特表2021-528361(P2021-528361A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-528361ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-528361(P2021-528361A)
(43)【公表日】2021年10月21日
(54)【発明の名称】ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 257/02 20060101AFI20210924BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20210924BHJP
   A61K 49/10 20060101ALI20210924BHJP
【FI】
   C07D257/02
   C07D405/04
   A61K49/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-529184(P2020-529184)
(86)(22)【出願日】2019年1月29日
(85)【翻訳文提出日】2020年5月15日
(86)【国際出願番号】CN2019073690
(87)【国際公開番号】WO2020154892
(87)【国際公開日】20200806
(31)【優先権主張番号】201910078991.8
(32)【優先日】2019年1月28日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520169409
【氏名又は名称】フーベイ ティアンシュ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HUBEI TIANSHU PHARMACEUTICAL CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジファ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ユンロン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C085
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC83
4C063DD47
4C063EE05
4C085HH01
4C085KA28
4C085KB12
4C085LL01
(57)【要約】
本発明は、ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法およびその応用を提供する。一般式(II)で表されるものが、アルカリ性触媒の存在下、一般式(III)で表されるものまたは一般式(IV)で表されるものと反応し、一般式(I)または一般式(V)で表される構造を有するガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を生成するステップを含む(式中、RはC−Cのアルキル基、ベンジル基またはベンジル基誘導体、Rは−Hまたは−CHOH、Rは−CHまたは−OHを示す。)ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法。上記の調製方法で一般式(I)で表される構造を有するガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を製造する場合、反応が簡単で、ステップが少なく、反応の制御が可能であり、収率が99%以上に達することができ、得られる生成物の純度は99.5%を超える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応式が下記の通りであり、
一般式(II)で表されるものが、アルカリ性触媒の存在下、一般式(III)で表されるものまたは一般式(IV)で表されるものと反応し、一般式(I)または一般式(V)で表される構造を有するガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を生成するステップを含むことを特徴とするガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法。
または、
(式中、RはC−Cのアルキル基、ベンジル基またはベンジル基誘導体、Rは−Hまたは−CHOH、Rは−CHOH、−CHまたは−OHを示す。)
【請求項2】
RはC−Cのアルキル基、Rは−Hまたは−CHOH、Rは−CHOH、−CHまたは−OHを示すことを特徴とする請求項1に記載のガドリニウム系イオン性造影剤の中間体。
【請求項3】
Rはtert−ブチル基、Rは−H、Rは−CHを示し、または、Rはtert−ブチル基、Rは−CHOH、Rは−CHOHを示すことを特徴とする請求項1に記載のガドリニウム系イオン性造影剤の中間体。
【請求項4】
前記アルカリ性触媒は無機アルカリ性触媒または有機アルカリ性触媒であり、
前記無機アルカリ性触媒は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウムの一種または複数種であり、
前記有機アルカリ性触媒は有機アミン類触媒であり、前記有機アミン類触媒はトリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ピリジン、ピリジン誘導体および構造が上記のものと類似する化合物の一種または複数種であり、さらに好ましくは、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムの一種または複数種であり、炭酸カリウムが好ましいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項5】
前記一般式(II)で表されるものと、一般式(III)または一般式(IV)で表されるものと、アルカリ性触媒との質量比は(10〜100):(1〜10):1であり、13:5:1であることが好ましいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項6】
前記反応の温度は40〜180℃であり、時間は6〜18hであり、好ましくは、前記反応の温度は60℃であり、時間は12hであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項7】
前記反応において、溶媒として、トルエンまたはイソプロピルアルコールを使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項8】
一般式(V)で表される構造を含むことを特徴とするガドリニウム系イオン性造影剤の中間体。
【請求項9】
前記ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を加水分解し、塩を形成させることで、前記ガドリニウム系イオン性造影剤が得られることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の調製方法のガドリニウム系イオン性造影剤の製造における応用。
【請求項10】
前記加水分解は具体的に、触媒を用いて前記ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を加水分解することを含み、
前記触媒の調製方法は、ジルコニアと塩化チタンを、硫酸と水の存在下、固体が溶解するまで60℃〜90℃で反応させ、シリカを加え、1〜5h反応させ、固体を濾取して洗浄した後に焼成するステップを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年01月28日に出願された、中国特許出願201910078991.8に基づく優先権を主張し、その全内容を参照により本出願に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、画像診断に用いられる造影剤の技術分野に関するものであり、具体的には、ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法及びその応用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
核磁気共鳴画像法(Nuclear Magnetic Resonance Imaging、NMRと略称される。)は、磁気共鳴画像法(MRI)とも呼ばれ、非侵襲的で、解剖学的画像の解像度が高く、生体に毒性も損傷も与えないといったメリットがあるため、既に臨床医学診断における通常の診断技術となっている。核磁気共鳴画像法では、人体内の水素原子核が外部磁場の条件でエネルギーの高い状態からエネルギーの低い状態に緩和することにより画像が生じる。画像の品質は人体内の水素原子核の密度と分布状況によって影響され、明晰な磁気共鳴画像法による解剖学的画像が得られないことが多く、疾患や損傷を正確に判断することが困難である。造影剤は、その周囲にある水素原子核の緩和時間を変え、検査する標的部位と周囲の背景組織とのコントラストを向上させ、NMRIの感度と精度を改善することができる。
【0004】
今まで、臨床で最も広く使用されているのは、ガドリニウムを中心とする錯体系標的磁気共鳴技術である。ガドリニウム(Gd)は、外層に七つの不対電子を持つため、強力な常磁性イオンである。結合状態ではないガドリニウムイオンは毒性を有するが、毒性のない有機キレート剤と錯体を形成した後、常磁性作用に顕著な影響を与えることなく、ガドリニウムの毒性作用をほとんど解消することができる。静脈内注射が可能であるガドリニウムのさまざまなキレート剤、例えば、ガドブトロールまたはガドテリドールは、既に磁気共鳴画像法(MRI)技術の不可欠な一部となっている。そのうち、ガドブトロールは、ガドリニウム(III)と大環状配位子である10−(2,3−ジヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸(ブトロール)からなる非イオン性錯体である。ガドテリドール注射剤(gadoteridol injection)は、ガドリニウムをベースとした非イオン性造影剤であり、静脈内注射して脳、脊髄、肝臓などの核磁気共鳴画像検査に用いられる。その原薬はガドテリドール(別名:10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸ガドリニウム)である。
【0005】
先行技術では、ガドブトロール及びガドテリドールの調製方法が複数提供されているが、先行技術における一部の合成経路は実験室の規模のみに適用され、大規模生産には適さず、一部の合成経路では、目的生成物の精製のために大量の樹脂を必要とし、大規模生産ではコストが高く、収率が低く、純度が悪い。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、第1、反応式は下記の通りであり、一般式(II)で表されるものが、アルカリ性触媒の存在下、一般式(III)で表されるものまたは一般式(IV)で表されるものと反応し、一般式(I)または一般式(V)で表される構造を有するガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を生成するステップを含むガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法を提供することを目的とする。

あるいは、
(式中、上記の一般式において、RはC−Cのアルキル基、ベンジル基またはベンジル基誘導体、Rは−Hまたは−CHOH、Rは−CHOH、−CHまたは−OHを示す。)
【0007】
本発明の好ましい一実施形態では、一般式(I)において、RはC−Cのアルキル基、Rは−Hまたは−CHOH、Rは−CHOH、−CHまたは−OHを示す。より好ましくは、前記一般式(I)において、Rはtert−ブチル基、Rは−H、Rは−CHを示し、または、Rはtert−ブチル基、Rは−CHOH、Rは−CHOHを示す。
【0008】
本発明の好ましい一実施形態では、一般式(V)において、RはC−Cのアルキル基を示し、tert−ブチル基であることが好ましい。
【0009】
本発明の好ましい一実施形態では、前記アルカリ性触媒は無機アルカリ性触媒または有機アルカリ性触媒であり、前記無機アルカリ性触媒は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウムの一種または複数種であり、前記有機アルカリ性触媒は、有機アミン類触媒であり、前記有機アミン類触媒はトリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ピリジン、ピリジン誘導体及び構造が上記のものと類似する化合物の一種または複数種である。より好ましくは、前記アルカリ性触媒は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムの一種または複数種であり、炭酸カリウムが好ましい。
【0010】
本発明の好ましい一実施形態では、前記一般式(II)で表されるものと、一般式(III)で表されるものと、アルカリ性触媒との質量比は(10〜100):(1〜10):1であり、(11〜20):(1〜10):1であることが好ましく、13:5:1であることが好ましい。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態では、前記反応の温度は40〜180℃であり、時間は6〜18hであり、好ましくは、前記反応の温度は60℃であり、時間は12hである。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態では、上記の2つの反応において、溶媒として、トルエンまたはイソプロピルアルコールを使用できる。そのうち、溶媒の添加量は基質を溶解できる量であればよい。そのうち、式(I)において、Rがtert−ブチル基、Rが−H、Rが−CHを示す場合、反応の溶媒としてトルエンを選用してもよい。Rがtert−ブチル基、Rが−CHOH、Rが−OHを示す場合、反応の溶媒としてイソプロピルアルコールを選用してもよい。
【0013】
そのうち、反応が終了した後、水で反応液を洗浄し、乾燥させ、溶媒を除去することにより、純度が高く、一般式(I)または一般式(V)で表される構造を有するガドリニウム系イオン性造影剤の中間体が得られる。
【0014】
本発明の他の目的は、上記の調製方法で得られる一般式(I)または一般式(V)で表される構造を有するガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を提供することにある。すなわち、提供されるガドリニウム系イオン性造影剤の中間体は一般式(I)または一般式(V)で表される構造を有する。
または

(式中、Rはtert−ブチル基であることが好ましい。Rは−H、Rは−CHを示し、または、RとRはいずれも−CHOHを示す。)
【0015】
上記の調製方法で一般式(I)で表される構造を有するガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を調製する場合、収率は98%以上に達することができ、得られる生成物の純度は99%を超え、99.5%を超えることが好ましい。
【0016】
本発明の更なる目的は、上記の調製方法のガドリニウム系イオン性造影剤の調製における応用を提供することにある。すなわち、前記ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を加水分解し、塩を形成させることで、前記ガドリニウム系イオン性造影剤が得られるステップを含むガドリニウム系イオン性造影剤の調製方法を提供する。
【0017】
そのうち、加水分解は当分野の常用の酸加水分解であってもよい。好ましくは、触媒を用いて前記ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を加水分解することを含んでもよい。前記触媒の調製方法は、ジルコニアと塩化チタンを、硫酸と水の存在下、固体が溶解するまで60℃〜90℃で反応させ、シリカを加え、1〜5h反応させ、固体を濾取して洗浄した後に焼成するステップを含む。
【0018】
そのうち、上記のジルコニアと塩化チタンのモル比は、1:(0.1〜1)であることが好ましく、1:(0.4〜0.5)であることがさらに好ましい。
【0019】
そのうち、上記の硫酸と水の体積比は、(0.5〜3):10であることが好ましく、(1〜1.5):10であることがさらに好ましい。
【0020】
そのうち、上記のジルコニアとシリカのモル比は、1:(10〜20)であることが好ましく、1:(12〜15)であることが好ましい。
【0021】
そのうち、上記の焼成の温度は、500℃〜700℃であり、550℃〜600℃であることが好ましい。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態では、上記のtert−ブチルエステルと前記触媒の質量比は、1:(1〜1000)であり、1:(50〜100)であることが好ましく、1:100であることがさらに好ましい。
【0023】
そのうち、加水分解の温度は、70℃〜90℃であり、時間は8〜24hであり、好ましくは、前記加水分解の温度は85℃〜90℃であり、時間は12〜15hである。
【0024】
上記の加水分解反応において、水の添加量と前記tert−ブチルエステルの重量比は20:1〜20:5である。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態では、好ましくは、加水分解は具体的に上記のガドリニウム系イオン性造影剤の中間体と水を混合させ、上記の触媒を加え、70℃〜90℃で8〜24h反応させることを含んでもよい。
【0026】
加水分解において、加水分解の反応終了後の反応液を濾過し、水で洗浄して濃縮した後に、エタノールおよび/またはアセトンで再結晶させ、得られた生成物で次の塩形成反応を行うことをさらに含んでもよい。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態では、中間体が一般式(I)で表される構造であって、式(I)におけるRがtert−ブチル基、Rが−H、Rが−CHを示す場合、再結晶の溶媒としてエタノールを選用してもよい。Rがtert−ブチル基、Rが−CHOH、Rが−OHを示す場合、再結晶の溶媒としてエタノールとアセトンとの混合溶媒を選用してもよく、そのうち、エタノールとアセトンの体積比は(5.5〜7):(3〜5)であることが好ましく、6:4であることがさらに好ましい。
【0028】
当業者は、当分野の常用の塩形成反応でガドリニウム系イオン性造影剤を調製することができる。本発明の実施形態において、塩形成は具体的に下記のステップを含んでもよい:
加水分解後の生成物を水に溶解し、酸化ガドリニウムを加え、清澄になるまで60〜100℃で反応させ、再結晶させることで、前記ガドテリドールが得られる。
【0029】
そのうち、加水分解後の生成物と酸化ガドリニウムのモル比は1:1.1〜0.9:1であることが好ましく、1:1.02〜0.95:1であることがさらに好ましい。
【0030】
そのうち、清澄になるまで85℃で反応させるのが好ましい。
【0031】
そのうち、イソプロピルアルコールで再結晶させることが好ましく、前記イソプロピルアルコールとテリドール(teridol)の質量比は3:1〜20:1であることが好ましい。
【0032】
上記の調製方法で一般式(I)または一般式(V)で表される構造を有するガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を調製する場合、反応が簡単で、ステップが少なく、反応の制御が可能であり、収率が98%以上に達することができ、得られる生成物の純度は99%を超える。本発明の中間体でガドリニウム系イオン性造影剤を調製する場合、提供される調製方法による収率が高く、生成物の純度が良く、調製過程で生じた排ガス、排水及び残渣が少なく、環境に対する汚染を効率的に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例を結合しながら本発明の具体的な実施形態についてさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を説明するために記載されたものであり、本発明の範囲を限定するために記載されたものではない。
【0034】
実施例で使用される技術手段は、特に断りのない限り、当業者が熟知する通常の手段であり、使用される原料はいずれも市販品である。
【0035】
実施例1
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法を提供し、当該調製方法の反応式は下記の通りである。
【0036】
調製方法は下記のステップを含む:
1Lの反応フラスコに、tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸26g、炭酸カリウム2g、イソプロピルアルコール300mL、4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5,1,0]オクタン10gを加え、60℃で12h反応させ、イソプロピルアルコールを回収し、トルエン300mLを加え、水で反応液を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、イソプロピルアルコールを減圧回収し、淡黄色の油状物33gが得られ、収率は99%を超え、純度は99.8%を超えた。
【0037】
本実施例で得られた淡黄色の油状物の元素を分析した結果は、C:60.12%、N:8.48%、H:9.46%(C3362の理論値:C:60.18%、H:9.43%、N:8.51%)であった。上記のデータより、本実施例で上記の中間体が成功に合成されたことを証明できる。
【0038】
実施例2
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法を提供し、当該調製方法の反応式は下記の通りである。
【0039】
調製方法は下記のステップを含む:
1Lの反応フラスコに、tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸臭化水素酸塩30g、炭酸カリウム20g、トルエン300mL、プロピレンオキシド10mLを加え、60℃で12h反応させ、水で反応液を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、トルエンを減圧回収し、淡黄色の油状物28gが得られ、収率は99%を超え、純度は99.5%を超えた。
【0040】
そのうち、本実施例で得られたガドリニウム系イオン性造影剤の中間体(I)において、Rはtert−ブチル基、Rは−H、Rは−CHを示す。
【0041】
本実施例で得られた淡黄色の油状物の元素を分析した結果は、C:59.76%、N:9.62%、H:9.79%(C2956の理論値:C:59.97%、N:9.65%、H:9.72%)であった。上記のデータより、本実施例で上記の中間体が成功に合成されたことを証明できる。
【0042】
実施例3
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法を提供し、反応式は実施例1と同じである。調製方法は下記のステップを含む:
1Lの反応フラスコに、tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸26g、炭酸ナトリウム2g、イソプロピルアルコール300mL、4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5,1,0]オクタン10gを加え、40℃で18h反応させ、イソプロピルアルコールを回収し、トルエン300mLを加え、水で反応液を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、イソプロピルアルコールを減圧回収し、淡黄色の油状物が得られ、收率は98.6%を超え、純度は99.5%を超えた。
【0043】
本実施例で得られた淡黄色の油状物の元素の分析結果は、実施例1で得られた生成物の元素の分析結果と同じであり、本実施例で上記の中間体が成功に合成されたことを証明できる。
【0044】
実施例4
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法を提供し、反応式は実施例1と同じである。調製方法は下記のステップを含む:
1Lの反応フラスコに、tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸40g、ジメチルアニリン2g、イソプロピルアルコール300mL、4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5,1,0]オクタン20gを加え、180℃で4h反応させ、イソプロピルアルコールを回収し、トルエン300mLを加え、水で反応液を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、イソプロピルアルコールを減圧回収し、淡黄色の油状物が得られ、收率は98.2%を超え、純度は99.3%を超えた。
【0045】
本実施例で得られた淡黄色の油状物の元素の分析結果は、実施例1で得られた生成物の元素の分析結果と同じであり、本実施例で上記の中間体が成功に合成されたことを証明できる。
【0046】
実施例5
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法を提供し、反応式は実施例1と同じである。調製方法は下記のステップを含む:
1Lの反応フラスコに、tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸100g、炭酸カリウム1g、イソプロピルアルコール300mL、4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5,1,0]オクタン10gを加え、60℃で12h反応させ、イソプロピルアルコールを回収し、トルエン300mLを加え、水で反応液を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、イソプロピルアルコールを減圧回収し、淡黄色の油状物が得られ、收率は98%を超え、純度は99%を超えた。
【0047】
本実施例で得られた淡黄色の油状物の元素の分析結果は、実施例1で得られた生成物の元素の分析結果と同じであり、本実施例で上記の中間体が成功に合成されたことを証明できる。
【0048】
実施例6
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法を提供し、反応式は実施例2と同じである。調製方法は下記のステップを含む:
1Lの反応フラスコに、tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸臭化水素酸塩30g、トリメチルアミン20g、トルエン300mL、プロピレンオキシド10mLを加え、60℃で12h反応させ、水で反応液を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、トルエンを減圧回収し、淡黄色の油状物28gが得られ、收率は98%を超え、純度は99%を超えた。
【0049】
そのうち、本実施例で得られたガドリニウム系イオン性造影剤の中間体(I)において、Rはtert−ブチル基、Rは−H、Rは−CHを示す。
【0050】
本実施例で得られた淡黄色の油状物の元素の分析結果は、実施例2で得られた生成物の元素の分析結果と同じであり、本実施例で上記の中間体が成功に合成されたことを証明できる。
【0051】
実施例7
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の調製方法を提供し、反応式は下記の通りである。
【0052】
当該調製方法は下記のステップを含む:
1)実施例1で得られたガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を、蒸留水が200mL入った500mLの反応フラスコに加え、撹拌しながら触媒0.5gを加え、85−90℃で12時間反応させ、濾過し、少量の水で洗浄し、乾固するまで減圧濃縮し、エタノール/アセトン(6:4)で再結晶させ、ブトロールである白色固体21gが得られた(元素の分析結果は、C:47.82%、N:12.32%、H:7.64%であり、C1834の理論値は、C:47.97%、N:12.43%、H:7.62%である。)。
【0053】
そのうち、触媒の調製方法は下記の通りである:ZrO5g、TiCl3gを蒸留水100mLに加え、硫酸10mLを加え、固体が完全に溶解するまで80℃程度で加熱し、SiO60mlを加えて2時間吸着させ、濾過し、水で二回洗浄し、10%NaOH50mlで二回洗浄し、中性になるまで蒸留水で洗浄し、550℃で焼成して触媒が得られる。
【0054】
2)上記のブトロールを蒸留水100mLに溶解し、Gd9.0gを加え、清澄になるまで85℃で反応させ、濾過、濃縮し、95%エタノール300mLで再結晶させ、白色結晶であるガドブトロール28gが得られ、収率は99%を超え、純度は99.5%を超えた。
【0055】
そのうち、白色結晶の赤外吸収スペクトル(KBr、cm−1)は、3560、3280、2975、2940、2920、2880、2870、1650、1600、1380であった。当該白色結晶がガドブトロールであることを証明できる。
【0056】
実施例8
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の調製方法を提供し、反応式は下記の通りである。
【0057】
当該調製方法は下記のステップを含む:
1)実施例2で得られたガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を、蒸留水が200mL入った500mLの反応フラスコに加え、撹拌しながら触媒0.5gを加え、85−90℃で12時間反応させ、濾過し、少量の水で洗浄し、乾固するまで減圧濃縮し、95%エタノールで再結晶させ、テリドールである白色固体17gが得られた(元素の分析結果は、C:50.37%、N:13.80%、H:8.09%であり、C1732の理論値は、C:50.44%、N:13.85%、H:8.01%である。)。
【0058】
そのうち、触媒の調製方法は下記の通りである:ZrO5g、TiCl3gを蒸留水100mLに加え、硫酸10mLを加え、固体が完全に溶解するまで80℃程度で加熱し、SiO60mlを加えて2時間吸着させ、濾過し、水で二回洗浄し、10%NaOH50mlで二回洗浄し、中性になるまで蒸留水で洗浄し、550℃で焼成して触媒が得られた。
【0059】
2)上記のテリドールを蒸留水100mLに溶解し、Gd9.0gを加え、清澄になるまで85℃で反応させ、濾過、濃縮し、イソプロピルアルコール200mLで再結晶させ、白色結晶であるガドテリドール28gが得られ、収率は99%を超え、純度は99.5%を超えた。
【0060】
最後に、本発明の方法は好ましい実施案にすぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。本発明の技術的思想および趣旨の範疇内のいかなる修正、同等な置き換え、改善などは、いずれも本発明の保護範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明はガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法及びその応用を提供する。当該調製方法は、一般式(II)で表されるものが、アルカリ性触媒の存在下、一般式(III)で表されるものまたは一般式(IV)で表されるものと反応し、一般式(I)または一般式(V)で表される構造を有するガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を生成するステップを含む。そのうち、RはC1−C5のアルキル基、ベンジル基またはベンジル基誘導体、R1は−Hまたは−CH2OH、R2は−CH3または−OHを示す。本発明が提供する調製方法は、工業上、大規模生産することができ、従来の方法が小規模生産のみに適用され、純度が不十分で、収率が低いといった欠点を補う。
【手続補正書】
【提出日】2020年12月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応式が下記の通りであり、
一般式(II)で表されるものが、アルカリ性触媒の存在下、一般式(III)で表されるものまたは一般式(IV)で表されるものと反応し、一般式(I)または一般式(V)で表される構造を有するガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を生成するステップを含むことを特徴とするガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法。
または、
(式中、RはC−Cのアルキル基、ベンジル基またはベンジル基誘導体、Rは−Hまたは−CHOH、Rは−CHOH、−CHまたは−OHを示す。)
【請求項2】
RはC−Cのアルキル基、Rは−Hまたは−CHOH、Rは−CHOH、−CHまたは−OHを示すことを特徴とする請求項1に記載のガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法
【請求項3】
Rはtert−ブチル基、Rは−H、Rは−CHを示し、または、Rはtert−ブチル基、Rは−CHOH、Rは−CHOHを示すことを特徴とする請求項1に記載のガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法
【請求項4】
前記アルカリ性触媒は無機アルカリ性触媒または有機アルカリ性触媒であり、
前記無機アルカリ性触媒は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウムの一種または複数種であり、
前記有機アルカリ性触媒は有機アミン類触媒であり、前記有機アミン類触媒はトリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ピリジン、ピリジン誘導体および構造が上記のものと類似する化合物の一種または複数種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項5】
前記一般式(II)で表されるものと、一般式(III)または一般式(IV)で表されるものと、アルカリ性触媒との質量比は(10〜100):(1〜10):1であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項6】
前記反応の温度は40〜180℃であり、時間は6〜18hであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項7】
前記反応において、溶媒として、トルエンまたはイソプロピルアルコールを使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項8】
一般式(V)で表される構造を含むことを特徴とするガドリニウム系イオン性造影剤の中間体。
【請求項9】
前記ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を加水分解し、塩を形成させることで、前記ガドリニウム系イオン性造影剤が得られることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の調製方法のガドリニウム系イオン性造影剤の製造における応用。
【請求項10】
前記加水分解は具体的に、触媒を用いて前記ガドリニウム系イオン性造影剤の中間体を加水分解することを含み、
前記触媒の調製方法は、ジルコニアと塩化チタンを、硫酸と水の存在下、固体が溶解するまで60℃〜90℃で反応させ、シリカを加え、1〜5h反応させ、固体を濾取して洗浄した後に焼成するステップを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の応用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
調製方法は下記のステップを含む:
1Lの反応フラスコに、tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸26g、炭酸カリウム2g、イソプロピルアルコール300mL、4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5,1,0]オクタン10gを加え、60℃で12h反応させ、イソプロピルアルコールを回収し、トルエン300mLを加え、水で反応液を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、トルエンを減圧回収し、淡黄色の油状物33gが得られ、収率は99%を超え、純度は99.8%を超えた。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
実施例3
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法を提供し、反応式は実施例1と同じである。調製方法は下記のステップを含む:
1Lの反応フラスコに、tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸26g、炭酸ナトリウム2g、イソプロピルアルコール300mL、4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5,1,0]オクタン10gを加え、40℃で18h反応させ、イソプロピルアルコールを回収し、トルエン300mLを加え、水で反応液を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、トルエンを減圧回収し、淡黄色の油状物が得られ、收率は98.6%を超え、純度は99.5%を超えた。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
実施例4
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法を提供し、反応式は実施例1と同じである。調製方法は下記のステップを含む:
1Lの反応フラスコに、tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸40g、ジメチルアニリン2g、イソプロピルアルコール300mL、4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5,1,0]オクタン20gを加え、180℃で4h反応させ、イソプロピルアルコールを回収し、トルエン300mLを加え、水で反応液を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、トルエンを減圧回収し、淡黄色の油状物が得られ、收率は98.2%を超え、純度は99.3%を超えた。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
実施例5
本実施例はガドリニウム系イオン性造影剤の中間体の調製方法を提供し、反応式は実施例1と同じである。調製方法は下記のステップを含む:
1Lの反応フラスコに、tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸100g、炭酸カリウム1g、イソプロピルアルコール300mL、4,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[5,1,0]オクタン10gを加え、60℃で12h反応させ、イソプロピルアルコールを回収し、トルエン300mLを加え、水で反応液を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、トルエンを減圧回収し、淡黄色の油状物が得られ、收率は98%を超え、純度は99%を超えた。
【国際調査報告】