特表2021-531340(P2021-531340A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォンダシヨン、アジール、デ、アブグルスの特許一覧

特表2021-531340眼障害を治療するためのPRC2サブユニットの阻害
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-531340(P2021-531340A)
(43)【公表日】2021年11月18日
(54)【発明の名称】眼障害を治療するためのPRC2サブユニットの阻害
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20211022BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20211022BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20211022BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211022BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20211022BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61P27/02
   A61P27/06
   A61P43/00 111
   A61K45/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2021-524106(P2021-524106)
(86)(22)【出願日】2019年7月2日
(85)【翻訳文提出日】2021年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2019067784
(87)【国際公開番号】WO2020011607
(87)【国際公開日】20200116
(31)【優先権主張番号】18182551.4
(32)【優先日】2018年7月9日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521013404
【氏名又は名称】フォンダシヨン、アジール、デ、アブグルス
【氏名又は名称原語表記】FONDATION ASILE DES AVEUGLES
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】イバン、アルセニジェビック
(72)【発明者】
【氏名】カムデム、マルシヤル、ムベホ
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZC41
4C084ZC75
(57)【要約】
本開示は、それを必要とする対象における眼障害の予防または治療における使用のための、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)の1つ以上のサブユニットの阻害剤、および治療上有効な量のポリコーム抑制複合体2(PRC2)のサブユニットの1つ以上の阻害剤を使用して、対象における眼障害、例えば、非癌性障害を治療する方法を提供する。
本開示の方法の特定の複数の実施形態において、眼障害は、網膜ニューロンの変性または細胞死を特徴とする。
本開示の方法の特定の複数の実施形態において、PRC2のサブユニットは、EZH1またはEZH2であり、阻害剤は、H3K27トリメチル化の阻害剤である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における眼障害の予防または治療における使用のための、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)の1つ以上のサブユニットの阻害剤。
【請求項2】
眼障害が、遺伝性網膜障害、網膜変性、網膜の神経変性疾患、網膜に影響を与える眼自己免疫疾患または網膜に影響を与える炎症性疾患からなる群から選択される、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
眼障害が、色覚異常、コンピュータービジョン症候群、糖尿病性網膜症、飛蚊症および斑点、緑内障、学習関連視覚問題、黄斑変性、眼振、眼アレルギー、高眼圧症、網膜剥離、網膜色素変性症、結膜下出血、ブドウ膜炎、レーバー先天性黒内障、錐体桿体ジストロフィー、夜盲症、硝子体網膜ジストロフィー、びらん性硝子体網膜症、アッシャー症候群、網膜上膜、黄斑円孔からなる群から選択される、請求項1および2のいずれかに記載の阻害剤。
【請求項4】
眼障害が、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、錐体桿体ジストロフィー、夜盲症、硝子体網膜ジストロフィー、びらん性硝子体網膜症、黄斑変性、網膜剥離、アッシャー症候群からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項5】
眼障害が、網膜ニューロンの変性または細胞死を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項6】
PRC2の1つ以上のサブユニットが、zesteホモログ1エンハンサー(EZH1)、zesteホモログ2エンハンサー(EZH2)、zeste12サプレッサー(SUZ12)、胚性外胚葉発生(embryonic ectoderm development)(EED)、網膜芽細胞腫サプレッサー(Rb)関連タンパク質46(RbAp46)、網膜芽細胞腫サプレッサー(rb)関連タンパク質48(RbAp48)、脂肪細胞エンハンサー結合タンパク質2(AEBP2)、ポリコーム様1タンパク質(PCL1)、ポリコーム様2タンパク質(PCL2)、ポリコーム様3タンパク質(PCL3)、十文字ATリッチ相互作用ドメイン2(JARID2)、EPOP、LCORまたはそれらのアイソフォーム、パラログもしくは変異体からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項7】
PRC2の1つのサブユニットが阻害される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項8】
PRC2の1つのサブユニットが阻害され、前記サブユニットが、EZH1もしくはEZH2、またはそれらのアイソフォーム、パラログもしくは変異体である、請求項7に記載の阻害剤。
【請求項9】
前記サブユニットが、SUZ12、EED、RbAp46、RbAp48、AEBP2、PCL1、PCL2、PCL3、JARID2、EPOP、LCORまたはそれらのアイソフォーム、パラログもしくは変異体からなる群から選択される、請求項7に記載の阻害剤。
【請求項10】
PRC2の2つ以上のサブユニットが阻害され、1つのサブユニットが、EZH1、またはそのアイソフォーム、パラログもしくは変異体であり、1つ以上の他のサブユニットが、EZH2、SUZ12、EED、RbAp46、RbAp48、AEBP2、PCL1、PCL2、PCL3、JARID2、EPOP、LCORまたはそれらのアイソフォーム、パラログもしくは変異体からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項11】
PRC2の2つ以上のサブユニットが阻害され、1つのサブユニットが、EZH2、またはそのアイソフォーム、パラログもしくは変異体であり、1つ以上の他のサブユニットが、EZH1、SUZ12、EED、RbAp46、RbAp48、AEBP2、PCL1、PCL2、PCL3、JARID2、EPOP、LCORまたはそれらのアイソフォーム、パラログもしくは変異体からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項12】
エピジェネティック薬、例えば、ヒストン修飾因子の阻害剤、好ましくは、ヒストン−リシンメチルトランスフェラーゼ阻害剤またはリシンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、H3K27メチル化の阻害剤またはH3K27トリメチル化の阻害剤である化合物を含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項13】
EZH1阻害剤および/またはEZH2阻害剤を含んでなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項14】
前記化合物が、UNC1999、EPZ005687、EPZ−6438(タゼメトスタット)、GSK126、GSK343、GSK503、GSK2816126、El1、CPI−169、CPI−1205、CPI−360、EPZ011989、ZLD1039、PF−06821497、JQEZ5、JQEZ23、3−デアザネプラノシン(DNZeP)、5R−(4−アミノ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−3−シクロペンテン−1S,2R−ジオール、シネフンギン、ならびにそれらの類似体、機能的誘導体または薬学上許容可能な塩からなる群から選択されるEZH1阻害剤および/またはEZH2阻害剤である、請求項13に記載の阻害剤。
【請求項15】
前記化合物が、SUZ12、EED、RbAp46、RbAp48、AEBP2、PCL1、PCL2、PCL3、JARID2、EPOP、LCORまたはそれらのアイソフォーム、パラログもしくは変異体からなる群から選択されるPRC2のサブユニットの阻害剤である、請求項13に記載の阻害剤。
【請求項16】
それを必要とする対象に、治療上有効な量のポリコーム抑制複合体2(PRC2)のサブユニットの1つ以上の阻害剤を投与することを含んでなる、対象における眼障害を予防または治療する方法。
【請求項17】
請求項6〜11のいずれか一項に記載のポリコーム抑制複合体2(PRC2)のサブユニットの阻害を含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項12〜15のいずれか一項に記載の1つ以上の阻害剤を使用することを含んでなる、請求項16および17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
対象に1つ以上のさらなる治療剤を投与することをさらに含んでなる、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
1つ以上のさらなる剤が、PRC2のサブユニットの阻害剤ではない、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つ以上のさらなる治療剤が、対象における眼障害を治療するために使用される治療剤の中から選択される、請求項19および20のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、徐々に失明につながる網膜ニューロンの変性または細胞死を特徴とする眼障害の治療または予防のための、非癌治療法およびポリコーム抑制複合体2(PRC2)のサブユニットの阻害剤の使用、ならびにEZH1阻害剤またはEZH2阻害剤などの阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜機能に影響を与える遺伝的欠損に起因する進行性の視力喪失を有する欧州における170,000例超の患者に関して、症例の99%に対して治療法が存在しない。大多数の患者が、20〜30年の間に完全に視力を失う。これらの患者によるこのハンディキャップの認識は、末期癌または重度脳卒中に罹患した患者と類似する生活の質に相当し(Yuzawa et al., 2013)、よって、治療に対する期待は大きい。
【0003】
多くの異なる突然変異は、徐々に失明につながる遺伝性網膜ジストロフィー(IRD)の起源である。これらの突然変異は、主に桿体光受容体の生存に影響を及ぼす。そして、それらの死は錐体変性を誘発するが、突然変異はそれらの代謝を直接的に変えるものではなかった。これまでのところ、遺伝性網膜ジストロフィーに対する網膜変性の進行を遅延させるための薬剤は、市場に存在しない。
【0004】
遺伝子療法が、動物モデルおよび先天性RDであるレーバー先天性黒内障の1つの非常にまれな型(LCA2、RPE65の欠損)を有する患者群において、一部の視覚機能を回復させることに最近成功したことを示した(Smith et al., 2012)。しかしながら、2つの異なるグループが、遺伝子療法による治療は、網膜変性を予防しなかったことを明らかにした(Jacobson et al., 2012, Cideciyan et al., 2013)。20,000超の遺伝子がRDの起源であると同定され、これは症例の60%を説明するものであり、遺伝子導入用ベクターは、ごくわずかしか現在動物モデルにおいて試験されていない。さらに、動物モデルを用いた前臨床試験では、遺伝子療法は、疾患の非常に初期に提供した場合は有効であることが示されているが(例えば、Bemelmans et al., 2006)、現実には、低視力および視力障害の検出は、変性過程がすでに十分始まっているときに生じることが多い。このような臨床表現型は、遺伝子療法の有効性を維持できるようにするための神経保護的支持を必要とするはずである。
【0005】
代替の治療法として、エクソンスキッピングが開発中であり、これは、1つのエクソンに対するコード領域の損失が、得られる短縮タンパク質にとって有害ではない、特定の遺伝子に対してのみ実現可能である。これまでのところ、市販されている薬剤はないが、CEP290に関する臨床試験が間もなく開始予定であり、このアプローチは有望であるが、血液循環に薬剤を反復注射する必要がある。全身性副作用が生じないことを実証することが期待される。
【0006】
盲目患者における残存する網膜ニューロンを光感受性にし、オプトジェネティクスを利用して、視力を潜在的に回復させるための最近の臨床試験が、GenSight社によって開始された。まだ薬剤は利用可能ではない。添加されるタンパク質の光感受性は、非常に低く、光の刺激を強め、コントラストを感じるには、眼鏡を必要とする。興味深いものではあるが、このアプローチは、まだヒトにおいて概念実証に達していない。この治療展望において、網膜神経節細胞を標的とし、そのため光受容体と網膜神経節細胞との間の情報処理はなく、これにより、コントラスト知覚の質、視力および運動知覚の有効性にかなり影響を与える。オプトジェネティクスアプローチは、多くの光受容体を持たない患者に対するものである。
【0007】
シュタルガルト病に対する薬物治療として、この疾患における網膜により産生される「廃棄物」を低減させるようにAlkeus社によって開発された薬剤ALK−001が挙げられるが、これは現在、臨床試験において試験中である。この薬剤は、有病率1〜5/10,000(Orphanet)を有するこの疾患のみを標的とする。
【0008】
別の代替の治療法としては、RdCVFが挙げられ、これは、桿体が乾燥したときに錐体を変性から保護するものとして同定された(Leveillard et al., 2004)。
【0009】
他のアプローチは、残存する網膜を直接刺激する電子デバイスを使用して、完全に盲目の患者における一部の視知覚を再構築することを目的としている。このアプローチは、ある程度成功を収めたが(Gekeler et al., 2018)、視力および光受容体を失っている患者集団のみを対象とするものであるため、オプトジェネティクスアプローチの代替であるが、網膜ニューロンの変性または細胞死の問題には適用されない。
【0010】
このため、網膜ニューロンの変性または細胞死を遅延または停止させることができる治療法の開発の必要性が存在する。したがって、良好な視力の期間を延長することができるこのような治療法は、網膜変性などの眼障害の治療に有用であろう。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)のサブユニットの阻害剤、例えば、zesteホモログ1エンハンサー(EZH1)の阻害剤またはzesteホモログ2エンハンサー(EZH2)の阻害剤は、網膜ニューロンの変性または細胞死を遅延または停止させる能力を有する、という知見に基づく。したがって、本開示は、PRC2のサブユニットの阻害剤(例えば、EZH1阻害剤またはEZH2阻害剤)は、網膜ニューロンの変性または細胞死を特徴とする網膜変性または網膜の神経変性疾患などの眼障害を効果的に治療することができるため、網膜機能に影響を与える遺伝的欠損または体細胞欠損に起因する徐々に視力喪失につながることを特徴とする眼障害の療法を標的とする新たな領域を提示する。
【0012】
本発明者らは、PRC2のサブユニットの阻害剤(例えば、EZH1阻害剤またはEZH2阻害剤)が、網膜変性の2つの異なるマウスモデル、すなわち、それぞれ急速なおよび遅い変性過程を有するRd1およびFam161a KOマウスにおいて、網膜ニューロン(例えば、光受容体)の生存を延長するのに有効であることを同定した。EZH2活性の上昇は、RDの優性型のモデルおよび劣性RDの他の型、ならびに網膜色素変性症に罹患している2例の患者においても認められた。したがって、本発明者らは、このような阻害剤は、光受容体の生存を有意に延長するための最初の有効な治療法であると考える。さらに、これらの阻害剤は、光伝達の過程に影響を及ぼさない、よって、視覚処理にも影響を及ぼさないという利点を有する。
【0013】
欧州において、170,000例の患者が、遺伝性網膜ジストロフィーに罹患している。それらのうち、15歳未満の小児は、EZH2薬の適用に関して除外されるべきであるが、それは、EZH2は、正常な網膜および脳の発達にとって必須であることが知られているからである。さらに、40〜45歳以降の総てのRD患者は、光受容体を失っていると考えることができる。このため、15〜45歳の集団は、RD患者のおよそ31%を示している。結果として、年間およそ52,700例の患者が、EZH2薬の治療に適格である。患者の生活の質に対する認識は、視力喪失の程度に密接に関連するが、視力喪失は、進行癌または脳卒中を有する患者に相当する認識をもたらす最も重度の形態である。患者の治療に対する需要は高い。
【0014】
提案された治療は、反復硝子体内注射による慢性治療であり、その頻度は、依然として異なるモデルにおいて決定されている。
【0015】
本発明者らはまた、細胞死が多いヒト網膜剥離のモデルにおいて、EZH2活性がアップレギュレートされることを観察し、これは、EZH2阻害剤は、網膜剥離が長引く患者も標的とし得ることを示唆している。この集団は、欧州において年間およそ10,000例の患者を示す。この場合において、一次医療で1回の注射で十分なはずである。
【0016】
このため、これらの神経保護阻害剤は、桿体光受容体などの網膜ニューロンおよびその結果それらの機能を保護することによって、多くの患者に対して視力の延長を確実にするはずである。さらに、大多数のIRD患者が、桿体の機能に部分的に影響を及ぼし、それにもかかわらず細胞喪失に至るが、イメージ知覚および視力は保証される突然変異を有する。PRC2のサブユニットの阻害剤(例えば、EZH1阻害剤またはEZH2阻害剤)は、網膜色素変性症に罹患している患者のおよそ80%において、視力および自律性を有意に延長し、その結果、患者の生活の質を有意に改善するはずである。
【0017】
ポリコーム抑制複合体2(PRC2)は、哺乳動物、昆虫および植物において発見されている、高度に進化的に保存されているポリコーム群タンパク質(PcG)である。PRC2は、エピジェネティック制御において重要な役割を果たすが、細胞分化および発達(Bracken et al., 2006)またはX染色体不活性化(Plath et al., 2003)の維持および調節においても重要な役割を果たす。PRC2は、ヒストンH3上のリシン27のジメチル化およびトリメチル化(ヒストンH3リシン27、H3K27me3)(それぞれがクロマチン転写サイレンシングと関連する)を調節することによって、重要なクロマチン修飾因子として働く(Holoch, Margueron, 2017)。PRC2は、いくつかのサブユニットからなる動的複合体である。H3K27のメチル化は、zesteホモログ2エンハンサー(EZH2)(Cao et al., 2002)またはその機能的ホモログであるzesteホモログ1エンハンサー(EZH1)のSETドメインによって触媒され、それらの酵素活性には、以下の3つのさらなるタンパク質の存在を少なくとも必要とする:胚性外胚葉発生(embryonic ectoderm development)(EED)、zeste12サプレッサー(SUZ12)およびヒストン結合タンパク質である網膜芽細胞腫サプレッサー(Rb)関連タンパク質46(RbAp46)または網膜芽細胞腫サプレッサー(rb)関連タンパク質48(RbAp48)。EZH2、EED、SUZ12およびRbAp46/RbAp48は、クロマチン調節PRC2のコアサブユニットを含んでなる。他のサブユニットまたは補因子、例えば、脂肪細胞エンハンサー結合タンパク質2(AEBP2)、ポリコーム様1タンパク質(PCL1)、ポリコーム様2タンパク質(PCL2)、ポリコーム様3タンパク質(PCL3)、十文字ATリッチ相互作用ドメイン2(JARID2)、EPOPまたはLCORは、PRC2に関連づけられ、その漸増および活性を調節する。
【0018】
EZH2もしくは他のPRC2成分、例えば、SUZ12もしくはEEDの調節不全、および/またはH3K27のトリメチル化も、多数の癌と関連している。例えば、PRC2およびEZH2の異常な発現は、乳癌、骨髄腫、前立腺癌およびリンパ腫を含む広範囲の癌において認められている(Chase et al., 2011, Yoo, et al., 2012)。PRC2のサブユニットの阻害剤(例えば、EZH1阻害剤またはEZH2阻害剤)は、他の病態にも適用可能であり得る。
【0019】
発明
本発明は、第1に、それを必要とする対象における眼障害の治療における使用のための、より具体的には、癌、遺伝性網膜障害、網膜変性、網膜の神経変性疾患、網膜に影響を与える眼自己免疫疾患または網膜に影響を与える炎症性疾患、色覚異常、コンピューター視覚症候群、糖尿病性網膜症、飛蚊症および斑点、緑内障、学習関連視覚問題、黄斑変性、眼振、眼アレルギー、高眼圧症、網膜剥離、網膜色素変性症、結膜下出血、ブドウ膜炎、レーバー先天性黒内障、錐体桿体ジストロフィー、夜盲症、硝子体網膜ジストロフィー、びらん性硝子体網膜症、アッシャー症候群、網膜上膜、黄斑円孔、網膜色素変性症のいずれかであり得る障害の予防または治療における使用のための、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)の1つ以上のサブユニットの阻害剤を提供する。
【0020】
本発明は、さらに、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)の1つ以上のサブユニットの阻害剤であって、前記サブユニットが、zesteホモログ1エンハンサー(EZH1)、zesteホモログ2エンハンサー(EZH2)、zeste12サプレッサー(SUZ12)、胚性外胚葉発生(embryonic ectoderm development)(EED)、網膜芽細胞腫サプレッサー(Rb)関連タンパク質46(RbAp46)、網膜芽細胞腫サプレッサー(rb)関連タンパク質48(RbAp48)、脂肪細胞エンハンサー結合タンパク質2(AEBP2)、ポリコーム様1タンパク質(PCL1)、ポリコーム様2タンパク質(PCL2)、ポリコーム様3タンパク質(PCL3)、十文字ATリッチ相互作用ドメイン2(JARID2)、EPOP、LCORまたはそれらのアイソフォーム、パラログもしくは変異体からなる群から選択される、阻害剤を提供する。
【0021】
本発明は、なおさらに、エピジェネティック薬、例えば、ヒストン修飾因子の阻害剤、好ましくは、ヒストン−リシンメチルトランスフェラーゼ阻害剤またはリシンメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、H3K27メチル化の阻害剤またはH3K27トリメチル化の阻害剤である化合物を含んでなる、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)の1つ以上のサブユニットの阻害剤を提供する。前記阻害剤は、網膜ニューロンの変性または細胞死を遅延または停止させ得る。
【0022】
本発明はまた、それを必要とする対象に、治療上有効な量の上記に定義されるポリコーム抑制複合体2(PRC2)のサブユニットの1つ以上の阻害剤を投与することを含んでなる、対象における眼障害を治療する方法を開示する。
【0023】
本発明はまた、対象に、1つ以上のさらなる治療剤、特に、PRC2のサブユニットの阻害剤ではない治療剤を投与することをさらに含んでなる方法を開示する。
【0024】
本発明のさらなる目的は、添付の特許請求の範囲に記載しているか、または本明細書および以下の関連する実施例を通じて明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】Rd1マウスにおけるエピジェネティック依存的な変性の提唱モデル。遺伝性Pde6突然変異の後、胎仔期におけるEZH2の欠損または機能獲得およびEZH2のターンオーバーに応答して、不適切なヒストン修飾が生じる。重要な生物学的経路の重度の撹乱が、異常な細胞周期の進行および発達異常を誘導する。細胞は、全体的な細胞ホメオスタシスの維持の失敗に起因して、早期に死滅し得る。
図2】光受容体の変性は、Rd1マウスにおける増大したH3K27me3マークに匹敵した。(A)オプシンプロモーターにより駆動される条件的なBmi1欠失は、Rd1における光受容体の変性に影響を及ぼさない。オプシン::CRE;Bmi1loxP/lox動物は、モザイクパターンでONL内のBmi1の標的特異的欠失を示す(上段)。Rd1マウス対照と比較して、PN16においてRd1;オプシン::CRE;Bmi1loxP/loxPには、光受容体のレスキューは認められなかった(下段)。(B)PN15での、いくつかの変性Rd1;オプシン::CRE;Bmi1loxP/loxP光受容体におけるH3k27me3マークの顕著な蓄積。(C)H3K27me3細胞集団の潤沢、分布(白色矢印)および核局所化は、Rd1網膜において時間依存的である(上段、赤色染色)。視細胞のサブセットにおける増殖マーカーKi−67の発現も示されている(下段のパネルおよび(F))。(D)ロドプシン(Rho、赤色の標識、矢印)で染色されたH3K27me3の共局在によって示されるように、H3K27me3の蓄積が桿体細胞において生じる。H3K27me3陽性細胞の数は、疾患の重症度とともに増加し、Rd1マウスにおいてPN13でプラトーに達し(E)、中心網膜において開始されることが示された(G)。(H)Rd1と比較して、Rd1;Bmi1−/−マウス網膜において、ONLにおけるH3K27me3陽性細胞の数の顕著な減少が認められた。(I)Crx−GFPおよびRd1;Crx−GFP網膜から単離された光受容体のウエスタンブロット解析により、変性光受容体におけるEZH2の発現の増大が明らかとなっている。ヒストグラムおよびプロットは、8個超の切片の平均からのものであり、n=4匹/群。(**)=ANOVA t検定、p<0.01、(***)=ANOVA t検定p<0.001。エラーバーは、SEMを示す。スケールバー:A〜Cでは60μmおよびDでは20μm。
図3】他の網膜変性(RD)モデルにおけるH3K27me3の検出。PN12におけるロドプシンP23Hマウス(上段)およびPN15におけるロドプシンS334−ter(中段)網膜変性ラットモデルならびにPN18におけるRd10から得た網膜切片を、H3K27me3に対して染色した。高レベルのH3K27me3マークが、分析した全サンプルからの光受容体において認められた。ロドプシンS334−terラットは、外顆粒層においてより大量のH3k27me3陽性細胞を示す。スケールバーは、50μmを表す。
図4】WTおよびRd1網膜におけるH3K4me3およびH3K9me2の均一な発現および分布。PN12において、Rd1およびWT網膜切片に対して染色を行った。共焦点分析では、H3K4me3(上段)およびH3K9me2(下段)の染色時に、WTとRd1との間の明らかな変化は明らかにされなかった。スケールバー=20μm。
図5】網膜色素変性症(RP)に罹患している患者からのヒト光受容体における高レベルのH3K27me3マーク。1例のヒト健常ドナー(A)および中心網膜における中等度の変性および網膜周辺領域における進行した細胞喪失を有する1例のRP患者(B)からの網膜切片。増大したH3K27me3は、進行した網膜変性を有する領域(周辺、矢印)においてかなり支配的であった。正常な光受容体構造を有する網膜領域において、少数の核もH3K27me3マークを含有していることに留意されたい(矢印)。キャリブレーションバー:(A)および(B)に対してそれぞれ60μmおよび40μm。
図6】H3K27me3マークの増大は、Rd1マウスにおけるcGMP蓄積とDNA断片化(TUNEL)との間の中間事象である。(A)Rd1網膜における視細胞を、H3K27me3およびそれぞれcGMP(上段のパネル)、CDK4(中段のパネル)またはTUNEL(下段のパネル)のいずれかで二重染色した。cGMPおよびH3K27me3では共局在は認められなかったが、CDK4およびTUNEL陽性細胞の画分は、H3K27me3も含有していた。(B)12におけるH3K27me3およびTUNELまたは(C)CDK4を有する細胞のパーセンテージを示す棒グラフ。H3K27me3陽性細胞の40%未満が、TUNEL陽性でもあったことに留意されたい(n=4)。スケールバー=20μm。エラーバーは、SEMを示す。(D)PN09、10および11でのRd1およびWTマウスにおけるCDK4およびH3K27me3の経時的分析(n=4匹/年齢)。H3K27me3陽性細胞の数は、CDK4発現前にピークに達する。
図7】in vivoにおけるEZH2の薬理学的阻害は、Rd1およびFam161a−/−マウスにおける視細胞死を遅延させる。(A)マウス胚線維芽細胞を、示されるようにEZH2阻害剤UNC1999の増量した用量で処理し、2.5および5μMは、毒性が少なく最も有効なであり、H3K27me3マークの顕著な減少をもたらすことが示された。(B)H3K27me3の免疫細胞化学による標識は、マークの強い減少によるEZH2の阻害を確証した(透明な標識)。EZH2のレベル(透明な標識)も、わずかに影響を受けた。(C〜F)Rd1眼に対し、ビヒクル(DMSO)またはUNC1999(2.5μM最終眼中濃度)をPN8において注射した。UNC1999は、H3K27me3(C、E)およびTUNEL(D、F)陽性細胞の顕著な減少を誘導した。(G、H)2ヵ月齢で開始し、4ヵ月齢まで行った反復投与において、類似の実験をFam161−/−マウスにおいて実施した。データは、変性網膜の腹側の軸に沿った光受容体の列の統計学的に有意な保存を示しているが(G)、背腹の軸全体ではH3K27me3マークの変化は認められなかった(H)。最終注射後4日目に、分析を行った。二元配置分散分析、p<0.05、n=5条件あたりに分析した網膜。キャリブレーションバー:Bでは20μm、ならびにCおよびDでは60μm。
図8】RPE欠落網膜剥離片における光受容体変性および細胞死経路のパターン。図は、5つの採用したパラメーター総てに対する、2つの群:in vitro対照群(A)およびin vitro RD群(B)における、全4個のヒト網膜剥離片の要約データを示す。5つ総てのパラメーターに関して群間に有意差が認められたが、異なる時点であったことに留意されたい。最も重要な差は、特に、RD群におけるTUNELおよびH3K27me3陽性光受容体の経時的な増大に関してのものであり、AIFは、TUNEL陽性細胞のピークに次いで、3DIVにてピークを示したが、CDK4は、RD群において中等度に多く発現し、特定の細胞における細胞周期再突入が示唆された。*:p<0.05。
図9】TUNEL陽性細胞は、RPE細胞の非存在後に増大した。RPEを有さないヒトin vitro RDモデルおよびRPEを有するヒトin vitro網膜組織の対照群における、1DIV、3DIV、5DIV、7DIVでのTUNEL陽性細胞(矢印)。RPEの存在は、アーチファクト蛍光バックグラウンドをもたらした。ONL:外顆粒層、INL:内顆粒層、RPE:網膜色素上皮、キャリブレーションバー:20μm。
図10】ヒト網膜剥離片変性の中/後期におけるH3K27me3マークの増大。RD(RPEを有さない)のヒトin vitroモデルおよびRPEを有する網膜組織のヒトin vitroモデルにおける、1DIVおよび7DIVでのH3K27me3陽性細胞。ONL:外顆粒層、INL:内顆粒層、RPE:網膜色素上皮。倍率:400倍。キャリブレーションバー:20μm。
図11】腫瘍形成により誘導された網膜剥離は、変性ONLにおけるH3K27me3の増大を誘発する。局所網膜剥離に至る網膜の周辺部の黒色腫腫瘍に罹患している患者の眼球中の網膜。中心網膜のONLは、均一なH3K27me3の標識を示すが、網膜剥離が生じた領域では、核における高度に陽性のH3K27me3マークを有する光受容体が検出された(矢印参照)。スケール:20μm。
図12】健常成人眼へのUN1999の注射は、ビヒクル注射と同様に網膜機能に影響を及ぼす。(A)網膜機能を、薬剤(黒色の線)またはビヒクル(灰色の線)の注射前に、暗順応条件下で記録した。注射の1週後に、DMSO群(灰色の破線)およびUNC1999処置群(黒色の破線)の同じ動物を、同じ範囲の光刺激で再度刺激した。暗順応条件下での網膜活性の(最大b波振幅)の差は、2群間に認められなかった。明順応条件下で同様の分析を行った(B)。2つの高刺激(3および10cda/s.m)に関して、b波の最大振幅は、ベースラインと比較して、2群において減少した。2群間に差は認められなかった。(C)2群の動物を、注射の前(黒色のカラム)または後(斜線のカラム)に、異なる刺激周波数での明順応刺激に関して調べた。5および10Hz刺激では、両群に有意な減少が認められたが、15Hzでは認められず、桿体は、注射手技によって錐体よりも影響を受けたことが示唆された。対照群と処置群との間には、差は認められなかった。
図13
図14
図15
図16
図17
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
以下の定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために、ここにまとめたものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。便宜上、本明細書で使用する略語は、生物学的および化学的技術の範囲内での従来の意味を有する。
【0027】
本明細書で使用する場合、冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法的目的語の1つまたは1つより多い(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例示として、「1つの要素(an element)」は、1つ以上の要素の列挙を参照した、1つの要素または1つより多くの要素を意味し、前記列挙におけるいずれか1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、前記列挙内に具体的に列挙される少なくとも1つの各々および総ての要素を必ずしも含むものではなく、前記列挙における要素の任意の組合せを除外するものではないと理解されるべきである。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「癌」および「癌性」は、制御されない細胞成長を一般に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指す、または説明する。この定義に含まれるものは、良性および悪性の癌、例えば、眼の癌である。このような癌の例としては、ぶどう膜黒色腫および結膜黒色腫を含む黒色腫、網膜芽細胞腫、眼内リンパ腫、扁平上皮癌、涙腺癌、眼瞼癌または二次眼癌が挙げられる。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「障害」は、「疾患」と互換的であり、その両方とも、治療から利益が得られる任意の状態を指し、その例としては、限定されるものではないが、慢性および急性障害、遺伝性障害および非遺伝性障害または哺乳動物をこのような障害に罹患させやすくするそれらの病態を含む障害が挙げられる。この定義に含まれるものは、眼障害、例えば、遺伝性網膜障害、網膜変性、網膜の神経変性疾患、網膜に影響を与える眼自己免疫疾患または網膜に影響を与える炎症性疾患である。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「zesteホモログ1エンハンサー」、「EZH1」、「EZH1酵素」、「ヒストン−リシンN−メチルトランスフェラーゼEZH1」、「ヒストン−リシンN−メチルトランスフェラーゼEZH1」は、EZH1遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトEZH1遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000108799である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「zesteホモログ2エンハンサー」、「EZH2」、「EZH2酵素」、「ヒストン−リシンN−メチルトランスフェラーゼEZH2」、「zeste2ポリコーム抑制複合体2サブユニットのエンハンサー」は、EZH2遺伝子によりコードされる酵素を指す。ポリコーム抑制複合体2(PRC2)のコア触媒成分であるEZH2は、ヒストンH3上のリシン27のジメチル化およびトリメチル化(ヒストンH3リシン27、H3K27me3)を触媒し、それによりクロマチン転写をサイレンシングするヒストン−リシンN−メチルトランスフェラーゼである。本定義の例示として、ヒトEZH2遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000106462である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「zeste12サプレッサー」および「SUZ12」は、SUZ12遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトSUZ12遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000178691である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「胚性外胚葉発生(embryonic ectoderm development)」および「EED」は、EED遺伝子によりコードされる酵素を指す。この定義に含まれるものは、「胚性外胚葉発生(embryonic ectoderm development)1」または「EED1」、「胚性外胚葉発生(embryonic ectoderm development)2」または「EED2」、「胚性外胚葉発生(embryonic ectoderm development)3」および「EED3」ならびに「胚性外胚葉発生(embryonic ectoderm development)4」および「EED4」を含んでなるEED遺伝子のアイソフォームである。本定義の例示として、ヒトEED遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000074266である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「網膜芽細胞腫サプレッサー(Rb)関連タンパク質46」、「RbAp46」および「RBBP7」は、RBBP7遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトRBBP7遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000102054である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「網膜芽細胞腫サプレッサー(rb)関連タンパク質48」、「RbAp48」および「RBBP4」は、RBBP4遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトRBBP4遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000162521である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「脂肪細胞エンハンサー結合タンパク質2」および「AEBP2」は、AEBP2遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトAEBP2遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000139154である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「ポリコーム様タンパク質」または「PCL」は、ポリコーム様ホモログ(例えば、PCL1、PCL2またはPCL3)である酵素を指す。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「ポリコーム様1タンパク質」、「PCL1」または「PHF1」は、PHF1遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトPHF1遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000112511である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「ポリコーム様2タンパク質」、「PCL2」または「MTF2」は、MTF2遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトMTF2遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000143033である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「ポリコーム様3タンパク質」、「PCL3」または「Phf19」は、PHF19遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトPHF19遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000119403である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「十文字ATリッチ相互作用ドメイン2」および「Jarid2」は、JARID2遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトJARID2遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000008083である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「EPOP」または「C17orf96」は、EPOP遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトEPOP遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000273604である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「LCOR」または「C10orf12」は、LCOR遺伝子によりコードされる酵素を指す。本定義の例示として、ヒトLCOR遺伝子のENSEMBLは、ENSG00000196233である。この定義に含まれるものは、アイソフォーム、パラログまたは変異体である。
【0044】
本明細書で使用する場合、用語「zesteホモログ1エンハンサーの阻害剤」、「EZH1の阻害剤」、「EZH1阻害剤」、「zesteホモログ1エンハンサーのアンタゴニスト」、「EZH1のアンタゴニスト」および「EZH1アンタゴニスト」は、EZH1に結合することができる、EZH1発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、EZH1媒介メチルトランスフェラーゼ活性を含むEZH1生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、EZH1発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはEZH1生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、AEBP2)上の1つ以上のEZH1結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るEZH1阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともEZH1ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともEZH1ポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともEZH1ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともEZH1ポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、EZH1に対する阻害性核酸、EZH1に対するギャップマーもしくはアプタマー、EZH1に対する三重らせん分子、EZH1を標的とするリボザイム、EZH1に対する抗体、EZH1を標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、EZH1を標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、EZH1を標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、EZH1を標的とするメガヌクレアーゼ、EZH1を標的とするアルゴノートタンパク質、またはEZH1に結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るEZH1阻害剤として含まれるものは、EZH1に結合することができる、EZH1発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、EZH1媒介メチルトランスフェラーゼ活性を含むEZH1生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、EZH1阻害剤は、EZH1の発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、EZH1特異的阻害剤およびEZH1の非特異的阻害剤、例えば、EZH1アイソフォームの阻害剤、EZH1パラログの阻害剤またはEZH1変異体の阻害剤であり、これには、限定されるものではないが、EZH1/EZH2二重阻害剤またはEZH2阻害剤が含まれる。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「zesteホモログ2エンハンサーの阻害剤」、「EZH2の阻害剤」、「EZH2阻害剤」、「zesteホモログ2エンハンサーのアンタゴニスト」、「EZH2のアンタゴニスト」および「EZH2アンタゴニスト」は、EZH2に結合することができる、EZH2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、EZH2媒介メチルトランスフェラーゼ活性を含むEZH2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、EZH2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはEZH2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、EED、SUZ12)上の1つ以上のEZH2結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るEZH2阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともEZH2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともEZH2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともEZH2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともEZH2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、EZH2に対する阻害性核酸、EZH2に対するギャップマーもしくはアプタマー、EZH2に対する三重らせん分子、EZH2を標的とするリボザイム、EZH2に対する抗体、EZH2を標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、EZH2を標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、EZH2を標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、EZH2を標的とするメガヌクレアーゼ、EZH2を標的とするアルゴノートタンパク質、またはEZH2に結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るEZH2阻害剤として含まれるものは、EZH2に結合することができる、EZH2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、EZH2媒介メチルトランスフェラーゼ活性を含むEZH2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、EZH2阻害剤は、EZH2の発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、EZH2特異的阻害剤およびEZH2の非特異的阻害剤、例えば、EZH2アイソフォームの阻害剤、EZH2パラログの阻害剤またはEZH2変異体の阻害剤であり、これには、限定されるものではないが、EZH1/EZH2二重阻害剤またはEZH1阻害剤が含まれる。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「zeste12サプレッサーの阻害剤」、「SUZ12の阻害剤」、「SUZ12阻害剤」、「zeste12サプレッサーのアンタゴニスト」、「SUZ12のアンタゴニスト」および「SUZ12アンタゴニスト」は、SUZ12に結合することができる、SUZ12発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むSUZ12生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、SUZ12発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはSUZ12生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、EZH2、EED)上の1つ以上のSUZ12結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るSUZ12阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともSUZ12ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともSUZ12ポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともSUZ12ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともSUZ12ポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、SUZ12に対する阻害性核酸、SUZ12に対するギャップマーもしくはアプタマー、SUZ12に対する三重らせん分子、SUZ12を標的とするリボザイム、SUZ12に対する抗体、SUZ12を標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、SUZ12を標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、SUZ12を標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、SUZ12を標的とするメガヌクレアーゼ、SUZ12を標的とするアルゴノートタンパク質、またはSUZ12に結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るSUZ12阻害剤として含まれるものは、SUZ12に結合することができる、SUZ12発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むSUZ12生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、SUZ12阻害剤は、SUZ12の発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、SUZ12特異的阻害剤およびSUZ12の非特異的阻害剤、例えば、SUZ12アイソフォームの阻害剤、SUZ12パラログの阻害剤またはSUZ12変異体の阻害剤である。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「胚性外胚葉発生(embryonic ectoderm development)の阻害剤」、「EEDの阻害剤」、「EED阻害剤」、「胚性外胚葉発生(embryonic ectoderm development)のアンタゴニスト」、「EEDのアンタゴニスト」および「EEDアンタゴニスト」は、EEDに結合することができる、EED発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むEED生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、EED発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはEED生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、EZH2、SUZ12)上の1つ以上のEED結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るEED阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともEEDポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともEEDポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともEEDポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともEEDポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、EEDに対する阻害性核酸、EEDに対するギャップマーもしくはアプタマー、EEDに対する三重らせん分子、EEDを標的とするリボザイム、EEDに対する抗体、EEDを標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、EEDを標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、EEDを標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、EEDを標的とするメガヌクレアーゼ、EEDを標的とするアルゴノートタンパク質、またはEEDに結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るEED阻害剤として含まれるものは、EEDに結合することができる、EED発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むEED生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、EED阻害剤は、EEDの発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、EED特異的阻害剤およびEEDの非特異的阻害剤、例えば、EEDアイソフォームの阻害剤、EEDパラログの阻害剤またはEED変異体の阻害剤であり、これには、限定されるものではないが、EED1阻害剤、EED2阻害剤、EED3阻害剤、またはEED4阻害剤が含まれる。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「網膜芽細胞腫サプレッサー(Rb)関連タンパク質46の阻害剤」、「RbAp46の阻害剤」、「RbAp46阻害剤」、「網膜芽細胞腫サプレッサー(Rb)関連タンパク質46のアンタゴニスト」、「RbAp46のアンタゴニスト」および「RbAp46アンタゴニスト」は、RbAp46に結合することができる、RbAp46発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるクロマチン構築およびメチルトランスフェラーゼ活性を含むRbAp46生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、RbAp46発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはRbAp46生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、SUZ12、PCL)上の1つ以上のRbAp46結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るRbAp46阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともRbAp46ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともRbAp46ポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともRbAp46ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともRbAp46ポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、RbAp46に対する阻害性核酸、RbAp46に対するギャップマーもしくはアプタマー、RbAp46に対する三重らせん分子、RbAp46を標的とするリボザイム、RbAp46に対する抗体、RbAp46を標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、RbAp46を標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、RbAp46を標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、RbAp46を標的とするメガヌクレアーゼ、RbAp46を標的とするアルゴノートタンパク質、またはRbAp46に結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るRbAp46阻害剤として含まれるものは、RbAp46に結合することができる、RbAp46発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるクロマチン構築およびメチルトランスフェラーゼ活性を含むRbAp46生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、RbAp46阻害剤は、RbAp46の発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、RbAp46特異的阻害剤およびRbAp46の非特異的阻害剤、例えば、RbAp46アイソフォームの阻害剤、RbAp46パラログの阻害剤またはRbAp46変異体の阻害剤であり、これには、限定されるものではないが、RbAp46/RbAp48二重阻害剤またはRbAp48阻害剤が含まれる。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「網膜芽細胞腫サプレッサー(rb)関連タンパク質48の阻害剤」、「RbAp48の阻害剤」、「RbAp48阻害剤」、「網膜芽細胞腫サプレッサー(rb)関連タンパク質48のアンタゴニスト」、「RbAp48のアンタゴニスト」および「RbAp48アンタゴニスト」は、RbAp48に結合することができる、RbAp48発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるクロマチン構築およびメチルトランスフェラーゼ活性を含むRbAp48生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、RbAp48発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはRbAp48生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、SUZ12、PCL)上の1つ以上のRbAp48結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るRbAp48阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともRbAp48ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともRbAp48ポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともRbAp48ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともRbAp48ポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、RbAp48に対する阻害性核酸、RbAp48に対するギャップマーもしくはアプタマー、RbAp48に対する三重らせん分子、RbAp48を標的とするリボザイム、RbAp48に対する抗体、RbAp48を標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、RbAp48を標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、RbAp48を標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、RbAp48を標的とするメガヌクレアーゼ、RbAp48を標的とするアルゴノートタンパク質、またはRbAp48に結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るRbAp48阻害剤として含まれるものは、RbAp48に結合することができる、RbAp48発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるクロマチン構築およびメチルトランスフェラーゼ活性を含むRbAp48生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、RbAp48阻害剤は、RbAp48の発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、RbAp48特異的阻害剤およびRbAp48の非特異的阻害剤、例えば、RbAp48アイソフォームの阻害剤、RbAp48パラログの阻害剤またはRbAp48変異体の阻害剤であり、これには、限定されるものではないが、RbAp46/RbAp48二重阻害剤またはRbAp46阻害剤が含まれる。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「脂肪細胞エンハンサー結合タンパク質2の阻害剤」、「AEBP2の阻害剤」、「AEBP2阻害剤」、「脂肪細胞エンハンサー結合タンパク質2のアンタゴニスト」、「AEBP2のアンタゴニスト」および「AEBP2アンタゴニスト」は、AEBP2に結合することができる、AEBP2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むAEBP2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、AEBP2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはAEBP2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、JARID2、EED)上の1つ以上のAEBP2結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るAEBP2阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともAEBP2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともAEBP2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともAEBP2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともAEBP2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、AEBP2に対する阻害性核酸、AEBP2に対するギャップマーもしくはアプタマー、AEBP2に対する三重らせん分子、AEBP2を標的とするリボザイム、AEBP2に対する抗体、AEBP2を標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、AEBP2を標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、AEBP2を標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、AEBP2を標的とするメガヌクレアーゼ、AEBP2を標的とするアルゴノートタンパク質、またはAEBP2に結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るAEBP2阻害剤として含まれるものは、AEBP2に結合することができる、AEBP2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むAEBP2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、AEBP2阻害剤は、AEBP2の発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、AEBP2特異的阻害剤およびAEBP2の非特異的阻害剤、例えば、AEBP2アイソフォームの阻害剤、AEBP2パラログの阻害剤またはAEBP2変異体の阻害剤である。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「十文字ATリッチ相互作用ドメイン2の阻害剤」、「JARID2の阻害剤」、「JARID2阻害剤」、「十文字ATリッチ相互作用ドメイン2のアンタゴニスト」、「JARID2のアンタゴニスト」および「JARID2アンタゴニスト」は、JARID2に結合することができる、JARID2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むJARID2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、JARID2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはJARID2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、EED、AEBP2)上の1つ以上のJARID2結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るJARID2阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともJARID2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともJARID2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともJARID2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともJARID2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、JARID2に対する阻害性核酸、JARID2に対するギャップマーもしくはアプタマー、JARID2に対する三重らせん分子、JARID2を標的とするリボザイム、JARID2に対する抗体、JARID2を標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、JARID2を標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、JARID2を標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、JARID2を標的とするメガヌクレアーゼ、JARID2を標的とするアルゴノートタンパク質、またはJARID2に結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るJARID2阻害剤として含まれるものは、JARID2に結合することができる、JARID2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むJARID2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、JARID2阻害剤は、JARID2の発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、JARID2特異的阻害剤およびJARID2の非特異的阻害剤、例えば、JARID2アイソフォームの阻害剤、JARID2パラログの阻害剤またはJARID2変異体の阻害剤であり、これには、限定されるものではないが、KDM5B阻害剤が含まれる。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「ポリコーム様タンパク質の阻害剤」、「PCLの阻害剤」、「PCL阻害剤」、「ポリコーム様タンパク質のアンタゴニスト」、「PCLのアンタゴニスト」および「PCLアンタゴニスト」は、1つ以上のPCLに結合することができる、1つ以上のPCL発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含む1つ以上のPCL生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、1つ以上のPCL発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または1つ以上のPCL生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、AEBP2、RbAp46、RbAp48)上の1つ以上のPCL結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るPCL阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともPCLポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともPCLポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともPCLポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともPCLポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、PCLに対する阻害性核酸、PCLに対するギャップマーもしくはアプタマー、PCLに対する三重らせん分子、PCLを標的とするリボザイム、PCLに対する抗体、PCLを標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、PCLを標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、PCLを標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、PCLを標的とするメガヌクレアーゼ、PCLを標的とするアルゴノートタンパク質、または少なくとも1つのPCLに結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るPCL阻害剤として含まれるものは、1つ以上のPCLに結合することができる、1つ以上のPCL発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含む1つ以上のPCL生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、PCL阻害剤は、1つ以上のPCLの発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、PCL特異的阻害剤およびPCLの非特異的阻害剤、例えば、PCLアイソフォームの阻害剤、PCLパラログの阻害剤またはPCL変異体の阻害剤である。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「ポリコーム様1タンパク質の阻害剤」、「PCL1の阻害剤」、「PCL1阻害剤」、「PHF1の阻害剤」、「PHF1阻害剤」、「ポリコーム様1タンパク質のアンタゴニスト」、「PCL1のアンタゴニスト」、「PCL1アンタゴニスト」、「PHF1のアンタゴニスト」および「PHF1アンタゴニスト」は、PCL1に結合することができる、PCL1発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるDNA損傷応答およびメチルトランスフェラーゼ活性を含むPCL1生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、PCL1発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはPCL1生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、AEBP2、RbAp46、RbAp48)上の1つ以上のPCL1結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るPCL1阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともPCL1ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともPCL1ポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともPCL1ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともPCL1ポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、PCL1に対する阻害性核酸、PCL1に対するギャップマーもしくはアプタマー、PCL1に対する三重らせん分子、PCL1を標的とするリボザイム、PCL1に対する抗体、PCL1を標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、PCL1を標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、PCL1を標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、PCL1を標的とするメガヌクレアーゼ、PCL1を標的とするアルゴノートタンパク質、またはPCL1に結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るPCL1阻害剤として含まれるものは、PCL1に結合することができる、PCL1発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるDNA損傷応答およびメチルトランスフェラーゼ活性を含むPCL1生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、PCL1阻害剤は、PCL1の発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、PCL1特異的阻害剤およびPCL1の非特異的阻害剤、例えば、PCL1アイソフォームの阻害剤、PCL1パラログの阻害剤またはPCL1変異体の阻害剤であり、これには、限定されるものではないが、PCL2阻害剤およびPCL3阻害剤が含まれる。
【0054】
本明細書で使用する場合、用語「ポリコーム様2タンパク質の阻害剤」、「PCL2の阻害剤」、「PCL2阻害剤」、「MTF2の阻害剤」、「MTF2阻害剤」、「ポリコーム様2タンパク質のアンタゴニスト」、「PCL2のアンタゴニスト」、「PCL2アンタゴニスト」、「MTF2のアンタゴニスト」および「MTF2アンタゴニスト」は、PCL2に結合することができる、PCL2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むPCL2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、PCL2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはPCL2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、AEBP2、RbAp46、RbAp48)上の1つ以上のPCL2結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るPCL2阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともPCL2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともPCL2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともPCL2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともPCL2ポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、PCL2に対する阻害性核酸、PCL2に対するギャップマーもしくはアプタマー、PCL2に対する三重らせん分子、PCL2を標的とするリボザイム、PCL2に対する抗体、PCL2を標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、PCL2を標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、PCL2を標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、PCL2を標的とするメガヌクレアーゼ、PCL2を標的とするアルゴノートタンパク質、またはPCL2に結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るPCL2阻害剤として含まれるものは、PCL2に結合することができる、PCL2発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むPCL2生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、PCL2阻害剤は、PCL2の発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、PCL2特異的阻害剤およびPCL2の非特異的阻害剤、例えば、PCL2アイソフォームの阻害剤、PCL2パラログの阻害剤またはPCL2変異体の阻害剤であり、これには、限定されるものではないが、PCL1阻害剤およびPCL3阻害剤が含まれる。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「ポリコーム様3タンパク質の阻害剤」、「PCL3の阻害剤」、「PCL3阻害剤」、「Phf19の阻害剤」、「Phf19阻害剤」、「ポリコーム様3タンパク質のアンタゴニスト」、「PCL3のアンタゴニスト」、「PCL3アンタゴニスト」、「Phf19のアンタゴニスト」および「Phf19アンタゴニスト」は、PCL3に結合することができる、PCL3発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むPCL3生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、PCL3発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはPCL3生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、AEBP2、RbAp46、RbAp48)上の1つ以上のPCL3結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るPCL3阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともPCL3ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともPCL3ポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともPCL3ポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともPCL3ポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、PCL3に対する阻害性核酸、PCL3に対するギャップマーもしくはアプタマー、PCL3に対する三重らせん分子、PCL3を標的とするリボザイム、PCL3に対する抗体、PCL3を標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、PCL3を標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、PCL3を標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、PCL3を標的とするメガヌクレアーゼ、PCL3を標的とするアルゴノートタンパク質、またはPCL3に結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るPCL3阻害剤として含まれるものは、PCL3に結合することができる、PCL3発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むPCL3生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、PCL3阻害剤は、PCL3の発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、PCL3特異的阻害剤およびPCL3の非特異的阻害剤、例えば、PCL3アイソフォームの阻害剤、PCL3パラログの阻害剤またはPCL3変異体の阻害剤であり、これには、限定されるものではないが、アイソフォーム1阻害剤、アイソフォーム2阻害剤、PCL1阻害剤およびPCL2阻害剤が含まれる。
【0056】
本明細書で使用する場合、用語「EPOPの阻害剤」、「EPOP阻害剤」、「C17orf96の阻害剤」、「C17orf96阻害剤」、「EPOPのアンタゴニスト」および「EPOPアンタゴニスト」、「C17orf96のアンタゴニスト」、「C17orf96アンタゴニスト」は、EPOPに結合することができる、EPOP発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むEPOP生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、EPOP発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはEPOP生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、EED、EZH2、PCL)上の1つ以上のEPOP結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るEPOP阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともEPOPポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともEPOPポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともEPOPポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともEPOPポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、EPOPに対する阻害性核酸、EPOPに対するギャップマーもしくはアプタマー、EPOPに対する三重らせん分子、EPOPを標的とするリボザイム、EPOPに対する抗体、EPOPを標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、EPOPを標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、EPOPを標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、EPOPを標的とするメガヌクレアーゼ、EPOPを標的とするアルゴノートタンパク質、またはEPOPに結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るEPOP阻害剤として含まれるものは、EPOPに結合することができる、EPOP発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むEPOP生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、EPOP阻害剤は、EPOPの発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、EPOP特異的阻害剤およびEPOPの非特異的阻害剤、例えば、EPOPアイソフォームの阻害剤、EPOPパラログの阻害剤またはEPOP変異体の阻害剤である。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「LCORの阻害剤」、「LCOR阻害剤」、「C10orf12の阻害剤」、「C10orf12阻害剤」、「LCORのアンタゴニスト」および「LCORアンタゴニスト」、「C10orf12のアンタゴニスト」、「C10orf12アンタゴニスト」は、LCORに結合することができる、LCOR発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むLCOR生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子を指す。例えば、LCOR発現レベルを阻害もしくは低減することができる、またはLCOR生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる分子は、PRC2複合体(例えば、EZH2)上の1つ以上のLCOR結合部位に結合することによって、その効果を発揮し得る。本開示の方法に使用され得るLCOR阻害剤として含まれるものは、小化合物、例えば、少なくともLCORポリペプチドをコードする核酸分子の断片と相補的である小RNA(例えば、アンチセンス核酸、siRNA、shRNA、miRNA)、少なくともLCORポリペプチドをコードする核酸分子の断片とハイブリダイズするロックド核酸、少なくともLCORポリペプチドをコードする核酸分子の断片と結合するペプチド核酸、少なくともLCORポリペプチドをコードする核酸分子の断片を標的とするモルホリノ、LCORに対する阻害性核酸、LCORに対するギャップマーもしくはアプタマー、LCORに対する三重らせん分子、LCORを標的とするリボザイム、LCORに対する抗体、LCORを標的とするジンクフィンガータンパク質(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼもしくはジンクフィンガー転写因子)、LCORを標的とする転写活性化因子様エフェクタータンパク質(例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼもしくは転写活性化因子様エフェクターに基づく転写因子)、LCORを標的とするCRISPRベースシステム(例えば、ガイドRNAと、DNAもしくはRNAを切断するための触媒活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム、ガイドRNAと、遺伝子サイレンシングおよびエピジェネティック修飾のための機能ドメインと融合した、もしくはしていない触媒不活性CRISPR酵素とを組み合わせたシステム)、LCORを標的とするメガヌクレアーゼ、LCORを標的とするアルゴノートタンパク質、またはLCORに結合するキメラのものを含む任意のポリペプチドである。本開示の方法に使用され得るLCOR阻害剤として含まれるものは、LCORに結合することができる、LCOR発現レベルを阻害もしくは低減することができる、または、限定されるものではないが、PRC2のコアサブユニット、例えば、EZH1もしくはEZH2により媒介されるメチルトランスフェラーゼ活性を含むLCOR生物学的活性を中和、遮断、低減もしくは妨害することができる、非ペプチド小分子、例えば、化合物である。例えば、LCOR阻害剤は、LCORの発現レベルまたは生物活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減または阻害する。この定義に含まれるものは、LCOR特異的阻害剤およびLCORの非特異的阻害剤、例えば、LCORアイソフォームの阻害剤、LCORパラログの阻害剤またはLCOR変異体の阻害剤であり、これには、限定されるものではないが、PRC2関連LCORアイソフォーム1(PALI1)の阻害剤およびPRC2関連LCORアイソフォーム2(PALI2)の阻害剤が含まれる。
【0058】
本明細書で使用する場合、用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」および「治療」は、障害、疾患と戦って、障害もしくは疾患と関連する1つ以上の症状もしくは合併症を軽減もしくは抑制する、または、障害もしくは疾患の1つもしくは複数の原因、もしくは障害もしくは疾患自体を根絶することを目的とした、患者の管理およびケアを指す。用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」および「治療」はまた、障害もしくは疾患、および/もしくはその付随症状の発症を遅延および/もしくは防止する;対象が障害もしくは疾患を獲得することを阻止する;または対象が障害もしくは疾患を獲得するリスクを低減させる方法を指す。用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」および「治療」はまた、動物モデルまたはin vitroの細胞の治療(処置)も含み得る。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、「それを必要とする対象」と互換的であり、その両方とも、眼障害と診断されている、眼障害の症状を有する、または全体の集団と比較して眼障害を発症するリスクが高い、任意の哺乳動物を指す。哺乳動物は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、雌ウシ、ヒツジ、ブタまたはウマであり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。眼障害は、任意の眼障害、例えば、癌であるまたは癌ではない眼障害であり得る。好ましくは、眼障害は、癌ではなく、例えば、遺伝性眼障害、眼に影響を与える神経変性障害、眼自己免疫疾患、眼に影響を与える炎症性疾患である。より好ましくは、眼障害は、遺伝性網膜障害、網膜変性、網膜の神経変性疾患、網膜に影響を与える眼自己免疫疾患または網膜に影響を与える炎症性疾患である。眼障害はまた、網膜ニューロンに影響を与える障害を含む。例示すると、予防の目的で、対象は、網膜ニューロンの細胞死を特徴とする網膜機能の変性などを有するヒト対象であり得る。このような眼障害の例としては、限定されるものではないが、色覚異常、コンピューター視覚症候群、糖尿病性網膜症、飛蚊症および斑点、緑内障、学習関連視覚問題、黄斑変性、眼振、眼アレルギー、高眼圧症、網膜剥離、網膜色素変性症、結膜下出血、ブドウ膜炎、レーバー先天性黒内障、錐体桿体ジストロフィー、夜盲症、硝子体網膜ジストロフィー、びらん性硝子体網膜症、アッシャー症候群、網膜上膜、黄斑円孔が挙げられる。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「網膜ニューロン」は、視覚情報の伝達および処理に特異的な役割を果たす、哺乳動物網膜の任意の神経細胞を指す。この定義に含まれるものは、桿体および錐体光受容体などの光受容体、網膜神経節細胞、双極細胞、アマクリン細胞および水平細胞である。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「治療上有効な量」および「有効量」は、哺乳動物に投与されたとき、治療される障害または状態の少なくとも1つの症状の発症を予防する、またはある程度まで軽減するのに十分である化合物の量を指す。これらの用語はまた、生体分子(例えば、タンパク質、酵素、DNAまたはRNA)、細胞、組織、システム、動物またはヒトなどの生物の生物学的または医学的応答を誘発するのに十分である化合物の量を指す。
【0062】
材料と方法
マウスおよび家畜:
野生型(WT)マウス、網膜変性1(Rd1)マウス、およびFVBバックグラウンドのRd1;Bmi1−/−マウス、ならびに緑色蛍光タンパク質(GFP)錐体−桿体ホメオボックス(Crx)遺伝子活性化を発現するC57/Bl6WTマウスを、室温25℃および湿度50〜60%にて、12時間明/12時間暗周期で動物施設において飼育した。Crx−GFPマウスをRd1マウスと交配させて、Rd1;Crx−GFPを得た。総ての動物の遺伝型を、以前に記載のように(Zencak et al., PNAS 2013;表1におけるジェノタイピングに使用したプライマーの組を参照)、特異的なプライマーを用いた従来のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅法により検証した。遅い変性過程を示すFam161a−/−マウスは、親切にもDror Sharon(university of Hadassah、エルサレム)によって提供された。動物は、視覚と眼科学研究協会会議(ARVO)ガイドラインに従って処置し、総ての実験手順は、Ethical Committee of the State of Vaud Veterinary Office,Switzerlandによって承認された。
【0063】
ヒトサンプル:
ヒト網膜色素変性症およびドナーからのスライド切片は、Jules−Gonin’s Eye Hospital(ローザンヌ、スイス)のアイバンクによって提供され、後ろ向き研究のプロトコールは、スイスのDepartment of Interior Affairsによって承認された(認可番号035−0003−48/COC)。研究は、網膜剥離のin vitroモデルとしてのヒト網膜剥離片に対して実施された。総ての手順は、ヒト対象が関与する生物医学的研究に関するヘルシンキ宣言の教義に従った。ローザンヌアイバンクから受領したヒト眼球は、移植には不適であるとみなした。州(VD)のヒト研究の倫理に関する委員会(CER−VD、プロトコール番号340−15)による倫理承認およびスイスの法律に従って、死亡前のドナーの全般的健康を検討し、網膜を損傷する恐れのある既往歴または治療歴を有するドナーからの組織は拒否した。
【0064】
化合物および原液の調製:
UNC1999阻害剤は、商業的供給源(番号SML0778−5MG、SIGMA社)から凍結乾燥粉末として供給された。原液は、製造業者の説明書に従って、100%DMSO中で調製した。十分な量のDMSOをバイアルに加え、10mM原液を作製した。最適な注射手技のために、本発明者らは、中間溶液の調製前に、3つの異なるパラメーターを検討した。第1に、およそ5.3μlである幼若マウス(生後8日目、PN08)の硝子体の容量を検討し;注射可能であった(最終容量6.3μl)最大安全量(1μl)、および細胞培養実験(下記参照)とともに増量した用量から得られた6μMの計算有効量を検討した。したがって、次いで、その後の実験用の20μM中間溶液を作製するために、原液を生理的緩衝液(0.9%NaCl)で希釈した。
【0065】
細胞培養およびUNC1999による処置:
マウス胚線維芽細胞(MEF)を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む10%ウシ胎仔血清(FBS)の培養液中で、37℃、5%CO2にて維持した。処置の前日に、細胞をトリプシン処理し、24ウェルプレート中のポリオルニチンコーティングしたカバーガラスに、密度50,000個で播種した。翌日に、培地を捨て、1μM〜50μMの範囲の、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した種々の用量のUNC1999阻害剤を含有する新鮮培地を3回加え、次いで、37℃で48時間再度インキュベートした。対照細胞に、UNC1999とともに使用した各ジメチルスルホキシドDMSOを与えた。カバーガラスを、予熱したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)1倍で室温(RT)にて3回洗浄した。細胞を、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で室温にて12分間固定した。PBS中でさらに2回洗浄した後、細胞を直ちに免疫染色に進めた。ウエスタンブロット解析のために、200,000個の細胞を6ウェルプレートに3回播種し、上記のように処置した。
【0066】
in vivo実験:
化合物を、PN08 Rd1同腹仔の眼球に、硝子体内注射によって送達した。動物(計08匹)を最初に、20mg/kgケタミン+300μg/KgのDorbeneの混合物で腹膜内(ip)麻酔した。30分後、300μg/kgのAlzaneのip注射によって、回復を行った。必要な場合、眼瞼のふち(future edge)を強制的に開き、鉗子で保持した。20μM UNC1999溶液で満たした注射針を、強膜を介して硝子体内に慎重に挿入した。単一用量(1μl)の中間溶液を徐々に送達し、終濃度2.5〜3μMに達し、これはDMSO濃度0.0317%に相当した。各動物に対し、一方の眼に化合物を投与し、一方、他方の眼にはビヒクルを注射した。注射された動物は、麻酔から目覚めるまで、保温し、厳密な検査から恩恵を受けた。動物が通常の習慣に戻る前の回復の助けとなるよう、400μlの5%グルコースおよびパラセタモールをそれぞれ皮下および腹膜内投与した。注射後4日目にマウスを屠殺し、以下に説明するように眼球を切除した。処理の前に、白内障および予期しない病変の何らかの徴候に関して、眼を慎重に検査した。同様に、単一用量のUNC1999(36μMの溶液)を、2ヵ月齢のFam161a−/−マウス(遅い変性過程)に、硝子体内注射により投与し、毎週反復注射した。4回目の注射後4日目に、動物を屠殺した。
【0067】
ヒト網膜剥離片を調製するためのプロトコール:
眼の解剖の手順:角膜ドナーの回収後、後眼部を回収し;硝子体を除去した後、次いで、強膜および網膜を、4回の切開で花形に切り出した。次に、網膜剥離のin vitroモデルを達成するために、網膜を、網膜色素上皮(RPE)、脈絡膜および強膜から剥離した。対照剥離片を、RPEとともに培養した。周辺部網膜を、最大5mm×5mmの小片に解剖した。網膜剥離片をMilliporeメンブレンインサート(ミリセルカルチャープレートインサート、MerckMillipore、Merck社、ダルムシュタット、ドイツ)に置き、次いで、6ウェルプレート(NalgeneNunc社、ロチェスター、ニューヨーク州、米国)に入れ、次いで、1.5mLの培地を各ウェルに投与した。DMEM/F12培地は、B27(1/50)、FBS(1%)、ペニシリン(1%)およびストレプトマイシン(1%)を含有していた。培地を37℃で維持し、48時間毎に交換した。このプロトコール中、解剖後24時間、72時間、5日目および7日目に固定を行った。固定は、4%PFAおよび30%スクロースを用いて達成し、剥離片を、Yazullaを用いて載せ、その後−20℃で凍結させた。組み入れ基準を満たした網膜剥離片は4個存在した(n=4)。4個総ての剥離片が、既知の網膜疾患に対して陰性であった。各生体サンプルを、2群、すなわち、RD群(RPEを有さない)、n=4および対照群(RPEを有する)、n=4に分け、分析した総ての時点に供した。
【0068】
組織学的検査および組織処理:
動物を、CO2への7分間の曝露によって屠殺した。摘出した眼に対して組織学的検査を行った。凍結薄切前に、眼球を視神経から切除し、25G針を用いて角膜レベルで穿孔し(単一の小さい穴)、室温で4%PFA(w/v)に移した。1時間のインキュベーション期間の後、眼を、4℃で一晩30%スクロースに移す前に、PBS1倍中で洗浄した。眼をyazulaに包埋し、−20℃で凍結させ、次いで、クリオスタットを用いて14μmの薄切を行った。切片を、各眼につき6枚の連続スライドに回収した。総ての定量化は、視神経を含む(またはそれを囲む)最も中心の凍結切片に対して行った。核の列の測定を、分析した総ての切片およびスライドにおける網膜の背側および腹側の両方に対して同じ位置的領域にて行った。データは、網膜の背側帯または腹側帯に対する平均としてプールした。
【0069】
WTおよびRd1マウスからの精製された光受容体の作製:
GFPを発現するCrx−GFP;WTおよびCrx−GFP;Rd1マウスを、PN12において屠殺し、上記のように摘出した。次いで、網膜を眼球から単離し、単離された網膜組織を、還元型血清培地OpTi−MEM(Life Technologies社)のアリコートを含有する2ml微量遠心管に移した。同じ同腹仔からの4〜6個の網膜を、製造業者の説明書に従って、パパイン−I解離(パパイン解離キット、Worthington biochemical社)の前に合わせた。サンプル調製物を、GFPを励起するための488nm緑色レーザーを備えたMoFlo Astrioシステム(UNILプラットフォーム、CHUVにおけるBeckman Coulter社)のカラムにさらにロードした。細胞を一定励起で選別し、PBS1倍中に回収し、ペレット化し、次いで、スナップ凍結し、分析日まで−80℃で直ちに保存した。
【0070】
H3K27me3染色のためのエピトープ回収:
凍結スライドを、室温で温め、再水和し、PBS1倍で3回洗浄した。スライドをプラスチック容器(25×75mm)に入れ、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)で満たし、家庭用マイクロ波オーブンに移した。液体が煮沸し始めるまで、サンプルを600W(中出力)でおよそ2分間加熱した。緩衝液を永久的に補充し、合計期間5分間、逐次的に再度煮沸した。次いで、切片を、室温で30分間、クエン酸緩衝液中で徐々に冷却し、免疫組織化学の前に、PBS1倍で徹底的にすすいだ。
【0071】
免疫組織化学:
処置および非処置スライドに対して、免疫組織化学を行った。切片を、冷却したPBS1倍で3回洗浄した後、トリトンX−100で20分間透過処理し、組織および細胞中の至る所での最適な抗体−抗原相互作用をさらに可能にした。切片を、0.3%トリトンX−100を含有するPBS1倍中の3%BSA(w/v)、5%NGS(v/v)を含有する緩衝液で、1時間ブロックした。適当な抗体希釈物(表2におけるそれぞれの用途を備えた抗体の一覧を参照)を、ブロッキング溶液中で調製し、十分な量を置き、4℃で一晩移した。翌日、抗体溶液を流し、残りの非相互作用プローブを、PBS1倍で3回洗い流した。次いで、相互作用プローブを、室温で1時間PBS1倍に希釈した適当なコンジュゲート二次抗体Alexa Fluor 488またはAlexa fluor 633の溶液を適用することによって、検出した。最後に、PBS中で調製した4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)溶液で、核を対比染色した。あるいは、cGMPおよびCDK4などの抗原を回収することが困難な場合には、特別な条件を適用した:CDK4の検出に成功するには、供給業者の説明書に従った、TSA(登録商標)フルオレセイン検出キット(PerkinElmer社)または3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)顕色システム(Dako社)のいずれかを用いたシグナル増幅を必要とする。cGMPの検出は、ソフト洗剤溶液(0.1%トリトンX−100)を用いてメンブレンを透過処理することにより、およびインキュベーション工程全体を通じてトリス緩衝液(TBS)を使用することにより、達成した。総ての調製物は、Mowiolを用いてマウントし、測定は、Olympus BX60蛍光顕微鏡またはZeiss共焦点顕微鏡(LSM 510 3.2 ソフトウェア)を用いて行った。
【0072】
シグナルの定量化および分析:
各抗原につき、スライド1枚あたり、視神経に隣接する8枚の切片を分析した。個々の切片を、対物レンズ20倍の倍率で描写された6つの主要な(背側3つおよび腹側3つ)視野に細分することによって、外顆粒層(ONL)核における陽性シグナルを、背腹側面に沿って数えた。各背側視野または腹側視野は、視神経に最も近い場合、中心に割り当て、一方、視神経から最も遠いものは、周辺とみなした。次いで、Rd1における染色された細胞の総数を、切片1枚あたりで推定し、1視野あたりの平均を、WTマウスと比較してスコア化した。
【0073】
末端dUTP鎖切断標識:
細胞死を、in−Situ細胞死検出キット(カタログ番号:12156792910。Roche diagnostics社;ロートクロイツ、スイス)を用いてモニタリングし、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)を、製造業者の説明書に従って行った。
【0074】
組織ホモジネートの調製:
精製された光受容体を、氷上で解凍し、PBX1倍で2回洗浄し、50mMトリス−HCl pH7.6、150mM Nacl、1mM EDTA、0.25%トリトンX−100および0.25%ノニデットNP40、ならびにプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma社)中でホモジナイズした。引き続き、4℃での30%振幅で3秒間の超音波処理工程を行い、核の成分を放出させた。細胞骨格およびデブリを、14,000gで10分間ペレット化し、透明なライセートを回収し、新鮮なエッペンドルフチューブ中の小さなアリコートに移し、分析日まで−80℃で保存した。
【0075】
ウエスタンブロット:
等量(20μg)のライセートを、定電圧下での12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離した。次いで、タンパク質を、室温でポリビニリデン(PVDF)メンブレンに移した(BioRad社、スイス)。メンブレンを、室温でPBS1倍中の5%脱脂粉乳で1時間ブロックした。メンブレンを、示したように(表1および表2参照)、5%脱脂粉乳、0.1%PBS Tween20(PBST)で希釈した一次抗体でインキュベートした。メンブレンを、PBS0.1%Tween20で3回洗浄し、PBS0.1%Tween20で希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート二次抗体で、室温にて1時間さらにインキュベートした。メンブレンをPBSTで2回洗浄し、PBS1倍で1回洗浄した。最後に、最高感度の化学発光HRP基質(Witec AG社)を加え、製造業者の説明書に従って、富士フイルム化学発光カセット(Amersham社)を用いてバンドを明らかにした。
【実施例】
【0076】
実施例1:網膜変性マウスモデルの光受容体におけるH3K27me3の蓄積
先行研究において、本発明者らは、Rd1光受容体における細胞死は、BMI1ポリコーム群タンパク質(B細胞特異的MMLV組込み部位1)と密接に依存していたが、その分子作用は、下流の従来のInk4a/Arf経路と非依存的であったことを示した(Zencak et al., 2013)。BMI1がRd1光受容体における自律的な効果を有するかどうかを明らかにするため、本発明者らは、光受容体においてBmi1欠失を特異的および独特に明確に誘導するために、条件的なRd1;Bmi1flox/floxマウスをオプシン::Cre系統と交配し、Rd1;オプシン::Cre;Bmi1flox/floxマウスを作製した(図2A)。Creリコンビナーゼ活性を有するマウスにおいて、生後16日目(PN16)でのBMI1の免疫組織化学によって、Bmi1の細胞型特異的な欠失を光受容体において確認した(図2A)。しかしながら、光受容体から構成される外顆粒層(ONL)の広い領域においてBMI1の発現は存在しなかったにもかかわらず、Rd1;Bmi1−/−と比較して、ONLの厚さのレスキューはPN16に認められなかった(図2AおよびZencak et al., 2013)。このことは、細胞死を引き起こす分子センサーが、光受容体の分化の直後、およびオプシンプロモーター活性の開始中に光受容体が自身の完全な成熟を獲得する時点の前に、切り替わり得ることを示唆する。
【0077】
ポリコーム抑制複合体2(PRC2)は、BMI1の前に遺伝子を調節するように作用するため、本発明者らは、PCR2はすでにこの死滅過程に関与している可能性があると仮定し、ヒストン翻訳後修飾(HPTM)を検討した。Zestホモログ2エンハンサー(EZH2)は、PRC2に属し、ヒストン3のリシン27上のトリメチル化(H3K72me3)を媒介して、クロマチンの凝集、およびBMI1を介したPRC1と関連した遺伝子抑制を支持する。選択されたヒストン翻訳後修飾(HPTM)に関するPN16のRd1;オプシン::Cre;Bmi1flox/floxマウスからの変性中の網膜切片のスクリーニングによって、ONL中のいくつかの細胞における部位特異的H3K27過剰トリメチル化が明らかにされている(図2D)。変性網膜内の光受容体におけるH3K27me3のこの独特の濃縮を考慮し、本発明者らは、その生物学的意義および疾患過程に対する潜在的な寄与をより注目することを検討した。
【0078】
PN12のRd1マウスにおいて、H3K27me3に対する免疫組織化学によって、外顆粒層(ONL)を構成するいくつかの核における強い核標識が示されている(図2C)。EZH2およびH3K27me3のレベルは、出生後の幼若WTマウスにおいてすでに定量的に減少していることから(Rao et al., 2010)、および抗体の非特異的相互作用に起因するいずれかの交差反応性を除外するために、本発明者らは、異なる商業的供給源からさらなる抗体(mAb6002)を得た。強い共局在が両方の標識で得られ、このため、H3K27me3染色の特異性が確証された。対照的に、WT網膜のONLにおいては、H3K27me3の濃いマークは認められず(図2C)、この観察所見は、成熟WT網膜に関して以前に説明されたものと一致している(Rao et al., 2010)。H3K27me3は、光受容体特異タンパク質であるロドプシン(Rho、図2D)を発現する細胞に共局在しており、亢進したH3K27me3マークが、これらの網膜ニューロンに存在することが証明された。
【0079】
H3K27me3の蓄積が、網膜変性の異なる齧歯類モデルにおいても生じるかどうかを検証するため、本発明者らは、Rd10、ロドプシンP23H、ロドプシンS334ter、ロドプシン−/−、およびFam161a−/−網膜におけるH3K27me3マークを検討した。Rd10マウスは、Rd1とほぼ類似する別の網膜変性モデルである(PDE6欠損)(Chang et al., 2007, Barhoum et al., 2008)。しかしながら、網膜細胞喪失の発症は遅延しているが、変性過程はさらに速い(本発明者らのコロニーにおいて)。このモデルにおいて、中心網膜における核濃縮細胞の数は、PN25にピークに達し、視細胞死の半数がPN13〜14にONLにおいて生じるRd1とは異なっている(Portera-Cailliau et al., 1994.)。興味深いことに、抗H3K27me3ポリクローナル抗体によるRd10網膜切片の染色は、H3K27me3マークの顕著な増大も示した(図3、下段のパネル)。さらに、本発明者らはまた、2つの他の常染色体優性RPのモデル、すなわち、それぞれP23HマウスおよびS334terラット(図3、それぞれ上段および中段のパネル)のONL、ならびに遅い変性速度を有するFam161−/−およびロドプシン−/−マウス(資料未記載)における、H3K27me3マークの強い存在を観察した。
【0080】
したがって、これらのデータは、H3K27me3の蓄積は、異なる種類の網膜変性に影響を及ぼす一般的な現象であることを明らかにしている。
【0081】
さらに、Rd1におけるH3K27me3マークの分布およびその基礎レベルの変化は、特別なものであるかどうか、またはHPTMホメオスタシスの一般的な調節緩和を明らかにするかどうかを決定するため、本発明者らは、それぞれサイレント遺伝子および活性遺伝子のTSSにおいて濃縮されていることでも知られるH3K9me2およびH3K4me3マークのパターンおよび分布を調べた。染色時、本発明者らは、WTとRd1のONLとの間のH3K9me2およびH3K4me3のいずれの発現差異も検出しなかった(図4AおよびB)。
【0082】
まとめると、これらの結果は、齧歯類の光受容体は、変性過程中に特異的なクロマチンリモデリングを受け、H3K27me3マークの調節緩和は、変性光受容体に特別なものであると思われることを強く明らかにしている。
【0083】
実施例2:網膜色素変性症に罹患しているヒト患者網膜におけるH3K27me3の蓄積
網膜障害におけるH3K27me3の過剰メチル化の関連性をよりよく与えるために、本発明者らは、この表現型は、ヒト網膜においても生じる可能性があるのではないかと考えた。網膜色素変性症に罹患している1例のヒトおよび1例の健常ドナーからの眼球を採取および処理し、それらの網膜におけるH3K27me3の存在を検討した。ヒトドナーサンプル(図5A)とは対照的に、H3K27me3過剰トリメチル化マークの存在は、最初に変性過程が開始した領域、および周辺付近の領域においても、両方のRD網膜の周辺部において著しく濃縮していた(図5B、資料未記載)。対照的に、中心網膜においては、H3K27me3マークはほとんど認められなかった。周辺部においてH3K7me3マークの数が多く、中心網膜に向かって希薄化していくというパターンは、網膜色素変性症に罹患している患者において一般に認められる細胞死のパターンと一致する。
【0084】
まとめると、これらのデータは、H3K27me3メチル化をRDにおける変性過程の特徴として見出すものであり、細胞死の機序と関連している可能性がある。
【0085】
実施例3:網膜変性マウスモデルにおけるH3K27me3の蓄積は、視細胞死の過程の遅い事象に先行する
Rd1網膜におけるH3K27me3の時間的な発現をよく理解するために、本発明者らは、疾患発症前のPN5から、30%未満の細胞のみがRd1網膜に残存するPN15までの、このマークの時間的経過を評価した。H3K27me3は、PN8においてすでに検出可能であり(図2E)、その時間的な発現パターンは、すでに説明した変性経過と密接に関連しており(Zencak et al., 2013)、増殖マーカーKi−67の発現に先行する(図2C、下段のパネルおよび2F)。H3K27me3を有する細胞の数は、50%超の細胞がRd1マウスにおいて変性を示した時点と一致するPN13まで、経時的に増加する。さらに、本発明者らは、H3K27me3シグナルは、視神経に隣接する領域における網膜の中心部で主に濃縮されており(PN8〜12)、疾患が進行するにつれ、周辺に向かって進むことに気づいた(図2G、データはPN12においてのみ示す)。重要なことに、また、Bmi1の欠失は網膜変性を遅延させることを明らかにした本発明者らの先行研究と一致して、H3K27me3陽性細胞の数は、Rd1;Bmi1−/−マウスにおいて有意に減少した(図2H)。それにもかかわらず、H3K27me3マークの存在は消失されておらず、このため、図2Bにおいて示唆されるように、残存するメチルトランスフェラーゼ活性は、BMI1の存在と非依存的であることが明らかにされている。興味深いことに、精製されたCrx−GFP陽性光受容体のウエスタンブロット解析によって、光受容体サンプルにおけるRd1中のポリコーム抑制コア成分EZH2タンパク質含量の増加が明らかにされている(図2I)。
【0086】
まとめると、これらのデータは、H3K27me3の蓄積は、EZH2のアップレギュレーションおよび活性の結果であり、そのパターンは、Rd1マウスにおける疾患重症度の進行と強く相関することを示唆している。
【0087】
光受容体における細胞死の経過は、別々の分子事象の複雑化によって組織化されている(Paquet-Durand et al., 2014)。Rd1桿体光受容体において、cGMPの蓄積は、視細胞死カスケードの非常に初期に一般に生じるが、末端dUTP鎖切断標識(TUNEL)は、細胞がそれらのDNA断片化段階を受けることを明らかにしている。H3K27me3が出現する初期の時間枠は、Pde6βヌルマウス網膜におけるcGMP細胞内増加の時間枠と一致するため(Farber & Lolley, 1974)、本発明者らは、H3K27me3が下流または上流で出現するかどうかを決定するために、cGMPおよびH3K27me3が同じ細胞内で共存かどうかを検討した。本発明者らは、cGMP染色が、PN12でのRd1網膜におけるH3K27me3と共局在している細胞はないことを観察し(図6A上段のパネル)、H3K27me3は、cGMPの蓄積後に出現し得ることが示唆された。H3K27me3陽性光受容体のうち、60%がTUNEL陽性でもあり、一方、TUNEL陽性集団の40%がH3K27me3と局在しており、このマウスモデルにおけるH3K27me3と細胞死との関係性が示唆された(図6A下段のパネル、図6b)。さらに、H3K27me3の65%が、PN12においてCDK4に対しても陽性であり(図6A中段のパネル、図6C)、このキナーゼの発現との強い関係性が示唆された。H3K27me3およびCDK4の経時的発現は、分析の時間的経過総てにわたり、CDK4陽性細胞の出現前に、H3K27me3の数が増加したことを実証した(図6C)。先行研究において、本発明者らは、ONLにおけるTUNEL陽性細胞の75%が、CDK4に対しても陽性であったことを観察した。
【0088】
まとめると、これらの結果は、細胞死の前のH3K27me3およびCDK4の連続的な出現を明らかにしており、光受容体の死の中間誘導因子としてのEZH2が関与する変性の段階的機序が示唆された。
【0089】
実施例4:EZH2の薬理学的阻害は、光受容体をin vivoでの変性から保護する
WTと比較したRd1マウスにおけるEZH2の基礎レベルの増加(図2I)および細胞同一性を制御する生物学的過程におけるその顕著な位置付けは、この特別なメチルトランスフェラーゼ酵素の活性は、変性過程の初期における新たな組の遺伝子を標的とするために増大し得ることを示している。in vivoにおけるH3K27me3のレベルを薬理学的に制御するために、本発明者らは、EZH1/EZH2阻害剤であるUNC1999を使用して、その触媒SETドメインを標的とした(Konze et al., 2013, Xu et al., 2015)。増殖性マウス胚線維芽細胞において、2.5μMのUNC1999は、DMSO対照と比較して、H3K27me3の内因性レベルを遮断するのに有効であり(図7A図7B)、これにより、in vivoでの検討のための有効量が示唆された。この結果に基づき、次いで、Rd1(PN8)網膜を2.5μMのUNC1999(注射後の眼において外挿された濃度)に曝露させ、注射後4日目におけるTUNEL染色時のH3K27me3マークおよび細胞死の程度をモニタリングすることによって、処置の有効性を評価した。過剰なH3K27me3シグナルが、DMSO処置眼において保たれたが、このようなシグナルは、UNC1999注射網膜のONLにおいては強く減少した(75%)(図7C図7E)。興味深いことに、TUNEL陽性細胞の数は、DMSO処置眼と比較して、対応する領域において実質的に70%減少している(図7D図7F)。
【0090】
Fam161a KOマウスは、6ヵ月時の光受容体のおよそ80%の喪失の結果生じた、遅い網膜変性を有するRPの別の疾患モデルである。Rd1と比較して、Fam161a−/−は、遅い変性過程を模倣する。同様に、Rd1マウスに対して、本発明者らは、単一用量のUNC1999を、2ヵ月齢のFam161a−/−マウスに投与した。しかしながら、実験は4回目の注射まで毎週繰り返し、動物を4日齢後に屠殺した。動物を1週後に屠殺し、網膜切片を、視細胞の生存および背腹の軸に沿ったH3K27me3の存在に関して分析した(図7G図7H)。本発明者らのデータは、本発明者らが定量した腹側ONLにおける列の数の有意な保存を示した。背側区画において有意差は認められなかった。本発明者らは、注射側と非注射側との間で、H3K27me3過剰トリメチル化のレベルに関して統計学的差を認めなかったが、これはおそらく、注射の最終日および屠殺時間を含めた時間に起因する、化合物の有効性の喪失が原因である。
【0091】
試験したUNC1999用量(10 M)が、網膜機能に対する毒性作用を有するかどうかを試験するため、対照(ビヒクル、DMSOを注射)およびUNC1999処置C57/Bl6健常マウスの網膜活性を、硝子体内注射の前および1週後にERGによって記録した(図12)。暗順応条件下において、DMSO処置群のb波最大振幅ベースラインは、注射の前に、UNC1999群よりわずかに高かった。両群とも、注射の1週後に同様の応答を示し、ベースラインに関する有意差は認められなかった(図12A)。同様の観察を明順応観察において行ったが、3cda/s.m刺激は例外であり、それに対しては、DMSOおよびUNC1999処置動物の両方とも、減少した応答を示した(図12B)。フリッカー条件下において、応答の減少が、5Hzにおいて両処置群に生じ、10Hzではより少ない程度で生じ、15Hzでは全群間に差は認められなかった。全体的な結果は、注射手技は、一部の桿体をごく部分的に変化させるが、錐体に対しては実質的な効果を示さなかったことを示唆している。
【0092】
まとめると、これらのデータは、in vivoにおけるEZH2活性の阻害は、網膜変性のマウスモデルにおいて、TUNEL陽性細胞の数を減少させ、視細胞変性を遅延させることに寄与することを強く示唆している。
【0093】
実施例5:ヒト光受容体の死の過程における細胞死経路の活性化および網膜変性におけるEZH2活性の証拠
本発明者らは、どの死経路が活性化されるかを検討するため、ヒト網膜剥離(RD)のin vitroモデルを開発した。このモデルは、RPE細胞を有する網膜と比較して、網膜色素上皮(RPE)を有さないヒト網膜剥離片の培養物からなる。
【0094】
光受容体層の数:
全4個の剥離片において、光受容体層の数は、対照群において極めて安定していたが、RD群において経時的にわずかな減少が認められた。この群では、5DIVおよび7DIVにおいて、光受容体の列の数が、1DIVと比較しておよそ25%減少した(P<0.04)。全時点において分析した群間差は、統計学的に有意ではなかったが、1DIV後(図8A〜B、表3)は例外であり、RD群は、実験の最初において多数の光受容体を示した。このことは、同じドナーからの網膜片が、2群間で分布していたが、ある程度の不均一性が、同じ組織サンプル中に存在することを明らかにしている。それにもかかわらず、各群は、同程度の数の光受容体の列を有する網膜を含んでいた(図8中のSEMバー参照)。このため、同じ群における光受容体数の進化が、網膜の健康をよりよく明らかにする。RD網膜は、光受容体の列の有意な減少を示したが、対照群はそうではなかったことに留意されたい(表4)。
【0095】
TUNEL染色;細胞死マーカー:
様々な死後の遅延(12h、14h、23hおよび24h)ならびに組織の解剖手技にもかかわらず、TUNEL陽性細胞が、対照群において低レベルで実験の最初から存在した。TUNEL陽性細胞の数は、3DIVにおいて有意に増加し、3および7DIVにおいてピークに達した。TUNEL陽性細胞の10倍超の増加が、RD群と対照群との間に3DIVにおいて認められた(P=0.0014)(図9ならびに表3および5)。興味深いことに、細胞死のこのピークは、in vivoにおける裂孔原性網膜剥離に関して記載されたものと一致する(Hisatomi et al., 2001, Arroyo et al., 2005)。TUNEL陽性細胞の有意な30%の増加は、3DIV〜7DIVの間で生じ続け、5日目に高い変動を示し、二相性の細胞死過程が示唆された(図8〜9、表5)。次いで、本発明者らは、細胞死過程の潜在的な行為者を検討した。
【0096】
正準アポトーシス経路は、ヒトRD群において活性化されない:
カスパーゼ3は、アポトーシスの最終的なエフェクターであり、RPEを有するおよび有さない網膜におけるアポトーシス事象の程度を明らかにするために選択された。意外にも、ONLにおける非常にまれな細胞が、両群に存在しており、アポトーシスのピークは同定されなかった(資料未記載)。
【0097】
アポトーシス誘導因子(AIF)染色:
AIFは、カスパーゼ非依存的アポトーシス誘導因子を表す。AIFは、通常、ミトコンドリア膜に局在する。細胞死の間、AIFが放出され、次いで、核に移動する(レビューおよび網膜に関しては、Hisatomi et al., 2001, Hisatomi et al., 2008参照)。本発明者らは、AIFが1DIVにおいてONLに存在し、RD群において3DIVに顕著なピークを示したことを観察した。AIF陽性細胞のピークは、3DIVに認められたTUNEL陽性細胞のピークと類似していた(図8、表3)。増加は、対照群と比較して約14倍であった(p=0.02)。5DIVおよび7DIVにおいて、目に見えるAIF陽性細胞はほとんど存在しなかった。
【0098】
細胞周期マーカーCDK4は、RPEの非存在下で、変性過程中に中程度に発現する:
1DIV後に、対照群の光受容体の核においてCDK4は認められず、3〜7DIVの間には、ごく少数の細胞のみが、このタンパク質を発現した。RD群において、1DIVからCDK4陽性細胞が存在し(図8、表3および表6)、それらの数は、その後中程度に増加し、3〜7DIVの間に安定を維持した。RDを模倣する剥離片の群におけるCDK4陽性細胞の数の平均は、全時点において3.07±2.31であったが、対照群においては、この数は1.25±1.38であった。CDK4陽性細胞の数は、TUNEL陽性細胞と比較してかなり少ないことに留意されたい(図8)。2群間の比較は、5DIVを除き、各時点で統計学的差を示した(図8、表3)。
【0099】
H3K27me3マークのエピジェネティック修飾は、変性過程の後期で生じる:
最近の研究では、網膜抽出物におけるH3K27me3マークレベルの小さな増大を伴った、網膜変性の経過中のエピジェネティック修飾を説明した(Zheng et al., 2018)。本発明者らはまた、エピジェネティック修飾が、網膜色素変性症の一部の齧歯類モデルにおいてヒストンレベルで生じることを観察し(未発表データ)、本発明者らは、遺伝子抑制を調節することで知られるH3K27me3マークを検討した(Wahlin et al., 2013)。対照群において、ONLにおけるH3K27me3陽性細胞の数は、5DIVまで低値を維持し、7DIVにおいてわずかな上昇を示したが、このマークの顕著な増大が、RD群において5DIVに認められ、7DIVに上昇した状態を維持したが、部分的に減少した(図8図9図10、表3および表7)。H3K27me3陽性細胞の上昇した数は、3DIVにおけるTUNEL陽性細胞のピーク後に出現しているが、その後の瀕死の光受容体の数と匹敵していたことに留意されたい。本発明者らの施設のアイバンクの機会を捉え、本発明者らは、網膜周辺部の局所網膜剥離を引き起こすぶどう膜黒色腫に罹患している患者からの眼球を分析した。ONLのより薄い部分において、本発明者らは、H3K27me3マークに対して陽性のいくつかの光受容体を観察したが、腫瘍位置から遠い中心部の網膜は、このマークの均一な別々の標識を示した(図11)。
【0100】
これらのデータは、EZH2は、長期網膜剥離中の光受容体の死に関与していることを示唆している。
【0101】
結論として、AIF発現は、細胞死の第1のピークと一致しているが、H3K27me3マークは、細胞死の第2の上昇前に増加し、このことにより、光受容体の死は、網膜剥離後の異なる連続的な経路により誘導されることが示唆された。
【0102】
このin vitroモデルは、臨床的関連を有し得る神経保護薬の同定を可能にするはずであり、H3K27me3は、網膜変性の後期において重要な役割を果たし得ることを示している。
【0103】
実施例の結論:
まとめると、これらのデータは、マウスおよびヒト網膜におけるいくつかの網膜病態において、H3K27me3マークは、光受容体の死の事象と相関しており、UNC1999によるEZH1/2活性の阻害は、Rd1マウスにおける網膜変性を顕著に遅延させ、このため、異なるファミリーの網膜ジストロフィーの新たな治療法を提供することを実証している。
【0104】
他の実施形態
本開示は、その説明とともに記載されているが、前述の説明は、例示することを意図したものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。他の側面、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲内にある。
【0105】
例えば、当業者に明らかであるように、本開示は、多数のEZH1またはEZH2阻害剤が潜在的な解決策として説明されているが、他の病態に対して現在研究中の他のEZH2阻害剤(大部分が癌の治療用−レビューに関しては、Tanaka et al., 2015およびStazi et al. 2017参照;いくつかのEZH2阻害剤が、前臨床および臨床の状況下で最近評価されている)も、眼障害の治療に適用され得る。
【0106】
例えば、Epizyme, Inc.、米国は、癌を治療するためのヒトEZH2の阻害剤を開発しており、例えば、置換6,5−縮合二環式ヘテロアリール化合物、置換ベンゼン化合物、N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−l,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−5−(エチル(テトラヒドロ−2h−ピラン−4−イル)アミノ)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[l,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド臭化水素酸塩、1,4−ピリドン二環式ヘテロアリール化合物、塩酸塩の形態が挙げられる(例えば、国際出願WO2012/034132、WO2012/118812、WO2012/142513、WO2012/142504、WO2013155464、WO2013/155317、WO2014/062732、WO2014/062733、WO2014/100665、WO2014/100646、WO2014/172044、WO2015/010078、WO2015/010049、WO2015/057859、WO2015/200650、米国特許第8,691,507号、第9,376,422号、第8,410,088号、第8,765,732号、第9,090,562号、第9,549,931号、第9,855,275号、第9,006,242号、第9,701,666号、第9,624,205号)。
GlaxoSmithKline plc、英国も、癌を治療するためのヒトEZH2の阻害剤を開発しており、例えば、アザインダゾール、インダゾール、インドール誘導体、置換ベンズアミド化合物が挙げられる(例えば、国際出願WO2012/005805、WO2011/140325、WO2011/140324、WO2012/075080、WO2013/039988、WO2013/067296、WO2013/173441、WO2014/107277、WO2014/177982、WO2014/195919、WO2015/004618、WO2015/132765、WO2016/066697、WO2017/191545、米国特許第8,637,509号、第8,846,935号、第9,018,382号、第8,536,179号、第8,975,291号、第9,114,141号、第9,402,836号、第9,649,307号、第8,765,792号、第9,073,924号、第9,24,2962号、第9,446,041号、第9,562,041号、第9,956,210号、第9,382,234号、第9,505,745号、第9,790,212号、第9,556,157号)。
【0107】
Constellation Pharmaceuticals,Inc.、米国も、癌を治療するためのヒトEZH2の阻害剤を開発しており、例えば、インドール誘導体、例えば、インドールまたはピロール−ピリジン系6−メチルピリドン含有化合物、6−メチルピリドン含有化合物およびピリジン含有誘導体が挙げられる(例えば、国際出願WO2012068589、WO2013/120104、WO2014/124418、WO2014/151142、WO2015/023915、WO2016/130396、WO2018/075598、米国特許第9,085,583号、第9,371,331号、第9,469,646号、第9,980,952号、第9,745,305号、第9,969,716号)。
【0108】
Pfizer Inc.、米国も、癌を治療するためのヒトEZH2の阻害剤を開発しており、例えば、ベンズアミドおよびヘテロベンズアミド化合物、アリールおよびヘテロアリール縮合ラクタム、置換ジヒドロイソキノリン化合物が挙げられる(例えば、国際出願WO2014/049488、WO2014/097041、WO2015/193768、WO2015/193765、米国特許第9,040,515号、第9,481,666号)。
【0109】
Piramal Group,Ltd.、インドも、癌を治療するためのヒトEZH2の阻害剤を開発しており、例えば、置換二環式化合物、複素環式化合物が挙げられる(例えば、国際出願WO2014/155301、WO2015/104677、WO2015/110999)。
【0110】
Everfront Biotech,Co.,Ltd.、台湾も、癌を治療するためのヒトEZH2の阻害剤を開発しており、例えば、ブチリデンフタリドが挙げられる(例えば、国際出願WO2017/028602、米国特許出願第2017/049746号)。
【0111】
Bristol Myers Squibb Inc.、米国も、過剰増殖性、炎症性、感染性、および免疫調節性の障害および疾患を治療するためのヒトEZH2の阻害剤を開発している(例えば、国際出願WO2015/077193、WO2015/077194、米国特許第9,738,630号、第9,822,103号)。
【0112】
Eli Lilly and Company Inc.、米国も、癌を治療するためのヒトEZH2の阻害剤を開発している(例えば、国際出願WO2016/089804、WO2017/035060、米国特許第9,527,837号、第9,718,838号)。
【0113】
さらに、学術研究者も、大部分がこれもまた癌を治療するための、EZH2阻害剤を開示している。
【0114】
例えば、Yantai University、中国は、癌などの疾患を予防および治療するための合成化合物を開発している。このような化合物は、このような疾患に関与する酵素、例えば、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2を阻害するために使用することができる(例えば、国際出願WO2014/048313、米国特許第9,518,038号、中国出願第103690531号、第103690529号、第103690528号、第103690530号、第103845324号、第103845325号、第103110621号)。
【0115】
Dana Farber Cancer Institute、米国も、癌を治療するためのヒトEZH2の阻害剤を開発しており、例えば、ピラゾロ−ピリジン系およびインドール系化合物が挙げられる(例えば、国際出願WO2014/190035、WO2016/073956、WO2017/184999およびUniversity of Minnesota、米国と共同出願されたWO2016/073903)。
【0116】
Agency for Science, Technology and Research、シンガポールも、癌を治療するためのタンパク質リシンメチルトランスフェラーゼなどのメチルトランスフェラーゼの阻害剤、およびエピジェネティック薬、例えば、キノリンおよび5,6,7,8−テトラヒドロアクリジン誘導体を開発している(例えば、国際出願WO2017/061957)。
【0117】
本明細書に記載の総ての刊行物、特許、および特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、または特許出願が、具体的および個々に、引用することにより本明細書の一部とされると示される場合と同じ程度まで、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0118】
参考文献
Arroyo JG, Yang L, Bula D, Chen DF. Photoreceptor apoptosis in human retinal detachment. Am J Ophthalmol. 2005 Apr;139(4):605-10.

Arrowsmith CH, Audia JE, Austin C, Baell J, Bennett J, Blagg J, Bountra C, Brennan PE, Brown PJ, Bunnage ME, Buser-Doepner C, Campbell RM, Carter AJ, Cohen P, Copeland RA, Cravatt B, Dahlin JL, Dhanak D, Edwards AM, Frederiksen M, Frye SV, Gray N, Grimshaw CE, Hepworth D, Howe T, Huber KV, Jin J, Knapp S, Kotz JD, Kruger RG, Lowe D, Mader MM, Marsden B, Mueller-Fahrnow A, Muller S, O'Hagan RC, Overington JP, Owen DR, Rosenberg SH, Roth B, Ross R, Schapira M, Schreiber SL, Shoichet B, Sundstrom M, Superti-Furga G, Taunton J, Toledo-Sherman L, Walpole C, Walters MA, Willson TM, Workman P, Young RN, Zuercher WJ. The promise and peril of chemical probes. Nat Chem Biol. 2015 Aug;11(8):536-41.

Barhoum R, Martinez-Navarrete G, Corrochano S, Germain F, Fernandez-Sanchez L, de la Rosa EJ, de la Villa P, Cuenca N. Functional and structural modifications during retinal degeneration in the rd10 mouse. Neuroscience. 2008 Aug 26;155(3):698-713.

Bemelmans AP, Kostic C, Crippa SV, Hauswirth WW, Lem J, Munier FL, Seeliger MW, Wenzel A, Arsenijevic Y. Lentiviral gene transfer of RPE65 rescues survival and function of cones in a mouse model of Leber congenital amaurosis. PLoS Med. 2006 Oct;3(10):e347.
Bracken AP, Dietrich N, Pasini D, Hansen KH, Helin K. Genome-wide mapping of Polycomb target genes unravels their roles in cell fate transitions. Genes Dev. 2006 May 1;20(9):1123-36.

Cao, R., Wang, L., Wang, H., Xia, L., Erdjument-Bromage, H., Tempst, P., Jones, R.S., and Zhang, Y. Role of histone H3 lysine 27 methylation in Polycomb-group silencing. Science. 2002 Nov 1;298(5595):1039-43.

Chang B, Hawes NL, Pardue MT, German AM, Hurd RE, Davisson MT, Nusinowitz S, Rengarajan K, Boyd AP, Sidney SS, Phillips MJ, Stewart RE, Chaudhury R, Nickerson JM, Heckenlively JR, Boatright JH. Two mouse retinal degenerations caused by missense mutations in the beta-subunit of rod cGMP phosphodiesterase gene. Vision Res. 2007 Mar;47(5):624-33.

Chase A, Cross NC. Aberrations of EZH2 in cancer. Clin Cancer Res. 2011 May 1;17(9):2613-8.
Czermin B, Melfi R, McCabe D, Seitz V, Imhof A, Pirrotta V. Drosophila enhancer of Zeste/ESC complexes have a histone H3 methyltransferase activity that marks chromosomal Polycomb sites. Cell. 2002 Oct 18;111(2):185-96.

Cideciyan AV, Jacobson SG, Beltran WA, Sumaroka A, Swider M, Iwabe S, Roman AJ, Olivares MB, Schwartz SB, Komaromy AM, Hauswirth WW, Aguirre GD. Human retinal gene therapy for Leber congenital amaurosis shows advancing retinal degeneration despite enduring visual improvement. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Feb 5;110(6):E517-25.

Farber DB, Lolley RN Cyclic guanosine monophosphate: elevation in degenerating photoreceptor cells of the C3H mouse retina. Science. 1974 Nov 1;186(4162):449-51.

Gekeler K, Bartz-Schmidt KU, Sachs H, MacLaren RE, Stingl K, Zrenner E, Gekeler F. Implantation, removal and replacement of subretinal electronic implants for restoration of vision in patients with retinitis pigmentosa. Curr Opin Ophthalmol. 2018 May;29(3):239-247.

Hisatomi T, Sakamoto T, Murata T, Yamanaka I, Oshima Y, Hata Y, Ishibashi T, Inomata H, Susin SA, Kroemer G. Relocalization of apoptosis-inducing factor in photoreceptor apoptosis induced by retinal detachment in vivo. Am J Pathol. 2001 Apr;158(4):1271-8.

Hisatomi T, Nakazawa T, Noda K, Almulki L, Miyahara S, Nakao S, Ito Y, She H, Kohno R, Michaud N, Ishibashi T, Hafezi-Moghadam A, Badley AD, Kroemer G, Miller JW. HIV protease inhibitors provide neuroprotection through inhibition of mitochondrial apoptosis in mice. J Clin Invest. 2008 Jun;118(6):2025-38.

Gimenez E, Montoliu L. A simple polymerase chain reaction assay for genotyping the retinal degeneration mutation (Pdeb(rd1)) in FVB/N-derived transgenic mice. Lab Anim. 2001 Apr;35(2):153-6.

Holoch D, Margueron R. Chapter 9 - Polycomb Repressive Complex 2 Structure and Function. Polycomb Group Proteins, 2017, p191-224

Jacobson SG, Cideciyan AV, Ratnakaram R, Heon E, Schwartz SB, Roman AJ, Peden MC, Aleman TS, Boye SL, Sumaroka A, Conlon TJ, Calcedo R, Pang JJ, Erger KE, Olivares MB, Mullins CL, Swider M, Kaushal S, Feuer WJ, Iannaccone A, Fishman GA, Stone EM, Byrne BJ, Hauswirth WW. Gene therapy for leber congenital amaurosis caused by RPE65 mutations: safety and efficacy in 15 children and adults followed up to 3 years. Arch Ophthalmol. 2012 Jan;130(1):9-24.

Konze KD, Ma A, Li F, Barsyte-Lovejoy D, Parton T, Macnevin CJ, Liu F, Gao C, Huang XP, Kuznetsova E, Rougie M, Jiang A, Pattenden SG, Norris JL, James LI, Roth BL, Brown PJ, Frye SV, Arrowsmith CH, Hahn KM, Wang GG, Vedadi M, Jin J. An orally bioavailable chemical probe of the Lysine Methyltransferases EZH2 and EZH1. ACS Chem Biol. 2013;8(6):1324-34.

Kuzmichev A, Nishioka K, Erdjument-Bromage H, Tempst P, Reinberg D. Histone methyltransferase activity associated with a human multiprotein complex containing the Enhancer of Zeste protein. Genes Dev. 2002 Nov 15;16(22):2893-905.

Leveillard T, Mohand-Said S, Lorentz O, Hicks D, Fintz AC, Clerin E, Simonutti M, Forster V, Cavusoglu N, Chalmel F, Dolle P, Poch O, Lambrou G, Sahel JA. Identification and characterization of rod-derived cone viability factor. Nat Genet. 2004 Jul;36(7):755-9.
Muller J, Hart CM, Francis NJ, Vargas ML, Sengupta A, Wild B, Miller EL, O'Connor MB, Kingston RE, Simon JA. Histone methyltransferase activity of a Drosophila Polycomb group repressor complex. Cell. 2002 Oct 18;111(2):197-208.

Plath K, Fang J, Mlynarczyk-Evans SK, Cao R, Worringer KA, Wang H, de la Cruz CC, Otte AP, Panning B, Zhang Y. Role of histone H3 lysine 27 methylation in X inactivation. Science. 2003 Apr 4;300(5616):131-5.

Paquet-Durand F, Sahaboglu A, Dietter J, Paquet-Durand O, Hitzmann B, Ueffing M, Ekstrom PA. How long does a photoreceptor cell take to die? Implications for the causative cell death mechanisms. Adv Exp Med Biol. 2014;801:575-81.

Portera-Cailliau C, Sung CH, Nathans J, Adler R. Apoptotic photoreceptor cell death in mouse models of retinitis pigmentosa. Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1; 91(3): 974-978.

Rao RC, Tchedre KT, Malik MT, Coleman N, Fang Y, Marquez VE, Chen DF. Dynamic patterns of histone lysine methylation in the developing retina. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2010 Dec;51(12):6784-92.

Smith AJ, Bainbridge JW, Ali RR. Gene supplementation therapy for recessive forms of inherited retinal dystrophies. Gene Ther. 2012 Feb;19(2):154-61.
Stazi G, Zwergel C, Mai A, Valente S. EZH2 inhibitors: a patent review (2014-2016). Expert Opin Ther Pat. 2017 Jul;27(7):797-813.

Tanaka M, Roberts JM, Qi J, Bradner JE. Inhibitors of emerging epigenetic targets for cancer therapy: a patent review (2010-2014). Pharm Pat Anal. 2015;4(4):261-84.

Wahlin KJ, Enke RA, Fuller JA, Kalesnykas G, Zack DJ, Merbs SL. Epigenetics and cell death: DNA hypermethylation in programmed retinal cell death. PLoS One. 2013 Nov 11;8(11):e79140.
Xu B, On DM, Ma A, Parton T, Konze KD, Pattenden SG, Allison DF, Cai L, Rockowitz S, Liu S, Liu Y, Li F, Vedadi M, Frye SV, Garcia BA, Zheng D, Jin J, Wang GG. Selective inhibition of EZH2 and EZH1 enzymatic activity by a small molecule suppresses MLL-rearranged leukemia. Blood. 2015 Jan 8;125(2):346-57.

Yoo KH, Hennighausen L. EZH2 Methyltransferase and H3K27 Methylation in Breast Cancer. Int J Biol Sci. 2012; 8(1): 59-65.

Yuzawa M, Fujita K, Tanaka E, Wang EC. Assessing quality of life in the treatment of patients with age-related macular degeneration: clinical research findings and recommendations for clinical practice. Clin Ophthalmol. 2013;7:1325-32.

Zencak D, Schouwey K, Chen D, Ekstrom P, Tanger E, Bremner R, van Lohuizen M, Arsenijevic Y. Retinal degeneration depends on Bmi1 function and reactivation of cell cycle proteins. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Feb 12;110(7):E593-601.

Zheng S, Xiao L, Liu Y, Wang Y, Cheng L, Zhang J, Yan N, Chen D. DZNep inhibits H3K27me3 deposition and delays retinal degeneration in the rd1 mice. Cell Death Dis. 2018 Feb 22;9(3):310.
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
2021531340000001.app
【国際調査報告】