(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【氏名又は名称】ソシエテ ドゥ コメルシアリサション デ プロドゥイ ドゥ ラ ルシェルシェ アプリケ ソクプラ シアンス サンテ エ ユメーヌ エス.ウ.セ.
本開示は、接合性細菌宿主細胞を有するIV型接着線毛を含むまたは効果的なインビボ接合を媒介するための接合性送達システムの一部としての交配ペア安定化モジュールの使用に関する。
前記IV型接着線毛及び/または前記アドヘシンが以下のタンパク質、すなわち、PilL、PilN、PilO、PilP、PilQ、PilR、PilS、PilT、TraB、PilU、PilV、またはTraNの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記IV型接着線毛が、以下の細菌プラスミドのファミリー、すなわち、IncI2、IncA、IncB/O(Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2、IncI1、IncJ、IncK、IncL/M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、またはInc18の少なくとも1つに由来する、請求項1または2に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記IV型分泌系モジュールが、以下のタンパク質、すなわち、VirB1、VirB2、VirB3、VirB4、VirB5、VirB6、VirB7、VirB8、VirB9、VirB10、VirB11、またはVirD4の少なくとも1つを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記第1の維持モジュールが、以下のタンパク質、すなわち、RepA、ParA、ParB、DNAプライマーゼ、YgiA、毒素、Vcrx028、YcfA、抗毒素、Vcrx027、YcfB、DNAトポイソメラーゼ、YdiA、またはYdgAの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記第1の栄養複製モジュールまたは前記第1の維持モジュールが、以下の細菌プラスミドのファミリー、すなわち、IncI2、IncA、IncB/O(Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2、IncI1、IncJ、IncK、IncL/M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、またはInc18の少なくとも1つに由来する、請求項6または7に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記第2の維持モジュールが、以下のタンパク質、すなわち、RepA、ParA、ParB、DNAプライマーゼ、YgiA、毒素、Vcrx028、YcfA、抗毒素、Vcrx027、YcfB、DNAトポイソメラーゼ、YdiA、またはYdgAの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記第2の栄養複製モジュールまたは前記第2の維持モジュールが、以下の細菌プラスミドのファミリー、すなわち、IncI2、IncA、IncB/O(Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2、IncI1、IncJ、IncK、IncL/M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、またはInc18の少なくとも1つに由来する、請求項10または11に記載の接合性細菌宿主細胞。
細菌染色体内に位置する伝達マシナリーを含み、前記伝達マシナリーが、前記IV型分泌系モジュール、前記交配ペア安定化モジュール、及び前記可動化モジュールを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記調節モジュールが、以下の調節タンパク質または非コーディングRNA、すなわち、YajA、YafA、FinO、Fur、Fnr、KorA、AcaC、AcaD、Acr1、Acr2、StbA、TwrA、ResP、KfrA、ArdK、dCas9、crRNA、ZFN、TALEN、taRNA、トーホールドスイッチ、AraC、TetR、LacI、またはLacIqの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記可動化モジュールが、以下のタンパク質、すなわち、VirC1、NikB、またはNikAの少なくとも1つを含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記交配ペア安定化モジュールが、前記アドヘシンをコードする遺伝子に関連付けられたシャフロンを改変するためのシャフラーゼをさらに含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記シャフロンが、以下の細菌プラスミドのファミリー、すなわち、IncI2、IncA、IncB/O(Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2、IncI1、IncJ、IncK、IncL/M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、及び/またはInc18の少なくとも1つに由来する、請求項21に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記シャフラーゼが、以下の細菌プラスミドのファミリー、すなわち、IncI2、IncA、IncB/O(Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2、IncI1、IncJ、IncK、IncL/M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、またはInc18の少なくとも1つに由来する、請求項21〜23のいずれか1項に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記ヌクレアーゼが、CRISPR(クラスターを形成し、規則的に間隔を空けた短いパリンドロームリピート)関連DNA結合(Cas)タンパク質、またはCasタンパク質類似体であり、前記ペイロードモジュールが、前記Casタンパク質または前記Casタンパク質類似体によって認識可能なCRISPR RNA(crRNA)分子をさらにコードする、請求項25に記載の接合性細菌宿主細胞。
前記ペイロードモジュールが、前記Casタンパク質または前記Casタンパク質類似体によって認識可能なトランス活性化型CRISPR RNAをさらにコードする、請求項25〜29のいずれか1項に記載の接合性細菌宿主細胞。
固体培地で得られた対応する接合効率と比較した場合に、液体培地で得られたインビトロ接合効率の比が、0.1%よりも高い、請求項1〜33のいずれか1項に記載の接合性細菌宿主細胞。
請求項1〜39のいずれか1項に定義される接合性細菌宿主細胞を作製するためのプロセスであって、請求項1〜39のいずれか1項に定義される前記遺伝子カーゴと、前記IV型分泌系モジュール、前記交配ペア安定化モジュール、または前記可動化モジュールのうちの少なくとも1つとを細菌内に導入して前記接合性細菌宿主細胞を与えることを含む、前記プロセス。
請求項6〜39のいずれか1項に定義される前記栄養複製モジュール、前記維持モジュール、前記調節モジュール、前記選択モジュール、または前記排斥モジュールのうちの少なくとも1つを前記細菌内に導入して前記接合性細菌宿主細胞を与えることをさらに含む、請求項42に記載のプロセス。
請求項40または41に定義される組成物を製造するためのプロセスであって、請求項1〜39のいずれか1項に定義される前記接合性細菌宿主細胞を賦形剤とともに配合することを含む、前記プロセス。
レシピエント細菌を有することが疑われる対象内で前記接合性細菌宿主細胞から前記レシピエント細菌へと前記遺伝子カーゴをインビボで伝達するための請求項1〜39もしくは44のいずれか1項に定義される接合性組換え細菌宿主細胞、または請求項40、41、45もしくは46のいずれか1項に定義される組成物。
レシピエント細菌を有することが疑われる対象内で前記接合性細菌宿主細胞から前記レシピエント細菌へと遺伝子カーゴをインビボで伝達するための請求項1〜39もしくは44のいずれか1項に定義される接合性組換え細菌宿主細胞、または請求項40、41、45もしくは46のいずれか1項に定義される組成物の使用。
レシピエント細菌を有することが疑われる対象内で前記接合性細菌宿主細胞から前記レシピエント細菌へと遺伝子カーゴをインビボで伝達するための薬剤を製造するための請求項1〜39もしくは44のいずれか1項に定義される接合性組換え細菌宿主細胞、または請求項40、41、45もしくは46のいずれか1項に定義される組成物の使用。
レシピエント細菌を有することが疑われる対象内で接合性細菌宿主細胞から前記レシピエント細菌へと遺伝子カーゴをインビボで伝達するための方法であって、有効量の請求項1〜39もしくは44のいずれか1項に定義される接合性組換え細菌宿主細胞、または請求項40、41、45もしくは46のいずれか1項に定義される組成物を、前記レシピエント細菌への前記遺伝子カーゴの前記伝達を可能とする条件下で前記対象に投与することを含む、前記方法。
前記接合性細菌宿主細胞が、プロバイオティクス細菌宿主細胞である、請求項47に記載の接合性細菌宿主細胞、請求項48もしくは49の使用、または請求項50に記載の方法。
前記接合性細菌宿主細胞の改変システムが、前記レシピエント細菌の制限修飾システムと実質的に同様である、請求項47〜52のいずれか1項に記載の接合性細菌宿主細胞、使用、または方法。
前記ヌクレアーゼが、CRISPR(クラスターを形成し、規則的に間隔を空けた短いパリンドロームリピート)関連DNA結合(Cas)タンパク質であり、前記ペイロードモジュールが、前記Casタンパク質によって認識可能なガイドRNA(gRNA)分子をさらにコードする、請求項57に記載の接合性細菌宿主細胞、使用、または方法。
前記遺伝子が、前記レシピエント細菌内で、抗生物質に対する耐性に関与するタンパク質、毒素、または、前記レシピエント細菌の線毛をコードする、請求項61に記載の接合性細菌宿主細胞、使用、または方法。
前記レシピエント細菌によって引き起こされる腸内毒素症または感染症の症状を治療または緩和するための請求項47〜62のいずれか1項に記載の接合性細菌宿主細胞、使用、または方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】接合実験においてドナー株とレシピエント株とを簡単に区別するために必要な大腸菌Nissle 1917(EcN)株誘導体の生成。KN01と称されるドナー株は、特殊なメタゲノミクスシークエンシング(16S)タグとスペクチノマイシン耐性遺伝子aad7を含む最初のカセットの挿入によって作製した(
図1A)。
【
図1B】KN02は、ストレプトマイシン耐性の異なるメタゲノミクス配列(16S)タグstrAB 、IPTG誘導性NeonGreen蛍光レポーター、及びクロラムフェニコールに対する耐性を付与するcat遺伝子を含む異なるカセットを有していた(
図1B)。KN02を、レシピエントと標的株の両方として使用した。
【
図1C】KN03は、KN02と同じメタゲノミクスシーケンス(16S)タグであるストレプトマイシン耐性のstrAB 、及びテトラサイクリン耐性のtetBを含むインサートを有していた(
図1C)。KN03を、レシピエントと非標的コントロールの両方として使用した。
図1A〜Cのすべての遺伝子は、各DNAコンストラクトの下に示される塩基対(bp)の総量に合った縮尺で示されている。
【
図1D】すべてのインサートは、attL部位のTn7とattRのTn7部位との間に位置するpGRG36のSmaI及びXhoI制限部位にクローニングした(
図1D)。得られたプラスミドをEcNに形質転換し、Tn7システムの発現をアラビノースで誘導した。これにより、pGRG36のattL/RTn7間に位置するDNAフラグメントが切除され、次いでこれがglmS遺伝子の3’末端に組み込まれた。pGRG36複製マシナリーは熱感受性であるため、42℃の非許容温度でのインキュベーションを最終的に用いて細胞から空のベクター骨格をキュアした。
【
図2】dapAの欠失が大腸菌の代謝に与える影響。dapAの欠失は、L−アスパラギン酸−セミアルデヒドの4−ヒドロキシ−2,3,4,5−テトラヒドロジピコリネート(THDP−OH)への変換を防げる。この反応は、大腸菌における両方の形態のDAPの合成に不可欠である。ただし、L,L−DAP及びmeso−DAPは環境から取り込んで、変異を補完することで、ペプチドグリカン及びリジンの両方の合成が可能となりうる。このため、DAPは、dapA欠失変異体の増殖に不可欠な培地添加物となっている。略語と名称:THDP−OH:4−ヒドロキシ−2,3,4,5−テトラヒドロジピコリネート、THDP:(S)−2,3,4,5−テトラヒドロジピコリネート、スクシニル−AKP:N−スクシニル−L−2−アミノ−6−ケトピメレート、スクシニル−DAP:N−スクシニル−L,L−2,6−ジアミノピメレート、L,L−DAP:LL−2,6−ジアミノピメレート、meso−DAP:meso−2,6−ジアミノピメレート、DapA:ジヒドロジピコリネートシンターゼ、DapB:ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、DapD:THDPAスクシニラーゼ、SerC:スクシニル−DAPアミノトランスフェラーゼ、DapE:スクシニル−DAPデスクシニラーゼ、DapF:DAPエピメラーゼ、LysA:DAPデカルボキシラーゼ。
【
図3A】ストレプトマイシン(Sm)処理は、大腸菌Nissle 1917(EcN)によるマウスの腸内コロニー形成を改善する。異なるSm濃度が、内因性腸内細菌(白い領域)を減少させ、EcNコロニー形成(灰色の領域)を促進する能力を、−2日目から開始し、飲み水中、0mg/L(
図3A)、50mg/L(
図3B)、100mg/L(
図3C)、250mg/L(
図3D)、450mg/L(
図3E)、1000mg/L(
図3F)で処理したマウスの糞便中のCFUを定量化することによって評価した。未処理(○)及びストレプトマイシン処理(●)マウスの腸管のいくつかの部分におけるKN01のコロニー形成レベルを評価した(
図3G)。パネルGの点線は、接合頻度の評価に充分なCFUレベルを示す。これは、試験したすべてのシステムについて固体支持体上での最小のインビトロ接合率に基づいたものである(約1x10
-3接合完了体/レシピエント)。黒い横線は、各条件下での平均値を示す。
【
図3B】ストレプトマイシン(Sm)処理は、大腸菌Nissle 1917(EcN)によるマウスの腸内コロニー形成を改善する。異なるSm濃度が、内因性腸内細菌(白い領域)を減少させ、EcNコロニー形成(灰色の領域)を促進する能力を、−2日目から開始し、飲み水中、0mg/L(
図3A)、50mg/L(
図3B)、100mg/L(
図3C)、250mg/L(
図3D)、450mg/L(
図3E)、1000mg/L(
図3F)で処理したマウスの糞便中のCFUを定量化することによって評価した。未処理(○)及びストレプトマイシン処理(●)マウスの腸管のいくつかの部分におけるKN01のコロニー形成レベルを評価した(
図3G)。パネルGの点線は、接合頻度の評価に充分なCFUレベルを示す。これは、試験したすべてのシステムについて固体支持体上での最小のインビトロ接合率に基づいたものである(約1x10
-3接合完了体/レシピエント)。黒い横線は、各条件下での平均値を示す。
【
図3C】ストレプトマイシン(Sm)処理は、大腸菌Nissle 1917(EcN)によるマウスの腸内コロニー形成を改善する。異なるSm濃度が、内因性腸内細菌(白い領域)を減少させ、EcNコロニー形成(灰色の領域)を促進する能力を、−2日目から開始し、飲み水中、0mg/L(
図3A)、50mg/L(
図3B)、100mg/L(
図3C)、250mg/L(
図3D)、450mg/L(
図3E)、1000mg/L(
図3F)で処理したマウスの糞便中のCFUを定量化することによって評価した。未処理(○)及びストレプトマイシン処理(●)マウスの腸管のいくつかの部分におけるKN01のコロニー形成レベルを評価した(
図3G)。パネルGの点線は、接合頻度の評価に充分なCFUレベルを示す。これは、試験したすべてのシステムについて固体支持体上での最小のインビトロ接合率に基づいたものである(約1x10
-3接合完了体/レシピエント)。黒い横線は、各条件下での平均値を示す。
【
図3D】ストレプトマイシン(Sm)処理は、大腸菌Nissle 1917(EcN)によるマウスの腸内コロニー形成を改善する。異なるSm濃度が、内因性腸内細菌(白い領域)を減少させ、EcNコロニー形成(灰色の領域)を促進する能力を、−2日目から開始し、飲み水中、0mg/L(
図3A)、50mg/L(
図3B)、100mg/L(
図3C)、250mg/L(
図3D)、450mg/L(
図3E)、1000mg/L(
図3F)で処理したマウスの糞便中のCFUを定量化することによって評価した。未処理(○)及びストレプトマイシン処理(●)マウスの腸管のいくつかの部分におけるKN01のコロニー形成レベルを評価した(
図3G)。パネルGの点線は、接合頻度の評価に充分なCFUレベルを示す。これは、試験したすべてのシステムについて固体支持体上での最小のインビトロ接合率に基づいたものである(約1x10
-3接合完了体/レシピエント)。黒い横線は、各条件下での平均値を示す。
【
図3E】ストレプトマイシン(Sm)処理は、大腸菌Nissle 1917(EcN)によるマウスの腸内コロニー形成を改善する。異なるSm濃度が、内因性腸内細菌(白い領域)を減少させ、EcNコロニー形成(灰色の領域)を促進する能力を、−2日目から開始し、飲み水中、0mg/L(
図3A)、50mg/L(
図3B)、100mg/L(
図3C)、250mg/L(
図3D)、450mg/L(
図3E)、1000mg/L(
図3F)で処理したマウスの糞便中のCFUを定量化することによって評価した。未処理(○)及びストレプトマイシン処理(●)マウスの腸管のいくつかの部分におけるKN01のコロニー形成レベルを評価した(
図3G)。パネルGの点線は、接合頻度の評価に充分なCFUレベルを示す。これは、試験したすべてのシステムについて固体支持体上での最小のインビトロ接合率に基づいたものである(約1x10
-3接合完了体/レシピエント)。黒い横線は、各条件下での平均値を示す。
【
図3F】ストレプトマイシン(Sm)処理は、大腸菌Nissle 1917(EcN)によるマウスの腸内コロニー形成を改善する。異なるSm濃度が、内因性腸内細菌(白い領域)を減少させ、EcNコロニー形成(灰色の領域)を促進する能力を、−2日目から開始し、飲み水中、0mg/L(
図3A)、50mg/L(
図3B)、100mg/L(
図3C)、250mg/L(
図3D)、450mg/L(
図3E)、1000mg/L(
図3F)で処理したマウスの糞便中のCFUを定量化することによって評価した。未処理(○)及びストレプトマイシン処理(●)マウスの腸管のいくつかの部分におけるKN01のコロニー形成レベルを評価した(
図3G)。パネルGの点線は、接合頻度の評価に充分なCFUレベルを示す。これは、試験したすべてのシステムについて固体支持体上での最小のインビトロ接合率に基づいたものである(約1x10
-3接合完了体/レシピエント)。黒い横線は、各条件下での平均値を示す。
【
図3G】ストレプトマイシン(Sm)処理は、大腸菌Nissle 1917(EcN)によるマウスの腸内コロニー形成を改善する。異なるSm濃度が、内因性腸内細菌(白い領域)を減少させ、EcNコロニー形成(灰色の領域)を促進する能力を、−2日目から開始し、飲み水中、0mg/L(
図3A)、50mg/L(
図3B)、100mg/L(
図3C)、250mg/L(
図3D)、450mg/L(
図3E)、1000mg/L(
図3F)で処理したマウスの糞便中のCFUを定量化することによって評価した。未処理(○)及びストレプトマイシン処理(●)マウスの腸管のいくつかの部分におけるKN01のコロニー形成レベルを評価した(
図3G)。パネルGの点線は、接合頻度の評価に充分なCFUレベルを示す。これは、試験したすべてのシステムについて固体支持体上での最小のインビトロ接合率に基づいたものである(約1x10
-3接合完了体/レシピエント)。黒い横線は、各条件下での平均値を示す。
【
図4】接合プラスミド候補の伝達効率の評価。最初に、寒天(固体)及びブロス(液体)の両方で、6つの異なる接合プラスミドの転写効率を37℃で2時間試験した(A)。接合プラスミドは、実験当たり4匹のマウスを使用して、マウスの腸内におけるそれらの伝達効率についても試験した。レシピエント菌あたりの接合完了体の割合を3日間にわたって糞で評価し(B)、3日目に盲腸で見られる比率と比較した(C)。TP114の伝達能力を、4匹のマウスのさらなる組を使用して確認し、同じ時点で寒天上でインビトロで得られた接合頻度と比較した(D)。Sm処理マウスと非処理マウスの両方でTP114とR6Kを用いた結合実験を行い、部分的に減少した微生物叢または完全な微生物叢内の移動効率を比較した。プラスミド当たり条件ごとに4匹のマウスで12時間の接合後の糞便中の伝達速度を測定した(E)。エラーバーは、少なくとも3つの生物学的複製からの平均(黒い線)の標準偏差を示す。
【
図5】
図4Bに示されるインビボの伝達速度の計算に使用される生のコロニー形成単位(CFU)データ。ドナー(●)、レシピエント(■)、及び接合完了体(▼)細菌のCFUを、各プラスミドについて選択的マッコンキー寒天プレート上で1、2、3日目の糞便試料からカウントした。pOX38(A)、R6K(B)、TP114(C)、pVCR94(D)、R388(E)及びRK24(F)の接合からのCFUを示す。
【
図6】接合効率に対する、レシピエント株とドナー株のコロニー形成間の時間の影響。Sm処理マウスに、ドナー株の導入の2時間前または12時間前にレシピエント細菌を与えた。TP114(A)及びR6K(B)の接合効率を、4匹のマウスの糞便で4日間追跡し、接合前のレシピエント細菌のコロニー形成の影響を評価した。レシピエントのコロニー形成を、TP114(C)及びR6K(D)の両方での実験を通じた糞便からのCFUでも追跡した。時点は、時間= 0日目のドナー株導入に関連して示されている。
【
図7】RAST、CDsearch、及びBLASTによって予測されたTP114の遺伝子アノテーション。TP114は、Illumina及びOxford Nanopore技術の両方を用いてシークエンシングし、RASTを使用して最初にコーディング遺伝子にアノテーションを付けた。遺伝子座タグは、接頭辞TP114−0と、genbankに寄託されたTP114の配列の開始位置に基づく遺伝子順序を参照する番号(MF521836.1)とを有する各CDSに帰属した。CDsearchとBLASTを使用してアノテーションをさらに改良し、推定される機能を遺伝子に帰属させた。名称は、それらの推定されるホモログに基づいた遺伝子に帰属させた。次に、一般的な機能を、4型分泌系(T4SS)、交配ペアの安定化、可動化、維持、調節、選択、不明な機能などの特定の機能を媒介する異なるモジュールにマニュアルで帰属させた。
【
図8A】TP114とIncIファミリーの他のプラスミドとの間の配列相同性。配列同一性を円形のパターンで示すBLASTに似たプログラムであるBRIGGを使用して配列相同性を評価した。配列同一性の閾値を、すべての分析で100%、70%、及び50%に設定した。TP114の配列を、サブファミリーの7つのメンバーと、核酸配列(A)、及びそのコード遺伝子のアミノ酸配列(B)に基づいてIncI2のメンバーと比較した。IncI2プラスミド間の遺伝子保存も表6にまとめられている。次に、TP114を、核酸配列(C)及びそのコーディング遺伝子のアミノ酸配列(D)に基づいて、IncI1サブファミリーの7つのメンバーと比較した)。IncI1サブファミリーの相同領域は、repA複製開始遺伝子、シャフロン及びそれに関連するシャフラーゼrciのみで構成されていた。相同性リングの番号は凡例のプラスミドに対応し、1が最も内側のリング、7が最も外側のリングである。
【
図8B】TP114とIncIファミリーの他のプラスミドとの間の配列相同性。配列同一性を円形のパターンで示すBLASTに似たプログラムであるBRIGGを使用して配列相同性を評価した。配列同一性の閾値を、すべての分析で100%、70%、及び50%に設定した。TP114の配列を、サブファミリーの7つのメンバーと、核酸配列(A)、及びそのコード遺伝子のアミノ酸配列(B)に基づいてIncI2のメンバーと比較した。IncI2プラスミド間の遺伝子保存も表6にまとめられている。次に、TP114を、核酸配列(C)及びそのコーディング遺伝子のアミノ酸配列(D)に基づいて、IncI1サブファミリーの7つのメンバーと比較した)。IncI1サブファミリーの相同領域は、repA複製開始遺伝子、シャフロン及びそれに関連するシャフラーゼrciのみで構成されていた。相同性リングの番号は凡例のプラスミドに対応し、1が最も内側のリング、7が最も外側のリングである。
【
図8C】TP114とIncIファミリーの他のプラスミドとの間の配列相同性。配列同一性を円形のパターンで示すBLASTに似たプログラムであるBRIGGを使用して配列相同性を評価した。配列同一性の閾値を、すべての分析で100%、70%、及び50%に設定した。TP114の配列を、サブファミリーの7つのメンバーと、核酸配列(A)、及びそのコード遺伝子のアミノ酸配列(B)に基づいてIncI2のメンバーと比較した。IncI2プラスミド間の遺伝子保存も表6にまとめられている。次に、TP114を、核酸配列(C)及びそのコーディング遺伝子のアミノ酸配列(D)に基づいて、IncI1サブファミリーの7つのメンバーと比較した)。IncI1サブファミリーの相同領域は、repA複製開始遺伝子、シャフロン及びそれに関連するシャフラーゼrciのみで構成されていた。相同性リングの番号は凡例のプラスミドに対応し、1が最も内側のリング、7が最も外側のリングである。
【
図8D】TP114とIncIファミリーの他のプラスミドとの間の配列相同性。配列同一性を円形のパターンで示すBLASTに似たプログラムであるBRIGGを使用して配列相同性を評価した。配列同一性の閾値を、すべての分析で100%、70%、及び50%に設定した。TP114の配列を、サブファミリーの7つのメンバーと、核酸配列(A)、及びそのコード遺伝子のアミノ酸配列(B)に基づいてIncI2のメンバーと比較した。IncI2プラスミド間の遺伝子保存も表6にまとめられている。次に、TP114を、核酸配列(C)及びそのコーディング遺伝子のアミノ酸配列(D)に基づいて、IncI1サブファミリーの7つのメンバーと比較した)。IncI1サブファミリーの相同領域は、repA複製開始遺伝子、シャフロン及びそれに関連するシャフラーゼrciのみで構成されていた。相同性リングの番号は凡例のプラスミドに対応し、1が最も内側のリング、7が最も外側のリングである。
【
図9】高密度トランスポゾン突然変異誘発(HDTM)実験の概要。TP114を含むEcNに、pFG051(配列番号147)(可動性Tn5転移プラスミド)及びpFG036(配列番号146)(ドナー株のTn5トランスポゾンマシナリーを抑制するプラスミド)を含むMFD pir + を使用してトランスポゾンをボンバードメントした。これにより、EcNの染色体とTP114の両方にTn5がランダムに挿入され、HDTMライブラリ1が生成された。インビトロ (固体支持体)及びインビボ(マウス腸内)の両方で接合実験を行って、それらの特定の環境でも伝達することが可能なTP114:: Tn5変異体を選択した。HDTMライブラリ1のインビボ伝達を生物学的複製当たり2匹のマウスで2日間行った。この実験から2つのHDTMライブラリが生成され、糞便試料から回収された接合完了体がHDTMライブラリ4を構成したのに対し、HDTMライブラリ6は、マウスの盲腸から回収された接合完了体で構成されていた。インビトロでの伝達により、HDTMライブラリ2が得られ、これを再びインビトロ固体交配(HDTMライブラリ3を生成)及び腸内でのインビボ接合(それぞれ糞便中及び盲腸内に見られる接合完了体からなるHDTMライブラリ5及び7を生成)のドナーとして使用した)。HDTMライブラリ8は、TP114の排斥メカニズムを調べるためにHDTMライブラリ2のTP114 :: tetB (配列番号166)の接合によって生成された。
【
図10】HDTMライブラリ分析。HDTMライブラリをシークエンシングし、リードを用いてTP114内のトランスポゾン挿入部位の位置を正確に特定した。次に、UCSC GenomeBrowserを使用してリードマッピングを視覚化した。黒い線は挿入部位を表し、線の高さはTP114の特定の位置でのリードの密度を表す。図に示されるトラックは、ライブラリ3と比較してHDTMライブラリ2で検出されたバックグラウンドノイズを表している。生物学的複製#2のデータは、HDTMライブラリ1、2、及び3について示されている。
【
図11】HDTM試料間の相関。TP114の各100bpのビン上にマッピングした正規化されたリード数を、ピアソン相関を用いて複製及び条件間で相関させた。互いに強く相関している(濃い灰色で示される1.0)または弱く相関している(白で示される0.0)試料を視覚的に識別するために、データにグレースケールを適用した。試料を、X.X.Xの3つの数字のフォーマットに従って識別し、最初の位置はHDTMライブラリ番号を示し、2番目の位置はHDTMライブラリの生物学的複製を示し、3番目の数字は実験がインビボで行われた場合のマウスの同一性を示す。
【
図12】プラスミドの維持に不可欠な遺伝子。HDTMライブラリをシークエンシングし、TP114の挿入ポイントに基づいてリードをマッピングした。次に、UCSC GenomeBrowserを使用してリードマッピングを視覚化した。縦線はトランスポゾンの挿入部位を表し、それぞれの高さはこの位置でのリードの密度に対応している。選択されたラックは、トランスポゾン挿入カバレッジの再現性のある低下について分析されたHDTMライブラリ1の3つの生物学的複製を示している。これらの低カバレッジ領域は、必須のメンテナンス遺伝子を表すものとみなした。ただし、一部の遺伝子にはマッピング可能性の低い領域が含まれており、これもカバレッジの低い領域として表示され、分析から除外した。カバレッジの低い残りの遺伝子は点線の枠内に示され(表8も参照)、プラスミドの維持に重要であると考えられる。
【
図13】HDTMライブラリ2及び3の遺伝子カウント比の分布。この手順を繰り返して、HDTMライブラリ4〜7の遺伝子の重要性を決定した。最初に、特定の条件下で特定の遺伝子内にマッピングされる正規化されたリード数を計算することにより遺伝子カウントを決定した。次に、遺伝子カウントを、式(条件Xの遺伝子カウント−条件1の遺伝子カウント)/条件1の遺伝子カウント)を用いて、HDTMライブラリ1の遺伝子カウントと比較した。最大値と平均値(それぞれ黒と灰色の線)は、テストライブラリXには必須であるが、ライブラリ1には必須ではないと思われる遺伝子のセットを用いて計算した。HDTMライブラリ2(A)の遺伝子カウント比の分布を示し(A)、破線部分を拡大して示す(B)。HDTMライブラリ3の遺伝子カウント比の分布を示し(C)、破線部分を拡大して示す(D)。最大値のしきい値を下回る遺伝子カウント比を有するすべての遺伝子を、特定の条件で重要であるものとみなした。
【
図14】pil遺伝子はインビボでの導入に不可欠であるが、インビトロでは必須ではない。トランスポゾン挿入部位をTP114上にマッピングし、UCSC GenomeBrowserを使用して視覚化した。トランスポゾン挿入密度が、インビトロ及びインビボ接合実験の両方について示されている。黒い線は挿入部位を表し、それらの高さはTP114内の特定の位置でのリードの密度を表す。図に示されるトラックは、生物学的複製2のHDTMライブラリ1、3、6及び7を表す。HDTMライブラリ1がインビトロの接合結果の完全な挿入プロファイルを示すのに対して、HDTMライブラリ3は2つのインビトロ接合後の挿入密度を示し、HDTMライブラリ6及び7は、挿入密度に対するインビボ接合の影響を示す。トラックを比較すると、2つのインビボ接合実験(破線で選択された部分内の遺伝子)についてのみpil遺伝子の挿入シグナル強度の低下が明らかである。インビボ接合の遺伝子不可欠性を表10に要約する。
【
図15】維持、インビトロ接合及びインビボ接合に関するTP114のコア及び必須遺伝子の分布。HDTMによって決定された遺伝子の保存及び遺伝子の不可欠性に関するデータを、TP114の配列上にマッピングした。信頼性の高い必須遺伝子(黒)及びコア遺伝子(灰色)のみが示されている。遺伝子機能を、
図7に基づいて帰属させた。
【
図16】インビトロでのTP114の交配ペア安定化に対するT4P無効化の影響。TP114のT4P変異体においてpilS遺伝子を欠失させ、補完して、固体支持体、静止液体及び攪拌液体条件下での接合を行った(A)。簡単に述べると、TP114ΔpilS::catまたはTP114ΔpilS::cat+pPilSのいずれかを含む約10
8CFUのKN01株を等量のKN03株と混合してTP114接合効率に対するT4Pの重要性を評価した。得られた混合物を、固体培地上または液体中で、攪拌を行うかまたは行わずに、37℃で2時間インキュベートした。次に、接合完了体を総量800μLに再懸濁(固体)または希釈(液体)し、適当な抗生物質を含むLB培地にプレーティングして、レシピエント細胞集団全体における接合完了体の割合を評価した。エラーバーは、少なくとも3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。*は、接合完了体形成の頻度が検出限界(<10
-8)を下回ったことを示す。pilV遺伝子全体、またはpilVのC末端(pilV遺伝子 の3 ’末端を含む)を再編成することができるシャフロンをFlagタグで置き換えてT4P変異体の第2のセットを生成した。pilV変異体の発現を可能にするプラスミド(TP114ΔpilV::cat+ pPilV4’)は、上記と同様の実験条件を使用してこの表現型を補完することができた(B)。ロックされたpilV変異体のそれぞれの可能性を、上記に述べたものと同じ条件下で、固体支持体、静止液体及び攪拌液体条件下での接合について評価した(それぞれC〜E)。
【
図17】TP114のインビボ伝達速度に対するT4P不活性化の影響。TP114ΔpilS変異体がインビボで伝達する能力をTP114と比較した。簡単に説明すると、各群5匹のマウスを株の導入の2日前に1g/Lのストレプトマイシンで処理した。ドナー株導入の2時間前に、マウスにレシピエント株KN03を投与した。次に、レシピエント細菌当たりの接合完了体の割合を糞便中で4日間モニターした(A)。4日目に、マウスを屠殺し、盲腸と糞便との間で接合完了体の割合を比較した(B)。エラーバーは、少なくとも5つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。同様の実験を、TP114ΔpilV::cat、ならびに2つのロックされたpilV変異体(それぞれ、大腸菌レシピエント株へのインビトロ接合が行えない、または行えた、TP114Δシャフロン::pilV1−cat及びTP114Δシャフロン::pilV4’−cat)で行ったところ、特定の標的細菌に対する接合について特定のpilV変異体の不可欠な役割が示された(C)。
【
図18】不和合性と排斥は、接合プラスミドの伝達を妨げる。不和合性及び排斥メカニズムは、各Incプラスミドファミリーに固有である。TP114を含むKN02を、異なるプラスミド(pOX38、R6K、TP114 :: tetB、pVCR94、R388、RP4)を有するレシピエント細菌への接合用のドナーとして使用した。接合プラスミドを含まないレシピエント細菌へのTP114の伝達速度は点線で示し、標準偏差は灰色で示す(A)。パネルAのデータに基づいて排斥比を計算した。簡単に述べると、接合プラスミドを欠くレシピエントへのTP114の接合頻度を、すでにプラスミドを含んでいるレシピエントへの伝達比で割った。TP114によるpCloDF13の、TP114のコピーを含むかまたは含まないレシピエントへのトランス可動化も評価した(B)。次に、排斥をインビボで試験した。ストレプトマイシン処理マウスに最初にKN02+TP114 ::tetB (配列番号166)またはKN02のいずれかを与え、2時間後にKN01+TP114を与えた。次に、糞便中のレシピエント細胞当たりの接合完了体の割合を、4日間連続して毎日分析した(C)。4日目にマウスを屠殺し、レシピエント細菌あたりの接合完了体の割合を盲腸と糞便の間で比較した(D)。エラーバーは、少なくとも3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図19】排斥は、HDTMライブラリ8からの特定のTP114変異体では無効化される。TP114::tetB (配列番号166)は、接合によってHDTMライブラリ1から変異体プールに伝達された。得られた接合完了体はHDTMライブラリ8と呼ばれ、排斥についてほとんどが不全であった。個々のHDTMライブラリ8変異体を単離してからドナー株として使用して、TP114::Tn5の排斥不全クローンを単離した。連続した2ラウンドの接合伝達の後、TP114::tetB(配列番号166)を排斥するTP114 :: Tn5の能力を、KN02+TP114 :: tetB(配列番号166)と、レシピエントとしてのKN01、KN01+TP114またはKN01+TP114 :: Tn5との間の接合実験で検証した(A)。TP114またはTP114 :: Tn5の排斥比を、
図18で前述したように、空のレシピエントとも比較した(B)。最後に、TP114 :: Tn5変異体が予想される速度で伝達する能力を、KN01をドナー細胞として、KN03をレシピエントとして使用して、37°Cで2時間、固体培地上で検証した(C)。エラーバーは、少なくとも3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図20】TP114の伝達効率を制限する遺伝子。トランスポゾン挿入部位をTP114上にアラインし、UCSC GenomeBrowserを使用して視覚化した。インビトロ(HDTMライブラリ3)及び インビボ(HDTMライブラリ7)条件の代表的な挿入密度トラックが示されている。黒い縦線は、TP114ゲノムの特定の位置でのトランスポゾン密度を表す。図に示されるトラックは、
図9に示される生物学的複製#2のHDTMライブラリのステップ1、3、及び7を表している。TP114−005(以前に排斥及び接合頻度の増加を媒介することが示されている)及び yaeC (転写抑制因子finOのホモログ)の2個の遺伝子のみがHDTMライブラリ1からHDTMライブラリ3及び7への濃縮を示した。両方の遺伝子は点線の枠で囲まれている。
【
図21A】カーゴKill1及びKill3を試験するために使用されるプラスミドとgRNA。Kill1挿入デバイス(
図21A)、Kill3挿入デバイス(
図21B)、pREC1(配列番号160)(
図21C)、pBXB1(配列番号145)(
図21 D)、及びpT(
図21E)のマップが、一定の縮尺で示されている。プラスミド名の下に塩基対の全長(bp)が示されている。Kill3のgRNA(tracrRNAとcrRNAの操作による融合体)は、Kill1のgRNAと同じプロモーターとターミネーターを用いて設計されている。pTのマップのcat遺伝子の*は、gRNAのプロトスペーサーを表している。すべてのgRNAは、標的のゲノムに導入された、またはプラスミド上に存在するクロラムフェニコール耐性遺伝子である catを標的とするように設計した。gRNAのスペーサー配列は、cat遺伝子の標的配列と一致している(
図21F)。cat 遺伝子の完全なヌクレオチド配列(配列番号87)は、gRNA1(配列番号88、薄い灰色)、gRNA2(配列番号89、灰色)及びgRNA3(配列番号90、濃い灰色)プロトスペーサー及びそれらのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(実線で囲まれている)の位置を示している(
図21G)。
【
図21B】カーゴKill1及びKill3を試験するために使用されるプラスミドとgRNA。Kill1挿入デバイス(
図21A)、Kill3挿入デバイス(
図21B)、pREC1(配列番号160)(
図21C)、pBXB1(配列番号145)(
図21 D)、及びpT(
図21E)のマップが、一定の縮尺で示されている。プラスミド名の下に塩基対の全長(bp)が示されている。Kill3のgRNA(tracrRNAとcrRNAの操作による融合体)は、Kill1のgRNAと同じプロモーターとターミネーターを用いて設計されている。pTのマップのcat遺伝子の*は、gRNAのプロトスペーサーを表している。すべてのgRNAは、標的のゲノムに導入された、またはプラスミド上に存在するクロラムフェニコール耐性遺伝子である catを標的とするように設計した。gRNAのスペーサー配列は、cat遺伝子の標的配列と一致している(
図21F)。cat 遺伝子の完全なヌクレオチド配列(配列番号87)は、gRNA1(配列番号88、薄い灰色)、gRNA2(配列番号89、灰色)及びgRNA3(配列番号90、濃い灰色)プロトスペーサー及びそれらのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(実線で囲まれている)の位置を示している(
図21G)。
【
図21C】カーゴKill1及びKill3を試験するために使用されるプラスミドとgRNA。Kill1挿入デバイス(
図21A)、Kill3挿入デバイス(
図21B)、pREC1(配列番号160)(
図21C)、pBXB1(配列番号145)(
図21 D)、及びpT(
図21E)のマップが、一定の縮尺で示されている。プラスミド名の下に塩基対の全長(bp)が示されている。Kill3のgRNA(tracrRNAとcrRNAの操作による融合体)は、Kill1のgRNAと同じプロモーターとターミネーターを用いて設計されている。pTのマップのcat遺伝子の*は、gRNAのプロトスペーサーを表している。すべてのgRNAは、標的のゲノムに導入された、またはプラスミド上に存在するクロラムフェニコール耐性遺伝子である catを標的とするように設計した。gRNAのスペーサー配列は、cat遺伝子の標的配列と一致している(
図21F)。cat 遺伝子の完全なヌクレオチド配列(配列番号87)は、gRNA1(配列番号88、薄い灰色)、gRNA2(配列番号89、灰色)及びgRNA3(配列番号90、濃い灰色)プロトスペーサー及びそれらのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(実線で囲まれている)の位置を示している(
図21G)。
【
図21D】カーゴKill1及びKill3を試験するために使用されるプラスミドとgRNA。Kill1挿入デバイス(
図21A)、Kill3挿入デバイス(
図21B)、pREC1(配列番号160)(
図21C)、pBXB1(配列番号145)(
図21 D)、及びpT(
図21E)のマップが、一定の縮尺で示されている。プラスミド名の下に塩基対の全長(bp)が示されている。Kill3のgRNA(tracrRNAとcrRNAの操作による融合体)は、Kill1のgRNAと同じプロモーターとターミネーターを用いて設計されている。pTのマップのcat遺伝子の*は、gRNAのプロトスペーサーを表している。すべてのgRNAは、標的のゲノムに導入された、またはプラスミド上に存在するクロラムフェニコール耐性遺伝子である catを標的とするように設計した。gRNAのスペーサー配列は、cat遺伝子の標的配列と一致している(
図21F)。cat 遺伝子の完全なヌクレオチド配列(配列番号87)は、gRNA1(配列番号88、薄い灰色)、gRNA2(配列番号89、灰色)及びgRNA3(配列番号90、濃い灰色)プロトスペーサー及びそれらのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(実線で囲まれている)の位置を示している(
図21G)。
【
図21E】カーゴKill1及びKill3を試験するために使用されるプラスミドとgRNA。Kill1挿入デバイス(
図21A)、Kill3挿入デバイス(
図21B)、pREC1(配列番号160)(
図21C)、pBXB1(配列番号145)(
図21 D)、及びpT(
図21E)のマップが、一定の縮尺で示されている。プラスミド名の下に塩基対の全長(bp)が示されている。Kill3のgRNA(tracrRNAとcrRNAの操作による融合体)は、Kill1のgRNAと同じプロモーターとターミネーターを用いて設計されている。pTのマップのcat遺伝子の*は、gRNAのプロトスペーサーを表している。すべてのgRNAは、標的のゲノムに導入された、またはプラスミド上に存在するクロラムフェニコール耐性遺伝子である catを標的とするように設計した。gRNAのスペーサー配列は、cat遺伝子の標的配列と一致している(
図21F)。cat 遺伝子の完全なヌクレオチド配列(配列番号87)は、gRNA1(配列番号88、薄い灰色)、gRNA2(配列番号89、灰色)及びgRNA3(配列番号90、濃い灰色)プロトスペーサー及びそれらのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(実線で囲まれている)の位置を示している(
図21G)。
【
図21F】カーゴKill1及びKill3を試験するために使用されるプラスミドとgRNA。Kill1挿入デバイス(
図21A)、Kill3挿入デバイス(
図21B)、pREC1(配列番号160)(
図21C)、pBXB1(配列番号145)(
図21 D)、及びpT(
図21E)のマップが、一定の縮尺で示されている。プラスミド名の下に塩基対の全長(bp)が示されている。Kill3のgRNA(tracrRNAとcrRNAの操作による融合体)は、Kill1のgRNAと同じプロモーターとターミネーターを用いて設計されている。pTのマップのcat遺伝子の*は、gRNAのプロトスペーサーを表している。すべてのgRNAは、標的のゲノムに導入された、またはプラスミド上に存在するクロラムフェニコール耐性遺伝子である catを標的とするように設計した。gRNAのスペーサー配列は、cat遺伝子の標的配列と一致している(
図21F)。cat 遺伝子の完全なヌクレオチド配列(配列番号87)は、gRNA1(配列番号88、薄い灰色)、gRNA2(配列番号89、灰色)及びgRNA3(配列番号90、濃い灰色)プロトスペーサー及びそれらのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(実線で囲まれている)の位置を示している(
図21G)。
【
図21G】カーゴKill1及びKill3を試験するために使用されるプラスミドとgRNA。Kill1挿入デバイス(
図21A)、Kill3挿入デバイス(
図21B)、pREC1(配列番号160)(
図21C)、pBXB1(配列番号145)(
図21 D)、及びpT(
図21E)のマップが、一定の縮尺で示されている。プラスミド名の下に塩基対の全長(bp)が示されている。Kill3のgRNA(tracrRNAとcrRNAの操作による融合体)は、Kill1のgRNAと同じプロモーターとターミネーターを用いて設計されている。pTのマップのcat遺伝子の*は、gRNAのプロトスペーサーを表している。すべてのgRNAは、標的のゲノムに導入された、またはプラスミド上に存在するクロラムフェニコール耐性遺伝子である catを標的とするように設計した。gRNAのスペーサー配列は、cat遺伝子の標的配列と一致している(
図21F)。cat 遺伝子の完全なヌクレオチド配列(配列番号87)は、gRNA1(配列番号88、薄い灰色)、gRNA2(配列番号89、灰色)及びgRNA3(配列番号90、濃い灰色)プロトスペーサー及びそれらのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(実線で囲まれている)の位置を示している(
図21G)。
【
図22A】ダブルリコンビナーゼ操作によるDNA挿入(Double Recombinase Operated Insertion of DNA )(DROID)による伝達マシナリーへの遺伝子カーゴの導入。DROID法は、伝達マシナリーTP114へのKill1の挿入によって例示される(
図22A)。
【
図22B】最初のステップは、リコンビニアリングによってtetBローディングドックを伝達マシナリーに挿入することである。次に、Bxb1インテグラーゼが、それぞれローディングドック及び遺伝子カーゴ挿入デバイス上にあるattB部位とattP部位との間の融合を行う。最後に、FLPリコンビナーゼを発現させて、2個の新たに連結されたFRT部位(tetB、pSC101ts、及び attL部位)間の挿入デバイスセグメントをノックアウトする。Kill1の挿入について、リコンビニアリング(
図22B)、DROIDステップ1(
図22C)、及びDROIDステップ2(
図22D)のPCRによる検証を示す。各レーンのアンプリコンは、TP114 ::tetB内のtetBとTP114との間の右側の接合部であるレーンDを除いて、太字または数字で図面に示されている。
【
図22C】最初のステップは、リコンビニアリングによってtetBローディングドックを伝達マシナリーに挿入することである。次に、Bxb1インテグラーゼが、それぞれローディングドック及び遺伝子カーゴ挿入デバイス上にあるattB部位とattP部位との間の融合を行う。最後に、FLPリコンビナーゼを発現させて、2個の新たに連結されたFRT部位(tetB、pSC101ts、及び attL部位)間の挿入デバイスセグメントをノックアウトする。Kill1の挿入について、リコンビニアリング(
図22B)、DROIDステップ1(
図22C)、及びDROIDステップ2(
図22D)のPCRによる検証を示す。各レーンのアンプリコンは、TP114 ::tetB内のtetBとTP114との間の右側の接合部であるレーンDを除いて、太字または数字で図面に示されている。
【
図22D】最初のステップは、リコンビニアリングによってtetBローディングドックを伝達マシナリーに挿入することである。次に、Bxb1インテグラーゼが、それぞれローディングドック及び遺伝子カーゴ挿入デバイス上にあるattB部位とattP部位との間の融合を行う。最後に、FLPリコンビナーゼを発現させて、2個の新たに連結されたFRT部位(tetB、pSC101ts、及び attL部位)間の挿入デバイスセグメントをノックアウトする。Kill1の挿入について、リコンビニアリング(
図22B)、DROIDステップ1(
図22C)、及びDROIDステップ2(
図22D)のPCRによる検証を示す。各レーンのアンプリコンは、TP114 ::tetB内のtetBとTP114との間の右側の接合部であるレーンDを除いて、太字または数字で図面に示されている。
【
図23】接合送達システムの形態の例。細菌は、階層的に編成されたいくつかの構成要素に分解することができる(A)。遺伝子カーゴはいくつかの形態で送達できるが、そのうちの3つを実施例IIIに示す(B)。最初のアプローチは、シス可動化によって遺伝子カーゴを送達することであり、その場合、遺伝子カーゴは伝達マシナリーに直接挿入されて接合送達システムをコードする単一のベクターを形成する。2番目の方法は、制約付きシス可動化によって遺伝子カーゴを送達することであり、その場合、必須の複製遺伝子がドナー細菌の染色体に再配置されることでドナー株の外部の接合送達システムの複製を防止する。最後に、遺伝子カーゴと伝達マシナリーを2つ以上のベクターにコードして トランス可動化を可能とすることができる。この設定では、遺伝子カーゴには、伝達マシナリーによって認識され、ドナー株からレシピエント株への伝達を媒介する輸送モジュールが必要である。各送達モードは、X(バイオコンテインメントされていない)、+(コンテインメントされている)、及び++(より厳密にコンテインメントされている)で表される異なるレベルのバイオセーフティを与える。ドナー株とレシピエント株の両方の複製及び伝達能力を、X(不可能)またはチェックマーク(可能)で示している。トランス可動化のためのレシピエントでの複製は、遺伝子カーゴの維持モジュールに依存している。
【
図24】標的プラスミド(pT)を含むレシピエント細胞への形質転換によって評価したKill1及びKill3遺伝子カーゴの形質転換効率。50ngの各遺伝子カーゴ挿入デバイスを生物学的三重複製でKN03+pTにエレクトロポレーションし、プレーティングして遺伝子カーゴのみを選択するか(黒い棒)、または遺伝子カーゴとpTの両方を選択した(白い棒)。形質転換効率は、エレクトロポレーションしたDNA1mgあたりの形質転換体として示されている。エラーバーは、少なくとも3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。*は、プレート上にCFUがないことを示す。
【
図25A】TP114 :: Kill1は、インビトロで混合集団から標的細菌を選択的に排除する。COPを、cat遺伝子の染色体コピーを保持する大腸菌Nissle 1917(
図25A )またはシトロバクター・ロデンティウム(Citrobacter rodentium)(
図25B )の特異的標的化に用い、これを、他の3つの腸内細菌科で構成される模擬細菌集団で行った。等量の各株を混合した後、COP株と、またはKN01ΔdapA + TP114コントロール株と、37℃の固体培地上で2時間、インキュベートした。この図は、模擬集団の各株についてTP114と比較したTP114 :: Kill1の接合完了体の相対存在量(%)を示している。どちらの場合も、標的株の接合完了体の存在量は、具体的には約1000分の1に減少した。エラーバーは、少なくとも3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図25B】TP114 :: Kill1は、インビトロで混合集団から標的細菌を選択的に排除する。COPを、cat遺伝子の染色体コピーを保持する大腸菌Nissle 1917(
図25A )またはシトロバクター・ロデンティウム(Citrobacter rodentium)(
図25B )の特異的標的化に用い、これを、他の3つの腸内細菌科で構成される模擬細菌集団で行った。等量の各株を混合した後、COP株と、またはKN01ΔdapA + TP114コントロール株と、37℃の固体培地上で2時間、インキュベートした。この図は、模擬集団の各株についてTP114と比較したTP114 :: Kill1の接合完了体の相対存在量(%)を示している。どちらの場合も、標的株の接合完了体の存在量は、具体的には約1000分の1に減少した。エラーバーは、少なくとも3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図26】TP114複製起点(oriV)遺伝子座の特定。複製タンパク質RepAをコードする遺伝子座をインシリコで予測し、pir依存性プラスミド骨格に3つの異なる形態でクローニングした。「repA+上流」は、repAコード配列(CDS)+上流領域から1000bpに対応し、「repA+下流」は、repA CDS及び推定されるプロモーター+下流領域の1000bpを表し、「repA+両側」には、repA CDS +上流及び下流領域からの1000bpが含まれる。3つすべてのプラスミドのバージョンを、pir−またはpir+株に形質転換してTP114 のoriVの活性を試験した。上流領域と下流領域の両方を有するrepA CDSのみ が、pir−株内で複製することができた。エラーバーは、3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図27】制約付きシス可動化送達は、環境中のプラスミドの持続を防ぐことができる。TP114とTP114ΔrepA::cat−oriV
R6Kを接合によりEC100Dpir+からpir−欠損株(黒い棒)及びpir+株(白い棒)へと、固体LB培地上、37℃で2時間、伝達させた。pir−欠損株(*)へのTP114ΔrepA::cat−oriV
R6Kの場合では接合完了体は検出されず、pir+株へのTP114ΔrepA::cat−oriV
R6Kの場合では頻度の低下が観察された。まったく対照的に、野生型TP114は通常の頻度(約10
-3)で伝達することができた(A)。TP114とTP114ΔrepA::cat−oriV
R6Kを接合により、KN05からEC100Dpir+株(灰色の棒)に、固体LB培地上、37℃で2時間、伝達させた(B)。これらの条件下では、両方のプラスミドが同様の速度でコンジュゲートする可能性があります。エラーバーは、3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図28】oriT
TP114含有プラスミドのトランス可動化。シャトルプラスミドpNA01は、oriT
TP114を含み、したがってTP114によって可動化されるはずである。pNA02は、oriT
TP114のニッキング部位を中心とした7bpの欠失を提示する。TP114とシャトルプラスミド(pNA01またはpNA02のいずれか)を含むドナー株を用いたプラスミドpNA01(A)及びpNA02(B)のトランス可動化頻度。接合頻度を、TP114(黒い棒)、シャトルプラスミドpNA01またはpNA02(灰色の棒)を含む接合完了体について、及びTP114とシャトルプラスミド(白い棒)の両方を含む接合完了体について計算した。エラーバーは、3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図29】ペアワイズ配列アラインメントによるTP114の伝達起点(oriT)ニッキング部位の位置特定。oriTはプラスミドの認識を可能とし、可動化に不可欠である。この認識は、oriT配列内のリピートの存在に基づいている。次に、リラクソソームがoriTに特異的に結合し、DNAにニック(一本鎖切断)を入れて接合伝達を開始する。TP114のoriT (配列番号141)を、これまでに特徴付けられているR64最小 oriT (配列番号142)と整列させた。ニッキング部位の予測を可能とするために重要なリピートをアライメント上にマッピングした。配列アラインメントは弱かったが、リピートはTP114とR64の両方に存在し、ニッキング部位の推定上の局在を示唆した。線「|」は、完全な配列アラインメントを表し、ドット「.」は、類似性の低い領域を示し、空白スペース 「 」はミスマッチのギャップである。
【
図30】伝達起点(oriT)の欠失がTP114の伝達頻度に与える影響。TP114のoriTのニッキング部位のおおよその位置をリコンビニアリングによって欠失させ、TP114ΔoriTを作製した。最初に大腸菌 MG1655Nx
R から大腸菌MG1655Rf
Rへの伝達を用いて接合頻度を評価し、野生型の接合率と比較した(A)。伝達率はTP114ΔoriTで大幅に低下し、残存伝達事象 (約10
-6)はおそらくは部分的なoriTの認識によるか、またはTP114内の隠れたoriTの存在によると考えられた。次に、大腸菌MG1655Rf
RへのTP114ΔoriTの伝達を試験したところ、接合完了体は検出されなかった(*)(B)。エラーバーは、3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図31】非可動化伝達マシナリーによるシャトルプラスミドpKN30及びpKN31のトランス可動化。TP114とシャトルプラスミド(pKN30またはpKN31のいずれか)の両方を含むドナー株を使用したプラスミドpKN30(
図28A )及びpKN31(
図28B)のトランス可動化頻度。プラスミドpKN30及びpKN31は、それぞれpNA01及びpNA02のカナマイシン耐性変異体である。pKN30及びpKN31は両方ともTP114の oriTが含んでいるが、pKN31は、ニッキング部位領域に7bpの欠失があり、その伝達を妨げている。シャトルプラスミド(pKN30またはpKN31)であるTP114ΔoriT::cat−tetBを含む接合完了体について、また、TP114とシャトルプラスミドの両方を有する接合完了体について接合頻度を計算した。*は、接合完了体形成の頻度が検出限界(<10
-8)を下回ったことを示す。エラーバーは、3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図32】実施例IIIで説明したトランス可動化の概略図。TP114 oriT 配列をインシリコで同定し、pNA01にクローニングした。oriT配列は、TP114ニッカーゼによって認識され、pNA01のトランス可動化を媒介する。しかしながら、予測されるニッキング部位(ニッカーゼ活性に不可欠)を中心とした7bpの欠失は、pNA02のトランス可動化を妨げる。
【
図33】COPシステムは、有益な表現型を与えるDNAをインビボで標的細菌に伝達することができる。TP114を、カナマイシン耐性遺伝子をマウスの腸内の標的細菌に伝達するための接合送達システムとして使用した。KN01+TP114導入の2時間前に、マウスにKN02を与えた。耐性表現型を獲得したレシピエント細菌(接合完了体)の全レシピエントに対する割合を、糞便中で4日間追跡した(A)。4日目にマウスを屠殺し、盲腸と糞便でレシピエント当たりの接合完了体の割合を比較した(B)。エラーバーは、4つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図34】実施例IVに示されるような接合プロバイオティクス(COP)の応用。COPシステムは、接合伝達によって遺伝子カーゴを送達するプロバイオティクス細胞シャーシに基づいている。この例では、遺伝子カーゴはCRISPR−Cas9をコードしており、これを細菌の集団に伝達して、特定の菌株を、配列固有の基準に基づいて除去するための標的とすることができる(A)。接合は非常に効率的な接合プラスミドによってコードされる伝達マシナリーによって媒介され、接合プラスミドは、この例では遺伝子カーゴを直接保有していることによって、接合送達システムを形成している。接合プラスミドも通常モジュール式であり、遺伝子はその機能に従ってグループ化されている(B)。標的細胞に入ると、Cas9エンドヌクレアーゼが発現し、gRNAとアセンブルして、細胞のDNA含量全体をスキャンする。プロトスペーサー配列がプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の下流で見つかると、Cas9はDNAの二本鎖切断を媒介する(C)。細菌性COPを使用することで、複雑な微生物集団内の細胞を選択的に標的化することができる。細菌性COPは、遺伝子カーゴをレシピエント細胞に伝達するが、Cas9−gRNAシステムは、集団の特定の株のみを標的とする。標的配列がゲノムにある場合、標的細胞はDNAが損なわれたゲノムの完全性のため死に至る。標的がプラスミドにある場合(例えば、病原性関連遺伝子)、プラスミドはキュアされ、標的細胞のディスアームにつながる(D)。
【
図35】COPは、CRISPR−Cas9染色体外配列ターゲティングを介して表現型形質の喪失を媒介することができる。TP114(コントロール)またはTP114 :: Kill1を、マウス腸管内でKN01からKN02(標的プラスミドpTを含む)に伝達させた。標的株のディスアーム(pTプラスミドのキュレーション)を、すべての標的レシピエント細胞の増殖を可能とするプレート上のコロニー蛍光を分析することにより、糞便中で4日間、経時的に追跡した(A)。COP治療に応じて、コントロール群の4匹のマウスと試験群の3匹のマウスの生の割合で一元配置分散分析を行った。代表的な画像は、プラスミドを失ったコロニーと失っていないコロニーとの間で緑色蛍光がどのように識別できるかを示している(B)。4日目に、プラスミドキュレーションの結果をマウスの糞便と盲腸とで比較したところ、高い一貫性を示した(C)。接合完了体のみについて選択した場合、TP114 :: Kill1はすべてのマウスで100%のディスアーム率を実現したが、TP114の伝達はそのような活性を示さなかった(D)。
【
図36A】COPは、インビボで侵入株によるコロニー形成を防止するために予防的に投与することができる。実験の概略的な説明(
図36A)。
【
図36B】CRISPR−Cas9システムを含む、または含まない(それぞれ、COP及びコントロール)TP114プラスミドを有するプロバイオティクスドナー株を、標的/非標的株混合物の12時間前に投与した(約10
8 CFU)。糞便1mgあたりの標的株と非標的株の存在量(
図36B及びD)と競合指数(
図36C及びE)を、ドナー株の強制給餌後の時間の関数として示す。競合指数は、標的細菌または非標的細菌の相対的な存在量を示します。パネルB及びDの破線はCFUの検出上限であり、y軸は検出下限に設定されている。パネルC及びEにおいて、破線は、両方の菌株がまったく同じ適応度を有する状況での両方の菌株に相当する競合比を表している。
【
図36C】CRISPR−Cas9システムを含む、または含まない(それぞれ、COP及びコントロール)TP114プラスミドを有するプロバイオティクスドナー株を、標的/非標的株混合物の12時間前に投与した(約10
8 CFU)。糞便1mgあたりの標的株と非標的株の存在量(
図36B及びD)と競合指数(
図36C及びE)を、ドナー株の強制給餌後の時間の関数として示す。競合指数は、標的細菌または非標的細菌の相対的な存在量を示します。パネルB及びDの破線はCFUの検出上限であり、y軸は検出下限に設定されている。パネルC及びEにおいて、破線は、両方の菌株がまったく同じ適応度を有する状況での両方の菌株に相当する競合比を表している。
【
図36D】CRISPR−Cas9システムを含む、または含まない(それぞれ、COP及びコントロール)TP114プラスミドを有するプロバイオティクスドナー株を、標的/非標的株混合物の12時間前に投与した(約10
8 CFU)。糞便1mgあたりの標的株と非標的株の存在量(
図36B及びD)と競合指数(
図36C及びE)を、ドナー株の強制給餌後の時間の関数として示す。競合指数は、標的細菌または非標的細菌の相対的な存在量を示します。パネルB及びDの破線はCFUの検出上限であり、y軸は検出下限に設定されている。パネルC及びEにおいて、破線は、両方の菌株がまったく同じ適応度を有する状況での両方の菌株に相当する競合比を表している。
【
図36E】CRISPR−Cas9システムを含む、または含まない(それぞれ、COP及びコントロール)TP114プラスミドを有するプロバイオティクスドナー株を、標的/非標的株混合物の12時間前に投与した(約10
8 CFU)。糞便1mgあたりの標的株と非標的株の存在量(
図36B及びD)と競合指数(
図36C及びE)を、ドナー株の強制給餌後の時間の関数として示す。競合指数は、標的細菌または非標的細菌の相対的な存在量を示します。パネルB及びDの破線はCFUの検出上限であり、y軸は検出下限に設定されている。パネルC及びEにおいて、破線は、両方の菌株がまったく同じ適応度を有する状況での両方の菌株に相当する競合比を表している。
【
図37A】COPは、インビボで標的株を選択的に排除するために治療的に投与することができる。実験の概略図(
図37A)。
【
図37B】標的/非標的株混合物を、CRISPR−Cas9システムを含む、または含まない(それぞれCOP及びコントロール)TP114プラスミドを有するプロバイオティクスドナー株の12時間前に投与した(約10
8CFU)。糞便1mgあたりの標的株と非標的株の存在量(
図36B及びD)と競合指数(
図36C及びE)を、標的株と非標的株の強制給餌後の時間の関数として示す。競合指数は、標的細菌または非標的細菌の相対存在量を示す。パネルB及びDの破線はCFUの検出上限であり、y軸は検出下限に設定されている。パネルC及びEにおいて、破線は、両方の菌株がまったく同じ適応度を有する状況での両方の菌株に相当する競合比を表している。
【
図37C】標的/非標的株混合物を、CRISPR−Cas9システムを含む、または含まない(それぞれCOP及びコントロール)TP114プラスミドを有するプロバイオティクスドナー株の12時間前に投与した(約10
8CFU)。糞便1mgあたりの標的株と非標的株の存在量(
図36B及びD)と競合指数(
図36C及びE)を、標的株と非標的株の強制給餌後の時間の関数として示す。競合指数は、標的細菌または非標的細菌の相対存在量を示す。パネルB及びDの破線はCFUの検出上限であり、y軸は検出下限に設定されている。パネルC及びEにおいて、破線は、両方の菌株がまったく同じ適応度を有する状況での両方の菌株に相当する競合比を表している。
【
図37D】標的/非標的株混合物を、CRISPR−Cas9システムを含む、または含まない(それぞれCOP及びコントロール)TP114プラスミドを有するプロバイオティクスドナー株の12時間前に投与した(約10
8CFU)。糞便1mgあたりの標的株と非標的株の存在量(
図36B及びD)と競合指数(
図36C及びE)を、標的株と非標的株の強制給餌後の時間の関数として示す。競合指数は、標的細菌または非標的細菌の相対存在量を示す。パネルB及びDの破線はCFUの検出上限であり、y軸は検出下限に設定されている。パネルC及びEにおいて、破線は、両方の菌株がまったく同じ適応度を有する状況での両方の菌株に相当する競合比を表している。
【
図37E】標的/非標的株混合物を、CRISPR−Cas9システムを含む、または含まない(それぞれCOP及びコントロール)TP114プラスミドを有するプロバイオティクスドナー株の12時間前に投与した(約10
8CFU)。糞便1mgあたりの標的株と非標的株の存在量(
図36B及びD)と競合指数(
図36C及びE)を、標的株と非標的株の強制給餌後の時間の関数として示す。競合指数は、標的細菌または非標的細菌の相対存在量を示す。パネルB及びDの破線はCFUの検出上限であり、y軸は検出下限に設定されている。パネルC及びEにおいて、破線は、両方の菌株がまったく同じ適応度を有する状況での両方の菌株に相当する競合比を表している。
【
図38】遺伝子カーゴは、細菌集団に有益な影響及び有害な影響を与え得る。この実験では、TP114 :: Kill3は、カナマイシン耐性遺伝子と、クロラムフェニコール耐性を与える遺伝子を標的とするCRISPR−Cas9システムをコードしていた。TP114 :: Kill3とTP114(コントロール)の両方を、接合により標的プラスミド(pT)を有するレシピエント細菌に伝達した。プラスミドのキュレーション効率を、最初に抗生物質耐性によってモニターし、プラスミドpTとTP114またはTP114 :: Kill3との共存を評価した。pTとTP114 :: Kill3について同時選択することによってCFUが明らかに低下したが、これは、遺伝子カーゴの選択によってレシピエント細菌集団内でのpT損失の増加につながることを示唆している。*は、接合完了体形成の頻度が検出限界(<10
-8)を下回っていたことを示す(A)。次に、カナマイシンを使用して遺伝子カーゴの獲得について選択を行いながら、蛍光コロニー(pTプラスミドを含む)の数を定量化することにより、プラスミドのキュレーションを評価した(B)。カナマイシン選択を行った標的細胞の増殖後の段階希釈された接合混合物からの細菌スポットの代表的な写真(C)。エラーバーは、3つの生物学的複製からの平均の標準偏差を示す。
【
図39】EcNドナーとさまざまな細菌種からの異なるレシピエント株との間のいくつかのプラスミドの接合伝達率。最も悪名高い多剤耐性腸内細菌科のいくつかを代表する菌株への、6つの不和合性ファミリーにまたがるいくつかの接合プラスミドのインビトロ伝達。寒天(A)とブロス(B)の両方で伝達実験を行った。レシピエントのCFUで正規化した伝達頻度を、グレースケールグラデーションを使用して表している。図に示されるデータは、少なくとも3つの生物学的複製の平均である。
【
図40】制限系からの保護をDNA修飾によって獲得することができる。制限修飾系は、遺伝子の水平伝達に対する障壁である。レシピエントの制限系と適合性のある修飾系を有するドナーを使用することで、接合効率が向上する。凡例では、MG1655 =大腸菌MG1655、EcN =大腸菌Nissle1917である。伝達は、ドナーとレシピエントのペアの間で行われる。図に示されるデータは、少なくとも3つの生物学的複製の平均である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、インビボでレシピエント細菌宿主細胞に治療用遺伝子カーゴなどのペイロードを送達するように特別に操作された接合性細菌細胞を開発及び使用するための方法及びシステムに関する。特定の実施形態では、接合性細菌細胞は、インビボで使用することができる(例えば、胃腸管環境または膀胱内で)。いくつかの実施形態において、接合性細菌細胞を用いて、(1)微生物叢の腸内毒素症を治療し、(2)有益な因子を発現するように微生物叢を改変し、(3)抗生物質耐性及び/または抗生物質耐性の広がりを抑制し、(4)特定の病原体を除去し、(5)細菌の病原性因子の発現を抑制することができる。
【0018】
本開示との関連で使用するところの「由来する」なる用語は、天然に存在する生物から得られた、または天然に存在する生物から改変された遺伝物質の使用を指す。
【0019】
接合送達システムの構成要素
本開示の接合送達システムは、細菌内に天然に存在するかまたは遺伝的に導入された遺伝的要素を含み、細菌がその遺伝子カーゴをレシピエント細菌細胞にインビボで伝達することを可能とする。接合送達システムは、伝達マシナリー(遺伝子カーゴを伝達するために必要な遺伝的要素を含む)と、遺伝子カーゴそれ自体の2つの主要な構成要素で構成されている。伝達マシナリーの構成要素は、1つ以上の染色体外ベクター上に配置されるか、及び/または細菌染色体に組み込まれてもよい。伝達マシナリーの構成要素は、互いに対して シス または トランスに位置することができる。遺伝子カーゴは、輸送モジュールをペイロードモジュールと機能的に関連付けて配置することによって、または異種の遺伝子カーゴを接合性細菌宿主細胞に導入することによって、接合性細菌宿主細胞に遺伝子操作により導入されてきた。ペイロードモジュールに機能的に関連付けられた輸送モジュールを含む遺伝子カーゴは、染色体外ベクター上に配置されても、または細菌染色体に組み込まれてもよい。輸送モジュールは、ペイロードモジュールと「機能的に関連付けられ」、それにより、可動化モジュール(例えば、輸送マシナリー)によってコードされたタンパク質が輸送モジュールを認識して輸送モジュールに作用する際にペイロードモジュールの伝達を可能にする。したがって、遺伝子カーゴ上で、ペイロードモジュールは可動化モジュールのタンパク質が輸送モジュールと結合する際にペイロードモジュールの伝達を可能にする位置で輸送モジュールに対してシスに配置される。
【0020】
一実施形態では、伝達マシナリー及び遺伝子カーゴの構成要素は、1つ以上の染色体外ベクター上のみに配置される。一実施形態では、伝達マシナリー及び遺伝子カーゴの構成要素は、単一の染色体外ベクター上に配置される。別の実施形態では、伝達マシナリー及び遺伝子カーゴの構成要素は、複数の染色体外ベクター上に配置される。例えば、伝達マシナリー及び遺伝子カーゴの構成要素は、
図23Aに示されるように、2つの異なる染色体ベクターとして編成することができる。
【0021】
別の実施形態では、伝達マシナリー及び遺伝子カーゴの構成要素は、細菌の染色体のみに配置することができる。
【0022】
いっそうさらなる実施形態では、伝達マシナリー及び遺伝子カーゴの構成要素は、1つ以上の染色体外ベクター上及び細菌の染色体に配置される/配置することができる。例えば、伝達マシナリーの構成要素を細菌の染色体のみに配置し、遺伝子カーゴの構成要素を染色体外ベクターのみに配置することができる。別の例では、伝達マシナリーの構成要素のいくつかを細菌の染色体及び1つ以上の染色体外ベクターに配置する一方で、遺伝子カーゴの構成要素を1つ以上の染色体外ベクターのみに配置することができる(例として、
図23Bに示される実施形態など)。さらに別の例では、伝達マシナリーの構成要素を細菌の染色体のみに配置する一方で、遺伝子カーゴの構成要素のいくつかを細菌の染色体に配置し、他のものを1つ以上の染色体外ベクターに配置することができる。さらに別の例では、伝達マシナリーの構成要素のいくつかを細菌染色体及び1つ以上の染色体外ベクターに配置する一方で、遺伝子カーゴの構成要素のいくつかを細菌染色体に配置し、他のものを1つ以上の染色体外ベクターに配置することができる。
【0023】
本明細書で使用するところの「ゲノム」なる用語は、コーディング配列及び非コーディング配列の両方を含む、DNAにコードされた生物の遺伝情報全体を指す。「モジュール」なる用語は、同じ機能に寄与する遺伝子群を指す。一実施形態では、同じモジュールからのすべての遺伝子は、同じDNA分子上で物理的に(シスに)連結されている。さらに別の実施形態では、遺伝子は、複数のDNA分子に含まれ得る。
【0024】
本明細書で使用するところの「染色体外ベクター」なる用語は、細菌ゲノムとは物理的に異なる遺伝的要素を指す。染色体外ベクターは通常、栄養複製モジュールが存在するため、細菌ゲノムとは独立して複製することができる。いくつかの実施形態において、染色体外ベクターは、例えば、環状プラスミドなどのプラスミドである。ベクターは、通常、ベクターがドナー細菌のゲノムとは独立して複製することが意図されている場合、環状プラスミドであってよく、またはベクターはドナー細菌のゲノムに組み込まれた線状DNA分子であってもよい。複数のベクターが存在する実施形態では、それらを同じまたは異なる形態で与えることができる。
【0025】
一実施形態では、伝達マシナリー及び遺伝子カーゴは、同じ核酸分子または異なる核酸分子の一部であってよい。核酸分子は環状としても、または線形化してもよい(細菌の染色体への組み込みを目的として)。
【0026】
伝達マシナリー及び遺伝子カーゴは、1つ以上のタンパク質、その変異体またはその断片をコードすることができる遺伝子を含むモジュールを含む。タンパク質は、モジュールによってコードされることが知られているタンパク質の変異体であってよい。変異体は、天然/既知のタンパク質のアミノ酸配列と比較した場合に少なくとも1つのアミノ酸の相違を含む。本明細書で使用するところの変異体とは、タンパク質の生物学的機能に悪影響を及ぼさないアミノ酸配列の変更を指す。置換、挿入または欠失は、変更後の配列が異種タンパク質に関連する生物学的機能を防止または破壊する場合、タンパク質に悪影響を与えると言われる。例えば、タンパク質の全体的な電荷、構造、または疎水性−親水性は、生物学的活性に悪影響を与えることなく変更することができる。したがって、アミノ酸配列は、例えば、異種タンパク質の生物学的活性に悪影響を与えることなく、ペプチドをより疎水性または親水性にするように変更することができる。タンパク質変異体は、本明細書に記載の異種タンパク質と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。当該技術分野では周知の「同一性(%)」なる用語は、配列同士を比較することによって決定される、2つ以上のタンパク質配列または2つ以上のヌクレオチド配列間の関係である。同一性のレベルは、既知のコンピュータプログラムを使用して従来通りに決定することができる。同一性は、これらに限定されるものではないが、以下の文献に記載されるものを含む既知の方法によって容易に計算することができる。すなわち、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.) Oxford University Press,NY(1988);Biocomputing: Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.) Academic Press,NY(1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.) Humana Press,NJ(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,ed.) Academic Press(1987);及びSequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.) Stockton Press,NY(1991)。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最良の一致を与えるように設計されている。同一性及び類似性を決定する方法は、公開されているコンピュータプログラムとしてコード化されている。配列アラインメント及び同一性(%)の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.,Madison,Wis)のMegalignプログラムを使用して行うことができる。本明細書に開示される配列のマルチプルアラインメントは、デフォルトのパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10)を用いて、Clustalアラインメント法(Higgins and Sharp(1989)CABIOS.5:151−153)を使用して行った。Clustalメソッドを使用したペアワイズアライメントのデフォルトパラメータは、KTUPLB 1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5、及びDIAGONALS SAVED=5であった。
【0027】
本明細書に記載される変異体タンパク質は、(i)1つ以上のアミノ酸残基が保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されているもので、かかる置換アミノ酸残基は遺伝子コードによってコードされたものであってもなくてもよい、または(ii)1つ以上のアミノ酸残基が置換基を含むもの、または(iii)成熟ポリペプチドが別の化合物、例えば、ポリペプチド(例えば、ポリエチレングリコール)の半減期を延長する化合物と融合されているもの、または(iv)ポリペプチドの精製用にさらなるアミノ酸が成熟ポリペプチドに融合されているものであってよい。タンパク質の「変異体」は、保存的変異体または対立遺伝子変異体であってよい。
【0028】
タンパク質は、モジュールの遺伝子の1つによってコードされるタンパク質の断片または変異タンパク質の断片であってよい。一実施形態では、フラグメントは、シグナルペプチド配列が除去された既知の/天然のタンパク質に相当する。いくつかの実施形態において、異種タンパク質の「フラグメント」は、タンパク質の少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900またはそれ以上の連続したアミノ酸を有する。フラグメントは、既知の/天然の異種タンパク質のアミノ酸配列と比較した場合、少なくとも1つ少ないアミノ酸残基を含み、それでも完全長の異種タンパク質の酵素活性を有する。一実施形態では、フラグメントは、シグナルペプチドを欠くタンパク質のアミノ酸配列に相当する。いくつかの実施形態において、異種タンパク質のフラグメントは、ペプチド合成によって対応する完全長の異種タンパク質を生成するために使用することができる。したがって、フラグメントは、完全長タンパク質を生成するための中間体として使用することができる。
【0029】
接合性細菌細胞
本明細書で使用するところの「接合性細菌(宿主)細胞」、「組換え細菌」または「ドナー細菌」なる用語は、細菌接合を介して水平遺伝子伝達が可能な細菌を指す。本開示との関連で使用される「細菌接合」、「接合」、「接合伝達」または「伝達」なる用語は、遺伝物質(遺伝カーゴと呼ばれる)がドナー細菌から標的細菌(レシピエント細菌細胞とも呼ばれる)へと2個の細菌細胞間に通路を形成する接合孔を介して送達される水平遺伝子伝達 の機構を指す。接合性細菌細胞は、いくつかの実施形態において、1つ以上の病原性因子を除去または不活性化するように、接合で使用される前に改変することができる。いくつかの実施形態において、接合性細菌細胞は、「接合性プロバイオティクス」または「COP」と呼ばれる場合もあるプロバイオティクス細菌であり得る。本明細書で使用するところの「プロバイオティクス」なる用語は、適当な量でかつ適当な経路を介して投与された場合に、有害な効果を有さず、またその宿主に有益な効果を与えることができる細菌を指す。
【0030】
したがって、本開示は、本開示の接合送達システムを有するように遺伝子操作された、プロバイオティクスであり得る細菌を提供する。したがって、本開示は、本開示の接合送達システムを細菌に導入することによって組換え細菌を得るためのプロセスも提供する。
【0031】
ヒトまたは動物の対象に対してプロバイオティクスと呼ばれ、本開示のCOPである可能性がある細菌属としては、これらに限定されるものではないが、バチルス属、ビフィドバクテリウム 属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、ラクトバチルス属 、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、及び ストレプトコッカス属が挙げられる。したがって、本開示は、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、及びストレプトコッカス属からのプロバイオティクス組換え細菌、ならびにバチルス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、またはストレプトコッカス属のプロバイオティクス細菌に接合性細菌ベクターまたはシステムを導入することによってかかるプロバイオティクス細菌を作製するためのプロセスを提供する。ヒト対象に対してプロバイオティクスとみなされる細菌種としては、これらに限定されるものではないが、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)(例、GBI−30または6086株)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)ラクチス亜種(subsp.lactis)(例、BB−12株)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)インファンティス亜種(subsp.infantis)、エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)(例、LAB18s株)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)(例、Nissle 1917株)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(例、NCFM株)、ラクトバチルス・ビフィダス(Lactobacillus bifidus)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)(例、Lai、LCIまたはNCC533株)、ラクトバチルス・パラカゼイLactobacillus paracasei (例、Stl 1またはNCC2461株)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)(例、299v株)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri (例、ATCC55730、SD2112、プロテクティス、DSM17938、プロデンティス、DSM17938、ATCC55730、ATCCPTA5289、RC−14株)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)(例、GG、GR−1)及びラクトコッカス・サーモフィルス(Lactococcus thermophiles)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc masenteroides) (例、B7株)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)(例、UL5株)、及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)が挙げられる。したがって、本開示は、ヒト対象に対してプロバイオティクスとみなされる細菌種からのプロバイオティクス組換え細菌、ならびにヒトにおいてプロバイオティクスとみなされる細菌株のプロバイオティクス細菌に接合性細菌ベクターまたはシステムを導入することによってかかるプロバイオティクス細菌を作製するためのプロセスを提供する。特定の実施形態では、プロバイオティクスは、エシェリキア属、例えば、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)種、例えば、E.coli(大腸菌)Nissle 1917 に由来する。本開示は、接合性細菌ベクターまたはシステムをプロバイオティクス種である大腸菌、例えば、E.coli Nissle 1917に導入することにより、かかるプロバイオティクス組換え細菌を作製するためのプロセスを提供する。
【0032】
伝達マシナリー
接合性細菌宿主細胞は、遺伝子カーゴ、IV型分泌システムモジュール、可動化モジュール、及びIV型接着線毛を含む交配ペア安定化モジュールを含み、IV型接着線毛は、アドヘシンを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子カーゴの一部ではないモジュールは、伝達マシナリーとして編成することができる。
【0033】
伝達マシナリーは、接合孔の形成と、その後の遺伝子カーゴのレシピエント細菌への物理的伝達を可能にする役割を有する。伝達マシナリーには、以下でさらに説明する異なるモジュールに分割された遺伝子及び調節エレメントが含まれる。これらのモジュール内に存在する遺伝子は、場合により、1つ以上のオペロンの形で編成することができる。
【0034】
本明細書で使用するところの「遺伝子」なる用語は、タンパク質または非コーディングRNA(例えば、tracrRNA、crRNA、gRNA、rRNA、tRNA、アンチセンスRNA)の発現に必要な配列情報を含む核酸分子を指す。遺伝子がタンパク質をコードする場合、遺伝子は、プロモーター及び構造遺伝子のオープンリーディングフレーム配列(ORF)、ならびにタンパク質の発現に関与する他の配列を含む。遺伝子が非コーディングRNAをコードする場合、遺伝子は、プロモーター、及び非翻訳RNAをコードする核酸を含む。上記に示したように、遺伝子は、1つ以上のオペロンの形で発現され得る。本明細書で使用するところの「オペロン」なる用語は、当該技術分野では周知であるように、単一のプロモーターの制御下にある遺伝子のクラスターを含む機能単位である。
【0035】
調節エレメントなる用語は、プロモーター、アクチベーター/リプレッサー結合部位、ターミネーター、エンハンサーなどを指す。一実施形態では、複数のプロモーターが、本開示の細菌接合送達システムに含まれる。一実施形態では、1個のみのプロモーターが、本開示の接合送達システムに含まれる。
【0036】
プロモーターが存在する場合、構成的または誘導性であり得る。「構成的」及び「誘導性」なる用語は、動的な発現の状態を指す。構成的発現は経時的に安定しているのに対して、誘導性発現は遺伝子の発現レベルの有意な変化を可能とする。誘導性発現は、転写活性化因子による転写の活性化、転写抑制因子による転写の抑制、または一般的にリボスイッチと呼ばれる機能性の5 ’非翻訳領域による翻訳の制御などのさまざまな形で実現することができる。
【0037】
一実施形態では、伝達マシナリーは、IV型分泌系(T4SS)モジュール、交配ペア安定化モジュール、及び可動化モジュールを含む。いくつかの実施形態では、伝達マシナリーは、任意選択的に、輸送モジュール、調節モジュール、栄養複製モジュール、維持モジュール、選択モジュール、及び/または排斥モジュールを含むことができる。
【0038】
T4SSモジュールには、IV型分泌系の形成に関与する遺伝子及び調節エレメントが含まれる。T4SSは、ドナー細菌とレシピエント細菌との間に通路を形成する接合孔を確立することができるタンパク質アセンブリである。この接合孔を通じて遺伝子カーゴがドナー細菌からレシピエント細菌に伝達される。いくつかの実施形態において、T4SSモジュール(接合性細菌細胞に対して異種であり得る)は、接合性細菌細胞のゲノムに組み込まれる。別の実施形態において、T4SSモジュールは、接合性細菌細胞に対して内因性または異種であり得る1つ以上の染色体外ベクター(プラスミドなど)内に位置する。T4SSモジュール内に存在する遺伝子としては、これらに限定されるものではないが、virB1(TP114−012:traB)、virB2(TP114−013:traC)、virB3(TP114−014:traD)、virB4(TP114−015:traE)、virB5(TP114−004:trbJ)、virB6(TP114−003:traA)、virB7(TP114−011:ygeA)、virB8(TP114−017:traG)、virB9(TP114−018:traH)、virB10(TP114−019:traI)、virB11(TP114−020:traJ)及び/またはvirD4(TP114−021:traK)のうちの1つ以上が挙げられる。したがって、T4SSモジュールは、T4SSの1つ以上のタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を含むことができる。さらに、1つ以上のT4SS接合孔、ならびに1つ以上の異なるタイプのT4SSが、T4SSモジュールによってコードされ、ドナー細菌によって発現され得る。一実施形態では、T4SSをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドの以下のファミリー、すなわちMPF
T、MPF
F、MPF
I、MPF
FATA、MPF
B、MPF
FA、MPF
G、及び/またはMPF
Cのうちの1つ以上に由来することができる。別の実施形態では、T4SSをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのMPF
Tファミリーの1つに由来することができる。例えば、T4SSをコードする遺伝子は、細菌プラスミドTP114に由来するものであってよい。別の例では、T4SSをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドR6Kに由来するものであってよい。さらに別の実施形態では、T4SSをコードする遺伝子は、接合プラスミドのMPF
Fファミリーの1つに由来するものであってよい。さらに別の実施形態では、T4SSをコードする遺伝子は、細菌ベクターF(またはpOX38)に由来するものであってよい。
【0039】
伝達マシナリーには、交配ペア安定化モジュールも含まれる。交配ペア安定化モジュールは、ドナー細菌と標的細菌との物理的相互作用の安定化に関与する遺伝子及び調節エレメントを含む。以下の実施例IIに示されるように、ドナー細菌と標的細菌との間の相互作用を安定化させることは、T4SS接合孔の確立に必要な物理的近接性の維持に有利であり、これは、不安定な環境(例えば、インビボまたは液体)中の遺伝子カーゴのその後の伝達にとって重要である。ドナー細菌と標的細菌との間の相互作用の安定化は、揺動が接合細菌細胞から標的細菌への伝達に影響を与え得るインビボ (例えば、胃腸環境または膀胱)において特に重要である。交配ペア安定化モジュール(接合性細菌細胞と異種であり得る)は、接合性細菌細胞のゲノムに組み込まれるか、または1つ以上の細菌ベクター上に配置され得る。
【0040】
交配ペア安定化モジュールには、IV型接着線毛の形成に関与する遺伝子及び調節エレメントが含まれる。交配ペア安定化モジュール(接合性細菌細胞と異種であり得る)は、接合性細菌細胞のゲノムに組み込まれるか、または1つ以上の細菌ベクター上に配置することができる。本明細書で使用するところのIV型接着線毛とは、細菌細胞から突出し、細菌細胞内に引っ込む細長いフィラメントを形成するタンパク質アセンブリである。ドナー細菌の膜上のIV型接着線毛の存在は、標的細菌を物理的に「つかみ」「引っ張る」ことによって標的細菌の「捕捉」を容易にするものと考えられている。したがって、ドナー細菌の膜上のIV型接着線毛の存在は、ドナー細菌と標的細菌との相互作用を安定化させる。IV型接着線毛遺伝子としては、これらに限定されるものではないが、pilL(TP114−009)、pilN(TP114−022)、pilO(TP114−023)、pilP(TP114−024)、pilQ(TP114−025)、pilR(TP114−026)、pilS(TP114−027)、pilT(TP114−028)、traN、traB(TP114−012)、pilU(TP114−029)及び/またはpilV(TP114−030)のうちの1つ以上のものが挙げられる。したがって、交配ペア安定化モジュールは、IV型接着線毛の1つ以上のタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を含むことができる。さらに、1つ以上のIV型接着線毛、ならびに1つ以上の異なるタイプのIV型接着線毛は、交配ペア安定化モジュールによってコードされ、ドナー細菌によって発現させることができる。一実施形態では、IV型接着線毛をコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドの以下のファミリー、すなわち、IncA、IncB/O (Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2、IncI1、IncI2、IncJ、IncK、IncL/M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、Inc18のうちの1つに由来し得る。別の実施形態において、IV型接着線毛をコードする遺伝子は、I複合体:IncI1、IncI2、IncIу、IncB/O(Inc10)、IncK及び/またはIncZに属することができる細菌接合プラスミドの不和合性ファミリーのうちの1つに由来し得る別の実施形態では、IV型接着線毛をコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのIncI2ファミリーの1つに由来し得る。例えば、IV型接着線毛をコードする遺伝子は、細菌ベクターTP114に由来し得る。
【0041】
IV型接着線毛はアドヘシンを含む。アドヘシンは、ドナー細菌膜の表面に提示される場合、標的細菌の外膜上に存在するさまざまな分子(例えば、タンパク質、糖、脂質)と相互作用することができるタンパク質である。例えば、細菌接合プラスミドのIncI2ファミリーのPilVアドヘシンは、グラム陰性菌の外膜に一般的に見られる分子であるリポ多糖(LPS)などの受容体と相互作用する。したがって、ドナー細菌がその外膜にPilVアドヘシンを提示する場合、PilVはグラム陰性標的細菌のLPSに結合して2つの細胞の相互作用を安定化させる。アドヘシンとしては、これらに限定されるものではないが、TP114由来のpilV(TP114−030)、R64由来のpilV、pOX38由来のTRANのうちの1つ以上が挙げられる。いくつかの実施形態において、1つ以上のアドヘシン、ならびに1つ以上の異なるタイプのアドヘシンは、交配ペア安定化モジュールによってコードされ、ドナー細菌によって発現させることができる。一実施形態では、アドヘシンは、アクセサリー線毛タンパク質アセンブリ(例えば、IV型接着線毛など)の一部として、及び/またはT4SS接合線毛タンパク質アセンブリの一部として、及び/または/またはアドヘシンが細菌の表面に表示されることを可能にする分子複合体の一部としてのいずれかによって、ドナー細菌の表面に提示され得る。別の実施形態において、アドヘシンをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドの以下のファミリー、すなわち、IncA、IncB/O (Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2、IncI1、IncI2、IncJ、IncK、IncL/M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、Inc18のうちの1つに由来し得る。別の実施形態では、IV型接着線毛をコードする遺伝子は、I複合体に属することができる細菌接合プラスミドの不和合性ファミリー:IncI1、IncI2、IncIу、IncB/O (Inc10)、IncK及び/またはIncZのうちの1つに由来し得る。さらに別の実施形態では、アドヘシンをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのIncI2ファミリーの1つに由来することができる。例えば、アドヘシンをコードする遺伝子は、細菌ベクターTP114に由来することができる。さらに別の実施形態では、アドヘシンをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのIncFIIファミリーの1つに由来することができる。例えば、アドヘシンをコードする遺伝子は、細菌ベクターpOX38に由来することができる。さらに別の実施形態では、アドヘシンをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのIncXファミリーの1つに由来することができる。例えば、アドヘシンをコードする遺伝子は、細菌ベクターpR6Kに由来することができる。
【0042】
アドヘシン遺伝子は、必要に応じて、シャフロンの存在及びシャフラーゼの活性によって再編成することができる。シャフロンは、アドヘシン遺伝子の3 ’末端に位置し得る複数のDNA逆位セグメントのクラスターである。リコンビナーゼ活性を有する酵素であるシャフラーゼの作用下で、シャフロンの異なるセグメントの順序をランダムに再編成することができる。この再編成の後、アドヘシン遺伝子と整列する1個のセグメントがアドヘシン遺伝子の終わりになる。したがって、アドヘシン遺伝子がシャフロンに関連付けられている場合、遺伝子の遠位部分は可変であり、シャフロンに含まれる異なるDNA逆位セグメントのいずれかとなり得る。その結果、シャフロンをともなうアドヘシン遺伝子が転写及び翻訳される場合、アドヘシンのC末端も可変であり、アドヘシン遺伝子を終了するシャフロンの逆位セグメントに対応する。各シャフロンのセグメントは、アドヘシンタンパク質に対する特異的な結合親和性を与える。例えば、接合プラスミドのIncI2ファミリーのpilVアドヘシン遺伝子に隣接するシャフロンの場合、各シャフロンのセグメントは、特定の受容体に対するPilVアドヘシンの結合親和性を付与する。したがって、シャフロンセグメントがアドヘシン遺伝子とアラインされる場合、シャフロンセグメントは、対応するアドヘシンタンパク質の結合親和性を調節する。したがって、ドナー細菌がアドヘシンを提示する場合、シャフロンを用いてドナー細菌と標的細菌との間の相互作用の安定性に影響を与えることができる。シャフロンは、これらに限定されるものではないが、以下のDNA配列、すなわち、シャフラーゼ認識部位5’−GTGCCAATCCGGTNNNTGG−3’(配列番号140、略語 srs)を含み、これは再編成される代替ORF(altORF)である。したがって、交配ペア安定化モジュール内に存在する1つ以上のアドヘシンタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子は、シャフロンを有することができる。一実施形態では、シャフロンのDNA配列は、細菌接合プラスミドの以下のファミリー、すなわち、IncA、IncB/O (Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2、IncI1、IncI2、IncJ、IncK、IncL/M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、Inc18のうちの1つに由来し得る。別の実施形態において、シャフロンのDNA配列は、I複合体に属する細菌接合プラスミドの不和合性ファミリー:IncI1、IncI2、IncIу、IncB / O(Inc10)、IncK及び/またはIncZのうちの1つに由来し得る。別の実施形態では、シャフロンのDNA配列は、細菌接合プラスミドのIncIファミリーの1つに由来することができる。さらに別の実施形態では、シャフロンのDNA配列は、細菌接合プラスミドのIncI2ファミリーの1つに由来することができる。さらに別の実施形態では、シャフロンのDNA配列は、細菌ベクターTP114に由来することができる。
【0043】
アドヘシンをコードする遺伝子がシャフロンを含む場合、交配ペア安定化モジュールは、シャフラーゼをコードする1つ以上の遺伝子を含む。シャフラーゼは、シャフロンのDNA逆位セグメントを再編成することが可能なリコンビナーゼであり、上記のように、アドヘシンタンパク質の結合活性及び特異性に影響し得る。シャフラーゼには、これらに限定されるものではないが、1つ以上のrci (TP114−031)が含まれる。したがって、交配ペア安定化モジュールは、1つ以上のシャフラーゼタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を含むことができる。さらに、1つ以上のシャフラーゼ、ならびに1つ以上の異なるタイプのシャフラーゼは、交配ペア安定化モジュールによってコードされ、ドナー細菌によって発現され得る。一実施形態では、シャフラーゼをコードする遺伝子は、以下の細菌接合プラスミドのファミリー、すなわちIncA、IncB/O (Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2、IncI1、IncI2、IncJ、IncK、IncL/M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、Inc18のうちの1つに由来し得る。別の実施形態において、シャフロン及び/またはシャフラーゼは、I複合体に属する細菌接合プラスミドの不和合性ファミリー:IncI1、IncI2、IncIу、IncB / O(Inc10)、IncK及び/またはIncZのうちの1つに由来し得る。別の実施形態では、シャフラーゼをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのIncIファミリーの1つに由来することができる。さらに別の実施形態では、シャフラーゼをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのIncI2ファミリーの1つに由来することができる。例えば、シャフラーゼをコードする遺伝子は、細菌ベクターTP114に由来することができる。
【0044】
可動化モジュールは、リラクソソーム、例えば、ペイロードモジュールに機能的に関連付けられ、その後、接合孔を通じてレシピエント細菌に遺伝子カーゴを伝達する輸送モジュール(伝達起点(oriT))を認識することが可能なタンパク質複合体をコードする。可動化モジュール(接合性細菌細胞と異種であってもよい)は、接合性細菌細胞の染色体に組み込まれるか、または1つ以上の細菌ベクター上に配置され得る。可動化モジュールには、これらに限定されるものではないが、virC1 (TP114−68: parA)、(TP114−41: nikB)、及び/または(TP114−42: nikA)のうちの1つ以上が含まれる。可動化モジュールは、以下の接合ファミリー、すなわち、MOB
F、MOB
P、MOB
V、MOB
H、MOB
C及び/またはMOB
Qのうちの少なくとも1つに由来することができる。別の実施形態では、可動化マシナリーをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのMOB
Pファミリーの1つに由来することができる。例えば、可動化マシナリーをコードする遺伝子は、細菌ベクターTP114に由来することができる。さらに別の例では、可動化マシナリーをコードする遺伝子は、細菌ベクターR6Kに由来することができる。別の実施形態では、可動化マシナリーをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのMOB
Fファミリーの1つに由来することができる。例えば、可動化マシナリーをコードする遺伝子は、細菌ベクターpOX38に由来することができる。
【0045】
輸送モジュールは、遺伝子カーゴの構成要素であり、遺伝子カーゴは、遺伝子カーゴ及び伝達マシナリーのエレメントがシス編成にある場合には伝達マシナリーにも存在しうる。トランスポートモジュールには、遺伝子カーゴのレシピエント細菌への伝達起点(oriT)として機能する1つ以上の機能的DNAエレメントが含まれる。輸送モジュールは、接合性細菌細胞に対して異種であり得る。輸送モジュールは シス作用性であり、したがって、遺伝子カーゴを構成する遺伝子構成要素(染色体または染色体外ベクター)にみられる。上記に示したように、輸送モジュールは可動化モジュールの作用を受ける。本開示との関連で使用される場合、「可動化」なる用語は、接合プラスミドが、ドナー細菌からレシピエント細菌への、伝達起点(oriT)を含むDNA分子の伝達を行うプロセスを指す。「伝達起点」(略語oriT)なる用語は、DNA分子内に存在する場合、対応する可動化タンパク質によって認識され、その可動化を可能とするDNA配列を指す。
【0046】
調節モジュールは、輸送マシナリー内に存在する場合、遺伝子の発現を調節することができるか、または遺伝子の発現を調節するために用いられ得る1つ以上のタンパク質または非コーディングRNAをコードする1つ以上の遺伝子及び調節エレメント(例えば、アクチベーター、リプレッサー、リボスイッチ、CRISPR−Cas9、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALE、taRNA)を含むことができる。調節モジュール(接合性細菌細胞に対して異種であり得る)は、接合性細菌細胞のゲノムに組み込まれるか、または1つ以上の細菌ベクター上に位置することができる。一実施形態では、調節遺伝子及び調節エレメントは、伝達マシナリーまたは接合送達システムのモジュールとは異なる核酸分子上にあってもよい。別の実施形態において、調節遺伝子及び調節エレメントは、これらに限定されるものではないが、他のモジュールと同じプラスミド、別のプラスミド、細菌染色体、ファージ、真核生物染色体、古細菌などの異なる供給源から単離することができる。さらに別の実施形態において、調節遺伝子及び調節エレメントは、天然に存在する遺伝子から操作または発展されたものであってよい。調節モジュールによってコードされる調節タンパク質または非コーディングRNAを使用することで、送達システムをホストする細菌の染色体上に位置する遺伝子を誘導または抑制するだけでなく、伝達マシナリーまたは遺伝子カーゴのモジュールのいずれかに位置する遺伝子を誘導または抑制することができる。一実施形態では、調節モジュールは、これらに限定されるものではないが、yajA(TP114−058)、yafA(TP114−069)、yaeC(TP114−070)、yheC(TP114−085),fur、fnr、korA、acaCD、acr1、acr2、stbA、twrA、ResP、kfrA、ardK、Cas9、crRNA、ZFN、TALEN、taRNA、トーホールドスイッチ、araC、tetR、lacI及び/またはlacIqなどの1つ以上の調節タンパク質または非コーディングRNAをコードする1つ以上の遺伝子を含む。
【0047】
伝達マシナリーが染色体外ベクターに(全体的または部分的に)位置している場合、染色体外ベクターには栄養複製モジュールが含まれる。伝達マシナリーの栄養複製モジュールは、遺伝子カーゴの栄養複製モジュールと同じでも異なっていてもよい。細菌宿主のゲノムと独立して複製する1つ以上のベクター上に伝達マシナリーが位置している場合には、栄養複製モジュールが必要である。その場合、伝達マシナリーを含む1つ以上の染色体外ベクターは、細菌宿主内で複製及び維持されるために栄養複製モジュールを必要とする。栄養複製モジュールは、栄養複製の起点(oriV)として機能する1つ以上の機能的DNA要素を含む。oriVは、遺伝子エレメント上に存在するDNA配列であり、維持モジュールによってコードされた複製マシナリーによって認識されると、細菌宿主内でのプラスミドの複製を可能とする。多目的な用途のため、また、広範囲の細菌宿主におけるベクターの維持のためには、栄養複製モジュールのoriV は、広い宿主範囲のoriV (すなわち、広範囲の細菌宿主種によって認識されるoriV)とすることができる。ベクターの維持を限られた範囲の細菌宿主に制限する必要があるいくつかの実施形態では、制限された、または狭い宿主範囲のoriV(すなわち、限られた範囲の細菌宿主種によって認識されるoriV)を使用することが好ましい場合がある。
【0048】
伝達マシナリーが染色体外ベクター上に(全体的または部分的に)位置する場合、接合性細菌宿主細胞は、維持モジュール(いくつかの実施形態では、伝達マシナリーの一部と見なすことができる)を含む。維持モジュールは、栄養複製モジュールのoriVを認識することができるタンパク質(複製マシナリーと呼ばれる)を含み、栄養複製モジュールを含む染色体外ベクター(例えば、プラスミド)の複製を可能とする。維持モジュールは、栄養複製モジュールのoriVを認識できるタンパク質を含み、栄養複製モジュールを含むプラスミドの複製を可能とする。維持モジュールは、接合細菌細胞に対して異種であってもよい。ベクターの維持をドナー細菌に限定する必要がある場合、維持モジュールをドナー細菌染色体に配置する(例えば、組み込む)ことが好ましい場合がある。あるいは、維持モジュールは、1つ以上の染色体外ベクター上に配置してもよい。維持モジュールはまた、適当なDNA分配に関与する1つ以上の遺伝子及び調節エレメントを含むことができる。分配に関与する遺伝子には、プラスミドコピーの娘細胞への均等な分離に関与するタンパク質、毒素及び抗毒素安定化システム、及び/またはプラスミドの複製において複製マシナリーを助けるヘリカーゼ及びDNAプライマーゼが含まれる。維持モジュールのタンパク質としては、これらに限定されるものではないが、repA(TP114−083:repA)、TP114−082、parA(TP114−068:parA)、parB、DNAprimase(TP114−006:ygiA)としてしばしばアノテーション付けされるタンパク質、毒素(例えば、pVCR94のvcrx028、TP114のTP114−051:ycfA)、抗毒素(例えば、pVCR94のvcrx027、TP114のTP114−050:ycfB)、DNAトポイソメラーゼ(TP114−035:ydiA及びTP114−036:ydgA)が挙げられる。したがって、維持モジュールは、複製マシナリーの1つ以上のタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を含み、また、DNA分配タンパク質をコードする0個以上の遺伝子及び調節エレメントも含むことができる。さらに、1つ以上の複製マシナリー、ならびに1つ以上の異なるタイプの複製マシナリーが、維持モジュール内に存在してもよい。一実施形態では、維持モジュール及び/または栄養複製モジュールは、以下の細菌ベクターのファミリー、すなわち、IncA、IncB/O(Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2 、IncI1、IncI2、IncJ、IncK、IncL / M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101 、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、及び/またはInc18の1つに由来することができる。一実施形態では、維持モジュール及び/または栄養複製モジュールは、細菌ベクターのIncI2ファミリーの1つに由来することができる。例えば、維持モジュール及び/または栄養複製モジュールは、細菌ベクターTP114に由来することができる。
【0049】
伝達マシナリーはまた、1つ以上の選択モジュールを含むことができる。選択モジュールは、伝達マシナリーの1つ以上のモジュールを有する細菌を同定するための選択可能な形質を付与する1つ以上の遺伝子を含む。選択モジュールは、1つ以上の細菌ベクター及び/または伝達マシナリーの組み込まれたモジュールと機能的に接続されている。伝達マシナリーの選択モジュールは、遺伝子カーゴの選択モジュールと同じでも異なっていてもよい。選択可能な形質は、抗生物質耐性遺伝子、蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質を含む)をコードする遺伝子、栄養要求性選択マーカー、β−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子(例えば、細菌のlacZ遺伝子)、ルシフェラーゼをコードする遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(例えば、細菌のcat遺伝子)、β−グルクロニダーゼをコードする遺伝子とすることができる。
【0050】
排斥モジュールは、伝達マシナリーに存在する場合、排斥タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を含む。排斥モジュール(接合性細菌細胞に対して内因性または異種であってよい)は、細菌の染色体または1つ以上の染色体外ベクターに位置することができる。排斥タンパク質は、細菌を接合プラスミドに対して耐性とすることにより、遺伝物質の水平伝播を制限する。例えば、特定の細菌接合プラスミド(例えば、R64)に対する排斥タンパク質(例えば、excAB)を発現する細菌は、このプラスミドを接合を受け取ることができなくなる。この現象を利用して、接合性細菌細胞間の無効な接合性伝達を回避することができる。例えば、接合性細菌細胞細菌が、遺伝子カーゴを伝播させるために用いられる、それら自身の伝達マシナリーに対する排斥タンパク質を発現するように設計されている場合、接合性細菌細胞細菌間の伝達はもはや起こり得ない(または著しく低い速度で起きる)。排斥タンパク質には、TP114からのTP114−05、プラスミドR64からのexcA及びexcB 、RP4 からのtrbK、プラスミドFからのtraS及びtraT(pOX38)のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。したがって、排斥モジュールは、1つ以上の排斥タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を含むことができる。一実施形態では、排斥タンパク質をコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドの以下のファミリー、すなわち、IncA、IncB / O(Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2、IncI1、IncI2 、IncJ、IncK、IncL / M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101、IncP−2 、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、Inc18の1つに由来することができる。別の実施形態において、排斥タンパク質をコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのIncI2ファミリーの1つに由来することができる。例えば、排斥タンパク質をコードする遺伝子は、細菌ベクターTP114に由来することができる。
【0051】
遺伝子カーゴ
遺伝子カーゴは、接合細菌細胞ドナー細菌によって、伝達マシナリーを介して標的細菌に送達されることを意図している。遺伝子カーゴには、以下でさらに説明する異なるモジュールに分割された遺伝子及び調節エレメントが含まれる。これらのモジュール内に存在する遺伝子は、場合により、1つ以上のオペロンの形で編成することができる。
【0052】
遺伝子カーゴは、輸送モジュールに機能的に関連付けられたペイロードモジュールを含む。輸送モジュールは、ペイロードモジュールと「機能的に関連付けられ」、これにより、可動化モジュールによってコード化されたタンパク質が輸送モジュールに作用する際にペイロードモジュールの伝達が可能になる。輸送モジュールをペイロードモジュールと機能的に関連付けるために、ペイロードモジュールまたは輸送モジュールの少なくとも一方が接合性細菌宿主細胞に遺伝的に導入されていることから、遺伝子カーゴは接合性細菌宿主細胞に対して異種である。遺伝子カーゴは、場合により、選択モジュール、栄養複製モジュール、及び/または可動化モジュールを含んでもよい。
【0053】
ペイロードモジュールは、これらに限定されるものではないが、遺伝子、調節エレメント、非コーディングRNA(例えば、siRNA、shRNA、及びmiRNAなど)、トランスポゾン、ゲノム(例えば、ファージ、または細菌)を含むことができる。特定の実施形態では、ペイロードモジュールは、レシピエント細胞によって認識され、作用され得るガイドRNA(gRNA)及び/またはCRISPRアレイ(crRNA及びtracrRNA)をコードする。ペイロードモジュールは、1つ以上のタンパク質、及び/または1つ以上の非コーディング遺伝子エレメント(例えば、RNAなど)をコードすることができる。ペイロードモジュールはまた、1つ以上の遺伝子、及び/または調節エレメント、及び/または非コーディングRNA、及び/またはトランスポゾン、及び/またはゲノムの組み合わせであってもよい。
【0054】
特定の実施形態において、ペイロードモジュールは、レシピエント細菌内で発現されることを意図した1つ以上の異種タンパク質または機能的RNAをコードする1つ以上の異種遺伝子を含む。本開示との関連で、レシピエント細菌内での異種遺伝子(複数可)の発現は、レシピエント細菌にとって有益、中性、または有害であり得る。異種遺伝子は、その発現がレシピエント細菌に生物学的利点をもたらす場合、レシピエント細菌内で有益に発現されたとみなされる。有益に発現される異種遺伝子としては、これらに限定されるものではないが、lacZ、lacY、lacA、galE、galT、galK、gadD、gadT、gadP、scrA、scrB、merA、AN−PEPが挙げられる。異種遺伝子は、その発現が生物学的利点をもたらさず、レシピエント細菌に生物学的欠点ももたらさない場合、レシピエント細菌内で中性に発現されたとみなされる。中性に発現される異種遺伝子としては、これらに限定されるものではないが、レシピエント細菌を有する対象に対して治療効果を示すタンパク質(例えば、真核生物成長因子、ホルモン(例えば、グルカゴン様ペプチド−1すなわちGLP−1、インシュリンなど)、インターロイキンを含むサイトカイン(例えば、インターロイキン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17)、及び/またはケモカイン(例えば、CCケモカイン、CXCケモカイン、CケモカインまたはCX3Cケモカイン)などの治療タンパク質)が挙げられる。異種遺伝子は、その発現がレシピエント細菌に生物学的不利益をもたらす場合(例えば、細胞増殖の低下、抗生物質に対する感受性の増加、及び/または致死率の増加)、レシピエント細菌内で有害に発現されたとみなされる。有害に発現される異種遺伝子としては、これらに限定されるものではないが、ヌクレアーゼ(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、及びCRISPR(クラスター形成する、規則的に間隔を空けた短いパリンドロームリピート)関連DNA結合(Cas)タンパク質及びその類似体、エンドヌクレアーゼ制限酵素(例えば、ApaLI、BamHI、BglII、DpnI、EcoR1、EcoRV、HindIII、PvuI、PvuII、XhoI)、及びレシピエント細菌に対して毒性を有する毒素またはタンパク質(例えば、リシン、Vcrx028、MazF、HicB、KikA、CcdB、マイクロシン)が挙げられる。
【0055】
特定の実施形態では、ペイロードモジュールによってコードされる異種タンパク質は、Casタンパク質またはCasタンパク質類似体である。本開示との関連で使用される場合、Casタンパク質または関連する類似体とは、CRISPR RNA(crRNA)がDNA分子上に局在する特定の位置でDNA分子の二本鎖切断(平滑または付着末端)を媒介することができるエンドヌクレアーゼである。Casタンパク質は、I型、II型、またはIII型CRISPR RNA誘導エンドヌクレアーゼであってよい。本開示との関連において、「Casタンパク質類似体」とは、CRISPR RNA(crRNA)がDNA分子上に局在する特定の位置でDNA分子の二本鎖切断(平滑または付着末端)を媒介することができる、またはCRISPR RNA(crRNA)がDNA分子上に局在する特定の位置でDNAまたはRNA分子の一本鎖切断を媒介することができる、Casタンパク質の変異体、またはCasタンパク質の断片のことを指す。
【0056】
Casタンパク質変異体は、天然のCasタンパク質のアミノ酸配列と比較した場合に少なくとも1個のアミノ酸の相違を含む。本明細書で使用するところの変異体とは、Casタンパク質類似体の生物学的機能に悪影響を及ぼさないアミノ酸配列の変更を指す。置換、挿入または欠失は、変更された配列がCasタンパク質に関連する生物学的機能を防止または破壊する場合にタンパク質に悪影響を与えると言われる。例えば、タンパク質の全体的な電荷、構造、または疎水性−親水性は、生物学的活性に悪影響を与えることなく変更することができる。したがって、アミノ酸配列を、例えば、Casタンパク質の生物学的活性に悪影響を与えることなく、ペプチドをより疎水性または親水性にするために変更することができる。Casタンパク質変異体は、本明細書に記載されるCasタンパク質と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一率を有する。当該技術分野では周知の「同一性(%)」なる用語は、配列同士を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係性である。同一性のレベルは、既知のコンピュータプログラムを使用して従来通りに決定することができる。同一性は、これらに限定されるものではないが、Computational Molecular Biology (Lesk,A.M.,ed.) Oxford University Press,NY(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects (Smith,D.W.,ed.) Academic Press,NY (1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part I (Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.)Humana Press,NJ (1994);Sequence Analysis in Molecular Biology (von Heinje,G.,ed.) Academic Press (1987);及び、Sequence Analysis Primer (Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.)Stockton Press,NY(1991)に記載されるものを含む周知の方法によって容易に計算することができる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最良の一致を与えるように設計されている。同一性及び類似性を決定する方法は、公開されているコンピュータプログラムにコード化されている。配列アラインメント及び同一性(%)の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.,Madison,Wis)のMegalignプログラムを使用して行うことができる。本明細書に開示される配列の多重アラインメントは、Clustal method of alignment(Higgins and Sharp (1989) CABIOS.5:151−153)を、デフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10, GAP LENGTH PENALTY=10)で使用して行った。Clustal法を使用したペアワイズアライメントのデフォルトパラメータは、KTUPLB 1,GAP PENALTY=3,WINDOW=5,及びDIAGONALS SAVED=5であった。
【0057】
本明細書に記載される変異体Casタンパク質は、(i)1つ以上のアミノ酸残基が保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されたものであり、かかる置換アミノ酸残基は遺伝子コードによってコードされたものでもそうでなくともよい、(ii)1つ以上のアミノ酸残基が置換基を有するもの、または(iii)成熟タンパク質が別の化合物、例えば、タンパク質の半減期を延長する化合物と融合されているもの、または(iv)ポリペプチドの精製のためにさらなるアミノ酸が成熟タンパク質に融合されているものであってよい。Casタンパク質の「変異体」は、保存的変異体または対立遺伝子変異体であってよい。
【0058】
Casタンパク質類似体は、既知/天然のCasタンパク質のフラグメントであってもよい。Casタンパク質の「フラグメント」(ベーキング酵素「フラグメント」を含む)は、Casタンパク質の少なくとも100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、またはそれ以上の連続したアミノ酸を有する。フラグメントは、既知の/天然のCasタンパク質のアミノ酸配列と比較した場合、少なくとも1個少ないアミノ酸残基を含み、なお完全長Casタンパク質のエンドヌクレアーゼ活性を有する。いくつかの実施形態において、Casタンパク質のフラグメントは、ペプチド合成によって対応する完全長のCasタンパク質を生成するために使用することができる。したがって、フラグメントは、完全長タンパク質を生成するための中間体として使用することができる。いくつかの実施形態において、Casタンパク質フラグメントは、本明細書に記載のCasタンパク質と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有することができる。
【0059】
一実施形態では、Casタンパク質はCas9タンパク質であり、切断部位での平滑末端の形成を可能とする。一実施形態では、Cas9タンパク質は、例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)(化膿レンサ球菌)に由来することができる。Cas9タンパク質は、CRISPR RNA(crRNA)部分及びトランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)部分と共働して作用し、二本鎖DNAを特異的に切断する。crRNA部分は、二本鎖DNA(例えば、レシピエント細菌に存在する)の核酸配列に特異的であってよく、そのような核酸配列及びCas9タンパク質の存在下で核酸配列と二重鎖を形成して二重鎖領域にCas9のエンドヌクレアーゼ活性を特異的に誘導する。tracrRNAはCas9タンパク質と特異的に結合してcrRNAとの密接な会合を可能とする。Cas9タンパク質が異種タンパク質である実施形態では、ペイロードモジュールはまた、crRNA及び/またはtracrRNAをコードする遺伝子も含むことができる。Cas9タンパク質が異種タンパク質である別の実施形態では、ペイロードモジュール核酸分子は、ガイドRNA(gRNA)をコードする遺伝子を含むことができる。gRNAは、同じ遺伝子転写産物上に、CRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)の両方を含む。
【0060】
別の実施形態では、Casタンパク質はCpf1タンパク質であり、切断部位に粘着末端の形成を可能とする。一実施形態では、Cpf1タンパク質は、例えば、フランシセラ・ ノビシダ(Francissella novicida)に由来することができる。Cas9タンパク質と異なり、Cpf1タンパク質は、二本鎖DNAの特異的切断を媒介するうえでcrRNAの存在のみを必要とする。したがって、Cpf1タンパク質がCasタンパク質として使用される実施形態では、ペイロードモジュールは、CRISPR RNA(crRNA)を含み、トランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)を含む必要はない。
【0061】
本開示は、ペイロードモジュール上に見出されるcrRNAがCasタンパク質によって認識可能であると規定している。これは、crRNAが、I型またはII型Casタンパク質のエンドヌクレアーゼを二本鎖DNA分子の特定の位置に誘導するか、またはIII型Casタンパク質のエンドヌクレアーゼをRNA分子の特定の位置に誘導することができることを意味する。かかる実施形態では、crRNAがレシピエント細菌ゲノム内の1つ以上の特定の位置(例えば、1つ以上の標的位置)で、またはレシピエント細菌のRNA分子上の1つ以上の特定の位置で二重鎖を形成することが必要であるため、crRNAは、レシピエント細菌のゲノム上の、またはレシピエント細菌内に存在するRNA分子上の1つ以上の標的位置に実質的に相補的でなければならない。本明細書で使用するところの「ゲノム」なる用語には、細菌の染色体及びプラスミドDNAが含まれる。やはり本明細書で使用するところの「実質的に相補的」なる用語は、レシピエント細菌のゲノム内の、またはレシピエント細菌内に存在するRNA分子内の1つ以上の標的位置と特定の二重鎖を形成することができるような最小レベルの相補性を有するcrRNAの配列を指す。
【0062】
一実施形態では、crRNAは、レシピエント細菌内に単一または複数のコピーで存在する標的配列に実質的に相補的である。そのような実施形態では、レシピエント細菌内への遺伝子カーゴの伝達は、レシピエント細菌内でのcrRNA(レシピエント細菌内で複数の二重鎖を形成する)及びCasタンパク質の発現を可能にし、最終的に標的細菌ゲノム内の複数の二本鎖DNA切断の形成につながる。これらの複数の二本鎖DNA切断は、最終的にはレシピエント細菌の生存率の低下につながり、レシピエント細菌の死滅につながる可能性が高い。
【0063】
レシピエント細菌の死滅が望ましくない(例えば、レシピエント細菌の集団の死によって引き起こされる炎症反応を避けるため)実施形態では、crRNAは、レシピエント細菌のゲノム内の単一の位置、例えば、レシピエント細菌の特定の遺伝子に実質的に相補的であり得る。ペイロードモジュールはまた、標的遺伝子座を修復し、crRNAによるターゲティングからの保護もできる不活性化変異を導入するための鋳型として使用できるDNA分子も含んでいる必要がある。例えば、crRNAは、レシピエント細菌内の病原性因子をコードする遺伝子、またはレシピエント細菌内の病原性因子をコードするRNAに実質的に相補的であってよい。そのような実施形態では、ペイロードモジュールの導入は、レシピエント細菌の生存率を変化させることも、レシピエント細菌を保有する対象に有害な影響を生じることもなく、変異が導入された修復鋳型を病原性因子遺伝子に導入することによって病原性因子の不活性化をもたらす。病原性因子は、レシピエント細菌の染色体上またはレシピエント細菌のプラスミド上に位置する可能性がある。
【0064】
レシピエント細菌内の病原性因子は、例えば、抗生物質などの薬剤に対する耐性を付与する遺伝子であり得る。「抗生物質耐性遺伝子」なる用語は、タンパク質をコードするか、または抗生物質耐性を付与する機能的RNAを転写する遺伝子またはそのコーディング部分を包含する。例えば、抗生物質耐性遺伝子は、(1)抗生物質を分解する酵素、(2)抗生物質を修飾する酵素、(3)抗生物質の排出ポンプなどのポンプ、または(4)抗生物質の作用を抑制する変異された標的に寄与する遺伝子またはそのコーディング部分であり得る。抗生物質耐性形質をコードする遺伝子としては、これらに限定されるものではないが、aadA2、aadA、aacC、aacA1、aphA、strAB、pbp1A、pbp1B、pbp2A、pbp2B、dac、bla
CMY-2、floR、cmlA、cat、cmx、ermA、mph2、mel、erm(x)、mecA、aadA1a、sul1、sul2、tetA、tet(W)、blaSHV−1、dhfr、van(A)、van(B)及びbla
NDM1が挙げられる。
【0065】
レシピエント細菌の病原性因子は、例えば、毒素をコードする遺伝子であってよい。毒素をコードする遺伝子としては、これらに限定されるものではないが、ccdB、relE、parE、doc、vapC、hipA、stl、espA、pag、ctxA、ctxB、tcpA、exoU、exoS、exoT、SgiT、及び hipBが挙げられる。
【0066】
病原性因子は、線毛(pilus)、線毛(fimbriae)、鞭毛、またはポンプなどの構造または構成要素である可能性がある。毒性成分をコードする遺伝子としては、これらに限定されるものではないが、fimA、csgD、toxT、cps、ptk、epsA、mia、ssrB、acrA、acrB、tolC 、及び csgAが挙げられる。
【0067】
特定の実施形態では、crRNAは、例えば、大腸菌の病原性因子をコードする遺伝子など、大腸菌(Escherichia sp.)に見られる病原性因子をコードする遺伝子、または該遺伝子に由来するRNA分子に特異的である。大腸菌に見られる病原性因子としては、これらに限定されるものではないが、WO2015/148680に記載されるものが挙げられる。特定の実施形態において、病原性因子をコードする遺伝子には、大腸菌の抗生物質耐性遺伝子及び志賀毒素遺伝子(例えば、多剤耐性志賀毒素産生大腸菌)を含む。別の特定の実施形態では、病原性因子をコードする遺伝子として、大腸菌 (例えば、接着性浸潤性大腸菌)の線毛をコードする遺伝子(例えば、1型線毛)をコードする遺伝子が挙げられる。
【0068】
輸送モジュールは、遺伝子カーゴの構成要素であり、遺伝子カーゴのレシピエント細菌への物理的輸送に関与する機能的なDNA遺伝子座を含む。輸送モジュールは、伝達起点(oriT)、例えば、ドナー細菌からレシピエント細菌へのベクターの伝達を可能とする核酸配列を含む。輸送モジュールは、接合性細菌細胞に対して異種であってよい。輸送モジュールはシス作用性であり、したがって、遺伝子カーゴを構成する遺伝子構成要素(染色体または染色体外ベクター)上にみられる。上記に示したように、輸送モジュールは可動化モジュールの作用を受ける。本開示との関連で使用される場合、「可動化」なる用語は、接合プラスミドが、ドナー細菌からレシピエント細菌への、伝達起点(oriT)を含むDNA分子の伝達を行うプロセスを指す。「伝達起点」(略語oriT)なる用語は、DNA分子内に存在する場合、対応する可動化タンパク質によって認識され、その可動化を可能とするDNA配列を指す。
【0069】
遺伝子カーゴは、1つ以上の選択モジュールも含むことができる。選択モジュールは、遺伝子カーゴの1つ以上のモジュールを保有する細菌を同定するための選択可能な形質を付与する1つ以上の遺伝子を含む。選択モジュールは、1つ以上の細菌ベクター及び/または遺伝子カーゴの組み込まれたモジュールと機能的に接続される。遺伝子カーゴの選択モジュールは、接合送達システムの選択モジュールと同じでも異なっていてもよい。選択可能な形質は、抗生物質耐性遺伝子、蛍光タンパク質(緑色蛍光タンパク質を含む)をコードする遺伝子、栄養要求性選択マーカー、β−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子(例えば、細菌のlacZ遺伝子)、ルシフェラーゼをコードする遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(例えば、細菌のcat遺伝子)、β−グルクロニダーゼをコードする遺伝子とすることができる。
【0070】
遺伝子カーゴが染色体外ベクターに(全体的または部分的に)位置している場合、染色体外ベクターは栄養複製モジュールを含む。遺伝子カーゴの栄養複製モジュールは、接合送達システムの栄養複製モジュールと同じでも異なっていてもよい。細菌宿主のゲノムと独立して複製する1つ以上のベクター上に伝達マシナリーが位置している場合には、栄養複製モジュールが必要である。その場合、遺伝子カーゴを含む1つ以上の染色体外ベクターは、細菌宿主内で複製し、また維持されるために栄養複製モジュールを必要とする。栄養複製モジュールは、栄養複製の起点(oriV)として機能する1つ以上の機能的DNA要素を含む。oriVは、遺伝子エレメント上に存在するDNA配列であり、維持モジュールによってコードされた複製マシナリーによって認識されると、細菌宿主内でのプラスミドの複製を可能とする。多目的な用途のため、また、広範囲の細菌宿主におけるベクターの維持のためには、栄養複製モジュールのoriV は、広い宿主範囲のoriV (すなわち、広範囲の細菌宿主種によって認識されるoriV)とすることができる。ベクターの維持を限られた範囲の細菌宿主に制限する必要があるいくつかの実施形態では、制限された、または狭い宿主範囲のoriV(すなわち、限られた範囲の細菌宿主種によって認識されるoriV)を使用することが好ましい場合がある。
【0071】
遺伝子カーゴが染色体外ベクター上に(全体的または部分的に)位置する場合、接合性細菌宿主細胞は、維持モジュール(いくつかの実施形態では、伝達マシナリーの一部と見なすことができる)を含む。維持モジュールは、栄養複製モジュールのoriVを認識することができるタンパク質(複製マシナリーと呼ばれる)を含み、栄養複製モジュールを含む染色体外ベクター(例えば、プラスミド)の複製を可能とする。維持モジュールは、栄養複製モジュールのoriVを認識できるタンパク質を含み、栄養複製モジュールを含むプラスミドの複製を可能とする。維持モジュールは、接合細菌細胞に対して異種であってもよい。ベクターの維持をドナー細菌に限定する必要がある場合、維持モジュールをドナー細菌染色体に配置する(例えば、組み込む)ことが好ましい場合がある。あるいは、維持モジュールは、染色体外ベクターの1つ以上に位置してもよい。維持モジュールはまた、適当なDNA分配に関与する1つ以上の遺伝子及び調節エレメントを含むことができる。分配に関与する遺伝子には、プラスミドコピーの娘細胞への均等な分離に関与するタンパク質、毒素及び抗毒素安定化システム、及び/またはプラスミドの複製において複製マシナリーを助けるヘリカーゼ及びDNAプライマーゼが含まれる。維持モジュールのタンパク質としては、これらに限定されるものではないが、repA(TP114−083:repA)、TP114−082、parA(TP114−068:parA)、parB、DNAprimase(TP114−006:ygiA)としてしばしばアノテーション付けされるタンパク質、毒素(例えば、pVCR94のvcrx028、TP114のTP114−051:ycfA)、抗毒素(例えば、pVCR94のvcrx027、TP114のTP114−050:ycfB)、DNAトポイソメラーゼ(TP114−035:ydiA及びTP114−036:ydgA)が挙げられる。したがって、維持モジュールは、複製マシナリーの1つ以上のタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子を含み、また、DNA分配タンパク質をコードする0個以上の遺伝子及び調節エレメントも含むことができる。さらに、1つ以上のoriV及び複製マシナリー、ならびに1つ以上の異なるタイプのoriV及び複製マシナリーが維持モジュール内に存在してもよい。一実施形態では、維持モジュール及び/または栄養複製モジュールは、以下の細菌ベクターのファミリー、すなわち、IncA、IncB / O(Inc10)、IncC、IncD、IncE、IncF1、IncF2、IncG、IncHI1、IncHI2 、IncI1、IncI2、IncJ、IncK、IncL / M、IncN、IncP、IncQ1、IncQ2、IncR、IncS、IncT、IncU、IncV、IncW、IncX1、IncX2、IncY、IncZ、ColE1、ColE2、ColE3、p15A、pSC101 、IncP−2、IncP−5、IncP−7、IncP−8、IncP−9、Inc1、Inc4、Inc7、Inc8、Inc9、Inc11、Inc13、Inc14、及び/またはInc18のうちの1つに由来することができる。一実施形態では、維持モジュール及び/または栄養複製モジュールは、細菌ベクターのIncI2ファミリーの1つに由来することができる。例えば、維持モジュール及び/または栄養複製モジュールは、細菌ベクターTP114に由来することができる。
【0072】
可動化モジュールは、リラクソソーム、例えば、遺伝子カーゴに機能的に関連付けられ、その後、接合孔を通じてレシピエント細菌に遺伝子カーゴを伝達する輸送モジュール(伝達起点(oriT))を認識することが可能なタンパク質複合体をコードする。可動化モジュール(接合性細菌細胞と異種であってもよい)は、接合性細菌細胞の染色体に組み込まれるか、または1つ以上の細菌ベクター上に配置され得る。可動化モジュールには、これらに限定されるものではないが、virC1 (TP114−68: parA)、(TP114−41: nikB)、及び/または(TP114−42: nikA)のうちの1つ以上が含まれる。可動化モジュールは、以下の接合ファミリー、すなわち、MOB
F、MOB
P、MOB
V、MOB
H、MOB
C及び/またはMOB
Qのうちの少なくとも1つに由来することができる。別の実施形態では、可動化マシナリーをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのMOB
Pファミリーの1つに由来することができる。例えば、可動化マシナリーをコードする遺伝子は、細菌ベクターTP114に由来することができる。さらに別の例では、可動化マシナリーをコードする遺伝子は、細菌ベクターR6Kに由来することができる。別の実施形態では、可動化マシナリーをコードする遺伝子は、細菌接合プラスミドのMOB
Fファミリーの1つに由来することができる。例えば、可動化マシナリーをコードする遺伝子は、細菌ベクターpOX38に由来することができる。
【0073】
接合送達システムの構成
特定の実施形態では、接合送達システムは、遺伝子カーゴの指数関数的な伝播を可能にするためにシス可動化を与えるように設計されている。そのような実施形態では、システムのすべてのモジュールは、単一の染色体外ベクター(いくつかの実施形態では、環状プラスミド)上に位置している。シス可動化に基づくシステムの使用は、コンテインメントがないことに厳密に限られ、接合プラスミドのレシピエント細胞への伝達、及びその後のレシピエント細胞から他のレシピエント細胞への伝達のラウンド、ならびにレシピエント内での接合プラスミドの複製が可能となる。
【0074】
別の特定の実施形態では、接合送達システムは、遺伝子カーゴの速やかな伝播を可能にし、一定程度のコンテインメントを与えるような制約付きシス可動化を与えるように設計されている。そのような実施形態では、維持モジュールは接合細菌細胞の染色体内に位置し、システムの残りのモジュールは単一の染色体外ベクター(いくつかの実施形態では、環状プラスミド)上に位置する。制約付きシス可動化を与えるように設計されたシステムの使用によってある程度のコンテインメントが与えられ、接合プラスミドのレシピエント細胞への伝達、及びその後のレシピエント細胞から他のレシピエント細胞への伝達は可能であるが、レシピエント細胞内での複製は防止される。
【0075】
さらに特定の実施形態では、接合送達システムは、遺伝子カーゴのコンテインメントのレベルを高めるようなトランス可動化を与えるように設計されている。そのような実施形態では、伝達マシナリー全体が接合細菌細胞の染色体に位置するかまたは1個もしくは多数の染色体外ベクター(いくつかの実施形態では、環状プラスミド)上に位置するが、輸送モジュールを欠いている。システムの遺伝子カーゴの各モジュール(ペイロードモジュール及び輸送モジュール)は、単一の染色体外ベクター(いくつかの実施形態では、環状プラスミド)上に位置する。そのような実施形態では、遺伝子カーゴは栄養複製モジュールも含む。トランス可動化を与えるように設計されたシステムの使用により最高レベルのコンテインメントが与えられ、可動化されたプラスミドのレシピエント細胞から別のレシピエント細胞への伝達が防止され、レシピエント細胞内での複製が防止される。
【0076】
遺伝子カーゴの各モジュールは、細菌の染色体に組み込まれてもよい。そのような実施形態では、遺伝子カーゴは切り出されるか、またはペイロードモジュールの上流に(機能的に関連して)栄養複製モジュールを含むことができる。
【0077】
本開示のシステムは、遺伝子カーゴのレシピエント細菌への伝達を可能とすることで、レシピエント細菌内で1つ以上の異種タンパク質及び/または1つ以上の非コーディングDNAまたはRNA分子を発現するように設計されている。このシステムは、ドナー細菌に導入されると、インビボ(例えば、胃腸環境)の許容される接合効率で遺伝子カーゴを標的細菌に伝達することができる。本開示との関連で使用される場合、「接合効率」とは、ドナー細菌からレシピエント細菌への遺伝子カーゴの伝達の尺度を指す。接合効率は、当業者によって多くの方法でインビボ(例えば、対象内)またはインビトロ(例えば、対象外、(液体または固体)培地中)で決定することができる。接合効率がインビボで測定される実施形態では、接合効率は、利用可能な総レシピエント細菌当たりの細菌接合完了体の数(例えば、接合性細菌細胞から遺伝子カーゴを受け取った細菌の数)として与えることができる。接合効率は、対象の特定の場所、例えば対象の腸内で測定することができる(そしてそのような場合、腸内での接合効率のレベルが与えられる)。本開示との関連で使用される場合、「許容可能なレベルのインビボ接合効率」なる表現は、標的細胞集団に対する、または標的細胞集団による有意な影響を媒介するような遺伝子カーゴの充分な伝達を与えることが可能な、インビボで観察される伝達のレベルを指す。いくつかの実施形態では、システムは、少なくとも10
-3、10
-2、または10
-1(接合完了体細菌/レシピエント細菌)のインビボ接合効率を有する。特定の実施形態では、システムは、少なくとも10
-3(接合完了体細菌/レシピエント細菌)のインビボ接合効率を有する。特定の実施形態では、システムは、少なくとも10
-2(接合完了体細菌/レシピエント細菌)のインビボ接合効率を有する。特定の実施形態では、システムは、少なくとも10
-1(接合完了体細菌/レシピエント細菌)のインビボ接合効率を有する。
【0078】
本開示に示されるように、いくつかの実施形態において、伝達効率はいくつかの交配条件において比較される。したがって、特定の条件下でのインビトロ接合の測定値を、あるベクターのインビボ伝達効率が許容可能であるかどうかを判定するための代用として用いることができる。その結果、いくつかの実施形態では、低酸素条件下、培地中の糞便の存在下、生理学的に適切な温度(例えば、37℃)、不安定な交配環境(例えば、静的または攪拌ブロス)でのシステムの接合効率は、標準的な固体培地での交配と比較して少なくとも10
-3、10
-2、または10
-1(接合完了体細菌/レシピエント細菌)である。特定の実施形態において、システムは、上記の条件のいずれかで測定した場合、少なくとも10
-3(接合完了体細菌/レシピエント細菌)のインビトロ接合効率を有する。特定の実施形態において、システムは、上記の条件のいずれかで測定した場合、少なくとも10
-2(接合完了体細菌/レシピエント細菌)のインビトロ接合効率を有する。特定の実施形態において、システムは、上記の条件のいずれかで測定した場合、少なくとも10
-1(接合完了体細菌/レシピエント細菌)のインビトロ接合効率を有する。
【0079】
いくつかの実施形態において、液体培地と固体培地における接合効率の比は、ベクターのインビボ伝達効率が許容可能であるかどうかを判定するための代用として用いることができる。以下の実施例に示されるように、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0%より高い接合効率の比は、接合性細菌が許容されるインビボ伝達効率を有することを示す。いくつかの実施形態において、0.1%よりも高い接合効率の比は、接合性細菌が許容されるインビボ伝達効率を有することを示す。
【0080】
本開示はまた、液体培地中で接合する細菌系の能力を測定することにより、インビボ伝達の効率を決定するための方法も含む。かかる方法は、液体培地中で接合性細菌宿主細胞とレシピエント細菌宿主細胞とを接触させることと、かかる液体培地中での接合効率を測定することと、を含む。一実施形態では、液体培地は、特定の温度(例えば、37℃)で測定した場合に水と実質的に同様の粘度を有する。標準的な固体培地での交配と比較して、接合効率が少なくとも10
-3、10
-2、または10
-1(接合完了体細菌/レシピエント細菌)である場合、接合性細菌細胞は、インビボ(例えば、被験者の胃腸管内)で効果的に接合することが可能であると判定される。上記に代えて、または上記と組み合わせて、この方法は、液体培地と固体培地における接合効率の比を決定することを含み得る。かかる実施形態において、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0%より高い接合効率の比は、接合細菌が許容されるインビボ伝達効率を有することを示す。接合性細菌細胞とレシピエント細菌細胞との接触は、インビボ環境と同じかまたは実質的に同様である特定の温度、例えば、30〜40℃(例えば、37℃)で行うことができる。接合細菌細胞とレシピエント細菌細胞との接触は、静的条件で、または攪拌下で行うことができる。
【0081】
プロバイオティクス組換えドナー細菌、該ドナー細菌を含む組成物、及び該ドナー細菌を作製するためのプロセス
本開示はまた、本明細書に記載される遺伝子カーゴを標的(レシピエント)細菌に伝達するために接合を行うことができるドナー細菌として機能することができる組換え細菌宿主細胞(接合性細菌細胞と呼ばれる)も提供する。接合性細菌細胞細菌は、本明細書に記載される伝達マシナリー及び遺伝子カーゴを含む。いくつかの実施形態では、伝達マシナリー及び遺伝子カーゴは、組換え細菌のゲノムとは独立して複製することができる。そのような実施形態では、伝達マシナリーは、遺伝子カーゴ核酸分子と機能的に関連付けられて例えば単一の一体型ベクター(例えば、単一のプラスミド)を形成することができる。別の実施形態において、伝達マシナリーは、接合性細菌細胞細菌の染色体に(単一の位置または複数の位置に)組み込まれ、遺伝子カーゴ核酸分子は、ドナー細菌のゲノムとは独立して複製され得る。別の実施形態では、ドナー細菌は、伝達マシナリーを含む第1のベクターと、遺伝子カーゴ核酸分子を含む第2のベクターの少なくとも2つの別個のベクター(例えば、2つの別個のプラスミド)を含むことができる。
【0082】
本開示の伝達マシナリーは高いインビボ接合効率を有しているため、対象内で所望の治療効果を実現するうえで必要とされる接合性細菌細胞細菌の量は、本開示のシステムを欠く他の組換え細菌と同等またはそれ以下となると考えられる。
【0083】
いくつかの実施形態において、接合性細菌細胞は、その病原性を低減または消失させるように改変された病原性細菌細胞であってよい。あるいは、本開示の接合性細菌細胞は少なくとも対象に有害ではない(例えば、病原性ではない)ことから、プロバイオティクス細菌であるとみなされ、いくつかの実施形態では、プロバイオティクスはそれ自体で対象に健康上の利益をもたらすことができる。したがって、本開示は、本開示の送達システムを保有するように遺伝子操作された細菌を提供する。したがって、本開示はまた、細菌細胞に本開示のシステムを導入することによって接合性細菌細胞を得るためのプロセスも提供する。場合により、システムは、1つ以上の選択可能な形質を付与する遺伝子を含むことができる。
【0084】
接合性細菌細胞として使用できる細菌細胞としては、これらに限定されるものではないが、バチルス属菌、ビフィドバクテリウム属菌、エンテロコッカス属菌、エシェリキア属菌、ラクトバチルス属菌、ラクトコッカス属菌、ロイコノストック属菌、ペディオコッカス属菌、及びストレプトコッカス属菌が挙げられる。したがって、本開示は、バチルス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、及びストレプトコッカス属からのプロバイオティクス組換え細菌、ならびにバチルス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、及びストレプトコッカス属のプロバイオティクス細菌に接合性細菌ベクターまたはシステムを導入することによってかかるプロバイオティクス細菌を作製するためのプロセスを提供する。ヒト対象に対してプロバイオティクスとみなされる細菌種としては、これらに限定されるものではないが、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)(例、GBI−30または6086株)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)ラクチス亜種(subsp.lactis)(例、BB−12株)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)インファンティス亜種(subsp.infantis)、エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)(例、LAB18s株)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)(例、Nissle 1917株)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(例、NCFM株)、ラクトバチルス・ビフィダス(Lactobacillus bifidus)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)(例、Lai、LCIまたはNCC533株)、ラクトバチルス・パラカゼイLactobacillus paracasei (例、Stl 1またはNCC2461株)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)(例、299v株)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri (例、ATCC55730、SD2112、プロテクティス、DSM17938、プロデンティス、DSM17938、ATCC55730、ATCCPTA5289、RC−14株)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)(例、GG、GR−1)及びラクトコッカス・サーモフィルス(Lactococcus thermophiles)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc masenteroides) (例、B7株)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)(例、UL5株)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)が挙げられる。したがって、本開示は、いくつかの実施形態において、プロバイオティクスとみなされる細菌種からの接合性細菌組換え細菌、ならびにヒトにおいてプロバイオティクスとみなされる細菌株のプロバイオティクス細菌に接合性細菌ベクターまたはシステムを導入することによってかかるプロバイオティクス細菌を作製するためのプロセスを提供する。特定の実施形態では、プロバイオティクスは、エシェリキア属、例えば、エシェリキア・コリ菌(大腸菌)、例えば、大腸菌(E.coli)Nissle株に由来する。本開示は、接合性細菌ベクターまたはシステムをプロバイオティクス大腸菌、例えば 大腸菌Nissle株に導入することにより、そのようなプロバイオティクス組換え細菌を作製するためのプロセスを提供する。
【0085】
一実施形態では、組換えドナー細菌は、組換え細菌を投与した対象の胃腸管内にコロニー形成することができることから、腸内組換え細菌である。一実施形態では、腸内組換え細菌は、胃、腸(小腸及び大腸を含む)、及び/または組換え細菌を投与した対象の結腸内にコロニー形成することができる。
【0086】
一実施形態では、組換え細菌は、組成物(プロバイオティクス組成物であってよい)として配合することができる。組成物はまた、賦形剤、1つ以上の抗生物質(複数可)、選択圧力(選択可能な形質を有する細胞を選択するため)、及び/または1つ以上の化学的に活性な分子、及び/またはプロバイオティクス(非組換え)細菌の1つ以上の株も含むことができる。組成物において、組換え細菌は、溶液/懸濁液として、または乾燥形態で提供することができる。組成物は、任意の経路による投与用に提供することができ、一実施形態では、組成物は、経口投与、注射、吸入などのために提供することができる。組成物が経口投与を意図し、対象の胃腸管にコロニー形成することを意図して使用される場合、その生存率及び目的の場所(レシピエント細菌を含むことが疑われる)に到達するまで接合を行う能力を維持するように組換え細菌を配合するように注意を払う必要がある。
【0087】
したがって、本開示は、組成物を作製するためのプロセスを提供する。概して、プロセスは、組換え細菌を、賦形剤と、また、場合によりさらなるプロバイオティクス細菌及び/または抗生物質及び/または化学的に活性な分子と組み合わせることを含む。プロセスは、組換え細菌の溶液/懸濁液を調製すること、または組換え細菌を乾燥することを含んでもよい。組成物が経口投与を意図する場合、組成物を製造するためのプロセス及び組成物に使用される賦形剤は、経口投与を可能にするように設計/選択される。
【0088】
組換え細菌宿主細胞及び該宿主細胞を含む組成物の治療的使用
本開示の組換え接合性細菌宿主細胞は、遺伝子カーゴを標的(レシピエント)細菌に伝達するためのドナー細菌として機能する。伝達は、接合性細菌細胞が投与される対象(ヒトまたは動物)の体内で起こり得る。対象は、レシピエント細菌を保有していることが疑われるかまたはわかっているものとすることができる。対象は、ヒト対象または動物対象(例えば、非ヒト哺乳動物など)とすることができる。組換え細菌が腸内細菌である実施形態では、伝達は、対象の胃腸管で起こることが意図されている。
【0089】
一実施形態では、組換え細菌は、意図されたレシピエント細菌の制限修飾システムと同じかまたは同様の修飾モジュールを有するように選択または操作される。細菌には、外来DNAに対する細菌の防御システムに関与している4つの既知の制限修飾システム(I、II、III、及びIV型)が存在している。修飾モジュールの類似性は、DNAを制限作用から保護することにより、レシピエント細菌への遺伝子カーゴ分子の導入を容易とし、それにより接合効率が向上する。例えば、レシピエント細菌がI型制限修飾システムを有する実施形態では、同様のI型修飾システムを有する組換え細菌、例えば、大腸菌由来の組換え細菌を選択して使用することができる。一実施形態では、制限修飾システムは、ドナー細菌に内因性であり、排斥モジュールの一部である。別の実施形態において、制限修飾システムは、ドナー細菌に対して異種であり、排斥モジュールに組み込まれる。一実施形態では、ドナー細菌の制限修飾システム及びレシピエント細菌の制限修飾システムは、I型制限修飾システムを含む/である。別の実施形態では、ドナー細菌の制限修飾システム及びレシピエント細菌の制限修飾システムは、II型制限修飾システムを含む/である。さらなる実施形態において、ドナー細菌の制限修飾システム及びレシピエント細菌の制限修飾システムは、III型制限修飾システムを含む/である。さらに別の実施形態において、ドナー細菌の制限修飾システム及びレシピエント細菌の制限修飾システムは、IV型制限修飾システムを含む/である。
【0090】
したがって、本開示は、遺伝子カーゴを、それを必要とする対象の微生物叢中でドナー細菌からレシピエント細菌に伝達する方法を提供する。伝達は、液体(例えば、尿または血液)または固体表面(例えば、上皮)で行うことができる。微生物叢は、固体表面(胃腸上皮、膀胱上皮または肺上皮など)または液体(例えば、膀胱または尿道の尿、血管内の血液、胃液または胃またはリンパ節のリンパ液など)に存在しうる。この方法は、治療有効量の本開示の接合性細菌細胞細菌を、それを必要とする対象に投与することを含む。本開示との関連で使用される場合、治療有効量とは、対象に対する治療効果を媒介するのに有効な量(用量)を指す。本明細書において、「薬学的な有効量」とは、単独でまたは他の治療薬と組み合わせて服用される、単回投与または任意の用量もしくは経路のいずれかで服用される、所望の治療効果を与える量として解釈され得る点も理解されたい。この方法はまた、組換え細菌の投与の前に、対象内のレシピエント細菌の存在を判定することも含み得る。この方法は、組換え細菌の制限修飾システムが、意図されるレシピエント細菌の制限修飾システムと実質的に同様かどうかを判定することをさらに含むことができる。
【0091】
有利な点として、上記に示したように、本開示のシステムは高いインビボ接合効率を有するので、組換え細菌を投与される対象において所望の治療効果を実現するうえで必要とされる組換え細菌の量は、本開示の接合送達システムを欠く他の組換え細菌よりも少なくなるであろう。
【0092】
遺伝子カーゴが1つ以上の異種タンパク質、及び/または非コーディングRNA、及び/またはファージゲノム、及び/または細菌ゲノムをコードする実施形態では、レシピエント細菌は、組換え細菌からの接合を受け入れる対象内に存在するあらゆる種類の細菌であり得る。そのような場合、レシピエント細菌は例えば、これらに限定されるものではないが、エロモナス属菌(Aeromonas sp.)、バチルス属菌(Bacillus sp.)、ビフィドバクテリウム属菌(Bifidobacterium sp.)、カンピロバクター属菌(Campylobacter sp.)、シトロバクター属菌(Citrobacter sp.)、クロストリジウム属菌(Clostridium sp.)、エンテロバクター属菌(Enterobacter sp.)、エシェリキア属菌(Escherichia sp.)、クレブシエラ属菌(Klebsiella sp.)、ハフニア属菌(Hafnia sp.)、ヘリコバクター属菌(Helicobacter sp.)、ラクトバチルス属菌(Lactobacillus sp.)、ラクトコッカス属菌(Lactococcus sp.)、モルガネラ属菌(Morganella sp.)、プレシオモナス属菌(Plesiomonas sp.)、プロテウス属菌(Proteus sp.)、プロビデンシア属菌(Providencia sp.)、シュードモナス属菌(Pseudomonas sp.)、サルモネラ属菌(Salmonella sp.)、セラチア属菌(Serratia sp.)、シゲラ属菌(Shigella sp.)、スタフィロコッカス属菌(Staphylococcus sp.)、ビブリオ属菌(Vibrio sp.)、及びエルシニア属菌(Yersinia sp.)を含む腸内細菌叢(対象に対して病原性でありうるかまたは病原性のないものでよい)の一部とすることができる。
【0093】
遺伝子カーゴが1つ以上の異種タンパク質をコードする実施形態では、遺伝子カーゴを受け取った細菌は、その後、1つ以上の異種タンパク質を発現することができる。例えば、レシピエント細菌は、真核生物の成長因子、及び/またはホルモン、及び/またはサイトカイン(インターロイキン及び/またはケモカインを含む)のうちの1つ以上を発現することができる。異種タンパク質の発現は、組換え細菌が投与された対象に治療効果を与えることを意図している。例えば、治療用タンパク質がGLP−1ペプチドのようなホルモンである場合、本開示は、組換え細菌を使用して、例えば、糖尿病などのGLP−1の増加が有益な効果を示す状態に関連する症状を予防、治療または緩和することを提供する。別の例では、治療用タンパク質がインターロイキンである場合、本開示は、組換え細菌を使用して、例えば炎症状態などのインターロイキンの増加が有益な効果を示す状態に関連する症状を予防、治療または緩和することを提供する。
【0094】
遺伝子カーゴによってコードされる異種タンパク質がプログラム可能なヌクレアーゼである実施形態では、レシピエント細菌は、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはCasタンパク質のうちの1つ以上を発現するように改変することができる。プログラム可能なヌクレアーゼの発現は、組換え細菌が投与された、レシピエント細菌に罹患している対象に治療効果を与えることを目的としている。接合性細菌細胞組換え細菌の投与は、例えば、レシピエント細菌を殺すか、レシピエント細菌を抗生物質に感作するか、または病原性に寄与する、タンパク質または非コーディングRNAの発現を抑制するようにレシピエント細菌を改変することができる。異種タンパク質がCas9タンパク質のようなCasタンパク質である場合、本開示は、接合性細菌細胞組換え細菌を使用して、意図されたレシピエント細菌によって引き起こされる感染症または腸内毒素症に関連する症状を予防、治療または緩和することを提供する。一実施形態では、意図されるレシピエント細菌によって引き起こされる感染症及び/または腸内毒素症は胃腸管に存在し、組換え細菌は、そのような感染症及び/または腸内毒素症の症状を予防、治療または緩和するために投与される。例えば、対象が多剤耐性志賀毒素産生大腸菌に感染している場合、組換え細菌を使用して、レシピエント細菌の薬剤感受性を回復し、及び/または志賀毒素の発現を阻害することができる。さらに別の例では、対象が付着性侵襲性大腸菌に罹患しており、腸内毒素症に関連するクローン病または炎症性腸疾患にも罹患している場合、組換え細菌を使用して付着線毛の発現を阻害することでレシピエント細菌の胃腸壁への付着性を低下させ、いくつかの実施形態では、腸内毒素症を治療することができる。さらに別の例では、対象が腸内毒素症に関連する尿路感染症または敗血症に罹患している場合、組換え細菌を使用して付着線毛または病原性因子の発現を阻害してレシピエント細菌の病原性を低下させ、いくつかの実施形態では、腸内毒素症を治療することができる。
【0095】
遺伝子カーゴが1つ以上の非コーディングRNAをコードする実施形態では、レシピエント細菌は、その後、1つ以上の非コーディングRNAを発現することができる。例えば、レシピエント細菌は、1つ以上のcrRNA、及び/またはtracrRNA、及び/またはアンチセンスRNA、及び/またはgRNA、及び/またはrRNA、及び/またはtRNAを発現することができる。非コーディングRNAの発現は、組換え細菌が投与された対象に治療効果を与えることを意図している。例えば、治療用の非コーディングRNAがアンチセンスRNAである場合、病原性因子の発現をノックダウンする可能性があり、それによりレシピエントは対象に感染することができなくなる。
【0096】
遺伝子カーゴが1つ以上の非コーディングRNA及び1つ以上の異種タンパク質をコードする実施形態では、遺伝子カーゴを受け取った細菌は、その後、1つ以上の非コーディングRNA及び1つ以上の異種タンパク質を発現することができる。例えば、レシピエント細菌は、1つ以上のcrRNA、及び1つ以上のCasタンパク質を発現することができる。crRNA及びCasタンパク質の発現は、接合性細菌細胞組換え細菌を投与した対象に治療効果をもたらすことを意図している。例えば、レシピエント細菌のゲノムの特定の遺伝子座にcrRNAとCas9が同時に存在すると、これらの部位で二本鎖切断が生じる。これらの切断は、その後、レシピエント細菌の死を誘発する。
【0097】
組換え細菌は、場合により抗生物質と組み合わせて使用することができる。抗生物質の例としては、これらに限定されるものではないが、アミノグリコシド、アンサマイシン、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサゾリドノン、ペニシリン、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。アミノグリコシドの例としては、これらに限定されるものではないが、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、スペクチノマイシン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。アンサマイシンの例としては、これらに限定されるものではないが、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、リファキシミン(ストレプトマイシン)及びそれらの組み合わせが挙げられる。カルバペネムの例としては、これらに限定されるものではないが、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム及びそれらの組み合わせが挙げられる。セファロスポリンの例としては、これらに限定されるものではないが、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン(cefalotin)またはセファロチン(cefalothin)、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフタロリンフォサミル、セフトビプロール及びそれらの組み合わせが挙げられる。糖ペプチドの例としては、これらに限定されるものではないが、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。リンコサミドの例としては、これらに限定されるものではないが、クリンダマイシン、リンコマイシン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。リポペプチドの例としては、これに限定されるものではないが、ダプトマイシンが挙げられる。マクロライドの例としては、これらに限定されるものではないが、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スピラマイシン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。モノバクタムの例としては、これに限定されるものではないが、アズトレオナムが挙げられる。ニトロフランの例としては、これらに限定されるものではないが、フラゾリドン、ニトロフラントイン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。オキサゾリドノンの例としては、これらに限定されるものではないが、リネゾリド、ポシゾリド、ラデゾリド、オレゾリド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ペニシリンの例としては、これらに限定されるものではないが、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、ペニシリンG、テモシリン、チカルシリン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。キノロンの例としては、これらに限定されるものではないが、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。スルホンアミドの例としては、これらに限定されるものではないが、マフェニド、スルファセタミド、スルファジアジン、銀スルファジアジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファナミド(旧名)、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール(Co−トリモキサゾール)(TMP−SMX)、スルファミドクリソイジン(旧名)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。テトラサイクリンの例としては、これらに限定されるものではないが、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0098】
本発明は、その範囲を限定するためではなく、本発明を説明するために示される以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されよう。
【0099】
実施例I−インビトロの細菌接合の伝達効率は 、インビボでの細菌接合の伝達効率を予測しない
菌株、プラスミド及び増殖条件。本実施例で使用したすべての株及びプラスミドを表1に示す。すべてのオリゴヌクレオチド配列を表2に示す。細胞は一般的に、必要に応じて以下の濃度の抗生物質、すなわちアンピシリン(Ap)100μg/mL、クロラムフェニコール(Cm)34μg/mL、カナマイシン(Km)50μg/mL、ナリジクス酸(Nx)4μg/mL、スペクチノマイシン(Sp)100μg/mL、ストレプトマイシン(Sm)50μg/mL、スルファメトキサゾール(Su)160μg/mL、テトラサイクリン(Tc)15μg/mL、及びトリメトプリム(Tm)32μg/mLを添加したLuriaブロスMiller(LB)またはLuriaブロス寒天Miller培地で増殖させた。ジアミノピメリン酸(DAP)栄養要求性は、培地に最終濃度57μg/mLのDAPを添加することによって補った。すべての培養物は37℃で通常どおり培養した。感熱性プラスミド(pSIM6、pCP20、pGRG36)を含む細胞を30℃で増殖させた。菌齢18時間以上の細菌培養は実験で使用しなかった。
【0100】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0101】
DNA操作。本実施例で使用したオリゴヌクレオチド配列の詳細なリストを表2に示す。各プラスミドは、EZ10−Spin Column Plasmid Miniprepキット(BIOBASIC#BS614)を使用して調製し、ゲノムDNA(gDNA)ミニプレップはQuick gDNAミニプレップ(ZYMO RESEARCH)を製造元の指示に従って使用して調製した。PCR増幅では、それぞれVeraseq DNAポリメラーゼ(Enzymatics)またはTaqB(Enzymatics)を使用してDNA部分の増幅及びスクリーニングを行った。制限酵素による消化は、製造者の推奨に従って37℃で1時間インキュベートした。プラスミドは、製造元のプロトコルに従ってNEBuilder Gibson Assemblyミックス(NEB)を使用してGibsonアセンブリによりアセンブルした。
【0102】
リコンビニアリング。すべてのリコンビニアリング実験は、蒸気に述べたようにpSIM6を使用して行った(PMID:16750601)。簡単に説明すると、pSIM6を含む大腸菌株を600ナノメートルの光学密度が0.4〜0.8に達するまで30℃で培養した。次に、細胞に4℃で15分間の熱ショックを与えてから洗浄し、熱ショックを与えた大腸菌細胞にリコンビニアリングカセットをエレクトロポレーションした。次に、細胞を室温で一晩インキュベートした後、選択培地にプレーティングした。次に、コロニーをPCRでスクリーニングして、陽性クローンを同定した。
【0103】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【0104】
DNAの精製。バッファーの不適合を回避するため、または酵素反応を停止するため、プラスミドアセンブリの各ステップ間でDNAの精製を行った。PCR反応を、Agencourt Ampure XP DNA結合ビーズ(Beckman Coulter)を製造者のガイドラインに従って使用して、固相可逆固定法(SPRI)によって大まかに精製した。DNA試料を制限酵素で消化した場合、DNAは、細胞懸濁液DNA精製プロトコルに関する製造者の推奨に従って、DNA Clean and Concentrator(ZYMO RESEARCH)を使用して精製した。精製後、必要に応じてNanodrop分光光度計を使用してDNA濃度及び純度を常法に従って評価した。
【0105】
エレクトロポレーションによる大腸菌へのDNA形質転換。通常のプラスミド形質転換をエレクトロポレーションによって行った。エレクトロコンピテントな大腸菌株を20mLのLBブロスから調製した。次に、600ナノメートルの光学密度(OD600nm)0.6の指数増殖期に達した培養物を滅菌蒸留水で3回洗浄した。次に、細胞を200μLの水に再懸濁し、40μLのアリコートに分配した。次に、DNAをエレクトロコンピテントセルに加え、混合物を1mmエレクトロポレーションキュベットに移した。1.8kV、25μF、200Ωのパルスを5ms間、使用して細胞をエレクトロポレーションした。次に、細胞を1mLの非選択的LB培地に再懸濁し、1時間回復させた後、選択的培地にプレーティングした。
【0106】
ヒートショックによる大腸菌へのDNA形質転換。ヒートショック形質転換を主に用いて、ギブソンアセンブリ生成物をクローニングした。化学的コンピテントセルをこれまでに記載されているような塩化ルビジウムプロトコルに従って調製した(Green et al.,2013)。化学的コンピテントセルを急速冷凍し、使用前に−80℃で保存した。ギブソンアセンブリ生成物は、EC100Dpir+化学的コンピテントセルに1/10の体積比で直接形質転換した。常法により、最大10μLのDNAを100μLのコンピテントセルに添加した後、42℃で45秒間のヒートショックによる形質転換を行った。次に、細胞を1mLの非選択的LB培地に再懸濁し、37℃で1時間回復させた後、選択的培地にプレーティングした。
【0107】
接合の定量化のためのEscherichia coli Nissle 1917(EcN)株への選択マーカーの導入。改変EcN株を、これまでに記載されているようにして抗生物質耐性カセットのTn7挿入によって得た(McKenzie et al.,2006)。表2に記載されているように、対応するプライマーを使用したPCRによって組み込みを確認した。プラスミドの除去を確認するために、アンピシリン耐性の喪失を確認した。より具体的には、pGRG36ベクターをE.coli EC100Dpir+から精製し、SmaI+XhoIで消化した。対応するプライマー(表2)を用いてインサートをPCRにより増幅し、消化したpGRG36プラスミドのattLTn7とattRTn7部位との間にギブソンアセンブリにより挿入した(
図1)。次に、ギブソンアセンブリ生成物を化学的コンピテントな大腸菌EC100Dpir+株に形質転換した。得られたプラスミドを制限酵素を用いて分析し、陽性クローンを大腸菌MFDpir+に形質転換した(Ferrieres et al.,2010)。プラスミドは、接合によって大腸菌MFDpir+からEcNに移された。glmSのターミネーターへのカセットの挿入を媒介するため、EcNをOD
600nmが0.6となるまで、アラビノースを加えたLB中、30℃で最初に培養した。次に、細胞に42℃で1時間ヒートショックを与え、37℃で一晩インキュベートしてプラスミドをクリアランスさせた。次に、細菌培養物のアリコートをLB寒天プレートにストリークした。20個以上のコロニーを分析し、アンピシリンの非存在下でのみ増殖し、インサートの選択マーカーを含むコロニーを、表2に記載される適当なプライマーを使用したPCRによって調べた。
【0108】
大腸菌KN01ΔのdapAの構築。pSIM6を使用したリコンビニアリングにより、EcNのdapA遺伝子を欠失させることによってDAP栄養要求性変異体も得た(Born et al.,1999)。DAP栄養要求性の復帰は過去に報告されたことがなく(Ronchel et al.,2001)、また、DAP栄養要求性は補完された場合に細菌の適応度にほとんど影響しない(Allard et al.,2015)ことから、DAP栄養要求性は、伝達頻度を低下させることなく接合用のドナー株とレシピエント株とを区別するための優良なマーカーであることが示されている。DAP栄養要求性株を作製するため、pKD4のaph−IIIa耐性カセットを、dapAに隣接する領域に対する相同性を高めたPCRによって増幅した。次に、精製されたPCR産物の2回目のPCRラウンドにより、相同性の長さを増加させた。これまでに記載されているようにして、pSIM6を使用してEcNでリコンビニアリングを行った(Datta et al.,2006)。簡単に説明すると、pSIM6を含むEcNに精製PCR産物をエレクトロポレーションした。カナマイシン耐性菌を選択し、DAP栄養要求性を確認した。カセットの挿入とdapAの欠失も、対応するプライマーを使用したPCRによって確認した(表2)。dapA遺伝子座へのカセット挿入を確認した後、42℃で1時間のヒートショックを行い、続いて37℃で一晩インキュベーションすることにより、株をpSIM6からキュアした。次に、培養物を選択プレートにストリークしてAp感受性クローンを同定し、次にこれをpCP20で形質転換して、これまでに記載されているようにして耐性カセットを除去した(Datsenko et al.,2000)。pCP20プラスミドを、上記と同じ手順に従ってヒートショックによってキュアした。次に、SmSpインサートをEcNΔdapA株のゲノムに付加して、KN01ΔdapAを完成させた。
【0109】
インビトロ接合アッセイ。すべてのインビトロ接合アッセイについて、特に明記しない限り、ドナー株はKN01ΔdapAとし、レシピエント株はKN02とした。各菌株を、接合実験の18時間前に凍結ストックから増殖させ、1:1の体積比(各100μL)で混合し、最大速度で1分間遠心分離し、抗生物質を含まない200μLのLBで洗浄した。次に、細菌混合物をスピンダウンし、5μLのLBブロスに再懸濁してDAPを含むLB寒天プレート上に堆積させるか、DAPを含むLBブロスにOD
600nm1.0にまで再懸濁した。次に、細胞混合物を37℃で所望の接合時間だけインキュベートした後、800μLの滅菌PBSに再懸濁し、希釈及びプレーティング中の増殖を避けるために滅菌PBSで10倍段階希釈した。次に、5μLの各希釈液をドナー、レシピエント、接合完了体を選択するうえで適当な抗生物質を含むLBプレート上に二重にスポットし、コロニー形成単位(CFU)の数をカウントした。すべての接合頻度は、接合完了体の数をレシピエントCFUの総数で割ることによって計算した。ただし、細胞は常に1:1で混合されているため、ドナー当たりの接合頻度は同等であった(データは示さず)。すべての接合実験を、少なくとも3つの独立した生物学的複製で繰り返した。
【0110】
マウスモデル。すべてのマウス関連のプロトコルは、本発明者らが制定したアニマルケアコミッティーガイドライン(Animal Care Committee Guideline)に準拠して設計し、動物の苦痛を避けるために厳密に評価を行った。すべての実験を通じて、動物に水と通常の餌を自由に与えた。動物は個別に換気されたケージに収容し、同じケージに入れる動物を5匹以下とした。使用したすべての動物は、16〜20 g(チャールズリバー)のC57BL /6系の雌とし、到着時に3日間の適応期間が与えた。動物の体重と健康状態を各実験を通じて毎日監視した。いずれの実験においてもマウスに健康状態及び体重の有意な低下は見られなかった。Sm処理したマウス群について、Smの作業濃度を、腸内細菌のクリアランス及びEcNコロニー形成を最大とするように最初に評価した(Kotula et al.,2014)。1g/LのSmの濃度を選択し、すべてのSm処理マウス群の強制給餌の2日前に飲み水に添加した。その時点から、最適なSm活性を維持するために給水ボトルを3日毎に入れ替えた。細菌負荷を、指定の時点で糞便をサンプリングすることにより監視した。実験終了時に、動物をイソフルランで麻酔し、頸椎脱臼により屠殺した。次に、動物を解剖してコロニー形成パターンを明らかにし、腸内細菌含有量をCFUによって評価した。
【0111】
マウス接種物の調製。強制給餌の2日前に、適切な菌株を凍結ストックからマッコンキー選択プレートにストリークし、37℃で一晩インキュベートした。翌日、コロニーを37℃の選択的LBブロスに接種した。マウスの経口チャレンジの3〜4時間前に、20mLの選択的LBブロス中の大きな接種物(200μLまたは500μL)で菌株を再度継代培養し、OD
600nm0.6±0.1に達するまで37℃でインキュベートした。次に、細胞をPBSで1回洗浄し、OD
600nm6.0に相当する量に濃縮した。接種物のアリコートを用いて細胞濃度を評価した。最終的な細胞懸濁100μLを各マウス(約1×10
8CFU)に経口投与した。
【0112】
糞便及び組織の処理。500μLのPBSと0.2mmのガラスビーズ1個を1.5mLの滅菌マイクロチューブに加えることにより、実験に先立って回収チューブを準備した。次に、サンプリングの前後にチューブの重量を測定して、試料の重量でCFUを正規化した。各試料をFastPrep−24(MP)ビーズビーターで最大速度で1分間ホモジナイズした。次に、ホモジネートを500xgで30秒間遠心分離し、大きな破片がピペッティングされる可能性を防いだ。遠心分離は、回収されたCFUに対する有意な影響を示さなかった(データは示さず)。次いで、試料を初期濃度の10
0〜10
-7に滅菌PBSで10倍段階希釈し、2.5μLの各希釈液を、技術的二重反復として選択マッコンキープレート上にスポットした。試料1mg当たりのCFUを、試料の測定重量の関数として計算した。各実験では、Sm処理のコントロールとして、抗生物質を含まないマッコンキープレート上での腸内細菌の総クリアランスも追跡した(データは示さず)。
【0113】
マウスの解剖及びEcNコロニー形成パターンの評価。4日目にマウスを屠殺し、解剖して十二指腸、空腸、回腸、盲腸、上行結腸、及び下行結腸を摘出した。腸の各部分を区別するため、胃に付着した小腸の最初の3cm(cm)は十二指腸、中央の6cmは空腸、最後の6cm(盲腸に最も近い部分)は回腸とみなした。上行結腸と下行結腸は、結腸の正確に半分であった。CFU分析用に、各切片の2個の間隔を開けた4半部分をサンプリングした。盲腸の縦半分もCFUに使用した。盲腸はマウスの腸の大きくてはっきりと区別できる構造であり、また、EcNは盲腸に強くコロニー形成するため、この領域を、コロニー形成及び接合性細菌細胞治療を研究するための腸の代表的な部分として選択した。
【0114】
インビボ接合マウスモデル。インビボ接合実験において、ドナー株の導入の2時間または12時間前に、マウスにレシピエント株で経口チャレンジした。これは、強制給餌前のPBS溶液中でのプラスミド伝達の可能性を防止するためである。細菌負荷を、指定の時点で糞便をサンプリングすることにより監視した。実験の最後にマウスを屠殺し、盲腸を摘出して、マウスの腸内での接合レベルを確認した。糞便及び組織処理のセクションで述べたように糞便をホモジナイズし、CFUをマッコンキープレートで得た。
【0115】
統計的分析 統計的有意性は、特に指定がない限り、一元配置分散分析を使用してデータの対数値に対して行った。P値はグラフ上に直接示され、2つのデータ群間の統計的有意差を表す。P値が0.05未満の場合にデータの差が有意であると見なした。
【0116】
1.1 大病菌Nissle1917改変株の構築
抗生物質耐性EcN変異体の作製。EcNは天然の抗生物質耐性表現型を有さないため(Sonnenborn et al.,2009)、EcNの2つの株間の接合効率を定量化することは不可能であった。ドナー株とレシピエント株とを区別するには、2つの異なる耐性マーカーの使用が不可欠である。さらに、接合プラスミド上の抗生物質耐性マーカーの存在によって、レシピエントと接合完了体との区別が可能である。したがって、EcNのいくつかの株が接合効率の定量化を可能にするために開発されている。菌株の抗生物質耐性変異体を作製する1つの方法は、その染色体に耐性遺伝子を挿入することであった。細菌の染色体へのDNAの組み込みは、Tn7を用いたシステムを使用して効率的に実現されている(McKenzie,2006)。このシステムでは、プラスミドpGRG36を、Tn7マシナリーを発現させるためのベクターとして使用しているが、目的のDNA配列を挿入するための骨格としても使用した。目的のDNA配列は、glmSのターミネーター配列内に挿入することができるようにpGRG36のattL
Tn7とattR
Tn7部位との間へのクローニングを必要とした。Tn7手法を用いて抗生物質耐性カセットをEcNに挿入し、3つの異なる株を作製した(
図1)。これらの株は、インビボで微生物叢を阻害するために使用したSmに対していずれも抵抗性であった。さらなる耐性表現型は、3つの菌株のそれぞれに固有であった。例えば、ドナーKN01はSpにも耐性があり、レシピエントKN02はCmにも耐性があり、KN03はTcにも耐性があった。
【0117】
接合の選択マーカーとしての栄養要求性。抗生物質の存在下の細胞の増殖を可能とする抗生物質耐性と異なり、栄養要求性は通常の条件下で細胞が増殖することを防止する。これは、既知の復帰メカニズムがこれまで報告されておらず、栄養要求性ドナー株は接合能力に欠陥がみられないため、接合実験でドナー株とレシピエント株とをさらに区別するうえで特に有用である。EcNを、ラムダレッド組換えシステムを発現するプラスミドであるpSIM6で最初に形質転換した。次に、dapA遺伝子を、前述のように抗生物質耐性カセットに置き換えた(Datsenko et al.,2000)。dapAを欠失させると、リシン生合成経路及びペプチドグリカン壁の合成が中断された(
図2)。これにより、細胞はその細胞壁及びアミノ酸リシンを合成できなくなった。いずれの機能も、通常の条件下での細胞の生存に不可欠である。しかしながら、突然変異はDAPの外因性の供給源によって補完される可能性がある(Allard et al.,2015)。次に、プラスミドpGRG36−SmSpを用いてSmSp耐性遺伝子をEcNΔdapAの染色体に挿入し、KN01ΔdapAこのドナー株はDAPなしでは増殖できず、接合完了体とレシピエントとのより効果的な区別が可能となった。また、コントロールとして、dapAの欠失が接合効率に影響を与えないことを検証したところ、欠失は影響を与えなかった(データは示さず)。
【0118】
EcNはネズミの腸にコロニーを形成した。インビトロ及びインビボでのいくつかの接合プラスミドの結合効率を比較するため、EcNがマウスの腸にコロニーを形成する能力を検証した。Smはマウスにおける大腸菌のコロニー形成の安定性を高めることがこれまでに示されており、KN01はSmの最小発育阻止濃度(MIC)が最も低い(表3)ことから、KN01をコロニー形成アッセイで使用して、(1 )マイクロバイオームから腸内細菌を除去し、(2)ドナー株とレシピエント株のコロニー形成を促進するのに必要なSmの濃度を決定した。1,000 mg / L(
図3A)、400 mg / L(
図3B)、250 mg / L(
図3C)、100 mg/ L(
図3D)、50 mg / Lの濃度(
図3E)及び0 g / L(
図3F)のSmを試験した。飲み水中1g/LのSmは、腸内細菌を除去する一方でKN01株の安定したコロニー形成は可能とした。この濃度をその後の実験で使用した。十二指腸、空腸、回腸、盲腸、上行結腸、下行結腸におけるKN01のCFU密度を分析することにより、EcNのコロニー形成パターンもSm処理マウスと非処理マウスの両方で検討した(
図3G)。コロニー形成は、Sm処理マウスの腸のすべての部分で高く、腸の回腸と肛門の間の部分で特に高かった(>10
3CFU/mg組織)。したがって、EcNは、腸管の異なる領域にコロニーを形成することができることから、インビボでの接合の定量化を行ううえで優れた菌株であった。ただし、盲腸は、より高密度のKN01(10
4CFU/mg組織)を生じる別個の構造であるため、その後の接合の定量化に使用した。
【0120】
1.2−インビトロとインビボでの接合伝達効率の比較
細菌接合プラスミドの選択。インビボでのDNAの伝達用の最も効率的な細菌接合システムを見つけるため 、6つの接合プラスミドを選択した。これらの6つのプラスミドは、6つの異なる不和合性ファミリーにまたがっている(表4)。不和合性ファミリーは、2つのプラスミドが細胞内で同時に共存する能力に基づく分類である。2つのプラスミドが同じ不和合性ファミリーに属するためには、それらが細胞内で同時に維持されないものである必要がある。プラスミドが不和合となりうる主な形としては、(1)宿主細胞内の他方のプラスミドの伝達を阻害することによるものと、(2)それらの維持モジュール間の強い類似性によるものの2つがある。異なる不和合性ファミリーからプラスミドを選択することにより、プラスミドは系統発生的に互いにより離れている可能性が高くなった。プラスミドは報告されたインビトロ伝達効率についても選択した(Bradley et al.,1980)。
【0122】
細菌の接合効率は、環境の物理的特性により影響された。6つの接合プラスミドを、以下の実験用のドナー株を構成するKN01ΔdapA 及びKN01株に伝達した。接合プラスミドのうちの1つを含むKN01ΔdapAとレシピエントとしてのKN02との間の接合実験を、寒天プレート(固体交配)とブロス(液体交配)の両方で行ってインビボでの接合プラスミドの接合効率を予測した(
図4A)。固体支持体上での接合は、細胞が固体表面に固定化され、せん断力が働かないため、交配ペアの安定化を必要とせずに接合プラスミドを伝達させることが可能である(Bradley,1984)。しかしながら、細胞は液体中で絶えず移動しているため、せん断力による接合の中断を避けるために、細胞同士が互いにしっかりとグリップする必要があることから液体中での接合ははるかに不安定な環境である。ほとんどのプラスミドは寒天プレート上で効率的に転写されたが、pOX38及びR6Kは寒天及びブロスの両方で同様の頻度で接合することができた。TP114によって媒介される結合は、液体伝達条件下では軽度の影響しか受けないようであった。
【0123】
インビボ条件とインビトロ実験室条件との間の接合効率の相違。(インビボでの)治療用途において対象となりうる、細菌接合性細菌細胞システム用の最も適切な伝達マシナリーを構成することができる接合性プラスミドを決定した。それぞれドナー及びレシピエントとして使用したKN01とKN02との間の接合を、Sm処理された接合マウスモデルで行った。マウスに、ドナー株の導入の2時間前にレシピエント株を与えた。接合完了体の割合を、糞便中で3日間モニターした(
図4B)。実験の3日目にマウスを屠殺し、盲腸内の接合完了体の割合を調べた。盲腸内での接合の結果は、糞便で見られるものと一致していた(
図4C)。ドナー、レシピエント、及び接合完了体の生のCFUデータを、各プラスミドについて
図5に示す。3つのプラスミド(pOX38、R6K、及びTP114)のみがマウスで再現性よく接合することができた。これらの中でも、TP114の伝達速度はインビトロと比較してインビボでほぼ100倍高かった(
図4A)。また、TP114は、試験したどの時点でも、他のすべての試験したプラスミドよりも約240倍から1,400,000倍超、効率的に伝達することができた。TP114のインビボ伝達活性を、5匹のマウスのさらなるグループでも確認し、同じ経過時間を使用して固体培地上でインビトロで測定されたものと比較した(
図4D)。48時間以上にわたるTP114の接合は、インビボ条件と比較してインビトロの伝達速度の改善をほとんど示さなかった。Sm処理マウスの接合が、そのままの状態のマイクロバイオーム中の伝達速度を反映しているかどうかを検証するため、TP114及びR6Kを使用したSm処理または未処理のマウスモデルの両方で12時間の接合実験を行った(
図4E)。伝達速度は両方の条件で同様であり、腸内マイクロバイオームの存在がTP114またはR6Kによる接合に影響しなかったことを示している。レシピエントとドナーの導入間のコロニー形成時間の影響についても、強制給餌の間を2時間または12時間として調べた。このパラメータは、TP114(
図6A)及びR6K(
図6B)の全体的な接合頻度にほとんど影響しなかった。さらに、TP114及びR6Kの両方のレシピエント株のコロニー形成レベルは、強制給餌間の時間に関係なく同様であった(
図6C及び6D)。しかし、TP114は、ほぼ100%の効率速度でインビボで伝達することが可能であることが試験で示された唯一の接合プラスミドであり、したがって、COPの伝達マシナリーとして使用するのに最も興味深い候補と考えられた。
【0124】
実施例II −TP114によるDNAのインビボ接合送達に必要な遺伝子及び遺伝的要素の同定
菌株、プラスミド及び増殖条件。すべての菌株とプラスミドを表1に示す。すべてのプラスミド配列は、配列の付録に記載されている。本実施例で使用されるオリゴヌクレオチド、菌株の増殖条件、DNA操作、プラスミド構築、リコンビニアリング、及び常法の形質転換は、実施例Iの材料と方法のセクションに記載されている。
【0125】
TP114のシークエンシング。TP114をDSMZ(DSM−4246)から取得し、大腸菌MG1655Nx
R への接合によって大腸菌K12 J53−2から伝達させた。得られた菌株を選択的LBブロス中で37℃で増殖させ、シークエンシングに充分なDNAを得た。QIAseq FXLibrary キット(Qiagen)を使用して、約400〜600bpのサイズ選択されたゲノムDNAフラグメントからイルミナライブラリを調製した。このイルミナライブラリを、300bpのペアエンドリードを用いてMiSeq機器でシークエンシングし、インサート全体をカバーするより長い複合リードをアセンブルした(Rodrigue et al.,2010)。MinION(Oxford Nanopore Technologies、UK)シークエンシングライブラリも、1.5μgの高分子量ゲノムDNA及びR9 Nanoporeシークエンシングキット(SQK−NSK007、Oxford Nanopore Technologies,UK)を使用して調製した。イルミナのシークエンシングリードを、デノボで、またはIncI2ファミリーの他の接合プラスミド(R721、AP002527.1;pChi7122、FR851304;pRM12761、CP007134.1;pSLy21、NZ_CP016405.1)からの参照配列を使用してRoche gsAssemblerバージョン2.6を用いてアセンブルした。次に、大きなデノボ及び参照コンティグをマニュアルアセンブルし、BLASTnを使用して高品質のMinIONリードでスキャフォールディングした。最後に、より低いリードカバレッジに基づいて選択された1.5 kbの10個の領域を、サンガーシークエンシングによって再シークエンシングし、対応するプライマーとのアセンブリを確認した(表2)。得られた64,818bp(G+C含有量43%)の環状配列をRASTアノテーションサーバー(Aziz et al.,2008)に提出したところ、合計92個のオープンリーディングフレーム(ORF)が予測された。次に、アノテーションを調節して、TP114と参照IncI2プラスミドR721(GenBank:AP002527.1)との間で相同遺伝子に一貫した名前を付けた。
【0126】
TP114遺伝子機能の分析。TP114遺伝子機能のインシリコ分析を、CDsearch(Marchler−Bauer et al.,2017)及びBLASTp(Altschul et al.,1990)の両方を用いて行った。タンパク質マルチファスタファイルを、RASTによって予測された92個のオープンリーディングフレーム(ORF)すべてについて最初に生成した(Aziz et al.,2008)。マルチファスタファイルをCDsearchによって処理して保存されたタンパク質ドメインを見つけ、タンパク質ファミリーまたはスーパーファミリーをTP114の各タンパク質コード遺伝子に帰属させた。CDsearchが高い信頼性(e値<1x10
-15)でタンパク質ドメインを同定できなかった場合、マルイチファスタファイルをBLASTにも提出して推定タンパク質ホモログを同定した。いずれの分析もデフォルトのパラメータを使用して行った。同じ結果を示したヒットが5個よりも多い場合にのみ、高い同一性レベルのBLASTヒットを用いて推定機能を帰属させた。これらの基準に一致しなかったタンパク質は、機能が不明であるとみなした。
【0127】
比較ゲノミクス。遺伝子含有量の比較を、配列の利用可能性のみに基づいてIncI1及びIncI2サブファミリーの7つのランダムに選択されたプラスミドのデータベースに対してTP114で行った(表5)。BRIGスタンドアロンソフトウェア(Alikhan et al.,2011)を使用して、TP114と各プラスミドグループ間のBLASTベースの相同性分析を行った。プラスミド全体のヌクレオチド配列とコード遺伝子のアミノ酸配列の両方を用いて相同性を分析した。遺伝子の保存を、100%、70%、及び50%の配列同一性カットオフを用いて評価した。同一性のパーセンテージを、不一致の場合は−2、一致の場合は+1、挿入/欠失の場合は線形コストのスコアを割り当てることによって計算した。次に、遺伝子を、プラスミドの100%に存在する場合にはコア遺伝子、プラスミドの50%以上に存在する場合にはソフトコア遺伝子、またはプラスミドの50%未満に存在する場合にはアクセサリー遺伝子として分類した。
【0128】
TP114のpilSの欠失。pKD3から増幅されたFRT隣接cat遺伝子を使用して、リコンビニアリングによりTP114のpilSを欠失させた(Datsenko et al.,2000)。次に、MG1655Rf
R の組換えクローンを、適当なプライマーを使用してスクリーニングした(表2)。pilS欠失により、TP114ΔpilS::catが作製され、次いでこれを大腸菌株KN01に伝達した。野生型及びそのpilS変異体が大腸菌KN01から大腸菌KN03に伝達する能力を、固体、液体(静止)、攪拌下の液体、及びインビボ条件下でアッセイした。
【0129】
pilVアドヘシン、pilVのC末端シャフロンの欠失、及びpilVのC末端変異体のロッキング。FRT配列に挟まれたcatクロラムフェニコール耐性遺伝子を含むカセットを適当なプライマー(表2)を使用してpKD3から増幅し、シャフラーゼ遺伝子rciに隣接する領域に対する相同性を与えた。次に、MG1655Rf
R内でpSIM6を使用してリコンビニアリングすることにより、カセットをTP114に挿入してTP114Δrci::catを生成した。次いで、pSIM6を非許容温度での菌株のインキュベーションによってキュアしてから、pE−FLPで形質転換した。これにより、TP114Δrci::catからcat遺伝子が切り出され、rciによって与えられる組換え能力を欠いたTP114の変異体であるTP114Δrciが作製された。pilVのN末端に隣接する領域に相同性を有する、FRT隣接cat遺伝子及び前のrci欠失を含むカセットを増幅し、MG1655Rf
R株内でpSIM6を使用した第2ラウンドのリコンビニアリングで再び使用した。次に、得られた菌株TP114ΔpilV−rci::catをpE−FLPで処理し、TP114ΔpilV−rciを作製した。あるいは、FLAGタグ及びFRT隣接cat遺伝子を含むカセットをpKD3から増幅した(FLAGタグはPCRプライマーによって与えられる)。カセットをTP114に挿入し、リコンビニアリングによってpilVの3’末端、シャフロン、及び欠失させたシャフラーゼ遺伝子領域を置き換えた(Datsenko et al.,2000)。次に、大腸菌MG1655Rf
Rの組換えクローンを適当なプライマー(表2)を用いてスクリーニングした。欠失によって、シャフロンがFLAGタグで置き換えられたTP114pilVΔシャフロン−rci::catが作製された。pilVの各C末端変異体もPCRによって増幅し、FRT隣接クロラムフェニコール耐性カセットに融合した。完全なカセットには、pilV遺伝子及びシャフラーゼ欠失痕(deletion scar)の相同領域が含まれていた。これらのカセットを用いたリコンビニアリングによって、各pilV変異体について「ロックされた」形態が作製された(TP114pilVΔシャフロン::pilV1−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV2−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV3−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV3’−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV4−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV4’−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV5−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV5’−cat)。TP114ΔpilV−rci、TP114ΔpilVΔシャフロン−rci::cat、及びpilVアドヘシンの変異体を含む、TP114の変異体バージョン(TP114pilVΔシャフロン::pilV1−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV2−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV3−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV3’−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV4−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV4’−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV5−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV5’−cat)を大腸菌株KN01に伝達した。野生型TP114及びTP114のpilV変異体バージョンが大腸菌KN01から大腸菌KN03に伝達する能力を、固体、液体(静的)、攪拌条件下の液体下でアッセイした。
【0130】
pPilS及びpPilV4’の構築と使用。TP114からのpilS遺伝子、pBAD30からのoriV
p15A−araC−P
BAD、及びpSB1C3からのcatを表2に列挙されたプライマーを用いて増幅し、それらをギブソンアセンブリにより連結することによってプラスミドpPilSを構築した。次に、プラスミドpPilSを、補完実験用にKN01+TP114ΔpilSに形質転換した。同様に、TP114からのpilV4’遺伝子、pBAD30からのoriV
p15A−araC−P
BAD、及びpSB1C3からのcatを表2に列挙されたプライマーを用いて増幅し、それらをギブソンアセンブリにより連結することによってプラスミドpPilV4’を構築した。次に、プラスミドpPilV4’を、補完実験用にKN01+TP114ΔpilSに形質転換した。pilS及びpilV4’遺伝子は、AraC
40の調節下にあり、アラビノース誘導性発現を与える。補完実験を行うため、ドナー株とレシピエント株を37℃で一晩増殖させた。接合の2時間前に、アラビノースを1%w / vの最終濃度でドナー株培養物に添加した。次に、各培養物のOD
600nmを測定し、細胞をLB+1%アラビノースで洗浄した後、LB+1%アラビノース中、40
OD600nmに相当する量に再懸濁した。次に、2.5μLのドナー株とレシピエント株を互いに混合し、LB+1%アラビノースプレートに付着させて固体接合させるか、195μLの予熱したLB + 1%アラビノースと混合して液体静止条件及び液体攪拌条件の両方で接合させた。次に、37℃で2時間交配を行った。さらに、液体攪拌条件下での接合反応を回転攪拌機に入れた。インキュベーション後、交配反応を10倍段階希釈し、選択培地にプレーティングしてドナー、レシピエント、及び接合完了体のCFU分析を行った。
【0131】
インビトロ接合アッセイすべてのインビトロ 抱合実験は、実施例Iの材料及び方法のセクションに記載されているように実施した。注意すべき点として、攪拌下での液体交配では、細胞混合物を標準的な静的インキュベーションの代わりに、ロータリーミキサー上で37℃で2時間インキュベートした。
【0132】
高密度トランスポゾン突然変異誘発(HDTM)。接合支援ランダムトランスポゾン突然変異誘発実験を行った。転移システムは、pFG036(cI転写リプレッサーをコードするプラスミド)、pFG051(cIの抑制下のTn5トランスポゾンマシナリー、RP4ベースの伝達起点及びSp
Rトランスポゾンをコードするpir依存性自殺プラスミド)、及びMFDpir+(Ferrieres et al.,2010)(RP4接合マシナリー、ジアミノピメリン酸栄養要求性、及び細胞内でのpFG051の維持に必要なPiタンパク質を有する)で構成されていた。これらの各ステップに関与する遺伝子の機能を明確に特定するために、HDTM実験をいくつかの連続したステップで行った。最初に、pFG051をMFDpir+ からTP114を含むEcNへと、3重にLB+DAPプレート上で2時間、30℃で接合して伝達した。EcNに入ると、Tn5マシナリーはpFG051から発現され、TP114へのランダムなトランスポゾン挿入を媒介した。次に、接合完了体を複製当たり6枚のプレートに全体的にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、接合完了体クローンは細胞芝生を形成し、これをセルスクレーパーを使用して回収した後、選択用抗生物質を含むLBブロスに再懸濁した。次に、変異体ライブラリを形成する接合完了体を洗浄し、4.5mLのLB + 25%グリセロールに再懸濁し、保存用に凍結した。また、変異体ライブラリ100μLをKN02に対する、次いでKN03に対する2つの連続接合伝達実験に使用した。どちらもインビトロ及びインビボで平行して行った。
【0133】
インビボHDTMライブラリ接合のマウスモデル。マウス関連の実験は、わずかな変更を加えて、実施例Iの材料及び方法のセクションに記載されているように行った。ドナー株の接種物を、マウスの強制給餌の3〜4時間前に調製した。高密度トランスポゾン変異誘発(HDTM)変異体ライブラリの凍結ストック500μLを20mLの選択用LBブロスに接種し、37℃で4時間インキュベートしてから強制給餌を行った。準備ができたら、細胞をPBSで1回洗浄し、6.0OD
600nmに相当する体積まで濃縮した。マウスに、ドナー株の導入の3時間前にレシピエント株で経口チャレンジした。次に、24時間及び48時間で糞便サンプリングを行って接合をモニターした。48時間後、マウスを屠殺し、盲腸を摘出した。また、接合完了体では、シークエンシング用の接合完了体クローンを多数取得するために、マウス当たり4 x 100μLもプレーティングした。
【0134】
HDTMライブラリのシークエンシング。各試料について、変異体ライブラリの1.5mLの凍結ストックのアリコートを氷上で15分間解凍した。アリコートを遠心分離し、Quick gDNA Miniprepキット(ZymoResearch)の細胞溶解バッファー300μLに細胞を再懸濁した。DNAを、Bioruptor Plus(Diagenode)を使用して、4℃で30秒オン、30秒オフを12サイクル行って断片化した。断片化後、細胞懸濁液用のQuick gDNA Miniprepキットのプロトコルに従い、DNAを50μLの分子グレードの水に溶出した。次に、End−repair Mix HC(Enzymatics)を使用して10μgのDNAを末端修復した後、AMPure DNA XP磁気ビーズ(Agencourt)を使用してDNAを精製した。次に、精製したDNAを、dATPを添加したTaqB(Enzymatics)を使用して68℃で30分間アデニル化し、AMPure DNA XPビーズ(Agencourt)で再度精製した。次に、NexteraアダプテーターBを、2つのオリゴヌクレオチド:5’−PO
4−CTGTCTCTTATACACATCTCCGAGCCCACGAGAC−InvdT−3 ’(配列番号91)及び5’−CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATTCGCCTTAGTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGT−3’(配列番号92)をアニーリングすることによって作製した。アニーリングは、アニーリングバッファー(10mM TrisNaCl pH 7.5、50mM NaCl)中の各オリゴヌクレオチド40μMを98℃に加熱してから、4℃に達するまで10秒ごとに0.1℃ずつゆっくりと下げて行った。NexteraアダプテーターBを、T4 DNAリガーゼ(Enzymatics)を使用して16℃で一晩ライゲーションした。DNA Ampure XPビーズ(Agencourt)を使用してDNAを再度精製し、Veraseq DNAポリメラーゼ(Enzymatics)を使用してqPCRマシンでバーコード化を実行した。増幅反応は指数期の終わりに停止した。DNAを再度精製し、Quant−it PicoGreenDNAアッセイを使用して定量した。増幅された変異体ライブラリの品質及びサイズ分布を、高感度DNAチップを使用してBioanalyzerで評価した。次に、変異体ライブラリをプールし、Nextera技術を使用してIlluminaによってシークエンシングした。
【0135】
HDTM変異体分析。リードは、Trimmomaticバージョン0.32を、パラメータSLIDINGWINDOW:4:20及びMINLEN:30で使用して、それら品質及びNextera Illuminaアダプターの存在に基づいて最初にトリミングした(Bolger et al.,2014)。トリミングの前後のリードの品質を、デフォルトのパラメータを使用してFastQCで評価した(Andrew,2010)。EcNの染色体上にマッピングしたリードをフィルターにかけ、残りのリードをTP114にマッピングした。これらのアラインメントは、デフォルトのパラメータを用いてBWA MEMで行った(Li,2013)。マッピング品質のスコアが30未満のアライメントは破棄した。次に、9bpのTn5挿入部位重複の中央の塩基対の位置を用いて、対応するすべてのアラインメントを表した(Goryshin et al., 1998)。シークエンシングノイズをフィルター除去するため、1つのリードによってのみ表される挿入部位は破棄した。次に、正規化されたリードカウント(ライブラリサイズに基づく)を有する挿入マップを、UCSC Genome Browser in a Boxを用いて視覚化した(Haeussler et al.,2015)。条件1の遺伝子の不可欠性をマニュアルで検証し、3つの複製すべてでマッピング可能な再現性のある低カバレッジ領域を検索した。次に、各条件について各TP114の遺伝子の正規化されたリードカウント(ライブラリサイズに基づく)を計算することによって、遺伝子カウントテーブルを生成した。遺伝子の最初の5%と最後の15%の挿入部位は、機能的な遺伝子断片につながる可能性があるため、リードカウントでは考慮しなかった。インビトロ及びインビボ接合に重要な遺伝子を、条件1と試験条件との間の遺伝子リードカウント比に基づいて決定した。遺伝子リードカウント比の計算に使用される式は、以下である:(リードカウントx−リードカウント1)/読み取りカウント1。次に、インビトロでの接合(traABCDEGHIJK、trbJ、nikAB)及びインビボでの接合(pilLNOPQRSUV)に不可欠であると考えられる遺伝子のコアセットを使用して、各条件の最大比の値を設定した。遺伝子数の比が最大値を下回るすべての遺伝子を、特定の条件で必須であるとみなした。
【0136】
2.1−TP114接合プラスミドの比較ゲノミクス
TP114シークエンシングとアノテーション。実施例Iにおいて、TP114は、インビボでのDNAカーゴ送達の最も強力な接合プラスミドであることが特定された。したがって、これは、COPシステムのトランスファー機構として使用されるうえで最も興味深いプラスミドであった。しかしながら、TP114についてはほとんど知られていない。したがって、インビボでのTP114の伝達効率の理解に向けた最初のステップは、その完全な配列を決定することであった。Illumina及びOxford Nanoporeシークエンシングテクノロジーを用いて、大腸菌MG1655株内でTP114のシークエンシングを行った。次に、IncI2プラスミドファミリーからの関連プラスミドR721へのリファレンスマッピング及びデノボ配列アセンブリなど、いくつかの方法で配列をアセンブルした。次に、RASTを使用してプラスミドに自動的にアノテーションを付け、潜在的なORFを見つけた。次に、配列相同性に基づいてR721からのアノテーションと比較することにより、アノテーションを修正した。R721上の遺伝子に対して98%を超えるヌクレオチド相同性を有する遺伝子に、プラスミド間で一貫するように再びアノテーション付けした。次に、TP114の完全な配列及びアノテーションをアクセッション番号MF521836.1でGenbankに提出した。プラスミドTP114は、92個のCDSを含む64,818bpの長さであり、平均G+C比率は43%である。機能的相同体を見つけるためにBLASTn及びCDsearchを使用してTP114の遺伝子を、さらに特徴付けた。接合プラスミドはモジュール式である傾向があるため、各遺伝子を特定の機能(IV型分泌系(T4SS)、交配ペアの安定化、維持、調節、選択、及び不明な機能)を有する特定のモジュールに帰属させた。次に、遺伝子をTP114にマッピングして、TP114の遺伝子の第1のグラフィカルマップを生成した(
図7)。
【0137】
TP114遺伝子保存分析。接合プラスミド上に存在する特定の遺伝子の重要性を決定する1つの方法は、その遺伝子の保存を分析することである。遺伝子の保存は、密接に関連する接合プラスミドに対する配列相同性によって評価することができる。幸いなことに、接合プラスミドは、同じ細胞内で安定して維持される能力、または同じバクテリオファージの標的となりうる能力に基づいて、不和合性ファミリーに分類されている。2つのプラスミドが同じホストを共有できないことは、複製タンパク質配列間の類似性にしばしば関連している。したがって、TP114の複製タンパク質の一次配列は、IncI2プラスミドサブファミリーに属するR721のものと高度に類似しているため、TP114はIncI2プラスミドとして分類されている。IncIプラスミドファミリーはIncI1とIncI2の2つのサブファミリーに分けられ、両方のグループがどれだけ配列相同性を共有しているかは未だに不明である。したがって、比較ゲノミクス分析は、両方のプラスミドサブファミリーで行った。IncI1及びIncI2サブファミリーの7つのプラスミドを、Genbank(NCBI)で全ゲノム配列が利用できるかどうかに基づいて選択した(表5)。次に、これらのプラスミドを、スタンドアロンのBRIGソフトウェアを使用したTP114との相同性分析のデータベースとして使用した。TP114の遺伝子は、ほとんどの場合、核酸レベルとアミノ酸レベルの両方で、IncI2プラスミド全体で高度に保存されていた(
図8A及び
図8B)。これは、ほとんどのIncI2プラスミドが、インビボでDNAを効率的に伝達するTP114の能力を共有できることを示唆した。IncI1プラスミドに対する相同性は、核酸レベルとアミノ酸レベルの両方で極めて乏しかった(
図8C及び
図8D)。IncI1グループとIncI2グループの間で遺伝子機能は類似しているものの、これら2つのサブファミリー間では高い配列の相違が見られた。したがって、遺伝子保存の分析では、IncI1グループとの配列相同性が低すぎたことから、IncI2サブファミリーのみを考慮した。遺伝子は、コア、ソフトコア、アクセサリーの3つのグループに分類した(表6)。コア遺伝子がIncI2ファミリーのすべてのプラスミドで保存されていたのに対して、ソフトコア遺伝子はプラスミドの50%以上で保存されていた。最後に、遺伝子がプラスミドの50%未満に存在する場合、遺伝子をアクセサリーとみなした。
【0138】
【表5】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【0139】
交配ペア安定化モジュールをコードしたTP114。I−complexプラスミド(IncB / O(Inc10)、IncI1、IncI2、IncK、incZなど)に共通する興味深い特徴の1つに、機能性IV型線毛(T4P)をコードする遺伝子の存在がある(Sekizuka et al.,2017)。I−complexの他のプラスミドで観察されたように、TP114は従来のT4SSから独立したT4Pをコードしていた。このような装置は、レシピエントの膜に直接結合し、線毛を引っ込めることでドナー/レシピエントの直接的な接触を促すことにより、交配ペア安定化を改善すると考えられている(以下、交配ペア安定化モジュールと呼ぶ)(Bradley,1984)。T4Pをコードすることが知られているプラスミドファミリーはごくわずかである(例:IncI1(Ishiwa et al.,2003)、IncI2(Sekizuka et al.,2017)、IncB / O(Inc10)(Papagiannitsis et al.,2011)、IncK(Seiffert et al.,2017)、及びIncZ(Venturini et al.,2013))。
【0140】
2.2−TP114の高密度トランスポゾン突然変異誘発。
【0141】
HDTM実験計画。TP114遺伝子の機能を完全に特徴づけるため、いくつかのHDTM実験が必要とされた。そこで、HDTMを説明するスキームを、実験の範囲を完全に理解するために提示する(
図9)。HDTMステップ1は、TP114変異体の完全なライブラリを生成した。この時点で、トランスポゾンが細胞内の短期間のプラスミド維持に必要な遺伝子を破壊すると、プラスミドの喪失につながる。抗生物質を使用してTP114とTn5トランスポゾンについて選択することにより、プラスミドを失った細胞は生存しなくなる。したがって、必須の維持遺伝子内にTn5を挿入すると、それらの遺伝子の配列の決定が妨げられ、遺伝子座のカバレッジが低くなる。次に、このHDTMライブラリ1を、一方はTP114 :: Tn5をインビトロでの固体交配によって伝達させ(ステップ2)、もう一方はインビボで交配を行う(接合完了体が糞便から得られる場合はステップ4、接合完了体が盲腸から回収される場合はステップ6)、2つの異なる接合実験で使用した。HDTMライブラリ2によりインビトロでの接合に不可欠な遺伝子が明らかとなったのに対して、HDTMライブラリ4と6によりインビボでの接合に不可欠な遺伝子が明らかとなった。これにより、両方の環境で必要とされる遺伝子と1つの特定の環境でのみ必要とされる遺伝子とを区別することができた。HDTMライブラリ2を、さらに、インビトロ (ステップ3)及びインビボ(糞便から抽出された接合完了体ではステップ5、及び盲腸から抽出された接合完了体ではステップ7)の2つの補助的交配実験においてドナーとして使用した。この2回目の伝達は、Tn5トランスポゾンによって不活性化されると接合効率にプラスの効果をもたらす遺伝子を濃縮すると予想される(例、転写抑制因子)。さらに、2回目の伝達ステップでは、最初のドナー細胞を希釈することでバックグラウンドが最小限に抑えられている。最後に、HDTMステップ8では、改変されたTP114 ::tetBのHDTMライブラリ2への伝達を必要とした。同じ不和合性ファミリーの接合プラスミドは、通常、排斥と呼ばれるメカニズムによって別の関連するプラスミドの獲得を防ぐことができる。TP114は排斥を媒介することができるため、TP114 ::tetBは、排斥関連遺伝子(複数可)がTn5トランスポゾンによって破壊された場合にのみ細胞に入ることができる。
【0142】
HDTM分析の考慮事項。HDTM変異体ライブラリの分析により、TP114でbp当たり9.68個の挿入の平均カバレッジが明らかになった。この高解像度により、最小のアノテーション付きTP114遺伝子の不可欠性を評価することが可能となった。しかしながら、TP114は、リードをマッピングすることができない繰り返し領域(0マッピング可能領域と呼ばれる)を含む7個の遺伝子のセットをコードしている(表7)。これらの遺伝子は過小に存在しているように見えたが、必ずしも必須ではなく、マッピング可能な遺伝子の部分のみを考慮して分析した。HDTM実験では、ドナーDNA汚染の可能性も考慮した。HDTMライブラリを用いて連続伝達実験を行うことにより、バックグラウンド汚染が大幅に減少し、一貫した結果が示された。そのため、HDTMライブラリ2からHDTMライブラリ3へのバックグラウンドレベルの明らかな低下が見られ、ライブラリ間で一貫した結果が観察された(
図10)。HDTM分析では、多数の複製及び条件を利用することで条件間及び生物学的複製間のリードカウントの比較も可能であった。複製間及び条件間の類似性はピアソン相関によって評価し、相関の高い複製と異なる条件間の弱い相関が明らかになった(
図11)。異なる条件は変異体の集団に異なる選択圧力をかけることからこの種の分布が予想され、特定の条件ごとに最適なフィットを有する変異体が選択された。HDTMライブラリ4及び6のマウス群Cからの複製のみが他のマウスとの相関が弱く、分析から除外した。
【0144】
HDTMによって、TP114の複製と維持に関する重要な機能が特定された。HDTMの最初のステップは、すべての遺伝子に挿入を有する変異ライブラリを生成することであった(ライブラリ1)。この設定では、TP114の複製と維持に重要な配列への挿入のみが、生存不能なクローンを生成するはずである。したがって、複製に重要な遺伝子は、他の遺伝子と比較して、リードカバレッジで過小に表現されているはずである。疑われるように、再現可能に過小に表現された6個の遺伝子のコアセットを除いて、ほとんどの遺伝子は高い挿入カバレッジを有していた(
図12)。とりわけ、repA はプラスミド維持の重要な因子であることが既に疑われており、aph−III 遺伝子は接合完了体の選択に使用されるため、不可欠と考えられる。複製と維持に不可欠な遺伝子のリストを表8に示す。これらの遺伝子のほとんどは、維持モジュールの一部であることが既に疑われているか、またはIncI2ファミリーで高度に保存されている。しかしながら、プラスミドの維持への関与が予測されたygiA (TP114−006)、ydiA (TP114−035)、ydgA (TP114−036)、traL (TP114−044)、及びTP114−072は、HDTMによって重要ではないことが判明した。これらの遺伝子は、機能的な冗長性のため、大腸菌内のプラスミド維持に必要ではない可能性があったが、他の宿主種でのプラスミド維持に関与している可能性があった。traLのようないくつかの遺伝子は、接合プラスミドの別の機能に関与している可能性がある。それにもかかわらず、遺伝子機能の予測は、HDTMの結果とほぼ一致していた。
【0146】
固体培地でのインビトロ接合に不可欠なTP114遺伝子の特定。固体培地上でのインビトロ交配における遺伝子の重要性を、遺伝子カウント比によって評価した。遺伝子カウント比は、特定の遺伝子に2つの異なるコンテキストでマッピングされるリードの数を比較することによって計算した。簡単に言えば、インビトロでの接合伝達の後に過小に発現された遺伝子(ライブラリ1と比較してライブラリ2及び3)は、負の遺伝子カウント比を示した。遺伝子の不可欠性を評価し、バイアスを説明するため、接合に不可欠であると予測された遺伝子のセット(traABCDEFGHIJK、trbJ、nikAB)を使用して、不可欠遺伝子の最大及び平均の遺伝子カウント比を評価した。ただし、traFは遺伝子カウント比が高く、外れ値とみなし、接合には不可欠ではないものとみなした。HDTMライブラリ2と3の両方について遺伝子分布をプロットし(
図13)、最大遺伝子カウント比の値を下回るすべての遺伝子を、特定のライブラリにおいて接合に不可欠であるものとみなした。プラスミドの維持に関与しているものとすでに決定されている遺伝子は破棄した。インビトロでのTP114接合に不可欠な遺伝子のリストを表9に示す。
【0148】
インビボでのTP114接合に重要な遺伝子の特定。TP114のインビボ接合のための遺伝子の不可欠性の分析を、インビトロ分析と同様に行った。ただし、pil遺伝子はインビボ 接合においてのみ不可欠であることが明らかだったため、最大遺伝子カウント比を固定するために用いたセットは、pilLMNOPQRSTUVで構成した(
図14)。pilM及びpilT遺伝子は、外れ値であったため、セットから除外した。少なくともHDTMライブラリ5及び7においてインビボでのみ重要であると疑われている遺伝子を使用することが重要であった。実際、HDTMライブラリ5及び7はHDTMライブラリ2のインビボ接合によって生成され、HDTMライブラリ2はHDTMライブラリ1のインビトロ伝達から生成される。このように、最初のインビトロ交配はインビトロで伝達できるプラスミドに強い選択圧力をかけ、インビトロで不可欠の遺伝子はインビボでも不可欠であり得るため、これらの遺伝子を播種することによってインビボでのみ不可欠である遺伝子の大部分が除外された。しかしながら、合計12匹のマウスを含む4つの異なる条件をインビボ接合に用いたため、遺伝子の不可欠性は、同じまたは異なる条件からの複製間の一貫性によって評価することもできる。インビボ条件のいずれかのしきい値を下回った遺伝子を表10に示す。しかしながら、プラスミドの維持に重要であることがすでに証明されている遺伝子は、遺伝子カウント比が0による除算につながることが多いため、この表には含まれていない。インビボ接合のドナー細胞としてHDTMライブラリ1を使用した場合(条件4及び6)、糞便試料において40個の遺伝子が不可欠であり、盲腸試料において36個が不可欠であることがわかった。これらの遺伝子のうち、31個が両方の条件で共有されていた。これと一貫して、インビボでのHDTMライブラリ2の接合(条件5及び7)では、糞便試料において40個の遺伝子が重要であり、盲腸試料では37個の遺伝子が重要であることがわかり、33個の遺伝子が共有されていた。合計で40個の遺伝子が少なくとも1つの条件で重要であることがわかり、そのうち31個がすべての条件で共有されていた。興味深いことに、インビトロ接合に重要な遺伝子のほとんどはインビボ接合にも重要であった。条件5及び7はインビトロ伝達に従うため、これは予想されたことである。さらに、pil 遺伝子のほとんどはインビボ伝達に不可欠であったが、pilMとpilTは2つの唯一の例外であった。
【0150】
TP114は、接合に重要な遺伝子のコアセットを有していた。多数の生物学的複製でHDTMを行うことにより、信頼水準をTP114の異なる機能に対する各遺伝子の重要性に帰することができた(表11)。信頼水準は結果の再現性に基づいており、++が最高の信頼水準であり、−が最低である。プラスミドの維持については、信頼水準は他の条件とは異なる原因に帰された。++の信頼水準は、遺伝子がすべての複製で不可欠であることを意味し、−は、少なくとも1つの条件において不可欠ではなかったことを意味した。他のすべての条件の場合、信頼水準は条件間の再現性の程度に基づいており、++は、遺伝子がすべての条件で不可欠であったことを意味し、+は、1つの条件でのみ不可欠であったことを意味し、−は不可欠ではなかったことを意味する。
【0151】
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【0152】
TP114の交配ペア安定化モジュールのインビボ接合における不可欠性の確認。インビトロでの交配ペア安定化におけるT4P(pil遺伝子)の役割が、IncI2ファミリーの別のモデルプラスミドであるR721で疑われた。しかしながら、TP114のHDTMデータは、T4Pの形成に関与することが予想される遺伝子は、インビボでの伝達に不可欠であることを示唆した。このことは、T4Pが固体交配ではインビトロで必要とされないこと、そして環境条件の違いがT4Pをインビボで不可欠なものにすることを意味した。この仮説を確認するには、T4P機能を完全に無効化することが望ましい。プレピリン遺伝子pilSは、HDTMデータがインビボ伝達におけるこの遺伝子に対する強い依存性を明らかにし、また、T4Pの構造におけるその重要な役割のため、最初に欠失の候補として選択した。プレピリンはT4Pを形成する主要なサブユニットであり、最初に特定のペプチダーゼによってピリンにプロセスされた後、分泌されて線毛に組み立てられる。したがって、pilSを欠失させると、線毛の形成が無効化され、そのアセンブリが妨げられることが予想される。pilS遺伝子を、組換えアプローチを用いてTP114から欠失させた。次に、得られたTP114ΔpilS::catを、さらなる試験を行うためにKN01内に固体交配接合によって伝達させた。そのように、TP114ΔpilS::catを、固体、液体、及び液体攪拌条件でKN01からKN03に接合するその能力について試験した(
図16A)。固体交配においてTP114ΔpilS::catが伝達する能力は変化しなかったのに対して、液体中では攪拌を行った、または行わない場合に伝達効率の急激な低下が観察された。これは、TP114ΔpilS::catの接合効率が、野生型TP114と比較して不安定な条件下で損なわれたことを示唆している。トランスで pilSを発現するプラスミドpPilSを用いた補完は、接合率の有意な回復をもたらした。腸管内での接合におけるT4Pの関与を試験するため、マウスモデルを用いて接合実験を行った。合計で5匹のSM処置したマウスに、最初にレシピエント株としてのKN03を、次いでドナーとしてのKN01+TP114またはTP114ΔpilS::catを与えた。接合効率を、4日間連続して糞便を収集することでモニターした(
図17A)。4日目にマウスを屠殺して糞便と盲腸に見られる接合効率を比較した(
図17B)。野生型TP114はその予想された頻度(>10
-1)で接合することができたが、TP114ΔpilS::cat はインビボで伝達できなかった。これは、インビボ接合におけるTP114のT4Pの重要な役割を示し、IncI2接合プラスミドにまたがったT4Pの保存を説明する可能性がある。
【0153】
TP114におけるpilVアドヘシン変異体とシャフロンの役割。HDTMデータは、pilVのN末端部分のみがインビボ接合に不可欠であることを示したが、これは実際にはHDTM法のアーティファクトであることが疑われた。この変則的な結果は、pilVのC末端にシャフロンが存在し、これが遺伝子の末端を再編成していくつかの変異体を生成することによる。pilV遺伝子は、ドナー細菌によるレシピエント細胞の認識に関与していると考えられているアドヘシンをコードしている。アドヘシンはT4Pの先端に存在して接触を確立し、2個の細胞間の相互作用を安定させると考えられている。したがって、シャフラーゼを欠失させてシャフロンをTP114Δrci内での安定したコンフォメーションに固定した。次に、インビボ接合におけるpilVとシャフロンの役割を評価するために、最初の実験でpilV遺伝子全体を欠失させてTP114ΔpilV−rciを作製した。別の変異体では、シャフロンのみをFlagタグに置き換え、TP114pilVΔシャフロン−rci::catさらに別の一連の変異体において、pilV遺伝子変異体を特定のコンフォメーションに固定した(TP114pilVΔシャフロン::pilV1−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV2−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV3−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV3’−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV4−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV4’−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV5−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV5’−cat)。これは、pilVのC末端部分がPilVを介した接着に不可欠であるかどうかを試験し、異なるpilV変異体の重要性を解明するために行った。そのため、TP114ΔpilV−rci、TP114pilVΔシャフロン−rci:: cat、及びすべての固定されたpilV変異体をKN01に伝達して、交配ペア安定化におけるそれらの役割を試験した。各コンストラクトを、固体、静的液体及び攪拌液体条件下での接合によってKN03レシピエント細菌に伝達させた。pilVアドヘシンは、両方の液体条件での接合に不可欠であることがわかり、交配ペア安定化におけるアドヘシンの役割が確認された(
図16B)。より正確には、TP114pilVΔシャフロン−rci::cat が固体支持体上で接合する能力は、コントロールと比較してわずかに低下したが、液体中で接合する能力(攪拌のあるなしによらず)は完全に無効化された(
図16B)。これは、HDTMデータによって示唆された結果とは異なり、pilVのC末端部分が機能的なアドヘシンを生成するうえで不可欠であることを示した。さらに、2つの大腸菌細胞間でのTP114 pilV変異体の伝達が固体培地上のすべてのpilVの形態で高い接合効率をもたらしたのに対して(
図16C)、一部の変異体のみ(すなわち、TP114pilVΔシャフロン::pilV3’−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV4−cat、及びTP114pilVΔシャフロン::pilV4’−cat)が、静的液体(
図16D)及び攪拌液体条件(
図16E)で交配ペア安定化及び接合をもたらした。これは、pilV 変異体が細菌の表面の異なる構造を認識し、プラスミド伝達にこれらの相互作用が必要であることを示した。このように、変異体TP114pilVΔシャフロン::pilV3’−cat、TP114pilVΔシャフロン::pilV4−cat、及びTP114pilVΔシャフロン::pilV4’−catがEcNの表面に存在する構造、おそらくはリポ多糖、を認識したのに対して、他の変異体はEcN上に見られない構造を認識した。この相互作用がインビボでの接合に必要であることを確認するため、EcNを認識する(TP114pilVΔシャフロン:: pilV4’−cat)、または認識しない(TP114pilVΔシャフロン:: pilV1−cat)1つの変異体であるpilV欠失変異体TP114ΔpilV−rciを、レシピエントとしてKN03を用いたインビボ接合アッセイに使用した(
図17C)。このアッセイでは、唯一、TP114pilVΔシャフロン::pilV4’−catのみがインビボで接合を行うことができ、レシピエント細菌の表面へのPilVアドヘシンの結合がインビボでの接合に必要であることが確認された。
【0154】
TP114の排斥タンパク質の同定。排斥と不和合性は、2つのプラスミドが同じ細胞を共有することを妨げる2つのメカニズムである。不和合性は受動的であり、2つの複製または維持システムが類似しすぎている場合に生じるのに対して、排斥は、細胞間接触またはレシピエントへのDNA侵入を防ぐ能動的なメカニズムである。TP114における排斥の存在と範囲を最初に検証した。これを行うため、6つの異なる接合プラスミドを有するKN02からKN01への接合実験を行った。選択されたプラスミドは6つの不和合性ファミリーにまたがり、それらのファミリーを最初に不和合性と排斥に基づいて分類した。TP114のみが独自の排斥を媒介できるはずである。予想された通り、排斥現象は、TP114がTP114を有するレシピエントに伝達する場合にのみ観察された(
図18A)(
図18B)。しかしながら、この実験では、不和合性を維持及び排斥と区別することはできなかった。これは、TP114のT4SSを乗っ取って接合する能力を有するが、完全に異なる複製メカニズムを使用する可動性プラスミドpCloDF13を使用して解決した。
図18Bに示されるように、TP114とpCloDF13の両方の排斥率は類似しており、TP114が排斥されることが証明された。この耐性メカニズムを特徴付ける最終的な試みとして排斥実験をインビボで行い、KN01+TP114及びKN02+TP114 ::tetBを接合ペアとして使用した。この環境では排斥はさらにストリンジェントであり、4日間で接合完了体を生成することはほとんどなかった(
図18C)。注目すべき点として、結果は糞便と盲腸とで一貫していた(
図18D)。HDTMライブラリ2を使用して、排斥の原因となる遺伝子を調べた。HDTMの最終ステップでは、TP114 ::tetBをHDTMライブラリ2に伝達させ、接合完了体をシークエンシングした。ほとんどの接合完了体では、これまで機能が不明であった遺伝子であるTP114−005にトランスポゾンが挿入されていた(表12)。排斥タンパク質がTP114−005であることを確認するため、HDTMライブラリ8からのクローンを最初にMG1655Nx
Rに伝達させ、次にKN02に戻した。インビトロ 接合効率によりTP114は細胞の1%に伝達することができるため、2ラウンドの連続した伝達を用いることで、TP114 :: Tn5クローンが分離され、それにより、同じレシピエント細胞への伝達が最小限に抑えられる。また、排斥が不充分な場合でも、不和合性は、維持不和合性メカニズムを通じて、同じ細胞内のTP114の2つの異なるクローンの持続を防ぐはずである。TP114−005への挿入はより高頻度であるため、それらも容易に分離されるはずである。TP114 :: Tn5の3つのクローンの排斥能力を、TP114 ::tetBをKN01からKN02に伝達させることによって試験した。高い接合頻度(
図19A)及び排斥率(
図19B)によって示されるように、ほとんどのクローンは排斥を行うことができなかった。予期せざる点として、これらのクローンが接合する能力を試験している間、排斥不全クローンは野生型TP114よりも約10倍効率的であった(
図19C)。したがって、TP114−005遺伝子及び対応するタンパク質が排斥プロセスに関与しているものと理解される。
【0156】
TP114の接合に有害な影響を与える遺伝子の同定。HDTM実験は、TP114の接合伝達の頻度を制限する遺伝子を発見するうえで役立った。これらの遺伝子は、各伝達ステップの後にカウント比が増加した遺伝子を調べることによって決定することができる。本発明者らの実験では、2個の遺伝子のみがインビトロとインビボの両方でTP114の伝達に有害であることがわかった。これらの遺伝子は、TP114−005(以前は排斥タンパク質として同定されていた)及び yaeC (TP114−070)であった(
図20)。興味深い点として、遺伝子機能分析により、yaeCは 、接合プラスミドのIncFファミリーの遺伝子を抑制する転写因子であるfinOホモログであることが明らかになった。したがって、yaeC遺伝子は、インビトロ及びインビボの両方でTP114の伝達を制限する転写抑制因子である可能性が最も高い。この遺伝子の欠失が、インビトロ及びインビボの両方でTP114の伝達を向上させるうえで望ましいと考えられる。
【0157】
実施例III−TP114に由来する接合送達システムの構築
菌株、プラスミド及び増殖条件。本実施例で使用されるすべての菌株とプラスミドを表1に示す。すべてのプラスミド配列は、配列の付録に記載されている。本実施例で使用されるオリゴヌクレオチドは表2に示される。株の増殖条件、DNA操作、プラスミド構築、リコンビニアリング、及び常法の形質転換の詳細は、実施例Iの材料と方法のセクションに記載されている。
【0158】
ローディングドックpREC1の構築。pREC1は、ローディングドックカセットを増幅し、これを1つの簡単なステップで伝達マシナリーに挿入するための鋳型として使用されるプラスミドである。この例では、pREC1を使用して、TP114伝達マシナリーにローディングドックを挿入した。これを行うため、pREC1を最初にギブソンアセンブリによってプラスミドにアセンブルした( pFG018 からのtetB耐性遺伝子とpKD4からの oriV
R6K を増幅する)。FRT及び attP
Bxb1部位をプライマーアセンブリテールによって与えた。得られたプラスミドpREC1(
図21C)を、その後のPCR増幅の鋳型として使用した。FRT−tetB−attP
Bxb1 カセットをリコンビニアリングによってTP114に挿入し、TP114 ::tetB プラスミドを作製した(Datsenko et al.,2000)。これにより、このバージョンのTP114を、DROID(Double Recombinase Operated Insertion of DNA)(DNAのダブルリコンビナーゼ操作による挿入)による遺伝子カーゴの挿入に使用することができる。
【0159】
pBXB1の構築。プラスミドpBXB1はインテグラーゼBxb1を含み、pSB1A3からのoriV
pMB1及びアンピシリン耐性遺伝子(bla)、及びgBlock−BxbIからのBLAインテグラーゼ遺伝子を増幅することによってアセンブルした(
図21D)。Bxb1インテグラーゼのプロモーターは、Bxb1インテグラーゼの構成的発現を可能にする。2つのPCR産物をSPRIによって精製し、pBXB1をギブソンアセンブリによって構築した後、化学的にコンピテントなEC100Dpir+に形質転換した。
【0160】
ダブルリコンビナーゼ操作挿入DNA(DROID)。同じベクター上で遺伝子カーゴと伝達マシナリーとを組み合わせるために、ここではDROIDと呼ばれる新しいプロセスが開発された(
図22A)。この例では、DROID法を使用して、プラスミド複製を不安定にすることなく2個のDNA分子を結合した。DROID法では、両方のDNA分子に特定の組み込み部位と組換え部位が含まれている必要がある。伝達マシナリーの場合、組換え部位は、TP114 ::tetBのtetBインサートに存在するローディングドックによって与えられる(
図22B)。遺伝子カーゴの場合、組換え部位は、挿入デバイス」(
図21AB)と呼ばれる一時的な骨格内にそのアセンブリ時に与えられ、挿入デバイスはDROID手順中に除去される。pBXB1及び遺伝子カーゴ挿入デバイスの1つを、エレクトロポレーションによって同じEC100Dpir+株に形質転換した。次に、改変されたTP114 ::tetBを、30℃での接合により、pBXB1とKill1または3挿入デバイスの一方とを含むEC100Dpir+に伝達した。インテグラーゼは構成的に発現されるため、組み込みを促進するには単一の継代培養ステップで充分である。得られたプラスミドTP114 ::tetB−Kill1または3を次に 大腸菌 MG1655Nx
Rへの接合によって伝達した。遺伝子カーゴからとTP114 :: tetBからの選択モジュールを有する接合完了体を選択した。この時点から、菌株を37°Cで培養して、TP114を不安定化させる可能性のある組み込まれた遺伝子カーゴからの熱感受性複製起点(oriV
pSC101ts)の活性化を回避した。次いで、大腸菌 MG1655Nx
R+TP114 ::tetB−Kill1または3をエレクトロポレーションによってpCP20で形質転換した。pCP20は、リコンビニアリングカセット内のFRT部位及び遺伝子カーゴ内のFRT部位の両方を認識するFLPリコンビナーゼを発現し、これらを再結合してtetB、attL
bxb1部位、及び挿入デバイスを構成するoriV
pSC101tsをノックアウトする(
図22A)。インサートの完全性を、TP114、TP114 ::tetB (
図22B)、TP114 ::tetB−Kill1(
図22C)、及びTP114 :: Kill1(
図22D)についてPCRにより評価した(TP114 :: Kill3についてのデータは示されていない)。DROID技術は、大きなコンストラクトの染色体挿入や非常に大きなプラスミドまたは外因性染色体のアセンブリなど、いくつかの用途にも速やかに適応させることができる。
【0161】
Cas9テスト遺伝子カーゴ挿入デバイスの構築。cas9とgRNA(複数可)をコードする2つの遺伝子カーゴを、DROID法を用いて伝達マシナリーに挿入した。このような大規模な遺伝子クラスターのアセンブリは通常複雑であり、複数のステップが必要であるが、DROIDによるアプローチはプロセスを大幅に簡素化するものである。cas9−gRNA遺伝子クラスターの最も重要な側面の1つは、高度に特異的なgRNAを設計することである。そのようなgRNAsを設計するため、DNA2.0(ATUM)ウェブベースのソフトウェアを、標的配列としてクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(CAT)を、オフターゲット配列として大腸菌K−12のゲノムを使用して実行した。次に、最も強力なgRNAスペーサー(最高の ΔG、最低のオフターゲット)を 腸内細菌科及びEcNゲノムに対してBLASTn(Altschul et al.,1990)にかけ、オフターゲットの高い候補gRNAを除去した。このバイオインフォマティクス戦略により、3つのgRNA(すなわちgRNA 1、2、及び3)が同定された(
図21FG)。遺伝子カーゴを、2段階のアプローチで伝達マシナリーベクターに導入した。これを行うため、対応するプライマー(表2)を使用して、pKN02のcas9遺伝子、pKD4のカナマイシン耐性カセット、及びpGRG36のoriV
pSC101tsを組み合わせて第1のプラスミドを作製した。gRNA1の全体を前のコンストラクト(pKN02)から増幅し、gRNA2及び3スペーサーをPCRプライマー中に直接付加した。gRNA1(Kill1)とともにcas9遺伝子を含む第1の遺伝子カーゴを作製した。gRNA1、2、及び3(Kill3)とともにcas9遺伝子をコードする別の遺伝子カーゴも得た。遺伝子カーゴKill3では、遺伝子座の反復的性質によるミスアセンブリを防ぐため、各gRNA間にアセンブリタグを配置した。他の断片の連結は、gRNA1とoriV
pSC101tsとの間のFRT部位、及びoriV
pSC101tsとcas9との間のattP
bxb1部位などの短い配列のプライマーテール中への付加を容易にした。どちらの遺伝子カーゴ挿入デバイスもギブソンアセンブリによって構築した。すべてのgRNA配列を、サンガーシークエンシングによって確認した(データは示さず)。Kill1とKill3の完全なプラスミドマップをそれぞれ
図21Aと21Bに示す。
【0162】
インビトロ接合アッセイ実施例Iの材料及び方法のセクションに記載されているようにして、インビトロ接合実験を行った。
【0163】
クロラムフェニコール耐性シトロバクター・ロデンティウム(Citrobacter rodentium)の生成。pGRG36の使用及びTn7を介したDNAの挿入に関する詳細は、実施例Iの材料及び方法のセクション及び
図1に示されている。詳細には、組み込みプラスミドpGRG36−SmCmを、エレクトロポレーションにより C.ロデンティウム(C.rodentium)に形質転換した。glmS遺伝子のターミネーターへのカセット挿入を媒介するため 、C.ロデンティウム(C.rodentium)DBS100を、OD
600nm0.6となるまでアラビノースを含むLB中で30℃で最初に培養した。次に、細胞に42℃で1時間ヒートショックを与え、37℃で一晩インキュベートしてプラスミドをクリアランスさせた。次に、細胞をLB寒天プレート上にストリークし、インサートのみを選択した。表2のプライマーoGSC6−F、oGSC6−R、oGSC5−F、opir3−F、及びopir3−Rを使用して、プラスミドのキュレーションとゲノムへのカセットの挿入を確認した。
【0164】
pNA22、pNA23及びpNA24の構築と試験。pNA22〜24のプラスミド群を、TP114の複製に関与する最小のDNA配列を区切るように設計した。複製開始配列は、TP114中でこれまでにTP114−083として同定されたrepA遺伝子の近くに通常位置している(実施例IIを参照)(Praskier et al.,2005)。複製する最小のDNA配列を単離するため、repAとrepAの上流または下流のいずれかに位置する1,000bpの領域、またはその両方をギブソンアセンブリによってpKD3にクローニングし、pNA22〜pNA24を作製した。pKD3の複製は pir依存性であるため、コンストラクトを化学的にコンピテントな E. coli EC100Dpir +に形質転換した(Metcalf et al.,1994)。次に、TP114からの複製起点の機能を E. coli BW25113での形質転換によって試験した。
【0165】
pir+EcN(KN05)株の作製。pir遺伝子をEC100Dpir+から増幅し、pFG018のrrnBターミネーターとSmaI+XhoIで消化したpGRG36骨格とでアセンブルした。次に、得られたプラスミドpGRG−pir+(Kvitko et al.,2012)をMFDpir+(Ferrieres et al., 2010)に形質転換し、RP4を介した接合によりEcNへと可動化した。glmS遺伝子のターミネーターへのpir挿入を誘導するため、EcNを、0.6OD
600nmにまでアラビノースを含むLB中で30℃で最初に培養した。次に、細胞に42℃で1時間ヒートショックを与え、37℃で一晩インキュベートしてプラスミドをクリアランスさせた。pGRG36の骨格を選択するため、アンピシリンを含む、または含まないプレート上に20個以上のコロニーをストリークすることによってプラスミドキュレーションを試験した。次に、プラスミドのキュレーションが確認されたクローンを、表2に示されるそれぞれのプライマーを使用して、pir挿入についてPCRによってスクリーニングした。
【0166】
伝達マシナリーのホスト制約付き複製。cat及びoriVR6K をコードするカセット をpKD3から増幅し、大腸菌EC100Dpir+株でTP114−083のCDS(repA)を置き換えるために使用した
。組換えクローンを、得られたプラスミドTP114の表2複製からの対応するプライマーを用いてPCRによりスクリーニングした。得られたプラスミドTP114ΔrepA::cat−oriV
R6Kの複製は、EC100Dpir+の染色体に位置するpir遺伝子に依存しているはずである。TP114ΔrepA::cat−oriV
R6Kのpir依存性複製を、pir+ (KN05及びEC100Dpir+)またはpir− 宿主(KN01)での接合伝達により確認した。
【0167】
インシリコoriT
TP114予測。転移の起点(oriT)は通常、接合性及び可動性プラスミドのニッカーゼのプロモーターの近くに位置している。TP114では、予測されるニッカーゼタンパク質をコードするnikAB(TP114−041及びTP114−042)のプロモーターの近くに大きな遺伝子間領域が位置している。TP114(oriT
TP114)配列の潜在的なoriTのインシリコ分析を、BLASTnを使用して表5に記載される他のIncI2プラスミドと最初に比較して潜在的なoriT
TP114内の高度に保存された領域を見つけた。これにより、oriT
TP114を138bpのコア配列に絞り込むことができた。次に、このコアoriT
TP114を、EMBOSS Needle Webベースソフトウェア(Rice et al.,2000) を使用したペアワイズシーケンスアラインメントによって最小oriT
R64 (Furuya and Komano,2000)と比較した。アラインメントは、デフォルト設定を用いて行った(ギャップの形成に10、拡張に0.5のコスト)。次に、結果にマニュアルでアノテーションを付け、重要な繰り返しの位置、推定上の結合及びニッキング部位を示した。
【0168】
pNA01及び誘導体の構築。予測されたoriT
TP114を含む全遺伝子間領域を増幅、クローニングし、ギブソンアセンブリを使用して、pSIM7の宿主範囲の広いoriV
pBBR1、及びpFG018のtetBとアセンブルし、それによりpNA01を作製した。代替的プラスミド(pNA02)は、oriT
TP114配列の予測されるニッキング部位を中心とする7bpの欠失を含み、pNA01と同じ骨格とアセンブルされたものである。pNA01及びpNA02のカナマイシン耐性変異体(それぞれpKN30及びpKN31)を、pNA01またはpNA02の骨格を増幅し、pKD4からカナマイシン耐性遺伝子を増幅することによって作製した。次に、PCRフラグメントを精製し、ギブソンアセンブリを使用して互いにアセンブルした。
【0169】
oriT
TP114の欠失。FRTに隣接するcatのカセットをpKD3から増幅し、リコンビニアリングによって、ニッキング部位を構成する予測されたoriT
TP114の一部を欠失させた。欠失クローンをPCRによって検証し、次に接合実験で使用して、伝達頻度に対する欠失の影響を評価した。
【0170】
統計的分析統計的有意性を、実施例Iの材料及び方法のセクションに記載されているように行った。
【0171】
3.0−接合送達システムの形態
遺伝子カーゴの送達モードのバリエーション。遺伝子カーゴ核酸分子は、それぞれに利点と潜在的な不便を伴うさまざまなアプローチを使用して送達することができる。このセクションでは、COP送達モードについて説明する。まず、
図23Aに示すように、COPはいくつかの要素に分解することができる。COPは、最初、プロバイオティクス細菌と接合送達システムとで構成されている。接合送達システムは、伝達マシナリーと、それ自体が機能的な遺伝子モジュールを含む遺伝子カーゴでそれ自体が構成されている。このように、接合送達システムは、いくつかのベクターに分解することができ、プロバイオティクスドナーの染色体に部分的に組み込むことができる。遺伝子カーゴを可動化するための最初の戦略は、遺伝子カーゴを伝達マシナリーに挿入して、細菌細胞の集団内で自律的に増殖できる単一のベクターを形成することである。この方法は、最大限の接合伝達が必要な用途において望ましい場合があるが、微生物叢中での接合送達システムの持続につながる可能性もある。したがって、遺伝子カーゴの一過性の発現を与える別の増殖の方法も検討する必要がある。例えば、遺伝子カーゴは、時間の経過とともに、または短期間で異なるレベルで発現されることが必要な場合がある(例えば、GLP−1などのインスリン刺激ペプチドの発現)。あるいは、遺伝子カーゴが細菌集団に対する負の影響を媒介する場合、環境中でのその持続は、耐性菌の出現につながる可能性がある。このような代替方法の例には、制約付きシス可動化及びトランス可動化が含まれる。これらを
図23Bに示し、次のサブセクションで検討する。
【0172】
3.1 −シス可動化による遺伝子カーゴ輸送
強力な接合送達システムモードとしてのシス可動化。シス可動化は、伝達マシナリーと遺伝子カーゴの両方が同じベクター上にある送達モードである。この条件では、接合送達システムがレシピエント細菌に伝達され、レシピエント細菌が新しいドナーとなる。1つのドナー細菌が複数のドナー細胞を生じて連鎖反応を引き起こす可能性があるため、このプロセスによれば、接合送達システムと遺伝子カーゴは指数関数的に伝達される。この指数関数的な拡散のため、シス可動化は、細菌集団内で遺伝子カーゴを増殖させるための理論上は最も効率的な送達モードであるが、環境内での接合送達システムの持続にもつながる。シス可動化戦略の主な課題の1つに、伝達マシナリーと遺伝子カーゴを同じベクター上で連結することがある。
【0173】
DROIDは、DNA分子を融合するための強力な方法である。2つのDNA分子の結合を媒介するには、例えば、ギブソンアセンブリ、消化ライゲーション、Golden Gate、USERクローニング、その他の誘導法などのいくつかの方法を使用することができる。代替案の1つとして、リコンビニアリング、遺伝子ドクター、NO−SCARなどの組換えベースの方法を使用することがある。ただし、これらの方法では大きなDNAフラグメントを簡単に欠失させることができるが、特定の位置に挿入することができるDNA分子の長さによって制限される。DROID法は、非常に迅速に行うことができ、セリンインテグラーゼを使用することでオーソゴナルな挿入部位に対して高度に特異的であるため、既存の方法に比べていくつかの利点がある。DROIDによれば、両方のDNA分子同士の融合がサイズに依存しないため、複雑な遺伝子クラスターを有する大きなDNA分子を簡単に挿入することができる。DNA分子の融合後、特定のDNAフラグメントを切除する第2のリコンビナーゼの作用により、望ましくないDNA配列を簡単に除去することができる。DROID法では、挿入部位(1つのFRT部位と1つのattR
Bxb1部位)の両端に、互いに相同ではない特徴的な痕跡が残る。これにより、挿入されたDNA分子をノックアウトする可能性のある痕跡間の組換えが防止される。
【0174】
遺伝子カーゴ挿入デバイスの機能テスト。DROID法を試験するために、2つの遺伝子カーゴ挿入デバイスを構築した。この例では、遺伝子カーゴはcat遺伝子を標的とするcas9−gRNA複合体で構成されているため、cat遺伝子(pT)を有するプラスミドを含む細胞にKill1またはKill3挿入デバイスを定期的に形質転換するとプラスミドが失われるはずである。したがって、遺伝子カーゴが機能していることを検証するためのコントロールとして、遺伝子カーゴ挿入デバイスを、最初にpTプラスミドを含む細胞に直接形質転換した。挿入デバイスとpTプラスミドの両方を同時に選択するのではなく、遺伝子カーゴ挿入デバイスのみを選択した場合に形質転換効率が大幅に高くなることがわかった(
図24)。さらに、pTはGFPをコードしているため(
図21.F)、細胞内に存在すると、青色光の下で簡単に視覚化できる蛍光シグナルが発生する。Kill1とKill3の両方の挿入デバイスの形質転換からのCFUはすべてGFP陰性であり、形質転換体内のpTのクリアランスを示している。これは、両方の遺伝子カーゴがそれらの挿入デバイスで機能していることを示している。
【0175】
DROIDによる伝達マシナリーへの2つの試験遺伝子カーゴの挿入。DROID法は3つの簡単なステップに分けることができる(
図22A)。最初のステップは、リコンビニアリングによってローディングドックを標的DNA分子に挿入することである(
図22B)。このステップは1回だけ必要である。次に、得られたプラスミドを、同じアプローチを使用していくつかの異なる遺伝子カーゴを挿入するために使用することができる。ローディングドックは、attB部位
Bxb1をコードするpREC1の断片であり、TP114に挿入されてaph−III遺伝子を置換して、TP114 ::tetBを生成する。2番目のステップでは、遺伝子カーゴ挿入デバイスとプラスミドpBXB1の両方を同じ細胞にクローニングする必要がある。Kill1(
図21A)とKill3(
図21B)の2個の遺伝子カーゴ挿入デバイスを使用してDROID法を試験した。TP114 ::tetBを、pBXB1とKill1または3を含む大腸菌EC100Dpir+へと接合によって伝達させた。次に、TP114 ::tetB−Kill1または3(
図22C)を、大腸菌MG1655Nx
Rへと伝達させた。方法の最後のステップは、大腸菌MG1655Nx
R+TP114::tetB−Kill1または3をpCP20で形質転換することである。このステップにより、tetB、attL
Bxb1 、及び oriV
pSC101tsを除去することができる(
図22D)。最終的な接合送達システムであるTP114 :: Kill1とTP114 :: Kill3を、KN01及びKN01ΔのdapAに伝達した。ステップ1〜3までのプロセス全体が完了するまでに11日間かかるが、ステップ1は毎回必要ではない。したがって、これにより、遺伝子カーゴのクリーンな挿入を行う時間が7日間に短縮される。
【0176】
異なる細胞型における遺伝子カーゴのシス可動化。伝達マシナリー(TP114)へのDROID後に遺伝子カーゴが機能するかどうかを試験するため、TP114 :: Kill1をモデルとして使用した。KN02、大腸菌MG1655Nx
R、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、及びサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)の4つの異なるレシピエント細胞の1:1ミックスに接合送達システムTP114 :: Kill1を伝達した。このミックスでは、KN02のみがクロラムフェニコールに耐性を有するため、cas9−gRNA遺伝子カーゴの標的とするのはKN02のみとすべきである。TP114 :: Kill1の効率を、COPに供した細胞の生存比率によって評価した。これらのCOPに供した細胞の生存比率は、接合送達システムを受け取って生存した細胞の割合を表す。COPに供した細胞の生存比率は、TP114 :: Kill1(接合送達システムを生き延びた細胞)の接合効率をTP114の接合効率(接合送達システムを受けるはずであった全細胞)で割ることによって計算した。予想通り、接合送達システムによってKN02のみが排除された(
図25A)。殺滅がKN02のゲノムにおけるオフターゲティングによるものではなかったことを確認するため、4つのレシピエントの第2の混合物(シトロバクター・ロデンティウム(Citrobacter rodentium)KN04、大腸菌MG1655Nx
R、KN03、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium))を調製した。このミックス中ではC.ロデンティウム(C.rodentium)KN04のみが、その染色体内のcat遺伝子の挿入のためにクロラムフェニコールに耐性である。COPに供した細胞の生存比率を再び用いて、TP114 :: Kill1の効率を評価した。予測されたように、C.ロデンティウム(C.rodentium)KN04のみがCOPシステムの影響を受け、これにより、cas9−gRNA遺伝子カーゴが異なる細胞で発現され、cat遺伝子に対して高度に特異的であることが示された(
図25B)。
【0177】
DROID法により、伝達マシナリーと遺伝子カーゴとが1個のベクターにうまく融合された。本実施例では、DROID法を使用して、伝達マシナリーと遺伝子カーゴとを3つのステップで結合できることが示された。これらのステップは、遺伝子カーゴと伝達マシナリーとの間の機能的な重複を避けるように設計されたものである。FRT組換えステップは、伝達マシナリーから選択モジュールを除去し、遺伝子カーゴから維持モジュールを除去し、それにより、単一の選択及び栄養複製モジュールを有する単一のDNA分子を作製するうえで必要とされた。そこで、本発明の接合性送達システムを、しばしば抗生物質耐性腸内感染症及び尿路感染症の原因となる細菌の分類群である腸内細菌のいくつかの代表的な菌への遺伝子カーゴの送達の概念の証明に用いた。
【0178】
3.2 −制約されたシス可動化による遺伝子カーゴの送達
バイオセーフティ対策としての制約付きシス可動化。制約付きシス可動化システムは、遺伝子カーゴと伝達マシナリーが同じDNA分子上に配置された接合送達システムで構成されている。しかし、かかるシステムでは、維持モジュールからの不可欠な複製開始遺伝子がドナー株の染色体に挿入される(
図23B)。これにより、接合送達システムの複製がCOP染色体に依存するようになる。レシピエント株は接合送達システムからの遺伝子を発現することができることから、かかるシステムはなお、指数関数的な速度で増殖することができると考えられる。しかしながら、接合送達システムは、レシピエント細菌内では複製できないため、最終的には失われる。したがって、システムは高い接合効率を示すが、環境中で持続しないため、投与のダイナミクスをより適切に制御し、バイオセーフティレベルを向上させることができる。
【0179】
oriV
TP114の位置特定。制約付き複製に向けた最初のステップは、制約付きシス可動化ではrepAをドナー細胞染色体に再配置する必要があることから、TP114(oriV
TP114)の複製起点の位置を確認することである。接合プラスミド複製は通常、RepAと呼ばれるプラスミドにコードされたタンパク質によって開始される。このタンパク質は、宿主細胞からDNA複製マシナリーを動員してプラスミドDNAの複製を可能にする。Tp114によってコードされる複製開始タンパク質は、インシリコ分析によって、repA 遺伝子TP114−083によってコードされていることが予測された(実施例IIを参照)。ほとんどの接合プラスミドでは、oriVはrepA遺伝子の近くの遺伝子間領域に見出される。ただし、TP114内で、repA は2つの遺伝子間領域によって挟まれている。どちらがoriV
TP114であるかは不明であった。そのため、repAを、遺伝子の1,000bp上流、下流、または両側1,000bpのいずれかでプラスミド骨格にクローニングした。プラスミド骨格は、染色体に組み込まれたpir遺伝子に依存する複製起点であるoriV
R6Kを含む。アセンブリを、最初にpir+株大腸菌EC100Dpir+で検証した後、pir−株BW25113にクローニングしてoriV
TP114機能分析を行った(
図26)。試験した3つのプラスミドのうち、pir−宿主内で複製できたのは1つだけであった。このプラスミドは、遺伝子の両側にrepA及び1,000bpを含んでいた。この結果は、TP114−083が実際のRepAタンパク質をコードしており、oriV
TP114がrepA遺伝子の近くにあることを示している。
【0180】
TP114の制約付きシス可動化。制約付きシス可動化は、伝達マシナリーと遺伝子カーゴが、染色体にコードされた複製タンパク質の制御下で複製する同じベクター上に位置する接合送達システムを指す。制約付きシス可動化を開発するには、複製タンパク質とそれに関連する oriVを特性評価することが必要である。oriV
TP114とそのrepA遺伝子の位置が特定されたが、複製タンパク質とoriVのペアを選択するためには他のいくつかの要因を考慮する必要がある。例えば、複製タンパク質は、環境中の接合送達システムの維持を避けるため、潜在的なレシピエント細胞の染色体では稀でなければならない。また、接合送達システムの不和合性に基づく拒絶を低減するには、TP114の複製システムとは異種の複製システムを使用することが望ましい場合がある。最も研究され、理解されている複製システムの1つに、R6Kの pir依存性oriV
R6Kがある。pir遺伝子によってコードされるPiタンパク質は、IncXファミリーの接合プラスミドに天然に見られ、細菌の染色体に頻繁に見られないという利点がある。Tn7組み込みプラスミドpGRG36に基づいたpir組み込みシステムが開発されており、pir+EcN株KN05が作製されている。TP114−083 (repA)を市販の大腸菌EC100Dpir+クローニング株を用いてoriV
R6K及びクロラムフェニコール耐性カセット(cat)に置き換え、TP114ΔrepA::cat−oriV
R6Kを作製した。次に、このプラスミドをKN05及びKN01に伝達してTP114ΔrepA::cat−oriV
R6Kがpir+及びpir−株でそれぞれ複製する能力を評価した。接合効率を、同じ条件下で野生型TP114と比較した(
図27A)。予想通り、TP114ΔrepA::cat−oriV
R6KのKN01(pir−株)への伝達からは接合完了体は得られなかったが、KN05(pir+株)への接合では接合完了体が得られた。しかしながら、TP114ΔrepA::cat−oriV
R6Kの接合効率は、野生型TP114の接合効率よりも低かった。今回はドナー株としてKN05を使用し、レシピエントとして大腸菌EC100Dpir+を使用して、第2の接合実験を試みた(
図27B)。その場合、両方のプラスミドの結合効率は同等であり、この場合、制約付きシス可動化が結合効率にほとんど影響しなかったことを示している。かかる維持モジュールを使用すると、pir−株へのプラスミドの伝達は影響されないはずであるが、レシピエント細胞での複製は不可能であるはずである。これは、遺伝子カーゴのペイロードと伝達マシナリーの発現はpir−株で依然、行われるが、この発現は一過性のものであることを意味する。かかる一過性発現は、定常的発現がCOP効果、環境、または対象に有害となり得るいくつかの状況で望ましい。したがって、制約付きシス可動化は、高い結合効率を維持しながら、プラスミドの持続を防ぐ効率的な方法である。
【0181】
3.3 −トランス可動化による遺伝子カーゴ配送
遺伝子カーゴの配送モードとしてのトランス可動化。トランス可動化は、トランスファー機構と遺伝子カーゴが2つの異なるDNA分子上に存在するベクターシステムを使用して実現される(
図23B)。この形態では、遺伝子カーゴは、伝達マシナリーの栄養複製モジュールと和合性のある輸送モジュールを含む必要がある。伝達マシナリーは、染色体への挿入またはそれ自体の輸送モジュールの破壊のいずれかによって固定化することができる(oriT)。したがって、送達のこのモードは、遺伝子カーゴがレシピエント細菌へとトランス(伝達マシナリーとは独立した異なるDNA分子上)で可動化されることを可能とする。遺伝子カーゴの栄養複製モジュールの選択は、環境中でのその持続よりも高い重要性を有し得る。この送達モードは、最大のバイオコンテインメントを可能にするが、レシピエント細菌が遺伝子カーゴを増殖させることができないため、より適度な伝達効率が得られる。
【0182】
TP114の伝達起点(oriT)の位置特定。すべての可動化プラスミドは、接合プロセスが生じるうえでリラクソソームによるそれらのoriTの認識に依存している。リラクソソームは、oriT上の特定の配列を認識して結合し、ニッキング部位と呼ばれる特定の場所でDNAの一本鎖を切断するマルチヘテロマータンパク質複合体である。次に、DNAの一本鎖がT4SSに導かれ、T4SSを介してレシピエント細胞に伝達される。T4SSをコードしていない可動化プラスミドは、別の接合プラスミドによってコードされたT4SSを使用することができる。しかしながら、可動性プラスミドは、それ自身のoriT 配列に特異的なそれ自身のリラクソソームをコードしている。したがって、oriT は、伝達マシナリーによる遺伝子カーゴ伝達における最も重要な配列の1つである。本明細書に示される従来の例では、遺伝子カーゴとトランスファー機構との間の物理的連結を利用して、DNA伝達に伝達マシナリーのoriT配列をシスで用いている。しかしながら、可動化プラスミドで観察されるように、oriT配列を伝達マシナリーから遺伝子カーゴの核酸分子に再配置して、遺伝子カーゴをレシピエント細胞にトランスでのみ可動化することが可能である。重要な点として、oriT
TP114を最初に特定する必要があった。他の接合プラスミドのトポロジーに基づくと、oriT 配列は、リラクソソームのサブユニットであるニッカーゼ遺伝子の近くにしばしば位置している。TP114上で、ニッカーゼは、これまでに同定されているニッカーゼと同じタンパク質ファミリーpfam03432ドメインを共有するコア遺伝子であるTP114−041(nikB)であると予測される。TP114では、2個の分岐遺伝子を含む368bpの遺伝子間領域がnikBのプロモーター領域の近くに位置し、潜在的なoriTを示している。
【0183】
トランス可動性ベクターpNA01の構築。368bpの予測されたoriT
TP114を、栄養複製モジュール(oriV
pBBR1)とペイロードモジュール(tetM) を含む広宿主域プラスミド骨格にクローニングした。遺伝子カーゴpNA01を、TP114を含むKN01ΔdapAに形質転換した後、次いでKN02へと可動化した(
図28A)。pNA01の接合効率はTP114の接合効率と同等であり、pNA01にクローニングされた368 bpのDNA配列がoriT
TP114であることが確認された。
【0184】
TP114のニッキングサイトの特定。トランス可動化効率は、oriTの欠失またはドナーの染色体への組み込みのいずれかによるTP114の固定化によってわずかに完成され得る。伝達マシナリーの固定化は、標的細菌へのその拡散を防ぎ、環境中の伝達マシナリーの持続を制限することによってバイオセーフティを向上させることができる。また、固定化された伝達マシナリーは、遺伝子カーゴをトランスで可動化することができ、それにより、レシピエントで発現される必要のある遺伝子のみの伝達を可能とする。しかしながら、oriT
TP114は、2個の分岐遺伝子間の遺伝子間領域に位置している。これは、この領域に2個のアノテーション付けされていないプロモーターが含まれており、その一方が必須のニッカーゼ遺伝子nikBしたがって、nikB発現の障害の可能性を避けるためには、正確な欠失が求められる。oriT
TP114 とIncI2ファミリーの他のプラスミドの配列比較(表5)により、配列保存に関する詳細情報が与えられた。試験したプラスミドの中で、pChi7122−3のみがoriT
TP114配列の最初の138bpに対して相同性を示した。したがって、nikBプロモーターとニッキングサイトの両方がoriT
TP114のこの部分に位置特定される可能性が最も高い。細菌プロモーターは通常、−10及び−35ボックスで構成され、場合によりオペレーター配列を含むことができる。nikBはoriT
TP114の上流に位置し、13位に−10ボックスモチーフがみつかったため、nikBのプロモーターはoriT
TP114の最初の100bpに位置特定される可能性が最も高い。IncI1モデルプラスミドR64では、コアoriT
R64配列は92bpの長さであるものと決定され、ニッキング部位は77位の高度に保存されたグアニンに位置している。EMBOSSニードルソフトウェア(Rice et al.,2000) を用いて行ったペアワイズ配列アラインメントは、oriT
TP114と最小のoriT
R64の最初の138塩基対間で36%の相同性を示した(
図29)。このアラインメントは、重要なリピート及びNikAの結合部位がR64とTP114との間で比較的よく保存されていることを示している。TP114のこれらのモチーフの位置を用い、ニッキング部位は124位のGであると予測された。ニッキング部位が実際に124位に位置することを検証するため、121〜127位までの7bpを欠失させてから、2番目のベクター、すなわちpNA02にクローニングした。遺伝子カーゴpNA02は、7bpの欠失を除いてpNA01と同じであるため、TP114によって可動化されないはずである。TP114を含むKN01からKN02へのpNA02のトランス可動化を、pNA01の場合とまったく同じようにして試験した。しかしながら、トランス可動化は、pNA02のoriT
TP114の7bpの欠失によって事実上無効化された(
図28B)。このことは、TP114のニッキング部位がこの領域にあることを示している。
【0185】
TP114の伝達マシナリーからのoriT
TP114の欠失。上記のように、oriT の変異を行ってドナー株に接合プラスミドを固定化することができる。トランス可動化はこの固定化から利することができる。固定化がなされない場合、伝達マシナリーと遺伝子カーゴがT4SSを介した伝達について競合する。TP114の固定化をFRT隣接catカセットのリコンビニアリングによる挿入によって行い、116〜254位にわたるoriT
TP114に138bpの欠失を行った。この欠失はニッキング部位をカバーし、oriT
TP114の認識、ひいては伝達マシナリーの接合 を防ぎ、同時にnikBの発現は影響されない。TP114ΔoriT::cat−tetBを、MG1655Nx
R内で生成し、接合によりKN01に伝達した。TP114ΔoriT::cat−tetBの接合効率は大きく損なわれたが、それでもいくつかの接合完了体を得た(
図30A)。かかる伝達によって、MG1655Nx
R株に潜在的に依然存在しうるTP114からTP114ΔoriT::cat−tetB を単離する排斥機構が可能となった。したがって、KN01からMG1655Rf
Rへと向かう、接合効率の第二の試験を行った。今回は、接合完了体は回収されず、TP114の伝達機能が完全に無効化されたことを示している(
図30B)。次に、それぞれ、pNA01及びpNA02、pKN30及びpKN31のカナマイシン抵抗性誘導体を、KN01+TP114ΔoriT::cat−tetBに形質転換した。バイオコンテインメントされた伝達マシナリーを使用して、pKN30及びpKN31をMG1655Nx
Rへとトランスで可動化した(
図31)。pKN30のみがMG1655Nx
Rに伝達することができ、これにより、この閉じ込め方法が高度にストリンジェントであることが確認された。しかしながら、その結合効率はTP114の約10分の1であった。これは、リラクソソーム関連遺伝子を伝達マシナリーから遺伝子カーゴベクターに再配置することによってさらに改善することができる。要約すると、本実施例で示すように、トランス可動化では、リラクソソームを伝達マシナリー(TP114)から発現させる必要があった。これにより、リラクソソームはpNA01上のoriT
TP114を認識し、T4SSを介してその可動化を媒介した。しかしながら、pNA02のニッキング部位の7bpの欠失は、リラクソソームによるoriT
TP114の認識及びプロセシングを妨げ、それによりpNA02の伝達を妨げた(
図32)。
【0186】
実施例IV−遺伝子カーゴの送達及び応用
菌株、プラスミド及び増殖条件。本実験で使用されるすべての菌株とプラスミドを表1に示す。すべてのプラスミド配列は、配列の付録に記載されている。菌株、プラスミド、増殖条件、インビトロ 接合、糞便及び組織の処理、インビボ接合、及び統計分析に関する詳細は、実施例Iの材料及び方法のセクションに記載されている。
【0187】
蛍光測定。特定の染色体DNA配列またはプラスミドDNA配列の切断におけるgRNA−cas9ペイロードの有効性を評価するため、2種類の標的細菌を使用した。最初のものであるKN02は、そのゲノム内に組み込ま れた緑色蛍光タンパク質(Shaner et al.,2013)(NeonGreen(商標))をコードする遺伝子を有している。2番目のKN03は、クロラムフェニコール耐性遺伝子とgfp遺伝子を有するpTプラスミドを持っている(Ormo et al.,1996)。KN02の細菌ゲノムまたはKN03内のプラスミドpTの完全性を測定するためのプロキシとして蛍光を用いた。簡単に言えば、クロラムフェニコール耐性遺伝子を保持するpTプラスミドに切断がない限り、細菌宿主で維持することができ、GFPが発現される。CRISPR−Cas9システムがクロラムフェニコール耐性遺伝子を切断するとすぐにpTが失われ、それによりGFP蛍光が失われる。pTをキュアするCOPシステムの効率を測定するため、レシピエントと接合完了体を選択するプレート上で緑色蛍光コロニー及び非蛍光コロニーの数をカウントした。Typhoon FLA 9500を使用して蛍光を測定し、ImageFijiソフトウェアを使用して画像を分析した。
【0188】
細胞の蛍光誘導。高レベルの蛍光タンパク質が標的細菌の適応度に及ぼす可能性のある悪影響を制限するため、蛍光タンパク質をコードする遺伝子を誘導性プロモーターの制御下に置いた。ゲノム標的とプラスミド標的の両方で、蛍光シグナルは誘導性であった。pTのgfp遺伝子は、アラビノースによって作用が阻害されるタンパク質であるAraCの抑制下にある(Guzman et al.,1995)。そのため、pT上のgfpを、1%アラビノースの存在下で誘導することができる。KN02細胞(染色体標的)の場合、蛍光はNeonGreenによって媒介される。大腸菌KN02のNeonGreen遺伝子は、1mMのIPTGで誘導することができる(Lutz et al.,1997)。NeonGreenは、GFPと同様の吸収及び発光スペクトルで緑色蛍光を発するが、より明るい蛍光を発する(Shaner et al.,2013)。プラスミド標的とゲノム標的の両方で、青色光を使用したトランスイルミネーター下及びセルソーター(FACSJazz)で蛍光発光が確認された(データは示さず)。
【0189】
コロニー写真。インビトロ及びインビボ実験の間のpT損失を追跡するため、1%アラビノースを添加したLB寒天プレート上でTyphoon FLA9500を使用してコロニーの蛍光を検出した。これを行うため、1つはローパスブルーフィルターと473nmレーザーを使用したGFPの検出用のものと、もう1つはローパスレッドフィルターと635nmレーザーを使用した明視野画像用のものの2つの画像を撮影した。これらの2つの画像を、ImageFijiソフトウェアを使用してマージした(Schindelin et al.,2012)。次に、緑色の蛍光コロニーと非蛍光コロニーをマニュアルでカウントした。
【0190】
FACSによる死亡率の評価。標的がゲノムであるインビトロ実験では、生菌/死菌アプローチを使用して死亡率を調査した。ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用して、生菌と死菌を区別した。通常、PIは損傷した膜しか通過できないため、死細胞の検出に用いられる(Davey,2011)。KN02の蛍光を、インビトロのCOP処理によって誘導した。死細胞を検出するため、細胞を0.85%NaCl中、30μMのPIで暗所で15分間染色した。次に、細胞を2回洗浄し、0.85%NaClに迅速かつ正確な細胞検出を可能とする密度で再懸濁した。FACSJazzサイトメーターを使用して、試料当たり100000個の細胞で緑と赤の蛍光を即座に評価した。
【0191】
4.1−レシピエント細菌に対して有益な効果を有するペイロードを伝達するためのCOPシステムのインビボでの使用
COPシステムを用いて、標的細菌に有益な遺伝子カーゴを伝達することができる。かかる遺伝子カーゴは、レシピエント細菌に有利な表現型を与える遺伝子をコードすることができる。特定の細菌種に表現型の利点を与えることは、過小に存在している種の増殖を助けることにより、乱れた微生物叢のバランスを取り戻す助けとなり得る。例えば、これは、ラクトースなどの新しい炭素源を利用できるようにする遺伝子を導入することによって行うことができる。ラクトース分解酵素を与えることは細菌に利益をもたらすが、ラクトース不耐症の場合は対象にも利益をもたらす。ペイロードに含まれる可能性のある有益な遺伝子の別の例として、抗生物質耐性遺伝子がある。特定の細菌を特定の微生物叢で濃縮する必要がある場合、抗生物質治療の前に耐性遺伝子をこれらの細菌に伝達することでそれらの集団が大幅に濃縮される。
【0192】
COPシステムは、インビボで標的細菌に有益な表現型の特徴を与えるペイロードを伝達することができる。COPを、腸内環境において有益な表現型形質を標的細菌に与える遺伝子カーゴを伝達する能力について試験した。これを行うため、KN01+TP114をドナーとしたインビボ接合マウスモデルを用い、KN02レシピエント細菌にカナマイシン耐性遺伝子を与えた。KN02細菌がカナマイシンに耐性を有するようになったため、COPは実験の最初の2日以内に高レベルの遺伝子カーゴの伝達を実現した(
図33A)。得られた結果は、盲腸と糞便との間で一貫していた(
図33B)。レシピエント集団のほとんどは、実験を通じてカナマイシンに抵抗する能力を獲得し、これにより、COPを用いて有益な表現型形質をインビボで細菌に伝達及び送達できることが示された。
【0193】
4.2−レシピエント細菌に有害なペイロードを伝達するためのCOPのインビボでの使用
COPシステムを使用してCRISPR−Cas9システムをペイロードとしてインビボで送達することができる。本実施例では、COPを腸内環境で使用して、特定の遺伝子を不活性化するCRISPR−cas9システムを標的細菌に送達する。これを実証するため、伝達マシナリーと遺伝子カーゴが同じベクター上に配置された接合送達システムを有するプロバイオティクスEcN(
図34A)でCOPを構成した(実施例IIIのシス可動化を参照)(
図34B)。この構成では、伝達マシナリーと遺伝子カーゴとが互いに連結されているため、これらは両方とも標的細菌に伝達され、標的細菌は、局所微生物叢内でのカーゴの指数関数的な拡散に寄与するドナーとなる。標的レシピエント細胞に入ると、Cas9−gRNAペイロードが発現され、ゲノムをスキャンして、調整可能なgRNAスペーサーの配列によって決定される特定の標的配列を探す。標的配列が検出されると、Cas9は細胞のDNAの二本鎖切断を触媒する(
図34C)。接合送達システムの構築については、実施例3.1に詳述されている。簡単に言えば、遺伝子カーゴと伝達マシナリーとをDROID法を使用して互いに連結した。遺伝子カーゴのペイロードを、cas9 遺伝子と1つ(Kill1)または3つ(Kill3)のgRNAで構成した。この概念実証のため、遺伝子カーゴからのgRNAを、クロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)に特異的に結合するように設計した。catターゲット配列は、プラスミドまたは標的細菌の染色体上に自然に見られる。catが標的株の染色体上に位置する場合、CRISPR−cas9によって引き起こされる二本鎖切断の結果として標的細胞が殺された。一方、catがプラスミド上に位置する場合、CRISPR−cas9によって誘導された二本鎖切断はプラスミドの分解を促進し、細胞は「ディスアーム」された(
図34D)。
【0194】
4.2.1−抗生物質に対して細菌を感作するペイロードを送達するためのCOPのインビボでの使用。
【0195】
COPを用いて、標的細菌の表現型形質をなくすペイロードを送達することができる。COPがその遺伝子カーゴの伝達によって媒介される有害な影響をもたらし得る1つの形は、特定の表現型を発現する標的細菌の能力を妨げることである。最も悪名高い表現型の1つは、抗生物質に対する耐性である。そのため、細菌集団における抗生物質耐性遺伝子の喪失を誘導するCOPを設計することが望ましい場合がある。プログラム可能なエンドヌクレアーゼ(例えばcas9)の使用は、極めて高い耐性を有する病原菌の出現の原因となる抗生物質耐性遺伝子の標的化と消失に大変有望である。抗生物質耐性遺伝子は、細菌の染色体とプラスミドの両方に見られる。これらの遺伝子が、接合性及び可動化プラスミドのように水平方向に伝達可能な遺伝子エレメント上にある場合、これらはより問題となる。この特定の状況では、耐性表現型が他の種の細菌に伝達され得る。CRISPR−Cas9を含むCOPを使用すると、これらの耐性遺伝子を標的とし、そのような可動性遺伝子エレメントを有する細菌をインビボでディスアームすることができる。
【0196】
COPは、抗生物質耐性プラスミドをインビボでキュアするペイロードを送達することができる。COPをインビボ接合実験において使用し、ペイロードを送達して標的細菌から抗生物質耐性プラスミドを排除することができるかどうかを試験した。これを行うため、COPを、マウス腸管内の共生大腸菌株からpTを排除することが可能なペイロードを送達する能力について試験した。pTを有するKN03を、TP114を有するKN01またはTP114 :: Kill1を有するKN01の12時間前にマウスに導入した。レシピエント細胞におけるpTの存在を、選択的LBプレート上の蛍光によってモニターした。COPシステムを1回投与すると、4日間の実験を通じて標的プラスミドの73%程度を除去することができる(
図35A及びB)。コントロール群(KN01+TP114)ではプラスミドの喪失は観察されず、COPシステムのすべての接合完了体は標的プラスミドを欠いていた(
図35C)。糞便試料の結果は、実験終了時にマウスの盲腸でみられた頻度と一致していた(
図35D)。これらの結果は、特異的細胞からの耐性プラスミドを硬化させることが可能であることが示された ここ抗生物質耐性表現型の喪失を引き起こし、CRISPR−cas9を含むペイロードを送達するためにCOPシステムを使用して腸内細菌叢におけるインビボ。
【0197】
42.2−ペイロードを送達して細菌を選択的に殺すためのCOPシステムのインビボ使用。
【0198】
COPシステムは、従来の抗生物質の代替として使用することができる。混合集団中の特定の細菌を標的とし、排除するためのCRISPR−Cas9の使用は、抗生物質耐性の出現が我々が細菌感染を治療する能力にとって脅威となっていることから、大きな関心を集めている用途の1つである。TP114 :: Kill1を使用すると、COPは染色体配列を病原菌のゲノム内にターゲティングして病原菌を排除することができる。ほとんどの細菌は非相同末端結合(NHEJ)を行えないため、Cas9を介した染色体の平滑な二本鎖切断によって死につながり得る。この インビボ 例では、細菌の特定の菌株が、他の密接に関連する菌株に影響を与えることなく効果的に標的化され、集団から排除される。複雑な細菌集団から特定の細菌を排除するペイロードを送達するCOPの能力を試験するため、密接に関連した標的株と非標的株のセットを必要とした。これらの実験では、KN01ΔdapA をドナー株として使用し、標的染色体cat遺伝子を保有するKN02を標的株として使用したのに対して、catの代わりに染色体tetB遺伝子を保有するKN03を非標的株として使用した。
【0199】
4.2.2.1−インビボで細菌を選択的に殺すためのCOPシステムの予防的使用。
【0200】
COP TP114::Kill1システムの予防的使用の用途。予防的治療は、感染または不要な細菌株の拡散を防ぐために、COPの毎日の摂取を意味する。この種の治療は、例えば、旅行中、または抗生物質治療からの回復中など、被験者が特定のタイプの細菌感染に曝露されやすい状況で有用となり得る。COPの予防的使用はまた、抗生物質耐性菌を標的とすることで健康を改善し、それによって抗生物質耐性感染の可能性を低下させ得る。そのような予防的治療の研究のためのマウスモデルを設計した。マウスに最初にTP114 :: Kill1またはTP114(コントロールとして)を有するCOPシステムを与え、12時間後に標的細菌と非標的細菌(それぞれKN02及びKN03)の1:1混合物に曝露した。次に、標的細菌と非標的細菌のそれぞれの存在量を、糞便中で4日間にわたって追跡した(
図36A)。
【0201】
COPシステムは、予防的に投与することでインビボで侵入標的細菌を特異的に排除するペイロードを送達することができる。マウスの予防的治療を、COP KN01+TP114 :: Kill1またはKN01+TP114(コントロールのプラセボ治療)を使用して厳密に追跡した。COP予防的治療は、非標的株と比較して標的株の存在量の13倍もの特異的減少をもたらし、この減少は1日でもたらされた。TP114 :: Kill1を有するCOP KN01の予防的治療の単回投与のみによって、標的株の生CFU数の明らかな低下が観察された(
図36Bと36Dを比較)。2つの菌株間のCFUカウントを比較することにより、標的菌株と非標的菌株との間の競合比を計算した。例えば、標的株の競合比は、標的株のCFUカウントを全レシピエント株のCFUカウントで割ることによって計算した。同等のことを行って非標的株の競合比を計算した。競合比は、COPシステムの影響を強調するために2つの株の適応度を比較している。菌株の競合比は生のCFUと一致し、TP114 :: Kill1を有するCOP KN01による処置における2、3、4日目のレシピエント菌株間には明確な差があったが、コントロールでは差はなかった(
図36Cと36Eを比較)。菌株のコロニー形成の差は、COP技術が効率的かつ特異的に標的株をインビボで排除し、非標的株の繁殖を可能とすることを示唆している。これにより、COPシステムを予防的に使用してペイロードをインビボで送達することで腸内細菌叢に侵入する病原菌を特異的に防ぐことができることが示された。
【0202】
4.2.2.2−インビボで細菌を選択的に殺滅するためのCOPシステムの治療的使用。
【0203】
インビボでのCOPの治療的使用の例。COPの治療的使用は、COPの投与が特定の病原菌の検出後に行われることを意味する。COPは、病原菌を排除または不活性化するために投与される。このタイプの治療は、特定の病原体細胞に死を誘発することが望ましい状況で有用となり得る。実際、COPシステムの高い特異性は、日和見病原体の確立を防ぎ、抗生物質関連下痢などの病状の出現を制限すると考えられる。さらに、標的細菌がすべての既知の抗生物質に耐性を有するような状況では、対象の治療が好ましいと考えられる。それにもかかわらず、COPの高い特異性は、個人において過剰に存在する種を効率的に標的とすることにより、腸内毒素症を有する対象の腸内細菌叢の正確な操作を可能にしうる。そのような治療的処置の有効性を調べるためのマウスモデルを考案した。マウスに、最初に標的細菌と非標的細菌(それぞれKN02とKN03)の1:1混合物を与え、12時間後、TP114 :: Kill1システムまたはTP114(コントロール)のいずれかを含むCOPで処置した。糞便中の標的細菌と非標的細菌の存在量を4日間追跡した(
図37A)。
【0204】
COPは、ペイロードを送達してインビボで標的細菌を排除することができる。マウスの治療的処置を、TP114 :: Kill1を有するCOP KN01またはTP114を有するKN01(コントロールのプラセボ処置)を使用して厳密に追跡した。COPによる治療的処置の単回投与は、わずか2日以内に非標的株と比較して標的株の2,116倍もの減少を伴う優れた結果をもたらした。生のCFUの有意な減少は、TP114 :: Kill1を有するCOP KN01で処置したマウスで2、3、及び4日目に観察されたが、プラセボ処理マウスでは観察されなかった(
図37Bと37Dを比較)。標的及び非標的競合指数(予防的治療のセクションで計算したもの)は、TP114 :: Kill1を有するCOP KN01で処置したマウスでは非標的株の明らかな優位性を示したが、コントロール群ではそのような優位性は示されなかった(
図37Cと37Eを比較)。これにより、COP技術を治療的に使用して、インビボで細菌を排除するように特に設計されたペイロードを送達できることが示された。
【0205】
4.3−細菌集団に複合的な影響を与えるペイロードを伝達するためのCOPシステムのインビボでの使用
レシピエント細菌に有益及び有害な影響を与えるペイロードの利用。TP114 :: Kill3送達システムを使用すると、同じ遺伝子カーゴ内での有益な遺伝子(カナマイシン耐性)と有害な遺伝子(Cas9−gRNA)の両方の伝達を利用して細菌の集団を操作することが可能である。例えば、TP114 :: Kill3のカナマイシン耐性遺伝子を標的細菌に伝達し、それらの細胞をカナマイシンに曝露することにより、遺伝子カーゴの獲得に向かった選択的圧力が生じ、これにより、レシピエント細菌がCRISPR−Cas9の作用を受けるようになる。標的遺伝子catを含み、GFPを発現するプラスミドpTを使用して、このアプローチを実証した(
図21E)。TP114はインビトロの固体培地上で約1%の頻度で伝達するため、CRISPR−Cas9は、抗生物質選択を行わずに集団の約1%でプラスミドの喪失を媒介できる可能性がある。TP114 :: Kill3のみ、またはTP114 :: Kill3とpTの両方を選択することにより、pTを含むKN03へのTP114 :: Kill3の伝達を測定した。コントロールとして、TP114をpTを有するKN03に伝達して、プラスミドのキュレーションがプラスミドの不和合性に起因するものではないことを確認した(
図38A)。伝達頻度は、TP114 :: Kill3を含む両方のプラスミドのみについて選択した場合に大幅に低いが、TP114では低くならないことがわかった。これにより、プラスミドのキュレーションはTP114 :: Kill3上に存在するgRNA−Cas9システムによるものであることが示唆された。GFPシグナルを使用することで、TP114 :: Kill3を含むCOP処置後にpTがキュアしたレシピエント細菌の数を求めることができた。この数は、選択を行わない場合、1〜7%の間の範囲であった。しかしながら、レシピエント細胞内のTP114 :: Kill3について選択するためのカナマイシンの存在下では、プラスミドのキュレーションは100%に達した(
図38B及び38C)。pTの喪失も、選択的抗生物質培地で63個の接合完了体コロニーを継代培養することによって確認された(TP114について21個、TP114 :: Kill3について42個)。TP114 :: Kill3からの接合完了体のみがpT損失について首尾よく確認された(42/42)。pT株を保有するKN03へのTP114 WTプラスミドの接合は、接合完了体におけるpTの喪失を引き起こさず、プラスミドの喪失が、プラスミドの不和合性ではなく、遺伝子カーゴの発現によるものであることを示している。この戦略を用いると、システムの効率をインビトロで約1%〜100%に高めることができる。このタイプの戦略は、一度に複数の耐性遺伝子を標的とする複数のgRNAを使用するようにスケールアップすることができる。これにより、システムが1つの耐性のみを拡散しながら、いくつかの抗生物質耐性遺伝子を排除することができる。したがって、いくつかの実施形態では、耐性遺伝子を拡散し、COPを抗生物質治療と組み合わせることが望ましい場合があると予想される。
【0206】
4.4−COPは種にまたがってペイロードを送達できる
COPは、表現型形質を種にまたがったペイロードとして送達することができる。他の種の細菌に有益な形質を伝達するCOPの能力を、COPとしてのTP114を有する大腸菌KN01ΔdapAと、個々のレシピエントとしての多様な細菌種との間の接合によって最初に試験した。レシピエント細菌(サルモネラ・エンテリカ・(Salmonella enterica)サブストレイン ティフィムリウム(Typhimurium)SR−11、大腸菌MG1655Nx
R、シトロバクター・ロデンティウム(Citrobacter rodentium)DBS100、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)ATCC 35029、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)ATCC 13883、大腸菌KN02)を、腸内細菌叢に最も頻繁にみられる細菌科であるエンテロバクター科の一部として選択した。プロセスを、固体及び液体交配条件下で、代替的な伝達マシナリー(接合プラスミドpVCR94、RK24、pOX38、R6K、R388)を使用して繰り返した(
図39A及び39B)。ほとんどの伝達マシナリーは、抗生物質耐性を種をまたいで伝達することができ、これらの遺伝子コンストラクトの幅広い宿主範囲が示された。ペイロードの伝達頻度はレシピエント間で異なったが、すべてのレシピエント細菌は表現型形質を問題なく獲得できた。
【0207】
制限修飾(RM)システムの和合性は、遺伝子の水平伝達(HGT)に役立つ。次に、伝達頻度間の差を検討した。HGTの主な障壁の1つは、制限修飾システムの和合性である。そのため、伝達された遺伝子カーゴの安定性は、レシピエント細菌が遺伝子コンストラクトを標的化して排除する能力に依存する。新しいDNA分子のターゲティングは、特定のヌクレアーゼによる認識を回避するためにDNA分子が特異的に修飾されるRMシステムにしばしば依存する。このように、プロバイオティクスドナーの修飾システムとレシピエントの制限システムとの間の和合性は、特定のヌクレアーゼによる遺伝子カーゴの認識率に影響する可能性がある。注目すべき点として、接合によるDNAの伝達は、試験したほとんどの接合システムについて、大腸菌MG1655Nx
R からEcNへ、及びEcNからMG1655Nx
Rへは制限されるようであったが、2つのMG1655またはEcN株間では制限されないようであった(
図40)。この結果は、MG1655の修飾システムがEcNの制限システムと和合性がない(また、その逆)ことを示唆している。したがって、レシピエント細菌と和合性のある修飾システムを有するドナー細菌を選択するかまたは操作することにより、レシピエント細菌内でのペイロードの安定性を高めることができる。あるいは、抗制限タンパク質をコードする遺伝子を遺伝子カーゴに加えることで不和合な細菌間の伝達性を高めることができます。そのような抗制限遺伝子の1つはRK24(kclA)に見られ、MG1655からEcNへの接合の低下がないことを説明するものである。RK24の抗制限システムにより、抗生物質耐性遺伝子のいくつかの種にまたがった伝達頻度が一般的に向上した(
図39A)。したがって、COPシステムに制限防止タンパク質を加えることは、種をまたいだカーゴの送達を改善するうえで望ましいと考えられる。
【0208】
接合プラスミドは、ドナー株からほとんど独立して機能する単離された遺伝子コンストラクトである。接合プラスミドはいくつかの属の細菌に拡散しうるため、DNA伝達を実現するための宿主染色体からのそれらの独立性は、それらの経時的な持続にとって重要である。細胞は接合プラスミドにリソースを提供するが、そのようなプラスミドはしばしば自動調節され、その適当な機能に必要なタンパク質の多くを発現する。そのため、接合プラスミドの伝達効率は、宿主細菌によって大きく影響されるべきではない。この仮説を検証するため、2個の遠縁の大腸菌株MG1655Nx
Rと大腸菌KN01を、菌株内での接合効率を比較するために選択した。
図40の結果は、接合効率がドナー株に依存しておらず、試験した株の両方で同じであることを示唆した。試験したすべての接合プラスミドの伝達効率は、2つの株が遠縁である場合であっても、両方の大腸菌ドナー株で同じであった。したがって、COPシステムは、多くのプロバイオティクス宿主内で機能するように容易に適合させることが可能である。
【0209】
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