特表2021-528342(P2021-528342A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-5283422本ロープ式運転および3本ロープ式運転において牽引ロープまたは巻上げロープをそれぞれ強制的に繰り出す汎用キャリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-528342(P2021-528342A)
(43)【公表日】2021年10月21日
(54)【発明の名称】2本ロープ式運転および3本ロープ式運転において牽引ロープまたは巻上げロープをそれぞれ強制的に繰り出す汎用キャリッジ
(51)【国際特許分類】
   B66C 21/00 20060101AFI20210924BHJP
【FI】
   B66C21/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2021-520457(P2021-520457)
(86)(22)【出願日】2019年6月18日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月20日
(86)【国際出願番号】EP2019065965
(87)【国際公開番号】WO2019243302
(87)【国際公開日】20191226
(31)【優先権主張番号】A50489/2018
(32)【優先日】2018年6月19日
(33)【優先権主張国】AT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520500440
【氏名又は名称】エムエム フォルストテヒニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】フェアヴァンガー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】エーレンヘーファー,ヴィリバルト
(57)【要約】
ケーブルクレーン(1)の耐荷ケーブル(5)に沿って積荷を輸送するためのケーブルクレーン(1)の汎用キャリッジ(2、20)であって、キャリッジ(2、20)は、2本ケーブル式運転においては牽引ケーブル(3)によって、さらに3本ケーブル式運転においては補助ケーブル(7)によって、ケーブルクレーン(1)の集材装置(6)の耐荷ケーブル(5)に沿って牽引され、牽引ケーブル(3)または巻上げケーブル(26)をキャリッジ(2)から引き出すためのモータを有し、さらに、牽引ケーブル(3)の引出し運動のために設けられた摩擦ディスク(13)、および/または巻上げケーブル(26)の引出し運動のために設けられかつモータによって直接もしくは間接的に駆動される巻上げケーブルドラム(22)も有し、キャリッジ(2、20)は、3本ケーブル式運転において補助ケーブル(7)を引き出すための補助ケーブルドラム(15、24)を有し、補助ケーブルドラム(15、24)は、摩擦ディスク(13)および/または巻上げケーブルドラム(22)に動作可能に接続され、かつ牽引ケーブル(3)および/または巻上げケーブル(26)を繰り出すためのモータに加えるかまたはその代替として設けられた補助ケーブル(7)によって駆動される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルクレーン(1)の運搬ロープ(5)に沿って積荷を輸送するための前記ケーブルクレーン(1)のキャリッジ(2、20)であって、
前記キャリッジ(2、20)は、
2本ロープ式運転においては牽引ロープ(3)を介し、さらに、3本ロープ式運転においては補助ロープ(7)を介し、前記ケーブルクレーン(1)のロープ装置(6)によって前記運搬ロープ(5)に沿って牽引され、
前記牽引ロープ(3)または巻上げロープ(26)を前記キャリッジ(2)から繰り出すためのモータと、
前記牽引ロープ(3)の繰出し運動のために設けられた摩擦ディスク(13)、および/または、前記巻上げロープ(26)の繰出し運動のために設けられかつ前記モータによって直接もしくは間接的に駆動される巻上げロープドラム(22)と、を備え、
前記キャリッジ(2、20)は、3本ロープ式運転において前記補助ロープ(7)を巻き付けるための補助ロープドラム(15、24)を備え、
前記補助ロープドラム(15、24)が、前記摩擦ディスク(13)および/または前記巻上げロープドラム(22)に動作可能に接続され、前記補助ロープ(7)によって駆動され、前記牽引ロープ(3)および/または前記巻上げロープ(26)を繰り出すための前記モータに加えて、または、その代替として設けられる
ことを特徴とする、キャリッジ(2、20)。
【請求項2】
前記モータおよび前記補助ロープドラム(15)は、前記牽引ロープ(3)を繰り出すために前記摩擦ディスク(13)と一緒に係合して設けられることを特徴とする、請求項1に記載のキャリッジ(2)。
【請求項3】
前記モータは、前記補助ロープドラム(15、24)に動作可能に接続され、前記補助ロープ(7)を巻き付けるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のキャリッジ(2、20)。
【請求項4】
前記牽引ロープ(3)を締め付けるための牽引ロープクランプ(12)と、
前記補助ロープドラム(15)の回転を係止するための補助ロープクランプ(16)と、が設けられ、
前記補助ロープ(7)が巻き付けられている場合、
前記牽引ロープクランプ(12)が係止され、かつ、
前記補助ロープクランプ(16)が開かれる
ことを特徴とする、請求項3に記載のキャリッジ(2)。
【請求項5】
前記モータは、電気モータ(18)、特にハブモータによって形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のキャリッジ(2、20)。
【請求項6】
前記モータは、チェーン駆動、ベルト駆動またはギヤ駆動によって、前記摩擦ディスク(13)および/または前記補助ロープドラム(15)に動作可能に接続されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のキャリッジ(2)。
【請求項7】
無線信号によって制御可能な制御装置が設けられ、
前記制御装置は、前記モータをオンまたはオフするよう、かつ、前記摩擦ディスク(13)と前記補助ロープドラム(15)との間で切替可能なクラッチを係合または係合解除するように構成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のキャリッジ(2)。
【請求項8】
前記摩擦ディスク(13)および前記補助ロープドラム(15)が一体に形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のキャリッジ(2)。
【請求項9】
前記摩擦ディスク(15)は、前記牽引ロープ(3)を摩擦によって案内するためのV字形の溝および少なくとも1つの圧力ローラ(14)を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のキャリッジ(2)。
【請求項10】
前記牽引ロープ(3)を巻き付けるための牽引ロープドラム(23)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載のキャリッジ(20)。
【請求項11】
前記牽引ロープドラム(23)、前記補助ロープドラム(24)および前記巻上げロープドラム(22)が一体に形成されることを特徴とする、請求項10に記載のキャリッジ(20)。
【請求項12】
下り勾配での集材の間に前記牽引ロープ(3)が前記ケーブルクレーン(1)の方向へ後退するのを防止するために、ブレーキ、特にドラムブレーキ(27)が前記牽引ロープ(3)を繰り出すためのドライブトレーンに設けられ、
前記後退は、前記キャリッジ(2)が運搬ロープクランプ(11)によって前記運搬ロープ(5)に固定された状態で重力によって生じるものであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のキャリッジ(2)。
【請求項13】
前記ドラムブレーキ(27)が前記摩擦ディスク(13)を減速させるように構成されることを特徴とする、請求項12に記載のキャリッジ(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルクレーンの運搬ロープに沿って積荷を輸送するためのケーブルクレーンのキャリッジに関し、キャリッジは、2本ロープ式運転においては牽引ロープを介し、さらに3本ロープ式運転においては補助ロープを介して、ケーブルクレーンのロープ装置によって運搬ロープに沿って牽引され、牽引ロープまたは巻上げロープをキャリッジから繰り出すためのモータ、および牽引ロープの繰出し運動のために設けられた摩擦ディスク、および/または巻上げロープの繰出し運動のために設けられかつモータによって直接もしくは間接的に駆動される巻上げロープドラムを備える。
【背景技術】
【0002】
ケーブルクレーンは、伐採木、木の一部または他の積荷を通行不能地帯から移動させるために林業で使用され、様々な設計のキャリッジを用いて様々な運転モードで操作される。最も単純な形態では、ケーブルクレーンは2本のロープのみを用いる2本ロープ式運転で操作される。運搬ロープは、ローラ付きのキャリッジが摺動可能に取り付けられた状態で架けられ、重力によって駆動されるキャリッジは下り勾配を走行し、例えば伐採木などの積荷とともに牽引ロープによって上り勾配に向かって牽引される。上り勾配での集材の場合、積荷は高い方に位置する運搬ロープの端部に輸送され、下り勾配での集材の場合は、低い方に位置する運搬ロープの端部に輸送される。この目的のために、ケーブルクレーンのロープ装置または牽引ロープウインチはそれぞれ、上り勾配での集材の間は運搬ロープの上端に通常は配置され、下り勾配での集材の間は運搬ロープの下端に通常は配置される。3本ロープ式運転では、キャリッジを運搬ロープの下端に向かって牽引する補助ロープが第3のロープとして使用される。補助ロープは通常、キャリッジから運搬ロープの下端に案内され、上り勾配での集材のために、運搬ロープの下端からプーリを介して、運搬ロープの上端へ、そして運搬ロープの上端に配置されたロープ装置に案内される。補助ロープの敷設は複雑であるため、特にケーブルクレーンシステムを頻繁に設置したり解体したりする場合は、特に上り勾配での集材のための2本ロープ式運転が好ましい。
【0003】
運搬ロープおよびキャリッジから遠く離れて位置する可能性のある伐採木に向かう牽引ロープの端部を引っ張るために、最も単純な実施形態では、牽引ロープは、積荷に向かうキャリッジを介して木工によって手動で引っ張られなければならない。この作業は、特にガイが長い場合に体力を消耗する。積荷が取り付けられた後、牽引ロープが引き込まれると、積荷は最初にキャリッジの下に引き寄せられ、次いでキャリッジに向かって吊り上げられ、その後、キャリッジおよび積荷がロープ装置に向かって上り勾配に牽引される。繰出しには高い引張力が必要とされるために、手動繰出しは非常に困難であるかまたは不可能でさえあるので、ガイをより遠くに張設するために、および運搬ロープや牽引ロープをそれぞれより長くするために、繰出しが強制的に行われるキャリッジが必要とされる。上り勾配での集材の間、牽引ロープに作用する重力は牽引ロープを繰り出すのに役立ち、牽引ロープは、運搬ロープの上端からキャリッジを介して案内される。これに対し、下り勾配での集材の間、運搬ロープの下端に配置されたロープ装置を用いて、牽引ロープが運搬ロープ全体に沿って重力に逆らって上方に案内され、かつ運搬ロープの一部の長さだけキャリッジに戻るので、重力は全体で牽引ロープの引出し方向に対して作用する。したがって、特に下り勾配での集材の場合、牽引ロープを強制的に繰り出すことが不可欠である。
【0004】
キャリッジは、それぞれディーゼルエンジンまたはディーゼル油圧システムによって駆動される巻上げロープウインチがキャリッジ内に配置されていることで当業者に知られている。このようなウインチは、これによって積荷がキャリッジに向かって引き寄せられる巻上げロープを積極的に繰り出すこともできる。これらのキャリッジには、非常に高出力であるために、内向きに牽引するには大型のモータが必要になるという欠点がある。さらに、キャリッジは巻上げロープウインチ上の巻上げロープ全体を含む。モータおよび巻上げロープウインチはかなりの重量があり、このようなキャリッジは非常に重くなる。さらに、内燃機関は傾斜した位置にある場合にエンジンが損傷する傾向がある。繰出し長さは、巻上げロープドラムに巻き上げられる巻上げロープの長さに制限される。
【0005】
さらに、当業者は、補助ロープが牽引ロープを繰り出すために使用される、3本ロープ式運転のために提供されるキャリッジに精通している。上り勾配での集材には一般に2本ロープ式運転で十分であり、補助ロープの敷設にはさらなる労力が必要になるため、上り勾配での集材には他のキャリッジが使用されることが多く、不都合なことに、様々な種類のキャリッジを保管しかつ保守する必要がある。
【0006】
さらに、当技術分野の当業者は、ディーゼルモータ、油圧モータまたは電気モータによって駆動される摩擦ディスクを介して牽引ロープが繰り出されるキャリッジに精通している。オーストリア国特許第512872号明細書は、牽引ロープを繰り出すための電気モータを備えるこのようなキャリッジを開示している。油圧モータまたは電気モータを含む実施形態では、エネルギー蓄積装置は、通常は牽引ロープが引き込まれる場合にキャリッジ内で再充填される。ほとんどの場合、ディーゼルエンジン式繰出し手段を備えるキャリッジは非常に重い。さらにディーゼルエンジンは、キャリッジが傾いている場合、オイル供給が不十分なためにエンジンが損傷する傾向がある。油圧式または電動式の繰出し手段を備えるキャリッジは、繰出し力が低いため、一般的に上り勾配での集材にのみ適している。下り勾配での集材の場合、駆動モータと摩擦ディスクとの間の大幅なギヤ減速によって、集材に必要な繰出し力が可能になるので、可能なガイの長さまたは繰出し速度が大幅に制限される。油圧駆動の場合は油圧蓄圧器を使用し、電気駆動の場合は蓄電器を使用すると、繰出し長さがさらに制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】オーストリア国特許第512872号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、林業で必要とされる異なる運転モードのために牽引ロープの確実な強制繰出しを可能にするケーブルクレーン用のキャリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基礎となる課題はキャリッジによって解決され、キャリッジは、3本ロープ式運転において補助ロープを巻き付けるための補助ロープドラムを備え、補助ロープドラムは、摩擦ディスクに動作可能に接続され、補助ロープによって駆動され、および追加もしくは代替として、牽引ロープを繰り出すためのモータによって駆動される。
【0010】
林業では、キャリッジを備えた移動式ケーブルクレーンが既に何十年も使用されてきたが、本発明によるキャリッジのおかげで、上り勾配での集材および下り勾配での集材の両方で、2本ロープ式運転および3本ロープ式運転の両方を適用して、1台のキャリッジだけで牽引ロープの確実な強制繰出しを常に可能にする可能性が初めて生まれた。異なる傾斜、積荷および運転モードに最も有利なそれぞれのロープ技術を、牽引ロープまたは巻上げロープをそれぞれ確実に強制的に繰り出すたった1台のキャリッジを用いて自由に選択することができる。3本ロープ式運転における補助ロープの通常であればより大きな繰出し力、または、2本ロープ式運転もしくは3本ロープ式運転における電気モータの通常であればより低い繰出し力を、一緒にまたは個別に利用することができる。特に有利なのは、電気モータのエネルギー蓄積装置が空の場合に、電気モータによる牽引ロープの強制繰出しから補助ロープによる強制繰出しに切り替えることが可能であり、それによってケーブルクレーンの確実な操作が可能なことである。
【0011】
従来技術によるキャリッジは、牽引ロープを繰り出すための駆動の種類が常に1つしかなく、したがって、可能であれば全ての運転モードを網羅しようとするため、それに伴う欠点が生じる。電動駆動の場合、強力な駆動または大幅なギヤ減速が用いられ、その結果、重量が増加し、繰出し速度が遅くなり、繰出し長さが短くなる。本発明によるキャリッジはこの原理に基づいており、2種類の駆動を提供し、それによって比較的弱い電気モータおよび/またはより低いギヤ減速を意図的に選択することができ、補助ロープの助けによって、必要な場合は長さの長い牽引ロープをも迅速に繰り出すことが可能である。結果として、キャリッジの重量をさらに軽減することができ、それによってキャリッジおよび/またはロープ装置のエネルギー消費が減少する。
【0012】
牽引ロープを繰り出すだけでなく補助ロープを補助ロープドラムに巻き付けるためにも、電気モータを使用することは特に有利である。牽引ロープを繰り出すために補助ロープを使用する従来のキャリッジでは、牽引ロープの引張力を利用する、時間がかかり、かつ間違いを起こしやすい機械的工程によってのみ可能であるか、または手動でのみ可能である。
本発明の有利で非限定的な例示的実施形態を、図面を参照して以下でさらに詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】2本ロープ式運転における木の上り勾配での集材を示す図である。
図2】3本ロープ式運転における木の上り勾配での集材を示す図である。
図3】3本ロープ式運転における木の下り勾配での集材を示す図である。
図4】本発明の第1の例示的な実施形態による本発明によるキャリッジを示す図である。
図5図4によるキャリッジ底部の主要部分の斜視図である。
図6図4によるキャリッジ底部の主要部分の側面図である。
図7図4によるキャリッジ底部の主要部分の平面図である。
図8】2本ロープ式運転における図4によるキャリッジ底部の主要部分およびキャリッジ上部の個々の部分の斜視図である。
図9】3本ロープ式運転における図4によるキャリッジ底部の主要部分およびキャリッジ上部の個々の部分の斜視図である。
図10】統合された巻上げロープウインチと、モータ駆動および/または補助ロープおよび内向きの牽引を介して、および/または牽引ロープを介してモータ駆動される繰出し部を含む、本発明の第2の例示的な実施形態によるキャリッジの主要部分を示す図である。
図11】統合された巻上げロープウインチと、モータ駆動および/または補助ロープおよび内向きの牽引を介して、および/または牽引ロープを介してモータ駆動される繰出し部を含む、本発明の第2の例示的な実施形態によるキャリッジの主要部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図3は、ケーブルクレーン1を用いて、伐採木を通行不能地帯から移動させるための異なる運転モードを示している。図4図9に示す本発明によるキャリッジ2は、これらの運転モードの全てにおいて使用されてもよく、その工程において牽引ロープを強制的に繰り出すことができる。図1は、2本ロープ式運転におけるケーブルクレーン1を用いた木の上り勾配での集材を示しており、キャリッジ2は、運搬ロープ5に沿ってローラ4上を牽引ロープ3を用いて牽引される。ロープ装置6は運搬ロープ5の上端に設けられ、キャリッジ2とともに上向きに木を牽引し、木は上り勾配で集材される。重力は、次の木をロープで縛るために、空のキャリッジ2を運搬ロープに沿って下り勾配に置くことができるようにする。
【0015】
図2は、3本ロープ式運転におけるケーブルクレーン1による木の上り勾配での集材を示しており、ここで、空のキャリッジ2の下り勾配での集材が補助ロープ7を用いて行われる。補助ロープ7は、キャリッジ2から運搬ロープ5の下端のプーリ8を介して、運搬ロープ5と平行に、または異なる経路を通って、ロープ装置6に向かって案内され、ロープ装置6によって駆動される。
【0016】
図3は、3本ロープ式運転におけるケーブルクレーン1を用いた下り勾配での木の集材を示しており、ここで、ロープウインチ6は、運搬ロープ5の下端に配置されているため、補助ロープ7は短く保たれ、牽引ロープ3は長く保たれる。
【0017】
図4図9に示すキャリッジ2は、本質的に、キャリッジ底部9と2つのキャリッジ上部10とで構成される。キャリッジ上部10の各々には、運搬ロープ5上を走る2つのローラ4が存在する。キャリッジ底部9は、2つのキャリッジ上部10から吊るされている。一方のキャリッジ上部10には、2つのローラ4に加えて運搬ロープクランプ11が配置されており、このクランプにより、キャリッジ2を運搬ロープ4に固定することができる。他方のキャリッジ上部10には作動油タンクが配置され、油圧ポンプもまた配置され、油圧ポンプはローラ4を介して駆動され、かつ蓄圧器を充填し、蓄圧器はキャリッジ底部9に配置され、かつ油圧クランプおよび係止シリンダに供給する。牽引ロープ3を締め付けるための牽引ロープクランプ12および補助ロープ7を締め付けるための補助ロープクランプ16は、油圧クランプとして設けられている。
【0018】
図8は、2本ロープ式運転において上り勾配で操作されるか、または牽引ロープ3の強制繰出しとともに下り勾配で操作されるキャリッジ2を示している。キャリッジ2は、ローラ4とともに運搬ロープ5に摺動可能に取り付けられている。牽引ロープ3は、摩擦ディスク13と十分に絡み合うようにキャリッジ2を通って案内される。この目的のために、牽引ロープ3は、キャリッジ2内で偏向プーリ19を横切って案内され、摩擦ディスク13をもう一度横切って通過する。牽引ロープ3は、2つの圧力ローラ14によって摩擦ディスク13にさらに押し付けられ、それによって、摩擦ディスク13と牽引ロープ3との間の摩擦がさらに増大する。摩擦ディスク13は、摩擦力をさらに増大させるために牽引ロープ3が案内されるV字形の溝を有する。溝の設計および圧力ローラからの接触圧力に応じて、牽引ロープ3が摩擦ディスク13にわずか90°もしくは最大450°以上巻き付いて、必要な摩擦を達成することが有利である可能性がある。
【0019】
摩擦ディスク13は、補助ロープドラム15とともにキャリッジ底部9の軸線上に取り付けられている。ラチェット機構を含むフリーホイールは摩擦ディスク13と補助ロープドラム15との間に配置され、摩擦ディスク13を補助ロープドラム15に対して一方向にねじれさせ、他の方向に係止する。補助ロープドラム15は、その2つの側面の各々に歯部を有する。摩擦ディスク13に面する補助ロープドラム15の側面の係止歯部は、補助ロープクランプ16を一体に形成する係止シリンダおよび係止部分を用いて補助ロープドラム15を係止するのに役立つ。反対側の側面にあるチェーン歯部17は、電気モータ18によるチェーン駆動によって補助ロープドラム15を駆動するのに役立つ。チェーン駆動は、電気モータ18と補助ロープドラム15との間のギヤを十分少なくすることを可能にするために、二段階の設計を有する。
【0020】
補助ロープ7は、2本ロープ式運転においては使用されない。したがって、補助ロープドラム15は空である。牽引ロープ3を繰り出すために、キャリッジ2は最初に、繰出しが行われる適切な位置で運搬ロープクランプ11を用いて運搬ロープ5に固定される。次いで、牽引ロープクランプ12が開かれる。チェーン駆動によって、キャリッジ2のコントローラによって適切に動作する電気モータ18は、今や補助ロープドラム15を駆動し、補助ロープドラム15が摩擦ディスク13を駆動し、それによって牽引ロープ3がキャリッジ2から繰り出される。ケーブルクレーン1は、この目的に必要な量の牽引ロープ3を供給する必要がある。電気モータ18には、同じくキャリッジ2に位置するバッテリから必要なエネルギーが供給される。コントローラは、無線信号を使用して地上の操作者によって遠隔制御することができるキャリッジ2の制御装置の一部である。
【0021】
内向きの牽引の間、牽引ロープ3は、今や摩擦ディスク13を反対方向に駆動する。次いで、摩擦ディスク13は補助ロープドラム15を駆動し、したがって、チェーン駆動によって電気モータ18を駆動する。今や、電気モータ18は、発電機として動作するようにコントローラによって作動される。したがって、生成された電流は、牽引ロープ3が引き込まれる際にバッテリを再充電する。ロープ装置6は、牽引ロープ3の引込みを達成する。理想的には、電気モータ18は、バッテリの充電を、内向きの牽引の間に発電機モードによってのみ達成することができ、かつバッテリの追加の充電が不要であるような寸法にされる。
【0022】
牽引ロープ3が引き込まれ、積荷が吊り上げられた後、牽引ロープクランプ12が閉じられる。その結果、運搬ロープクランプ11が開かれ、キャリッジ2は、牽引ロープ3がさらに引き込まれた場合に、積荷とともに運搬ロープ5に沿ってロープ装置6に向かって移動する。
【0023】
図4図7および図9は、3本ロープ式運転における同じキャリッジ2を示している。この動作では、別のロープである補助ロープ7が、牽引ロープ3の反対側のキャリッジ2の側部からキャリッジ2内に案内され、キャリッジ2の補助ロープドラム15に部分的に巻き付けられるように、偏向プーリを介してロープ装置6から循環される。牽引ロープ3を繰り出すために、キャリッジ2は、今や再び適切な位置で運搬ロープクランプ11を用いて運搬ロープ5に固定される。牽引ロープクランプ12が開かれる。同時に、ロープ装置6上の補助ロープ7が引っ張られ、牽引ロープ3が供給される。補助ロープ7を引っ張ることによって、補助ロープドラム15が回転する。これにより、補助ロープ7は補助ロープドラム15から繰り出される。摩擦ディスク13は、動作接続を形成するフリーホイールを介して補助ロープドラム15に結合され、今や補助ロープ7によっても駆動される。牽引ロープ3は、回転する摩擦ディスク13によって繰り出される。牽引ロープ3が反対方向に引っ張られた場合、牽引ロープ3は、今や摩擦ディスク13を駆動し、したがってフリーホイールを介して補助ロープドラム15も駆動し、それによって補助ロープ7がキャリッジ2内の補助ロープドラム15に巻き取られる。この目的のために、補助ロープ7は、ロープ装置6上に供給されなければならない。
【0024】
牽引ロープ3と摩擦ディスク13との間には滑りが存在する。結果として、補助ロープドラム15に巻かれる補助ロープ7の長さ、したがって、牽引ロープ3の可能な繰出し長さもまた、動作中に連続的に減少する。補助ロープ7を補助ロープドラム15に巻き取るために、牽引ロープ3は最初に、例えば木に取り付けられる。次いで、補助ロープドラム15の回転は、補助ロープドラム15の一方の側面の係止歯部に係合する係止部分によって阻止される。今や牽引ロープクランプ12は開かれ、補助ロープ7を引っ張ることによって、キャリッジ2は運搬ロープ5に沿って補助ロープ7の方へ移動する。その結果、牽引ロープ3は、補助ロープドラム15が回転し、かつ補助ロープ7が繰り出されることなく、キャリッジ2を通して引っ張られる。これは、補助ロープドラム15に対する摩擦ディスク13の回転方向が、現在はフリーホイールする方向を指しているので、フリーホイールによってのみ可能になる。補助ロープ7を巻き上げるために、補助ロープドラム15の係止が解除され、牽引ロープがロープ装置6から引き戻され、それによってより長い補助ロープ7が補助ロープドラム15に再び巻き付けられ、より長い繰出し長さを、その後の繰出しの間に再び達成することができる。
【0025】
2本ロープ式運転における上り勾配での集材の場合、摩擦ディスク13は電気モータによって駆動される。この動作条件の場合、わずかな繰出し力のみが必要である。電気モータ18は、適切な小型の設計を有することができる。したがって、電気モータ18の電力は、例えば5000ワットに達する可能性がある。この動作モードを図8に示す。
【0026】
3本ロープ式運転における上り勾配での集材の場合、摩擦ディスク13は、必要な繰出し力および繰出し長さに応じて、任意選択により電気モータ18によってまたは補助ロープ7を介して駆動される。補助ロープ7を介した駆動による繰出しを図9に示す。電気的繰出しを伴う3本ロープ式運転における上り勾配での集材の場合、補助ロープは、補助ロープドラム15ではなくキャリッジ底部9自体に取り付けられる。運搬ロープ5の長さが長いため、または他の状況に起因して特に大きな繰出し力が必要となることが予想される場合、補助ロープ7は補助ロープドラム15に巻き取られ、牽引ロープ3は、補助ロープ7によって駆動されることによって一時的に繰り出される。
【0027】
下り勾配での集材または平坦な地面での集材の場合、摩擦ディスク13は、好ましくは補助ロープ7を介して駆動される。電気モータ18によって駆動される場合に繰出し力が十分である限り、摩擦ディスク13を、下り勾配での集材または平坦な地面での集材中も、補助ロープドラム15ではなくキャリッジ底部9自体に取り付けられている補助ロープ7をこの動作モードで用いて電気モータによって駆動することができる。
【0028】
補助ロープ7だけでは加えることができない非常に高い繰出し力が必要な場合、補助ロープ7および電気モータ18による同時駆動によって、牽引ロープ3を強制的に繰り出す駆動も組み合わせて行うことができる。この動作の場合、牽引ロープ3を繰り出すために、電気モータ18および補助ロープドラム15が摩擦ディスク13と一緒に係合される。電気モータ18は、無線遠隔制御によってスイッチを随時入れることができ、したがって繰出し力をさらに増大させることができることが特に有利である。したがってキャリッジ2は、全ての動作状況について、各動作状況に十分な繰出し力および繰出し速度で牽引ロープ3の適切な強制繰出しを普遍的に保証する解決策を提供する。キャリッジ2の位置に関係なく、動作は静かである。電気モータ18を用いて繰出しを行う場合、繰出し長さは無制限である。電動駆動は、上り勾配での集材を目的とすることが好ましい。したがって、小さな寸法を有することができるため、キャリッジ2の重量は軽減される。補助ロープ7を用いた駆動は、高い繰出し力が必要であり、ともかく集材するために第3のロープが必要とされる下り勾配での集材を目的とすることが好ましい。
【0029】
摩擦ディスクは、中間リンクとしての補助ロープドラムを介してではなく、電気モータによって直接駆動することもできると言及してもよい。さらに、電気モータと補助ロープドラムまたは摩擦ディスクそれぞれとの間の動力伝達は、チェーン駆動、ベルト駆動またはギヤ駆動を用いて行われる場合がある。この場合、駆動は、ギヤ減速の要件に応じて単段または多段の設計にすることができる。
【0030】
電気モータの代替として、摩擦ディスクまたは補助ロープドラムのモータ式駆動はまた、燃焼モータまたは油圧モータによって提供することができる。そうすることで、油圧ポンプまたは蓄圧器を介して油圧モータに直接給油することができ、油圧ポンプは、電気モータまたは燃焼モータによって駆動することができ、または蓄圧器が使用される場合は、牽引ロープが引き込まれているときに摩擦ディスクを介して駆動することができる。
【0031】
補助ロープドラムおよび摩擦ディスクはまた、互いに堅固に接続することができるか、または回転固定方式で結合することができるか、または取外し可能に結合するように構成することができる。それらは、共通の単一構成要素として、つまり一体に構成することもできる。
【0032】
フリーホイールの代わりに、無線信号によって切り替えることができるクラッチ、または切替え可能なフリーホイールをそれぞれ、摩擦ディスクと補助ロープドラムとの間に配置してもよい。その結果、摩擦ディスクおよび補助ロープドラムを分離し、補助ロープをモータ駆動方式で補助ロープドラムに巻き付けることができる。これにより、同時に補助ロープドラムを係止しながら牽引ロープを引き出すことによって、時間のかかる手動巻きや機械巻きの必要がなくなる。
【0033】
補助ロープドラムまたは摩擦ディスクはそれぞれ、ハブモータによって駆動することもできる。このようにして、キャリッジを著しく小型に設計することが有利に達成される。
【0034】
図10は、本発明の第2の例示的な実施形態による、特に下り勾配での集材に主に使用される3本ロープ式運転におけるキャリッジ20の本質的な部分を概略的に示している。キャリッジ20は、3つの区画、すなわち巻上げロープ区画22、牽引ロープ区画23および補助ロープ区画24を含むロープドラム21を備える。3つの区画を含む1つのロープドラム21の代わりに、3つのロープドラムをキャリッジ20内に配置することもでき、これらは、1つのドラムの回転運動がその他のドラムの各々の回転運動を引き起こすように互いに結合される。この場合、3つのドラムは有利には共通の軸線上にある。しかし、異なる軸線で支持し、かつ駆動によって互いに接続することもできる。
【0035】
さらに、キャリッジ20は、キャリッジ20を運搬ロープ5に固定するための運搬ロープクランプ11と、ロープドラム21用のブレーキ25とを有する。また、キャリッジ20は、ロープドラム21用のモータ駆動を有し、好ましくは、チェーン駆動、ベルト駆動、ギヤ駆動によって、または、例えばハブモータとして直接、ロープドラム21を駆動することができる電気駆動を有する。キャリッジ20では、モータ駆動は、ロープドラム21の中空シャフト内の電気モータ18として構成される。
【0036】
キャリッジ20の巻上げロープ26は、積荷をキャリッジ20に向かって引き寄せて吊り上げるのに役立つ。一方では、キャリッジ20は、牽引ロープ3および補助ロープ7によって運搬ロープ5に沿って移動する。他方では、2本のロープはそれぞれ、繰出しおよび引込みにも役立ち、かつ、積荷をキャリッジ20に向かって吊り上げるのにも役立つ。
【0037】
積荷を持ち上げるために、キャリッジ20は最初に、牽引ロープ3および補助ロープ7によって運搬ロープ5に沿って、積荷が引き寄せられて吊り上げられる適切な位置まで移動され、運搬ロープクランプ11は開かれ、ブレーキ25は閉じられる。その結果、運搬ロープクランプ11は閉じられ、したがってキャリッジ20は運搬ロープ5に固定される。ブレーキ25は今や開かれ、ロープドラム21は、補助ロープ7が引っ張られかつロープ装置6が同時に牽引ロープ3を供給することによって回転し、それによって巻上げロープ26が繰り出され、牽引ロープ3が、牽引ロープ区画23または牽引ロープドラムそれぞれに繰り出される。積荷を引き寄せて吊り上げるために、牽引ロープ3は今やロープ装置6によって引き込まれ、それによってキャリッジ20内のロープドラム21が反対方向に回転するように設定され、これにより、巻上げロープ26および補助ロープ7が、ロープドラム21に引き込まれて巻き付けられる。キャリッジ20がロープ装置6に向かって引き込まれる前に、ブレーキ25は今や閉じられる。したがって、積荷はキャリッジ20に固定される。運搬ロープクランプ11は開かれ、キャリッジ20は、下り勾配での集材用の補助ロープ7および上り勾配での集材用の牽引ロープ3とともにロープ装置6に向かって牽引され、各他のロープは十分に供給されなければならず、また、下り勾配での集材の間、積荷を減速させなければならない。
【0038】
図11は、キャリッジ20内のロープの案内を説明するために、ロープドラム21、巻上げロープ26、補助ロープ7および牽引ロープ3、ならびに電気モータ18のみを概略的に示している。ロープドラムは、個々のロープ用の3つの区画、すなわち巻上げロープ区画22、補助ロープ区画23、および牽引ロープ区画24を含む一体型ロープドラム21として構成され、それぞれのロープは、互いに空間的に分離されているが互いに結合されながら一緒に巻かれる。キャリッジ20が運搬ロープ5に固定され、かつブレーキ25が解放された状態で牽引ロープ3が引っ張られた場合、巻上げロープ26および補助ロープ7はロープドラム21に巻き付けられる。補助ロープ7が引っ張られた場合、巻上げロープ26が繰り出され、かつ牽引ロープ3がロープドラム21に巻き付けられる。
【0039】
今や、キャリッジ20は、主に上り勾配での集材に適用される補助ロープ7がなくとも、2本ロープ式運転において有利に動作することができ、電気モータ18は、今や巻上げロープ26を繰り出すためにロープドラム21を駆動する。そうすることで、牽引ロープ3はまた、関連する牽引ロープ区画24内のロープドラム21に巻き付けられる。巻上げロープ26を引き込んで積荷を吊り上げるために、今や牽引ロープ3は、運搬ロープ5に固定されたキャリッジ20とともに牽引され、これにより、牽引ロープ3がロープドラム21から繰り出される。このようにして強制されたロープドラム21の回転は、今や巻上げロープ26をロープドラム21に巻き付け、負荷をキャリッジ20に向かってそれぞれ引き寄せるかまたは吊り上げる。ロープ区画の配置は可変である。例えば図示の実施形態とは反対に、巻上げロープ区画はまた、ロープドラムの一方側に位置してもよく、牽引ロープ区画は中央に位置してもよく、そして補助ロープ区画は他方側に位置してもよい。
【0040】
図10および図11によるキャリッジ20では、電気モータ18は、ロープドラム21の中空シャフトに配置されている。ギヤ、例えば多段遊星歯車は、有利には電気モータ18とロープドラム21との間に配置される。既に第1の実施形態にあるように、電気モータ18は、この実施形態においても内向きの牽引の間の発電機として使用され、したがってバッテリを再充電する。
【0041】
あるいは、電気モータまたは別のモータもまた、キャリッジ20内のロープドラム21の外側に配置されてもよく、例えばチェーン駆動、ベルト駆動またはギヤ駆動によってロープドラム21を駆動することができる。電気モータの代わりに、燃焼モータまたは油圧モータを駆動モータとして使用することもできる。
【0042】
ロープドラム21のブレーキ25の代替として、牽引ロープクランプをキャリッジ20内に設けることもでき、このクランプは、牽引ロープ3をロープドラム21から繰り出したり巻き付けたりできないようにキャリッジ20内に固定する。
【0043】
最後に、従来技術から知られている異なる種類のキャリッジと比較した、本発明によるキャリッジ2およびキャリッジ20の利点を再び要約する。
【0044】
ディーゼルエンジン式繰出し手段との比較
・ディーゼルエンジンは不要である(コスト、騒音、重量、給油、排気ガス、複雑性、エンジン損傷の危険性、キャリッジが衝突した場合の損傷の危険性など)
【0045】
純電動式繰出し手段との比較
・下り勾配での集材および長距離にわたる平坦な地面での集材のための補助ロープのために繰出し力が高く、集材は、3本ロープ式運転においてともかく実行されるので、補助ロープが利用可能である
【0046】
油圧式繰出し手段との比較
・重量、複雑性、油圧蓄圧器の強制検査(毎年繰り返される)、コスト
・一定の繰出し力(油圧蓄圧器では、油圧蓄圧器の充填レベルに応じて油圧が低下するので、最大繰出し力は繰出しの開始時にのみ利用可能であり、繰出し中に継続的に減少する)
・下り勾配での集材および長距離にわたる平坦な地面での集材のための高い繰出し力であり、集材は、ともかく3本ロープ式運転において実行されるので、補助ロープが利用可能である
・繰出し長さ(牽引ロープの長さ)は無制限
【0047】
補助ロープを介した純繰出し手段との比較
・有効な繰出し手段は、2本ロープ式運転での上り勾配での集材にも使用される(3本目のロープは不要)
・繰出し長さは無制限
・補助ロープドラムの補助ロープの電動繰出しが可能
【0048】
好ましい実施形態の変形例では、キャリッジ2は、例えば図9に示すようにドラムブレーキ27によって実装される通り、牽引ロープ3にブレーキを有する。下り勾配での集材の間に、キャリッジ2が重力のために運搬ロープ5に沿って下り勾配を走行する場合、キャリッジ2とケーブルクレーン1との間で牽引ロープ3にたるみ(ロープバッグとも呼ばれる)が生じる。運搬ロープクランプ11によって、キャリッジ2の下り勾配の降下は運搬ロープ5上で終了し、キャリッジ2は牽引ロープ3に締め付けられる。続いて牽引ロープ3がキャリッジ2から繰り出された場合、牽引ロープ3のこのたるみが減少し、その結果、牽引ロープ3のロープ張力がキャリッジ2とケーブルクレーン1との間で増加する。例えば、作業者が障害物を乗り越えなければならないために今や牽引ロープ3の繰出しが中断された場合は、牽引ロープ3がケーブルクレーン1の方向へ後退するのを防止しなければならない。これは、一方では牽引ロープクランプ12を閉じることによって達成することができるが、蓄圧器に負担をかける。本発明によれば、摩擦ディスク13を直接減速させ、かつ必要な圧油が著しく少ないドラムブレーキ27が提供される。あるいは、ブレーキを、牽引ロープ3を繰り出すためにドライブトレーンの他の任意の位置に設置することもでき、例えばモータシャフト上に直接、特に電磁ブレーキとして、またはチェーン駆動もしくは補助ロープドラム15のシャフトの1つに設置することもできる。あるいは、ブレーキ機能はまた、電気モータ18自体によって達成されてもよいが、その場合、モータシャフトの回転がなければ冷却されないため、停止時の制動トルクは時間的に制限される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】