(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-530198(P2021-530198A)
(43)【公表日】2021年11月11日
(54)【発明の名称】循環ループを備えた自動合成反応器システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20211015BHJP
C07K 1/04 20060101ALI20211015BHJP
C07K 1/06 20060101ALI20211015BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C07K1/04
C07K1/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-556849(P2020-556849)
(86)(22)【出願日】2018年5月4日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月6日
(86)【国際出願番号】FR2018051142
(87)【国際公開番号】WO2019211531
(87)【国際公開日】20191107
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】520396049
【氏名又は名称】ポリペプタイド ラボラトリーズ フランス
【氏名又は名称原語表記】POLYPEPTIDE LABORATORIES FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルードマン・ホムブルガー,オリビア
(72)【発明者】
【氏名】マルティヌッツィ,イサベル
(72)【発明者】
【氏名】ボビエル,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】フランコム,エリック
【テーマコード(参考)】
4B029
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB15
4B029DG10
4H045AA20
4H045AA40
4H045FA34
4H045FA57
4H045FA61
(57)【要約】
本発明は、固相ペプチド合成を行うための反応器の自動化システムに関し、より具体的には、測定セルを介して反応器内の化学種をリアルタイムで測定することを可能にする、液体再循環ループを備えた反応器による自動化される固相ペプチド合成器に関する。このシステムは、複数の入口パイプ、即ち、(1)樹脂の導入専用のパイプ、(2)合成および洗浄溶媒の導入専用のパイプ、(3)導入されたアミノ酸を脱保護するための薬剤の導入専用のパイプ、(4)試薬の導入専用のパイプを備え、そして、アセンブリ反応器(9)および反応器の液体の再循環用ループ(10)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相ペプチド合成を実行するための反応器システムであって、
樹脂の導入専用の入口パイプ(1)と、
合成および洗浄溶媒の導入専用の入口パイプ(2)と、
供給されたアミノ酸の脱保護剤の導入専用の入口パイプ(3)と、
試薬の導入専用の入口パイプ(4)と、
アセンブリ反応器(9)と、
固相での反応の進行を間接的に定量化するための少なくとも1つの測定セル(11)を具備した、反応器の液体の再循環ループ(10)と、
を備えてなる、反応器システム。
【請求項2】
前記測定セル(11)が、分光光度測定セルであることを特徴とする、請求項1に記載の固相ペプチド合成を実行するための反応器システム。
【請求項3】
前記測定セル(11)が、近赤外測定セルであることを特徴とする、請求項2に記載の固相ペプチド合成を実行するための反応器システム。
【請求項4】
前記測定セル(11)が、ラマン分光法によって測定するためのセルであることを特徴とする、請求項2に記載の固相ペプチド合成を実行するための反応器システム。
【請求項5】
前記アセンブリ反応器(9)内に濾過システムを更に備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固相ペプチド合成を実行するための反応器システム。
【請求項6】
アミノ酸を予備活性化する、および/または粉末を溶解するための反応器(5)と、該反応器(5)を前記アセンブリ反応器(9)に接続する入口(6)とを更に備えることを特徴とする、請求項5に記載の固相ペプチド合成を実行するための反応器システム。
【請求項7】
前記再循環ループ(10)において、導電率を測定するためのセルを更に備えることを特徴とする、請求項6に記載の固相ペプチド合成を実行するための反応器システム。
【請求項8】
前記再循環ループ(10)において、紫外線吸光度を測定するためのセルを更に備えることを特徴とする、請求項6に記載の固相ペプチド合成を実行するための反応器システム。
【請求項9】
前記再循環ループ(10)において、ラマン分光法によって測定するためのセルを更に備えることを特徴とする、請求項6に記載の固相ペプチド合成を実行するための反応器システム。
【請求項10】
固相ペプチド合成方法であって、当該方法は以下のステップ、即ち:
a)アセンブリ反応器内で撹拌し、再循環ループを開始することによりカップリングするステップと、
b)混合物の化学種を定量化するための再循環ループ内での検出器の測定により、カップリングステップをリアルタイム監視するステップと、
c)前記アセンブリ反応器を洗浄するステップと、
d)合成溶媒および脱保護剤を前記反応器に導入し、前記反応器および前記再循環ループ内で撹拌を開始することにより脱保護するステップと、
e)検出器の測定により前記反応器内の脱保護ステップをリアルタイム監視するステップと、
f)前記脱保護剤を洗浄するステップと、
g)検出器の測定により前記反応器内の脱保護剤の濃度について洗浄ステップ(f)をリアルタイム監視するステップと、
を備えてなる、固相ペプチド合成方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、当該方法が次のステップ、即ち:
a)溶解反応器においてアミノ酸を予備活性化するステップと、
b)検出器からの測定により、前記反応器内での予備活性化ステップをリアルタイムで監視するステップと、
c)前記アセンブリ反応器に予備活性化混合物を導入するステップと
を備えてなることを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記予備活性化ステップのリアルタイム監視が、導電率計によって行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(f)における洗浄が、浸透によって行われることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
脱保護剤の濃度が、反応器出口で、リアルタイムで測定されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
溶媒の濾過のための、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法における浸透システムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相ペプチド合成を実行するための自動反応器システム、より具体的には、リアルタイムで測定セルを介して反応器内の化学種を測定することを可能にする液体再循環ループ反応器によって自動化された固相ペプチド合成器に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドは、ほとんどの生物の基本要素である結合アミノ酸鎖である。したがって、ペプチドおよびタンパク質、ならびにペプチドおよびタンパク質を合成する能力の研究は、生物科学および医学において非常に興味深い。
【0003】
固相ペプチド合成は、RB Merrifieldが固相法を使用した4つのアミノ酸で構成される配列の合成を発表した1963年に登場した(非特許文献1)。
【0004】
Merrifieldによる1963年の導入以来、固相合成は、均一相で知られているペプチド合成の限界を大幅に退けた。Merrifieldには、活性化エステルを使用する方法論と、不溶性ポリマーマトリックスへの最初のアミノ酸の固定とを組み合わせるという考えがあった。したがって、この新しい合成モードでは、パートナーの1つを固相に固定化することで、アミノ酸の1つの面がカップリングに使用され得るため、望ましくない反応を回避することが可能であった。不溶性ポリマーへのアミノ酸の固定化の別の利点は、これが溶液中の過剰な試薬の使用を可能にすることである。過剰な試薬はもはや最終製品の不純物とは見なされず、100%に近いカップリング効率を達成することができる。固相合成の最も重要な利点は、所望のペプチドが得られるまで、所望の生成物が不溶性ポリマーに付着したままであるため、各カップリング間の全ての精製ステップが排除されることである。次いで、ペプチドは化学的切断によってポリマーから分離される。固相ペプチド化学による進歩は、アミノ酸の活性化および保護のための新しい化学の開発だけでなく、多くの固体担体の開発に貢献してきた。現在、固相ペプチド合成には2つの主要な戦略が使用されている。これらの2つの戦略は、アミノ機能の保護のための、2種類のいわゆる直交一時保護Fmoc/Bocの使用に基づいている。2種類の保護基の主な違いは、それらの脱保護モードに関連している。Fmoc基の脱保護は塩基性媒体中で達成され、Boc基の脱保護は酸性媒体中で達成される。現在、Fmoc/tBu戦略が最も広く使用されているが、これは、固体担体からのペプチドの最終切断に濃縮TFA(トリフルオロ酢酸)が使用されるのに対し、Boc/Bnl戦略では、はるかに危険で取り扱いが難しい濃縮フッ化水素酸を使用する必要があるためである。これらの2種類の保護は、2つの異なるプロトコルに従って脱保護されるが、異なるアミノ酸のカップリングに使用されるプロトコルは類似している。したがって、固相ペプチド合成は、所望のペプチドが得られるまでの一連のカップリングおよび脱保護からなり、次いでこれは化学的切断によってポリマーから分離される。
【0005】
固相ペプチド合成中、カップリングまたは脱保護の有効性を評価することを可能にする技術は比色試験に基づいているが、これは定量的ではない。ペプチド鎖を定量的に分析できるようにするには、分子を固体担体から分離して、通常のRMN、HPLC、および質量分析技術で分析する必要がある。担体の分子を分析可能となる前に切断することからなるこの方法は、いわゆる困難な配列の合成中に遭遇する問題の原因である現象を理解するためには不十分である。
【0006】
質量分析はハイスループット分析を提供できるが、オンライン監視に標準的な分光法を使用することの主な欠点の1つは、研究対象の試料を可溶化する必要があるため、固体担体から解放されることである。したがって、化合物の測定は、通常、合成の最後に行われる。
【0007】
したがって、合成の品質を制御するための手段としてそのような切断および分析戦略を使用することには、いくつかの欠点がある。第一に、試料が消費されるため破壊的であり、さらに、切断試薬との二次反応が発生し、得られる複雑なスペクトルのために質量分析によるペプチド生成物の決定が困難となる可能性がある。
【0008】
先行技術における数多くの特許が、進行中のペプチド合成のリアルタイム分析を実行することを試みている。
【0009】
特許文献1(WO2012056300)は、ペプチド中間体またはオンライン生成物を特性評価するための、周囲雰囲気下での固相ペプチド合成(SPPS)のリアルタイム監視の方法を保護している。説明されている技術的解決策により、光源、電子スプレーユニット、および質量分析計を使用して、SPPSのステップ反応のプロセスをリアルタイムで追跡することができる。しかしながら、これらの分析技術の使用は、本発明による方法とは反対に、試料の破壊も伴う溶媒に分散された前記試料の採取という重大な欠点を有する。これは、破壊的分析手法と呼ばれる。さらに、言及された解決策は定量的ではなく、異なるステップ(カップリング後の洗浄またはピペリジンの洗浄)間で樹脂が適切に洗浄されているかどうかを知ることはできず、アミノ酸が樹脂にカップリングされているかどうかを、(あるいは樹脂のアミノ酸が脱保護されている場合において)知ることができるのみである。
【0010】
特許文献2(WO2017049128)は、試薬を除去する等のプロセスを変更することにより反応を後で制御することを可能にする検出器を使用することによって、固相ペプチド合成を制御するためのシステムを記載している。使用される検出器は、液相でシステムの検出ゾーンを介して測定し、流体に対応する1つまたは複数の信号が生成され得る。この目的において、特許文献2は、信号を生成するために、反応器の下流に配置された電磁放射検出器を使用して、反応器の出口で流体を検出する。したがって、パラメータは、固相ペプチド合成反応プロセスの前または最中に調整され得る。この方法の欠点は、制御が反応器の下流で行われ、反応器内または再循環ループ内では行われないことである。さらに、この方法は脱保護を監視するがカップリングは監視せず、最終的に、この手法ではマルチパスリアルタイム分析ができず、本発明によるシステムとは対照的に、この解決策は大過剰の試薬および溶媒を暗に意味し、これは多くの試薬を消費し、経済的に全く実行可能ではない。
【0011】
比色または分光光度型の破壊的分析方法には、不可逆的であるという欠点がある。さらに、それらは改質された生成物を生成し、さらに重要なことに、それらは樹脂−ペプチドアリコートで作製されるため、最終ペプチドの収量を低下させる。しかしながら、これらの方法は迅速であり、高価な機器を必要としないため、広く使用されている。
【0012】
非破壊分析法はまた、バッチプロセスでも使用され得る。例えば、官能基の出現または消失に基づく、赤外線による反応の監視について言及することができるが、これは、特に有機合成の分野において固相化学合成を監視し、ペプチド合成中のカップリングおよび脱保護を監視するために適用され得る。赤外線およびラマン分光法は、固体担体上の生成物の直接分析を可能にするため、反応生成物の検出および特性評価に広く使用されている技術である。FT−IR技術(フーリエ変換赤外分光法またはFT−IR分光法)の開発についても言及でき、これにより、固体、液体、または気体試料の赤外線吸収スペクトル、発光、光伝導、またはラマン拡散を取得することができる。
【0013】
それにもかかわらず、固相反応のためのこれらの技術の使用は、特にそれらの高いコストのために、そしてそれらが試料中の単一の位置を測定し得るのみであるために制限されている。
【0014】
多数の試料の情報を迅速かつ同時に取得することができるが、またアセンブリ反応器内の全ての試薬を監視する、リアルタイムの非破壊監視および分析のための新しいシステムおよび方法の開発が、特に、既存の方法とは異なり、反応時間の最適な制御、溶媒、試薬の使用、および大幅なコスト削減のために、合成の完全な制御および固相ペプチド合成の段階的な監視が可能となるため、真に求められている。さらに、新しいリアルタイム検出方法では、反応が終了するとすぐにステップを停止することで、副反応の促進を回避することができる。
【0015】
本発明は、そのようなシステムおよびそのような方法を提供し、上述の制限を解決するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開WO2012056300
【特許文献2】国際公開WO2017049128
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】RB MERRIFIELD,Solid Phase Peptide Synthesis I,the synthesis of a tetrapeptide,J.Am.Chem.Soc.1963,85(14),pp 2149−2154
【発明の概要】
【0018】
本発明は、固相ペプチド合成を行うための反応器システムに関連し、反応器システムは、樹脂の導入専用の入口パイプ(1)と、合成および洗浄溶媒の導入専用の入口パイプ(2)と、供給されたアミノ酸の脱保護剤の導入専用の入口パイプ(3)と、試薬の導入専用の入口パイプ(4)と、アセンブリ反応器(9)と、固相での反応の進行を間接的に定量化するための少なくとも1つの測定セル(11)を備えた反応器の液体の再循環ループ(10)と、を備える。
【0019】
好ましい実施形態によれば、測定セル(11)は、分光光度測定セルであり、好ましくは、測定セル(11)は、ラマン分光法によって測定するためのセルであり、さらにより好ましくは、測定セル(11)は、近赤外を測定するためのセルである。
【0020】
NIR分光法とも呼ばれる近赤外分光法は、化学で使用される定量的および定性的な分析技術である。この技術では、700〜2500nm(λ)の波長、すなわち波数14286〜4000cm
−1(v)に及ぶスペクトルを使用する。
【0021】
別の好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を実行するための反応器システムは、アセンブリ反応器(9)内に濾過システムをさらに備える。
【0022】
本発明による濾過システムは、有利には、焼結ステンレス鋼材料および/または焼結シートから作製された濾過システムである。
【0023】
別の好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を実行するための反応器システムは、アミノ酸を予備活性化する、および/または粉末を溶解するための反応器(5)と、反応器(5)をアセンブリ反応器(9)に接続する入口(6)とをさらに備える。
【0024】
好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を実行するための反応器システムは、予備活性化反応器(5)上に追加の溶媒(7)の入口パイプおよび追加の試薬(8)の入口パイプをさらに備える。
【0025】
別の好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を実行するための反応器システムは、再循環ループ(10)において、導電率を測定するための少なくとも1つのセルをさらに備える。
【0026】
別の好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を実行するための反応器システムは、再循環ループ(10)において、紫外線吸光度を測定するための少なくとも1つのセルをさらに備える。
【0027】
別の好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を実行するための反応器システムは、再循環ループ(10)において、ラマン分光法によって測定するためのセルをさらに備える。
【0028】
これらの測定セルは、再循環ループにすでに存在する測定セルに追加され得る。
【0029】
好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を実行するための反応器システムは、合成溶媒の導入専用の入口パイプ(7)のレベルで自吸式ポンプをさらに備える。
【0030】
別の好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を実行するための反応器システムは、反応器内の樹脂および/または液体のレベルを測定するためのレベルセンサをさらに備える。
【0031】
レベルセンサにより、反応器内に存在する液体のレベルを継続的に測定できるため、洗浄をリアルタイムで監視して、その効果を最適化し、使用する溶媒の量を低減することができる。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を達成するための反応器システムは、アセンブリ反応器(9)内に圧力センサをさらに備える。
【0033】
別の好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を達成するための反応器システムは、アセンブリ反応器(9)内に、反応器の底部の導電率セルをさらに備える。
【0034】
別の好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を達成するための反応器システムは、アセンブリ反応器(9)内に、反応器の底部のpHを測定するためのセルをさらに備える。
【0035】
別の好ましい実施形態によれば、固相ペプチド合成を達成するための反応器システムは、反応器(9)のレベルで、ラインの端部に位置する溶媒を分散させるための装置(デバイス)をさらに備える。
【0036】
本発明の別の態様は、固相ペプチド合成方法であって、当該方法は以下のステップ:
a)アセンブリ反応器で撹拌し、再循環ループを開始することによりカップリングするステップと、
b)混合物の化学種を定量化するための再循環ループ内での検出器の測定により、カップリングステップをリアルタイムで監視するステップと、
c)アセンブリ反応器を洗浄するステップと、
d)合成溶媒および脱保護剤を反応器に導入し、反応器および再循環ループ内で撹拌を開始することにより脱保護するステップと、
e)検出器の測定により反応器内の脱保護ステップをリアルタイムで監視するステップと、
f)脱保護剤を洗浄するステップと、
g)検出器の測定により反応器内の脱保護剤の濃度について洗浄ステップ(f)をリアルタイムで監視するステップと、を含む固相ペプチド合成方法である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によれば、アセンブリ反応器におけるカップリングステップの前に、この方法は、溶解反応器においてアミノ酸を予備活性化する予備ステップと、検出器からの測定により、反応器内での予備活性化ステップをリアルタイムで監視するステップと、アセンブリ反応器に事前活性化混合物を導入するステップとを含む。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、カップリングステップのリアルタイムの監視は、近赤外検出器、導電率計、UV検出器、ラマン分光検出器、および/またはpH検出器の中から選択される検出器の測定によって行われる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、予備活性化ステップのリアルタイム監視は、導電率計、UV検出器、ラマン分光検出器、および/またはpH検出器によって行われる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によれば、洗浄ステップのリアルタイム監視は、近赤外線検出器、導電率計、UV検出器、ラマン分光検出器、および/またはpH検出器の中から選択される検出器の測定によって行われる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、予備活性化ステップのリアルタイム監視は、近赤外線検出器、導電率計、UV検出器、ラマン分光検出器、および/またはpH検出器の中から選択される検出器の測定によって行われる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、ステップ(i)の洗浄は、浸透(percolation)によって行われる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によれば、浸透は、レーダ型センサによるレベル制御で行われる。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、脱保護剤の濃度は、反応器出口で、リアルタイムで測定される。この測定は、浸透中にその進行を監視し、溶媒の導入を停止して排液を終了するために行われる。
【0045】
本発明の別の態様は、洗浄をリアルタイムで最適化し、溶媒消費を最小化するために、浸透ステップのための樹脂床の高さに対する反応器内の液体の高さを決定するためのレベルセンサの使用である。
【0046】
本発明の別の態様は、溶媒の濾過のための本発明によるリアルタイムで監視するためのプロセスにおける浸透システムの使用である。浸透システムの使用中のリアルタイムの監視は、センサ、特にレーダ型センサを介して行われ、したがって、反応を監視し、溶媒および試薬の量をリアルタイムで制御してそのコストを制限することができる。
【0047】
本発明はまた、化学反応をリアルタイムで監視するための方法およびプロセスに関し、本発明による反応器システム、アセンブリ反応器および再循環ループにおける高度なオンライン制御により反応器システムの自動化を可能にするソフトウェアによって制御される制御ユニット(13)を含むものに関する。リアルタイムで監視するためのこの方法は、ペプチド合成反応、より好ましくは固相ペプチド合成に有利に使用される。
【0048】
有利には、本発明は、本発明の方法を実践するためのコンピュータ化された手段を備えるデバイスである。その別の態様によれば、本発明による方法は、本発明によるシステムにおいて予見されるコンピュータ化された手段によって少なくとも部分的に実践される。
【0049】
コマンドシステム(13)は、本発明に従う反応器システムの制御ユニットを備える。このユニットは、本発明によるシステムに有利に埋め込まれている。より好ましくは、この制御ユニットは、異なるセンサによって提供されるデータを使用して本発明によるシステムの制御の自動管理を可能にするように構成されたソフトウェア/アプリケーションの1つまたは複数のアイテムを備える固定コンピュータ化端末(例えば、PC、マッキントッシュまたはUnixシステム)および/またはモバイル(例えば、スマートフォン/タブレット型)を含む。したがって、本発明によるペプチド合成システムの測定セル(またはセンサも)オンになり、異なるセンサからデータを受信するとすぐに、ソフトウェア/アプリケーションは、電子ユニット内の制御信号をトリガーし、現在のステップを停止する又は停止しない。
【0050】
これを制限することなく、本発明によるシステムの前記構成されたソフトウェア/アプリケーションはまた、ペプチド合成に使用される試薬および溶媒のストックを管理する目的で、前記試薬および溶媒の性質および量に関する情報を収集することができる。所与の将来の期間にわたるソフトウェア/アプリケーションのこれらの構成されたアイテムによる統合は、試薬および溶媒のストックを、所望の時間における全ての合成ステップの良好な進行を保証するために必要であるが経済的に不利ではないレベルで保持するための暫定要素を統合することを可能にし得る。
【0051】
本発明によれば、測定セルおよびセンサは、同等に参照される。例えば、赤外線センサまたは赤外線測定セルは、赤外線波長を検出する赤外線検出デバイスである。
【0052】
本発明のデバイスおよび方法は、既存の解決策に対して多くの利点を有する。
【0053】
その内部に、および/または循環ループ内に高度なオンライン制御を備えた反応器を使用すると、ステップがいつ終了したかを正確に知るために、反応の各ステップを監視することができる。このシステムにより、大幅な時間の節約が得られる。さらに、サンプリングする必要のある試料がより少ないため、操作者は危険な試薬に曝露されることが少なくなる。本発明による反応器システムおよび合成方法はまた、二次反応を制限することによって反応が終了するとすぐに反応を停止し、合成されたペプチドの純度を最適化することを可能にする。
【0054】
監視(モニタリング)は、近赤外線センサに加えて導電率および温度により反応器内でも実行され得るが、反応器の再循環ループにより、導電率およびUVを測定するためのセンサ等、FTNIR(フーリエ変換近赤外分光法)に加えて多数のセンサが設置され得るため、液相で行われることが好ましい。
【0055】
本発明によるシステムおよび方法の別の利点は、全てのFmoc保護された天然アミノ酸に対して単一の較正が使用されることである。本発明によるシステムおよび方法はまた、反応がいつ終了したかを知るために、Fmoc保護アミノ酸を脱保護するステップ中の脱保護剤およびジベンゾフルベンの放出を正確に定量化することを可能にする。
【0056】
本発明によるシステムおよび方法はまた、洗浄がいつ完了するかを知るために、洗浄および閾値までの試薬の濃度の減少を監視することを可能にする。この高度なオンライン制御により、反応の進行を監視するだけでなく、それを自動化に使用することもできる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態によれば、閾値に達したとき、または安定化が確立されたときに、どの測定セルがステップの終了を決定するかを選択することが可能である。したがって、反応器は、オンライン監視結果に従って、数ステップで自動的に動作することができる。
【0058】
樹脂床の高さに対する反応器内の液体の高さを決定することができるレーダ型センサにより、また再循環ループでの監視により、反応器は自動的に動作することができ、したがって、浸透モードに従って動作することにより、樹脂のより効果的な洗浄をもたらし得る。
【0059】
有利には、本発明によるシステムおよび方法は、浸透プロセスを使用して溶媒を洗浄し、使用される試薬および溶媒の量によってオンライン監視を最適化する。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によれば、ユニットまたは浸透プロセスが使用される場合、液体は、全ての洗浄のために反応器内で一定に保たれなければならない液体の高さの制御により、反応器の出口流量と同じ流量で、反応器の上部によって樹脂上に導入される。
【0061】
この洗浄モードは、充填された樹脂床と、樹脂の表面に液体を良好に分配するための、反応器の上部にある液体の入口のための分配システムとを含む。この洗浄モードは最も効果的であり、他の既存のモードと比較して溶媒の消費量を大幅に削減し得る。反応器はまた、数分で2つの異なるステップ間で温度を変えることができるように温度が制御されている。
【0062】
本発明は、環境に害を与える試薬、実際に消費される溶媒および廃液(有機溶媒)の量を大幅に低減することにより、出発生成物の購入および残留液体の処理に必要なコストを削減する。
【0063】
本発明は、以下の発明の詳細な説明、および例示として与えられ、したがって本発明を限定するものではない添付の図面から、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】本発明のペプチド自動合成装置における化学種の変化をリアルタイムで測定することができる、反応器の液体再循環ループ(10)を使用して固相ペプチド合成を実現する合成反応器システム(14)を示す概略図である。
図1の参照番号は、次の要素を示している:樹脂の導入専用の入口パイプ(1)、任意選択で自吸式ポンプによって導入される、合成溶媒の導入専用の入口パイプ(2)。好ましい実施形態によれば、アミノ酸の、および/または粉末の溶解のための予備活性化反応器(5)が、入口パイプ(6)によりアセンブリ反応器(9)に接続され、自吸式ポンプによって導入されるアミノ酸の脱保護剤の導入専用の入口パイプ(3)および溶媒の導入専用の入口パイプ(4)が、アセンブリ反応器(9)に接続され、試薬の導入専用の追加の入口パイプ(8)および溶媒の導入専用の入口パイプが、予備活性化反応器(5)に接続されている。反応器の液体再循環ループ(10)は、少なくとも1つの検出器(11)、好ましくは近赤外分光光度測定セル、再循環ループの高度なオンライン制御により反応器システムの自動化を可能にするソフトウェアによって制御されるコマンドモジュール(13)を含む。アセンブリ反応器(9)の再循環ループ上のセンサの出口にある三方弁(12)は、必要に応じて、排液モードへの移行/停止を可能にする。
【
図2】赤外線による定量のためのUV(390nm)によるピペリジンの較正曲線を示す(グラフである)。
【
図3】0.01%〜35%vのピペリジンの較正曲線を示す(グラフである)。
【
図4】0.01%〜1%vのピペリジンの較正曲線を示す(グラフである)。
【
図5】液相でのペプチド樹脂へのヒスチジンのカップリングの経時的なモニタリング(監視)を示す(グラフである)。試薬の消失および生成物(DICU)の形成の観察である。
【
図6】ヒスチジンの脱保護ステップの監視を示す(グラフである)。
【
図7】ヒスチジンの脱保護後のピペリジンの洗浄を示す(グラフである)。
【
図8】一定の浸透流量での経時的な脱保護剤の消失を示す(グラフである)。
【発明を実施するための形態】
【0065】
[発明の詳細な説明]
以下に、本発明によるシステムおよび方法の好ましい実施形態および実践について説明する。この説明は、添付の図も参照して行われる。
【0066】
合成反応器は、25リットルの容量を有するステンレス鋼の反応器である。樹脂を保持し、溶媒を排出するために、濾過デバイスが反応器の底に配置されている。この濾過デバイスは、焼結ステンレス鋼材料で形成されているが、濾過シートまたは当業者に知られている他の任意の濾過システムからなってもよい。
【0067】
反応器は、樹脂および液体を可能な限り混合するために撹拌ブレードを有する。この撹拌ブレードは、両回転方向に回転することができる。反応器の上部には、いくつかの入口があり、そのうちの1つの入口は樹脂の導入専用であり、もう1つの入口は合成溶媒(DMF)の導入専用であり、合成溶媒は自吸式ポンプによって導入される。導入流量、および導入体積は、マスフローセンサにより測定および定量化される。流量は、35l/h(リットル毎時)〜600l/h(リットル毎時)の範囲である。溶媒は、熱交換器を介して反応器に進入する前に、必要に応じて加熱または冷却され得る。合成の各ステップ間で反応器を正しく洗浄するために、溶媒を分散させるためのデバイスがラインの端部、反応器のレベルに位置している。このデバイスは、20〜1000l/h(リットル毎時)の間で正しく動作する。アミノ酸を脱保護するための薬剤の導入専用の入口パイプが、アセンブリ反応器の上に配置されてもよい。これは、流量が20〜1000l/hの自吸式ポンプによって行われる。導入流量、および導入体積は、マスフローセンサにより測定および定量化される。脱保護剤は、反応器に導入する前に、合成溶媒と予混合されてもよく、またはされなくてもよい。体積および流量がマスフローセンサによって制御される追加の溶媒用の入口パイプも、アセンブリ反応器の上に配置され得る。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、反応器を不活性にすること、または反応器を窒素でフラッシングすることを目的として、窒素入口パイプがアセンブリ反応器の上に配置される。
【0069】
本発明の別の実施形態によれば、アセンブリ反応器は、以下の様々なセンサを装備することができる。
・近赤外分光センサ、
・反応器内の樹脂または液体のレベルを測定するための(レーダ型の)レベルセンサ、
・圧力センサ、
・固液相での合成の任意の瞬間の導電率を測定するための、反応器の底にある導電率セル、
・固液相での合成の任意の瞬間のpHを測定するための、反応器の底にあるpHメーター。
【0070】
アセンブリ反応器の液体再循環ループは、導電率セル、近赤外セル(1mm〜30mmの光路)、およびUVセル(0.5mm〜10mmの光路)である測定セルを介して、反応器内の化学種の変化のリアルタイム測定を可能にする。所与のステップにおいて、ループへの液体の流入は何度も発生し、反応が遅い、または速い場合は、ステップに応じて再循環の流量が調整され得る。
【0071】
ステップが終了すると、反応器からの液体は、再循環ループの測定セルを通過することにより焼結材料を介して排液され、これにより反応器の出口での液相に関する情報を得ることができる。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、アセンブリ反応器は、粉末を溶解するために、または反応器に導入する前にアミノ酸を予備活性化するために使用され得る別の反応器に接続される。この反応器は、容量が10リットルのガラス製二重エンベロープ反応器である。これは、粉末を溶解することができるスターラーを備える。これは、任意選択で導電率プローブおよび圧力センサを有する。粉末を導入するために、上部に入口がある。溶媒の入口パイプは、アセンブリ反応器と同様に、自吸式ポンプにより、20〜1000l/h(リットル毎時)の範囲で溶媒を導入することができる。流量および導入体積は、マスフローセンサで測定される。溶媒またはカップリング剤を導入するための最後の入口パイプが存在する。
【0073】
アセンブリは、高度なオンライン制御により設備の自動化を可能にするソフトウェアによって制御される。
【実施例】
【0074】
[実施例1:設備の動作]
固相合成中、これは専用の入口を介して樹脂を反応器に導入することから始まる。事前に定義された体積の合成溶媒が、専用の入口を介して事前に定義された流量で加えられる。樹脂と溶媒の混合物は撹拌され、次いで樹脂が膨張したら、反応器底部の出口から溶媒が排液される。動作は数回再開される。同時に、アミノ酸またはリンカーが、DMFの溶解反応器内で溶解および/または予備活性化される。これは撹拌される。カップリング剤は添加されるか又は添加されない。添加される場合、好ましくは導電率セルによって、予備活性化ステップが続く。
【0075】
予備活性化が終了すると、混合物はアセンブリ反応器に導入される。アセンブリ反応器で撹拌が開始され、再循環ループが開始される。再循環ループでの赤外線測定により、混合物の化学種を定量化することができる。試薬の濃度は減少し、反応の副生成物の濃度は安定化するまで液相で増加する。安定化に達すると、ステップは終了し、次いでアセンブリ反応器は、センサの出口にある三方弁により排液モードへの移行を可能にする再循環ループを介して排液される。
【0076】
カップリングステップが終了すると、合成溶媒が事前に定義された体積および流量で反応器に導入される。溶媒と樹脂の混合物は撹拌され、再循環ループが開始される。導電率の信号が反応器内で安定している場合、および/または再循環ループ内の信号が安定している場合、反応器の排液が開始される。このステップは、反応器内の所望の残留濃度に達するまで、数回、好ましくは少なくとも3回行われる。
【0077】
樹脂を洗浄するこのステップが終了すると、脱保護ステップが開始される。合成溶媒および脱保護剤は、専用の入口パイプを介して反応器に導入される。次いで、反応器内の撹拌が開始され、再循環ループもまた開始される。オンライン測定セルにより、リアルタイムで脱保護ステップが反応器内で監視される。
【0078】
導電率は、反応の終了を示す安定化まで、反応器内で増加する。反応器内の種(化学種)の定量化は、好ましくは、赤外線セルにより行うことができる。この場合、ジベンゾフルベンの形成および脱保護剤(ここではピペリジン)の消費の監視が可能である。
【0079】
UV吸光度の増加は、ジベンゾフルベンの形成を明らかにし、その安定化は、脱保護ステップの終了を示す。UVによるこの種(化学種)の定量化は、UVの安定化が信号の解釈に十分でない場合に実行され得る。
【0080】
ステップが終了すると、反応器の排液が行われる。脱保護剤を洗浄するステップが続く。この洗浄ステップは、2つの様式で行うことができる。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、洗浄ステップは、洗浄溶媒、ここではDMFを導入し、撹拌および再循環ループし、次いで排液するという連続バッチで行われる。各バッチで、赤外線セルが反応器内のピペリジンの濃度を測定する。赤外線測定でピペリジンの閾値に達すると、最後の排液が行われる。
【0082】
別の好ましい実施形態によれば、洗浄ステップはまた、驚くべきことに、以下を備えるシステムにより、浸透によって行うことができる:(そのシステムは)
樹脂床上の均一な洗浄溶媒の分布、並びに
適切なセンサによる液体のレベルの測定、および液体のレベルの測定に基づく流量の調整(を備える)。
【0083】
DMFを用いて洗浄体積の最適化が達成される。DMFを導入する流量は、好ましくは、反応器の排液流量に等しく、したがって、反応器内の液体の一定レベルが維持され、樹脂床のレベルに最も近く維持される。脱保護剤、例えばピペリジンの濃度の測定は、反応器の出口で、リアルタイムで測定される。脱保護剤の閾値に達すると、洗浄溶媒の導入が停止され、排液が終了する。
【0084】
樹脂が洗浄されると、ペプチドのアセンブリ(組立て)の最後まで同じステップが再開され、すなわち、アミノ酸の予備活性化または溶解、樹脂上のアミノ酸のカップリング、樹脂の洗浄、アミノ酸の脱保護、樹脂の洗浄が再開される。
【0085】
測定セル(特に近赤外線)を備えるアセンブリ反応器での再循環ループの使用は、従来技術の解決策に対して多くの利点を有する。特に、以下の化学種は、ペプチドのアセンブリが見出されるステップに従って直接的および非間接的に定量化され得る。
【0086】
カップリング中およびカップリング後の洗浄中に、当該システムは、Fmoc−aa−OH、Fmoc−aa−OBt、Fmoc−aa−OxymaまたはFmoc−aa−DIC等の活性化状態に関係なく、Fmoc型基(Fmoc−aa)によって保護されているアミノ酸を定量化でき、
HOBt、Oxyma、DIC、DICU、または水、カップリング剤の存在下でのジイソプロピル尿素(DICU)、例えば、HOBt、Oxyma、DIC、Fmoc−aa;DIC、DICUおよびFmoc−aaの存在下でのHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)+Fmoc−aa−OBtの合計;
DIC、DICUおよびFmoc−aaの存在下でのOxyma+Fmoc−aa−oxymaの合計;
DIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)+Fmoc−aa−DICの合計;
の存在下または非存在下で、アミノ酸が何であれ有効である。
【0087】
以下の媒体(又は培地)中、他のカップリング剤の存在下で、全ての種の存在または非存在(種の生成、消失、または濃度の安定化)の変化を、必要に応じて定量化せずに監視することもできる。
DIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)+Fmoc−aa−OH、Fmoc−aa−Obt、Fmoc−aa−Oxyma、Fmoc−aa−DIC
【0088】
[赤外線による定量のためのピペリジンの較正]
赤外線による定量方法を確立する前に、較正曲線を作成する必要がある。
本発明者らは、当業者に周知であるピペリジンの既存の定量化方法、すなわちUV分光計による定量化方法を任意に使用することを選択した。
【0089】
これは、DMF中のピペリジンをDNFBで誘導体化し、次いで誘導体化の30分後に390nmでUV分光法によって分析する間接的な方法である。非限定的な例として、本発明に従って使用可能な分光光度計は、Genesys 10SUV−Visと呼ばれるThermo Scientific社のものである。
誘導体化の30分後、ピペリジンの濃度は390nmで測定される。
ピペリジンの較正曲線を
図2に示す。
【0090】
UVでの較正曲線が達成されたら、DMF中0.01〜35体積%の間のピペリジンの様々な既知の濃度で、ピペリジンの試料を調製する。低い値のピペリジンの精度を高めるために、0.01%〜1%の間のピペリジンの試料を多数調製した。
【0091】
次いで、これらの試料を、本発明によるシステムのものと同一であるかどうかにかかわらず、赤外線分光計(商品名Matrix−F、製造業者Bruker)の測定セルに通過させた。
【0092】
赤外線によるピペリジンの正確な定量化のための方法を得るために、実際の試料、すなわち脱保護ステップおよび脱保護後の洗浄ステップからの試料もセルに通過させる必要がある。これらには、DMF中のピペリジンに加えて、特にジベンゾフルベン、試薬トレース(Fmoc−aa、DIC、DICU、HOBt、Oxyma)が含まれている。
【0093】
赤外線による定量化はスペクトルバンドに基づく定量化であり、高精度の波長ではないため、較正中に実際の合成溶液に近い試料があると便利である。
【0094】
近赤外定量は、マトリックス分解能と統計的方法を利用した多変数較正である。これらの方法は、赤外線分光計を制御するためのソフトウェアと直接統合されている。
【0095】
脱保護および脱保護後の洗浄の実際の試料を、赤外線セルに通過させ、試料中のピペリジンの実際の濃度を決定するために、UV分光法によって同時に分析した。
【0096】
試料が既知のピペリジン濃度でNIR(近赤外:NEAR−INFRARED)セルを通過すると、多変量解析が開始して、ソフトウェアによって提案された最良の定量方法を決定することができる。次いで、この方法は、既知の濃度で他の試料を通過させることによって試験および証明され、提案された較正曲線が実際にピペリジンを望ましい許容誤差で定量化できるかどうかが確認される必要がある。
【0097】
ピペリジンの場合、測定範囲が非常に広く(0.01%〜35%のピペリジン)、低ピペリジン含有量での精度が重要であるため、2つの較正曲線が作成された。
既知のピペリジン濃度の試料を、赤外線定量法によって分析した。
図3は、既知のピペリジン濃度の試料が、0.01%〜35%のピペリジンの赤外線定量法によって分析された較正曲線を示す。
図4は、0.01%〜1%ピペリジンの間のピペリジンの較正曲線を示す。
結果は、赤外線によるピペリジンの較正曲線の検証を可能にする。
【0098】
[システムに存在するさまざまな種のモニタリング(監視)]
本発明は、ペプチド合成の異なるステップの間の異なる種の赤外線による監視および定量化の非限定的な例を提案する。
【0099】
<所与のペプチド樹脂上でヒスチジンをカップリングするステップの監視>
アミノ酸およびHOBTが、溶解反応器内で溶解される。次いでそれらは、DICと共にアセンブリ反応器に導入される。撹拌が開始され、再循環ループが開始される。
経時的な赤外線分析を
図7に示す。
【0100】
信号の安定化は、約2時間後に生じる。種、特にFmoc−aa−*(ヒスチジンに対応)の最終濃度は、予測される濃度に近い。カップリングが終了する。反応器の排液を行うことができる。
【0101】
DMFがアセンブリ反応器に導入される。このようにして撹拌が開始され、再循環ループが開始される。かくして、脱保護に必要な量のピペリジンが加えられる。再循環ループ内の赤外線による信号の測定を
図8に示す。
【0102】
これは、アセンブリ反応器でのピペリジンの消費およびジベンゾフルベンの放出を示している。脱保護が生じる。信号の安定化が観察されると、反応は生じなくなる。その後、反応器は排液される。
脱保護が終了すると、バッチ洗浄中にピペリジンの濃度の変化が監視され得る。
結果を
図9に示す。
【0103】
このために、事前に定義された量のDMFがアセンブリ反応器に導入される。撹拌および再循環ループが開始される。赤外線測定により、反応器内に存在するピペリジンの量が定量化される。ピペリジンの濃度が安定するたびに、反応器は排液される。得られたピペリジンの値が十分に低くない限り、所望の濃度が得られるまで洗浄が再開される。
【0104】
[浸透によるシステムの洗浄時間の最適化]
本発明の好ましい実施形態によれば、当該化学合成反応器システムは、洗浄時間および使用される洗浄溶媒の量も最適化するために、浸透システムに接続されている。
【0105】
本発明の意味において、浸透(percolation)とは、溶媒、特に洗浄溶媒が、抽出を実行するために樹脂等の固定床を通過することを意味する。
【0106】
浸透は、濾過システムの固定床に単純に堆積されている樹脂で(且つ)、樹脂床を通る洗浄溶媒のいかなる好ましい経路も回避するためにその表面上に均一および水平に分布している樹脂、例えば、4−メチルベンズヒドリルアミン塩酸塩樹脂または当業者に知られている任意の他の樹脂(確認を必要とする、または別の例を与える)の上で行われる。
【0107】
DMF等の洗浄溶媒は、樹脂床を乱さないようにする分配システムにより導入され、その表面で水平に保たれる。
【0108】
再混合現象を制限することにより使用される洗浄溶媒の量を減らすために、樹脂の上の液体レベルは、樹脂床を乱すことなく、可能な限り樹脂床の近くに制御される。
【0109】
固相(樹脂)と液相(洗浄溶媒)との間で除去されるべき種の移動速度を決定するため、洗浄溶媒の流量が最適化される。
【0110】
したがって、過度に高い流量は種を拡散させることができず、洗浄溶媒の過剰消費を伴い、過度に低い流量は種を拡散させることができるが、長すぎる洗浄時間を伴う。
【0111】
次の例は、洗浄流量に従い、洗浄の効果が同じではないことを示す。
実験は、ペプチドがカップリングされた高さ10cmの樹脂床を含む焼結材料を備えた直径10cmのガラス反応器内で行われる。洗浄溶媒による浸透を行うことにより、脱保護剤の濃度を低減することが求められる。樹脂床は均質および水平であり、優先的な経路はなく、樹脂床が表面上で水平を維持するように洗浄溶媒が分配される。
【0112】
次の表に、浸透による洗浄の効果に対する洗浄溶媒の影響を示す。
【表1】
【0113】
浸透流量が50ml/分の場合、最適な洗浄を行うには、930mlの洗浄溶媒が必要であり、これは最大20分の洗浄である。
300ml/分の浸透流量では、同じ最適な洗浄を達成するために、1200mlの洗浄溶媒が必要であり(50ml/分の流量に対して+20%の追加溶媒)、これは4分間の洗浄である(50ml/分の流量に対して−79%の時間)。
流量が高すぎると、同じ洗浄閾値に到達するためにより多くの洗浄溶媒が必要になるが、洗浄時間は短くなることが分かる。
【0114】
[本発明によるシステムでの浸透の結果]
以下の例は、樹脂床高さ5.6cmの本発明の反応器での浸透による洗浄を示す。
再循環ループのオンライン分析により、脱保護剤(ここではピペリジン)の除去を正確に定量化することができる。
図8は、一定の浸透流量での経時的な脱保護剤の消失を示す。
【0115】
以上のように本発明を説明したが、本発明は多くの様式で修正され得ることは明らかである。そのような変形は、本発明の意味および範囲からの逸脱と見なされてはならず、当業者にとって明らかである全ての修正は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0116】
5 予備活性化反応器/溶解反応器
9 アセンブリ反応器
10 再循環(用)ループ
11 検出器(測定セル)
12 三方弁
13 制御ユニット(または、コマンドシステム)
【国際調査報告】