特表2021-529669(P2021-529669A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-529669連続鋳造中にスラブを封じ込める方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-529669(P2021-529669A)
(43)【公表日】2021年11月4日
(54)【発明の名称】連続鋳造中にスラブを封じ込める方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/115 20060101AFI20211008BHJP
   B22D 11/128 20060101ALI20211008BHJP
【FI】
   B22D11/115 V
   B22D11/128 J
   B22D11/128 340G
   B22D11/128 340F
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-573429(P2020-573429)
(86)(22)【出願日】2019年6月25日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2019066798
(87)【国際公開番号】WO2020002313
(87)【国際公開日】20200102
(31)【優先権主張番号】102018000006635
(32)【優先日】2018年6月25日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520510173
【氏名又は名称】ロテレック ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROTELEC SA
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グアスティーニ、ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴートロー、ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】レン、ジャン−イヴ
(72)【発明者】
【氏名】カルヴィ、ジョヴァンニ
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004GB10
4E004LC05
4E004LC10
4E004MB11
4E004NB01
(57)【要約】
鋳造軸(C)に沿ってスラブ(S)を鋳造することを提供する、連続鋳造中にスラブを封じ込める方法であって、前記スラブ(S)は所定の幅(W1)を有し、前記方法は複数のロール(11,12)を用いて前記スラブ(S)を封じ込めることを提供し、前記ロール(11,12)は、互いに向かい合って対に配置されて、鋳造される前記スラブ(S)のための前記鋳造軸(C)に沿った通路を画定し、複数の前記ロール(11,12)は、前記スラブ(S)に含まれる液体を攪拌する電磁攪拌機(13)を備えた電磁ロール(12)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造軸(C)に沿ってスラブ(S)を鋳造することを提供する、連続鋳造中にスラブを封じ込める方法であって、前記スラブ(S)は所定の幅(W1)を有し、前記方法は複数のロール(11,12)を用いて前記スラブ(S)を封じ込めることを提供し、前記ロール(11,12)は、互いに向かい合って対に配置されて、鋳造される前記スラブ(S)のための前記鋳造軸(C)に沿った通路を画定し、複数の前記ロール(11,12)は、前記スラブ(S)に含まれる液体を攪拌する電磁攪拌機(13)を備えた電磁ロール(12)を含み、
鋳造中、前記電磁ロール(12)は前記スラブ(S)の幅(W1)よりも短い長さ(L)を有し、それにより、前記スラブ(S)は、少なくとも1つの突出部(20)で、前記電磁ロール(12)の少なくとも一端に対して突出することを特徴とする、連続鋳造中にスラブを封じ込める方法。
【請求項2】
前記スラブ(S)は、前記電磁ロール(12)の一端に対して、最大300mm、好ましくは最大250mmの非支持幅(W2)だけ突出しており、前記突出部(20)はロールによって支持されていないことを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造中にスラブを封じ込める方法。
【請求項3】
前記スラブ(S)の前記非支持幅(W2)と前記スラブ(S)の幅(W1)との比率が2%から20%の間、好ましくは2.5%〜16%の間に含まれることを特徴とする、請求項2に記載の連続鋳造中にスラブを封じ込める方法。
【請求項4】
前記電磁ロール(12)の各々が、それぞれの電磁ロール(12)と整列しかつ同軸上にあるそれぞれの補助封じ込めロール(14)に関連付けられることを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造中にスラブを封じ込める方法。
【請求項5】
前記ロールは、前記鋳造軸(C)に沿って互いに距離を置いた第1の電磁ロール(12)および第2の電磁ロール(12)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスラブを封じ込める方法。
【請求項6】
前記第1の電磁ロール(12)と前記第2の電磁ロール(12)との間には、前記スラブ(S)を封じ込めかつ支持するために、複数の封じ込めロール(11)が設けられることを特徴とする、請求項5に記載のスラブを封じ込める方法。
【請求項7】
前記スラブ(S)の第1の縁(21)が前記第1の電磁ロール(12)に対して突出する一方、前記第1の縁(21)に対して反対側の第2の縁(22)が前記第2の電磁ロール(12)に対して突出するように、前記第1の電磁ロール(12)が配置されることを特徴とする、請求項5または6に記載のスラブを封じ込める方法。
【請求項8】
スラブ(S)を鋳造するように構成された型(15)と、鋳造される前記スラブ(S)のための通路を画定するために鋳造軸(C)に沿って互いに向かい合って対に配置された複数のロール(11,12)と、を備える鋳造装置であって、複数の前記ロール(11,12)は、前記スラブ(S)に含まれる液体を攪拌するように構成された電磁攪拌機(13)を備えた電磁ロール(12)を含み、前記電磁ロール(12)および前記通路は、前記スラブ(S)の幅(W1)よりも短い長さ(L)を有し、それにより、前記スラブ(S)は前記電磁ロール(12)の一端に対して突出することを特徴とする、鋳造装置。
【請求項9】
前記電磁ロール(12)の各々が、それぞれの電磁ロール(12)と整列しかつ同軸上にあるそれぞれの補助封じ込めロール(14)に関連付けられることを特徴とする、請求項8に記載の鋳造装置。
【請求項10】
前記ロールは、前記鋳造軸(C)に沿って互いに距離を置いた第1の電磁ロール(12)および第2の電磁ロール(12)を含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の鋳造装置。
【請求項11】
前記第1の電磁ロール(12)に関連する前記補助封じ込めロール(14)が前記鋳造軸(C)に対して第1の側に配置され、前記第2の電磁ロール(12)に関連する前記補助封じ込めロール(14)が前記鋳造軸(C)に対して、前記第1の側の反対側の第2の側に配置されていることを特徴とする、請求項9および10に記載の鋳造装置。
【請求項12】
前記第1の電磁ロール(12)と前記第2の電磁ロール(12)との間には、前記スラブ(S)を封じ込めかつ支持するために、複数の封じ込めロール(11)が設けられることを特徴とする、請求項10または11に記載の鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造中にスラブを封じ込める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁ロールが1960年代から製鋼業界で広く使用されている。実際、電磁ロールは、スラブの内部健全性を高めるべく、溶鋼を攪拌し続けるために使用される。
今日では、人々が厚さの増すスラブを製造しているため、スラブの冶金学的長さが長くなっている。これにより、メニスカスの下で電磁ロールを使用する可能性のある位置がはるかに低くなる。
【0003】
その間、スラブはますます広くなり、より高い生産性とより多様なアプリケーションが必要になっている。前記の2つのスラブ生産の傾向は、電磁ロール自体に大きな課題をもたらす。実際、電磁ロールは、溶鋼静圧の力の下で過度に大きな機械的たわみを受けてはいけない。
【0004】
通常、製鋼メーカーは、欠陥のないスラブ生産を保証するために、非常に小さな機械的たわみのみを許容する。スラブの大きなたわみは、表面割れおよび内部割れにつながるが、バルジングの影響(bulging effect)によって溶鋼プールの安定性にも影響を与える可能性がある。
【0005】
このようなバルジング挙動は、鋼のメニスカスを乱し、パウダー巻き込み(powder entrapments)につながる。これは、鋼種の品質にとって劇的である。この影響は、ロールがメニスカスから遠く離れている場合でも現れる。
【0006】
したがって、電磁ロールの設計は、そのような鋳造機において、いかなる場合でも、機械製造者によって設定された制限値を超えないスラブの最小の機械的たわみを維持することが不可欠である。
【0007】
ビームの理論は、たわみが荷重条件と電磁ロールの機械的寸法および特性とによって決定されることを示している。荷重条件は、どのような種類の負荷がビームのどこに分散されるかを意味している。
【0008】
問題は、ロールの直径が隣接するロールの直径に匹敵することを念頭に置きながら、可能な限り最小のたわみで極力大きな溶鋼静圧に耐えることができる電磁ロールをどのように機械的に設計するかである。これらの考慮事項に加えて、スラブに冶金学的利点をもたらすために、電磁性能を高く維持する必要がある。
【0009】
通常、荷重はスラブ全体に対称的に分散される。鋳造機の下の特定の位置において、スラブの特定の厚さと幅に対して、従来のワンピースロールでは溶鋼静圧が非常に高くなる可能性があるため、ロールのたわみが大きすぎて機械製造業者のニーズを満たすことができない。
【0010】
実際、ロールのたわみを制限するために、3つの可能な解決策が知られており、すでに使用されているが、それぞれに特定の欠点がある。
1つ目の既知の解決策は、ロール断面の抵抗面積を増やすために電磁ロールの直径を大きくすることである。これは理論的には可能であるが、電磁ロールの直径は隣接するロールおよびセグメントのピンチロールと互換性を保つ必要があるため、実際には不可能なことがよくある。結果として、これはバルジング挙動とスラブのクラック率(crack rate)に影響を与える可能性がある。
【0011】
2つ目の既知の解決策は、ロールの長さに基づくものであって、これはたわみに大きな役割を果たすからである。スラブ幅が2500mmを超える場合、電磁ロールを2つの半分の長さのロールに分割し、溶鋼への高レベルの電磁力を維持しながら、機械的たわみを制御することができる。
【0012】
分割電磁ロールに基づくこの解決策は、特許文献1に記載されており、工業生産で数年間使用されている。しかし、電磁ロールを半分の長さにすることにより、ロールの長さが短くなりすぎると、すなわちスラブが2500mmより短くなると、電磁力が溶鋼を効果的に攪拌しかつスラブの内部健全性品質を向上させるのに十分ではなくなる。
【0013】
これは、電磁力が、電磁ロールの長さに関連する電磁ロールの極ピッチに比例するために起こる。したがって、電磁ロールの長さが短いほど、電磁力は弱くなる。
3つ目の既知の解決策は、バックアップロールと呼ばれる実施形態である。ロールの胴部を2つの胴部に変換する代わりに、1つのサポートロールが電磁ロールの中央に取り付けられて該電磁ロールを支持する。このアイデアは魅力的であるが、工業生産におけるこの単純な解決策の実行には大きな欠点がある。
【0014】
工業生産の条件では、ミルスケールなどの異なるサイズの粒子または物体が電磁ロールとバックアップロールとの間に導入されるため、緊密できれいな接触をまったく保証できなかった。その結果、電磁ロールとバックアップロールの両方が摩耗の加速の兆候を示すか、多くの場合破壊される。
【0015】
この解決策を使用すると、電磁ロールとバックアップロールの寿命が大幅に短縮され、メンテナンスのコストが高くなる。したがって、この解決策は産業上信頼できない。
しかしながら、上記の問題を解決しない既知の攪拌プロセスおよび装置は、例えば、特許文献2に記載されている。他の既知の連続鋳造装置および方法は、例えば、特許文献3および特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0290703号明細書
【特許文献2】カナダ国特許出願公開第1144336号明細書
【特許文献3】独国実用新案第6928827号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2269750号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、最新技術の欠点の少なくとも1つを克服することができる、連続鋳造機用のスラブを封じ込めるための方法および装置を完成させる必要がある。
本発明の1つの目的は、スラブが大きな溶鋼静圧にさらされる封じ込め区域においてさえ、スラブの横方向のたわみを制限することを可能にし、同時に、スラブのコアまたは内部に含まれる溶融金属を攪拌する際に高効率を維持できる必要な電磁力を保証する、連続鋳造機用のスラブを封じ込める方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、電磁ロールの直径を隣接するロールの直径と互換性を保つようにし、それによって鋳造装置の下流に位置するセグメントへの統合を容易にすることを可能にする、連続鋳造中にスラブを封じ込める方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、溶鋼に対する電磁攪拌力がスラブ幅に沿ってより均一になり、したがってより良い冶金学的結果がもたらされる、連続鋳造中にスラブを封じ込める方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
出願人は、最新技術の欠点を克服して、以下に説明する利点を得るために、本発明を考案し、試験し、そして具体化した。
本発明は、独立請求項に記載され、特徴付けられているが、従属請求項は、本発明の他の特徴または主な発明思想の変形例を説明している。
【0021】
上記の目的によれば、本発明は、鋳造軸に沿ってスラブを鋳造することを提供する、連続鋳造中にスラブを封じ込める方法に関する。スラブは予め規定された幅を有する。
この方法はさらに、複数のロールを用いたスラブの封じ込めを提供し、前記ロールは互いに向かい合って対に配置され、鋳造軸に沿って鋳造スラブの通路を画定する。
【0022】
複数のロールは、スラブに含まれる液体を攪拌するように構成された、電磁攪拌機を備えた電磁ロールを含む。
使用中、電磁ロールは、スラブの幅よりも短い長さを有するので、スラブは、少なくとも1つの突出部で、前記電磁ロールの少なくとも一端に対して突出する。
【0023】
本発明の封じ込め方法により、スラブがかなりの溶鋼静圧にさらされる封じ込め区域においてさえ、スラブの横方向のたわみが制限され、同時に、スラブのコアまたは内部に含まれる溶融金属の必要な電磁攪拌力が保証される。
【0024】
本発明は、より広いスラブにバックアップロールを使用することなく、および/または溶鋼静圧がより高いより低い位置で電磁ロールが使用される場合に、電磁ロールのたわみを許容値内に維持する。
【0025】
別の実施形態によれば、スラブは、電磁ロールの一端に対して、最大300mm、好ましくは最大250mmの非支持幅だけ突出しており、前記突出部はロールによって支持されていない。特に、スラブの非支持幅は、ロールに接触または支持されていないが、スラブの他の部分は、電磁ロールによって完全に封じ込められている。
【0026】
一実施形態によれば、電磁ロールの各々は、それぞれの電磁ロールと整列しかつ同軸上にあるそれぞれの補助封じ込めロールに関連付けられる。
本発明の実施形態はまた、スラブを鋳造するように構成された型と、鋳造スラブ用の通路を画定するために鋳造軸に沿って互いに向かい合って対に配置された複数のロールと、を含む鋳造装置に関する。複数のロールは、スラブに含まれる液体を攪拌するように構成された電磁攪拌機を備えた電磁ロールを含む。電磁ロール、したがって前記通路は、スラブが前記電磁ロールの一端に対して突出するように、スラブの幅よりも短い長さを有する。
【0027】
本発明の上記および他の特徴は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられた、いくつかの実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による連続鋳造機の概略図である。
図2図1の断面線II−IIに沿った断面図である。
図3図2の断面線III−IIIに沿った断面図である。
図4図1の側面図である。
図5図2の変形例である。
図6図3の変形例である。
図7図6および図7の側面図である。
図8】本発明の一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
理解を容易にするために、可能な場合は同じ参照番号を使用して、図面中の同一の共通要素を識別するようにしている。一実施形態の要素および特徴は、さらなる明確化をすることなく、他の実施形態に都合よく組み込むことができることが理解される。
【0030】
ここで、本発明の様々な実施形態を詳細に参照し、その1つ以上の例を図に示す。一般に、個々の実施形態に対する相違のみが説明されている。各例は、本発明の説明として提供されており、本発明の限定を意味するものではない。例えば、一実施形態の一部として図示または説明された特徴は、他の実施形態上で、または他の実施形態と組み合わせて使用して、さらにさらなる実施形態をもたらすことができる。本発明は、そのような改変および変形を含むことが意図されている。
【0031】
図1図8を参照してここで説明する実施形態は、連続鋳造中にスラブを閉じ込める方法に関する。
この方法は、鋳造装置10の鋳造軸Cに沿ってスラブSを鋳造することを提供する。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、スラブSは型15内で鋳造される。
型15の出口で、スラブSは、固化した外皮およびその内部部分、すなわちコアを有し、それはまだ液体である。
【0033】
スラブSは、予め規定された幅W1を有する。スラブSの幅W1は、1500mmから3000mmの間、好ましくは1800mmから2500mmの間で構成することができる。
【0034】
この方法は、複数のロール11、12を用いたスラブSの封じ込めを提供する。
ロール11,12は、互いに向き合って、鋳造軸Cに沿って対に配置されている。
ロール11,12は、鋳造スラブS用の通路を画定する。
【0035】
ロール11,12は、鋳造軸Cに対して垂直であるそれぞれの回転軸の周りを自由に回転する。
一実施形態によれば、前記複数のロールは、連続鋳造中にスラブSに対して封じ込め作用のみを発揮するように構成された封じ込めロール11を含む。封じ込めロール11は、電磁攪拌の機能を有さない、すなわち、以下に説明するようなマグネチックスターラー(magnetic stirrer)を有さない。
【0036】
封じ込めロール11は、鋳造軸C、すなわちスラブSに対して互いに対で対面して配置することができる。
封じ込めロール11は、鋳造スラブSの幅W1に実質的に等しい長さであり得る。
【0037】
図面に示されていない実施形態によれば、封じ込めロール11は、2つ以上の構成要素によって構成され得る。例えば、封じ込めロール11は、互いに軸方向に整列されるとともに支持要素によってそれぞれの端部で支持される2つ以上の円筒体によって規定することができる。この解決策は、封じ込めロール11の屈曲に対する抵抗を増大させることを可能にし、スラブSの溶鋼静圧が封じ込められることを保証する。
【0038】
さらに、複数のロールは、複数の電磁ロール12を含む。
一実施形態によれば、電磁ロール12は、鋳造軸C、すなわちスラブSに対して互いに対面して対に配置することができる。
【0039】
別の実施形態によれば、複数の電磁ロール12、またはそれらの少なくとも1つは、前記封じ込めロール11の1つに面して配置することができる。
本発明の他の実施形態によれば、電磁ロール12は、スラブSに対して片側にのみ配置することができる。
【0040】
電磁ロール12は、液体を攪拌するために、スラブSの液体コアに面する鋳造軸Cに沿って配置される。
電磁ロール12は、スラブSに含まれる液体を攪拌する電磁攪拌機13を備えている。
【0041】
1つの解決策によれば、電磁攪拌機13は、電磁ロール12の内部に含まれている。
他の実施形態(図1)では、電磁ロール12はまた、スラブSに対して対向する対で鋳造軸Cに沿って配置され、スラブSを封じ込める作用だけでなく、スラブS中にまだ存在する液体を攪拌する作用をも発揮する。
【0042】
各電磁攪拌機13は、それぞれの電磁ロール12の内部に配置された少なくとも1つの電磁インダクタを備えることができる。特に、電磁攪拌機13は、磁場、およびそれぞれの電磁力17を生成する。
【0043】
電磁力17は、スラブSに含まれる液体の内部、すなわちスキンの内部に複数の再循環ループ16を生成する。
可能な実施形態によれば、電磁ロール12は、1400mmを超える、好ましくは2500mm未満の長さLを有する。
【0044】
電磁ロール12は、スラブSの表面と干渉しないように適合されたそれぞれの支持要素26でそれらの端部において支持されている。
鋳造中、電磁ロール12は、スラブSの幅W1よりも短い長さLを有し、その結果、スラブSは、前記電磁ロール12の一端に対して突出する。
【0045】
したがって、鋳造中、スラブSは、電磁ロール12と接触していない突出部20を有する。
また、突出部20は、電磁ロール12に対して、電磁ロール12の回転軸に平行な方向に突出している。
【0046】
特に、電磁ロール12は、鋳造されるスラブSを使用中に封じ込めるように構成されて前記長さLを有する封じ込め面を有することが提供される。したがって、スラブSは、電磁ロール12の前記封じ込め面の側縁に対して突出する。
【0047】
封じ込め面は、使用中、鋳造されるスラブSと直接接触する面である。したがって、突出部20は、封じ込め面と接触していない。封じ込め面は円筒形である。
このように、突出部20があるにも関わらず、スラブSは安定して支持され、過度の屈曲を防止し、電磁攪拌機13に必要な電磁力を保証する。
【0048】
一実施形態(図2図4)によれば、スラブSは、電磁ロール12の一端に対して、最大300mm、好ましくは最大250mmの非支持幅W2だけ突出している。
したがって、スラブSのごく一部のみが電磁ロール12によって支持されていない。スラブSの縁の鋼は、鋳造機の下のこの場所でほぼ完全に固化しており、この非支持区域は品質問題についての欠点ではない。
【0049】
本発明の別の実施形態によれば、外部に、すなわち電磁ロール12に対して横方向に突出するスラブSの非支持幅W2と、スラブSの幅W1との比率は、2%から20%の間、好ましくは2.5%〜16%の間に含まれる。
【0050】
本発明の一実施形態(図4図7および図8)によれば、前記電磁ロールは、鋳造軸Cに沿って互いに距離を置いた第1の電磁ロール12および少なくとも第2の電磁ロール12を備える。
【0051】
以下では、第1および第2の電磁ロールについて言及しているが、同じ教示が3つ以上の電磁ロールに適用できることを排除するものではない。
実施形態によれば、第1の電磁ロール12は、電磁ロール12の第1の対18を規定するために、別の第1の電磁ロール12に面することができる。
【0052】
さらなる実施形態によれば、第2の電磁ロール12は、電磁ロール12の第2の対19を規定するために、別の第2の電磁ロール12に面することができる。
第1の電磁ロール12と第2の電磁ロール12との間に、スラブSを封じ込めかつ支持するために、複数の前記封じ込めロール11を設けることができる。
【0053】
一実施形態によれば、第1の電磁ロール12および第2の電磁ロール12は、スラブSの第1の縁21が第1の電磁ロール12に対して突出し、第1の縁21に対して反対側の第2の縁22が第2の電磁ロール12に対して突出するように配置される。
【0054】
電磁ロール12のこの配置は、図4および図7に示されるように、溶鋼再循環ループ16を可能な限り最大化および均質化することを可能にする。
実際(図4)、第1の電磁ロール12および第2の電磁ロール12のこの特定の配置により、第1の電磁ロール12と第2の電磁ロール12との間の区域に均一に分布する再循環ループ16の分布を得ることができる。
【0055】
特に、これらの再循環ループ16を生成するために、第1の電磁ロール12で生成された電磁力17は、第2の電磁ロール12で生成された電磁力17が向けられる第2の方向とは反対の第1の方向に向けられる。
【0056】
好ましくは、第1の電磁ロール12の外側に突出する突出部20の非支持幅W2は、第2の電磁ロール12の外側に突出する突出部20の非支持幅W2に等しい。
本発明の可能な解決策によれば、前記電磁ロール12の1つは、型15の直下に配置される。
【0057】
別の実施形態(図5図8)によれば、スラブSの非支持幅W2が長すぎる場合、電磁ロール12の各々は、それぞれの電磁ロール12と整列しかつ同軸上にあるそれぞれの補助封じ込めロール14に関連付けられる。
【0058】
したがって、電磁ロール12が主にスラブSを支持し、補助封じ込めロール14は、スラブSの残りの部分、すなわち突出部20を支持する。
補助封じ込めロール14は、内部にアクティブな電磁インダクタを持たず、支持機能のみを有する。
【0059】
補助封じ込めロール14は、前記非支持幅W2以上であることができる長さKを有する。
好ましくは、非支持幅W2とスラブSの幅W1との比率が10%から40%の間に含まれる場合、補助封じ込めロール14を使用することが提供される。
【0060】
可能な実施形態によれば、補助封じ込めロール14は、それぞれの電磁ロール12の長さLの10%から40%の間に含まれる長さKを有する。
本発明の可能な解決策(図5図8)によれば、各電磁ロール12、およびそれに関連するそれぞれの補助封じ込めロール14は、前記支持要素26によって支持される。特に、支持要素26は、電磁ロール12の1つおよびそれぞれの補助封じ込めロール14を軸方向に次々に、そして互いに直接隣接して支持するように構成される。
【0061】
可能な実施形態(図7および図8)によれば、第1の電磁ロール12は、第1の電磁ロール12と整列して配置されたそれぞれの補助封じ込めロール14を含み、第2の電磁ロール12は、第2の電磁ロール12と整列して配置されたそれぞれの補助封じ込めロール14を含む。
【0062】
第1の電磁ロール12に関連する補助封じ込めロール14は、第2の電磁ロール12に関連する補助封じ込めロール14に対して反対側の位置に配置されている。
言い換えれば、第1の電磁ロール12に関連する補助封じ込めロール14は、鋳造軸Cに対して第1の側に配置され、第2の電磁ロール12に関連する補助封じ込めロール14は、鋳造軸Cに対して、第1の側の反対側の第2の側に配置される。
【0063】
図8に見られるように、鋳造装置10のこの変形例においても、第1の電磁ロール12で生成された電磁力17は、第2の電磁ロール12で生成された電磁力17が向けられる第2の方向とは反対の第1の方向に向けられる。
【0064】
本発明の実施形態はまた、スラブSを鋳造するように構成された前記型15と、鋳造スラブS用の通路を画定するために鋳造軸Cに沿って互いに向かい合って対に配置された前記複数のロール11,12と、を含む鋳造装置10を対象とする。
【0065】
本発明によれば、進行磁場によって生成される電磁力17はスラブ幅W1に沿ってより均一である。なぜなら、スラブ幅W1と比較して電磁ロール12を短くすると、十分な攪拌効果を維持しながら電磁エッジ効果を平滑化できるからである。
【0066】
本発明がいくつかの特定の例を参照して説明されてきたが、当業者は確かに、請求項に記載されている特徴を有し、したがってすべてがそれによって定義された保護の範囲内にある、連続鋳造中にスラブを封じ込めるための本方法の他の多くの均等の形態を達成することができなければならないことは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2020年7月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造軸(C)に沿ってスラブ(S)を鋳造することを提供する、連続鋳造中にスラブを封じ込める方法であって、前記スラブ(S)は所定の幅(W1)を有し、前記方法は複数のロール(11,12)を用いて前記スラブ(S)を封じ込めることを提供し、前記ロール(11,12)は、互いに向かい合って対に配置されて、鋳造される前記スラブ(S)のための前記鋳造軸(C)に沿った通路を画定し、複数の前記ロール(11,12)は、前記スラブ(S)に含まれる液体を攪拌する電磁攪拌機(13)を備えた電磁ロール(12)と、連続鋳造中に前記スラブ(S)に対して封じ込め作用のみを発揮するように構成された封じ込めロール(11)と、を含み、
鋳造中、前記電磁ロール(12)は前記スラブ(S)の幅(W1)よりも短い長さ(L)を有し、それにより、前記スラブ(S)は、少なくとも1つの突出部(20)で、前記電磁ロール(12)の少なくとも一端に対して突出し、前記封じ込めロール(11)は前記スラブ(S)の幅(W1)と実質的に等しい長さを有することを特徴とする、連続鋳造中にスラブを封じ込める方法。
【請求項2】
前記スラブ(S)は、前記電磁ロール(12)の一端に対して、最大300mm、好ましくは最大250mmの非支持幅(W2)だけ突出しており、前記突出部(20)はロールによって支持されていないことを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造中にスラブを封じ込める方法。
【請求項3】
前記スラブ(S)の前記非支持幅(W2)と前記スラブ(S)の幅(W1)との比率が2%から20%の間、好ましくは2.5%〜16%の間に含まれることを特徴とする、請求項2に記載の連続鋳造中にスラブを封じ込める方法。
【請求項4】
前記電磁ロール(12)の各々が、それぞれの電磁ロール(12)と整列しかつ同軸上にあるそれぞれの補助封じ込めロール(14)に関連付けられることを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造中にスラブを封じ込める方法。
【請求項5】
前記ロールは、前記鋳造軸(C)に沿って互いに距離を置いた第1の電磁ロール(12)および第2の電磁ロール(12)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスラブを封じ込める方法。
【請求項6】
前記第1の電磁ロール(12)と前記第2の電磁ロール(12)との間には、前記スラブ(S)を封じ込めかつ支持するために、複数の封じ込めロール(11)が設けられることを特徴とする、請求項5に記載のスラブを封じ込める方法。
【請求項7】
前記スラブ(S)の第1の縁(21)が前記第1の電磁ロール(12)に対して突出する一方、前記第1の縁(21)に対して反対側の第2の縁(22)が前記第2の電磁ロール(12)に対して突出するように、前記第1の電磁ロール(12)が配置されることを特徴とする、請求項5または6に記載のスラブを封じ込める方法。
【請求項8】
スラブ(S)を鋳造するように構成された型(15)と、鋳造される前記スラブ(S)のための通路を画定するために鋳造軸(C)に沿って互いに向かい合って対に配置された複数のロール(11,12)と、を備える連続鋳造装置であって、複数の前記ロール(11,12)は、前記スラブ(S)に含まれる液体を攪拌するように構成された電磁攪拌機(13)を備えた電磁ロール(12)と、連続鋳造中に前記スラブ(S)に対して封じ込め作用のみを発揮するように構成された封じ込めロール(11)と、を含み、前記電磁ロール(12)および前記通路は、前記スラブ(S)の幅(W1)よりも短い長さ(L)を有するように構成され、それにより、前記スラブ(S)は前記電磁ロール(12)の一端に対して突出し、前記封じ込めロール(11)は前記スラブ(S)の幅(W1)と実質的に等しい長さを有するように構成されることを特徴とする、連続鋳造装置。
【請求項9】
前記電磁ロール(12)の各々が、それぞれの電磁ロール(12)と整列しかつ同軸上にあるそれぞれの補助封じ込めロール(14)に関連付けられることを特徴とする、請求項8に記載の鋳造装置。
【請求項10】
前記ロールは、前記鋳造軸(C)に沿って互いに距離を置いた第1の電磁ロール(12)および第2の電磁ロール(12)を含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の鋳造装置。
【請求項11】
前記第1の電磁ロール(12)に関連する前記補助封じ込めロール(14)が前記鋳造軸(C)に対して第1の側に配置され、前記第2の電磁ロール(12)に関連する前記補助封じ込めロール(14)が前記鋳造軸(C)に対して、前記第1の側の反対側の第2の側に配置されていることを特徴とする、請求項9および10に記載の鋳造装置。
【請求項12】
前記第1の電磁ロール(12)と前記第2の電磁ロール(12)との間には、前記スラブ(S)を封じ込めかつ支持するために、複数の封じ込めロール(11)が設けられることを特徴とする、請求項10または11に記載の鋳造装置。
【国際調査報告】