(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本発明は、低エネルギー走査型電子顕微鏡システムを提供する。前記低エネルギー走査型電子顕微鏡システムは、電子源と、電子加速構造と、複合対物レンズと、偏向装置と、検知装置と、を備え、前記電子源は、電子ビームを生成することに用いられ、前記電子加速構造は、前記電子ビームの運動速度を向上させることに用いられ、前記複合対物レンズは、前記電子加速構造により加速された電子ビームを集束することに用いられ、前記偏向装置は、前記電子ビームの運動方向を変更することに用いられ、前記検知装置は、電子ビームが試料に作用することで発生した二次電子及び反射電子を受信するための第1サブ検知装置と、前記反射電子を受信するための第2サブ検知装置と、前記二次電子及び前記反射電子の運動方向を変更するための制御装置と、を含み、前記電気レンズは、第2サブ検知装置と、試料台と、制御電極と、を含む。
低エネルギー走査型電子顕微鏡システムであって、前記低エネルギー走査型電子顕微鏡システムは、第1電子源と、電子加速構造と、第1偏向装置と、第1検知装置と、磁気レンズ及び電気レンズからなる複合対物レンズと、を備え、
前記第1電子源は、電子ビームを生成することに用いられ、
前記電子加速構造は、前記電子ビームの運動速度を向上させることに用いられ、
前記複合対物レンズは、前記電子加速構造により加速された電子ビームを集束することに用いられ、
前記第1偏向装置は、前記磁気レンズの内壁と前記電子ビームの光軸との間に位置し、前記電子加速構造により加速された電子ビームの運動方向を変更することに用いられ、
前記第1検知装置は、電子ビームが試料に作用することで発生した二次電子及び反射電子を受信するための第1サブ検知装置と、前記反射電子を受信するための第2サブ検知装置と、前記二次電子及び前記反射電子の運動方向を変更するための制御装置と、を含み、
前記電気レンズは、第2サブ検知装置と、試料台と、制御電極と、を含み、前記電子ビームの運動速度を小さくして、前記二次電子及び前記反射電子の運動方向を変更することに用いられることを特徴とする、低エネルギー走査型電子顕微鏡システム。
前記第2サブ検知装置は、グランド電位にあり、前記試料台の電圧値は、V2であり、V1<V2<−5kVであり、前記制御電極の電圧値V3は、調整可能であり、V3≦0kVであることを特徴とする
請求項1に記載の低エネルギー走査型電子顕微鏡システム。
前記第2サブ検知装置の電圧値は、V4であり、前記試料台の電圧値は、V2であり、V1<V2≦0kVであり、前記制御電極の電圧値V3は、調整可能であり、V3≦V4であることを特徴とする
請求項1に記載の低エネルギー走査型電子顕微鏡システム。
走査型電子顕微鏡対物レンズシステムであって、前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムは、磁気レンズと、第2偏向装置と、偏向制御電極と、検知待ち試料と、第2検知装置と、備え、
前記磁気レンズの磁極片方向は、前記検知待ち試料に向かい、
前記第2偏向装置は、前記磁気レンズ内部に位置し、少なくとも1つのサブ偏向器を含み、
前記偏向制御電極は、前記第2検知装置と前記検知待ち試料との間に位置し、前記検知待ち試料に作用する初期電子ビームの方向、及び前記初期電子ビームが前記検知待ち試料に作用することで生成した信号電子の方向を変更し、
前記第2検知装置は、前記信号電子における反射電子を受信するための第1サブ検知器と、前記信号電子における二次電子を受信するための第2サブ検知器と、を含むことを特徴とする、走査型電子顕微鏡対物レンズシステム。
試料検知方法であって、走査型電子顕微鏡対物レンズシステムに適用され、前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムにおける、反射電子を受信するための第1サブ検知器、偏向制御電極及び検知待ち試料は、減速静電レンズフィールドを構成し、前記減速静電レンズフィールドと前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムにおける磁気レンズで発生した磁界は、前記検知待ち試料の近傍の領域で重なり合い、複合型イマージョン減速レンズフィールドを形成し、前記方法は、
初期電子ビームを複合型イマージョン減速レンズフィールドによる作用下で、前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムにおける第2偏向装置及び偏向制御電極により偏向させた後、前記検知待ち試料の表面に入射して信号電子を生成することと、
前記信号電子を、前記第1サブ検知器及び前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムにおける第2サブ検知器により受信するように、前記偏向制御電極の電圧値を制御することと、を含むを特徴とする、試料検知方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに鑑み、本発明の実施例は、低エネルギー走査型電子顕微鏡システムの高分解能を保持すると共に、信号電子の収集効率を向上させ、受信した信号電子のカテゴリを柔軟に制御することができる、低エネルギー走査型電子顕微鏡システム、走査型電子顕微鏡システム及び試料検知方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例は、低エネルギー走査型電子顕微鏡システムを提供する。前記低エネルギー走査型電子顕微鏡システムは、第1電子源と、電子加速構造と、第1偏向装置と、第1検知装置と、磁気レンズ及び電気レンズからなる複合対物レンズと、を備え、
前記第1電子源は、電子ビームを生成することに用いられ、
前記電子加速構造は、前記電子ビームの運動速度を向上させることに用いられ、
前記複合対物レンズは、前記電子加速構造により加速された電子ビームを集束することに用いられ、
前記第1偏向装置は、前記磁気レンズの内壁と前記電子ビームの光軸との間に位置し、前記電子加速構造により加速された電子ビームの運動方向を変更することに用いられ、
前記第1検知装置は、電子ビームが試料に作用することで発生した二次電子及び反射電子を受信するための第1サブ検知装置と、前記反射電子を受信するための第2サブ検知装置と、前記二次電子及び前記反射電子の運動方向を変更するための制御装置と、を含み、
前記電気レンズは、第2サブ検知装置と、試料台と、制御電極と、を含み、前記電子ビームの運動速度を小さくして、前記二次電子及び前記反射電子の運動方向を変更することに用いられる。
【0008】
上記技術的解決手段において、前記電子加速構造は、陽極である。
【0009】
上記技術的解決手段において、前記電子加速構造は、陽極と、高圧管と、を含み、前記高圧管はそれぞれ前記陽極、前記第2サブ検知装置に接続される。
【0010】
上記技術的解決手段において、前記電子加速構造により加速された電子ビームの特徴を変更することに用いられる電子ビーム調整装置を更に備える。
【0011】
上記技術的解決手段において、前記電子ビーム調整装置は、集束装置及び/又は絞りを含み、
前記集束装置は、電子加速構造により加速された電子ビームを集束することに用いられ、
前記絞りは、電子ビームをフィルタリングすることに用いられ、前記絞りの中心は、前記光軸に位置する。
【0012】
上記技術的解決手段において、前記第1サブ検知装置は、前記陽極と前記磁気レンズとの間に位置し、前記磁気レンズの方向に近接し、
前記第2サブ検知装置は、前記磁気レンズの下方に位置し、前記磁気レンズの磁極片に近接する。
【0013】
上記技術的解決手段において、前記第1サブ検知装置は、前記陽極と前記磁気レンズとの間に位置し、前記磁気レンズの方向に近接し、
前記第2サブ検知装置は、前記磁気レンズの下方に位置し、前記高圧管の下端面に接続される。
【0014】
上記技術的解決手段において、前記制御装置は、多極電気偏向器と、多極磁気偏向器と、を含む。
【0015】
上記技術的解決手段において、前記磁気レンズは、電流コイルにより励起されたイマージョン型磁気レンズであり、前記磁気レンズの磁極片の開口方向は、前記試料に向かう。
【0016】
上記技術的解決手段において、前記第1サブ検知装置の中心孔の直径は、1ミリメートル以下である。
【0017】
上記技術的解決手段において、前記第2サブ検知装置の中心孔の直径は、前記制御電極の中心孔の直径未満である。
【0018】
上記技術的解決手段において、前記第1電子源の電圧値は、V1<−5kVであり、前記陽極の電圧値は、ゼロである。
【0019】
上記技術的解決手段において、前記第2サブ検知装置は、グランド電位にあり、前記試料台の電圧値は、V2であり、V1<V2<−5kVであり、前記制御電極の電圧値V3は、調整可能であり、V3≦0kVである。
【0020】
上記技術的解決手段において、前記第1電子源の電圧値V1<0kVであり、前記陽極の電圧値と前記高圧管の電圧値はいずれもV4であり、V4>+5kVである。
【0021】
上記技術的解決手段において、前記第2サブ検知装置の電圧値は、V4であり、前記試料台の電圧値は、V2であり、V1<V2≦0kVであり、前記制御電極の電圧値V3は、調整可能であり、V3≦V4である。
【0022】
上記技術的解決手段において、前記制御電極の電圧値V3が、前記電気レンズを構成する第2サブ検知装置の電圧値より大きくて前記電気レンズを構成する試料台の電圧値V2より小さい場合、
前記第1サブ検知装置は具体的には、二次電子及び出射方向の、試料表面に対する角度が第1閾値より大きい反射電子を受信することに用いられ、
前記第2サブ検知装置は具体的には、出射方向の、試料表面に対する角度が第1閾値未満である反射電子を受信することに用いられる。
【0023】
上記技術的解決手段において、前記制御電気レンズにおける制御電極の電圧値V3が前記試料台の電圧値V2より少なくとも50V小さい場合、
前記第1サブ検知装置は具体的には、出射方向の、試料表面に対する角度が第1閾値より大きい反射電子のみを受信することに用いられ、
前記第2サブ検知装置は具体的には、出射方向の、試料表面に対する角度が第1閾値未満である反射電子のみを受信することに用いられる。
【0024】
上記技術的解決手段において、
前記第1サブ検知装置及び/又は第2サブ検知装置に接続され、前記第1サブ検知装置が受信した二次電子及び/又は反射電子に基づいて生成した第1信号を処理することに用いられ、
及び/又は、前記第2サブ検知装置が受信した反射電子に基づいて生成した第2信号を処理することに用いられる信号処理装置を更に備える。
【0025】
上記技術的解決手段において、前記信号処理装置は、
前記第1信号及び/又は前記第2信号を増幅させることに用いられる信号増幅サブ装置と、
増幅した第1信号及び/又は第2信号を処理することに用いられる信号処理サブ装置と、を含む。
【0026】
上記技術的解決手段において、前記信号処理装置は、
前記信号処理サブ装置により処理された第1信号及び前記信号処理サブ装置により処理された第2信号に対して合成処理を行い、複合画像を形成することに用いられる信号合成サブ装置を更に含む。
【0027】
本発明の実施例は、試料検知方法を更に提供する。前記方法は、第1電子源から発生した電子ビームを電子加速構造により加速した後、運動速度を増加させることと、
前記電子加速構造により加速された電子ビームが、複合対物レンズにより集束され、電気レンズにより減速され、第1偏向装置により前記電子ビームの運動方向が変更された後、試料に作用し、二次電子及び反射電子を生成し、前記複合対物レンズは、電気レンズと、磁気レンズと、を含む、ことと、
第1検知装置により受信するように、前記電気レンズ及び制御装置による作用下で前記二次電子及び前記反射電子に対して運動方向変更を行うことと、を含む。
上記技術的解決手段において、第1検知装置により受信するように、前記電気レンズ及び制御装置による作用下で前記二次電子及び前記反射電子に対して運動方向変更を行うことは、
前記制御電気レンズにおける制御電極の電圧値V3を、前記電気レンズを構成する第2サブ検知装置の電圧値より大きくて、前記電気レンズを構成する試料台の電圧値V2小さいように制御することと、
前記制御装置で発生した電界及び磁界による作用下で、二次電子及び出射方向の、試料表面に対する角度が第1閾値より大きい反射電子を、第1検知装置における第1サブ検知装置により受信することと、
出射方向の、試料表面に対する角度が第1閾値未満である反射電子を、第1検知装置における第2サブ検知装置により受信することと、を含む。
【0028】
上記技術的解決手段において、前記制御電気レンズにおける制御電極の電圧値V3が前記試料台の電圧値V2より少なくとも50V小さい場合、
前記制御装置で発生した電界及び磁界による作用下で、出射方向の、試料表面に対する角度が第1閾値より大きい反射電子は全て、第1検知装置における第1サブ検知装置により受信され、
出射方向の、試料表面に対する角度が第1閾値未満である反射電子は全て、第1検知装置における第2サブ検知装置により受信され、
二次電子が前記試料表面まで運動し、前記第1サブ検知装置及び前記第2サブ検知装置により受信されない。
【0029】
上記技術的解決手段において、前記方法は、
前記第1サブ検知装置が受信した二次電子及び/又は反射電子に基づいて生成した第1信号を処理すること、
及び/又は、前記第2サブ検知装置が受信した反射電子に基づいて生成した第2信号を処理すること、を更に含む。
【0030】
上記技術的解決手段において、前記方法は、
前記第1信号及び/又は前記第2信号を増幅することと、
増幅した第1信号及び/又は第2信号を処理した後に出力し、第1画像及び/又は第2画像を形成することと、を更に含む。
【0031】
上記技術的解決手段において、前記第1画像及び前記第2画像に対して合成処理を行い、複合画像を形成する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の実施例において、第1電子源、電子加速構造、第2サブ検知装置、制御電極及び試料台の電圧を制御することで、電子ビームが試料に到着したドロップポイントエネルギーを5keV未満にする。電気レンズ及び磁気レンズからなる複合対物レンズにより、走査型電子顕微鏡システムの分解能を向上させる。電気レンズと制御装置との協働作用により、信号電子の収集効率を100%に近くするか又は到達させる。また、制御電極の電圧値を調整することで、受信した信号電子のカテゴリ及び特定の角度で出射した反射電子を柔軟に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本発明を更に詳しく説明する。ここで記述される具体的な実施例は、本発明を解釈するためのものだけであり、本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0035】
本発明を更に詳しく説明する前に、本発明の実施例に係わる名詞及び用語を説明する。本発明の実施例に係わる名詞及び用語は、以下のように解釈される。
【0036】
1)空間電荷効果は、電子光学システムにおいて、電子間のクーロン作用力による電子ビームの「膨張」により、電子ビームイメージングシステムの収差を増加させるという現象である。特に、電子ビームで交差ビームスポットが生成した時、交差ビームスポットでの電子の密度が極めて大きく、電子間の相互距離が極めて少ない。クーロン力が電子間の距離の二乗に逆比例するため、大きなクーロン力は、電子ビームの集束スポットの拡大を引き起こす。
【0037】
2)初期電子ビームは、第1電子源で生成されて試料間に到着した電子ビームである。
【0038】
3)信号電子は、電子ビームが試料に作用することで生成した電子であり、二次電子及び反射電子を含む。
【0039】
4)光軸は、電子ビームの光学中心軸である。
【0040】
5)発射角度は、信号電子の出射方向と試料表面との挟角を指す。
【0041】
本発明の図面において、信号電子は、磁界による作用下で光軸に沿って回転する運動軌跡は、図示されておらず、光軸の所在する子午面での信号電子の軌跡のみが図示されていることに留意されたい。
【0042】
関連技術において、低ドロップポイントエネルギー条件で、単一の磁気レンズ又は単一の電気レンズの収差は明らかに増加する。電気レンズが磁気レンズの収差を部分的に補償できるため、走査型電子顕微鏡を提供し、電気レンズ及び磁気レンズからなる複合対物レンズを用いて、収差を減少させ、更に、走査型電子顕微鏡の分解能を向上させる。任意選択的な実施例において、走査型電子顕微鏡は、高圧管構造を有する。対物レンズにおける高圧管は、電気レンズの1つの電極とする。第1電子源から出射した初期電子ビームが高圧管中で高い速度を保持し、試料に近づく時、高圧管及び試料からなる電気レンズによる影響を受けて速度が減少する。高圧管と試料との間のもう1つの選択可能な電極は、電気レンズの中間極とする。電気レンズで発生した電界及び磁気レンズで発生した磁界は、重なり合うか又は接続されるため、低ドロップポイントエネルギーで、電気レンズ及び磁気レンズからなる複合対物レンズは、走査型電子顕微鏡の分解能を向上させ、走査型電子顕微鏡の性能を向上させる。
【0043】
関連技術において、走査型電子顕微鏡の分解能を向上させるために、走査型電子顕微鏡を提供する。磁気レンズの磁極片を電気レンズの1つの電極として用い、試料に負電圧を印加し、試料と磁気レンズとの間で減速電界を生成し、第1電子源から出射した初期電子ビームを、磁気レンズと試料との間で減速させる。磁気レンズと試料との間のもう1つの選択可能な電極は、電気レンズの中間極とする。該走査型電子顕微鏡において、対物レンズの上方にレンズ中検知器を配置する。該レンズ中検知器は、in−column検知器と呼ばれる。従来のレンズ外検知器に比べて、レンズ中検知器は、対物レンズと試料との間の空間を占用しないため、対物レンズの作動距離は、可能な限り小さくてもよい。従って、走査型電子顕微鏡は、高い分解能を保持することができる。
【0044】
また、試料から励起された二次電子は、複合対物レンズにおける静電界により吸引され、交差スポットを形成し、対物レンズを通過してレンズ中検知器により収集される。二次電子のエネルギーが極めて低く、50eVひいては5eV未満であるため、殆ど全ての二次電子は、レンズ中検知器により収集され、僅かな電子がレンズ中検知器の中心孔を通過して収集されない。これにより、二次電子の収集效率を向上させる。しかしながら、反射電子のエネルギーが高く、電気レンズにより吸引されにくく、出射方向の、試料面に対する発射角度が小さい反射電子は、レンズ中検知器により収集されることが不能であり、対物レンズの内表面又は対物レンズ外に入射されるため、レンズ中検知器による反射電子の検知効率は極めて低い。
【0045】
関連技術において、反射電子の検知効率を向上させるために、任意選択的な実施例を更に提供する。これは、高圧管の、試料に近い一端に、小角度で発射された反射電子を収集するための反射電子検知器を配置し、電気レンズの1つの電極とすることと、反射電子検知器が、発射角度の小さい純粋な反射電子信号を収集することと、全ての二次電子及び和大角度で発射された反射電子が反射電子検知器の中心孔を通過し、対物レンズの上方に配置されたレンズ中検知器により検知されることと、を含む。関連技術において、もう1つの任意選択的な実施例を更に提供する。これは、反射電子検知器を高圧管中に配置し、これにより、小角度で発射された反射電子を収集し、二次電子が吸引されて反射電子検知器の中心孔を通過し、対物レンズの上方に配置された二次電子検知器により検知され、又は反射電子検知器を磁気レンズ中に配置して且つ二次電子検知器の下方に位置させることを含む。上記実施例に係る角度は、反射電子の出射方向の、試料表面に対する角度を指す。
【0046】
しかしながら、上記実施形態において、下記明らかな技術的課題が存在する。低ドロップポイントエネルギー条件下で、走査型電子顕微鏡が、高いフラックス、及び高い二次電子と反射電子の検知効率を有することが求められる。上記実施形態において、反射電子ビームは、初期電子ビームにより試料表面で励起された後、対物レンズ外の反射電子検知器に直接的に入射される。低ドロップポイントエネルギーで、反射電子のエネルギーが低くて3keV未満であるため、反射電子検知器に入射された反射電子により励起された信号が弱くなり、反射電子検知器の利得が小さくなる。又は、反射電子が電界により加速された後に反射電子検知器に入射された時、一部の二次電子及び反射電子が最上方の検知器の中心孔から逃すため、二次電子及び反射電子の検知率を低下させる。なお、異なる発射角度からの反射電子が、試料の異なる次元での情報を表すとができるため、出射角度の、試料表面に対する角度が小さい反射電子は、試料の外観情報を表すことができ、出射角度の、試料表面に対する角度が大きい反射電子は、試料の材料情報を表すことができる。所定のドロップポイントエネルギーについて、電界の強度、磁界の強度及び反射電子検知器の位置が一定であるため、反射電子の運動経路の変更により反射電子検知器による特定の発射角度の反射電子の検知を実現させることができない。
【0047】
また1つの任意選択的な実施形態において、反射電子検知器は、異なる発射角度の反射電子を区分するための複数の環状検知チャネルを有する。しかしながら、該構造を有する反射電子検知器は、相対的複雑であり、異なるドロップポイントエネルギー、異なる発射角度の反射電子を選択的に収集する柔軟性が低い。
【0048】
実施例1
上記課題について、本発明の実施例1は、低エネルギー走査型電子顕微鏡システムを提供する。走査型電子顕微鏡システムの構造は、
図1に示すように、第1電子源101と、電子加速構造と、磁気レンズ107及び電気レンズ10からなる複合対物レンズ11と、第1偏向装置106と、第1検知装置105と、を備え、前記第1電子源101は、電子ビームを生成することに用いられる。任意選択的な実施形態において、前記第1電子源は、例えば、熱電界放出型第1電子源又は冷電界放出型第1電子源のような、電界放出型第1電子源であり、タングステンフィラメント及び六ホウ化ランタン材料からなる熱放射源に比べて、より優れた電流密度及び輝度を有し、また、より小さい仮想放射源を有し、電子ビームが試料に集束することで発生したスポットの大きさを減少させ、走査型電子顕微鏡システムによる試料検知の分解能を向上させることができる。
【0049】
前記電子加速構造は、陽極102であり、電子ビームの発射方向に沿って、前記第1電子源101の下方に位置し、電界を形成して前記電子ビームの運動速度を増加させることに用いられる。関連技術において、走査型電子顕微鏡の陽極と第1電子源との間に、一般的に少なくとも1つの吸引電極が含まれる。本発明の実施例において、前記第1電子源101で生成した電子ビームは、陽極により直接的に電界放出され、前記陽極102と前記第1電子源101のエミッタティップの距離を可能な限りちいさくなるように制御し、電子ビームのエネルギー分散の減少に寄与し、更に、空間電荷効果による第1電子源101から発射した電子ビームへの影響更に減少させる。本発明の実施例において、電子ビームが陽極により加速された後、複合対物レンズ11で形成される集束場の近傍に入り、いずれも高いエネルギーを保持することができ、また、空間電荷効果による第1電子源101から発射した電子ビームへの影響を減少させる。
【0050】
本発明の実施例において、前記第1電子源101の電圧値V1<−5kVであり、V1の典型的な値は、−10kVである。前記陽極102は、接地し、電圧値はゼロであり、前記第1電子源101で生成した電子ビームが陽極102を経過した後、運動速度は、増加する。
【0051】
前記複合対物レンズ11は、磁気レンズ107と、電気レンズ10と、を含み、前記電子加速構造により加速された電子ビームを集束することに用いられる。
【0052】
前記第1偏向装置106は、前記磁気レンズ107の内壁と前記電子ビームの光軸110との間に位置し、前記試料に入射される前の電子ビームの運動方向を変更することに用いられる。前記第1偏向装置106は少なくとも、第1偏向器106aと、第2偏向器106bと、を備え、より多い偏向器が初期電子走査に関与してもよい。第1偏向器106a、第2偏向器106bはいずれも磁気偏向器又は電気偏向器であってもよい。第1偏向器106a及び第2偏向器106bは、磁気レンズの内側に位置し、第1偏向器106a及び第2偏向器106bは、協働し、且つ磁気レンズフィールドに近く、大型走査フィールド場合の走査フィールドの縁の収差の低下に寄与する。第1偏向器106a及び第2偏向器106bは、一般的には、例えば、4極、8極、12極、16極等ような多極磁気偏向器又は電気偏向器であってもよく、如何なる偏向方向の走査フィールドを発生することができる。本発明の実施例において、陽極102から反射電子検知器105bまでの電子ビーム路径における要素がいずれも接地するため、好ましくは、静電気偏向器である。静電気偏向器は、磁気偏向器に比べて速度がより速く、高速電子ビーム走査に更に寄与し、電子ビーム顕微鏡のイメージング速度の実現に寄与する。
【0053】
前記第1検知装置105は、初期電子ビームが試料に作用することで生成した二次電子及び反射電子を受信するための第1サブ検知装置105aと、前記反射電子を受信するための第2サブ検知装置105bと、前記二次電子及び前記反射電子の運動方向を変更するための制御装置105cと、を備える。
【0054】
任意選択的な実施例において、前記第1サブ検知装置105aは、中心検知器であり、前記磁気レンズ107の上方に位置する。前記第2サブ検知装置105bは、反射電子検知器であり、前記磁気レンズ107の下方に位置し、前記磁気レンズ107の磁極片と密着される。
【0055】
前記中心検知器105a及び反射電子検知器105bは、中心孔を有する円形検知器であり、いずれも、半導体検知器、アバランシェ検知器又はシンチレータ及び光導管からなる検知器であってもよい。反射電子検知器105bの厚さが薄く、2mmひいては1mm以下に制御される。これにより、前記磁気レンズ107と試料台109との間の空間を多く占用することを避け、対物レンズと試料との間の作動距離を小さくなるように確保し、高い分解能を確保する。前記中心検知器105aの中心孔の直径Φ2≦1mmである。これにより、信号電子の受信効率を向上させる。
【0056】
任意選択的な実施例において、前記制御装置105cは、第1サブ検知装置105aの下方、第2サブ検知装置105bの上方に位置する。前記制御装置105cは、電気偏向器及び磁気偏向器からなり、電気偏向器及び磁気偏向器は、複合電磁界を発生する。ここで、電界強度の大きさ及び方向、磁界強度の大きさ及び方向は、いずれも初期電子ビームの速度に関わる。好適な実施形態において、前記制御装置105cの機能は、ウェーンアナライザにより実現することができる。
【0057】
制御装置105cにおける電気偏向器は、電界を発生する。初期電子が受けた電界力は、以下のとおりである。
【0058】
Fe=qE (1)
ただし、qは、帯電粒子の帯電量であり、Eは、電界強度である。
【0059】
それと同時に、制御装置105cにおける磁気偏向器は、電界強度に垂直な磁界を発生する。初期電子が受けたローレンツ力は以下のとおりである。
【0060】
Fm=qv×B (2)
ただし、Bは、磁気誘導強度であり、vは、帯電粒子の速度である。
【0061】
初期電子ビームについて、電子ビームが電界力Feのを受けると同時に、逆方向のFm磁界力を受ける。電界力と磁界力の作用力はバランスを取り、初期電子の偏向を引き起こすことがない。
【0062】
初期電子ビームが試料に作用することで生成した信号電子はウェーンアナライザを通過する時、ローレンツ力が電子の移動方向に関わり、電界力が電子の移動方向に関わらないため、信号電子の入射方向は反対方向になり、この場合、ローレンツ力Fmの方向は、電界力Feと同じであるようになり、信号電子は、両者を結合した力を受け、電界力の方向へ偏向する。
【0063】
任意選択的な実施形態において、ウェーンアナライザにおける電気偏向器は、複数の静止電極を含む多極型構造であり、ウェーンアナライザにおける磁気偏向器は、例えば、4極、8極、12極、16極等のような複数の磁極を含む多極型構造である。これにより、光軸に沿って360度回転して分布する任意の方向のバランスが取られた電界及び磁界を発生し、更に、信号電子を光軸に沿って360度回転する任意の方向へ偏向するように制御する。
【0064】
本発明の実施例において、前記複合対物レンズ11は、磁気レンズ107と、電気レンズ10と、を備え、前記磁気レンズ107は、好ましくは電流コイルにより励起されたイマージョン型磁気レンズであり、ワイヤが巻き付けられた励起コイルの外部に、磁気材料からなるハウジングがある。前記磁気レンズ107の開口部は、磁気レンズの磁極片であり、磁極片の開口は、試料に向かう。試料面は、前記磁気レンズ107のZ方向磁界の最も強い箇所の近傍に位置する。関連技術において、非イマージョン型磁気レンズの磁極片の開口部は、電子ビームの光軸110の方向に向かい、且つ磁気レンズの集束フィールドは、試料面から離れる。従って、本発明の実施例におけるイマージョン型磁気レンズ107のイメージング収差は、関連技術における非イマージョン型磁気レンズのイメージング収差よりも小さいため、走査型電子顕微鏡システムの分解能を向上させる。
【0065】
本発明の実施例において、前記電気レンズ10は、第2サブ検知装置105b、試料台109及び制御電極108からなる。
【0066】
任意選択的な実施形態において、前記第2サブ検知装置105bは、反射電子検知器であり、前記磁気レンズ107の下方に位置し、前記磁気レンズ107の磁極片と密着される。前記制御電極108は、中心孔を有し、前記制御電極108は、前記第2サブ検知装置105bと前記試料台109との間に位置する。
【0067】
任意選択的な実施形態において、前記電気レンズ10は、減速型陰極レンズであり、陽極により加速された電子ビームの運動速度を減少させ、信号電子の運動経路を制御することに用いられる。前記第2サブ検知装置105bは、グランド電位にあり、つまり、第2サブ検知装置105bの電圧値はゼロであり、電子ビームが陽極102から第2サブ検知装置105bまで経過した経路の電圧値はいずれもグランド電位である。試料台109の電圧値V2は、V1<V2<−5kVである。試料は、試料台109上に配置された後、試料台109と同一又は近似する電圧値を有する。前記制御電極108の電圧値V3は調整可能であり、制御電極108の電圧値V3≦0kVである。制御電極108の電圧値を調整することで、減速型電気レンズフィールドの分布を調整する。これにより、初期電子ビームの集束、及び初期電子ビームが試料に作用することで生成した信号電子の軌跡に影響を与える。従って、第1電子源101で発生した電子ビームが陽極102により加速された後に、前記電気レンズ10により減速されて試料に集束する。前記試料は、試料台に配置される。半導体試料、導体試料、不導電型試料等であってもよい。それと同時に、電気レンズ10は、磁気レンズ107の一部の収差を補償し、走査型電子顕微鏡の分解能を向上させることができる。
【0068】
本発明の実施例において、初期電子ビームが試料で励起して発生した信号電子は、二次電子及び反射電子を含む。磁気レンズ107の磁界及び電気レンズ10の電界の作用下で、二次電子及び反射電子の軌跡はいずれも影響を受ける。磁気レンズ107の磁界及び電界の協働作用で、元々直線状に放出された反射電子が光軸110の方向(r方向)へ指向する作用力を受けた後、試料面から発した反射電子の運動軌跡は、次第に光軸110に近づく。
【0069】
特定の低ドロップポイントエネルギー条件下で、つまり、試料の電位V
2が決まった場合、制御電極の電圧V
3が特定値とされた場合、反射電子が試料面から放出されて第1検知装置により受信される期間で、反射電子の運動軌跡に、交差点が存在しない。非常に低い(50eV未満)のドロップポイントエネルギーの場合、反射電子エネルギー及び二次電子エネルギーが特に近く、電磁界による作用を受けるため、反射電子の軌跡において、交差点を形成して反射電子検知器の中心孔を貫通する。電磁界による強い作用下で、二次電子エネルギーが小さい過ぎるため(50eV未満)、二次電子が試料表面から放出されたばかり、その運動軌跡において、試料と反射電子検知器との間又は反射電子検知器の孔の近傍に交叉点を形成する。反射電子検知器の中心孔の直径Φ1の値が特定の範囲内である場合、二次電子は全て、反射電子検知器の中心孔を通過して検出されない。ひいては試料表面に近接して平行に放出された二次電子は、いずれも、電磁界による作用を受けて反射電子検知器の中心孔を通過して検出される。この場合、発射角度が小さい反射電子は、光軸110に向かう力を受けるため、光軸110の中心へ集束する。適切な対物レンズフィールド条件下で、発射角度がゼロに近い反射電子でも、反射電子検知器105bにより検知される。なお、発射角度が大きい反射電子である、光軸110に近接して放出された反射電子は、反射電子検知器105bの中心孔を通過して、中心検知器105aにより検知される。反射電子検知器105bの中心孔Φ1は、数mm程度に設定される。初期電子ビームが試料表面に作用することで生成した信号電子は、電気レンズ10により加速されてウェーンアナライザ105cにより偏向された後、検知器105により検知される。ここで、信号電子の一部は直接的に105bにより検知され、他の部分が105aにより検知される。二次電子は、完全に反射電子検知器105bの中心孔を通過することができる。
【0070】
制御装置105cがウェーンアナライザであることを例として、ウェーンアナライザ105cがオフしている場合、
図2に示すように、信号電子は、電気レンズ10により加速された後、発射角度が小さい反射電子は、完全に反射電子検知器105bにより検知される。中心検知器105aの中心孔が極めて小さい場合、殆ど全ての二次電子及び発射角度が大きい反射電子は、中心検知器105aにより検知され、僅かな二次電子が検知器105により受信されなく、中心検知器105aの中心孔を通過する。
【0071】
本発明の実施例において、ウェーンアナライザ105cがオンしている場合、
図1に示すように、ウェーンアナライザ105cで発生した電界及び磁界が適切である時、信号電子は、電気レンズ10により加速された後、発射角度が小さい反射電子は、完全に反射電子検知器105bにより検知される。全ての二次電子及び発射角度が大きい反射電子は、いずれも中心検知器105aにより検知される。この場合、ウェーンアナライザ105cの補助で、第1検知装置105の検知効率は、約100%までに向上する。低ドロップポイントエネルギー走査型電子顕微鏡システムにおいて、信号電子の収集効率が直接的に走査型電子顕微鏡システムの速度を決定する。一方で、低ドロップポイントエネルギー走査型電子ビーム顕微鏡により観察される試料が半導体又は有機材料などの不良な導体であり、その信号電子の収量が良導体よりも遥かに低いため、信号電子を可能な限り多く収集することは、電子顕微鏡のイメージング速度の向上に寄与する。また一方で、二次電子及び反射電子はいずれも、電気レンズ10で発生した付加的な加速フィールドによる作用を受けるため、二次電子及び反射電子のエネルギーは、約V
2電子ボルト向上し、検知器でより高い信号利得を発生し、低ドロップポイントエネルギー条件下での電子ビームイメージング速度の向上に寄与する。
【0072】
前記制御電極108の電圧値V
3が調整可能であり、つまり、制御電極108の電圧値V3の大きさは、必要に応じて柔軟に調整可能である。従って、制御電極108の電圧を調整することで、電気レンズ10のフィールドを柔軟に調整し、反射電子及び二次電子の運動軌跡を制御することができる。
図3aに示すように、制御電極108の電圧値V
3を反射電子検知器の電圧値と試料台109の電圧値V
2との間で調整する時、試料台109と反射電子検知器105bとの間で静電気レンズフィールドを形成することができる。本発明の実施例において、電気レンズフィールドの等電位線は
図3aにおける13に示すとおりである。静電気レンズフィールドと対物レンズの磁界は共同で信号電子に作用する。この場合、二次電子が交差スポットを形成して完全に反射電子検知器105bの中心孔を通過し、出射角度が大きい反射電子も反射電子検知器105bの中心孔を通過し、ウェーンアナライザ105cによる作用下で、中心検知器105aにより検知される。出射角度が小さい反射電子は、電気レンズ10による作用下で、反射電子検知器105bにより検知される。また、制御電極108の電圧が連続的に変動可能であるため、特定の角度範囲で出射した反射電子が検知器105bにより検知されるように制御することができる。これにより、出射角度が特定値より大きい反射電子を、検知器105bの中心孔を通過して検知器105aにより捕捉されるように制御する。
【0073】
異なる角度で放出した反射電子により運ばれる材料情報が異なるため、発射角度が小さい反射電子は、試料表面の起伏による影響を受けて、試料表面の外観情報を表すことができる。発射角度が大きい(90°に近い)反射電子である、光軸110に近接する反射電子は、試料の材料情報を表すことができる。従って、制御電極108の電圧値の調整により、発射角度が特定値内である反射電子を検知器105bにより検知されるように制御し、更に、反射電子検知器105bにより取得された反射電子画像が試料の材料情報を表すことができるか、それとも試料表面の外観情報を表すことができるかを決定する。なお、試料自体の差異により、初期電子ビームが試料に作用した後に発生した反射電子の発射角度も異なる。検知される反射電子を柔軟に選択することで、最適な反射電子コントラスト画像を得ることができる。従って、制御電極108により、複合対物レンズ11における電気レンズの電界を柔軟に制御することができ、検知しようとする信号電子のタイプ及び分布角度を柔軟に選択することもできる。1つの反射電子検知器105bを用いることで、特定の角度範囲内で放出された反射電子を選択して捕捉することができる。関連技術における反射電子検知器を、複数の検知チャネルを有する環状ゾーンに分けることに比べて、異なる角度範囲内の反射電子を選択して捕捉するという要件に更に適応可能であり、検知器の複雑さを低減させる。
【0074】
本発明の実施例において、制御電極108の電圧値V
3が試料台109の電圧値V
2より少なくとも50V小さい場合、静電フィールドの分布は、
図3bに示すように変動し、制御電極108と試料台109との間で電子に下向き力を印加する電界を形成する。14は、該実施例の下向き電界の等電位線である。二次電子は、下向き電界により抑制され、上向きに送られず、試料に戻る。反射電子は、r方向の外向き力を受ける。従って、発射角度が小さい反射電子も反射電子検知器105bにより検知される。発射角度がより大きい反射電子が中心検知器105aにより検知される。中心検知器105a及び反射電子検知器105bにより取得したものは、異なる出射角度で出射した純粋な反射電子であり、二次電子が存在しない。
【0075】
従って、制御電極108により、電気レンズ10の電界を柔軟に制御し、中心検知器105aにより検知される電子のタイプを柔軟に選択し、更に、単一の反射電子の検知、又は反射電子及び二次電子を含む信号電子の検知を選択する。従来技術における中心検知器の前に、純粋な反射電子情報を取得するための調整可能なフィルタを追加することに比べて、本発明の実施例は、第1検知装置の複雑さを低減させる。
【0076】
要するに、制御電極108を調整することで、異なる出射角度の反射電子、単一の反射電子、反射電子と二次電子の混合情報、又は単一の二次電子を検知するように選択することができる。これにより、低ドロップポイントエネルギー条件下での信号電子検知の柔軟性を向上させる。
【0077】
上記から分かるように、本発明の実施例において、第1電子源101で発生した電子ビームは、試料に集束して集束点又は交差ビームスポットを形成し、第1電子源101と試料台109との間の経路において、他の集束点又は交差ビームスポットが発生していない。電子ビームが陽極102を経過して複合対物レンズのレンズフィールドに近接する前に、電子ビームはいずれも高いエネルギーを保持する。第1電子源101の電圧V1の値が−10kVであると、初期電子が複合対物レンズフィールドに近接する前の光学経路において、いずれも10keVのエネルギーを保持し、且つ、他の集束点又は交差ビームスポットを発生していない。これにより、空間電荷効果による光学システムへの影響を効果的に減少させる。
【0078】
実施例2
本発明の実施例2で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムは、本発明の実施例1で提供される走査型電子顕微鏡システムと類似しており、本発明の実施例2で走査型電子顕微鏡システムの構造は、光軸110の方向に沿って陽極102の下方に配置され、陽極102を経過した電子ビームの特徴を変更することに用いられる電子ビーム調整装置を更に備え、前記電子ビームの特徴が少なくとも電子ビームのビーム密度及び電子ビームの直径を含むという点で相違する。
【0079】
任意選択的な実施形態において、
図4に示すように、前記電子ビーム調整装置は、集束装置103である。集束装置103は、初期電子ビームの出射方向に沿って陽極102の下方に設けられ、陽極により加速された電子ビームを集束することに用いられ、つまり、電子ビームの発射開き角を変更し、更に、電子ビームが試料に到着するビーム密度を制御する。また、電子ビームが収束装置103を経過した後に交差スポットを形成しない。
【0080】
好ましい実施形態において、集束装置103は、電気励起型磁気レンズであり、集束装置103の集束磁界は、連続的に調整可能である。
【0081】
実施例3
本発明の実施例3で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムは、本発明の実施例1、実施例2で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムと類似する。本発明の実施例3で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムの構造は、
図5aに示すように、本発明の実施例1で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムに比べて、電子ビーム調整装置が絞り104であり、前記絞り104が光軸方向に沿って前記陽極の下方に位置し、陽極102を経過した電子ビームをフィルタリングすることに用いられるという点で相違する。
【0082】
又は、本発明の実施例3で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムの構造は、
図5bに示すように、本発明の実施例2で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムに比べて、電子ビーム調整装置が絞り104を更に備え、該絞り104は、光軸方向に沿って前記集束装置103の下方に位置し、集束装置103を通過した電子ビームをフィルタリングすることに用いられ、第1電子源101で発生した電子ビームは、陽極102、集束装置103及び絞り104を通過した後、光軸110に沿って下へ運動する。
【0083】
実施例4
本発明の実施例4で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムは、本発明の実施例1で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムと類似しており、
図6に示すように、本発明の実施例4で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムの電子加速構造が陽極102と、高圧管401と、を含むという点で相違する。
【0084】
本発明の実施例において、陽極102から反射電子検知器105bまでの経路において、電子ビームが高圧管中で高速を保持する。高圧管に電圧値がV
4である高圧が印加されたため、第1偏向装置106として、好ましくは磁気偏向器を用いる。
【0085】
本発明の実施例において、電子加速構造は、陽極102及び高圧管401からなる。高圧管401はそれぞれ陽極102及び第2サブ検知装置105bに接続される。第1電子源101の電圧値V1<0kVであり、陽極102の電圧値及び高圧管401の電圧値はいずれもV4であり、V4>+5kVである。電気レンズ10は、減速型陰極レンズであり、陽極により加速された電子ビームの運動速度を減少させ、信号電子の運動経路を制御することに用いられる。前記第2サブ検知装置105bの電圧値がV4であり、電子ビームが陽極102から第2サブ検知装置105bまで経過した経路の電圧値は、いずれもV4である。試料台109の電圧値V2は、V
1<V
2≦0kVである。試料が試料台109に配置された後、試料台109と同一又は近似した電圧値を有する。前記制御電極108の電圧値V3は、調整可能であり、制御電極108の電圧値V3≦V4である。制御電極108の電圧値を調整することで、減速型電気レンズフィールドの分布を調整し、初期電子ビームの集束、及び初期電子ビームが試料に作用することで生成した信号電子の軌跡に影響を与える。
【0086】
制御装置105cがウェーンアナライザであることを例として、ウェーンアナライザ105cがオフしている場合、
図7に示すように、信号電子は、電気レンズ10により加速された後、出射角度が小さい反射電子は、完全に反射電子検知器105bにより検知される。中心検知器105aの中心孔が極めて小さい場合、殆ど全ての二次電子及び出射角度が大きい反射電子は、中心検知器105aにより検知され、僅かな二次電子が検知器105により検知されなく、中心検知器105aの中心孔を通過する。ウェーンアナライザ105cがオンしている場合、
図6に示すように、ウェーンアナライザ105cで発生した電界及び磁界が適切である時、信号電子は、電気レンズ10により加速された後、出射角度が小さい反射電子は、完全に反射電子検知器105bにより検知される。全ての二次電子及び出射角度が大きい反射電子は、中心検知器105aにより検知される。従って、アナライザ105cは検知効率を約100%までに向上する。低エネルギー走査型電子顕微鏡システムにおいて、信号電子の収集効率が直接的に走査型電子顕微鏡の速度を決定する。低エネルギー走査型電子ビーム顕微鏡により観察される試料が半導体又は有機材料である不良な導体であり、その信号電子の収量が良導体よりも遥かに低いため、信号電子を可能な限り収集することは、電子顕微鏡のイメージング速度の向上に寄与する。また、二次電子及び反射電子はいずれも、陰極電気レンズで発生した付加的な加速フィールドによる作用を受けるため、二次電子及び反射電子のエネルギーは、約V
2電子ボルト向上し、検知器でより高い信号利得を発生し、低エネルギー条件下での電子ビームイメージング速度の向上に寄与する。
【0087】
前記制御電極108の電圧値V
3が調整可能であり、つまり、制御電極108の電圧値V3の大きさは、調整可能である。従って、制御電極108の電圧を調整することで、電気レンズ10のフィールドを柔軟に調整し、反射電子及び二次電子の運動軌跡を制御することができる。
図8aに示すように、制御電極108の電圧値V
3を反射電子検知器の電圧値V
4と試料台109の電圧値V
2との間で調整する時、試料台109と反射電子検知器105bとの間で静電気レンズフィールドを形成することができる。本発明の実施例において、電気レンズフィールドの等電位線は
図8aにおける21に示すとおりである。静電気レンズフィールドと対物レンズの磁界は共同で信号電子に作用する。この場合、二次電子が交差スポットを形成して完全に反射電子検知器105bの中心孔を通過し、出射角度が大きい反射電子も反射電子検知器105bの中心孔を通過し、ウェーンアナライザ105cによる作用下で、中心検知器105aにより検知される。出射角度が小さい反射電子は、電気レンズ10による作用下で、反射電子検知器105bにより検知される。また、制御電極108の電圧が連続的に変動可能であるため、特定の角度範囲で出射した反射電子が検知器105bにより検知されるように制御することができる。これにより、出射角度が特定値より大きい反射電子を、検知器105bの中心孔を通過して検知器105aにより捕捉されるように制御する。
【0088】
異なる角度で放出した反射電子により運ばれる材料情報が異なるため、発射角度が小さい反射電子は、試料表面の起伏による影響を受けて、試料表面の外観情報を表すことができる。発射角度が大きい(90°に近い)反射電子である、光軸に近接する反射電子は、試料の材料情報を表すことができる。従って、制御電極108の電圧値の調整により、発射角度が特定値内である反射電子を検知器105bにより検知されるように制御し、更に、反射電子検知器105bにより取得された反射電子画像が試料の材料情報を表すことができるか、それとも試料表面の外観情報を表すことができるかを決定する。なお、試料自体の差異により、初期電子ビームが試料に作用した後に発生した反射電子の発射角度も異なる。検知される反射電子を柔軟に選択することで、最適な反射電子コントラスト画像を得ることができる。従って、制御電極108により、複合対物レンズ11における電気レンズの電界を柔軟に制御することができ、検知しようとする信号電子のタイプ及び分布角度を柔軟に選択することもできる。1つの反射電子検知器105bを用いることで、選択角度範囲内で放出された反射電子を選択して捕捉することができる。関連技術における反射電子検知器を、複数の検知チャネルを有する環状ゾーンに分けることに比べて、異なる角度範囲内の反射電子を選択して捕捉するという要件に更に適応可能であり、検知器の複雑さを低減させる。
【0089】
本発明の実施例において、制御電極108の電圧値V
3が試料台109の電圧値V
2より少なくとも50V小さい場合、静電フィールドの分布は、
図8bに示すように変動し、制御電極108と試料台109との間で電子に下向き力を印加する電界を形成する。22は、該実施例の下向き電界の等電位線である。二次電子は、下向き電界により抑制され、上向きに送られず、試料に戻る。反射電子は、r方向の外向き力を受ける。従って、発射角度が小さい反射電子も反射電子検知器105bにより検知される。発射角度がより大きい反射電子が中心検知器105aにより検知される。中心検知器105a及び反射電子検知器105bにより取得したものは、異なる出射角度で出射した純粋な反射電子であり、二次電子が存在しない。
【0090】
従って、制御電極108により、電気レンズ10の電界を柔軟に制御し、中心検知器105aにより検知される電子のタイプを柔軟に選択し、更に、単一の反射電子の検知、又は反射電子及び二次電子を含む信号電子の検知を選択する。従来技術における中心検知器の前に、純粋な反射電子情報を取得するための調整可能なフィルタを追加することに比べて、本発明の実施例は、第1検知装置の複雑さを低減させる。
【0091】
要するに、制御電極108を調整することで、異なる出射角度の反射電子、単一の反射電子、反射電子と二次電子の混合情報、又は単一の二次電子を検知するように選択することができる。これにより、低ドロップポイントエネルギー条件下での信号電子検知の柔軟性を向上させる。
【0092】
実施例5
本発明の実施例5で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムは、本発明の実施例4で提供される走査型電子顕微鏡システムと類似しており、本発明の実施例5で走査型電子顕微鏡システムの構造は、光軸方向に沿って陽極102の下方に配置され、陽極102を経過した電子ビームの特徴を変更することに用いられる電子ビーム調整装置を更に備え、前記電子ビームの特徴が少なくとも電子ビームのビーム密度及び電子ビームの直径を含むという点で相違する。
【0093】
任意選択的な実施形態において、
図9に示すように、前記電子ビーム調整装置は、集束装置103である。集束装置103は、初期電子ビームの出射方向に沿って陽極102の下方に設けられ、陽極により加速された電子ビームを集束することに用いられ、つまり、電子ビームの発射開き角を変更し、更に、電子ビームが試料に到着するビーム密度を制御する。また、電子ビームが収束装置103を経過した後に交差スポットを形成しない。
【0094】
好ましい実施形態において、集束装置103は、電気励起型磁気レンズであり、集束装置103の集束磁界は、連続的に調整可能である。
【0095】
実施例6
本発明の実施例6で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムは、本発明の実施例4、実施例5で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムと類似する。本発明の実施例6で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムの構造は、
図10aに示すように、本発明の実施例4で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムに比べて、電子ビーム調整装置が絞り104であり、前記絞り104が光軸方向に沿って前記陽極の下方に位置し、陽極102を経過した電子ビームをフィルタリングすることに用いられるという点で相違する。
【0096】
又は、本発明の実施例6で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムの構造は、
図10bに示すように、本発明の実施例5で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムに比べて、電子ビーム調整装置が絞り104を更に備え、該絞り104は、光軸方向に沿って前記集束レンズ103の下方に位置し、集束レンズ103を通過した電子ビームをフィルタリングすることに用いられ、第1電子源101で発生した電子ビームは、陽極102、集束レンズ103及び絞り104を通過した後、光軸110に沿って下へ運動する。
【0097】
実施例7
上記実施例1から実施例6によれば、本発明の実施例7で提供される低エネルギー走査型電子顕微鏡システムは、
図11に示すように、信号処理装置30を更に備える。該信号処理装置30は、前記第1サブ検知装置及び/又は第2サブ検知装置に接続され、前記第1サブ検知装置が受信した二次電子及び/又は反射電子に基づいて生成した第1信号を処理することに用いられ、及び/又は、前記第2サブ検知装置が受信した反射電子に基づいて生成した第2信号を処理することに用いられる。
【0098】
任意選択的な実施形態において、前記信号処理装置は、信号増幅サブ装置と、信号処理サブ装置と、を含み、
信号増幅サブ装置は、前記第1信号を増幅させることに用いられる第1信号増幅サブ装置300a、及び/又は、前記第2信号を増幅させることに用いられる第2信号増幅サブ装置300bを含み、
信号処理サブ装置は、増幅した第1信号を処理した後に出力し、第1画像を形成することに用いられる第1信号処理サブ装置301a、及び/又は、増幅した第2信号を処理した後に出力し、第2画像を形成することに用いられる第2信号処理サブ装置301bを含む。
【0099】
任意選択的な実施形態において、前記信号処理装置は、前記信号処理サブ装置により処理された第1信号及び前記信号処理サブ装置により処理された第2信号に対して合成処理を行い、複合画像を形成することに用いられる信号合成サブ装置を更に含む。
【0100】
本発明の実施例において、第1サブ検知装置から出力された信号及び第2サブ検知装置から出力された信号に対して、増幅、処理操作を行い、対象がはっきりしている検知のための二次電子画像又は反射電子画像をそれぞれ生成する。信号合成サブ装置302により、処理した第1サブ検知装置から出力された第1信号及び処理した第2サブ検知装置から出力された第2信号を合成し、収集率が100%であるか又は100%に近い合成画像を得る。
【0101】
実施例8
上記実施例1から実施例7に記載の低エネルギー走査型電子顕微鏡システムによれば、本発明の実施例8は、試料検知方法を更に提供する。前記試料検知方法の処理フローは、
図12に示すように、下記ステップを含む。
【0102】
ステップS101において、第1電子源から発生した電子ビームを電子加速構造により加速した後、運動速度を増加させる。
【0103】
任意選択的な実施形態において、前記電子加速構造は陽極であり、前記第1電子源の電圧値V1<−5kVであり、陽極は接地する。
【0104】
もう1つの任意選択的な実施形態において、前記電子加速構造は、陽極と、高圧管と、を含み、第1電子源の電圧値V1<0kVであり、陽極の電圧値V4は、V4>+5kVであり、高圧管の電圧値はV4である。
【0105】
前記第1電子源から発生した電子ビームは、前記電子加速構造により加速された後、エネルギーは、5keVより大きいように保持し、典型的な値は、10keVである。光軸に沿って下へ運動する。下へ運動する高エネルギー電子ビームは、集束レンズにより集束されるが、交差スポットを形成せず、絞りを通過する。両者は、電子ビームのビーム大きさ及びビームスポットの直径を調整した。
【0106】
ステップS102において、前記電子加速構造により加速された電子ビームが、複合対物レンズにより集束され、電気レンズにより減速され、第1偏向装置により前記電子ビームの運動方向が変更された後、試料に作用し、二次電子及び反射電子を生成する。
【0107】
好ましい実施形態において、運動速度が増加された電子ビームは、複合対物レンズにより集束され、電気レンズにより減速され、第1偏向装置により偏向された後、試料の表面で走査を行い、二次電子及び反射電子を生成する。ここで、複合対物レンズは、磁気レンズと、電気レンズと、を含む。前記磁気レンズは、好ましくは電流コイルにより励起されたイマージョン型磁気レンズであり、ワイヤが巻き付けられた励起コイルの外部に、磁気材料からなるハウジングがある。前記磁気レンズの開口部は、磁気レンズの磁極片であり、磁極片の開口は、試料に向かう。試料面は、前記磁気レンズのZ方向磁界の最も強い箇所の近傍に位置する。関連技術において、非イマージョン型磁気レンズの磁極片の開口部は、電子ビームの光軸の方向に向かい、且つ磁気レンズの集束フィールドは、試料面から離れる。従って、本発明の実施例におけるイマージョン型磁気レンズのイメージング収差は、関連技術における非イマージョン型磁気レンズのイメージング収差よりも小さいため、走査型電子顕微鏡システムの分解能を向上させる。
【0108】
任意選択的な実施形態において、前記電気レンズにおける反射電子検知器は、グランド電位にあり、前記試料台の電圧値はV2であり、V1<V2<−5kVであり、前記制御電極の電圧値V3は調整可能であり、大きさがV3≦0kVである。電子ビームが陽極から反射電子検知器まで経過した経路は、いずれもグランド電位である。
【0109】
もう1つの任意選択的な実施形態において、前記電気レンズにおける反射電子検知器は、V4電位にある。試料台の電圧値は、V1<V2≦0kVであり、制御電極の電圧値V3は調整可能であり、V3≦V4である。
【0110】
前記複合対物レンズにおける磁気レンズで発生した集束磁界及び電気レンズで発生した減速電界が複合集束フィールドを構成する。光軸に沿って下へ運動する高エネルギー電子ビームは、複合集束フィールドにより集束されると共に、集束電子ビームは、前記減速電界により、エネルギー5keV以下に減速され、検知待ち試料に集束されて検知待ち試料を照射する。低エネルギー集束電子ビームは、偏向器により発生した偏向フィールドによる作用下で、試料上で走査を行い、二次電子及び反射電子を含む信号電子を生成する。
【0111】
ステップS103において、第1検知装置により受信するように、前記電気レンズ及び制御装置による作用下で前記二次電子及び前記反射電子に対して運動方向変更を行う。
【0112】
任意選択的な実施形態において、第1検知装置は、反射電子検知器及び中心検知器を含む。試料から戻った信号電子は、電気レンズの電界により加速される。前記制御装置の電圧値V3は、連続的に変動可能である。制御装置の電圧値V3を反射電子検知器の電圧値と試料台の電圧値V2との間で調整する時、二次電子及び出射角度が第1閾値より大きい反射電子は中心検知器により検知される。出射角度が第1閾値未満である反射電子は、反射電子検知器により検知される。制御電極の電圧値V3が試料台の電圧値V2より少なくとも50V小さい場合、二次電子は、抑制されて試料に戻る。出射角度が第1閾値より大きい反射電子は、中心検知器により検知される。出射角度が第1閾値未満である反射電子は、反射電子検知器により検知される。ここで、第1閾値は、反射電子検知器の位置などの属性に関わる。
【0113】
任意選択的な実施形態において、前記制御装置がウェーンアナライザである場合、ウェーンアナライザで発生した電界及び磁界の強度を調整することで、中心検知器による二次電子及び/又は反射電子の収集效率を向上させる。
【0114】
要するように、制御装置の電圧値を調整することで、異なる出射角度の反射電子情報、純粋な反射電子情報、反射電子と二次電子の混合情報、及び純粋な二次電子情報を検知するように選択することができる。
【0115】
実施例9
本発明の実施例9で提供される試料検知方法は、
図13に示すように、実施例8で提供される試料検知方法と類似しており、ステップS103を実行した後、下記ステップS104を更に含むという点で相違する。
【0116】
ステップS104において、中心検知器及び/又は反射電子検知器により受信された信号電子で生成した信号を処理する。
【0117】
本発明の実施例において、中心検知器により受信された信号電子で生成した信号及び反射電子検知器により受信された信号電子で生成した信号に対してそれぞれ、増幅、処理操作を行い、2つの対象がはっきりしている二次電子画像又は反射電子画像を生成することができる。反射電子検知器における信号及び中心検知器における信号を処理した後、合成を行い、収集率が100%であるか又は100%に近似する画像を得る。
【0118】
実施例10
本発明の実施例10は、走査型電子顕微鏡対物レンズシステムを提供する。走査型電子顕微鏡対物レンズシステムの構造は、
図14に示すように、磁気レンズ401と、第2偏向装置402と、偏向制御電極403と、検知待ち試料407と、第1サブ検知器404及び第2サブ検知器405からなる第2検知装置と、を備える。
【0119】
本発明の実施例において、前記磁気レンズ401は、イマージョン型電流励起磁気レンズである。その環状磁極片の開口は、検知待ち試料407に向かう。前記磁気レンズ401の中心軸線上での磁界の最も強い箇所は、前記検知待ち試料の表面近傍にあり、イマージョン型磁気レンズを形成する。
【0120】
本発明の実施例において、前記第2偏向装置402は、前記磁気レンズ401内に位置する。前記第2偏向装置402は、少なくとも1つのサブ偏向器を含む。
【0121】
前記第2偏向装置402が複数のサブ偏向器を含む場合、前記複数のサブ偏向器は、全て電気偏向器であってもよく、全て磁気偏向器であってもよく、電気偏向器と磁気偏向器の組み合わせであってもよい。
【0122】
前記第2偏向装置402に含まれる複数のサブ偏向器が電気偏向器と磁気偏向器の組み合わせである場合、前記電気偏向器及び前記磁気偏向器の数を限定しない。例えば、前記第2偏向装置402が4個のサブ偏向器を含む場合、1つの実施例において、前記電気偏向器の数が1個であり、前記磁気偏向器の数が3個である。もう1つの実施例において、前記電気偏向器の数が2個であり、前記磁気偏向器の数が2である。また1つの実施例において、前記電気偏向器の数が3個であり、前記磁気偏向器の数が1個である。また1つの実施例において、前記電気偏向器の数が0個であり、前記磁気偏向器の数が4個であるか又は前記電気偏向器の数が4個であり、前記磁気偏向器の数が0個である。
【0123】
本発明の実施例において、前記第2偏向装置402の形状は、円柱形である。前記第2偏向装置402が複数のサブ偏向器を含む場合、前記複数のサブ偏向器は、前記磁気レンズ401の軸線方向に沿って上から下へ順次配列される。また、前記複数のサブ偏向器が電気偏向器と磁気偏向器の組み合わせである場合、前記電気偏向器及び前記磁気偏向器の位置を限定しない。例えば、第2偏向装置402が4個のサブ偏向器を含む場合、1つの実施例において、前記磁気レンズ401の軸線方向に沿って上から下へ順に電気偏向器、電気偏向器、磁気偏向器、磁気偏向器が設けられる。もう1つの実施例において、前記磁気レンズ401の軸線方向に沿って上から下へ順に電気偏向器、磁気偏向器、電気偏向器、磁気偏向器が設けられる。また1つの実施例において、前記磁気レンズ401の軸線方向に沿って上から下へ順に磁気偏向器、磁気偏向器、電気偏向器、電気偏向器が設けられる。勿論、複数のサブ偏向器のタイプ及び位置は、複数の組み合わせ形態を含み、ここで、詳細な説明を省略する。
【0124】
本発明の実施例において、前記偏向制御電極403は、非磁性良導体材料からなる。前記偏向制御電極403は、前記磁気レンズ401の下方に位置し、且つ前記検知待ち試料407の上方に位置する。
【0125】
本発明の実施例において、前記偏向制御電極403は、第1中心孔及び複数の偏向制御サブ電極を含み、前記複数の偏向制御サブ電極は、前記第1中心孔を中心として、前記第1中心孔の周囲に分布する。従って、前記偏向制御電極403の構造は、花弁構造である。
【0126】
前記偏向制御電極403が八葉型構造であることを例として、前記偏向制御電極403の1つの構造の概略図は、
図15aに示すとおりである。8個の偏向制御サブ電極に対応する電位は、それぞれV
y+aV
x、aV
y+V
x、−aV
y+V
x、−V
y+aV
x、−V
y−aV
x、−aV
y−V
x、aV
y−V
x、V
y−aV
xである。ただし、aは、電圧スケールファクタであり、V
yは、電圧のy方向成分であり、V
xは、電圧のx方向成分である。
【0127】
前記偏向制御電極403が十二葉型構造であることを例として、前記偏向制御電極403のもう1つの構造の概略図は、
図15bに示すとおりである。12個の偏向制御サブ電極に対応する電位はそれぞれV
y、V
x、V
y、V
x、−V
y、−V
x、−V
y、−V
x、−V
y、−V
x、V
y、−V
xである。ここで、V
yは、電圧のy方向成分であり、V
xは、電圧のx方向成分である。本発明の実施例において、前記偏向制御電極403は、給電システムにより定電圧V3が印加され、固定電位が形成される。それと同時に、前記偏向制御電極403に更に給電システムにより交番電圧V4を印加することで、前記偏向制御電極403をサブ偏向器として、前記検知待ち試料に入射された初期電子ビームを偏向させ、前記初期電子ビーム入射中で前記検知待ち試料に形成された信号電子を偏向させる。
【0128】
本発明の実施例において、前記第1サブ検知器404の機能は、反射電子検知器により実現でき、前記第2サブ検知器405の機能は、中心検知器により実現できる。ここで、前記第1サブ検知器404及び前記第2サブ検知器405は、中心孔を有する円形半導体検知器、アバランシェ検知器又はシンチレータ及び光導管からなる検知器である。
【0129】
本発明の実施例において、前記第1サブ検知器404は、第2中心孔を有し、前記第2中心孔の直径は、前記偏向制御電極403における第1中心孔の直径未満である。好適な実施例において、前記第1サブ検知器404の第2中心孔の直径は、ミリメートル程度であり、例えば、第2中心孔の直径は、5mm以下である。
【0130】
本発明の実施例において、前記第1サブ検知器404は少なくとも1つの第1サブ検知アセンブリを含む。各第1サブ検知アセンブリは、取得した対応する領域の信号電子に対応する信号を前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムの外部の画像処理装置に送信し、対応する領域の信号をイメージングすることに用いられる。前記第1サブ検知器404は、半導体材料からなるものである。前記第1サブ検知器404が複数の第1サブ検知アセンブリを有する場合、複数の第1サブ検知アセンブリは、前記第2中心孔を中心として、前記第2中心孔の周囲に分布する。また、複数の第1サブ検知アセンブリ同士は相互絶縁する。各第1サブ検知アセンブリは、自体に対応する領域の信号電子を受信することに用いられる。前記第1サブ検知器404の構造によれば、前記第1サブ検知器404の検知領域は、複数の第1サブ検知アセンブリの分布に基づいて複数のサブ検知領域に分割されると理解されてもよい。
【0131】
一実施例において、第1サブ検知器404の構造及び検知領域の概略図は、
図16aに示すとおりである。前記第1サブ検知器404の検知領域は、前記第2中心孔を中心とした4つの扇形サブ検知領域B
1、B
2、B
3及びB
4からなる。4個のサブ検知領域が受信した電子信号はそれぞれ、S1、S2、S3及びS4と表記される。上記4個の電子信号は、異なる方位で生成した反射電子信号を表す。上記4個の電子信号はそれぞれ、単独した画像処理装置又は画像処理チャネルに接続され、独立した4枚の画像を形成する。上記4つの電子信号に対して互いに演算処理を行った後、総合信号を形成し、画像処理装置に入力した後に出力することもできる。前記演算処理は、加算、差分値算出などの演算を含むが、これらに限定されない。
【0132】
もう1つの実施例において、もう1つの第1サブ検知器404の構造及び検知領域の概略図は、
図15bに示すとおりである。前記第1サブ検知器404の検知領域は、前記第2中心孔を中心とする2個の環状サブ検知領域A及びサブ検知領域Bからなる。2個のサブ検知領域が受信した電子信号はそれぞれS1及びS2と表記される。上記2個の電子信号は、異なる角度で生成した反射電子信号を表す。
【0133】
また1つの実施例において、また1つの第1サブ検知器404の構造及び検知領域の概略図は、
図16cに示すとおりである。前記第1サブ検知器404の検知領域は、前記第2中心孔を中心とする環状サブ検知領域及び扇形サブ検知領域からなる。
図16bに示す2個の環状サブ検知領域は、4個の扇形領域に分割され、A
1、A
2、A
3、A
4、B
1、B
2、B
3及びB
4という8個のサブ検知領域が形成される。8個のサブ検知領域が受信した電子信号はそれぞれS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7及びS8と表記される。上記8個の電子信号は、異なる方位で生成した反射電子信号を表す。上記8個の電子信号は、それぞれ、単独した画像処理装置又は画像処理チャネルに接続され、独立した8枚の画像を形成する。上記8個の電子信号に対して互いに演算処理を行い、総合信号を形成し、画像処理装置に入力した後に出力することもできる。前記演算処理は、加算、差分値算出等の演算を含むが、これらに限定されない。
【0134】
本発明の実施例において、前記磁気レンズ401は、給電システムにより電圧が印加される。つまり、給電システムは、前記磁気レンズ401の励起コイルに給電し、前記磁気レンズ401に定常磁界を発生させる。前記第1サブ検知器404、前記偏向制御電極403及び前記検知待ち試料407の電位はいずれも給電システムにより供給される。ここで、前記検知待ち試料407は、試料台に配置されてもよい。給電システムは、試料台に給電することで、前記検知待ち試料407に対する給電を実現させる。
【0135】
一実施例において、前記第1サブ検知器404の電圧値は0Vであり、前記検知待ち試料407の電圧値V2の範囲は、−30kV≦V2≦−5kVである。ここで、前記偏向制御電極403の電圧は、定電圧V3及び可変電圧V4を含み、V2≦V3≦0である。
【0136】
前記第1サブ検知器404、前記偏向制御電極403及び前記検知待ち試料407の電位に対する制御に基づいて、前記第1サブ検知器404、前記偏向制御電極403及び前記検知待ち試料407により共同で減速静電レンズフィールドを構成する。前記減速静電レンズフィールドの、光学軸線での電位分布は、
図14に示す408におけるU(z)に示すとおりである。前記磁気レンズ401の磁界の、光学軸線での分布は、
図14に示す408におけるB(z)に示すとおりである。B(z)の最大値は、前記検知待ち試料407の表面付近にある。前記偏向制御電極403は、可変電位V4により制御されて走査電界を形成する。これは、
図14に示す408におけるD(z)に示すとおりである。
【0137】
ここで、前記減速静電レンズフィールドと前記磁気レンズ401で発生したイマージョン型磁界が共同で複合型イマージョン減速吸収レンズフィールドを構成する。前記複合型イマージョン減速吸収レンズフィールドの作用は主に3つの態様を含む。第1態様において、前記検知待ち試料407に入射された初期電子ビームを集束し、前記初期電子ビームを前記検知待ち試料407の表面に集束させることができる。第2態様において、前記検知待ち試料407に入射された初期電子ビームを減速し、前記初期電子ビームを、低いエネルギーで前記検知待ち試料に到着させ、非導電性試料の荷電効果を低減させる。第3態様において、前記検知待ち試料407の表面で生成した信号電子(反射電子及び二次電子を含む)を加速し、前記第1サブ検知器404及び前記第2サブ検知器405による前記信号電子の収集効率を向上させる。
【0138】
複合型イマージョン減速吸収レンズフィールドは、前記第2偏向装置402及び偏向制御電極403の走査電界に相互結合し、共同で、揺動型イマージョン減速吸収レンズフィールド走査方式又は並進型イマージョン減速吸収レンズフィールド走査方式を形成する。上記2つの走査方式は、いずれも、大フィールド走査時の軸外収差及び偏向収差を減少させ、百ミクロンレベルの大フィールドでの高分解能走査イメージングを実現させることができる。
【0139】
実施例11
本発明の実施例11で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムは、本発明の実施例10で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムと類似した。本発明の実施例11で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムの構造は、
図17に示すように、第2電子源201と、陽極202と、を更に含み、前記第2電子源201は、熱放出型第2電子源又は電界放出型第2電子源であり、前記第2電子源201が初期電子ビームを放射し、前記初期電子ビームが光学軸線203に沿って下へ運動し、本発明の実施例2に記載の走査型電子顕微鏡対物レンズシステムを経過した後、前記検知待ち試料107の表面で集束及びイメージングを行うという点で相違する。
【0140】
本発明の実施例において、前記第2偏向装置は、サブ偏向器402aと、サブ偏向器402dと、を含む。
【0141】
本発明の実施例において、給電システム406により前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムに電気エネルギーを提供し、前記第2電子源201の電圧値をV1にする。V1の範囲は、−30kV≦V1≦−5kVである。前記陽極202、前記第2サブ検知器405及び前記第1サブ検知器404はいずれもグランド電位であり、つまり、電圧値が0Vである。前記検知待ち試料407の電圧値V2の範囲は、−30kV≦V2≦−5kVである。ここで、前記偏向制御電極403の電圧は、定電圧V3及び可変電圧V4を含み、V2≦V3≦0である。
【0142】
実施例12
本発明の実施例12で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムは、本発明の実施例11で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムと類似する。本発明の実施例12で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムの構造は、
図18に示すように、本発明の実施例11で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムに比べて、前記第2偏向装置402が光軸403の方向に沿って上から下へ順にサブ偏向器402a、サブ偏向器402b、サブ偏向器402c、サブ偏向器402dを含むという点で相違する。
【0143】
実施例13
本発明の実施例13で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムは、本発明の実施例11で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムと類似する。本発明の実施例13で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムの構造は、
図19に示すように、高圧管503を更に備え、前記高圧管503の1つの構成部分は、陽極503aであり、前記高圧管503の下端503bは、第1サブ検知器404と絶縁するという点で相違する。
【0144】
本発明の実施例において、前記第2偏向装置は、サブ偏向器502aと、サブ偏向器502dと、を含み、且つ、サブ偏向器502a及びサブ偏向器502dはいずれも磁気偏向器である。
【0145】
本発明の実施例において、給電システム406により前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムに電気エネルギーを供給し、前記第2電子源201の電圧値をV1にする。V1の範囲は、−15kV≦V1≦0kVである。前記陽極502a、前記第2サブ検知器405及び前記第1サブ検知器404の電圧値はいずれもV5であり、V5の範囲は、5kV≦V5≦30kVである。前記検知待ち試料407はグランド電位であり、つまり、前記検知待ち試料の電圧値は、0Vである。前記偏向制御電極403の電圧は、定電圧V3及び可変電圧V4を含み、0≦V3≦V5である。
【0146】
実施例14
本発明の実施例14で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムは、本発明の実施例13で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムと類似する。本発明の実施例14で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムの構造は、
図20に示すように、本発明の実施例14で提供される走査型電子顕微鏡対物レンズシステムに比べて、前記第2偏向装置が光軸203の方向に沿って上から下へ順にサブ偏向器502a、サブ偏向器502b、サブ偏向器502c、サブ偏向器502d。を含み、且つサブ偏向器502a、サブ偏向器502b、サブ偏向器502c、サブ偏向器502dはいずれも磁気偏向器であるという点で相違する。
【0147】
実施例15
上記実施例10から実施例14に記載の走査型電子顕微鏡対物レンズシステムによれば、本発明の実施例15は、試料検知方法を更に提供する。前記試料検知方法の処理フローは、
図21に示すように、下記ステップS201とステップS202を含む。
【0148】
ステップS201において、初期電子ビームを複合型イマージョン減速レンズフィールドによる作用下で、前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムにおける第2偏向装置及び偏向制御電極により偏向させた後、前記検知待ち試料の表面に入射して信号電子を生成する。
【0149】
一実施例において、前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムにおける、反射電子を受信するための第1サブ検知器、偏向制御電極及び検知待ち試料は、減速静電レンズフィールドを構成する。前記減速静電レンズフィールドと前記走査型電子顕微鏡対物レンズシステムにおける磁気レンズで発生した磁界が前記検知待ち試料の近傍の領域で重なり合い、複合型イマージョン減速レンズフィールド605を構成する。
【0150】
第2偏向装置が602a及び602dという2つのサブ偏向器を含むことを例として、
図22a及び
図22bに記載の第2電子源401から発射した初期電子は、まず、
図22a及び
図22bにおける603に示すように、サブ偏向器602aにより、光学軸線410から離れる運動となるように偏向し、続いて、サブ偏向器602dを経過する。
【0151】
一実施例において、
図22aに示すように、前記偏向制御電極403に給電システムにより走査電圧が印加された後、走査電界を発生する。前記走査電界とサブ偏向器602dで発生した走査電界は共同で前記複合型イマージョン減速レンズフィールド605に結合し、複合型イマージョン減速レンズフィールドの中心軸線606を並進させ、走査型電子顕微鏡対物レンズシステムの中心軸線410と重なり合わなくなり、並進型イマージョン減速吸収対物レンズ(Moving Objective Retarding Receiving Immersion Lens:MORRIL)を形成する。複合型イマージョン減速レンズフィールドの中心軸線606が移動したため、走査型電子顕微鏡対物レンズシステムに、大フィールド走査時、小さな軸外収差及び偏向収差を持たせ、大フィールドの縁と中心に高い分解能を持たせる。
図22aにおける607は、サブ偏向器602a、サブ偏向器602d及び偏向制御電極403による共同制御下で初期電子ビームにより行われる格子型大フィールド走査を示す。ここで、607aは、走査フィールドの中心点であり、607bは、走査フィールドの縁の任意の点である。
【0152】
もう1つの実施例において、
図22bに示すように、前記偏向制御電極403に給電システムにより走査電圧が印加された後、走査電界を発生する。前記走査電界とサブ偏向器602dで発生した走査電界は共同で前記複合型イマージョン減速レンズフィールド605と結合する。
図22aと異なる結合方式により、複合型イマージョン減速レンズフィールドの中心軸線606を揺動させ、走査型電子顕微鏡対物レンズシステムの中心軸線410に平行でなくなり、揺動型イマージョン減速吸収対物レンズ(Swing Objective Retarding Receiving Immersion Lens:SORRIL)を形成する。複合型イマージョン減速レンズフィールドの中心軸線606が揺動したため、走査型電子顕微鏡対物レンズシステムに、大フィールド走査時、小さな軸外収差及び偏向収差を持たせ、大フィールドの縁と中心に高い分解能を持たせる。
図22aにおける607は、サブ偏向器602a、サブ偏向器602d及び偏向制御電極403による共同制御下で初期電子ビームにより行われる格子型大フィールド走査を示す。ここで、607aは、走査フィールドの中心点であり、607bは、走査フィールドの縁の任意の点である。
【0153】
第2偏向装置が602a、602b、4602c和602dという4個のサブ偏向器を含むことを例として、
図23a及び
図23bに記載するように、第2電子源401から発射した初期電子は
図23a及び
図23bにおける603に示すように、まずサブ偏向器602a、602b、602cを通過した後に、光学軸線410から離れる運動となるように偏向し、続いて、サブ偏向器602dを経過する。
【0154】
一実施例において、
図23aに示すように、前記偏向制御電極403に給電システムにより走査電圧が印加された後、走査電界を発生する。前記走査電界とサブ偏向器602dで発生した走査電界は共同で前記複合型イマージョン減速レンズフィールド605に結合し、複合型イマージョン減速レンズフィールドの中心軸線606を並進させ、走査型電子顕微鏡対物レンズシステムの中心軸線410と重なり合わなくなり、MORRILを形成する。複合型イマージョン減速レンズフィールドの中心軸線606が移動したため、走査型電子顕微鏡対物レンズシステムに、大フィールド走査時、小さな軸外収差及び偏向収差を持たせ、大フィールドの縁と中心に高い分解能を持たせる。
図23aにおける507は、サブ偏向器602a、602b、602c、602d及び偏向制御電極403による共同制御下で初期電子ビームにより行われる格子型大フィールド走査を示す。ここで、507aは、走査フィールドの中心点であり、507bは、走査フィールドの縁の任意の点である。
【0155】
もう1つの実施例において、
図23bに示すように、前記偏向制御電極403に給電システムにより走査電圧が印加された後、走査電界を発生する。前記走査電界とサブ偏向器602dで発生した走査電界は共同で前記複合型イマージョン減速レンズフィールド605と結合する。
図23aと異なる結合方式により、複合型イマージョン減速レンズフィールドの中心軸線606を揺動させ、走査型電子顕微鏡対物レンズシステムの中心軸線410と重なり合わなくなり、SORRILを形成する。複合型イマージョン減速レンズフィールドの中心軸線606が揺動したため、走査型電子顕微鏡対物レンズシステムに、大フィールド走査時、小さな軸外収差及び偏向収差を持たせ、大フィールドの縁と中心に高い分解能を持たせる。
図23bにおける507は、サブ偏向器602a、602b、602c、602d及び偏向制御電極403による共同制御下で初期電子ビームにより行われる格子型大フィールド走査を示す。ここで、507aは、走査フィールドの中心点であり、507bは、走査フィールドの縁の任意の点である。
【0156】
第2偏向装置に2個のサブ偏向器が含まれることに比べて、第2偏向装置に4個のサブ偏向器が含まれる場合、大フィールド走査方法において、走査フィールドをブロックに分割して走査する。まず、サブ偏向器602a、602d及び偏向制御電極403からなる偏向フィールドにより、初期電子ビームを各ブロック領域(例えば、507における左上隅のブロック領域507b)の開始位置に偏向させ、続いて、サブ偏向器602b及び602cにより、各ブロック領域を迅速に走査し、サブ偏向器602a、602d及び偏向制御電極403からなる偏向フィールドにより、初期電子ビームを次のブロック領域の開始位置に偏向させ、続いて、サブ偏向器602b及び602cにより、該ブロック領域を迅速に走査し、このように類推すると、最終的に大きな走査フィールド507を形成する。
【0157】
ステップS202において、前記信号電子を第1サブ検知器及び第2サブ検知器により受信するように、前記偏向制御電極の電圧値を制御する。
【0158】
本発明の実施例において、前記試料の電圧をV2に制御し、0≦V2≦−5kVである。前記第1サブ検知器の電圧値を0Vに制御し、前記第3電圧の電圧値V3を定電圧に制御し、V2≦V3≦0である。
【0159】
もう1つの実施形態において、前記試料の電圧V2を0に制御し、前記第1サブ検知器の電圧値をV5に制御し、5kV<V5≦30kVである。前記第3電圧の電圧値V3を定電圧に制御し、0<V3≦V5である。
【0160】
大走査フィールドの中心位置で発生した信号電子(二次電子及び反射電子)の検知を示す概略図は、
図24aに示すとおりである。この場合は、
図22a及び
図22bにおける走査フィールド中心点607a及び近傍で発生した信号電子の検知の場合に対応し、
図23a及び
図23bにおける中心ブロック領域507aを走査する時に発生した信号電子の検知の場合にも対応する。
図24aに示すように、この場合、試料からの反射電子801は集束されず、発散して前記第1サブ検知器404により受信される。二次電子802は、複合型イマージョン減速吸収レンズフィールドにより集束され、第1サブ検知器404の中心孔803を通過して引き続き上へ運動し、最後に第2サブ検知器405により受信される。本発明の実施例において、前記偏向制御電極403に印加される電位V3及びV4、試料に印加される電位V2を調整することで、前記反射電子801及び二次電子802の軌跡を調整する。これを、異なる条件下で好適に対応する検知器により受信されるようにする。
【0161】
大走査フィールドの縁で発生した信号電子の検知を示す概略図は、
図24bに示すとおりである。この場合は、
図22a及び
図22bにおける走査フィールドの縁点607b及び近傍で発生した信号電子の的検知の場合に対応し、
図23a及び
図23bにおける走査フィールドの縁のブロック領域507bを走査する時に発生した信号電子の検知の場合にも対応する。本発明の実施例において、前記偏向制御電極403に印加される電位V3及びV4、試料に印加される電位V2を調整することで、前記反射電子801及び二次電子802の軌跡を調整する。走査フィールドの縁で発生した反射電子及び二次電子を、好適に対応する検知器により受信されるようにする。
【0162】
要するに、制御装置の電圧値を調整することで、大走査フィールドの中心及び縁で発生した信号電子に対して高効率で検知することができる。
【0163】
当業者であれば、本発明で開示された技術的範囲内で容易に想到できる変動又は置換えは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。従って、本発明の保護範囲は、前記特許請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。