【実施例】
【0072】
実施例1:UL25欠損HCMV株からのデンスボディの産生
1. 材料と方法
1.1 細胞およびウイルス。
ヒト包皮線維芽細胞(HFF)を、5%ウシ胎児血清(FCS)を含むMEM培地で培養した。
【0073】
ウイルスの再構成は、BAC DNAをHFF細胞にトランスフェクトすることによって達成した。トランスフェクション用のBACmid DNAは、Plasmid Purification Kit(Macherey&Nagel、Duren、Germany)を製造元の指示に従って使用し、大腸菌から入手した。HFFへのトランスフェクションは、Superfectトランスフェクション試薬(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して実施した。このために、HFF細胞を1×10
5細胞/ウェルの密度で6ウェルプレー
トに播種し、異なるBAC-DNA濃度をトランスフェクションに用いた。続いて、プラークが
見えるようになるまで細胞を継代した。次に、感染性上清を、ウイルスの継代のために非感染細胞に移した。すべてのHCMV株はHFF上で増殖させた。感染したHFF細胞から培養上清を収集し、続いて低速遠心分離によって細胞破片を除去することにより、ウイルスストックを得た。さらに使用するまで、上清を-80℃で凍結した。
【0074】
ウイルス力価を、William Brittの厚意により提供されたモノクローナル抗体p63-27(8)を使用して、前初期1タンパク質ppUL123(IE1)の発現について染色することによって
決定した。このために、5×10
3HFF細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種した。翌日
、ウイルスストックを培地で10
-3および10
-4に希釈し、8連で細胞に添加した。細胞を、96%エタノールを使用して48時間後に20分間固定した。一次抗体p63-27(8)を37℃の加湿チャンバー内で1時間添加した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(ウサギ抗マウス免疫グロ
ブリンHRP; Dako、Hamburg, Germany)に結合した抗マウスIgGを1:500の希釈率で1時間
添加し、続いて3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)/H
2O
2ででさらに1時間染色することにより、検出を行った。IE1陽性細胞をカウントし、8連値の平均として力価を決定した。
【0075】
1.2 HCMV株Towne-delUL25およびTowne-UL25FLAGの作製
HCMV Towne-BACは、Towne-delUL25およびTowne-UL25FLAGを作製する基礎となる。前者
のTowne-delUL25またはそのUL130陽性変異体は、新世代のDBワクチンを確立するための親ゲノムとして機能するだろう。pUSF-3という名前のベクターpMBO1374の改変バージョンと野生型タウンウイルスDNAの相同組換えによって、HCMV Towne-BACを構築した(4)。pMBO1374はF-プラスミドベクターpMBO131の派生物であり、pBluescript II KS(+)のマルチ
クローニングサイトに埋め込まれたlacZ遺伝子を含む645bp HaeIIフラグメントを、pMBO131特有のSalIサイトにサブクローニングし、その結果、複数の特有のクローニングサイトが挿入された(9)。pUSF 3にはさらに、大腸菌でBACとして維持するための原核生物の遺伝子要素、ウイルスゲノム特有の短い領域へのダイレクト相同組換えのためのHCMV DNA配列、および真核細胞における組換えHCMVの同定と精製のためのGFPマーカーを含む(4)。
【0076】
pUSF-3を構築するために、pMBO1374特有のBamHIサイトと2つのClaIサイトの1つを取り
除いた。相同組換えのための隣接HCMV DNAとして使用されたpUSF-3の2つのHCMV DNAフラ
グメントを、PCRによりHCMV株AD169(10)のゲノムのフラグメントを含むコスミドクローンpCM1052から得た。AD169 HCMVの公開配列(11)からDNAフラグメントの増幅に使用するプライマーを得て、BamHIおよびHindIIIオーバーハングにより拡張した。HCMV DNAフラグメントをBamHIで消化し、ライゲーションして5.2kbフラグメントを得、これを今度はHindIIIで消化し、HindIIIサイトにクローニングした。最後に、SV40初期プロモーター、GFP
遺伝子、およびpGET-07由来のpolyA(12)を有するPCRアンプリコンを残りのClaIサイト
にクローニングした。相同組換えのために、HCMVタウン株に感染したHFF細胞から単離し
た全ウイルス粒子より精製した野生型タウンウイルスDNA、線形化した(BamHI消化した)pUSF-3、およびHCMV外皮タンパク質pp71の発現プラスミド(13)をHFF細胞にエレクトロ
ポレーションした。相同組換えの際、隣接するDNAは、細胞培養におけるHCMV複製に必ず
しも必要でないHCMVのUS領域内の8.9kbのDNA(aa719の後のIRS1、リーディングフレームUS1からUS11とUS12のC末端3分の1)を欠失する(14)。Towne-BAC分離株の配列は、GenBankデータベース(アクセッション番号AY315197)に寄託されている(1)。
【0077】
Towne-delUL25株(Towne-dUL25)は、Warming らの手順を使用して(15)、バクテリアgalKをコードする遺伝子をTowne-BACのUL25オープンリーディングフレームに挿入するこ
とにより作製した。これによって、UL25オープンリーディングフレームを、塩基対288で
始まるgalKカセットに置き換え、それによってpUL25の発現を阻害した。アミノ酸1〜287
をコードするDNA領域は、BACコンストラクトに残っていた(Towne-delUL25-BAC)。Towne-delUL25-BACを線維芽細胞にトランスフェクションした後、ウイルスTowne delUL25を再
構成した。
【0078】
リバータントウイルスTowne-UL25FLAGを作製するために、テンプレートとしてTowne-delUL25-BACを、および選抜のためにgalKの手法を用いて、FLAG-Tagエピトープ(DYKDDDDK
)をコードする遺伝子フラグメントをUL25オープンリーディングフレームの3'末端に挿入した(15)。得られたBACクローンTowne UL25FLAG-BACは、そのDNAを線維芽細胞にトランスフェクトすることによって再構成した。ウイルスマスターストックの作製は、以前のセクションで詳述した通りに行った。組換えウイルスは、タンパク質のC末端に結合したFLAGタグ付きのpUL25を発現した。
【0079】
1.3 ウイルスおよびデンスボディ(DB)の精製
組換えHCMVシードウイルスへの感染に際してヒト線維芽細胞において、DBが産生した。HCMVタウン株のゲノムの遺伝子改変バージョンをコードするBACプラスミドの細胞へのト
ランスフェクションにより、このシードウイルスを得た。
【0080】
粒子を精製するために、1.8×10
6の初代HFF細胞を、5%FCS、L-グルタミン(100 mg/リットル)、ゲンタマイシン(50 mg/リットル)を添加した最小必須培地(MEM; Gibco-BRL, Glasgow, Scotland)中、175cm
2組織培養フラスコ20個で1日増殖させた。欧州特許出
願公開第18176735.1号に記載されるように、HCMVのTowne-UL130repΔGFP株の凍結ストッ
ク0.5mlに細胞を感染させた。ウイルス接種物を37℃で1.5時間吸着させた。細胞を少なくとも7日間インキュベートした。
【0081】
細胞が後期HCMV感染のCPE(細胞変性効果)を示したとき(通常は感染後[p.i.]7日目)、上清を回収し、2,800rpmで10分間遠心分離して、細胞破片を除去した。その後、上清を収集し、Beckman Optima L-90K超遠心機のSW32Tiローターで30,000rpm(70分; 10℃)で
遠心分離した。ペレットを2mlの1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。酒石酸
グリセロール勾配は、使用直前に調製した。このために、0.04Mリン酸ナトリウム緩衝液
、pH7.4中の35%酒石酸ナトリウム溶液4mlを1つのカラムに添加し、0.04Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4中の15%酒石酸ナトリウム-30%グリセロール溶液5mlを、グラジエント
ミキサーの2番目のカラムに添加した。45°の角度で配置されたベックマンウルトラクリ
ア遠心チューブ(14×89mm)(14 by 89 mm)に溶液をゆっくりと滴下することにより、勾
配を調製した。次に、1mlのウイルス粒子を勾配頂上に注意深く積層した。超遠心分離は
、Beckman SW41スイングアウトローターでブレーキをかけずに、23,000rpm、10℃で60分
間実行した。粒子を光散乱によって照らし(
図1)、遠心チューブのバンド下を中空の針
で突き刺すことによって勾配から収集した。シリンジを使用してチューブからサンプルを
注意深く引き抜いた。
【0082】
粒子を1×PBSで洗浄し、SW41スイングアウトローター中24,000rpm、90分間、10℃でペ
レット化した。最後の遠心分離ステップの後、DBとビリオンを250μlから350μlの1×PBSに再懸濁し、−80℃で保存した。精製したDBおよびビリオンのタンパク質濃度は、Pierce
BCA Protein Assay Kit(Thermo Scientific、Bonn、Germany)を使用して決定した。
【0083】
1.4 透過型電子顕微鏡用サンプルの調製
フラスコ2個分のHFF細胞(フラスコあたり174万個の細胞)を0.8のm.o.iで感染させた
。細胞を6日間インキュベートし、続いてトリプシンを使用して支持体から剥がした。2個のフラスコから細胞をプールし、1,200rpmで遠心分離した。次に、1mlの固定液を加え、
細胞を注意深く再懸濁することにより、細胞を固定した。1,200rpmで5分間の遠心分離ス
テップの後、細胞ペレットを1mlの固定液に再度再懸濁した。続いて、細胞を室温で1時間インキュベートし、次に再び1,200rpmで5分間遠心分離した。次に、細胞を洗浄緩衝液に
再懸濁し、遠心分離した。この手順を2回繰り返した。最後の洗浄ステップの後、細胞を
遠心分離せずに、室温で10分間インキュベートした。次に、細胞をエッペンドルフチューブに移した。次に、サンプルを、以前に記載されたように(16)、透過型電子顕微鏡による検査用にさらに加工した。
【0084】
固定液
5ml 2×ストック カコジル酸塩/スクロース(0.2Mカコジル酸塩; 0.2Mスクロース)
1ml 10×グルタルアルデヒド(25% GA)
追加(ad) 10ml H
2Odd
洗浄バッファー:
6.5ml 2×ストック カコジル酸塩/スクロース(0.2Mカコジル酸塩; 0.2Mスクロース)
6.5ml H
2Odd
【0085】
1.5 複製動態およびインターフェロンβ処理
サブコンフルエントなHFF細胞をIFN-β(100 U/ml)で処理した。12時間のインキュベ
ーション後、細胞をそれぞれ0.05のm.o.iでTowne-BACまたはTowne-delUL25に感染させた
。IFN-β非存在下での感染細胞が対照として機能した。培養上清サンプルは、感染後4時
間、1、4、6、8、および11日の時点で収集した(それぞれ2× 1ml細胞培養上清および1×10
6細胞)。Rocheの標準プロトコルに従って、RocheのHigh Pure Viral Nucleic Acid Kitを使用して、上清と感染細胞からウイルスDNAを精製した。定量的PCRは、フォワード(fwd)およびリバース(rev)プライマーを使用して実行した。
【0086】
インターフェロンβ(IFN-β)
-PeproTech; 番号 300-02BC
-比活性(製造元の情報による):5×10
8U/mg
-0.1%BSA/ H
2Oddで希釈
【0087】
ウイルスDNAのTaqMan-PCR分析 − 細胞培養上清中の濃度。
RocheのHigh Pure Viral Nucleic Acid Kitを製造元の指示に従って使用して、200μl
の細胞培養上清からDNAを単離した。最終的に100μlの溶出バッファー中にDNAを溶出した。
【0088】
TaqMan-バッチ:
→サンプルあたり45μlマスターミックス(プローブ、プライマーdNTP、バッファー、
およびTaqポリメラーゼを含む)+5μl DNA
→分析は、3連で実施した
→プローブ:5'CCACTTTTGCCGATGTAACGTTTCTTGCAT-TMR(配列番号1)
→fwd-プライマー:5'TCATCTACGGGGACACGGAC 3'(配列番号2)
rev-プライマー:5'TGCGCACCAGATCCACG 3'(配列番号3)
→Taq-ポリメラーゼ:QiagenのHotStar Taq Plus
→標準:コスミドpCM1049(10)の希釈
【0089】
-TaqMan-プログラム:
95℃ 5分
42× 95℃ 15秒+60℃ 1分
-TaqMan-装置:7500リアルタイムPCRシステム、Applied Biosystems
-TaqMan-ソフトウェア:7500システムソフトウェア
【0090】
1.6 免疫沈降およびウエスタンブロット
HFF細胞をそれぞれのHCMV株に感染させた。感染したHFF細胞を回収し、洗浄し、溶解バッファー(0.5M NaCl、0.05M Tris-HCl、0.5%NP-40、10mM DTT)に再懸濁した。細胞溶
解物を超音波処理し(1×10秒、出力30%)、続いてタンパク質を特定の抗体(抗-FLAG M2、Sigma、または抗チューブリン抗体)にローテーター内で4℃で一晩結合させた。次に
、抗体-タンパク質複合体をIgG磁気ビーズによって室温(RT)で2時間収集した。磁気ビ
ーズを溶解バッファーで3回洗浄し、続いてLaemmliサンプルバッファーで再懸濁した。タンパク質サンプルをロードして10% SDS-PAGEで泳動し、PVDFメンブレンに転写した。フ
ィルターを特定の一次抗体に対してプローブした。チューブリンを内部標準として使用することにより、定量分析を行った。このために、ECL検出基質Best Western Femto(Thermo Fisher)とChemiDoc Scanner(Biorad)Scannerを使用した。
【0091】
1.7 プロテアソーム阻害剤
pUL26がUL25非存在下でプロテアソーム分解を受けやすいかどうかを調べるために、HFF細胞を1のm.o.iでTowne-BACまたはTowne-delUL25それぞれに感染させた。6 d.p.i.で細胞を10μMのMG-132プロテアソーム阻害剤(Sigma)で16時間処理した。次に、細胞を回収して溶解し、pUL26のレベルをイムノブロットで分析した。
【0092】
1.8 質量分析
精製ウイルス粒子の定量的プロテオミクス分析を、公開されているように(17)Synapt
G2-S質量分析計でイオン移動度が向上したデータ非依存性収集(ion‐mobility enhanced data-independent acquisition)を使用して実施した。データセットの統計分析を、MS-Excel 2010が提供するANOVA分析ツールを使用して実施した。
【0093】
2. 結果
2.1 UL25を欠失しても、DBの形成と放出は変化せず、ビリオンとDBへの外側外皮タンパ
ク質のアップロード(upload)における影響は限定的である。
ウイルスタンパク質pUL25の役割を扱うことを可能にするために、HCMV株タウンの遺伝
的背景でUL25を欠く変異体を、BAC変異誘発を使用して作製した。
【0094】
UL25オープンリーディングフレームを、galK発現カセットを挿入することにより欠失させた(
図1a)。HFF細胞をこの変異体に感染させ、酒石酸グリセロール勾配遠心分離を使
用してビリオンとDBを精製した(
図1b)。本材料を、親タウン株およびTB40/e株の対応するサンプルとともにSDS-PAGEにロードした。得られた3つの株のビリオンとDBのタンパク
質パターンを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動とそれに続く銀染色によって比較した。Towne-delUL25のDB調製物のpUL25に対応する約80kDaのタンパク質バンドがないことを除
いて、ほとんど違いは見られなかった(
図1c)。wt-pUL25を調査できるようにするために
、Towne-UL25-FLAG と称するTowne-delUL25のリバータントウイルスを、再度galK技術を
使用して
図1aに示すように構築した。
【0095】
ビリオンとDBのタンパク質パターンをより正確に調べるために、ラベルフリー質量分析を使用した。結果は、Towne-delUL25のビリオンおよびDBにpUL25が存在しないことを確認した(
図1dおよびf)。他の外側外皮タンパク質の大部分は、UL25の欠失によるアップロ
ードの影響を受けなかった。別の独立した分析(示さず)によって検証されたように、pUL24のみがそのアップロードにおいて再現性よく増強した(
図1eおよびg)。しかし、最も注目に値するのは、pUL26がpUL25陰性ビリオンおよびDBにほぼ完全に存在しないという発見であり(
図1eおよびg)、HCMV粒子におけるその存在が感染細胞におけるpUL25の存在に依存することが示された。後者の結果は、独立した実験でも確認された(示さず)。
【0096】
pUL25の欠如が細胞質粒子の形態形成を変化させたかどうかを調べるために、Towne-delUL25またはTowne-BACに感染したHFF細胞で透過型電子顕微鏡による検査を実施した(
図2
)。複数の感染細胞を精査しても、明らかな違いは見られなかった。さらに、ビリオンの直径は2つの株間で保存されていた。
【0097】
2.2 pUL26のレベルはTowne-delUL25に感染した線維芽細胞で減少する
定量的質量分析の結果から、親Towne-BAC株由来のそれぞれの粒子と比較して、pUL26がTowne-delUL25のビリオンおよびDBに少量でパッケージ化することが示された。それがTowne-delUL25感染細胞におけるpUL26レベルの低下によるものであるか否かを調べるために
、イムノブロット分析を実施した。Towne-delUL25感染細胞ではpUL26のレベルが著しく低下しているようであった(
図3)。これは、pUL26合成またはpUL26安定性のいずれかがpUL25の非存在下で変化したことを示した。
【0098】
2.3 pUL25はpUL26タンパク質の安定性を促進する。
pUL26タンパク質の安定性がpUL25の存在によって影響を受けるか否かを調べるために、Towne-delUL25またはTowne-UL25-FLAGそれぞれに細胞を感染させた。プロテアソーム阻害剤MG132を6 d.p.i.でいくつかのサンプルに添加した。細胞溶解物を収集し、pUL26特異的抗体を使用してSDS-PAGEおよびウエスタンブロット分析に供した(
図4)。バンドの強度
を測定し、内部チューブリン対照の強度に対して正規化した。結果は、pUL26の両方の既
知のアイソフォームがTowne-delUL25感染細胞で減少し、特に、MG132で処理した細胞で長いアイソフォームが安定化したことを示した。これにより、pUL26がpUL25の存在によって安定化したことが示された。
【0099】
2.4 pUL25は、HCMV感染細胞でpUL26と相互作用する。
pUL26の安定性におけるpUL25の影響が、2つのタンパク質の相互作用に関連しているか
否かを調べるために、共免疫沈降分析(Co-IP)を実施した。Towne-UL25-FLAGに細胞を感染させた。細胞溶解物を6 d.p.iで収集し、FLAG-Tag特異的抗体M2を使用してCo-IPに供した(
図5)。2つの生物学的レプリケート(サンプル1および2)を使用した実験により、pUL26がpUL25と共免疫沈降することが示され、これは両タンパク質が感染細胞で複合体を形成したことを示した。
【0100】
2.5 pUL25は、精製HCMVビリオンおよびDB中でpUL26と相互作用する。
pUL25が細胞外ビリオンおよびDBでもpUL26と相互作用するか否かを調べるために、精製ウイルス粒子においてCo-IP実験を繰り返した。再度、pUL25-FLAG特異的抗体M2を使用し
てpUL26を沈殿させることができた(
図6)。
【0101】
まとめると、pUL25がpUL26と複合体を形成し、それによって後者のタンパク質を安定化し、この複合体がその後HCMVビリオンの外皮およびDBにパッケージ化されることを本結果
は示す。
【0102】
2.6 タンパク質のISG化および遊離ISG15レベルは、pUL25の非存在下で増加する。
インターフェロンは、ウイルス感染に対する自然免疫反応に不可欠である。それらは何百ものインターフェロン刺激遺伝子(ISG)の転写を引き起こし、そのタンパク質産物は
抗ウイルス活性を示す。インターフェロン刺激遺伝子15は、I型IFNによって誘導されるユビキチン様タンパク質(ISG15)をコードする。ISG15によるタンパク質修飾(ISG化)は
、多くのウイルスの複製を阻害することが知られている(18)。HCMVによって誘導されるISG15の蓄積は、宿主による細胞質二本鎖DNA(dsDNA)の検出によって引き起こされる。
最近の報告では、pUL26がHCMV感染細胞においてタンパク質のISG化を妨害することが示された(2)。
【0103】
UL25の欠失がHCMVによって誘導されるISG化の抑制に影響を与えるか否かを調べるため
に、Towne-delUL25とTowne-UL25-FLAGそれぞれに細胞を感染させた。細胞は6日間感染さ
せた。場合により、MG132をサンプリングの16時間前に添加した。続いて、細胞溶解物を
ウエスタンブロット分析に供した。チューブリンが内部対照として機能した。Towne-UL25-FLAG感染(対照)後、実際にISG化が抑制された。この抑制は、Towne-delUL25の感染後
に緩和された。これらの結果は、pUL25がHCMV感染細胞のISG化の抑制に関与したことを示す(
図7)。さらに、Towne-delUL25感染細胞では遊離ISG15レベルが増加した。その結果
、pUL25の欠如は、HCMV感染細胞におけるインターフェロン刺激遺伝子応答を増加させる
。
【0104】
2.7 UL25を欠失すると、HCMV複製がIFN-βに対してより感受性になる。
HCMV感染は、ISG15発現の誘導を引き起こし、細胞培養における全タンパク質ISG化を増強する(2,3)。pUL26はISG化の抑制に関与し、ウイルス複製の増強につながることが報
告されている。この影響は、感染した培養物にIFN-βを添加することにより緩和できる。他者は、細胞がUL26ヌルウイルスに感染した場合、緩和レベルが増加することを示すことができた(2)。
【0105】
pUL25の発現が欠損しているウイルス株もインターフェロン応答の影響を、より受けや
すいか否かをテストするために、Towne delUL25およびTowne-BACそれぞれに細胞を感染させ、IFN-βの非存在下または存在下で(in the presence of absence of IFN-s)維持し
た。培養上清のサンプルを、感染後のさまざまな時点で収集した。後代ウイルスの放出を表すこれらのサンプル中のウイルスゲノムのレベルは、定量的PCRにより決定した(
図8)。本実験により、Towne delUL25がwt株Towne-BACと比較して、明らかにIFN-β処理に対してより感受性が高いことが示された。これらの結果は、pUL25発現が欠損しているHCMV株
によるヒト宿主の感染が、自然免疫系によって効率的に制御されるという考えを支持している。
【0106】
実施例2:HCMV由来デンスボディの産生のためのシールド-1の使用
条件付き複製欠損HCMV株、例えば、安定化リガンドシールド-1の存在下でのみ複製能力があるHCMV株が、HCMV由来DBベースのHCMVワクチンの産生に使用可能か否かをテストした。
【0107】
一般概念
複製に不可欠なHCMVタンパク質、例えばタンパク質UL51は、不安定化タンパク質ドメイン、例えば、FKBPタンパク質、特に107残基のタンパク質FKBP12のF36V変異体(ddFKBP)
でタグ付けされている。安定化リガンド、例えば細胞透過性小分子リガンドシールド-1の非存在下では、ddFKBPタグ付きタンパク質は不安定であるため分解される。シールド-1が不安定化ドメインに結合すると、融合タンパク質が安定化し、分解から保護されるため、
融合タンパク質の機能が回復する(23)。
【0108】
DBの産生には、FKBPタグ付きの複製必須タンパク質をコードするセーフティーベクターであるBAC由来の「シードウイルス」が使用される。例えば、この株のUL51の遺伝子産物
はDD-FKBPでタグ付けされている。UL51はゲノムのパッケージングに不可欠であり、それ
によって後代の産生にも不可欠であるため、感染性HCMV粒子はシールド-1の存在下でのみ産生できる。シールド-1がない場合、株は細胞に感染することができるが、複製はできない。一方、DBの産生は損なわれていない。
【0109】
シードウイルスストックの作製のために、哺乳類の標的細胞、例えばMRC-5またはHFF細胞などのヒト線維芽細胞を、例えば、約1週間、シールド-1(例えば、1μM)の存在下で
シードウイルスに感染させる。ウイルス複製を確実にするために、シールド-1を、例えば、48時間ごとに1μMをさらに補充してもよい。既知の方法(30)に従って、上清を回収し、ウイルス粒子を単離してもよい。
【0110】
ワクチンとしてのDBの作製のために、MRC-5細胞などのヒト線維芽細胞を、シールド-1
の存在下で、細胞培養によるウイルスの増殖を確実にするのに十分な時間、シードウイルス粒子に感染させる。適切な期間の後、例えば約3.5日後、シールド-1含有細胞培養培地
をシールド-1を含まない細胞培養培地に交換して、感染性粒子を同時に産生することなくDBを産生する。適切な期間の後、例えば最初の感染から約1週間後、既知の方法(31)に
従って上清を回収し、DBを単離する。
【0111】
実験的証明
DBがシールド-1依存システムで産生できることを示すために、HCMV株HCMV-UL51-FKBP(32)を使用して、HCMV実験室株に対して許容状態であるHFF細胞に感染させた。テストウ
イルスHCMV-UL51-FKBPは、DD-FKBPタグ付きUL51遺伝子産物を発現し、感染性ウイルス粒
子の産生はシールド-1に依存する。
【0112】
潜在的なワクチンシードウイルスの主な特徴である、シールド-1の非存在下でのDBの産生を証明するために、細胞培養を介したウイルス増殖を確実に行うため、HFF細胞を当初1μMシールド-1の存在下でHCMV-UL51-FKBPに感染させた。3.5日後、シールド-1含有培地をシールド-1を含まない細胞培養培地に交換してウイルスの複製を防ぎ、非感染性DBのみを産生させた。
【0113】
感染の1週間後、上清を回収し、粒子を酒石酸グリセロール密度勾配超遠心分離によって分画した。遠心分離後、勾配にはDBのはっきりと見える画分:以前報告されているように(33)、光散乱によって見えるさまざまな密度の粒子の広い領域が含まれる(
図9、左
)。これらのDBを単離し、SDS-PAGEおよびインスタントブルー染色によって分析して、DB画分のタンパク質組成を視覚化した。
【0114】
リンタンパク質(pp)65(ppUL83)は、HCMV DBに見られる最も豊富なタンパク質であ
ることが示されている(6、7)。このデータによると、前述のシールド-1処理有りでHCMV-UL51-FKBPに感染したHFFから単離したDB画分においても、pp65が主成分である(
図9右、矢印でマーク)。さらに、pp150、pp71、およびpp28がこのDB調製物に認められ、これは
以前のデータと一致する(34,35)。したがって、この概念実証研究は、HCMV-UL51-FKBP
由来DBが、シールド-1の非存在下のこれらの条件下で産生できることを示している。
【0115】
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