特表2021-526783(P2021-526783A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モトール ルロワ−ソメーの特許一覧

<>
  • 特表2021526783-回転電気機械の為の固定子 図000003
  • 特表2021526783-回転電気機械の為の固定子 図000004
  • 特表2021526783-回転電気機械の為の固定子 図000005
  • 特表2021526783-回転電気機械の為の固定子 図000006
  • 特表2021526783-回転電気機械の為の固定子 図000007
  • 特表2021526783-回転電気機械の為の固定子 図000008
  • 特表2021526783-回転電気機械の為の固定子 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-526783(P2021-526783A)
(43)【公表日】2021年10月7日
(54)【発明の名称】回転電気機械の為の固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/16 20060101AFI20210910BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20210910BHJP
【FI】
   H02K1/16 A
   H02K3/04 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-567241(P2020-567241)
(86)(22)【出願日】2019年6月4日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2019064503
(87)【国際公開番号】WO2019234030
(87)【国際公開日】20191212
(31)【優先権主張番号】1854963
(32)【優先日】2018年6月7日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】505337087
【氏名又は名称】モトール ルロワ−ソメー
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】サン−ミッシェル,ジャック
【テーマコード(参考)】
5H601
5H603
【Fターム(参考)】
5H601AA22
5H601CC11
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE03
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB32
5H601GB49
5H601GC02
5H601GC12
5H603AA09
5H603BB05
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC03
5H603CC17
5H603CD02
5H603CD05
5H603CD11
5H603CD12
5H603CD22
5H603CE02
5H603CE05
(57)【要約】
本発明は、回転電気機械の固定子に関し、該固定子が、複数のスロットを有する固定子物体を有し、該複数のスロット内に軸方向に導入された複数の電気導体が収容されており、ここで、該複数のスロットのそれぞれが、連続的に閉じられた輪郭を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子(2)と永久磁石回転子(1)とを有する回転電気機械(1)であって、該固定子(2)が、複数のスロット(21)を有する固定子物体(25)を有し、該複数のスロット内に軸方向に導入された複数の電気導体(22)が収容されており、ここで、該複数のスロットのそれぞれが、連続的に閉じられた輪郭を有する、前記回転電気機械(1)。
【請求項2】
該固定子物体が、該複数のスロット(21)の間に形成された複数の歯(23)を有し、該複数の歯(23)が、材料の複数のブリッジ(27)によって空気間隙の側で、且つヨーク(29)によって反対側で、互いに接続されている、請求項1に記載の機械。
【請求項3】
該材料の複数のブリッジ(27)が、少なくとも1つの溝(40)によって形成された少なくとも1つの局所化された狭窄を有する、請求項1又は2に記載の機械。
【請求項4】
該複数の電気導体(22)が、分散された様式で該複数のスロット(21)内に配設されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の機械。
【請求項5】
該複数の電気導体(22)が、矩形の全体形状の横断面を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の機械。
【請求項6】
各スロット(21)が、2つ〜8つの電気導体(22)、特に2つ〜4つの電気導体、を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の機械。
【請求項7】
該複数の電気導体(22)が、U字形又はI字形のピンの形態である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の機械。
【請求項8】
少なくとも1つのスロット(21)、更に好ましくは該複数のスロットの全て、が、相互に並行な径方向エッジを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の機械。
【請求項9】
少なくとも1つのスロット(21)、更に好ましくは該複数のスロットの全て、が、矩形又は六角形の形状の横断面を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の機械。
【請求項10】
少なくとも1つの歯(23)、更に好ましくは複数の歯の全て、が、台形の全体形状の横断面を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の機械。
【請求項11】
該固定子物体(25)が、磁気ラミネーションを積層することによって作成されたものであり、該複数のスロットが、該ラミネーションを切ることによって作成される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の機械。
【請求項12】
該固定子物体(25)が、付加製造技術によって少なくとも部分的に作成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の機械。
【請求項13】
複数のスロット(21)を有する固定子物体(25)を有する回転電気機械の為の固定子(2)において、該複数のスロット内に軸方向に導入された電気導体(22)が収容されており、ここで、該複数のスロットのそれぞれが、連続的に閉じられた輪郭を有し、少なくとも1つのスロット(21)、更に好ましくは該複数のスロットの全て、が、六角形形状の横断面を有する、前記固定子(2)。
【請求項14】
請求項13に記載の固定子(2)と回転子(1)とを有する回転電気機械(1)。
【請求項15】
回転電気機械の為の固定子、特に請求項1〜12若しくは14のいずれか1項に記載の機械の為の固定子、又は請求項13に記載の固定子を製造する為の方法であって、該機械の一方又は両方の軸方向端部を介して複数の電気導体(22)を対応する複数のスロット内に導入することによって、該複数の電気導体が、該固定子の固定子物体(25)の複数のスロット(21)内に配設される、前記方法。
【請求項16】
単一のU字形の電気導体が、該固定子の該固定子物体の2つの異なる不連続のスロット内に配設されるか、又は該固定子の該固定子物体の2つの異なる不連続のスロット内に事前に導入された2つのI字形の電気導体が、互いに接続される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電気機械(rotary electric machines)に、より特にはそのような機械の固定子に、関する。
【背景技術】
【0002】
既知の固定子において、ヨークは、巻線が導入されることを可能にするように、空気間隙の方向に完全に開いているか又は半分開いているスロットを形成する。一般に、該半分開いているスロットは、ばらばらに配設されている円形の横断面を有する電気導体を受け入れ、該完全に開いているスロットは、配列された様式で配設されている矩形の横断面を有する電気導体を収容する。
【0003】
該スロットが非磁性くさびによって閉じられうる固定子は既知である。しかしながら、そのようなくさびは、外れて、そして該機械の動作を妨げる危険性がある。
【0004】
仏国特許出願公開第3019947号明細書は、複数の歯を有する歯付きリングを有する固定子であって、該複数の歯は、材料の複数のブリッジによって互いに接続され且つコイルを受け入れる為のスロットを複数の歯の間に画定する、ここで、該スロットが外側に向かって径方向に開いている、上記固定子を記載している。該スロットの開口は、該歯付きリングに取り付けられたヨークによって閉じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組み立てが簡単であり且つ該スロットの効率的な充填を可能にすると共に、十分な電磁性能を確保する、回転電気機械の為の固定子から利益を得ることが必要とされる。また、電気機械の為の固定子を更に改善すること、特にトルクリップルを低減すること、の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
固定子
本発明は、その観点のうちの1つに従って、回転電気機械の為の固定子であって、該固定子が、複数のスロットを有する固定子物体を有し、該複数のスロット内に軸方向に導入された複数の電気導体が収容されており、ここで、該複数のスロットのそれぞれが、連続的に閉じられた輪郭を有する、上記回転電気機械によって、この必要性を満たし且つこれを達成することを目的とする。
【0007】
「連続的に閉じられた」は、該機械の回転の軸に垂直に取られた横断面で見られたときに、該スロットが連続的に閉じられた輪郭を有することを意味すると理解される。該固定子物体の切れ目に遭遇すること無しに、完全な回路が該スロットの周りに作られることができる。
【0008】
該閉じられたスロットは、外部に向かって径方向に開いていない。
【0009】
本発明に従う該固定子は、取り付けられた磁気くさびを有さない。
【0010】
該固定子物体は、磁気ラミネーションを積層することによって作成され得、ここで、該スロットは該ラミネーションを切ることによって作成される。空気間隙の側で該スロットを閉じることは、該固定子物体を形成する該ラミネーションの残りと一体に形成された、材料の複数のブリッジによって得られる。
【0011】
変形として、該固定子物体は、付加製造技術によって、特に粉末焼結及び機械加工によって、少なくとも部分的に作成されうる。該固定子は複数の積層されたスライスを有し得、ここで、各スライスは付加製造によって作成される。
【0012】
該スロットを閉じる為にくさびが外れることの危険性が排除される。
【0013】
該閉じられたスロットの存在は、該固定子を機械的に補強し且つ振動を低減することを可能にする。
【0014】
最小限にされた切欠き効果(notching effect)(「コギングトルク」(cogging torque)として知られている)が得られる。
【0015】
この固定子は、従来技術において空気間隙上にスロット開口が存在することに関連付けられた電磁妨害を大幅に低減することを可能にする。
【0016】
該スロットは閉じられるので、空気間隙に向かう含浸ラッカーの漏れの危険性が排除される。該固定子は、該固定子のみの端部での封止を確保することによって、閉じられた含浸チャンバとして使用されうる。従って、工具が簡素化される。これはまた、ラッカー又は樹脂の損失の量、及び必要とされる洗浄動作を低減する。
【0017】
材料の複数のブリッジ
該固定子物体は、該複数のスロットの間に形成される該複数の歯を有し得、該複数の歯が、材料の複数のブリッジによって該空気間隙の側で互いに接続される。従って、各スロットは、前記固定子物体の2つの連続する歯を互いに接続する、材料のブリッジによって空気間隙の側で閉じられる。該材料の複数のブリッジはそれぞれ、該空気間隙の側で2つの隣接する歯をそれらの基部で接続し、且つ該スロットの底部をこれらの歯の間に画定する。
【0018】
該材料の複数のブリッジは、隣接する歯と一体である。
【0019】
2つの連続する歯は、ヨークによって反対側で、互いに接続されている。該ヨークは、該歯と一体で作られている。従って、該固定子は、歯付きリングに取り付けられたヨークを有さない。
【0020】
上述された通り、該スロットが該空気間隙に向かって開いていないという事実は、電磁妨害を生成すること、特に磁束フリンジング(flux fringing)による「磁気」空気間隙を増加すること、同じ理由による該回転子の表面でのより多い鉄を損失すること、又は脈動トルクを回避すること、を可能にする。これは、該機械の電磁性能を改善する。
【0021】
該材料の複数のブリッジは好ましくは、変形不可能である。これは、該固定子の剛性を増加させ、且つ該電気機械の寿命を改善する。
【0022】
該材料の複数のブリッジは、該機械の動作中に磁気的に飽和させられるように生成されうる。従って、該磁束が1つのスロットから別のスロットへ通過することは、該磁束が該回転子から該固定子へ通過することが防止されること無しに制限される。
【0023】
飽和を得る為に、例えば、少なくとも1つの溝によって形成された少なくとも1つの局所化された狭窄を提供することによって、該磁束の通過の為に利用可能である、該材料のブリッジの部分を、局所的に低減することが可能である。
【0024】
該材料の複数のブリッジのうちの少なくとも幾つか、更に好ましくは全て、がそれぞれ、下記の形態のうちの1以上である、低減された透磁率の少なくとも1つの領域を有しうる。
該材料のブリッジの厚さの中にある該固定子の長手方向軸に沿って延在する少なくとも1つの溝によって形成された少なくとも1つの局所化された狭窄、又は該材料のブリッジの幅の中にある少なくとも1つの局所化された材料の圧縮部(crushing)、及び/又は、
該材料のブリッジの幅の中にある少なくとも1つの開口、及び/又は、
該材料のブリッジの透磁率を局所的に低減する、該材料のブリッジの幅の中での少なくとも1つの局所化された処理部(treatment)。
【0025】
該材料のブリッジの、該局所化された狭窄、該局所化された圧縮部、該開口、又は該局所化された処理部によって形成される、該低減された透磁率の領域は、該機械が動作中の場合に、該材料のブリッジの上記領域が磁気的に飽和されることを可能にし、このことは、それによって該磁束の通過を制限すると共に、該機械の効率を増加させる。
【0026】
加えて、該材料の複数のブリッジの存在は、該固定子全体がラッカーに含浸されている場合に、該ラッカーが該空気間隙で失われる危険性を低減する。これは、洗浄の必要性を低減することを可能にする。
【0027】
それは、また、該固定子が取り付けられる該機械の動作中、該空気間隙内への該ラッカーの漏れを低減することを可能にする。これは、該機械のメンテナンスを単純化する。語「ラッカー」は、本明細書において広く理解されるべきであり、任意のタイプの含浸材料、特にポリマー材料、を包含する。
【0028】
好ましくは、該溝は、該スロットに向かって開いている。
【0029】
磁気的に低減された透磁率の各領域は優先的に、該固定子物体の厚さ全体にわたって延在する。
【0030】
変形として、該低減された透磁率の領域は、該固定子物体の厚さ以下の長さにわたって延在する。
【0031】
材料の各ブリッジの低減された透磁率の領域は好ましくは、該固定子物体の厚さで連続し、且つ矩形であってもよく又はなくてもよい。
【0032】
変形として、該低減された透磁率の領域は、該固定子物体の厚さにおいて不連続である。
【0033】
例えば、該固定子物体は、ラミネーションの積層体の形態であり、該空気間隙の側で該材料の複数のブリッジによって複数の歯の底部で互いに接続された該複数の歯を有し、該ラミネーションの該材料の複数のブリッジのうちの少なくとも幾つか、更に好ましくは全て、はそれぞれ、低減された透磁率の少なくとも1つの領域を有する。該ラミネーションそれぞれの、該材料の複数のブリッジの該低減された透磁率の領域は、中央に置かれないことが可能である。
【0034】
該材料の複数のブリッジは、該複数の歯と一体である。
【0035】
隣接する少なくとも2つのラミネーションは、互いに相対的に互い違いの様式で配列された、低減された透磁率の少なくとも2つの領域を有し得、且つ部分的に互いに交差していても又はしていなくてもよい。互い違いの配列は、該固定子物体を形成する該複数のラミネーションの積層体のうちの特定のラミネーションを、特に1つおきのラミネーションを反転することによって、又は該複数のラミネーションをある角度で切ることによって、又は複数の異なるラミネーションを使用することによって、達成されうる。
【0036】

好ましくは、該スロットの底部が少なくとも1つの溝を有する場合、該溝は該スロットに向かって開いている。
【0037】
該スロットの底部は、横断方向に方向付けされている少なくとも1つの支承面、更に好ましくは少なくとも2つの支承面、を有し、該溝の底部はこの又はこれらの面に対して後退させられる。該1以上の支承面は、対応するスロットの径方向軸に対して斜めに方向付けされ得、又は優先的に、この軸に対して垂直に方向付けされうる。該溝は、該1以上の支承面に対する傾斜において中断を形成する。好ましくは実質的に矩形の断面を有する、対応するスロットに挿入された該電気導体は好ましくは、該支承面に当接し、該溝の底部に対して後退させられる。好ましくは、該電気導体は該溝と接触していない。該1以上の支承面は優先的に、平らである。該スロットの底部は、該溝を除いて、平らでありうる。これは、該コイルが該スロットの底部に平らに載ることを可能にすることによって、矩形の横断面の電気導体の場合に、該スロットの該電気導体による良好な充填を可能にする。
【0038】
該スロットの底部にある該溝は好ましくは、該材料のブリッジと該対応する該導体との間に隙間(clearance)を形成し、それは、該固定子を含浸する場合に該ラッカーが浸透することをより簡単にしうる。
【0039】
該材料のブリッジは、上述した通りの少なくとも2つの溝、例えばスロット1つ当たり2つの溝、を備えうる。
【0040】
該1以上の溝は、該1以上のスロットに対して中心に置かれるか、又は対照的に、該1以上のスロットの対称面に対してオフセットされうる。
【0041】
該固定子の内表面は好ましくは、回転のシリンダーである。
【0042】
変形として、該1以上の溝は、該固定子の内表面、すなわち該回転子で該空気間隙を画定する該固定子の表面、に延在しうる。
【0043】
該回転子で該空気間隙を画定する該固定子の内表面に該1以上の溝が置かれる場合に、該1以上の溝は、該固定子の角度方向付けを可能にし得、従って該ラミネーションの積層及びインデックス付けをより簡単にしうる。次に、該固定子がその外表面にレリーフを有さないことが可能であり、これは、ヨークと冷却手段との接触を改善することを可能にする。
【0044】
好ましくは、該1以上の溝はそれぞれ、該固定子の軸に垂直な面において断面が曲線の、特に実質的に半円形の断面の、プロファイルを有する。
【0045】
局所化された圧縮部
局所化された圧縮部は、該材料のブリッジの厚さの中で、すなわち該固定子の径方向軸に沿って実現され、低減された透磁率を有する局所化された狭窄を構成する。該圧縮部は好ましくは、該スロットの底部に溝を形成する。その場合、該局所化された圧縮部は、該溝について上記した通りでありうる。
【0046】
変形として、該局所化された圧縮部は、該固定子の厚さの中で、すなわち該固定子の長手方向軸に平行な軸に沿って実現され、低減された透磁率を有する。
【0047】
開口
上記開口は優先的に、該固定子物体の厚さ全体にわたって、該固定子の長手方向軸に沿って延在する。
【0048】
該開口は、楕円形、円形、又は例えば丸み付けられた角を有する多角形、及び特に矩形、である横断面を有しうる。
【0049】
該材料のブリッジは、その幅に単一の開口のみを有することが可能である。
【0050】
該開口は、該材料のブリッジの中央にありうる。
【0051】
該開口は、そのどちらかの側に2つのより薄い領域を有し得、該より薄い領域は、該機械が動作中の場合に、磁気的に飽和される。
【0052】
変形として、該材料のブリッジはその幅において複数の微細孔を有する。微細孔は、ラミネーション断面を低減し、且つ該材料のブリッジがより弱い磁束によって磁気的に飽和されることを可能にする。
【0053】
処理部
局所化された処理部は、該磁束に対する該ブリッジの材料の透過性を修正することを局所的に可能にする。
【0054】
該局所化された処理部は、該材料のブリッジの幅全体にわたって、又はその一部分のみにわたって延在しうる。
【0055】
この処理部は、金属のグレインの配向を局所的に修正し且つ円周方向で透磁率の低下を引き起こす熱処理部でありうる。
【0056】
変形として、該熱処理部は、該材料のブリッジのレーザー切断中の材料の劣化と関連付けられる熱応力部である。
【0057】
電気導体
複数の電気導体は、集中された(concentrated)様式又は分散された(distributed)様式で該スロット内に配設されうる。「集中された」は、該複数の電気導体が単一の歯の周りにそれぞれ配設されることを意味すると理解される。
【0058】
好ましくは、該複数の電気導体は、分散された様式で該スロット内に配設される。「分散された」は、外部に向かう且つ戻る複数の電気導体が、異なる且つ非連続のスロットにそれぞれ収容されることを意味すると理解される。該複数の電気導体のうちの少なくとも1つは、隣接していない2つのスロットに連続して入ることができる。
【0059】
該複数の電気導体は、配列された様式(arranged manner)で該スロット内に配設されうる。「配列された」は、該導体がばらばらにではなく規則的な様式で該スロット内に配設されることを意味すると理解される。それらは、ランダムでない様式(non-random manner)で該スロット内に積層され、例えば位置合わせされた電気導体の1以上の列で配設される。
【0060】
該複数の電気導体は、特に丸み付けられた角を有する、矩形の全体形状の横断面を有しうる。該複数の電気導体の円周方向寸法は、スロットの幅に実質的に対応しうる。従って、スロットはその幅の中に単一の電気導体のみを有することが可能である。該スロットの幅は、該機械の回転軸の周りでその円周方向寸法として画定される。
【0061】
変形として、スロットは、1超の列の電気導体を有しうる。それらは、該スロット内に1以上の列で、例えば単一の列、又は2つの列、又は3つ若しくは4つの列、で配設されうる。
【0062】
該複数の電気導体は、それらの長辺に沿って互いに隣接し得、これらはまた、フラット(flat)と呼ばれうる。
【0063】
該積層体を最適化することは、より大量の電気導体を該スロット内に配設することを可能にし、それ故に、同じ体積で、より強力な固定子を得られうる。
【0064】
各スロットは、2つ〜8つの電気導体、特に2つ〜4つの電気導体、例えば2つ又は4つの電気導体、を有しうる。
【0065】
該複数の電気導体はピンの形態でありうる。該ピンは、U字形(「Uピン」として知られている)、又はI字形の直線(「Iピン」として知られている)でありうる。それらは、配列された様式で該スロット内に配設される。該複数の電気導体は、該機械の一方又は両方の軸方向端部を介して、対応するスロットに導入されうる。
【0066】
I字形の電気導体は、単一のスロットに入り、且つ該固定子の軸方向端部において、該電気導体の端部それぞれで2つの他の電気導体に溶接される。U字形の電気導体は、2つの異なるスロットに入り、且つ該固定子の一方の同じ軸方向側で、該電気導体の端部それぞれで2つの他の電気導体に溶接される。該U字の底部は、該固定子の他方の軸方向側に配設される。
【0067】
該複数の電気導体は、銅又はアルミニウムで作られうる。
【0068】
絶縁
該電気導体は、絶縁性被覆、特にエナメル、によって、外部から電気的に絶縁される。該電気導体は、絶縁によって、特に少なくとも1つの絶縁のシート、によって、該スロットの壁から離されうる。そのようなシート絶縁は、該固定子物体に相対的に該電気導体のより良好な絶縁を可能にする。
【0069】
各スロットは、少なくとも2つの電気導体、特に異なる位相を有する少なくとも2つの電気導体、を受け入れうる。これら2つの電気導体は、径方向に重ねられうる。好ましくは、各電気導体又は単一の位相に関連付けられた電気導体のバンドルの周りに1つのシートが巻き付けられる場合に、絶縁、特に少なくとも1つの絶縁のシート、更に好ましくは絶縁の少なくとも2つのシート、によって、該2つの電気導体は互いから離される。
【0070】
スロット
少なくとも1つのスロット、更に好ましくは該複数のスロットの全て、は、矩形形状の横断面を有しうる。少なくとも1つのスロットは、相互に平行な反対側の径方向エッジを有し得、更に好ましくは、該スロットは相互に平行な径方向エッジを有する。スロットの幅は好ましくは、その全高にわたって実質的に一定である。従って、該スロットの充填のより良好な程度が実現される。
【0071】
少なくとも1つの歯、更に好ましくは複数の歯の全て、は、台形の全体形状の横断面を有しうる。少なくとも1つの歯、更に好ましくは複数の歯の全て、は、該機械の回転軸から距離が増加するにつれて広がっていくエッジを有しうる。
【0072】
該固定子物体は、ラミネーションを積層することによって作成されうる。該複数の歯は、材料の複数のブリッジによって互いに、且つヨークによって反対側で接続される。閉じられた複数のスロットは、該ラミネーションを切ることによって全体的に作成されうる。ラミネーションの積層体の各ラミネーションは、一体でありうる。
【0073】
各ラミネーションは例えば、磁性鋼のシート又は磁性鋼を含むシート、例えば厚さ0.1〜1.5mmの鋼、から切られる。該ラミネーションは、該積層体内に組み立てられる前に、電気絶縁ラッカーによってそれらの反対側の面上で被覆されうる。該電気絶縁はまた、適切な場合、該ラミネーションの熱処理によって得られうる。
【0074】
変形として、該固定子物体は、取り付けられた複数のセクタを有する。
【0075】
該複数のセクタは、材料の複数のブリッジによって互いに、且つヨークによって反対側で接続された複数の歯を有しうる。該セクタは、切ることによって作成される。
【0076】
ラミネーション
本発明の更なる主題は、固定子の、特に上記した通りの固定子の、固定子物体の為のラミネーションであり、該ラミネーションは、空気間隙の側で材料の複数のブリッジによって複数の歯の基部で互いに接続された複数の歯を有し、該材料の複数のブリッジのうちの少なくとも幾つか、及び更に好ましくは全て、がそれぞれ、低減された透磁率の少なくとも1つの領域を有し、ここで該少なくとも1つの領域は、下記の形態である。
少なくとも1つの溝によって形成された少なくとも1つの局所化された狭窄、若しくは局所化された圧縮部(crushing)、及び/又は、
該材料のブリッジの厚さの幅の中にある少なくとも1つの開口、及び/又は、
該材料のブリッジの透磁率を局所的に低減する、該材料のブリッジの幅の中での少なくとも1つの局所化された処理部(treatment)。
【0077】
該固定子が上記された通りにラミネーションを積層することによって形成される場合、該ラミネーションの複数の歯は、該固定子の複数の歯を形成するように位置合わせされ、該ラミネーションの、該材料の複数のブリッジは、積層によって該固定子の該材料の複数のブリッジを形成する。
【0078】
該固定子に関して上記された特徴は、上記ラミネーションに当てはまる。
【0079】
機械及び回転子
本発明の更なる主題は、上記した通りの固定子を有する回転電気機械、例えば同期モータ又は同期発電機、である。該機械は同期式又は非同期式でありうる。該機械は、リラクタンス機械(reluctance machine)でありうる。該機械は、同期モータを構成しうる。
【0080】
該回転電気機械は回転子を有しうる。該回転子は、巻線型回転子又は永久磁石回転子でありうる。該機械が交流発電機として動作することが意図される場合、該回転子は巻線型回転子でありうる。該機械がモータとして動作することが意図される場合、該回転子は永久磁石回転子でありうる。
【0081】
該機械は、相対的に大きいサイズを有しうる。該回転子の直径は、50mm超、更に好ましくは80mm超、例えば80〜500mm、でありうる。
【0082】
該回転子は、回転軸に沿って延在し且つシャフトの周りに配設される回転子物体を有しうる。該シャフトは、回転している該回転子物体を駆動する為のトルク伝達手段を有しうる。
【0083】
該回転子は、オーバーハング有りで又は無しで取り付けられうる。
【0084】
該回転子は、軸方向に位置合わせされた複数の回転子部品、例えば3つの部品、から作られうる。該部品のそれぞれは、隣接する部品に相対的に角度的にオフセットされうる(「ステップスキュー」(step skew)として知られている)。該回転子は、捻られうる。
【0085】
製造方法及び機械
本発明の更なる主題は、上記とは独立して又は上記と組み合わせて、回転電気機械の為の固定子、特に上記した通りの固定子、を製造する方法であり、ここで、複数の電気導体は、それらを該機械の一方又は両方の軸方向端部を介して対応するスロットに導入することによって、該固定子の固定子物体のスロット内に配設される。
【0086】
単一のU字形の電気導体が、該固定子の該固定子物体の2つの異なる不連続のスロット内に配設されうる。電気導体がU字形である場合、該機械の一方の同じ側で2つの他の電気導体に溶接される。
【0087】
該固定子の該固定子物体の2つの異なる不連続のスロット内に事前に導入された2つのI字形の電気導体は、互いに接続されうる。電気導体がI字形である場合、該機械の2つの反対の側で2つの他の電気導体に溶接される。
【0088】
該固定子は捻られうる(「スキューイング」(skewing)として知られている)。そのような捻れは特に、該スロット内の該巻線を締めること且つ該スロットの高調波を低減することを可能にする。
【0089】
本発明は、本発明の非限定的な例示的実施態様の下記の詳細な説明を読み且つ添付の図面を研究することにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1図1は、本発明に従って作成された固定子の部分的且つ概略斜視図である。
図2図2は、矢印IIに沿った、その上面図である。
図3図3は、個々に検討された、図1及び図2における固定子の電気導体の部分的且つ概略斜視図である。
図4図4は、本発明に従った固定子の固定子物体の断面の部分的且つ概略図を示す。
図5図5は、図1の固定子の固定子物体の一部分を部分的及び概略的に示す。
図6図6は、固定子の断面の部分的且つ概略図である。
図7図7は、変形例の実施態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0091】
図1図6は、図示されていない回転子も有している、回転電気機械1の固定子2を示す。該固定子は、同期モータの文脈において、回転している該回転子を駆動する為の回転磁場を生成することを可能にし、及び、交流発電機の場合に、該回転子の回転が、該固定子の電気導体内に起電力を誘起する。
【0092】
下記に示されている例は概略であり、様々な構成要素の相対的な寸法は必ずしも守られていない。
【0093】
該固定子2は、固定子物体25の複数の歯23の間に形成された複数のスロット21内に配設される電気導体22を有する。切欠き21は閉じられ、すなわち、該固定子物体の切れ目に交わること無しに、完全な回路が各スロット21の周りに作られることができる。複数のスロット21は、材料の複数のブリッジ27によって空気間隙の側で且つヨーク29によって反対側で閉じられ、ここで、該複数のブリッジのそれぞれは、固定子物体25の2つの連続する歯を接続する。後者及び複数の歯23は一体である。ヨーク29は、適切な場合、冷却液の循環の為のダクトを収容することが意図される、半円の長手方向リブ31を備えうる。
【0094】
複数の電気導体22は、分散された様式で複数のスロット21内に配設される。該複数の電気導体は、I字形又はU字形でありうる。
【0095】
複数の電気導体22は、配列された様式で、位置合わせされた電気導体の1以上の列で、スロット21内に配設される。
【0096】
該複数の電気導体は、特に丸み付けられた角を有する、矩形の全体形状の横断面を有しうる。記載されている例において、該電気導体は単一の列で径方向に重ねられる。電気導体の円周方向寸法は、スロットの幅に実質的に対応する。従って、該スロットは、その幅の中に単一の電気導体のみを有する。該スロットは、その径方向寸法の中に複数の電気導体を有しうる。
【0097】
該複数の電気導体22は、エナメル加工されるか又は任意の好適な絶縁被覆で被覆されている銅又は別の導電性材料で作られる。
【0098】
記載されている例において、スロットは、異なる位相を有する少なくとも2つの電気導体を有する。図7の変形例の実施態様において、スロットは4つの電気導体を有する。
【0099】
各電気導体22は、図6で見えている通り、該電気導体を、該スロットの壁33及び36並びに異なる位相の電気導体22から絶縁することを可能にする、絶縁のシート37によって取り囲まれる。
【0100】
該複数のスロット21は、記載されている例において、相互に並行な径方向エッジ33を有し、且つ、該機械の回転軸Xに垂直な面内の断面において、実質的に矩形の形状である。
【0101】
該複数のスロット21の底部35は、溝又は局所化された圧縮部40を除いて、電気導体22の形状に対して実質的に補完的である形状を有する。以下、参照は溝のみに対して行われるが、該溝の代わりに局所化された圧縮部がまた可能であることが、明確に理解されるべきである。
【0102】
該複数のスロット21の底部35は、丸み付けられた部分38によって径方向エッジ33に接続される。各スロット21の溝40は、スロット35の底部上で中心に置かれ、且つ該機械の回転軸Xに沿って延在する。図示されていない変形例の実施態様において、該溝が中心に置かれないことが可能であり、又は底部35は複数の溝を有することができる。
【0103】
該溝40は、軸Xに垂直な面内の断面において、特に実質的に半円である曲線形状を有する。該溝は、0.2mm〜1mm、例えば0.42mmに等しい、深さpを有する。
【0104】
該溝40は、材料の複数のブリッジ27の局所化された狭窄を形成する。そのような狭窄は、ブリッジ27に沿ったより弱い磁束によって該ラミネーションの磁気飽和を可能にし、それによって該磁束の通過を制限する。
【0105】
材料の複数のブリッジ27の最小幅lは好ましくは、0.3mm〜0.6mmであり、例えば0.4mmに等しい。
【0106】
固定子物体25は、軸Xに沿って積層された磁気ラミネーションのパックで形成され、ここで、該ラミネーションは例えば、同一であり、且つ厳密に重ねられる。該ラミネーションは、クリップ留めによって、接着剤結合によって、リベットによって、タイロッドによって、溶接によって、及び/又は任意の他の技法によって、一緒に保持されうる。該磁気ラミネーションは好ましくは、磁性鋼から形成される。固定子物体25の該複数の歯23は、固定子物体25を構成する様々なラミネーションが互いにクリップ留めされることを可能にする補完的なレリーフを表面上に有しうる。変形として、該固定子物体はまた、切り出され且つそれら自体の上に巻かれる1以上の金属薄板の帯で形成されうる。
【0107】
該固定子は、長手方向軸Xに平行な軸に沿って複数のスロット21に滑り込ませることによって、電気導体22が該固定子の一方又は両方の軸方向端部を介して複数のスロット21内に挿入されるところの製造方法によって得られうる。
【0108】
当然ながら、本発明は、前述の例示的な実施態様に制限されず、記載された該固定子に関連付けられた該回転子は、巻線型回転子又は永久磁石回転子でありうる。
【0109】
表現「〜1つを有する」は、「少なくとも1つを備えている」と同義であると理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】