(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本発明は、CLDN18.2を標的とする抗体であって、VL及び/又はVHを含み、前記VLは配列番号11、配列番号12で示されるVL CDR1のアミノ酸配列、配列番号13で示されるVL CDR2のアミノ酸配列、配列番号14で示されるVL CDR3のアミノ酸配列を含み、前記VHは配列番号15で示されるVH CDR1のアミノ酸配列、配列番号16で示されるVH CDR2のアミノ酸配列、配列番号17で示されるVH CDR3のアミノ酸配列を含む抗体を開示する。また、CLDN18.2を標的とする二重特異性抗体、上記抗体の複合体、CLDN18.2を標的とするCAR分子及びそれを含む細胞、ならびにこれらの使用を開示する。
前記VLは配列番号11で示されるVL CDR1、配列番号13で示されるVL CDR2及び配列番号14で示されるVL CDR3のアミノ酸配列を含み、前記VHは配列番号15で示されるVH CDR1、配列番号16で示されるVH CDR2及び配列番号17で示されるVH CDR3のアミノ酸配列を含み、或いは、
前記VLは配列番号12で示されるVL CDR1、配列番号13で示されるVL CDR2及び配列番号14で示されるVL CDR3のアミノ酸配列を含み、前記VHは配列番号15で示されるVH CDR1、配列番号16で示されるVH CDR2及び配列番号17で示されるVH CDR3のアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のCLDN18.2を標的とする抗体。
前記CLDN18.2を標的とする抗体のCDR突然変異配列は、CDR領域での脱アミノ化感受性部位の突然変異が生じた配列であり、好ましくは、前記CDR領域での脱アミノ化感受性部位は軽鎖CDR1のL30A及び/又はL30B位であり、及び/又は、重鎖CDR3のH99及び/又はH100位であり、
より好ましくは、前記軽鎖CDR1のL30A及びL30B位のアミノ酸残基がNSからTS又はNTに突然変異し、前提はL30E位がQではなく、且つL34位がTではなく、前記重鎖CDR3のH99及びH100位のアミノ酸残基がNSがTS又はNTに突然変異し、前提は軽鎖CDR1のL30E位がQではなく、且つL34位がTではない、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のCLDN18.2を標的とする抗体。
前記CLDN18.2を標的とする抗体はマウス由来抗体の可変領域及びマウス又はヒト抗体の定常領域を含み、前記マウス抗体の定常領域はマウスIgG1、IgG2a、IgG2b3又はIgG3の重鎖定常領域及びκ又はλ型軽鎖定常領域を含み、前記ヒト抗体の定常領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の重鎖定常領域及びκ又はλ型軽鎖定常領域を含み、
好ましくは、前記CLDN18.2を標的とする抗体はマウス由来抗体の可変領域及びヒト抗体の定常領域からなるキメラ抗体であり、
より好ましくは、前記キメラ抗体の軽鎖のアミノ酸配列は配列番号9で示されるアミノ酸配列又はその突然変異であり、及び/又は、前記キメラ抗体の重鎖のアミノ酸配列は配列番号10で示されるアミノ酸配列又はその突然変異である、ことを特徴とする請求項4に記載のCLDN18.2を標的とする抗体。
前記抗体の軽鎖はヒトκ又はλ型軽鎖定常領域又はその突然変異から選ばれるものを含み、及び/又は、前記抗体の重鎖はヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の重鎖定常領域又はその突然変異から選ばれるものを含み、
好ましくは、前記重鎖定常領域又はその突然変異は、ヒトIgG1 Fc領域の234位、235位及び243位、又は239、330及び332位の突然変異を含み、
より好ましくは、前記重鎖定常領域又はその突然変異は、ヒトIgG1 Fc領域の356〜358位がEEM又はDELである突然変異を含む、ことを特徴とする請求項6に記載のCLDN18.2を標的とする抗体。
前記抗体の軽鎖は配列番号38、配列番号40、配列番号42又は配列番号45で示されるアミノ酸配列又はその突然変異を含み、及び/又は、前記抗体の重鎖は配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号44又は配列番号46で示されるアミノ酸配列又はその突然変異を含む、ことを特徴とする請求項6又は7に記載のCLDN18.2を標的とする抗体。
下記の軽鎖及び重鎖を含み、前記重鎖は配列番号39のアミノ酸配列で示され、前記軽鎖は配列番号38のアミノ酸配列で示され、或いは、前記重鎖は配列番号39のアミノ酸配列で示され、前記軽鎖は配列番号42のアミノ酸配列で示される、請求項1〜8のいずれかに記載のCLDN18.2を標的とする抗体。
第一タンパク質機能領域及び第二タンパク質機能領域を含む二重特異性抗体であって、前記第一タンパク質機能領域は請求項1〜10のいずれかに記載のCLDN18.2を標的とする抗体であり、前記第二タンパク質機能領域は非CLDN18.2抗原を標的とする抗体である、ことを特徴とする二重特異性抗体。
前記第一タンパク質機能領域は免疫グロブリンであり、前記第二タンパク質機能領域は1つ又は複数のscFv、サイトカイン又はその断片、或いはサイトカイン受容体又はその断片であり、或いは、前記第二タンパク質機能領域は免疫グロブリンであり、前記の第一タンパク質機能領域は1つ又は複数のscFvであり、ここで、前記scFvは重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域と軽鎖可変領域はリンカーを介して連結し、前記scFv、サイトカイン又はその断片、或いはサイトカイン受容体又はその断片はリンカーを介して前記免疫グロブリンと連結し、前記リンカーは、好ましくは(G4S)wであり、前記wは、好ましくは0〜10の整数であり、より好ましくは1、2、3又は4である、ことを特徴とする請求項12に記載の二重特異性抗体。
前記scFvの構造は軽鎖可変領域−リンカー−重鎖可変領域であり、その軽鎖可変領域のN末端又は重鎖可変領域のC末端がそれぞれリンカーを介して相応的に前記免疫グロブリンの軽鎖及び/又は重鎖のC末端又はN末端に連結しており、或いは前記scFvの構造は重鎖可変領域−リンカー−軽鎖可変領域であり、その重鎖可変領域のN末端又は軽鎖可変領域のC末端がそれぞれリンカーを介して相応的に前記免疫グロブリンの軽鎖及び/又は重鎖のC末端又はN末端に連結しており、好ましくは、前記リンカーは(G4S)3であり、及び/又は、前記scFvの数は2つで且つ前記免疫グロブリンの軽鎖及び/又は重鎖と対称的に連結しており、
より好ましくは、前記二重特異性抗体は、以下のいずれかから選ばれる:
(1)前記第一タンパク質機能領域は免疫グロブリンであり、前記免疫グロブリンは、配列番号38で示されるアミノ酸配列である軽鎖、配列番号39で示されるアミノ酸配列である重鎖を含み、前記第二タンパク質機能領域はscFvであり、ここで、
2つのscFvの重鎖可変領域のC末端が、リンカーを介して前記免疫グロブリンの2本の重鎖のN末端と対称的に連結しており、且つ、前記scFvの軽鎖可変領域はアテゾリズマブの軽鎖可変領域であり、前記scFvの重鎖可変領域はアテゾリズマブの重鎖可変領域であり、或いは、
2つのscFvの重鎖可変領域のC末端がリンカーを介して前記免疫グロブリンの2本の重鎖可変領域のN末端と対称的に連結しており、且つ、前記scFvの軽鎖可変領域はHu5F9の軽鎖可変領域であり、前記scFvの重鎖可変領域はHu5F9の軽鎖可変領域であり、或いは、
2つのscFvの重鎖可変領域のN末端がリンカーを介して前記免疫グロブリンの2本の重鎖のC末端と対称的に連結しており、且つ、前記scFvの軽鎖可変領域はAMG420の軽鎖可変領域であり、前記scFvの重鎖可変領域はAMG420の重鎖可変領域である;
(2)前記第一タンパク質機能領域はscFvであり、前記第二タンパク質機能領域は
免疫グロブリンであり、2つのscFvの重鎖可変領域のC末端がリンカーを介して前記免疫グロブリンの2本の重鎖のN末端と対称的に連結しており、前記scFvの軽鎖可変領域の配列は配列番号29で示され、前記scFvの重鎖可変領域の配列は配列番号34で示され、ここで、
前記免疫グロブリンはニボルマブの軽鎖可変領域、κ鎖である軽鎖定常領域、ニボルマブの重鎖可変領域及びhIgG4の重鎖定常領域のアミノ酸配列を含み、或いは、
前記免疫グロブリンはペムブロリズマブの軽鎖可変領域、κ鎖である軽鎖定常領域、ペムブロリズマブの重鎖可変領域及びhIgG4の重鎖定常領域のアミノ酸配列を含み、或いは、
前記免疫グロブリンはアテゾリズマブの軽鎖可変領域、κ鎖である軽鎖定常領域、アテゾリズマブの重鎖可変領域及びhIgG1の重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の二重特異性抗体。
前記第一タンパク質機能領域は免疫グロブリンであり、前記第二タンパク質機能領域はサイトカイン又はその断片、或いはサイトカイン受容体又はその断片であり、前記サイトカイン又はその断片、或いはサイトカイン受容体又はその断片の数は、好ましくは2つ又は4つであり、リンカーを介して前記免疫クロブリンの2本の軽鎖及び/又は2本の重鎖のC末端及び/又はN末端と対称的に連結しており、前記リンカーは好ましくは(G4S)3であり、
好ましくは、前記免疫グロブリンは配列番号38で示されるアミノ酸配列である軽鎖、配列番号39で示されるアミノ酸配列である重鎖を含み、ここで、
前記サイトカイン又はその断片、或いはサイトカイン受容体又はその断片はTGFβRIIであり、その配列は配列番号1で示され、且つ数が2つであり、前記TGFβRIIは前記免疫グロブリンの2本の重鎖のC末端と対称的に連結しており、そのC末端のアミノ酸がKからAに突然変異し、或いは、
前記サイトカイン又はその断片、或いはサイトカイン受容体又はその断片はIL10であり、その配列は配列番号2で示され、且つ数が2つであり、前記IL10は前記免疫グロブリンの2本の重鎖のC末端と対称的に連結しており、そのC末端のアミノ酸がKからAに突然変異した、ことを特徴とする請求項13に記載の二重特異性抗体。
分離された核酸であって、請求項1〜10のいずれかに記載のCLDN18.2を標的とする抗体又は請求項11〜16のいずれかに記載の二重特異性抗体をコードする核酸。
前記小分子薬物はMMAE、MMAF、DM1、DM3及びDM4のうちの一つ又は複数であり、前記リンカーはSPP、SIAB、SMCC、MP、VC、ala−phe、PAB及びMC−VC−PABのうちの一つ又は複数である、ことを特徴とする請求項18に記載の抗体薬物複合体。
前記CARは、(a)特異的にCLDN18.2を認識する細胞外結合ドメインscFv、(b)ヒンジドメイン、(c)膜貫通ドメイン、(d)共刺激細胞内ドメイン、(e)シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞外結合ドメインは請求項1〜10のいずれかに記載のCLDN18.2を標的とする抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含むことを特徴とするキメラ抗原受容体(CAR)。
前記ヒンジドメインはCD8αヒンジ領域であり、前記膜貫通ドメインはCD8α膜貫通領域であり、前記共刺激細胞内ドメインはCD28細胞内領域及び/又は4−1BB細胞内領域であり、前記シグナル伝達ドメインはCD3ζ細胞内領域であり、
好ましくは、前記CD8αヒンジ領域はヒトCD8αヒンジ領域であり、前記CD8α膜貫通領域はヒトCD8α膜貫通領域であり、前記CD28細胞内領域はヒトCD28細胞内領域であり、前記4−1BB細胞内領域はヒト4−1BB細胞内領域であり、及び/又は、前記CD3ζ細胞内領域はヒトCD3ζ細胞内領域であり、
より好ましくは、前記CARのアミノ酸配列は配列番号3で示される、
ことを特徴とする請求項24又は25に記載のCAR。
請求項17に記載の分離された核酸、又は請求項27〜29のいずれかに記載の核酸構築体を含み、好ましくは、レトロウイルス発現ベクター、レンチウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター及びアデノ随伴ウイルス発現ベクターから選ばれる発現ベクター。
遺伝子修飾された細胞であって、請求項30に記載の発現ベクターが形質移入されており、好ましくは、前記遺伝子修飾された細胞は真核細胞であり、より好ましくは分離されたヒト細胞であり、さらに好ましくは免疫細胞、例えばT細胞、又はNK細胞、例えばNK92細胞系である、ことを特徴とする遺伝子修飾された細胞。
遺伝子修飾された細胞を製造する方法であって、請求項30に記載の発現ベクターを修飾される細胞内に形質移入させる工程を含み、好ましくは、前記遺伝子修飾された細胞は真核細胞であり、好ましくは分離されたヒト細胞であり、より好ましくは免疫細胞、例えばT細胞又はNK細胞であり、さらに好ましくはNK92細胞系であることを特徴とする方法。
請求項1〜10のいずれかに記載のCLDN18.2を標的とする抗体、請求項11〜16のいずれかに記載の二重特異性抗体、請求項17〜22のいずれかに記載の抗体薬物複合体、請求項31に記載の遺伝子修飾された細胞と、薬学的に許容される担体とを含み、好ましくは、さらに免疫チェックポイント抗体を含むことを特徴とする薬物組成物。
腫瘍、好適にCLDN18.2陽性腫瘍、好ましくは胃癌、食道癌、肺癌、メラノーマ、腎臓癌、乳癌、結腸直腸癌、肝臓癌、膵臓腺癌、膀胱癌、膠細胞腫又は白血病を治療する薬物の製造における、請求項1〜10のいずれかに記載のCLDN18.2を標的とする抗体、請求項11〜16のいずれかに記載の二重特異性抗体、請求項17〜22のいずれかに記載の抗体薬物複合体、請求項24〜26のいずれかに記載のCAR、請求項27〜29のいずれかに記載の核酸構築体、請求項30に記載の発現ベクター、請求項31に記載の遺伝子修飾された細胞又は請求項33に記載の薬物組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0112】
[具体的な実施形態]
用語の解釈:
本発明において、別途に説明しない限り、本明細書で使用される科学及び技術用語は当業者に通常理解される意味を有する。そして、本明細書で使用される細胞培養、分子遺伝
学、核酸化学、免疫学の実験室の操作手順はいずれも相応する分野で幅広く使用される通常の手順である。同時に、より良く本発明を理解できるように、以下、関連用語の定義及び解釈を提供する。
【0113】
本発明で使用されるアミノ酸の3文字の略号及び1文字の略号は当業者に既知のもの、或いはJ. Biol. Chem, 243, p3558(1968)に記載のものである。
【0114】
本明細書で用いられるように、用語「含む」又は「含有する」とは、組成物及び方法が前記の要素を含むことであるが、他の要素を除くものではない。「基本的に……からなる」は、組成物及び方法を定義するために使用される場合、予想される使用の組み合わせに何らの実質的な作用がある他の要素を除くことを表す。例えば、本明細書で定義される、基本的に当該要素からなる組成物は、分離・精製方法及び薬学的に許容される担体(例えばリン酸塩緩衝液、防腐剤など)から微量の汚染物を除くことがない。「……からなる」は、微量元素よりも多い他の成分及び本明細書で公開された組成物を施用するための実質的な方法・工程を除くことを表す。これらの接続語(transitional term)で定義されるいずれの側面も本発明の範囲に含まれる。
【0115】
用語「CLDN18.2」はアイソタイプ、哺乳動物(例えばヒト)のCLDN18.2、ヒトCLDN18.2のホモログ及び少なくとも一つのCLDN18.2との共有エピトープを含む類似体を含む。CLDN18.2(例えばヒトCLDN18.2)のアミノ酸配列は本分野で既知のものであり、例えば、NCBIデータベースで示される通りである。
【0116】
用語「CLDN18.1」はアイソタイプ、哺乳動物(例えばヒト)のCLDN18.1、ヒトCLDN18.1のホモログ及び少なくとも一つのCLDN18.1との共有エピトープを含む類似体を含む。CLDN18.1(例えばヒトCLDN18.1)のアミノ酸配列は本分野で既知のものであり、NCBIデータベースで示される通りである。
【0117】
本発明に記載の「CLDN18.2抗体」、「抗CLDN18.2抗体」、「CLDN18.2抗体分子」及び「抗CLDN18.2抗体分子」は入れ替えて使用することができる。用語「エピトープ」とは抗原(例えば、ヒトCLDN18.2)における抗体分子と特異的に相互作用する部分を言う。本発明において、用語「競争」とは抗体分子が抗CLDN18.2抗体分子と標的(例えば、ヒトCLDN18.2)との結合能力に干渉することを言う。結合作用に対する干渉は直接又は間接的なものである(例えば、抗体分子又は標的を介するアロステリック調節作用)。競争的結合測定法(例えば、FACS測定法、ELISA又はBIACORE測定法)によって抗体分子が別の抗体分子のその標的と結合する程度に干渉できるか確認することができる。
【0118】
本発明に記載の用語「抗体」は免疫グロブリンを含み、2本の同じ重鎖及び2本の同じ軽鎖がジスルフィド結合を介して連結してなる4本ペプチド鎖の構造である。免疫グロブリンの重鎖定常領域のアミノ酸の構成及び配列順序により、その抗原性が異なる。これによって、免疫グロブリンは5種類に分かれ、或いは免疫グロブリンのアイソタイプと呼ばれ、即ち、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEであり、その相応する重鎖はそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同一のIgはそのヒンジ領域のアミノ酸の組成及び重鎖ジスルフィド結合の数と位置の違いにより、異なるサブタイプに分かれ、例えばIgGはIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4に分かれる。軽鎖は定常領域によってκ鎖又はλ鎖に分かれる。5種類のIgのうち、いずれのIgもκ鎖又はλ鎖を有してもよい。
【0119】
本発明において、本発明に記載の抗体の軽鎖可変領域はさらに軽鎖定常領域を含んでもよく、前記の軽鎖定常領域はヒト由来又はマウス由来のκ鎖、λ鎖又はその突然変異を含む。本発明において、本発明に記載の抗体の重鎖可変領域はさらに重鎖定常領域を含んでもよく、前記の重鎖定常領域はヒト由来又はマウス由来のIgG1、2、3、4又はその突然変異を含む。
【0120】
抗体の重鎖及び軽鎖のN末端に近い約110のアミノ酸の配列は大きく異なり、可変領域(V領域)であり、C末端に近い残りのアミノ酸配列は相対的に安定であり、定常領域(C領域)である。可変領域は3つの超可変領域(HVR)及び4つの配列が相対的に保存的な骨格領域(FR)を含む。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる。各軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)は3つのCDR領域及び4つのFR領域からなり、アミノ末端からカルボキシ末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で並ぶ。軽鎖の3つのCDR領域はLCDR1、LCDR2及びLCDR3を、重鎖の3つのCDR領域はHCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。
【0121】
軽鎖及び重鎖のうち、可変領域及び定常領域は約12又はそれ以上のアミノ酸の「J」領域を介して連結し、重鎖はさらに約3又はそれ以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)とからなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)とからなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなる。抗体の定常領域はグロブリンと宿主の組織又は因子の結合を仲介し、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)と古典的補体系の第一成分(C1q)の結合を含む。VHとVL領域はさらに超可変性を有する領域[相補性決定領域(CDR)と呼ばれる]に細分してもよく、その間により保存的なフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散在している。各VH及びVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順でアミノ末端からカルボキシ末端まで並ぶ3つのCDR及び4つのFRからなる。各重鎖/軽鎖に相応する可変領域(VH及びVL)はそれぞれ抗体結合部位を形成する。特に、重鎖は、さらに、3つ以上、例えば6、9又は12個のCDRを含んでもよい。例えば、本発明の二重特異性抗体において、重鎖はIgG抗体の重鎖のN末端にもう一つの抗体のScFvが連結したものでもよく、このような場合、重鎖は9つのCDRを含有する。
【0122】
本発明に記載の抗体又は抗原結合断片のVL領域及びVH領域のCDRのアミノ酸残基は数及び位置において既知のKabat、Contact、CCG、AbM及びChothiaの番号付けに準ずる。例えば、Kabat番号付けはKabat EA.ら, Sequences of Proteins of Immunological Interest [National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991)]の定義に準じ、Chothia番号付けはChothia & Lesk 1987) Mol.Biol. 196:901−917、Chothiaら (1989) Nature 342:877−883の定義に準ずる。与えられるCDRの境界は認識のための方案にもよるが、本発明に記載の定義規則及び前記抗体の定義のCDR配列は表3−8を参照する。例えば、Kabat方案は構造比較に基づく、Chothia方案は構造情報に基づく。Kabat及びChothia方案に用いられる番号は最も使用される抗体領域の配列の長さに基づき、そしてアルファベットを挿入して挿入物を(例えば、「30a」)、一部の抗体において欠失部分を示す。2つの方案では、異なる位置に何らかの挿入物及び欠失部分(インデル「(indel)」)異なる番号になる。Contact方案は複合体の結晶構造に対する分析に基づき、且つ多くの面においてChothia番号付け方案に類似する。そのため、別途に規定しない限り、用語で定義される抗体又はその領域(例えば可変領域
)の「CDR」及び「相補性決定領域」ならびに当該抗体及びその領域の単一のCDR(例えば、CDR−H1、CDR−H2)は本明細書に記載の上記既知の方案における任意の一つの定義される相補性決定領域を含むことが理解される。一部の場合、規定は一つ又は複数の特定のCDRを認識する方案に使用され、例えばKabat、Chothia又はContact方法によって定義されるCDRが挙げられる。他の場合、CDRの特定のアミノ酸配列が与えられる。
【0123】
本発明において、用語「マウス由来抗体」は本分野の知識及び技能によって製造されるヒトCLDN18.2に対するモノクローナル抗体である。製造時、CLDN18.2抗原で試験対象に注射した後、必要な配列又は機能の特徴を有する抗体を発現するハイブリドーマを分離する。本発明の一つの好適な実施形態において、前記マウス由来CLDN18.2抗体又はその抗原結合断片は、さらにマウス由来κ鎖、λ鎖又はその突然変異の軽鎖定常領域を、或いはさらにマウス由来IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4又はその突然変異の重鎖定常領域を含んでもよい。
【0124】
用語「ヒト抗体」はヒト免疫グロブリン配列の可変領域及び定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、ヒト免疫グロブリンの配列によってコードされるアミノ酸残基を含んでもよい(例えば、体外におけるランダム又は部位特異性の誘発突然変異或いは体内における体細胞の突然変異によって導入される突然変異)。しかし、用語「ヒト抗体」はこのような抗体、即ち、既に別の哺乳動物種(例えばマウス)からのCDR配列がヒト骨格配列に移植されたもの(即ち、「ヒト化抗体」)を含まない。
【0125】
用語「キメラ抗体(chimeric antibody)」は、マウス由来抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を融合させてなる抗体で、マウス由来抗体による免疫応答反応を減少することができる。キメラ抗体を構築するには、マウス由来モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを構築・選択し、さらにマウスハイブリドーマ細胞から可変領域の遺伝子をクローニングし、また必要によって得られたヒト抗体の定常領域の遺伝子をクローニングし、マウス可変領域の遺伝子とヒト定常領域の遺伝子をキメラ遺伝子に連結してベクターに挿入し、最後に真核細胞、産業化システム又は原核産業化システムにおいてキメラ抗体分子を発現させる。本発明の一つの好適な実施形態において、前記CLDN18.2キメラ抗体の抗体軽鎖可変領域は、さらにマウス由来κ型、λ型又はその突然変異の軽鎖FR領域を含む。前記CLDN18.2キメラ抗体の抗体重鎖可変領域は、さらにマウス由来IgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はその突然変異の重鎖FR領域を含む。ヒト抗体の定常領域はヒト由来IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4又はその突然変異の重鎖定常領域から選ばれ、好ましくはヒト由来IgG1又はIgG4の重鎖定常領域を含むか、或いはアミノ酸が突然変異してADCC(antibody−dependentcell−mediated cytotoxicity、抗体依存性細胞傷害作用)、CDC(complement dependent cytotoxicity、CDC、補体依存性細胞傷害作用)活性が変わったIgG1を使用する。IgGにおけるFc領域に対する修飾により、抗体のADCC、CDC効果機能を低下又は消失、或いは増強させることができる。前記修飾とは抗体の重鎖定常領域における突然変異であり、例えばIgG1のN297A、L234A、L235A、IgG2/4キメラ、IgG4のF235E、又はL234A/E235A,F243L、又はS239D/A330L/I332Eの突然変異から選ばれる。
【0126】
用語「ヒト化抗体(humanized antibody)」とは、CDR移植抗体(CDR−grafted antibody)とも呼ばれ、マウスのCDR配列をヒトの抗体可変領域のフレームワークに移植してなる抗体である。特に、本発明に記載のCLDN18.2抗体は、CDRがCCG、Kabat、AbM、Chothia又はContactなどの番号付けで定義される各CDR配列であり、ヒトの抗体可変領域のフレー
ムワークに移植してなる抗体である。好ましくは、本発明に記載のCLDN18.2抗体のCDRは、好適に軽鎖CDR1における0〜5箇所がヒト抗体CDRの相応する部位のアミノ酸に突然変異した。これらによって、キメラ抗体が大量のマウスタンパク質成分を持つことで、強烈な抗体可変抗体反応が誘導されることを克服することができる。ヒトFR配列はImMunoGeneTics(IMGT)のサイトwww.imgt.org及びwww.vbase2.orgから得られる。
【0127】
本明細書で用いられるように、抗体に関する用語「特異的結合」とは特異性抗原を認識するが、基本的にサンプルにおける他の分子を認識又は結合しない抗体のことである。例えば、特異的な結合は一つの種の抗原の抗体でも、一つ又は複数の種の当該抗原でもよい。しかし、このような種間クロス反応性自体は抗体の特異性による分類を変えることがない。もう一つの実例において、特異的に抗原に結合する抗体は当該抗原の異なる対立遺伝子形態に結合することもできる。しかし、このようなクロス反応性自体は抗体の特異性による分類を変えることがない。一部の場合、用語「特異的結合」又は「特異的に結合する」は、抗体、タンパク質又はペプチドと第二化学物質の相互作用に使用することができ、当該相互作用が化学物質における特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在によることを意味する。例えば、抗体は、通常、タンパク質ではなく、特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗体はエピトープ「A」に特異性がある場合、標識された「A」及び抗体を含む反応において、エピトープAを含有する分子(又は遊離の未標識のA)の存在によって抗体に結合する標識されたAの量が減少する。
【0128】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記のCLDN18.2ヒト化抗体のマウスCDR配列は配列番号11〜28から選ばれる。ヒトの抗体の可変領域のフレームワークは設計・選択されたもので、ここで、前記抗体の軽鎖可変領域における軽鎖FR領域配列は、ヒト軽鎖のIGKV4−1*01(F)とhJK2.1の組み合わせ配列の配列番号29〜33からのものであり、ヒト軽鎖IGKV4−1*01(F)のFR1、FR2、FR3領域及びhJK2.1のFR4領域を含む。ここで、前記抗体の重鎖可変領域における重鎖FR領域配列は、ヒト重鎖のIGHV1−69*01(F)とhJH4.1の組み合わせ配列の配列番号34〜37からのもので、ヒト重鎖IGHV1−69*01(F)のFR1、FR2、FR3領域及びhJH4.1のFR4領域を含む。免疫原性の低下及びそれによる活性の低下を防止するには、前記ヒト抗体の可変領域に最低限の復帰突然変異をさせることによって活性を維持することができる。本発明の一つの好適な実施形態において、前記のヒト化抗体は、可変領域の復帰突然変異が0であり、即ち、全ヒト化抗体である。
【0129】
用語「脱アミノ化(deamidation)」とは部位又は分子のある部位におけるアミノ基を脱離させることである。「脱アミノ化(deamidation)感受性部位」とは、脱アミノ化作用が生じやすい傾向がある分子及び分子のある部位である。
【0130】
用語「抗原結合断片」とは、抗体の抗原結合断片及び抗体類似体であり、通常、少なくとも一部の親抗体(parental antibody)の抗原結合領域又は可変領域(例えば一つ又は複数のCDR)を含む。抗体断片には親抗体の少なくとも一部の結合特異性が残っている。通常、モルで活性を表示する場合、抗体断片には少なくとも10%の親の結合活性が残っている。好ましくは、抗体断片には少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%又は100%又はそれ以上の親抗体の標的に対する結合親和性が残っている。抗原結合断片の実例は、Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fv断片、線状抗体(linear antibody)、一本鎖抗体、ナノ抗体、ドメイン抗体及び多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。遺伝子改変の抗体突然変異の詳細はHolliger及びHudson(2005)Nat. Biotechnol. 23: 1126−1136に記載されている。
【0131】
「Fab断片」は1本の軽鎖と1本の重鎖のCH1及び可変領域からなる。Fab分子の重鎖はもう一つの重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fc」領域は抗体のCH1およいCH2ドメインを含む2つの重鎖断片を含有する。2つの重鎖断片は2つ又は複数のジスルフィド結合及びCH3ドメインの疎水作用によって一緒になっている。「Fab’断片」は1本の軽鎖とVHドメイン及びCH1ドメインならびにCH1とCH2ドメインの間の領域を含む1本の重鎖の部分を含有するため、2つのFab’断片の2本の重鎖の間で鎖間ジスルフィド結合を形成してF(ab’)
2分子になることが可能である。「F(ab’)
2断片」は2本の軽鎖と2本のCH1とCH2ドメインの間の定常領域の部分を含む重鎖を含有するため、2本の重鎖の間で鎖間ジスルフィド結合を形成している。そのため、F(ab’)
2断片は2本の重鎖の間のジスルフィド結合によって一緒になった2つのFab’断片からなる。用語「Fv」とは抗体の一方のアームのVL及びVHドメインからなる抗体断片であるが、定常領域が欠けている。
【0132】
一部の場合、抗体の抗原結合断片は一本鎖結合断片(例えば、scFv)であり、ここで、VL及びVHドメインが単一のポリペプチド鎖になるようなリンカーを介して1価の分子を形成している[例えば、Birdら,Science 242:423−426 (1988) 及びHustonら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883(1988)を参照する]。このようなscFv分子は、NH2−VL−リンカー−VH−COOH又はNH2−VH−リンカー−VL−COOHという一般的な構造を有する。適切な既存技術のリンカーは重複のG
4Sアミノ酸配列又はその突然変異からなる。例えば、アミノ酸配列(G
4S)
4又は(G
4S)
3リンカーを使用してもよいが、その突然変異を使用してもよい。
【0133】
用語「多重特異性抗体」は、その最も広い意味で使用され、ポリエピトープ特異性を有する抗体を含む。これらの多重特異性抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む抗体であって、当該VH−VL単位がポリエピトープ特異性を有し、2つ又は複数のVL及びVH領域を有する抗体であって、各VH−VL単位が異なる標的又は同一の標的の異なるエピトープに結合する抗体、2つ又は複数の単一可変領域を含む抗体であって、各単一可変領域が異なる標的又は同一の標的の異なるエピトープと結合する抗体、全長抗体、抗体断片、二重特異性抗体(diabodies)、及び三価抗体(triabodies)、共役又は非共役的に連結した抗体断片などを含むが、これらに限定されない。
【0134】
抗体分子は二重特異性抗体(diabody)及び一本鎖分子ならびに抗体の抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)
2、scFv及びFv)を含む。抗体分子は1本の重鎖及び1本の軽鎖(本発明において半抗体と呼ばれる)を含むか、又はこれらからなる。Fab’、F(ab’)
2、Fc、Fd、Fv、一本鎖抗体(例えばscFv)、単一可変ドメイン抗体、二重特異性抗体(Dab)(二価及び二重特異性)及びキメラ(例えば、ヒト化)抗体は、完全な抗体を修飾することによって生成してもよく、又は組み換えDNA技術によって一から合成された抗体分子でもよい。これらの機能性抗体断片には選択的にそれに相応する抗原又は受容体と結合する能力が残っている。抗体及び抗体断片はいずれの抗体の種類からのものでもよく、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEを含むが、これらに限定されず、そしていずれの抗体のサブタイプからのものでもよい(例えば、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)。抗体分子の製造はモノクローニングでもポリクローニングでもよい。抗体はヒト抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体又は体外で生成した抗体でもよい。抗体は例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4から選ばれる重鎖定常領域を有してもよい。また、抗体は例えばκ型又はλ型の軽鎖を有してもよい。
【0135】
本発明で開示された抗体は単一ドメイン抗体でもよい。単一ドメイン抗体は相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの構成部分である抗体を含んでもよい。例は重鎖抗体、天然に軽鎖が欠けた抗体、通常の4本鎖抗体から誘導された単一ドメイン抗体、遺伝子改変抗体及び抗体から誘導される骨格以外の単一ドメイン骨格を含むが、これらに限定されない。単一ドメイン抗体は既存技術の任意の抗体、又は将来の任意の単一ドメイン抗体でもよい。単一ドメイン抗体は任意の種からのものでもよく、マウス、ヒト、ラクダ、アルパカ、ヤギ、ウサギ及びウシを含むが、これらに限定されない。一部の側面では、単一ドメイン抗体は天然に存在する単一ドメイン抗体であり、軽鎖が欠けた重鎖抗体と呼ばれる。明確な理由により、本発明において、4本鎖免疫グロブリンの通常のVHと区別するように、天然に軽鎖が欠けた重鎖抗体から誘導されるこのような可変ドメインはVHH又はナノ体と呼ばれる。このようなVHH分子はラクダ科(Camelidae)の種(例えばラクダ、アルパカ、ヒトコブラクダ、ラマやグアナコ)で生じた抗体から誘導されるものでもよい。ラクダ以外の他の種は天然に軽鎖が欠けた重鎖抗体が発生できれば、このようなVHHも考えられる。VH領域及びVL領域はさらに超可変領域に分画され、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれ、その間により保存的な領域が挿入されており、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる。フレームワーク領域及びCDRの範囲は既に多くの方法によって定義されている。
【0136】
本発明の抗体はモノクローナル抗体を含む。本発明に係るモノクローナル抗体又はmAbまはAbとは、単一クローンの細胞株から得られる抗体であり、前記の細胞は、真核のもの、原核のもの又はファージのクローン細胞株でもよいが、これらに限定されない。本発明に係るベクターの宿主細胞は、真核細胞、細菌細胞、昆虫細胞又はヒト細胞でもよいが、これらに限定されない。適切な真核細胞は、Vero細胞、Hela細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、293T、293E、BHK細胞を含むが、これらに限定されず、適切な昆虫細胞Sf9細胞を含むが、これらに限定されない。
【0137】
モノクローナル抗体又は抗原結合断片は、例えばハイブリドーマ技術、組み換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術(例えばCDR移植(CDR−grafting))、又は他の既存技術によって組み換えて得ることができる。抗体及び抗原結合断片を生産及び精製する方法は既存技術、例えばコールド・スプリング・ハーバーの抗体技術研究所マニュアルにおいて熟知のものか見つかるものである。抗原結合断片は同様に通常の方法で製造することができる。
【0138】
本明細書で用いられた用語「キメラ抗原受容体」又は「CAR」とは、抗原と結合できる細胞外領域(細胞外結合ドメイン)、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン(膜貫通領域)及び細胞質シグナルをドメインに伝達するポリペプチド(即ち、細胞内シグナル領域)を含む。ヒンジドメインは、細胞外抗原結合領域に柔軟性を与えるための一部と考えられる。細胞内シグナル領域とは、決まったシグナル伝達経路を通してセカンドメッセンジャーが生じることによって情報を細胞内に伝達することで細胞活性を調節するタンパク質、或いはこのようなメッセンジャーに応答することによってエフェクターとして作用を発揮するタンパク質で、CAR細胞(例えば、CART細胞)の免疫エフェクター機能を促進できるシグナルを生じさせるものである。細胞内シグナル領域はシグナル伝達ドメインを含み、さらに共刺激分子からの共刺激細胞内ドメインを含んでもよい。
【0139】
用語「シグナル伝達ドメイン」とはCARのエフェクター機能シグナルを伝達して細胞にその専門的な機能を実行するようにさせる部分である。シグナル伝達ドメインの実例は、T細胞受容体複合体のζ鎖又はその任意のホモログを含むが、これらに限定されない。
【0140】
本明細書において、用語「CD3ζ」はGenBank登録番号BAG36664.1によって提供されるタンパク質、又はヒト以外の種、例えばマウス、げっ歯類動物、サル
、ルイジンエンなど由来の等価残基と定義されている。「CD3ζ細胞内領域」は、機能的にT細胞の活性化に必要な初期シグナルを伝達することができる、ζ鎖由来の細胞質ドメインのアミノ酸残基と定義されている。一方、CD3ζ細胞内領域はGenBank登録番号BAG36664.1の残基52から164を含む、その機能的ホモログである、ヒト以外の種、例えばマウス、げっ歯類動物、サル、ルイジンエンなど由来の等価残基である。本明細書で用いられるように、用語「CD3ζシグナル伝達ドメイン」又は「CD3ζ細胞内領域」とはその名称に関連する特定のタンパク質断片、及び本明細書で示されるCD3ζ細胞内領域のアミノ酸配列と少なくとも80%、又は代わりに少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約97%、さらに好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性を有する、類似する生物的機能を有する任意の他の分子をいう。
【0141】
用語「共刺激細胞内ドメイン」とは、共刺激分子の細胞内領域で、T細胞における関連する結合性パートナーで、特異的に共刺激リガンドと結合することによって、免疫細胞の共刺激反応を仲介するが、例えば、増殖が挙げられるが、これに限定されない。共刺激分子は、有効な免疫反応に必要で、非抗原受容体の細胞表面の分子又はそのリガンドである。共刺激分子は、例えばMHCクラスI分子、BTLA及びTollリガンド受容体、ならびにOX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM−1、LFA−1 (CD11a/CD18)及び4−1BB (CD137)といった分子の細胞内領域を含むが、これらに限定されない。
【0142】
本明細書において、用語「4−1BB」とはTNFRスーパーファミリーのメンバーで、GenBank登録番号AAA62478.2のアミノ酸配列、又はヒト以外の種、例えばマウス、げっ歯類動物、サル、ルイジンエンなど由来の等価残基を有し、「4−1BB」共刺激細胞内ドメインは、GenBank登録番号AAA62478.2のアミノ酸配列214−255、又はヒト以外の種、例えばマウス、げっ歯類動物、サル、ルイジンエンなどからの等価残基、又は本願で示される4−1BB共刺激ドメイン配列と少なくとも80%、又は代わりに少なくとも90%のアミノ酸配列の同一性、好ましくは95%の配列の同一性、より好ましくは少なくとも97、98又は99%の配列の同一性を有する、類似する生物的機能を有する任意の他の分子と定義されている。
【0143】
本明細書で用いられるように、用語「CD28共刺激ドメイン」はヒトCD28共刺激ドメイン、或いはその名称に関連する特定のタンパク質断片、及びヒトCD28共刺激ドメインの配列と少なくとも80%、又は代わりに少なくとも90%のアミノ酸配列の同一性、好ましくは95%の配列の同一性、より好ましくは少なくとも97、98又は99%の配列の同一性を有する、類似する生物的機能を有する任意の他の分子をいう。
【0144】
本発明において、一つの側面では、CARはキメラ融合タンパク質を含み、前記タンパク質は細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及びシグナル伝達ドメインを含む。一つの側面では、CARはキメラ融合タンパク質を含み、前記タンパク質は細胞外抗原を認識する細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及びシグナル伝達ドメインを含む。一つの側面では、CARはキメラ融合タンパク質を含み、前記タンパク質は細胞外結合ドメイン、共刺激ドメイン及びシグナル伝達ドメインを含み、前記共刺激ドメインは一つ又は複数の共刺激分子からの少なくとも二つの機能性シグナル伝達ドメインを含む。一つの側面では、CARはCAR融合タンパク質のN末端に任意選択のリーダー配列(又はシグナルペプチド)を含む。一つの側面では、CARは細胞外抗原認識ドメインのN末端にさらにリーダー配列を含み、ここで、リーダー配列は任意にCARの細胞で加工されて細胞膜に局在化する過程で抗原識別ドメイン(例えばscFv)のN末端から切り取られる。
【0145】
「相同性」、「変異配列」、「突然変異」とは2つのポリヌクレオチド配列の間又は2つのポリペプチドの間の配列の類似性をいう。比較する2つの配列における位置がいずれも同じ塩基又はアミノ酸の単独の2価の基に占められている場合、例えば2つのDNA分子のいずれの位置もアデノシンに占められている場合、前記分子は当該位置において相同である。2つの配列の間の相同性の百分率は2つの配列が共有するマッチ又は相同の位置数を比較の位置数で割って100を掛ける関数である。例えば、配列のアラインメントの場合、2つの配列における10の位置のうち、6つのマッチ又は相同があると、2つの配列は相同性が60%である。一般的に、2つの配列のアライメントで最大の相同性百分率が得られる場合、比較する。「最適化」とは、前記抗体と抗原の結合を維持又は改善した突然変異で、本発明において、CLDN18.2との結合を維持又は改善した突然変異である。
【0146】
本発明において、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」(一本鎖の場合)は入れ替えて使用することができる。用語「核酸」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」又は「ポリヌクレオチド配列」及び「ポリヌクレオチド」は入れ替えて使用することができる。
【0147】
用語「アミノ酸修飾」は、アミノ酸の置換、付加及び/又は欠失を含み、「アミノ酸の置換」及び「アミノ酸の保存的置換」はそれぞれそのうちのアミノ酸残基がもう一つのアミノ酸残基で置換されること及び類似する側鎖を有するアミノ酸残基で置換されることである。
【0148】
用語「IL10」、「インターロイキン10」及び「interleukin−10」は入れ替えて使用することができ、同じ意味を有する。同様に、用語「IL15」、「インターロイキン15」及び「interleukin−15」は入れ替えて使用することができ、同じ意味を有する。適切なアミノ酸修飾は、得られる分子の生物活性が変わらないままで容易に実施することができる。これらの技術により、当業者は、一般的に、ポリペプチドの非必要領域において単一のアミノ酸を変えても基本的に生物活性が変わらないことが分かる。前記IL10又はIL15の活性断片はいずれも本発明に使用することができる。ここで、前記生物活性断片とは、全長ポリペプチドの一部として、全長のポリペプチドの全部又は一部の機能が残っているポリペプチドをいう。通常の場合、前記生物活性断片には少なくとも50%の全長ポリペプチドの活性が残っている。より好ましい条件において、前記活性断片には全長ポリペプチドの80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の活性が残っている。前記IL10又はIL10ポリペプチド配列に基づき、修飾又は改良されたポリペプチドも本発明に使用することができ、例えば、その半減期、有効性、代謝、及び/又はポリペプチドの効果を促進するために修飾又は改良されたポリペプチドを使用することができる。つまり、ポリペプチドの生物活性に影響しない変更形態のいずれも本発明に使用することができる。
【0149】
当業者に周知のように、IL15とIL15受容体の結合によって生物学的機能が発揮される。IL15受容体は3つのサブユニットを有し、それぞれIL15受容体α、IL15Rβ(CD122)及びγ(CD132とも呼ばれる)である。IL15Rα細胞外領域はIL15に結合する部分であり、そのうちのsushiドメインがIL15に結合してIL15の生物学的機能が発揮される。本発明において、「sushi+」とは、sushi断片以外、さらに他のポリペプチド断片を含む。上記IL15Rα、IL15Rα(sushi)及びIL15Rα(sushi+)のアミノ酸配列はCN106755107Aを参照する。IL15がIL15Rαに結合すると、細胞自身が活性化される以外、IL15Rαを介し、さらにシグナルがもう一つの細胞に伝達して細胞活性が活性化される。これらの活性は選択的なCD8+T細胞、NK細胞などの増幅を含み、且つIL2のようにT細胞を活性化させて調節するものではないため、抗腫瘍免疫反応において異
なる機能を発揮する可能性がある。
【0150】
本明細書で用いられる「レンチウイルス」とはレトロウイルス科(Retroviridae family)の属である。レンチウイルスはレトロウイルスの中で独特なもので、非分裂細胞に感染することができ、顕著な量の遺伝情報を宿主細胞のDNAに送達するため、遺伝子送達ベクターの最も有効な方法である。HIV、SIV及びFIVはいずれもレンチウイルスの実例である。レンチウイルスからのベクターは体内において顕著なレベルの遺伝子の移行を実現させる手段を提供する。
【0151】
本明細書で用いられる用語「ベクター」は分離された核酸を含み、且つ分離された核酸を細胞内部へ送達する組成物である。本分野では、多くのベクターが知られており、線状ポリヌクレオチド、イオン又は両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド及びウイルスを含むが、これらに限定されない。そのため、用語「ベクター」は自己複製のプラスミド又はウイルスを含む。なお、当該用語は核酸の細胞内への移行を促進するプラスミド及びウイルス以外の化合物、例えばポリリジン化合物、リポソームなどとも理解できる。ウイルスベクターの実例は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどを含むが、これらに限定されない。
【0152】
本発明で使用される表現「細胞」、「細胞系」及び「細胞培養物」は入れ替えて使用することができ、且つこのような名称はいずれも子孫を含む。用語「宿主細胞」とは、ベクター導入に使用可能な細胞で、例えば大腸菌などの原核細胞、例えば酵母細胞などの真菌細胞、或いは例えば線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞又はヒト細胞などの動物細胞を含むが、これらに限定されない。
【0153】
用語「形質移入」とは外来核酸を真核細胞へ導入することである。形質移入は本分野で既知の様々な手段によって実現することができ、リン酸カルシウムDNA沈殿、DEAE−デキストランを介する形質移入、ポリブレンを介する形質移入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染及びバイオリステック技術(biolistics)を含む。
【0154】
用語「免疫細胞」とは免疫応答を引き起こす細胞であり、「免疫細胞」及びその文法的な他の形態は任意由来の免疫細胞を指す。「免疫細胞」は、例えば骨髄で生じる造血幹細胞(HSC)から誘導される白血球、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)及び骨髄由来の細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単核球、マクロファージ、樹状細胞)を含む。用語「免疫細胞」はヒトのものでも非ヒトのものでもよい。
【0155】
本明細書で用いられるように、用語「T細胞」とは胸腺で成熟するリンパ球である。T細胞は細胞を介する免疫において重要な作用を果たし、且つ他のリンパ球(例えばB細胞)との相違点は細胞の表面に存在するT細胞受容体にある。「T細胞」はCD3を発現するすべての種類の免疫細胞を含み、ヘルパーT細胞(CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞(Treg)及びγ−δT細胞を含む。「細胞傷害性T細胞」は、CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞及び好中球を含み、これらの細胞は細胞傷害性反応を仲介する。本明細書で用いられるように、用語「NK細胞」とは骨髄由来で自然免疫系において重要な作用を果たすリンパ球である。NK細胞は、細胞の表面に抗体及び主要組織適合遺伝子複合体分子が存在しなくても、ウイルス感染に対する細胞、腫瘍細胞又は他のストレス細胞の快速免疫反応を提供する。
【0156】
例えば、免疫細胞は血液由来のもの、例えば自己T細胞、異種T細胞、自己NK細胞、
異種NK細胞でもよく、細胞系由来のもの、例えばEBVウイルスで感染させることによってNK細胞系を製造し、胚性幹細胞及びiPSCから誘導・分化したNK細胞及びNK92細胞系などでもよい。
【0157】
「任意に」、「いずれ」、「任意の」又は「いずれか」とは後記の事項又は環境によって可能であるが必ずしも発生するわけではないという意味であり、当該記述は当該事項又は環境が発生する場合又は発生しない場合を含む。例えば、「任意に1つの抗体の重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列の抗体の重鎖可変領域でもよいが、必ずしも存在しなくてもよい。本発明で用いられるように、「1つ」及び「1種類」とは本発明において1つ又は1つよりも多いという文法的対象である。内容によって明確に示されない限り、用語「又は」は本発明において用語「及び/又は」という意味で、且つ入れ替えて使用することができる。「約」及び「およそ」とは、通常、測定の性質又は精度により、測定される量の許容できる誤差の程度である。例示的な誤差の程度は、一般的に、その10%以内の範囲であり、より一般的に、その5%以内の範囲である。本発明で開示される方法及び組成物は、指定の配列、変異配列又はそれと基本的に同様又は類似の配列、例えば、指定の配列と少なくとも85%、90%、95%、99%又はこれ以上同じ配列を有するポリペプチド及び核酸を含む。アミノ酸配列の場合、本発明において、用語「基本的に同様」とは第一のアミノ酸配列である。
【0158】
本明細書で用いられるように、用語「KD」とは特定の抗体−抗原相互作用の解離平衡定数(KD)であり、抗体と抗原の間の結合親和性を示すために使用される。解離平衡定数が小さいほご、抗体−抗原結合が緊密であり、抗体と抗原の間の親和性が高い。通常、抗体は約10
−5M未満、例えば約10
−6M、10
−7M、10
−8M、10
−9M又は10
−10M未満又はそれ以上小さい解離平衡定数で抗原と結合し、例えば、表面プラスモン共鳴技術(SPR)によってBIACORE装置で測定される。例えば、KINEXA方法によってKINEXA 400装置で測定される抗体と細胞が結合する親和性を使用する。本明細書で用いられるように、用語EC
50とは半数最大効果濃度(concentration for 50% of maximal effect)、即ち、50%の最大効果をもたらす濃度である。
【0159】
本発明の薬物組成物は、必要により各種の剤形に調製することができ、且つ医者が患者の種類、年齢、体重及び基本病状、投与の様態などの要素によって患者に有益な投与量を決めて使用することができる。投与形態は、例えば注射又は他の治療形態を使用してもよい。
【0160】
本明細書で用いられるように、用語「抗体の薬物複合体」、「複合物」、「複合体」又は「ADC」は入れ替えて使用することができ、式I、III、IV、V、VI又はVIIなどの構造で示される抗体の薬物複合体を指す。
【0161】
オーリスタチンは全合成薬物であり、物理性質及び薬らしさの特徴を最適化するには、化学構造式が比較的に改造しやすい。抗体と複合するオーリスタチンの誘導体は主にモノメチルオーリスタチンE(MMAE)及びモノメチルオーリスタチンF(MMAF)を含むが、前者は天然微小管重合阻害剤であるドラスタチン10(dolastatin−10)から誘導される合成ペンタペプチドであり、C末端に1つの2−アミノ−1−フェニルプロパン−1−オールを加えて合成された。MMAEは多くのヒト腫瘍細胞株に対する抑制活性が1 nmol未満である。MMAE自身の細胞毒活性を低下させるために、MMAFはドラスタチン10のC末端に1つのフェニルアラニンを加えたもので、構造上1つのカルボキシ基が導入され、MMAFの細胞膜透過性が劣るため、細胞に対する生物活性が顕著に低下するが、抗体と複合した後、細胞に対する抑制活性が大幅に向上する(US7750116)。
【0162】
一部の実施形態において、抗体の細胞傷害性薬物複合体又はその薬用可能な塩又は溶媒化合物は1つ又は複数のメイタンシノイド分子が複合した本発明の抗体を含む。メイタンシノイドは微小管重合を抑制することによって作用を発揮する有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは、初めはメイテナス・セラタ(Maytenusserrata)から分離された(米国特許番号3,896,111)。その後、他の微生物もメイタンシノイド、例えばマイタンシノールやC−3メイタンシノールエステル(米国特許番号4,151,042)を生成することが見出された。メイタンシノイド薬物モジュールは抗体−薬物複合体において注目の薬物モジュールであり、それは、(i)発酵又は発酵産物の化学修飾又は誘導によって製造することが比較的に容易で、(ii)非ジスルフィドリンカーを介する抗体への複合に適する官能基で誘導しやすく、(iii)血漿において安定で、且つ(iv)多くの腫瘍細胞系に有効であるからである。メイタンシノイド薬物モジュールとして適するメイタンシン化合物は本分野で公知で、そして既知の方法によって天然源から分離するか、遺伝工学技術によって生産することができる(Yuら(2002)PNAS99:7968−7973を参照する)。マイタンシノール及びマイタンシノール類似体も既知の方法によって合成・製造することができる。メイタンシノイド薬物モジュールの例示的な実施形態は、本明細書で開示されるように、DM1、DM3及びDM4を含む。
【0163】
本発明で用いられる用語「連結ユニット」、「連結基」及び「リンカー」とは、本発明に適する、本発明の抗体と小分子薬物を連結するための基である。例示的なリンカーは、MC、MP、val−cit、ala−phe、PAB、SPP、SMCC、SIABを含む。一つの実施形態において、前記リンカーはMc−vc−PABである。
【0164】
薬物担持量(Loading)はyで表され、即ち、一般式I、III、IV、V及びVIの分子における各抗体の平均薬物モジュール数であり、薬物抗体比(drug antibody ratio、DAR)とも呼ばれる。カップリング反応のADC製品における各抗体の平均薬物モジュール数は通常の方法、例えば質量分析、ELISA測定法及びHPLCによって特徴付けされる。また、ADCのyにおける定量分布を測定することができる。一部の場合、yがある値の同質なADCの他の薬物担持量のADCからの分離、精製及び特徴付けは、逆相HPLC又は電気泳動のような手段によって実現できる。薬物担持量の範囲は0.8〜10個の薬物モジュール(D)/抗体でもよい。
【0165】
ADCの担持量(薬物抗体比DAR)は様々な手段、例えば、(i)薬物−リンカー中間体又はリンカー試薬が抗体に対して過剰なモル量になるように制限すること、(ii)カップリング反応の時間又は温度を制限すること、(iii)システインのチオール修飾の部分又は還元性条件を制限すること、(iv)組み換え技術で抗体のアミノ酸配列に対して遺伝子改変を行うことで、リンカー−薬物複合の数及び/又は位置を制御するためにシステイン残基の数及び位置を変えること(例えば本明細書及びW02006/034488(全体として本明細書に参考として取り入れる)に記載のように製造されるthioMab又はthioFab)によって制御することができる。
【0166】
本発明に記載の方法、組成物、併用治療は、他の活性剤又は治療手段と併用してもよいが、前記方法は対象に有効に疾患(例えば、癌)を治療又は予防する量で、本発明に記載の抗CLDN18.2抗体分子、任意に、PD−1、PD−L1、PD−L2、LAG−3、CTLA−4、Tim−3抗体(免疫治療)又は他の腫瘍治療抗体、Her−2、EGFR、VEGF、VEGFR抗体など、及びADC(抗体薬物複合体、例えばT−DM1)、二重特異性抗体、化学治療薬などの1つ又は複数の阻害剤の組み合わせを投与することを含み、さらに、抗CLDN18.2抗体分子、別の活性剤又は全部をこのような量又は投与量で施用することを含み、前記量又は投与量は単独で(例えば、単一の療法として)使用される各活性剤の量又は投与量と同様又はそれよりも高いか、低い量又は投与量
である。抗CLDN18.2抗体、別の活性剤又は全部の使用量又は投与量は単独で(例えば、単一の療法として)使用される各活性剤の量又は投与量よりも(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%)低い。
【0167】
また、本発明の実施例に記載のように、抗CLDN18.2抗体及びCLDN18.2抗体の薬物複合体はCLDN18.2に結合して標的細胞(腫瘍細胞)のアポトーシスを誘導し、腫瘍細胞の成長を抑制し、体内におけるエフェクター細胞の腫瘍細胞に対するADCC、CDC殺傷作用を増加させることによって癌患者を治療する目的を実現することができる。そのため、一部の実施形態において、本発明に記載の抗CLDN18.2抗体及びCLDN18.2抗体の薬物複合体はこれらの機序によって本発明の抗体の抗腫瘍効果を示し、そして腫瘍細胞の成長を抑制する方法は、治療有効量の本発明に記載の抗CLDN18.2抗体及びCLDN18.2抗体の薬物複合体を被験者に施用することを含む。当該方法は癌の体内治療に適する。標的特異的な治療効果が得られるように、抗CLDN18.2抗体分子は他の抗体とともに施用することができる。CLDN18.2抗体及びCLDN18.2抗体の薬物複合体を一つ又は複数の活性剤と組み合わせて施用する場合、当該組み合わせは任意の順番で又は同時に癌の種類、特にCLDN18.2高発現の腫瘍患者に施用することができる。一部の側面では、対象の体内において対象の過剰増殖性障害又は疾患(例えば癌)を治療(例えば減少又は緩和)する。当該方法は、対象に単独で又は他の活性剤か治療手段と組み合わせて本発明に係る一つ又は複数の抗CLDN18.2抗体又はCLDN18.2抗体の薬物複合体を施用することを含む。
【0168】
組み合わせは、さらに、免疫チェックポイント調節因子の阻害剤又は作動剤、例えば、抗PD−L1抗体分子、抗PD−1抗体分子、又はCTLA−4阻害剤(例えば、抗CTLA−4抗体)、又は非免疫チェックポイント調節因子の阻害剤又は作動剤(例えば化学薬物、小分子標的薬物、抗体標的薬物を含む大分子、例えば抗Her2、抗VEG、抗VEGFR、抗EGFRなどの抗体、抗体複合薬物、二重特異性抗体、CAR−T細胞の組み合わせなど)、又は任意の組み合わせを含む。CLDN18.2抗体による治療は、標準の癌治療と組み合わせることもできる。
【0169】
用語「免疫チェックポイント」とは、免疫細胞の表面における一連の分子であり、「閘門」として免疫応答、例えば腫瘍免疫応答を下方調節又は抑制することで、本発明の抗体と併用して腫瘍を治療することができる。免疫チェックポイント分子はPD−1、PD−L1、細胞傷害性のT細胞抗原4(CTLA−4)、B7−H1、B7−H3、OX−40,4−1BB(CD137)、CD40、及びリンパ球活性化遺伝子3(LAG−3)などを含むが、これらに限定されない。
【0170】
単独で又はもう一つの免疫調節剤(例えば抗LAG−3、抗Tim−3、抗PD−1又は抗PD−L1、抗CTLA−4抗体分子)と組み合わせて抗CLDN18.2抗体分子によって胃癌、膵臓腺癌、肺癌、食道癌、卵巣癌などを治療する。抗CLDN18.2抗体分子は、免疫に基づいた対策、標的薬物(例えば、VEGF阻害剤、例えばVEGFに対するモノクローナル抗体)、VEGFチロシンキナーゼ阻害剤、例えばスニチニブ、ソラフェニブ、アパチニブ、RNAi阻害剤又はVEGFシグナル伝達の下流媒介物の阻害剤、例えば、ラパマイシン、哺乳動物標的(mTOR)の阻害剤のうちの一つ又は複数と組み合わせて施用することができる。
【0171】
本発明で用いられるように、用語「癌」、「癌症」、「癌患者」とは組織病理学的分類や侵入段階にかかわらず、すべての種類の癌性増殖物又は発癌過程、転移性組織又は悪性転化の細胞、組織又は器官を含む。例は、固形腫瘍、血液癌、軟部組織腫瘍や転移性病巣を含むが、これらに限定されない。
【0172】
本発明で開示されるCLDN18.2を標的とする抗体、二重特異性抗体、ADC及びCAR細胞又はその組み合わせで治療することができる癌の実例は、肺癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、頭頚部癌、メラノーマ、腎臓癌、乳癌、結腸直腸癌、肝臓癌、膵臓腺癌、膀胱癌及び白血病など、又はその転移性病巣を含むが、これらに限定されない。
【0173】
実施例1:クローディン18.1、18.2(CLDN18.1、CLDN18.2)高発現細胞株の構築
本発明で使用されたヒトCLDN18.1、ヒトCLDN18.2、マウスCLDN18.1、マウスCLDN18.2高発現細胞株は会社の安定的な細胞株構築プラットフォームによって完成された。具体的な手順は以下の通りである。
【0174】
実験開始から1日目に、293T細胞(中国科学院典型培養物寄託委員会細胞ライブラリーCat#GNHu17)を2つの6cmシャーレに、各シャーレにおける細胞数が7.5×10
5個になるように接種した。2日目に、パッケージングプラスミド(pGag−pol、pVSV−G、pBabeなどのBioVector、プラスミドベクター菌種細胞遺伝子寄託センター)及びヒト又はマウスCLDN18.2又はCLDN18.1遺伝子がクローニングされたプラスミドpBabe−CLDN18.2又はpBabe−CLDN18.1を4μgずつOPTI−MEM(Thermofisher Scientific Cat # 31985070)に入れ、最終体積が200μlになるようにし、別途に200μlのOPTI−MEMを用意して36μlの形質移入試薬fectin(上海源培生物科技股フン有限公司Cat # F210)を入れ、両者を均一に混合し、室温で5min置いた後、混合物(200μl/シャーレ)を培養された293T細胞に滴下した。3日目に、293T細胞培養液を4mlのDMEM高糖培地(上海源培生物科技股フン有限公司/源培生物:Cat# 310KJ)に変えた。4日目に、CHO−K1(中国科学院典型培養物寄託委員会細胞ライブラリーCat# SCSP−507)を10cmシャーレに、細胞数が5×10
5個になるように接種した。5日目に、293T細胞上清(ウイルス)を収集し、0.45μmろ膜でろ過して培養されたCHO−K1細胞に入れ、同時に10 μg/mlのポリブレン(上海翊聖生物科技有限公司Cat # 40804ES76)を入れ、均一に混合した後、インキュベーターに置き、3〜4h後、DMEM/F12 10%FBS培地(源培生物、Cat # L310KJ)に変えた。7日目に、CHO−K1細胞を継代し、8日目に、継代された細胞に10μg/mlのピューロマイシン(puromycin)を入れてスクリーニングした(源培生物、Cat # S250J0)。2〜3日で細胞が大量に死亡し、培地を変えて続いて細胞が死亡しなくなるまで培養し、細胞が大量に増幅し、モノクローナル細胞株をスクリーニングし、増幅培養して凍結保存した。
【0175】
本発明で構築された安定的な発現CLDN18細胞株はそれぞれ、ヒトCLDN18.1+細胞(hCLDN18.1+cell)、ヒトCLDN18.2+細胞(hCLDN18.2+cell)、マウスCLDN18.1+細胞(mCLDN18.1+ cell)、マウスCLDN18.2+細胞(mCLDN18.2+ cell)と記載した。使用されたタンパク質配列は公開発表されているデータベースからのもので、各タンパク質のアミノ酸配列は以下の通りである。
【0176】
ヒトCLDN18.1(hCLDN18.1)はNCBIデータベースにおける>NP_057453.1,claudin−18 isoform 1 precursor
[Homo sapiens]からのものである。ヒトCLDN18.2(hCLDN18.2))はNCBIデータベースにおける>NP_001002026.1 claudin−18 isoform 2 [Homo sapiens]からのものである。マウスCLDN18.1(mCLDN18.1))はNCBIデータベースにおける>NP_062789.1 claudin−18 isoform A1.1 prec
ursorからのものである。マウスCLDN18.2(mCLDN18.2))はNCBIデータベースにおけるNP_001181850.1 claudin−18 isoform A2.1 [Mus musculus]からのものである。
【0177】
実施例2:抗CLDN18.2抗体とCLDN18.2+及びCLDN18.1 +細胞株の結合(ELISA)実験
実施例1で得られた細胞であるヒトCLDN18.1、ヒトCLDN18.2、マウスCLDN18.1又はマウスCLDN18.2高発現のモノクローナル細胞株を増幅培養した後、5×10
4個/ウェルで96ウェルプレートに敷き、37℃のインキュベーターで一晩インキュベートした後、上清を除去し、免疫染色固定液(上海碧雲天生物技術有限公司Cat#P0098)を使用して100μl/ウェルで室温で半時間固定させた。PBS(源培生物,Cat#B320)で一回洗浄した後、5%牛乳で37℃で2時間ブロッキングし、PBSTで3回洗浄した。被験サンプル(ヒト又はマウス由来抗体、Jackson Immuno Research)を入れた。37℃で1時間インキュベートした後、PBSTで3回洗浄した。抗ヒト又はマウスHRPを1:2500、50μl/ウェルで37℃で1時間インキュベートした後、PBSTで3回洗浄し、TMB(Surmodic Cat#TTMB−1000−01)で呈色させ、50μl/ウェルで1M
H
2SO
4を入れて反応を中止させた。マイクロプレートリーダー(MultiskanGO Thermo 型番51119200)によって読み取り、Graphpad prism 5によってデータの分析を行った。
【0178】
実施例3:組み換えタンパク質、抗体のクローニング、発現及び精製、活性検出(ELISA、ブロッキングアッセイ)
本発明で使用された組み換えタンパク質/抗体のクローニング、発現及び精製はいずれも当業者に熟知の分子クローニング方法で行われた。
【0179】
具体的に、本発明で使用された発現ベクターは長沙優宝生物科技有限公司から購入され、その後、二重酵素切断又は相同組み換え方法によって外来遺伝子を導入しやすいように、上海健信生物医薬科技有限公司(健信生物)によってEcoRI酵素切断部位(GAATTC)が導入された。遺伝子合成は、生工生物工程(上海)股フン有限公司(生工生物)などによって完成された。293細胞、CHO−Kは中国科学院典型培養物寄託委員会細胞ライブラリーから購入された。
【0180】
本発明において、組み換えタンパク質及び抗体は293F細胞に一過性形質移入して発現させて精製することによって得られた。具体的な手順は、293細胞をGibco FreeStyle 293 Expression Medium(Gibco,Cat# 12338018)培地で増幅培養した。一過性形質移入の前、細胞濃度を6〜8×10
5 細胞/ml、1%FBS(Aus Gene X FBS Excellentプロバイダー:AusGeneX,China,Cat# FBSSA500−S)に調整し、37℃、8%CO
2のシェーカーで24h培養し、再度顕微鏡で検出したところ、生存率が>95%であり、細胞濃度が1. × 10
6細胞/mlであった。
【0181】
300mlの培養系細胞、15ml Opti−MEM(Gibco,Cat#31985070)を用意し、重鎖、軽鎖を150μgずつ溶解させ、0.22μmでろ過して除菌した。さらに15mlのOpti−MEMを取って600μlの1mg/ml PEI(Polysciences,Inc,Cat# 23966−2)に溶解させた後、5min静置した。500mlの培養系において、25ml Opti−MEM(Gibco,Cat#31985070)に重鎖、軽鎖を250μgずつ溶解させ、0.22μmでろ過して除菌した。さらに25mlのOpti−MEMを取って1000μlの1mg/ml PEIに溶解させた後、5min静置した。PEIをゆっくりプラスミドに入
れ、室温で10minインキュベートし、培養瓶を振とうしながらゆっくりプラスミドPEI混合溶液を滴下し、37℃、8%CO
2のシェーカーで5日培養してサンプルを回収し、3300G 10 minで上清を取って精製した。
【0182】
精製:サンプルを高速遠心して不純物を除去し、PBS pH 7.4でプロテインA(Mabselect,GE Healthcare Life Science,Cat# 71−5020−91 AE)を含有する重力カラム(生工生物、Cat# F506606−0001)を平衡化し、2〜5倍のカラム体積で洗浄した。サンプルにカラムを通させた。5〜10倍のカラム体積のPBS(生工生物、Cat#B548117−0500)でカラムを洗浄した。さらにpH 3.5の0.1M酢酸で標的のタンパク質を溶離させた後、pH 8.0のTris−HClで中性に調整し、マイクロプレートリーダーによって濃度を測定し、分注して使用に備えて保存した。
【0183】
本発明における組み換えヒトCLDN18.2(クローディン18.2)細胞外領域(20位D−70はA断片である)及びFc融合タンパク質は293系によって一過性形質移入して精製されたものである。当該タンパク質は免疫マウスの血清力価の検出に使用することができる。
【0184】
本発明の一部の実験において、ヒトCLDN18.2(anti−hCLDN18.2)抗体(対照分子又は陽性分子と呼ばれる)が対照として使用された。本発明において、当該抗体はRef(Reference)と略され、配列はWO2014146672からのものである。
【0185】
抗原被覆プレートELISA:pH 7.4のPBS緩衝液で本発明で発現させたヒトPD−1、PD−L1、CD47、LAG3、Tim3、又はPeprotechから購入されたTGFβ1(Cat# 100−21−10)、TGFβ2(Cat# 100−35B)、TGFβ3(Cat# 100−36E)を懸濁させた。Sino biologicalから購入されたIL10(カタログ番号SEKA10947)、FcγR
I/CD64(Cat.#1257−FC−050,R&D Systems)などの抗原をアッセイによって、1〜2μg/mlの濃度に希釈し、50μl/ウェルの体積で96ウェルマイクロプレート(Corning,CLS3590−100EA)に入れ、37℃インキュベーターで2時間置いた。液を捨てた後、PBSで希釈された5%脱脂牛乳(上海生工生物工程有限公司,A600669−0250)ブロッキング液を200μl/ウェル入れ、37℃インキュベーターで3時間又は4℃で一晩(16〜18時間)置いてブロッキングした。ブロッキング液を捨て、そしてPBST緩衝液(pH7.4、0.05% tweeen−20含有PBS)でプレートを5回洗浄した後、50μl/ウェルで1% BSAで5倍連続希釈された被験抗体を入れ、37℃で1時間インキュベートし、PBSTでプレートを5回洗浄し、50μl/ウェルで1:2500で希釈されたHRPで標識された二次抗体(Jackson Immuno Research,115−035−003)を入れ、37℃で1時間インキュベートした。PBSTで5回洗浄した後、50μl/ウェルのTMB呈色基質(KPL,52−00−03)を入れ、室温で5〜10minインキュベートし、50μl/孔の1M H
2SO
4を入れて反応を中止させ、MULTISKAN Goマイクロプレートリーダー(ThermoFisher,51119200)によって450nmにおいて吸収値を読み取り、OD値からEC50を計算した。
【0186】
抗体による抗原とそのリガンドの結合に対する阻害の実験(ブロッキングアッセイ)
pHが7.4のPBS緩衝液で本発明で発現させた抗原PD−1、PD−L1、CD47を2μg/mlの濃度に希釈し、50μl/ウェルの体積で96ウェルマイクロプレート(Corning,CLS3590−100EA)に入れ、37℃で2時間インキュベ
ートした。液を捨てた後、PBSで希釈された5%脱脂牛乳(上海生工生物工程有限公司,A600669−0250)ブロッキング液を200μl/ウェル入れ、37℃で3時間インキュベートしてブロッキングした。ブロッキング液を捨て、PBST(pH7.4、0.05% tweeen−20含有PBS)でプレートを5回洗浄した後、25μl/ウェルの1% BSAで5倍に連続希釈された被験サンプル及び25μl/ウェルの最終濃度が10μg/mlのビオチンで標識されたリガンド(PD−1、PD−L1、SIRPαなど、本発明で発現・精製されたもの)を入れ、37℃で1時間インキュベートし、PBSTでプレートを5回洗浄し、50μl/ウェルで1:1000で希釈されたHRPで標識された二次抗体(金斯瑞生物科技有限公司、M00091)を入れ、37℃で1時間インキュベートした。PBSTで5回洗浄した後、50μl/ウェルのTMB呈色基質(KPL,52−00−03)を入れ、室温で5〜10minインキュベートし、50μl/孔の1M H
2SO
4を入れて反応を中止させ、MULTISKAN Goマイクロプレートリーダー(ThermoFisher,51119200)によって450nmにおいて吸収値を読み取り、OD値からIC50を計算した。
【0187】
ビオチンで標識されたキットはBiotin Labeling Kit−NH2で、東仁化学科技(上海)有限公司から購入され、カタログ番号はLK03である。操作方法は説明書に従って行われ、標識された抗体はMultiskan GO(ThermoFisher)マイクロプレートリーダーによって濃度を検出して使用された。
【0188】
実施例4:抗ヒトCLDN18.2抗体の発見
本発明の抗ヒトCLDN18.2モノクローナル抗体は、実施例1で得られたヒトCLDN18.2高発現細胞株(hCLDN18.2+ cell)でマウスを免疫させ、免疫マウスの脾臓を採取してハイブリドーマ融合を行い、数百万株のハイブリドーマクローンからスクリーニングして最適化して得られた。
【0189】
実験用マウスは雌で、4週齢である(SJLは北京VITAL RIVER実験動物技術有限公司から購入され、動物生産許可証番号:SCXK(京)2016−0011で、Balb/cは上海SIPPR−BK実験動物有限公司から購入された)。マウスは購入された後、実験室の環境において1週間飼育し、昼夜で明暗の周期を調節し、温度は20〜25℃で、湿度は40〜60%であった。マウスを3匹/群/籠で分けた。
【0190】
実施例1で構築されたヒトCLDN18.2高発現細胞株(hCLDN18.2+cell、ヒトCLDN18.2+細胞)を培養し、トリプシンで消化した後、DMEM培地(源培生物、Cat#L310KJ)で洗浄した後、DMEM培地に再懸濁させた。100μl/1×10
7細胞/匹で、免疫マウスに腹腔内注射した。1回目の免疫の時、Titermax(Sigma−Aldrich,T2684)で1:1で細胞と均一に混合して免疫させた。その後、週に1回で、10回免疫させた後、実施例2のELISA方法によって、ヒトCLDN18.1+細胞及びヒトCLDN18.2+細胞を同時にプレートに敷き、又は上記実施例3における組み換えて発現されたヒトCLDN18.2細胞外(ECL1)タンパク質をプレートに敷き、免疫マウスの血清力価を検出し、ヒトCLDN18.1+細胞をプレートに敷いた場合のELISA値を背景とし、マウス血清の免疫力価(titer)を計算した。12〜15回免疫させた後、血清力価が高くて且つ力価がプラトー期にあるマウスを選んで脾臓細胞の融合を行い、融合前に200μl/2×10
7細胞/匹でマウスを刺激免疫し、3日後、マウス脾臓のリンパ球を取って骨髄腫細胞Sp2/0細胞(ATCC(登録商標) CRL−8287(商標))と融合して得られたハイブリドーマ細胞を96ウェルプレートに敷いた。
【0191】
96ウェルプレートにおけるハイブリドーマ細胞の上清を取ってヒトCLDN18.1+細胞及びヒトCLDN18.2+細胞をプレートに敷き、ハイブリドーマから生じた抗
体の結合の様子を検出した。表1aは一部のハイブリドーマ上清の検出結果である。
【0193】
ヒトのCLDN18.2及びCLDN18.1は92%と高い相同性があり(240/261)、且つ当該タンパク質は膜貫通タンパク質であり、少数のペプチド断片が細胞外で(例えば51アミノ酸のECL1)、免疫原性が非常に低く、特異性抗体が生成する可能性が非常に低い。そのため、上記スクリーニングにおいて、CLDN18を分泌・認識できるハイブリドーマは少なく、そしてごく一部のハイブリドーマにおいて、大多数のハイブリドーマ上清における抗体が同時にヒトCLDN18.2及びCLDN18.1に結合できる抗体である。
【0194】
意外なことに、本発明では、分泌される上清がヒトCLDN18.2+細胞のみに結合し、ヒトCLDN18.1+細胞に結合しないハイブリドーマが見出され、表1aにおけるmab5を参照し、クローン番号はC13C1である。表1aのデータから分かるように、同じスクリーニング条件において、当該クローンの上清はヒトCLDN18.2+細胞のみに結合し、検出値は1.41であり、一方、ヒトCLDN18.1+細胞にほとんど結合せず、結合活性の読み取り値はわずか0.09であった。
【0195】
さらに、本発明で意外に見出された当該ハイブリドーマ細胞株C13C1が独特な抗ヒトCLDN18.2抗体を分泌することに対して確認した。C13C1ハイブリドーマ細胞に対して有限な希釈を数回行い、鋭意に精密に最適化して毎回の希釈後の単一クローンをスクリーニングし、最終的に独特な抗ヒトCLDN18.2抗体を分泌できるモノクローナル細胞株を見つけたが、結果は表1bに示す。
【0197】
表1bの結果から分かるように、本発明で得られた初期ハイブリドーマクローンC13C1から精密に最適化・スクリーニングによって得られたモノクローナル細胞株C13C1F1D3G6及びC13C1F1D3H5によって分泌される抗体はいずれもヒトCLDN18.2細胞と結合する特徴が残り、読み取り値はそれぞれ0.8895及び0.8778であった。一方、ヒトCLDN18.1細胞と結合せず、読み取り値はそれぞれ0.0859及び0.0756であった。当該読み取り値は今回のELISAのバックグラウンドの0.081に近かった。初期ハイブリドーマクローンF2A4も同時にスクリーニングしてモノクローナル細胞株F2A4F6F3E4及びF2A4F6F3H7を得た。これらのモノクローナル細胞株は予想通りに、ヒトCLDN18.2細胞、ヒトCLDN18.1細胞に同じ結合活性があったが、データは表1bに示す。これらの結果から、本発明で発見されたモノクローナル細胞株、例えばC13C1F1D3G6は、独特な抗体を分泌し、意外に、分泌される抗体はヒトCLDN18.2のみに結合し、ヒトCLDN18.1に結合しないことが分かる。
【0198】
これは、本発明で意外に発見された抗体が有効にヒトCLDN18.2タンパク質のみを認識し、モノクローナル抗体として腫瘍、特にヒトCLDN18.2タンパク質が過剰発現される、膵臓腺癌、胃癌、食道癌、肺癌などを含むが、これらに限定されない癌患者を治療する潜在的な能力を有する。ヒトCLDN18.1に全然結合しないことから、治療性抗体がヒトCLDN18.1などのタンパク質に非特異的に結合して毒性・副作用につながることが避けられると予想される。
【0199】
実施例5:本発明のマウス由来抗ヒトCLDN18.2抗体のスクリーニング・同定
上記実施例で得られたハイブリドーマのモノクローナル細胞株C13C1F1D3G6(表1b)から当該細胞株によって分泌される抗体配列を抽出し、本発明のマウス由来抗体mab5b配列を得た。ハイブリドーマの好適なモノクローナル細胞株から抗体配列を抽出する過程は当業者に熟知でよく使用される方法である。
【0200】
具体的に、本発明は上記実施例で発見されたハイブリドーマのモノクローナル細胞C13C1F1D3G6を増幅培養し、1×10
6個の細胞を収集し、Trizol(Invitrogen,15596−018)でRNAを抽出し(キットの説明書の手順に従う)、抽出されたRNAをcDNAに逆転写し、逆転写キットは生工生物技術(上海)股フン有限公司から購入され、Cat#B532435であった。逆転写で得られたcDNAを鋳型とし、PCR増幅を行った後、増幅産物をシークエンシングしてmab5bの抗体の軽・重鎖可変領域の配列を得た。使用されたプライマーはNovagenによって発表されたマニュアルを参照する(TB326 Rev.C0308)。
【0201】
本発明の好適なハイブリドーマモノクローナル細胞株C13C1F1D3G6から抗ヒトCLDN18.2(anti−hCLDN18.2)モノクローナル抗体の軽鎖のヌクレオチド配列(配列番号5)及び重鎖のヌクレオチド配列(配列番号6)を得た。
【0202】
上記軽鎖の塩基配列から翻訳して得られた本発明で発見されたハイブリドーマモノクローナル細胞株から抽出されたマウス由来抗ヒトCLDN18.2(anti−hCLDN18.2)モノクローナル抗体mab5bの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は以下の通りである。
【0203】
DIVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTHFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDYFYPFTFGSGTKLEKK(配列番号7)
上記重鎖の塩基配列から得られた本発明で発見されたハイブリドーマモノクローナル細胞株から抽出されたマウス由来抗ヒトCLDN18.2(anti−hCLDN18.2)モノクローナル抗体mab5bの重鎖可変領域のアミノ酸配列は以下の通りである。
【0204】
QVQLQQSGAELIGPGTSVKVSCKASGYAFSNYLIEWVKQRPEQGLEWIGLINPGSGGTNYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSDDSAVYFCARVYYGNSFAYWGQGTLVTVSA(配列番号8)
本発明で発見されたハイブリドーマモノクローナル細胞株から抽出された上記抗体mab5bは、実施例3に記載の方法によって抗体の軽・重鎖の可変領域及び定常領域をそれぞれクローニングして(配列は以下の通りである)組み換えて発現させ、精製した後、対照抗体Refとともに、ヒトhCLDN18.1、hCLDN18.2、マウスmCLDN18.1及びmCLDN18.2との結合活性を検出し、結果は下記表2a、表2b及び
図1に示す。
【0205】
本発明の抗hCLDN18.2抗体mab5b軽鎖(L Chain)は配列番号9で示され、重鎖(H Chain)は配列番号10で示される。
【0208】
表2a、
図1aの結果から、本発明で発見された抗hCLDN18.2マウス由来抗体mab5b及び対照抗体(Ref)はいずれもhCLDN18.1+細胞に結合せず、EC50が検出されず(ND)、200nMという高濃度の場合でも結合活性が検出されず、結合値Emax(サンプルの濃度が上がって結合がプラトーに達した時の結合値、即ち、最大特異的結合数値)がまだバックグラウンド、即ち、背景値であったことが分かる。一方、2つの抗体はいずれもhCLDN18.2+細胞に良い結合活性があった。意外なことに、本発明の抗体mab5bの結合活性はRefよりも1倍以上優れた(EC50:0.115 nM vs 0.249 nM)。より意外なことに、mab5bで得られる最大結合数値EmaxがRefよりも36%以上高かった[(1.92−1.41)/1.41]。
【0209】
表2b、
図1bの結果から、本発明で発見された抗hCLDN18.2マウス由来抗体mab5b及び対照抗体(Ref)はいずれもマウスCLDN18.1+細胞に結合せず、EC50が検出されず(ND)、200nMという高濃度の場合でも結合活性が検出されず、結合値Emaxがまだバックグラウンド、即ち、背景値であったことが分かる。一方、2つの抗体はいずれもマウスCLDN18.2+細胞に良い結合活性があった。意外なことに、本発明の抗体mab5bの結合活性はRefよりも4倍以上優れた(EC50
:0.182nM vs 1.04nM)。より意外なことに、mab5bで得られる最大結合数値EmaxがRefよりも1倍以上高かった[2.21 vs 1.0]。
【0210】
上記結果から、本発明で発見された新規な分子mab5bは結合活性(EC50及びEmax)が対照分子よりも良かったことが分かる。そして、hCLDN18.1及びmCLDN18.1のいずれにも結合活性がなかったことから、mab5bは結合活性がより良いのみならず、特異性も非常に優れたことが示された。これはmab5bを腫瘍治療製品の開発に使用するとより良い治療効果及び安全性という優勢を提供することを示す。そして、マウスCLDN18.2にもより良く結合し、マウスにおいて臨床前研究を行うのにより便利な非霊長類動物の選択を提供する。
【0211】
実施例6: 本発明の抗体mab5bのヒト化
本発明で発見された抗体mab5bは活性がRefよりも良いことから、当該抗体は腫瘍治療薬の開発に有用であることが示された。薬物開発の過程における免疫原性などの面のリスクを減少するために、例えばマウス由来抗体からヒト化し、そしてヒト化を最適化した後、分子の特性が薬物開発に有利で、本発明では、mab5bに対してヒト化の選別、及び配列の最適化が行われた。具体的な過程は下記の通りである。
【0212】
抗体のCDRの定義は本分野で多くの様々な方法があり、これらのCDRを表示する方法は下記表3にまとめた。
【0214】
上記実施例5で得られたマウス由来抗ヒトCLDN18.2抗体mab5bは表3の様々な定義方法により、そのCDR配列は以下のように表示/注釈される。
【0220】
本発明の抗hCLDN18.2抗体(mab5b)の上記CDR分析は、抗体表示システムにより、抗体の軽・重鎖のCDR領域(上記のように)を表示・認識した上で、マウス由来抗体mab5bの軽・重鎖可変領域の配列をそれぞれヒト抗体のデータベース(v−base)と比較し、相同性の高いヒト抗体の軽・重鎖の株を見つけ、それに基づき、コンピューターでモデルを構築し、抗体の構造における抗原との結合に影響しうる部位をシミュレートし、重要な部位及び組み合わせを復帰突然変異させ、活性が好適なヒト化抗体分子をスクリーニングした。
【0221】
具体的に、配列の相同性の比較分析により、mab5b軽鎖との相同性が良いヒト抗体株は、IGKV4−1*01(F)、IGKV2−28*01(F)、IGKV2D−28*01(F)、IGKV1−27*01(F)、IGKV1−39*01(F)、IGKV1D−39*01(F)、IGKV2−40*01(F)、IGKV2D−29*01(F)、IGKV2D−40*01(F)、IGKV3−15*01(F)を含む。さらに比較、分析したところ、ヒト抗体株の軽鎖IGKV4−1*01(F)が好ましい。特に、選ばれたヒト抗体株の軽鎖IGKV4−1*01(F)のCDR2配列はWASTRESであり、本発明で発見されたマウス由来抗体mab5bの軽鎖CDR2配列と完全に一致している。配列アラインメントによってmab5bの軽鎖J遺伝子領域はヒト抗体株hJK1、hJK2.1、hJK2.2、hJK2.3、hJK2.4と相同性が高いことが分かり、さらに比較、分析したところ、好適にhJK2.1をmab5b軽鎖のヒト化ヒト抗体株のJ領域に使用し、ヒト化の設計、スクリーニング及び配列の最適化を行った。
【0222】
配列の相同性の比較分析により、mab5b重鎖との相同性が良いヒト抗体株は、IGHV1−69*02(F)、IGHV1−69*06(F)、IGHV1−69*08(F)、IGHV1−69*09(F)、IGHV1−69*10(F)、IGHV1−69*04(F)、IGHV1−69*14(F)、IGHV1/OR15−2*02(P)、IGHV1−69*01(F)、IGHV1−69*11(F)を含み、さらに比較し、分析したところ、好適にヒト抗体株の重鎖IGKV1−69*01(F)配列を本発明の抗体のヒト化に使用した。配列アラインメントによってmab5bの重鎖J遺伝子領域はヒト抗体株の重鎖J遺伝子hJh4.1、hJh4.2、hJh4.3、hJh1、hJh2、hJh3.1、hJh3.2と相同性が高いことが分かり、さらに比較し、分析したところ、好適にhJh4.1を本発明のmab5b重鎖のヒト化ヒト抗体株のJ領域に使用し、ヒト化の設計、スクリーニング及び配列の最適化を行った。
【0223】
本発明の抗体mab5bのCDR領域(上記CDRの定義を参照する)を、選ばれたヒト化軽・重鎖のヒト抗体株の鋳型に移植し、さらにIgG軽・重鎖定常領域と組み換えた。その後、マウス由来抗体の3次元構造を元に、残基を包埋し、CDR領域と直接に相互作用がある残基、及びVLとVHの配座に大きく影響する残基に対して復帰突然変異を行い、これらの突然変異及び突然変異の組み合わせをスクリーニングし、抗体活性に対する影響を考慮し、そしてCDR領域の化学的不安定なアミノ酸残基を最適化し、構造、活性などが最適化された抗体分子配列、即ち、本発明の抗ヒトCLDN18.2マウス由来抗体mab5bのヒト化系列の最適化抗体分子を得た。
【0224】
具体的に、本発明の抗体mab5bの軽鎖を分析したところ、CDR1(L24−L34位)及びCDR2(L50−L56位)の配列は本発明のヒト化の好適なヒト軽鎖IGKV4−1*01(F)の配列と相同性が高いことが分かった。中では、L24〜L34のCDR1は5つのアミノ酸しか異ならず、それぞれL29、L30A、L30C、L30E及びL34位であり、下記表9aに示された。一方、L50〜L56位のCDR2は
完全に一致している(下記表9bに示された)。本発明では、まず、mab5bのCDR1の5つの部位(L29、L30A、L30C、L30E及びL34位)に対して復帰突然変異を行って、ヒトIGKV4−1*01(F)の相応する部位のアミノ酸にし、組み合わせの設計は下記表9aに示された。
【0227】
上記ヒト化設計分子Var1、Var2、Var3、Var4、Var5、Var6、Var7、Var8及びmab5bを前記実施例3のようにクローニングし、発現し、精製して、実施例2のようにヒトCLDN18.2+細胞との結合活性を検出し、結果は下記表10に示された。
【0229】
上記結果から、本発明の抗体mab5bの軽鎖CDR1のヒト化最適化配列はいずれもmab5bと同じ(近い)結合活性が残ったことが分かる。
さらに、上記ヒト化方法を利用し、mab5bに対してヒト化設計を行い、好適に本発明のmab5b抗体のヒト化軽鎖可変領域の好適な配列は以下の通りである。
【0230】
L14:DIVMTQSPDSLAVSLGERATISCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPK LLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQNDYFYPFTFGQGTKLEIK(配列番号29)
L11:配列番号30;
L12:DIVMTQSPDSLAVSLGERATISCKSSQSLLNSGNNKNYLAWYQQKPGQPPK LLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQNDYFYPFTFGQGTKLEIK(配列番号31)
L13:配列番号32;
L15:DIVMTQSPDSLAVSLGERATISCKSSQSLLNSGNNKNYLAWYQQKPGQPPK LLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTHFTLTISSLQAEDVAVYYCQNDYFYPFTFGQGTKLEIK(配列番号33)
上記方法によって得られた本発明のヒト化重鎖可変領域の好適な配列は以下の通りである。
【0231】
H51:QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSNYLIEWVKQAPGQGLEWIG LINPGSGGTNYNEKFKGKATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARVYYGNSFAYWGQGTLVTVSS(配列番号34)
H52:配列番号35;H53:配列番号36;
H54:QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSNYLIEWVRQAPGQGLEWM GLINPGSGGTNYNEKFKGKVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARVYYGNSFAYWGQGTLVTVSS(配列番号37)
挙げられたL14、L11、L12、L13、L15及び挙げられていない前記任意の配列を含む上記軽鎖可変領域の配列をヒト抗体軽鎖のκ型又はλ型の軽鎖定常領域と組み合わせて本発明のヒト化抗体の軽鎖の配列を得た。挙げられたH51、H52、H53、L54及び挙げられていない前記重鎖可変領域の配列を含む上記重鎖可変領域の配列をhIgG1、2、3、4などの異なるサブタイプの定常領域と組み合わせて本発明のヒト化抗体の重鎖の配列を得た。前記軽鎖、重鎖を任意に組み合わせて本発明のヒト化抗体を得たが、一部のヒト化抗体の配列を下記表11に示された。
【0233】
ヒト化Ab10抗体のアミノ酸配列:
軽鎖:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATISCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQNDYFYPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号38)
重鎖:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSNYLIEWVKQAPGQGLEWIGLINPGSGGTNYNEKFKGKATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARVYYGNSFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWY
VDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号39)
ヒト化Ab7抗体のアミノ酸配列の軽鎖:配列番号40;重鎖:配列番号39;
ヒト化Ab8抗体のアミノ酸配列の軽鎖:配列番号38;重鎖:配列番号41;
ヒト化Ab9抗体のアミノ酸配列の軽鎖:配列番号40;重鎖:配列番号41;
ヒト化Ab6抗体のアミノ酸配列の軽鎖:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATISCKSSQSLLNSGNNKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQNDYFYPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号42)
重鎖:配列番号39;
ヒト化Ab11抗体のアミノ酸配列の軽鎖:配列番号42;重鎖:配列番号43;
ヒト化Ab12抗体のアミノ酸配列の軽鎖:配列番号42;重鎖:配列番号44;
ヒト化Ab13抗体のアミノ酸配列の軽鎖:配列番号45;重鎖:配列番号43;
ヒト化Ab14抗体のアミノ酸配列の軽鎖:配列番号45;重鎖:配列番号44;
ヒト化Ab15抗体のアミノ酸配列の軽鎖:配列番号45;重鎖:配列番号39;
本発明の前記実施例3の方法によってクローニングし、組み換え抗体を発現させて精製し、実施例2の前記ELISA方法によって上記ヒト化抗体及びhCLDN18.2+細胞、hCLDN18.1+細胞との結合活性を検出してスクリーニングしたが、結果は下記表12及び
図2aに示された。
【0235】
表12の結果から、本発明で発見された抗体mab5bがヒト化した後、マウス由来抗体は結合活性が対照抗体Refよりも高いという利点が残り、ヒト化抗体Ab10のEC50がRefより2倍も良かった(0.117 vs 0.345)ことが分かる。そして、これらの最適化されたヒト化分子は結合最高値Emaxが対照抗体Refよりも39.8%〜54.1%高かった。マウス由来抗体mab5bと比べ、より対照抗体よりも優れた。
【0236】
さらに本発明のヒト化分子を最適化するために、好ましくは最終の配列がヒト抗体株の軽・重鎖となるべく一致するようにし、マウス由来抗体における少量の配列によってなりうる免疫原性を減少し、好適にヒト化最適化軽鎖CDR1配列Var3(表9を参照)で一連のヒト化抗体を設計し、そして特異的結合活性のスクリーニングを行った。結果は下記表13及び
図2bに示された。
【0238】
上記結果から、本発明のさらに最適化されたヒト化抗体(表13及び
図2b)のうち、これらのヒト化抗体の復帰突然変異のアミノ酸の数が異なり、Ab1〜Ab20を含む(表11を参照)ことが分かる。その中で、6個の復帰突然変異のもの、例えばAb10(軽鎖1個、重鎖5個)、6個の復帰突然変異で、且つ軽鎖CDR1のヒト化最適化されたもの、例えばAb6(軽鎖1個、重鎖5個)、2個の復帰突然変異のもの、例えばAb14(軽鎖0個、重鎖2個)、1個のみの復帰突然変異のもの、例えばAb11(軽鎖1個、重鎖0個)、及び完全に復帰突然変異のないもの、例えばAb13がある。これらの最適化されたヒト化分子の活性は、EC50及びEmax活性を含め、いずれもAb10(表12における既に最適化されたmab5bヒト化分子)と同等のレベルが残り、且ついずれもhCLDN18.1+細胞に結合しない。
【0239】
特に意外に発見されたAb13抗体分子は何らの復帰突然変異がなく、全ヒト化の抗体分子で、且つCDR1配列がヒト化最適化され、その結合活性(EC50及びEmax)がAb6、Ab10と同様であった。
【0240】
上記結果から、本発明のマウス由来抗体mab5b配列がヒト化を経て最適化スクリーニングされた抗体分子、ヒト化のはFR領域のみで、軽鎖CDR1が野生型のままで(突然変異がない)、例えばAb10、又はFR領域以外、軽鎖CDR1もヒト化最適化された配列Var3であり、得られたAb6、Ab11−15などは、いずれもその結合活性
を維持し、且ついずれも対照分子よりも優れ、EC50が対照分子よりも1倍強く、Emaxが対照分子よりも30%〜50%高く、そしていずれもhCLDN18.1+細胞に結合しないことが分かる。
【0241】
実施例7:本発明の抗体配列の脱アミド(deamidation)感受性部位の配列最適化
本発明のmab5b配列及びヒト化後の最適化配列(上記表9a、9b、11)に対してコンピューターによる構造のシミュレーション解析を行い、可能な、特に抗体の集合、アスパラギン脱アミド(asparagine deamidation)の感受性部位(NG、NS、NHなど)、アスパラギン酸異性化(DG、DP)の感受性部位、Nグリコシル化(N−{P}S/T)の感受性部位及び酸化の感受性部位を含むCDR領域の翻訳後修飾(Potential post−translational modification、PTM)の部位を分析したところ、本発明の抗体は軽鎖CDR1(CDR1,L Chain)の第L30A、L30B位がNSであり、重鎖CDR3(CDR3,H Chain)の第H99、H100がNSであり、そのL30A位、H99位のアスパラギン(N)が脱アミドに敏感な可能性があることが分かった。本発明の抗体を薬物製剤に使用する場合の抗体分子の薬らしさの関連リスクを低下させるために、この2つの可能な感受性部位に対して配列最適化を行った。具体的に、本発明の抗体の軽鎖CDR1のL30A、L30B位(NS)、重鎖CDR3のH99、H100位(NS)の部位に対して突然変異させ、好適な方案は以下の通りである。
【0243】
上記最適化された脱アミド感受性部位の最適化設計後の配列を異なる軽・重鎖の組み合わせで抗体を発現させた後、さらに結合活性でスクリーニングした。前記抗体の組み合わせの一部を下記表に示す。
【0245】
上記好適な抗体を実施例3の方法によって発現させ、精製した後、実施例2の方法によってヒトCLDN18.2+細胞との結合活性を検出したが、結果を表16a、16b及び表16cに示された。
【0249】
表16aの結果から、Ab21(軽鎖 CDR1 NS−>TS及び重鎖 CDR3 NS−> TS)は結合活性が「ほとんどない」ことが分かった(>16nM)。Ab23(軽鎖 CDR1 NS−>NT、重鎖 CDR3 NS−> TS)も結合活性が「ほとんどない」ことが分かった(>40nM)。Ab22(軽鎖CDR1 NS−> TS、重鎖CDR3 NS−> NT)は結合活性がやや低下するが、完全になくならないことが分かった(EC50=1.37nM vs Ab14 EC50 =0.35)。つまり、軽鎖CDR1のL30A位はN−>Tであるが、重鎖CDR3のH99位Nが突然変異しておらず、抗体の結合活性が「ほとんどない」から1.37nMに回復し、正常Ab14よりも3倍近く減少した。一方、Ab56(軽鎖CDR1 NS−>NT、重鎖CDR3 NS−>NT)は結合活性が正常分子Ab14と同様で、そのEC50=0.295nMであった。
【0250】
表16aを合わせると、本発明の抗体の軽鎖CDR1のL30A位N及び重鎖CDR3のH99位Nは本発明の抗体の結合に非常に重要であり、これらの部位の突然変異(例えばTへの変異)が直接に活性の消失又は完全な無活性につながることが分かった。しかし、軽鎖のL30B位S及び重鎖CDR3のH100位SのTへの突然変異は結合活性に影響がない。
【0251】
表16bのデータから、単独の軽鎖のL30B位SのTへの突然変異、又は単独の重鎖CDR3のH100位SのTへの突然変異は結合活性に影響がないことがさらに証明された。
【0252】
非常に意外なことに、表16bのデータから、Ab30(重鎖CDR3、NS−>NT)は、完全に結合活性を失った(EC50>11nM、即ち、実際に結合曲線が既に陰性対照と同様になり、抗原との特異的結合作用がなくなった)が、Ab34は同じ重鎖(CDR3、NS−>NT)を含むが、活性を失っていなかったことが分かった。これは、Ab30の活性消失はCDR3ではなく、NS−>NTの変化によるものであることが示された。この2つの分子の唯一の違いは軽鎖CDR1の違い、即ち、Ab30は軽鎖がL14であり、そのCDR1がKSSQSLLNSGN
QKNYL
T(配列番号11)であり、Ab34は軽鎖がL12であり、そのCDR1がKSSQSLLNSGN
NKNYL
A(配列番号12)であるため、下線部分が2つのCDR1配列の違いである。この意外な発見から、重鎖CDR3のH100位SがTへ突然変異した(脱アミドの可能性を避けるために)場合、軽鎖のCDR1配列はKSSQSLLNSGN
NKNYL
Aでなければならない(配列番号12、即ち、CDR1配列が最適化されたVar3、表9aを参照)ことが示された。軽鎖CDR1がKSSQSLLNSGN
QKNYL
Tである(配列番号11、下線部分が2つのCDR1配列の違いである)場合、抗体分子全体が完全に結合活性を失った(Ab30)。この発見から、本発明の抗体のCDR1はL30E位がQで且つL34位がTである場合(下線で示された)、重鎖H100位SがTへの脱アミドの可能性を避けるために、重鎖のH100位Sは突然変異してはならず、そうでなければ、抗体分子全体が結合活性を失うことが示された。
【0253】
さらに本発明の抗体の軽鎖CDR1配列KSSQSLLNSGN
QKNYL
T(配列番号11、L30E位Q及びL34位T)及びヒト化最適化されたCDR1配列KSSQSLLNSGN
NKNYL
A(配列番号12、L30E位N和L34位A)の違いによる本発明の抗体の軽鎖CDR1及び重鎖CDR3におけるNS突然変異(脱アミドの可能性を避けるため)への影響を確認するために、Ab10(CDR1:KSSQSLLNSGN
QKNYL
T、配列番号11)とAb6(CDR1:KSSQSLLNSGN
NKNYL
A、配列番号12)を比較したところ、この2つの分子の唯一の違いはその軽鎖CDR1にある(下線のアミノ酸は両者の違いである)。そして、この2つの分子の軽鎖CDR1及び重鎖CDR3に同時にNT−>NSの突然変異を行ったところ、Ab35、Ab36の2つの抗体を得た。表16cの結果から、Ab35は完全に結合活性を失った(EC50>62nM)ことが分かる。
【0254】
このデータから、本発明で発見された軽鎖CDR1配列KSSQSLLNSGN
NKNYL
A(配列番号12)のL30E位がNで且つL34位がAで(下線で示された)あり、即ち、CDR1のヒト化最適化された配列が軽鎖CDR1のL30B位S(斜体)に影響がないこと、及び/又は重鎖のH100位Sに脱アミドの可能性を避けるために、突然変異(例えば、L30B位SのTへの突然変異及び/又はH100位SのTへの突然変異)を行ったことが確認された。
【0255】
CDR1配列KSSQSLLNSGN
QKNYL
T(配列番号11)のL30E位がQで且つL34位がTである(下線で示された)場合、CDR1のL30B位S(斜体)又
は重鎖のH100位Sのいずれも突然変異してはならず(例えば、L30B位SのTへの突然変異又はH100位SのTへの突然変異)、何らのこのような突然変異でも抗体の結合活性がなくなる。
【0256】
上記結果をまとめると、本発明の抗体の軽鎖CDR1のL30A、L30B位NS、重鎖CDR3のH99、H100位NSはNS−>NTという最適化突然変異によって脱アミノ化のリスクを低下させることができるが、CDR1のL30E位がNで、L34位がAである(即ち、配列はヒト化最適化された配列KSSQSLLNSGN
NKNYL
A、配列番号12)場合しかできず、当該領域の配列がKSSQSLLNSGN
QKNYL
T(配列番号11)である場合、抗体は完全に活性を失う(下線部分は両者の配列の違いである)ことが分かる。
【0257】
実施例8: 本発明の抗体のFc配列(バリアント)の活性分析
本発明の抗体の可変領域と実施例3で挙げられたヒト抗体の異なる軽鎖(κ、λ型軽鎖など)、重鎖定常領域(hIgG2、hIgG4、hIgG1)を含むが、これらに限定されない、ヒト抗体の異なる軽・重鎖定常領域の組み合わせ、特にヒトのIgG1Fc配列のバリアント、例えば356−358位がDEL又はEEMである異なる形態から、異なる抗体のバリアント形態が得られる。表17に一部の本発明の抗体及びFc配列のバリアント形態を示すが、Fc領域配列の356−358位がDEL又はEEMであるものを含む。
【0259】
前記Ab42抗体のアミノ酸配列は以下のとおりである。
軽鎖:配列番号38;重鎖:配列番号46。
上記好適な抗体を実施例3の方法によって発現させ、精製した後、実施例2の方法によってヒトCLDN18.2+細胞との結合活性を検出したが、代表的なデータを下記表1
8に示す。結果から、軽・重鎖定常領域の上記変化は、hIgG1の356〜358位がそれぞれDEL又はEEMであるものを含み、本発明の抗体の活性に影響しないことが分かる。
【0261】
実施例9: 本発明の抗体のFc領域(ヒトIgG1)のADCC、CDC活性に対する配列の最適化
本発明の抗体の特異的にヒトCLDN18.2に結合して腫瘍治療に使用する作用機序の一つは、抗体Fcによって腫瘍細胞に対するエフェクター細胞(effector cell)の殺傷を仲介することで、腫瘍を治療する目的を果たす。本発明の抗体におけるヒトFc領域(hIgG1 Fc)はエフェクター細胞のADCC及びCDC作用を仲介し、特異的に腫瘍細胞を標的とする作用を増強することができるが、非特異的標的では、標的以外の副作用につながる。ヒト抗体Fc領域(hIgG1 Fc)が仲介するADCC及びCDC作用について、多くの研究がある。本発明では、発見された抗体分子のFc領域のヒト血細胞に対するエフェクター作用(ADCC及びCDC)が確認された。具体的に、本発明の抗体におけるヒト抗体Fc領域(hIgG1 Fc)に異なる突然変異をさせ、これらの突然変異体のADCC及びCDC活性を評価したが、突然変異の設計は表19に示され、活性のデータは表20a、20bに示された。
【0263】
上記好適な抗体は実施例3の方法によって発現させ、精製して抗体を得た後、それぞれADCC(抗体依存性細胞傷害)実験及びCDC(補体依存性細胞傷害)実験を行って抗体Fc配列の最適化後の活性を検出した。具体的に、以下の通りである。
【0264】
ADCC:
実施例1で構築されたhCLDN18.2+細胞に対し、正常の培養を行った。培地はDMEM/F12+10%FBS(上海源培生物科技股フン有限公司Cat#L310KJ)で、本実験のADCC用標的細胞とした。
【0265】
実験の前日に、培養されたhCLDN18.2+細胞を取り、5000個/ウェルで計数して96ウェルプレートに敷いた。実験の当日に、PBMC細胞(本発明では、ヒト末梢血から分離されたものであり、ヒト末梢血は当社のボランティアから提供された。)を用意し、150000細胞/50μlの濃度でPBMCを無血清RPMI1640培地(培源生物、Cat#L210KJ)に懸濁させた。被験薬物は無血清RPMI1640で調製され、初期濃度40μg/mlから3倍の比率で希釈された。
【0266】
培養された標的細胞(hCLDN18.2+細胞)を取り出し、注意して上清を吸い取って捨て、調製されたPBMCを50μl/ウェル入れた。同時に50μl/ウェルで調製された異なる濃度の被験サンプルを入れ、標的細胞を37℃、5% CO
2インキュベーターで4時間インキュベートし、LDHを検出した。
【0267】
LDHキットはCytotoxicity LDH Assay Kit−WSTで、東仁化学科技(上海)有限公司から購入され、カタログ番号はCK12である。操作方法は説明書に従って行われ、マイクロプレートを取り出し、各ウェルに100μlの使用液(Working Solution)を入れ、光を避けるようにアルミホイルで包み、室温で10〜40min反応させ、MultiskanGO(ThermoFisher)マイクロプレートリーダーによって490nMにおいて数値を読み取り、10minおきに1回検出し、適切な反応時間のデータを取り、Graphpadprism5によってデータを分析処理した。
【0268】
CDC:
実施例1で構築されたhCLDN18.2+細胞を、本実験のCDC用標的細胞とした。hCLDN18.2+細胞に対して正常培養を行い、培地はDMEM/F12+10%FBS(ADCCと同様)であった。実験の前日に、標的細胞を収集し、計数し、1×10
5細胞/mlで調製し、100μl/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに入れた。37℃、5% CO
2で一晩培養して使用に備えた。
【0269】
実験の当日に、96ウェルプレートの細胞から培地を除去し、PBSで2回洗浄して使用に備えた。被験抗体は無血清培地(RPMI1640)で希釈され、抗体の初期濃度は20μg/mlであり、5倍で希釈された。50μl/ウェルで希釈された抗体をPBSで洗浄された標的細胞の培養プレートに入れ(0μg/ml抗体ウェル用新鮮培地を100μl/ウェルで、対照ウェルとした)、各濃度に6つの重複ウェルを設けた。37℃、5% CO
2で15 minインキュベートした。
【0270】
補体の用意:新鮮な血清を滅菌された遠心管に取った。半分の血清を取って56℃の水浴鍋で30分間インキュベートして補体を不活性化させ、陰性対照とした。不活性化させた血清及び不活性化させなかった血清を、それぞれRPMI1640培地で血清を調製したが、RPMI1640培地=40%:60%で、即ち、40%は血清であり、60%はRPMI1640であった。
【0271】
異なる濃度の被験抗体を含有する標的細胞培養プレートに50μl/ウェルの希釈された血清を入れ、血清の最終濃度を20%とし、サンプル(抗体)の初期濃度は10μg/mlであった。前の3つの重複ウェルに補体を含有する血清を、後ろの3つの重複ウェルに不活性化させた補体の血清を入れた。37℃、5%CO
2のインキュベーターで2時間インキュベートした後、取り出してLDHキットによって検出した。
【0272】
LDHキットはCytotoxicity LDH Assay Kit−WSTで、東仁化学科技(上海)有限公司から購入され、カタログ番号はCK12である。操作方法は説明書に従って行われ、マイクロプレートを取り出し、各ウェルに100μlの使用液(Working Solution)を入れ、光を避けるようにアルミホイルで包み、室温で反応させ、10minおきに1回検出し、適切な反応時間のデータを取り、MultiskanGO(ThermoFisher)マイクロプレートリーダーによって490nMにおいて数値を読み取り、Graphpadprism5によってデータを分析処理した。
【0275】
結果から、本発明の抗体は、hIgG1の形態で、そのFc領域の243位Fの単一部位の突然変異、例えばF243L、L234A、L235A、L234A/L235Aでは、本発明の抗体のADCC及び/又はCDC活性が完全に失われたが、Fc領域の239、330、332位の3つの部位の組み合わせの突然変異、例えばS239D/A330L/I332Eでは、本発明の抗体のCDC活性がやや弱くなったことが分かる。
【0276】
実施例10:本発明の抗体の異なるヒト化分子のADCC、CDC活性の評価
本発明のヒト化抗体分子のADCC及びCDC活性を評価するために、上記実施例と同じ方法によって、対照分子(Ref)とともに、本発明のヒト化分子のADCC及びCDC活性を検出したが、結果は下記表21a、21b及び
図3に示された。
【0279】
上記結果から、本発明のヒト化抗体はADCC活性が対照抗体(Ref)に相当することが分かる(表21a)。意外なことに、本発明のヒト化分子の中では、異なる復帰突然変異を含有するヒト化分子を含み、Ab6、Ab13、Ab14などのCDC活性が近く(EC50はそれぞれ0.293μg/ml、0.374μg/ml、0.265μg/ml)、且つAb10(0.648μg/ml)よりも1倍以上優れ、特に意外なことに、Ab6、Ab13及びAb14などのCDC活性が対照抗体(EC50 =2.31μg/ml)よりも10倍近く優れた(表21b、
図3を参照する)。Ab36、Ab24もいずれもCDC活性が対照抗体Refよりも優れた。
【0280】
Ab35(CDR1、CDR3 NS突然変異体、実施例7、表16cを参照する)は結合活性を失ったため、CDC活性は検出されなかった。
実施例11:本発明の抗体による腫瘍細胞(hCLDN18.2+細胞)のアポトーシスの誘導活性の評価
本発明の抗体、特に好適なヒト化抗体によるhCLDN18.2+細胞(腫瘍細胞)のアポトーシスの誘導作用を検出するために、本発明の実施例1で構築されたhCLDN18.2+細胞を利用し、本発明の抗体による腫瘍細胞のアポトーシスの誘導活性を検出した。hCLDN18.2+細胞に対して正常培養を行い(培地は10%FBS含有DME
M/F12で、プロバイダーは上海源培生物科技股フン有限公司で、カタログ番号はL310である)、本実験用細胞とした。実験の初めは、hCLDN18.2+細胞を96ウェルプレートに2×10
4/ウェルの密度で敷いた。37℃、5%CO
2で一晩培養して壁に付着させた。抗体サンプルの用意:無血清DMEM/F12培地で0μg/ml、1μg/ml、3μg/ml、10μg/mlの抗体サンプルを調製した。一晩付着培養されたhCLDN18.2+細胞を取り出し、培地を捨て、そしてPBSで細胞を2回洗浄した。それぞれ用意された異なる濃度の抗体サンプルを100μl/ウェル入れた。続いて24h培養した後、LDHを検出した。
【0281】
LDHキットはCytotoxicity LDH Assay Kit−WSTで、東仁化学科技(上海)有限公司から購入され、カタログ番号はCK12である。操作方法は説明書に従って行われ、マイクロプレートを取り出し、各ウェルに100μlの使用液(Working Solution)を入れ、光を避けるようにアルミホイルで包むなどの方法を使用し、室温で反応させ、異なる時点(10 min、20min、30min、40min、50min)で、MultiskanGO(ThermoFisher)マイクロプレートリーダーによって490nMにおいて数値を読み取り、適切な反応時間を見つけ、数値を読み取ってGraphpad prism 5によってデータを分析処理した。
【0282】
結果は
図4a、
図4bに示された。
図4a、4bの結果から、本発明のヒト化抗体Ab10、Ab6、Ab14、Ab24、Ab36などは、いずれも腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する活性が対照分子(Ref)よりも良く、活性が3〜10倍良く/強く、これらの分子は濃度10μg/mlでは、既に対照分子の30μg/mlにおける活性に相当するか、陽性分子の30μg/mlにおける活性よりも強いことが分かる。
【0283】
具体的に、Ab6は10μg/mlにおける腫瘍細胞のアポトーシスを増加する活性(46.7%)が同濃度の陽性対照(15.3%)よりも2倍以上良かった。さらに、30μg/mlの陽性対照(19.6%)よりも1倍以上良かった。一方、濃度30μg/mlでは、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する活性(85.1%)が同濃度における対照抗体(19.6%)よりも3倍以上良かった。
【0284】
意外なことに、Ab6は10μg/mlにおける腫瘍細胞のアポトーシスを増加する活性(46.7%)が同濃度のAb10(33.2%)よりも41%良かった。濃度30μg/mlでは、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する活性(85.1%)が同濃度におけるAb10(34.7%)よりも1倍以上強かった。
【0285】
実施例12:本発明の抗体による腫瘍細胞(hCLDN18.2+細胞)の増殖の抑制作用
腫瘍細胞の増殖に対する本発明の抗体の抑制作用を検出するために、実施例1で構築されたhCLDN18.2+細胞に対して活性を検出した。具体的に、hCLDN18.2+細胞に対して正常培養を行った(培地は10%FBS含有DMEM/F12で、プロバイダーは上海源培生物科技股フン有限公司で、カタログ番号はL310である)。実験の初めは、対数期のhCLDN18.2+細胞を取って96ウェルプレートに3×10
3/ウェルの密度で敷いた。37℃、5%CO
2で一晩付着培養した。抗体サンプルの用意:10%FBS含有DMEM/F12培地(源培生物)で1μg/ml、10μg/ml、30μg/mlの抗体サンプルを調製した。一晩付着培養されたhCLDN18.2+細胞を取り出し、培地を捨て、そしてPBSで細胞を1回洗浄した後、それぞれ用意された異なる抗体サンプルを100μl/ウェル入れた。続いて72h培養した後、CCK8キットで検出した。
【0286】
CCK−8キットはCell Counting Kit−8で、東仁化学科技(上海)有限公司から購入され、カタログ番号はCK04である。操作方法は説明書に従って行われ、96ウェルプレートを取り出し、各ウェルに10μlのCCK−8溶液(読み取り値に影響するため、ウェルに泡が生じないように注意した)を入れ、培養プレートをインキュベーターで1〜4hインキュベートし、最適な検出時点を見つけ、Multiskan GO(ThermoFisher)マイクロプレートリーダーによって450nMにおいて数値を読み取り、数値をGraphpad prism 5によって分析してデータを処理した。結果を下記表22に示す。
【0288】
表22の結果から、陰性抗体は1μg/ml、10μg/ml、30μg/mlの濃度において腫瘍細胞を抑制する活性(抑制率)が1%以下で、即ち、ブックグラウンドレベルであることが分かる。1μg/ml、10μg/ml、30μg/mlにおけるAb10の腫瘍細胞を抑制する活性(抑制率)が2.17%〜3.16%であり、これはRefの抑制率の2.34%〜3.9%に近い。一方、Ab6は腫瘍細胞を抑制する活性がRefよりもずっと強く、例えば10μg/mlにおける抑制率が6.12%で、Ref(2.94%)の2倍以上である。
【0289】
実施例13:本発明のヒト化抗体のマウスCLDN18との結合活性の検出
前記実施例2の方法に従い、本発明の好適なヒト化抗体のマウスCLDN18.1+細胞及びマウスCLDN18.2+細胞との結合活性を検出した。スクリーニングの過程において、1つのクローン克隆(抗体L180)が得られ、当該抗体はヒト及びマウスのCLDN18.1のいずれにも結合した。本アッセイの対照として、L180はmCLDN18.1+細胞との結合活性がEC50=0.48nMであることから、本発明で構築されたマウスCLDN18.1+細胞は抗CLDN18.1抗体と特異的に結合することが示された。一方、本発明の好適なヒト化抗体はいずれもmCLDN18.1+細胞に結合せず、且つ同マウス由来抗体mab5bと同じmCLDN18.2+細胞との結合活性が残り、下記表23を参照する。
【0291】
上記結果から、本発明の好適なヒト化抗体はいずれもmCLDN18.2+細胞との結合活性が残っていることが分かる。EC50はヒト化前のmab5b(同アッセイにおけるEC50=0.375nM)と同じ結合活性を有する。Emaxは1.91(Ab51)〜2.47(Ab6)の間で、mab5b(2.17)に近い。
【0292】
実施例14:本発明の抗体の体内における薬効活性の評価
本発明の抗体の抗腫瘍活性を評価するために、BALB/cヌードマウスにhCLND18.2+細胞(実施例1で構築された)又は胃癌細胞NUGC4(上海素爾生物科技有限公司)を皮下移植して構築された動物薬効モデルを利用し、本発明の抗体の体内における薬効を評価した。
【0293】
具体的に、hCLDN18.2+細胞の培地はDMEM/F12(源培生物)に10%ウシ胎児血清(上海博昇生物科技有限公司、カタログ番号BS−0002−500)を入れたものである。NUGC4細胞の培地はRPMI1640(源培生物)に10%ウシ胎児血清を入れたものである。培養条件は37℃、5% CO
2である。BALB/cヌードマウスは雌で、4週齢で、体重が18〜20gであり、上海SIPPR−BK実験動物有限公司(生産許可証番号:SCXK(京)2012−0001)から購入され、室温20〜25℃、湿度40〜60%で、自由に餌・水を摂取させ、3〜4日適応性飼育した。適当に敷材を交換し、籠を掃除した。対数期の細胞を選び、収集して計数した。
【0294】
hCLDN18.2+細胞異系移植モデルでは、hCLDN18.2+細胞をPBSで2回洗浄した後、再懸濁させて1×10
8細胞/mlにした。マウスの左側に0.1ml皮下接種し、計1×10
7細胞/匹であった。腫瘍体積が約120〜180 mm
3になるように成長したマウスを選び、各群に5〜6匹、ランダムに群分けした。
【0295】
胃癌NUGC4細胞異系移植モデルでは、NUGC4細胞をRPMI1640で2回洗
浄した後、Matrigelを入れ、RPMI640との比率が1:1になるようにし、混合液で再懸濁させて1×10
8細胞/mlにした。マウスの左側に0.1ml皮下接種し、計1×10
7細胞/匹であった。腫瘍体積が約150〜200mm
3になるように成長したマウスを選び、各群に5〜6匹、ランダムに群分けした。
【0296】
無菌で被験サンプルをPBSで調製した。ブランクは無サンプルのPBS対照であり、標的に関係のない抗体であり、即ち、陰性抗体(Neg IgG)対照である。200μg/100μl/匹で腹腔内注射した。2回/週で、数週連続で注射した。サンプルを注射した日を0日目とした。毎回の投与前に、体重、腫瘍体積を測定し、データを記録した。
【0297】
腫瘍の大きさの計算式:腫瘍体積TV(mm
3)=0.5×(腫瘍長径×腫瘍短径
2)。相対腫瘍増殖率(T/C%) = 100%×(T−T0)/(C−C0)。腫瘍抑制率(TGI)=(1−T/C)×100%。ここで、T0、Tはそれぞれサンプル群の実験開始時及び実験終了時の腫瘍体積であり、C0、Cはそれぞれ対照群の実験開始時及び実験終了時の腫瘍体積である。
【0298】
動物体内における薬効の結果は
図5a、5b(hCLDN18.2+細胞異系移植モデル)及び下記表24(NUGC4腫瘍細胞異系移植モデル)に示す。
ヒトCLDN18.2高発現細胞(hCLDN18.2+細胞)で構築された腫瘍異系移植モデルにおいて、
図5aの結果から、本発明の抗体Ab10、Ab6は陽性抗体分子(Ref)と同様に非常に良い体内における薬効活性を示し、腫瘍細胞成長の抑制及び/又は腫瘍細胞の殺滅(抑制率)が90%以上に達した。意外なことに、軽鎖CDR1及び重鎖CDR3が脱アミノ感受性部位最適化され、軽鎖CDR1がヒト化最適化された好適な抗体Ab36は完全に腫瘍の成長を抑制、その体内における薬効が顕著にAb6、Ab10及び対照陽性抗体(Ref)よりも良かったことが示された。
図5bの結果から、本発明の完全ヒト化抗体(復帰突然変異がない)Ab13、及びその軽鎖CDR1及び重鎖CDR3が脱アミノ感受性部位最適化された完全ヒト化抗体Ab51、ならびに軽鎖CDR1及び重鎖CDR3が脱アミノ感受性部位最適化され、重鎖に復帰突然変異が2個のみあるヒト化抗体Ab24はいずれも対照抗体と同じ体内における薬効を示したことが示された。
【0299】
【表33】
ヒト胃癌細胞系NUGC4で構築された腫瘍モデルにおいて、上記結果(表24)から、本発明の好適なヒト化抗体Ab10、Ab6はいずれもある程度の薬効を示し、腫瘍抑制率が10%〜20%であり、且つ投与量依存性を示したことが分かる。一方、同じモデルにおいて、対照抗体(Ref)はPBS対照、陰性抗体(Neg IgG)と同様で、腫瘍抑制効果がなかった。この結果から、本発明の抗体は陽性対照抗体よりも優れた体内における薬効を有することが分かる。
【0300】
実施例15:本発明の抗体のマウスにおける薬物動態学(PK)の評価
上記実施例13に記載のように、本発明の抗体はマウスCLDN18.2と優れた結合活性を有し、これは本発明の抗体に臨床前研究の非霊長類の種の選択を提供した。本発明では、マウス体内における薬物動態学(PK)の本発明の抗体の特性を評価した。
【0301】
具体的に、実験は6週齢の雌Balb/cマウスが使用され、上海SIPPR−BK実験動物有限公司から購入された。マウスは購入された後、6匹/籠であり、自由に餌及び水を摂らせた。実験室の環境において3日飼育し、温度は20〜25℃であり、湿度は40〜60%であり、12/12時間で明暗の周期を調節した。実験開始の前日に、マウスに対して体重を測定し、20〜25gのマウスを選び、3匹/群で群分け及び番号付けを
行った。実験の当日に、各マウスにそれぞれ被験薬物Ab10及び対照抗体(Ref)を皮下注射し、薬物の投与量は10mg/kgであり、皮下注射は100 μl/匹/回であった。
【0302】
マウスに注射した後0、1、6、24、26、30、50、55、71、79、98、143、167、191、215、240時間でそれぞれ目縁から採血した。採取された血液サンプルを遠心し、上清を取り、−20度で保存し、測定に備えた。血液サンプルを収集した後、前記実施例2のELISA方法によって血清における薬物濃度を検出した。正式に検出する前に、1匹のマウスの血清を採取し、勾配希釈を行い、血清の最適な希釈比率を決めた。すべてのサンプルは最適な希釈比率でELISAによる検出を行い、検出結果に対してT1/2計算式及びEXCELソフトによってデータを分析したが、結果を下記表25に示した。
【0304】
上記表25の結果から、本発明の抗体Ab10はCmaxが対照抗体(Ref)よりも57%高かった([407.7〜259.3]/259.3)ことが分かる。より意外なことに、本発明の抗体Ab10は半減期T1/2が対照抗体(Ref)よりも30.7時間以上長く(170.1〜139.4)、マウス体内において30時間と長いT1/2の優勢は、ヒト体内においてさらに拡大すると予想される。これらの結果から、本発明のヒト化抗体は対照抗体よりも優れたPK性能を有し、特に半減期T1/2の顕著な優勢が臨床に少なくとも薬効(長時間)及びコスト(低い投与頻度)などの優勢をもたらすと予想されることが分かる。
【0305】
実施例16:本発明の抗体の親和性の分析(KinExA)
CLD18.2は細胞の膜貫通タンパク質であり、4回膜貫通で、2つの細胞外領域ECL1及び2がいずれもわずか20〜50アミノ酸の長さである。本発明の抗体は特異的にCLDN18.2細胞外領域に結合する。通常の抗原(20−50アミノ酸)を発現させて抗体と結合させるBiacore検出法は、好適に本発明の抗体の標的タンパク質の
細胞外領域との特異的な親和性を評価することができる。そのため、本発明では、KinExA方法によって抗体のhCLDN18.2+細胞との親和性を検出した。方法はKinExA 4000装置の説明書を参照して行われ、即ち、被験抗体Ref、Ab10をそれぞれ固定結合相手(Constant binding Partner、CBP)とし、hCLDN18.2+細胞を滴定剤(Titrant)とした。固定濃度の抗体(CBP)で細胞(Titrant)を勾配希釈し、インキュベートした後、抗ヒトIgG
Fcのカラムで細胞に結合しなかった遊離抗体(free CBP)を捕獲し、anti−human Fc Alexa Flour 647で信号値を獲得し、KinExAの付属ソフトによって抗体の親和性を算出した。
【0306】
具体的に、適切な抗体希釈液の濃度を決めるために、まず、予想された親和性から合理的な濃度を推算して信号テストを行い、それぞれ500μlの120pM Ref抗体及び100pM Ab10抗体を信号100%とし、当該濃度において満足できる純粋な検出信号値を得、PBSブランクを陰性信号値(NSB)とした。120pM Ref 抗体及び100pM Ab10抗体の濃度をCBP濃度とした。次の平衡実験において、300gで10分間遠心してそれぞれ2本の遠心管のhCLDN18.2+細胞を収集し、各管の細胞数は5×10
8個であった(FACS検出による陽性率は100%であった)。PBSで細胞を1回洗浄し、300gで10分間遠心し、細胞をそれぞれ15ml遠心管に収集した。それぞれ15mlの120pM Ref及び100pM Ab10の抗体溶液を用意した。5×10
8個の細胞に120pM Ref 抗体溶液を2mlまで入れ、そして120pM Ref 抗体溶液を緩衝液として細胞を2倍勾配で希釈し、初期濃度2.5×10
8細胞/mlから、18個の勾配で、各勾配の濃度は0.6mlずつであった。5×10
8個の細胞に100pM Ab10抗体溶液を2mlまで入れ、そして100pM Ab10抗体溶液を緩衝液として細胞を2倍勾配で希釈し、初期濃度2.5×10
8細胞/mlから、18の勾配で、各勾配の濃度は0.6mlずつであった。細胞と抗体の懸濁液を室温で振とうしながら2hインキュベートした。インキュベート終了後、450gで10分間遠心し、上清を取った。1μg/mlのanti human Fc
Alexa Flour 647溶液を用意した。サンプルをホルダーにおける相応する位置にセットした。KinExA3200装置によって信号値を検出して親和性のデータを得た。結果は下記表に示された。結果から、Ab10は親和性(13.3 pM)がRef抗体よりも10倍以上高かったことが分かる。
【0308】
実施例17: 本発明の抗体の取り込み活性の検出
hCLDN18.2+細胞が90%まで増殖した時点で、トリプシンで消化し、FACS緩衝液(PBS+1%BSA)で細胞を最終濃度が1x10
6細胞/mlになるように再懸濁させた。500μlの細胞懸濁液を1.5ml遠心管に入れ、蛍光標識を持つ抗体対照抗体(hCLDN18.2+細胞に結合しない抗体)、対照抗体Ref、被験サンプル(本発明の好適なヒト化抗体)Ab10、Ab6(抗体の標識には、mix−n−stain CF488 antibody labeling kit,Sigma−Aldrich,Cat# MX488S100−1kit、又はmix−n−stain CF633 antibody labeling kit,Sigma−Aldric
h,Cat# MX633S100−1kitが使用され、標識の手順はいずれもキットにおける説明書に従って行われた)を入れ、最終濃度が1μg/ml又は10μg/mlであり、氷の上で1時間インキュベートし、冷やしておいたFACS緩衝液で3回洗浄した。1/5を取り出して氷の上に置き、結合値のサンプルとしてそのままフローサイトメトリーに使用した。残った4/5の細胞は、37℃で加熱しておいた1640+10%FBSで細胞を再懸濁させ、1/4を分注してそのまま氷の上に置き、取り込みの0時間の散布売るとし、残りは37℃インキュベーターでインキュベートし、それぞれ1hr、2hr、3hrで取り出し、氷の上で予備冷却し、取り込みを中止させ、4℃、1300rpmで3分間遠心分離し、上清を捨てた。0hr、1hr、2hr、3hrでストリッピング緩衝液(strip buffer)(0.05 M グリシン,pH 2.45 + 0.1 M NaCl)を250μl入れ、室温で7min、4℃、1300rpmで3分間遠心分離し、上清を捨て、FACS緩衝液で1回洗浄した。サンプルはすべて150μlの4%パラホルムアルデヒド(生工生物工程 Cat#E672002)を入れ、4℃で半時間固定した後、装置にセットして検出した(Beckman CytoFLEXフローサイトメーター)。結果を下記表に示す。
【0310】
上記結果(CF488で標識された被験抗体)から、抗体濃度が1μg/mlの場合(上記表の左半分)、対照抗体(Ref)の結合蛍光強度(1939)は陰性抗体(hCLDN18.2+細胞に結合しない抗体)の蛍光強度値(1747)、即ち、バックグラウンド値に近かったことが分かる。そして、0h、1h、2h、3hにおける蛍光強度値(下線の数値)もすべてバックグラウンド(1747)に近かった。一方、本発明の抗体Ab10、Ab6は、結合値(蛍光強度)がそれぞれ27200、16300であり、バックグラウンドの15倍及び9倍であり、それぞれ対照抗体の14倍(27200/1939)及び8.4倍(16300/1939)であった。これによって、さらに、本発明の抗体は結合Emaxが対照抗体(Ref)よりも強かったことが証明された。
【0311】
抗体濃度が10 μg/mlに増加した場合(上記表の右半分)、陰性抗体(hCLDN18.2+細胞に結合しない抗体)の蛍光強度値、即ち、バックグラウンド値が1284〜3485(下線の数字)であった。対照抗体(Ref)の蛍光強度(結合値)は17900であり、バックグラウンド(3485)よりも4倍高かったことから、Refが10μg/mlと高くなって初めて蛍光標識抗体の特異的結合が検出されたことが示された。同じ濃度において、本発明の抗体Ab10、Ab6の結合強度(蛍光値)がそれぞれ138000、86000であり、バックグラウンド(3485)の39倍及び24倍であり、それぞれRefの7.7倍(138000/17900)及び4.8倍(86000/17900)であった。これによって、さらに、本発明の抗体の結合Emaxが対照抗体(Ref)よりもずっと強かったことが証明された。これは上記KinExA検出の結果とも一致する。
【0312】
上記表におけるデータから、公式:取り込み百分率(%)=(被験時点における蛍光強度−0hにおける蛍光強度)/結合値により、下記表のデータが得られた。
【0314】
上記結果から、本発明の好適な抗体Ab10、Ab6は、濃度1μg/mlの場合(上記表の左半分)、1h、2h、3hのいずれでも比較的に良い取り込み作用が示され、3hにおける取り込みはそれぞれ28%及び25%であったことが分かる。一方、同等の条件において、Ref抗体は陰性対照抗体と同様に、取り込みが見られなかった。
【0315】
抗体の量が10μg/mlまで上がった(上記表の右半分)場合、対照抗体は非常に小さい取り込みしかなく(7% 〜8%)、ほとんどバックグラウンドに近づく、即ち、取り込みがなかった。一方、本発明の抗体Ab10、Ab6は、取り込みがまだ時間の経過につれて増加し、3hで、それぞれ23%及び18%であった。これは抗体濃度1μg/mlにおける28%及び25%に及ばないことから、本発明の抗体は結合活性がRefよりもずっと良く、10μg/mlは本発明の抗体に過飽和であり、最適な抗体取り込み濃
度ではないことが示された。
【0316】
上記結果から、本発明の好適なヒト化抗体は取り込み抗体であることが分かる。一方、対照抗体(Ref)は取り込み抗体ではないか、取り込みが非常に弱い。さらに本発明の好適な抗体の取り込み活性を証明するために、CF488と異なる蛍光染料CF633(Sigma−Aldrich、Cat# MX633S100−1kit)で抗体の標識及び取り込み活性の分析を行ったが、検出装置はBD FACS Caliburフローサイトメーターであった。結果は下記表に示す。
【0318】
上記結果(CF633で標識された被験抗体)から、抗体濃度が1μg/mlの場合(上記表の左半分)、陰性抗体(hCLDN18.2+細胞に結合しない抗体)の蛍光強度値、即ち、バックグラウンド値が23であったことが分かる。0h、1h、2h、3hにおける蛍光強度値(下線の数値)もすべてバックグラウンド(12.7〜13.7、即ち、2倍以内で100未満のはいずれもバックグラウンド値である)に近かった。対照抗体(Ref)の結合蛍光強度(62.5)がバックグラウンド(陰性抗体、23)に近く、2倍の範囲内であった(62.5/23=2.7)。そして、0、1、2、3hで結合蛍光強度値がいずれも弱く(15.5〜33.4)、特に1、2、3hで読み取り値が変化せず(33.9、33.7、33.4)、これらの数値が基本的にバックグラウンドレベルに近いことが示された。
【0319】
一方、本発明の抗体Ab10、Ab6は、結合値(蛍光強度)がそれぞれ854、690であり、バックグラウンドの37倍(854/23)及び30倍(690/23)であり、それぞれ対照抗体の14倍(854/62.5)及び11倍(690/62.5)であった。これによって、さらに、本発明の抗体の結合Emaxが対照抗体(Ref)よりもずっと強かったことが証明された。これは上記KinExAの結果とも一致した。
【0320】
抗体濃度が10μg/mlに増加した場合(上記表の右半分)、陰性抗体(hCLDN18.2+細胞に結合しない抗体)の蛍光強度値、即ち、バックグラウンド値が23.2〜14.9(下線の数字)であった。対照抗体(Ref)の蛍光強度(結合値)は198であり、バックグラウンド(23.2)の8.5倍であったことから、Refが10μg/mlと高い場合、蛍光標識抗体の特異的結合が検出できることが示された。同じ濃度において、本発明の抗体Ab10、Ab6の結合強度(蛍光値)がそれぞれ3229及び2237であり、それぞれバックグラウンド(23.2)の139倍及び96倍であり、それぞれRefの16倍(3229/198)及び11倍(2237/198)であった。これによって、さらに、本発明の抗体の結合Emaxが対照抗体(Ref)よりもずっと強かった(蛍光読み取り値が10倍以上強かった)ことが証明された。
【0321】
上記表におけるデータから、公式:取り込み百分率(%)=(被験時点における蛍光強度−0hにおける蛍光強度)/結合値により、下記表のデータが得られた。
【0323】
上記結果から、本発明の好適な抗体Ab10、Ab6は、濃度1μg/mlの場合、1h、2h、3hのいずれでも比較的に良い取り込み作用が示され、3hにおける取り込みはそれぞれ35.1%及び30.4%であったことが分かる。一方、同等の条件において、Ref抗体(結合強度がバックグラウンドの2〜3倍以内)は陰性対照抗体と同様に、取り込み作用がなかった。
【0324】
抗体の量が10μg/mlまで上がった(上記表の右半分)場合、対照抗体は非常に小さい取り込みしかなく(5%〜8%)、ほとんどバックグラウンドに近づく、即ち、取り込みがなかった。一方、本発明の抗体Ab10、Ab6は、取り込みが時間の経過につれて増加し、3hで、それぞれ27.3%及び28.9%であった(
図6を参照する)。こ
れは抗体濃度1μg/mlにおける35.1%及び30.4%に及ばないことから、本発明の抗体は結合活性がRefよりもずっと良く、10μg/mlは本発明の抗体に既に過飽和である、最適な取り込み作用の濃度ではないことが示された。
【0325】
上記2つの異なる蛍光染料(CF488及びCF633)の実験結果をまとめると、本発明の好適なヒト化抗体Ab10、Ab6は取り込み抗体であることが分かる。これらは対照抗体(Ref)と全く違う。対照抗体は取り込み作用がないか、取り込みが非常に弱く、バックグラウンドレベルに近かった。
【0326】
実施例18:抗CLDN18.2抗体Ab10毒素SMCC−DM1複合体(ADC1)の製造
本発明の抗CLDN18.2抗体Ab10毒素SMCC−DM1複合体(ADC1)の製造方法は特許CN106188293A及びUS2009202536A1で開示された方法を参照し、具体的な手順は以下の通りである。
【0328】
工程1では、中間体を製造した。1mgのSMCC(4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸スクシンイミドエステル、上海瀚鴻化工科技有限公司、ロット番号BH−4857−111203)を0.55mLのアセトニトリル溶液に溶解させ、使用に備えた。Ab10抗体(pH=6.5、PBS緩衝液)50mg(5ml)を上記使用に備えた4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸スクシンイミドエステルのアセトニトリル溶液に入れ、25℃で振とうしながら2時間反応させた。反応終了後、Sephadex G25ゲルカラムによって脱塩・精製して(溶離相:pHが6.5の0.05MのPBS溶液)中間体溶液、即ち、上記合成スキームにおける工程1と工程2の間の分子を得、そして約8mg/mlに濃縮した後、次の反応を行った。
【0329】
工程2では、抗体−毒素のカップリングを行った。工程1で得られた中間体溶液5mgを、L−DM1のエタノール溶液(3.0mg L−DM1/mlエタノール)に入れた。L−DM1は「Journal of Medicinal Chemistry. 2006,49,4392−4408」の公知の方法によって製造することができ、L−DM1の量はL−DM1:中間体=3:8mgの比率で入れた。25℃で振とうしながら約4.0時間反応させた後、反応液をSephadex G25ゲルカラムによって脱塩
・精製し(溶離相:pHが6.5の0.05MのPBS溶液)、本発明の抗CLDN18.2抗体Ab10に毒素SMCC−DM1をカップリングさせた産物ADC1の溶液を得た。得られたADC1の最終濃度は1.3mg/mlで、分注して4℃で保存して使用に備えた。
【0330】
得られたADC1のサンプルをLC−MS方法によって検出して分析したところ、得られたサンプルに遊離の毒素小分子がないことが証明された。分光光度計(UV方法)によってA252、A280における吸収ピークを検出したところ、得られたADC1毒素と抗体の比率DAR=4.4であった。
【0331】
実施例19:抗CLDN18.2抗体Ab10毒素MC−VC−PAB−MMAF複合体(ADC2)の製造
本発明の抗CLDN18.2抗体Ab10毒素MC−VC−PAB−MMAF複合体(ADC2)の製造方法は特許CN106188293A及びUS20140127211A1で開示された方法を参照し、具体的な手順は以下の通りである。
【0333】
工程1では、中間体を製造した。0.7mgのチオ酢酸S−(3−カルボニルプロピル)エステルを0.9mLのアセトニトリル溶液に溶解させ、使用に備えた。Ab10抗体(pH=4.3の酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液)50mg(5ml)を上記使用に備えたチオ酢酸S−(3−カルボニルプロピル)エステルのアセトニトリル溶液に入れた後、1.0mlのシアノ水素化ホウ素ナトリウム(14.1 mg)水溶液を滴下し、25℃で振とうしながら2時間反応させた。反応終了後、Sephadex G25ゲルカラムによって脱塩・精製(溶離相:pHが6.5の0.05MのPBS溶液)した後、産物1aの溶液(上記スキームに示されるように)を得、1aを約10mg/mlに濃縮し、中間体1bの製造を行った。ここで、前記x≦yであった。
【0334】
5mlの上記1a溶液に0.15mlの2.0M塩酸ヒドロキシアミン溶液を入れ、25℃で振とうしながら30分間反応させた後、反応液をSephadex G25ゲルカラムによって脱塩・精製(溶離相:pHが6.5の0.05MのPBS溶液)した後、上記スキームにおける中間体1b、即ち、Ab10−プロパンチオール溶液を得た。
【0335】
工程2では、抗体−毒素のカップリングを行った。1.6mgの化合物MC−VC−PAB−MMAF(PCT特許WO2005081711で開示された方法によって製造することができる)を0.3mlのアセトニトリルに溶解させ、上記で製造された中間体Ab10−プロパンチオール溶液5mgを入れ、25℃で振とうしながら4時間反応させた後、反応液をSephadex G25ゲルカラムによって脱塩・精製し(溶離相:pHが6.5の0.05MのPBS溶液)、本発明の抗CLDN18.2抗体Ab10毒素MC−VC−PAB−MMAF複合体ADC2(構造は下記式で表される)を得た。
【0337】
得られたADC2の最終濃度は1.21mg/mlであり、分注して4℃で保存して使用に備えた。得られたADC2のサンプルをLC−MS方法によって検出して分析したところ、得られたサンプルに遊離の毒素小分子がないことが証明された。分光光度計(UV
方法)によってA252、A280における吸収ピークを検出したところ、得られたADC2毒素と抗体の比率DAR=4.8であった。
【0338】
実施例20:抗CLDN18.2抗体Ab10細胞毒性複合体ADC1、ADC2の結合活性の検出
実施例2に記載のELISA方法によって本発明の抗体Ab10、及びAb10抗体細胞毒素複合体ADC1、ADC2のhCLDN18.2+細胞との結合活性を検出したが、結果を下記表に示す。
【0340】
上記結果から、Ab10抗体細胞毒素複合体ADC1、ADC2は、標的細胞(hCLDN18.2+細胞)との結合活性(EC50)が抗体Ab10よりもやや弱くなったが、2倍(誤差)の範囲内にあったことが分かる。
【0341】
実施例21:抗CLDN18.2抗体Ab10細胞毒性複合体ADC1、ADC2の取り込み活性の検出
上記「本発明の抗体の取り込み活性の検出」(実施例17)と同じ方法によって本発明の抗体Ab10、及びAb10抗体細胞毒素複合体ADC1、ADC2の取り込み活性を検出した。上記実施例に基づき、標識方法を最適化し(CF633染料を使用した)、抗体濃度(2.5μg/ml)及び時間(1時間)などの取り込みの検出条件で、結果を下記表に示した。
【0343】
上記結果から、本発明のAb10抗体細胞毒素複合体ADC1、ADC2には抗体Ab10の取り込み活性が残ったことが分かる。つまり、毒素が連結した抗体Ab10は抗体の取り込み活性が影響されなかった。
【0344】
実施例22:抗CLDN18.2抗体Ab10細胞毒性複合体ADC1、ADC2の標的細胞の増殖を抑制する活性
Ab10抗体細胞毒性複合体ADC1、ADC2の標的細胞の増殖を抑制する活性を検出するために、CCK8法(キットは東仁化学科技(上海)有限公司から購入され、カタログ番号はCK04である。説明書に従って行われた。)によって細胞の増殖作用を検出した。具体的に、10% FBS含有DMEM/F12培地でhCLDN18.2+細胞(標的細胞)及びhCLDN18.1+細胞(非CLDN18.2標的細胞で、対照細胞とした)を培養し、72時間の培養の終了の2時間前に、各ウェルに10μlのCCK8を入れ、インキュベーターで続いて2時間培養し、Multiskan GOマイクロプレートリーダーでOD450nMの読み取り値を得、Graphpad prism 5によって分析してデータを処理した。細胞増殖抑制百分率(%)=100×(1−(OD450サンプル/OD450対照ウェル))で、結果を下記表に示す。
【0346】
上記結果から、本発明のAb10抗体細胞毒素複合体ADC1及びADC2分子は、標的特異性細胞(hCLDN18.2+細胞)の増殖を顕著に抑制することができ、IC50はそれぞれ11.2nM及び0.71nMであったことが分かる。ADC1は非標的細胞(本実験に使用されたのはAb10抗体に結合しないhCLDN18.1+細胞である)に対して抑制作用がなく、安全域が3000と高かった。ADC2は非常に高い濃度(IC50:18.5nM)で非標的特異性細胞に対する抑制が見られたが、このような抑制は高投与量(10〜100nMと高い)による非標的毒性のためである。これはADC2に連結したMMAFの高毒性という特徴と一致している。ADC2は安全域が26に達した。
【0347】
実施例23:抗CLDN18.2抗体Ab10細胞毒性複合体の標的細胞傷害活性の検出
本発明のAb10抗体細胞毒素複合体の特異的にCLDN18.2+を標的とする細胞毒性を検出するために、本実施例ではADC1を例として、細胞上清におけるLDHの放出を検出することによって本発明の抗CLDN18.2抗体Ab10細胞毒性複合体の標的細胞傷害活性を評価した。
【0348】
具体的に、10% FBS含有DMEM/F12培地でhCLDN18.2+細胞(標的細胞)及びhCLDN18.1+細胞(非CLDN18.2標的細胞で、対照細胞とした)を対数期まで培養した。実験の前日に、培養されたhCLDN18.2+細胞及びhCLDN18.1+細胞を、10% FBS含有DMEM/F12培地で再懸濁させ、細胞濃度が4×10
4細胞/mlになるように調整し、100μl/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに入れた。37℃、5% CO
2で一晩インキュベートした。実験の当日に、96ウェルプレートにおける細胞から培地を除き、各ウェルに2%FBS含有DMEM/F12培地を入れて使用に備えた。2%FBS含有DMEM/F12培地で勾配希釈された被験薬物ADC1を調製し、0μg/mlの抗体ウェルに新鮮な培地を使用し、対照ウェルとした。細胞に用意された異なる濃度の抗体サンプルを50μl/ウェル入れ、各濃度に3つの重複ウェルを設けた。37℃、5% CO
2のインキュベーターで72時間インキュベートした後、上清を取り出してLDHキット(東仁化学科技(上海)有限公司から購入され、カタログ番号はCK12である)によってLDHの放出を検出した。検出方法は説明書に従って行われた。Multiskan GOマイクロプレートリーダーによって490nMにおいて数値を読み取り、Graphpad prism 5によって分析してデータを処理した。細胞殺傷百分率(%)=100×(OD490被験サンプル−OD490対照ウェル)/(OD490細胞全分解−OD490対照ウェル)。実験結果は下記表に示す。
【0350】
上記結果から、本発明のAb10抗体細胞毒性複合体の特異的にhCLDN18.2+陽性細胞を標的とする細胞毒性が強く、EC50が1nM以下であったことが分かる。一方、非標的細胞(本実験に使用されたのはAb10抗体に結合しないhCLDN18.1+細胞である)に対する細胞傷害作用が弱かった(細胞毒性がなかった)。特に、ADC1は特異的細胞と非特異的細胞を標的とする毒性(EC50)の比率が156と高かった。この特異性域(安全域)は当該分子の非標的毒性が弱く、安全性が高いことを示す。
【0351】
実施例24:抗CLDN18.2抗体Ab10細胞毒性複合体の体内における薬効
実施例14と同じ方法におけるBALB/cヌードマウスにhCLND18.2+細胞を皮下移植した動物モデル及び試験方法を使用し、ADC1と例として、本発明の抗体Ab10抗体細胞毒性複合体の体内における薬効を評価した。 結果を表35に示した。
【0353】
表35の結果から、本発明の抗体毒素薬物複合体ADC1は、低濃度(2mg/kg)では、4回のみの投与であり、2週間(14日)で非常に優れた腫瘍抑制効果が見られ、抑制率が46%であり、対照群と有意差があった(P値<0.001)。
【0354】
実施例14と同じ方法において、その中の腫瘍細胞を、胃癌細胞系NUGC−4のhCLDN18.2過剰発現の細胞系をBALB/cヌードマウスに接種し、本発明のADC2の動物における薬効を評価した。具体的に、胃癌細胞系NUGC−4の細胞は中国科学院細胞生物学研究所から購入された。実施例1の方法によってhCDLN18.2過剰発現細胞系NUGC−4−802を構築した。NUGC−4−802を10%ウシ胎児血清(上海博昇生物科技有限公司、カタログ番号BS−0002−500)を含有するRPMI1640培地(上海源培生物科技股フン有限公司、カタログ番号:L210KJ)において培養し、5%CO
2を含有する37℃の細胞インキュベーターにおいて培養し続けた。NUGC−4−802細胞が対数期(コンフルエント80%〜90%)まで増殖した時点で、0.25%トリプシンで消化し、細胞を収集し、そして無血清RPMI1640培地で2回洗浄し、再懸濁させて計数し、細胞濃度が5×10
7細胞/mlになるように調整した。5×10
6個/100μlでBALB/c−ヌードマウスの右脇部の皮下に接種し、体積が約120〜150mm
3まで成長した腫瘍細胞を選んでランダムに6匹ずつ群分けした。
【0355】
無菌で被験サンプルADC2、Ab10をPBSで調製した。ブランク群はPBSである。投与量5mg/kgで、静脈注射した。2回/週で、2週連続で注射した。各注射サンプルの投与の当日を0日目とした。毎回の投与前に、体重、腫瘍体積を測定し、データを記録した。データの統計分析方法は前記実施例14と同様である。本実験の実際の投与周期は2週間であった。結果を表35bに示した。
【0357】
表35bの結果から、本発明の抗体毒素薬物複合体ADC2は、5mg/kgでは、4回のみの投与で、2週間(14日)でNUGC−4−802腫瘍モデルにおいて非常に優れた腫瘍抑制効果が見られ、抑制率が62%に達し、対照群PBSと有意差があった(P
値<0.05)。特に意外なことに、当該モデルにおいて、同濃度の抗体Ab10は腫瘍抑制効果が弱かった(わずか10%)。この意外な結果から、本発明の抗体毒素薬物複合体ADC2が単独の抗体よりも顕著に優れた腫瘍抑制効果を有することが分かる。
【0358】
実施例25 二重特異性抗体における抗原、抗体のクローニング、発現及び精製
本発明で使用されるヒトCLDN18.2の設計は上記実施例を参照する。PD−1、PD−L1細胞外領域−ヒトIgG1 Fc融合タンパク質、Hisタグタンパク質、モノクローナル抗体及び設計された異なる構造の二重特異性抗体などは、本発明によってクローニングされ、発現・精製して得られたか、北京ACROBiosystems社及び北京Sino biological社から購入された。
【0359】
抗原の配列はNCBIデータベースから検索して得られた。本発明で使用される抗体は、組み換え抗体、二重特異性抗体を含む。本発明で発見された抗ヒトCLDN18.2抗体の配列以外、他の配列はいずれも開示された文献から得られ、抗PD−1抗体Nivo、Pem、Ba08(配列は特許WO2016015685A1からのものである)、抗PD−L1抗体Atezo(アテゾリズマブ(Atezolizumab)/Tecentriq)、Avel(アベルマブ(Avelumab)/Bavencio)、Durv(デュルバルマブ(Durvalumab)/ imfinzi)、抗CD47抗体hu5F9、iMab、Blincyto、AMG420における抗CD3抗体の軽・重鎖可変領域の配列を含む。例えば、PD−1抗体Nivo(ニボルマブ(Nivolumab)/Opidivo)の配列は公開文献、例えばwww.drugbank.ca、又はWO2013019906からのものである。PD−1抗体Pem(ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)/Keytruda)の配列はwww.drugbank.caからのものである。PD−1抗体Ba08の配列は特許WO2016015685A1からのものである。Atezo配列、Avel配列、Durv配列(登録番号,DB11714)はいずれもwww.drugbank.caから直接調べて得られる。CD47抗体hu5F9の軽鎖の配列はUS9382320B2_42であり、重鎖の配列はUS9382320B2_37である。iMabの軽鎖はWO2018075857_4,1F8であり、重鎖はWO2018075857_3,1F8である。CD3抗体はblincytoの抗CD3抗体の軽鎖・重鎖可変領域からのものである。Blincytoの配列はwww.drugbank.caで開示された配列である。もう一つのCD3抗体の配列はAMG420における抗CD3抗体配列の軽・重鎖可変領域からのものである。AMG420の配列はWO2014140248_340からのものである。Tim3の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のアミノ酸配列はそれぞれCN201710348699.4における配列番号27及び配列番号36で示され、当該特許は既に公開され、LAG3の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のアミノ酸配列はそれぞれCN201810917684Xにおける配列番号33及び配列番号44で示される。TGFβ受容体II(TGFβRII)の配列はUniProtKB/Swiss−Prot: P37173.2の細胞外領域(本発明の配列表における配列番号1)からもので、IL10配列はNCBI番号NP_000563.1(本発明の配列表における配列番号2)からものである。CD47リガンドSIRPαの配列はNCBI番号NP_001035111.1からのものである。
【0360】
すべての抗原、抗体は、単独の抗体、二重特異性抗体、抗体−受容体(Trap)、抗体−サイトカインなどの遺伝子合成で得られる合成断片を含み、設計、クローニング・発現、精製がいずれも本発明によって完成された。具体的に、前記実施例3と同様である。
【0361】
Hisタグタンパク質の精製:細胞を高速遠心して不純物を除去した。ニッケルカラム(Ni smart beads 6FF、常州天地人和生物科技有限公司、Cat# SA036010)の平衡化:10 mMイミダゾール、0.5M NaClを含有する
PBSのpH7.4溶液でニッケルカラムを平衡化し、2〜5倍カラム体積で流した。サンプル上清にカラムを通させた。不純物タンパク質の溶離:10 mMイミダゾール、0.5M NaClを含有するPBSのpH7.4溶液でクロマトグラフィーカラムを洗い、非特異的に結合した不純物タンパク質を除去し、そして流出液を収集した。250mMイミダゾール、0.5M NaClを含有するPBS(pH7.4)で目的のタンパク質を溶離させた。緩衝液の置換:溶離させた目的のタンパク質に限外ろ過チューブを通させて12000gで10min遠心分離し(限外ろ過チューブMerck Millipore Cat#UFC500308)、さらに1mlのPBSを追加し、濃度を測定し、分注して保存して使用に備えた。TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3及びIL10はいずれもPeprotechから購入された。
【0362】
ヒト抗体の軽鎖定常領域の配列Lc(κ鎖)、Lc(λ鎖)は既存技術である。ヒト抗体の重鎖定常領域の配列hIgG4又はHc(hIgG4);hIgG1又はHc(hIgG1);hIgG1p又はHc(hIgG1p)、即ち、第356〜358位がEEMのhIgG1のもう一つの形態は、いずれも既存技術である。上記で示された配列以外、重鎖定常領域はhIgG2又はhIgG3でもよい。
【0364】
実施例26 T細胞(CD3)との抗体の結合実験(FACS)
フローサイトメトリー(FACS)によって本発明で設計されたCD3を標的とする二重特異性抗体のCD3結合活性を検出した。具体的に、健常者の末梢血単核球(PBMC)をDynabeads Human T−Activator CD3/CD28(Gibco,11131D)で3日活性化させた。活性化細胞をFACS緩衝液(PBS,0.5% FBS)で1回洗浄した(800g,遠心分離3分間)後、FACS緩衝液に再懸濁させ、細胞密度が4×10
6/mlであり、各サンプルに25μlずつで使用に備えた。被験サンプルをFACS緩衝液で勾配希釈し、最高濃度が250nMであり、5倍希釈で、8つの濃度であり、体積が25μlであった。希釈されたサンプル25μlを25μlの細胞懸濁液に入れ、軽く均一に混合した後、室温で20分間インキュベートした。染色体積5倍超のFACS緩衝液で細胞を洗浄した後、二次抗体(anti−hFc−
PE,Biolegend,409304)を入れ、室温で20分間染色した後、洗浄し、再懸濁させ、フローサイトメーター(Beckman,CytoFLEXフローサイトメーター)によって検出した。FlowJoソフトによって被験サンプルの平均蛍光信号MFIを分析した。MFI及び濃度で曲線を作成し、Graphpad Prism 5ソフトによってEC50を計算した。
【0365】
実施例27 活性化PBMC標的細胞殺傷実験
本発明のCD3を標的とする二重特異性抗体に対して、本実験でその機能を評価した。上記実施例1で構築されたhCLDN18.2+細胞を標的細胞とし、hCLDN18.1+細胞を陰性対照細胞とした(hCLDN18.1+細胞を構築する方法は実施例1と同様で、即ち、同じ構築手順であり、hCLDN18.2をhCLDN18.1プラスミドに取り替えた)。健常者の末梢血単核球(PBMC)をエフェクター細胞とした。具体的に、それぞれhCLDN18.2+細胞及びhCLDN18.1+細胞を収集し、1640完全培地(RPMI1640、10%FBS)において細胞密度が2×10
5/mlになるように調整し、100μl/ウェルで96ウェルプレートに入れて使用に備えた。1640完全培地においてPBMCを細胞密度が4×10
6/mlになるように調整し、50μl/ウェルでそれぞれhCLDN18.2+細胞又はhCLDN18.1+細胞に入れた。1640完全培地で勾配希釈された被験サンプルを調製し、濃度が4、0.4、0.04、0.004μg/mlであり、50μl/ウェルで細胞に入れ、その最終濃度が1、0.1、0.01、0.001μg/mlであった。重複ウェルは3つである。37℃、5% CO
2インキュベーターで48時間インキュベートした後、上清をLDHキット(上海同仁生物科技有限公司、カタログ番号:CK12)によってLDHの放出を検出し、標的細胞の殺傷を反映させた。操作方法は説明書に準じ、Multiskan GOマイクロプレートリーダーによって490nMにおいて数値を読み取り、Graphpad prism 5によって分析してデータを処理した。
【0366】
細胞殺傷百分率(%)=100×(OD
490ある薬物濃度−OD
490対照ウェル)/(OD
490細胞全分解−OD
490対照ウェル)
実施例28 本発明の二重特異性抗体の安定性の評価
本発明で設計された二重特異性抗体は、いずれもプロテインA重力カラムによって精製された。サンプルを精製してpH 7.4のPBS緩衝液に置換し、1mg/mlであった。異なる条件において保存したが、−80℃で60日以上、4℃で14又は30日、37℃で7日、37℃で14日などを含む。異なる条件において保存されたサンプルは、電気泳動(PAGE)によってサンプルの分解程度を評価した。結合活性を検出することによって異なる保存条件がサンプルの活性に影響があるかどうか評価した。同じ検出条件において、検出された活性値(EC
50)及び−80℃で保存されたサンプルで検出された活性値を比較し、比の変化が2倍の範囲を超えると、保存条件がサンプルの安定性/活性に影響があったと考えられる。
【0367】
実施例29 CLDN18.2及びPD−1の2つの標的に対する二重特異性抗体の設計及び活性評価
本発明では、CLDN18.2及びPD−1の2つの標的に対して異なる配列構造の二重特異性抗体を設計したが、下記表に示す。
【0369】
本発明の実施例25の方法によってそれぞれ上記二重特異性抗体をクローニング・発現し、精製し、前記実施例の方法によってそれぞれこれらの設計された二重特異性分子とヒトCLDN18.2及びPD−1との結合活性を検出したが、結果を下記表に示した。
【0371】
比の値が大きいほど、設計された二重特異性抗体の単一標的に対する結合力が低下されることが示され、例えば、比の値が2の場合、設計された二重特異性抗体の標的に対する結合活性が相応するモノクローナル抗体と比べて1倍低下したことが示された。比の値が2以内の場合、結合活性が影響されていないことが示され、比の値が2〜5の間の場合、結合活性がやや影響されたことが示され、この時はもう一つの標的の比が考慮され、もう一つの標的の比の値が例えば1以内の場合、当該二重特異性抗体はまだある程度の利用価値がある。
【0372】
上記結果はそれぞれLB302、LB301、LB308及びLB309のヒトCLDN18.2の結合活性の検出結果(
図7A〜7D、a)、ヒトPD−1の結合活性の検出結果(
図7A〜7D、b)及び二重特異性抗体の構造概略図(
図7A〜7D、c)を示す。LB302(Ab10 scFvがNivoVH HcのN末端に位置する)、LB301(Ab10 scFvがPemVH HcのN末端に位置する)、LB307(Ab10 scFvがBa08VH HcのN末端に位置する)は、PD−1の結合活性に対する影響がそれぞれ0.68、2.1、1.5倍の変化であり、CLDN18.2の結合活性に対する影響がそれぞれ1.18、3.2、6.1であった。LB302はヒトCLDN18.2及びPD−1との結合活性を維持したが、LB307はヒトCLDN18.2の結合活性に対する影響が最も大きく、5.1倍低下した(6.1−1=5.1)。つまり、同じ類似するIgG構造の二重特異性設計分子のうち、LB302、LB301、LB307は同時に抗PD−1であるが、PD−1抗体Nivo、Pem、Ba08の配列が異なるため、その抗CLDN18.2の効果も異なる。意外に、本発明の抗体Ab10のscFv及びニボルマブ(Nivolumab、Nivo)で設計された二重特異性抗体LB302は2つの標的のCLDN18.2及びPD−1に対する結合活性に影響がなかったことが見出された。
【0373】
これらのデータから、本発明の抗CLDN18.2抗体の配列及び異なるPD−1抗体の配列で設計された配列特異的で構造がIgGと類似する二重特異性抗体(
Sequence−based IgG like bispecific anti
body、本発明ではSBodyと略される)は、活性が配列及びscFvが存在する位置に関連する。SBodyは配列の組み合わせ、scFvが存在する位置によって予想外の2つの標的に対する活性が生じる。
【0374】
例えば、LB309(Ab10 scFvがNivoVH−HcのC末端に位置する)、LB308(Ab10 scFvがPemVH−HcのC末端に位置する)、LB310(Ab10 scFvがBa08VH−HcのC末端に位置する)は、PD−1の結合活性に対する影響がそれぞれ1.33、0.93、0.56倍の変化で、CLDN18.2の結合活性に対する影響がそれぞれ4.2、6.5、7.3倍であった。つまり、同じ設計形態では、3つのPD−1抗体の配列が異なる二重特異性抗体分子は、PD−1との結合活性にとほんど影響がない。しかし、CLDN18.2との結合活性に影響が大きく、Ab10 scFvがNivoVH−HcのC末端に位置する設計(LB309)では、活性がより良い。
【0375】
LB302/LB301/LB307及びLB309/LB308/LB310の活性のデータを比較したところ、同じ配列では、scFvがHcのN末端に位置するほうがC末端よりも活性に対する影響が小さく、本発明のCLDN18.2抗体の配列及びPD−1抗体の配列の二重特異性抗体の設計には、scFvがHcのN末端に位置するのがより最適化の二重特異性抗体の設計である。
【0376】
LB301及びLB156を比較したところ、本発明で設計された二重特異性抗体は、scFvが異なるが、位置が同様で(いずれも重鎖のN末端)あり、scFvがPD−1に対するもので、PD−1に対するその(LB156)結合活性が低下されなかった(活性変化が0.34倍で、即ち、活性が増強された)が、CLDN18.2に対する活性変化が4.8倍で、即ち、3.8倍低下したことが見出された。N末端のscFvがCLDN18.2に対するものである場合、PD−1に対するその(LB301)結合変化が3.2倍で、即ち、2.2倍低下したが、CLDN18.2に対する結合活性変化が2.1倍で、即ち、1.1倍低下したことが見出された。このような構造は活性に対する影響がLB156と大いに異なる。
【0377】
LB302及びLB309を比較したところ、同じ標的のscFvでは、例えば、いずれもCLDN18.2に対するscFvであり、その位置が異なる場合も、活性に対する影響が意外と大いに異なることが見出された。PD−1に対するLB302の結合活性変化が0.68倍で(1に近く、即ち、影響がない)、CLDN18.2に対する結合活性変化が1.18倍であった(影響がない)。PD−1に対するLB309の結合活性変化が4.2倍で、即ち、活性が3.2倍低下したが、CLDN18.2に対する結合活性にほとんど影響がなかった(活性変化1.33倍)。つまり、scFvが重鎖N末端に位置するほうがC末端よりも優れている。
【0378】
LB312及びLB313を比較したところ、同じ標的に対するscFvでは、例えば、いずれもAb10 scFv及びPD−1抗体(Pem)で設計された二重特異性抗体で、Ab10 scFvがいずれもPD−1抗体の軽鎖に連結しているが、位置が異なる場合、活性に対する影響が意外と大いに異なることが見出された。LB312のAb10
scFvはPem LcのN末端に、LB313のAb10 scFvはPem LcのC末端に位置する。LB313はCLDN18.2との結合活が10倍以上低下し、LB312は1.6倍低下した。両者はPD−1結合活性に対する影響が近い。つまり、Ab10 scFvが軽鎖N末端に位置するほうがC末端よりも良い。
【0379】
PD−1抗体の重鎖C末端に1コピーのAb10 scFvが付加された場合(LB314)、意外に、これによってCLDN18.2との結合活性を向上させることができず(LB302と比較する)、しかもPD−1の結合活性を低下させ、変化倍数が5.2倍であったことが見出された。つまり、Nivoの重鎖C末端に1コピーのAb10 scFvが付加された場合、2つの標的のいずれにも結合活性を低下させるか阻害する作用が
ある。
【0380】
また、より正確に本発明の二重特異性抗体の結合力を評価するために、BiacoreでPD−1に対するLB302、LB301の親和性を検出した。具体的に、Biacore T200,GE Healthcare装置によってLB302対Nivo(L101)、LB301対Pem(L105)のヒトPD−1−his(本発明の実施例1の方法によって発現された)との親和性を測定した。pH 7.4の稼働緩衝液HBS−EP+(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.05%のP20)で、まず、プロテインA(Thermo Pierce、Cat# 21181)をバイオセンサーチップCM5(Cat. # BR−1005 −30,GE)にカップリングし、チップを新しく調製された50mM NHS(N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−hydroxysuccinimide)及び200mM EDC塩酸塩(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1−ethyl−3−(3−dimethylamino propyl)carbodiimide
hydrochloride)で活性化させた後、pH4.0の10 mM NaACで調製された10μg/mlのプロテインAを注いだ。稼働緩衝液で濃度が1μg/mlになるように被験サンプルを希釈し、捕獲信号が50RU程度であり、抗原PD−1−hisの濃度勾配は100 nMから、3倍希釈であり、流速が30μl/分で、結合時間が180秒で、溶離時間が300秒であった。実験後、10mM グリシン塩酸(Glycine−HCl)、pH 1.5、30 μl/minでチップを30s洗浄した。実施データをBiacore T200 evaluation version 3.0
(GE)ソフトによって1:1 Langmuirモデルでフィッティングし、親和性の数値KDを得た。結果:LB302,10.4 nM vs L101,8.6 nM;LB301,6.5 nM vs L105,4.4 nM。当該Biacoreによる親和性(KD)は前記ELISAの結果と一致し、即ち、本発明のSBody分子LB302、LB301は相応する抗体に近いPD−1との結合活性を維持している。
【0381】
Ab6配列設計に基づいたLB3022、LB3012は活性(上記表を参照する)がLB302、LB301に近かった。
これらのデータから、本発明の抗体Ab10、Ab6などの設計に基づいた構造がIgGに類似する二重特異性抗体(抗CLDN18.2及びヒトPD−1)SBodyは配列依存性及び配列位置依存性のものであることが分かる。例えば、Ab10配列に基づいて特定的に設計された二重特異性抗体は予想外の効果、即ち、好適な設計が得られ、例えばLB302には2つの標的の結合活性が好適に残っている。
【0382】
前記実施例の方法によって、本発明で設計された好適な分子のアポトーシス誘導活性(%)を評価することによって抗CLDN18.2機能活性を比較した。アポトーシス活性はAb10抗体を同じ条件、同等の濃度(本実験では150nMとした)において対照とした。PD−1抗原とリガンドPD−L1の結合を阻害する活性(IC50)を検出することによって、抗PD−1の機能活性を評価したが、結果を下記表に示した。
【0384】
上記結果から、LB302、LB308、LB310はいずれも抗PD−1抗体の機能活性が残って低下せず、逆に増強したものもあった(LB310)。活性の増強は配列設計関連による相乗効果を反映する可能性がある。
【0385】
抗CLDN18.2の機能活性のデータから、Ab10 scFvが重鎖N末端にあるもの(LB302、LB301、LB307)は抗CLDN18.2細胞活性に増強/相乗(Ab10抗体と比べ)効果があり、且つ異なるPD−1抗体(Pem、Nivo、Ba08)のいずれもそうであったことが分かる。一方、Ab10 scFvが重鎖C末端(LB309、LB308、LB310)に抗CLDN18.2細胞活性を維持した。これらのデータから、本発明のAb10抗体に基づいて設計された二重特異性抗体(SBody)は設計によって、予想外の活性効果が生じることが分かる。
【0386】
安定性の評価(方法は前記実施例を参照する)から、二重特異性抗体(SBody)LB302、LB309、LB156、LB301、LB308、LB307、LB310、LB312、LB313、LB314、LB3022、LB3012は、37℃で14日で保存した後、いずれも異なる程度の分解が生じ、PD−1及びCLDN18.2に対する結合活性がある程度低下され、部分的に10倍以上低下したことが分かる。−80℃で60日、4℃で14日保存した場合、活性が変化せず、これらの二重特異性分子は−80℃、4℃で安定して保存できることが示された。
【0388】
上記結果から、本発明で設計された二重特異性抗体は、同じAb10抗体scFv配列でPD−1抗体の位置異なるもの(LB302 vs LB309、LB301 vs LB308、LB307 vs LB310)、同じAb10配列scFv配列の位置で異なるPD−1抗体のもの(LB302 vs LB301 vs LB307、LB309 vs LB308 vs LB310)、同じAb10及びPD−1抗体scFv又はAb10 scFv配列及びPD−1抗体のもの(LB156 vs LB301)で、意外に、異なる設計、発現量が配列に関連し、大いに異なることが見出された。収量が最も高いLB309が収量が最も低いLB156よりも67倍高かった(28.7/0.42)。同じAb10 scFvが同じPD−1抗体(Pem)の軽鎖のN末端にあるもの(LB312)とC末端にあるもの(LB313)でも発現量が異なる。1コピーのAb10 scFvが付加されたもの(LB314)は、発現量が単コピーのAb10 scFvのもの(LB302)よりも12倍低下した(2.57/0.2=12.9)。これらのデータから、本発明の抗CLDN18.2抗体に基づいて設計された二重特異性抗体(SBody)は発現量が配列特異的なものであることが分かる。Ab10抗体の二重特異性抗体の設計における配列の位置、構造などはいずれも発現量に関連する。
【0389】
LB302の軽鎖の配列:配列番号53;重鎖を含む配列:配列番号54。
実施例30 CLDN18.2及びPD−L1の2つの標的に対する二重特異性抗体の設計及び活性評価
本発明では、CLDN18.2及びPD−L1の2つの標的に対して異なる配列構造の
二重特異性抗体を設計し、下記表に示した。
【0391】
本発明の実施例25の方法によってそれぞれ上記二重特異性抗体をクローニング・発現し、精製し、前記実施例の方法によってそれぞれこれらの二重特異性分子とヒトCLDN18.2及びPD−L1との結合活性を検出したが、結果を下記表に示す。
【0393】
LB157とLB305を比較したところ、本発明の抗体Ab10及びPD−L1抗体Atezoで構造がIgGに類似する二重特異性抗体を設計すると、意外に、重鎖のN末端はAb10 scFvでもAtezo scFvでも、CLDN18.2及びPD−L1に対する得られた二重特異性抗体の結合活性に影響がなかったことが見出された。また、安定性実験の結果から、LB157及びLB305は37℃で14日保存しても、活性に変化がなく、そして電気泳動(PAGE)分析では、抗体に顕著な分解が見られなかったことが示された。本発明の抗体Ab10とAtezo配列の組み合わせで設計された構造がIgGに類似する二重特異性抗体は、2つの標的に対する結合活性が残り、通常の抗体精製方法によりプロテインAを精製して得られ、プロセスが簡単で、且つ安定性が良いことが示された。
【0394】
LB311のデータから、Ab10 scFvがPD−L1抗体Atezoの重鎖C末端に連結して得られたSBodyは、hCLDN18.2及びPD−L1に対する結合活性に影響がなかったことが分かる。
【0395】
LB316、LB317のデータから、Ab10 scFv及びPD−L1抗体Avelで設計されたSBodyにおいて、Ab10 scFvがAvel重鎖のN末端にある時の効果がより良かったが、Ab10 scFvがAtezo重鎖の両末端にある時の効果がいずれも良かったことが分かる。
【0396】
LB319、LB320のデータから、Ab10 scFv及びPD−L1抗体Durvで設計されたSBodyにおいて、Ab10 scFvがDurv重鎖のN末端にある時、CLDN18.2及びPD−L1に対する結合活性のいずれにも影響がなかったことが分かる。Ab10 scFvがDurv重鎖のC末端にある時、CLDN18.2の結合活性にやや影響があり、PD−L1の結合活性に影響がなかった。
【0397】
これらのデータから、3つのPD−L1抗体及びAb10 scFvで設計されたSBodyにおいて、2つの標的に対する結合活性は配列の間に差異が存在する。即ち、SBodyの活性は配列依存性である。Ab10 scFv及びAtezoで設計されたSBodyは、意外に、パフォーマンスが最も良かった。
【0398】
また、より正確に本発明の二重特異性抗体の結合力を評価するために、BiacoreでPD−L1に対するLB157、LB305 vs LB185(Atezo)の親和性を検出した。Biacore方法は前記LB302に記載の方法と同様である。PD−1−hisの代わりに、PD−L1−his(Sino biologicalから購入され、Cat #: 10084−H08Hである)を使用した。得られた親和性(KD)の結果:LB157は5.22nMであり、LB305は3.08 nMであり、LB185は1.97 nMであった。当該結果から、本発明の抗CLDN18.2及びPD−L1(atezo)で設計されたSBodyでは、Ab10 scFvはatezo結合活性にほとんど影響がなかった(LB305 vs LB185)が、atezo scFvがAb10の重鎖N末端にある場合、PD−L1に対する結合力が少々低下した(LB157 vs LB185)ことが示された。これは上記ELISA検出の結果と基本的に一致し、即ち、本発明で最適化して設計されたSBodyのLB157、LB305は2つの標的に対する結合活性が残っている。
【0399】
また、Ab6配列に基づいて設計されたLB1572、LB3052は、CLDN18.2及びPD−L1に対する活性にほとんど影響がなかった。
上記二重特異性抗体に対する機能的評価は、CLDN18.2に対するCDC細胞活性、PD−1/PD−L1結合を遮断する活性を含むが、その結果は下記表を参照する。
【0401】
C57BL/6 cnc系マウス(浙江VITAL RIVER実験動物技術有限公司から購入され、生産許可証番号:SCXK(浙)2018−0001である)で動物薬効モデルを構築し、本発明の二重特異性抗体LB157、LB305に対して体内薬効の評価を行った。
【0402】
MC38細胞(中国科学院細胞生物学研究所から購入された)で本実験に必要な安定的な発現細胞系MC38−804(構築方法は前記実施例1と同様であり、MC38の代わりにCHO−K1を使用した)を構築した。MC38−804を10%ウシ胎児血清(上海博昇生物科技有限公司、カタログ番号BS−0002−500)、1%Hepes(サーモフィッシャーサイエンティフィック(中国)有限公司、カタログ番号:15630080)を含有するDMEM/高糖培地(上海源培生物科技股フン有限公司、カタログ番号:L110KJ)で培養し、5%CO
2を含有する37℃の細胞インキュベーターにおいて培養し続けた。6週齢のC57BL/6 cnc雌マウスを5匹/籠でSPF級環境において飼育し、温度20〜25℃、湿度40%〜60%で、自由に摂取、飲水をさせ、定期的に敷材を交換した。
【0403】
MC38−804細胞が対数期(コンフルエント80%〜90%)まで増殖した時点で、0.25%トリプシンで消化し、細胞を収集し、そして無血清のDMEM/高糖培地で細胞を2回洗浄し、最後に無血清のDMEM/高糖培地で再懸濁させ、細胞を計数し、マトリゲル(ベクトン・ディッキンソン医療機器上海有限公司から購入され、カタログ番号:354234である)で1:1の比率で細胞濃度が1×10
7細胞/mlになるように調整し、接種に使用した。MC38−804細胞懸濁液(1×10
6個)100μlをマウスの右脇部の皮下に接種し、体積が約120〜150mm
3まで成長した腫瘍細胞を選んでランダムに6匹ずつ群分けした。
【0404】
無菌で被験サンプル及び陽性対照をPBSで調製した。ブランク群はPBSである。PD−L1抗体LB185+Ab10は併用対照群である。LB157、LB305はそれぞれ二重特異性抗体薬物の被験群である。投与形態は腹腔内注射であり、LB185+Ab10併用対照群では、マウスの投与量は抗体ごとに20μgずつ、200μl/匹であった。LB157マウスの投与量は26μg/200μl/匹であり、LB305マウスの投与量は26μg/200μl/匹であった(併用群のLB185、Ab10と等モル量である)。各群では、投与頻度は2回/週で、1.5週連続であった。
【0405】
各注射サンプルの投与の当日を0日目とした。毎回の投与前に、体重、腫瘍体積を測定し、データを記録した。本実験の実際の投与周期は1.5週間であり、測定周期は21日であった。
【0406】
腫瘍の大きさの計算式:腫瘍体積TV(mm
3)=0.5×(腫瘍長径×腫瘍短径
2);腫瘍相対体積(RTV)=T/T0又はC/C0である。相対腫瘍増殖率(T/C%)=100%×(T−T0)/(C−C0);腫瘍抑制率(TGI)=(1−T/C)×100%;ここで、T0、Tはそれぞれサンプル群の実験開始時及び実験終了時の腫瘍体積であり、C0、Cはそれぞれ対照群の実験開始時及び実験終了時の腫瘍体積である。
【0409】
上記結果から、本発明のCLDN18.2及びPD−L1に対する二重特異性抗体LB157は、薬効が同モル量の2つのモノクローナル抗体の併用によるものと同様であり、21日目の腫瘍抑制率がそれぞれ54%と52%であったことが分かる。非常に意外なことに、LB305の腫瘍抑制率は21日目で80%に達し、モノクローナル抗体の併用による腫瘍抑制率52%よりも顕著に優れた。
【0410】
LB305の軽鎖の配列:配列番号55;重鎖を含む配列:配列番号56。
実施例31 CLDN18.2及びCD47の2つの標的に対する二重特異性抗体の設計及び活性評価
本発明では、CLDN18.2及びCD47の2つの標的に対して異なる配列構造の二重特異性抗体を設計し、下記表に示した。
【0412】
本発明の実施例25の方法によってそれぞれ上記二重特異性抗体をクローニング・発現し、精製し、前記実施例の方法によってそれぞれこれらの二重特異性分子とヒトCLDN18.2及びCD47との結合活性を検出したが、結果を下記表に示した。
【0414】
上記結果(LB158及びLB304)から、本発明の抗体Ab10及びCD47抗体Hu5F9で構造がIgGに類似する形態に設計され、設計された二重特異性抗体のAb10 scFvがN末端にある時(LB304)、Ab10の結合活性に影響が大きく、EC50が7.5倍低下した(8.5−1=7.5、上記表を参照する)ことが分かる。同じ配列の組み合わせで、異なる位置の場合、例えばHu5F9 scFvが前記二重特異性抗体のN末端にある時(LB158)、CLDN18.2及びCD47に対する結合活性に影響が小さく、EC50が1倍程度低下した(上記表を参照する)。
【0415】
LB158の機能活性の検出結果から、CD47とリガンドSIRPαを阻害する活性IC50が1.13nMであり、CD47モノクローナル抗体Hu5F9 LB157のIC50が2.37 nMで1.1倍増強し、即ち、機能活性が低下されなかったことが分かる。CLDN18.2機能活性を腫瘍細胞のアポトーシスの誘導で評価したところ、LB158の腫瘍細胞のアポトーシスの誘導は11%であり、同じ条件、同じ濃度のAb10は腫瘍細胞のアポトーシスの誘導は10.3%であった。即ち、LB158は抗CLDN18.2の機能活性が低下しなかった。
【0416】
安定性の検出結果から、LB158は−80℃で60日、4℃で14日、37℃で7日、14日保存し、電気泳動(PAGE)分析では分解が見られなかったことが分かる。活性の検出結果から、CLDN18.2に対するこの4つのサンプルの結合活性がそれぞれ0.68nM、0.98nM、0.67nM、0.73nMであったことが分かる。CD47に対する結合活性がそれぞれ0.08nM、0.12nM、0.16nM、0.10nMであったことが分かる。LB158は、これらの保存条件において、分子が安定して
おり(電気泳動の結果)、そして活性も安定していることが示された。
【0417】
LB321の結果から、本発明の抗CLDN18.2抗体及びもう一つのCD47抗体(iMab)で設計された二重特異性抗体(iMab scFvがAb10の重鎖N末端にある)は、抗CLDN18.2の結合活性が維持されながら、CD47の結合活性が1.5倍増加した(EC
50が0.484nM vs 1.38nMである)ことが分かる。機能活性の検出結果から、LB321はCD47とリガンドSIRPαを阻害する活性IC50及びLS956(iMab)が1.64倍変化したことが分かる。LB321は抗CD47抗体の機能活性に影響がなかったことが示された。
【0418】
安定性の検出結果から、LB321は、−80℃で60日、4℃で14日で保存した場合、CLDN18.2、CD47との結合活性がいずれも変化せず、37℃で14日保存した場合、CLDN18.2との結合活性EC50が0.99nMから10.1nMに変わり、活性が10倍近く低下され、CD47との結合活性が0.77nMから12.3nMに変わり、活性が15倍低下したことが分かる。LB321は4℃又は4℃以下で保存しても安定していることが示された。同時に、同様に設計されたSBodyは、CD47抗体配列の違いにより、例えば安定性の方面では、LB158は安定性がLB321よりも良いことが示された。
【0419】
本発明で設計された二重特異性抗体の発現量を比較した結果は下記表に示された。
【0421】
上記結果から、本発明で設計された二重特異性抗体は、同じ配列で、位置が異なる場合(LB158 vs LB304)、同じ条件において発現量が大いに異なることが分かる。LB158はLB304よりも収量が1倍以上高かった。LB158 vs LB321で、異なる配列(同一の標的に対するもの)が同じ手段でAb10と設計された二重特異性抗体も、同じ条件において発現量が大いに異なる(37.9 vs 13.6)ことが示された。
【0422】
これらの結果から、本発明の抗体Ab10及びCD47抗体で最適化設計(配列の構成やscFv位置など)で得られた最適化二重特異性分子は2つの標的に対する結合活性を維持しながら、安定性が良いことが示された。構造がIgGに類似し、通常のIgGと同じプロセスで精製することができ、後続の開発がより簡単で、実施しやすくなる。
【0423】
実施例32 CLDN18.2及びCD3の2つの標的に対する二重特異性抗体の設計及び活性評価
本発明では、CLDN18.2及びCD3の2つの標的に対して異なる配列構造の二重特異性抗体を設計し、下記表に示した。
【0425】
本発明の実施例25の方法によってそれぞれ上記二重特異性抗体をクローニング・発現し、精製し、前記実施例の方法によって、それぞれこれらの二重特異性分子のヒトCLDN18.2+細胞との結合(ELISA)及びCD3(T細胞)とのFACSによる結合活性を検出したが、結果を下記表に示した。
【0427】
上記結果(LB155,LB195;LB194,LB193)から、本発明の抗体A
b10及びCD3抗体で設計された構造がIgGに類似する二重特異性抗体は、CD3 scFv(Blincyto又はAMG420由来のもの)がN末端にあることはAb10及びCLDN18.2に対する結合活性のいずれにも大きい影響があり、中でも、AMG420 scFv及びAb10で設計された二重特異性抗体LB194は、CLDN18.2に対する影響が最も大きく、EC50が6.2倍低下した(7.2−1=6.2)ことが分かる。LB195対LB155、LB194対LB195の結果から、CD3抗体及び本発明のAb10で設計された二重特異性抗体では、CD3 scFvがN末端にある場合、VH−リンカー−VLはVL−リンカー−VHよりも2つの標的の結合活性がより良く残っていることが示された。
【0428】
また、LB155、LB195、LB194、LB193及びLB303を比較した結果から、Ab10 scFv及びCD3抗体で設計された構造がIgGに類似する二重特異性抗体は、CD3 scFv及びAb10抗体から構成された二重特異性抗体よりも二重特異性抗体の結合活性がより良く残っていることが示された。
【0429】
LB196の結果から、CD3 scFvがC末端にある場合、CD3の結合活性に影響がなく、活性変化倍数が0.77であった(1未満)が、CLDN18.2の結合活性に対する影響が大きかったことが示された。同じ条件において、CLDN18.2に対するLB196の結合活性がAb10のCLDN18.2との結合活性よりも2.5倍低下した(3.5−1=2.5)。同様にCD3 scFv及びAb10抗体で設計された二重特異性抗体でも、CD3 scFvがN末端にある場合、2つの標的の結合活性がより良く残っていることが示された。
【0430】
Ab6及びCD3抗体に基づいて設計された二重特異性抗体において、好適な分子LB1952は基本的にCLDN18.2及びCD3との結合活性が残っていた。
機能活性の分析から、LB195、LB193はCDCを活性化させる活性(前記実施例の方法によって抗CLDN18.2機能を評価した)が、Ab10活性(EC
50)に対して変化倍数がそれぞれ1.7、2.2倍であったことが分かる。これらの変化倍数が実験誤差範囲内にあると、LB195、LB193はCLDN18.2に対する機能活性が残っていることが示される。PBMCを活性化させて標的細胞を殺傷する活性(方法は前記実施例を参照する)の検出では、LB195、LB193の活性が相当し、標的細胞に対する特異的殺傷作用に投与量と効果の関係が示され、0.1μg/mlの濃度において30%〜40%の標的細胞が分解したことが見出された。
【0431】
安定性分析の結果から、LB195及びLB193は−80℃で60日、4℃で14日、37℃で7日、37℃で14日保存するなどの条件において、37℃で14天のみは、電気泳動(PAGE)ですこし分解が見られ、ほかはいずれも安定して分解がみられず、且つ活性がいずれも顕著な変化がなかったことが分かる。
【0432】
これらから、抗CD3 scFv及びAb10に基づいて二重特異的に設計された好適な分子LB195、LB193は2つの標的に対する結合活性及び機能活性が残っていることが示された。通常のIgG精製方法によって得られ、且つ安定して保存することができる。
【0434】
上記結果から、本発明のAb10及びCD3抗体に基づいて設計された二重特異性抗体の発現量が最も良かったのはLB196であることが分かる。
代表的な配列LB193の軽鎖配列:配列番号38、それはAb10軽鎖であり、実施例6を参照する;重鎖を含む配列:配列番号4。
【0435】
実施例33 CLDN18.2及びTGFβの2つの標的に対する二重特異性抗体の設計及び活性評価
本発明では、CLDN18.2及びTGFβの2つの標的に対して異なる配列の構造がIgGに類似する二重特異性抗体を設計したが、具体的に、本発明の抗体Ab10、Ab6の軽鎖、重鎖のN又はC末端、好ましくは重鎖のC末端にTGFβ受体IIが融合され、得られた分子(TRAP)はCLDN18.2に結合しながら、TGFβ1、2、3に結合することができ、設計は下記表に示した。
【0437】
本発明の実施例25の方法によって、それぞれ上記二重特異性抗体をクローニング・発現し、精製し、前記実施例の方法によって、それぞれこれらの二重特異性分子のヒトCLDN18.2及びTGFβとの結合活性を検出したが、結果を下記表に示した。
【0439】
上記LB401の結合活性の結果から、本発明の抗体Ab10は重鎖のC末端にTGFβRIIが結合しており、ヒトCLDN18.2に対する結合活性が残りながら、TGFβIに対する結合活性、ならびにTGFβII及びTGFβIIIに対する高度の選択性が残っていることが分かる。また、TGFβに対するLB401とLB824の結合活性を比較したところ、TGFβ1、2、3に対する本発明の抗体Ab10にTGFβRIIが融合して得られたLB401の結合活性は、PD−L1抗体にTGFβRIIが融合したTrap(LB824)の結合特性(Profile)と一致していることが見出された。
【0440】
Ab10の代わりにAb6で得られたLB4012は、同様に2つの標的に対する結合活性が残っている。
安定性分析の結果から、LB401は−80℃で60日、4℃で30日、37℃で7日、37℃で14日保存するなどの条件において安定で、電気泳動(PAGE)分析では、37℃で14日保存すると、分解が見られ、TGFβI、II、IIIの結合活性が低下し、CLDN18.2の結合活性に影響がなかったことが分かり、
図8を参照する。そのため、LB401は−80℃又は4℃で安定して保存することができる。
【0441】
また、LB401及びLB824に対して平行に血清安定性の評価を行った。具体的に、C57BL/6マウス(6週齢、雌、上海SIPPR−BK実験動物有限公司から購入された。)から血液を取り、12000 rpmで10分間遠心分離し、血清を取って使用に備えた。3μlのサンプル(1μg/μl, pH7.4 PBS)を取って上記血清27μlで希釈し、最終濃度が0.1μg/mlであった。それぞれ37℃で0h、24h及び72h処理した後、そのヒトCLDN18.2+細胞及びTGFβIとの結合活
性を検出した。結果は以下の通りであった。
【0443】
上記結果から、LB401を血清で24時間インキュベートしても、CLDN18.2及びTGFβIに対する結合活性にいずれも影響がなかったことが分かる。72時間では、CLDN18.2に対する結合活性が2倍以上低下し(0.424 vs 0.11)、TGFβIに対する結合活性も低下し、これは現在の臨床試験の同種類の分子LB824の安定性に類似する。
【0444】
前記実施例30と同じ動物モデル(MC38−804)及び方法によって、本発明のCLDN18.2及びTGFβに対して設計された二重特異性抗体(TRAP)に対して体内薬効の評価を行った。無菌で被験サンプル及び陽性対照をPBSで調製した。ブランク群はPBSであった。Ab10は単独投与対照群であり、LB824は二重特異性抗体薬物対照群である。LB401は本発明の好適な二重特異性抗体薬物の被験群である。投与形態は腹腔内注射であり、Ab10の投与量が120μg/200μl/匹であり、LB824、LB401の投与量は160μg/200μl/匹であった。各群では、投与頻度は2回/週であり、3週連続であった。結果を下記表に示した。
【0446】
上記結果から、この動物モデルにおいて、Ab10単独では、薬効が弱く、24日目にわずか12%の腫瘍抑制率が示されたことが分かる。PD−L1及びTGFβに対する分子LB824(薬効モデルの対照分子として)は、24日目に56%の腫瘍抑制率が示された。非常に意外なことに、本発明で設計されたCLDN18.2及びTGFβに対する二重特異性抗体(TRAP)LB401はAb10と同じモル量で、24日目の腫瘍抑制率が61%に達し、LB824(56%)よりも良く、単独Ab10(12%)よりも顕著に優れた。
【0447】
上記結果から、本発明の抗CLDN18.2抗体及びTGFβRIIで最適化して設計された二重特異性分子は、2つの標的に対する優れた活性が残り、動物における薬効が顕著で、しかも分子が安定で、精製プロセス(プロテインA結合)が簡単で実行しやすいことが分かる。
【0448】
LB401の軽鎖配列(配列番号38)は、Ab10軽鎖であり、実施例6を参照する。
LB401の重鎖を含む配列(配列番号57):
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSNYLIEWVKQAPGQGLEWIGLINPGSGGTNYNEKFKGKATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARVYYGNSFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGAGGGGSGGGGSGGGGSGIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAAS
PKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPD
実施例34 CLDN18.2及びIL10の2つの標的に対する二重特異性抗体の設計及び活性評価
本発明では、CLDN18.2及びIL10の2つの標的に対してAb10抗体及びサイトカインの融合分子が設計された。具体的に、本発明の抗体Ab10、Ab6の軽鎖、重鎖のN及び/又はC末端、好ましくは重鎖のC末端和N末端にIL10分子が融合され、設計は下記表に示した。
【0450】
本発明の実施例25の方法によって、それぞれ上記二重特異性抗体をクローニング・発現し、精製し、前記実施例の方法によってそれぞれこれらの二重特異性分子のヒトCLDN18.2及びIL10との結合活性を検出したが、結果を下記表に示した。
【0452】
上記結合活性の結果から、本発明の抗体Ab10及びサイトカインIL10で設計された二重特異性分子LB432及びLB433、LB4332は、CLDN18.2との結合活性がAb10、Ab6と同様であった(活性変化が2倍程度であった)ことが分かる。IL10との結合活性は抗原被覆ELISA及びサンドイッチ方ELISAによって評価した。具体的に、抗原被覆ELISAの検出方法は前記実施例3を参照する。その結果、LB432、LB433及びLB4332のEC
50はそれぞれ0.34、0.14及び0.2nMであった。活性の差は2倍程度で、実験誤差範囲に近かった。
【0453】
同じ条件において、ELISAによって検出されたIL10(Peprotech,Cat#:200−10)の結合活性EC50は4.53nMであった。つまり、本発明の二重特異性分子LB432、LB433及びLB4332は、IL10結合活性が組み換えIL10結合活性よりも強かった。
【0454】
サンドイッチ法ELISA方法:実施例2で構築されたヒトCLDN18.2+を、10×10
4/ウェルで96ウェルプレート(Corning,Cat#CLS3599−100EA)に敷き、37℃のインキュベーターで一晩インキュベートした後、上清を除去し、免疫染色固定液(上海碧雲天生物技術有限公司Cat # P0098)を使用して100μl/ウェルで室温で半時間固定させた。PBSで一回洗浄した後、230μl
の5%牛乳で37℃で2時間ブロッキングし、PBSTで3回洗浄した。50μl/ウェルで1% BSAで5倍連続希釈された被験抗体を入れ、37℃で1時間インキュベートし、PBSTでプレートを5回洗浄し、50 μl/ウェルで1:400で希釈されたHRPで標識されたウサギ抗ヒトIL10(sino biological,Cat#SEKA10947)を入れ、37℃で1時間インキュベートした。PBSTで5回洗浄した後、50μl/ウェルのTMB呈色基質(KPL,52−00−03)を入れ、室温で5〜10minインキュベートし、50μl/孔の1M H
2SO
4を入れて反応を中止させ、MULTISKAN Goマイクロプレートリーダー(ThermoFisher,51119200)によって、450nmにおいて吸収値を読み取り、OD値からEC50を計算した。サンドイッチ法ELISAの結果から、LB432の結合活性(11.3 nM)が顕著にLB433(0.77 nM)よりも弱かった。同じIL10配列がAb10のN末端かC末端にあるかで、それぞれCLDN18.2及びIL10と結合する活性に影響が大きくなかったが、LB432はCLDN18.2に結合した後、さらにIL10に結合する活性がLB433よりも10倍以上低下した(11.3nM vs 0.77 nM)。
【0455】
つまり、LB432のN末端へのIL10の連結は「立体障害」が存在し、即ち、得られた二重特異性分子が単独で2つの標的に結合する活性に影響がないが、その一方に結合していると、当該分子のもう一方の標的への結合が阻害/影響される。本発明の他の二重特異性分子SBodyにおいて、LB302、LB301、LB157、LB305、LB158、LB195、LB196、LB401などを含み、サンドイッチ法ELISAによる検出では、いずれもその一方の標的の結合がもう一方の標的の結合に影響すること(立体障害)が見出されなかった。
【0456】
上記データから、本発明では、意外に、抗体Ab10及びIL10で設計された二重特異性抗体の最適化配列はLB433であり、即ち、IL10がAb10の重鎖のC末端に融合するのが最も好ましいことが見出された。
【0457】
安定性の検出結果から、LB432及びLB433は−80℃で60日、4℃で30日、37℃で7日、37℃で14日保存するなどの条件下で安定で、電気泳動(PAGE)分析では顕著な分解が見られず、LB432及びLB433は安定性が良いことが分かる。
【0458】
また、LB432及びLB433に対して血清安定性の評価を行った。具体的に、C57BL/6マウス(6週齢、雌、上海SIPPR−BK実験動物有限公司から購入された。)から血液を取り、12000rpmで10分間遠心分離し、血清を取って使用に備えた。3μlのサンプル(1μg/μl,pH7.4 PBS)を取って上記血清27μlで希釈し、最終濃度が0.1μg/mlであった。それぞれ37℃で0h、24h及び72h処理した後、そのヒトCLDN18.2+細胞及びIL10抗体との結合活性を検出した。結果は以下の通りであった。
【0460】
上記血清安定性の結果から、LB433は血清で72hインキュベートした後、CLDN18.2との結合活性改変が1.64倍(0.264/0.161)であり、同じ条件下でLB432は3.4(1.2/0.357)であり、IL10との結合活性において、LB433は変化が0.67倍(0.113/0.168)であり、同じ条件下で、LB432は1.4(0.115/0.083)であった。LB433の血清安定性がLB432よりも良かったことが示された。
【0462】
上記結果から、LB4331、LB4333、LB4334、LB4335の結合活性(CLDN18.2, IL10)は、LB433に近かったことが分かる。これらの分子は、LB433との相違点が、CD64 (FcγR I)に対するその結合活性が顕
著に低下したことにある。
【0463】
前記実施例30と同じ動物モデル(MC38−804)及び方法によって本発明のCLDN18.2及びIL10に対して設計された二重特異性抗体に対して体内薬効の評価を行った。無菌で被験サンプル及び陽性対照をPBSで調製した。ブランク群はPBSである。Ab10は単独投与対照群である。LB433は二重特異性抗体薬物の被験群である。投与形態は腹腔内注射であり、Ab10の投与量が60μg/200μl/匹であり、LB433の投与量は80μg/200μl/匹であった。各群では、投与頻度は2回/週であり、1.5週連続であった。結果を下記表に示す。
【0465】
上記結果から、この動物モデルにおいて、Ab10単独では、薬効が弱く、21日目にわずか4%の腫瘍抑制率が示され、即ち、動物における薬効が見られなかったことが分かる。非常に意外なことに、本発明のCLDN18.2及びIL10に対して設計された二重特異性抗体LB433は、Ab10と同じモル量で、21日目の腫瘍抑制率が81%に達し、単独のAb10(4%)よりも顕著に優れており、T検定分析のP値が<0.05であった。
【0466】
LB433の軽鎖配列(配列番号38)は、Ab10軽鎖であり、実施例6を参照する。
LB433の重鎖を含む配列(配列番号58):
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSNYLIEWVKQAPGQGLEWIGLINPGSGGTNYNEKFKGKATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARVYYGNSFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKE
YKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGAGGGGSGGGGSGGGGSSPGQGTQSENSCTHFPGNLPNMLRDLRDAFSRVKTFFQMKDQLDNLLLKESLLEDFKGYLGCQALSEMIQFYLEEVMPQAENQDPDIKAHVNSLGENLKTLRLRLRRCHRFLPCENKSKAVEQVKNAFNKLQEKGIYKAMSEFDIFINYIEAYMTMKIRN
LB4333の軽鎖の配列(配列番号38);LB4333の重鎖を含む配列(配列番号59);
LB4331の軽鎖の配列(配列番号38);LB4331の重鎖を含む配列(配列番号60);
LB4335の軽鎖の配列(配列番号38);LB4335の重鎖を含む配列(配列番号61):
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSNYLIEWVKQAPGQGLEWIGLINPGSGGTNYNEKFKGKATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARVYYGNSFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGAGGGGSGGGGSGGGGSSPGQGTQSENSCTHFPGNLPNMLRDLRDAFSRVKTFFQMKDQLDNLLLKESLLEDFKGYLGCQALSEMIQFYLEEVMPQAENQDPDIKAHVNSLGENLKTLRLRLRRCHRFLPCENKSKAVEQVKNAFNKLQEKGIYKAMSEFDIFINYIEAYMTMKIRN
実施例35 CLDN18.2及びLAG3、CLDN18.2及びTim3の2つの標的に対する二重特異性抗体の設計及び活性評価
本発明では、CLDN18.2及びLAG3の2つの標的、ならびにCLDN18.2及びTim3の2つの標的に対してそれぞれ二重特異性抗体を設計し、下記表に示した。
【0468】
本発明の実施例25の方法によってそれぞれ上記二重特異性抗体をクローニング・発現し、精製し、前記ELISA方法によってそれぞれこれらの二重特異性分子のヒトCLDN18.2及びLAG3、Tim3との結合活性を検出したが、結果を下記表に示した。
【0470】
上記結果から、本発明の抗体Ab10及びLAG3、Tim3抗体で設計された構造がIgGに類似する二重特異性抗体分子(scFvがAb10の重鎖のN末端にある)は、CLDN18.2及びLAG3、Tim3に対する結合活性を維持しながら、安定して発現し、精製することができる。
【0471】
実施例36 CLDN18.2それぞれ及びPD−1、PD−L1、CD47の2つの標的の抗体のDVD構造の設計及び評価
本発明では、CLDN18.2及びPD−1、PD−L1、CD47に対してそれぞれDVD形態で二重特異性抗体を設計し、下記表に示した。
【0473】
本発明の実施例25の方法によって、それぞれ上記二重特異性抗体をクローニング・発現し、精製し、ゲル電気泳動(PAGE)を行った結果から、これらの抗体の軽鎖、重鎖はいずれもリンカー間の断裂現象が生じやすいことが示された。一方、scFvの形態で1つの標的の抗体をもう1つの標的の抗体の軽鎖又は重鎖のN又はC末端に連結し、スクリーニングによって設計が最適化された二重特異性抗体を得ると、リンカー間の断裂を防止/減少し(前記実施例を参照する)、そして2つの標的の結合活性、機能活性を維持できる。好適な二重特異性抗体(本発明では、SBodyと呼ばれる)は、安定しながら、構造が通常のIgGに類似し、精製プロセスが簡単で、これは後続の開発過程におけるプロセス、精製に大いに便利を提供する。
【0474】
実施例37 CLDN18.2に対するCAR分子の設計
本発明のCLDN18.2に対する新たなCAR分子の設計は先に公開された特許CN106755107Aを参照する。
【0475】
具体的に、本発明で設計されたCAR分子の核酸構築体の一般式はCAR−[(IRES)−f]
qである。当該一般式において、CARはキメラ抗原受体を表し、scFv−H−TM−S−CD3ζを含み、ここで、scFv(一本鎖Fv、single chain Fv)は特異的にCLDN18.2抗原を標的とする一本鎖可変断片であり、一本鎖抗体、一本鎖可変領域とも呼ばれる。その配列は本発明で発見された抗CLDN18.2抗体(前記実施例を参照する)の可変領域の配列から構成される。その構造はVL−リンカー−VH又はVH−リンカー−VLであり、リンカーは(G
4S)
wが好ましく、wは0、1、2、3、4であり、好ましくはw=3又はw=4である。Hはヒンジドメインであり、TMは膜貫通ドメインであり、Sは共刺激シグナル伝達領域である。前記共刺激シグナル伝達領域は、CD28由来の共刺激分子、及び/又は4−1BB由来の共激分子を含む。一般式において、CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列(細胞内領域)である。
【0476】
IRESは内部リボソーム進入部位配列(Internal ribosome entry site、IRES)を表し、fは機能性タンパク質Fをコードし、qは0又は非0自然数である。前記機能性タンパク質はサイトカインIL10、IL15又はその活性断片、及び/又は前記サイトカインの受容体、例えばIL15受容体又はその活性断片、及び/又はサイトカイン、例えばIL10、IL15又はその活性断片とIL15受容
体sushi+断片の融合断片を含む。
【0477】
設計されたCAR分子は構造にf部分がない場合、当該CAR分子もIRES配列がない。また、IRES及び(IRES)は同じ意味を表し、IRESの外に括弧「()」が含まれる場合、IRES配列が核酸構築体のみに存在し、IRES配列を含むヌクレオチドがタンパク質のコーディングに使用される場合、当該IRES配列は相応するタンパク質をコードするのではなく、IRES配列の前又は後ろのヌクレオチド配列がそれぞれ異なるタンパク質断片(即ち、CAR及びf)をコードし、且つ異なるタンパク質断片同士はそれぞれ離れている。
【0478】
上記CAR又はCAR−(IRES)−f分子において、抗CLDN18.2抗体の配列の可変領域に基づいて設計されたscFvの配列は本発明の新たな抗体配列であり、上記実施例を参照する。scFV部位はFab又は単一ドメイン抗体(sdFv)の構造でもよい。他の配列(scFv以外の配列)は米国国立医学図書館サイトhttp://www.pub med.com、GenBankデータベースから検索して得られ、ヒトCD8αシグナルペプチド、ヒトCD8αヒンジ領域、CD8α膜貫通領域、ヒトCD28細胞内領域、ヒト4−1BB細胞内領域、ヒトCD3ζ細胞内領域、内部リボソーム進入エレメント(IRES elements)、ヒトIL15(特許CN106755107Aにおける配列番号22と同じ)、ヒトIL15受容体α(IL15Rα)野生型及び突然変異/sushi部分(US2014/01314; WO2007/046006)、ヒトIL10(配列番号2)タンパク質配列などを含む。すべてのクローンに構築された塩基配列はいずれもタンパク質配列からコドンの最適化を行うことで、コードアミノ酸配列が変わらないままでヒト細胞による発現により適するようにした。
【0479】
IL10のヌクレオチド配列は、例えばGenBank登録番号NM_000572で示される配列である。
具体的に、本発明の代表的なCAR分子の構築は、公開番号がCN106755107Aの特許出願に記載の方法を参照する。当該特許の実施例3のJX005プラスミド(pBABEpuro由来のもの)におけるコードc−Met抗体のscFvを本発明のAb10のscFvに変えると、本発明のCARの新たな分子CAR1aのプラスミドJX1aが得られる。プラスミドJX1aでコードされるCAR1aのアミノ酸配列は以下の通りである:
DIVMTQSPDSLAVSLGERATISCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQNDYFYPFTFGQGTKLEIKGGGGSGGGGSGGGGSQVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSNYLIEWVKQAPGQGLEWIGLINPGSGGTNYNEKFKGKATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARVYYGNSFAYWGQGTLVTVSS
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号3)
ここで、1〜246位はAb10に結合したscFvコード配列であり、247〜293位はヒトCD8αヒンジ領域のコード配列(下線部分)であり、294〜315位はヒトCD8α膜貫通領域のコード配列であり、316〜357位は4−1BB細胞内領域のコード配列であり、358〜469位はCD3ζ 細胞内シグナル領域のコード配列である。
【0480】
ここで、1〜63位のヌクレオチド(下線部分)はシグナルペプチドのコード領域である。64〜801位はCLDN18.2が結合したAb10抗体のSCFVのコード配列であり、802〜942位はヒトCD8Αヒンジ領域のコード配列であり、943〜1008位はヒトCD8α膜貫通領域のコード配列であり、1009〜1134位は4−1BB細胞内領域のコード配列であり、1135〜1470位はCD3Ζ 細胞内シグナル領域のコード配列である。
【0481】
公開番号がCN106755107Aの特許出願における実施例5で構築されたJX007プラスミドにおけるコードc−Met抗体のscFvを、本発明のAb10のscFvに取り替えて(方法は本発明のJX1aの構築方法と同じである)、本発明のCARの新たな分子CAR3abに使用されるプラスミドJX3abを得た。プラスミドJX3abでコードされるアミノ酸配列は上記JX1aがコードする配列と同様であり、また、サイトカインIL15の活性断片(野生型)をコードする。IL15活性断片のヌクレオチド配列は、任意の既存技術においてそれをコードする配列、例えばCN106755107Aの配列番号31の699〜1040位のヌクレオチド配列でもよい。
【0482】
上記で構築されたプラスミドJX3abにおけるIL15をコードする配列(例えばCN106755107Aの配列番号31の699〜1040位のヌクレオチド配列)の代わりに、IL10をコードする配列(例えばGenBank登録番号NM_000572で示される配列)を使用して、本発明の新たなCAR分子CAR3ab10のプラスミドJX3ab10を得た。
【0483】
上記プラスミドJX3ab10は、以下のようなIL10タンパク質配列をコードする。
SPGQGTQSENSCTHFPGNLPNMLRDLRDAFSRVKTFFQMKDQLDNLLLKESLLEDFKGYLGCQALSEMIQFYLEEVMPQAENQDPDIKAHVNSLGENLKTLRLRLRRCHRFLPCENKSKAVEQVKNAFNKLQEKGIYKAMSEFDIFINYIEAYMTMKIRN(配列番号2)
特許CN106755107Aの実施例6で構築されたJX008プラスミドにおけるコードc−Met抗体のscFvを、本発明のAb10のscFvに取り替えて(方法は本発明のJX1aの構築方法と同じである)、本発明のCARの新たな分子CAR4aに使用されるプラスミドJX4aを得た。JX4aがコードするアミノ酸配列は、上記CAR1aのコード配列以外、サイトカインIL15の活性断片(突然変異型)とIL15Rα (sushi+)の融合タンパク質をコードし、sushi+とはsushi断片以外、さらに他のポリペプチド断片を含む。
【0484】
上記同じ方法により、Ab10抗体のscFvの代わりにAb6抗体配列のscFvを使用して、CARの新たな分子CAR1a.2、CAR3ab.2、CAR3ab10.2及びCAR4a.2に相応するプラスミドJX1a.2、JX3ab.2、JX3ab10.2及びJX4a.2を構築した。
【0485】
実施例38 CLDN18.2に対して設計されたCAR分子の同定
ウイルスのパッケージング、製造及び濃縮:ウイルスの製造方法は特許CN106755107Aで使用される方法を参照し、三プラスミドウイルスパッケージングシステムpGag−Pol、pVSVG及び本発明の新たな各CAR分子の発現プラスミドpBABEpuro(いずれも優宝生物から購入された)を使用し、例えばJX1a、JX3ab、JX3ab10又はJX4aで293細胞に共形質移入させてウイルス上清を得、超遠心分離によって濃縮して濃縮されたウイルスを得た。
【0486】
具体的に、パッケージングプラスミドpGag−Pol、pVSVG及び発現プラスミドJX1a、JX3ab、JX3ab10又はJX4aを、6μgずつ、PEI(Polysciences,Inc,Cat#: 23966−2)36μgと均一に混合し、室温で5min静置し、293細胞(中国科学院典型培養物寄託委員会細胞ライブラリー)に入れた。48h培養し、1次上清を回収し、次の日に、72h培養し、2次上清を回収した。2回の上清を合併し、3mLの20%ショ糖溶液を入れ、ウイルス上清を注意してショ糖溶液の上に敷き、125000gで1.5時間遠心分離し、PBSで低温で沈殿を再懸濁させ、分注して−80℃で凍結保存した。ウイルスはそれぞれ1a、3ab、3ab10、4aと表示する。超遠心機の型番はBeckman Coulter Optima XPN−100であり、ローターの型番はSW32iであり、超遠心管はBeckman 344058であった。
【0487】
ウイルス力価の検出:勾配希釈されたウイルスで293細胞に感染させ、48時間後、プロテインLで染色してscFvを発現する細胞の陽性率を確認する方法によって、ウイルスの力価を確認した。具体的に、それぞれ20μlのウイルス(1a、3ab、3ab10、4a)を10%FBS(Gibco,Cat#: 10099141)、0.8μg ポリブレン(上海翊盛生物科技有限公司、Cat#: 40804ES76)を含有するRPMI 1640培地(培源生物,Cat#L210KJ)で5倍勾配で希釈し、最終の系は250μlであった。予めプラートに敷いた293細胞に入れ、全培養系は500μl/ウェルであり、293細胞は5×10
4個/ウェルであった。48h後、細胞を収集し、ビオチン−プロテインL(GenScript社、カトログ番号M00097)で293細胞を1μl/サンプルで標識した。室温で20minインキュベートした後、FACS緩衝液を1ml入れ、遠心分離して細胞を洗浄した。FACS緩衝液100μlで再懸濁させ、PEで標識されたストレプトアビジン(eBioscience、カトログ番号12−4317−87)を0.4μl/サンプルで入れ、室温で20minインキュベートした後、FACS緩衝液を1ml入れ、遠心分離して細胞を洗浄した。FACSによって陽性細胞の比率を検出し、陽性の比率が10%になった時のサンプルを取ってウイルスの力価を計算し、力価(IU/ml)=陽性率×293細胞数×希釈倍数/ウイルス液体積であった。結果から、今回で得られた1a、3ab、3ab10及び4aウイルスの力価はそれぞれ9.2、1.3、3.2及び1.5×10
6IU/mlであったことが分かる。
【0488】
CART細胞の調製:健常なボランティアから新鮮な末梢血を採取し、特許CN106755107Aにおける同じ方法によって末梢血の単核球(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)を分離した。PBMCを抗ヒトCD3、CD28抗体がカップリングされた磁気ビーズ(Gibco、カタログ番号11131D)で40〜48h活性化させた後、それぞれウイルス1a、3a、3ab10、4a(MOIが0.05〜5の範囲にある)、ポリブレン(最終濃度8μg/ml)を入れた。3h感染させ、1mlまで液を追加し、一晩で液を交換し、培地が10%FBS、500IU/mL IL2(北京四環生物製薬有限公司,Cat#:S20040007)を含有するRPMI 1640であった。1日おきに液を交換して1:2で培養体積を、体内外実験に十分な細胞が得られるまで拡大した。感染後、各CAR分子のT細胞(CART細胞)をそれぞれCART1a、CART3ab、CART3ab10及びCART4a細胞と表示し、未感染のT細胞(ブランクベクター)を陰性細胞(対照)とした。
【0489】
本発明のCART分子Ab10抗体scFvの発現・同定:上記各CART細胞はプロテインLで染色することによってCART分子scFvの発現及び感染細胞の陽性率を確認した。具体的に、感染後のT細胞(CART細胞)を2×10
5個収集し、ビオチン−プロテインL(南京genscript社、カタログ番号M00097)で細胞を標識した(標識方法は前記ウイルス力価の検出と同様である)。FACSによってCART陽性
細胞の比率を検出し、陰性細胞を対照とした。陽性率=CART細胞FACS(%)−陰性細胞(対照) FACS(%)であり、結果を下記表57aに示した。
【0490】
上記と同じ方法によってCART1a.2、CART3ab.2、CART3ab10.2及びCART4a.2を製造した。検出されたAb6抗体scFvの陽性率がCART1a、CART3ab、CART3ab10及びCART4aに近く、表57bを参照する。
【0493】
上記結果から、本回の実験の4種類のCART細胞(Ab10及びAb6のscFvを含む)の陽性率が20%〜47%であり、得られたCART細胞のいずれも正常にAb10又はAb6抗体のscFvを発現したことが確認された。以下、CART1a、CART3ab、CART3ab10及びCART4aを例として本発明のCAR細胞の活性及び機能を評価した。
【0494】
本発明で設計されたCART細胞によって発現・分泌されるサイトカインの同定:本発明で設計された新たなCART細胞CART3ab、CART4aがサイトカインIL15、IL15/IL15Rを発現・分泌し、CART3ab10はサイトカインIL10を発現・分泌する。前記CART細胞が前記因子を発現・分泌することを同定するために、CART細胞の培養上清を取り、ELISAキット(北京義翹神州生物技術有限公司、カタログ番号SEKA10947、SEK10360)によってそれぞれIL10、IL15の発現を検出した。その結果、CART3ab10上清のみから2256pg/ml及び844pg/ml検出され(繰り返して異なるドナーPBMC由来のT細胞に感染させて得られたCART細胞を調製した)、同時に調製されたCART1a上清から背景値として13.7pg/ml及び5.3pg/mlのみ検出された(繰り返して異なるドナーPBMC由来のT細胞に感染させて得られたCART細胞を調製した)。当該データから、本発明で設計されたCART3ab10が特異的にサイトカインIL10を発現して分泌したことが分かる。ELISA方法では、CART3ab、CART4a上清におい
てIL15、IL15/IL15Rαの発現及び分泌が検出されず、培養されたCART3ab、CART4aによって分泌されるサイトカインIL15及びIL15/IL15Rαの量が低かったことが示された。
【0495】
細胞の培養上清からIL15及びIL15/IL15Rαの発現が検出されず、生じた4つのCART細胞をそれぞれマウス体内に注射した。Balb/cヌードマウスを取り、静脈内注射で1×10
6のCART細胞を投与した。注射後の7日目及び14日目にそれぞれ血清を採取し、ELISAによって血清におけるIL10及びIL15のレベルを検出した。結果を下記表に示した。
【0497】
上記結果から、CART3ab10はマウス体内において、7日目の時点で、IL10の発現量が5154.7pg/mlに達したことが分かる。14日目に、IL10の発現量が350.7pg/mlに低下した。CART1a、CART(ブランク)は対照サンプルとしていずれもIL10の発現が検出されず、検出値14、152.7及び128.7pg/mlはいずれも背景値であった。CART3abは14日目にIL15活性断片の発現が検出され、発現量が118.8pg/mlであった。CART4aは7日目にIL15/IL15Rαの発現が検出され、発現量が206.4pg/mlであった。CART1a、CART(ブランク)は対照サンプルとしていずれもIL15の発現が検出されず、読み取り値が0(背景)であった。
【0498】
上記結果から、本発明で設計されたCARで形質移入されたT細胞であるCART3ab、CART4a細胞によってIL15活性断片が発現・分泌されたことが分かる。CART3ab10細胞によってIL10が発現・分泌された。
【0499】
実施例39 CLDN18.2に対して設計されたCAR細胞の活性
本発明のCART細胞の体外活性を評価するために、ヒトCLDN18.2高発現細胞(hCLDN18.2+細胞)を標的細胞とし、ヒトCLDN18.1高発現細胞(hCLDN18.1+細胞)を対照陰性標的細胞とし、CART細胞の2種類の細胞に対する殺傷を比較した後、標的細胞の生存比率でCART細胞の特異性体外殺傷活性を評価した。具体的に、CFSE(Biolegend、カタログ番号423801)でhCLDN18.2+細胞を標識した。標的細胞の懸濁液を調製し、hCLDN18.1+細胞をCFSEで標識されたhCLDN18.2+細胞と等比率で混合し、それぞれ1.5×10
5個/mlであった。24ウェルプレートにおいて標的細胞殺傷実験を行い、標的細胞の懸濁液は100μl/ウェルであった。CART1a、CART3ab、CART3ab10、CART4a細胞及び陰性細胞(ブランクベクター)をそれぞれ同じ培地で希釈し、異なるCART細胞と標的細胞の比率にし、それぞれ20:1,10:1,3:1及び1:1であった。別に未殺傷群を設け、即ち、CART細胞なしで、上記標的細胞のみの群であった。CART細胞を標的細胞と16時間共培養した後、上清を捨て、PBSで慎重に洗浄して残ったCART細胞及び殺滅された標的細胞を除去し、トリプシンで消化して付着した標的細胞を収集し、7AAD(Biolegend:420404)で染色した後、FACSによって7AAD陰性CFSE標識hCLDN18.2+/hCLDN18.1+細胞の比率を検出した。
【0500】
標的細胞の特異的分解(殺傷)率=1−[CART細胞7AAD陰性hCLDN18.2+/hCLN18.1+]/[陰性対照(ブランクベクター)細胞7AAD陰性hCLDN18.2+/hCLN18.1+]。標的細胞の特異的分解(殺傷)率が高いほど、CART細胞の特異的殺傷効果が強く、以下はCART細胞と標的細胞が10:1の場合におけるCART1a殺傷率の計算結果である。陰性対照CART細胞の結果のデータから、生存細胞CLDN18.1:CLDN18.2は50.5%対48.6%であり、1:1に近く、これは陰性対照CART細胞が非標的細胞及び標的細胞のいずれに対しても殺傷効果がないことを示した。CAR1a細胞の結果のデータから、生存細胞CLDN18.1:CLDN18.2は57.5%対37.5%であり、CART1a細胞は非標的細胞に殺傷効果がなかった(50%に近かった)が、標的細胞(CLDN18.2)に殺傷効果があった(50%から37.5%に低下した)ことを示した。殺傷率(%)の計算方法:1−[(37.5%/57.5%)/(48.6%/50.5%)]=32.2%。各結果を下記表に示した。
【0502】
上記結果(3回以上の重複実験で、且つ毎回の実験で陰性対照CART細胞は非標的細胞及び標的細胞のいずれにも殺傷効果がなかった)から、本発明の4種類のCART細胞と標的細胞が20:1の場合、いずれも殺傷効果を示し、殺傷率が19.8%〜34.8%であった。CART細胞:標的細胞の比率の低下につれ、標的細胞に対する殺傷効果が低下し、最も速く低下したのはCART4a、CART3ab10及びCART3aであった。この3つのCART細胞が3:1、1:1の比率の場合、基本的に標的細胞に対する殺傷作用が見られなかった。これは、本発明のCARTの設計は細胞機能に関連し、生じる効果は異なる設計によって予想外の効果が現れることを示す。
【0503】
実施例40 CLDN18.2に対して設計されたCAR細胞の動物体内における薬効
Balb/cヌードマウスを取り、hCLDN18.2+細胞を皮下接種して腫瘍モデ
ルを構築し、CART細胞を静脈内注射し、腫瘍体積(TV)、体重(BW)を測定することによってCART細胞の抗腫瘍効果及びその安全性を評価した。具体的に、hCLDN18.2+細胞を10%ウシ胎児血清含有DMEM/F12培地において培養し、5%
CO
2を含有する37℃の細胞インキュベーターにおいて対数期(コンフルエント80%〜90%)まで連続培養した後、トリプシンで消化し、細胞を収集し、そして無血清のDMEM/F12で細胞を2回洗浄し、PBSで再懸濁させ、計数し、細胞濃度が1×10
8/mlになるように調整した。Balb/cヌードマウスにhCLDN18.2+細胞懸濁液を100μl/匹で、右脇部の皮下に接種した。3週間後、腫瘍体積が80〜130mm
3のマウスを選択し、群分けし(2匹/群)CART細胞を2×10
6/匹で静脈内注射した。投与当日を0日目とした。その後、週に2回腫瘍体積を測定し、体重を量り、データを記録した。
【0504】
腫瘍の大きさの計算式:腫瘍体積TV(mm
3)=0.5×(腫瘍長径×腫瘍短径
2);相対腫瘍体積(RTV)= TV/TV0であり、ここで、TV0は開始時(0日目)の腫瘍体積であり、1とした。TVは検出時の腫瘍体積である。相対腫瘍体積(RTV)は、各検出時点における腫瘍体積の増長倍数である。相対腫瘍増殖率(T/C%)=100%×(T−T0)/(C−C0);腫瘍抑制率(TGI)=(1−T/C)×100%。ここで、T0、Tはそれぞれサンプル群の実験開始時及び実験終了時の腫瘍体積であり、C0、Cはそれぞれ対照群の実験開始時及び実験終了時の腫瘍体積である。
【0505】
結果から、CARTを注射して2週間後、各マウスの体重に顕著な変化がなく、CART細胞に顕著な安全性問題がないことが示された。薬効の面において、CART(ブランクベクター)をマウスに注射して13日目〜19日目に、腫瘍体積が増大し続け、増加倍数(相対腫瘍体積)が14から39倍になった(
図9)。一方、CART1a、CART3ab、CART3ab10及びCART4a細胞を注射したマウスは、腫瘍体積の増加がいずれも10倍以下であった(腫瘍抑制率:40%〜90%)。特に、CART3ab10及びCART4a細胞を注射したマウスは、腫瘍体積が13日目から17日目の間で維持してほとんど増長せず、持続的に抑制する(100%に近い抑制)効果を達成した。この結果から、本発明の抗CLND18.2抗体で設計された異なるCAR分子によるCART細胞が予想外の動物薬効の効果を示すことが分かる。
【0506】
実施例40 CLDN18.2に対して設計されたCARをNK細胞に形質移入して得られたCARNK細胞の活性
対数期にある状態が良好なNK92(商城北納創聯生物科技有限公司から購入された)細胞にそれぞれウイルス1a、3a、3ab10、4a(MOIが0.5〜5の範囲にある)、ポリブレン(最終濃度8μg/mL)を入れた。3h感染させ、1mLまで液を追加し、一晩で液を交換し、培地がNK92専用培地(商城北納創聯生物科技有限公司)であった。1日おきに液を交換して1:2で培養体積を、体内外実験に十分な細胞が得られるまで拡大した。感染後のNK92細胞をそれぞれCARNK1a、CARNK3a、CARNK3ab10、CARNK4a細胞と表示し、未感染のNK92細胞をCARNK(ブランクベクター)と表示し、陰性対照とした。7日感染させた後、上記実施例38と同じ方法によってCARNK細胞表面の発現を検出し、結果を下記表に示す。
【0508】
上記結果から、本発明で新たに設計されたCARはNK細胞においても好適に抗体Ab10のscFvを発現してヒトhCLDN18.2を認識することができることが分かる。
【0509】
実施例41 CLDN18.2に対して設計されたCARNK細胞の動物体内における薬効
上記実施例7と同じ動物モデルで本発明のCARNK細胞の動物薬効を評価した。調製されたCARNK(ブランクベクター)対照、CARNK1a、CARNK3ab、CARNK3ab10、CARNK4a細胞を2×10
5/匹取り、2匹/群で、0日目及び3日目に1回ずつ注射した。その後、週に2回腫瘍の大きさを検出し、結果を下記表61に示した。
【0511】
表61の結果から、本発明の抗CLDN18.2抗体で構築されたCARNK細胞は体内において11、13日目に持続的に腫瘍を抑制する効果が示されたことが分かる。腫瘍抑制率は16.5%〜60.7%の範囲にあった。ここで、CARNK3ab10が示した動物体内における薬効が最も優れた。
【0512】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正を行うことができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
前記VLは配列番号11で示されるVL CDR1、配列番号13で示されるVL CDR2及び配列番号14で示されるVL CDR3のアミノ酸配列を含み、前記VHは配列番号15で示されるVH CDR1、配列番号16で示されるVH CDR2及び配列番号17で示されるVH CDR3のアミノ酸配列を含み、或いは、
前記VLは配列番号12で示されるVL CDR1、配列番号13で示されるVL CDR2及び配列番号14で示されるVL CDR3のアミノ酸配列を含み、前記VHは配列番号15で示されるVH CDR1、配列番号16で示されるVH CDR2及び配列番号17で示されるVH CDR3のアミノ酸配列を含む、ことを特徴とし、
好ましくは、前記CLDN18.2を標的とする抗体のCDR突然変異配列は、CDR領域での脱アミノ化感受性部位の突然変異が生じた配列であり、例えば、前記CDR領域での脱アミノ化感受性部位は軽鎖CDR1のL30A及び/又はL30B位であり、及び/又は、重鎖CDR3のH99及び/又はH100位であり、
例えば、前記軽鎖CDR1のL30A及びL30B位のアミノ酸残基がNSからTS又はNTに突然変異し、その前提はL30E位がQではなく、且つL34位がTではなく、前記重鎖CDR3のH99及びH100位のアミノ酸残基がNSからTS又はNTに突然変異し、その前提は軽鎖CDR1のL30E位がQではなく、且つL34位がTではない、ことを特徴とする請求項1に記載のCLDN18.2を標的とする抗体。
前記CLDN18.2を標的とする抗体は、マウス由来抗体の可変領域、及びマウス又はヒト抗体の定常領域を含み、前記マウス抗体の定常領域はマウスIgG1、IgG2a、IgG2b又はIgG3の重鎖定常領域及びκ又はλ型軽鎖定常領域を含み、前記ヒト抗体の定常領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の重鎖定常領域及びκ又はλ型軽鎖定常領域を含み、
好ましくは、前記CLDN18.2を標的とする抗体はマウス由来抗体の可変領域及びヒト抗体の定常領域からなるキメラ抗体であり、
より好ましくは、前記キメラ抗体の軽鎖のアミノ酸配列は配列番号9で示されるアミノ酸配列又はその突然変異であり、及び/又は、前記キメラ抗体の重鎖のアミノ酸配列は配列番号10で示されるアミノ酸配列又はその突然変異である、ことを特徴とする請求項3に記載のCLDN18.2を標的とする抗体。
前記scFvの構造は軽鎖可変領域−リンカー−重鎖可変領域であり、その軽鎖可変領域のN末端又は重鎖可変領域のC末端がそれぞれリンカーを介して相応的に前記免疫グロブリンの軽鎖及び/又は重鎖のC末端又はN末端に連結しており、或いは前記scFvの構造は重鎖可変領域−リンカー−軽鎖可変領域であり、その重鎖可変領域のN末端又は軽鎖可変領域のC末端がそれぞれリンカーを介して相応的に前記免疫グロブリンの軽鎖及び/又は重鎖のC末端又はN末端に連結しており、好ましくは、前記リンカーは(G4S)3であり、及び/又は、前記scFvの数は2つであり、且つ2つの前記scFvは前記免疫グロブリンの軽鎖及び/又は重鎖と対称的に連結しており、
より好ましくは、前記二重特異性抗体は、以下のいずれかから選ばれる:
(1)前記第一タンパク質機能領域は免疫グロブリンであり、前記免疫グロブリンは、配列番号38で示されるアミノ酸配列である軽鎖、配列番号39で示されるアミノ酸配列である重鎖を含み、前記第二タンパク質機能領域はscFvであり、ここで、
2つのscFvの重鎖可変領域のC末端が、リンカーを介して前記免疫グロブリンの2本の重鎖のN末端と対称的に連結しており、且つ、前記scFvの軽鎖可変領域はアテゾリズマブの軽鎖可変領域であり、前記scFvの重鎖可変領域はアテゾリズマブの重鎖可変領域であり、或いは、
2つのscFvの重鎖可変領域のC末端がリンカーを介して前記免疫グロブリンの2本の重鎖可変領域のN末端と対称的に連結しており、且つ、前記scFvの軽鎖可変領域はHu5F9の軽鎖可変領域であり、前記scFvの重鎖可変領域はHu5F9の軽鎖可変領域であり、或いは、
2つのscFvの重鎖可変領域のN末端がリンカーを介して前記免疫グロブリンの2本の重鎖のC末端と対称的に連結しており、且つ、前記scFvの軽鎖可変領域はAMG420の軽鎖可変領域であり、前記scFvの重鎖可変領域はAMG420の重鎖可変領域である;
(2)前記第一タンパク質機能領域はscFvであり、前記第二タンパク質機能領域は免疫グロブリンであり、2つのscFvの重鎖可変領域のC末端がリンカーを介して前記免疫グロブリンの2本の重鎖のN末端と対称的に連結しており、前記scFvの軽鎖可変領域の配列は配列番号29で示され、前記scFvの重鎖可変領域の配列は配列番号34で示され、ここで、
前記免疫グロブリンはニボルマブの軽鎖可変領域、κ鎖である軽鎖定常領域、ニボルマブの重鎖可変領域及びhIgG4の重鎖定常領域のアミノ酸配列を含み、或いは、
前記免疫グロブリンはペムブロリズマブの軽鎖可変領域、κ鎖である軽鎖定常領域、ペムブロリズマブの重鎖可変領域及びhIgG4の重鎖定常領域のアミノ酸配列を含み、或いは、
前記免疫グロブリンはアテゾリズマブの軽鎖可変領域、κ鎖である軽鎖定常領域、アテゾリズマブの重鎖可変領域及びhIgG1の重鎖定常領域のアミノ酸配列を含み、或いは、
前記第一タンパク質機能領域は免疫グロブリンであり、前記第二タンパク質機能領域はサイトカイン又はその断片、或いはサイトカイン受容体又はその断片であり、前記サイトカイン又はその断片、或いはサイトカイン受容体又はその断片の数は、好ましくは2つ又は4つであり、リンカーを介して前記免疫クロブリンの2本の軽鎖及び/又は2本の重鎖のC末端及び/又はN末端と対称的に連結しており、前記リンカーは好ましくは(G4S)3である、ことを特徴とする請求項8に記載の二重特異性抗体。