特表2021-526206(P2021-526206A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-526206象嵌することによって製造される装飾部品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-526206(P2021-526206A)
(43)【公表日】2021年9月30日
(54)【発明の名称】象嵌することによって製造される装飾部品
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/22 20060101AFI20210903BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20210903BHJP
   C25D 11/04 20060101ALI20210903BHJP
   C25D 11/16 20060101ALI20210903BHJP
【FI】
   G04B37/22 Z
   G04B45/00 V
   C25D11/04 E
   C25D11/16 301
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-564933(P2020-564933)
(86)(22)【出願日】2019年6月26日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月19日
(86)【国際出願番号】EP2019066956
(87)【国際公開番号】WO2020002402
(87)【国際公開日】20200102
(31)【優先権主張番号】18180563.1
(32)【優先日】2018年6月28日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ロマン,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ル ブドゥワル,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】オーブリー,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴュイユ,ピエリ
(72)【発明者】
【氏名】ネトゥシル,アレクサンドル
(57)【要約】
本発明は部品(1)を製造するための方法に関し、部品(1)は、部品(1)の目に見えることが意図された面(2a)に装飾を形成する美的要素(3)が充填される少なくとも1つのくぼみ(4)を備えるサポート(2)を備え、前記方法は、
− 前記少なくとも1つのくぼみ(4)を備えたサポート(2)を提供するステップ、および部品(1)の美的要素(3)を形成することが意図されたプリフォームを提供するステップと、
− プリフォームをサポート(2)の前記少なくとも1つのくぼみ(4)に圧入することによって象篏するステップと
を含み、
方法は、プリフォームが結晶性アルミニウム合金製であり、象篏するステップは、結晶性アルミニウム合金の固相線温度と液相線温度の間の温度で実施されることを特徴としている。
本発明は、この方法によって得られる部品(1)に同じく関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品(1)を製造するための方法であって、前記部品(1)は、前記部品(1)の目に見えることが意図された面(2a)に装飾を形成する美的要素(3)が充填される少なくとも1つのくぼみ(4)を備えるサポート(2)を備え、前記方法は、
− 前記少なくとも1つのくぼみ(4)を備えた前記サポート(2)を提供するステップ、および前記部品(1)の前記美的要素(3)を形成することが意図されたプリフォームを提供するステップと、
− 前記プリフォームを前記サポート(2)の前記少なくとも1つのくぼみ(4)に圧入することによって象篏するステップと
を含み、
前記プリフォームが結晶性アルミニウム合金製であり、前記象篏するステップは、前記結晶性アルミニウム合金の固相線温度と液相線温度の間の温度で実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記サポート(2)は、セラミック、サファイヤおよびエナメルの中から選択される材料でできていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サポート(2)はジルコニア系セラミック製であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶性アルミニウム合金は7075合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サポート(2)は、前記象嵌ステップに先立って、300℃と500℃の間の温度に予熱されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
熱間圧入によって象篏する前記ステップは、500kgと1000kgの間の荷重の下で実施されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
熱間圧入によって象篏する前記ステップは、500℃と650℃の間温度で実施されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記象篏ステップの後、前記美的要素(3)の電気化学表面処理ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電気化学表面処理ステップは、前記象篏ステップに引き続く機械研削ステップの後に実施されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのくぼみ(4)は、前記表面処理の間、前記美的要素(3)に電流を供給するための1つまたは複数の接触点(4b)をそれぞれ形成するために、前記部品の目に見えないことが意図された面(2b)のいくつかの場所で開くことを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
部品(1)であって、前記部品(1)の目に見える面(2a)に装飾を形成する美的要素(3)が充填される少なくとも1つのくぼみ(4)を備えるサポート(2)を備え、前記美的要素(3)は結晶性アルミニウム合金製である、部品(1)。
【請求項12】
前記サポート(2)は、セラミック、サファイヤおよびエナメルの中から選択される材料でできていることを特徴とする請求項11に記載の部品(1)。
【請求項13】
前記サポート(2)はジルコニア系セラミック製であることを特徴とする請求項11または12に記載の部品(1)。
【請求項14】
前記結晶性アルミニウム合金は7075合金であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の部品(1)。
【請求項15】
前記少なくとも1つのくぼみ(4)は、1つまたは複数の場所で、前記部品(1)の目に見えないことが意図された面(2b)に開くことを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の部品(1)。
【請求項16】
前記部品は時計学または宝石類のための外部構成要素であることを特徴とする請求項11〜15のいずれか一項に記載の部品(1)。
【請求項17】
前記部品は小型時計ベゼルであり、前記小型時計ベゼルは、前記美的要素(3)として前記ベゼルの目盛または環状部分を形成する前記結晶性アルミニウム合金が充填される少なくとも1つのくぼみ(4)を有する前記サポート(2)を形成することを特徴とする請求項16に記載の部品(1)。
【請求項18】
前記部品はミドル・ケースであり、前記ミドル・ケースは、前記美的要素(3)として、前記ミドル・ケースのホーン(8a)まで展開する前記ミドル・ケースの一部を形成する前記結晶性アルミニウム合金が充填される少なくとも1つのくぼみ(4)を有する前記サポート(2)を形成することを特徴とする請求項16に記載の部品(1)。
【請求項19】
前記少なくとも1つのくぼみ(4)は、前記ホーン(8a)の中に配置されたバー・ホール(10)と連通することを特徴とする請求項18に記載の部品(1)。
【請求項20】
前記美的要素(3)は陽極酸化処理された層を備えることを特徴とする請求項11〜19のいずれか一項に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性金属合金をサポート、とりわけセラミック・サポートに熱間圧入することによる象篏ステップを含む、装飾部品を製造するための方法、およびその方法によって製造される装飾部品に関する。
【背景技術】
【0002】
美的要素を使用して外部小型時計製造構成要素を装飾することは知られている慣行である。例えば目盛などのパターンを使用して装飾された小型時計ベゼルが存在している。一般的にはセラミック製であるこれらのベゼルは、様々な方法で、また、金、銀または白金などの異なる材料を使用してマークを付けることができる。前記マーキングは、エンボス・マーキングまたはディープ・マーキングのいずれかであってもよい。ディープ・マーキングの場合、これは、サポート中の成形済みくぼみを充填することによって達成される。このようなマーキングを製造するために使用される原理は、物理蒸着法(PVD)によって導電性プライマーを堆積させることにある。プライマー層が堆積されると、電鋳によってくぼみに金属が充填される。この方法には、複雑で、かつ、極端に速度が遅い欠点がある。
【0003】
特許文書の欧州特許第2315673号明細書に記載されている別の方法は、美的要素をサポート中に設けられたくぼみに圧入することによって象篏することにある。この文書は、より詳細には、非結晶性金属材料製の美的要素をセラミック・サポートに熱間圧入して、例えば小型時計ベゼルの上に目盛を形成する象篏方法を開示している。非結晶性金属を使用して象篏することにより、低応力および温度の下で、サポートの材料を弱くする危険を伴うことなく作業することができる。しかしながら非結晶性金属とセラミック・サポートの間の対比が欠乏しているため、視覚的外観を最適化することができない。さらに、非結晶性金属を象篏することによって装飾部品を製造するための方法は、金属の非結晶性構造を維持するための適切な取扱いが必要であるため、比較的高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記欠点を克服するために、本発明の目的は、とりわけセラミック製のサポート中に配置された1つまたは複数のくぼみに結晶性金属合金を圧入する象嵌ステップを含む、装飾部品を製造するための方法を提案することである。結晶性金属象嵌には、美的要素とそのサポートの間の対比を大きくすること、および製造コストを低減することが意図されている。本発明によれば、結晶性金属の選択は、他の結晶性金属合金と比較すると、低い温度で変形が可能である、という特定の利点を有するアルミニウム合金に関している。したがって本発明の方法によれば、PVD堆積であれ、あるいは電鋳であれ、他の方法では達成が困難である、アルミニウム製の1つまたは複数の美的要素を備える装飾部品を製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
有利には、製造方法は、象篏ステップおよび任意の機械的な研削ステップの後に、保護目的のため、ならびに/または美的目的のために、象嵌された美的要素の表面状態を変えることが意図された電気化学処理を含む。この処理は、着色の有無にかかわらず、前記要素の選択的陽極酸化処理からなっていてもよい。サポート、とりわけセラミック・サポートは電気導体ではないため、1つまたは複数のくぼみは、使用中は目に見えないことが意図された装飾部品の面に開く。目に見えない面と連絡しているこれらのくぼみは、電気化学処理が施される象嵌された要素に電流をもたらすことができるだけの接触点を形成する。これらの目に見えない接触点により、小型時計ベゼル上のタキメーター目盛などのきわめて多数の微細装飾に電流を供給することができる。広範囲にわたる色、さらには色むらをこれらの装飾上に得ることが可能である。それほど安価ではないアルミニウム合金を象嵌し、次に、陽極酸化処理によってそれを硬化させることを同じく想定することができる。この電気機械処理は、象嵌された装飾上で、それらの最終表面状態、すなわち研磨され、梨地仕上げされ、砂吹きされた状態で実施することができ、したがって製造プロセスの最後に実施することができる。
【0006】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照してなされる、非制限の例として提示される好ましい実施形態についての以下の説明の中で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】装飾部品、詳細には本発明による方法を使用して象篏することによって製造されたアルミニウム合金目盛を備える小型時計ベゼルの平面図である。
図2】この同じ装飾部品の部分断面図である。
図3】本発明による方法を使用して、サポートにアルミニウム合金プリフォームを象篏するステップを示す略図である。
図4】本発明による方法を使用して、サポートにアルミニウム合金プリフォームを象篏するステップを示す略図である。
図5】本発明による方法を使用して、サポートにアルミニウム合金プリフォームを象篏するステップを示す略図である。
図6】本発明による方法を使用して、サポートにアルミニウム合金プリフォームを象篏するステップを示す略図である。
図7】本発明による方法を使用して、サポートにアルミニウム合金プリフォームを象篏するステップを示す略図である。
図8】本発明によって実現される、美的要素をくぼみの中に保持するための手段の変形例を示す図である。
図9】本発明によって実現される、美的要素をくぼみの中に保持するための手段の変形例を示す図である。
図10】くぼみが背面、すなわちベゼルの目に見えない面に出現する、図2の変形例を示す図である。
図11A】いくつかの美的要素が象嵌されたベゼルの前面、すなわち目に見える面を、1つの美的要素に的を絞ったベゼルの部分断面図と共に示す図である。
図11B】この同じベゼルの背面を示す図である。
図12A】バー・ホールと連絡しているくぼみをケース・ミドルの中に備える小型時計ケースの三次元図である。
図12B】くぼみの中に象嵌された美的要素を備えるこの同じ小型時計ケースを示す図である。
図12C】くぼみの中に象嵌された美的要素を備え、また、石がセットされたこの同じ小型時計ケースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、象篏とも呼ばれる、1つまたは複数のくぼみを備えたサポートに1つまたは複数の美的要素を熱間圧入することによって装飾部品を製造するための方法、およびこの方法によって得られる装飾部品に関している。部品は、とりわけ、ベゼル、文字盤、ケース、クラウン、プッシャー、水晶、ブレスレット要素、等々などの外部時計構成要素であってもよい。図1および図2に示されている例として、部品1は、くぼみ4を備えたサポート2を形成している環状ボディーを含む小型時計ベゼルであり、くぼみ4は、目盛を形成している美的要素3を受け取るために前記サポート2の中に配置されている。
【0009】
本発明によれば、美的要素は結晶性金属合金製であり、より正確には結晶性アルミニウム合金製である。サポートは低延性材料製であることが好ましい。低延性材料製は、例えばセラミック、サファイヤ、エナメル、等々であってもよい。サポートはセラミックであることが好ましく、また、ジルコニアであることがより好ましい。したがって部品は、アルミニウム合金製の目盛を有するジルコニア小型時計ベゼルであってもよい。詳細には、アルミニウム合金は、約6重量%の量の亜鉛を含む7075合金であってもよい。アルミニウム合金は、650℃近辺のその低融解温度の結果として、低い温度で可鍛性である利点を有している。
【0010】
サポート2は、レーザー・エッチング、機械加工、等々によって構築された少なくとも1つのくぼみ4を備えている。目に見えることが意図されたサポート2の表面2aでは、くぼみ4は、所望の装飾の輪郭に対応する形状4aを有している。このくぼみ4は、盲目にすることも(図2)、あるいはサポート2の目に見えない面2bに開いていてもよい(図10)。くぼみ4の体積全体に、サポート2の表面2aから突出し、あるいはサポート2の表面2aと同じ高さの美的要素3が充填されることが有利である。変形態様では、くぼみの体積の一部分のみに美的要素を充填することを同じく想定することができる。空洞4は、くぼみ内における美的要素の最適保持に適した幾何形状を有する側面7を有している。図3に概略的に示されているように、側面7は、サポート2の目に見える表面2aに対して実質的に直角であってもよく、美的要素はくぼみ内の摩擦によって保持される。図には示されていない好ましい変形態様によれば、側面は少なくとも部分的に傾斜し、目に見える表面に向かって狭くなり、美的要素がくぼみから出ていくのを防止している。図8に示されている別の好ましい変形態様によれば、側面7は、傾斜している、していないにかかわらず、ハウジング5が貫かれており、このハウジング5に美的要素が充填されると、傾斜した壁と同じ方法でストップを形成し、美的要素の移動を防止する。図9に示されている別の好ましい変形態様によれば、くぼみ4の中に突起6を配置して、美的要素を保持するための手段と同様の役割を実施させることができる。
【0011】
本発明によれば、美的要素は、美的要素を形成しているアルミニウム合金の固相線温度と液相線温度の間、典型的には500℃と650℃の間の温度におけるサポートのくぼみへの熱間圧入によって象嵌される。より正確には、本発明の製造方法の象篏ステップは、図3乃至図7を参照して概略的に示される。最初に、1つまたは複数のくぼみ4を備えたサポート2が提供される。同様に、美的要素3を形成するためのプリフォームが提供される。小型時計ベゼルをアルミニウム目盛で装飾する場合、象嵌される美的要素は環状プリフォームの形態であり、リング径および幅は、目盛のリング径および幅の寸法と実質的に等価である。象篏プロセスの間、プリフォームがプレスに粘着するのを防止するために、例えば窒化ホウ素の抗接着層をプレス接触面に加えることができる。第1のステップでは、熱衝撃を防止するためにサポートが予熱される。予熱温度は300℃と500℃の間であることが好ましい。次に、プリフォーム3がサポート2の表面2aに、くぼみ4と同じ高さで置かれる(図4)。このアセンブリーはプレスの中に置かれ、そこでプリフォームがプリフォーム材料の固相線温度と液相線温度の間からなる温度に加熱され、それにより圧入プロセスに先立って材料が軟化する。次に、くぼみ4にアルミニウム合金を充填するためにプリフォーム3に圧力Pが加えられる(図5および図6)。象篏プロセスの間の荷重は、サポートの損傷を回避するために、1000kg未満の値に維持されることが好ましい。この荷重は500kgと800kgの間であることが好ましい。この圧入サイクルは、望ましい最大圧力まで加圧する前の予荷重ステップと共にいくつかのステップで実施することができる。次に、アルミニウム合金をくぼみの中に象篏するステップに引き続いて冷却ステップが実施され、また、恐らくは、余分の美的要素3を除去し(図7)、また、不連続性が全く存在することなく互いに接続されたサポートおよび美的要素の目に見える表面を作り出すために、研磨などの機械研削ステップが実施される。
【0012】
一例として、アルミニウム7075合金をジルコニア・サポートの中に象嵌する場合、サポートは450℃に予熱され、プリフォームは、90秒の間、550℃に加熱され、かつ、750kg近辺の荷重の下で加圧される。
【0013】
機械研削ステップの後、美的要素に仕上げ処理が施されることが有利である。この処理は、象嵌された金属材料の選択的電気化学処理であってもよく、より正確には、この処理は、象嵌された材料の外観および/または硬さを変えるための着色の有無にかかわらず、陽極酸化処理プロセスであってもよい。本発明は、主として電気的に非導電性のサポートのためのものであることが意図されているため、電気化学処理の間、装飾部品上で絶対に目に見えてはならない接触点を介して美的要素に電流を供給することは困難である。そのために、くぼみのうちの1つまたは複数は、装飾部品の目に見えなくなる面に開くように構成される。目に見えない面に開いているこれらのくぼみは、象嵌された美的要素に電流を供給することができるだけの接触点を形成する。結晶性アルミニウム合金を象篏することによって製造された目盛を備えるセラミック小型時計ベゼルの例に戻ると、個々の目盛のためのくぼみ4は、図10に示されているようにベゼル1の背面2bに開いている。接触点4bにより、電気化学処理の間、個々の目盛に電流を供給することができる。サポート2の背面2bのこれらの接触点4bは、サポート2の目に見える面2aに開いているくぼみの部分4aの断面よりも小さい断面を有することができる。これらの接触点により、目盛毎に同じ電気化学処理を実施することができ、あるいは任意選択で異なる処理を組み合わせることができ、したがって電気化学処理毎に1つまたは複数の目盛にのみ電流を供給することによって着色することができる。
【0014】
図11Aおよび図12Bの例の場合のように美的要素3のサイズがより大きい場合、美的要素の一様な電気化学処理を保証するために、場合によっては美的要素毎にいくつかの接触点が必要である。図11Aでは、例えば3つの美的要素3がベゼル1の目に見える面2aの環状部分に分散している。この構成では、美的要素3は、非導電性材料製の目盛を含む基板2の上に象嵌されている。図11Bで見ることができるベゼル1の背面2bでは、ベゼル1は、くぼみ4と連絡して、これらの3つの要素に電流を供給するための接触点を形成しているいくつかのオリフィス4bを備えている。図11Aの断面図に示されているように、美的要素3毎に2つの接触点4bが提供されている。図12Bおよび図12Cは、サポートの中に配置されたくぼみの中に象嵌されたアルミニウム美的要素の別の構成を示したものである。美的要素3は、小型時計ケース8のミドル部品のホーン8aまで展開しており、また、石9を設定するためのハウジング3aを備えている。他の例と同様の方法で、美的要素を受け取るくぼみは、少なくとも1つの位置で小型時計ケースの目に見えない面に開いている。したがって図12Aに示されているように、くぼみ4はバー・ホール10と連絡することを想定することができる。当然、くぼみ4は、いくつかの場所で、他の貫通孔を介して連絡することができ、それにより美的要素3に電流を供給する接触点を作り出すことができる。したがって本発明によれば、石が設定されると、小型時計ケースの目に見えない面に設けられた電気接触点によって美的要素を電気化学的に処理することができる。
【0015】
以上、本発明について、小型時計製造のための装飾部品に対してより特定的に例証したが、本発明の方法は、宝石類、電話通信、自動車産業、等々などの多くの他の分野における装飾部品の製造に適用されることは明らかである。
【0016】
図面の手引き
(1) 装飾部品
(2) サポート
a.目に見える面
b.目に見えない面
(3) 美的要素またはプリフォーム
a.ハウジング
(4) くぼみ
a.サポートの目に見える面に開いている部分
b.サポートの目に見えない面に開いている部分
(5) くぼみの内側のハウジング
(6) くぼみの中の突起
(7) くぼみの側面
(8) 小型時計ケース
a.ホーン
(9) 石
(10) バー・ホール
【符号の説明】
【0017】
1 部品(ベゼル)
2 サポート(基板)
2a サポートの目に見える表面
2b サポートの目に見えない面
3 美的要素(プリフォーム)
3a ハウジング
4 くぼみ(空洞)
4a 所望の装飾の輪郭に対応する形状
4b 接触点(オリフィス)
5 ハウジング
6 突起
7 くぼみの側面
8 小型時計ケース
8a ホーン
9 石
10 バー・ホール
P 圧力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
【国際調査報告】