特表2021-531292(P2021-531292A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-531292筋肉減少症又は廃用性萎縮症の治療のための組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-531292(P2021-531292A)
(43)【公表日】2021年11月18日
(54)【発明の名称】筋肉減少症又は廃用性萎縮症の治療のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20211022BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20211022BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211022BHJP
   C07K 14/495 20060101ALI20211022BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20211022BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20211022BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20211022BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20211022BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20211022BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61P21/00
   A61K48/00
   A61P43/00 111
   C07K14/495ZNA
   C12N15/12
   C12Q1/6851 Z
   C12Q1/686 Z
   G01N33/50 P
   G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2021-503067(P2021-503067)
(86)(22)【出願日】2019年7月19日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2019069545
(87)【国際公開番号】WO2020016425
(87)【国際公開日】20200123
(31)【優先権主張番号】18184861.5
(32)【優先日】2018年7月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】19152677.1
(32)【優先日】2019年1月18日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520296842
【氏名又は名称】アソシエーション・アンスティトゥート・ドゥ・マイオロジー
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランス・ピエトリ−ルクセル
(72)【発明者】
【氏名】セスティーナ・ファルコーネ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB01
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB02
2G045FB03
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR48
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX02
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA65
4C084NA14
4C084ZA94
4C084ZC41
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、加齢性筋肉減少症又は廃用性萎縮症の治療のための方法における使用のためのGDF5経路を活性化する物質に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋肉減少症又は廃用性萎縮症の治療又は予防のための方法における使用のためのGDF5経路を活性化する物質。
【請求項2】
ミオパシー又は神経筋疾患における筋肉衰弱の治療又は予防における、単独か又は前記ミオパシー若しくは神経筋疾患の治療と組み合わせた使用のためのGDF5経路を活性化する物質。
【請求項3】
GDF5の活性を上昇させる化合物又はGDF5の発現を増加させる化合物から選択される、請求項1又は2に記載の使用のための物質。
【請求項4】
組換えヒトGDF5である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための物質。
【請求項5】
組換えヒトCaVβ1-E又はヒトCaVβ1-Eをコードするベクターである、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための物質。
【請求項6】
50歳又はこれ以上、特には、55歳又はこれ以上、特には、60歳又はこれ以上、より詳細には、65歳又はこれ以上、更により詳細には、70歳又はこれ以上、例えば、75歳若しくはこれ以上、又は更には80歳若しくはこれ以上の対象に投与される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための物質。
【請求項7】
経口、経鼻、血管内、筋肉内、腹腔内経路、経皮又は皮下経路により投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための物質。
【請求項8】
定期的に、例えば、毎月、特には、毎週、又はより詳細には、毎日投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための物質。
【請求項9】
筋肉減少症の治療により、筋量及び/若しくは筋機能の上昇、身体能力若しくは可動性の上昇、並びに/又は筋力の上昇が生じる、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための物質。
【請求項10】
GDF5経路を活性化する物質及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項11】
物質が、組換えヒトGDF5である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
医薬としての使用のためのGDF5経路を活性化する物質。
【請求項13】
組換えヒトGDF5である、請求項12に記載の使用のための物質。
【請求項14】
対象の生体試料におけるGDF5のレベルを判定する工程を含む、対象における筋肉減少症の診断のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢性筋肉減少症又は廃用性萎縮症の治療のための方法における使用のためのGDF5経路を活性化する物質に関する。
【背景技術】
【0002】
筋肉減少症は、骨格筋量及び骨格筋機能の進行性の低下により特徴づけられる加齢性の症状である。50歳から筋量及び筋力が低下し始め、典型的には、30%を超える初期筋量が80歳には失われる。筋肉減少症は、高齢者の公衆衛生における主要な臨床的問題であり、有害転帰、例えば、身体障害、生活の質の低下、入院の必要性及び死亡リスクの上昇を伴う。筋肉減少症は、フレイルを生じることがあり、いくつかの研究では、筋力が低下した対象において、転倒リスクが著しく上昇することを示している。この症状により主要な懸念が引き起こされ、この症状の発症を可能な限り予防又は遅らせて、生存を高め、長期介護の需要を削減することが重要である。
【0003】
非常に多数の研究において、廃用性萎縮症及び筋肉減少症に関する分子機構に取り組んでいる。
【0004】
廃用性萎縮症は、アトロジーン(atrogene)が急速に活性化される初期、及び萎縮症が安定化して遺伝子の差次的発現が基礎レベルに戻る後期により一般に特徴づけられる。この最近の知見では、分子機構が、筋量の低下に反作用するように活性化され得ることを示唆している。このような仮説は、総mRNA及びタンパク質含有量が、除神経筋において増加する(Furuno, K.、 Goodman, M. N. & Goldberg, A. L. Role of different proteolytic systems in the degradation of muscle proteins during denervation atrophy. J. Biol. Chem.265、8550〜8557頁(1990))だけでなく、タンパク質合成機構が活性化される(Furano Op. cit.; Sartori, R.らBMP signaling controls muscle mass. Nat. Genet.45、1309〜1318頁(2013))という証拠により確認されている。この代償性応答では、わずかな成分しか同定されておらず、特に、除神経筋及び絶食時の筋肉における筋量の低下の反作用に必須である(Sartori Op. cit)だけでなく、神経挫滅後の再神経支配を促進する(Macpherson, P. C. D.、 Farshi, P. & Goldman, D. Dach2-Hdac9 signaling regulates reinnervation of muscle endplates. Development142、4038〜4048頁(2015)) Gfd5/Smad4経路が重要な役割を果たす。しかし、神経退却を完了させる、非常に重度の病状を模倣する坐骨神経の外科切除により、突発的かつ不可逆的分子経路を誘導して代償性応答を誘導することができる。それにもかかわらず、このモデルでは、筋分解を非常に緩徐とし、進行性であり機構を均衡させる筋肉喪失を変化させ得る、他の神経筋疾患を反映させることが不十分である。
【0005】
代わりに、加齢する筋肉は、酸化の増加、DNA損傷、非効率な自食作用、代謝変化、神経-筋肉の接続の固定化及び減少を含むいくつかの分子の変化の結果として、筋量の喪失を均衡させる能力が漸進的に低下する(Miljkovic, N.、 Lim, J.-Y.、 Miljkovic, I. & Frontera, W. R. Aging of skeletal muscle fibers. Ann. Rehabil. Med. 39、155〜162頁(2015))。自食作用を高めてDNAの酸化的損傷を減少させることを目的とするカロリー制限、並びに筋活動を回復させることを目的とする運動又は機能的電気刺激は、現在まで、老化した骨格筋の機能及びサイズを維持する最良の手法である。しかし、筋量及び筋機能の低下に反作用する代償性応答を生じる機構をより良く理解することは、分子標的を同定して、老年期における生存及び生活の質を向上させるのに非常に意義がある。
【0006】
本出願では、発明者らは、CaVβ1-Eが、加齢する筋肉だけでなく若年の廃用性筋肉においてもGdf5発現を持続させてシグナル伝達することにより、生理学的筋量を維持するのに主要な役割を担うことを明らかに実証する。発明者らは、加齢性筋肉減少症が、CaVβ1-E/GDF5の強力な減少と関連することを初めて明らかとし、成人及び加齢する筋肉における電気的活動機能障害後の筋萎縮症を均衡させるのに必要な分子経路の活性化を引き起こす分子としてのCaVβ1-Eの重要な役割を特徴づけた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第201308649号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Furuno, K.、Goodman, M. N. & Goldberg, A. L. Role of different proteolytic systems in the degradation of muscle proteins during denervation atrophy. J. Biol. Chem.265、8550〜8557頁(1990)
【非特許文献2】Sartori, R.らBMP signaling controls muscle mass. Nat. Genet.45、1309〜1318頁(2013)
【非特許文献3】Macpherson, P. C. D.、 Farshi, P. & Goldman, D. Dach2-Hdac9 signaling regulates reinnervation of muscle endplates. Development142、4038〜4048頁(2015)
【非特許文献4】Miljkovic, N.、 Lim, J.-Y.、 Miljkovic, I. & Frontera, W. R. Aging of skeletal muscle fibers. Ann. Rehabil. Med. 39、155〜162頁(2015)
【非特許文献5】Winbanksら2013、Macphersonら2015
【非特許文献6】Reynardら、2014-Hum Genet (2014) 133:1059〜1073頁
【非特許文献7】Sadejahら、JCI Insight. 2018;3(3):e98441
【非特許文献8】Nakamura, K.ら(1999) Exp. Cell Res. 250:351
【非特許文献9】Charbordら、Stem Cells. 2013 Sep;31(9):1816-28
【非特許文献10】Gus Remington's Pharmaceutical Sciences (18th Ed., Mack Publishing Co., Eastern, Pa.、1990、1435〜1712頁)
【非特許文献11】Vassillopoulosら、J. Cell Biol. 205、377〜393頁(2014)
【非特許文献12】Pasqueら、EMBO J. 30、2373〜2387頁(2011)
【非特許文献13】Riviereら、Gene Ther. 13、1300〜1308頁(2006)
【非特許文献14】Schneider, C. A., Rasband, W. S. & Eliceiri, K. W. NIH Image to ImageJ: 25 years of image analysis. Nature Methods (2012). doi:10.1038/nmeth.2089
【非特許文献15】TaylorらJ. Cell Biol. 205、829〜846頁(2014)
【非特許文献16】TaylorらAging Cell 8、584〜594頁(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
CaVβ1-E/GDF5が強力に減少した加齢性筋肉減少症の関連性を明らかとすることにより、健康上の主要な懸念に対する治療的解法がもたらされる。本発明の結果、ここで、GDF5経路を活性化することによる筋肉減少症の治療を思い描くことが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、医薬としての使用のためのGDF5経路を活性化する物質を本明細書において記載する。より詳細には、GDF5経路を活性化する物質は、筋肉減少症又は廃用性萎縮症の治療又は予防のための方法において使用する。特定の実施形態では、物質は、GDF5の活性を上昇させる化合物又はGDF5の発現を増加させる化合物から選択される。本発明による使用のための代表的物質は、組換えGDF5タンパク質、組換えCaVβ1-Eタンパク質又はGDF5若しくはCaVβ1-Eをコードするベクターを含むが、これらに限定されない。他の物質は、CaVβ1-E/GDF-5系を含む物質、例えば、NRSF阻害物質を含む。NRSF阻害物質の中でも、化合物X5050及びバルプロ酸は、非制限的に引用することができる。
【0011】
物質は、50歳又はこれ以上、特には、55歳又はこれ以上、特には、60歳又はこれ以上、より詳細には、65歳又はこれ以上、更により詳細には、70歳又はこれ以上、例えば、75歳若しくはこれ以上、又は更には80歳若しくはこれ以上の対象に投与され得る。その上、物質は、経口、経鼻、血管内(例えば、静脈内又は動脈内)、筋肉内、腹腔内、経皮又は皮下経路により投与され得る。物質は、定期的に、例えば、毎月、特には、毎週、又はより詳細には、毎日投与され得る。加えて、物質は、1日1回又は1日に数回投与され得る。
【0012】
筋肉減少症の治療により、筋量及び/若しくは筋機能の上昇、身体能力若しくは可動性の上昇、並びに/又は筋力の上昇が生じ得る。本明細書に開示する治療の他の利益は、当業者に明らかである。
【0013】
別の態様では、本発明は、GDF5経路を活性化する物質、例えば、組換えGDF5、特には、組換えヒトGDF5、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物に関する。
【0014】
更なる態様は、治療における使用のためのGDF5経路を活性化する物質、例えば、組換えGDF5、特には、組換えヒトGDF5に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、上記対象の生体液におけるGDF5のレベルを判定する工程を含む、対象における筋肉減少症の診断のための方法に関する。
【0016】
本発明の他の目的及び利点は、当業者に容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】筋肉の除神経を行うと、選択的第1エクソンスプライシングによって新たなCaVβ1アイソフォームの発現が誘導されることを示す図である。神経支配又はそれぞれ1、3、7、15日の除神経TA筋由来のCacnb1 mRNAのRT-qPCRを示す。プライマーは、マウスCacnb1の予想コード領域のエクソン2及びエクソン3においてデザインする。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
図1B】筋肉の除神経を行うと、選択的第1エクソンスプライシングによって新たなCaVβ1アイソフォームの発現が誘導されることを示す図である。神経支配(1及び3行目)又は3、7又は15日の除神経TA筋(それぞれ2、4、5行目)におけるCaVβ1発現の代表的ウエスタンブロット解析を示す。アクチンは、ローディングコントロールとして使用する。
図1C】筋肉の除神経を行うと、選択的第1エクソンスプライシングによって新たなCaVβ1アイソフォームの発現が誘導されることを示す図である。2つのプロモーター領域を示すCacnb1遺伝子の模式図である。
図1D】筋肉の除神経を行うと、選択的第1エクソンスプライシングによって新たなCaVβ1アイソフォームの発現が誘導されることを示す図である。RNA配列データを確証する、神経支配(inn)又は除神経(den)TA筋における種々のCacnb1領域の代表的RT-PCRを示す。
図1E】筋肉の除神経を行うと、選択的第1エクソンスプライシングによって新たなCaVβ1アイソフォームの発現が誘導されることを示す図である。エクソン13のCacnb1-D特異的領域及びエクソン14のCacnb1-E特異的領域の代表的RT-PCRを示す(プライマーは、図1Eにおいて下線を引く)。
図2A】CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5シグナル伝達の阻害によって除神経筋における筋萎縮症が悪化することを示す図である。AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-sh CaVβ1-E(sh CaVβ1-E)で処置した成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋におけるCacnb1-E(ex14)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
図2B】CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5シグナル伝達の阻害によって除神経筋における筋萎縮症が悪化することを示す図である。AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-sh CaVβ1-E(sh CaVβ1-E)で処置した成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋におけるCacnb1-D(ex13)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
図2C】CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5シグナル伝達の阻害によって除神経筋における筋萎縮症が悪化することを示す図である。AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-sh CaVβ1-E(sh CaVβ1-E)で処置した成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋におけるCacnb1(ex2〜3)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
図2D】CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5シグナル伝達の阻害によって除神経筋における筋萎縮症が悪化することを示す図である。CaVβ1の中枢ペプチドに対して産生させ、CaVβ1-D(下のバンド)及びCaVβ1-E(上のバンド)を認識する抗体を使用した、AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-sh CaVβ1-E(sh CaVβ1-E)で処置した成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋におけるCaVβ1発現の代表的ウエスタンブロット解析を示す。
図2E】CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5シグナル伝達の阻害によって除神経筋における筋萎縮症が悪化することを示す図である。AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-sh CaVβ1-E(sh CaVβ1-E)で処置した成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋における、アクチンに対して正規化したCaVβ1-D及びCaVβ1-Eの発現の定量を示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
図2F】CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5シグナル伝達の阻害によって除神経筋における筋萎縮症が悪化することを示す図である。15日の成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋のTA/マウス体重の比率の百分率を示す。TAは、AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-sh CaVβ1-E(sh CaVβ1-E)で処置した。データは、平均値±s.e.m.として示す。***P<0.001、対のある試料のt検定(両側);各条件についてn=6筋肉。
図2G】CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5シグナル伝達の阻害によって除神経筋における筋萎縮症が悪化することを示す図である。AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-sh CaVβ1-E(sh CaVβ1-E)で処置した成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋におけるGdf5の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
図2H】CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5シグナル伝達の阻害によって除神経筋における筋萎縮症が悪化することを示す図である。上は、AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-sh CaVβ1-E(sh CaVβ1-E)で処置した成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋におけるリン酸化SMAD 1/5/8及びアクチンの代表的ウエスタンブロット解析を示し、下は、AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-sh CaVβ1-E(sh CaVβ1-E)で処置した神経支配(inn)及び除神経(den)TA筋における、アクチンに対して正規化したリン酸化SMAD 1/5/8の発現の定量を示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=6マウス)。
図2I】CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5シグナル伝達の阻害によって除神経筋における筋萎縮症が悪化することを示す図である。AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-sh CaVβ1-E(sh CaVβ1-E)で処置した成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋におけるId-1の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
図2J】CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5シグナル伝達の阻害によって除神経筋における筋萎縮症が悪化することを示す図である。7量体CANNNTG E-boxを含むGdf5プロモーター領域を上流のルシフェラーゼ遺伝子にクローニングし、pCDNA3 shスクランブル(scra)を用いてpCDNA3-sh CaVβ1-EをC2C12細胞内にトランスフェクトした。ウミシイタケルシフェラーゼのためのベクターによる同時トランスフェクションを使用して、トランスフェクション効率について正規化した。C2C12は、分化培地に24又は48時間維持し、次いで、ホタル/ウミシイタケルシフェラーゼ活性の比率を決定した。データは、平均値±s.d.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。各条件についてn=3回の独立した実験。
図3A】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。種々の齢のマウス由来の成体神経支配TAのTA/マウス体重の比率の百分率を示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。***P<0.001、対のある試料のt検定(両側)。各条件についてn=6筋肉。
図3B】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。Cacnb1-E(ex14)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=6マウス)。
図3C】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。Cacnb1-D(ex13)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=6マウス)。
図3D】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。12、52及び78週齢のマウス由来の神経支配及び除神経TA筋におけるCacnb1-E(ex14)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=6マウス)。
図3E】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。12、52及び78週齢のマウス由来の神経支配及び除神経TA筋におけるCacnb1-D(ex13)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=6マウス)。
図3F】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。12、52及び78週齢のマウス由来の神経支配及び除神経TA筋における Gdf5の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=6マウス)。
図3G】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。CaVβ1-D (下のバンド)及びCaVβ1-E (上のバンド)を認識する抗体を使用した、12、52及び78週齢のマウス由来の神経支配(inn)及び除神経(den) TA筋におけるCaVβ1発現の代表的ウエスタンブロット解析を示す。
図3H】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。12、52及び78週齢のマウス由来の神経支配(inn)及び除神経(den) TA筋におけるアクチンに対して正規化したCaVβ1-Eの発現の定量を示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=6マウス)。
図3I】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。12、52及び78週齢のマウス由来の神経支配(inn)及び除神経(den) TA筋におけるアクチンに対して正規化したCaVβ1-Dの発現の定量を示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=6マウス)。
図3J】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。種々の年齢の健常対象由来の大腿筋膜筋生検のヒト張筋におけるCacnb1の種々のアイソフォームの発現のRT-qPCRを示す。ヒト脊髄生検由来のRNAをCacnb-Bの陽性対照として使用する。
図3K】加齢する筋肉:減少性筋肉喪失と関連するCaVβ1-E下方制御の生理学的モデルを示す図である。種々の年齢の健常対象由来の大腿筋膜筋生検のヒト張筋におけるGdf5の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=6マウス)。
図4A】CaVβ1-Eが高発現すると、GDF5シグナル伝達がレスキューされることにより加齢性筋肉減少症が回復することを示す図である。スクランブル(Scra)又はAAV-CaVβ1-E(CaVβ1-E)で処置した92週齢のマウス由来の神経支配TA筋におけるCacnb1-E(ex14)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=12マウス)。
図4B】CaVβ1-Eが高発現すると、GDF5シグナル伝達がレスキューされることにより加齢性筋肉減少症が回復することを示す図である。スクランブル(Scra)又はAAV-CaVβ1-E(CaVβ1-E)で処置した92週齢のマウス由来の神経支配TA筋におけるCacnb1-D(ex13)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=12マウス)。
図4C】CaVβ1-Eが高発現すると、GDF5シグナル伝達がレスキューされることにより加齢性筋肉減少症が回復することを示す図である。スクランブル(Scra)又はAAV-CaVβ1-E(CaVβ1-E)で処置した92週齢のマウス由来の神経支配TA筋におけるGdf5の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=12マウス)。
図4D】CaVβ1-Eが高発現すると、GDF5シグナル伝達がレスキューされることにより加齢性筋肉減少症が回復することを示す図である。スクランブル(Scra)又はAAV-CaVβ1-E(CaVβ1-E)で処置した92週齢のマウス由来の神経支配TA筋における、リン酸化SMAD 1/5/8及びアクチンの代表的ウエスタンブロット解析を示す。
図4E】CaVβ1-Eが高発現すると、GDF5シグナル伝達がレスキューされることにより加齢性筋肉減少症が回復することを示す図である。スクランブル(Scra)又はAAV-CaVβ1-E(CaVβ1-E)で処置した92週齢のマウス由来の神経支配TA筋における、正規化したリン酸化SMAD 1/5/8の定量を示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=4マウス)。
図4F】CaVβ1-Eが高発現すると、GDF5シグナル伝達がレスキューされることにより加齢性筋肉減少症が回復することを示す図である。スクランブル(Scra)又はAAV-CaVβ1-E(CaVβ1-E)で処置した92週齢のマウス由来の神経支配TA筋におけるId-1の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=12マウス)。
図4G】CaVβ1-Eが高発現すると、GDF5シグナル伝達がレスキューされることにより加齢性筋肉減少症が回復することを示す図である。AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-CaVβ1-Eで処置した92週齢のマウス由来の神経支配TA筋のTA/マウス体重の比率の百分率を示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。***P<0.001、対のある試料のt検定(両側)。各条件についてn=12筋肉。
図4H】CaVβ1-Eが高発現すると、GDF5シグナル伝達がレスキューされることにより加齢性筋肉減少症が回復することを示す図である。AAV-shスクランブル(Scra)又はAAV-CaVβ1-E(CaVβ1-E)で処置した92週齢のマウス由来の神経支配TA筋のTAにおいて測定した比力を示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。***P<0.001、対のある試料のt検定(両側)。各条件についてn=12筋肉。
図5A】ヒト筋肉におけるCaVβ1-Eの発現:代償性機構は保存されるか?を示す図である。ヒトhCaVβ1タンパク質並びにhCACNB1遺伝子及び転写変異体の模式図である(出典7)。
図5B】ヒト筋肉におけるCaVβ1-Eの発現:代償性機構は保存されるか?を示す図である。3人の健常成人由来のヒト四頭筋(Q)及び大腿筋膜(FL1及びFL2)筋生検(表1)におけるhCACNB1の種々のアイソフォームの発現を示す代表的RT-PCR結果である。1つのヒト脊髄生検(SC)由来のRNAをhCACN1-Bの陽性対照として使用した。プライマーは、hCACNB1の予想コード領域のエクソン13、エクソン5〜9のためにデザインした。ヒトリボソームリンタンパク質(hPO)は、ローディングコントロールとして使用する。
図5C】ヒト筋肉におけるCaVβ1-Eの発現:代償性機構は保存されるか?を示す図である。3人の健常成人由来のヒト四頭筋(Q)及び大腿筋膜(FL1及びFL2)筋生検(表1)におけるhCACNB1-Eの発現を示す代表的RT-PCR結果である。1つのヒト脊髄生検(SC)由来のRNAをCACN1-Bのエクソン14の発現のための陽性対照として使用した。プライマーは、hCACNB1の予想コード領域のエクソン14、ATG2エクソン7Aのためにデザインした。hPOは、ローディングコントロールとして使用する。
図5D】ヒト筋肉におけるCaVβ1-Eの発現:代償性機構は保存されるか?を示す図である。図5B及び図5Cと同一の成人健常対象由来のヒト大腿筋膜(FL1及びFL2)筋生検(表1)におけるCaVβ1の代表的ウエスタンブロットを示す。アクチンは、ローディングコントロールとして使用した。
図6A】ヒトにおけるhCACNB-E/hGDF5の発現と加齢性筋肉喪失との相関性を示す図である。表2に詳細を示す、健常な若年及び高齢ボランティア由来のヒト四頭筋生検における除脂肪筋量の百分率及び力の分布である。
図6B】ヒトにおけるhCACNB-E/hGDF5の発現と加齢性筋肉喪失との相関性を示す図である。表2に詳細を示す、健常な若年及び高齢ボランティア由来のヒト四頭筋生検におけるhCACNB-E又はhCACNB-A発現の分布である。
図6C】ヒトにおけるhCACNB-E/hGDF5の発現と加齢性筋肉喪失との相関性を示す図である。表1に詳細を示す、健常な若年及び高齢ボランティア由来のヒト四頭筋生検におけるhCACNB-E発現と除脂肪筋量百分率との間の線形回帰であり、決定係数(Rの2乗)及びPを示す。
図6D】ヒトにおけるhCACNB-E/hGDF5発現と加齢性筋肉喪失との相関性を示す図である。表2に詳細を示す、健常な高齢ボランティア由来のヒト四頭筋生検におけるhGDF5(赤色の三角、左のy軸)及びhCACNB-E(青色の円、右のy軸)の発現の分布であり、除脂肪筋量百分率の上昇を有する。黒色の点線は、若年群の除脂肪筋量百分率の平均を示す。
図7A】パイロット試験におけるRh-GDFの添加を示す図である。90週齢C57Bl/6マウスに対するマウスRh-GDF5投与プロトコールの模式図を示す。Rm-GDF5を0.2mg/Kgで週に2回、腹腔内に注射した。ビヒクル:PBS/BSA 0.1%。
図7B】パイロット試験におけるRh-GDFの添加を示す図である。ビヒクル単独を注射後のプロトコールの初期(T0)及び末期(T10)における90週齢C57Bl/6マウスの除脂肪筋量及び脂肪量の百分率を示す。
図7C】パイロット試験におけるRh-GDFの添加を示す図である。マウスRm-GDF5 (Gdf5)を注射後のプロトコールの初期(T0)及び末期(T10)における90週齢C57Bl/6マウスの除脂肪筋量及び脂肪量の百分率を示す。
図7D】パイロット試験におけるRh-GDFの添加を示す図である。ビヒクル又はRm-GDF5 (Gdf5)を10週間処置した100週齢C57Bl/6マウス由来の四頭筋(Quad)及び前脛骨筋(TA)の筋肉/体重の比率を示す。
図S1A】胚性CaVβ1アイソフォームの発現を示す図である。図2Eに示すように、エクソン13のCacnb1-D特異的領域及びエクソン14のCacnb1-E特異的領域の代表的RT-PCRを示し、Cacnb1-Eは、胚性筋及び除神経筋において転写され、Cacnb1-Dは、成体の筋肉においてP0で、わずかに転写される。
図S1B】胚性CaVβ1アイソフォームの発現を示す図である。成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋並びに胚性/新生仔筋におけるCacnb1-D(ex13)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
図S1C】胚性CaVβ1アイソフォームの発現を示す図である。成体の神経支配及び除神経筋並びに胚性/新生仔筋におけるCacnb1-E(ex14)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
図S1D】胚性CaVβ1アイソフォームの発現を示す図である。成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋並びに胚性/新生仔筋における選択的第1エクソンスプライシングを示すCacnb1(ex 2〜3)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
図S1E】胚性CaVβ1アイソフォームの発現を示す図である。胚性/新生仔筋並びに成体の神経支配及び除神経筋における種々のCacnb1領域の代表的RT-PCRを示す。
図S1F】胚性CaVβ1アイソフォームの発現を示す図である。CaVβ1の中枢ペプチドに対して産生させ、CaVβ1-D (下のバンド)及びCaVβ1-E (上のバンド)を認識する抗体を使用した、神経支配又は除神経TA筋及び胚性筋(E16)におけるCaVβ1発現の代表的ウエスタンブロット解析を示す。
図S1G】胚性CaVβ1アイソフォームの発現を示す図である。CaVβ1-Eのみを認識する、ヒトCaVβ1に対するCaVβ1抗体を使用した、胚性E16筋及び神経支配(inn)又は除神経成体TA筋における3日間のCaVβ1発現の代表的ウエスタンブロット解析を示す。アクチンは、ローディングコントロールとして使用する。
図S1H】胚性CaVβ1アイソフォームの発現を示す図である。CaVβ1タンパク質並びにCacnb1遺伝子及び転写変異体の模式図である。
図S1I】胚性CaVβ1アイソフォームの発現を示す図である。胚性/新生仔筋、成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋、並びに脊髄におけるCacnb1(ex5〜9)の発現のRT-PCRを示し、筋組織又は神経組織における種々のサイズの増幅配列を示す。
図S1J】胚性CaVβ1アイソフォームの発現を示す図である。胚性/新生仔筋並びに成体の神経支配(inn)及び除神経(den)筋におけるCacnb1-E変異体のみを増幅する、Cacnb1(ex7A〜14)の発現のRT-PCRを示し、増幅配列の種々の発現レベルを示す。
図S2A-1】図S2A。Cacnb1変異体の配列アラインメントである。Cacnb1-D(通常の字体)及びCacnb1-E(イタリック体)のRNA配列のアラインメントを示す。特異的qPCRのプライマー配列は、下線を引く。
図S2A-2】図S2Aの続き。
図S2B】Cacnb1変異体の配列アラインメントである。CaVβ1-D(通常の字体)及びCaVβ1-E(イタリック体)のタンパク質配列のアラインメントを示す。
図S2C-1】図S2C。Cacnb1変異体の配列アラインメントである。Cacnb1-B(通常の字体)及びCacnb1-E(イタリック体)のRNA配列のアラインメントを示す。
図S2C-2】図S2Cの続き。
図S3A】C2C12におけるCacnb1-E及びGdf5の発現を示す図である。分化するC2C12筋管において、Cacnb1-E変異体のみを増幅する、Cacnb1(ex7A〜14)の発現のRT-PCRを示す。ミオゲニンを分化マーカーとして、POをハウスキーピング遺伝子として使用する。
図S3B】C2C12におけるCacnb1-E及びGdf5の発現を示す図である。CaVβ1の中枢ペプチドに対して産生させ、CaVβ1-D(下のバンド)及びCaVβ1-E(上のバンド)を認識する抗体を使用した、分化するC2C12筋管、胚性筋(E16)、及び神経支配(D0)又は3日間除神経した(D3)成体TA筋におけるCaVβ1発現の代表的ウエスタンブロット解析を示す。
図S3C図S3C。C2C12におけるCacnb1-E及びGdf5の発現を示す図である。24、48及び72時間分化させたC2C12におけるGdf5の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。
図S3D】C2C12におけるCacnb1-E及びGdf5の発現を示す図である。pCDNA3スクランブル(Scra)又はpCDNA3-shEx2をトランスフェクトした、48時間分化させたC2C12における、Cacnb1-E(Ex14)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。
図S3E】C2C12におけるCacnb1-E及びGdf5の発現を示す図である。pCDNA3スクランブル(Scra)又はpCDNA3-shEx2をトランスフェクトした、48時間分化させたC2C12におけるGdf5の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。
図S4A】減少性の筋肉におけるCaVβ1を示す図である。CaVβ1の中枢ペプチドに対して産生させ、CaVβ1-D(下のバンド)及びCaVβ1-E(上のバンド)を認識する抗体を使用した、神経支配95〜100週齢(高齢) TA筋、及び神経支配(Inn)又は除神経した(Den) 12週の成体(若年) TA筋における、CaVβ1発現の代表的ウエスタンブロット解析を示す。
図S4B】減少性の筋肉におけるCaVβ1を示す図である。神経支配95〜100週齢(高齢)TA筋及び12週の成体(若年)TA筋におけるCacnb1(Ex 2〜3)の発現のRT-qPCRを示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=5マウス)。
図S4C】減少性の筋肉におけるCaVβ1を示す図である。12、52及び78週齢のマウス由来の神経支配(inn)及び除神経(den) TA筋におけるリン酸化SMAD 1/5/8及びアクチンの代表的ウエスタンブロット解析を示す。
図S4D】減少性の筋肉におけるCaVβ1を示す図である。12、52及び78週齢のマウス由来の神経支配(inn)及び除神経(den) TA筋における、アクチンに対して正規化したリン酸化SMAD 1/5/8の発現の定量を示す。データは、平均値±s.e.m.として示す。*P<0.05、***P<0.001、独立した試料のt検定(両側)。(1群あたりn=3マウス)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
坐骨神経の切除モデルにおける電気的活動の変化に対する骨格筋の即時応答を測定することにより、発明者らは、翻訳されたCacnb1アイソフォームE(又はアイソフォーム5、RefSeq: NM_001282977; NP_001269906)に対応するタンパク質の出現を観察した。発明者らは、このタンパク質CaVβ1-Eが、CaVβ1に特異的な胚性変異体であることを示し、これにより、胚性アイソフォームがまた、神経支配を欠く成人の骨格筋において発現することを実証することができた。マウスでは、発明者らは、CaVβ1-Eが、GDF5シグナル伝達の活性化により筋量の喪失を均衡させるのに必要とされることを実証した。CaVβ1-Eが下方制御されると、GDF5発現が障害され、除神経後に筋萎縮症が悪化する。老化した減少性の筋肉におけるCaVβ1-E及びGDF5のレベルを測定して、発明者らは、両方のタンパク質が、加齢の過程において著しく減少することを見出した。発明者らは、高齢の健常対象(75歳超)由来のヒト筋生検におけるCaVβ1-E及びGDF5に関して同一の相関性を観察した。より重要なことには、発明者らは、AAVベクターによりCaVβ1-Eが高発現すると、処置したマウスの骨格量が明らかに保存されることを示すことができた。加えて、CaVβ1-Eを高発現する筋肉の比力が、著しく向上した。CaVβ1-Eが回復すると、GDF5経路がレスキューされ、次いで、筋肉減少症に反作用して筋量の更なる低下を消失させる。GDF5経路は、除神経モデルの代償性応答において役割を果たすことがこれまでにわかっている。しかし、本出願は、GDF5経路が、加齢する筋肉に関与するという最初の報告である。これは、先行技術を大いに補強するものを意味し、筋肉減少症の治療のための新規の治療的手法をもたらす。
【0019】
したがって、本発明は、筋肉減少症の治療ためのGDF5経路の活性化に関する。
【0020】
増殖分化因子5(GDF5;BMP-14及びCDMP-1とも呼ばれる)は、TGFベータスーパーファミリータンパク質のうちのBMPファミリーのメンバーである。ヒトGDF-5、-6及び-7は、BMPファミリーの亜群を定義する。GDF5は、354個のアミノ酸のN末端プロ領域及び120個のアミノ酸のC末端成熟ペプチドからなるホモ二量体の前駆タンパク質として合成する。成熟ヒトGDF-5は、成熟マウス及びラットの両方のGDF5との99%のアミノ酸配列同一性を共有する。GDF5シグナル伝達は、1型(BMPR-1B)及びII型(BMPR-II又はアクチビンRII)セリン/スレオニンキナーゼ受容体からなるホモ二量体複合体の形成により媒介され、これは、細胞質Smadタンパク質(Smad 1、5及び8)のリン酸化及び活性化を生じる。他のBMPファミリータンパク質と同様に、GDF5シグナル伝達は、ノギンにより弱められる。GDF5は、肢生成、軟骨発生、関節形成、骨の形態形成、細胞生存、及び神経突起生成を含む複数の発生過程に関与する。外因性GDF5は、in vivo及びin vitroでの間葉系肝細胞における軟骨形成、骨形成、及び血管形成を促進することが報告されている。GDF5発現が阻害されるか又はこのシグナル伝達が変化すると、変形性関節症の発症が亢進し得る。
【0021】
萎縮性刺激(神経損傷、絶食)後の骨格筋の維持におけるGDF5/SMAD4経路の関連性は、2013年Sartori及び同僚らにより、SMAD4ノックアウトマウス由来の筋肉が除神経に対する代償性応答を欠いたことを示す公表文献において、明白に示されている。彼らは、野生型マウスにおいて、SMAD4が、除神経時に強力に上方制御されるパラクリン因子であるGDF5(BMP14としても知られる)により活性化されたことを示した。神経切除後に発現するGDF5は、Smad1/5/8複合体のリン酸化を刺激するBMP受容体1に作用する。この変化において、この複合体は、SMAD4に結合して核へのこの移行を媒介し、ここで、これは遺伝子転写を調節してユビキチンリガーゼMUSA1(Fbox32)の活性化を阻害することにより、萎縮症を制限する。この公表文献では、神経退却後の過剰な筋肉喪失の反作用に必要とされる必須経路を定義した。その上、GDF5が、GDF8(ミオスタチンとしてよく知られる)シグナル伝達を支配し、ミオスタチン阻害後に誘発された筋肥大は、GDF5経路の普及が原因であることをも示した。わずかな他の研究により、筋量の恒常性におけるGDF5/SMAD4の必須の役割が確認された(Winbanksら2013、Macphersonら2015)が、GDF5の誘導を引き起こす上流のシグナル伝達を解明した研究はない。最近の論文では、DNAのメチル化が、GDF5プロモーターの活性化において重要な役割を有し(Reynardら、2014-Hum Genet (2014) 133:1059〜1073頁)、また、NFKB-TAK1経路が、骨格筋においてSMAD4シグナル伝達に関与する(Sadejahら、JCI Insight. 2018;3(3):e98441)ことが示され、GDF5の関与の可能性を議論するのみである。
【0022】
本発明では、筋肉減少症の治療又は予防のための方法における使用のためのGDF5経路を活性化する物質を提供する。
【0023】
特定の実施形態では、GDF5経路を活性化する物質は、GDF5ペプチド、特には、合成又は組換えGDF5、より詳細には、組換えGDF5、例えば、組換えヒトGDF5である。未処理の野生型ヒトGDF-5(Uniprot受託番号P43026)は、次の配列を有する。
【0024】
【化1】
【0025】
(配列番号1)
【0026】
配列番号1は、単一のペプチドをアミノ酸位置1〜27に、プロペプチドをアミノ酸位置28〜381に、及び上記の配列において下線を引いた、成熟ペプチドに対応する部分をアミノ酸位置382〜501に含む。
【0027】
したがって、成熟ペプチドは、以下の配列番号2に示す配列を有する。
APLATRQGKRPSKNLKARCSRKALHVNFKDMGWDDWIIAPLEYEAFHCEGLCEFPLRSHLEPTNHAVIQTLMNSMDPESTPPTCCVPTRLSPISILFIDSANNVVYKQYEDMVVESCGCR
(配列番号2)
【0028】
他の組換えヒトGDF5は、市販されており、例えば、配列番号3に示す配列を有するタンパク質であり、これは、Thermo Fischer社(カタログ番号RP-8663)から入手可能である。
APSATRQGKRPSKNLKARCSRKALHVNFKDMGWDDWIIAPLEYEAFHCEGLCEFPLRSHLEPTNHAVIQTLMNSMDPESTPPTCCVPTRLSPISILFIDSANNVVYKQYEDMVVESCGCR
(配列番号3)
【0029】
本発明の文脈では、配列番号2又は配列番号3に示すペプチドは、「参照組換えヒトGDF5」と呼び得る。
【0030】
別の特定の実施形態によれば、GDF5経路を活性化する物質は、GDF5ペプチドの機能性誘導体である。本発明による機能性誘導体は、参照ペプチドの少なくとも1つ、特には、すべての活性を有するペプチドである。本発明の文脈では、GDF5ペプチドの機能性変異体は、ATDC5マウス軟骨形成細胞によるアルカリホスファターゼの産生を誘導する能力を、0.01〜10μg/mL、例えば、0.2〜4μg/mL、例えば、0.2〜1.2μg/mLのED50で有し得る(Nakamura, K.ら(1999) Exp. Cell Res. 250:351)。特には、GDF5ペプチドの機能性変異体は、本出願の実験部分に示す症状の動物モデル、又はヒト対象における、筋肉減少症を治療又は予防し得るペプチドである。また、GDF5シグナル伝達は、SMAD1/5/8のリン酸化、SMAD 4の核移行及びId-1の転写を、以下の実験部分に示すように測定することにより評価し得る。機能性変異体の活性は、参照GDF5ペプチドの活性の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は少なくとも100%であり得る。特定の実施形態では、機能性ペプチドは、参照GDF5ペプチドの活性よりも優れた活性、例えば、参照GDF5ペプチドの少なくとも105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%の活性又は少なくとも150%の活性を有する。加えて、本発明によれば、GDF5ペプチドの機能性変異体は、参照GDF5アミノ酸配列に対する少なくとも80%の配列同一性、特には、参照ヒト組換えGDF5に対する少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する。例えば、GDF5ペプチドの機能性変異体は、参照組換えヒトGDF5と比較して1〜20個のアミノ酸修飾(すなわち、アミノ酸の付加、欠失又は置換)、例えば、参照組換えヒトGDF5と比較して1〜15個のアミノ酸修飾、特には、1〜10個のアミノ酸修飾、より詳細には、1〜6個のアミノ酸修飾、更により詳細には、1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸修飾を含み得る。組換えヒトGDF5のこのような機能性変異体は、GDF5の自然変異体であり得る。特定の態様では、機能性変異体は、最適化GDF5ペプチドである。最適化は、ペプチドにおける種々の変化、例えば、上記のアミノ酸修飾、グリコシル化、アセチル化、リン酸化等、又は少なくとも1つのD-アミノ酸、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4又は少なくとも5つのDアミノ酸の組込みを含み得る。別の態様では、GDF5ペプチドは、GDF5配列の別のアミノ酸の挿入、付加、又は置換により組み込まれた少なくとも1つの非天然アミノ酸を含む。更に別の態様では、組換えGDF5は、別の部分、例えば、別のペプチド部分に融合させ得る。このような他の部分は、ペプチドを、例えば、安定化し得る。
【0031】
別の特定の実施形態では、物質は、国際公開第201308649号に記載されているGDF5関連タンパク質に対応し、BMP受容体IB(BMPR-IB)に対する親和性が上昇し、及び/又はBMP受容体IA(BMPR-IA)に対する親和性が低下した、GDF5ペプチドの機能性変異体である。特定の実施形態では、タンパク質は、ヒト野生型GDF5に由来する。特定の実施形態では、GDF5関連タンパク質は、好ましくは、遺伝子改変技術により、GDF-5ペプチドのアミノ酸配列内のBMPR-IB及び/又はBMPR-IA結合部位に関連する少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することにより得る。更なる実施形態では、GDF5ペプチドのBMPR-IB及び/又はBMPR-IA結合部位における少なくとも1つの疎水性アミノ酸は、親水性又は極性アミノ酸、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、セリン及びスレオニンからなる群から選択される親水性アミノ酸残基又は極性アミノ酸残基と置換する。代替の実施形態では、GDF5ペプチドのBMPR-IB及び/又はBMPR-IA結合部位における少なくとも1つの親水性又は極性アミノ酸は、疎水性アミノ酸、例えば、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、バリンからなる群から選択される疎水性アミノ酸と置換する。代替の別の実施形態では、GDF5関連タンパク質は、GDFペプチドのBMPR-IB及び/又はBMPR-IA結合部位における少なくとも1つのアミノ酸の保存的置換を含み、特には、疎水性アミノ酸は、小型若しくは大型の疎水性アミノ酸により置換するか、又は疎水性若しくは極性アミノ酸は、小型若しくは大型の親水性若しくは極性アミノ酸により置換する。BMPR-IA及び/又はBMPR-IB結合部位のへの結合に関与するGDF-5関連タンパク質の領域は、当技術分野において周知であるか、又は一般知識の範囲内の方法を使用して容易に決定することが可能である。野生型ヒトGDF5の未処理で完全長のアミノ酸配列である配列番号1を参照して、特定の実施形態では、異なる任意のアミノ酸による、次のアミノ酸の1つ又は複数の置換を提供する。
R399;
F409〜W417のいずれか1つ、特にはM412、G413、W414及び/又はW417;
E434〜M456のいずれか1つ、特にはF435、P436、L437、R438、S439、H440、P443、N445、V448、I449、L452、M453、S455及び/又はM456;
S475;
I476;
F478;
K488〜M493のいずれか1つ、特にはK488、Y490及び/又はD492。
【0032】
特定の実施形態では、未処理で完全長のアミノ酸配列である配列番号1を参照して、次のアミノ酸の1つ又は複数を特定のアミノ酸により置換する。
- R399は、V、L、I、M、F、Y、W、E又はDにより置換し、
- M412は、V、L、I、F、Y、W、H、K又はRにより置換し、
- W414は、R、K、F、Y、H、E又はDにより置換し、
- W417は、R、K、F、Y、H、E又はDにより置換し、
- F435は、V、L、I、M、P、Y、W、H、K又はRにより置換し、
- P436は、V、L、I、M、F、Y又はWにより置換し、
- L437は、D又はEにより置換し、
- R438は、K、D、H、N、M、E、Q、S、T、Y又はWにより置換し、
- S439は、K、D、E、H、R、M、T、N、Q、Y又はWにより置換し、
- H440は、V、I、M、F、Y、W、E又はDにより置換し、
- P443は、V、L、I、M、F、Y、W、A又はSにより置換し、
- N445は、D、Q、H、F、L、R、K、M、S、Y又はWにより置換し、
- V448は、F、L、I、M、P、Y又はWにより置換し、
- I449は、F、L、V、M、P、Y又はWにより置換し、
- L452は、F、I、V、M、P、Y又はWにより置換し、
- M456は、F、I、L、P、Y、W、S、T、N、Q、K又はDにより置換し、
- S475は、M、T、N、Q、Y又はWにより置換し、
- K488は、R、M、S、T、N、Q、Y又はWにより置換し、
- Y490は、E、H、K、R、Q、F、T、M、S、N、Q又はWにより置換し、
- D492は、G、E、M、S、T、N、Q、Y、W、H、K又はRにより置換し、
- I476は、G、A、V、L、M、F、Y又はWにより置換し、
- F478は、G、A、V、L、I、Y又はWにより置換する。
【0033】
別の特定の実施形態では、未処理で完全長のアミノ酸配列である配列番号1を参照して、次のアミノ酸の1つ又は複数を特定のアミノ酸により置換する。
R399は、M又はEにより置換し、
W414は、Rにより置換し、
W417は、R又はFにより置換し、
R438は、Kにより置換し、
S439は、K又はEにより置換し、
I449は、Vにより置換する。
【0034】
成熟ペプチド(例えば、配列番号2又は配列番号3)における対応する位置は、未処理で完全長の野生型ヒトGDF-5に関する上の情報から容易に得られる。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、物質は、アミノ酸が配列番号2又は配列番号3からなるGDF5ペプチドである。別の特定の実施形態では、物質は、アミノ酸配列が配列番号2又は配列番号3からなり、メチオニン残基をN末端に付加したGDF5ペプチドである。別の実施形態では、物質は、アミノ酸が配列番号2又は配列番号3からなり、第1のアラニン残基をメチオニン残基により置換したGDF5ペプチドである。
【0036】
更なる特定の実施形態では、GDF5経路を活性化する物質は、CaVβ1-E/GDF5系を含む物質である。この実施形態では、変異体は、小型の化学分子の使用を含む。この実施形態の非限定的な変異体では、GDF5経路を活性化する物質は、NRSF(神経特異的抑制因子;REST又はRE1転写抑制因子とも呼ばれる)の阻害物質である。
【0037】
特定の実施形態では、NRSF阻害物質であるGDF5経路を活性化する物質は、バルプロ酸である。更なる特定の実施形態では、GDF5経路を活性化する物質は、Charbordら、Stem Cells. 2013 Sep;31(9):1816-28に開示するNRSF阻害物質、特には、それに開示する2-(2-ヒドロキシ-フェニル)-1H-ベンゾイミダゾール-5-カルボン酸アリルオキシアミド(X5050)、2-チオフェン-2-イル-1H-ベンゾイミダゾール-5-カルボン酸(2-エチル-ヘキシル)-アミド(X5917)、3-[1-(3-ブロモ-フェニル)-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル]-1-{4-[5-(モルホリン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-2-フェニル-ピペラジン-1-イル}-プロパン-1-オン(X38210)又は3-[1-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-4-イル]-1-{4-[5-(モルホリン-4-カルボニル)-ピリジン-2-イル]-2-フェニル-ピペラジン-1-イル}-プロパン-1-オン(X38207)分子、より詳細には、それに開示するX5050分子から選択される。
【0038】
更に別の実施形態では、GDF5経路を活性化する物質は、GDF5、例えば、ヒトGDF5又はこの機能性変異体をコードする核酸を含むベクターである。特定の実施形態では、ベクターは、プラスミド又はウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。したがって、本発明はまた、GDF5をコードする配列を含む、ベクター、例えば、ウイルスベクター、例えば、上記のレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス又はAAVベクターに関する。特定の実施形態によれば、ウイルスベクターは、筋肉及び/又は神経細胞の形質導入に適する。より特定の実施形態では、筋肉及び/又は神経細胞の形質導入に適するこのようなウイルスベクターは、AAVベクター、例えば、AAV2/2、AAV2/6、AAV2/8、AAV2/9又はAAV2/10カプシドを有するAAVベクターである。更なる特定の実施形態では、GDF5をコードする配列は、制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー及びポリアデニル化シグナルの制御下に存在し得る。特定の実施形態では、ベクターは、プロモーター、GDF5をコードする配列及びポリアデニル化シグナルをこの順序で含む発現カセットを含む。プロモーターは、遍在性又は組織特異性であり得る。特定の実施形態では、プロモーターは、GDF5遺伝子の天然のプロモーター、例えば、ヒトGDF5遺伝子のプロモーターである。
【0039】
別の特定の実施形態では、GDF5経路を活性化する物質は、GDF5の活性又は発現を上昇させる物質である。より特定の実施形態では、物質は、組換えCaVβ1-E、例えば、組換えヒトCaVβ1-Eである。
【0040】
更なる実施形態では、GDF5経路を活性化する物質は、CaVβ1-E、例えば、ヒトCaVβ1-Eをコードする核酸を含むベクターである。特定の実施形態では、ベクターは、プラスミド又はウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターである。したがって、本発明はまた、CaVβ1-Eをコードする配列を含む、ベクター、例えば、ウイルスベクター、例えば、上記のレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス又はAAVベクターに関する。CaVβ1-Eをコードする配列は、制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー及びポリアデニル化シグナルの制御下に存在し得る。特定の実施形態では、ベクターは、プロモーター、CaVβ1-Eをコードする配列及びポリアデニル化シグナルをこの順序で含む、発現カセットを含む。プロモーターは、遍在性又は組織特異性であり得る。特定の実施形態では、プロモーターは、CaVβ1-E遺伝子の天然のプロモーター、例えば、ヒトCaVβ1-E遺伝子のプロモーターである。
【0041】
好ましい実施形態では、GDF5経路を活性化する物質は、上記の組換えGDF5、例えば、組換えヒトGDF5又はこの機能性変異体である。
【0042】
特定の実施形態では、物質は、50歳又はこれ以上の対象に投与される。特定の実施形態では、対象は、55歳又はこれ以上、特には、60歳又はこれ以上、より詳細には、65歳又はこれ以上、更により詳細には、70歳又はこれ以上、例えば、75歳若しくはこれ以上、又は更には80歳若しくはこれ以上である。特定の実施形態では、対象は、進行性の筋量低下を示す。対象は、男性又は女性、特には、閉経後の女性であり得る。特定の実施形態では、対象の運動神経細胞は、インタクト又は実質的にインタクトであり、対象の体内で除神経が生じていないことを意味する。
【0043】
対象は、筋肉減少症を患っているか又は潜在的に患っているものとして、当業者に公知の任意の方法によりスクリーニングし得る。このような方法は、2重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)によって骨格筋量指数を算出すること、及び/又は対象のボディマス指数を算出することによる評価を含む。本発明から利益を得る対象を同定するための他の方法は、筋肉機能パラメーターの測定を含む。
【0044】
また、本発明は、対象が、部分的又は完全な身体的運動抑制、例えば、一肢の運動抑制、例えば、腕、脚、肩、股関節の運動抑制を被っている場合、特には、上記四肢の骨折後、最も詳細には、股関節の骨折後の上述の年齢の対象に利益をもたらし得る。例えば、運動抑制は、骨折、例えば、腕骨、脚骨の骨折、又は股関節の骨折の結果であり得る。また、運動抑制は、人工部位、例えば、人工装具、部分的又は完全人工膝関節、部分的又は完全人工股関節、及び部分的又は完全肩関節との身体部位の置換に伴い得る。特定の実施形態では、物質は、股関節骨折を有する高齢の対象に投与する。したがって、本発明は、部分的又は完全な身体的運動抑制を有する対象における加齢性筋量低下の治療又は予防のための方法における使用のためのGDF5経路を活性化する物質に関する。特には、本発明は、股関節骨折を有する対象における加齢性筋量低下の治療又は予防のための方法における使用のためのGDF5経路を活性化する物質に関する。
【0045】
また、本発明は、早老症を患っている対象に利益をもたらし得る。ハッチンソン・ギルフォード症候群としても知られる早老症は、非常にまれな進行性遺伝障害であり、これは、小児の急速な老化を生じ、生後2年で発症する。早老症を有する小児は、出生時、遺伝的には正常に見える。生後1年間に、徴候及び症状、例えば、発育の遅れ及び脱毛が見られる。また、この疾患を患っている小児において、筋量の低下も観察される。したがって、本発明は、疾患の症状の1つを少なくとも軽減させることにより、早老症を患っている対象に有益であり得る。したがってこのため、本発明は、早老症に関連する筋量の低下を治療若しくは予防し、筋量及び/若しくは筋機能を上昇又は安定化し、又は早老症を患っている対象の身体能力若しくは可動性を上昇若しくは安定化するための方法における使用のためのGDF5経路を活性化する物質に関する。
【0046】
別の実施形態によれば、対象は、上記対象の生体試料におけるGDF5のレベルを判定することにより同定する。特定の実施形態では、生体試料は、生体液試料、例えば、血液、血漿、血清、尿又は唾液である。したがって、本発明の別の態様は、対象の生体試料、例えば、生体液におけるGDF5のレベルを判定する工程を含む、対象における筋肉減少症の診断ための方法に関する。特定の実施形態では、生体液は、血液、血漿又は血清である。更なる特定の実施形態では、対象試料におけるGDF5のレベルは、参照試料におけるGDF5のレベルと比較する。参照試料は、対象の試料と同様に処理した、若年の非筋肉減少性の対象由来の試料であり得る。また、参照試料におけるGDF5のレベルは、公表された所定の基準、例えば、若年の非筋肉減少性の対象におけるGDF5の平均レベルの測定から得た基準であり得る。例えば、参照試料は、若年対象(例えば、45歳若しくはこれ以下、40歳若しくはこれ以下、35歳若しくはこれ以下、又は30歳若しくはこれ以下の対象)の試料であり得る。この場合、試験試料におけるGDF5のレベルが、参照試料におけるGDF5のレベルよりも低いとき、筋肉減少症が疑われ得る。参照試料は、年齢及び/又は性別特異的な対象に対応し得る。特定の実施形態では、対象は、ヒト男性であり、参照試料におけるGDF5のレベルは、若年ヒト男性対象の参照試料におけるGDF5のレベルである。別の特定の実施形態では、対象は、ヒト女性であり、参照試料におけるGDF5のレベルは、若年ヒト女性対象の参照試料におけるGDF5のレベルである。例えば、対象がヒト男性である場合、参照試料は、30〜40歳のヒト男性由来の参照試料におけるGDF5のレベルであり得る。特定の実施形態では、対象がヒト男性である場合、参照試料レベルは、30〜40歳の非筋肉減少性ヒト男性対象において測定したGDF5のレベルの平均値である。別の実施形態では、対象がヒト女性である場合、参照試料は、40〜50歳のヒト女性由来の参照試料におけるGDF5のレベルであり得る。特定の実施形態では、対象がヒト女性である場合、参照試料レベルは、40〜50歳の非筋肉減少性ヒト女性対象において測定したGDF5のレベルの平均値である。明確とするために、このような平均値は、30〜40歳の複数の若年ヒト男性対象又は40〜50
歳の複数の若年女性対象において測定したレベルから取得し、このような値は、平均化する。参照レベルの定義では、GDF5レベルを得る対象の状態に留意すべきである。例えば、ヒト女性参照では、妊婦を除外することに留意し得る。
【0047】
また、GDF5経路を活性化する物質又は上記のベクターを、薬学的に許容される担体に含む医薬組成物を本明細書において開示する。医薬組成物は、他の添加物、例えば、保存料、緩衝液及び/又は溶媒を更に含み得る。適する担体は、水又は生理食塩水を含むが、これらに限定されない。また、担体タンパク質、例えば、血清アルブミンは、医薬組成物中に含まれ得る。本発明に従って調製した、最終的に製剤化された医薬組成物は、溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固体又は脱水若しくは凍結乾燥した粉末の形態で、無菌のバイアルに保存し得る。このような製剤は、すぐに使用できる形態、又は例えば、凍結乾燥粉末の場合、投与前に再構成を必要とする形態のいずれかで保存し得る。上記及び更に適する医薬製剤は、当技術分野において公知であり、例えば、Gus Remington's Pharmaceutical Sciences (18th Ed.、 Mack Publishing Co.、 Eastern, Pa.、1990、1435〜1712頁)に記載されている。このような製剤は、薬学的に有効な化合物の物理的状態、安定性、in vivoでの放出率及びin vivoでのクリアランス率に影響し得る。
【0048】
有効な他の投与形態は、非経口的徐放、すなわち、遅延性の製剤、吸入ミスト、経口的に活性の製剤を含む。例えば、徐放製剤は、高分子化合物(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等)の粒子調製物又はリポソームに結合するか又は組み込まれるタンパク質を含み得る。
【0049】
また、本発明による医薬組成物は、例えば、輸注又は注射による、非経口投与のために製剤化することがあり、また、徐放又は持続的に循環する製剤を含み得る。
【0050】
物質は、経口、直腸、経鼻、血管内(例えば、静脈内又は動脈内)、筋肉内及び腹腔内、経皮及び皮下経路のような種々の経路により、経腸的又は非経口的に投与し得る。医薬組成物は、最終的に選択された特定の投与経路に適合させる。
【0051】
特定の実施形態では、物質は、組換えタンパク質、例えば、組換えヒトGDF5であり、これは経皮又は血管内経路、より詳細には、静脈内経路により投与する。
【0052】
特定の態様では、物質は、リポソーム、ナノ粒子(例えば、脂質含有ナノ粒子)又は脂質をベースとする担体に含まれる。他の態様では、物質は、経皮送達に作用するように皮膚パッチに含まれる。別の態様では、物質は、植込み型装置、例えば、皮下移植のための装置に含まれる。特定の実施形態では、植込み型装置は、物質を徐々に及び/又は持続的に送達するポンプを含む。このような植込み型装置は、補充システムを含み得る。
【0053】
物質は、治療的有効量、すなわち、筋肉減少症の少なくとも1つの症状の回復を生じる量で投与する。治療的有効量は、投与する物質、治療する対象、筋肉減少症の段階、投与経路等に基づいて、当業者により容易に決定することができる。
【0054】
特定の実施形態では、物質は、1回投与する。例えば、物質は、遺伝子治療ベクター、例えば、GDF5又はCaVβ1-Eをコードするベクターであることがあり、これは、コードされた遺伝子の持続的発現のために1回投与する。
【0055】
別の特定の実施形態では、物質は、定期的に、例えば、毎月、特には、毎週、又はより詳細には、毎日投与する。加えて、物質は、1日1回又は1日に数回投与し得る。更なる特定の実施形態では、物質は、加齢する対象に生涯投与する。
【0056】
また、GDF5経路を活性化する物質及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を本明細書において更に開示する。
【0057】
また、別の態様は、医薬としての使用のためのGDF5経路を活性化する物質に関する。
【0058】
本発明の物質は、筋肉減少症を治療又は予防するため、すなわち、対象における加齢性筋量低下を治療又は予防するための方法において使用し得る。本発明の非限定的な利益は、対象における、筋量及び/若しくは筋機能の上昇若しくは安定化、身体能力若しくは可動性の上昇若しくは安定化、入院期間の削減、自律性の上昇、筋肉減少症と関連する死亡リスクの予防、がん死亡率の予防、並びに/又はフレイルの治療若しくは予防を含み得る。
【0059】
別の態様では、本発明はまた、ミオパシー又は神経筋障害を患っている対象における筋肉衰弱の治療のための方法における使用のためのGDF5経路を活性化する物質に関する。衰弱は、ミオパシー及び神経筋疾患の主な臨床症状の1つであり、罹患患者の日常生活、予後、及び転帰に強力に影響する。このような疾患を患っている対象における主要な治療目標の1つは、筋肉衰弱を完全に回復させることである。種々の治療選択が、可能であり、理学療法、電気療法、食事、薬物、筋肉毒性物質及び衰弱誘発物質の回避若しくは中止、解毒、肝細胞治療、血漿交換、呼吸療法、又は手術を含む。本発明の結果、筋肉衰弱は、それを必要とする対象へのGDF5経路を活性化する物質の投与により治療又は予防し得る。GDF5経路を活性化する物質は、単独か又はミオパシー若しくは神経筋疾患のための治療と組み合わせて投与し得る。したがって、本発明はまた、ミオパシー又は神経筋疾患のための治療と組み合わせた、例えば、上記症状の治療に適する別の薬学的に活性な物質と組み合わせた使用のためのGDF5経路を活性化する物質に関する。本発明の結果、ミオパシー又は神経筋疾患のためのこのような治療の文脈において、大きな利益、例えば、筋量及び/若しくは筋機能の上昇若しくは安定化、又は身体能力若しくは可動性の上昇若しくは安定化を得ることがあり、これにより、ミオパシー又は神経筋疾患に対する上記治療の治療効率が相乗的に上昇する。また、本発明は更に、ミオパシー又は神経筋疾患のための治療を受ける対象、例えば、ミオパシー、例えば、中心核ミオパシー及びジストロフィン異常症(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー又はベッカー型筋ジストロフィー)又は神経筋疾患、例えば、脊髄性筋萎縮症及び筋萎縮性側索硬化症を患っている対象における、筋量及び/若しくは筋機能の上昇若しくは安定化又は身体能力若しくは可動性の上昇若しくは安定化における使用のためのGDF5経路を活性化する物質に関する。好ましくは、対象の運動神経細胞は、インタクト又は実質的にインタクトである。
【0060】
本発明の別の態様は、運動神経細胞の障害により媒介される筋疾患の治療に関する。実際、GDF5経路の活性化が、萎縮性又は減少性の筋肉における代償性経路の活性化を生じることを本明細書において示す。したがって、GDF5経路を活性化する物質によって、神経支配の欠如又は神経支配の障害を代償することが可能である。本発明によって治療し得る筋肉疾患は、ミオパシー、例えば、中心核ミオパシー及びジストロフィン異常症(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー又はベッカー型筋ジストロフィー)、神経筋疾患、例えば、脊髄性筋萎縮症及び筋萎縮性側索硬化症、並びに先天性及び外傷性脊髄損傷を含むが、これらに限定されない。
【0061】
本発明は、筋量及び/又は筋機能の加齢性の低下の治療に主に着目しているが、GDF5経路を活性化する物質の投与の他の利益は、CaVβ1-E/GDF-5系が筋量及び筋機能の恒常性に関与するという知見に基づいて思い描き得る。上記のように、物質は、若年の早老症対象に有利に投与し得る。加えて、上記のミオパシー及び神経筋疾患から選択される症状のための治療を受けている若年の対象は、GDF5経路を活性化する物質による治療が単独でも、上記症状の治療に適する別の薬学的に活性な物質と組み合わせても、利益を得ることができる。
【0062】
別の態様では、GDF5経路を活性化する物質はまた、これを必要とする対象における廃用性萎縮症を治療又は予防するために投与し得る。この態様では、タイ粗油は、若年又は高齢のいずれかであり得る。例えば、廃用性萎縮症は、部分的又は完全な身体的運動抑制、例えば、四肢の運動抑制、例えば、腕、脚、肩、又は股関節の運動抑制の結果又は将来の結果であり得る。例えば、運動抑制は、骨折、例えば、腕骨、脚骨の骨折、又は股関節の骨折の結果であり得る。また、運動抑制は、人工部位、例えば、人工装具、部分的又は完全人工膝関節、部分的又は完全人工股関節、及び部分的又は完全肩関節との身体部位の置換に伴い得る。また、運動抑制は、対象が昏睡状態である場合の結果であり得る。このため、本発明は、これにより、昏睡の発症中に観察された筋肉喪失を治療又は予防し得る点において有益であり得る。例えば、本発明は、対象における、筋量及び/若しくは筋機能の上昇若しくは安定化、身体能力若しくは可動性の上昇若しくは安定化、又は昏睡と関連するフレイルの予防若しくは治療のために、昏睡状態の対象にとって有益であり得る。
【0063】
別の特定の態様では、本発明は、筋量及び/又は筋力を非治療的に上昇させるためのGDF5経路を活性化する物質の使用に関する。例えば、このような筋量及び/又は筋力の上昇は、スポーツの練習又はエクササイズの文脈において望まれ得る。この実施形態では、対象は、若年対象、例えば、10代の若者又は若年成人、例えば、11〜50歳、特には15〜40歳、例えば、18〜30歳の対象であり得る。
【0064】
勿論、本発明はまた、獣医学分野における適用及び利益を有し得る。特には、上記の任意の実施形態は、非ヒト哺乳動物、例えば、ペット及び家畜において実行し得る。特には、GDF5経路を活性化する物質は、上記ペット又は家畜、特には、ペットにおける筋肉減少症を治療又は予防するためにペットに投与し得る。特には、GDF5経路を活性化する物質は、上記ペットにおける、筋量及び/若しくは筋機能の上昇若しくは安定化、身体能力若しくは可動性の上昇若しくは安定化、動物病院における入院期間の削減、自律性の上昇、筋肉減少症と関連する死亡リスクの予防、がん死亡率の予防、並びに/又はフレイルの治療若しくは予防のためにペットに投与し得る。特定の実施形態によれば、ペットは、人間とともに暮らす任意の非ヒト哺乳動物を含むが、これらに限定されない。このようなペットは、ネコ、イヌ、ウサギ、マウス、ハムスター、モルモット、フェレット、ウマ及びブタを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ペットは、ネコ又はイヌである。
【0065】
別の態様では、本発明は、筋量及び/又は筋機能の誘導及び上昇に有効な量のGDF5経路を活性化する物質を動物に投与する工程を含む、非ヒト動物、特には、家畜における筋量及び/又は筋機能を上昇させるための非治療的方法に関する。本発明の文脈では、家畜は、労働力及び/又は商品、例えば、食肉、卵、乳、毛皮、皮革、及び羊毛をもたらすように農業環境において飼育した、飼い慣らされた動物である。この用語は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びウマを含むが、これらに限定されない。
【0066】
勿論、上記のすべての非ヒト哺乳動物の態様では、特異的に使用するGDF5経路を活性化する物質は、上記物質を摂取する特定の非ヒト哺乳動物に応じて選択される。例えば、物質がGDF5ペプチド、CaVβ1-Eタンパク質、又はGDF5ペプチド若しくはCaVβ1-Eタンパク質をコードするベクターである場合、上記ヒト哺乳動物に由来する、ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質をコードするベクターを使用することが、より適し得る。例示として、ネコ、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、フェレット、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ及びヤギのGDF5ペプチド、CaVβ1-Eタンパク質、又は上記をコードするベクターは、好ましくは、ネコ、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、フェレット、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ及びヤギの対象において、それぞれ使用し得る。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
材料及び方法
プラスミド及びAAVの生成。
AAV-sh CaVβ1-Ex2 (sh CaVβ1-E) (個体: TRCマウスCacnb1 shRNAクローンId: TRCN000006951、Dharmacon社)は、pSUPERにおいてH1プロモーターの制御下でBglII及びHindIII部位のPCR挿入によりpALK0.1shCaVβ1-Ex2をクローニングすることによって生成した。次いで、H1カセットをAAV1をベースとするベクター内の2つのITR間に、pSMD2-sh AAV2ベクター骨格のBamHI及びSalI部位を使用して導入した(Vassillopoulosら、J. Cell Biol. 205、377〜393頁(2014))。pSUPER retro puro Scr shRNA (SCRA)は、John Gurdonから寄贈されたものであった(Addgeneプラスミド# 30520) (Pasqueら、EMBO J. 30、2373〜2387頁(2011))。BamHI部位は、PCRにより挿入し、H1-SCRAカセットは、BamHI及びSalI部位によりpSMD2-shにクローニングした。AAV2/1偽型ベクターは、Center of Research in MyologyのAAV生成施設により、これまでに記載するように293個の細胞におけるトランスフェクションによって調製した(Riviereら、Gene Ther. 13、1300〜1308頁(2006))。
【0068】
AAV-CaVβ1-Eは、EcoRI及びNheI部位と隣接するCacnb-E ORF (NM_001282977)をpSMD2 AAV2ベクターにおいてCMVプロモーター下で直接クローニングすることにより生成した(GeneArt string; ThermoFisher社)。最終ウイルス調製物は、PBS溶液に-80℃で維持した。粒子力価(ウイルスゲノム数)を定量的PCRにより決定した。すべてのAAV2/1は、1×1012ベクターゲノム(vg)/TAの最終力価で使用した。
【0069】
また、sh Cacnb-Ex2、sh-SCRAをpCDNA3においてクローニングして、ルシフェラーゼアッセイを行った。
【0070】
Gdf5プロモーター領域は、パブリックドメインhttp://epd.vital-it.chを使用し、-312 toof Gdf5 TSSから配列を得てデザインした。EcoRI及びNheI部位と隣接するこの配列を合成し(GeneArt string; ThermoFisher社)、HSVTK-Luc3'修飾プラスミドにおいて上流のホタルルシフェラーゼ遺伝子をクローニングして、ルシフェラーゼアッセイを行った。
【0071】
in vivoでの遺伝子導入
実験は、成体の6〜8又は78〜80週齢のC57/BL6マウスについて実施した。イソフルランを使用して麻酔を行い、ブプレノルフィン(vetergesic)により鎮痛を行った。筋肉内注射(40μl/TA)を1回、両TA筋に実施した。対照として、6〜8週齢又は78〜80週齢のC57/BL6マウスに、SCRA AAVベクターと同一の手順を使用して注射した。マウスは、注射後3か月に犠死させた。
【0072】
除神経実験
AAV又は対照のマウスへの注射後10週に、一般的麻酔下(イソフルラン)で、坐骨神経を神経切除した(5mmの坐骨神経断片の切除)。マウスは、除神経後2週に犠死させ、TA筋を解剖、秤量した後、液体窒素中に予備冷却したイソペンタンにより凍結させて、組織学的検査又は分子解析まで-80℃で保存した。
【0073】
遺伝子発現解析
全RNAを前脛骨筋(TA)凍結切片600μmからTRizol (Life Technologies社)を使用して製造者の指示に従って調製した。Invitrogen Superscript II逆転写酵素(Invitrogen社)により相補DNAを生成し、リアルタイムqPCRをStepOne Plus Real-Time PCR System (Applied Biosystems社)上でPower SyberGreen PCR MasterMix (Applied Biosystems社)を使用して実施することにより解析した。すべてのデータは、PO発現レベルに対して正規化した。使用したプライマーを次の表に列挙する。
【0074】
【表1A】
【0075】
【表1B】
【0076】
免疫ブロットのための抗体
Cell Signaling Technology社から入手した次の抗体を使用した:リン酸化Smad1/5(Ser463/465)/Smad8(Ser426/438)に対するウサギポリクローナル抗体;リン酸化Smad3(Ser423/425)に対するウサギモノクローナル抗体、Smad4に対するマウスポリクローナル抗体、Cav3に対するマウスモノクローナル抗体。Cavβ1 C末端(AP16144b)に対するウサギポリクローナル抗体をAbGent社から購入し、一方、Cavβ1内部領域に対するウサギポリクローナル抗体(現在は入手不可: sc-25689)及びGDF5に対するルマウスモノクローナル抗体をSanta Cruz Biotechnologies社より入手した。アクチンに対するマウスモノクローナル抗体(A4700)は、Sigma社から購入した。ラットポリクローナルAchR抗体は、Covance社;マウス抗アクチンEA53抗体は、Sigma社から入手した。
【0077】
免疫ブロッティング
凍結TA筋又は液体窒素凍結ヒト筋生検由来の凍結切片を、ダウンス型ホモジナイザーにより、50mMのTris-HCl、pH7.4、100mMのNaCl、0.5%のNP40並びにHaltプロテアーゼとホスファターゼの阻害カクテル(Pierce社)を含む溶解緩衝液中で均質化した。次いで、試料を5分間、5000gで遠心分離し、室温で30分間、Laemmli緩衝液により変性させた。タンパク質濃度は、Bradfordアッセイ(Pierce社)により決定した。タンパク質を電気泳動により分離させ(Nu-PAGE 4〜12% Bis-Trisゲル; Life Technologies社)、次いで、ニトロセルロース膜(GE Healthcare社)に移し、1次抗体及び西洋ワサビペルオキシダーゼと共役させた2次抗体で標識した。シグナルをSuperSignal West Pico Chemiluminescent基質(Pierce社)により可視化した。画像は、LAS4000カメラ(GE Healthcare社)により取得した。ウエスタンブロット画像解析は、パブリックドメインソフトウェアのFiji ImageJ (ゲル解析ツール)により実施した(Schneider, C. A., Rasband, W. S. & Eliceiri, K. W. NIH Image to ImageJ: 25 years of image analysis. Nature Methods (2012). doi:10.1038/nmeth.2089)。ブロットは、Restore Western Blotting Stripping Buffer (Thermo社)を使用して製造者の指示に従って取り除き、必要に応じて再プローブした。
【0078】
免疫標識実験
免疫標識手順では、10μmの組織切片の生成をクライオスタット(Leica社)上で実施し、スライドガラス上に固定して-80℃で保存した。スライドをリン酸緩衝食塩水(PBS)中で再水和させ、4%のパラホルムアルデヒドで10分間固定し、0.5%のTriton X-100 (Sigma-Aldrich社)で透過処理してPBS/4%ウシ血清アルブミン/0.1% Triton X-100中に1時間ブロッキングした。切片をPBS/2% BSA/0.1% Triton X-100中で1次抗体とともに一晩4℃でインキュベートし、PBSで洗浄、2次抗体とともに1時間インキュベート、PBSで徹底的に洗浄、4',6'-ジアミジノ-2-フェニルインドールとともにインキュベートして5分間核染色し、Fluoromount(Southern Biotech社)で封入した。画像は、Leica SPE共焦点顕微鏡により取得した。
【0079】
細胞培養及びトランスフェクション並びにルシフェラーゼアッセイ
C2C12筋細胞株をATCCから購入し、15%のFBS及び1%のペニシリン-ストレプトマイシン混合物を添加したIMDM(Gibco-Life Technologies社)中37℃及び5%CO2で細胞がコンフルエンスに達するまで培養した。分化は、2%のHS及び1%のペニシリン-ストレプトマイシン混合物を添加したIMDMを用いた培地の交換により誘導した。細胞は、リポフェクタミン2000 (Life Technologies社)を使用して製造者の指示に従ってトランスフェクトした。実験において使用した細胞株は、マイコプラズマ汚染について立証及び試験した。Gdf5プロモーター-ルシフェラーゼは、25pgのpCDNA3-sh CaVβ1-E又はpCDNA3-sh Scraのいずれか単独により、Optimem還元培地に希釈したリポフェクタミン2000を使用してC2C12細胞に同時トランスフェクトした。また、プラスミドCMVウミシイタケルシフェラーゼ(0.25ng)も各条件により基準としてトランスフェクトした。
【0080】
トランスフェクション後5時間に、Optimem還元培地を2%のHSを加えたIMDMと交換した。培地交換後24及び48時間に細胞を解析した。
【0081】
ホタル及びウミシイタケルシフェラーゼの発光をDual-Glo Luciferase Assay Systemにより(製造者の指示に従って)Flexstation3マイクロプレートリーダー上で定量した。ホタルルシフェラーゼ活性は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して正規化した。
【0082】
結果
神経支配により胚性CaVβ1-E発現が成体の筋肉において制御される
活性の変化に対する骨格筋応答の測定に適切なモデルは、坐骨神経の切除である。このモデルでは、発明者らは、エクソン2及び3のプライマーによりCacnb1 mRNAをプローブした。発明者らは、除神経前脛骨(Tibialis Anterioris、TA)筋におけるこの領域の増幅の経時的増加を観察した(図1A)。同一条件においてCaVβ1中枢ペプチド18を認識する抗体を使用したCaVβ1タンパク質のウエスタンブロットにより、除神経後、経時的に増加する70 KDaの追加バンドの出現が明らかとなった。対照的には、53 kDaにおけるバンドの強度、予想された筋特異的CaVβ1A(又はCacnb1のアイソフォーム1 NM_031173; NP_112450)の分子量は、変わらないままであった(図1B)。
【0083】
発明者らは、70 KDaのバンドが、今までに筋肉に関して記載されていない、更に長いCaVβ1アイソフォームであり得ると推測した。Cacnb1遺伝子(GSMG0007319)は、エクソン14個を有し、これは、スプライシングされて転写変異体6つ(NM_031173; NM_145121; NM_001159319; NM_001159320; NM_001282977; NM_001282978)をもたらし得る(図S1H)。
【0084】
除神経筋において発生するCacnb1の潜在的スプライシング現象を同定するために、発明者らは、神経支配又は除神経マウスTA筋から抽出したRNAに対して、全ゲノムトランスクリプトーム解析をエクソンレベルで実施した。発明者らは、1022件の差次的に制御された選択的スプライシング現象を見出し(異なる遺伝子706個から)、この再分配により、第1のエクソンスプライシング現象の優勢が示された。この中でも、Cacnb1は、第1エクソンスプライシングを示し、この転写物は、神経支配筋肉試料におけるエクソン3の5'の推定非コード配列において開始した。除神経筋肉試料では、第1のCacnb1 mRNAを除いて、エクソン1において開始する別の転写物が上方制御されたことを見出し(図1C及び図S2)、これは2つの異なるスプライシングアイソフォームの転写を意味する。RT-PCRでは、神経支配TA筋Cacnb1オープンリーディングフレーム(ORF)がエクソン3(ATG1)の5'に存在した一方、除神経筋Cacnb1の転写物2つが発現し、この一方はエクソン1 (ATG2)のレベルで開始し、他方はATG1のレベルで開始したことが確認された(図1D)。すぐ上流のエクソン3から開始するCacnb1のmRNA配列をBlast又はNCBIデータベースで検索して、発明者らは、成体マウス骨格筋において発現した特異的CaVβ1アイソフォームは、CaVβ1D(NP_001152792.1)であると結論づけた(図S1H図S2A図S2B)。他方では、除神経筋由来のタンパク質抽出物において出現するCaVβ1追加バンドのサイズは、Cacnb1-E(又はアイソフォーム5、NM_001282977; NP_001269906)の翻訳によって信頼可能であった。この仮説を確認するために、発明者らは、2つの配列の3'において、Cacnb1-Dについてはエクソン13のレベルで、Cacnb1-Eについてはエクソン14のレベルで適合する特異的プライマーをデザインし(図S2A、プライマー領域は下線部)、発明者らはRT-PCRにより、タンパク質発現データと一致して、Cacnb1-E転写物のみが成体除神経筋において増加したことを確認した(図1E)。
【0085】
筋除神経により、いくつかの胚性タンパク質、例えば、トロポニンT、ミオシン及びアセチルコリン受容体サブユニットが誘導される。発明者らは、これは、CaVβ1-Eに当てはまるかどうかを疑った。リアルタイムPCR及びqPCRにより、Cacnb1-Eが、胚性及び新生仔の筋肉に特異的な変異体であり(E12.5, E16, P0)(図S1A図S1B図S1C)、エクソン1においてORFを有し(図S1D図S1E)、除神経後に成体の筋肉において発現したCacnb1-Eと同一であることが明らかとなった。
【0086】
神経末端に特異的であるものとして示すCacnb1-B変異体は、Cacnb1-Eと同一の3'末端配列を共有する(図S2C)。エクソン5と9との間の領域の増幅により、胚性及び新生仔の筋肉においてCacnb1-Eの大量のmRNA発現(381bp)が、E12.5筋のみにおいてCacnb1-Bのほとんど検出不可能な発現(246bp)が示された(おそらく、この胚期において混合した前駆細胞が存在するため)(図S1I)。その上、Cacnb1-B及びCacnb1-C変異体を除いたエクソン7Aとエクソン14との間の領域をプローブして、発明者らは、Cacnb1-Eが、除神経後に上方制御された唯一のCaVβ1アイソフォームであることを確認した(図S1J)。更なる確認として、除神経成体のみを染色したマウスCaVβ1Eに対して特異的な抗体及び胚性筋タンパク質抽出物を使用して、ウエスタンブロットを行った(図S1G)。神経支配及び除神経筋肉スライド並びに単離した線維の、CaVβ1 (中枢ペプチド)又はCaVβ1E抗体のいずれかによる免疫蛍光では、CaVβ1染色強度及び3者局在性が、むしろCaVβ1Dの主な発現を反映したことが示された。実際、出現した特異的CaVβ1-E染色は、除神経線維及びスライドにおいて増加し、フリーソフトウェアcNLM mapper (http://nlsmapper.iab.keio.ac.jp/cgibin/NLS_Mapper_form.cgi)により予想されたNLSの発現と一致して、ほとんどがZ線のレベルで分布し、核に局在した。
【0087】
全体的に見て、このようなデータにより、骨格筋が、種々の神経支配依存性CaVβ1アイソフォームを発現することが実証される。選択的第1エクソンスプライシングは、成体及び胚性Cacnb1変異体の差次的発現の開始点で生じる。CaVβ1AではなくCaVβ1Dは、神経支配成体骨格筋において発現するアイソフォームであるが、胚性筋においてはCaVβ1Eのみが発現する。加えて、神経支配の欠如により、CaVβ1Eの発現が特異的に誘導されるが、これは神経支配成体筋においては、ほとんど検出不可能である。その上、CaVβ1D及びCaVβ1Eは、成体骨格筋線維において種々の細胞内局在を示す。
【0088】
CaVβ1-Eは、除神経後のGDF5シグナル伝達の活性化に必要とされる
CaVβ1-Eが廃用性萎縮症における役割を有し得るかどうかを理解するために、発明者らは、Cacnb1エクソン(shCaVβ1 Ex2)における特異的配列を標的として、CaVβ1-E発現を消失させるツールを生成した。AAV2/1ベクターにより輸送されるshCaVβ1-E構築物(AAV-shCaVβ1-E)をマウスTA筋に注射した。
【0089】
除神経後に誘導されたCaVβ1-E発現は、AAV-shCaVβ1-E注射後2か月に消失した(図2A図2C図2D図2E)。CaVβ1D発現の減少は観察されなかった(図2C図2D図2E)。CaVβ1-Eが誘導されなかった結果、除神経後に萎縮症が増加し、筋量を廃用から防ぐ、このタンパク質の保護的役割を示唆した(図2F)。
【0090】
筋量恒常性に関与する分子経路の中でも、GDF5シグナルは、萎縮性症状における筋肉喪失を制限するのに必須であることがわかっている(Sartori Op. cit)。
【0091】
CaVβ1-Eの非存在は、除神経後のGdf5の増加に著しく影響し(図2G)、GDF5経路に対するCaVβ1-Eの陽性対照を示唆した。実際、Smad 1/5/8のリン酸化、Smad 4の核移行及びId-1の転写は、CaVβ1-E下方制御条件下で阻害された(図2H図2I)。
【0092】
CaVβ1が筋前駆細胞における転写因子として記載されているように(TaylorらJ. Cell Biol. 205、829〜846頁(2014))、発明者らは、CaVβ1EがGDF5発現に対する転写活性を有し得るかどうかを問うた。このため、発明者らは、C2C12細胞を使用した。発明者らは、このような細胞が分化の間にCaVβ1Eを発現するかどうかを最初に確認した。発明者らのデータにより、Cacnb1-Eが、C2C12において分化の間に発現し増加すること(図S3A)、及びCaVβ1Eが、この筋原細胞株において発現する主なアイソフォームであること(図S3B)が示された。その上、Gdf5の発現はまた、分化するC2C12において増加していた。一貫して、shCaVβ1-Eを輸送するプラスミド(pCDNA3-shCaVβ1-E)のトランスフェクションによるCacnb1-E発現の阻害(図S3D)により、分化するC2C12におけるGdf5の発現が阻止され(図S4C)、この作用をin vivoで模倣した。このようなデータにより、C2C12細胞が、CaVβ1-E転写活性を測定するin vitroでの適切なツールとして確証された。
【0093】
これまでの研究では、いくつかのプロモーター領域の標準的及び非標準的DNA E-Box配列(CANNTG及びCANNNTG) (TaylorらJ. Cell Biol. 205、829〜846頁(2014))が、CaVβ1により標的とされ得ることがわかっている。したがって、2つのCANNNTG E-Box及び1つのCANNTG E-Boxを含む-312からGdf5 TSSの配列を、HSVTK-Luc3'修飾プラスミドの上流のホタルルシフェラーゼにクローニングし、C2C12細胞にトランスフェクトした(図2J)。ホタル/ウミシイタケのシグナルは、Gdf5プロモーターの活性化を反映する細胞分化の間に増加し、これはshCaVβ1-Eプラスミドによる同時トランスフェクションにより誘導されたCaVβ1-Eの下方制御により消失した。このようなデータにより、CaVβ1-EがGdf5プロモーターを標的とし得ることが強力に示唆され、この作用がin vivoで観察されたことが確認される。
【0094】
加齢する筋肉: CaVβ1-Eの鍵となる役割
坐骨神経の外科的切除を行うと、非常に重度の病状が模倣され、神経退却により、完全な筋肉喪失を回避する分子経路が誘導される。しかし、発明者らは、筋萎縮症に対する代償性応答が障害される場合の生理学的プロセスにおけるCaVβ1の役割について疑った。このシナリオは、加齢性筋肉減少症により代表される。
【0095】
老化は、多くの組織及び器官に関与する、複雑な生理学的状態である。加齢する骨格筋は、除神経様の徴候を示し、筋肉減少性となって、筋量の喪失に反作用するこの能力を漸進的に失う。加齢する筋肉においては、CaVβ1発現及び機能について多少議論の余地があることが知られている(TaylorらAging Cell 8、584〜594頁(2009))。C57b1/6マウスのTAでは、筋肉喪失が、約78週齢で有意となり、92週齢で非常に有意となる(12週齢マウスと比較して、筋肉減少症のそれぞれ26.3±8.9%及び38.7±6.4%)(図3A)。発明者らは、95〜100週齢のTAにおいて、12週齢の成体TA筋と比較してCacnb1-Dのわずかな減少を観察した(図3C及び図S4A)が、対照的に、Cacnb1-Eの基礎レベルの有意な減少を観察した(図3B図S4B)。老化した筋肉におけるGdf5レベルについては、何もわかっていない。
【0096】
加えて、発明者らは、加齢の間の神経支配及び除神経TA筋におけるCaVβ1-E発現を測定した。発明者らは、52週齢以来、CaVβ1-Eの除神経に対する応答が増加せず、Gdf5の上昇が弱まって(図3D図3E図3F図3G)、Smad 1/5/8のリン酸化に影響したことを見出した(図S4C図S4D)。CaVβ1D発現の有意な変化は、測定されなかった(図3H図3I)。
【0097】
発明者らは、この機構がヒトにおいても保存されているかどうかを疑った。3つのヒトCACNB1変異体のみが、今までに同定されており(NM_000723.4、NM_199247.2、NM_199248.2)、マウスアイソフォームA、B、Cに対応する(図S1H)。発明者らは、30〜89歳の健常対象の筋肉から抽出されたヒトCACNB1 mRNAのエクソン5〜9、エクソン13及びエクソン14をプローブした。エクソン5とエクソン9との間の領域の増幅により、すべての筋肉が、予想されたCACNB-A (380 bp)変異体、及び予想されなかったCACNB-B(245 bp)変異体を発現したことが示され、これは、エクソン13における特異的領域の増幅により確認された。驚くべきことには、エクソン14における特異的領域の増幅により、ヒト筋肉が、発明者らがCACNB1-Eと呼ぶ、未同定の新たな変異体を発現し、この転写物が、75歳超の(老化した)筋肉において、強力に下方制御されたことが明らかとなった(図3J)。発明者らは、同一試料におけるGDF5転写物を測定し、発明者らは、老化した筋肉におけるこのレベルの非常に有意な低下を見出した(図3K)。このような結果は、ヒトCACNB1-Eが実際に解明されたことを実証し、CaVβ1-GDF5系が、ヒトにおいても保存されていることを強力に示唆する。
【0098】
CaVβ1-Eが、加齢性筋肉減少症を向上させ得るかどうかを理解するために、発明者らは、AAV-CaVβ1-Eを78〜80週齢マウスのTAに注射することによりCaVβ1-Eを高発現させた。CaVβ1-Eの高発現は、3か月後(図4A)、Cacnb1-Dの転写に影響することなく(図4B)、非常に効率的であった。CaVβ1-Eが高発現すると、Gdf5の転写(図5C)、並びにSmad 1/5/8のリン酸化、Smad 4核移行及びId-1の転写により測定したGDF-5シグナル伝達(図4D図4E図4F)がレスキューされた。
【0099】
CaVβ1-EによるGDF5シグナル伝達のレスキューの作用は、スクランブルと比較した、老化した骨格筋の量の明らかな保存(図4G)及び比力の向上であった(図4H)。全体的に見て、このようなデータにより、CaVβ1-Eが、加齢性筋肉減少症における筋量の維持に、非常に必須の役割を担うことが実証された。
【0100】
結論
骨格筋活性の感知と遺伝子発現への翻訳とを関連づけるタンパク質及び機構は、今までに見つかっていなかった。
【0101】
ここで、発明者らは、E-Cカップリングとは関係なく、筋肉の柔軟性を持続し、筋肉の維持に厳密に必要とされる電位センサーサブユニットにより引き起こされる分子経路を示した。このような証拠は、CaVβ1-E依存性シグナル伝達がまた、神経筋障害において中枢となる可能性があり、筋肉及び神経の変性を保存する潜在的治療標的を、このような病理において明らかにし得ることを示唆する。
【0102】
最も重要なことには、発明者らは、CaVβ1-EがGdf5プロモーターを活性化させるのに必須であることを確立した。成体骨格筋では、CaVβ1DではなくCaVβ1-Eの発現が、GDF5経路を持続させるのに必要である。重要なことには、発明者らは、骨格筋量の維持における骨格筋の能力が失われる場合、加齢性筋肉減少症においてこれが生じるとき、GDF5シグナル伝達及びこれを引き起こすタンパク質CaVβ1-Eについて問うた。今まで、進行性の筋肉喪失とGDF5経路の不全との相関性は、報告されていなかった。ここで、発明者らは、Gdf5のレベルが、加齢性筋肉減少症において低下することを示す。全体的に見て、発明者らのデータにより、GDF5経路が、このプロセスの間に鍵となる役割を果たすことが示される。したがって、発明者らは、筋量及び/又は筋機能の低下を患っている対象へのGDF5の投与に基づく強力な治療戦略を、筋肉減少症の文脈又は廃用性萎縮症の文脈のいずれかにおいて提唱する。
【0103】
最終的に、しかし極めて重要なことには、CaVβ1-Eは、可逆性神経挫滅後に筋肉の再神経支配を生じる経路の重大な成分であり得る。CaVβ1-Eの意義は、GDF5シグナル伝達とのクロストークの結果として、神経接続の回復を媒介する中枢因子であるはずである。
【0104】
(実施例2)
ヒト筋肉:骨格筋の加齢に関係づけられる新たなCaVβ1アイソフォーム
CaVβ1-Eのマウス骨格筋における明白な重要性を考慮して、発明者らは、類似の機構がヒトにおいて保存され得るかどうかを疑った。今まで、3つのヒトCACNB1変異体のみが、同定されており、マウスアイソフォームA、B及びCに対応する(図5A)。健常な成人対象の1つの四頭筋及び2つの大腿筋膜筋の生検から抽出したヒトmRNAを、hCACNB1-Bの陽性対照としての、頸髄から抽出したヒトmRNAとともに(Table 1 (表2))、エクソン13及び5〜9についてプローブした。
【0105】
【表2】
【0106】
エクソン13における配列を増幅すると、両方の筋肉の種類が、hCACNB1-A及び/又はhCACNB1-Cを発現したことが示された。マウスの筋肉のように、エクソン5と9との間の領域の増幅により、hCACNB1-B(245bp)が、筋肉においてではなく、ヒト脊髄(SC)のみにおいて発現し、この場合、hCACNB1-A又はhCACNB1-Eに対応する380bpのみが現れたことが実証された。その上、hCACNB1-Cの発現は、増幅配列が245bpであったため、筋肉において除外された(図5B)。エクソン14における領域の増幅により、ヒト筋肉が、これまでに未同定の変異体hCACNB1-Eを発現したことが明らかとなった(図5C)。このアイソフォームは、予想されたXM_006722072.2変異体に一致し、エクソン3の上流に開始コドン(ATG2)を有した(図5A図5C)。ウエスタンブロット実験により、2つの異なるヒト大腿筋膜筋生検におけるこの発現が確認された(図5D)。
【0107】
発明者らは、CaVβ1-E/GDF5系の変化が、マウスにおける老化の間の筋肉喪失と関連したことを見出したため、発明者らは、健常な若年(20〜42歳)及び高齢(70〜81歳)ボランティアのコホートにおける筋量(除脂肪筋量の百分率)及び機能(力)の低下を示す筋肉特性を比較し、これまでの試験に含んだ(Table 2 (表3))。
【0108】
【表3】
【0109】
20〜42歳の若年(Y)参加者及び70〜81歳の高齢(O)参加者の性別が男性(M)及び女性(F)において、パラメーターを調べた。除脂肪筋量(%)を2重エネルギーX線吸収測定法により評価した。力台上で実行された力を1キログラムあたりのワット(W/kg)により表し、NDは、未決定を表す。
【0110】
発明者らは、高齢の群が、若年の群よりも有意に低い除脂肪筋量及び力を有したことを見出した(図6A)。次いで、発明者らは、hCACNB1-E転写物を測定し、高齢の群において、この発現の有意な減少を見出したが、hCACNB1-Aレベルは、群間で変わらなかった(図6B)。有意に低いhCACNB1-E発現はまた、低い除脂肪筋量の百分率と関連した(図6C)。hGDF5は、筋生検において非常に低いレベルで検出された。しかし、恒例の筋試料では、発明者らは、hCACNB1-EとhGDF5の両方の低い発現を、低い除脂肪筋量の百分率と結び付けることができた。加えて、高い除脂肪筋量の百分率を有する参加者は、hCACNB1-EとhGDF5の両方が高いレベルを呈した(図6D)。
【0111】
全体的に見て、発明者らは、若年及び高齢の筋肉における筋肉喪失に反作用する、GDF5調節による代償性応答の新たな動因としてCaVβ1-Eを発見した。特には、この試験において得た結果により、加齢性筋肉喪失とCaVβ1-E/GDF5系との間の関連が、マウスとヒトとの間で保存されることが示され、哺乳動物の筋量維持における、このタンパク質の必須の役割を強力に示唆する。
【0112】
rGdf5の全身投与は加齢性筋肉減少症に反作用する
組換えマウス(Rm)Gdf5は、0.2mg/kgを0.1%のPBS/BSAに希釈して1週間に2回、C57b1/6マウス(90週齢)4匹に腹腔内注射(I.P)により10週間投与した。また、対照として、0.1%のPBS/BSAのみを注射した。体組成の測定(RMN)及び握力試験を2週毎に実施した(図7A)。
【0113】
握力試験解析により、群間での違いは示されず、これはおそらく、このアッセイの感度が低下したためであった。除脂肪筋量及び脂肪量の百分率は、ビヒクルで処置したマウスにおいて変わらなかった(図7B)。しかし、RmGdf5の導入により、除脂肪筋量の百分率の有意な上昇及び脂肪量の百分率の低下が誘導された(図7C)。
【0114】
TA及びQUADの筋肉/体重の比率は、非処置又はビヒクルで処置した92週齢のCD57B1/6マウスと比較して、Rm-GDF5(Gdf5)で10週間処置した100週齢のC57B1/6マウスにおいて上昇し(図7D)、Rm-Gdf5の導入によって有意な筋量の増加が生じることを示唆した。まとめると、このようなデータにより、Rm-Gdf5による全身的治療は、加齢性筋肉減少症に効率的に反作用することが示唆される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図S1A
図S1B
図S1C
図S1D
図S1E
図S1F
図S1G
図S1H
図S1I
図S1J
図S2A-1】
図S2A-2】
図S2B
図S2C-1】
図S2C-2】
図S3A
図S3B
図S3C
図S3D
図S3E
図S4A
図S4B
図S4C
図S4D
【配列表】
2021531292000001.app
【国際調査報告】