特表2021-528680(P2021-528680A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-528680(P2021-528680A)
(43)【公表日】2021年10月21日
(54)【発明の名称】表示装置のための光導波体
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/04 20060101AFI20210924BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20210924BHJP
   G03H 1/02 20060101ALI20210924BHJP
   G03H 1/26 20060101ALI20210924BHJP
【FI】
   G03H1/04
   G02B27/01
   G03H1/02
   G03H1/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-569795(P2020-569795)
(86)(22)【出願日】2019年6月13日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月14日
(86)【国際出願番号】EP2019065605
(87)【国際公開番号】WO2019238885
(87)【国際公開日】20191219
(31)【優先権主張番号】102018209628.7
(32)【優先日】2018年6月15日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トアステン アレクサンダー ケアン
(72)【発明者】
【氏名】フェリツィタス ヴィレ
【テーマコード(参考)】
2H199
2K008
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA18
2H199DA26
2K008AA14
2K008BB03
2K008CC01
2K008HH01
2K008HH12
2K008HH18
(57)【要約】
本発明は、表示装置のための光導波体(5)およびかかる光導波体の製造方法に関する。光導波体(5)は基板(54)を有し、その上にホログラム層(56)が配置されている。ホログラム層(56)上にカバー層(55)が配置されており、これは硬化プロセスが施された光透過性材料から成る。基板(54)をガラスから成るものとすることができる。別の選択肢として基板(54)は、同じく硬化プロセスが施された光透過性材料から成る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(54)と、
該基板(54)上に配置されたホログラム層(56)と、
該ホログラム層(56)上に配置されたカバー層(55)と
を備え、
前記カバー層(55)は、硬化プロセスが施された光透過性材料から成る、
表示装置のための光導波体(5)。
【請求項2】
前記基板(54)はガラスから成り、または同じく硬化プロセスが施された光透過性材料から成る、請求項1記載の光導波体(5)。
【請求項3】
前記光透過性材料は、ラッカまたは光学透明接着剤である、請求項1または2記載の光導波体(5)。
【請求項4】
硬化プロセスが施された前記光透過性材料は1.4以上の屈折率を有する、請求項3記載の光導波体(5)。
【請求項5】
前記基板(54)または前記カバー層(55)は構造形成部を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の光導波体(5)。
【請求項6】
光導波体(5)の製造方法であって、
第1の型板(70)に光透過性材料の層を被着するステップ(S1)と、
被着された前記光透過性材料を硬化させてカバー層(55)を形成するステップ(S2)と、
前記カバー層(55)にホログラム層(56)を被着するステップ(S3)と、
前記ホログラム層(56)に基板(54)を被着するステップ(S4)と、
前記ホログラム層(56)を照射し(S5)硬化させる(S6)ステップと
を有する、光導波体(5)の製造方法。
【請求項7】
光導波体(5)の製造方法であって、
第1の型板(70)に光透過性材料の層を被着するステップ(S1)と、
被着された前記光透過性材料を硬化させてカバー層(55)を形成するステップ(S2)と、
前記カバー層(55)にホログラム層(56)を被着するステップ(S3)と、
前記ホログラム層(56)を照射し(S5)硬化させる(S6)ステップと、
前記ホログラム層(56)に光透過性材料の層を被着するステップ(S7)と、
第2の型板(71)を用いて、被着された前記光透過性材料を成形するステップ(S8)と、
被着された前記光透過性材料を硬化させて基板(54)を形成するステップ(S9)と
を有する、光導波体(5)の製造方法。
【請求項8】
前記第1の型板(70)と前記光透過性材料の層との間に、または前記第2の型板(71)と前記光透過性材料の層との間に、分離層を配置する、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記第1の型板(70)または前記第2の型板(71)は構造形成部を有する、請求項6から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
画像を生成する画像生成ユニット(1)と、
虚像(VB)を生成するためにミラーユニット(3)の方向に前記画像を投影する光学ユニット(2)と
射出瞳を拡開するために、請求項1から5までのいずれか1項記載の少なくとも1つの光導波体(5)と、
を有する、虚像(VB)を生成する装置。
【請求項11】
移動手段の操作者に対し虚像(VB)を生成するために、請求項10記載の装置を備えた移動手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置のための光導波体およびかかる光導波体の製造方法に関する。本発明はさらに、かかる光導波体を使用し虚像を生成する装置に関する。
【0002】
HUDとも呼ばれるヘッドアップディスプレイとは、表示すべき内容が観察者の視野内に挿入されることから、観察者が自身の視線を維持できる表示システムのことであると解される。かかるシステムはそれらの複雑さおよびコストゆえに、元々は主として航空分野において利用されてきたが、いまでは自動車分野においても量産でそれらのシステムが組み込まれるようになってきている。
【0003】
ヘッドアップディスプレイは一般に、画像生成器と光学ユニットとミラーユニットとから成る。画像生成器は画像を生成する。光学ユニットはその画像をミラーユニットへ導く。画像生成器は、しばしば画像生成ユニットまたはPGU(Picture Generating Unit)とも呼ばれる。ミラーユニットは、部分的に反射性である光透過性のガラス板である。したがって観察者は、画像生成器により表示された内容を虚像として見ると同時に、ガラス板背後の実世界も見る。ミラーユニットとして、自動車分野ではしばしばフロントガラスが用いられ、その湾曲形状を表示にあたり考慮する必要がある。光学ユニットとミラーユニットとの共働によって、虚像は画像生成器により生成された画像の拡大表示となる。
【0004】
観察者は、いわゆるアイボックスのポジションだけからしか、虚像を観察できない。理論上の観察窓に相応する高さおよび幅を有する領域が、アイボックスと呼ばれる。観察者の目がアイボックス内に位置しているかぎりは、虚像のすべての要素を目で見ることができる。これに対し目がアイボックスの外側に位置していると、虚像は観察者には部分的にしか見えず、またはまったく見えない。したがってアイボックスが大きくなればなるほど、観察者にとって自身のシートポジションの選択にあたり制約が少なくなる。
【0005】
慣用のヘッドアップディスプレイの虚像のサイズは、光学ユニットのサイズによって制限される。虚像を拡大するための1つのアプローチは、画像生成ユニットから到来する光を光導波体に入射させるというものである。画像情報を担持し光導波体に入射された光は、光導波体の界面で全反射させられ、そのようにして光導波体内部を案内される。これに加え、伝播方向に沿った多数のポジションでそれぞれ光の一部が出射され、その結果、画像情報が光導波体の面全体にわたり分散されて出射される。このようにして光導波体によって、射出瞳(Austrittspupille)の拡開が行われる。この場合、実効射出瞳は、画像生成システムの開口の像から合成される。
【0006】
このような背景のもとで、米国特許出願公開第2016/0124223号明細書は、虚像表示装置について記載している。この表示装置は、以下のように作用する光導波体を含む。すなわちこの光導波体は、画像生成ユニットから到来し第1の光入射面を通して入射する光を繰り返し内面反射させて、第1の光入射面から離れる第1の方向で進行させる。さらにこの光導波体は、光導波体内を案内される光の一部が、第1の方向に延在する第1の光出射面の領域を通って外部に出射するように作用する。この表示装置はさらに、当射光を回折させ、回折させられた光が光導波体に入射するように作用する、第1の光入射側回折格子と、光導波体から入射する光を回折させる第1の光出射側回折格子とを含む。
【0007】
光導波体をベースとする慣用のフルカラーヘッドアップディスプレイは通常、上下に位置する3つの単色の光導波体から成り、赤色、緑色および青色のためにそれぞれ1つの光導波体が設けられている。これらの光導波体はそれぞれ、ガラス基板と、薄いホログラム層と、カバー層としてのさらなるガラス基板とから成る。その際にガラスは、一般的に1mmよりも厚い。しかもそれらのガラスは硬く、かつ撓みに対しロバストである。
【0008】
かかる光導波体を製造するための基板は、たとえば平坦性などに関して、著しく良好な表面特性を有していなければならない。かかる特性は、手間のかかる基板の表面処理なしでは、市場では入手が極めて困難であり、過度に高い値段でしか手に入れることができない。しかも基板の厚さゆえに、3つの単色の光導波体から成る光導波体の構造が大きくなってしまう。さらにその結果として、光導波体を含む製品たとえばヘッドアップディスプレイ全体の構造が大きくなってしまう。これに加えて、複数の単色の光導波体を急な角度で見たときに、それらの光導波体のそれぞれ1つによって搬送される色の重なり合いに誤差が生じてしまう。このことは特に、ヘッドアップディスプレイとして自動車において適用した場合に該当することが多い。
【0009】
本発明の課題は、改良された光導波体およびかかる光導波体の製造方法を提供することにある。
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を備えた光導波体および請求項6または7の特徴を備えた方法によって解決される。従属請求項には本発明の好ましい実施形態が記載されている。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、表示装置のための光導波体は、
基板と、
この基板上に配置されたホログラム層と、
このホログラム層上に配置されたカバー層と
を有し、この場合、カバー層は、硬化プロセスが施された光透過性材料から成る。
【0012】
本発明による光導波体は、基板と、カバー層と、これら両方の間に位置する光学的活性層とを有する。この場合、カバー層は、硬化プロセスが施された光透過性材料から成る。カバー層はその際に、正確に予め定められたジオメトリを有する形状で被着され、硬化させられる。したがってカバー層は、そのために手間をかけて後処理する必要なく、正確な表面形状を有する。これまでカバー層として使用されてきたガラス基板において発生するような、表面品質の変動が回避される。これに加え、成形された表面の高い品質により、角度誤差の低減という点で内面全反射の明確な改善が達成される。
【0013】
さらなる利点として、光導波体のために複数の比較的厚いガラス基板を使用する必要がなくなる。これによって、厚さの低減された光導波体の構成が可能となる。しかもカバー層の製造は、今日市販されているそれ相応の表面特性を有するガラス基板を使用するよりも低コストである。
【0014】
本発明の1つの態様によれば、基板はガラスから成り、または同じく硬化プロセスが施された光透過性材料から成る。
【0015】
本発明による光導波体の第1の実施形態の場合、基板はガラスから成る。これにより得られる利点とは、ガラス基板を機械的に安定した支持体として用いることができる、ということである。
【0016】
本発明による光導波体の第2の実施形態の場合、基板は同じく硬化プロセスが施された光透過性材料から成る。これにより得られる利点とは、基板も低コストであるが、それにもかかわらず所望の表面特性を有するように製造できる、ということである。しかもこのようにすれば、所定の範囲で柔軟性のある光導波体を実現することができる。
【0017】
基板およびカバー層のために、好ましくは同じ光透過性材料が用いられるけれども、異なる材料を用いてもよい。
【0018】
本発明の1つの態様によれば、光透過性材料はラッカまたは光学透明接着剤(OCA,Optical Clear Adhesive)であり、つまり硬化性の接着剤である。この接着剤は通常、それによって接着される透過性材料と一致する屈折率を有する。かかる接着剤は当業者に公知であり、所望の屈折率に合わせて、ここでは使用されるもしくは置き換えられるガラスの屈折率に合わせて、極めて良好に調整することができる。ここで挙げた材料は、低コストで良好に処理可能である、という利点を有する。
【0019】
本発明の1つの態様によれば、硬化プロセスが施された光透過性材料は1.4以上の屈折率を有する。かくしてこの材料は、ガラスの光学特性に相応する光学特性を有し、さもなくば使用されるガラスの代替として、手間をかけて光学特性を新たに計算することなく、この材料を使用することができる。光導波体に適用するためには、n=1.5±0.02の屈折率が特に適していると判明した。
【0020】
本発明の1つの態様によれば、基板またはカバー層は構造形成部(Strukturierung)を有する。正確に予め定められたジオメトリを有する形状を使用することによって、平坦な材料層の代わりに、材料層の形状の所期の構造形成を行うこともでき、これによってラッカ層もしくは光導波体の種々の厚さが種々の領域で実現される。これはたとえば、数ミリメートル範囲での凹部または隆起部である。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、光導波体の製造方法は、
第1の型板に光透過性材料の層を被着するステップと、
被着された光透過性材料を硬化させてカバー層を形成するステップと、
カバー層にホログラム層を被着するステップと、
ホログラム層に基板を被着するステップと、
ホログラム層を照射し硬化させるステップと
を含む。
【0022】
基板がガラスから成る光導波体の実施形態の場合、材料層を製造するために、材料たとえばラッカまたは光学透明接着剤が型板に被着され、つまり特に平坦性に関して所望の特性を有する基準面に被着される。その後、この材料が硬化させられる。これに続いて薄いホログラム層が被着され、その層厚をスペーサによって規定することができる。最後に、材料層と薄いホログラム層とから成る構造にガラス基板が被着され、ホログラム層が照射されて硬化させられる。薄いホログラム層の照射および硬化を、ガラス基板を被着する前および後に行うことができる。
【0023】
ここで説明した方法の利点は、光導波体の構造のために1枚のガラスが省かれる、ということである。しかも、たとえば平坦性といった鋳型の型板の特性が、その型板のところで成形されるカバー層に移される。かくして、ガラス材料の特性よりも優れていさえする表面特性が達成される。
【0024】
本発明のさらなる態様によれば、光導波体の製造方法は、
第1の型板に光透過性材料の層を被着するステップと、
被着された光透過性材料を硬化させてカバー層を形成するステップと、
カバー層にホログラム層を被着するステップと、
ホログラム層を照射し硬化させるステップと、
ホログラム層に光透過性材料の層を被着するステップと、
第2の型板を用いて、被着された光透過性材料を成形するステップと、
被着された光透過性材料を硬化させて基板を形成するステップと
を含む。
【0025】
基板もカバー層もガラスからは構成されていない光導波体の実施形態の場合、材料層を製造するために、材料たとえばラッカまたは光学透明接着剤が型板に被着され、つまり特に平坦性に関して所望の特性を有する基準面に被着される。その後、この材料が硬化させられる。これに続いて薄いホログラム層が被着され、その層厚をスペーサによって規定することができる。その後、ホログラム層が照射されて硬化させられる。たとえば同じくラッカまたは光学透明接着剤から成る第2の材料層を実現するために、材料がホログラム層に被着される。材料層の表面は、力の作用を受けて材料層と接触させられる対向板によって成形される。
【0026】
ここで説明した方法の利点は、光導波体の構造のために2枚のガラスが省かれる、ということである。しかも、たとえば平坦性といった鋳型の型板の特性が、その型板のところで成形されるカバー層に移される。
【0027】
両方の材料層を、薄いホログラム層を基板または他の導波体に移すための支持材料としても使用することができ、その理由は、それらの材料層を薄いホログラム層から、この層を損傷させることなく外すことができるからである。
【0028】
本発明の1つの態様によれば、第1の型板と光透過性材料の層との間に、または第2の型板と光透過性材料の層との間に、分離層が配置される。これらの型板と隣接する個々の材料層との間に、好ましくは1つまたは複数のさらなる層が挿入され、この層は、材料層を個々の型板から外しやすくするために用いられる。このことが特に有用となるのは、使用される材料が接着剤である場合であって、このような接着剤は、これと型板との間に位置するさらなる層がなければ、ある程度の手間をかけることでしか型板から外すことができない。
【0029】
本発明の1つの態様によれば、第1の型板または第2の型板は構造形成部を有する。平坦な材料層の代わりに、型板の構造形成により材料層の形状の所期の構造形成を達成することもできる。このようにすれば、ラッカ層もしくは光導波体の種々の厚さを種々の領域で実現することができる。これはたとえば、数ミリメートル範囲での凹部または隆起部である。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、虚像を生成する装置は、
画像を生成する画像生成ユニットと、
虚像を生成するためにミラーユニットに向けて画像を投影する光学ユニットと
虚像を生成するためにミラーユニットの方向に画像を投影する光学ユニットと、
射出瞳を拡開するための本発明による光導波体と
を有する。
【0031】
本発明による光導波体によって、所要スペースが低減されたヘッドアップディスプレイを実現することができる。特に有利であるのは、上下に位置する3つの単色の光導波体が必要とされる、光導波体をベースとするフルカラーヘッドアップディスプレイにおいて使用することである。
【0032】
好ましくは本発明による装置は、移動手段の操作者のために虚像を生成する目的で、移動手段において虚像を生成するために用いられる。移動手段をたとえば、自動車または航空機とすることができる。当然ながら本発明による解決手段を、別の環境においても、または別の用途のためにも、用いることができ、たとえばトラック、鉄道技術および公共近距離旅客輸送、クレーンおよび工事機械などにおいても、用いることができる。
【0033】
以下の説明ならびに添付の特許請求の範囲に基づき図面を参照することで、本発明のさらなる特徴が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】従来技術による自動車用ヘッドアップディスプレイを概略的に示す図である。
図2】2次元で拡大された光導波体を示す図である。
図3】光導波体を備えたヘッドアップディスプレイを概略的に示す図である。
図4】光導波体を備えた自動車におけるヘッドアップディスプレイを概略的に示す図である。
図5】光導波体の3つの例を示す縦断面図である。
図6】本発明による光導波体の第1の実施形態を概略的に示す図である。
図7】本発明による光導波体の第2の実施形態を概略的に示す図である。
図8図7による光導波体について製造の詳細を示す図である。
図9】本発明による光導波体のための第1の製造方法を概略的に示す図である。
図10図9による製造方法の変形実施形態を示す図である。
図11】本発明による光導波体のための第2の製造方法を概略的に示す図である。
【0035】
発明を実施するための形態
本発明の原理について理解を深めるために、以下では図面に基づき本発明の実施形態を詳しく説明する。図中、同じ構成要素または同じ働きをする構成要素に対し同じ参照符号が用いられ、それらについては必ずしも図面ごとに新たに説明しない。自明のとおり、本発明は図示されている実施形態に限定されるものではなく、ここで説明する特徴を、添付の特許請求の範囲において定義されているような本発明の保護範囲から逸脱することなく、組み合わせることもできるし、または変形することもできる。
【0036】
最初に図1図4に基づき、光導波体を備えたヘッドアップディスプレイの基本的着想について説明する。
【0037】
図1には、従来技術による自動車用ヘッドアップディスプレイの原理図が示されている。このヘッドアップディスプレイは、画像生成器1と光学ユニット2とミラーユニット3とを有する。表示素子11からビーム束SB1が発せられ、これは折り返しミラー21により湾曲ミラー22に向けて反射させられ、湾曲ミラー22はビーム束SB1をミラーユニット3の方向に反射させる。ミラーユニット3はここでは、自動車のフロントガラス31として示されている。そこからビーム束SB2は、観察者の目61の方向に達する。
【0038】
観察者は、自動車の外側でボンネット上方またはそれどころか自動車前方に位置する虚像VBを見る。光学ユニット2とミラーユニット3との共働により、虚像VBは表示素子11により表示された画像の拡大表示である。ここでは速度制限、目下の車両速度ならびにナビゲーション指示がシンボルで表示されている。矩形により示唆されたアイボックス62内に目61が位置しているかぎり、虚像のすべての要素を目61で見ることができる。目61がアイボックス62の外側に位置していると、虚像VBは観察者には部分的にしか見えず、またはまったく見えない。アイボックス62が大きくなればなるほど、観察者にとって自身のシートポジションの選択にあたり制約が少なくなる。
【0039】
湾曲ミラー22の湾曲はフロントガラス31の湾曲に整合されており、これにより画像のゆがみがアイボックス62全体にわたり安定するよう配慮される。湾曲ミラー22は、支承部221により旋回可能に支承されている。これにより湾曲ミラー22が回転可能になることで、アイボックス62をシフトさせることができるようになり、したがってアイボックス62のポジションを目61のポジションに整合させることができるようになる。折り返しミラー21の役割は、表示素子11と湾曲ミラー22との間でビーム束SB1が辿る経路が長くなるようにし、同時に光学ユニット2が結果としてコンパクトになるようにすることである。光学ユニット2は、透明なカバー23によって周囲に対し仕切られている。したがって光学ユニット2の光学素子は、たとえば車両の内部空間に存在する埃から保護されている。さらにカバー23の上には、光学シートもしくは偏光子24が設けられている。表示素子11は一般に偏光されており、ミラーユニット3は検光子のように作用する。したがって偏光子24の目的は、有効光の均等な可視性を達成するように偏光に作用を及ぼすことである。防眩素子25の役割は、カバー23の界面を介して反射させられる光を確実に吸収して、観察者の眩惑が引き起こされないようにすることである。太陽光SL以外に、他の妨害光源64の光も表示素子11に到達する可能性がある。偏光フィルタと組み合わせて、入射する太陽光SLをカットするために偏光子24を付加的に利用することもできる。
【0040】
図2には、2次元で拡大された光導波体5が立体表示で概略的に示されている。左下の領域に入射ホログラム53が示されており、これを用いることで、図示されていない画像生成ユニットから到来する光L1が光導波体5に入射される。この光導波体5において図面では右上に向かって、矢印L2に従い光が伝播する。光導波体5のこの領域には折り返しホログラム51が設けられており、これは相前後して配置された多数の半透過性ミラーと似たように作用し、Y方向に拡がりX方向に伝播する光束を生成する。このことは3つの矢印L3によって示唆されている。図面では右に向かって延びている光導波体5の部分に出射ホログラム52が設けられており、これもやはり相前後して配置された多数の半透過性ミラーと似たように作用し、矢印L4で示唆された光をZ方向で上方に向けて光導波体5から出射させる。この場合、入射した元々の光束L1が、2次元で拡大された光束L4として光導波体5から離れるように、X方向での拡がりが発生する。
【0041】
図3には、3つの光導波体5R、5G、5Bを備えたヘッドアップディスプレイが、立体表示で概略的に示されており、これらの光導波体は上下に位置するように配置されており、赤色、緑色および青色というそれぞれ1つの基本色のために設けられている。これらの光導波体が合わさって光導波体5を成している。光導波体5内に設けられているホログラム51、52、53は波長依存性であり、したがってそれぞれ1つの光導波体5R、5G、5Bが基本色のうちの1つのために用いられる。光導波体5の上方に、画像生成器1および光学ユニット2が示されている。光学ユニット2はミラー20を有しており、このミラー20によって、画像生成器1により生成され光学ユニット2により成形された光が、個々の入射ホログラム53の方向に偏向される。画像生成器1は、3つの基本色のための3つの光源14R、14G、14Bを有する。ここでわかるのは、図示されているユニット全体はその光放射面に比べて僅かな構造全高を有する、ということである。
【0042】
図4には、図1と同様に自動車におけるヘッドアップディスプレイが、ただしここでは立体表示で光導波体5と共に示されている。この図からわかるように、ミラー面523を用いて光導波体5に入射される平行なビーム束SB1を生成する画像生成器1が概略的に示唆されている。簡略化するため、光学ユニットは図示されていない。複数のミラー面522によって、それらに当射する光のそれぞれ一部がフロントガラス31すなわちミラーユニット3の方向に反射させられる。そこから光は目61の方向に反射させられる。観察者は、ボンネット上方もしくは自動車前方のさらに隔たった距離のところで虚像VBを見る。この技術の場合にも、光学系全体が1つのハウジング内に組み込まれており、このハウジングは透明なカバーによって周囲に対し仕切られている。図1のヘッドアップディスプレイにおいてすでに示したように、このカバーの上に位相子を配置することができる。
【0043】
図5には、光導波体5の3つの例が縦断面図で示されている。部分図(a)における光導波体5は、理想的に平坦な上方界面501と理想的に平坦な下方界面502とを有し、これら双方は互いに平行に配置されている。ここでわかるのは、光導波体5内を左から右に向かって伝播する平行な光束L1が、上方界面501および下方界面502の平行性および平坦性ゆえに、横断面において変化せずに平行なまま維持される、ということである。部分図(b)における光導波体5は、完全には平坦でなく互いに平行でもない、上方界面501および下方界面502を有する。したがってこの光導波体5は、光の伝播方向において変動する厚さを有する。ここでわかるのは、光束L1は少し反射した後にすでにもはや平行ではなくなっており、不均一な横断面も有する、ということである。部分図(c)における光導波体5は、部分図(b)における光導波体5よりもさらに大きく理想の形状から逸脱した上方界面501および下方界面502を有する。したがって光束L1も、理想の形状からさらに大きく逸脱している。このように光導波体内の光の伝播の品質にとって、界面501、502の平坦性は非常に重要である。
【0044】
図6には、本発明による光導波体5の第1の実施形態が示されている。この実施形態の場合、ガラスから成る基板54が用いられる。基板54上に、薄いホログラム層56が配置されている。ホログラム層56上にカバー層55が配置されており、これは硬化プロセスが施された光透過性材料から成る。この光透過性材料をたとえば、ラッカまたは光学透明接着剤とすることができる。好ましくは、この材料の屈折率は1.4以上である。必要に応じて、カバー層55は構造形成部を有することができる。
【0045】
図7には、本発明による光導波体5の第2の実施形態が示されている。この実施形態の場合には、同じく硬化プロセスが施された光透過性材料から成る基板54が用いられる。基板54上にはここでも薄いホログラム層56が配置されており、その上にカバー層55が被着されている。上述のものと同様、カバー層55は、硬化プロセスが施された光透過性材料から成る。基板54およびカバー層55のために、好ましくは同じ光透過性材料が用いられるけれども、異なる材料を用いてもよい。この実施形態の場合も、光透過性材料をラッカまたは光学透明接着剤とすることができる。好ましくは、ここでも光透過性材料の屈折率は1.4以上である。必要に応じて、基板54またはカバー層55は構造形成部を有することができる。
【0046】
図8には、図7による光導波体5について製造の詳細が示されている。この構造を製造するために、所望の表面特性を有する2つの型板70、71が用いられる。光導波体5を製造構造から取り外すために、型板70、71が互いに引き離されて、その際に光導波体5が型板70、71から外れる。
【0047】
図9には、本発明による光導波体のための第1の製造方法が概略的な形態で示されている。最初にステップS1において、第1の型板に硬化可能な光透過性材料の層を被着する。ステップS2において、この層を硬化させてカバー層を形成する。次いでステップS3において、カバー層にホログラム層を被着する。次いでステップS4において、このホログラム層に基板を被着し、ステップS5においてホログラム層56を照射して、ステップS6において硬化させる。
【0048】
図10には、本発明による光導波体のための、図9に対し変形された製造方法が概略的な形態で示されている。この有利な変形実施形態によれば、ステップS5における照射およびステップS6における硬化が、ステップS4における基板の被着の前にすでに行われる。残りのステップは、図9によるステップに相応する。
【0049】
図11には、本発明による光導波体のためのさらなる製造方法が概略的な形態で示されている。最初にステップS1において、下方の型板に硬化可能な光透過性材料の層を被着する。ステップS2において、この層を硬化させてカバー層を形成する。次いでステップS3において、カバー層にホログラム層を被着し、ステップS5においてホログラム層を照射して、ステップS6において硬化させる。その後、ステップS7において、硬化させたホログラム層に、硬化可能な光透過性材料のさらなる層を被着する。ステップS8において、第2の型板を用いて材料層を成形し、次いでステップS9において、材料層を硬化させて基板を形成する。最後にステップS10において、型板を互いに引き離して、その際に光導波体が型板から外れる。
【0050】
この方法のすべての実施形態において、型板と隣接する個々の材料層との間に、1つまたは複数のさらなる層を挿入することができ、この層は、材料層を個々の型板から外しやすくするための分離層として用いられる。
【符号の説明】
【0051】
1 画像生成器/画像生成ユニット
11 表示素子
14、14R、14G、14B 光源
2 光学ユニット
20 ミラー
21 折り返しミラー
22 湾曲ミラー
221 支承部
23 透明なカバー
24 光学シート/偏光子
25 防眩素子
3 ミラーユニット
31 フロントガラス
5 光導波体
501 上方界面
502 下方界面
51 折り返しホログラム
52 出射ホログラム
521 出射領域
522 ミラー面
523 ミラー面
53 入射ホログラム
531 入射領域
54 基板
55 カバー層
56 ホログラム層
61 目/観察者
62 アイボックス
64 妨害光源
70 第1の型板
71 第2の型板
L1〜L4 光
S1 第1の型板に材料層を被着する
S2 材料層を硬化させてカバー層を形成する
S3 カバー層にホログラム層を被着する
S4 ホログラム層に基板を被着する
S5 ホログラム層を照射する
S6 ホログラム層を硬化させる
S7 ホログラム層に材料層を被着する
S8 材料層を成形する
S9 材料層を硬化させて基板を形成する
S10 型板を互いに引き離す
SB1、SB2 ビーム束
SL 太陽光
VB 虚像
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】