特表2021-526972(P2021-526972A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-526972(P2021-526972A)
(43)【公表日】2021年10月11日
(54)【発明の名称】ベース構造へのコーティングの付加
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20210913BHJP
   B05D 3/14 20060101ALI20210913BHJP
【FI】
   B05D3/00 D
   B05D3/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2021-518417(P2021-518417)
(86)(22)【出願日】2019年6月6日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月5日
(86)【国際出願番号】NL2019050343
(87)【国際公開番号】WO2019235929
(87)【国際公開日】20191212
(31)【優先権主張番号】2021092
(32)【優先日】2018年6月8日
(33)【優先権主張国】NL
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520481149
【氏名又は名称】キューレイヤーズ・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンベル・エホン・ファン・ハウエルメイレン
(72)【発明者】
【氏名】ルベン・ヘートイェンス
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC08
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075BB42Z
4D075BB81Z
4D075BB91Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DA23
4D075DC11
4D075DC12
4D075DC13
4D075EA05
(57)【要約】
本発明は、微視的ポリマー構造を有する硬化したポリマーコーティングを少なくとも部分的にベース構造に施すための方法および装置に関する。方法は、未硬化のポリマー材料をベース構造の少なくとも一部上に付加するステップであって、未硬化のポリマー材料は、第1の符号を有する電荷で電気充電される、ステップと、前記未硬化のポリマー材料の少なくとも一部の上方に距離を置いて少なくとも1つの電極を設けるステップと、第1の符号とは反対の第2の符号を有する電荷で少なくとも1つの電極を充電するステップであって、それによって未硬化のポリマー材料を少なくとも1つの電極に向かって静電気的に引き付け、未硬化のポリマー材料を、形状を有する1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造を含む未硬化の構造化されたポリマー材料になるように変形させる、ステップと、1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造を硬化させるステップであって、それによって硬化したポリマーコーティングを形成する、ステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微視的ポリマー構造(2A)を有する硬化したポリマーコーティング(2”)を少なくとも部分的にベース構造(1)に施すための方法であって、
未硬化のポリマー材料(2)を前記ベース構造(1)の少なくとも一部上に付加するステップであって、前記未硬化のポリマー材料(2)は、第1の符号(S1)を有する電荷で電気充電される、ステップと、
前記未硬化のポリマー材料(2)の少なくとも一部の上方に距離を置いて少なくとも1つの電極(4)を設けるステップと、
前記第1の符号(S1)と反対の第2の符号(S2)を有する電荷で前記少なくとも1つの電極(4)を充電するステップであって、それによって未硬化のポリマー材料(2)を前記少なくとも1つの電極(4)に向かって静電気的に引き付け、前記未硬化のポリマー材料(2)を、形状を有する1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を含む未硬化の構造化されたポリマー材料(2’)になるように変形させる、ステップと、
前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を硬化させるステップであって、それによって前記硬化したポリマーコーティング(2”)を形成する、ステップとを含む、方法において、
前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を硬化させる前記ステップの前またはその間、
前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)の前記形状を制御し、安定化させるステップであって、
前記少なくとも1つの電極(4)が充電されている間、前記電極(4)と前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)との間の電流の発生および電流量を監視する、
前記電流量に対する閾値を設定する、
電流量の前記閾値を超えたときに、
前記電極(4)上の前記電荷を低減し、および/または
前記電極(4)と前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)との間の前記距離を増大させることによって前記電流量を少なくとも低減することによる、ステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)と前記電極(4)との間の前記電流が、前記電極(4)と直列に電気接続されたシャント抵抗器(5)によって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電流量の前記閾値が、100ナノアンペア未満の大きさを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電極(4)が、接続(7)によって電源(6)に電気接続され、前記電極(4)上の電荷は、前記接続(7)を短絡することによって低減される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電極(4)上の前記電荷が、前記電極(4)を充電する電源(6)の出力電圧を変更することによって低減される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)と前記電極(4)との間の前記電流が、前記電極(4)を前記ベース構造(1)および前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)から遠ざけることによって低減される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を硬化させる前記ステップが、前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を安定化させている間に実行される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ベース構造(1)の上方の異なる位置に前記電極(4)を移動させるステップと、
すべての他の方法ステップを反復するステップとをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
微視的ポリマー構造(2A)の目的に合わせたパターンが、前記ベース構造(1)の上方の異なる位置に前記電極(4)を移動させ、すべての他の方法ステップを反復することを繰り返すことによって形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の工業的方法。
【請求項11】
微視的ポリマー構造(2A)を有する硬化したポリマーコーティング(2”)を少なくとも部分的にベース構造(1)に施すための組立体(100)であって、前記ベース構造(1)には、第1の符号(S1)の電荷を有する未硬化のポリマー材料(2)が施され、前記組立体(100)は、
前記未硬化のポリマー材料(2)の少なくとも一部の上方に距離を置いて配置されるように構成された少なくとも1つの電極(4)と、
前記電極(4)に電気接続された少なくとも1つの電源(6)であって、前記第1の符号(S1)とは反対の第2の符号(S2)を有する電荷で前記電極(4)を充電するように構成され、それにより、前記電極(4)を充電した後、未硬化のポリマー材料(2)は前記電極(4)に向かって静電気的に引き付けられ、前記未硬化のポリマー材料(2)を、形状を有する1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を含む未硬化の構造化されたポリマー材料(2’)になるように変形させる、少なくとも1つの電源(6)と、
前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を硬化させ、前記硬化したポリマーコーティング(2”)を形成するように構成された硬化源(8)とを備える、組立体(100)において、
前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)の前記形状を制御し、安定化させるように構成された制御ユニット(9)であって、
電流測定ユニット(10)であって、前記電極(4)と前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)との間の電流を測定するように構成され、前記制御ユニット(9)と通信して配置される、電流測定ユニット(10)を備える、制御ユニット(9)をさらに備え、
前記制御ユニット(9)は、閾値の設定を可能にし、
前記制御ユニット(9)は、前記電流が前記閾値を超えると、
前記電極(4)上の前記電荷を低減するように、および/または
前記電極(4)と前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)との間の前記距離を増大させるように構成されることを特徴とする、組立体(100)。
【請求項12】
前記制御ユニット(9)が、前記電源(6)と前記電極(4)との間の前記電気接続(7)を短絡するように構成されたスイッチ(11)を含む、請求項11に記載の組立体。
【請求項13】
前記制御ユニット(9)が、前記電極(4)に動作可能に接続されたアクチュエータ(12)を含み、前記アクチュエータ(12)は、前記電極(4)を前記未硬化の微視的ポリマー構造(4)から遠ざけるように構成される、請求項11または12に記載の組立体。
【請求項14】
微視的ポリマー構造(2A)を有する硬化したポリマーコーティング(2”)を少なくとも部分的にベース構造(1)に施すためのシステム(200)であって、
電荷を有する未硬化のポリマー材料(2)をベース構造(1)上に付加するように構成されたポリマー付加デバイス(13)と、
請求項11から13のいずれか一項に記載の組立体(100)とを備える、システム(200)。
【請求項15】
請求項11から13のいずれか一項に記載の組立体(100)および/または請求項14に記載のシステム(200)を備える、機械的アーム(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微視的ポリマー構造を有する硬化したポリマーコーティングを少なくとも部分的にベース構造に施すための方法、組立体、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面上の特殊形状のコーティングは、たとえばその表面の抗力を低減するのに役立ち得ることがすでに数十年にわたって知られている。たとえば、鮫の皮膚を微視的スケールで分析すると、これが、長さ方向に互いに平行に走るリブレット(隆起部またはリブ)からなることが観察され得る。これらのリブレットは、鮫が水中を泳ぐときに鮫の抗力を低減するのに役立つ。そのような微視的パターンは、自然界全体で、数多くの異なる適用範囲で観察されている。抗力の低減は、ここでは、単なる一例として言及されている。他の例は、自己洗浄コーティング、アンチグラフィティコーティング、汚損防止コーティングまたは吸湿コーティングを含むことができる。
【0003】
また、すでに数十年にわたり、人造生産物、たとえば車、レーシングカー、航空機、船、バイクを含む乗り物、またはたとえば風力タービンブレード上に微視的スケールのそのようなコーティング、たとえばポリマーコーティングを付加して、たとえばそのような人造生産物の抗力を低減することが望まれている。そのようなコーティングを付加するための数多くの試みがこれまでなされてきたが、商業的に適用可能な適切な方法は、過去において見出されていない。
【0004】
2009年、journal Nano Todayで公開された「micro− and nano−patterns created via electrohydrodynamic instabilities」の科学記事において、WuおよびRusselは、硬化したポリマーコーティングをベース構造上に形成するための方法を説明している。この方法は、ポリマーの薄い層をシリコン基板上にスピンコーティングすることと、ポリマーフィルムの上部に上部電極を置くことと、システム全体をポリマーのガラス転移温度以上に加熱し、外部電圧を課すことと、パターン形成が生じるまで数秒から数週間待機することと、システムを冷却して室温に素早く戻すことによって前記パターン形成を凍結させることとからなる。
【0005】
この論文によれば、この方法は、ポリマー構造の形成において深刻な不安点性が生じるという欠点を有する。この論文によれば、この方法によって形成されたポリマー構造は、大きな表面では規則性が失われ、すなわちこの方法によって形成されたパターンは、大きな表面に付加されたときに不揃いとなる。これにより、説明した方法は、大規模の(工業的)用途に不適切となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「micro− and nano−patterns created via electrohydrodynamic instabilities」、2009年、journal Nano Todayで公開
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記で説明した方法の不安定性を少なくとも部分的に克服することである。より詳細には、本発明の目的は、硬化した、または凍結したポリマーコーティングを少なくとも部分的にベース構造に施すためのより信頼性が高く、反復可能でおよび/または予測可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明によれば、請求項1の方法が提示される。
【0009】
したがって、本発明は、換言すれば、微視的ポリマー構造を有する硬化したポリマーコーティングを少なくとも部分的にベース構造に施すための方法であって、
− 未硬化のポリマー材料をベース構造の少なくとも一部上に付加するステップであって、未硬化のポリマー材料は、第1の符号を有する電荷によって電気充電される、ステップと、
− 前記未硬化のポリマー材料の少なくとも一部の上方に距離を置いて少なくとも1つの電極を設けるステップと、
− 第1の符号と反対の第2の符号を有する電荷で少なくとも1つの電極を充電するステップであって、それによって未硬化のポリマー材料を少なくとも1つの電極に向かって静電気的に引き付け、未硬化のポリマー材料を、形状を有する1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造を含む未硬化の構造化されたポリマー材料になるように変形させる、ステップと、
− 1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造の形状を制御し、安定化させるステップであって、
・少なくとも1つの電極が充電されている間、電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間の電流の発生および電流量を監視する、
・前記電流量に対する閾値を設定する、
・電流量の閾値を超えたときに、
・電極上の電荷を低減し、および/または
・電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間の距離を増大させることによって前記電流量を少なくとも低減することによる、ステップと、
− 1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造を硬化させるステップであって、それによって硬化したポリマーコーティングを形成する、ステップとを含む、方法に関する。
【0010】
硬化したポリマーコーティングを形成するための知られている方法では、一貫した予測可能な形状の硬化した微視的ポリマー構造を得ることは可能ではない。WuおよびRusselの記事では、「ポリマーマイクロ構造は均衡とはほど遠い」と述べられており、また、「現在まで、「完全な」誘電モデルと「漏出しやすい」誘電モデルとの間には納得できる実験的区別は存在していない」と述べられている。従来技術は、硬化した微視的ポリマー構造の形成に成功していることを示しているが、これらの構造の形状は、予測不能であり、一貫していない。
【0011】
しかし、工業規模に適用するには、信頼高く、反復可能で予測可能な形状およびパターンが望まれる。故に、そのようにして工業的に適用するには、従来技術の方法は十分ではない。
【0012】
コーティングを画定する硬化した微視的ポリマー構造の信頼高く、反復可能で予測可能な形状およびパターンを得るというこうした問題は、1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造の形状を制御し、安定化させるステップを追加することにより、本発明によって少なくとも部分的に解決される。
【0013】
未硬化の微視的ポリマー構造の形状のこうした制御および安定化は、少なくとも1つの電極が充電されている間、電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間の電流の発生および電流量を監視することによって可能にされる。従来技術においてすでに認識されているように、ポリマー構造が形成し始めるとき、最初に少量のポリマー材料が、静電引力の結果、電極に向かって上昇する。ポリマー材料が電極に近くなるにつれて、静電引力は大きくなり、ポリマー構造の成長はより早くなっていく。
【0014】
本出願人は、ポリマー構造の成長が早くなるにつれて、静電引力はより大きくなり、最終的にはポリマー材料は電極と接触することを見出した。ポリマー材料は、電極と接触する直前、電極に向かってスパイクする。電極に向かってポリマー材料がスパイクするこうした事象は、「スプレー作用」と呼ばれる。この接触およびスプレー作用は望ましくなく、その理由は、そのため未硬化のポリマー材料の電荷が電極およびその給電ユニットによって吸収され、静電引力が消え、未硬化のポリマー材料が重力によって再度引き下げられるときにポリマー構造が消えるためである。
【0015】
本出願人は、さらに、未硬化のポリマー材料が電極に接触する前、電子がポリマー材料および電極の一方からポリマー材料および電極の他方に向かって静電引力によって分離された結果(電子の流れ方向は、電極および未硬化のポリマー材料の電荷によって左右される)、わずかであるが測定可能な電流が電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間にすでに流れ始めていることを見出した。
【0016】
本出願人は、電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間の電子のこうした流れを測定し、監視することにより、未硬化の微視的ポリマー構造の形状を安定化させ、制御することができることを見出した。すなわち、本発明によれば、この電流の電流量が閾値を超えたとき、未硬化の微視的ポリマー構造と電極との間の電流の電流量を低減するための対策がとられる。未硬化の微視的ポリマー構造と電極との間の電流の電流量の低減が成功し得るとき、ポリマー構造の形状を安定化させ、硬化させることができ、それによってコーティングを形成する。
【0017】
未硬化の微視的ポリマー構造と電極との間の電流の電流量を低減するためにとられる対策は、電極上の電荷を低減することおよび/または電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間の距離を増大させることになり得る。いずれの対策も、これらが同じ効果、すなわち電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間の静電引力を低減する効果を有するという点において等価のものである。静電引力のこうした低減は、ポリマー構造の成長を止めるか、または低減し、その形状を安定化させる。静電引力のこうした低減はまた、電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間の電子の流れを止めるか、または低減し、故に未硬化の微視的構造と電極との間の電流の電流量を止めるか、または低減する。
【0018】
本発明は、微視的ポリマー構造を有する硬化した、または凍結したポリマーコーティングを少なくとも部分的にベース構造に施すための方法に関する。ほとんどの、またはすべてのポリマーの固有の物理的特性は、その形状を変形させることができる状態と、その形状が固定される状態とを有することである。本発明によれば、ポリマーは、(形状が固定された後ポリマー材料を再度変形させることはできない)熱硬化性ポリマー、または(ポリマー材料を複数回変形させることができる)熱可塑性ポリマーとなり得る。熱硬化性と熱可塑性の両方の材料に関して、変形可能な形状は、「未硬化」状態と称される。すなわち、本発明の文脈における未硬化ポリマーは、形状が変更され得る状態にあるポリマーである。熱硬化性と熱可塑性の両方の材料に関して、固定された状態は、「硬化した」状態と称される。すなわち、本発明の文脈における硬化したポリマーは、形状が固定された状態にあるポリマーである。故に、本発明の文脈における、熱硬化性材料を硬化させるステップと熱可塑性材料を凍結させるステップの両方は、「硬化させる」ステップと称される。
【0019】
好ましくは、未硬化状態のポリマーの粘度は、比較的低い。これにより、ポリマーを比較的速く変形させることが可能になり、これは、工業規模の適用が望まれる場合に有益となり得る。本出願人によって予備試験において適切であると見出されたポリマーの例は、たとえば、エポキシポリマー、ポリウレタン、およびポリアクリレートを含む。しかし、数多くのポリマー材料をこの方法における使用に適合させることも予見され、本発明は、ここにあげるポリマーのみに限定されない。
【0020】
諸実施形態では、ポリマー材料は、たとえば異なるポリマーの混合物またはポリマーと非ポリマー材料の混合物を含む複合材料である。
【0021】
本発明によれば、ポリマー材料内に形成されるポリマー構造は、微視的なものである。たとえば、構造は、ナノメートルまたはマイクロメートルの規模のものになり得る。たとえば、構造は、人の目にほとんど見えないか、または顕微鏡またはループなどの補助製品を使用しないと人の目に見えないものにもなり得る。
【0022】
本発明によれば、未硬化のポリマー材料が、ベース構造の少なくとも一部上に付加される。未硬化のポリマー材料をベース構造上に付加するための数多くの方法が知られており、本発明は、これらのいずれにも限定されない。任意の方法が使用されてよい。方法の例は、たとえば、電界紡糸または電気流体力学的印刷である。
【0023】
ベース構造に付加されたとき、またはベース構造に付加された後の未硬化のポリマー材料は、第1の符号を有する電荷で電気充電される。この電荷は、比較的弱く、たとえば1〜5mC/m程度になり得る。たとえば、未硬化のポリマー材料上の電荷は、1mC/mより大きくなり得る。未硬化のポリマー材料上に印可される最大電荷は、最大数十mC/m、またはそれ以上になり得る。未硬化のポリマー材料上に印可される最大電荷は、とりわけ、使用される材料、環境の湿度、および他の大気条件に左右される。未硬化のポリマー材料は、正の電荷または負の電荷を有することができる。
【0024】
本発明によれば、少なくとも1つの電極が、未硬化のポリマー材料の少なくとも一部の上方に距離を置いて設けられる。故に、ベース構造の寸法と比較して、電極は小さくなり得る。ベース構造は、数平方センチメートルまたはそれ以下から、最大数百平方メートル、またはそれ以上の範囲であってよく、電極は、好ましくはミリメートルもしくはサブミリメートルの範囲またはそれより小さいものである。マイクロメートル規模またはそれより小さい電極も考えられる。
【0025】
しかし、電極とベース構造の両方が微視的規模、たとえばマイクロメートル範囲またはそれより小さいものであることも可能である。電極がベース構造と同じサイズを有すること、または電極がベース構造よりも大きいことが、可能である。
【0026】
可能な実施形態では、2つ以上の電極が、ベース構造の上方に設けられる。たとえば、電極は、ベース構造に沿って移動方向に移動可能であることができ、その一方で複数の電極は、移動方向に実質的に垂直の方向に設けられ、たとえば位置合わせされる。
【0027】
可能な実施形態では、ポリマー材料を向く側の電極は、実質的に平坦である。別の実施形態では、ポリマー材料を向いている側の電極は、鋭利および/または先が尖った形状を有する。
【0028】
電極またはその複数の電極は、ポリマー材料の上方に距離を置いて設けられる。好ましくは、未硬化の、または硬化したポリマー材料と電極との間の接触は、方法を実施しているときには常に防止される。好ましくは、ポリマー材料と電極との間の距離は、小さく、たとえば2mm未満である。
【0029】
本発明によれば、電極は、未硬化のポリマー材料の電荷とは反対である電荷で充電される。電極上の電荷、および電極上の電荷と未硬化のポリマー材料上の電荷との間の符号の違いにより、未硬化のポリマー材料は、電極に向かって静電気的に引き付けられる。その結果、たとえばピーク形状を有するポリマー構造が、ポリマー材料から形成される。
【0030】
本発明によれば、方法は、上記で説明したように、1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造の形状を、これらが形成された後に制御し、安定化させるステップを含む。
【0031】
未硬化の微視的ポリマー構造の形状を制御し、安定化させる間、またはその直後、本発明による方法は、1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造を硬化させるステップを含み、それによって硬化したポリマーコーティングを形成する。未硬化のポリマーを硬化させるための数多くの方法が知られており、それだけに限定されないが、ポリマーの冷却(自然の方法で、熱を除去することで、または冷気を加えることで)およびポリマーへのUV光の付加を含む。熱硬化性ポリマーの場合、熱を付加して熱硬化性ポリマー中の溶媒を蒸発させることができ、および/または硬化の速度を上げることができる。任意の知られている硬化方法が、本発明によって使用されてよい。
【0032】
微視的ポリマー構造を硬化させるステップ後、ベース構造には、硬化したポリマーコーティングが少なくとも部分的に施される。ベース構造に沿って電極を移動させ、方法を反復することにより、コーティングのサイズを増大させることができ、それによって硬化したポリマーコーティングをベース構造のより多くの部分に施す。最終的には、方法の繰り返しを継続すると、ベース構造全体にコーティングを施すことができる。
【0033】
本発明による一実施形態では、方法は、ベース構造の上方の異なる位置に電極を移動させるステップと、すべての方法ステップを反復するステップとをさらに含む。電極がベース構造に沿って移動され、方法が実行されるとき、微視的ポリマー構造のパターンを形成することができる。たとえば、電極を移動させ、方法を反復しながら、リブレット形状(リブ付き、隆起形状)のポリマー構造の平行な列を形成することができる。たとえば、複数の列間の間隔は同じであることができ、リブレット形状の構造は同じ高さも有する。しかし、微視的ポリマー構造のいくつかの異なる重複または非重複のパターンが、比較的大きいベース構造に付加されてもよい。
【0034】
本発明の一実施形態では、ベース構造の上方の異なる位置に電極を移動させ、すべての他の方法ステップを反復することを繰り返すことによって、微視的ポリマー構造の目的に合わせたパターンを形成することができる。たとえば、本発明による方法の実行を継続することにより、たとえば微視的ポリマー構造の繰り返しパターンがコーティングを形成することができる。
【0035】
諸実施形態では、方法は、電極をベース構造に沿って、好ましくは一直線上に移動させるステップをさらに含み、それによって1つまたは複数の細長いリブレット形状の微視的ポリマー構造を形成する。たとえば、本発明による方法を実行するように構成されたシステムは、3つの連続するデバイス/モジュール、すなわち未硬化のポリマー材料をベース構造上に付加するように構成されたポリマー付加デバイスであって、未硬化のポリマーは第1の符号を有する電荷で電気充電される、ポリマー付加デバイスと、1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造を含む未硬化の構造化されたポリマー材料を形成し、形成された微視的ポリマー構造を制御し、安定化させるように構成された、電極を備える制御デバイスまたは組立体であって、ポリマー付加デバイスの後方に配置される、制御デバイスまたは組立体と、微視的ポリマー構造を硬化させるように構成された硬化デバイスであって、たとえば、制御デバイスまたは組立体の後方に配置される、硬化デバイスとを備えることができる。ポリマー付加デバイス、制御デバイスまたは組立体、および硬化デバイスを備えるシステムは、ベース構造に沿って移動されて、システムの移動および動作時にコーティングを付加することができる。
【0036】
本発明の一実施形態では、未硬化の微視的ポリマー構造と電極との間の電流は、電極と直列に電気接続されたシャント抵抗器によって測定される。シャント抵抗器は、基本的には、使用時に電圧が印可され、電流が通り抜けることができる抵抗器である。電流がシャント抵抗器を通り抜けるとき、これに印可された電圧は降下する。故に、シャント抵抗器を通る電流が大きいほど、これに印可された電圧は小さくなる。シャント抵抗器は、使用時、電圧が供給される。電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間に電流が流れていないとき、シャント抵抗器内の電圧は、シャント抵抗器に供給された電圧と実質的に等しい。電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間を電流が流れ始めると、この電流はシャント抵抗器にも到達し、シャント抵抗器内の電圧は、この電流によって降下する。シャント抵抗器内の電圧を監視することにより、電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間の電流をこうして(間接的に)測定し、監視することができる。
【0037】
諸実施形態では、シャント抵抗器の抵抗は、メガオーム程度、たとえば、10MΩから100MΩの間である。
【0038】
本発明の一実施形態では、電流量の閾値は、100ナノアンペア未満の大きさを有する。電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間の電流を測定するために使用される測定ユニットのタイプによっては、より低い電流レベルを観察することができる。たとえば容易に入手可能なシャント抵抗器を使用することにより、ナノアンペア範囲の電流を測定することができる。
【0039】
諸実施形態では、電極上の電荷は、電極と電源または接地との間の接続を短絡することによって低減される。1つだけの電源が使用される場合、これにより、電極上の電荷は完全に除去され、電極とポリマー材料との間の静電引力は解消されることになる。電極が、たとえば複数の電源によって充電され、電源の1つが短絡されている場合、これにより、電極上の電荷が低減され、電極とポリマー材料との間の静電引力が低減される。電極とポリマー材料との間の電流の測定から、電極に向かうポリマー材料の(望ましくない)スプレー作用までの時間は、通常は非常に短く、たとえば数ミリ秒程度である。1つの試験では、電流の測定からポリマーのスプレー作用までの時間は、約20ミリ秒であった。電極に給電する電源の電力出力を十分に低減させることは、この非常に短い時間では可能になり得ない。この場合、接続の短絡が好ましくなり得る。
【0040】
一実施形態では、mosfet(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)スイッチが、電極と並列に電気接続されて、電極上に印可された電荷および/または電圧を少なくとも部分的に低減する。mosfetは、電極を接地または電源に接続している。mosfetのスイッチが入ると、電流はmosfetを通って進行することができ、電極上に印可された電圧は降下する。故に、mosfet上に印可された電圧を変更することにより、電極に印可された電荷および/または電圧の量を制御することができる。
【0041】
あるいは、電源の電力出力においてそのような高速の(すなわちミリ秒以内)の低減が可能であるとき、電極を充電する電源の出力電圧の変更を適用して、一実施形態において電極上の電荷を低減することができる。
【0042】
本発明の一実施形態では、電極とポリマー構造との間の電流の電流量は、電極をベース構造および未硬化の微視的ポリマー構造から遠ざけることによって低減される。この対策はまた、電極とポリマー材料との間の静電引力、故に電流の電流量も低減する。
【0043】
代替の実施形態では、ベース構造を電極から遠ざけて、電極と未硬化の微視的ポリマー構造との間の距離を増大させることができる。
【0044】
本発明の一実施形態では、1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造を硬化させるステップは、1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造を安定化させながら実行される。これにより、予測可能で、信頼高く、反復可能なポリマー構造を形成することが可能になる。好ましくは、硬化させるステップは、たとえば、(ポリマーがUV硬化可能なポリマーであるとき)UV光をレーザビームによって付加することによって、および/または熱の除去によってポリマーを冷却することによって高速で実行される。UV光を付加する1つの利点は、これがレーザビームによって容易に焦点合わせできるため、硬化させるステップおよびポリマー構造を形成するステップを、互いの近くで、同時に、互いに影響を与えずに実行できることである。
【0045】
諸実施形態では、未硬化の微視的ポリマー構造は、ピーク形状であり、すなわち、鋭利な上縁を有する。そのような鋭利な上縁は、たとえば、抗力低減コーティングをベース構造に付加するときに好まれる。
【0046】
諸実施形態では、電極を充電するために電極上に印可される電圧は、1から3kVの間、好ましくは1.5から2.5kVの間など、3.5kVより小さいものである。しかし、他の電圧も予見される。とりわけ、電極とポリマー材料との間の距離、電極とポリマー材料との間の媒体、およびポリマー材料の電荷に応じて、適切な電圧を電極上に印可することができる。
【0047】
諸実施形態では、未硬化の構造化されたポリマー材料(および未硬化の微視的ポリマー構造)の形成中の電極と未硬化のポリマー材料との間の距離は、1mm未満など、最大でも2mmである。好ましくは、電極とポリマー材料との間の距離は、可能な限り小さいが、構造化された材料(ポリマー構造)の形成を依然として可能にもする。電極とポリマー材料との間の距離が低減されるときに電極上の必要とされる電荷が小さくなることが、考えられる。
【0048】
諸実施形態では、未硬化の構造化されたポリマー材料および未硬化の微視的ポリマー構造の形成中、電極とポリマー材料との間に空気が存在する。予備試験は、電極と未硬化のポリマー材料との間に通常の空気が存在するときに満足のいく結果を達成できることを示している。電極の周りの保護環境が、本方法によって生成されるコーティングの予測可能性および反復性に有益となり得ることが予見され、たとえばここでは、不活性ガスおよび/または(ほぼ)真空などの空気以外の別の媒体が、未硬化のポリマー材料と電極との間に存在する。
【0049】
諸実施形態では、未硬化のポリマー材料は、未硬化の電気充電されたポリマー材料の1つまたは複数の線をベース構造上に電界紡糸することによって付加される。電界紡糸は、電気充電されたポリマー材料をベース構造上に付加するための数多くの知られている方法の1つである。電界紡糸の特定の利点は、ポリマー材料の付加中に局所的な高さ上昇がすでに達成され、ポリマー構造の形成をより容易にすることができることである。
【0050】
諸実施形態では、未硬化のポリマー材料は、未硬化の電気充電されたポリマー材料の層をベース構造上に電気流体力学的に印刷することによって付加される。電気流体学的印刷は、電気充電されたポリマー材料をベース構造上に付加するための数多くの知られている方法の1つである。
【0051】
諸実施形態では、未硬化のポリマー材料をベース構造上に付加するステップは、未硬化のポリマー材料をベース構造上に付加する第1のサブステップ、その後に前記未硬化のポリマー材料を電荷で充電する第2のサブステップを含む。たとえば、未硬化のポリマー材料上に電子をブローして未硬化のポリマー材料に電荷を付加することができる。
【0052】
諸実施形態では、未硬化の電気充電されたポリマー材料の電荷は、正の符号のものである。代替の実施形態では、未硬化の電気充電されたポリマー材料の電荷は、負の符号のものである。
【0053】
諸実施形態では、ベース構造は、二重曲面を有する。たとえば、ベース構造は、機体または翼などの航空機部分となり得る。たとえば、ベース構造は、船の船体となり得る。たとえば、ベース構造は、(レーシング)カー、(競技用)自転車、バイクなどの乗り物(その一部)となり得る。たとえば、ベース構造は、風力タービン翼となり得る。特に二重曲面を有するベース構造の場合、通常、その表面層上に凹凸のある(textured)コーティングを付加することは非常に難しい。しかし、本発明による方法では電極がポリマー材料の上方に設けられるため、ベース構造の形状は、方法の可能な適用範囲を限定しない。本方法は、したがって、二重曲面を有する表面上にコーティングを付加するのにも適している。
【0054】
諸実施形態では、ベース構造上に付加されたコーティングは、不均一である。たとえば、ベース構造の一部において形成された微視的ポリマー構造は、ベース構造の他の部分よりも高くおよび/または互いに近くなり得る。有利には、コーティングの微細構造的形状におけるそのような変動は、本発明による方法によって達成することができる。
【0055】
本発明の一実施形態では、方法は工業的方法であり、ここでは、方法は、たとえば、より多くの数の類似製品上に等しいコーティングを、または(非常に)大きいベース構造上にコーティングを付加するように適合され、その一方でコーティングの品質は一貫しており、反復可能であり、予測可能である。
【0056】
本発明は、さらに、請求項11による組立体に関する。
【0057】
換言すれば、請求項11による組立体は、請求項1による方法の特徴的部分を実行するように構成されると言うことができる。
【0058】
本方法に関連して上記で説明した実施形態は、本発明による組立体にも有利であり、および/または適用可能になり得る。
【0059】
本発明の一実施形態では、制御ユニットは、電源と電極との間の電気接続を少なくとも部分的に短絡するように構成されたスイッチ、たとえばmosfetスイッチを含む。上記で説明したように、電源と電極との間の電気接続を短絡することは、電極上の電荷を低減し、電極とポリマー構造との間の電流および静電引力を低減し、ポリマー構造を安定化させるための可能な対策の1つである。
【0060】
諸実施形態では、制御ユニットは、電源の出力電圧を低減するように構成される。上記で説明したように、電源の出力電圧を低減することは、特に、これを十分に高速に行うことができる場合、電極上の電荷を低減し、電極とポリマー構造との間の電流および静電引力を低減し、ポリマー構造を安定化させるための可能な対策の1つである。
【0061】
本発明の一実施形態では、制御ユニットは、電極に動作可能に接続されたアクチュエータを含み、アクチュエータは、電極を未硬化の微視的ポリマー構造から遠ざけるように構成される。上記で説明したように、電極をポリマー構造から遠ざけることは、電極とポリマー構造との間の電流および静電引力を低減し、ポリマー構造を安定化させるための可能な対策の1つである。たとえば、アクチュエータは、圧電素子または弾性要素となり得る。
【0062】
本発明は、さらに、請求項14によるシステムに関する。
【0063】
本発明は、さらに、請求項15による機械的アームに関する。
【0064】
本発明の第2の態様によれば、微視的構造を有するコーティングを少なくとも部分的にベース構造に施すための方法が提示され、方法は、
− 変形可能な材料をベース構造の少なくとも一部上に施すステップであって、変形可能な材料は、第1の符号を有する電荷で充電される、ステップと、
− 前記変形可能な材料の少なくとも一部の上方に距離を置いて少なくとも1つの電極を設けるステップと、
− 第1の符号とは反対の第2の符号を有する電荷で少なくとも1つの電極を充電するステップであって、それによって変形可能な材料を少なくとも1つの電極に向かって静電気的に引き付け、変形可能な材料を、形状を有する1つまたは複数の変形可能な微視的構造を含む変形可能な構造化された材料になるように変形させる、ステップと、
− 1つまたは複数の変形可能な微視的構造の形状を固定するステップであって、それによってコーティングを形成する、ステップとを含む、方法において、
1つまたは複数の変形可能な微視的構造を硬化させるステップの前またはその間、
− 1つまたは複数の変形可能な微視的構造の形状を制御し、安定化させるステップであって、
・少なくとも1つの電極が充電されている間、電極と変形可能な微視的構造との間の電流の発生および電流量を監視する、
・前記電流量に対する閾値を設定する、
・電流量の前記閾値を超えたときに、
・電極上の電荷を低減し、および/または
・電極と変形可能な微視的ポリマー構造との間の距離を増大させることによって前記電流量を少なくとも低減することによる、ステップを含むことを特徴とする。
【0065】
本発明の第2の態様による方法は、ベース構造上に施される材料を除いて、本発明の第1の態様による方法と同様であり、匹敵するものである。この材料はポリマーとなり得るが、金属または複合材料であってもよい。好ましくは、材料は、大気条件下で固体状態である。
【0066】
たとえば、材料は、ベース構造の少なくとも一部上に材料を施すときにベース材料の上部に付加される。
【0067】
たとえば、ベース構造の上部層は、これを変形可能にするように少なくとも部分的に変更(たとえば加熱)され、それによってベース構造の少なくとも一部上に材料が施される。
【0068】
「変形可能な」材料は、材料の形状を変形させることを可能にする状態にある材料である。
【0069】
材料を「固定する」とき、材料の形状は、凍結され、硬化され、または別の形で固定され、それによって材料は、少なくともこれが再度変更されるまで、それ以上変形可能ではなくなる。
【0070】
本発明の第1の態様に関連して説明する実施形態はまた、本発明の第2の態様にも有利となり得る。第1の態様のみに関連して説明する実施形態を本発明の第2の態様と組み合わせて適用することもできる。
【0071】
本発明のこれらおよび他の態様は、添付の図を参照してさらに解明される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】電極によって、ベース構造上に付加された未硬化のポリマー材料から微視的ポリマー構造を含む未硬化の構造化されたポリマー材料を形成することを示す概略図である。
図2】本発明による微視的ポリマー構造を有する硬化したポリマーコーティングを少なくとも部分的にベース構造に施すためのシステムの第1の実施形態の一部を示す概略図である。
図3図2によるシステムが作動されるときにシャント抵抗器内の電流を測定する監視ユニットを示す概略図である。
図4】本発明による微視的ポリマー構造を有する硬化したポリマーコーティングを少なくとも部分的にベース構造に施すためのシステムの第2の実施形態の一部を示す概略図である。
図5】本発明による方法の一実施形態を示す概略図である。
図6】本発明による機械的アームの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1に示すのは、未硬化のポリマー材料2の層の一部の上方に距離を置いて配置された電極4である。ここでは、電極4はピーク形状であるが、これは必要ではない。電極4は、たとえば平坦であっても湾曲していてもよい。未硬化のポリマー材料2は、ベース構造1上に付加され、電荷で充電される。ここでは、未硬化のポリマー材料2上の電荷の符号S1は、正である。
【0074】
図1に示すように、電荷はまた、電極4にも付加され、ここでの電極4上の電荷は負である。すなわち、電極4上の電荷の符号S2は、図1の実施形態では負である。電極4と未硬化のポリマー材料2との間の電荷相違の結果、未硬化のポリマー材料2は、電極4に向かって静電気的に引き付けられる。図示するようなこの静電引力は、未硬化のポリマー材料2の一部を未硬化の構造化されたポリマー材料2’になるように変形させ、この未硬化の構造化されたポリマー材料は、ここではピーク形状を有する未硬化の微視的ポリマー構造2Aを含む。未硬化のポリマー材料2の一部は、静電引力によって上方向に引っ張られ、ポリマー構造2Aに形成される。
【0075】
図1を参照して説明し得るように、好ましくはポリマー構造2Aの形状は、制御され安定化される。より詳細には、これは、ポリマー構造2Aが電極4と接触するときは望まれない。たとえば、ポリマー構造2Aの高さが想像線Lを超えないことが望まれ得る。ポリマー構造2Aの形状のこうした制御および安定化は、図2および4を参照して以下で説明する。
【0076】
図2は、微子的ポリマー構造によって形成された、硬化したポリマーコーティングを少なくとも部分的にベース構造1に施すためのシステムおよび組立体の一部を示す。図2では、ベース構造1には、電荷を有する未硬化のポリマー材料2がすでに施されている。未硬化のポリマー材料2をベース構造1上に付加する方法は、たとえば、図5を参照して以下で説明する。
【0077】
図2に示すのは、電荷で電極4を充電するように構成された電源6である。電源6と電極4との間に、電気接続7が存在する。
【0078】
さらに図2に示すのは、ポリマー材料2内に形成されたポリマー構造の形状を制御し、安定化させるように構成された制御ユニット9である。図1と同様に、図2もまた、ポリマー材料2の上方に配置された電極4を示す。ポリマー材料2内に形成されたポリマー構造は、図2では示さない。説明するように、本出願人は、ポリマー構造が電極4に向かってスプレーする直前(たとえば数ミリ秒前)にはポリマー材料2内にポリマー構造を形成しているため、電極4とポリマー材料2との間の電流をすでに測定できることを見出した。
【0079】
さらに図2に示すのは、測定ユニット10、ここではシャント抵抗器5であり、これは、電極4が充電されている間、電極4と未硬化の微視的ポリマー構造2Aとの間の電流の発生および大きさを監視するように構成される。より詳細には、シャント抵抗器5は、電極4と直列に電気接続される。
【0080】
測定ユニット10は、制御ユニット9と通信して配置される。システムおよび/または組立体の動作中、すなわち、本発明による方法を実行している間、電極4とポリマー構造2Aとの間の電流が予想される。測定ユニット10は、この電流を間接的に測定する。測定を実行し、電流の電流量を提供しながら、制御ユニット9は、電流の電流量を事前設定された閾値と比較する。図1を再度参照すると、この閾値を超えると、形成されたポリマー構造2Aの高さは、想像線Lを超えることが予想される。これは望ましくないため、制御ユニット9によって方策を講じる。本発明によれば、この方策は、電極4上の電荷を低減することおよび/または電極4とポリマー構造との間の距離を増大させることになり得る。
【0081】
図2の実施形態では、これらの方策の第1のもの、すなわち電極4上の電荷を低減することを概略的に示す。したがって、mosfet(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)スイッチ11が、電極と並列に接続されて設けられる。制御ユニット9は、電極4とポリマー構造との間の電流の事前に定義された閾値を超えると決定したとき、mosfetスイッチ11を起動させることができる。mosfetスイッチ11を起動させると、電源6によって提供された電荷の少なくとも一部は、短絡されて、電極4上の電荷を低減し、電極4とポリマー構造との間の静電引力を低減する。電極4上の電荷および電極4とポリマー構造との間の静電引力のこうした低減は、ポリマー構造の形状を安定化させる。次いで、硬化源がポリマー構造を硬化させ、その形状を固定することができ、これは図5を参照して以下で説明する。
【0082】
図3は、たとえば図2のシステムを動作させている間のシャント抵抗器5上の電圧を表示するモニタースクリーンのスナップショットを示す。時間が水平軸上に線形に表示され、左から右に増大し、一方でシャント抵抗器上の電圧は、垂直軸上に線形に表示される。この図で分かるように、最初、シャント抵抗器内の電圧は比較的一定であり、これは、電極4とポリマー構造との間に電流が存在しないことを示す。時間が進み、時間t1辺りになると、シャント抵抗器上で測定される電圧は小さくなり、これは、電流がシャント抵抗器を流れることを示す。時間t2では、閾値Tに到達することができ、このときに方策は、通常、システムを動作させているときに講じられる。しかし、図3に示すグラフでは、システムは、時間t2を超えて、ポリマー材料が電極と接触するまで動作しており、シャント抵抗器を流れ抜ける電流は多くなり、シャント抵抗器内の電圧は実質的に0である。この例では、線が負の勾配を有する時間t1辺りで第1の電流を測定することから、時間t3辺りで電極に向かってポリマー材料をスプレーするまでの時間は、20msの短さになり得る。故に、図3から、電極とポリマー構造との間の静電引力を低減するための方策は、15msの短さの時間帯で必要とされ得、そうでなければスプレー作用はすでに起こっていたことが分かる。
【0083】
図4は、微視的ポリマー構造2Aによって形成された硬化したポリマーコーティングを少なくとも部分的にベース構造1に施すためのシステム(部分的)および/または組立体100の第2の実施形態を示す。図2と同様に、図4の組立体/システムもまた、電源6と、制御ユニット9と、電流測定ユニット10と、電荷を有するポリマー材料2がその上に付加されたベース構造1とを備える。図4によるシステム/組立体の電源6、制御ユニット9、および電流測定ユニット10の作用原理は、図2によるシステム/または組立体の電源6、制御ユニット9、および電流測定ユニット10の作用原理と同様であるため、繰り返されない。
【0084】
しかし、図2の組立体/システムがmosfetスイッチ11を使用してポリマー構造2の形状を制御し、安定化させるところでは、図4の組立体/システムは、アクチュエータ12を使用してポリマー構造2Aの形状を制御し、安定化させる。図2の組立体の作用と同様の方法で、電極4とポリマー構造2Aとの間の電流の電流量が事前設定された閾値を超えると制御ユニット9が決定すると、アクチュエータ12は、電極をポリマー構造2Aから(矢印Mによって示すように)遠ざける。電極4をポリマー構造2Aから遠ざけることにより、電極4とポリマー構造2Aとの間の静電引力は低減され、形成されたポリマー構造2Aの形状を安定化させる。
【0085】
図4では、アクチュエータ12、たとえば圧電素子が、絶縁要素17によって電極4から物理的に分離されていることを示す。
【0086】
図4では、未硬化の微視的ポリマー構造2Aを硬化させ(固くし)、硬化したポリマーコーティングを形成するように構成された硬化源8を見ることもできる。
【0087】
方法の異なるステップを、図5を参照して代替的な方法で説明する。
【0088】
図5に示すのは、第1の符号S1の電荷を有する未硬化のポリマー材料2のコーティングをベース構造1上に付加するように構成されたデバイス13である。未硬化のポリマー材料のこうした付加は、たとえば、電界紡糸または電気流体力学的印刷によって行われ得る。デバイス13はここでは、デバイス分離壁15によって電極4から物理的に分離されている。
【0089】
さらに図5に示すのは、前記未硬化のポリマー材料2の少なくとも一部の上方に距離を置いて設けられた電極4である。電極4は、第1の符号とは反対の第2の符号S2を有する電荷で充電される。これにより、未硬化のポリマー材料2は、電極4に向かって静電気的に引き付けられ、未硬化のポリマー材料2は、形状を有する未硬化の微視的ポリマー構造2Aを含む、未硬化の構造化されたポリマー材料2’になるように変形される。図5では、デバイス13によって付加されているが、まだ変形されていない未硬化のポリマー材料2と、電極4によって形成されている未硬化の微視的ポリマー構造2Aを含む未硬化の構造化されたポリマー材料2’とを良好に見ることができる。電極4は、デバイス分離壁14によってデバイス13から物理的に分離されている。
【0090】
未硬化の微視的ポリマー構造2Aが形成されると、その形状は、たとえば上記で説明した方法で制御され、安定化される。
【0091】
図5では、未硬化の微視的ポリマー構造2Aを硬化させ、硬化したポリマーコーティング2”を形成するように構成された硬化源8を見ることができる。
【0092】
図5では、デバイス13と、電極4と、硬化源8とを備える組立体100は、すでにある期間にわたって動作しており、動作中にベース表面に対して移動している。この結果、細長く、高い、リブレット形状の線のコーティングが形成された。組立体100の継続した動作中、(たとえばベース表面を図の左に移動させることによって、または組立体を図の右に移動させることによって)より長い線のコーティングを形成することができる。図を出入りするようにベース表面1または組立体100を移動させることにより、別の線を、たとえば図示する線と平行に形成することもできる。このようにして、ベース構造1上に付加されたコーティング2”のサイズを増大させることができる。
【0093】
図6は、微視的ポリマー構造2Aを有する硬化したポリマーコーティング2”を少なくとも部分的にベース構造1、ここでは航空機の翼に施すためのシステム100、たとえば図4に示すようなシステム100を備えるロボットアーム300を概略的に示す。ロボットアーム300は、所望のコーティング2”に応じて、たとえば、ベース構造1にわたってアームの長手方向軸に対して長手方向に走査するか、またはベース構造1にわたってアームの長手方向軸に対して横方向に走査して、コーティング2”をベース表面に付加することができる。アーム300が表面に沿って移動されるにつれて、コーティング2”の領域は増大する。
【符号の説明】
【0094】
1 ベース構造
2 未硬化のポリマー材料
2A 未硬化の微視的ポリマー構造
2’ 未硬化の構造化されたポリマー材料
2” 未硬化のポリマーコーティング
4 電極
5 シャント抵抗器
6 電源
7 電気接続
9 制御ユニット
8 硬化源
10 電流測定ユニット
11 mosfetスイッチ
12 アクチュエータ
13 デバイス
14 デバイス分離壁
15 デバイス分離壁
17 絶縁要素 100 組立体、システム
300 ロボットアーム
L 想像線
M 矢印
S1 第1の符号
S2 第2の符号
T 閾値
t1、t2、t3 時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2020年4月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微視的ポリマー構造を有する硬化したポリマーコーティング(2”)を少なくとも部分的にベース構造(1)に施すための方法であって、
未硬化のポリマー材料(2)を前記ベース構造(1)の少なくとも一部上に付加するステップであって、前記未硬化のポリマー材料(2)は、第1の符号(S1)を有する電荷で電気充電される、ステップと、
前記未硬化のポリマー材料(2)の少なくとも一部の上方に距離を置いて少なくとも1つの電極(4)を設けるステップと、
前記第1の符号(S1)と反対の第2の符号(S2)を有する電荷で前記少なくとも1つの電極(4)を充電するステップであって、それによって未硬化のポリマー材料(2)を前記少なくとも1つの電極(4)に向かって静電気的に引き付け、前記未硬化のポリマー材料(2)を、形状を有する1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を含む未硬化の構造化されたポリマー材料(2’)になるように変形させ、ここにおいて前記未硬化のポリマー材料(2)を前記少なくとも1つの電極(4)に向かって静電気的に引き付けることで、前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を前記少なくとも1つの電極(4)に向かって成長させる、ステップと、
前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を硬化させるステップであって、それによって前記硬化したポリマーコーティング(2”)を形成する、ステップとを含む、方法において、
前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を硬化させる前記ステップの前またはその間、
前記未硬化の構造化されたポリマー材料(2’)が前記少なくとも1つの電極(4)から距離を置いた状態で、前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)の前記形状を制御し、安定化させるために前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)の前記成長を止めるか、または低減するステップであって、それによって、
前記少なくとも1つの電極(4)が充電されている間、前記電極(4)と前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)との間の電流の発生および電流量を監視し、前記電極(4)と前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)との間の前記電流を測定する、
前記電流量に対する閾値を設定する、
電流量の前記閾値を超えたときに、
前記電極(4)上の前記電荷を低減し、および/または
前記電極(4)と前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)との間の前記距離を増大させることによって少なくとも前記電流量を低減することによって、前記未硬化のポリマー材料(2’)と前記少なくとも1つの電極(4)との間の接触を常に防止する、ステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)と前記電極(4)との間の前記電流が、前記電極(4)と直列に電気接続されたシャント抵抗器(5)によって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電流量の前記閾値が、100ナノアンペア未満の大きさを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電極(4)が、接続(7)によって電源(6)に電気接続され、前記電極(4)上の電荷は、前記接続(7)を短絡することによって低減される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電極(4)上の前記電荷が、前記電極(4)を充電する電源(6)の出力電圧を変更することによって低減される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)と前記電極(4)との間の前記電流が、前記電極(4)を前記ベース構造(1)および前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)から遠ざけることによって低減される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を硬化させる前記ステップが、前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を安定化させている間に実行される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ベース構造(1)の上方の異なる位置に前記電極(4)を移動させるステップと、
すべての他の方法ステップを反復するステップとをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
微視的ポリマー構造(2A)の目的に合わせたパターンが、前記ベース構造(1)の上方の異なる位置に前記電極(4)を移動させ、すべての他の方法ステップを反復することを繰り返すことによって形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の工業的方法。
【請求項11】
微視的ポリマー構造(2A)を有する硬化したポリマーコーティング(2”)を少なくとも部分的にベース構造(1)に施すための組立体(100)であって、前記ベース構造(1)には、第1の符号(S1)の電荷を有する未硬化のポリマー材料(2)が施され、前記組立体(100)は、
前記未硬化のポリマー材料(2)の少なくとも一部の上方に距離を置いて配置されるように構成された少なくとも1つの電極(4)と、
前記電極(4)に電気接続された少なくとも1つの電源(6)であって、前記第1の符号(S1)とは反対の第2の符号(S2)を有する電荷で前記電極(4)を充電するように構成され、それにより、前記電極(4)を充電した後、未硬化のポリマー材料(2)は、前記電極(4)に向かって静電気的に引き付けられ、前記未硬化のポリマー材料(2)を、形状を有する1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を含む未硬化の構造化されたポリマー材料(2’)になるように変形させ、ここにおいて前記未硬化のポリマー材料(2)を前記少なくとも1つの電極(4)に向かって静電気的に引き付けることで、前記1つまたは複数の未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を前記少なくとも1つの電極(4)に向かって成長させる、少なくとも1つの電源(6)と、
前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)を硬化させ、前記硬化したポリマーコーティング(2”)を形成するように構成された硬化源(8)とを備える、組立体(100)において、
制御ユニット(9)であって、前記未硬化の構造化されたポリマー材料(2’)が前記少なくとも1つの電極(4)から距離を置いた状態で、前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)の前記形状を制御し、安定化させるために前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)の前記成長を止めるか、または低減するように構成され、それによって前記未硬化のポリマー材料(2’)と前記少なくとも1つの電極(4)との間の接触を常に防止し、前記制御ユニット(9)は、
電流測定ユニット(10)であって、前記電極(4)と前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)との間の電流を測定し、前記電極(4)と前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)との間の電流の発生および電流量を監視するように構成され、前記制御ユニット(9)と通信して配置される、電流測定ユニット(10)を備える、制御ユニット(9)をさらに備え、
前記制御ユニット(9)は、前記電流量に対する閾値の設定を可能にし、
前記制御ユニット(9)は、前記電流が電流量の前記閾値を超えると、
前記電極(4)上の電荷を低減するように、および/または
前記電極(4)と前記未硬化の微視的ポリマー構造(2A)との間の前記距離を増大させるように構成されることを特徴とする、組立体(100)。
【請求項12】
前記制御ユニット(9)が、前記電源(6)と前記電極(4)との間の前記電気接続(7)を短絡するように構成されたスイッチ(11)を含む、請求項11に記載の組立体。
【請求項13】
前記制御ユニット(9)が、前記電極(4)に動作可能に接続されたアクチュエータ(12)を含み、前記アクチュエータ(12)は、前記電極(4)を前記未硬化の微視的ポリマー構造(4)から遠ざけるように構成される、請求項11または12に記載の組立体。
【請求項14】
微視的ポリマー構造(2A)を有する硬化したポリマーコーティング(2”)を少なくとも部分的にベース構造(1)に施すためのシステム(200)であって、
電荷を有する未硬化のポリマー材料(2)をベース構造(1)上に付加するように構成されたポリマー付加デバイス(13)と、
請求項11から13のいずれか一項に記載の組立体(100)とを備える、システム(200)。
【請求項15】
請求項11から13のいずれか一項に記載の組立体(100)および/または請求項14に記載のシステム(200)を備える、機械的アーム(300)。
【国際調査報告】