(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-528082(P2021-528082A)
(43)【公表日】2021年10月21日
(54)【発明の名称】植物の成長を改善するための緑色微細藻類の使用
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20210924BHJP
C05G 5/20 20200101ALI20210924BHJP
C05F 11/08 20060101ALI20210924BHJP
A01C 1/06 20060101ALI20210924BHJP
【FI】
A01G7/00 605Z
C05G5/20
C05F11/08
A01C1/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-571710(P2020-571710)
(86)(22)【出願日】2019年6月21日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2019066498
(87)【国際公開番号】WO2019243587
(87)【国際公開日】20191226
(31)【優先権主張番号】18179068.4
(32)【優先日】2018年6月21日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520498619
【氏名又は名称】アルジー・イノベイション・ネザーランズ・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Algae Innovation Netherlands B.V.
(71)【出願人】
【識別番号】520498620
【氏名又は名称】ウニフェルシテイト・ファン・アムステルダム
【氏名又は名称原語表記】Universiteit van Amsterdam
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・バールト
(72)【発明者】
【氏名】ウィシュワス・アブヤンカル
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー・ブラル
【テーマコード(参考)】
2B051
4H061
【Fターム(参考)】
2B051AA02
2B051AB01
2B051AB03
4H061AA01
4H061AA02
4H061AA04
4H061CC41
4H061EE02
4H061EE05
4H061EE12
4H061EE30
4H061FF01
4H061GG48
4H061JJ03
4H061JJ06
4H061KK07
(57)【要約】
本発明は、植物の成長を改善するための、生存している緑色微細藻類を含む液体組成物に関する。液体組成物は、無機炭素源としての炭酸水素塩の存在下で、10〜12のpHで緑色微細藻類を成長させることによって製造される。液体組成物は、使用するまで4〜25℃で保存することができる。液体組成物は、肥料を改善するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生存している緑色微細藻類を含む液体組成物を製造するための方法であって、
pH10〜pH12の水性培地中、無機炭素源として5mM未満のナトリウムおよび炭酸水素塩を含む培地中、開放池で緑色微細藻類を培養すること;
沈殿または遠心分離によって緑色微細藻類を収穫し、0.5% w/w〜10% w/wの範囲の乾物含量および5mM未満のナトリウム含量を有する、生存している緑色微細藻類を含む液体組成物を得ること;
を含む方法。
【請求項2】
水性培地が、湧水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭酸水素塩が、重炭酸アンモニウムまたは重炭酸カリウムとして供給される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
緑色微細藻類が、培養物へのフロキュレーション剤の添加なしで、自己フロキュレーションによって収穫される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
液体組成物の乾物含量が、1% w/w〜5% w/wの範囲である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
液体組成物が、最大の2 mMのナトリウムを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
液体組成物が、4〜25℃の範囲の温度で最大1年間保存される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
生きている微細藻類が、アンキストロデスムス、デュナリエラ、クロレラ、ヘマトコッカス、ペディアストルム、セネデスムスおよびボルボックスから選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
生きている緑色微細藻類、最大5 mMのナトリウムおよび0.5% w/w〜10% w/wの範囲の乾物含量を含む液体組成物。
【請求項10】
該微細藻類が、アンキストロデスムス、クロレラ、ヘマトコッカス、ペディアストルム、セネデスムスおよびボルボックスから選択される、請求項9に記載の液体組成物。
【請求項11】
肥料が、液体肥料であり、基質が、粘土、コイアダスト、堆肥、繊維、砂利、ローム、苔、泥炭、パーライト、砂または水を含む、請求項9または10に記載の液体組成物を含む肥料または基質。
【請求項12】
植物の成長、栄養素の同化、代謝または光合成の効率、種子、塊茎または球根を改善するための、請求項9または10に記載の液体組成物の使用。
【請求項13】
液体組成物が、基質または肥料と混合されるか、またはそれに含まれる、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
液体組成物が、植物、種子、塊茎、球根または基質上または内に、噴霧または注入される、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
液体組成物が、毎日、週1回、週3回または毎月、継続的に適用される、請求項12〜14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
植物が、消費可能な植物または観賞植物である、請求項12〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
植物が、キク科、シュウカイドウ科、アブラナ科、アカザ科、ウリ科、イネ科、マメ科(Leguminosae)、ユリ科、アオイ科、バショウ科、ラン科、シャクヤク科、バラ科、アカネ科、ミカン科、ヤナギ科、ナス科、アオギリ科またはバンダ亜科のメンバーである、請求項12〜16のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長を改善するための微細藻類に基づく液体組成物に関する。本願発明はまた、液体組成物を製造するための方法および液体組成物の使用にも関係する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、大量の肥料の使用は、環境に問題を引き起こしてきた。これらの肥料は、主に、植物の栄養素である溶存ミネラルを含む。土壌と植物の相互作用は、これらの製品によって刺激されない。これは、一時的に植物に利益をもたらすが、時間の経過とともに土壌が枯渇し、汚染され、土壌の肥沃度が失われる。現在、世界中で、農家および植物栽培者にとって経済的で環境に優しいオプションが求められている。天然由来の植物成長促進剤(バイオ肥料とも呼ばれる)は、植物の栄養効率および一般的な健康を向上させるので、既存の肥料の好ましい代替品と見なされてきた。
【0003】
一般に海藻として知られている大型藻類は、肥料として頻繁に提案されている。EP3 055 415は、外因性小RNA分子を含む、好ましくはアスコフィルム・ノドスムなどの、海藻からの抽出物または溶解物を含む肥料組成物を記載している。米国特許第9,854,810号は、酸性化剤として酢酸およびアルカリ化剤としてKOHで海藻を処理することによって得られる肥料を開示している。それは、アメリカのレオナルダイトと混合されて乾燥生成物が得られる。世界中で海藻は植物の成長改善剤として使用されているが、海藻を使用することの欠点は、それが、水質および条件が不明で管理されていないことが多い水からの海藻であるということである。海藻源も塩分濃度が高く、これは植物にとってもう一つの欠点である。
【0004】
微細藻類は、淡水および海洋系で一般的に見られる微細で小さい植物である。それらは、単細胞種であることが多く、個別に、または鎖状または群体で存在する。乾燥した微細藻類を肥料として使用することが記載されており、たとえば、Coppens et al、2016 J. Applied Phycol. 28:2367を参照。この文献では、低温殺菌および乾燥した微細藻類を徐放性肥料として使用する方法について記載している。微細藻類は、フォトバイオリアクター内で成長する。US2014/0345341は、フォトバイオリアクター内でのシアノバクテリアからのバイオ肥料の生産について記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトバイオリアクターは、構築と使用にかなり費用がかかる。より経済的、かつより実用的に生産することができ、商業生産に使用することができる代替物を有することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】5週間のシロイヌナズナ植物の根の発達。左:完全な基質上で成長した対照コントロール。右:本発明による液体組成物と混合された完全な基質上で成長した。
【
図2】水耕栽培システムにおけるトマトの根の発達。左:すべての必須ミネラルを含む増殖培地で増殖させた対照グループ。右:増殖培地に微細藻類を添加して増殖させた。
【
図3】イチゴの根の発達;左:対照植物;右:微細藻類を追加。
【
図4】新鮮な微細藻類(生細胞、三角形)または乾燥微細藻類(死細胞、正方形)での処理に対するソラヌム・リコペルシクム(Solanum lycopersum)(トマト)の成長応答(茎の長さ)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な記載
本発明は、生存している緑色微細藻類を含む液体組成物を製造するための方法であって、
--pH10〜pH12の水性培地中、無機炭素源として5mM未満のナトリウムおよび炭酸水素塩を含む培地中、開放池で緑色微細藻類を培養すること;
--沈殿または遠心分離によって緑色微細藻類を収穫し、0.5% w/w〜10% w/wの範囲の乾物含量および5mM未満のナトリウム含量を有する、生存している緑色微細藻類を含む液体組成物を得ること;
を含む方法に関する。
【0008】
本発明による方法は、いくつかの利点を有する。1つの利点は、本発明による方法によって得られた液体組成物が、無機肥料よりも植物の成長を促進するのにより効果的であることである。本発明による方法は、有益な土壌微生物の活性を開始および増強するために使用することができ、それによって植物成長条件の改善を促進することができる液体組成物をもたらす。
【0009】
もう1つの利点は、池での培養が可能であることである。結果として、海から得られる海藻よりも培養条件が、よりコントロールされる。
【0010】
もう1つの利点は、この方法が、淡水中での培養を可能にすることである。したがって、得られる製品は、海藻ベースの製品よりも塩化ナトリウム含量およびヨウ化物含量が低い。
【0011】
別の利点は、この方法によって得られた液体組成物が、海藻ベースの組成物よりも植物にとってより高い栄養価をもつことである。微細藻類製品には、タンパク質などの重要な植物刺激成分と、すべての必須アミノ酸、主要および重要な微量元素、色素(抗酸化物質)、ビタミン、炭水化物、植物成長調節剤(ホルモン)、および重要な多価不飽和脂肪酸が含まれている。
【0012】
もう一つの利点は、この方法が陸上の池での培養を可能にすることであり、それは海から陸への高い輸送コストを回避する。
【0013】
さらに別の利点は、この方法が開放系での培養を可能にすることである。一般に、開放池などの開放培養系は、フォトバイオリアクターなどの閉鎖系よりも建設費が安い。閉鎖系の投資コストおよび運用コストは、開放系と比較して10〜20%高い。世界的な開放系は、大規模で成功裏に商業的に運用されている唯一の系であることが証明されている。
【0014】
本発明による方法は、緑色微細藻類を培養することを含む。本発明の文脈において、培養とは、サイズの増加または数の増加による緑色微細藻類バイオマスの増加を意味する。色微細藻類は、緑藻綱、特に緑色植物門に属する真核、光合成、単細胞生物であり、好ましくは、淡水微細藻類である。1つの実施態様では、緑色微細藻類は、アンキストロデスムス、クロレラ、デュナリエラ、ヘマトコッカス、ペディアストルム、セネデスムスおよびボルボックスから選択される属などの、クロレラ科、デュナリエラ科、ユースティグマ科、ヘマトコッカス科、アミミドロ科、セレナストラム科、セネデスムス科およびボルボックス科から選択される科に属する。好ましくは、微細藻類は、アンキストロデスムス・ファルカツス、クロレラ・ブルガリス、ペディアストルム・ボリアナム、セネデスムス・ジモルファスまたはセネデスムス・クアドリコーダなどの、アンキストロデスムス、クロレラ、ヘマトコッカス、ペディアストルム、セネデスムスおよびボルボックスから選択される淡水緑色微細藻類である。最も好ましくは、緑色微細藻類は、ペディアストルムまたはセネデスムス、特に、ペディアストルム・ボリアナム、セネデスムス・ジモルファスまたはセネデスムス・クアドリコーダなどの、アミミドロ科またはセネデスムス科に属する。
【0015】
本発明による方法による栽培は、開放池などの開放系で行われる。本発明の文脈において、開放池などの開放という用語は、培養物が屋外にさらされる培養系を意味する。開放系は、培養物の表面と大気との間のガス交換を可能にする限り、完全にまたは部分的に覆われていてもよい。1つの実施態様では、培養物の表面の少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは100%が大気と接触しており、大気とガスを交換することができる。1つの実施態様では、開放系はまた、典型的にはその水面を通して、培養物中への雨水の浸透を可能にする。
【0016】
池は、天然または人工でありうる。1つの実施態様では、池は、埋め立て地などの地表に位置する。別の実施態様では、池は、コンクリート、木材、プラスチックであるか、またはタイル張りであってもよい、コンテナ、浴槽、タンク、プール、またはボウルの場合がある。池は通常、屋外、例えば屋外タンク内にある。それは、たとえば、屋根があり壁がない構造で、完全にまたは部分的に覆われていてもよい。池は、円形、楕円形、長方形、または不規則など、任意の形態をとることができる。1つの実施態様では、池は、楕円形タイプの水路型であり、中央の仕切り壁を備えた単一のユニットの形態で構築されている。池は、1000リットル〜800,000リットルの範囲など、任意のサイズを有することができる。1つの実施態様では、容量が100,000〜500,000リットルまたは200,000〜600,000リットルの池が使用される。開放池は、浅いこと、たとえば、深さが50cm以下であることが好ましい。1つの実施態様では、池の深さは、30〜50cmまたは40〜50cmの範囲である。1つの実施態様では、池は、水密材料で裏打ちされている。池の裏打ちに使用される材料は、好ましくは、密封しやすい柔軟で非毒性のUV耐性材料、たとえば、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンなどの柔軟で非毒性のUV耐性プラスチックから作られる。ライニングは、可塑剤を容易に放出しないことが好ましい。1つの実施態様では、ライニングは飲料水の品質を満たす。1つ以上の池は、互いに近接して、または互いに隣接して配置されうる。1つの実施態様では、開放池は、屋外に露出され、培養物への雨水の浸透を可能にする温室構造で設置された水路設計タイプのものである。
【0017】
本発明による方法で使用される開放池は、培養培地、再循環培養培地、炭酸水素塩、湧水、水道水、ミネラルまたは栄養素のための1つ以上の入口、および収穫などのための1つ以上の出口を有しうる。
【0018】
開放池は、微細藻類の培養に適していなければならない培地を含む。培養培地は、好ましくは水性であり、典型的には、微細藻類の成長に必要なすべての要素を含む水である。水性培地用の水は、水源から池に供給される。水源は、水を含む容器でありうる。最終的な微細藻類製品が植物に適用され、ほとんどの植物が塩を含んだ条件下ではうまく成長しないので、水は、新鮮であるのが好ましい。水は、水道水、雨水または湧水でありうる。湧水は、地下水源から得ることができる。多環芳香族化合物(PAC)、特に、多環芳香族炭化水素(PAH)など、微細藻類の成長を妨げる物質や人体に有害な物質を含まない限り、どのような水でも使用することができる。最終製品を耐塩性が高いか、または中程度の植物に適用する場合は、汽水を使用することができる。塩水を使用しないことが好ましい。
【0019】
1つの実施態様では、培養の開始時に、少なくとも50% v/v、少なくとも60% v/v、少なくとも70% v/v、少なくとも80% v/vまたは少なくとも90% v/vの培地、たとえば、50〜100% v/vまたは80〜100% v/vの培地は、湧水または水道水である。もう1つの実施態様では、培養の開始時に、池は、水道水と湧水の混合物で満たされている。水道水:湧水の比率は、たとえば、1:1、1:2、1:5、1:9、2:1、5:1または9:1でありうる。もう1つ実施態様では、池の培養の開始時に、主に水道水を含むが、湧水は、培地に定期的に添加される。さらにもう1つの実施態様では、池の培養の開始時に、池は、主に湧水を含み、たとえば、少なくとも80〜100% v/vの培地が湧水である。湧水には、微細藻類の成長に必要ないくつかの必須ミネラルおよび炭酸水素塩を含むという利点がある。水は任意の形態で供給されうる。1つの実施態様では、水は液体形態で供給される。さらにもう1つの実施態様では、水は蒸気形態で供給され、これは、凝縮後、たとえば、池を形成する容器の壁に対する凝縮後に、液体になる。
【0020】
微細藻類は、光合成と成長のために無機炭素源と光エネルギーを必要とする。本発明による方法では、光エネルギーは、太陽または人工照明から得ることができる。好ましくは、太陽光は、任意選択で人工照明と組み合わせて使用される。特に夜間や悪天候時には、人工照明との組み合わせが望まれる場合がある。人工照明の適切な例は、LED光である。人工照明が適用される場合、好ましい波長は、約450nm、約647nm、および約663nmである。当業者は、人工照明の適用がシステムの経済性を低下させることを理解するであろう。1つの実施態様では、太陽光は人工照明と組み合わされておらず、光合成による酸素生成は、低光条件および夜間に低くなることが認められる。したがって、藻類は交互の明暗レジームに付される。暗期の間に、微細藻類細胞は細胞成分の再生を開始する。
【0021】
無機炭素の要件は、空気中の自然濃度(0.03%)が低すぎて、微細藻類の最適な成長および高い生産性を維持することができないので、空気中の二酸化炭素の単純な拡散では満たすことができない。本発明の方法によれば、追加的に必要とされる無機炭素は、重炭酸塩またはHCO
3-とも呼ばれる炭酸水素塩の形態で供給される。二酸化炭素は、補足的な無機炭素源として使用されないことが好ましい。炭酸水素塩は、任意の形態で供給されてもよく、好ましくは、溶解した重炭酸イオンとして供給され、重炭酸アンモニウムまたは重炭酸カリウムなどの重炭酸塩から得ることができる。重炭酸ナトリウムは、ナトリウムが最終生成物に蓄積する可能性があり、その塩分のために植物の成長を促進するのに適さなくなる可能性があるため、むしろ回避される。炭酸水素塩は、任意の供給源から得ることができる。1つの実施態様では、湧水、が炭酸水素源として使用される。炭酸水素塩は過剰に存在する必要があり、通常は少なくとも50mg/lである。通常、600mg/lを超える炭酸水素塩は必要とされない。とにかく、それは成長を制限するべきではない。したがって、適切な範囲は、50mg/l〜600mg/l、50mg/l〜400mg/l、100mg/l〜400mg/lまたは100mg/l〜600mg/lである。炭酸水素塩を使用しているため、光合成中、培養液のpHは、pH10〜pH12の範囲の値のままである。当業者は、pH10〜12においては、必要に応じて炭酸水素塩を添加することにより行われる、pHがpH10〜pH12の範囲内に保たれている限り、炭酸水素塩(HCO
3-)と炭酸塩(CO
32-)との間に平衡があり、培養に悪影響を及ぼさないことを理解するであろう。
【0022】
水および無機炭素に加えて、本発明による方法で使用される培地は、マグネシウム(Mg)、窒素、(N)、リン(P)、カリウム(K)およびイオウ(S)などの、微細藻類バイオマスの構造合成に必要とされるいくつかの元素を含む。これらの腫瘍元素は、通常、2mg/l〜200mg/l、たとえば、2mg/l〜100mg/l、2mg/l〜50mg/lまたは2mg/l〜10mg/lの範囲の量で存在する。本発明による方法において、窒素は、硝酸塩またはアンモニアの形態で、好ましくは乾燥重量の約10%に等しい量で存在する;リンは、リン酸塩の形態で、たとえば、リン酸二水素カリウムまたは リン酸三水素カリウムで存在する;硫黄は、硫酸塩、たとえば、硫酸マグネシウム、または亜硫酸塩の形態で存在する。ホウ素、銅、鉄、マンガン、モリブデンおよび亜鉛などの他のさまざまな元素が、必須の微量元素である。好ましくは、鉄は、第一鉄の形態で培地中に存在する。これらの元素は、1リットルあたり非常に少量のマイクログラム、通常は、10マイクログラム/l〜2000マイクログラム/l、たとえば、10マイクログラム/l〜1000マイクログラム/l、10マイクログラム/l〜500マイクログラム/lまたは10マイクログラム/l〜100マイクログラム/lの量で必要である。
【0023】
培養培地が十分な主要元素および微量元素を含む限り、任意の藻類培養培地を使用して、緑色微細藻類を培養することができる。通常、2μmol/lを超えるほとんどの主要元素および0.1マイクロモル/lを超える微量元素が非限定的であることを必要とされる。非限定的量は、NH
4+>3.6μmol/l、K
+>1.3μmol/l、Ca
2+>1.2μmol/l、Mg
2+>2.0μmol/l、NO
3->3.5μmol/l、NO
2=0、Cl<1.5μmol/l、SO
4->0.5μmol/l、HCO
3->0.8μmol/l、H
2PO
4->1.6μmol/l、Si
2+>0.2μmol/l、Fe
3+>0,8μmol/l、Mn
2+>0.2μmol/l、Zn
2+>0.2μmol/l、B
3+>0.2μmol/l、Cu
2+>0.2μmol/l、Mo
4+>0.1μmol/lである。
【0024】
1つの実施態様では、培養培地は、2mg/l〜200mg/lの主要元素(マグネシウムの硝酸塩およびリン酸塩など)、500mg/l〜600mg/lの炭素源としての炭酸水素塩、10μg/l〜2mg/lの鉄、亜鉛、マンガンおよび銅などの微量元素および115mg/l未満のナトリウムを含む。
【0025】
淡水緑色微細藻類を培養するためにはナトリウムは必要とされず、したがって、Na
+の非限定濃度は<6.5μmol/lである。プロセスの液体生成物の最終用途である植物の成長を促進することを考慮して、ナトリウム濃度を可能な限り低く保つべきである。最終的な液体微細藻類製品を、耐塩性植物を含む多くの種類の異なる植物に適用できるようにするために、培地中のナトリウムの濃度は、5 mMより低くあるべきであり、たとえば、0mg/l〜110mg/l、0.5mg/l〜90mg/lまたは20mg/l〜50mg/l、好ましくは、2 mM未満、たとえば、0.5mg/l〜40mg/l、5mg/l〜30mg/lまたは15mg/l〜25mg/l、最も好ましくは、1 mM未満、たとえば、0mg/l〜20mg/lまたは0.5mg/l〜10mg/lである。
【0026】
主要元素および微量元素は、水に添加されても、自然に存在してもよい。1つの実施態様では、湧水の使用が、ほとんどまたはすべての必須元素を提供する。必須元素を培養物に加えてもよい。1つの実施態様では、窒素、リン、およびマグネシウムは、上記の濃度に達するまで定期的に添加される。1つの実施態様では、それらは、硝酸マグネシウム、硝酸アンモニウム、またはリン酸塩の形態などの無機形態で添加される。ミネラル濃度は制御され、光と温度は変化してもよい。
【0027】
培養は、バッチシステムまたは連続または半連続培養システムで行うことができる。培養が、連続的な収穫を可能にする連続的な培養システムで行われるのが好ましい。どちらのシステムを使用する場合でも、光合成に必要な追加の炭素は、二酸化炭素の形ではなく、炭酸水素塩の形で供給される。その結果、光合成中、pHは、微細藻類の光合成の結果として通常上昇するpH範囲である、pH10〜pH12の範囲のままである。培養物の所望の濃度、たとえば、約200〜400mg/lが得られるとき、微細藻を生存させ続けながら収穫する。
【0028】
培養を開始するために、池に、前培養した、好ましくは無菌システムでより小規模に増殖させた微細藻類の単一培養物を播種することができる。前培養物は、バッチシステムまたは連続または半連続培養システムで増殖されてもよい。適切な播種材料は、30〜60リットル/400立方メートルであり、播種材料の細胞密度は、乾物含量として計算されて、300〜500mg/lである。1つの実施態様では、池は、微細藻類による水の緑色の着色が視覚的になるまで、最初の週に、通常5〜7日間、数回、たとえば、少なくとも2回、少なくとも3回、たとえば、4回、5回、6回または7回播種される。培養物の密度は、この初期段階の間、継続的に測定される。この初期段階の後、培養は、さらなる前培養播種なしで継続することができる。
【0029】
培養物の密度は、好ましくは663nmで光学密度を測定することによって、または細胞計数によってなど、任意の適切な方法によって決定することができる。1つの実施態様では、培養物の密度は、乾物含量に基づく。乾物含量は、任意の適切な方法によって決定することができる。好ましい実施態様は、乾物含量は、既知の量の微細藻類をワットマンGFFフィルター(孔径1.2μm)で濾過し、たとえば、オーブン中でフィルターを80℃で24時間乾燥させることを含む、認可され、保証された実験室規模の方法によって決定される。フィルター重量と乾燥後の重量の差から、微細藻類の乾物含量を算出することができる。
【0030】
好ましい実施態様では、微細藻類は、微細藻類培養物を生理学的定常状態に維持することを可能にする連続培養原理に従って培養される。この定常状態では、成長は、一定の比成長速度で起こり、希釈率は、微細藻類の生産時間に等しい。実際には、これは、微細藻類を継続的に収穫することによって培養物の希釈率が達成されることを意味する。微細藻類バイオマスの生産時間は、気象条件(主に放射照度)に依存し、2〜10日で変化する。生産時間は、任意の適切な方法によって、たとえば、663nmでの光学密度(OD)の増加を測定することによって、または乾物含量を測定することによって決定することができる。当業者は、微細藻類の成長が季節によって、光と温度によって変化し、より高い温度とより多くの光でより豊富になることを理解するであろう。オランダでは、生産性が最も高いのは通常6月から8月である。
【0031】
開放池での培養中、培養温度は外気温と同様であり、-1℃〜35℃の範囲の温度でありうる。培地中の温度は常に監視される。
【0032】
1つの実施態様では、池は、光合成独立栄養成長を確実にするために微細藻類細胞を懸濁状態に保ち、それらを定期的に光に曝露するため、および固形物の沈着を回避するために、攪拌(stirring)するか、または攪拌(agitation)のための水移動装置を含む。適切な水移動装置は、池の形状に応じて、パドルホイールおよび旋回攪拌機である。これらの水移動装置は、好ましくは、主にプラスチックなどの不活性材料、たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)材料またはステンレス鋼から作製される。攪拌はまた、培地中のミネラルの均一な分布に寄与し、活発な代謝中に形成される微細藻類細胞の周りの栄養勾配およびガス勾配の発生を防ぐ。池は、低レベルの水、たとえば、5〜20cmの水で満たされ、攪拌(stirring)または攪拌(agitation)のための移動装置は、播種前にスイッチが入れられる。攪拌(stirring)または攪拌(agitation)用の移動装置は、培養物を攪拌し、微細藻類細胞を懸濁状態に保ち、光独立栄養増殖を確実にし、固形物の沈着を回避するためにそれらを定期的に光に曝すために非常に重要である。
【0033】
微細藻類の沈降を最小限にするために培養物を混合する。最適な微細藻類の成長に必要な培養物の混合速度は変化し、主に特定の微細藻類細胞の沈降速度に依存する。一般に、細胞の沈着を回避するには、5〜20cm/秒の範囲の培養物の混合速度で十分である。1つの実施態様では、10〜18cm/秒の培養物の混合速度が使用される。
【0034】
1つの実施態様では、池は、池の曲がり(bend)の中または曲がりを通して培養物を導くための1つ以上の誘導バッフルを含む。
【0035】
pH、酸素濃度、電気伝導率、温度、細胞密度および光条件などの重要なプロセス条件を監視および制御するために、自動化されたプログラム可能なプロセス制御システムを使用することができる。1つの実施態様では、プロセス制御は、オンライン遠隔制御の形態である。
【0036】
本発明の文脈において、収穫は、特に微細藻類バイオマスを培地から分離することによる微細藻類バイオマスの回収を意味する。緑色微細藻類は、培地とバイオマスを分離し、微細藻類を生存させたままにする穏やかな方法で収穫される。細胞壁への損傷を最小限に抑えなければならない。損傷した細胞壁は、培地中のクロロフィルなどの細胞成分から明らかでありうる。したがって、加熱、凍結、滅菌、機械的破壊、粉砕、抽出または乾燥を含む方法による微細藻類バイオマスの収穫は、本発明による方法の一部ではない。収穫された画分において、緑色微細藻類、またはたとえば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%などの緑色微細藻類の大部分が、生存し続けるので、沈降または遠心分離による収穫が好ましい。1つの実施態様では、微細藻類は、好ましくは4000rpm以下の速度で、遠心分離によって収穫される。あるいは、緑色微細藻類は、沈降によって、好ましくは自己フロキュレーションによって収穫される。自己フロキュレーションは、凝集剤の添加の有無にかかわらず達成することができる。1つの実施態様では、それは、媒体中の鉄、マグネシウム、カルシウムまたはリン酸塩による沈殿によって達成される。別の実施態様では、自己フロキュレーションは、培地中の鉄またはマグネシウムの濃度を増加させることによって、たとえば、培養物に大量の鉄またはマグネシウムを加えることによって達成される。CO
2供給を制限することによるか、または有機ポリマー分泌による自己フロキュレーションは、好ましくは、収穫のために使用されない。自己フロキュレーションの結果として、微細藻類細胞は、収穫中に収穫ユニットの底に沈降する。培地は、好ましくは、池の培養物に再循環される。タンクの底から回収されたバイオマスは、池での希釈培養物に比べて高濃度である。1つの実施態様では、微細藻類バイオマスは、凝集剤を添加せずに微細藻類を沈降させることができる収穫ユニットの上部に培養物をポンプで送ることによって収穫される。培地は池の培養物に再循環される。濃縮された微細藻類バイオマスは底から回収される。
【0037】
収穫後、液体組成物が得られる。生存している緑色微細藻類を含むこの液体組成物は、本発明の別の態様である。本発明による液体組成物は、それ自体で使用するか、または肥料と混合して植物の成長を促進することができる。この液体組成物の乾物含量は、好ましくは、0.5% w/w〜10% w/w乾物の範囲である。この範囲の乾物含量で、液体組成物はポンプ輸送可能である。液体組成物は、1.0% w/w〜10% w/w、たとえば、2.0% w/w〜4.0% w/w、1.5% w/w〜8.0% w/w、1.0% w/w〜4.0% w/w または3.0% w/w〜5% w/wの乾物含有量を有し得る。1つの実施態様では、液体組成物は水の粘度を有する。別の実施態様では、液体組成物は、サワーミルクの粘度を有するスラリーである。液体組成物は生存している緑色微細藻類を含み、乾燥または凍結すべきではない。好ましくは、液体組成物は、最大5 mM Na
+、より好ましくは最大2mM Na
+、最も好ましくは最大1 mM Na
+を含む。
【0038】
液体組成物は、調製後すぐに、またはほとんどすぐに使用することができるか、または保存することができる。液体組成物は、液体形態で保存される。1つの実施態様では、液体組成物は、収穫後24時間以内または48時間以内に使用される。別の実施態様では、液体組成物は、使用前に少なくとも1週間、少なくとも3週間、または少なくとも5週間保存される。液体組成物は、収穫から1年以内に使用されるのが好ましい。
【0039】
液体組成物は4〜25℃の温度で保存することができる。1つの実施態様では、液体組成物は、使用前に低温、たとえば、4℃で数時間、数日間、数週間または数ヶ月間保存される。もう1つの実施態様では、液体組成物は、使用前に、12〜25℃の範囲の温度で数時間、数日間、数週間または数ヶ月間保存される。
【0040】
液体組成物は、嫌気的にまたは実質的に嫌気的に保存することができる。1つの実施態様では、液体組成物は、容器に保存され、縁まで満たされ、気密蓋で閉じられる。液体は、明所または暗所のいずれか都合のよい場所で保存することができる。
【0041】
液体組成物は、使用前に希釈することができる。ほとんどの水道水はナトリウムを多く含み、本発明組成物で処理された植物に損傷を与える可能性があるため、希釈は、水道水ではなく、湧水などのナトリウムの少ない水で行うことが好ましい。好ましくは、希釈後、液体組成物は、最大5 mM Na
+、より好ましくは最大2 mM Na
+、最も好ましくは最大1 mM Na
+を含む。
【0042】
液体組成物は、植物の成長を促進するために有利に使用されうる。この組成物は、有益な微生物の発生を促進する。1つの実施態様では、この組成物は、養分固定に関与する微生物の活性を高め、それによって植物への窒素の利用可能性を高める。液体組成物は、そのまま使用することも、別の製品、特に肥料製品の成分として使用することもできる。液体組成物を肥料製品と混合してもよい。肥料製品は、本発明による液体組成物と混合される前または後に、基質に含まれるか、または基質に添加されうる。
【0043】
収穫された液体組成物は、生存している緑色微細藻類を含む。液体組成物は、サンプル中の藻類細胞の総数に基づく推定値である、少なくとも75%、たとえば、70%〜100%、75%〜95%または80%〜95%の緑色微細藻類を含み、これは、微視的に決定される。液体組成物は、好ましくは、緑藻の1つの種を含むが、異なる緑色微細藻類の混合物を含んでもよい。
【0044】
微細藻類バイオマスの少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%が生存しているのが好ましい。緑色微細藻類が生存しているかどうかを判断する1つの方法は、微細藻類の全部または一部を自然光または人工光に曝露することである。生存している緑色微細藻類は、光合成によって酸素を生成する。酸素の生成は、酸素プローブを使用することによって容易に決定することができる。緑色微細藻類が生存しているかどうかを判断する別の方法は、目視検査によるものである。死亡したか、または漏れた微細藻類は、それらの細胞内容物の全部または一部を放出する。特に、細胞外クロロフィルは、その緑色のために視覚的に容易に検出されうる。微細藻類が生存しているかどうかを判断する他の方法は、遠心分離後の上清中のクロロフィルまたはタンパク質の分析、寒天プレート上のコロニー形成単位の評価を介するか、またはフルオレセインジアセテートなどの蛍光色素での染色、その後のフローサイトメトリー分析によるものである。定量化は、いくつかの方法で、たとえば、顕微鏡的に、細胞計数チャンバーを使用して行うことができる。
【0045】
植物の成長を促進するための生きている緑色微細藻類は、緑藻綱に属する、好ましくは、アンキストロデスムス、クロレラ、デュナリエラ、ヘマトコッカス、ペディアストルム、セネデスムスおよびボルボックスから選択される属などの、クロレラ科、デュナリエラ科、ユースティグマ科、ヘマトコッカス科、アミミドロ科、セレナストラム科、セネデスムス科およびボルボックス科から選択される科に属する淡水緑色微細藻類である。より好ましくは、微細藻類は、アンキストロデスムス・ファルカツス、クロレラ・ブルガリス、ペディアストルム・ボリアナム、セネデスムス・ジモルファスまたはセネデスムス・クアドリコーダなどの、アンキストロデスムス、クロレラ、ヘマトコッカス、ペディアストルム、セネデスムスおよびボルボックスから選択され、最も好ましくは、ペディアストルム・ボリアナムまたはセネデスムス・ジモルファスまたはセネデスムス・クアドリコーダなどのペディアストルムまたはセネデスムスから選択される淡水緑色微細藻類である。
【0046】
生存している微細藻類を含む液体組成物の使用は、本発明による液体組成物を含む基質上または基質中で成長していない植物と比較して、改善された根の発達、改善された栄養素同化、植物代謝の改善された効率または増加した光合成などの、改善された成長を伴う植物をもたらす。本発明による液体組成物は、健康で緑の植物の成長ならびに植物保護のための新しい革新的な方法を可能にする。窒素、リンおよびカリウムなどの元素を主成分とする組成物である無機肥料は、本発明の液体組成物と混合することにより改善することができる。このようにして得られた改良肥料は、本発明の別の態様である。
【0047】
本発明による液体組成物は、園芸、水耕法または農業における任意のタイプの植物の基質に適用されうる。基質は、有機または無機、固体または液体であってもよく、粘土、コイアダスト、堆肥、繊維、砂利、ローム、苔、泥炭、パーライト、砂または水からなるか、またはそれらを含みうる。本発明による液体組成物は、その基質を介して植物に適用されうる。生きている緑色微細藻類を含む液体組成物を、植物が成長している基質に加えることにより、基質に存在する栄養素の利用可能性を高めることができる。あるいは、本発明による液体組成物は、植物の基質に適用される液体肥料などの栄養培地に含まれうる。本発明による液体組成物はまた、基質の代わりに、植物または植物の部分、たとえば、小枝、葉または花に直接適用されうる。液体組成物は、注ぐ、浸漬する、注入する、または噴霧することを含む、任意の便利な方法で、基質、植物または植物の部分に適用することができる。噴霧は、ノズルまたはスプレーヘッドシステムを使用して便利に実行することができる。植物の処理のための本発明による液体組成物の適用頻度は、植物および処理の目的に依存するであろう。1つの実施態様では、適用頻度は毎日である。もう1つの実施態様では、適用頻度は、週1回、週3回、または毎月である。適用は、断続的または連続的でありうる。
【0048】
任意の植物は、本発明による液体組成物の作用から利益を得ることができる。1つの実施態様では、植物は、顕花植物と非顕花植物を含む観賞植物である。もう1つの実施態様では、植物は、穀物、作物、果樹、ハーブ、薬用植物および野菜を含む消費可能な植物である。もう1つの実施態様では、植物は、ネギ科、セリ科、キジカクシ科、ツルボラン科、キク科、ナンヨウスギ科、シュウカイドウ科、アブラナ科、パイナップル科、ツゲ科、キーノピジアケアエ(Chenopidiaceae)、タンポポ亜科、アカザ科、針葉樹類、ウリ科、マメ科(Fabaceae)、リンドウ科、イネ科、アヤメ科、マメ科(Leguminosae)、ユリ科、アオイ科、クズウコン科、ホウライタケ科、バショウ科、モクセイ科、ラン科、シャクヤク科、ヒラタケ科、マツ科、イネ科、バラ科、アカネ科、ミカン科、ヤナギ科、ナス科、アオギリ科、イチイ科、セイヨウショウロ科、バンダ亜科、ブドウ科またはススキノキ科のメンバー、好ましくは、キク科、シュウカイドウ科、アブラナ科、アカザ科、ウリ科、イネ科、マメ科(Leguminosae)、ユリ科、アオイ科、バショウ科、ラン科、シャクヤク科、バラ科、アカネ科、ミカン科、ヤナギ科、ナス科、アオギリ科またはバンダ亜科のメンバー、最も好ましくは、シュウカイドウ科、アブラナ科、ラン科、シャクヤク科、バラ科またはナス科のメンバーである。
【0049】
植物は、ハゴロモグサ属、ネギ属、アロエ属、アルストロメリア属、シロイヌナズナ属、モクシュンギク属、カラスムギ属、ベゴニア属、アブラナ属、ブロメリア属、ツゲ属、カラテア属、カンパニュラ属、トウガラシ属、カトレア属、キクニガナ属、柑橘類属、ヒノキ属、キク属、クレマチス属、キュウリ属、シクラメン属、シドニア属、シンビジウム属、ギョウギシ属、ナデシコ属、ドラセナ属、ビワ属、ユーフォルビア属、ユーストマ属、イチジク属、フラガリア属、フクシア属、シラタマノキ属、ガーベラ属、ダイズ属、カスミソウ属、ヘデラ属、ヘリアンサス属、オオムギ属、ヒヤシンス属、アジサイ属、ヒッペアストラム属、アイリス属、カランコエ属、ラクチュカ属、レンリソウ属、ラベンダー属、ユリ属、リモニウム属、リンゴ属、マンデビラ属、オリーブ属、オリザ属、オステオスペルマム属、シャクヤク属、キビ属、ペラルゴニウム属、ペチュニア属、ファレノプシス属、インゲンマメ属、マツ属、エンドウ属、キキョウ属、プルヌス属、ナシ属、ラナンキュラス属、シャクナゲ属、ローサ属、キイチゴ属、ルタ属、ライムギ属、ミヤマシキミ属、ナス属、ナナカマド属、ソルガム属、スパティフィラム属、トリフォリウム属、トリチカム属、チューリップ属、バンダ属、ソラマメ属、スミレ属、ブドウ属、ザミオクルカス属またはトウモロコシ属の種であってもよい。好ましくは、植物は、シロイヌナズナ属、ベゴニア属、アブラナ属、フラガリア属、シャクヤク属、ファレノプシス属、ローサ属、ナス属またはバンダ属の種である。
【0050】
特に、液体組成物は、アルファルファ、リンゴ、シロイヌナズナ、バナナ、ベゴニア、ブロメリア、穀物、チェリー、柑橘系の果物、ブドウ、トウモロコシ、メロン、オリーブ、タマネギ、ラン、モモ、ボタン、ジャガイモ、コメ、ダイズ、テンサイ、ホウレンソウ、イチゴ、トマトまたはコムギ、さらに特に、シロイヌナズナ、ベゴニア、ラン、シャクヤク、イチゴおよびトマトなどの商業的に重要な作物および植物の成長を促進するために使用することができる。
【0051】
本発明による液体組成物はまた、種子、塊茎または球根の成長または発達を改善するために使用されうる。液体組成物は、それ自体で使用することができ、または基質または栄養培地と混合することができる。種子、塊茎または球根に、1つの実施態様では、本発明の液体組成物は、種子、塊茎または球根をコーティングするために使用される。
【0052】
本発明による液体組成物の適用の効果は、成長の改善、たとえば、根の発達の改善、栄養素の同化の改善、植物代謝の効率の改善または光合成の増加である。これは、本発明による液体組成物が適用されていない同様の植物と比較して、収量の改善、葉の形成の改善、色の形成の改善、開花の改善、果実の形成の改善、味の改善または健康の改善から明らかでありうる。
【0053】
改善は、当業者によって一般的に使用される任意の適切な方法で、たとえば、計数、計量、または測定することによって決定することができる。これらの領域のいずれか1つにおける改善は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100% 少なくとも200%、または少なくとも300%、たとえば、約5%〜50%、約5%〜100%、約10%〜100%、約20%〜50%、約20%〜100%または約100%〜200%でありうる。
【0054】
改善された根の発達は、植物あたりのより多くの根、正方形領域あたりのより多くの根、加速された根の形成、より早い根の形成、より強い根、より太い根、よりよく機能する根、より枝分かれした根またはより広がった網状の根など、いくつかの方法で反映されうる。
【0055】
収量の改善は、領域あたりの植物数の増加、植物あたりの枝の増加、植物あたりの芽の増加、植物あたりの球根の増加、植物あたりの果実の増加、植物あたりの花の増加、植物あたりの葉の増加、種子からのより多くの苗、植物あたりの種子の増加、植物あたりの若枝の増加、植物あたりの胞子の増加、植物あたりのデンプンの増加、植物あたりの塊茎の増加、植物あたりの重量の増加、乾物含量の増加、植物あたりの一次代謝産物の増加または植物あたりの二次代謝産物の増加など、いくつかの方法で反映されうる。
【0056】
成長の改善は、発芽の早期化、発芽の加速、茎の成長の加速、より太い茎、果実の形成の早期化、果実の形成の加速、果実の早期成熟または果実の成熟の加速など、いくつかの方法で反映されうる。
【0057】
葉の形成の改善は、植物あたりのより多い葉、茎の1cmあたりのより多い葉、茎あたりのより多い芽、より大きい葉、より広い葉、より厚い葉、より強い葉、よりよく機能する葉または加速された葉の形成など、いくつかの方法で反映されうる。
【0058】
改善された色形成は、より早い色形成、加速された色形成、より多様な色形成、より深い色形成、より強い色またはより安定した色など、いくつかの方法で反映されうる。
【0059】
開花の改善は、より早期の開花、加速された開花、より大きな花、より多くの花、より多くの開花、より開いた花、より長持ちする花、より長く開く花によって、より多様な色の花によって、所望の色を有する花によって、または色のより安定した花によってなど、いくつかの方法で反映されうる。
【0060】
果実形成の改善は、より早期の果実形成、加速された果実形成、より長い結実期間、果実のより早い成熟、果実の加速された成熟、より多くの果実、より重い果実、より大きい果実またはよりおいしい果実など、いくつかの方法で反映されうる。
【0061】
味の改善は、酸味の減少、甘味の増加、風味の増加、より複雑な風味プロファイル、栄養素含量の増加、または果汁の増加など、いくつかの方法で反映されうる。
【0062】
健康の改善は、非生物的ストレスに対する耐性が高い、生物的ストレスに対する耐性が高い、化学的ストレスに対する耐性が高い、身体的ストレスに対する耐性が高い、生理学的ストレスに対する耐性が高い、害虫に対する耐性が高い、真菌害に対する耐性が高い、より豊富に成長し、より豊富に開花し、葉をより長期間維持するか、またはより効率的に食物摂取するなど、いくつかの方法で反映されうる。本文脈において、生物的ストレス因子は、真菌および昆虫を含む。非生物的ストレスは、与えられた状況下で植物にとって極端な塩分、温度、水または光の条件の結果である。
【0063】
1つの実施態様では、本発明による液体組成物の使用は、領域あたりのより多くの植物、または領域あたりの植物あたりのより多くの樹皮、液果、枝、芽、球根、切り枝、切り花、花、果実、葉、根、種子、若芽、胞子または塊茎などの植物の部分を収穫することをもたらす。本発明による液体組成物の使用は、作物の収量の増加をもたらしうる。本発明による液体組成物が適用されない状況と比較して、収穫はより豊富でありえ、収穫はより短い期間の後に起こりうる。
【0064】
1つの実施態様では、本発明による液体組成物の適用は、より多くのキログラムの花、果物、穀物または野菜、たとえば、リンゴ、ナス、バナナ、オオムギ、ピーマン、ブラックベリー、ブルーベリー、チェリー、チャイブ、ズッキーニ、キュウリ、エンダイブ、ニンニク、ブドウ、リーキ、レタス、トウモロコシ、メロン、オートムギ、 タマネギ、オレンジ、ナシ、コショウ、ジャガイモ、カボチャ、ダイコン、ラズベリー、コメ、ライムギ、イチゴ、パプリカ、トマトまたはコムギをもたらす。
【0065】
もう1つの実施態様では、本発明による方法の適用は、本発明による液体組成物が適用されない状況と比較して、より多くのキログラムの樹皮、液果、枝、芽、花、果実、葉、根または料理用または薬用ハーブからの種子、たとえば、バジル、カモミール、キャットニップ、チャイブ、コリアンダー、ディル、ユーカリ、フェンネル、ジャスミン、ラバス(lavas)、ラベンダー、ミント、オレガノ、パセリ、ローズマリー、セージ、タイムをもたらし、同じ期間またはより短い期間で、より多くのアロマ、フレーバー、フレグランス、オイルまたは味をもたらす。
【0066】
もう1つの実施態様では、本発明による液体組成物の使用は、抗酸化剤、着色剤、栄養素、多糖類、色素またはテルペンのより高い収率をもたらす。1つの実施態様では、細胞の糖度が増加する。
【0067】
対照植物または対照状況との比較期間は、数時間、数日間または数週間から数ヶ月間または数年間までの任意の期間でありうる。比較する領域は、平方メートルまたはヘクタール、またはポットあたりなど、任意の領域にすることができる。
【0068】
液体組成物は、使用前に製剤されてもよく、たとえば、EU法律ステータス(生産関数カテゴリー1AII、1 BII、3A、4、5、6B)肥料に従って、他のCE(欧州適合)マーキングコンポーネントとともに肥料成分として使用することができる。ニンニクまたはハーブなどの他の成分と、1重量%〜99重量%、たとえば、4重量%〜80重量%または5重量%〜25重量%の比率で混合することができる。したがって、別の態様において、本発明は、改善された肥料、および改善された肥料の製造方法に関する。改善された肥料の製造方法は、肥料を本発明による液体組成物と混合することを含む。本発明による液体組成物は、粒状、粉末または液体形態などの任意の形態でありうる、徐放性肥料および正業放出肥料などの任意の種類の肥料と混合または添加することができる。
【0069】
当業者は、上記の実施態様を組み合わせて、本発明の範囲内で新しい実施態様を形成することができることを理解するであろう。液体組成物の製造方法について言及された実施態様および好ましい実施態様を、液体組成物および植物成長を促進することにおけるその使用に適用することもでき、逆もまた同様である。
【実施例1】
【0070】
緑色微細藻類の培養
水路設計(長さ100m、幅10m、高さ0.5m)の開放池は、屋外にアクセスすることができる温室内にあり、水道水(90% v/v)および湧水(10% v/v)からなる約100,000リットルの培地で満たされた。湧水との混合により、培地は、少なくとも2mg/lの、マグネシウム、硝酸塩、リン酸塩などの主要元素、少なくとも500mg/lの、炭素源としての炭酸水素塩、少なくとも10μg/lの、鉄、亜鉛、マンガンおよび銅などの微量元素で構成された。それは、1〜2 mmol/l Na
+を含んだ。培養中に、二酸化炭素は、添加されなかった。光エネルギーは、太陽光によって提供され、ガス交換のために培養物の表面は大気と接触した。攪拌はパドルホイールによって提供された。
【0071】
セネデスムスの50リットルの単一培養物を、解放池の5回の播種に使用した。目視検査により、水が緑色に変わった時に播種を停止した。微細藻類の光合成活性により、二酸化炭素と炭酸水素塩の反応式に従って、昼間の期間中にpHが自動的に10〜11の値に上昇した。培養物が約5日かけて約300mg/lの密度に達した後、微細藻類の収穫プロセスを継続的に開始した。1時間あたり5m
3の収穫速度を適用した。収穫した培養物を収穫ユニットの上部にポンプで送り、微細藻類細胞を沈降させた。培地を池に再循環させ、沈降したバイオマスを、乾物含量が3% w/wの液体スラリーとして食品グレードの容器に収集した。生きている細胞のスラリーは、使用するまで15℃で保存した。
【実施例2】
【0072】
シロイヌナズナ植物における根および葉の形成
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(Col-0)の種子を土壌(ongkind Zaaigrond NR 1/SIR、Jongkind BV、Aalsmeer、オランダ)に播種した。7日後、各植物を、必要なすべての必須ミネラルを含む土壌基質(Jongkind Zaaigrond NR 1/SIR)で満たされた40ポット栽培トレイ(直径6cmのポットサイズ)の単一ポットに移した。植物は、通常の給水方式(週に3回)で給水された。植物は、20℃にて、16時間の明期(日光および人工光)およびそれに続く8時間の暗期からなる照明状況の下で温室内で成長させた。本発明による液体組成物120μlを、週に1回、各植物の土壌基質に適用した。対照グループは、本発明による液体組成物で処理されなかった。対照グループと試験グループはそれぞれ40の植物で構成された。
【0073】
5週間後、植物を分析した。本発明による液体組成物で処理された植物は、対照グループで成長した植物と比較して、改善された根の発達を示した。根は、より枝分かれし、より多くの根毛を有した(
図1)。本発明による液体組成物で処理された植物はまた、対照グループで成長した植物と比較して、より健康な葉を示した。
【実施例3】
【0074】
固体基質におけるトマト植物
トマト(Solanum lycopersicum)の種子を土壌(Jongkind Zaaigrond NR 1/SIR、Jongkind BV、Aalsmeer、オランダ)に播種した。10日後、各植物を、初期成長段階に十分なミネラルを含む土壌基質(Jongkind Zaaigrond NR 1/SIR)で満たされた単一のポット(寸法:9x9x10cm)に移した。植物は通常の給水方式(週に3回)で給水された。植物は、20〜25℃にて、16時間の明期(日光および人工光)およびそれに続く8時間の暗期からなる照明状況の下で温室内で成長させた。本発明による液体組成物60μlを、実験の第4週の終わりまで、週に1回、各植物の土壌基質に適用した。植物を、Jongkind Zaaigrond NR 1/SIRで満たされたより大きな鉢(直径22.6cm)に移した。実験の5週目から7週目まで、本発明による300μlの液体組成物を適用し、7週目以降、1.5mlを適用した。対照グループは、本発明による液体組成物で処理されなかった。試験グループと対照グループはそれぞれ、1つのトレイにグループ化された24の植物で構成された。
【0075】
6週間後、両方のグループを比較した。本発明による液体組成物で処理された植物は、対照グループで成長した植物よりも高かった。実をつけるとき、本発明による液体組成物で処理された植物はまた、より青々とし、より健康であった。ミネラル不足の結果、対照グループの植物はストレスを受け、黄色くなり、より早く不健康になった。10週間後、本発明による液体組成物で処理されたトマト植物は、対照グループからの植物よりも多くの実をつけた。実の成熟後、果実の専門家はブラインドテストを受けた、すなわち、彼らは、実の処理ついてのさらなる情報なしで味見のために果実を与えられた。専門家は、本発明による液体組成物を与えられた植物からのトマトを、対照グループからのものよりも優れた品質であると評価した。
【実施例4】
【0076】
水耕栽培におけるトマト植物
植物成長性能試験を、液体成長培地中のトマトを用いて実施した。これらの試験のために、プラスチックの箱を使用し、液体肥料を充填した(水耕栽培)。いわゆるプラグで育てた若いトマト(長さ約15cm)をポリスチレンプレートの小さな穴に入れた。ポリスチレンプレートを、プラスチックの箱の中の液体の表面に浮かべた。水耕栽培における本発明による組成物の効果を調査した。
【0077】
グループ1(対照、微細藻類を添加しない)は、植物の成長に不可欠な主要元素と微量元素をすべて含む10リットルの無機肥料で成長させた。実験開始時にpHを5.8に調整した。EC値3.6 mS/cm。グループ2(微細藻類を含む)は、植物の成長に不可欠な主要元素と微量元素をすべて+新たに収穫された、乾物含量4% w/wの微細藻類濃縮物1000 mlを含む9000 mlの無機肥料で成長させた。実験開始時にpHを5.8に調整した。EC値2.6 mS/cm。各試験グループは5つのトマト植物で構成された。
【0078】
植物は、通常の日光条件(昼-夜の光サイクル)で温度制御の条件なしで温室に置いた水耕栽培システムで5週間成長させた。液体は、1回10リットルで補充した。プラスチックの箱の中の液体肥料を、試験中に小さな空気ポンプとブリスルストーン(bristle stone)で曝気(混合)した。開花期にはトマトの積極的な施肥は行わなかった。
【0079】
対照グループ1と比較して、グループ2は、根の重量に基づいて80%優れた根の発達を示し(
図2)、植物のバイオマスに基づいて約43%優れた成長性能を示した。これは、無機肥料と組み合わせた本発明による液体組成物が、水耕栽培における根およびバイオマスの有意な成長性能をもたらすことを示す。
【実施例5】
【0080】
イチゴ植物の果実形成
イチゴ(Fragaria Elsanta)の生産を、微細藻類の液体製剤で処理されたイチゴ植物で調査した。この目的のために、等しいサイズの若いイチゴ植物を使用し、植物を、豊富な基質(園芸用に認定されたJongkind基質 EN12580、Jongkind BV、Aalsmeer、オランダ)で満たされた大きな容器ポットに入れた。
【0081】
グループ1(対照、微細藻類を添加しなかった)は、本発明による液体組成物を添加することなく、ミネラルが豊富な基質(EN12580)上で成長させた。グループ2は、1:25の重量比で無機肥料の液体配合物および本発明による液体組成物を含む基質(EN12580)上で成長させた。肥料/微細藻類の混合物20mlを、植物の近くの、各植物の基質に、週に1回、6週間加えた。熟したイチゴの総量を数えた。結果は、本発明による液体組成物で処理されたイチゴが、対照グループよりも10%多いイチゴ、および10%より熟したイチゴを生産することができたことを示した。根の発達を視覚的に評価したところ、グループ2のイチゴ植物は、対照グループの植物よりも多くの根を示した(
図3)。
【実施例6】
【0082】
ボタンの開花
6つのグループのボタン(Itoh Peonies)を試験した。ボタンの各グループは5つの植物で構成された。塊茎をプラスチック容器に入れた。グループ(園芸用に認定されたJongkind基質 EN12580、Jongkind、Aalsmeer、オランダ)1とグループ2(Van Egmond Substrates BV、Amsterdam、オランダ)のボタンには、異なる供給元の基質を使用した。これらのグループの基質は、徐放性固体肥料ペレット(窒素徐放、Koppert BV、Berkel & Rodenrijs、オランダ)で完成された。このようにして、基質はボタンの最適な成長条件に必要なすべての必須元素を含んだ。他の4つのグループは、肥料の代わりに本発明による液体組成物を添加して、基質(Jongkind EN12580))中で成長させた。塊茎を基質に植えた後、微細藻類の添加を開始した。3ヶ月の期間中、週に1回、本発明による液体組成物(水道水中の10% v/v溶液)を、注射器での注射によって基質に添加した。この期間の後、ボタンは開花を開始した。牡丹の最初の成長サイクルの間、花の形成は非常に乏しい。一般的に、牡丹は基質に置いてから2年目に開花を開始する。植物あたりの花の数を数えた。結果は、グループ1および2については1つの植物のみ花を持つことを示した(植物の10%)。グループ3、4、5、および6の植物は、18の植物が花を持つことを示した(植物の90%)。これは、生きている微細藻類を含む本発明による液体組成物の添加が植物の開花を改善することを示す。
【実施例7】
【0083】
ランの花の形成
成長初期のラン(Orchids Snowflake)を使用して、微細藻類が花の形成と枝分かれに及ぼす影響を試験した。グループあたり合計76の植物を試験した。微細藻類を添加していない1つの対照グループと微細藻類を添加した1つの試験グループを35週間の成長サイクル期間中に試験した。植物を透明なプラスチック容器のポットに入れ、週に1回、水道水(対照グループ)または水道水中の本発明による液体組成物の10% v/v溶液(試験グループ)を植物に噴霧した。園芸の成長段階の終わりに、個々の植物の花と枝を数えた。
【0084】
結果は、対照グループと比較して、生きている微細藻類を添加したグループでは、13%多い花と34%多い枝を示した。これは、生きている微細藻類を含む本発明による液体組成物の添加が、植物の開花および枝分かれを改善することを示している。
【実施例8】
【0085】
乾燥微細藻類と比較した新鮮な液体微細藻類の効果
トマト(Solanum lycopersicum)の種子を土壌(Jongkind Zaaigrond NR 1/SIR、Jongkind BV、Aalsmeer、オランダ)に播種した。10日後、各植物を、成長初期段階のために十分なミネラルを含む土壌基質(Jongkind Zaaigrond NR 1/SIR)で満たされた単一のポット(寸法:9x9x10cm)に移した。植物を、実施例3のような、照明状況および給水方式の下で、温室内で成長させた。植物を2つのグループに分けた。植物の1つのグループは、実施例1に従って調製された新鮮な生きている緑色藻類で処理した。植物の他のグループは、乾燥微細藻類で処理した。乾燥微細藻類バイオマスを得るために、実施例1に従って調製された液体微細藻類バイオマスをドラム乾燥機システムで乾燥させた。このプロセスの間、藻類バイオマスは、90〜100℃で数秒間加熱された。液体微細藻類製品とは対照的に、乾燥藻類バイオマスは、加熱プロセスのためにもはや生きている細胞を含まなくなった。液体微細藻類(生細胞)と乾燥微細藻類(死細胞)の機能性を、トマトの成長応答について比較した。成長サイクルの間に、植物のバイオマスの発達を、茎の長さを測定することによって記録した。成長サイクルを最大約10週間追跡した。トマトは、8週間後に栄養期から生殖期への移行によりバイオマスの生産量が減少し始めることが知られている。
【0086】
結果を
図4に示す。約35日後、微細藻類の液体生成物で処理された植物は、茎の長さのより速い増加を示し、この差は、植物の成長サイクルの間継続した。さらに、新鮮な微細藻類で処理された植物は、乾燥した微細藻類と比較して、より早い生殖期を開始し、これは、これらの植物がトマト果実の形成をより早く開始したことを意味する。結論として、新鮮な液体組成物で処理された植物は、乾燥微細藻類で処理された植物よりも加速された茎の成長とより早い果実形成を示す。
【実施例9】
【0087】
海藻と比較した新鮮な液体微細藻類の効果
(Solanum lycopersicum)の種子を土壌(Jongkind Zaaigrond NR 1/SIR、Jongkind BV、Aalsmeer、オランダ)に播種した。10日後、各植物を、成長初期段階のために十分なミネラルを含む土壌基質(Jongkind Zaaigrond NR 1/SIR)で満たされた単一のポット(寸法:9x9x10cm)に移した。植物を、実施例3のような、照明状況および給水方式の下で、温室内で成長させた。植物を3つのグループに分けた。一方の植物の1つのグループは、本発明による新鮮な生きている緑色微細藻類で処理され、植物の他方のグループは、海藻からなる製品(アスコフィルム・ノドスム、Caldic Iberica、Barcelona、スペイン)で処理され、3番目のグループは、他のもので処理されなかった(対照)。成長サイクルの間に、植物のバイオマスの発達を、茎の長さを測定することによって記録した。
【0088】
5週間後の結果を
図5に示す。5週間後、海藻で処理された植物は、非処理の植物よりもわずかに良好であった。微細藻類の新鮮な液体製品で処理された植物は、海藻で処理された植物および非処理の植物(対照)よりもはるかに優れた成長性能(22%のパーセンテージ)を示した(表1)。
【0089】
表1
【表1】
【実施例10】
【0090】
新鮮なペディアストルム・ボリアナムで処理されたベゴニア
ガラス温室内で、ベゴニア・ネティア(Begonia netja)種の母植物の挿し木を、基質(Jongkind Zaaigrond NR 1/SIR)で満たされたプラスチックポット(ポットあたり9cmの体積)に置いた。配置直後に肥料および液体微細藻類製品の投与を開始した。14週間の成長サイクル(挿し木から成熟した顕花植物まで)の間、すべての植物(n=160)は、過剰のすべての必須微量元素と主要元素からなる液体肥料製品での処理を週に1回水とともに受けた。さらに、これらの植物の選択されたサブグループ(80植物)は、週に植物あたり2.5mlの新鮮な液体微細藻類製品での処理を受けた。本発明による新鮮な液体微細藻類製品は、ペディアストルム・ボリアナムによって占められ、実施例1に記載されているように緑色微細藻類ペディアストルム・ボリアナムを培養することによって得られた。10週間後、植物のサイズに有意差が見られた。微細藻類を受け取ったサブグループの植物は、他の植物よりも優れた植物の発達および花の形成を示し、そのことは、植物の大部分を秤量することによって定量化された。基質による差異(植物あたりの体積と水分含有量の差異)の影響を回避するために、根と基質を植物から取り除いた。対照グループの重量(葉および花)と、液体微細藻類を添加したグループの重量との間に平均23%の差異が観察された。結果を表2に示す。
【0091】
表2
【表2】
【国際調査報告】