特表2021-529560(P2021-529560A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-529560ハイブリッド培地においてユーグレナ属(Euglena)を従属栄養培養するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-529560(P2021-529560A)
(43)【公表日】2021年11月4日
(54)【発明の名称】ハイブリッド培地においてユーグレナ属(Euglena)を従属栄養培養するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20211008BHJP
【FI】
   C12N1/12
   C12N1/12 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】81
(21)【出願番号】特願2021-523107(P2021-523107)
(86)(22)【出願日】2019年6月28日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月5日
(86)【国際出願番号】IB2019055524
(87)【国際公開番号】WO2020003243
(87)【国際公開日】20200102
(31)【優先権主張番号】62/692,528
(32)【優先日】2018年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】521000666
【氏名又は名称】ノーブルジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】リュー ユアン
(72)【発明者】
【氏名】キューネ アレクサンドラ マーガレット
(72)【発明者】
【氏名】ノーブル アダム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】モリソン エリン ニコル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA83X
4B065AA84X
4B065AC09
4B065BB04
4B065BB15
4B065BB16
4B065BB17
4B065BB18
4B065BB35
4B065BC25
4B065CA41
4B065CA60
(57)【要約】
本願は、ユーグレナ属(Euglena)の種の微生物、シゾキトリウム属(Schizochytrium)の種の微生物、またはクロレラ属(Chlorella)の種の微生物を培養する方法であって、微生物を、ハイブリッド培養培地中で培養する工程;微生物を、実質的に光が無い環境で、従属栄養的に維持する工程を含み、ハイブリッド培養培地が炭水化物を含み、ハイブリッド培養培地が新鮮培地とリサイクル培養培地とを含む、方法、を開示する。本願はまた、ハイブリッド培養培地も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーグレナ属(Euglena)の種の微生物、シゾキトリウム属(Schizochytrium)の種の微生物、またはクロレラ属(Chlorella)の種の微生物を培養する方法であって、
微生物を、ハイブリッド培養培地中で培養する工程;
微生物を、実質的に光が無い環境または全く光が無い環境で、従属栄養的に維持する工程
を含み、
ハイブリッド培養培地が炭素供給源、任意で炭水化物を含み、
ハイブリッド培養培地が新鮮培地とリサイクル培養培地とを含む、方法。
【請求項2】
微生物が、約1x105細胞/mL〜約5x107細胞/mLで接種される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
微生物が、約0.5g/L〜約150g/Lの細胞乾燥重量で接種される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
リサイクル培養培地が、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、供給源培養培地が、誘導期、対数期、または定常期にある、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
微生物が、約4時間〜約350時間増殖される、または約75日まで増殖される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
微生物が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50サイクルにわたって増殖される、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
バッチ、フェドバッチ、半連続、または連続である、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
フェドバッチ、半連続、または連続である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
半連続または連続である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
リサイクル培養培地が、誘導期、対数期、または定常期でハイブリッド培養培地に添加される、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
リサイクル培養培地が、培養培地、供給培地、使用済み培地、補充済み培地、およびその組み合わせからなる群より選択され、任意で、使用済み培地または補充済み培地である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
微生物が、誘導期、対数期、または定常期で回収される、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
回収された微生物が培地から分離され、該培地が培養物に戻されてリサイクルされる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
培養物に戻されてリサイクルされる培地が、使用済み培地である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
使用済み培地が、約3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01g/Lより少ない全炭水化物を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
炭水化物が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、および/またはコーンシロップである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
使用済み培地の約10%〜約75%、任意で約25%〜約75%、任意で約50%〜約75%、任意で約75%が培養物に戻される、請求項14〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
微生物が、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)、ユーグレナ・サングイネア(Euglena sanguinea)、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)、ユーグレナ・ムタビリス(Euglena mutabilis)、ユーグレナ・アクス(Euglena acus)、ユーグレナ・ビルディス(Euglena virdis)、ユーグレナ・アナバエナ(Euglena anabaena)、ユーグレナ・ゲニクラタ(Euglena geniculata)、ユーグレナ・オキシウリス(Euglena oxyuris)、ユーグレナ・プロキシマ(Euglena proxima)、ユーグレナ・トリプテリス(Euglena tripteris)、ユーグレナ・クラミドフォラ(Euglena chlamydophora)、ユーグレナ・スプレンデンス(Euglena splendens)、ユーグレナ・テキシタ(Euglena texta)、ユーグレナ・インターメディア(Euglena intermedia)、ユーグレナ・ポリモルファ(Euglena polymorpha)、ユーグレナ・エレンベルギ(Euglena ehrenbergii)、ユーグレナ・アドハエレンス(Euglena adhaerens)、ユーグレナ・クララ(Euglena clara)、ユーグレナ・エロンガタ(Euglena elongata)、ユーグレナ・エラスティカ(Euglena elastica)、ユーグレナ・オブロンガ(Euglena oblonga)、ユーグレナ・ピシフォルミス(Euglena pisciformis)、ユーグレナ・カンタブリカ(Euglena cantabrica)、ユーグレナ・グラヌラタ(Euglena granulata)、ユーグレナ・オブツサ(Euglena obtusa)、ユーグレナ・リムノフィラ(Euglena limnophila)、ユーグレナ・ヘミクロマタ(Euglena hemichromata)、ユーグレナ・バリアビリス(Euglena variabilis)、ユーグレナ・カウダタ(Euglena caudata)、ユーグレナ・ミニマ(Euglena minima)、ユーグレナ・コムニス(Euglena communis)、ユーグレナ・マグニフィカ(Euglena magnifica)、ユーグレナ・テリコラ(Euglena terricola)、ユーグレナ・ベラタ(Euglena velata)、ユーグレナ・レプルサンス(Euglena repulsans)、ユーグレナ・クラバタ(Euglena clavata)、ユーグレナ・ラタ(Euglena lata)、ユーグレナ・ツベルクラタ(Euglena tuberculata)、ユーグレナ・コンタブリカ(Euglena contabrica)、ユーグレナ・アスカスフォルミス(Euglena ascusformis)、ユーグレナ・オステンデンシス(Euglena ostendensis)、クロレラ・アウトトロフィカ(Chlorella autotrophica)、クロレラ・コロニアルス(Chlorella colonials)、クロレラ・レウィニ(Chlorella lewinii)、クロレラ・ミヌチシマ(Chlorella minutissima)、クロレラ・ピツイタ(Chlorella pituita)、クロレラ・プルケロイデス(Chlorella pulchelloides)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、クロレラ・ロツンダ(Chlorella rotunda)、クロレラ・シングラリス(Chlorella singularis)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)、クロレラ・バリアビリス(Chlorella variabilis)、クロレラ・ボルティス(Chlorella volutis)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、シゾキトリウム・アグレガタム(Schizochytrium aggregatum)、シゾキトリウム・リマシヌム(Schizochytrium limacinum)、シゾキトリウム・ミヌタム(Schizochytrium minutum)、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
光栄養培養を含まない、請求項1〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
ハイブリッド培地の滅菌を含まない、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
微生物がユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法が、約0.05nmol/mL〜約100nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約75nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約50nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約40nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約35nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約30nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約25nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約20nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約15nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約10nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約5nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約4nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約3nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約2.5nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約2nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約1.5nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約1nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約0.5nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約0.1nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約25nmol/mLのサイトカイニンを産生する、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
微生物がユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法が約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLのABAを産生する、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
微生物がユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法が、約0.000005g/L〜約20g/Lの、クエン酸、クエン酸塩、フマル酸、フマル酸塩、リンゴ酸、リンゴ酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、コハク酸、コハク酸塩、酢酸、酢酸塩、乳酸、乳酸塩、およびその組み合わせからなる群より選択される有機酸を産生する、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
培養培地が、約2.5〜約5、任意で約2.5〜約4のpHで維持される、請求項1〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
培養培地が、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の相対変換効率を維持する、請求項1〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
ユーグレナ属の種の微生物、シゾキトリウム属の種の微生物、またはクロレラ属の種の微生物を従属栄養培養するのに適したリサイクル培養培地を産生するための方法であって、
微生物を、炭水化物を含む培養培地中で培養する工程;
実質的に光が無い環境または全く光が無い環境を維持する工程;
リサイクル培養培地を産生する工程;
リサイクル培養培地を細胞から分離する工程;および
リサイクル培養培地を収集する工程
を含み、
炭水化物が3g/Lを下回るまで微生物が培養され、
微生物がユーグレナ・グラシリスであり、
リサイクル培養培地が、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、
供給源培養培地が、誘導期、対数期、または定常期にあり、
供給源培養培地が、ハイブリッド培養培地またはストック培養培地である、方法。
【請求項27】
リサイクル培養培地が、約3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.01g/Lより少ない全炭水化物を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
炭水化物が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップ、またはその組み合わせである、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
ハイブリッド培養培地を含む培養培地であって、ハイブリッド培養培地が炭水化物を含み、ハイブリッド培養培地が新鮮培地とリサイクル培養培地とを含む、培養培地。
【請求項30】
炭水化物が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップ、またはその組み合わせである、請求項29記載の培養培地。
【請求項31】
約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLのサイトカイニンを含む、請求項29または30記載の培養培地。
【請求項32】
約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLのABAを含む、請求項29〜31のいずれか一項記載の培養培地。
【請求項33】
約0.000005g/L〜約20g/Lの、クエン酸、クエン酸塩、フマル酸、フマル酸塩、リンゴ酸、リンゴ酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、コハク酸、コハク酸塩、酢酸、酢酸塩、乳酸、乳酸塩、およびその組み合わせからなる群より選択される有機酸を含む、請求項29〜32のいずれか一項記載の培養培地。
【請求項34】
ハイブリッド培養培地が、約10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または99.99%のリサイクル培養培地を含む、請求項29〜33のいずれか一項記載の培養培地。
【請求項35】
微生物を培養するための、請求項29〜34のいずれか一項記載の方法によって産生された培養培地の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本願は、ユーグレナ属(Euglena)を従属栄養培養するための方法に関する。例えば、本願は、ユーグレナ属を従属栄養的に増殖させるための方法、およびユーグレナ属を従属栄養的に増殖させるためのハイブリッド培養培地の使用、に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)は、実験室での研究においてモデル種として用いられ、バイオ燃料、食料、および飲料製品の製造において産業用途もある単細胞微細藻類の一群に属する。ユーグレナ属には、ミトコンドリア、核、およびリソソームなどの真核細胞に特有の代表的な特徴がある(Gomez et al., 「Studies of Euglena gracilis in Aging Cultures. I. Light Microscopy and Cytochemistry」, Br. Phycol. J. 9:163-74 (1974)(非特許文献1); Kings et al., 「Growth Studies on Microalgae Euglena sanguinea in Various Natural Eco-Friendly Composite Media to Optimize the Lipid Productivity」, Bioresour. Technol. 244:1349-57 (2017)(非特許文献2))。さらにユーグレナ属は、その長い鞭毛と大きな赤色の眼点によって特徴付けることができる(Kings et al., 「Growth Studies on Microalgae Euglena sanguinea in Various Natural Eco-Friendly Composite Media to Optimize the Lipid Productivity」, Bioresour. Technol. 244:1349-57 (2017)(非特許文献2))。ユーグレナ属は植物と同様に自身の栄養分を産生することができ(独立栄養)、動物のように外部食物源を取り入れることができるので(従属栄養)、他とは異なる(Gomez et al.,「Studies of Euglena gracilis in Aging Cultures. I. Light Microscopy and Cytochemistry」, Br. Phycol. J. 9:163-74 (1974)(非特許文献1))。一方または両方の栄養状態を用いる天然の能力を最適化することにより、産生プロセスの重要なパラメータを調節することで標的化合物を産生するようにユーグレナ属を仕向ける場合がある(Acien Fernandez et al., 「Photobioreactors: Light Regime, Mass Transfer, and Scaleup」, Progress in Industrial Microbiology 35:231-47 (1999)(非特許文献3))。これらの調節を用いて、老廃物の産生を最小限にしながら迅速な増殖を促進するようにインプット栄養源の変換効率を改善する可能性がある。
【0003】
老廃物の産生を軽減し、費用を削減する可能性がある、従属栄養培養で微細藻類を増殖させるための栄養素および培地の再利用が示唆されている(Lowrey et al., 「Nutrient and Media Recycling in Heterotrophic Microalgea Cultures」, Appl. Microbiol. Biotechnol. 100(3):1061-75 (2016)(非特許文献4))。しかしながら、微細藻類に悪影響を及ぼす可能性がある、重金属、フェノール、脂肪酸、およびアンモニアなどの阻害化合物の形成を含めて、従属栄養微細藻類の栄養素再利用に関連する多くの技術的課題および実用上の課題がある(Lowrey et al., 「Nutrient and Media Recycling in Heterotrophic Microalgea Cultures」, Appl. Microbiol. Biotechnol. 100(3):1061-75 (2016)(非特許文献4))。さらに、リサイクル培養培地の一般に認められている技術的な滅菌工程が追加費用を招き、それどころか、「老廃物」の熱滅菌が微細藻類増殖に有害な不要な化合物を生じることさえある(Lowrey et al., 「Nutrient and Media Recycling in Heterotrophic Microalgea Cultures」, Appl. Microbiol. Biotechnol. 100(3):1061-75 (2016)(非特許文献4))。
【0004】
興味深いことに、植物ホルモンは細胞シグナル伝達と細胞増殖に関与するので、培養物の健康状態の指標になり得る。従来より、植物ホルモンは植物の成長制御因子だと考えられているが、細菌、菌類、哺乳動物、および藻類においても発見されている。微細藻類は、高等植物と等価な、機能的であるが、比較的簡単な植物ホルモン生合成経路を有する。微細藻類では、植物ホルモンは、細胞分裂または伸長を含む細胞発生と、クロロフィルおよびタンパク質代謝において調節的な役割を果たすように見える(Pei et al., 「Toward Facilitating Microalgae Cope With Effluent from Anaerobic Digestion of Kitchen Waste: the Art of Agricultural Phytohormones」, Biotech Biofuels 10:76 (2017)(非特許文献5))。植物ホルモンは、好ましくない条件に対処するために藻類を刺激してストレスに対する耐性を高める可能性がある(Pei et al., 「Toward Facilitating Microalgae Cope With Effluent from Anaerobic Digestion of Kitchen Waste: the Art of Agricultural Phytohormones」 Biotech Biofuels 10:76 (2017)(非特許文献5))。植物ホルモンまたはホルモン類似体は、藻類増殖および代謝産物生合成の促進において有益な可能性がある培養添加物だと強調されている(Liu et al., 「The Boosted Biomass and Lipid Accumulation in Chlorella vulgaris by Supplementation of Synthetic Phytohormone Analogs」, Bioresource Technol. 232:44-52 (2017)(非特許文献6); Han et al., 「Phytohormone and Effects on Growth and Metabolites of Microalgae: A Review」, Fermentation 4(2):25 (2018)(非特許文献7))。ユーグレナ・グラシリス培養細胞のリサイクル培地の中に植物ホルモンと正の増殖制御因子が検出されたことは、連続培養での使用の機会と、藻類ならびに植物系の増殖を強化するものとしての潜在的な使用の機会があることを示している。
【0005】
サイトカイニン(CK)およびアブシジン酸(ABA)は、低濃度で存在し、かつ藻類の増殖および発生に影響を及ぼすことができる、構造が異なる分子である(Han et al., 「Phytohormone and Effects on Growth and Metabolites of Microalgae: A Review」, Fermentation 4(2):25 (2018)(非特許文献7))。藻類では、CKは細胞周期を活性化し、カロテノイド、脂質、炭水化物、およびタンパク質を含む代謝産物の産生にも影響を及ぼす(Salama et al., 「Enhancement of Microalgae Growth and Fatty Acid Content Under the Influence of Phytohormone 」 Bioresource Technology 172:97-103 (2014)(非特許文献8); Han et al., 「Phytohormone and Effects on Growth and Metabolites of Microalgae: A Review」 Fermentation 4(2):25 (2018)(非特許文献7))。ABAは増殖阻害剤として、ストレス耐性を誘導する刺激として役立つ(Han et al., 「Phytohormone and Effects on Growth and Metabolites of Microalgae: A Review」 Fermentation 4(2):25 (2018)(非特許文献7))。微細藻類においてABAはバイオマス産生、カロテノイド産生(carotenogenesis)、および脂質生合成を増やすことが見出されている(Kozlova et al., 「Effect of Phytohormones on Growth and Accumulation of Pigments and Fatty Acids in the Microalgae Scenedesmus quadricauda」 Algal Research 27:325-34 (2017)(非特許文献9))。植物ホルモンは微細藻類の細胞増殖と最終産物の生合成を両方とも同時に促進することができる(Kozlova et al., 「Effect of Phytohormones on Growth and Accumulation of Pigments and Fatty Acids in the Microalgae Scenedesmus quadricauda」, Algal Research 27:325-34 (2017)(非特許文献9))。微細藻類植物ホルモンの代謝ネットワークおよび調節ネットワークについての知識は微細藻類の培養および応用のための新たな機会を与える(Liu et al., 「Extracellular Metabolites from Industrial Microalgae and Their Biotechnological Potential」, Mar. Drugs 14(10):191 (2016)(非特許文献10))。
【0006】
本発明は、これらの不備および当技術分野にける他の不備を克服することに向けられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gomez et al., 「Studies of Euglena gracilis in Aging Cultures. I. Light Microscopy and Cytochemistry」, Br. Phycol. J. 9:163-74 (1974)
【非特許文献2】Kings et al., 「Growth Studies on Microalgae Euglena sanguinea in Various Natural Eco-Friendly Composite Media to Optimize the Lipid Productivity」, Bioresour. Technol. 244:1349-57 (2017)
【非特許文献3】Acien Fernandez et al., 「Photobioreactors: Light Regime, Mass Transfer, and Scaleup」, Progress in Industrial Microbiology 35:231-47 (1999)
【非特許文献4】Lowrey et al., 「Nutrient and Media Recycling in Heterotrophic Microalgea Cultures」, Appl. Microbiol. Biotechnol. 100(3):1061-75 (2016)
【非特許文献5】Pei et al., 「Toward Facilitating Microalgae Cope With Effluent from Anaerobic Digestion of Kitchen Waste: the Art of Agricultural Phytohormones」, Biotech Biofuels 10:76 (2017)
【非特許文献6】Liu et al., 「The Boosted Biomass and Lipid Accumulation in Chlorella vulgaris by Supplementation of Synthetic Phytohormone Analogs」, Bioresource Technol. 232:44-52 (2017)
【非特許文献7】Han et al., 「Phytohormone and Effects on Growth and Metabolites of Microalgae: A Review」, Fermentation 4(2):25 (2018)
【非特許文献8】Salama et al., 「Enhancement of Microalgae Growth and Fatty Acid Content Under the Influence of Phytohormone 」 Bioresource Technology 172:97-103 (2014)
【非特許文献9】Kozlova et al., 「Effect of Phytohormones on Growth and Accumulation of Pigments and Fatty Acids in the Microalgae Scenedesmus quadricauda」 Algal Research 27:325-34 (2017)
【非特許文献10】Liu et al., 「Extracellular Metabolites from Industrial Microalgae and Their Biotechnological Potential」, Mar. Drugs 14(10):191 (2016)
【発明の概要】
【0008】
概要
従って、本願は、ユーグレナ属の種の微生物、シゾキトリウム属(Schizochytrium)の種の微生物、またはクロレラ属(Chlorella)の種の微生物を培養する方法であって、
微生物を、ハイブリッド培養培地中で培養する工程;
微生物を、実質的に光が無い環境で、従属栄養的に維持する工程
を含み、
ハイブリッド培養培地が、炭素供給源、任意で炭水化物を含み、
ハイブリッド培養培地が、新鮮培地とリサイクル培養培地とを含む、方法、を含む。
【0009】
一態様では、微生物は約1x105細胞/mL〜約5x107細胞/mLで接種される。
【0010】
一態様では、微生物は約0.5g/L〜約150g/Lの細胞乾燥重量で接種される。
【0011】
別の態様では、リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地(source culture media)から分離することによって得られ、供給源培養培地は、誘導期、対数期、または定常期にある。
【0012】
別の態様では、微生物は、約4時間〜約350時間増殖される、または約75日まで増殖される。
【0013】
別の態様では、微生物は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50サイクルにわたって増殖される。
【0014】
別の態様では、前記方法は、バッチ、フェドバッチ、半連続、または連続である。
【0015】
別の態様では、前記方法は、フェドバッチ、半連続、または連続である。
【0016】
別の態様では、前記方法は、半連続または連続である。
【0017】
別の態様では、リサイクル培養培地は、誘導期、対数期、または定常期でハイブリッド培養培地に添加される。
【0018】
別の態様では、リサイクル培養培地は、培養培地、供給培地(feed media)、使用済み培地培地、補充済み培地、およびその組み合わせからなる群より選択され、任意で、使用済み培地または補充済み培地である。
【0019】
別の態様では、微生物は、誘導期、対数期、または定常期で回収される。
【0020】
別の態様では、回収された微生物は培地から分離され、培地は培養物に戻してリサイクルされる。
【0021】
別の態様では、培養物に戻してリサイクルされる培地は、使用済み培地である。
【0022】
別の態様では、使用済み培地は、約3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.01g/Lより少ない全炭水化物を含む。
【0023】
別の態様では、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、および/またはコーンシロップである。
【0024】
別の態様では、使用済み培養培地またはリサイクル培養培地の約10%〜約75%、任意で約25%〜約75%、任意で約50%〜約75%、任意で約75%は、培養物に戻される。
【0025】
別の態様では、微生物は、ユーグレナ・グラシリス、ユーグレナ・サングイネア(Euglena sanguinea)、ユーグレナ・デセス(Euglena deses)、ユーグレナ・ムタビリス(Euglena mutabilis)、ユーグレナ・アクス(Euglena acus)、ユーグレナ・ビルディス(Euglena virdis)、ユーグレナ・アナバエナ(Euglena anabaena)、ユーグレナ・ゲニクラタ(Euglena geniculata)、ユーグレナ・オキシウリス(Euglena oxyuris)、ユーグレナ・プロキシマ(Euglena proxima)、ユーグレナ・トリプテリス(Euglena tripteris)、ユーグレナ・クラミドフォラ(Euglena chlamydophora)、ユーグレナ・スプレンデンス(Euglena splendens)、ユーグレナ・テキシタ(Euglena texta)、ユーグレナ・インターメディア(Euglena intermedia)、ユーグレナ・ポリモルファ(Euglena polymorpha)、ユーグレナ・エレンベルギ(Euglena ehrenbergii)、ユーグレナ・アドハエレンス(Euglena adhaerens)、ユーグレナ・クララ(Euglena clara)、ユーグレナ・エロンガタ(Euglena elongata)、ユーグレナ・エラスティカ(Euglena elastica)、ユーグレナ・オブロンガ(Euglena oblonga)、ユーグレナ・ピシフォルミス(Euglena pisciformis)、ユーグレナ・カンタブリカ(Euglena cantabrica)、ユーグレナ・グラヌラタ(Euglena granulata)、ユーグレナ・オブツサ(Euglena obtusa)、ユーグレナ・リムノフィラ(Euglena limnophila)、ユーグレナ・ヘミクロマタ(Euglena hemichromata)、ユーグレナ・バリアビリス(Euglena variabilis)、ユーグレナ・カウダタ(Euglena caudata)、ユーグレナ・ミニマ(Euglena minima)、ユーグレナ・コムニス(Euglena communis)、ユーグレナ・マグニフィカ(Euglena magnifica)、ユーグレナ・テリコラ(Euglena terricola)、ユーグレナ・ベラタ(Euglena velata)、ユーグレナ・レプルサンス(Euglena repulsans)、ユーグレナ・クラバタ(Euglena clavata)、ユーグレナ・ラタ(Euglena lata)、ユーグレナ・ツベルクラタ(Euglena tuberculata)、ユーグレナ・コンタブリカ(Euglena contabrica)、ユーグレナ・アスカスフォルミス(Euglena ascusformis)、ユーグレナ・オステンデンシス(Euglena ostendensis)、クロレラ・アウトトロフィカ(Chlorella autotrophica)、クロレラ・コロニアルス(Chlorella colonials)、クロレラ・レウィニ(Chlorella lewinii)、クロレラ・ミヌチシマ(Chlorella minutissima)、クロレラ・ピツイタ(Chlorella pituita)、クロレラ・プルケロイデス(Chlorella pulchelloides)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、クロレラ・ロツンダ(Chlorella rotunda)、クロレラ・シングラリス(Chlorella singularis)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)、クロレラ・バリアビリス(Chlorella variabilis)、クロレラ・ボルティス(Chlorella volutis)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、シゾキトリウム・アグレガタム(Schizochytrium aggregatum)、シゾキトリウム・リマシヌム(Schizochytrium limacinum)、シゾキトリウム・ミヌタム(Schizochytrium minutum)、およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0026】
別の態様では、前記方法は光栄養培養を含まない。
【0027】
別の態様では、前記方法はハイブリッド培地の滅菌を含まない。
【0028】
別の態様では、微生物はユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法は、約0.01pmol/mL〜約100nmol/mL、任意で2nmol/mL〜約100nmol/mLのサイトカイニン、任意で約2nmol/mL〜約50nmol/mLのサイトカイニン、任意で約2nmol/mL〜約25nmol/mLのサイトカイニン、任意で約2nmol/mL〜約15nmol/mLのサイトカイニンを産生する。
【0029】
別の態様では、微生物はユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法は、約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.01pmol/mL〜約0.25nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.01pmol/mL〜約0.50nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.01pmol/mL〜約0.75nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.01pmol/mL〜約1nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.01pmol/mL〜約1.5nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.01pmol/mL〜約2nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.01pmol/mL〜約30nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.01pmol/mL〜約50nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約75nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約50nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約40nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約35nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約30nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約25nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約20nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約15nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約10nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約5nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約4nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約3nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約2.5nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約2nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約1.5nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約1nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約0.5nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約0.1nmol/mLのサイトカイニン、任意で約0.05nmol/mL〜約25nmol/mLのサイトカイニンを産生する。
【0030】
別の態様では、微生物はユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法は約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLのABAを産生する。
【0031】
別の態様では、微生物はユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法は、約0.000005g/L〜約20g/Lの、クエン酸、クエン酸塩、フマル酸、フマル酸塩、リンゴ酸、リンゴ酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、コハク酸、コハク酸塩、酢酸、酢酸塩、乳酸、乳酸塩、およびその組み合わせからなる群より選択される有機酸を産生する。
【0032】
別の態様では、培養培地は、約2.5〜約5、任意で約2.5〜約4のpHで維持される。
【0033】
別の態様では、培養培地は、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の相対変換効率を維持する。
【0034】
ユーグレナ属の種の微生物、シゾキトリウム属の種の微生物、またはクロレラ属の種の微生物を従属栄養培養するのに適したリサイクル培養培地を産生するための方法であって、
微生物を、炭水化物を含む培養培地中で培養する工程;
実質的に光が無い環境または全く光が無い環境を維持する工程;
リサイクル培養培地を産生する工程;
リサイクル培養培地を細胞から分離する工程;および
リサイクル培養培地を収集する工程
を含み、
炭水化物が3g/Lを下回るまで微生物が培養され、
微生物がユーグレナ・グラシリスであり、
リサイクル培養培地が、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、
供給源培養培地が、誘導期、対数期、または定常期にあり、
供給源培養培地が、ハイブリッド培養培地またはストック培養培地である、方法、もまた提供される。
【0035】
別の態様では、リサイクル培養培地は、約3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.01g/Lより少ない全炭水化物を含む。別の態様では、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップ、またはその組み合わせである。
【0036】
ハイブリッド培養培地を含む培養培地であって、ハイブリッド培養培地が炭水化物を含み、ハイブリッド培養培地が新鮮培地とリサイクル培養培地とを含む、培養培地、もまた提供される。別の態様では、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップ、またはその組み合わせである。別の態様では、培養培地は、約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLのサイトカイニン、および/または約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLのABAを含む。植物ホルモン供給源は、培地供給源ならびにユーグレナ属バイオマスからの産出物および排出物を含む。別の態様では、培養培地は、約0.000005g/L〜約20g/Lの、クエン酸、クエン酸塩、フマル酸、フマル酸塩、リンゴ酸、リンゴ酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、コハク酸、コハク酸塩、酢酸、酢酸塩、乳酸、乳酸塩、およびその組み合わせからなる群より選択される有機酸を含む。別の態様では、ハイブリッド培養培地は、約10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または99.99%の使用済み培地またはリサイクル培養培地を含む。
【0037】
微生物を培養するための、本明細書に記載の方法によって産生された、培養培地、使用済み培地、リサイクル培養培地、補充済み培地、またはハイブリッド培養培地の使用も提供される。一態様では、微生物はユーグレナ属の種である。一態様では、ユーグレナ属の種はユーグレナ・グラシリスである。
【0038】
本願の他の特徴および利点は以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明および具体的な実施例は本願の態様を示すと同時に単に例示として示され、クレームの範囲はこれらの態様によって限定されてはならず、この説明全体と一致する最も広い解釈がなされるべきだと理解しなければならない。さらに、本発明のある特定の局面、特徴、態様、またはパラメータの好みおよび選択肢は、文脈によって定められていない限り、本発明の他の全ての局面、特徴、態様、およびパラメータの任意のおよび全ての好みおよび選択肢と組み合わされて開示されていると考えなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
今から、図面を参照して本願をさらに詳細に説明する。
【0040】
図1】対照培地および再利用率(Recycle Rate)培地A〜Cの実験デザインを示す。
図2】異なるリサイクル培養培地率について(図2A)細胞湿重量および(図2B)細胞乾燥重量を示す。3つの異なる再利用率(A〜C)を経時的(時間)に試験し、新鮮培地対照(対照:100%)と比較した。各時点は増殖サイクル(すなわち、サイクル1〜4、48〜264時間)を表す。図2Aは細胞湿重量値を示し、図2Bは細胞乾燥重量値を示す。
図3】上清乾燥重量を示す。3つの異なる再利用率(率A〜C)を経時的(時間)に試験し、新鮮培地対照(対照:100%)と比較した。各時点は増殖サイクル(すなわち、サイクル1〜4、48〜264時間)を表す。乾燥上清重量は、培地に残された残存する溶質を表す。
図4】細胞数を経時的(サイクル)に示す。3つの異なる再利用率(率A〜C)を経時的(時間)に試験し、新鮮培地対照(対照:100%)と比較した。各時点は増殖サイクル(すなわち、サイクル1〜4、48〜264時間)を表す。
図5】異なるリサイクル培養培地率の(図5A)糖消費および(図5B)pHの追跡を示す。3つの異なる再利用率(A〜B)を経時的(時間)に試験し、新鮮培地対照(対照:100%)と比較した。各時点は増殖サイクル(すなわち、サイクル1〜4、48〜264時間)を表す。図5Aは、それぞれのサイクルのグルコース消費を示す。図5Bは、それぞれの率およびサイクルのpH変化を示す。
図6】異なる試料中でのアブシジン酸(ABA)ホルモンレベルを示す。図6Aは、培地ブランク中のABAレベルを示す。図6Bは、異なる試験条件、すなわち、対照(Ctrl、100%新鮮培地)、再利用率A(A、ハイブリッド培養培地-25%)、再利用率B(B、ハイブリッド培養培地-50%)、および再利用率C(C、ハイブリッド培養培地-75%)でのサイクル1におけるABAレベルを示す。図6Cは、最後のサイクル、サイクル4の間のABAレベルを表す。
図7】培地ブランク中の全サイトカイニンレベルを示す。図7Aは、培地ブランク中の全サイトカイニンレベルを示す。図7Bは、培地ブランク中のサイトカイニンのタイプを示す。FBは遊離塩基を表す。RBはリボシドを表す。NTはヌクレオチドを表す。Metはメチルチオールを表す。Glucsはグルコシドを表す。
図8】全ての再利用率における上清中の全サイトカイニン(CK)レベルを示す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。各CKの濃度をy軸にpmol/mLで示した。図8Aは、サイクル1の開始時(DPI0)および終了時(DPI2)のCK全レベルを表す。図8Bは、サイクル4の開始時(DPI0)および終了時(DPI2)のCK全レベルを表す。
図9】様々な再利用率の上清中に検出されたサイトカイニン(CK)型を示す(表2および表3を参照されたい)。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。各CKの濃度をy軸にpmol/mLで示した。図9Aは、サイクル1の開始時(DPI0)および終了時(DPI2)のCK型を表す。図9Bは、サイクル4の開始時(DPI0)および終了時(DPI2)のCK型を表す。FBは遊離塩基を表す。RBはリボシドを表す。NTはヌクレオチドを表す。Metはメチルチオールを表す。Glucはグルコシドを表す。
図10】様々な再利用率のペレット中に検出された全サイトカイニンレベルを示す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。各CKの濃度をy軸にpmol/gで示した。図10Aは、サイクル1の開始時(DPI0)および終了時(DPI2)のCK全レベルを表す。図10Bは、サイクル4の開始時(DPI0)および終了時(DPI2)のCK全レベルを表す。FBは遊離塩基を表す。
図11】様々な再利用率のペレット中に検出されたサイトカイニン型を示す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。各CKの濃度をy軸にpmol/gで示した。図11Aは、サイクル1の開始時(DPI0)および終了時(DPI2)のCK型を表す。図11Bは、サイクル4の開始時(DPI0)および終了時(DPI2)のCK型を表す。FBは遊離塩基を表す。RBはリボシドを表す。NTはヌクレオチドを表す。Metはメチルチオールを表す。Glucはグルコシドを表す。
図12】条件1のサイクリングスキームを示す。
図13】条件2のサイクリングスキームを示す。
図14】条件3のサイクリングスキームを示す。
図15】条件4のサイクリングスキームを示す。
図16】サイクル1の増殖曲線(図16A)およびグルコース消費(図16B)を示す。1〜4はそれぞれ条件1〜4を表す。細胞増殖は、ある期間(日)にわたる、5mL培養物試料あたりの乾燥した細胞の塊の重量と定義される(図16A)。ある期間にわたる、条件1〜4のグルコース消費(図16B)。
図17】サイクル2の増殖曲線(図17A)およびグルコース消費(図17B)を示す。1〜4はそれぞれ条件1〜4を表す。細胞増殖は、ある期間(日)にわたる、5mL培養物試料あたりの乾燥した細胞の塊の重量と定義される(図17A)。ある期間にわたる、条件1〜4のグルコース消費(図17B)。
図18】サイクル3の増殖曲線(図18A)およびグルコース消費(図18B)を示す。1〜4はそれぞれ条件1〜4を表す。細胞増殖は、ある期間(日)にわたる、5mL培養物試料あたりの乾燥した細胞の塊の重量と定義される(図18A)。ある期間にわたる、条件1〜4のグルコース消費(図18B)。
図19】4日増殖サイクルを用いた細胞数対時間を示す。75%リサイクル培地率(75%使用済み培地と25%新鮮増殖培地)を使用して、使用した培養時間(サイクル)の長さを試験した。サイクル0は、リサイクル培地を生成するための初回増殖の増殖を表す。
図20】3日増殖サイクルを用いた細胞数対時間を示す。75%リサイクル培地率(75%使用済み培地と25%新鮮増殖培地)を使用して、使用した培養時間(サイクル)の長さを試験した。サイクル0は、リサイクル培地を生成するための初回増殖の増殖を表す。
図21】サイクル1の培養増殖を表したグラフである。棒は、時間0および時間3で採取した乾燥バイオマス(g/mL)を表すのに対して、線は細胞数(百万/mL)を表す。x軸は数日にわたる培養時間を表す。最も濃い棒は100%新鮮増殖培地を表す。中間の灰色の棒は50%リサイクルハイブリッド培地を表す。薄い灰色の棒は、グルコース補充済み50%リサイクル培地を表す。黒色の実線は100%新鮮増殖培地を表す。大きな破線は50%リサイクルハイブリッド培地を表す。それに対して、小さな破線はグルコース補充済み50%リサイクルハイブリッド培地を表す。
図22】サイクル2の培養増殖を表したグラフである。棒は、時間0および時間3で採取した乾燥バイオマス(g/mL)を表すのに対して、線は細胞数(百万/mL)を表す。x軸は数日にわたる培養時間を表す。最も濃い棒は100%新鮮増殖培地を表す。中間の灰色の棒は50%リサイクルハイブリッド培地を表す。薄い灰色の棒は、グルコース補充済み50%リサイクルハイブリッド培地を表す。黒色の実線は100%新鮮増殖培地を表す。大きな破線は50%リサイクルハイブリッド培地を表す。それに対して、小さな破線はグルコース補充済み50%リサイクルハイブリッド培地を表す。
図23】サイクル3の培養増殖を表したグラフである。棒は、時間0および時間3で採取した乾燥バイオマス(g/mL)を表すのに対して、線は細胞数(百万/mL)を表す。x軸は数日にわたる培養時間を表す。最も濃い棒は100%新鮮増殖培地を表す。中間の灰色は50%リサイクルハイブリッド培地を表す。薄い灰色は、グルコース補充済み50%リサイクルハイブリッド培地を表す。黒色の実線は100%新鮮増殖培地を表す。大きな破線は50%リサイクルハイブリッド培地を表す。それに対して、小さな破線はグルコース補充済み50%リサイクルハイブリッド培地を表す。
図24】各条件の各サイクルのpH変化を示す。濃い灰色の棒は100%新鮮増殖培地を表す。点々のある棒は50%新鮮増殖培地を表す。中間の灰色の棒はグルコース補充済み50%新鮮増殖培地を表す。縞のある棒は50%リサイクルハイブリッド培地を表す。薄い灰色の棒はグルコース補充済み50%リサイクルハイブリッド培地を表す。図24Aはサイクル1を表す。図24Bはサイクル2を表す。図24Cはサイクル3を表す。x軸はサイクルの日数を表す。y軸はpHを表す。
図25】100%新鮮培地の有機酸プロファイルを示した棒グラフである。有機酸であるピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、および酢酸を100%新鮮培地対照において試験した。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D))、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。各有機酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図26】50%リサイクル培地の有機酸プロファイルを示した棒グラフである。有機酸であるピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、および酢酸を50%リサイクル培地試料において試験した。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D0)、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。各有機酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図27】グルコース補充済み50%リサイクル培地の有機酸プロファイルを示した棒グラフである。有機酸であるピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、および酢酸をグルコース補充済み50%リサイクル培地試料において試験した。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D))、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。各有機酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図28】100%新鮮増殖培地無細胞対照の有機酸プロファイルを示した棒グラフである。有機酸であるピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、および酢酸を100%新鮮増殖培地無細胞対照において試験した。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D0)、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。各有機酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図29】50%リサイクル培地無細胞対照の有機酸プロファイルを示した棒グラフである。有機酸であるピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、および酢酸を50%リサイクル培地無細胞対照において試験した。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D0)、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。各有機酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図30】酢酸の培地プロファイルを表した棒グラフである。処理タイプはx軸上に示され、100%は100%新鮮培地対照を表す。50%は50%リサイクル培地を表す。G50%はグルコース補充済み50%リサイクル培地を表す。100%無細胞は100%新鮮増殖培地無細胞対照を表す。50%無細胞は50%リサイクル培地無細胞対照を表す。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D0)、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。酢酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図31】フマル酸の培地プロファイルを表した棒グラフである。処理タイプはx軸上にあり、100%は100%新鮮培地対照を表す。50%は50%リサイクル培地を表す。G50%はグルコース補充済み50%リサイクル培地を表す。100%無細胞は100%新鮮増殖培地無細胞対照を表す。50%無細胞は50%リサイクル培地無細胞対照を表す。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D0)、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。フマル酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図32】乳酸の培地プロファイルを表した棒グラフである。処理タイプはx軸上にあり、100%は100%新鮮培地対照を表す。50%は50%リサイクル培地を表す。G50%はグルコース補充済み50%リサイクル培地を表す。100%無細胞は100%新鮮増殖培地無細胞対照を表す。50%無細胞は50%リサイクル培地無細胞対照を表す。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D0)、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。乳酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図33】コハク酸の培地プロファイルを表した棒グラフである。処理タイプはx軸上にあり、100%は100%新鮮培地対照を表す。50%は50%リサイクル培地を表す。G50%はグルコース補充済み50%リサイクル培地を表す。100%無細胞は100%新鮮増殖培地無細胞対照を表す。50%無細胞は50%リサイクル培地無細胞対照を表す。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D0)、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。コハク酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図34】リンゴ酸の培地プロファイルを表した棒グラフである。処理タイプはx軸上にあり、100%は100%新鮮培地対照を表す。50%は50%リサイクル培地を表す。G50%はグルコース補充済み50%リサイクル培地を表す。100%無細胞は100%新鮮増殖培地無細胞対照を表す。50%無細胞は50%リサイクル培地無細胞対照を表す。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D0)、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。リンゴ酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図35】ピルビン酸の培地プロファイルを表した棒グラフである。処理タイプはx軸上にあり、100%は100%新鮮培地対照を表す。50%は50%リサイクル培地を表す。G50%はグルコース補充済み50%リサイクル培地を表す。100%無細胞は100%新鮮増殖培地無細胞対照を表す。50%無細胞は50%リサイクル培地無細胞対照を表す。説明文は、サイクル1の0日目(C1D0)、サイクル1の3日目(C1D3)、サイクル2の0日目(C2D0)、サイクル2の3日目(C2D3)、サイクル3の0日目(C3D0)、およびサイクル3の3日目(C3D3)を表す。エラーバーは各試料の標準誤差を表す。ピルビン酸の濃度をy軸にg/Lで示した。
図36】実施例3bの培養増殖を表したグラフである。棒は、時間0および時間3で採取した乾燥バイオマス(g/mL)を表すのに対して、線は細胞数(百万/mL)を表す。x軸は数日にわたる培養時間を表す。最も濃い棒は100%新鮮増殖培地を表す。点々のある棒は50%新鮮増殖培地を表す。中間の灰色の棒はグルコース補充済み50%新鮮培地を表す。縞のある棒は50%リサイクルハイブリッド培地を表す。薄い灰色の棒はグルコース補充済み50%リサイクルハイブリッド培地を表す。黒色の実線は100%新鮮増殖培地を表す。大きな破線は50%新鮮増殖培地を表す。丸がある点線は、グルコース補充済み50%新鮮培地の細胞数(百万/mL)を経時的に表す。三角がある点線は、50%リサイクルハイブリッド培地の細胞数(百万/mL)を経時的に表す。四角がある点線は、グルコース補充済み50%リサイクルハイブリッド培地の細胞数(百万/mL)を経時的に表す。
図37】pH変化を経時的(日)に表した棒グラフである。最も濃い棒は100%新鮮増殖培地のpHを表す。点々のある棒は50%新鮮増殖培地のpHを表す。中間の灰色の棒はグルコース補充済み50%新鮮培地のpHを表す。縞のある棒は50%リサイクルハイブリッド培地のpHを表す。薄い灰色の棒はグルコース補充済み50%リサイクルハイブリッド培地のpHを表す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
特別の定めのない限り、このセクションおよび他のセクションに記載の定義および態様は、当業者により理解されるように、これらの定義および態様が適している、本明細書において説明される本願の全ての態様および局面に適用可能だと意図される。
【0042】
本明細書で使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に内容によってはっきりと規定されていない限り複数の指示物を含む。
【0043】
本明細書で使用する「および/または」という用語は、列挙された項目が存在するか、または個々に、もしくは組み合わされて使用されることを意味する。実際には、この用語は、列挙された項目の「の少なくとも1つ」または「1つまたは複数の」が使用される、または存在することを意味する。
【0044】
本明細書で使用する「適切な」という用語は、特定の化合物または条件の選択が、実施しようとする特定の合成操作と、変換しようとする分子の正体に左右されるが、その選択が十分に当業者の技術の範囲内であることを意味する。
【0045】
本明細書で使用する「実質的に」、「約(about)」、および「約(approximately)」などの程度の用語は、最終結果が有意に変化しないような、修飾されている用語の妥当な逸脱量を意味する。この逸脱が、これらの程度の用語によって修飾されている言葉の意味を否定しなければ、これらの程度の用語は、修飾されている用語の少なくとも±5%の逸脱を含むと解釈すべきである。
【0046】
値の範囲が定められている場合、その範囲の上限と下限との間の、間のそれぞれの値、ならびにその述べられた範囲にある他の任意の述べられた値または間の値が本開示に包含されると意図される。例えば、1mL〜8mLの範囲が述べられていれば、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、および7mL、ならびに1mLより多いか、または1mLに等しい値の範囲、および8mLより少ないか、または8mLに等しい値の範囲も明示的に開示されると意図される。
【0047】
本願の範囲を理解する際に、本明細書で使用する「含む(comprising)」という用語およびその派生語は、述べられた特徴、要素、成分、群、整数、および/または工程の存在を指定するが、他の述べられていない特徴、要素、成分、群、整数、および/または工程の存在を除外しないオープンエンドの用語であると意図される。前述の用語はまた、「含む(including)」、「有する(having)」という用語およびその派生語などの同様の意味を有する用語にも適用される。本明細書で使用する「からなる(consisting)」という用語およびその派生語は、述べられた特徴、要素、成分、群、整数、および/または工程の存在を指定するが、他の述べられていない特徴、要素、成分、群、整数、および/または工程の存在を除外するクローズド(closed)な用語であると意図される。本明細書で使用する「から本質的になる」という用語は、述べられた特徴、要素、成分、群、整数、および/または工程の存在を指定することが意図され、特徴、要素、成分、群、整数、および/または工程の基本的な、かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない用語である。
【0048】
「追加の」または「第2の」成分を含む態様では、本明細書で使用する第2の成分は他の成分または第1の成分とは異なる。「第3の」成分は他の成分、第1の成分、および第2の成分とは異なり、さらに数え上げられた成分または「追加の」成分も同様に異なる。
【0049】
本明細書で使用する「従属栄養の」という用語または派生語は、有機炭素、例えば、炭水化物、脂質、アルコール、カルボン酸、糖アルコール、タンパク質、またはその組み合わせの外部供給源から実質的に完全に栄養素を得るような条件下にある、生物、例えば、ユーグレナ属を含む微生物を指す。例えば、ユーグレナ属は、実質的に光がない環境にある従属栄養体である。
【0050】
本明細書で使用する「光栄養の」という用語または派生語は、エネルギーを得るために光子を捕らえることができる条件下にある時の、生物、例えば、ユーグレナ属を含む微生物を指す。例えば、生物が光栄養である時、光合成を行ってエネルギーを生じる。
【0051】
本明細書で使用する「母培養物(mother culture)」という用語は、ある期間にわたって連続して増殖され、培地と細胞が、本明細書に記載の実験条件とは独立したスケジュールで取り出される、または補給される細胞培養物を指す。
【0052】
明細書、実施例、および特許請求の範囲で用いられる、ある特定の用語が本明細書において収集される。特に定義のない限り、本開示で使用する技術用語および科学用語は全て、本開示が属する当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0053】
本開示は、微生物を培養培地中で従属栄養的に培養するための方法を含み、培養培地はリサイクル培養培地を含む。
【0054】
従って、本願は、ユーグレナ属の種の微生物、シゾキトリウム属の種の微生物、またはクロレラ属の種の微生物を培養する方法であって、
微生物を、ハイブリッド培養培地中で培養する工程;
微生物を、実質的に光が無い環境または全く光が無い環境で、従属栄養的に維持する工程
を含み、
ハイブリッド培養培地が、炭水化物を含み、
ハイブリッド培養培地が、新鮮培地とリサイクル培養培地とを含む、方法、を含む。
【0055】
一態様では、前記方法は、微生物を、実質的に光が無い環境で、従属栄養的に維持する工程を含む。別の態様では、前記方法は、微生物を、全く光が無い環境で、従属栄養的に維持する工程を含む。
【0056】
微細藻類は、1種類または複数種の炭素供給源、1種類または複数種の窒素供給源、および1種類または複数種の塩供給源を含む培養培地中で増殖される。一部の態様では、増殖培地はまた、外因性の栄養素および/または添加物、例えば、炭水化物、脂質、アルコール、カルボン酸、糖アルコール、タンパク質、窒素、金属、ビタミン、鉱物、またはその組み合わせも含んでよい。
【0057】
微生物は、ある範囲の濃度で接種される。一態様では、微生物は、約1x105細胞/mL〜約5x107細胞/mL、任意で約1x105細胞/mL〜約1x107細胞/mL、任意で約2x105細胞/mL〜約5x106細胞/mL、任意で約2.5x105細胞/mL〜約3x1106細胞/mLで接種される。
【0058】
微生物はまた、ある範囲の細胞乾燥重量で接種することもできる。一態様では、微生物は、約0.5g/L〜約70g/L、任意で約0.5〜約30g/L、任意で約0.5〜約70g/L、任意で約1.0g/L〜約70g/L、任意で約1.0g/L〜約30g/L、任意で約1.0〜約150g/Lで接種される。
【0059】
培養物中の微生物の増殖は、様々な期間:誘導期、対数(log)(対数(logarithmic))期または指数期、定常期、および死滅期を経る。誘導期では微生物は成熟し、代謝が活発であるが、活発に分裂も複製もしない。対数期に、微生物は分裂し、倍加するなど数が増加する。増殖が制限されなければ、倍加は一定の速度で継続し、そのため、連続した期間ごとに細胞数および集団速度(rate of population)が2倍になる。このタイプの指数増殖のために、時間に対して細胞数の自然対数をプロットすると直線になる。この線の傾きは、単位時間あたり細胞1個あたりの分裂数の尺度である、微生物の比増殖速度である。この増殖の実際の速度(すなわち、図の線の傾き)は、細胞分裂事象の頻度と2つの娘細胞が生き残る確率に影響を及ぼす増殖条件に左右される。培地から栄養素が枯渇し、老廃物が豊富になると、指数増殖は継続できない。定常期に増殖速度と死滅速度は等しくなるか、またはほぼ同じになる。これは増殖曲線の水平な直線部分として示される。理論に拘束されるつもりはないが、これは、必須栄養素の枯渇などの増殖制限因子および/または有機酸などの阻害産物の形成が原因かもしれない。死滅期に、微生物は、例えば、栄養素の欠如、微生物の許容帯域(tolerance band)より上もしくは下のpH、または他の不都合な条件により死滅する。
【0060】
微生物培養物は供給源培養培地中で増殖され、供給源培養培地中の培養物が、誘導期、対数期、定常期、または死滅期にある時にリサイクル培養培地が得られる。一態様では、リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、供給源培養培地は、誘導期、対数期、定常期、または死滅期にある。別の態様では、リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、供給源培養培地は、誘導期にある。別の態様では、リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、供給源培養培地は、対数期にある。別の態様では、リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、供給源培養培地は、定常期にある。別の態様では、リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、供給源培養培地は、定常期にある。別の態様では、リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、供給源培養培地は、死滅期にある。
【0061】
本明細書に記載の微生物を培養する方法によって産生された細胞および/または産物は、誘導期、指数期、定常期、または死滅期に収集される。一態様では、産生された細胞および/または産物は、誘導期、指数期、定常期、または死滅期に回収または収集される。別の態様では、産生された細胞および/または産物は、誘導期に回収または収集される。別の態様では、産生された細胞および/または産物は、対数期に回収または収集される。別の態様では、産生された細胞および/または産物は、誘導期に回収または収集される。別の態様では、産生された細胞および/または産物は、定常期に回収または収集される。別の態様では、産生された細胞および/または産物は、死滅期に回収または収集される。
【0062】
微生物培養物が定常期に達すると、培養物中の微生物濃度は飽和に達する。飽和は、光学密度、細胞湿重量、細胞乾燥重量、細胞数、および/または時間を含む多くの測定値によって求められる。
【0063】
一態様では、微生物は、約600nmでの光学密度、細胞湿重量、細胞乾燥重量、または細胞数として測定される飽和まで増殖される。一態様では、光学密度によって測定される飽和は約2〜約10である。一態様では、細胞湿重量によって測定される飽和は約10g/L〜約100g/Lである。一態様では、細胞乾燥重量によって測定される飽和は約2g/L〜約50g/Lである。一態様では、細胞数によって測定される飽和は約2x106〜約100x106細胞/mLである。一態様では、微生物は約4時間〜約350時間、または約75日まで増殖される。
【0064】
一般的に、細胞培養物への供給は、4つの培養スタイル:バッチ培養、フェドバッチ培養、半連続培養、および連続培養、に分類することができる。バッチ培養では、多量の栄養素(培地)が細胞集団に添加される。次いで、培地中のインプットが枯渇するまで、細胞の望ましい濃度に達するまで、または望ましい産物が産生されるまで、細胞は増殖される。この時点で、細胞は回収され、プロセスは繰り返される。フェドバッチ培養では、培地は一定の速度で添加されるか、または細胞集団を維持するために必要に応じて成分が添加される。最大に達したら、または産物形成に達したら、細胞の大多数が回収され、次いで、次のサイクルを開始するために残りの細胞が用いられる。フェドバッチでは、増殖ファーメンターがまだ一杯になっていない時に、培養物を目標密度にするように培地が供給される。一杯になり目標密度になったら連続回収が開始する。この目的は、限度一杯の目標密度培養を維持することである。半連続培養中には、測定のために、および/または培養成分を回収するために、ある決まった体積の試料が一定の時間間隔を開けて取り出され、培養物に等量の新鮮培地がすぐに添加され、それによって瞬時に栄養素濃度が上昇し、細胞濃度が希釈される。連続培養では、培地への添加および培地からの取り出しが長期間にわたって可能な条件下で、細胞は培地中で培養される。従って、栄養素、増殖因子、および空間は枯渇しない。
【0065】
一態様では、微生物を従属栄養培養する方法はバッチ、フェドバッチ、半連続、または連続である。別の態様では、微生物を従属栄養培養する方法はバッチである。別の態様では、微生物を従属栄養培養する方法はフェドバッチである。別の態様では、微生物を従属栄養培養する方法は半連続である。別の態様では、微生物を従属栄養培養する方法は連続である。
【0066】
半連続培養および連続培養では、培地が培養物から取り出される。培地は誘導期、対数期、または定常期に取り出すことができる。一態様では、培地は誘導期、対数期、または定常期に培養物から取り出される。別の態様では、培地は誘導期に培養物から取り出される。別の態様では、培地は対数期に培養物から取り出される。別の態様では、培地は定常期に培養物から取り出される。
【0067】
半連続培養および連続培養では、培地は時間間隔に基づいて培養物から取り出すこともできる。一態様では、培地は、培養もしくは培養サイクルの始まりから、または以前の培地添加から、約または少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、16時間、20時間、24時間、28時間、32時間、36時間、40時間、44時間、48時間、52時間、56時間、60時間、64時間、68時間、72時間、76時間、80時間、84時間、88時間、92時間、96時間、100時間、104時間、108時間、112時間、116時間、120時間、124時間、128時間、132時間、136時間、140時間、144時間、148時間、152時間、156時間、160時間、164時間、168時間、172時間、176時間、180時間、184時間、188時間、または192時間で取り出される。半連続培養および連続培養では、1サイクルは容器(例えば、タンクまたはバイオリアクター)が入れ替えられることと定義される。タンクは、微生物の増殖を支援する容器またはシステムである。増殖のために様々なパラメータがタンク内でモニタリングおよび制御される。これらには、温度、pH、酸素レベル、および攪拌が含まれる。タンクは100Lであってもよく、20,000Lまででもよい。もっと大きなタンク、例えば、100,000L以上も可能である。一態様では、タンクは少なくとも100L、1,000L、10,000L、または100,000Lである。別の態様では、タンクは10,000L、100,000L、200,000L、500,000L、または1,000,000Lまである。バイオリアクターは、微生物の増殖を支援する容器またはシステムである。増殖のために様々なパラメータがバイオリアクター内でモニタリングおよび制御される。これらには、温度、pH、酸素レベル、および攪拌が含まれる。バイオリアクターのスケールは3L〜8Lなどタンクより小さく、36Lなどもっと大きなバイオリアクターがある。入れ換えとは、第1の培地などの、ある液体の容器を空にし、その容器を、第2の培地などの第2の液体で満たすことと定義される。その後、容器を空にし、満たすたびに別の入れ換えとなるだろう。例えば、2の入れ換え、2度入れ換える、または2回入れ換えるとは、タンクを2度空にし、満たすことを示している。連続培養中に、供給源培地が実質的に等しく取り出され、添加される。連続培養中に1回入れ換えられるとは、容器の体積が取り出され、容器に補給された時である。一態様では、前記方法はタンクまたはバイオリアクターの中での半連続培養または連続培養である。別の態様では、前記方法は、10,000L、100,000L、200,000L、500,000L、または1,000,000Lまでのタンクの中での半連続培養または連続培養である。別の態様では、前記方法は、3L、5L、8L、10L、20L、30L、35L、36L、40L、または50Lまでのバイオリアクターの中での半連続培養または連続培養である。別の態様では、培地はタンクまたはバイオリアクターの中で1日に1回、2回、3回、または4回入れ換えられる。別の態様では、培地は75日で300回まで入れ換えられる。別の態様では、培地は75日で少なくとも75回、150回、225回、または300回まで入れ換えられる。別の態様では、前記方法はタンクまたはバイオリアクターの中での連続培養であり、微生物は約75日まで増殖される。別の態様では、前記方法はタンクまたはバイオリアクターの中での連続培養であり、微生物は約75日まで増殖され、培地は300回入れ換えられる。特定の態様では、前記方法はタンクの中での連続培養であり、微生物ユーグレナ・グラシリスは約75日まで増殖され、培地は300回入れ換えられ、培地は培養培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地である。
【0068】
フェドバッチ培養、半連続培養、および連続培養では、培地は培養物に添加される。培地は誘導期、対数期、または定常期に添加することができる。一態様では、培地は誘導期、対数期、または定常期に培養物に添加される。別の態様では、培地は誘導期に培養物に添加される。別の態様では、培地は対数期に培養物に添加される。別の態様では、培地は定常期に培養物に添加される。
【0069】
フェドバッチ培養、半連続培養、および連続培養では、培地は時間間隔に基づいて培養物に添加することもできる。一態様では、培地は、培養もしくは培養サイクルの始まりから、または以前の培地の取り出しから、約または少なくとも8時間、12時間、16時間、20時間、24時間、28時間、32時間、36時間、40時間、44時間、48時間、52時間、56時間、60時間、64時間、68時間、72時間、76時間、80時間、84時間、88時間、92時間、96時間、100時間、104時間、108時間、112時間、116時間、120時間、124時間、128時間、132時間、136時間、140時間、144時間、148時間、152時間、156時間、160時間、164時間、168時間、172時間、176時間、180時間、184時間、188時間、または192時間で添加される。別の態様では、培地は、培養もしくは培養サイクルの始まりから、または以前の培地の取り出しから、約または最大で10分、15分、30分、45分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、または8時間で添加される。別の態様では、培地は培養物によって取り出されるのとほぼ同時に、培地は添加される。
【0070】
追加の培地は、培養培地、供給培地、リサイクル培養培地、使用済み培地、補充済み培地、およびその組み合わせでもよい。培養培地(増殖培地とも知られる)は、細胞を増殖または培養するために必要な成分を含む培地である。これは増殖培地とも知られることがある。供給培地は、栄養素を補給するために培養物に添加される成分を含む培地である。供給培地は、作業(working)濃度または濃縮レベルの成分から培養物の限界希釈まである。供給培地は、栄養素を補給するために培養物に添加される成分を含む培地である。使用済み培地は、細胞培養に用いられた培地、すなわち、増殖成分のレベルが培養開始時よりも低い培養培地である。使用済み培地はまた、細胞培養に用いられた後の培地中の炭水化物の含有量によっても決定される。炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップでもよい。使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップ、またはその組み合わせを含有してもよい。一態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ない全炭水化物を含む。一態様では、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップである。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないグルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、マルトース、および/またはラクトースを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないグルコースを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないフルクトースを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないガラクトースを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないスクロースを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないマルトースを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないラクトースを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないグリセロールを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないキシロースを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ないデキストロースを含む。別の態様では、使用済み培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、20g/L、15g/L、10g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ない糖蜜を含む。別の態様では、使用済み培地は、約3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、または0.01g/Lより少ないフルクトース、グルコース、スクロース、またはその組み合わせを含む。特定の態様では、使用済み培地は約3g/Lより少ないグルコースを含む。
【0071】
使用済み培地中の炭水化物の枯渇は、培養または培養サイクルの開始時にある炭水化物の開始量に対するパーセントとして表すことができる。一態様では、使用済み培地は、培養または培養サイクルの開始時の量から約15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、または0.001%より少ない全炭水化物を含む。別の態様では、使用済み培地は、培養または培養サイクルの開始時の量から約15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、または0.001%より少ないグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップ、またはその組み合わせを含む。別の態様では、使用済み培地は、培養または培養サイクルの開始時の量から約15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、または0.001%より少ないグルコースを含む。別の態様では、使用済み培地は、培養または培養サイクルの開始時の量から約15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、または0.001%より少ないフルクトースを含む。別の態様では、使用済み培地は、培養または培養サイクルの開始時の量から約15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、または0.001%より少ない糖蜜を含む。一態様では、使用済み培地は、培養または培養サイクルの開始時の量から約15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、または0.001%より少ないガラクトースを含む。別の態様では、使用済み培地は、培養または培養サイクルの開始時の量から約15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、または0.001%より少ないフルクトースを含む。別の態様では、使用済み培地は、培養または培養サイクルの開始時の量から約15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、または0.001%より少ないスクロースを含む。別の態様では、使用済み培地は、培養または培養サイクルの開始時の量から約15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、または0.001%より少ないマルトースを含む。
【0072】
炭水化物に加えて、カルボン酸(本明細書において有機酸とも参照される)は、微生物によって利用される別の炭素である。本明細書に記載の有機酸はプロトン化型でもよく、脱プロトン型でもよい。有用なカルボン酸には、クエン酸、クエン酸塩、フマル酸、フマル酸塩、リンゴ酸、リンゴ酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、コハク酸、コハク酸塩、酢酸、酢酸塩、乳酸、および乳酸塩が含まれる。一態様では、カルボン酸は、クエン酸、クエン酸塩、フマル酸、フマル酸塩、リンゴ酸、リンゴ酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、コハク酸、コハク酸塩、酢酸、酢酸塩、乳酸、乳酸塩、およびその組み合わせからなる群より選択される。別の態様では、使用済み培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地は、約20g/L、10g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.01g/L、0.001g/L、0.0005g/L、0.0001g/L、0.00005g/L、0.00001g/L、または0.000005g/Lより少ないカルボン酸を含む。別の態様では、使用済み培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地は、約20g/L、10g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.09g/L、0.08g/L、0.07g/L、0.06g/L、0.05g/L、0.04g/L、0.03g/L、0.02g/L、0.01g/L、0.009g/L、0.008g/L、0.007g/L、0.006g/L、0.005g/L、0.004g/L、0.003g/L、0.002g/L、0.001g/L、0.01g/L、0.001g/L、0.0005g/L、0.0001g/L、0.00005g/L、0.00001g/L、または0.000005g/Lより少ないクエン酸、クエン酸塩、フマル酸、フマル酸塩、リンゴ酸、リンゴ酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、コハク酸、コハク酸塩、酢酸、酢酸塩、乳酸、乳酸塩、およびその組み合わせを含む。別の態様では、使用済み培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地は、約40g/L、30g/L、20g/L、10g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.09g/L、0.08g/L、0.07g/L、0.06g/L、0.05g/L、0.04g/L、0.03g/L、0.02g/L、0.01g/L、0.009g/L、0.008g/L、0.007g/L、0.006g/L、0.005g/L、0.004g/L、0.003g/L、0.002g/L、または0.001g/Lより少ないクエン酸を含む。別の態様では、使用済み培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地は、約10g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.09g/L、0.08g/L、0.07g/L、0.06g/L、0.05g/L、0.1g/L、0.09g/L、0.08g/L、0.07g/L、0.06g/L、0.05g/L、0.04g/L、0.03g/L、0.02g/L、0.01g/L、0.009g/L、0.008g/L、0.007g/L、0.006g/L、0.005g/L、0.004g/L、0.003g/L、0.002g/L、0.001g/L、0.01g/L、0.001g/L、0.0005g/L、0.0001g/L、0.00005g/L、0.00001g/L、または0.000005g/Lより少ない酢酸を含む。別の態様では、使用済み培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地は、約1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.09g/L、0.08g/L、0.07g/L、0.06g/L、0.05g/L、0.1g/L、0.09g/L、0.08g/L、0.07g/L、0.06g/L、0.05g/L、0.04g/L、0.03g/L、0.02g/L、0.01g/L、0.009g/L、0.008g/L、0.007g/L、0.006g/L、0.005g/L、0.004g/L、0.003g/L、0.002g/L、または0.001g/Lより少ないコハク酸を含む。別の態様では、使用済み培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地は、約10g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.09g/L、0.08g/L、0.07g/L、0.06g/L、0.05g/L、0.04g/L、0.03g/L、0.02g/L、0.01g/L、0.009g/L、0.008g/L、0.007g/L、0.006g/L、0.005g/L、0.004g/L、0.003g/L、0.002g/L、0.001g/L、0.01g/L、0.001g/L、0.0005g/L、0.0001g/L、0.00005g/L、0.00001g/L、または0.000005g/Lより少ない乳酸を含む。別の態様では、使用済み培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地は、約10g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.09g/L、0.08g/L、0.07g/L、0.06g/L、0.05g/L、0.04g/L、0.03g/L、0.02g/L、0.01g/L、0.009g/L、0.008g/L、0.007g/L、0.006g/L、0.005g/L、0.004g/L、0.003g/L、0.002g/L、または0.001g/Lより少ないピルビン酸を含む。別の態様では、使用済み培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地は、約10g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.09g/L、0.08g/L、0.07g/L、0.06g/L、0.05g/L、0.04g/L、0.03g/L、0.02g/L、0.01g/L、0.009g/L、0.008g/L、0.007g/L、0.006g/L、0.005g/L、0.004g/L、0.003g/L、0.002g/L、または0.001g/Lより少ないリンゴ酸を含む。別の態様では、使用済み培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地は、約10g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、0.09g/L、0.08g/L、0.07g/L、0.06g/L、0.05g/L、0.04g/L、0.03g/L、0.02g/L、0.01g/L、0.009g/L、0.008g/L、0.007g/L、0.006g/L、0.005g/L、0.004g/L、0.003g/L、0.002g/L、または0.001g/Lより少ないフマル酸を含む。
【0073】
リサイクル培養培地は、別の継代、サイクルのために細胞を培養するのに用いられる使用済み培地、または異なる培養、ロット、または株に由来する細胞を培養するための使用済み培地である。リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、供給源培養培地は誘導期、対数期、または定常期にある。リサイクル培養培地は単に使用済み培地でもよく、培養培地(新鮮増殖培地)と混合されてもよく、使用済み培地中で枯渇した1種類または複数種の成分が補充されてもよい。リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得ることができ、供給源培養培地は誘導期、対数期、または定常期にある。一態様では、リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、供給源培養培地は誘導期、対数期、または定常期にある。
【0074】
ハイブリッド培養培地(本明細書ではハイブリッド培地またはリサイクルハイブリッド培地とも呼ばれる)は、ある量のリサイクル培養培地を含有する培養培地(例えば、新鮮培地とリサイクル培養培地との混合物)である。ハイブリッド培養培地は1種類または複数種の炭水化物、アルコール、脂質、タンパク質、酵母エキス、アミノ酸、および/またはカルボン酸を含有する。ハイブリッド培養物中の炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップ、またはその組み合わせである。一態様では、ハイブリッド培養培地は1種類または複数種の炭水化物、アルコール、脂質、タンパク質、酵母エキス、アミノ酸、および/またはカルボン酸を含む。一態様では、炭水化物はグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップ、またはその組み合わせである。別の態様では、ハイブリッド培養培地は新鮮培地とリサイクル培養培地とを含む。別の態様では、ハイブリッド培養培地は、約10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または99.99%のリサイクル培地または使用済み培地を含む。ハイブリッド培養培地はまたサイトカイニンなどの成長ホルモンも含有する。一態様では、ハイブリッド培養培地は約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLのサイトカイニンを含む。nmol/mLおよびpmol/mLで表した、本明細書に記載のサイトカイニンの全濃度は、それぞれ、nmol/gおよびpmol/gで表した数値も含む。一態様では、ハイブリッド培養培地は、約0.01pmol/mL〜約0.25nmol/mLのサイトカイニン、約0.01pmol/mL〜約0.50nmol/mLのサイトカイニン、約0.01pmol/mL〜約0.75nmol/mLのサイトカイニン、約0.01pmol/mL〜約1nmol/mLのサイトカイニン、約0.01pmol/mL〜約1.5nmol/mLのサイトカイニン、約0.01pmol/mL〜約2nmol/mLのサイトカイニン、約0.01pmol/mL〜約30nmol/mLのサイトカイニン、約0.01pmol/mL〜約50nmol/mLのサイトカイニン、約0.05nmol/mL〜約100nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約75nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約50nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約40nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約35nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約30nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約25nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約20nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約15nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約10nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約4nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約3nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約2.5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約2nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約1.5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約1nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約0.5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約0.1nmol/mLの1種類または複数種のサイトカイニンを含む。一部の態様では、ハイブリッド培養培地は、少なくとも、約75nmol/mL、約50nmol/mL、約35nmol/mL、約30nmol/mL、約25nmol/mL、約20nmol/mL、約15nmol/mL、約10nmol/mL、約5nmol/mL、約4nmol/mL、約3nmol/mL、約2.5nmol/mL、約2nmol/mL、約1.5nmol/mL、約1nmol/mL、約0.5nmol/mL、約0.4nmol/mL、約0.3nmol/mL、約0.2nmol/mL、約0.1nmol/mL、約0.09nmol/mL、約0.08nmol/mL、約0.07nmol/mL、約0.06nmol/mL、約0.05nmol/mL、約0.04nmol/mL、約0.03nmol/mL、約0.02nmol/mL、約0.01nmol/mL、約0.009nmol/mLの1種類または複数種のサイトカイニンを含む。本明細書に記載のサイトカイニンの濃度は、全サイトカイニンレベル、サイトカイニングループ(例えば、遊離塩基(FB)、リボシド(RB)、ヌクレオチド(NT)、グルコシド(GLUC)、およびメチルチオール(MET))の全レベル、1種類もしくは複数種のタイプのサイトカイニン(例えば、ジヒドロゼアチン(DZ)、trans-ゼアチン(tZ)、イソペンテニルアデニン(iP)、およびcis-ゼアチン(cZ))の全レベル、1つもしくは複数の個々のサイトカイニン(例えば、DZR、tZR、cZR、iPR、DZNT、tZNT、cZNT、iPNT、2MeSZ、2MeSiP、2MeSZR、2MeSiPA、DZOG、DZROG、cZROG、DZ9G、tZOG、cZOG、tZ9Gの1つもしくは複数)、またはその任意の組み合わせ(表1〜5を参照されたい)に関連するものでもよい。一部の態様では、ハイブリッド培養培地は約0.01nmol/mLより少ない1種類または複数種のサイトカイニンを含む。一部の態様では、ハイブリッド培養培地は、1種類または複数種のサイトカイニン(例えば、DZR、tZR、cZR、iPR、DZNT、tZNT、cZNT、iPNT、2MeSZ、2MeSiP、2MeSZR、2MeSiPA、DZOG、DZROG、cZROG、DZ9G、tZOG、cZOG、tZ9G)を含まないか、または実質的に含まない。
【0075】
一部の態様では、ハイブリッド培養培地はアブシジン酸(ABA)を含む。一部の態様では、ハイブリッド培養培地は約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLのABAを含む。一部の態様では、ハイブリッド培養培地は、約0.001nmol/mL〜約100nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約75nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約50nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約40nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約35nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約30nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約25nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約20nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約15nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約10nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約5nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約4nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約3nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約2.5nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約2nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約1.5nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約1nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約0.5nmol/mL、または約0.001nmol/mL〜約0.1nmol/mLのABAを含む。一部の態様では、ハイブリッド培養培地は、少なくとも、約75nmol/mL、約50nmol/mL、約35nmol/mL、約30nmol/mL、約25nmol/mL、約20nmol/mL、約15nmol/mL、約10nmol/mL、約5nmol/mL、約4nmol/mL、約3nmol/mL、約2.5nmol/mL、約2nmol/mL、約1.5nmol/mL、約1nmol/mL、約0.5nmol/mL、約0.4nmol/mL、約0.3nmol/mL、約0.2nmol/mL、約0.1nmol/mL、約0.09nmol/mL、約0.08nmol/mL、約0.07nmol/mL、約0.06nmol/mL、約0.05nmol/mL、約0.04nmol/mL、約0.03nmol/mL、約0.02nmol/mL、約0.01nmol/mL、または約0.009nmol/mLのABAを含む(表2〜3を参照されたい)。一部の態様では、ハイブリッド培養培地は約0.001nmol/mL未満のABAを含む。一部の態様では、ハイブリッド培養培地はABAを含まないか、または実質的に含まない。
【0076】
補充済み培地は、細胞の増殖、健康状態、および/または産生を高めるために、1種類または複数種の追加成分がさらに補充されている、培養物、供給培養培地、使用済み培養培地、またはリサイクル培養培地である培地である。一態様では、追加培地は、培養培地、供給培地、リサイクル培養培地、使用済み培地、補充済み培地、およびその組み合わせからなる群より選択され、任意で、リサイクル培養培地または補充済み培地である。別の態様では、追加培地は培養培地である。一態様では、リサイクル培養培地は、培養培地、供給培地、使用済み培地、補充済み培地、およびその組み合わせからなる群より選択され、任意で、使用済み培地または補充済み培地である。別の態様では、追加培地は供給培地である。別の態様では、追加培地は使用済み培地である。別の態様では、追加培地はリサイクル培養培地である。別の態様では、追加培地は補充済み培地である。
【0077】
一部の態様では、本明細書に記載の任意の培地に1種類または複数種のサイトカイニンおよび/またはABAが補充される。ある量の1種類または複数種のサイトカイニンおよび/またはABAが補充されると、1種類または複数種のサイトカイニンおよび/またはABAの全レベルが得られる。例えば、あるレベルの1種類または複数種のサイトカイニンおよび/またはABAが、補充前に補充されている培地に既に存在していれば、1種類または複数種のサイトカイニンおよび/またはABAの全レベルは、培地に補充されるサイトカイニンおよび/またはABAのレベルより高くなる。一部の態様では、培地には、約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLの全レベルが補充されるか、または前記の全レベルまで補充される。一部の態様では、培地には、約0.05nmol/mL〜約100nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約75nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約50nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約40nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約35nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約30nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約25nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約20nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約15nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約10nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約4nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約3nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約2.5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約2nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約1.5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約1nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約0.5nmol/mL、または約0.05nmol/mL〜約0.1nmol/mLの全レベルが補充されるか、または前記の全レベルまで補充される。一部の態様では、本明細書に記載の任意の培地に、少なくとも、約100nmol/mL、約75nmol/mL、約50nmol/mL、約35nmol/mL、約30nmol/mL、約25nmol/mL、約20nmol/mL、約15nmol/mL、約10nmol/mL、約5nmol/mL、約4nmol/mL、約3nmol/mL、約2.5nmol/mL、約2nmol/mL、約1.5nmol/mL、約1nmol/mL、約0.5nmol/mL、または約0.1nmol/mLの全レベルが補充されるか、または前記の全レベルまで補充される。一部の態様では、本明細書に記載の任意の培地には、DZR、tZR、cZR、iPR、DZNT、tZNT、cZNT、iPNT、2MeSZ、2MeSiP、2MeSZR、2MeSiPA、DZOG、DZROG、cZROG、DZ9G、tZOG、cZOG、および/もしくはtZ9Gより選択される1種類もしくは複数種のサイトカイニン、ならびに/または任意のタイプもしくは型(表1〜5を参照されたい)が補充される。このような培地は、例えば、もっと迅速な細胞分裂を促進するために、微細藻類、例えば、ユーグレナ属の種子を準備(prime)または前処理するために用いられる場合がある。
【0078】
培養物中の微生物は、誘導期、対数期、または定常期で回収される。一態様では、微生物は、誘導期、対数期、または定常期で回収される。
【0079】
リサイクル培養培地はまた、同じ培養、継代、および/または培養サイクルに由来する。一態様では、回収された微生物は培地から分離され、培地は培養物に戻してリサイクルされる。別の態様では、培養物に戻してリサイクルされる培地は、使用済み培地である。
【0080】
培養物中の微生物は、全部または部分的に回収される。一態様では、培養物中にある回収された微生物は、全供給源培養物の約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。回収方法は当技術分野において公知である。例えば、細胞を沈殿させることによって回収が行われ、供給源培地はファーメンターに残される。一態様では、細胞を沈殿させることによって微生物が回収される。スケールでは、細胞を供給源培地から分離するために、微生物はタンクの底に沈殿するようにされる。次いで、微生物はタンクの底から取り出され、残りの使用済み培地はタンクに残される。次いで、タンクには新鮮増殖培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地が補充される。微生物の回収は遠心分離などの物理的方法によって確立することもできる。このプロセスでは、遠心力によって供給源培地から細胞が分離される。スケールでは、これはディスクスタック(disk stack)遠心機により成し遂げられることがある。一態様では、微生物の回収はディスクスタック遠心機による回収である。
【0081】
本開示は、新鮮培地も含有するハイブリッド培養培地中にある、使用済み培地またはリサイクル培養培地の有用なパーセントについて説明する。ハイブリッド培養培地について説明する時、10%ハイブリッド培養培地は10%の使用済み培養培地またはリサイクル培養培地と90%の新鮮培地を含有する。ハイブリッド培養培地中にある使用済み培養培地またはリサイクル培養培地の有用なパーセントは、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または99.99%、約10%〜約99.99%、任意で約10%〜約75%、任意で約25%〜約75%、任意で約50%〜約75%、任意で約75%の使用済み培養培地またはリサイクル培養培地である。一態様では、培地、任意で使用済みの培養培地またはリサイクル培地の約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.99%、または100%が培養物に戻される。別の態様では、約10%〜約99.99%の使用済み培養培地またはリサイクル培養培地、任意で10%〜約75%、任意で約25%〜約75%、任意で約50%〜約75%、任意で約75%が培養物に戻される。別の態様では、使用済み培養培地またはリサイクル培養培地の約25%が培養物に戻される。別の態様では、使用済み培養培地またはリサイクル培養培地の約50%が培養物に戻される。別の態様では、使用済み培養培地またはリサイクル培養培地の約75%が培養物に戻される。
【0082】
培地のpHは培養中の微生物の増殖に影響を及ぼす。当業者は、有機酸、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、およびクエン酸、または塩基、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、および重炭酸ナトリウムを用いて増殖培地のpHを容易に変更することができる。培地のpHは、約2〜約8、約2.5〜約5、約2.5〜約4、約2.5〜約3.5である。一態様では、培養培地は、約2〜約8、任意で約2.5〜約5、任意で約2.5〜約4のpHに維持される。
【0083】
本明細書で使用する「サイクル」という用語は、細胞増殖のための所定の期間を指す。例えば、1サイクルは、細胞を、約2日間、3日間、4日間、もしくは5日間、または約48時間、54時間、60時間、66時間、72時間、78時間、84時間、90時間、96時間、102時間、108時間、114時間、または120時間培養するための期間である。一態様では、1サイクルは、微生物を、約2日間、3日間、4日間、もしくは5日間、または約48時間、54時間、60時間、66時間、72時間、78時間、84時間、90時間、96時間、102時間、108時間、114時間、または120時間培養するための期間である。別の態様では、1サイクルは、微生物を、約または少なくとも2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、または12時間にわたって連続培養するための期間である。
【0084】
本明細書で使用する「連続サイクル」という用語は、連続して互いの後に続く増殖サイクルを指す。例えば、細胞が3つの連続したサイクルにわたって増殖される本明細書に記載の実験では、1回目の増殖サイクルの終了時に、かつ1サイクルの期間の一例として3日を用いた時に、培養物は細胞バイオマスと上清(使用済み増殖培地)に分離された。新たなサイクルが、新鮮増殖培地またはある割合でリサイクル増殖培地を含有するフラスコに200万個の細胞/mLを接種することによって開始する。これによりサイクル2が開始し、細胞は別の期間にわたって増殖される(サイクル2の終了、すなわち、第2の3日期間の終了)。サイクル2が設定されたようにサイクル3が開始し、完了する。細胞培養物は、多くのサイクル、例えば、少なくともまたは約2、3、4、5、6、7、8、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50サイクルを経ることができる。一態様では、微生物は、少なくとも、または約2、3、4、5、6、7、8、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、または300サイクルにわたって培養される。
【0085】
本明細書で使用する「変換効率」という用語は、使用した供給源培地中にある微生物が消費した溶質の量に対する、生成されたバイオマスのパーセントを指す。ある決まったの培地成分を用いて生成されるバイオマスが増えた時、変換効率は高くなる。ある決まったの培地成分を用いて生成されるバイオマスが減った時、変換効率は低くなる。従って、高い「変換効率」とは、溶質からバイオマスへの変換が増えたことを表す。一態様では、培地、任意で、ハイブリッド培養培地、リサイクル培養培地、または補充済み培地中での細胞の変換効率は、少なくとも、または約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%(バイオマス重量/溶質重量)である。ハイブリッド培養培地または補充済み培地の変換効率はまた、ほぼ同じ量の炭素および/または炭水化物内容物を含有する対応する新鮮培地対照と比較することもできる。この「相対変換効率」は、リサイクル培養培地または補充済み培地の変換率を対応する培地の変換率で割ったものである。ハイブリッド培養培地または補充済み培地の変換効率は、対応する新鮮培地に近いか、または対応する新鮮培地より良い。ハイブリッド培養培地または補充済み培地の相対変換効率は、少なくとも、または約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、101%、102%、103%、104%、105%、106%、107%、108%、109%、110%、115%、120%、または125%である。一態様では、ハイブリッド培養培地または補充済み培地の相対変換効率は、約10%、15%、20%、30%、40%、50%、または60%から、約70%、75%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、または125%まで、である。一態様では、ハイブリッド培養培地または補充済み培地の相対変換効率は約40%〜約70%である。一態様では、ハイブリッド培養培地または補充済み培地の相対変換効率は約85%〜約100%である。別の態様では、ハイブリッド培養培地または補充済み培地の相対変換効率は少なくとも、または約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、101%、102%、103%、104%、105%、106%、107%、108%、109%、110%、115%、120%、または125%である。
【0086】
本開示において用いられる時に、本明細書で使用する「微生物」という用語およびその派生語は、原核生物または真核生物である、従属栄養または混合栄養の微生物を含む。一態様では、微生物は、ユーグレナ属の種、クロレラ属の種、またはシゾキトリウム属の種である。別の態様では、微生物種はクロレラ属の種である。別の態様では、微生物種はシゾキトリウム属の種である。別の態様では、微生物種はユーグレナ属の種である。別の態様では、微生物は、ユーグレナ・グラシリス、ユーグレナ・サングイネア、ユーグレナ・デセス、ユーグレナ・ムタビリス、ユーグレナ・アクス、ユーグレナ・ビルディス、ユーグレナ・アナバエナ、ユーグレナ・ゲニクラタ、ユーグレナ・オキシウリス、ユーグレナ・プロキシマ、ユーグレナ・トリプテリス、ユーグレナ・クラミドフォラ、ユーグレナ・スプレンデンス、ユーグレナ・テキシタ、ユーグレナ・インターメディア、ユーグレナ・ポリモルファ、ユーグレナ・エレンベルギ、ユーグレナ・アドハエレンス、ユーグレナ・クララ、ユーグレナ・エロンガタ、ユーグレナ・エラスティカ、ユーグレナ・オブロンガ、ユーグレナ・ピシフォルミス、ユーグレナ・カンタブリカ、ユーグレナ・グラヌラタ、ユーグレナ・オブツサ、ユーグレナ・リムノフィラ、ユーグレナ・ヘミクロマタ、ユーグレナ・バリアビリス、ユーグレナ・カウダタ、ユーグレナ・ミニマ、ユーグレナ・コムニス、ユーグレナ・マグニフィカ、ユーグレナ・テリコラ(Euglena terricola)、ユーグレナ・ベラタ、ユーグレナ・レプルサンス、ユーグレナ・クラバタ、ユーグレナ・ラタ、ユーグレナ・ツベルクラタ、ユーグレナ・コンタブリカ、ユーグレナ・アスカスフォルミス、ユーグレナ・オステンデンシス、クロレラ・アウトトロフィカ、クロレラ・コロニアルス、クロレラ・レウィニ、クロレラ・ミヌチシマ、クロレラ・ピツイタ、クロレラ・プルケロイデス、クロレラ・ピレノイドサ、クロレラ・ロツンダ、クロレラ・シングラリス、クロレラ・ソロキニアナ、クロレラ・バリアビリス、クロレラ・ボルティス、クロレラ・ブルガリス、シゾキトリウム・アグレガタム、シゾキトリウム・リマシヌム、シゾキトリウム・ミヌタム、およびその組み合わせからなる群より選択される。特定の態様では、ユーグレナ属の種はユーグレナ・グラシリスである。
【0087】
ユーグレナ・グラシリスなどの微生物は、従属栄養培養および光栄養培養が可能である。本明細書に記載の方法は光栄養培養を伴わない。一態様では、前記方法は光栄養培養を含まない。
【0088】
微生物を培養するためにリサイクル培養培地を使用する際に、典型的にはクリーニングまたは滅菌が伴う。この工程は、細胞増殖に悪影響を及ぼす毒性の化学物質を分解するための工程である。本明細書に記載の方法は、培地、例えば、リサイクル培地、使用済み培地、または補充済み培地の、クリーニングまたは滅菌工程、例えば、加圧滅菌、濾過、UV滅菌または熱滅菌を伴わない。一態様では、前記方法はハイブリッド培地の滅菌を含まない。別の態様では、前記方法は、培地の加圧滅菌、濾過、UV処理、または熱滅菌を含まない。別の態様では、前記方法は培地の加圧滅菌を含まない。別の態様では、前記方法は培地の濾過を含まない。別の態様では、前記方法は培地のUV処理を含まない。別の態様では、前記方法は培地の熱滅菌を含まない。
【0089】
本開示はまた、微生物の増殖調節に関係づけられるホルモンである、様々なタイプのサイトカイニンの産生についても説明する。サイトカイニンは増殖培地などの外部供給源から得ることができる、および/または新鮮培地、使用済み培地、リサイクル培養培地、またはハイブリッド培養培地を用いてユーグレナ属を培養することによって産生される。サイトカイニンは、遊離塩基、リボシド、ヌクレオチド、メチルチオール、グルコシド、および芳香族の形をとる。一部の態様では、サイトカイニンは、表1に示したサイトカイニンの1つまたは複数を含む。一態様では、本明細書に記載の方法は微生物を培養する工程を含み、微生物はユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法は約0.01pmol/gまたはmL〜約100nmol/gまたはmLのサイトカイニンを産生する。一部の態様では、本明細書に記載の方法は微生物を培養する工程を含み、微生物はユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法は、約0.05nmol/mL〜約100nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約75nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約50nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約40nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約35nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約30nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約25nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約20nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約15nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約10nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約4nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約3nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約2.5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約2nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約1.5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約1nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約0.5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約0.1nmol/mLの1種類または複数種のサイトカイニンを産生する。一部の態様では、ハイブリッド培養培地は、少なくとも約75nmol/mL、約50nmol/mL、約35nmol/mL、約30nmol/mL、約25nmol/mL、約20nmol/mL、約15nmol/mL、約10nmol/mL、約5nmol/mL、約4nmol/mL、約3nmol/mL、約2.5nmol/mL、約2nmol/mL、約1.5nmol/mL、約1nmol/mL、約0.5nmol/mL、約0.4nmol/mL、約0.3nmol/mL、約0.2nmol/mL、約0.1nmol/mL、約0.09nmol/mL、約0.08nmol/mL、約0.07nmol/mL、約0.06nmol/mL、約0.05nmol/mL、約0.04nmol/mL、約0.03nmol/mL、約0.02nmol/mL、約0.01nmol/mL、約0.009nmol/mLの1種類もしくは複数種のサイトカイニンを含む。本明細書に記載のサイトカイニンの濃度は、全サイトカイニンレベル、サイトカイニングループ(例えば、遊離塩基(FB)、リボシド(RB)、ヌクレオチド(NT)、グルコシド(GLUC)、およびメチルチオール(MET))の全レベル、1種類もしくは複数種のタイプのサイトカイニン(例えば、ジヒドロゼアチン(DZ)、trans-ゼアチン(tZ)、イソペンテニルアデニン(iP)、およびcis-ゼアチン(cZ))の全レベル、1つもしくは複数の個々のサイトカイニン(例えば、DZR、tZR、cZR、iPR、DZNT、tZNT、cZNT、iPNT、2MeSZ、2MeSiP、2MeSZR、2MeSiPA、DZOG、DZROG、cZROG、DZ9G、tZOG、cZOG、tZ9Gの1つもしくは複数)、またはその任意の組み合わせ(表1〜5を参照されたい)に関連するものでもよい。従って、一態様では、サイトカイニンは、遊離塩基、リボシド、ヌクレオチド、メチルチオール、およびグルコシドからなる群より選択される形をとる。
【0090】
アブシジン酸(ABA)は、微生物における増殖および代謝産物産生において役割を果たすホルモンである。一態様では、本明細書に記載の方法は微生物を培養する工程を含み、微生物はユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法は約0.01pmol/gまたはmL〜100nmol/gまたはmLのABAを産生する。nmol/mLおよびpmol/mLで表した本明細書に記載のABAの全濃度は、それぞれ、nmol/gおよびpmol/gで表した数値も含む。一態様では、本明細書に記載の方法は微生物を培養する工程を含み、微生物はユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法は、約0.001nmol/mL〜約100nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約75nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約50nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約40nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約35nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約30nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約25nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約20nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約15nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約10nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約5nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約4nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約3nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約2.5nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約2nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約1.5nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約1nmol/mL、約0.001nmol/mL〜約0.5nmol/mL、または約0.001nmol/mL〜約0.1nmol/mLのABAを産生する。一部の態様では、ハイブリッド培養培地は、少なくとも約75nmol/mL、約50nmol/mL、約35nmol/mL、約30nmol/mL、約25nmol/mL、約20nmol/mL、約15nmol/mL、約10nmol/mL、約5nmol/mL、約4nmol/mL、約3nmol/mL、約2.5nmol/mL、約2nmol/mL、約1.5nmol/mL、約1nmol/mL、約0.5nmol/mL、約0.4nmol/mL、約0.3nmol/mL、約0.2nmol/mL、約0.1nmol/mL、約0.09nmol/mL、約0.08nmol/mL、約0.07nmol/mL、約0.06nmol/mL、約0.05nmol/mL、約0.04nmol/mL、約0.03nmol/mL、約0.02nmol/mL、約0.01nmol/mL、または約0.009nmol/mLのABAを含む(表2〜3を参照されたい)。一部の態様では、本明細書に記載の方法は微生物を培養する工程を含み、微生物はユーグレナ属であり、ユーグレナ属を培養する方法は約0.001nmol/mL未満のABAを産生する。
【0091】
特定の態様では、ユーグレナ・グラシリス微生物を培養する方法は、
微生物を、ハイブリッド培養培地中で培養する工程;
微生物を、全く光が無い環境で、従属栄養的に維持する工程;
約2.5〜約4のpHを維持する工程;
を含み、
微生物は、約1x105細胞/mL〜約5x107細胞/mLで接種され、
ハイブリッド培養培地は炭水化物を含み、
炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、および/またはコーンシロップであり、
ハイブリッド培養培地は、新鮮培地とリサイクル培養培地とを含み、
リサイクル培養培地は、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、
供給源培養培地は、誘導期、対数期、または定常期にあり、
前記方法は、ハイブリッド培地の滅菌を含まず、
培養培地は、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の相対変換効率を維持する。
【0092】
ユーグレナ属の種の微生物、シゾキトリウム属の種の微生物、またはクロレラ属の種の微生物を従属栄養培養するのに適したリサイクル培養培地を産生するための方法であって、
微生物を、炭水化物を含む培養培地中で培養する工程;
実質的に光が無い環境または全く光が無い環境を維持する工程;
リサイクル培養培地を産生する工程;
リサイクル培養培地を細胞から分離する工程;および
リサイクル培養培地を収集する工程
を含み、
炭水化物が3g/Lを下回るまで微生物が培養され、
微生物がユーグレナ・グラシリスであり、
リサイクル培養培地が、リサイクル培養培地を供給源培養培地から分離することによって得られ、
供給源培養培地が誘導期、対数期、または定常期にあり、
供給源培養培地がハイブリッド培養培地またはストック培養培地である、方法、もまた提供される。
【0093】
一態様では、リサイクル培養培地は、約50g/L、40g/L、30g/L、25g/L、20g/L、15g/L、10g/L、9g/L、8g/L、7g/L、6g/L、5g/L、4g/L、3g/L、2.5g/L、2g/L、1.5g/L、1g/L、0.5g/L、0.4g/L、0.3g/L、0.2g/L、0.1g/L、または0.01g/Lより少ない全炭水化物を含む。別の態様では、炭水化物はグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、糖蜜、グリセロール、キシロース、デキストロース、蜂蜜、コーンシロップ、またはその組み合わせである。
【0094】
本明細書に記載の方法によってハイブリッド培養培地を産生するために、リサイクル培養培地は、新鮮培地と混合される。従って、本明細書において提供される方法はハイブリッド培養培地も産生する。一態様では、ハイブリッド培養培地は、新鮮培地を、本明細書に記載の方法によって産生されたリサイクル培養培地と混合することによって産生される。一態様では、ハイブリッド培養培地は、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または99.99%のリサイクル培養培地または使用済み培地を含む。
【0095】
別の局面では、微生物を従属栄養培養するのに適した使用済み培養培地またはリサイクル培養培地を産生するための方法は、正の増殖制御因子を含む、使用済み培地、使用済み培養培地またはリサイクル培養培地を産生する。正の増殖制御因子は、成長ホルモン、例えば、サイトカイニン、または細胞増殖を促進する任意のタンパク質、炭水化物、ヌクレオチド、もしくは脂質でもよい。これらは、細胞から使用済み培地に排出されたものでもよく、別の供給源から外因的に添加されたものでもよい。
【0096】
微生物を培養するための、本明細書に記載の方法によって産生された、培養培地、使用済み培地、リサイクル培養培地、補充済み培地、またはハイブリッド培養培地の使用も提供される。一態様では、微生物はユーグレナ属の種である。一態様では、ユーグレナ属の種はユーグレナ・グラシリスである。
【0097】
本明細書において開示される方法、使用、および培地は、任意の微生物に適用することができる。本明細書において開示される方法、使用、および培地は、さらに多い容量で拡張可能である。
【0098】
一局面では、本明細書に記載の方法は、新鮮培地中で培養する工程、リサイクル培地を添加してハイブリッド培地を形成する工程、ハイブリッド培地中で培養する工程、リサイクル培地を添加する段階および培養する段階を繰り返す工程、を含む。本明細書に記載の方法によって産生された、培養培地、使用済み培地、リサイクル培養培地、補充済み培地および/またはハイブリッド培養培地を含む組成物も本明細書において提供される。
【0099】
本明細書に記載の方法によって産生された、培養培地、使用済み培地、リサイクル培養培地、補充済み培地、またはハイブリッド培養培地の画分または抽出物を含む組成物も本明細書において提供される。一部の態様では、このような画分は、本明細書に記載の方法によって産生された、培養培地、使用済み培地、リサイクル培養培地、補充済み培地、またはハイブリッド培養培地から抽出または分離された植物ホルモン、有機酸、アミノ酸、エキソポリサッカライド、細胞外脂質、および/または他感作用性化学物質を含む。一部の態様では、このような画分は、純粋な、または実質的に純粋な植物ホルモン、有機酸、アミノ酸、エキソポリサッカライド、細胞外脂質、および/または他感作用性化学物質を含む。一部の態様では、前記画分は1種類または複数種のサイトカイニンを含む。適切なサイトカイニンは本明細書において説明される。一部の態様では、前記画分はABAを含む。このような画分を含む組成物は、例えば、もっと速い細胞分裂を促進するために、微細藻類、例えば、ユーグレナ属の種子を準備または前処理するのに用いられる場合がある。
【0100】
本明細書中の任意の組成物または方法に関連して、組成物または培地から阻害性分子(例えば、重金属、フェノール、脂肪酸、アンモニア、および/または細胞破片)を除去する工程も提供される。
【0101】
組成物は任意の適切な形をとることができる。例えば、本明細書に記載の組成物は液体でもよい。一部の態様では、本明細書に記載の組成物は、(例えば、顆粒、ペレット、またはビーズの形をとる)固体組成物である。本明細書に記載の組成物は安定している場合がある(例えば、1種類または複数種の組成物成分の活性または濃度を大幅に失うことなく、環境圧力、例えば、熱、凍結、凍結融解サイクル、加熱、圧力、酸化条件、およびその組み合わせに耐えることができる)。一部の態様では、前記組成物は、およそ少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、14日、30日、60日、または90日にわたって安定している。一部の態様では、前記組成物は熱安定性である。一部の態様では、前記組成物中の有機酸は熱安定性である。
【0102】
微細藻類は、増殖中に、例えば、植物ホルモン(例えば、サイトカイニンまたはABA)、有機酸(例えば、クエン酸、クエン酸塩、フマル酸、フマル酸塩、リンゴ酸、リンゴ酸塩、ピルビン酸、ピルビン酸塩、コハク酸、コハク酸塩、酢酸、酢酸塩、乳酸、および/または乳酸塩)、アミノ酸、エキソポリサッカライド、細胞外脂質、他感作用性化学物質を含む細胞外代謝産物を培地に分泌し、これらの多くはバイオマス回収後に老廃物として廃棄される。この使用済み培地は環境汚染を生じる。多量の、藻類を含まない培地(または実質的に藻類を含まない培地)が、例えば、利用されなかったフロースルー培養物中に、およびバッチ培養のバイオマス回収後に存在する。本明細書に記載の再利用法は、使用済み培地からの高価な産物の生成につながる。農業用肥料/成長促進剤または土壌調整剤などの他の目的のための、代謝産物の標的抽出または使用済みの材料の再使用によって、使用済み/無細胞培地には高価な代謝産物を生じる可能性がある。
【0103】
微細藻類、藍藻類(blue-green algae)、およびシアノバクテリアを含む藻類は肥料添加物として用いられてきた。藻類およびシアノバクテリアによるエキソポリサッカライドおよび生理活性物質の排出には、土壌栄養素の回収および不溶型の無機リン酸の動員(mobilization)において、証明された役割がある。藻類プロテオグリカンは、細胞を固体表面に容易に結び付けることができる付着性を有し、凝集した土壌粒子は土壌の温度、エアレーション、および浸透速度に影響を及ぼす。これは農作物の物理的環境を改善することができる。ムコ多糖、炭水化物、および有機物は土壌の肥沃度、および湿度を保持する能力を改善することができる。本明細書に記載の方法に従って培養された微細藻類(例えば、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis))には、これらの有益な代謝産物を培養培地に排出する能力がある。
【0104】
従って、本明細書に記載の方法によって産生された培養培地、使用済み培地、リサイクル培養培地、補充済み培地、および/またはハイブリッド培養培地(またはその画分)を含む、バイオ肥料(biofertilizer)または土壌調整組成物も本明細書において提供される。
【0105】
土壌調整剤またはバイオ肥料として使用するための組成物における、本明細書に記載の方法によって産生された培養培地、使用済み培地、リサイクル培養培地、補充済み培地、および/またはハイブリッド培養培地(またはその画分)の使用も本明細書において提供される。一部の態様では、このような使用は、土壌を有効量の本明細書に記載の組成物と接触させる工程を含む。一部の態様では、土壌は、播種された種子または成長している植物のすぐ近くにあってもよい。一部の態様では、本明細書に記載の組成物は液体組成物であり、注入(例えば、点滴灌漑)、噴霧を含むが、これに限定されない任意の適切な手段によって、または液体組成物が土壌に注がれる土壌ドレンチ法(soil drench method)によって土壌に供給することができる。一部の態様では、本明細書に記載の組成物は、(例えば、顆粒、ペレット、またはビーズの形をとる)固体組成物であり、任意の適切な手段によって土壌に供給することができる。
【0106】
一部の態様では、本明細書に記載の組成物は微細藻類細胞を含む。一部の態様では、本明細書に記載の組成物は無細胞または実質的に無細胞である。
【0107】
一部の態様では、本明細書に記載の任意の培地に1種類または複数種のサイトカイニンおよび/またはABAが補充される。ある量の1種類または複数種のサイトカイニンおよび/またはABAが補充されると、1種類または複数種のサイトカイニンおよび/またはABAの全レベルが得られる。例えば、あるレベルの1種類または複数種のサイトカイニンおよび/またはABAが、補充前に補充されている培地に既に存在していれば、1種類または複数種のサイトカイニンおよび/またはABAの全レベルは、培地に補充されるサイトカイニンおよび/またはABAのレベルより大きくなる。一部の態様では、培地には、約0.01pmol/mL〜約100nmol/mLの全レベルが補充されるか、または前記の全レベルまで補充される。一部の態様では、培地には、約0.05nmol/mL〜約100nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約75nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約50nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約40nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約35nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約30nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約25nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約20nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約15nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約10nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約4nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約3nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約2.5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約2nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約1.5nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約1nmol/mL、約0.05nmol/mL〜約0.5nmol/mL、もしくは約0.05nmol/mL〜約0.1nmol/mLの全レベルが補充されるか、または前記の全レベルまで補充される。一部の態様では、本明細書に記載の任意の培地に、少なくとも約75nmol/mL、約50nmol/mL、約35nmol/mL、約30nmol/mL、約25nmol/mL、約20nmol/mL、約15nmol/mL、約10nmol/mL、約5nmol/mL、約4nmol/mL、約3nmol/mL、約2.5nmol/mL、約2nmol/mL、約1.5nmol/mL、約1nmol/mL、約0.5nmol/mL、もしくは約0.1nmol/mLの全レベルが補充されるか、または前記の全レベルまで補充される。一部の態様では、本明細書に記載の任意の培地には、DZR、tZR、cZR、iPR、DZNT、tZNT、cZNT、iPNT、2MeSZ、2MeSiP、2MeSZR、2MeSiPA、DZOG、DZROG、cZROG、DZ9G、tZOG、cZOG、および/またはtZ9Gより選択される1種類または複数種のサイトカイニンが補充される(表1〜5を参照されたい)。
【0108】
本開示の方法において本明細書中で説明されたように本開示の使用の態様は変更できると当業者に理解される。
【0109】
以下の非限定的な実施例は本願を例示するものである。
【実施例】
【0110】
実施例1:ハイブリッド培養培地Aおよびホルモンシグナル伝達
序論
増殖効率および産物収率を高めることは学界だけでなく産業にとっても関心が高い。理論に拘束されるつもりはないが、必要不可欠な増殖に関係するパラメータを操作および追跡することが可能な場合がある。微細藻類を用いた研究から、サイトカイニン(CK)は増殖制御因子として働くことが示唆された。ユーグレナ・グラシリスにおけるリサイクル培養培地の使用、ならびにバイオマス蓄積、細胞数、pH、グルコース消費、上清枯渇、細胞数、およびCKに及ぼす、その影響が本明細書において説明される。
【0111】
方法と材料
予備的培養増殖条件
ユーグレナ・グラシリスを、糖蜜(3g/L)、酵母エキス(5g/L)、リン酸一アンモニウム(ammonium phosphate monobasic)(2g/L)、植物油(2g/L)、およびエタノール(2g/L)を含有するオートクレーブ済み新鮮培地に入れて、バッチ培養で従属栄養的に増殖させた。ユーグレナ・グラシリスを通気性ソリッドキャップ(ajar solid cap)付2L培養フラスコに入れて、29.0℃で、振盪速度100分-1に設定したAdolf Kuhner AG (Model, ISF-4-V)インキュベーターに置いて培養した。
【0112】
実験的増殖条件
ユーグレナ・グラシリスを、インキュベートされた予備的培養物からの細胞濃縮物として回収し、実験物を増殖させるのに使用した。それぞれの一連の実験では同じ新鮮培地を使用した。リサイクル上清を、フェドバッチ法を用いて、供給源培養物から、75%使用済み培地と25%新鮮培地の比で再循環させた(ハイブリッド培養培地-75%が生じる)。
【0113】
実験1および2の培養条件およびデータ回収
予備的培養からの細胞濃縮物を使用して、5x500mL(4つの試験レプリケートおよび1つの対照)の、バッフル付ベント付培養フラスコに2x106細胞/mLの密度で接種した。実験1では、使用済み培地の回収および再循環を4日ごとに行い、これに対して実験2では3日ごとに回収を行った。250mLのオリジナル培養物を回収し、5mLを超える量についてはThermo Scientific Sorvall ST 16遠心機を用いて5000rpmで5分間、遠心沈殿した。オリジナル培養フラスコの中にある残りの250mLに、遠心分離した上清125mLを添加し、125mLの新鮮培地を補った。これにより、組み合わされた供給源から500mLとなった。サイクルを開始するたびに、新鮮培地と、予備的培養からの濃縮細胞を厳密に対照に使用した。ある決まった時間(例えば、9:00am)で、次のサイクルのためにフラスコを回収および分割した。これを5つの回収サイクルにわたって繰り返した。フラスコをThermo Scientific Max Q 6000(Model, 4359)に入れて、29.0℃で、振盪速度125rpmで保持した。
【0114】
各フラスコから、毎日、ある決まった時間(例えば、2:00pm)に採取した2mL試料を用いてデータを収集した。5mLより少ない試料については、Thermo Scientific Heraceus Picoを用いて2000xgで5分間遠心分離した、2mL試料の遠心分離後に、湿重量と上清およびペレットの体積を得た。遠心分離した試料1mLを秤量し、60℃のLindberg/Blue(Model, G01330A-1)Ovenに入れて一晩乾燥させた。パーセント水分および最終乾燥産物重量も計算した。各サイクルの終了時に100mLの培養を遠心分離し、さらなる消費分析のためにペレットと50mLの上清を収集した。
【0115】
実験3の培養条件およびデータ回収
実験デザインにおける試料: 対照100%、再利用率A、再利用率B、再利用率C、およびサイクルデザインを、図1に図示した。これは、5つのサイクル:0、1、2、3、および4にわたって行われる。予備的(母)培養物からの細胞濃縮物を使用して、バッフル付ベント付培養フラスコの中に入っている8x500mL新鮮培地に2x106細胞/mLの密度で接種し、増殖前サイクル(サイクル0)として3日間そのままにした。全てのフラスコを、29.0℃で、振盪速度100min-1に設定したAdolf Kuhner AG(Model, ISF-4-V)インキュベーターに入れて保持した。実験群を以下で説明する。
【0116】
対照100%: 3日後に、4個のフラスコについて、遠心分離によって、5000rpm、室温で5分間、沈殿させた。細胞ペレットおよび上清を捨てた。新たな増殖培地を4個のフラスコに添加し、2x106個の細胞/mLの細胞接種材料を添加した。これらの細胞をサイクル1のために3日間増殖させ、次いで、サイクル2〜4のためにプロセスを繰り返した。
【0117】
再利用率A: 3日間増殖させた後、サイクル0の1個のフラスコについて、遠心分離によって5000rpm、室温で5分間、沈殿させた。次いで、上清を使用して、ハイブリッド培養培地-25%(75%新鮮増殖培地と25%使用済み培地を用いる)を生成した。これをサイクル1の4個のフラスコのためのハイブリッド培養培地として使用した。培養物を3日間増殖させ、次いで、沈殿させ、サイクル2のための使用済み培地として使用した。サイクル2〜4をサイクル1と同じように設定した。
【0118】
再利用率B: 3日間増殖させた後、サイクル0の2個のフラスコについて、遠心分離によって5000rpm、室温で5分間、沈殿させた。次いで、上清を使用して、ハイブリッド培養培地-50%(50%新鮮増殖培地と50%使用済み培地を用いる)を生成した。これをサイクル1の4個のフラスコのためのハイブリッド培養培地として使用した。培養物を3日間増殖させ、次いで、沈殿させ、サイクル2のための使用済み培地として使用した。サイクル2〜4をサイクル1と同じように設定した。
【0119】
再利用率C: 3日間増殖させた後、サイクル0の3個のフラスコについて、遠心分離によって5000rpm、室温で5分間、沈殿させた。次いで、上清を使用して、ハイブリッド培養培地-75%(25%新鮮増殖培地と75%使用済み培地を用いる)を生成した。これをサイクル1の4個のフラスコのためのハイブリッド培養培地として使用した。培養物を3日間増殖させ、次いで、沈殿させ、サイクル2のための使用済み培地として使用した。サイクル2〜4をサイクル1と同じように設定した。
【0120】
乾燥バイオマス重量
各フラスコから、5mLを採取した接種後の日(Day Post Inoculation)(DPI)1を除いて、毎日、ある決まった時間(すなわち、2:00pm)に採取した25mL試料を用いてデータを収集した。細胞ペレット重量を求めるために5mLを使用した。細胞ペレットを、5000rpm、室温で5分間の遠心分離によって形成した。さらなる分析のために上清を収集した。ペレットを脱イオン水で2回洗浄した。細胞ペレットを、5000rpm、室温で5分間の遠心分離によって回収した。試料を細胞湿重量のために秤量し、次いで、凍結乾燥させて細胞乾燥重量を求めた。試料の凍結乾燥は、細胞ペレットを-80℃で10分〜12時間まで凍結すること、次いで、減圧下で凍結乾燥機に入れることからなった。これによって、凍結した水分子が除去され、乾燥バイオマスが残った。次いで、試料の重量を求めるために、乾燥した細胞/バイオマスを秤量した。細胞が多いほど、または細胞内にある細胞成分、すなわち、タンパク質、脂質、脂肪酸、および/もしくは炭水化物が多いほど、重量が重くなる。
【0121】
乾燥上清重量
上清試料を使用して、溶解状態で残っている溶質の量を測定した。5mLの試料を培養物から収集し、細胞をペレット化するために、5000rpm、室温で5分間遠心分離した。上清を収集し、次いで、3μmより小さな粒子を保持することができる4.25cm直径のFisherbrand Glass Fiber filter circle, G6で濾過した。次いで、濾過した上清を凍結乾燥させ、乾燥バイオマスと同じように測定した。
【0122】
ABAおよびCKの抽出および精製
凍結乾燥した細胞ペレットおよび上清を抽出緩衝液(CH3OH:H2O:HCOOH[15:4:1, v/v/v])で再懸濁し、試料に、内部標準(144ngの2H4-ABA(PBI, Saskatchewan, Canada)および10ngのそれぞれの重水素化内部標準CK(OlChemim Ltd, Olomouc, Czech Republic; 表1)を加え、次いで、ステンレス鋼シリンダー(RetschMM300; 5min, 25 Hz)と酸化ジルコニウム研磨ビーズ(Comeau Technique Ltd., Vaudreuil-Dorion, Canada)を用いて4℃でホモジナイズし(ボールミル, Retsch MM300)、徹底的にボルテックスし、1分間超音波処理した。試料を受動的に-20℃で一晩(約12時間)抽出した。試料を1000rpmで10分間遠心分離し、上清を収集した。ペレットを1mLの抽出緩衝液で-20℃で30分間再抽出した。プールした上清を高速真空濃縮機に入れて35℃で乾燥させた。
【0123】
(表1)高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(HPLC-MS/MS)によってスキャンされた植物ホルモン(サイトカイニン(CK)およびアブシジン酸(ABA))ならびに関連する標識された標準物質
【0124】
全CKの完全なプロトン化を確実にするために、抽出残渣を1mLの1Mギ酸(pH1.4)に溶解して再構成した。各抽出物を混合モード、逆相、陽イオン交換カートリッジ((Canadian Life Sciences; IRIS MCX 6mL; 25〜35μ 200mg, Peterborough, ON, Canada)で精製した。カートリッジを5mLのHPLCグレードメタノールを用いて活性化し、5mLの1Mギ酸(pH1.4)を用いて平衡化した。平衡化後に各試料をロードし、5mLの1Mギ酸(pH1.4)で洗浄した。ABAおよびCKを化学的特性に基づいて溶出させた。最初に5mLのHPLCグレードメタノールを用いてABAを溶出させた。5mLの0.35M水酸化アンモニウムを用いてヌクレオチド画分(NT)を溶出させた。遊離塩基(FB)およびリボシド(RB)は電荷および疎水特性に基づいて保持された。従って、これらを、60%メタノールに溶解した0.35M水酸化アンモニウム5mLを用いて最後に溶出させた。全ての試料を高速真空濃縮機に入れて35℃で蒸発するまで蒸発させ、すぐに-20℃で保管した。1mLの0.1Mエタノールアミン-HCl(pH10.4)に溶解した3単位の細菌アルカリホスファターゼを用いてNTを37℃で12時間、脱リン酸した。結果として生じたRBを高速真空濃縮機に入れて35℃で乾燥させた。逆相C18カラム(Canadian Life Sciences; C18/14%, 6ml, 500mg; Peterborough, ON, Canada)でさらに精製するために、試料を1.5mLの2回蒸留水(double-distilled water)(DDW)に溶解して再構成した。カラムを、3mLのHPLCグレードメタノールを用いて活性化し、6mLの2回蒸留水で平衡化した。試料をC18カートリッジにロードし、重力によってカラムに通した。吸着剤を3mLのDDWで洗浄し、分析物を、1.25mLのHPLCグレードメタノールを用いて溶出させた。全ての試料溶出液を高速真空濃縮機に入れて35℃で乾燥させ、さらに処理するまで-20℃で保管した。高速液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(HPLC-ESI MS/MS)分析の前に、全ての乾燥試料を1.5mLの開始条件(CH3COOH:CH3CN:ddH2O[0.08:5.0:94.92, vol/vol/vol]に溶解して再構成した。
【0125】
CKおよびABAの定量および分析
ホルモンをHPLC(ESI)MS/MSによって特定および定量した。25μLの試料体積を、QExactive Orbitrap質量分析計(Thermo Scientific)と連結したDionex Ultimate 3000 HPLCに注入した。逆相C18カラム(Kinetex 2.6u C18 100 A, 2.1×50mm; Phenomenex, Torrance, CA, USA)を用いて化合物を分離した。全てのホルモン画分を、成分B:アセトニトリル(CH3CN)と0.08%CH3CO2Hと混合した、成分A:水(H2O)と0.08%酢酸(CH3CO2H)の多段階勾配を用いて、ABAについては0.3mL/分、CKについては0.4mL/分の流速で溶出させた。初期条件は、2分にわたって5%Bから10%Bへの直線的な増加に続いて、6.5分にわたる95%Bへの増加であった。95%Bを1.5分間にわたって一定に保った後に、5分間にわたって開始条件に戻した。CK試料を、加熱エレクトロスプレーイオン化(heated electrospray ionization)(HESI)源を備えるThermo Fisher Scientific QExactive Orbitrap(Santa Clara, CA, USA)を用いて分析し、ポジティブイオンモードで操作した。ABA試料をネガティブイオンモードで操作した。並列反応モニタリング(PRM)モードでのスキャニングの開始時間と終了時間を決定するために、フルスキャンモードでの質量範囲(mass range)はm/z150〜550であり、分解能を35,000に設定した。HESIプローブおよびキャピラリーの温度はそれぞれ450℃および250℃であり、スプレー電圧は3.9kVであった。シースガス(sheath gas)、補助ガス(auxiliary gas)、およびスペアガス(spare gas)をそれぞれ30、8、および0任意単位で操作した。S-lens RFレベルは60であった。PRMパラメータには、1・106の自動利得制御(automatic gain control)(AGC)と128msecの最大注入時間(IT)が含まれた。前駆体単離ウインドウ幅(precursor isolation window width)はm/z 1.2であり、各化合物に個々に最適化された、基準化された衝突エネルギー(normalized collision energy)(NCE)は化合物に応じて28〜40eVであった。LC-MS/MS分析中に収集した生データファイルを、Thermo Fisher Scientific Xcaliburソフトウェア(v.3.0.63; Santa Clara, CA, USA)を用いて処理した。2種類の最も強いフラグメントイオンの正確な質量と3ppmの質量許容誤差(mass tolerance)を用いてピークを抽出した。ピーク積分では5つのスムージングポイント(smoothing point)と0.5の信号対雑音(S/N)閾値を使用した。定量は2H標識内部標準の回収に基づいた同位体希釈分析によって行った。
【0126】
有機培地(培地ブランク)中にある既存の内因性ホルモンのバックグラウンドレベルを除くことによって内因性CK分析を調整し、CK濃度を、Xcaliburソフトウェアパッケージを用いて細胞乾燥ペレット重量に従って計算した。購入した内部標準を分析に使用した(表1)。
【0127】
グルコース消費
試料中のグルコース量を求めるために上清試料を採取し、YSI分析機器(YSI2700)によって測定した。具体的には、YSI機器によって測定される範囲に試料を(8倍)希釈するために、250μLの上清を1.75mLの脱イオン水に添加した。この機器には、0.05g/L〜9g/Lのグルコースを検出することができる標準物質がある。この機器は実験試料中のグルコースを測定し、存在するグルコースの量を求めるために標準物質と比較する。
【0128】
結果と考察
異なる再利用率および対照からの細胞湿重量および細胞乾燥重量を経時的(サイクル)に求めた(図2)。一般的に、細胞湿重量が増加した再利用率BおよびCの264時間を除いて、時間が長くなるにつれて細胞湿重量は減少した。乾燥重量はもっと変化に富んでいたが、概して、対照は(264時間を除いて)他のものより多かった。このことから、再利用率全体にわたってバイオマス生成レベルはかなり一貫性があることが分かる。
【0129】
異なる実験群の上清乾燥重量を求めた。対照と、使用したリサイクル培養培地栄養素が少ない再利用率Aの上清を再利用率BおよびCと経時的に比較した(図3)。
【0130】
異なるリサイクル培養培地率の細胞数を経時的に求めた(図4)。細胞数は各サイクルの中でかなり似ている。このことから、細胞分裂は、試験した最も高い再利用率でも制限されないことが分かる。
【0131】
それぞれの再利用率およびサイクルについて培地からのグルコース消費を求めた(図5A)。消費データから、後ろのサイクルの細胞で用いられる糖は少ないことが分かる。このことから、これらの細胞は代謝が活発でないことが分かる。pH追跡(図5B)から、再利用率が増えるにつれてpHも上昇し、サイクル中にも上昇することが分かる。このことから、対照培地および再利用率Aの培地は緩衝能を保持しているが、再利用率BおよびCの培地は保持していないことが分かる。
【0132】
全ホルモンデータが、培養に使用した新鮮培地中に存在するCKおよびABAのパーセントに対して補正されている。これは、実験ブランクを採取し、植物ホルモンレベルを分析し、次いで、リサイクル培地における希釈率に基づいて、これらのレベルを差し引くことで行った。結果として得られた、報告されたホルモンレベルは、ユーグレナ属細胞そのものによって合成または処理されたホルモンを代表するものであろう。しかしながら、培地中におけるホルモンの外因的存在が、ユーグレナ属細胞ペレットの内因性プロファイル全体ならびに/または後のサイクル回で用いられる上記培地および無細胞使用済み培地に排出されるホルモンに影響を及ぼす可能性があることは無視できない。
【0133】
培地ブランクおよび全ての再利用率からの上清のABA分析を行った(図6)。培地ブランクは全ホルモンプロファイルの約25%を占めた。異なる再利用率の下で増殖させた培養物の上清からのABAデータから、サイクル1では、再利用率が増えるにつれて培養培地中のABAレベルは増加することが分かった。このことから、ユーグレナ属はABAを周囲環境に分泌する能力を有する可能性があると示唆される。サイクル1の終了時に、全ての再利用率においてABAレベルは開始値の>25%低下した。他の再利用率と比べて、サイクル1の開始時および終了時ならびにサイクル4の開始時および終了時に75%のABAレベルが最も多かった。ABAは細胞周期の阻害または遅れを引き起こすことができ、脂質などの他の代謝産物産生を増やす可能性があるので、このことは、細胞乾燥重量が他の再利用率と比べて少ないことを説明しているのかもしれない。
【0134】
サイトカイニン(CK)はそのタイプまたは型に基づいて大きく分類することができる。CKタイプにはDZ、cZ、tZ、およびiPが含まれ、CK型には、ヌクレオチド、リボシド、遊離塩基、グルコシド、およびメチルチオールが含まれる。大まかに、CKタイプには、様々な型、すなわち、DZタイプ:DZNT、DZR、DZ;cZタイプ:cZNT、cZR、cZ;tZタイプ:tZNT、tZR、tZ、およびiPタイプ:iPNT、iPR、iPが含まれる。CK型は様々なCKタイプを組み込んでいる。CK分析は、全ての再利用率の上清のCKプロファイルを調べ、CKタイプおよび型に基づいて分析を提供する。
【0135】
培地ブランク中の全サイトカイニンレベルならびに培地ブランク中のサイトカイニンタイプを求めた(図7)。培地ブランクの全CK濃度ならびに存在するタイプおよび型を求めた。存在するCKの大多数はヌクレオチド型であり、遊離塩基およびリボシド型が続いた。優勢なCKタイプにはiPおよびDZが含まれた。
【0136】
サイトカイニン測定値を、上清測定値については表2〜3で、細胞ペレットサイトカイニン測定値については表4〜5で報告する。
【0137】
(表2)無細胞使用済み培地の様々な再利用率で増殖させたユーグレナ・グラシリス培養物の上清に由来するサイトカイニン濃度およびABA濃度(pmol/mL)。値は、増殖サイクルの開始時(DPI0)および終了時(DPI2)に、サイクル1の培養中の特定の時点で選んだ平均(n=3)である。空欄のセルは分析物の0の値を示す。
【0138】
(表3)無細胞使用済み培地の様々な再利用率で増殖させたユーグレナ・グラシリス培養物の上清に由来するサイトカイニン濃度およびABA濃度(pmol/mL)。値は、増殖サイクルの開始時(DPI0)および終了時(DPI2)に、サイクル4の培養中の特定の時点で選んだ平均(n=3)である。空欄のセルは分析物の0の値を示す。
【0139】
(表4)無細胞使用済み培地の様々な再利用率で増殖させたユーグレナ・グラシリス培養物のペレットに由来するサイトカイニン濃度およびABA濃度(pmol/gDCW)。値は、増殖サイクルの開始時(DPI0)および終了時(DPI2)に、サイクル1の培養中の特定の時点で選んだ平均(n=3)である。空欄のセルは分析物の0の値を示す。
【0140】
(表5)無細胞使用済み培地の様々な再利用率で増殖させたユーグレナ・グラシリス培養物のペレットに由来するサイトカイニン濃度およびABA濃度(pmol/gDCW)。値は、増殖サイクルの開始時(DPI0)および終了時(DPI2)に、サイクル4の培養中の特定の時点で選んだ平均(n=3)である。空欄のセルは分析物の0の値を示す。
【0141】
培地上清中ならびに細胞ペレット中の全サイトカイニンレベルを試験した。一般的に、サイクル開始時に多くのリボシドが観察され、サイクル終了時にグルコシド型(貯蔵型)が見出される。グルコシドではcZタイプが増加する。これも主にcZ型およびiP型である。
【0142】
サイクル終了時にグルコシド型が増加するので、次のサイクルの開始時には、再利用率が高いほど、サイクル開始時に存在するグルコシドが多くなる。最もよくあるサイトカイニンタイプはDZ型グルコシドであり、再利用率B(50%)および率C(75%)のサイトカイニンレベルが高かった。しかしながら、サイクルの期間にわたって、これらのレベルは低下する。
【0143】
100%対照上清中のサイトカイニンレベルを求めた(図8〜9)。全サイトカイニンレベルはサイクル1からサイクル4にかけて減少した。100%新鮮培地対照におけるCKレベルをユーグレナ・グラシリス培養増殖中に求め、さらなる計算から、培地ブランクからのバックグラウンドCKレベルを取り除いた。全CKはサイクル1およびサイクル4の開始と終了の間に減少した。サイクル1での減少は、優勢なiPタイプCK、特に、iPRの低減を示した。cZタイプの増加は主にcZRおよびcZの増加によるものであった。サイクル1の開始時にはCK型はリボシドが優勢であるのに対して、サイクル1の終了時にはリボシドが減少し、グルコシド比率が増加した。これは、DZRおよびiPRが低減し、tZOGおよびcZOGが増加したことが原因である可能性が高い。tZOGおよびcZOGは貯蔵型として働くので、これらは、非結合型、すなわち、サイクル1の開始と終了の間に増加することが見出されたcZおよびtZの増加と共に増加することが分かる。サイクル4は、全CKが減少する同様の傾向と、iP CKタイプの同様の低減に従った。
【0144】
再利用率A(25%ハイブリッド培養培地)上清からの培地中の全CKレベルを求めた(図8〜9)。全CKレベルはサイクル1の開始からサイクル1の終了にかけて減少した。この傾向はサイクル4にも反映された。ユーグレナ・グラシリス増殖と共にCKプロファイルが変化し、全CKリボシドがサイクル1の開始から終了にかけて低減した。これはiP CKタイプが低減し、iPおよびiPRが低減したことが原因である。このプロファイルではCKグルコシドおよびCKRB型は等量になる。DZおよびtZタイプを含む他のCKタイプもサイクル1の開始から終了にかけて低減した。この傾向はサイクル4にも反映される。しかしながら、cZタイプはサイクル1の開始と終了の間に増加する。これはcZの存在量が増加したことが原因である。cZグルコシドの増加は、サイクル1の開始から終了にわたるcZ型の増加を相殺する可能性が高い。
【0145】
再利用率B(50%ハイブリッド培養培地)からの上清中の全CKレベルを求めた(図8〜9)。全CKレベルはサイクル1の開始から終了にかけて減少した。この傾向はサイクル4に反映されなかった。cZタイプが増加し、cZが増加し、それに加えて、cZタイプグルコシド(cZOGおよびcZROG)が増加した。
【0146】
他の再利用率で見られたようにiP CKタイプは低減した。しかしながら、DZタイプの形をとる高レベルのグルコシドがある。これはサイクル1の開始から終了にかけて低減するが、CKプロファイルにおいて優勢なタイプである。
【0147】
これらの全CK型優勢の違いは、この処理において認められたCKプロファイル変化と関連する可能性があるDCWを含む増殖傾向と相関関係があるかもしれない。
【0148】
再利用率C(75%ハイブリッド培養培地)からの上清中の全CKレベルを求めた(図8〜9)。全CKレベルはサイクル1の開始から終了にかけて増加し、サイクル4については、より少ない変化が認められた。他の再利用率で見られたようにiPタイプの特徴的な低減はない。iPタイプと比べて他のCKタイプが増加する。サイクル1におけるCKグルコシド型ならびにリボシド型の増加。これらの増加はサイクル4に反映されなかった。
【0149】
全体の傾向は、再利用率A、B、およびCからの異なる培地について異なるCKプロファイルを示す。バックグラウンド基本培地ホルモンプロファイル補正を組み込むと、培地ブランクレベルはリサイクル培養培地および対照試料における測定レベルより少なかったと認められる。さらに、CKプロファイルの変化の分析は様々な培養条件において傾向が保存されることを強調している。全体として、培養時間が長くなるにつれて、iPタイプを含むリボシド型が減少し、cZタイプが増加する傾向がある。このことから、ユーグレナ・グラシリスは、ある特定のCKを合成し、培地に排出できることが分かる。さらに、サイクルの終了時にCKグルコシドが増加して優勢になる。このことから、ユーグレナ・グラシリスはCKを安定なグルコシド型に処理する能力があることが分かる。
【0150】
プロファイルから、産生を導くのに役立つデータが得られる。ホルモンデータと突き合わせ、最も生産的なプロファイルと一致するようにユーグレナ・グラシリスのアウトプットを変更すると培養の条件および技法が導かれる。理想的には、パラメータはグルコシド存在量を低減させ、増殖プロセスにおけるiPおよびcZタイプCKの重要性も強調する。
【0151】
ペレットの全CKに着目した場合、内因性サイトカイニンはサイクル終了までに増加する。高再利用率(50%および75%)は高レベルのサイトカイニンを示す(図10)。ABAはどのペレット試料でも検出されなかった。
【0152】
100%新鮮培地からのペレット中の全CKレベルを求めた(図10〜11)。全CKレベルはサイクル1の開始から終了にかけて全体的に増加した。DZタイプの減少がサイクル1および4の開始と終了の間に見出された。これはDZRおよびDZNT型が低減したことが原因である。tZタイプはサイクル1および4において減少し、tZNTが低減した。cZタイプは増加し、cZおよびcZNTが増加した。このcZタイプ増加はサイクル4でも見られた。iPタイプは増加した。これは、iPNTの存在量が原因であるが、iPRおよびiPが全体的に低減した。メチルチオールCKのうち2MeSiPがサイクル1およびサイクル4での増殖中に50%低減した。CKグルコシド型はサイクル1および4の開始と終了の間に低減した。興味深いことに、この内因的低減は、対応する上清試料中にあるCKグルコシドの外因的増加と対になる可能性がある。
【0153】
再利用率A(25%ハイブリッド培養培地)からのペレット中の全CKレベルを求めた(図10〜11)。CKレベルはサイクル1およびサイクル4の開始から終了にかけて増加した。この増加はcZおよびiP CKタイプの増加が原因であった。特に、cZ、cZNT、およびiPNTが増殖サイクルにわたって蓄積する。メチチオール(methythiol)CKのうち2MeSiPはサイクル1の開始と終了の間に低減したのに対して、サイクル4の開始と終了の間に増加した。サイクル4中の、この蓄積増加は、再利用率Aのサイクル4中の全バイオマス減少と相関する。再利用率BおよびCもサイクル4において同様の2MeSiP増加を示す。これはDCWと相関関係があるかもしれない。グルコシドも再利用率Aのペレット中で検出され、増殖中にはっきりとした変化はなかった。
【0154】
再利用率B(50%ハイブリッド培養培地)からのペレット中の全CKレベルを求めた(図10〜11)。再利用率Bのペレット中で全CKレベルは増加した。これは、CK iP CKタイプが増加したことが原因であった。主なiP CKタイプ蓄積はiPNTに続いてiPRおよびiPであった。cZタイプは減少した。これは、100%新鮮培地および再利用率Aで見られたものとは異なる。cZ CKタイプの減少はcZが減少したことが原因であったが、cZNT(前駆体型)は増加した。
【0155】
再利用率C(75%ハイブリッド培養培地)からのペレット中の全CKレベルを求めた(図10〜11)。全CKはサイクル1およびサイクル4の開始と終了の間に増加した。CK型、特に、ヌクレオチド型ならびにメチルチオールCKの増加が見られた。増加はサイクル1および4の開始から終了にかけてcZNTおよびiPNTならびに2MeSiPおよび2MeSZRにおいて見ることができた。サイクル1ではcZおよびiPも減少し、これは再利用率Bでも見られた。
【0156】
全体として、再利用率全体を通してサイクルの開始と終了の間に内因性CKが増加した。100%新鮮および再利用率AではcZレベルは増加したのに対して、BおよびCではcZレベルはサイクル1では全体的に低減した。これは、これらの細胞で見られる増殖の違いと相関するかもしれない。
【0157】
全体として、iPNTの形をとる、ペレット中のiPタイプの蓄積が増加した。これらのiPタイプは細胞内で産生されたか(NT)、または周囲培地から細胞に取り込まれ、細胞により処理された可能性がある。
【0158】
さらに、メチルチオールCKは培養の全増殖速度において役割を果たしているかもしれない。2MeSiPはサイクル1および4の100%新鮮培地中で減少した。再利用率Aでは、メチルチオール2MeSiPはサイクル1の開始と終了の間に低減したのに対して、サイクル4の開始と終了の間に増加した。サイクル4中の、この蓄積増加は、サイクル4中の再利用率Aの全バイオマス減少と相関する。再利用率BおよびCもサイクル4での同様の2MeSiP増加を示す。これはDCWと相関関係があるかもしれない。
【0159】
高再利用率ではcZタイプのサイトカイニンが低減する。これは、上清観察で認められたように、cZ型が培地に分泌されたことと相関するかもしれない。全ての率で、ペレット中でiPタイプ、特に、ヌクレオチド型が増加する。理論に拘束されるつもりはないが、これは、iPタイプがNTの形で細胞内に産生されたか、または細胞に取り込まれ、細胞により処理されたことが原因であるかもしれない。
【0160】
実施例2:ハイブリッド培養培地B
序論
炭水化物供給源として糖蜜を使用した実施例1に加えて、特定の糖供給源としてグルコースも試験した。
【0161】
方法と材料
ユーグレナ・グラシリス株Z
ユーグレナ・グラシリス株Zを細胞培養物として使用した。出発細胞培養物:グルコース、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、塩化カルシウム、様々な微量金属、硫酸アンモニウム、ならびにビタミンであるビオチン(B7)、チアミンHCl(B1)、B6、およびB12(表6を参照されたい)を含有する増殖培地中に、細胞を2x106細胞/mLの濃度で接種した。
【0162】
(表6)ユーグレナ・グラシリスを増殖させるのに使用した新鮮増殖培地の成分。pHを3.2に調整した
【0163】
リサイクル培養培地の生成
グルコースが枯渇する(培地中で約0g/Lに達する)まで細胞を3〜4日間増殖させた。これによって、1回目の再利用増殖サイクル(サイクル1)用のリサイクル培養培地を作製するのに使用する第1の使用済み培地を生成した。
【0164】
試験条件
この実験では4つの異なる条件を試験した:
【0165】
条件1: 母培養物からの細胞(200万個の細胞/mLの開始濃度)を新鮮増殖培地の中でインキュベートし、3日間増殖させた。フラスコを、新鮮増殖培地と新鮮な細胞接種材料を用いて再開し、サイクル2を開始した。再度、このサイクル2は3日後に終了した。サイクル3を同じように繰り返した(図12)。
【0166】
条件2: 母培養物からの細胞(200万個の細胞/mLの開始濃度)をリサイクル増殖培地の中でインキュベートし、サイクル1のために3日間増殖させた(図13を参照されたい)。リサイクル増殖培地は使用済み増殖培地と新鮮増殖培地から1:1比で構成された。サイクル2のために、サイクル1からの使用済み増殖培地を新鮮増殖培地と1:1比で混合して、サイクル2用のリサイクル培養培地を生成した。新鮮な細胞をリサイクル培養培地に接種し(200万個の細胞/mL)、細胞を3日間増殖させた。サイクル3のために、サイクル2からの使用済み増殖培地を新鮮増殖培地と1:1比で混合して、サイクル3用のリサイクル培養培地を生成した。新鮮な細胞をリサイクル培養培地に接種し(200万個の細胞/mL)、細胞を3日間増殖させた。当業者は、追加サイクルを同様に実施できると容易に認めることができる。
【0167】
条件3: 条件1下でのサイクル1の終了からの細胞を、新鮮増殖培地に導入する接種細胞として使用した。このインキュベーションを条件3のサイクル1と呼ぶ。200万個の細胞/mLを新鮮培地に接種し、3日間増殖させた。次いで、サイクル2のために、サイクル1の終了時の細胞を200万個の細胞/mLで新鮮培地に接種し、3日間増殖させた。サイクル3をサイクル2と同じように繰り返した。図14を参照されたい。
【0168】
条件4: 条件1下でのサイクル1の終了からの細胞を、リサイクル培養培地に導入する接種細胞として使用した(図15)。リサイクル増殖培地は、使用済み増殖培地と新鮮増殖培地から1:1比で構成された。200万個の細胞/mLの細胞を接種し、培養物を3日間培養させた。サイクル2のために、サイクル1の終了時の細胞を、200万個の細胞/mLで、サイクル1からの使用済み増殖培地と新鮮増殖培地の1:1混合物を含むリサイクル培養培地に接種した。培養物を3日間培養させた。サイクル3のために、サイクル2からの使用済み増殖培地を新鮮増殖培地と1:1比で混合して、サイクル3用のリサイクル培養培地を生成した。サイクル2の終了からの細胞をリサイクル培養培地に接種し(200万個の細胞/mL)、細胞を3日間増殖させた。当業者は、追加サイクルを同様に実施できると容易に認めることができる。
【0169】
全細胞を、400mLの作業体積がある、ベントキャップ付1Lフラスコに入れて、暗所で増殖させた。細胞を28℃で、120rpmで振盪しながらインキュベートした。それぞれの条件およびフラスコについて乾燥バイオマス重量、乾燥上清重量、およびグルコース消費を測定した。全ての条件を2回繰り返して行い、各条件を3連続サイクルにわたって増殖させた。各サイクルは3日であり、サイクル1の開始からサイクル3の終了までの全日数は9日であった。
【0170】
乾燥バイオマス重量
乾燥バイオマスとは、試料から水分子を除去するために凍結乾燥されているバイオマスを指す。乾燥バイオマスの調製は実施例1において説明された通りであった。当業者は、バイオマスを乾燥させるのに適した様々な方法を容易に認めることができる。例えば、オーブン乾燥が用いられる場合がある。ある期間(日)にわたる、培養物の細胞バイオマス乾燥重量は細胞増殖の尺度である。細胞増殖は、細胞が増えたこと、すなわち、複製によるものでもよく、細胞の組成が変化したこと、すなわち、細胞内に炭水化物、タンパク質、または脂質が生成したことによるものでもよい。
【0171】
乾燥上清重量
上記の実施例では、ペレット化細胞から上清をデカントし、凍結乾燥することによってペレット化細胞から上清を取り出した。このプロセスは、細胞上清を-80℃で10分〜12時間凍結した後に、試料を減圧下で凍結乾燥機に入れることを伴う。これによって、凍結した水分子が除去される。残留物は、培地に残った溶質が乾燥したものである。溶質は、化合物、すなわち、培地に由来する成分ならびに細胞に由来する潜在的な排出された材料、すなわち、老廃物であろう。経時的に、培地の成分、例えば、主な炭素供給源であるグルコースが用いられるので溶質レベルは減少する。
【0172】
効率の決定
変換効率は培地効率の尺度である。変換効率は、生成されたバイオマスの量を、培地中にある消費された溶質の全量で割ったものと定義される。生成されたバイオマスは、サイクル終了時のバイオマスの全質量を測定し、開始時の培養物中にあった初期全バイオマスを差し引くことによって計算する。消費された溶質の全量は、開始時の培養物中にあった全溶質-最終日の全溶質として計算する。
変換効率は以下のように求める:
変換効率=(サイクル終了時の生成された全バイオマス/サイクル終了時の消費された全溶質)*100%
【0173】
生成された全バイオマス
生成された全バイオマス/サイクルは以下のように求める:
生成された全バイオマス/サイクル=サイクル終了時の全乾燥バイオマス重量-サイクル開始時の全乾燥バイオマス重量
【0174】
消費された全溶質
消費された全溶質/サイクルは以下のように求める:
消費された全溶質/サイクル=サイクル開始時の初期溶質重量-サイクル終了時の最終溶質重量
【0175】
全収率
全収率は、どれくらいのインプットがバイオマスに変換されたかという尺度である。この計算では、1サイクルで生成されたバイオマスの量は、グラムで示される、各サイクル終了時の乾燥バイオマスから、グラムで示される、サイクル開始からの初期乾燥バイオマス重量を差し引くことによって求める。次いで、これを、グラムで示される、使用したインプット、すなわち、増殖培地中にある全ての成分の総質量で割る。細胞乾燥重量は乾燥バイオマス重量と定義される。全収率は以下のように求める:
全収率(gDCW/gインプット)=サイクルで生成されたバイオマスの総質量(細胞乾燥重量)(gDCW)/使用したインプットの総質量(gインプット)
【0176】
サプリメント収率
サプリメント収率を全収率と同様に計算した。しかしながら、これは、使用したインプットの総質量ではなく、新鮮培地補充に由来するハイブリッド培地中の総質量である。この計算では、1サイクルで生成されたバイオマスの量は、グラムで示される、各サイクル終了時の乾燥バイオマスから、グラムで示される、サイクル開始からの初期乾燥バイオマス重量を差し引くことによって求める。次いで、これを、グラムで示される、使用した補充インプット、すなわち、添加した新鮮増殖培地中にある全ての成分の総質量で割る。細胞乾燥重量は乾燥バイオマス重量と定義される。サプリメント収率は以下のように求める:
サプリメント収率(gDCW/gSインプット)=サイクルで生成されたバイオマスの総質量(細胞乾燥重量)(gDCW)/サイクルで使用した新鮮増殖培地に由来するインプットの総質量(gSインプット)
【0177】
グルコースに基づいた収率
グルコースは主な炭素供給源であり、質量の点で培地の2/3を占めるので、グルコース利用に着目した場合の収率も報告する。これは、1サイクルで生成された乾燥バイオマス重量を、そのサイクルで使用したグルコース量で割ったものと定義される。これは、培養または増殖培地の質量(すなわち、グラム)として、またはグラム/リットル(濃度)によって測定される。グルコース(濃度)に基づいた収率は以下のように求める:
グルコース(濃度)に基づいた収率=(サイクル終了時の細胞濃度(g/L)-サイクル開始時の細胞濃度(g/L))/(サイクル開始時のグルコース濃度(g/L)-サイクル終了時のグルコース濃度(g/L))
【0178】
結果と考察
表7および表8は、それぞれ、条件1および条件2の下で培養したユーグレナ属細胞からのサプリメント収率およびグルコース濃度に基づいた収率の概要を示す。DCWは細胞乾燥重量の略語である。gDCWは細胞乾燥重量のグラムである。各サイクルの(サイクル1〜3)結果をサプリメント収率およびグルコース濃度に基づいた収率について個々に示した。各サイクルから、いくつかの要素を示した。第1の要素は、各サイクルから蓄積したバイオマスの最終質量である。表は、3つ全てのサイクルで生成された総質量を、3つ全てのサイクルの新鮮増殖培地インプットの合計で割ったものに基づいた全サイクルのサプリメント収率も示す。最後に、表はグルコースに基づいた収率の平均も示す。
【0179】
条件1の下で、全収率はサイクル1および2が0.26と最も高く、それに対して、サイクル3はわずかに少なかった(0.24)。しかしながら、グルコース濃度に基づく収率はサイクル2が0.45と最も高く、サイクル3が0.41と最も低かった。条件2の下で、サプリメント収率はサイクル1が0.40と最も高く、それに対して、サイクル2および3は低いままであった(それぞれ、0.34および0.29)。しかしながら、グルコース濃度に基づく収率はサイクル1が0.61と最も高く、サイクル3が0.45と最も低かった。
【0180】
(表7)条件1の全収率およびグルコースに基づいた収率の概要
【0181】
(表8)条件2のサプリメント収率およびグルコース濃度に基づいた収率の概要
【0182】
条件1(母培養物細胞を含む新鮮増殖培地)を、条件2(母培養物細胞を含む、50%リサイクル増殖培地と50%新鮮培地を含有するハイブリッド培養培地)と比較した時、ハイブリッド培養培地のサプリメント収率およびグルコース濃度に基づいた収率の方が高い。このことから、補充したインプットまたは使用したグルコースの総量に基づいた、生成されたバイオマスの量は条件2の方が多いことが分かる。理論に拘束されるつもりはないが、ハイブリッド培養培地の収率の方が高く、これは、ユーグレナ属細胞のユニークな代謝が原因であるかもしれない。ユーグレナ属によって排出された可能性がある「老廃」産物、例えば、酢酸、乳酸、またはコハク酸は代謝可能であり、増殖の供給源として有用な可能性がある。理論に拘束されるつもりはないが、ハイブリッド培養培地には、より多くの「老廃」産物が蓄積し、主な炭素供給源であるグルコースが乏しいので、細胞は、生き残るために培地中にある「老廃物」を使用することができる。
【0183】
表9および表10は、それぞれ、条件3および条件4の下で培養したユーグレナ属細胞からの全収率、サプリメント収率、およびグルコース濃度に基づいた収率の概要を示す。DCWは細胞乾燥重量の略語である。gDCWは細胞乾燥重量のグラムである。各サイクルの(サイクル1〜3)結果を、全収率、サプリメント収率、およびグルコース濃度に基づいた収率について個々に示した。各サイクルから、いくつかの特徴が認められた。第1の特徴は、各サイクルから蓄積したバイオマスの最終質量である。表5はまた、全サイクルのサプリメント収率が、3つ全てのサイクルで生成された総質量を、3つ全てのサイクルの全インプットの合計で割ったものに基づくことも示す。最後に、グルコースに基づいた収率の平均も示す。
【0184】
条件3の下で、全収率はサイクル1が0.28と最も高く、それに対して、サイクル2および3は低いままであった(0.25)。グルコース濃度に基づく収率はサイクル1が0.49と最も高く、サイクル3が0.42と最も低かった。条件4の下で、サプリメント収率はサイクル1が0.42と最も高く、それに対して、サイクル2および3は依然としてほぼ同じであった(それぞれ、0.33および0.32)。しかしながら、グルコース濃度に基づく収率はサイクル1が0.68と最も高く、サイクル3が0.48と最も低かった。
【0185】
(表9)条件3の全収率およびグルコース濃度に基づいた収率の概要
【0186】
(表10)条件4のサプリメント収率およびグルコース濃度に基づいた収率の概要
【0187】
条件3(再接種された培養細胞、すなわち、母培養物以外の以前の培養物に由来する細胞を含む新鮮増殖培地)を、条件4(再接種された培養細胞を含む、50%リサイクル培養培地と50%新鮮増殖培地を含有するハイブリッド培養培地)を比較した時に、サプリメント収率(全収率と比較した)およびグルコース濃度に基づいた収率はハイブリッド培養培地の方が高い。このことから、補充されたインプットおよび使用したグルコースの総量に基づく、生成されたバイオマスの量は条件4の方が多いことが分かる。これは、条件1および2を比較した時に観察されたものと同じ傾向である。条件1および3ならびに条件2および4の間の結果がユーグレナ属細胞の供給源の点でしか異ならないので、このことから、細胞の出発接種材料がインプットの消費に影響を及ぼさないことが分かる。条件1および3と条件2および4との間で、補充された濃度およびグルコース濃度の両方について収率間に差があるので、データから、補充されたインプットをバイオマスにより多く変換する因子がハイブリッド培養培地に存在することが分かる。理論に拘束されるつもりはないが、ユーグレナ属細胞のユニークな代謝が変換において役割を果たしている可能性があり、この場合、ユーグレナ属によって排出された「老廃」産物、例えば、酢酸、乳酸、またはコハク酸が代謝され、増殖の供給源として用いられる。理論に拘束されるつもりはないが、ハイブリッド培養培地には、より多くの「老廃」産物が蓄積し、主な炭素供給源であるグルコースが乏しいので、細胞は、生き残るために培地中にある「老廃物」を使用することができる。
【0188】
同様の傾向が図16〜18に示された。これらの図は、サイクル1、2、および3の増殖曲線およびグルコース消費結果を示す。これらの図のパネルAは、条件2および4が、条件1および3と比較して3つ全てのサイクルの2日目まで同様に増殖することを示す。2日目の後に、条件2および4のユーグレナ属の増殖は3日目でほぼ同じになったが、条件1および3では増殖は増加した。グルコース消費に着目した場合に(図16〜18のパネルB)、条件2および4は条件1および3よりも少ないグルコース濃度(ほぼ半分)から開始する。従って、2日目までに、条件2および4はハイブリッド増殖培地に存在するグルコースの大多数を消費している(<0.2g/L)。条件1および3の下では、3日目までに、約2g/Lグルコースが依然として残っている。このことから、これらの条件下では、全ての炭素供給源が細胞によって利用されるわけではないことが分かる。
【0189】
表11は変換効率の概要を示す。各条件の各サイクルについて変換効率(蓄積した全バイオマスを、消費された供給源培地中にある溶質の全量で割ったもの)を報告した。条件1および3は、新鮮培地条件の下で培養したユーグレナ属細胞からの結果を示し、条件2および4は、ハイブリッド培養培地条件の下でのユーグレナ属細胞からの結果を示す。各条件下での全サイクルの変換効率の平均を示した。
【0190】
(表11)変換効率の概要
【0191】
変換効率は培地効率の尺度である。変換効率は、生成されたバイオマスの量を、培地中にある消費された溶質の全量で割ったものと定義される。溶質は、供給源培地中で測定された成分と定義される。特に、溶質は、水が除去された後に供給源培地中にあるものの測定値である。生成されたバイオマスが多いと変換効率が高くなる。消費される溶質が多いが、生成されるバイオマスが多くなければ、この数は小さくなる。従って、ここで示したように、ハイブリッド培養培地中で増殖されたユーグレナ属細胞による変換効率は新鮮培地の変換効率と非常に似ている。新鮮増殖培地の平均とハイブリッド培養培地の平均を比較した時に、変換効率は互いの2%の範囲内にある(新鮮培地では39%、リサイクル培地では38%)。新鮮培地が対照効率だとすると、リサイクル培地は全体で97%の効率で働いた。
【0192】
さらに、結果から、ハイブリッド培養培地の変換効率は新鮮培地と比較して高いことが分かる。例えば、サイクル2では、条件2および4の変換効率は条件3より高く、条件4は条件1とほぼ同じであった(両方とも46%)。サイクル3では、条件4の変換効率は条件3よりわずかに高かった。これらの結果から、ハイブリッド培養培地-50%(50%リサイクル培養培地と50%新鮮培地)は供給源培地中にある成分からバイオマスへの変換を制限しないことが分かる。
【0193】
(表12)4日増殖サイクルの細胞乾燥重量
【0194】
(表13)3日増殖サイクルの細胞乾燥重量
【0195】
表12および表13は、2つの異なるサイクル長を用いたバイオマス変化を示す。3日サイクルは、4日サイクルと同じ程度で経時的に増殖変化を示す。
【0196】
図19および図20は4日増殖サイクルと3日増殖サイクルの違いを示す。図19はまた、増殖サイクルが長く、細胞を後期から定常期で接種する培地再利用例でもある。図20では、増殖サイクルが短く、対数期の間に接種が行われる。
【0197】
実施例3:リサイクル培養培地を用いた追加研究
(a)ユーグレナ属培養における制限因子グルコースの補充
培地中のグルコースレベルが、増殖、変換効率、および再使用される培地の容量を制限するかどうか確かめるために試験を行う。濃度を新鮮増殖培地対照に戻すために、グルコースをリサイクル培養培地に補充する。これを3回の3日サイクルにわたってフラスコスケールで行う。
【0198】
方法および材料
ユーグレナ・グラシリス株Zを細胞培養物として使用した。細胞培養に使用する前にオートクレーブした表14に示した増殖培地に細胞を接種した。3個の、ベントキャップ付バッフル付2Lフラスコに、1Lの体積で2x106細胞/mLを播種し、28℃、120rpmで、従属栄養条件下で振盪しながらインキュベートした。3日後に、増殖培地を無菌条件下で細胞塊から遠心分離によって分離し、さらなるサイクルで使用するための再利用培地供給源として働くように一緒に組み合わせた。これによって、サイクル1用のリサイクル培地ハイブリッドを作製するのに使用する第1の使用済み培地を生成した。種培養ペレットも組み合わせ、均一に混合した後にサイクル1のフラスコに播種した。
【0199】
(表14)実施例3の実験で使用した新鮮増殖培地。pHを3.2に調整し、オートクレーブした。
【0200】
供給源培養物も、表14に列挙した培地中で、28℃、120rpmで、従属栄養的に維持した。実験全体を通して、全処理の実験の母供給源または種供給源として役立った。
【0201】
試験条件
実験的処理を、ベントキャップ付バッフル付1Lフラスコの中で、500mLの培養体積で行った。従属栄養増殖のために、培養物をKuhner Shakerインキュベーターに入れて、28℃、120rpmで振盪しながら3日/サイクルにわたってインキュベートした。実験的処理したものを約2x106細胞/mLを播種した。条件をn=2で行い、サイクル1の開始からサイクル3の終了までの実験の総日数は10日であった。連続サイクルの間、毎日測定を行った。サイクル1の3日目はサイクル2の0日目であった。リサイクル培地ハイブリッドにおいて使用するための無細胞使用済み培地の回収および再使用を無菌条件下で行った。
【0202】
実験的処理は以下を含んだ:
条件1: 100%新鮮増殖培地。この場合、表14に列挙した培地500mLに、シードストックから2x106細胞/mLのユーグレナ・グラシリス細胞を接種した。各サイクルの開始時に新鮮培地を用いてフラスコを開始し、サイクル2および3の開始時に再接種した。試料サイズn=2。
【0203】
条件2: リサイクル培地ハイブリッド。この場合、培地供給源の約50%を以前の増殖サイクルからの無細胞使用済み培地から入手し、50%を新鮮増殖培地から入手し、2x106細胞/mLを接種した。この培地は、以前のサイクルからの使用済み増殖培地と新鮮増殖培地の1:1比で構成された。サイクル2のために、サイクル1からの使用済み増殖培地を新鮮増殖培地と1:1比で混合した。サイクル3をサイクル2と同じように繰り返した。細胞を3日間増殖させた。試料サイズn=2。
【0204】
条件3: グルコース補充済み50%リサイクル培地。この場合、培地供給源の約50%を以前の増殖サイクルからの無細胞使用済み培地から入手し、50%を新鮮増殖培地から入手した。リサイクル培地のグルコース濃度が0g/Lであり、50%新鮮培地のグルコース濃度が7.5g/Lだと仮定して、約15g/Lのグルコースとなるように40%(w/v)の濃グルコースストックを用いて各サイクルの0日目に培地にグルコースを補充した。各サイクルの開始時に、この処理したものに約9.375mLの40%(w/v)濃グルコースストックを添加した。試料サイズn=2。
【0205】
無細胞培地
無細胞培地を、ベントキャップ付バッフル付250mLフラスコに入れて、100mLの体積で前記と同じパラメータ下でインキュベートした。100%新鮮培地を維持し、各サイクルの開始時に補給した。50%リサイクル無細胞培地ハイブリッドを、以前のサイクルの対応する50%リサイクル処理フラスコから入手し、1:1比で新鮮培地と混合した。すなわち、サイクル2のために50%無細胞培地をサイクル1の50%リサイクル処理液から入手した。各サイクルの開始時に光学顕微鏡によって無細胞培地をモニタリングし、細胞が無いことを確実にした。増殖はどの無細胞培地処理でも検出されなかった。各処理を3回繰り返し、実験条件中に分解があったかどうか観察するためにグルコースレベルならびに有機酸を測定した。
【0206】
データ回収
バイオマスおよび上清を50mLファルコンチューブに入れて、5000rpm、10分の遠心分離によって回収し、様々なパラメータおよび凍結乾燥後の対応する乾燥重量のために重量を記録した。グルコース消費を、実施例1および実施例2に概説しものと同じ方法でYSI分析機器;YSI2950によって測定した。
【0207】
各サイクルの0日目および3日目の無細胞対照/無細胞培地については、以下の測定を無菌条件下で行った。20mLの培養物を5000rpmで遠心分離し、凍結乾燥後の上清乾燥重量を求めるために5mL、グルコース分析のために1.5mL、有機酸プロファイリングのために5mL、残りをpH測定のために採取した。1日目および2日目に7mLを5000rpmで遠心沈殿し、グルコース測定およびpH測定に使用した。
【0208】
0日目および3日目の実験的処理については、各処理から25mLの培養物を無菌条件下で等分した。毎日、細胞数を求めるためにアリコートを使用した。10mLの培養物を5000rpmで遠心分離し、上清分析のために5mLを取り出した後に、凍結乾燥した。残りの上清を取り出し、ペレットを秤量した後に凍結乾燥した。残りの培養物を前記のように遠心分離し、グルコース分析に1.5mL、有機酸プロファイリングに5mL、pH測定のために残りを使用した。1日目および2日目については8mLの培養物を無菌条件下で取り出した。細胞数のために1mLを使用し、残りを前記のように遠心分離し、グルコースのために1.5mLを使用し、残りをpH測定のために使用した。
【0209】
乾燥バイオマス重量を実施例2において概説したように行った。
【0210】
乾燥上清重量を実施例2に記載のように行った。
【0211】
さらに、実施例2で求めたパラメータも計算した。
【0212】
有機酸分析
5mLの上清を各処理から収集し、分析を行うことができるまで-80℃で保管した。2mLの試料を0.2umフィルターと1cc注射器で濾過し、運転中のバイアルに入れた。
【0213】
HPLCを用いて有機酸含有量を検出した。DADとHPX-87HのAminex HPLCカラム(300x8.7mm)を備えるAgilent HPLC-1260 infinity systemを使用した。移動相は5mM硫酸であり、流速は0.35mL/minであり、40℃に加熱した。DAD検出器を210nmに設定した。オートサンプラーを経由して0.2umシリンジフィルターで濾過した後に、10μLの試料を直接注入した。フマル酸;IC用のリンゴ酸標準物質、IC用のコハク酸標準物質、ピルビン酸(Sigma Aldrich)を用いて作製した標準較正曲線から得た較正曲線を用いて個々の有機酸濃度を計算した。
【0214】
結果と考察
サイクル中の培養増殖を細胞数と細胞乾燥重量によって測定した(図21〜23)。サイクル1では試料全体にわたって細胞数は似ていた(図21)。サイクル2(図22)の間、50%リサイクル培地(50)と、補充されたグルコース補充を含む50%リサイクル培地(G50)(条件2および3)の細胞数はサイクル終了までに100%新鮮増殖培地(100)(条件1)の細胞数と比べて減少した。サイクル3(図23)については、50%リサイクル培地(50)(条件2)しか、サイクル終了までに、100%新鮮増殖培地(100)(条件1)の細胞数と比べて細胞数の低減を示さなかった。バイオマスに着目した場合に、全サイクルにわたってグルコース補充済みリサイクル培地は100%新鮮増殖培地(11)とほぼ同じ量のバイオマスを生成した(図21〜23)。全サイクルにわたって50%リサイクル培地は対照のほぼ半分の量のバイオマスを生成した(図21〜23)。
【0215】
実験中に、いくつかの注目すべきpH変化があった(図24)。100%新鮮増殖培地条件(100)は50%リサイクル(50)およびグルコース補充済み条件(G50)よりも高いpHを示した。100%新鮮増殖培地のpHは経時的に減少したのに対して、50%(50)およびグルコース補充済みリサイクル培地(G50)条件のpHは経時的に安定していた。無細胞対照(100NCおよび50NC)は両方ともpHはほとんど変化しなかった。
【0216】
この実験で試験した全条件の変換効率を計算した(表15)。平均して、グルコース補充済み培地の変換効率(37%)が最も高く、サイクル1(41%)が最も高かった。50%リサイクル培地の全サイクル平均は32%と最低であったが、これは、サイクル2での変換効率が20%と低かったことが原因である。50%リサイクル培地のサイクル1およびサイクル3での変換効率は39%であった。これは100%新鮮培地対照より高く、グルコース補充済み50%リサイクル培地試料の全サイクル平均よりも高かった。100%新鮮増殖培地の全サイクル変換効率は平均34と同等であった。50%リサイクル培地の平均変換効率は100%新鮮培地の平均変換効率の94%であり、グルコース補充済み50%リサイクル培地の平均変換効率は100%新鮮培地の平均変換効率の109%であった。
【0217】
(表15)実施例3a条件の変換効率の概要
【0218】
(表16)100%新鮮増殖培地の全収率およびグルコース濃度に基づいた収率の概要
【0219】
(表17)50%リサイクル培地のサプリメント収率およびグルコース濃度に基づいた収率の概要
【0220】
(表18)グルコース補充50%リサイクル培地のサプリメント収率およびグルコース濃度に基づいた収率の概要
【0221】
表16〜18は、変換効率と同様の傾向を示す、全収率、サプリメント収率、およびグルコースに基づいた収率を示す。グルコース補充ハイブリッド培地のサプリメント収率が0.344と最も高く、グルコースに基づいた収率が0.57と最も高かった。100%新鮮培地が全収率0.263、グルコースに基づいた収率0.51と次に高かった。50%再利用率のハイブリッド培地のサプリメント収率が0.221、グルコースに基づいた収率が0.43と最も低かった。全測定値にわたってハイブリッド培地のサイクル2が低かった。しかしながら、サイクル1および3の方が100%新鮮培地で見られた平均に匹敵するものであった。実施例3bは、バイオマス生成に対するグルコース補充の効果をさらに調べるために行った。
【0222】
上記の時点にわたって培地中で酸が分解されるかどうか確かめるために、有機酸分析を全試料タイプならびに無細胞対照に対して行った。文献と入手可能な標準物質:ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、および酢酸に基づいて6種類の有機酸を調べた。図30〜35は実験条件ごとに全種類の有機酸を示す。図25は100%新鮮増殖培地対照を表す。図26は50%リサイクル培地試料を表す。図27はグルコース補充済み50%リサイクル培地を表す。図28は100%無細胞対照を表す。図29は50%リサイクル培地無細胞対照を示す。はっきりとした傾向から、全条件においてコハク酸が最も多く、フマル酸および酢酸は、それより少ない培地中に排出された有機酸である。図30〜35は全試料にわたる有機酸を示す。酢酸(図30)は興味深い傾向があり、100%新鮮増殖培地対照では、各サイクルの開始時に存在し、サイクルの終了までに検出されなくなる。50%リサイクル培地の場合、サイクル2の開始時に酢酸が存在したが、サイクルの終了時には存在しなかった。50%リサイクル培地およびグルコース補充済みリサイクル培地の両方において酢酸はサイクル3の終了時に検出された。しかしながら、標準誤差を考慮に入れると、これらのレベルは非常に低いレベルである。一般的に、無細胞対照は各サイクルの開始時および終了時にほぼ同じレベルの酢酸を示し、ユーグレナ属が有機酸を活発に利用している時の100%試料と、50%リサイクル培地のサイクル2で見られるレベルをさらに裏付けている。
【0223】
図31は、全処理および無細胞対照におけるフマル酸を示す。無細胞対照は各サイクルの中で一定したレベルを示す。100%新鮮増殖培地試料は、サイクル1および2では、培地中に排出されるフマル酸が大幅に増加するのに対して、サイクル3ではほとんど変化しない。50%リサイクル培地の場合、サイクル1ではサイクルの終了までにフマル酸がわずかに増加し、サイクル2で大幅に増加し、サイクル3ではフマル酸レベルが劇的に減少する。グルコース補充済み50%リサイクル培地は50%リサイクル培地と同様の傾向を示す。
【0224】
図32は乳酸の結果を示す。無細胞対照および実験条件の両方でほぼ同じレベルの乳酸が見られた。しかしながら、注目すべきことに、100%新鮮増殖培地のサイクル1ではサイクルの終了時に乳酸が減少し、これは無細胞対照では反映されなかった。50%リサイクル培地例ではサイクル3の3日目でも同じわずかな減少が示される場合がある。これらの結果から、一般的にユーグレナ属は培地から乳酸を取り込まず、2つの例だけ乳酸レベルがわずかに減少することが分かる。乳酸レベルは各サイクルの終了時に培地中で増加していないので、このことから、培養物は嫌気性の状態または代謝になっていないことも示唆される。なぜなら、乳酸は嫌気性呼吸の一般的な副産物だからである。
【0225】
図33は前記条件におけるコハク酸レベルを表し、無細胞対照を含む全処理において高レベルが観察された。100%新鮮増殖培地ではサイクル2および3においてサイクル終了時にコハク酸が増加した。50%リサイクル培地ではサイクル3終了時に有機酸がわずかに減少した。グルコースが補充された50%リサイクル培地ではサイクル2においてサイクル終了時に有機酸が増加した。
【0226】
図34は全処理におけるリンゴ酸レベルを示す。100%新鮮増殖培地処理においてサイクル3終了時にリンゴ酸がわずかに増加した。50%リサイクル培地ではサイクル1終了時にリンゴ酸が増加し、グルコース補充済み50%リサイクル培地では観察可能な差異が見られなかった。
【0227】
最後に、図35は全試料におけるピルビン酸レベルを示す。一般的に、実験条件の大多数は各サイクル終了時にピルビン酸の減少を示す。無細胞対照での変化はわずかであり、ピルビン酸レベルの増加はわずかであるので、このことから、ユーグレナ属はピルビン酸を代謝していることが示唆される。ピルビン酸は、従属栄養条件下でユーグレナ・グラシリスを増殖する際に用いられてきた炭素供給源である。ピルビン酸は、ユーグレナ属代謝においてよく用いられる分子であり、好気性条件下で使用することができる。サイトゾルのピルビン酸はクレブス回路でのエネルギー利用のためにミトコンドリアに直接移入されてもよく、最初にサイトゾル中で乳酸に変換され、次いで、ミトコンドリアに移入されてもよい。
【0228】
いくつかの細胞外代謝産物グループ:植物ホルモン、有機酸などが培地に排出されるという証拠がある。本発明者らは、上記の結果から、ユーグレナ・グラシリスが有機酸を排出し、増殖中に潜在的に利用できることを知っている。バイオプラスチックの供給源としてコハク酸および乳酸がよく用いられる。使用した増殖条件を考えると、有機酸プロファイルに多量のコハク酸がある。さらなる処理および用途のために、この有機酸を潜在的に単離および利用できるかもしれない。
【0229】
さらに、あらゆる処理の培地での有機酸の蓄積または存在から阻害作用は観察されなかった。このことから、3サイクルにわたる有機酸蓄積はバイオマス蓄積または基質利用の阻害因子でないことが分かる。
【0230】
(b)対照培地の比較
本研究では、培地変化の影響、特に、全体のユーグレナ属バイオマス産生および変換効率に及ぼす溶質インプットの影響。グルコースだけを添加することで、新鮮培地と同じように増殖を増大させるかどうか、またはハイブリッド培地も影響を及ぼすかどうかも調べた。
【0231】
方法と材料
表14において報告した基本培地を100%新鮮培地対照に使用した。少量の溶質を比較するために、表19に示したように100%新鮮培地対照と比較して、グルコースが全量あるグルコース補充ハイブリッド培地の対照として、以下の表19に示したようにインプットが半分の50%新鮮培地溶液を作製した。1サイクルのために、50%ハイブリッドリサイクル培地およびグルコース補充済みハイブリッド培地を実施例3aに記載のように生成した。
【0232】
(表19)実施例3bで使用した100%、50%、およびグルコース補充済み50%新鮮増殖培地。pHを3.2に調整し、オートクレーブした。
【0233】
実験的処理を、ベントキャップ付250mLフラスコの中で、100mLの培養体積で行った。従属栄養増殖のために、培養物をKuhner Shakerインキュベーターに入れて、28℃、120rpmで振盪しながら1サイクルにつき3日間インキュベートした。実験的処理したものを約2x106細胞/mLで播種した。条件をn=2で行った。
【0234】
バイオマスおよび上清を50mLファルコンチューブに入れて、5000rpm、10分の遠心分離によって回収し、様々なパラメータと、凍結乾燥後の対応する乾燥重量のために重量を記録した。グルコース消費を、実施例1および実施例2に概説しものと同じ方法でYSI分析機器;YSI2950によって測定した。
【0235】
0日目および3日目の試料については、各処理から12mLの培養物を無菌条件下で等分した。毎日、細胞数を求めるためにアリコートを使用した。11mLの培養物を5000rpmで遠心分離し、上清分析のために5mLを取り出した後に凍結乾燥した。残りの上清を取り出し、ペレットを秤量した後に凍結乾燥した。残りの培養物を前記のように遠心分離し、グルコース分析に1.5mL、有機酸プロファイリングに5mL、pH測定のために残りを使用した。1日目および2日目については、7mLの培養物を無菌条件下で取り出した。細胞数のために1mLを使用し、残りを前記のように遠心分離し、グルコースのために1.5mLを使用し、残りをpH測定のために使用した。
【0236】
乾燥バイオマス重量を実施例2において概説したように行った。
【0237】
乾燥上清重量を実施例2に記載のように行った。
【0238】
さらに、実施例2で求めたパラメータも計算した。
【0239】
結果と考察
図36では、細胞数および細胞バイオマスについて細胞増殖パラメータを測定した。100%新鮮増殖培地の細胞数が最も多く、サイクルにわたるバイオマス蓄積が最も多いものの1つであった。3日サイクルにわたって50%新鮮増殖培地の細胞数が最も少なく、生成されたバイオマスの量は最も少なかった。3日目には、グルコース補充50%新鮮増殖培地の細胞数およびバイオマス生成は50%新鮮増殖培地よりも多かったが、100%新鮮増殖培地対照ほどではなかった。50%ハイブリッド培地を比較した時に、ハイブリッド培地の細胞数およびバイオマスは50%新鮮培地対照と比較して増加した。グルコース補充済みハイブリッド培地とグルコース補充済み50%新鮮増殖培地に注目した場合に、細胞数は新鮮培地対照とほぼ同じであった。しかしながら、バイオマス生成は全試料において観察されたものの中で、100%新鮮培地対照でさえ最も高いものであった。バイオマス生成は100%新鮮増殖培地増殖より高いか、またはそれに匹敵するものであったので、このことは、同様のバイオマス生成となるために再利用成分が必要であったことを示唆している。50%新鮮培地対照と比較して50%ハイブリッド培地について同様の傾向が観察されたが、グルコース補充済み50%ハイブリッド培地と同じ程度ではなかった。
【0240】
図37ではpH測定値を観察した。実施例3aで示されたように、100%新鮮増殖培地のpHは経時的に低下し、全試料にわたってpH減少が最も大きかった。50%新鮮培地およびグルコース補充済み50%新鮮培地の傾向は100%新鮮増殖培地と同様であった。2種類のハイブリッド培地は、pHレベルが低い使用済み培地を含んでいたので低pHで開始した。そのためpH減少はわずかであった。全体的に見て、3日目までに全培養物のpHは同じになった。
【0241】
表20は、実施例3bで試験した異なる条件の変換効率を示す。全体的に見て、グルコース補充済みハイブリッド培地の変換効率が22.9%と最も高かった。これは100%新鮮増殖培地対照(13.7%)、50%新鮮培地(15.3%)、グルコース補充済み50%新鮮増殖培地(15.9%)、および50%ハイブリッド培地(13.9%)よりも高い。効率がグルコース補充済み50%新鮮培地よりも高いので、このことは、リサイクル培地が変換効率に影響を及ぼすことを示唆している。同様にリサイクル培地を用いている50%ハイブリッド培地よりも高いので、このことは、変換効率にプラスの影響を及ぼす、高濃度のグルコースとリサイクル培地の併用効果であることを示唆している。50%ハイブリッド培地はまた100%新鮮培地対照試料に匹敵し、これに対して、他の新鮮培地対照(50%およびグルコース補充済み)はわずかに高い。
【0242】
(表20)実施例3bの変換効率概要
【0243】
本願が実施例に関連して説明されたが、クレームの範囲は、実施例に示された態様によって限定されてはならず、説明全体と一致する最も広い解釈が与えられるべきだと理解しなければならない。
【0244】
刊行物、特許、および特許出願は全て、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が、その全体が参照により組み入れられるように詳細かつ個々に示されるのと同程度に、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本願における用語が、本明細書において参照により組み入れられる文書において異なって定義されていると判明した場合、本明細書において提供される定義が、その用語の定義となる。
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【国際調査報告】