特表2021-531233(P2021-531233A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-531233医薬品または機能性食品の自己乳化型固体分散体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-531233(P2021-531233A)
(43)【公表日】2021年11月18日
(54)【発明の名称】医薬品または機能性食品の自己乳化型固体分散体組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/107 20060101AFI20211022BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 31/592 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 31/015 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20211022BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20211022BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20211022BHJP
【FI】
   A61K9/107
   A61K45/00
   A61K47/04
   A61K47/06
   A61K31/355
   A61K31/592
   A61K31/07
   A61K31/122
   A61K31/015
   A61K47/26
   A61K47/14
   A61K47/10
   A61K47/40
   A61K47/36
   A61P3/02
   A23L33/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-554511(P2020-554511)
(86)(22)【出願日】2019年12月16日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月2日
(86)【国際出願番号】US2019066491
(87)【国際公開番号】WO2020247020
(87)【国際公開日】20201210
(31)【優先権主張番号】62/857,926
(32)【優先日】2019年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
3.SPAN
4.KOLLIPHOR
(71)【出願人】
【識別番号】520380886
【氏名又は名称】フアナ・グローバル・バイオテック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Huana Global Biotech Co., Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】520380897
【氏名又は名称】フアナ・グローバル・バイオテック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Huana Global Biotech Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ワン・リアン−シュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・チー−チアン
(72)【発明者】
【氏名】リン・ユー−シュアン
(72)【発明者】
【氏名】フゥ・ピン−チュアン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE03
4B018MD05
4B018MD06
4B018MD07
4B018MD10
4B018MD23
4B018MD24
4B018MD26
4B018MD29
4B018MD31
4B018MD33
4B018MD36
4B018ME14
4B018MF02
4C076AA16
4C076AA17
4C076BB01
4C076CC22
4C076CC23
4C076DD09F
4C076DD27
4C076DD46F
4C076DD67
4C076EE23F
4C076EE30
4C076FF16
4C076FF43
4C076FF63
4C084AA17
4C084MA21
4C084MA22
4C084MA52
4C084NA02
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4C084NA05
4C084ZC22
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA09
4C086CB27
4C086DA14
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA21
4C086MA22
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZC22
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA02
4C206CA08
4C206CA10
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA22
4C206MA41
4C206MA42
4C206MA72
4C206NA02
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZC22
(57)【要約】
本発明は、(a)水不溶性または難水溶性の薬物または機能性食品;(b)少なくとも1つの界面活性剤;(c)ケイ酸、ケイ酸塩またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される1つの担体;および(d)少なくとも1つの炭水化物賦形剤を含む、経口投与のための医薬または機能性食品の「自己乳化型固体分散体」組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記:
(a)水不溶性または難水溶性(疎水性)の薬物または機能性食品;
(b)少なくとも1つの界面活性剤;
(c)ケイ酸、ケイ酸塩またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される1つの担体;および
(d)少なくとも1つの炭水化物賦形剤
を含む、経口投与のための医薬または機能性食品の自己乳化型固体分散体(SESD)組成物。
【請求項2】
薬物または機能性食品が、トコトリエノール類、トコフェロール類、ビタミンA、D、Kおよびβ-カロテンまたは他の疎水性薬物または抽出物からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬または機能性食品のSESD組成物。
【請求項3】
薬物または機能性食品が、トコトリエノール類を含む、請求項2に記載の医薬または機能性食品のSESD組成物。
【請求項4】
界面活性剤が、ポリソルベート(Tween)、ソルビタン脂肪酸エステル(Span)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシル35ヒマシ油(Kolliphor EL)、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の医薬または機能性食品のSESD組成物。
【請求項5】
担体が、1〜40重量%の割合で存在する、請求項1に記載の医薬または機能性食品のSESD組成物。
【請求項6】
担体が、1〜20重量%の割合で存在する、請求項5に記載の医薬または機能性食品のSESD組成物。
【請求項7】
炭水化物賦形剤が、15〜90重量%の割合で存在する、請求項1に記載の医薬または機能性食品のSESD組成物。
【請求項8】
炭水化物賦形剤が、ラクトース、イソマルト、シクロデキストリン、デキストレート、イソマルトデキストリン、マルトデキストリン、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の医薬または機能性食品のSESD組成物。
【請求項9】
炭水化物賦形剤が、40〜90重量%の割合で存在する、請求項8に記載の医薬または機能性食品のSESD組成物。
【請求項10】
下記:
(e)少なくとも1つの結合剤;および
(f)少なくとも1つの滑沢剤
をさらに含む、請求項1に記載の医薬または機能性食品のSESD組成物。
【請求項11】
下記:
(e)少なくとも1つの結合剤;または
(f)少なくとも1つの滑沢剤
をさらに含む、請求項1に記載の医薬または機能性食品のSESD組成物。
【請求項12】
ケイ酸、ケイ酸塩またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される1つの担体;少なくとも1つの界面活性剤;および少なくとも1つの炭水化物賦形剤を含む、水不溶性または難水溶性(疎水性)の薬物または機能性食品ための送達システム。
【請求項13】
少なくとも1つの結合剤;および少なくとも1つの滑沢剤をさらに含む、請求項12に記載の送達システム。
【請求項14】
界面活性剤が、ポリソルベート(Tween)、ソルビタン脂肪酸エステル(Span)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシル35ヒマシ油(Kolliphor EL)、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項12に記載の送達システム。
【請求項15】
担体が、1〜40重量%の割合で存在する、請求項14に記載の送達システム。
【請求項16】
担体が、1〜20重量%の割合で存在する、請求項14に記載の送達システム。
【請求項17】
炭水化物賦形剤が、ラクトース、イソマルト、シクロデキストリン、デキストレート、イソマルトデキストリン、マルトデキストリン、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項12に記載の送達システム。
【請求項18】
炭水化物賦形剤が、15〜90重量%の割合で存在する、請求項17に記載の送達システム。
【請求項19】
炭水化物賦形剤が、40〜90重量%の割合で存在する、請求項18に記載の送達システム。
【請求項20】
下記:
(a)少なくとも1つのトコフェロールを含む化合物または物質;
(b)少なくとも1つの界面活性剤;
(c)ケイ酸担体;
(d)炭水化物賦形剤
を含む、トコフェロールの送達または吸収を改善するための組成物または医薬組成物であって、
ケイ酸担体は0.1〜20重量%の割合で、炭水化物賦形剤は40〜90重量%の割合で存在する、組成物または医薬組成物。
【請求項21】
界面活性剤が、ポリソルベート(Tween)、ソルビタン脂肪酸エステル(Span)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシル35ヒマシ油(Kolliphor EL)、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項20に記載の組成物または医薬品組成物。
【請求項22】
炭水化物賦形剤が、ラクトース、イソマルト、シクロデキストリン、デキストレート、イソマルトデキストリン、マルトデキストリン、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項20に記載の組成物または医薬品組成物。
【請求項23】
下記:
(e)少なくとも1つの結合剤;および
(f)少なくとも1つの滑沢剤
をさらに含む、請求項20に記載の組成物または医薬品組成物。
【請求項24】
下記:
(e)少なくとも1つの結合剤;または
(f)少なくとも1つの滑沢剤
をさらに含む、請求項20に記載の組成物または医薬品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年6月6日出願の米国仮出願第62/857,926号に基づく利益および優先権を主張し、これは出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、医薬または機能性食品の自己乳化型固体分散体(SESD)組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
承認されている薬物の約40%および開発パイプライン薬物の90%近くが難溶性分子からなる。いくつかの上市薬物は、溶解度が低く、透過性が低く、代謝および身体から排出が速く、そして安全性および忍容性が低いという問題がある。
【0004】
他方、機能性食品などの生物活性剤はまた、バイオアベイラビリティが低いかまたは変動しやすいことがあり、これはその有効性を制限し、その有効性の変動をもたらし得る。例えば、体内でビタミンEを製造できないためヒトの食事の必須成分である、ビタミンEは、生殖能力をサポートすることおよび抗酸化活性を有することが知られている。さらに、ビタミンE欠乏は、酸化ストレス関連病態、例えば加齢性白内障、照射傷害および貧血に関連している。天然ビタミンEは、4つのトコフェロール類および4つのトコトリエノール類(T3類)を含む8つの脂溶性化合物のグループである。しかしながら、ヒト体内でα-トコフェロールが豊富であることが相当に注目を集めており、そのため非トコフェロールのビタミンE分子は基礎および臨床研究のテーマとして軽視されている。トコフェロールは、飽和イソプレノイド側鎖またはテールを持つ分子構造を有する。T3は、炭化水素テールまたは不飽和テールに3つのトランス二重結合が存在することでトコフェロールと構造的に異なる。最近の研究は、天然ビタミンEのT3サブファミリーが、トコフェロールでは見られない効果的な神経保護、抗癌、抗炎症およびコレステロール低下の特性を有することを示している。
【0005】
しかしながら、人体におけるT3のバイオアベイラビリティおよび挙動の理解の欠如は、T3の進歩を妨げている。ビタミンEは、一般的に、吸収および代謝的運命について十分研究されているが、T3類の血漿濃度がトコフェロールと比較して極めて低いことが分かった。したがって、吸収およびバイオアベイラビリティを改善し、これによりT3の治療的有効性を改善することが重要である。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、水不溶性または難水溶性(疎水性)の薬物または機能性食品を含む、経口投与のための医薬品または機能性食品の「自己乳化型固体分散体」(SESD)組成物を提供する。
【0007】
本発明の一目的は、(a)水不溶性または難水溶性の薬物または機能性食品;(b)少なくとも1つの界面活性剤;(c)ケイ酸、ケイ酸塩およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される1つの担体;および(d)少なくとも1つの炭水化物賦形剤を含む、経口投与のためのSESDの医薬または機能性食品組成物を提供することである。
【0008】
本発明のいくつかの実施態様において、薬物または機能性食品は、トコトリエノール類(T3類)、トコフェロール類、ビタミンA、D、Kおよびβ-カロテンまたは他の疎水性薬物または抽出物からなる群より選択される。
【0009】
本発明の一例において、薬物または機能性食品は、T3類の少なくとも1つを含む。
【0010】
本発明のいくつかの実施態様において、界面活性剤は、ポリソルベート(Tween)、ソルビタン脂肪酸エステル(Span)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシル35ヒマシ油など、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される。
【0011】
本発明のいくつかの実施態様において、炭水化物賦形剤は、ラクトース、イソマルト、シクロデキストリン、デキストレート、イソマルトデキストリン、マルトデキストリンなど、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される。
【0012】
本発明のいくつかの実施態様において、医薬または機能性食品のSESD組成物は、(e)少なくとも1つの結合剤および(f)少なくとも1つの滑沢剤をさらに含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施態様において、医薬または機能性食品のSESD組成物は、(e)少なくとも1つの結合剤または(f)少なくとも1つの滑沢剤をさらに含む。
【0014】
本発明の別の目的は、ケイ酸、ケイ酸塩およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される1つの担体;少なくとも1つの界面活性剤;および少なくとも1つの炭水化物賦形剤を含む、水不溶性または難水溶性(疎水性)の薬物または機能性食品のための送達システムを提供することである。
【0015】
上記の一般的説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものに過ぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の上記概要および以下の詳細な説明は、添付の図面と合わせて読んだとき、より良く理解される。本発明の例示目的のため、現在好ましい実施態様が図面に示されている。
図面において:
【0017】
図1図1は、溶出アッセイによる様々な製剤化T3(FT)組成物のT3放出速度を示す。FT1、FT2およびFT3を含む3つの組成物は、UNFと比較して、pH1.2およびpH6.8にて著しく高いT3放出速度を示す。UNF、未製剤化T3;FT1、イソマルト+湿式造粒;FT2、デンプン+湿式造粒;FT3、ラクトース+湿式造粒。データを平均±SDとして表し、各群についてn=3;***、p<0.001である。
【0018】
図2図2は、Caco-2細胞単層モデルにおけるUNFおよび様々なFT組成物のバイオアクセシビリティ(経細胞吸収)分析を示す。Caco-2単層に適用した5つの製剤化T3(FT)組成物のうち、4つのFT組成物は、UNFと比較してバイオアクセシビリティの著しい増加を示す。UNF、未製剤化T3;FT1、イソマルト+湿式造粒;FT3、ラクトース+湿式造粒;FT4、イソマルト+PVP K30;FT5、デンプン+PVP K30。データを平均±SDとして表し、各群についてn=3;*、p<0.05、**、p<0.01である。
【0019】
図3図3は、HepaRG細胞における様々なFT組成物の吸収率を示す。HepaRG細胞アッセイを用いた、すべてのFT組成物のT3吸収率は、UNFより著しく高い。UNF、未製剤化T3;FT1、イソマルト+湿式造粒;FT3、ラクトース+湿式造粒;FT4、イソマルト+PVP K30;FT5、デンプン+PVP K30。データを平均±SDとして表し、各群についてn=3;*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001である。
【0020】
図4図4は、Sprague Dawley(SD)ラットにおけるUNFおよびFT1の薬物動態(PK)試験を示す。FT1のT3バイオアクセシビリティは、Tmax、CmaxおよびAUC(曲線下面積)を含む薬物動態試験において、UNFより著しく優れていた。UNF、未製剤化T3;FT1、イソマルト+湿式造粒。Cmax、最高血中薬物濃度;Tmax、Cmaxに達する時間;AUC(曲線下面積)、濃度-時間曲線より下の面積。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の上記概要を、以下の例の実施態様を参照してさらに説明する。しかしながら、本発明の内容は以下の実施態様のみに限定されると理解すべてきではなく、本発明の上記内容に基づくすべての発明が本発明の範囲に属する。
【0022】
他に明確に定義しない限り、本明細書で用いるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されるもの同じ意味を有する。
【0023】
本明細書で用いる単数形「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、他に明確に断らない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「ある試料」への言及は、複数のこのような試料および当業者に公知の等価物を含む。
【0024】
本発明は、(a)水不溶性または難水溶性の薬物または機能性食品;(b)少なくとも1つの界面活性剤;(c)ケイ酸、ケイ酸塩またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される1つの担体;および(d)少なくとも1つの炭水化物賦形剤を含む、経口投与のための医薬または機能性食品の自己乳化型固体分散体(SESD)組成物を提供する。
【0025】
本発明のいくつかの実施態様において、医薬または機能性食品のSESD組成物は、(e)少なくとも1つの結合剤および(f)少なくとも1つの滑沢剤をさらに含む。
【0026】
本発明のいくつかの実施態様において、医薬または機能性食品のSESD組成物は、(e)少なくとも1つの結合剤または(f)少なくとも1つの滑沢剤をさらに含む。
【0027】
本発明による医薬または機能性食品のSESD組成物は、溶解度、バイオアクセシビリティおよび吸収を著しく増加させることが見出された。
【0028】
他方、本発明はまた、ケイ酸、ケイ酸塩またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される1つの担体;少なくとも1つの界面活性剤;および少なくとも1つの炭水化物賦形剤を含む、水不溶性または難水溶性の薬物または機能性食品のための送達システムを提供する。
【0029】
固体状態で担体またはマトリックス中に1つ以上の活性成分を分散および自己乳化させた効果として定義される用語「自己乳化型固体分散体」(SESD)は、バイオアベイラビリティを改善するために水不溶性または難水溶性(疎水性)の薬物または機能性食品の溶解性を改善するための効率的な戦略である。
【0030】
「難水溶性」または「疎水性」は、薬物または機能性食品の溶解度が、生理学的pH範囲、25℃において、10 mg/mL未満、好ましくは0.1 mg/mL未満であることを意味する。溶解度は、標準的な方法で測定され得る。
【0031】
本発明のいくつかの実施態様において、薬物は、直接的に遊離塩基または酸のままの医薬として、または公知の方法で製造され得る薬学的に許容される塩の形態として用いられ得る。酸付加塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、鉱酸、例えばリン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、または有機酸、例えばメタンスルホン酸との塩を含むがこれらに限定されない。塩基付加塩は、例えば、ナトリウム塩、リチウム塩、アルカリ金属塩、例えばカリウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばマグネシウム塩、またはアンモニウム塩を含むがこれらに限定されない。
【0032】
本発明の医薬または機能性食品のSESD組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ドライシロップ剤などを含む様々な剤形に製剤化され得る。特定の実施態様において、本発明の医薬または機能性食品のSESD組成物は、顆粒形態または固体形態である。
【0033】
本発明において、薬物または機能性食品は、T3類、トコフェロール、ビタミンA、D、またはK、β-カロテンまたは他の疎水性薬物または抽出物からなる群より選択される。
【0034】
本発明の一例において、薬物または機能性食品は、少なくとも1つのT3を含む。
【0035】
本発明において、薬物または機能性食品の含有量は、1〜60重量%である。好ましくは、薬物または機能性食品の含有量は、1〜20重量%である。
【0036】
本明細書で用いる用語「界面活性剤」は、液体の表面張力を著しく低下させることができる強い界面活性を有する物質のクラスを指す。適切な界面活性剤は、合成または天然であり得る非イオン性、カチオン性、アニオン性の界面活性剤を含む。本発明に含まれる界面活性剤は、一緒に用いたとき、製剤中における薬物または機能性食品の湿潤化および可溶化を増加させる。界面活性剤の例は、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)としても知られている)、ミレス硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロブタンスルホン酸、アルキルエーテルリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ペルフルオロノナン酸、ペルフルオロオクタン酸(PFOAまたはPFO)、オクテニジン二塩化物、恒久的に帯電した四級アンモニウムカチオン、セチルトリメチルアンモニウム臭化物(CTAB)(すなわち、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物)、セチルトリメチルアンモニウム塩化物(CTAC)、セチルピリジニウム塩化物(CPC)、ポリエトキシ化獣脂アミン(POEA)、ベンザルコニウム塩化物(BAC)、ベンゼトニウム塩化物(BZT)、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩化物、ジオクタデシルジメチルアンモニウム臭化物(DODAB)、CHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-l-プロパンスルホネート)、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、コカミドプロピルベタイン、レシチン、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール(セチルアルコールおよびステアリルアルコールからなる)、オレイルアルコール、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、グルコシドアルキルエーテル、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノール、Triton X-100、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル、Nonoxynol-9、ラウリン酸グリセリル、ポリソルベート、例えばポリソルベート20(Tween 20)、ポリソルベート40(Tween 40)、ポリソルベート60(Tween 60)、ポリソルベート65(Tween 65)、ポリソルベート80(Tween 80)、ソルビタン脂肪酸エステル20(Span 20)、ソルビタン脂肪酸エステル40(Span 40)、ソルビタン脂肪酸エステル65(Span 65)、ソルビタン脂肪酸エステル80(Span 80)、ソルビタンアルキルエステル、コカミドMEA、コカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド、およびポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、またはそれらの1つ以上の混合物を含むが、これらに限定されない。
【0037】
本発明において、界面活性剤は、ポリソルベート(Tween)、ソルビタン脂肪酸エステル(Span)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシル35ヒマシ油、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される。好ましくは、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール200、またはポリオキシル35ヒマシ油である。界面活性剤は、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5%であり得る。
【0038】
本発明によれば、組成物はまた、担体(例えば、薬学的または栄養学的に許容される担体)を含む。担体は、任意の適切な担体または担体混合物であり得る。
【0039】
本明細書で用いる用語「担体」は、活性医薬成分と相互作用し、その特性を増強するように設計された物質を指す。例えば、高品質の流動性および低吸湿性を有する顆粒は、打錠およびカプセル充填に理想的である。担体の例は、二酸化ケイ素、デンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。本発明の一実施態様において、担体は、1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%である。
【0040】
本明細書で用いる用語「賦形剤」は、消費者が極めて小さい活性成分を容易に摂取できるように生成物に嵩を加える物質を指す。好ましくは、該賦形剤は、有機化合物、無機化合物またはタンパク質である。
【0041】
有機賦形剤の例は、ラクトース(例えば、スプレードライラクトース、α-ラクトース、β-ラクトース、一水和物(monohydrate)(登録商標)錠、様々なグレードの永久一水和物(permanent monohydrate)(登録商標)、マイクロ一水和物(micro monohydrate)(登録商標)またはFast-Floc(登録商標))微結晶セルロース(様々なグレードのAlbi cell(登録商標)、El Sema(登録商標)、Viva cell(登録商標)、Ming Tai(登録商標)またはSolka-Floc(登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース、L-ヒドロキシプロピルセルロース(ジェオチサイクリック(jeochi cyclic))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(例えば、Shin-EtsuのMethocel E、FおよびK、metol Los SH、例えば、Methocel Eグレードの4,000cpsおよびmetol Los 60 SH;Methocel Fグレードの4,000cpsおよびmetol Los 65 SH;Methocel Kグレードの4,000、15,000および100,000cps;およびmetol Los 90 SHグレードの4,000、15,000、39,000および100,000)、メチルセルロースポリマー(例えば、Methocel a、Methocel A4C、Methocel A15C、Methocel A4M)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、スクロース、アガロース、ソルビトール、マンニトール、イソマルト、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、イソマルトデキストリン、およびデンプンまたは加工デンプン(馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプンおよび米デンプンを含む)を含むがこれらに限定されない。
【0042】
無機賦形剤の例は、無機顔料、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、フライアッシュ、赤色酸化物、黄色酸化物、レモンクロムおよびコバルトブルー;チタン、銅、真鍮、金、ステンレス鋼を含む金属の粉末;炭酸塩、例えば炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム;リン酸塩、例えばリン酸カルシウムおよびリン酸鉛;シリカおよびケイ酸塩、例えばクレーおよびガラス粒子;クロム酸塩、例えばクロム酸鉛;金属塩、例えば塩化銀;不活性賦形物質、例えばチタン酸塩およびタルク;フェライト;アルミニウム水和物などを含むがこれらに限定されない。特に興味深いのは、金属および金属合金、例えばアルミニウム、コバルト、鉄、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、パラジウム、銀、ルテニウム、白金、金、ロジウム、鉛、およびこれら金属の合金である。また興味深いのは、このような金属の酸化物、特に鉄、ニッケル、コバルトまたはそれらの合金などの磁性酸化物、ならびに他の元素の酸化物、例えば二酸化チタンおよびシリカである。
【0043】
タンパク質賦形剤の例は、コラーゲン、ヒアルロン酸(ヒアルロナン)およびジェリータコラーゲンゲルを含むがこれらに限定されない。
【0044】
本発明のいくつかの実施態様において、炭水化物賦形剤は、ラクトース、イソマルト、シクロデキストリン、デキストレート、イソマルトデキストリン、マルトデキストリン、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される。炭水化物賦形剤は、15〜90重量%、好ましくは40〜90重量%である。本発明の一実施態様において、炭水化物賦形剤は、50〜60重量%、60〜70重量%、70〜80重量%または80〜90重量%である。
【0045】
本明細書で用いる用語「結合剤」は、粉末、顆粒および他の乾燥成分を文字通り「一緒に結合」して、必要な機械的強度を産物に与える接着剤として作用するように処方される添加剤を指す。湿式造粒で一般的に用いられる結合剤は、より効果的で予想通りの顆粒形成を生じるために加えられる。結合剤の例は、界面活性剤ブロックコポリマーEO/PO、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリエチレンアミン、ポリエチレンアミド、ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)、Polymin)、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ(酢酸ビニル)、タイロースおよびこれらのポリマーのコポリマーを含むがこれらに限定されない。
【0046】
本発明の好ましい一実施態様において、結合剤は、ポリビニルピロリドンである。
【0047】
本明細書で用いる用語「滑沢剤」は、打ち抜き型/面への顆粒/粉末の付着を防止し、打錠後の型からのスムーズな排出を促進する物質を指す。滑沢剤はまた、装置表面およびDosator機構への顆粒/粉末の付着を防止するために、カプセルへの充填のために粉末を混合する際、および個々の粒子の凝集を抑制するために、多粒子剤形の表面をコーティングする際などの打錠が関与しないときにも用いられ得る。滑沢剤の例は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸、タルク、ワックスおよびグリセリド、異なる金属の軽油、PEG、ベヘン酸グリセリル、コロイド状シリカ、植物硬化油、トウモロコシデンプン、フマル酸ステアリルナトリウムなど、ポリエチレングリコール、劉さんアルキル、安息香酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウムを含むがこれらに限定されない。
【0048】
本明細書で用いる用語「対象体」は、ヒトまたは非ヒト動物、例えばコンパニオン動物(例えばイヌ、ネコなど)、家畜動物(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、または実験動物(例えばラット、マウス、モルモットなど)を含む。
【0049】
本明細書で用いる用語「有効量」は、そのような量を受け取っていない対応する対象体と比較して、疾患、障害もしくは副作用の治療、治癒、予防もしくは改善、または疾患もしくは障害の進行速度の低下において効果をもたらす、医薬品または機能性食品の量を指す。当該用語はまた、その範囲内に、正常な生理学的機能を増強するのに有効な範囲の量を含む。
【0050】
限定ではなく例示の目的で提供する、以下の実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0051】
統計学的分析
動物実験から得られたデータを、平均と、平均の標準偏差(±S.D.M)として表した。スチューデントt検定を用いて、複数群間または2群間の差異を調べた。統計学的有意性を、* p<0.05、** p<0.01および*** p<0.001として表した。
【0052】
実施例1
【0053】
1.1 FT組成物の製造
例として、表1に記載のFT組成物のいずれも、溶解、バイオアクセシビリティ、吸収および薬物動態分析を提供するために有用に製造し得る。FT組成物を、1〜20%T3、1〜20%担体、1〜5%界面活性剤、52〜94%賦形剤、例えばイソマルト、デンプン、ラクトース、シクロデキストリン、イソマルトデキストリン、ラクトース+イソマルト、ラクトース+マルトデキストリンおよびラクトース+シクロデキストリン、および3%結合剤を含む成分(表1)から製造した。T3および界面活性剤を含む油相成分、ならびに担体および賦形剤を含む固相添加剤を、別々によく混合した。固相添加剤を油相溶液に加え、よく混合した。結合剤を、溶媒、例えばエタノールに溶解させ、その後、固相に加え、よく混合した。あるいは、結合剤を固相に直接加え、混合してもよい。混合物を篩過し、乾燥させ、その後メッシュを通した。
【表1】
【0054】
1.2 担体の選択
SESD組成物の製造に適する担体の選択を、一定量のT3(50%)を用いて準備し、担体(50%)として、SiO2、ケイ酸カルシウム、PVPポリマーおよびコポリマー、マルトデキストリン、イソマルトおよびシクロデキストリンが含まれた(表2)。表2に示す結果に基づいて、T3およびSiO2からなる組成物が最良の物理特性を示した。
【表2】
【0055】
表3に示すT3とSiO2の比に基づいて、FT組成物を製造して、物理特性を決定した。表3に示すように、すべてのFT組成物が良好な物理特性を示した。
【表3】
【0056】
実施例2 UNFおよび様々なFT組成物の溶出試験
【0057】
2.1 溶出試験手順
製剤化粉末2.0 gまたは油形態150 mgを含むFT組成物およびUNF T3を、750 mLの酸媒体(pH1.2の精製水10 L中のラウリル硫酸ナトリウム(SDS)2.5gおよび塩酸83 mLにより調製した、0.025%SDS-HCl水溶液)に曝露し、続いて緩衝媒体(0.20Mリン酸三ナトリウム250 mLを、ベッセル中の液体に連続的に加え、総量は1000 mLに等かった)に曝露した。溶出試験を、pH1.2および6.8の媒体中で連続的に実施した。酸媒体中の試験溶液をサンプリングし、15および30分にてそれぞれ、0.45μmシリンジフィルターを通してろ過した。30分後、0.20Mリン酸三ナトリウム250 mLを加えて、緩衝媒体を形成した。次に、試験溶液を30分後にサンプリングし、0.45μmシリンジフィルターを通してろ過した。採取した媒体を、T3放出速度のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)またはMS(質量分析)分析に供した。
【0058】
2.2 結果
UNFおよび様々なFT T3の溶出分析を、胃および小腸がそれぞれ消化する1.2および6.8のpH値にて決定した。結果は、FT1、FT2およびFT3組成物からのT3溶出が、UNFと比較して1.2および6.8の両方のpH値にて著しく増加したことを示す(図1)。実際、1.2および6.8の両方のpH値におけるコントロールのUNF群からのT3溶出は、ほとんど検出されなかった。
【0059】
実施例3 Caco-2細胞モデルを用いたバイオアクセシビリティ(経細胞吸収)分析
【0060】
3.1 細胞培養
腸細胞によるT3の経細胞吸収を調べるために、Caco-2細胞モデルを用いた。Caco-2細胞を12ウェルプレートの0.4μmトランスウェルインサートに播種した。培地1 mLをバソラテラル区画に加え、培地0.5 mLをアピカル区画に加えた。細胞を均一に分散させて、プレートの底に付着させ、37℃にて5%CO2および95%空気の雰囲気でインキュベートした。
【0061】
3.2 Caco-2細胞株の分化
Caco-2細胞は、80%コンフルエンスに達したとき自然に分化し始め、約14〜21日間の総培養期間の後、小腸細胞の特徴であるアピカル側に密な微絨毛が出現した。培養細胞の適切な分化を確保にするために、経上皮電気抵抗(TEER)値を測定した。オーム計による250Ω〜400Ωの値を有する培養細胞を試験に用いた。
【0062】
3.3 UNFまたは様々なFT T3での処理
処理の前に、細胞をPBSで洗浄した。その後、UNFおよび様々なFT T3をトランスウェルインサートに加え、細胞を2時間インキュベートした。
【0063】
3.4 培地採取および分析
培地を、アピカル側およびバソラテラル側のチャンバーから採取し、1.5 mlエッペンドルフへ移した。その後、培地中のT3を質量分析(MS)により分析した。
【0064】
3.5 結果
得られたCaco-2細胞単層を通るT3のフラックスおよび見かけのバイオアクセシビリティ係数を図2に示した。図2に示すように、FT1、FT4およびFT5組成物は、UNFと比較して、Caco-2単層を通ったT3の吸収を著しく増加させた。しかしながら、同様の結果がFT3とUNFの間でも見られた。
【0065】
実施例4 HepaRG細胞モデルを用いた肝細胞におけるT3の吸収
【0066】
4.1 細胞培養
HepaRG細胞を、培地2 mLで満たした6ウェルプレートに播種し、37℃にて5%CO2および95%空気の雰囲気でインキュベートした。
【0067】
4.2 UNFまたは様々なFT T3での処理
T3組成物を加える前に、細胞をPBSで洗浄した。その後、UNFまたは様々なFT T3をそれぞれプレートに加え、細胞を6時間インキュベートした。
【0068】
4.3 培地採取および分析
培地を採取し、HepaRG細胞をペレット化し、溶解させて、細胞タンパク質を得た。その後、培地および細胞タンパク質をMSにより分析した。
【0069】
4.4 結果
T3肝臓取込みの機能を調べるために、HepaRG細胞での吸収試験を、UNF、または、including FT1、FT3、FT4およびFT5を含む様々なFT T3を用いて実施した。UNFと比較して、FT1、FT3、FT4およびFT5の著しく高いT3吸収がHepaRG細胞において観察された(図3)。
【0070】
実施例5 Sprague Dawley(SD)ラットモデルを用いた薬物動態(PK)分析
【0071】
5.1 動物
SDラット(雄性、250〜400g、約8〜9週齢)をこの試験に用いた。絶食12時間後、一の群のSDラットにUNF(原材料、未製剤化)を与え、他のラットにTF1(製剤化T3)を与えた。
【0072】
5.2 UNFまたはTF1での処置
UNFまたはTF1いずれかの1回投与をそれぞれSDラットに与えた。1回給餌用量におけるTF1中のT3の含有量は、UNFと同様であった(両群についてMSにより測定、36 mgのT3)。
【0073】
5.3 血液採取および分析
血液を尾静脈から0、0.5、1、2、4、6および12時間にて採取し、T3含有量のHPLCまたはMS分析のために血清を遠心分離した。
【0074】
5.4 結果
SDラットにおけるUNFおよびTF1の比較薬物動態試験を図4に示した。SDラットへの経口補給後(36 mgのT3の1回投与、製剤化または未製剤化)、TF1で処置したSDラットのTmax、CmaxおよびAUCは、UNFで処置したSDラットより著しく優れていた(Cmax:TF1 1.59±0.10 ppm対UNF 0.71±0.06 ppm;AUC:TF1 4.97±0.89対UNF 2.75±0.24)。これらの結果は、TF1の経口投与が、UNFと比較して優れた薬物動態プロファイルを有することを示し得る。
【0075】
インビトロのCaco-2細胞モデルでの結果は、SESD T3組成物が、未改変プロトタイプのT3と比較してCaco-2腸細胞のバイオアクセシビリティ(経細胞吸収)を著しく増加させたことを示す。HepaRG肝細胞モデルにおける吸収の結果およびSDラットにおけるPK試験の結果も同様である。
【0076】
また、溶出試験において、T3のSESD組成物の各々は、未改変プロトタイプのT3と比較して胃および小腸がそれぞれ消化する両pH値(1.2および6.8)にて溶解度を著しく増加させた。したがって、化学的には、SESD組成物は親油性T3の親水性を著しく改善し、生物学的には、小腸、肝臓およびインビボ試験においてそのバイオアクセシビリティまたは吸収を改善した。
【0077】
上記説明は、単に本発明における好ましい実施態様関するものであり、当業者には、いくつかの改良および改変が本発明の原理から逸脱することなくなされ得て、これらの改良および改変もまた本発明の保護の範囲内であるとみなされるべきでることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】