(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-527704(P2021-527704A)
(43)【公表日】2021年10月14日
(54)【発明の名称】基準マーカーとしての蛍光色素を含んでなる溶液
(51)【国際特許分類】
A61K 49/00 20060101AFI20210917BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20210917BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20210917BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20210917BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20210917BHJP
【FI】
A61K49/00
A61K47/54
A61K9/08
A61K47/10
A61K51/00 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】74
(21)【出願番号】特願2020-571492(P2020-571492)
(86)(22)【出願日】2019年6月19日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2019066205
(87)【国際公開番号】WO2019243422
(87)【国際公開日】20191226
(31)【優先権主張番号】18178519.7
(32)【優先日】2018年6月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】18204336.4
(32)【優先日】2018年11月5日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】520496682
【氏名又は名称】デンマークス、テクニスケ、ウニベルシテット
【氏名又は名称原語表記】DANMARKS TEKNISKE UNIVERSITET
(71)【出願人】
【識別番号】520496693
【氏名又は名称】ナノビ、アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】NANOVI A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス、ロサガー、ヘンリクセン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、ラーシュ、アンドレセン
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ、エリアス、ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、トゥイ、インゲマン、ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】リンダ、マリア、ブルーン
(72)【発明者】
【氏名】ラスムス、イルミング、ユルック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076DD37
4C076DD66
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4C085KB56
4C085LL18
(57)【要約】
本開示は、水不溶性炭水化物および近赤外線(NIR)造影剤などの蛍光色素を含んでなる溶液に関し、その溶液はin vivoなどの水性条件下で固化して、例えば、ゲルガラス、半固体、固体、結晶またはそれらの任意の混合物を形成する。本開示はさらに、このような溶液の調製およびin vivoイメージングまたは手術のガイドまたは介入的治療手技のためのこのような溶液の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.水不溶性炭水化物、
b.蛍光色素、および
c.−2〜2の範囲のlogPを有する有機溶媒
を含んでなる、溶液。
【請求項2】
前記蛍光色素が2を上回るlogPを有し、それにより、水性条件下で溶液における蛍光色素の保持を可能とする、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
水性条件下で5時間後に10%未満、例えば5%未満、の蛍光色素が放出される、請求項1または2に記載の溶液。
【請求項4】
前記蛍光色素が近赤外線(NIR)造影剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項5】
NIR造影剤がフタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィン、アントラコシアニンおよびシアニン色素からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項6】
NIR造影剤が、PC1、PC2および/またはPC3などのフタロシアニンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項7】
前記蛍光色素が、SAIB、SSIBおよびLOIBからなる群から選択される水不溶性炭水化物にコンジュゲートされている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項8】
前記水不溶性炭水化物が、マルトース、トレハロース、ラクトースおよびスクロースからなる群から選択される二糖類を含んでなり、炭水化物を水不溶性とするように1以上のヒドロキシル基が官能化されている、請求項1に記載の溶液。
【請求項9】
前記水不溶性炭水化物が、C2−C7エステルを形成するように官能化された1以上のヒドロキシル基を含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項10】
C2−C7エステルを形成するように官能化されたヒドロキシル基の数が、n、n−1、n−2、n−3、n−4またはn−5であり、ここで、nは前記炭水化物のヒドロキシル基の総数である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項11】
前記C2−C7エステルが、炭水化物のヒドロキシル基とC2−C7アルカノイルのカルボニル基の間の結合により形成される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項12】
前記C2−C7アルカノイルがアセチル、プロパノイル、イソブタノイルおよびベンゾイルから選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項13】
前記水不溶性炭水化物が、オクタイソ酪酸マルトース(MOIB)、ジ酢酸ヘキサイソ酪酸スクロース(SAIB)、オクタイソ酪酸スクロース(SOIB)、オクタイソ酪酸ラクトース(LOIB)、およびオクタイソ酪酸トレハロース(TOIB)からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項14】
前記有機溶媒が、水性条件下で溶液から拡散して、ゲル、ガラス、半固体、固体、結晶またはその任意の組合せを提供する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項15】
粘度が、水性条件下で1000センチポアズ(cP)より多く、例えば5000cPより多く、例えば10000cPより多く、例えば50000cPより多く、例えば100000cPより多く増す、請求項1〜14のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項16】
水性条件下で5時間未満、例えば4時間未満、例えば3時間未満、例えば2時間未満で固化する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項17】
前記水性条件がin vivo条件である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項18】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネートおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項19】
モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドをさらに含んでなる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項20】
前記蛍光色素が放射性核種に配位している、請求項1〜19のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項21】
前記放射性核種がTc−99m、In−111、Ga−67、Lu−177、Tl−201、Sn−117m、Cu−64、Mn−52、Zr−89、Co−55、Sc−44、Ti−45、Sc−43、Cu−61、As−72、Te−152、F−18、Ga−68、C−11、Nd−140およびTe−149からなる群から選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項22】
Cu−64、ならびにPC1、PC2、および/またはPC3を含んでなる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項23】
さらなる造影剤を含んでなる、請求項1〜22のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項24】
前記さらなる造影剤が、X線剤、CT剤、MRI剤、PET剤およびSPECT剤からなる群から選択される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項25】
前記さらなる造影剤が、式(III):
【化1】
の構造を有する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項26】
in vivo診断ツールとして使用するための、請求項1〜25のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項27】
in vivoイメージングの方法であって、
a.請求項1〜26のいずれか一項に記載の溶液を、それを必要とする個体に投与すること、
b.蛍光色素の励起、および
c.蛍光色素の検出
を含んでなる、方法。
【請求項28】
前記溶液が、注入および/または塗抹により投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
in vivoイメージングのための、請求項1〜26のいずれか一項に記載の溶液の使用。
【請求項30】
基準マーカーとしての、請求項1〜26のいずれか一項に記載の溶液の使用。
【請求項31】
手術のガイドのための、求項1〜26のいずれか一項に記載の溶液の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水不溶性炭水化物および近赤外線(NIR)造影剤などの蛍光色素を含んでなる溶液に関し、その溶液はin vivoなどの水性条件下で固化して、例えば、ゲルガラス、半固体、固体、結晶またはそれらの任意の混合物を形成する。本開示はさらに、このような溶液の調製ならびにin vivoイメージングおよび/または手術のガイドおよび/または介入的手技のためのこのような溶液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
手術は、永らく固形癌の治療の基礎であった。手術の程度、外科的アプローチおよびその奏効転帰は、癌のタイプ、その病期、サイズ、分布および場所によって異なる。癌の初期段階に行われる手術は、良好な治療転帰をもたらす。外科手技の目的は、待期的または根治的であり得る。待期的手術は、癌により引き起こされた症状を軽減することを目的とし、根治的手術は、治癒目的を持つ。手術は、結腸直腸癌前駆体の切除または肺におけるすりガラス陰影の切除の場合のように癌を予防する目的で行われる場合もある。治癒目的および予防目的の癌手術では、患者から総ての悪性細胞が除去されることが最も良い。従って、外科手技の精密さが主となる。
【0003】
対象が外科医の裸眼で見えない場合には、外科手技の詳細な計画が必要とされる。計画目的で、術前スキャン(ほとんどの場合、MRIおよびCT)が対象構造および器官の3Dモデルを構築するために使用される。術前スキャンからの立体復元もまた、患者に特異的なバーチャルリアリティシミュレーションの開発の基礎であり、それにより、外科医は実際の介入を行う前に手技訓練を行うことができる。
【0004】
ますます利用度が高くなっている別のアプローチは、外科手技のリアルタイムイメージガイダンスの使用である。C−アームおよび術中コーンビームコンピューター断層撮影法(CBCT)などの技術がハイブリッド手術室に組み込まれている。同様のことがフルオロスコピーおよび磁気共鳴画像法(MRI)にも当てはまる。しかしながら、C−アームおよびCBCTは両方とも、軟組織が見えず、金組織マーカーが補助として使用される場合が多いX線に基づくイメージングを基にしている。乳癌の場合のように、マーカーを用いて、また用いずに、術中ガイドに超音波が使用されることもある。
【0005】
肺癌では、スクリーニングプログラムが登場し、初期段階には小型の孤立性肺結節(solitary pulmonary nodules)(SPN)数の増加が特定される。最適には、このようなSPNは、疾患の進行を防ぐために診断時にビデオ補助胸腔鏡手術(video assisted thoracic surgery)(VATS)によって外科的に除去されるべきである。SPNの大部分は、小型でかつ/または胸膜から離れているために触知不能であり、外科医にそれらを位置特定し、除去することを不可能とするので、この状況は外科医と患者の双方に挫折感を抱かせる問題を引き起こした。結果として、VATS手技は、結節が触知可能な大きさに成長するまで延期される。このような延期は望ましくなく、転移癌への進行のリスクを高め、これが予後を著しく増悪し、治療関連コストを引き上げる。
【0006】
最新のマンモグラフィーは、外科医が正確に位置特定し、切除するには難しいますます小さなサイズで病巣を識別する。ワイヤガイド(wire-guided localization)(WGL)およびラジオガイド潜在性病変位置特定(radio-guided occult lesion localization)(ROLL)を含むいくつかのアプローチが外科的転帰を改善するために現在使用されている。見られた手術ガイドの利益は、ROLL技術の使用を孤立性肺腫瘍および甲状腺癌腫へ拡大した。
【0007】
よって、手術中に癌病変を特定するという問題を克服するため、外科的露出中に診断画像の可能性を十分に活用するために、手術中に位置特定および識別が可能なマーカーが鋭意探究されている。試験マーカーの例としては、(i)メチレンブルーなどの組織カラー染料およびICGなどの近赤外線(NIR)色素、(ii)放射線不透過性オイルであるリピオドール、(iii)フックワイヤ、(iv)金基準、および(v)
99mTc放射性標識マーカーがある。最適なマーカーは、i)診断画像上で可視化でき、ii)手術中にいずれの組織深度でも位置特定しやすく、iii)局在後に非局在化も移動もせず、iv)高精度で位置特定でき、かつv)気胸またはその他の望ましくない合併症などの患者への付加的リスクを生じない。しかしながら、これらの基準を満たす現在利用可能なマーカーは存在しない。
【0008】
NIRカメラ、SPECTスキャナーおよびガンマプローブ検出器は、標準的な手術ならびにIntuitive Surgical製のダビンチシステムなどのロボット手術システムの両方に搭載されている。同じことがPETスキャナーにも当てはまる。ロボット補助手術は、腹腔鏡手術を行うためにロボットアームを使用する。ロボット手術を用いる利点には、より優れた可視化、操作性の増進およびより優れた精度が含まれ、これらは患者にとって疼痛および不快感の軽減、より速い回復期間および通常活動への復帰、感染リスクの軽減となるより小さな切開、ならびに最小の瘢痕を含むいくつかの利益をもたらす。
【0009】
よって、良好な基準マーカーの開発の分野においては、画像ガイド手術の分野において発達している技術と併用する差し迫った必要がある。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、外科的介入をガイドするまたは生検後などに身体の部位をマークするための優れた基準マーカーを提供する。本開示は、in vivoなどの水性条件下で固化して、例えば、ゲル、ガラス、半固体、固体、結晶またはそれらの任意の混合物を形成し、その後、蛍光色素制御放出または保持のためのシステムを提供し、かつ/または1もしくは複数の画像診断法によるイメージングのための組織マーカーとして働き得る注入可能な溶液を提供する。本開示の溶液は、最新の生体材料および色素技術を、生体適合性、分解性があり、複数の画像診断法で可視化でき、かつ、容易に注入でき、現在の技術水準の気管支鏡に適合する新しい外科的マーカーに結びつける。本開示の溶液の他の利点は、それが従来のシリンジと針の注入ならびに限定されるものではないが、内視鏡、CTおよびUSガイド吸引および注入技術を含む現在の技術水準の注入技術に適合することを含む。よって、本開示の溶液は、規定の位置、例えば、腫瘍、異物、重要な周縁部および神経の位置における蛍光色素の定着を提供する。
【0011】
本開示は、水不溶性炭水化物、蛍光色素および−2〜2の範囲のlogPを有する溶媒を含んでなる溶液に関する。1つの態様において、蛍光色素は、2を上回るlogPを有する。蛍光色素の疎水性により、この溶液中での蛍光色素の拡散速度が低いことおよび/または水相に対するその親和性が低く、それにより、定着させた溶液に蛍光色素が保持されることが保証される。例えば、ある腫瘍部位にこの溶液を投与すると、溶液の溶媒が周囲の環境に拡散して、その結果として粘度が増し、やがて溶液が固化して、例えば、ゲル、ガラス、半固体、固体、結晶またはそれらの任意の混合物を形成し、それにより、蛍光色素の動的トラップが提供される。それにより、蛍光色素は、注入または直接投与、例えば、腫瘍除去後の手術床での散布の投与部位に保持され、基準マーカーの正確な位置特定を可能とする。第2の別の態様において、蛍光色素は、ポリエチレングリコール(PEG)に共有結合的にコンジュゲートされ、2000を超える分子量を有する。PEGの親水性は、溶液からの蛍光色素の放出をもたらし、その後、蛍光色素−PEGコンジュゲートは、それを必要とする個体に投与されると、局所リンパ系に入り、これを染色し、リンパ節に蓄積し得る。
【0012】
本開示のゲルに基づく基準マーカーの利益は、ゲルが現行の標準的手法に比べて拡散によって起こる移動または分散を受けにくいこと、NIR/PET/SPECT/CTマーカーなどの複数の画像診断法に適合可能であること、処置が終わった後に外科的に取り出す必要がないこと、生体適合性が改善されていること、侵襲性が最小の適用法を用いて挿入/注入できることが含まれる。全体的にこれは患者の快適性および処置の転帰の改善をもたらし、小ゲージの針または気管支鏡で容易に注入できることは、基準マーカーが適切である潜在的適用を拡大する。
【0013】
本明細書の上記で述べたように、画像ガイド手術の分野においては、良好な基準マーカーが必要である。本開示の溶液は、NIR/PET/SPECT/CT/MRI/USマーカーなどの複数の画像診断法に適合させることができ、PETまたはSPECTイメージングまたはハンドヘルドガンマプローブ検出と併用可能である。現在、注入部位に放射能を保持することができる液体基準マーカー技術で利用可能なものはなく、CT造影剤で希釈された、
99mTcで標識された大凝集塊の溶液がCTガイダンスにより小節に注入されるあまり魅力的でない方法が使用される。しかしながら、このような溶液はマーカーの急速なクリアランスと活性の拡散を受け、精度および有用性を低下させる。
【0014】
理想的なマーカーは、診断画像上で可視化され、VATS手技中に識別が容易でなければならない。本開示は、i)非ガイド注入、超音波(US)、コンピューター断層撮影法(CT)または注入の蛍光透視画像ガイダンスを用いて罹患組織へ注入することが容易であり、かつ、ii)例えば、胸膜表面から離れた肺組織内の深部に位置したいっそう小さな小節、軟組織内の異物、腫瘍境界、臨界構造およびさらなる組織が除去されることを要求される術後床を位置特定する確率を改善する多モード基準マーカーを記載する。これらのマーカーは、注入前には流体であり、高精度でマーカーの局在を可能とする現在の技術水準の電磁式ナビゲーション気管支鏡(electromagnetic navigation bronchoscopes)(ENB)と適合する。注入すると、この溶液は固化してゲル、ガラス、半固体、固体、結晶またはその任意の組合せを形成し、これが移動のリスクを最小にし、外科医が末梢に局在するSPNに関して触診により病変を特定することを可能とする。
【0015】
本開示の溶液は、基準マーカーがガイドを保証する総ての外科手技/適応に使用可能である。ロボット手術は、本開示の適用のもう1つの分野であり、この場合、イメージングによるガイドが患者内のロードマップおよび基準マーカーとしての診断画像をビーコンとして用いてロボットにナビゲートさせる。
【0016】
よって、1つの態様において、本開示は、
a.水不溶性炭水化物、
b.蛍光色素、および
c.−2〜2の範囲のlogPを有する有機溶媒
を含んでなる溶液に関する。
【0017】
1つの態様において、本開示は、2を上回るlogPを有し、それにより、水性条件下で溶液における蛍光色素の保持を可能とする、本明細書に開示されるような溶液に関する。
【0018】
1つの態様において、本開示は、蛍光色素がポリエチレングリコールに共有結合的にコンジュゲートされ、2000Daを超える分子量を有し、それにより、水性条件下で溶液からの蛍光色素の放出が提供される、本明細書に開示されるような溶液に関する。
【0019】
蛍光色素−PEGコンジュゲートのこのような放出は、in vivoにおいて溶液からの放出後に、リンパ節における前記コンジュゲートの蓄積を提供し得る。
【0020】
1つの態様において、本開示は、蛍光色素が放射性核種に配位している、本明細書に記載されるような溶液に関する。蛍光色素の放射性核種への配位は、複数の画像診断法および核医学検出技術により検出可能な基準マーカーを提供し得る。
【0021】
1つの態様において、本開示は、in vivoイメージングツールとして使用するための、本明細書に記載されるような溶液に関する。
【0022】
別の態様において、本開示は、
a.本明細書に記載されるような溶液を、それを必要とする個体に投与すること、
b.蛍光色素の励起、および
c.蛍光色素の検出
を含んでなる、in vivoイメージングの方法に関する。
【0023】
1つの態様において、本開示は、in vivoイメージングのための、本明細書に記載されるような溶液の使用に関する。
【0024】
1つの態様において、本開示は、手術および介入的治療手技のガイドのための、本明細書に記載されるような溶液の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】
図1:トルエンまたはマーカー配合物に溶解させたPC1、PC2およびPC3の吸光度および蛍光スペクトル。(A)トルエンに溶解させたPC1、および(B)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC1。(C)トルエンに溶解させたPC2、および(D)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC2。(E)トルエンに溶解させたPC3、および(F)SAIB:BA 80:20マーカー配合物に溶解させたPC3。
【
図1B】
図1:トルエンまたはマーカー配合物に溶解させたPC1、PC2およびPC3の吸光度および蛍光スペクトル。(A)トルエンに溶解させたPC1、および(B)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC1。(C)トルエンに溶解させたPC2、および(D)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC2。(E)トルエンに溶解させたPC3、および(F)SAIB:BA 80:20マーカー配合物に溶解させたPC3。
【
図1C】
図1:トルエンまたはマーカー配合物に溶解させたPC1、PC2およびPC3の吸光度および蛍光スペクトル。(A)トルエンに溶解させたPC1、および(B)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC1。(C)トルエンに溶解させたPC2、および(D)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC2。(E)トルエンに溶解させたPC3、および(F)SAIB:BA 80:20マーカー配合物に溶解させたPC3。
【
図1D】
図1:トルエンまたはマーカー配合物に溶解させたPC1、PC2およびPC3の吸光度および蛍光スペクトル。(A)トルエンに溶解させたPC1、および(B)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC1。(C)トルエンに溶解させたPC2、および(D)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC2。(E)トルエンに溶解させたPC3、および(F)SAIB:BA 80:20マーカー配合物に溶解させたPC3。
【
図1E】
図1:トルエンまたはマーカー配合物に溶解させたPC1、PC2およびPC3の吸光度および蛍光スペクトル。(A)トルエンに溶解させたPC1、および(B)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC1。(C)トルエンに溶解させたPC2、および(D)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC2。(E)トルエンに溶解させたPC3、および(F)SAIB:BA 80:20マーカー配合物に溶解させたPC3。
【
図1F】
図1:トルエンまたはマーカー配合物に溶解させたPC1、PC2およびPC3の吸光度および蛍光スペクトル。(A)トルエンに溶解させたPC1、および(B)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC1。(C)トルエンに溶解させたPC2、および(D)SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に溶解させたPC2。(E)トルエンに溶解させたPC3、および(F)SAIB:BA 80:20マーカー配合物に溶解させたPC3。
【
図2A】
図2:SAIB:x−SAIB:EtOH 70:10:20中のフタロシアニン色素PC2の蛍光自己消光分析。(A)色素濃度の関数として示されるPC2の蛍光放出スペクトル。(B)PC2色素濃度の関数として示される(A)において得られたPC2の正規化最大蛍光強度。放出スペクトルは、768nmにおける励起により、3反復で記録した。(C)ある範囲の異なるPC2色素濃度に関してEtOHの存在下(+EtOH)および不在下(−EtOH)で記録した表面蛍光強度画像。(D)PC2色素濃度の関数として示される(C)から得られたPC2の正規化表面蛍光強度。表面蛍光画像強度は、ImageJを用いた強度分析により得られたものである。
【
図2B】
図2:SAIB:x−SAIB:EtOH 70:10:20中のフタロシアニン色素PC2の蛍光自己消光分析。(A)色素濃度の関数として示されるPC2の蛍光放出スペクトル。(B)PC2色素濃度の関数として示される(A)において得られたPC2の正規化最大蛍光強度。放出スペクトルは、768nmにおける励起により、3反復で記録した。(C)ある範囲の異なるPC2色素濃度に関してEtOHの存在下(+EtOH)および不在下(−EtOH)で記録した表面蛍光強度画像。(D)PC2色素濃度の関数として示される(C)から得られたPC2の正規化表面蛍光強度。表面蛍光画像強度は、ImageJを用いた強度分析により得られたものである。
【
図2C】
図2:SAIB:x−SAIB:EtOH 70:10:20中のフタロシアニン色素PC2の蛍光自己消光分析。(A)色素濃度の関数として示されるPC2の蛍光放出スペクトル。(B)PC2色素濃度の関数として示される(A)において得られたPC2の正規化最大蛍光強度。放出スペクトルは、768nmにおける励起により、3反復で記録した。(C)ある範囲の異なるPC2色素濃度に関してEtOHの存在下(+EtOH)および不在下(−EtOH)で記録した表面蛍光強度画像。(D)PC2色素濃度の関数として示される(C)から得られたPC2の正規化表面蛍光強度。表面蛍光画像強度は、ImageJを用いた強度分析により得られたものである。
【
図2D】
図2:SAIB:x−SAIB:EtOH 70:10:20中のフタロシアニン色素PC2の蛍光自己消光分析。(A)色素濃度の関数として示されるPC2の蛍光放出スペクトル。(B)PC2色素濃度の関数として示される(A)において得られたPC2の正規化最大蛍光強度。放出スペクトルは、768nmにおける励起により、3反復で記録した。(C)ある範囲の異なるPC2色素濃度に関してEtOHの存在下(+EtOH)および不在下(−EtOH)で記録した表面蛍光強度画像。(D)PC2色素濃度の関数として示される(C)から得られたPC2の正規化表面蛍光強度。表面蛍光画像強度は、ImageJを用いた強度分析により得られたものである。
【
図3】
図3:SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20配合物からのPC2色素のin vitro放出。バッファーへの注入後6日目のPBS放出媒体中のPC2のUVvisスペクトル(3反復で実施)。10%放出に相当する標準を参照に含めた。6日の時間枠内で放出されたPC2色素はほとんど無かった。
【
図4A】
図4:UVvisおよび蛍光により調べたSAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20中のPC2色素の銅誘導性消光。(A)Cu/PC2比の関数として示されるPC2の正規化吸収スペクトル。(B)Cu/PC2比の関数として示されるPC2の正規化蛍光強度。
【
図4B】
図4:UVvisおよび蛍光により調べたSAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20中のPC2色素の銅誘導性消光。(A)Cu/PC2比の関数として示されるPC2の正規化吸収スペクトル。(B)Cu/PC2比の関数として示されるPC2の正規化蛍光強度。
【
図5A】
図5:SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20またはLOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2 70:10:20:0.1中に配合した場合のSSIB−Cy7.5の蛍光放出。(A)異なるSSIB−Cy7.5色素濃度での、SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物中のSSIB−Cy7.5の蛍光放出。(B)LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01の正規化吸光度および放出。
【
図5B】
図5:SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20またはLOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2 70:10:20:0.1中に配合した場合のSSIB−Cy7.5の蛍光放出。(A)異なるSSIB−Cy7.5色素濃度での、SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物中のSSIB−Cy7.5の蛍光放出。(B)LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01の正規化吸光度および放出。
【
図6A】
図6:雄ラットの大腿および精巣からのSSIB−Cy7.5 NIRマーカー(LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01)の外科的切除。ラットの右大腿からの外科的切除のRGB(A)およびNIR(B)画像。ラットの精巣内のマーカーのRGB(C)およびNIR(D)画像(NIRカメラ積分時間40ミリ秒)。
【
図6B】
図6:雄ラットの大腿および精巣からのSSIB−Cy7.5 NIRマーカー(LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01)の外科的切除。ラットの右大腿からの外科的切除のRGB(A)およびNIR(B)画像。ラットの精巣内のマーカーのRGB(C)およびNIR(D)画像(NIRカメラ積分時間40ミリ秒)。
【
図6C】
図6:雄ラットの大腿および精巣からのSSIB−Cy7.5 NIRマーカー(LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01)の外科的切除。ラットの右大腿からの外科的切除のRGB(A)およびNIR(B)画像。ラットの精巣内のマーカーのRGB(C)およびNIR(D)画像(NIRカメラ積分時間40ミリ秒)。
【
図6D】
図6:雄ラットの大腿および精巣からのSSIB−Cy7.5 NIRマーカー(LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01)の外科的切除。ラットの右大腿からの外科的切除のRGB(A)およびNIR(B)画像。ラットの精巣内のマーカーのRGB(C)およびNIR(D)画像(NIRカメラ積分時間40ミリ秒)。
【
図7A】
図7:ブタ肺組織におけるSSIB−Cy7.5マーカー(LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01)の注入。(A)開放胸腔。(B)3箇所における100μL SSIB−Cy7.5マーカーの注入。(C)マーカーの位置および組織深度のRGB画像(左=深部、中央=中間、右=表面)。(D)3つのマーカーのNIR画像(積分時間83ミリ秒)。CとDには、3つのマーカーの位置を強調するために破線の円を挿入している。
【
図7B】
図7:ブタ肺組織におけるSSIB−Cy7.5マーカー(LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01)の注入。(A)開放胸腔。(B)3箇所における100μL SSIB−Cy7.5マーカーの注入。(C)マーカーの位置および組織深度のRGB画像(左=深部、中央=中間、右=表面)。(D)3つのマーカーのNIR画像(積分時間83ミリ秒)。CとDには、3つのマーカーの位置を強調するために破線の円を挿入している。
【
図7C】
図7:ブタ肺組織におけるSSIB−Cy7.5マーカー(LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01)の注入。(A)開放胸腔。(B)3箇所における100μL SSIB−Cy7.5マーカーの注入。(C)マーカーの位置および組織深度のRGB画像(左=深部、中央=中間、右=表面)。(D)3つのマーカーのNIR画像(積分時間83ミリ秒)。CとDには、3つのマーカーの位置を強調するために破線の円を挿入している。
【
図7D】
図7:ブタ肺組織におけるSSIB−Cy7.5マーカー(LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01)の注入。(A)開放胸腔。(B)3箇所における100μL SSIB−Cy7.5マーカーの注入。(C)マーカーの位置および組織深度のRGB画像(左=深部、中央=中間、右=表面)。(D)3つのマーカーのNIR画像(積分時間83ミリ秒)。CとDには、3つのマーカーの位置を強調するために破線の円を挿入している。
【
図8A】
図8:
64Cuで放射性標識したSAIB:xSAIB:EtOH:PC2(70:10:20:0.01)のラジオ−TLCクロマトグラム。(A)SAIB:xSAIB:EtOHマーカーにおける
64Cu−PC2の複合体形成(結果はRf=0.9〜1.0)。(B)PC2を含有しないSAIB:xSAIB:EtOHマーカーの放射性標識の対照実験(結果はRf=0)。
【
図8B】
図8:
64Cuで放射性標識したSAIB:xSAIB:EtOH:PC2(70:10:20:0.01)のラジオ−TLCクロマトグラム。(A)SAIB:xSAIB:EtOHマーカーにおける
64Cu−PC2の複合体形成(結果はRf=0.9〜1.0)。(B)PC2を含有しないSAIB:xSAIB:EtOHマーカーの放射性標識の対照実験(結果はRf=0)。
【
図9A】
図9:PC2色素を含有する
64Cu放射性標識SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物の導入効率およびin vitro放出。(A)PC2色素濃度の関数として示される
64Cu放射性標識SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物の導入効率。(B)種々のPC2色素濃度を含有するSAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に関する、時間の関数として示されるTRIS緩衝EDTAリポソーム含有媒体中への
64Cuのin vitro放出。実験は総て3反復で行い、結果は平均±SEMとして示す。
【
図9B】
図9:PC2色素を含有する
64Cu放射性標識SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物の導入効率およびin vitro放出。(A)PC2色素濃度の関数として示される
64Cu放射性標識SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物の導入効率。(B)種々のPC2色素濃度を含有するSAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物に関する、時間の関数として示されるTRIS緩衝EDTAリポソーム含有媒体中への
64Cuのin vitro放出。実験は総て3反復で行い、結果は平均±SEMとして示す。
【
図10A】
図10:注入後の時間の関数としての、
64Cuの生体分布、マーカー体積、およびマーカー蛍光強度の変化。(A)PETに基づくマーカー、肝臓、心臓および膀胱における
64Cuの生体分布。(B)時間の関数として示されるマーカー体積。(C)投与後の時間の関数として示されるマーカーから放出された総NIR蛍光強度。(D)臓器のウェルカウントデータに基づく注入48時間後の
64Cuの生体分布。
【
図10B】
図10:注入後の時間の関数としての、
64Cuの生体分布、マーカー体積、およびマーカー蛍光強度の変化。(A)PETに基づくマーカー、肝臓、心臓および膀胱における
64Cuの生体分布。(B)時間の関数として示されるマーカー体積。(C)投与後の時間の関数として示されるマーカーから放出された総NIR蛍光強度。(D)臓器のウェルカウントデータに基づく注入48時間後の
64Cuの生体分布。
【
図10C】
図10:注入後の時間の関数としての、
64Cuの生体分布、マーカー体積、およびマーカー蛍光強度の変化。(A)PETに基づくマーカー、肝臓、心臓および膀胱における
64Cuの生体分布。(B)時間の関数として示されるマーカー体積。(C)投与後の時間の関数として示されるマーカーから放出された総NIR蛍光強度。(D)臓器のウェルカウントデータに基づく注入48時間後の
64Cuの生体分布。
【
図10D】
図10:注入後の時間の関数としての、
64Cuの生体分布、マーカー体積、およびマーカー蛍光強度の変化。(A)PETに基づくマーカー、肝臓、心臓および膀胱における
64Cuの生体分布。(B)時間の関数として示されるマーカー体積。(C)投与後の時間の関数として示されるマーカーから放出された総NIR蛍光強度。(D)臓器のウェルカウントデータに基づく注入48時間後の
64Cuの生体分布。
【
図11】
図11:
64Cu放射性標識SAIB:xSAIB:EtOH:PC2 70:10:20:0.01マーカー配合物を皮下注入した1個体のマウスの代表的画像。冠状PETおよびCT画像は注入1時間、24時間および48時間後に示され、FLI画像は注入1時間、24時間、48時間、2週間、3週間および4週間後のPC2のNIR蛍光を示す。
【
図12A】
図12:(A)
64Cu(8HQ)放射性標識LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01マーカーを皮下注入したマウスのPET/CT/FLI/NIR画像、ならびに対応する
64Cu生体分布、NIR蛍光強度およびマーカー体積の変化。(B)時間の関数としてのマーカー、肝臓および腎臓における
64Cu生体分布。(C)注入18時間および44時間後のマーカーからのNIR蛍光において記録された総フラックス。(D)注入後の時間の関数として示されるマーカーの相対体積変化。
【
図12B】
図12:(A)
64Cu(8HQ)放射性標識LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01マーカーを皮下注入したマウスのPET/CT/FLI/NIR画像、ならびに対応する
64Cu生体分布、NIR蛍光強度およびマーカー体積の変化。(B)時間の関数としてのマーカー、肝臓および腎臓における
64Cu生体分布。(C)注入18時間および44時間後のマーカーからのNIR蛍光において記録された総フラックス。(D)注入後の時間の関数として示されるマーカーの相対体積変化。
【
図12C】
図12:(A)
64Cu(8HQ)放射性標識LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01マーカーを皮下注入したマウスのPET/CT/FLI/NIR画像、ならびに対応する
64Cu生体分布、NIR蛍光強度およびマーカー体積の変化。(B)時間の関数としてのマーカー、肝臓および腎臓における
64Cu生体分布。(C)注入18時間および44時間後のマーカーからのNIR蛍光において記録された総フラックス。(D)注入後の時間の関数として示されるマーカーの相対体積変化。
【
図12D】
図12:(A)
64Cu(8HQ)放射性標識LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01マーカーを皮下注入したマウスのPET/CT/FLI/NIR画像、ならびに対応する
64Cu生体分布、NIR蛍光強度およびマーカー体積の変化。(B)時間の関数としてのマーカー、肝臓および腎臓における
64Cu生体分布。(C)注入18時間および44時間後のマーカーからのNIR蛍光において記録された総フラックス。(D)注入後の時間の関数として示されるマーカーの相対体積変化。
【
図13】
図13:時間の関数として示される50μLの
125I放射性標識LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5マーカー配合物を皮下注入した1個体のマウスの代表的SPECT/CTおよびFLI/X線画像。注入10分、1週間、2週間および3週間後にマウスをスキャンし、画像化した。
【0026】
本開示は、NIR造影剤などの蛍光色素を含んでなる溶液に関し、この溶液は、in vivoなどの水性条件下で固化して、例えば、ゲル、ガラス、半固体、固体、結晶またはそれらの任意の混合物を形成し、それにより、この溶液は、規定の位置、例えば、腫瘍部位における蛍光色素の定着を提供する。
【0027】
本開示の溶液はまた、in vivoイメージングのためおよび手術中の誘導のための基準マーカーとしても使用可能である。
【0028】
定義
用語「溶液」は、本明細書で使用する場合、本発明の成分を含んでなる液体組成物を指す。1つの実施態様において、総ての成分を前記液体組成物に溶解させる。別の実施態様において、一部または総ての成分を前記液体組成物に分散させて、例えば、コロイド分散液を作製する。用語「溶液」および「分散液」は本明細書では互換的に使用できる。
【0029】
用語「溶液の固化」は、本明細書で使用する場合、物理的特性の変化、溶液であれば、流体形態からゲル形態、半固体形態、固体形態、結晶性形態またはそれらの任意の組合せへの変化を指す。本開示の溶液は、in vivo条件などの水性条件に曝されるまで流体形態であり、有機溶媒が周囲の環境に拡散すると、溶液が固化してゲル、半固体、固体、結晶またはその任意の組合せを形成する。言い換えると、水性条件下で「溶液は固化して」ゲル、半固体、固体、結晶またはその任意の組合せを形成する。よって、「固化した溶液」という場合には、水性条件下でこの溶液によって形成されたゲル、半固体、個体、結晶またはその任意の組合せを指す。同様に、ゲル、ゲル混合物、半固体、固体、結晶またはその任意の組合せという場合には、本発明の溶液を水性条件に曝すことから生じる組成物またはデポ(depot)を指す。よって「固化した溶液の形態」は、ゲル、半固体、固体、結晶またはその任意の組合せであり得る。用語「固化した溶液」、「ゲル」および「デポ」は、本明細書では互換的に使用できる。
【0030】
用語「logP」は、本明細書で使用する場合、所与の化合物の、水相と1−オクタノール相間の分配係数を指す。logPは、水相と1−オクタノール相中の、所与の化合物の濃度比の対数として示される。logPは、これら2相における化合物の溶解度の違いの尺度である。正のlogP値は一般に疎水性化合物に特徴的であり、負のlogP値は親水性化合物を示す。
【0031】
用語「水性条件」、本明細書で使用する場合、主として水を含んでなる溶液および/または条件を指す。水性条件は、バッファー系などのin vitro条件であり得る。あるいは、水性条件は、腫瘍部位など、in vivo条件とも呼ばれるヒトまたは動物組織内であり得る。
【0032】
用語「含んでなる」は、包含形式で理解されるべきである。従って、例として、化合物Xを含んでなる組成物は、化合物Xおよび任意選択で付加的化合物を含んでなり得る。
【0033】
用語「フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)」は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、共鳴エネルギー移動(RET)または電子エネルギー移動(EET)としても知られ、2つの感光性分子(発色団)間のエネルギー移動を表すメカニズムを指す。ドナー発色団は、最初は電子励起状態にあり、非発光性の双極子間カップリングを介してアクセプター発色団にエネルギーを移動し得る。このエネルギー移動の効率は、ドナーとアクセプター間の距離の6乗に反比例し、これはFRETを距離の小さな変化に対して極めて高感度とする。
【0034】
溶液
本開示は、水不溶性炭水化物、蛍光色素および有機溶媒を含んでなる溶液に関する。水性条件下で、有機溶媒は周囲の環境に拡散して、溶液の固化による例えば、ゲル、ガラス、半固体、固体、結晶またはその任意の組合せの形成をもたらす。
【0035】
よって、1つの実施態様において、本開示は、
a.水不溶性炭水化物、
b.蛍光色素、および
c.−2〜2の範囲のlogPを有する有機溶媒
を含んでなる溶液に関する。
【0036】
これらの溶液は、本明細書では「マーカー」と呼ばれる場合がある。
【0037】
この溶液は、溶液および/または固化した溶液において蛍光色素の拡散速度を制御するように設計される。より好ましくは、この溶液は、溶液および/または固化した溶液からの蛍光色素の拡散速度を制御するように設計される。前記拡散速度を制御することにより、溶液および/または固化した溶液からの蛍光色素の放出または保持が制御される。これは、水性条件下で蛍光色素の制御放出または蛍光色素の保持を提供する溶液の設計を可能とする。
【0038】
本開示の溶液の投与は、目的の部位における注入により行うことができる。よって、1つの実施態様において、本開示の溶液は、注入針によって注入可能である。本開示の溶液は粘稠な溶液であってもよい。よって、1つの実施態様において、溶液は、1〜1000cPの範囲、例えば1〜750cPの範囲、例えば1〜500cPの範囲、例えば1〜250の範囲、例えば1〜100の範囲、例えば100〜1000cPの範囲、例えば100〜500cPの範囲の粘度を有する。
【0039】
この溶液の水不溶性炭水化物は、溶液が水性条件下で固化する特性を提供する。溶液および固化した溶液の疎水性および粘度は、前記水不溶性炭水化物の性質により制御することができ、それにより、蛍光色素の拡散速度が制御される。
【0040】
本開示の固化した溶液は一般に、in vivoで3〜12か月以内に分解される。本開示の溶液の水不溶性炭水化物は、分解または加水分解時に組織、臓器などで十分な忍容性がある糖類の形成をもたらす生分解性化合物である。
【0041】
1つの態様において、溶液の蛍光色素は2を上回るlogPを有する。logPが高い蛍光色素は、LogPが低い蛍光色素に比べて、定着した溶液から水相へ拡散しにくいものであり得る。蛍光色素の疎水性は、蛍光色素の溶液中での拡散速度を低くすることおよび/または水相に対するその親和性を低くし、それにより、定着した溶液内に蛍光色素が保持されることを保証する。蛍光色素はそれにより投与部位に保持され、基準マーカーの正確な局在が可能となる。
【0042】
第2の態様において、この溶液の蛍光色素は、ポリエチレングリコール(PEG)に共有結合的にコンジュゲートされ、2000を超える分子量を有する。PEGの親水性は、溶液からの蛍光色素の放出をもたらし、その後、蛍光色素−PEGコンジュゲートは、それを必要とする個体に投与されると、リンパ系に入り、リンパ節に蓄積し得る。
【0043】
この溶液の溶媒は、水不溶性炭水化物および蛍光色素を溶解させる働きをする。溶媒は、a)この溶液の成分を溶解させることができ、かつb)水性条件下で溶液から周囲の環境へ拡散することができる特性を有するべきである。
【0044】
1つの実施態様において、有機溶媒の量は、1〜30%、例えば1〜20%、例えば1〜15%、例えば1〜10%、例えば5〜10%の範囲である。
【0045】
本開示の溶液は、1つの実施態様において、モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドなどの、本明細書では補助溶媒とも呼ばれるさらなる溶媒をさらに含んでなってもよい。
【0046】
よって、1つの実施態様において、本開示は、
a.水不溶性炭水化物、
b.蛍光色素、
c.−2〜2の範囲のlogPを有する有機溶媒、ならびに
d.モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドなどのさらなる溶媒
を含んでなる溶液に関する。
【0047】
1つの実施態様において、さらなる溶媒の量は、0〜50%の範囲、例えば0〜40%の範囲、例えば0〜30%の範囲、例えば0〜20%の範囲、例えば0〜10%の範囲である。
【0048】
本開示の溶液は、造影剤をさらに含んでなってもよい。このような造影剤は、例えばin vivoにおいて定着させると、溶液の、NIR以外の画像診断法による可視化を可能とする。
【0049】
よって、1つの実施態様において、本開示は、
a.水不溶性炭水化物、
b.蛍光色素、
c.−2〜2の範囲のlogPを有する有機溶媒、ならびに
d.造影剤
を含んでなる溶液に関する。
【0050】
別の実施態様において、本開示は、
a.水不溶性炭水化物、
b.蛍光色素、
c.−2〜2の範囲のlogPを有する有機溶媒、
d.モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドなどのさらなる溶媒、ならびに
e.造影剤
を含んでなる溶液に関する。
【0051】
1つの実施態様において、本開示は、
a.40〜60w/w%の範囲の式(II)の水不溶性炭水化物、
b.0,001〜1w/w%の範囲のCu−64配位2,11,20,29−テトラ−tert−ブチル−2,3−ナフタロシアニン、
c.15〜25w/w%の範囲のエタノール、および
d.20〜40w/w%の範囲の式(III)の造影剤
を含んでなる溶液に関する。
【0052】
1つの実施態様において、本開示は、前記蛍光色素の制御放出をもたらす溶液に関する。
【0053】
別の実施態様において、本開示は、前記蛍光色素の保持をもたらす溶液に関する。
【0054】
水不溶性炭水化物
この溶液の水不溶性炭水化物は、溶液が水性条件下で固化する特性を提供する。溶液および固化した溶液の疎水性および粘度は、前記水不溶性炭水化物の性質により制御することができ、それにより、蛍光色素の拡散速度が制御される。さらに、固化した溶液の形態は、溶液の水不溶性炭水化物を変更することにより変更可能である。
【0055】
用語「水不溶性炭水化物」は、本明細書で使用する場合、2〜20の範囲、例えば2〜15の範囲、例えば2〜10の範囲、例えば2〜5の範囲、例えば4〜20の範囲、例えば4〜15の範囲、例えば4〜10の範囲のlogPを有する炭水化物を指す。水不溶性炭水化物は、いずれの単糖、二糖、三糖またはオリゴ糖であってもよい。
【0056】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、単糖類、二糖類、三糖類およびオリゴ糖類からなる群から選択される。
【0057】
用語「オリゴ糖」は、本明細書で使用する場合、10までの単糖単位、例えば9までの単糖単位、例えば8までの単糖単位、例えば7までの単糖単位、例えば6までの単糖単位、例えば5までの単糖単位、例えば4までの単糖単位を含んでなる糖ポリマーを指す。オリゴ糖は直鎖であってもまたは分岐していてもよい。
【0058】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン、マンノース、ラムノース、ラムノサミン、ガラクトース、アロース、アロサミン、アルトロース、アルトロサミン、グロース、グロサミン、イドース、イドサミン、タロースおよびタロサミンからなる群から選択される単糖である。
【0059】
本開示の糖類は、L型またはD型のいずれでもよい。さらに、二糖類、三糖類およびオリゴ糖類の単糖単位は、αまたはβのいずれのグリコシド結合によって連結されてもよく、いずれの比のα,βアノマー混合物も存在してよい。
【0060】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、マルトース、トレハロース、ラクトース、スクロース、Galp−(1→2)−Glc、Galp−(1→3)−GlcN、Galp−(1→4)−Glc、Glcp−(1→4)−Glc、Glcp−(1→6)−Glc、Glcp−(1→2)−GlcN、Galp−(1→4)−ManN、Glcp−(1→4)−GalN、Manp−(1→3)−Glc、ManNp−(1→4)−Gal、GalNp−(1→3)−ManN、GlcNp−(1→6)−GalN、Rhamnp−(1→6)−Glc、Glcp−(1→1)−Glcp、Talp−(1→4)−Glu、Glup(1→3)−ldo、GlcNp−(1→4)−GlcN、GlcNp−(1→6)−GlcNからなる群から選択される二糖である。
【0061】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、マルトース、トレハロース、ラクトースおよびスクロースからなる群から選択される二糖である。
【0062】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、ラフィノース、Galp−(1→2)−Glcp−(1→3)−Galp、Galp−(1→4)−Glcp−(1→6)−GlcN、Galp−(1→4)−Glcp−(1→6)−Gal、Glcp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glcp、Glcp−(1→6)−Glcp−(1→6)−Glc、Galp−(1→6)−Glcp(1→2)−Fruf、Glcp−(1→3)−Fruf−(2→1)−Glcp、Galp−(1→4)−ManNp−(1→3)−Glu、Glcp−(1→4)−GalN−(1→2)−Man、Manp−(1→3)−Glcp−(1→4)−GlcN、ManNp−(1→4)−Galp−(1→3)−Glc、GalNp−(1→3)−ManNp−(1→6)−GlcN、Rhamnp−(1→6)−Glcp−(1→4)−GlcN、Galp−(1→6)−Glcp−(1→1)−Glcp、Talp−(1→4)−Glup−(1→2)−Man、Glup(1→3)−ldop−(1→6)−Glu、GlcNp−(1→6)−GlcNp(1→4)−GlcNからなる群から選択される三糖である。
【0063】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物はラフィノースである。
【0064】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、Galp−(1→4)−Glcp−(1→6)−glcp−(1→4)−Glc、Galp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glc、Galp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Galp−(1→4)−Glc、Glcp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glc、Galp−(1→6)−Glcp−(1→6)−Galp−(1→6)−Glc、Galp−(1→6)−Glcp−(1→6)−Galp−(1→4)−Glc、Galp−(1→6)−Glcp−(1→6)−Glcp−(1→4)−Glc、GlcNp−(1→4)−GlcNp−(1→6)−GlcNp−(1→4)−GlcN、GlcNp−(1→6)−Galp−(1→6)−Glcp−(1→2)−Fruf、Galp−(1→4)−Glcp−(1→3)−Fruf−(2→1)−Glcp、Talp−(1→4)−Glup−(1→2)−Man−(1−3)−Glu、Glup(1→3)−ldop−(1→6)−Glup−(1→2)−Gal、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロースおよび酢酸プロプリオン酸(proprionate)セルロースからなる群から選択されるオリゴ糖である。
【0065】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、エステルを形成するように官能化された1以上のヒドロキシル基を含んでなる。このようなエステルは、炭水化物のヒドロキシル基とアルカノイルのカルボニル基の間の結合により形成され得る。
【0066】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、C2−C7エステルを形成するように官能化された1以上のヒドロキシル基を含んでなる。
【0067】
用語「Cn−Cmエステル」は、本明細書で使用する場合、アルコールとnおよびm個の炭素原子を含んでなるアルカノイルの間の結合により形成されたエステル官能基を指す。例えば、C2−C7エステルは、アルコールとC2−C7アルカノイル、すなわち、2〜7個の炭素原子を含んでなるアルカノイルのカルボニル基の間の結合により形成されたエステル官能基である。
【0068】
よって、1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、エステルを形成するように官能化された1以上のヒドロキシル基を含んでなり、これらのエステルは、炭水化物のヒドロキシル基とアルカノイルのカルボニル基の間の結合により形成される。
【0069】
1つの実施態様において、エステルを形成するように官能化された水不溶性炭水化物のヒドロキシル基の数は、n、n−1、n−2、n−3、n−4またはn−5であり、ここで、nは、炭水化物のヒドロキシル基の総数である。
【0070】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物の総てのヒドロキシル基がエステルを形成するように官能化されている。
【0071】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物のエステルは、C2−C10エステル、例えばC2−C9エステル、例えばC2−C8エステル、例えばC2−C7エステル、例えばC2−C6エステル、例えばC2−C5エステル、例えばC2−C4エステル、例えばC2−C3エステルである。
【0072】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物のエステルは、C2−C7エステルである。
【0073】
1つの実施態様において、アルカノイルは、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、イソブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイルおよびベンゾイルから選択される。
【0074】
1つの実施態様において、アルカノイルは、アセチル、プロパノイル、イソブタノイルおよびベンゾイルから選択される。
【0075】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、オクタイソ酪酸マルトース(MOIB)、ジ酢酸ヘキサイソ酪酸スクロース(SAIB)、オクタイソ酪酸スクロース(SOIB)、オクタイソ酪酸ラクトース(LOIB)、オクタイソ酪酸トレハロース(TOIB)からなる群から選択される。
【0076】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、ジ酢酸ヘキサイソ酪酸スクロース(SAIB)およびオクタイソ酪酸ラクトース(LOIB)からなる群から選択される。
【0077】
水不溶性炭水化物は、異なる水不溶性炭水化物の混合物であり得る。ある実施態様において、水不溶性炭水化物は、オクタイソ酪酸ラクトースとオクタ安息香酸ラクトースの混合物、またはオクタイソ酪酸ラクトースとオクタ安息香酸スクロースの混合物である。
【0078】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、式(I)の構造を有する。
【化1】
【0079】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、式(II)の構造を有する。
【化2】
【0080】
1つの実施態様において、水不溶性炭水化物は、十一イソ酪酸ラフィノースである。
【0081】
蛍光色素
1つの実施態様において、蛍光色素は、ローダミン、BODIPY、Alexa Fluor、NBD、シアニン色素(Cy3)およびカルボキシフルオレセインからなる群から選択される。
【0082】
1つの実施態様において、蛍光色素は、NIR造影剤である。
【0083】
従来のおよび近赤外線(NIR)蛍光団は、荷電基の組み込みおよびまたはPEGなどの親水性ポリマーにより、水溶液中で可溶性となるように化学的に修飾されない限り、疎水性(logP>0)であることを特徴とする高度にコンジュゲートされた分子から構成されることが多い。このような色素の疎水性の特徴は、本開示の疎水性溶液との良好な適合性を保証し、溶液および/または固化した溶液中での高い保持を可能とする。このような蛍光団は、様々なサイズのストークシフトにより分離される励起スペクトルおよび放出スペクトルによって特徴付けられる。従来の蛍光団は、可視スペクトル(200〜700nm)域で光子を放出し、NIR−1蛍光団は、700〜900nm域で光子を放出するが、NIR−II蛍光団は、900nmを超える領域で光子を放出する。しかしながら、組織吸収およびの光子散乱は可視スペクトル域(600nm未満)で高く、結果として従来の蛍光団から放出される蛍光は、減衰性が高い。600nmw超えると、組織吸光度は著しく低下し、放出される光子の散乱は光子波長の関数としてますます低下する。よって、NIR−IおよびNIR−II領域で光を発する蛍光団は、数センチメートルの組織深度で可視化でき、すなわち、励起および放出された光子は数センチメートルの組織を通過でき、これにより、手術中に臓器内でNIRカメラを用いてNIR標識マーカーの特定が可能となる。NIR−IおよびNIR−IIスペクトル領域内で組織からのより低レベルの自家蛍光もまたシグナル/ノイズ比を改善し、組織におけるこのような色素のより良い検出力を可能とする。NIR−II色素は、組織内で光子散乱の最大の低下を受け、より深い組織深度での可視化およびより集中した(拡散の少ない)蛍光シグナルの獲得を可能とし、これが基準マーカーを用いた外科的イメージングの主要な利点である。
【0084】
1つの実施態様において、2種または多種の色素がこの溶液に組み込まれ、これにより、FRET(フェルスター共鳴エネルギー移動)が可能となる。このような多種の蛍光団の包含は、励起光と放出光の間により大きなシフトを誘導するのに役立ち得る。
【0085】
生体分子コンジュゲーションのための標識試薬として使用される現行の有機蛍光団は、光安定性に制限がある。これは、光安定性蛍光レポート基を必要とする適用においては、それらの性能を損なう。例えば、分子イメージングおよび単分子顕微鏡では、長期間にわたって個々の分子イベントを観測および追跡するためには、光安定性蛍光標識が重要である。本開示においては、高濃度の色素を溶液に組み込むことができ、光退色の問題が回避される。
【0086】
さらに、組み込まれた色素のより高い光安定性は、これが長期イメージングを可能とし、反復曝露/NIRイメージングの後または他の光源に曝された際であってもNIRマーカーとしてのこの溶液性能の再現性を保証するので保証される。保存安定性の改善は、より高い光安定性のさらにもう1つの結果である。フタロ−およびナフタロ−シアニン色素およびポルフィリン色素は、溶液中に包理するため最適な疎水性NIR色素であり、従来の有機色素に比べて、極端な光安定性を示す。これらの色素は、現行の近IR蛍光団、例えば、Alexa Fluor(登録商標)680、Cy5.5、Cy7およびIRDye(商標)800CW色素の約40〜125倍の光安定性であり、最も光安定性の高い有機色素の1つであるテトラメチルローダミン(TMR)の約20倍の光安定性である。
【0087】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、NIR−I造影剤である。
【0088】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、NIR−II造影剤である。
【0089】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、インドシアニングリーン(ICG)、メチレンブルー(MB)、CH1055、IRDye800CW、非スルホン化およびスルホン化シアニン色素(Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5)、両性イオンシアニン色素(ZW800−1)、ホスホン酸シアニン色素(Pam78、P800SO3)、第四級アンモニウムシアニン色素(C700−OMe、C800−OMe)、BODIPY色素(mPB、BAP−5)、Alexa Fluor色素(Alexa Fluor 702、Alexa Fluor 749およびAlexa Fluor 790からなる群から選択される。
【0090】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、シアニン7.5−アルキン、シアニン7.5−アミン、シアニン7.5−アジド、シアニン7.5−カルボン酸、シアニン7.5−ヒドラジド、シアニン7.5−マレイミド、シアニン7.5−NHSエステル、シアニン7.5−テトラジン、シアニン7−アルキン、シアニン7−アミン、シアニン7−アジド、シアニン7−カルボン酸、シアニン7−ヒドラジド、シアニン7−マレイミド、シアニン7−NHSエステル、シアニン7−テトラジン、Cy5−アルキンおよびCy5.5−アルキンからなる群から選択されるシアニン色素である。
【0091】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、シアニン7.5−アルキン、シアニン7.5−アミン、シアニン7.5−アジド、シアニン7.5−カルボン酸、シアニン7.5−ヒドラジド、シアニン7.5−マレイミド、シアニン7.5−NHSエステルおよびシアニン7.5−テトラジンからなる群から選択されるシアニン色素である。
【0092】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、シアニン7−アルキン、シアニン7−アミン、シアニン7−アジド、シアニン7−カルボン酸、シアニン7−ヒドラジド、シアニン7−マレイミド、シアニン7−NHSエステルおよびシアニン7−テトラジンからなる群から選択されるシアニン色素である。
【0093】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、Cy5−アルキン、Cy5.5−アルキン、Cy7−アルキンおよびCy7.5−アルキンからなる群から選択されるシアニン色素である。
【0094】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、ポルフィリン、フタロシアニンおよびナフタロシアニンからなる群から選択される。
【0095】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、2,9,16,23−テトラ−tert−ブチル−29H,31H−フタロシアニン、1,4,8,11,15,18,22,25−オクタブトキシ−29H,31H−フタロシアニン、2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(オクチルオキシ)−29H,31H−フタロシアニン、2,11,20,29−テトラ−tert−ブチル−2,3−ナフタロシアニン、5,9,14,18,23,27,32,36−オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニンおよびアントラコシアニンからなる群から選択される。
【0096】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、2,9,16,23−テトラ−tert−ブチル−29H,31H−フタロシアニン、1,4,8,11,15,18,22,25−オクタブトキシ−29H,31H−フタロシアニン、2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(オクチルオキシ)−29H,31H−フタロシアニンおよび2,11,20,29−テトラ−tert−ブチル−2,3−ナフタロシアニン、5,9,14,18,23,27,32,36−オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニンからなる群から選択される。
【0097】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、IFP1.4、IFP2.0、iRFP713およびmiRFP703からなる群から選択される。
【0098】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、IR−780、IR−792、IR−895、IR−140、IR−26/27、IR−1048、IR−1061、NIR−II蛍光団−H1(3,6−ビス[5−{7−アミノ−9,9−ビス−[2−(2−トリメチルシラニル−エトキシカルボニル)−エチル]−9H−フルオレン−2−イル}−チオフェン−2−イル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール)、1,4,8,11,15,18,22,25−オクタブトキシ−29H,31H−フタロシアニンおよび5,9,14,18,23,27,32,36−オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニンからなる群から選択される。
【0099】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、IR−780、IR−792、IR−895、IR−140、IR−26/27、IR−1048およびIR−1061からなる群から選択される。
【0100】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、NIR−II蛍光団−H1、1,4,8,11,15,18,22,25−オクタブトキシ−29H,31H−フタロシアニンおよび5,9,14,18,23,27,32,36−オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニンからなる群から選択される。
【0101】
1つの実施態様において、NIR造影剤は、金属に配位している。このようなNIR造影剤の金属への配位は、NIR造影剤の励起波長および放出波長の微調整を容易にし得る。金属に配位しているNIR造影剤の例としては、限定されるものではないが、鉛(II)フタロシアニン、マンガン(II)フタロシアニン、Cu(II)フタロシアニン、コバルト(II)フタロシアニン、アルミニウム(III)フタロシアニンクロリド、ガリウム(III)フタロシアニンクロリド、インジウム(III)フタロシアニンクロリド、鉄(III)フタロシアニンクロリド、マンガン(III)フタロシアニンクロリド、ニッケル(II)フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、チタン(IV)フタロシアニンジクロリド、亜鉛(II)フタロシアニン、バナジル3,10,17,24−テトラ−tert−ブチル−1,8,15,22−テトラキス(ジメチルアミノ)−29H,31H−フタロシアニン、バナジル2,3−ナフタロシアニン、コバルト(II)2,3−ナフタロシアニン、銅(II)2,3−ナフタロシアニン、銅(II)5,9,14,18,23,27,32,36−オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニン、ニッケル(II)5,9,14,18,23,27,32,36−オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニン、スズ(IV)2,3−ナフタロシアニンジクロリドおよびバナジル2,11,20,29−テトラ−tert−ブチル−2,3−ナフタロシアニンが含まれる。
【0102】
よって、1つの実施態様において、NIR造影剤は、鉛(II)フタロシアニン、マンガン(II)フタロシアニン、Cu(II)フタロシアニン、コバルト(II)フタロシアニン、アルミニウム(III)フタロシアニンクロリド、ガリウム(III)フタロシアニンクロリド、インジウム(III)フタロシアニンクロリド、鉄(III)フタロシアニンクロリド、マンガン(III)フタロシアニンクロリド、ニッケル(II)フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、チタン(IV)フタロシアニンジクロリド、亜鉛(II)フタロシアニンおよびバナジル3,10,17,24−テトラ−tert−ブチル−1,8,15,22−テトラキス(ジメチルアミノ)−29H,31H−フタロシアニンからなる群から選択される。
【0103】
別の実施態様において、NIR造影剤は、バナジル2,3−ナフタロシアニン、コバルト(II)2,3−ナフタロシアニン、銅(II)2,3−ナフタロシアニン、銅(II)5,9,14,18,23,27,32,36−オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニン、ニッケル(II)5,9,14,18,23,27,32,36−オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニン、スズ(IV)2,3−ナフタロシアニンジクロリドおよびバナジル2,11,20,29−テトラ−tert−ブチル−2,3−ナフタロシアニンからなる群から選択される。
【0104】
本開示による溶液は、種々の疎水性の溶媒と混合された水不溶性炭水化物に基づく。この溶液を例えば腫瘍部位へ投与すると、溶液の溶媒が周囲の環境に拡散して、その結果として粘度が増し、やがて溶液が固化して、例えば、ゲル、ガラス、半固体、固体、結晶またはそれらの任意の混合物を形成し、それにより、溶液の内容物の動的トラップが提供される。この溶液およびその内容物、例えば、おそらく放射性核種に配位している蛍光色素は、それにより、投与部位に保持される。蛍光団色素を効果的に動的トラップするためには、この溶液は固化しなければならず、それにより、その粘度は、固体デポの場合、100〜1000cPから100000〜1000000cPまたはそれ以上に増す。ストークス・アインシュタインの関係によれば、このような粘度の1000倍の上昇は、溶液における拡散速度に1000倍の低下をもたらし、それにより、色素が粘稠な溶液から抜け出さないようにする。同様に、拡散する色素の分子断面積を大きくすれば、色素の移動性がさらに低下し、溶液からの色素の漏出の低減につながる。漸増する分子断面積を有する色素の例は表1に示され、漸増する分子量を有する選択された色素が示される。拡散速度を低下させる目的で分子断面積を増すためのもう1つの戦略は、より大きな構築物、例えば、PNIPAMのPLAなどのポリマーにより小さな色素をコンジュゲートすることに頼るものである。
【0105】
よって、1つの実施態様において、蛍光色素は、PNIPAM、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、ペルフルオロカーボン、ポロキサマープルロニック、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(L−ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(ploy)(DL−ラクチド)(DLPLA)、ポリ(ジオキサノン)(PDO)、ポリ(DL−ラクチド−co−L−ラクチド)(LDLPLA)、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)(DLPLG)、ポリ(グリコリド−co−炭酸トリメチレン)PGA−TMC、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(LPLG)またはポリ(カプロラクトン)(PCL)からなる群から選択されるポリマーにコンジュゲートされる。
【0106】
あるいは、蛍光色素は、水不溶性炭水化物にコンジュゲートさせてもよい。水不溶性炭水化物は、本明細書の他所に定義されるようないずれの水不溶性炭水化物であってもよい。1つの実施態様において、蛍光色素は、SAIB、SSIB、LOIB、三糖類、オリゴ糖類(oligosaccharaides)およびセルロースを含んでなるリストから選択される水不溶性炭水化物にコンジュゲートされる。1つの実施態様において、蛍光色素は、SAIB、SSIB、LOIB、三糖類、オリゴ糖類(oligosaccharaides)およびセルロースからなる群から選択される水不溶性炭水化物にコンジュゲートされる。1つの実施態様において、蛍光色素Cy7.5は、水不溶性炭水化物SSIBにコンジュゲートされる。
【0107】
溶液に対する高い親和性と水性媒体に対する最小の親和性を有する色素を選択することにより、溶液の注入後、溶液が完全に固化し(5〜6時間)動的トラップが有効となる前に、溶液構成成分(色素、放射性核種など)は溶液中で熱力学的に安定となり得、漏出が防げる。溶液に対して高い親和性を有する色素は、4を上回る、例えば8を上回る、例えば12を上回るlogP値を有し、これは溶液と色素の疎水性の相互作用を強め、加えて、水性媒体中の色素の溶解度を最小とする。
【0108】
1つの実施態様において、蛍光色素は、2を上回る、例えば3を上回る、例えば4を上回る、例えば5を上回る、例えば6を上回る、例えば8を上回る、例えば10を上回る、例えば15を上回るlogPを有する。
【0109】
拡散の遅い蛍光色素
量子ドット(Qドット)は、それらのサイズ、およびまたは溶液に対する親和性を確保するためのPNIPAMなどのポリマーによる表面の官能化およびまたはポリマーのもつれにより生じる拡散の阻害のために本開示の溶液に動的にトラップされ得る粒子である。量子ドットは、NIR−IおよびNIR−II両方の光領域にわたって変種で存在する。
【0110】
Qドットは、さらに、有機蛍光団の使用に伴う消光の問題の一部を回避するための任意選択の解決策であり、代替の生物学的標識として浮上したのが量子ドットの使用である。Qドット標識の1つのユニークな特性は、粒子の大きさまたは化学組成を変更することにより放出波長が容易に調節できることである。従来の有機色素に比べ、Qドットは、a)長い蛍光寿命(>10ナノ秒);b)はるかにシャープな分離のよい放出ピーク;c)単一のUVまたは可視光源による効率的励起;およびd)明るい蛍光を有する。最も重要なこととして、量子ドットは、有機色素の最大限界である顕著な光安定性を示す。定量的測定では、Qドットは光退色に対してローダミン6Gの約100倍の安定性を示す。単一のQドットにより放出される光子の総数は、光退色を受ける前には、典型的な有機色素分子よりも1桁〜2桁高いと見積もられる。
【0111】
本開示に示される溶液から構成される動的トラップを利用するためのもう1つの代替戦略は、シアニン色素Cy5、Cy7.5などのようなより小さな色素に比べて断面積を増した粒子またはロッドの使用である。このような粒子は、抗力の増大のために粘稠な媒体中での拡散速度が低減されている。このような実施態様の例は、シアニン色素などの蛍光色素の官能基を有する1〜1000μmの大きさの金属またはポリマーナノ粒子である。あるいは、溶液中での保持を向上させるために、このような粒子の内部に低親和性色素を捕捉させてもよい。
【0112】
さらなる代替戦略は、量子ドットまたはカーボンナノチューブなどの固有の蛍光粒子またはロッドを利用することである。量子ドットおよびカーボンナノチューブは両方とも高い量子収率を持ち、NIR−I〜NIR−II、すなわち、500〜1600nmの光学域にわたる。
【0113】
よって、1つの実施態様において、本明細書に記載されるような溶液の蛍光色素は、量子ドット、ナノ粒子およびカーボンナノチューブからなる群から選択される。
【0114】
1つの実施態様において、蛍光色素は、CdTe、CdHgTe CdTe/ZnS、CdTe/CdSe、CdSeTe/CdS、CdTe/CdS/ZnS、PbS、PbS/CdS、PbS/CdS/ZnS、InAs/ZnS、InAs/ZnSe、InAs/InP/ZnSe、InAsxP
1−x/InP/ZnSe、CuInS
2/ZnS、(CuInSe
xS
2−x)/ZnS、Ag
2S Ag2SeおよびSiからなる群から選択される量子ドットである。
【0115】
1つの実施態様において、蛍光色素は、NaYF
4:Er、Ho、Tm、Pr(ホスト:ドーパント);NaGdF
4:Nd、Yb、Tm;SrF
2:Nd LaF
3:Nd;LiYF
4:Nd NaY
0.78Yb
0.2Er
0.02F
4からなる群から選択される希土類ナノ粒子である。
【0116】
1つの実施態様において、蛍光色素は、Au、AgまたはCuナノクラスターからなる群から選択される金属ナノクラスターである。
【0117】
1つの実施態様において、蛍光色素は、単層カーボンナノチューブなどのカーボンナノチューブである。
【0118】
有機溶媒
本開示の溶液の有機溶媒は、溶液の成分を溶解させる、例えば、水不溶性炭水化物および蛍光色素を溶解させる役割を果たす。蛍光色素が粒子として提供される場合、溶媒はそれらの粒子を分散させる。さらに、有機溶媒は水といくらかの混和性を有し、それにより、溶液と水相間の分配傾向を有するべきである。
【0119】
よって、1つの実施態様において、有機溶媒は、−2〜2の範囲、例えば−1.8〜1.8の範囲、例えば−1.5〜1.5の範囲、例えば−1〜1の範囲、例えば−2〜1の範囲、例えば−1.5〜1の範囲、例えば−1〜2の範囲、例えば−1〜1.5の範囲のlogPを有する。
【0120】
1つの実施態様において、有機溶媒は、アルコールである。
【0121】
1つの実施態様において、有機溶媒は、C1−C7アルコール、例えばC1−C6アルコール、例えばC1−C5アルコール、例えばC1−C4アルコールである。
【0122】
用語Cn−Cmアルコールは、本明細書で使用する場合、n〜m個の炭素原子を有するアルコールを指す。例えば、用語C1−C4アルコールは、1〜4個の炭素原子を有するアルコールを指す。
【0123】
1つの実施態様において、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネートおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択される。
【0124】
1つの実施態様において、有機溶媒は、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネートおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択される。
【0125】
1つの実施態様において、本開示の溶液中の有機溶媒の量は、1〜30%、例えば1〜20%、例えば1〜15%、例えば1〜10%、例えば5〜10%の範囲である。
【0126】
さらなる溶媒
本開示の溶液は、さらなる溶媒を含んでなり得る。さらなる溶媒は、本明細書に記載されるように補助溶媒とも呼ばれる。さらなる溶媒としては、限定されるものではないが、モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドを含み得る。
【0127】
溶液中へのさらなる溶媒の包含は、蛍光色素の放出速度を調節するための手段を提供し得る。1つの実施態様において、さらなる溶媒の量を増やすと、溶液および/または固化した溶液からの蛍光色素の放出が増える。
【0128】
1つの実施態様において、さらなる溶媒は、トリデカン酸グリセリル(GTD)、トリオクタン酸グリセリル(GTO)およびトリヘキサン酸グリセリル(GTH)からなる群から選択されるトリグリセリドである。
【0129】
1つの実施態様において、さらなる溶媒の量は、0〜50%の範囲、例えば0〜40%の範囲、例えば0〜30%の範囲、例えば0〜20%の範囲、例えば0〜10%の範囲である。
【0130】
画像診断法
本開示のいくつかの実施態様は、キレーターであるNIR造影剤などの蛍光色素を含有する。このような色素は、それらが例えばNIR蛍光装置を用いてこれらの溶液の可視化を可能とし、加えて放射性核種の錯化ができるので多機能である。このような溶液は、NIRカメラによって、また疎水性NIRキレーターを介して溶液に放射性核種を組み込むことによりPETまたはSPECT画像でも可視化され得る。このようなNIRキレーターの例は、ナフタロシアニンおよびフタロシアニン誘導体化色素、ポルフィリン誘導体化色素、例えば、テキサフィリンである。
【0131】
金属陽イオンをキレート化すると、NIRキレーター色素のスペクトル特性は変化し、これを基準マーカーの光学特性を改変するため、または注入後に組織に存在する特定の陽イオンを検出するために使用することができる。
【0132】
NIRおよびPETイメージングの両方により可視化できるこのような溶液を適用すると、外科医が例えば術前に注入後の基準マーカーをPETにより可視化すること、および外科的露出中にNIRカメラを用いて基準マーカーを識別することを可能とする。他の放射性核種タイプの組み込みはさらに、手術中のSPECTイメージングまたはハンドヘルドガンマプローブ検出誘導を可能とする。このような溶液の適用は、外科医が、ガンマプローブを用いてより深い組織深度で基準マーカーの位置を特定すること、およびNIRイメージングを用いて中間の組織深度で基準マーカーをなお可視化することを可能とする。
【0133】
加えて、ヨウ素化炭水化物エステル、ヨウ素化ポリマーまたは金ナノ粒子などの放射線不透性造影剤がこの溶液にさらに含まれてもよく、これはCTイメージングまたは外科手技中のX線透視法による誘導を可能とする。本開示の溶液はさらに、本質的に低水含量の材料のために磁気共鳴画像法(MRI)により、また、組織よりも高い粘度および/または延性のために超音波(US)により可視化可能である。
【0134】
NIR/PET/SPECT/CT/MRIおよびUS中で可視性を有する多モード基準マーカーとして機能する本開示の溶液は、それがいくつかの画像診断法において共通の参照点として使用される場合、これらの橋渡し/アラインメントの可能性を提供する。本開示の溶液はさらに,注入が容易であり、注入/移植中にUSまたはX線透視法によってリアルタイムで追跡可能であり、その後、外科医が手術中に、また、到達困難な対象を、深い組織深度ではガンマプローブ検出器、または浅い〜中間の組織深度ではNIRイメージングを用いて識別/位置特定することを可能とする。このようなマーカーのPETおよびSPECTイメージングはまた、外科手技において、マーカーが罹患組織/病変の位置を実際にマークする確認のため、またはリアルタイムSPECT誘導手術のためにも使用可能である。
【0135】
よって、1つの実施態様において、この溶液は、さらなる造影剤を含んでなる。
【0136】
画像診断法としては、限定されるものではないが、X線イメージング、CTイメージング、MRI、PETイメージング、単光子放射コンピューター断層撮影法(SPECT)イメージング、核シンチグラフィーイメージング、超音波検査イメージングおよび/または超音波イメージングが含まれる。
【0137】
1つの実施態様において、さらなる造影剤は、X線剤、CT剤、MRI剤、PET剤およびSPECT剤からなる群から選択される。
【0138】
1つの実施態様において、蛍光色素は、放射性核種に配位している。
【0139】
1つの実施態様において、放射性核種は、Tc−99m、In−111、Ga−67、Lu−177、Tl−201、Sn−117m、Cu−64、Mn−52、Zr−89、Co−55、Sc−44、Ti−45、Sc−43、Cu−61、As−72、Te−152、F−18、Ga−68、C−11、Nd−140およびTe−149からなる群から選択される。
【0140】
1つの実施態様において、放射性核種は、Tc−99m、In−111、Ga−67、Lu−177、Tl−201およびSn−117mからなる群から選択される。
【0141】
1つの実施態様において、放射性核種は、Cu−64、Mn−52、Zr−89、Co−55、Sc−44、Ti−45、Sc−43、Cu−61、As−72およびTe−152からなる群から選択される。
【0142】
1つの実施態様において、放射性核種は、Cu−67、Cu−64、Mn−52、Zr−89、Co−55、Sc−44、Ti−45、Sc−43、Cu−61、As−72およびTe−152からなる群から選択される。
【0143】
1つの実施態様において、この溶液は、溶液に関連の放射性核種、例えば、Tc−99m、In−111、Ga−67、Lu−177、Tl−201、Sn−117m、Cu−64、Mn−52、Zr−89、Co−55、Sc−44、Ti−45、Sc−43、Cu−61、As−72、Te−152、F−18、Ga−68、C−11、Nd−140、Te−149が組み込まれているためにPETおよび/またはSPECTイメージングによるイメージングを提供し得る。
【0144】
1つの実施態様において、この溶液は、放射性ハロゲン化水不溶性炭水化物、例えば放射性ヨウ素化または放射性フッ素化水不溶性炭水化物を含んでなり得る。よって、1つの実施態様において、この溶液は、
31I、
125Iおよび/または
18Fで標識された水不溶性炭水化物を含んでなり得る。このような標識はPETおよび/またはSPECTによる溶液の可視化を可能とし得る。
【0145】
1つの実施態様において、さらなる造影剤は、X線剤である。X線剤は、1以上のヨウ素化ポリマー、ヨウ素化オリゴマー、ヨウ素化脂質、ヨウ素化糖類、ヨウ素化二糖類、ヨウ素化多糖類、ヨウ素化ペプチド、またはそれらの誘導体もしくは組合せを含んでなり得る。好ましい造影剤は、ポリマーなどのヨウ素化化合物、あるいはグルコースもしくはスクロースの誘導体または二糖類、三糖類もしくはオリゴ糖類の誘導体などの糖分子である。X線剤は、あるいは、1以上のX線造影剤、すなわち、X線照射を遮断または減衰することができる化合物を含んでなる、またはからなる固体粒子であり得る。このような化合物には、周期表によって定義される遷移金属、希土類金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、その他の金属が含まれる。
【0146】
1つの実施態様において、X線造影剤は、ヨウ素(I)、金(Au)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、ガドリニウム(Gd)、鉄(Fe)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)から選択される。
【0147】
1つの実施態様において、さらなる造影剤は、式(III)の構造を有する。
【化3】
【0148】
1つの実施態様において、この溶液は、同じクラスの非ヨウ素化水不溶性炭水化物を含んでなる溶液にドープされた水不溶性炭水化物ヨウ素化誘導体を含んでなる。
【0149】
1つの実施態様において、この溶液は、MRIなどの画像診断法で使用するための常磁性化合物をさらに含んでなり得る。
【0150】
1つの実施態様において、この溶液は、溶液の無視できる水分含量のためにネガティブコントラストでMRIによるイメージングを提供し得る。
【0151】
1つの実施態様において、この溶液は、組織によりも高い粘度および/または延性のために超音波(US)で可視化可能であり得る。
【0152】
別の実施態様において、この溶液は、超音波検査イメージングのために脂質系、ポリマー系または無機系粒子に封入された1以上のガスをさらに含んでなる。前記ガスは、空気、六フッ化硫黄または十フッ化二硫黄などのハロゲン化硫黄;ペルフルオロカーボンなどのフルオロカーボン;ペリウオロアセトン(peril uoroacetone)などのフッ素化(例えば、過フッ素化)ケトン;およびペルフルオロジエチルエーテルなどのフッ素化(例えば、過フッ素化)エーテルを含んでなり得る。
【0153】
溶液の物理学
本開示の溶液は、水不溶性炭水化物および100〜1000cPの範囲の粘度を有する溶液または分散液を共に形成する極性〜非極性の特徴を有する溶媒を含んでなる。本開示のいくつかの実施態様では、水不溶性炭水化物は4〜10の範囲のlogP値を有するが、使用する溶媒は−2〜2の範囲のlogPを有する。水性媒体または間質液を含有する組織に注入すると、溶液は非溶媒誘起相分離(non-solvent induced phase separation)(NIPS)を受け、溶液の溶媒が周囲の水相に分配されて、水不溶性炭水化物の沈澱およびその炭水化物を反映する材料特性を有するデポの形成に至る。NIPSの際、例えばSAIBなど、極めて粘稠な(100000〜1000000cP)液体を形成する炭水化物もあるし、例えば、オクタイソ酪酸マルトース、オクタイソ酪酸スクロース、オクタイソ酪酸ラクトース、オクタイソ酪酸トレハロースまたは十一イソ酪酸ラフィノースなど、脆いまたは延性のある固体を形成する炭水化物もある。脆く硬い炭水化物は、非晶質、結晶性、ガラス状またはそれらの混合物のいずれかであるとして特徴付けることができる。このような実施態様の例は、SAIB:EtOH 80:20、SAIB:xSAIB:EtOH 50:30:20、LOIB:EtOH 80:20またはLOIB:xSAIB:EtOH 50:30:20を含んでなり、任意選択で他の炭水化物、溶媒およびそれらの変形形態を含む溶液である。
【0154】
1つの実施態様において、有機溶媒は、水性条件下で溶液から拡散して、ゲル、ガラス、半固体、固体、結晶またはその任意の組合せを提供する。
【0155】
1つの実施態様において、溶液の粘度は、水性条件下で、1000センチポアズ(centipose)(cP)より多く、例えば5000cPより多く、例えば10000より多く、例えば50000cPより多く、例えば100000cPより多く増す。
【0156】
1つの実施態様において、固化した溶液の粘度は、100000〜1000000cPの範囲、例えば100000〜750000の範囲、例えば100000〜500000cPの範囲、例えば100000〜250000cPの範囲である。
【0157】
1つの実施態様において、固化した溶液の粘度は、100000〜1000000cPの範囲、例えば250000〜1000000cPの範囲、例えば500000〜1000000cPの範囲、例えば750000〜1000000cPの範囲である。
【0158】
粘稠度の高い液体であるデポでも、脆い、延性のある、非晶質の、結晶性のまたはガラス状のデポでも、デポの高い粘度または固体の特徴によって拡散が妨げられるので、捕捉された蛍光色素は動的にトラップされる。より大きい蛍光色素またはナノ粒子の場合、抗力/摩擦が高まるために、その溶液内での拡散はなおさらに低下し、固化した溶液中のこれらの動的トラップの有効性の向上がもたらされる。
【0159】
いくつかの実施態様では、限定されるものではないが、モノ、ジおよびトリグリセリドなどの、4〜10の範囲のlogP値を特徴とする補助溶媒が本明細書に記載されるような溶液に含められる。水性媒体または間質液を含有する組織に注入すると、このような溶液はNIPSを受けて炭水化物補助溶媒溶液を生じ、炭水化物材料特性、補助溶媒粘度および炭水化物/補助溶媒比を反映する調節可能な粘度を有するデポが形成する。このような実施態様の例は、SAIB:GTH:EtOH 64:28:8、SAIB:GTO:EtOH 83:9:8 SAIB:xSAIB:GTO:EtOH 66:9:17:8、LOIB:GTO:EtOH 64:28:8、LOIB:xSAIB:GTO:EtOH 50:9:33:8またはそれらの変形形態である。
【0160】
水性媒体または間質液を含有する組織への注入時のこのような溶液からの溶媒流出速度は、溶液中で溶媒の水溶解度、ならびに水不溶性炭水化物に対する溶媒の親和性によって異なる。より高いlogPを有する溶媒ほどより遅い溶媒放出およびNIPSにより形成された炭水化物デポの粘度により緩慢な増加をもたらす。一例として、95%EtOHの流出は、SAIB:xSAIB:EtOH 50:20:20の溶液の場合、in vivoで2時間以内に完了し、すなわち、これらの溶液は固化し、数時間以内にNIPSを受け、注入後5〜6時間以内に溶液の完全な固化をもたらす。溶液固化期間の後、流体定着物の粘度または固体デポにおいて拡散の減少が蛍光色素の逸出を妨げる。
【0161】
1つの実施態様において、溶液は水性条件下で10時間未満、例えば8時間未満、例えば6時間未満、例えば5時間未満、例えば4時間未満、例えば3時間未満、例えば2時間未満で固化する。
【0162】
本開示のいくつかの実施態様では、低粘度で、蛍光色素保持の高い溶液が保証される。水不溶性炭水化物を補助溶媒と混合することにより、より低い粘度が得られる。
【0163】
炭水化物および補助溶媒が完全に適合する、すなわち、例えばLOIBおよびGTOまたはSAIBおよびGTHと同等のlogPを有する場合には主として一相系が形成されるが、これらには補助溶媒の存在によって生じる粘度低下のために動的トラップ原理に基づく蛍光色素の保持はできない。しかしながら、適合度の低い炭水化物エステルおよび補助溶媒を選択するとミクロ相分離(microphase separation)(MPS)に至る場合があり、組み込まれた蛍光色素などの化合物が一方の相または他方の相に分離され得る。本開示のいくつかの実施態様において、これらの相は不連続であるかまたは完全な浸透構造ではなく、組み込まれた化合物の拡散および逸出が妨げられる。一例は、蛍光色素を保持する固化溶液内における液滴の液体−液体共存であろう。補助溶媒の包含により最小放出が得られる本開示のある実施態様は、SAIB:GTO:EtOHから構成される溶液である。
【0164】
1つの実施態様において、蛍光色素の拡散速度は、溶液が固化してしまうまで蛍光色素が溶液中に保持され、それにより、蛍光色素の放出が全くないかまたは限定された状態で、固化した溶液中に蛍光色素を動的にトラップするようなものである。
【0165】
溶液中の保持
外科的介入の誘導は、現在、診療所では、メチレンブルーおよびインドシアニングリーン(ICG)などの自由拡散色素の注入により使用されている。どちらの色素もNIR−I型であり、組織のマークのためまたはNIRカメラ装置を用いた臓器灌流のモニタリングのために使用されている。しかしながら、このような色素の臓器内注入は、拡散により引き起こされる急速な分散に至り、外科的誘導のためのこれら色素の最適な使用を阻んでいる。本開示の溶液は蛍光色素の保持によってこの問題を解決する。溶液を注入すると、その溶液は固化し、NIR色素を動的にトラップするか、または色素と溶液間の高い親和性のために色素を保持する。このようにして、高濃度の色素が注入部位に保持され、外科医が手術中に目的の領域を特定することを可能とする。
【0166】
本明細書の上記に記載されるような溶液の物理学のために、蛍光色素は溶液および/または固化した溶液中に保持され得る。これは周囲組織および/または臓器への漏出を最小にして、蛍光色素を所望の位置に正確かつ安定に局在させることを可能とする。
【0167】
溶液および/または固化した溶液中の蛍光色素の保持は、溶液の粘度の制御、固化溶液の形成、蛍光色素の疎水性、蛍光色素の大きさならびに溶媒および/またはさらなる溶媒の疎水性など、溶液の組成によって制御することができる。
【0168】
さらに、溶液および/または固化した溶液中の蛍光色素の保持は、本明細書の「溶液の物理学」の節に上記されるように、溶液の種々の成分の相対的logP値によっても制御することができる。
【0169】
1つの実施態様において、水性条件下で5時間後に10%未満、例えば5%未満、例えば4%未満、例えば2%未満の蛍光色素が溶液および/または固化した溶液から放出される。
【0170】
1つの実施態様において、水性条件下で4時間後に10%未満、例えば5%未満、例えば4%未満、例えば2%未満の蛍光色素が溶液および/または固化した溶液から放出される。
【0171】
1つの実施態様において、水性条件下で3時間後に10%未満、例えば5%未満、例えば4%未満、例えば2%未満の蛍光色素が溶液および/または固化した溶液から放出される。
【0172】
1つの実施態様において、水性条件下で2時間後に10%未満、例えば5%未満、例えば4%未満、例えば2%未満の蛍光色素が溶液および/または固化した溶液から放出される。
【0173】
1つの実施態様において、水性条件は、in vitro条件、例えばバッファー系である。
【0174】
1つの実施態様において、水性条件は、in vivo条件、例えば腫瘍部位への注入である。
【0175】
本開示の溶液からの蛍光色素の低い放出は、基準マーカーのより正確で安定な局在を提供し得る。さらに、本開示の溶液からの蛍光色素の低い放出は、蛍光色素による所望の組織の長期の標的を提供し得る。
【0176】
溶液からの制御放出
本開示の溶液はまた、溶液および/または固化した溶液からの蛍光色素の制御放出も提供し得る。蛍光色素の制御放出は、所属リンパ節の標識を提供し得る。
【0177】
溶液および/または固化した溶液からの蛍光色素の放出速度は、溶液の粘度の制御、固化溶液の形成、蛍光色素の疎水性、溶媒および/またはさらなる溶媒の疎水性など、溶液の組成によって制御することができる。
【0178】
さらに、溶液および/または固化した溶液からの蛍光色素の放出速度は、本明細書の「溶液の物理学」の節に上記されるように、溶液の種々の成分の相対的logP値によっても制御することができる。一例として、水不溶性炭水化物および完全に適合する、すなわち、同等のlogPを有する溶媒を含んでなる溶液は、溶液および/または固化した溶液からの蛍光色素のより高い放出をもたらすであろう。炭水化物および溶媒が完全に適合する、すなわち、例えばLOIBおよびGTOまたはSAIBおよびGTHと同等のlogPを有する場合には主として一相系が形成されるが、これらには補助溶媒の存在によって生じる粘度低下のために動的トラップ原理に基づく蛍光色素の保持はできない。
【0179】
炭水化物が補助溶媒と混合されて、粘度が低い基準マーカーを形成する場合、拡散により制限される速度論に基づいて、捕捉された化合物の制御放出が助長され得る。捕捉された化合物(NIR色素−ポリマー構築物という)は、デポの粘度およびまたは拡散するNIR色素−ポリマー構築物の分子断面積によって定義される制御された様式で放出され得る。このようなポリマー構築物は、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィン、アントラコシアニンなどの蛍光色素にコンジュゲートされたPNIPAM、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、ペルフルオロカーボン、ポロキサマープルロニック、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)、ポリ(L−ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(ploy)(DL−ラクチド)(DLPLA)、ポリ(ジオキサノン)(PDO)、ポリ(DL−ラクチド−co−L−ラクチド)(LDLPLA)、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)(DLPLG)、ポリ(グリコリド−co−炭酸トリメチレン)PGA−TMC、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)(LPLG)またはポリ(カプロラクトン)(PCL)を含んでなり得る。デポからの放出速度は、大きさ(分子断面積)、ポリマーと溶液のもつれおよび相互作用、ならびに水性媒体中でのポリマーの溶解度によって制御される。
【0180】
本開示の他の実施態様において、量子ドットまたはカーボンナノチューブなどの蛍光粒子またはロッドを、固化した溶液から放出させることができる。さらに別の実施態様において、蛍光色素を捕捉しているかまたは蛍光色素で表面が官能化されたポリマーまたは金属ナノ粒子を、制御放出を達成するために同様の原理を用いて放出させることができる。
【0181】
蛍光標識粒子、ポリマーまたはロッドが放出すると、これらは腫瘍組織において拡散により分散し、所属リンパ節に蓄積する。リンパ節蓄積の程度は、ポリマーの大きさ、疎水性およびまたは標的リガンドのコンジュゲーションによって異なる。
【0182】
本開示のいくつかの実施態様では、放出された構築物は、所属リンパ節のSPECT/PETまたはガンマプローブ検出のための診断同位体を運び得る。本開示の別の実施態様において、放出された構築物は、例えば所属リンパ節内の転移性癌の治療のためのプロドラッグを含み得る。本開示の別の実施態様において、放出された構築物は、腫瘍またはリンパ節の機能的イメージングのための酵素、酸化還元またはpHで活性化可能な蛍光色素を含み得る。
【0183】
1つの実施態様において、蛍光色素は、ポリエチレングリコール(PEG)に共有結合的にコンジュゲートされ、2000Daを超える分子量を有する。蛍光色素の親水性PEGポリマーとのコンジュゲーションは、水性条件下で溶液からの蛍光色素の放出をもたらし得る。
【0184】
1つの実施態様において、放出された蛍光色素−PEGコンジュゲートは、in vivoにおいて溶液から放出された後にリンパ節に蓄積する。
【0185】
1つの実施態様において、蛍光色素−PEGコンジュゲートは、2000Daを超える、例えば3000Daを超える、例えば4000Daを超える、例えば5000Daを超える、例えば10000Daを超える、例えば15000Daを超える、例えば20000Daを超える分子量を有する。
【0186】
溶液の使用
本開示による溶液は、100〜1000cPの範囲の粘度を有する液体であってよく、ヒト身体のほとんどいずれの部位にも細い注入針で皮下投与、内視鏡投与または気管支鏡投与可能である。
【0187】
よって、本開示の1つの態様は、本明細書に記載されるような溶液の基準マーカーとしての使用に関する。
【0188】
手術の誘導
上記のように、画像誘導手術の分野で開発中の技術と併用するための良好な基準マーカーの開発の分野においての需要が存在する。
【0189】
本明細書に記載されるような溶液は、基準マーカーとして外科的誘導に適切な多モード画像診断法を含んでなり得る。これらの溶液は、それらの無視できる水分含量のためにMRIでネガティブコントラストを、また、軟組織に比べてそれらの固有の高い粘度および延性のために超音波コントラストを本質的に有する水不溶性炭水化物を含んでなる。これらの溶液はさらに、ヨウ素化炭水化物エステル(iodinates carbohydate esters)、ヨウ素化ポリマーまたは金ナノ粒子の組み込みによりCTイメージングを、また、溶液中に捕捉された蛍光色素への診断放射性核種の配位によりSPECT/PETイメージングを可能とし得る。
【0190】
溶液の注入中、基準マーカーの位置および体積の変化は、xSAIBなどの放射線不透過性成分を含む溶液に対する、超音波イメージングまたはX線に基づく技術、例えば、X線透視法によりリアルタイムでモニタリングすることができる。従って、マーカーを注入する医療専門家は、外科手技を進める前に基準マーカーの質および精度を評価することができる。注入の質が疑わしい場合には、外科的介入を進める前にマーカーの正確な位置を保証するために、X線に基づくイメージング、例えば、CTをさらに使用してもよい。このような多モードマーカーは、画像誘導手術において、外科的および治療的介入を改善し、患者の不快感および術後痛を軽減し、生存率を向上させ、入院を短縮し、および医療コストを引き下げる高い可能性を有する。
【0191】
本開示の溶液は、誘導のために基準マーカーが保証される総ての外科的および介入的手技/適応に使用可能である。
【0192】
よって、1つの実施態様において、本開示は、手術の誘導のための、本明細書に記載されるような溶液の使用に関する。
【0193】
1つの実施態様において、本明細書に記載されるような溶液は、外科手技後の参照点の標識に使用される。一例として、本明細書に記載されるような溶液は、組織生検手順の参照点の標識または治療デバイスの位置特定のために使用可能である。
【0194】
外部照射療法の誘導
放射線療法は、費用対効果のある、癌治療に広く採用される解決法であり、固形腫瘍を有すると診断された50%を超える患者が何らかの形の放射線処置を受けている。米国および欧州だけで、年間250万人を超える患者が放射線療法を受ける。この治療選択肢の普及はまた、欧州で1000を超える医療施設が線形加速器またはリニアックとして知られる放射線療法装置を備えていることにも表される。放射線療法処置は、いくつかの処置画分(最大30のことがある)に送達されることが最も多く、効果的な処置に最終的に重要なのは、これらの処置画分のそれぞれで正確に腫瘍に当てることである。一部の癌では、それらの位置および軟組織コントラストは、周囲組織と似すぎていて、線形加速器に含まれるX線に基づくイメージング技術を基に正確に画定できない。このような場合、高いX線コントラストを有する基準マーカーの包含が患者の正確な位置決めおよび放射線療法の送達のための参照点を提供し得る。
【0195】
この達成を可能とするには、軟組織マーカー、または基準マーカーが必要である。
【0196】
放射線療法の技術の進展は、新しく、かつ最適化された処置アプローチの浮上を可能とし、それらは総て向上した画像誘導処置および軟組織マーカーの必要に頼るものである。
【0197】
よって、1つの態様において、本開示は、EBRTの誘導のための、本明細書に記載されるような溶液に関する。
【0198】
1つの実施態様において、本開示は、外部照射療法の誘導のための、本明細書に記載されるような溶液の使用に関する。
【0199】
特定の酵素活性/環境を有する部位の標識(w切断可能なクエンチャー)
1つの実施態様において、本開示の溶液の蛍光色素は、クエンチャーにコンジュゲートされる。
【0200】
蛍光色素−クエンチャーコンジュゲートは、特定の酵素反応、低pHまたは酸化還元電位の変化などの条件下で切断され得る。
【0201】
よって、蛍光色素−クエンチャーコンジュゲートにおいて、溶液からシグナルは提供されない。しかしながら、固化した溶液から蛍光色素−クエンチャーコンジュゲートが制御放出された際に、蛍光色素は例えば、低pH、特定の酸化還元電位または所与の酵素の存在を有する目的部位において活性化され得る。
【0202】
併用処置
本開示の溶液は、本開示を他の療法と併用することにより、またはすでに記載した基準マーカー機能の上に付加的な/その他の特徴を含めることにより、ある範囲の併用処置の可能性を与える。
【0203】
本開示の溶液は、創傷治癒剤または消毒剤などの種々の有効医薬成分とともに処方され得る。このような溶液を注入すると、創傷治癒剤または消毒剤が局所放出される。あるいは、本開示の溶液は、抗生物質とともに処方され得る。
【0204】
本開示のさらに別の実施態様では、光線力学療法(photo dynamic therapy)(PDT)のための溶液に対する親和性が低減された(logPが低減された)フタロシアニンまたはナフタロシアニン誘導体などの光増感剤を、腫瘍組織にその光増感剤が最適な蓄積をするように放出させることができ、その光増感剤を光で活性化させた後に癌細胞の破壊に至らせることを可能とする。
【0205】
調製用キット
本開示は、さらに、投与現場またはその付近で本開示の溶液を調製するためのキットに関する。放射性線源は必要に応じて提供され、最終的には現場で受容または作製された後に適用され得るのに対し、溶液の非放射性成分は例えば病院で提供および保管され得るので、このキットは、蛍光色素が放射性核種に配位される場合に有利であり得る。
【0206】
よって、1つの実施態様において、本開示は、
a.本明細書に記載されるような、水不溶性炭水化物、−2〜2の範囲のlogPを有する溶媒、および任意選択のさらなる溶媒および/またはさらなる造影剤を含んでなる溶液、
b.本明細書に記載されるような蛍光色素を含んでなる溶液
を含んでなるキットに関する。
【0207】
1つの実施態様において、キットは、成分b)の一部としてのまたは個々の成分c)としての放射性核種をさらに含んでなる。
【0208】
1つの実施態様において、キットの成分a)の成分は別個の部分として、またはa)固体成分およびb)液体成分を含んでなる2成分として提供される。
【0209】
1つの実施態様において、キットの成分b)の成分は、別個の部分として、またはa)固体成分およびb)液体成分を含んでなる2成分として提供される。
【0210】
アイテム
1.a.水不溶性炭水化物、
b.蛍光色素、および
c.−2〜2の範囲のlogPを有する有機溶媒
を含んでなる溶液。
【0211】
2.前記蛍光色素が2を上回るlogPを有し、それにより、水性条件下で溶液における蛍光色素の保持を可能とする、第1項に記載の溶液。
【0212】
3.前記蛍光色素が2を上回る、例えば3を上回る、例えば4を上回る、例えば5を上回る、例えば6を上回る、例えば8を上回る、例えば10を上回る、例えば15を上回るlogPを有する、第1項〜第2項のいずれか一項に記載の溶液。
【0213】
4.水性条件下で5時間後に10%未満、例えば、5%未満の蛍光色素が放出される、第1項〜第3項のいずれか一項に記載の溶液。
【0214】
5.前記蛍光色素がポリエチレングリコールに共有結合的にコンジュゲートされ、2000Daを超える分子量を有し、それにより、水性条件下で溶液からの蛍光色素の放出を提供する、第1項に記載の溶液。
【0215】
6.放出された蛍光色素−PEGコンジュゲートが、in vivoにおいて溶液から放出した後にリンパ節に蓄積する、第5項に記載の溶液。
【0216】
7.蛍光色素−PEGコンジュゲートが、2000Daを超える、例えば3000Daを超える、例えば4000Daを超える、例えば5000Daを超える、例えば10000Daを超える、例えば15000Daを超える、例えば20000Daを超える分子量を有する、第5項および第6項に記載の溶液。
【0217】
8.前記蛍光色素が粒子の一部である、第1項〜第7項に記載の溶液。
【0218】
9.前記粒子が、量子ドット、蛍光色素で官能化された金属ナノ粒子、蛍光色素で官能化されたポリマーナノ粒子およびカーボンナノチューブからなる群から選択される、第8項に記載の溶液。
【0219】
10.前記粒子がポリマーでコーティングされている、第8項〜第9項のいずれか一項に記載の溶液。
【0220】
11.前記蛍光色素が近赤外線(NIR)造影剤である、第1項〜第10項のいずれか一項に記載の溶液。
【0221】
12.前記蛍光色素がNIR−I造影剤である、第1項〜第11項のいずれか一項に記載の溶液。
【0222】
13.前記蛍光色素がNIR−II造影剤である、第1項〜第12項のいずれか一項に記載の溶液。
【0223】
14.NIR造影剤がフタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィン、アントラコシアニンおよびシアニン色素からなる群から選択される、第1項〜第13項のいずれか一項に記載の溶液。
【0224】
15.NIR造影剤がフタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィン、アントラコシアニンからなる群から選択される、第1項〜第14項のいずれか一項に記載の溶液。
【0225】
16.NIR造影剤がPC1、PC2および/またはPC3などのフタロシアニンである、第1項〜第15項のいずれか一項に記載の溶液。
【0226】
17.前記蛍光色素がポリマーにコンジュゲートされている、第1項〜第16項のいずれか一項に記載の溶液。
【0227】
18.前記蛍光色素がNIRより下の領域で光子を放出する、第1項〜第17項のいずれか一項に記載の溶液。
【0228】
19.前記蛍光色素が700〜900nm域で光子を放出する、第1項〜第18項のいずれか一項に記載の溶液。
【0229】
20.前記蛍光色素が900nmより上の領域で光子を放出する、第1項〜第19項のいずれか一項に記載の溶液。
【0230】
21.前記水不溶性炭水化物がC2−C7エステルを形成するように官能化された1以上のヒドロキシル基を含んでなる、第1項〜第20項のいずれか一項に記載の溶液。
【0231】
22.前記C2−C7エステルが炭水化物のヒドロキシル基とC2−C7アルカノイルのカルボニル基の間の結合により形成される、第1項〜第21項のいずれか一項に記載の溶液。
【0232】
23.C2−C7エステルを形成するように官能化されたヒドロキシル基の数がn、n−1、n−2、n−3、n−4またはn−5であり、ここで、nは炭水化物のヒドロキシル基の総数である、第1項〜第22項のいずれか一項に記載の溶液。
【0233】
24.総てのヒドロキシル基がC2−C7エステルを形成するように官能化された、第1項〜第23項のいずれか一項に記載の溶液。
【0234】
25.前記水不溶性炭水化物が単糖類、二糖類、三糖類およびオリゴ糖類からなる群から選択される、第1項〜第24項のいずれか一項に記載の溶液。
【0235】
26.前記水不溶性炭水化物が、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン、マンノース、ラムノース、ラムノサミン、ガラクトース、アロース、アロサミン、アルトロース、アルトロサミン、グロース、グロサミン、イドース、イドサミン、タロースおよびタロサミンからなる群から選択される単糖である、第1項〜第25項のいずれか一項に記載の溶液。
【0236】
27.前記水不溶性炭水化物が、マルトース、トレハロース、ラクトース、スクロース、Galp−(1→2)−Glc、Galp−(1→3)−GlcN、Galp−(1→4)−Glc、Glcp−(1→4)−Glc、Glcp−(1→6)−Glc、Glcp−(1→2)−GlcN、Galp−(1→4)−ManN、Glcp−(1→4)−GalN、Manp−(1→3)−Glc、ManNp−(1→4)−Gal、GalNp−(1→3)−ManN、GlcNp−(1→6)−GalN、Rhamnp−(1→6)−Glc、Glcp−(1→1)−Glcp、Talp−(1→4)−Glu、Glup (1→3)−ldo、GlcNp−(1→4)−GlcN、GlcNp−(1→6)−GlcNからなる群から選択される二糖である、第1項〜第26項のいずれか一項に記載の溶液。
【0237】
28.前記水不溶性炭水化物が、ラフィノース、Galp−(1→2)−Glcp−(1→3)−Galp、Galp−(1→4)−Glcp−(1→6)−GlcN、Galp−(1→4)−Glcp−(1→6)−Gal、Glcp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glcp、Glcp−(1→6)−Glcp−(1→6)−Glc、Galp−(1→6)−Glcp(1→2)−Fruf、Glcp−(1→3)−Fruf−(2→1)−Glcp、Galp−(1→4)−ManNp−(1→3)−Glu、Glcp−(1→4)−GalN−(1→2)−Man、Manp−(1→3)−Glcp−(1→4)−GlcN、ManNp−(1→4)−Galp−(1→3)−Glc、GalNp−(1→3)−ManNp−(1→6)−GlcN、Rhamnp−(1→6)−Glcp−(1→4)−GlcN、Galp−(1→6)−Glcp−(1→1)−Glcp、Talp−(1→4)−Glup−(1→2)−Man、Glup(1→3)−ldop−(1→6)−Glu、GlcNp−(1→6)−GlcNp(1→4)−GlcNからなる群から選択される三糖である、第1項〜第27項のいずれか一項に記載の溶液。
【0238】
29.前記水不溶性炭水化物が、Galp−(1→4)−Glcp−(1→6)−glcp−(1→4)−Glc、Galp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glc、Galp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Galp−(1→4)−Glc、Glcp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glcp−(1→4)−Glc、Galp−(1→6)−Glcp−(1→6)−Galp−(1→6)−Glc、Galp−(1→6)−Glcp−(1→6)−Galp−(1→4)−Glc、Galp−(1→6)−Glcp−(1→6)−Glcp−(1→4)−Glc、GlcNp−(1→4)−GlcNp−(1→6)−GlcNp−(1→4)−GlcN、GlcNp−(1→6)−Galp−(1→6)−Glcp−(1→2)−Fruf、Galp−(1→4)−Glcp−(1→3)−Fruf−(2→1)−Glcp、Talp−(1→4)−Glup−(1→2)−Man−(1−3)−Glu、Glup(1→3)−ldop−(1→6)−Glup−(1→2)−Gal、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロースおよび酢酸プロプリオン酸(proprionate)セルロースからなる群から選択されるオリゴ糖である、第1項〜第28項のいずれか一項に記載の溶液。
【0239】
30.前記C2−C7アルカノイルがアセチル、プロパノイル、ブタノイル、イソブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイルおよびベンゾイルから選択される、第1項〜第29項のいずれか一項に記載の溶液。
【0240】
31.前記C2−C7アルカノイルがアセチル、プロパノイル、イソブタノイルおよびベンゾイルから選択される、第1項〜第30項のいずれか一項に記載の溶液。
【0241】
32.前記水不溶性炭水化物が式(I)の構造を有する、第1項〜第31項のいずれか一項に記載の溶液。
【化4】
【0242】
33.前記水不溶性炭水化物が式(II)の構造を有する、第1項〜第32項のいずれか一項に記載の溶液。
【化5】
【0243】
34.前記有機溶媒が水性条件下で溶液から拡散し、ゲル、ガラス、半固体、固体、結晶またはその任意の組合せを提供する、第1項〜第33項のいずれか一項に記載の溶液。
【0244】
35.粘度が水性条件下で、1000センチポアズ(centipose)(cP)より多く、例えば5000cPより多く、例えば10000より多く、例えば50000cPより多く、例えば100000cPより多く増す、第1項〜第34項のいずれか一項に記載の溶液。
【0245】
36.溶液が水性条件下で5時間未満、例えば4時間未満、例えば3時間未満、例えば2時間未満で固化する、第1項〜第35項のいずれか一項に記載の溶液。
【0246】
37.前記水性条件がバッファー系などのin vitro条件である、第1項〜第36項のいずれか一項に記載の溶液。
【0247】
38.前記水性条件がin vivo条件である、第1項〜第37項のいずれか一項に記載の溶液。
【0248】
39.前記有機溶媒が−2〜2の範囲、例えば−1.8〜1.8の範囲、例えば−1.5〜1.5の範囲、例えば−1〜1の範囲、例えば−2〜1の範囲、例えば−1.5〜1の範囲、例えば−1〜2の範囲、例えば−1〜1.5の範囲のlogPを有する、第1項〜第38項のいずれか一項に記載の溶液。
【0249】
40.前記有機溶媒がアルコールである、第1項〜第39項のいずれか一項に記載の溶液。
【0250】
41.前記有機溶媒がC1−C4アルコールである、第1項〜第40項のいずれか一項に記載の溶液。
【0251】
42.前記有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネートおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択される、第1項〜第41項のいずれか一項に記載の溶液。
【0252】
43.有機溶媒の量が1〜30%、例えば1〜20%、例えば1〜15%、例えば1〜10%、例えば5〜10%の範囲である、第1項〜第42項のいずれか一項に記載の溶液。
【0253】
44.モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドをさらに含んでなる、第1項〜第43項のいずれか一項に記載の溶液。
【0254】
45.前記トリグリセリドがトリデカン酸グリセリル(GTD)、トリオクタン酸グリセリル(GTO)およびトリヘキサン酸グリセリル(GTH)からなる群から選択される、第1項〜第44項のいずれか一項に記載の溶液。
【0255】
46.モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドの量が0〜50%の範囲、例えば0〜40%の範囲、例えば0〜30%の範囲、例えば0〜20%の範囲、例えば0〜10%の範囲である、第1項〜第45項のいずれか一項に記載の溶液。
【0256】
47.前記蛍光色素が放射性核種に配位している、第1項〜第46項のいずれか一項に記載の溶液。
【0257】
48.前記放射性核種がTc−99m、In−111、Ga−67、Lu−177、Tl−201、Sn−117m、Cu−64、Mn−52、Zr−89、Co−55、Sc−44、Ti−45、Sc−43、Cu−61、As−72、Te−152、F−18、Ga−68、C−11、Nd−140およびTe−149からなる群から選択される、第1項〜第47項のいずれか一項に記載の溶液。
【0258】
49.Cu−64およびPC1、PC2、および/またはPC3を含んでなる、第1項〜第48項のいずれか一項に記載の溶液。
【0259】
50.さらなる造影剤を含んでなる、第1項〜第49項のいずれか一項に記載の溶液。
【0260】
51.さらなる造影剤がX線剤、CT剤、MRI剤、PET剤およびSPECT剤からなる群から選択される、第1項〜第50項のいずれか一項に記載の溶液。
【0261】
52.さらなる造影剤が式(III)の構造を有する、第1項〜第51項のいずれか一項に記載の溶液。
【化6】
【0262】
53.in vivo診断ツールとして使用するための、第1項〜第52項のいずれか一項に記載の溶液。
【0263】
54.
a.第1項〜第54項のいずれか一項に記載の溶液の、それを必要とする個体への投与、
b.蛍光色素の励起、および
c.蛍光色素の検出
を含んでなる、in vivoイメージングの方法。
【0264】
55.前記溶液が注入および/または塗抹により投与される、第1項〜第54項のいずれか一項に記載の方法。
【0265】
56.in vivoイメージングのための、第1項〜第55項のいずれか一項に記載の溶液の使用。
【0266】
57.基準マーカーとしての、第1項〜第56項のいずれか一項に記載の溶液の使用。
【0267】
58.手術の誘導のための、第1項〜第57項のいずれか一項に記載の溶液の使用。
【実施例】
【0268】
実施例1 蛍光色素およびゲル材料の疎水性および分子量
従来の近赤外線(NIR)蛍光団は、荷電残基およびまたはPEGなどの親水性ポリマーの組み込みにより、水溶液中で可溶性となるように化学的に修飾されない限り、疎水性(logP>0)であることを特徴とする高度にコンジュゲートされた分子から構成されることが多い。このような色素の疎水性の特徴は、疎水性溶液との良好な適合性を保証し、高い保持を可能とする。このような色素の例は表1に記載され、関連の溶液材料は表2に記載される。
【0269】
logP値は、Viswanadhan et al (Viswanadhan, V. N.; Ghose, A. K.; Revankar, G. R.; Robins, R. K., J. Chem. Inf. Comput. Sci., 1989, 29, 163-172;)のアルゴリズムに基づく計算によって得た。logP値はまた、オクタノール−水分配実験によって求めることもできる。正のlogP値は疎水性化合物に特徴的であり、負のlogP値は親水性化合物を示す。
【0270】
【表1】
【0271】
【表2】
【0272】
考察
選択された色素は、可視光(400〜600nm)からNIR−I域(700〜900nm)までの光学領域に存在する。表1の色素は総て、4を上回るlogP値を有する疎水性であり、分子量とlogPの間に正の直線的相間を示す(R
2=0.86)。よって、分子量の大きい色素ほど、溶液との疎水性相互作用を介した親和性の増強ならびにより大きな分子断面積によって引き起こされる粘稠な溶液中での拡散の阻害の両方のために、本開示に記載される溶液に効果的に保持されると予想される。
【0273】
放射性核種などの陽イオンをキレートすることができる蛍光団は、表1のポルフィン、フタロシアニン、ナフタロシアニンおよびアントラコシアニンにより代表される。総て、より小さいシアニン色素Cy5〜Cy7.5に比べて高いlogP値を有するより大きい構築物であり、高い溶液保持を示す。このような色素の水溶解度は極めて低く、このような色素の放出は最小であると思われる。
【0274】
炭水化物エステルおよびトリグリセリド補助溶媒の疎水性(logP)は、アシル鎖長が増すほど大きくなることが判明した。ゲル形成に適用可能な溶媒は、−1.4〜1.2の1logP値範囲にわたると判明し、水性媒体に注入した際に溶液から拡散する傾向を示し、非溶媒誘起相分離を生じる。トリグリセリド補助溶媒は5.59〜10.92のlogP範囲にわたると見られ、炭水化物エステルは−1.17〜15.30のlogP範囲にわたる。
【0275】
補助溶媒と炭水化物エステルの間にlogP値の特定の一致が見られ、例えば、補助溶媒炭水化物混合物SAIB:GTHとLOIB:GTOのlogP値の差異は1未満であり、類似の疎水性および適合性を示す。補助溶媒と炭水化物エステルの間のlogP値の大きな差異は、不適合性の予測因子となり得、溶液のミクロ相分離につながる、さらに「溶液の物理学」の節も参照。
【0276】
結論
logP値は、選択された溶液基質および色素化合物に対して計算法により確立され、補助溶媒と炭水化物エステルの間の適合性を予測するために使用されているとともに、キレート色素のより高い保持も予測する。
【0277】
実施例2 材料および方法
別段の断りがない限り、化学物質は総てSigma−Aldrichから購入した。ICP−MS測定用の試薬はTraceSelect(登録商標)であり、硝酸はFluka Analyticalから購入した。HSPC:CHOL:DSPE−PEG2000モル比(56.5:38.2:5.3)の水素化ダイズL−α−ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール(CHOL)および1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](アンモニウム塩)(DSPE−PEG2000)から構成されるプレミックス脂質混合物は、Lipoid GmbHから購入した。
【0278】
酢酸イソ酪酸スクロース(SAIB)はSigmaから購入し、オクタイソ酪酸ラクトース(LOIB)およびxSAIBは所内カスタム合成により作製した。
【0279】
125I([
125I]NaI)およびLCSカクテル、Ultimaゴールドは、Perkin Elmerから購入した。
【0280】
CT26(マウス結腸癌)は、ATTC(ロックビル、MD、USA)から購入した。10%ウシ胎仔血清およびペニシリン−ストレプトマイシン(pen-strep)を添加したDMEM培地は、Invitrogen Inc.(デンマーク)から購入した。
【0281】
使用する水は総て、Milli−Qシステム(Millipore)から得た。TRIS等浸透圧バッファー(10mM TRIS、150mM NaCl)はMilli−Q水で調製し、HClでpH7.8に調整した。
【0282】
略号:
8HQ: 8−ヒドロキシキノリン
SAIB: ジ酢酸ヘキサイソ酪酸スクロース、式(I)
LOIB: オクタイソ酪酸ラクトース、式(II)
xSAIB: 式(III)のヨウ素化SAIB誘導体
【化7】
【0283】
実施例3 6’−(シアニン7.5)−イソ酪酸スクロース(セプタイソ酪酸スクロースシアニン7.5、SSIB−Cy7.5)の合成
本実施例では、NIR色素シアニン7.5は、疎水性炭水化物エステルであるセプタイソ酪酸スクロースに化学的に連結され、生成物SSIB−Cy7.5となっている。
【0284】
方法:
反応は総て不活性雰囲気(N
2)下で行った。感水性の液体および溶液をシリンジに移した。単離した生成物の洗浄のために使用した水は総ての場合でMilliQ水であった。有機溶液を30〜60℃、200〜0ミリバールでの回転蒸発により濃縮した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、間シリカ60F(Merck 5554)でプレコートされたアルミニウムシートを用いて行った。これらのTLCプレートをUV光下で調べるかまたは硫酸セリウムアンモニウム溶液(10%硫酸溶液中、1%硫酸セリウム(IV)および2.5%モリブデン酸五アンモニウム)を用いて現像した。
【0285】
試薬: シアニン7.5NHSエステルはLumiprobeから購入し、乾燥溶媒はAcros Organicsから購入した(AcroSeal、モレキュラーシーブス上エキストラドライ)。他の化学物質は総てSigma Aldricから購入し、受領したまま使用した。
【0286】
機器: 中間体の核磁気共鳴(NMR)は、nmr溶媒中、残留非重水素化溶媒残留物を内部標準として用い、298Kにおいて5mmH−ブロードバンドデュアルチャネルz勾配プロディジークライオプローブを用い、
1Hに対しては401.3MHzおよび
13Cに対しては100.62MHzで作動するBruker Ascend(商標)400MHzにて取得した。最終生成物のNMRは、最適なスペクトル分解能を得るために、TCIクライオプローブ(Bruker)を備えた800MHz Bruker Avance IIIHD分光計を用いて取得した。結合定数(J)は総てHzで表される。FIDファイルはMnova Suiteで処理した。MALDI−TOF MSは、Bruker Autoflex Speed(商標)質量分析計で取得した。MALDI−TOFに関して使用したマトリックスは、エタノール中トリフルオロ酢酸ナトリウム(60mg/mL)でスパイクした2,5ジヒドロキシ安息香酸(DHB)の混合物であった。UPLCは、Waters Acquity Ultra performance LCシステムにて、二元溶媒マネージャーおよびTUV検出器を用いて行った。分取HPLCは、Waters 600ポンプおよびコントローラーにて、Waters 2489 UV/Vis検出器を用いて行った。
【化8】
【0287】
6’−TBDPS−イソ酪酸スクロース(2)
スクロース(1)(2.5g、7.3mmol)を、35mLの乾燥ピリジンと10mLの乾燥DMFの溶媒混合物に懸濁させた。その後、DMAP(0.36g、2.92mmol)を加え、この混合物を適切に溶解するまで撹拌した。次に、TBDPS−Cl(1.1mL、4.0mmol(0.55当量))を、シリンジを通して10〜15分かけて滴下し、反応を一晩継続した。16時間後、追加のTBDPS−Cl(1.1mL、4.0mmol(0.55当量))を加え、その後、反応物を再び一晩撹拌した。その後、UPLC(カラム:C8 注入体積:5μL 溶出剤:A:水中0.1%ギ酸 B:アセトニトリル、0.1%ギ酸 勾配:6分で5〜100%B 波長220および280nm)は、2:1の関係でモノ−およびジ−tbdpsスクロースへの変換を示した(保持時間:それぞれ3.1分および5.2分)。形成した6’−TBDPS−スクロースは単離されず、代わりに、混合物をそのまま無水イソ酪酸物と反応させ、次いで、精製して(2)を得た。イソ酪酸無水物(34mL、0.21mol)を加え、この反応物を室温で1日撹拌した。反応の後にMALDI−TOF MSを行った。完了した時点で、反応混合物をセライトで真空濃縮した。精製はフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中EtOAc 2%増)により行った。収量=14.8g(50%)。
1H-NMR (400MHz, DMSO-D6):
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 7.63 - 7.57 (m, 4H), 7.47 - 7.37 (m, 6H), 5.62 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 5.51 - 5.46 (m, 2H), 5.39 - 5.33 (m, 1H), 5.04 (t, J = 9.8 Hz, 1H), 4.87 (dd, J = 10.4, 3.7 Hz, 1H), 4.25 (ddd, J = 10.3, 4.2, 2.0 Hz, 1H), 4.20 - 4.03 (m, 4H), 3.91 (dd, J = 12.5, 2.0 Hz, 1H), 3.87 - 3.77 (m, 2H), 2.60 - 2.51 (m, 3H), 2.47 - 2.33 (m, 3H), 1.15 - 1.07 (m, 12H), 1.07 - 0.94 (m, 40H)。
13C-NMR (101 MHz, DMSO-d
6): δ 175.6, 175.2 (2C), 175.0, 174.9 (2C), 174.5, 135.0 (4 C), 132.4, 132.2, 129.9 (2C), 127.8 (4C), 102.4, 89.1, 80.0, 75.2, 73.5, 69.2 69.1, 68.1, 67.1, 63.8, 63.3, 61.2 (炭水化物の炭素), 33.2 (3C), 33.1 (2C), 33.0 (2C) (CH イソ酪酸), 26.4 (4C), 18.7, 18.6 (3C), 18.5 (5C), 18.4 (2C),
MALDI-TOF MS: 理論値[M+ Na]
+: 1093.53。実測値:1093.31。
【0288】
6’−OH−イソ酪酸スクロース(セプタイソ酪酸スクロース)(3)
6’−TBDPS−イソ酪酸スクロース(2)(14.8g、13.8mmol)を乾燥THF(80mL)に溶解させた。酢酸(12mL、0.21mol)を注意深く滴下した。次に、この反応混合物を冷却し、THF中、1.0MのTBAF溶液(83mL、83mmol)を、シリンジを通して10〜15分かけて加えた。この反応物を30分かけて加熱して室温とし、その後、これを40℃に温め、この温度で一晩撹拌した。その後、TLC(ヘキサン:酢酸エチル 3:1)は、反応の完了を示した(生成物rf:0.2)。この反応混合物を室温に冷却し、まず、ヘキサン(300mL)、次に、脱イオン水(300mL)を加えた。この混合物を10分間撹拌し、その後、分液漏斗に注いだ。有機相を回収し、水相をヘキサン(2×300mL)で抽出した。合わせた有機相をHCl(水溶液)(500mL、pH=2)、次に、リン酸バッファー(3×300mL、pH=6.8)で洗浄した。有機相をセライトで濃縮し、次に、ドライカラム精製(ヘキサン中EtOAc 2〜4%増)により精製して生成物を得た。収量5.1g(89.5%)。性状:透明油状物。
1H-NMR (400 MHz, クロロホルム-d): δ 5.68 - 5.39 (m, 4H), 5.18 (t, J = 10.4 Hz, 1H), 4.94 (dd, J = 10.4, 3.6 Hz, 1H), 4.36 - 4.14 (m, 3H), 4.10 - 3.93 (m, 3H), 3.84 (dd, J = 12.9, 2.8 Hz, 1H), 3.60 (dd, J = 12.9, 3.6 Hz, 1H), 2.69 - 2.24 (m, 7H), 1.34 - 0.99 (m, 42H)。
13C-NMR (101 MHz, クロロホルム-d): δ 176.8, 176.3 (2C), 176.1, 176.0, 175.9, 175.2, 102.8, 90.2, 81.4, 75.6, 72.5, 70.0, 69.5, 69.1, 67.2, 64.0, 60.8, 60.7, 34.0 (4C), 33.9 (2C), 33.8, 19.2, 19.1, 19.0 (4C), 18.9 (5C), 18.8 (2C), 18.5。
MALDI-TOF MS: 理論値[M+ Na]
+: 855.41. 実測値: 855.20。
【0289】
6’−(シアニン7.5)−イソ酪酸スクロース(セプタイソ酪酸スクロースCy7.5)(4)
6’−OH−イソ酪酸スクロース(3)(14mg、0.017mmol)を乾燥DCM(3mL)に溶解させた。次に、シアニン7.5NHSエステル(15mg、0.019mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(10μL、0.072mmol)を加えた。この反応物を室温で2日間撹拌した。その後、TLC(ヘキサン:酢酸エチル 3:1)は完全な変換を示した。有機相を真空濃縮し、この化合物をメタノール(2mL)に再溶解させ、分取HPLC(カラム:Xterra C8 溶出剤系:A:水中0.1%TFA B:アセトニトリル、0.1%TFA 勾配:15分で75〜100%B)により精製した。収量:15.2mg(62%)。性状:緑色粉末。
1H-NMR (800 MHz, DMSO-d
6): δ 8.24 (dd, J = 11.5, 8.5 Hz, 2H), 8.09 - 8.02 (m, 4H), 7.84 - 7.63 (m, 6H), 7.53 - 7.47 (m, 2H), 6.19 (dd, J = 26.1, 14.0 Hz, 2H), 5.62 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 5.50 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 5.40 - 5.31 (m, 2H), 5.10 - 5.06 (m, 1H), 4.93 - 4.85 (m, 2H), 4.33 - 4.01 (m, 8H), 3.86 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 3.76 - 3.74 (m, 2H), 2.93 (q, J = 6.7 Hz, 1H), 2.59 - 2.53 (m, 10H), 2.47 - 2.30 (m, 3H), 2.07 (s, 3H), 1.94 (br s, 6H), 1.89 - 1.85 (m, 2H), 1.80 - 1.74 (m, 2H), 1.66 - 1.34 (m, 8H), 1.27 - 0.83 (m, 42H).
MALDI-TOF MS: 理論値[M+ H]
+: 1464.78. 実測値: 1464.73。
【0290】
結論:
結論として、生成物SSIB−Cy7.5は、高い収率および純度で形成された。
【0291】
実施例4: SSIB−Cy7.5マーカー配合物の調製
本実施例では、NIR色素SSIB−Cy7.5を、LOIBまたはSAIBに基づくマーカー配合物に溶解させた。
【0292】
方法:
SAIBマーカー配合物の調製: SAIBを70℃に加熱し、7gのSAIBをガラスバイアルに注いだ。1gのxSAIBおよび2gのEtOHをSAIBと混合し、30分間音波処理を施して透明で均質なSAIB配合物(SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20)を得た。
【0293】
LOIBマーカー配合物の調製: 7gのLOIBをガラスバイアルに秤量した。1gのxSAIBおよび2gのEtOHをSAIBと混合し、30分間音波処理を施して透明で均質なLOIB配合物(LOIB:xSAIB:EtOH 70:10:20)を得た。
【0294】
SSIB−CY7.5の添加: 2mg/mlのSSIB−CY7.5保存溶液をEtOHで調製した。その後、0.1mlのSSIB−Cy7.5保存溶液をピペットでガラスバイアルに移し、穏やかなN
2流下、55℃で乾燥させ、2gのSAIBまたはLOIBのいずれかの配合物を加え、この溶液に6時間音波処理を施して最終色素濃度を0.01%w/wとした。0.01%、0.006%、0.003%、0.001%,0.0006%、0.0003%、0.0001%または0.00001%のSSIB−Cy7.5を含有する配合物を連続希釈により調製した。
【0295】
D&Cバイオレット2(D&Cv2)の添加: LOIBマーカー中、0.01%(w/w%)のSSIB−Cy7.5および0.1%(w/w%)のブルーD&Cバイオレット2を動物で試験するために調製した。簡単に述べれば、1mgのD&Cバイオレット2を1gのSSIB−CY7.5−LOIBマーカー溶液(LOIB:xSAIB:EtOH:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.01)中に混合し、この溶液に30分間音波処理を施した。
【0296】
結果:
10%w/wのxSAIB、20%のEtOHおよび0.00001%〜0.01%w/wのSSIB−Cy7.5を含有する、LOIBまたはSAIBのいずれかに基づくNIRマーカー配合物を調製した。これらの配合物は透明で均質であり、6か月を超えて沈澱も外観変化もなく5℃で保存することができた。0.1%w/wのD&Cバイオレット2を含有する配合物は暗青色であり、動物試験のために調製した。
【0297】
結論:
結論として、新規なNIR色素SSIB−Cy7.5を含有する透明で均質なNIRマーカー配合物を調製することができた。
【0298】
実施例5: PC1、PC2およびPC3マーカー配合物の調製
本実施例では、NIR色素PC1、PC2およびPC3をマーカー配合物で調製した。
【0299】
方法:
SAIBマーカー配合物の調製: SAIBを70℃に加熱し、7gのSAIBをガラスバイアルに注いだ。1gのxSAIBおよび2gのEtOHをSAIBと混合し、30分間音波処理を施して透明で均質なSAIB:xSAIB:EtOH配合物(SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20)を得た。8gのSAIBをガラスバイアルに注いだ。2gのベンジルアルコール(BA)をSAIBと混合し、30分間音波処理を施して透明で均質なSAIB:BA配合物(SAIB:BA 80:20)を得た。
【0300】
色素を含むSAIBマーカー配合物の調製:
PC1: クロロホルムに溶解させたPC1の溶液(50〜500μL、1mg/mL)をピペットでガラスバイアルに移し、室温、窒素流下でクロロホルムを蒸発させた。次に、1gのマーカー配合物(SAIB:xSAIB:エタノール 70:10:20)をバイアルに加えてPC1濃度を0.005〜0.05%w/wとした。得られた混合物に15分間、70℃で音波処理を施した後、ボルテックスで撹拌した。
【0301】
PC2: 1mgのPC2をガラスバイアルに秤量した。1gのSAIBマーカー配合物を加え、この溶液に55℃で6時間、音波処理を施した後、55℃で16時間、磁気撹拌して、最終色素濃度を0.1%w/wとした。
【0302】
PC3: クロロホルム(50〜500μL、1mg/mL)に溶解させたPC3の溶液をピペットでガラスバイアルに移し、室温、窒素流下でクロロホルムを蒸発させた。次に、1gのマーカー配合物(SAIB:BA 80:20)をバイアルに加えてPC3濃度を0.005〜0.05%とした。得られた混合物に15分間、70℃で音波処理を施した後、ボルテックスで撹拌した。
【0303】
種々の色素含量を含有する配合物を、マーカー溶液を用いた連続希釈により調製した後、激しく撹拌した。
【0304】
結論:
結論として、3種類のフタロシアニン色素は総て、SAIBを含有するマーカー配合物に良好に溶解された。
【0305】
実施例6: PC1、PC2およびPC3 NIR色素の分光学的特徴
本実施例では、トルエンおよびマーカー溶液に溶解させた場合のNIR色素PC1、PC2およびPC3に基づくフタロシアニンの吸光度および蛍光を検討した。
【0306】
方法:
有機溶媒でのPC色素の調製: トルエン中総てのPC色素の保存溶液を単に混合することにより調製し(1mg/mL)、さらに希釈して吸収および蛍光の測定に好適な濃度とた。3種類の濃度の各色素をトルエンで調製し、蛍光スペクトルを記録するために用い、吸光度のためには1種類の色素濃度を調製した。
【0307】
マーカー配合物でのPC色素の調製: 総ての組成物を重量パーセントまたは重量比で表す。SAIB(70%)、xSAIB(10%)およびEtOH(20%)、またはSAIB(80%)およびベンジルアルコール(BA)(20%)を含有するマーカー配合物を実施例5に記載のように調製した。
【0308】
SAIB:xSAIB:エタノール 70:10:20に基づくPC1マーカー溶液を実施例5に記載のように調製した。このPC1マーカー溶液をSAIB:xSAIB:エタノール 70:10:20でさらに希釈して吸収(0.001%w/w)および蛍光測定(0.005%w/w)に好適な濃度とした。
【0309】
SAIB:xSAIB:エタノール 70:10:20に基づくPC2マーカー溶液を実施例5に記載のように調製した。このPC2マーカー溶液をさらにSAIB:xSAIB:エタノール 70:10:20で希釈して吸収(0.001%w/w)および蛍光測定(0.001%w/w)に好適な濃度とした。
【0310】
SAIB:BA 80:20に基づくPC3マーカー溶液を実施例5に記載のように調製した。このPC3マーカー溶液をさらにSAIB:BA 80:20で希釈して吸収(0.01%w/w)および蛍光測定(0.005%w/w)に好適な濃度とした。
【0311】
蛍光放出測定: 各マーカー配合物(1.0mL)を石英キュベット(Helma、10mm光路)に移し、蛍光スペクトルを励起/放出帯域幅26nmおよび積分時間0.2秒を用い、蛍光分光計(OLIS DM 45)により収集した。トルエンおよびマーカー配合物中のPC1には、650nmの励起波長を使用した。PC2では、トルエンおよびマーカー配合物中の色素に関して700nmの励起波長を使用し、トルエン中のPC3には800nm、マーカー配合物中のPC3には750nmの励起波長を使用した。
【0312】
UV−vis吸光度測定: 各溶液(0.2mL)をピペットで96ウェルプレートに移し、UV−visスペクトル(400〜1000nm)を多モードマイクロプレートリーダー(Spark(登録商標)、Tecan)により、帯域幅3.5nmで記録した。
【0313】
結果:
3種類のフタロシアニン色素PC1、PC2およびPC3の吸光度および蛍光を検討し、結果を
図1に示す。
【0314】
結論:
結論として、PC1は、700〜800nm域で蛍光を発し、600〜700nmで吸光を示すことが判明した。PC2は、約790nmを中心とするよりシャープな蛍光バンドを示し、トルエン中ではより大きな波長に向かう肩を持っていた。マーカー配合物では、PC2は、約790nmを中心とする狭い放出ピークを示した。PC2は、650〜800nm域で吸光を示し、トルエン中では782nmにシャープなピークを有していた。SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20配合物中に組み込んだ場合のPC2では、より幅の広い吸収バンドが見られた。トルエンでは、PC3は、850〜1100nm域で蛍光を発し、700〜900nm域で吸光を示した。SAIB:BA 80:20に溶解させた場合、PC3は、トルエンに溶解させたPC3に比べてより幅の広い吸収および放出ピークを示した。3種類のPC色素は総て、蛍光放出強度の蛍光団濃度依存を示し、自己消光を示した。
【0315】
実施例7: フタロシアニンの蛍光自己消光分析
最高の蛍光強度を有する最も明るいマーカー配合物を特定するために、PC2色素の自己消光を調べた。自己消光はUVvisにより調べ、蛍光はキュベットを用いて90°で収集し、表面蛍光は表面プレートリーダーにより収集した。
【0316】
方法:
種々のレベルのPC2を含有する組成物SAIB:x−SAIB:EtOH 70:10:20を含む配合物を実施例5に記載のように調製した。
【0317】
蛍光光度計による蛍光放出 :簡単に述べれば、0.01%、0.006%、0.003%、0.001%、0.0006%、0.0003%、0.0001%または0.00001%のいずれかのPC2色素を含有するマーカー配合物サンプルの蛍光放出強度を記録し、例えば、1.2mLのPC2配合物をピペットで石英キュベット(Helma 10.00mm)に移し、蛍光分光計(OLIS SLM8000、USA)を用いて780nm〜830nmで蛍光放出を記録した。励起波長768nm、スキャン時間45秒、およびスリット幅8nmを用いて放出スペクトルを記録した。
【0318】
表面蛍光イメージング: ゲルサンプルの表面蛍光を、in vitro NIRイメージングシステム(Odyssey FC、Licor、USA)を用い、PC2色素濃度の関数として調べた。種々のPC2色素濃度を有する70μLのゲルサンプルをピペットで10ウェル試料ガラス(Thermo Scientific、10ウェル 6.7 mm)に移し、800nmチャネル設定(785nm励起、分解能125μm)を用いて蛍光を記録した。次に、サンプルを含む10ウェル試料ガラスを真空炉にて55℃で一晩維持してEtOHを除去した。EtOHの除去後、これらのサンプルを室温に冷却し、蛍光を再測定した。
【0319】
結果:
フタロシアニン色素のPC2蛍光自己消光を、標準90°キュベット測定を用い、表面蛍光イメージングにより調べ、結果を
図2に示す。
【0320】
結論:
結論として、SAIB:x−SAIB:EtOH 70:10:20中に配合されたフタロシアニン色素PC2の蛍光強度は、標準キュベットおよび表面蛍光アッセイの両方における色素濃度に依存することが判明した。自己消光の最大強度および最低程度は、標準放出蛍光における0.001%w/wおよび表面蛍光における0.01%w/wと決定された。自己消光はEtOH放出に依存しないこと、すなわち、このマーカーはEtOH流出の前後で同じ蛍光強度を有することが判明した。
【0321】
実施例8: SSIB−Cy7.5色素の分光学的特徴
新規なNIR色素SSIB−Cy7.5は、SAIBまたはLOIBに基づくマーカー中に配合され、蛍光または吸光度により特徴付けられる。蛍光放出はさらに、SAIBに基づくマーカー中の色素濃度の関数として調べた。
【0322】
方法:
SSIB−Cy7.5を含有するマーカー配合物SAIB:xSAIB:EtOHおよびLOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2を実施例4に従って調製した。
【0323】
蛍光スペクトル: SAIB:xSAIB:EtOH SSIB−Cy7.5配合物の場合、1mLのサンプルをピペットで石英キュベット(Helma 10.00mm)に移し、蛍光分光計(OLIS SLM8000、USA)を用いて780nm〜900nmの蛍光放出を記録した。励起波長768nm、スキャン時間45秒、およびスリット幅8mmを用いて放出スペクトルを記録した。LOIB:xSAIB:EtOH SSIB−Cy7.5配合物の場合、1mLのサンプルをピペットで石英キュベット(Helma 10.00mm)に移し、蛍光分光計(OLIS DM45、USA)を用い、励起/放出帯域幅26nmおよび積分時間0.2秒で800nm〜1100nmの蛍光放出を記録した。励起波長768nmを使用した。
【0324】
SSIB−Cy7.5マーカーサンプル、例えば、0.2mLのSSIB−Cy7.5配合物のUVvisスペクトルを、多モードマイクロプレートリーダー(Tecan、Sweden)を用いて記録し、D&Cv2を含む0.05mLのSSIB−Cy7.5配合物をピペットで96ウェルプレートに移し、550nm〜1000nmのUV−vis スペクトルを測定した。
【0325】
結果:
SSIB−Cy7.5を含有する蛍光マーカーを調製し、分光光度的に特徴付けた。結果を
図5に示す。SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20中のSSIB−Cy7.5の蛍光放出は、放出強度における色素濃度依存的変化および804から844へのピーク強度の段階的シフトを示した。SSIB−Cy7.5の濃度が増すにつれ、放出強度は0.003%w/wまで増大し、その後は低下して色素の自己消光を示す。LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2のUVvis分析は、それぞれ0.1%w/w D&Cv2色素および0.01%w/w SSIB−Cy7.5色素からの吸収に相当する590nmおよび803nmに吸収ピークを示した。LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2中、0.01%w/w SSIB−Cy7.5から845nmを中心とする放出ピークが決定された。
【0326】
結論:
結論として、SSIB−Cy7.5は、LOIBおよびSAIBの両マーカー配合物中に上手く配合され、蛍光強度およびピーク位置の両方の色素濃度依存を示した。
【0327】
実施例9: in vitroにおけるマーカーからのPC2の漏出
水性媒体または組織中にマーカーを注入すると、EtOHがマーカーから拡散し、これが色素の漏出をもたらし得る。この現象を、in vitroにおいて、高い量(0.1%w/w)のPC2を、リン酸緩衝溶液を含有するマーカー配合物に注入することにより検討した。その後、マーカーからの色素の漏出をUVvis分光法により検出した。
【0328】
方法:
0.1%w/wのPC2を含有するマーカー配合物SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20を実施例4〜5に記載されているように調製し、漏出実験に使用した。
【0329】
マーカーからのPC2色素のin vitro漏出: マーカーからのPC2色素の放出を、in vitroにおいて、300μLのPC2マーカー配合物(0.1%〜1mg/ml)を5mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、5mM、150mM NaCl、pH7.0)に注入することにより調べた。その後、サンプルを暗所にて37℃で保存し、1、3、6時間後および1、2、4、6日後にUV−vis分光法により色素放出をモニタリングした。0.5mlのPBS放出バッファーのUV−visスペクトルを、石英キュベットにて、ナノドロップ2000c(Thermoscientific、US)分光光度計を用い、600nm〜850nmで記録した。バッファー中でのPC2の溶解度が低いために、バッファー中のPCの標準曲線を得ることができなかった。アセトニトリル中PC2溶液(0.05mg/mL)を調製し、PBS中でのPC2の10%放出に相当する0.006mg/mL濃度となるようにPBSバッファーを用いて希釈した。
【0330】
結果:
SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20およびPC2色素を含有する配合物を調製し、放出媒体中のPC2をUVvisにより決定した(
図3)。
【0331】
6日以内に判定された放出媒体の吸光度の変化はなかったが、このことは色素が形成されたマーカー中に完全に保持されていることを示す。含めた10%標準(
図3)に基づくと、放出されたPC2色素は1%未満である。この結果は1%より低い可能性があるが、現行のベースラインノイズレベルでは解明することはできない。
【0332】
結論:
結論として、実験の6日という時間枠では、マーカーからのPC2の漏出は検出されなかった。
【0333】
実施例10: 銅のキレート化によるPC2の蛍光消光
フタロシアニン色素はキレーターであり、金属陽イオンに配位することができ、キレートの電子特性の変化は、色素の蛍光および吸光度に変化を引き起こし得る。
【0334】
方法:
0.001%w/wのPC2を含有するマーカー配合物SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20を実施例4〜5に記載されるように調製した。
【0335】
銅消光サンプル: エタノール中CuCl
2・2H
2Oの溶液(0.005mg/mL)を調製し、ガラスバイアル(0、44、87、131、218または436μL)に移した。各バイアル中のエタノールを、窒素流を用い、55℃に加熱することにより蒸発させた。PC2マーカー溶液(1.2mL、0.001%)を、種々の量のCuCl
2を含有する各バイアル(vail)に加え、その後の各バイアルのCu
2+/PC2のモル比はそれぞれ0、1:10、1:5、3:10、1:2および1:1となった。得られた混合物を55℃で2時間、磁気撹拌した。
【0336】
PC2マーカーサンプルのUVvisスペクトルを、多モードマイクロプレートリーダー(Tecan、スウェーデン)を用いて記録し、例えば、0.2mLのPC2配合物をピペットで96ウェルプレートに移し、550nm〜1000nmのUV−visスペクトルを測定した。
【0337】
各混合物の蛍光放出スペクトルを得た。簡単に述べれば、各マーカー溶液(1.2mL)を石英キュベットに移し、蛍光放出スペクトルを波長域780〜830nm、励起波長768nm、スキャン時間45秒およびスリット幅8mmで記録した。
【0338】
結果および結論:
図4に示すデータに基づけば、銅はPC2によりキレート化される、およびPC2の蛍光強度は銅の結合時に低下すると結論付けられる。PC2色素を完全に消光するためには1:1モル比の色素および銅が必要とされる。
【0339】
実施例11: フタロシアニン種色素の64Cuによる放射性標識
フタロシアニン種色素(PC1、PC2およびPC3)は、銅がPC2の蛍光放出を消光した実施例10で実証されたように金属キレーターである。本実施例では、PC2を含有するマーカー配合物を
64Cu
2+で放射性標識し、その後、Radio−TLCにより定量する。
【0340】
方法:
64Cu生産:
64Cuは、電気めっき
64Ni標的の陽子照射によるビームラインを備えたPETtraceサイクロトロン(GE Healthcare)で作製した後、塩化水素水溶液(HCl)媒体中での陰イオン交換クロマトグラフィーにより精製した。
64Cuは最終的にHCl水溶液(1.0M)中に得られ、アルゴン流によるHCl水溶液の蒸発により単離した。乾燥
64CuCl
2を、マーカーを放射性標識するために使用した。
【0341】
マーカーの放射性標識: PC2を含有するマーカーSAIB:xSAIB:EtOH(70:10:20)(750μL、0.01%または0.001%)、またはPC2不含マーカー(750μL)をガラスバイアルの乾燥
64CuCl
2(150MBq)に加えた。得られた混合物を55℃で2時間、磁気拡散した。
【0342】
放射性TLCによる特性決定: 少量の各放射性標識マーカーをガラスバイアルに秤量し、約10mg/mLの濃度となるようにアセトニトリルに溶解させた。得られた溶液を放射性TLC(Beta Detector GMCプローブを備えたPerkin−Elmer MiniGita Star)により、TLCプレート(Merck、シリカゲル60 F254)に1μLをスポットすることによって分析した。これらのTLCプレートを、クロロホルム:メタノール:mili−Q水:酢酸 70:25:4:1 (v/v)を溶離剤として用いて展開した。非錯化
64Cuは、これらのTLC条件を用いると元の位置に留まることが分かっている。
【0343】
結果:
マーカーSAIB:xSAIB:EtOH:PC2(70:10:20:0.01)を
64Cuで放射性標識し、放射性TLCを用いて錯体の形成を調べた。データを
図8に示す。
64Cu−PC2の形成は、得られたTLC保持係数(Rf=0.9〜1.0)を化学的に同じ非放射性対照化合物のものと比較することにより確認した。PC2を含まないマーカー中の
64CuのRfは元の位置に留まった(Rf=0)。
【0344】
結論:
結論として、PC2は、そのままSAIB:xSAIB:EtOH:PC2(70:10:20:0.01)および乾燥
64CuCl
2と混合することにより、
64Cuと容易に錯体を形成する。マーカー配合物中に0.01%w/wのPC2が存在すると、
64Cuの>99%がその錯体とともにTLCプレート上の溶媒前線を移動した。
【0345】
実施例12: 64Cu標識マーカーのin vitro放出および導入効率
64Cuの導入効率および放射性標識PC2 SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカーからのin vitro放出を調べた。遊離
64Cu
2+のスカベンジャーとしてのEDTAおよび放出されたPC2色素のスカベンジャーとしてのリポソームを含有する等張TRISバッファーをin vitro放出媒体として使用した。
【0346】
方法:
マーカー調製: PC2を含有する放射性標識SAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー(100μL、0.01%または0.001%)およびPC2不含の対照マーカー(100μL)を実施例5に記載されるように調製した。
【0347】
ステルスリポソームの調製: ステルスリポソーム(HSPLC:Chol:DSPE−PEG2k 3:1:1w/w)は、65℃で音波処理1時間により市販のステルス脂質混合物を等張TRISバッファーで水和させた後、200nmポリカーボネートフィルターを備えたミニエクストルーダーでサイズ選別を行うことにより調製した。リポソームサイズは142.4±1.6nmであり、PDIは0.19±0.006であった。脂質濃度はICP−MSを用いて決定し、リポソームは終濃度5mMとなるようにISO−イソTRISでさらに希釈した。
【0348】
in vitro放出アッセイ: その後、放射性標識マーカーを25G針で、TRIS(10mM、150mM NaCl、pH7.8)緩衝EDTA(1.0mM)およびステルスリポソーム(5.0mM脂質)を含有する放出媒体(4.0mL)の入ったガラスバイアルに注入した。放出バッファーに注入した各マーカーの放射能をドーズキャリブレーター(Comecer、VDC−505)にて測定した。アリコート(15〜1000μL)を時間(1時間、3時間、6時間、1日、2日、4日および6日)の関数として取り出し、等量の放出媒体に置き換えた。6日後、総ての放出媒体を除去し、残ったマーカーを、エタノール(1.0mL)を用いて溶解させた。得られた溶液(250μL)のアリコートを定量のために取り出した。次に、総てのサンプルアリコートをLSCカクテル(Ultimaゴールド)と混合し、液体シンチレーション(HIDEX、300SL 分光計)により2〜850keVのエネルギー範囲で分析した。
64Cuに関する検量線(20〜800Bq)を作成したところ、必要とする濃度範囲では直線であった(r
2>0.999)。
【0349】
導入効率: 導入効率は、サンプル中で可溶化されていた全活性の画分を測定する。導入効率は、個々の配合物に関し、活性濃度の決定により求め、すなわち、100μLのサンプルをガラスバイアルに移し、活性をドーズキャリブレーター(Comecer、VDC−505)で決定した。
【0350】
結果:
マーカーは上手く調製され、放射性標識され、in vitro放出および導入効率が決定された。結果を
図9に報告する。
【0351】
0、0.001または0.01%w/wのいずれかのPC2を含有するSAIB:xSAIB:EtOH 70:10:20マーカー配合物を
64Cuで放射性標識したところ、PC2色素濃度の増大とともに導入効率の増大が見られ、銅がPC2によりキレート化されることが確認される。PC2が存在しない場合(0%w/w)、
64Cuの67%がマーカー溶液に可溶化されていたが、このことは酸素豊富なマーカー成分SAIB、xSAIBおよびEtOHに対する銅の親和性を示す。
【0352】
in vitro放出アッセイにおいてマーカー間で顕著な差異が見られ、PC2不含のマーカー(キレーター無し)は急速なバーストを示し、数時間内に活性の80%を放出する。0.001%または0.01%w/wのPC2を含有するマーカーは、それぞれ2%未満または0.4%未満の限定された放出を示した。後者の結果から、予測されたように、色素/キレーター濃度が高いほどマーカー中でより高い放射性核種の保持をもたらすので、PC2と銅はキレートを形成することが確認される。
【0353】
結論:
結論として、PC2を含有するマーカーは、導入効率が高く(>80%)、in vitro放出程度が低い(<2%)
64Cuにより容易に放射性標識され得る。
【0354】
実施例13: マーカーLOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5を用いたNIR誘導手術
配合物LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5を、NIR画像誘導を用いるラットおよびブタモデルで外科的マーカーとして検討した。
【0355】
方法:
マーカー配合物LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01は実施例4に記載されるように調製した。
【0356】
ラットモデル: ウィスター雄ラット(体重400g)を過量のペントバルビタール(Euthanimal Vet、400mg/ml、Scanvet、ヘルスホルム、デンマーク)の静注により安楽死させ、50μLのマーカー配合物を右大腿および一方の精巣の筋肉内に1mlシリンジおよび23 G注射針を用いて注射した。マーカーの蛍光を、NIRカメラ(Fluobeam 800、Fluoptics、グルノーブル、フランス)を用いて評価し、外科的に摘出した(surgically exercised)。
【0357】
ブタモデル: 45kgの標準飼育のブタを過量のペントバルビタール(Euthanimal Vet、400mg/ml、Scanvet、ヘルスホルム、デンマーク)の静注により安楽死させ、胸壁切開により胸腔を開いた。切開創を開き、大きいWickers開創鉤を用いて開放を維持した(
図7A)。NIRカメラ(Fluobeam 800、800nm config、Fluoptics、グルノーブル、フランス)を用い、蛍光放出に関してマーカー性能のイメージングデータを得るために、肺の軸側から3層の深さでマーカーを注入した。
【0358】
結果:
LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5マーカーは上手く注入され、ラットの大腿および精巣(
図6)、ならびにブタの肺組織(
図7)でNIRカメラにより識別された。ラットモデルでは、マーカーは手術中(
図6A)または組織末梢に組み込まれた場合(
図6C)にD&Cv2色素により可視化されたが、NIRカメラを用いて可視化した場合にはより明瞭であった(
図6BおよびD)。ブタモデルにおいて、これらのマーカーは、約1cmまでの組織深度で識別できたが、放出光は最も深い組織ではますます減衰した(
図7D、左のマーカー)。さらに、LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5は、末梢/表面に組み込まれたマーカーのブルーD&Cv2色素によって視覚的に識別することができた(
図7C、右のマーカー)。
【0359】
結論:
結論として、組織内のマーカーの局在を可能とするSSIB−Cy7.5色素は、LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2配合物のNIRイメージングを可能とする。
【0360】
実施例14: マウスモデルにおけるマーカーのin vivo PET/NIR/CTイメージング
64Cu放射性標識SAIB:xSAIB:EtOH:PC2 70:10:20:0.01マーカーを調製し、8個体のマウスの側腹部の皮下に注射した。その後、IVISスキャナー(Perkin Elmer)を用いて動物をPET/CTおよび蛍光(FLI)により2次元で画像化した。データを
図10で定量測定値として、
図11で記録画像としてコンパイルする。
【0361】
方法:
64Cu放射性標識SAIB:xSAIB:EtOH:PC2 70:10:20:0.01マーカーを実施例10に記載されるように調製した。注入時に、マーカーは35MBq/mlの活性を有した。
【0362】
試験の設定: 経時的な蛍光団のIVISイメージングおよび
64CuのPETイメージングのために、8個体のマウス(NMRI/Taconic)の右側腹部に50μL(1.75MBq)マーカーを皮下注射した。8個体のマウス総てに、注射後1時間、4時間、24時間および48時間の時点でPET/CTおよびIVISスキャンを行い、3個体のマウスに2週間、3週間および4週間後にIVISスキャンを行った。PET/CTスキャンの後に5個体のマウスを安楽死させ、その後、臓器を回収し、ガンマカウンター(Wizard2、Perkin Elmer)Wellカウンターで120秒間カウントした。
【0363】
PET手順: セボフルランを用いてマウスを麻酔し、スキャンのために加温ベッドに寝かせ、CTでスキャンし、次いで、MicroPET Focus 120(Siemens Medical Solutions、マルバーン、PA、USA)にてPETデータを取得した。ボクセルサイズは0.866×0.866×0.796mm
3であり、中央視野において、分解能は,半値全幅(full width at half-maximum)(fwhm)1.4mmであった。1時間および4時間の時点に関しては5分、24時間の時点に関しては10分、さらに、48時間に関しては20分の放出時間での
64CuのPET−プロトコールでスキャンする。データは、最大事後確率(maximum a posterior)(MAP)再構築アルゴリズムで再構築した。活性の解剖学的局在ついては、専用の(dediactes)小動物イメージングシステム(NanoScan microSPECT/CT、Mediso、ブダペスト、ハンガリー)を用いてCT画像を取得した。データの再構築の後、PETおよびCT画像を、Inveonソフトウエア(Siemens)を用いて融合した。放出スキャンをランダムカウントおよびデッドタイムに関して補正した。これらのPETおよびCT画像を用いてトレーサー取り込みの領域を特定し、各スキャンに個別に適用された関心領域(regions of interest)(ROI)を作成した。関心領域はゲルおよび肝臓および腎臓周囲に描かれ、%ID/ゲルまたは%ID/gのいずれかが計算された。
【0364】
IVIS手順: 蛍光イメージングは小動物生物発光および蛍光スキャナー(IVIS、Lumina XR、Caliper Life Sciences、USA)を用いて行った。イソフルランを用いてマウスを麻酔し、スキャンのために加温プレートに寝かせ、蛍光(FLI)をスキャンした。ビニング2、曝露時間最大120秒および励起および放出波長Ex:745nmおよびEm:810〜875nmを用いた。
【0365】
ウェルカウント: 最後のPETスキャン時間(48時間)の後、5個体のマウスを安楽死させ、生体分布に関するウェルカウントのために臓器を回収した。ウェルカウントプロトコールは各臓器サンプルについて120秒のカウントからなり、結果は平均%注入用量/g(%ID/g)±SEMとして表した。
【0366】
マーカー体積: マーカー体積は、250HUのCTコントラストカットオフに基づく自動セグメンテーション手順により得た。
【0367】
結果:
全体的に見れば、マーカー中の活性濃度は、最初の48時間で7.5%の増加が見られ、肝臓蓄積は1%未満であった(
図10A)。PET画像によってまた、活性の主要な部分がマーカー体積中に存在することも確認された(
図11)。マーカー体積は最初の48時間に11%減少することが判明し(
図10B)、これはマーカーからのEtOH流出により引き起こされる。この体積減はまた、体積当たりのマーカー活性濃度の増大も説明する。このマーカーではいっそう高い活性濃度が見られたが、ウェルカウントデータ(
図10D)はさらに、得られたPETに基づく生体分布とも一致した。
【0368】
マーカー中のPC2からのNIR蛍光強度は、4週間ほぼ一定であることが判明し、24時間および48時間の時点では若干増加した(
図10C)。このことは機器性能またはスキャナー内の動物の位置の変動によって説明でき、NIR放出強度における実際の変化とは見なされない。FLI画像もまた、4週間、マーカーからの一定のNIR蛍光強度を示し(
図11)、このことは、時間が経っても光退色はマーカーの性能を変化させないことを示す。
【0369】
マーカーのCTコントラスト(
図11)は、最初の48時間、一定であることが判明し、このマーカーは、骨構造と等しいコントラストレベルを有して明らかに可視である。
【0370】
結論:
結論として、
64Cu放射性標識SAIB:xSAIB:EtOH:PC2 70:10:20:0.01マーカーは、PET/CTおよびNIRにおいて可視であり、総ての画像診断法で、PC2色素および
64Cu活性の位置、強度および保持に関して高い安定性を示した。
【0371】
実施例15: イオノフォアを用いたSSIB−Cy7.5を含有するNIRマーカーの64Cu放射性標識
本実施例では、別の戦略を用いて非キレート蛍光団を組み込んだNIRマーカーを放射性標識することにより現行のプラットフォーム技術の多機能性が示される。この手順では、マーカーLOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5(70:10:20:0.01:0.01)を、疎水性のキレーター8−ヒドロキシ−キノリン(8HQ)を使用して
64Cuで放射性標識し、それにより、PET/CT/NIRにおいて可視であり、有色であって目に見え、かつ、外科手技において触知可能な固体を形成するマーカーを作出した。
【0372】
方法:
マーカー配合物の調製: LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5(70:10:20:0.1:0.01)マーカー配合物を実施例4に記載されるように調製した。
【0373】
64Cuの調製: [
64Cu]CuCl
2は、実施例10に記載されるように調製した。
【0374】
マーカーの放射性標識: エタノール中8HQの溶液(200μL、500μM)および純粋なエタノール(300μL)を乾燥[
64Cu]CuCl
2(300MBq)と混合し、室温にて400rpmで18時間撹拌した。エタノール溶媒をアルゴン流を用い20分間50℃で蒸発させた。次に、1mLのマーカー配合物(LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01)を
64Cu(8HQ)の乾燥フィルムに加え、その後、この配合物を50℃、400rpmで2時間撹拌した。放射性標識マーカー配合物(660μL)を新しいガラスバイアルに移し、放射能をドーズキャリブレーター(Comecer、VDC−505)により測定した。非放射性ゲル配合物(1.5mL)を加えてこの配合物を20MBq/mLとなるように希釈した。最終配合物を50℃にて400rpmで20分間さらに撹拌することによりホモジナイズし、ボルテックスで撹拌した。
【0375】
動物モデル: 組成物LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01)を含むマーカーを20MBqの
64Cu(8HQ)/mLで放射性標識した。4個体の雌Balb/C CT26マウスの群をセボフルランで麻酔した。マウスの右側腹部を鉗子で留め、皮下注射のための無菌的準備を行い、各マウスに、1MBq/マウスの活性用量レベルに相当する50μLのゲル配合物(20MBq/mL)を皮下注射した。
【0376】
PETデータは、専用の小動物PET/CTスキャナー(Inveon、MicroPET Focus 120(Siemens Medical Solutions、マルバーン、30 PA、USA)で取得した。ボクセルサイズは0.866×0.866×0.796mm
3であり、中央視野において、分解能は,半値全幅(fwhm)1.4mmであった。PETスキャンは、ゲル注入の10分後に取得し、注入の1時間、17時間および42時間後に再び取得した。最大事後確率(MAP)再構築アルゴリズムで再構築物した。活性の解剖学的局在ついては、MicroCAT II 35システム(Siemens Medical Solutions、マルバーン、PA、USA)を用いてCT画像を取得した。データの再構築の後、PETおよびCT画像を、Inveonソフトウエア(Siemens)を用いて融合した。放出スキャンをランダムカウントおよびデッドタイムに関して補正した。これらのPETおよびCT画像を用いてトレーサー取り込みの領域を特定し、各スキャンに個別に適用された関心領域(ROI)を作成した。関心領域はゲルの周囲ならびに肝臓および腎臓の境界内に描かれ、%ID/ゲルまたは%ID/gのいずれかが計算された。
【0377】
マーカー体積: マーカー体積は、250HUのCTコントラストカットオフに基づく自動セグメンテーション手順により得た。
【0378】
FLI画像: 2個体のマウスから実施例14に記載の設定を用いて注入18時間および44時間後にFLI画像を得た。次に、マーカーからの総フラックスを積分し、
図12に示す。
【0379】
NIRカメラ画像: NIRカメラ(Fluobeam、800nm config、Fluoptics)を用いてNIR画像を取得した。
【0380】
結果:
PET/CT/NIRデータを収集し、結果を
図12に示す。LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5 70:10:20:0.1:0.01マーカー配合物は8HQにより錯体形成された
64Cuで上手く放射性標識された。4個体の雌Balb/Cマウスの右側腹部を鉗子で留め、皮下注射のための無菌的準備を行った。マーカーを皮下注射し、PET/CT画像を時間の関数として記録した。初期スキャン時間(10分)において、総活性の90%がゲル中に回収され、これは42時間後に81%に徐々に低下した(
図12A)。経時的に、
64Cuの小画分の肝臓および脾臓への蓄積が見られたが、両臓器に見られたのは1.2%ID/g未満であった。蛍光強度は注射後18時間および44時間の時点で一定であることが判明し、体積はこの実験の過程で8%減少した。
【0381】
結論:
結論として、8HQは、
64Cuのマーカーへの組み込みのための疎水性イオノフォアとして機能した。42時間で活性に見られた低下は10%未満であり、肝臓および脾臓への蓄積は最小であった。
【0382】
実施例16: イオノフォアを用いたSSIB−Cy7.5を含有するNIRマーカーの放射性ヨウ素標識
【0383】
本実施例では、別の戦略を用いて非キレート蛍光団を組み込んだNIRマーカーを放射性標識することにより現行のプラットフォーム技術の多機能性が示される。この手順では、マーカーLOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5(70:10:20:0.01:0.01)を、従前に記載の(Schaarup-Jensen et. al. Injectable iodine-125 labeled tissue marker for radioactive localization of non-palpable breast lesions, Acta Biomaterialia 65 (2018), p. 197-202)SAIB−TMS基質を使用して
125Iで放射性標識し、それにより、SPECT/CT/NIRにおいて可視であり、有色であって目に見え、かつ、外科手技において触知可能な固体を形成するマーカーを作出した。
【0384】
方法:
TLCをヘプタン:EtOAc(6:4)で実施し、KMnO
4染色剤で現像した。SAIB−TMSはRf=0.6に、[
125I]SAIB−Iはやや下方に溶出した。放射性TLCはCyclone Plus Strage Phosphor System(Perkin Elmer)で分析した。放射能をVeenstra InstrumentsドーズキャリブレーターVDC−505にて、Perkin−Elmerにより示されるI−125仕様を用いて予め較正された標準化4mLガラスバイアルで測定した。
【0385】
放射性ヨウ素化: Tl(CF
3COO)
3(10.2mg)をアセトニトリル(2.30mL)とトリフルオロ酢酸(1.50mL)の混合物に溶解させた。この溶液(380μL)のアリコートをHPLCバイアルに移した。(Tl(CF
3COO)
3:1.1mg、1.8μmol)。次に、このバイアルにアセトニトリル中SAIB−TMS(120μL、1.2μmol)を加えた。この溶液を室温で2時間撹拌した。次に、この混合物に10
−5M NaOH水溶液中[
125I]NaI(30μL、96.5MBq)を加えた。室温で43分撹拌した後、NaI水溶液(18μL、3.6μmol)を加え、次いで、室温で60分撹拌した。
【化9】
【0386】
後処理: この反応混合物に水(500μL)を加えた。その後、予めエタノール(2×5mL)および水(3×5mL)で洗浄したSEP−PEAK C18 Plusカートリッジに生成物を捕捉した。反応容器およびカートリッジをDTPA水溶液(3×1mL、50mM、pH7.0)、水(3×10mL)および水中25%(v/v)エタノール(2×2mL)で洗浄した。次に、この生成物をエタノール(3×1mL)で溶出した。エタノールの最初の2画分(2×1mL)は生成物本体を含有していた。これら2つの画分で放射性TLCにおいて放射性化学純度は、90.6%(画分10、51.6MBq)および92.6%(画分11、30.0MBq)であると決定された。この生成物をTLCにより分析したところ、放射性標識生成物の同一性が非放射性SAIB−IのRfとの比較により確認される化学純度であることが判明した。これら2つの画分をプールし、500μLのエタノールを追加して容器をすすいだ。放射能収量は83.4MBq(RCY:86%)であると決定された。
【0387】
マーカーの配合: エタノール中の合わせた生成物画分(2.5mL)から2.2mL(73MBq)を取り出し、これをガラスバイアルにてアルゴン流下、40℃で74分間蒸発乾固させた。この乾燥残渣に1.8mLのLOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5マーカー溶液を加えた後、室温で30分間、磁気撹拌した。これを最終マーカー配合物とした。
【0388】
放射能のin vitro保持: 放射性標識を含有するおよそ3×100μLのゲル溶液を、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(3.0mL)を含有するガラスバイアルに移した。数時点で、2mLの媒体を取り出し、2mLの新鮮媒体に置き換えた。この置き換えの後にバイアルに残った放射能を測定し、表1に示す。最後に示された測定点(X)において、全媒体を取り出し、新鮮媒体に置き換えた。これを最終の10日目の測定直後に行った。取り出した媒体アリコート中の放射能も測定し、表3に示す。
【0389】
動物モデル: 雌NMRIマウスまたは12週齢雌Balb/Cマウスの右側腹部を鉗子で留め、マーカーの皮下注射のための無菌的準備を行った。マーカーの注射後、SPECT/CTスキャンおよび蛍光イメージングを行った。
【0390】
SPECT/CTスキャン:
125I放射性標識LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5マーカー注射マウスのマイクロSPECT/CTスキャンを、専用小動物SPECT/CTスキャナー(NanoScan、Mediso、ブダペスト、ハンガリー)を用いて行った。SPECTスキャンは、マーカーを注射した領域の単一の視野(FOV)として行った。スキャンはマイクロピンホールコリメーターを用いて行い、総てのスキャンについて90秒の20投影を取得した。
【0391】
SPECT/CT画像上で、手動関心体積(VOI)を、市販のソフトウエア(Vivo−quant 3.5、inviCRO LCC.ボストン、MA、USA)を用いて構築した。複数のスキャン点で減衰補正
125I活性を計算して、マーカーにおける
125I保持を求めた。
【0392】
FLI画像: マーカーの蛍光イメージングは、小動物蛍光および生物発光イメージング(FLI)およびX線システム(IVIS Lumina XR、Caliper Life Sciences、USA)を使用し、実施例14に記載の設定を用いて実施した。FLI/X線イメージング(ex/em、光、1cm FOV)は、注射日とマーカーの注射後3週間毎週実施した。対応するラジオグラフおよび光学画像を記録した。画像を、ゲル面積の3倍のROIを手動構築し、その構築したROI内で総フラックス(カウント/秒)を記録することにより放出収量に関して評価した。
【0393】
結果:
【表3】
【0394】
マーカーにおいて放射能の優れた保持が見られ、測定されたゲル中の放射能は測定初日に約95%に下がり、ゆっくり降下するプラトーに達した。マーカー中の放射能が唯一測定されたインキュベーション10日後の最終測定点(X)では、その保持は95.5±0.5%(n=3)であった。保持される放射能の最初の低下はバースト放出に帰すことができるが、それは放出された媒体中の放射能により反映されていなかったことから、最初に観察された低下は、エタノールが放出されゲルが定着するにつれてのゲルの変化の幾何学的形状の結果である可能性がある。モニタリングの初日に、取り出された媒体中では0.17±0.08%(n=3)の放出が見られたにすぎず、連続10日間で合計約1%が放出されるまでにゆっくり着実に増加した。
【0395】
結論:
論として、これらのデータは、このLOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5マーカーシステムでは、極めて高い程度のI−125放射能保持が協調される。
【0396】
さらに、SPECT/CTおよびFLI/Xray画像(
図13)から、
125I放射性標識LOIB:xSAIB:EtOH:D&Cv2:SSIB−Cy7.5マーカーが3週間の期間、色素および
125I活性の局在、強度および保持に関して安定性が高かった。
【手続補正書】
【提出日】2021年3月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.水不溶性炭水化物、
b.蛍光色素、および
c.−2〜2の範囲のlogPを有する有機溶媒
を含んでなる、溶液。
【請求項2】
前記蛍光色素が2を上回るlogPを有し、それにより、水性条件下で溶液における蛍光色素の保持を可能とする、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
水性条件下で5時間後に10%未満、例えば5%未満、の蛍光色素が放出される、請求項1または2に記載の溶液。
【請求項4】
前記蛍光色素が近赤外線(NIR)造影剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項5】
NIR造影剤がフタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィン、アントラコシアニンおよびシアニン色素からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項6】
NIR造影剤が、PC1、PC2および/またはPC3などのフタロシアニンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項7】
前記蛍光色素が、SAIB、SSIBおよびLOIBからなる群から選択される水不溶性炭水化物にコンジュゲートされている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項8】
前記水不溶性炭水化物が、マルトース、トレハロース、ラクトースおよびスクロースからなる群から選択される二糖類を含んでなり、炭水化物を水不溶性とするように1以上のヒドロキシル基が官能化されている、請求項1に記載の溶液。
【請求項9】
前記水不溶性炭水化物が、C2−C7エステルを形成するように官能化された1以上のヒドロキシル基を含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項10】
C2−C7エステルを形成するように官能化されたヒドロキシル基の数が、n、n−1、n−2、n−3、n−4またはn−5であり、ここで、nは前記炭水化物のヒドロキシル基の総数である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項11】
前記C2−C7エステルが、炭水化物のヒドロキシル基とC2−C7アルカノイルのカルボニル基の間の結合により形成される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項12】
前記C2−C7アルカノイルがアセチル、プロパノイル、イソブタノイルおよびベンゾイルから選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項13】
前記水不溶性炭水化物が、オクタイソ酪酸マルトース(MOIB)、ジ酢酸ヘキサイソ酪酸スクロース(SAIB)、オクタイソ酪酸スクロース(SOIB)、オクタイソ酪酸ラクトース(LOIB)、およびオクタイソ酪酸トレハロース(TOIB)からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項14】
前記有機溶媒が、水性条件下で溶液から拡散して、ゲル、ガラス、半固体、固体、結晶またはその任意の組合せを提供する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項15】
粘度が、水性条件下で1000センチポアズ(cP)より多く、例えば5000cPより多く、例えば10000cPより多く、例えば50000cPより多く、例えば100000cPより多く増す、請求項1〜14のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項16】
水性条件下で5時間未満、例えば4時間未満、例えば3時間未満、例えば2時間未満で固化する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項17】
前記水性条件がin vivo条件である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項18】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネートおよびジメチルスルホキシドからなる群から選択される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項19】
モノグリセリド、ジグリセリドおよび/またはトリグリセリドをさらに含んでなる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項20】
前記蛍光色素が放射性核種に配位している、請求項1〜19のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項21】
前記放射性核種がTc−99m、In−111、Ga−67、Lu−177、Tl−201、Sn−117m、Cu−64、Mn−52、Zr−89、Co−55、Sc−44、Ti−45、Sc−43、Cu−61、As−72、Te−152、F−18、Ga−68、C−11、Nd−140およびTe−149からなる群から選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項22】
Cu−64、ならびにPC1、PC2、および/またはPC3を含んでなる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項23】
さらなる造影剤を含んでなる、請求項1〜22のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項24】
前記さらなる造影剤が、X線剤、CT剤、MRI剤、PET剤およびSPECT剤からなる群から選択される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項25】
前記さらなる造影剤が、式(III):
【化1】
の構造を有する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項26】
in vivo診断ツールとして使用するための、請求項1〜25のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項27】
in vivoイメージングの方法に用いるための、請求項1〜26のいずれか一項に記載の溶液を含んでなる組成物であって、前記方法が、
a.請求項1〜26のいずれか一項に記載の溶液を、それを必要とする個体に投与すること、
b.蛍光色素の励起、および
c.蛍光色素の検出
を含んでなる、組成物。
【請求項28】
前記溶液が、注入および/または塗抹により投与される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
in vivoイメージングのための、請求項1〜26のいずれか一項に記載の溶液を含んでなる、組成物。
【請求項30】
基準マーカーとして用いるための、請求項1〜26のいずれか一項に記載の溶液を含んでなる、組成物。
【請求項31】
手術のガイドのための、請求項1〜26のいずれか一項に記載の溶液を含んでなる、組成物。
【国際調査報告】