【実施例】
【0222】
7.実施例
下記の非限定的な実施例によって、本明細書に示されている特定の実施形態を例示する。
【0223】
7.1 実施例1.rAAVゲノムをコードするプラスミド及びin vitroトランスフェクションアッセイのデザイン
【0224】
hGALNS発現カセットを含む組み換えAAVゲノムであって、AAV8キャプシドに包まれるようになる組み換えAAVゲノムを作製するために、その組み換えAAVゲノムをコードするプラスミドをデザインした。TBG−hGALNS(そのhGALNS発現カセットは、hGALNSをコードするヌクレオチド配列を含み、その発現は、肝臓特異的なTBGプロモーターの調節下で行われる)、TBG−hGALNS CoOpt(そのhGALNS発現カセットは、hGALNSをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含み、その発現は、肝臓特異的なTBGプロモーターの調節下で行われる)、TBG−D8−hGALNS(そのhGALNS発現カセットは、D8に融合されたhGALNSである融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、その調節は、肝臓特異的なTBGプロモーターの調節下で行われる)、またはTBG−D8−hGALNS CoOpt(そのhGALNS発現カセットは、D8に融合されたhGALNSである融合タンパク質をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を含み、その発現は、肝臓特異的なTBGプロモーターの調節下で行われる)という4つのプラスミドをデザイン及び作製した。得られたrAAVは、(a)AAV逆位末端反復配列(ITR)に挟まれたhGALNS発現カセットを含む組み換えAAVゲノムを含むrAAVであって、そのhGALNS発現カセットが、肝臓特異的なTBGプロモーター配列に機能可能に連結されたhGALNS cDNA配列と、ポリA部位をコードするヌクレオチド配列を含むrAAVと、(b)AAV逆位末端反復配列(ITR)に挟まれたhGALNS発現カセットを含む組み換えAAVゲノムを含むrAAVであって、そのhGALNS発現カセットが、肝臓特異的なTBGプロモーター配列に機能可能に連結されたD8−hGALNS cDNA配列と、ポリA部位をコードするヌクレオチド配列を含むrAAVという2つのカテゴリーに属する(
図1)。D8は、骨ターゲティング型のアスパラギン酸オクタペプチドである。
【0225】
次に、hGALNSの発現をin vitroで試験するために、Lipofectamine−3000のプロトコールを用いて、ヒト肝細胞癌(HuH7)細胞に、その4つのプラスミドのうちの1つをトランスフェクションした。48時間のインキュベーション後、そのトランスフェクションしたHuH7細胞と上清を回収し、細胞ペレット及び培地におけるGALNS酵素活性について解析した。GFPプラスミドをトランスフェクションしたHuH7細胞をコントロールとして使用した。TBG−hGALNSプラスミドまたはTBG−hGALNS CoOptプラスミドをトランスフェクションしたところ、細胞内のhGALNS酵素活性は、同程度向上した(
図2A及び2B)。TBG−D8−hGALNSプラスミドまたはTBG−D8−hGALNS CoOptプラスミドをトランスフェクションした後にも、細胞内酵素活性は向上したが、TBG−hGALNSプラスミドまたはTBG−hGALNS CoOptプラスミドをトランスフェクションした場合よりも程度は低かった(
図2A及び2B)。細胞培地で検出された酵素活性は、いずれのプラスミドをトランスフェクションした場合でも向上した(
図2C及び2D)。
【0226】
同様に、hGALNSの発現をin vitroで試験するために、Lipofectamine−3000のプロトコールを用いて、ヒト肝癌細胞(HepG2)に、上記の4つのプラスミドのうちの1つをトランスフェクションした(
図3)。72時間のインキュベーション後、そのトランスフェクションしたHepG2細胞を回収し、細胞ペレットにおけるhGALNS酵素活性について解析した。TBG−hGALNSプラスミドまたはTBG−hGALNS CoOptプラスミドをトランスフェクションしたところ、細胞内のhGALNS酵素活性は、コントロールのプラスミドをトランスフェクションした場合と比べて向上した。TBG−D8−hGALNSプラスミドまたはTBG−D8−hGALNS CoOptプラスミドをトランスフェクションしたところ、hGALNS活性は、コントロールのプラスミドとよりも向上しなかった。
【0227】
7.2 実施例2.MPS IVAノックアウト(galns−/−)マウスへのrAAVのin vivo投与
肝臓特異的プロモーターTBGの制御下で天然型のヒトGALNS(hGALNS)を発現できるウイルスゲノムを含むrAAV8(AAV8−TBG−hGALNS。いくつかの図では、AAV8−hGALNSとしても示されている)、または肝臓特異的プロモーターの制御下で、アスパラギン酸オクタペプチド(D8)を有するhGALNSを発現できるウイルスゲノムを含むrAAV8(AAV8−TBG−D8−hGALNS。いくつかの図では、AAV8−D8−hGALNSとしても示されている)を作製した。それぞれ、TBG−hGALNS CoOptプラスミド及びTBG−D8−hGALNS CoOptプラスミドを用いて、ウイルスゲノムを作製した。その2種類のウイルスをそれぞれ、4週齢のMPS IVAノックアウト(KO)マウス及びMtol免疫寛容マウスに、体重1kg当たり5x10
13GCの用量で静脈内投与した。KOマウスは、mGALNSのエキソン2が標的破壊されており、検出可能なGALNS酵素活性が見られない。Mtolマウスは、ヒトGALNSタンパク質に対して免疫寛容状態になっている。未処置のKOマウス及び野生型(WT)マウスをコントロールとした。これらのマウスは、注射後、14週間モニタリングした。血液を週に2回採取し、hGALNS活性及びケラタン硫酸(KS)についてアッセイした。rAAVの投与、血液採取、GALNS酵素アッセイ及びKSアッセイのスケジュールは、
図4に示されている。検死時に、骨の病態を組織病理学的解析によって評価した。
【0228】
図5Aで見られるように、rAAV処置マウスの白血球(WBC)において、hGALNS酵素活性が向上し、治療から10週間後に、WTマウスのレベル近くに達した。rAAVの投与から2週間後、すべてのrAAV処置マウスの血漿におけるhGALNS酵素活性は、WTマウスにおけるレベルと比べて、平均で20倍(WTマウスにおけるレベルと比べて5〜100倍の範囲)上昇した(
図5B)。この上昇は、14週間のモニタリング期間にわたって維持された(
図5B)。同様のデータが
図22に示されている。AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMtolマウスにおける血漿中の酵素活性レベルは、AAV8−TBG−hGALNSで処置したMtolマウスにおけるレベルよりも有意に高かった(
図6)が、いずれの処置群の酵素活性レベルも、WTのレベルよりも上昇した。同様のデータが
図23に示されている。
【0229】
AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したKO(galns−/−)マウスの肝臓で測定したhGALNS活性をWTマウスの肝臓におけるhGALNS活性と比較した(
図7A)。AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウスは、肝臓におけるhGALNS活性のレベルが、WTのレベルと比べて40倍高かったのに対して、AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスは、肝臓におけるhGALNS活性が、WTのレベルよりも8倍高かった。AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMtolマウスの肝臓におけるhGALNS活性は、未処置のMtolマウス(PBS処置マウス)よりも上昇した(
図7B)。AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウスは、肝臓におけるhGALNS活性のレベルが、未処置のマウスと比べて50倍高かったのに対して、AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスは、肝臓におけるhGALNS活性が、未処置のMtolマウスよりも8倍高かった。AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSを投与後、MPS IVA KOマウス(galns−/−)及びMtolマウスの肝臓でそれぞれ測定したhGALNSの活性レベルを未処置のMPS IVA KOマウス(galns−/−)、未処置のMtolマウス及び野生型マウスと比較したものに関するさらなるデータについては、
図12Aを参照されたい(n=3〜8、平均±標準偏差)。
【0230】
hGALNS活性は、(a)WTマウス、(b)未処置のMPS IVA KO(galns−/−)マウス、(c)AAV8−TBG−hGALNSで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウス、(d)AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウス、(e)未処置のMtolマウス、(f)AAV8−TBG−hGALNSで処置したMtolマウス及び(g)AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMtolマウスの心臓でも測定した(
図7C)。MPS IVA KO(galns−/−)マウス及びMtolマウスのいずれでも、AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウス及びAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスの両方とも、心臓におけるhGALNS活性レベルが、未処置のマウスと比べて高かった。AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSを投与後に、MPS IVA KOマウス(galns−/−)及びMtolマウスの心臓でそれぞれ測定したhGALNS活性レベルを未処置のMPS IVA KOマウス(galns−/−)、未処置のMtolマウス及び野生型マウスの場合と比較したものに関するさらなるデータについては、
図13Bを参照されたい(n=3〜8、平均±標準偏差)。
【0231】
同様に、hGALNS活性を(a)WTマウス、(b)未処置のMPS IVA KO(galns−/−)マウス、(c)AAV8−TBG−hGALNSで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウス、(d)AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウス、(e)未処置のMtolマウス、(f)AAV8−TBG−hGALNSで処置したMtolマウス及び(g)AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMtolマウスの骨で測定した(
図7D)。MPS IVA KO(galns−/−)マウス及びMtolマウスのいずれでも、AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウス及びAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスの両方とも、骨におけるhGALNS活性のレベルが、未処置のマウスと比べて高かった。AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSを投与後、MPS IVA KOマウス(galns−/−)及びMtolマウスの骨でそれぞれ測定したhGALNS活性レベルを未処置のMPS IVA KOマウス(galns−/−)、未処置のMtolマウス及び野生型マウスと比較したものに関するさらなるデータについては、
図13Aを参照されたい(n=3〜8、平均±標準偏差)。
【0232】
MPS IVA KO(galns−/−)マウス及びMtolマウスのいずれでも、処置マウスの肝臓、心臓及び骨におけるhGALNS活性レベルは、AAV8−TBG−hGALNSベクターまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSベクターの送達後に上昇した。加えて、血液におけるhGALNS酵素活性と骨におけるhGALNS酵素活性に、直接的な相関関係が見られた。
【0233】
hGALNS酵素活性レベルは、AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSを投与後、MPS IVA KOマウス(galns−/−)の脾臓及びMtolマウスの脾臓でも、未処置のMPS IVA KOマウス(galns−/−)、未処置のMtolマウス及び野生型マウスと比較した形で、それぞれ測定した(n=3〜8、平均±標準偏差)(
図12B)。MPS IVA KO(galns−/−)マウス及びMtolマウスのいずれでも、AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウス及びAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスの両方とも、脾臓におけるhGALNS活性のレベルが、未処置のマウスと比べて高かった。
【0234】
加えて、hGALNS酵素活性レベルは、AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSを投与後、MPS IVA KOマウス(galns−/−)の肺及びMtolマウスの肺でも、未処置のMPS IVA KOマウス(galns−/−)、未処置のMtolマウス及び野生型マウスと比較した形で、それぞれ測定した(n=3〜8、平均±標準偏差)(
図12C)。MPS IVA KO(galns−/−)マウス及びMtolマウスのいずれでも、AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウス及びAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスの両方とも、肺におけるhGALNS活性のレベルが、未処置のマウスと比べて高かった。
【0235】
血中ケラタン硫酸(KS)レベルを測定した。KO(galns−/−)マウスでは、いずれの群でも、rAAVによる治療により、投与から2週間後に、血漿中のモノ硫酸化ケラタン硫酸(KS)レベルが、WTのレベルまで低下した(
図8及び
図14)。いずれのrAAV処置群でのこれらの血漿中レベルの低下は、注射から12週間後の検死時まで維持された。対照的に、未処置のKOマウスの血漿中のKSレベルは低下せず、モニタリングした期間にわたって上昇したままであった。MtolマウスにおいてrAAVのいずれを投与した場合も、血漿中のモノ硫酸化ケラタン硫酸(KS)レベルは、治療から2週間後、WTのレベルと比べて低下し、その血漿中KSレベルは、未処置のMtolマウスと比べて有意に低下した(
図9A〜9B及び
図15A〜15B)。しかしながら、血中diHS−0Sレベルは、未処置のマウス群、AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウス群、AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウス群及びWTマウス群で、差は見られなかった(
図10)。
【0236】
モノ硫酸化KSレベルをAAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMPS IVA KOマウス(galns−/−)の肝臓、Mtolマウスの肝臓及びMPS IVA KOマウス(galns−/−)の肺で、未処置のMPS IVA KOマウス及び未処置の野生型マウスと比較する形で、それぞれ測定した(
図16A〜16C)。rAAVのいずれを投与した場合も、未処置のマウスと比べて、肝臓におけるモノ硫酸化KSが有意に低下したとともに、肺におけるモノ硫酸化KSが有意に低下した。MPS IVA KOマウス(galns−/−)及びMtolマウスの肝臓及び肺におけるKSレベルは、AAVベクターの投与後、ほぼ正常化した。
【0237】
これらの処置KOマウスの肝臓の組織病理学的評価により、洞内皮細胞及びクッパー細胞におけるGAG貯蔵が完全に解消されたことが示された。
【0238】
AAV8−TBG−hGALNS及びAAV8−TBG−D8−hGALNSの投与により、モニタリング期間にわたり、KOマウスモデル及びMtolマウスモデルの血漿において、高レベルの酵素活性が維持された。このように循環酵素が継続的に存在することにより、血漿中のKSがWTのレベルまで低下し、そのレベルは、ERTによって得られる改善よりも有意な改善である(Tomatsu et al.,Human Molecular Genetics,2008,17(6):815−824)。血漿中KSレベルは、いずれのマウスモデルでも、かつAAV8−TBG−hGALNS及びAAV8−TBG−D8−hGALNSのいずれでも、rAAVの投与から2週間後に正常化したが、KOマウスをERTで処置した以前の研究では、血漿中KSレベルは、週に1回注入してから12週間後でも正常化しなかった(Tomatsu et al.,Human Molecular Genetics,2008,17(6):815−824)。加えて、高い酵素レベルが、循環時間の長期化と相まって、骨及び軟骨への浸透を高めたことによって、これらの領域における貯蔵性が改善した。
【0239】
rAAVによる処置から12週間後にマウスを安楽死させ、組織を摘出し、グリコサミノグリカン(GAG)の貯蔵について評価した。組織をトルイジンブルーで染色した。骨の病態を組織病理学的解析によって評価したが、病理スコアは、MPS IVA KO(galns−/−)マウスについてグラフ図で表されている(
図11A)。
図11Bは、膝関節(MPS IVA KO(galns−/−)マウス)の染色画像を示している。
【0240】
図11Cは、MPS IVA KO(galns−/−)マウスの大腿関節軟骨の40倍に拡大した染色画像を示している。その未処置のマウス(左パネル)では、表層細胞が破壊され、軟骨細胞が風船様になり、空胞化していた。さらに、そのカラム構造は歪み、崩壊していた。対照的に、AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSのいずれかで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウスの組織では、表層細胞は組織化されており、軟骨細胞の空胞化の程度は小さく、カラム構造は維持されていた(右の2つのパネル)。これらの様相は、
図11D〜11Fにさらに詳細に示されている。
【0241】
図11Gは、未処置のMPS IVA KO(galns−/−)マウスまたはrAAVで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウスの大腿骨成長板の40倍に拡大した染色画像を示している。その未処置のマウス(左パネル)では、軟骨細胞は空胞化し、そのカラム構造は大部分が崩壊し、歪んでいた。AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウスの軟骨細胞(中央パネル)も空胞化していたが、カラム構造の歪みは中度に過ぎなかった。対照的に、AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウスの組織(右パネル)では、軟骨細胞の空胞化は中度であり、カラム構造は、より組織化されていた。これらの様相は、
図11H〜11Jにさらに詳細に示されている。
図17A〜17Eにも、(A)野生型マウス(いずれの軟骨細胞も空胞化しておらず、カラム構造は充分に組織化されていた)、(B)未処置のMPS IVA KOマウス(galns−/−)(軟骨細胞はいずれも空胞化し、カラム構造は、大部分が崩壊し、歪んていた)、(C)未処置のMtolマウス(軟骨細胞はいずれも空胞化し、カラム構造は、大部分が崩壊し、乱れていた)、(D)AAV8−TBG−hGALNSで処置したMtolマウス(軟骨細胞の空胞化は中度であったが、カラム構造は、良質であった)、及び(E)AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMtolマウス(軟骨細胞の空胞化は中度であったが、カラム構造は部分的に回復していた)の大腿骨成長板の40倍に拡大した染色画像が示されている。
【0242】
図18Aは、未処置の野生型マウス、未処置のMPS IVA KOマウス(galns−/−)、AAV8−TBG−hGALNSで処置したMPS IVA KOマウス(galns−/−)またはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMPS IVA KOマウス(galns−/−)の大腿骨及び脛骨の成長板で測定した軟骨細胞の細胞サイズを示している。
図18Bは、未処置の野生型マウス、未処置のMtolマウス、AAV8−TBG−hGALNSで処置したMtolマウスまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMtolマウスの大腿骨成長板で測定した軟骨細胞の細胞サイズを示している。
図18Cは、未処置の野生型マウス、未処置のMPS IVA KOマウス(galns−/−)、AAV8−TBG−hGALNSで処置したMPS IVA KOマウス(galns−/−)またはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMPS IVA KOマウス(galns−/−)の脛骨成長板で測定した軟骨細胞の細胞サイズを示している。
図18Dは、未処置の野生型マウス、未処置のMtolマウス、AAV8−TBG−hGALNSで処置したMtolマウスまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMtolマウスの脛骨成長板で測定した軟骨細胞の細胞サイズを示している。
【0243】
MPS IVA KOマウス及びMtolマウスの成長板における軟骨細胞のサイズ及びカラム構造はいずれも、AAVによる遺伝子移入後に実質的に改善した。
【0244】
図11Kは、未処置のMPS IVA KO(galns−/−)マウスまたはrAAVで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウスの半月板の40倍に拡大した染色画像を示している。その未処置のマウス(左パネル)では、その細胞の大半が風船様になり、空胞化していた。AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウスの半月板の細胞の一部(中央パネル)は空胞化していた。AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスの組織の細胞の大半(右パネル)は、空胞化していなかった。
【0245】
図11Lは、未処置のMPS IVA KO(galns−/−)マウスまたはrAAVで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウスの脛骨側の靭帯の40倍に拡大した染色画像を示している。その未処置のマウス(左パネル)では、その細胞の大半が空胞化していた。AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスの靭帯の細胞の一部(右の2つのパネル)は、空胞化したままであった。
【0246】
図11Mは、未処置のMPS IVA KO(galns−/−)マウスまたはrAAVで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウスの心臓弁の基部の40倍に拡大した染色画像を示している。未処置のマウス(左パネル)の僧帽弁基部の細胞の多くは空胞化していたが、AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウス(中央パネル)またはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウス(右パネル)の僧帽弁組織の基部には、空胞化した細胞は見られなかった。未処置のマウスの組織のこれらの様相は、
図11Nにさらに詳細に示されている。心臓弁の組織で、同様の結果が見られた(
図11O)。Mtolマウスにおける同様の結果は、
図19(下パネル)に示されている。未処置のマウス(左パネル)の心臓弁細胞の多くは、空胞化していたが、AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウス(中央パネル)またはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウス(右パネル)の心臓弁組織では、空胞化した細胞は見られなかった。未処置のマウスの組織のこれらの様相は、
図11Pにさらに詳細に示されている。
【0247】
図20は、AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMtolマウスの心筋(40倍拡大画像)の組織病態を未処置のMtolマウスと比較したものを示している。
【0248】
心臓弁及び心筋では、AAVによる遺伝子移入後、MPS IVA KO(galns−/−)マウス及びMtolマウスのいずれでも、明らかに空胞化した細胞は見られなかった。
【0249】
図21Aは、未処置の野生型マウス、未処置のMPS IVA KO(galns−/−)マウス、AAV8−TBG−hGALNSで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウスまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウスの心臓弁組織の病理スコアを示している。
図21Bは、未処置の野生型マウス、未処置のMtolマウス、AAV8−TBG−hGALNSで処置したMtolマウスまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMtolマウスの心臓弁組織の病理スコアを示している。
図21Cは、未処置の野生型マウス、未処置のMPS IVA KO(galns−/−)マウス、AAV8−TBG−hGALNSで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウスまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMPS IVA KO(galns−/−)マウスの心筋組織の病理スコアを示している。
図21Dは、未処置の野生型マウス、未処置のMtolマウス、AAV8−TBG−hGALNSで処置したMtolマウスまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMtolマウスの心筋組織の病理スコアを示している。
【0250】
Mtolマウスでも、骨の病態を組織病理学的解析によって評価した。独立t検定を用いて、未処置群と各処置群との病理スコアの差について調べた(スコア:0(正常)〜3(重度))。表1を参照されたい。
【0251】
表1.Mtolマウスの骨の病理スコア(n=2〜5、平均±標準偏差)
【表2】
*未処置群に対するp<0.05
【0252】
いずれのウイルスも、関節軟骨、関節軟骨周辺の靭帯及び半月板、ならびに脛骨及び大腿骨の成長板領域におけるGAG貯蔵を低下させた。骨及び軟骨で観察された、GAG貯蔵の低下は、AAV−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスにおいて比較的大きかった。
【0253】
rAAVで処置したマウスでは、骨、成長板、関節軟骨、半月板、靭帯及び心臓組織は、実質的に改善した。加えて、処置マウスでは、心臓弁及び心臓弁基部の異常に関して、ほぼ完全寛解が得られ、心臓弁基部及び心臓弁のいずれにおいても、明らかに空胞化した細胞は見られなかった。これらの結果から、ERTよりも有意な改善が示されている。ERT処置マウスでは、成長板において、空胞化した細胞の消失が見られず、成長板において、カラム構造が崩壊しており、心臓弁において、実質的に空胞化した細胞が見られたからである(Tomatsu et al.,Human Molecular Genetics,2008,17(6):815−824)。
【0254】
肝臓以外の組織で治療効果が観察された(hGALNSタンパク質及びD8−hGALNSタンパク質が産生された)ことから、マンノース−6−リン酸受容体がクロスコレクションを媒介したことが示唆されている。
【0255】
7.3 実施例3.肝臓を標的としたAAV8による遺伝子療法は、ムコ多糖症IVAマウスモデルにおいて、骨格及び心血管の病態を改善する
この実施例は、本明細書に記載されている他の実施例(実施例1〜2を含む)で説明及び実施された実験に関連するものであり、実施例1〜2の追加データを提供する。この実施例では、肝臓特異的なサイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーターの制御下で、hGALNSを、骨ターゲティングシグナルとともに、または骨ターゲティングシグナルなしに発現するAAV8ベクターを評価し、MPS IVAの疾患の両方のマウスモデルの骨及び心臓の病変において、これらの組み換えAAV8ベクターの治療有効性を試験する。骨及び心臓のいずれも、この障害で影響を受ける主要器官である。
【0256】
7.3.1 結果
(a)血液及び組織におけるGALNS酵素活性:AAV−hGALNSを送達すると、MPS IVAのマウスモデルの血漿及び各種組織において、GALNS活性が顕著に向上する。
MPS IVAである2つのマウスモデル(MPS IVA KO及びMtol)では、hGALNS活性の欠損、血液及び組織におけるKSレベルの上昇、ならびに各種組織(軟骨細胞、半月板、靭帯、心筋及び心臓弁を含む)内の貯蔵物質(小胞)に関して、ヒトMPS IVAが再現される。これらのバイオマーカーは、これらのマウスモデルにおいて、表現型の重症度及びいくつかのアプローチの治療有効性を評価する目的で広く用いられている(Tomatsu,S.,et al.,Hum.Mol.Genet.,2008,17,815−824、Tomatsu,S.,et al.,Hum.Mol.Genet.,2003,12,3349−3358、Tomatsu,S.,et al.,Hum.Mol.Genet.,2005,14,3321−3335、Tomatsu,S.,et al.,Mol.Ther.,2010,18,1094−1102)。この試験では、我々は、AAV8−TBG−hGALNSco及びAAV8−TBG−D8−hGALNSco(
図24A)を4週齢のMPS IVA KO及びMTOLマウスに、体重1kg当たり5×10
13GCという均一な用量で静脈内送達した。それらのマウスを、注射後12週間にモニタリングし、血液試料を1週間おきに採取して、酵素活性及びKSレベルを解析した。加えて、検死時に、酵素活性及びKSレベルのために、組織試料を異なる器官から採取し、組織病理解析のために、膝関節及び心臓弁も摘出した。
【0257】
MPS IVA KOマウス及びMTOLマウスの血漿中酵素活性は、
図24B〜24Cに示されている。未処置のMPS IVAマウスでは、血漿中のhGALNS活性は検出されなかった。注射から2週間後、AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMPS IVA KOマウスにおける血漿中のhGALNS活性は、野生型マウスにおける活性と比べて、有意に向上した。注射から2週間後、AAV8−TBG−D8−hGALNSに由来する酵素活性は、AAV8−TBG−hGALNSに由来する活性よりも高かったが、注射から12週間後には、これらの2つのAAVベクターにおいて、血漿中のhGALNS活性に差は見られなかった。いずれのAAVベクターで処置したMTOLマウスでも、血漿中のhGALNS活性は、注射から2週間後に、野生型マウスにおける活性と比べて、有意に向上した。AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスの酵素活性のレベルは、試験期間全体を通じて、AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウスの活性よりも高かったことから、骨ターゲティングシグナルを有するhGALNSは、おそらく、組織への取り込みの低下により、天然型のhGALNSと比べて、血液循環が長くなったことが示唆された。これらの結果により、いずれのMPS IVAマウスモデルにおいても、AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSの1回注射後に、超生理学的レベルの循環hGALNS活性が得られたとともに、試験中、高レベルの酵素活性が維持されたことが示された。
【0258】
AAVベクターのIV送達から12週間後の肝臓におけるhGALNS活性のレベルが、
図24J及び
図24Kに示されている。すべての処置MPS IVAマウスにおけるhGALNSの活性レベルは、未処置のMPS IVAマウスにおける活性よりも有意に高かった。AAV8−TBG−hGALNSで処置したMPS IVA KOマウスにおける平均酵素活性レベルは、野生型マウスで観察されたレベルよりも49倍高く、AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMPS IVA KOマウスにおける平均酵素活性レベルは、9倍高かった。AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウスでは、hGALNS活性は、野生型マウスで見られたレベルよりも60倍高く、AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したMTOLマウスでは、9倍高かった。AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したKOマウス及びMTOLマウスの肝臓におけるGALNS活性は、AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウスにおける活性よりも有意に低かった。
【0259】
MPS IVAマウスの組織において、組織中のhGALNS活性のレベルを調べて、hGALNS欠損の潜在的クロスコレクションを評価した。KOマウスMTOLマウスの両方において、AAV8−TBG−hGALNまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSによる処置後いずれも、脾臓、肺、腎臓、骨(肢骨)及び心臓を含め、調べたすべての組織で、hGALNS活性が観察された(
図24J〜24K)。その酵素活性は、脾臓及び心臓において、野生型レベルと同程度以上であったとともに、肺及び腎臓では、多少低いレベルの活性が観察された。とりわけ、AAV8−TBG−hGALNSで処置したKOマウスの骨では、野生型酵素活性の37%の活性が観察され、AAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したKOマウスの骨では、野生型酵素活性の20%の活性が観察された。また、これらの2つのAAVベクターで処置したMTOLマウスでは、野生型酵素活性の57%の活性及び43%の活性が観察された。これらの結果から、AAVによる遺伝子移入後、安定した超生理学的レベルのhGALNS酵素が、MPS IVAマウスの骨を含む各種組織内へのその酵素の浸透に寄与することが示唆されている。骨におけるhGALNS活性レベルは、AAV8−TBG−hGALNSとAAV8−TBG−D8−hGALNSにおいて、統計的な差は見られなかった。
【0260】
(b)AAV−GALNSを送達した結果、血液及び組織におけるモノ硫酸化KSのレベルは低下した
我々は、KSの主成分であるモノ硫酸化KSをMPS IVAマウスの血漿及び組織において測定した。KOマウス及びMTOLマウスにおける血漿中のモノ硫酸化KSのレベルは、
図25A〜25Bに示されている。AAVベクターを投与する前、未処置のKOマウスにおける血漿中KSレベルは、野生型マウスにおけるレベルよりも有意に高かった(平均:16.3ng/mlに対して41.8ng/ml)。注射から2週間後、両方のAAVベクターにおいて、血漿中のモノ硫酸化KSレベルは完全に正常化し、このレベルは、少なくともさらに10週間(検死時)維持された。モノ硫酸化KSレベルは、4週齢の野生型マウス及び未処置のMTOLマウスにおいて同程度であった。野生型マウスにおけるモノ硫酸化KSレベルは、試験全体を通じて一定レベルに維持されたが、未処置のMTOLマウスにおけるモノ硫酸化KSのレベルは、加齢に伴って徐々に上昇した。上記のAAVベクターのいずれかで処置したMTOLマウスは、試験期間全体を通じて、正常レベルを維持した。16週齢では、AAVベクターで処置したMTOLマウスにおけるモノ硫酸化KSレベルは、未処置のMTOLマウスにおけるレベルと比べて、有意に低下した。
【0261】
MPS IVAマウスの組織におけるモノKSレベルを測定する。検死時に、KOマウス及びMTOLマウスの両方の組織に、GAGの過剰貯蔵が見られた。KOマウス及びMTOLマウスの肝臓及び肺におけるモノ硫酸化KSの量は、いずれのAAVベクターを注射した12週間後にも、有意に減少した(
図25C〜25D)。hGALNSを発現するこれらのAAVベクターが他のGAGレベルに及ぼす作用を評価するために、MPS IVSマウスの血液及び組織において、ヘパラン硫酸(HS)のレベルを解析した。KOマウス及びMtolマウスのいずれも、血漿中のdiHS−0Sが正常レベルであったとともに、そのレベルは、AAVベクターの注射後に影響を受けなかった(
図30)。その肝臓及び肺の組織中のdiHS−0Sレベルも、AAVベクターの注射から12週間後、すべての群の間で、変化は見られなかった(
図31)。
【0262】
(c)AAV GALNSベクターの送達によって、MPS IVAマウスにおける骨及び軟骨の病態が改善した
MPS IVAマウスにおいて、AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSの注射から12週間後に、骨(大腿骨及び脛骨)ならびに心臓(心筋及び心臓弁)を含む組織を評価した。
【0263】
16週齢の未処置のMPS IVA KOマウス及びMTOLマウスで、GAG貯蔵小胞が、大腿骨及び脛骨の成長板(硝子軟骨)(
図27A)、関節円板(
図27B)、膝関節周辺の靭帯(
図32A)及び半月板(
図32B)に見られた。その成長板では、崩壊したカラム構造とともに、風船様になり、空胞化した軟骨細胞も見られた(
図27A〜27B)。AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したKOマウスでは、膝関節における成長板、関節軟骨、靭帯及び半月板は、貯蔵物質が部分的に減少し、軟骨細胞のカラム構造は改善したが、依然として、崩壊し、乱れた状態のままであった。これらのAAVベクターで処置したMTOLマウスでは、膝関節における成長板、関節軟骨、靭帯及び半月板は、貯蔵が観察可能な程度を上回る程度減少し、成長板及び関節軟骨のカラム構造では、未処置のMTOLマウスよりも大きな回復が見られた。
【0264】
その成長板の軟骨細胞における空胞化の改善を客観的に評価するために、KOマウス及びMTOLマウスの成長板病変において、軟骨細胞の細胞サイズを定量した(4C)。我々は、これらの成長板病変において、軟骨細胞サイズの中度の減少を観察し、その減少は、MTOLマウスにおいて、統計学的に有意な状態に達した。未処置のMPS IVAマウスでは、心臓弁及び心筋でGAG貯蔵小胞が見られた。AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSは、処置したKOマウス及びMTOLマウスの上記の心臓病変をほぼ完全に消失させた(
図27A〜27B)。
【0265】
(d)抗hGALNS抗体の循環
全体として、AAV8ベクターの注射から12週間後、KOマウスにおける骨の病態の改善は、MTOLマウスにおける改善と比べて顕著ではなかった。hGALNSに対する液性応答の可能性を調べるために、hGALNSに対する抗体力価を酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって測定した。プレート上にコーティングした完全長rhGALNSを用いることによって、間接ELISA法によって、血漿中の抗hGALNS抗体を検出した。AAVベクターで処置したKOマウスに由来する血漿では、循環抗hGALNS抗体のレベルが、他の群に由来するレベルと比べて有意に高かった(AAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したKOにおいて、光学密度(OD)単位は0.50±0.38または0.62±0.43であった)(
図28)。循環抗hGALNS抗体は、野生型マウス、未処置のKOマウス及びMTOLマウスでは検出されなかった。
【0266】
7.3.2 材料及び方法
(a)AAV hGALNS発現カセットの開発
hGALNSを含むAAV8ベクターを開発するために、我々は、hGALNSの最適化コドン配列を決定した。肝臓特異的なTBGプロモーターの制御下で、526個のアミノ酸に翻訳されるその1569bpの最適化配列をAAV8キャプシドにパッケージングした。骨ターゲティングシグナルを含むベクタープラスミドでは、アスパラギン酸オクタペプチド(D8)配列をhGALNSのN末端シグナルペプチドの後に挿入し、主要骨基質であるヒドロキシアパタイトに対する親和性の高い骨ターゲティングhGALNSを作製した(
図24A)。Huh−7細胞へのトランスフェクション実験を行った後、これらのAAVベクタープラスミドによるGALNSの産生を確認した。そのコドン最適化オープンリーディングフレームに由来する細胞内及び細胞外のhGALNSの活性レベルは、天然型のhGALNSコード配列によって産生されるレベルと同程度であった(
図29A〜29B)。
【0267】
(b)発現カセットのデザイン及びAAVベクターの作製
AAV8ベクターにパッケージングする目的で、天然型のGALNS及びD8を含むGALNSの導入遺伝子を含む発現カセットをデザインした(
図28)。骨ターゲティングシグナルであるアスパラギン酸オクタペプチド(D8)配列は、hGALNSのN末端シグナルペプチドの後に挿入した。そのデザインには、肝臓特異的なサイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーターをウサギβグロブリンポリアデニル化テール(ポリA)とともに含めた。我々は、そのマウス試験用の両方のベクターに、コドン最適化hGALNS配列を使用した。我々は、Huh−7細胞を用いたトランスフェクション実験で、これらの発現カセットプラスミドのGALNS酵素活性を確認した。我々は、トランスフェクションから48時間後に、細胞溶解物及び上清の両方で、活性レベルを求めた(
図29A〜29B)。そのコドン最適化コンストラクトから得られたGALNS活性レベルは、天然型のhGALNSコード配列によって産生されるレベルと同程度であった。
【0268】
REGENXBIO(Rockville,MD)独自のGMPベクター作製プロトコールをスケールダウンしたものに従って、AAV8−TBG−hGALNSベクター及びAAV8−TBG−D8−hGALNSベクターを作製した。簡潔に述べると、HEK293細胞(RGX293)に、ヘルパープラスミド、AAV8キャプシドプラスミド、及びhGALNS/D8−hGALNSプラスミドを含む導入遺伝子プラスミドをトリプルトランスフェクションした。アフィニティークロマトグラフィーを用いて、そのパッケージングしたベクターを細胞培養上清から精製し、Digital Droplet PCR(BioRad)法を用いて、力価の測定を行った。
【0269】
(c)マウスモデル及びin vivo試験デザイン
我々は、2つのMPS IVAマウスモデルを用いることによって、AAV8−TBG−hGALNS及びAAV8−TBG−D8−hGALNSの潜在的な治療能力を試験した(Tomatsu et al.,Hum Mol Genet 2003;12(24):3349−3358、Tomatsu et al.,Hum.Mol.Genet.2005;14,3321−3335)。第1のタイプは、galns遺伝子が破壊されたGalnsノックアウトマウスモデル(KO:Galns−/−)である(Tomatsu et al.,Hum Mol Genet 2003;12(24):3349−3358)。第2のタイプは、ヒトGALNSに対する寛容性を有するマウスモデルであって、イントロン1に、hGALNSを発現する導入遺伝子を含むとともに、エキソン2に隣接して、活性部位の変異(C76S)を含むことで、標的変異誘発によって、そのマウスGalns遺伝子に、その不活性なhGALNSコード配列が、C79Sという活性部位の変異とC76Sという変異とともに導入されるマウスモデル(Mtol:Galns
tm(hC79S.mC76S)slu)である(Tomatsu et al.,Hum.Mol.Genet.2005;14,3321−3335)。いずれのモデルでも、血液及び組織において、検出可能な酵素活性は見られず、主に、細網内皮系クッパー細胞、心臓弁、心筋、ならびに成長板及び関節軟骨を含む軟骨細胞内で、貯蔵物質の蓄積が見られた。
【0270】
我々は以前、2つのMPS IVAマウスモデルの開発について説明したが、それは、C57BL/6バックグラウンドのMPS IVAノックアウトマウス(Galns−/−)(Tomatsu et al.,Hum Mol Genet 2003;12(24):3349−3358)及びヒトGALNSタンパク質に対する寛容性を有するMPS IVAマウス(galns
tm(hC79S.mC76S)slu)(Tomatsu et al.,Hum. Mol.Genet.2005;14,3321−3335)である。そのGALNSノックアウトマウスモデル(KO:Galns−/−)は、GALNS遺伝子の標的破壊によって開発した(Tomatsu et al.,Hum Mol Genet 2003;12(24):3349−3358)。ヒトGALNSに対する寛容性を有するマウスモデル(Mtol:galns
tm(hC79S.mC76S)slu)は、イントロン1に、hGALNSを発現する導入遺伝子を含むとともに、エキソン2に隣接して、活性部位の変異(C76S)を含むことによって、その不活性なhGALNSコード配列が、C79Sという活性部位の変異とともに導入される(Tomatsu et al.,Hum.Mol.Genet.2005;14,3321−3335)。いずれのマウスモデルでも、血液及び組織において、検出可能な酵素活性は見られず、主に、細網内皮系クッパー細胞、心臓弁及び心筋、ならびに成長板及び関節軟骨を含む軟骨細胞内で、貯蔵物質の蓄積が見られた。
【0271】
14日目に、実験コホートのジェノタイピングをPCRによって行った。4週齢のホモ接合型MPS IVAマウスをいずれかのAAV8ベクターで、5×10
13GC/kgの均一な用量で静脈内処置した。別のコホートのMPS IVAマウスと、罹患していないC57BL/6同腹子に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与した。総投与体積は、マウス1匹当たり約100μlであった。マウスの取り扱い及び実験はすべて、Institutional Animal Care and Use Committee of Nemours/Alfred I.duPont Hospital for Childrenから許可を得た。
【0272】
(d)血液及び組織の採取
約100μlの血液をEDTA入りのチューブ(BD,Franklin Lakes,NJ,USA)に、1週間おきに、試験におけるすべてのマウスから採取した。その血液を8,000rpmで10分遠心分離し、GALNS酵素アッセイ及びGAGアッセイを行うまで、分離した血漿を−20℃に保持した。16週齢時に、マウスをCO
2チャンバーで安楽死させ、20mlの0.9%生理食塩水でかん流した。肝臓、腎臓、肺、脾臓、心臓及び膝関節を摘出し、GALNS酵素アッセイ及びGAGアッセイに備えて処理するまで、−80℃で保存した。加えて、各種組織の試料を採取し、組織病理解析に備えて、10%中性緩衝ホルマリンで保存した。
【0273】
(e)GALNS活性アッセイ
以前に説明されたようにして(Toietta,G.,et al.Hum.Gene Ther.2001;12,2007−2016)、血液及び組織中のGALNS活性を求めた。ホモジナイザーを用いることによって、25mmol/lのトリス−HCl(pH7.2)及び1mmol/lのフェニルメチルスルホニルフルオリドからなるホモジナイズバッファーで、凍結した組織をホモジナイズした。組織溶解物または血漿と、0.1MのNaCl、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH4.3)中の22mMの4−メチルウンベリフェリル−β−ガラクトピラノシド−6−硫酸(Research Products International,Mount Prospect,IL,USA)を37℃で16時間インキュベートした。続いて、0.1MのNaCl、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH4.3)中の、Aspergillus oryzaeに由来する10mg/mlのβ−ガラクトシダーゼ(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)を反応試料に加え、追加のインキュベーションを37℃で2時間行った。その試料を反応停止液(1Mのグリシン、NaOH、pH10.5)に移し、Perkin Elmer Victor X4というプレートリーダー(PerkinElmer,Waltham,MA,USA)で、そのプレートを366nmの励起光及び450nmの発光で読み取った。活性は、1時間当たり、血漿1マイクロリットルまたはタンパク質1ミリグラム当たりに放出される4−メチルウンベリフェロンの量(ナノモル)として表した。タンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)によって求めた。
【0274】
(f)組織からのGAGの抽出
各種マウス組織からのGAGの抽出法は、Mochizukiらの開発した方法(Mochizuki,H.,et al.J.Biol.Chem.2008;283,31237−31245)を改変したものであった。簡潔に述べると、摘出した組織を液体窒素で凍結し、ホモジナイザーを用いて、アセトンでホモジナイズした。得られた粉末を遠心真空乾燥した。その脱脂組織粉末を0.5MのNaOHに懸濁し、50℃で2時間インキュベートして、そのコアタンパク質からGAG鎖を切り離した。1MのHClで中和後、NaClを終濃度3Mになるまで加えた。不溶物質を遠心分離によって除去し、その上清のpHを1MのHClによって1.0未満に調整した。沈殿したヌクレオチドを遠心分離によって除去し、その上清を1MのNaOHで中和した。1.3%酢酸カリウムを含む2倍量のエタノールを加えることによって、その粗GAGを沈殿させた。遠心分離後、その沈殿物を蒸留水に溶解させた。
【0275】
(g)GAGアッセイ
以前に説明されたようにして(Oguma,T.,et al.Biomed.Chromatogr.2007;21,356−362、Oguma,T.,et al.Anal.Biochem.2007;368,79−86、Shimada,T.,et al.JIMD.Rep.2014;16,15−24、Shimada,T.,et al.JIMD.Rep.2015;21,1−13、Kubaski,F.,et al.J.Inherit.Metab.Dis.2017;40,151−158)、血液及び組織中のGAGレベルをLC−MS/MSによって測定した。簡潔に述べると、50mMのトリス−HCl(pH7.0)と試料を96ウェルレシーバープレート上の96ウェルオメガ10Kフィルタープレート(Pall Corporation,Port Washington,NY,USA)に入れた。試料を15分、2,500gで遠心分離した。そのフィルタープレートを新しいレシーバープレートに移し、50mMのトリス−HCl(pH7.0)、内部標準(IS)としての5μg/mLのコンドロシン、1mUのヘパリチナーゼ及び1mUのケラタナーゼIIのカクテル混合物をそのフィルタープレートに加えた。試料を37℃のウォーターバスで一晩インキュベートした。続いて、その試料を15分、2,500gで遠心分離した。その装置は、6460 Triple Quadという質量分析計とともに、1290 Infinity LCシステム(Agilent Technologies,Palo Alto,CA,USA)から構成されていた。60℃に恒温したHypercarbというカラム(内径2.0mm、長さ50mm、粒子5μm、Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)で二糖を分離した。その移動相は、5mMの酢酸アンモニウム(pH11.0)(溶出液A)→100%アセトニトリル(溶出液B)というグラジエント溶出相であった。その流速は0.7ml/分で、そのグラジエントは、100%溶出液Aで0分、70%溶出液Aで1分、70%溶出液Aで2分、0%溶出液Aで2.20分、0%溶出液Aで2.60分、100%溶出液Aで2.61分、100%溶出液Aで5分であった。その質量分析計は、エレクトロスプレーイオン化法を用いて、ネガティブイオンモードで作動させた(Agilent Jet Stream technology)。特定のプリカーサーイオン及びプロダクトイオンのm/zを用いて、各二糖をそれぞれ定量した(IS:354.3→193.1、モノ硫酸化KS:462→97、HS−0S378.3→175.1)。注入体積は10μlで、実行時間は1試料当たり5分であった。
【0276】
(h)トルイジンブルー染色及び病理学的評価
以前に説明されたようにして(Tomatsu,S.,et al.Mol.Genet.2005,14,3321−3335)、トルイジンブルー染色を行った。簡潔に述べると、16週齢のMPS IVAマウス及びWTマウスから、膝関節及び僧帽弁を摘出して、貯蔵顆粒のレベルを光学顕微鏡観察によって評価した。組織をPBS中の2%パラホルムアルデヒド及び4%グルタルアルデヒドで固定し、四酸化オスミウムで後固定し、Spurrレジンに包埋した。続いて、トルイジンブルー染色した厚さ0.5μmの切片を検査した。大腿骨または脛骨の成長板における軟骨細胞の細胞サイズ(空胞化)を評価するために、各マウスにおいて、増殖区域内の約300個の軟骨細胞をImage Jというソフトウェアによって測定し、結果を野生型群からの変化倍率として表した。
【0277】
(i)酵素結合免疫吸着法(ELISA)による、GALNSに対する抗体の検出
以前に説明されたようにして(Tomatsu,S.,et al.Hum.Mol.Genet.2003;12,961−973)、間接ELISA法を用いて、処置マウス及び未処置マウスの血漿において、GALNSに対する抗体を検出した。簡潔に述べると、15mMのNa
2CO
3、35mMのNaHCO
3、0.02%のNaN
3(pH9.6)中の2μg/mlの精製rhGALNS(R&D Systems,Minneapolis,MN,USA)で、96ウェルマイクロタイタープレートを一晩コーティングした。そのウェルをTBS−T(10mMのトリス(pH7.5)、150mMのNaCl、0.05%TWEEN20)で3回洗浄してから、PBS(pH7.2)中の3%ウシ血清アルブミンで1時間、室温でブロックした。TBS−Tで3回洗浄後、マウス血漿の、TBS−Tによる100倍希釈液をそのウェルに加え、37℃で2.5時間インキュベートした。そのウェルをTBS−Tで4回洗浄してから、ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)の1:1,000希釈液を含むTBS−Tをそのウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。そのウェルをTBS−Tで3回洗浄し、TBS(10mMのトリス(pH7.5)、150mMのNaCl)で2回洗浄した。ペルオキシダーゼ基質(ABTS溶液、Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を加え(1ウェル当たり100μl)、プレートを室温で30分インキュベートした。1%SDSを加えて、その反応を停止させ、Perkin Elmer Victor X4というプレートリーダー(PerkinElmer,Waltham,MA,USA)で、そのプレートを410nmの光学密度で読み取った。
【0278】
(j)統計解析
すべてのデータは、平均及び標準偏差(SD)として表した。GraphPad Prism5.0(GraphPad Software,San Diego,CA,USA)を用いて、ボンフェローニのポストホックテストを伴う一元ANOVAによって、多重比較検定を行った。その統計学的に有意な差は、p<0.05とした。
【0279】
7.4 実施例4.酵素への長期間の暴露が骨の病態に及ぼす作用を評価する
下記の試験は、酵素への長期間の暴露が骨の病態に及ぼす作用を評価する目的で行う。この試験では、AAV8−TBG−hGALNScoを4週齢のMPSIVA KOマウスに、体重1kg当たり5×10
13GCの用量で投与する。コントロール群は、同じ週齢の未処置のMPS IVA KOマウス及び未処置の野生型マウスである。この試験では、3群のマウス(1群当たり6〜10匹)を使用する。注射から24週間後または48週間後のいずれかに、それらのマウスをモニタリングし、血液試料を1週間おきに採取して、酵素活性及びKSレベルを解析する。加えて、検死時に、組織試料を、酵素活性及びKSレベルのために、異なる器官から摘出するとともに、組織病理解析のために、膝関節及び心臓弁から摘出する。
【0280】
同様に、AAV8−TBG−hGALNScoを4週齢のMTOLマウスに、体重1kg当たり5×10
13GCの用量で送達する。コントロール群には、同じ週齢の未処置のMTOLマウス及び未処置の野生型マウスが含まれる。この試験では、3群のマウス(1群当たり6〜10匹)を使用する。注射から24週間後または48週間後のいずれかに、それらのマウスをモニタリングし、血液試料を1週間おきに採取して、酵素活性及びKSレベルを解析する。加えて、検死時に、組織試料を、酵素活性及びKSレベルのために、異なる器官から摘出するとともに、組織病理解析のために、膝関節及び心臓弁から摘出する。
【0281】
7.5 実施例5.新生仔試験:早期介入が骨の病態に及ぼす作用を評価する
下記の試験を新生仔マウスで行って、早期介入が骨の病態に及ぼす作用を評価する。この試験では、AAV8−TBG−hGALNScoをMPSIVA KO新生仔マウスに、体重1kg当たり5×10
13GCの用量で投与する。コントロール群には、同じ週齢の未処置のMPS IVA KOマウス及び未処置の野生型マウスが含まれる。それらのマウスを16週齢に殺処分し、血液試料を1週間おきに採取して、酵素活性及びKSレベルを解析する。加えて、検死時に、組織試料を、酵素活性及びKSレベルのために、異なる器官から摘出するとともに、組織病理解析のために、膝関節及び心臓弁から摘出する。
【0282】
同様に、我々は、AAV8−TBG−hGALNScoを新生仔MTOLマウスに、体重1kg当たり5×10
13GCの用量で送達した。コントロール群には、同じ週齢の未処置のMTOLマウス及び未処置の野生型マウスが含まれる。この試験では、3群のマウス(1群当たり6匹)を使用する。それらのマウスを16週齢に殺処分し、血液試料を1週間おきに採取して、酵素活性及びKSレベルを解析する。加えて、検死時に、組織試料を、酵素活性及びKSレベルのために、異なる器官から摘出するとともに、組織病理解析のために、膝関節及び心臓弁から摘出する。
【0283】
7.6 実施例6.新規な発現カセットの評価
下記の試験を行って、最適化プロモーターコンストラクトを、有効性の改善について評価する。この試験では、AAV8−TBG−hGALNSco、AAV8−CAG−hGALNSco、AAV8−プロモーター1−hGALNSco、AAV8−プロモーター2−hGALNSco、AVV9−プロモーター2−hGALNScoを4週齢のMPSIVA KOマウスに、体重1kg当たり1×10
13GCの用量で投与する(1群当たり10匹のマウス)。コントロール群には、同じ週齢の未処置のMPS IVA KOマウス及び未処置の野生型マウスが含まれる。12週間または48週間のいずれかで、それらのマウスをモニタリングし、血液試料を1週間おきに採取して、酵素活性及びKSレベルを解析する。加えて、検死時に、組織試料を、酵素活性及びKSレベルのために、異なる器官から摘出するとともに、組織病理解析のために、膝関節及び心臓弁から摘出する。
【0284】
7.7 実施例7.後期AAV遺伝子療法試験
下記の試験を行って、後期AAV遺伝子療法の有効性を評価する。この試験では、AAV−TBG−hGALNSco、AAV−CAG−hGALNSco、AAV−プロモーター1−hGALNSco、AAV−プロモーター2−hGALNSco、AVV−プロモーター2−hGALNScoを8〜10週齢のMPSIVA KOマウス(1群当たり5匹のマウス)に投与する。未処置のMPS IVA KOマウスをコントロールとして使用する。ある期間にわたり、それらのマウスをモニタリングし、血液試料を1週間おきに採取して、酵素活性及びKSレベルを解析する。加えて、検死時に、組織試料を、酵素活性及びKSレベルのために、異なる器官から採取し、組織病理解析のために、膝関節及び心臓弁から採取する。
【0285】
同様に、AAV−TBG−hGALNSco、AAV−CAG−hGALNSco、AAV−プロモーター1−hGALNSco、AAV−プロモーター2−hGALNSco、AVV−プロモーター2−hGALNScoを8〜10週齢のMTOLマウス(1群当たり5匹のマウス)に投与する。未処置のMTOLマウスをコントロールとして使用する。ある期間にわたり、それらのマウスをモニタリングし、血液試料を1週間おきに採取して、酵素活性及びKSレベルを解析する。加えて、検死時に、組織試料を、酵素活性及びKSレベルのために、異なる器官から摘出するとともに、組織病理解析のために、膝関節及び心臓弁から摘出する。
【0286】
7.8 実施例8.高用量及び低用量におけるAAV8−TBG−hGALNS、AAV8−TBG−D8−hGALNS AAV8−CAG−hGALNS及びAAV8−CAG−D8−hGALNSの作用に関する比較試験
下記の試験を行って、高用量及び低用量におけるAAV8−TBG−hGALNS、AAV8−TBG−D8−hGALNS、AAV8−CAG−hGALNS及びAAV8−CAG−D8−hGALNSの作用を評価した。
【0287】
この試験では、我々は、AAV8−TBG−hGALNS及びAAV8−TBG−D8−hGALNSを4週齢のMPSIVA KOマウス(1群当たりn≧4)に、高用量(体重1kg当たり2×10
14GC)または低用量(体重1kg当たり5×10
13GC)で静脈内送達した。我々は、AAV8−CAG−hGALNS及びAAV8−CAG−D8−hGALNSも、4週齢のMPSIVA KOマウス(1群当たりn≧4)に、低用量(体重1kg当たり5×10
13GC)で静脈内送達した。コントロール群には、同じ週齢の未処置のMPS IVA KOマウス及び未処置の野生型マウスを含めた。それらのマウスを12週間モニタリングし、血液試料(血漿)を週に2回採取して、酵素活性及びKSレベルを解析した。
【0288】
同様に、我々は、AAV8−TBG−hGALNS及びAAV8−TBG−D8−hGALNSを4週齢のMTOLマウス(1群当たりn≧4)に、高用量(体重1kg当たり2×10
14GC)または低用量(体重1kg当たり5×10
13GC)で静脈内送達した。我々は、AAV8−CAG−hGALNS及びAAV8−CAG−D8−hGALNSも、4週齢のMTOLマウス(1群当たりn≧4)に、低用量(体重1kg当たり5×10
13GC)で静脈内送達した。未処置のMTOLマウスをコントロールとして使用する。それらのマウスを12週間モニタリングし、血液試料を週に2回採取して、酵素活性及びKSレベルを解析した。
【0289】
7.8.1 結果
(a)体重1kg当たり5×10
13GCのAAV8−CAG−hGALNSまたはAAV8−CAG−D8−hGALNSを投与したMPS IVA KOマウスの血漿におけるhGALNS酵素活性と、未処置の野生型マウスの場合との比較
体重1kg当たり5×10
13GCのAAV8−CAG−hGALNSまたはAAV8−CAG−D8−hGALNSを投与したMPSIVA KOマウスにおける血漿中のhGALNS酵素活性は、
図33〜35に示されている。注射から2週間後、AAV8−D8−hGALNSマウスでは、未処置の野生型マウスと比べて、血漿中のhGALNS活性の向上が検出された。注射から2週間後には、AAV8−CAG−D8−hGALNSに由来する酵素活性は、AAV8−CAG−hGALNSに由来する活性よりも高かった。
【0290】
(b)体重1kg当たり5×10
13GCのAAV8−CAG−hGALNSまたはAAV8−CAG−D8−hGALNSを投与したMPS IVA KOマウスの肝臓におけるhGALNS酵素活性と、未処置の野生型マウスの場合との比較
体重1kg当たり5×10
13GCのAAV8−CAG−hGALNSまたはAAV8−CAG−D8−hGALNSを投与したMPSIVA KOマウスの肝臓におけるhGALNS酵素活性は、
図36に示されている。AAV8−D8−hGALNSで処置したマウス及びAAV8−hGALNSで処置したマウスの両方において、未処置の野生型マウスと比べて、肝臓中のhGALNS活性の向上が検出された。
【0291】
(c)体重1kg当たり5×10
13GCのAAV8−CAG−hGALNSを投与したMTOLマウスの血漿中のhGALNS酵素活性と、未処置の野生型マウスの場合との比較
体重1kg当たり5×10
13GCのAAV8−CAG−hGALNSを投与したMTOLマウスの血漿中のhGALNS酵素活性は、
図37に示されている。
【0292】
(d)体重1kg当たり5×10
13GCのAAV8−CAG−hGALNSを投与したMTOLマウスの肝臓におけるhGALNS酵素活性と、未処置の野生型マウスの場合との比較
体重1kg当たり5×10
13GCのAAV8−CAG−hGALNSを投与したMTOLマウスの肝臓におけるGALNS酵素活性は、
図38に示されている。AAV8−hGALNSで処置したマウスにおいて、未処置の野生型マウスと比べて、肝臓中のhGALNS活性の向上が検出された。
【0293】
(e)体重1kg当たり2×10
14GCのAAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSを投与したMPS IVA KOマウスの血漿中のhGALNS酵素活性と、未処置の野生型マウスの場合との比較
体重1kg当たり2×10
14GCのAAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSを投与したMPSIVA KOマウスにおける血漿中のhGALNS酵素活性は、
図39〜40に示されている。
【0294】
(f)体重1kg当たり2×10
14GCのAAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSを投与したMPS IVA KOマウスの肝臓におけるhGALNS酵素活性と、未処置の野生型マウスの場合との比較
体重1kg当たり2×10
14GCのAAV8−TBG−hGALNSまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSを投与したMPSIVA KOマウスの肝臓におけるhGALNS酵素活性は、
図41に示されている。AAV8−TBG−hGALNSで処置したマウスまたはAAV8−TBG−D8−hGALNSで処置したマウスのいずれにおいても、未処置の野生型マウスと比べて、肝臓中のhGALNS活性の向上が検出された。
【0295】
8.配列表
【表3】
【0296】
9.均等物及び参照による援用
本発明の具体的な実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明されているが、機能的に均等である変形形態が、本発明の範囲内であることは分かるであろう。実際、上記の説明及び添付の図面から、当業者には、本明細書に示されているとともに説明されている形態に加えて、本発明の様々な修正形態が明らかになるであろう。このような修正形態は、添付の請求項の範囲内に含まれるように意図されている。当業者は、常法に過ぎない実験を用いて、本明細書に記載されている本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、またはそれらを突き止めることができるであろう。このような均等物は、下記の請求項に含まれるように意図されている。
【0297】
本明細書で言及されている刊行物、特許及び特許出願はいずれも、個々の刊行物、特許及び特許出願が参照により、その全体として援用されることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、参照により、本明細書に援用される。