特表2021-530192(P2021-530192A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-530192ブラシレス直流電気モータ、および関連する制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-530192(P2021-530192A)
(43)【公表日】2021年11月4日
(54)【発明の名称】ブラシレス直流電気モータ、および関連する制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20160101AFI20211008BHJP
   H02P 23/14 20060101ALI20211008BHJP
【FI】
   H02P6/16
   H02P23/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-573333(P2020-573333)
(86)(22)【出願日】2019年6月27日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月10日
(86)【国際出願番号】EP2019067257
(87)【国際公開番号】WO2020002559
(87)【国際公開日】20200102
(31)【優先権主張番号】1856031
(32)【優先日】2018年6月29日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】512092737
【氏名又は名称】ヴァレオ システム デシュヤージュ
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ−ルイ、エラーダ
【テーマコード(参考)】
5H505
5H560
【Fターム(参考)】
5H505DD08
5H505FF01
5H505HA08
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505LL24
5H505LL41
5H560BB04
5H560BB07
5H560BB12
5H560BB17
5H560DA02
5H560DB02
5H560EB01
5H560UA02
(57)【要約】
本発明は、ブラシレス直流電気モータ(1)を制御するための方法であって、前記電気モータ(1)は、永久磁石(9)を有するロータ(3)と、電磁励磁コイルを有するステータ(5)と、前記ロータ(3)の所定の角度位置を検出するように設計された、好適には単一のホール効果センサである少なくとも1つのホール効果センサ(17)と、少なくとも1つのコイルの領域における電気変数であって、前記ロータ(3)の位置に応じて変化する電気変数を測定するための手段と、を備え、前記方法は、前記電気モータ(1)を始動させるための以下のステップ、すなわち、少なくとも1つのコイルの領域における前記電気変数が、前記測定手段を使用して測定されるステップ(102)と、前記電気変数の測定値に基づいて前記ロータの位置が特定されるステップ(103)と、前記特定されたロータ(104)の位置に関連する所定の励磁信号が印加されるステップと、次いで、前記ホール効果センサ(17)の状態変化毎に、所定の励磁信号のシーケンスが印加されるステップ(105)と、を備える制御方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレス直流電気モータ(1)を制御するための方法であって、前記電気モータ(1)は、
−永久磁石(9)を備えるロータ(3)と、
−電磁励磁コイルを有するステータ(5)と、
−前記ロータ(3)の所定の角度位置を検出するように構成された、好適には単一のホール効果センサである少なくとも1つのホール効果センサ(17)と、
−単数または複数のコイルにおける電気量であって、前記ロータ(3)の位置に応じて変化する電気量を測定するための手段と、
を備え、
前記方法は、前記電気モータ(1)を始動させるための以下のステップ、すなわち、
−単数または複数のコイルにおける前記電気量が、前記測定の手段を使用して測定されるステップ(102)と、
−前記電気量の測定値に基づいて前記ロータの位置が特定されるステップ(103)と、
−前記特定されたロータ位置に関連する所定の励磁信号が印加されるステップ(104)と、
−次いで、前記ホール効果センサ(17)の状態変化毎に、所定の励磁信号のシーケンスが印加されるステップ(105)と、
を備える制御方法。
【請求項2】
−前記ロータ(3)を回転駆動するように、前記ロータ(3)の位置に応じて前記コイルに印加される前記励磁信号を決定する第1予備ステップと、
−前記ロータ(3)の異なる位置に関連する前記電気量の値を測定する第2予備ステップと、
を更に備える請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記電気量は、前記コイルのうちの少なくとも1つのインダクタンス(La、Lb、Le)である、
請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記電気量は、前記コイルのうちの2つの間の相互インダクタンスである、
請求項1または2に記載の制御方法。
【請求項5】
前記コイルは、星形配置の3つの相(A、B、およびC)を形成し、
前記電気量の測定は、以下のステップ、すなわち、
−所定の電圧が第1および第2相(A、B)に関連する前記コイル間に印加され、前記電圧が前記第2または第3相(B、C)において測定され、前記測定された電圧の値が前記印加電圧の半分の値と比較され、前記第1および第2相(A、B)に関連する前記インダクタンス(La、Lb)間の相対値が推定されるステップと、
−所定の電圧が前記第1および第3相(A、C)に関連する前記コイル間に印加され、前記電圧が前記第3または第2相(B、C)において測定され、前記測定された電圧の値が前記印加電圧の半分の値と比較され、前記第1および第3相(A、C)に関連する前記インダクタンス(La、Le)間の相対値が推定されるステップと、
−所定の電圧が前記第2および第3相(B、C)に関連する前記コイル間に印加され、前記記電圧が第3または第1相(A、C)において測定され、前記測定された電圧の値が前記印加電圧の半分の値と比較され、前記第1および第3相(B、C)に関連する前記インダクタンス(Lb、Le)間の相対値が推定されるステップと、
を備え、
前記ロータ(3)の位置が、前記異なる相(A、B、C)に関連する前記インダクタンス(La、Lb、Le)の相対値と、前記ホール効果センサ(17)が送信する前記信号の値とに基づいて特定される、
請求項1乃至4のいずれかに記載の制御方法。
【請求項6】
前記コイルは、星形配置の3つの相(A、B、およびC)を形成し、
前記電気量の測定は、以下のステップ、すなわち、
−所定の電圧が第1および第2相(A、B)に関連する前記コイル間に印加され、第1電圧が前記第2位相(B)において測定されるステップと、
−同じ前記所定の電圧が逆電流で前記第1および第2相(A、B)に関連する前記コイル間に印加され、第2電圧が前記第2相(B)において測定されるステップと、
−前記測定された第1電圧の値と第2電圧の値とが比較され、前記第1および第2相(A、B)に関連する前記インダクタンス(La、Lb)の相対値が推定されるステップと、
−所定の電圧が前記第1および第3相(B、C)に関連する前記コイル間に印加され、第3電圧が前記第3相(C)において測定されるステップと、
−同じ前記所定の電圧が逆電流で前記第1および第3相(A、C)に関連する前記コイル間に印加され、第4電圧が前記第3相(C)において測定されるステップと、
前記測定された第3電圧の値と第4電圧の値とが比較され、前記第1および第3相(A、C)に関連する前記インダクタンス(La、Le)の相対値が推定されるステップと、
−所定の電圧が前記第2および第3相(B、C)に関連する前記コイル間に印加され、第5電圧が前記第3相(C)において測定されるステップと、
同じ前記所定の電圧が逆電流で前記第2および第3相(B、C)に関連する前記コイル間に印加され、第6電圧が前記第3相(C)において測定されるステップと、
前記測定された第5電圧の値と第6電圧の値とが比較され、前記第2および第3相(B、C)に関連する前記インダクタンス(Lb、Le)の相対値が推定されるステップと、
を備え、
前記ロータ(3)の位置が、前記異なる相(A、B、C)に関連する前記インダクタンス(La、Lb、Le)の相対値と、前記ホール効果センサ(17)が送信する信号の値とに基づいて特定される、
請求項1乃至4のいずれかに記載の制御方法。
【請求項7】
前記所定の電圧の印加時間は、1乃至50μs、または好適には3乃至10μsの時間間隔から選択される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電気モータ(1)は、3つの相(A、B、C)を備え、
前記ロータ(3)のサイクルは、それぞれ6個の励磁信号に関連付けられる6個の角度部分に分割可能であり、3つの角度部分が前記ホール効果センサ(17)からの前記信号の第1レベルに対応し、他の3つの角度部分が前記ホール効果センサ(17)からの前記信号の第2レベルに対応し、前記ホール効果センサ(17)に対応する前記3つの角度部分のうち、前記ロータ(3)の位置に対応する前記角度部分が、前記電気量の測定に基づいて特定される、
請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記制御方法は、6個の励磁信号を備え、
各励磁信号は、第1相(A、B、C)への正電圧の供給、第2相(B、C、A)への負電圧の供給、および接地または開放した第3相(C、A、B)に対応する、
請求項4に記載の制御方法。
【請求項10】
−永久磁石を備えるロータ(3)と、
−電磁励磁コイルを有するステータ(5)と、
−前記ロータ(3)の所定の角度位置を検出するように構成された、好適には単一のホール効果センサである少なくとも1つのホール効果センサ(17)と、
−前記ロータ(3)を回転駆動するように、前記ロータ(3)の位置に応じて所定の励磁信号を前記コイルに印加するように構成された制御ユニット(14)と、
を備えるブラシレス直流電気モータ(1)であって、
前記制御ユニット(14)は、また、始動時に、
−単数または複数のコイルにおける電気量であって、前記ロータ(3)の位置に応じて変化する電気量を測定するステップ(102)と、
−前記測定された電気量の値に応じて前記ロータ(3)の位置を特定するステップ(103)と、
−前記ロータ(3)の特定された位置に関連する所定の励磁信号を印加するステップ(104)と、
−次いで、前記ホール効果センサ(17)の状態変化毎に、所定の励磁信号のシーケンスを印加するステップ(105)と、
を実施するように構成される、
電気モータ(1)。
【請求項11】
前記ホール効果センサ(17)は、前記ロータ(3)に連結された制御磁石(19)に関連付けられ、前記制御磁石(19)の極対の個数は、前記電気モータ(1)の極対の個数の3倍に等しい、
請求項10に記載の電気モータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車両機器を対象としたブラシレス直流電気モータに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのブラシレス直流電気モータが、自動車両機器において、特にワイパー装置のギアードモータにおいて使用されている。
【0003】
ブラシレス直流電気モータは、長い寿命、小さい全体寸法、少ない消費電力等の多くの利点を有し得る。
【0004】
しかしながら、ブラシ付きの電気モータに比較して、電気モータの制御は複雑である。なぜならば、正しい動作を得るために、ブラシレス直流電気モータのロータの角度位置を正確に把握することが不可欠なためである。この理由は、このような電気モータが、ロータに配置された永久磁石を駆動するように、ステータに配置された電磁励磁コイルであって、インバータを介して交互に給電される電磁励磁コイルを備えていることにある。
【0005】
最適なタイミングでインバータスイッチを切り替える、したがって電磁コイルへの給電を切り替えてロータを所望どおり駆動させるために、ロータの位置を、少なくともセクタにより、切り替え中に数個の正確なポイントで把握する必要がある(通常、台形励磁の場合、ロータの1回転毎に6回の切り替え)。
【0006】
また、始動時に、適切な励磁信号を印加できるように、ロータの位置を把握する必要がある。専用の位置センサを使用してもよいが、コストが余計にかかる。
【0007】
したがって、始動時のロータ位置を検出するための経済的な解決策を見出すことが所望されている。
【発明の概要】
【0008】
この目的のために、本発明は、
ブラシレス直流電気モータを制御するための方法であって、前記電気モータは、
−永久磁石を備えるロータと、
−電磁励磁コイルを有するステータと、
−前記ロータの所定の角度位置を検出するように構成された、好適には単一のホール効果センサである少なくとも1つのホール効果センサと、
−単数または複数のコイルにおける電気量であって、前記ロータの位置に応じて変化する電気量を測定するための手段と、
を備え、
前記方法は、前記電気モータを始動させるための以下のステップ、すなわち、
−単数または複数のコイルにおける前記電気量が、前記測定手段を使用して測定されるステップと、
−前記電気量の測定値に基づいて前記ロータの位置が特定されるステップと、
−前記特定されたロータ位置に関連する所定の励磁信号が印加されるステップと、
−次いで、前記ホール効果センサの状態変化毎に、所定の励磁信号のシーケンスが印加されるステップと、
を備える制御方法に関する。
【0009】
また、本方法は、以下の態様のうちの少なくとも1つを備え得る。
−前記電気モータは、磁極集中を有する電気モータである。
−前記永久磁石は、強磁性材料の本体に一体化(または埋設または埋蔵)されている。
−前記ホール効果センサは、前記ロータに連結された制御磁石に関連付けられ、前記制御磁石の極対の個数は、前記電気モータの極対の個数の3倍に等しい。
−前記ロータ(3)を回転駆動するように、前記ロータ(3)の位置に応じて前記コイルに印加される前記励磁信号を決定する第1予備ステップ。
−前記ロータ(3)の異なる位置に関連する前記電気量の値を測定する第2予備ステップ。
【0010】
前記電気量は、前記コイルのうちの少なくとも1つのインダクタンスである。
【0011】
前記電気量は、前記コイルのうちの2つの間の相互インダクタンスである。
【0012】
前記コイルは、星形配置のされた3つの相を形成し、
前記電気量の測定は、以下のステップ、すなわち、
−所定の電圧が第1および第2相に関連する前記コイル間に印加され、前記電圧が前記第2または第3相において測定され、前記測定された電圧の値が前記印加電圧の半分の値と比較され、前記第1および第2相に関連するインダクタンス間の相対値が推定されるステップと、
−所定の電圧が前記第1および第3相に関連する前記コイル間に印加され、前記電圧が前記第3または第2相において測定され、前記測定された電圧の値が前記印加電圧の半分の値と比較され、前記第1および第3相に関連する前記インダクタンス間の相対値が推定されるステップと、
−所定の電圧が前記第2および第3相に関連する前記コイル間に印加され、前記記電圧が第3または第1相において測定され、前記測定された電圧の値が前記印加電圧の半分の値と比較され、前記第2および第3相に関連する前記インダクタンス間の相対値が推定されるステップと、
を備え、
前記ロータの位置が、前記異なる相に関連する前記インダクタンスの相対値と、前記ホール効果センサが送信する前記信号の値とに基づいて特定される。
【0013】
前記コイルは、星形配置の3つの相を形成し、
前記電気量の測定は、以下のステップ、すなわち、
−所定の電圧が第1および第2相に関連する前記コイル間に印加され、第1電圧が前記第2相において測定されるステップと、
−同じ所定の電圧が逆電流で前記第1および第2相に関連する前記コイル間に印加され、第2電圧が前記第2相において測定されるステップと、
−前記測定された第1電圧の値と第2電圧の値とが比較され、前記第1および第2相に関連する前記インダクタンスの相対値が推定されるステップと、
−所定の電圧が前記第3および第3相に関連する前記コイル間に印加され、第1電圧が前記第3相において測定されるステップと、
−同じ所定の電圧が逆電流で前記第1および第3相に関連する前記コイル間に印加され、第4電圧が前記第3相において測定されるステップと、
前記測定された第3電圧の値と第4電圧の値とが比較され、前記第1および第3相に関連する前記インダクタンスの相対値が推定されるステップと、
−所定の電圧が前記第2および第3相に関連する前記コイル間に印加され、第5電圧が前記第3相において測定されるステップと、
同じ所定の電圧が逆電流で前記第2および第3相に関連する前記コイル間に印加され、第6電圧が前記第3相において測定されるステップと、
前記測定された第5電圧の値と第6電圧の値とが比較され、前記第2および第3相に関連する前記インダクタンスの相対値が推定されるステップと、
を備え、
前記ロータの位置が、前記異なる相に関連する前記インダクタンスの相対値と、前記ホール効果センサが送信する信号の値とに基づいて特定される。
【0014】
前記所定の電圧の印加時間は、1乃至50μs、または好適には3乃至10μsの時間間隔から選択される。
【0015】
前記電気モータは、3つの相を備え、
前記ロータのサイクルは、それぞれ6個の励磁信号に関連付けられる6個の角度部分に分割可能であり、3つの角度部分が前記ホール効果センサからの前記信号の第1レベルに対応し、他の3つの角度部分が前記ホール効果センサからの前記信号の第2レベルに対応し、前記ホール効果センサに対応する前記3つの角度部分のうち、前記ロータの位置に対応する前記角度部分が、前記電気量の測定に基づいて特定される。
【0016】
前記制御方法は、6個の励磁信号を備え、各励磁信号は、第1相への正電圧の供給、第2相への負電圧の供給、および接地または開放した第3相に対応する。
【0017】
また、本発明は、
−永久磁石を備えるロータと、
−電磁励磁コイルを有するステータと、
−前記ロータの所定の角度位置を検出するように構成された、好適には単一のホール効果センサである少なくとも1つのホール効果センサと、
−前記ロータを回転駆動するように、前記ロータの位置に応じて所定の励磁信号を前記コイルに印加するように構成された制御ユニットと、
を備えるブラシレス直流電気モータであって、
前記制御ユニットは、また、始動時に、
−単数または複数のコイルにおける電気量であって、前記ロータの位置に応じて変化する電気量を測定するステップと、
−前記測定された電気量の値に応じて前記ロータの位置を特定するステップと、
−前記ロータの特定された位置に関連する所定の励磁信号を印加するステップと、
−次いで、前記ホール効果センサの状態変化毎に、所定の励磁信号のシーケンスを印加するステップと、
を実施するように構成される、ブラシレス直流電気モータに関する。
【0018】
本発明の別の態様によれば、前記電気モータは、磁極集中を有する電気モータである。
【0019】
本発明の別の態様によれば、前記永久磁石は、強磁性材料の本体に一体化(または埋設または埋蔵)されている。
【0020】
本発明の別の態様によれば、前記ホール効果センサは、前記ロータに連結された制御磁石に関連付けられ、前記制御磁石の極対の個数は、前記電気モータの極対の個数の3倍に等しい。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して非限定的な例としてなされる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電気モータの一部を示す図。
図2】電気モータの一部を示す図。
図3】ロータの位置に応じて電気モータの相に印加される制御信号の図。
図4】制御磁石に関連付けられたホール効果センサの図。
図5】ロータの位置に応じてホール効果センサが供給する信号を示す図。
図6】相のインダクタンスの値と、ロータの位置に応じてホール効果センサが供給する信号を示す図。
図7】第1実施形態による、電気モータの相と、2つの相のインダクタンスの相対値を特定するために印加され測定される電圧を示す図。
図8】第2実施形態による、電気モータの相と、2つの相のインダクタンスの相対値を特定するために印加され測定される電圧を示す図。
図9】第3実施形態による、電気モータの相と、2つの相のインダクタンスの相対値を特定するために印加され測定される電圧を示す図。
図10】第4実施形態による、電気モータの相と、2つの相のインダクタンスの相対値を特定するために印加され測定される電圧を示す図。
図11】本発明による相の相対インダクタンスを測定するための方法のステップのフローチャート。
図12】本発明による電気モータを始動させるための方法のステップのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
全ての図において、同一の要素には同じ参照番号を付す。
【0024】
以下の実施形態は例である。単数または複数の実施形態について説明がなされるが、これは、各説明が同一の実施形態に関すること、または特性が1つの実施形態にのみ適用可能であるということを意味しない。種々の実施形態の単純な特徴を組み合わせたり交換したりすることで、他の実施形態を提供してもよい。
【0025】
本発明は、ブラシレス直流電気モータ、例えば、ワイパー装置のギアードモータ等の自動車両機器において使用される電気モータに関する。特に、本発明は、このような電気モータを始動させるための方法に関する。
【0026】
図1は、磁石一体型(または埋設型または埋蔵型)電気モータ1であって、ロータ3とステータ5とを備える電気モータ1の部分概略図である。電気モータ1は、少なくとも2対の極、本例において4対の極を有するロータ3を備えている。極対は、強磁性材料からなる、S1…S8で示すセクションを備える本体7により形成されている。前記セクションS1…S8は、異なるセクションS1…S8の間に、角度を付けて規則的に分散配置されたハウジングを画成している。ハウジングは、永久磁石9を受容するように構成されている。本例において、8個の永久磁石9が45°毎に配置されているが、異なる個数のセクションS1…S8および永久磁石9を備えたロータ3も可能である。また、ハウジングは、別の不規則な分散配置を有していてもよい。2つの永久磁石9の間に配置された本体3のセクションS1…S8は、ステータ5のコイル(図示せず)と相互作用することが意図された極を形成する。このようなロータ3は、磁石一体型(または埋設型または埋蔵型)ロータ3と呼ばれる。
【0027】
ステータ5は、複数の歯11を有しており、その周囲には巻き体が巻回されて電磁励磁コイルを形成している。巻き体は、例えば銅線で形成されている。これらのコイルは、モータの相を形成し、これらに給電することでロータ3を回転させることができる。
【0028】
ロータ3の所望の回転を得るには、励磁信号の所定のシーケンスが印加されなければならない。3つの相を備える電気モータ1の場合、所定のシーケンスは、6つの異なる励磁状態を有する(台形励磁の場合)。これらの励磁信号は、例えば、図2に示すようなインバータ10により印加される。インバータ10は、並列に配置されるとともに電圧源13に接続されたB1、B2およびB3で示される3つの分岐を備えている。各分岐B1、B2、B3は、直列に配置されるとともに制御ユニット14により制御される2つのスイッチ15を備えている。各分岐B1、B2、B3の中間点は、それぞれ電気モータ1の各相に接続している。
【0029】
ロータ3のサイクルにおける電気モータ1の異なる励磁状態を図3に示す。これらは、3つの相に関連する制御信号により規定され、C1、C2およびC3で示される。
【0030】
第1状態E1は、相Aへの正電圧V+、および相Bへの負電圧V−の印加、および相Cへのゼロ電圧の印加に対応する。ゼロ電圧の印加は、相Cに接続しているスイッチを開放することにより、または相Cを接地することによりなされる。
【0031】
第2状態E2は、相Aへの正電圧V+、および相Cへの負電圧V−の印加、および相Bへのゼロ電圧の印加に対応する。
【0032】
第3状態E3は、相Bへの正電圧V+、および相Cへの負電圧V−の印加、および相Aへのゼロ電圧の印加に対応する。
【0033】
第4状態E4は、相Bへの正電圧V+、および相Aへの負電圧V−の印加、および相Cへのゼロ電圧の印加に対応する。
【0034】
第5状態E5は、相Cへの正電圧V+、および相Aへの負電圧V−の印加、および相Bへのゼロ電圧の印加に対応する。
【0035】
第6状態E6は、相Cへの正電圧V+、および相Bへの負電圧V−の印加、および相Aへのゼロ電圧の印加に対応する。
【0036】
ロータ3の所望の回転を得るためには、ロータ3の位置を正確に把握することも必要である。これにより、インバータ10のスイッチ15の状態を所定のタイミングで変更でき、所望のタイミングで切り替えることができる。本例において、ロータ3の位置を、60電気角(electric degrees)度毎に一回正確に特定しなければならない。なぜならば、360電気角に対して6回の切替操作があるからである。例えば、状態E1は、ロータ3が0乃至60°の角度に対応する角度部分に位置しているときに適用されなければならない。
【0037】
60°毎に一回ロータ3の位置を見出すように、図4に示すホール効果センサ17が使用される。ホール効果センサ17は、例えば、ロータ3と一体の制御磁石19に連結されている。制御磁石19は、電気モータ1の極数の3倍に等しい個数の極を備えている。例えば、8個の極を有するモータの場合は、24個の極を備えている。
【0038】
図5に、ロータ3の回転角に応じてホール効果センサ17が供給する信号Hの例を示す。ホール効果センサ17の状態の変化は、60電気角毎に一回生じる。これにより、制御ユニット14は、ホール効果センサ17が供給する信号を利用して所望のタイミングで切り替えを行う。
【0039】
しかしながら、始動のタイミングで正しい信号のシーケンスを印加するためには、始動のタイミングでのロータ3の位置を把握する必要がある。ホール効果センサ17では、この位置が把握できず、始動のために印加される励磁信号を決定することができない。
【0040】
この目的のために、ロータ3の位置に応じて値が変化する電気量を測定することを利用できる。この量は、例えば、電気モータ1の少なくとも1つの相に関連する単数または複数のコイルのインダクタンスに、または電気モータ1の2つの相に対応する2つの励磁コイル間の相互インダクタンスに対応する。これは、インダクタンスの値がロータ3の位置に応じて変化するためである。これにより、インダクタンスの値は、始動時のロータ3の位置の特定に使用され得る。インダクタンスの測定値がロータ3の2つの想定可能な異なる位置に対応する場合、この測定を信号Hにより供給されるホール効果センサ17の状態と組み合わせてもよい。相互インダクタンスに関して、例えば相対測定によって相互インダクタンスの異なる値を比較し、相対値をホール効果センサ17の状態と組み合わせて、始動時に適切なコマンドの適用を可能とするロータ3のおおよその位置を決めてもよい。この方法については、以下の説明で詳細に説明する。また、ロータ3の位置に依存する他の任意の電気量であって、始動時に励磁コイルに印加される励磁信号を決定するためにロータ3の位置を特定することを可能にする電気量を利用することも可能である。したがって、電気モータ1は、ロータ3の位置に応じて変化する電気量を測定するための手段、例えば、電気モータ1の相における電圧を測定するための手段を備えている。
【0041】
図6に、ロータ3の回転角の関数としてLa、LbおよびLeで示される相のインダクタンス値を表す曲線の例を示す。60電気角の間隔に対応するロータ3の各角度部分に対して、インダクタンスの相対値は異なる。この場合、ロータ3が位置し得る角度部分が、異なる相互インダクタンスを互いに比較することにより特定され得る。ホール効果センサ17が供給する信号Hも図6に示す。ホール効果センサ17が高レベルの信号を供給する場合、ロータ3は、高レベル信号に対応する3つの角度部分、本例において、角度部分60°−120°、180°−240°、および300°−360°のうちの1つにある。この角度部分において、相AのインダクタンスLaが、相BおよびCのそれぞれのインダクタンスLbおよびLeより高いと判断された場合、ロータ3は角度部分180°−240°に位置していると推定され得る。したがって、ロータ3を回転駆動するべく適切な励磁信号が印加され得る。
【0042】
図7は、相AおよびBのそれぞれのインダクタンスLaとLbとを比較するための第1測定モードを示す。この目的のために、電圧Vintが相AおよびBの端子に印加され、電圧Voutが相CとBとの間で測定される。測定された電圧Voutを印加電圧Vintの半分と比較する。測定された電圧がVint/2より大きい場合、相BのインダクタンスLbの値は、相AのインダクタンスLaの値より大きい。一方、測定された電圧がVint/2より小さい場合、相BのインダクタンスLbの値は相AのインダクタンスLaの値より小さい。
【0043】
あるいは、図8に示すように、電圧Voutを相の中間点と相Bとの間で測定してもよい。第1測定モードでは、電圧Vintが相AおよびBの端子に印加され、測定された電圧Voutが印加電圧Vintの半分と比較される。測定された電圧がVint/2より大きい場合、相BのインダクタンスLbの値は、相AのインダクタンスLaの値より大きい。一方、測定された電圧がVint/2より小さい場合、相BのインダクタンスLbの値は相AのインダクタンスLaの値より小さい。
【0044】
同様に、ロータ3が位置する角度部分を特定するように、インダクタンスLaの値とLeの値、ならびにインダクタンスLbの値とLeの値を比較することも可能である。
【0045】
図9に示す異なるインダクタンスを比較する別の測定モードによれば、電圧Vintが相AおよびBの端子間に印加され、電圧Vabが中間点と相Bの他方の端部との間で測定され、次いで電圧Vintが相BおよびAの端子間に印加され(インバータ10のスイッチ15の位置を変更することで正端子と負端子とを逆にする)、電圧Vbaが中間点と相Aの他方の端部との間で測定される。そして、電圧Vabと電圧Vbaとの差に対応する電圧Vdiffの値が計算される。電圧Vdiffの値に基づいて、インダクタンスLBに対するインダクタンスLAの相対値がこれより推定され得る。
【0046】
あるいは、図10に示すように、相CとBとの間の電圧V’ab、および相CとAとの間の電圧V’baを測定してもよい。そして、電圧V’abと電圧V’baとの差に対応する電圧V’diffが特定される。電圧V’diffの値に基づいて、インダクタンスLbに対するインダクタンスLaの相対値がこれより推定され得る。
【0047】
同様に、インダクタンスLaとLeとの相対値、およびインダクタンスLbとLeとの相対値がこれより推定され得る。
【0048】
また、測定を行うための電圧Vintの印加時間は、1乃至50μs、または好適には3乃至10μsの時間間隔から選択され、例えば5μsである。この時間は、測定回路の要素の静電容量によって測定が干渉を受けることを防ぐように十分に長く、且つ電気モータ1の始動時間に過度な影響が及ばないように十分に短くなければならない。
【0049】
図11は、一実施形態によるインダクタンス同士を比較するためのプロトコルのステップのフローチャートを示す。これらのステップは、例えば制御ユニット14により実行される。
−相AとBとの間に電圧ステップVintを5μsに亘って印加する第1ステップ201であって、相Aは電圧源13の正端子に接続し、相Bは電圧源13の負端子に接続している第1ステップ201、
−中間点と相Bとの間の電圧Vabを測定する第2ステップ202、
−電圧が印加されない5μsの休止に対応する第3ステップ203、
−相BとAとの間に電圧ステップVintを5μsに亘って印加する第4ステップ204であって、相Bは電圧源13の正端子に接続し、相Aは電圧源13の負端子に接続している第4ステップ204、
−中間点と相Aとの間の電圧Vbaを測定する第5ステップ205、
−電圧が印加されない5μsの休止に対応する第6ステップ206、
−相AとCとの間に電圧ステップVintを5μsに亘って印加する第7ステップ207であって、相Aは電圧源13の正端子に接続し、相Cは電圧源13の負端子に接続している第7ステップ207、
−中間点と相Cとの間の電圧Vacを測定する第8ステップ208、
−電圧が印加されない5μsの休止に対応する第9ステップ209、
−相CとAとの間に電圧ステップVintを5μsに亘って印加する第10ステップ210であって、相Cは電圧源13の正端子に接続し、相Aは電圧源13の負端子に接続している第10ステップ210、
−中間点と相Aとの間の電圧Vcaを測定する第11ステップ211。
【0050】
インダクタンスLaとLbとLeとを比較するためのこのプロトコルにより、異なる相AとBとCとの相対値を把握することができるとともに、ロータ3が位置する角度部分を推定することができる。
【0051】
図12は、電気モータ1を始動させる方法のステップのフローチャートを示す。これらのステップは、例えば制御ユニット14により実行される。
【0052】
本方法は、予備ステップ(図12には示さない)、例えば、ロータ3を回転駆動するように、ロータ3の位置に応じてコイルに印加される励磁信号を決定する第1予備ステップを備え得る。これは、図3での信号C1、C2およびC3の確定に対応する。また、本方法は、ロータの異なる位置に関連する電気量の値を特定する、例えば、ロータ1の位置に関する相のインダクタンス値の曲線、すなわち図6の曲線を特定する第2予備ステップを備え得る。
【0053】
第1ステップ101は、ホール効果センサ17の状態の特定に関する。ホール効果センサ17が供給する信号のレベルにより、ロータ3の位置に関する3つの想定可能な角度部分を特定することができる。
【0054】
第2ステップ102は、電気モータ1の少なくとも1つの位相のインダクタンスの測定、または、電気モータ1の相AとBとCとのインダクタンスの相対値の特定に関する。ステップ102は、例えば、図11を参照して説明したサブステップ201乃至212を備える。
【0055】
第3ステップ103は、ロータ3の位置の特定に関する。この特定は、ステップ101および102の結果に基づいて実施される。上述のように、ロータ3が位置する角度部分は、ホール効果センサ17が供給する信号、および相A、BおよびCのインダクタンスLa、LbおよびLeの相対値から推定され得る。ロータ3が位置する角度部分により、ロータ3の所望の回転を得るように印加される制御信号を決定することができる。
【0056】
第4ステップ104は、ロータ3を所望の回転方向において回転させ得る所定の制御信号を印加することに関する。
【0057】
第5ステップ105は、制御信号のシーケンスを印加することに関する。或る制御信号から別のものへの変化は、ホール効果センサ17の状態変化の間に生じる。
【0058】
したがって、本発明により、ロータ3の位置に応じて異なる電気量、例えば相A、BおよびCのインダクタンスを測定することにより、ホール効果センサ17の始動時にロータ3の位置を特定することが可能となる。これにより、電気モータ1の動作に必要とされるセンサの個数を削減することでこのような電気モータ1のコストが削減される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】