特表2021-530611(P2021-530611A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トデスカン,アルベルトの特許一覧

特表2021-530611ステンレス鋼製の物体をコーティングするための電解処理プロセス
<>
  • 特表2021530611-ステンレス鋼製の物体をコーティングするための電解処理プロセス 図000012
  • 特表2021530611-ステンレス鋼製の物体をコーティングするための電解処理プロセス 図000013
  • 特表2021530611-ステンレス鋼製の物体をコーティングするための電解処理プロセス 図000014
  • 特表2021530611-ステンレス鋼製の物体をコーティングするための電解処理プロセス 図000015
  • 特表2021530611-ステンレス鋼製の物体をコーティングするための電解処理プロセス 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-530611(P2021-530611A)
(43)【公表日】2021年11月11日
(54)【発明の名称】ステンレス鋼製の物体をコーティングするための電解処理プロセス
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/26 20060101AFI20211015BHJP
   C25D 3/38 20060101ALI20211015BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20211015BHJP
   C25D 21/14 20060101ALI20211015BHJP
【FI】
   C25D5/26 Q
   C25D3/38
   C25D21/12 A
   C25D21/14 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-569788(P2020-569788)
(86)(22)【出願日】2019年6月14日
(85)【翻訳文提出日】2021年2月8日
(86)【国際出願番号】IT2019050137
(87)【国際公開番号】WO2019239440
(87)【国際公開日】20191219
(31)【優先権主張番号】102018000006380
(32)【優先日】2018年6月15日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520486144
【氏名又は名称】トデスカン,アルベルト
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トデスカン,アルベルト
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AA19
4K023BA06
4K023DA02
4K023DA07
4K023DA08
4K024AA09
4K024AB01
4K024BA04
4K024BB03
4K024BB20
4K024BB28
4K024CA01
4K024CA02
4K024CA07
4K024GA16
(57)【要約】
ステンレス鋼製の物体の表面に確実に付着する金属層の電着のためのカソード処理であって、ニッケル、コバルト、カドミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金及びレニウムの元素を除く周期表の3〜12のグループのみに属する1つ以上の金属と、100〜400g/lの濃度のメタンスルホン酸を含む電解浴中でのカソード処理が記載されている。
また本発明の対象は、ステンレス鋼の物体の表面に確実に付着する金属層を適用するためのプロセスであり、上記のカソード処理を含む。
さらに本発明は、記載されたタイプのプロセスによって得られた被膜を備えたステンレス鋼を含む物体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼製の物体の表面に確実に付着する金属層の電気めっきのためのカソード処理であって、
ニッケル、コバルト、カドミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金及びレニウムの元素を除く周期表の3〜12のグループのみに属する1つ以上の金属を含む電解浴中でのカソード処理であり、
電解浴が100〜400g/lの濃度のメタンスルホン酸を含むことを特徴とするカソード処理。
【請求項2】
前記遷移金属が、0.1〜10g/l、好ましくは0.25〜2.5g/lの濃度の銅を含むことを特徴とする、請求項1に記載の処理。
【請求項3】
0.1〜2.0g/l、好ましくは0.4〜1.0g/lの濃度の結晶粒微細化剤の機能を有する1つ以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の処理。
【請求項4】
溶液中に存在する金属の錯体を形成するための1つ以上のキレート剤、及び/又は、表面酸化物を除去するための1つ以上の酸洗剤を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の処理。
【請求項5】
パルス電流を使用し、1つのインパルスが正であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の処理。
【請求項6】
前記パルス電流が、1つの第1のインパルスと1つの第2のインパルスの少なくとも1つのサイクルで送電され、前記第1のインパルスと第2のインパルスの両者が正であることを特徴とする、請求項5に記載の処理。
【請求項7】
前記第1のインパルスと、前記第2のインパルスが、電流強度の異なる値を有することを特徴とする、請求項6に記載の処理。
【請求項8】
少なくとも1つのサイクルが、電流強度がゼロの第3のインパルスを含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の処理。
【請求項9】
ステンレス鋼製の物体の表面に確実に付着する金属層を適用するためのプロセスであって、請求項1〜8のいずれか一項に記載のカソード処理を含むプロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスによって得られた被膜を備えたステンレス鋼を含む物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後続する他の金属コーティングの電着操作を可能にするステンレス鋼の電解処理のためのシステムに関する。限定はされないが、特に本発明は個人用の物体、すなわち人と密接な関係にあり頻繁に皮膚との長時間の接触を伴う物体を作製するための使用に適している。
【0002】
例として、以下のカテゴリの物体が挙げられる:眼鏡のフレーム、時計、宝飾品及び装飾品、ペン、装身具、及び、どのような場合でも環境衛生やアレルギーのない状態を必要とする物品。以下に詳細に説明する。
【0003】
より具体的には、本発明は、ステンレス鋼基板に確実に付着する、周期表の3から12のグループ(遷移金属のグループ)のみに属する電着可能な金属の水溶液からの電着によって作製される金属層を適用するためのプロセスに関する。なお、健康への危険性のためにニッケル、コバルト及びカドミウムの元素が除かれ、高コストのためにルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、レニウムの元素が除かれる。
【背景技術】
【0004】
ステンレス鋼は、その耐食性のために多くの生産部門で広く使用されており、皮膚との長時間の接触がある物品の製造に適している。特に最近の研究に基づくと、いくつかのタイプはニッケルの移動のリスクがないと考えられている。
【0005】
現行の実施においては、ステンレス鋼は他の金属と組み合わせて使用されることが多く、その多くは機能的又は審美的理由により電解コーティング処理を必要とする。したがって、ステンレス鋼への効率的な適用にも適した電気めっき処理の使用が不可欠である。
【0006】
ステンレス鋼は、それを保護する酸化クロム層のために、十分な付着特性を備えたコーティングを施すため、表面処理を必要とすることが知られている。
【0007】
接着の程度は、最終製品が多くの使用状況に適合していることを保証する決定要因である。表面を正確に作製した後は、アプリケーションモードに重大な問題を発生させることなく、効率的で安全な処理システムとする必要がある。実際、接着の欠陥は特定の試験なしでは検出が難しく、破壊をもたらす場合があり、物品のその後の機能に重大なリスクをもたらす。
【0008】
現在使用されているシステムは以下の通りである:
1. 機械的又は電解(陽極溶解)処理による表面の粗面化:これらの方法は一般的に、後に自己触媒システム(例えば、「無電解ニッケルめっき」)で被覆される技術的物品に限定される。これらの方法はステンレス鋼への付着特性を持たないないものの、「シース」効果のある連続コーティングを生成する能力を特徴とする。
【0009】
2. 4%のHClの溶液中の24%のNiCl2を含む、いわゆるウッドニッケル浴を使用して実施される電解ニッケルめっき(特許文献1)。
【0010】
3. さまざまな種類の添加剤の存在下で、AuCl3又はAuK(CN)4をベースとし、Au金属の量が2.0〜4.0g/lであるpH2.0未満の電解質から得られる金めっき。
【0011】
第1のケースでは、電解コーティングを受けた場合はまったく効果がない。さらに、この解決法は明るさを変更しないで光沢のある表面に適用することができないことが明らかであり、そのため個人用の物体の大部分は除外される。
【0012】
第2のケースでは、この解決法は腐食しやすい金属であるニッケルの層を適用するため、ステンレス鋼の特性を打ち消す。皮膚に接触するように設計された物品の場合、非合金ニッケルの存在のために、物品を長期間使用した後でもその移動を回避するよう保護コーティングを適用し、時間がかかり信頼性に限度がある分析方法によって当該物品がアレルギー反応を引き起こさないことを実証する必要がある。さらに、この解決法は、作業者に対して発癌性があると考えられるプロセスの使用を有利に必要とする。
【0013】
第3のケースでは、この解決法は経済的にはステンレス鋼の最終の金めっきのプロセスの場合にのみ有効である。前処理として使用すると、非常に高価な材料である金が無駄になり、卑金属材料(銅やその合金など)で覆われることになる。接着の程度も、通常要求される試験に合格するには不十分である(以下を参照)。
【0014】
したがって、ステンレス鋼を特に個人用の物体に使用することを可能にし、使用者に害がなく、携わる作業者に無毒であり、さらに技術的に効率的で経済的観点から都合の良い解決策が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第2437409号明細書
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、上記の欠点を克服し、ステンレス鋼の表面に確実に付着する金属層を適用するための信頼性の高いプロセスを提供することにある。
【0017】
当該目的は、以下でより完全に明らかになるこれらの目的及び他の目的と同様に、添付の請求項1に従った金属層を適用するためのプロセスによって達成される。
【0018】
本発明に従ったプロセスの詳細な工程は、対応する従属請求項に示されている。
【0019】
したがって本発明の特定の目的は、ステンレス鋼製の物体の表面に確実に付着する金属層を適用するためのプロセスであって、実地の操作で採用されている方法に従った以下の操作を含むプロセスである:
【0020】
1.必要に応じた機械的及び/又は化学的処理によるスケール又はプレートなどの加工残留物の除去;
2.適切な脱脂処理による油、グリース又は他の異物の除去;
3.カソード又はアノード電解活性化;
4.ステンレス鋼の表面に付着する被膜の電着;
5.さらなる機能的及び/又は装飾的な被膜の堆積。
【0021】
個人用に設計された物体の場合、これらが電気めっき処理の前に一般的に受ける表面仕上げ処理のために、本発明に従った処理の連続した工程の例は以下の通りとすることができる:
【0022】
a)脱脂;
b)すすぎ;
c)ミネラル又はカルボン酸及び/又はそれらの塩の混合物からなる溶液中のカソード電解活性化;
d)脱塩水を用いたすすぎ;
e)1つ以上の遷移金属、一般式R−SO3Hのスルホン酸誘導体からなる1つ以上の物質、被膜の特性と付着性を向上させるための1つ以上の添加剤を含む電着浴中の処理;
f)すすぎ;
g)以下の前処理サイクル後の、必要に応じた、ただし必ずしもそうとは限らない、追加の機能的又は装飾的な被膜処理:
i.カソード電解脱脂;
ii.すすぎ;
iii.酸溶液中の活性化;
iv.すすぎ。
【0023】
特にe)のスルホン酸誘導体は電着浴を最も効率的にするものであり、以下から構成されうる:
1.以下の型の化合物:
【0024】
【化1】
【0025】
式中、R=アルカン、アルケン、アルキン及びそれらの組み合わせの直鎖状もしくは分岐状及び/又はヘテロ原子(例えば、N、O、S)も含む環状の誘導体である。これらの基は、必要に応じて、以下に列挙される基で置換されていてもよい:
【0026】
上記式を参照して、Rは、ハロゲン化物(F、Cl、Br、I);アルカン、アルケン、アルキン、アリール基、アリールアルキル、カルボキシル、カルボニル、チオール、窒素基(例えば、ニトロ及び/又は亜硝酸、アンミン酸、アンミド酸(ammidic)等)、環状置換基及び/又はヘテロ原子(例えば、N、O、S)を含む環状置換基及び/又はさらにスルホン基の誘導体とすることができる。ヒドロキシル基が付加された列挙されたカテゴリの1つ以上の組み合わせもまた意図される。
【0027】
2.以下の型のベンゼンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸の誘導体化合物:
【0028】
【化2】
【0029】
重縮合環からなる芳香族化合物;例えば、アントラセン、テトラセン、ピレン、アズレン、フェナントレン、アヌレン、ベンゾピレンの誘導体)及び/又はヘテロ原子(例えば、N、O、S)を含む芳香族化合物が挙げられるが、これには限定されない。
【0030】
置換基Rは、水素、ヒドロキシル、ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)、飽和及び/又は不飽和アルキル基、アリール、アリールアルキル、カルボキシル、カルボニル、数種のスルホン基、チオール、窒素基(例えば、ニトロ及び/又は亜硝酸、アンミン酸、アンミド酸等)、環状置換基及び/又はヘテロ原子(N、O、S)を含む環状基とすることができる。列挙されたカテゴリの1つ以上の組み合わせもまた意図される。
【0031】
しかしながら、概して、一般的に市販されているか、又は文献で公知の合成方法によって調製することができるスルホン酸誘導体は全て含まれる。
【0032】
本発明では銅を含む遷移金属を構成することができ、その濃度は0.1〜10g/l、好ましくは0.25〜2.5g/lである。
【0033】
実際、銅の存在は、使用できる唯一の金属ではないが、プロセスの最適な動作を保証する。
【0034】
再び本発明によれば、上記の通りRと共に示される群の物質は、10〜600g/l、好ましくは100〜400g/lの濃度のメタンスルホン酸を含むことができる。
【0035】
特に、市場で最も簡単に見つけられる全ての酸の中で、メタンスルホン酸はプロセスに最良の結果を提供できるものである。
【0036】
本発明によれば、好ましくは、電着浴中の処理の工程は、例えば0.1〜2.0g/l、好ましくは0.4〜1.0g/lの濃度のサッカリンナトリウム塩又はポリエチレングリコールを含む、結晶粒微細化剤の機能を有する1つ以上の添加剤を提供する。
【0037】
実際、これらにより、より均質で一貫性のある被膜を得ることができる。
【0038】
さらに、本発明は、表面酸化物を除去するための1つ以上の酸洗剤、及び/又は工程e)の間に溶液中に存在する金属の錯体を形成するための1つ以上のキレート剤を含むことができる。このようにして、金属基板上の被膜の付着性とその最終的な厚さの両方を改善することが可能である。
【0039】
さらに、本発明によれば、電着浴中の処理の工程は、パルス電流によるカソード電解処理を含むことができる。
【0040】
これは特定の構造が得られることを有利に可能にし、コーティングの分布を改善し、その結果、定電流を使用して達成できるものを超える特性をもたらす。
【0041】
例えば、少なくとも1つのインパルスは正であってもよく、有利には、負電荷の送電に続いて電解質被膜の成長をもたらす。
【0042】
この場合、第1のインパルスと第2のインパルスは両方とも正であってもよい。
【0043】
これは、有利には、コーティングの改善された稠密度を得ることを可能にするであろう。
【0044】
また、第1のインパルスと第2のインパルスは、異なる強度を有することができ、例えば、それぞれがミリ秒のオーダーの持続時間を有し、等しい又は異なる値を有することができる。
【0045】
同様に好ましくは、パルス電流サイクルは、電流強度が0に等しい第3のインパルスを含むことができる。
【0046】
上記の特性は、有利には、基材への付着及び適用される厚さの均一性に関して、被膜の性能の改善につながる。
【0047】
また本発明は、本発明のプロセスによって被覆された、それ自体の又は他の金属と結合したステンレス鋼製の物体に関するものであり、特に個人用の物体に関するものであるが、これには限定されない。
【0048】
本発明のさらなる特徴及び利点は、本発明による金属層を適用するためのプロセスの好ましいが排他的ではない実施形態の説明からより完全に明らかになり、添付の図面に非限定的な例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、本発明によるプロセスで使用される化合物の第1の変形例を示す。
図2図2は、本発明によるプロセスで使用される化合物の第2の変形例を示す。
図3図3は、本発明によるプロセスの第1の好ましい実施形態の工程を説明するグラフである。
図4図4は、本発明によるプロセスの第2の好ましい実施形態の工程を説明するグラフである。
図5図5は、本発明によるプロセスの工程の間の好ましい作業構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、ステンレス鋼製の物体(特に、ただし必ずしも限定されない、以下のタイプの鋼製の物体)の表面に確実に付着する金属層を適用するためのプロセスに関する:
AISI 301
AISI 304
AISI 310
AISI 316
AISI 430。
【0051】
これらのいくつかは、欧州規格(2011年3月のEN 1811;2011年3月のEN 16128;1998年10月のEN 12472)で規定されたニッケルの移動限界を充足する[参照:欧州連合リスク評価書(European Union Risk Assessment Report)]。
【0052】
特に、本発明は、以下の工程を含む電着処理サイクルに関する:
1.油、グリース、及び有機物で汚染された部品の一般的な脱脂。この工程で使用される技術及び製品は周知であり、したがって本発明の対象を構成しない。
2.すすぎ(既知のタイプであり、本発明の対象を構成しない)。
【0053】
3.カソード電解活性化(電流供給ユニットの負極に接続された物体)。溶液は、ミネラル酸又はカルボン酸とそれらの塩の混合物で構成される。処理の目的は、局所的な加熱、長時間の研磨、又は特定の機械的プロセスなどのプロセスに由来する異常な酸化の影響を受けた表面にもコーティングの完全な付着を確実にすることである。この工程で使用される技術及び製品は周知であり、したがって本発明の対象を構成しない。
4.流動する脱塩水(既知のタイプであり、本発明の対象を構成しない)中のすすぎ。
【0054】
5.ニッケル、コバルト、カドミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金及びレニウムの元素を除く周期表の3〜12のグループのみに属する1つ以上の金属(遷移金属);好ましくは100〜400g/lの濃度の上記の中から選択される1つ以上の物質(例えば、図1及び2に特定される)、特にメタンスルホン酸を含む電着浴中の処理;さらに、結晶粒微細化剤の機能を備えた1つ以上の添加剤を電着浴で使用することができ、及び/又は溶液中に存在する金属を錯化するための1つ以上のキレート剤、及び/又は表面酸化物を除去するための1つ以上の酸洗剤を使用することができる。
【0055】
有利には、記載された化学物質の使用によりその後の処理又はプロセスを必要としないで、早くも電気めっき浴からの出口で、鋼基板に完全に付着し、機械的応力に対して非常に耐性のあるコーティングを得ることができる。
【0056】
この特性は、明らかに、流電方式(galvanic system)で製造できる部品の量と質の向上を意味し、生産ライン内への追加の工程及び/又は計装の導入の必要はないので、既存のシステムでもプロセスの実装と作動を簡素化するという利点がある。
【0057】
これは、時間、コスト及び安全性の点で、本発明によるプロセスを従来技術よりも便利にする。
【0058】
金属被膜の適用は、例えば図3及び4に示されるように、カソード電解処理によって行われる(一定電流又はパルス電流でありうる電流供給ユニットの負極に接続された物体)。
【0059】
6.すすぎ(既知のタイプであり、本発明の対象を構成しない)。
7.カソード電解脱脂(既知のタイプであり、本発明の対象を構成しない)。
【0060】
8.すすぎ(既知のタイプであり、本発明の対象を構成しない)。
9.酸性溶液中の活性化(既知のタイプであり、本発明の対象を構成しない)。
【0061】
10.すすぎ(既知のタイプであり、本発明の対象を構成しない)。
11.適切な電解浴からの金属のさらなる層の電着(本発明の対象を構成しない)。
【0062】
以下の実施例の目的は、本発明の好ましいが非限定的な実施形態を説明することであり、例示としてのみ提供される。
【実施例】
【0063】
実施例1
ステンレス鋼の表面に付着するコーティングを形成するための電気めっき浴:
【0064】
【表1】
【0065】
溶液のpHは1未満である。上記のプロセスにかけられたAISI 316L鋼のプレートは、25℃の温度で45秒間、2.0A/dm2の電流密度で、電気めっき浴中で、混合酸化物でコーティングされたチタンアノードを使用して処理された(工程5)。
【0066】
これにより、XRF分光光度計で測定した平均厚さ0.2μmの、鋼の表面に完全に付着した半光沢の外観の銅のコーティングが得られた。
続いて、光沢のある銅めっきを用いた酸電解銅の銅層を平均厚さ8.7μmで適用した。
【0067】
プレートは、直径10mmのスピンドルで曲げた後でも、層間剥離の兆候がなく、最後にASTMB 571接着試験(9.Heat−Quench試験)にかけられた。
【0068】
実施例2
ステンレス鋼の表面に付着するコーティングを形成するための電気めっき浴:
【0069】
【表2】
【0070】
溶液のpHは1未満である。上記のプロセスにかけられたAISI 316L鋼のプレートは、25℃の温度で90秒間、電着浴中で、混合酸化物でコーティングされたチタンアノードを使用して処理された(工程5)。
【0071】
これにより、XRF分光光度計で測定した平均厚さ0.25μmの、鋼の表面に完全に付着した光沢のある外観の銅のコーティングが得られた。
続いて、光沢のある銅めっきを用いた酸電解銅の銅層を平均厚さ10.2μmで適用した。
【0072】
プレートは、直径10mmのスピンドルで曲げた後でも、層間剥離の兆候がなく、最後にASTMB 571接着試験(9.Heat−Quench試験)にかけられた。
【0073】
実施例3
ステンレス鋼の表面に付着するコーティングを形成するための電着浴:
【0074】
パルス電流を使用して複雑な形状の物体のコーティングの分布を改善する。3.5×2.5cmの3枚のAISI 316L鋼板を長手方向に90°に曲げて、XRF分光光度計を用いて、下記の表1に示す処理を行った後に得られた厚さの測定。
【0075】
図5に示すように、厚さの測定は、プレート1のコーナー3の内側の中点線に沿って規則的に分布した7点で実施した。
【0076】
実施例2に記載の0.5リットルの浴を、混合酸化物でコーティングされた2つのチタンアノードを含むパイレックス(商標)ガラス容器に入れ、電流供給ユニットの正極に接続した。
【0077】
図5を参照すると、例えば90°に曲げられたプレート1は、容器2の中央で吊り下げられ、電流供給ユニットの負極に接続されている。
【0078】
可塑化された磁気シリンダーを回転させるマグネチックスターラーによって、溶液を動かし続けた。
【0079】
3つの試験全てのプレートの操作条件:
1)温度:25℃
2)電着時間:2分
3)スターラー速度:毎分250回転
4)磁石の寸法:25mmo5mm。
【0080】
特に、図3及び4を参照すると、電着に有利に働くように電流パルスを供給することができる。
【0081】
本発明によるプロセスの工程5の間に、この一連の試験で使用される電流は、以下のパラメータを有する:
【0082】
【表3】
【0083】
得られた結果:
【0084】
【表4】
【0085】
表1及び2を参照すると、上記の一連の工程からなる組み合わせによって形成されるサイクルが採用され、可変モードと交互に十分な回数繰り返されて、所望の被膜厚さを形成できることが明らかである。
【0086】
この場合、実際、被膜の稠密度、延性、及びその表面分布のより大きな均一性に関して、かなりの利点が得られる。
【0087】
本発明の好ましい変形例によれば、電解液の組成は、上記の成分に、フッ化水素酸(HF)又はその誘導体の1つ(例えば:金属塩、アンモニア塩、又は、フッ素の有機化合物)からなる1つ以上の化合物を、溶液中で0.5〜50g/l、好ましくは2.0〜20.0g/lのフッ素量が得られる量で添加することによって改質される。
【0088】
これらの化合物は酸洗剤として機能し、鋼から酸化クロムの表層を取り除き、別の金属の被膜を促進する。
【0089】
実施例4
ステンレス鋼の表面に付着するコーティングを形成するための電着浴:
【0090】
【表5】
【0091】
溶液のpHは1未満である。上記のプロセスにかけられたいくつかの鋼板は、25℃の温度で45秒間、2.0A/dm2の電流密度で、電着浴中で、グラファイトアノードを使用して処理された。
【0092】
使用したプレートはAISI 304鋼でできており、寸法は35×25×0.15mm、総表面積は0.18dmである。
これにより、XRF分光光度計で測定した平均厚さ0.1μmの、鋼の表面に完全に付着した半光沢の外観の銅のコーティングが得られた。
【0093】
以下に記載の方法に従って操作することにより、この実施例で説明するシステムを使用すると、ウッドニッケル浴で得られる結果よりも優れた結果が保証されることが確認された。
使用されたウッドニッケル浴の組成は以下の通りである:
250g/lのNiCl2・6H2
120ml/lの37%HCl溶液
【0094】
実施例4の処方により得られた被膜の性能レベルを、酸性金めっき、ウッドニッケル浴、並びに実施例1及び2によって得られたものと実験的に比較し、それぞれの付着力を限界条件まで試験することは価値があると考えられた。
【0095】
電解ニッケルコーティングの層(高い硬度と非変形性で悪名が高い)が試料に適用された。これは、さまざまな固着剤で処理されたステンレス鋼板で構成され、厚さが増している。次に、間接的な測定を用いて、プレートをスピンドルに巻き付けて変形させ、様々な処理の挙動を確認した。
【0096】
プレートに適用される処理サイクルと相対的な操作条件:
A.前処理
ウッドニッケル浴を用いた電解電着、及び本発明による様々な処方を用いた電解電着の前に、本発明の全ての変形例に共通する脱脂工程が存在する。
脱脂プロセスは、以下の工程で構成される:
【0097】
1)超音波洗浄用洗浄剤(例えば、Dantecaneva SrlコードPRE04001によるコードDS 904として商業的に知られている洗浄剤;超音波洗浄用の洗浄剤と添加剤の混合物)の3%溶液中で、70℃の温度で30秒間超音波洗浄を行う。
【0098】
2)金属の電解脱脂用洗浄剤(例えば、Dantecaneva SrlコードPLT90001によってFer 540として商業的に知られている洗浄剤;金属の電解脱脂用の洗浄剤とアルカリ塩の混合物)の10%溶液中で、温度25℃、電流密度5A/dm2で30秒間カソード電解脱脂を行う。
【0099】
脱脂後、電着の前に、10%の酸性塩(例えば、Dantecaneva SrlコードCHI76001によるSolvadecという名称で商業的に知られている混合物;金属表面の活性化のための酸性塩の混合物)の酸性溶液の中で試料を電解活性化する工程がある。その後、電着がウッドニッケル浴によって行われる場合、ウッドニッケル浴中での後続するカソード処理が活性化と被覆の作用を同時に行うので、活性化は、電流を流さずに、25℃で30秒間、酸性溶液に試料を浸漬することによって行われる。
【0100】
一方、本発明に従った処方の1つ又は酸性金めっき浴を使用して電着が行われる場合、活性化は、同じ酸溶液中で、同じ温度25℃で、電流密度3A/dm2で、60秒間カソード電解質処理を行うことによって得られる。
【0101】
B.固定層の電着
金属コーティングの適用は、カソード電解処理(一定の強度の連続電流供給ユニットの負極に接続されたプレート)によって実行された。
【0102】
B1.2g/lの金AuK(CN)4、2g/lのCoSO4、100g/lのクエン酸、及び25g/lのオルトリン酸を含む浴を使用して酸性金めっき処理を行った。プラチナメッキのチタンアノードが使用され、プロセスパラメータは以下の通りである:
【0103】
1)温度:35℃
2)電着時間:1.5分
3)電流密度:1.5A/dm2
【0104】
B2.ウッドニッケル浴中の処理は、ニッケルアノードの使用を含み、プロセスパラメータは以下の通りである:
【0105】
1)温度:25℃
2)電着時間:1.5分
3)電流密度:2.3A/dm2
【0106】
B3.本発明に従った処理は、グラファイトアノードの使用を含み、プロセスパラメータは以下の通りである:
【0107】
1)温度:25℃
2)電着時間:1.5分
3)電流密度:1.5A/dm2
【0108】
C.B.光沢のあるニッケル層の電着
ニッケル被膜の適用は、ウッドニッケル浴中のカソード電解処理によって実行される。ニッケルアノードと以下のプロセスパラメータが使用される。
【0109】
1)温度:60℃
2)電着時間:変化する
3)電流密度:2.0A/dm2
【0110】
付着試験の結果
ニッケルコーティングの付着性を間接的に評価するために、コーティングされたプレートの平坦な表面を直径8mmのスピンドル上に置き、両端が平行になるまで変形させた。以下に示す結果は、同じ厚さについて、ウッドニッケル浴及び酸性金と比較して、また実施例1〜2の処方と比較して、実施例4の処方によって適用された被膜の便益を示した(結果は、以下の表で強調された列の比較から確認できる)。
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】

(1):変形領域でステンレス鋼から剥離した表面のパーセンテージ
【0113】
本発明は、その好ましい実施形態に従って、適用範囲を限定することなく、例示的にのみ記載されてきたが、本発明は、本明細書の特許請求の範囲に定義されているように、本発明の概念の範囲から逸脱することなく、当該分野の専門家によって修正及び/又は適応され得ることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2020年4月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼製の物体の表面に確実に付着する金属層電気めっきするための方法であって、
100〜400g/lの濃度のメタンスルホン酸と、1つ以上の金属を含む水溶液と、を含む電解浴中でのカソード処理工程を備え、
前記1つ以上の金属は、ニッケル、コバルト、カドミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金及びレニウムの元素を除く周期表の3〜12のグループのみに属する1つ以上の金属を含むものであり、
前記電解浴は、溶液中に存在する金属の錯体を形成するための1つ以上のキレート剤、及び/又は、表面酸化物を除去するための1つ以上の酸洗剤を含む、方法
【請求項2】
前記1つ以上の金属が、0.1〜10g/l、好ましくは0.25〜2.5g/lの濃度の銅を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項3】
0.1〜2.0g/l、好ましくは0.4〜1.0g/lの濃度の結晶粒微細化剤の機能を有する1つ以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法
【請求項4】
パルス電流を使用し、1つのインパルスが正であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
前記パルス電流が、1つの第1のインパルスと1つの第2のインパルスの少なくとも1つのサイクルで送電され、前記第1のインパルスと第2のインパルスの両者が正であることを特徴とする、請求項に記載の方法
【請求項6】
前記第1のインパルスと、前記第2のインパルスが、電流強度の異なる値を有することを特徴とする、請求項に記載の方法
【請求項7】
少なくとも1つのサイクルが、電流強度がゼロの第3のインパルスを含むことを特徴とする、請求項又はに記載の方法
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって得られた被膜を備えたステンレス鋼を含む物体。
【国際調査報告】