(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
ステップ(i)における前記エンベロープウイルスを含む調製物が、前記エンベロープウイルスを前記混合モードクロマトグラフィー担体と結合させる前に、以下のステップ:
(a)細胞溶解と、
(b)ウイルス清澄化と、
(c)ヌクレアーゼ処理と、
からなる群から選択される1または複数のステップに供せられる、請求項1に記載の方法。
(iii)前記混合モードクロマトグラフィー担体を洗浄バッファーで洗浄するステップであって、前記エンベロープウイルスが前記混合モードクロマトグラフィー担体と結合したままであるステップをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
ステップ(ii)において、前記エンベロープウイルスを前記混合モードクロマトグラフィー担体から溶出することにより、混合モード溶出液が形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
今日、モノクローナル抗体を超えて、ウイルス粒子をベースとした新規の生物薬剤の開発が大きく期待されている。これらのウイルス粒子は、遺伝子治療またはワクチン接種に応用することができる。特に、癌や感染性疾患の処置または予防への幅広い広範囲の適用は、医療市場の拡大と相まって、遺伝子治療ベクターおよびウイルスワクチンの製造プロセスの改善に向けた努力を加速させている。
【0003】
十分特徴づけられた動物細胞株およびスケーラブルな製造システムの使用により、天然ウイルスや組換えウイルスの力価や、製造物の品質の大幅な改善が可能になった。しかしながら、ウイルス粒子についての下流精製プロセスへは、それほど努力が投入されていなかった。
【0004】
汚染物質は、プロセスに関連するもの(例えば、ウシ血清アルブミン、抽出物、ヌクレアーゼ、浸出物)または製造物に関連するもの(例えば、宿主細胞タンパク質、宿主細胞DNA、プロテオグリカン、およびグリコサミノグリカン)のいずれかであり、原則として、精製プロセスによって除去されなければならない。上流の力価が向上し続けると、ウイルスの下流処理(DSP)が、重大なボトルネックになる。粒子サイズや不均一性、等電点(pI)、表面の疎水性に加えて、ウイルスの不安定さは、生ウイルスの精製プロセスの設計において重要な役割を果たしている。これは、特にエンベロープウイルスに当てはまり、ウイルスエンベロープの物理化学的性質が、コスト効率の高い工業的ウイルス製造にとっての課題となっているからである。
【0005】
多くのDNAウイルスおよびRNAウイルスは、ウイルスエンベロープを有する。脂質二重層エンベロープは、ウイルスのタンパク質カプシドを覆い、ウイルスの糖タンパク質を含む宿主細胞膜の部分に由来する。免疫系を回避するため、ウイルスは、短時間で表面タンパク質を変化させることができる。さらに、これらのウイルスのエンベロープは、熱、界面活性剤、および乾燥に対して比較的感受性があり、この特性は、宿主環境の外側でのエンベロープウイルスの限定的な生存をもたらしている。エンベロープウイルスは、非エンベロープウイルスより変性しやすく、典型的には、宿主から宿主へ直接移動し/移動させられなければならない。
【0006】
それでもやはり、エンベロープウイルスは、弱毒生ワクチンとして用いらる。エンベロープウイルスは、不活性化ビリオンまたは精製されたサブユニットより広範な免疫応答を誘導する。
【0007】
いくつかのエンベロープウイルスは、例えば、ポックスウイルス(pox virus)、アルファウイルス(alphavirus)、フラビウイルス(flavivirus)、パラミクソウイルス(paramyxovirux)、ヘルペスウイルス(herpes virus)などの、ベクターワクチンとしても用いられる。この場合、エンベロープウイルスは、レシピエントにおける発現のため、別のウイルスの抗原または腫瘍抗原を運ぶために用いられる。遺伝子治療のためのベクターとして用いられる他のエンベロープウイルスには、レトロウイルス(retrovirus)、ポックスウイルス、およびヘルペスウイルスなどが挙げられる。
【0008】
明らかに、例えば遺伝子治療アプリケーション、ウイルスベクターワクチン、または腫瘍溶解性ウイルスに必須であるウイルス感染力を維持するために、生エンベロープウイルスの穏やかな下流処理(DSP)に課題がある。
【0009】
エンベロープウイルスを精製するために当技術分野で用いられる対応する処理は、しばしば、ラージスケールで移植する能力が限られていたり、または著しい収量損失と関連していたり、または連続的な細胞株で製造された医薬品に要求される純度のレベルを満たしていなかったりすることがある。
【0010】
多数のウイルスベースワクチンは、初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)を含む初代細胞の有限培養物上で作製される。初代細胞に由来したワクチンに関する多数の経験と、それらの限られた寿命のため、初代CEF細胞で産生されたワクチンは、一般的に安全であると認識されており、宿主細胞DNAまたは宿主細胞タンパク質のレベルに関しては、それほど厳格な条件が適用されない。しかしながら、CEF細胞は、孵化卵から作製されなければならないため、特定病原体未感染(SPF)な農場で卵を産生しているにも関わらず、感染性物質を汚染する潜在的なリスクがある。製造コストがかかり、産生されたワクチンバッチごとに費用のかかる高価なバイオセーフティ検査を行う必要があるため、業界では連続細胞株が好まれる。不死細胞をバンク化し、細胞バンクレベルで特徴づけ、個々のバッチのために高価な検査を必要としない、多数のワクチンバッチの生産に用いることができる。さらに、連続細胞株は、弱毒生ウイルス、および生きているが複製能力のないウイルスベクターを支援するためのヘルパー遺伝子の取り込みを可能にする。
【0011】
そのようなベクターの一例として、改変ワクシニアアンカラ(Modified Vaccinia Ankara)(MVA)がある。これは、高度に弱毒化されたワクシニアウイルスであり、ヒト細胞において複製することができず、無関係のウイルスの抗原または特定の腫瘍抗原を運ぶための重要なワクチンベクターとして機能する。ワクシニアは、最も大きいDNAウイルスである。もうひとつの例は、トリパラミクソウイルス(paramyxovirus)の一種である、ニューカッスル病(ND)ウイルスがあり、ヒト腫瘍において複製する潜在能力を示しており、腫瘍細胞を死滅させ、かつ強力な抗腫瘍免疫応答を開始させる腫瘍溶解剤として機能することができる。どちらのウイルスも、歴史的に、CEF細胞で増殖している。
【0012】
ワクチンまたは遺伝子治療送達媒体として適用される他のウイルスベクター、例えばセンダイウイルス(Sendai virus)(別のパラミクソウイルス)、それぞれのアルファウイルスに由来したベネズエラウマ脳炎ウイルスレプリコンベクター、黄熱病ウイルス(Yellow fever virus)(YF17D)、フラビウイルスなどは、連続細胞株で増殖する。恒久的な遺伝子改変に用いられるレンチウイルスベクターは、一過性トランスフェクションによって作製され、基質として恒久的な細胞株を必要とする。
【0013】
ほとんどの不死細胞株、特に、懸濁培養での増殖に適応した不死細胞株は、高細胞用量で注射された場合、免疫無防備な不全動物(新生ヌードマウス)で増殖する潜在能力を獲得している。まれに、細胞DNAの注入後に腫瘍形成が見られることもある。
【0014】
そのような細胞株は、不死化/形質変換因子(核酸またはタンパク質)をワクチンレシピエントへ移入する可能性がある。したがって、不死化細胞株で産生されるウイルスおよびウイルスベクターの純度に関して、厳格な条件が課されている。
【0015】
そのような低レベルの宿主細胞汚染物質を得るため、精製のための新しい改善された方法が必要とされる。その目標は、一方においてはウイルス収率を向上させ、他方では規制上の必要条件を満たすことである。
【0016】
ワクチンの製造または遺伝子治療に用いられるエンベロープウイルスの型に応じて、ベクターは様々な方法で精製することができる。従来、エンベロープウイルスの精製は、分子サイズとその特異的な密度差によって分子を分離する方法に基づいて行われている。密度勾配遠心分離は、ウイルス下流精製プロセスにおける最先端である。例えば、前臨床研究のための限られた量のウイルスを精製するために、スクロース、イオジキサノール(iodixanol)、または塩化セシウム勾配が、一般的に用いられている。さらに、宿主細胞DNAおよび他の宿主細胞汚染物質のさらなる除去のために、限外濾過またはヌクレアーゼ処理(例えば、ベンゾナーゼ(Benzonase))のような二次的方法が用いられる。
【0017】
これらのプロセスのスケーラビリティおよび経済面の乏しさ、ならびに医療用途として用いられるウイルス調製物の純度に関するより高い規制要件が、クロマトグラフィー法に基づいた新しいテクノロジーの開発に繋がった。これらの方法はよく知られ、確立されており、ウイルス粒子の下流処理に広く用いられている。ウイルス粒子のクロマトグラフィー濃縮および精製について最も一般的な方法は、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、およびサイズ排除クロマトグラフィーである。
【0018】
宿主細胞DNA問題に対抗する特定のアプローチを例証するために、ワクシニアウイルスを例として用いる(このアプローチはワクシニアウイルスのみに限定することはない)。ワクシニアウイルスの3つの表面タンパク質A27L、D8L、およびH3Lは、ワクシニアウイルスの細胞表面のヘパリン硫酸との相互作用を媒介することが報告されている。したがって、ワクシニア精製のためにアフィニティクロマトグラフィーに用いられた場合のヘパリンおよびヘパリン硫酸は、37%の収量損失で77%のDNA枯渇をもたらした(非特許文献1参照)。
【0019】
特許文献1参照では、精製のためにカオトロピック剤とケイ酸濾過の組合せを用いて、感染単位の52%を回収し、宿主細胞DNAの17%を枯渇させた。
【0020】
エンベロープウイルス粒子、例えば、ワクシニアウイルス粒子を感染細胞株から効率的に精製するには、いくつかの重要な課題が克服されなければならない。記載された方法は、しばしば、連続細胞で製造された医薬品に必要とされる純度のレベルを満たさない。成分の分離に必要とされる(塩濃度およびpHのような)条件は、特に、感受性の高いエンベロープウイルスについて、ウイルス凝集またはウイルス不活性化を引き起こす場合が多い。擬(Pseudo)アフィニティクロマトグラフィーは、いくつかのハードルを克服し得るが、特定のウイルスに限定される。
【0021】
したがって、ヒトの予防薬や治療薬のために、高活性を有するエンベロープウイルスの精製のための新しい方法の必要性がある。このような新しい方法は、迅速で、費用効率が高く、普遍的で、堅牢で、工業的にスケーラブルであるべきである。加えて、この方法は、高収率および高純度でのエンベロープウイルスの調製を可能にするべきである。特に、エンベロープウイルスの調製は、DNAおよび/またはRNAなどの宿主細胞由来核酸、加えて宿主細胞由来タンパク質を可能な限り少なく含むべきである。マルチモーダルクロマトグラフィーまたは混合モードクロマトグラフィー(MMC)は、様々な生体分子の分離に用いられる技術であり、1を超える分離原理を利用したクロマトグラフィー方を指す。MMCによる抗体精製のための技術は、当技術分野において知られている。中でも、MMCは、タンパク質調製物からウイルスを除去するために用いられる。この場合、タンパク質溶液は、フロースルーモードで混合モード担体を通過するが、ウイルスを含む汚染物質は、樹脂に強固に結合したままであるため、タンパク質を精製することができる。
【0022】
本特許出願の発明者らは、驚くべきことに、エンベロープウイルスの精製のための疎水性イオン交換混合モードクロマトグラフィーを初めて確立した。これは、完全にスケーラブルでかつ再現性のあるプロセスである。前記プロセスにより、高収率および高純度でのエンベロープウイルスの精製が可能となった。さらに、本特許出願の発明者らは、溶出バッファー中のアルギニンの存在が、ウイルス収率および純度をさらに高めることを可能にし、溶出に通常用いられる高い塩濃度を補償することさえできることを発見した。当技術分野において、アルギニンは、エンベロープウイルスを不活性化するために用いられるため、大量のエンベロープウイルスの回収は、極めて驚くべきことである(特許文献2参照)。本発明のウイルス精製方法は、エンベロープウイルスの精製における実際の欠点(例えば、純度、速度、回収率、普遍性、堅牢性、および/またはスケーラビリティに関する)を克服するのに適した結合溶出モードでの混合モードクロマトグラフィーを用いる。この方法は、いかなるエンベロープウイルスでもウイルス調製物から精製するのに適している。記載されたプロセスで得られたウイルス製剤は、規制当局の厳格なガイドラインを満たす。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本発明が下記で詳細に説明される前に、この発明が、本明細書に記載された特定の方法論、プロトコール、および試薬は変化し得るため、これらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書に用いられる専門用語が特定の実施形態のみを記載することを目的とし、添付された特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないこともまた理解すべきである。他に規定がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。
【0034】
好ましくは、本明細書で用いられる用語は、“A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)”,Leuenberger,H.G.W,Nagel, B.and Kolbl,H.eds.(1995),Helvetica Chimica Acta,CH−4010 Basel,Switzerlandに記載されている通りに定義される。
【0035】
いくつかの文書が、この明細書の本文を通して引用されている。上記下記に関わらず、(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造会社の仕様書、使用説明書、GenBankアクセッション番号配列提出などを含む)本明細書に引用された文書のそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられている。先行発明によって、本発明がそのような開示に先行する資格がないという承認として解釈されるべきことは、本明細書に存在しない。万一、そのような組み入れられた参考文献の定義または教示と、本明細書に列挙された定義または教示との間に矛盾が生じた場合、本明細書の本文が優先する。
【0036】
本発明による用語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの語尾変化形は、述べられた整数または整数群の包含を意味するが、任意の他の整数または整数群の排除を意味するものではない。本発明による用語「から本質的になること(consisting essentially of)」は、述べられた整数または整数群の包含を意味するが、述べられた整数に著しく影響しまたは変化させるだろう改変または他の整数を排除する。本発明による用語「からなること(consisting of)」、または「からなる(consists of)」などの語尾変化形は、述べられた整数または整数群の包含、およびいかなる他の整数または整数群の排除をも意味する。
【0037】
本発明を記載する文脈において(特に、特許請求の範囲の文脈において)用いられる用語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」ならびに類似した言及は、本明細書で他に指定がない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を網羅すると解釈されるものとする。
【0038】
この発明の化合物または作用物質の量または濃度、pH、時間、温度などの測定可能な値に言及する時に本明細書で用いられる場合の用語「約」は、示された値および示された値の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらに0.1%の変動を包含することを意図される。
【0039】
本明細書で用いられる場合、用語「ウイルス」は、他の生物体の生きている細胞の内側でのみ複製する小さい作用物質を指す。ウイルスはまた、細胞培養において培養され得る。ウイルスは、動物および植物から、細菌および古細菌を含む微生物までの全ての型の生命体に感染することができる。感染細胞の内側でもなく、細胞に感染する最中でもない間、ウイルスは、独立した粒子の形をとって存在する。ビリオンとしても知られている、これらのウイルス粒子は、以下の2つまたは3つの部分からなる:(i)遺伝情報を運ぶ長い分子であるDNAかRNAかのいずれかから作られた遺伝物質、(ii)遺伝物質を囲みかつ保護する、カプシドと呼ばれるタンパク質殻、および場合によっては、(iii)ウイルスが細胞の外側にある時、タンパク質殻を囲む脂質のエンベロープ。これらのウイルス粒子の形は、あるウイルス種についての単純なヘリックスおよび正二十面体の形から他のウイルス種についてのより複雑な構造まで様々である。したがって、本明細書で用いられる場合、用語「ウイルス」はまた、ウイルス粒子、特に感染性粒子を包含する。
【0040】
本明細書で用いられる場合、用語「エンベロープウイルス」は、ウイルスの保護的タンパク質カプシドを覆うウイルスエンベロープを有するウイルスを指す。エンベロープは、典型的には、宿主細胞膜(リン脂質およびタンパク質)の部分に由来するが、糖タンパク質および/または糖オリゴペプチドなどのいくつかの(ウイルスの)糖構造を含む。機能的には、ウイルスエンベロープは、ウイルスが宿主細胞へ入るのを助け、ウイルスが宿主免疫系を回避するのを助け得る。エンベロープの表面上の糖タンパク質および/または糖オリゴペプチドなどの(ウイルスの)糖構造は、宿主の膜上の受容体部位を同定しかつ受容体部位と結合する役割を果たす。その後、ウイルスエンベロープは、宿主の膜と融合し、カプシドおよびウイルスゲノムが宿主へ入って、宿主を感染させることを可能にする。改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスおよびニューカッスル病ウイルス(NDV)はエンベロープウイルスである。本明細書で用いられる場合、用語「エンベロープウイルス」はまた、エンベロープウイルス粒子、特に感染性エンベロープウイルス粒子を包含する。
【0041】
本明細書で用いられる場合、用語「改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス」は、アンカラ株に由来したワクシニアの高度に弱毒化された株を指し、ワクチンおよびワクチンアジュバントとしての使用のために開発された。最初のMVAウイルスは、野生型アンカラ株から、ニワトリ胚細胞の連続継代により単離された。このように処理されて、MVAウイルスは、霊長類(ヒトを含む)細胞において効率的に複製する能力を含む野生型ワクシニアのゲノムの約15%を喪失した。MVAウイルスは、エンベロープウイルスのクラスに属する。
【0042】
本明細書で用いられる場合、用語「ニューカッスル病(ND)ウイルス」は、多くの家畜および野生型のトリ種を冒すトリ疾患を引き起こすことが一般的に知られたウイルスを指す。NDウイルスはヒトへ感染する。ヒトの、感染したトリへの曝露(例えば、家禽処理工場における)は、軽度の結膜炎およびインフルエンザ様症状を引き起こし得るが、その他の点では、NDウイルスはヒトの健康に害をもたらさない。抗癌剤としてのNDウイルスの使用への関心は、NDウイルスが、正常細胞に対する限られた毒性と共に、ヒト腫瘍細胞を選択的に死滅させる能力から起こった。NDウイルスはエンベロープウイルスのクラスに属する。
【0043】
本明細書で用いられる場合、用語「精製されたウイルス、特にエンベロープウイルス」は、汚染物質の存在を低減または排除する条件下で単離されたウイルス、特にエンベロープウイルスを指し、その汚染物質として、ウイルス、特にエンベロープウイルスが得られる、天然の材料/(非ウイルスの)細胞内物質/成分、例えば、細胞、細胞片、細胞レムナント、細胞タンパク質、細胞脂質、ならびに/または、DNA分子および/もしくはRNA分子などの細胞核酸が挙げられる。汚染物質には、(非ウイルスの)細胞外物質/成分、例えば、(細胞培養およびウイルス産生に用いられる)培地添加物がさらに挙げられる。非ウイルスの細胞内物質および非ウイルスの細胞外物質はまた、ウイルス非関連材料と名づけられ得る。汚染物質にはまた、(望まれる(無傷の)ウイルスを除く)ウイルス物質/成分、例えば、不完全なウイルス粒子および外来性ウイルスが挙げられる。好ましくは、汚染物質には、天然の材料/(非ウイルスの)細胞内物質および/または(非ウイルスの)細胞外物質が挙げられる。精製されたウイルス、特にエンベロープウイルスは、好ましくは、汚染物質、例えば、細胞成分および/または培養成分を実質的に含まない。本明細書で用いられる場合、用語「実質的に含まない」は、例えばウイルスを産生する細胞および/またはその細胞培地に含まれる、汚染物質の、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%または100%、例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が除去されていることを意味する。換言すれば、汚染物質を実質的に含まない、精製されたウイルス、特にエンベロープウイルスは、好ましくは少なくとも50%純粋、より好ましくは少なくとも90%純粋、さらにより好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%または100%純粋、例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%純粋である。
【0044】
本明細書で用いられる場合、用語「(%)純度」は、精製ステップを経てウイルス、特にエンベロープウイルスが精製ステップを通して搬送される際に、精製ステップの前の調製物/試料におけるウイルスの純度と比較して達成された純度を意味することが意図される。純度を高めることは、調製物/試料が精製ステップの前後で比較されたときに、(ウイルス、特にエンベロープウイルスと比例して)汚染物質のレベルが低下したウイルス、特にエンベロープウイルスを得ることを伴う。上記で定義された純度の意味の範囲内のパーセンテージには、非限定的に、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%または100%、例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%を含む。純度は、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、イムノアッセイ、組成物分析、生物検定、および当技術分野において知られた他の方法により評価することができる。純度はまた、用量あたりの各不純物の量(例えば、ngの核酸/用量)である、特定の不純物として表現することができる。本明細書において精製されているようなエンベロープウイルスを含む調製物は、好ましくは、≦10ngの核酸/用量、例えば、0ng、≦0.1ng、0.2ng、0.3ng、0.4ng、0.5ng、0.6ng、0.7ng、0.8ng、0.9ng、1.0ng、2.0ng、3.0ng、4.0ng、5.0ng、6.0ng、7.0ng、8.0ng、9.0ng、または10.0ngの核酸/用量を含む。核酸は、DNAおよび/またはRNA分子を包含する。
【0045】
本明細書で用いられる場合、ウイルス、特にエンベロープウイルスの用語「精製」は、ウイルス、特にエンベロープウイルスの調製物における汚染物質の除去または汚染物質のレベルの測定可能な低減を指す。
【0046】
本明細書で用いられる場合、用語「ウイルス活性」は、(i)少なくとも1つの細胞型において感染性であるか、(ii)ヒトなどの動物において免疫原性であるか、または(iii)感染性と免疫原性の両方であるかのいずれかである、ビリオンとして定義される。「活性ウイルス」、特に「活性エンベロープウイルス」は、好ましくは、少なくとも1つの細胞型において感染性であるかもしくはヒトなどの動物において免疫原性であるかのいずれか、または両方であるウイルスである。好ましくは、ウイルス活性は、精製中に保存される。特に、ウイルス活性は、最初の50%組織培養感染量(TCID
50)の少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%またはそれ以上、例えば、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が、精製中に保持されているように精製中に保存される。50%組織培養感染量(TCID
50)は、感染性ウイルス力価の尺度である。このエンドポイント希釈アッセイは、感染した宿主の50%を死滅させるのに、または接種された組織培養細胞の50%において細胞変性効果を生じるのに必要とされるウイルスの量を定量化する。TCID50を計算するために以下の2つの方法が一般的に用いられる:Spearman−Karber方法およびReed−Muench方法。ウイルス活性を決定するための代替方法は、当業者に知られている。
【0047】
本明細書で用いられる場合、用語「ウイルスワクチン、特にエンベロープウイルスワクチン」は、レシピエント、例えば、ヒトまたは動物レシピエントにおいて、免疫応答を誘導するのに、または防御免疫を誘発するのに用いることができる作用物質を指す。有効であるためには、ウイルスワクチンは、一部の個体が堅牢なもしくは防御的な免疫応答を、または場合によってはいかなる免疫応答も、開始することができないとしても、免疫された集団の一部分において免疫を誘発することができる。このような免疫応答を開始できないことは、レシピエントの遺伝的背景から生じ得、または免疫不全状態(後天性か先天性のいずれか)もしくは免疫抑制(例えば、化学療法での処置または免疫抑制薬の使用による)のためであり得る。ウイルスワクチン効力は、動物モデルにおいて確立され得る。
【0048】
本明細書で用いられる場合、用語「ワクチン接種」は、レシピエント、例えば、ヒトまたは動物レシピエントにおいて、弱毒化感染性ウイルスでの粘膜もしくは経皮曝露により、または前記ウイルスの不活性型の注射により、ウイルス抗原に対する特異的な免疫が誘導されることを意味する。ワクチンのレシピエントの体への投与後、エピトープが発現し、免疫系に提示され、これらのエピトープに対する特異的な免疫応答が誘導され得る。したがって、レシピエントは、エピトープを含有する分子に対して免疫される。
【0049】
本明細書で用いられる場合、用語「細胞培養」は、細胞が、一般的には細胞の天然の環境の外側で、管理条件下で成長する過程を指す。実際には、用語「細胞培養」は、多細胞生物体に由来した細胞、例えば、ヒトまたは動物の細胞の培養を指す。ウイルス細胞培養において、細胞は、ウイルスの宿主である。ウイルス細胞培養後、ウイルス、特にエンベロープウイルスを濃縮された量で含む細胞懸濁液が達成される。ウイルスは、細胞の内側および/または細胞の外側(すなわち、細胞を取り囲む培地中)であり得る。
【0050】
本明細書で用いられる場合、用語「初代細胞培養物」は、切除された正常なヒトまたは動物組織から直接的に引き出され、かつ外植片培養として培養されたか、または酵素消化により単細胞懸濁液への解離後に培養されたかのいずれかである細胞培養物を指す。そのような培養物は、最初、不均一であるが、後には、線維芽細胞によって支配されるようになる。初代培養物の調製は大きな労働力を要し、初代培養物は、限られた期間のみ、インビトロで維持することができる。限られた寿命の間、初代細胞は、通常、インビボでの細胞の分化型特性の多くを保持する。
【0051】
本明細書で用いられる場合、用語「連続細胞培養物」(または「不死化細胞培養物」)は、初代培養物の確立以後、培養で増殖し続けている細胞を記載し、この細胞は、老化の自然の限界を超えて成長および生存することができる。そのような生存している細胞は、不死とみなされる。換言すれば、本明細書で用いられる場合、用語「連続細胞培養物」は、長期間、培養で連続的に増殖することができる単一の細胞型を含む培養物を指す。この培養物は、不定の寿命を有する。連続または不死化細胞株は、例えば、癌遺伝子の誘導によりまたは腫瘍抑制遺伝子の喪失により、作製することができる。ウイルスは、連続または不死化細胞培養物において増殖し得る。
【0052】
本明細書で用いられる場合、用語「汚染物質」は、ウイルス、特にエンベロープウイルスが得られる、(非ウイルスの)細胞内物質、例えば、細胞、細胞片、細胞レムナント、細胞タンパク質、細胞脂質、ならびに/またはDNA分子および/もしくはRNA分子などの細胞核酸を包含する。汚染物質には、(非ウイルスの)細胞外物質、例えば、(細胞培養およびウイルス産生に用いられる)培地添加物がさらに挙げられる。非ウイルスの細胞内物質および非ウイルスの細胞外物質はまた、ウイルス非関連材料と名づけられ得る。汚染物質にはまた、(望まれる(無傷の)ウイルスを除く)ウイルス物質、例えば、不完全なウイルス粒子および外来性ウイルスが挙げられる。加えて、汚染物質には、分離プロセスおよび/または精製プロセスから、またはこのプロセス中に生じる不純物などのプロセス関連不純物が挙げられる。好ましくは、汚染物質には、(非ウイルスの)細胞内物質、(非ウイルスの)細胞外物質、および/または(望まれる(無傷の)ウイルスを除く)ウイルス物質が挙げられる。より好ましくは、汚染物質には、(非ウイルスの)細胞内物質および/または(非ウイルスの)細胞外物質が挙げられる。
【0053】
この点において、それぞれのMMCの動的結合能力に関して、本発明の方法を用いて、10Lのクロマトグラフィーカラムから、捕獲サイクルあたり1×10
8個のMVAウイルス粒子の最小限50,000回の用量を供給することができることは注目されるべきである。より好ましくは、本発明の方法を用いて、10Lのクロマトグラフィーカラムから、捕獲サイクルあたり1×10
8個のウイルス粒子の400,000回より多い用量を供給することができる。本明細書において精製されているようなエンベロープウイルスを含む調製物は、好ましくは、≦40ngの核酸/用量、例えば、0ng、≦0.1ng、0.2ng、0.3ng、0.4ng、0.5ng、0.6ng、0.7ng、0.8ng、0.9ng、1ng、2ng、3ng、4ng、5ng、6ng、7ng、8ng、9ng、10ng、11ng、12ng、13ng、14ng、15ng、16ng、17ng、18ng、19ng、20ng、21ng、22ng、23ng、24ng、25ng、26ng、27ng、28ng、29ng、30ng、31ng、32ng、33ng、34ng、35ng、36ng、37ng、38ng、39ng、または40ngの核酸/用量を含む。核酸は、DNAおよび/またはRNA分子を包含する。
【0054】
本明細書で用いられる場合、用語「エンベロープウイルスを含む調製物」は、精製されていることが望まれる、エンベロープウイルスを含有する任意の組成物を指す。特に、本発明の方法において提供される調製物は、1または複数の汚染物質、例えば、非限定的に、細胞タンパク質、細胞核酸、細胞脂質、様々な細胞培地成分および添加物、不完全なウイルス粒子、ならびに/または外来性ウイルスから精製されることが望まれる、エンベロープウイルスを含む調製物を指す。本発明の方法において提供されるエンベロープウイルスを含む調製物は、不純な未精製調製物、または部分的に精製された調製物であり得る。不純な未精製調製物は、エンベロープウイルスを含む細胞懸濁液(エンベロープウイルスは細胞の内側および/または外側にあり得る)またはエンベロープウイルスを含む細胞可溶化液であり得る。部分的に精製された調製物は、(例えば、濾過、遠心分離、および分画ステップの少なくとも1つにより、またはそれらの任意の組合せにより)さらに処理されている、未精製調製物、例えば、エンベロープウイルスを含む細胞懸濁液またはエンベロープウイルスを含む細胞可溶化液から生じる。あるいは、エンベロープウイルスを含む調製物は、製造プロセスにおける以下のステップのいずれかからであり得る:ウイルス成長後(例えば、エンベロープウイルスを含む細胞懸濁液)、細胞溶解後(例えば、エンベロープウイルスを含む細胞可溶化液)、または1または複数のウイルス精製前/処理前ステップ、例えば、濾過、遠心分離、および/もしくは分画後(例えば、エンベロープウイルスを含む清澄化ウイルス調製物)。好ましくは、本発明の方法において提供されるエンベロープウイルスを含む調製物は、エンベロープウイルスを含む細胞懸濁液、エンベロープウイルスを含む細胞可溶化液、またはエンベロープウイルスを含む清澄化ウイルス調製物である。本発明の方法において提供されるエンベロープウイルスを含む調製物が、水性調製物、特に水性懸濁液であることは特に好ましい。
【0055】
本明細書で用いられる場合、用語「異種性核酸配列」は、天然では、通常、ウイルス、特にエンベロープウイルスに密接に関連しては見出されない核酸配列を指す。異種性核酸配列を含むウイルスはまた、組換えウイルスと名づけられる場合もある。異種性核酸配列は、好ましくは、(i)抗原、特に抗原のエピトープ、(ii)診断用化合物、および(iii)治療用化合物をコードする配列から選択される。
【0056】
本明細書で用いられる場合、用語「混合モードクロマトグラフィー担体」は、混合物中の汚染物質、例えば、タンパク質、DNAおよび/またはRNA分子などの核酸、ならびにウイルスなどの2つ以上の成分の分離を達成するための、2つ以上の化学的機構の組合せを用いる固相クロマトグラフィー担体を指す。例として、陽イオン交換(すなわち、担体が陰イオン性である)、陰イオン交換(すなわち、担体が陽イオン性である)、疎水性相互作用、親水性相互作用、水素結合、pi−pi結合、および金属親和性の組合せを利用するクロマトグラフィー担体が挙げられるが、それらに限定されない。固相は、多孔性粒子、非多孔性粒子、膜、またはモノリスであり得る。本発明の方法において、混合モードクロマトグラフィー担体は、疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体、例えば、疎水性陽イオン交換クロマトグラフィー担体または疎水性陰イオン交換クロマトグラフィー担体、好ましくは疎水性陽イオン交換クロマトグラフィー担体である。
【0057】
本明細書で用いられる場合、用語「疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)担体」は、定常相との疎水性相互作用に基づいた成分の分離を指す。したがって、HICにおける溶出順序は、成分が成分の相対疎水性に基づいて順位付けされることを可能にする。HICは、非変性条件を利用し、有機溶媒の使用も高温の使用も必要とせず、分離は、ウイルス精製プロセスに用いられる場合、ウイルス構造の保存を可能にする生理的pHで行われる。
【0058】
本明細書で用いられる場合、用語「イオン交換クロマトグラフィー担体」は、イオン化可能な分子の、総電荷に基づいた分離を可能にする、クロマトグラフィー担体を指す。イオン交換クロマトグラフィー担体は、「陰イオン交換クロマトグラフィー担体」または「陽イオン交換クロマトグラフィー担体」であり得る。陰イオン交換クロマトグラフィー担体は、成分の分離を達成するために正味正の表面電荷を有する分子への親和性を有する固相クロマトグラフィー担体である。陽イオン交換クロマトグラフィー担体は、成分の分離を達成するために正味負の表面電荷を有する分子への親和性を有する固相クロマトグラフィー担体である。固相は、多孔性粒子、非多孔性粒子、膜、またはモノリスであり得る。
【0059】
本明細書で用いられる場合、用語「リガンド」は、エンベロープウイルスの、前記ウイルスを結合することによる精製を可能にする、混合モードクロマトグラフィー担体、特に疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)担体に付着した特異的な結合構造を指す。
【0060】
本明細書で用いられる場合、用語「洗浄バッファー」は、エンベロープウイルスが結合している混合モードクロマトグラフィー担体、特に疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体から汚染物質を除去するために用いられる溶液を指す。洗浄バッファーにより、担体に結合したエンベロープウイルスが精製される。
【0061】
本明細書で用いられる場合、用語「溶出バッファー」は、エンベロープウイルスが結合している混合モードクロマトグラフィー担体、特に疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体からエンベロープウイルスを溶出しまたは解離させるために用いられる溶液を指す。換言すれば、溶出バッファーは、混合モードクロマトグラフィー担体からエンベロープウイルスを救出するために用いられる。
【0062】
本明細書で用いられる場合、用語「ウイルス清澄化」は、収集された感染細胞培養物質を固体成分(細胞および細胞片)から分離することを可能にする任意の技術を指す。これは、例えば、濾過、遠心分離、沈降、凝結、または当業者に知られた他の技術により、達成され得る。
【0063】
本発明の実施形態
上記で述べられているように、本特許出願の発明者らは、驚くべきことに、エンベロープウイルスの精製のための疎水性イオン交換混合モードクロマトグラフィーを初めて確立した。これは、十分にスケーラブルでかつ再現性のあるプロセスである。前記プロセスは、高収率および高純度でのエンベロープウイルスの精製を可能にする。加えて、本特許出願の発明者らは、溶出バッファーにおけるアルギニンの存在が、ウイルス収率および純度を増加させるのをさらに可能にすることを発見した。当技術分野において、アルギニンは、エンベロープウイルスを不活性化するために用いられるため、エンベロープウイルスの高収率の回収は、極めて驚くべきことである(欧州特許第2350271号明細書)。本発明のウイルス精製のための方法は、エンベロープウイルスの精製における実際の欠点(例えば、純度、速度、回収率、普遍性、堅牢性、および/またはスケーラビリティに関する)を克服するのに適している、結合溶出モードでの混合モードクロマトグラフィーを用いる。前記方法は、いかなるエンベロープウイルスでもウイルス調製物から精製するのに適している。得られたウイルス調製物は、規制機関の厳格なガイドラインを満たす。
【0064】
したがって、第1の態様において、本発明は、
(i)調製物に含まれるエンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体と結合させるステップと、
(ii)前記混合モードクロマトグラフィー担体から前記エンベロープウイルスを溶出するステップと、を含むエンベロープウイルスの精製方法であって、
前記混合モードクロマトグラフィー担体が疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体である、方法に関する。
【0065】
ステップ(i)におけるエンベロープウイルスを含む調製物は、好ましくは、1×10
7個から1×10
11個の間の感染性ウイルス粒子(IVP)/mlを含む。
【0066】
エンベロープウイルスは、細胞成分および/または細胞培地関連成分と非特異的に会合する。この相互作用のためのエンベロープウイルスのアクセス可能な表面は、主に、脂質膜、およびその脂質膜に埋め込まれた表面タンパク質である。エンベロープウイルスについて、精製は特に困難である:ウイルスエンベロープは、培地自体、宿主細胞、および/または他のウイルス粒子に由来した様々な結合パートナーに対して、様々な静電気的、ファンデルワールス、または疎水性相互作用表面をそれぞれまたは組み合わせて提示する、糖タンパク質におけるスルホ基からスフィンゴ脂質における脂肪族アルコールまで様々である異なる分子の非常に複雑かつ可動性のコレクションを含有し得る。本発明の方法は、エンベロープウイルスを含む調製物からの前記成分の低減、特に除去、およびそれにしたがって、高純度を有するエンベロープウイルスの産生を可能にする。
【0067】
エンベロープウイルスを含む調製物は、精製されることが望まれる、エンベロープウイルスを含有する任意の組成物であり得る。調製物は、不純な未精製調製物(例えば、ウイルス培養または細胞溶解後の細胞懸濁液)、または部分的に精製された、もしくはプレクリーニングされた調製物(例えば、清澄化ウイルス調製物)であり得る。部分的に精製された調製物は、(例えば、濾過、遠心分離、凝結、沈殿、沈降、もしくは代替の分画方法の少なくとも1つにより、またはそれらの任意の組合せにより)さらに処理されている、未精製調製物から生じる。特に、ステップ(i)における調製物は、1または複数の汚染物質から精製されることが望まれる、エンベロープウイルスを含む組成物を指す。1または複数の汚染物質は、好ましくは、ウイルス物質(望まれる(無傷の)ウイルスを除く)、非ウイルスの細胞内物質、および/または非ウイルスの細胞外物質からなる群から選択され、例えば、非ウイルスの細胞内物質、または非ウイルスの細胞外物質、または非ウイルスの細胞内物質と非ウイルスの細胞外物質、または非ウイルスの細胞内物質と非ウイルスの細胞外物質とウイルス物質(望まれる(無傷の)ウイルスを除く)である。さらにより好ましくは、ウイルス物質は、不完全なウイルス粒子および外来性ウイルスからなる群から選択され、非ウイルスの細胞内物質は、細胞、細胞片、細胞レムナント、細胞タンパク質、細胞脂質ならびにRNAおよび/もしくはDNA分子などの細胞核酸からなる群から選択され、ならびに/または非ウイルスの細胞外物質は、(細胞培養およびウイルス産生に用いられる)培地添加物である。MVAウイルス感染細胞の典型的な粗可溶化液は、約2.5×10
5ng/mlのDNAおよび約3.0×10
9pfu/mlのMVAウイルスを含有する。ワクチン用量として1×10
8pfuを用いると、通常、WHOガイドラインにより許容されるDNAの量の800倍より多く超過した、用量あたり8300ngのDNAを取得する。任意の連続細胞株からのワクチンが、非常に破壊的な感染性疾患に対する世界的規模のワクチン接種に必要とされるラージスケールで製造されかつ使用され得る前に、このDNA汚染物質および他の汚染物質は解決されなければならない非常に大きな課題である。本発明の方法で精製されたエンベロープウイルスを含む調製物は、好ましくは、≦40ngの核酸/用量、例えば、0ng、≦0.1ng、0.2ng、0.3ng、0.4ng、0.5ng、0.6ng、0.7ng、0.8ng、0.9ng、1ng、2ng、3ng、4ng、5ng、6ng、7ng、8ng、9ng、10ng、11ng、12ng、13ng、14ng、15ng、16ng、17ng、18ng、19ng、20ng、21ng、22ng、23ng、24ng、25ng、26ng、27ng、28ng、29ng、30ng、31ng、32ng、33ng、34ng、35ng、36ng、37ng、38ng、39ng、または40ngの核酸/用量を含む。核酸は、DNAおよび/またはRNA分子を包含する。
【0068】
一実施形態において、ステップ(i)におけるエンベロープウイルスを含む調製物は、エンベロープウイルスを含む細胞懸濁液、エンベロープウイルスを含む細胞可溶化液、およびエンベロープウイルスを含む清澄化ウイルス調製物からなる群から選択される。一実施形態において、細胞懸濁液、細胞可溶化液、または清澄化ウイルス調製物はヌクレアーゼ処理される。当業者は、エンベロープウイルスを含む細胞懸濁液を作製する方法を知っている。通常、細胞に、エンベロープウイルスを感染させ、またはトランスフェクションし(宿主細胞)、規定された期間にわたって培養する(細胞培養物)。通常、感染細胞懸濁液は、感染サイクルが終了した後に収集される。例えば、MVAについての感染性ウイルス力価は、感染から48時間後、ピークになり、感染から72時間後に収集することができ、その後、本発明の方法でさらに精製することができる。好ましくは、感染していないまたはトランスフェクションされていない状態での前記ウイルス産生細胞は、AGE1.CR、AGE1.CR.pIX、AGE1.HN、AGE1.R06E、AGE1.R05T、MDCK(Madin−Darbyイヌ腎臓;ATCC CCL 34)、BHK(ベビーハムスター腎臓)21(ATCC CCL−10)、BHK TK(ECACC No.85011423)、HEK(ヒト胚腎臓)293(ATCC CRL 1573)、またはDF−1(Doug Fosterにより開発されたニワトリ線維芽細胞株)などの連続細胞株に由来する。細胞株AGE1.CR.pIX(17a11b)は、ProBioGen、Goethestr.54、13086 Berlin、Germanyにより、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg 1b、38124 Braunschweig、Germanyへ2005年11月24日にアクセッション番号DSM ACC2749として寄託された。細胞株AGE1.HN(NC5T11#34)は、ProBioGen、Goethestr.54、13086 Berlin、Germanyにより、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Mascheroder Weg 1b、38124 Braunschweig、Germanyへ2005年11月4日にアクセッション番号DSM ACC2744として寄託された。細胞株AGE1.R06Eは、ProBioGen、Goethestr.54、13086 Berlin、Germanyにより、DSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstr.7B、38124 Braunschweig、Germanyへ2008年4月3日にアクセッション番号DSM ACC2902として寄託された。さらに、当業者は、(細胞培養物における)エンベロープウイルス産生細胞から、エンベロープウイルスを含む細胞可溶化液を作製する方法を知っている。例えば、細胞可溶化液は、機械的方法、例えば、超音波、温度変化、狭いバルブを通しての混合もしくは圧力ホモジナイゼーションにより、または化学的方法により、例えば、浸透圧ショック、もしくはTween−20もしくはTriton X−100などの界面活性剤を用いて、作製される。細胞可溶化液は、好ましくは、細胞溶解の前に、エンベロープウイルス産生細胞へ、1または複数のカオトロピック塩および/または極性もしくは荷電高分子を加えて、前記エンベロープウイルス産生細胞を溶解することにより作製される。カオトロピック塩および/または極性もしくは荷電高分子は、非ウイルスの物質、好ましくは細胞内もしくは細胞外物質の1もしくは複数と、ならびに/または前記ウイルスと結合する。カオトロピック塩および/または極性もしくは荷電高分子は、下流処理からの宿主細胞因子または細片とのビリオンの会合を媒介する結合部位を保護する、マスキング化合物である。好ましくは、カオトロピック塩は、任意でデキストラン硫酸および/またはポリリン酸および/またはポリビニルピロリドンと組み合わせた、NaBrおよび/またはKClおよび/または尿素である。好ましくは、カオトロピック塩および/または極性もしくは荷電高分子の濃度は、ウイルスが実質的に無傷および/または感染性のままであるような濃度である。実質的に無傷とは、血清、好ましくはヒト血清におけるウイルスの半減期が、カオトロピック塩および/または極性もしくは荷電高分子で処理されていないウイルスの半減期の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%であることを意味する。より好ましくは、NaBrの濃度は、5mMから750mMの間、25mMから700mMの間、50mMから650mMの間、75mMから600mMの間、100mMから550mMの間、125mMから500mMの間、150mMから450mMの間、175mMから400mMの間、または好ましくは、200mMから350mMの間である。好ましくは、pHは、7.4〜8.0、6.0〜6.5、6.5〜6.8、6.8〜7.2、より好ましくは7.2〜7.4の範囲内である。好ましくは、KClの濃度は、1mMから750mMの間、15mMから700mMの間、30mMから650mMの間、45mMから600mMの間、60mMから550mMの間、75mMから500mMの間、90mMから450mMの間、105mMから400mMの間、または好ましくは120mMから350mMの間である。好ましくは、尿素の濃度は、0.2mMから2Mの間、5mMから1Mの間、または100mMから500mMの間である。好ましくは、デキストラン硫酸の濃度は、5mg/lから1000mg/lの間、10mg/lから800mg/lの間、または好ましくは15mg/lから600mg/lの間である。好ましくは、ポリリン酸の濃度は、0.1mMから100mMの間、0.2mMから80mMの間、または好ましくは0.3mMから60mMの間である。好ましくは、ポリビニルピロリドンの濃度は、0.2%から10%の間、1%から8%の間、2%から6%の間、3%から4%の間である。好ましくは、Tween−20および/またはオクチルフェノキシポリトキシエタノール(octylphenoxypolythoxyethanol)(IGEPAL)の濃度は、それぞれ、0.05%から0.25%の間、0.1%から0.20%の間、または好ましくは0.13%から0.17%の間である。好ましくは、pHは、7.4〜8.0、6.0〜6.5、6.5〜6.8、6.8〜7.2、より好ましくは7.2〜7.4の範囲内である。さらに、当業者には、エンベロープウイルスを含む清澄化ウイルス調製物を作製する方法が知られている。特に、エンベロープウイルスは、細胞懸濁液に含まれる細胞および/もしくは周囲の細胞培地から、または細胞可溶化液における溶解されていない細胞、細胞片、および/もしくは周囲の培地から、例えば、以下の精製前/処理前のステップ:濾過、遠心分離、凝結/沈殿、沈降、もしくは代替の分画方法、またはそれらの任意の組合せの1または複数により、分離することができる。ウイルスが、細胞から細胞培地へ放出されている場合には、例えば、細胞除去だけが必要とされる。細胞が、ウイルスを放出するために最初に溶解されなければならない場合には、ウイルス清澄化は、細胞可溶化液から始まる。この場合、エンベロープウイルスは、溶解されていない細胞および細胞片から、例えば、以下の精製前ステップ:濾過、遠心分離、凝結/沈殿、沈降、もしくは代替の分画方法、またはそれらの任意の組合せの1または複数により、分離される。
【0069】
一つの別の実施形態において、ステップ(i)におけるエンベロープウイルスを含む調製物は、エンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体と結合させる前に、以下の(処理前/精製前)ステップ:
(a)細胞溶解と、
(b)ウイルス清澄化と、
(c)ヌクレアーゼ処理と、
からなる群から選択される1または複数のステップに供せられる。
好ましくは、ステップ(i)におけるエンベロープウイルスを含む調製物は、エンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体と結合させる前に、(b)ウイルス清澄化および任意で、(c)ヌクレアーゼ処理に供せられ、または(a)細胞溶解、(b)ウイルス清澄化、および任意で、(c)ヌクレアーゼ処理に供せられる。例えば、エンベロープウイルスを含む調製物が、エンベロープウイルスを含む細胞懸濁液であり、かつウイルスが細胞から周囲の細胞培地へ放出されている場合には、ウイルス清澄化は、直接、行うことができる。エンベロープウイルスを含む調製物が、エンベロープウイルスを含む細胞懸濁液であり、かつウイルスが細胞から周囲の細胞培地へ放出されていない場合には、細胞は、まず、溶解されなければならない。その後、ウイルス清澄化を行うことができる。ウイルス清澄化ステップは、好ましくは、以下からなる群から選択される:
クロマトグラフィー、より好ましくは、膜吸着装置、
濾過、より好ましくは、デッドエンド濾過、深層濾過、膜濾過、クロスフロー濾過、ダイアフィルトレーション(DF)、限外濾過(UF)、精密濾過(MF)、または接線流深層濾過(TFDF)、
遠心分離、より好ましくは、連続流遠心分離、不連続流遠心分離、または密度勾配遠心分離、
凝結/沈殿、より好ましくは、金属塩、マクロ多孔性材料または珪質物質、例えば、珪藻土、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)などの陽イオン性ポリマー、キトサン、またはポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(pDADMAC)による凝結/沈殿、および
沈降、より好ましくは、重力による沈降。
【0070】
上記で述べられているように、本発明の方法は、例えば、純度、速度、回収率、堅牢性、および/または選択性に関する、エンベロープウイルスの精製における実際の欠点を克服する。ヌクレアーゼの添加は、ウイルス調製物において、核酸、例えば、RNAおよび/またはDNA分子の量を低減するのをさらに助け得、したがって、純度をさらに高めることができる。
【0071】
したがって、一実施形態において、エンベロープウイルスを含む調製物は、ステップ(i)の前に、ヌクレアーゼで処理される。
【0072】
調製物に含まれるエンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体と結合させる前に、調製物をさらに、沈殿させ、(例えば、密度勾配における遠心分離または濾過により)分離し、および/または別のクロマトグラフィーカラムへ負荷し得る。
【0073】
一実施形態において、混合モードクロマトグラフィー担体を、特にエンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体と結合させる前に、平衡バッファーで平衡化させる。このようにして、担体内の化学的環境は平衡化されている。混合モード担体は、適切なpH、伝導率、および/または塩の濃度を確立するように平衡化され得る。担体の平衡化は、例えば、適切な試薬を含有する平衡バッファーをカラムに流すことにより、達成される。緩衝化合物はTrisであり得る。
【0074】
この操作は、エンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体と結合させる前に、エンベロープウイルスを含む調製物を再緩衝化、濃縮、または希釈する場合、有用であり得る。例えば、エンベロープウイルスを含む調製物を、調製物をクロマトグラフィー担体へアプライする前に、クロマトグラフィー担体平衡バッファーと適合性の条件へ平衡化させることができる。調製物を、pHおよび/または塩の濃度を調整することにより平衡化させ得る。
【0075】
あるいは、ステップ(i)における混合モードクロマトグラフィー担体は、平衡化混合モードクロマトグラフィー担体であり、ステップ(i)におけるエンベロープウイルスを含む調製物を、混合モードクロマトグラフィー担体と適合性の条件へ平衡化させる。
【0076】
クロマトグラフィー担体および/またはエンベロープウイルスを含む調製物の平衡化の後、調製物に含まれるエンベロープウイルスは、クロマトグラフィー担体と結合している。調製物に含まれるエンベロープウイルスは、担体と線流速で結合することができる。
【0077】
エンベロープウイルスの混合モードクロマトグラフィー担体との結合後、結合したウイルスは、任意で、洗浄される。したがって、一実施形態において、方法は、(ステップ(ii)後)以下のステップ:
(iii)混合モードクロマトグラフィー担体を洗浄バッファーで洗浄するステップであって、前記エンベロープウイルスが前記混合モードクロマトグラフィー担体と結合したままである、ステップをさらに含む。
洗浄ステップは、1または複数の汚染物質、例えば、宿主細胞タンパク質、DNAおよび/もしくはRNA分子などの宿主細胞核酸、不完全なウイルス粒子、ならびに/または外来性ウイルスの除去および/または置換をもたらす。1回より多い洗浄ステップ、例えば、2回、3回、4回、またはそれ以上の洗浄ステップを行うことができる。
【0078】
任意の洗浄ステップ後、エンベロープウイルスは、混合モードクロマトグラフィー担体から溶出される。一実施形態において、エンベロープウイルスは、混合モードクロマトグラフィー担体から溶出バッファーで溶出される。エンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体から溶出することにより、エンベロープウイルスは精製される。
【0079】
平衡バッファー、洗浄バッファー、および溶出バッファーは、好ましくは、塩を含み、および/または規定のpHを有する。塩は、好ましくは、アルカリ塩またはアルカリ土類塩である。より好ましくは、アルカリ塩は、NaClまたはKClである。さらにより好ましくは、アルカリ塩はNaClである。より好ましくは、アルカリ土類塩はMgCl
2である。
【0080】
一つの好ましい実施形態において、ステップ(ii)における溶出は、
平衡バッファーおよび洗浄バッファーよりも高い塩濃度を有する溶出バッファー、
平衡バッファーおよび洗浄バッファーよりも高いpHを有する溶出バッファー、または、
平衡バッファーおよび洗浄バッファーよりも高い塩濃度および高いpHを有する溶出バッファー、のいずれか、を用いて達成される。
【0081】
一つの別の好ましい実施形態において、平衡バッファー、洗浄バッファー、および溶出バッファーは、塩を含み、および/または規定のpHを有し、ならびにステップ(ii)における溶出は、
平衡バッファーおよび洗浄バッファーの塩濃度と比較して、(混合モードクロマトグラフィー担体と結合したエンベロープウイルスと接触する)溶出バッファーの塩濃度を上昇させること、
平衡バッファーおよび洗浄バッファーのpHと比較して、(混合モードクロマトグラフィー担体と結合したエンベロープウイルスと接触する)溶出バッファーのpHを上昇させること、または
平衡バッファーおよび洗浄バッファーの塩濃度およびpHと比較して、(混合モードクロマトグラフィー担体と結合したエンベロープウイルスと接触する)溶出バッファーの塩濃度およびpHを上昇させること、のいずれか、を含む。
【0082】
溶出されたエンベロープウイルスは、ステップ(i)における調製物に含まれるエンベロープウイルスと比較して高度に濃縮されている。
【0083】
好ましくは、平衡バッファーは、≦0.8M NaCl、例えば、0M、≦0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、もしくは0.8M NaClを含み、および/または約7.0から約7.5の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、もしくは7.5のpHを有する。より好ましくは、平衡バッファーは、0.01Mから0.8Mの間のNaCl、0.1Mから0.8Mの間のNaCl、または0.3Mから0.6Mの間のNaClを含む。さらにより好ましくは、平衡バッファーは、0.3Mから0.6Mの間のNaClを含む。
【0084】
好ましくは、洗浄バッファーは、≦0.8M NaCl、例えば、0M、≦0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、もしくは0.8M NaClを含み、および/または約7.0から約7.5の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、もしくは7.5のpHを有する。より好ましくは、洗浄バッファーは、0.01Mから0.8Mの間のNaCl、0.1Mから0.8Mの間のNaCl、または0.3Mから0.6Mの間のNaClを含む。さらにより好ましくは、洗浄バッファーは、0.3Mから0.6Mの間のNaClを含む。
【0085】
好ましくは、溶出バッファーは、0.01Mから3.0Mの間のNaCl、例えば、0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、もしくは3.0M NaClを含み、および/または約7.0から約8.0の間、例えば、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8.0のpHを有する。より好ましくは、溶出バッファーは、0.2Mから3.0Mの間のNaClを含む。さらにより好ましくは、溶出バッファーは、0.2Mから2.0Mの間のNaCl、または0.5Mから2.0Mの間のNaClを含む。
【0086】
最も好ましくは、平衡バッファーおよび洗浄バッファーは、≦0.5M NaCl、例えば、0.5M NaClを含み、および約7.0から約7.5の間、例えば、7.2のpHを有し、ならびに溶出バッファーは、≧0.5Mから3.0Mの間のNaCl、例えば、0.5M NaClまたは2.0M NaClを含み、および約7.0から約8.0の間、例えば7.2のpHを有する。
【0087】
本特許出願の発明者らは、驚くべきことに、溶出バッファーにおけるアルギニンの存在が、ウイルス収率および純度をさらに高めることを見出した。当技術分野において、アルギニンは、エンベロープウイルスを不活性化するために用いられるため、エンベロープウイルスの高収率の回収は、極めて驚くべきことである(欧州特許第2350271号明細書)。したがって、溶出バッファーがアルギニンを含むことは特に好ましい。より好ましくは、溶出バッファーは、0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、または1.0Mのアルギニンを含む。さらにより好ましくは、溶出バッファーは、0.01Mから3.0Mの間のNaCl、例えば、0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、もしくは3.0M NaCl、および0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、もしくは1.0Mアルギニンを含み、ならびに/または7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8.0のpHを有する。
【0088】
一つの特に好ましい実施形態において、溶出バッファーは、>1.0Mから3.0Mの間のNaCl、好ましくは2.0M NaCl、例えば、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、または3.0M NaCl、および0.2Mから≦0.5Mの間のアルギニン、好ましくは0.25Mアルギニン、例えば、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5Mアルギニンを含む(高塩バッファー)。
【0089】
一つの別の特に好ましい実施形態において、溶出バッファーは、0.01Mから1.0Mの間のNaCl、好ましくは0.5M NaCl、例えば、0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M NaCl、および>0.5Mから1.0Mの間のアルギニン、好ましくは0.75Mアルギニン、例えば、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、または1.0Mアルギニンを含む(低塩バッファー)。
【0090】
上記の溶出バッファーのpHは、好ましくは、7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0である。
【0091】
好ましくは、ステップ(i)におけるエンベロープウイルスを含む調製物は、混合モードクロマトグラフィー担体と結合した時、≦0.8M NaCl、例えば、0M、≦0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、もしくは0.8M NaClを含み、および/または約7.0から約7.5の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、もしくは7.5のpHを有する。前記エンベロープウイルスを含む調製物は、好ましくは、1×10
7個から1×10
12個の間の感染性ウイルス粒子(IVP)/mlを含む。
【0092】
混合モードクロマトグラフィー担体、特に疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体は、結合溶出モードで操作される。特に、エンベロープウイルスは、バッファー条件(例えば、(i)塩濃度、(ii)pH値、(iii)アルギニン濃度、(iv)塩濃度およびpH値、(v)塩およびアルギニンの濃度、(vi)pH値とアルギニン濃度、または(vii)塩濃度、pH値、およびアルギニン濃度などの塩および/またはpH値および/またはアルギニン濃度)を変化させることにより溶出される。ステップ(ii)においてエンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体から溶出することにより、混合モード溶出液が形成される。
【0093】
溶出液は、ウイルス製剤バッファーと直接、混合され得、またはウイルス製剤用にウイルスを調製するために1もしくは複数の処理後/精製後ステップに供され得る。
【0094】
一実施形態において、溶出液は、以下の(処理後/精製後)ステップからなる群から選択される1または複数のステップにさらに供せられる:
(a)濾過、好ましくは、デッドエンド濾過、深層濾過、膜濾過、クロスフロー濾過、ダイアフィルトレーション(DF)、限外濾過(UF)、精密濾過(MF)、または接線流深層濾過(TFDF)、
(b)クロマトグラフィー、好ましくは、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、擬アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、または膜吸着装置、および、
(c)ヌクレアーゼ処理。
【0095】
一つの好ましい実施形態において、混合モード溶出液は、ヌクレアーゼで処理される。この場合、ヌクレアーゼは、好ましくは、バッファー交換なしに、溶出液に直接加えられる。好ましくは、ヌクレアーゼは、SAN High Quality(商標)(ArcticZymes)などの塩活性ヌクレアーゼである。ヌクレアーゼ処理は、≧1.0M NaCl、例えば、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、または3.0M NaClを含有する溶液/懸濁液において実施され得る。ヌクレアーゼは、RNAおよび/またはDNA分子などの細胞核酸を消化するために用いられ、したがって、エンベロープウイルス精製に寄与する。ヌクレアーゼは、≦1.0M NaClの記載された範囲外で、すなわち、>1.0M NaClで有効であることは、本発明者らにとって驚くべきことであった。推奨される塩濃度は、通常、0.5M NaClであり、1.0M NaClにおいていくらかの活性が保存される。ヌクレアーゼは、驚くべきことに、≦1.0M NaClおよび>0.5Mアルギニンを含有する溶出液/溶液/バッファーにおいても有効であった。
【0096】
したがって、一つの好ましい実施形態において、ヌクレアーゼは、>1.0Mから3.0Mの間のNaCl、好ましくは2.0M NaCl、例えば、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、または3.0M NaCl、および0.2Mから≦0.5Mの間のアルギニン、好ましくは0.25Mアルギニン、例えば、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5Mアルギニンを含む溶出液に加えられる。
【0097】
一つの別の好ましい実施形態において、ヌクレアーゼは、0.01Mから1.0Mの間のNaCl、好ましくは0.5M NaCl、例えば、0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M NaCl、および>0.5Mから1.0Mの間のアルギニン、好ましくは0.75Mアルギニン、例えば、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、または1.0Mアルギニン(低塩バッファー)を含む溶出液に加えられる。
【0098】
上記の溶出液のpHは、好ましくは、7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0である。
【0099】
ヌクレアーゼ処理が、例えばバッファー交換後、アルギニンを含む溶液/バッファーにおいて実施されることもまた好ましい。より好ましくは、溶液/バッファーは、0.2Mと1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、または1.0Mアルギニンを含む。さらにより好ましくは、溶液/バッファーはまた、0.01Mから3.0Mの間のNaCl、例えば、0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、もしくは3.0M NaCl、および0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、もしくは1.0Mアルギニンを含み、ならびに/または7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8.0のpHを有する。
【0100】
好ましくは、ヌクレアーゼは、その後、例えば、クロマトグラフィーにより、より好ましくは、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、擬アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、もしくは膜吸着装置により、および/または濾過により、より好ましくは、デッドエンド濾過、深層濾過、膜濾過、クロスフロー濾過、ダイアフィルトレーション(DF)、限外濾過(UF)、精密濾過(MF)、もしくは接線流深層濾過(TFDF)により、溶出液から除去される。
【0101】
一実施形態において、混合モード溶出液は、製剤バッファーと混合される。最終濾過ステップは、その後、行われ得る(
図1参照)。
【0102】
上記で述べられているように、エンベロープウイルスは、ステップ(i)において混合モードクロマトグラフィー担体と結合する。混合モードクロマトグラフィー担体は、疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体である。エンベロープウイルスを含む調製物の精製のための疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体の使用は、規制機関の厳格なガイドラインを満たす、高純度、高効力、および高品質を有するエンベロープウイルスを得ることを可能にする。一実施形態において、疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体は、疎水性陽イオン交換クロマトグラフィー担体または疎水性陰イオン交換クロマトグラフィー担体、好ましくは疎水性陽イオン交換クロマトグラフィー担体である。好ましくは、疎水性陽イオン交換クロマトグラフィー担体は、少なくとも1つの疎水性部分および少なくとも1つの酸性部分を含むリガンドを含む。より好ましくは、疎水性部分は、フェニル環もしくは脂肪族炭化水素鎖であり、および/または酸性部分はカルボキシル基である。さらにより好ましくは、リガンドは、p−アミノ馬尿酸である。担体は、好ましくは、カラムに充填されている。担体はまた、膜または樹脂であり得る。疎水性陽イオン交換担体の市販の例には、Capto MMC(商標)(GE Healthcareから入手できる)およびNuvia(商標)cPrime(商標)(Bio−Radから入手できる)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0103】
エンベロープウイルスを精製するための例示的な方法は、以下のステップ:
(i)任意として、細胞溶解と、
(ii)ウイルス清澄化、例えば、濾過または遠心分離と、
(iii)疎水性イオン交換クロマトグラフィー(例えば、結合ステップ、任意で洗浄ステップ、および溶出ステップによる)と、
(iv)任意として、ヌクレアーゼ処理、および、例えばクロマトグラフィーまたは接線流濾過(TFF)による、その後のヌクレアーゼ除去と、を有することとしてもよい。
【0104】
特に、エンベロープウイルスの精製方法は以下のステップ:
(i)細胞溶解と、
(ii)ウイルス清澄化、例えば、濾過または遠心分離と、
(iii)疎水性イオン交換クロマトグラフィー(例えば、結合ステップ、任意で洗浄ステップ、および溶出ステップによる)と、
(iv)ヌクレアーゼ処理、および、例えばクロマトグラフィーまたは接線流濾過(TFF)による、その後のヌクレアーゼ除去と、を有することとしてもよい。
【0105】
一つの好ましい実施形態において、エンベロープウイルスの精製方法は、以下のステップ:
(i)調製物に含まれるエンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体と結合させるステップであって、前記混合モードクロマトグラフィー担体が疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体である、ステップと、
(ii)前記エンベロープウイルスを前記混合モードクロマトグラフィー担体から、>1.0Mから3.0Mの間のNaCl、好ましくは2.0M NaCl、例えば、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、または3.0M NaClを含む溶出バッファー(高塩バッファー)で溶出し、それにより、溶出液を形成するステップと、
(iii)任意で、前記溶出液にヌクレアーゼを加えるステップと、を含むこととしてもよい。
【0106】
一つのより好ましい実施形態において、エンベロープウイルスの精製方法は、以下のステップ:
(i)調製物に含まれるエンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体と結合させるステップであって、前記混合モードクロマトグラフィー担体が疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体である、ステップと、
(ii)前記エンベロープウイルスを前記混合モードクロマトグラフィー担体から、>1.0Mから3.0Mの間のNaCl、好ましくは2.0M NaCl、例えば、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、または3.0M NaCl、および0.2Mから≦0.5Mの間のアルギニン、好ましくは0.25Mアルギニン、例えば、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5Mアルギニンを含む溶出バッファー(高塩バッファー)で溶出し、それにより、溶出液を形成するステップと、
(iii)任意で、前記溶出液にヌクレアーゼを加えるステップと、を含むこととしてもよい。
【0107】
一つのさらにより好ましい実施形態において、エンベロープウイルスの精製方法は、以下のステップ:
(i)調製物に含まれるエンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体と結合させるステップであって、前記混合モードクロマトグラフィー担体が疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体である、ステップと、
(ii)前記エンベロープウイルスを前記混合モードクロマトグラフィー担体から、0.01Mから1.0Mの間のNaCl、好ましくは0.5M NaCl、例えば、0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M NaCl、および>0.5Mから1.0Mの間のアルギニン、好ましくは0.75Mアルギニン、例えば、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、または1.0Mアルギニンを含む溶出バッファー(低塩バッファー)で溶出し、それにより、溶出液を形成するステップと、
(iii)任意で、前記溶出液にヌクレアーゼを加えるステップと、を含むこととしてもよい。
【0108】
好ましくは、ヌクレアーゼは、その後、例えば、クロマトグラフィーにより、より好ましくは、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、擬アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、もしくは膜吸着装置により、および/または濾過により、より好ましくは、デッドエンド濾過、深層濾過、膜濾過、クロスフロー濾過、ダイアフィルトレーション(DF)、限外濾過(UF)、精密濾過(MF)、もしくは接線流深層濾過(TFDF)により、溶出液から除去される。
【0109】
エンベロープウイルスが、生エンベロープウイルス、弱毒化エンベロープウイルス、または複製欠損エンベロープウイルスであることは、好ましい。エンベロープウイルスが、野生型エンベロープウイルス、組換えエンベロープウイルス、または改変エンベロープウイルスであることは、(代替としてまたは追加として)好ましい。エンベロープウイルスが、マイナス鎖一本鎖RNA((−)ssRNA)ウイルス、プラス鎖一本鎖RNA((+)ssRNA)ウイルス、二本鎖DNA(dsDNA)ウイルス、または逆転写ウイルスであることは、より好ましい。マイナス鎖一本鎖RNA((−)ssRNA)ウイルスが、Orthomyxoviridae科、Paramyxoviridae科、Arenaviridae科、Bornaviridae科、Bunyaviridae科、Filoviridae科、もしくはRhabdoviridae科のウイルス、もしくはD型肝炎ウイルスであり、プラス鎖一本鎖RNA((+)ssRNA)ウイルスが、Flaviviridae科、Coronaviridae科、もしくはTogaviridae科のウイルスであり、二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスが、Poxviridae科、Herpesviridae科、もしくはHepadnaviridae科のウイルスであり、または逆転写ウイルスが、Retroviridae科のウイルスであることは、さらにより好ましい。Orthomyxoviridae科のウイルスが、A型インフルエンザウイルス(influenza A virus)、B型インフルエンザウイルス(influenza B virus)、C型インフルエンザウイルス(influenza C virus)、イサウイルス(Isavirus)、クアランジャウイルス(Quaranjavirus)、およびトゴトウイルス(Thogotovirus)からなる群から選択され、Paramyxoviridae科のウイルスが、ニューカッスル病(ND)ウイルス(Newcastle disease virus)、センダイウイルス(Sendai virus)、麻疹ウイルス(measles virus)、ヘンドラウイルス(Hendra virus)、およびニパウイルス(Nipah virus)からなる群から選択され、Flaviviridae科のウイルスが、フラビウイルス(Flavivirus)、ペギウイルス(Pegivirus)、およびペスチウイルス(Pestivirus)からなる群から選択され、Coronaviridae科のウイルスが、ブタ流行性下痢ウイルス(porcine epidemic diarrhea virus)(PEDV)であり、Retroviridae科のウイルスが、アルファ、ベータ、ガンマ、もしくはデルタレトロウイルス(retrovirus)、レンチウイルス(lentivirus)、またはスプマウイルス(spumavirus)であり、またはPoxviridae科のウイルスが、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)、好ましくは、改変ワクシニアアンカラ(Modified Vaccinia Ankara)(MVA)ウイルス、より好ましくは組換え改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスであることが最も好ましい。好ましい実施形態において、エンベロープウイルスは、改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスである(実施例参照)。
【0110】
エンベロープウイルスが異種性核酸配列をさらに含むことは特に好ましい。前記異種性核酸配列は、好ましくは、抗原、特に抗原のエピトープ、診断用化合物、および治療用化合物をコードする配列からなる群から選択される。
【0111】
第2の態様において、本発明は、第1の態様の方法により得られるエンベロープウイルスまたは複数のエンベロープウイルスに関する。エンベロープウイルスは、好ましくは、汚染物質、例えば、ウイルス物質(望まれる(無傷の)ウイルスを除く)、非ウイルスの細胞内物質、および/または非ウイルスの細胞外物質を実質的に含まない。ウイルス物質は、好ましくは、不完全なウイルス粒子および外来性ウイルスからなる群から選択され、非ウイルスの細胞内物質は、好ましくは、細胞、細胞片、細胞レムナント、細胞タンパク質、細胞脂質、および細胞核酸からなる群から選択され、ならびに/または非ウイルスの細胞外物質は、好ましくは、(細胞培養およびウイルス産生に用いられる)培地添加物である。特に、エンベロープウイルスまたは複数のエンベロープウイルスは、≦40ngの核酸/用量、例えば、0ng、≦0.1ng、0.2ng、0.3ng、0.4ng、0.5ng、0.6ng、0.7ng、0.8ng、0.9ng、1ng、2ng、3ng、4ng、5ng、6ng、7ng、8ng、9ng、10ng、11ng、12ng、13ng、14ng、15ng、16ng、17ng、18ng、19ng、20ng、21ng、22ng、23ng、24ng、25ng、26ng、27ng、28ng、29ng、30ng、31ng、32ng、33ng、34ng、35ng、36ng、37ng、38ng、39ng、または40ngの核酸/用量を含む。核酸は、DNAおよび/またはRNA分子であり得る。エンベロープウイルスまたは複数のエンベロープウイルスは、製剤バッファーに含まれ得る。
【0112】
第3の態様において、本発明は、医薬での使用のための第2の態様のエンベロープウイルスまたは複数のエンベロープウイルスに関する。
【0113】
第2の態様のエンベロープウイルスまたは複数のエンベロープウイルスを遺伝子治療のために、例えば、治療用遺伝子を導入するために、または内因性遺伝子を改変もしくは矯正するために、用いることは好ましい。治療用遺伝子は、哺乳類、例えば、ヒトへ導入され得、または内因性遺伝子は、哺乳類、例えば、ヒトの内部で改変もしくは矯正され得る。
【0114】
第2の態様のエンベロープウイルスまたは複数のエンベロープウイルスをワクチンとして/ワクチン接種のために、特に、例えばヒトなどの哺乳類において、免疫応答を誘導するために、用いることもまた好ましい。
【0115】
第2の態様のエンベロープウイルスまたは複数のエンベロープウイルスを、疾患、例えば、遺伝性もしくは後天性疾患、感染症、または癌を予防または処置するために用いることはさらに好ましい。
【0116】
第4の態様において、本発明は、アルギニンを含む溶出バッファーに関する。好ましくは、溶出バッファーは、0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、または1.0Mアルギニンを含む。特に、溶出バッファーは、7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0のpHを有する。より好ましくは、溶出バッファーは、0.01Mから3.0Mの間のNaCl、例えば、0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、もしくは3.0M NaCl、および0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.1M、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、もしくは1.0Mアルギニンを含み、ならびに/または7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8.0のpHを有する。さらなる好ましい範囲について、本発明の第1の態様が参照される。
【0117】
第5の態様において、本発明は、エンベロープウイルスを溶出するための、アルギニンを含むバッファーの使用に関する。好ましくは、溶出バッファーは、0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、または1.0Mアルギニンを含む。特に、溶出バッファーは、7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0のpHを有する。より好ましくは、溶出バッファーは、0.01Mから3.0Mの間のNaCl、例えば、0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、もしくは3.0M NaCl、および0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.1M、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、もしくは1.0Mアルギニンを含み、ならびに/または7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8.0のpHを有する。さらなる好ましい範囲について、本発明の第1の態様が参照される。
【0118】
さらなる態様において、本発明は、エンベロープウイルスを精製するための、アルギニンおよびヌクレアーゼの使用、またはヌクレアーゼと組み合わせてのアルギニンの使用に関する。アルギニンは、好ましくは、バッファーに含まれる。特に、バッファーは、0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、または1.0Mアルギニンを含む。特に、バッファーは、7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0のpHを有する。より好ましくは、バッファーは、0.01Mから3.0Mの間のNaCl、例えば、0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、もしくは3.0M NaCl、および0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.1M、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、もしくは1.0Mアルギニンを含み、ならびに/または7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8.0のpHを有する。さらなる好ましい範囲について、本発明の第1の態様が参照される。ヌクレアーゼに関して、それもまた、本発明の第1の態様が参照される。
【0119】
第6の態様において、本発明は、以下:
(i)疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体である、混合モードクロマトグラフィー担体と、
(ii)以下のバッファーのうちの1または複数:平衡バッファー、洗浄バッファー、および溶出バッファーと、
(iii)任意で、ヌクレアーゼと、を含む、エンベロープウイルスを精製するためのキットに関する。
一実施形態において、キットは、平衡バッファー、洗浄バッファー、および溶出バッファーを含む。一つの好ましい実施形態において、キットは、溶出バッファー、ならびに任意で、平衡バッファーおよび/または洗浄バッファーを含む。好ましくは、溶出バッファーはアルギニンを含む。より好ましくは、溶出バッファーは、0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、または1.0Mのアルギニンを含む。特に、溶出バッファーは、7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8.0のpHを有する。さらにより好ましくは、溶出バッファーは、0.01Mから3.0Mの間のNaCl、例えば、0.01M、0.05M、0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.5M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2.0M、2.1M、2.2M、2.3M、2.4M、2.5M、2.6M、2.7M、2.8M、2.9M、もしくは3.0M NaCl、および0.2Mから1.0Mの間のアルギニン、例えば、0.1M、0.2M、0.25M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.75M、0.8M、0.9M、もしくは1.0Mアルギニンを含み、ならびに/または7.0から8.0の間、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8.0のpHを有する。さらなる好ましい範囲について、本発明の第1の態様が参照される。一つのより好ましい実施形態において、キットは、ヌクレアーゼをさらに含む。任意で存在するヌクレアーゼに関して、それもまた、本発明の第1の態様が参照される。キットは、エンベロープウイルスを精製するのに有用である。特に、キットは、第1の態様による方法を行うのに有用である。キットは、エンベロープウイルス精製を行う方法に関する使用説明書(例えば、CD−ROMまたはDVDなどのデータ記憶媒体における)、および包装材料をさらに含み得る。
【0120】
本発明は、以下の通り、要約される:
1.(i)調製物に含まれるエンベロープウイルスを混合モードクロマトグラフィー担体と結合させるステップと、
(ii)前記エンベロープウイルスを前記混合モードクロマトグラフィー担体から溶出するステップと、を含み、
前記混合モードクロマトグラフィー担体が、疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体である、エンベロープウイルスの精製方法。
2.ステップ(i)における前記エンベロープウイルスを含む調製物が、前記エンベロープウイルスを前記混合モードクロマトグラフィー担体と結合させる前に、以下のステップ:
(a)細胞溶解と、
(b)ウイルス清澄化と、
(c)ヌクレアーゼ処理と、
からなる群から選択される1または複数のステップに供せられる、項目1に記載の方法。
3.前記ウイルス清澄化ステップが、クロマトグラフィー、濾過、遠心分離、凝結/沈殿、および沈降からなる群から選択される、項目2に記載の方法。
4.前記混合モードクロマトグラフィー担体が平衡バッファーで平衡化されている、項目1〜3のいずれか一項目に記載の方法。
5.(iii)前記混合モードクロマトグラフィー担体を洗浄バッファーで洗浄するステップであって、前記エンベロープウイルスが前記混合モードクロマトグラフィー担体と結合したままである、ステップをさらに含む、項目1〜4のいずれか一項目に記載の方法。
6.前記エンベロープウイルスが、前記混合モードクロマトグラフィー担体から溶出バッファーで溶出される、項目1〜5のいずれか一項目に記載の方法。
7.ステップ(ii)における前記溶出が、
前記平衡バッファーおよび前記洗浄バッファーよりも高い塩濃度を有する溶出バッファー、
前記平衡バッファーおよび前記洗浄バッファーよりも高いpHを有する溶出バッファー、または
前記平衡バッファーおよび前記洗浄バッファーよりも高い塩濃度および高いpHを有する溶出バッファー、
のいずれかを用いて達成される、項目4〜6のいずれか一項目に記載の方法。
8.前記平衡バッファー、前記洗浄バッファー、および前記溶出バッファーが、塩を含み、および/または規定のpHを有し、ならびにステップ(ii)における前記溶出が、
前記平衡バッファーおよび前記洗浄バッファーの塩濃度と比較して、前記溶出バッファーの塩濃度を上昇させること、
前記平衡バッファーおよび前記洗浄バッファーのpHと比較して、前記溶出バッファーのpHを上昇させること、または
前記平衡バッファーおよび前記洗浄バッファーの塩濃度およびpHと比較して、前記溶出バッファーの塩濃度およびpHを上昇させること、
のいずれかを含む、項目4〜6のいずれか一項目に記載の方法。
9.前記平衡バッファーが、≦0.8M NaClを含み、および/または7.0から7.5の間のpHを有する、項目4〜8のいずれか一項目に記載の方法。
10.前記洗浄バッファーが、≦0.8M NaClを含み、および/または7.0から7.5の間のpHを有する、項目5〜9のいずれか一項目に記載の方法。
11.前記溶出バッファーが、0.2Mから3.0Mの間のNaClを含み、および/または7.0から8.0の間のpHを有する、項目6または10のいずれか一項目に記載の方法。
12.前記平衡バッファーおよび前記洗浄バッファーが、≦0.5M NaCl、好ましくは0.5M NaClを含み、および7.0から7.5の間、好ましくは7.2のpHを有し、ならびに前記溶出バッファーが、≧0.5Mから3.0Mの間のNaCl、好ましくは2.0M NaClを含み、および7.0から8.0の間、好ましくは7.2のpHを有する、項目4〜11のいずれか一項目に記載の方法。
13.前記溶出バッファーがアルギニンを含む、項目6〜12のいずれか一項目に記載の方法。
14.前記溶出バッファーが、0.2Mから1.0Mの間のアルギニンを含む、項目13に記載の方法。
15.前記溶出バッファーが、0.2Mから3.0Mの間のNaCl、および0.2Mから1.0Mの間のアルギニンを含み、ならびに/または7.0から8.0の間のpHを有する、項目13または14に記載の方法。
16.ステップ(i)における前記エンベロープウイルスを含む調製物が、前記混合モードクロマトグラフィー担体と結合する時、≦0.8M NaClを含み、および/または7.0から7.5の間のpHを有する、項目1〜15のいずれか一項目に記載の方法。
17.ステップ(ii)において前記エンベロープウイルスを前記混合モードクロマトグラフィー担体から溶出することにより、混合モード溶出液が形成される、項目1〜16のいずれか一項目に記載の方法。
18.前記溶出液が、以下のステップ:
(a)濾過と、
(b)クロマトグラフィーと、
(c)ヌクレアーゼ処理と、
からなる群から選択される1または複数のステップにさらに供せられる、項目17に記載の方法。
19.前記混合モード溶出液がヌクレアーゼで処理される、項目17または18に記載の方法。
20.前記ヌクレアーゼが、その後、クロマトグラフィー、好ましくはサイズ排除クロマトグラフィー、および/または濾過、好ましくは、接線流濾過(TFF)、限外濾過(UF)、ダイアフィルトレーション(DF)、ゲル濾過、もしくはゲル濾過と接線流濾過(TFF)の組合せにより、前記溶出液から除去される、項目18または19に記載の方法。
21.前記混合モード溶出液が製剤バッファーと混合される、項目17〜20のいずれか一項目に記載の方法。
22.前記疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体が、疎水性陽イオン交換クロマトグラフィー担体または疎水性陰イオン交換クロマトグラフィー担体、好ましくは疎水性陽イオン交換クロマトグラフィー担体である、項目1〜21のいずれか一項目に記載の方法。
23.前記疎水性陽イオン交換クロマトグラフィー担体が、少なくとも1つの疎水性部分および少なくとも1つの酸性部分を含むリガンドを含む、項目22に記載の方法。
24.前記疎水性部分が、フェニル環もしくは脂肪族炭化水素鎖であり、および/または前記酸性部分がカルボキシル基である、項目23に記載の方法。
25.前記リガンドがp−アミノ馬尿酸である、項目23または24に記載の方法。
26.前記担体がカラムに充填されている、項目1〜25のいずれか一項目に記載の方法。
27.ステップ(i)における前記エンベロープウイルスを含む調製物が、ウイルス物質、非ウイルスの細胞内物質、および/または非ウイルスの細胞外物質からなる群から選択される1または複数の汚染物質を含む、項目1〜26のいずれか一項目に記載の方法。
28.前記ウイルス物質が、不完全なウイルス粒子および外来性ウイルスからなる群から選択され、前記非ウイルスの細胞内物質が、細胞、細胞片、細胞レムナント、細胞タンパク質、細胞脂質、および細胞核酸からなる群から選択され、ならびに/または前記非ウイルスの細胞外物質が、(細胞培養およびウイルス産生に用いられる)培地添加物である、項目27に記載の方法。
29.前記エンベロープウイルスが、生エンベロープウイルス、弱毒化エンベロープウイルス、または複製欠損エンベロープウイルスである、項目1〜28のいずれか一項目に記載の方法。
30.前記エンベロープウイルスが、野生型エンベロープウイルス、組換えエンベロープウイルス、または改変エンベロープウイルスである、項目1〜29のいずれか一項目に記載の方法。
31.前記エンベロープウイルスが、マイナス鎖一本鎖RNA((−)ssRNA)ウイルス、プラス鎖一本鎖RNA((+)ssRNA)ウイルス、二本鎖DNA(dsDNA)ウイルス、または逆転写ウイルスである、項目1〜30のいずれか一項目に記載の方法。
32.前記マイナス鎖一本鎖RNA((−)ssRNA)ウイルスが、Orthomyxoviridae科、Paramyxoviridae科、Arenaviridae科、Bornaviridae科、Bunyaviridae科、Filoviridae科、もしくはRhabdoviridae科のウイルス、もしくはD型肝炎ウイルスであり、プラス鎖一本鎖RNA((+)ssRNA)ウイルスが、Flaviviridae科、Coronaviridae科、もしくはTogaviridae科のウイルスであり、二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスが、Poxviridae科、Herpesviridae科、もしくはHepadnaviridae科のウイルスであり、または逆転写ウイルスが、Retroviridae科のウイルスである、項目31に記載の方法。
33.前記Orthomyxoviridae科のウイルスが、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、イサウイルス、クアランジャウイルス、およびトゴトウイルスからなる群から選択され、前記Paramyxoviridae科のウイルスが、ニューカッスル病(ND)ウイルス、センダイウイルス、麻疹ウイルス、ヘンドラウイルス、およびニパウイルスからなる群から選択され、前記Flaviviridae科のウイルスが、フラビウイルス、ペギウイルス、およびペスチウイルスからなる群から選択され、前記Coronaviridae科のウイルスが、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)であり、前記Retroviridae科のウイルスが、アルファ、ベータ、ガンマ、もしくはデルタレトロウイルス、レンチウイルス、またはスプマウイルスであり、または前記Poxviridae科のウイルスが、ワクシニアウイルス、好ましくは、改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルスである、項目32に記載の方法。
34.前記エンベロープウイルスが異種性核酸配列をさらに含む、項目1〜33のいずれか一項目に記載の方法。
35.前記異種性核酸配列が、抗原、特に抗原のエピトープ、診断用化合物、および治療用化合物をコードする配列からなる群から選択される、項目34に記載の方法。
36.項目1〜35のいずれか一項目に記載の方法により得られるエンベロープウイルスまたは複数のエンベロープウイルス。
37.医薬での使用のための項目36に記載のエンベロープウイルスまたは複数のエンベロープウイルス。
38.アルギニンを含む溶出バッファー。
39.エンベロープウイルスを溶出するための、アルギニンを含むバッファーの使用。
40.以下を含む、エンベロープウイルスを精製するためのキット:
(i)疎水性イオン交換クロマトグラフィー担体である、混合モードクロマトグラフィー担体、
(ii)以下のバッファーのうちの1または複数が、:平衡バッファー、洗浄バッファー、および溶出バッファー、ならびに
(iii)任意で、ヌクレアーゼ。
41.前記溶出バッファーがアルギニンを含む、項目40に記載のキット。
42.エンベロープウイルスを精製するのに有用である、項目40または41に記載のキット。
43.エンベロープウイルス精製を行う方法に関する使用説明書を含む、項目40〜42のいずれか一項目に記載のキット。
【0121】
本発明の様々な改変およびバリエーションは、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、主張されている本発明が、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、当業者に明白である、本発明を実行するための記載されたモードの様々な改変は、本発明により網羅されることを意図される。
【実施例】
【0122】
下記に示された実施例は、例証のみを目的とし、上記の発明を決して限定するものではない。
【0123】
実施例1
改変ワクシニアアンカラ(MVA)ウイルス産生
親MVA−CR19クローン(米国特許第9732325号明細書)の蛍光バージョンである、MVA−CR19.gfpを、成長培地中で培養されたAGE1.CR.pIX細胞(Jordan I,Vos A,Beilfuss S,Neubert A,Breul S,Sandig V.An avian cell line designed for production of highly attenuated viruses.Vaccine.2009;7:748−756)において2×10
6個の細胞/mlの生細胞密度まで産生させた。ウイルス産生について、ウイルス伝播を支持する細胞凝集物を誘導するために、成長培地CD−U4(GE Healthcare、USA)の50%をCD−VP4培地(Gibco、USA)へ置き換えた。細胞に0.005の感染効率(MOI)で感染させ、収集前に最長3日間、培養した。細胞を培養上清から分離せずに、超音波を用いて直接、溶解した。このプロセスにおいて10
9/mlまたはそれ以上の力価が定期的に得られた。
【0124】
実施例2
MVAウイルス滴定(TCID50、qTCID50)
MVAのウイルス滴定を、TCID50およびqTCID50の両方の方法について接着性AGE1.CR.pIXにおいて実施した。TCID50(組織培養感染用量50(Tissue Culture Infection Dose 50))アッセイについて、96ウェルプレートに、5% FCSを含有するDMEM/F12(Gibco、USA)中2.5×10
5個の細胞/mlを播種してから24時間後、段階ウイルス希釈物を感染させた。評価は、37℃でのインキュベーションから48時間後であり、ReedおよびMuench(Reed LJ,Muench H.A simple method of estimating fifty per cent endpoints.Am J Hyg 1938;27:493−497)に従って計算した。さらに、MVAについてのqTCID50、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)による力価決定法を開発し、確立した。TCID50と同様に、細胞プレートに、10
−2〜10
−6希釈された規定標準を感染させ、その試料を10
−3希釈した。6時間のインキュベーション後、培地を除去し、ウェルをPBSで洗浄した。細胞溶解について、ウェルあたり50μlのQuickExtract DNA Extraction Solution 1.0(Epicentre、USA)を用い、プレートを65℃まで15分間加熱し、その後、95℃で5分間のインキュベーションステップを行った。100μl WFIを加えた後、試料を、qPCRに用いた。プライマーペアMVA128L 5’−CGTTTTGCATCATACCTCCATCTT−3’(配列番号1)および5’−GCGGGTGCTGGAGTGCTT−3’(配列番号2)(TIB MolBiol、Germany)、Power SYBR Green PCR Master Mix(Thermo Fisher Scientific、USA)、およびWFIを含有する最終マスターミックスの15μlへ5μlプローブをそれぞれ加えた。非鋳型対照(NTC)についてWFIを用いた。qPCRを、95℃で10分間、続いて、95℃で15秒間の変性およびアニーリングおよび60℃で1分間のDNA増幅の40サイクルをプログラムされたStepOnePlus RealTime PCR System(Applied Biosystems、USA)において実施した。評価は、ct値およびMVA標準の力価に基づいた。
【0125】
実施例3
混合モードクロマトグラフィーによるMVAウイルス精製
収集時点において、ウイルスの一部は、上清に見出すことができるが、ウイルスの大部分は細胞の内部に留まっている。上清におけるウイルス画分はMVA−CR19についてより高い(米国特許第9732325号明細書)が、それでも細胞内画分は重要であり、好ましくは、プロセスへ細胞溶解を含める。細胞内MVAウイルスの放出のために、産生培地中の細胞を、カオトロピック塩(250mM NaBr、250mM NaCl、および/または150mM KCl、米国特許第9273289号明細書参照)とインキュベートして、ウイルス粒子から宿主細胞DNAを脱離させ、超音波(振幅10%、45秒間)を用いて溶解した。可溶化液の一次クリアランスを、プレフィルター(Sartopure、Sartorius、Germany)で実施して、次の精製ステップにおいて困難を引き起こし得る細胞片およびより大きい粒子を除去した(
図1)。この段階後すでに、宿主細胞DNAを低減するためにヌクレアーゼ処理を適用することができる。しかしながら、ヌクレアーゼで処理された可溶化液において沈殿物が観察され、クロマトグラフィーへの前提条件として追加の濾過ステップを必要とした。このステップは、ウイルスの50%より多く、時には80%も除去した。さらに、クリアランスされた可溶化液の高体積において、ヌクレアーゼ処理は経済的ではない。したがって、ヌクレアーゼ処理をこの段階で実施して、次のステップにおいてヌクレアーゼの除去を容易にすることができるが、この段階でヌクレアーゼ処理を省き、代わりに、ヌクレアーゼ処理をクロマトグラフィー後に実施することが好ましい。ウイルス精製の中心的構成要素は、収集体積の低減、ウイルスの濃縮、および下流精製初期における主要な汚染物質の除去を並行して可能にする効率的な捕獲ステップである。混合モード担体は、それらの様々な結合相互作用モードにより、不均質な構造、脂質およびタンパク質組成、加えて、不均一な表面電荷を有するエンベロープウイルスに特に適していると予測された。さらに、混合モード担体は、プラットフォームステップとして様々なウイルスに適用可能であると考えられた。しかしながら、混合モード担体と結合しかつこれから溶出する典型的な条件は、脆弱なエンベロープウイルスの不活性化を引き起こし得る。ラージスケール産生に適合した混合モード担体は、最近、様々な販売会社を通して商業的に入手可能になってきたが、エンベロープウイルスに用いられたことはない。異なる混合モードリガンドをスクリーニングすることにより、生存可能なウイルスと適合した条件下でいくつかのリガンドについてのMVAの捕獲を、実際、観察した。適用された条件下(pH7.2±0.2、55mS/cm)でフロースルー画分における感染単位の実質的な低下により判断された場合、最も効率的な捕獲は、混合モード陽イオン交換器Capto MMC(商標)(GE Healthcareから入手できる)およびNuvia(商標)cPrime(商標)(Bio−Radから入手できる)で効率的に達成された(
図2)。好ましいプロセスについて、50mM Tris、0.5M NaCl、pH7.2と平衡化した樹脂(Nuvia cPrime、Biorad、Germany)の1mlあたり5×10
9個の感染性ウイルス粒子を負荷した。UV吸収の増加により明らかなように、汚染物質を25CVの洗浄バッファー(50mM Tris、0.5M NaCl、pH7.2)で洗い流した(
図2a)。ウイルス粒子を混合モード担体から放出させるために、溶出バッファーにおける塩濃度を増加させることを試験した。50mM Tris.HCLおよび2M NaClでの溶出は、感染性ウイルスの約24%を回収することを可能にしたが、残留の結合している材料は、CIP中に放出された(
図2b)。興味深いことに、アルギニンが溶出バッファーに加えられた場合、ウイルス回収率は、24%から約40%へ有意に向上し、それに応じて、CIPピーク面積が減少した(
図2a、b)。したがって、50mM Tris.HCL、2M NaCl、および250mMアルギニン、pH7.2を含有する溶出バッファーでウイルスを溶出することが好ましい。アルギニンのウイルスへの負の影響を考えれば、この所見は驚くべきことである。とりわけ、溶出された材料は、汚染細胞DNAの約97.5%(表1)およびタンパク質汚染物質の約98%から解放され、したがって、担体に適用された最初の材料と比較して、実質的に精製されたと言うことができる。混合モードリガンドを用いるウイルス捕獲の一貫性を、アルギニンを含有する溶出バッファーを用いる同じ混合モード担体における連続的実行により調べた。
図3に示されているように、ウイルス捕獲および溶出は、担体の延長した使用(n=10)の時でさえも、本明細書に記載された方法で再現性よく実施することができた。プロセスの堅牢性の実証以外にも、この所見は、スケールアップに必要とされるカラムサイズに大きな影響を及ぼし、本明細書に記載されたプロセスがそのような問題によって制限されないことを示唆している。
【0126】
実施例4
ヌクレアーゼ処理によるDNAの低減およびヌクレアーゼの除去
細胞DNA負担をさらに低減し、かつヒトワクチン/治療薬についての必要条件を満たすために、別のクロマトグラフィーが考えられ得るが、ヌクレアーゼ処理が最も適切なステップであり得る。しかしながら、溶出液における高塩濃度は、多くのヌクレアーゼの活性と適合しない可能性がある。消化するために、全体的な収率を低下させるだろう追加のステップである、DNAバッファーをTFFによって交換して、塩濃度を低下させることができる。あるいは、SAN(Artic Enzymes、Norway)などのより高い塩濃度において活性があるヌクレアーゼが用いられ得る。このヌクレアーゼについての推奨塩濃度は、500mMであり、1Mにおいていくらかの活性が保存される。驚くべきことに、部分的に精製された材料/溶出液が50U/mlのSANで、室温において一晩、処理された時、ウイルス用量あたりDNAの150分の1への低下が見出された。消化後、ヌクレアーゼは、接線流濾過によるか、またはサイズ差によりウイルス粒子から酵素を分離するゲル濾過担体を用いることによるかのいずれかにより除去することができる。ホローファイバー(750kDa mPES、SpectrumLabs、USA)および穏やかなずり速度(500l/s)を用いる、溶出バッファーに対するダイアフィルトレーションは、ヌクレアーゼを除去し、98%のステップ収率であった。バッファーを適用のための適切な製剤へ変えるために同じステップが適用される。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例5
高いアルギニン濃度における混合モードクロマトグラフィー
事前のバッファー交換なしにヌクレアーゼ消化を促進するために溶出ステップにおいて塩濃度を低下させることは望ましい。アルギニンの添加がウイルス回収率を向上させることが観察されたため、非常に高いアルギニン濃度がNaClの代わりになり得ると推論された。可溶化液を調製し、前処理し、実施例3に記載されているように、クロマトグラフィー樹脂(Nuvia cPrime、Biorad、Germany)へアプライした。汚染物質を、25CVの洗浄バッファー(50mM Tris、0.5M NaCl、pH7.2)で洗い流した。溶出バッファーについて、アルギニン濃度を、3倍、上昇させ(0.75M)、塩濃度を、4分の1へ減少させた(0.5M)。このアプローチにより、ウイルス回収率は、約83%へさらに向上した(
図4a、b)。溶出液を、事前バッファー交換なしにヌクレアーゼ処理に供した。DNA含有量は、50U/mlのSANでの室温における一晩の処理によって500分の1未満へ、低減した。結果的に、SANヌクレアーゼは、予想通り、500mM NaClにおいて、より高い活性を有するが、高濃度750mMのアルギニンに対しても非感受性であった。全体的なプロセスの収率および純度は表2に記載されている。
【0129】
【表2】
【0130】
実施例6
宿主細胞DNAの定量化
少量のDNAを含む精製された試料の測定を、qPCRにより実施した。DNA抽出前に、高塩レベルを有する試料を、10
−1希釈し、規定標準10
−1〜10
−6に希釈した。5μl QuickExtract DNA抽出溶液1.0(Epicentre、USA)へ20μl試料を加え、C1000 Touch Thermal Cycler(Bio−Rad、USA)を用いて、65℃へ加熱し、15分間、インキュベートし、その後、95℃で5分間のインキュベーションステップを行った。後で、50μlのWFIを加えた。qPCR方法およびマスターミックスの組成は、プライマーペアのduPseudo2(5’−CAGGCAGGTTTCTTTAGGAAGG−3’(配列番号3)および5’−GTAGGTAGCAAGGAGGTTTAGC−3’(配列番号4))(TIB MolBiol、Germany)を除いて、qTCID50について用いられたものと同一であった。
【0131】
実施例7
ニューカッスル病ウイルス(NDV)産生
ニューカッスル病ウイルス(NDV)を、AGE1.CR.pIX細胞において産生させた。懸濁培養物を、5cmの振幅および毎分180回転の回転速度での回転プラットフォーム上の振盪インキュベーター(HT Multitron Cell、Infors AG、Bottmingen、Switzerland)において維持した。CO
2気圧を8%に、温度を37℃に設定した。全ての培養容器、振盪チューブ(Tubespin 50、TPP Techno Plastic Products AG、Switzerland)、またはバッフル付き振盪フラスコ(Corning、NY、USA)は、ガス交換を可能にするために、0.2μmフィルター付き蓋を備えた。培養物体積を、容器サイズの20〜50%に維持した。DASBox(DASGip、Eppendorf、Hamburg、Germany)バイオリアクターユニットは、3つの羽根を有するMarine羽根車および60〜250mlワーキング体積の容器を備えた。ガス混合は、N
2、空気、CO
2、およびO
2で実施され、pHはCO
2および1M Na
2CO
3で調整された。接種を、通常、1×10
6個の細胞/ml CD−U3培地へと実施し、培養物を、およそ4×10
6個の細胞/mlへ3日間、増殖させた。細胞増殖相についてのパラメータは、37℃培養温度、培地中60% DO(溶存酸素)飽和、羽根車について180rpm、および細胞増殖中、細胞培養物において7.25単位から7.00単位へ減少するpH勾配であった。pHは、通常、感染中、7.1単位に維持された。0.17ml/時間(1日あたり4ml)の供給速度が毎日、8U/ml培養体積の最終濃度を生じるように調整された活性で、組換えトリプシン(rTrypsin、Novozym 6395020)を、4℃に維持された溶液由来の感染培養物へ供給することにより、NDVウイルスの増殖がさらに支援された。インキュベーション温度は35℃に設定された。
【0132】
実施例8
混合モードクロマトグラフィーによるニューカッスル病ウイルス精製
細胞懸濁液を、3回の凍結融解サイクルに供し、MVAプロセスについて記載されているように、細胞片を濾過(Sartopure、Sartorius、Germany)により除去した。得られた材料を、混合モード陽イオン交換器(Nuvia cPrime、Biorad、Germany)を用いるクロマトグラフィーステップに供した。汚染物質を25CVの洗浄バッファーで洗い流し、結合しているウイルスを5CVの溶出バッファーで溶出し、生ウイルスを回収した。部分的に精製された材料/溶出液を、50U/mlのヌクレアーゼ(SAN、Artic Enzymes、Norway)で、室温において一晩、さらに処理した。その酵素、加えてDNA断片およびより小さい不純物を、ホローファイバーを用いる溶出バッファーに対するダイアフィルトレーションにより除去した。
【0133】
実施例9
感染単位の決定
ニューカッスル病ウイルス(NDV)の感染力価を、ベロ細胞上で決定した。2mM GlutaMAX I(Gibco)および5% ウシ胎仔血清(Biochrom)を含有するDMEM:F12培地(Gibco)中の1.5×10
6個の細胞を、CellBIND 96ウェルプレート(Corning)へ100μlの細胞懸濁液で播種した。次の日、2mM GlutaMAX Iおよび1.5μg/mlトリプシン(type IX−S、Sigma T0303)を含有するが、ウシ胎仔血清を含有しないDMEM:F12へ培地を置き換えた。NDV試料の10個ずつの段階希釈物を、血清を含まないDMEM:F12培地中に調製し、希釈物のそれぞれ10μlを、ベロ培養物へ加えた。37℃で72時間、ウイルスを複製させた。NDV複製の検出を、免疫染色により容易にした:細胞を、メタノール中、10分間、固定し、完了まで乾燥させ、0.05% Tween−20を含有するPBSで再水和させた。1%ウシ胎仔血清を含有するPBS中1:2000の希釈率でのNDV抗血清(GD Animal Health Deventer、the Netherlands)を加え、室温で1時間、インキュベートした。PBSでの2回の洗浄後、二次抗体(1μg/μlにおける抗ニワトリ、Alexa Fluor 488標識、宿主ウサギ、Dianova、303−545−003)を、1:2000の希釈率で、外界温度で2時間、または4℃で一晩、加えた。感染したウェルを、PBSでの2回の洗浄後、蛍光により同定した。TCID50値の計算を、Reedら(Reed LJ,Muench H.A simple method of estimating fifty per cent endpoints.Am J Hyg 1938;27:493−497)に従って実施した。