(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本発明は、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマー、その製造方法、それから製造される物品及び複合材料、複合材料の製造方法、並びにPEKK複合材料を含む複合材料製品に関する。驚くべきことに、低金属モノマーからPEKKポリマーを合成し、合成中の反応物の相対的な量を選択的に制御することにより、予想外に改善された溶融安定性を有するPEKKポリマーが得られることが見出された。PEKKポリマーを含むPEKK複合材料は、ポリマーマトリックスの溶融安定性が重要な厚い複合材料部品の製造に特によく適している。
ICP−OESによって測定される少なくとも30ppm、より好ましくは少なくとも40ppm、最も好ましくは少なくとも60ppmのリン量を有する、請求項5又は6に記載のPEKKSポリマー。
前記強化繊維が連続繊維であり、炭素繊維、グラファイト繊維、ガラス繊維(Eガラス繊維など)、セラミック繊維(炭化ケイ素繊維など)、合成ポリマー繊維(芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、及びポリベンゾオキサゾール繊維など)又はこれらの組み合わせである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書の目的のためには:
− 化合物、化学式又は式の一部を特定する記号又は数字の前後の括弧の使用は、それらの記号又は数字を本文の残りから区別し易くする目的を有しているに過ぎず、そのため前記括弧は省略することもでき;
− 「低金属モノマー」という表現は、ナトリウムとカリウムの濃度の合計が25重量ppm未満であり、且つカルシウムの濃度が10重量ppm未満であるモノマーを示すことが意図されており、金属濃度は、実施例に記載の誘導結合プラズマ発光分析(「ICP−OES」)により決定される。低金属モノマーは、当業者に公知の方法によって、例えば、2017年12月19日に出願された国際出願EP第2017/083672号明細書(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている方法によって調製することができる;
− 「結晶性PEKKポリマー」という表現は、20℃/分の加熱及び冷却速度を使用して、ASTM D3418−03及びE793−06に従って示差走査熱量計(DSC)で2回目の加熱走査で融解吸熱下の正味の(すなわち低温結晶化を考慮)面積として決定される、少なくとも5J/gの融解熱を有するPEKKポリマーを指すことが意図されており;
− 「PEKKポリマー」という表現は、別段の記載がない限り、前記PEKK
Sポリマーと前記PEKK
Cポリマーの両方を指すことが意図されている。
【0022】
前記ポリマーマトリックスは、上述した方法(M
C)から得られた少なくとも1種のPEKK
Cポリマーと、任意選択的な1種以上の添加剤とを含む。前記ポリマーマトリックスは、例えば、PEKKポリマーと任意の追加の添加剤とを乾式混合することを含む、当該技術分野で周知の方法により調製することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、PEKKポリマーは、50μm未満、好ましくは30μm未満の平均粒子サイズを有する微粉末に粉砕される。
【0024】
好ましくは、PEKKポリマーは、少なくとも1種の繰り返し単位(R
MPEKK)と少なくとも1種の繰り返し単位(R
PPEKK)を含む。
【0025】
各繰り返し単位((R
MPEKK)は、一般式(1):
−[−M
m−O−]− (1)
による式で表され、
各繰り返し単位(R
PPEKK)は、次の一般式(2):
−[−M
p−O−]− (2)
による式で表され、
これらの式中のM
m及びM
pは、それぞれ次の一般式(3)及び(4):
により表され、
式中、
R
1及びR
2は、各場合に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
i及びjは、各場合に、0〜4の範囲の独立して選択される整数である。
【0026】
本明細書で用いるところでは、破線の結合は、描画構造の外側の原子への結合を示す。化学種「M」上の添字「p」及び「m」は、中心のベンゼン環上のそれぞれのパラ(式(4))及びメタ(式(3))ベンゾイル置換を反映している。
【0027】
いくつかの実施形態において、各i及びjはゼロである。
【0028】
明確にするために記載しておくと、いくつかの実施形態において、PEKKポリマーは、各繰り返し単位が別個であるという状態で、複数の繰り返し単位(R
MPEKK)、複数の繰り返し単位(R
PPEKK)、又は両方を有する。したがって、繰り返し単位(R
MPEKK)への言及は、一般式(1)に従ったPEKK中の全てのタイプの繰り返し単位に言及し、繰り返し単位(R
PPEKK)への言及は、一般式(2)に従ったPEKK中の全てのタイプの繰り返し単位に言及する。
【0029】
本明細書で用いるところでは、PEKKポリマーは、繰り返し単位(R
MPEKK)及び繰り返し単位(R
PPEKK)の総濃度が、PEKKポリマー中の繰り返し単位の総モル数に対して少なくとも50モル%である任意のポリマーを意味する。いくつかの実施形態において、繰り返し単位(R
MPEKK)及び繰り返し単位(R
PPEKK)の総濃度は、PEKKポリマー中の繰り返し単位の総モル数に対して、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%又は少なくとも99モル%である。
【0030】
有利には、前記PEKK
Cポリマーにおいて、繰り返し単位(R
MPEKK)の総モル数に対する、繰り返し単位(R
PPEKK)の総モル数の比(「(R
PPEKK)/(R
MPEKK)」又は「T/I比」)は、55/45〜75/25、好ましくは60/40〜80/20、より好ましくは62/38〜75/25の範囲である。
【0031】
有利には、前記PEKK
Sポリマーにおいて、繰り返し単位(R
PPEKK)の総モル数対繰り返し単位(R
MPEKK)の総モル数の比(「(R
PPEKK)/(R
MPEKK)比」)は、少なくとも約1:1、少なくとも約1.2:1、少なくとも約1.3:1、少なくとも約1.4:1である。その上又は或いはまた、(R
PPEKK)/(R
MPEKK)比は、約5.7:1以下、約5:1以下、約4:1以下、約3.5:1以下若しくは約3:1以下、又は約2.7:1以下である。
【0032】
いくつかの実施形態において、繰り返し単位(R
MPEKK)は、繰り返し単位(R
M1PEKK)を含み、繰り返し単位(R
PPEKK)は、繰り返し単位(R
P1PEKK)、(R
P2PEKK)、及び(R
P3PEKK)を含む。
【0033】
好ましくは、繰り返し単位(R
M1PEKK)、(R
P1PEKK)、(R
P2PEKK)及び(R
P3PEKK)は、それぞれ、次式(5)〜(8):
−[−M
1*m−O−]− (5)
−[−M
1*p−O−]− (6)
−[−M
2*p−O−]− (7)
−[−M
3*p−O−]− (8)
で表され、
これらの式中、
M
1*m、M
1*p、M
2*p、及びM
3*pは、それぞれ、次の式(9)〜(12):
により表され、
これらの式中、
R
1*、R
2*、R
3*及びR
4*は、各場合に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
i
*、j
*、k
*及びL
*は、各場合に、0〜4の範囲の独立して選択される整数である。
【0034】
いくつかの実施形態において、各i
*、j
*、k
*及びL
*はゼロである。
【0035】
いくつかの実施形態において、繰り返し単位(R
M1PEKK)並びに繰り返し単位(R
P1PEKK)、(R
P2PEKK)及び(R
P3PEKK)の総濃度は、繰り返し単位(R
MPEKK)及び繰り返し単位(R
PPEKK)の総モル数に対して、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%若しくは少なくとも99モル%、又は100モル%である。いくつかの実施形態において、繰り返し単位(R
P1PEKK)、(R
P2PEKK)、及び(R
P3PEKK)の総モル数対繰り返し単位(R
M1PEKK)のモル数の比は、繰り返し単位(R
MPEKK)及び(R
PPEKK)に関して上に記載された範囲内である。
【0036】
上述したように、対象のPEKK
Cポリマーは、予想外にも従来の方法によって製造されたPEKKポリマーと比べて改善された溶融安定性を示す。したがって、いくつかの実施形態では、PEKKポリマーは、ASTM D4440に従って、410℃、窒素下、10rad/s、10分及び120分で1%のひずみで測定される、1.0〜3.0、1.0〜2.5、1.0〜2.4の範囲の複素粘度比120/10(平行板)を示す。さらに、いくつかの実施形態では、PEKK
Cポリマーは、以下の実施例に記載されるようにASTM D3835に従って測定した場合に、1.0〜1.3、好ましくは1.0〜1.25の範囲の溶融安定性(VR40)を示す。
【0037】
上述したように、PEKK
Sポリマーは、所与のη
inhで予想外により低い溶融粘度(「MV」)を有し、例えば、それらは、同じ機械的特性でより低い溶融粘度を示す。本明細書に記載のPEKK
Sポリマーは、−2Pa・s以下であるΔMVを有することができ、ここで、
ΔMV=MV
(e)−MV (E1)
式中、MV
(e)は、予期される溶融粘度(パスカル秒(「Pa・s」)単位)であり、η
inhは、PEKKポリマーの固有粘度(1グラム当たりのデシリットル(「dL/g」)単位)である。
【0038】
式E2中のパラメータm
mv及びnは、様々な伝統的なPEKKポリマーについてMV対ηinhをプロットし、曲線
にフィットさせることによって実験的に求めることができる。
【0039】
61:39〜65:35の(R
PPEKK)/(R
MPEKK)を有するPEKKポリマーでは、MVは下の実施例に記載の通りに410℃で測定され、m
mv=1006(Pa・s)(g/dL)
3.90且つn=3.90である。
【0040】
(R
PPEKK)/(R
MPEKK)比が65:35(1.86:1)超〜75:25(3.00:1)である好ましいPEKKポリマーでは、MVは下の実施例に記載の通りに380℃で測定され、同様に下の実施例において示されるようにm
mv=1490(Pa・s)(g/dL)
3.98且つn=3.98である。MV及びη
inhは、下の実施例に記載されるように測定される。いくつかの実施形態において、PEKKポリマーは、約−3Pa・s以下、約−5以下、約−10以下、約−12以下、約−30以下、−40以下、−50以下、又は−60以下であるΔMVを有することができる。
【0041】
PEKKポリマーは、280℃〜370℃、285℃〜360℃、又は290℃〜350℃のT
mを有することができる。T
mは、実施例に記載されるように20℃/minでDSCにより測定される。
【0042】
PEKKポリマーは、少なくとも0.40dL/g、少なくとも0.50dL/g、又は少なくとも0.60dL/gのη
inhを有することができる。その上又は或いはまた、PEKKポリマーは、1.50dL/g以下、1.40dL/g以下、又は1.2dL/g以下のηinhを有することができる。η
inhは、下の実施例に記載されるように測定される。
【0043】
有利には、本発明のPEKK
Cポリマーは、少なくとも45(μeq/g)/(g/10分)
0.29、又は好ましくは50(μeq/g)/(g/10分)
0.29、より好ましくは少なくとも60(μeq/g)/(g/10分)
0.29の、%[F]([F]すなわち
19F−NMRで測定されたPEKKポリマーのフッ素末端基の濃度と、MFIすなわちASTM D1238に従って8.4Kgの荷重で360℃で測定されたPEKKポリマーのメルトフローインデックスとの間の割合)の0.29乗を有する。
【0044】
有利には、本発明のPEKK
Cポリマーは、ICP−OESによって実施例で測定される少なくとも30ppm、より好ましくは少なくとも40ppm、最も好ましくは少なくとも60ppmのリン量を有する。
【0045】
上で述べられたように、本明細書に記載されるポリマー合成法は、予想外に改善された溶融粘度を有するPEKKポリマーを生成することが見出された。合成アプローチには、低金属モノマーの使用、反応物の選択的制御、及び合成スキームの他の要素が含まれる。より具体的には、合成アプローチは、低金属ビス(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンモノマーとビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマーのブレンドを、炭酸ナトリウム、Na
2CO
3、及び溶媒の存在下で反応させることを含み、ここで、前述の成分の相対量は、予想外に増加した溶融安定性を有するPEKKポリマーを達成するために選択される。
【0046】
一般に、本明細書の対象のPEKKポリマーは、それぞれ、次の一般式:
X
5−M
m−X
5 (13)
X
6−M
p−X
6 (14)
を有する低金属の1,3−ビス(ベンゾイル)モノマーと1,4−ビス(ベンゾイル)モノマーとの重縮合から形成される繰り返し単位を含み、
これらの式中、
X
5は−OH又はハロゲンであり、X
6は−OH又はハロゲンである。
【0047】
本明細書において、ハロゲンは、F、Cl、Br、及びIのうちのいずれか1つを指す。好ましくは、ハロゲンはF又はClであり、より好ましくはハロゲンはFである。
【0048】
本明細書において、1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーは式(13)で表されるモノマーを指し、1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーは式(14)で表されるモノマーを指す。さらに、ビス(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンモノマーは、X
5又はX
6がそれぞれ−OHである、式(13)又は(14)で表されるモノマーを意味する。ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマーは、X
5又はX
6が、それぞれ、ハロゲンである式(13)又は(14)で表されるモノマーを意味する。例えば、1,3−ビス(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンモノマー(1,3BHBB)は、X
5が−OHである式(13)のモノマーを意味する。別の例として、1,4−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマーは、例えば1,4−ビス(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン(1,4−DFDK)などの、X
6がハロゲンである式(14)のモノマーを指す。
【0049】
参照を容易にするために明記しておくと、上述した方法(M
S)では、Na
2CO
3、K
2CO
3、モノマー(HB)、モノマー(FB)、及び溶媒は、集合的に「反応成分」と呼ばれる。
【0050】
好ましくは、本発明によるPEKKポリマーでは、Σは、好ましくは<5.5、より好ましくはΣ<5.0、さらに好ましくは<4.0、<3.0、<2.0、最も好ましくは<1.5である。
【0051】
65/35(1.86:1)超〜75/25(3.00:1)の(R
PPEKK)/(R
MPEKK)比を有するPEKKポリマーについては、Σ<6.0であり、好ましくはΣ<5.5であり、より好ましくはΣ<5.0である。
【0052】
%Na
2CO
3及び%K
2CO
3に関して、いくつかの実施形態において、%Na
2CO
3+%K
2CO
3≦106.0%である。%Na
2CO
3+%K
2CO
3は、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも102%、さらに好ましくは少なくとも103.5%である。好ましくは、Na
2CO
3は、2009年10月23日に出願されたLouisの米国特許第9,175,136号明細書(これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に詳述されている粒度分布の要件を満たす。
【0053】
上述したように、各繰り返し単位(R
MPEKK)及び(R
PPEKK)は、モノマー(HB)とモノマー(FB)のモル数が等モルになるようなモノマー(HB)とモノマー(FB)との重縮合から形成される。
【0054】
したがって、%XS
DFDK>0である実施形態では、モノマーブレンドは、モノマー(HB)のモル数と比較してより多くのモルのモノマー(FB)を含む。いくつかのそのような実施形態では、%XS
DFDKは、0.1モル%〜10.0モル%、好ましくは0.3モル%〜5.0モル%、より好ましくは0.5〜3.0モル%、最も好ましくは0.8〜2.5モル%の範囲である。
【0055】
前記PEEK
Sポリマーについては、好ましくは、前記%XS
DFDK%は、0.7モル%〜10.0モル%、好ましくは0.75モル%〜5.0モル%、より好ましくは0.8〜3.0モル%である。
【0056】
溶媒に関して、それは、ジフェニルスルホン、ジベンゾチオフェンジオキシド、ベンゾフェノン又は1つ以上のそれらの任意の組み合わせを含むことができるが、それらに限定されない。好ましくは、溶媒はジフェニルスルホンを含む。より好ましくは、溶媒は、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%のジフェニルスルホンを含む。いくつかの実施形態において、ジフェニルスルホンは、2014年4月7日に登録された、参照により本明細書に援用される、Louisに付与された、米国特許第9,133,111号明細書に詳述されるような、限定された量の不純物を含む。
【0057】
モノマー(HB)及びモノマー(FB)の相対濃度に関して、繰り返し単位(R
MPEKK)と繰り返し単位(R
PPEKK)のそれぞれは、1,−3ビス(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンモノマー又は1,4−ビス(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンモノマーから選択されるモノマー(HB)と、1,3−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマー又は1,4−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマーから選択されるモノマー(FB)との重縮合により形成されることに留意すべきである。
【0058】
より具体的には、各繰り返し単位(R
MPEKK)は、2種の別個の1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーの重縮合から;又は1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーと1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーとの重縮合から形成される。同様に、各繰り返し単位(R
PPEKK)は、2種の別個の1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーの重縮合から;又は1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーと1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーとの重縮合から形成される。例えば、式X
5−M
m−X
5に従ったモノマー(1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼン)と、式X
6−M
p−X
6に従ったモノマー(1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼン)との重縮合は、繰り返し単位(R
PPEKK)及び(R
MPEKK)を形成し、ここで、X
5は、−OH又はハロゲンであり、X
5が−OHである場合、X
6は、ハロゲンであり、X
5がハロゲンである場合、X
6は、−OHである。別の例として、式X
5−M
m−X
5に従ったモノマー(1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼン)と、式X
7−M
*m−X
7に従ったモノマー(1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼン)との重縮合は、繰り返し単位(R
MPEKK)を形成し、ここで、M
*mは、式(13)で表され、M
mと同じ又はそれとは別個のものであり、そしてここで、X
5は、−OH又はハロゲンであり、X
5が−OHである場合、X
7は、ハロゲンであり、X
5がハロゲンである場合、X
7は、−OHである。また別の例として、式X
6−M
p−X
6に従ったモノマー(1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼン)と、式X
8−M
*p−X
8に従ったモノマー(1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼン)との重縮合は、繰り返し単位(R
PPEKK)を形成し、ここで、M
*pは式(14)で表され、M
pと同じ又はそれとは別個のものあり、そしてここで、X
6は、−OH又はハロゲンであり、X
6が−OHである場合、X
8は、ハロゲンであり、X
6がハロゲンである場合、X
8は、−OHである。
【0059】
好ましくは、本明細書で対象のPEKK
Cポリマーは、55/45〜75/25の範囲の(R
PPEKK)/(R
MPEKK)比を有する。
【0060】
好ましい実施形態では、前記PEKK
Sポリマーは、61/39超、好ましくは少なくとも65/35、最も好ましくは少なくとも68/32及び最大75/25のR
PPEKK)/(R
MPEKK)比を有する。
【0061】
したがって、モノマー(HB)とモノマー(FB)とのブレンド中の1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーのモル数に対する1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーのモル数の比(「1,4/1,3比」)は、前記PEKK
Cポリマーについては55/45〜75/25の範囲である一方で、前記PEKK
Sポリマーについては、61/39超、好ましくは少なくとも65/35、最も好ましくは少なくとも68/32及び最大75/25である。前述の1,4/1,3比が満たされている限り、1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンと1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンのモノマーであるモノマー(HB)とモノマー(FB)の相対量は、特に限定されない。いくつかの実施形態において、PEKKポリマー中の繰り返し単位(R
MPEKK)のモル数に対して、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%又は少なくとも99モル%の1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーは、1,3−ビス(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンモノマーであるか1,3−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマーである。
【0062】
重大なことに、反応成分の規定濃度、並びに本明細書に記載される反応成分の他の濃度は、繰り返し単位(R
MPEKK)及び(R
PPEKK)を形成するために使用される反応成分の量に関連している。言い換えれば、反応成分の1つ以上は、反応中の別個の時点で反応混合物中へ独立して組み入れることができる。いくつかの実施形態において、反応混合物は、式(EQ1)〜(EQ4)で規定される量(「規定量」)で反応成分のそれぞれを含有し、規定量のビス(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンモノマーとビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマーとが同時に反応させられる。例えば、1つのそのような実施形態において、反応混合物は、Na
2CO
3、K
2CO
3、ビス(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンモノマー、ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマー及び溶媒を、反応の前にそれらの規定量で、同時に、含有し、対応するモノマーがその中で反応させられる。
【0063】
代わりの実施形態において、反応成分の1つ以上は、反応の前に又は反応中に異なる時点で反応混合物に添加することができる。いくつかのそのような実施形態において、規定量の1つ以上の反応成分の一部は、反応の前に反応混合物に添加され、規定量の1つ以上の成分の残りは、反応中に反応混合物に添加される。
【0064】
好ましい実施形態において、それぞれ、繰り返し単位(R
MPEKK)を形成する1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーの少なくとも90モル%、少なくとも95、又は少なくとも99モル%は、反応の前か又は反応中に反応混合物に添加され、残りの繰り返し単位(R
PPEKK)を形成する1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーの少なくとも90モル%、少なくとも95、又は少なくとも99モル%は、反応中か又は反応の前に反応混合物に添加される。
【0065】
別の好ましい実施形態において、規定量の溶媒が、反応の前に反応混合物中に存在する。
【0066】
いくつかの実施形態において、規定量のNa
2CO
3及びK
2CO
3を、反応の前か又は第1反応中に反応混合物に添加することができる。
【0067】
本明細書での記載に基づき、当業者は、個々の反応成分を反応混合物に添加する追加の方法を認めるであろう。
【0068】
反応は、反応混合物が180℃〜270℃の第1温度範囲内にその温度を維持するために加熱される第1加熱を含むことができる。いくつかの実施形態において、第1加熱は、第1期間の間第1温度範囲内に反応混合物の温度を維持することを含むことができる。第1期間は、5分(「min」)〜300分、7分〜240分、又は10分〜180分又は15分〜120分であり得る。上に指摘されたように、反応成分の1つ以上は、反応中の別個の時点で反応混合物に独立して添加することができる。いくつかの実施形態において、それらの規定量での、反応成分のそれぞれは、第1加熱の前に反応混合物に添加される。代わりの実施形態において、反応成分の少なくとも1つ以上は、第1加熱中に反応混合物に添加され、反応成分の残りは、第1加熱の前に反応混合物に添加される。いくつかのそのような実施形態において、規定量の1つ以上の反応成分(例えば、全量の1つ以上の反応成分)は、第1加熱中に反応混合物に添加される。
【0069】
代わりのそのような実施形態において、規定量の1つ以上の反応成分の一部のみが、第1加熱中に反応混合物に添加され、残りの部分は、第1加熱の前に反応混合物に添加される。一般に、各反応成分は、第1加熱の終了の前にその規定量で反応混合物中に存在する。そのような実施形態において、第1期間は、規定量の各反応成分が反応混合物に添加された時点に関連する。好ましい実施形態において、繰り返し単位(R
MPEKK)を形成する1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーの少なくとも90モル%、少なくとも95、又は少なくとも99モル%は、第1加熱の前に又は第1加熱中に添加され、そしてここで、残りの1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーを形成する1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーの少なくとも90モル%、少なくとも95、又は少なくとも99モル%は、それぞれ、第1加熱中に又は第1加熱の前に添加される。
【0070】
いくつかの実施形態では、反応は、第1加熱に続く第2加熱をさらに含み、反応混合物は、ここでその温度を300℃〜340℃である第2の温度範囲内に維持するように加熱される。
【0071】
いくつかのそのような実施形態では、反応混合物は、第2期間、第2の温度範囲内に維持することができる。第2期間は、0〜240分、0〜180分、又は0〜120分であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、第2加熱は、反応混合物にエンドキャッピング剤を添加することをさらに含む。
【0073】
エンドキャッピング剤は、重合中の選択された時点で重合反応を終わらせることによってPEKKポリマーの分子量を制御する。そのような実施形態において、第2加熱は第2添加を含む。
【0074】
望ましいエンドキャッピング剤には、次式:
(式中、Gは、−C(O)−Ar又はS(O
2)−Arであり、Arはアリーレン基である)
で表されるものが含まれる。
【0075】
いくつかの実施形態において、エンドキャッピング剤は、PEKKポリマーの繰り返し単位(R
MPEKK)又は繰り返し単位(R
PPEKK)を形成するために使用される過剰のビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマー(1,3−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマー又は1,4−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマー)である。
【0076】
本発明のPEKK
Cポリマーでは、過剰とは、反応混合物に添加されるそれぞれのモノマーの全量を、ビス(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンモノマーと等モル量の少なくとも1.03倍、好ましくは少なくとも1.04倍、より好ましくは少なくとも1.05倍にする量よりも多い1,3−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマー又は1,4−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマーの量を意味する。明確にするために明記しておくと、エンドキャッピング剤が、繰り返し単位(R
MPEKK)又は繰り返し単位(R
PPEKK)を形成するために使用されるビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマーである実施形態では、エンドキャッピング剤の量は%XS
DFDKに含まれない。
【0077】
いくつかの実施形態では、PEKK
Cポリマーは、50モル%超、好ましくは55モル%超、60モル%超、65モル%超、70モル%超、75モル%超、80モル%超、85モル%超、90モル%超、95モル%超、99モル%超の、核磁気共鳴分光法(NMR)により決定される非反応性末端基を含む。本明細書における「非反応性末端基」は、ポリマー鎖の末端を形成する、−OH基ではない基である。好ましくは、非反応性基は、1,4−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼン基である。最も好ましくは、非反応性基は末端フッ素を含む。
【0078】
本発明のPEKK
Sポリマーでは、過剰とは、反応混合物に添加されるそれぞれのモノマーの全量を、ビス(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼンモノマーと等モル量の少なくとも1.08倍、好ましくは少なくとも1.10倍、より好ましくは少なくとも1.12倍にする量よりも多い1,3−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマー又は1,4−ビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマーの量を意味する。明確にするために明記しておくと、エンドキャッピング剤が、繰り返し単位(R
MPEKK)又は繰り返し単位(R
PPEKK)を形成するために使用されるビス(ハロベンゾイル)ベンゼンモノマーである実施形態では、エンドキャッピング剤の量は%XS
DFDKに含まれない。
【0079】
PEKKポリマーの形成方法のいくつかの実施形態において、モノマー(HB)及びモノマー(FB)は、少なくとも1種の第1の1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマー、少なくとも1種の第1の1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマー、少なくとも1種の第2の1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマー、及び少なくとも1種の第3の1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーをまとめて含み、ここで、各1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーは、式(13)に従った式で表され、各1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーは、式(14)に従った式で表される。いくつかのそのような実施形態において、少なくとも1種の第1の1,3−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーの1種、少なくとも1種の第1の1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーの1種、少なくとも1種の第2の1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーの1種、及び少なくとも1種の第3の1,4−ビス(ベンゾイル)ベンゼンモノマーの1種は、それぞれ、以下の式:
X
1−M
1*m−X
1 (16)
X
2−M
1*p−X
2 (17)
X
3−M
2*p−X
3 (18)
X
4−M
3*p−X
4 (19)
で表され、これらの式中、
X
1は−OH又はハロゲンであり、
X
1が−OHである場合にはX
2はハロゲンであり、X
1がハロゲンである場合にはX
2は−OHであり、
X
3は−OH又はハロゲンであり、
X
3が−OHである場合にはX
4はハロゲンであり、X
3がハロゲンである場合にはX
4は−OHである。
【0080】
いくつかのそのような実施形態において、モノマーX
1−M
*1m−X
1及びX
2−M
*1p−X
2は、重縮合して、それぞれ、繰り返し単位(R
M1PEKK)及び(R
P1PEKK)を形成し、モノマーX
3−M
*p−X
3及びX
4−M
*p−X
4は重縮合して、それぞれ、繰り返し単位(R
P2PEKK)、及び(R
P3PEKK)を形成する。
【0081】
いくつかの実施形態において、X
1及びX
3は−OHである。いくつかの実施形態において、各i
*、j
*、k
*及びL
*は、繰り返し単位(R
P1PEKK)、(R
P2PEKK)及び(R
P3PEKK)が同一であるように、ゼロである。
【0082】
前記方法(M
C)は、前記工程(I
*)の後且つ前記工程(II
*)の前に、溶媒(例えばジフェニルスルホン)及び残留塩をアセトンとpH1〜12の範囲のpHの水とを用いて抽出することによって前記少なくとも1種のPEKKポリマーを含有する組成物を単離する工程(I
*b)をさらに含むことができる。
【0083】
加えて、前記方法(M
C)は、前記工程(I
*)の後、且つ前記工程(I
*b)又は前記工程(II
*)の前に、前記少なくとも1種のPEKK
Cポリマーを含有する組成物を単離する工程をさらに含むことができる。好ましくは、前記工程は、工程(I
*b)の後に得られる少なくとも1種のPEKK
Cポリマーを含有するポリマーマトリックスを、リン酸二水素ナトリウム(NaH
2PO
4・2H
2O)とリン酸水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)のうちの少なくとも1つの溶液で洗浄することによって行われる。
【0084】
好ましくは、工程(I
*b)の後に得られる少なくとも1種のPEKK
Cポリマーを含有するポリマーマトリックスは、溶液と、例えばNaH
2PO
4・2H
2OとNa
2HPO
4の両方を含む水溶液と接触させられる。溶液中のNaH
2PO
4・2H
2Oの濃度は、好ましくは0.01〜0.20重量%、好ましくは0.02〜0.15重量%、最も好ましくは0.03〜0.10重量%の範囲であり、Na
2HPO
4の濃度は好ましくは0.01〜0.20重量%、好ましくは0.02〜0.15重量%、最も好ましくは0.03〜0.10重量%の範囲である。
【0085】
上述したように、前記少なくとも1種のPEKK
Sポリマーを含有する組成物を単離する前記工程(II)は、NaH
2PO
4及びNa
2HPO
4が入っている溶液で前記組成物を洗浄することによって行われる。
【0086】
好ましくは、前記工程(II)において、溶液中のNaH
2PO
4の濃度は、好ましくは、0.01〜0.20重量%、好ましくは0.02〜0.15重量%、最も好ましくは0.03〜0.10重量%の範囲であり、Na
2HPO
4の濃度は、好ましくは0.01〜0.20重量%、好ましくは0.02〜0.15重量%、最も好ましくは0.03〜0.10重量%の範囲である。
【0087】
好ましくは、上述したポリマーマトリックスは、(i)着色剤(例えば染料);(ii)顔料(例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛及び酸化亜鉛);(iii)光安定剤(例えばUV安定剤);(iv)熱安定剤;(v)酸化防止剤(例えば有機ホスファイト及びホスホナイト);(vi)酸捕捉剤(vii)加工助剤(viii)核形成剤(ix)可塑剤、内部滑剤、及び外部滑剤;(x)難燃剤(xi)煙抑制剤(x)帯電防止剤(xi)ブロッキング防止剤(xii)導電性添加剤(例えば、カーボンブラック及びカーボンナノフィブリル)(xiii)可塑剤;(xiv)流動性改良剤;(xv)増量剤;(xvi)金属不活性化剤並びに1つ以上のそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の追加の成分を含むことができる。
【0088】
好ましくは、追加の成分の総濃度は、ポリマーマトリックスの総重量を基準として、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、さらに好ましくは2%未満である。本明細書に記載のPEKKポリマーは、望ましくはポリマー組成物中で使用することができ、限定するものではないが、モバイル電子デバイス、医療デバイス、及び複合材料などの成形品の中に配合することができる。さらに、PEKKポリマー、又はそれらの組成物は、望ましくは積層造形用途の状況でも使用することができる。
【0089】
PEKKポリマーを含むポリマー組成物(「PEKKポリマー組成物」)は、補強性充填材を含むことができる。
【0090】
強化繊維は有機物であっても無機物であってもよい。
【0091】
強化繊維成分としての使用に適した繊維には、例えば、炭素繊維、グラファイト繊維、ガラス繊維、例えば、Eガラス繊維、セラミック繊維、例えば、炭化ケイ素繊維、合成ポリマー繊維、例えば、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、及びポリベンゾオキサゾール繊維が含まれる。そのような繊維の単層又は断面の目付は、例えば50〜600g/m
2で変動し得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又は炭素繊維とガラス繊維の両方を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、繊維は、例えば、ASTM D638によって測定される3.5ギガパスカル(「GPa」)以上の引張り強度及び200GPa以上の引張り弾性率を示す炭素繊維等の炭素繊維を含む。
【0094】
繊維は、ウィスカー、短繊維、連続繊維、シート、プライ、及びそれらの組み合わせの形態であってもよい。連続繊維は、さらに、一方向の、多方向の、不織の、織られた、編まれた、縫われた、巻かれた、及び網状の構成、並びにスワールマット、フェルトマット、及びチョップドマット構造のうちのいずれかが採用されていてもよい。 繊維トウは、クロストウステッチ、緯糸挿入編ステッチ、又はサイジングなどの少量の樹脂によって、そのような構成で所定の位置に固定することができる。本明細書における「連続繊維」は、10mmを超える長さを有する繊維である。
【0095】
補強性充填材の重量は、組成物の総重量を基準として、好ましくは80重量%未満、より好ましくは70重量%未満、さらにより好ましくは65重量%未満である。
【0096】
いくつかの実施形態において、本組成物は、ポリ(エーテルエーテルケトン)(「PEEK」)ポリマー、ポリ(エーテルケトン)(「PEK」)ポリマーを含むが、それらに限定されない、PEKKポリマーとは異なるポリアリールエーテルポリマー、スルホンポリマー、及びポリアリールスルフィドポリマーなどの、1つ又は2つ以上の追加のポリマー成分と組み合わせてPEKKポリマーを含む。他の実施形態によれば、上で詳述されたような、PEKKポリマーは、PEKKポリマー組成物中のたった1つのポリマー成分である。表現「ポリマー成分」は、その通常の意味に従って、すなわち、典型的には2,000g/モル以上の分子量を有する、繰り返し結合単位で特徴付けられる化合物を包含すると理解されるべきである。
【0097】
PEKKポリマー組成物は、例えば乾式ブレンディング、懸濁液若しくはスラリー混合、溶液混合、溶融混合又は乾式ブレンディングと溶融混合との組み合わせによる、PEKKポリマーと、任意選択的に補強性充填材と、任意選択的にPEKKポリマー組成物中に望まれる上記の追加の原料との密接混ぜ合わせを含む様々な方法によって調製することができる。
【0098】
上記に記載した粉末混合物をさらに溶融混錬することによって本発明の組成物を製造することも可能である。上記のように、溶融混錬は、上で詳述されたような粉末混合物に関して達成することができるか、又は上で詳述されたような、PEKKポリマー、上で詳述されたような、補強性充填材、及び任意選択的に、他の原料に関して直接達成することができる。共回転型及び反転型押出機、単軸スクリュー押出機、コニーダー、ディスク−パックプロセッサー及び様々な他のタイプの押出装置などの従来型の溶融混錬装置を用いることができる。好ましくは、押出機、より好ましくは二軸スクリュー押出機を用いることができる。
【0099】
本発明はさらに、上で定義したPEKKポリマーで上述した強化繊維を含浸することを含む、PEKK複合材料の製造方法にも関する。
【0100】
前記PEKKポリマーと、上で定義した任意選択的な1種以上の追加の成分とを含むポリマーマトリックスは、当該技術分野で公知の方法によって有利に調製することができる。
【0101】
そのような方法としては、例えば、PEKKポリマーと任意の追加の成分との乾式混合が挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態では、PEKKポリマーは、50μm未満、好ましくは35μm未満、30μm未満の平均粒子サイズを有する微粉末に粉砕される。
【0103】
例えば、ポリマーマトリックスで少なくとも部分的に含浸された繊維のシート又はテープの形態でプライを形成するために、ポリマーマトリックスで繊維を含浸できる様々な方法を使用することができ、その際のマトリックスは、例えば粉体塗装、フィルム積層、押出、引抜成形、水性スラリー、及び溶融含浸などの、溶融形態又は粒子形態のいずれかである。
【0104】
本明細書において、「テープ」は、ストリップ材料の単一の軸に沿って整列された、長手方向に延びる強化繊維を有する材料のストリップを意味する。
【0105】
マトリックスで含浸された繊維のプライを互いに隣接して配置して、プリプレグなどのコンソリデーションされていない複合材料積層体を形成することができる。ラミネートの繊維強化層は、それぞれの繊維補強材を互いに対して選択された方向に配置することができる。
【0106】
プライは、手作業で又は自動で、例えば、「ピックアンドプレース」ロボティクスを使用する自動テープレイアップによって、又は予め含浸された繊維のトウがモールド中若しくはマンドレルで加熱及び圧縮されるAFP(advanced fiber placement)によって積層することで、望まれる物理的寸法及び繊維配向を有する複合材料ラミネートを形成することができる。
【0107】
コンソリデーションされていないラミネートの層は、典型的には完全には一体に融着されておらず、コンソリデーションされていない複合材料ラミネートは、X線マイクロトモグラフィーによって測定される例えば20体積%を超える有意なボイド含有量を示し得る。複合材料ラミネートのコンソリデーション前の複合材料ラミネート取り扱いを可能にする中間工程として、ラミネートを安定させて層が互いに対して動くことを防止するために、例えば複合材料「ブランク」を形成するために、熱及び/又は圧力がかけられてもよく、或いは音波振動融着が使用されてもよい。
【0108】
そのように形成された複合材料ラミネートを、その後、典型的には例えばモールド内で熱及び圧力を複合材料ラミネートにかけることでコンソリデーションして、成形された繊維強化熱可塑性マトリックス複合材料製品を形成する。
【0109】
本明細書において、「コンソリデーション」とは、マトリックス材料が軟化され、複合材料ラミネートの層が一緒にプレスされ、空気、水分、溶媒、及び他の揮発性物質がラミネートから押し出され、隣接する複合材料ラミネートのプライが一体に融着して固く密着した物品を形成するプロセスである。理想的には、コンソリデーションされた複合材料製品は、X線マイクロトモグラフィーによって測定される最低限の、例えば5体積%未満、より典型的には2体積%未満のボイド含有率を示す。
【0110】
PEKK複合材料は、好ましくは、PEKK複合材料の20〜80重量%の強化繊維と、80〜20重量%のポリマーマトリックスとを含む。
【0111】
本明細書に記載のPEKK複合材料は、限定するものではないが、航空宇宙用途の構成要素などの複合材料製品に組み込むことができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、複合材料製品は、実質的に二次元の物品の形態である。
【0113】
二次元の製品には、1つの寸法(厚さ又は高さ)が他の2つの特徴的な寸法(幅及び長さ)よりも有意に小さい部品、例えばフィルム及びシートが含まれる。いくつかの実施形態において、複合材料製品は、三次元部品である。三次元部品には、複雑な形状(場合により逃げ溝、差込み部などを含む、例えば凹形又は凸形区間)を有する部品の形態を含む、同じように空間の3つの次元に実質的に伸びる部品が含まれる。
【0114】
いくつかの実施形態では、複合材料製品は、少なくとも4mm、好ましくは少なくとも5mmの厚さを有する少なくとも1つの部分を含む。
【0115】
ポリマーマトリックスの予想外に改善された溶融安定性のために、ポリマーマトリックスを含む複合材料製品は、5mmを超える厚さを有する部分において2%未満のボイドを示し得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、PEKK複合材料の靭性は、290℃〜370℃の範囲の温度で20分間加熱された後、その初期靭性の75%を超え、この靭性は、ASTM試験法D7137/7136に準拠した30Jの衝撃エネルギーを使用した衝撃後圧縮強さとして測定される。
【0117】
いくつかの実施形態では、PEKK複合材料の靭性は、290℃〜370℃の範囲の温度で20分間加熱された後、その初期靭性の75%を超え、この靭性は、ASTM5228に準拠したモード1の破壊靭性として測定される。
【0118】
PEKKポリマー組成物(又はPEKKポリマー)は、造形品へ望ましくは組み入れることができる。造形品は、押出成形、射出成形、及び圧縮成形を含むが、それらに限定されない任意の好適な溶融加工溶融加工技術を用いてPEKKポリマー組成物から製造することができる。いくつかの実施形態において、造形品は、実質的に二次元品の形態下にある。二次元製品は、1つの寸法(厚さ又は高さ)が他の2つの特徴的な寸法(幅及び長さ)より有意に小さい部品、例えばフィルム及びシートを含む。一部の実施形態において、成形品は、コーティングであり得る。いくつかの実施形態において、成形品は、三次元部品である。三次元部品には、複雑な形態部品(例えば、アンダーカット、インサートなどをおそらく含む、凹面又は凸面セクション)の形態下のなどの、同じように空間の3つの次元に実質的に伸びる部品が含まれる。
【0119】
いくつかの実施形態において、造形品は、携帯用電子機器の構成要素である。本明細書において使用する「携帯用電子機器」は、様々な場所に輸送され、様々な場所で使用される電子機器を意味する。携帯用電子機器としては、携帯電話、携帯端末(「PDA」)、ラップトップ型コンピューター、タブレット型コンピューター、ウェアラブル・コンピューティング機器(例えば、スマートウォッチ及びスマートグラス)、カメラ、ポータブルオーディオプレーヤー、ポータブルラジオ、衛星利用測位システム受信機及びポータブル型ゲームコンソールを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0120】
その上、改善された加工性(例えばより低いMV)及びより高い熱安定性のために、本明細書に記載されるPEKKポリマーは、融解フィラメント製造(FFF)又は選択的レーザー焼結(SLS)などの3D印刷(積層造形としても知られる)二次加工技術において望ましくも使用することができる。積層造形は、3Dモデルデータから材料を接合して物品を製造するプロセスを含む。物品は、一般に層ごとの堆積を用いて形成される。FFFタイプの商業的に入手可能な3D印刷製造設備としては、一例として、Stratasys,Inc.によって製造され、Fortus(登録商標)の商標で販売されている設備が挙げられる。SLS系の3D印刷設備の例は、商品名EOSINT(登録商標)で販売されているものなど、EOS corporationから入手可能である。そのような実施形態において、物品は、PEKKポリマー(又はPEKKポリマー組成物)を3D印刷することによって形成することができる。
【0121】
一部の実施形態において、本明細書に記載した成形品は、医療機器又は医療機器の構成要素である。本明細書で使用する「医療機器」は、疾病若しくは疾患の予防、診断若しくは治療において、又はヒト若しくは動物の身体の構造若しくは機能を検出するか、測定するか、回復させるか、矯正するか又は修正するために使用される製品、器具、装置又は機械である。
【0122】
材料の選択は、医療機器にとって、特にその材料が身体内に埋め込まれるか又は身体と接触する場合に極めて重要である。そのアプリケーション設定における医療機器の特定の要件(例えば耐摩耗性)を満たし、そしてまた、例えば、医療機器から体への化学薬品の浸出などの、体との望ましくない相互作用を低減するか又は防ぐ医療機器材料が継続して必要とされている。
【0123】
本明細書に記載されるPEKKポリマーは、例えば、それらの低下した塩素及び金属含有量に反映されるようなそれらのより高い純度のために、医療機器での使用に特に好適であり得る。
【0124】
医療機器は、一般に、外科的機器、非外科的機器、人工補装具、インプラントなどを含み得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるPEKKポリマーを含む医療機器は、埋込み可能な医療機器(IMD)である。IMDは、喪失した生物学的構造に取って代わり、損傷した生物学的構造を支援し、又は体中の既存の生物学的構造を強化するように設計された医療機器である。IMGの例としては、頭蓋顎顔面インプラントなどの頭蓋インプラント、脊椎ケージ及び脊椎ディスクなどの脊椎インプラント、指及び足指インプラント、膝代替品、寛骨臼キャップなどの股関節代替品、ステント、心臓弁、ペースメーカー、並びに骨ねじ及びプレートなどのハードウェアが挙げられる。医療機器は、取り外し可能な総義歯及び部分義歯フレーム、歯冠、ブリッジ、入れ歯及びインプラントバーなどの歯科器具も含み得る。
【0126】
参照により本明細書中に組み込まれている任意の特許、特許出願、及び公開資料の開示が、これがある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と対立する場合、本記載が優先するものとする。
【0127】
参照により本明細書中に組み込まれている任意の特許、特許出願、及び公開資料の開示が、これがある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と対立する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0128】
原材料
1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンは、露国特許出願公開第445643A1号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に従って調製した。
1,2−ジクロロベンゼン、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、3,5−ジクロロベンゾイルクロリド、塩化アルミニウム(AlCl
3)、メタノール、NaH
2PO
4・2H
2O、及びNa
2HPO
4は、Sigma Aldrichから購入した。
メタノールはSigma−Aldrichから入手した。
ジフェニルスルホン(ポリマーグレード)(純度99.8%)はProvironから入手した。
炭酸ナトリウム、ライトソーダ灰(d
90粒子サイズ=130μm)は、Solvay S.A.,Franceから入手し、使用前に乾燥した。
炭酸カリウム(d
90<45μm)は、Armand productsから入手し、使用前に乾燥した。
塩化リチウム(無水粉末)はAcrosから入手した。
【0129】
19F NMRによるF末端基の決定
F末端基の濃度は、外部標準としてヘキサフルオロアセトン三水和物を使用する
19F−NMRにより決定した。
【0130】
F末端基は、
のタイプのものである。
サンプル(約10mg)を0.5mlのCD
2Cl
2と0.5mlのCH
3SO
3Hに溶解した。複数回試みた後、最終的に透明な溶液が得られた。
全てのNMRスペクトルは、400MHz NMR Bruker AVANCE分光計で30℃で記録した。
19F 1D NMRスペクトルは以下の通りに得た:正確に既知の量のヘキサフルオロアセトン三水和物を0.5mLのCD
2Cl
2(又はC
2D
2Cl
4)と0.5mLのCH
3SO
3Hに溶解し、
19F−NMRスペクトルを外部標準として記録した。
ポリマーのF末端基濃度[F]は、次の式を使用して計算した:
式中、
全ての重量はグラム単位であり、
[F]はμeq/g単位であり、
I
Arylfluorideは、−94〜−96ppmでの
19F NMRシグナル(ポリマーサンプルのスペクトル)の積分値であり、
I
HFA.3H2Oは、−82.5ppmでの
19F NMRシグナル(外部標準スペクトル−シグナルは6Fについてのものである)の積分値である。
【0131】
メルトフローインデックスの決定
メルトフローインデックスは、ASTM D1238に従って、3.8kgの荷重で360℃で決定した。8.4kgの荷重について表に示されている最終的なMFIは、得られた値に2.35を掛けることによって得られた。
【0132】
キャピラリーレオロジー(VR40)による溶融安定性の決定
溶融粘度は、ASTM D3835に従ってキャピラリーレオメーターを用いて測定した。次の特徴:直径=1.016mm、長さ=20.32mm、円錐角=120°を有するダイを使用して、410℃及び46.3s
−1のせん断速度で10分及び40分の滞留時間後に読み取りを行った。
【0133】
溶融安定性は、10分に対する40分での粘度の比(VR40)によって評価した。値が1に近いほど溶融安定性を有する。
【0134】
平行板による複素溶融粘度の決定
以下の条件下で圧縮成形することにより、直径7.62cm×3mmの試験板を作製した:
1.368℃で予熱する、
2.2000重量kg−fで368℃/15分間
3.2700重量kg−fで368℃/2分間
4.2000重量kg−fで40分間かけて30℃に冷却する。
試験板から直径25mmのディスクをドリルで切り取り、TA ARESR DA3レオメーターでASTM D4440に従って平行板レオロジーにより分析した。
複素粘度は、410℃、窒素下、10rad/s、1%ひずみで120分間測定した。
【0135】
ICP−OESによるモノマー及びPEKKポリマー中の元素不純物の決定
清浄な乾燥した白金るつぼを分析天秤の上に置き、天秤をゼロにした。0.5〜3グラムのモノマー/ポリマーサンプルを舟形の皿に量り取り、その重量を0.0001gまで記録した。サンプルの入ったるつぼをマッフル炉(Thermo Scientific Thermolyne F6000 Programmable Furnace)に入れた。炉を525℃に徐々に加熱し、その温度で10時間にわたり保持して試料を乾式灰化した。
【0136】
灰化後、炉温を室温に冷却し、炉からるつぼを取り出し、フュームフード内に配置した。灰を希塩酸中に溶解させた。ポリエチレン製ピペットを使用して、この溶液を25mLの容量フラスコに移した。るつぼは、約5mLの超純水(R<18MΩcm)を用いて2回すすぎ洗い、定量的移動を実行するために洗浄液をメスフラスコに添加した。超純水をフラスコ内に計25mLとなるまで添加した。フラスコの上部に栓をして、内容物が確実に混ざるまで振とうした。
【0137】
ICP−OES分析は、誘導結合プラズマ発光分光器Perkin−Elmer Optima 8300デュアルビューを使用して実施した。発光分光器は、0.0〜10.0mg/Lの被分析物濃度を備えるNISTトレーサブル多要素混合標準物質の組を使用して較正した。48検体各々について0.9999より優れた相関係数を有する濃度範囲で線形較正曲線を得た。標準物質は、機器安定性を保証するために10個の試料ごとの前後に実施した。結果は、3回の実験の平均値として報告した。試料中の元素不純物の濃度は、下記の方程式を用いて計算した:
A=(B*C)/(D)
(式中、
A=試料中の元素の濃度、mg/kg(=wt.ppm)であり、
B=ICP−OESによって分析された溶液中の元素、mg/Lであり、
C=ICP−OESによって分析された溶液中の体積、mLであり、
D=この手法で使用した試料の重量である)。
【0138】
ガラス転移温度(T
g)の決定
ガラス転移温度(T
g)は、ASTM D3418−03及びE1356−03に従って示差走査熱量計(DSC)で測定し、半値法を使用して2回目の加熱から記録した。
【0139】
融解熱の決定(ΔH)
ポリマー粉末の融解熱(ΔH)は、20℃/分の加熱及び冷却速度を使用して、ASTM D3418−03及びE793−06に従って、示差走査熱量計(DSC)での2回目の加熱走査における融解吸熱下の面積として決定した。融解熱(ΔH)は、2回目の加熱走査で測定し、ガラス転移温度(Tg)より上から吸熱の終了時を超える温度まで引かれる直線ベースライン上の面積として得た。
【0140】
成形部品の融解熱(ΔH)は、20℃/分の加熱及び冷却速度を使用して、ASTM D3418−03及びE793−06に従って、示差走査熱量計(DSC)での1回目の加熱走査における融解吸熱下の面積として決定した。
【0141】
充填材入りの組成物については、測定された融解熱(ΔH)は充填材含有量について補正し、充填材を除くポリマー成分のみに対する融解熱(ΔH)を表した。
【0142】
モノマーの調製
1,4−ビス(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン(1,4−DFDK)及び1,3ビス(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン(1,3−DFDK)は、Gilbらの米国特許第5,300,693号明細書(1992年11月25日に出願、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の実施例1に従ってフルオロベンゼンのフリーデルクラフツアシル化により調製した。1,4−DFDKの一部は米国特許第5,300,693号明細書に記載されている通りにクロロベンゼン中での再結晶により精製し、1,4−DFDKの一部はDMSO/エタノール中での再結晶により精製した。DMSO/エタノール中での再結晶により精製した1,4−DFDKを重合反応における1,4−DFDKとして使用して以下で記載するPEKKを製造し、クロロベンゼン中で再結晶した1,4−DFDKを1,4−ビス(4’−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン(1,4−BHBB)の前駆体として使用した。
1,4−BHBB及び1,3−ビス(4’−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン(1,3−BHBB)を、Hackenbruchらの米国特許第5,250,738号明細書(1992年2月24日出願、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の実施例1に記載の手順に従ってそれぞれ1,4−DFDK及び1,3−DFDKの加水分解により製造した。
以下の比較実施例2で使用する1,4−BHBBを米国特許第5,250,738号明細書の手順を使用して精製することで、以降で「モノマーA」と呼ばれる「高金属モノマー」を得た。
以下の比較実施例3並びに実施例4及び5で使用される1,4−BHBBを、DMF/エタノール中での再結晶によって精製することで、「モノマーB」と呼ばれる(「低金属モノマー」)を得た。
1,4−BHBBモノマー中の様々な金属の量は、以下で説明するICP−OES分析により決定した。分析結果を表1に示す。
【0143】
【0144】
比較例1:求電子プロセスによって製造されたPEKK。
重縮合
攪拌機、乾燥N
2注入管、反応媒体中に差し込まれている熱電対、及び凝縮器が取り付けられた2000mLの4つ口反応フラスコに、1000gの1,2−ジクロロベンゼンと40.63gの1,4−ビス(4−フェノキシベンゾイル)ベンゼンを導入した。その後、乾燥窒素の掃引下で、7.539gの塩化テレフタロイル、9.716gの塩化イソフタロイル、及び0.238gの塩化ベンゾイルを反応混合物に加えた。次いで、反応器を5℃に冷却し、温度を5℃未満に保ちながら、塩化アルミニウム(AlCl
3)71.88gをゆっくりと加えた。反応を5℃で10分間保持し、次いで混合物の温度を5℃/分で90℃に上げた。反応混合物を90℃で30分間保持し、次いで30℃まで冷却した。30℃で、250gのメタノールをゆっくりと添加して、温度を60℃未満に維持した。添加終了後、反応混合物を2時間攪拌し続け、次いで30℃まで冷却した。
【0145】
濾過及び洗浄
次いで、ブフナーでの濾過により固形物を除去した。湿った状態のケーキをフィルター上で追加の188gのメタノールで濯いだ。次いで、湿った状態のケーキをビーカー中で440gのメタノールで2時間再スラリー化した。ポリマー固形物をブフナー漏斗で再度濾過し、湿った状態のケーキをフィトラー(fitler)上で188gのメタノールで濯いだ。この固形物を、470gの塩酸水溶液(3.5重量%)で2時間スラリー化した。次いで、ブフナーでの濾過により固形物を除去した。湿った状態のケーキをさらなる280gの水でフィルターにおいて濯いだ。次いで、湿った状態のケーキをビーカー中で0.5N水酸化ナトリウム水溶液250gを用いて2時間再スラリー化した。次いで、湿った状態のケーキを、475gの水を用いてビーカーの中で再スラリー化し、ブフナー漏斗で濾過した。最後の水洗工程をさらに3回繰り返した。その後、ポリマーを、6.6重量%のNaH
2PO
4・2H
2O及び3.3重量%のNa
2HPO
4が入っている0.75gの水溶液でスラリー化し、次いで、180℃の真空オーブンの中で12時間乾燥させる。
【0146】
比較例2:モノマーAを使用するPEKKの合成
この実施例で使用した1,4−BHBBは、146ppmの総金属濃度を有するモノマーAであった。
【0147】
撹拌機、N
2注入管、反応媒体中に入れられた熱電対を備えるClaisenアダプター並びに凝縮器及びドライアイストラップ付きのDean−Starkトラップが取り付けられた500mLの4つ口反応フラスコに、127.50gのジフェニルスルホン、26.130gの1,3−BHBB、18.921gの1,4−BHBB(モノマーA)、及び46.525gの1,4−DFDKを導入した。フラスコ内容物を真空下で排気し、次いで(10ppm未満のO
2を含む)高純度窒素で満たした。反応混合物を次いで一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0148】
反応混合物を270℃までゆっくり加熱した。270℃で、15.555gのNa
2CO
3及び0.098gのK
2CO
3を60分かけて粉末ディスペンサーから反応混合物に添加した。添加の終了時、反応混合物を1℃/分で320℃まで加熱した。320℃で14分後に、1.368gの1,4−DFDKを、反応器において窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。5分後、0.600gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に、別の0.456gの1,4−DFDKを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。
【0149】
次いで、反応器内容物を、反応器からステンレス鋼受皿に注ぎ込み、冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリッションミルで摩砕した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1〜12のアセトンと水との混合物から抽出した。最後の洗浄のために、0.67gのNaH
2PO
4・2H
2O及び0.62gのNa
2HPO
4を1200mLのDI水に溶解した。粉末を次に反応器から取り出し、真空下の120℃で12時間乾燥させ、72gの黄色の粉末を得た。
【0150】
最終PEKKポリマーは、71/29のT/I比を有していた。
【0151】
比較例3:モノマーBを使用する中国特許出願公開第CN1974631号明細書によるPEKKの調製
攪拌機、N
2注入管、反応媒体中に差し込まれている熱電対付きClaisenアダプター、並びに凝縮器及びドライアイストラップ付きDean−Starkトラップが取り付けられた500mLの4つ口反応フラスコに、249.93gのジフェニルスルホン、39.790gの1,4−BHBB(モノマーB)、17.726gの1,4−DFDK、22.561gの1,3−DFDK、及び13.646gのNa
2CO
3を導入した。フラスコ内容物を真空下で排気し、次いで(10ppm未満のO
2を含む)高純度窒素で満たした。反応混合物を次いで一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0152】
反応混合物を120℃まで、次に2℃/分で120℃〜160℃まで加熱した。混合物を次に1h、160℃に保持し、5℃/分で210℃まで加熱し、1h、210℃に保持した。混合物を次に5℃/分で250℃まで加熱し、1h、250℃に保持した。混合物を次に10℃/分で290℃まで加熱し、2h、290℃に保持した。混合物を10℃/分で310℃まで加熱し、3h、310℃に保持した。反応器内容物を次に、反応器からステンレス鋼受皿に注ぎ込み、冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンに通してアトリッションミルで摩砕した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1〜12のアセトンと水との混合物から抽出した。最後の洗浄のために、0.67gのNaH
2PO
4・2H
2O及び0.62gのNa
2HPO
4を1200mLのDI水に溶解した。粉末を次に反応器から取り出し、真空下の120℃で12時間乾燥させ、68gのオフホワイトの/黄色の粉末を得た。
【0153】
最終ポリマーは、70/30のT/I比を有していた。
【0154】
実施例4:モノマーBを使用するPEKKの最初の合成
1,4−BHBBモノマーがモノマーBであり、総金属濃度が9.7ppmであったことを除いては比較例2の手順に従った。
【0155】
最終ポリマーは、71/29のT/I比を有していた。
【0156】
実施例5:モノマーBを使用するPEKKの第2の合成
NaH
2PO
4・2H
2O及びNa
2HPO
4の重量をそれぞれ1.34g及び1.24gへと2倍にしたことを除いては実施例4の手順に従った。
【0157】
最終ポリマーは、71/29のT/I比を有していた。
【0158】
比較例6:本発明による実施例と同じモノマーを使用する中国特許出願公開第1974631号明細書によるPEKKの調製
攪拌機、N
2注入管、反応媒体中に差し込まれている熱電対付きClaisenアダプター、並びに凝縮器及びドライアイストラップ付きDean−Starkトラップが取り付けられた500mLの4つ口反応フラスコに、219.94gのジフェニルスルホン、14.706gの1,4−ビス(4’−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン(14BHBB B、清浄)、35.453gの1,4−ビス(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン、20.309gの1,3−ビス(4’−フルオロベンゾイル)ベンゼン及び12.009gのNa
2CO
3を導入した。フラスコ内容物を真空下で排気し、次いで(10ppm未満のO
2を含む)高純度窒素で満たした。次いで、反応混合物を一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0159】
反応混合物を120℃まで、次に2℃/分で120℃〜160℃まで加熱した。混合物を次に1h、160℃に保持し、5℃/分で210℃まで加熱し、1h、210℃に保持した。混合物を次に5℃/分で250℃まで加熱し、1h、250℃に保持した。混合物を次に10℃/分で290℃まで加熱し、2h、290℃に保持した。混合物を10℃/分で310℃まで加熱し、26分間310℃に保持することで、他の実施例と一致する分子量を目標にした。次いで、反応器内容物を反応器からSS受皿に注ぎ込んで冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリッションミルで摩砕した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1〜12のアセトンと水との混合物から抽出した。最後の洗浄のために、0.67gのNaH
2PO
4・2H
2O及び0.62gのNa
2HPO
4を1200mLのDI水に溶解した。粉末を次いで反応器から取り出し、真空下120℃で12時間乾燥させ、60gのオフホワイト/黄色の粉末を得た。
【0160】
最終ポリマーは、71/29のT/I比を有していた。
【0161】
比較例7:高レベルの残留金属及び少ないNa
2CO
3を有するモノマーを使用するPEKKの合成及び分析
この実施例で使用した1,4−BHBBは、146ppmの総金属濃度を有するモノマーAであった。
【0162】
攪拌機、N
2注入管、反応媒体中に入れられた熱電対を備えるClaisenアダプター、並びに凝縮器及びドライアイストラップ付きのDean−Starkトラップを備えた500mLの4口反応フラスコに、112.50gのジフェニルスルホン、23.056gの1,3−BHBB、16.695gの1,4−BHBB、及び41.051gの1,4−DFDKを導入した。フラスコ内容物を真空下で排気し、次いで(10ppm未満のO
2を含む)高純度窒素で満たした。反応混合物を次いで一定の窒素パージ(60mL/分)下に置いた。
【0163】
反応混合物を260℃までゆっくり加熱した。260℃で、13.566gのNa
2CO
3及び0.086gのK
2CO
3を60分かけて粉末ディスペンサーから反応混合物に添加した。添加の終了時、反応混合物を1℃/分で320℃まで加熱した。320℃で14分後に、1.409gの1,4−DFDKを、反応器において窒素パージを保ちながら反応混合物に添加した。5分後、0.529gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後に、別の0.402gの1,4−DFDKを反応器に添加し、反応混合物を15分間温度に保った。
【0164】
次いで、反応器内容物を、反応器からステンレス鋼受皿に注ぎ込み、冷却した。固形物を砕き、2mmスクリーンを通してアトリッションミルで摩砕した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1〜12のアセトンと水との混合物から抽出した。最後の洗浄のために、2.03gのNaH2PO4・2H2O及び1.86gのNa2HPO4を1200mLのDI水に溶解した。粉末を次に反応器から取り出し、真空下の120℃で12時間乾燥させ、72gの黄色の粉末を得た。
【0165】
最終PEKKポリマーは、71/29のT/I比を有していた。
【0166】
【0167】
上で示されているように、実施例4及び5のPEKKは、驚くべきことに、求電子プロセスを使用して製造された比較例1と比較して、改善された溶融安定性を示した(例えばVR40及び複素粘度比120/10を参照)。
【0168】
さらに、比較例2のPEKKが比較的低レベルの金属を有していているにもかかわらず、実施例4及び5のPEKK(Σ=0.9及び低金属モノマーB)は、比較例2(Σ=0.9及び高金属モノマーA)と比較して改善された溶融安定性(例えばVR40及び複素粘度比120/10を参照)を予想外にも示した。これに関し、比較例2及び実施例5のPEKKポリマーの経時的な平行板による複素粘度プロファイルが
図1に示されている。
図1は、比較例2のPEKKと比較して予想外に向上した実施例5のPEKKの経時安定性をさらに実証している。
【0169】
加えて、Σ<6.0の要件を満たす反応物量の本発明の実施例5のPEKKは、驚くべきことに、反応物の量がΣ<6.0の要件を満たさなかった比較例3のPEKKと比較して大幅に改善された溶融安定性(VR40)を示した。
【0170】
最後に、せん断貯蔵弾性率(G’)及びせん断損失弾性率(G”)が交差する時間(「クロスオーバー時間」)、すなわちポリマーが、410℃の液体よりも固体のように挙動し始めるのに要する時間も記録したところ、実施例4及び5のPEKKが、比較例1及び2のPEKK程度の試験条件下で予想外にも交差しなかったことが示されている。
【0171】
衝撃強さ試験
比較例1(CE1)のPEKKポリマー及び実施例5のPEKKポリマーを、溶融含浸プロセスにより連続炭素繊維ユニテーププリプレグに変換した。
【0172】
ユニテーププリプレグは、34重量%の公称樹脂含有量及び145g/m
2の繊維目付を有していた。オートクレーブでのコンソリデーションに備えて、プリプレグテープを切断し、32プライの疑似等方レイアップ([+45/90/−45/0]4s)(350mm×350mmのパネルサイズ)にレイアップした。
【0173】
レイアップを、袋詰めフィルム用の高温ポリイミドフィルムを使用して真空で袋詰めした。サイクルの開始時にレイアップで685〜760mmHgの真空を使用し、次いで3〜7℃/分の加熱速度でコンソリデーション温度まで加熱する、連続上昇コンソリデーションオートクレーブサイクルを採用した。最大コンソリデーション温度に到達した後、6.8barの圧力をかけ、指定された時間保持してから冷却する。同様に同じ真空レベルで行われる冷却速度は3〜5℃/分である。試験パネルをオートクレーブから取り外し、次いで超音波スキャンして優れたコンソリデーション(ボイド含有率2%未満)であることを確認してから、ラミネートを衝撃後圧縮試験用の試験クーポンへと機械加工した。
【0174】
使用した衝撃後圧縮試験方法は、6.7J/mmの衝撃エネルギーレベルを使用するASTM D7137であった。
【0175】
CE1及び実施例5のそれぞれについて5つの試験クーポンを試験した。両方のポリマーの衝撃後圧縮(CAI)強さとしての結果を、最高温度での異なるオートクレーブ保持時間で測定した。これらは以下の表3に示されている。
【0176】
【0177】
不純物を低減するための限られた量の洗浄が行われた比較例1のポリマーが5%の低下を示したのとは対照的に、不純物の少ない実施例5のポリマーは、靭性が14%増加した。