特表2021-531041(P2021-531041A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-531041癌の早期診断のための複合バイオマーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-531041(P2021-531041A)
(43)【公表日】2021年11月18日
(54)【発明の名称】癌の早期診断のための複合バイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20211022BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20211022BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20211022BHJP
【FI】
   C12Q1/6886 Z
   C12Q1/02
   C12Q1/686 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2021-526182(P2021-526182)
(86)(22)【出願日】2019年7月3日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月18日
(86)【国際出願番号】KR2019008114
(87)【国際公開番号】WO2020017791
(87)【国際公開日】20200123
(31)【優先権主張番号】10-2018-0084334
(32)【優先日】2018年7月19日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】521025577
【氏名又は名称】バイオインフラ ライフ サイエンス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOINFRA LIFE SCIENCE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョル−ウ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ユ ジン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ03
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4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、エクソソーム内のmRNAを用いた癌の早期診断方法に関し、カベオリン−1、アデニンヌクレオチド転位酵素2、形質転換成長因子ベータ1、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1の発現量を測定して癌を早期に診断する方法などに関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)生物学的試料から分離したエクソソーム(exosome)からmRNAを抽出する段階と、
(b)前記抽出されたmRNAを鋳型としてカベオリン−1(caveolin−1)、アデニンヌクレオチド転位酵素2(Adenine nucleotide translocase 2;ANT2)、形質転換成長因子ベータ1(transforming growth factor−β1;TGF−β1)、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1(Aminoacyl−tRNA synthetase−interacting multifunctional proteins−1;AIMP−1)のmRNAレベルを測定する段階と、
(c)前記測定されたmRNAレベルがすべて正常ヒトに比べて増加したとき、癌に分類する段階と、を含む、癌の早期診断のための情報提供方法。
【請求項2】
前記生物学的試料は、血液、尿または便であることを特徴とする請求項1に記載の情報提供方法。
【請求項3】
前記癌は、乳癌、胃癌、大腸癌、卵巣癌、肝癌、前立腺癌、すい臓癌および肺癌よりなる群から選ばれたいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の情報提供方法。
【請求項4】
カベオリン−1(caveolin−1)、アデニンヌクレオチド転位酵素2(Adenine nucleotide translocase 2;ANT2)、形質転換成長因子ベータ1(transforming growth factor−β1;TGF−β1)、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1(Aminoacyl−tRNA synthetase−interacting multifunctional proteins−1;AIMP−1)のmRNAレベルを測定する物質を含む、エクソソームを用いた癌の早期診断用組成物。
【請求項5】
前記mRNAレベルを測定する物質は、mRNAを増幅させることができるプライマーまたはプローブであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記エクソソームは、血液、尿または便から分離したことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記癌は、乳癌、胃癌、大腸癌、卵巣癌、肝癌、前立腺癌、すい臓癌および肺癌よりなる群から選ばれたいずれか一つであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、18S rRNAまたは、β−アクチン(β−actin)のmRNAレベルを測定する物質をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
カベオリン−1(caveolin−1)、アデニンヌクレオチド転位酵素2(Adenine nucleotide translocase 2;ANT2)、形質転換成長因子ベータ1(transforming growth factor−β1;TGF−β1)、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1(Aminoacyl−tRNA synthetase−interacting multifunctional proteins−1;AIMP−1)のmRNAレベルを測定する物質を含む、エクソソームを用いた癌の早期診断用キット。
【請求項10】
前記mRNAレベルを測定する物質は、mRNAを増幅させることができるプライマーまたはプローブであることを特徴とする請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記エクソソームは、血液、尿または便から分離したことを特徴とする請求項9に記載のキット。
【請求項12】
前記癌は、乳癌、胃癌、大腸癌、卵巣癌、肝癌、前立腺癌、すい臓癌および肺癌よりなる群から選ばれたいずれか一つであることを特徴とする請求項9に記載のキット。
【請求項13】
前記キットは、18S rRNAまたは、β−アクチン(β−actin)のmRNAレベルを測定する物質をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のキット。
【請求項14】
前記キットは、エクソソームからmRNAを分離する物質をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の早期診断のための複合バイオマーカー(multi−gene biomarker)に関し、より詳しくは、エクソソームを用いた癌の非侵襲的早期診断のための複合バイオマーカーなどに関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に癌発病患者の数は、毎年増加している傾向にあり、韓国内でも2002年の一年間に10万人に至っている。そのうち、乳癌、胃癌、大腸癌、卵巣癌、肝癌、前立腺癌、すい臓癌および肺癌は、全世界的に最も高い発病率を示している。このような癌の治療効率は、早期診断の有無によって変わる。癌の早期診断は、どんな治療法より効果的に癌の死亡率を減らすことができるので、癌の早期診断は、個人だけでなく、国家的次元でも医療費の節減において非常に大きい意味を有している。
【0003】
しかしながら、このような癌の診断方法は、ほとんどの場合、組織検査のような侵襲的方法(invasive method)であって、検査者の苦痛がひどく、感染による副作用および入院と検査後に回復期間を必要とするという点から容易に接近することができないので、一般的に症状が現れる前には、検査を受けないため、早期診断が困難である。したがって、最近には、非侵襲的方法(non−invasive method)を通した癌の診断のために、血液、尿、便などからタンパク質、DNAなどを分析する方法が活発に開発されている。特にRNAの場合には、少量でも増幅が可能なので、診断正確性を顕著に増加させることができるという長所を有しているが、一般的に、RNAは、血液に存在する多量のリボヌクレアーゼ(RNase)により容易に破壊されるので、RNAエクソソーム診断方法は、分析の正確性が劣るという短所がある。また、それぞれの癌による診断バイオマーカーが異なるので、検査時には、多量の試料および高費用の検査費用が発生する(韓国特許出願10−2011−0080014号)。
【0004】
これより、本発明者らは、リボヌクレアーゼから保護され得る血液内のエクソソームからメッセンジャーRNA(mRNA)を分離および利用して診断の正確性および再現性を高め、多様な癌を早期に診断できる最小限の複合バイオマーカーを選定して容易に癌を早期診断できる方法について研究した結果、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために案出されたものであって、エクソソーム内のmRNAを用いてカベオリン−1(caveolin−1)、アデニンヌクレオチド転位酵素2(Adenine nucleotide translocase 2;ANT2)、形質転換成長因子ベータ1(transforming growth factor−β1;TGF−β1)、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1(Aminoacyl−tRNA synthetase−interacting multifunctional proteins−1;AIMP−1)のmRNA量を測定して、多様な種類の癌を早期に診断する方法などを提供することをその目的とする。
【0006】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、下記の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)生物学的試料から分離したエクソソーム(exosome)からmRNAを抽出する段階と、(b)前記抽出されたmRNAを鋳型としてカベオリン−1(caveolin−1)、アデニンヌクレオチド転位酵素2(Adenine nucleotide translocase 2;ANT2)、形質転換成長因子ベータ1(transforming growth factor−β1;TGF−β1)およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1(Aminoacyl−tRNA synthetase−interacting multifunctional proteins−1;AIMP−1)のmRNAレベルを測定する段階と、(c)前記4個の遺伝子すべてのmRNA量が正常ヒトに比べて増加したとき、癌に分類する段階と、を含む、癌の早期診断のための情報提供方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、カベオリン−1(caveolin−1)、アデニンヌクレオチド転位酵素2(Adenine nucleotide translocase 2;ANT2)、形質転換成長因子ベータ1(transforming growth factor−β1;TGF−β1)およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1(Aminoacyl−tRNA synthetase−interacting multifunctional proteins−1;AIMP−1)のmRNAレベルを測定する物質を含むエクソソームを用いた癌の早期診断用組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、カベオリン−1(caveolin−1)、アデニンヌクレオチド転位酵素2(Adenine nucleotide translocase 2;ANT2)、形質転換成長因子ベータ1(transforming growth factor−β1;TGF−β1)およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1(Aminoacyl−tRNA synthetase−interacting multifunctional proteins−1;AIMP−1)のmRNAレベルを測定する物質を含むエクソソームを用いた癌の早期診断用キットを提供する。
【0010】
本発明の一具体例において、前記生物学的試料は、好ましくは、血液、尿、便などであり、より好ましくは、血液であるが、非侵襲的方法で獲得され得、エクソソームを含んでいる試料であれば、これに制限されない。また、前記エクソソームは、血液、尿、便など非侵襲的方法で獲得され得る試料から分離したエクソソームであれば、制限がない。
【0011】
本発明の他の具体例において、前記癌は、好ましくは、乳癌、胃癌、大腸癌、卵巣癌、肝癌、前立腺癌、すい臓癌、肺癌などであるが、本発明のカベオリン−1、アデニンヌクレオチド転位酵素2、形質転換成長因子ベータ1、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1の増加した発現量で測定され得る癌の種類であれば、これに制限されない。
【0012】
本発明のさらに他の具体例において、前記mRNAレベルを測定する物質は、好ましくは、mRNAを増幅させることができるプライマー、プローブなどであるが、カベオリン−1、アデニンヌクレオチド転位酵素2、形質転換成長因子ベータ1、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1のmRNAの量を測定できる物質であれば、これに制限されない。
【0013】
本発明のさらに他の具体例において、前記組成物またはキットは、18S rRNAおよび/または、β−アクチン(beta−actin)のmRNAレベルを測定する物質をさらに含むことができ、さらに含まれ得る物質は、内部対照群(internal control)として使用できるハウスキーピングmRNA(housekeeping mRNA)であれば、制限がない。また、その他にも、癌を早期に診断することができると知られている遺伝子に対するmRNAを測定できる物質をさらに含むことができる。また、エクソソーム内のmRNAを分離するための、エクソソーム溶解用物質、mRNA分離用物質などをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるカベオリン−1、アデニンヌクレオチド転位酵素2、形質転換成長因子ベータ1、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1からなるバイオマーカーグループは、エクソソーム内のmRNAを用いて非侵襲的方法で多様な癌を高い正確性をもって早期に診断できるので、容易に接近が可能な診断方法であるだけでなく、高い正確性を有するので、癌の早期診断率を顕著に高めることができ、これを通して癌による治療効率を顕著に増加させることができるものと期待される。そして、癌治療後の再発の有無を容易にモニタリングして、再発による治療効率も増加させることができるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1aおよび図1bは、本発明の一実施例によるqRT−PCRを用いた癌の早期診断用複合バイオマーカーを選別した結果を示す図である。
図2図2aおよび図2bは、本発明の一実施例によるqRT−PCRを用いた癌の早期診断用複合バイオマーカーを再検証して選別した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
癌の死亡率を最も効果的に減らすことができる方法は、癌の早期診断であり、癌を早期に診断できると、癌による再発率、死亡率などを実質的に減少させることができるものと期待される。
【0017】
本発明では、エクソソーム内のmRNAを用いてカベオリン−1、アデニンヌクレオチド転位酵素2、形質転換成長因子ベータ1、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1からなる複合バイオマーカーのmRNAレベルを測定することによって、高い正確性をもって非侵襲的方法で多様な癌を早期に診断できるので、癌の早期診断用途に効果的に使用され得るものと期待される。
【0018】
本明細書において「エクソソーム(exosome)」とは、細胞から分泌される二重脂質膜(lipid bilayer)を有している小さい形態の小胞体を包括的に意味し、エクソソームは、多様な細胞から分泌され、略30〜200nmの直径を有していると知られている。このようなエクソソーム内には、細胞に由来する多様な種類のタンパク質、DNA、mRNA、miRNAなどが含まれており、本発明のエクソソームは、好ましくは、自然的に分泌されたものであるが、人工的に分泌されたものまたは製造されたものも含まれ得る。
【0019】
本明細書において「生物学的試料(biological sample)」とは、非侵襲的に獲得され得る試料であって、エクソソームを含んでいるすべての試料を意味し、好ましくは、血液、血しょう、血清、骨髄、組織、細胞、唾液、喀痰、髪の毛、尿、便などであってもよく、より好ましくは、血液、尿、便などであってもよいが、カベオリン−1、アデニンヌクレオチド転位酵素2、形質転換成長因子ベータ1、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1からなる複合バイオマーカーのmRNA量を測定できる試料であれば、これに制限されない。
【0020】
本明細書において「情報提供方法(method for providing information)」とは、癌の早期診断に関する情報を提供する方法であって、エクソソーム内のmRNAを用いてカベオリン−1、アデニンヌクレオチド転位酵素2、形質転換成長因子ベータ1、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1のmRNAレベルが増加したとき、癌が誘発された可能性に関する情報を獲得する方法を意味する。
【0021】
本明細書において「mRNAのレベルを測定する方法」は、癌を診断するためにエクソソームからカベオリン−1、アデニンヌクレオチド転位酵素2、形質転換成長因子ベータ1、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1遺伝子のmRNA存在の有無およびmRNAの量を確認する過程であって、エクソソーム内に含まれているmRNAの量を測定することによって確認することができる。これのための分析方法としては、RT−PCR、競争的RT−PCR(competitive RT−PCR)、リアルタイムRT−PCR(Real−time RT−PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロッティング(northern blotting)、DNAマイクロアレイチップ、Luminexを用いたTarget−Specific PCR sequence detection with MagPlex(登録商標)−TAGTMMicrosphereなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本明細書において、「キット(kit)」とは、エクソソーム内のカベオリン−1、アデニンヌクレオチド転位酵素2、形質転換成長因子ベータ1、およびアミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1遺伝子のmRNA量を測定して癌の発病の有無を予測できる検診用機器を意味し、患者から分離した生物学的試料から前記遺伝子のmRNA量を測定できる形態であれば、制限がない。好ましくは、前記mRNAに対して相補的な配列を有するプローブ(probe)またはプライマー(primer)セットを含むことができ、前記「プローブまたはプライマー」は、前記mRNAに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド(oliogonucleotide)を意味するが、前記遺伝子のmRNA量を測定できる物質であれば、これに制限されない。
【0023】
以下、本発明の理解を助けるために、下記実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
実施例1:正常ヒトと癌患者の血液試料準備
癌の早期診断用複合バイオマーカーを選別するために、正常ヒトと癌患者の血液試料を準備した。癌患者の試料は、大学病院で癌と確診された患者の血液試料を使用し、正常ヒトの試料は、癌蛋白診断用バイオマーカーを用いた検査結果、正常範囲であるヒトの血液試料を用いた。それぞれの試料は、−80℃で冷凍保管し、SST(serum separator tube)真空採血管に採血した血清(serum)とEDTA(ethylene diaminetetraacetic acid)真空採血管に採血した血しょう(plasma)を使用した。それぞれの試料に含まれているエクソソーム(exosome)内のRNAを抽出するために、下記表1のように統合試料(pooling sample)を準備した。準備された統合試料は、200μlずつ新しいチューブに分注して、−80℃で冷凍保管し、すべての試料は、同一に1回の冷凍過程と解凍過程を経ることを原則とした。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例2:エクソソーム内のRNA抽出
実施例1の方法で準備された統合試料からエクソソーム内のmRNA(messenger RNA)を抽出するために、Nextractor(登録商標)NX−48((株)ジェノリューション)を使用した。より詳しくは、Nextractor(登録商標)NX−48を用いて血しょうまたは血清内のエクソソームを溶解(lysis)させ、エクソソームに含まれていた多様なタンパク質、DNA、RNA(mRNA、miRNA、rRNAなど)などからRNAのみを純粋に抽出した。抽出されたRNAは、ナノドロップ(nano−drop)を用いて260nmの波長で吸光度を測定してRNA濃度を定量し、260/280 ratioと260/230 ratioを用いてRNA純度および汚染程度を確認した。
【0027】
実施例3:癌の早期診断用複合バイオマーカーの選別
3.1.癌の早期診断用複合バイオマーカーの一次的選別
癌の早期診断用複合バイオマーカーを選別するために、前記実施例2と同じ方法で抽出したRNA 100ngを鋳型(template)としてqRT−PCR(quantitative Reverse Transcription−Polymerase Chain Reaction)を実施した。qRT−PCRは、SensiFASTTMProbe Lo−ROX One−Stepキット(Bioline)およびStepOne Plus装備(ABI)を使用して進めた。癌の早期診断のための複合バイオマーカーの候補としては、(a)癌の増殖(tumor proliferation)に関与する遺伝子、(b)癌の進行(tumor progression)に関与する遺伝子、(c)腫瘍免疫反応(tumor immune response)に関与する遺伝子、および(d)癌幹細胞(cancer stem cell)関連遺伝子を調査して、一次的に25個の候補遺伝子を選定し、癌細胞株由来のエクソソーム(cancer cell line−derived exosome)を用いてqRT−PCRを実施した。
【0028】
癌細胞株由来のエクソソームのqRT−PCR結果、25個の候補遺伝子のうちカベオリン−1(caveolin−1)、ベータ−カテニン(β−catenin)、アデニンヌクレオチド転位酵素2(Adenine nucleotide translocase 2;ANT2)、電圧−依存性陰イオンチャネル1(Voltage−Dependent Anion Channel 1;VDAC1)、形質転換成長因子ベータ1(transforming growth factor−β1;TGF−β1)、アミノアシル−tRNA合成酵素−結合多機能タンパク質1(Aminoacyl−tRNA synthetase−interacting multifunctional proteins−1;AIMP−1)、ノッチ1(NOTCH1)、ケーラス(v−Ki−ras2 Kirsten rat sarcoma viral oncogene homolog;KRAS)、ヒストン脱アセチル化酵素(Histone deacetylase 1;HDAC1)、リシル−tRNA合成酵素(Lysyl−tRNA synthetase;KARS)、形質転換成長因子ベータ3(transforming growth factor−β3;TGF−β3)、癌抗原125(Cancer Antigen 125;CA−125)、エクト−ノックスジスルフィドチオール交換体2(ecto−NOX disulfide−thiol exchanger 2;ENOX2)、および癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen;CEA)の14個のmRNA量が増加したことを確認した。前記14個の遺伝子を対象として、実施例1および2と同じ方法で準備された癌患者の試料から抽出されたmRNAを鋳型として用いてqRT−PCRを実施した。RNA濃度の標準化のための内部対照群(internal control gene)としては、ハウスキーピング遺伝子であるβ−アクチン(β−actin)および18S rRNAを使用した。それぞれの遺伝子に対するプローブ(probe)情報は、下記表2に記載した。RNA濃度100ngを基準としてqRT−PCRを実施したとき、Ct値が35以上であるTGF−β3、CA125、ENOX2およびCEA遺伝子を除いて、mRNAの量を測定した。その結果は、図1に示した。
【0029】
【表2】
【0030】
図1に示されたように、正常ヒトの発現レベルを基準として2倍以上有意的に増加したmRNAであるCaveolin−1、β−catenin、ANT2、VDAC1、TGF−β1、およびAIMP−1遺伝子6個を選別した。このうちANT2およびVDAC1は、癌の増殖と関係していると知られている遺伝子であり、AIMP−1は、癌の進行と、TGF−β1は、腫瘍の免疫反応と、Caveolin−1およびβ−cateninは、癌の幹細胞と関係していると知られている遺伝子である。
【0031】
3.2.癌の早期診断用複合バイオマーカーの再検証
実施例3.1の方法で選別された6個の遺伝子を多様な癌の早期診断用複合バイオマーカーとして使用可能であるかを再検証するために、6個の遺伝子を対象として癌患者由来のエクソソームから分離したmRNAを鋳型としてqRT−PCRを実施した。その結果は、図2に示した。
【0032】
図2に示されたように、6個の遺伝子を複合バイオマーカーで組み合わせることより、4個の遺伝子であるAIMP−1、TGF−β1、ANT2、およびCaveolin−1を組み合わせて使用した複合バイオマーカーの場合、乳癌、大腸癌、胃癌、卵巣癌、肝癌、前立腺癌、すい臓癌、肺癌などの多様な癌の早期診断の正確性が向上することを確認することができた。
【0033】
前記結果を通して、癌に関連していると知られている多様な遺伝子の組合せのうち本発明のAIMP−1、TFG−β1、ANT2、およびCaveolin−1の組合せを用いると、多様な癌の早期診断の正確性を顕著に増加させることができるだけでなく、血液内のエクソソームを用いた非侵襲的診断方法で容易な接近が可能なので、癌の早期診断効率を顕著に向上させることができるものと期待される。
【0034】
上記記述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、エクソソーム内のmRNAを用いた癌の早期診断方法に関し、エクソソーム内のmRNAを用いて非侵襲的方法で多様な癌を高い正確性をもって早期に診断できるだけでなく、治療後に再発の有無のモニタリングにも用いられるので、癌の早期診断率の増加による癌治療費用の減少と治療後にも不要な検査費用を減少させることができるものと期待される。
図1a
図1b
図2a
図2b
【国際調査報告】