(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-529878(P2021-529878A)
(43)【公表日】2021年11月4日
(54)【発明の名称】さまざまな酸に対する新規な腐食抑制剤
(51)【国際特許分類】
C23F 11/16 20060101AFI20211008BHJP
C09K 8/34 20060101ALI20211008BHJP
C23F 11/167 20060101ALI20211008BHJP
【FI】
C23F11/16
C09K8/34
C23F11/167
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-570103(P2020-570103)
(86)(22)【出願日】2019年6月14日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月15日
(86)【国際出願番号】CA2019000093
(87)【国際公開番号】WO2019241872
(87)【国際公開日】20191226
(31)【優先権主張番号】3,008,866
(32)【優先日】2018年6月19日
(33)【優先権主張国】CA
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519424962
【氏名又は名称】フリュイド エナジー グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーディー、クレイ
(72)【発明者】
【氏名】バイセンベルガー、マルクス
【テーマコード(参考)】
4K062
【Fターム(参考)】
4K062AA03
4K062BA08
4K062BB11
4K062BB21
4K062BB30
4K062CA04
4K062CA05
4K062DA05
4K062FA04
(57)【要約】
産業活動で使用するための酸組成物と共に使用するための液状腐食抑制剤組成物であって、前記腐食抑制剤組成物が、チオ尿素誘導体;スルタイン界面活性剤、ベタイン界面活性剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される第1の種類の両性界面活性剤;第2の種類の両性界面活性剤;並びに溶媒を含む、液状腐食抑制剤組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンホール石油産業活動で使用するためのクロムに優しい改質された酸組成物と共に使用するための液状腐食抑制剤組成物であって、前記腐食抑制剤組成物が、
−チオ尿素誘導体、
−スルタイン界面活性剤、ベタイン界面活性剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される第1の種類の両性界面活性剤、
−第2の種類の両性界面活性剤、並びに
−溶媒
を含む、液状腐食抑制剤組成物。
【請求項2】
前記チオ尿素誘導体が1,3ジエチル−2−チオ尿素である、請求項1に記載の腐食抑制剤。
【請求項3】
前記スルタイン界面活性剤及びベタイン界面活性剤が、アミドベタイン界面活性剤、アミドスルタイン界面活性剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の腐食抑制剤。
【請求項4】
前記アミドベタイン界面活性剤が、C8〜C16の疎水性尾部を含むアミドベタインである、請求項3に記載の腐食抑制剤。
【請求項5】
C8〜C16の疎水性尾部を含む前記アミドベタインが、コカミドプロピルベタインである、請求項4に記載の腐食抑制剤。
【請求項6】
前記第2の種類の両性界面活性剤が、ベータ−アラニン、N−(2−カルボキシエチル)−N−ドデシルのナトリウム塩(1:1)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項7】
前記溶媒が、水、メタノール、エタノール、及びイソプロパノール、並びにこれらの組合せからなる群から選択されるアルコールである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項8】
前記溶媒が、イソプロパノール−水、イソプロパノール−メタノール、メタノール−エタノール、エタノール−水及びメタノール−水からなる群から選択される組合せである、請求項7に記載の腐食抑制剤。
【請求項9】
前記チオ尿素誘導体が、前記組成物の重量の10〜90%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項10】
前記チオ尿素誘導体が、前記組成物の重量の15〜50%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項11】
前記チオ尿素誘導体が、前記組成物の重量の20〜40%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項12】
前記チオ尿素誘導体が、前記組成物の重量のおよそ30%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項13】
前記ベタイン界面活性剤が、前記組成物の重量の5〜90%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項14】
前記ベタイン界面活性剤が、前記組成物の重量の5〜30%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項15】
前記第2の界面活性剤が、前記組成物の重量の5〜90%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項16】
前記第2の界面活性剤が、前記組成物の重量の5〜30%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項17】
前記溶媒が、前記組成物の重量の10〜90%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項18】
前記溶媒が、前記組成物の重量の20〜80%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項19】
前記溶媒が、前記組成物の重量の30〜70%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項20】
前記溶媒が、前記組成物の重量の40〜60%の範囲の濃度で存在する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の腐食抑制剤。
【請求項21】
酸組成物と共に使用するための、請求項1〜20のいずれか一項に記載の腐食抑制剤組成物であって、前記酸組成物が、HCl、0.1:1.0の範囲のモル比のHCl−尿素、リン酸、及び0.1:1以上のモル比の尿素−リン酸又はその誘導体からなる群から選択される、腐食抑制剤組成物。
【請求項22】
HCl、HCl−尿素、リン酸−尿素及びリン酸誘導体からなる群から選択される酸と、
−チオ尿素誘導体、
−ベタイン界面活性剤、
−両性界面活性剤、及び
−溶媒
を含む腐食抑制剤組成物と、を含む、改質された酸組成物。
【請求項23】
前記リン酸誘導体が、ポリリン酸、オルトリン酸(H3PO4)、ピロリン酸(H4P2O7)、トリポリリン酸(H5P3O10)、テトラポリリン酸(H6P4O13)、トリメタリン酸(H3P3O9)、及びリン酸無水物(P4O10)からなる群から選択される、請求項21に記載の改質された酸組成物。
【請求項24】
累層を刺激するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項25】
ダウンホール圧送操作中の破壊又は注入圧の低減を支援するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項26】
掘削操作後の坑井フィルタケーキを処理するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項27】
詰まったパイプを解放するのを支援するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項28】
パイプライン及び/又は生産井をスケール除去するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項29】
注入井の圧入速度を上昇させるために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項30】
流体のpHを低下させるために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項31】
地表機器、井戸並びに関連する機器及び/又は施設における望ましくないスケールを除去するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項32】
環状及びブルヘッドの圧搾及び浸漬を実施するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項33】
累層の有効浸透性を高めるために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項34】
坑井の周面の損傷を低減又は除去するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項35】
穿孔を清浄化するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項36】
石灰石、ドロマイト、方解石及びこれらの組合せを可溶化するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項37】
セメントプラグを掘削するために前記石油産業で使用するための、請求項21に記載の腐食抑制剤組成物。
【請求項38】
産業活動で使用するためのクロムに優しい改質された酸組成物と共に使用するための液状腐食抑制剤組成物であって、前記腐食抑制剤組成物が、
−チオ尿素誘導体、
−スルタイン界面活性剤、ベタイン界面活性剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される第1の種類の両性界面活性剤、
−第2の種類の両性界面活性剤、並びに
−溶媒
を含む、液状腐食抑制剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油及びガス産業又は他の産業用途においてさまざまな操作を実行する際に酸と共に使用するための新規な腐食抑制剤組成物、より具体的には、酸感受性構成要素が存在するリン酸組成物と共に使用されることになる腐食抑制剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸スケール処理は、炭化水素の流れを刺激することに対して、穿孔を開き、ダウンホールポンプ、補助装置、及び管状構造を清掃する目的のために実行される。典型的には、サービスリグユニットは、クロムの又はクロムメッキしたロータ又はその他の酸感受性ダウンホール構成部品との非適合性により、酸処理の前にすべてのダウンホール装置を穴から引き出す必要がある。坑井内に高めの温度で長期間放置されたダウンホール装置のスケール処理問題を処理することができる製品があることは、坑井の費用のかかる改修の必要性を排除するので、非常に有利である。
【0003】
これらの用途で塩酸を使用することで石油及びガス業界が直面する主な課題のうちのいくつかには、次のようなものがある。酸とさまざまな種類の金属との極度に高水準の(通常はヒト、環境及び装置に対して毒性がありかつ有害である「薄膜形成」型の腐食抑制剤の添加による鋼曝露に対する対抗手段である)腐食反応は大きく異なる可能性があるが、アルミニウム、マグネシウム、及びクロム又はクロムメッキのような一部の金属、又は二重合金若しくは超二重合金のような高クロム含有構成部品は、大きな点食及び一般的な金属喪失の影響を非常に受けやすく、即座に損傷を引き起こす。クロムメッキロータ及びダウンホールポンプ構成部品は、カルシウム系スケールを攻撃するが、長期間にわたって高めの温度でクロムに影響を与えない製品を有する業界では一般的であるので、非常に有利である。塩酸はまた、有毒な(潜在的に致命的でありかつ皮膚、目及び金属に対して腐食性がある塩化水素ガスを生成する。50ppm(百万分率)を超える水準では、塩酸は、生命と健康にただちに危険を及ぼす(IDHL)可能性がある。1300〜2000ppmの水準では、2〜3分で死亡する可能性がある。HClのある特定の欠点を克服するために、HCl−尿素のような修飾酸を使用することができるが、それでも腐食抑制剤の使用は必要であり、ロータ及び業界で非常に一般的な関係する構成部品のようなクロムメッキ構成部品への長期間の高温曝露には適用可能ではなく、実際、30分を超える高めの温度での曝露時間は、点食及び局部腐食を引き起こし得る。
【0004】
地表又はダウンホールから帯水層又は他の水源に意図せず又は偶発的に放出された事象における、塩酸のような強鉱酸の固有の環境への影響(野生生物の器質性不妊、中毒など)は破壊的である。地表での意図しない放出はまた、塩化水素ガス雲の放出を引き起こし得、ヒト及び動物の健康を危険にさらす可能性がある。このことは、タンクが割れ若しくは漏れたとき、又は道路輸送若しくは鉄道輸送の事象中に、大規模な保管場所で一般的な事象である。通常、公共に近い場合は、広域で事後に避難させる必要がある。塩化水素のガス又はフュームはまた、その酸性の性質により、特に湿気の存在下でも腐食性がある。
【0005】
酸及び酸と助剤とのさまざまなブレンドが生分解できないので、意図せぬ放出が発生した場合、オペレータは当然、清浄化及び復旧に費用がかかる。その上、塩酸によって生成される有毒なフューム又は蒸気は、ヒト/動物に有害であり、非常に腐食性であり及び/又は爆発の可能性がある。同様に、このような腐食性/危険性製品の配合を取り扱う人員による危険を取り巻く曝露は、該フューム又は蒸気の使用/実施を制限する。
【0006】
別の懸念は、貯蔵容器の破損及び/又は展開装置の故障、すなわち、高い腐食速度によって引き起こされるコイル状配管又は処理鉄の破損(点食、亀裂、ピンホール、及び重大な破損)を引き起こす酸の高い腐食レベルによる場所での曝露事故についての可能性である。その他の懸念事項には特に、オペレータが改修を実行し、ダウンホールポンプ、掘削モータ、配管、ケーブル、パッカーなどを交換する必要が生じる、クロムメッキのダウンホール装置の腐食による故障;鉱酸及び有機酸の一貫性のない強度又は品質の水準;産業生産水準に基づく潜在的な供給問題;オペレータ及びサービス会社にとって費用のかかる修理及び保守の水準を結果的に生じる、表面ポンプ装置、特にクロムメッキのプランジャーロッド及びその他の流体端のクロムメッキ部品の高水準の腐食;オペレータ及びサービス会社の資本支出を大いに上げる、酸を汲み上げるために構築された用途の特別な専用機器の必要性;完成品を現地で、又は該完成品の最終的に使用するすぐ近くで調達できないこと;輸送及び現場での保管が難しいこと、が挙げられる。
【0007】
最小限の助剤を必要とし、クロム及びクロムメッキに優しく、かつ酸感受性構成部品への腐食又は点食を懸念することなく長期間静的に展開することができる代替案があることは非常に有利である。
【0008】
塩酸はまた、噴出防止装置(BOP)/ダウンホールツール/パッカー/水中ポンプ/シール/マッドモータ/ステータなどにおいて見られるもののような、膨潤及び脆性を引き起こす、石油及びガス産業で見られるほとんどのエラストマーにとって非常に有害でもある。逆流プロセス中に使用済みの酸を処理しなければならないことはまた、これらの酸が典型的には低pHのままであり、毒性を保っており、金属及び可溶化鉱物を沈殿させるので、非常に費用がかかる。多くの場合、何十万ガロンという逆流流体は、タンクへ流されて処分井戸へ輸送されるか、又は費用のかかる再利用プロセスで処理されることが必要である。これらの一般的な構成部品と適合性があり、その廃水に対して有利な特性を有し、かつより健康で、安全で、環境に配慮した酸ブレンド及び腐食抑制剤のパッケージがあることは有利である。
【0009】
酸の有用性を維持しながら、酸の負の影響を排除するか、又は単に低減させることさえ、業界にとって、特にクロム、クロムメッキ、及びその他の酸感受性の表面又は構成部品に関して労力を注いでいる。より清浄な/より安全な/より環境に優しい製品の使用に対する公共の需要が高まるにつれて、企業は、従来の鉱酸の使用と関係する欠点をほとんど伴うことなく必要な機能を実行する代替品を探し求めている。
【0010】
塩酸は、金属、特にクロム及び高クロム合金に対して極度に腐食性がある。リン酸は、錆及び炭酸塩系のスケールを除去するのに非常に有効であるが、有効な腐食抑制助剤を添加することなくリンと経時的に接触させると、クロム及び鋼の完全性に負に影響を与えることもする酸である。
【0011】
純リン酸は白い固体である。42℃強で、粘性のあるかつ無色の液体へと融解し、該液体は非常に粘性がありかつ無色である。リン酸の最も一般的に市販されている形態は、75%〜85%濃度の水溶液である。これらの溶液は、無色、無臭、粘性がある/シロップ状、かつ不揮発性である。リン酸の公知の一般的な産業用途には、酸化鉄(III)がリン酸第二鉄(FePO4)に変換される錆の除去が含まれる。その後、このリン酸第二鉄は、手動で除去することができる。
【0012】
同様に、NaOH又はKOHでリン又はリン酸を中和することによって形成された塩からなるリン酸塩。オルトリン酸塩は、リン酸(H
3PO
4)塩であり、水素イオンのうちの1、2、又は3個が中和されている。NaOHで中和すると、3つのオルトリン酸ナトリウム、すなわち(a)リン酸一ナトリウム(MSP)、(b)リン酸二ナトリウム(DSP)、又は(c)リン酸三ナトリウム(TSP)が得られる。これらの溶液は、4.6〜12のpH範囲の緩衝液である。TSPは、優れた脱脂剤である。すべてがカルシウムのような硬度のイオンを沈殿させることになる。ポリリン酸塩は、熱による脱水によってさまざまなオルトリン酸塩から作られたポリマーである。酸性ピロリン酸ナトリウム(SAPP)は、粘土の解膠剤であり、セメント汚染の処理剤である。粘土の解膠の場合、ポリリン酸塩は加水分解してオルトリン酸塩に戻る温度によって制限されるが、最高280°F(138℃)で挙動するものがいくつか文献に記載されている(参考文献を参照されたい。
【0013】
同様に、ポリリン酸塩(ピロリン酸塩としても公知)は、熱による脱水によってさまざまなオルトリン酸塩から作られたポリマーである。オルトリン酸塩は、リン酸(H
3PO
4)塩であり、水素イオンのうちの1、2、又は3個が中和されている。酸性ピロリン酸ナトリウム(SAPP)は、粘土の解膠剤であり、セメント汚染の処理剤である。
【0014】
国際公開第2006/113735(A2)号は、金属部品の洗浄に適した水性酸性洗浄組成物が、尿素リン酸塩、界面活性剤、腐食抑制剤、及び水で構成されることを教示している。腐食抑制剤は、リン酸鉄、リン酸亜鉛、リン酸マンガン及びこれらに類するもののようなリン酸化合物であってもよい。
【0015】
米国特許出願公開第2006/0079424(A1)号明細書は、ステンレス鋼及び他の金属から酸化物の変色、錆、及び高温関連のスケールを洗浄するための組成物を教示している。該組成物は、尿素と酸の混合物によって生成される酸性窒素塩、及びゲル化剤を含む。該組成物に使用される好ましい酸性窒素塩は、酸性緩衝洗浄剤である尿素塩酸塩である。合成スメクタイト粘土は、好ましい揺変性ゲル化剤である。これらの成分はいずれも無害であり、いかなる有毒又は腐食性のフュームも発生しない。本発明はまた、該組成物を調製する方法も含む。
【0016】
米国特許出願公開第2004/0048769(A1)号明細書は、洗浄剤、粒子状粘土材料、及び水性担体を含む洗浄配合物を教示している。該配合物は、約4.0未満のpHを有し、最高約0.10s
−1の剪断速度で、25℃で粘度が少なくとも90%低減することを特徴とする。該洗浄配合物は揺変性であり、酸安定性、温度安定性、電解質安定性及び紫外線安定性の非常に望ましい組合せを有する。
【0017】
米国特許出願公開第2003/0004080(A1)号明細書は、溶接のような熱処理後にステンレス鋼上の酸化物層を除去するための長期間安定した酸洗い剤を教示しており、該酸洗い剤は、硝酸及び充填剤を含み、熱処理されたステンレス鋼の上にコーティングされる酸洗いペースト若しくは酸洗いゲルで、又は熱処理されたステンレス鋼に噴霧される酸洗い液で構成される。本発明によれば、該酸洗い剤はまた、酸洗い剤が使用されるときに亜硝酸フュームの形成を低減するための尿素も含む。
【0018】
米国特許第3,936,316号は、金属仕上げの前に、金属、特に鉄系の金属を酸洗いするためのプロセス及び組成物を教示している。尿素の添加を特徴とするハロゲン化水素酸の酸洗い溶液が使用される。該尿素は、このような酸洗い操作と通常関係する有害かつ腐食性のハロゲン化水素酸フュームの過剰な遊離を実質的に低減させ、完全に排除さえする。酸の消費量が劇的に低減するので、酸洗い作業の経費が大幅に削減されると言われている。その上、該フュームと接触した人員及び機器への傷害が少ない。最後に、本発明の酸洗い溶液で処理された金属表面は、点食が少なく、かつ該表面が金属堆積溶液に対してより活性であるので、改善される。
【0019】
米国特許出願公開第2003/0181350(A1)号明細書は、洗浄剤、粒子状粘土材料、及び水性担体を含む洗浄配合物を開示している。好ましい実施形態では、該配合物は、約1.0未満のpHを有し、(i)最高約0.10s
−1の剪断速度で、25℃で少なくとも90%の粘度低減、及び(ii)少なくとも60日間の期間、実質的に変化しない粘度を特徴とする。該洗浄配合物は揺変性であり、酸安定性、温度安定性、電解質安定性及び紫外線安定性の非常に望ましい組合せを有すると言われている。
【0020】
より最近では、Fluid Energy社の特許出願であるカナダ国特許第2,925,635号は、クロムの存在下で腐食の低下を示す改質したリン酸組成物の使用を教示している。腐食抑制剤パッケージには、Akzo Nobel社のArmohib CI−31(登録商標)中に存在するジブチルチオ尿素が含まれている。
【0021】
石油産業のいくつかの生産作業では、流体が非常に高い温度(120℃超のときもあれば135℃までのときでさえある)へ曝露され、これらのさまざまな作業で使用される組成物は、その全体的な効果を失うことなく、これらの高温に耐える必要がある。これらの組成物は、接触する機器に影響を与えずに、広範囲の温度にわたって操作に使用することができなければならない。市場で入手可能なほとんどの溶液は、スケール生成の問題を処理する前に、サービスリグがこれらのアイテムを穴から引き出す必要があるダウンホールポンプ及び/又は管状構造の冶金を損傷する。本発明は、135℃超の温度で酸に曝露されたときに金属の腐食抑制を提供するのに適合している。加えて、本発明者らは、現に市販されている腐食抑制パッケージの構成要素よりもはるかに容易に溶解させることができる腐食抑制剤を開発した。
【0022】
その結果、酸組成物と共に組み込まれることができ、かつ多くの用途で使用することができる、石油産業で使用するための腐食抑制剤が依然として必要とされている。好ましくは、本発明による腐食抑制剤組成物は、ポンプ、マッドモータ固定子、ケーブル及び管状構造のようなクロムメッキした機器への曝露の際に十分な保護を提供し、該保護は、サービスリグによる坑井からのこれらのアイテムの取外しを必要とする従来の酸の応用と典型的に関係する多くの危険/問題を低下させることができる。
【0023】
その上、本発明による好ましい腐食抑制剤組成物は、高温(135℃超)での操作に対して安定性を呈し、それゆえ石油及びガス産業において該操作を有用にすることが発見された。本発明による腐食抑制剤組成物は、理想的には、注入−処分及び生産井処理、スケール除去処理(地表及び地下、機器、パイプライン、施設)、累層フィルタケーキの除去、配管の酸洗い、マトリックスの酸の圧搾及び浸漬、セメント圧搾の分解、流体のpH制御、並びにセメントプラグの掘削、マッドモータ及びダウンホールポンプの内部のロータのような、クロムメッキした構成要素に損傷を与えることのないボールドロップボールなどのようなダウンホール油田操作において使用されるさまざまな酸性組成物に添加することができる。炭酸塩形成におけるROP(浸透率)を支援する及び酸を提供することにより、掘削時間を大幅に短縮し、場合によっては水系のシステムでの掘削と比較して、操作者がかなりの経費を削減することができる。
【発明の概要】
【0024】
本発明による腐食抑制剤組成物は、クロム及び鋼の腐食、ロジステックス/取り扱い、ヒト/環境への曝露及び形成/流体適合性の問題を標的とすることによって、特にリン酸及びその関係する用途を利用する石油及びガス産業並びに他の産業のために開発された。
【0025】
本発明は、石油及びガス産業における広範囲のダウンホール及び地表での用途にわたって使用することができ、公知の組成物よりも有利な特性を呈する腐食抑制剤組成物を提供する。本発明による腐食抑制剤はまた、自動車の金属処理、食品加工機器の洗浄、水処理、又はさまざまな金属及び/若しくは他の酸感受性材料へ曝露されるリン酸を使用する何らかの産業のような、石油及びガス産業に関連のないさまざまな用途で使用することもできる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、石油産業で使用するためのクロムに優しい(chrome friendly)改質された酸組成物と共に使用するための腐食抑制剤組成物が提供される。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、石油産業で使用するためのクロムに優しい(chrome−friendly)改質された酸組成物と共に使用するための腐食抑制剤組成物が提供され、該改質された酸組成物は、該改質された酸組成物が非クロムの又はクロムメッキした表面上で使用されるとき、満足のいく保護も提供する。
【0028】
本発明の別の態様によれば、石油産業で使用するためのクロムに優しい改質された酸組成物と共に使用するための腐食抑制剤組成物が提供され、該改質された酸組成物は、広範囲の温度にわたって制御された包括的な反応を提供する。本発明の好ましい実施形態は、生成物とブレンドされる水の量を単に調整することによって、反応速度の低減(又は上昇)が有利である特定の用途のために、制御する/遅延させる又は大幅に「減速させる若しくは上昇させる」ことができる反応速度を有する。本発明の好ましい組成物は、実質的に10%未満に希釈することができるが、バッチ処理又は持続的注入及びpH制御を経たスケールのような多くの用途において依然として有効であり、HSEの利点をさらに高める。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、0.1:1以上のモル比で、好ましくは、0.5:1以上のモル比で、好ましくは0.7:1以上のモル比で、より好ましくは1.0:1以上のモル比で尿素及びリン酸誘導体を含む改質された酸組成物と共に使用するための腐食抑制剤組成物が提供され、ここで、腐食抑制剤は、チオ尿素化合物、好ましくはジエチルチオ尿素を含む。尿素:リン酸の比は、0.1:1.0〜1.0:1.0、好ましくは0.5:1.0〜1.0:1.0、より好ましくは0.7:1.0〜1.0:1.0の範囲であることができる。
【0030】
好ましい実施形態によれば、リン酸誘導体は、リン酸、ポリリン酸、オルトリン酸(H
3PO
4)、ピロリン酸(H
4P
2O
7)、トリポリリン酸(H
5P
3O
10)、テトラポリリン酸(H
6P
4O
13)、トリメタリン酸(H
3P
3O
9)、及びリン酸無水物(P
4O
10)からなる群から選択される。好ましいリン酸誘導体はオルトリン酸である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、腐食抑制パッケージは、環境に優しい界面活性剤を含む。より好ましくは、界面活性剤は、分解を受けることなく、閉鎖環境において少なくとも130℃までの温度への曝露に2〜4時間、耐えることができる。
【0032】
好ましくは、ベタイン界面活性剤は、アミドベタイン界面活性剤である。より好ましくは、アミドベタイン界面活性剤は、C8〜C16の疎水性尾部を含むアミドベタインからなる群から選択される。最も好ましくは、C8〜C16の疎水性尾部を含むアミドベタインはコカミドベタインである。
【0033】
好ましい実施形態は、コカミドプロピルベタイン及びβ−アラニン、N−(2−カルボキシエチル)−N−ドデシルのナトリウム塩(1:1)を含む腐食抑制パッケージを参照することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明、及びそこに説明されている実施形態は、本発明の原理の詳細な実施形態の1つ又は複数の例を例示するために提供されている。これらの例は、該原理及び本発明を説明する目的で提供されているのであって、限定のために提供されているのではない。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によれば、ダウンホール石油産業活動(downhole oil industry activities)で使用するためのクロムに優しい(chrome−friendly)改質された酸組成物と共に使用するための液状腐食抑制剤組成物(liquid corrosion inhibitor composition)が提供されており、該腐食抑制剤組成物は、
−チオ尿素誘導体、
−スルタイン界面活性剤、ベタイン界面活性剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される第1の種類の両性界面活性剤、
−第2の種類の両性界面活性剤、並びに
−溶媒
を含む。
【0036】
好ましくは、チオ尿素誘導体は、1,3ジエチル−2−チオ尿素である。好ましくはまた、スルタイン界面活性剤及びベタイン界面活性剤は、アミドベタイン界面活性剤、アミドスルタイン界面活性剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、アミドベタイン界面活性剤は、C8〜C16の疎水性尾部を含むアミドベタインである。より好ましくは、C8〜C16の疎水性尾部を含むアミドベタインは、コカミドプロピルベタインである。
【0037】
好ましい実施形態によれば、第2の種類の両性界面活性剤は、ベータ−アラニン、N−(2−カルボキシエチル)−N−ドデシル−のナトリウム塩(1:1)である。
【0038】
好ましくは、溶媒は、メタノール、エタノール及びイソプロパノールからなる群から選択されるアルコールである。
【0039】
好ましい実施形態によれば、チオ尿素誘導体は、組成物の重量の10〜90%の範囲の濃度で存在する。好ましくは、チオ尿素誘導体は、組成物の重量の15〜50%の範囲の濃度で存在する。さらにより好ましくは、チオ尿素誘導体は、組成物の重量の20〜40%の範囲の濃度で存在する。なおもより好ましくは、チオ尿素誘導体は、組成物の重量のおよそ30%の濃度で存在する。
【0040】
好ましい実施形態によれば、ベタイン界面活性剤は、組成物の重量の5〜90%の範囲の濃度で存在する。好ましくは、ベタイン界面活性剤は、組成物の重量の5〜30%の範囲の濃度で存在する。
【0041】
好ましい実施形態によれば、第2の界面活性剤は、組成物の重量の5〜90%の範囲の濃度で存在する。好ましくは、第2の界面活性剤は、組成物の重量の5〜30%の範囲の濃度で存在する。
【0042】
好ましい実施形態によれば、溶媒は、組成物の重量の10〜90%の範囲の濃度で存在する。好ましくは、溶媒は、組成物の重量の20〜80%の範囲の濃度で存在する。より好ましくは、溶媒は、組成物の重量の30〜70%の範囲の濃度で存在する。さらにより好ましくは、溶媒は、組成物の重量の40〜60%の範囲の濃度で存在する。
【0043】
本発明の別の態様によれば、酸組成物と共に使用するための腐食抑制剤組成物が提供され、該酸組成物は、HCl、0.1:1.0の範囲のモル比のHCl−尿素、リン酸、及び0.1:1以上のモル比の尿素−リン酸又はその誘導体からなる群から選択される。
【0044】
本発明の別の態様によれば、HCl、HCl−尿素、リン酸−尿素及びリン酸誘導体からなる群から選択される酸と、
−チオ尿素誘導体、
−ベタイン界面活性剤、
−両性界面活性剤、及び
−溶媒
を含む腐食抑制剤組成物と、を含む、改質された酸組成物が提供される。
【0045】
好ましくは、リン酸誘導体が、ポリリン酸、オルトリン酸(H
3PO
4)、ピロリン酸(H
4P
2O
7)、トリポリリン酸(H
5P
3O
10)、テトラポリリン酸(H
6P
4O
13)、トリメタリン酸(H
3P
3O
9)、及びリン酸無水物(P
4O
10)からなる群から選択される、請求項20に記載の改質された酸組成物である。
【0046】
本発明の別の態様によれば、累層(formations)を刺激すること;ダウンホール圧送操作中の破壊又は注入圧の低減を支援すること;掘削操作後の坑井フィルタケーキを処理すること;詰まったパイプを解放するのを支援すること;パイプライン及び/又は生産井のスケールを除去すること;注入井の圧入速度を上昇させること;流体のpHを低下させること;地表機器、井戸及び関連する機器及び/又は施設における望ましくないスケールを除去すること;環状及びブルヘッドの圧搾及び浸漬を実施すること;累層(formations)の有効浸透率を高めること;坑井の周面の損傷を低減又は除去すること;穿孔を清浄化すること;石灰岩、ドロマイト、方解石及びこれらの組合せを可溶化すること;並びにセメントプラグを掘削することからなる群から選択される操作を実行すること、のために石油産業において使用するための腐食抑制剤組成物が提供される。
【0047】
本発明の別の態様によれば、産業活動で使用するためのクロムに優しい(chrome−friendly)改質された酸組成物と共に使用するための液状腐食抑制剤組成物が提供され、該腐食抑制剤組成物は、
−チオ尿素誘導体、
−スルタイン界面活性剤、ベタイン界面活性剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される第1の種類の両性界面活性剤、
−第2の種類の両性界面活性剤、並びに
−溶媒
を含む。
【0048】
本発明の別の態様によれば、水処理用途における金属研磨スケール除去を金属酸洗いすること、クロム及び最も好ましい実施形態では他の「軟質」金属を含む表面金属表面上の硬化したセメント又はセメント様材料の除去を含むがこれらに限定されないさまざまな産業活動において使用するために、リン酸成分(本明細書ですでに説明したような)と、チオ尿素誘導体;スルタイン界面活性剤、ベタイン界面活性剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される第1の種類の両性界面活性剤;第2の種類の両性界面活性剤;並びに溶媒を含む腐食抑制剤組成物を含む組成物が提供される。先の組成物の別の好ましい実施形態は、コンクリートをエッチングするために(したがって、エッチング部位に近い金属への損傷を最小限にするために)、又はエフロレセンスの蓄積を除去するために採用することができる。それに応じた先の好ましい組成物についての他の使用には、pH制御、食品、乳製品及び醸造機器の消毒、などが含まれ、これらは、好ましくは、クロム又はクロムメッキした機器が使用される使用である。
【0049】
尿素及びリン酸誘導体を使用するとき、分子構造内でリン酸イオンを結合するCO(NH
2)
2・H
3PO
4の化学組成を有する尿素リン酸溶液が生成される反応がある。尿素リン酸塩のpHが低いと、カルシウム、マグネシウム及びリンが溶液中に共存することができる。この反応は、発煙効果、吸湿効果、腐食性の高い性質のような、オルトリン酸自体の危険な効果を大幅に低減する。安全性が求められるとき、リン酸誘導体のモル数(リン酸基に関して)に1より大きなモル比で尿素を添加することが好まれる。このことは、いかなる利用可能なリン酸イオンも結合するために行われ、それによって、より安全でより安定した生成物を創出する。好ましくは、このような組成物は、1.0モルのオルトリン酸あたり1.0モルの尿素を含む。尿素はまた、炭酸塩系材料の存在下にあるとき、反応速度を低減させることができる。これはまた、オルトリン酸が従来示されているものよりも強い分子結合又はイオン結合が関係していることによる。
【0050】
いくつかの産業活動は、本明細書で以下に列挙されている。リン酸は、電気メッキのような幾多の産業で(酸金属清浄剤−酸化物除去剤として)、集積された鉄鋼製造で(酸洗いする酸として)、実験用化学物質における標準的な酸として、機械の製造及び修復において(清浄洗浄剤として)、pH調節剤において(水処理のためのpH調整剤として)、印刷回路板製造において(PCB孔を伝導性にすることにおいて及び外層のエッチング/メッキのために)、半導体において(湿式化学エッチングのために)、並びに溶接及びはんだづけ剤において(腐食性フラックス成分として)使用されている。
【0051】
尿素−リン酸組成物のいくつかの利点により、エンドユーザは、輸送及び保管の利点、並びに健康、安全及び環境の利点を有する従来の酸に対する代替物を利用することが可能となる。短期/長期の腐食制御の強化は、本発明の重要な利点の1つである。周面の腐食性の低減、反応中の腐食性フュームの除去、制御された消耗の性質、及び高い耐塩性、並びにクロム及びクロムメッキ金属と標準的な非メッキ金属とを損傷させることに対する耐性により、尿素−リン酸の使用がリン酸単独よりも望ましくなる。しかしながら、尿素でさえ腐食防止に限界があり、このため、リン酸及びその誘導体、並びにリン酸の修飾酸の使用をより大規模に実施するために、適切な腐食抑制剤パッケージが依然として非常に大きく追求されている。
【0052】
クロムに優しい(chrome−friendly)とは、改質された酸組成物の曝露の際の標準的なクロム表面の腐食が、20℃の温度で6時間の同じ種類のクロム表面の腐食よりも少なくとも50%少ないことを意味すると理解されている。
【0053】
Armohib31(登録商標)のSDSシートによれば、この抑制剤はリン酸と共に使用するように設計されていると言われている。独自のアルコキシル化脂肪アミン塩(非公開の%含有量)、独自のアルコキシル化有機酸(非公開の含有量)、及び20〜30重量%の範囲の量のN,N’−ジブチルチオ尿素を含有すると言われている。しかしながら、この腐食抑制剤は、リン酸の使用と関係した発煙及び環境毒性の欠点にも、クロムに対する腐食の影響にも対処していない。該腐食抑制剤は、主として鋼表面の腐食に対処する。
【実施例】
【0054】
[例1] 本発明の好ましい実施形態による腐食抑制剤と共に使用するための酸組成物を調製するためのプロセス
50重量%の尿素水溶液で出発する。85重量%のオルトリン酸溶液を添加し、すべての反応が完全に終止するまで循環させる。水を所望の50%濃度になるまでただちに添加する。
【0055】
表1は、本発明による腐食抑制剤を含む例1の酸組成物の成分を、組成物の総重量と比較した該成分の重量百分率及び各成分のCAS番号を含めて列挙している。
【0056】
【表1】
【0057】
得られた例1の組成物は、1年超の保管期限を有する透明な無臭の液体である。該組成物は、およそマイナス30℃の凝固点及びおよそ100℃の沸点を有する。該組成物の比重は、1.19±0.02である。水に完全に溶解し、そのpHは1である。例1の組成物のリン酸濃度は、17%である。これは、後述のほとんどの腐食試験実験に使用されるストック溶液である。このストック溶液は、腐食表では尿素−リン酸(100%)と称される。例えば、元のストック溶液の50%に希釈すると、該組成物は、尿素−リン酸(50%)と称される。
【0058】
該組成物は、周面試験のための分類によって刺激物として分類される。該組成物は非発煙性であり、揮発性有機化合物も、飲料水品質水準を超えるいかなるBTEX水準も有していない。BTEXとは、化学物質のベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレンを指す。毒性試験は、代理情報を使用して計算され、LC
50は884mg/kgより大きいと決定された。
【0059】
腐食に対する保護について、多くの腐食抑制剤組成物を検討した。該組成物を以下の表2に列挙する。
【0060】
【表2】
【0061】
表2で利用される腐食抑制剤は概して、イソプロパノール、コカミドプロピルベタイン、ベータ−アラニン、N−(2−カルボキシエチル)−N−ドデシルのナトリウム塩(1:1)及び1,3−ジエチル−2−チオ尿素で構成される。溶媒は、配合により測定される。次に、2つの界面活性剤を溶媒に添加し、続いて有効成分を添加する。各成分を溶媒中に溶解した後、次の化学物質を添加する。
【0062】
好ましくは、少なくとも1つの両性界面活性剤は、スルタイン界面活性剤、ベタイン界面活性剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、スルタイン界面活性剤及びベタイン界面活性剤は、アミドベタイン界面活性剤、アミドスルタイン界面活性剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される。なおもさらにより好ましくは、アミドベタイン界面活性剤であり、C8〜C16の疎水性尾部を含むアミドベタインからなる群から選択される。最も好ましくは、C8〜C16の疎水性尾部を含むアミドベタインはコカミドベタインである。
【0063】
好ましくは、溶媒は、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群から選択される。最も好ましい溶媒はイソプロパノールである。
【0064】
<腐食試験>
合成の又は改質された酸組成物の存在下での本発明によるいくつかの異なる腐食抑制パッケージについて以下の表に概略されている以下の腐食試験を、塩類溶液水で希釈して最高135℃の温度でさまざまな曝露時間について実施した(異なる温度も使用した−表の表題に示されている)。望ましい結果は、lb/ft2の腐食数が0.05以下であるものとした。より好ましくは、該数は0.02以下とする。腐食試験の結果を以下に報告する。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
【表9】
【0072】
CIパッケージ内のさまざまな溶媒の組合せを評価するために実施された一連の実験。以下に報告する結果は、CI−IP(現CI−P5)、CI−IP/水、及びメタノールとの比率(質量%)である。表10は、さまざまな溶媒組成を使用した腐食抑制剤パッケージを含む50%尿素−リン酸組成物で必要な負荷及び腐食抑制の結果を報告している。
【0073】
【表10】
【0074】
先の結果は、水、メタノール、エタノール及びイソプロパノール、並びにイソプロパノール−水、イソプロパノール−メタノール、メタノール−エタノール、エタノール−水及びメタノール−水のようなこれらの組合せを含むがそれらに限定されない、さまざまな溶媒及びその組合せの使用を支持する。
【0075】
表11は、本発明の好ましい実施形態による腐食抑制剤を採用する酸組成物が、その希釈の際に(該希釈は、使用目的に応じておよそ1〜100%の範囲であることができる)、注入/廃棄処理、浸漬、酸洗い、パイプラインスケール処理、セメントの破壊又は穿孔の清浄化、pH制御、及びスケール除去の用途を含むことができるがこれらに限定されないさまざまな用途を強調している。
【0076】
【表11】
【0077】
本発明による腐食抑制剤組成物の1つの利点は、該組成物を組み込む(又は混合する)ことができる酸組成物に関して該組成物が提供するフレキシビリティーを含む。確かに、HCl及びリン酸は、金属の種類が適合している該金属の種類を参照すると、実質的に異なる腐食特性を有している。その上、本発明の好ましい実施形態による腐食抑制剤組成物は、炭素鋼金属並びにクロム又はクロムメッキ金属に対する保護を提供する。石油産業は両方の(及びそれより多数の)金属を使用するので、流体循環の同じ領域内で頻繁に、片方又はもう片方の金属を腐食しないことになる、より好ましくはいずれも腐食しないことになる酸を使用することができることが望ましい。
【0078】
本発明による組成物の使用(又は用途)には、およそ1〜90%希釈の範囲の希釈の場合、注射/廃棄処理、マトリックス酸の圧搾、浸漬又はブルヘッド、酸破砕、酸洗い、スピアヘッドの破砕(破壊)、パイプラインのスケール処理、セメントの破壊又は穿孔の清浄化、pH制御、及びスケール除去用途、高温(最高135℃)の周期的蒸気スケール処理及び蒸気支援式重力排水(SAGD)スケール処理(最高135℃)が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
当業者によって理解されるように、使用方法は概して、以下のステップ、すなわち、本発明の好ましい実施形態による腐食抑制剤組成物を提供するステップ、腐食抑制剤組成物を酸性組成物に混合するステップ、(金属表面のような)表面を水性酸組成物へ曝露するステップ、水性酸組成物が該表面に作用するのに十分な時間を許容するステップ、及び場合により、操作が完了するのに十分であるか又は十分に完了すると曝露時間が決定されたときに、酸組成物を除去するステップを含む。別の使用方法は、水性酸組成物を井戸に注入すること、及び水性酸組成物がその所望の機能を十分な時間実行した後、井戸から酸組成物を除去して酸曝露を終止することを含む。さらに別の使用方法は、pHの低下を必要とする流体(通常は水)の本体に水性酸組成物を曝露し、水性酸組成物がpHを所望のレベルまで低下させるのに十分な曝露時間を許容することを含む。
【0080】
上述の発明は、明確にし、且つ理解する目的でいくらか詳細に説明されてきたが、関連技術の当業者は、本開示に精通した後、形式及び詳細のさまざまな変更を、添付の特許請求の範囲内で本発明の真の範囲から逸脱することなく行うことができることを認識することになる。
【国際調査報告】