【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様(請求項1)によれば、コアシェル型構造の分子ビルディングブロックから形成される高分子液体材料を調製するための方法が提供され各ビルディングブロックが多分岐ポリシロキサンコアと、前記コアに周辺において付加された官能性シロキサンシェルとから構成され、この方法は、以下の工程:
a)少なくとも1つのシリコンテトラアルコキシドSi(OR)
4(Rは、最大4個の炭素原子を有する非分岐または分岐アルキル基である);および任意選択で、以下:
−1つのR’’−有機官能性トリアルコキシシランR’’−Si(OR)
3、および任意選択で、R
3,R
4−有機官能性ジアルコキシシランR
3−Si(OR)
2−R
4;または
−異なるR’’−有機官能性トリアルコキシシラン、および任意選択で、少なくとも1つのR
3,R
4−有機官能性ジアルコキシシランの混合物;
の官能性混和物を、
モノマーまたはオリゴマーの形態で、触媒の存在下、所望のDP
コアに従って選択された第1の化学量論量の無水酢酸とともに反応容器に充填する工程と;
b)工程a)で提供された反応混合物を、水を含まない不活性雰囲気中で撹拌しながら加熱して所望の反応温度に到達させ、反応および蒸留物の流れが停止するまで、得られた酢酸エステル反応生成物を蒸留除去し、それにより前記多分岐ポリシロキサンコアを形成する工程と;
c)
−1つのR’−有機官能性トリアルコキシシランR’−Si(OR)
3、および任意選択で、R
1,R
2−有機官能性ジアルコキシシランR
1−Si(OR)
2−R
2、または
−異なるR’−有機官能性トリアルコキシシラン、および任意選択で、少なくとも1つのR
1,R
2−有機官能性ジアルコキシシランの混合物を、所望のDP
シェルに従い選択された第2の化学量論量の無水酢酸とともに、任意選択で触媒の存在下、工程b)で形成された高温反応混合物に対して、撹拌を継続しながら添加して、工程b)で形成されたコア上への前記官能性シロキサンシェルの選択的蓄積を開始し、これによりさらなる酢酸エステルが形成されて蒸留され、蒸留物の流れが再び停止するまで反応を継続する工程であって、
R’およびR’’は、それぞれがL−Zとして表すことができる、独立して選択された置換基であり、
−Lは、−C
6H
4−、−C
6H
4−CH
2−、−CH
2−CH
2−C
6H
4−CH
2−および−[(CH)
2]
n−(n=0、1、2、3、4)からなる群から選択されるリンカー基であり;
−Zは、以下:
【0020】
【化1】
【0021】
から選択される末端官能基であり、
R
*は、−H、−CH
3、−C
2H
5、−C
3H
8、−C
4H
10および−C
6H
5からなる群から選択され;
またはZは、−[(CH)
2]
m−CH
3(m=0、1、2、...、11)であり;
および
トリプレット(R’、R
1、R
2)と(R’’、R
3、R
4)が同一ではないという条件で、R
1、R
2、R
3およびR
4は、−CH
3、−C
2H
5、−C
6H
5、−C
6H
11、−CH=CH
2、−CH
2−CH
2−Clおよび−C
5H
5からなる群から独立して選択される置換基である、
工程と;
d)任意選択で、工程c)で記載された添加および反応プロトコルを少なくとも1回繰り返すことにより、シェルに追加の官能性層を構築する工程と;
e)任意選択で、反応容器内の圧力を徐々に下げ、最終圧力を5〜250mbarの範囲に10〜120分間保持することによる減圧蒸留により、反応混合物中の低分子反応生成物および/または残留出発物質を除去する工程と;
f)こうして得られた高分子液体材料を冷却および単離する工程と;を備え、
工程a)からe)が1つの同一反応容器内で実行される。
【0022】
以下でより明確になるように、コアは、主要な非有機官能性シロキサン成分に加えて、限定された含有量の有機官能性シロキサン部分を含んでもよい。シェルは、定義上、有機官能性シロキサン部分のみで構成されている。トリプレット(R’、R
1、R
2)と(R’’、R
3、R
4)とが同一でないという規定は、シェルの組成と任意選択の官能性を有するコア成分の組成とが同一でないことを意味する。
【0023】
上記の調製方法において、様々な工程で使用される反応物の量は、形成される高分子液体材料の所望の組成に応じて選択されるであろう。特に、反応物の量は、以下でさらに定義される含有量の限定事項を満たすように選択される。
【0024】
本文脈において、「官能性混和物」という用語は、工程a)で添加される少なくとも1つの有機官能性トリアルコキシシランおよび任意選択でのジアルコキシシランの量に対処するために使用される。このような混和物により、コアに特定の官能性特性を提供し得る。
【0025】
有利な実施形態は、従属請求項および以下の説明および実施例で定義されている。
一実施形態(請求項2)によれば、官能性混和物がゼロである。換言すると、コアは、実質的に非有機官能性シロキサン部分のみで構成されている。
【0026】
さらなる実施形態(請求項3)によれば、Rがメチルまたはエチルである。
別の実施形態(請求項4)によれば、工程b)からe)の反応温度が、70℃〜170℃の範囲、好ましくは100℃〜150℃の範囲、最も好ましくは120℃〜140℃の範囲であり、工程b)からd)の間の圧力が、0.1bar〜2barの範囲であり、好ましくは0.5bar〜1.4barの範囲であり、最も好ましくは0.9bar〜1.2barの範囲である。
【0027】
さらなる別の実施形態(請求項5)によれば、シリコンテトラアルコキシドSi(OR)
4が、テトラエトキシシラン(TEOS)またはテトラメトキシシラン(TMOS)、またはそれらのモノマーおよびオリゴマーの混合物である。
【0028】
さらなる実施形態(請求項6)によれば、酢酸エステル反応生成物が、低沸点反応生成物が溶液中の高沸点残留反応物から分離され、これにより後者が連続的に反応混合物にフィードバックされるように、複数の理論段数を含む蒸留塔を介して系から除去される。
【0029】
またさらなる実施形態(請求項7)によれば、触媒が、Ti(OR’’)
4、またはZn(II)アルカノレートZn(OR’’)
2の群から選択され、R’’=−CH
2CH
3、−CH(CH
3)
2、−CH
2CH
2CH
3、−C(CH
3)
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3であるか、または、触媒が、Ti(O−Si(CH
3)
3)
4であり、触媒量が、コア成長工程で使用される全アルコキシシラン前駆体のモルベースで0.01〜1.5%である。
【0030】
さらなる別の実施形態(請求項8)によれば、R’が下記:
i)R’=−C
6H
5、−CH=CH
2であり、
ii)R’=L−Zであり、Lが−CH
2−であり、およびZ=[(CH)
2]
p−CH
3(p=0、1、2、4、6、8、10、12、14)であり、
iii)R’=L−Zであり、L=−CH
2CH
2CH
2−(n−プロピル)であり、Z=−Br、−Cl、−I、−SH、−OH、−NH
2、−NH−(BOC)、−NH−(FMOC)、−(2−オキシラニル)、−メトキシ−(2−オキシラニル)、−N
3、−SO
3R、−PO
3R
2、−アクリレート、−メタクリレート、−エタクリレート、−プロパクリレート、−ブタクリレートであり、または
iv)R’=L−Zであり、L=CH
2であり、Z=ビニル、−アクリレート、−メタクリレート、−エタクリレート、−プロパクリレート、−ブタクリレートである、
の群から選択され、
R
1およびR
2が、同一であるとともに、−CH
3、−C
6H
5、および−CH=CH
2からなる群から選択され、R
1=−CH
3およびR
2=−CH=CH
2である。
【0031】
さらなる態様(請求項9)によれば、官能性混和物なく実行される本発明の方法により調製された高分子液体材料が提供される。材料は、コアシェル型構造の分子ビルディングブロックから形成され、各ビルディングブロックが多分岐ポリシロキサンコアと、コアに周辺において付加された官能性シロキサンシェルとから構成され、
材料が、0.5質量パーセント未満のヒドロキシ部分(Si−OH)を含み、
コアが、1.3〜2.7の範囲、特に1.5〜2.5の範囲の重合度DP
コアを有し、
シェルが、R’−置換シロキサン部分、および任意選択でR1−、R2−置換シロキサン部分から形成されるとともに、0.3〜2.5の範囲、特に1.0〜2.3の範囲の重合度DP
シェルを有し、
材料中の全シリコン対遊離加水分解性アルコキシのモル比が、1:1.25〜1:2.75であり、
材料が、10〜100,000cPの範囲の粘度を有し、
コアが、非有機官能性シロキサン部分で構成され、非有機官能性シロキサン部分が、
−一般式
【0032】
【化2】
【0033】
の非有機官能性末端結合シロキサン部分(Q
1化学種)
および/または
−一般式
【0034】
【化3】
【0035】
の非有機官能性ジシロキサン部分(Q
2化学種)
および/または
−一般式
【0036】
【化4】
【0037】
の非有機官能性トリシロキサン部分(Q
3化学種)
および/または
−一般式
【0038】
【化5】
【0039】
の非有機官能性テトラロキサン部分(Q
4化学種)
を含み、
シェルが、以下:
−一般式
【0040】
【化6】
【0041】
の単有機官能性末端結合シロキサン部分(T
1化学種)
および/または
−一般式
【0042】
【化7】
【0043】
の単有機官能性ジシロキサン部分(T
2化学種)
および/または
−一般式
【0044】
【化8】
【0045】
の単有機官能性トリシロキサン(T
3化学種)部分、
および、任意選択で、
−一般式
【0046】
【化9】
【0047】
の末端結合二有機官能性シロキサン(D
1化学種)部分
および/または
−一般式
【0048】
【化10】
【0049】
の二有機官能性ジシロキサン(D
2化学種)部分、から構成され、
R、R’、R
1およびR
2が、請求項1に定義された通りである。
一実施形態によれば、材料が、50〜5,000cPの範囲の粘度を有する。
【0050】
有利には(請求項10)、T化学種対Q化学種の相対原子比が0.03:1〜1:1、好ましくは0.03:1〜0.75:1、最も好ましくは、0.05:1〜0.5:1の範囲である。
【0051】
本発明の別の態様(請求項11)によれば、第1の態様による高分子液体材料を所定量の水または所定量の水溶媒混合物と反応させることにより得られた加水分解生成物が提供される。
【0052】
さらなる態様によれば、さらなる態様による高分子液体材料、または第2の態様による対応する加水分解生成物が、請求項12および13で規定されるように様々な用途のために使用される。
【0053】
驚くべきことに、無水酢酸反応(すなわち、イントロダクションで述べた方法5))を連続して使用して、同一の反応条件下で、少なくとも1つの有機官能性トリアルコキシシランを含む単一の有機官能性シラン化合物または混合物を投与することにより、既存のhyPASコアまたは核上に官能性シェルを選択的に構築し得ることが分かった。
【0054】
直接反応生成物は、
−本質的に明確に高分子であり、その構成コアシェルMBBの典型的なサイズは2nm未満であり;
−選択された反応条件に応じて、様々な含有量の未反応のモノマーおよび小オリゴマーを有する分子量の統計的分布を示し、低分子種は、任意選択で真空蒸留によって除去され再利用され得る。個々のビルディングブロックでは、典型的には30〜500個のSi原子が含まれ;
−コアとシェルとの両方に、かなりの含有量の加水分解性で反応的に架橋するアルコキシ基を有し;
−10〜100,000cPの範囲の粘度を有する、本質的に無溶媒の純MBBの液体混合物であり;
−MBBの分子構造の点で星型ポリマー様である。
【0055】
既知の最先端技術からの他の星型ポリマーとの明確な区別は、コアの多分岐の性質に関して行うことができ、これは、コアにおけるかなりの程度の架橋、およびさらに重要なことに、その可変サイズに関するシェルの性質(エンドキャッピングから可変長の主に直線状ポリマー鎖まで)を示す。実用的に関連する配合は、コア(DP
コア=1.3〜2.7)およびシェル(DP
シェル=0.3〜2.5)の両方のサブ構造の限られた重合範囲内にある。
【0056】
本発明では、「コアシェル」という用語がナノマテリアル科学から採用された。本発明により包含される反応生成物の明らかな高分子の特徴に基づいて、コアとシェルとの間の境界領域は、組成が急激に変化する鋭い境界ではなく、拡散シェルとして理解されなければならない。官能性シェル種の濃度が数結合長またはオングストロームにわたって変化するこの拡散シェル層構造は、縮合化学、つまり、予め形成されたhyPASコアへの官能性シランシェルのグラフト化の直接的な結果である。樹状のhyPASコアの外側アームは、より小さなシランモノマーおよびオリゴマーに対して高い透過性を示すため、シェルのグラフト化の程度がその周辺部で最も高いことは明らかであるが、鋭いカットオフはない。それにもかかわらず、「コアシェル」という用語は、立体的な理由と反応性アルコキシ基の利用可能性の低下の両方のために、コアの中心におけるグラフト化が非常に妨げられるため、依然として適用される。コアの中心における平均的な結合性(架橋酸素結合(シリコン中心あたりのSi−O−Si結合)の数)がコアの周囲よりも高いからである。したがって、「コアシェル」という用語は、本発明の文脈において、上記の議論に従う拡散シェルを備えたhyPASコアの意味で使用される。
【0057】
非結晶性酸化シリコン材料の重合度DPは、系内の金属原子Si
totの総数に対する架橋酸素BO(Si−O−Si結合の数)の比として定義され得る。
重合度について:
−DP=4、すべてのSi原子が他の4つの隣接原子に結合している。すなわち、これは、各中心Siの四面体位置に位置する4つの酸素原子を有する完全結晶(水晶)における場合であり、各Si原子がまったく同じ環境を認める。
−DP=3、平均して各Si原子は架橋酸素結合(Si−O−Si)を介して3つの他のSi原子に結合している。単一の成分がDP=3を有する場合、その構造は、粘土鉱物のようなシートに似た、無限に拡張された2次元シートである。
−DP=2、平均して各Si原子は2つの架橋酸素結合を介して結合している。単一の成分類似体は、例えば、非架橋PDMS(ポリジメチルシロキサン)タイプのシリコーン樹脂などの直鎖状ポリマーである。
【0058】
無水酢酸反応は、その試薬(アルコキシドおよび無水酢酸)に関して定量的である。したがって、その添加の結果として形成される新しい結合の数およびDPは、以下に示すように、化学量論的変換係数f(およびコアi)とシェルiiのg)ビルドアップ反応に正比例する。
【0059】
【化11】
【0060】
テトラアルコキシドモデル化合物からのコア形成(式i))、最大化学量論係数f=2は、無水酢酸対テトラアルコキシドの比2:1に対応し、これは、SiO
2への完全な変換である実質的に不可能なDP=4になる。
【0061】
機構的には、式i
a)に示すように、無水酢酸反応は、酢酸エステルの第1のアリコートの脱離を伴うアセトキシ中間体を介して進行する。次に、アセトキシ中間体は、式i
b)に示すように、酢酸エステルの第2のアリコートの脱離化で、第2の分子上のアルコキシ基と分子間縮合を起こす。
【0062】
【化12】
【0063】
Moellerの元の研究ですでに説明されているように、有機官能性トリアルコキシシランは、式ii)に従う無水物化学を使用してhyPASに変換され得る。
【0064】
【化13】
【0065】
ただし、縮合反応に利用できるアルコキシ基の数が少ないため(4ではなく3)、DP
コアは低くなる。機構的には、ジ−およびトリアルコキシシランはテトラアルコキシシランと同じように反応する。
【0066】
ほとんどのガラスおよびhyPASは、理論上の限界(すべてのアルコキシ基の完全な変換)を大幅に下回る平均DP値を特徴としている。調製中、理論上のDP値は、反応で使用される化学量論比によって与えられ、有効なDP値は、酢酸エステル反応生成物の定量分析を通じて直接決定され得る。独立して、材料のDP
コアとDP
シェルは定量的NMRデータから直接取得され得る。テトラアルコキシシランに由来する単一成分hyPASの単純なモデルの場合、DPは定量的な
29Si NMRスペクトル(
図3)から下記に従い計算され得る。
【0067】
【数1】
【0068】
ここで、A
Qnは、そのQ
n種に関連する定量的な
29SiNMRピーク面積を示し、これは、Si−O−Si架橋によって次の最隣接するSi原子に連結させるn個の架橋酸素(BO)原子と、4−n個の非架橋酸素(NBO)原子、すなわちアルコキシ基Si−ORとによって調整されたSi原子である。
【0069】
純粋なテトラアルコキシシランモデル系の場合、定量的変換を想定すると、DPは単純な下記関係によって化学量論的f係数(式i)に直接関連づけられる。
【0070】
【数2】
【0071】
有機官能性のジ−およびトリアルコキシシランについて、
29Siスペクトルフィンガープリント領域は徐々にダウンフィールドにシフトし、シェル堆積後のモデル化合物スペクトルに見られるように、異なる非有機官能性Q
nを有機官能性T
mおよびD
l化学構造から明確に分離できる(
図4)。ここで、A
Tmは、m個のBOおよび(3−m)個のNBOを有する有機官能性トリアルコキシシランに属する各Si種の曲線下のピーク面積を表し、A
Dlは、l個のBOおよび(2−l)個のNBOを有する有機官能性ジアルコキシシランに由来するピーク面積を表す。
【0072】
しかしながら、コアシェル分子の縮合および重合の程度を決定することはより複雑である。シェル前駆体および追加の無水酢酸の添加前のコアの重合度(DP
コア、最初)は、純粋な系の式に従い、定量的
29Si NMR(
図3)または化学量論から決定され得る。
【0073】
【数3】
【0074】
ここで、A
Qnは、シェル前駆体の添加前に採取されたサンプルのアリコートで収集された定量的な
29SiNMRスペクトルから導出される。
本発明による既存のテトラアルコキシシランコア上に有機官能性トリアルコキシシランから成長したシェルを特徴とするMBB材料の場合、新しいモノマーおよび無水酢酸の添加(gは無水酢酸対有機官能性トリアルコキシシランのモル比として定義される)は、以下の反応をもたらす。
i)コア重合(Q−Q凝縮)の継続、
ii)T種のホモ縮合(T−T縮合)、および
iii)既存のコアシロキサン分岐への官能性シランのグラフト化(T−Q縮合)。
【0075】
ホモ縮合反応(T−T)は、シェル(DP
シェル)の重合度を増加させるのみであるが、ヘテロ縮合(T−Q)は、以下に示す例示的なグラフト反応iii)に従って、DP
コアおよびDP
シェルの両方を増加させる。
【0076】
【化14】
【0077】
上記のグラフト反応の例では、R’有機官能性トリアルコキシシランがT
0からT
1に変換される一方、反応の左側のコア種(3つの波状シロキサン結合によって象徴される)がQ
3からQ
4に変換されることに留意されたい。これは、各グラフト反応が同時にDP
コアとDP
シェルとを増加させることを表している。明らかに、例えば、T
2種がQ
2にグラフト化してそれぞれT
3とQ
3を生成する、または、T
1種がQ
2にグラフト化してT
2とQ
3を生成するなど、可能なグラフト反応の他のあらゆる種類の組み合わせが存在する。
【0078】
実験結果は、T−Q縮合(グラフト化)が、本発明によって記載される限定において好ましい反応であることを示唆している。
図5から分かるように、
29Si−
29Si INADEQUATE NMRスペクトルは、Q−QとQ−Tの相関に関連する明確なシグナルを示しているが、T−Tホモ縮合に関連するピークは検出限界を下回っている。これは、T−T縮合および/または有機官能性トリアルコキシシランビルディングブロックで作製される純粋な相重縮合種の形成ではなく、予めアセンブルされたコアへの三官能性シランのグラフト化が、支配的なT縮合メカニズムである証拠である。
【0079】
コアシェル高分子の最終重合度は、シェル前駆体との反応が完了した後の定量的
29SiNMRスペクトルから、下記に従い決定され得る。
【0080】
【数4】
【0081】
ここで、A
QnおよびA
Tmは、シェル前駆体との反応が完了した後に収集された定量的な
29Si NMRスペクトルから導出される(
図4)。
前述の反応i)〜iii)のため、DP
コア、最終およびDP
シェルは、f、g、およびn
シェル/n
コア比から直接計算され得ない。なぜなら、T−TおよびT−Q反応の相対的な重要性/選択性は事前に知られておらず、Q
nおよびT
mモノマーとより高分子のhyPASコア種との相対的な反応性に依存するからである。それにもかかわらず、f、g、およびn
シェル/n
コアは、次式によってそれぞれの重合度に関連付けられる。
【0082】
【数5】
【0083】
ここで、ΔDP
コア=DP
コア、最終−DP
コア、最初であり、三官能性モノマーおよび無水酢酸の添加後(
図4)および添加前(
図3)に収集された定量的
29SiNMRスペクトルから決定される。
【0084】
本発明によるMBBは、テトラアルコキシシランベースのhyPASコアから構成される。コアアセンブリ中のf係数の選択は、DP
コア、最初を決定し(DP
コア、最終と同一であるクレームされた設計パラメータDP
コアと混同しない)、その結果として、シェル成長前のコアのサイズ、分子量、および分岐の程度も決定する。シェルは、有機官能性トリアルコキシシランモノマーまたは、第2の(a)後続の時間的に分離された工程で(場合によっては追加のサブシェルで)成長した混合物から作成された単一のポリシロキサン層で構成される。任意選択で、シェルモノマー混合物は、少数の有機官能性ジアルコキシシランを含む。
【0085】
シェルの成長中に添加される無水酢酸の望ましい量(g係数)は、そのサイズ(ポリマー鎖の平均長)と形態を決定する。より高いg係数(g=0.75〜1.25)は、直鎖状でわずかに分岐したオルガノジシロキサンシェルを生成する一方、より低いg係数(g=0.15〜0.5)は、有機官能性モノマーと短いオリゴマーによるコアのエンドキャッピングに有利である。他方、低いg係数変換は、反応混合物中の比較的大量の未反応モノマー(T
0種)を常に伴い、これは実際の用途には望ましくない可能性があるが、必要に応じて蒸留によって除去され得る。
【0086】
本発明により包含されるMBBは、
図6に示す具体的な例に示されているように、コアおよびシェルを構成する材料の量に関して、幅広い構造に及ぶ。シェル官能性に対するこの範囲の制御は、シェルおよびコアを構築するために使用される前駆体モノマーのモル量の比(n
シェル/n
コア)の観点で、最もよく説明され得る。一般に、n
シェル/n
コア比が0.2未満の場合、官能性デンドリマーと見なされ、その表面化学がコア組成によって支配される材料が生成される一方、n
シェル/n
コア比が0.5超の場合は、その表面化学がシェル組成によって支配される、本質的に明らかに星型ポリマー様の材料が生成される。0.2〜0.5のn
シェル/n
コアの中間組成範囲では、その表面化学および反応性は、コアおよびシェルの化合物の両方によって決定される。任意の所与のn
シェル/n
コアについて、シェル種の結合モードは、
29Si NMRスペクトルで観察される化学種集団に直接影響するシェル成長工程中に添加される無水酢酸の量(g係数)によって制御され得る。
【0087】
DP
全体が2.0超の場合、本発明による粗MBB反応混合物中の未反応モノマー種(対応するテトラ−、トリ−、およびジアルコキシシランについてQ
0、T
0、D
0として定義される)の総量は10重量%未満であり、好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満である。コアの後且つシェル成長工程の前に残留モノマーを蒸留除去することにより、未反応のモノマー種の量はさらに減らされ得る。本発明によるNBB加水分解生成物中の未反応のモノマー種の量は、1重量%未満である。
【0088】
有利な実施形態では、コアは、シリコンテトラアルコキシド、好ましくはTEOSまたはTMOS、またはダイナシラン(Dynasilan)40(エボニックインダストリーズ社)または同等物などのそれらの低分子市販オリゴマーに由来し、シェルは、それぞれ、単一成分のモノマー有機官能性トリアルコキシシランまたは多成分トリアルコキシシラン混合物に由来する。
【0089】
さらなる有利な実施形態では、コアは、シリコンテトラアルコキシド、好ましくはTEOSまたはTMOS、またはダイナシラン(Dynasilan)40(エボニックインダストリーズ社)または同等物などのそれらの低分子市販オリゴマーに由来し、単一成分のシェルは、モノマー有機官能性トリアルコキシシランおよびジアルコキシシランの混合物から構成される。有機官能性トリアルコキシシランをジアルコキシシランに置き換えることにより、加水分解性反応性架橋剤基Si−ORの含有量が正確に制御され得る。このようにして、より疎水性のポリジメチルシロキサン(PDMS、シリコーン)様の特性を持ち、水に対する感度が低下したMBBが取得され得、用途に特化したニーズに従い正確な特性が調整される。
【0090】
別の有利な実施形態では、シェルは、異なる有機官能性トリアルコキシシランおよび任意選択でジアルコキシシランの2以上の層から構成されるように調製される。コアおよびシェルアセンブリを一時的に分離することによってコアの上にシェルを選択的に成長させるのと同じように、有機官能性シロキサンの追加の層は、シェル成長手順を1回または複数回繰り返すことによって成長させ得る。特に好ましい実施形態では、第1のシェルは、メチル、ビニルなどの群から選択される有機官能基を有し、これらは、得られるMBB材料の疎水性および加水分解/縮合特性を制御する主な目的を果たし、最外殻層は、チオール、(BOCまたはFMOC保護)アミン、ビニル、アクリレート、ホスホン酸またはスルホン酸エステルなどの、反応性架橋、重合、および用途関連マトリックスとの境界領域適合性を支援するために選択された特定の官能基を有する。
【0091】
さらに有利な実施形態では、好ましくはカスタム適合された官能性を制御するために、コアは、例えば、金属イオンおよび遷移金属イオンまたは小分子薬物などのゲスト種の吸着/取り込みを増加させ得る選択された化学官能基を有する微量成分(モルベースで25%未満)も含むように調製される。これに特に適しているものは、テトラアルコキシシラン、好ましくはTEOS(テトラエトキシシラン)またはTMOS(テトラメトキシシラン)またはそのオリゴマー、および、特定のリガンド基(−NH
2、SH、−PO
3H)または共有結合性の正または負に帯電した種(−SO3
−、−PO
3−2、COO
−、−NR
3+)を有する有機官能性トリアルコキシシランからなる混合物で構成されるコアである。官能性を有するリガンド基は、好ましくは、主なテトラアルコキシド成分と保護された官能基モノマー前駆体(例えば、−NH−BOCまたは−NH−FMOC、−NH(ブチリデン)、−SO
3R、−PO
3R
2末端トリアルコキシシラン)とのコア共アセンブリによって導入される。
【0092】
本発明により包含される新規クラスのMBBの主な利点の1つは、これらの材料が本質的にヒドロキシル種を含まない(Si−OH質量含有量0.5%未満)という事実であり、これは、従来のゾルゲルベースのハイブリッド材料よりも大幅に改善された安定性および保存性と、実質的により多くの構造制御とを提供することを意味する。実際の用途では、MBBは、非極性有機溶媒、ブレンドなどで「そのまま」使用することも、ポリマー溶融物などの疎水性マトリックスに直接組み込むこともできる。
【0093】
コアとシェルの材料の相対量は、かなりの範囲で変化し得る。有利な実施形態によれば、シェル対コアのモル比n
シェル:n
コアは、0.05〜2.0、好ましくは0.1〜1.0である。
【0094】
さらなる実施形態によれば、シェル内のT種の相対原子含有量は、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%である。
一態様によれば、MBB生成物は、水中で直接、または必要に応じて酸または塩基触媒の存在下で適切な水/溶媒系中で加水分解することにより、ナノスケールのビルディングブロックに変換される。本発明による加水分解生成物は、ナノスケールビルディングブロック(NBB)であるが、
図7に概略的に示されるように、完全に制御可能なサブ構造およびカスタム適合可能な官能基を有する。最先端技術と比較して、そのような新規の加水分解生成物NBBは、改善された組成制御および実際の用途においてしばしばコスト制限成分であるシェル成分(トリ−およびジアルコキシシランを有する官能基)のより効率的な使用という利点を有する。
【0095】
さらに、MBBの有利な調製方法が概説される。hyPASコアは、コアビルドアップ反応i)に従って最初に調製され、それは、TEOSやTMOSなどのシリコンテトラアルコキシドを、触媒の存在下で、選択された準化学量論的な量のfの無水酢酸と混ぜ合わせ、その混合物を、120〜140℃の範囲の典型的な反応温度に加熱する。機構的には、無水酢酸は最初に律速段階で遊離アルコキシ基と反応して、アセトキシ中間体(式i
a)と第1の分子の酢酸エステル反応副産物とを形成する。第2の工程(式i
b)では、アセトキシ中間体が、次に、モノマー、オリゴマー、または既存のhyPAS分子の第2のアルコキシ基と反応して、M−O−M(この場合はSi−O−Si)結合と第2の酢酸エステル副産物分子とを形成する。最初は、出発材料(テトラアルコキシドおよび無水酢酸)の濃度が高く、これは、反応速度が高く、酢酸エステルが反応混合物中で急速に蓄積していることを意味する。したがって、反応の開始に続いて、出発物質およびhyPAS一次反応生成物の両方よりも著しく低い沸点を有する酢酸エステル副生成物形成が沸騰し得る。反応が進行するにつれて、ますます多くのシロキサン結合が形成され、平均hyPASコアサイズ、分子量、したがってDP
コアが最初に増加する。f係数が高くなると、NMR化学種もQ
nが高くなる方向に進展する。無水酢酸は出発混合物において準化学量論的な量で使用されるため、ある時点で使い果たされ、反応は自己終了する。また、反応は出発物質に対して完全に化学量論的であるため、反応の進行、またはより技術的には重合度DP
コア、最初はf係数に正比例し、DP
シェルおよびΔDP
コアの統計的に重み付けされた合計はg係数に正比例する。これは、コアおよびシェルの成長が時間的に分離され、互いに独立して制御され得ることを意味する。
【0096】
コアアセンブリが完了し、酢酸エステルの蒸留が停止すると、有機官能性トリアルコキシシラン化合物または混合物、および任意選択でさらに有機官能性ジアルコキシシランまたは混合物と、シェル重合に必要な選択された準化学量論的な量(g係数)の無水酢酸とを、同一の反応混合物に撹拌を続けながら温度で少なくとも1回の添加、また任意選択で複数回の続く制御された添加をすることによって、有機官能性シロキサンシェルでエンドキャップおよび/または過成長される。添加中または添加直後に、追加の酢酸エステル反応副生成物の蒸留が再開される。有機官能性トリアルコキシシランおよびジアルコキシシランは、無水酢酸反応に使用可能なアルコキシ基を3つおよび2つしか含まないため、有効なg係数が所与の特定のシェルまたはサブシェルの混合物に調整される必要があることに留意されたい。総シェルシランモノマーに対する準化学量論量的な無水酢酸の比はg係数として定義され、典型的には、DP
シェルが0.3〜2.5の範囲にとどまるように選択される。本発明によれば、シェル中のトリアルコキシシランベースのT種のモル分率は、少なくとも5%、10%、好ましくは少なくとも20%でなければならない。
【0097】
さらに有利な実施形態では、多成分シェル構造が、異なる有機官能性トリアルコキシシランおよび任意選択でジアルコキシシランモノマーを用いてシェル添加手順を複数回繰り返すことによって堆積される。各モノマーは、好ましくは、問題のサブシェルの所望の程度の縮合を創作するのに必要なその選択された等量の無水酢酸とともに添加される。
【0098】
Moellerらによって報告されたhyPASに関する最初に公開された研究(Macromolecules 2006,39,1701〜1708)から知られているように、重合度/f係数は、単一成分のテトラアルコキシシラン化合物について、それぞれ約2.5/1.25の値に限定されている。その説明は、DP/fが増加するにつれて、純粋なhyPASコアが、より多くのM−O−M結合が形成されて成長し続けるという事実にある。ある時点で、ほとんどの低分子種が反応しなくなった状況に到達し、それ以降は、hyPASの樹状アームが追加の縮合反応によって結合するだろう。これは、そのような化合物の粘度がそれぞれ2.2/1.1を超えるDP/f値で劇的に増加する理由を説明し、かなりの範囲のアクセス可能な液体材料の粘度にもつながる。Moellerの方法を使用して調製された単一前駆体TEOS hyPASモデル化合物の場合、1.3超のf係数は、もはや溶解しない固体の三次元架橋生成物になる。本発明によるコアシェルMBBも、f係数およびg係数の合計(DP
全体)に直接関連している一般的な限定事項でサイズが限定されている。Moellerによる元のモデルシステムと同じロジックに従って、追加の無水酢酸でhyPASコアに三官能性有機官能性トリアルコキシシランをグラフトすることによりMBBが成長する。有機官能性トリアルコキシシランモノマーがグラフトされ、g係数の増加とともに段階T0→T1→T2→T3に変換されると、純粋なhyPAS成分について同一状況が発生する。すなわち、ほとんどのモノマーおよび小分子種が反応し、形成される新しい結合が残留アルコキシ基を介して2つのアームを結合している可能性が統計的に高くなる。実験的研究では、所与のf係数のコアがさらにコアシェルMBBに変換されるとともにg係数が着実に増加すると、粘度において同じ急激な増加が観察され、最終的には、完全に三次元的に架橋されたゴムまたはゲル状の材料の形成に至る。
【0099】
粘度に関する反応生成物の特性評価は、例えば、ASTM E2975−15:「同心円筒回転粘度計の校正のための標準試験方法(Standard Test Method for Calibration of Concentric Cylinder Rotational Viscometers)」による円筒回転粘度計などの標準化された粘度測定によって容易に分析される。シュタウディンガー(Staudinger)タイプのキャピラリー粘度計や最新の動的粘度測定法など、他の粘度試験方法も可能である。
【0100】
コアおよびシェルの両方についての分子前駆体およびDPに関しての反応生成物の特性評価は、コアおよびシェルの化学種が定量的溶液
29SiNMR測定から容易に分析される単一成分コア/単一成分シェル材料で最も容易である。より複雑な組成の場合、一般に、
29Si NMRは、有機官能基特有のスペクトルシフトがあれば、コアおよびシェルの有機官能性成分を明確に分離可能である。一般的な場合(請求項1に記載の任意選択の官能性混和物を含む)の化学的に特有の分析プロトコルは、請求項1に記載のようにコアを調製し、アリコートサンプルを抜取し、それを
29Si−NMR分析に供することを含む。これにより、DP
コア、最初の決定が可能になり、続いて、1または複数のシェル成長工程を実行し、
29Si−NMRを使用して最終材料を再度分析し、DP
コア、最終、およびDP
シェルを与える。
【0101】
コア成長工程での官能性シラン構成成分の混和物がゼロ(請求項2)およびその従属材料請求項(請求項9)である特定化された場合では、相対量が、それぞれQタイプおよびT、DタイプのNMRスペクトルシグネチャから直接導出できるため、最終材料の単一の
29Si NMRスペクトルが、それをDP
コアおよびDP
シェルに関して特性評価するのに十分である。
【0102】
本発明の中心的な態様の1つは、予め形成されたコアへのシェルモノマーのグラフト化である。TEOS−コア/MTES(メチル−トリエトキシシラン)−シェルモデル化合物の2D INADEQUATE
29Si−
29Si NMR研究により、Q
2/T
2、Q
2/T
1間の強いクロスピークが明らかになり、これは、官能性T種がQに直接グラフトされていることの強力な証拠である。さらに重要なことに、2D NMRスペクトルにT−Tクロスピークがないことにより、高い選択性が強調される。驚くべきことに、シェルモノマーの投与速度は、シード成長タイプのコアシェルナノ粒子との類推によって予想されるように、生成物の分布を著しく変化させなかった。これは、酢酸エステル反応生成物の蒸留速度によって測定されたシェルアセンブリ反応の速度が、三官能性シランの添加速度とはまったく無関係であることが見出されたという観察によって裏付けられている。
【0103】
合理的な反応時間をもたらすのに十分に速い反応速度を可能にするために、触媒と組み合わせた高温の使用が、非加水分解性無水酢酸化学のために必要とされる。工程b)からe)の反応温度は、70℃〜170℃の範囲、好ましくは100℃〜150℃の範囲、最も好ましくは120℃〜140℃の範囲である。工程b)からd)の間の圧力は、0.1バール(bar)〜2バールの範囲であり、好ましくは0.5バール〜1.4バールの範囲であり、最も好ましくは0.9バール〜1.2バールである。
【0104】
反応温度によっては、一部のモノマーと無水酢酸試薬とが沸点に近くなる。使用される触媒の種類と濃度に応じて、典型的には30分から数時間かかる各反応工程(コアおよびシェル/サブシェルの形成)では、一部の試薬が酢酸エステル副生成物と一緒に蒸留される傾向がある。これにより、選択した試薬がそれらの沸点に応じて徐々に失われ、化学量論の使用から予想される形態よりも、有効なf/g係数およびDP値が低くなったり高くなったりする。これらの損失は、使用した無水酢酸のモル量(f、g係数)と有効に形成された結合(NMR分析、酢酸エステル反応生成物の定量化)との差として定量化され得る。
【0105】
有利な実施形態(請求項6)において、反応の過程でのモノマーおよび/または無水酢酸試薬の損失は、蒸留ブリッジに接続されたいくつかの理論段数(theoretical plate)を備えた分離ステージを含む蒸留アタッチメントを反応器に装備することによって打ち消される。したがって、未使用の高沸点揮発性試薬から低沸点酢酸エステル反応副生成物を定量的に分離することができ、前者はその後反応器に直接フィードバックされる。これにより、製造方法の精度(効果的なDP値が使用された選択した試薬の量と一致)と再現性(理論対有効f、g係数の偏差が開始モノマーと反応温度などに依存)の両方が大幅に向上する。
【0106】
Moellerが最初の特許出願で報告したように、無水酢酸の非加水分解法に使用される触媒は、テトラアルコキシチタネートTi(OR)
4または亜鉛ジエタノレートZn(OR)
2のファミリーから有利に選択され、ここで、R=−CH
2CH
3、−CH(CH
3)
2、−CH
2CH
2CH
3、−C(CH
3)
3または−CH
2CH
2CH
2CH
3である。より最近の研究では、テトラキス(トリメチルシロキシ)チタンTi(O−Si(CH
3)
3)
4が特に適切な触媒として特定されている。触媒濃度は、一般に、MBB調製に使用されるシリコンアルコキシドの総モル量に基づいて、0.02%mol〜1.5%molの範囲にある。触媒は典型的には、コアのビルドアップ工程で添加され、シェル成長工程中の追加の触媒の投与は任意選択であるが、通常は不必要である。
【0107】
有利には(請求項7)、触媒は、Ti(OR’’)
4またはZn(II)アルカノレートZn(OR’’)
2の群から選択され、ここで、R’’=−CH
2CH
3、−CH(CH
3)
2、−CH
2CH
2CH
3、−C(CH
3)
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3であるか、触媒はTi(O−Si(CH
3)
3)
4であり、触媒量は、コア成長工程で使用される全アルコキシシラン前駆体のモルベースで0.01〜1.5%である。
【0108】
要約すると、本発明は、時間的に分離された反応によって、任意選択で有機官能性ジアルコキシシランも含む有機官能性トリアルコキシシランの、hyPAS「コア」への選択的シェル成長の課題を解決し、化学量論的なコア/シェル化合物比の限定されたウィンドウ内で組成、構造、および特性に関して極めて変動性を有する官能性分子ビルディングブロック(MBB)の新しいグループを生じさせる。さらに、本発明に包含されるMBBに由来する加水分解生成物は、非常に正確さを有するナノスケールのビルディングブロック(NBB)を調製し、それらのサブナノメートルの構造および組成について制御する新しい方法を提供する。コアシェルMBBの生成のための対応する方法は、非加水分解性無水酢酸法による選択されたシリコンテトラアルコキシドまたはそのオリゴマーに主に由来するコアの調製に続いて、同じ無水酢酸反応を使用した、少なくとも有機官能性トリアルコキシシランおよび任意選択で有機官能性ジアルコキシシランを含む混合物の選択された堆積が行われるという、2または多工程の反応を含む。時間的に分離されたシェル堆積は複数回繰り返され得、複雑な多層シェル構造のアセンブリを可能にする。
【0109】
本発明の上記および他の特徴および目的、並びにそれらを達成する方法は、より明らかになり、本発明自体は、添付の図面と併せて取られる本発明の様々な実施形態の前述の説明を参照することによってよりよく理解されるであろう。