特表2021-526598(P2021-526598A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-526598不織繊維集合体およびこれを用いたマスクパックシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-526598(P2021-526598A)
(43)【公表日】2021年10月7日
(54)【発明の名称】不織繊維集合体およびこれを用いたマスクパックシート
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/013 20120101AFI20210910BHJP
   D01F 2/00 20060101ALI20210910BHJP
   D04H 3/015 20120101ALI20210910BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20210910BHJP
   D04H 3/018 20120101ALI20210910BHJP
   A45D 44/22 20060101ALI20210910BHJP
【FI】
   D04H3/013
   D01F2/00 Z
   D04H3/015
   D04H3/16
   D04H3/018
   A45D44/22 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-565990(P2020-565990)
(86)(22)【出願日】2019年6月14日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月25日
(86)【国際出願番号】KR2019007218
(87)【国際公開番号】WO2020004843
(87)【国際公開日】20200102
(31)【優先権主張番号】10-2018-0075232
(32)【優先日】2018年6月29日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジン,サン ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウ チョル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨン クワン
【テーマコード(参考)】
4L035
4L047
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB03
4L035BB66
4L035DD02
4L035DD13
4L035EE05
4L035FF04
4L035FF05
4L047AA08
4L047AA12
4L047AB03
4L047AB06
4L047AB09
4L047BA05
4L047CA19
4L047CB07
4L047CC03
(57)【要約】
本発明は、不織繊維集合体およびこれを用いたマスクパックシートに関するものであって、具体的に、産業資材用途には優れた曲げ特性、衣類やインテリアの用途には良好な感触と柔らかな光沢特性、マスクパック不織繊維集合体の用途には透明性、皮膚密着性、水分などの溶媒の吸収性および維持性、滑らかな表面触感などの優れた物性特徴を有する、比表面積が大きいリヨセル繊維を含む不織繊維集合体およびこれを用いたマスクパックシートに関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパルプおよびN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸して製造されたリヨセル繊維を含み、
前記リヨセル繊維に含まれるリヨセルモノフィラメントの断面は、複数個の突起を含み、
前記複数個の突起は、仮想の第1円、および前記仮想の第1円の内部に含まれている仮想の第2円と接するが、前記仮想の第2円を中心部として一体型に形成され、その末端が前記仮想の第1円と接する形状を有する、不織繊維集合体。
【請求項2】
前記リヨセル紡糸ドープは、セルロースパルプ6〜16重量%;およびN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液84〜94重量%を含む、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項3】
前記セルロースパルプは、アルファ−セルロース含量が85〜97重量%であり、重合度(DPw)が600〜1700である、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項4】
前記リヨセル繊維は、下記式1で定義される空間占有率が150〜300%である、請求項1に記載に不織繊維集合体。
<式1>
空間占有率(%)=(仮想の第1円の面積/リヨセルモノフィラメントの断面積)×100
【請求項5】
前記仮想の第1円は、半径が6.0〜7.8μmである、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項6】
前記仮想の第2円は、半径が1.8〜2.1μmである、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項7】
前記仮想の第1円と仮想の第2円は、その中心が同一である、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項8】
前記リヨセル繊維の繊度は1.0〜1.5デニールである、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項9】
前記リヨセル繊維の繊維長は36〜40mmである、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項10】
前記リヨセル繊維のクリンプ数は8〜12cpiである、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項11】
前記リヨセル繊維は、油剤含有量が前記リヨセル繊維100重量%に対して0.1〜0.4重量%である、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項12】
前記不織繊維集合体の坪量は30〜60g/m2である、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項13】
前記不織繊維集合体の厚さは0.3〜0.6mmである、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項14】
前記不織繊維集合体は、水分吸収率が前記リヨセル繊維重量に対して1000〜1600%である、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項15】
前記不織繊維集合体は、水分処理後の透明度が80〜84%である、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項16】
前記不織繊維集合体は、エッセンス処理後の透明度が88〜94%である、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項17】
前記不織繊維集合体は、水分処理後の皮膚密着力が3.6〜4.2gfである、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項18】
前記不織繊維集合体はエッセンス処理後の皮膚密着力が4.5〜5.3gfである、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項19】
前記不織繊維集合体は、油剤含有量が前記不織繊維集合体100重量%に対して0.001重量%以下である、請求項1に記載の不織繊維集合体。
【請求項20】
請求項1による不織繊維集合体を用いたマスクパックシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2018年6月29日付韓国特許出願第10−2018−0075232号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リヨセル繊維を含む不織繊維集合体およびこれを用いたマスクパック(フェイスパック)シートに関するものである。
【背景技術】
【0003】
繊維は、形状を見たとき、柔軟で細く、太さに対する長さの比が大きい天然または人造の線状物体を意味する。このような繊維をその形態面で区分すれば長繊維、準長繊維、短繊維に分けられ、原料面で区分すれば天然繊維と人造繊維に分けられる。
【0004】
以前から、繊維は人間の生活と密接な関係を持ってきたが、綿、麻、羊毛、絹繊維といった天然繊維は、被服の主原料として使用されてきた。産業革命以後、科学技術の発展に伴い、繊維は、被服の材料だけでなく、工業用へもその用途が拡大されたのであり、文化の発達と人口の増加に伴って急激に増加した繊維の需要を充足させるために、新たな繊維材料として人造繊維の分野が開拓されるようになった。
【0005】
このような人造繊維のうち、再生繊維は、肌触りおよび着心地に優れるだけでなく、綿より遥かに速い水分吸収および排出の能力を有していて、被服の原料として多く使用されてきた。特に、このような再生繊維のうち、レーヨン繊維は、優れた光沢性および発色性を有し、天然繊維と同等の肌触りを実現することができるだけでなく、人体に無害な素材として認識されて過去に広範囲に使用された。しかし、このようなレーヨン繊維は、収縮およびシワがよく発生するという素材の特性を有しており、製造過程が複雑であって、木材パルプなどを溶かす過程で多くの化学薬品が使用されることから、作業上の環境問題と、廃水処理などの過程で環境汚染を引き起こすという問題点を有していた。
【0006】
これにしたがい、環境および人体に無害であり、物性も従来のその他の繊維より優れた繊維に関する研究が行われ、最近、天然パルプおよびアミンオキシド水和物から製造されるリヨセル(Lyocell)繊維が紹介された。このようなリヨセル繊維は、従来の再生繊維に比べて優れた引張特性や肌触りなどの繊維特性を有しながらも、生産工程で一切の汚染物質を発生させず、使用されるアミンオキシド系溶媒がリサイクル可能であり、廃棄の際に生分解され、環境にやさしい繊維として多様な分野に使用されている。
【0007】
但し、現在、リヨセル繊維はその断面の形態が円形である製品のみ生産可能であるが、リヨセル繊維の断面形態によって多様な物性を示すことができると期待されている。また、リヨセル繊維を含む不織繊維集合体に関する技術について日本公開特許第2009−540140号で紹介している。
【0008】
しかし、このような技術を使用しても、空間占有率の引き上げによって比表面積が大きくなるという効果がなく、スウェリング特性や界面接着特性、速乾性の特性などの様々な特性が優れていないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れた曲げ特性、良い感触と柔らかな光沢特性、透明性、皮膚密着性、水分などの溶媒の吸収性および維持性、滑らかな表面触感などの優れた物性特徴を有する不織繊維集合体を提供するためのものである。
【0010】
また、本発明は、前記不織繊維集合体を用いて透明性、皮膚密着性、水分など溶媒吸収性および維持性、滑らかな表面触感に優れたマスクパックシートを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、セルロースパルプおよびN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸して製造されたリヨセル繊維を含み、前記リヨセル繊維に含まれるリヨセルモノフィラメントの断面は複数個の突起を含み、前記複数個の突起は、仮想の第1円、および、前記仮想の第1円の内部に含まれている仮想の第2円と接するが、前記仮想の第2円を中心部として一体型に形成され、その末端が前記仮想の第1円と接する形状を有する不織繊維集合体が提供される。
【0012】
また、本明細書では、前記不織繊維集合体を用いたマスクパックシートが提供される。
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態による不織繊維集合体およびこれを用いたマスクパックシートについて、より詳細に説明する。
【0014】
本明細書で、第1および第2の用語は多様な構成要素を説明することに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、セルロースパルプおよびN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸して製造されたリヨセル繊維を含み、前記リヨセル繊維に含まれるリヨセルモノフィラメントの断面は複数個の突起を含み、前記複数個の突起は仮想の第1円および前記仮想の第1円の内部に含まれている仮想の第2円と接するが、前記仮想の第2円を中心部にして一体型に形成されその末端が前記仮想の第1円と接する形状を有する不織繊維集合体を提供することができる。
【0016】
前記リヨセル(Lyocell)繊維は、天然パルプおよびアミンオキシド水和物から製造されるものであって、従来の再生繊維に比べて優れた引張特性と触感などの繊維特性を有しうる。また、前記リヨセル繊維は、親水性物質に該当し、単織繊繊度を低めるほど比表面積が高くて水分吸収力に優れるため、リヨセル繊維を含む不織繊維集合体に水分およびエッセンスなどの液状組成物を含浸させた時、不織繊維集合体の吸水力が高まり、不織繊維集合体内の液状組成物維持力も高くなり得る。
【0017】
但し、従来のリヨセル繊維はその断面の形態が円形である製品のみ生産可能であり、断面が円形であるリヨセル繊維は比表面積が大きくなる効果がないためスウェリング特性や界面接着特性、速乾性特性などの色々な特性が優れないという問題点がある。そこで、本発明者らは前記問題点を解決するために、比表面積の大きいリヨセル繊維を含む不織繊維集合体を提供することで、既存の円形断面のリヨセル繊維を含む不織繊維集合体にて提供できなかった物理的特性を発揮することができるのを確認し、本発明を完成することとなった。
【0018】
また、前記不織繊維集合体に含まれるリヨセル繊維は、セルロースパルプおよびN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸して製造され、特に、N−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液を使用することによってリヨセル紡糸ドープでセルロースパルプをより容易に溶解させる効果があるという点を確認した。
【0019】
さらに、前記不織繊維集合体は、優れた曲げ特性によって産業資材用途として使用でき、良い感触と柔らかな光沢特性によって衣類やインテリア用途として使用でき、透明性、皮膚密着性、水分などの溶媒の吸収性および維持性、滑らかな表面触感などの優れた物性特徴によってマスクパック不織繊維集合体用途として使用できる。
【0020】
前記一実施形態による不織繊維集合体に含まれるリヨセル繊維は、1個以上のリヨセルマルチフィラメントを含み、このようなリヨセルマルチフィラメントは、1個以上のリヨセルモノフィラメントを含むことができる。
【0021】
前記リヨセルモノフィラメントは、異形断面(multi lobal)を有することができ、具体的に、異形断面とは、複数個の突起2を含む形状を意味する。
【0022】
図1は前記リヨセルモノフィラメントの断面を模式的に示した図であって、これによれば、前記リヨセルモノフィラメントの異形断面は、一つの中心部1を中心にして一体型に形成された複数個の突起2の形状を有することができる。
【0023】
具体的に、前記異形断面は、複数個の突起2のそれぞれの末端点をつなぐ仮想の第1円11、および、前記仮想の第1円11の内部に含まれている仮想の第2円12の範囲内で、その大きさと形状を定義することができる。ここで、前記仮想の第1円11および仮想の第2円12は、前記仮想の第1円11は前記仮想の第2円12に比べてその半径が大きい円であり、仮想の第1円と第2円は中心が同一なものであってもよい。
【0024】
前記異形断面は複数個の突起2を含むものであって、複数個の突起2は前記仮想の第2円12と重なり合う中心部1と一体型に形成されており、それぞれの突起の末端5は前記仮想の第1円11と接し、突起の間に形成された凹部4は、仮想の第2円12と接する形状を有することができる。
【0025】
また、前記リヨセル繊維の比表面積を最大化するために、前記異形断面は2個以上、3個以上または3個の突起を含むことができる。
【0026】
前記仮想の第1円11は、半径が6.0〜7.8μm、6.5〜7.7μmまたは7.0〜7.5μmであってもよい。前記仮想の第1円の半径が6.0μm未満である場合、異形断面形態の実現が不可能であり、7.8μm超過である場合、繊維製品として適した繊度を有するモノフィラメントを形成しにくいことがある。
【0027】
一方、前記仮想の第2円12は、半径が1.8〜2.1μmであってもよい。前記仮想の第2円の半径が1.8μm未満である場合、異形断面形態の実現が不可能であり、2.1μm超である場合、繊維製品として適した繊度を有するモノフィラメントを形成しにくいのでありうる。
【0028】
前記リヨセルモノフィラメントが前述のような異形断面を有することによって、前記リヨセル繊維は下記式1で定義される空間占有率が150〜300%または150〜200%であり得る。
【0029】
<式1>
空間占有率(%)=(仮想の第1円の面積/リヨセルモノフィラメントの断面積)×100
【0030】
前記空間占有率は、異形断面の複数個の突起によってモノフィラメントが実質的に繊維中で占めるようになる空間の比率を意味する。即ち、リヨセル繊維に含まれているモノフィラメントの断面が円形断面である場合は、実際のモノフィラメントの断面積と、仮想の第1円の面積とが同一であるので、前記のように定義される空間占有率が100%である。しかし、突起を含む異形断面を有する前記リヨセル繊維の場合は、その突起により、繊維が占める実際の面積は大きくなる。したがって、空間占有率が大きくなるほど、繊維の比表面積が大きくなるのが分かる。
【0031】
また、前述の空間占有率を満足するリヨセル繊維は、比表面積が大きくなった効果によって、スウェリング特性や界面接着特性、速乾性特性などの様々な特性が優れるようになり得る。
【0032】
前記一実施形態による不織繊維集合体に含まれるリヨセル繊維は、セルロースパルプおよびN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸して製造された繊維である。
【0033】
前記リヨセル繊維は、N−メチルモルホリン−N−オキシドを含むリヨセル紡糸ドープが紡糸されて製造されることによって、リヨセル紡糸ドープでセルロースパルプをより容易に溶解させる効果がある。
【0034】
具体的に、前記リヨセル紡糸ドープは、セルロースパルプ6〜16重量%;およびN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液84〜94重量%を含むことができる。例えば、前記セルロースパルプおよびN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液の重量比は、6:94〜16:84、8:92〜14:86〜10:90〜12:88でありうる。
【0035】
前記リヨセル紡糸ドープにおいてセルロースパルプの含量が過度に少なければ繊維的特性を実現しにくく、セルロースパルプの含量が過度に多ければ水溶液中に溶解しにくいのでありうる。また、リヨセル紡糸ドープにおいて前記N−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液の含量が過度に少なければ溶解粘度が非常に高まるという問題点があり、N−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液の含量が過度に多ければ紡糸粘度が非常に低まって紡糸段階で均一な繊維を製造し難いのでありうる。
【0036】
また、前記セルロースパルプは、アルファ−セルロース含量が85〜97重量%、89〜95重量%、または92〜94重量%でありうる。また、前記セルロースパルプの重合度(DPw)は600〜1700、700〜1600、または800〜1300でありうる。
【0037】
前記N−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液で、N−メチルモルホリン−N−オキシドと水との重量比が93:7〜85:15でありうる。前記N−メチルモルホリン−N−オキシドと水との重量比が93:7を超過する場合には、溶解温度が高まって、セルロースの溶解時にセルロースの分解が発生することがあり、前記重量比が85:15未満である場合には、溶媒の溶解性能が低下してセルロースの溶解が困難でありうる。
【0038】
前述のリヨセル紡糸ドープが紡糸されて製造されたリヨセル繊維はステープルの短繊維の形態に製造でき、これはマスクパック用で重要な物性、例えば、皮膚密着力、エッセンスの吸収力および維持力、柔らかな感触などが、他素材に比べて非常に優れることから、マスクパック用不織繊維集合体に使用できる。
【0039】
前記リヨセル繊維の繊度は、1.0〜1.5デニールでありうる。前記リヨセル繊維の繊度が1.0デニール未満であれば、リヨセル繊維の製造に解決困難な問題が発生し、1.5デニールを超過する場合には、マスクパックに適用される一般的な繊度であるために特徴がなく、皮膚密着力やエッセンス吸収力などの物性が一般的な水準を示す。
【0040】
前記繊度は、下記式2で定義されるものであって、断面の分析を通じて得られた実際のリヨセルモノフィラメントの断面積と、リヨセル繊維の密度(1.49g/cm2)とを用いて得ることができる。
【0041】
<式2>
繊度(De)=[リヨセル繊維のモノフィラメントの断面積(μm2)×リヨセル繊維の密度(g/cm3)×9000(m)]/1000000
【0042】
また、前記リヨセル繊維はステープル繊維であって、繊維長は36〜40mm、または37〜39mmでありうる。前記リヨセル繊維が前記繊維長範囲内で不織繊維集合体として使用される場合、不織繊維集合体の製造工程の中のカーディング工程での工程性が優れるのでありうる。
【0043】
また、前記リヨセル繊維のクリンプ数は、5〜20cpiまたは8〜12cpiであってもよい。前記クリンプ数が過度に少なければ不織繊維集合体製造工程の中のカーディング工程で繊維間の絡み合いが低くて工程の問題が発生し、クリンプ数が過度に多ければ不織繊維集合体の製造工程の中のカーディング工程で開繊が良好に行われないという問題が発生する。
【0044】
また、前記リヨセル繊維は、油剤含有量が0.1〜0.4重量%、または0.2〜0.3重量%でありうる。前記油剤がこの重量%範囲を満足する場合に、後述のフィラメントがクリンプトウに形成される過程で発生する摩擦を減らし、繊維間クリンプを良好に形成することができ、また、不織繊維集合体の製造時にカーディング性を良好なものとすることができる。
【0045】
前記リヨセル繊維を含む前記一実施形態の不織繊維集合体は、同じ単位重量であると、一般的な円形断面繊維に比べて不織繊維集合体の厚さが薄いので、これをマスクパックに使用する場合、エッセンスなど化粧品溶媒にディッピングすれば、柔らかな感触と共に透明になり皮膚密着力が非常に優れた特徴を有することができる。
【0046】
また、前記不織繊維集合体に含まれるリヨセル繊維の比表面積は、同一繊度の円形断面繊維に比べて大きいことによって、これをマスクパックに使用する場合、エッセンスなどの溶媒に対する吸収力が高いため、エッセンスの維持力も優れていて、他素材に比べて大きな効果を示すことができる。
【0047】
一方、前記不織繊維集合体の坪量は、30〜60g/m2、35〜55g/m2または40〜50g/m2であってもよい。また、不織繊維集合体の厚さは0.3〜0.6mm、0.35〜0.58nm、または0.4〜0.55mmであってもよい。前記不織繊維集合体の厚さは、ステープル繊維の単繊度および不織繊維集合体の坪量に応じて変わる物性であって、ステープル繊維の単繊維繊度が低いほど、不織繊維集合体の坪量が小さいほど、厚さは薄くなり得る。前記の坪量および厚さの範囲は、前記リヨセル繊維の繊度、繊維長、クリンプ数、油剤含有量を満足する、前記リヨセル繊維を含む不織繊維集合体中における液状組成物の吸収率、透明度および密着力を向上させるための最適の範囲を意味する。
【0048】
また、前記不織繊維集合体は、水分吸収率が1000〜1600%、1100〜1600%、または1300〜1600%であってもよい。前述のように、前記リヨセル繊維は、親水性に該当し水分吸収率が他の繊維に比べて高い方であるが、前記リヨセル繊維の特性を満足させながら前記不織繊維集合体の坪量および厚さの範囲を満足する場合に、前記リヨセル繊維を含む不織繊維集合体の水分吸収率を前記範囲に合わせるようにして吸収させることができる。
【0049】
また、前記不織繊維集合体は、水分処理後の透明度が80〜84%であってもよく、エッセンス処理後の透明度が88〜94%であってもよい。前記不織繊維集合体の透明度については、前記リヨセル繊維の繊度が1.0〜1.4デニールであって細繊度に該当し、前記リヨセル繊維を含む不織繊維集合体の厚さも薄くなるため、水分およびエッセンスなどの液状組成物を前記不織繊維集合体に処理すれば、柔らかな感触と共に前記透明度の範囲内の透明性を有することができる。一方、前記不織繊維集合体に水分またはエッセンス処理するということは、不織繊維集合体を水またはエッセンスなどの液状組成物に担持するか浸漬するということを意味する。
【0050】
また、前記不織繊維集合体は、水分処理後の皮膚密着力が3.6〜4.2gfであり得、エッセンス処理後の皮膚密着力が4.5〜5.3gfであり得る。前記不織繊維集合体の皮膚密着力も前記リヨセル繊維の特性を満足し、これを含む不織繊維集合体の坪量および厚さによって前記範囲を満足させることができる。一方、前記不織繊維集合体に水分またはエッセンス処理するということは、不織繊維集合体を水またはエッセンスなどの液状組成物に担持するか浸漬するということを意味し、皮膚密着力は水分またはエッセンス処理された不織繊維集合体を人の皮膚に粘着させた後に剥ぎ取りながら示される粘着力を測定したものである。
【0051】
また、前記不織繊維集合体は、油剤含有量が前記不織繊維集合体100重量%に対して0.001重量%以下でありうる。前記不織繊維集合体は、不織繊維集合体の製造工程の中のスパンレース工程での水流交絡時、リヨセル繊維が含有している油剤が大部分洗い落とされるようになって前記のような含有率を示すことができる。
【0052】
発明の他の実施形態によれば、前記不織繊維集合体を用いたマスクパックシートを提供する。
【0053】
前述のように、不織繊維集合体は水分またはエッセンスなどの溶媒に対する吸収力および維持力が高く、水分またはエッセンスなどの溶媒処理後にも透明度および皮膚密着力が高いので、このような不織繊維集合体を用いたマスクパックシートは、マスクパックシートの最も重要な物性である透明性、皮膚密着力、エッセンス吸収力および維持力、柔らかな感触などについて、他の素材に比べて非常に優れた効果がある。
【0054】
また、前記マスクパックシートは屈曲の多い顔の部位でも皮膚密着力および着用感に優れるだけでなく、水分およびエッセンスなどの液状組成物の吸水性に優れ、顔の部位に効果的に栄養を供給することができる。
【0055】
前記不織繊維集合体の製造方法には、通常知られた不織繊維集合体製造方法を使用することができるが、具体的に、(S1)セルロースパルプおよびN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸する段階;(S2)前記(S1)段階で紡糸されたリヨセル紡糸ドープを凝固させてリヨセルマルチフィラメントを得る段階;(S3)前記(S2)段階で得られたリヨセルマルチフィラメントを水洗する段階;および(S4)前記(S3)段階で水洗されたリヨセルマルチフィラメントを油剤処理する段階;(S5)前記(S4)段階で油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントについて、スタッファーボックス(stuffer box)を通じてクリンピングしてクリンプトウ(crimped tow)を得る段階;(S6)前記(S5)段階で得られたクリンプトウを乾燥およびカッティングしてリヨセルステープル繊維を得る段階;および(S7)前記(S6)段階で得られたリヨセルステープル繊維を不織繊維集合体に製造する段階を含むことができる。
【0056】
[(S1)段階]
(S1)段階はセルロースパルプおよびN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液を含むリヨセル紡糸ドープを紡糸する段階であって、リヨセル紡糸ドープに含まれているセルロースパルプとN−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液の含量/重量比、アルファ−セルロースの含量、セルロースパルプの重合度、N−メチルモルホリン−N−オキシド水溶液における水の含量は前述の一実施形態の不織繊維集合体で述べた通りである。
【0057】
前記リヨセル紡糸ドープの紡糸は、紡糸口金の紡糸ノズルからリヨセル紡糸ドープが吐出される際に行われ、紡糸ノズルから吐出された紡糸ドープはフィラメント形状(状)を示しうる。この際、前記紡糸口金は、フィラメント状の紡糸ドープを、エアギャップ区間を通じて凝固槽内の凝固液として吐出させる役割を果たすことができる。前記紡糸ドープを紡糸口金から吐出させる段階は、80〜130℃の紡糸温度下で行うことができる。
【0058】
前記紡糸口金は、口金ホールの形状について、複数個のホールを一つの単位ホールであると設定したとき、前記単位ホールが複数個形成された紡糸口金でありうる。ここで、前記単位ホールに含まれている複数個のホールの個数は、異形断面の突起の個数と同一でありうる。例えば、3個の突起を含む異形断面を有するモノフィラメントを含むリヨセル繊維を製造するために、単位ホールに含まれているホールの個数は3個でありうる。
【0059】
[(S2)段階]
(S2)段階は前記(S1)段階で紡糸されたリヨセル紡糸ドープを凝固させてリヨセルマルチフィラメントを得る段階であって、前記(S2)段階の凝固は、冷却空気を紡糸ドープに供給して凝固させるエアクエンチング(air quenching、Q/A)による1次凝固段階;および1次凝固された紡糸ドープを凝固液に投入して凝固させる2次凝固段階を含むことができる。
【0060】
前記(S1)段階で、紡糸口金を通じて紡糸ドープを吐出させた後には、これについて、前記紡糸口金と、凝固槽との間の空間であるエアギャップ区間を通過させることができる。このようなエアギャップ区間には、ドーナツの形態の口金の内側に位置した空冷部より、口金の内側から外側へと冷却空気が供給されるが、このような冷却空気を紡糸ドープに供給するエアクエンチング(air quenching)によって1次凝固されうる。
【0061】
この際、(S2)段階で得られるリヨセルマルチフィラメントの物性に影響を与える要素は、エアギャップ区間での冷却空気の温度および風速であり、(S2)段階の凝固は4〜15℃の温度および5〜10m/sの風速を有する冷却空気を紡糸ドープに供給して凝固することでありうる。
【0062】
前記1次凝固時の冷却空気の温度が4℃未満であれば、口金の表面が冷め、リヨセルマルチフィラメントの断面が不均一になり、紡糸工程性も良好でなくなり、15℃超であれば、冷却空気による1次凝固が十分に行われないことから紡糸工程性が良好でなくなる。
【0063】
また、1次凝固時の冷却空気の風速が5m/s未満であれば、冷却空気による1次凝固が十分に行われないことから紡糸工程性が良好でなくなって糸切れが発生し、10m/s超であれば、口金から吐出される紡糸ドープが空気によって揺り動かされることで紡糸工程性が良好でなくなる。
【0064】
エアクエンチング(air quenching)による1次凝固後、前記紡糸ドープは凝固液が貯められている凝固槽に供給されて2次凝固が行われ得る。一方、適切な2次凝固の進行のために、前記凝固液の温度は30℃以下でありうる。これは、2次凝固温度が必要以上に高くないため、凝固速度が適切に維持されるようにするためである。ここで、前記凝固液は、本発明の属する技術分野における通常の組成で製造して使用することができるので、特に限定されない。
【0065】
[(S3)段階]
(S3)段階は、前記(S2)段階で得られたリヨセルマルチフィラメントを水洗する段階である。
【0066】
具体的には、前記(S2)段階で得られたリヨセルマルチフィラメントを牽引ローラーに導入した後、水洗浴に導入して水洗することができる。
【0067】
前記フィラメントの水洗段階では、水洗後の溶剤の回収および再使用の容易性を考慮して、0〜100℃温度の水洗液を使用することができ、前記水洗液としては水を使用することができ、必要によってその他の添加成分をさらに含ませることもできる。
【0068】
[(S4)段階]
(S4)段階は、前記(S3)段階で水洗されたリヨセルマルチフィラメントを油剤処理する段階であって、油剤処理後に乾燥することができる。
【0069】
油剤処理はリヨセルマルチフィラメントが油剤中に完全に浸かって沈められる形態を取り、油剤処理装置の進入ロールと放出ロールに取り付けられた絞りローラーによって油剤がフィラメントに付く量を一定に維持することができる。前記油剤は、フィラメントが乾燥ローラーおよびガイド、クリンプ段階での接触時に発生する摩擦を減らし、クリンプが良好に形成されるようにすることができる。
【0070】
[(S5)段階]
(S5)段階は、前記(S4)段階で油剤処理されたリヨセルマルチフィラメントをクリンピング(crimping)してクリンプトウ(crimped tow)を得る段階である。
【0071】
クリンピングとはマルチフィラメントにクリンプを付与する工程であって、具体的に、スタッファーボックス(押込み箱;stuffer box)を用いてクリンピングすることで、インチ当り8〜12個のクリンプが付与されたクリンプトウを得ることができる。
【0072】
前記(S5)段階では、リヨセルマルチフィラメントにスチームを供給し、圧力を加えてクリンピングすることができる。
【0073】
具体的に、前記リヨセルマルチフィラメントをスチームボックス(Steam box)に通過させて、スチームは0.1〜1.0kgf/cm2で供給してマルチフィラメントの温度および水分を上げた後、1.5〜3.0kgf/cm2の圧力でプレスローラー(Press Roller)を用いて圧着することによって、スタッファーボックスでクリンプが形成される。
【0074】
この際、スチームの供給量が0.1kgf/cm2未満であればクリンプが円滑に形成されず、1.0kgf/cm2超過であればスタッファーボックス内の温度が120℃以上に上昇してフィラメントが互いにくっ付いてスタッファーボックスを通過できないこともありうる。また、圧着ローラーを押圧する圧力が1.5kgf/cm2未満であれば所望のクリンプ数が形成されず、3.0kgf/cm2超過であれば押圧する力が過度に強いため、この場合もフィラメントがスタッファーボックスを通過できないことがありうる。
【0075】
[(S6)段階]
(S6)段階は、前記(S5)段階で得られたクリンプトウを乾燥およびカッティングしてリヨセルステープル繊維を得る段階である。
【0076】
前記クリンプトウは格子(Lattice)乾燥機を用いて乾燥し、カッティング工程を経てリヨセルステープル繊維を形成することができる。
【0077】
[(S7)段階]
(S7)段階は、前記(S6)段階で得られたリヨセルステープル繊維を不織繊維集合体に製造する段階である。
【0078】
前記リヨセルステープル繊維はカーディングおよびスパンレーシング方式で水流交絡して不織繊維集合体を製造することができる。
【発明の効果】
【0079】
本発明によれば、既存の円形断面のリヨセル繊維を含む不織繊維集合体で提供できなかった物理的特性を発揮することができるようになって、優れた曲げ特性によって産業資材用途として使用されるのであり、良好な感触と柔らかな光沢の特性によって衣類やインテリア用途にも使用されるのであり、透明性、皮膚密着性、水分などの溶媒の吸収性および維持性、滑らかな表面触感などの優れた物性の特徴によってマスクパック不織繊維集合体の用途に使用される不織繊維集合体およびこれを用いたマスクパックシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】前記一実施形態による不織繊維集合体に含まれるリヨセルモノフィラメントの断面を模式的に示した図である。
図2a】製造例1によって製造されたリヨセル繊維の断面を撮影した写真である。
図2b】製造例2によって製造されたリヨセル繊維の断面を撮影した写真である。
図2c】製造例3によって製造されたリヨセル繊維の断面を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。これら実施例はただ本発明をより具体的に説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないということは本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に自明である。
【実施例】
【0082】
<製造例>
製造例1
重合度(DPw)820、アルファセルロース含量93.9%であるセルロースパルプをプロピルガレート含量0.01重量%であるN−メチルモルホリン−N−オキシド/H20混合溶剤に90:10重量比(セルロースパルプ:N−メチルモルホリン−N−オキシド/H20混合溶剤)で混合して、濃度12重量%のリヨセル繊維製造用紡糸ドープを製造した。
【0083】
まず、3個のホールを含む単位ホールが、複数個形成されている紡糸口金の紡糸ノズルを準備し、紡糸ノズルから、前記紡糸ドープの紡糸温度を110℃に維持し、リヨセルモノフィラメントの単繊度が1.2デニールになるように紡糸ドープの吐出量と紡糸速度を調節して紡糸した。前記紡糸ノズルから吐出されたマルチフィラメント状の紡糸ドープを、エアギャップ区間を経て凝固槽内の凝固液に供給してリヨセルマルチフィラメントを製造した。
【0084】
この際、前記エアギャップ区間にて、8℃の温度および10m/sの風速の冷却空気で、マルチフィラメント状の紡糸ドープを1次凝固させた。一方、前記凝固液には、温度が25℃であり、濃度が水85重量%およびN−メチルモルホリン−N−オキシド15重量%であるものを使用した。
【0085】
牽引ローラーを通じて空気層で延伸されたリヨセルマルチフィラメントは、水洗装置でスプレーされた水洗液によって水洗されて、残存するN−メチルモルホリン−N−オキシドが除去されることで、リヨセルマルチフィラメントに油剤が均一に付くようにして、油剤含量が0.2%を維持するようにし、乾燥ローラーで150℃にて乾燥させて、3個の突起を含む異形断面を有するモノフィラメントからなるマルチフィラメントを含むリヨセル繊維を製造した。
【0086】
製造例2
リヨセルモノフィラメントの単繊維繊度が1.4デニールになるようにしたことを除いて、製造例1と同様の方法で、3個の突起を含む異形断面を有するモノフィラメントからなるマルチフィラメントを含むリヨセル繊維を製造した。
【0087】
製造例3
リヨセルモノフィラメントの単繊維繊度が1.5デニールになるようにしたことを除いて、製造例1と同様の方法で、3個の突起を含む異形断面を有するモノフィラメントからなるマルチフィラメントを含むリヨセル繊維を製造した。
【0088】
製造例4
リヨセルモノフィラメントの単繊維繊度が2.5デニールになるようにしたことを除いては、製造例1と同様の方法で、3個の突起を含む異形断面を有するモノフィラメントからなるマルチフィラメントを含むリヨセル繊維を製造した。
【0089】
製造例5
1個の円形ホールを単位ホールとして、前記単位ホールが複数個形成された紡糸口金を使用し、エアクエンチング(air quenching)風速を15m/sにしてリヨセルモノフィラメントの単繊維繊度が1.5デニールになるようにしたことを除いては、製造例1と同様の方法で、断面の直径が11.93μmである円形断面を有するモノフィラメントからなるマルチフィラメントを含むリヨセル繊維を製造した。
【0090】
製造例6
リヨセルモノフィラメントの単繊維繊度が2.0デニールになるようにしたことを除いては、製造例5と同様の方法で、断面の直径が13.78μmである円形断面を有するモノフィラメントからなるマルチフィラメントを含むリヨセル繊維を製造した。
【0091】
前記製造例1〜6で製造されたリヨセル繊維に対して、前記リヨセル繊維に含まれているリヨセルモノフィラメントの断面形状、断面面積、繊度および空間占有率を以下のような方法で測定および算出して、その結果を下記表1に示した。
【0092】
(1)リヨセル繊維に含まれているモノフィラメントの断面形状
少量の繊維束をサンプリングし、黒い綿と共に巻き細くして、断面をカッティングすることができる板の孔に差し込んだ後、剃刀の刃でもって、断面が押さえ込まれないようにカッティングした。
【0093】
これを、光学顕微鏡(BX51、Olympus社製品)を使用して、断面を拡大観察(Х500)し、デジタルカメラでイメージを保存した。前記繊維の断面イメージはOlympus soft imaging solutionプログラムを使用して、求めようとする断面を指定し、長軸と短軸の長さおよび面積、繊維厚さ、断面周りの長さなどを分析した。
【0094】
(2)繊度
断面分析によって得られた実際リヨセル繊維のモノフィラメント断面積とリヨセル繊維の密度(1.49g/cm2)を用いて下記式2で計算してリヨセル繊維の繊度を求めた。
【0095】
<式2>
繊度(De)=[リヨセル繊維のモノフィラメント断面積(μm2)×リヨセル繊維の密度(g/cm3)×9000(m)]/1000000
【0096】
(3)空間占有率
下記式1によってリヨセル繊維の空間占有率を計算した。
【0097】
<式1>
空間占有率(%)=(仮想の第1円の面積/リヨセル繊維に含まれているモノフィラメントの断面積)×100
【0098】
【表1】
【0099】
上記表1に示されているように、3個の突起を含む異形断面を有するモノフィラメントからなる製造例1〜4のリヨセル繊維は、円形断面を有するモノフィラメントからなる製造例5および製造例6のリヨセル繊維に比べて、空間占有率が大きいことが確認された。ここで、図2の(a)〜(c)は製造例1〜製造例3のリヨセル繊維の断面を撮影した写真である。
【0100】
これから、製造例1〜製造例4のリヨセル繊維は比表面積が大きいのを確認し、比表面積が大きい繊維が要求される分野に広範囲に適用することができるのを確認した。
【0101】
<実施例>
実施例1
前記製造例1で製造されたリヨセル繊維について、スチームボックス(圧力条件0.2kgf/cm2)を通過させることでトウに温度を付与する予熱状態を経て、2.0kgf/cm2の圧力でスタッファーボックスの圧縮ローラーを用いて圧着することによって、スタッファーボックスにてクリンプトウを製造し、これを格子(Lattice)乾燥機によって乾燥した後、最終的にカッティングをすることによって、38mmの繊維長を有するリヨセルステープル繊維を製造した。
【0102】
前記製造されたリヨセルステープル繊維について、不織繊維集合体の製造工程におけるカーディングおよびスパンレーシングの工程によって、最終的に不織繊維集合体を製造し、原料投入および工程の速度を調節して不織繊維集合体の坪量を表2の数値に合わせ、不織繊維集合体の坪量の偏差は±10%範囲になるようにした。
【0103】
実施例2〜4
前記製造例2〜4で製造されたリヨセル繊維をそれぞれ用いて表2のように坪量を変更したことを除いては、実施例1と同様な方法で不織繊維集合体を製造した。
【0104】
前記製造された不織繊維集合体は下記測定方法で物性値を測定して下記表2に示した。
【0105】
比較例1および2
前記製造例5および6で製造されたリヨセル繊維をそれぞれ用いて表2のように坪量を変更したことを除いては、実施例1と同様な方法で不織繊維集合体を製造した。
【0106】
前記製造された不織繊維集合体は下記測定方法で物性値を測定して下記表2に示した。
【0107】
<測定方法>
(1)坪量(gsm=g/m2
不織繊維集合体を横5cm、縦20cmでサンプリングし、重量を測定して下記式3で計算して坪量を求めた。
【0108】
<式3>
坪量=不織繊維集合体サンプル重量測定値×100
【0109】
(2)厚さ
ミツトヨ(Mitutoyo)社のNo.2046Fを使用して測定した。
【0110】
(3)透明性
試料前処理:不織繊維集合体を水あるいはエッセンスに10分間浸漬させる。
【0111】
不織繊維集合体の透明性を測定するために、光透過率装備であるヘーズメーター(Haze Meter;日本電色工業株式会社(Nippon Denshoku Industry)、NDH−5000)を使用し、nmの波長の透過率を測定した。
【0112】
(4)吸水性
水あるいはエッセンスに不織繊維集合体を10分間浸漬させた後、前/後の重量を測定して不織繊維集合体が、水あるいはエッセンスを吸収する能力を、下記式4で計算して測定した。
【0113】
<式4>
吸水性(%)={(浸漬後不織繊維集合体重量−浸漬前不織繊維集合体重量)/浸漬前不織繊維集合体重量}×100
【0114】
(5)皮膚密着力
不織繊維集合体を25mm×150mm大きさで切断して水あるいはエッセンスに10分間浸漬後、人の腕の部位に粘着させる。粘着させた後、直ちにインストロン万能材料試験機(Instron、Instron−3365)を使用して不織繊維集合体を皮膚から剥ぎ取りながら粘着力(単位gf)を測定した。
【0115】
【表2】
【0116】
上記表2に示されているように、実施例1〜4は複数個の突起を含む異形断面、特に複数個の突起が仮想の第1円および前記仮想の第1円の内部に含まれている仮想の第2円と接するが、前記仮想の第2円を中心部にして一体型に形成され、その末端が前記仮想の第1円と接する形状を有することを特徴とする不織繊維集合体によって、比較例1および2の不織繊維集合体より厚さが薄いながらも透明性、吸水性、密着力に優れた性能を示すのを確認した。
【0117】
以上、本発明内容の特定の部分を詳しく記述したが、当業界の通常の知識を有する者においてこのような具体的技術は単に好ましい実施例に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されるのではない点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれらの等価物によって定義されるというはずである。
【符号の説明】
【0118】
1:中心部
2:突起
3:突起の長軸
4:突起の凹部
5:突起の末端
11:仮想の第1円
12:仮想の第2円
図1
図2a
図2b
図2c
【国際調査報告】