(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-531394(P2021-531394A)
(43)【公表日】2021年11月18日
(54)【発明の名称】抗菌プラスチック、それを含む呼吸装置のガス通路およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20211022BHJP
A61M 16/00 20060101ALI20211022BHJP
A61L 29/04 20060101ALI20211022BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20211022BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20211022BHJP
【FI】
C08L101/00
A61M16/00 380
A61L29/04 200
A61L29/16
C08L71/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2021-504552(P2021-504552)
(86)(22)【出願日】2018年4月9日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月9日
(86)【国際出願番号】CN2018082327
(87)【国際公開番号】WO2019195981
(87)【国際公開日】20191017
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520393624
【氏名又は名称】永勝医療製品有限公司
【氏名又は名称原語表記】VINCENT MEDICAL MANUFACTURING CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孟 文君
(72)【発明者】
【氏名】郭 秀娟
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲ユエ▼穎
(72)【発明者】
【氏名】張 明▲ギュ▼
(72)【発明者】
【氏名】符 国富
(72)【発明者】
【氏名】朱 青修
【テーマコード(参考)】
4C081
4J002
【Fターム(参考)】
4C081AC07
4C081BA14
4C081CA021
4C081CA051
4C081CA081
4C081CA181
4C081CE01
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4C081EA02
4J002BB03W
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4J002CH02Y
4J002FD18Y
4J002GB01
(57)【要約】
呼吸装置のガス通路のための抗菌プラスチックは、生物付着防止化合物と、基礎プラスチックとを含む。前記生物付着防止化合物は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオール誘導体およびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリエーテル、ポリ(エチレングリコール)エーテル、ポリソルベートおよびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノラウレート、ポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノオレエート、ポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレエート、セテアレスおよびこれらの組合せから選ばれていてもよい。前記基礎プラスチックは、低密度ポリエチレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリプロピレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリオレフィンエラストマーポリマーの混合物およびポリ塩化ビニルポリマーから選ばれる。このような抗菌プラスチックを製造するための方法、該抗菌プラスチックを含む呼吸装置のガス通路コンポーネント、および呼吸装置についても説明する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオール誘導体およびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリエーテル、ポリ(エチレングリコール)エーテル、ポリソルベートおよびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノラウレート、ポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノオレエート、ポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレエート、セテアレスおよびこれらの組合せから選ばれていてもよい、生物付着防止化合物(A)と、
低密度ポリエチレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリプロピレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリオレフィンエラストマーポリマーの混合物及びポリ塩化ビニルポリマーから選ばれる、基礎プラスチック(B)と、を含む、呼吸装置のガス通路のための抗菌プラスチック。
【請求項2】
前記基礎プラスチックは、混合物であり、
前記生物付着防止化合物と中間プラスチックとが混合されてマスターバッチを形成し、
前記マスターバッチと基礎プラスチックとが混合されて抗菌プラスチックを形成する、請求項1に記載の抗菌プラスチック。
【請求項3】
中間プラスチックは、基礎プラスチックと同じポリマーセグメントを含まない、請求項2に記載の抗菌プラスチック。
【請求項4】
前記中間プラスチックは、ランダムターポリマー、またはエチレンモノマー、アクリレートモノマー、無水マレイン酸モノマーおよびこれらの組合せから選ばれるモノマーを含むランダムターポリマー、またはエチレンモノマー、アクリレートモノマーおよび無水マレイン酸モノマーを含むランダムターポリマー、またはエチレンモノマー、アクリレートモノマーおよび無水マレイン酸モノマーを含むポリマーバックボーンを含むランダムターポリマーを含む、請求項2または3に記載の抗菌プラスチック。
【請求項5】
抗菌プラスチックに対するマスターバッチの重量百分率が、約0.001%〜約50%、または約0.001%〜約20%、または約0.01%〜約15%である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック。
【請求項6】
中間プラスチックは、基礎プラスチックと相溶性のあるポリマーセグメントを少なくとも1つ含む、請求項2〜5のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック。
【請求項7】
25%、または約0.1%〜約20%、または約0.5%〜約15%である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック。
【請求項8】
前記基礎プラスチックは、ポリ塩化ビニルポリマーであり、
前記生物付着防止化合物と前記ポリ塩化ビニルポリマーとが混合されて前記抗菌プラスチックを形成する、請求項1に記載の抗菌プラスチック。
【請求項9】
前記抗菌プラスチックに対する前記生物付着防止化合物の重量百分率が、約0.001%〜約50%、または約0.001%〜約20%、または約0.01%〜約15%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック。
【請求項10】
前記抗菌プラスチックに対する前記基礎プラスチックの重量百分率が、約50%〜約99.999%、または約80%〜約99.999%、または約85%〜約99.99%である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック。
【請求項11】
前記抗菌プラスチックは、少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%の抗菌率を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック。
【請求項12】
抗菌性の貯蔵寿命は、約1年以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック。
【請求項13】
抗菌プラスチックは、ISO 10993試験、ISO 18562試験およびこれらの組合せによれば、生体適合性を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック。
【請求項14】
前記抗菌プラスチックは、物理的性質を有し、
前記基礎プラスチックは、同様な物理的性質を有し、前記抗菌プラスチックの物理的性質と前記基礎プラスチックの同様な物理的性質との差が、約±20%、または±10%、または±5%以下である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗菌プラスチックの製造方法であって、
前記基礎プラスチックと前記生物付着防止化合物を押出機で混合させる、製造方法。
【請求項16】
ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオール誘導体およびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリエーテル、ポリ(エチレングリコール)エーテル、ポリソルベートおよびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノラウレート、ポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノオレエート、ポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレエート、セテアレスおよびこれらの組合せから選ばれていてもよい、生物付着防止化合物を提供する工程(A)と、
低密度ポリエチレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリプロピレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリオレフィンエラストマーポリマーの混合物及びポリ塩化ビニルポリマーから選ばれる、基礎プラスチックを提供する工程(B)と、
生物付着防止化合物と基礎プラスチックを混合させる工程(C)と、を含む、呼吸装置のガス通路のための抗菌プラスチックの製造方法。
【請求項17】
前記基礎プラスチックは、低密度ポリエチレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリプロピレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリオレフィンエラストマーポリマーの混合物を含み、
前記製造方法は、
ランダムターポリマー、またはエチレンモノマー、アクリレートモノマー、無水マレイン酸モノマーおよびこれらの組合せから選ばれるモノマーを含むランダムターポリマー、またはエチレンモノマー、アクリレートモノマーおよび無水マレイン酸モノマーを含むランダムターポリマー、またはエチレンモノマー、アクリレートモノマーおよび無水マレイン酸モノマーを含むポリマーバックボーンを含むランダムターポリマーを含んでいてもよい中間プラスチックを提供する工程(D)と、
生物付着防止化合物と中間プラスチックとを混合してマスターバッチを形成する工程(E)と、
マスターバッチと基礎プラスチックとを混合して抗菌プラスチックを形成する工程(F)と、をさらに含む、請求項16に記載の抗菌プラスチックの製造方法。
【請求項18】
前記基礎プラスチックは、ポリ塩化ビニルを含み、
前記生物付着防止化合物と前記基礎プラスチックとを直接混合して前記抗菌プラスチックを形成する、請求項16に記載の抗菌プラスチックの製造方法。
【請求項19】
前記混合工程は、押出機、モールドおよびこれらの組合せで行われ、或いは押出機で行われる、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック、または請求項15〜19のいずれか一項に記載の製造方法により製造されるプラスチックを含む、呼吸装置のガス通路コンポーネント。
【請求項21】
請求項20に記載の呼吸装置のガス通路コンポーネントを製造するための方法であって、
前記呼吸装置のガス通路コンポーネントを熱成形する工程をさらに含み、
又は、熱成形工程は、成形、押し出し、射出、圧縮およびこれらの組合せから選ばれるプロセス、または成形、押し出しおよびこれらの組合せから選ばれるプロセスを含む、方法。
【請求項22】
請求項20に記載の呼吸装置のガス通路コンポーネントを含む、呼吸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、プラスチックを製造する方法、呼吸装置のガス通路、およびプラスチックを含む呼吸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックから製造される医用呼吸装置、特に呼吸管コンポーネントは、必要に応じて、押し出し(特に、管の場合)、射出成形、真空成形などの、様々な方法によって製造されることができる。
【0003】
プラスチックに埋め込まれたおよび/または塗布された殺菌・殺微生物材料を含む抗菌および/または抗微生物プラスチックがある。これらのプラスチックは、プラスチックに接触する任意の細菌、微生物などを死滅させることで、感染、伝播などの可能性を減らすことを目的とする。しかしながら、抗菌および/または抗微生物材料に関する規制は、国によって大きく異なるため、このような抗菌および/または抗微生物プラスチックは、医療機器に用いられるために登録することが困難であり得ることが分かっている。他の問題は、さらに、抗菌および/または抗微生物効果がどのぐらい持続可能であるか、ナノ銀粒子およびイオンなどの活性物質の浸出が人体に対して有害であるか、溶剤または他の物質が活性物質に対して影響を及ぼすかなどに関する。また、耐性菌および多剤耐性菌の増加につながる抗生物質の乱用についての懸念が高まっている。
【0004】
表面に抗菌性を有させる抗微生物剤のコーティングまたはリリースに関する特許及び刊行物が多い。「Antifouling Coatings: Recent Developments in the Design of Surfaces That Prevent Fouling by Proteins、 Bacteria、 and Marine Organisms」、Bannerjeeなど、Adv.Mater.、 第23巻、p690〜718(Wiley、2011);Antwerpの公開日が2005年1月13日のUS2005/0008671A1;2009年6月18日に公開され、Pabst Patent Group LLPに譲渡されたO’ShaughnesseyらのUS2009/0155335A1;安徽美騰特殊ケーブル材料有限公司(Anhui Meiting Special Electric Cable Materials Co.,Ltd.,)の、公開日が2015年8月19日のCN104847971A;および、2000年1月26日に公開され、株式会社東レに譲渡されたTanahashiのCN1242781A。しかしながら、従来技術において、基礎プラスチック(basic plastic)のみにコーティングが形成され、基礎プラスチックから浸出しやすいなどの問題を引き起こす恐れがある。
【0005】
他の技術として、ポリマーをプラスチックにグラフトし、典型的には、側鎖にグラフトすることは、たとえば、Zhangらの公開日が2011年12月15日のUS2011/0305898A1、およびWangらの公開日が2011年5月26日のUS2011/0124772A1に開示されている。
【0006】
プラスチックの他の既存のタイプは、通常、細菌、微生物などが滑落しやすい表面を提供し得る生物付着(バイオファウリング)防止化合物を含む抗菌(germ−repellent)プラスチックである。これらの材料は、通常、細菌の付着の可能性を減らす表面を提供して、コロニーの成長、生物膜の形成などの可能性を減少させることを目的とする。これらの抗菌プラスチックは、たとえば、中間プラスチックと混合してマスターバッチを形成した後、基礎プラスチックと混合することができる抗菌材料を含む。これは、プ
ラスチックの独特の内蔵抗菌機能(built−in germ−repellent feature)である。たとえば、2017年5月11日に公開され、香港ナノ・先端材料研究院有限公司(Nano and Advanced Materials Institute, Ltd., of Hong Kong.)に譲渡された、LauらのUS2017/0129139A1をご参照ください。しかし、この技術では、基礎プラスチックと同じまたは基本的に同じバックボーンを必要とし得る。
【0007】
しかし、呼吸管、呼吸装置などの医用呼吸装置は、細菌および微生物の汚染、生物膜の形成などを特に起こしやすいことが分かっている。これは、その中の空気が、いつでも暖かく、湿潤で、および/または酸素ガス含有量が高いものであるためである。また、ベンチレーターまたは患者からのガスに伝染性微生物が含まれている可能性があり、これらの微生物は、さらに他の領域、表面、患者などに拡散および/または付着する可能性もあることが分かっている。また、従来の抗菌プラスチックは、例えば、マスターバッチに基礎プラスチックと同じ基礎ポリマーバックボーンが含まれることを要求するという技術的制限を有し得る。上述したような技術的制限により、医用呼吸装置メーカーの設計柔軟性が低下する可能性があることが分かっている。また、マスターバッチおよび/または最終製品のコストの増加を引き起こす恐れもある。
【0008】
また、複数種の他のプラスチックとともに使用可能な抗菌プラスチックを必要とする。そのため、追加の抗菌プラスチック、それから製造される医用呼吸装置、およびこのような医用呼吸装置を製造する方法を必要とする。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一実施形態は、生物付着防止化合物と、基礎プラスチックとを含む、呼吸装置のガス通路のための抗菌プラスチックに関する。前記生物付着防止化合物は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオール誘導体およびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリエーテル、ポリ(エチレングリコール)エーテル、ポリソルベートおよびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノラウレート、ポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノオレエート、ポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレエート、セテアレスおよびこれらの組合せから選ばれていてもよい。前記基礎プラスチックは、低密度ポリエチレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリプロピレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリオレフィンエラストマーポリマーの混合物およびポリ塩化ビニルポリマーから選ばれる。
【0010】
本発明の一実施形態は、前記基礎プラスチックと前記生物付着防止化合物を押出機で混合させる、抗菌プラスチックの製造方法に関する。
【0011】
本発明の一実施形態は、呼吸装置のガス通路のための抗菌プラスチックの製造方法に関する。該方法は、生物付着防止化合物を提供する工程と、基礎プラスチックを提供する工程と、生物付着防止化合物と基礎プラスチックを混合させる工程と、を含む。前記生物付着防止化合物は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオール誘導体およびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリエーテル、ポリ(エチレングリコール)エーテル、ポリソルベートおよびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノラウレート、ポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノオレエート、ポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレエート、セテアレスおよびこれらの組合せから選ばれていてもよい。前記基礎プラスチックは、低密度ポリエチレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリプロピレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリオレフィンエラストマーポリマーの混合物およびポリ塩化ビニルポリマーから選ばれる。
【0012】
本発明の一実施形態は、前記抗菌プラスチックまたは上記方法により製造されるプラスチックを含む呼吸装置のガス通路コンポーネントに関する。
【0013】
本発明の一実施形態は、前記呼吸装置のガス通路コンポーネントを含む呼吸装置に関する。
【0014】
理論に限定されることを意図するものではないが、本発明では、単にその上に塗布されることではなく、抗菌性がプラスチックに恒久的に結合される抗菌プラスチックが提供されると考えられている。そのため、本発明は、抗菌性を長期間にわたって維持し、たとえば、室温で3年間維持することができる。生物付着防止化合物と基礎プラスチックとの物理的混合、およびそれによる結合は、生物付着防止化合物の抗菌プラスチックからの浸出を減少させると考えられている。さらに、本発明に係る抗菌プラスチックは、基礎プラスチック自身と比べると、本発明に係る抗菌プラスチックに対するグラム陽性菌およびグラム陰性菌の付着を著しく低下させることができると考えられている。
【0015】
理論に限定されることを意図するものではないが、呼吸装置のガス通路コンポーネントは、本発明に係る抗菌プラスチックから形成される場合でも、基礎プラスチック自身と比べると、生物膜の形成、交差汚染および/または細菌付着の可能性を減少させると考えられている。さらに、いくつかの実施形態において、マスターバッチ中の1つのポリマーセグメントのみが基礎プラスチックと相溶性である必要があることが発見されたので、本発明に係る抗菌プラスチックは、メーカーに対して著しく大きな設計柔軟性を提供することができると考えられている。実際に、いくつかの実施形態においてマスターバッチは全く必要とされず、原材料の量、製造複雑さおよび/または料金を低減することにより、コストを節約することが発見されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特に明確に規定されない限り、本発明におけるすべての試験は、いずれも、室温および25℃の試験温度、海面気圧(1atm.)、およびpH 7を含む規格条件下で行われるとともに、すべての測定は、いずれもメートル法で行われる。また、特に指摘されない限り、本発明におけるすべての百分率(パーセンテージ)、比率などは、いずれも最終製品、材料、プラスチックなどの重量を基準とする。
【0017】
本発明に記載されるように、用語の「混合」、および「…を混合させる」などの他の形態とは、少なくとも2種の材料を物理的に混合させ、或いは物理的に混合させて化学的に混合させ、或いは物理的に混合させて化学的に結合することを指す。
【0018】
本発明に記載されるように、用語の「菌(germ)」は、微生物または細菌を示す。
【0019】
本発明に記載されるように、材料(または、プラスチックなど)を説明する場合、用語の「抗菌」、および「抗菌性」などの他の文法形態は、材料(または、プラスチックなど)に対する微生物、細菌などの物理的付着または初期物理的付着を低下させ、および/またはプラスチック材料から物理的に除去する可能性を増加させることを示す。
【0020】
本発明の一実施形態は、生物付着防止化合物と、基礎プラスチックとを含む抗菌プラスチックに関する。前記生物付着防止化合物は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオール誘導体およびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリエーテル、ポリ(エチレングリコール)エーテル、ポリソルベートおよびこれらの組合せから選ばれ、或いはポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノラウレート、ポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノオレエート、ポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレエート、セテアレスおよびこれらの組合せから選ばれていてもよい。前記基礎プラスチックは、低密度ポ
リエチレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリプロピレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリオレフィンエラストマーポリマーの混合物およびポリ塩化ビニルポリマーから選ばれる。
【0021】
本発明に係る生物付着防止化合物は、菌(たとえば、微生物または細菌)が基礎プラスチックおよび/または基礎プラスチックから製造される呼吸ガス通路コンポーネントに付着する可能性を減少させる。理論に限定されることを意図するものではないが、生物付着防止化合物は、たとえば、本発明に係る生物付着剤(例えば、細菌、微生物など)が滑落しやすい表面を提供することができると考えられている。該生物付着防止化合物は、たとえば、プラスチック表面を非常に親水性にして、プラスチックに薄い水層ができ、生物付着剤がプラスチックに付着することを防止することができる。
【0022】
様々なグレードの本発明に係る生物付着防止化合物は、世界中の多くの仕入先から取得することができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、ポリオール誘導体またはポリエーテルポリオールは、約1〜約20のC
4−28エステル部分を有するPEG分子である。
【0024】
セテアレス(たとえば、セテアレス−20、CAS番号68439−49−6)は、下記構造を有するポリ(エチレングリコール)エーテル非イオン性界面活性剤である。
【0025】
【化1】
(ただし、nは、エチルエーテル繰り返し単位の数である。本発明のセテアレスにおけるnは、約2〜約100、または約10〜約90であり、或いは20、40、60または80である。)
【0026】
トゥイーン(Tween)、特にトゥイーン20およびトゥイーン80は、本発明において有用である。トゥイーン20(CAS No.9005−64−5)は、下記構造を有するポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノオレエートである。
【0027】
【化2】
(ただし、w+x+y+zの和は、20である。)
【0028】
トゥイーン80(CAS No.9005−65−6)は、下記構造を有するポリ(エチレングリコール)ソルビタンモノラウレートである。
【0029】
【化3】
(ただし、w+x+y+zの和は、20である。)
【0030】
ポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレエート(たとえば、CAS番号57171−56−9)は、下記構造を有する。
【0031】
【化4】
(ただし、nは、約2〜約100の自然数である。)
【0032】
本発明の一実施形態において、抗菌プラスチックに対する前記生物付着防止化合物の重量百分率が、約0.001%〜約50%、約0.001%〜約20%または約0.01%〜約15%である。
【0033】
本発明に係る基礎プラスチックは、LDPEポリマーとEVAコポリマーの混合物、PPポリマーとEVAコポリマーの混合物、POEポリマーの混合物およびPVCポリマーから選ばれる。本発明の一実施形態において、本発明に用いられるPOEは、エチレンモノマー、1−ブテンモノマー、1−ヘキサンモノマー、1−オクテンモノマーおよび1−デセンモノマーから選ばれる線状α−オレフィンモノマーの組合せ、またはエチレンモノマーと1−オクテンモノマーの組合せを含む。様々なグレードおよび形態の基礎プラスチックは、世界中の仕入先から取得することができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記抗菌プラスチックに対する前記基礎プラスチックの重量百分率が、約50%〜約99.999%、約80%〜約99.999%または約85%〜約99.99%である。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記生物付着防止化合物と中間プラスチックとが混合されてマスターバッチを形成する。前記マスターバッチは、さらに基礎プラスチックと混合されて抗菌プラスチックを形成する。本発明の一実施形態において、前記中間プラスチックは、ランダムターポリマー、エチレンモノマー、アクリレートモノマー、無水マレイン酸モノマーおよびこれらの組合せから選ばれるモノマーを含むランダムターポリマー、エチレンモノマー、アクリレートモノマーおよび無水マレイン酸モノマーを含むランダムターポリマー、またはエチレンモノマー、アクリレートモノマーおよび無水マレイン酸モノマーを含むポリマーバックボーンを含むランダムターポリマーである。典型的には、ランダムターポリマーにおいて、モノマーの順番は、重合時に存在する特定のモノマーの実際の化学量論および反応動力学によりランダムに決定される。
【0036】
本発明の一実施形態において、中間プラスチックは、基礎プラスチックと相溶性のあるポリマーセグメントを少なくとも1つ含む。しかしながら、本発明における中間プラスチ
ックは、基礎プラスチックと完全に同じ基礎ポリマーバックボーンを必要とせず、いくつかの実施形態において単一のポリマーセグメントのみを含む必要があるため、本発明は、従来技術における既知のプラスチックと明らかに異なると考えられている。理論に限定されることを意図するものではないが、いくつかの実施形態において、中間体を必要とせず、或いは基礎プラスチックと同じポリマーセグメントが含まれないと考えられている。
【0037】
本発明の1つの好適な実施形態において、(基本的に線状の)ポリマーバックボーンから分岐する明らかなモノマー単位が存在しないので、中間ポリマーは、グラフトポリマーではない。理論に限定されることを意図するものではないが、ある場合、特に、基礎プラスチックがLDPE/EVAの混合物、PP/EVAの混合物および/またはPOEの混合物である場合、中間プラスチックは、基礎プラスチック全体に生物付着防止化合物を保持し、均一に分布させるのに役立つと考えられている。
【0038】
本発明の一実施形態において、生物付着防止化合物と中間プラスチックを混合させてマスターバッチを形成し、或いは、前記生物付着防止化合物と前記中間プラスチックを押出機で混合させてマスターバッチを形成し、或いは、生物付着防止化合物と中間プラスチックを重合させてマスターバッチを形成する。理論に限定されることを意図するものではないが、このような方法は、生物付着防止化合物と基礎プラスチックの恒久的結合を確保し、さらに改良されたプラスチックを提供することで、生物付着防止化合物が基礎プラスチックから浸出する可能性を減少させるとともに、抗菌効果の持続期間を増加させると考えられている。
【0039】
本発明の一実施形態において、抗菌プラスチックに対するマスターバッチの重量百分率が、約0.001%〜約50%、約0.001%〜約20%、または約0.01%〜約15%である。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記抗菌プラスチックに対する基礎プラスチックの重量百分率が、約50%〜約99.999%、約80%〜約99.999%または約85%〜約99.99%である。
【0041】
本発明の一実施形態において、マスターバッチが存在する場合、マスターバッチに対する生物付着防止化合物の重量百分率が約0.01%〜約25%、約0.1%〜約20%、または約0.5%〜約15%である。
【0042】
あるいは、本発明の一実施形態において、基礎プラスチックがPOEの混合物、LDPE/EVAの混合物および/またはPP/EVAの混合物である場合、約1000:1〜約1:1、約75:1〜約5:1または約60:1〜約7:1の重量比でマスターバッチを混合させる。本発明の一実施形態において、基礎プラスチックがPOEの混合物またはLDPE/EVAの混合物であり、約60:1〜約40:1の重量比で基礎プラスチックとマスターバッチを混合させる。本発明の一実施形態において、基礎プラスチックがPP/EVAの混合物であり、約50:1〜約7:1の重量比で基礎プラスチックとマスターバッチを混合させる。この場合、中間プラスチックが基礎プラスチックと相溶性があるとは、中間プラスチックと基礎プラスチックとが均一に混合され、目に見える変色または物理的欠陥を引き起こすことがないことを意味する。
【0043】
本発明の他の実施形態において、基礎プラスチックがPVCであり、中間プラスチックがほとんどまたは完全にない。この場合、基礎プラスチックがポリ塩化ビニルポリマーである場合、生物付着防止化合物とPVCポリマーを混合させて抗菌プラスチックを(直接)形成することができる。本発明に係る生物付着防止化合物がPVCと混合される場合、抗菌プラスチックを形成する前に生物付着防止化合物をPVCと結合するのを助けるため
に中間プラスチックは必要とされないことが驚くべきことに見出された。さらに、マスターバッチを予めに形成する必要性を回避し、効率および/または生産速度を向上させることができる。理論に限定されることを意図するものではないが、PVCがフィラメント状性質を有するため、生物付着防止化合物を容易に絡み合わせ、その中に均一に分布させやすいと考えられている。
【0044】
本発明の一実施形態において、約10000:1〜約20:1、約7500:1〜約40:1または約3000:1〜約75:1の重量比でPVCと生物付着防止化合物を混合させる。
【0045】
本発明の一実施形態において、添加剤は、抗菌プラスチック、基礎プラスチック、生物付着防止化合物、中間プラスチックおよび/またはマスターバッチに存在してもよい。添加剤は、たとえば、紫外線保護剤(たとえば、紫外線吸収剤、紫外線ブロッカー、紫外線反射剤など)、顔料、可塑剤、充填剤、増量剤、塗料、安定剤、触媒、開始剤、発泡剤、増粘剤、潤滑剤、インパクトモディファイア(impact modifier)、ブロッキング防止剤、清澄剤、帯電防止剤、難燃剤およびこれらの組合せを含んでもよい。典型的には、添加剤は、抗菌プラスチックに対して0.0001%〜約10%の重量百分率で存在してもよい。
【0046】
製造方法
本発明の一実施形態において、抗菌プラスチックを製造するための方法は、生物付着防止化合物を提供する工程と、基礎プラスチックを提供する工程と、生物付着防止化合物と基礎プラスチックを混合させる工程と、を含む。
【0047】
典型的には、混合工程は、物理的混合、または物理的混合と化学的混合、または同時に行われる物理的混合と化学的混合、または基礎プラスチックと生物付着防止化合物、生物付着防止化合物と中間プラスチック、マスターバッチと基礎プラスチックなどの少なくとも2種の異なる材料の物理的混合および/または化学的結合である。基礎プラスチック、生物付着防止化合物、中間プラスチック、マスターバッチおよび/または任意の添加剤が熔融および/または液体状態となる場合、混合工程を行うことができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、基礎プラスチックは、低密度ポリエチレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリプロピレンポリマーとエチルビニルアセテートコポリマーの混合物、ポリオレフィンエラストマーポリマーの混合物および/またはこれらの組合せを含む場合、本発明の製造方法は、中間プラスチックを提供する工程と、生物付着防止化合物と中間プラスチックを混合させてマスターバッチを形成する工程と、マスターバッチと基礎プラスチックを混合させて抗菌プラスチックを形成する工程と、をさらに含んでもよい。
【0049】
本発明の一実施形態において、生物付着防止化合物と基礎プラスチック、または生物付着防止化合物、中間プラスチックおよび基礎プラスチック、またはマスターバッチと基礎プラスチックを混合させて抗菌プラスチックを形成する。本発明における混合工程は、例えば、熔融、成形、射出成形、真空成形、吹込み成形、押し出し、共押し出し、混合およびこれらの組合せ、または押し出し、熔融、射出成形およびこれらの組合せ、または押し出し、射出成形およびこれらの組合せ、または押し出し、吹込み成形、真空成形およびこれらの組合せによって行われてもよい。押し出しは、モールド、押出機またはこれらの組合せで行われてもよい。押出機は、例えば、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、スクリューレス押出機およびプラスチック製造分野における既知の他の押出機であってもよい。理論に限定されることを意図するものではないが、押し出しにより、生物付着防止化合物、中間体および/またはマスターバッチと基礎プラスチックとの十分な混合を
確保して、均質(consistent)且つ比較的均一な抗菌プラスチックを形成することができると考えられている。さらに、生物付着防止化合物と基礎プラスチックを押出機で混合させることにより、十分に永続的且つ均一な混合を実現することで、使用、貯蔵などの過程において生物付着防止化合物が基礎プラスチックから浸出することがないと考えられている。
【0050】
本発明の一実施形態において、基礎プラスチックがポリ塩化ビニルを含む場合、生物付着防止化合物と基礎プラスチックとを直接混合して抗菌プラスチックを形成することができる。
【0051】
呼吸装置のガス通路コンポーネント
本発明に係る抗菌プラスチックは、呼吸装置のガス通路コンポーネント、或いは、呼吸管、加熱ガス通路コンポーネント、ベンチレーターコンポーネント、加湿器コンポーネント、ガスマスクコンポーネント、酸素ガス貯蔵機器コンポーネント、酸素ガス濃縮器コンポーネント、ポンプコンポーネント、フェイスマスクコンポーネント、鼻コンポーネント、口腔コンポーネント、フィルターコンポーネント、ウォータートラップコンポーネント、ガスサンプリングラインコンポーネント、Y字形材、ネブライザーコンポーネントおよびこれらの組合せ、または吸気呼吸管、呼気呼吸管、加湿器ガス通路コンポーネント、加湿器チャンバーコンポーネント、加熱ガス通路コンポーネント、気管導管コンポーネント、呼吸モニターコンポーネント、酸素ガス貯蔵装置コンポーネント、酸素ガス濃縮器コンポーネントおよびこれらの組合せ、または吸気呼吸管、呼気呼吸管、加湿器ガス通路コンポーネント、加熱ガス通路コンポーネント、ベンチレーターコンポーネント、ネブライザーコンポーネントおよびこれらの組合せなどの呼吸装置のガス通路コンポーネントを形成してもよい。呼吸装置のガス通路コンポーネントは、必要に応じて、呼吸装置の剛性ガス通路コンポーネントおよび/または呼吸装置の可撓性ガス通路コンポーネントであってもよい。
【0052】
本発明の一実施形態において、本発明の製造方法は、呼吸装置のガス通路コンポーネントを熱成形する工程をさらに含む。熱成形工程は、成形、押し出し、射出、圧縮およびこれらの組合せから選ばれるプロセス、または成形、押し出しおよびこれらの組合せから選ばれるプロセスを含んでもよい。本発明の一実施形態において、押し出しによって呼吸装置のソフトガス通路コンポーネントを形成し、例えば、射出成形によって呼吸装置のハードガス通路コンポーネントを形成してもよい。
【0053】
呼吸装置
本発明における呼吸装置のガス通路は、さらに呼吸装置内に含まれ、および/または呼吸装置の一部を形成してもよい。そのため、本発明における呼吸装置は、例えば、麻酔呼吸システム、呼吸加湿システム、通気呼吸システム(加湿器を含んでもよい)、ベンチレーター、酸素ガス濃縮器、酸素ガス貯蔵器、ネブライザー、加熱器、呼吸回路、マスク、ポンプ、アダプタ、フィルターおよびこれらの組合せであってもよい。
【0054】
試験方法:
スワブ試験:
細菌の試験接種物の調製:大腸菌E.coli(ATCC(登録商標)8739(商標))および黄色ブドウ球菌S.aureus(ATCC(登録商標)6538P(商標))。
【0055】
日本工業規格(JIS Z 2801:2000)に従って、細菌の試験接種物を調製し、培養時にカウントを行った。わずかな変更を加えて、該JISは、試験サンプル表面の抗菌活性および細菌に対する効果を試験するために用いられる。フローチャート1を参照しながら、ピクチャーフォーマットで該工程について以下のように説明する。
【0057】
1)寒天プレート(4℃の冷蔵庫に貯蔵)から、細菌の単一のコロニーを採取し、3mL栄養ブロスに移して一晩培養した。
2)300μLの培養細菌を3mLの新鮮な栄養ブロスに移し、約3〜4時間培養した。
3)8000rpmの速度で1〜2分間遠心分離して細菌を収穫した(OD600は、大腸菌の場合、0.6〜0.7に調整し、黄色ブドウ球菌の場合、1.5〜1.7に調整しなければならない)。
4)0.9%のNaCl水溶液で細菌を3回洗浄して遠心分離した。
5)得た細菌を1/500の栄養ブロス溶液に再懸濁させて(1/500 NBとは、pHを6.8〜7.2に調整した500倍希釈の栄養ブロスである)、細菌溶液を試験接種物として調製した。複数回の希釈は、試験サンプルに依存する。通常、大腸菌懸濁液を10倍希釈し、黄色ブドウ球菌懸濁液を500倍希釈する。
【0058】
サンプル培養およびスワブ試験
試験接種物(大腸菌または黄色ブドウ球菌)をサンプルに接種した後、サンプルを37℃で24時間培養した。スワブ試験によって、サンプル表面に付着した細菌を測定した。試験手順は、以下のとおりである(フローチャート2を参照)。
【0060】
1)サンプル(たとえば、チューブ)を小片に切断した後、滅菌済みの6ウェルプレートに入れた。
2)8mLの調製した細菌懸濁液をウェルごとに移し、37℃で24時間培養した。
3)細菌懸濁液を注意深く除去した。
4)0.9%のNaCl水溶液で洗浄し、同じ体積で各サンプルを洗浄した。
5)滅菌綿棒または3Mクイックアプリケータースティックでサンプル表面およびプレート表面を拭き取り、セルスプレッダーを用いて手動でプレーティングし、或いは、自動スパイラルプレーター(たとえば、Eddy Jet 2、IUL、S.A.)を用いてより均一にプレーティングした。
6)一晩または最大24時間培養した後、寒天プレートに形成したコロニーをカウントした。
【0061】
理論に限定されることを意図するものではないが、上記試験において、大腸菌の使用は、他のグラム陰性菌の付着を代表し、黄色ブドウ球菌の使用は、他のグラム陽性菌を代表すると考えられている。そのため、この試験の結果は、通常他の細菌を代表すると考えられている。
【0062】
上記試験に基づき、ここで用いられる細菌減少百分率の算出は、以下の通りである。
【0064】
ここで用いられる用語「cfu」は、細菌コロニー形成単位を示す。
【0065】
本発明の一実施形態において、前記抗菌プラスチックは、少なくとも約5
本発明の一実施形態において、前記抗菌プラスチックは、少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%または少なく
とも約95%の抗菌率(germ−repellent efficiency)を有する。本発明の一実施形態において、大腸菌に対する該抗菌プラスチックの抗菌率は、少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%または少なくとも約95%である。本発明の一実施形態において、黄色ブドウ球菌に対する前記抗菌プラスチックの抗菌率は、少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%または少なくとも約85%である。
【0066】
本発明の一実施形態において、前記抗菌プラスチックは、少なくとも約5
本発明において有用な試験は、ISO 10993医療器械生物学的評価、特に、その変形としてのISO 10993−5およびISO 10993−10、ISO 18562医療保健適用における呼吸ガス通路の生体適合性評価、およびASTM F1980−07医療器械無菌バリアシステム加速老化標準ガイドを含む。
【0067】
抗菌プラスチックサンプルに対して加速老化を行う試験において、ASTM F1980−07に従って、抗菌プラスチックサンプルに対して老化を行う。ASTM F1980−07における条件下で、97日間の加速老化とは、正常(室温)で約3年間貯蔵することに相当する。そして、上記スワブ試験に従って、試験細菌溶液で24時間培養し、抗菌プラスチックサンプルに対して試験を行い、それを対照プラスチックサンプル(加速老化されていないサンプル)と比較する。
【0068】
本発明の一実施形態において、約7.4ヶ月以上貯蔵した(または20日間加速老化した)後、または約12ヶ月以上貯蔵した(または33日間加速老化した)後、または約1.5年間以上貯蔵した(または43日間加速老化した)後、または約3年間以上貯蔵した(または97日間加速老化した)後、前記抗菌プラスチックは、少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%の抗菌率を有する。
【0069】
換言すれば、少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%の抗菌率を維持することにより、本発明に係る抗菌プラスチックは、約7.4ヶ月以上(または20日間加速老化)の貯蔵寿命、または約12ヶ月以上(または33日間加速老化)の貯蔵寿命、または約1.5年間以上(または43日間加速老化)の貯蔵寿命、または約3年間以上(または97日間加速老化)の貯蔵寿命を有する。
【0070】
本発明の一実施形態において、ISO10993試験、ISO18562試験およびこれらの組合せに従って、前記抗菌プラスチックは、生体適合性を有し、或いは、ISO10993−5試験、ISO10993−10試験およびISO18562試験に従って、生体適合性を有する。
【0071】
該分野における既知の他の試験、例えば、引張試験、メルトフローインデックス試験、熱特性試験などがそれに関し得る。特に、190℃で重量2.16kgの場合に行われるサンプルのメルトフローインデックスを測定するためのASTM D1238−10は、ここで役立つ場合がある。
【0072】
しかし、本発明に係る抗菌プラスチックは、このような試験により測定されたこれらの物理的性質について、抗菌プラスチックと基礎プラスチックとの差異が小さいという利点がある。そのため、本発明の一実施形態において、前記抗菌プラスチックは、物理的性質を有するとともに、前記基礎プラスチックは、同様な物理的性質を有する。業界標準試験に従って、抗菌プラスチックの物理的性質を測定するとともに、同様な業界標準試験に従って、基礎プラスチックの同様な物理的性質を測定する場合、抗菌プラスチックの物理的
性質と基礎プラスチックの物理的性質との差が、±20%以下、または±10%以下、または±5%以下である。
【0073】
実施例1
8.3重量%のEVA基礎プラスチック、83.3重量%のエチレン/アクリル酸/マレイン酸ターポリマー中間プラスチック、および8.3重量%のセテアレス生物付着防止化合物の混合物を混合させてマスターバッチを形成した。具体的には、生物付着防止化合物、EVA基礎プラスチックおよび中間プラスチックを二軸スクリュー押出機で混合させ、二軸スクリュー押出機の温度範囲は、前部の90℃〜後部の190℃である。
【0074】
(主に)基礎プラスチックは、2種のエチレン−オクテンPOEの混合物である。マスターバッチと基礎プラスチックの重量比が1:54である。マスターバッチと基礎プラスチックを、温度範囲が前部の90℃〜後部の235℃の一軸スクリュー押出機に供給して抗菌プラスチック(A)を形成した。一軸スクリュー押出機により、抗菌プラスチックをシート状に押し出した。
【0075】
そのため、最終の抗菌プラスチックシートにおける重量百分率は、0.15%のEVA基礎プラスチック、1.5%のエチレン/アクリル酸/マレイン酸ターポリマー中間プラスチック、0.15%のセテアレス生物付着防止化合物、および98.2%のPOE混合物である。
【0076】
さらに、比較サンプルには、いずれのマスターバッチ、中間プラスチックまたは生物付着防止化合物が含まれない以外、2種のPOEの同様な混合物を含む比較プラスチック(対照1)を同じ形態で調製した。
【0077】
スワブ試験(上述したように)を行い、抗菌プラスチック(A)と比較プラスチック(対照1)の抗菌性を比較した。
【0079】
表1から分かるように、比較プラスチック(対照1)と比べると、本発明における抗菌プラスチック(A)は、スワブ試験において大腸菌を99.9%減少させた。換言すれば、抗菌プラスチック(A)は、比較プラスチック(対照1)の0.11%の付着力のみを有する。
【0081】
表2から分かるように、比較プラスチック(対照1)と比べると、本発明における抗菌プラスチック(A)は、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を98.7%減少させた。換言すれば、抗菌プラスチック(A)は、比較プラスチック(対照1)の1.3%の付着力のみを有する。
【0082】
また、抗菌プラスチックAによるチューブ(加速老化無し)は、ISO 10993−5試験に合格した。実施例C/Dにおける抗菌プラスチックのメルトフローインデックス(ASTM D1238−10による)が0.9g/10minであり、POE混合物(対照1)の対応するメルトフローインデックスが0.88g/10minであるので、+2.3%の相違だけである。
【0083】
実施例2
マスターバッチを調製する際に、二軸スクリュー押出機の温度範囲が前部の110℃〜後部の190℃である以外、実施例1の方法で抗菌プラスチック(B)および比較プラスチック(対照2)を調製した。抗菌プラスチックを調製する際に、一軸スクリュー押出機の温度範囲が前部の210℃〜後部の235℃である。また、これらのサンプルを一軸スクリュー押出機から押し出して、実施例1におけるシートではなく、ある長さのチューブを形成した。
【0084】
スワブ試験(上述したように)を行い、抗菌プラスチック(B)と比較プラスチック(対照2)の抗菌性を比較した。
【0086】
表1から分かるように、比較プラスチック(対照2)と比べると、本発明における抗菌プラスチック(B)は、スワブ試験において大腸菌を95.6%減少させた。換言すれば、抗菌プラスチック(B)は、比較プラスチック(対照2)の4.4%の付着力のみを有する。
【0088】
表2から分かるように、比較プラスチック(対照2)と比べると、本発明における抗菌プラスチック(B)は、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を86.8%減少させた。換言すれば、抗菌プラスチック(B)は、比較プラスチック(対照2)の13.2%の付着力のみを有する。
【0089】
試験を継続して行い、22日間および43日間加速老化された後、それぞれ、抗菌プラスチック(C、D)および比較プラスチック(対照3、4)のサンプルに対してスワブ試験を行った。
【0092】
表3〜4から分かるように、本発明に係る抗菌プラスチック(C)は、22日間加速老化された場合、比較プラスチック(対照3)と比べると、スワブ試験において大腸菌を98.6%減少させた。本発明に係る抗菌プラスチック(D)は、43日間加速老化された場合、比較プラスチック(対照4)と比べると、スワブ試験において大腸菌を94.9%減少させた。換言すれば、抗菌プラスチック(C)は、22日間加速老化された場合、比較プラスチック(対照3)の1.40%の付着力のみを有し、抗菌プラスチック(D)は、43日間加速老化された場合、比較プラスチック(対照4)の5.12%の付着力のみを有する。換言すれば、本発明は、22日間および43日間加速老化された後、大腸菌に対して依然として顕著な抗菌性を維持することが示されている。
【0095】
表5〜6から分かるように、本発明に係る抗菌プラスチック(C)は、22日間加速老化された場合、比較プラスチック(対照3)と比べると、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を84.7%減少させた。本発明に係る抗菌プラスチック(D)は、43日間加速老化された場合、比較プラスチック(対照4)と比べると、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を92.5%減少させた。換言すれば、抗菌プラスチック(C)は、22日間加速老化された場合、比較プラスチック(対照3)の15.3%の付着力のみを有し、抗菌プラスチック(D)は、43日間加速老化された場合、比較プラスチック(対照4)の7.46%の付着力のみを有する。
【0096】
実施例3
EVAがない以外、実施例1によりマスターバッチを調製した。91重量%のエチレン/アクリル酸/マレイン酸ターポリマー中間プラスチックの混合物と9重量%のセテアレス生物付着防止化合物を二軸スクリュー押出機で混合させてマスターバッチを形成した。二軸スクリュー押出機の前部の温度が110℃、後部の温度が200℃である。
【0097】
基礎プラスチックは、LDPEポリマーとEVAポリマーの混合物を含む。マスターバッチと基礎プラスチックを一軸スクリュー押出機で混合させて抗菌プラスチックサンプル(E〜G)を形成した。具体的には、一軸スクリュー押出機の温度範囲が前部の180℃〜後部の215℃である以外、実施例2、3により、一軸スクリュー押出機で抗菌プラス
チックをチューブとして押し出した。
【0098】
マスターバッチ、中間プラスチックまたは生物付着防止化合物が含まれない以外、同じ形態で基礎プラスチック(LDPE/EVA混合物)のみを含む比較プラスチックサンプル(対照5〜7)を調製した。
【0099】
スワブ試験(上述したように)を行い、抗菌プラスチックサンプル(E〜G)と比較プラスチックサンプル(対照5〜7)の抗菌性を比較した。
【0103】
表1〜3から分かるように、チューブを形成した場合、本発明に係る抗菌プラスチック(E)は、比較プラスチック(対照5)と比べると、スワブ試験において大腸菌を99%超え減少させた。抗菌プラスチック(F)は、22日間加速老化された場合、比較プラスチック(対照6)と比べると、大腸菌を96.6%減少させた。抗菌プラスチック(G)は45日間加速老化された場合、サンプル(G)または比較プラスチック(対照7)のいずれにも細菌が付着していない。
【0107】
表4〜6から分かるように、比較プラスチック(対照5)と比べると、本発明における抗菌プラスチック(E)は、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を99.3%減少させた。比較プラスチック(対照6)と比べると、本発明における抗菌プラスチック(F)は、22日間加速老化された場合、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を91.5%減少させた。比較プラスチック(対照7)と比べると、本発明における抗菌プラスチック(G)は、45日間加速老化された場合、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を96.7%減少させた。
【0108】
また、比較プラスチック(対照5)における1.92g/10minと比べて、抗菌プラスチックEのメルトフローインデックスが2.30g/10minである。抗菌プラスチックEと対照5との相違が+20%であることを意味する。メルトフローインデックスは、ASTM D1238−10に従って、190℃および2.16kgの条件下で試験を行って得られた。
【0109】
実施例4
調製したマスターバッチは、83.3重量%のEVA基礎プラスチックの混合物を含み、8.3重量%のエチレン/アクリル酸/マレイン酸ターポリマー中間プラスチックおよび8.3重量%のセテアレス生物付着防止化合物と二軸スクリュー押出機で混合された。二軸スクリュー押出機の温度範囲が前部の110℃〜後部の200℃である。
【0110】
基礎プラスチックは、PPとEVAの混合物を含む。マスターバッチと基礎プラスチックを混合させて抗菌プラスチックサンプル(H〜K)を形成した。具体的には、一軸スクリュー押出機の温度範囲が前部の190℃〜後部の225℃である以外、実施例2〜3により、一軸スクリュー押出機で抗菌プラスチックをチューブ(H〜K)として押し出した。また、基礎プラスチックとマスターバッチを9:1の重量比で混合させた(熔融押出による)。
【0111】
マスターバッチ、中間プラスチックまたは生物付着防止化合物が含まれない以外、同じ形態で基礎プラスチック(PP/EVA混合物)のみを含む比較プラスチックサンプル(対照8〜11)を調製した。
【0112】
スワブ試験(上述したように)を行い、抗菌プラスチックサンプル(H〜K)と比較プラスチックサンプル(対照8〜11)の抗菌性を比較した。
【0117】
表1〜3から分かるように、チューブを形成した場合、本発明に係る抗菌プラスチック(H)は、比較プラスチック(対照8)と比べると、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を96%減少させた。比較プラスチック(対照9)と比べると、本発明における抗菌プラスチック(I)は、22日間加速老化された場合、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を81.8%減少させた。比較プラスチック(対照10)と比べると、本発明における抗菌プラスチック(J)は、62日間加速老化された場合、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を86.0%減少させた。比較プラスチック(対照11)と比べると、本発明における抗菌プラスチック(K)は、97日間加速老化された場合、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を98.4%減少させた。
【0118】
示されていないが、上述したように試験を行った場合、上述した抗菌プラスチックは、大腸菌に対する抗菌性が97%〜100%であった。
【0119】
また、抗菌プラスチックHは、メルトフローインデックスが1.02g/10minであり、比較プラスチック(対照8)のメルトフローインデックスが0.90g/10minであり、13.3%増加した。ASTM D1238−10に従って、230℃および2.16kgの条件下でメルトフローインデックスを測定した。また、対照8と比べると、プラスチックHを測定する際に、プラスチックHの引張強度(ASTM D638−10に従って、V型、速度5mm/min)が8.5%低下し、伸びが0.9%低下し、ヤング率が5.4%低下した。最後に、抗菌プラスチックHは、ISO10993−5試験およびISO10993−10試験に合格した。
【0120】
実施例5
一軸スクリュー押出機で、生物付着防止化合物(ポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレエート)と、PVCから製造された基礎プラスチックを、1:1000の重量比で混合させて、抗菌プラスチックを形成した。一軸スクリュー押出機の温度範囲が前部の90℃〜後部の145℃である。一軸スクリュー押出機により、抗菌プラスチックをチューブとして直接押し出した。
【0121】
スワブ試験(上述したように)を行い、抗菌プラスチックサンプル(L〜M)と比較プラスチックサンプル(対照11〜12)の抗菌性を比較した。
【0124】
表1〜2から分かるように、チューブを形成した場合、本発明に係る抗菌プラスチック(K)は、比較プラスチック(11)と比べると、スワブ試験において大腸菌を99.9%超え減少させた。22日間加速老化された場合、本発明に係る抗菌プラスチック(L)は、比較プラスチック(12)と比べると、スワブ試験において大腸菌を80.8%減少させた。
【0127】
表3〜4から分かるように、チューブを形成した場合、本発明に係る抗菌プラスチック(L)は、比較プラスチック(11)と比べると、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を89.7%減少させた。22日間加速老化された場合、本発明に係る抗菌プラスチック(M)は、比較プラスチック(12)と比べると、スワブ試験において黄色ブドウ球菌を93.8%減少させた。
【0128】
ASTM D638−10に従って、V型、速度10mm/minの条件下で試験を行う際に、抗菌プラスチックLの引張強度が6%増加し、伸びが2.9%増加し、ヤング率が6.1%増加した。
【0129】
9重量%のセテアレス生物付着防止化合物が存在した場合、二軸スクリュー押出機で、91%重量のエチレン/アクリル酸/マレイン酸ターポリマー中間プラスチックを混合させてマスターバッチを形成した。二軸スクリュー押出機の温度範囲が前部110℃〜後部190℃である。
【0130】
基礎プラスチックは、2種のエチレン−オクテンPOEの混合物である。マスターバッチと基礎プラスチックを、1:54の重量比で混合させた。マスターバッチと基礎プラスチックを温度範囲が前部の210℃〜後部の235℃の一軸スクリュー押出機に供給して抗菌プラスチック(N)を形成し、チューブとして直接押し出した。2種のエチレン−オクテンPOEの同様な混合物で比較例(対照13)を形成したが、マスターバッチを形成しなかった。
【0131】
抗菌性を比較するために、抗菌プラスチックNにおいてスワブ試験を行った。対照13と比べると、大腸菌を91%減少させ、黄色ブドウ球菌を85%減少させた。また、抗菌プラスチックNは、ISO 10993−5試験に合格した。
【0132】
実施例7
二軸スクリュー押出機の温度範囲が前部の90℃〜後部の190℃である以外、実施例6によりマスターバッチを形成した。基礎プラスチックは、PPとEVAの混合物を含む。基礎プラスチックとマスターバッチの重量比が45:1であり、一軸スクリュー押出機の温度範囲が前部150℃〜後部200℃である。一軸スクリュー押出機により、シート状の抗菌プラスチック(P)および比較例(対照14)を調製した。第2台の一軸スクリュー押出機で、抗菌プラスチック(Q〜R)をチューブとして直接押し出した。温度範囲が前部190℃〜後部225℃である。PPとEVAの同様な混合物で類似する比較例(比較例15〜16)を形成し、同様にマスターバッチを形成しなかった。
【0133】
抗菌性を比較するために、抗菌プラスチックPにおいてスワブ試験を行った。対照14と比べると、大腸菌を99%減少させ、黄色ブドウ球菌を99%減少させた。対照15と比べると、大腸菌を99%減少させ、黄色ブドウ球菌を96%減少させた。22日間加速老化された場合、抗菌プラスチックRは、対照16と比べると、大腸菌を99%減少させるとともに、黄色ブドウ球菌を97%減少させた。
【0134】
実施例8
押出機の温度範囲が前部の190℃〜後部の210℃であり、抗菌プラスチックは、プラスチックSとして呼吸装置のガス通路コンポーネントとして用いられるコネクタに射出成形される以外、上述したように実施例7におけるマスターバッチおよび抗菌プラスチックを調製した。さらに、マスターバッチを含まない比較例を対照17として調製した。本発明に係るスワブ試験に従って、試験を行った場合、プラスチックSは、対照17と比べて、大腸菌を99%減少させ、黄色ブドウ球菌を97%減少させた。
【0135】
実施例9
押出機全体の温度が145℃であり、抗菌プラスチックはプラスチックTとして呼吸装置のガス通路コンポーネントとして用いられるコネクタに射出成形される以外、上述したように実施例3におけるマスターバッチおよび抗菌プラスチックを調製した。さらに、マスターバッチを含まない比較例を対照18として調製した。本発明に係るスワブ試験に従って、試験を行った場合、プラスチックTは、対照18と比べて、大腸菌を99%減少させ、黄色ブドウ球菌を97%減少させた。
【0136】
以上、本発明を実施可能となる実施例のみが示されており、本発明の構想から逸脱せずに修正および/または変更を行うことができることを理解すべきである。
【0137】
明確のために、独立した実施形態に記載されている本発明のある特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されることができることをさらに理解すべきである。逆に、簡潔のために、単一の実施形態において記載されている本発明の様々な特徴は、独立して、或いは任意の適当なサブコンビネーションで提供されることができることを理解すべき
である。
【0138】
本明細書で具体的に援用された刊行物、参照文献などは、いずれもその内容全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。しかし、それらは、独立しても、組み合わせても、従来技術とする利用可能性および/または関連性が承認されていない。
【手続補正書】
【提出日】2020年12月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
マスターバッチに対する生物付着防止化合物の重量百分率が、約0.01%〜約25%、または約0.1%〜約20%、または約0.5%〜約15%である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の抗菌プラスチック。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
本発明の一実施形態において、前記抗菌プラスチックは、少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%または少なくとも約95%の抗菌率(germ−repellent efficiency)を有する。本発明の一実施形態において、大腸菌に対する該抗菌プラスチックの抗菌率は、少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%または少なくとも約95%である。本発明の一実施形態において、黄色ブドウ球菌に対する前記抗菌プラスチックの抗菌率は、少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%または少なくとも約85%である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
本発明において有用な試験は、ISO 10993医療器械生物学的評価、特に、その変形としてのISO 10993−5およびISO 10993−10、ISO 18562医療保健適用における呼吸ガス通路の生体適合性評価、およびASTM F1980−07医療器械無菌バリアシステム加速老化標準ガイドを含む。
【国際調査報告】