(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
配列番号33を含むvhCDR1、配列番号34を含むvhCDR2、配列番号35を含むvhCDR3、配列番号30を含むvlCDR1、配列番号31を含むvlCDR2及び配列番号32を含むvlCDR3を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
配列番号182又は配列番号184を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号183を含む可変軽鎖ドメインを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
請求項1〜9のいずれか一項に記載の参照抗原結合タンパク質のSTEAP1に対する結合をクロスブロックするか、又は請求項1〜9のいずれか一項に記載の参照抗原結合タンパク質により、STEAP1に対する結合からクロスブロックされる抗原結合タンパク質。
配列番号189に記載されるアミノ酸配列を含むvhCDR1、配列番号190に記載されるアミノ酸配列を含むvhCDR2、配列番号191に記載されるアミノ酸配列を含むvhCDR3、配列番号192に記載されるアミノ酸配列を含むvlCDR1、配列番号193に記載されるアミノ酸配列を含むvlCDR2及び配列番号194に記載されるアミノ酸配列を含むvlCDR3を含む抗PD−1抗原結合タンパク質をさらに含む、請求項19に記載の医薬組成物。
前記医薬は、有効量の抗PD−1抗原結合タンパク質と共同して有効量の前記抗STEAP1抗原結合タンパク質を投与するためのものである、請求項23に記載の使用。
前記抗PD1抗原結合タンパク質は、配列番号189に記載されるアミノ酸配列を含むvhCDR1、配列番号190に記載されるアミノ酸配列を含むvhCDR2、配列番号191に記載されるアミノ酸配列を含むvhCDR3、配列番号192に記載されるアミノ酸配列を含むvlCDR1、配列番号193に記載されるアミノ酸配列を含むvlCDR2及び配列番号194に記載されるアミノ酸配列を含むvlCDR3を含む、請求項22、24又は26のいずれか一項に記載の方法、使用又は使用のための抗原結合タンパク質。
前記抗PD1抗原結合タンパク質は、配列番号195のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号196のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、請求項27に記載の方法、使用又は使用のための抗原結合タンパク質。
前記抗PD1抗原結合タンパク質は、配列番号195のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号196のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、請求項28に記載の方法、使用又は使用のための抗原結合タンパク質。
前記抗PD−1抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項27〜29のいずれか一項に記載の方法、使用又は使用のための抗原結合タンパク質。
前記抗PD1抗原結合タンパク質は、配列番号197のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号198のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項27〜31のいずれか一項に記載の方法、使用又は使用のための抗原結合タンパク質。
請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質の前記軽鎖可変ドメインをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド及び請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質の重鎖可変ドメインをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む組成物。
抗原結合タンパク質を作製する方法であって、宿主細胞を、請求項36に記載のポリヌクレオチド又は請求項38に記載の組成物と、前記軽鎖可変ドメイン及び前記重鎖可変ドメインの発現を可能にする条件下で接触させることを含む方法。
前記第1の単量体は、アミノ酸置換E233P、L235V、G236A、S267K、R292C、N297G、V302C、E357Q及びS364Kを含み;前記第2の単量体は、アミノ酸置換N208D、E233P、L235V、G236A、S267K、R292C、Q295E、N297G、V302C、L368D、K370S、N384D、Q418E及びN421Dを含み;且つ両方の単量体は、234位において欠失を含む、請求項43に記載のヘテロ二量体抗体。
前記scFvは、配列番号170を含むvhCDR1、配列番号171を含むvhCDR2、配列番号172を含むvhCDR3、配列番号174を含むvlCDR1、配列番号175を含むvlCDR2及び配列番号176を含むvlCDR3を含むCDRを含む、請求項43又は44に記載のヘテロ二量体抗体。
前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記第2の可変重鎖ドメインは、CDR配列 配列番号14を含むvhCDR1、配列番号15又は配列番号21を含むvhCDR2、配列番号16を含むvhCDR3を含み、前記可変軽鎖ドメインは、CDR配列 配列番号11を含むvlCDR1、配列番号12を含むvlCDR2及び配列番号13を含むvlCDR3を含む、請求項43〜51のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記第2の可変重鎖ドメインは、CDR配列 配列番号33を含むvhCDR1、配列番号34を含むvhCDR2、配列番号35を含むvhCDR3を含み、前記可変軽鎖ドメインは、CDR配列 配列番号30を含むvlCDR1、配列番号31を含むvlCDR2及び配列番号32を含むvlCDR3を含む、請求項43〜51のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記第2の可変重鎖ドメインは、配列番号182又は配列番号184を含み、且つ前記可変軽鎖ドメインは、配列番号183を含む、請求項43〜51のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記第2の可変重鎖ドメインは、配列番号185を含み、且つ前記可変軽鎖ドメインは、配列番号186を含む、請求項43〜51のいずれか一項に記載のヘテロ二量体抗体。
a)前記第1の単量体は、配列番号19又は配列番号20の配列を含み、前記第2の単量体は、配列番号18又は199の配列を含み、且つ前記共通の軽鎖は、配列番号17の配列を含むか;又は
b)前記第1の単量体は、配列番号38の配列を含み、前記第2の単量体は、配列番号37の配列を含み、且つ前記共通の軽鎖は、配列番号36の配列を含む、請求項43に記載のヘテロ二量体抗体。
前記抗PD1抗原結合タンパク質は、配列番号189に記載されるアミノ酸配列を含むvhCDR1、配列番号190に記載されるアミノ酸配列を含むvhCDR2、配列番号191に記載されるアミノ酸配列を含むvhCDR3、配列番号192に記載されるアミノ酸配列を含むvlCDR1、配列番号193に記載されるアミノ酸配列を含むvlCDR2及び配列番号194に記載されるアミノ酸配列を含むvlCDR3を含む、請求項65、67又は69のいずれか一項に記載の方法、使用又は使用のための抗原結合タンパク質。
前記抗PD1抗原結合タンパク質は、配列番号195のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号196のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、請求項70に記載の方法、使用又は使用のための抗原結合タンパク質。
前記抗PD1抗原結合タンパク質は、配列番号195のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号196のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む、請求項71に記載の方法、使用又は使用のための抗原結合タンパク質。
前記抗PD−1抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項70〜72のいずれか一項に記載の方法、使用又は使用のためのヘテロ二量体抗体。
前記抗PD1抗原結合タンパク質は、配列番号197のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号198のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項70〜75のいずれか一項に記載の方法、使用又は使用のためのヘテロ二量体抗体。
前記抗PD1抗原結合タンパク質は、配列番号208のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号209のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項70〜75のいずれか一項に記載の方法、使用又は使用のためのヘテロ二量体抗体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
STEAP1は、3つの細胞外ループ及び2つの細胞内ループをもたらす6つの膜貫通ドメインを含む339アミノ酸のタンパク質である。ヒトSTEAP1のアミノ酸配列は、配列番号2として本明細書に記載される。細胞外ループの推定される位置は、アミノ酸92〜118(細胞外ループ1)、アミノ酸185〜217(細胞外ループ2)及びアミノ酸279〜290(細胞外ループ3)である。STEAP1は、正常組織と比較して前立腺癌において差次的に発現され、骨及びリンパ節前立腺癌転移巣における発現の増加が原発性前立腺癌試料と比較して観察された。STEAP1は、例えば、T細胞依存性の細胞傷害活性又は前立腺癌細胞のリダイレクト溶解を誘発するための二重特異性抗STEAP1/抗CD3 T細胞リクルート抗体など、診断及び抗体に基づく治療薬のための理想的な標的となる。本開示は、本明細書にさらに記載されるとおり、STEAP1に結合する抗原結合タンパク質を提供する。
【0015】
抗原結合タンパク質
「抗原結合タンパク質」は、指定された標的抗原(STEAP1など)に結合する部分を含むタンパク質である。抗原結合タンパク質は、抗原結合部分が、抗原結合タンパク質の抗原への結合を促進する立体構造をとることを可能にする骨格又はフレームワーク部分を含む。例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、抗体若しくは免疫グロブリン(例えば、ヘテロ二量体及び/又は二重特異性抗体)、又は抗原結合抗体断片、又は抗体タンパク質生成物である。
【0016】
用語「抗体」は、インタクトな抗原結合免疫グロブリンを指す。「抗体」は、抗原結合タンパク質の一種である。抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のいずれか1つを含むIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMの抗体であり得る。様々な実施形態において、インタクトな抗体は、2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖を含む。抗体は、可変領域及び定常領域を有する。IgG形式において、可変領域は、一般に、約100〜110以上のアミノ酸であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、抗原認識に主に関与し、且つ異なる抗原に結合する他の抗体間で実質的に変動する。可変領域は、通常、少なくとも3つの重鎖又は軽鎖のCDRを含み(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901−917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877−883も参照されたい)、それらは、フレームワーク領域(Kabat et al.,1991によってフレームワーク領域1〜4、FR1、FR2、FR3及びFR4と呼ばれ;Chothia and Lesk,1987、前掲も参照されたい)内にある。定常領域は、抗体が免疫系の細胞及び分子を動員することを可能にする。
【0017】
様々な態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。ある種の態様では、抗体は、ヒト抗体である。ある種の態様では、抗体(又は他の抗原結合タンパク質)は、キメラであるか又はヒト化されている。用語「キメラ」は、2つ以上の異なる抗体に由来するドメインを含有する抗体を指す。キメラ抗体は、例えば、1つの種に由来する定常ドメイン及び第2の種に由来する可変ドメインを含有することができるか、又はより一般的には少なくとも2つの種に由来する一続きのアミノ酸配列を含有することができる。「キメラ」及び「ヒト化」の両方は、2つ以上の種に由来する領域を組み合わせる抗原結合タンパク質を指す場合が多い。キメラ抗体は、同じ種内の2つ以上の異なる抗体のドメインを含有することもできる。一実施形態では、キメラ抗体は、CDR移植抗体である。
【0018】
用語「ヒト化」は、抗原結合タンパク質に関して使用される場合、元の供給源の抗体よりも真のヒト抗体に類似した構造及び免疫機能を有するように操作された、非ヒト供給源に由来するCDR領域を少なくとも有する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)を指す。例えば、ヒト化は、マウス抗体などの非ヒト抗体に由来するCDRをヒトフレームワーク領域に移植することを伴い得る。一般的に、ヒト化抗体において、CDRを除く抗体の全体は、ヒト起源のポリヌクレオチドによってコードされるか、又はそのCDRの範囲内を除いてそのような抗体と同一である。一部又は全てが非ヒト生物に起源を有する核酸によってコードされるCDRは、ヒト抗体可変領域のβシートフレームワークに移植されて抗体を生成し、その特異性は、移植されたCDRによって決定される。そのような抗体の作製は、例えば、国際公開第92/11018号パンフレット、Jones,1986,Nature 321:522−525;及びVerhoeyen et al.,1988,Science 239:1534−1536において記載されており、これらは、全て全体として参照により組み込まれる。対応するドナー残基に対して選択されたアクセプターフレームワーク残基の「復帰変異」は、初期移植コンストラクトにおいて失われる親和性を回復するために利用されることが多い(例えば、全てが全体として参照により組み込まれる米国特許第5530101号明細書;同第5585089号明細書;同第5693761号明細書;同第5693762号明細書;同第6180370号明細書;同第5859205号明細書;同第5821337号明細書;同第6054297号明細書;及び同第6407213号明細書を参照されたい)。ヒト化抗体は、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も最適に含み、これは、通常、ヒト免疫グロブリンのものであり、したがって、通常、ヒトFc領域を含むことになる。
【0019】
キメラ抗体、ヒト化抗体を作製し、且つ非ヒト抗体を再構築するための様々な技術及び方法は、当技術分野でよく知られる。全てが全体として参照により組み込まれるTsurushita&Vasquez,2004,Humanization of Monoclonal Antibodies,Molecular Biology of B Cells,533−545,Elsevier Science(USA)及びその中で引用される参考文献;Jones et al.,1986,Nature 321:522−525;Riechmann et al.,1988;Nature 332:323−329;Verhoeyen et al.,1988,Science,239:1534−1536;Queen et al.,1989,Proc Natl Acad Sci,USA 86:10029−33;He et al.,1998,J.Immunol.160:1029−1035;Carter et al.,1992,Proc Natl Acad Sci USA 89:4285−9,Presta et al.,1997,Cancer Res.57(20):4593−9;Gorman et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4181−4185;O’Connor et al.,1998,Protein Eng 11:321−8、米国特許出願公開第20030039649号明細書;米国特許第5,869,619号明細書、同第5,225,539号明細書、同第5,821,337号明細書、同第5,859,205号明細書;Padlan et al.,1995,FASEB J.9:133−39;及びTamura et al.,2000,J.Immunol.164:1432−41を参照されたい。非ヒト抗体可変領域の免疫原性を低減するヒト化又は他の方法は、例えば、全体として参照により組み込まれるRoguska et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:969−973において記載されるとおりのリサーフェシング方法を含み得る。親抗体は、親和性成熟され得、これは、当技術分野でよく理解されている。構造に基づく方法は、例えば、米国特許出願公開第20060008883号明細書において記載されるとおり、ヒト化及び親和性成熟のために利用され得る。選択に基づく方法は、抗体可変領域をヒト化し且つ/又は親和性成熟させるために利用され得、全てが全体として参照により組み込まれるWu et al.,1999,J.Mol.Biol.294:151−162;Baca et al.,1997,J.Biol.Chem.272(16):10678−10684;Rosok et al.,1996,J.Biol.Chem.271(37):22611−22618;Rader et al.,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:8910−8915;Krauss et al.,2003,Protein Engineering 16(10):753−759において記載される方法を含むが、これらに限定されない。ヒト化は、ヒト配列により類似した非ヒト配列を作製するアミノ酸置換を選択することも含み得る。他のヒト化方法は、CDRの部分のみを移植することを含み得、全てが全体として参照により組み込まれるTan et al.,2002,J.Immunol.169:1119−1125;De Pascalis et al.,2002,J.Immunol.169:3076−3084において記載される方法を含むが、これらに限定されない。
【0020】
他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、抗原結合抗体断片、すなわち抗体の軽鎖の部分若しくは全て及び/又は抗体の重鎖の部分若しくは全てを欠く抗体の断片である。抗体断片は、組換えにより生成され得るか、又は例えばパパイン及びペプシンなどの酵素を使用してインタクト抗体を切断することによって作製され得る。パパインは、抗体を切断して2個のFab断片及び1個のFc断片をもたらす。ペプシンは、抗体を切断してF(ab’)
2断片及びpFc’断片をもたらす。例示的な場合において、抗原結合抗体断片は、Fab断片又はF(ab’)
2断片である。Fab断片は、VL、VH、CL及びCH1ドメインを有する一価断片である。Fabは、単離におけるこの領域又は完全長抗体、抗体断片などに関連して、この領域を指し得る。F(ab’)
2断片は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を有する二価断片である。
【0021】
抗体の構造は、少なくとも約12〜150kDaの分子量範囲に及び、且つ単量体(n=1)〜二量体(n=2)、三量体(n=3)、四量体(n=4)、また場合によりさらに高次の価数(n)範囲を有する広範な代替形態を創出するために利用されており;このような代替形態は、本明細書では「抗体タンパク質生成物」と称され、抗原結合タンパク質の例である。抗体タンパク質生成物としては、完全な抗体構造に基づくもの及び完全な抗原結合能力を保持する抗体断片を模倣するもの、例えばscFv及びVHH/VH(後述)が挙げられる。一本鎖抗体(scFv)は、VL及びVH領域がリンカー(例えば、通常約15アミノ酸長のアミノ酸残基の合成配列)を介して結合されて、連続的なタンパク質鎖を形成する抗体であり、リンカーは、タンパク質鎖がそれ自体折り畳まれ、且つ一価抗原結合部位を形成することを可能にするのに十分な長さである(例えば、Bird et al.,1988,Science 242:423−26及びHuston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−83を参照されたい)。
【0022】
完全な抗原結合部位を保持する抗原結合断片は、全体的に可変(V)領域(単一抗体のVL及びVHドメイン)からなるFv断片である。分子の安定性のためにscFv(一本鎖断片可変)断片にV領域を連結するため、多くの場合、可溶性の柔軟性のあるアミノ酸ペプチドリンカーを使用するか、又は定常(C)ドメインをV領域に付加してFab断片(断片、抗原結合)を生成する。scFv及びFab断片は、宿主細胞、例えば原核又は真核の宿主細胞で容易に産生され得る。他の抗体タンパク質生成物としては、ジスルフィド結合安定化scFv(ds−scFv)、一本鎖Fab(scFab)、一本鎖抗体(SCA)、ドメイン抗体(dAb)(例えば、VHドメイン、VLドメイン又はVH若しくはVLドメインの抗原結合断片を含むペプチド)、Fd断片(VH及びCH1ドメインを含む)を含むペプチド、相補性決定領域(CDR)断片並びにダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディのような二量体及び多量体抗体形式又はオリゴマー化ドメインに連結されたscFvからなる異なる形式を含むミニボディ(miniAb)が挙げられる。最小断片は、ラクダ科動物重鎖AbのVHH/VH及び単一ドメインAb(sdAb)である。ペプチボディ又はペプチド−Fc融合体は、さらに別の抗体タンパク質生成物である。ペプチボディの構造は、Fcドメイン上に移植された生物学的に活性のあるペプチドからなる。ペプチボディは、当技術分野でさらに記載されている。例えば、Shimamoto et al.,mAbs 4(5):586−591(2012)を参照されたい。
【0023】
代わりに、抗体タンパク質生成物は、例えば、移植されたCDR又はCDR誘導体を有する代替のタンパク質骨格又は人工の骨格を含み得る。そのような骨格としては、例えば、抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化するために導入される変異を含む抗体に由来する骨格及び例えば生体適合性ポリマーを含む完全に合成的な骨格が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Korndorfer et al.,2003,Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics,Volume 53,Issue 1:121−129;Roque et al.,2004,Biotechnol.Prog.20:639−654を参照されたい。加えて、骨格として、フィブロネクチン成分を利用する抗体模倣物に基づく骨格だけでなく、ペプチド抗体模倣物(「PAM」)が使用され得る。
【0024】
様々な態様において、抗原結合タンパク質は、i)vhCDR1 配列番号14、vhCDR2 配列番号15若しくはvhCDR2 配列番号21及びvhCDR3 配列番号16、又はii)vhCDR1 配列番号33、vhCDR2 配列番号34及びvhCDR3 配列番号35から3、2若しくは1個以下のアミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を含む重鎖CDR;並びに/又はi)vlCDR1 配列番号11、vlCDR2 配列番号12及びvlCDR3 配列番号13;又はii)vlCDR1 配列番号30、vlCDR2 配列番号31及びvlCDR3 配列番号32から3、2若しくは1個以下のアミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む。各々のそのような配列の相違は、独立して、欠失、挿入又は置換のいずれかであるが、置換(例えば、保存的置換)が好ましい。保存的置換の例としては、以下の群内での交換が挙げられるが、これらに限定されない:小さい脂肪族の非極性又はわずかに極性の残基、Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;極性、負に荷電した残基及びそれらのアミド及びエステル、Asp、Asn、Glu、Gln、システイン酸及びホモシステイン酸;極性、正に荷電した残基、His、Arg、Lys、オルニチン(Orn);大きい脂肪族の非極性残基、Met、Leu、Ile、Val、Cys、ノルロイシン(Nle)、ホモシステイン;及び大きい芳香族残基:Phe、Tyr、Trp、アセチルフェニルアラニン。
【0025】
様々な態様において、抗原結合タンパク質は、以下のCDR配列を含む:a)配列番号14を含むvhCDR1、配列番号15若しくは配列番号21を含むvhCDR2及び配列番号16を含むvhCDR3、又はb)配列番号33を含むvhCDR1、配列番号34を含むvhCDR2及び配列番号35を含むvhCDR3。代わりに又は加えて、抗原結合タンパク質は、以下のCDR配列を含む:a)配列番号11を含むvlCDR1、配列番号12を含むvlCDR2及び配列番号13を含むvlCDR3、又はb)配列番号30を含むvlCDR1、配列番号32を含むvlCDR2及び配列番号33を含むvlCDR3。
【0026】
したがって、様々な態様において、抗原結合タンパク質は、配列番号14を含むvhCDR1、配列番号15又は配列番号21を含むvhCDR2、配列番号16を含むvhCDR3、配列番号11を含むvlCDR1、配列番号12を含むvlCDR2及び配列番号13を含むvlCDR3を含む。代替的な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号33を含むvhCDR1、配列番号34を含むvhCDR2、配列番号35を含むvhCDR3、配列番号30を含むvlCDR1、配列番号31を含むvlCDR2及び配列番号32を含むvlCDR3を含む。
【0027】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、配列番号183若しくは配列番号186と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一若しくは100%同一)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;及び/又は配列番号182、配列番号184若しくは配列番号185と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一若しくは100%同一)のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。例えば、抗原結合タンパク質は、(i)配列番号183及び配列番号182、(ii)配列番号184及び配列番号183、又は(iii)配列番号185及び配列番号186を含み得る。様々な態様において、抗原結合タンパク質は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個の残基でのみ前述のアミノ酸配列と異なるアミノ酸の配列を含む軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み、各々のそのような配列の相違は、独立して、欠失、挿入又は置換(例えば、保存的置換)のいずれかである。様々な態様において、配列の相違は、CDRの外部(例えば、フレームワーク領域内)に位置する。
【0028】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、配列番号17若しくは配列番号36と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一若しくは100%同一)のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び/又は配列番号18、配列番号199若しくは配列番号37と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一若しくは100%同一)のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。例えば、抗原結合タンパク質は、(i)配列番号17及び配列番号18;(ii)配列番号17及び配列番号199;又は(iii)配列番号36及び配列番号37を含み得る。
【0029】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、配列番号200若しくは配列番号204と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一若しくは100%同一)のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び/又は配列番号201、配列番号203若しくは配列番号205と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一若しくは100%同一)のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。例えば、抗原結合タンパク質は、(i)配列番号200及び配列番号201;(ii)配列番号200又は配列番号203;(iii)配列番号204及び配列番号205を含み得る。
【0030】
競合、エピトープ、結合親和性
抗原結合タンパク質は、配列番号2のSTEAP1に結合する。特異的な結合(すなわち非特異的な相互作用と測定できるほど異なるSTEAP1への結合)は、例えば、一般的に結合活性を有しない類似構造の分子である対照分子の結合と比較して分子の結合を測定することによって測定され得る。例えば、特異的な結合は、標的に類似する対照分子との競合により測定され得る。
【0031】
STEAP1への抗原結合タンパク質の結合親和性は、解離定数(Kd)の点から記載され得る。例示的な態様では、本明細書で提供される抗原結合タンパク質のKdは、マイクロモル、ナノモル、ピコモル又はフェムトモルである。通常、抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、標的抗原又はエピトープに対して対照分子の20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍、10,000倍以上であるKdを有することになる。また、特定の抗原に対する特異的な結合は、例えば、対照と比較してエピトープに関して少なくとも20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍、10,000倍以上の抗原又はエピトープに対するKA又はKaを有する抗体によって示され得、ここで、KA又はKaは、特定の抗体−抗原相互作用の結合速度を指す。例示的な態様では、STEAP1に関して本明細書に提供される抗原結合タンパク質のKDは、10
−7M以下、10
−8M以下、10
−9M以下、10
−10M以下、10
−11M以下又は10
−12M以下である。例えば、抗原結合タンパク質のKDは、任意選択により、約10
−4〜10
−6M、又は約10
−7〜10
−9M、又は約10
−10〜10
−12M、又は約10
−7〜10
−12、又は約10
−9〜10
−12、又は約10
−13〜10
−15Mの範囲内である。代わりに(又は加えて)、抗原結合タンパク質は、STEAP1からの低い解離速度を有する。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、1×10
−4s
−1以下のK
offを有する。別の実施形態では、K
offは、5×10
−5s
−1以下である。様々な態様において、抗原結合タンパク質は、高レベルのSTEAP1を発現する標的細胞と、より少なくSTEAP1を示すそれらのオフターゲット細胞との間で差異化する。例えば、様々な態様において、抗原結合タンパク質は、1細胞当たり約100,000個より多いSTEAP受容体(例えば、1細胞当たり約200,000個のSTEAP1受容体)〜1細胞当たり約10,000個のSTEAP1受容体を含む細胞に優先的に結合する。STEAP1に関連する競合、結合親和性及び結合特異性に関する本開示は、第2若しくは第3の抗原(例えば、CD3)への多特異性の抗原結合タンパク質の結合又は抗STEAP1抗原結合タンパク質と組み合わせて使用される異なる抗体にも適用されることが理解されるであろう。例えば、例示的な態様では、CD3(又は下記のとおりのPD−1)に関して本明細書に提供される抗原結合タンパク質のKdは、10
−7M以下、10
−8M以下、10
−9M以下、10
−10M以下、10
−11M以下又は10
−12M以下である。例えば、抗原結合タンパク質のKdは、任意選択により、約10
−4〜10
−6M、又は約10
−7〜10
−9M、又は約10
−10〜10
−12M、又は約10
−7〜10
−12、又は約10
−9〜10
−12、又は約10
−13〜10
−15Mの範囲内である。代わりに(又は加えて)、抗原結合タンパク質は、CD3からの低い解離速度を有する。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、1×10
−4s
−1以下のK
offを有する。別の実施形態では、K
offは、CD3に関して5×10
−5s
−1以下である。
【0032】
本開示は、本明細書に記載される抗原結合タンパク質(例えば、本明細書に記載されるとおりのXmAb
2+1形式において含むAb−A、Ab−A1、Ab−A2、Ab−B又はAb−B1)のいずれかによるSTEAP1への結合に関して競合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)をさらに提供する。換言すると、本開示は、本明細書に記載される参照抗原結合タンパク質のSTEAP1への結合をクロスブロックするか、又は参照抗原結合タンパク質により、STEAP1への結合からクロスブロックされる抗原結合タンパク質を提供する。「競合する」は、1つの抗原結合タンパク質がSTEAP1への参照抗原結合タンパク質の結合を妨げるか、低減するか又は阻害することを意味する。多くの種類の競合結合アッセイを使用することができ、例えば表面プラズモン共鳴、固相直接又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接又は間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al.,1983,Methods in Enzymology 9:242−253を参照されたい)、固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Kirkland et al.,1986,J.Immunol.137:3614−3619を参照されたい)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Pressを参照されたい);1−125標識を用いた固相直接標識RIA(例えば、Morel et al.,1988,Molec.Immunol.25:7−15を参照されたい);固相直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Cheung,et al.,1990,Virology 176:546−552を参照されたい);及び直接標識RIA(Moldenhauer et al.,1990,Scand.J.Immunol.32:77−82)がある。典型的には、そのようなアッセイは、固体表面に結合されるか又は細胞上に暴露される精製抗原、非標識試験抗原結合タンパク質及び標識参照抗原結合タンパク質の使用を伴う。競合的阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で固体表面又は細胞に結合した標識の量を決定することによって測定される。通常、試験抗原結合タンパク質は、過剰に存在する。競合アッセイ(抗原結合タンパク質を競合させる)によって同定される抗原結合タンパク質としては、参照抗原結合タンパク質と同じエピトープ、参照抗原結合タンパク質によって認識されるエピトープと重複するエピトープ及び重複しないが、試験抗原結合タンパク質と参照抗原結合タンパク質との間に生じる立体障害を可能にするエピトープに結合する抗原結合タンパク質が挙げられる。通常、競合する抗原結合タンパク質が過剰に存在すると、それは、共通の抗原への参照抗原結合タンパク質の結合を少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%又は75%阻害することになる。いくつかの場合、結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%又は97%以上阻害される。少なくとも1つの態様では、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)は、STEAP1への参照抗原結合タンパク質の結合が少なくとも80%又は少なくとも90%減少されるように、参照抗原結合タンパク質(例えば、任意選択により、実施例において記載される二重特異性抗体形式などの二重特異性抗体形式(例えば、XmAb
2+1)において、本明細書に記載されるAb−A、Ab−A1、Ab−A2、Ab−B又はAb−B1)と競合する。
【0033】
抗原結合タンパク質は、配列番号2のSTEAP1に結合する。競合(又はクロスブロッキング)抗原結合タンパク質は、参照抗原結合タンパク質によって認識されるエピトープと重複するエピトープ又は重複しないが、試験抗原結合タンパク質と参照抗原結合タンパク質との間に生じる立体障害を可能にするエピトープに結合し得る。様々な態様において、抗原結合タンパク質は、本明細書に記載されるAb−A、Ab−A1、Ab−A2(N67Q)、Ab−B若しくはAb−B1又はその二重特異性若しくはヘテロ二量体のバージョン(例えば、Ab−A1 XmAb
2+1、Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1又はAb−B1 XmAb
2+1)などの参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する。例えば、本開示の抗原結合タンパク質は、任意選択により、第2の細胞外ループの外側の領域でSTEAP1に結合する。抗原結合タンパク質は、少なくとも1つの実施形態において、アミノ酸92〜118(細胞外ループ1)及び/又はアミノ酸279〜290(細胞外ループ3)内にあるSTEAP1の領域に結合する。様々な態様において、本開示は、アミノ酸92〜118及びアミノ酸279〜290内のSTEAP1の領域に結合する抗原結合タンパク質を提供する。また、任意選択により、抗原結合タンパク質は、STEAP2(UniProtKB No.Q8NFT2;配列番号177)に結合しない。必要に応じて、参照抗原結合タンパク質及び/又は試験される抗原結合タンパク質のエピトープは、STEAP1又はその部分に結合された抗原結合タンパク質のX線血漿構造を解析することによって決定され得る。そのような一実施形態では、エピトープは、抗原結合タンパク質(参照又は試験)がそれに結合される場合、結合していない場合と比較して少なくとも10%の溶媒への接近性の低下を示すSTEAP1の細胞外部分上のそれらの残基として定義される。
【0034】
抗原結合タンパク質を作製する方法
抗原結合タンパク質(例えば、抗体、抗原結合抗体断片及び抗体タンパク質生成物)を作製する好適な方法は、当技術分野で知られる。例えば、抗体を生成するための標準的なハイブリドーマ法は、例えば、Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988)及びCA.Janeway et al.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,NY(2001)において記載されている。EBV−ハイブリドーマ法及びバクテリオファージベクター発現系は、例えば、Haskard and Archer,J.Immunol.Methods,74(2),361−67(1984)、Roder et al.,Methods Enzymol.,121,140−67(1986)及びHuse et al.,Science,246,1275−81(1989)において記載されている。非ヒト動物において抗体を産生する方法は、例えば、米国特許第5,545,806号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,714,352号明細書及び同第5,814,318号明細書;並びに米国特許出願公開第2002/0197266号明細書(全てが参照により本明細書に組み込まれる)において記載されている。ある種の態様では、STEAP1に結合する組換え抗原結合タンパク質が提供される。これに関連して、「組換えタンパク質」は、組換え手法を用いて、例えば組換え核酸の発現によって作製されるタンパク質である。組換えタンパク質の産生のための方法及び技術は、当技術分野においてよく知られている。
【0035】
結合部位におけるCDRの分子進化も、親和性が増大した抗原結合タンパク質(例えば、抗体)、例えばSchier et al.,1996,J.Mol.Biol.263:551によって記載されるとおりのc−erbB−2に対する親和性の増大を有する抗体を生成するために使用されてきた。そのような技術は、抗STEAP1抗原結合タンパク質(又は本明細書に記載される他の抗原結合タンパク質)を調製するのに有用である。
【0036】
STEAP1などの抗原に結合する能力に関して抗原結合タンパク質を試験する方法は、当技術分野において知られており、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降法、表面プラズモン共鳴(例えば、BIAcore(登録商標))及び競合的阻害アッセイ(例えば、全てが全体として且つ特に競合アッセイに関して参照により本明細書に組み込まれるJaneway et al.,下記;米国特許出願公開第2002/0197266号明細書;及び米国特許第7,872,106号明細書を参照されたい)を含む。実際に、抗原又はそのエピトープへの結合に関して第2の抗原結合タンパク質と競合する抗原結合タンパク質の能力を試験するアッセイは、当技術分野において知られており、且つ例えばSTEAP1に結合する抗体の能力を試験するために使用され得る。例えば、米国特許出願公開第2014/0178905号明細書、Chand et al.,Biologicals 46:168−171(2017);Liu et al.,Anal Biochem 525:89−91(2017);及びGoolia et al.,J Vet Diagn Invest 29(2):250−253(2017)を参照されたい。表面プラズモン共鳴を、抗原結合タンパク質及び第2の抗原結合タンパク質の結合定数を決定するために使用することができ、2つの結合定数が比較され得る。
【0037】
多重特異性抗原結合タンパク質
抗体技術において進行中の問題は、一般に異なる抗原を近接させることができ、且つ新規の機能性及び新規の療法をもたらす、2つ(以上)の異なる抗原に同時に結合する二重特異性(及び/又は多重特異性)抗体についての要望である。本開示は、STEAP1及び1つ以上の追加の標的抗原に結合する新規の多重特異性抗原結合タンパク質を提供する。好ましい実施形態では、本開示は、上記のとおりの抗STEAP1結合ドメイン及び第2の標的抗原(異なるSTEAP1エピトープであり得るが、一般に異なる抗原である)に結合する結合領域を含む新規の二重特異性抗原結合タンパク質(例えば、二重特異性抗体)を提供する。様々な態様において、第2の抗原は、エフェクター細胞、すなわち1つ以上のFcR(例えば、FcγRIII)を発現し、且つ抗体のFc領域に起因する1つ以上のエフェクター機能を遂行する白血球上に存在する細胞表面分子である。
【0038】
エフェクター機能の例としては、Clq結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、ファゴサイトーシス、細胞表面受容体の下方制御及びB細胞活性化が挙げられるが、これらに限定されない。ADCCに関与するエフェクター細胞の例としては、細胞傷害性T細胞、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球及び好中球が挙げられるが、これらに限定されない。様々な態様において、本開示は、CD3(例えば、配列番号1)及びSTEAP1(配列番号2)の両方に結合する二重特異性抗原結合タンパク質(例えば、二重特異性抗体)を提供する。様々な態様において、本開示は、CD3並びにSTEAP1の細胞外ループ1及び3の両方に結合する二重特異性抗原結合タンパク質(例えば、二重特異性抗体)を提供する。
【0039】
様々な態様において、二重特異性抗原結合タンパク質は、高レベルのSTEAP1を発現する標的細胞と、より少なくSTEAP1を示すそれらのオフターゲット細胞との間で差異化する。この点に関して、いくつかの実施形態では、本開示の二重特異性抗原結合タンパク質(例えば、ヘテロ二量体抗体)は、腫瘍細胞のT細胞依存的な殺滅を優先的に媒介することができ、低減した「オフターゲット」効果を示す。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載されるSTEAP1抗原結合タンパク質及びCD3抗原結合領域を含む二重特異性抗体は、10,000より多いSTEAP1の表面密度を有する細胞のT細胞依存的な殺滅を優先的に媒介する(例えば、EC90は、10,000未満のSTEAP1の表面密度を有する細胞と比較して、10,000より多いSTEAP1の表面密度を有する細胞に関して少なくとも10倍少ない)。
【0040】
本開示は、CDR並びに完全な可変軽鎖及び重鎖のセットを含む新規の抗CD3配列を含む二重特異性抗原結合タンパク質を提供する。いくつかの態様では、二重特異性コンストラクトのCD3結合ドメイン(任意選択により下記のとおりのscFv)は、vhCDR1 配列番号170、vhCDR2 配列番号171及びvhCDR3 配列番号172から3、2又は1個以下のアミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を含む重鎖CDRを含む可変重鎖ドメイン並びにvlCDR1 配列番号174、vlCDR2 配列番号175及びvlCDR3 配列番号176から3、2又は1個以下のアミノ酸だけ異なるアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む可変軽鎖ドメインを含む。例えば、本開示は、配列番号169と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一又は100%同一)のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメイン及び配列番号173と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一又は100%同一)のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む多重特異性(例えば、二重特異性)コンストラクトを提供する。
【0041】
例えば、抗CD3部分は、任意選択により、CDR配列 配列番号170を含むvhCDR1、配列番号171を含むvhCDR2、配列番号172を含むvhCDR3、配列番号174を含むvlCDR1、配列番号175を含むvlCDR2及び配列番号176を含むvlCDR3を含む。この点に関して、CD3結合領域は、任意選択により、配列番号169の可変重鎖領域及び配列番号173の可変軽鎖領域を含む。
【0042】
二重特異性抗原結合タンパク質は、本明細書に記載されるSTEAP1及びCD3結合ドメインなどの2つの抗原結合ドメイン(例えば、各抗原は、一価で結合される)又は3つ(以上)の抗原結合ドメイン(例えば、一方の抗原は、二価で結合され、且つ他方は、一価で結合される)を含み得る。二重特異性抗体としては、従来型の二重特異性免疫グロブリン(例えば、BsIgG)、付加された抗原結合ドメイン(例えば、軽鎖又は重鎖のアミノ末端又はカルボキシ末端が、単一ドメイン抗体又は対になった抗体可変ドメイン(例えば、Fv又はscFv)などの追加の抗原結合ドメインに連結される)を含むIgG、BsAb断片(例えば、二重特異性一本鎖抗体)、二重特異性融合タンパク質(例えば、エフェクター部分に融合された抗原結合ドメイン)及びBsAbコンジュゲートが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、様々な二重特異性形式を記載し、且つ参照により本明細書に組み込まれるSpiess et al.,Molecular Immunology 67(2)Part A:97−106(2015)を参照されたい。二重特異性コンストラクトの例としては、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ、タンデムscFv及びFab
2二重特異物並びに完全長抗体を含む操作されたコンストラクトが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、全てが明示的に本明細書に組み込まれるChames&Baty,2009,mAbs 1[6]:1−9;及びHolliger&Hudson,2005,Nature Biotechnology 23[9]:1126−1136;Wu et al.,2007,Nature Biotechnology 25[11]:1290−1297;Michaelson et al.,2009,mAbs 1[2]:128−141;国際公開第2009032782号パンフレット及び国際公開第2006020258号パンフレット;Zuo et al.,2000,Protein Engineering 13[5]:361−367;米国特許出願公開第20020103345号明細書;Shen et al.,2006,J Biol Chem 281[16]:10706−10714;Lu et al.,2005,J Biol Chem 280[20]:19665−19672;並びにKontermann,2012 MAbs 4(2):182を参照されたい。
【0043】
様々な態様において、二重特異性抗原結合タンパク質は、二重特異性一本鎖抗体(BiScFv)である。軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、任意選択によりリンカーを介して類似の構造の第2の抗原結合ドメインに連結された第1の抗原結合ドメインとして互いに一本鎖として連結される。リンカーが使用される場合、そのリンカーは、好ましくは、第1及び第2の抗原結合ドメインの各々が、互いに独立して、それらの差異のある結合特異性を保持し得ることを確実にするのに十分な長さ及び配列である。二重特異性一本鎖分子は、当技術分野において知られ、全てが全体として参照により組み込まれる米国特許第7635472号明細書、国際公開第99/54440号パンフレット;Mack,J.Immunol.(1997),158,3965−3970;Mack,PNAS,(1995),92,7021−7025;Kufer,Cancer Immunol.Immunother.,(1997),45,193−197;Loffler,Blood,(2000),95,6,2098−2103;Bruhl,Immunol.,(2001),166,2420−2426;及びKipriyanov,J.Mol.Biol.,(1999),293,41−56においてさらに記載されている。
【0044】
代替の二重特異性抗原結合形式は、例えば、本明細書に参照により組み込まれる米国特許出願公開第2011/0054151号明細書に記載されている。例えば、二重特異性抗原結合タンパク質は、IgG抗体がC末端でFv断片と融合されているmAb−Fv形式を含み得る。代わりに、IgG抗体がC末端でFabと融合されているmAb−Fab形式が使用され得る。mAb−Fabコンストラクトは、CH及びCL定常ドメインC末端を含有するが、mAb−Fvは、C末端Fv融合体にそれらを含有しない。米国特許出願公開第2011/0054151号明細書の
図8を参照されたい。任意選択により、mAb−Fv及びmAb−FabコンストラクトのN末端結合領域は、軽鎖及びCH1ドメインを欠く(すなわち単一ドメインVHH領域を含む)。mAb−Fv及びmAb−Fabコンストラクトは、3つの可変領域を含有し、その結果、それらは、第1の抗原に二価で結合し、且つ第2の抗原に一価で結合する。好適な二重特異性抗原結合形式には、米国特許出願公開第2011/0054151号明細書に記載されるFab−Fv及びFab−Fabコンストラクトも含まれる。Fab−Fv及びFab−Fab免疫グロブリンは、第1の抗原に結合するN末端Fab断片を含み、C末端Fv又はFab断片は、第2の抗原に結合する。
【0045】
一態様では、本開示は、ヘテロ二量体化形成を促進し、且つ/又はホモ二量体よりヘテロ二量体の精製を容易にすることを可能にするために、抗原をともに結合し、且つ各鎖上で異なる定常領域におけるアミノ酸変異体に依拠するヘテロ二量体抗体の生成に関する。一般に、二重特異性抗体は、宿主細胞に各重鎖及び軽鎖に関する遺伝子を含むことによって作製される。これは、一般に、所望のヘテロ二量体(A−B)及び2つのホモ二量体(A−A及びB−B)の形成をもたらす。しかしながら、二重特異性抗体の形成における主な障壁は、ホモ二量体抗体からヘテロ二量体抗体を精製すること及び/又はホモ二量体の形成よりヘテロ二量体の形成に偏らせることの困難さである。
【0046】
本開示は、以前の技術に関連する問題を克服するヘテロ二量体抗体を提供する。さらに、STEAP1/CD3二重特異性抗原結合タンパク質に関連して、本開示のヘテロ二量体抗体は、CD3の一価の結合を可能にする。T細胞のCD3活性化は、その関連するT細胞受容体(TCR)が、高い親和性の細胞間の接合部において抗原提示細胞上で抗原負荷MHCと結合する場合にのみ生じる(Kuhns et al.,2006,Immunity 24:133−139)。抗CD3抗体を使用する非特異的なCD3の二価の架橋は、サイトカインストーム及び毒性を誘発する(Perruche et al.,2009,J Immunol 183[2]:953−61;Chatenoud&Bluestone,2007,Nature Reviews Immunology 7:622−632;参照により明示的に組み込まれる)。したがって、実際的な臨床使用に関して、標的細胞のリダイレクトされた殺滅のためのCD3共結合の好ましい様式は、共結合された標的との結合時にのみ活性化をもたらす一価の結合である。したがって、一実施形態では、本開示のヘテロ二量体抗体は、効率的な抗体産生をもたらす形式におけるCD3への一価の結合及びSTEAP1への二価の結合の利点を提供する。
【0047】
一本鎖Fv(scFv)を有する1つの重鎖及び「通常の」Fab形式における第2の重鎖を含む、すなわち可変重鎖及び軽鎖を含む例示的なヘテロ二量体抗体形式である。換言すると、ヘテロ二量体抗体は、a)第1の可変Fcドメイン及び第1の抗原(任意選択によりCD3)に結合する一本鎖Fv領域(scFv)を含む第1の重鎖;b)第2の可変Fcドメイン及び第1の可変重鎖ドメインを含む第2の重鎖;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び第1の定常軽鎖ドメインを含む第1の軽鎖を含み、第1の可変重鎖ドメイン及び第1の可変軽鎖ドメインは、第2の抗原(任意選択によりSTEAP1)に結合する。説明するために、コンストラクトは、scFv領域−ドメインリンカー−Fcドメインを有する1つの単量体及びVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3と関連する軽鎖を有する第2の単量体を含み、任意選択により、立体及びpI変異体、Fc及びFcRn変異体並びにこれらの領域に含まれる追加の抗原結合ドメイン(任意選択のリンカーを伴う)を含むヘテロ二量体化変異体を伴う。いくつかの実施形態では、リンカーは、ヒンジ領域又はその断片である。この構造は、XmAb形式である「三重F」形式(scFv−FAb−Fc)又は「ボトルオープナー」形式と本明細書で呼ばれる場合がある。2つの鎖は、好ましくは、下により十分に記載されるとおりのヘテロ二量体抗体の形成を促進する定常領域(例えば、Fcドメイン及び/又はヒンジ領域)におけるアミノ酸変異体の使用によって結び付けられる。好ましくは、scFvは、CD3に結合し、且つ任意選択により正に荷電したscFvリンカーを含む。代わりに、scFvは、STEAP1に結合する。「三重F」形式は、全体として且つ特にヘテロ二量体抗体構造の開示に関して参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,822,186号明細書においてさらに記載されている。
【0048】
別の態様では、二重特異性抗原結合タンパク質は、scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカー及びscFv可変重鎖ドメインを含むscFvとともに、第1の可変重鎖ドメインを含む第1の重鎖、第1のCH1ドメインを含む第1の定常重鎖及び第1のFcドメインを含む第1の単量体を含むヘテロ二量体抗体である。scFvは、重鎖定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間でドメインリンカーを使用して共有結合され、scFvは、CD3に結合する。ヘテロ二量体抗体は、第2の可変重鎖ドメイン及び第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖を含む第2の重鎖を含む第2の単量体をさらに含む。ヘテロ二量体抗体は、STEAP1に結合する2つの同一のFabを形成する重鎖に関連する可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む共通の軽鎖をさらに利用する。この形式は、1つの標的抗原への二価の結合のために「XmAb
2+1」形式と本明細書で呼ばれる場合がある。したがって、一実施形態では、本開示のヘテロ二量体抗体は、効率的な抗体産生をもたらす形式におけるCD3への一価の結合及びSTEAP1への二価の結合の利点を提供する。
【0049】
下にさらに記載されるとおり、ヘテロ二量体抗体は、非対称変異体、pI変異体、切断変異体、追加のFc変異体などを生成する変異体も含み得る。例えば、様々な態様において、第1及び前記第2のFcドメインは、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L及びK370S:S364K/E357Qからなる群から選択されるアミノ酸置換のセットを有する。
【0050】
本開示のXmAb
2+1ヘテロ二量体抗体形式の説明は、
図1において提供される。scFvドメイン及び2つのFab部分の提供により、3つの抗原結合ドメインを形成し、2つの単量体のFab部分は、STEAP1に結合し、且つscFvドメインは、CD3に結合する。scFvドメインは、単量体の1つのFcドメインとCH1−Fv領域との間に挿入される。
【0051】
好ましくは、ヘテロ二量体抗体は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むが、これらに限定されない複数のサブクラスを有するIgGクラスの抗体であるが、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEも考えられる。抗体は、アイソタイプ及び/又はサブクラスのハイブリッドも含み得ることが理解されるべきである。例えば、参照により組み込まれる米国特許出願公開第2009/0163699号明細書に示されるとおりのIgG1/G2ハイブリッドのpI操作が本開示の一部として考えられる。
【0052】
本開示のヘテロ二量体を生成するために使用され得るいくつかの機構が存在する。加えて、当業者によって理解され、且つ下により十分に記載されるとおり、これらの機構を組み合わせて、高いヘテロ二量体化を確実にすることができる。
【0053】
1つの機構は、一般に、ヘテロ二量体形成に有利に作用する立体的影響をもたらすアミノ酸操作を指す「ノブアンドホール」(「KIH」)と当技術分野において呼ばれ、不利なヘテロ二量体形態も任意選択により使用され得る。これは、特にヘテロ二量体抗体生成の開示に関して、全てが全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20130205756号明細書、Ridgway et al.,Protein Engineering 9(7):617(1996);Atwell et al.,J.Mol.Biol.1997 270:26;及び米国特許第8,216,805号明細書において記載されるとおりの「ノブアンドホール」と呼ばれる場合がある。加えて、Merchant et al.,Nature Biotech.16:677(1998)において記載されるとおり、これらの「ノブアンドホール」変異をジスルフィド結合と組み合わせて、ヘテロ二量体化の形成を非対称にすることができる。変異の例は、特に、下に概説されるとおりのpi変異体を含む他のヘテロ二量体化変異体と組み合わせて、T366Wと対になるT366S/L368A/Y407V及び架橋するジスルフィドを有するこの変異体、T366W/S354Cと対になるT366S/L368A/Y407V/Y349Cを含む。
【0054】
ヘテロ二量体の生成において有用なさらなる機構は、全体として参照により本明細書に組み込まれるGunasekaran et al.,J.Biol.Chem.285(25):19637(2010)において記載されるとおり、「静電ステアリング」と呼ばれる場合がある。これは、本明細書で「電荷対」と呼ばれる場合がある。この実施形態において、静電気は、ヘテロ二量化に向けて形成を非対称にするために使用される。当業者が理解するとおり、これらは、pI、したがって精製に対して影響を有する場合があり、したがって場合によりpI変異体であるとも見なされ得る。しかしながら、これらは、ヘテロ二量体化を強制するために生成され、精製ツールとして使用されなかったため、それらは、「立体変異体」として分類される。これらには、D221R/P228R/K409Rと対になるD221E/P228E/L368E(すなわち、これらは、単量体の対応するセットである)及びC220R/E224R/P228R/K409Rと対になるC220E/P228E/368Eが挙げられるが、これらに限定されない。フレームワーク領域のいくつかの実施形態では、220位の変異は、重鎖及び軽鎖ジスルフィド形成にもはや必要ないシステインを除去する。「立体変異体」は、本開示の任意選択の実施形態である。
【0055】
ヘテロ二量体タンパク質の精製を容易にすることができるいくつかの機構が存在する。あるものは、pI変異体の使用に依拠し、その結果、各単量体が異なるpIを有し、それによりA−A、A−B及びB−B二量体タンパク質の等電点精製が可能になる。代わりに、分離は、サイズに基づいて実施され得る。一般に下に概説されるとおり、ヘテロ二量体の形成がホモ二量体を上回るように「非対称にする」ことも可能である。したがって、立体ヘテロ二量体化変異体及びpI又は電荷対変異体の組合せが本開示に関連して使用され得る。さらに、scFvは、精製を目的としてpIをさらに高める荷電scFvリンカー(正又は負のいずれか)を含み得る。当業者によって理解されるとおり、適正な荷電scFvリンカーを有し、且つ追加のpi調整がない一部の三重F形式が有用であるが、本発明は、荷電scFvリンカーも有する非対称変異体(及び本明細書に記載されるFc、FcRn及びKO変異体の組合せ)の使用も提供する。
【0056】
分離機構としてpIを利用する実施形態では、アミノ酸変異体は、単量体ポリペプチドの一方又は両方に導入することができ;すなわち単量体の一方(単純化のために本明細書では「単量体A」と呼ぶ)のpIを、単量体Bから離れるように操作することができるか、又は単量体A及びBの両方を変えることができ、単量体AのpIが上昇し、単量体BのpIが低下する。一方又は両方の単量体のpI変化は、荷電残基を取り除くか又は付加すること(例えば、中性アミノ酸を正又は負に荷電したアミノ酸残基によって置き換える、例えばグリシンをグルタミン酸に置き換える)、荷電した残基を正又は負の電荷から反対の電荷に変える(例えば、アスパラギン酸からリジンに)こと又は荷電した残基を中性残基に変える(例えば、電荷の消失;リジンからセリンに)ことによって行われ得る。加えて、本明細書のヘテロ二量体抗体の作製における使用のための好適なpI変異体は、例えば、pIが著しい免疫原性を導入することなく変えられるように、異なるIgGアイソタイプからpI変異体を移入するアイソタイプであるものであり;全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20140288275号明細書の
図29を参照されたい。
【0057】
したがって、実施形態は、ヘテロ二量体がホモ二量体から分離できるように、単量体の少なくとも1つにおいてpIの十分な変化を生じさせる。これは、「野生型」重鎖定常領域及びそのpIを上げるか又は下げるように(wtA−+B又はwtA−−B)操作されている変異領域を用いること又は一方の領域を上げ、他方の領域を下げる(A+−B−又はA−B+)ことによって達成され得る。この議論において、いずれの単量体がscFvを含み、いずれがFabを含むかは、問題でないことに留意されたい。pI変異体の使用と関連する概略図は、米国特許第9,822,186号明細書(全体として且つ特にヘテロ二量体抗体変異体及び抗CD3配列の議論に関して参照により本明細書に組み込まれる)の
図34において記載されている。pI変異体は、変異体の効果が、異なるFv領域を有する異なる抗体に容易に移り、且つ非常に安定であるという点で「プラグアンドプレイ」形式において非対称変異体と組み合わされ得る。
【0058】
したがって、一般に、本開示の態様は、抗体の定常領域におけるアミノ酸変異体を含み、これは、アミノ酸置換(「pI変異体」又は「pI置換」)を単量体の1つ又は両方に組み込むことにより、「pIヘテロ二量体」(すなわち「pI抗体」)を形成するために、抗体の単量体の両方でない場合に少なくとも1つの等電点(pI)を変えることに向けられる。2つのホモ二量体からのヘテロ二量体の分離は、2つの単量体のpIがわずか0.1pH単位、例えば0.2、0.3、0.4及び0.5pH以上の差でも異なれば達成することができる。
【0059】
所望の分離を達成するのに各々又は両方の単量体に含まれるべきpI変異体の数は、scFv及びFabの開始pIに部分的に依存することになる。すなわち、いずれの単量体を操作するか又はいずれの「方向」(例えば、正側若しくは負側)にするかを決定するために、2つの標的抗原のFv配列が計算され、そこから決定がなされる。当技術分野で知られるとおり、異なるFvは、利用される異なる開始pIを有することになる。一般に、pIを操作して、少なくとも約0.1logの各単量体の総pI差をもたらすが、0.2〜0.5が好ましい。
【0060】
さらに、いくつかの場合(形式に依存する)、ヘテロ二量体は、サイズ(例えば、分子量)に基づいてホモ二量体から分離され得る。例えば、
図18A〜Iのいくつかの実施形態において示されるとおり、いくつかの形式は、ホモ二量体及び異なるサイズを有するヘテロ二量体をもたらす(例えば、ボトルオープナーに関して、1つのホモ二量体は、「二重scFv」形式であり、1つのホモ二量体は、標準的な抗体であり、且つヘテロ二量体は、1つのFab及び1つのscFvを有する)。加えて、
図18A〜Iに示されるとおり、いくつかの抗原は、二価で結合される可能性がある(例えば、1つの抗原に対して2つの抗原結合部位)。理解されるとおり、Fab及びscFvの任意の組合せを利用して、所望の結果及び組合せを達成できる。
【0061】
重鎖の定常領域を使用することにより、pI変異体を使用してヘテロ二量体化を達成する場合、抗体を含む多重特異性タンパク質の設計及び精製に対するさらなるモジュール方式の手法が提供される。したがって、いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体化変異体(非対称及び精製ヘテロ二量体化変異体を含む)は、可変領域に含まれておらず、その結果、個々の各抗体が操作されなければならない。加えて、いくつかの実施形態では、pI変異体からもたらされる免疫原性の可能性は、pIが著しい免疫原性を導入することなく変化されるように異なるIgGアイソタイプからpI変異体を移入することによって著しく低減される。したがって、解決されるべき追加の問題は、高いヒト配列含量、例えばいずれかの特定の位置での非ヒト残基の最小化又は回避を有する低pI定常ドメインの解明である。
【0062】
pI操作で起こり得る副次的な利点は、血清半減期の延長及びFcRn結合の増加でもある。すなわち、米国特許出願公開第20120028304号明細書(全体として参照により組み込まれる)において記載されるとおり、抗体定常ドメイン(抗体及びFc融合体において見出されるものを含む)のpIを下げることにより、インビボにおいて血清での保持が長期化し得る。長期化された血清半減期に関するこれらのpI変異体も精製のためのpI変化を促進する。
【0063】
本開示のヘテロ二量体融合タンパク質は、一般に
図18A〜Iに示されるとおり、様々な構成をとることができる。いくつかの図は、「単一末端」の構成を示し、分子の一方の「アーム」には1種の特異性があり、もう一方の「アーム」には異なる特異性がある。他の図は、「二重の末端」の構成を示し、分子の「上部」で少なくとも1種の特異性があり、分子の「底部」で1種以上の異なる特異性がある。本開示において有用な1つのヘテロ二量体の骨格は、
図18Aに示され、且つ上記のとおりの「三重F」又は「ボトルオープナー」骨格形式である。「三重F」形式には、いくつかの明確な利点がある。2つのscFvコンストラクトに依拠する抗体類似体は、安定性及び凝集の問題を有する場合が多く、これは、「通常の」重鎖と軽鎖の対形成の追加により本明細書に記載されるコンストラクトによって軽減され得る。加えて、2つの重鎖及び2つの軽鎖に依拠する形式とは対照的に、重鎖と軽鎖との不適切な対形成(例えば、軽鎖2と対形成する重鎖1など)による問題はない。追加の有用な抗原結合タンパク質形式が下に記載される。
【0064】
様々な態様において、ヘテロ二量体抗体のscFvは、本明細書に記載される抗CD3 CDR配列を含む。例えば、様々な態様において、scFvは、配列番号170を含むvhCDR1、配列番号171を含むvhCDR2、配列番号172を含むvhCDR3、配列番号174を含むvlCDR1、配列番号175を含むvlCDR2及び配列番号176を含むvlCDR3を含む。例えば、scFvは、任意選択により、配列番号169の可変重鎖領域及び配列番号173の可変軽鎖領域を含む。様々な態様において、scFvは、配列番号44の配列を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、scFvは、
図19に記載されるアミノ酸配列、例えば配列番号44に記載されるアミノ酸配列を含む。
図19に記載される配列は、異なる親和性の抗原結合ドメインを提供する。いくつかの適応症において、より強い親和性が好ましい場合があるが、他の場合、より低い親和性が有用であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、CD3に対する「強い」又は「高い親和性」結合体である抗CD3抗原結合ドメインを含むヘテロ二量体抗体を提供する(例えば、1つの例は、H1.30_L1.47(任意選択により適宜荷電リンカーを含む)として示される重鎖及び軽鎖可変ドメインである)。他の実施形態では、本開示は、CD3に対する「少ない」又は「より低い親和性」結合体である抗CD3抗原結合ドメインを含むヘテロ二量体抗体を提供する。
【0066】
典型的なscFvリンカーは、当技術分野でよく知られており、一般に10〜25アミノ酸長であり、且つグリシン及びセリンを含む。「荷電scFvリンカー」は、少なくとも1つのscFvを含むヘテロ二量体抗体の作製及び精製における使用のための荷電アミノ酸を利用するscFvリンカーを意味する。好適な荷電scFvリンカーは、
図8A、8B及び19に示されるが、他のものが使用され得る。一般に、本開示に関連して使用について考えられる荷電scFvリンカーは、従来使用される(GGGGS)
3〜5(配列番号179)配列などの標準的な非荷電scFvリンカーと比較して3〜8個(3、4、5、6、7又は8個の全てが可能である)の電荷の変化を有する(負又は正のいずれか)。荷電scFvは、任意選択により、IRPRAIGGSKPRVA(配列番号145)、GKGGSGKGGSGKGGS(配列番号146)、GGKGSGGKGSGGKGS(配列番号147)、GGGKSGGGKSGGGKS(配列番号148)、GKGKSGKGKSGKGKS(配列番号149)、GGGKSGGKGSGKGGS(配列番号150)、GKPGSGKPGSGKPGS(配列番号151)、GKPGSGKPGSGKPGSGKPGS(配列番号152)又はGKGKSGKGKSGKGKSGKGKS(配列番号153)から選択されるアミノ酸配列を含む。様々な態様において、scFvは、アミノ酸配列GKPGSGKPGSGKPGSGKPGS(配列番号152)を含む。
【0067】
例示的な態様では、scFvは、本明細書で提供される配列(例えば、配列番号4〜6、8〜10、11〜17、21、23〜25、27〜29、30〜35、170〜173及び174〜176のいずれか1つ以上のCDR配列、配列番号3、7、22、26、41、42、45、46、49、50、53、54、57、58、61、62、65、66、69、70、73、74、77、78、81、82、85、86、89、90、93、94、97、98、101、102、105、106、109、110、113、114、117、118、121、122、125、126、129、130、133、134、137、138、141、142、169、173及び182〜186のいずれか1つ以上の可変領域配列;配列番号143〜168のいずれか1つのscFvリンカー配列並びに/又は配列番号19、20、38、40、43、44、47、48、51、52、55、56、59、60、63、64、67、68、71、72、75、76、79、80、83、84、87、88、91、92、95、96、99、100、104、104、107、108、111、112、115、116、119、120、123、124、127、128、131、132、135、136、139及び140のいずれか1つのscFv配列)のいずれかと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は約90%より高い(例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%)配列同一性を有するCDR配列、可変領域配列、scFvリンカー配列又はscFv配列を含む。例えば、scFvは、配列番号4〜6、8〜10、11〜17、21、23〜25、27〜29、30〜35、170〜173及び174〜176のいずれか1つ以上に記載されるが、1つ又は2つのアミノ酸置換を含むCDR配列を含み得る。代わりに、様々な態様において、scFvは、配列番号3、7、22、26、41、42、45、46、49、50、53、54、57、58、61、62、65、66、69、70、73、74、77、78、81、82、85、86、89、90、93、94、97、98、101、102、105、106、109、110、113、114、117、118、121、122、125、126、129、130、133、134、137、138、141、142、169、173又は182〜186に関して改変された可変領域配列を含み得、改変は、CDR配列の外部である。
【0068】
ヘテロ二量体抗体の第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、様々な態様において、本明細書に記載される抗STEAP1 CDR又は可変領域配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体の第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号14を含むvhCDR1、配列番号15又は配列番号21を含むvhCDR2及び配列番号16を含むvhCDR3を含み;且つ可変軽鎖ドメインは、配列番号11を含むvlCDR1、配列番号12を含むvlCDR2及び配列番号13を含むvlCDR3を含む。代わりに、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号33を含むvhCDR1、配列番号34を含むvhCDR2及び配列番号35を含むvhCDR3を含み;且つ可変軽鎖ドメインは、配列番号30を含むvlCDR1、配列番号31を含むvlCDR2及び配列番号32を含むvlCDR3を含む。好ましい実施形態では、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号182又は配列番号184を含み、且つ可変軽鎖ドメインは、配列番号183を含む。代わりに、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号185を含み、且つ可変軽鎖ドメインは、配列番号186を含む。
【0069】
本開示の様々な態様において、ヘテロ二量体抗体は、a)配列番号19若しくは20の配列を含む第1の単量体、配列番号18の配列を含む第2の単量体及び配列番号17の配列を含む共通の軽鎖;又はb)配列番号38の配列を含む第1の単量体、配列番号37の配列を含む第2の単量体及び配列番号36の配列を含む共通の軽鎖を含む。
【0070】
本開示の様々な態様において、ヘテロ二量体抗体は、配列番号202若しくは207の配列を含む第1の単量体、配列番号201若しくは203の配列を含む第2の単量体及び配列番号200の配列を含む共通の軽鎖(例えば、配列番号202の配列を含む第1の単量体、配列番号201の配列を含む第2の単量体及び配列番号200の配列を含む軽鎖;又は配列番号207の配列を含む第1の単量体、配列番号203の配列を含む第2の単量体及び配列番号200の配列を含む軽鎖)を含む。代わりに、ヘテロ二量体抗体は、配列番号206の配列を含む第1の単量体、配列番号205の配列を含む第2の単量体及び配列番号204の配列を含む共通の軽鎖を含み得る。
【0071】
例示的な態様では、第1及び/又は第2の可変重鎖ドメインは、本明細書で提供される配列(例えば、配列番号4〜6、14〜17、21、23〜25、33〜35及び170〜172のいずれか1つ以上のCDR配列又は配列番号3、22、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、93、97、101、105、109、113、117、121、125、129、133、137、141、169、182、184及び185のいずれか1つの可変領域配列)のいずれかと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は約90%より高い(例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%)配列同一性を有するCDR配列又は可変領域配列を含み得る。例えば、第1及び/又は第2の可変重鎖ドメインは、配列番号4〜6、14〜17、21、23〜25、33〜35及び170〜172のいずれか1つ以上において記載されるが、1つ又は2つのアミノ酸置換を含むCDR配列を含み得る。代わりに、様々な態様において、第1及び/又は第2の可変重鎖ドメインは、配列番号3、22、41、45、49、53、57、61、65、69、73、77、81、85、89、93、97、101、105、109、113、117、121、125、129、133、137、141、169、182、184又は185に関して改変された可変領域配列を含み得、改変は、CDR配列の外部である。同様に、可変軽鎖ドメインは、本明細書で提供される配列(例えば、配列番号8〜10、11〜13、27〜29、30〜32及び174〜176のいずれか1つ以上のCDR配列又は配列番号7、26、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、94、98、102、106、110、114、118、122、126、130、134、138、142、173、183及び186のいずれか1つの可変領域配列)のいずれかと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は約90%より高い(例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%)配列同一性を有するCDR配列又は可変領域配列を含み得る。例えば、可変軽鎖ドメインは、配列番号8〜10、11〜13、27〜29、30〜32及び174〜176のいずれか1つ以上において記載されるが、1つ又は2つのアミノ酸置換を含むCDR配列を含み得る。代わりに、様々な態様において、可変軽鎖ドメインは、配列番号7、26、42、46、50、54、58、62、66、70、74、78、82、86、90、94、98、102、106、110、114、118、122、126、130、134、138、142、173、183又は186に関して改変された可変領域配列を含み得、改変は、CDR配列の外部である。必要に応じて、第1の単量体は、本明細書で提供される配列(配列番号19、20、38、202、206又は207)のいずれかと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は約90%より高い(例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%)配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得;第2の単量体は、本明細書で提供される配列(配列番号18、199若しくは37;又は配列番号202、207若しくは206)のいずれかと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は約90%より高い(例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%)配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得;且つ/又は共通の軽鎖は、本明細書で提供される配列(配列番号17、36、200又は204)のいずれかと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は約90%より高い(例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%)配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、完全長ヘテロ二量体抗体が利用される。「完全長」は、本明細書で概説されるとおりの1つ以上の改変を含む可変及び定常領域を含む抗体の天然の生物学的形態を構成する構造を意味する。本開示のヘテロ二量体抗体は、モノクローナル、合成、キメラ及び/又はヒト化であり得る。ヘテロ二量体抗体に関連して、抗原結合抗体断片は、pI操作など、ヘテロ二量体を生成するように操作され得る少なくとも1つの定常ドメインを含有する。他の抗体断片は、pI操作された本発明のCH1、CH2、CH3、ヒンジ及びCLドメインの1つ以上を含有するものを含む。例えば、Fc融合体は、別のタンパク質に融合されたFc領域(任意選択によりヒンジ領域を有するCH2及びCH3)の融合体である。いくつかのFc融合体が当技術分野で知られ、本発明のヘテロ二量体化変異体の追加によって改善され得る。CH1;CH1、CH2及びCH3;CH2;CH3;CH2及びCH3;CH1及びCH3を含む抗体融合体を作製することができ、これらのいずれか又は全ては、本明細書に記載されるヘテロ二量体化変異体の任意の組合せを利用して、任意選択によりヒンジ領域とともに作製され得る。
【0073】
本開示のヘテロ二量体抗体を含む抗原結合タンパク質は、一般に、単離されるか又は組換え体である。本明細書に記載されるヘテロ二量体抗体の全て又は一部をコードする核酸、ベクター及び宿主細胞が本明細書で記載され、本開示の一部として企図される。
【0074】
抗体構造/Fc領域改変
本開示は、野生型抗体配列に対してアミノ酸改変を有する改変されたFc変異体を有する抗体を含む。変異体は、それらを構成するアミノ酸改変に従って定義される。したがって、例えば、N434S又は434Sは、親Fcポリペプチドに対して434位において置換セリンを有するFc変異体であり、付番は、EUインデックスに従う。同様に、M428L/N434Sは、親Fcポリペプチドに対して置換M428L及びN434Sを有するFc変異体を定義する。野生型アミノ酸の同一性は、特定されていなくてもよく、その場合、前述の変異体は、428L/434Sと称される。置換がもたらされる順序は、任意であり、すなわち、例えば、428L/434Sは、M428L/N434Sと同じFc変異体などである。改変は、付加、欠失又は置換であり得る。置換は、天然に存在するアミノ酸及び場合により合成アミノ酸を含み得る。例としては、全てが全体として参照により組み込まれる米国特許第6,586,207号明細書;米国特許出願公開第20040214988号明細書;国際公開第98/48032号パンフレット、国際公開第03/073238号パンフレット、国際公開第05/35727A2号パンフレット及び国際公開第05/74524A2号パンフレット;J.W.Chin et al.,(2002),Journal of the American Chemical Society 124:9026−9027;J.W.Chin,&P.G.Schultz,(2002),ChemBioChem 11:1135−1137;J.W.Chin,et al.,(2002),PICAS United States of America 99:11020−11024;及びL.Wang,&P.G.Schultz,(2002),Chem.1−10が挙げられる。
【0075】
抗体及び他の抗原結合タンパク質に関する本開示において議論される全ての位置に関して、別段の記載がない限り、アミノ酸位置の付番は、EUインデックスに従う。EUインデックス又はKabat若しくはEU付番スキームのようなEUインデックスは、EU抗体の付番を指す(参照により全体として本明細書に組み込まれるEdelman et al.,1969,Proc Natl Acad Sci USA 63:78−85)。例えば、各可変重鎖領域(VH)及び可変軽鎖領域(VL)は、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つの超可変領域(「相補性決定領域」、「CDR」)及び4つのFRで構成されることが理解される:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4。超可変領域は、一般に、軽鎖可変領域におけるおよそアミノ酸残基24〜34(LCDR1;「L」は軽鎖を意味する)、50〜56(LCDR2)及び89〜97(LCDR3)並びに重鎖可変領域におけるおよそ31〜35B(HCDR1;「H」は重鎖を意味する)、50〜65(HCDR2)及び95〜102(HCDR3)のアミノ酸残基;Kabat et al.,SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)並びに/又は超可変ループを形成するそれらの残基(例えば、軽鎖可変領域における残基26〜32(LCDR1)、50〜52(LCDR2)及び91〜96(LCDR3)並びに重鎖可変領域における26〜32(HCDR1)、53〜55(HCDR2)及び96〜101(HCDR3));Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901−917)を包含する。
【0076】
当技術分野において理解されるとおり、CDRの正確な付番及び配置は、異なる付番系間で異なる場合がある。しかしながら、可変重鎖配列及び/又は可変軽鎖配列の本開示は、関連する(固有の)CDRの開示を含むことが理解されるべきである。したがって、各可変重鎖領域の本開示は、vhCDR(例えば、vhCDR1、vhCDR2及びvhCDR3)の開示であり、且つ各可変軽鎖領域の本開示は、vlCDR(例えば、vlCDR1、vlCDR2及びvlCDR3)の開示である。CDR付番の有用な比較は、下のとおりであり、Lafranc et al,Dev.Comp.Immunol.27(l):55−77(2003)を参照されたい。
【0078】
本明細書全体にわたり、Kabat付番系は、一般に、可変ドメインにおける残基(およそ軽鎖可変領域の残基1〜107及び重鎖可変領域の残基1〜113)を参照する場合に使用される(例えば、Kabat et al.,上掲(1991))。
【0079】
各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を規定する。Kabatらは、重鎖及び軽鎖の可変領域の多数の一次配列を収集した。配列の保存の程度に基づいて、その著者らは、個々の一次配列をCDR及びフレームワークに分類し、そのリストを作成した(全体として参照により組み込まれるSEQUENCES OF IMMUNOLOGICAL INTEREST,5th edition,NIH publication,No.91−3242,E.A.Kabat et al.を参照されたい)。
【0080】
免疫グロブリンのIgGサブクラスにおいて、重鎖にいくつかの免疫グロブリンドメインが存在する。本明細書の「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」は、別個の三次構造を有する免疫グロブリンの領域を意味する。定常重鎖(CH)ドメイン及びヒンジドメインを含む重鎖ドメインが興味深い。IgG抗体に関連して、IgGアイソタイプは、それぞれ3つのCH領域を有する。したがって、IgGに関連して、「CH」ドメインは、以下のとおりである:「CH1」は、KabatのようなEUインデックスに従う118〜220位を指す。「CH2」は、KabatのようなEUインデックスに従う237〜340位を指し、且つ「CH3」は、KabatのようなEUインデックスに従う341〜447位を指す。本明細書に示され且つ下記のとおり、pI変異体は、下で議論されるCH領域及びヒンジ領域の1つ以上におけるものであり得る。様々な態様において、本明細書に示される配列は、CH1領域の118位で開始し;可変領域は、指定される場合を除いて含まれない。
【0081】
別の型の重鎖のIgドメインは、ヒンジ領域である。本明細書の「ヒンジ」、又は「ヒンジ領域」、又は「抗体ヒンジ領域」、又は「免疫グロブリンヒンジ領域」は、抗体の第1の定常ドメインと第2の定常ドメインとの間のアミノ酸を含む可動性のポリペプチドを意味する。構造的に、IgG CH1ドメインは、EUの220位で終了し、及びIgG CH2ドメインは、EUの237位の残基で開始する。したがって、IgGの場合、抗体ヒンジは、221位(IgG1におけるD221)〜236(IgG1におけるG236)を含むように本明細書で定義され、ここで、付番は、KabatのようなEUインデックスに従う。いくつかの実施形態では、例えばFc領域に関連して下部ヒンジが含まれ、「下部ヒンジ」は、一般に、226〜230位を指す。本明細書に記載されるとおり、pI変異体は、ヒンジ領域においても作製され得る。
【0082】
本明細書で使用する場合、「Fc」、又は「Fc領域」、又は「Fcドメイン」は、最初の定常領域免疫グロブリンドメイン及び場合によりヒンジの一部を除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを意味する。したがって、Fcは、IgA、IgD及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメインを指し、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメインを指し、且つこれらのドメインに対する可動性ヒンジN末端を指す。IgA及びIgMに関して、Fcは、J鎖を含み得る。IgGに関して、Fcドメインは、免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3(Cγ2及びCγ3)並びにCγ1(Cγ1)とCγ2(Cγ2)との間の下位のヒンジ領域を含む。Fc領域の境界は、異なる場合があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226又はP230からそのカルボキシル末端までを含むと定義され、付番は、Kabatに記載されるようなEUインデックスに従う。
【0083】
アミノ酸変異体を本開示の抗原結合タンパク質(例えば、二重特異性抗体)に導入して追加の機能性を加え得る。例えば、Fc領域内でアミノ酸変化を加えて(1つの単量体又は両方のいずれか)、ADCC又はCDCの増大を促進し(例えば、Fcγ受容体への結合の改変)、毒性及び薬物の付加を可能にするか又はその収率を増加させ(例えば、ADCのため)、またFcRnへの結合を増加させ、且つ/又は得られる分子の血清半減期を延長することができる。アミノ酸配列を変えることによって調整され得るエフェクター機能としては、ADCC、ADCP及びCDCが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で概説されるあらゆる変異体は、任意選択により且つ独立して、他の変異体と組み合わされ得る。
【0084】
「FcRn」又は「新生児Fc受容体」は、IgG抗体Fc領域に結合し、且つFcRn遺伝子によって少なくとも部分的にコードされるタンパク質を意味する。FcRnは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサルを含むが、これらに限定されない任意の生物に由来し得る。当技術分野で知られるとおり、機能的FcRnタンパク質は、重鎖及び軽鎖と呼ばれる場合が多い2つのポリペプチドを含む。軽鎖は、ベータ−2−ミクログロブリンであり、重鎖は、FcRn遺伝子によってコードされる。本明細書で別段の記載がない限り、FcRn又はFcRnタンパク質は、FcRn重鎖とベータ−2−ミクログロブリンとの複合体を指す。様々なFcRn変異体が、FcRn受容体への結合を増加させ、且ついくつかの場合に血清半減期を延長するために使用される。FcRn受容体への結合の増加及び血清半減期における対応する増加を付与するFc変異体としては、434A、434S、428L、308F、259I、428L/434S、259I/308F、436I/428L、436I又はV/434S、436V/428L、252Y、252Y/254T/256E及び259I/308F/428Lが挙げられるが、これらに限定されない。明確さのために、各重鎖は、異なるため、FcRn変異体(及びFc変異体)は、1つ又は両方の単量体に存在し得る。
【0085】
機能性変異体の別の分類は、「Fcγ切断変異体」又は「Fcノックアウト(FcKO又はKO」変異体である。これらの実施形態では、一部の治療応用のために、Fcγ受容体(例えば、FcγR1、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaなど)の1つ以上又は全てに対するFcドメインの通常の結合を低減するか又は除去して、さらなる作用機序を回避することが望ましい。「Fcガンマ受容体」、「FcγR」又は「FcガンマR」は、IgG抗体Fc領域に結合し、且つFcγR遺伝子によってコードされるタンパク質のファミリーの任意のメンバーを意味する。ヒトにおいて、このファミリーとしては、アイソフォームFcγRIa、FcγRIb及びFcγRIcを含むFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131及びR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb−1及びFcγRIIb−2を含む)及びFcγRIIcを含むFcγRII(CD32);並びにアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158及びF158を含む)及びFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIb−NA1及びFcγRIIb−NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)が挙げられるが、これらに限定されない(全体として参照により組み込まれるJefferis et al.,2002,Immunol Lett 82:57−65)。FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサルを含むが、これらに限定されない任意の生物に由来し得る。マウスFcγRとしては、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)及びFcγRIII−2(CD16−2)が挙げられるが、これらに限定されない。多くの実施形態では、ADCC活性を除去するか又は著しく低減するためにFcγRIIIa結合を切断することが一般に望ましい。米国特許第9,822,186号明細書の
図36は、野生型の安定性を保持するが、全てのFcγR結合を除去するFcノックアウト(又は切断変異体)の使用を示す。
【0086】
代表的な切断変異体としては、G236R/L328R、E233P/L234V/L235A/G236del/S239K、E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、E233P/L234V/L235A/G236del/S239K/A327G、E233P/L234V/L235A/G236del/S267K/A327G及びE233P/L234V/L235A/G236delからなる群から選択されるものが挙げられる。本明細書で参照される切断変異体は、FcγR結合を切断するが、一般にFcRn結合を切断しないことが留意されるべきである。
【0087】
当技術分野で知られるとおり、ヒトIgG1のFcドメインは、Fγ受容体への最も高い結合を有し、したがって、切断変異体は、ヘテロ二量体抗体の骨格における定常ドメイン(又はFcドメイン)がIgG1である場合に使用され得る。代わりに又はIgG1骨格における切断変異体に加えて、グリコシル化位置297(一般にA又はS)での変異は、例えば、FcγRIIIaへの結合を著しく切断できる。ヒトIgG2及びIgG4は、Fcγ受容体への結合を天然に減少させ、したがって、それらの骨格は、切断変異体を伴うか又は伴わずに使用され得る。
【0088】
脱アミド化は、抗体活性及び安定性に著しく影響を及ぼし得る。様々な態様において、ヘテロ二量体抗体は、脱アミド化部位を除去するために1つ以上の置換を含む。この点に関して、ヘテロ二量体抗体は、任意選択により、置換N67QなどのN67位における置換を含む。
【0089】
ヘテロ二量体重鎖定常領域
本開示は、第1のドメインとしての変異体重鎖定常領域を含有する単量体の使用に基づくヘテロ二量体抗体を提供する。本明細書における「単量体」は、ヘテロ二量体タンパク質の半分を意味する。従来型の抗体は、実際には四量体(2つの重鎖及び2つの軽鎖)であることが留意されるべきである。参照の容易さのために、本開示に関連して、重鎖及び軽鎖を含む対が「単量体」と見なされる。scFv(及びいくつかの場合にはFab)を含む重鎖領域が単量体と見なされる。本質的に、各単量体は、それが定常領域全体、例えばCH1−ヒンジ−CH2−CH3、Fc領域(CH2−CH3)又はCH3ドメインのみであるかどうかにかかわらず、ヘテロ二量化操作を可能にするのに十分な重鎖定常領域を含む。
【0090】
変異体重鎖定常領域は、完全長コンストラクト、CH1−ヒンジ−CH2−CH3又は例えばCH2−CH3若しくはCH3単独を含むそれらの部分を含む重鎖定常領域の全て又は一部を含み得る。加えて、各単量体の重鎖領域は、同じ骨格(CH1−ヒンジ−CH2−CH3又はCH2−CH3)又は異なるものであり得る。N及びC末端トランケーション及び付加もその定義に含まれる。例えば、いくつかのpI変異体は、重鎖ドメインのC末端への荷電アミノ酸の付加を含む。
【0091】
本明細書で概説されるヘテロ二量体化変異体(例えば、立体及びpI変異体)に加えて、重鎖領域は、FcγR及びFcRn結合を変えるための変化を含む追加のアミノ酸置換も含有し得る。
【0092】
ヘテロ二量体化変異体は、任意選択により且つ独立して、任意の他の変異体と組み合わされ得る立体変異体(電荷変異体を含む)及びpI変異体を含むが、これらに限定されない、いくつかの異なる型の変異体を含む。これらの実施形態では、「単量体A」を「単量体B」と適合させることが重要であり、すなわちヘテロ二量体タンパク質が立体変異体及びpI変異体の両方に依拠する場合、これらは、各単量体に適切に適合される必要があり、例えば、機能する立体変異体のセット(単量体Aに対する1セット、単量体Bに対する1セット)は、各単量体に対する変異体が所望の機能を達成するために設計されるように、pI変異体セット(単量体Aに対する1セット、単量体Bに対する1セット)と組み合わされる。立体変異体が電荷も変え得る実施例の場合、適切なセットが適切な単量体に適合される必要がある。
【0093】
本明細書で概説されるヘテロ二量体化変異体(例えば、図面において示されるそれらの変異体を含むが、これらに限定されない)は、任意選択により且つ独立して、任意の他の変異体及び任意の他の単量体と組み合わされ得る。ヘテロ二量体化に重要なことは、変異体の「セット」、一方の単量体に関する1つのセット及び他方に関する1つのセットが存在することである。これらが1対1で組み合わされる(例えば、単量体1の一覧が同時に起こる)か又は切り替えられる(単量体1のpI変異体を単量体2の立体変異体により)かどうかは、無関係である。しかしながら、「鎖状態」は、ヘテロ二量体化が有利であるように、組合せが上に概説されるとおりになされる場合、保存されるべきである。例えば、pIを上げる電荷変異体は、上昇pI変異体及び/又は上昇したpIを有するscFvリンカーなどとともに使用されるべきである。ヘテロ二量体タンパク質の単量体に関連して、「鎖状態」は、「適合する」DNAの二本鎖と同様に、ヘテロ二量体化変異体が、ヘテロ二量体を形成するために「適合する」能力を保存するために各単量体に組み込まれることを意味する。例えば、いくつかのpI変異体が単量体Aに操作される場合(例えば、pIをより高くする)、利用され得る「電荷対」である立体変異体も、pI変異体に支障をきたさず、例えば、pIを高くする電荷変異体は、同じ「鎖」又は「単量体」に置かれて、両方の機能性を保存する。さらに、追加のFc変異体(FcγR結合、FcRn結合のためのもの、切断変異体など)のために、いずれかの単量体又は両方の単量体は、独立して且つ任意選択により、列挙された変異体のいずれかを含み得る。いくつかの場合、両方の単量体は、追加の変異体を有し、且ついくつかの場合、1つの単量体のみが追加の変異体を有するか又はそれらが組み合わされ得る。
【0094】
立体変異体
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体の形成は、立体変異体の追加によって促進される。すなわち、各重鎖においてアミノ酸を変えることにより、異なる重鎖が、同じFcアミノ酸配列を有するホモ二量体を形成するよりも、ヘテロ二量体構造を形成するように会合する可能性が高くなる。代表的な好適な立体変異体は、図面において示される。
【0095】
立体変異体を生成するための1つの機構は、上記の「ノブアンドホール」機構である。ヘテロ二量体の生成において有用なさらなる機構は、全体として参照により本明細書に組み込まれるGunasekaran et al.,J.Biol.Chem.285(25):19637(2010)において記載されるとおり、「静電ステアリング」と呼ばれる場合がある。これは、本明細書で「電荷対」と呼ばれる場合がある。この実施形態において、静電気は、ヘテロ二量化に向けて形成を非対称にするために使用される。これらは、pI、したがって精製に対して影響を有する場合があり、したがって場合によりpI変異体であるとも見なされ得る。しかしながら、これらは、ヘテロ二量体化を強制するために生成され、精製ツールとして使用されなかったため、それらは、「立体変異体」として分類される。これらには、D221R/P228R/K409Rと対になるD221E/P228E/L368E(例えば、これらは、「単量体の対応するセット」である)及びC220R/E224R/P228R/K409Rと対になるC220E/P228E/368Eなどの75%を超えるヘテロ二量体化をもたらす変異体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
いくつかの実施形態では、非対称変異体は、有利に且つ同時に、「ノブアンドホール」機構及び「静電ステアリング」機構の両方に基づくヘテロ二量体化に有利である。これらの変異体は、「セット」の「対」でもたらされる。すなわち、対の一方のセットは、第1の単量体に組み込まれ、対のもう一方のセットは、第2の単量体に組み込まれる。これらのセットは、一方の単量体における残基と他方における残基との間に1対1の対応を有する「ノブインホール」変異体として必ずしも振る舞う必要がないことが留意されるべきである。すなわち、セットのこれらの対は、代わりに、ヘテロ二量体形成を促し、且つホモ二量体形成を抑止する2つの単量体間の界面を形成する可能性があり、これにより、生物学的条件下で自発的に形成するヘテロ二量体のパーセンテージが、予想される50%(25%ホモ二量体A/A:50%ヘテロ二量体A/B:25%のホモ二量体B/B)ではなく、90%を超えることが可能になる。例示的なヘテロ二量体化「非対称」変異体は、
図4において示される。そのような非対称変異体の例としては、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q;及びT366S/L368A/Y407V:T366W(任意選択により架橋ジスルフィドを含む、T366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354C)を含むが、これらに限定されない変異のセットの対が挙げられる。
【0097】
本明細書で概説されるpI変異体又は図面及び説明文が参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0149876号明細書の
図37で示される他の立体変異体など、他の変異体と任意選択により且つ独立して任意の量で組み合わせることができる追加の単量体A及び単量体Bの変異体である。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書で概説される立体変異体は、任意選択により且つ独立して、一方又は両方の単量体にpI変異体(又はFc変異体、FcRn変異体、切断変異体などの他の変異体)を含む任意のヘテロ二量体化変異体とともに組み込まれ得る。
【0099】
ヘテロ二量体のためのpI(等電点)変異体
一般に、pI変異体には2つの分類がある:タンパク質のpIを上げるもの(塩基性の変化)及びタンパク質のpIを下げるもの(酸性の変化)。本明細書で記載されるとおり、これらの変異体の全ての組合せが実施され得る:一方の単量体が、野生型又は野生型から著しく異なるpIを示さない変異体である場合があり、且つ他方がより塩基性又はより酸性のいずれかであり得る。代わりに、各単量体が変化され、一方がより塩基性であり、且つ一方がより酸性である。pI変異体の例示的な組合せは、図面において示される。
【0100】
様々な実施形態では、例えば
図18A、E、F、G、H及びIの形式において、pI変異体の好ましい組合せは、208D/295E/384D/418E/421D変異体(ヒトIgG1に対する場合、N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D)を含む一方の単量体(負のFab側)及び(GKPGS)
4を含む正に荷電したscFvリンカーを含む第2の単量体(正のscFv側)を有する。しかしながら、当業者に理解されるとおり、第1の単量体は、208位を含むCH1ドメインを含む。したがって、CH1ドメインを含まないコンストラクトにおいて(例えば、ドメインの1つにおいてCH1ドメインを利用しない抗体に関して、例えば
図18B、C若しくはDに示されるものなどの二重scFv形式又は「1アーム」形式において)、好ましい負のpI変異体Fcセットは、295E/384D/418E/421D変異体(ヒトIgG1に対する場合Q295E/N384D/Q418E/N421D)を含む。
【0101】
酸性のpI変化
変異体重鎖定常ドメインを含む1つの単量体がより正に作製されることになる場合(例えば、pIを下げる)、以下の改変(例えば、置換)の1つ以上は、本開示に関連して好適である:S119E、K133E、K133Q、T164E、K205E、K205Q、N208D、K210E、K210Q、K274E、K320E、K322E、K326E、K334E、R355E、K392E、K447の欠失、C末端でのペプチドDEDEの付加、G137E、N203D、K274Q、R355Q、K392N及びQ419E。これらの変化は、IgG1に対して記載されるが、アイソタイプハイブリッドだけでなく、全てのアイソタイプをこの方法で改変することができる。重鎖定常ドメインがIgG2〜4由来である場合、R133E及びR133Qも使用され得る。
【0102】
塩基性のpI変化
変異体重鎖定常ドメインを含む1つの単量体がより負に作製されることになる場合(例えば、pIを上げる)、以下の例示的な置換の1つ以上は、本開示に関連して好適である:Q196K、P217R、P228R、N276K及びH435R。これらの変化は、IgG1に対して記載されるが、アイソタイプハイブリッドだけでなく、全てのアイソタイプをこの方法で改変することができる。
【0103】
ヘテロ二量体抗体軽鎖変異体
pI変異体も抗体軽鎖において作製され得る。軽鎖のpIを下げるためのアミノ酸改変としては、K126E、K126Q、K145E、K145Q、N152D、S156E、K169E、S202E、K207E及び軽鎖のC末端でのペプチドDEDEの付加が挙げられるが、これらに限定されない。定常ラムダ軽鎖に基づくこの分類における変化は、R108Q、Q124E、K126Q、N138D、K145T及びQ199Eでの1つ以上の置換を含むが、これらに限定されない。加えて、軽鎖のpIを上げることも可能であり、本開示の様々な態様において企図される。
【0104】
アイソタイプ変異体
加えて、本開示の様々な実施形態は、一方のIgGアイソタイプからもう一方に特定の位置でpIアミノ酸の「移入」を伴い、したがって変異体に導入されている望まれない免疫原性の可能性を低減するか又は排除する。これらのいくつかは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0370013号明細書の
図21において示される。すなわち、IgG1は、高いエフェクター機能を含む様々な理由のために治療抗体に関して共通のアイソタイプである。しかしながら、IgG1の重鎖定常領域は、IgG2のものより高いpIを有する(7.31に対して8.10)。IgG1骨格に特定の位置でIgG2残基を導入することにより、得られる単量体のpIは、下げられ(又は上げられ)、且つより長い血清半減期をさらに示す。例えば、IgG1は、137位でグリシン(pI 5.97)を有し、且つIgG2は、グルタミン酸(pI 3.22)を有する。グルタミン酸を移入することは、得られるタンパク質のpIに影響を及ぼすことになる。いくつかのアミノ酸置換は、一般に、変異体抗体のpIに著しく影響を及ぼすことを要求される。しかしながら、IgG2分子における変化でさえ血清半減期の延長を可能にすることは、下で議論されるとおり留意されるべきである。
【0105】
他の実施形態では、非アイソタイプアミノ酸変化を作製して、得られるタンパク質の全体的な電荷状態を低減するか(例えば、より高いpIアミノ酸からより低いpIアミノ酸に変化させることによって)、又は安定性などのための構造における適応を可能にする。
【0106】
加えて、重鎖及び軽鎖定常ドメインの両方をpI操作することにより、ヘテロ二量体の各単量体における著しい変化が観察され得る。本明細書で議論されるとおり、2つの単量体が少なくとも0.5異なるpIを有することは、イオン交換クロマトグラフィー若しくは等電点電気泳動又は等電点に影響されやすい他の方法による分離を可能にし得る。
【0107】
加えて、等配電子である、例えば親アミノ酸とほぼ同じサイズである電荷変異体であるpI変異体を作製することができ、且つ本明細書で企図される。
【0108】
pIの計算
各単量体のpIは、変異体重鎖定常ドメインのpI並びに変異体重鎖定常ドメイン及び融合パートナーを含む全単量体のpIに依存し得る。したがって、いくつかの実施形態では、pIの変化は、変異体重鎖定常ドメインに基づいて計算される。代わりに、各単量体のpIが比較され得る。同様に、「開始」可変領域(例えば、scFv又はFabのいずれか)のpIは、いずれの単量体がいずれの方向で設計されることになるかを知らせるために計算される。
【0109】
インビボにおいてより優れたFcRn結合を付与するpI変異体
単量体のpIを下げるpI変異体は、インビボで血清保持を改善する利点の付加を示し得る。
【0110】
Fc領域は、エンドソームにおけるpH6でのFcRnへの結合がFcを占有するため、インビボでより長い半減期を有すると考えられる(Ghetie and Ward,1997 Immunol Today.18(12):592−598、参照により本明細書に組み込まれる)。次に、エンドソーム区画は、Fcを細胞表面に再循環させる。区画が細胞外空間に開通すると、より高いpH、約7.4は、Fcの血液への放出を誘導する。pH7.4でのFcRnに対するFcの親和性の増大は、Fcの血液への放出を妨げると考えられる。したがって、インビボでFcの半減期を延長することになるFc変異は、理想的には低pHでFcRn結合を増加させることになる一方、依然としてより高いpHでのFcの放出を可能にする。アミノ酸のヒスチジンは、6.0〜7.4のpH範囲においてその電荷状態を変える。したがって、Fc/FcRn複合体における重要な位置でHis残基を見出すことは、驚くべきことではない。
【0111】
近年、より低い等電点を有する可変領域を有する抗体もより長い血清半減期を有し得ることが示唆されている(Igawa et al.,2010 PEDS.23(5):385−392、全体として参照により組み込まれる)。低下したpI及び延長された半減期を有する定常領域変異体は、抗体の薬物動態特性を向上させることに対してよりモジュール方式の手法を提供する。
【0112】
この実施形態において有用なpI変異体及び精製の最適化のためのそれらの使用は、図面において開示される。
【0113】
変異体の組合せ
当業者によって理解されるとおり、列挙されたヘテロ二量体化変異体の全ては、任意選択により且つ独立して、それらがその「鎖状態」又は「単量体境界」を保持する限り、いずれかの方法で組み合わされ得る。加えて、これらの変異体の全ては、ヘテロ二量体化形式のいずれかに組み合わされ得る。pI変異体の場合、例示的な実施形態が図面において示されるが、他の組合せは、精製を容易にするために2つの単量体間のpI差を改変する基本的な規則に従って作製され得る。
【0114】
抗原結合タンパク質(例えば、抗体)形式
本開示に関連して有用な1つのヘテロ二量体骨格は、上に記載され且つ
図18に記載される「三重F」又は「ボトルオープナー」骨格形式である。この実施形態において、抗体の一方の重鎖は、一本鎖Fv(下に定義されるとおりの「scFv」)を含有し、且つ他方の重鎖は、可変重鎖及び軽鎖を含む「通常の」Fab形式である。本明細書で概説される実施形態の多くは、一般に、scFvリンカー(全てではないが、多くの場合に荷電されている)を使用して共有結合された可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインを含むscFvを含む第1の単量体を含むボトルオープナー形式に依拠し、ここで、scFvは、通常、ドメインリンカー(本明細書で概説されるとおり、荷電されなくても又は荷電されてもよく、外来性又は内在性であり得る(例えば、天然のヒンジドメインの全て又は一部))を介して第1のFcドメインのN末端に共有結合される。ボトルオープナー形式の第2の単量体は、重鎖であり、且つ組成物は、軽鎖をさらに含む。
【0115】
加えて、ボトルオープナー形式のFcドメインは、一般に、非対称変異体(例えば、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W;及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354Cからなる群から選択される)、任意選択により切断変異体、任意選択により荷電scFvリンカーを含み、且つ重鎖は、pI変異体を含む。いくつかの実施形態では、ボトルオープナー形式は、非対称変異体、pI変異体及び切断変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)荷電scFvリンカー、非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及びFvを含む第1の単量体(「scFv単量体」);b)非対称変異体L368D/K370S、pI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び可変軽鎖ドメインとともに第2の抗原に結合するFvを構成する可変重鎖ドメインを含む第2の単量体(「Fab単量体」);並びにc)軽鎖を含むボトルオープナー形式を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、ボトルオープナー形式は、非対称変異体、pI変異体、切断変異体及びFcRn変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)荷電scFvリンカー、非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、FcRn変異体M428L/N434S及び第1の抗原に結合するFvを含む第1の単量体(「scFv単量体」);b)非対称変異体L368D/K370S、pI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、FcRn変異体M428L/N434S及び可変軽鎖ドメインとともに第2の抗原に結合するFvを構成する可変重鎖ドメインを含む第2の単量体(「Fab単量体」);並びにc)軽鎖を含むボトルオープナー形式を含む。
【0117】
本開示に関連して有用な別のヘテロ二量体骨格は、
図18Hにおいて示されるmAb−Fv形式である。この実施形態において、その形式は、一方の単量体に対する「追加の」可変重鎖ドメインのC末端結合及び他方の単量体に対する「追加の」可変軽鎖ドメインのC末端結合の使用に依拠し、それにより第3の抗原結合ドメインを形成し、ここで、2つの単量体のFab部分が1つの抗原に結合し、且つ「追加の」scFvドメインが異なる抗原に結合する。
【0118】
この実施形態において、第1の単量体は、ドメインリンカーを使用して第1のFcドメインのC末端に共有結合された第1の可変軽鎖ドメインとともに、第1の可変重鎖ドメイン及び第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖ドメインを含む第1の重鎖を含む(vhl−CHl−[ドメインリンカー(例えば、ヒンジ)]−CH2−CH3−[任意選択のドメインリンカー]−vl2)。第2の単量体は、第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖ドメインの第2の可変重鎖ドメイン及びドメインリンカーを使用して第2のFcドメインのC末端に共有結合された第3の可変軽鎖ドメインを含む(vhl−CHl−ドメインリンカー(例えば、ヒンジ)−CH2−CH3−[任意選択のドメインリンカー]−vh2)。2つのC末端に結合された可変ドメインは、scFvを構成する。この実施形態は、2つの同一のFabを形成する重鎖に関連する可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む共通の軽鎖をさらに利用する。本明細書の実施形態の多くに関して、これらのコンストラクトは、本明細書において所望され且つ記載されるとおりの非対称変異体、pI変異体、切断変異体、追加のFc変異体などを含む。
【0119】
任意選択により、mAb−Fv形式のFcドメインは、非対称変異体(例えば、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W;及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354Cからなる群から選択される)、任意選択により切断変異体、任意選択により荷電scFvリンカーを含み、且つ重鎖はpI変異体を含む。いくつかの実施形態では、mAb−Fv形式は、非対称変異体、pI変異体及び切断変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに抗原に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の抗原に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の抗原に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含むボトルオープナー形式を含む。
【0120】
本開示において有用なさらに別のヘテロ二量体骨格は、
図18Iにおいて示されるmAb−scFv形式である。この実施形態において、その形式は、単量体の1つに対するscFvのC末端結合の使用に依拠し、それにより第3の抗原結合ドメインを形成し、ここで、2つの単量体のFab部分が1つの抗原に結合し、且つ「追加の」scFvドメインが異なる抗原に結合する。この実施形態において、第1の単量体は、いずれかの向きでscFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカー及びscFv可変重鎖ドメインを含むC末端に共有結合されたscFvとともに、第1の重鎖(可変重鎖ドメイン及び定常ドメインを含む)を含む(vhl−CHl−ドメインリンカー−CH2−CH3−[任意選択のドメインリンカー]−vh2−scFvリンカー−vl2又はvhl−CHl−ドメインリンカー−CH2−CH3−[任意選択のドメインリンカー]−vl2−scFvリンカー−vh2)。この実施形態は、標的抗原の1つに結合する2つの同一のFabを形成する重鎖に関連する可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む共通の軽鎖をさらに利用する。本明細書の実施形態の多くに関して、これらのコンストラクトは、本明細書において所望され且つ記載されるとおりの非対称変異体、pI変異体、切断変異体、追加のFc変異体などを含む。
【0121】
加えて、mAb−scFv形式のFcドメインは、任意選択により、非対称変異体(例えば、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W;及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354Cからなる群から選択される)、任意選択により切断変異体、任意選択により荷電scFvリンカーを含み、且つ重鎖はpI変異体を含む。いくつかの実施形態では、mAb−scFv形式は、非対称変異体、pI変異体及び切断変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の抗原に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の抗原に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の抗原に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含む形式を含む。
【0122】
本開示において有用なさらに別のヘテロ二量体骨格は、
図18Fにおいて示される中央−scFv又は「mAb
2+1」形式である。その形式は、第3の抗原結合ドメインをこのように形成する挿入されたscFvドメインの使用に依拠し、ここで、2つの単量体のFab部分は、1つの標的に結合し、且つ「追加の」scFvドメインは、別のもう1つの標的に結合する。scFvドメインは、単量体の1つのFcドメインとCH1−Fv領域との間に挿入され、それにより第3の抗原結合ドメインをもたらす。この実施形態において、一方の単量体は、第1の可変重鎖ドメイン、CH1ドメイン(及び任意選択のリンカー/ヒンジ)及びFcドメインを含む第1の重鎖を、scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカー及びscFv可変重鎖ドメインを含むscFvとともに含む。scFvは、重鎖定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間で任意選択のドメインリンカーを使用して共有結合される(VH1−CH1−[任意選択のドメインリンカー]−VH2−scFvリンカー−VL2−[ヒンジを含む任意選択のドメインリンカー]−CH2−CH3又はscFvに関して反対の向き、VH1−CH1−[任意選択のドメインリンカー]−VL2−scFvリンカー−VH2−[ヒンジを含む任意選択のドメインリンカー]−CH2−CH3)。いくつかの実施形態では、第1の単量体は、VH1−CH1−ドメインリンカー−VH2−scFvリンカー−VL2ドメインリンカー−CH2−CH3である。他方の単量体は、標準的なFab側(すなわちVH1−CH1−ドメインリンカー(例えば、ヒンジ)−CH2−CH3)である。この実施形態は、標的に結合する2つの同一のFabを形成する重鎖に関連する可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む共通の軽鎖をさらに利用する。本明細書の実施形態の多くに関して、これらのコンストラクトは、本明細書において所望され且つ記載されるとおりの非対称変異体、pI変異体、切断変異体、追加のFc変異体などを含む。
【0123】
様々な態様において、抗原結合タンパク質は、VH1−CH1−[ドメインリンカー]−VH2−scFvリンカー−VL2−[ドメインリンカー(任意選択によりヒンジを含む)]−CH2−CH3を含む第1の重鎖;VH1−CH1−ドメインリンカー−CH2−CH3を含む第2の重鎖;及びVL1を含む共通の軽鎖を含み;VH1及びVL1はSTEAP1に結合し、且つVH2及びVL2はCD3に結合する。この形式において、VH2は、任意選択により、配列番号170(CDR1)、配列番号171(CDR2)及び配列番号172(CDR3)のCDR配列を含むが、VL2は、配列番号174(CDR1)、配列番号175(CDR2)及び配列番号176(CDR3)のCDR配列を含む。VH1は、配列番号14(CDR1)、配列番号15又は21(CDR2)及び配列番号16(CDR3)のCDR配列を含み;且つVL1は、配列番号11(CDR1)、配列番号12(CDR2)及び配列番号13(CDR3)のCDR配列を含む。代わりに、VH1は、配列番号33(CDR1)、配列番号34(CDR2)及び配列番号35(CDR3)のCDR配列を含み;且つVL1は、配列番号30(CDR1)、配列番号31(CDR2)及び配列番号32(CDR3)のCDR配列を含む。任意選択により、抗原結合タンパク質は、E233P、delL234、L235V、G236A、S267K、r292c、n297g、v302c、E357Q及びS364K(EU付番、小文字は、本明細書でさらに記載されるSEFL2置換を参照する)を含むが、これらに限定されない第1の重鎖における改変を含み、且つ第2の重鎖は、N208D、E233P、delL234、L235V、G236A、S267K、r292c、Q295E、n297g、v302c、L368D、K370S、N384D、Q418E及びN421D(EU付番、小文字は、本明細書でさらに記載されるSEFL2置換を参照する)を含むが、これらに限定されない改変を含む。この実施形態に関連して、使用のためのリンカーは、任意選択により、GKPGSGKPGSGKPGSGKPGS(配列番号152)である。
【0124】
中央scFv形式のFcドメインは、任意選択により、非対称変異体(例えば、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354Cからなる群から選択される)、任意選択により切断変異体、任意選択により荷電scFvリンカーを含み、且つ重鎖はpI変異体を含む。いくつかの実施形態では、中央scFv形式は、非対称変異体、pI変異体及び切断変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の標的に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含む形式を含む。
【0125】
本開示において特に有用な別のヘテロ二量体骨格は、
図18Gにおいて示される中央−Fv形式である。その形式は、第3の抗原結合ドメインをこのように形成する挿入されたscFvドメインの使用に依拠し、ここで、2つの単量体のFab部分は、1つの標的に結合し、且つ「追加の」scFvドメインは、別のもう1つの標的に結合する。scFvドメインは、単量体のFcドメインとCH1−Fv領域との間に挿入され、それにより第3の抗原結合ドメインをもたらし、ここで、各単量体は、scFvの構成要素を含有する(例えば、一方の単量体は、可変重鎖ドメインを含み、且つ他方は、可変軽鎖ドメインを含む)。この実施形態において、一方の単量体は、第1の可変重鎖ドメイン、CH1ドメイン及びFcドメインを含む第1の重鎖並びに追加の可変軽鎖ドメインを含む。軽鎖ドメインは、ドメインリンカーを使用して、重鎖定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間で共有結合される(vhl−CHI−[任意選択のドメインリンカー]−vl2−ヒンジ−CH2−CH3)。他方の単量体は、第1の可変重鎖ドメイン、CH1ドメイン及びFcドメインを含む第1の重鎖並びに追加の可変重鎖ドメインを含む(vhl−CHI−[任意選択のドメインリンカー]−vh2−ヒンジ−CH2−CH3)。軽鎖ドメインは、ドメインリンカーを使用して、重鎖定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間で共有結合される。この実施形態は、標的に結合する2つの同一のFabを形成する重鎖に関連する可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む共通の軽鎖をさらに利用する。本明細書の実施形態の多くに関して、これらのコンストラクトは、本明細書において所望され且つ記載されるとおりの非対称変異体、pI変異体、切断変異体、追加のFc変異体などを含む。
【0126】
本開示に関連して有用なさらなるヘテロ二量体骨格は、
図18Cにおいて示される1アーム中央−scFv形式である。この実施形態において、一方の単量体は、Fcドメインのみを含むが、他方の単量体は、挿入されるscFvドメインを使用し、それにより第2の抗原結合ドメインを形成する。この形式において、Fab部分は、1つの標的に結合し、scFvは、もう1つの標的に結合する。scFvドメインは、単量体の1つのFcドメインとCH1−Fv領域との間に挿入される。この実施形態において、一方の単量体は、第1の可変重鎖ドメイン、CH1ドメイン及びFcドメインを含む第1の重鎖を、scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカー及びscFv可変重鎖ドメインを含むscFvとともに含む。scFvは、ドメインリンカーを使用して、重鎖定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端との間で共有結合される。第2の単量体は、Fcドメインを含む。この実施形態は、Fabを形成する重鎖に関連する可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖をさらに利用する。本明細書の実施形態の多くに関して、これらのコンストラクトは、本明細書において所望され且つ記載されるとおりの非対称変異体、pI変異体、切断変異体、追加のFc変異体などを含む。
【0127】
加えて、1アーム中央−scFv形式のFcドメインは、任意選択により、非対称変異体(例えば、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W及びT366S/L368A/Y407V Y349C:T366W/S354Cからなる群から選択される)、任意選択により切断変異体、任意選択により荷電scFvリンカーを含み、且つ重鎖はpI変異体を含む。いくつかの実施形態では、1アーム中央scFv形式は、非対称変異体、pI変異体及び切断変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の標的に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含むボトルオープナー形式を含む。いくつかの実施形態では、1アーム中央scFv形式は、非対称変異体、pi変異体、切断変異体及びFcRn変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、FcRn変異体M428L/N434S及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pi変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、FcRn変異体M428L/N434S及び第1の可変軽鎖ドメインとともに本明細書で概説されるとおりの第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の標的に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含む形式を含む。
【0128】
本開示において有用なさらなるヘテロ二量体骨格は、
図18Dにおいて示される1アームscFv−mAb形式である。この実施形態において、一方の単量体は、Fcドメインのみを含むが、他方の単量体は、一般にリンカーの使用を介して重鎖のN末端で結合されたscFvドメインを使用する:vh−scFvリンカー−vl−[任意選択のドメインリンカー]−CHl−hinge−CH2−CH3又は(反対の向き)vl−scFvリンカー−vh−[任意選択のドメインリンカー]−CHl−ヒンジ−CH2−CH3。この形式において、Fab部分は、1つの標的に結合し、scFvは、もう1つの標的に結合する。この実施形態は、Fabを形成する重鎖に関連する可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖をさらに利用する。本明細書の実施形態の多くに関して、これらのコンストラクトは、本明細書において所望され且つ記載されるとおりの非対称変異体、pI変異体、切断変異体、追加のFc変異体などを含む。
【0129】
1アームscFv−mAbのFcドメインは、非対称変異体(例えば、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W;及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354Cからなる群から選択される)、任意選択により切断変異体、任意選択により荷電scFvリンカーを含み、且つ重鎖はpi変異体を含む。いくつかの実施形態では、1アームscFv−mAb形式は、非対称変異体、pi変異体及び切断変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び第1の可変軽鎖ドメインとともに本明細書で概説されるとおりの第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の標的に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含むボトルオープナー形式を含む。いくつかの実施形態では、1アームscFv−mAb形式は、非対称変異体、pI変異体、切断変異体及びFcRn変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、FcRn変異体M428L/N434S及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pi変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、FcRn変異体M428L/N434S及び第1の可変軽鎖ドメインとともに本明細書で概説されるとおりの第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の標的に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含むボトルオープナー形式を含む。
【0130】
本開示において有用な別のヘテロ二量体骨格は、
図18Eにおいて示されるmAb−scFv形式である。この実施形態において、その形式は、単量体の1つに対するscFvのN末端結合の使用に依拠し、それにより第3の抗原結合ドメインを形成し、ここで、2つの単量体のFab部分が1つの標的に結合し、且つ「追加の」scFvドメインが異なる標的に結合する。この実施形態において、第1の単量体は、いずれかの向きでscFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカー及びscFv可変重鎖ドメインを含むN末端に共有結合されたscFvとともに、第1の重鎖(可変重鎖ドメイン及び定常ドメインを含む)を含む((vhl−scFvリンカー−vll−[任意選択のドメインリンカー]−vh2−CHl−ヒンジ−CH2−CH3)又は(反対の向きのscFvを有する)(vll−scFvリンカー−vhl−[任意選択のドメインリンカー]−vh2−CHl−ヒンジ−CH2−CH3))。この実施形態は、標的抗原の1つに結合する2つの同一のFabを形成する重鎖に関連する可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む共通の軽鎖をさらに利用する。本明細書の実施形態の多くに関して、これらのコンストラクトは、本明細書において所望され且つ記載されるとおりの非対称変異体、pi変異体、切断変異体、追加のFc変異体などを含む。
【0131】
scFv−mAb形式のFcドメインは、任意選択により、非対称変異体(例えば、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W;及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354Cからなる群から選択される)、任意選択により切断変異体、任意選択により荷電scFvリンカーを含み、且つ重鎖はpI変異体を含む。いくつかの実施形態では、mAb−scFv形式は、非対称変異体、pI変異体及び切断変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pi変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び第1の可変軽鎖ドメインとともに本明細書で概説されるとおりの第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の標的に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含むボトルオープナー形式を含む。いくつかの実施形態では、mAb−scFv形式は、非対称変異体、pI変異体、切断変異体及びFcRn変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、FcRn変異体M428L/N434S及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、FcRn変異体M428L/N434S及び第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の標的に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含むボトルオープナー形式を含む。
【0132】
本開示は、
図18Bにおいて示されるものなどの二重scFv形式も提供する。この実施形態では、ヘテロ二量体抗原結合タンパク質は、2つのscFv−Fc単量体(両方が(vh−scFvリンカー−vl−[任意選択のドメインリンカー]−CH2−CH3)形式若しくは(vl−scFvリンカー−vh−[任意選択のドメインリンカー]−CH2−CH3)形式のいずれか又は一方の向きの1つの単量体及び他の向きの他方の単量体を有する)で構成される。二重scFv形式のFcドメインは、任意選択により、非対称変異体(例えば、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W;及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354Cからなる群から選択される)、任意選択により切断変異体、任意選択により荷電scFvリンカーを含み、且つ重鎖はpI変異体を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、二重scFv形式は、非対称変異体、pI変異体及び切断変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pi変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K及び第1の可変軽鎖ドメインとともに本明細書で概説されるとおりの第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の標的に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含む形式を含む。いくつかの実施形態では、二重scFv形式は、非対称変異体、pI変異体、切断変異体及びFcRn変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、FcRn変異体M428L/N434S及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pi変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、FcRn変異体M428L/N434S及び第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン並びに第2の可変重鎖とともに第2の標的に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含むボトルオープナー形式を含む。
【0134】
抗体形式の追加の説明は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2017/218707号パンフレットにおいて提供される。
【0135】
抗体結合
本開示の二重特異性抗原結合タンパク質(例えば、ヘテロ二量体抗体)は、様々な態様において、CD3及びSTEAP1に結合する。異なる結合領域は、独立して、10
−4M以下、10
−5M以下、10
−6M以下、10
−7M以下、10
−8M以下、10
−9M以下、10
−10M以下、10
−11M以下又は10
−12M以下のそれらの対応する抗原に関するKDを示し、ここで、KDは、特異的な抗体−抗原相互作用の解離速度を指す。結合親和性は、上でさらに記載されている。STEAP1結合領域は、例えば、CD3結合領域がCD3に結合する際と同じ親和性を有してSTEAP1に結合する必要はない。二重特異性抗原結合タンパク質に関連して開示される結合親和性は、PD−1に結合するコンストラクトを含む本明細書に記載される単一特異性コンストラクトのいずれかにも適用される。
【0136】
追加の抗体修飾
上で概説される修飾に加えて、他の修飾が作製され得る。例えば、分子は、VH及びVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組み込みによって安定化され得る(Reiter et al.,1996,Nature Biotech.14:1239−1245、全体として参照により組み込まれる)。加えて、下で概説されるとおりに作製され得る抗体の様々な共有結合的修飾が存在する。
【0137】
抗体の共有結合的修飾は、本開示の範囲内に含まれ、これは、一般に、常にではないものの翻訳後に行われる。例えば、抗体のいくつかの種類の共有結合的修飾は、抗体の特定のアミノ酸残基を、選択された側鎖又はN末端若しくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることによって分子内に導入される。
【0138】
システイニル残基は、最も一般的には、α−ハロアセテート(及び対応するアミン)、例えばクロロ酢酸又はクロロアセトアミドと反応して、カルボキシメチル又はカルボキシアミドメチル誘導体を生じる。システイニル残基は、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、リン酸クロロアセチル、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾアート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール又はクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールなどとの反応によっても誘導体化され得る。
【0139】
加えて、システインでの修飾は、下でさらに記載される抗体−薬物コンジュゲート(ADC)適用において特に有用である。いくつかの実施形態では、抗体の定常領域は、薬物部分のより特異的且つ制御された配置を可能にするために、特に「チオール反応性」である1つ以上のシステインを含有するように操作され得る。例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,521,541号明細書を参照されたい。
【0140】
ヒスチジル残基は、pH5.5〜7.0でのジエチルピロカーボネートとの反応によって誘導体化され、なぜなら、この薬剤は、ヒスチジル側鎖に対して比較的特異的であるためである。パラ−ブロモフェナシルブロミドも有用であり;この反応は、好ましくは、pH6.0の0.1Mカコジル酸ナトリウム中で実施される。
【0141】
リシニル及びアミノ末端残基は、コハク酸又は他のカルボン酸無水物と反応する。これらの薬剤による誘導体化は、リシニル残基の電荷を反転させる。アルファ−アミノ含有残基を誘導体化するための他の好適な試薬としては、ピコリンイミド酸メチルなどのイミドエステル;リン酸ピリドキサール;ピリドキサール;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソ尿素;2,4−ペンタンジオン;及びグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。
【0142】
アルギニル残基は、1つ又は複数の従来型の試薬、とりわけフェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン及びニンヒドリンとの反応により修飾される。グアニジン官能基のpKaが高いため、アルギニン残基の誘導体化は、反応をアルカリ条件下で実施する必要がある。さらに、これらの試薬は、リジンの基及びアルギニンイプシロン−アミノ基と反応し得る。
【0143】
チロシル残基の特異的修飾は、特に芳香族ジアゾニウム化合物又はテトラニトロメタンとの反応によるチロシル残基へのスペクトル標識の導入を目的として行われる場合がある。最も一般的には、N−アセチルイミジゾール(N−acetylimidizole)及びテトラニトロメタンを使用して、それぞれO−アセチルチロシル種及び3−ニトロ誘導体を形成する。125I又は131Iを用いてチロシル残基をヨウ素化して、ラジオイムノアッセイに使用される標識タンパク質を調製する、上記のクロラミンT法が好適である。
【0144】
カルボキシル側基(アスパルチル又はグルタミル)は、カルボジイミド(R’−N=C=N−−R’)との反応によって選択的に修飾され、ここで、R及びR’は、任意選択により、異なるアルキル基、例えば1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド又は1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドである。さらに、アスパルチル残基及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル残基及びグルタミニル残基に変換される。
【0145】
二官能性薬剤による誘導体化は、様々な方法における使用のための水不溶性支持体マトリックス又は表面に抗体を架橋するのに有用である。一般的に使用される架橋剤として、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、例えば4−アジドサリチル酸とのエステルなどのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)などのジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル及びビス−N−マレイミド−1,8−オクタンなどの二官能性マレイミドが挙げられる。メチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートなどの誘導体化剤により、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化され得る中間体が得られる。代わりに、シアノゲン−ブロミド活性化炭水化物並びに全てが全体として参照により組み込まれる米国特許第3,969,287号明細書;同第3,691,016号明細書;同第4,195,128号明細書;同第4,247,642号明細書;同第4,229,537号明細書;及び同第4,330,440号明細書において記載される反応性物質などの反応性水不溶性マトリックスがタンパク質固定化のために利用される。
【0146】
グルタミニル及びアスパラギニル残基は、多くの場合、脱アミド化されて、それぞれ対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基になる。代わりに、これらの残基は、弱酸性条件下で脱アミド化される。これらの残基のいずれの形態も本開示の範囲内に含まれる。
【0147】
他の修飾としては、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,pp.79−86[1983](全体が本明細書に組み込まれる))、N末端アミンのアセチル化並びに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0148】
加えて、当業者に理解されるとおり、標識(蛍光性、酵素性、磁性、放射性などを含む)は、本明細書に記載される抗原結合タンパク質(及び本開示の他の組成物)のいずれかに付加され得る。
【0149】
グリコシル化
別の種類の共有結合的修飾は、グリコシル化における改変である。別の実施形態では、本明細書で開示される抗体(又は他の種類の抗原結合タンパク質)は、1つ以上の操作されたグリコフォームを含むように修飾され得る。本明細書で使用する場合、「操作されたグリコフォーム」は、抗体に共有結合された糖質組成物を意味し、前記糖質組成物は、親抗体のものと化学的に異なる。操作されたグリコフォームは、エフェクター機能を増強するか又は低減することを含むが、これに限定されない様々な目的のために有用であり得る。操作されたグリコフォームの好ましい形態は、アフコシル化であり、これは、おそらくFcγRIIIa受容体へのより緊密な結合を介してADCC機能の増加に相関することが示されている。これに関連して、「アフコシル化」は、宿主細胞において産生される抗体の大半が実質的にフコースを欠き、例えば生成された抗体の90%、95%又は98%が、抗体の糖鎖(一般にFc領域のN297で結合される)の構成要素として認識できるフコースを有しないことを意味する。定義された機能的にアフコシル化された抗体は、一般に、FcγRIIIa受容体に対して少なくとも50%以上の親和性を示す。
【0150】
任意選択により、ヘテロ二量体抗体は、例えば、292位、297位又は302位の1つ以上において、もう1つのグリコシル化部位を除去する配列改変を含む。1つの非限定的な実施例は、例えば、全体として且つ特にSEFL2変異の説明に関して参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,546,203号明細書においてさらに記載される1つ以上の好適なエフェクター機能(SEFL2)変異(例えば、IgG1骨格における)の導入を含む。この改変は、本明細書で開示される任意の他の改変、例えば脱アミド化を減少させるN67Q改変に加えて使用され得る。
【0151】
操作されたグリコフォームは、当技術分野で知られる様々な方法によって作製され得る。例えば、全てが全体として参照により組み込まれるUmana et al.,1999,Nat Biotechnol 17:176−180;Davies et al.,2001,Biotechnol Bioeng 74:288−294;Shields et al.,2002,J Biol Chem 277:26733−26740;Shinkawa et al.,2003,J Biol Chem 278:3466−3473;米国特許第6,602,684号明細書;米国特許出願公開第2003/0157108号明細書及び同第2003;0003097号明細書;並びに国際公開第00/61739A1号パンフレット及び国際公開第01/29246A1号パンフレット、国際公開第02/31140A1号パンフレット、国際公開第02/30954A1号パンフレット、並びにポテリジェント(登録商標)技術[Biowa,Inc.,Princeton,NJ]及びGlycoMAb(登録商標)グリコシル化操作技術[Glycart Biotechnology AG,Zuerich,Switzerland]を参照されたい。これらの技術の多くは、例えば、様々な生物又は操作されたか若しくは別の方法による細胞株(例えば、Lec−13 CHO細胞又はラットハイブリドーマYB2/0細胞)においてIgGを発現させることにより、グリコシル化経路に関与する酵素(例えば、FUT8[α1,6−フコシルトランスフェラーゼ]及び/又はβ1−4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII[GnTIII]))を調節することにより、又はIgGが発現された後に糖質を修飾することにより、Fc領域に共有結合されたフコシル化及び/又はバイセクティングオリゴ糖のレベルを制御することに基づく。例えば、「糖操作された抗体技術」は、産生中にフコシル化を阻害する修飾された糖類を付加することによって機能し;例えば全体として参照により組み込まれる米国特許出願公開第20090317869号明細書を参照されたい。操作されたグリコフォームは、通常、様々な糖質又はオリゴ糖指し;したがって、抗体は、操作されたグリコフォームを含み得る。
【0152】
代わりに、操作されたグリコフォームは、様々な糖質又はオリゴ糖を含むIgG変異体を指し得る。当技術分野で知られるとおり、グリコシル化パターンは、タンパク質の配列(例えば、以下で論じる特定のグリコシル化アミノ酸残基の存在又は非存在)又はそのタンパク質を産生する宿主細胞若しくは生物体の両方に依存し得る。個々の発現系について以下で論じる。
【0153】
ポリペプチドのグリコシル化は、通常、N結合又はO結合のいずれかである。N結合は、糖鎖のアスパラギン残基側鎖への結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−トレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への糖鎖の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を生成する。O結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンも使用し得るが、最も一般的にはセリン又はスレオニンへの糖類N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースの1つの付加を指す。
【0154】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、好都合には、上述のトリペプチド配列の1つ以上が含まれるようにアミノ酸配列を改変することにより達成される(N結合型グリコシル化部位の場合)。改変は、1つ以上のセリン若しくはトレオニン残基の開始配列への付加又はそれによる置換によってもなされ得る(O結合グリコシル化部位の場合)。容易にするために、抗体アミノ酸配列を、DNAレベルでの変化により、特に所望のアミノ酸に翻訳されることになるコドンが生成されるように、予め選択された塩基で標的ポリペプチドをコードするDNAを変異させることによって改変することが好ましい。
【0155】
抗原結合タンパク質(例えば、抗体)上の糖鎖の数を増やす別の手段は、タンパク質へのグリコシドの化学的又は酵素的カップリングによるものである。これらの手順は、それらがN結合型及びO結合型グリコシル化のためのグリコシル化能を有する宿主細胞におけるタンパク質の産生を必要としない点で有利である。使用される結合様式に応じて、糖は、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのものなどの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニン若しくはヒドロキシプロリンのものなどの遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン若しくはトリプトファンのものなどの芳香族残基、又は(f)グルタミンのアミド基に付加され得る。これらの方法は、両方が全体として参照により組み込まれる国際公開第87/05330号パンフレット及びAplin and Wriston,1981,CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306において記載されている。
【0156】
出発抗体(例えば、翻訳後)上に存在する糖鎖の除去は、化学的又は酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化は、化合物トリフルオロメタンスルホン酸又は均等な化合物へのタンパク質の曝露が必要となる。この処理により、ポリペプチドは無傷な状態のままで、結合している糖(N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン)を除くほとんど又は全ての糖が切断される。化学的脱グリコシル化については、両方が全体として参照により組み込まれるHakimuddin et al.,1987,Arch.Biochem.Biophys.259:52及びEdge et al.,1981,Anal.Biochem.118:131によって記載されている。ポリペプチド上の糖鎖の酵素的切断は、全体として参照により組み込まれるThotakura et al.,1987,Meth.Enzymol.138:350によって記載されるとおりの様々なエンド及びエキソグリコシダーゼの使用によって達成され得る。潜在的なグリコシル化部位でのグリコシル化は、全体として参照により組み込まれるDuskin et al.,1982,J.Biol.Chem.257:3105によって記載されるとおりの化合物ツニカマイシンの使用によって妨げられ得る。ツニカマイシンは、タンパク質−N−グリコシド結合の形成を阻止する。
【0157】
抗体の共有結合修飾の別の種類は、例えば、全てが全体として参照により組み込まれるNektar Therapeuticsからの2005−2006 PEGカタログ(Nektarのウェブサイトで利用可能)又は米国特許第4,640,835号明細書;同第4,496,689号明細書;同第4,301,144号明細書;同第4,670,417号明細書;同第4,791,192号明細書;若しくは同第4,179,337号明細書において記載される様式において、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリオキシアルキレンなどの様々なポリオールを含むが、これらに限定されない様々な非タンパク質性ポリマーに抗体を連結することを含む。加えて、当技術分野で知られるとおり、PEGなどのポリマーの付加を容易にするために抗体内の様々な位置でアミノ酸置換がなされ得る。例えば、全体として参照により組み込まれる米国特許出願公開第2005/0114037A1号明細書を参照されたい。
【0158】
追加の機能性のための追加のFc変異体
上記のpIアミノ酸変異体及び他の変異体に加えて、1つ以上のFcγR受容体への結合を改変すること、FcRn受容体への結合の改変などを含むが、これらに限定されない様々な理由のために作製され得るいくつかの有用なFcアミノ酸改変が存在する。以下の改変が上記の改変のいずれかに加えて又はその代わりに利用され得る。
【0159】
FcγR変異体
FcγR受容体の1つ以上に対する結合を変えるために作製され得るいくつかの有用なFc置換がある。結合の増加及び結合の減少をもたらす置換が有用であり得る。例えば、FcγRIIIaに対する結合の増加は、一般に、ADCC(抗体依存性細胞性細胞傷害;FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が、標的細胞上で結合された抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞性反応)の増加をもたらす。同様に、FcγRIIb(抑制性受容体)に対する結合の減少は、いくつかの状況において同様に有益であり得る。本開示において有用なアミノ酸置換としては、全てが全体として且つ特に開示される変異体に関して参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0024298号明細書(特に
図41)、同第2006/0121032号明細書、同第2006/0235208号明細書、同第2007/0148170号明細書において列挙されるものが挙げられる。有用な特定の変異体としては、236A、239D、239E、332E、332D、239D/332E、267D、267E、328F、267E/328F、236A/332E、239D/332E/330Y、239D、332E/330L及び299Tが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
加えて、434S、428L、308F、259I、428L/434S、259I/308F、436I/428L、436I又はV/434S、436V/428L及び259I/308F/428Lを含むが、これらに限定されない、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0163699号明細書において具体的に開示されるとおりの、FcRn受容体に対する結合の増加及び血清半減期の増大において有用な追加Fc置換がある。
【0161】
Fc切断変異体
本開示に関連して有用な追加の変異体は、Fcγ受容体への結合を切断する(例えば、減少させるか又は除去する)ものである。これは、ヘテロ二量体抗体の潜在的な作用機序を減少させる(例えば、ADCC活性を減少させる)ために望ましい場合がある。いくつかの好適なFc切断変異体は、
図6において示され、任意選択により且つ独立して、pI及び立体変異体を含む任意の他のヘテロ二量体化変異体と組み合わせて含まれ得るか又は除外され得る。
【0162】
いくつかの実施形態において、pI変異体を含まず、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを含む正側と対になるpI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、非対称変異体368D/370S及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを含有する第1の単量体(「負側」)(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)が特に有用であり、正側は、scFvを含む単量体であり、且つ荷電scFvリンカーを含有する。第2の実施形態は、pI変異体Q196K/I199T/P271R/P228R/N276K、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを含む正側(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)と対になるI199T/N203D/K274Q/R355Q/Q419E/K447del、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを含む第1の負側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用し、正側は、scFvを含む単量体であり、且つ荷電scFvリンカーを含有する。第3の実施形態は、pI変異体を有さず、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを有する正側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)と対になるI199T/N203D/K274Q/R355Q/N384S/K392N/V397M/Q419E/K447del、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを含む第1の負側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用し、正側は、scFvを含む単量体であり、且つ荷電scFvリンカーを含有する。第4の実施形態は、pI変異体を含まず、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S239Kを含む正側と対になるpI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、非対称変異体368D/370S及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S239を含有する第1の単量体(「負側」)(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用する。第5の実施形態は、pI変異体Q196K/I199T/P271R/P228R/N276K、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S239Kを含む正側(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)と対になるI199T/N203D/K274Q/R355Q/Q419E/K447del、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S239Kを含む第1の負側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用する。第6の実施形態は、正側単量体の非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S239K(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)と対になるI199T/N203D/K274Q/R355Q/N384S/K392N/V397M/Q419E/K447del、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267Kを含む第1の負側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用し、正側は、scFv単量体であり、且つ荷電scFvリンカー(特にscFvが抗CD3である場合)を含有する。第7の実施形態は、pI変異体を含まず、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体S239K/S267Kを含む正側と対になるpI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、非対称変異体368D/370S及び切断変異体S239K/S267Kを含有する第1の単量体(「負側」)(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用し、正側は、scFv単量体であり、且つ荷電scFvリンカーを含有する。第8の実施形態は、pI変異体Q196K/I199T/P271R/P228R/N276K、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体S239K/S267Kを含む正側(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)と対になるI199T/N203D/K274Q/R355Q/Q419E/K447del、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体S239K/S267Kを含む第1の負側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用し、正側は、scFv単量体であり、且つ荷電scFvリンカーを含有する。第9の実施形態は、pI変異体を有さず、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体S239K/S267Kを有する正側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)と対になるI199T/N203D/K274Q/R355Q/N384S/K392N/V397M/Q419E/K447del、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体S239K/S267Kを含む第1の負側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用し、正側は、scFv単量体であり、且つ荷電scFvリンカーを含有する。第10の実施形態は、pI変異体を含まず、非対称変異体S364/E357Q及び切断変異体S267K/P329Kを含む正側と対になるpI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、非対称変異体368D/370S及び切断変異体S267K/P329Kを含有する第1の単量体(「負側」)(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用し、正側は、scFv単量体であり、且つ荷電scFvリンカーを含有する。第11の実施形態は、pI変異体Q196K/I199T/P271R/P228R/N276K、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体S267K/P329Kを含む正側(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)と対になるI199T/N203D/K274Q/R355Q/Q419E/K447del、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体S267K/P329Kを含む第1の負側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用し、正側は、scFv単量体であり、且つ荷電scFvリンカーを含有する。第12の実施形態は、pI変異体を有さず、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体S267K/P329Kを有する正側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)と対になるI199T/N203D/K274Q/R355Q/N384S/K392N/V397M/Q419E/K447del、非対称変異体S364K/E357Q及び切断変異体S267K/P329Kを含む第1の負側単量体(任意選択によりFcRn変異体428L/434Sを含有する両方の単量体)を利用し、正側は、scFv単量体であり、且つ荷電scFvリンカーを含有する。
【0163】
様々な態様において、第1の可変重鎖ドメインを含む第1の重鎖、第1のCH1ドメイン及び第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖、ヒトCD3に結合し、且つscFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカー及びscFv可変重鎖ドメイン重鎖を含むscFvを含む第1の単量体(すなわち「Fab−scFv−Fc」重鎖)は、上部ヒンジにおいて欠失を含み、且つCH2及びCH3置換が導入される。置換は、例えば、E233P、delL234、L235V、G236A、S267K、r292c、n297g、v302c、E357Q及びS364K(EU付番、小文字は、SEFL2置換を指す)の1つ以上(例えば、全て)を含む。第2の可変重鎖ドメイン及び第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖を含む第2の重鎖を含む第2の単量体は、任意選択により、以下の変異の1つ以上(例えば、全て)を含む:N208D、E233P、delL234、L235V、G236A、S267K、r292c、Q295E、n297g、v302c、L368D、K370S、N384D、Q418E及びN421D(EU付番、小文字は、SEFL2置換を指す)。
【0164】
リンカー
本明細書の「リンカー」は、「リンカー配列」若しくは「スペーサー」又は文法的に正しい均等物として参照される。ホモ又はヘテロ二官能性リンカーは、よく知られている(全体として参照により組み込まれる1994 Pierce Chemical Company catalog,technical section on cross−linkers,155−200頁を参照されたい)。(一般的な「リンカー」と、「scFvリンカー」と、「荷電scFvリンカー」との間の区別に留意されたい。)いくつかの戦略を使用して、共有結合的に分子をともに連結し得る。これらとしては、タンパク質又はタンパク質ドメインのN末端とC末端との間のポリペプチド結合、ジスルフィド結合を介する結合及び化学的架橋試薬を介する結合が挙げられるが、これらに限定されない。この実施形態の一態様では、リンカーは、組換え技術又はペプチド合成によって生成されるペプチド結合である。リンカーペプチドは、次のアミノ酸残基を主に含み得る:Gly、Ser、Ala又はThr。リンカーペプチドは、2つの分子を、それらが互いに対して妥当な立体構造をとり、その結果、所望の活性を保持するように連結するのに十分である長さを有するべきである。一実施形態では、リンカーは、約1〜50アミノ酸長、好ましくは約1〜30アミノ酸長である。一実施形態では、1〜20アミノ酸長のリンカーが使用され得る。有用なリンカーとしては、グリシン−セリンポリマー、例えば(GS)n、(GSGGS)n(配列番号178)、(GGGGS)n(配列番号179)及び(GGGS)n(配列番号180)(ここで、nは、少なくとも1の整数である);グリシン−アラニンポリマー;アラニン−セリンポリマー;及び他の可動性リンカーが挙げられる。代わりに、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーを含むが、これらに限定されない様々な非タンパク質性のポリマーがリンカーとして有用であり得る。
【0165】
他のリンカー配列は、CL/CH1ドメインの任意の長さの任意の配列を含み得るが、CL/CH1ドメインの全ての残基ではなく;例えば、CL/CH1ドメインの最初の5〜12個のアミノ酸残基である。リンカーは、免疫グロブリン軽鎖、例えばCκ又はCλに由来し得る。リンカーは、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cα1、Cα2、Cδ、Cε及びCμを含む任意のアイソタイプの免疫グロブリン重鎖に由来し得る。リンカー配列は、Ig様タンパク質などの他のタンパク質(例えば、TCR、FcR、KIR)、ヒンジ領域由来の配列及び他のタンパク質由来の他の天然配列にも由来し得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、リンカーは、本明細書で概説される任意の2つのドメインをともに連結するのに使用される「ドメインリンカー」である。例えば、
図18Fにおいて、FabのCH1ドメインのC末端をscFvのN末端に結合するドメインリンカーは、scFvのC末端をCH2ドメインに結合する別の任意選択のドメインリンカーとともに存在し得る(ただし、多くの実施形態では、ヒンジがこのドメインリンカーとして使用される)。いくつかの実施形態では、リンカーは、ヒンジ領域及びその断片である。
【0167】
抗体−薬物コンジュゲート
本開示の抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はヘテロ二量体抗体)は、任意選択により、薬物とコンジュゲートされて、抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を形成する。一般に、ADCは、癌研究応用を含む様々な関連において使用されるが、ここで、細胞障害性薬剤又は細胞分裂阻害剤の局所的送達のための抗体−薬物コンジュゲートの使用は、薬物部分の腫瘍への標的化された送達を可能にし、これにより、より高い有効性、より低い毒性などが可能になる場合がある。この技術の概要は、全てが全体として参照により本明細書に組み込まれるDucry et al.,Bioconjugate Chem.,21:5−13(2010);Carter et al.,Cancer J.14(3):154(2008);及びSenter,Current Opin.Chem.Biol.13:235−244(2009)において提供される。
【0168】
一般に、コンジュゲーションは、下でさらに記載されるとおり抗体への共有結合によって実施され、且つ一般にリンカー、多くの場合にペプチド結合に依拠する(これは、本明細書に記載されるとおり、標的部位でのプロテアーゼ又はそれ以外による切断に感受性であるように設計され得る)。加えて、リンカー−薬物単位(LU−D)の結合は、抗体内のシステインに対する結合によって達成され得る。1抗体当たりの薬物部分の数は、反応の条件に応じて変化し得、且つ1:1〜10:1の薬物:抗体で変動し得る。当業者に理解されるとおり、実際の数は、平均値である。
【0169】
ADCの薬物は、化学療法剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素又はその断片)又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)などの細胞障害性薬剤を含むが、これらに限定されないいくつかの薬剤のいずれかから選択され得る。本開示は、ADCを使用する方法をさらに提供する。
【0170】
本開示に関連して、使用のための薬物は、細胞障害薬物、特に癌療法のために使用されるものを含む。そのような薬物は、一般に、DNA損傷薬剤、代謝拮抗薬、天然の生成物及びそれらの類似体を含む。細胞障害性薬剤の例示的なクラスは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤及びチミジル酸シンターゼ阻害剤などの酵素阻害剤、DNA干渉物質、DNA切断剤、トポイソメラーゼ阻害剤、薬物のアントラサイクリンファミリー、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞障害性ヌクレオシド、薬物のプテリジンファミリー、ジイネン、ポドフィロトキシン、ドラスタチン、マイタンシノイド、分化誘導剤並びにタキソールを含む。
【0171】
これらのクラスのメンバーは、例えば、メトトレキセート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、ロイロシン、ロイロシデイン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、カミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシン及びエトポシド又はリン酸エトポシドなどのポドフィロトキシン誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソールを含むタキサン、タキソテールレチノイン酸、酪酸、N8−アセチルスペルミジン、カンプトテシン、カリチアマイシン、エスペラミシン、エン−ジイン、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、カリチアマイシン、カンプトテシン、マイタンシノイド(DM1を含む)、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)及びマイタンシノイド(DM4)並びにそれらの類似体を含む。
【0172】
毒素は、抗体−毒素コンジュゲートとして使用され得、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リシンなどの植物毒素、ゲルダナマイシンなどの小分子毒素(Mandler et al(2000)J.Nat.Cancer Inst.92(19):1573−1581;Mandler et al(2000)Bioorganic&Med.Chem.Letters 10:1025−1028;Mandler et al (2002)Bioconjugate Chem.13:786−791)、マイタンシノイド(EP1391213号明細書;Liu et al.,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623)及びカリチアマイシン(Lode et al(1998)Cancer Res.58:2928;Hinman et al(1993)Cancer Res.53:3336−3342)を含む。毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機構によってそれらの細胞障害効果及び細胞増殖抑制効果を発揮し得る。
【0173】
抗体(又は他の抗原結合タンパク質)のコンジュゲート並びにマイタンシノイド、ドラスタチン、オーリスタチン、トリコテシン、カリチアマイシン及びCC1065などの1つ以上の小分子毒素並びに毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が企図される。
【0174】
マイタンシノイド薬物部分としての使用に好適なマイタンシン化合物は、当技術分野でよく知られており、遺伝子操作技術を使用してもたらされる既知の方法(Yu et al(2002)PNAS 99:7968−7973を参照されたい)に従って天然の供給源から、又は既知の方法に従って合成的に調製されるマイタンシノール及びマイタンシノール類似体から単離され得る。下記のとおり、薬物は、抗体へのコンジュゲーションのためのチオール基又はアミン基などの機能的に活性な基の組み込みによって修飾され得る。
【0175】
例示的なマイタンシノイド薬物部分は、C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号明細書)(アンサマイトシンP2の水素化アルミニウムリチウム還元により調製される);C−20−ヒドロキシ(又はC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号明細書及び同第4,307,016号明細書)(ストレプトマイセス(Streptomyces)若しくはアクチノミセス(Actinomyces)を使用する脱メチル又はLAHを使用する脱塩素により調製される);及びC−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号明細書)(塩化アシルを使用するアシル化により調製される)並びに他の位置での修飾を有するものなどの修飾された芳香環を有するものを含む。
【0176】
例示的なマイタンシノイド薬物部分は、C−9−SH(米国特許第4,424,219号明細書)(H2S又はP2S5によるマイタンシノールの還元により調製される);C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH2OR)(米国特許第4,331,598号明細書);C−14−ヒドロキシメチル又はアシルオキシメチル(CH2OH又はCH2OAc)(米国特許第4,450,254号明細書)(ノカルジア(Nocardia)から調製される);C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号明細書)(ストレプトマイセス(Streptomyces)によるマイタンシノールの変換により調製される);C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号明細書及び同第4,315,929号明細書)(トレウィア・ヌドルフローラ(Trewia nudlflora)から単離される);C−18−N−デメチル(米国特許第4,362,663号明細書及び同第4,322,348号明細書)(ストレプトマイセス(Streptomyces)によるマイタンシノールの脱メチル化により調製される);並びに4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号明細書)(マイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により調製される)などの修飾を有するものも含む。
【0177】
DM1(参照により組み込まれる米国特許第5,208,020号明細書において開示される)及びDM4(参照により組み込まれる米国特許第7,276,497号明細書において開示される)が特に有用である。また、全てが全体として参照により明示的に組み込まれる米国特許第5,416,064号明細書;同第6,441,163号明細書;同第7,303,749号明細書;同第7,368,565号明細書;及び同第7,601,354号明細書;国際公開第01/24763号パンフレット、国際公開第02/098883号パンフレット、国際公開第02/16368号パンフレット及び国際公開第04/1033272号パンフレット;並びに米国特許出願第12/631,508号明細書におけるいくつかの追加のマイタンシノイド誘導体及び方法を参照されたい。
【0178】
マイタンシノイドを含有するADC、それを作製する方法及びそれらの治療的使用は、例えば、米国特許第5,208,020号明細書;同第5,416,064号明細書;同第6,441,163号明細書並びに欧州特許第0425235B1号明細書において開示され、これらの開示は、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623(1996)は、ヒト結腸直腸癌に対して向けられるモノクローナル抗体C242に連結されたマイタンシノイドで設計されたDM1を含むADCを記載した。
【0179】
Chari et al.,Cancer Research 52:127−131(1992)は、マイタンシノイドが、ヒト結腸癌細胞株上の抗原に結合するマウス抗体A7又はHER−2/neu癌遺伝子に結合する別のマウスモノクローナル抗体TA.1に対してジスルフィドリンカーを介してコンジュゲートされたADCを記載している。薬物コンジュゲートは、遊離マイタンシノイド薬物と同様のある程度の細胞障害性を達成し、1抗体分子当たりのマイタンシノイド分子の数を増加させることによって増加させることができた。
【0180】
いくつかの実施形態では、ADCは、ドラスタチン又はドラスタチンペプチド性類似体若しくは誘導体又はオーリスタチンを含む(米国特許第5,635,483号明細書及び同第5,780,588号明細書)。ドラスタチン及びオーリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解並びに核及び細胞分裂に支障をきたすことが示されており(Woyke et al(2001)Antimicrob.Agents and Chemother.45(12):3580−3584)、抗癌(米国特許第5,663,149号明細書)及び抗真菌活性(Pettit et al (1998)Antimicrob.Agents Chemother.42:2961−2965)を有する。ドラスタチン又はオーリスタチン薬物部分は、ペプチド性薬物部分のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端を介して抗体に結合され得る(国際公開第02/088172号パンフレット)。様々な態様において、ヘテロ二量体抗体は、エリブリンの投与も含む治療計画の一部である。
【0181】
例示的なオーリスタチンの実施形態は、2004年3月28日に提出されたSenter et al,Proceedings of the American Association for Cancer Research,Volume 45,Abstract Number 623に開示され、且つ開示が全体として参照により明示的に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0238648号明細書に記載されるN末端に連結されたモノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDFを含む。例示的なオーリスタチンの実施形態は、MMAEである(全体として参照により明示的に組み込まれる米国特許第6,884,869号明細書を参照されたい)。別の例示的なオーリスタチンの実施形態は、MMAFである(全体として参照により明示的に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0238649号明細書並びに米国特許第5,767,237号明細書及び同第6,124,431号明細書を参照されたい)。
【0182】
通常、ペプチドに基づく薬物部分は、2つ以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片間でペプチド結合を形成することによって調製され得る。そのようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野でよく知られる液相合成法(E.Schroder and K.Lubke,“The Peptides”,volume 1,pp76−136,1965,Academic Pressを参照されたい)に従って作製され得る。オーリスタチン/ドラスタチン薬物部分は、米国特許第5,635,483号明細書及び同第5,780,588号明細書;Pettit et al(1989)J.Am.Chem.Soc.111:5463−5465;Pettit et al(1998)Anti−Cancer Drug Design 13:243−277;Pettit,G.R.,et al.Synthesis,1996,719−725;Pettit et al(1996)J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 5:859−863;及びDoronina(2003)Nat Biotechnol 21(7):778−784の方法に従って調製され得る
【0183】
他の実施形態では、ADCは、1つ以上のカリチアマイシン分子を含む。例えば、マイロターグは、最初の市販のADC薬物であり、ペイロードとしてカリチアマイシンγ1を利用する(全体として参照により組み込まれる米国特許第4,970,198号明細書を参照されたい)。追加のカリチアマイシン誘導体は、全てが参照により明示的に組み込まれる米国特許第5,264,586号明細書、同第5,384,412号明細書、同第5,550,246号明細書、同第5,739,116号明細書、同第5,773,001号明細書、同第5,767,285号明細書及び同第5,877,296号明細書において記載される。抗生物質のカリチアマイシンファミリーは、ピコモル以下の濃度で二重鎖DNA切断を生成できる。カリチアマイシンファミリーのコンジュゲートの作製については、米国特許第5,712,374号明細書、同第5,714,586号明細書、同第5,739,116号明細書、同第5,767,285号明細書、同第5,770,701号明細書、同第5,770,710号明細書、同第5,773,001号明細書、同第5,877,296号明細書(全てAmerican Cyanamid Companyに対する)を参照されたい。使用され得るカリチアマイシンの構造的類似体としては、γ1I、α2I、α2I、N−アセチル−γ1I、PSAG及びθI1が挙げられるが、これらに限定されない(Hinman et al.,Cancer Research 53:3336−3342(1993)、Lode et al.,Cancer Research 58:2925−2928(1998)及びAmerican Cyanamidに対する前述の米国特許)。抗体がコンジュゲートされ得る別の抗腫瘍薬物は、葉酸代謝拮抗剤であるQFAである。カリチアマイシン及びQFAは、両方とも細胞内作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。したがって、抗体媒介性の内部移行を介するこれらの薬剤の細胞取込みは、それらの細胞障害効果を大幅に増強する。
【0184】
CC−1065(参照により組み込まれる米国特許第4,169,888号明細書を参照されたい)及びデュオカルマイシンは、ADCにおいて利用される抗腫瘍抗生物質のファミリーのメンバーである。これらの抗生物質は、副溝におけるアデニンのN3でDNAを配列選択的にアルキル化することにより機能するように見え、アポトーシスを引き起こす現象のカスケードを開始する。デュオカルマイシンの重要なメンバーとしては、デュオカルマイシンA(参照により組み込まれる米国特許第4,923,990号明細書)及びデュオカルマイシンSA(参照により組み込まれる米国特許第5,101,038号明細書)並びに全てが参照により明示的に組み込まれる米国特許第7,517,903号明細書、同第7,691,962号明細書、同第5,101,038号明細書;同第5,641,780号明細書;同第5,187,186号明細書;同第5,070,092号明細書;同第5,070,092号明細書;同第5,641,780号明細書;同第5,101,038号明細書;同第5,084,468号明細書;同第5,475,092号明細書;同第5,585,499号明細書;同第5,703,080号明細書;同第6,989,452号明細書;同第7,087,600号明細書;同第7,129,261号明細書;同第7,498,302号明細書;同第7,507,420号明細書;及び同第5,846,545号明細書;並びに国際公開第2007/089149号パンフレット及び国際公開第2009/017394A1号パンフレットに記載されるとおりの多数の類似体が挙げられる。
【0185】
他の細胞障害性薬剤
抗原結合タンパク質にコンジュゲートされ得る他の抗腫瘍薬剤としては、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5−フルオロウラシル、米国特許第5,053,394号明細書及び第5,770,710号明細書に記載されるLL−E33288複合体として一括して知られる薬剤のファミリー並びにエスペラミシン(米国特許第5,877,296号明細書)が挙げられる。
【0186】
使用され得る酵素的に活性な毒素及びその断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ−サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、モモルジカ・カランチア(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンが挙げられる。例えば、国際公開第93/21232号パンフレットを参照されたい。
【0187】
本開示は、抗原結合タンパク質と、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼ又はデオキシリボヌクレアーゼ;DNaseなどのDNAエンドヌクレアーゼ)との間で形成されるADCをさらに企図する。
【0188】
腫瘍の選択的破壊のために、抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はヘテロ二量体抗体)は、高度に放射性の原子を含み得る。様々な放射性同位体が放射性コンジュゲートの生成のために利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体が挙げられる。
【0189】
放射性又は他の標識は、既知の様式におけるコンジュゲートにおいて組み込まれ得る。例えば、ペプチドは、生合成され得るか、又は例えば水素の代わりにフッ素−19を含む好適なアミノ酸前駆体を使用する化学的アミノ酸合成により合成され得る。Tc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111などの標識は、ペプチドにおけるシステイン残基を介して結合され得る。イットリウム−90は、リジン残基を介して結合され得る。ヨードゲン法(Fraker et al(1978)Biochem.Biophys.Res.Commun.80:49−57)がヨウ素−123を組み込むために使用され得る。“Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”(Chatal、CRC Press 1989)は、他の方法の詳細を記載している。
【0190】
いくつかの場合、pが他の薬物負荷を有するADCから一定の値である均一なADCの分離、精製及び特徴付けは、逆相HPLC又は電気泳動などの手段によって達成され得る。例示的な実施形態では、pは、2、3、4、5、6、7若しくは8又はその分数である。
【0191】
化学修飾も、その化合物の反応を本発明のコンジュゲートを作製する目的に対してより好都合にするために、所望の化合物に対してなされ得ることが理解されるであろう。例えば、官能基、例えばアミン、ヒドロキシル又はスルフヒドリルは、薬物の活性又は他の特性に最小限の又は許容される効果を及ぼす位置で薬物に付加され得る。
【0192】
リンカー単位
通常、抗原結合タンパク質−薬物コンジュゲートは、薬物単位と抗原結合タンパク質単位との間にリンカー単位を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、細胞内又は細胞外条件下で切断可能であり、その結果、リンカーの切断により、適切な環境において抗原結合タンパク質から薬物単位が放出される。例えば、ある種のプロテアーゼを分泌する固形腫瘍は、切断可能なリンカーの標的としての役割を果たす可能性があり;他の実施形態では、それは、利用される細胞内プロテアーゼである。さらに他の実施形態では、リンカー単位は、切断可能ではなく、薬物は、例えば、リソソームにおける抗体分解によって放出される。
【0193】
いくつかの実施形態では、リンカーは、細胞内環境(例えば、リソソーム又はエンドソーム又は小胞状細胞内構造内)に存在する切断剤によって切断可能である。リンカーは、例えば、リソソーム又はエンドソームプロテアーゼを含むが、これらに限定されない、細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素によって切断されるペプチジルリンカーであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長又は少なくとも3以上のアミノ酸長である。
【0194】
切断剤としては、カテプシンB及びD並びにプラスミンを含み得るが、これらに限定されず、これらの全ては、標的細胞の内部で活性の薬物の放出をもたらすジペプチド薬物誘導体を加水分解することが知られる(例えば、Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67−123を参照されたい)。CD38発現細胞に存在する酵素により切断可能なペプチジルリンカーである。例えば、癌性組織において高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼのカテプシンBにより切断可能なペプチジルリンカーが使用され得る(例えば、Phe−Leu又はGly−Phe−Leu−Glyリンカー(配列番号181))。そのようなリンカーの他の例は、全体として参照により組み込まれる米国特許第6,214,345号明細書において記載される。
【0195】
いくつかの実施形態では、細胞内プロテアーゼにより切断可能なペプチジルリンカーは、Val−Citリンカー又はPhe−Lysリンカーである(例えば、val−citリンカーによるドキソルビシンの合成を記載する米国特許第6,214,345号明細書を参照されたい)。
【0196】
他の実施形態では、切断可能なリンカーは、pH感受性、すなわち一定のpH値で加水分解に対して感受性である。通常、pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解できる。例えば、リソソームにおいて加水分解可能な酸不安定リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis−アコニットアミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)が使用され得る。(例えば、米国特許第5,122,368号明細書;同第5,824,805号明細書;及び同第5,622,929号明細書;Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67−123;Neville et al.,1989,Biol.Chem.264:14653−14661を参照されたい)。そのようなリンカーは、血液中のものなどの中性pH条件下で相対的に安定であるが、リソソームのおよそのpHであるpH5.5又は5.0未満で不安定である。ある種の実施形態では、加水分解可能なリンカーは、チオエーテルリンカー(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤に結合されたチオエーテルなど(例えば、米国特許第5,622,929号明細書を参照されたい))である。
【0197】
さらに他の実施形態では、リンカーは、還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。様々なジスルフィドリンカーが当技術分野で知られており、例えばSATA(N−サクシニミジル−5−アセチルチオアセタート)、SPDP(N−サクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート)、SPDB(N−サクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチラート)及びSMPT(N−サクシニミジル−オキシカルボニル−アルファ−メチル−アルファ−(2−ピリジル−ジチオ)トルエン)−並びにSPDB及びSMPTを使用して形成され得るものが挙げられる。例えば、Thorpe et al.,1987,Cancer Res.47:5924−5931;Wawrzynczak et al.,In Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C.W.Vogel ed.,Oxford U.Press,1987)を参照されたい。また、米国特許第4,880,935号明細書も参照されたい。
【0198】
他の実施形態では、リンカーは、マロナートリンカー(Johnson et al.,1995,Anticancer Res.15:1387−93)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al.,1995,Bioorg−Med−Chem.3(10):1299−1304)又は3’−N−アミド類似体(Lau et al.,1995,Bioorg−Med−Chem.3(10):1305−12)である。
【0199】
さらに他の実施形態では、リンカー単位は、切断可能ではなく、薬物は、抗体分解によって放出される。例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0238649号明細書を参照されたい。
【0200】
多くの実施形態では、リンカーは、自己犠牲である。本明細書で使用する場合、用語「自己犠牲スペーサー」は、間隔をあけた2つの化学的部分を合わせて共有結合して安定した3部分からなる分子にすることができる二官能性の化学的部分を指す。それは、第1の部分に対するその結合が切断される場合、第2の化学的部分から自発的に分離することになる。例えば、薬物及び切断可能な基質が自己犠牲リンカーを介して任意選択により結合され、且つ全てが参照により明示的に組み込まれる、薬物−切断可能な基質のコンジュゲートに関する国際公開第2007059404A2号パンフレット、国際公開第06110476A2号パンフレット、国際公開第05112919A2号パンフレット、国際公開第2010/062171号パンフレット、国際公開第09/017394号パンフレット、国際公開第07/089149号パンフレット、国際公開第07/018431号パンフレット、国際公開第04/043493号パンフレット及び国際公開第02/083180号パンフレットを参照されたい。
【0201】
多くの場合、リンカーは、細胞外環境に対して実質的に感受性ではなく、すなわち、抗原結合タンパク質−薬物コンジュゲートの試料中のリンカーの約20%、15%、10%、5%、3%以下又は約1%以下は、抗原結合タンパク質−薬物コンジュゲートが細胞外環境(例えば、血漿中)に存在するときに切断される。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性でないかどうかは、例えば、抗原結合タンパク質−薬物コンジュゲート化合物を血漿と既定の期間(例えば、2、4、8、16又は24時間)インキュベートし、続いて血漿中に存在する遊離薬物の量を定量化することによって決定され得る。
【0202】
互いに排他的ではない他の実施形態では、リンカーは、細胞内部移行を促進する。ある種の実施形態では、リンカーは、治療剤にコンジュゲートされるときに(すなわち本明細書に記載されるとおりのADCのリンカー−治療剤部分の環境において)細胞内部移行を促進する。さらに他の実施形態では、リンカーは、オーリスタチン化合物及び本開示の抗原結合タンパク質の両方にコンジュゲートされるときに細胞内部移行を促進する。
【0203】
本組成物及び方法とともに使用され得る様々な例示的なリンカーは、国際公開第2004−010957号パンフレット並びに米国特許出願公開第2006/0074008号明細書、同第20050238649号明細書及び同第2006/0024317号明細書(各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる)において記載される。
【0204】
上記の治療剤は、別々に投与され得、すなわち様々な実施形態において抗原結合タンパク質にコンジュゲートされない場合があることが理解されるであろう。
【0205】
薬物負荷
薬物負荷は、pにより表され、分子における1抗原結合タンパク質当たりの薬物部分の平均数である。薬物負荷(「p」)は、1抗原結合タンパク質当たりの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超える部分(D)であり得るが、多くの場合、平均数は、分数又は小数である。一般に、1〜4の薬物負荷が多くの場合に有用であり、且つ1〜2も有用である。本開示のADCは、1〜20の薬物部分の範囲でコンジュゲートされた抗原結合タンパク質の収集物を含む。コンジュゲーション反応からのADCの調製物中の1抗原結合タンパク質当たりの薬物部分の平均数は、質量分析及びELISAアッセイなどの従来の手段によって特徴付けされ得る。
【0206】
pの点からADCの定量的分布も決定され得る。いくつかの場合、pが他の薬物負荷を有するADCから一定の値である均一なADCの分離、精製及び特徴付けは、電気泳動などの手段によって達成され得る。
【0207】
いくつかのADCに関して、pは、抗原結合タンパク質上の結合部位の数によって制限され得る。例えば、結合がシステインチオールである場合、上記の例示的な実施形態の場合のように、抗原結合タンパク質は、1つのみ又は複数のシステインチオール基を有し得るか、又はリンカーが結合され得る1つのみ又は複数の十分に反応性のチオール基を有し得る。ある種の実施形態では、より高い薬物負荷、例えばp>5は、ある種の抗体−薬物コンジュゲートの凝集、不溶性、毒性又は細胞透過性の消失を引き起こす場合がある。ある種の実施形態では、本開示のADCに関する薬物負荷は、1〜約8;約2〜約6;約3〜約5;約3〜約4;約3.1〜約3.9;約3.2〜約3.8;約3.2〜約3.7;約3.2〜約3.6;約3.3〜約3.8;又は約3.3〜約3.7の範囲である。実際に、ある種のADCに関して、1抗原結合タンパク質当たりの薬物部分の最適な比は、8未満であり得、且つ約2〜約5であり得る。米国特許出願公開第2005/0238649A1号明細書(全体として参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0208】
ある種の実施形態では、薬物部分の理論的最大値未満がコンジュゲーション反応中に抗原結合タンパク質にコンジュゲートされる。抗原結合タンパク質は、例えば、下記のとおりの薬物−リンカー中間体又はリンカー試薬と反応しないリジン残基を含有し得る。一般に、抗体は、薬物部分に連結され得る多くの遊離及び反応性のシステインチオール基を含有せず;実際に、抗体中の大部分のシステインチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在する。ある種の実施形態では、抗体は、ジチオスレイトール(DTT)又はトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤とともに、部分的又は全体的な還元条件下で反応されて、反応性のシステインチオール基を生成し得る。ある種の実施形態では、抗体は、変性条件にかけられて、リジン又はシステインなどの反応性求核基を暴露する。
【0209】
ADCの負荷(薬物/抗原結合タンパク質比)は、例えば、(i)抗体に対して薬物−リンカー中間体又はリンカー試薬のモル過剰量を制限すること、(ii)コンジュゲーション反応時間又は温度を制限すること、(iii)部分的又は限定的なシステインチオール修飾のための反応性条件、(iv)システイン残基の数及び位置がリンカー−薬物結合の数及び/又は位置の制御のために修飾されるように抗原結合タンパク質のアミノ酸配列を組込み技術により操作すること(例えば、国際公開第2006/034488号パンフレット(全体として参照により本明細書に組み込まれる)において開示されるとおりに調製されるチオMab又はチオFabなど)による様々な方法において制御され得る。
【0210】
2つ以上の求核基が薬物−リンカー中間体又はリンカー試薬に続いて薬物部分試薬と反応する場合、得られる生成物は、抗原結合タンパク質に結合した1つ以上の薬物部分の分布を有するADC化合物の混合物であることが理解されるべきである。1抗原結合タンパク質当たりの薬物の平均数は、抗原結合タンパク質に特異的且つ薬物に特異的な二重ELISA抗体アッセイによって混合物から計算され得る。個々のADC分子は、質量分析により混合物において同定され得、且つHPLC、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィーにより分離され得る。
【0211】
いくつかの実施形態では、単一の負荷値を有する均一なADCは、電気泳動又はクロマトグラフィーによりコンジュゲーション混合物から単離され得る。
【0212】
組成物
本開示に従う使用のための製剤は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態において、所望の純度を有する抗原結合タンパク質を任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.[1980])と混合することによって保管のために調製される。本開示の組成物は、無菌であることが好ましい。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用する用量及び濃度でレシピエントに対して毒性がなく、それらには、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Znタンパク質錯体);並びに/或いはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0213】
製剤は、治療されている特定の徴候のために必要に応じて2つ以上の活性化合物も含有し得、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を有するものである。例えば、他の特異性を有する抗原結合タンパク質を提供することが望ましい場合がある。代わりに又は加えて、組成物は、本明細書で言及される薬物のいずれかなどの細胞障害性薬剤、サイトカイン、増殖阻害剤及び/又は小分子アンタゴニストを含み得る。このような分子は、意図する目的のために有効な量で組み合わされて好適に存在する。
【0214】
活性成分は、例えば、コアセルベーション手法によって又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルションにも取り込まれ得る。このような手法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0215】
徐放性製剤が調製され得る。徐放性製剤の好適な例としては、抗原結合タンパク質を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号明細書)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニルコポリマー、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なマイクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー並びにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日間を超えて分子を放出できるが、特定のヒドロゲルは、より短い期間にわたってタンパク質を放出する。
【0216】
カプセル化された抗体が長時間体内に残存する場合、37℃の水分に曝露される結果として、それらは、変性又は凝集し、生物学的活性の消失及び免疫原性の可能な変化が生じ得る。関与している機構に応じた安定化のための合理的な戦略が考案され得る。例えば、凝集メカニズムがチオ−ジスルフィド交換による分子間のS−S結合の形成であると分かったら、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液の凍結乾燥、水分含量の制御、適切な添加剤の使用及び特定のポリマーマトリックス組成物の開発によって安定化を達成することができる。
【0217】
投与様式
抗原結合タンパク質及び任意選択により化学療法剤又は別の抗体治療(例えば、抗PD−1抗体)などの併用療法は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、関節内、病巣内、滑膜内、髄腔内、経口、局所、腫瘍内、求心性リンパ管又は吸入経路などの臨床的に許容される方法に従って対象に投与される。抗原結合タンパク質の静脈内又は皮下投与が好ましい。ボーラス注射及び持続注入は、例えば、疾患又は損傷の部位での局所投与と同様に企図される。エクスビボでの手順における抗原結合タンパク質(任意選択により別の治療剤を伴う)の使用も企図される。例えば、患者の血液又は他の体液は、エクスビボで抗原結合タンパク質と接触され得、また任意選択により投与され得る。抗原結合タンパク質は、好適な不溶性マトリックス又は固体支持材料に結合され得る。
【0218】
使用方法
本開示は、治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、対象に、本明細書に記載される抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はヘテロ二量体抗体)を投与することを含む方法を提供する。様々な実施形態では、本開示は、癌(前立腺癌又はユーイング肉腫など)の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、対象に、本明細書に記載される抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はヘテロ二量体抗体)を投与することを含む方法を提供する。本開示は、治療を、それを必要とする対象において行うための本開示の抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はヘテロ二量体抗体)の使用であって、対象における癌(例えば、前立腺癌又はユーイング肉腫)の治療のための使用などをさらに提供する。癌は、好ましくは、STEAP1の増加した発現(例えば、10,000 STEAP1/細胞より多い)を伴う癌である。癌の例としては、前立腺、乳房、膵臓、膀胱、胃腸管、精巣、卵巣、子宮頚部の癌並びに肉腫(ユーイング肉腫)及び黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0219】
本明細書に記載される対象を治療する方法は、疾患若しくは状態の改善及び/又は疾患若しくは状態と関連する症状における改善をもたらすことが意図される。例えば、治療応答は、疾患における以下の改善の1つ以上を指すであろう:(1)新生細胞の数の減少;(2)新生細胞死の増加;(3)新生細胞生存の阻害;(5)腫瘍増殖又は新たな病変の出現の阻害(すなわちある程度遅くする、好ましくは止める);(6)患者の生存率の上昇;及び/又は(7)(例えば、前立腺癌、頻尿症、夜間多尿、血尿症、排尿障害又は骨痛に関連して;ユーイング肉腫、疼痛、腫脹又は患部の圧痛に関連して)疾患又は状態と関連する1つ以上の症状の多少の緩和。
【0220】
任意の所与の疾患又は状態における治療応答は、その疾患又は状態に特異的な標準化された効果判定基準によって決定され得る。腫瘍応答は、核磁気共鳴画像(MRI)スキャン、X線撮影、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、陽電子放射断層撮影(PET)スキャン、骨スキャン、超音波、腫瘍生検採取、血行中の腫瘍細胞の計数及び/又は腫瘍抗原(例えば、前立腺特異抗原(PSA)及び/又はアルファフェトプロテイン(AFP))の測定などのスクリーニング手法を使用して評価され得る。これらの治療応答に加えて、療法を受けている対象は、疾患に関連する症状における改善の有益な効果を経験し得る。
【0221】
対象は、哺乳動物、好ましくはヒト、任意選択によりヒト男性である。癌に関連して、対象は、疾患の任意のステージ(すなわちステージI、ステージII、ステージIII又はステージIV前立腺癌)により診断され得るか、又は依然として臨床的に確認されていない癌を発症するリスクで診断され得る。
【0222】
前立腺癌に関して、対象は、前立腺癌に関連する症状(本明細書に記載されるものなど)の減少、腫瘍サイズの減少、前立腺癌マーカーのレベルの低減、新たな病変の出現の速度の低減などを経験し得る。様々な態様において、本開示の方法は、対象において治療をモニタリングすることをさらに含む。対象の健康における改善が企図される(例えば、臨床的に検出可能な疾患がないこと、新たな病変の非存在下での測定可能な腫瘍量(すなわち対象において存在する悪性細胞の数又は腫瘍質量の測定される容積)の任意の減少(少なくとも約50%の減少など)、疼痛の低減、排尿の改善)。
【0223】
本開示に従う治療は、「治療有効量」の使用される医薬を含む。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するために必要な投与量及び期間で有効な量を指す。治療有効量は、疾患状態、年齢、性別及び個体の体重並びに個体において所望の応答を誘発する医薬の能力などの要因に応じて変動し得る。治療有効量は、治療上有益な効果のいずれの毒性又は有害作用にもまさる量である。腫瘍療法のための「治療有効量」は、疾患の進行を安定化するその能力によっても測定され得る。本開示の抗原結合タンパク質の治療有効量に関する例示的な非限定的な範囲は、約0.1〜100mg/kgである。非経口組成物は、投与の容易さ及び投与量の均一性のために投与単位剤形において製剤化され得る。本明細書で使用する場合、投与単位剤形は、治療される対象に対する単位投与量として適合された物理的に分離した単位を指し;各単位は、必要とされる医薬品担体と共同して所望の生物学的効果をもたらすように計算された既定量の治療薬を含有する。
【0224】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質(例えば、単一特異性抗体又はヘテロ二量体抗体)は、1つ以上の追加の治療剤、例えば化学療法剤又は免疫療法剤と組み合わせて使用される。追加の治療剤は、連続的に(互いに数分、数時間、数日又は数週間以内)又は並行して投与され得る。それらは、予め混合された単一の組成物においても患者に投与され得る。
【0225】
DNA損傷化学療法剤の非限定的な例としては、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン及びその類似体又は代謝産物並びにドキソルビシン);トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド及びダウノルビシン);アルキル化薬剤(例えば、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、デカルバジン、メトトレキセート、マイトマイシンC及びシクロホスファミド);DNA干渉物質(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、エピルビシン及びカルボプラチン);DNA干渉物質及びブレオマイシンなどのフリーラジカル発生剤;並びにヌクレオシド模倣物(例えば、5−フルオロウラシル、カペシチビン、ゲムシタビン、フルダラビン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及びヒドロキシ尿素)が挙げられる。
【0226】
細胞複製を妨害する化学療法剤としては、パクリタキセル、ドセタキセル及び関連する類似体;カバジタキセル;ビンクリスチン、ビンブラスチン及び関連する類似体;サリドマイド、レナリドミド及び関連する類似体(例えば、CC−5013及びCC−4047);タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブメシル酸塩及びゲフィチニブ);プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ);IκBキナーゼの阻害剤を含むNF−κB阻害剤;癌において過剰発現されるタンパク質に結合し、それにより細胞複製を下方制御する抗体(例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ及びベバシズマブ);並びに阻害が細胞複製を下方制御する、癌において上方制御されるか、過剰発現されるか又は活性化されることが知られるタンパク質又は酵素の他の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0227】
いくつかの実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質(例えば、単一特異性抗体又はヘテロ二量体抗体)は、ドセタキソールによる治療前、それと同時又はその後に使用され得る。様々な態様において、抗原結合タンパク質(例えば、単一特異性抗体又はヘテロ二量体抗体)は、外科手術及び/又は放射線照射(例えば、外部ビーム又は密封小線源治療)を含む治療計画の一部として投与される。
【0228】
様々な態様において、抗原結合タンパク質(例えば、単一特異性抗体又はヘテロ二量体抗体)は、ホルモン療法(例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモンの放出又は産生を遮断する薬剤などのアンドロゲン除去療法(例えば、リュープロリド、ゴセレリン、トリプトレリン又はデガレリクス)、抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド、フルタミド又はニルタミド)、ケトコナゾール、酢酸アビラテロン、エンザルタミド)の投与も含む治療計画の一部として提供される。
【0229】
様々な態様において、抗原結合タンパク質(例えば、単一特異性抗体又はヘテロ二量体抗体)は、別の免疫療法(例えば、シプロイセル−T、ベバシズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、AM−224、MDX−1105、eftilagimod alpha(IMP321)又はエノブリツズマブ(MGA271))の投与も含む治療計画の一部として提供される。この点に関して、方法は、任意選択により、癌関連抗原又は免疫応答に関連する抗原などの様々な抗原を標的化する別の抗原結合タンパク質の投与を含む。例えば、様々な実施形態において、抗STEAP1抗原結合タンパク質は、PD−1とPD−L1又はPD−L2などのその結合パートナーの1つ以上との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させるか、遮断するか、阻害するか、抑制するか、又は干渉するPD−1標的化抗原結合タンパク質(例えば、抗体)とともに対象に投与される。特定の態様において、PD−1抗原結合タンパク質は、PD−1のPD−L1及び/又はPD−L2への結合を阻害する。一実施形態では、PD−1抗原結合タンパク質は、機能不全T細胞の機能不全をより低減するように(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答を増強するように)、PD−1を介したシグナル伝達を媒介するTリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によって媒介されるか、又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを減少させる。抗PD−1抗体の例としては、ニボルマブ(BMS−936558)、ペムブロリズマブ(MK−3475)、BMS 936558、BMS−936559、TSR−042(Tesaro)、ePDR001(Novartis)及びピディリズマブ(CT−011)が挙げられる。本開示は、PD−1抗原結合タンパク質を参照するが、本開示は、PD−1とPD−L1又はPD−L2などのその結合パートナーの1つ以上との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させるか、遮断するか、阻害するか、抑制するか、又は干渉する他のPD−1結合アンタゴニストの使用も企図する。
【0230】
抗STEAP1抗原結合タンパク質に関して本明細書で提供される開示は、抗PD−1抗原結合タンパク質にも適用される。例えば、様々な場合において、抗PD−1抗原結合タンパク質は、モノクローナルIgGなどの抗体である。抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、一価又は二価である。例示的な態様では、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、配列番号187のアミノ酸配列を有するヒトPD−1に結合する。例示的な態様では、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、配列番号188のアミノ酸配列を有するカニクイザルPD−1に結合する。例示的な場合において、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、ヒトPD−1及びカニクイザルPD−1の両方に結合する。
【0231】
例示的な実施形態では、PD−1に対する抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物の結合強度は、KDに関して記載され得る。例示的な態様では、本明細書で提供される抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物のKDは、約10
−1M、約10
−2M、約10
−3M、約10
−4M、約10
−5M、約10
−6M、約10
−7M、約10
−8M、約10
−9M又はそれ未満である。例示的な態様では、本明細書で提供される抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物のKDは、マイクロモル、ナノモル、ピコモル又はフェムトモルである。例示的な態様では、本明細書で提供される抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物のKDは、約10
−4〜10
−6M、又は10
−7〜10
−9M、又は10
−10〜10
−12M、又は10
−13〜10
−15Mの範囲内である。例示的な態様では、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、ヒトPD−1、カニクイザルPD−1又は両方に対して高い親和性を有する。例示的な態様では、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、ヒトPD−1に対して100pM未満、任意選択により約1pM〜約50pMのKDを有する。例示的な態様では、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、ヒトPD−1に対して約1pM〜約20pM以内又は約10pM未満のKDを有する。例示的な態様では、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、カニクイザルPD−1に対して100pM未満、任意選択により約1pM〜約75pMのKDを有する。例示的な態様では、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、カニクイザルPD−1に対して約1pM〜約20pM以内又は約10pM未満のKDを有する。
【0232】
例示的な態様では、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、PD−1とPD−L1又はPD−L2との間の結合相互作用の少なくとも50%を阻害する。例示的な態様では、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、PD−1とPD−L1又はPD−L2との間の結合相互作用の少なくとも約50%、少なくとも約60%又は少なくとも約70%の阻害を示す。
【0233】
例示的な場合において、抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物は、混合リンパ球反応(MLR)におけるT細胞によるIL−2のPD−1媒介性の産生を阻害する。例示的な態様では、MLRにおける抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物のIC50は、約0.1nM〜約5nM以内である。例示的な態様では、MLRにおける抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物のICは、2nM未満又は1nM未満である。例示的な態様では、MLRにおける抗PD−1抗体、その抗原結合抗体断片又は抗PD−1抗体タンパク質生成物のIC50は、約0.5nM〜約2nMである。
【0234】
PD−1に結合する能力に関して抗体を試験する方法は、当技術分野で知られており、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降、SPR及び競合的阻害アッセイ(例えば、Janeway et al.,下記及び米国特許出願公開第2002/0197266号明細書並びに競合アッセイに関する上の節を参照されたい)などの任意の好適な抗体−抗原結合アッセイを含む。他の結合アッセイ、例えば抗原又はそのエピトープへの結合に関して第2の抗体と競合する抗体の能力を試験する競合的結合アッセイ又は競合アッセイを使用して、PD−1に対して結合する抗体の能力を試験することができる。例えば、米国特許出願公開第2014/0178905号明細書、Chand et al.,Biologicals 46:168−171(2017);Liu et al.,Anal Biochem 525:89−91(2017);及びGoolia et al.,J Vet Diagn Invest 29(2):250−253(2017)を参照されたい。また、2つの抗体を比較する他の方法が当技術分野で知られており、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)を含む。SPRを、抗体及び第2の抗体の結合定数を決定するために使用することができ、2つの結合定数が比較され得る。本開示は、開示される方法に関連して、PD−1タンパク質に対する本明細書に記載される抗PD−1抗体のいずれかの結合と競合するか、又はクロスブロックする抗PD−1抗原結合タンパク質の使用を企図する。
【0235】
ヒト及びカニクイザルPD−1結合親和性を特徴付けするための代表的な方法は、以下のとおりである。抗体は、可溶性組換え受容体ヒトPD−1(1−170)−FLAG−His又はカニクイザルPD−1(1−167)−FLAG−Hisの3段階希釈物を含有するウェル中でインキュベートされる。両方の場合において、30nMの最高PD−1濃度が選択され得る。300秒間の結合及び500秒間の解離は、これらのパラメーターが、通常、正確な動力学的フィットに十分な曲率をもたらすために使用され得る。ヒト/カニクイザルPD−1の結合親和性は、ForteBio Octet HTX及びRED384機器で定量化され得る。標準的なOctet試料緩衝液が試料希釈及び結合ペースライン、結合並びに解離工程のために使用され得る(例えば、10mM Tris、pH7.5、150mM NaCl、1mM CaCl
2、0.10mg.ml BSA、0.13%(v/v)Triton X−100)。ForteBioの未加工データは、標準的な機器データ分析ソフトウェア(v9及びv10)を使用して以下の様式で処理され得る:(a)固定化された標的を有するが相互作用がない2つの参照曲線(すなわち緩衝液のみ)が平均化され、同じカラム中の残存している試料の曲線から減算され;(b)結合及び解離曲線が単離され、Y軸に対して整列され;(c)結合及び解離工程が整列され;(d)シグナルのノイズを減らすために、Savitzky−Golayフィルタリングが実施され、及び(e)各々の試料−標的相互作用について得られた結合曲線及び解離曲線のセットが単一の1:1結合モデルによりグローバルフィッティングされて、結合速度定数ka及び解離速度定数kdの測定値が決定され;平衡解離定数KDが解離速度定数と結合速度定数との比(=kd/ka)として算出される。
【0236】
例示的な場合において、抗PD−1抗体(又はその抗原結合抗体断片若しくは抗体タンパク質生成物)は、配列番号189に記載される重鎖(HC)相補性決定領域1(vhCDR1)アミノ酸配列、配列番号190に記載されるHC CDR2(vhCDR2)アミノ酸配列、配列番号191に記載されるHC CDR3(vhCDR3)アミノ酸配列、配列番号192に記載される軽鎖(LC)CDR1(vlCDR1)アミノ酸配列、配列番号193に記載されるLC CDR2(vlCDR2)アミノ酸配列及び配列番号194に記載されるLC CDR3(vlCDR3)アミノ酸配列を含む。例示的な実施形態では、抗PD−1抗体(又はその抗原結合抗体断片若しくは抗体タンパク質生成物)は、配列番号195のアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(vh)及び/又は配列番号196のアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(vl)を含む。例示的な実施形態では、抗PD−1抗体(又はその抗原結合抗体断片若しくは抗体タンパク質生成物)は、配列番号197のアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一)のアミノ酸配列を含む重鎖及び/又は配列番号198のアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一)のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0237】
例示的な態様では、本明細書に記載される抗STEAP1コンストラクトは、腫瘍転移を阻害し、且つ/又は少なくとも1つの細胞集団に対して抗増殖性効果を有するのに有効なサイトカイン、リンホカイン、増殖因子又は造血因子の投与を含む治療レジメンの一部である。そのようなサイトカイン、リンホカイン、増殖因子又は他の造血因子としては、M−CSF、GM−CSF、TNF、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IFN、TNFα、TNF1、TNF2、G−CSF、Meg−CSF、GM−CSF、トロンボポエチン、幹細胞因子及びエリスロポエチンが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる増殖因子としては、例えば、アンジオゲニン、骨形態形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質−2、骨形態形成タンパク質−3、骨形態形成タンパク質−4、骨形態形成タンパク質−5、骨形態形成タンパク質−6、骨形態形成タンパク質−7、骨形態形成タンパク質−8、骨形態形成タンパク質−9、骨形態形成タンパク質−10、骨形態形成タンパク質−11、骨形態形成タンパク質−12、骨形態形成タンパク質−13、骨形態形成タンパク質−14、骨形態形成タンパク質−15、骨形態形成タンパク質受容体IA、骨形態形成タンパク質受容体IB、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養因子受容体α、サイトカイン誘導性好中球走化性因子1、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2α、サイトカイン誘導性好中球走化性因子2β、β内皮細胞増殖因子、エンドセリン1、上皮由来好中球誘因物質、グリア細胞由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞由来神経栄養因子受容体α2、増殖関連タンパク質、増殖関連タンパク質α、増殖関連タンパク質β、増殖関連タンパク質γ、ヘパリン結合性上皮増殖因子、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、インスリン様増殖因子I、インスリン様増殖因子受容体、インスリン様増殖因子II、インスリン様増殖因子結合タンパク質、ケラチノサイト増殖因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子、神経成長因子受容体、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、プレB細胞増殖刺激因子、幹細胞因子、幹細胞因子受容体、トランスフォーミング増殖因子α、トランスフォーミング増殖因子β、トランスフォーミング増殖因子β1、トランスフォーミング増殖因子β1.2、トランスフォーミング増殖因子β2、トランスフォーミング増殖因子β3、トランスフォーミング増殖因子β5、潜在型トランスフォーミング増殖因子β1、トランスフォーミング増殖因子β結合タンパク質I、トランスフォーミング増殖因子β結合タンパク質II、トランスフォーミング増殖因子β結合タンパク質III、腫瘍壊死因子受容体I型、腫瘍壊死因子受容体II型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体並びにキメラタンパク質及びその生物学的又は免疫学的に活性な断片が挙げられる。例示的な実施形態では、抗STEAP1コンストラクトは、前述のサイトカイン、リンホカイン、増殖因子又は他の造血因子のいずれか1つに特異的な抗体の投与を含む治療レジメンの一部として投与される。
【0238】
本開示は、癌の治療を、それを必要とする対象において行うための医薬の調製における抗STEAP1抗原結合タンパク質又はヘテロ二量体抗体の使用を企図する。任意選択により、医薬は、有効量の抗PD−1抗原結合タンパク質(例えば、本明細書に記載される抗PD−1抗原結合タンパク質のいずれか)と共同して有効量の抗STEAP1抗原結合タンパク質又はヘテロ二量体抗体を投与するためのものである。
【0239】
本開示は、癌の治療を、それを必要とする対象において行う際の(すなわち前立腺癌又はユーイング肉腫などの癌の治療を、それを必要とする対象において行う方法における)使用のための、本明細書に記載される抗STEAP1抗原結合タンパク質又はヘテロ二量体抗体をさらに企図する。任意選択により、抗STEAP1抗原結合タンパク質又はヘテロ二量体抗体は、抗PD1抗原結合タンパク質とともに投与される。「〜とともに投与する」は、抗STEAP1抗原結合タンパク質又はヘテロ二量体抗体が、抗PD1抗原結合タンパク質の投与を含む治療レジメンの一部であることを意味する。実際に、抗STEAP1抗原結合タンパク質(例えば、ヘテロ二量体抗体)は、抗PD1抗原結合タンパク質による治療前、それと同時に又はその後に使用され得る。抗STEAP1抗原結合タンパク質又はヘテロ二量体抗体及び抗PD1抗原結合タンパク質の投与は、同時に行われる必要はないが、本開示は、成分が同じ医薬組成物中に含まれ、一緒に投与される実施形態を企図する。本開示は、抗STEAP1抗原結合タンパク質又はヘテロ二量体抗体及び抗PD1抗原結合タンパク質が、並行して投与されるか又は近い時間で投与される別々の医薬組成物中に存在する治療の方法も提供する。抗STEAP1抗原結合タンパク質又はヘテロ二量体抗体及び抗PD1抗原結合タンパク質は、いずれかの順序で連続的に(例えば、互いに数分、数時間、数日又は数週間以内)投与され得る。投与様式は、上に記載される。
【0240】
本明細書に記載される抗STEAP1抗原結合タンパク質は、例えば、STEAP1の存在をインビトロ又はインビボのいずれかで検出するアッセイでも使用され得る。抗原結合タンパク質は、例えば、免疫親和性クロマトグラフィーによりSTEAP1を精製するためにも使用され得る。
【0241】
核酸、ベクター、宿主細胞
本開示は、本明細書に記載される抗原結合タンパク質(例えば、単一特異性抗体又はヘテロ二量体抗体)をコードする核酸組成物をさらに提供する。本開示の抗原結合タンパク質の成分をコードする核酸は、当技術分野で知られるとおり、且つ抗原結合タンパク質を生成するために使用される宿主細胞に依存して、発現ベクターに組み込まれ得る。発現ベクターの例としては、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクター及び他の発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、所望のポリペプチドをコードする核酸配列は、任意の数の調節エレメント(プロモーター、複製開始点、選択マーカー、リボソーム結合部位、インデューサーなど)に作動可能に連結される。発現ベクターは、染色体外ベクター又は組込みベクターであり得る。
【0242】
本開示の核酸及び/又は発現ベクターは、任意選択により、多くの実施形態において有用な哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)とともに、哺乳動物、細菌、酵母、昆虫及び/又は真菌細胞を含む任意の数の当技術分野でよく知られるとおりの様々な種類の宿主細胞に導入される。別の態様では、本開示は、抗原結合タンパク質をコードする発現ベクターが導入されたそのような宿主細胞を提供する。好適な哺乳動物宿主細胞株の例としては、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al.,1981,Cell 23:175)、L細胞、ヒト胚性腎臓293細胞又はその派生体(例えば、HEK293T、HEK293−EBNA)、C127細胞、マウス胚線維芽細胞(3T3細胞)(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びその派生体(例えば、CHO−K1、CHO pro−3)、マウス黒色腫細胞(例えば、NS0、GS−NS0、Sp2/0)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa細胞)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞(ATCC CRL 10)細胞株、ヒト骨肉腫上皮細胞U2−OS、腺癌ヒト肺胞基底上皮細胞(A549)、ヒト線維肉腫細胞(HT1080)、マウス脳腫瘍細胞(CAD)、胚性癌腫細胞(P19)、マウス神経芽細胞腫細胞(N2a)、ヒト乳癌細胞(MCF−7)、網膜芽細胞腫細胞(Y79)、ヒト網膜芽細胞腫細胞(SO−Rb50)、ヒト肝臓癌細胞(Hep G2)、マウスB骨髄腫細胞(J558L)及びアフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、COS細胞、VERO細胞及びその派生体(McMahan et al.,1991,EMBO J.10:2821によって記載されるとおりアフリカミドリザル腎臓細胞株CVIに由来するCVI/EBNA細胞株(ATCC CCL 70)を含む)が挙げられる。形質転換された細胞を、抗原結合タンパク質の発現を促進する条件下で培養することができ、そのタンパク質を従来の精製手順によって回収することができる。そのような精製手順の1つは、例えば、STEAP1の全て又は一部(例えば、1つ以上の細胞外ループ)が結合したマトリックス上での親和性クロマトグラフィーの使用を含む。本明細書での使用のために企図される抗原結合タンパク質は、実質的に内在性の材料が混入されていない実質的に均一な組換え抗原結合タンパク質を含む。
【0243】
ヘテロ二量体抗体に関して、様々な態様において、第1の単量体をコードする核酸、第2の単量体をコードする核酸及び共通の軽鎖をコードする核酸を含む組成物が提供される。本開示は、単量体の部分及び共通の軽鎖、例えばSTEAP1に結合する本明細書で開示される6つのCDRを含む抗STEAP1 Fab又は抗体断片、抗CD3 scFv、STEAP1及び/又はCD3に結合する可変軽鎖ドメイン及び/又は可変重鎖ドメインなどをコードする核酸コンストラクトも提供する。
【0244】
いくつかの実施形態では、各単量体をコードする核酸及び任意選択により共通の軽鎖をコードする核酸は、それぞれ一般に異なる又は同じプロモーター制御下で単一の発現ベクター内に含有される。様々な実施形態において、これらの2つ又は3つの核酸の各々は、異なる発現ベクター上に含有される。米国特許出願公開第2016/0215063号明細書(全体として且つ特に組換え抗体産生の議論に関して参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるとおり、異なるベクター比率を使用して、ヘテロ二量体形成を駆動することができる。驚くべきことに、抗体コンストラクトが第1の単量体:第2の単量体:軽鎖を1:1:2の比で含む場合、必ずしも最良の結果をもたらす比はない。参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0215063号明細書の
図65を参照されたい。様々な態様において、本開示は、核酸組成物であって、a)第1の単量体をコードする第1の核酸を含む第1の発現ベクター;b)第2の単量体をコードする第2の核酸を含む第2の発現ベクター;及びc)共通の軽鎖をコードする第3の核酸を含む第3の発現ベクターを含む核酸組成物を提供する。代替的な実施形態では、共通の軽鎖をコードする第3の核酸は、第1又は第2の核酸と同じ発現ベクター上に存在する。
【0245】
ヘテロ二量体抗体は、任意選択により、発現ベクターを含む宿主細胞を培養することによって作製される。作製されると、通常、イオン交換クロマトグラフィー工程を含む抗体精製工程が実施される。本明細書で議論されるとおり、2つの単量体が少なくとも0.5異なるpIを有することは、イオン交換クロマトグラフィー若しくは等電点電気泳動又は等電点に影響されやすい他の方法による分離を可能にし得る。すなわち、各単量体の等電点(pI)を変えるpI置換を包含し、その結果、その各単量体が異なるpIを有し、且つヘテロ二量体も異なるpIを有し、それにより等電点精製ヘテロ二量体を容易にする(例えば、アニオン交換カラム、カチオン交換カラム)。これらの置換は、精製後に混入しているmAbホモ二量体の同定及びモニタリングも促進する(例えば、IEFゲル、cIEF及び分析的IEXカラム)。
【0246】
キット
いくつかの実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質は、キットにおいて提供される。例示的な態様では、キットは、単位用量(すなわち好適な担体中で分散された別々の量)として抗原結合タンパク質を含む。例示的な態様において、キットは、いくつかの単位用量、例えば任意選択により1週間又は1ヶ月供給分の単位用量を含み、各単位用量は個々にパッケージ化されるか、又はそうでなければ他の単位用量から分離される。いくつかの実施形態では、キット/単位用量の成分は、患者に投与するための説明書とともにパッケージ化される。いくつかの実施形態では、キットは、患者に投与するための1つ以上のデバイス、例えば針及び送達デバイス(シリンジなど)を含む。いくつかの態様では、抗原結合タンパク質は、使用準備済の形態、例えばシリンジ、静脈内バッグなどの中に予めパッケージ化されるが、それは、抗原結合タンパク質が、再構成を必要とする凍結乾燥形態において提供され得ることも企図される。いくつかの態様では、キットは、本明細書に記載されるもののいずれかを含む他の治療剤又は診断剤又は薬学的に許容される担体(例えば、溶媒、緩衝液、希釈剤など)をさらに含む。
【0247】
本明細書中に引用される刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照によって組み込まれるように個別的且つ具体的に指定され、その全体が本明細書に記載されているかのような場合と同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0248】
以下の実施例は、単に本開示を説明するために与えられ、決してその範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0249】
実施例1
この実施例は、本明細書に記載されるとおりの単一特異性抗体を使用する前立腺癌細胞の表面でのSTEAP1の検出を記載する。
【0250】
STEAP1に対して向けられるCRISPRコンストラクトを使用してSTEAP1発現を失うように操作された前立腺癌細胞(C4−2B luc細胞(
図11A)又はC4−2B luc
STEAP1 KO細胞(
図11B))を10μg/mLの濃度でアイソタイプ対照抗体又は抗STEAP1マウスモノクローナル抗体(Ab−Am)と4℃において1時間インキュベートした。細胞結合Ab−Amは、FITC−コンジュゲート(
図11A)又はAPC−コンジュゲート抗マウスIgG二次抗体(
図11B)とのインキュベーション後にフローサイトメトリーにより検出された。STEAP1依存的なシグナルを同定するFITC又はAPC蛍光は、ヒストグラム(塗りつぶしの灰色ヒストグラム)においてプロットされ、アイソタイプ対照(白色ヒストグラム)に対して比較された。結果は、
図11A及び11Bにおいて示される。
【0251】
実施例2
この実施例は、抗STEAP1抗体の特徴付けを記載する。
【0252】
一連の22個の抗ヒトSTEAP1マウスモノクローナル抗体が作製された。抗体Aは、試験された他のもの:Ab−A(60.1)、Ab−B(3.6)、Ab−C(2.4)及びAb−D(4.3)と比較して、向上したフローサイトメトリー結合特性(親mAb結合LnCAP(+)/DU145(−)FACSシフト(倍率))を実証した。
【0253】
本開示の抗体によって認識されるSTEAP1の領域を決定するために、STEAP1の3つの細胞外ループの各々がSTEAP2の対応する領域で置換され、且つ293細胞中で発現されたキメラコンストラクトが作製された。Ab−Aは、STEAP1に結合し、STEAP2に結合しない。STEAP1の細胞外ループ1及び3をSTEAP2由来の対応するループと置き換えることは、結合を抑制したが、STEAP1に結合するAb−Aは、細胞外ループ2がSTEAP2対応物と置き換えられたときに破壊された。Ab−Aは、細胞外ループ2の外部でSTEAP1に結合するように見える。
【0254】
Ab−A1、Ab−A2(N67Q)及びAb−B1のSTEAP−1結合アーム及び抗CD3結合アームを含むヘテロ二量体抗体は、例えば、米国特許出願公開第2016/0215063号明細書において記載されるとおりの「XmAb」形式で調製された。これらのヘテロ二量体抗体は、TDCC活性(pM)を示した:Ab−A1x(273.8)、Ab−A2x(387.9)及びAb−B1x(128.7)。
【0255】
実施例3
この実施例は、本開示のヘテロ二量体抗STEAP1/抗CD3(Xmab
2+1)のC4−2B細胞に対する結合(EC50により特徴付けされる)を、異なる骨格を有する抗STEAP1/抗CD3二重特異性抗体(XmAb)と比較する。
【0256】
「XmAb」形式における3つの抗STEAP1ヒト化抗体(Ab−A1、Ab−A2(N67Q)及びAb−B1)は、例えば、米国特許出願公開第2016/0215063号明細書(特に「ボトルオープナー」形式の議論に関して、参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるとおりに作製された。XmAb形式は、抗CD3 scFvに結合されたFcドメインを含む第1の重鎖;Fcドメイン及び第1の可変重鎖ドメインを含む第2の重鎖;並びに可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を伴う。可変重鎖ドメイン及び前記可変軽鎖ドメインは、STEAP1に結合する。2つの抗STEAP1ヒト化抗体は、ヘテロ二量体XmAb
2+1形式(Ab−A1 XmAb
2+1及びAb−B1 XmAb
2+1)において作製された。Ab−A1 XmAb
2+1及びAb−B1 XmAb
2+1のCDR配列は、配列番号11〜16(Ab−A1 XmAb
2+1)及び配列番号30〜35(Ab−B1 XmAb
2+1)において記載される。本明細書でAb−A2(N67Q)XmAb
2+1と呼ばれるN67Q改変を有するAb−A1 XmAb
2+1の変異体も作製された。Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1のCDR配列は、配列番号11〜13、14、16及び21において記載される。抗体の命名Ab−A2及びAb−A2(N67Q)XmAb
2+1は、本明細書で互換的に使用される。C4−2B前立腺癌細胞の表面で発現されるSTEAP1に結合するヘテロ二量体二重特異性抗体の能力は、ヒト化されていないXmAb形式(Ab−Mx1、Ab−Mx2及びAb−Mx3)における3つのマウス抗STEAP1抗体とともに評価された。
【0257】
C4−2B−Luc細胞を最大5μMの漸増濃度のAb−A1 XmAb
2+1、Ab−A1 Xmab、Ab−B1 Xmab、Ab−Mx1、Ab−Mx2及びAb−Mx3とともに4℃で1時間インキュベートした。細胞結合抗体を、APC−コンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体とのインキュベーション後のフローサイトメトリー及び試験された対応する抗体の漸増濃度でのAPCチャンネルの平均蛍光強度(MFI)により検出した。表3に示されるとおり、Ab−A1 Xmab
2+1は、XmAb形式(すなわちAb−A1 Xmab)の同じ結合体の結合EC50より65倍低かった細胞結合を示し、これは、対応するXmAbのものを超える非常に強力な結合活性を示している。XmAb
2+1形式は、前立腺癌細胞上で発現されるSTEAP1に対するAb−A結合体の結合を大幅に向上させた。
【0258】
【表2】
【0259】
実験は、様々な形式(Ab−A(従来型、単一特異性抗体、非ヒト化)、Ab−A1 XmAb形式、Ab−A1 Xmab
2+1形式及びAb−A2(N67Q)Xmab
2+1形式(N67Q改変を有する))のAb−A並びにAb−B XmAb形式で繰り返された。C4−2B−Luc細胞を最大5μMの漸増濃度の抗STEAPI XmAb又はXmAb
2+1分子とともに4℃で1時間インキュベートした。細胞結合XmAbをAPC−コンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体とのインキュベーション後のフローサイトメトリーにより検出し、対応する抗STEAPI XmAb分子の漸増濃度でのAPCチャンネルの平均蛍光強度(MFI)が示された。結果は、
図12A〜12C及び
図13並びに下の表4において示される。
【0260】
【表3】
【0261】
抗体は、全てヘテロ二量体形式にかかわらずSTEAP1に結合した。XmAb
2+1形式は、他の抗体形式と比較してSTEAP1への結合の向上を実証した。
【0262】
TDCC活性も、上記のものと同様の方法を使用して評価された。全ての試験された抗体は、XmAb
2+1の抗体によりTDCC活性を示し、これは、Xmab抗体より優れた活性を実証している:Ab−A XmAb(EC50=274pM、EC90=438pM)、Ab−A1 Xmab(EC50=388pM、EC90=722pM)、Ab−B1 Xmab(EC50=129pM、EC90=265pM)、Ab−A1 Xmab
2+1(EC50=6pM、EC90=11pM)及びAb−B1 Xmab
2+1(EC50=19pM、EC90=43pM)。
【0263】
実施例5
この実施例は、抗STEAP1 XmAb及びXmAb
2+1によって媒介されるヒトT細胞によるヒト腫瘍細胞株C4−2B lucの溶解を特徴付けする。
【0264】
C4−2B luc前立腺癌細胞をヒト汎T細胞とともに10:1のE:T細胞比及び漸増濃度の(
図14A)Ab−A1 XmAb、(
図14B)Ab−A1 XmAb
2+1又は(
図14C)Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1形式(N67Q置換を有する)で48時間共培養した。標的細胞溶解は、ルシフェラーゼ活性の測定によりモニターされ、特異的な細胞障害性は、XmAbのない対照条件と比較して各濃度でプロットされた。
図14A〜14Cに示されるとおり、Ab−A1 Xmab、Ab−A1 XmAb
2+1及びAb−A2(N67Q)XmAb
2+1は、標的細胞溶解の媒介において奏功した。
【0265】
実施例6
この実施例は、STEAP1発現細胞と、STEAPを発現しない細胞との間で違いを識別する本開示のヘテロ二量体抗体の能力を実証する。
【0266】
STEAP1陽性C4−2B luc前立腺癌細胞(●)及びSTEAP1陰性C4−2B luc
STEAP1 KO細胞(■)をヒト汎T細胞とともに10:1のE:T細胞比及び漸増濃度のAb−A1 XmAb
2+1で48時間共培養した標的細胞溶解は、ルシフェラーゼ活性の測定によりモニターされ、特異的な細胞障害性は、対照条件(XmAbを欠く)と比較して各濃度でプロットされた。結果は、
図15及び下の表5において示される。Ab−A1 XmAb
2+1は、STEAP1発現をノックアウトするように改変されたC4−2B luc細胞ではなく、ヒト腫瘍細胞株C4−2B lucの標的細胞溶解を用量依存的に媒介した。
【0267】
【表4】
【0268】
さらに、ヒトSTEAP1で安定にトランスフェクトされた293T細胞(
図16A)又は親293T細胞(
図16B)をアイソタイプ対照抗体又は抗STEAP1 Ab−Aマウスモノクローナル抗体(Ab−Am;二重特異性形式ではない)とともに10μg/mLの濃度において4℃で1時間インキュベートした。細胞結合Ab−Amは、FITCコンジュゲート抗マウスIgG二次抗体とのインキュベーション後にフローサイトメトリーによって検出された(
図16A)。STEAP1依存的なシグナルを同定するFITC蛍光は、ヒストグラム(塗りつぶしの灰色ヒストグラム)においてプロットされ、アイソタイプ対照(白色ヒストグラム)に対して比較された。
図16A及び
図16Bにおいて示されるとおり、Ab−Amは、試験された両方の細胞集団において発現されるSTEAP−1を検出した。
【0269】
図16Cは、STEAP1安定293T細胞(●)及びSTEAP1陰性親293T細胞(■)をヒト汎T細胞とともに10:1のE:T細胞比及び漸増濃度のAb−A2(N67Q)XmAb
2+1で48時間共培養する結果を示す。標的細胞溶解は、ルシフェラーゼ活性の測定によりモニターされ、特異的な細胞障害性は、XmAbのない対照条件と比較して各濃度でプロットされた。結果は、
図16A〜16C及び下の表6において示される。抗STEAP1/抗CD3ヘテロ二量体抗体は、STEAP1発現細胞の細胞溶解を選択的に媒介した。
【0270】
【表5】
【0271】
STEAP1陽性C4−2B luc前立腺癌細胞も、ヒト汎T細胞とともに10:1のE:T細胞比及び漸増濃度のAb−B1 XmAb(●)又はAb−B1 XmAb
2+1(■)で48時間共培養した。
図17Aに示されるとおり、Ab−B1 XmAb及びAb−B1 Xmab
2+1は、C4−2B luc前立腺癌細胞の標的細胞溶解を媒介した。
【0272】
C4−2B luc前立腺癌細胞をヒト汎T細胞とともに10:1のE:T細胞比及び漸増濃度のXmAb
2+1 Ab−B1−G37A(G37A置換を有するXmAb
2+1)(■)、XmAb
2+1 Ab−B1−S39A(S39A置換を有するXmAb
2+1形式)(▲)又はXmAb
2+1 Ab−B1−G37A/S39A(G37A及びS39A置換の両方を有するXmAb
2+1形式)(▼)で48時間共培養した。
図17Bに示されるとおり、Ab−B1変異体(すなわちAb−B1−G37A、Ab−B1−S39A及びAb−B1−G37A/S39A)は、C4−2B luc前立腺癌細胞の標的細胞溶解を媒介した。下の表7を参照されたい。同様に、STEAP1陰性C4−2B luc
STEAP1 KO癌細胞をヒト汎T細胞とともに10:1のE:T細胞比及び漸増濃度のAb−B1 XmAb
2+1(●)、Ab−B1−G37A(■)、Ab−B1−S39A(▲)又はAb−B1−G37A/S39A(▼)で48時間共培養した標的細胞溶解は、ルシフェラーゼ活性の測定によりモニターされ、特異的な細胞障害性は、XmAbのない対照条件と比較して各濃度でプロットされた。結果は、
図17C及び下の表7において示される。抗STEAP1/抗CD3ヘテロ二量体抗体は、STEAP1発現細胞の細胞溶解を選択的に媒介し、本開示のXmAb
2+1形式は、他の形式より性能が優れていた。
【0273】
【表6】
【0274】
実施例7
この実施例は、ヒト及びカニクイザルCD3εに対する本開示のヘテロ二量体抗体、Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1の平衡結合定数(KD)を特徴付けする。
【0275】
組換えヒト又はカニクイザルCD3εに対するAb−A2(N67Q)XmAb
2+1の親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR−Pioneer FE)を使用して測定された。組換えヒトCD3ε−Fc及びカニクイザルCD3ε−Fcは、約60RUで標準的なアミンカップリング手順を使用してCM5チップ表面上に固定化された。Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1は、100、33.3、11.1及び3.7nMの濃度で注射された。リガンドに対するAb−A2(N67Q)XmAb
2+1相互作用の結合及び解離速度は、下の表8において記載されるとおり、それぞれ120秒及び300秒間記録された。平衡解離定数(K
D)値は、解離速度定数及び結合速度定数(k
off/k
on)の比率として導き出された。
【0276】
【表7】
【0277】
実施例8
この実施例は、本開示のヘテロ二量体抗体(Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1)が、ある範囲のSTEAP1表面密度を示す標的細胞の溶解を媒介することを実証する。
【0278】
様々な標的細胞株(SNU−5、C4−2B、Sk−N−MC、LOX−IMVI、VCaP、IM−95、TYKNU、22RV−1、HBSCM、HUCCT1、PC3、HCT116及びNCIH1869)の表面でのSTEAP−1密度が評価された。Dako Qifikit法を使用して測定されるとおりに3列目においてSTEAP1密度(1細胞当たりのSTEAP I抗体結合部位の数)を同定する下の表9を参照されたい。
【0279】
【表8】
【0280】
別々の試験において、OE33、EBC1及びA673細胞株の表面でのSTEAP−1密度が評価された。Dako Qifikit法を使用して測定されるとおりに3列目においてSTEAP1密度(1細胞当たりのSTEAP I抗体結合部位の数)を同定する下の表10を参照されたい。
【0281】
【表9】
【0282】
ヒトドナー由来のT細胞を漸増濃度のAb−A2(N67Q)XmAb
2+1分子とともに標的細胞株と37℃で48時間インキュベートした。48時間後、標的細胞生存率は、細胞生存率を測定するsteady glo(B)又はcell titer gloを使用して測定された。Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1は、様々なEC90を有して全ての細胞株を殺滅した。
【0283】
Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1は、1細胞(SNU5細胞株)当たり約200,000個のSTEAP1受容体〜1細胞(LOX−IMV細胞株)当たり約10,000個のSTEAP1受容体の範囲のSTEAP1密度を有する癌細胞株を殺滅できる。Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1の効力は、STEAP1受容体密度が1細胞当たり10,000個未満に落ちるときに低減する。この点に関して、Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1は、10,000より多いSTEAP1の表面密度を有する細胞のT細胞依存的な殺滅を優先的に媒介する(例えば、EC90は、10,000未満のSTEAP1の表面密度を有する細胞と比較して、10,000より多いSTEAP1の表面密度を有する細胞に関して少なくとも10倍少ない)。
【0284】
癌細胞の特異な殺滅は、Ab−A2−N67G XmAb
2+1と比較してXmab
2+1形式の他の抗体(Ab−B−G52A XmAb
2+1及びマウス抗体Ab−Cm XmAb
2+1)により評価された。Ab−A2−N67G XmAb
2+1は、高STEAP1発現細胞と低STEAP1発現細胞との間の特異な殺滅を実証したが、Ab−B−G52A XmAb
2+1は、高STEAP1発現細胞と低STEAP1発現細胞との間を識別せず、代わりにいずれのSTEAP1発現細胞も殺滅した。表11を参照されたい。Ab−A2−N67G XmAb
2+1は、HSMBC(一次ヒト平滑筋気管支細胞)などの低いレベル(すなわち10,000/細胞未満)でSTEAP1を発現する正常細胞を残す。
【0285】
【表10】
【0286】
実施例9
この実施例は、T細胞依存性の細胞傷害活性が、抗PD−1抗体とともに本明細書に記載される抗CD3/抗STEAP1ヘテロ二量体抗体の組合せを使用して増強されることを実証する。
【0287】
PD−L1過剰発現細胞株の作製:GP2−293細胞を、10%ウシ胎仔血清、1% Pen/Strep、1% HEPES及び1% GlutaMAXで補充されたDMEM培地中で培養した。細胞を、10cmのディッシュにおいて75%の培養密度で蒔き、37℃、5% CO
2で一晩インキュベートした。翌朝、細胞をトランスフェクトした。チューブAに45μLのリポフェクタミン3000及び500μLのOptiMEM培地を加えた。チューブBに15μgのMSCV_GFP_PD−L1プラスミド、1.8μgのVSV−gプラスミド、30μLのP3000試薬及び500μLのOptiMEM培地を加えた。チューブA及びBを混合し、室温で10分間インキュベートした。混合物をGP2−293細胞のディッシュに滴下して加え、これを37℃、5% CO
2で一晩インキュベートした。翌朝、培地を除去し、10mLの新鮮な培養培地で置き換えた。その日の午後に標的細胞を6ウェルプレートに75%の培養密度で蒔き、37℃、5% CO
2で一晩インキュベートした。翌朝、ウイルス上清をGP2−293細胞から回収し、遠心分離した(5分、1200rpm)。上清を新しいチューブに回収し、ポリブレンを1:1000で加えた。培地を、標的細胞を含有するプレートから除去し、2mLのウイルス上清を加えた。上清細胞に関して、1E6細胞を1500rpmで5分間遠心分離し、10% ウシ胎仔血清及び1% pen/strepで補充された500μL RPMIにおいて再懸濁し、6ウェルプレートに蒔き、これに2mLのウイルス上清を加えた。標的細胞及びウイルス上清を含有するプレートを1200×gにおいて32℃で1.5時間遠心分離し、続いて37℃、5% CO
2でインキュベートした。培養培地を5時間後に加えた。4日後、細胞を、FACSymponyによるフローサイトメトリーによってGFP及びPD−L1発現について分析した。PD−L1を、PE−コンジュゲート抗体、クローン29E.2A3を使用して検出した。PD−L1発現について<70%陽性の細胞をBD Melodyソーター上で選別して、高レベルのPD−L1を発現する細胞について選択した。
【0288】
T細胞依存性の細胞障害性(TDCC)アッセイ:Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1を細胞培養培地(RPMI、10%熱不活性化ウシ胎仔血清、1X GlutaMAX、1X Pen/Strep)中で希釈し、段階希釈し(1:3、合計22)、Bravoリキッドハンドリングロボットを使用して黒色透明底384ウェルプレートに移した。CD3/CD28 Dynabead(1:1、48時間)で予め活性化されたヒト汎T細胞(n=4)を、磁石を使用してビーズから分離し、細胞培養培地中で希釈した。(各ドナーからの一定分量の活性化T細胞をフローサイトメトリーによってPD−1発現について評価した。細胞を上記のとおり染色し、データをFACSymphony フローサイトメーター上で収集し、FlowJo v10.1を使用して分析した。)活性化T細胞(2500細胞/20μL;4列/ドナー)に続いてPD−L1を過剰発現する標的細胞を、最終のエフェクター対標的細胞(E:T)比が1:1になるように384ウェルアッセイプレート(2500細胞/20μL;全プレート)に蒔いた。配列番号189〜194のCDR配列を含む本開示の抗PD−1抗体(5μで10μg/mL最終)を各T細胞ドナーの2つの列に加えた。プレートをMicroClimeの蓋で覆い、37℃、5% CO
2で24時間インキュベートした。ルシフェラーゼを発現する標的細胞によるアッセイに関して、30μLのSteady−Glo、Bright−Glo又はOne−Glo試薬(Promega)を加えた。ルシフェラーゼを発現しない接着標的細胞を有するプレートを、EL406プレートワッシャーを使用してPBSで洗浄してT細胞を除去し、25μLのCell Titer Glo試薬を加えた。プレートを、試薬とともに室温の暗所で10分間インキュベートした。発光を、BioTek Neoプレートリーダーを使用して検出した。特異的な細胞障害性は、Ab−A2 XmAb
2+1を伴わないT細胞とインキュベートされた標的細胞に対して計算された。GraphPad Prismソフトウェアを使用して、用量曲線をプロットし、4パラメーター可変勾配曲線フィッティングによりEC50値を計算した。
【0289】
TDCCアッセイの結果は、
図20A及び20Bにおいて示される。Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1及び抗PD−1抗体の組合せは、Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1単独と比較して、細胞障害性の増強及びEC50の低減を実証した。
【0290】
実施例10
この実施例は、インビボでユーイング肉腫の腫瘍体積を減少させる本開示のヘテロ二量体抗体(例えば、Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1)の能力を実証する。
【0291】
致死量以下照射NOD/SCID雌免疫無防備状態マウスに対して、1日目に5×10
6細胞のSTEAP1発現SK−N−MC腫瘍細胞を移植した。8日目に2×10
7個のCD3+ヒトT細胞を腹腔内注射した。Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1又は溶媒対照を12、19及び26日目に0.01、0.1又は1mg/kgで静脈内(IV)ボーラス注射により投与した。経時的な腫瘍体積データは、図表によって示される(
図22)。
【0292】
Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1は、初期の腫瘍退縮を誘導し、15日目〜22日目で全ての投与群において相対的な腫瘍体積(RTV)が<1になったが、溶媒治療動物のRTVは、試験終了まで持続的に増大した。最も低い用量のAb−A2(N67Q)XmAb
2+1(0.01mg/kg)を受容している動物に由来する腫瘍は、22目後に再増殖を開始したが、より高いAb−A2(N67Q)XmAb
2+1用量(0.1及び1mg/kg)で治療されたマウスに関する平均RTVは、28日目及び25日目までそれぞれ<1であった(表12)。
【0293】
【表11】
【0294】
溶媒治療対照群2と比較した場合、15日目〜22日目において、p値<0.001は、全てのAb−A2(N67Q)XmAb
2+1用量レベルで達成され、22日目後、p値<0.001は、0.1及び1mg/kg Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1用量で達成された(
図23)。28日目において、溶媒治療マウス(群2)の腫瘍は、治療開始前のそれらの開始体積と比較して平均5.29倍大きくなったが、Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1治療群における群平均RTVは、0.61(群3)、1.13(群4)及び4.24(群5)であった(表1)。28日目の生存期の最後において、最も高いAb−A2(N67Q)XmAb
2+1用量群(群3)の9/10の動物は、腫瘍がないと見なされ、97%の腫瘍増殖阻害(TGI)を有した(表13)。
【0295】
【表12】
【0296】
したがって、臨床的に関連のある異種移植モデルにおいて、Ab−A2(N67Q)XmAb
2+1は、納得できる抗腫瘍活性を示した。