特表2021-529648(P2021-529648A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-529648系の特定のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-529648(P2021-529648A)
(43)【公表日】2021年11月4日
(54)【発明の名称】系の特定のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/029 20060101AFI20211008BHJP
   A61B 5/0205 20060101ALI20211008BHJP
   A61B 5/0215 20060101ALI20211008BHJP
   A61M 60/178 20210101ALI20211008BHJP
   A61M 60/216 20210101ALI20211008BHJP
   A61M 60/414 20210101ALI20211008BHJP
   A61M 60/32 20210101ALI20211008BHJP
   A61M 60/592 20210101ALI20211008BHJP
   A61M 60/806 20210101ALI20211008BHJP
【FI】
   A61B5/029
   A61B5/0205
   A61B5/0215 B
   A61M60/178
   A61M60/216
   A61M60/414
   A61M60/32
   A61M60/592
   A61M60/806
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2021-520094(P2021-520094)
(86)(22)【出願日】2019年6月19日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月5日
(86)【国際出願番号】US2019038049
(87)【国際公開番号】WO2019246305
(87)【国際公開日】20191226
(31)【優先権主張番号】62/687,133
(32)【優先日】2018年6月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/863,146
(32)【優先日】2019年6月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/863,136
(32)【優先日】2019年6月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】タン チン
(72)【発明者】
【氏名】エル カテルジ アーマッド
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフィー ノーム
(72)【発明者】
【氏名】エデルマン エレーザー アール.
(72)【発明者】
【氏名】チャン ブライアン イェール
(72)【発明者】
【氏名】ケラー スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】バブサー ソニャ サナット
【テーマコード(参考)】
4C017
4C077
【Fターム(参考)】
4C017AA03
4C017AA08
4C017AA10
4C017AC03
4C017BC11
4C017EE01
4C017FF05
4C077AA04
4C077BB10
4C077DD10
4C077DD21
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH18
(57)【要約】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、心拍出量などの心臓または血管パフォーマンスの指標を決定し、これらの指標を使用して、患者に提供すべき機械的循環補助の適切なレベルを決定することができる。説明されるシステムおよび方法は、単一の心拍におけるまたは複数の心拍にまたがる大動脈圧測定値(または、他の生理学的測定値)を決定すること、および、心拍出量などの心臓パフォーマンスを決定するためにそのような測定値を単一の心拍または複数の心拍において得られる流量推定値または流量測定値と組み合わせて使用することによって、心臓パフォーマンスを決定する。血管系内に配置された機械的循環補助システムを利用することにより、患者内に別個の測定デバイスを配置する必要性が低減または排除される。本明細書に記載のシステムおよび方法は、心臓ポンプの動作を変化させることなく(例えば、ポンプ速度を上昇または低下させることなく)心臓パフォーマンスを特徴決定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、心臓の心拍出量を決定する方法:
心臓の複数の拍動において第1のポンピング速度で血液をポンピングすることを含む血行動態補助を、血液ポンプによって心臓に適用する工程であって、各拍動が収縮期上昇、重複切痕、および重複切痕後に起こる拡張期下降を含んでいる、工程と、
第1の時点における第1の大動脈圧測定値および第2の時点における第2の大動脈圧測定値を検出する工程であって、前記第1の時点および前記第2の時点が前記複数の拍動のうちの特定の拍動の拡張期下降において存在する、工程と、
前記第1の時点で前記血液ポンプによってポンピングされた第1の血流量および前記第2の時点で前記血液ポンプによってポンピングされた第2の血流量を決定する工程と、
前記第1の大動脈圧測定値、前記第2の大動脈圧測定値、前記第1の血流量、および前記第2の血流量に基づいて、心拍出量を決定する工程。
【請求項2】
前記第1の大動脈圧測定値、前記第2の大動脈圧測定値、前記第1の血流量、および前記第2の血流量を使用して血管系の時間依存非線形モデルを計算し、全身血管抵抗およびコンプライアンスを決定する工程と、
前記決定された全身血管抵抗およびコンプライアンスに基づいて、前記特定の拍動における心拍出量を決定する工程と
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記時間依存非線形モデルは、ウィンドケッセルモデルである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
心臓の心拍出量の第1の累積インジケータを決定する工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
心拍出量を決定する工程は、第1の複数の心拍出量値を決定することを含み、前記第1の複数の心拍出量値のうちの各心拍出量値は、前記複数の拍動のうちの第1の組の拍動のうちの各拍動に対応する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
第1の心拍出量値を第2の心拍出量値と比較する工程であって、前記第1の複数の心拍出量値が前記第1の心拍出量値および前記第2の心拍出量値を含む、工程と、
前記第1の心拍出量値と前記第2の心拍出量値との間の比較に基づいて、心臓の心臓パフォーマンスの変化を決定する工程と、
前記決定された心臓の心臓パフォーマンスの経時的な変化に基づいて、患者への血行動態補助を変更する工程と
をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記決定された複数の心拍出量値に合計、平均、または線形回帰のうちの少なくとも1つを適用して、心臓の心拍出量の第1の累積インジケータを計算する工程をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記心臓の心拍出量の第1の累積インジケータは、心臓の心臓パフォーマンスを表す、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記複数の拍動のうちの第2の組の拍動について、心臓の心拍出量の第2の累積インジケータを決定する工程であって、前記第2の組の拍動が、前記第1の組の拍動の後に起こる、工程と、
前記心拍出量の第1の累積インジケータを前記心拍出量の第2の累積インジケータと比較する工程と、
前記第1の累積インジケータと前記第2の累積インジケータとの間の比較に基づいて、(i)心臓の心臓パフォーマンスの向上または(ii)心臓の心臓パフォーマンスの低下を判定する工程と、
前記判定された心臓の心臓パフォーマンスの経時的な向上または低下に基づいて、患者への血行動態補助を変更する工程と
をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第2の累積インジケータを決定する工程は、
第2の複数の心拍出量値を決定することであって、前記第2の複数の心拍出量値のうちの各心拍出量値が、前記第2の組の拍動のうちの各拍動に対応する、ことと、
前記決定された複数の心拍出量値に合計、平均、または線形回帰のうちの少なくとも1つを適用して、心臓の心拍出量の第2の累積インジケータを計算することと
を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記特定の拍動の心拍出量を決定する工程は、
前記特定の拍動の拡張期下降における複数の時点で、複数の大動脈圧測定値を検出することであって、前記複数の大動脈圧測定値のうちの各大動脈圧測定値が該複数の時点のうちの一時点に対応する、ことと、
前記複数の時点で前記血液ポンプによってポンピングされた複数の血流量を決定することと、
前記複数の大動脈圧測定値および前記複数の血流量を使用して血管系の複数の時間依存非線形モデルを計算し、複数の全身血管抵抗値およびコンプライアンス値を決定することと、
前記決定された複数の全身血管抵抗値およびコンプライアンス値に基づいて、前記特定の拍動における複数の心拍出量値を決定することと、
前記決定された複数の心拍出量値に合計、平均、または線形回帰のうちの少なくとも1つを適用して、前記特定の拍動の心拍出量を計算することと
を含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記複数の拍動のうちの第2の心拍について、心臓の心拍出量の第2の累積インジケータを決定する工程であって、前記第2の心拍が前記特定の心拍の後に起こる、工程と、
前記心拍出量の第1の累積インジケータを前記心拍出量の第2の累積インジケータと比較する工程と、
前記第1の累積インジケータと前記第2の累積インジケータとの間の比較に基づいて、(i)心臓の心臓パフォーマンスの向上または(ii)心臓の心臓パフォーマンスの低下を判定する工程と、
心臓の心臓パフォーマンスが経時的に向上しているまたは低下しているとの判定に基づいて、適用される血行動態補助を変更する工程と
をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
血行動態補助は、心臓の心室内に配置されるように構成されたカニューレを有する心臓内血液ポンプによってもたらされる、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記カニューレは、左心室内に配置されるように構成される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
圧力センサが、前記心臓内血液ポンプとともに設けられ、前記複数の大動脈圧測定値を検出することは、前記圧力センサによって大動脈圧を測定することを含む、請求項13〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記圧力センサは、前記血液ポンプのハウジング内に配置される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記複数の大動脈圧測定値を検出することは、前記心臓内血液ポンプから離れた圧力センサから前記大動脈圧測定値を受信することを含む、請求項13〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記心臓内血液ポンプの動作が、コントローラによって調整され、前記コントローラは、血管系の前記時間依存非線形モデルを格納するメモリを備える、請求項13〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記決定された心拍出量に基づいて、心臓に適用される血行動態補助を調整する工程をさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記決定された心拍出量を表示用に構成する工程をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記全身血管抵抗およびコンプライアンスは、大動脈の抵抗およびコンプライアンスを表す、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
心拍出量を決定する工程は、或る期間にわたり総心血流量の平均をとることを含む、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
前記期間は、前記特定の拍動の長さである、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
以下の工程を含む、心臓の心臓パフォーマンスを決定するための方法:
第1のデバイス動作パラメータでの機械的循環補助デバイスの動作の最中に、血行動態パラメータを監視する工程と、
経時的な血行動態パラメータの形状に基づいて、心拍サイクルの拡張期を特定する工程と、
前記拡張期における大動脈圧と血流との間の時変関係を確立する工程と、
前記拡張期における大動脈圧と血流との間の時変関係に基づいて、心拍ごとの前記機械的循環補助デバイスによって誘導された血液の総量を計算し、心臓パフォーマンスを示す工程。
【請求項25】
前記機械的循環補助デバイスは、血管内血液ポンプであり、監視する工程は、前記ポンプを第1のポンプ速度で動作させているときに起こる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記血行動態パラメータは、大動脈圧である、請求項24〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
心拍ごとにポンピングされた血液の総量を計算することは、
経時的な血行動態パラメータの数学的表現に基づいて、全身血管系の血管コンプライアンスおよび血管抵抗を決定することと、
前記決定された血管コンプライアンスおよび血管抵抗を使用して、全身血管系の一回拍出量を計算することと
を含む、請求項24〜26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
モータおよびインペラを備える、患者の血管内に血流を生じさせるためのシステムと、
血管内でのインペラ回転の抵抗の変化を検出し、
前記検出されたインペラ回転の抵抗に基づいて、一定のインペラ回転速度を維持し、
前記インペラ回転の抵抗の変化に基づいて、伝達関数を使用して血管コンプライアンスおよび血管抵抗を計算する
ように構成されたコントローラと
を備える、血管センサ。
【請求項29】
前記伝達関数は、ウィンドケッセルモデルである、請求項28記載の血管センサ。
【請求項30】
前記コントローラは、前記血管コンプライアンスおよび前記血管抵抗に基づいて心臓パフォーマンスを表す指標を決定するように構成されている、請求項28または29記載の血管センサ。
【請求項31】
前記心臓パフォーマンスを表す指標は、心拍出量、心臓出力、一回拍出量、一回仕事量、駆出率、心収縮能、心室エラスタンス、心係数、または患者生存予測のうちの少なくとも1つである、請求項31記載の血管センサ。
【請求項32】
前記コントローラは、前記血管抵抗、前記血管コンプライアンス、または前記心拍出量のうちの少なくとも1つに基づいて前記インペラ回転速度を調整するように構成されている、請求項30記載の血管センサ。
【請求項33】
前記コントローラは、
或る期間にわたり大動脈圧を表す測定値を受信し、
前記ポンプへと送られた電流を検出し、そして
前記ポンプへと送られた電流に基づいて、前記期間にわたり前記システムによってポンピングされた血流量を決定する
ように構成され、
前記血管コンプライアンスおよび前記血管抵抗の計算は、前記大動脈圧を表す測定値および前記血流量にさらに基づく、請求項28〜32のいずれか一項記載の血管センサ。
【請求項34】
前記患者の血管内に血流を生じさせるためのシステムは、心臓の左心室内を延びるように構成されたカニューレと、大動脈圧、左心室圧、または差圧のうちの少なくとも1つを検出するように構成された圧力センサとを備える、請求項28〜33のいずれか一項記載の血管センサ。
【請求項35】
前記患者の血管内に血流を生じさせるためのシステムは、シュラウド内にインペラを組み込んだ心臓内血液ポンプである、請求項28〜34のいずれか一項記載の血管センサ。
【請求項36】
患者の血管内に血流を生じさせるためのシステムと、
前記生じさせた血流に起因する血行動態パラメータの変化を検出するように構成された血行動態センサと、
センサ信号を受信して血管の抵抗を血管内の血流および大動脈圧の関数として計算するように構成された、コントローラと
を備える、血管センサ。
【請求項37】
前記システムは、モータおよびインペラを備え、前記コントローラは、
血管内でのインペラ回転の抵抗の変化を検出し、
前記検出されたインペラ回転の抵抗に基づいて、一定のインペラ回転速度を維持し、そして
ポンプ動作データをコンピューティングデバイスに送信する
ように構成されている、請求項36記載のセンサ。
【請求項38】
前記ポンプ動作データは、圧力測定値、電流測定値、インペラ回転の抵抗の変化、および流量の推定のうちの少なくとも1つを含む、請求項36〜37のいずれか一項記載の血管センサ。
【請求項39】
前記コントローラは、
第1の時点に対応する第1の大動脈圧測定値および第2の時点に対応する第2の大動脈圧測定値を受信し(ここで前記第1の時点および前記第2の時点は、心拍の拡張期下降において存在する)、
前記第1の時点で前記血液ポンプによってポンピングされた第1の血流量および前記第2の時点で前記血液ポンプによってポンピングされた第2の血流量を決定し、そして
(i)前記第1の大動脈圧測定値、(ii)前記第2の大動脈圧測定値、(iii)前記第1の血流量、および(iv)前記第2の血流量を使用して血管系の時間依存非線形モデルを計算して全身血管抵抗およびコンプライアンスを決定する
ように構成されている、請求項36〜38のいずれか一項記載の血管センサ。
【請求項40】
前記時間依存非線形モデルは、ウィンドケッセルモデルである、請求項39記載の血管センサ。
【請求項41】
前記コントローラは、前記第1の大動脈圧測定値、前記第2の大動脈圧測定値、前記第1の血流量、および前記第2の血流量に基づいて心拍出量を決定するようにさらに構成されている、請求項36〜40のいずれか一項記載の血管センサ。
【請求項42】
前記コントローラは、前記コンピューティングデバイスからポンプ動作指令を受信するように構成され、前記ポンプ動作指令は、前記ポンプ動作データに基づく、請求項36〜41のいずれか一項記載の血管センサ。
【請求項43】
以下の工程を含む、血液ポンプを使用して患者に機械的循環補助を提供するための方法:
血液ポンプを患者の血管系内で動作させる工程と、
請求項1〜42のいずれか一項を使用して患者の心臓の心拍出量を決定する工程と、
前記決定された心拍出量に基づいて前記血液ポンプの速度を調整する工程。
【請求項44】
心臓の左心室内を延びるように構成されたカニューレを有する心臓内血液ポンプと、大動脈圧を検出するように構成された圧力センサとを備え、かつ
前記請求項のいずれか一項記載の方法のいずれかに従って心拍出量または血管抵抗を決定するように構成されている、
機械的循環補助システム。
【請求項45】
前記圧力センサは、請求項36記載の血管センサである、請求項38記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月19日に出願された「METHODS AND SYSTEMS FOR IMPROVED ASSESSMENT OF VASCULAR AND CARDIAC STATE」という名称の米国特許仮出願第62/687,133号、2019年6月18日に出願された「SYSTEMS AND METHODS FOR SYSTEM IDENTIFICATION」という名称の米国特許仮出願第62/863,136号、および2019年6月18日に出願された「SYSTEMS AND METHODS FOR DETERMINING CARDIAC PERFORMANCE」という名称の米国特許仮出願第62/863,146号の優先権および恩典を主張する。これらの出願の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
心血管の疾患は、病気、死亡、および世界中の医療への負担の主要な原因である。心臓の健康のために、医薬品から機械装置および移植に至るまで、さまざまな治療の様態が開発されてきた。心臓ポンプシステムなどの一時的な心臓補助デバイスが、血行動態補助を提供し、心臓の回復を促進する。IMPELLA(登録商標)ファミリーのデバイス(マサチューセッツ州DanversのAbiomed,Inc.)など、いくつかの心臓ポンプシステムが、心臓に経皮的に挿入され、心拍出量を補うために本来の心臓と並行して動作することができる。そのような心臓ポンプシステムは、患者の健康の判断および心臓ポンプシステムの動作の判定に有用な心臓ポンプパラメータを測定および/または計算することができる。ポンプを、ポンプへの血液入口が左心室内に位置し、ポンプからの出口が大動脈内に位置するように、心臓の大動脈弁をまたいで配置することができる。いくつかの実装形態において、ポンプは、心臓の右心室内に配置される。ポンプが、ポンプへの血液入口が左心室内に位置し、ポンプからの出口が大動脈内に位置するように、大動脈弁をまたいで配置される場合、ポンプは、左心室の負荷を減らすことによって本来の心臓の動作に寄与する。
【0003】
ポンプ装置によって送り出される血液の体積流量によって測定される心臓補助、または各々の患者が必要とする心臓補助の期間は、さまざまであり得る。とりわけインターベンションまたは他の心臓治療から回復する患者について、デバイスによってもたらすべき補助の量や心臓ポンプシステムの使用の終了時期を直接的かつ定量的に決定することは、臨床医にとって困難である。したがって、臨床医は、流体で満たされたカテーテルを使用して心臓内または血管内の圧力を測定するなど、心機能の評価および間接的な推定に依存する傾向にある。とくには、心拍出量(CO)の定量化が困難である。肺動脈カテーテル(PAC)が、中心静脈圧および肺動脈圧のリアルタイム測定を提供することができ、全身酸素消費量の測定によるフィックの法則またはボーラス熱希釈法を使用してCOを推定することができる。CO指標(metrics)に到達するために行わなければならない仮定、および対応するより侵襲的な指標が有する忠実度の欠如のために、PACは、臨床転帰との信頼できる関連を確立させることができていない。PACによる測定は、心臓機能の動的変化を考慮せず、連続的でないが、一方で全身の心室血管の連関の非線形局面が適切に捉えられていない。
【発明の概要】
【0004】
概要
本明細書に記載のシステムおよび方法は、患者の単一の心拍についてCOなどの心臓パフォーマンスの指標を決定し、これらの指標を使用して、患者に提供すべき機械的循環補助の適切なレベルを決定することができる。心臓パフォーマンスの指標を、複数の拍動において測定し、数学的に処理して、その患者の心臓の全体的なパフォーマンスのモデルに到達することができる。決定を、血管内血液ポンプシステムなどの機械的循環補助システムを使用して行うことができる。システムおよび方法は、1つまたは複数の心拍のうちの単一の心拍の期間内で決定される機械的循環補助システムの使用中の圧力および流量の測定値あるいは圧力および流量の推定値から心臓パフォーマンスを特徴決定する。本明細書に記載のシステムおよび方法は、機械的循環補助システムによって取得される既存の測定値を利用するがゆえに、臨床応用において容易に検証および利用することができる。本明細書に記載のシステムおよび方法は、留置された機械的循環補助デバイスの動作を活用して、追加の測定またはカテーテルを必要とせずに、COを決定する。全身血管抵抗およびコンプライアンスの変化を継続的かつ正確に追跡し、心臓の一回拍出量を推定することが可能になることで、臨床実務に容易に展開されるPACまたは他の診断から得られる伝統的な測定を超える著しい前進がもたらされる。
【0005】
説明されるシステムおよび方法は、単一の心拍におけるまたは複数の心拍にまたがる大動脈圧測定値(または、他の生理学的測定値)を決定すること、および、心拍出量などの心臓パフォーマンスを決定するためにそのような測定値を単一の心拍または複数の心拍において行われる流量推定値または流量測定値と組み合わせて使用することによって、心臓パフォーマンスを決定する。血管系内に配置された機械的循環補助システムを利用することにより、患者内に別個の測定デバイスを配置する必要性が低減または排除される。測定を単一の心拍において行うことができるため、1つまたは複数の拍動における心臓パフォーマンスの特徴を、或る拍動から別の拍動へと連続的なやり方で明らかにすることができ、例えば心臓のパフォーマンスを一連の心拍のうちの各心拍について測定することができる。さらに、心臓ポンプの動作がこれらの測定値の取得によって損なわれることがない。本明細書に記載のシステムおよび方法は、心臓ポンプの動作を変化させることなく(例えば、ポンプ速度を上昇または低下させることなく)心臓パフォーマンスを特徴決定することができる。これは、患者が心臓ポンプの血流の寄与に完全に依存しているので患者に害を及ぼす可能性を伴わずに心臓ポンプの速度を下げることができない場合や、他の機器(例えば、体外式膜型人工肺(ECMO)システム)が理由で心臓ポンプの速度を高めることができない場合に、とくに有益となり得る。いくつかの用途において、本明細書に記載のシステムおよび方法は、そのような他の機器と組み合わせて使用される。したがって、本明細書に記載のシステムおよび方法は、適切な心臓補助を提供しながら、心臓パフォーマンスの連続測定を提供することができる。
【0006】
血行動態補助を、血液ポンプを含むことができる機械的循環補助システムによって患者の心臓に提供することができ、血行動態パラメータを、血液ポンプの動作中に測定することができる。血液ポンプは、血管内血液ポンプ、大動脈内バルーンポンプ、ECMOデバイス、または他の血液ポンプ(例えば、マサチューセッツ州DanversのAbiomed IncのImpella(登録商標)ファミリーのデバイス、またはペンシルバニア州PittsburghのCardiacAssist Inc.のTandemHeart(登録商標)ファミリーのデバイス)であってよい。血行動態パラメータの複数の測定値を、単一の心拍において取得することができる。例えば、複数の測定値(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、10個、20個、30個、100個、または任意の適切な数の測定値)を、さまざまな時点で心拍の拡張期下降において取得することができる。心臓パフォーマンスが数学的システムとして(例えば、ウィンドケッセルモデルによって)モデル化される場合、これらのさまざまな時点における圧力および血流量により、連立方程式を構成することができ、これを解いて、心臓パフォーマンスを表す全身血管抵抗およびコンプライアンスなどの機能値を決定することができる。次いで、心拍出量(ならびに、心臓および/または血管パフォーマンスを表す他の指標)を、抵抗またはコンプライアンスの値から計算することができる。これらの計算は、単一の心拍について1回だけ抵抗およびコンプライアンスを計算することに限定されず、例えば、本明細書において説明される計算は、単一の心拍における複数の圧力測定値(または、圧力測定のグループ)について抵抗およびコンプライアンスを計算し、これらの測定値から抵抗およびコンプライアンスを決定し、次いでこれらの抵抗およびコンプライアンスの値を平均または他のやり方で処理して、単一の心拍について全体としての血管または心臓の健康を表す代表的な抵抗、コンプライアンス、または他の指標値を決定することを含むことができる。同様の測定を複数の心拍について行い、その患者の心臓の心臓パフォーマンスをモデル化する平均または他の組み合わせた測定値を決定するために使用することができる。
【0007】
いくつかの局面においては、血行動態補助を、決定された心臓パフォーマンス測定値に基づいて適用または調整することができる。血行動態補助は、機械的循環補助デバイス(MCS)によって患者の心臓に適用される。いくつかの実装形態において、デバイスは、経皮的挿入によって患者の心臓内に配置される血管内血液ポンプである。MCSは、外科的に埋め込まれるデバイス、左心室補助デバイス、カウンターパルセーションデバイス、展開式心臓ポンプ、体外式膜型人工肺デバイス、大動脈内バルーンポンプ、または任意の他の適切なデバイスであってよい。患者が心原性ショックの状態にある、冠状動脈インターベンションを受けている、心臓発作を起こしている、あるいは他のかたちで心臓の健康の低下に直面しているという理由で、ポンプを患者へと導入することができる。ポンプは、心臓からのCOが本来のCOにポンプ出力を加えたものに等しくなるように、本来の心臓の動作に寄与する。
【0008】
血行動態補助を提供することは、血管内血液ポンプを第1のポンピング速度またはポンプ速度で動作させることを含むことができる。ポンピング速度は、ポンプの動作の速度であり、ポンプの動作によってもたらされる血流の量に対応する。いくつかの実装形態において、ポンピング速度は、ロータの回転速度に対応し得る。例えば、ポンプ速度は、10,000 RPM、20,000 RPM、30,000 RPM、40,000 RPM、50,000 RPM、60,000 RPM、70,000 RPM、80,000 RPM、90,000 RPM、100,000 RPM、または任意の適切な速度であり得る。ポンプ速度は、図1に関連して後述されるように、パワーレベルまたはPレベルに対応し得る。例えば、ポンプ速度は、P-1、P-2、P-3、P-4、P-5、P-6、P-7、P-8、またはP-9であり得る。いくつかの実装形態において、ポンピング速度は代わりに、ポンプのチャンバが血液で満たされるおよび血液を放出する速度に対応し得る。
【0009】
いくつかの実装形態において、血行動態補助は、心臓の複数の拍動において第1のポンピング速度で提供される。各拍動は、収縮期上昇、重複切痕、および重複切痕後に起こる拡張期下降を含む。例えば、血行動態ポンピング速度は、2回、3回、4回、10回、20回、30回、100回、200回、または他の任意の適切な回数の心拍にわたって提供され得る。重複切痕は拡張期の始まりを示し、拡張期は、心筋が弛緩して心室を血液で満たさせる、心拍のフェーズである。血管内血液ポンプが左心系である場合に、血液ポンプが動作しているとき、拡張期において患者の左心室から大動脈へと流れる実質的な流れは、血液ポンプが寄与する流れだけである。拡張期は、心臓が拡張期を完了させるまでの時間であり、心筋が弛緩して心室を血液で満たさせる、心拍のフェーズである。例えば、拡張期は、0.05秒、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒、0.5秒、0.6秒、0.7秒、0.8秒、0.9秒、1秒、または任意の適切な長さであり得る。
【0010】
いくつかの実装形態において、血行動態パラメータが、デバイスの位置および機能ならびにデバイス上にあるときの患者の健康状態を監視するために測定される。例えば、血行動態パラメータを、血管内血液ポンプに含まれるセンサで測定することができ、あるいは別個のデバイスによって測定することができる。血行動態パラメータは、身体の器官または組織における血液の流れに関連する任意のパラメータであってよい。例えば、血行動態パラメータは、心拍、血圧、動脈酸素飽和度、混合静脈飽和度、中心静脈酸素飽和度、動脈血圧、平均動脈圧、右動脈圧、中心静脈圧、右心室圧、肺動脈圧、平均肺動脈圧、肺動脈閉塞圧、左心房圧、大動脈圧、差圧、左心室末期圧、一回拍出量、一回拍出量指数、一回拍出量変動、全身血管抵抗、全身血管抵抗指数、肺血管抵抗、肺血管抵抗指数、肺血管抵抗、肺血管抵抗指数、左心室一回仕事量、左心室一回仕事量指数、右心室一回仕事量、右心室一回仕事量指数、冠状動脈かん流圧、右心室拡張末期容積、右心室拡張末期容積指数、右心室収縮末期容積、右心室駆出率、動脈酸素含有量、静脈酸素含有量、動脈-静脈酸素含有量差、酸素運搬、酸素運搬指数、酸素消費量、酸素消費量指数、酸素摂取率、酸素摂取指数、総末梢抵抗、CO、心係数、およびCPOのうちの少なくとも1つまたは複数を含むことができる。
【0011】
いくつかの実装形態において、血行動態パラメータは、大動脈圧である。複数の大動脈圧測定を、それぞれの異なる時点で行うことができ、それらの結果が、ポンプの位置および働きを検出しかつ動作のためにポンプを設定するのに使用される。いくつかの実装形態において、すべてが複数の拍動のうちの同じ心拍の拡張期内であってよく、あるいは異なる拍動または時間の最中であってよい、3つ以上の大動脈圧測定値が検出される。血液ポンプが左心系である場合、拡張期において大動脈を通る実質的な流れは血液ポンプの寄与によるものだけであるため、拡張期における圧力測定が最適であり得る。したがって、ポンプの働きおよび心臓への寄与の決定が、より容易になり得る。
【0012】
いくつかの実装形態において、血管内血液ポンプによってポンピングされた少なくとも3つの血流量が、それぞれの3つの異なる時点で決定される。ポンプからの流量出力(ip)を、ポンプの速度(1分あたりの回転数またはRPM)と、そのポンプ速度を維持するためにポンプに供給されたモータ電流とによって決定することができる。ポンプ速度とモータ電流との間の技術的関係により、数学的相関あるいはルックアップテーブル(ここで、ポンプ速度およびモータ電流がルックアップテーブルに連動している)によって、流量を推定することが可能になる。ルックアップテーブル内の流量値は、ベンチテストによって事前に入力されていてよい。ポンプからの流量出力を決定する別のやり方は、ポンプ(または、同様のポンプ)を患者に配置する前に、生じ得るポンプ速度およびモータ電流値の組み合わせのうちの一部について、流量を決定することである。例えば、ポンプ速度40,000RPMおよびモータ電流500mAでの流量がi1によって表され、ポンプ速度40,000RPMおよびモータ電流510mAでの流量がi2によって表される場合、ポンプ速度40,000RPMおよびモータ電流505mAにおける流量を、i1およびi2の平均をとることによって計算することができる。
【0013】
COが、複数の大動脈圧測定値および血流速度に基づいて決定される。いくつかの適応は、少なくとも3つの大動脈圧測定値および少なくとも3つの対応する血流速度を使用する。一例においては、血管系をシミュレートするために、互いに並列な2つの電流源ihおよびipと、抵抗Rと、コンプライアンスCとを有するウィンドケッセルモデルが使用される。このモデルに反映される技術的関係の支配方程式は、
であり、ここでCはコンプライアンスであり、Pは圧力であり、Rは全身血管抵抗であり、ihは本来の心臓の動作からの流れであり、ipはポンプからの流れである。拡張期においては大動脈弁が閉じているため、左心室を通る唯一の流れは、弁をまたいで配置されたポンプからの流れである。したがって、心臓電流源を無視し、ポンプの流れが一定であると仮定することにより、モデルを以下のように簡略化でき、
ここでP0は、拡張期血圧の指数関数的減衰項
の倍率である。例えば、倍率P0は、対応するポンプ速度の逆数に比例することができ、したがって、
であり、ここでP01は、第1のポンプ速度speed1における倍率であり、P02は、第2のポンプ速度speed2における倍率である。したがって、ひとたびP0xが単一のポンプ速度xについて臨床的に決定されると、倍率P0xを、或る範囲のポンプ速度について外挿することができる。いくつかの実装形態において、ポンプからの流れipは、一定の速度を維持するための心臓ポンプシステムのモータへの電流の流れから推定される。圧力Pを、圧力波形を特徴付けて分解するために、単一の拡張期内のさまざまな時点で測定することができる。例えば、圧力は、複数の時点で公知であって(例えば、測定されて)よく、ウィンケッセルモデルの場合には、3つの異なる時点で公知であって(例えば、測定されて)よい。流れipを、圧力測定値と同じ時点で推定することができる。式(2)に基づいて、圧力の測定の時点ごとに1つずつ、複数の圧力方程式を設定し、RおよびCの値を計算することができる。いくつかの実装形態において、心臓ポンプは一定速度で動作する。
【0014】
全身血管抵抗値およびコンプライアンス値を使用して、心臓パフォーマンスを表す他の指標を計算することができる。例えば、ひとたびRおよびCが上述のウィンドケッセルモデルを使用して決定されると、計算されたRおよびCの値を上記の式(1)に挿入し、ihについて解いて、本来の心臓の機能の寄与による体積流量を決定することにより、心臓のCOを決定することができる。COを、所望の期間(例えば、5秒、10秒、30秒、など)にわたって総心血流量(ih+ip)の平均をとることによって計算することができる。
【0015】
いくつかの実装形態において、心臓パフォーマンスを表す別の指標を決定することができる。例えば、心臓パフォーマンスを表す指標は、心室抵抗、心室コンプライアンス、CO、CPO、一回拍出量、一回仕事量、駆出率、心係数、または患者生存予測であってよい。心臓パフォーマンスを表す多数の指標は、相互に関連している。例えば、COは、ポンプを通過する血液の流量に基づいて決定される。一回拍出量は左心室機能の指標であり、その式はSV=CO/HRであり、ここでSVは一回拍出量であり、COは心拍出量であり、HRは心拍数である。一回仕事量は、血液を排出するために心室によって行われる仕事であり、一回拍出量から式SW=SV*MAPに従って計算することができ、ここでSWは一回仕事量であり、SVは一回拍出量であり、MAPは平均動脈圧である。心仕事量は、一回仕事量と心拍数との積によって計算される。CPOは、心臓のポンプ能力を表す心機能の尺度であり、単位はワットである。CPOは、式CPO=mAoP*CO/451を使用して計算され、ここでCPOは心出力であり、mAoPは平均動脈圧であり、COは心拍出量であり、451はmmHg x L/分をワットに変換するために使用される定数である。駆出率は、一回拍出量を心室の血液量で割り算することによって計算することができる。チャンバ圧力、前負荷状態、後負荷状態、心臓回復、流れ負荷状態、可変体積負荷状態、および/または心拍サイクル流れ状態などの他のパラメータを、これらの値から計算することができ、あるいはこれらのパラメータを介して決定することができる。
【0016】
ポンプの動作を、心臓パフォーマンスを表す指標に基づいて調整することができる。ポンプ動作の調整は、ポンプ速度の上昇、ポンプ速度の低下、ポンプ配置の調整、ポンプのオフ、または任意の他の適切な調整を含み得る。例えば、ポンピングされる血液の総量がしきい値を下回る場合に、ポンプ速度を上げることができる一方で、血液の量がしきい値を上回る場合に、ポンプ速度を下げることができる。
【0017】
いくつかの実装形態において、複数の大動脈圧測定値が、複数の拍動のうちの特定の拍動における拡張期下降において検出される。例えば、圧力を、1秒あたり1個、2個、3個、10個、20個、30個、100個、200個、300個、1000個、2000個、3000個、または任意の他の適切な数のサンプルの速度でサンプリングすることができる。いくつかの例において、大動脈圧は、拡張期下降においてのみサンプリングされる。いくつかの例において、大動脈圧は、常に測定され、あるいは定期的に測定される。いくつかの例において、大動脈圧のサンプリングレートは、拡張期下降の最中に変更される。いくつかの実装形態においては、心拍出量が血液ポンプの動作のみによって生じる場合、少なくとも1つの大動脈圧測定が、拡張期の終わりにおいて行われる。いくつかの実装形態においては、複数の大動脈圧測定値を、圧力センサによって取得することができる。例えば、圧力センサは、心臓に血行動態補助を提供する血管内血液ポンプの一部であってよく、あるいは圧力センサは、血管内血液ポンプとは別であってよい。
【0018】
いくつかの実装形態において、患者の心臓の心拍出量を決定することは、単一の心拍または複数の心拍についての複数の心拍出量値を処理することを含む。例えば、上述のように、複数の大動脈圧測定値を、特定の心拍の拡張期において取得することができる。複数の大動脈圧測定値のうちの各々の圧力測定値について、圧力を測定することができ、流量を推定することができる。圧力および流量の値を、公知の測定時点との組み合わせにおいて、2つの時点の間で比較し、血管抵抗およびコンプライアンスなどの心臓パラメータを計算し、次いでCOの決定に使用することができる。単一の心拍内であっても、拡張期下降全体にわたり計算されるCO値は、患者の心臓の変動および流量推定の違いに起因して変化する可能性がある。複数のCO値を処理することは、決定された複数の心拍出量値について合計、平均、または線形回帰のうちの少なくとも1つを実行して、心臓の心拍出量の第1の累積インジケータ(cumulative indicator)を計算することを含むことができる。単一の心臓における複数の大動脈圧測定値について複数のCO値を処理することによって、本明細書に記載のシステムおよび方法は、心臓のCO(および、心臓パフォーマンス)の正確な表現を提供する。いくつかの実装形態において、心臓の心拍出量の第1の累積インジケータは、特定の心拍における心臓パフォーマンスまたは全体的な患者の健康を表す。
【0019】
いくつかの実装形態において、本明細書のシステムおよび方法は、複数の心拍についてCOを計算することによって心臓パフォーマンスを決定することができ、COの測定および決定を評価して、心臓の心臓パフォーマンスの累積インジケータを特定することができる。いくつかの実装形態においては、心臓の心拍出量の第2の累積インジケータが、上述の特定の心拍の後の第2の心拍について決定され、すなわち、心拍出量の第1の累積インジケータは、第1の時点における第1の心拍を表すことができ、第2の累積心拍出量は、第1の時点よりも後の第2の時点における第2の心拍を表すことができる。いくつかの実装形態において、第2の心拍は、第1の心拍の直後である。いくつかの実装形態においては、第1の心拍の終わりと第2の心拍の始まりとの間に或る期間が経過する。この期間は、1秒、1分、10分、1時間、10時間、または任意の他の適切な時間長であってよい。例えば、第1の累積インジケータを、午後12時に始まる心拍について計算することができ、第2の累積インジケータを、その同じ日の午後1時に始まる心拍について計算することができる。さまざまな時点で心拍の心拍出量を調査することにより、臨床医またはコンピュータシステムが患者の健康の全体的な傾向を見つけることを可能にできる。
【0020】
いくつかの実装形態において、心拍出量の第1の累積インジケータは、心拍出量の第2の累積インジケータと比較される。上述の第1の累積インジケータと同様に、第2の累積インジケータを、第2の複数の心拍出量値を計算することによって決定することができ、第2の複数の心拍出量値のうちの各心拍出量値は、第2の組の拍動のうちの一拍動に対応する。合計、平均、または線形回帰が、決定された複数の心拍出量値に適用され、患者の心臓の全体的な心臓パフォーマンスを表すことができる第2の累積インジケータが計算される。
【0021】
第1の累積インジケータと第2の累積インジケータとの間の比較に基づいて、(i)心臓の心臓パフォーマンスの向上または(ii)心臓の心臓パフォーマンスの低下のいずれかが判定される。心臓パフォーマンスの向上または低下は、患者の心臓または全体的な健康を表すことができる。同様に、CO値を、患者の複数の心拍について決定することができ、心臓パフォーマンスを経時的に追跡するために使用することができる。患者に提供される血行動態補助を、心臓の心臓パフォーマンスが経時的に向上しているあるいは低下しているとの判定に基づいて、調整することができる。そのインジケータを、機械的循環補助の適用およびレベル調整の時期、ならびに程度を特定するために使用することができる。いくつかの実装形態においては、心臓パフォーマンスの向上が観測された場合に、患者へと提供される血行動態補助を減らすことができる一方で、心臓パフォーマンスの低下が観測された場合に、患者へと提供される血行動態補助を増加させることができる。
【0022】
いくつかの局面においては、心臓ポンプを第1のポンプ速度で動作させている間、血行動態パラメータが監視される。いくつかの実装形態において、ポンプは、経皮的挿入によって患者の心臓内に配置される血管内血液ポンプデバイスである。ポンプは、患者が心原性ショックの状態にあるかあるいは他のかたちで健康の低下に直面しているという理由で、患者へと導入される可能性がある。ポンプを、ポンプへの血液入口(例えば、図1の血液入口172)が左心室内に位置し、ポンプからの出口(例えば、図1の出口開口部170)が大動脈内に位置するように、大動脈弁をまたいで配置することができる。ポンプは、心臓からのCOが本来のCOにポンプ出力を加えたものに等しくなるように、本来の心臓の動作に寄与する。
【0023】
血行動態パラメータは、身体の器官または組織における血液の流れに関連する任意のパラメータであってよい。例えば、血行動態パラメータは、心拍、血圧、動脈酸素飽和度、混合静脈飽和度、中心静脈酸素飽和度、動脈血圧、平均動脈圧、右動脈圧、中心静脈圧、右心室圧、肺動脈圧、平均肺動脈圧、肺動脈閉塞圧、左心房圧、大動脈圧、差圧、左心室末期圧、一回拍出量、一回拍出量指数、一回拍出量変動、全身血管抵抗、全身血管抵抗指数、肺血管抵抗、肺血管抵抗指数、肺血管抵抗、肺血管抵抗指数、左心室一回仕事量、左心室一回仕事量指数、右心室一回仕事量、右心室一回仕事量指数、冠状動脈かん流圧、右心室拡張末期容積、右心室拡張末期容積指数、右心室収縮末期容積、右心室駆出率、動脈酸素含有量、静脈酸素含有量、動脈-静脈酸素含有量差、酸素運搬、酸素運搬指数、酸素消費量、酸素消費量指数、酸素摂取割当量、酸素摂取指数、総末梢抵抗、CO、心係数、および心臓出力(CPO)のうちの少なくとも1つを含むことができる。ポンプ速度は、ポンプの動作の速度であり、ポンプの動作によってもたらされる血流の量に対応する。いくつかの実装形態において、ポンプ速度は、ロータの回転速度に対応し得る。例えば、ポンプ速度は、10,000 RPM、20,000 RPM、30,000 RPM、40,000 RPM、50,000 RPM、60,000 RPM、70,000 RPM、80,000 RPM、90,000 RPM、100,000 RPM、または任意の適切な速度であり得る。ポンプ速度は、図1に関連して上述したように、パワーレベルまたはPレベルに対応し得る。例えば、ポンプ速度は、P-1、P-2、P-3、P-4、P-5、P-6、P-7、P-8、P-9、または任意の他の適切な値であり得る。いくつかの実装形態において、ポンプ速度は代わりに、ポンプのチャンバが血液で満たされるおよび血液を放出する速度に対応し得る。血行動態パラメータを監視することにより、本明細書に記載のシステムおよび方法は、その血行動態パラメータの経時的な変化を調査することができる。このような比較を、心臓のパフォーマンスを定量化するために使用することができる。
【0024】
いくつかの実装形態において、心拍サイクルの拡張期は、経時的な血行動態パラメータの形状に基づいて特定される。とくに、重複切痕(例えば図3の切れ込み310など、大動脈圧波形において明らかである)が、拡張期の始まりを示す。患者の心拍数が比較的安定している場合、心拍の始まりを正確に予測することができる。心拍が収縮期を完了すると、大動脈圧は、上昇前に低下して重複切痕を形成する。この波形の形状を特定することで、システムは拡張期の始まりを決定することができる。拡張期は、心臓が拡張期を完了させるまでの時間であり、心筋が弛緩して心室を血液で満たさせる、心拍のフェーズである。例えば、拡張期は、0.05秒、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒、0.5秒、0.6秒、0.7秒、0.8秒、0.9秒、1秒、または任意の適切な長さであり得る。
【0025】
いくつかの実装形態において、拡張期における大動脈圧と血流との間の時変(time-variant)関係が決定される。時変関係は、互いに並列な2つの電流源ihおよびipと、抵抗Rと、コンプライアンスCとを有するウィンドケッセルモデルであり得る。このモデルの支配方程式は、
であり、ここでCはコンプライアンスであり、Pは圧力であり、Rは血管抵抗であり、ihは本来の心臓の動作からの流れであり、ipはポンプからの流れである。しかしながら、拡張期においては大動脈弁が閉じているため、左心室を通る唯一の流れは、弁をまたいで配置されたポンプからの流れである。したがって、心臓電流源を無視し、ポンプの流れが一定であると仮定することにより、モデルを以下のように簡略化でき、
ここでP0は、拡張期血圧の指数関数的減衰部分の倍率である。いくつかの実装形態において、ポンプからの流れipは、一定の速度を維持するための心臓ポンプシステムのモータへの電流の流れから推定される。圧力Pを、圧力波形を特徴付けて分解するために、単一の拡張期内のさまざまな時点で測定することができる。例えば、圧力は、第1、第2、および第3の時点で公知であり得る。流量ipも、第1、第2、および第3の時点で推定され得る。式(2)に基づいて、3つの時点のそれぞれについて1つずつ、3つの圧力方程式を設定し、RおよびCの値を計算することができる。いくつかの実装形態において、心臓ポンプは一定速度で動作する。
【0026】
いくつかの実装形態において、心臓パフォーマンスを表す、心拍ごとにポンピングされる血液の総量が、拡張期における大動脈圧と血流との間の時変関係に基づいて計算される。例えば、ひとたびRおよびCが決定されると、計算されたRおよびCの値を上記の式(1)に代入し、ihについて解いて、本来の心臓の機能の寄与による体積流量を決定することにより、心臓のCOを決定することができる。
【0027】
いくつかの実装形態において、心臓パフォーマンスを表す別の指標を計算することができる。例えば、心臓パフォーマンスを表す指標は、心室抵抗、心室コンプライアンス、CO、CPO、一回拍出量、一回仕事量、駆出率、心係数、または患者生存予測であってよい。心臓パフォーマンスを表す多数の指標は、相互に関連している。例えば、COは、ポンプを通過する血液の流量に基づいて決定される。一回拍出量は左心室機能の指標であり、その式はSV=CO/HRであり、ここでSVは一回拍出量であり、COは心拍出量であり、HRは心拍数である。一回仕事量は、血液を排出するために心室によって行われる仕事であり、一回拍出量から式SW=SV*MAPに従って計算することができ、ここでSWは一回仕事量であり、SVは一回拍出量であり、MAPは平均動脈圧である。心仕事量は、一回仕事量と心拍数との積によって計算される。CPOは、心臓のポンプ能力を表す心機能の尺度であり、単位はワットである。CPOは、式CPO=mAoP*CO/451を使用して計算され、ここでCPOは心出力であり、mAoPは平均動脈圧であり、COは心拍出量であり、451はmmHg x L/分をワットに変換するために使用される定数である。駆出率は、一回拍出量を心室の血液量で割り算することによって計算することができる。チャンバ圧力、前負荷状態、後負荷状態、心臓回復、流れ負荷状態、可変体積負荷状態、および/または心拍サイクル流れ状態などの他のパラメータを、これらの値から計算することができ、あるいはこれらのパラメータを介して決定することができる。
【0028】
いくつかの実装形態において、心臓パフォーマンスを表す指標に基づいて、ポンプの動作が調整される。ポンプ動作の調整は、ポンプ速度の上昇、ポンプ速度の減少、ポンプ配置の調整、ポンプのオフ、または任意の他の適切な調整を含み得る。例えば、ポンピングされる血液の総量がしきい値を下回る場合に、ポンプ速度を上げることができる一方で、血液の量がしきい値を上回る場合に、ポンプ速度を下げることができる。
【0029】
いくつかの実装形態において、上述の方法は、患者の血管系内で血液ポンプを動作させることと、上述のシステムおよびセンサのいずれかを使用して患者の心臓の心拍出量を決定することとを含む。血液ポンプのポンピング速度を、決定された心拍出量に基づいて調整することができる。いくつかの実装形態において、適用される血行動態補助は、心臓の心臓パフォーマンスが経時的に向上しているまたは低下しているとの判定に基づくことができる。
【0030】
いくつかの実装形態においては、血管センサが提供される。血管センサは、患者の血管内に血流を生じさせるためのシステムを含むことができる。システムは、血管内システムであってよい。システムは、モータおよびインペラを含むことができる。いくつかの実装形態において、患者の血管内に血流を生じさせるためのシステムは、心臓の左心室内を延びるように構成されたカニューレと、大動脈圧、左心室圧、または差圧のうちの少なくとも1つを検出するように構成された圧力センサとを備える。患者の血管内に血流を生じさせるためのシステムは、シュラウド内にインペラを組み込んだ心臓内血液ポンプであってよい。例えば、シュラウドは、ポンプハウジングであってよい。シュラウドを、患者の血管を通過するサイズにすることができ、モータまたは他のポンプ要素に結合させることができる。シュラウドは、1つまたは複数の血液排出口または出口を備えることができる。
【0031】
さらに、血管センサは、コントローラを含むことができる。コントローラを、血管内でのインペラ回転の抵抗の変化を検出するように構成することができる。いくつかの実装形態においては、一定のインペラ回転速度が、検出されたインペラ回転の抵抗に基づいて維持される。
【0032】
いくつかの実装形態においては、血管コンプライアンスおよび血管抵抗を、伝達関数を使用してインペラ回転の抵抗の変化に基づいて計算することができる。いくつかの実装形態において、伝達関数は、ウィンドケッセルモデルである。いくつかの実装形態においては、ポンプ動作データをコンピューティングデバイスに送信することができる。コンピューティングデバイスは、コントローラとは別に配置されてよく、あるいはコントローラに搭載されてよい。例えば、コンピューティングデバイスは、遠方に格納されたサーバーであってよい。いくつかの実装形態において、ポンプ動作データは、圧力測定値、電流測定値、インペラ回転の抵抗の変化、および流量の推定のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実装形態において、コントローラは、コンピューティングデバイスからポンプ動作指令を受信するようにさらに構成され、ポンプ動作指令は、ポンプ動作データに基づく。例えば、コンピューティングデバイスは、血管抵抗およびコンプライアンスを計算し、それに応じてポンプ動作を変更することができる。
【0033】
いくつかの実装形態において、コントローラまたはコンピューティングデバイスは、血管コンプライアンスおよび血管抵抗に基づいて心臓パフォーマンスを表す指標を決定するように構成される。心臓パフォーマンスを表す指標は、心拍出量、心臓出力、一回拍出量、一回仕事量、駆出率、心収縮能、心室エラスタンス、心係数、患者生存予測、または任意の適切な指標のうちの少なくとも1つであってよい。
【0034】
いくつかの実装形態において、コントローラは、血管抵抗、血管コンプライアンス、または心拍出量のうちの少なくとも1つに基づいてインペラ回転速度を調整するように構成される。例えば、患者の心臓または血管の健康状態に基づいて、多いまたは少ない血流を提供するために、インペラ回転速度を増減させることができる。
【0035】
いくつかの実装形態において、コントローラは、或る期間にわたり大動脈圧を表す測定値を受信し、ポンプへと供給された電流を検出し、そして、その期間にわたりシステムによってポンピングされた血流の速度を、ポンプへと供給された電流に基づいて決定するように、構成される。血管コンプライアンスおよび血管抵抗の計算は、大動脈圧を表す測定値および血流の速度に基づくことができる。
【0036】
いくつかの実装形態においては、コントローラが、本明細書に記載の実装形態、局面、および方法のいずれかを実行するように構成される。例えば、コントローラは、Abiomed,IncのAutomated Impella Controller(AIC)、または任意の他の適切なコントローラであってよい。いくつかの実装形態において、心臓ポンプシステムは、カテーテルと、モータと、モータに動作可能に結合したロータと、ロータを少なくとも部分的に取り囲むポンプハウジングと、差圧センサなどの1つまたは複数のセンサと、コントローラとを含み、モータを作動させることによってロータが駆動され、血液がポンプハウジングを通ってポンピングされる。例えば、心臓ポンプシステムは、AICまたは任意の他の適切なシステムに接続されたAbiomed,IncのImpella 5.0という心臓ポンプを備えることができる。
【0037】
いくつかの実装形態において、コントローラは、ディスプレイを備える。表示のために上述の計算または機能のいずれかを構成することができる。例えば、大動脈圧波形をグラフィカル・ユーザ・インターフェース上に提示することができる。臨床医は、そのような表示を眺め、経時的な血行動態パラメータの観察に基づいて、ポンプの動作を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】患者の血管に挿入された例示的な心臓ポンプシステムを示している。
図2】特定の実装形態に従って心拍ごとにポンピングされる血液の量を決定するためのプロセスを示している。
図3】特定の実装形態による心臓ポンプシステムの圧力対時間のプロットを示している。
図4】特定の実装形態による患者に組み合わせられたCOセンサを示している。
図5】特定の実装形態に従って心拍ごとにポンピングされる血液の総量を決定するためのプロセスを示している。
図6】特定の実装形態に従って心拍出量を決定するためのプロセスを示している。
図7】特定の実装形態による心臓ポンプシステムの圧力対時間および流量対時間のプロットを示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
本明細書に記載のシステムおよび方法の全体的な理解をもたらすために、特定の例示的な態様を説明する。本明細書に記載の態様および特徴は、経皮的心臓ポンプシステムに関連した使用について具体的に説明されるが、以下で概説される構成要素および他の特徴のすべてが、任意の適切なやり方で互いに組み合わせることが可能であり、外科的切開を使用して埋め込まれる心臓ポンプシステムなど、他の種類の心臓治療および心臓ポンプシステムへの適合および適用が可能であることを、理解できるであろう。
【0040】
本明細書に記載のシステム、デバイス、および方法は、臓器内に完全または部分的に位置する補助デバイスによって、その臓器の機能を評価することを可能にする。とくには、システム、デバイス、および方法は、経皮的心室補助デバイスなどの機械的循環補助システムを使用して、心臓の機能を評価することを可能にする。例えば、血液ポンプなどの補助装置を、心原性ショックまたは心臓発作の治療に使用することができ、あるいは広く冠状動脈インターベンションの最中に心臓を補助するために使用することができる。
【0041】
機械的循環補助システムを使用して心臓の機能を評価することで、医療専門家に心臓機能の変化を警告することができ、補助デバイスによってもたらされる補助の程度/レベル(すなわち、デバイスによってポンピングされる血液の流量)を特定の患者のニーズに合わせることを可能にすることができる。例えば、患者の心臓機能が悪化しているときに補助の程度を増加させることができ、あるいは患者の心臓機能が回復して、正常な心臓機能のベースラインへと戻るときに、補助の程度を減少させることができる。これにより、心臓の回復を促進するようにデバイスを心臓機能の変化に動的に応答させることを可能にでき、患者を徐々に治療から切り離すことを可能にすることができる。さらに、心臓機能の評価は、心臓ポンプシステムの使用をいつ終了させることが適切であるかを示すことができる。本明細書に提示されるいくつかの態様は、大動脈弁をまたいで埋め込まれ部分的に左心室に位置する心臓ポンプシステムを対象とするが、考え方は、心臓、心臓血管系、または身体の他の領域内のデバイスに適用可能である。
【0042】
心機能の評価は、心臓とデバイスとの相互作用を利用して心臓パラメータを決定することを含むことができる。本明細書に記載のシステムおよび方法は、大動脈圧の測定値および血液ポンプシステムからの流量出力に基づいて心拍出量を決定する。流量は、測定値であってよく、あるいは血管内血液ポンプシステムの所与のポンプ速度においてモータに供給されるモータ電流から決定される推定値であってよい。本明細書に記載のシステムおよび方法の少なくとも1つの利点は、心臓ポンプシステムによってポンプの動作(例えば、ポンプ速度)を変更することなく心臓機能を評価することを可能することで、ポンプ速度の変更に関連するリスクが最小化されることである。ポンプ速度の低下が、患者の補助の減少を伴う一方で、ポンプ速度の上昇は、吸引または他のリスクにつながる可能性がある。さらに、ポンプ速度の頻繁な変化および/または急な変化が、溶血またはポンプ/モータ性能の低下につながる可能性がある。さらに、血管内血液ポンプシステムを使用して心臓パフォーマンスを表す指標を決定するために必要なパラメータを測定または推定することで、これらの指標が患者の血管系内にすでに配置されている血液ポンプシステムによって取得されるがゆえに、心臓のパフォーマンスを継続的に測定することが可能になる。
【0043】
心臓ポンプシステムの作用を活用することによって血管および心臓パフォーマンスを継続的に測定することは、適切なデバイス補助の滴定に役立つ追加の臨床データを提供するための重要なステップである。しかしながら、より重要なことに、本明細書に記載のシステムおよび方法は、心臓および血管の状態の決定におけるデバイス-動脈連関の影響および可能性を実証している。心臓から血液をシャントするいくつかの侵襲的な心臓ポンプシステムと異なり、本明細書に提示される心臓ポンプシステムは、心臓内に存在し、本来の心室機能と並行して機能する。これにより、本明細書に提示される心臓ポンプシステムは、いくつかのより侵襲的なデバイスとは異なり、本来の心室機能を検出するための充分な感度を有することができる。したがって、システム、デバイス、および方法は、心臓ポンプシステムを補助デバイスとしてだけでなく、診断および予測ツールとして使用することも可能にする。心臓ポンプシステムが、本質的に、心臓に流体力学的に結合する(hydraulically coupling)ことによって、心臓機能に関する情報を抽出するアクティブカテーテルとして機能することができる。いくつかの実装形態においては、心臓ポンプシステムが一定のレベル(例えば、ロータの一定の回転速度)で動作する一方で、補助デバイスに供給される電力が測定される。特定の実装形態においては、本来の心臓機能をさらに調べるために、心臓ポンプシステムのロータの速度を(例えば、デルタ、ステップ、またはランプ関数として)変更することができる。
【0044】
図1は、患者の血管に挿入された例示的な心臓ポンプシステムを示している。本開示と互換性のある心臓ポンプシステムが、米国特許出願公開第2018-0078159-A1号に開示されており、この米国特許出願公開の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。一般に、任意の他の心臓ポンプシステムまたは患者から生理学的データを取得するためのシステムを、本開示とともに使用することができる。いくつかの実装形態において、本明細書に記載のシステムおよび方法は、IMPELLA(登録商標)ファミリーのデバイス(マサチューセッツ州DanversのAbiomed,Inc.)に関連し得る。
【0045】
心臓ポンプシステム100は、心臓内、部分的に心臓内、心臓の外部、部分的に心臓の外部、部分的に血管系の外部、または患者の血管系の任意の他の適切な場所で動作してよい。カニューレ173が、ポンプへの血液入口(例えば、血液入口172)が左心室内に位置しポンプからの出口(例えば、出口開口部170)が大動脈内に位置するように大動脈弁をまたいで配置されたときに、心臓ポンプシステムが「適切な位置にある」と見なすことができる。心臓ポンプシステム100は、心臓ポンプ106および制御システム104を含む。制御システム104の全部または一部が、心臓ポンプ106から分離した/遠隔のコントローラユニット内にあってよい。いくつかの実装形態において、制御システム104は、心臓ポンプ106の内部にある。制御システム104および心臓ポンプ106は、縮尺どおりに示されているわけではない。ポンプシステム100は、細長いカテーテル本体105と、モータハウジング102と、ポンプ要素が形成される駆動シャフトとを含む。ポンプ100は、ポンプハウジング134およびモータハウジング102を含み、モータハウジング102は、モータハウジング102の遠位端111においてカニューレ173に結合している、ドライブシャフト上のインペラブレードをポンプハウジング134内で回転させて、吸い込みヘッド174におけるカニューレ173への血流を生じさせることができる。吸い込みヘッド174は、カニューレ173の遠位端部分171に血液入口172をもたらす。血液の流れ109は、カニューレ173を第1の方向108に通過し、カニューレ173の1つまたは複数の出口開口部170においてカニューレ173を出る。
【0046】
さらに、ポンプハウジング134内の駆動シャフトの回転は、ベアリングギャップ内のポンプ要素を回転させることができる。血液適合性流体を、細長いカテーテル105を通し、モータハウジング102を通してカニューレ173の近位端部分へと送達することができ、ここで流体は、ポンプ要素の回転によって加圧される。血液適合性流体の流れは、ポンプのベアリングギャップを通る第2の方向122を有する。ベアリングギャップを出た後で、血液適合性流体は、流れ方向123に従い、血液の流れに混ざり込み、血液とともに大動脈へと流れることができる。
【0047】
心臓ポンプ100は、シース175を通って患者の血管に挿入される。ポンプハウジング134は、ロータおよび内部ベアリングを囲むことができ、患者の血管へと経皮的に挿入されるようなサイズであってよい。いくつかの実装形態においては、ポンプを、血管系を通り、大動脈弓164を過ぎて進めることができる。ポンプが左心室内に図示されているが、代わりに、血液を患者の下大静脈または右心房から右心室を通って肺動脈へとポンピングするように、ポンプを右心に配置してもよい。
【0048】
心臓ポンプ100を血管または心室に最適に位置させるために、カニューレ173の遠位端部分171において、吸い込みヘッド174の遠位側に、可撓性の突出部176がさらに含まれてよい。可撓性の突出部176は、吸い込みヘッド174が血管の壁に近付き、吸い込みによって血管の壁に貼り付く可能性を、防止することができる。可撓性の突出部176は吸い込みを有さなくてよいため、可撓性の突出部176は、ポンプ100を機械的に延長することができるが、流体に関して延ばすわけではない。いくつかの実装形態においては、可撓性の突出部をピグテールとして形成することができる。いくつかの局面において、ポンプは、必ずしも可撓性の突出部を含まなくてもよい。
【0049】
細長いカテーテル105は、流体供給ラインを備えることができ、電気接続ケーブルを収容することもできる接続126を収容する。接続126は、制御システム104内に収容されてよい流体リザーバからポンプへと血液適合性流体を供給することができる。
【0050】
制御システム104はコントローラ182を含み、例えばモータへの電力を制御し、あるいはモータ速度を制御するなど、ポンプ106を制御する。いくつかの実装形態において、制御システム104は、差圧信号およびモータ電流などの測定値を表示するための表示画面を含む。制御システム104は、ライン内の空気を知らせる電流の低下についてモータ電流を監視し、差圧信号の変化を監視し、流れの位置を監視し、吸い込みを監視し、あるいは任意の他の適切な測定を監視するための回路を含むことができる。制御システム104は、センサの故障、接続126の切断または破損、あるいは患者の健康の突然の変化をオペレータに警告するための警告音、警告灯、またはインジケータを含むことができる。
【0051】
モータ108は、ロータを設定された速度に維持するために必要な速度で動作することができる。結果として、以下でさらに説明されるように、ロータ速度を維持するためにモータが引き出すモータ電流を監視して、根底にある心臓の状態を理解するために使用することができる。例えば、モータ電流を使用して、心臓を通る流量を決定することができる。
【0052】
心臓ポンプは、さまざまなポンプ速度またはPレベルで動作することができる。Pレベルは、心臓ポンプシステムのパフォーマンスレベルであり、システムの流量制御に関係する。Pレベルが高くなると、心臓ポンプシステムに関する流量、モータ電流、および1分あたりの回転数が増加し、したがって、より高いPレベルは、心臓ポンプシステムに関するより多い流量およびより高い1分あたりの回転数に対応する。例えば、パワーレベルP-1が、ロータの第1の1分あたりの回転(RPM)数に対応できる一方で、パワーレベルP-2は、第2のRPM数に対応することができる。いくつかの例において、ポンプは、P-0からP-9までの範囲の10個の異なるパワーレベルで動作する。これらのPレベルは、0RPM〜100,000RPMまたは任意の適切な数に対応できる。ロータの速度が変化すると、心臓のCOが変化する。
【0053】
制御システム104は、電流センサ(図示せず)を含むことができる。コントローラ182は、1つまたは複数の電線などを介し、接続126によってモータ108に電流を供給する。接続126を介してモータ108に供給される電流は、電流センサによって測定される。機械式ポンプのモータが被る負荷は、圧力ヘッド、あるいは大動脈圧と左心室圧との間の差である。心臓ポンプ106は、所与の圧力ヘッドにおける定常状態動作において公称負荷を被り、この公称負荷からの変動は、例えば左室収縮の力学などの外部負荷条件の変化の結果である。動的負荷条件の変化は、ポンプロータを一定または実質的に一定の速度で動作させるために必要なモータ電流を変化させる。上述のように、モータは、ロータを設定された速度に維持するために必要な速度で動作することができ、ロータ速度を維持するためにモータが引き出すモータ電流を監視して、根底にある心臓の状態を理解するために使用することができる。心臓の状態を、圧力センサ112を使用して心拍サイクルの最中に圧力ヘッドを同時に監視することによって、さらにより正確に定量化および理解することができる。心臓パラメータ推定器185が、電流センサからの電流信号、ならびに圧力センサ112からの圧力信号を受信する。心臓パラメータ推定器185は、これらの電流および圧力信号を使用して、心臓の機能を明らかにする。心臓パラメータ推定器185は、格納されたルックアップテーブルにアクセスして、圧力および電流信号に基づいて心臓の機能を明らかにするための追加の情報を取得することができる。例えば、心臓パラメータ推定器185は、圧力センサ112から大動脈圧を受信することができ、ルックアップテーブルを用いて、モータ電流およびポンプ速度を使用して大動脈と心室との間のデルタ圧力を決定することができる。
【0054】
いくつかの実装形態において、圧力センサ112は、大動脈圧センサである。いくつかの実装形態において、圧力センサ112は、差圧を測定するように構成されたカニューレ172に統合された可撓膜である。センサの一方側が、カニューレの外部の血圧に曝され、他方側が、カニューレの内部の血圧に曝される。センサは、カニューレの外部の圧力と内部の圧力との間の差に比例する電気信号(差圧信号)を生成し、これを心臓ポンプシステムによって表示してもよい。心臓ポンプシステムが大動脈弁をまたぐ正しい位置に配置されると、センサの上部(外面)が大動脈圧に曝され、センサの下部(内面)が心室内圧に曝される。したがって、差圧信号は、大動脈圧と心室内圧との間の差にほぼ等しい。いくつかの実装形態において、システムは、差圧センサおよび大動脈圧センサの両方を含む。
【0055】
図2が、心拍出量を決定するためのプロセス200を示している。プロセス200を、図1の心臓ポンプシステム100または任意の他の適切なポンプを使用して実行することができる。いくつかの実装形態において、ポンプは、経皮的挿入によって患者の心臓内に配置される血管内血液ポンプデバイスである。ポンプは、患者が心原性ショックの状態にあるかあるいは他のかたちで健康の低下に直面しているという理由で、患者へと導入される可能性がある。ポンプを、ポンプへの血液入口(例えば、図1の血液入口172)が左心室内に位置しポンプからの出口(例えば、図1の出口開口部170)が大動脈内に位置するように、大動脈弁をまたいで配置することができる。ポンプは、心臓からのCOが本来のCOにポンプ出力を加えたものに等しくなるように、本来の心臓の動作に寄与する。
【0056】
ステップ202において、血行動態補助が、第1のポンピング速度で心臓に適用される。いくつかの実装形態において、ポンピング速度は、ロータの回転速度に対応し得る。例えば、ポンプ速度は、10,000 RPM、20,000 RPM、30,000 RPM、40,000 RPM、50,000 RPM、60,000 RPM、70,000 RPM、80,000 RPM、90,000 RPM、100,000 RPM、または任意の適切な速度であり得る。ポンプ速度は、図1に関連して後述されるように、パワーレベルまたはPレベルに対応し得る。例えば、ポンプ速度は、P-1、P-2、P-3、P-4、P-5、P-6、P-7、P-8、またはP-9であり得る。いくつかの実装形態において、ポンピング速度は代わりに、ポンプのチャンバが血液で満たされるおよび血液を放出する速度に対応し得る。ポンピング速度は、心臓の複数の心拍にわたって供給される。各心拍は、収縮期上昇、重複切痕、および、重複切痕後に起こる拡張期下降を含む。
【0057】
ステップ204において、少なくとも3つの大動脈圧測定値が、複数の拍動のうちの特定の拍動の拡張期下降において検出される。いくつかの実装形態においては、大動脈圧が継続的に測定され、あるいは定期的にサンプリングされ、複数の大動脈圧測定値が検出される。例えば、圧力を、1秒あたり1個、2個、3個、10個、20個、30個、100個、200個、300個、1000個、2000個、3000個、または任意の他の適切な数のサンプルの速度でサンプリングすることができる。いくつかの例において、大動脈圧は、拡張期下降においてのみサンプリングされる。いくつかの例において、大動脈圧は、常に測定され、あるいは定期的に測定される。
【0058】
ステップ206において、血管内血液ポンプによってポンピングされた少なくとも3つの血流が決定される。図3に示され、上述されているように、圧力を、拡張期の期間における一連の時点で測定することができる。これらの圧力測定値の各々について、圧力が測定され、ロータ速度を維持するためにポンプに供給される電流に基づいて、流量を推定することができる。ポンプ速度およびモータ電流と流量推定値との間のこの数学的関係を、ポンプ速度およびモータ電流がテーブルへのインデックスであり、テーブル内の流量値がベンチテストによって事前入力されているルックアップテーブルを設定することによって、実装可能である。別のやり方は、ポンプ速度とモータ電流との可能な組み合わせの一部について、流量を事前に決定することである。例えば、ポンプ速度40,000RPMおよびモータ電流500mAでの流量ならびにポンプ速度40,000RPMおよびモータ電流510mAでの流量が、それぞれi1およびi2として知られている場合、ポンプ速度40,000RPMおよびモータ電流505mAにおける流量を、i1およびi2の平均をとることによって計算することができる。圧力および流量の測定値は、公知の測定時点との組み合わせにおいて、2つの時点の間で比較され、全身血管抵抗およびコンプライアンスなどの心臓パラメータが計算される。
【0059】
ステップ208において、特定の拍動における心拍出量が、大動脈圧および血流の測定値に基づいて決定される。大動脈圧をシミュレートするために、互いに並列な2つの電流源ihおよびipと、抵抗Rと、コンプライアンスCとを有するウィンドケッセルモデルを使用することができる。このモデルの支配方程式は、
であり、ここでCはコンプライアンスであり、Pは圧力であり、Rは血管抵抗であり、ihは本来の心臓の動作からの流れであり、ipはポンプからの流れである。しかしながら、拡張期においては大動脈弁が閉じているため、左心室を通る唯一の流れは、弁をまたいで配置されたポンプからの流れである。したがって、心臓電流源を無視し、ポンプの流れが一定であると仮定することにより、モデルを以下のように簡略化でき、
ここでP0は、拡張期における初期大動脈圧である。いくつかの実装形態において、ポンプからの流れipは、一定の速度を維持するための心臓ポンプシステムのモータへの電流の流れから推定される。圧力Pを、図3に示され、以下で説明されるように、圧力波形を特徴付けて分解するために、単一の拡張期内のさまざまな時点で測定することができる。例えば、圧力は、3つの時点で知られてよい。流れipも、同じ3つの時点で推定されてよい。式(2)に基づいて、3つの時点のそれぞれについて1つずつ、3つの圧力方程式を設定し、RおよびCの値を計算することができる。例えば、ひとたびRおよびCが上述のウィンドケッセルモデルを使用して決定されると、計算されたRおよびCの値を上記の式(1)に代入し、ihについて解いて、本来の心臓の機能の寄与による体積流量を決定することにより、心臓のCOを決定することができる。
【0060】
計算されたCO値に基づいて、ポンプの動作を調整することができる。ポンプ動作の調整は、ポンプ速度の上昇、ポンプ速度の低下、ポンプ配置の調整、ポンプのオフ、または任意の他の適切な調整を含み得る。例えば、COがしきい値を下回る場合に、ポンプ速度を上げることができる一方で、COがしきい値を上回る場合に、ポンプ速度を下げることができる。
【0061】
図3は、特定の実装形態による心臓ポンプシステムの圧力対時間のプロット300を示している。プロット300のy軸が、大動脈圧(mmHg)を表す一方で、x軸は、時間を心拍長のパーセンテージとして表している。とくには、プロット300は、心拍の拡張期において一連の時点P0〜P5で圧力を測定できることを示している。Δt1が第1の心拍の時間を表し、Δt2が第1の心拍の後の第2の心拍の時間を表す。期間Δt1およびΔt2は、心臓ポンプシステムが少なくとも部分的に患者の心臓内に配置されている間に発生する。点310が、第1の心拍における重複切痕を表し、点320が、第2の心拍における重複切痕を表す。拡張期Δt3が、第2の心拍の拡張期を表す。期間Δt1、Δt2、およびΔt3において、ポンプは第1のポンプ速度で動作する。いくつかの実装形態において、ポンプは、期間Δt3において第2のポンプ速度で動作する。例えば、ポンプ速度を、期間Δt3において高くすることができる。より高いポンプ速度では、測定される大動脈圧および総流量が、より低いポンプ速度と比較して大きくなる。
【0062】
拡張期Δt3のうちの所与の公知の時点t02において、圧力P(t02)が公知であり、拡張期Δt3のうちの第2の公知の時点t03において、圧力P(t03)が公知であり、拡張期Δt3のうちの第3の公知の時点t04において、圧力P(t04)が公知である。拡張期Δt3のこれらの各時点で、ポンプの流れは、その時点でポンプモータに供給されたモータ電流から公知である。したがって、次の式を使用してP0、R、およびCを計算することができる。
これらのステップを、拡張期t3の各時点について繰り返すことができる。時点の各組(例えば、t02とt04、t02とt03、など)について計算されたR値およびC値がわずかに異なる可能性がある。測定されたR値およびC値を平均して、心臓の代表的な全身血管抵抗値およびコンプライアンス値に到達することができる。いくつかの実装形態において、R値およびC値を定期的に計算して、患者の治療時に値が経時的にどのように変化するかを決定することができる。いくつかの実装形態においては、心拍出量を、計算されたR値およびC値を使用して決定することができる。例えば、心拍出量を決定することは、複数の拍動のうちの複数の特定の拍動の心拍出量を決定し、決定された心拍出量に合計、平均、または線形回帰のうちの少なくとも1つを適用して、心臓の心拍出量の累積インジケータを決定することを含むことができる。
【0063】
図4が、患者400に結合したコンプライアンスセンサ410を示している。コンプライアンスセンサ410は、本明細書に記載の方法、ならびに追加のプロセスを実行するように構成された種々のハードウェア要素を含み得る。いくつかの実装形態において、コンプライアンスセンサは、血管内血液ポンプ(例えば、図1のポンプ202)を含む。血管内血液ポンプを、少なくとも部分的に患者の心臓内に配置されるように構成することができる。いくつかの実装形態において、血管内血液ポンプは、カニューレと、血管内で回転してカニューレを通して血液をポンピングするように構成されたインペラと、インペラを回転させるための電力を与えるように構成された駆動機構とを含む。いくつかの実装形態において、カニューレは、カニューレの遠位端が左心室内にあり、カニューレの近位端が大動脈内にあるように、大動脈弁をまたいで延びるように構成され得る。例えば、カニューレが、ポンプへの血液入口が左心室内に位置し、ポンプからの出口が大動脈内に位置するように、大動脈弁をまたいで配置されたときに、心臓ポンプシステムが「適切な位置にある」と見なすことができる。駆動機構は、内蔵モータ、駆動ケーブル、駆動シャフト、または任意の他の適切な要素、あるいはこれらの組み合わせを含み得る。
【0064】
いくつかの実装形態において、コンプライアンスセンサ410は、カニューレに結合した細長いカテーテル本体を含む。細長いカテーテルは、駆動ケーブル、血液ポンプを制御システムに接続する電気配線、任意の適切な要素、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実装形態において、血液ポンプは、ポンプハウジングおよびモータハウジングを含み、モータハウジングは、モータハウジングの遠位端でカニューレに結合する。インペラをポンプハウジング内で回転させ、カニューレへの血流を生じさせることができる。
【0065】
コンプライアンスセンサ410は、血管内での血液のポンピングから少なくとも部分的に生じる血管内の圧力を検出するように構成された圧力センサを含む。例えば、圧力センサは、血液ポンプの一部である差圧センサであり得る。差圧センサの一方側または一方の表面を、大動脈圧に曝すことができ、差圧センサの第2の側または表面を、心室内圧に曝すことができ、差圧センサは、大動脈圧と心室内圧との間の差を測定することができる。別の例として、圧力センサ412は、大動脈圧を測定するように構成された圧力測定管腔を備えることができる。
【0066】
コンプライアンスセンサ410は、コントローラ414を含む。コントローラ414は、圧力センサ412に接続される。コントローラ414は、圧力センサ412に直接的または間接的に接続され得る。例えば、コントロール414を、電気配線、無線信号、または任意の他の適切な手段を介して圧力センサ412に接続することができる。コントローラ414は、血圧を表す圧力センサからの信号を検出するように構成される。コントローラ414の全部または一部は、血管内血液ポンプから分離した/遠隔のコントローラユニット内にあってよい。いくつかの実装形態において、制御システムは、血管内血液ポンプの内部にある。
【0067】
いくつかの実装形態において、コントローラ414は、血管内のインペラ回転の抵抗の変化を検出するように構成される。例えば、抵抗を、図1に関連して上述したように、心臓の圧力および流量の測定値に基づいて、さまざまな時点において計算することができる。
【0068】
いくつかの実装形態において、コントローラ414は、インペラ回転について検出された抵抗に基づいて、一定のインペラ回転速度を維持するように構成される。インペラモータに供給される電流を、モータ速度を維持するために必要な電流に基づいて変更することができる。したがって、モータ電流は、心臓を通る流量に関連付けられ得る。
【0069】
いくつかの実装形態において、コントローラ414は、インペラ回転の抵抗の変化に基づき、伝達関数を使用して、血管コンプライアンスおよび血管抵抗を計算するように構成される。例えば、血管コンプライアンスおよび抵抗を、図3に関連して上述したように決定することができる。別の例では、ポンプ速度を一定速度(speed1)に維持しつつ、拡張期大動脈圧の測定値P1(t)の組およびポンプ流量i1(t)の測定値の組が、1つの組の時点について決定される(例えば、tはt101、t102、t103、などに等しい)。次いで、コントローラは、ポンプを異なる一定速度(speed2)に設定し、拡張期大動脈圧の測定値P2(t)の第2の組およびポンプ流量の測定値i2(t)の第2の組を、第2の組の時点について取得することができる(例えば、tはt201、t202、t203、などに等しい)。2つの組の圧力測定値P1(t)およびP2(t)の差、ならびに2つの組のポンプ流量i1(t)およびi2(t)の差を使用して、以下の式によって血管抵抗を計算することができる。
【0070】
図5が、心拍ごとにポンピングされる血液の総量を決定するためのプロセス500を示している。プロセス500を、図1の心臓ポンプシステム100または任意の他の適切なポンプを使用して実行することができる。いくつかの実装形態において、ポンプは、経皮的挿入によって患者の心臓内に配置される血管内血液ポンプデバイスである。いくつかの実装形態において、ポンプは、外科的に埋め込まれたデバイス、左心室補助デバイス、カウンターパルセーションデバイス、展開式心臓ポンプ、または任意の他の適切なデバイスであってよい。ポンプは、患者が心原性ショックの状態にあるかあるいは他のかたちで健康の低下に直面しているという理由で、患者へと導入される可能性がある。ポンプを、ポンプへの血液入口(例えば、図1の血液入口172)が左心室内に位置し、ポンプからの出口(例えば、図1の出口開口部170)が大動脈内に位置するように、大動脈弁をまたいで配置することができる。ポンプは、心臓からのCOが本来のCOにポンプ出力を加えたものに等しくなるように、本来の心臓の動作に寄与する。
【0071】
ステップ502において、血行動態パラメータが、心臓ポンプを第1のポンプ速度で動作させつつ監視される。血行動態パラメータは、身体の器官または組織における血液の流れに関連する任意のパラメータであってよい。例えば、血行動態パラメータは、心拍、血圧、動脈酸素飽和度、混合静脈飽和度、中心静脈酸素飽和度、動脈血圧、平均動脈圧、右動脈圧、中心静脈圧、右心室圧、肺動脈圧、平均肺動脈圧、肺動脈閉塞圧、左心房圧、大動脈圧、差圧、左心室末期圧、一回拍出量、一回拍出量指数、一回拍出量変動、全身血管抵抗、全身血管抵抗指数、肺血管抵抗、肺血管抵抗指数、肺血管抵抗、肺血管抵抗指数、左心室一回仕事量、左心室一回仕事量指数、右心室一回仕事量、右心室一回仕事量指数、冠状動脈かん流圧、右心室拡張末期容積、右心室拡張末期容積指数、右心室収縮末期容積、右心室駆出率、動脈酸素含有量、静脈酸素含有量、動脈-静脈酸素含有量差、酸素運搬、酸素運搬指数、酸素消費量、酸素消費量指数、酸素摂取割当量、酸素摂取指数、総末梢抵抗、CO、心係数、およびCPOのうちの少なくとも1つを含むことができる。ポンプ速度は、ポンプの動作の速度であり、ポンプの動作によってもたらされる血流の量に対応する。いくつかの実装形態において、ポンプ速度は、ロータの回転速度に対応し得る。例えば、ポンプ速度は、10,000 RPM、20,000 RPM、30,000 RPM、40,000 RPM、50,000 RPM、60,000 RPM、70,000 RPM、80,000 RPM、90,000 RPM、100,000 RPM、または任意の適切な速度であり得る。ポンプ速度は、図1に関連して上述したように、パワーレベルまたはPレベルに対応し得る。例えば、ポンプ速度は、P-1、P-2、P-3、P-4、P-5、P-6、P-7、P-8、P-9、または任意の他の適切な値であり得る。いくつかの実装形態において、ポンプ速度は代わりに、ポンプのチャンバが血液で満たされるおよび血液を放出する速度に対応し得る。
【0072】
ステップ504において、心拍サイクルの拡張期が、経時的な血行動態パラメータの形状に基づいて特定される。拡張期は、心臓が拡張期を完了させるまでの時間であり、心筋が弛緩して心室を血液で満たさせる、心拍のフェーズである。例えば、拡張期は、0.05秒、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒、0.5秒、0.6秒、0.7秒、0.8秒、0.9秒、1秒、または任意の適切な長さであり得る。
【0073】
ステップ506において、拡張期における大動脈圧と血流との間の時変関係が決定される。時変関係は、互いに並列な2つの電流源ihおよびipと、抵抗Rと、コンプライアンスCとを有するウィンドケッセルモデルであり得る。このモデルの支配方程式は、
であり、ここでCはコンプライアンスであり、Pは圧力であり、Rは全身血管抵抗であり、ihは本来の心臓の動作からの流れであり、ipはポンプからの流れである。しかしながら、拡張期においては大動脈弁が閉じているため、左心室を通る唯一の流れは、弁をまたいで配置されたポンプからの流れである。したがって、心臓電流源を無視し、ポンプの流れが一定であると仮定することにより、モデルを以下のように簡略化でき、
ここでP0は、拡張期における初期大動脈圧である。いくつかの実装形態において、ポンプからの流れipは、一定の速度を維持するための心臓ポンプシステムのモータへの電流の流れから推定される。圧力Pを、図3に関して後述されるように、圧力波形を特徴付けて分解するために、単一の拡張期内のさまざまな時点で測定することができる。いくつかの実装形態において、心臓ポンプは一定速度で動作する。本明細書で説明されるいくつかの実装形態において、ポンプの速度を心臓を「ピング」するために変更することができる。
【0074】
ステップ508において、心臓パフォーマンスを表す、心拍ごとにポンピングされる血液の総量が、拡張期における大動脈圧と血流との間の時変関係に基づいて計算される。例えば、ひとたびRおよびCが決定されると、(例えば、図7に関して後述されるように)心臓のCOを決定することができる。いくつかの実装形態において、心臓パフォーマンスを表す別の指標を計算することができる。例えば、心臓パフォーマンスを表す指標は、心室抵抗、心室コンプライアンス、CO、CPO、一回拍出量、一回仕事量、駆出率、心係数、または患者生存予測であってよい。心臓パフォーマンスを表す多数の指標は、相互に関連している。例えば、COは、ポンプを通過する血液の流量に基づいて決定される。一回拍出量は左心室機能の指標であり、その式はSV=CO/HRであり、ここでSVは一回拍出量であり、COは心拍出量であり、HRは心拍数である。一回仕事量は、血液を排出するために心室によって行われる仕事であり、一回拍出量から式SW=SV*MAPに従って計算することができ、ここでSWは一回仕事量であり、SVは一回拍出量であり、MAPは平均動脈圧である。心仕事量は、一回仕事量と心拍数との積によって計算される。CPOは、心臓のポンプ能力を表す心機能の尺度であり、単位はワットである。CPOは、式CPO=mAoP*CO/451を使用して計算され、ここでCPOは心出力であり、mAoPは平均動脈圧であり、COは心拍出量であり、451はmmHg x L/分をワットに変換するために使用される定数である。駆出率は、一回拍出量を心室の血液量で割り算することによって計算することができる。チャンバ圧力、前負荷状態、後負荷状態、心臓回復、流れ負荷状態、可変体積負荷状態、および/または心拍サイクル流れ状態などの他のパラメータを、これらの値から計算することができ、あるいはこれらのパラメータを介して決定することができる。
【0075】
いくつかの実装形態において、心臓パフォーマンスを表す指標に基づいて、ポンプの動作が調整される。ポンプ動作の調整は、ポンプ速度の上昇、ポンプ速度の低下、ポンプ配置の調整、ポンプのオフ、または任意の他の適切な調整を含み得る。例えば、ポンピングされる血液の総量がしきい値を下回る場合に、ポンプ速度を上げることができる一方で、血液の量がしきい値を上回る場合に、ポンプ速度を下げることができる。
【0076】
いくつかの実装形態において、上述の方法は、患者の血管系内で血液ポンプを動作させることと、上述のシステムおよびセンサのいずれかを使用して患者の心臓の心拍出量を決定することとを含む。血液ポンプのポンピング速度を、決定された心拍出量に基づいて調整することができる。
【0077】
図6が、心拍出量を決定するためのプロセス600を示している。プロセス600を、図1の心臓ポンプシステム100または任意の他の適切なポンプを使用して実行することができる。いくつかの実装形態において、ポンプは、経皮的挿入によって患者の心臓内に配置される血管内血液ポンプデバイスである。ポンプは、患者が心原性ショックの状態にあるかあるいは他のかたちで健康の低下に直面しているという理由で、患者へと導入される可能性がある。ポンプを、ポンプへの血液入口(例えば、図1の血液入口172)が左心室内に位置し、ポンプからの出口(例えば、図1の出口開口部170)が大動脈内に位置するように、大動脈弁をまたいで配置することができる。ポンプは、心臓からのCOが本来のCOにポンプ出力を加えたものに等しくなるように、本来の心臓の動作に寄与する。
【0078】
ステップ602において、血行動態補助が、第1のポンピング速度で心臓に適用される。血行動態ポンピング速度は、心臓の複数の心拍にわたって供給される。各心拍は、収縮期上昇、重複切痕、および重複切痕後に起こる拡張期下降を含む。例えば、血行動態ポンピング速度は、2回、3回、4回、10回、20回、30回、100回、200回、または他の任意の適切な数の心拍にわたって提供され得る。
【0079】
ステップ604において、複数の大動脈圧測定値が、複数の拍動のうちの特定の拍動における拡張期下降において検出される。例えば、圧力を、1秒あたり1個、2個、3個、10個、20個、30個、100個、200個、300個、1000個、2000個、3000個、または任意の他の適切な数のサンプルの速度でサンプリングすることができる。いくつかの例において、大動脈圧は、拡張期下降においてのみサンプリングされる。いくつかの例において、大動脈圧は、常に測定され、あるいは定期的に測定される。いくつかの例において、大動脈圧のサンプリングレートは、拡張期下降の最中に変更される。
【0080】
ステップ606において、複数の大動脈圧測定値のうちの第1の大動脈圧測定値が、血管系の時間依存非線形モデルにおいて複数の大動脈圧測定値のうちの第2の大動脈圧測定値と比較され、全身血管抵抗およびコンプライアンスが決定される。いくつかの実装形態においては、心拍出量が血液ポンプの動作のみによって生じる場合、少なくとも1つの大動脈圧測定が、拡張期の終わりにおいて行われる。例えば、図3に示され、上述されたように、圧力を、拡張期における一連の時点で測定することができる。これらの圧力測定値の各々について、圧力を測定でき、流量を推定することができる。圧力および流量の測定値を、公知の測定時点との組み合わせにおいて、2つの時点の間で比較し、大動脈の抵抗およびコンプライアンスなどの心臓パラメータを計算することができる。
【0081】
ステップ608において、特定の拍動における心拍出量が、決定された全身血管抵抗およびコンプライアンスの関数として決定される。いくつかの実装形態において、心拍出量を決定することは、複数の拍動のうちの複数の特定の拍動の心拍出量を決定し、決定された心拍出量に合計、平均、または線形回帰のうちの少なくとも1つを適用して、心臓の心拍出量の累積インジケータを決定することを含む。心臓の心拍出量の累積インジケータは、心臓パフォーマンスまたは全体的な患者の健康を表すことができる。
【0082】
図7は、同じ10秒の期間についての2つのプロットを示しており、一方は大動脈圧であり、一方は心血流量である。上側のプロットのy軸が、大動脈圧(mmHg)を表す一方で、x軸は、時間(秒)を表す。下側のプロットのy軸が、計算による総心血流量(リットル/分)で表す一方で、x軸は、時間(秒)を表す。この例において、全身の血管抵抗RおよびコンプライアンスCは公知である。例えば、RおよびCを、図示の10秒の期間において取得された大動脈圧の測定値を上記のようにポンプデータと組み合わせて使用して、計算することができる。総心血流量ih+ipは、式(1)
を適用することにより、R、C、および大動脈圧波形を使用して計算される。COを、或る期間(例えば、5秒、10秒、または30秒)にわたって式(1)から得られる総心血流量ih+ipの平均をとることによって計算することができる。図7の例において、期間は10秒である。この期間の平均R値は、0.6143 mmHg*sec/mlであり、平均C値は、1.5 mL/mmHgであり、計算によるCOは6.9 L/minになる。
【0083】
上記は、あくまでも本開示の原理の例示にすぎず、装置を、限定ではなく例示の目的で提示された上述の局面以外の局面によって実施することが可能である。本明細書に開示の装置は、心臓ポンプの経皮的挿入において使用されるものとして示されているが、止血を必要とする他の用途の装置に適用可能であることを理解されたい。
【0084】
当業者であれば、本開示を検討することで、変更および修正に想到できるであろう。開示された特徴は、本明細書に記載の1つまたは複数の他の特徴とともに、任意の組み合わせおよび部分的組み合わせ(複数の従属する組み合わせおよび部分的組み合わせを含む)にて実装可能である。上述され、あるいは上記で例示された種々の特徴は、それらのあらゆる構成要素も含め、他のシステムに組み合わせ、あるいは統合することが可能である。さらには、特定の特徴が省略され、あるいは実装されなくてもよい。
【0085】
上述のシステムおよび方法は、心臓ポンプシステムまたはAICなどの心臓ポンプシステムのコントローラ上に局所的に実装され得る。心臓ポンプシステムは、データ処理装置を含み得る。本明細書に記載のシステムおよび方法は、別個のデータ処理装置上で遠隔的に実施され得る。別個のデータ処理装置は、クラウドアプリケーションを介して心臓ポンプシステムに直接的または間接的に接続され得る。心臓ポンプシステムは、リアルタイム(または、ほぼリアルタイム)で別個のデータ処理装置と通信し得る。
【0086】
一般に、本明細書に記載の主題および機能的動作の局面は、デジタル電子回路、あるいは本明細書に開示の構造およびそれらの構造的同等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェア、あるいはそれらのうちの1つ以上の組み合わせに実装可能である。本明細書に記載の主題の局面は、1つまたは複数のコンピュータプログラム製品、すなわちデータ処理装置によって実行され、もしくはデータ処理装置の動作を制御するようにコンピュータ可読媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実装可能である。コンピュータ可読媒体は、機械可読ストレージデバイス、機械可読ストレージ基板、メモリデバイス、機械可読伝搬信号に影響を与える組成物、またはそれらのうちの1つまたは複数の組み合わせであり得る。「データ処理装置」という用語は、例えば、プログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、あるいは複数のプロセッサまたはコンピュータなど、データを処理するためのすべての装置、デバイス、および機械を包含する。装置は、ハードウェアに加えて、例えばプロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはそれらのうちの1つまたは複数の組み合わせを構成するコードなど、該当のコンピュータプログラムのための実行環境を生成するコードを含むことができる。伝播信号は、人工的に生成された信号であり、例えば適切な受信機装置への送信のための情報を符号化するために生成される機械生成の電気、光学、または電磁信号である。
【0087】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、またはコードとしても知られる)は、コンパイラ型言語またはインタープリタ型言語を含む任意の形式のプログラミング言語で記述可能であり、例えばスタンドアロンのプログラムあるいはコンピューティング環境における使用に適したモジュール、コンポーネント、サブルーチン、または他のユニットとして、任意の形式で展開可能である。コンピュータプログラムは、ファイルシステム内のファイルに対応し得る。プログラムを、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部分(例えば、マークアップ言語ドキュメントに保存された1つ以上のスクリプト)に格納でき、該当のプログラムに専用の単一のファイルに格納でき、あるいは複数の協調的なファイル(例えば、コードの1つ以上のモジュール、サブプログラム、または一部分を格納するファイル)に格納することができる。コンピュータプログラムを、1つのコンピュータ、あるいは1つの場所に位置し、もしくは複数の場所に分散して通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0088】
本明細書に記載のプロセスおよび論理フローは、入力データを操作して出力を生成することによって機能を実行するために、1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラム可能なプロセッサによって実行可能である。また、プロセスおよび論理フローは、例えばFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)などの専用の論理回路によって実行することができ、装置をそのような専用の論理回路として実装することも可能である。
【0089】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサは、例えば、汎用および専用の両方のマイクロプロセッサ、ならびに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つまたは複数のプロセッサを含む。一般に、プロセッサは、読み出し専用メモリまたはランダム・アクセス・メモリあるいはその両方から命令およびデータを受信する。コンピュータの主要な要素は、命令を実行するためのプロセッサ、ならびに命令およびデータを格納するための1つまたは複数のメモリデバイスである。一般に、コンピュータは、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、または光ディスクなど、データを格納するための1つまたは複数の大容量記憶デバイスをさらに含み、あるいはデータの受信、データの転送、もしくはその両方のために、そのような大容量記憶デバイスに動作可能に結合する。しかしながら、コンピュータが必ずしもそのようなデバイスを有する必要はない。
【0090】
変更、置換、および修正の例が、当業者にとって解明可能であり、本明細書に開示される情報の範囲から逸脱することなく行うことが可能である。本明細書において引用されるすべての参考文献は、それらの全体が参照によって組み入れられ、本出願の一部を形成する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】