604 H-2projectile at low energy 低エネルギーにあるH-2発射物
Phonons in thelattice are represented by off-equilibrium positions of nuclei in the lattice 格子内のフォノンは格子内の核の非平衡位置によって表される

図10
Illustration ofnuclear excitation transfer modality “incoherent excitation transfer” leadingto changes in nuclear reaction products (charged particle production) (2) 核反応生成物の変化(荷電粒子生成)をもたらす核励起移動形式「インコヒーレント励起移動」の図(2)
Nuclear reaction (bindingenergy released) 核反応(結合エネルギーが解放される)
Phonons in thelattice are represented by off-equilibrium positions of nuclei in the lattice 格子内のフォノンは格子内の核の非平衡位置によって表される

図11
Illustration ofnuclear excitation transfer modality “incoherent excitation transfer” leadingto changes in nuclear reaction products (charged particle production) (3) 核反応生成物の変化(荷電粒子生成)をもたらす核励起移動形式「インコヒーレント励起移動」の図(3)
Excitation transfer 励起移動
Phonons in the latticeare represented by off-equilibrium positions of nuclei in the lattice 格子内のフォノンは格子内の核の非平衡位置によって表される

図12
Illustration ofnuclear excitation transfer modality “incoherent excitation transfer” leadingto changes in nuclear reaction products (charged particle production) (4) 核反応生成物の変化(荷電粒子生成)をもたらす核励起移動形式「インコヒーレント励起移動」の図(4)
Phonons in thelattice are represented by off-equilibrium positions of nuclei in the lattice 格子内のフォノンは格子内の核の非平衡位置によって表される
609 H-3and He-4 at high energy 高エネルギーにあるH-3及びHe-4
Disintegration 壊変

図13
502 Chargedparticle detector 荷電粒子検出器
503 Neutrondetector 中性子検出器
504 Hand D ion source H及びDイオン源
505 Ionbeam イオンビーム
506 Vacuumchamber 真空チャンバー
507 sampleholder サンプルホルダー
508 Li-6and Li-7 sample Li-6及びLi-7サンプル
511 Vacuumpump 真空ポンプ
512 Pressuregauge 圧力計

図14
Kinetic energy ofemitted charged particles from nuclear excitation transfer-induceddisintegration of acceptor nuclei with initial mass number A 初期質量数Aを有するアクセプター核の核励起移動に誘起された壊変から放出される荷電粒子の運動エネルギー
Transferred energy:24 MeV (from D+D fusion) 移動エネルギー:24 MeV(D+D核融合から)
Emitted particlespecies: alpha particles 放出される粒子種:アルファ粒子
Nuclear species ofmass number A 質量数Aの核種

図15
Kinetic energy ofemitted charged particles from nuclear excitation transfer-induced disintegrationof acceptor nuclei with initial mass number A 初期質量数Aを有するアクセプター核の核励起移動に誘起された壊変から放出される荷電粒子の運動エネルギー
Transferred energy:24 MeV (from D+D fusion) 移動エネルギー:24 MeV(D+D核融合から)
Emitted particlespecies: neutrons 放出される粒子種:中性子
Nuclear species ofmass number A 質量数Aの核種

図16
Kinetic energy ofemitted charged particles from nuclear excitation transfer-induced disintegrationof acceptor nuclei with initial mass number A 初期質量数Aを有するアクセプター核の核励起移動に誘起された壊変から放出される荷電粒子の運動エネルギー
Transferred energy:5.5 MeV (from D+P fusion) 移動エネルギー:5.5 MeV(D+P核融合から)
Emitted particlespecies: alpha particles 放出される粒子種:アルファ粒子
Nuclear species ofmass number A 質量数Aの核種

図17
Kinetic energy ofemitted charged particles from nuclear excitation transfer-induceddisintegration of acceptor nuclei with initial mass number A 初期質量数Aを有するアクセプター核の核励起移動に誘起された壊変から放出される荷電粒子の運動エネルギー
Transferred energy:5.5 MeV (from D+P fusion) 移動エネルギー:5.5 MeV(D+P核融合から)
Emitted particlespecies: protons 放出される粒子種:陽子
Nuclear species ofmass number A 質量数Aの核種

図18
Kinetic energy ofemitted charged particles from nuclear excitation transfer-induceddisintegration of acceptor nuclei with initial mass number A 初期質量数Aを有するアクセプター核の核励起移動に誘起された壊変から放出される荷電粒子の運動エネルギー
Transferred energy:5.5 MeV (from D+P fusion) 移動エネルギー:5.5 MeV(D+P核融合から)
Emitted particlespecies: neutrons 放出される粒子種:中性子
Nuclear species ofmass number A 質量数Aの核種

図19
602 deformednucleus 変形核
610 asymmetricfission 非対称核分裂
increasing rotation 増加する回転

図21
602 deformednucleus 変形核
610 asymmetricfission 非対称核分裂

図22
680 Qualitative overviewof phonon-nuclear coupling strength determinants フォノン核カップリング強度決定要因の定性的概略
Here, consider asfixed: energy in excited phonon modes; phonon mode characteristics;configuration of nuclei in lattice. ここでは一定とみなす:励起フォノンモードにおけるエネルギー;フォノンモード特性;格子内の核の構成
Independentvariable 独立変数
Dependent variables 従属変数
Coupling matrixelement カップリング行列要素
Small 小
Medium 中
Large 大
Phonon-nuclearcoupling strength フォノン核カップリング強度
Low 低
Medium 中
High 高
Modality of nuclearexcitation transfer 核励起移動の形式
Resonant excitationtransfer 共鳴励起移動
Non-resonant excitationtransfer 非共鳴励起移動
Up-conversion/down-conversion/subdivision アップコンバージョン/ダウンコンバージョン/細分
Effects 効果
Anisotropy of photoemission 光子放出の異方性
Delocalization ofphoton emission; incoherent fission/ disintegration 光子放出の非局在化;インコヒーレント核分裂/壊変
Conventionally unexpectedabsence/presence of photon emission; coherent fission 通常予想されない光子放出の有無;コヒーレント核分裂

図23
700 Qualitativeoverview of phonon-nuclear coupling strength determinants フォノン核カップリング強度決定要因の定性的概略
Here, consider asfixed: energy in excited phonon modes; phonon mode characteristics;configuration of nuclei in lattice. ここでは一定とみなす:励起フォノンモードにおけるエネルギー;フォノンモード特性;格子内の核の構成
Independent variable 独立変数
Dependent variables 従属変数
Nuclear transitionquantum 核遷移量子
Large 大
Medium 中
Small 小
Phonon-nuclearcoupling strength フォノン核カップリング強度
Low 低
Medium 中
High 高
Modality of nuclearexcitation transfer 核励起移動の形式
Resonant excitationtransfer 共鳴励起移動
Non-resonant excitationtransfer 非共鳴励起移動
Up-conversion/down-conversion/subdivision アップコンバージョン/ダウンコンバージョン/細分
Effects 効果
Anisotropy of photonemission 光子放出の異方性
Delocalization ofphoton emission; incoherent fission/disintegration 光子放出の非局在化;インコヒーレント核分裂/壊変
Conventionally unexpectedabsence/presence of photon emission; coherent fission 通常予想されない光子放出の有無;コヒーレント核分裂

図24
800 Overviewof dependencies for determining and optimizing nuclear excitation transferparameters 核励起移動パラメーターを決定及び最適化するための依存関係の概略
Modality of nuclearexcitation transfer (and resulting effects) 核励起移動の形式(及び結果として生じる効果)
Phonon-nuclear couplingstrength フォノン核カップリング強度
Quantum coherencelifetime 量子コヒーレンス寿命
Coupling matrix element カップリング行列要素
Number of nuclei 核の数
Phonon energy フォノンエネルギー
Nuclear transitionenergy 核遷移エネルギー
Phonon polarization フォノン分極

図25
Design process fornuclear excitation transfer-based charged particle production systems 核励起移動ベースの荷電粒子生成システムの設計プロセス
For this application,the corresponding modality of nuclear excitation transfer is “incoherent nuclearexcitation transfer” このアプリケーションについて、対応する核励起移動の形式は「インコヒーレント核励起移動」である
Iterate: 反復:
Determine needed nuclearexcitation transfer parameters (phonon-nuclear coupling strengths and coherencelifetimes) to enable nuclear excitation transfer from donor nuclei to chosenacceptor nuclei at the desired rate (see previous figure). ドナー核から、選ばれたアクセプター核への所望の速度での核励起移動を可能にするために必要とされる核励起移動パラメーター(フォノン核カップリング強度及びコヒーレンス寿命)を決定する(前の図を参照)
compare with 比較
Determineachievable nuclear excitation transfer parameters (phonon-nuclear coupling strengthsand coherence lifetimes) given the proposed lattice (see previous figures). 提案された格子を前提として、達成可能な核励起移動パラメーター(フォノン核カップリング強度及びコヒーレンス寿命)を決定する(前の図を参照)
Determine the desiredinput reactions (e.g. D+D, D+P) and output products 所望の入力反応(例えば、D+D、D+P)及び出力生成物を決定する
Select desired outputparticle species 所望の出力粒子種を選択する
Determine the desiredand undesired reaction products/particle species (such as alpha particle, protons,neutrons) 所望及び非所望の反応生成物/粒子種(アルファ粒子、陽子、中性子等)を決定する
Select desired particleenergy 所望の粒子エネルギーを選択する
Determine the desiredand undesired energy ranges of reaction products 反応生成物の所望及び非所望のエネルギー範囲を決定する
Select the nuclearspecies of acceptor nuclei アクセプター核の核種を選択する
Look up in thecharts above the kinetic energy of the chosen reaction products for different materialswhen chosen as nuclear excitation transfer acceptor nuclei. If multiple candidatematerials are suitable for your application, consider the one with the higherphotodisintegration cross section. 核励起移動アクセプター核として選ばれると、上記チャートにおいて、異なる物質の選ばれた反応生成物の運動エネルギーを調べる。複数の候補物質がアプリケーションに適している場合には、より高い光壊変断面積を有するものを検討する
Determine the latticeconfiguration 格子構成を決定する
Embed the chosen nuclearexcitation transfer acceptor nuclei in the lattice of the system; make adjustmentsto the lattice and phonon generation mechanism in order to achieve the desiredphonon-nuclear coupling strength & transfer rate. 選ばれた核励起移動アクセプター核をシステムの格子に組み込む;所望のフォノン核カップリング強度及び移動速度を達成するように格子及びフォノン生成メカニズムに調整を行う。
Determine the phonongeneration mechanism and other remaining system characteristics. フォノン生成メカニズム及び他の残りのシステム特性を決定する

図26
General designprocess for nuclear excitation transfer-based systems 核励起移動ベースのシステムの一般的な設計プロセス
Iterate: 反復:
Determine needed nuclearexcitation transfer parameters (phonon-nuclear coupling strengths and coherencelifetimes) given the desired modality of nuclear excitation transfer and involvednuclear species 所望の核励起移動の形式及び関与する核種を前提として、必要とされる核励起移動パラメーター(フォノン核カップリング強度及びコヒーレンス寿命)を決定する
compare with 比較
Determine achievablenuclear excitation transfer parameters (phonon-nuclear coupling strengths andcoherence lifetimes) given the proposed lattice (see previous figures). 提案された格子を前提として、達成可能な核励起移動パラメーター(フォノン核カップリング強度及びコヒーレンス寿命)を決定する(前の図を参照)
Determine the desiredinput reactions and output products 所望の入力反応及び出力生成物を決定する
Determine the correspondingmodality of nuclear excitation transfer (see section 3) 核励起移動の対応する形式を決定する(セクション3参照)
Select the nuclearspecies involved in the nuclear excitation transfer 核励起移動に関与する核種を選択する
Determine thenuclear species to be used as acceptor nuclei アクセプター核として用いられる核種を決定する
Determine thenuclear species to be used as “stepping stones” for energy up-stepping and down-steppingin the lattice if needed. 必要に応じて、格子においてエネルギーのアップステッピング及びダウンステッピングの「ステッピングストーン」として用いられる核種を決定する
Determine the latticeconfiguration 格子構成を決定する
Determine thenuclear species of other nuclei in the system lattice (with respect to theireffect on phonon characteristics, alternative energy pathways, structural aspects,and other functional aspects such as for instance electrical properties). システム格子内の他の核の核種を(フォノン特性に対するそれらの効果、代替のエネルギー経路、構造的側面、及び、例えば電気特性等の他の機能的側面に関して)決定する
Determine the latticestructure and arrangement of nuclei in the lattice and their impact on nuclear excitationtransfer parameters. 格子構造及び格子内の核の配置並びに核励起移動パラメーターに対するそれらの影響を決定する
Determine the phonongeneration mechanism and other remaining system characteristics. フォノン生成メカニズム及び他の残りのシステム特性を決定する
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【国際調査報告】