(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本発明は、添加剤をカプセル化するナノサイズからマイクロサイズの範囲のポリマー系部分開口中空リザーバに関し、これは、還元−酸化および電圧変化などの特定の事象刺激を使用して、または、随意に、同一の刺激を使用して、リザーバから放出することができる。本発明はまた、そのようなリザーバを調製する方法、および添加物を放出するための方法に関する。本発明はさらに、そのようなリザーバを含むマトリックスおよびそのようなマトリックスを調製する方法に関する。本発明はまた、添加剤のそのような制御放出を使用することから利益を得る、例えば、腐食防止、潤滑、および接着における用途に関する。
前記少なくとも1つの導電性ポリマーが、ポリアニリン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマー誘導体、ポリピロール、ポリピロール系ポリマー、ポリピロール系ポリマーの誘導体、それらのブレンド、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の複数の部分開口中空リザーバ。
前記導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリ−o−トルイジン、ポリ−o−メトキシアニリン、ポリ−o−エチルアニリン、およびポリ−2−エトキシアニリンのうちの少なくとも1つを含む前記ポリアニリン系ポリマーである、請求項2に記載の複数の部分開口中空リザーバ。
前記複数の部分開口中空リザーバが、少なくとも1つのポリアニリン系ポリマーをその塩基形態、その塩形態、またはその塩基形態とその塩形態とのブレンドで含む、請求項3に記載の複数の部分開口中空リザーバ。
前記少なくとも1つのポリアニリン系ポリマーが、そのエメラルジン形態、そのロイコエメラルジン形態、もしくはそのペルニグラニリン形態、またはそれらの組み合わせである、請求項4に記載の複数の部分開口中空リザーバ。
前記カプセル化物が、腐食防止添加剤、潤滑添加剤、接着添加剤、殺生物添加剤、防汚添加剤、殺虫添加剤、薬物送達添加剤、腐食センサ添加剤、芳香放出添加剤、触媒添加剤、インク添加剤、染料添加剤、酵素添加剤、反応物添加剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の複数の部分開口中空リザーバ。
前記腐食防止添加剤が、(a)アミノ基もしくはカルボキシ基またはカルボン酸の塩、有機硫化物、複素環、置換芳香環、有機ホスフェートおよびホスホン酸、第四級アンモニウム化合物、イミダゾリン、アルデヒド、スルホキシド、カルボン酸、メルカプトカルボン酸、イミダゾール、オキシム、アゾール、タンニン、置換フェノール、キノリンおよびキノロン化合物、置換キノリンおよびキナリザリン、ピリジニウム基、ピラジン基、アゾール誘導体、ならびに1つ以上のシッフ塩基を含有する有機化合物と、(b)ポリホスフェートおよびその誘導体、ニトライト、シリケート、モリブデートならびにポリモリブデートおよびその誘導体、バナデートならびにポリバナデートおよびその誘導体を含む群から選択される1つ以上のアニオンを含有する有機化合物と、(c)ランタニド、マグネシウム、カルシウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム、クロム、および銀を含む群から選択される1つ以上のカチオンを含む有機または無機化合物と、各腐食防止添加剤群(a)、(b)、および(c)内の構成成分の組み合わせと、各添加剤群(a)、(b)、および(c)の1つ以上の構成成分間の組み合わせと、から選択される、請求項6に記載の複数の部分開口中空リザーバ。
前記カプセル化物が、(i)フェノールおよびその誘導体、芳香族およびアリールアミンから選択される酸化防止添加剤と、(ii)金属アルキルチオホスフェートから選択される耐摩耗添加剤と、(iii)フェネート、硫化フェネート、サリチレート、ナフテネート、ステアレート、カルバメート、チオカルバメート、リン誘導体から選択される分散剤と、各潤滑添加剤群(i)、(ii)、および(iii)内の構成成分の組み合わせと、各潤滑添加剤群(i)、(ii)、および(iii)の1つ以上の構成成分間の組み合わせと、から選択される潤滑添加剤である、請求項6に記載の複数の部分開口中空リザーバ。
前記部分開口中空リザーバが、複数の開口部を有する、見かけが球形状の中空リザーバ、見かけが棒形状の中空リザーバ、不規則な形状の中空リザーバ、または中空微粒子である、請求項1に記載の複数の部分開口中空リザーバ。
請求項3に記載の複数の部分開口中空リザーバを調製するためのプロセスであって、前記複数の部分開口中空リザーバが、任意のカプセル化物を含まず、前記導電性ポリマーが、ポリアニリン系ポリマーであり、前記プロセスが、水性酸化重合により、前記ポリアニリン系ポリマーのモノマーを重合するステップを含む、プロセス。
前記少なくとも1つのポリアニリン系ポリマーが、その塩基形態、またはその塩形態、またはその塩基形態とその塩形態のブレンドである、請求項14に記載のプロセス。
前記少なくとも1つのポリアニリン系ポリマーが、そのエメラルジン形態、またはそのロイコエメラルジン形態もしくはペルニグラニリン形態である、請求項15に記載のプロセス。
前記カプセル化物が、腐食防止添加剤、潤滑添加剤、接着添加剤、殺生物添加剤、防汚添加剤、殺虫添加剤、薬物送達添加剤、腐食センサ添加剤、芳香放出添加剤、触媒添加剤、インク添加剤、染料添加剤、酵素添加剤、反応物添加剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載のプロセス。
前記複数の部分開口中空リザーバの合成中、前記複数の部分開口中空リザーバ内での前記少なくとも1つのカプセル化物のその場カプセル化の前記ステップを含む、請求項1に記載の複数の部分開口中空リザーバを調製するためのプロセス。
金属中の腐食を防止するためのプロセスであって、請求項1に記載の前記部分開口中空リザーバを含むコーティングマトリックスで前記金属をコーティングするステップを含み、前記少なくとも1つのカプセル化物が、少なくとも1つの腐食防止剤を含む、プロセス。
前記少なくとも1つの腐食防止剤が、(a)アミノ基もしくはカルボキシ基またはカルボン酸の塩、有機硫化物、複素環、置換芳香環、有機ホスフェートおよびホスホン酸、第四級アンモニウム化合物、イミダゾリン、アルデヒド、スルホキシド、カルボン酸、メルカプトカルボン酸、イミダゾール、オキシム、アゾール、タンニン、置換フェノール、キノリンおよびキノロン化合物、置換キノリンおよびキナリザリン、ピリジニウム基、ピラジン基、アゾール誘導体、ならびに1つ以上のシッフ塩基を含有する有機化合物と、(b)ポリホスフェートおよびその誘導体、ニトライト、シリケート、モリブデートならびにポリモリブデートおよびその誘導体、バナデートならびにポリバナデートおよびその誘導体を含む群から選択される1つ以上のアニオンを含有する有機化合物と、(c)ランタニド、マグネシウム、カルシウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム、クロム、および銀を含む群から選択される1つ以上のカチオンを含む有機または無機化合物と、各腐食防止添加剤群(a)、(b)、および(c)内の構成成分の組み合わせと、各添加剤群(a)、(b)、および(c)の1つ以上の構成成分間の組み合わせと、から選択される、請求項22に記載のプロセス。
前記マトリックスコーティングが、ラテックス、アミノ樹脂、ポリウレタン、エポキシ、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリスルフィド樹脂、ポリアスパラギン、ポリ尿素、ポリラクトン、アミンの付加物、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルおよびハロゲン化ポリマー樹脂である、請求項22に記載のプロセス。
前記金属が、自動車の一部、自動車部品、船舶車両の一部、補修部品、船舶車両部品、機器の一部、機器部品、金属被覆材の一部、金属被覆材部品、任意の他の車両の一部、任意の他の車両用の部品、飛行物体の一部、飛行物体用の部品、装飾片の一部および装飾目的用の部品、産業機械、産業機械部品、パイプ、パイプ部品、タンク、タンク部品、橋梁および橋梁部品、コイル、建築物および建築物部品、電力部門で使用される金属機器および構造物、エネルギー部門で使用される金属機器および構造物、ならびに輸送部門で使用される金属機器および構造物、である、請求項22に記載のプロセス。
前記マトリックスが、潤滑剤であり、前記カプセル化物が、(i)フェノールおよびその誘導体、芳香族およびアリールアミンから選択される酸化防止添加剤と、(ii)金属アルキルチオホスフェートから選択される耐摩耗添加剤と、(iii)フェネート、硫化フェネート、サリチレート、ナフテネート、ステアレート、カルバメート、チオカルバメート、リン誘導体から選択される分散剤と、各潤滑添加剤群(i)、(ii)、および(iii)内の構成成分の組み合わせと、各潤滑添加剤群(i)、(ii)、および(iii)の1つ以上の構成成分間の組み合わせと、から選択される潤滑添加剤である、請求項18に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、外部刺激に応答して即座にカプセル化物を放出することができるポリマー系部分開口中空リザーバに関係する。外部刺激は、還元/酸化、pH変化、電圧変化、および電気化学ポテンシャルの変化を含む。別の実施形態では、カプセル化物はまた、部分開口中空リザーバの壁の機械的損傷または剪断によって放出することができる。あるいは、部分開口中空リザーバはまた、部分開口中空リザーバの部分開口構成の結果として、経時的な、即座にとは対照的に、漸進的にカプセル化物を放出することができる。
【0047】
(A)部分開口中空リザーバ
部分開口中空リザーバ(POHR)とは、その表面上に少なくとも1つの開口部、および任意選択で1つ以上のカプセル化物の保管庫または貯蔵庫であり得る中空の内部を有する構造を意味する。好ましくは、本発明のPOHRは、ポリマー系である。本開示における「部分開口」とは、複数のPOHR内で、相当数がその表面上に少なくとも1つの開口部を有することを意味する。また、その表面上に2つ、3つ、4つ、または多数の開口部を有することもできる。
図1は、本発明の様々な部分開口POHRの概略図を示す。本開示では、POHR、リザーバ、マイクロリザーバ、およびナノリザーバ、ならびにマイクロカプセルは、同じ意味で使用される。それらは1つのおよび同じ構造を意味する。複数のマイクロリザーバでは、公称量のマイクロリザーバが閉鎖構造である可能性がある。
【0048】
一実施形態では、POHRは、ポリマー系の構造である。一実施形態では、ポリマーは、導電性ポリマーを含む。一実施形態では、ポリマーは、2つ以上のポリマーのブレンドまたは混合物であり、ポリマーのうちの少なくとも1つは導電性ポリマーを含む。
【0049】
一実施形態では、ポリマーは、ポリアニリン系ポリマー、および/またはその誘導体、および/またはそのオリゴマーを含む。一実施形態では、ポリマーは、ポリアニリン、またはポリ−o−メトキシアニリン、またはポリ−o−トルイジンを含む。一実施形態では、導電性ポリマーは、ポリピロール、および/またはその誘導体、および/またはそのオリゴマーである。本発明はまた、ポリアニリン系ポリマーのコポリマーを含むポリマー、およびポリピロール系ポリマーのコポリマーを含むポリマーを想定している。
【0050】
本発明のPOHRは、実効直径が200nm〜10,000nm(10μm)の範囲の平均サイズを有する。言い換えれば、複数のPOHRの平均サイズは、以下の数のうちの任意の1つである(nmで):200,..., 250, ..., 300, ..., 350, ..., 400, ..., 450, ..., 500, ..., 550, ..., 600, ..., 650, ..., 700, ..., 750, ..., 800, 850, ..., 900, ..., 950, ..., 1000,..., 2000, ..., 3000, ..., 4000, ..., 5000, ..., 6000, ..., 7000, ...,..., 8000, ..., 9000, ..., 9500, ..., 9550...., 9600, ..., 9650, ..., 9700, ..., 9750, ..., 9800, ..., 9850, ..., 9900, ..., 9950, ..., および 10000。
【0051】
一実施形態では、POHRの平均サイズは、端点を含む上述の任意の2つの数によって定義される範囲にある。上述の2つの数の間の間隔とは、中間の数も本明細書に開示されることを意味する。間隔は、簡潔にするために提供されている。
【0052】
一実施形態では、POHRと1つ以上の様々な開口部との組み合わせにより、カプセル化物の望ましい放出プロファイルが可能になる。例えば、一実施形態では、本発明は、POHRマイクロリザーバと同等の表面積を有する実効球表面積の0.25%〜約50%の範囲の開口部を有するマイクロリザーバを提供する。言い換えると、百分率で表した開口部の平均サイズは、下記のリスト:0.25、0.5、0.75、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50からの任意の数であり得る。
【0053】
一実施形態では、開口部の平均サイズは、端点を含む上記の任意の2つの数によって定義される範囲内にある。マイクロリザーバ開口部サイズの望ましい分布は、例えば、そのようなマイクロリザーバの2つ以上のバッチをブレンドすることによって調製することができる。例えば、1つの分布では、25%のマイクロリザーバは20%の平均開口部サイズを有し、25%のマイクロリザーバは30%の平均開口部サイズを有し、25%のマイクロリザーバは35%の平均開口部サイズを有し、25%のマイクロリザーバは40%の平均開口部サイズを有する。
図1は、様々な開口部サイズを有する本発明のマイクロリザーバのSEM画像を示す。
【0054】
リザーバは、カプセル状、球状、管状、および多孔質の中空微粒子状などの様々な形状のものであり得る(
図1.1、1.2を参照のこと)。一実施形態では、一般に、POHRは、それらの表面上に1つ以上の開口部または孔もしくは穴を有する不規則な球体である。多くの実施形態では、球体は完全には形成されておらず、これは、POHRの部分的な開放性を提供することの一因になる。一実施形態では、POHRは、表面上に多数の開口部を有し、開口部は、マイクロリザーバの表面上に、少なくとも部分的に網のような構造を有する。例えば、
図1を参照のこと。
【0055】
(B)カプセル化物
カプセル化物とは、部分開口中空リザーバ(POHR)内に組み込まれるか、またはカプセル化され、外部刺激の結果として、またはPOHRへの機械的損傷もしくは経時的な漸進的放出の結果として、一般に後になって放出に利用可能である、溶媒(例えば、有機溶媒)中で一般に可溶性の添加剤を意味する。カプセル化物は、機能性添加剤または非機能性添加剤であり得る。カプセル化物は可溶性であるか、または有機、無機、もしくは水性媒体中に分散することができる。分散液は、コロイド懸濁液、エマルジョンなどを含む。一般に、カプセル化物は、POHRの中空内部に常在するか、またはカプセル化されている。上記で説明したように、POHRは化学信号または刺激を受けると「ゲートが開口する」ため、カプセル化物は、POHR内に「化学的に閉じ込められている」と見なすことができる。
【0056】
これとは別に、しかしながら、本発明はまた、カプセル化物がPOHRの外面上に吸着されていることを想定している。部分開口中空リザーバ内にカプセル化するプロセスについては、下記で述べる。
【0057】
本発明の一実施形態では、POHRは、少なくとも1つのタイプのカプセル化物を含む。例えば、POHRは、カプセル化物E1を含み得る。別の例では、POHRは、2つのカプセル化物、E1およびE2、等々を含み得る。明確にするために、この実施形態が意味することは、一般に、各マイクロリザーバが両方のカプセル化物、例えば、E1およびE2を含むことである。
【0058】
別の実施形態では、POHRの実質的なパーセントは、少なくとも1つのタイプのカプセル化物を含むが、POHRのいくつかは、任意のカプセル化物を有していない場合がある。例えば、POHRのかなりのパーセントがカプセル化物E1を含み、いくつかのPOHRは任意のカプセル化物を有していない場合がある。別の例では、POHRのかなりのパーセントがカプセル化物E1およびE2の両方を含み、いくつかのPOHRは任意のカプセル化物を有していない場合がある。
【0059】
さらに別の実施形態では、部分開口中空リザーバ(POHR)のいくつかは1つのタイプのカプセル化物を有し、いくつかのPOHRは別のタイプのカプセル化物を有し、他のいくつかのPOHRはさらに別のタイプのカプセル化物を有する、等々。例えば、いくつかのPOHRはカプセル化物E1を含み、いくつかのPOHRはカプセル化物E2を含み、他のいくつかのPOHRはカプセル化物E3を含む。
【0060】
一実施形態では、所与の複数のPOHR内で、第1の組のPOHRは、1つ以上のタイプのカプセル化物を有し得、第2の組のPOHRは、1つ以上のタイプのカプセル化物を有し得るが、少なくとも1つのカプセル化物は、2つの組間で異なるタイプのカプセル化物である。例えば、第1の組はカプセル化物E1を有し得、第2の組はカプセル化物E2を有し得るか、または第1の組はカプセル化物E1およびE2を有し得、第2の組はカプセル化物E2を有し得るか、または第1の組はカプセル化物E1、E2、およびE3を有し得、第2の組はカプセル化物E2およびE3を有し得る。同様に、この実施形態は、多数の組のPOHRを含む複数のPOHRを想定しており、各組のPOHRは、少なくとも1つのカプセル化物がそのようなカプセル化物を含む任意の2つの組のPOHR間で異なるように、1つ以上のカプセル化物を有する。
【0061】
別の言い方をすれば、Piが様々な組のPOHRを表し、Ejが様々なタイプのカプセル化物を表す場合、本発明は、1つ以上のカプセル化物を含む様々な1つ以上の組のPOHRを想定している。
ΣPi(ΣEj)
式中、括弧は、カプセル化を表す。
Piは、一組のPOHRであり、iは、1〜10で変化する。
Ejは、カプセル化物であり、jは、1〜10で変化し、
Σは、加算を示す。
【0062】
多くの機能を備えているかどうかにかかわらず、カプセル化物は、POHRに添加することができる。そのような機能性添加剤は、腐食防止剤、潤滑添加剤、接着添加剤、殺生物添加剤、防汚添加剤、殺虫添加剤、薬物送達添加剤、蒸気センサ添加剤、化学センサ添加剤、バイオセンサ添加剤、食品包装センサ、腐食センサ、芳香放出添加剤、触媒添加剤、酵素添加剤、pHバランス添加剤、着色添加剤、色付け添加剤、電荷散逸添加剤、インクリフレッシュ添加剤、および静的除去添加剤を含む。
【0063】
カプセル化物を可溶化するか、または分散するのに有用な溶媒の非網羅的なリストを表1に示す。
【0064】
表1:カプセル化用の溶媒
本発明のカプセル化物に使用される一般的な溶媒は、以下の表にあるものを含む。
【表1-1】
【表1-2】
【0065】
(C)部分開口中空リザーバを調製する方法
一実施形態では、例えば、ポリアニリン、ポリ−o−トルイジン、およびポリ−o−メトキシアニリンの導電性ポリマー系マイクロリザーバは、酸化剤としてペルオキシ二硫酸アンモニウムを使用する水性媒体中でのそれらそれぞれのモノマーの化学酸化重合によって合成される。
【0066】
マイクロリザーバは、ポリマーマイクロリザーバが合成された後、カプセル化物のカプセル化を可能にする表面上に少なくとも1つの穴または開口部を有する。カプセル化物が部分開口中空リザーバ(POHR)内にカプセル化されるか、または組み込まれると、穴またはオリフィスとしても知られている開口部により、外部刺激、機械的剪断もしくは摩耗、または経時的な、カプセル化物の持続的もしくは漸進的放出が可能になる。
【0067】
ポリアニリン
本発明の一実施形態では、POHRを調製するために使用されるポリマーは、置換または非置換アニリンの重合から調製されたポリアニリン系ポリマーを含む。「アニリン」という用語が本明細書で使用されるとき、特定の非置換形態のみが意図されるという状況が明確でない限り、それは、置換および非置換アニリンを含むために総称的に使用される。一般に、本発明で使用するためのアニリンは、下記の式Iのモノマーであり、
【化1】
式I
mは、1〜5の整数であり、
nは、0〜4の整数であるが、mとnとの合計が5に等しいことを条件とし、
Rは、各発生で同じまたは異なるように独立して選択され、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボン酸、ハロゲン、シアノ、または1つ以上のスルホン酸、カルボン酸、ハロ、ニトロ、シアノ、もしくはエクスポリ部分で置換されたアルキル;またはカルボン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、もしくはスルホン酸部分;からなる群から選択されるか、または任意の2つのR基が一緒に3、4、5、6、もしくは7員の芳香族環または脂環式環を完成させるアルキレンもしくはアルケニレン鎖を形成し得、この環は、任意選択で1つ以上の二価の窒素、硫黄または酸素原子を含み得る。本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、様々なR基のサイズは、約1個の炭素(アルキルの場合に)から2個以上の炭素から約20個の炭素までの範囲であり、n個のRの合計は約1〜約40個の炭素である。
【0068】
以下の置換および非置換アニリンのリストは、本発明の実践に有用なポリマーおよびコポリマーを調製するために使用することができるものの例示である:アニリン、2,5−ジメチルアニリン、o−トルイジン、2,3−ジメチルアニリン、m−トルイジン、2,5−ジブチルアニリン、o−エチルアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、m−エチルアニリン、テトラヒドロナフチルアミン、o−エトキシアニリン、o−シアノアニリン、m−ブチルアニリン、2−チオメチルアニリンm−ヘキシルアニリン、2,5−ジクロロアニリン、m−オクチラニリン、3−(n−ブタンスルホン酸)アニリン、2−ブロモアニリン、3−ブロモアニリン、2,4−ジメトキシアニリン、3−アセトアミドアニリン、4−ブロモアニリン、4−メルカプトアニリン、4−アセトアミドアニリン、4−メチルチオアニリン、5−クロロ−2−メトキシアニリン、3−フェノキシアニリン、5−クロロ−2−エトキシアニリン、4−フェノキシアニリン。
【0069】
本発明の一実施形態では、ポリアニリンおよびその誘導体の構造を下記に示す。本発明では、ポリアニリンおよびその誘導体は、ドープされた構成としても知られている導電性構成、およびドープされていない構成としても知られている絶縁性構成の両方においてマイクロリザーバとして使用される。
式II
【化2】
【0070】
上記の式は、本発明の部分開口中空マイクロリザーバまたはカプセルの一実施形態を調製するために使用されるポリマー骨格の構造を示す。例えば、R=Hであるとき、構造はポリアニリンのものである。R
1=CH
3、R
2=Hについては、それはポリ−o−トルイジンであり、R=C
2H
2、R
2=Hについては、それはポリ−2−エチルアニリンである。R=OCH
3、R
2=Hについては、それはポリ−o−メトキシアニリンであり、R=OC
2H
5、R
2=Hについては、それはポリ−エトキシアニリンである。R
1=CH
3、R
2=CH
3については、それはポリ−2,5−ジメチルアニリンであり、R
1=C
3H
5、R
2=C
2H
5については、それはポリ−2,5−ジエチルアニリンである。R
1=OCH
3、R
2=OCH
3については、それはポリ−2,5−ジメトキシイルアニリン(poly−2,5−dimethoxyylaniline)であり、R
1=OC
2H
5、R
2=OC
2H
5については、それはポリ−2,5−ジエトキシルアニリン(poly−2,5−diethoxylaniline)である。(a)として指示された構造は、ポリアニリン系ポリマーの導電性またはドープされた構成に対応し、Dは、ドーパント対イオンである。(b)として指示された構造は、ドーパント対イオンを含まない、骨格分子の絶縁またはドープされていない構成に対応する。
【0071】
本発明の一実施形態では、POHRは、ポリアニリンおよびその誘導体に基づいており、それらの導電性形態および絶縁性形態の両方で使用することができる。モノマーおよび酸化剤の濃度に依存して、リザーバは、直径200nm〜10,000nm(10μm)の範囲のサイズで得られる。
【0072】
一実施形態では、アニリン系モノマー、例えばo−トルイジンモノマーは、室温未満の範囲の制御された温度条件下で、ペルオキシ二硫酸アンモニウム酸化剤を使用して水性媒体中で酸化的に重合される。反応は、一般に氷の状態で数時間放置される。モノマーおよび酸化剤の濃度、ならびに反応混合物の温度を変化させることにより、異なるサイズおよび形状のリザーバが合成される。モノマーが水性媒体中に分散されると、それらは水性媒体中でマイクロエマルジョンを形成する。酸化剤が添加されるとき、本発明の部分開口中空リザーバを形成するように、モノマーは重合する。
【0073】
モノマーおよび酸化剤の濃度を変化させることにより、様々なサイズおよび形状のリザーバが合成される。温度の反応条件、および反応物の濃度は、部分開口中空リザーバ、チューブ、ナノファイバー構造、ならびに多孔質および中空構造などの本発明のリザーバの個別の形状(重合鎖の自己組織化)を生み出すように調整することができる。
【0074】
(D)POHR内にカプセル化物をカプセル化する方法
本発明の一実施形態では、添加剤またはカプセル化物は、3つの方法、すなわち、(a)溶媒蒸発、(b)その場堆積、および(c)沈殿によって部分開口中空リザーバ内にカプセル化される。
【0075】
(a)溶媒蒸発法
この方法では、飽和カプセル化物溶液を、その揮発性溶媒中で調製する。部分開口中空リザーバ(POHR)をカプセル化物溶液に添加し、数時間撹拌して、カプセル化物溶液が確実にPOHR内に浸透するか、または十分に吸着されるようにする。次いで、溶液を加熱して、溶媒を除去し、その結果、カプセル化物とともにカプセル化されたリザーバが得られる。明らかに、溶媒が1つ以上のタイプのカプセル化物の溶液を調製するのに適している限り、1つ以上のタイプのカプセル化物を使用することができる。
【0076】
(b)その場堆積法
この方法では、カプセル化物を、部分開口中空マイクロリザーバ(POHR)の合成中に添加する。カプセル化物部分とモノマーとの相互作用により、カプセル化物部分は、重合中に形成されたモノマーミセルに入り、その結果、カプセル化物とともにカプセル化されたPOHRの形成が得られる。明らかに、1つ以上のタイプのカプセル化物は、カプセル化物のその場堆積に使用することができる。この技術は、必ずしもカプセル化物を溶媒中に溶解して溶液を形成することを必要としない。
【0077】
(c)沈殿法
この方法では、飽和カプセル化物溶液を、水混和性溶媒中で調製する。POHRをカプセル化物溶液に添加し、数時間撹拌して、カプセル化物溶液が確実にPOHR内に浸透するか、または十分に吸着されるようにする。次いで、カプセル化物が溶液から沈殿し、その結果、カプセル化物がマイクロリザーバ内でカプセル化されるように、溶液を氷冷水に添加する。溶剤および水を標準的な方法によって除去する。
【0078】
(E)POHRからカプセル化物を放出する方法
部分開口中空リザーバ(POHR)からのカプセル化物の放出は、酸化、還元、pH変化、電圧変化、および/または電気化学ポテンシャル、および/または機械的損傷、vを誘発することができる。例えば、剪断または力による機械的損傷によっても、カプセル化物を放出することができる。カプセル化物はまた、経時的に、POHR内の1つ以上の開口部から放出することができる。
【0079】
一実施形態では、上述の放出刺激またはトリガーと組み合わせたPOHRは、所与の時間でのカプセル化物の割合および放出を決定する。別の言い方をすれば、本発明は、カプセル化物の時間依存放出を支援するPOHR内の部分的開口によるカプセル化物の時間放出のためのメカニズムを提供する。一実施形態では、POHRと様々な開口部との組み合わせにより、望ましい放出プロファイルが可能になる。例えば、一実施形態は、POHRマイクロリザーバと同等の表面積を有する実効球表面積の0.25%〜約50%の範囲の開口部を有するマイクロリザーバを提供する。言い換えると、百分率で表した開口部の平均サイズは、下記のリスト:0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50からの任意の数であり得る。
【0080】
一実施形態では、開口部の平均サイズは、端点を含む上記の任意の2つの数によって定義される範囲内にある。
【0081】
一実施形態では、マイクロリザーバ開口部サイズの望ましい分布を調製することができる。例えば、1つの分布では、25%のPOHRは20%の平均開口部サイズを有し、25%のPOHRは30%の平均開口部サイズを有し、25%のPOHRは35%の平均開口部サイズを有し、25%のPOHRは40%の平均開口部サイズを有する。
図1は、様々な開口部サイズを有する本発明のPOHRのSEM画像を示す。
【0082】
カプセル化物は、外部刺激に基づいて、随意に、POHRから瞬時に、またはPOHR表面上の1つ以上の開口部により、一定期間にわたって放出される。
【0083】
本発明では、機能性添加剤などのカプセル化物の放出は、単純にPOHRの1つ以上の開口部に依存しない。言い換えれば、POHR上の1つ以上の開口部によって示される部分的開放性は、カプセル化物を媒体またはカプセル化物を含むPOHRを具体化するマトリックスの中に放出するための唯一の、または実質的な考慮事項ではない。実際に、本発明が使用する妥当なメカニズムは、POHRの部分的開放性と併せて、カプセル化物の放出を生み出す「化学剪断」である。実質的に、それは、ベースポリマーの還元−酸化状態にある外部から誘発された変化、または電気化学ポテンシャルの変化、またはpHの変化、またはカプセル化物を放出する外部刺激として作用する電圧の変化である。これを
図2bに示す。酸化状態の変化の結果として、放出におけるステップ変化が発生する(これらの部分の還元が発生する)。一実施形態では、本発明は、機械的剪断および/またはPOHRの部分的開放性(実質的にまたは唯一とは対照的に、機械的衝撃、例えば機械的剪断)とわずかに併せて、実質的に化学的衝撃を提供し、ポリマーマイクロリザーバ内の機能性添加剤を放出する際に補助する。あるいは、機能性添加剤などのカプセル化物を放出する「化学的」刺激のこの現象は、本発明の目的のために「化学的剪断」と呼ばれる。
【0084】
制御してリザーバから内容物を放出する能力は、自己修復コーティング、潤滑剤、腐食防止、抗菌保護、薬物送達、センサ、芳香放出、肥料放出、殺虫剤放出、インク、看板および標識用の染料、触媒作用、ならびにバッテリー修理などの様々な用途で非常に関心が高いものである。
【0085】
リザーバは、特定の部位および/または時間にそのカプセル化物を送達するための担体または送達手段として作用するか、または必要な場合、放出される特殊化学物質を貯蔵するために使用することができる。POHR内にカプセル化されるように、機能性添加剤を媒体に添加することにより、直接添加された、すなわちPOHR内にカプセル化されていない同じ添加剤の寿命と比較したとき、カプセル化された構成により、添加剤が浸出したり、または急速に消費されたりすることを保護するため、媒体内のそのような添加剤の機能寿命が延びる。
【0086】
POHRポリマーの骨格構造に依存して、様々なメカニズムは、POHRの内容物を放出するためのトリガーを提供することができるリザーバシェル壁における変化を開始させることができる。pHの変化または一定の化学物質の存在はまた、ヒトもしくは動物またはそのような投与を必要とする他の種などの対象における特定の位置への薬物または薬物前駆体の送達に有用であり得るカプセル化物の放出を誘発することができる。電気的または電気化学的に誘起されたカプセル化物の放出は、防食コーティングまたはバッテリー修理に有用である。
【0087】
コアシェルタイプのポリマー系のリザーバは、機械的損傷によりそれらのカプセル化物を放出する。外部トリガーに敏感であり、外部刺激でカプセル化物を放出するポリマーリザーバは、外部トリガーに敏感になるように、いくつかの化学的または物理的機能でポリマー骨格を修飾する必要がある。しかしながら、ポリアニリンおよびその誘導体を含む本発明のPOHRは、電気活性であり、本来、酸塩基レドックス化学によって導電性から絶縁性に変換することができる導電性ポリマーである。したがって、導電性ポリマーリザーバは、カプセル化物放出のための外部トリガーに対する感度を組み込むためのポリマー骨格修飾を必要としない。
【0088】
(F)ポリアニリンカプセル化物放出メカニズム
【化3】
上述の式は、ポリアニリンエメラルジン塩(導電性)およびエメラルジン塩基(絶縁性)の形態の化学構造およびその異なる酸化状態(ペルニグラニリンおよびロイコエメラルジン)を示す。
【0089】
本発明者らは、それが本発明に関するとき、それに束縛されることを望むものではないが、以下の理論を提案する。ポリアニリンは、単純な酸塩基レドックス化学によって導電性から絶縁性の形態に変換することができる本質的に導電性ポリマーである。また、金属と同様に、ポリアニリンは、ある酸化状態から別の酸化状態に変換することができ、すなわち、ポリアニリンは、ロイコエメラルジン、エメラルジン、およびエメラルジン酸化状態が安定した形態であるペルニグラニリンの3つの酸化状態で存在することができる。ポリアニリンからのカプセル化物の放出は、導電性から絶縁性の形態に変換するためのそのレドックス特性、またはある酸化状態から別の酸化状態に移行する能力に起因され得る。
【0090】
エメラルジン酸化状態にあるポリアニリンリザーバは、その中に有機部分を貯蔵するが、還元酸化状態では有機部分を放出する。エメラルジンの酸化状態では、ポリアニリンは、ベンゼノイド環およびキノノイド環を含有する。これにより、アミン−イミン分子間の水素結合によりポリマー鎖がよりコンパクトになり、それによってその中に貯蔵されている有機部分の放出が妨げられる。ポリアニリンがロイコエメラルジン酸化状態に還元されるとき、水素結合が弱くなり、キノノイド環の二重結合がないことにより、ポリアニリン鎖の剛性が低下する。したがって、弱い水素結合(あまりコンパクトではない構造)およびポリマー鎖の柔軟性により、ロイコエメラルジン酸化状態にあるポリアニリンは、より透過性が高く多孔性であり、リザーバ内に貯蔵された有機部分を放出することができる。
【0091】
ロイコエメラルジン酸化におけるポリアニリン鎖はより柔軟性であり、光散乱およびゲル浸透クロマトグラフィーの研究によっても明白である。同様の合成条件下で、エメラルジン酸化状態にあるポリアニリンは、ロイコメラルジン酸化状態と比較して、より高い分子量を示すことが観測される。この相違は、分子量が棒のような鎖立体配座によるエメラルジン酸化状態にあるポリアニリンのより大きい流体力学的半径に起因するが、ロイコエメラルジン酸化状態にあるポリアニリンは、その柔軟なコイルのような鎖立体配座によって比較的小さい流体力学的半径を有する。したがって、酸化状態またはドーピングレベルの変化は、特定のモルホロジーのポリアニリンのポリマー鎖スタッキングを破壊し、それによって構造の多孔性を変化させる。したがって、腐食防止剤などのカプセル化物を含有する本発明のポリアニリン系のPOHRは、pH、電気化学ポテンシャル、または電圧の変化でそのカプセル化物を効果的に放出する。
【0092】
また、pHの変化に伴い、カプセル化物の放出が観測され、これは、ポリマー鎖上で発生するドーピング/脱ドーピングレドックス化学によるポリアニリンの分子鎖立体配座の変化に起因し得る。例えば、そのドープされた(導電性形態)POHRは、高pH条件下でカプセル化物を放出するが、その塩基(脱ドープされた、絶縁性形態)にあるPOHRは、低pH条件下でそのカプセル化物を放出する。
【0093】
(F)カプセル化物を含むPOHRの用途
本発明の刺激応答性マイクロリザーバ(POHR)は、様々な用途、例えば、
1.自己修復腐食防止添加剤およびそのような添加剤を含む自己修復防食コーティングマトリックスと、
2.潤滑添加剤およびそのような添加剤を含む潤滑剤マトリックスと、
3.接着添加剤およびそのような添加剤を含む接着剤マトリックスと、
4.殺生物および防汚(B&A)添加剤、ならびにそのような添加剤を含むB&Aマトリックスと、
5.殺虫添加剤およびそのような添加剤を含む殺虫剤マトリックスと、
6.薬物送達添加剤およびそのような添加剤を含む薬物送達マトリックスと、
7.腐食センサ添加剤およびそのような添加剤を含む腐食センサマトリックスと、
8.芳香放出添加剤およびそのような添加剤を含む芳香放出マトリックスと、
9.触媒添加剤およびそのような添加剤を含む触媒マトリックスと、
10.インク添加剤およびそのような添加剤を含むインクマトリックスと、
11.染料添加剤およびそのような添加剤を含むマトリックスと、
12.酵素添加剤およびそのような添加剤を含むマトリックスと、
13.反応物添加剤およびそのような添加剤を含むマトリックスと、を使用することができる。
【0094】
上述の例では、「マトリックス」とは、カプセル化物を含むそのようなPOHRが分散された媒体を意味する。そのような「マトリックス」の例としては、腐食防止剤を含むPOHRが添加された塗料およびコーティング、潤滑添加剤を含むPOHRが添加されたモータオイルなどの潤滑油、接着添加剤を含むPOHRが添加されたエポキシまたはウレタン接着剤などの接着剤、等々が挙げられる。マトリックスは、流体、固体、半固体、ゲル、ゾルゲル、分散液、エマルジョン、コロイド懸濁液、気液混合物、ペースト、ポリマーマトリックス、またはそのようなPOHRマイクロリザーバに適した他のそのような組み合わせであり得る。POHRがマトリックスに追加されるとき、マトリックスは、1つの物理的および化学的な形態にあり、後で別の物理的および/または化学的な形態に変化する可能性がある。
【0095】
(a)自己修復腐食防止添加剤および添加剤を含む防食コーティングマトリックス
金属表面を腐食や他の損傷から保護するために、金属表面上にコーティングが塗布される。腐食防止剤をコーティングに添加して、金属の腐食を遅らせるか、または防止する。産業標準または腐食防止剤をコーティングに組み込むことは、直接添加によるものである。この方法は簡単ではあるものの、防止剤は、コーティングに対する損傷によって直接露出しないため、その効果が制限される。また、経時的に、雨、湿気、および他の環境要因により、腐食防止剤がコーティング表面から浸出し、コーティングの腐食防止効率が低下する場合がある。また、従来のコーティングは、損傷に応答して、コーティングの損傷部位で正確に、およびまたは損傷を修正または完全に取り除くのに必要な量で、必要に応じて活性剤の制御可能な放出を提供することができない。したがって、コーティングの腐食誘発損傷の部位でオンデマンドで腐食防止剤を放出する能力を有する腐食防止剤のカプセルまたはリザーバを含む刺激感受性コーティングは、腐食防止寿命およびコーティングの効率を増加させる。
【0096】
本発明のPOHRは、石油およびガス、自動車、化学プラント、船舶などの産業、ならびに建物、施設、および産業施設などの建設、道路、ガードレール、橋、線路、建築物、コンテナ、産業用途、被覆材、装飾、石油化学、発電施設、上下水道、官庁、工場、さらにはクリーンテクノロジー製造などの高性能製造施設などのインフラストラクチャで使用することができる。POHRは、アクセスの一般化された欠如のために無視される可能性が高い、手の届きにくい場所を被覆するコーティングで特に有用である。
【0097】
コーティングの腐食防止寿命を改善するために、腐食防止剤は、コーティング中でより長期間保存されるべきであり、表面上に引っかき傷または機械的損傷がある場合、腐食部位で容易におよび/または即座に利用可能にされるべきである。防食コーティング中の腐食防止剤を含むマイクロリザーバは、金属の腐食を一般に阻止するだけでなく、腐食を迅速に止めることによって、表面上の引っかき傷または機械的損傷の場合には金属を修復してさらなる腐食から保護する。
【0098】
本発明のマイクロリザーバ内に貯蔵される腐食防止剤は、意図された目的に好適である従来技術で知られている任意の腐食防止剤であり得る。腐食防止剤の選択は、金属の性質および保護される金属構造、環境条件、操作条件などに依存する。
【0099】
実際に腐食の始まりでは、カプセル化された腐食防止剤を放出することができる部分開口中空リザーバは、非常に有益なものである。
【0100】
本発明のリザーバは電気化学的還元に敏感であり、腐食は酸化プロセスであるため、コーティング中に添加剤として添加されるときの腐食防止剤とともにカプセル化されたリザーバは、腐食部位におよび具体的には腐食の始まりに直接腐食防止剤を放出し、それによって自己修復し、金属を腐食から保護する。
【0101】
POHRリザーバ内にカプセル化された腐食防止剤は、以下の群のうちの1つ以上から選択される。
【0102】
(i)アミノ基もしくはカルボキシ基またはカルボン酸の塩、イミダゾール、チアゾール、テトラゾール、および(置換)ベンゾトリアゾールのようなトリアゾール、ならびに2−メルカプトベンゾチアゾールのようなアゾール;N−フェニル−1.4−フェニレンジアミンなどのアミンおよびN、N’−o−フェニレン−ビス(3−メトキシサリチリデンイミン)などのシッフ塩基(アミンとアルデヒドまたはケトンとの縮合生成物);DMTDまたは1−フェニル−2.5−ジチオヒドラゾジカルボンアミドなどのトリプトファンチオール基化合物のようなアミノ酸;2−[(7−アニリノ−5−[1,2,4]トリアゾロ[3,4−b][1,3,4]チアジアジン−3−イル)メチル]フタラジン−1(2H)−オンのようなフタラジン誘導体;タンニンおよび置換ウラシル;スチレンホスホン酸などのホスホン酸基含有材料;コハク酸;(ベンゾチアゾール−2−イルチオ)コハク酸;リノール酸およびTEOAなどの脂肪酸誘導体;タロー脂肪酸の塩;ならびにスルホネート、ピリジニウム基、ピラジン基、アゾール誘導体キノリンおよびキノロン化合物を含有する有機化合物、
【0103】
(ii)ポリホスフェートおよびその誘導体、ニトライト、シリケート、モリブデート、ならびにポリモリブデートおよびその誘導体、バナデートならびにポリバナデートおよびその誘導体を含む群から選択される1つ以上のアニオンを含有する有機化合物、ならびに、
【0104】
(iii)ランタニド、マグネシウム、カルシウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム、クロム、および銀を含む群から選択される1つ以上のカチオンを含む有機または無機化合物。
【0105】
腐食防止剤とともにカプセル化されたリザーバは、前処理、すなわち、金属基板上の初期結合層、化成コーティング、プライマー、ポリマーコーティング配合物、粉末コーティング、塗料、およびコンクリートなどのマトリックスに、特に粉末または懸濁液の形態で添加され得る。
【0106】
腐食防止は、鉄、銅、亜鉛、および鋼などの合金などの様々な金属上で達成することができる。本発明を使用する腐食保護用の他の例示的な金属および金属合金としては、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム合金、亜鉛合金、銅合金、および真鍮が挙げられる。本発明の適用分野としては、自動車、航空宇宙、建設、建築物、輸送、船舶、コイル、装飾、被覆材などが挙げられる。すなわち、本発明は、腐食を受ける可能性が高い任意の物体上に使用することができる。
【0107】
マイクロリザーバ添加剤は、水性系、溶媒系、および粉末系のコーティングで使用することができる。
【0108】
(b)潤滑添加剤および添加剤を含む潤滑剤マトリックス
潤滑剤は、通常、金属部品を移動することを伴う用途で使用される。それらは、例えば摩耗および加熱によって可動部品間に生じる摩擦を低減する。潤滑剤は金属部品もコーティングするため、腐食を防止するのに役立つ。機能性添加剤は、性能を高めるために潤滑剤の中に添加される。例えば、潤滑剤は、油を増粘から阻止する酸化防止添加剤、エンジン効率を高める摩擦調整添加剤、汚染物質を懸濁状態に保つ分散添加剤、気泡の生成および保持を防止する消泡添加剤、金属上への堆積物を低減する洗剤添加剤、ならびに金属の腐食を防止するための腐食防止添加剤を含み得る。
【0109】
添加剤をリザーバ内にカプセル化することによって、添加剤が潤滑剤中に長期間保存され、
i.長期保護のための化学添加剤の時限放出する、
ii.有害な添加剤と添加剤との相互作用を回避することにより、添加剤の実効用量を削減する、
iii.正しい時間および正しい場所で望ましい化学物質を送達して、添加剤を直接添加したときに可能ではない性能を達成する、
iv.最大限の効果のために正しい量の添加剤を送達することにより、潤滑剤の効率を高める、
v.送達される添加剤の実効用量を増加させることによって廃棄物を削減し、その結果、コストを下げ、環境上の利点を提供する(例えば、環境に浸入する廃油を減らす)、
vi.生分解性剤の導入を許可して、廃棄潤滑剤の安全かつ迅速な分解を促進する、などのいくつかの利点を提供する。
【0110】
リザーバ内にカプセル化され得る潤滑添加剤はまた、フェノールおよびその誘導体、芳香族アミンおよびアリールアミンの分類に属する酸化防止添加剤と、金属アルキルチオホスフェートの分類に属する耐摩耗添加剤と、フェネート、硫化フェネート、サリチレート、ナフテネート、ステアレート、カルバメート、チオカルバメート、リン誘導体の分類に属する分散剤などと、を含む。
【0111】
(c)接着添加剤およびそのような添加剤を含む接着剤マトリックス。
本発明はまた、接着剤に使用されるPOHR系添加剤に関する。接着剤は、ゲル、ペースト、液体、または任意の他のマトリックス形態であり得る。接着剤のいくつかの例としては、ウレタンおよびエポキシ系のシステムが挙げられる。接着剤は、熱硬化性樹脂系または熱可塑性系の材料であり得る。ポリマーゲルはまた、本発明のPOHRと併せて、マトリックスとして使用することができる接着剤材料である。
【0112】
例えば、電子デバイスでは、導電性要素は、接着剤によって互いに結合され得る。多くの産業では、金属部品の製造業者は、構造用接着剤を使用して、リベット、ボルト、および溶接などの従来の固定技術に置き換えている。接着剤は、改善された製品性能、審美性、短縮された全体的な組み立て時間、およびより低い生産コストを提供する。さらに、接着剤は、リベット、ボルト、溶接、および他の旧来の固定方法で見られることが多い応力点の集中、腐食、および構成部品損傷の多くを防ぐ。
【0113】
本発明はまた、構造の重量全体を低減するために、例えば自動車用途において、2つの異なるタイプの材料を一緒に取り付ける際にPOHRを含む接着剤を使用することに関する。例えば、自動車では、屋内および屋外のパネル、ボンネット、およびラゲージドアは、構造、重量、および外観の要件を満たすために、鋼パネル、アルミニウムパネル、マグネシウム合金パネル、銅合金パネル、カーボン複合材料の任意の組み合わせで作製することができる。
【0114】
しかしながら、金属の組み合わせ(隣接)は、間隔の狭い金属構造がそれらの間でガルバニック作用を生じる可能性が高いため、腐食の影響を受けやすくなる。
【0115】
したがって、本発明の腐食防止剤とともにカプセル化されたマイクロリザーバを含む接着剤組成物は、2つの異なるタイプの金属が一緒に結合されたときに腐食を効果的に防止する。腐食防止剤は、(i)POHRが、2つの金属片が結合するために一緒に押し付けられたときに機械的に砕かれたとき、(ii)腐食事象が発生したとき、ならびに/または(iii)接着剤結合プロセスの完了後、および結合されたアセンブリの寿命中に、POHRから漸進的に放出されたとき、に放出される。
【0116】
腐食防止剤の例としては、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金を保護するためのクロメート組成物またはホスフェート、シリケート、ニトレート、ベンゾエート、銅合金用のメルカプトベンゾチアゾール、鉄合金用のモリブデン酸ナトリウム配合物、および鋼用のアミンと組み合わせたホスホン酸が挙げられ得る。
【0117】
一実施形態では、接着剤用途については、POHRは、反応および硬化プロセスの制御の不可欠な部分である。硬化剤は、POHRの中にカプセル化され、接着剤に添加される。接着剤をねじに塗布した後、例えば、ねじを締める動作により、ねじ山の間でPOHRが破裂し、活性材料が放出され、これにより硬化が始まる。
【0118】
一実施形態では、マイクロリザーバは、スペーサとして作用し、それらを接着剤中に含めると、2つの基剤間に所定の最小ボンドライン厚が得られる。
【0119】
(d)殺生物および防汚(B&A)添加剤ならびにそのような添加剤を含むマトリックス
船舶コーティングおよび塗料の製造業者は、これらの塗料が容器または桟橋などの水中構造物に塗布されるとき、習慣的に、殺生物剤を塗料に添加して、微生物、例えばカビおよび酵母などの真菌、バクテリア、藻類、ならびにシアノバクテリアなどによる薄膜の望ましくない侵入(いわゆる「軟質汚損」)を阻止または防止する。
【0120】
B&A添加剤はまた、場合によってはフジツボ、チューブワームなどの増殖(いわゆる「硬質汚損」)を阻止する際にも効果がある。しかしながら、殺生物剤放出の制御が不十分であることが、これらのシステムの主な欠点である。ほとんどのコーティングは、コーティングの寿命が終わる前にその防汚作用を低下させる殺生物剤の早期漏出に悩まされている。あるいは、より多くの殺生物剤含有量を使用して、必要なライフサイクルに到達することもできるが、これらの有毒剤を環境の中に継続的に放出することは、適用された生物活性剤の生態毒性および累積効果のために、生態系に深刻な害を及ぼす。結果として、厳格な国際規制が発行された。したがって、殺生物剤または防汚剤をコーティング中に長期間貯蔵する能力、およびコーティング中での経時的なその制御された放出が非常に重要である。
【0121】
本発明のPOHRは、その表面上に1つ以上の開口部を有し、刺激は化学的/電気化学的、および/または機械的であるため、本出願における他の箇所で述べるように、放出プロファイルは、必要性に従って構造化することができる。例えば、連続放出、または時限放出、または持続放出は、予想に従って調整することができる。本発明はまた、1つのPOHR内に多数の殺生物剤、または複数のPOHRの組内にPOHRの組ごとに1つの殺生物剤を使用することに関する。好適な殺生物剤としては、トリアゾール、イミダゾール、サクシネート、ベンズアミド、ヨウ素、フェノール、ピリジン、キノリン、窒化物、ホスフェート、およびそれらのそれぞれの誘導体が挙げられ得る。一実施形態では、好適な殺生物剤は、海洋生物または淡水生物用の無機、有機金属、金属有機、または有機殺生物剤のうちの1つ以上であり得る。
【0122】
無機殺生物剤の例としては、酸化銅、チオシアン酸銅、銅ブロンズ、炭酸銅、塩化銅、銅ニッケル合金などの銅塩、および塩化銀または硝酸銀などの銀塩が挙げられる。
【0123】
有機金属および金属有機殺生物剤の例としては、亜鉛ピリチオン(2−ピリジンチオール−1−オキシドの亜鉛塩)、銅ピリチオン、ビス(N−シクロヘキシル−ジアゼニウムジオキシ)銅、亜鉛エチレン−ビス(ジチオカルバメート)(すなわち、ジネブ)、亜鉛ジメチルジチオカルバメート(ジラム)、および亜鉛塩(すなわちマンコゼブ)と複合されたマンガンエチレン−ビス(ジチオカルバメート)が挙げられる。
【0124】
有機殺生物剤の例としては、ホルムアルデヒド、ドデシルグアニジン一塩酸塩、チアベンダゾール、Nトリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミドなどのN−アリールマレイミド、3−(3,4−ジクロロフェニル)1,1−ジメチル尿素(ジウロン)、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2メチルチオ−4−ブチルアミノ−6−シクロポピルアミノ−s−トリアジン(2 methylthio−4−butylamino−6−cyclopopylamino−s−triazine)、3−ベンゾ[b]チエン−イル−5、6ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン4−オキシド、4,5−ジクロロ−2−(n−オクチル)−3(2H)−イソチアゾロン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、ジヨードメチル−pトシルスルホン、カプシアシン(capsciacin)、N−シクロプロピル−N’−(1,1−ジメチルエチル)−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、メデトミジン、1,4−ジチアアントラキノン−2,3−ジカルボニトリル(ジチアノン)、ピリジントリフェニルボランなどのボラン、2−(p−クロロフェニル)3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロール(トラロピリル)などの5位および任意選択で1位に置換された2−トリハロゲノメチル−3−ハロゲノ−4−シアノピロール誘導体、および3−ブチル−5−(ジブロモメチルイデン)−2(5H)−フラノンなどのフラノン、ならびにそれらの混合物、アベルメクチン、例えばアベルメクチンB1、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、アマメクチン、およびセラメクチンなどの大環状ラクトン、ならびにジデシルジメチルアンモニウムクロリドおよびアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドなどの第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0125】
(e)殺虫添加剤およびそのような添加剤を含む殺虫剤マトリックス
殺虫剤は、間違いなく現代の農業生産の必須の要素である。それらは、植物の害虫および病気を低減することによって、効果的に作物の収穫量を増加させることができる。しかしながら、旧来の殺虫剤配合物は、高い有機溶媒含有量、塵の浮遊、不十分な分散性などのいくつかの欠点を有し、最も重要なこととして、殺虫剤のほとんどが環境に失われ、1%未満が対象物に残る。この低い有効性は、殺虫剤に関連する深刻な環境汚染の一因になる。したがって、殺虫剤に関連する廃棄物、生産コスト、および環境汚染を削減しながら、さらに作物に対する殺虫剤作用の期間を延長するための努力を払う必要がある。
【0126】
これらの課題に対処するための方法のうちの1つは、本発明の一態様である殺虫剤の正確な制御放出を使用することによる。この手法は、殺虫剤の放出を遅らせ、制御する賢明な設計を通じて、殺虫剤に対する作物の需要を最小限に抑えて、より効果的で安全な殺虫剤の使用を漸進的に達成することを目的としている。
【0127】
また、殺虫剤の持続放出に加えて、光、温度、土壌のpH、湿度などに応答して殺虫剤を応答的に放出するシステムが可能である場合、廃棄物および汚染を低減することによって、殺虫剤の使用を大幅に改善することが可能である。
【0128】
殺虫剤とともにカプセル化された本発明のPOHRは、制御された殺虫剤放出を達成し、また、pHの変化に応答して殺虫剤放出を可能にし、廃棄物および汚染を低減することによって殺虫剤使用を改善する。
【0129】
本発明のPOHRカプセル化に適した殺虫剤の例としては、ビフェントリン、ペルメトリン、デルタメトリン、ラムダシハロトリン、シフルトリン、またはベータシフルトリンなどのピレトロイド;クロルピリホスなどの有機ホスフェート;アザジラクチンまたはメリアルテニンなどのリモノイド;フェニルピラゾールまたはインドキサカルブなどのオキサジアジン、フルベンジアミドおよびアントラニル酸ジアミドなどのフタル酸ジアミド;カルバリル(1−ナフチルN−メチルカルバメート)などのカルバメート、イミダクロプリド、チオメトキサム、クロチアニジン、もしくはジノテフランなどのネオニコチノイドまたはニトログアニジン;ハロフェノジドなどのジアシルヒドラジン;フロコナミド(floconamid)などのネオニコチン;トリクロルホンなどの有機ホスフェート、およびフィプロニルなどのピラゾールが挙げられる。
【0130】
(f)薬物送達添加剤およびそのような添加剤を含む薬物送達マトリックス
適時にかつ制御された、創傷への薬物または薬物前駆体の送達は、薬物のオンデマンド放出を可能にすることによって優良な治癒を提供することができる。薬物の制御放出は、副作用を低減し、患者のコンプライアンスを強化することにより、より効率的な治療を提供することができる。例えば、最新の創傷ドレッシング材は、多数の薬物のオンデマンド放出を可能にすることにより、優良な治癒サポートを提供することができる。最新の創傷ドレッシング材は通常、刺激応答性粒子およびコントローラで作製されている。刺激要因の供給源に依存して、薬物送達に使用される刺激応答性粒子には2つの異なるタイプがある。システムが環境中の局所的な変化に応答する場合、それは自己制限または閉鎖ループシステムと呼ばれ、これは、普通、酵素または競合物質で発生する。一方、超音波、温度、電場、および磁場などの外部刺激力によって支配される外部からの制限されたメカニズムは、より多くのユーザ制御を提供する。
【0131】
本発明は、慢性創傷の管理における活性送達のためのpH応答性材料の組み込みを想定している。これは、温度などの外部環境要因の影響をあまり受けないため、優良な代替形態である。慢性創傷の重度の感染のみがpHをかなり変化させる場合がある。また、そのような変化は、任意の悪影響を与えることなく、創傷の中への薬物のpH系放出を通してのみ有益な効果を有することができる。
【0132】
外部からの制限された刺激応答性システムを使用することによって、外部からの割合および用量を調節することにより、即時治療および正確な放出プロファイル制御が可能になる。
【0133】
薬物とともにカプセル化された本発明のPOHRは、外部からの制限された薬物送達および局所的な環境の変化に応答する薬物送達の両方を達成する。
【0134】
抗生剤の例としては、テトラサイクリン、ペニシリン、テラマイシン、エリスロマイシン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリマイシンB、ムピロシン、クリンダマイシン、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましい消毒剤としては、スルファジアジン銀、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、トリクロサン、他の銀塩、スクラルファート、第四級アンモニウム塩、およびそれらの混合物が挙げられる。これらの薬物は、カプセル化され、pHの変化によって放出される。
【0135】
(g)腐食センサ添加剤およびそのような添加剤を含む腐食センサマトリックス
防食コーティングは、金属構造物の腐食阻止に頻繁に使用され、多くの場合、腐食プロセスを遅らせても、完全に阻止することはできない。
【0136】
したがって、腐食が発生したとき、好ましくは早い段階で腐食を検出することが不可欠であり、それにより、金属およびそれらの合金の構造的損傷または機能の損失を回避するための措置を講じることができる。腐食検知コーティングは、特に、観測可能な腐食生成物の出現よりもはるかに早い段階で、肉眼による目視検査を通して信号を検出することができる場合、腐食制御のために大変望ましい。
【0137】
染料部分とともにカプセル化された本発明のPOHRは、pHの変化による腐食に応答して染料の放出を達成し、それにより、腐食の事象を肉眼に直接信号を伝える。
【0138】
(h)芳香放出添加剤およびそのような添加剤を含む芳香放出マトリックス
香料の形態で1つ以上の感覚マーカを組み込んだ組成物は、香料がそれで処理された物品に心地よい芳香を付与する場合を含め、組成物で処理された物品が消費者にとってより審美的に心地よいという点で消費者に知覚された利益を提供する。1つのそのような例は、空気清浄剤である。空気清浄剤は、悪臭をより心地よい特徴または許容可能なレベルに変えることによって臭気を制御するための揮発性芳香剤を採用するため、通常の臭気修正剤である。空気清浄剤は、最初は浴室および台所で使用され、結果として、魅力的というよりも機能的である傾向にあった。現在、空気清浄剤は、寝室および居間で使用されている。したがって、経時的に芳香をゆっくりと放出する清浄剤パック、または経時的に芳香を放出する装飾用塗料が非常に役に立つ。
【0139】
一実施形態では、芳香部分とともにカプセル化された本発明のPOHRは、経時的な芳香の持続放出を達成する。
【0140】
(i)触媒添加剤およびそのような添加剤を含む触媒マトリックス
触媒のカプセル化は、触媒の機能寿命および貯蔵安定性を向上させる。また、カプセル化は、望ましい時間での反応における触媒の関与を許容し、それによって反応の効率を高めることが可能である。
【0141】
触媒を必要とするシステムにおいてカプセル化された触媒を使用するために、マイクロカプセルは、処理に耐えるのに十分な剛性があり、触媒が早期に漏出または放出しないように安定したままでなければならない。マイクロカプセルは、システムにおいて適合性がなければならない。
【0142】
その上、マイクロカプセルは、望ましい時間に触媒を放出することができなければならない。そのような放出メカニズムは、電子およびヘルスケア用途におけるコーティング中または接着剤中などの一定の用途において必要とされる。したがって、安定で剛性があり、容易に適合性を持たせつつ、同時に制御して触媒を放出することができる触媒をカプセル化するマイクロカプセルの必要性が依然として残っている。
【0143】
一実施形態では、触媒をカプセル化する本発明のPOHRは、外部刺激を通して触媒を放出する。
【0144】
一実施形態では、インク用の1つ以上の添加剤は、溶媒中に溶解または分散され、本発明の部分開口中空リザーバ内にカプセル化される。1つ以上のインク添加剤を含むPOHRは、そのような添加剤の機能が望まれるインクマトリックスと混合される。例えば、本明細書で述べるような外部刺激により放出されるカラー顔料、または蛍光もしくは発光顔料、または接着顔料は、本発明の一実施形態において放出可能にカプセル化することができる。本明細書のインクマトリックスは、プリンタインクを含む。
【0145】
一実施形態では、例えば布地または他の着色用途のための染料用の1つ以上の添加剤は、溶媒中に溶解または分散され、本発明の部分開口中空リザーバ内にカプセル化される。1つ以上の染料添加剤を含むPOHRは、そのような添加剤の機能が望まれる染料マトリックスと混合される。例えば、本明細書で述べるような外部刺激によって放出されるカラー顔料、または蛍光もしくは発光顔料、または接着顔料は、本発明の一実施形態において放出可能にカプセル化することができる。例えば、布地は、発光染料が放出されて、一定の外部刺激条件下で、およびそれも制御して、布をより輝いて見せるように調製することができる。
【0146】
一実施形態では、例えば生物学的反応で使用するための酵素マトリックス用の1つ以上の添加剤は、溶媒中に溶解または分散され、本発明の部分開口中空リザーバ内にカプセル化される。1つ以上の酵素添加剤を含むPOHRは、そのような添加剤の機能が望まれる酵素マトリックスと混合される。例えば、本明細書で述べるような外部刺激によって放出される酵素は、本発明の一実施形態において放出可能にカプセル化することができる。例えば、反応は、本発明の酵素を含有するPOHR使用して、本開示において本明細書で述べる一定の外部刺激条件を使用して、およびそれも制御して、酵素的に触媒することができる。
【0147】
一実施形態では、例えば微小反応で使用するための反応マトリックス用の1つ以上の添加剤は、溶媒中に溶解または分散され、本発明の部分開口中空リザーバ内にカプセル化される。1つ以上の酵素添加剤を含むPOHRは、そのような添加剤の機能が望まれる反応混合物と混合される。例えば、本明細書で述べるような外部刺激によって放出される反応物は、本発明の一実施形態において放出可能にカプセル化することができる。例えば、微小反応の化学平衡は、本発明の反応物を含むPOHRを使用することによって個別の反応物の濃度を変化させることにより、一定の外部刺激条件を使用することによって、およびそれも制御して、変化させることができる。
【0148】
VI.実験
I.POHRの調製
この一連の実験では、POHRを調製する様々な方法について述べる。
【0149】
実施例1.1:ポリ−o−トルイジン部分開口中空リザーバの合成
この実施例では、o−トルイジンモノマー(0.12M)を、制御された温度条件(5〜10℃)下でペルオキシ二硫酸アンモニウム酸化剤(0.12M)を使用して400mlの水中で酸化重合させた。
【0150】
第1のステップでは、モノマーのo−トルジン(0.24M)を、第1のビーカ内で撹拌しながら200mlの水中に溶解した。第2のビーカでは、ペルオキシ二硫酸アンモニウム(0.24M)を撹拌しながら200mlの水中に溶解した。2つのビーカ内の構成成分の温度が5〜10℃に達するまで、両方のビーカを氷浴内に配置した。次いで、ペルオキシ二硫酸アンモニウム溶液を、撹拌しながらモノマー溶液に添加した。約2分後、撹拌を停止し、反応を氷浴内で8時間放置した。次いで、反応混合物を濾過し、多量の脱イオン水で洗浄した。このステップに続いて、濾液がほぼ無色になるまで、エタノールで洗浄した(オリゴマー不純物を除去した)。得られたポリマーを70℃のオーブン内で乾燥させた。
図3は、この実験から得られた部分開口中空リザーバの走査型電子顕微鏡写真である。
【0151】
実施例1.2:ポリ−o−メトキシアニリンPOHRの合成
この実施例では、o−メトキシアニリンモノマー(0.18M)を、制御された温度条件(0〜5℃)下でペルオキシ二硫酸アンモニウム酸化剤(0.18M)を使用して400mlの水中で酸化重合させた。
【0152】
第1のステップでは、o−メトキシアニリンモノマー(0.36M)を、第1のビーカ内で撹拌しながら200mlの水中に溶解した。第2のビーカでは、ペルオキシ二硫酸アンモニウム(0.36M)を、撹拌しながら200mlの水中に溶解した。温度が0〜5℃に達するまで、両方のビーカを氷浴内に配置した。次いで、ペルオキシ二硫酸アンモニウム溶液を、撹拌しながらモノマー溶液に添加した。約2分後、撹拌を停止し、反応を氷浴内で8時間放置した。次いで、反応混合物を濾過し、多量の脱イオン水で洗浄した。これに続いて、濾液がほぼ無色になるまで、エタノールで洗浄した(オリゴマー不純物を除去した)。得られたポリマーを70℃のオーブン内で乾燥させた。
図4は、この実験から得られた部分開口中空リザーバの走査型電子顕微鏡写真である。
【0153】
例1.3:ポリアニリンナノチューブリザーバ(N−POHR)の合成
第1のビーカでは、乳酸(0.032M)の溶液を500mlの水中で調製した。アニリン(0.065M)を、撹拌しながら乳酸溶液に添加した。第2のビーカでは、ペルオキシ二硫酸アンモニウム溶液(0.065M)を500mlの水中で調製した。ペルオキシ二硫酸アンモニウム溶液をアニリン/乳酸溶液に添加し、反応を室温で12時間放置した。次いで、反応混合物を濾過し、多量の脱イオン水で洗浄した。このステップに続いて、濾液がほぼ無色になるまで、エタノールで洗浄した(オリゴマー不純物を除去した)。得られたポリマーを約70℃のオーブン内で乾燥させた。図..
図5は、この実験から得られた部分開口中空リザーバの走査型電子顕微鏡写真である。
【0154】
実施例1.4:その表面上に多数の開口部を有するポリ−o−トルイジン部分開口中空リザーバの合成
この実施例では、o−トルイジンモノマー(0.24M)を、制御された温度条件(5〜10℃)でペルオキシ二硫酸アンモニウム酸化剤(0.24M)を使用して400mlの水中で酸化重合させた。
【0155】
第1のステップでは、モノマーのo−トルジン(0.48M)を、第1のビーカ内で撹拌しながら200mlの水中に溶解した。第2のビーカでは、ペルオキシ二硫酸アンモニウム(0.48M)を、撹拌しながら200mlの水中に溶解した。2つのビーカ内の構成成分の温度が5〜10℃に達するまで、両方のビーカを氷浴内に配置した。次いで、ペルオキシ二硫酸アンモニウム溶液を、撹拌しながらモノマー溶液に添加した。約2分後、撹拌を停止し、反応を氷浴内の振動表面上で8時間そのままにした。次いで、反応混合物を濾過し、多量の脱イオン水で洗浄した。このステップに続いて、濾液がほぼ無色になるまで、エタノールで洗浄した(オリゴマー不純物を除去した)。得られたポリマーを70℃のオーブン内で乾燥させた。
図6は、この実験から得られた部分開口中空リザーバの走査型電子顕微鏡写真である。
【0156】
II.POHR内のカプセル化物のカプセル化
この一連の実験では、POHR内にカプセル化物をカプセル化する様々な方法について述べる。
【0157】
例2.1:カプセル化−溶媒−蒸発法−ポリ−o−トルイジン系のPOHR内のメルカプトベンゾチアゾールカプセル化物
一般手順
溶媒蒸発法では、第1のステップにおいて、カプセル化物の飽和溶液を溶媒(例えば、エタノール)中で調製する。次のステップでは、部分開口中空リザーバ(POHR)を、撹拌しながらこのカプセル化物/溶媒(例えば、エタノール)溶液中に分散させる。リザーバは、それらの表面上に少なくとも1つの開口部を有する中空であるため、カプセル化物および溶媒(例えば、エタノール)は、中空リザーバの内部に浸透する。2時間撹拌した後、溶媒(例えば、エタノール)を、カプセル化物がリザーバ内にカプセル化されるように、撹拌しながら真空下で蒸発させる。溶媒(例えば、エタノール)を蒸発させた後、POHR/カプセル化物生成物を溶媒(例えば、エタノール)で素早く洗浄して、カプセルの表面上に沈殿した任意のカプセル化物を除去する。次いで、生成物を、使用される溶媒に適した温度、例えば、エタノールについては70℃のオーブン内で乾燥させる。
【0158】
より具体的には、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)腐食防止剤の飽和溶液は、2gのMBTを100mlのエタノール中に溶解することによって調製した。ポリアニリン系POHR、具体的には、ポリ−o−トルイジン(POT)リザーバ2gを、撹拌しながらこのMBT/エタノール溶液に分散させた。リザーバは、それらの表面上に少なくとも1つの開口部を有する中空であるため、MBTおよびエタノールは、中空リザーバの内部に浸透したと推測される。2時間撹拌した後、MBTがリザーバ内にカプセル化されるように、エタノールを60℃で撹拌しながら真空下で蒸発させた。エタノールを蒸発させた後、POT−POHR/MBT生成物をエタノールで素早く洗浄して、POHRの表面上に沈殿した任意の腐食防止剤を除去した。次いで、生成物を70℃のオーブン内で乾燥させた。
【0159】
図6aのSEM画像に示すように、POHR内にMBTをカプセル化するプロセスは、リザーバを全くまたは実質的に破壊または損傷させず、リザーバが実際に頑強であることを示している。
【0160】
腐食防止剤(MBT)が実際にリザーバ内にカプセル化されていることを確認するために、MBTをカプセル化したPOHRのUV−Vis分析を実行した。
【0161】
MBTカプセル化物を含むリザーバを、撹拌しながら10分間水中に分散させ、次いで遠心分離にかけた。上清(decant)を、腐食防止剤の存在について試験した。その後、同じリザーバを水中に再分散させたが、さらに10分間バス超音波処理してそれらを破断し、それらの内部からカプセル化物を除去した。
【0162】
超音波処理したリザーバを遠心分離し、上清のUV−Vis吸光度を測定した。
図6bに示すように、超音波処理後、腐食防止剤の濃度は、それらの破断によるリザーバ内からの腐食防止剤の放出を示す上清中で上昇し(特定の波長での吸光度単位のほぼ10倍の増加によって示すように)、これにより、腐食防止剤は実際にPOHR内に常在していたと結論付けるための1つを導いた。
【0163】
実施例2.2:カプセル化−その場堆積法−ポリ−o−トルイジン系POHR内のトリエタノールアミン(TEA)カプセル化物
親水性および/または水溶性部分がこれらのリザーバの合成中に部分開口中空リザーバ(POHR)内にカプセル化されるとき、その場堆積法を使用した。通常の手順では、最初に、カプセル化物を水中に溶解した。次いで、溶解したカプセル化物の存在下でモノマーを重合させた。
【0164】
より具体的には、第1のビーカでは、2.98gのトリエタノールアミン(TEA)を100mlの水中に溶解した。この溶液では、3.94gのo−トルイジンモノマーを撹拌しながら添加した。
【0165】
第2のビーカでは、7.3gのペルオキシ二硫酸アンモニウムを100mlの水中に溶解した。温度が5〜10℃に達するまで、両方のビーカを氷浴内に配置した。
【0166】
次いで、第2のビーカからのペルオキシ二硫酸アンモニウム溶液を、撹拌しながら第1のビーカ内のモノマー/TEA溶液に添加した。
【0167】
約2分後、撹拌を停止し、反応を氷浴内で8時間放置した。その後、反応混合物を濾過し、多量の脱イオン水で洗浄した。このステップに続いて、濾液がほぼ無色になるまで、エタノールで洗浄した(オリゴマー不純物を除去した)。得られたポリマーを70℃のオーブン内で乾燥させた。
【0168】
図7は、トリエタノールアミンとともにカプセル化されたポリ−o−トルイジン系POHRの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。モノマーおよびトリエタノールアミンの両方が本質的に塩基性であるため(荷電相互作用および水素結合により)、TEAは、モノマー液滴またはミセルのコアに留まり、重合後に球内にカプセル化され、TEAカプセル化されたPOHRを産生すると推測される。SEM撮像中のリザーバ上の帯電は、リザーバ内およびそれらの表面上のTEAの存在を示す。POHRとは異なり、非導電性でのTEA。結果として、電荷は、SEM撮像中に表面上に蓄積し、次いでPOHRの表面上にTEAが存在することを示す。
【0169】
例2.3:カプセル化−沈殿法−ポリ−o−トルイジン系POHR内のHalox570カプセル化物
一般手順
沈殿法では、カプセル化物の飽和溶液を溶媒(例えば、エタノール)中で調製し、ポリマー系のPOHRをこのカプセル化物/溶媒(例えば、エタノール)溶液中に撹拌しながら分散させる。リザーバは、それらの表面上に少なくとも1つの開口部を有する中空であるため、カプセル化物および溶媒(例えば、エタノール)は、中空リザーバの内部に浸透する。2時間撹拌した後、溶媒(例えば、エタノール)を、カプセル化物がリザーバ内にカプセル化されるように、撹拌しながら真空下で蒸発させる。溶媒(例えば、エタノール)を蒸発させた後、POHR/カプセル化物生成物を溶媒(例えば、エタノール)で素早く洗浄して、POHRの表面上に沈殿した任意のカプセル化物を除去する。次いで、生成物を、使用される溶媒に適した温度、例えば、エタノールについては70℃のオーブン内で乾燥させる。
【0170】
より具体的には、Halox570腐食防止剤の飽和溶液は、10gのHalox570を100mlのエタノール中に溶解することによって調製した。このHalox570/エタノール溶液では、10gのPOTリザーバを撹拌しながら分散させた。リザーバは、それらの表面上に少なくとも1つの開口部を有する中空であるため、腐食防止剤およびエタノールは、中空リザーバの内部に浸透した。2時間撹拌した後、腐食防止剤がエタノールから沈殿するが中空リザーバの内部に沈殿するように、混合物全体を氷/冷水の中に投入した。生成物を濾過し、水で洗浄し、70℃のオーブン内で乾燥させた。
【0171】
図8aのSEM画像に示すように、POHR内にHalox570をカプセル化するプロセスは、リザーバを全くまたは実質的に破壊または損傷させず、リザーバが実際に頑強であることを示している。
【0172】
腐食防止剤(Halox570)が実際にリザーバ内にカプセル化されていることを確認するために、Halox570をカプセル化したPOHRのUV−Vis分析を実行した。
【0173】
Halox570カプセル化物を含むリザーバを、撹拌しながら10分間水中に分散させ、次いで遠心分離にかけた。上清(decant)を、腐食防止剤の存在について試験した。その後、同じリザーバを水中に再分散させたが、さらに10分間バス超音波処理してそれらを破断し、それらの内部からカプセル化物を除去した。
【0174】
超音波処理したリザーバを遠心分離し、上清のUV−Vis吸光度を測定した。
図8bに示すように、超音波処理後、腐食防止剤の濃度は、それらの破断によるリザーバ内からの腐食防止剤の放出を示す上清中で上昇し(特定の波長での吸光度単位のほぼ7倍の増加によって示すように)、これにより、腐食防止剤は実際にPOHR内に常在していたと結論付けるための1つを導いた。
【0175】
III.POHRの内部からのカプセル化物の放出
この一連の実験では、POHR内からカプセル化物を放出する様々な方法について述べる。
【0176】
実施例3.1:還元によるポリ−o−トルイジン(POT)POHRからのカプセル化物の放出
還元によるリザーバからのカプセル化物の放出を確認するために、還元剤としてヒドラジンを使用してリザーバを化学的に還元した。
【0177】
第1のステップでは、Halox570腐食防止剤とともにカプセル化された10mgのPOTリザーバを水中に分散させた。POHRからのHalox570の放出を、UV−Vis分光計を使用してその吸光度を測定することにより、経時的に監視した。X11に示すように、最初はおよそ0.25単位のHalox570の吸光度であり、これは、POHRからのカプセル化物のゆっくりとした時間ベースの散逸に対応する可能性が高い。時間が進むと、Halox570の放出は遅くなり、これは、
図9の吸光度対時間プロットの正の傾きによって示される。
【0178】
1時間後、ヒドラジンを一滴添加し、吸光度を測定した。Halox570の吸光度は即座に1.2単位まで上昇し(
図9bに見られるようにステップ変化)、これは、ヒドラジンの添加を示しており、リザーバの内部でカプセル化されていたHalox570の瞬間的な放出を誘発したPOHRの減少を意味することがわかった。これにより、実際に減少がカプセル化物の放出を誘発したことを確認した。
【0179】
カプセル化物の同様の放出を、pH、電気化学ポテンシャル、および電圧の変化で観測する。
【0180】
実施例3.2:pH変化によるポリ−o−トルイジン(POT)POHRからのカプセル化物の放出
pHの変化によるリザーバからのカプセル化物の放出を確認するために、リザーバを酸性および塩基性溶液中に浸し、UV−Visを使用してカプセル化物の放出を測定した。
【0181】
第1のステップでは、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)でそれらのカプセル化された導電性(ドープされた)形態の1gのPOT−POHRを、pH〜1の各希HCl溶液、pH〜7のDI水、およびpH〜11の希水酸化アンモニウム溶液に添加して、5分間撹拌した。混合物を濾過し、濾過した溶液中のMBTの放出をUV−Vis吸光度分光法を使用して分析した。相当量のMBTが塩基性pH溶液中で観測されたが、高pH条件下でのカプセル化物の放出を示す酸性pH溶液中ではMBTは見られなかった。
【0182】
第2のステップでは、2ヒドロキシ安息香酸とともにカプセル化された絶縁性(塩基、脱ドープされた)形態の1gのPOT POHRを、pH〜1の各希HCl溶液、およびpH〜7のDI水、およびpH〜11の希水酸化アンモニウム溶液に添加して、5分間撹拌した。混合物を濾過し、濾過した溶液中のヒドロキシ安息香酸の放出をUV−Vis吸光度分光法を使用して分析した。相当量のヒドロキシ安息香酸が酸性pH溶液中で観測されたが、低pH条件下でのカプセル化物の放出を示す酸性pH溶液中ではごく少量のヒドロキシ安息香酸が見られた。したがって、高pHまたは低pH条件下でのカプセル化物の放出は、ドープまたは脱ドープされたPOHRを使用することによって制御することができる。
【0183】
IV.POHRカプセル化腐食防止剤を有する自己修復防食コーティング
実施例4.1:POT−POHR/Halox570腐食防止剤を有するアクリル系防食コーティング
自己修復防食コーティング添加剤としてのリザーバの性能を試験するために、アクリル系防食コーティングが、Halox570腐食防止剤とともにカプセル化された3重量%のポリ−o−トルイジンリザーバの使用量で配合された。コーティングの性能は、任意の腐食防止剤を含まないアクリル系のコーティングと、Halox570腐食防止剤をその中に直接添加したアクリル系コーティングとを並べて試験した。
【表2】
【0184】
ドローダウン法を使用して、コーティングをプライマーとして冷間圧延鋼パネル上に塗布した。その後、プライマーコーティングを、PPGからの市販のPittTech(登録商標)トップコートコーティングでトップコーティングした。プライマーおよびトップコートコーティングの両方の厚さは、各々約70μmであった。コーティングされたパネルの中央にスクライブを作製し、加速腐食試験のために塩水噴霧チャンバ内に配置した。
【0185】
コーティングされたパネルの性能は、ASTM B117塩水噴霧試験法を使用して試験した。Associated Environment Systemsからの塩水噴霧チャンバを試験用に使用した。塩水の濃度は、5重量%であった。対照コーティング試料については、対照試料が任意の腐食防止剤を含有しないか、カプセル化されているか、または別の方法を除いて、すべての成分を同じおよび同じ量に保った。
【0186】
図9に示すように、リザーバを含有していないコーティング試料(対照)は、塩水噴霧チャンバ内で360時間後に腐食した。対照的に、Halox570を含有するPOTリザーバで配合されたアクリルコーティングは、塩水噴霧試験の2000時間後でも優れた耐食性を示した。同様に、
図9.1に示すように、リザーバを含有していないコーティング試料(対照)は、塩水噴霧チャンバ内で360時間後に腐食した。例えば、腐食防止剤を含有していないパネル(
図9.1a)は、明らかに腐食した。しかしながら、中央のパネル(
図9.1b)については、Halox570腐食防止剤を添加したにもかかわらず、パネルは、塩水噴霧チャンバ内で264時間後にかなり腐食した。対照的に、Halox570を含有するPOTリザーバで配合されたアクリルコーティングは、塩水噴霧試験の2000時間後でも優れた耐食性を示した。これは、リザーバがコーティング中に腐食防止剤を長期間保存するだけでなく、腐食防止剤との相乗的な性能も示すことを示している。
【0187】
実施例4.2:POT−POHR/Halox570腐食防止剤を有する2K−エポキシ系防食コーティング
この実施例では、2K分子量のエポキシ系防食コーティングを、上記の実施例4.1で論じたカプセル化手順を使用して、Halox570腐食防止剤とともにカプセル化された3重量%のポリ−o−トルイジン(POT)リザーバの使用量で配合した。コーティング性能も試験した。下記に、コーティングの出発点配合物を示す。パートAについて下記の表に列挙する構成成分を、高速分散機を使用して混合した。A部およびB部を1:1の比率で一緒に混合し、金属基材に塗布した。
【0188】
ASTM B117塩水噴霧試験からの2つのパネルの画像を
図10に示す。第1のパネルを、POHR系腐食防止剤を含まない対照エポキシでコーティングした。第2のパネルを、Halox570とともにカプセル化された3重量%のPOTリザーバを含有する実験用2K−エポキシコーティングでコーティングした。注目すべき結果は、POHR系の実験用試料が、POHRを含まない360時間でのエポキシコーティングよりも2000時間以上も良好な耐食性を示したことである。
【表3】
【0189】
実施例4.3:POT−POHR/Halox570腐食防止剤を有するアクリル系防食コーティング
腐食防止剤とともにカプセル化されたカプセルの腐食防止効率をさらに理解するために、追加のアクリル系対照コーティングを配合した:(a)コーティングの中に直接添加された腐食防止剤Halox570を有するコーティング、(b)コーティングの中に添加された任意の腐食防止剤がないマイクロカプセルまたはマイクロリザーバを有するコーティング、(c)個々の添加剤としてコーティングの中に添加されたマイクロカプセルおよび腐食防止剤Halox570を有するコーティング、ならびに(d)Halox570腐食防止剤とともにカプセル化されたマイクロカプセルを有するコーティング。
【表4】
【0190】
配合されたコーティングを、プライマーとして冷間圧延鋼パネルに塗布した。次いで、プライマーコーティングを、PPGからの市販のPittTech(登録商標)トップコートコーティングでトップコーティングした。プライマーおよびトップコートコーティングの両方の厚さは、各々およそ70μmであった。コーティングされたパネルの性能は、ASTM B117塩水噴霧試験法を使用して試験した。コーティングされたパネルの中央にスクライブを作製し、加速腐食試験のために塩水噴霧チャンバ内に配置した。
【0191】
下記の
図11aに示すように、Halox570単独では、あまり良好な腐食防止効率を有しない。しかしながら、本発明のマイクロカプセルに基づくコーティング単独では(
図11b)、より良好な腐食防止効率を示す。これは、不動態化によっておよびイオンバリアとして作用することによって腐食を阻止することができるマイクロカプセルの固有の腐食防止特性に起因し得る。Halox570とマイクロカプセルとの混合物をコーティングに添加するとき、腐食防止は適正である(
図11c)。これは、コーティングからのHalox570の浸出、ならびにそれらの機能における他のコーティング構成成分とHalox570およびマイクロカプセルとの干渉に起因し得る。マイクロカプセル内にカプセル化されたHalox570が最良に働いた(
図11d)。これは、Halox570とマイクロカプセルとの相乗効果によるものである。
【0192】
V.潤滑添加剤
実施例5.1:スルホン酸カルシウム腐食防止剤とともにカプセル化されたPOTリザーバ
スルホン酸カルシウムは、潤滑剤中の効果的な腐食防止剤であり、様々なブランド名にて販売されている。1つのそのようなブランドは、LockhartからのCounter Rust
(商標)7165である。Counter Rust7165(CR)腐食防止剤の飽和溶液は、2gのCRを100mlのヘキサン中に溶解することによって調製する。ポリ−o−トルイジン(POT)リザーバ2gを、撹拌しながらこのCR/ヘキサン溶液中に分散させる。リザーバは、それらの表面上に1つ以上の開口部を有する中空であり、CRおよびヘキサンが中空リザーバ内に浸透する。2時間撹拌した後、CRがリザーバ内にカプセル化されるように、ヘキサンを約60℃で撹拌しながら真空下で蒸発させる。ヘキサンを蒸発させた後、POTリザーバ/CR生成物をヘキサンで素早く洗浄して、リザーバの表面上に沈殿した残留CRを除去した。次いで、40℃のオーブン内で乾燥させる。
【0193】
腐食防止剤とともにカプセル化されたリザーバは、潤滑剤の性能を改善するために基油配合物に添加剤として添加される。
【0194】
実施例5.2:ナフチル−フェニルアミン酸化防止剤とともにカプセル化されたPOTリザーバ
1−ナフチル−フェニルアミン(NPA)酸化防止剤の飽和溶液は、2gのNPAを100mlのエタノール中に溶解することによって調製する。ポリ−o−トルイジン(POT)リザーバ2gを、撹拌しながらこのNPA/エタノール溶液中に分散させる。リザーバは、それらの表面上に1つ以上の開口部を有する中空であり、NPAおよびエタノールが中空リザーバ内に浸透する。2時間撹拌した後、NPAがリザーバ内にカプセル化されるように、エタノールを約60℃で撹拌しながら真空下で蒸発させる。エタノールを蒸発させた後、POTリザーバ/NPA生成物をエタノールで素早く洗浄して、リザーバの表面上に沈殿した残留NPAを除去する。次いで、70℃のオーブン内で乾燥させる。
【0195】
酸化防止剤とともにカプセル化されたリザーバは、潤滑剤の性能を改善するために基油配合物に添加剤として添加される。
【0196】
実施例5.3:ジアルキルジチオリン酸亜鉛の酸化防止剤/耐摩耗剤/腐食防止剤とともにカプセル化されたPOTリザーバ
ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、潤滑剤中の効果的な酸化防止剤、耐摩耗剤、防食剤であり、様々なブランド名にて販売されている。1つのそのようなブランドは、LanxessからのADDITIN
(登録商標)RC3080であり、その化学的構成成分は、2−エチル−ヘキシルジアルキルジチオリン酸亜鉛(EZD)である。この実施例では、ADDITIN
(登録商標)RC3080(EZD)の飽和溶液は、2gのEZDを100mlの水中に溶解することによって調製する。ポリ−o−トルイジン(POT)リザーバ2gを、撹拌しながらこのEZD/水溶液に分散させる。リザーバは、それらの表面上に1つ以上の開口部を有する中空であり、EZDおよび水が中空リザーバ内に浸透する。2時間撹拌した後、EZDがリザーバ内にカプセル化されるように、水を90℃で撹拌しながら真空下で蒸発させる。水を蒸発させた後、POTリザーバ/EZD生成物を水で素早く洗浄して、リザーバの表面上に沈殿した任意のEZDを除去する。次いで、40℃のオーブン内で乾燥させる。
【0197】
EZD耐摩耗剤とともにカプセル化されたリザーバは、潤滑剤の性能を改善するために基油配合物に添加剤として添加される。
【0198】
VI.接着添加剤
実施例6.1:アミノジフェニルアミン硬化剤とともにカプセル化されたPOTリザーバ
この実施例では、硬化剤であるアミノジフェニルアミン(1g)を、100mlのシクロヘキサン中に溶解する。ポリ−o−トルイジン(POT)リザーバ1gを、撹拌しながらアミノジフェニルアミン/シクロヘキサン溶液中に分散させる。リザーバは、それらの表面上に1つ以上の開口部を有する中空であり、アミノジフェニルアミンおよびシクロヘキサンがPOHR内に浸透する。2時間撹拌した後、アミノジフェニルアミンがリザーバ内にカプセル化されるように、シクロヘキサンを70℃で撹拌しながら真空下で蒸発させる。シクロヘキサンを蒸発させた後、POT/アミノジフェニルアミン生成物をシクロヘキサンで素早く洗浄して、リザーバの表面上に沈殿した任意のアミノジフェニルアミンを除去する。次いで、約40℃のオーブン内で乾燥させる。
【0199】
アミノジフェニルアミンとともにカプセル化されたリザーバを、接着剤として使用するために、ポリメタクリクルプレポリマー(polymethacryclic prepolymer)と1:50の比率で混合する。ねじを締めるとリザーバが破断し、ねじをボルトに即座に固着する接着剤ポリマーを即座に硬化させる硬化剤を放出し、テーピングまたは固着剤の必要性を取り除くように、そのような混合物をねじに適用する。
【0200】
実施例6.2:メルカプトベンゾチアゾール腐食防止剤とともにカプセル化されたPOTリザーバ
POTカプセル化MBT腐食防止剤を調製するための調製手順について、実施例2.1で論じている。メルカプトベンゾチアゾール(MBT)腐食防止剤の飽和溶液は、2gのMBTを100mlのエタノール中に溶解することによって調製した。ポリ−o−トルイジン(POT)リザーバ2gを、撹拌しながらこのMBT/エタノール溶液中に分散させた。リザーバは、それらの表面上に1つ以上の開口部を有する中空であり、MBTおよびエタノールが中空リザーバの内部に浸透した。2時間撹拌した後、MBTがリザーバ内にカプセル化されるように、エタノールを60℃で撹拌しながら真空下で蒸発させた。エタノールを蒸発させた後、POTリザーバ/MBT生成物をエタノールで素早く洗浄して、リザーバの表面上に沈殿した任意の腐食防止剤を除去した。次いで、生成物を70℃のオーブン内で乾燥させた。
【0201】
MBTとともにカプセル化されたリザーバを、腐食を防止するために接着剤配合物に添加剤として添加した。接着剤は、ポリアクリレート、ポリウレタン、またはエポキシ系であり得る。この接着剤は、合金および他の金属を結合するのに有用である。例えば、自動車用途では、内側および外側のドアパネル、リフトゲートパネル、ボンネット、ならびにラゲージドアは、構造、重量、および外観の要件を満たすために、鋼パネル、アルミニウムパネル、マグネシウムパネル、炭素複合材料パネル、またはSMCパネルの任意の組み合わせで作製することができ、これらの接着剤は、金属および合金を結合する際に使用される。
【0202】
VII.殺生物添加剤
実施例7.1:イソチアゾリノン殺生物剤とともにカプセル化されたPOTリザーバ
イソチアゾリノンの群に属する殺生物剤は、非常に効果的である。1つのそのような殺生物剤は、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MITZ)である。この実施例では、MITZ殺生物剤の飽和溶液は、100mlのエタノール中に2gのMITZを溶解することによって調製する。ポリ−o−トルイジン(POT)リザーバ2gを、撹拌しながらMITZ/エタノール溶液中に分散させる。リザーバは、それらの表面上に1つ以上の開口部を有する中空であり、MITZおよびエタノールが部分開口中空リザーバ内に浸透する。2時間撹拌した後、MITZがリザーバ内にカプセル化されるように、エタノールを60℃で撹拌しながら真空下で蒸発させる。エタノールを蒸発させた後、POTリザーバ/MITZ生成物をエタノールで素早く洗浄して、リザーバの表面上に沈殿した任意のMITZを除去する。次いで、40℃のオーブン内で乾燥させる。
【0203】
殺生物剤とともにカプセル化されたリザーバは、殺生物特性を望むコーティング、接着剤、または化学物質に添加剤として添加される。この実施例におけるコーティングは、溶媒および水系の両方のアクリル、エポキシ、ポリウレタン、シロキサン、ポリ尿素、アスパラギン、およびそれらの混合物であり得、接着剤は、分散剤を使用して分散させた殺生物剤とともにカプセル化されたPOHRを含有するアクリル、エポキシ、およびポリウレタン系、または水性および溶媒系の両方の化学物質であり得る。
【0204】
VIII.殺虫添加剤
実施例8.1:チアメトキサム殺虫剤とともにカプセル化されたPOTリザーバ
チアメトキサム殺虫剤の飽和溶液は、2gのチアメトキサムを100mlのエタノール中に溶解することによって調製する。ポリ−o−トルイジン(POT)リザーバ2gを、撹拌しながらこのチアメトキサム/エタノール溶液中に分散させる。リザーバは、それらの表面上に1つ以上の開口部を有する中空であり、チアメトキサムおよびエタノールが中空リザーバ内に浸透する。2時間撹拌した後、チアメトキサムがリザーバ内にカプセル化されるように、エタノールを60℃で撹拌しながら真空下で蒸発させる。エタノールを蒸発させた後、POTリザーバ/MITZ生成物をエタノールで素早く洗浄して、リザーバの表面上に沈殿した任意のチアメトキサムを除去する。次いで、60℃のオーブン内で乾燥させる。
【0205】
殺虫剤とともにカプセル化されたリザーバは、それらを保護するために作物にわたって噴霧する。
【0206】
IX.制御された薬物放出
実施例9.1:スルファジアジン銀薬とともにカプセル化されたポリ−o−トルイジンリザーバ
この実施例では、創傷ドレッシング材に使用される局所抗生物質であるスルファジアジン銀を、ポリ−o−トルイジンPOHR内にカプセル化する。スルファジアジン銀(1g)を100mlの水中に溶解する。ポリ−o−トルイジンリザーバ1gを、撹拌しながらスルファジアジン銀水溶液中に分散させる。リザーバは、それらの表面上に1つ以上の開口部を有する中空であり、スルファジアジン銀および水がPOHR内に浸透する。2時間撹拌した後、スルファジアジン銀がリザーバ内にカプセル化されるように、水を70℃で撹拌しながら真空下で蒸発させる。次いで、生成物を水で素早く洗浄して、リザーバの表面に沈殿した任意のスルファジアジン銀をすべて除去する。次いで、約40℃のオーブン内で乾燥させる。
【0207】
実施例9.1.1.局所的な環境変化に応答した薬物送達
マイクロリザーバを、ポリエチレングリコール系ヒドロゲルなどの創傷ドレッシング材マトリックスの中に分散する。創傷が感染すると、創傷周辺のpHが上昇し、マイクロリザーバを活性化させてスルファジアジン銀を創傷に直接放出する。
【0208】
実施例9.1.2 外部トリガーに応答した薬物送達
カソードおよびアノードとして働く微細加工電極、ならびに電解質として作用するヒドロゲルを有するバンドエイドを組み立てる。スルファジアジン銀とともにカプセル化されたPOTリザーバをカソード上にコーティングする。電極間にDC電圧を印加することにより、スルファジアジン銀を含有するマイクロリザーバが減少し、カプセルからスルファジアジン銀が放出される。これは、創傷ドレッシング材へのスルファジアジン銀の時限放出に有益である。
【0209】
X.肥料添加剤
実施例10.1:尿素肥料とともにカプセル化されたポリ−o−トルイジンリザーバ
尿素の溶液は、10gの尿素を100mlの水中に溶解することによって調製する。ポリ−o−トルイジン(POT)リザーバ10gを、撹拌しながらこの尿素/水溶液中に分散させる。リザーバは、それらの表面上に1つ以上の開口部を有する中空であり、尿素および水が中空リザーバ内に浸透する。2時間撹拌した後、尿素がリザーバ内にカプセル化されるように、水を90℃で撹拌しながら真空下で蒸発させる。水を蒸発させた後、POT−POHRリザーバ/尿素生成物を水で素早く洗浄して、POT−POHRの表面上に沈殿した任意の尿素を除去する。次いで、約60℃のオーブン内で乾燥させる。
【0210】
尿素とともにカプセル化されたPOHRを土壌に添加して、経時的に植物に栄養素を供給する。
【0211】
XI.腐食検出
実施例11.1:フェノールフタレイン染料分子とともにカプセル化されたポリ−o−トルイジンPOHR
染料分子とともにカプセル化されたポリ−o−トルイジン(POT)部分開口中空リザーバは、酸化、すなわち金属の腐食によって染料分子を放出するコーティングの中に添加され、それによって視覚的にまたは信号を通して検出することができる腐食センサとして作用する。
【0212】
フェノールフタレインの溶液は、0.5gのフェノールフタレインを100mlのエタノール中に溶解することによって調製する。ポリ−o−トルイジン(POT)リザーバ2gを、撹拌しながらこのフェノールフタレイン/エタノール溶液中に分散させる。リザーバは、それらの表面上に1つ以上の開口部を有する中空であり、フェノールフタレインおよびエタノールが中空リザーバ内に浸透する。2時間撹拌した後、フェノールフタレインがPOHR内にカプセル化されるように、エタノールを60℃で撹拌しながら真空下で蒸発させる。エタノールを蒸発させた後、POTリザーバ/フェノールフタレイン生成物をエタノールで素早く洗浄して、リザーバの表面上に沈殿した任意のフェノールフタレインを除去する。次いで、40℃のオーブン内で乾燥させる。
【0213】
フェノールフタレインとともにカプセル化されたリザーバは、アクリルまたはエポキシ系のコーティングに添加剤として添加される。金属の表面上で腐食事象が発生した場合、カプセルは、フェノールフタレインを放出し、それによってコーティングの表面上の色変化は腐食を示す。