【実施例】
【0096】
実施例1
[137]初めに200人の患者をスクリーニングした。治験の基準に合う30人の被験者が同意した。9人の被験者は、治験に同意する前に高血糖値(高血糖症)を有していた。
【0097】
[138]高血糖値(高血糖症)は、2度にわたり126mg/dl以上の空腹時血漿グルコース値であると定義する。患者の平均年齢は62歳であり、患者の年齢の中央値は60歳であった。患者のうちの6人は女性であり、患者のうちの3人は男性であった。患者のうちの5人は50〜60歳であり、患者のうちの4人は60歳以上であった。
【0098】
[139]治験における患者には、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤(すなわちα−メチル−DL−チロシン)、メラニン促進剤(すなわちメラノタンII)、p450 3A4促進剤(すなわち5,5−ジフェニルヒダントイン)、およびロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤(すなわちN−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブチリル]−L−ロイシン)を含んだ処置レジメンを投与した。これらの化合物を、1週間当たり各5日において6週間投与し、週のサイクルの間に1日または2日のオフ日を設けた。血糖値を、全ての被験者について2週間ごとに監視した。血糖値は、毎日の血糖値試験によって測定し、2週間ごとに検査室血糖値試験でフォローアップした。
【0099】
[140]およそ2週間から4週間の後、被験者のうちの全9人は、2度にわたり125mg/dl以下の空腹時血漿グルコース値と規定される正常な血糖値を有していた。
[141]総体的に、上に特記した処置は、被験者による耐容性が良好であり、処置に関連した有害事象がなく、応答は、処置の100%で記録された。
【0100】
実施例2
[142]患者をスクリーニングし、彼らが自閉スペクトラム症のためのDSM−V基準のどの程度と合致するかを評価する。この基準を満たす患者のサブ群に、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤(すなわちα−メチル−DL−チロシン)を含む処置レジメンを、1日3回50〜100mgの用量で投与する。別のサブ群に、p450 3A4促進剤(すなわち5,5−ジフェニルヒダントイン)をさらに含む処置レジメンを、1日用量30mgで投与する。ガンマ−アミノブチル酸を、任意選択で、両方のサブ群に、就寝時間に、睡眠を助けるためおよびカチカチという音および歯磨きのような反復的行動を静めるために15mgの用量で投与する。バソプレシンを、脳の統制を助ける必要性に応じて投与する。処置レジメンの各投与に続き、被験者がDSM−5基準のどの程度を満たすかについての変更を、再度評価する。
【0101】
実施例3
[143]自閉症の処置におけるAMPTの使用についての、無作為化盲検プラセボ対照フェーズ2治験
[144]治験デザイン:8週間の無作為化盲検2選択肢の処置期間、続いて次の18週間にわたる追加の処置のフォローアップ訪問の、総計26週間の治験参加。処置選択肢は、L1−79単独またはプラセボからなる。
【0102】
[145]サンプル数:Ll−79 N=30、プラセボ N=10。
[146]治験集団:エントリー基準に合い、かつ調査の選択肢において高いパフォーマンスを有する12歳超の自閉症患者。
【0103】
[147]主な適格基準:署名された治験参加同意書、臨床上正常な検査室値、DSM−5に従った自閉症の診断、適格なADOSスコア、プロトコルを完了するのに十分高い機能、少なくとも2週間は精神作用薬剤なし、ABC−Cスコア>12。
【0104】
[148]主な除外基準:脆弱X症候群、てんかん、相補的代替医薬品の使用、任意の合併症、他の精神障害、範囲外の検査室値。
[149]実験的処置:LI−79は薬剤Demser(登録商標)のラセミ形態である。それを毎日×8週間付与し、次いで10週目、13週目および26週目にフォローする。
【0105】
[150]非実験的処置:プラセボ。
[151]投薬量および投与法:LI−79またはプラセボに無作為化し、90mgTIDの用量で経口投与することになる。
【0106】
[152]評価スケジュール:患者は8週間の上記スケジュールを受け、1週目から8週目まで週ごとの処置評価を受け、次いで10週目、13週目および26週目に後処置フォローアップ訪問を行うことになる。
【0107】
[153]安全性測定:規則的にスケジューリングされた完全な病歴および身体検査、バイタルサイン、CBC、ディファレンシャル、血小板のカウント、尿分析、以下を含む血漿酵素:総タンパク質、アルブミン、グルコース、BUN、クレアチニン、直接のおよび総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、リン、カルシウム、アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(「AST」)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(「ALT」)、ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸塩、T
4、TSH、ならびに有害事象の評価。独立DMCが、患者の安全性を確保するために本試験の実施を監督することになる。
【0108】
[154]治験期間:最大50週間(12週間の登録、38週間の処置およびフォローアップ)。
[155]治験エンドポイント:主要なエンドポイントは、異常行動チェックリスト−コミュニティ(ABC−C)、コナーズ親用評定尺度および自閉症診断観察スケジュール(ADOS)を含む多種の心理測定的試験における、ベースラインからの変化に基づく臨床包括的所見(CGI)尺度に反映される参加医師の評価、ならびにクリニックにおける彼らの個人観察からの評価、ならびに規則的にスケジューリングしたクリニック訪問(このプロトコル1つ当たり)で撮影される、および本治験のコースにわたり介助者によって提供される、ビデオ映像情報からの評価とすることになる。
【0109】
実施例4
[156]α−メチル−DL−チロシン(AMPT)を3人の患者に投与した。患者のこの群を、自閉症のDSM−5定義の下、適格とし、処置した。表1を参照。
【0110】
[157]
【0111】
【表1】
【0112】
異常行動チェックリスト−コミュニティ(ABC−C)、自閉症診断観察スケジュール(ADOS)、コナーズ親用評定尺度(CPRS)、および臨床包括的所見尺度を、該疾患を評価するのに用いた。ビデオを訪問ごとで撮影した。
【0113】
[158]この観察の最初の3週間にわたるこれらの患者のうちの2人についてのデータを、以下の表に提示する。コナーズ親用評定尺度データを
図1に描く。これらの臨床的改善は、素早く始まって恒久性があるように見える。何週間にも何か月にもわたる継続的改善を観察した。有害事象は、2人の患者における、投薬初日の軽度の疲労以外は報告されなかった。
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
実施例5
自閉症患者におけるL1−79投与の評価
[159]L1−79を2人の患者で事例的に使用し、続いてさらなる8人の自閉症患者で、より構造的な評価を行った。全ての患者に、L1−79の初期投与量90mgTIDを最短3か月間投与した。評価の間、400mgTIDにのぼる用量を使用した。これらの10人の患者で入手可能なデータの概要を、臨床有効性の概要において提供し、自閉症を処置するためのL1−79の使用を、IND128673、シーケンス番号0005に答申した。サンプル数は小さく、L1−79の非盲検投与を含んでいたが、結果は、ABC−Cドメインにおいて一貫した改善を有して、ADOS−2における平均的低下が30%であるという心強いものであり、1人の小児は60%のADOS−2低下をはっきりと表し、これは彼の自閉症診断の撤回をもたらした。加えて、より長期の処置が、自閉症の中核症状により大規模な治療上の利益をもたらした。その上、治験薬L1−79を中断したとき、この利益の全てが退行したわけではなかった。これらのデータは、L1−79が自閉症の中核症状を改善させる潜在性を有していることを示唆している。
【0118】
実施例6
自閉症と診断された男性患者における、無作為化二重盲検プラセボ対照4週間治験
[160]この臨床試験(本明細書では「治験HT02−121」と称する、すなわち実施例6)の目的は、L1−79が、耐容性が良好でASDの処置のための臨床上有用な作用剤であるかどうかを測定すること、およびL1−79での4週間のTID投薬のPKおよび薬力学(PD)を評価することであった。実施例5の予備治験は、少なくとも3か月のL1−79での非盲検処置を含んでいたが、本治験は、入手可能な毒物学データにおける制限に基づいてわずか4週間であった。より短い期間に基づき、L1−79への応答は、治験HT02−121において、より長い期間の予備治験と比べて少ないことを予想した。
【0119】
[161]この臨床試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照2コホート4週間投与の用量増加治験であり、これには、自閉症と診断された12歳から21歳の間の男性患者においてL1−79 100mgおよび200mgTIDの安全性および有効性を評価するために、2つの非盲検処置群を組み入れた。20人の患者の第1のコホートは、患者3群からなった:5人の患者の第1の群は、非盲検L1−79 100mgTIDを服用し、PKおよびEKG評価を受けた。このコホート中の残りの2群は、L1−79 100mgTIDまたはプラセボを服用するように2:1ベースで無作為化した15人の患者からなった。非盲検L1−79 100mgTID群からのPKおよび安全性データを、第2のコホートを登録する前に、レビューおよび受諾のためにFDAに申請した。第2のコホートは、手順通りに第1のコホートと同一とした。患者20人の第2のコホートは、同じ3つの群の患者からなっていたが、100mgTIDの用量の代わりに200mgTIDを使用した。キーとなる適格基準は以下の通りとした:(1)13歳から21歳の間の男性、(2)自閉症診断インタビューレビュー(ADIR)によって、および自閉症の診断と一致しているADOS−2スコアによって確認された、DSM−5に従った自閉スペクトラム症の診断、(3)1種のみの併用薬において安定でなければならず、かつ治験中の心理社会的介入において計画された変更がない。
【0120】
[162]キーとなる除外基準は以下の通りとした:(1)性的に活動的な男性、(2)脆弱X症候群、レット症候群、もしくはがん、遺伝的疾患、もしくは薬剤治療を要する任意の疾患もしくは症候群を含むがこれらに限定されない任意の他の合併症の病歴、(3)統合失調症、統合失調感情障害、アルコール使用障害または注意欠陥多動性障害(ADHD)のDSM−5診断、(4)てんかんおよび喘息を含む任意の活動性の医学的問題を有した、(5)進行中のまたは活動性の感染症、前兆となる循環器疾患、肝疾患、腎疾患、骨格−筋疾患、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、出血性脳血管発作(HCVA)、B型肝炎ウイルス(HBV)を含むがこれらに限定されない、制御できない介入性疾病、または治験の要請への遵守を制限しうる精神医学的疾病/社会状況、(6)慢性処置を必要とする任意の疾患、(7)免疫抑制薬での処置を要する任意の疾患、および/または(8)重篤な精神障害の現在のもしくは生涯にわたる診断。
非盲検患者
[163]各コホート中の最初の5人の患者を、非盲検方式において活性な医薬品を服用するように割り当てた。患者を、無作為化した患者と同一に処置したが、以下の例外を伴った:(1)血液サンプルを、ベースラインにて、ならびに投薬1時間後に、ならびに1週目、2週目、3週目および4週目の処置訪問での投薬後1時間後に採り、L1−79のPKを測定した、(2)EKGを、ベースラインにて、ならびに1週目、2週目、3週目および4週目の処置訪問前3日以内に、ならびに1週目および4週目の後投薬フォローアップ訪問にて評価した、(3)バイタルサイン、身体検査およびASD評価を、1週目の後投薬訪問にて実施した、(4)血液および尿サンプルを、ベースラインにて、ならびに1週目、2週目、3週目および4週目の処置訪問の投薬後1時間にて、かつ安全性分析のために、1週目および4週目の投薬後フォローアップ訪問にて採った。
無作為化患者
[164]無作為化患者を、非盲検患者と同一に処置したが、以下の3つの例外を伴った:(1)PK用の血液サンプルは採らなかった、(2)ECGは実施しなかった、および(3)これらの患者には1週目のフォローアップ訪問をさせず、4週目のフォローアップ訪問のみとした。治験のための時間およびイベントスケジュールを表5に付与する。
【0121】
【表5】
【0122】
安全性のエンドポイント
[165]安全性が、本治験の主要なエンドポイントであった。以下の安全性のエンドポイントを評価した:ECG、身体検査、実験評価(血液学、化学および尿分析)、起立性血圧を含むバイタルサイン、有害事象(AE)および併用薬。
有効性のエンドポイント
[166]主要な有効性エンドポイントは、臨床包括的所見(CGI)評定尺度によって記録した、治験責任医師による臨床上の改善度の測定であった。さらなる有効性のエンドポイントには、(1)ヴァインランド適応行動尺度、第2版(VABS II)親/介助者評定フォームの社会化およびコミュニケーションドメインにおけるベースラインからの変化、(2)ADOS−2総スコアおよびサブスコアにおけるベースラインからの変化、(3)対人応答性尺度、第2版(SRS−2)総スコアおよびサブ尺度における変化、(4)ABC−Cドメインにおける変化、(5)反復的行動尺度−改訂版(RBS−R)総スコアおよびサブ尺度における変化が挙げられる。叙述的統計のみである本治験の所与の診査デザインを計画した。
結果
治験集団
[167]患者の登録および割付を
図2にまとめる。総計42人の患者を無作為化し、治験薬の少なくとも1回の用量を服用させた。1人の患者を非盲検L1−79 200mgTIDに無作為化したが、クリニックにおいて治験医薬品1回用量を服用した後、親が0週目/ベースラインにて治験からの自発的な撤退を要請した。39人の患者は治験を完了した。二重盲検L1−79 200mgTIDで処置した1人の患者が、AE(表8を参照)に起因して治験から撤退し、プラセボで処置した1人の患者が自発的に治験から撤退した。属性の特徴を表6にまとめる。
【0123】
【表6】
【0124】
安全性
併用薬および身体検査
[168]患者の大半は、治験中、CNS医薬品を服用しなかった。治験中、以下のCNS医薬品を用いた:クロニジン(n=2)、Strattera(登録商標)(n=1)、Depakote(登録商標)(n=3)、ロラゼパム(n=1)、Prozac(登録商標)(n=1)およびAbilify(登録商標)(n=1)。治験中に報告された臨床的に著しい身体検査の知見はなかった。
有害事象
[169]プライマリー器官別大分類および好ましい用語ごとのAEの発生率を表7に提示し、治験中に報告されたAEの列挙を表8に提示する。全てのAEは、強度において軽度から中度であり、自然治癒した。
【0125】
【表7】
【0126】
【表8】
【0127】
[170]AEを経験した患者(34.1%、患者41人中14人)のうち、大半は軽度(24.4%、患者41人中10人)から中度(14.6%、患者41人中6人)の強度のAEを経験した。3件のAEのみが1人超の患者によって報告された。故意の自傷が、非盲検100mg群における2人の患者、および二重盲検プラセボ群における1人の患者によって処置緊急性AEとして報告された。不機嫌が、非盲検100mg群における2人の患者によって処置緊急性AEとして報告された。故意の自傷および不機嫌を報告した患者のうちの1人(02−002)について、これらの症状は積極的な処置から撤退した数日間以内に出現した(すなわち4週目の完了後)。他の患者(02−001)について、症状は、積極的な薬物処置中に始まった。存在する尿シスチン結晶が、4週目フォローアップ訪問にて、二重盲検200mg群における2人の患者によって非処置緊急性AEとして報告された。
【0128】
[171]治験中に報告された重篤な有害事象(SAE)または死亡はなかった。総計2人の患者が有害事象に起因して治験から撤退した:二重盲検200mg群における1人の患者が強直性大発作の処置緊急性AEを経験し、二重盲検プラセボ群における1人の患者が故意の自傷およびかんしゃくの処置緊急性AEを経験した。
バイタルサイン
[172]起立性バイタルサインを、治験HT02−12において記載した各訪問にて取った。起立性低血圧症(すなわち20mmHgの収縮期血圧における低下、10mmhgの拡張期血圧における低下、または1分当たり30拍の心拍数の上昇)のための基準に遭った変化は観察しなかった。少数の被験者が、収縮期および/または拡張期血圧において、処置の1週目または2週目での心拍数の上昇を伴って無症状性低下を示したが、それらは4週目に治癒し、本質的に軽度であった(例えば収縮期血圧における10mmgHgの低下、拡張期血圧における5mmHgの低下、および心拍数における1分当たり15〜24拍の上昇)。
図3は、認めた、ベースラインからの最大変化の例を付与し、これらの変化が一過性であり、卒倒が、起立性基準からみてはるかに短かったことを示している。
ECGSおよび検査室評価
[173]ベースラインEKGからの著しい臨床上の変化は、患者のいずれにおいても認められなかった。尿検査が明らかにした臨床上の症状に関連する知見はなかった。認められたのは、L1−79における患者の半数(50%)が結晶尿を発現し、それと比較してプラセボ処置群では30%を観察したことであった。本治験中に結晶尿を発現した人たちのうち、およそ半数(50%)が濃い尿(比重>1.025)を有していた。結晶尿のほとんどはシュウ酸カルシウム結晶からなっていた。結晶尿に伴う症状はなかった。
【0129】
[174]1人の患者は、4週目にアミラーゼの無症状性一過性軽度上昇を発現し(146U/L、正常の上限[ULN]は125U/Lである)、これは、4週目フォローアップ訪問までに治癒した。
【0130】
[175]安全性集団において認めた、ASTもしくはALTまたは任意の他の化学パラメータにおいて著しい上昇はなかった。
[176]血液学パラメータの評価は、安全性集団において著しい偏差がないことを明らかにした。
薬物動態
[177]薬物動態を、非盲検100mgおよび200mgTID患者において評価した。1日目に、L−79濃度を、投与後1時間に評価した。続いて、無作為L1−79血漿中濃度を、1週目、2週目、3週目および4週目に評価した。1日目での投与後1時間に、100mおよび200mgTIDを有する血漿中濃度は、それぞれ0(<2.5)〜736ng/mLおよび23〜1680ng/mLの範囲であった。個々の患者および組み合わせた総体的平均L1−79無作為血漿中濃度の概要を、
図4に示す。
図5および
図6に示すように、総体的L1−79無作為血漿中濃度は、1週目〜4週目にわたって比較的安定していた。
有効性
[178]この治験を開始したとき、長期の青年および生殖毒物学データが欠如していた。出願者は、期間28日の短期治験を開始し、患者の数、性別および年齢における制限が、本治験中に可能であった。結果として、本治験は、有効性エンドポイントのうちの任意のものにおいて統計的有意性を示すようにはデザインせず、そうするだけの検出力もなかった。そのため、予想通り、アウトカム測定のうちで統計的有意性を達成したものはなかった。予期され、かつ観察されたのは、自閉症の中核症状における改善と一致した様々なインスツルメントにおけるポジティブな傾向であった。事実、ASDに罹患した標的の中核的社会的ドメインの処置における改善と類似した指標を示す、多くの要素からなる有効性測定があった。加えて、有効性データは、盲検処置を受けた患者について提示しているのみである。
アウトカム測定
[179]本治験のコホート1とコホート2との間に質問票をどのように管理するかにおいて、いくらかの相違があった。予備治験では、全てのフォームを治験責任医師の存在下で治験サイトにて完了した。本治験のコホート1では、VABS−II、SRS−2、ABC−CおよびRBS−Rは、本治験の執行をはかどらせるために、処置訪問に先立って家で患者/患者の家族によって埋めてもらい処置訪問にて返却した。コホート1の間のVABS II、SRS−2、ABC−CおよびRBS−Rについての評価手順は処置訪問では行わず、結果として、家族がフォームを適正に埋めるのは困難であった。コホート2の間で質問票の質および完全性を改善するために、全ての質問票(ADOS−2[両方のコホートで、外部の認定されたADOS−2試験管理者が管理した]およびCGI[両方のコホートで、治験責任医師が完了した]を例外とする)を、筆頭治験責任医師が、事前指定した処置訪問において患者/患者の家族の補助を得ながら完了した。コホート2データはより豊富であったので、結果の検討は、ADOS−2およびCGIの例外を伴って、L1−79 200mgのプラセボに対する比較に焦点を当て、ここで、L1−79 100mgと200mgとの両方をプラセボと比較した。
【0131】
[180]治験の終了の後、VABS−IIについての基礎アンカーが常に適切に確立したわけではないことを発見した。加えて、2つのサブドメイン(コミュニケーションおよび社会化)のみが患者について完了し、これは、ドメインまたは総スコアを得ることを不可能にした。しかしながら、VABS IIコミュニケーションおよび社会化ドメインについての結果を以下に提示する。
【0132】
[181]有効性測定の要約を以下に提示する(表9)。L1−79の利益となるポジティブな傾向を示すこれらの測定について、3セットの図をそれぞれの有効性測定について提示する。これらの図は以下からなる:a)3つの処置群間でスクリーニング/ベースラインから4週目まで(いくつかの症例では治療時点後4週間が続く)を比較した変化を示す線グラフ、b)個々の患者の応答プロット、およびc)応答者解析プロット。L1−79の利益となるポジティブな傾向を示さない有効性測定では、3つの処置群間でスクリーニング/ベースラインから4週目まで(いくつかの症例では治療時点後4週間が続く)を比較した変化を示す線グラフのみを提示する。
応答者の定義
[182]活性薬剤に曝露した患者についての、プラセボと比較した、それぞれの有効性エンドポイントにおける大規模な変化を観察することによるデータの分析に加え、「応答者」集団を定義することが重要である。一般に、応答者解析は、治験集団における総体的変化よりも、任意の利益を示す患者の数に焦点を当てることを企図する。典型的には、応答者は、その標的症状が有効性エンドポイントにおいて事前に指定した改善を示す患者であると定義される。この定義は、自閉症を含むほとんど全ての障害において治験した実験的処置についての中期および長期のアウトカムを判定するための受容された標準と一致する。しかしながら、症状の重篤度において振幅を有する自閉症のような障害のための短期間の治験において、改良した定義が必要であることは考慮に入れていない。ASDでは、小児は、確認可能ではあるが依然として未確認な多様な要因に関連する彼らの行動的、社会的および感情的症状の調節において、軽度から中度の改善または悪化の期間を通ることが多い(Boso、2010年;城之内、2011年)。そのため、短期間の治験において、「ベースライン」測定は、事実として、これらの振幅のうちの1つの頂点、中間点または最下点にある可能性がある。治験下での標的症状をベースラインにて測定するときにそれらが頂点または中間点にある場合、短期間の治験は、標的症状をその振幅の最下点に戻らないように防止することによって、初期の有効性を示す機会を有するのみでありうる。何人かの治験患者の間でこれが起きた可能性を考慮に入れるために、応答者の定義は、標的症状における短期の安定性または改善のいずれかを示す患者を含んでいる。そのため、ポジティブな傾向を示すそれぞれの有効性エンドポイントについて、応答者解析は本明細書で定義しているように行った。
【0133】
[183]有効性測定についてのスクリーニング/ベースラインからの変化の要約を、表9に提示する。
【0134】
【表9-1】
【0135】
【表9-2】
【0136】
【表9-3】
【0137】
【表9-4】
【0138】
臨床包括的所見(CGI)評定尺度
[184]L1−79についての、経時的なCGI−総体的重篤度(CGI−S)およびCGI−総体的改善度(CGI−I)を、プラセボと比べて、
図7および
図8にグラフで提示する。4週目または最直前観察値(LOCF)におけるベースラインからのCGI−S平均変化を
図9に提示し、200mg群における患者についての総体的CGISにおいて、プラセボ群および100mg群における患者と比べて平均0.5ポイントの改善を示している。
【0139】
[185]CGI−Sにおける患者ごとのベースラインから4週目までの変化の概要を、
図10に提示する。加えて、4週目またはLOCFでの応答者解析(改善として定義する)を、CGISについて
図11に提示する。
【0140】
[186]CGI−Sのための応答者の定義は、(改善または変化なし、の代わりに)改善としてのみ定義し、その理由は、週1回実施した他の測定とは異なって、CGI−Sは、本治験の全体にわたるアウトカム測定およびそれらの動きの全てに基づいて、患者の臨床症状の重篤度の総体的評価に医師を必要とするためである。
【0141】
[187]4週目でのCGI−Sについての応答者解析は、L1−79 100mg群および200mg群についての、プラセボと比べた、改善の、明白な用量応答傾向を示している。
ヴァインランド適応行動尺度、第2版(VABS II)
[188]L1−79についての、VABS II標準化社会化スコアおよびVABS II標準化コミュニケーションスコアにおける、プラセボと比べたベースラインからの経時的な変化を、それぞれ
図12および
図13にグラフで提示する。
自閉症診断観察スケジュール、第2版(ADOS−2)
[189]L1−79についての、ADOS−2総スコア、限局的および反復的行動総スコアおよび対人的情動総スコアにおける、プラセボと比べたスクリーニングからの経時的な変化を、
図14、
図15および
図16にグラフで提示する。典型的にアウトカム測定としては使用しないが、短期間にわたるADOS−2における変化は、先に提示した、より長い期間の非盲検予備治験と一致する。
【0142】
[190]多数の患者にわたるこの効果の一貫性は、
図17に提示したADOS−2総スコアにおけるスクリーニングから4週目までの変化の概要によって示唆される。
対人応答性尺度、第2版(SRS−2)
[191]L1−79についての、SRS−2総Tスコア、SRS−2 DSM−5社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流Tスコア、SRS−2社会的コミュニケーションTスコア、SRS−2社会的モチベーションTスコアおよびSRS−2 DSM−5限局的および反復的行動Tスコアにおける、プラセボと比べたベースラインからの経時的な変化を、それぞれ、
図18、
図19、
図20、
図21および
図22にグラフで提示する。
【0143】
[192]SRS−2総計、SRS−2 DSM−5社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流、SRS−2社会的コミュニケーション、ならびにSRS−2社会的モチベーションTスコアは、L1−79 200mg処置群において平均して8ポイント近くまたは8ポイント以上改善した(
図18、
図19、
図20および
図21)。社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流尺度は、ASDの診断に要する社会的コミュニケーションの欠損および対人的相互交流の欠損を作り上げているDSM−5基準からなる。かなり関心があるのは、8ポイント以上落ちた60から83の間のベースラインスコアを有する患者が、臨床上の重篤度にあるカテゴリー変更をおそらくは示したという知見であり、その理由は、症状の重篤度の「正常限度内」(Tスコア60未満)、「軽度の範囲」(Tスコア60〜65)、「中度の範囲」(Tスコア66〜75)および「重度の範囲」(Tスコア76以上)という分類が、これらのTスコア範囲内で規定されているからである。
【0144】
[193]SRS−2総Tスコア、SRS−2 DSM−5社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流Tスコア、SRS−2社会的コミュニケーションTスコアならびにSRS−2社会的モチベーションTスコアにおける、患者ごとのベースラインから4週目までの変化の概要を、それぞれ、
図23、
図24、
図25および
図26に提示する。
【0145】
[194]SRS−2総計、SRS−2 DSM−5社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流、SRS−2社会的コミュニケーション、ならびにSRS−2社会的モチベーションTスコアについて、観察した応答者の規模と数との両方が、L1−79 200mgで、プラセボに比べて大きかった(
図27、
図28、
図29および
図30)。SRS−2総Tスコアについて、L1−79 200mg群において、3人の患者が重篤度のカテゴリーを変更するのに十分改善し、比較するとL1−79 100m群とプラセボ群との両方において2人であった。SRS−2社会的モチベーションTスコアについて、L1−79 200mg群において、6人の患者が臨床重篤度のカテゴリー変更を示し、比較すると100mg群で4人、プラセボ群で3人であった。SRS−2 DSM−5社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流Tスコアについて、200mg群において、4人の患者が重篤度カテゴリー化を変更し、比較すると100mg群で2人、プラセボ群で3人であった。同様に、SRS−2社会的コミュニケーションTスコアについて、200mg群において、4人の患者がカテゴリー改善を示し、比較するとプラセボ群と100mg群との両方で3人であった。
【0146】
[195]応答者解析(改善または悪化なしと規定した)を、4週目またはLOCFでのSRS−2総Tスコア、SRS−2 DSM−5社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流Tスコア、SRS−2社会的コミュニケーションTスコアならびにSRS−2社会的モチベーションTスコアについて、それぞれ
図27、
図28、
図29および
図30に提示する。
【0147】
[196]
図27〜30は、応答者の百分率(改善または悪化なしと規定した)が、L1−79 200mgで、プラセボと比べて高かったことを示す。応答者の定義(上の章)を参照されたい。
異常行動チェックリスト−コミュニティ(ABC−C)
[197]L1−79についての、ABC−C無気力および社会的引きこもりドメイン、ABC−C不適切スピーチドメイン、ABC−C多動および不服従ドメイン、ABC−C常同行動ドメイン、ならびにABC−C不機嫌およびかんしゃくドメインにおける、プラセボと比べたベースラインからの経時的な変化を、それぞれ
図31、
図32、
図33、
図34および
図35にグラフで示す。
【0148】
[198]ABC−C無気力および社会的引きこもりドメイン、ならびにABC−C不適切スピーチドメインにおける患者ごとのベースラインから4週目までの変化の概要を、それぞれ
図36および
図37において提示する。ベースラインスコアからの平均変化において200mg群とプラセボ群との間に乖離はなかったが、応答者解析は、200mg群において、プラセボと比べて、患者が行動の改善または悪化なしと応答する傾向がより大きいことを示し、それぞれ
図38および
図39に示す。
【0149】
[199]SRS−2がそうであるように、L1−79 200mgを付与された患者についての回答者の数と応答の規模との両方が、ABC−Cの社会的およびスピーチドメインについて乖離に向かう傾向を示した。等しくに認められるのは、L1−79 200mgでの患者の90〜100%がこれらのドメインの安定または改善を示したことであり、これは、より短い期間にわたる強度において著しく多様であることが知られる。
反復的行動尺度−改訂版(RBS−R)
[200]L1−79についての、RBS−R総スコア、RBS−R限局的行動、RBS−R儀式的行動、RBS−R単調行動、RBS−R強迫行動、RBS−R常同行動およびRBS−R自傷行動におけるベースラインからの経時的な変化を、プラセボと比較して、
図40、
図41、
図42、
図43、
図44、
図45および
図46においてグラフで提示する。
【0150】
[201]L1−79 200mgについてのスコアの低下を認めたRBS−R総スコアにおいて、プラセボと比べて平均的改善があった(
図40)。
[202]RBS−R総スコアにおける患者ごとのベースラインから4週目までの変化の概要を、
図47に提示する。加えて、4週目またはLOCFにおけるRBS−R総スコアについて、応答者解析(改善または悪化なしと規定した)を
図48に提示する。
【0151】
[203]ABC−C無気力および社会的引きこもり、ならびにABC−C不適切スピーチドメインと一致して、RBS−R総スコアは、限局的および反復的行動において、L1−79 200mgで、プラセボに比べて大規模な低下に向かう明らかな傾向を示した。これは、L1−79 200mgで処置した患者の91%が症状の改善または安定化を有し、プラセボでは78%であったことを示す応答者解析によってさらに示される。
総体的結論
[204]ASDの小児および成人のための現在入手可能な治療は、障害(不機嫌、かんしゃく、衝動、多動)に伴い、かつ血液検査を通じて代謝パラメータの監視を要する副作用を有する随伴症状のみを標的とする。静脈切開は、ほとんどの神経標準の小児および成人にとって不快であるが、これは、それらの恐れと適切にコミュニケーションできない極度の知覚感度を有する人たちにとってきわめて精神的外傷的である。実際、静脈切開は、彼らが呈する異常行動の多くが、相互交流する、コミュニケーションをとる、および他人と結び付くことの不能におそらくは起因することにおいて、これらの個体にとってキャッチ22である。彼らに、これらの行動を左右する中核症状を改善させるだけでなく侵襲的監視の必要なしにそのようにする治療を提供する潜在性は、これらの小児にとって生活の質を改善するための長い道のりとなろう。
【0152】
[205]治験HT02−121からの結果は、L1−79が、ASDの中核症状の処置において利益をもたらすように見えるという概念の証拠を提供する。ASDは、第1に、社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流、ならびに限局的および反復的行動パターン、興味または活動における持続する欠損として定義される。これらの中核症状の、社会的と行動的との両方の強度を測定するのに特に用いた多くの要素からなる独立した評価からの予備的エビデンスは、多数のインスツルメントにわたって繰り返し認めることが可能であった一貫した傾向を示した。本治験は限定的な数および短期間であったため、用いたアウトカム測定における統計的に有意な改善を示すという任意の予想または能力が排除されたが、本治験で用いた多くの要素からなる測定間の一致はきわめて心強いものである。1か月未満の処置において、本治験に関与した医師による盲検評価は、CGI−Sにおいて、ベースラインと比べて1ポイント近い変化を示した。同様に、L1−79を服用している患者は、ADOS−2スコアにおいて、同じ期間内でベースラインから1ポイント近く改善した。
【0153】
[206]10人の自閉症患者におけるL1−79の非盲検投与での先の経験(実施例5を参照)は、L1−79が、自閉症の中核症状を改善する潜在性を有することを明らかに示した。治験HT02−121において、CGI−S、ADOS−2、SRS−2、ABC−CおよびRBS−Rを含む多くの要素からなる個々の有効性測定は、ASDにより影響を及ぼされた標的スコアの社会的ドメインにおいて、短い処置期間および少数の患者にもかかわらず、一貫した改善を示した。28日間の処置期間にわたって、L1−79は安全であり耐容性が良好であった。治験の終了時に、多くの親が、彼らの子どもたちがL1−79での処置を受けることの継続を望んだ。結果として、両方の臨床サイトにて、これらの親たちが、彼らの自閉症の子どもたちにおけるL1−79の影響について直接FDAと話すことができるようにという企図の下、協議のビデオを撮影した。
【0154】
実施例7
自閉スペクトラム症の青年および成人における社会的コミュニケーション機能の中核的欠損の処置のための、L1−79の無作為化二重盲検プラセボ対照適応試験
[207]完了した治験HT02−121(実施例6)は、自閉症の処置のためのL1−79のフェーズII安全性治験であった。治験HT02−121は、13歳から21歳の間の男性の自閉症患者におけるL1−79 100mgおよび200mgTIDの安全性および有効性を評価するための、2つの非盲検処置群を組み入れた、無作為化二重盲検プラセボ対照2コホート4週間投与上昇治験とした。治験HT02−121からの結果は、L1−79がASDの中核症状の処置において利益をもたらすように見えるという概念の証拠をもたらす。これらの中核症状の社会的と行動的との両方の強度を測定するのに具体的に用いた、多くの要素からなる独立した分析からの予備的エビデンスは、多数のインスツルメントにわたって繰り返し認めることが可能であった一貫した傾向を示した。本治験の限定的な数および短い期間により、用いたアウトカム測定における統計的に有意な改善を示すという任意の予想または能力は排除されたが、本治験において利用した多くの要素からなる測定間の一致はきわめて心強い。治験HT02−121からの結果のレビューに続いて、FDAは、L1−79が、市場の認可につながる登録試験を開始することを許可し、L1−79 IND128673に迅速承認指定を与えた。
【0155】
[208]結果として、本発明者らは、定義している社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流における中核的欠損を処置するための、L1−79の治療剤としての評価に向けた、便宜ではあるが徹底的なアプローチを可能にする、フェーズIIIセッティングにおける適応試験アプローチを提案している。治験HT02−121(実施例6)からの結果に基づいて、提案したのは、2つのフェーズIII無作為化二重盲検平行群およびプラセボ対照の臨床試験(治験301および治験302)であり、これは、前向き無作為化二重盲検の様式で、それらの自閉症診断観察スケジュール−2(ADOS−2)結果に基づいて自閉症と診断された患者に200または300mgの用量でTID投与されるL1−79の安全性および有効性を定量化するために、治験301の第1のセグメント中に最適な適格基準、サンプル数およびアウトカム測定を評価するような適応デザインを利用する。
【0156】
[209]自閉症の処置のためのL1−79での臨床経験のほとんどを、100〜200mgTIDの用量とする。実施例8の治験(本明細書では「治験301」とも称する)では、前向き無作為化二重盲検の様式で、それらの自閉症診断観察スケジュール−2(ADOS−2)結果に基づいて自閉症と診断された患者に200または300mgの用量でTID投与されるL1−79の安全性および有効性を定量化することを模索する。
【0157】
[210]剤形は、DL−α−メチル−パラ−チロシン100mgのカプセル(これ以降、「L1−79」と称する)を収容するカプセルである。フェーズIII臨床試験(治験301および治験302)のためのL1−79の企図した投薬レジメンは、2つまたは3つのカプセルの1日3回(TID)経口投与である。
治験デザインの理論的根拠:
[211]ASDは、子ども時代の発達の間、対人的相互交流における欠損、および挙動、興味または行動の、限局的、反復的パターンの存在により特徴づけられる障害である(Swedo,S.E.,Baird、G.,Cook、E.H.,Happe’、F.G.,Harris、J.C.,Kaufmann、W.E.、…Wright,Harry,H.(Eds.)、(2013年)、Neurodevelopmental Disorders、アメリカ精神医学会;精神障害の診断および統計マニュアル(第5版)、アメリカ精神医学会)。最近の文献は、ASDの小児および成人における周辺のおよび自閉症の神経系の関与を示唆してきた(Baker、2017年;Fenning、2017年)。結果として、皮膚電位試験が、交感神経系を標的とする処置に、より応答しそうな患者の集団についての重要なバイオマーカーとして役立ちうる。
主要な目的:
[212]本治験の主要な目的は、自閉スペクトラム症(ASD)の青年および成人における社会的コミュニケーションおよび対人的相互交流における中核的欠損の処置のための、L1−79の有効性、安全性および耐容性を、プラセボと比べて評価することである。
副次的な目的:
[213]本治験の副次的な目的は以下を含む:
[214]1.この適応試験の第1のセグメント中に、最適な適格基準、サンプル数およびアウトカム測定を評価すること、
[215]2.ASDにおける反復的および限局的行動を減らすことに対するL1−79の効果を、プラセボと比べて評価すること、
[216]3.ASDにおける、多動、かんしゃくおよび不機嫌を含む異常行動を減らすことに対するL1−79の効果を、プラセボと比べて評価すること、ならびに
[217]4.被験者のサブセットにおけるL1−79についての薬物動態(PK)および薬力学(PD)のさらなるモデル化を、時間内の断続的なまばらなサンプリングを通じて実施すること。
治験デザイン:
[218]適格な参加者は、ADOS−2におけるASD症状の医師のインタビューおよび評価、ならびに重篤度の臨床包括的所見(CGI−S)評定4以上(中度以上)に基づき、ASDのための精神障害の診断および統計マニュアル−第5版(DSM−5)基準に合う12歳から21歳の間の青年および成人となる。
【0158】
[219]被験者を、プラセボ、L1−79 200mgまたはL1−79 300mgの1日3回(TID)群に、比1:2:2で無作為化することになる。
[220]200および300mg群における被験者を、200mgTIDで開始することになる。300mg群における被験者は、7日後に300mgTIDまで滴定することになる。
【0159】
[221]スクリーニング評価は、ADOS−2、DSM−5からのASD基準のレビューおよびCGI−Sを含むことになる。
[222]適応デザインを、以下の基準を決定するために用いることになる、提案した合間の分析で使用することになる:主要なアウトカムについての潜在的エンドポイント、定義した治験集団の修正、および推定したサンプル数。データ監視委員会および独立統計グループが、合間の分析を実行して、予備定義した基準に基づく治験における、提案した変化に関するスポンサーに推奨を行うことになる。サンプル数再計算は、合間の分析で測定することになる主要なアウトカムおよび潜在的治験集団に依存することになる。サンプル数再計算は、盲検データに基づくことになる。
【0160】
[223]イベントのスケジュールを表10に提示する。
【0161】
【表10】
【0162】
[224]適格基準:
1.被験者は、21歳までの男性または女性の、青年または成人でなければならない
2.被験者は、13歳から21歳の間でなければならない
3.初潮後の女性は、適切な場合、妊娠調節しなければならない
4.DSM−5基準[例えば自閉症症状評定尺度(ASRS)、小児自閉症評定尺度−2(CARS2)または自閉症診断インタビュー−改訂版(ADI−R)]を利用する評価ツールに基づき、かつADOS−2で4以上のCGI−Sスコアで確認した、ASDの診断
5.被験者は、1種のみの併用薬において安定でなければならず、かつ本試験中、心理社会的介入における計画した変更があってはならない
6.被験者および介助者は、本明細書で使用される試験において有効なスコアを得るのに十分な試験手順において自発的に参加し、かつ参加できなければならない
7.被験者は、1年にわたり彼らを知っていて1週間当たり少なくとも10時間彼らと共に過ごし、各アポイントメントに進んで彼らと同行する介助者を有していなければならない
8.被験者は、治験責任医師の意見において耐容性が十分でなければならず、本試験の要請に従うことが可能でなければならない。例えば、採血またはEGGに耐容性がないであろう患者は、本治験に適格な候補ではない
9.被験者は、カプセルを飲み込めなければならない
10.被験者および介助者は、治験参加同意書に進んで署名しなければならない、または彼らの法的保護者もしくは代理人によって付与される治験参加同意書を有していなければならない。18歳未満の全ての被験者、または自分自身でケアできない人は、介助者の同意書を有していなければならない。
【0163】
[225]除外基準:
1.性的に活動的な男性および女性
2.進行中のまたは活性な感染症、症候性心臓血管疾患、肝疾患、腎疾患、骨格筋疾患、HIV、HCVA、HBVが挙げられるがこれらに限定されない制御できない介入性疾患、または治験の要請への遵守を制限しうる精神疾患/対人的状況
3.免疫抑制薬での処置を要する任意の疾患
4.脆弱X症候群、レット症候群、または他の、患者の自閉症症状のベースとなりうる神経学的障害(例えば先天性もしくは後天性脳損傷、脳異常形態、発作、神経遺伝性もしくは代謝障害)の診断
5.統合失調症、統合失調感情障害、アルコール摂取障害またはADHD、重篤な精神障害(例えば双極性障害など)の現在または生涯の診断というDSM−5診断
6.制御できない発作性障害、心臓疾患、がん、喘息、遺伝性疾患、または継続的な薬剤療法を要する任意の疾患もしくは症候群が挙げられるがこれらに限定されない任意の活性な慢性医学的問題の存在
7.自閉症の処置のために1種超の医薬品を要する被験者、または医薬品のそれらの最小耐容用量を断っていない被験者
8.免疫抑制薬での処置を要する任意の疾患の被験者
9.範囲外の肝臓もしくは腎臓機能試験、または他の、治験責任医師によって臨床的に有意であるとみなされる、説明されていない検査室異常値の存在
10.治験参加同意書を付与することを進んで行わないまたはできない任意の被験者または介助者。
治験集団:
[226]350人の患者を計画する。
試験製品、用量および投与方法
[227]D−Lアルファ−メチル−チロシン(L1−79)を100および200mgとしてカプセル化した。2つの用量の選択肢を、200mgTID(プラセボと組み合わせた1回用量200mg)、および300mgTID(200mgの1つのカプセルと100mgの1つのカプセル)として試験することになる。
処置の期間:
[228]12週間(84日間)
有効性評価:
[229]有効性の測定の中に含まれないベースライン評価には、ウェクスラー成人知能検査尺度(WASI−2)およびスペンス不安尺度(SAS)が挙げられる。より大きい自閉症神経系の変動が治療への応答と相関するかどうかを測定するために、皮膚電位試験をベースラインにて実施することになる(「治験の理論的根拠」を参照)。主要なアウトカム測定は、ヴァインランド適応行動尺度−第3版(VABS−3)の適用行動複合(ABC)からの社会化(SOC)、コミュニケーション(COM)および日常生活スキル(DLS)ドメイン、ならびに対人応答性尺度−2(SRS−2)の社会化、コミュニケーションおよび対人的相互交流(SCI)、ならびに限局的興味および反復的行動(RRB)サブ尺度を含む5要素複合測定における12週目でのベースラインからの変化となる。副次的な主要なアウトカム測定は、12週目でのベースラインCGI−Sからの変化に基づくことになる。
【0164】
[230]さらなる副次的なアウトカム測定を、以下について、12週目でのベースラインスコアからの変化について、ゲートした方法(合間の分析中に測定すること)において評価することになる:
1.異常行動チェックリスト−コミュニティ(ABC−C)の社会的引きこもり/無気力および不適切スピーチドメイン
2.ABC−C、不機嫌、多動および常同ドメイン
3.反復的行動尺度−改訂版(RBS−R)
4.育児ストレスインデックス(PSI)ショートフォーム
5.官能プロファイル−ショートフォーム(SSP)
6.スペンス不安尺度(SAS)
7.ADOS−2総スコア
*(ADOS−2は、交互的な相互交流の盲検レビューにおける潜在的使用のために、スクリーニングで、かつ試験の終了で、ビデオ撮影をすることになる)。
安全性評価:
[231]安全性評価には、身体検査、血圧および脈拍の起立性測定、標準的血液学および臨床化学評価、併用薬の使用、尿分析、ECG、および自発的に報告された有害事象が挙げられる。
PK評価:
[232]ASD患者におけるL1−79のPKおよびPDのより大きい理解を得るために、PKパラメータをモデル化し、同パラメータを若い健康な成人で行った、より徹底的な治験から得たデータと比較することを助けるのに、まばらなサンプリングを利用することになる。まばらなサンプリングは、静脈切開手順の数を制限することになり、これは、典型的には、ASDではない同等者よりも採血手順がはるかに精神的外傷的であるASDの小児において、重要な配慮である。
統計的方法:
[233]適応デザインは、本治験の3つの構成要素を評価することになる:アウトカムの変動性、適格基準の潜在的修正、および合間の分析の時間になされる測定に基づくサンプル数再計算。適格基準の修正は、ASDの人々のための処置および介入戦略に直接影響を及ぼすことで知られる以下の特性:1)スペンス不安尺度による評価に基づく不安の重篤度、2)ウェクスラー成人知能検査尺度により評価するIQ、および3)ABC−C不機嫌および多動サブ尺度に基づく破壊的行動症状の重篤度、というベースライン重篤度のASDについての潜在的中間形質の評価に基づくことになる。加えて、自閉症感受性を測定するための皮膚反応性試験を、応答者表現型についての診査バイオマーカーとして使用することになる(これらのサブ群のための判定についての「治験の理論的根拠」を参照)。主要なアウトカムの選択は、ヴァインランド適応行動尺度−第3版(VABS−3)の適応行動複合(ABC)からの、社会化(SOC)、コミュニケーション(COM)および日常生活スキル(DLS)ドメイン、ならびに対人応答性尺度−2(SRS−2)の、社会化、コミュニケーションおよび相互交流(SCI)、ならびに限局的興味および反復的行動(RRB)サブ尺度を含む5要素複合測定の条件付検出力分析に基づくことになる。アウトカムおよび適格基準を選択した後、サンプル数を盲検データに基づいて再計算することになる。
【0165】
[234]本発明の広範な概念から逸脱することなく、上に記載した実施形態に変更がなされうることが、当業者により認められることになる。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲により規定されている本発明の趣旨および範囲内にある修正をカバーすることを企図することが理解される。