特表2021-529263(P2021-529263A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-529263(P2021-529263A)
(43)【公表日】2021年10月28日
(54)【発明の名称】希土類の回収のための方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20211001BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20211001BHJP
   C22B 3/20 20060101ALI20211001BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20211001BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20211001BHJP
【FI】
   C22B59/00
   C22B3/44 101Z
   C22B3/20
   C22B3/04
   C22B3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2021-510496(P2021-510496)
(86)(22)【出願日】2019年5月2日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月28日
(86)【国際出願番号】AU2019050404
(87)【国際公開番号】WO2019210368
(87)【国際公開日】20191107
(31)【優先権主張番号】2018901511
(32)【優先日】2018年5月3日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】508196427
【氏名又は名称】アラフラ・リソーシズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Arafura Resources Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ディーン・エリオット
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA39
4K001BA19
4K001DB02
4K001DB07
4K001DB16
4K001DB22
(57)【要約】
希土類硫酸塩を沈殿させるための方法であって、粗希土類硫酸塩溶液を、水溶性揮発性有機化合物の存在下、沈殿に供して、希土類硫酸塩沈殿物及び酸性上清を生成する工程を含む、方法。有機化合物は、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、アセトン又はその混合物からなる群から選択され、好ましくは、メタノールである。好ましくは、有機化合物は、好ましくは、有機化合物は、沈殿において、粗硫酸塩溶液との質量比0.25:1〜1.5:1、好ましくは0.5:〜1.25:1で使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類硫酸塩を沈殿させるための方法であって、粗希土類硫酸塩溶液を、水溶性揮発性有機化合物の存在下、沈殿に供して、希土類硫酸塩沈殿物及び酸性上清を生成する工程を含む、方法。
【請求項2】
水溶性揮発性有機化合物が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、アセトン又はその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の沈殿方法。
【請求項3】
水溶性揮発性有機化合物がメタノールである、請求項2に記載の沈殿方法。
【請求項4】
メタノールが、沈殿において、硫酸塩溶液との質量比0.25:1〜1.5:1、好ましくは0.5:1〜1.25:1で使用される、請求項3に記載の沈殿方法。
【請求項5】
沈殿の前に、硫酸塩溶液が、5%w/w超の遊離硫酸濃度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の沈殿方法。
【請求項6】
沈殿が、30〜85℃の範囲、又は40〜70℃の範囲、又は60〜65℃の範囲の温度で、5〜120分の範囲、又は10〜40分の範囲の滞留時間で生じる、請求項1から5のいずれか一項に記載の沈殿方法。
【請求項7】
有機化合物が、蒸留によって酸性上清から回収されて、回収された有機化合物及び希混合酸溶液が得られ、回収された有機化合物が、沈殿に使用するためにリサイクルされる、請求項1から6のいずれか一項に記載の沈殿方法。
【請求項8】
希混合酸溶液が、蒸発によって濃縮されて、濃縮混合酸溶液が生成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の沈殿方法。
【請求項9】
リン酸を用いて希土類が豊富なリン酸カルシウム濃縮物を前浸出させて、希土類が富化された前浸出残渣を形成すること、前浸出残渣を硫酸と混合し、続いて混合物を加熱して、前浸出残渣中の希土類を水溶性希土類硫酸塩に変換すること、及び加熱処理混合物を水浸出に供して、希土類硫酸塩を溶液に入れて、粗希土類硫酸塩溶液を形成することによって粗希土類硫酸塩溶液を生成する工程を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の沈殿方法。
【請求項10】
リン酸を用いて前浸出させて、希土類が富化された前浸出残渣並びにリン酸一カルシウム、不純物及び少量の希土類を含有する前浸出溶液を形成することによって、希土類が豊富なリン酸カルシウム濃縮物からリン酸カルシウムを除去する工程を含む、請求項9に記載の沈殿方法。
【請求項11】
浸出が、30〜45℃の温度、各段階の滞留時間30〜90分で、供給酸対供給濃縮物質量比が、濃縮物中Ca 1グラム当たり酸中2〜12グラムのP、理想的には濃縮物中Ca 1グラム当たり酸中4〜8グラムのPで維持される2段階向流構成で操作される、請求項10に記載の沈殿方法。
【請求項12】
前浸出溶液が加熱されて、回収溶液を残して、溶液から少量の希土類が希土類リン酸塩として沈殿する、請求項10又は11に記載の沈殿方法。
【請求項13】
加熱が、昇温のいくつかの段階で生じ、温度が全て60℃〜110℃の範囲であり、段階滞留時間が60〜180分間である、請求項12に記載の沈殿方法。
【請求項14】
硫酸、並びに希及び/又は濃縮混合酸溶液が回収溶液に添加されて、リン酸一カルシウムがリン酸に変換され、硫酸カルシウム沈殿物が形成する、請求項7及び又は請求項8に従属する場合の請求項9から13のいずれか一項に記載の沈殿方法。
【請求項15】
酸の添加が、30〜50℃の温度及び1段階につき30〜90分の滞留時間で複数の段階で行われる、請求項14に記載の沈殿方法。
【請求項16】
回収溶液から形成されたリン酸が、必要に応じて請求項10に規定の前浸出に使用される、請求項14又は15に記載の沈殿方法。
【請求項17】
前浸出残渣、及び存在する場合は請求項12に規定の希土類リン酸塩を、硫酸と混合する工程、混合物を210〜270℃の範囲内の温度まで加熱する工程、次いで、材料を、最大約60分の時間、この温度で維持して、前浸出残渣及び希土類リン酸塩中の希土類を水溶性希土類硫酸塩に変換する工程を含む、請求項9から16のいずれか一項に記載の沈殿方法。
【請求項18】
混合段階における温度制御がなく、混合材料が混合及び硫酸化の維持時間の間、加熱される場合、又は酸混合が請求項17に規定の温度範囲までで操作されるように硫酸が添加の前に予備加熱される場合のいずれかで、混合が、最大約30分の時間で行われる、請求項17に記載の沈殿方法。
【請求項19】
水溶性希土類硫酸塩が、最大約300分の時間にわたって、約50℃未満の温度に冷却される、請求項17又は18に記載の沈殿方法。
【請求項20】
水溶性希土類硫酸塩が、水浸出に供されて、希土類硫酸塩、リン酸及び残留硫酸が溶液に入れられ、したがって、粗希土類硫酸塩溶液及び廃棄のための不溶性脈石材料を含有する水浸出残渣が形成される、請求項17から19のいずれか一項に記載の沈殿方法。
【請求項21】
水浸出が、脈石材料からの不純物の浸出を最小にし、粗希土類硫酸塩溶液中の希土類の濃度を最大にするために行われる、請求項20に記載の沈殿方法。
【請求項22】
水浸出が、約35℃未満の温度で約20分未満の時間行われる、請求項21に記載の沈殿方法。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の方法によって生成された希土類硫酸塩沈殿物を処理する方法であって、希土類硫酸塩沈殿物を洗浄及び乾燥する工程、洗浄及び乾燥された希土類硫酸塩沈殿物を水に浸出させて、可溶性希土類硫酸塩を溶解し、希土類硫酸塩が豊富な浸出溶液及び不溶性リン酸塩の形態の不純物を含有する浸出残渣を形成する工程、希土類硫酸塩浸出溶液から不純物を沈殿させて、精製希土類硫酸塩溶液及び精製残渣を形成する工程、精製希土類硫酸塩溶液中の希土類を希土類水酸化物として沈殿させる工程、並びに希土類水酸化物沈殿物を選択的に浸出させて、希土類塩化物溶液及び残渣を形成する工程を含む、方法。
【請求項24】
希土類硫酸塩沈殿物の洗浄が、水溶性揮発性有機化合物を使用して行われる、請求項23に記載の処理方法。
【請求項25】
乾燥希土類硫酸塩沈殿物が、約40℃の温度で60〜180分の時間、水を用いて浸出され、不純物の混ざった希土類硫酸塩溶液及び不溶性リン酸塩の形態の不純物を含有する浸出残渣が残される、請求項23又は24に記載の処理方法。
【請求項26】
マグネシアが希土類硫酸塩浸出溶液に添加されて、不純物の沈殿によってその溶液が精製され、精製希土類硫酸塩溶液及び精製残渣が残される、請求項23から25のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項27】
マグネシアが、各々最大約55℃の温度で約30〜120分の時間、複数の段階において添加され、精製希土類硫酸塩溶液のpHが約4.5〜6.0である、請求項26に記載の処理方法。
【請求項28】
精製希土類塩酸塩溶液中の希土類の希土類水酸化物としての沈殿及び後続の選択的浸出が、
a)希土類硫酸塩溶液を水酸化ナトリウムと接触させて、希土類を希土類水酸化物として沈殿させる工程であって、希土類水酸化物沈殿物に含有されるセリウムを酸化させる酸化剤を添加することを含む、工程;並びに
b)塩酸を用いて希土類水酸化物沈殿物を選択的に浸出させて、希土類塩化物溶液及び残渣を形成する工程
において生じる、請求項23から27のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項29】
沈殿が、沈殿段階及びリファイニング段階を含む2段階向流プロセスにおいて生じ、希土類硫酸塩溶液が、リファイニング段階からの使用済み溶液と共に沈殿段階に供給されて、硫酸塩を含有する希土類水酸化物が沈殿する、請求項28に記載の処理方法。
【請求項30】
硫酸塩含有希土類水酸化物が、続いて、新たな水酸化ナトリウムの添加によりリファイニング段階において混じりけのない希土類水酸化物に変換される、請求項29に記載の処理方法。
【請求項31】
酸化剤が、過酸化水素及び/又は次亜塩素酸ナトリウムであり、これは、水酸化ナトリウムの添加後、沈殿及び/又はリファイニング段階に添加される、請求項29又は30に記載の処理方法。
【請求項32】
沈殿及びリファイニング段階の両方が、約40〜80℃の温度で、約30〜60分の時間操作され、化学量論量の水酸化ナトリウムの添加が100〜110%の範囲であり、酸化剤の化学量論投入が100〜130%である、請求項29から31のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項33】
希土類塩化物溶液が、無視できる量のセリウムを含有し、残渣が、主に水酸化セリウム(IV)からなる、請求項28から32のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項34】
希土類水酸化物沈殿物の選択的浸出が、2段階で行われ、各段階が、複数のタンクを有し、各段階が、第1の浸出段階からの浸出溶液により5〜15%w/wに希釈した塩酸を使用する、請求項28から33のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項35】
第2の浸出段階からの浸出溶液が、第1の浸出段階の前に、再パルプ化、希土類水酸化物沈殿物の浸出及び第2の浸出段階において溶解されたセリウム(IV)の沈殿のために使用される、請求項34に記載の処理方法。
【請求項36】
選択的浸出が、60〜80℃の温度で生じ、第1の浸出段階は、希土類の溶解を最大にする一方、セリウム(IV)の溶解を最小にするように操作され、これは、約pH3〜4の終点pHで達成され、第2の浸出段階は、残渣中の非セリウム希土類元素の濃度を最小にするように操作される、請求項34又は35に記載の処理方法。
【請求項37】
硫酸塩レベルが低い場合には硫酸と共に、塩化バリウムが希土類塩化物溶液に添加されて、硫酸バリウムとの共沈殿によりラジウムが除去されて、精製希土類塩化物溶液が形成される、請求項28から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
精製希土類塩化物溶液が、蒸発によって濃縮される、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、希土類鉱石又は希土類元素を含有する濃縮物からの希土類元素の回収に関する。より詳細には、本発明は、希土類硫酸塩溶液、例えば、モナザイト鉱石、濃縮物又は関連する前浸出残渣の硫酸化(酸焼成)及び後続の水浸出に由来する溶液からの希土類元素の回収に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素は、全てのランタニド元素(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウム)、並びに希少金属であるスカンジウム及びイットリウムを含む。議論を容易にするため、並びにそれらの豊富さ及び類似特性から、全希土類元素(TREE)は多くの場合、以下の3つの群に分けられる:軽希土類(LRE)である、ランタン、セリウム、プラセオジム及びネオジム;中希土類(MRE)である、サマリウム、ユーロピウム及びガドリニウム(プロメチウムは安定元素として存在しない);並びに重希土類(HRE)である、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウム。イットリウム及びスカンジウムは、多くの場合このリストに加えられるが、これらは厳密には重希土類元素ではない。
【0003】
過去20年の間、希土類元素を必要とする多くの物品への需要が爆発的に高まっており、これには現在、人々が毎日使用する多くの物品、例えば、コンピューターメモリー、DVD、充電式電池、携帯電話、触媒コンバーター、小型電気モーター、マグネット及び蛍光照明が含まれる。
【0004】
希土類元素はまた、風力発電、新世代電気自動車及び軍事用途において不可欠な役割を果たす。これに関して、軍事使用には、暗視ゴーグル、誘導兵器、通信装置、GPS装置及び電池が含まれる。
【0005】
新技術のデバイスにおける希土類元素の使用の増加は、需要の増加、及び1990年代初め以来中国が優位を占めるサプライチェーンの多様化の必要性につながっている。実際、近年、特に2010年に中国が、国内製造への供給を確実にするために希土類元素の輸出を厳しく制限すると発表して以来、希土類を採掘及び処理するための非中国資源の開発が拡大している。
【0006】
現在の又は潜在的に将来の商用目的の希土類元素が十分豊富である天然に存在する鉱物を含有する希土類には、フルオロ炭酸塩(例えば、バストネサイト)、フッ化物、酸化物、リン酸塩(例えば、モナザイト、ゼノタイム及びアパタイト)、並びにケイ酸塩(例えば、イオン性クレイ及びアラナイト)が含まれる。世界の資源は、主にバストネサイト及びモナザイトに含有される。中国及び米国のバストネサイト鉱床が、世界の既知の希土類経済資源の最大パーセンテージを構成し、一方、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、マレーシア、南アフリカ、スリランカ、タイ及び米国のモナザイト鉱石床が、2番目に大きな部分を構成する。
【0007】
その鉱石又は濃縮物から希土類元素を抽出するための従来の方法は、C.K. Gupta及びN. Krishnamurthy、CRC Press、2005による書籍「Extractive Metallurgy of Rare Earths」に記載されている。
【0008】
Gupta及びKrishnamurthy(2005)で概説される通り、希土類元素は、典型的には、硫酸化のプロセスによってモナザイト鉱石及び濃縮物から抽出されている。硫酸化(「酸焼成」とも呼ばれる)において、鉱石又は濃縮物は、濃硫酸と混合され、高温(例えば、200〜500℃)で焼成されて、鉱物マトリックスが分解され、希土類元素が硫酸塩に変換され、次いで、これは、焼成固体の水浸出物への溶解によって溶液にすることができる。希土類元素が、本明細書において「粗希土類硫酸塩溶液」と称する非純粋希土類硫酸塩溶液である溶液になると、希土類元素は、典型的には、いくつかの様々な従来技術によって回収される。
【0009】
Gupta及びKrishnamurthy(2005)はまた、バストネサイト鉱石及び濃縮物(バストネサイトは、希土類フルオロ炭酸塩である)から希土類元素を抽出するための方法を記載している。中国において、バストネサイト濃縮物は、回転炉において濃硫酸を用いて500℃に加熱することによって処理される。次いで、残渣は、水で処理されて、可溶性希土類硫酸塩が溶解され、再度、粗希土類硫酸塩溶液が形成される。
【0010】
そのような粗希土類硫酸塩溶液に含有された希土類元素を回収するために適合された従来技術の1つの処理戦略は、酸を中性化し、問題のある不純物を沈殿させ、続いて、溶媒抽出、希土類炭酸塩沈殿、希土類シュウ酸塩沈殿、希土類水酸化物沈殿又はイオン交換等のいくつかの代替的な方法のうちの1つを使用して、希土類元素を回収することである。別の戦略は、粗希土類硫酸塩溶液から希土類元素を直接回収することであり、これには従来技術の1つの処理選択肢、つまり、二重硫酸塩沈殿が利用可能である。
【0011】
1つ目の戦略の問題は、希土類元素を回収する前に相当量の中和が必要なことである。リン酸塩、マグネシア又は水酸化アンモニウムが豊富な系の場合、希土類リン酸塩の沈殿による希土類の損失を防止するために、中和剤及び大量の鉄の添加が必要である。これは、硫酸及びリン酸含有量が高い低温酸焼成システム等の場合、コストがあまりに高い場合がある。
【0012】
第2の戦略、つまり、二重硫酸塩沈殿による希土類元素の直接回収の問題は、得られる希土類貧混合酸溶液が、大量の硫酸ナトリウム不純物を含有しており、これにより使用に不適切となり得ることである。例えば、硫酸ナトリウムの存在は、リン酸前浸出システムの操作と不適合である。更に、二重硫酸塩沈殿は、それを更に処理され得る前に苛性変換の必要がある沈殿物をもたらす。更に、沈殿プロセスは、多くの場合、硫酸ナトリウム回収を保証するために十分大量のナトリウム添加が必要であり、これは、希土類貧混合酸溶液の中和が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「Extractive Metallurgy of Rare Earths」、C.K. Gupta及びN. Krishnamurthy、CRC Press、2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、粗希土類硫酸塩溶液からの希土類元素の選択的回収のための、単純化されたより経済的な方法を提供することである。
【0015】
上記の背景についての議論は、本発明の文脈を説明するために含まれる。言及した材料のいずれも、請求項の任意の一項の優先日において、公開された、公知の、又は一般技術常識(いかなる国においても)の一部であることを認めるものと解されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
希土類硫酸塩の沈殿
本発明は、希土類硫酸塩を沈殿させるための方法であって、粗希土類硫酸塩溶液を、水溶性揮発性有機化合物の存在下、沈殿に供して、希土類硫酸塩沈殿物及び酸性上清を生成する工程を含む、方法を提供する。
【0017】
この方法において、水溶性有機化合物は、粗硫酸塩溶液のほとんどの他の構成成分に対して希土類硫酸塩の溶解性を選択的に低下させ、有機化合物の他の異なる有機化合物への変換が無視できる、希土類硫酸塩沈殿物の選択的形成をもたらすことが可能であるため、有利である。このことは、本発明の方法において、後の有機化合物の回収及び再使用を補助する。
【0018】
有機化合物は、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、アセトン又はその混合物からなる群から選択され、好ましくはメタノールである。好ましくは、有機化合物は、沈殿において、粗硫酸塩溶液との質量比0.25:1〜1.5:1、好ましくは0.5:〜1.25:1で使用される。
【0019】
理想的には、粗希土類硫酸塩溶液は、含有された希土類硫酸塩の濃度に関して飽和に近い、又は飽和を超えており、限定されないが以下の化合物及び/又は元素:硫酸、リン酸、硫酸塩、リン酸塩、フッ化物、塩化物、硝酸塩、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、マグネシウム、鉄、ニッケル、ヒ素、セレン、ストロンチウム、モリブデン、バリウム、トリウム及びウラニウムのうちの任意の1つ又は複数を含有し得る。
【0020】
理想的には、希土類硫酸塩沈殿工程は、溶液からの希土類沈殿の程度を最大にする一方、リン酸塩及びフッ化物の形態の希土類沈殿を最小にし、不純物の共沈殿を最小にするように操作される。したがって、一形態において、粗硫酸塩溶液は、5%w/w超の遊離硫酸濃度を有する。これは、大量のリン酸塩及び/又はフッ化物を含有する粗希土類硫酸塩溶液に当てはまる。
【0021】
好ましい形態において、沈殿は、60〜65℃の範囲の温度、20〜40分の範囲の滞留時間で生じる。
【0022】
希土類硫酸塩沈殿物は、35%超のTREE、12%超のS、2%未満のP、0.3%未満のAl及び0.5%未満のFeを含有することが予想される一方、沈殿に添加される全ての有機物は、揮発しない限り、酸上清に含有されることになる。実際に、粗希土類硫酸塩溶液に含有される実質的に全ての水、硫酸、リン酸、Mg、Al、Fe及びUは、酸性上清に含有されると考えられる。
【0023】
希土類硫酸塩沈殿物は、その後、「希土類の処理」と題する節において以下で記載される更なる処理工程にかけられ、上記沈殿工程で生成された酸性上清もまた、理想的には、有機化合物の回収及びリン酸の再生を目的とする更なる処理工程にかけられる。
【0024】
一形態において、本発明の方法はしたがって、好ましくはまた、蒸留によって酸性上清から有機化合物を回収し、回収された有機化合物及び希混合酸溶液を形成する工程を含み、回収された有機化合物は、好ましくは、上で言及した沈殿工程における使用のためにリサイクルされ、希混合酸溶液は、直接及び/又は蒸発による更なる濃縮後に、以下でまた更に記載するリン酸再生段階における使用に進められる。
【0025】
メタノールが有機化合物である好ましい形態において、蒸留は、メタノールストリッピング段階であり、ほぼ全ての供給メタノール(>99.5%)を回収するように設計及び操作される連続蒸留カラムにおいて行われて、ほぼ純粋なメタノール(>95%メタノール)の蒸留画分が生成され、大部分の水並びに全ての酸及び供給溶液に含有される他の水溶性塩を含有する底部画分が生成される。好ましい形態において、蒸留画分は、蒸気としての使用のためにリサイクルされてもよく、溶液としてのリサイクルのために濃縮されてもよく、又は全エネルギー消費を最小にするために適切と考えられる場合、その組合せであってもよい。
【0026】
希土類が豊富なリン酸カルシウムの前処理
本発明の方法は、好ましくはまた、沈殿工程の前に、特に、希土類が豊富なリン酸カルシウム濃縮物からの好適な粗希土類硫酸塩溶液の生成に関する工程を含むいくつかの追加の工程を含み、希土類が豊富なリン酸カルシウム濃縮物は、全鉱石浮遊選鉱による希土類含有リン酸カルシウムが豊富な鉱石の選鉱の生成物である可能性が最も高い。好ましい形態において、鉱石は、アパタイトホステッドモナザイトを含有し、濃縮物は、鉱石と比べてより高いグレードのアパタイトホステッドモナザイトを含有する。
【0027】
一般的意味において、これらの前処理工程は、好ましくは、リン酸を用いて希土類が豊富なリン酸カルシウム濃縮物を前浸出させて、希土類が富化された前浸出残渣を形成すること、前浸出残渣を硫酸と混合し、続いて混合物を加熱して、前浸出残渣中の希土類を水溶性希土類硫酸塩に変換すること、及び最後に、加熱された混合物を水浸出させて、希土類硫酸塩を溶液に入れ、それによって、上記の沈殿工程に好適な粗希土類硫酸塩溶液を形成することを含む。
【0028】
一般的意味において、希土類含有リン酸カルシウム濃縮物は、これらに限定されないがモナザイト、ゼノタイム、アラナイト及びバストネサイトのうちの1種又は複数を含む任意の希土類鉱物中の希土類元素を含有し得る一方、リン酸カルシウムは、アパタイト、ヒドロキシアパタイト及びブルシャイトのうちの1種又は複数として存在し得る。一般的意味において、粗希土類硫酸塩溶液は、希土類元素、化学量論量以上の硫酸塩及び十分量の不純物を含有して、水溶性有機物の適用により希類硫酸塩の沈殿を促進して、溶液の由来に関わらず、選択肢のうち、含有される希土類元素を溶液から回収することを保証する、任意の溶液である。
【0029】
これらの好ましい前処理工程に関してより具体的には、本発明の方法は、好ましくは、リン酸を用いて前浸出させて、希土類が豊富な前浸出残渣並びにリン酸一カルシウム、不純物及び少量の希土類を含有する前浸出溶液を形成することによって、希土類富化リン酸カルシウム濃縮物からリン酸カルシウムを除去する工程を含む。
【0030】
リン酸前浸出は、好ましくは、リン酸カルシウムの溶解を最大にする一方、不純物の溶解を最小にするという競合する条件のバランスを取るように操作される。前浸出は、好ましくは、浸出が低温(典型的には30〜45℃)で操作され、各段階の滞留時間が30〜90分に維持された多段階向流構成で構成され、全供給酸対供給濃縮物の質量比は、理想的には、濃縮物中Ca 1グラム当たり酸中2〜12グラムのP、理想的には濃縮物中Ca 1グラム当たり酸中4〜8グラムのPで維持される。
【0031】
次いで、前浸出残渣及び後続の回収段階(下記)から形成される任意の希土類沈殿物は、好ましくは合わせられ、硫酸化段階において、濃硫酸を使用して粉砕されて、混合物中の希土類含有鉱物が水溶性希土類硫酸塩に変換される。そのような硫酸化段階は、好ましくは、後続の水浸出における下流の希土類元素の溶解が最大になる一方、鉄、アルミニウム、ケイ素及びマグネシウム不純物の溶解が最小になるように操作される。
【0032】
この形態において、前浸出残渣及び希土類沈殿物は、好ましくは、酸焼成温度又はそれ未満のいずれかで、最大約30分の時間、硫酸と混合されて(「酸混合」と称される)、得られた混合物が、次の工程の前に完全に均質化されることを確実にする。酸混合温度は、硫酸の供給温度の制御によって制御される。酸混合が酸焼成温度未満で操作される場合、次いで、酸混合排出混合物は、約250℃の酸焼成温度まで加熱され、次いで、酸焼成保持時間に進む。酸混合が酸焼成温度で操作される場合、排出物は、酸焼成保持時間に直接進む。酸焼成保持時間の間、硫酸化混合物は、好ましくは、最大約60分の時間の間、酸焼成温度で保持されて、前浸出残渣及び希土類リン酸塩中の希土類が水溶性希土類硫酸塩に変換される。
【0033】
次いで、水溶性希土類硫酸塩は、好ましくは、最大約300分の時間にわたって、約50℃未満の温度に冷却されて、後続の水浸出におけるその使用前に、従来通り、酸焼成から排出される硫酸化材料からのほとんどの熱が除去される。これは、水浸出の間、局所温度により加速された不純物の浸出を最小にするのを助ける。
【0034】
次いで、水溶性希土類硫酸塩は、好ましくは、水浸出に供されて、希土類硫酸塩、リン酸及び任意の残留硫酸が溶液に入れられ、したがって、上で言及した粗希土類硫酸塩溶液及び廃棄のための不溶性脈石材料を含有する水浸出残渣が形成される。
【0035】
水浸出は、好ましくは、脈石材料(鉄、アルミニウム、マグネシウム及びケイ素)からの不純物の浸出を最小にする一方、また、粗硫酸塩溶液中の希土類元素の濃度を最大にするように操作される。理想的には、水浸出は、希土類溶解度の限界未満であるがその近くで操作され、約20分未満の時間、約30℃未満の温度で行われる。
【0036】
リン酸の再生
上記の前処理段階のリン酸前浸出後、好ましくは、前処理で形成されたリン酸前浸出溶液は加熱されて、回収溶液を残して、溶液から少量の希土類が希土類リン酸塩として沈殿する。次いで、好ましくは、これらの希土類リン酸塩は、上記の硫酸化及び酸焼成工程に戻される。
【0037】
好ましい形態において、リン酸前浸出溶液の加熱は、昇温のいくつかの段階で生じ、温度は全て60℃〜110℃の範囲であり、段階滞留時間は60〜180分間である。
【0038】
次いで、回収溶液は、好ましくは硫酸、並びに/又は上記のメタノールストリッピング段階の希及び/若しくは濃縮混合酸溶液を投入されて、一リン酸カルシウムがリン酸に変換され、廃棄され得る硫酸カルシウム沈殿物が形成される。この酸の添加は、好ましくは、約40℃の温度及び1段階につき30〜90分の滞留時間で複数の段階で行われる。理想的には、硫酸及び/又は混合酸は、およそ6g/LのCa及び1.6g/LのSを含有するリン酸溶液を生成するために添加される。この状況において、6g/LのCaのうちの約2は可溶性硫酸カルシウムと会合し、6g/LのCaのうちの残りの4は、一リン酸カルシウムと会合する。この目的は、リン酸の反応性を最大にすること及び上で言及した前浸出において形成する硫酸カルシウム沈殿物の量を最小にすることの間でバランスを取ることである。
【0039】
回収溶液から形成されたリン酸は、必要に応じて上記の前処理工程における前浸出に使用され、余剰のリン酸は、システムから取り出され、リン酸精製に渡されてもよい。
【0040】
そのようなリン酸精製において、希リン酸ブリード中の不純物(主にウラン及びトリウム)は、イオン交換、溶媒抽出又は任意の他の商用プロセスによって一部の希土類元素と共に除去され得る。更に、希酸中のカルシウム及び硫黄の濃度は、消費者向け仕様に一致するように、必要に応じて硫酸の添加によって調整してもよい。次いで、精製された希リン酸は、リン酸副生成物が生成するまで濃縮されてもよく、これは、顧客に輸送されるまで保存されてもよい。
【0041】
希土類の処理
本発明の方法はまた、好ましくはまた、上記の沈殿工程によって生成された希土類硫酸塩沈殿物を処理するための後続工程を含む。
【0042】
一般的意味において、この後続処理は、希土類硫酸塩沈殿物を洗浄及び乾燥すること、洗浄及び乾燥された希土類硫酸塩沈殿物を水に浸出させて、可溶性希土類硫酸塩を溶解し、希土類硫酸塩が豊富な浸出溶液及び不溶性リン酸塩の形態の不純物を含有する浸出残渣を形成すること、希土類硫酸塩浸出溶液から不純物を沈殿させて、精製希土類硫酸塩溶液及び精製残渣を形成すること、精製希土類硫酸塩溶液中の希土類を希土類水酸化物として沈殿させること、並びに塩酸を用いて希土類水酸化物沈殿物を選択的に浸出させて、希土類塩化物溶液及び残渣を形成することを含む。
【0043】
好ましい形態において、希土類硫酸塩沈殿物の洗浄は、メタノール等の水溶性揮発性有機化合物より行われ、次いで、硫酸塩沈殿物は、硫酸塩沈殿物の水浸出の前に乾燥(回収され再使用される有機物を揮発させることにより)される。次いで、希土類硫酸塩沈殿物は、好ましくは、約40℃で最大180分間、水に浸出されて、可溶性希土類硫酸塩が溶解する一方、大部分の不純物は、不溶性リン酸塩(例えばトリウム)として残され、これは、リサイクル又は廃棄され得る。微量の可溶性不純物もまた、このプロセスにおいて溶解する。次いで、固液分離後、浸出残渣は廃棄され得る一方、得られた希土類硫酸塩が豊富な浸出溶液は、続いて、希土類硫酸塩精製段階にかけられて、精製希土類硫酸塩溶液及び精製残渣が形成される。
【0044】
精製段階に関連して、好ましくは、マグネシアが希土類硫酸塩浸出溶液に添加されて、不純物の沈殿によってその溶液が精製され、精製希土類硫酸塩溶液及び精製残渣が残される。精製は、不純物の沈殿を最大にする一方、希土類元素の共沈殿を最小にするように操作される。そのため、マグネシアは、好ましくは、最大約55℃の温度、各タンク30〜120分の滞留時間で、終点標的pH4.5〜6.0になるように複数のタンクにわたって投入される。
【0045】
その後、次いで水酸化ナトリウムが精製希土類硫酸塩溶液に添加されて、希土類が希土類水酸化物として沈殿し、過酸化水素等の酸化剤の添加により、沈殿物に含有されるセリウムが酸化される。この沈殿は、好ましくは、希土類元素の沈殿を最大にし、セリウム(III)のセリウム(IV)への変換を最大にする一方、化学量論過剰の試薬投入を最小にし、希土類水酸化物沈殿物中の硫酸塩の濃度を最小にするように操作される。そのため、希土類水酸化物の生成は、好ましくは、精製希土類硫酸塩溶液が、沈殿段階(段階1)に供給されて、リファイニング段階(段階2)からの使用済み溶液を使用していくらかの硫酸塩を含有する希土類水酸化物が沈殿する、2段階向流プロセスにおいて生じる。
【0046】
硫酸塩含有希土類水酸化物は、続いて、新たな水酸化ナトリウムの好ましい添加により第2の段階において混じりけのない希土類水酸化物に変換される。更に、過酸化水素が、水酸化ナトリウムの存在下約55℃の温度で、沈殿及び/又はリファイニング段階の間に好ましくは添加され、希土類水酸化物の生成の各段階は、好ましくは、希土類40〜80℃の温度で約30〜60分の時間操作され、理想的には100〜110%の範囲である化学量論量の水酸化ナトリウムが添加され、理想的には100〜130%の化学量論量の過酸化水素が投入される。
【0047】
精製沈殿物は、リサイクル又は廃棄され得る一方、次いで、希土類水酸化物沈殿物は、塩酸を用いた選択的浸出にかけられて、希土類塩化物溶液及び残渣が形成され、希土類溶液は、無視できる量のセリウムを含有し、残渣は、主として水酸化セリウム(IV)からなる。
【0048】
選択的浸出に関連して、希土類水酸化物沈殿物の選択的浸出は、塩酸が、段階1及び段階2の浸出タンク、好ましくは各段階における複数のタンクへのその添加の前に、洗練された段階1の浸出溶液を使用しておよそ10%w/wに希釈され、段階2の溶液が、段階1の浸出の前に、再パルプ化、希土類水酸化物残渣の浸出及び段階2で溶解されたセリウム(IV)の沈殿のために使用される多段階構成で行われ得る。更に、選択的浸出は、好ましくは、60〜80℃の温度で生じ、段階1の浸出は、理想的には、希土類の溶解を最大にする一方、セリウム(IV)の溶解を最小にするように操作され、これは、約pH3〜4の終点pHで達成され、段階2の浸出は、理想的には、水酸化セリウム(IV)残渣中の非セリウム希土類元素の濃度を最小にするように操作される。
【0049】
水酸化セリウム(IV)残渣は、粗セリウム生成物としてパッケージされてもよく、又は更に処理されて、より高純度のセリウム生成物が生成されてもよい。希土類塩化物溶液は、硫酸塩レベルが低い場合は硫酸と共に、塩化バリウムが投入されて、硫酸バリウムとの共沈殿によりラジウムが除去され、精製希土類塩化物溶液が形成され得る。次いで、精製希土類塩化物溶液は、必要な場合、蒸発によって濃縮され得る。
【0050】
次いで、希及び/又は濃縮精製希土類塩化物は、1種又は複数の個々の希土類元素を含有する各希土類生成物による溶媒抽出によって2種以上の異なる希土類生成物に分離され得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、本発明の方法の第1の好ましい実施形態による希土類硫酸塩の沈殿のための流れ図の概略図であり、また、希土類が豊富なリン酸カルシウムのための好ましい前処理段階及び好ましい関連するリン酸再生段階も示している。
図2図2は、好ましい後続の希土類処理段階の流れ図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
実験データを参照して本発明の好ましい実施形態のより詳細な説明を提示する前に、図1及び図2の流れ図のいくつかの説明を提供することが有用である。
【0053】
図1は、希土類硫酸塩の沈殿(セクションA)と共に、希土類が豊富なリン酸カルシウムの前処理(セクションB)及び関連するリン酸再生段階(セクションC)を示している。図2では、一連の後続の希土類処理段階(セクションD)が示される。本発明の焦点は、セクションAにおける希土類硫酸塩の沈殿であることが理解される。
【0054】
まず図1を参照すると、セクションBから開始するプロセスフローの順において、全鉱石浮遊選鉱(図示せず)によるリン酸カルシウムが豊富な鉱石を含有する希土類の選鉱の生成物である希土類が豊富なリン酸カルシウム濃縮物12からの好適な粗希土類硫酸塩溶液10の生成に種々の工程が関連していることが分かる。
【0055】
これらの前処理工程は、リン酸カルシウムを除去し、希土類が富化された前浸出残渣18、並びにリン酸一カルシウム、不純物及び少量の希土類を含有する前浸出溶液19を形成するための多段階向流構成におけるリン酸を用いた濃縮物の前浸出14、16を含む。この実施形態において、浸出14、16は、低温(典型的には30〜45℃)で操作され、各段階の滞留時間は30〜90分に維持され、全供給酸対供給濃縮物の質量比は、濃縮物中Ca 1グラム当たり酸中2〜12グラムのPで維持される。
【0056】
次いで、前浸出残渣18は、硫酸化段階において、合わせられ、濃硫酸を使用して粉砕され、酸焼成温度又はそれ未満のいずれかで最大約30分の時間、硫酸22と混合20されて、得られた混合物が、次の工程の前に完全に均質化されることを確実にする。混合物の後続の加熱24により、前浸出残渣18中の希土類は、水溶性希土類硫酸塩26に変換される。
【0057】
次いで、水溶性希土類硫酸塩26は、最大約300分間の時間にわたって、約50℃未満の温度に冷却されて、後続の水浸出28におけるその使用前に、従来通り、酸焼成物24から排出される硫酸化材料26からのほとんどの熱が除去される。
【0058】
次いで、冷却された水溶性希土類硫酸塩27は、水浸出28に供されて、希土類硫酸塩、リン酸及び任意の残留硫酸が溶液に入れられ、したがって、上で言及した粗希土類硫酸塩溶液10及び廃棄のための不溶性脈石材料を含有する水浸出残渣30が形成される。
【0059】
ここで、本発明の希硫酸塩の沈殿であるセクションAを参照すると、図1は、粗希土類硫酸塩溶液10が、水溶性揮発性有機化合物(例えばメタノール)34の存在下で沈殿に供されて、希土類硫酸塩沈殿物36及び酸性上清38が生成される硫酸塩沈殿段階32を示している。硫酸塩沈殿32は、理想的には、60〜65℃の範囲の温度、20〜40分の範囲の滞留時間で生じる。
【0060】
希土類硫酸塩沈殿物36は、続いて、図2に関連して以下で記載される更なる処理工程にかけられ、硫酸塩沈殿工程32で生成された酸性上清38もまた、有機化合物の回収及びリン酸の再生を目的とする更なる処理工程(セクションC)にかけられる。
【0061】
図1のセクションCは、したがって、回収された有機化合物34及び希混合酸溶液42の形成をもたらす、蒸留40による酸性上清38からの有機化合物の回収を示しており、回収された有機化合物34は、メタノール34としての硫酸塩沈殿工程32における使用のためにリサイクルされ、希混合酸溶液42は、蒸発による更なる濃縮44に供されて、リン酸再生段階46における使用のための濃縮混合酸溶液45が形成される。
【0062】
上で言及したリン酸前浸出14、16の後、前処理で形成されたリン酸前浸出溶液19が加熱48されて、回収溶液52を残して、溶液から少量の希土類が希土類リン酸塩50として沈殿する。見ることができる通り、次いで、希土類リン酸塩50は、上記の酸混合20及び酸焼成24の工程に戻される。リン酸前浸出溶液19の加熱48は、昇温のいくつかの段階で生じ、温度は全て60℃〜110℃の範囲であり、段階滞留時間は、60〜180分間である。
【0063】
次いで、回収溶液52は、酸再生段階46において硫酸54、及びこの実施形態ではまた濃縮混合酸溶液45を投入されて、一リン酸カルシウムが回収可能なリン酸56に変換され、廃棄され得る硫酸カルシウム沈殿物57が形成される。この酸の添加46は、約40℃の温度及び1段階につき30〜60分の滞留時間で複数の段階で行われる。回収溶液58から形成されたリン酸の一部はまた、前浸出14、16によって使用される一方、余剰のリン酸59は、システムから取り出される。
【0064】
ここで、後続の希土類処理段階を示す図2、及び流れ図の最終セクション(セクションD)を参照すると、この後続処理は、希土類硫酸塩沈殿物を洗浄及び乾燥(実際に、図1に段階60として示されている)し、続いて、洗浄及び乾燥された希土類硫酸塩沈殿物36を水中で浸出62して、可溶性希土類硫酸塩を溶解し、希土類硫酸塩が豊富な浸出溶液64及び不溶性リン酸塩の形態の不純物を含有する浸出残渣66を形成することを含む。
【0065】
次いで、不純物は、マグネシア63の添加により希土類硫酸塩浸出溶液64から沈殿68して、精製希土類硫酸塩溶液70及び精製残渣72が形成され、続いて、精製希土類硫酸塩溶液70中で希土類が、希土類水酸化物沈殿物76として沈殿74する。
【0066】
水酸化ナトリウム77は、精製希土類硫酸塩溶液70に添加されて、希土類が希土類水酸化物76として沈殿し、過酸化水素78の添加により、沈殿物に含有されるセリウムが酸化される。希土類水酸化物76の生成は、2段階向流プロセスにおいて生じ、ここで、リファイニング段階(段階2)73からの使用済み溶液71を使用し、精製希土類硫酸塩溶液70が、沈殿段階(段階1)74に供給されて、いくらかの硫酸塩を含有する粗希土類水酸化物75が沈殿し、希土類水酸化物リファイニング(段階2)73において、新しい水酸化ナトリウム77の添加により希土類硫酸塩化合物の希土類水酸化物化合物への変換が生じる。
【0067】
次いで、希土類水酸化物沈殿物76は、塩酸を用いた選択的浸出79、80、82にかけられて、希土類塩化物溶液86及び残渣88が形成され、希土類溶液86は、無視できる量のセリウムを含有し、残渣88は、主として水酸化セリウム(IV)からなる。
【0068】
希土類水酸化物沈殿物76の選択的浸出79、80、82は、塩酸が、段階1 80及び段階2 82の浸出タンク、各段階における複数のタンクへの、その添加の前に、洗練された段階1 80の浸出溶液を使用しておよそ10%w/wに希釈され、段階2 82の溶液が、段階1 80の浸出の前に、希土類水酸化物ケーキの再パルプ化及び浸出のために使用される多段階構成で行われる。
【0069】
次いで、水酸化セリウム(IV)残渣88は、粗セリウム生成物としてパッケージされる一方、希土類塩化物溶液86は、塩化バリウム90を投入されて、硫酸バリウムとの共沈殿によりラジウムが除去され、精製希土類塩化物溶液92が形成される。次いで、精製希土類塩化物溶液92は、蒸発94によって濃縮される。
【実施例】
【0070】
実験データの説明
ここで、本発明の好ましい実施形態を例示するために展開された実験データの説明に注意を向ける。
【0071】
希土類硫酸塩の沈殿
測定量の予備加熱された水浸出溶液を、蒸発損失を最小にするための還流冷却器を備える、十分にかき混ぜられた好適なバッフル付き容器中、測定量の室温のメタノールと接触させることによって、希土類硫酸塩沈殿試験を行った。得られた混合物を、特定の時間、設定温度で維持し、次いで、真空ろ過した。次いで、ろ過ケーキを、メタノールで十分に洗浄して、含有溶液を除去した後、乾燥した。
【0072】
温度の影響(試験1及び2)
2つの希土類硫酸塩沈殿試験を行って、反応温度が性能に及ぼす影響を評価した。一方の試験は、60〜65℃(試験1)で行い、他方は40〜45℃で行った。両方の試験を、同じ水浸出溶液(Table 1(表1))に対して行い、30分で、水浸出溶液1グラム当たり1グラムのメタノールと接触させた。結果をTable 2〜4(表2〜4)にまとめる。結果は、より低温で操作するほど、希土類硫酸塩と共沈殿するAl、P、Fe、Th及びUが減少したことを示している。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
接触比及び滞留時間の影響(試験3〜9)
2セットの希土類硫酸塩沈殿試験を行って、有機物対水接触比及び滞留時間が性能に及ぼす影響を評価した。第1のセットの試験では、4つ接触比(0.25、0.5、0.75及び1)を試験した(それぞれ試験3〜6)。試験3〜6の各々において、サブサンプルを、30、60及び120分の時点で収集した(サブサンプルA、B及びC)。第2のセットの試験(試験7〜9)は、第1のセットとは異なる供給溶液(Table 5(表5)参照)を使用し、接触比1で、より短い滞留時間(それぞれ10、20及び30分)を評価した。全ての試験(試験3〜9)で、有機相としてメタノールを使用し、実験は60〜65℃の温度標的で行い、実験温度範囲は55〜70℃であった。結果をTable 6〜8(表6〜8)にまとめる。
【0078】
結果は、より低い有機物対水接触比で操作するほど、希土類元素の沈殿度が減少したことを示している。結果は、希土類硫酸塩沈殿が、試験した最短の滞留時間(試験7の10分間)で効果的に完了した一方、トリウム等の不純物の沈殿は、20分までに効果的に完了し、長時間の接触で観察された更なる沈殿は無視できる量であったことを示している。
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
供給物の組成の影響(試験10〜24)
15の希土類硫酸塩沈殿試験を行って、供給物の組成変化が沈殿性能に及ぼす影響を評価した。各試験では、異なる粗希土類硫酸塩供給溶液(Table 9(表9))を使用し、1対1w/w接触比でメタノールと30分間接触させ、60〜65℃の温度標的に対して実験温度は55〜70℃の範囲であった。結果をTable 10〜12(表10〜12)にまとめており、これらから、ほとんどの試験で、鉄アルミニウム及びリン酸塩共沈殿でいくらかの変動があるものの、比較的混じりけのないな希土類硫酸塩沈殿物がもたらされたことが分かる。
【0084】
この不純物共沈殿について理解するために、各試験についての粗希土類硫酸塩供給溶液の遊離硫酸含有量を抽出し、結果をこれに従って並べた(Table 13(表13))。この遊離酸の値は、便利のために計算された値であり、供給溶液中で行われた実際の化学種同定を反映していない場合がある。遊離酸含有量は、カチオン及びアニオンのバランスを取って計算したプロトン濃度による溶液アッセイ結果から測定し及び推測した全てのカチオン及びアニオンを合計することによって決定した。次いで、全てのリン酸塩は、リン酸として存在し、残りのプロトンは硫酸に属するものであると仮定した。
【0085】
試験13について、この結果、硫酸含有量が負となったが、これは、リン酸塩が完全にはプロトン化していないか、又はアッセイがアニオンよりもカチオンに対する不確実な偏重を有するかのいずれかであることを示唆している。いずれにしても、試験13は、遊離酸が少なく、沈殿した希土類元素のうちの大きな割合がリン酸塩として沈殿した。全体として、結果は、ここで定義される通り、希土類元素のリン酸塩としての沈殿を最小にするためには、リン酸塩含有粗希土類硫酸塩溶液は、5%w/w以上の遊離H2S04を含有すべきであることを示している。
【0086】
【表9】
【0087】
【表10】
【0088】
【表11】
【0089】
【表12】
【0090】
【表13】
【0091】
リン酸の前浸出
測定量の温度制御されたリン酸溶液を、十分にかき混ぜられた好適バッフル付き容器中で、測定量の濃縮物と接触させることによって、前浸出試験を行った。得られた混合物を、特定の時間、設定温度で維持し、次いで、真空ろ過した。次いで、ろ過ケーキを、DI水で十分に洗浄して、含有溶液を除去した後、乾燥した。
【0092】
濃縮物供給変動度の影響
5つの前浸出試験を行って、供給濃縮物の組成(Table 14(表14))の変動度が前浸出の性能に対して及ぼす影響を評価した。各試験を、30℃で2時間、同じ供給酸(Table 15(表15))を使用し、濃縮物中Ca 1グラム当たり酸中8.4gのPの酸対濃縮物接触比で行った。結果をTable 16(表16)にまとめる。
【0093】
【表14】
【0094】
【表15】
【0095】
【表16】
【0096】
遊離酸の組成の影響
5つの前浸出試験を行って、供給酸の組成(Table 17(表17))の変動度が前浸出の性能に対して及ぼす影響を評価した。各試験を、30℃で2時間、同じ供給濃縮物(Table 18(表18))を使用し、供給濃縮物1グラム当たり13gの酸の酸対濃縮物接触比で行った。結果をTable 19(表19)にまとめる。
【0097】
【表17】
【0098】
【表18】
【0099】
【表19】
【0100】
連続2段階向流浸出
連続2段階前浸出回路試験(試験34)を行った。この試験について、第1の段階の固液分離のために、濃厚剤を使用した一方、第2の段階の固液分離のために、濃厚剤アンダーフローのろ過による濃化を使用した。第1の段階は、40〜45℃で操作される滞留時間30分の単一タンクを特徴とした一方、第2の段階は、30℃で操作される滞留時間30分の2つのタンクを含んだ。段階1の濃厚剤アンダーフローは、第1の段階の2つの浸出タンクにリン酸(Table 20(表20))と共に供給した。段階2の濃厚剤オーバーフローは、一次ろ液及び使用済み洗浄溶液と合わせ、次いで、段階1の浸出タンクに湿った(湿度9%)濃縮物(Table 21(表21))と共に供給した。段階1の濃厚剤オーバーフローは、段階2からの洗浄された浸出残渣ケーキとして、システムから連続して取り出した。段階1の浸出タンクに供給する濃縮物1キログラム(乾燥基準)毎に、10.6kgのリン酸を第1の段階の2つの浸出タンクに供給した。回路性能をTable 22(表22)にまとめる。
【0101】
【表20】
【0102】
【表21】
【0103】
【表22】
【0104】
希土類の回収
希土類回収試験を、還流冷却器を備える、十分にかき混ぜられた好適なバッフル付き容器中で、測定量の前浸出溶液(希土類回収供給溶液)を沸騰するまで加熱することによって行った。得られた混合物を、120分間、連続沸騰状態で維持し、次いで、真空ろ過した。次いで、ろ過ケーキを、DI水で十分に洗浄して、含有溶液を除去した後、乾燥した。
【0105】
5つの希土類回収試験を行って、供給溶液の組成(Table 23(表23))の変動度が希土類回収の性能に対して及ぼす影響を評価した。結果をTable 24及び25(表24及び25)にまとめる。
【0106】
【表23】
【0107】
【表24】
【0108】
【表25】
【0109】
リン酸の再生
連続リン酸再生回路試験を行った(試験40)。回路は、44℃で操作する滞留時間55分の単一沈殿タンク(タンク1)、続いて78分の安定化タンク(タンク2)及びバッチ式真空ろ過を特徴とし、これは、デューティ待機ろ過供給タンクによって支持され、向流洗浄で操作された。回収溶液を、混合酸と共に沈殿タンクに供給した(Table 26(表26))。再生性能を、Table 27及び29(表27及び29)にまとめる。
【0110】
【表26】
【0111】
【表27】
【0112】
【表28】
【0113】
【表29】
【0114】
酸焼成及び水浸出
測定量の硫酸を測定量の前浸出残渣と、好適な皿中で十分に混合することにより接触させることによって、酸焼成水浸出試験を行った。得られた混合物を炉に入れ、最大50分の時間をかけて250℃に昇温し、次いで、30分の時間、250℃で維持し、炉から取り出し、冷却した。次いで、冷硫酸化材料を、測定量の5℃DI水に添加し、10分間かき混ぜ、次いで、真空ろ過した。次いで、ろ過ケーキを、DI水で十分に洗浄して、含有溶液を除去した後、乾燥した。
【0115】
6つの酸焼成水浸出試験(試験41〜46)を行って、供給前浸出残渣の組成(Table 30(表30))の変動度が酸焼成水浸出の性能に及ぼす影響を評価した。各試験は、浸出残渣1トン当たり1600kgのH2S04、及び前浸出残渣1グラム当たり2.5gのDIの酸対残渣接触比で行った。結果をTable 31〜33(表31〜33)にまとめる。
【0116】
【表30】
【0117】
【表31】
【0118】
【表32】
【0119】
【表33】
【0120】
希土類硫酸塩の溶解
典型的には、40℃で120分の時間、十分にかき混ぜられた好適なバッフル付き容器中で混合することにより、測定量の乾燥希土類硫酸塩沈殿物を測定量のDI水と接触させ、次いで、真空ろ過することによって、希土類硫酸塩溶解試験を行なった。次いで、ろ過ケーキを、DI水で十分に洗浄して、含有溶液を除去した後、乾燥した。
【0121】
5つの希土類硫酸塩溶解試験(試験47〜51)を行って、供給物の組成(Table 34(表34))の変動度が溶解の性能に及ぼす影響を評価した。各試験は、供給固体1グラムあたり13グラムのDI水の水対供給固体接触比を使用して行った。試験47は、22℃で60分間の溶解により操作した一方、試験48〜51は、40℃で120分間の溶解により操作した。結果をTable 35〜37(表35〜37)にまとめる。
【0122】
【表34】
【0123】
【表35】
【0124】
【表36】
【0125】
【表37】
【0126】
希土類の精製
希土類精製試験(試験52及び53)を、オンラインpH測定を用いて終点標的pH5になるように、十分にかき混ぜられた好適なバッフル付き容器中、40℃で、マグネシアを測定量の非純粋希土類硫酸塩溶液に投入することによって行った。得られた混合物を30分の時間混合し、続いて、マグネシアを添加して、混合物を安定化させ、次いで真空ろ過した。次いで、ろ過ケーキを、DI水で十分に洗浄して、含有溶液を除去した後、乾燥した。
【0127】
2つの希土類精製試験を行って、マグネシア源(Table 38(表38))の変動度が共通供給溶液(Table 39(表39))からの希土類の精製の性能に及ぼす影響を評価した。結果をTable 40〜42(表40〜42)にまとめる。両方の試験(52及び53)において、供給溶液1トン当たり0.16kgのMgOを投入した。試験52では、マグネシアの利用率は97.3%であり、試験53ではマグネシアの利用率は91.1%であった。
【0128】
【表38】
【0129】
【表39】
【0130】
【表40】
【0131】
【表41】
【0132】
【表42】
【0133】
RE水酸化物の沈殿
試薬の影響
十分にかき混ぜられた好適なバッフル付き容器中、55℃で、測定量のマグネシア又は水酸化ナトリウムを測定量の精製希土類硫酸塩溶液に接触させることによって、希土類水酸化物沈殿試験(試験54〜56)を行なった。得られた混合物を30分の時間混合し、続いて、各投入量の試薬を添加して混合物を安定化させ、次いで、サブサンプルを収集し、真空ろ過した。サブサンプルろ過ケーキを、DI水で十分に洗浄して、含有溶液を除去した後、乾燥した。各試験について、試薬投入量の範囲をカバーする範囲のサブサンプルを収集した。サブサンプルの最終沈殿後、測定量の過酸化水素を残留スラリーに添加した。得られた混合物を30分の時間混合して、混合物を安定化させ、次いで真空ろ過した。
【0134】
希土類水酸化物沈殿試験のうちの2つ(試験54及び55)は、マグネシア源(Table 43(表43))の変動度が希土類水酸化物沈殿の性能に及ぼす影響を評価するために行った一方、3つ目の試験(試験56)では、水酸化ナトリウムの使用を評価した。3つの試験全ては、共通供給溶液(Table 44(表44))に基づいた。試薬投入量をTable 45(表45)にまとめる。結果をTable 46及び47(表46及び47)にまとめる。結果から、マグネシアの使用の結果、水酸化ナトリウムを使用した沈殿と比べて得られた沈殿物中の不純物が大幅に増加したことが分かる。更に、投入量が増加すると、硫酸塩の希土類水酸化物沈殿物への全体的な移動が減少した
【0135】
【表43】
【0136】
【表44】
【0137】
【表45】
【0138】
【表46】
【0139】
【表47】
【0140】
2段階希土類水酸化物生成
十分にかき混ぜられた好適なバッフル付き容器中、55℃で、測定量の水酸化ナトリウム(化学量論量の97%)を測定量の精製希土類硫酸塩溶液(Table 48(表48))と接触させることによって、希土類水酸化物沈殿試験(試験57)を行った。得られた混合物を30分の時間混合して、混合物を安定化させ、次いで、測定量の過酸化水素(化学量論量の117%)を添加した。得られた混合物を30分の時間混合して、混合物を安定化させ、次いで真空ろ過した。
【0141】
第2の段階について、第1の段階からの未洗浄ケーキを、DI水中、測定量の水酸化ナトリウム(第1の段階と同質量)と共に再パルプ化した。混合物を、55℃で60分間かき混ぜ、次いで、真空ろ過した。得られたケーキを洗浄した。
【0142】
結果をTable 49〜50(表49〜50)にまとめる。
【0143】
【表48】
【0144】
【表49】
【0145】
【表50】
【0146】
選択的溶解
希土類濃度の影響
一連の4つの2段階希土類水酸化物溶解試験(試験58〜61)を、十分にかき混ぜられた好適なバッフル付き容器中、70℃で、オンラインpH測定を用いて行った。各試験は、測定部の10%w/w塩酸を、DI水で再パルプ化した測定部の希土類水酸化物ケーキ(Table 51(表51))(試験58)、又は希土類塩化物溶液(試験59〜61)に投入し、続いて、30分間安定化することによって、第2の段階をシミュレートすることによって開始する。典型的には、この結果、スラリーpHがおよそ1.2〜2.2になる。次いで、各試験を、測定量の希土類水酸化物ケーキ(典型的には試験を開始するために使用したものの1.5倍)を添加し、30分間の安定化を観察し、次いで、測定部の10%w/w塩酸を投入し、続いて、30分間安定化させることによって第2の段階を終了させる。典型的には、この結果、スラリーpHがおよそ3〜4になる。次いで、試験を、真空ろ過し、続いてケーキ洗浄して終了する。
【0147】
試験59〜61は、試験58からの希土類塩化物溶液を使用し、試験59〜61に、各試験で消費される希土類水酸化物1グラム当たり2.8、5.3及び8.4gの希土類塩化物溶液をそれぞれ添加して開始した。結果をTable 52〜53(表52〜53)にまとめる。
【0148】
【表51】
【0149】
【表52】
【0150】
【表53】
【0151】
2段階選択的溶解
2段階希土類水酸化物溶解試験(試験62)を、十分にかき混ぜられた好適なバッフル付き容器中、70℃で、オンラインpH測定を用いて行った。試験を、60%の希土類水酸化物ケーキ(Table 54(表54))を、脱イオン化水中で再パルプ化し、続いて、10%w/w塩酸を、pH2(サンプル1)、次いでpH1(サンプル2)のオンラインpH標的に制御投入することによって開始した。pH1では、全ての希土類水酸化物沈殿物が溶解した。次いで、残りの40%の希土類水酸化物ケーキを添加し、混合物を、30分間、かき混ぜながら安定化させた(サンプル3)。次いで、酸の制御添加を、pH3(サンプル4)、pH2(サンプル5)及びpH1(サンプル6)まで再開した。この時間、希土類水酸化物ケーキは、完全には溶解しなかった。最終スラリーを、更に50分間かき混ぜた後、最終サンプル(サンプル7)を収集した。各時間の酸投入及びオンラインpH標的への到達後、得られた混合物を、少なくとも15分混合した後、サンプルを収集した。サブサンプルを真空ろ過し、続いてケーキ洗浄した。
【0152】
結果をTable 55〜57(表55〜57)にまとめる。結果から、サンプル2により、希土類水酸化物中の全てのセリウムが完全に溶解したにも関わらず、更なる希土類水酸化物の添加は、再沈殿を引き起こし、サンプル4(標的pH3、安定化後の到達pH3.2)により、溶液中のセリウムの濃度は、検出限界未満であった。このことは、この試験において、セリウムがセリウムIVとして溶解したことを示している。
【0153】
【表54】
【0154】
【表55】
【0155】
【表56】
【0156】
【表57】
【0157】
当業者であれば、具体的に記載されるもの以外の変形及び修正が存在し得ることを理解するであろう。本発明は、全てのそのような変形及び修正を包含することが理解される。本発明はまた、本明細書において、個々に又はまとめて言及又は示される全ての工程、特徴、組成物及び化合物、並びに工程又は特徴のうちの任意の2つ以上の任意の及び全ての組合せを包含する。
【符号の説明】
【0158】
10 粗希土類硫酸塩溶液
12 希土類が豊富なリン酸カルシウム濃縮物
14、16 前浸出
18 前浸出残渣
19 前浸出溶液
20 酸混合
22、54 硫酸
24 酸焼成
26、27 水溶性希土類硫酸塩
28 水浸出
30 水浸出残渣
32 硫酸塩沈殿段階
34 水溶性揮発性有機化合物
36 希土類硫酸塩沈殿物
38 酸性上清
40 蒸留
42 希混合酸溶液
44 濃縮
45 混合酸溶液
46 リン酸再生段階、酸の添加
48 希土類回収
50 希土類リン酸塩
52、58 回収溶液
56 リン酸
57 硫酸カルシウム沈殿物
60 希土類硫酸塩乾燥
62 浸出、溶解
63 マグネシア
64 浸出溶液
65 固液分離
66 残渣
68 硫酸塩精製、沈殿
70 精製希土類硫酸塩溶液
71 廃溶液
72 精製残渣
73 リファイニング
74 沈殿
75 粗希土類水酸化物
76 希土類水酸化物沈殿物
77 水酸化ナトリウム
78 酸化剤
79、80、82 選択的浸出、溶解
86 希土類塩化物溶液
88 水酸化セリウム(IV)残渣
90 塩化バリウム
92 精製希土類塩化物溶液
94 蒸発、濃縮
図1
図2
【国際調査報告】