(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本発明は、リソソーム蓄積障害の治療、特にムコ多糖症IVA型すなわちモルキオ症候群A型の治療のための、新規なポリヌクレオチド配列、アデノ随伴ウイルス由来ベクターおよびこれらを含む薬学的組成物を提供する。
配列番号1に記載されるヌクレオチド配列と75%〜90%の同一性を有する単離されたポリヌクレオチド配列であって、機能性ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼをコードする、単離されたポリヌクレオチド配列。
上記ポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター配列を含む発現ベクターであって、当該プロモーターはCAGプロモーター、hAATプロモーターまたはCMVプロモーターから選択される、請求項4に記載の発現ベクター。
上記組み換えAAVベクターはAAV2、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびAAVrh10から選択される、請求項7に記載の発現ベクター。
アクセッション番号がDSM 32792である配列番号4に記載されるプラスミドpAAV−CAG−ohGALNS−version1、アクセッション番号がDSM 32793である配列番号6に記載されるプラスミドpAAV−CAG−ohGALNS−version2およびアクセッション番号がDSM 32794である配列番号8に記載されるプラスミドpAAV−CAG−ohGALNS−version3からなる群から選択される、請求項4〜6の何れか一項に記載の発現ベクター。
医薬に使用される、請求項1〜3の何れか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項4〜9の何れか一項に記載のベクターまたは請求項10〜12の何れか一項に記載の薬学的組成物。
ムコ多糖症IVA型すなわちモルキオ症候群A型の治療に使用される、請求項4〜9の何れか一項に記載のベクターまたは請求項10〜12の何れか一項に記載の薬学的組成物。
(i)本発明のポリヌクレオチド、AAV capタンパク質、AAV repタンパク質、および任意でAAVの複製が依存するウイルスタンパク質を含む細胞を提供する工程と、
(ii)上記AAVの組み立てに適する条件下に上記細胞を維持する工程と、
(iii)上記細胞により産生されたアデノ随伴ウイルスベクターを精製する工程と含む、請求項7または8に記載のベクターを得る、方法。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、ムコ多糖症、特にムコ多糖症IVA型すなわちモルキオ症候群A型の治療のための新規なポリヌクレオチド配列およびベクターを提供する。
【0024】
第一の態様において、本発明は、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列と75%〜90%の同一性を有する単離されたポリヌクレオチド配列であって、機能性ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼをコードする、新規な単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。
【0025】
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターに関する。
【0026】
本発明のさらなる態様は、本発明のポリヌクレオチド配列またはベクターを治療上効果的な量含む、薬学的組成物に関する。
【0027】
さらに、本発明のさらなる態様は、薬剤として用いられる、特にムコ多糖症IVA型すなわちモルキオ症候群A型の治療用である、ポリヌクレオチド配列またはベクター、あるいは本明細書に記載した薬学的組成物に関する。
【0028】
本発明はまた、本発明に係るアデノ随伴ウイルスベクターの製造方法を提供する。
【0029】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、pAAV−CAG−hGALNSおよびAAV9−CAG−hGALNSの産生。(A)プラスミドpAAV−CAG−hGALNSおよびその諸要素の模式図。(B)hGALNSコード配列を含むアデノ随伴ベクターのゲノムの模式図。
【0030】
図2は、pAAV−CAG−ohGALNS−v1およびAAV9−CAG−ohGALNS−v1の産生。(A)プラスミドpAAV−CAG−ohGALNS−v1およびその諸要素の模式図。(B)ohGALNS−v1コード配列を含むアデノ随伴ベクターのゲノムの模式図。
【0031】
図3は、pAAV−CAG−ohGALNS−v2およびAAV9−CAG−ohGALNS−v2の産生。(A)プラスミドpAAV−CAG−ohGALNS−v2およびその諸要素の模式図。(B)ohGALNS−v2コード配列を含むアデノ随伴ベクターのゲノムの模式図。
【0032】
図4は、pAAV−CAG−ohGALNS−v3およびAAV9−CAG−ohGALNS−v3の産生。(A)プラスミドpAAV−CAG−ohGALNS−v3およびその諸要素の模式図。(B)ohGALNS−v3コード配列を含むアデノ随伴ベクターのゲノムの模式図。
【0033】
図5は、pAAV−CAG−omGalns、AAV9−CAG−omGalnsおよびAAV8−CAG−omGalnsの産生。(A)プラスミドpAAV−CAG−omGalnsおよびその諸要素の模式図。(B)omGalnsコード配列を含むアデノ随伴ベクターのゲノムの模式図。
【0034】
図6は、pAAV−hAAT−omGalnsおよびAAV8−hAAT−omGalnsの産生。(A)プラスミドpAAV−hAAT−omGalnsおよびその諸要素の模式図。(B)omGalnsコード配列を含むアデノ随伴ベクターのゲノムの模式図。
【0035】
図7は、異なるヒトGalnバージョン(AAV9−CAG−hGalns、AAV9−CAG−ohGalns−v1、AAV9−CAG−ohGalns−v2、およびAAV9−CAG−ohGalns−v3)をコードするAAV9ベクターの雄マウスへの静脈内送達。2ヶ月齢で各ベクターを5×10
10vgずつ静脈(IV)注射により全身投与された、野生型(健常)マウス(WT)、未処置のGalns
−/−マウスおよびGalns
−/−マウスの(A)肝臓および(B)血清におけるGALNS活性。WTマウスのGALNS活性を100%とした。値は、一群当たり4〜5匹のマウスの平均±標準誤差である。
【0036】
図8は、最適化マウスGaln(AAV9−CAG−omGalns)をコードするAAV9ベクターの雄マウスへの静脈内送達。1ヶ月齢でAAV9−CAGomGalnsを1×10
12vgずつ静脈(IV)注射により全身投与された、野生型(健常)マウス(WT)、未処置のGalns
−/−マウスおよびGalns
−/−マウスの(A)肝臓、(B)大腿骨および(C)脂肪組織におけるGALNS活性。(D)同じ動物コホートの異なる注入後時点における血清中のGALNS活性。WTマウスのGALNS活性を100%とした。値は、一群当たり4〜5匹のマウスの平均±標準誤差である。*:P<0.05、****:未処置のGalns
−/−マウスに対してP<0.0001
図9は、最適化マウスGalns(AAV8−CAG−omGalns)をコードするAAV8ベクターの雄マウスへの静脈内送達。1ヶ月齢でAAV8−CAGomGalnsを1×10
12vgずつ静脈(IV)注射により全身投与された、野生型(健常)マウス(WT)、未処置のGalns
−/−マウスおよびGalns
−/−マウスの(A)肝臓、(B)大腿骨および(C)脂肪組織におけるGALNS活性。(D)同じ動物コホートの異なる注入後時点における血清中のGALNS活性。WTマウスのGALNS活性を100%とした。値は、一群当たり4〜5匹のマウスの平均±標準誤差である。*:P<0.05、****:未処置のGalns
−/−マウスに対してP<0.0001
図10は、最適化マウスGalns(AAV8−hAAT−omGalns)をコードするAAV8ベクターの雄マウスへの静脈内送達。1ヶ月齢でAAV8−hAAT−omGalnsを1×10
11vgずつ静脈(IV)注射により全身投与された、野生型(健常)マウス(WT)、未処置のGalns
−/−マウスおよびGalns
−/−マウスの(A)肝臓、(B)大腿骨および(C)脂肪組織におけるGALNS活性。(D)同じ動物コホートの異なる注入後時点における血清中のGALNS活性。WTマウスのGALNS活性を100%とした。値は、一群当たり4〜5匹のマウスの平均±標準誤差である。*:P<0.05、****:未処置のGalns
−/−マウスに対してP<0.0001
図11は、最適化マウスGalns(AAV9−CAG−omGalns、AAV8−CAG−omGalnsおよびAAV8−hAATomGalns)をコードするAAV9ベクターおよびAAV8ベクターの雄マウスへの静脈内送達。LC-MS/MS解析による(A)肝臓および(B)血清におけるケラタン硫酸(KS)の定量。****:未処置のGalns
−/−雄マウスに対してP<0.0001
図12は、最適化マウスGalns(AAV9−CAG−omGalns、AAV8−CAG−omGalnsおよびAAV8−hAATomGalns)をコードするAAV9ベクターおよびAAV8ベクターの雄マウスへの静脈内送達。トルイジンブルーで染色した部分における脛骨骨端成長板の組織病理。元の拡大倍率:100倍。
【0037】
図13は、最適化マウスGalns(AAV9−CAG−omGalns、AAV8−CAG−omGalnsおよびAAV8−hAATomGalns)をコードするAAV9ベクターおよびAAV8ベクターのGalns
−/−雄マウスへの静脈内送達。(A)グリコサミノグリカンについてのMowry染色後の角膜上皮において得られた染色強度の定量。(B)静脈(IV)注射により全身投与された、野生型(健常)マウス(WT)、未処置のGalns
−/−マウスおよびGalns
−/−マウスにおける、トルイジンブルーで染色した部分における涙腺の組織病理。元の拡大倍率:40倍。*:P<0.001、****:未処置のGalns
−/−雄マウスに対してP<0.0001
図14は、最適化マウスGalns(AAV9−CAG−omGalns)をコードするAAV9ベクターの雄マウスへの静脈内送達。最適化マウスGalns(AAV9−CAG−omGALNS)をコードするベクター1×10
12vgを全身投与された6ヶ月齢の健康なWT雄およびGalns
−/−雄から採取した歯状回および扁桃体の超微細構造の、透過型電子顕微鏡による解析。血管周囲マクロファージ(歯状回)、神経周囲グリア細胞および内皮細胞(扁桃体)のリソソームの肥大は矢尻で示してある。
【0038】
〔微生物の寄託〕
プラスミドpAAV−CAG−hGALNS(配列番号2)、pAAV−CAG−ohGALNS−v1(配列番号4)、pAAV−CAG−ohGALNS−v2(配列番号6)およびpAAV−CAG−ohGALNS−v3(配列番号8)は、2018年4月19日、アクセス番号DSM32791、DSM32792、DSM32793およびDSM32794として、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen, Inhoffenstrasse 7 B, D-38124 Braunschweig, ドイツ連邦共和国)に寄託された。
【0039】
〔定義〕
用語「ヌクレオチド配列」または「単離されたヌクレオチド配列」または「ポリヌクレオチド配列」または「ポリヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド配列」は、本明細書では互換的に用いられ、DNAまたはRNAのいずれかの核酸分子(それぞれ、デオキシリボ核酸またはリボ核酸を含んでいる)を指す。上記核酸は、二本鎖配列であっても、一本鎖配列であっても、または二本もしくは一本鎖配列の両方の一部分が含まれていてもよい。
【0040】
用語「%の配列同一性」または「%の同一性」または「%の配列相同性」は、候補配列が最大の「%の配列同一性」を達成するように揃えた後において、参照配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸と同一である上記候補配列のヌクレオチドまたはアミノ酸の割合を指す。好ましい実施形態では、配列同一性は、2つの任意の配列番号の全長またはその一部に基づき計算される。上記「%の配列同一性」は、本技術分野において定着している任意の方法またはアルゴリズム(ALIGN、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムなど)によって決定することができる(Altschul S, et al., Nuc Acids Res. 1977;25:3389-3402およびAltschul S, et al., J Mol Biol. 1990;215:403-410を参照)。
【0041】
本明細書において、上記「%の配列同一性」または「%の同一性」または「%の配列相同性」は、上記参照配列および上記候補配列を揃えた後に同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸の数を、上記参照配列のヌクレオチドまたはアミノ酸の総数で除し、その結果を100倍することにより計算される。
【0042】
任意で、アミノ酸同一性の程度を決定する際、当業者は、いわゆる「保存的」なアミノ酸置換を考慮してもよい。このことは、当業者には明らかであろう。保存的なアミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の交換可能性に基づく。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンを含む。脂肪族‐ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンおよびスレオニンを含む。アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンおよびグルタミンを含む。芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンを含む。塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニン、およびヒスチジンを含む。硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインおよびメチオニンを含む。本明細書で開示するアミノ酸配列の置換変異体は、開示された配列中の少なくとも1つの残基が除去され、その場所に別の残基が挿入されたアミノ酸配列である。好ましくは、アミノ酸変化は保存的である。天然に存在するアミノ酸それぞれに対する好ましい保存的な置換は以下の通りである。AlaからSer; ArgからLys; AsnからGlnまたはHis; AspからGlu; CysからSerまたはAla; GlnからAsn; GluからAsp; GlyからPro; HisからAsnまたはGln; IleからLeuまたはVal; LeuからIleまたはVal; LysからArg; GlnからGlu; MetからLeuまたはIle; PheからMet, LeuまたはTyr; SerからThr; ThrからSer; TrpからTyr; TyrからTrpまたはPhe; ValからIleまたはLeu。
【0043】
用語「コードする(codify)」または「コードしている(coding)」は、どのようにヌクレオチド配列がポリペプチドまたはタンパク質に翻訳されるかを決定する遺伝子コードを指す。配列中のヌクレオチドの順序は、ポリペプチドまたはタンパク質に沿ったアミノ酸の順序を決定する。
【0044】
用語「タンパク質」は、1本以上のアミノ酸鎖またはポリペプチドから構成される高分子を指す。タンパク質は、システイン残基の3−オキソアラニンへの変換、糖鎖形成、または金属の結合のような翻訳後の修飾を受けうる。タンパク質の糖鎖形成とは、種々の炭化水素(アミノ酸鎖に共有結合されている)の付加である。
【0045】
本明細書で用いられる用語「転写調節領域」は、1つ以上の遺伝子の発現を調節できる核酸フラグメントを指す。本発明のポリヌクレオチドの調節領域は、転写要素を結合してRNAポリメラーゼ結合を助けるプロモーターおよび反応因子、アクチベーター、エンハンサー配列、および、リプレッサータンパク質が結合してRNAポリメラーゼ結合をブロックし発現を妨げるオペレーターまたはサイレンサー配列を含む。
【0046】
用語「プロモーター」は、1つ以上のポリヌクレオチド、例えばコード配列の転写を調節するよう機能する核酸フラグメントとして理解されたい。すなわち、ポリヌクレオチド配列の5’上流に位置し、DNA依存性RNAポリメラーゼに対する結合部位と、転写開始部位と、転写因子、リプレッサー、および当該分野で知られている、直接的または間接的に働いてプロモーターからの転写量を調節する他の任意のヌクレオチド配列に対する結合部位(ただし、これに限定されるものではない)とが存在することにより構造的に同定される、核酸フラグメントとして理解されたい。
【0047】
プロモーターは、当該プロモーターに作動可能に連結しているヌクレオチド配列の転写を、所定のヌクレオチド配列に作動可能に連結している当該プロモーターを含む遺伝子コンストラクトを用いる発現システムにおいて、RT-qPCRまたはノーザンブロッティングなどの好適なアッセイ(転写物の検出)を使用して開始できる場合、アクティブである、または上記ヌクレオチド配列の発現を進めると述べられる。上記プロモーターの活性はまた、コードされたタンパク質についての適切なアッセイ(例えば、ウェスタンブロッティングまたはELISA)を使用して、タンパク質レベルで評価され得る。プロモーターは、転写物を検知できる場合、あるいは転写レベルまたはタンパク質レベルが、当該プロモーターを有さない点だけで異なるコンストラクトを用いた転写と比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、500%、1000%、1500%または2000%である場合、転写を開始できるという。
【0048】
用語「構成的」プロモーターは、ほとんどの生理学的および発生条件下で活性であるプロモーターをいう。「誘導的」プロモーターは、好ましくは生理学的または発生条件に応じて調節されるプロモーターである。誘導的プロモーターは、薬物送達または光暴露後に活性であり得る。したがって、「構成的」プロモーターは、「誘導的」プロモーターの意味では調節されない。「組織特異的」プロモーターは、好ましくは特定の型の細胞/組織において活性である。遍在性プロモーターは、多くのまたは任意の異なる組織において活性であるプロモーターとして定義され得る。通常、本明細書の文脈において、「多くの」は、5以上または少なくとも6、10、15、20または5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個の異なる組織を意味する。
【0049】
用語「CAG」プロモーターは、ニワトリβ−アクチンプロモーターおよびサイトメガロウイルスエンハンサーを含むプロモーターをいう(Alexopoulou A. et al. BMC Cell Biology 2008; 9(2): 1-11)。より正確に言えば、上記CAGプロモーターは、(i)サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー要素、(ii)ニワトリβ−アクチンプロモーター、(iii)ニワトリβ−アクチン遺伝子の第一イントロン、および(iv)ウサギβ−グロビン遺伝子のイントロン2/エクソン3を含む。
【0050】
用語「hAAT」プロモーターは、ヒトα1−アンチトリプシンプロモーターおよびアポリポタンパク質Eからの肝細胞制御領域(HCR)エンハンサーの3つのコピーを含むハイブリッドプロモーターを指す。
【0051】
用語「作動可能に連結されている(operably linked)」は、所定の遺伝子に対するプロモーター配列の機能上の関係および位置を指す(例えば、コード配列の転写に影響を及ぼすならば、プロモーターまたはエンハンサーは、当該コード配列に対して作動可能に連結されている)。一般的に、作動可能に連結されているプロモーターは、所定の配列に隣接している。しかし、エンハンサーは、所定の配列の発現を調節するために、当該所定の配列に隣接している必要はない。
【0052】
本明細書で用いる用語「転写後調節領域」は、カセットまたは得られた遺伝子産物に含まれる配列の発現、安定化、または局在を容易にする任意のポリヌクレオチドを指す。
【0053】
本明細書で用いる用語「ベクター」は、1つ以上の所定のポリヌクレオチドを宿主細胞に送達、および任意で発現できるコンストラクトを指す。ベクターの例として、ウイルスベクター、裸のDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性凝縮剤と結合したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、およびプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは、安定であり得、自己複製であり得る。使用することができるベクターの種類に制限はない。ベクターは、伝播およびポリヌクレオチドの獲得に適したクローニングベクター、遺伝子コンストラクト、またはいくつかの異種生物に組み込まれた発現ベクターであり得る。
【0054】
特定の実施形態では、上記ベクターは発現ベクターである。本明細書で使用される用語「発現ベクター」は、細胞における遺伝子発現のために設計されたベクターを指し、すなわち、ベクターは、特定の遺伝子を標的細胞に導入して、当該遺伝子によってコードされるタンパク質を産生するために使用される。
【0055】
本発明に係るベクターは、エンハンサーおよび/またはプロモーター領域として作用し、発現ベクター上に担持された遺伝子の効率的な転写をもたらす調節配列を含むことができる。適切なベクターとして、原核生物発現ベクター(例えば、pUC18、pUC19、ブルースクリプト、およびそれらの誘導体)、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、CoIEl、pCRl、RP4、ファージおよびシャトルベクター(例えば、pSA3およびpAT28)、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス)に基づく真核生物発現ベクター、および非ウイルスベクター、例えば、pSilencer 4.1-CMV (Ambion(登録商標), Life Technologies Corp., Carslbad, CA, US)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV-10、pBPV-l、pML2dおよびpTDTlが挙げられる。
【0056】
用語「組み換えプラスミド」または「プラスミド」は、小型で、環状で、二本鎖の、自己複製するDNA分子であって、所定の遺伝物質を細胞に移入することができ、結果として当該遺伝物質によりコードされている産物(例えば、ポリペプチドタンパク質、ペプチドまたは機能性RNA)を標的細胞において産生することができる遺伝子工学技術を経て得られた、DNA分子を指す。さらに、用語「組み換えプラスミド」または「プラスミド」はまた、小型で、環状で、二本鎖の、自己複製するDNA分子であって、組み換えベクターゲノムの担体としてのウイルスベクターを作製する際に使用される遺伝子工学技術を経て得られた、DNA分子も指す。
【0057】
用語「組み換えウイルスベクター」または「ウイルスベクター」は、自然に産するウイルスから、所定の遺伝物質(例えば、DNAまたはRNA)を細胞に移入することができ、結果として当該遺伝物質によりコードされている産物(例えば、ポリペプチドタンパク質、ペプチドまたは機能性RNA)を標的細胞において産生することができる遺伝子工学技術を経て得られた作用物質を指す。
【0058】
本明細書で同義語として用いられる用語「アデノ随伴ウイルス」、「AAVウイルス」、「AAVビリオン」、「AAVウイルス粒子」、および「AAV粒子」は、AAVの少なくとも1つのカプシドタンパク質(好ましくは、特定のAAV血清型のすべてのカプシドタンパク質)と、AAVゲノムに対応する封入ポリヌクレオチドとからなるウイルス粒子を指す。野生型AAVは、パルボウイルス科、ディペンドウイルス属に属するウイルスである。野生型AAVゲノムは約4.7Kbの長さで、正または負に感知できる一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)からなる。野生型ゲノムは、DNA鎖の両端に逆方向末端反復(ITR)、および3つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。ORF repは、AAVのライフサイクルに必要な4つのRepタンパク質をコードしている。ORFキャップはカプシドタンパク質、VP1、VP2およびVP3をコードするヌクレオチド配列を含み、これらは相互作用して正二十面体対称のカプシドを形成する。最後に、Cap ORFと重複するAAP ORFは、カプシドアセンブリを促進すると思われるAAPタンパク質をコードしている。粒子がAAV ITRに隣接する異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達される導入遺伝子のような野生型AAVゲノムとは別のポリヌクレオチド)を含む場合、典型的には「AAVベクター粒子」または「AAVウイルスベクター」または「AAVベクター」として知られている。本発明はまた、dsAAVまたはscAAVとも呼ばれる二本鎖AAVの使用を包含する。
【0059】
用語「アデノ随伴ウイルスITR」または「AAV ITR」は、本明細書中で使用される場合、AAVのゲノムのDNA鎖の両末端に存在する逆方向末端反復をいう。ITR配列は、AAVゲノムの効率的な増殖に必要である。これらの配列の別の特性は、ヘアピンを形成する能力である。この特徴は、プライマーゼに依存しない第二のDNA鎖の合成を可能にする自己プライミングに寄与する。また、ITRは、野生型AAV DNAを宿主細胞ゲノム(例えば、血清型2 AAVのヒト第19染色体)に組み込み、そこからレスキューすること、およびAAV DNAを完全に集合したデオキシリボヌクレアーゼ耐性AAV粒子に効率的にカプシド化することの両方に必要であることが示されている。ITR配列は、約145bpの長さである。好ましくは、ITRの全配列がAAVウイルスベクターのゲノムにおいて使用されるが、これらの配列のある程度の小さな改変は許容される。野生型ITR配列は、ITRが所望の機能(例えば、複製、ニッキング、ウイルスパッケージング、組み込み、および/またはプロウイルスレスキュー)を媒介する限り、挿入、欠失、または切断によって改変され得る。これらのITR配列を改変するための手順は、当該分野で周知である。ITRは任意の野生型AAVに由来するものでよく、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12、または既知もしくは後に発見された任意の他のAAVが挙げられるが、これらに限定されない。AAVは2つのITRを含み、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、2つのITRは、AAVカプシドと同じAAV血清型に由来してもよく、または異なっていてもよい。好ましい実施形態において、5’および3’ AAV ITRはAAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV7、AAV8および/またはAAV9に由来する。好ましくは、ITRはAAV2、AAV8および/またはAAV9に由来し、最も好ましくは、AAV2である。一実施形態において、AAV2 ITRは偽型AAV(すなわち、異なる血清型に由来するカプシドおよびITRを有するAAV)を産生するように選択される。
【0060】
本明細書で使用される「組換えウイルスゲノム」という表現は、少なくとも1つの外来ポリヌクレオチドが天然に存在するAAVゲノムに挿入されているAAVゲノムを指す。本発明に係るAAVのゲノムは、典型的にはシス作用性5’および3’逆方向末端反復配列(ITR)および発現カセットを含む。
【0061】
用語「遺伝子治療」は、遺伝的疾患もしくは状態または後天的疾患もしくは状態を、治療または予防するため、細胞に対する所定の遺伝物質(例えば、DNAまたはRNA)を細胞に移入して、遺伝的疾患もしくは病態または後天的疾患もしくは病態を治療または予防することを指す。上記所定の遺伝物質は、インビボにおける生産が望まれている産物(例えば、ポリペプチドタンパク質、ペプチドまたは機能性RNA)をコードしている。上記所定の遺伝物質は、例えば、酵素、ホルモン、受容体または治療上価値のあるポリペプチドをコードしうる。
【0062】
本明細書で使用される用語「形質導入する(transduce)」または「形質導入(transduction)」は、外来ヌクレオチド配列がウイルスベクターを介して細胞内に導入されるプロセスを指す。
【0063】
本明細書で使用される用語「トランスフェクション」は、非ウイルス法によって精製核酸を真核細胞に意図的に導入するプロセスを指す。
【0064】
本明細書で使用される用語「治療する」または「治療」は、本発明の化合物または組成物を投与して、疾患の進行を制御することを指す。疾患の進行の制御は有益または所望の臨床結果の達成として理解され、これらには症状の減少、疾患の持続期間の減少、病理学的状態の安定化(特に、さらなる悪化を回避するため)、疾患の進行の遅延、病理学的状態の改善、および寛解(部分的および全体的の両方)が含まれるが、これらに限定されない。疾患の進行の制御には、治療を適用しない場合に予期される生存期間と比較しての生存期間の延長も含まれる。
【0065】
用語「効果的な量」は、意図された目的を達成するために充分な物質の量を指す。例えば、ガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ(GALNS)活性を上昇させるために効果的な量のAAVベクターは、グリコサミノグリカンの蓄積を減少させるために充分な量である。疾患または障害を治療するための発現ベクターの「治療上効果的な量」とは、疾患または障害のシグナルおよび症状を減少または根絶するのに十分な量である。所与の物質の有効量は、物質の性質、投与経路、物質を受ける動物のサイズおよび種、ならびに物質を与える目的などの要因によって変化する。個々の場合における有効量は、当業者によって、当技術分野において確立された方法に従って経験的に決定され得る。
【0066】
用語「個体」は、哺乳類を指し、好ましくはヒトまたは非ヒト哺乳類を指し、より好ましくはマウス、ラット、その他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマまたは霊長類を指し、さらに好ましくはヒトを指す。
【0067】
〔発明を実施するための形態〕
本発明は、ムコ多糖症、特にムコ多糖症IVA型またはモルキオ症候群A型の治療のための新規なポリヌクレオチド配列およびベクターを提供する。
【0068】
したがって、第1の態様では、本発明は、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列と75%〜90%の同一性を有する単離されたポリヌクレオチド配列(以降、「本発明のポリヌクレオチド」と称する)であって、機能性ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼをコードする、単離されたポリヌクレオチド配列に関する。
【0069】
上述のように、MPSIVAはガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ(GALNS)という酵素の活性の欠損によって生じる。GALNSは、コンドロイチン−6−硫酸(C6S)の非還元末端のN−アセチルガラクトサミン−6−硫酸の硫酸エステル基と、ケラタン硫酸(KS)の非還元末端のガラクトース−6−硫酸の硫酸エステル基を加水分解するリソソーム酵素である。非分解C6SおよびKSの持続的な蓄積の結果として、進行性の細胞損傷が起こり、多臓器性疾患をもたらす。
【0070】
本発明の発明者らは、カセットを発現するヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ(GALNS)の異なるバージョンを含むベクターであって、上記GALNSコード配列は、野生型コードGALNSヌクレオチド配列と75%〜90%の同一性を有する、ベクターをインビボで投与すると、MPSIVA動物で測定したレベルよりGALNS活性が実質的に増大したことを示した。実際、野生型と75%〜90%の間の同一性を有する配列を含む発現ベクターで到達したヒトGALNS活性のレベルは、野生型配列を含むベクターによって媒介されるものより高かった。
【0071】
したがって、第1の態様では、本発明は、配列番号1に記載される野生型GALNSをコードするヌクレオチド配列と75%〜90%の同一性を有するポリヌクレオチド配列であって、当該配列は、本技術分野で既知の機能性ヒトGALNS変異体およびフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド配列についても意図している。したがって、本発明は、GALNSと機能的に等価な変異体をコードするDNAを含むと解釈されるべきである。
【0072】
本明細書で使用される用語「機能的に等価な変異体」は、GALNSのポリペプチド配列によってコードされる酵素に実質的に相同であり、GALNSの生物学的活性を保存する任意の酵素に関する。このような機能的に等価な変異体の配列は、1つ以上のアミノ酸の挿入、置換または欠失によってGALNSの配列から得られ得、これはGALNSの生物学的活性を実質的に保存する。変異体が天然GALNSの生物学的活性を保存するかどうかを決定する方法は当業者に広く知られており、本出願の実験部分で使用されるアッセイのいずれかを含む。特に、本発明に包含されるGALNSの機能的に等価な変異体は、GALNSの機能の少なくとも1つ、例えば、グリコサミノグリカン(GAG)レベル、特にC6SおよびKSレベルを正常化または低下させる機能、を有する。本発明の実施例の項では、機能性GALNS酵素が上記GAGレベルを減少または正常化する能力を判定するのに適した方法を詳述する。
【0073】
本発明に付随する実施例に示すように、本発明のポリヌクレオチド配列は、機能性GALNS酵素をコードする。上記酵素は、WTと比較した場合、増大した活性を示す。これらの結果はベクター投与後のGALNS活性の回復を示し、これは、MPSIVA動物において測定されたレベルを超えるガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ活性の実質的な増加をもたらした。本発明に付随する実施例に示されるように、GALNS活性レベルは、肝臓におけるWTレベルの1500%〜2600%の範囲であった。
【0074】
好ましい実施形態において、ポリペプチドが上記のような機能を果たす能力を示す場合、特に、GALNS野生型ポリペプチドの能力の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%、好ましくはGALNS野生型ポリペプチドの能力の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%で、グリコサミノグリカンケラタン硫酸(KS)およびコンドロイチン−6−硫酸(C6S)を分解することができる場合、当該ポリペプチドは、GALNS酵素の機能的に等価な変異体であると考えられる。
【0075】
GALNSの機能的に等価な変異体は、天然のGALNSに実質的に相同なポリペプチドである。「実質的に相同」という表現は、タンパク質配列がGALNS野生型配列に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性の程度を有する場合のタンパク質配列に関する。2つのポリペプチド間の同一性の程度は、当業者に広く知られているコンピュータアルゴリズムおよび方法を用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、好ましくはBLASTPアルゴリズム(BLAST Manual, Altschul, S., et al, NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al, J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))を使用することによって決定されるが、他の類似のアルゴリズムを使用することもできる。
【0076】
GALNSの機能的に等価な変異体は、当該GALNSを産生するために使用される宿主細胞におけるコドン優先性を考慮して、そのコードポリヌクレオチド内のヌクレオチドを置換することによって得ることができる。
【0077】
GALNSの機能的に等価な変異体は、保存的アミノ酸変化を行い、得られた変異体を、上記の機能性アッセイまたは当該分野で公知の他の機能性アッセイの1つにおいて試験することによって産生され得る。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンであり、脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群はセリンおよびスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸群はリジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0078】
本発明の特定の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドに含まれるGALNSタンパク質をコードするヌクレオチド配列またはその機能的に等価な変異体は、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列と75%〜90%の同一性を有する。さらなる特定の実施形態では、上記ヌクレオチド配列は、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列と80%〜85%の同一性を有する。より好ましい実施形態では、上記配列は、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される。
【0079】
本発明の別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるGALNSタンパク質は、ヒトGALNS(hGALNS)およびマウスGALNS(mGALNS)からなる群から選択され、好ましくはヒトGALNS(hGALNS)である。
【0080】
本発明のポリヌクレオチドは、発現制御配列をさらに含んでよい。上記発現制御配列として、適切な転写調節配列(すなわち、開始、終結、プロモーター、およびエンハンサー)、効率的なRNAプロセシングシグナル(例えば、スプライシングおよびポリアデニル化(polyA)シグナル)、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列)、タンパク質安定性を高める配列、および所望の場合、コードされる産物の分泌を高める配列が挙げられるが、これらに限定されない。多数の発現制御配列が当該分野で公知であり、本発明に従って利用され得る。
【0081】
したがって、本発明によれば、特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、GALNSをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された転写調節領域を有する。本発明の特定の実施形態では、上記転写調節領域はプロモーターを含む。本発明の別の特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドの転写調節領域は、プロモーターに作動可能に連結されたエンハンサーをさらに含む。
【0082】
本発明ポリヌクレオチドはベクターに組み込むことができる。特定の実施形態では、上記ベクターは発現ベクターである。したがって、別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター(本明細書では「本発明のベクター」と称される)に関する。特定の実施形態では、上記ベクターはプラスミドである。別の特定の実施形態では、上記ベクターはAAVベクターであり、上記AAVベクターは、本発明に係るポリヌクレオチドを含む組換えウイルスゲノムを含む。
【0083】
本発明のポリヌクレオチドの文脈において開示されるすべての実施形態はまた、本発明のベクターに適用可能である。
【0084】
別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド配列は、AAV ITRに隣接する。より特定の実施形態では、上記AAV ITRはAAV2 ITRである。
【0085】
別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、転写後調節領域をさらに含む。本明細書で用いる用語「転写後調節領域」は、カセットまたは得られた遺伝子産物に含まれる配列の発現、安定化、または局在を容易にする任意のポリヌクレオチドを指す。転写後調節領域は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後領域(WPRE)であってもよいが、これに限定されない。本明細書で用いられる用語「ウッドチャックB型肝炎ウイルス調節後エレメント」または「WPRE」は、転写されると遺伝子の発現を増強することができる三次構造を作り出すDNA配列を指す。
【0086】
別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド配列は、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。
【0087】
本明細書で用いられる用語「ポリアデニル化シグナル」は、mRNAの3’末端へのポリアデニン尾部の付着を媒介する核酸配列に関する。適当なポリアデニル化シグナルとして、SV40初期ポリアデニル化シグナル、SV40後期ポリアデニル化シグナル、HSVチミジンキナーゼポリアデニル化シグナル、プロタミン遺伝子ポリアデニル化シグナル、アデノウイルス5Elbポリアデニル化シグナル、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、ヒト変異体成長ホルモンポリアデニル化シグナル、ウサギβグロビンポリAシグナルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態において、ポリアデニル化シグナルは、ウサギβグロビンポリAシグナルまたはその機能性変異体およびフラグメントである。
【0088】
上述のように、本発明の特定の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドはベクターに組み込まれる。特定の実施形態では、上記ベクターは発現ベクターである。特定の実施形態では、上記発現ベクターは、上記ポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター配列を含む。上記プロモーターは、構成的プロモーターまたは組織特異的プロモーターであり得る。特定の実施形態では、上記プロモーターは、CAGプロモーター、hAATプロモーターまたはCMVプロモーターから選択される。本発明の好ましい実施形態では、上記プロモーターはCAGプロモーターである。別の特定の実施形態では、上記プロモーターはhAATプロモーターである。
【0089】
本発明のポリヌクレオチドは、GALNSをコードするヌクレオチド配列またはその機能的に等価な変異体を含む。一実施形態では、上記ヌクレオチド配列は、ヒトGALNSをコードするヌクレオチド配列であり、アクセッション番号NM_000512.4を有するNCBIデータベースの配列に対応し、より詳細には配列番号1である。好ましい実施形態では、上記ヌクレオチド配列は、ヒトGALNSをコードするヌクレオチド配列の変異体である。より詳細には、上記ヌクレオチド配列は、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列と75%〜90%の同一性を有する。より詳細には、上記配列は、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列と80%〜85%の同一性を有する。好ましくは、上記配列は、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される。
【0090】
より特定の実施形態では、本発明に係る発現ベクターは、アクセッション番号がDSM 32792である配列番号4に記載されるプラスミドpAAV−CAG−ohGALNS−v1、アクセッション番号がDSM 32793である配列番号6に記載されるプラスミドpAAV−CAG−ohGALNS−v2およびアクセッション番号がDSM 32794である配列番号8に記載されるプラスミドpAAV−CAG−ohGALNS−v3からなる群から選択される。
【0091】
別の特定の実施形態では、本発明は発現ベクターを指す。より詳細には、組換えウイルスゲノムを含むアデノ随伴ウイルスベクターまたはAAVベクターであって、上記組換えウイルスゲノムが、GALNSをコードするヌクレオチド配列またはその機能的に等価な変異体に作動可能に連結された転写調節領域を含むポリヌクレオチドを含む、AAVベクターである。
【0092】
本発明に係るAAVは、AAVの既知の血清型のいずれかの血清型を含む。一般に、AAVの異なる血清型は有意な相同性を有するゲノム配列を有し、同一の一連の遺伝子機能を提供し、物理的な点および機能性の点で本質的に同等なビリオンを産生し、事実上同一のメカニズムを介して複製し、組み立てられる。特に、本発明のAAVは、AAV(AAV1)、AAV2、AAV3(3A型および3B型を含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、および任意の他のAAVの血清型1に属し得る。異なるAAV血清型のゲノムの配列の例は、文献またはGenBankなどの公的データベースで見つけることができる。GenBankアクセッション番号AF028704.1(AAV6)、NC006260(AAV7)、NC006261(AAV8)、およびAX753250.1(AAV9)を参照のこと。好ましい実施形態において、本発明のAAVベクターは、AAV2、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびAAVrh10血清型からなる群より選択される血清型のものである。好ましい実施形態において、本発明の上記AAVベクターは、血清型9、AAV9または血清型8、AAV8である。
【0093】
特定の実施形態において、上記AAVベクターは、ヒトまたはマウスのGALNS配列を含む。一実施形態では、上記ベクターは、ヒトGALNSをコードするヌクレオチド配列を含み、当該ヌクレオチド配列はアクセッション番号NM_000512.4を有するNCBIデータベースの配列に対応し、より詳細には配列番号1である。好ましい実施形態では、上記ベクターは、ヒトGALNSをコードするヌクレオチド配列の変異体であるヌクレオチド配列を含む。より詳細には、上記配列は、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列と75%〜90%の同一性を有する。より詳細には、上記配列は、配列番号1に記載されるヌクレオチド配列と80%〜85%の同一性を有する。好ましくは、上記配列は、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される。
【0094】
本発明の別の特定の実施形態では、AAVベクターは、AAV9−CAG−hGALNS、配列番号12であり、これは、CAGプロモーターに連結されたヌクレオチド配列配列番号1を含む。別の実施形態では、AAVベクターは、CAGプロモーターに連結されたヌクレオチド配列、配列番号3を含むAAV9−CAG−ohGALNS−v1、配列番号13である。別の実施形態では、AAVは、CAGプロモーターに連結されたヌクレオチド配列、配列番号5を含むAAV9−CAG−ohGALNS−v2、配列番号14である。別の実施形態では、AAVベクターは、CAGプロモーターに連結されたヌクレオチド配列、配列番号7を含むAAV9−CAG−ohGALNS−v3、配列番号15である。
【0095】
好ましい実施形態において、本発明のAAVは、5’〜3’方向に、(i)5’AAV2 ITR、(ii)CMV即時初期エンハンサー、(iii)ニワトリベータアクチンプロモーター、(iv)ニワトリベータアクチン遺伝子の第1イントロン、(v)ウサギベータグロビン遺伝子由来のイントロン2/エキソン3、(vi)GALNS cDNAまたはその機能的に等価な変異体、(vii)ウサギベータグロビンポリAシグナルなどのポリAシグナル、および(viii)3’AAV2 ITRを含むポリヌクレオチド配列を含む組換えウイルスゲノムを含む。当業者ならば、ベクターゲノムが他の配列(例えば、具体的に上述した配列間の介在配列)を含み得ることを理解するであろう。構成要素(i)〜(v)は、当業者によって通常、理解される意味を有する。
【0096】
好ましい実施形態において、組換えウイルスゲノムは、ヌクレオチド配列、配列番号12を含む。具体的には、5’AAV2 ITRはヌクレオチド1〜131を含み、CAGプロモーターはヌクレオチド185〜1707を含み、ヒトGALNS cDNAはヌクレオチド1918〜3494を含み、ウサギβグロビンポリAシグナルはヌクレオチド3520〜4048を含み、3’AAV2 ITRは配列番号12のヌクレオチド4107〜4215を含む。
【0097】
好ましい実施形態において、組換えウイルスゲノムは、ヌクレオチド配列、配列番号13を含む。具体的には、5’AAV2 ITRはヌクレオチド1〜131を含み、CAGプロモーターはヌクレオチド185〜1707を含み、ヒトGALNS cDNAはヌクレオチド1918〜3494を含み、ウサギβグロビンポリAシグナルはヌクレオチド3520〜4048を含み、3’AAV2 ITRは配列番号13のヌクレオチド4107〜4215を含む。
【0098】
好ましい実施形態において、組換えウイルスゲノムは、ヌクレオチド配列、配列番号14を含む。具体的には、5’AAV2 ITRはヌクレオチド1〜120を含み、CMVエンハンサーはヌクレオチド194〜557を含み、β−アクチンプロモーターはヌクレオチド558〜839を含み、ニワトリβ−アクチン遺伝子の第1イントロンはヌクレオチド840〜1804を含み、ウサギβ−グロビン遺伝子由来のイントロン2/エクソン3はヌクレオチド1805〜1906を含み、ヒトGALNS cDNAはヌクレオチド1934〜3592を含み、ウサギβ−グロビンポリAシグナルはヌクレオチド3619〜4147を含み、3’AAV2 ITRは配列番号14のヌクレオチド4206〜4313を含む。
【0099】
別の好ましい実施形態において、組換えウイルスゲノムは、ヌクレオチド配列、配列番号15を含む。具体的には、5’AAV2 ITRはヌクレオチド1〜120を含み、CMVエンハンサーはヌクレオチド194〜557を含み、β−アクチンプロモーターはヌクレオチド558〜839を含み、ニワトリβ−アクチン遺伝子の第1イントロンはヌクレオチド840〜1804を含み、ウサギβ−グロビン遺伝子由来のイントロン2/エクソン3はヌクレオチド1805〜1906を含み、ヒトGALNS cDNAはヌクレオチド1934〜3592を含み、ウサギβ−グロビンポリAシグナルはヌクレオチド3619〜4147を含み、3’AAV2 ITRは配列番号15のヌクレオチド4206〜4313を含む。
【0100】
改変されたAAV配列もまた、本発明の文脈において使用され得る。このような改変配列は例えば、既知の血清型のいずれかのAAV ITRまたはVPに対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%以上のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列同一性(例えば、約75〜99%のヌクレオチドまたはアミノ酸配列同一性を有する配列)を有し、上記構成要素の機能を維持する配列を含む。AAV ITRまたはVPの機能を決定するためのアッセイは、当該分野で公知である。上記改変配列は、野生型AAV ITRまたはVP配列の代わりに使用することができる。
【0101】
本発明のAAVベクターは、任意の血清型に由来するカプシドを含む。一般に、AAVの異なる血清型はアミノ酸および核酸レベルで有意な相同性を有するゲノム配列を有し、同一の一連の遺伝子機能を提供し、物理的な点および機能性の点で本質的に同等なビリオンを産生し、事実上同一のメカニズムを介して複製し、組み立てられる。特に、本発明のAAVは、AAV(AAV1)、AAV2、AAV3(3A型および3B型を含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、および任意の他のAAVの血清型1に属し得る。異なるAAV血清型のゲノムの配列の例は、文献またはGenBankなどの公的データベースで見つけることができる。GenBankアクセッション番号AF028704.1(AAV6)、NC006260(AAV7)、NC006261(AAV8)、およびAX753250.1(AAV9)を参照のこと。好ましい実施形態において、本発明のアデノ随伴ウイルスベクターは、AAV2、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびAAVrh10血清型からなる群より選択される血清型のものである。より好ましい実施形態において、上記AAVは、AAV血清型9、AAV9またはAAV血清型8、AAV8である。
【0102】
本発明のAAVベクターのゲノムは、repオープンリーディングフレームおよびcapオープンリーディングフレームを欠く。このようなAAVベクターは、rep遺伝子産物およびcap遺伝子産物(すなわち、AAV repタンパク質およびAAV Capタンパク質)をコードし、発現するベクターでトランスフェクトされた宿主細胞においてのみ、複製され、感染性ウイルス粒子にパッケージングされ得、ここで、宿主細胞はアデノウイルス由来のタンパク質をコードし発現するベクターでトランスフェクトされている。
【0103】
〔本発明の薬学的組成物〕
本発明のポリヌクレオチド発現ベクターは、薬学的組成物中での製剤化を必要とする従来の方法によってヒトまたは動物体に投与することができる。したがって、第2の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドの治療上効果的な量または本発明のベクターを含む薬学的組成物(以下、「本発明の薬学的組成物」と呼ぶ)に関する。薬学的組成物は、薬学的に許容できる担体をさらに含み得る。
【0104】
本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターの文脈で開示されたすべての実施形態は、本発明の薬学的組成物にも適用可能である。
【0105】
用語「治療上効果的な量」は、所望の効果を生じるように計算された本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたはAAVベクターの量を指し、一般に、何よりも、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたはAAVベクターの独自の特徴および得られる治療効果によって決定される。したがって、疾患の治療に有効である上記量は、本明細書に記載されるか、または当技術分野で公知の標準的な臨床技術によって決定することができる。製剤に使用される正確な用量は、投与経路に依存する。初期用量は当該分野で周知の技術を使用して、インビボデータ(例えば、動物モデル)から推定され得る。当技術分野において通常の経験を有する者は、動物におけるデータに基づいてヒトへの投与を容易に最適化することができる。
【0106】
特定の実施形態では、製剤の投与量は、ウイルス粒子として、またはゲノムコピー(「GC」)/ウイルスゲノム(「vg」)として測定または計算することができる。
【0107】
本発明のウイルス組成物1ミリリットル当たりのゲノムコピー(GC)数を決定するために、当技術分野で公知の任意の方法を使用することができる。AAVのGC数滴定を行う1つの方法は、以下の通りである。精製されたAAVベクターサンプルを、まず、DNaseで処理し、カプシド化されていないAAVゲノムDNAまたは汚染プラスミドDNAを産生プロセスから排除する。次いで、DNase耐性粒子を熱処理に供して、カプシドからゲノムを放出させる。次いで、放出されたゲノムを、ウイルスゲノムの特定の領域を標的とするプライマー/プローブセットを使用するリアルタイムPCRによって定量する。
【0108】
本明細書中で互換的に使用される用語「薬学的に許容できる担体」、「薬学的に許容できる希釈剤」、「薬学的に許容できる賦形剤」、または「薬学的に許容できるビヒクル」は、任意の従来型の非毒性固体、半固体、または液体充填剤、希釈剤、封入材料、または製剤補助剤を指す。薬学的に許容できる担体は、使用される投与量および濃度では受容者に対して本質的に非毒性であり、製剤の他の成分と両立できる。薬学的に許容できる担体の数および性質は、所望の投与形態に依存する。薬学的に許容できる担体は公知であり、当該分野で公知の方法により調製し得る。
【0109】
薬学的組成物は、ヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、脳脊髄液(CSF)(例えば槽内または脳室内)投与に適合した薬学的組成物として、常法に従って製剤することができる。好ましい実施形態において、薬学的組成物は、静脈内または脳脊髄液(CSF)投与のためのものである。より好ましくは、薬学的組成物は静脈内投与用である。
【0110】
連続注入AAVベクターは、注射(例えば、ボーラス注射または連続注入)による非経口投与のために製剤し得る。注射用製剤は、防腐剤を添加した単位剤形(例えば、アンプルまたは単回または複数回用量容器)で提供することができる。ウイルス組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤、または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。AAV製剤の液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂肪)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画植物油)、および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸塩またはソルビン酸)などの薬学的に許容できる添加剤を用いて従来の手段によって調製することができる。調製物はまた、緩衝塩を含み得る。あるいは、組成物は、使用前に、適切なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)で構成するための粉末形態であってもよい。必要に応じて、組成物は注射部位での疼痛を軽減するために、リドカインなどの局所麻酔薬を含んでもよい。組成物が浸透によって投与される場合、医薬品質の水または生理食塩水を含有する浸透ボトルを用いて、組成物を分配することができる。組成物が注射によって投与される場合、注射または滅菌生理食塩水用の水バイアルを提供することができ、それにより、成分を投与前に混合することができる。好ましくは、薬学的に許容できる担体は、生理食塩水溶液および界面活性剤(例えば、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、Pluronic F68(登録商標))である。
【0111】
本発明の組成物は、ヒトの対象とともに、獣医学的目的のための動物(例えば、家畜(ウシ、ブタ、その他))、および他の非ヒト哺乳動物の対象への送達のために製剤し得る。本発明の薬学的組成物は、遺伝子導入および遺伝子治療用途で用いるために、生理学的に許容できる担体を用いて製剤し得る。
【0112】
本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたはAAVベクターと組合せた、またはそれらと混合したアジュバントの使用も本発明に含まれる。意図されるアジュバントとしては、無機塩アジュバントまたは無機塩ゲルアジュバント、粒子アジュバント、マイクロ粒子アジュバント、粘膜アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
アジュバントは、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたはAAVベクターとの混合物として、またはそれらと併用して、対象に投与し得る。
【0114】
本発明の薬学的組成物は、局所投与または全身投与し得る。一実施形態では、薬学的組成物は、その細胞が形質導入されるべき組織または臓器の近傍に投与される。特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物は全身投与される。
【0115】
本明細書で使用される用語「全身投与される(systemically administered)」および「全身投与(systemic administration)」は、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、AAVベクターまたは組成物が非局在的に対象に投与され得ることを意味する。全身投与は、対象の全身のいくつかの器官または組織に到達し得るか、または対象の特定の器官または組織に到達し得る。例えば、静脈内投与は、対象における2つ以上の組織または器官の形質導入をもたらし得る。本発明の薬学的組成物は、単回投与で投与されてもよく、または本発明の特定の実施形態では、治療効果をあげるために多回投与(例えば、2回、3回、4回、またはそれ以上の投与)してもよい。本発明の好ましい実施形態において、本発明の薬学的組成物は単回投与で投与される、すなわち、一生に一度投与される。
【0116】
このように、他の態様では、本発明は、医薬に使用される、本発明に係るポリヌクレオチドまたはベクター、または本発明に係る薬学的組成物に関する。
【0117】
さらなる態様では、本発明は、ムコ多糖症IVA型あるいはモルキオ症候群A型の治療に使用される、本発明に係るポリヌクレオチドまたはベクター、または本発明に係る薬学的組成物に関する。
【0118】
本発明に付随する実施例に示すように、異なるバージョンのヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ発現カセットを含有するAAVベクターを、2ヶ月齢のMPSIVA罹患マウスに尾静脈注射を介して静脈内送達した。GALNS活性分析の結果、すべてのガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ含有ベクターによる形質導入が、ガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ活性を、MPSIVA動物において測定されたレベルよりも実質的に増加させたことが示された。
【0119】
このように、他の態様では、本発明は、ガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ活性を増加させるための、本発明に係るポリヌクレオチドまたはベクター、または本発明に係る薬学的組成物に関する。
【0120】
別の態様では、本発明は、ムコ多糖症IVA型の治療および/または予防を、それを必要とする対象に対して行う方法であって、当該対象に対し、本発明に係るポリヌクレオチド、本発明に係るベクター、または本発明に係る薬学的組成物を投与する方法を提供する。
【0121】
本明細書で使用される用語「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」、および「予防(prevention)」は、対象における疾患の開始を阻害するか、または発症を減少させることをいう。予防は完全であってもよいし(例えば、対象における病理学的細胞の完全な欠如)、または部分的であってもよい。予防はまた、臨床症状に対する感受性の減少をいう。本明細書中で使用される用語「処置する(treat)」または「処置(treatment)」は、臨床徴候が現れた後の疾患の進行を制御するための、本発明のポリヌクレオチド、またはベクター、またはAAVベクター、または薬学的組成物の投与をいう。疾患の進行の制御は有益または所望の臨床結果の達成として理解され、これらには症状の減少、疾患の持続期間の減少、病理学的状態の安定化(特に、さらなる悪化を回避するため)、疾患の進行の遅延、病理学的状態の改善、および寛解(部分的および全体的の両方)が含まれるが、これらに限定されない。疾患の進行の制御には、治療を適用しない場合に予期される生存期間と比較しての生存期間の延長も含まれる。
【0122】
本明細書で使用される用語「対象」は、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、チンパンジーおよび他の類人猿およびサル種)、農場動物(例えば、鳥類、魚類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマ)、家畜哺乳類(例えば、イヌおよびネコ)、または実験動物(例えば、マウス、ラット、およびモルモットなどのげっ歯類)などの個体または動物を指す。この用語は、任意の年齢または性別の対象を含む。好ましい態様において、対象は哺乳類、好ましくはヒトである。
【0123】
〔本発明のAAVを得る方法〕
本発明はまた、本発明のAAVベクターを得る方法に関する。前記AAVベクターは、構成的にRepタンパク質およびCapタンパク質を発現する細胞、またはRepコード配列およびCapコード配列がプラスミドまたはベクター中に提供された細胞に本発明のポリヌクレオチドを導入することによって得ることができる。
【0124】
したがって、別の態様において、本発明はまた、
(i)本発明のポリヌクレオチド、AAV capタンパク質、AAV repタンパク質、および任意でAAVの複製が依存するウイルスタンパク質を含む細胞を提供する工程と、
(ii)上記AAVの組み立てに適する条件下に上記細胞を維持する工程と、
(iii)上記細胞により産生されたアデノ随伴ウイルスベクターを精製する工程と含む、本発明のAAVベクターを得る方法に関する。
【0125】
AAVベクターを産生し得る任意の細胞が、本発明において使用され得る。
【0126】
本発明のポリヌクレオチドは、既に説明した通りである。本発明のポリヌクレオチドの文脈において開示される実施形態のいずれも、本発明のAAVを得る方法の文脈において適用可能である。
【0127】
本明細書で使用される「capタンパク質」という用語は、天然AAV capタンパク質(例えば、VPl、VP2、およびVP3)の少なくとも1つの機能的活性を有するポリペプチドを指す。capタンパク質の機能的活性の例としては、カプシドの形成を誘導し、一本鎖DNAの蓄積を促進し、カプシドへのAAV DNAパッケージングを促進し(すなわち、カプシド形成)、細胞受容体に結合し、かつビリオンの宿主細胞への侵入を促進する能力が挙げられる。原則として、任意のcapタンパク質が、本発明の文脈において使用され得る。
【0128】
好ましい実施形態において、capタンパク質は、AAV8またはAAV9に由来する。
【0129】
用語「カプシド」は、本明細書中で使用される場合、ウイルスゲノムがパッケージングされる構造をいう。カプシドはタンパク質から構成されるいくつかのオリゴマー構造サブユニットからなる。例えば、AAVはVP1、VP2、VP3という3種類のカプシドタンパク質の相互作用によって形成される正二十面体カプシドをもつ。
【0130】
本明細書で使用される「repタンパク質」という用語は、天然AAV repタンパク質の少なくとも1つの機能的活性を有するポリペプチドを指す。repタンパク質の「機能的活性」はDNAヘリカーゼ活性と同様に、DNA複製のAAV起点の認識、結合およびニッキングによるDNA複製の促進を含む、タンパク質の生理学的機能に関連する任意の活性である。さらなる機能には、AAV(または他の異種)プロモーターからの転写の調節、および宿主染色体へのAAV DNAの部位特異的組み込みが含まれる。特定の実施形態において、AAV rep遺伝子は、血清型AAV2に由来する。
【0131】
本明細書で使用される「AAVが複製において依存するウイルスタンパク質」という表現はAAVが複製において依存する機能(すなわち、「ヘルパー機能」)を果たすポリペプチドを指す。ヘルパー機能にはAAV遺伝子転写の活性化に必要な機能、時期特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、capタンパク質の合成、およびAAVカプシドの組み立てが含まれるが、これらに限定されない。ウイルスベースのアクセサリー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)、およびワクシニアウイルス等の既知のヘルパーウイルスのいずれからも誘導することができる。ヘルパー機能にはアデノウイルスEl、E2a、VA、およびE4またはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52、およびUL29、ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
本発明のポリヌクレオチド、すなわちAAV rep遺伝子、AAV cap遺伝子およびヘルパー機能を与える遺伝子は、これらの遺伝子を例えばプラスミド等のベクターに組み込み、当該ベクターを細胞に導入することによって、細胞に導入することができる。遺伝子は、同じプラスミドまたは異なるプラスミドに組み込むことができる。好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは1つのプラスミドに組み込まれ、AAV rep遺伝子およびAAV cap遺伝子は別のプラスミドに組み込まれ、そしてヘルパー機能を与える遺伝子は別のプラスミドに組み込まれる。
【0133】
本発明のポリヌクレオチドを含むプラスミド、および/またはAAV rep遺伝子およびAAV cap遺伝子またはヘルパー機能を与える遺伝子は、本技術分野で周知の任意の好適な方法を用いて細胞内に導入することができる。トランスフェクション方法の例には、リン酸カルシウムとの共沈、DEAE−デキストラン、ポリブレン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム媒介融合、リポフェクション、レトロウイルス感染およびバイオリスティックトランスフェクションが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、トランスフェクションは、リン酸カルシウムとの共沈によって行われる。細胞がAAV rep遺伝子およびAAV cap遺伝子およびアデノウイルスヘルパー機能を与える遺伝子のいずれかの発現を欠く場合、これらの遺伝子は、本発明のポリヌクレオチドと同時に細胞に導入され得る。あるいは、前記遺伝子は、本発明のポリヌクレオチドの導入の前後に細胞内に導入することができる。
【0134】
特定の実施形態において、細胞は、i)本発明のポリヌクレオチドを含むプラスミド、ii)AAV rep遺伝子およびAAV cap遺伝子を含むプラスミド、ならびにiii)ヘルパー機能を与える遺伝子を含むプラスミド、の3つのプラスミドで同時にトランスフェクトされる。
【0135】
本発明の方法の工程(ii)は、AAVの組み立てに適する条件下に細胞を維持する。
【0136】
細胞を培養する方法、およびAAVベクター粒子の放出を促進する例示的な条件(例えば、細胞の溶解)は、本明細書中の実施例に記載されるように実施され得る。AAVの組み立ておよび培地中へのウイルスベクターの放出を促進するために、プロデューサー細胞を適当な期間増殖させる。一般に、培養時間は、ウイルス産生の時点から測定される。例えば、AAVの場合、ウイルス産生は一般に、本明細書中に記載されるように、適切なプロデューサー細胞においてヘルパーウイルス機能を与える際に開始する。
【0137】
本発明の方法の工程(iii)は、細胞により産生されたAAVベクターを精製する。
【0138】
前記細胞または前記培地からAAVを精製するための任意の方法を、本発明のAAVを得るために使用することができる。特定の実施形態において、本発明のAAVは、ポリエチレングリコール沈殿工程および2つの連続した塩化セシウム(CsCl)勾配に基づく最適化された方法に従って精製される。
【0139】
様々な天然に存在するAAVおよび操作されたAAV、それらをコードする核酸、AAV capタンパク質およびAAV repタンパク質、ならびにそのようなAAV、および特にAAVの産生における使用に適したそれらのカプシドを単離または産生、増殖および精製するための方法が、本技術分野において公知である。
【0140】
本発明はさらに、GALNSタンパク質またはその機能的に等価な変異体をコードする本発明のポリヌクレオチド配列を含む単離細胞を提供する。
【0141】
本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたはAAVベクターおよび本発明の薬学的組成物の文脈において開示される全ての実施形態は、本発明の治療方法に適用可能である。
【0142】
〔一般的な手順〕
[1.組み換えAAVベクター]
本明細書において説明されているAAVベクターは、3重のトランスフェクションによって得た。上記ベクターを作製するために必要な材料は、HEK293細胞(アデノウイルスE1遺伝子を発現している)、アデノウイルス機能を与えるヘルパープラスミド、血清型2のAAV rep遺伝子および血清型8または9(AAV8またはAAV9)のcap遺伝子を与えるプラスミド、そして最後に、AAV2 ITRを有する骨格プラスミドおよび所定のコンストラクトである。
【0143】
ガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼを発現するAAVベクターを産生するため、ヒトまたはマウスのガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼの最適化または非最適化コード配列を、ユビキタスハイブリッドCAGプロモーターまたは肝臓特異型hAATプロモーターの制御下で、AAV骨格プラスミド中にてクローニングした。EndoFree Plasmid Megaprep Kit(Qiagen)を用いて、プラスミドの大規模産生を行った。
【0144】
3種類の改変プラスミドを用いて、ヘルパーウイルスを使用せずにHEK293細胞をトランスフェクションすることによって、ベクターを産生した(Matsushita et al., 1998およびWright et al., 2005を参照)。10%FBSを添加したDMEMを入れたローラーボトル(RB)(Corning, Corning, NY, US)中で、70%コンフルエンスにて細胞を培養した。次に、当該細胞を、1)血清型2のAAVのウイルスITRにより両端を挟まれている発現カセットを有しているプラスミド(上述);2)AAV rep2遺伝子およびAAV cap8遺伝子またはAAV cap9遺伝子を有しているプラスミド;および、3)アデノウイルスヘルパー機能を有しているプラスミド、で同時トランスフェクションした。上述した最適化プロトコルを用いて、2回の連続する塩化セシウム勾配により、ベクターを精製した(Ayuso et al., 2010を参照)。ベクターをPBS+0.001%プルロニック(登録商標)F68で透析し、濾過し、qPCRで滴定し、使用まで−80℃にて保存した。
【0145】
本発明のベクターは、本技術分野において周知である分子生物学技術によって作製された。
【0146】
[2.インビトロトランスフェクション試験]
HEK293細胞に、リポフェクタミン(登録商標)2000(Invitrogen、Thermo Fisher Scientific、CA、USA)を用いて、4μgのpAAV−CAG−omGALNS、pAAV−hAAT−omGALNS、pAAV−CAG−hGALNS、pAAV−CAG−ohGALNS−v1、pAAV−CAG−ohGALNS−v2またはpAAV−CAG−ohGALNS−v3を製造者の指示に従ってトランスフェクトした。48時間後、細胞および培地を回収し、タンパク質抽出のために処理した。
【0147】
250μlのMili−Q水中で細胞を超音波処理することによってタンパク質抽出物を得、Bradford protein assay(Bio-Rad, Hercules, CA, US)を用いてタンパク質含有量を定量した。上述したように、4−メチルウンベリフェロン由来の蛍光源基質(Toronto Rerearch Chemicals Inc, Ontario, Canada)によって、ガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ活性を、1μgの細胞タンパク質抽出物および5μlの培地中で決定し、タンパク質の総量および体積によってそれぞれ正規化した(van Diggelen et al., 1990)。
【0148】
[3.動物]
International Mouse Phenotyping Consortium (IMPC, www.mousephenotype.orgg)を介して利用可能なGalns遺伝子にレポーター(LacZ)遺伝子標識挿入を有する、C57BL/6N−A/a胚性幹細胞を得た。Universitat Autonoma de Barcelona(UAB)の動物バイオテクノロジー・遺伝子治療センター(CBATEG)のトランスジェニック動物課のC57BL/6JOlaHsd胚盤胞にクローンをマイクロインジェクションし、得られたオスキメラをC57Bl/6NTacメスと交配してGalnsノックアウト子孫(MPSIVAまたはGalns
−/−マウス)を作製した。テール・クリップサンプルをPCR分析し、目的の変異を含んでいる配列を増幅して、遺伝子型を決定した。それぞれのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーの配列は、以下の通りであった。センスプライマー:5’ CCA GGG AAT GTC CCA CCT ATT T 3’(配列番号20);アンチセンスプライマー:5’ GTC AGG TTG ACA CGA AGC TG 3’(配列番号21);およびアンチセンスプライマーKO:5’ GGA ACT TCG GTT CCG GCG 3’(配列番号22)。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーは、WTマウスの遺伝子型決定を可能にする。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーKOは、Galns
−/−マウスの遺伝子型決定を可能にする。
【0149】
標準食(Harlan, Tekland)で行動制限を設けずにマウスを飼育し、明暗周期を12時間に保った(午前9時に点灯)。
【0150】
これらの動物はGALNS活性がないため、大腿骨および脛骨からの骨端板の異なる領域におけるグリコサミノグリカン(GAG)の蓄積およびリソソーム区画の肥大を含む、MPSIVA疾患に特徴的ないくつかの病理学的特徴を早くも1か月齢で示す。さらに、これらの病理学的所見の多くは動物が高齢になると悪化し、このことは加齢動物ほど病態が悪化することを示唆している。同様に、動物が高齢になるにつれて、肝臓、心臓、脾臓などの末梢器官にGAGが蓄積されることも観察される。しかし、Galns
−/−とWTの同腹仔間の寿命に有意差は認められない。
【0151】
[4.マウスへのベクター投与]
AAV8−hAAT−omGALNSベクターの静脈内ベクター送達のために、3〜4週齢のGalns
−/−動物の尾静脈を通して、総投与量1×10
11vgを総量200μlでマウスに注射した。類似の動物コホートに、1×10
11vg対照非コード(AAV8−hAAT−null)ベクターを注射した。
【0152】
AAV8−CAG−omGALNSベクターの、マウスへの静脈内ベクター送達のために、3〜4週齢のGalns
−/−動物の尾静脈を通して、総投与量1×10
12vgを総量200μlでマウスに注射した。類似の動物コホートに、1×10
12vg対照非コード(AAV8−CAG−null)ベクターを注射した。
【0153】
AAV9−CAG−omGALNSベクターの、マウスへの静脈内ベクター送達のために、3〜4週齢のGalns
−/−動物の尾静脈を通して、総投与量1×10
12vgを総量200μlでマウスに注射した。類似の動物コホートに、1×10
12vg対照非コード(AAV9−CAG−null)ベクターを注射した。
【0154】
7月齢の時点、すなわちベクターの投与から6ヶ月後に、マウスを屠殺し、組織を摘出した。
【0155】
静脈内ベクター送達のために、種々のバージョンのヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼコード配列を備えるAAV9ベクターの5×10
10個のベクターゲノムを、2か月齢のGalns
−/−動物の尾静脈注射を通して全量200μlでマウスに送達した。WT動物および非処置Galns
−/−動物を対照として用いた。
【0156】
2.5月齢の時点、すなわちベクターの投与から15日後に、マウスを屠殺し、組織を摘出した。
【0157】
[5.サンプルの収集]
殺処分に際し、動物に深く麻酔を施し、その後、心臓を経由して50mLのPBSを潅流させて、組織から血液を完全に除去した。全脳および複数の体性組織(肝臓、脾臓、腎臓、肺、心臓、脂肪組織、眼、涙腺および骨を含む)を収集し、次の組織学的分析のために、液体窒素中で凍結させ−80℃にて保存するか、ホルマリン中に浸漬した。
【0158】
[6.ガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ活性およびグリコサミノグリカンの定量]
肝臓サンプルおよび脂肪組織サンプルを、Mili−Q水中で超音波処理し、大腿骨サンプルを、25mmol/lのTris−HCl、pH7.2、および1mmol/lのフェニルメチルスルホニルフルオリドからなるホモジナイゼーションバッファーでホモジナイズした。上述したように、4−メチルウンベリフェロン由来の蛍光源基質(Toronto Rerearch Chemicals Inc, Ontario, Canada)によって、ガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ活性を決定した(van Diggelen et al., 1990)。タンパク質の全量に対して肝臓、脂肪組織および大腿骨の活性レベルを正規化し、Bradford protein assay(Bio-Rad, Hercules, CA, US)を用いて定量した。
【0159】
GAGの定量のために、組織サンプルを計量し、プロテイナーゼKで消化した。遠心分離および濾過により、抽出物を清澄化した。液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS/MS)により、組織抽出物中および血清中のGAGレベルを決定した。GAGのレベルを、組織の含水重量または消化されたサンプルの全体積に対して、正規化した。
【0160】
[7.組織学的分析]
組織をホルマリン中で12〜24時間固定し、パラフィンに包埋し、切片を作製した。
【0161】
角膜上皮におけるGAG蓄積の検出のために、パラフィン切片を、GAGを青色で顕在化させるMowryコロイド染色に供した。涙腺および脛骨骨端成長板におけるGAG蓄積の検出のために、樹脂切片を、GAG蓄積を白色で顕在化させるトルイジンブルー染色に供した。
【0162】
NIS Elements Advanced Research 2.20ソフトウェアを用いて、動物1匹毎の各眼の15〜20枚の画像(元の拡大倍率:40倍)における、GAG+の面積の割合を定量した(すべての動物に対して同じ信号閾値を設定した)。次いで、ポジティブである面積の割合を計算した。すなわち、上記画像中の所定の領域における全組織の面積に対する、ポジティブ信号を有する面積を、ピクセルで計算した。
【0163】
[8.透過型電子顕微鏡による分析]
イソフルラン(Isoflo, Labs. Esteve, Barcelona, ES)の過剰投与によりマウスを殺処分し、下大動脈を通して、1mLの2.5%グルタルアルデヒドおよび2%パラホルムアルデヒドを潅流させた。歯状回および扁桃体の小片(約1mm
3)から切片を作製し、同じ固定液中で、4℃にて2時間インキュベートした。冷却したカコジル酸緩衝液中で洗浄した後、1%4酸化オスミウム中で試料を後固定し、酢酸ウラニル水溶液中で染色した。次いで、濃度を段階的に高く変えながらエタノールに数回通して脱水し、エポキシ樹脂中に包埋した。樹脂ブロックから作製した極薄片(600〜800オングストローム)を、クエン酸鉛を用いて染色し、透過型電子顕微鏡(H-7000; Hitachi, Tokyo, JP)で調査した。
【0164】
[9.統計分析]
すべての結果を平均±標準誤差として表した。一元配置分散分析を用いて統計比較を行った。ダネットの事後検定を用いてコントロール群と処置群との間の多重比較を行い、チューキーの事後検定を用いてすべての群の間の多重比較を行った。P<0.05の場合、統計的有意であると見なした。
【0165】
〔実施例〕
〔実施例1:pAAV−CAG−hGALNSの構築〕
ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS(NCBIの参照配列:NM_000512.4)を出発材料として利用し、本実施例の目的のために化学的に合成した(GeneArt; Life Technologies)。プラスミドpMK−RQ(KanR)内で、上記CDS(配列番号1)をクローニングした。上記CDSは、MluIおよびEcoRIの制限部位によって、5’および3’がそれぞれ挟まれていた。
【0166】
MluI/EcoRIガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS断片を、pMK−RQプラスミドから切り出し、その後、AAV骨格プラスミドpAAV−CAGの、MluIの制限部位とEcoRIの制限部位との間においてクローニングした。得られたプラスミドを、pAAV−CAG−hGALNS(アクセッション番号:DSM32791)と命名した(
図1Aおよび配列番号2を参照)。
【0167】
ここで使用したAAV骨格プラスミドpAAV−CAGは、従前産生されてきた。上記AAV骨格プラスミドpAAV−CAGには、所定のCDSのクローニングのためのマルチクローニングサイトに加え、AAV2ゲノムのITR、CAGプロモーター、およびウサギβ−グロビンのポリAシグナルを含んでいた。上記CAGプロモーターは、CMVの初期/中期エンハンサーおよびニワトリβ−アクチンプロモーターから構成された、ハイブリッドプロモーターである。このプロモーターは、あらゆる部位において、強力な発現を促進することができる。
【0168】
〔実施例2:pAAV−CAG−ohGALNS−v1の構築〕
ガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼcDNA配列の最適化バージョン(ohGALNS)を含んでいる発現カセットを設計して得た。配列の最適化を実行して、ヒトにおけるガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼタンパク質の産生効率を最大化した。上記最適化は、短いスプライス部位およびRNA非安定化配列要素の削除(RNAの安定性を上げるため)、RNA安定化配列要素の付加、コドンの最適化およびG/Cの含有量の適応、種々の変化のうちRNAの安定二次構造の変化の回避によって行った。ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS(NCBI参照配列:NM_000512.4)を配列最適化の出発点として用いた。
【0169】
プラスミドpMK−RQ(KanR)内で、上記最適化したCDS(配列番号3)(GeneArt; Life Technologies)をクローニングした。上記CDSは、MluIおよびEcoRIの制限部位によって、5’および3’がそれぞれ挟まれていた。
【0170】
MluI/EcoRI最適化ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS断片をpMK−RQプラスミドから切り出した。続いて、この断片を、上記AAV骨格プラスミドpAAV−CAGのMluIおよびEcoRI制限部位の間にてクローニングした。得られたプラスミドを、pAAV−CAG−ohGALNS−v1(アクセッション番号:DSM32792)と命名した(
図2Aおよび配列番号4を参照)。
【0171】
〔実施例3:pAAV−CAG−ohGALNS−v2の構築〕
ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS(NCBI参照配列:NM_000512.4)を配列最適化した(GeneScript Inc)。最適化したCDS(配列番号5)を、プラスミドpUC57(AmpR)内でクローニングした。上記CDSは、MluIおよびEcoRIの制限部位によって、5’および3’がそれぞれ挟まれていた。
【0172】
MluI/EcoRI最適化ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS断片をpUC57プラスミドから切り出した。続いて、この断片を、上記AAV骨格プラスミドpAAV−CAGのMluIおよびEcoRI制限部位の間にてクローニングした。得られたプラスミドを、pAAV−CAG−ohGALNS−v2(アクセッション番号:DSM32793)と命名した(
図3Aおよび配列番号6を参照)。
【0173】
〔実施例4:pAAV−CAG−ohGALNS−v3の構築〕
ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS(NCBI参照配列:NM_000512.4)を配列最適化した(DNA 2.0 Inc)。最適化したCDS(配列番号7)を、プラスミドpj201(KanR)内でクローニングした。上記CDSは、MluIおよびEcoRIの制限部位によって、5’および3’がそれぞれ挟まれていた。
【0174】
MluI/EcoRI最適化ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS断片をpj201プラスミドから切り出した。続いて、この断片を、上記AAV骨格プラスミドpAAV−CAGのMluIおよびEcoRI制限部位の間にてクローニングした。得られたプラスミドを、pAAV−CAG−ohGALNS−v3(アクセッション番号:DSM32794)と命名した(
図4Aおよび配列番号8を参照)。
【0175】
〔実施例5:pAAV−CAG−omGALNSの構築〕
マウスガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS(NCBI参照配列:NM_016722.4)を配列最適化した(GeneArt; Life Technologies)。最適化したCDS(配列番号9)を、プラスミドpMA−RQ−Bb(AmpR)内でクローニングした。上記CDSは、MluIおよびEcoRIの制限部位によって、5’および3’がそれぞれ挟まれていた。
【0176】
MluI/EcoRI最適化マウスガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS断片をpMA−RQ−Bbプラスミドから切り出した。続いて、この断片を、上記AAV骨格プラスミドpAAV−CAGのMluIおよびEcoRI制限部位の間にてクローニングした。得られたプラスミドを、pAAV−CAG−omGALNSと命名した(
図5Aおよび配列番号10を参照)。
【0177】
〔実施例6:pAAV−hAAT−omGALNSの構築〕
マウスガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのCDS(NCBI参照配列:NM_016722.4)を配列最適化した(GeneArt; Life Technologies)(配列番号9)。
【0178】
hAATプロモーター(配列番号19)を、プラスミドpGG2−hAAT(AmpR)内でクローニングした。上記CDSは、MluIおよびEcoRIの制限部位によって、5’および3’がそれぞれ挟まれていた。
【0179】
CAGプロモーター(配列番号18)をpAAV−CAG−omGALNSプラスミドから切り出した後、hAATプロモーターで置換した。得られたプラスミドを、pAAV−hAAT−omGALNSと命名した(
図6Aおよび配列番号11を参照)。
【0180】
hAATプロモーターは、ヒトα1−アンチトリプシンプロモーターおよびアポリポタンパク質Eからの肝細胞制御領域(HCR)エンハンサーの3つのコピーから構成された、ハイブリッドプロモーターである。このプロモーターは、肝臓特異的に強力な発現を促進することができる。
【0181】
〔実施例7:AAV9−CAG−hGALNSの構築〕
3種類の改変プラスミドを用いて、ヘルパーウイルスを使用せずにHEK293細胞をトランスフェクションすることによって、ベクターAAV9−CAG−hGALNS(配列番号12)を産生した(Matsushita et al., 1998およびWright et al., 2005を参照)。10%FBSを添加したDMEMを入れたローラーボトル(RB)(Corning, Corning, NY, US)中で、70%コンフルエンスにて細胞を培養した。次に、当該細胞を、1)血清型2のAAV2 ITR(pAAV−CAG−hGALNS;配列番号2)により両端を挟まれている発現カセットを有しているプラスミド;2)AAV2 rep遺伝子およびAAV9 cap遺伝子(pREP2CAP9)を有しているプラスミド;および、3)アデノウイルスヘルパー機能を有しているプラスミド、で同時トランスフェクションした。上述した最適化プロトコルを用いて、2回の連続する塩化セシウム勾配により、ベクターを精製した(Ayuso et al., 2010を参照)。ベクターをPBS+0.001%プルロニック(登録商標)F68で透析し、濾過し、qPCRで滴定し、使用まで−80℃にて保存した(
図1Bを参照)。
【0182】
〔実施例8:AAV9−CAG−ohGALNS−v1の産生〕
3種類の改変プラスミドを用いて、ヘルパーウイルスを使用せずにHEK293細胞をトランスフェクションすることによって、ベクターAAV9−CAG−ohGALNS−v1(配列番号13)を産生した(Matsushita et al., 1998およびWright et al., 2005を参照)。10%FBSを添加したDMEMを入れたローラーボトル(RB)(Corning, Corning, NY, US)中で、70%コンフルエンスにて細胞を培養した。次に、当該細胞を、1)血清型2のAAV2 ITR(pAAV−CAG−ohGALNS−v1;配列番号4)により両端を挟まれている発現カセットを有しているプラスミド;2)AAV2 rep遺伝子およびAAV9 cap遺伝子(pREP2CAP9)を有しているプラスミド;および、3)アデノウイルスヘルパー機能を有しているプラスミド、で同時トランスフェクションした。上述した最適化プロトコルを用いて、2回の連続する塩化セシウム勾配により、ベクターを精製した(Ayuso et al., 2010を参照)。ベクターをPBS+0.001%プルロニック(登録商標)F68で透析し、濾過し、qPCRで滴定し、使用まで−80℃にて保存した(
図2Bを参照)。
【0183】
〔実施例9:AAV9−CAG−ohGALNS−v2の産生〕
3種類の改変プラスミドを用いて、ヘルパーウイルスを使用せずにHEK293細胞をトランスフェクションすることによって、ベクターAAV9−CAG−ohGALNS−v2(配列番号14)を産生した(Matsushita et al., 1998およびWright et al., 2005を参照)。10%FBSを添加したDMEMを入れたローラーボトル(RB)(Corning, Corning, NY, US)中で、70%コンフルエンスにて細胞を培養した。次に、当該細胞を、1)血清型2のAAV2 ITR(pAAV−CAG−ohGALNS−v2;配列番号6)により両端を挟まれている発現カセットを有しているプラスミド;2)AAV2 rep遺伝子およびAAV9 cap遺伝子(pREP2CAP9)を有しているプラスミド;および、3)アデノウイルスヘルパー機能を有しているプラスミド、で同時トランスフェクションした。上述した最適化プロトコルを用いて、2回の連続する塩化セシウム勾配により、ベクターを精製した(Ayuso et al., 2010を参照)。ベクターをPBS+0.001%プルロニック(登録商標)F68で透析し、濾過し、qPCRで滴定し、使用まで−80℃にて保存した(
図3Bを参照)。
【0184】
〔実施例10:AAV9−CAG−ohGALNS−v3の産生〕
3種類の改変プラスミドを用いて、ヘルパーウイルスを使用せずにHEK293細胞をトランスフェクションすることによって、ベクターAAV9−CAG−ohGALNS−v3(配列番号15)を産生した(Matsushita et al., 1998およびWright et al., 2005を参照)。10%FBSを添加したDMEMを入れたローラーボトル(RB)(Corning, Corning, NY, US)中で、70%コンフルエンスにて細胞を培養した。次に、当該細胞を、1)血清型2のAAV2 ITR(pAAV−CAG−ohGALNS−v3;配列番号7)により両端を挟まれている発現カセットを有しているプラスミド;2)AAV2 rep遺伝子およびAAV9 cap遺伝子(pREP2CAP9)を有しているプラスミド;および、3)アデノウイルスヘルパー機能を有しているプラスミド、で同時トランスフェクションした。上述した最適化プロトコルを用いて、2回の連続する塩化セシウム勾配により、ベクターを精製した(Ayuso et al., 2010を参照)。ベクターをPBS+0.001%プルロニック(登録商標)F68で透析し、濾過し、qPCRで滴定し、使用まで−80℃にて保存した(
図4Bを参照)。
【0185】
〔実施例11:AAV9−CAG−omGALNSの産生〕
3種類の改変プラスミドを用いて、ヘルパーウイルスを使用せずにHEK293細胞をトランスフェクションすることによって、ベクターAAV9−CAG−omGALNS(配列番号16)を産生した(Matsushita et al., 1998およびWright et al., 2005を参照)。10%FBSを添加したDMEMを入れたローラーボトル(RB)(Corning, Corning, NY, US)中で、70%コンフルエンスにて細胞を培養した。次に、当該細胞を、1)血清型2のAAV2 ITR(pAAV−CAG−omGALNS;配列番号10)により両端を挟まれている発現カセットを有しているプラスミド;2)AAV2 rep遺伝子およびAAV9 cap遺伝子(pREP2CAP9)を有しているプラスミド;および、3)アデノウイルスヘルパー機能を有しているプラスミド、で同時トランスフェクションした。上述した最適化プロトコルを用いて、2回の連続する塩化セシウム勾配により、ベクターを精製した(Ayuso et al., 2010を参照)。ベクターをPBS+0.001%プルロニック(登録商標)F68で透析し、濾過し、qPCRで滴定し、使用まで−80℃にて保存した(
図5Bおよび配列番号16を参照)。
【0186】
〔実施例12:AAV8−CAG−omGALNSの産生〕
3種類の改変プラスミドを用いて、ヘルパーウイルスを使用せずにHEK293細胞をトランスフェクションすることによって、ベクターAAV8−CAG−omGALNS(配列番号16)を産生した(Matsushita et al., 1998およびWright et al., 2005を参照)。10%FBSを添加したDMEMを入れたローラーボトル(RB)(Corning, Corning, NY, US)中で、70%コンフルエンスにて細胞を培養した。次に、当該細胞を、1)血清型2のAAV2 ITR(pAAV−CAG−omGALNS;配列番号10)により両端を挟まれている発現カセットを有しているプラスミド;2)AAV2 rep遺伝子およびAAV8 cap遺伝子(pREP2CAP8)を有しているプラスミド;および、3)アデノウイルスヘルパー機能を有しているプラスミド、で同時トランスフェクションした。上述した最適化プロトコルを用いて、2回の連続する塩化セシウム勾配により、ベクターを精製した(Ayuso et al., 2010を参照)。ベクターをPBS+0.001%プルロニック(登録商標)F68で透析し、濾過し、qPCRで滴定し、使用まで−80℃にて保存した(
図5Bおよび配列番号16を参照)。
【0187】
〔実施例13:AAV8−hAAT−omGALNSの産生〕
3種類の改変プラスミドを用いて、ヘルパーウイルスを使用せずにHEK293細胞をトランスフェクションすることによって、ベクターAAV8−hAAT−omGALNS(配列番号17)を産生した(Matsushita et al., 1998およびWright et al., 2005を参照)。10%FBSを添加したDMEMを入れたローラーボトル(RB)(Corning, Corning, NY, US)中で、70%コンフルエンスにて細胞を培養した。次に、当該細胞を、1)血清型2のAAV2 ITR(pAAV−hAAT−omGALNS;配列番号11)により両端を挟まれている発現カセットを有しているプラスミド;2)AAV2 rep遺伝子およびAAV8 cap遺伝子(pREP2CAP8)を有しているプラスミド;および、3)アデノウイルスヘルパー機能を有しているプラスミド、で同時トランスフェクションした。上述した最適化プロトコルを用いて、2回の連続する塩化セシウム勾配により、ベクターを精製した(Ayuso et al., 2010を参照)。ベクターをPBS+0.001%プルロニック(登録商標)F68で透析し、濾過し、qPCRで滴定し、使用まで−80℃にて保存した(
図6Bおよび配列番号17を参照)。
【0188】
〔実施例14:AAV9−CAG−hGALNS、AAV9−CAG−ohGALNS−v1、AAV9−CAG−ohGALNS−v2またはAAV9−CAG−ohGALNS−v3のMPSIVAマウスへの静脈注射〕
異なるバージョンのヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ発現カセットを含有するAAV9−CAG−hGALNS、AAV9−CAG−ohGALNS−v1、AAV9−CAG−ohGALNS−v2またはAAV9−CAG−ohGALNS−v3の総投与量5×10
10ベクターゲノムを、2ヶ月齢のMPSIVA罹患マウスに尾静脈注射により静脈内送達した。
【0189】
ベクター送達の2週間後にGALNS活性分析を行った。4種類のガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ含有ベクターのすべてによる形質導入が、ガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ活性を、MPSIVA動物において測定されたレベルよりも実質的に増加させた。ガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼ活性レベルは、肝臓におけるWTレベルの1500%〜2600%の範囲であり、血清におけるWTレベルの55%〜99%の範囲であった(
図7Aおよび7Bを参照)。肝臓において、ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのバージョン2およびバージョン3の両方を含む発現カセットで到達した活性のレベルは、野生型配列を含むベクターによって媒介されるものより高かった(
図7Aを参照)。血清において、ヒトガラクトサミン(N−アセチル)−6−スルファターゼのバージョン2およびバージョン3の両方が、酵素活性を、野生型およびバージョン1よりも大幅に増加させた(
図7Bを参照)。
【0190】
〔実施例15:AAV9−CAG−omGALNS、AAV8−CAG−omGALNSおよびAAV8−hAAT−omGALNSのMPSIVAマウスへの静脈内送達〕
3〜4週齢のMPSIVA動物に、1×10
12ベクターゲノムのAAV9−CAG−omGALNS、1×10
12ベクターゲノムのAAV8−CAG−omGALNS、または1×10
11ベクターゲノムのAAV8−hAAT−omGALNSベクターを、総投与量で200μL、尾静脈に注射した。ベクター投与の4ヶ月後および6ヶ月後、動物を屠殺し、さらなる分析のためにサンプルを収集した。
【0191】
AAV処置の6か月後、MPSIVAで処置された動物の肝臓、大腿骨、脂肪組織および血清中のGALNSの酵素活性は正常化し、健康な動物において観察された値と同程度またはさらに高い値に達した(
図8、9および10を参照)。GALNS活性の回復は、野生型の対照および処置されたGalns
−/−マウスにおける同様の濃度のケラタン硫酸によって示されるように、肝臓および血清における疾病に特徴的な基質蓄積の完全に正常化をもたらした(
図11を参照)。
【0192】
血流への異なるベクターの静脈内投与は他の組織および器官のなかでも主に肝臓の形質導入を生じさせる(Ruzo et al., 2012)。従って、異なるベクターで処置されたMPSIVA雄マウスの肝臓におけるGALNS活性は、健康な動物において観察されたものより約25倍高かった(
図8A、9Aおよび10Aを参照)。
【0193】
肝臓において過剰発現させると、可溶性リソソームタンパク質が効率よく血流に分泌され、この器官を循環酵素の供給源に変える(Ruzo et al., 2012)。処理されたMPSIVAマウスの血清中では、GALNS活性は注射後3か月前後でピークに達し、その後、野生型同腹仔より20〜50倍の範囲の値で長期安定化した(
図8D、9Dおよび10Dを参照)。上記治療の身体的効果を、血清および肝臓のGAG含有量の定量によって評価すると、循環KSレベルおよび肝臓KSレベルの完全な正常化が見られた(
図11を参照)。
【0194】
AAV送達の4ヶ月後、MPSIVAで処置されたマウスの脛骨骨端成長板は、複数の細胞内GAGデポーの存在によって示される細胞内GAG蓄積の明確な減少を示した(
図12を参照)。
【0195】
AAVで処置された動物はまた、細胞内GAG貯蔵の欠如によって示される涙腺におけるGAG蓄積の完全な正常化を示した(
図13Bを参照)。同様に、Mowryコロイド染色で染色した角膜上皮切片におけるGAG陽性領域のシグナル強度の定量化は、AAV9−CAG−omGALNSまたはAAV8−hAAT−omGALNSで処置したGalns
−/−マウスにおいて、角膜上皮の表面のGAG沈着率がGALNS欠損マウスにおいて記録された値よりも減少することを明らかにした(
図13Aを参照)。
【0196】
7か月齢の雄マウスの歯状回および扁桃体の透過型電子顕微鏡による超微細構造解析から、非処理GALNS欠損マウスの細胞の細胞質に明るく見える物質を含む大きな小胞の存在が明らかになった。これらの細胞は歯状回における血管周囲マクロファージ、あるいは扁桃体における神経周囲グリア細胞および内皮細胞と同定された。貯蔵物質で満たされたリソソームであるように見えるこれらの小胞は、AAV9−CAG−omGALNSで処置された健康な野生型動物またはGalns
−/−動物からのサンプル中に全く存在せず、遺伝子導入後のリソソーム区画の正常な大きさの回復が確認された(
図14を参照)。