特表2021-529229(P2021-529229A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パフォーマンス マテリアルズ エヌエー インコーポレイテッドの特許一覧

特表2021-529229多層フィルム用の普遍的な熱可塑性接着剤
<>
  • 特表2021529229-多層フィルム用の普遍的な熱可塑性接着剤 図000008
  • 特表2021529229-多層フィルム用の普遍的な熱可塑性接着剤 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-529229(P2021-529229A)
(43)【公表日】2021年10月28日
(54)【発明の名称】多層フィルム用の普遍的な熱可塑性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/26 20060101AFI20211001BHJP
   C09J 151/06 20060101ALI20211001BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20211001BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20211001BHJP
【FI】
   C09J123/26
   C09J151/06
   C09J109/00
   C09J133/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2020-571435(P2020-571435)
(86)(22)【出願日】2019年6月26日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月9日
(86)【国際出願番号】US2019039182
(87)【国際公開番号】WO2020009854
(87)【国際公開日】20200109
(31)【優先権主張番号】18305862.7
(32)【優先日】2018年7月2日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519452389
【氏名又は名称】パフォーマンス マテリアルズ エヌエー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】オルレー、カマイユ
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマン、カルヘインツ
(72)【発明者】
【氏名】リー、イファ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040CA031
4J040DA041
4J040DA061
4J040DA131
4J040DA161
4J040DL061
4J040JA06
4J040JB01
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA04
4J040MA10
4J040MA11
4J040MB03
(57)【要約】
本開示の実施形態は、熱可塑性接着剤組成物を対象とし、少なくとも1つの無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーと、分子量分布(MWD)≧2.5を有する少なくとも1つの少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーであって、MWD=Mw/Mnであり、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量であり、これらは両方ともゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーと、0.885〜0.915グラム/cmの範囲の密度を有する超低密度ポリエチレン(VLDPE)とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性接着剤組成物であって、
少なくとも1つの無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーと、
分子量分布(MWD)≧2.5を有する少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーであって、MWD=Mw/Mnであり、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量であり、これらは両方ともゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーと、
0.885〜0.915グラム/cmの範囲の密度を有する超低密度ポリエチレン(VLDPE)とを含む、熱可塑性接着剤組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーをさらに含み、アルキル基が、1〜4個の炭素原子を含む、請求項1に記載の熱可塑性接着剤組成物。
【請求項3】
前記エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーが0.930〜0.960g/ccの密度を含む、請求項1または2に記載の熱可塑性接着剤組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性接着剤組成物が20〜40重量%のエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性接着剤組成物。
【請求項5】
前記無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーが、無水マレイン酸グラフト化直鎖状低密度ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンエラストマー、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性接着剤組成物。
【請求項6】
前記無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーが、0.900g/cc未満の密度および1〜20g/10分の間のメルトインデックス(I)を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性接着剤組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性接着剤組成物が、10〜40重量%の無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーを含む、請求項1〜6のいずれか一項に熱可塑性接着剤組成物。
【請求項8】
前記エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーのα−オレフィンがプロピレンであり、前記エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーの非共役ジエンがエチリデン−ノルボルネンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性接着剤組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性接着剤組成物が、15〜35重量%のエチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱可塑性接着剤組成物。
【請求項10】
前記VLDPEが2〜8g/10分のメルトインデックス(I)を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性接着剤組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性接着剤組成物が15〜50重量%の前記VLDPEを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱可塑性接着剤組成物。
【請求項12】
前記エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーが、示差走査熱量測定によって決定される、7〜20%の結晶化度を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱可塑性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月2日に出願された欧州特許出願第18305862.7号に対する優先権を主張し、その開示全体は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、熱可塑性接着剤組成物に関し、より具体的には、多層フィルムにおける結合層として使用される熱可塑性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
包装フィルムは、共押出システムおよびプロセスによってますます製造されている。これらのシステム自体は、常に洗練されてきている。したがって、インフレーションフィルム、キャストフィルム、射出成形、シート/ボトルなどを含む様々な共押出システムによって製造することができる多層フィルム用の材料を開発することは有利である。数年前は、押出機が3〜5層構造を共押出できるのが一般的であったが、現在では、例えばこれらの層を供給するために等しい数の押出機を使用することにより、機械が9層以上を共押出するのが通常である。
【0004】
例えば、シュリンクフィルム、シール可能フィルム、リッディングフィルム、ラッピングフィルムなどの食品包装用の多層フィルムは、様々な共押出および二配向プロセス、例えば、テンターフレームプロセス、トリプルバブルプロセス、またはダブルバブルプロセスによって製造されてもよい。Kuhne Anlagenbau GmbHによって開発されたプロセスであるTriple Bubble(登録商標)プロセスは、二軸配向の機械的支持層を個別に準備して、最終的な構造物を得るためにそれを第2の多層フィルムにラミネートする必要なしに、一回の作業において共押出二軸配向の高機能多層フィルムを製造し得る。これにより、このようなフィルムの製造プロセスが大幅に簡素化される。ただし、トリプルバブルフィルムはしばしば非常に多くの異なる層を含むので、すべての異なる層の間、例えば、ポリエチレンとポリアミドの層の間、ポリプロピレンとポリアミドの層の間、またはポリエステルとポリプロピレンの層の間、またはポリエステルとポリエチレンの層の間の接着強度を、二軸配向後に少なくとも2N/15mmの妥当な接着レベルに維持することは困難である。
【0005】
その結果、従来のトリプルバブルフィルムは、複数の別個の共押出可能な接着剤組成物(結合層とも呼ばれる)を利用し、各組成物は、互いに接着する必要がある特定のポリマー層に特に合わせて調整される。したがって、多層フィルム内の様々なポリマー層にわたって適切な接着を提供することができる普遍的な結合層配合物に対する継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、テンターフレームプロセス、ダブルバブルプロセス、またはトリプルバブルプロセスなどの共押出および二配向プロセスにおける二軸配向後に極性および非極性基板の両方に接着を提供する接着剤組成物(結合層)を提供することによって、前記ニーズに対処する。これは、トリプルバブルフィルム内の非常に多くの別個の結合層配合物の必要性を排除するか、または少なくとも低減する。
【0007】
一実施形態によれば、熱可塑性接着剤組成物が提供される。熱可塑性接着剤組成物は、少なくとも1つの無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーと、分子量分布(MWD)≧2.5を有する少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーであって、MWD=Mw/Mnであり、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量であり、これらは両方ともゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーと、0.885〜0.915グラム/cmの範囲の密度を有する超低密度ポリエチレン(VLDPE)とを含む。
【0008】
さらなる実施形態では、熱可塑性接着剤組成物の追加的な実施形態は、少なくとも1つのエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含み、ここで、アルキル基は、1〜4個の炭素原子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、これと共に含まれる図面と併せて読むと最も良好に理解することができる。
図1】本発明の結合層配合物と比較結合配合物との接着強度性能を示す棒グラフであり、各配合物は、13層のトリプルバブルフィルムにおいてポリアミド層とポリエチレン層とを接着させる。
図2】本発明の結合層配合物と比較結合配合物との接着強度性能を示す棒グラフであり、各配合物は、13層のトリプルバブルフィルムにおいてポリエステル層とポリプロピレンコポリマー層とを接着させる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
「ポリマー」という用語は、同一または異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常用いられる用語「ホモポリマー」、および2つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、総称であるインターポリマーという用語は、コポリマーと、ターポリマー等の3種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーとを含む。
【0011】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、50モル%を超える、エチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知であるポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状および実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m−LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0012】
本明細書で使用される場合、「ポリプロピレン」または「プロピレン系ポリマー」という用語は、重合形態において、プロピレンモノマーに由来する50を超えるモル単位を含むポリマーを指す。これには、プロピレンホモポリマー、ランダムコポリマーポリプロピレン、インパクトコポリマーポリプロピレン、プロピレン/α−オレフィンコポリマー、およびプロピレン/α−オレフィンコポリマーが含まれる。
【0013】
また、「LDPE」という用語は、「高圧エチレンポリマー」、または「高度分岐ポリエチレン」を指し得、ポリマーが、過酸化物(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,599,392号を参照)などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)超の圧力で、オートクレーブまたは管状反応器内で、部分的または完全にホモ重合または共重合されることを意味するように定義される。LDPE樹脂は、典型的には、0.916〜0.935g/ccの範囲の密度を有する。
【0014】
「LLDPE」という用語には、チーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製された樹脂、およびシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂が含まれ、ビスメタロセン触媒(「m−LLDPE」と称されることもある)、ホスフィンイミン、拘束幾何触媒、およびポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂が含まれるが、これらに限定されず、ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも称される)が含まれるが、これらに限定されない。LLDPEには、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均一なエチレン系コポリマーまたはホモポリマーが含まれる。LLDPEには、LDPEよりも少ない長鎖分岐が含有され、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、および米国特許第5,733,155号でさらに定義される実質的に直鎖状のエチレンポリマーと、米国特許第3,645,992号におけるものなどの均一分岐直鎖状エチレンポリマー組成物と、米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されたものなどの不均一分岐エチレンポリマーと、それらのブレンド(米国特許第3,914,342号または米国特許第5,854,045号に開示されるものなど)と、が含まれる。LLDPE樹脂は、当該技術分野で知られている任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはこれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、典型的には0.928から0.940g/ccの範囲のエチレン系ポリマー樹脂は、時には中密度ポリエチレン(「MDPE」)または直鎖状中密度ポリエチレン(LMDPE)と呼ばれることがある。0.940g/ccを超える密度を有するポリエチレンは、高密度ポリエチレン(「HDPE」)であり、一般にチーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、またはさらにはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いて調製される。
【0016】
超低密度のポリエチレン(「VLDPE」)は、様々な特性を持つポリマーを生成する様々なプロセスによって製造することができる。ただし、一般に、これらは、0.880〜0.915g/ccまたは0.900〜0.915g/ccなどの、0.916g/cc未満の密度を有する。
【0017】
「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸および/またはアクリル酸を含み、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートおよび/またはアクリレートを含む。アルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートを指す。
【0018】
「多層構造」または「多層フィルム」とは、2つ以上の層を有するあらゆる構造を意味する。例えば、多層構造(例えば、フィルム)は、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の層を有し得る。いくつかの実施形態では、多層フィルムは、13層またはそれ以上を含んでもよい。
【0019】
量、濃度、またはその他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、またはより低い好ましい値およびより高い好ましい値のリストのいずれかとして与えられる場合、範囲が別個に開示されているかどうかに関係なく、これは、あらゆるより低い範囲限界または好ましい値と、あらゆるより高い範囲限界または好ましい値とのあらゆる対から形成されたすべての範囲を具体的に開示するものと理解されるべきである。本明細書で数値の範囲が列挙されている場合、特に指示しない限り、範囲は、その端点、ならびに範囲内のすべての整数および分数を含むことを意図している。本発明の範囲は、範囲を定義するときに列挙された特定の値に限定されることを意図するものではない。ある構成要素が0から始まる範囲で存在することが示されている場合、そのような構成要素は選択的なコンポーネントである(つまり、存在しても、存在しなくてもよい)。存在する場合、選択的な構成要素は、少なくとも0.1重量%の組成物またはコポリマーであってもよい。
【0020】
材料、方法、または機械が、用語「当業者に既知の」、「従来の」、または同義の語もしくは句と共に本明細書に記載されているとき、この用語は、本出願の出願時期に従来のものである材料、方法、および機械を意味し、それらはこの記載に包含される。
【0021】
熱可塑性接着剤組成物
本開示の実施形態は、少なくとも1つの無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーと、分子量分布(MWD)≧2.50を有し、MWD=Mw/Mnである、少なくとも1つのエチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーと、0.885〜0.915g/ccの密度を有する超低密度ポリエチレン(VLDPE)とを含む、熱可塑性共押出可能な接着剤組成物を対象とする。
【0022】
無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマー
無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーは、無水マレイン酸グラフト化モノマーがグラフトされたエチレン系ポリマーである。無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーのための適切なエチレン系ポリマーは、限定されることなく、α−オレフィンを備えるポリエチレンホモポリマーおよびコポリマー、エチレンおよびビニルアセテートのコポリマー、ならびにエチレンおよび1つまたは複数のアルキル(メタ)アクリレートのコポリマーを含む。特定の実施形態では、無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーは、無水マレイン酸グラフト化直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンエラストマー、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0023】
エチレン系ポリマーがポリエチレンホモポリマーまたはエチレンと1つまたは複数のアルファオレフィンとのコポリマーである場合、エチレン系ポリマーは、直鎖状または実質的に直鎖状であってもよい。脂肪族または芳香族のいずれであってもよい適切なα−オレフィンコモノマーは、C−C20α−オレフィン、C−C16α−オレフィン、またはC−C10α−オレフィンを含んでもよい。1つまたは複数の実施形態において、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選択されたC−C10脂肪族α−オレフィンであってもよい。一実施形態では、α−オレフィンはプロピレンである。
【0024】
本明細書において使用される「実質的に直鎖状」という用語は、1000個の炭素あたり0.01の長鎖分岐から1000個の炭素あたり3の長鎖分枝までで置換されたポリマー骨格を指す。長鎖分岐はポリマー主鎖と同じコモノマー分布を有し、そしてポリマー主鎖の長さとほぼ同じ長さを有することができる。長鎖分岐の長さは、短鎖分岐の炭素長さよりも長く、短鎖分岐は、ポリマー主鎖へのα−オレフィンコモノマーの組み込みから形成される。対照的に、本明細書において使用される「直鎖状」という用語は、測定可能または実証可能な長鎖分岐を欠くポリマー骨格を指し、すなわち、1000個の炭素あたり0.01未満の長鎖分岐で置換されているポリマー骨格である。長鎖分岐の範囲は、炭素−13核磁気共鳴(13C−NMR)分光法を使用することにより決定することができ、Randallの方法(Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29(2&3),1989,p.285−297)を使用して定量化することができる。
【0025】
1つまたは複数の実施形態において、無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーは、190℃および2.16kgにおいてASTM方法D1238に従って決定される、1〜500g/10分、1〜20g/10分、1〜10g/10分、1〜5g/10分、または2〜4g/10分のメルトインデックス(I)を有してもよい。
【0026】
さらなる実施形態において、無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーは、ASTM方法番号D792−91に従って測定される、0.900g/cc未満、または0.860〜約0.900g/ccの密度を有する。その他の密度範囲は、約0.870〜約0.890g/cc、または0.875〜約0.885g/ccであってもよい。(1cc=1cm
【0027】
1つまたは複数の実施形態において、無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーは、無水マレイン酸グラフト化モノマーの無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーの総重量に基づいて、最大10重量%、最大5重量%、または1〜4重量%を含む。エチレン系ポリマーの重量パーセントは、無水マレイン酸グラフト化モノマーの量に相補的であるため、エチレン系ポリマーと無水マレイン酸グラフト化モノマーの重量パーセントの合計は100重量%である。したがって、無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーの無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーの総重量に基づいて、最大90重量%、最大95重量%、または96〜99重量%を含む。
【0028】
様々な商業的実施形態が適切であると考えられる。例えば、適切な無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーは、商標Fusabond(登録商標)機能性ポリマーとしてデュポンから市販されていてもよい。
【0029】
様々な量の無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーが、熱可塑性接着剤組成物内で適切であると考えられる。例えば、熱可塑性接着剤組成物は、10〜40重量%、15〜35重量%、15〜25重量%、または25〜35重量%の無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマーを含んでもよい。
【0030】
エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマー
エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、1つまたは複数のインターポリマーを含んでもよく、ここで、各エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、重合形態で、エチレン、α−オレフィン、および非共役ジエンを含む。特定の実施形態において、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、ターポリマーである。
【0031】
脂肪族または芳香族のいずれであってもよい適切なα−オレフィンの例は、C−C20α−オレフィン、C−C16α−オレフィン、またはC−C10α−オレフィンを含んでもよい。1つまたは複数の実施形態において、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選択されたC−C10脂肪族α−オレフィンであってもよい。一実施形態では、α−オレフィンはプロピレンである。
【0032】
非共役ジエンの適切な例は、C−C40非共役ジエンを含む。典型的な非共役ジエンは、1,4−ヘキサジエンおよび1,5−ヘプタジエンなどの直鎖非環式ジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、5,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、およびジヒドロミルセンの混合異性体などの分岐鎖非環式ジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、および1,5−シクロドデカジエンなどの単環脂環式ジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデンなどの多環脂環式縮合および架橋環ジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、および5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネンなどのアルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル、およびシクロアルキリデンノルボルネンを含む。特定の実施形態において、非共役ジエンは、好ましくは、ENB、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンからなる群から選択され、好ましくはENB、ジシクロペンタジエンおよび1,4−ヘキサジエン、より好ましくはENBおよびジシクロペンタジエン、さらにより好ましくはENBである。
【0033】
さらなる実施形態において、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、具体的には、エチレン、プロピレンおよびENBのターポリマー生成物である。
【0034】
エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーにおいて各モノマーの様々な量が想定されているが、インターポリマーは、大部分の量の重合エチレンを含む。1つまたは複数の実施形態において、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーの総重量に基づいて、50〜80重量%のエチレン、55〜75重量%のエチレン、または60〜70重量%のエチレンを含む。同様に、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーの総重量に基づいて、15〜45重量%のプロピレン、20〜40重量%のプロピレン、または25〜35重量%のプロピレンを含む。さらに、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーの総重量に基づいて、0.1〜10重量%の非共役ジエン、0.1〜5重量%の非共役ジエン、または0.1〜1重量%の非共役ジエンを含む。
【0035】
1つまたは複数の実施形態において、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、示差走査熱量測定によって測定される場合、7〜20%の結晶化度を有する。さらなる実施形態において、結晶化度は、8〜18、10〜15、または12〜15である。
【0036】
さらに、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、5〜50、10〜40、または15〜30のムーニー粘度(ML1+4)によって特徴付けられてもよく、ここで、ムーニー粘度(ML1+4)はASTM D1646に従って測定される。
【0037】
エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、少なくとも90,000g/モル、少なくとも100,000g/モル、少なくとも110,000g/モル、少なくとも120,000g/モル、少なくとも200000g/モル、少なくとも220,000g/モル、少なくとも240,000g/モル、少なくとも260,000g/モル、または少なくとも280,000g/モルの、従来のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に従って測定された重量平均分子量(Mw)を有してもよい。さらに、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、500,000g/モル以下、450,000g/モル以下、400,000g/モル以下、250,000g/モル以下、200,000g/モル以下、または150,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0038】
さらに、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、20,000g/モル以上、25,000g/モル以上、または30,000g/モル以上の数平均分子量(Mn)を有してもよい。1つまたは複数の実施形態では、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、60,000g/モル以下、55,000g/モル以下、50,000g/モル以下、40,000g/モル以下の数平均分子量(Mn)を有する。
【0039】
上記のように、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、少なくとも2.5の分子量分布(MWD)を有してもよく、MWD=Mw/Mnである。さらに、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、MWDが10.00以下、さらに9.50以下、さらに9.00以下、またはさらに5以下のMWDを有してもよい。一実施形態では、または本明細書に記載のいずれかの1つ以上の実施形態と組み合わせて、エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、3.00以上、3.25以上、または3.50以上のMWDを有してもよい。
【0040】
様々な商業的実施形態が適切であると考えられる。例えば、適切なエチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーは、ミシガン州ミッドランドのダウケミカル社によって製造されたNORDEL(商標)IP 3720Pを含んでもよい。
【0041】
様々な量のエチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーが、熱可塑性接着剤組成物内で適切であると考えられる。例えば、熱可塑性接着剤組成物は、10〜40重量%、15〜35重量%、または20〜30重量%のエチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマーを含んでもよい。
【0042】
VLDPE
さらに、熱可塑性接着剤組成物のVLDPEは、ポリエチレンホモポリマーまたはエチレンと1つまたは複数のα−オレフィンとのコポリマーを含んでもよい。脂肪族または芳香族のいずれであってもよい適切なα−オレフィンコモノマーは、C−C20α−オレフィン、C−C16α−オレフィン、またはC−C10α−オレフィンを含んでもよい。1つまたは複数の実施形態において、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選択されたC−C10脂肪族α−オレフィンであってもよい。一実施形態では、α−オレフィンは1−ブテンである。
【0043】
1つまたは複数の実施形態では、VLDPEは、0.885〜0.915g/cc、0.890〜0.910g/cc、または0.895〜0.905g/ccの密度を有する。さらに、低密度エチレン系ポリマーは、0.5〜20g/10分、1.0〜10g/10分、2〜8g/10分、または3〜6g/10分のメルトインデックス(I)を有してもよい。
【0044】
様々な商業的実施形態が適切であると考えられる。例えば、適切なVLDPEポリマーは、ミシガン州ミッドランドのダウケミカル社によって製造されたFLEXOMER(商標)DFDB−9042 NTを含んでもよい。
【0045】
様々な量のVLDPEが、熱可塑性接着剤組成物内で適切であると考えられる。例えば、熱可塑性接着剤組成物は、15〜60重量%、15〜50重量%、20〜50重量%、20〜30重量%、または40〜50重量%の低密度エチレン系ポリマーを含んでもよい。
【0046】
エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマー
熱可塑性接着剤組成物の追加的な実施形態は、少なくとも1つのエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含んでもよく、ここで、アルキル基は、1〜4個の炭素原子を含む。一実施形態では、少なくとも1つのエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、エチレンメチルアクリレートコポリマーである。
【0047】
エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの様々な量が、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーのために考えられる。1つまたは複数の実施形態において、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの総重量に基づいて、55〜90重量%のエチレン、60〜80重量%のエチレン、または70〜80重量%のエチレンを含む。同様に、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの総重量に基づいて、10〜45重量%のアルキル(メタ)アクリレート、15〜35重量%のアルキル(メタ)アクリレート、または20〜30重量%のアルキル(メタ)アクリレートを含む。
【0048】
1つまたは複数の実施形態では、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、0.920〜0.960g/cc、0.930〜0.955g/cc、0.935〜0.950g/cc、または0.940〜0.950g/ccの密度を有してもよい。さらに、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、0.5〜50g/10分、1〜10g/10分、1〜5g/10分、または1から5g/10分、または1〜3g/10分のメルトインデックス(I)を有してもよい。
【0049】
さらに、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、ASTM D3418による示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定される、少なくとも80℃の融点を有してもよい。さらなる実施形態において、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、少なくとも85℃、または少なくとも90℃の融点を有してもよい。さらに、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、105℃未満、100℃未満、または95℃未満の融点を有してもよい。理論に拘束されることなく、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの融点は、処理の観点から有益である可能性がある。なぜならば、融点は、熱可塑性接着剤組成物をペレット化するのを容易にすることがあるからである。
【0050】
エチレンおよびアルキル(メタ)アクリレートの適切なコポリマーは、米国特許第US2,200,429号、米国特許第US2,953,551号および米国特許第US3,350,372号に記載されている方法によってオートクレーブ内で合成されてもよい。その他の場合には、エチレンおよびアルキル(メタ)アクリレートのコポリマーは、「管状反応器生成」されており、すなわち、コポリマーは、マルチゾーンまたは「管状」反応器などにおいて高圧および高温で生成され、ここで、エチレンおよびアクリル酸アルキルコポリマーの異なる反応性比が、管状反応器内の反応流路に沿ったモノマーの導入によって全体的または部分的に軽減される。結果として、コポリマーの一次構造は、ポリマー鎖におけるコモノマー分布のより高度なランダム性を反映している。したがって、管状反応器で製造されたエチレンコポリマーは、オートクレーブで製造されたエチレンコポリマーと物理的に区別することができる。バルク特性に関して、管状反応器で製造されたエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、一般に、オートクレーブで製造されたコポリマーよりも剛性が高く、弾性が高い。管状反応器で製造されたエチレンコポリマーおよびコポリマーを製造する方法は、例えば米国特許第US3,350,372号、米国特許第US3,756,996号、および米国特許第5,532,066号に記載されている。適切な管状反応器で製造されたエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、商標Elvaloy(登録商標)ACアクリレートコポリマーとしてデュポンから市販されている。
【0051】
様々な量のエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーが、熱可塑性接着剤組成物内で適切であると考えられる。例えば、熱可塑性接着剤組成物は、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの総重量に基づいて、最大40重量%、10〜40重量%、20〜約40重量%、または25〜35重量%を含んでもよい。
【0052】
多層フィルム
上記の熱可塑性接着剤組成物は、例えば、多層フィルムなどの多層構造における結合層として、特に、共押出し、続いて二軸配向された多層フィルムにおける結合層として特に有用である。適切な結合層は、熱可塑性接着剤組成物を含むか、または基本的に熱可塑性接着剤組成物からなるか、または熱可塑性接着剤組成物からなる。多層構造の各結合層の厚さは、独立して、1μm未満、1〜100μm、5〜50μm、または5〜30μmであってもよい。
【0053】
多層フィルムは、あらゆる適切なプロセスによって形成および配向(例えば、二軸配向)されてもよい。これらのプロセスについての情報は、例えば、Kirk Othmer Encyclopedia,the Modern Plastics Encyclopedia、またはWiley Encyclopedia of Packaging Technology,2d edition,A.L.Brody and K.S.Marsh,Eds.,Wiley−Interscience(Hoboken,1997)などの参考文献に見ることができる。例えば、多層フィルムは、ディップコーティング、フィルムキャスティング、シートキャスティング、溶液キャスティング、圧縮成形、射出成形、積層、溶融押出、円形ブローフィルムを含むブローフィルム、押出コーティング、タンデム押出コーティング、またはあらゆるその他の適切な手順によって形成されてもよい。好ましくは、シートは、溶融押出、溶融共押出し、溶融押出コーティング、またはタンデム溶融押出コーティングプロセスによって形成される。適切な配向プロセスは、テンターフレーム技術および機械方向配向(MDO)技術を含む。
【0054】
特定の実施形態では、共押出多層フィルム構造は、例えば、国際特許出願に記載されている「ダブルバブルプロセス」または好ましくは「トリプルバブル」プロセスなどの、膨張による配向を伴う共押出プロセスにおいて製造される。WO2007/099214およびWO2016/100277簡単に要約すると、共押出多層フィルム構造を製造するためのトリプルバブル(3B)プロセスは、以下のステップ、すなわち、管状多層フィルム構造を共押出しするステップと、共押出された管状多層フィルム構造を第1の気泡内で冷却するステップと、共押出された管状多層フィルム構造を加熱下で第2の気泡内で一軸または二軸配向させるステップと、二軸配向された共押出された管状多層フィルム構造を加熱下で第3の気泡内で熱固定するステップとを含む。
【0055】
本明細書に記載の多層フィルムは、包装として、特に食品用の包装として有用である。多層フィルムは、収縮性フィルム、密封性フィルム、蓋フィルム、包装フィルムなどとして有用であることがある。加えて、多層フィルムは、シュリンクバッグ、パウチ、バルーン、人工芝などを形成するようにさらに処理されてもよい。
【0056】
この多層の実施形態は、共押出可能な熱可塑性接着剤組成物を含む少なくとも1つの層を含む多層構造を対象とする。多層フィルムのこれらの層は、独立して、1μm未満、1〜100μm、1〜5μm、5〜50μm、または5〜30μmの厚さを有してもよい。一実施形態では、多層フィルムは、ポリアミドを含む第1の層、エチレン系ポリマーを含む第2の層、および第1の層と第2の層との間に配置された上記の熱可塑性接着剤組成物を含む結合層を含む。さらに、別個の多層フィルムとして、または同じ多層フィルム内で、上記の熱可塑性接着剤組成物を含む結合層が、ポリエステル層とポリオレフィン層との間に配置されてもよい。
【0057】
ポリオレフィンは、エチレン系ポリマーまたはプロピレン系ポリマーを含んでもよい。適切なポリエステルおよびそのコポリマーは、限定されることなく、ポリカーボネート;例えばポリ乳酸またはポリ(3−ヒドロキシブチレート)を含むポリヒドロキシアルカン酸などの脂肪族ポリエステル;例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの半芳香族ポリエステル、およびPETG、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどの、それらのコポリマー、を含む。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、ポリエステル層の材料の一例である。
【0058】
理論に限定されることなく、この結合層は驚くべきことに普遍的であることがわかった。つまり、結合層は、あらゆる場所で異なる結合層組成を使用するのではなく、トリプルバブルフィルムの様々な場所において使用することができる。具体的には、この結合層は、必要な接着強度でポリアミドに対するエチレン系ポリマーなどの異種基板を接着することができ、同時に、必要な接着強度でポリエステルに対するポリオレフィンなどのさらに異種の基板を接着することができる。その結果、いくつかの実施形態では、この結合層は、複数の結合層の必要性を排除するか、または少なくとも多層フィルムの様々な層を接着するために必要な結合層配合物の数を減らす。特定の実施形態では、この結合層は、多層フィルムがダブルバブルまたはトリプルバブルプロセスなどのプロセスにおいて二軸配向された後、接着を維持するために有益である。
【0059】
一実施形態では、結合層は、60℃の温度で少なくとも2.5N/15mmの接着強度を有してもよい。さらなる実施形態では、結合層は、60℃の温度で少なくとも3.0N/15mmの接着強度を有してもよい。この接着性能は、シュリンクフィルムの層間剥離を防ぐために非常に望ましい。
【0060】
上記の基本的な多層フィルムフレームワークから離れて、以下の説明は、多層フィルム内で従来使用されている層についての詳細を提供する。これらの層は、Hausmann他によるPCT国際特許出願第WO2016/100277号においても詳細に説明されている。
【0061】
外層
食品ケーシングまたは食品フィルムの外表面層、または外層は、パッケージの外層を提供し、パッケージされた内容物から最も遠い層である。
【0062】
外層は、フィルムがシーリングターミナルに結合されることなく高温においてフィルムを溶接またはシールする能力を提供する、ポリエステル、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)を含むポリエチレン(PE)、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。その結果、シーリングマシンにおいて、より高いサイクル数が達成されることがある。さらに、これらの材料は、物理的な損傷により生じる害を受けにくく、光沢や透明性などの優れた光学特性を備えた外層を生成する。したがって、外層は、フィルムの他の層の機械的支持および保護を提供する。さらに、外層フィルムは、刻印または印刷に特に適している。
【0063】
上記のように、熱可塑性接着剤組成物は、ポリエステル層をポリオレフィン層に接着するための結合層として特に有用である。したがって、外層は、1つまたは複数のポリエステルを含むか、または基本的に1つまたは複数のポリエステルからなってもよい。ポリエステルは、光沢や透明性などの優れた光学特性を提供し、高温耐性の結果として、高速のさらなる処理(サイクル数)を可能にする。
【0064】
ポリエステルは、例えば80〜100℃の範囲の温度で、配向を伴う共押出プロセスに典型的な条件下で配向させられることができる。好ましくは、ポリエステル層は、1つまたは複数の方向に配向される。より好ましくは、ポリエステル層は、機械方向(MD)、横方向(TD)、または機械方向および横方向の両方に配向される。さらにより好ましくは、ポリエステル層は、機械方向および横方向の両方に二軸配向される。
【0065】
外層の機械的機能および/または保護機能を提供するために、上記のような組成を有する2つ以上の層の組み合わせが使用されてもよい。
【0066】
ポリオレフィン層
熱可塑性接着剤組成物は、ポリエステル層をポリオレフィン層に接着するための結合層として特に有用である。したがって、多層フィルムは、好ましくは、1つまたは複数のポリオレフィンを含むまたは基本的に1つまたは複数のポリオレフィンからなる層を含む。「バルク層」または「バルキング層」と呼ばれることもあるポリオレフィン層は、多層フィルムにおける収縮、穿刺抵抗および剛性などの特性を提供するのに有用である。
【0067】
ポリオレフィン層に適した材料は、例えば、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、エチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーのアイオノマー含み、前記アイオノマーは、選択的に、共重合させられたアルキル(メタ)アクリレートをさらに含む。ポリオレフィン層用の好ましい材料は、限定されることなく、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー、アルキル(メタ)アクリレート、カルボン酸、およびエチレン酸コポリマーのアイオノマー、ならびにポリプロピレンとエチレンなどの他のオレフィンとのコポリマーを含む。プロピレンおよびエチレンのアイオノマーおよびコポリマーは、ポリオレフィン層にとってより好ましい材料である。さらにより好ましいのは、ポリプロピレンのランダムまたはブロックコポリマー、ならびに例えば、エチレンおよびブテンなどの別のオレフィンとのプロピレンのランダムおよびブロックターポリマーである。1つの好ましい材料は、オランダのロッテルダムのリヨンデルバーゼルから、商品名アドシルで市販されている。例えば、Adsyl5C30F樹脂は、プロピレン、エチレンおよびブテンの適切なターポリマーである。
【0068】
いくつかの好ましいポリオレフィン層は、バルク収縮可能層である。バルク収縮可能層において使用するための適切なポリオレフィンは、米国特許第US8,202,590号およびResearch Database Disclosure No.448065に記載されており、これは、匿名で開示され、Research Disclosure Journal(Kenneth Mason Publications、Ltd.、Hants、U.K;2001年8月)に公開されている。エチレン酸コポリマーのアイオノマーは、バルク収縮可能層のための好ましい材料である。
【0069】
ガスバリア層
多層フィルムは、選択的に、ガスバリア層を含んでもよい。本明細書において使用される「ガスバリア層」という用語は、1気圧および50%の相対湿度における23℃の温度で、24時間ごとにフィルム1平方メートルあたり、酸素などの1000cc未満のガスがフィルムを通過することを可能にするフィルム層を意味する。
【0070】
バリア層は、多層フィルムのために、2日間で、500cc/m未満、100cc/m未満、50cc/m未満、30cc/m未満、または15cc/m未満の酸素透過を提供してもよい。厚さのためにファクタされるとき、フィルムは、好ましくは、一日、40cc.mil/m未満または30cc.mil/m未満の、酸素透過レベルを有する。バリア層の透過性を上記で規定された限界を超えて上昇させない限り、その他のポリマーがバリア層における追加的な成分として存在してもよい。
【0071】
適切なバリア層は、エチレンビニルアルコールコポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリ酢酸ビニル、または1つまたは複数のこれらのポリマーとポリエチレン、ポリビニルアルコール、またはポリアミドとのブレンドを含む層から選択されてもよい。
【0072】
前述のように、熱可塑性接着剤組成物は、エチレン系ポリマーを含む層などのポリオレフィン層にポリアミド層を接着するための結合層として特に有用である。様々なポリアミド、例えば、MXD6およびナイロン6I/6T(ヘキサメチレンイソフタルアミドヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー)などのアモルファスポリアミドが適切である。
【0073】
シーラント層
多層フィルムはまた、内側層またはシーラント層を含んでもよい。これは、パッケージされた内容物に最も近いパッケージの内側層である。また、熱成形された包装部品に蓋フィルムをシールするなど、シーラント層の2つの部分を一緒に、またはパッケージの別の部分の表面にヒートシールすることなどによって、パッケージ製品の周囲でパッケージをシールまたは閉鎖するための手段も提供する。シーラント層の組成は、例えば、可能な限り低いシール温度で高いシール接着強度を達成するために、内面層のシール能力に影響を与えるように選択される。
【0074】
シーラント層は、従来のヒートシーリング手段によって別の層に融着することができる1つまたは複数のポリマーを含んでもよい。シーラント層は、例えば、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー、エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、またはエチレンアルキル(メタ)アクリル酸コポリマーまたはそれらのアイオノマー、またはそれらの混合物などの、1つまたは複数のポリオレフィンポリマーを含んでもよい。好ましくは、1つまたは複数のオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーは、エチレン系ポリマー、および/またはコポリマー、例えばエチレン(メタ)アクリル酸コポリマーおよびそれらの対応するアイオノマーなどのエチレンコポリマー、および/またはそれらの混合物から選択される。
【0075】
さらに、シーラントは、エチレンと1つまたは複数のα−オレフィンとのコポリマーを含んでもよい。適切なα−オレフィンコポリマーは、1−ブテン、1−ヘキサン、または1−オクテンを含んでもよい。様々な商業的実施形態、例えば、両方ともミシガン州ミッドランドのダウケミカル社によって製造されているAFFINITY(商標)およびELITE(商標)ポリマーが適切であると考えられる。
【0076】
その他の接着層
選択的にいくつかの実施形態では、共押出多層構造は、層間接着を改善しかつ層の層間剥離を防止するために機能層間の接着層として機能するための1つまたは複数の追加的な層を含んでもよい。例えば、そのような共押出接着層は、外層(PET)組成物とガスバリア層組成物との間、またはアイオノマー含有層とポリオレフィン層との間に配置されてもよい。例えば、米国特許第US6,545,091号、米国特許第US5,217,812号、米国特許第US5,053,457号、米国特許第US6,166,142号、米国特許第US6,210,765号および米国特許出願公開第US2007/0172614号に記載されている接着組成物が適切である。
【0077】
接着剤組成物の例は、国際特許出願に詳細に説明されている。上記のWO2016/100277号オレフィンポリマーおよび変性ポリマーを含む選択的なその他の接着剤組成物は、デュポンから、Appeel(登録商標)剥離性シーラント樹脂、Bynel(登録商標)共押出性接着樹脂、Elvaloy(登録商標)ACエチレンアクリレートコポリマー、およびElvax(登録商標)エチレン酢酸ビニルコポリマー樹脂の商標で市販されている。
【0078】
添加剤
熱可塑性接着剤組成物を含む層および多層フィルム構造の追加的な層は、限定されることなく可塑剤、衝撃改質剤、粘度安定剤および加水分解安定剤を含む安定剤、潤滑剤、抗酸化剤、UV光安定剤、防曇剤、帯電防止剤、染料、顔料またはその他の着色剤、充填剤、難燃剤、強化剤、発泡剤、ならびに例えばブロッキング防止剤と離型剤などのポリマー配合技術において知られている加工助剤を含む、1つまたは複数の改質剤またはその他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0079】
これらの添加剤の1つまたは複数は、最大20重量%、好ましくは0.01〜7重量%、より好ましくは0.01〜5重量%の量で各層に存在してもよく、重量パーセントは、層の組成物の総重量に基づく。最後に、これらの添加剤は、当技術分野で知られている方法によって各層の組成物に組み込まれてもよい。例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,5th Edition,John Wiley and Sons(New York,2004)を参照されたい。
【0080】
多層フィルムの例
多層フィルムの代表的な例は、以下の表1のものを含むが、これらに限定されない。これらの説明では、記号「/」は隣接する層の間の境界を表す。さらに、パッケージにおいて使用することが意図された多層フィルムの、外側から内側への層が、左から右へ順に列挙されている。さらに、「PET」は、ポリエチレンテレフタレートを表し、「PA」は、例えば国際特許出願に説明されたポリアミドを表す。上記のWO2016/100277号単一のフィルムにおける2つ以上の接着剤層は、接着剤層に隣接する層の組成に応じて、同じ組成または異なる組成を有してもよい。したがって、接着剤層は、本明細書に記載の熱可塑性接着剤組成物を含む場合は「結合」と示され、あらゆるその他の接着剤組成物、例えば選択的なその他の接着剤層に適した上記の接着剤組成物を含む場合は「T」と示される。隣接する層がアイオノマー層である場合、各層は異なる組成を有する。この例外を除いて、そしてさらにPET層を除いて、2つ以上の隣接する層は同じ組成を有してもよく、これらの隣接する層は、多層フィルムにおいて単一の層を形成する。最後に、各多層フィルムは、意図されたパッケージング利用およびその他の用途に応じて、特定の利点を有する。
【表1】
【0081】
好ましい多層フィルムでは、少なくとも1つの層が一軸または二軸に配向されている。より好ましくは、少なくとも1つの層は、機械方向、横方向、または機械方向と横方向の両方に配向されている。より好ましいフィルムでは、配向された層はポリエステル層、または特に、PET層である。さらにより好ましくは、ポリエステル層またはPET層は二軸配向されている。また、好ましくは、ポリエステル層またはPET層が外層である。
【0082】
いくつかの好ましい多層フィルムは、3つの隣接する層PET/結合/PA、PET/結合/PO、またはPA/結合/POを有する構造を含み、いくつかの好ましい多層フィルムは、3つの隣接する層PET/結合/PA、PET/結合/PO、またはPA/結合/POからなり、「結合」は、上記で定義したとおりである。これらの好ましいフィルムでは、ポリオレフィン層「PO」は、バルク層またはシーラント層であってもよい。
【0083】
試験方法
メルトインデックス(I
メルトインデックス(I)値は、ASTM D1238に従って190℃および2.16kgで測定された。
【0084】
密度
密度測定は、ASTM D792、方法Bに従って行われた。
【0085】
ゲル浸透クロマトグラフィー(従来型GPC)
PolymerChar(スペイン、バレンシア)のGPC−IR高温クロマトグラフィーシステムには、Precision Detectors(Amherst,MA)の2角度レーザー光が備わっていた。
散乱検出器モデル2040、どちらもPolymerChar製のIR5赤外線検出器および4−毛細管粘度計。データ収集は、PolymerChar InstrumentControlソフトウェアおよびデータ収集インターフェースを使用して行った。このシステムには、Agilent Technologies(Santa Clara,CA)からのオンラインの溶媒脱ガスデバイスおよびポンプシステムが備わっていた。
【0086】
注入温度を摂氏150度に制御した。カラムは、Polymer Laboratories(Shropshire,UK)からの3つの10ミクロンの「Mixed−B」カラムであった。溶媒は1,2,4トリクロロベンゼンであった。試料は、「50ミリリットルの溶媒中0.1グラムのポリマー」の濃度で調製した。クロマトグラフィー溶媒および試料調製溶媒はそれぞれ、「200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)」を含有していた。両溶媒源を窒素スパージした。エチレン系ポリマー試料を摂氏160度で3時間静かに撹拌した。注入量は200マイクロリットルであり、流速は1.0ミリリットル/分であった。GPCカラムセットを、21の「狭分子量分布」ポリスチレン標準品を流すことによって較正した。標準品の分子量(MW)は、580〜8400000g/モルの範囲であり、標準品を6つの「カクテル」混合物に含有させた。各標準混合物は、個々の分子量間で少なくとも一桁の間隔を有した。標準混合物は、Polymer Laboratoriesから購入した。ポリスチレン標準品は、1000000g/モル以上の分子量について「50mLの溶媒中0.025g」、および1000000g/モル未満の分子量について「50mLの溶媒中0.050g」で調製した。
【0087】
ポリスチレン標準物を、穏やかに撹拌しながら80℃で30分間溶解した。劣化を最小限に抑えるために、まず、狭い標準混合物を、「最高分子量成分」から低い方へ順番に流した。ポリスチレン標準物ピーク分子量を、式1(Williams and Ward,J.Sci.,Polym.Letters,6,621(1968))に記載)を使用してポリエチレン分子量に変換した。
Mポリエチレン=A×(Mポリスチレン)(式1)
式中、Mは分子量であり、Aは0.4316の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0088】
数平均分子量(Mn(従来のgpc))、重量平均分子量(Mw−従来のgpc)、およびz平均分子量(Mz(従来のgpc))を、以下の式2〜4に従って計算した。
【数1】
【0089】
式2〜4において、RVは、「1秒間に1ポイント」で収集されたカラム保持容量(線形空間)であり、IRは、GPC器具のIR5測定チャネルからの、電圧におけるベースライン減算IR検出器信号であり、LogMPEは、式1から決定されたポリエチレン相当MWから導かれる。データ計算は、PolymerCharからの「GPC Oneソフトウェア(バージョン2.013H)」を使用して実施した。
【0090】
示差走査熱量測定
示差走査熱量測定(DSC)は、広範囲の温度にわたるポリマーの溶融および結晶化挙動を測定するために使用することができる。例えば、RCS(冷蔵冷却システム)およびオートサンプラーを備えるTA Instruments Q1000 DSCを使用して、この分析を実施する。試験中、50ml/分の窒素パージガス流量を使用する。各試料を約175℃で薄フィルムに溶融圧縮し、その後、溶融した試料を、室温(〜25℃)まで空冷する。3〜10mgの、直径6mmの試験片を冷却したポリマーから抽出し、計量し、軽量アルミニウムパン(約50mg)内に置き、圧着して閉じた。次いで、その熱的特性を決定するために分析を行う。
【0091】
試料の熱挙動は、試料温度を昇降して熱流量対温度プロファイルを作成することにより決定する。熱履歴を除去するために、まず、試料を180℃まで急速に加熱し、3分間等温保持した。次いで、試料を10℃/分の冷却速度で−40℃に冷却し、−40℃で3分間保持する。次いで、試料を10℃/分の加熱速度で150℃に加熱する。(これは「セカンドヒート」ランプである)10℃/分の加熱速度で。冷却曲線および第2の加熱曲線を記録する。冷却曲線は、結晶化の開始から−20℃まで基線端点を設定することによって分析される。加熱曲線は、−20℃から溶融の最後まで基線端点を設定することによって分析される。決定される値は、ピーク溶解温度(Tm)、ピーク結晶化温度(Tc)、融解熱(Hf)(ジュール/グラム)、および数式5を使用するポリエチレン試料についての計算された%結晶化度:%結晶化度=((Hf)/(292J/g))×100(数式5)。
【0092】
融解熱(Hf)およびピーク融解温度は、第2の熱曲線から報告する。ピーク結晶化温度は、冷却曲線から決定する。
【実施例】
【0093】
以下の実施例は、本開示の特徴を説明するものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0094】
表2は、以下の表3に挙げられた結合層比較例Aならびに本発明の例1および2において使用される市販のポリマーおよび添加剤のリストを含む。
【表2】
【0095】
さらに、発明の例1および2は、NORDEL(商標)IP 3720P(EPDM)を含んでいた。NORDEL(商標)IP 3720P(EPDM)は、3〜4のMWDと、示差走査熱量測定(DSC)で測定した場合の14%の結晶化度と、ASTM D1646に従って測定した場合の20のムーニー粘度(ML1+4)を含む。NORDEL(商標)IP 3720Pは、Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている。
【0096】
表3は、比較結合層配合物(比較例A)、および以下の表3のトリプルバブルフィルムにおいて利用された2つの本発明の結合層配合物(発明例1および2)を挙げている。本発明の実施例1と2の主な違いは、実施例1がエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含まないことである。
【表3】
【0097】
表3のこれらの結合層配合物は、トリプルバブルプロセスによって製造された13層のトリプルバブルフィルムに含まれていた。13層トリプルバブルフィルムの層組成を以下の表4に示す。以下に示すように、これらの接着剤組成物を層11または層2の結合層として含めることにより、比較結合例Aならびに発明結合例1および2の特性を測定した。
【表4】
【0098】
トリプルバブルフィルム材料
以下に提供されるのは、上記の表4のトリプルバブルフィルムの層において使用される組成物である。
【0099】
PETは、Dufor(オランダ、ゼーフェナール)からCumastretch FXとして市販されているポリエチレンテレフタレートである。
【0100】
PAは、EMS−Grivory(Sumter,SC,U.S.A.)からGrivory F40として市販される、220℃の融点と、ASTM D1238に従って5kgの荷重で275℃において25g/10分のメルト流を備える90重量%のナイロン6と、DuPontから市販される10重量%のSelar(登録商標)PA 3426とのブレンドである。
【0101】
EVOHは、Nippon Gosheiから得られるSoarnol(商標)AT4403として市販されるエチレンビニルアルコールである。
【0102】
PO−1は、Adsyl 6C30FとしてLyondelBasellから市販される、0.900g/cmの密度と、2.16kgの荷重で230℃で5.5g/10分のメルトインデックス(MI)と、103℃のビカット軟化温度と128℃の融点を有するランダムポリプロピレンコポリマーである。
【0103】
PO−2は、添加剤なしの、以下のシーラントと同じポリマーブレンドである。
【0104】
結合−1は、DuPontからBynel(登録商標)22E780接着剤樹脂の商標で市販されている変性エチレンアクリレート樹脂である。
【0105】
結合−2は、商標名Bynel登録商標41E687接着樹脂でDuPontから市販されている無水物変性直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0106】
シーラントは、溶液中で生成された、70重量%のエチレン系1−オクテンプラストマーである。
メタロセン触媒を使用し、密度が0.902g/cmの密度と、3g/10分のIと、融点が96℃の融点とを有し、Borealis(オーストリア、ウィーン)からQueo 0203として市販されているメタロセン触媒を使用する重合プロセスで、ExxonMobil Chemicals(Houston,TX,U.S.A.)からExceed商標1018の名称で市販されている30重量%のメタロセン触媒エチレン−ヘキセンコポリマーと、いくつかの添加剤、例えば、スリップまたはアンチブロック添加剤を含む。
【0107】
トリプルバブルプロセス
表4の共押出多層フィルムは、上記の表3に記載されている材料、厚さ、押出温度、および国際特許出願に記載された手順およびライン速度を使用して、ドイツのザンクトアウグスティンにあるKuhne Anlagenbau GmbHから入手可能なトリプルバブル(3B)製造ラインで、製造された。WO2007/099214およびWO2016/100277本明細書に記載の熱可塑性接着剤組成物を含む多層フィルムの共押出しのための特別な条件は、第2の気泡を90℃の温度にさらすことによってフィルムを配向し、第3の気泡を、収縮性フィルムの場合は60℃、非収縮性フィルムの場合は100℃の温度にそれぞれさらすことによってフィルムをアニーリングすることを含む。
【0108】
層1は、3つの管状気泡の外面層であり、層13は、3つの管状気泡の内面層であり、層2〜12は、多層フィルムの内層である。例えば、層3〜6において、多層フィルムに隣接して共押出された層が同じ材料を含む場合、隣接して共押出された層は、最終的なフィルム構造において単一の層であるように見える。共押出された多層フィルムは、層1においてポリエステルの外層を、層8、9および10においてガスバリア三重層PA/EVOH/PAを含んでいた。
【0109】
接着試験
接着強度は以下の方法に従って測定した。押出後、表4のフィルムを周囲条件下で少なくとも24時間コンディショニングし、次に横方向に15mmの幅を有する機械方向における長いストリップに切断した。
【0110】
比較フィルムAならびに発明フィルム1および2の場合、ストリップの一方の15mm端部において、レイヤー1〜10をレイヤー12〜13から手作業で分離した。2つの層の分離された部分の端部を引張試験機に固定し、2つの端部を機械的に引き離すことによって層間剥離を続けた。層1〜10および層12〜13は、機械的層間剥離の間、互いに180°の角度であり、両端が分離される速度は100mm/分であった。これらの条件下でフィルムを剥離するのに必要な力が測定され、ニュートン/15mmの単位における接着強度として報告される。
【0111】
比較フィルムBならびに発明フィルム3および4の場合、ストリップの一方の15mm端部においてで、レイヤー1(PET)をレイヤー3〜13から手作業で分離した。2つの層の分離された部分の端部を引張試験機に固定し、2つの端部を機械的に引き離すことによって層間剥離を続けた。層1(PET)および層3〜13は、機械的層間剥離の間、互いに180°の角度にあり、両端が分離される速度は100mm/分であった。
【0112】
図1は、ポリアミド(PA)をポリエチレン(PO−2)に接着するために使用された場合の比較結合例および発明結合例1および2の接着強度を示している。示されるように、発明の結合例1および2をそれぞれ含む両発明のフィルム1および2は、それぞれ2.5N/15分を超える接着強度を提供したが、比較結合例を含む比較フィルムAは、2.0N/15分未満の望ましくない接着強度を有していた。
【0113】
図2は、ポリエステル(PET)をポリプロピレン(PO−1)に接着するために使用される場合の比較結合例および発明結合例1および2の接着強度を示している。示されるように、それぞれ発明結合例1および2を含む発明フィルム3および4の両方は、約3N/15分の接着強度を提供し、これは、比較結合例を含む比較フィルムBよりも高かった。
【0114】
ポリエステルは無水マレイン酸との反応が非常に悪いことが知られているため、発明フィルム3および4の接着性能は注目に値する。ただし、無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマー(Fusabond(登録商標)N525)と、他の構成要素(エチレン/α−オレフィン/非共役ジエンインターポリマー(NORDEL(商標)IP 3720P EPDM)、VLDPE(FLEXOMER(商標)DFDB−9042)、および選択的にエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマー(Elvaloy(登録商標)1224AC)との組合せは、様々なポリマー層にわたって改良された接着を生じた。
【0115】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に様々な修正を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、そのような修正形態および変形形態が添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入る限り、記載された実施形態の修正形態および変形形態を網羅することが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】