(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-530242(P2021-530242A)
(43)【公表日】2021年11月11日
(54)【発明の名称】菌類学的製品を生成する方法及びこの方法によって作られた製品
(51)【国際特許分類】
C12N 1/04 20060101AFI20211015BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20211015BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20211015BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20211015BHJP
【FI】
C12N1/04
C12N1/14 A
C12N1/00 P
C12N5/077
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2021-503749(P2021-503749)
(86)(22)【出願日】2019年7月23日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月18日
(86)【国際出願番号】US2019042941
(87)【国際公開番号】WO2020023450
(87)【国際公開日】20200130
(31)【優先権主張番号】62/701,906
(32)【優先日】2018年7月23日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520165401
【氏名又は名称】エコベイティブ デザイン リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】カールトン アレックス
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー エベン
(72)【発明者】
【氏名】マッキンタイヤー ギャヴィン
(72)【発明者】
【氏名】カプラン−ビー ジェシー
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA57X
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD41
4B065BD43
4B065CA41
4B065CA60
(57)【要約】
本発明による菌類学的バイオポリマーのパネルは、真菌の菌糸体で全体的に構成され、所望の特性を付与するために後処理され、かかる特性は、食品又は組織用足場として使用するためのテクスチャー、風味、及び栄養プロファイルである。パネルは、植物由来のタンパク質、脂質、微量栄養素、及び選択された香味剤のうちの少なくとも1つの添加剤を含むのがよい。成長培地の成長条件は、後処理を使用する場合もしない場合も、分化されていない真菌材料の所望の密度、形態及び/又は組成を獲得するように調整される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌類学的製品を生成する方法であって、
全体的に成長用培地上の真菌の菌糸体からなる菌類学的ポリマーの多孔組織を、きのこへの真菌の完全な分化を防止しながら成長させるステップを含み、前記成長用培地は、栄養基材と真菌から構成され、
更に、菌類学的ポリマーのパネルを前記多孔組織から取出すステップと、
パネルを使用のために包装するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記成長用培地は、15%の粗タンパク質と、33%の非繊維炭水化物と、28%のリグニンと、14%の粗脂質で構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に、パネルに、少なくとも1つの添加剤を注入するステップを含み、前記添加剤は、動物由来の肉製品をパネル内で模倣するために、植物由来のタンパク質、脂質、微量栄養素、及び所望の香味剤からなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記注入するステップは、真空下で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記注入するステップは、パネルを前記少なくとも1つの添加剤に浸すステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの添加剤は、植物由来の添加剤、細胞由来の添加剤、発酵させたバクテリア又は真菌由来の添加剤、及び動物由来の添加剤のうちの1つである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
更に、パネル内における生物濃縮のために、高レベルの必須栄養素ミネラルを前記成長用培地内に含ませるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
更に、香料添加剤をパネルに、浸すこと及び真空注入の一方によって追加するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
更に、パネルの保存可能期間を増大させるために、ブロック化合物を成長用培地に追加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
更に、パネルを希釈過酸化水素(3.5%)内で洗浄し、既知の悪臭を除去する温度及び圧力で真空乾燥させるステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
更に、パネルを機械的に柔らかくするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記機械的に柔らかくするステップは、ピンのアレイをパネルに刺すステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
更に、その後、パネルを柔らかくするために、パネルをキチナーゼ浴内に配置するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
更に、パネルを、加熱されたSDS浴内で超音波処理を用いて脱細胞化するステップと、
その後、脱細胞化されたパネルを滅菌するステップと、
完全な3次元細胞構造を体外で形成するために、ウシ属の筋細胞を胎児のウシ属の血清の浴内でパネルに植菌するステップと、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
菌類学的バイオポリマーのパネルであって、
真菌の菌糸体で全体的に構成され、植物由来のタンパク質、脂質、微量栄養素、及び選択された香味剤のうちの少なくとも1つの添加剤を含む、パネル。
【請求項16】
前記添加剤は、パネル内で動物由来の肉製品を模倣する、請求項15に記載のパネル。
【請求項17】
更に、植菌されたウシ属の筋細胞をパネル内に含む、請求項15に記載のパネル。
【請求項18】
更に、保存可能期間を増大させるためのブロック化合物をパネル内に含む、請求項15に記載のパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は仮特許出願ではなく、2018年7月23日に出願した米国仮特許出願62/701,906号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、菌類学的製品を生成する方法及びこの方法によって作られた製品に関する。詳細には、本発明は、キノコ菌糸体を栄養マトリックスとして生成する方法に関する。さらに詳細には、本発明は、キノコ菌糸体を細胞培養及び食料ための栄養マトリックスとして生成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1から知られているように、自己支持型複合材料が、ばらばらの粒子の基材と、ばらばらの粒子の中及びその周りを延びるように相互連結された菌糸体細胞のネットワークで作られ、かかるネットワークは、ばらばらの粒子を互いに結合させる。一般的には、これらの複合材料は、菌類学的バイオ複合材として分類され菌類学的バイオ複合材は、リグノセルロース系廃棄材料と真菌細胞組織、場合によっては補助栄養素(ミネラル、ビタミン等)で構成される。
【0004】
公開された特許文献2から知られているように、全体的に真菌の菌糸体で構成される菌類学的バイオポリマー製品は、隙間空間以外シールされた環境内で、選択された真菌を栄養基材に植菌することによって作られるのがよく、かかる隙間空間は、真菌の菌糸体のネットワークで実質的に満たされる。菌類学的バイオポリマー製品を生成するための環境条件、すなわち、高含有量(5〜7容量%)の二酸化炭素(CO
2)及び高温(85〜95°F(29.4〜35℃))は、真菌をキノコに完全に分化させることを防ぐ。茎、かさ、又は胞子は生成されない。バイオポリマー製品は、ツールの隙間空間の中に成長し、この隙間空間を、分化していない菌糸体キチンポリマーで満たし、引き続いて、バイオポリマー製品を基材から抽出して乾燥させる。
【0005】
2018年11月14日に出願された特許文献3からも知られているように、バイオポリマー材料を成長させる別の方法は、成長用培地の培養を採用し、成長用培地は、閉鎖された培養室の中に配置された容器内の栄養基材及び真菌で構成され、培養室は、湿度、温度、二酸化炭素、及び酸素の予め定められた環境に維持され、各容器の上を通過する空気流を有する。菌類学的バイオポリマーを、乾燥マスを基礎材料とする乾燥密度0.5〜4ポンド/立方フィート(8〜64グラム/立法メートル)のパネルの中に成長させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9485917号
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0033620号
【特許文献3】米国特許出願第16/190585号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、機能的製品を作るのに使用される菌類学的バイオポリマー材料を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、食品の生産ために大量生産される特別注文の非動物マトリックス及び生物医学適用品等を作り出すのに使用される菌類学的バイオポリマー材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概略的には、本発明は、食品の生産ために大量生産される特別注文の非動物マトリックス及び生物医学適用品等を作り出すための方法を提供する。
【0010】
特に、本発明は、菌類学的製品を生成する方法を提供し、かかる方法は、特許文献3に記載されているように全体的に栄養基材と真菌で構成された成長用培地の上の真菌の菌糸体からなる菌類学的ポリマーの多孔組織を、きのこへの真菌の完全な分化を防止しながら成長させるステップを含み、特許文献3の開示を本明細書に援用する。このステップは、きのこへの真菌の完全な分化を防止しながら菌糸体バイオポリマーを生産するのに十分な湿度、温度、二酸化炭素、及び酸素の予め定められた環境に維持された閉鎖培養室内で行われる。
【0011】
本発明によれば、かかる方法は、菌類学的ポリマーのパネルを前記多孔組織から取出すステップと、パネルを使用のために包装するステップを含む。
【0012】
かかる方法(処理)は、大きく且つ不活性な組織パネルの生産を可能にし、かかる組織パネルを更に修正して、食材又は組織用足場(tissue scaffold)として使用するための特別注文のテクスチャー、風味、及び栄養プロファイルを有する材料を生成するのがよい。
【0013】
かかる方法は、成長及び/又は後処理の使用の間、口当たり及び/又は風味、脂質、細胞培養等への親和性を改良するために、分化していない真菌材料の密度、形態、及び組成を調整することを含む。
【0014】
第1の実施形態では、培養室内の成長条件を、肉に似ている整列した高分子構造を生じさせるように変更し、次いで、香味剤及びその他の添加剤を用いて補正するのがよく、香味剤及びその他の添加剤は、限定するわけではないが、タンパク質、脂質、香味料、芳香族化合物、ヘム分子、微量栄養素、及び着色剤を含む。
【0015】
第2の実施形態では、成長過程の間、香味剤及びその他の添加剤を、液体又は固体の堆積又は自然な細胞内への取込み(バイオ吸着)の何れかによって、成長用培地の上に堆積させて、例えば、成長用培地内のミネラル含有量を増大させ、組織のパネル内における最終含有率を増大させる。
【0016】
第3の実施形態では、望まない残留物(例えば、悪臭、自己安定性に影響を及ぼす酵素等)を、後処理又は培養条件の何れかの変更によって、パネルから除去する。
【0017】
第4の実施形態では、培養及び/又は後処理の条件を、動物の肉にテクスチャー的に似ている組織のパネルを生じさせるように変化させ、例えば、温度や空気流の制御及び/又は組織の構造の機械的、酵素的、又は化学的変更によって、整列を増大させ且つ成長密度を減少させる。
【0018】
第5の実施形態では、(任意の干渉残留物を洗い流した又はすべてを含んだ)組織のパネルを機械的に柔らかくして、自然の組織の密度にし(例えば、機械的圧縮、真空凝縮、菌糸体繊維をからませるためのニードル加工)又は繊維を更に配向させる(例えば、繊維の向きの平面におけるカレンダローラによる圧縮)。タンパク質、脂質、香味料、芳香族化合物、ヘム分子、微量栄養素、及び着色剤等の追加材を、柔らかくする前又はその直後の何れかにおいて、菌糸体マトリックスの中に付与するのがよい。
【0019】
第6の実施形態では、(任意の干渉残留物を洗い流した又はすべてを含んだ)組織のパネルを3次元マトリックスとして使用し、3次元マトリックスにおいて、非真菌組織細胞は支持され且つ培養され、それにより、肉の消費又は生物医学応用のための組織の対外生産を可能にする。この組織を、成長条件又は後処理を使用して操作することができ、それにより、所望の細胞成長(例えば、多孔度の増大又は減少、菌糸体の径の増大又は減少、キチンの脱アセチル化等)のための親和性を増大させる。
【0020】
これらの及びその他の目的及び利点は、以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【0021】
菌類学的製品を生成する方法は、特許文献3に記載されているように栄養基材及び真菌で構成された成長用培地の上の真菌の菌糸体で全体的に構成された菌類学的ポリマーの多孔組織を、きのこへの真菌の完全な分化を防止しながら成長させる最初のステップを含む。このステップは、きのこへの真菌の完全な分化を防止しながら菌糸体バイオポリマーを生成するのに十分な湿度、温度、二酸化炭素、及び酸素の予め定められた環境に維持された閉鎖培養室内で行われる。その後、菌類学的ポリマーのパネルを、例えばスライスすることによって、多孔組織から取出し、使用のために包装する。
【0022】
成長用培地は、特許文献3に記載されているようなものであってもよいし、最終製品に望ましい追加の微量栄養素(例えば、ミネラル、ビタミン)が増やされた酵素的に利用可能な炭素ソース及び窒素ソース(例えば、リグノセルロース系バイオマス、キチン系バイオマス、炭水化物)で基本的に作られてもよい。
【0023】
同様に、真菌の菌糸体は、特許文献3に記載されているようなものであってもよいし、ベータグルカン及びタンパク質のためのマトリックス内に封入されたキチンで構成された顕微鏡的小繊維の相互連結されたネットワークで基本的に作られてもよい。
【0024】
かかる方法によれば、菌類学的ポリマーのパネルを後処理して、所望の特性をパネルに付与する。例えば、パネルに、植物由来のタンパク質、脂質、微量栄養素、及び所望の香味剤で構成されるグループから選択された少なくとも1つの添加剤を注入して、動物由来の肉製品をパネル内に模倣する。また、添加剤は、植物由来の添加剤であってもよいし、細胞由来の添加剤であってもよいし、発酵したバクテリア又は真菌由来の添加剤であってもよいし、動物由来の添加剤であってもよい。
【0025】
変形例として、成長用培地の成長条件は、後処理を使用してもしなくても、分化していない真菌材料の所望の密度、形態、及び/又は組成を得ることができるように調整されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の例を、本発明の範囲を指示するために提供する。
【0027】
例1
1.菌類学的バイオポリマーの18インチ×11インチ×2.5インチ(45.72センチメートル×27.94センチメートル×6.35センチメートル)のパネルを、空気流(毎分100立方フィート(毎分2.83立方メートル)以下の横方向流れ)及び温度条件(85°F(29.4℃)以上)の下で成長させ、かかる空気流及び温度条件は、柔らかい(すなわち、液体に浸して容易に柔らかくされた)多孔組織を、15%の粗タンパク質、33%非繊維炭水化物、28%のリグニン、及び14%の粗脂質で構成される基材上に形成するように設計される。
2.パネルを、切断及びトリミングによって、成長用培地から所望の寸法及び形状で抽出する。
3.次いで、出来立てのパネルに、植物由来のタンパク質、脂質、微量栄養素、及び所望の香味剤(例えば、ベーコンの香味料)を真空注入して、動物由来の肉製品を模倣する。
4.次いで、製品を滅菌液体内で真空包装し(熱湯にくぐらせてもよいし、そうでなくてもよい)、消費の準備ができるまで冷蔵する。
【0028】
例2
1.菌類学的バイオポリマーの18インチ×11インチ×2.5インチ(45.72センチメートル×27.94センチメートル×6.35センチメートル)のパネルを、例えば、上述した空気流及び温度条件の下で成長させ、かかる空気流及び温度条件は、柔らかい多孔組織を、15%の粗タンパク質、33%の非繊維炭水化物、28%のリグニン、14%の粗脂質、及び高レベルの必須栄養素ミネラルで構成される基材上に形成するように設計される。
2.成長の間、これらの高レベルの必須栄養素ミネラルを、真菌によって吸収させ、菌糸体組織内で生物濃縮し、より多くの栄養素を含み且つバランスのとれた最終製品にする。
3.パネルを、切断及びトリミングによって、成長用培地から所望の寸法及び形状で抽出する。
4.次いで、パネルを、浸すこと又は真空注入によって、所望の添加剤でさらに修正する。
5.次いで、パネルを包装、冷蔵、消費する。
【0029】
例3
1.菌類学的バイオポリマーの18インチ×11インチ×2.5インチ(45.72センチメートル×27.94センチメートル×6.35センチメートル)のパネルを、例えば、上述した空気流及び温度条件の下で成長させ、かかる空気流及び温度条件は、柔らかい多孔組織を、15%の粗タンパク質、33%の非繊維炭水化物、28%のリグニン、及び14%の粗脂質で構成される基材上に形成するように設計される。
2.成長の間、所望の栄養素、香味剤、又はその他の添加剤を成長チャンバ内にエアロゾル化させ、増殖している組織の上で液化させ、マトリックス内に組入れる。
3.パネルを、切断及びトリミングによって、成長用培地から所望の寸法及び形状で抽出し、消費又は細胞培養の準備のために包装する。
【0030】
例4
1.菌類学的バイオポリマーの18インチ×11インチ×2.5インチ(45.72センチメートル×27.94センチメートル×6.35センチメートル)のパネルを、例えば、上述した空気流及び温度条件の下で成長させ、かかる空気流及び温度条件は、柔らかい多孔組織を、15%の粗タンパク質、33%の非繊維炭水化物、28%のリグニン、及び14%の粗脂質で構成される基材上に形成するように設計され、保存可能期間及び生じる香りを減少させるものとして知られている酵素をターゲットにする結合化合物、例えば、リガンド及びキレート剤を追加する。これらの結合化合物は、保存可能期間を延長させるように機能するブロック化合物として作用する。
2.パネルを抽出した後、パネルを、希釈過酸化水素(3.5%)内で洗浄し、110℃及び7トル(933パスカル)の真空下で乾燥させ、既知の悪臭(例えば、2,4,6トリクロロアニソール)を除去する。
【0031】
例5
1.菌類学的バイオポリマーの18インチ×11インチ×2.5インチ(45.72センチメートル×27.94センチメートル×6.35センチメートル)のパネルを、例えば、上述した空気流及び温度条件の下で成長させ、かかる空気流及び温度条件は、柔らかい多孔組織を、15%の粗タンパク質、33%の非繊維炭水化物、28%のリグニン、及び14%の粗脂質で構成される基材上に形成するように設計される。
2.パネルの抽出後、パネルを、ピンのアレイで機械的に柔らかくし、次いで、キチナーゼ浴に入れ、組織を更に柔らかくする。
3.次いで、パネルを包装し、消費又は細胞培養の準備をする。
【0032】
例6
1.菌類学的バイオポリマーの18インチ×11インチ×2.5インチ(45.72センチメートル×27.94センチメートル×6.35センチメートル)のパネルを、空気流(毎時150立方フィート以上)及び温度条件(85°F以下)の下で成長させ、かかる空気流及び温度条件は、高密度の(すなわち、噛み切れない軟骨状の)多孔組織を、15%の粗タンパク質、33%非繊維炭水化物、28%のリグニン、及び14%の粗脂質で構成される基材上に形成するように設計される。
2.パネルを、加熱されたSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)浴内で超音波処理を用いて脱細胞化する。
3.次いで、脱細胞化されたパネルを滅菌し、ウシ属の筋細胞を胎児のウシ属の血清の浴内でパネルに植菌する。
4.細胞を、植菌されたパネルによって形成された「足場」に沿って急増させ、完全な3次元細胞構造を体外で形成する。この例の「足場」は、相互連結された菌糸体小繊維のマトリックスであり、菌糸体小繊維の直径は、1〜10ミクロンであり、75%以上の多孔度である。マトリックスを構成する繊維は、一定の構造として機能し、哺乳類細胞がかかる構造にくっついたり、かかる構造に沿って成長したり、かかる構造から分化したりする。「足場」は、その上に又は周りに哺乳類細胞又はその他の細胞が種まきされる構造であり、それにより、分化した組織構造を生成する。
5.この組織は、生物医学適用品又は料理目的に有用である。例えば、その他の組織の工学的足場は、コラーゲン及びポリ乳酸小繊維を含む。かかる足場は、菌糸体と一緒に実施されてきたように、骨芽細胞(骨細胞)に種まきされ、正しい培地及び培養条件の下で菌糸体の上に成長することが可能にされ、次いで、骨組織を生成するために石灰化させることができる骨細胞に分化させられる。同じことが、料理のアプローチにも当てはまるが、この例では、筋細胞、すなわち、動物筋細胞(鳥類、ウシ属)を、成長培地(胎児のウシ属の血清 was cited)内で及び培養条件(典型的には、問題になっている動物の体温)で培養した菌糸体マトリックスの上又はその周りに成長させる。
【0033】
本発明の方法は、真菌の菌糸体で全体的に構成され且つ植物由来のタンパク質、脂質、微量栄養素、及び選択された香味剤のうちの少なくとも1つの添加剤を含む菌類学的バイオポリマーのパネルを提供する。
【0034】
1つの実施形態では、添加剤は、パネル内で動物由来の肉製品を模倣する。
【0035】
別の実施形態では、パネルは、そこに植菌されたウシ属の筋細胞を含む。
【0036】
更に別の実施形態では、パネルは、保存可能期間を減少させる酵素を阻止する化合物を含有する(例4参照)。
【0037】
かくして、本発明は、機能的製品を作る際に使用するための菌類学的バイオポリマー材料を提供する。特に、本発明は、食品及び生物医学適用品等の生産のために、特別注文の大量生産される非動物マトリックスを生成するのに使用される菌類学的バイオポリマー材料を提供する。
【国際調査報告】