(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-528682(P2021-528682A)
(43)【公表日】2021年10月21日
(54)【発明の名称】表示装置のための光導波体
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20210924BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20210924BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20210924BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20210924BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20210924BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20210924BHJP
【FI】
G02F1/01 D
G02B27/01
G02F1/01 B
G02B6/00 301
G02F1/13 505
G02F1/1334
B60K35/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-569821(P2020-569821)
(86)(22)【出願日】2019年6月13日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月14日
(86)【国際出願番号】EP2019065511
(87)【国際公開番号】WO2019238826
(87)【国際公開日】20191219
(31)【優先権主張番号】102018209638.4
(32)【優先日】2018年6月15日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トアステン アレクサンダー ケアン
【テーマコード(参考)】
2H038
2H088
2H189
2H199
2K102
3D344
【Fターム(参考)】
2H038AA41
2H038BA06
2H088EA48
2H088GA10
2H088JA03
2H189AA04
2H189CA08
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2H199DA26
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2K102EB20
3D344AA19
3D344AA21
3D344AA24
3D344AC25
(57)【要約】
本発明は、表示装置のための光導波体(5)およびかかる光導波体の制御方法に関する。光導波体(5)は、スイッチング可能な入射ホログラム(53)と、スイッチング可能な入射ホログラム(53)をスイッチングする電極とを有する。この電極は、ピクセルマトリックス(71)を有する電極アレイ(70)として構成されている。ピクセルマトリックス(71)のピクセル(72)を、個別にスイッチングすることができる。この目的で、ピクセル(72)を電圧源(73)と接続することができる。ピクセル(72)の制御は、制御ユニット(74)によって行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング可能な入射ホログラム(53)と、
スイッチング可能な前記入射ホログラム(53)をスイッチングする電極と
を備え、
前記電極は電極アレイ(70)として構成されている、
表示装置のための光導波体(5)。
【請求項2】
前記電極アレイ(70)はピクセル構造を有しており、該ピクセル構造のピクセルは電圧源(73)を介してスイッチング可能である、請求項1記載の光導波体(5)。
【請求項3】
ピクセルのスイッチングにより当該光導波体(5)の活性層が、前記ピクセルに割り当てられた前記入射ホログラム(53)のポジションで当該光導波体(5)に光(L1)を入射可能な状態にされる、請求項2記載の光導波体(5)。
【請求項4】
当該光導波体(5)の前記活性層は液晶液滴を有する、請求項3記載の光導波体(5)。
【請求項5】
前記電極アレイ(70)は制御ユニット(74)によって制御可能である、請求項2から4までのいずれか1項記載の光導波体(5)。
【請求項6】
表示装置のための請求項1から5までのいずれか1項記載の光導波体(5)の制御方法であって、
制御ユニット(74)を用いて、前記光導波体(5)の入射ホログラム(53)の電極アレイ(70)を、前記光導波体(5)に光(L1)が入射されない領域(77)が実現されるように制御する(S3)、
光導波体(5)の制御方法。
【請求項7】
前記光導波体(5)に光(L1)が入射されない前記領域(77)は、表示すべき画像(75)のうち、表示すべき画像内容(76)が存在しない領域と一致する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
画像を生成する画像生成ユニット(1)と、
虚像(VB)を生成するためにミラーユニット(3)に向けて前記画像を投影する光学ユニット(2)と
射出瞳を拡開するために、請求項1から5までのいずれか1項記載の少なくとも1つの光導波体(5)と、
を有する、虚像(VB)を生成する装置。
【請求項9】
移動手段の操作者に対し虚像(VB)を生成するために、請求項8記載の装置を備えた移動手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置のための光導波体およびかかる光導波体の制御方法に関する。本発明はさらに、かかる光導波体を使用し虚像を生成する装置に関する。
【0002】
HUDとも呼ばれるヘッドアップディスプレイとは、表示すべき内容が観察者の視野内に挿入されることから、観察者が自身の視線を維持できる表示システムのことであると解される。かかるシステムはそれらの複雑さおよびコストゆえに、元々は主として航空分野において利用されてきたが、いまでは自動車分野においても量産でそれらのシステムが組み込まれるようになってきている。
【0003】
ヘッドアップディスプレイは一般に、画像生成器と光学ユニットとミラーユニットとから成る。画像生成器は画像を生成する。光学ユニットはその画像をミラーユニットへ導く。画像生成器は、しばしば画像生成ユニットまたはPGU(Picture Generating Unit)とも呼ばれる。ミラーユニットは、部分的に反射性である光透過性のガラス板である。したがって観察者は、画像生成器により表示された内容を虚像として見ると同時に、ガラス板背後の実世界も見る。ミラーユニットとして、自動車分野ではしばしばフロントガラスが用いられ、その湾曲形状を表示にあたり考慮する必要がある。光学ユニットとミラーユニットとの共働によって、虚像は画像生成器により生成された画像の拡大表示となる。
【0004】
観察者は、いわゆるアイボックスのポジションだけからしか、虚像を観察できない。理論上の観察窓に相応する高さおよび幅を有する領域が、アイボックスと呼ばれる。観察者の目がアイボックス内に位置しているかぎりは、虚像のすべての要素を目で見ることができる。これに対し目がアイボックスの外側に位置していると、虚像は観察者には部分的にしか見えず、またはまったく見えない。したがってアイボックスが大きくなればなるほど、観察者にとって自身のシートポジションの選択にあたり制約が少なくなる。
【0005】
慣用のヘッドアップディスプレイの虚像のサイズは、光学ユニットのサイズによって制限される。虚像を拡大するための1つのアプローチは、画像生成ユニットから到来する光を光導波体に入射させるというものである。画像情報を担持し光導波体に入射された光は、光導波体の界面で全反射させられ、そのようにして光導波体内部を案内される。これに加え、伝播方向に沿った多数のポジションでそれぞれ光の一部が出射され、その結果、画像情報が光導波体の面全体にわたり分散されて出射される。このようにして光導波体によって、射出瞳(Austrittspupille)の拡開が行われる。この場合、実効射出瞳は、画像生成システムの開口の像から合成される。
【0006】
このような背景のもとで、米国特許出願公開第2016/0124223号明細書は、虚像表示装置について記載している。この表示装置は、以下のように作用する光導波体を含む。すなわちこの光導波体は、画像生成ユニットから到来し第1の光入射面を通して入射する光を繰り返し内面反射させて、第1の光入射面から離れる第1の方向で進行させる。さらにこの光導波体は、光導波体内を案内される光の一部が、第1の方向に延在する第1の光出射面の領域を通って外部に出射するように作用する。この表示装置はさらに、当射光を回折させ、回折させられた光が光導波体に入射するように作用する、第1の光入射側回折格子と、光導波体から入射する光を回折させる第1の光出射側回折格子とを含む。
【0007】
光導波体をベースとする最新のヘッドアップディスプレイの場合には、入射および出射のために単純な格子ではなくホログラムが用いられる。この目的でたとえば、複屈折液晶層に埋め込まれたホログラムが用いられる。この液晶層は電気的にスイッチング可能である。これについての一般的な使用法は、液晶層の平面のスイッチオンおよびスイッチオフであり、その目的は、上下に配置された複数の光導波体を用いたときに、複数の色のためのシーケンシャルに動作する光源に従い入射を同期させることである。
【0008】
複屈折液晶層をベースとするスイッチング可能な体積ホログラムを、たとえば適切なモノマーと液晶材料との混合物の光重合を用いて製造することができる。このために混合物が、平行な複数のガラス板またはプラスチック基板により形成されるセル内に挿入される。次いでセル内において、2つのレーザビームの重なり合いにより干渉パターンが生成される。干渉パターンの明領域では、干渉パターンの暗領域よりも速くモノマーが重合する。次いで描画プロセス中、さらなるモノマーが明領域内に拡散し、さらなるポリマーを形成する。これと同時に、さらなる液晶が暗領域内に拡散し、そこにおいて微小液滴いわゆるLC液滴を形成する。このようにして、多数のかかる液晶液滴を有する領域と、主としてポリマーが存在している領域という形態で、相分離が生じる。次いで、交互に現れるこれらの領域によって、変調された屈折率プロフィルの形態で液晶層に格子構造が形成され、そこにおいて入射光を回折させることができる。
【0009】
液晶層の上に電界を印加可能にし、それによって回折特性に作用を及ぼす目的で、セルのガラス板もしくは基板のところに、たとえばITO層(ITO:Indium Tin Oxide;インジウムスズ酸化物)の形態で、透明電極を配置することができる。この場合、液晶液滴における液晶の配向が変化し、それによって縞の屈折率変調が低減され、適切な電界もしくは適切な材料であれば、液晶とポリマーとの間の屈折率整合により、それどころか完全に消滅する。その結果、入射光の偏向が行われなくなる。この場合、液晶液滴のサイズが小さいことから、短い切替時間を達成することができる。ホログラフの用途のために液晶液滴を使用することに関するその他の詳細な点について、文献[1]を参照されたい。
【0010】
光の案内が特別な形態であることから、光導波体をベースとする既存のシステムは、それらのコントラスト特性に関して最適ではない。特に、散乱光として不所望な角度で画像生成ユニットから到来して入射される光が、光導波体内を案内され、その後、制御されずに不所望な角度範囲で出射される、という事例が発生する場合がある。
【0011】
本発明の課題は、コントラスト特性を向上させることのできる、改良された光導波体およびかかる光導波体の制御方法を提供することにある。
【0012】
この課題は、請求項1の特徴を備えた光導波体および請求項6の特徴を備えた方法によって解決される。従属請求項には本発明の好ましい実施形態が記載されている。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、表示装置のための光導波体は、
スイッチング可能な入射ホログラムと、
スイッチング可能な入射ホログラムをスイッチングする電極と
を有し、この場合、電極は電極アレイとして構成されている。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、表示装置のための光導波体の制御方法において、制御ユニットを用いて、光導波体の入射ホログラムの電極アレイを、光導波体に光が入射されない領域が実現されるように制御する。
【0015】
本発明による解決手段によれば、スイッチング可能な入射ホログラムを、単純な電極ではなく、入射ホログラムの部分領域に光が入射するのを阻止する電極アレイと組み合わせて用いることができる。それらの不活性領域では特に、光導波体に散乱光が入射する可能性もないことから、全体として入射される散乱光の量が最小限に抑えられる。この場合、表示装置による画像再生が妨害されないように、不活性領域を規定することができる。電極アレイを制御するために、好ましくは制御ユニットが設けられている。
【0016】
本発明の1つの態様によれば、電極アレイはピクセル構造を有しており、このピクセル構造のピクセルは電圧源を介してスイッチング可能である。このピクセル構造によって、光導波体に光が入射されない領域を、ピクセル分解能の範囲内で極めて精密に規定することができる。
【0017】
本発明の1つの態様によれば、ピクセルのスイッチングにより光導波体の活性層は、このピクセルに割り当てられた入射ホログラムのポジションで光導波体に光を入射可能な状態にされる。活性層はすでに設けられていることが多いので、この層を利用することによりごく僅かな付加的な構成要素だけしか用いずに、つまりは低コストで、本発明による解決手段を実装することができる。その際に2つのバリエーションを実現することができる。第1のバリエーションでは、電圧が加わっていない場所に光を入射させることができる。第2のバリエーションでは、光を入射させるために電圧を加える必要がある。
【0018】
本発明の1つの態様によれば、光導波体の活性層は液晶液滴を有する。かかる液晶液滴は、ヘッドアップディスプレイ用の光導波体において使用するために目下すでに用いられ、したがって変更のためにコストを大幅に高めることなく、本発明による解決手段を補足的に実装することができる。しかも液晶液滴を、電圧の印加によって極めて適切に制御することができる。
【0019】
本発明の1つの態様によれば、光導波体に光が入射されない領域は、表示すべき画像のうち、表示すべき画像内容が存在しない領域と一致する。それらの領域にはいずれにせよ画像内容の表示のために光を入射させる必要がないことから、それらの不活性領域は画像表示に対し妨害作用を及ぼさない。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、虚像を生成する装置は、
画像を生成する画像生成ユニットと、
虚像を生成するためにミラーユニットに向けて画像を投影する光学ユニットと
を有しており、この場合、光学ユニットは、少なくとも1つの本発明による光導波体を有する。
【0021】
本発明による光導波体によって、コントラスト特性が改善されたヘッドアップディスプレイを実現することができる。したがって特に有利であるのは、高いコントラストを必要とする環境において利用されるヘッドアップディスプレイにおいて使用することである。このことはたとえば、自動車において使用する場合に該当する。
【0022】
好ましくは本発明による装置は、移動手段の操作者のために虚像を生成する目的で、移動手段において虚像を生成するために用いられる。移動手段をたとえば、自動車または航空機とすることができる。当然ながら本発明による解決手段を、別の環境においても、または別の用途のためにも、用いることができ、たとえばトラック、鉄道技術および公共近距離旅客輸送、クレーンおよび工事機械などにおいても、用いることができる。
【0023】
以下の説明ならびに添付の特許請求の範囲に基づき図面を参照することで、本発明のさらなる特徴が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来技術による自動車用ヘッドアップディスプレイを概略的に示す図である。
【
図2】2次元で拡大された光導波体を示す図である。
【
図3】光導波体を備えたヘッドアップディスプレイを概略的に示す図である。
【
図4】光導波体を備えた自動車におけるヘッドアップディスプレイを概略的に示す図である。
【
図5】電極アレイを備えた本発明による光導波体を示す図である。
【
図6】表示すべき画像を電極アレイのピクセルマトリックスに関連させて概略的に示す図である。
【
図7】電極アレイのピクセルマトリックスによって実現された不活性領域と活性領域とを概略的に示す図である。
【
図8】
図5による光導波体の制御方法を概略的に示す図である。
【0025】
発明を実施するための形態
本発明の原理について理解を深めるために、以下では図面に基づき本発明の実施形態を詳しく説明する。図中、同じ構成要素または同じ働きをする構成要素に対し同じ参照符号が用いられ、それらについては必ずしも図面ごとに新たに説明しない。自明のとおり、本発明は図示されている実施形態に限定されるものではなく、ここで説明する特徴を、添付の特許請求の範囲において定義されているような本発明の保護範囲から逸脱することなく、組み合わせることもできるし、または変形することもできる。
【0026】
最初に
図1〜
図4に基づき、光導波体を備えたヘッドアップディスプレイの基本的着想について説明する。
【0027】
図1には、従来技術による自動車用ヘッドアップディスプレイの原理図が示されている。このヘッドアップディスプレイは、画像生成器1と光学ユニット2とミラーユニット3とを有する。表示素子11からビーム束SB1が発せられ、これは折り返しミラー21により湾曲ミラー22に向けて反射させられ、湾曲ミラー22はビーム束SB1をミラーユニット3の方向に反射させる。ミラーユニット3はここでは、自動車のフロントガラス31として示されている。そこからビーム束SB2は、観察者の目61の方向に達する。
【0028】
観察者は、自動車の外側でボンネット上方またはそれどころか自動車前方に位置する虚像VBを見る。光学ユニット2とミラーユニット3との共働により、虚像VBは表示素子11により表示された画像の拡大表示である。ここでは速度制限、目下の車両速度ならびにナビゲーション指示がシンボルで表示されている。矩形により示唆されたアイボックス62内に目61が位置しているかぎり、虚像のすべての要素を目61で見ることができる。目61がアイボックス62の外側に位置していると、虚像VBは観察者には部分的にしか見えず、またはまったく見えない。アイボックス62が大きくなればなるほど、観察者にとって自身のシートポジションの選択にあたり制約が少なくなる。
【0029】
湾曲ミラー22の湾曲はフロントガラス31の湾曲に整合されており、これにより画像のゆがみがアイボックス62全体にわたり安定するよう配慮される。湾曲ミラー22は、支承部221により旋回可能に支承されている。これにより湾曲ミラー22が回転可能になることで、アイボックス62をシフトさせることができるようになり、したがってアイボックス62のポジションを目61のポジションに整合させることができるようになる。折り返しミラー21の役割は、表示素子11と湾曲ミラー22との間でビーム束SB1が辿る経路が長くなるようにし、同時に光学ユニット2が結果としてコンパクトになるようにすることである。光学ユニット2は、透明なカバー23によって周囲に対し仕切られている。したがって光学ユニット2の光学素子は、たとえば車両の内部空間に存在する埃から保護されている。さらにカバー23の上には、光学シートもしくは偏光子24が設けられている。表示素子11は一般に偏光されており、ミラーユニット3は検光子のように作用する。したがって偏光子24の目的は、有効光の均等な可視性を達成するように偏光に作用を及ぼすことである。防眩素子25の役割は、カバー23の界面を介して反射させられる光を確実に吸収して、観察者の眩惑が引き起こされないようにすることである。太陽光SL以外に、他の妨害光源64の光も表示素子11に到達する可能性がある。偏光フィルタと組み合わせて、入射する太陽光SLをカットするために偏光子24を付加的に利用することもできる。
【0030】
図2には、2次元で拡大された光導波体5が立体表示で概略的に示されている。左下の領域に入射ホログラム53が示されており、これを用いることで、図示されていない画像生成ユニットから到来する光L1が光導波体5に入射される。この光導波体5において図面では右上に向かって、矢印L2に従い光が伝播する。光導波体5のこの領域には折り返しホログラム51が設けられており、これは相前後して配置された多数の半透過性ミラーと似たように作用し、Y方向に拡がりX方向に伝播する光束を生成する。このことは3つの矢印L3によって示唆されている。図面では右に向かって延びている光導波体5の部分に出射ホログラム52が設けられており、これもやはり相前後して配置された多数の半透過性ミラーと似たように作用し、矢印L4で示唆された光をZ方向で上方に向けて光導波体5から出射させる。この場合、入射した元々の光束L1が、2次元で拡大された光束L4として光導波体5から離れるように、X方向での拡がりが発生する。
【0031】
図3には、3つの光導波体5R、5G、5Bを備えたヘッドアップディスプレイが、立体表示で概略的に示されており、これらの光導波体は上下に位置するように配置されており、赤色、緑色および青色というそれぞれ1つの基本色のために設けられている。これらの光導波体が合わさって光導波体5を成している。光導波体5内に設けられているホログラム51、52、53は波長依存性であり、したがってそれぞれ1つの光導波体5R、5G、5Bが基本色のうちの1つのために用いられる。光導波体5の上方に、画像生成器1および光学ユニット2が示されている。光学ユニット2はミラー20を有しており、このミラー20によって、画像生成器1により生成され光学ユニット2により成形された光が、個々の入射ホログラム53の方向に偏向される。画像生成器1は、3つの基本色のための3つの光源14R、14G、14Bを有する。ここでわかるのは、図示されているユニット全体はその光放射面に比べて僅かな構造全高を有する、ということである。
【0032】
図4には、
図1と同様に自動車におけるヘッドアップディスプレイが、ただしここでは立体表示で光導波体5と共に示されている。この図からわかるように、ミラー面523を用いて光導波体5に入射される平行なビーム束SB1を生成する画像生成器1が概略的に示唆されている。簡略化するため、光学ユニットは図示されていない。複数のミラー面522によって、それらに当射する光のそれぞれ一部がフロントガラス31すなわちミラーユニット3の方向に反射させられる。そこから光は目61の方向に反射させられる。観察者は、ボンネット上方もしくは自動車前方のさらに隔たった距離のところで虚像VBを見る。この技術の場合にも、光学系全体が1つのハウジング内に組み込まれており、このハウジングは透明なカバーによって周囲に対し仕切られている。
図1のヘッドアップディスプレイにおいてすでに示したように、このカバーの上に位相子を配置することができる。
【0033】
図5には、入射ホログラム53、折り返しホログラム51および出射ホログラム52を備えた本発明による光導波体5が示されている。入射ホログラム53には電極アレイ70が設けられている。電極アレイ70はピクセルマトリックス71を有しており、たとえば構造形成されたITO層の形態でトランジスタと共にガラス基板上において実現することができる。ピクセルマトリックス71のピクセル72を、個別にスイッチングすることができる。この目的で、ピクセル72が光導波体5の入射ホログラム53に対し電圧が発生するように、それらのピクセル72を電圧源73と接続することができる。ピクセル72の制御は、制御ユニット74によって行われる。ピクセル72のスイッチングにより、光導波体5の活性層内に存在する入射ホログラム53の液晶液滴は、入射光L1を光導波体5の活性部分に入射させることができるようになり、つまり入射光L1を偏向または回折させることができるようになる。その際に2つのバリエーションを実現することができる。第1のバリエーションでは、電圧が加わっていない場所に光L1を入射させることができる。第2のバリエーションでは、光L1を入射させるために電圧を加える必要がある。
【0034】
図6には、表示すべき画像75が電極アレイのピクセルマトリックス71に関連させて概略的に示されている。ここで明確にわかるのは、表示すべき画像75のうち比較的僅かな部分のみに、実際にやはり表示すべき画像内容76が存在している、ということである。図示の実施例の場合にはこれは、速度情報「120」およびそれに属する度量衡単位「km/h」ならびに警告標識である。
【0035】
図7には、電極アレイのピクセルマトリックス71によって実現された不活性領域77と活性領域78とが概略的に示されている。ピクセルマトリックス71の個々のピクセル72において電圧を加えるまたは取り除くことによって、不活性領域77が規定され、この領域では光が光導波体に入射されない。同様に活性領域78が実現され、この領域では光が光導波体に入射される。その際、表示すべき画像75の表示すべき画像内容76への活性領域78の空間的割り当てが実現されるように、ピクセルマトリックス71のピクセル72がスイッチングされる。活性領域78においてしか散乱光が光導波体に入射する可能性はないので、この措置により全体として入射される散乱光の量が低減される。
図7の場合、不活性領域78もしくは活性領域の境界は、ピクセルマトリックス71のピクセル分解能の範囲内で、表示すべき画像内容76の輪郭に正確に追従する。ただしこれらの境界が、境界ボックスとも呼ばれる境界枠によって規定されるようにすることも考えられる。それらの境界枠は、表示すべき個々の画像内容76、表示すべき画像内容76のグループ、または表示すべき画像内容76全体を取り囲むことができる。
【0036】
図8には、
図5による光導波体の制御方法が概略的に示されている。この方法をたとえば、
図5に示した制御ユニットによって実施することができる。ただし別の選択肢として、画像生成ユニットのプロセッサもこの目的で使用することができ、その場合にはこのプロセッサは相応の指示を制御ユニットに送出する。第1のステップにおいて、表示すべき画像を受信する(S1)。次いで表示すべき画像のうち、表示すべき画像内容が存在していない領域を特定する(S2)。これに続いて、光導波体の電極アレイを特定された領域に従ってスイッチングし(S3)、つまり電極アレイのピクセルマトリックスのピクセルを所期のように活性化または不活性化する。
【0037】
参考文献
[1]Y. J. Liu等著:"Holographic Polymer-Dispersed Liquid Crystals: Materials, Formation, and Applications", Advances in OptoElectronics, Volume 2008, Article ID 684349
【符号の説明】
【0038】
1 画像生成器/画像生成ユニット
11 表示素子
14、14R、14G、14B 光源
2 光学ユニット
20 ミラー
21 折り返しミラー
22 湾曲ミラー
221 支承部
23 透明なカバー
24 光学シート/偏光子
25 防眩素子
3 ミラーユニット
31 フロントガラス
5 光導波体
51 折り返しホログラム
52 出射ホログラム
522 ミラー面
523 ミラー面
53 入射ホログラム
54 基板
55 カバー層
56 ホログラム層
61 目/観察者
62 アイボックス
64 妨害光源
70 電極アレイ
71 ピクセルマトリックス
72 ピクセル
73 電圧源
74 制御ユニット
75 表示すべき画像
76 表示すべき画像内容
77 不活性領域
78 活性領域
L1〜L4 光
S1 表示すべき画像を受信する
S2 表示すべき画像内容が存在しない領域を特定する
S3 特定の領域に従い電極アレイをスイッチングする
SB1、SB2 ビーム束
SL 太陽光
VB 虚像
【手続補正書】
【提出日】2020年12月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置のための光導波体(5)の制御方法であって、
制御ユニット(74)を用いて、前記光導波体(5)のスイッチング可能な入射ホログラム(53)をスイッチングする電極アレイ(70)を、前記光導波体(5)に光(L1)が入射されない領域(77)が実現されるように制御し(S3)、
前記光導波体(5)に光(L1)が入射されない前記領域(77)は、表示すべき画像(75)のうち、画像生成ユニット(1)により生成される画像内容(76)が存在しない領域と一致する、
表示装置のための光導波体(5)の制御方法。
【請求項2】
前記電極アレイ(70)はピクセル構造を有しており、該ピクセル構造のピクセルを、電圧源(73)を介してスイッチングする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ピクセルのスイッチングにより前記光導波体(5)の活性層を、前記ピクセルに割り当てられた前記入射ホログラム(53)のポジションで前記光導波体(5)に光(L1)を入射可能な状態にされる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記光導波体(5)の前記活性層は液晶液滴を有する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
虚像(VB)を生成する装置であって、
画像を生成する画像生成ユニット(1)と、
前記虚像(VB)を生成するためにミラーユニット(3)上に前記画像を投影する光学ユニット(2)と、
スイッチング可能な入射ホログラム(53)と、スイッチング可能な該入射ホログラム(53)をスイッチングする電極アレイ(70)とを備え、射出瞳を拡開する光導波体(5)と、
前記光導波体(5)に光(L1)が入射されない領域(77)が実現されるよう、前記電極アレイ(70)を制御する(S3)ように構成された制御ユニット(74)と
を備え、
前記光導波体(5)に光(L1)が入射されない前記領域(77)は、表示すべき画像(75)のうち、画像生成ユニット(1)により生成される画像内容(76)が存在しない領域と一致する、
虚像(VB)を生成する装置。
【請求項6】
前記電極アレイ(70)はピクセル構造を有しており、該ピクセル構造のピクセルは電圧源(73)を介してスイッチング可能である、請求項5記載の装置。
【請求項7】
ピクセルのスイッチングにより前記光導波体(5)の活性層は、前記ピクセルに割り当てられた前記入射ホログラム(53)のポジションで前記光導波体(5)に光(L1)を入射可能な状態にされる、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記光導波体(5)の前記活性層は液晶液滴を有する、請求項7記載の装置。
【請求項9】
移動手段の操作者に対し虚像(VB)を生成するために請求項5から8までのいずれか1項記載の装置を備えた移動手段。
【国際調査報告】