【実施例】
【0034】
材料
本実施例に使用されたプライマー、発現ベクター、酵母菌株は、表1、表2、表3に整理されている。本実施例で製作された発現ベクターは、
図4に図式で整理されており、使用した培地および試薬は、下記の通りである。
【0035】
−SC培地(Synthetic Complete medium;):0.67%アミノ酸がない酵母窒素塩基(yeast nitrogen base without amino acids)(BD、291940)、2%グルコース(glucose)(JUNSEI、64220S0650)、0.77g/Lすべての必須アミノ酸が補充されたドロップ−アウトアミノ酸混合物(drop−out amino acid mixture supplemented with all required amino acids)(CLONTECH、630425)
−インフュージョンクローニングキット(In fusion cloning kit)(TAKARA 121416)
−KOH(JUNSEI、39040−0350/Sigma、P1767)
−エタノール(Ethanol)(MERCK、1.00983.1011)
−メタノール(Methanol)(B&J、AH230−4)
−ヘプタン(Heptane)(SIGMA、246654)
−石油エタノール(Petroleum ether)(B&J、317−4)
−ピロガロール(Pyrogallol)(TCI、P0570)
−アセトン(Acetone)(SIGMA、650501)
−Cosmosil C18−PAQ(4.6mm*250mm)column
−HPLCアセトニトリル(acetonitrile)(FISHER、A998−4)
−HPLCウォーター(water)(FISHER、W5−4)
−HPLC分析用標準コレステロール前駆体
:ラノステロール (Lanosterol)(SIGMA、L5768)
:エルゴステロール(Ergosterol)(SIGMA、45480−10g−f)
:ジモステロール(Zymosterol)(AVANTI、700068P)
:デスモステロール(Desmosterol)(SIGMA、D6513)
:コレステロール(Cholesterol)(SIGMA、C8667)
:ラトステロール(Lathosterol)(SIGMA、C3652)
:7−デヒドロデスモステロール(7−Dehydrodesmosterol)(AVANTI、700138P)
:7−デヒドロコレステロール(7−Dehydrocholesterol)(SIGMA、30800)
:グルコースバイオ(Glucose Bio)(Roche、06343732001)
:アセテートV2バイオ(Acetate V2 Bio)(COWIE、7395442001)
:エタノールバイオ(Ethanol bio)(Roche、8055645001)
【0036】
機器
−HPLC(Waters Separations Module 2695、Waters Dual λ Absorbance Detector 2487)
−PCR cycler(Eppendorf、AG 22331)
−ビーズビーター(Beadbeator)(BERTIN TECHNOLOGY、PrecellysR24)
−ウォーターバス(Water bath)(TAITEC、SDN−B)
−遠心分離機(Centrifuge)(Eppendorf、5424R)
−回転真空濃縮機(Rotational vacuum concentrator)(CHRIST、RVC 2−25 CD plus)
−HPLC−CADシステム(Thermo scientific、Dionex Ultimate 3000−Corona Veo RS)
−バイオプロセスアナライザー(Bioprocess analyzer)(Roche、Cedex Bio)
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
酵母形質転換(LiAc/PEG方式)
前記製造されたベクターあるいはカセットを用いて形質転換を行うために、YPD(Bacto−peptone 2%(w/v)、Bacto−Yeast Extract 1%(w/v)、D−グルコース(Glucose)2%(w/v)液体培地で前培養した菌株を500mLバッフルフラスコ(baffled flask)に初期OD600値を0.2に合わせて50mLを30℃振とう培養器で180rpmで培養した。6〜7時間後、OD600値が1.0になるまで培養した後、4℃、4,000rpmで10分間遠心分離した。上澄み液を除去し、LiAc/TE緩衝溶液(0.01M Tris−HCl、1mM EDTA、0.1M LiAc、pH7.5)1mLを入れ、ピペッティング(pipetting)で懸濁した後、13,000rpmで1分間遠心分離して沈殿物を得た。さらにLiAc/TE緩衝溶液500μLに懸濁して、コンピテント細胞(competent cell)を製造した。100μLずつ5個に分けて分注し、各チューブ(tube)に組換えベクターあるいはカセット2μL、サケ精子(salmon sperm)DNA 10μL、PEG/LiAc緩衝溶液(50%ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、0.01M Tris−HCl、1mM EDTA、0.1M LiAc、pH7.5)600μLを混合した後、約3〜4回用心深くピペッティング(pipetting)した。30℃で30分間放置させた後、DMSO 70μLを添加してピペッティング(pipetting)した後、42℃で15分間熱処理をした。氷で3分間放置した後、13,000rpmで1分間遠心分離して得られた沈殿物を滅菌された蒸留水で懸濁し、特定アミノ酸(LEU or TRP or HIS)または塩基(URA)が欠失されたSC合成基盤の選択培地SC−LEU、SC−URA、SC−LUE−URA−TRP、SC−LUE−URA−TRP−HIS(0.67%yeast nitrogen base without amino acids,2%glucose,0.77g/L drop−out amino acid mixture supplemented without leucine,tryptophan,histidine,or uracil in combination)に塗抹し、30℃で48時間培養した後、形質転換体を得た(Hill J et.al.1991)。
【0041】
実施例1:ERG5、ERG6欠失とDHCR24、DHCR7同時挿入を通したステロール生産菌株の製作
まず、ERG5、ERG6欠失のために相同組換え(homologous recombination)が起こるN断片とC断片を表1に表示されたerg5 dN fw、ERG5 dN rv、ERG5 dC fw、ERG5 dC rv、ERG6 dN fw、ERG6 dN rv、ERG6 dC fw、ERG6 dC rvプライマーを用いてそれぞれN、Cの2個のPCR断片を得た後、その断片をもって融合重合酵素連鎖反応(Fusion−PCR)を行って、pT−ERG5dNC、pT−ERG6dNCを得た。酵母用コドン適応指数(Codon Adaptation Index)方式でコドン最適化されたゼブラフィッシュ由来のDHCR24とDHCR7遺伝子がクローニングされているpMKRQ−DrDHCR24、pMKRQ−DrDHCR7からPCRを通じてDHCR7、DHCR24 DNA切片を回収し、また、PCRを通じて得られた411bp TEF1プロモーター(promoter)と314bp GAL7ターミネーター(terminator)とともに連結(ligation)してpT−DHCR24、pT−DHCR7ベクターを製作後、このベクターからTEF1p−DHCR7−GAL7t、TEF1p−DHCR24−GAL7t断片を持ってきてpT−ERG5dNC、pT−ERG6dNCベクターのN、C断片のうち、BamHI/XbaI位置に挿入し、KlURA3、KlLEU2をpUG73、pUG72ベクターから持ってきてNotI位置に挿入することによって、最終ベクターpT−erg5::DHCR24−LEU2、pT−erg6::DHCR7−URA3、pT−erg6::DHCR24−LEU2、pT−erg5::DHCR7−URA3を得た(
図4A、B、C、D)。最終ベクターをSphI/MluI処理してerg5::DHCR24−LEU2、ERG6::DHCR7−URA3、ERG6::DHCR24−LEU2、ERG5::DHCR7−URA3カセットを回収した後、CENPK菌株にLiAc/PEG方式で形質転換し、SC−LEU、SC−URA、SC−LEU−URA培地で選別してerg5::D24、ERG6::D7、ERG6::D24、ERG5::D7、ERG5::24/erg6::D7、ERG6::D24/erg5::D7組換え菌株を製作した(
図2、1段階、表3)。
【0042】
実施例2:DHCR24多重挿入カセット製作および組換え酵母選別
コレステロール生合成遺伝子の多重挿入のために、本研究チームで開発されたrDNA−NTS基盤多重挿入カセットシステム(Moon et al.,2016)を用いてNTS−DHCR24−86TRP1カセットを製作した。pT−NTS−86TRP1ベクターにpT−erg6::DHCR24−LEU2から持ってきたTEF1p−DHCR24−GALt7断片をBamHI位置に挿入して製作されたpT−NTS−DHCR24−86TRP1(
図4E)をSphI/NsiI処理してNTS−DHCR24−86TRP1カセットを回収した後、erg5::D24/erg6::D7(#19、寄託番号KCTC 13889BP)、ERG6::D24/erg5::D7(#S1、寄託番号KCTC 13888BP)組換え菌株に導入させた後、SC−LEU−URA−TRP培地で選別して、
NTSD24/#19および
NTSD24/#S1組換え菌株を製作した(
図2、2段階)。
【0043】
実施例3:DHCR24/DHCR7多重挿入製作および組換え酵母選別
DCHR24とDHCR7発現カセットが共に入っているpT−NTS−DHCR24−DHCR7−86TRP1ベクター(
図4f)の製作は、ACT1p fwとACT1p rvプライマーで837bp大きさのScACT1プロモーターとDHCR7 fw2とDHCR7 rv2プライマーで1458bp大きさのDHCR7遺伝子、CYC1t fwとCYC1t rvプライマーで252bp大きさのCYC1ターミネーター部位をそれぞれ増幅し、これを融合(fusion)PCRを通じて1つの断片に作った後、既存pT−NTS−DHCR24−86TRP1ベクターにKpnI座に挿入して製作した。このように製作されたpT−NTS−DHCR24−DHCR7−86TRP1をSphI/NsiI処理してNTS−DHCR24−DHCR7−86TRP1カセットを回収した後、erg5::D24/erg6::D7(#19)組換え菌株に形質転換を行った後、SC−LEU−URA−TRP培地で選別して
NTSD24D7/#19組換え菌株(寄託番号KCTC 13884BP)を製作した(
図2、3段階、右側パネル)。
【0044】
また、pT−NTS−86TRP1−DHCR24−DHCR7ベクターをBamHI処理してDHCR24を除去することによって、pT−NTS−86TRP1−DHCR7ベクターを製作した。その後、pT−NTS−86TRP1−DHCR7ベクターにSmaI/NotIを処理して86TRP1を除去した後、プライマー101HIS3 fw、101HIS3 rvを用いてPCRで得られた101bp大きさのプロモーターを有するHIS3断片を挿入してpT−NTS−101HIS3−DHCR7を製作した(
図12a)。SpeI/XbaIを処理してNTS−101HIS3−DHCR7カセットを得た後、
NTSD24/#S1菌株にLiAc/PEG方式で形質転換し、SC−HIS培地で選別して
NTSD7/
NTSD24/#S1菌株(寄託番号KCTC 13885BP)を得た。製作された菌株
NTSD7/
NTSD24/#S1遺伝体内導入されたカセット数を確認するために、当該菌株をqPCRを通じて導入コピー数を分析した結果、DHCR7の遺伝子は、約4個、DHCR24の遺伝子は、約2個のカセットが導入されたことを確認することができた(
図12b)。
【0045】
実施例4:エピソームプラスミド(Episomal plasmid)基盤DHCR24/DHCR7発現ベクター製作
2マイクロイーストエピソームプラスミド(micro yeast episomal plasmids)を用いたY2pH−DHCR7−DHCR24ベクター(
図4g)は、Y2pHベクターにpT−NTS−DHCR24−DHCR7−86TRP1から持ってきたDHCR24−DHCR7をBamHI/XhoI位置に挿入して製作し、erg6::D24/erg5::D7(#S1)組換え菌株にLiAc/PEG方式で形質転換を行った後、SC−LEU−URA−HIS培地で選別して
2uD24D7/#S1組換え菌株を得た(
図2、3段階、左側パネル)。
【0046】
実施例5:ERG27−ERG2融合遺伝子(fusion gene)、ERG3過発現菌株の製作
ERG2、ERG3発現のためにY2pH−ERG3−ERG2ベクター(
図4f)の製作は、TDH3p fwとTDH3p rvプライマーで714bp大きさのScTDH3プロモーターとERG3 fwとERG3 rvプライマーで1098bp大きさのScERG3遺伝子、TEF1t fwとTEF1t rvプライマーで367bp大きさのScTEF1ターミネーター部位をそれぞれ増幅し、これを融合(fusion)PCRを通じて1つの断片に作って、TEF2p fwとTEF2p rvプライマーで836bp大きさのScTEF2プロモーターとERG2 fwとREF2 rvプライマーで666bp大きさのScERG2遺伝子、TDH3t fwとTDH3t rvプライマーで484bp大きさのScTDH3ターミネーター部位をそれぞれ増幅し、これを融合PCRを通じて1つの断片に作った後、既存Y2pHベクターにBamHI/XhoI座に挿入して製作した。Y2pH−ERG3−ERG27−2融合ベクター(
図4g)の製作は、ERG27とERG2をERG27−2 fw1とERG27−2 rv1を用いてPCR生成物(product)1とERG27−2 fw2とERG27−2 rv2を用いて得られたPCR生成物(product)2を融合PCRを通じて得た後、Y2pH−ERG3−ERG2ベクターにSphIサイトを用いてERG2の代わりに挿入させて製作した。製作されたY2pH−ERG3−ERG2、Y2pH−ERG3−ERG27−2融合ベクターを
NTSD24D7/#19菌株に形質転換させた後、SC−LEU−URA−TRP−HIS培地で選別してE3E2/
NTSD24D7/#19、E3E27−2/
NTSD24D7/#19組換え菌株を製作した。
【0047】
実施例6:UPC2−1導入菌株の製作
本研究チームで480bp大きさのUPC2プロモーター(promoter)とYCp(yeast centromere plasmids)を用いて製作したYCpH−np−UPC2を
2uD24D7/#19菌株に形質転換させた後、SC−LEU−URA−TRP−HIS培地で選別してUPC2−1/
NTSD24D7/#19組換え菌株を製作した(
図2、4段階左側パネル)。
【0048】
実施例7:erg6::D7/UPC2−1/
NTSD24D7菌株製作
先立って製作されたNTS−DHCR24−DHCR7−86TRP1カセットをCEN.PK野生型菌株に形質転換させた後、SC−TRP培地で選別して、
NTSD24D7/WT組換え菌株を得た。その後、前記製作したY2pH−ERG3−ERG2、Y2pH−ERG3−ERG27−2、YCpH−np−UPC2を導入してE3E2/
NTSD24D7/WT、E3E27−2/
NTSD24D7/WT、UPC2−1/
NTSD24D7/WT菌株を製作した。これらのうちUPC2−1/
NTSD24D7/WT菌株を選択してerg6::DHCR7−URA3カセットを活用してERG6遺伝子を欠失させて、erg6::D7/UPC2−1/
NTSD24D7菌株を製作した(
図3)。
【0049】
実施例8:ステロールエステル(Sterol ester)化主要な遺伝子ARE2欠失菌株の製作
相同組換えを用いたARE2欠失のためにN断片とC断片をARE2 dN fw、ARE2 dN fw、ARE2 dC fw、ARE2 dC fwプライマーを用いてそれぞれPCRで得た後、その断片をもって融合PCRを行って、pT−ARE2dNCを得た。その後、2つの断片の間のXhoI/EcoRVサイトにScHIS3を挿入して、最終ベクターpT−ARE2dNC−HISを得、SphI/MluI処理を通じてARE2dNC−HISカセットを得た後、
NTSD24D7/#19菌株にLiAc/PEG方式で形質転換を行った後、SC−LEU−URA−TRP−HIS培地で選別してare2Δ/
NTSD24D7/#19組換え菌株を製作した。
【0050】
実施例9:コドンコンテクスト(Codon context)方式でコドン最適化したccDHCR24、ccDHCR7を用いたERG5、ERG6欠失とDHCR24/DHCR7同時挿入製作および組換え酵母選別
既存に製作されたpT−ERG5dNC−DrDHCR7、pT−ERG5dNC−DrDHCR24、pT−ERG6dNC−DrDHCR7、pT−ERG6dNC−DrDHCR7ベクターをPstI/SalI処理してバックボーン(backbone)として準備し、コドンコンテクスト(Codon context)方式でccDHCR24、ccDHCR7を遺伝子合成したpMKRQ−sDrDHCR7(cc)、pMKRQ−sDrDHCR24(cc)ベクターでプライマーccD7 fw、ccD7 rv、ccD24 fw、ccD24 rvを用いてPCRで得られたccDHCR24、ccDHCR7断片をKpnI/SalI処理して得られたインサート(insert)をライゲーション(ligation)して、ベクターpT−ERG5dNC−ccDHCR7、pT−ERG5dNC−ccDHCR24、pT−ERG6dNC−ccDHCR7、pT−ERG6dNC−ccDHCR24を得た。その後、KlURA3、KlLEU2をpUG73、pUG72ベクターから持ってきてNotI位置に挿入することによって、最終ベクターpT−erg5::ccDHCR24−LEU2、pT−erg6::ccDHCR7−URA3、pT−erg6::ccDHCR24−LEU2、pT−erg5::ccDHCR7−URA3を得た(
図13a〜d)。最終ベクターをSphI/MluI処理してerg5::ccDHCR24−LEU2、ERG6::ccDHCR7−URA3、ERG6::ccDHCR24−LEU2、ERG5::ccDHCR7−URA3カセットを回収した後、CEN.PK菌株にLiAc/PEG方式で形質転換し、SC−LEU、SC−URA、SC−LEU−URA培地で選別してerg5::ccD24、ERG6::ccD7、ERG6::ccD24、ERG5::ccD7、ERG5::ccD24/erg6::ccD7(=#cc19、寄託番号KCTC 13886BP)、ERG6::ccD24/erg5::ccD7(=#ccS1、寄託番号KCTC 13882BP)組換え菌株を製作した(表3)。
【0051】
実施例10:tHMG1多重挿入による組換え#cc19、#ccS1菌株のコレステロール生産量増大
多重挿入が可能なpT−NTS−86TRP1−tHMG1ベクターは、表1に記述されたプライマーtHMG1−fwとtHMG1−rvを用いて増幅したN−末端552 amino acidが除去されたHMG1遺伝子をpT−NTS−86TRP1のEcoRI/SalIに挿入してpT−NTS−86TRP1−tHMG1ベクターを製作した(
図14a)。製作されたpT−NTS−86TRP1−tHMG1ベクターをSpeI/NsiI処理してNTS−86TRP1−tHMG1カセットを得た後、erg5::ccD24/erg6::ccD7(=#cc19)、ERG6::ccD24/erg5::ccD7(=#ccS1)菌株にLiAc/PEG方式で形質転換し、SC−TRP培地で選別してtHMG1/erg5::ccD24/erg6::ccD7(=tHMG1/#cc19、寄託番号KCTC 13887BP)、tHMG1/erg6::ccD24/erg5::ccD7(=tHMG1/#ccS1、寄託番号KCTC 13883BP)組換え菌株を製作した(表3)。製作された菌株tHMG1/#cc19、tHMG1/#ccS1遺伝体内導入されたカセット数を確認するために、当該菌株をqPCRを通じて導入コピー数を分析した結果、約3〜4個のカセットが導入されたことを確認することができた(
図14b)。
【0052】
<実験例>
qPCRを用いた挿入コピー数分析
製作された組換え菌株の挿入されたターゲット遺伝子発現カセットコピー数を確認するために、染色体(chromosome)DNAを回収した後、この染色体DNAをテンプレート(template)としてqPCRを行った。
【0053】
代謝副産物および残存炭素源分析
最終培養後、上澄み液内に蓄積された代謝副産物(例:Ethanol,acetate)と培養時に添加した炭素源であるグルコース(glucose)残存量を測定した。分析に使用した試料は、本培養の最終培養液を用い、これを遠心分離(12,000rpm、10分)して上澄み液を分析した。分析は、バイオプロセスアナライザー(Bio process analyzer)を用い、当該装備のエタノール(ethanol)、アセテート(acetate)、グルコース(glucose)測定専用キット(Roche/COWIE)を用いて分析した。
【0054】
HPLC−UV/VIs基盤コレステロールおよび前駆体分析
HPLC分析は、SC培地[Synthetic Complete medium(0.67% yeast nitrogen base without amino acids、2% glucose、0.77g/L drop−out amino acid mixture supplemented with all required amino acids)]に菌株1〜2コロニー(colony)接種して種培養を行った後、OD600=0.3〜0.5になるように初期接種後、SC培地またはYPD培地で培養した。総ステロール(Total sterol)抽出のためには、3日〜6日培養(28℃、220rpm)サンプル10mL回収後、0.05g/wet weight pelletに1mL KOH/EtOH(3:2)(KOH final concentration 4.5M)混合液に懸濁後、85℃で1時間培養後、0.5mLヘプタン(heptane)(sigma)を添加した後、ビーズビーター(beadbeator)(6,000rpm、15秒、3回反復)を用いて混合した。混合されたサンプルを遠心分離(12,000rpm、10分、25℃)で上澄み液0.5mLヘプタン(heptane)層を回収した(12,000rpm、10分、25℃)後、乾燥して、アセトン(acetone)200μLを添加して溶かされたサンプルに対してHPLC分析を行った。遊離ステロール(Free sterol)抽出のためには、0.5mLクロロホルム(chloroform):MeOH(2:1)混合物(mixture)をペレット(pellet)と添加後、ビーズビーター(6,000rpm、15秒、3回反復)を用いて混合した。混合されたサンプルを遠心分離(12,000rpm、10分、25℃)で有機溶媒層を回収した後、乾燥し、乾燥ペレット(pellet)に250μLヘキサン(hexane)を添加して溶かした後、さらに乾燥した。完全に乾燥後、アセトン(acetone)200μLを添加して溶かされたサンプルに対してHPLC分析を行った。HPLC分析時にカラムは、Cosmosil C18−PAQ(4.6mm*250mm)を使用し、流量(flow rate)は、1mL/min、分析溶媒は、90%アセトニトリル(Acetonitrile)、分析時間50分(min)てあった。コレステロールおよび前駆体に該当するピーク(peak)は、UV/Vis感知器を使用して波長203nmで分析した。
【0055】
HPLC−CAD基盤コレステロールおよび前駆体生産性分析
製作した菌株でコレステロールおよび前駆体生産性確認のためのHPLC−CAD分析のための細胞培養は、前記HPLC基盤分析内容と同一である。コレステロールおよび前駆体抽出のためには、3日〜6日培養(28℃、220rpm)したサンプル50mLを回収した後、20mLの再懸濁(resuspension)溶液(15%KOH(w/v)、0.125%ピロガロール(pyrogallol、w/v)、71%MeOH(v/v))に再懸濁した。これを85℃で2時間反応した後、常温で冷まし、石油エーテル(petroleum ether)5mLを添加した後、5分間ボルテックス(vortexing)して混合した。混合されたサンプルを遠心分離(3,000g、5分)し、上澄み液を回収した。石油エーテルを添加して抽出する過程は、以後2回反復し、3mLで進めて、上澄み液を全部回収した。回収した上澄み液は、回転真空濃縮機(rotational vacuum concentrator)を用いて乾燥し、乾燥した試料に1mLのメタノール(methanol)を添加して溶かしたサンプルに対してHPLC−CAD分析を行った。HPLC−CAD分析時にカラムは、カプセルパック(Capcellpak)(C18、4.6mm×250mm、5μm)を使用し、移動相としてはメタノールを使用し、流量および条件は、下記の表と同じである。分析時間は、45分(min)であった。
【0056】
【表4】
【0057】
前記分析法を通じて標準品7種(Zymosterol、ERGosterol、Lathosterol、7−dehydrocholesterol、7−dehydrodesmosterol、Desmosterol、Cholesterol)を分析した結果(
図9参照)、エルゴステロールおよびデスモステロールのHPLC peak滞留時間がそれぞれ30.7分および30.4分であって、重なっているが、野生型酵母菌株では、エルゴステロールのみが生産され、コレステロールおよび前駆体を生産できるように製作した組換え酵母菌株の場合には、デスモステロールのみが生産されるので、当該分析法を通じて最終生産性分析を行った。
【0058】
実験例1:erg5、erg6欠失およびDHCR24、DHCR7発現を通じて製作したステロール生産菌株に対するHPLC分析
HPLC−UV/Vis分析結果、erg5::D24/erg6::D7、ERG6::D24/erg5::D7菌株でコレステロールピーク(cholesterol peak)を確認することができ、erg5::D24/erg6::D7(#19)菌株が3.1ppm、ERG6::D24/erg5::D7(#S1)菌株が7.5ppmコレステロール生産量を示した(表5)。しかしながら、コレステロール前駆体であるジモステロール(zymosterol)、デヒドロデスモステロール(dehydrodesmosterol)、デスモステロール(desmosterol)の含量が非常に高かった(
図5)。
【0059】
実験例2:DHCR24多重挿入を通じて製造したステロール生産菌株に対するHLPC分析
生産されたコレステロール生産量増加のために、本研究チームで開発されたrDNA−NTS基盤多重挿入カセットシステムを用いてNTS−DHCR24−86TRP1カセットを追加導入させた菌株のHPLC分析結果、#19菌株に比べて
NTSD24/#19組換え菌株において約2.4倍高い7.4ppmのコレステロール(cholesterol)生成ピークを確認することができた(
図6、表5)。また、#S1菌株に比べて
NTSD24/#S1組換え菌株において約1.5倍高い11.5ppmのコレステロール(cholesterol)生成ピークを確認することができた(
図6、表5)。
【0060】
実験例3:DHCR24、DHCR7多重挿入を通した製造した組換え菌株に対するqPCRおよびHPLC分析
DHCR24、DHCR7の2つの遺伝子発現カセットが共に入っているNTS−DHCR24−DHCR7−86TRP1カセットを多重挿入して得られた
NTSD24D7/#19組換え菌株の挿入されたカセット数をqPCRで分析した結果、3〜4個まで挿入された菌株を得ることができた(
図7a)。HPLC分析結果、erg5::D24/erg6::D7(#19)菌株に比べて
NTSD24D7/erg5::D24/erg6::D7(
NTSD24D7/#19)組換え菌株において約2.9倍高い9.0ppmのコレステロール(cholesterol)生成ピークを確認することができた(
図7b)。また、HPLC分析結果、
2uD24D7/#S1組換え菌株も、#S1菌株に比べて約1.5倍高い11.1ppmのコレステロール(cholesterol)生成ピークを確認することができた(
図7c、表5)。
【0061】
実験例4:ERG27−ERG2融合遺伝子(fusion gene)、ERG3およびUPC2−1過発現を通じて製造した組換え菌株に対するHPLC分析
製作された
NTSD24D7/#19組換え菌株のより良いコレステロール生産効率増加のために、ジモステロールでコレステロール生産に関与するERG27、ERG2、ERG3遺伝子の追加発現した菌株のHPLC分析結果、
NTSD24D7/#19と比較してE3E2/
NTSD24D7/#19、E3E27−2/
NTSD24D7/#19、UPC2−1/
NTSD24D7/#19組換え菌株においてコレステロール生産量の差異が大きくなかった(表5.
図8)。しかしながら、ERG3、ERG27−2またはUPC2−1が導入された組換え菌株の場合、コレステロール前駆体の生産量は、顕著に増加した傾向を示した。
【0062】
実験例5:HPLC−CAD基盤組換え菌株のコレステロールおよび前駆体生産量分析
HPLC−CAD基盤分析法を通じてコレステロールおよび前駆体生産性を分析し、その結果を
図9に示した。野生型菌株に比べて組換え菌株#19(erg5::D24/erg6::D7)は、7−デヒドロデスモステロール、ジモステロール、デスモステロール、7−デヒドロコレステロールおよびコレステロールを高い収率で生産することが確認された。
【0063】
上記のような方法で製造した組換え菌株のコレステロール(cholesterol)およびコレステロール前駆体の生産量を表5に整理した。
【0064】
【表5】
【0065】
実験例6:ステロールエステル(Sterol ester)化主要な遺伝子ARE2欠失組換え菌株に対するHPLC−UV/Vis分析
酵母で細胞内過剰のステロール(sterol)の貯蔵のために、エステル(ester)化および脂質液滴(lipid droplet)保管に関与するARE1、ARE2遺伝子(Hohmann H−P et.al.2017)のうち好気性成長で主要な機能を担当するARE2の欠失を相同組換えによる遺伝子破砕技法で
NTSD24D7/#19菌株に試みた(
図10a)。遊離コレステロール(Free cholesterol)形態が維持される抽出法で準備したサンプルの場合、野生型菌株背景でコレステロールの量は大きな変化がない反面、前駆体のうちデヒドロデスモステロールの量が大きく減少することが観察された(
図10b)。これは、デヒドロデスモステロールの場合、大部分エステル(ester)化した状態で存在するが、コレステロールは、大部分遊離した(free)形態で存在することを示唆する。製作されたare2Δ/
NTSD24D7/#19菌株のHPLC分析結果、コレステロール量は大きな差異がなく、多量蓄積されていたデヒドロデスモステロールの量が多少減少した。このような結果は、
NTSD24D7/#19菌株で生産されるコレステロールは、大部分遊離ステロール(free sterol)状態と推定される。
【0066】
実験例7:野生型菌株対象ステロール生産組換え酵母S.cerevisiae分析
上記で試みられた戦略のうち多重挿入カセットシステムを用いた染色体(chromosome)内のNTS−DHCR24−DHCR7−86TRP1カセットの挿入数増加のための方法で野生型菌株に先にNTS−DHCR24−DHCR7−86TRP1カセットを多重挿入させた後、ERG6欠失を試みる戦略をもって最初の段階で製作された
NTSD24D7/WT組換え菌株の挿入されたカセット数をqPCRで分析した結果、4〜10個まで挿入された様々な候補菌株を得ることができた(
図11a)。その後、HPLC−UV/Vis分析で7個挿入された候補群(
NTSD24D7/WT #8)においてエルゴステロール(ergosterol)ピーク(peak)が大きく減少した反面、カンペステロール(campesterol)と推定されるピーク(peak)の最も増加した値を示した(
図11b)。したがって、後続実験では、7個挿入された候補群(
NTSD24D7/WT #8)を使用してE3E2/
NTSD24D7/WT、E3E27−2/
NTSD24D7/WT菌株を製作したが、HPLC−UV/Vis分析結果、
NTSD24D7/WT菌株と大きな差異が認められなかった。一方、UPC2−1/
NTSD24D7/WT組換え菌株の場合、全体的なエルゴステロール生合成経路(ergosterol pathway)活性化のためなのか、かえってエルゴステロール生産が増加した(
図11c)。次に製作されたerg6::D7/UPC2−1/
NTSD24D7菌株に対してHPLC−UV/Vis分析結果、コレステロール生産量が既存製作した最も高いコレステロール生産量を示す
NTSD24D7/erg5::D24/erg6::D7(
NTSD24D7/#19)組換え菌株に比べてさらに優秀ではなかった(
図11d)。
【0067】
実験例8:ステロール生産組換え菌株#S1および#19の生長量および副産物蓄積量分析
製作した菌株の代謝副産物蓄積量の確認結果、#19(erg5::D24/erg6::D7)菌株では、最終培養後にエタノールとアセテートのような副産物が蓄積される反面、#S1(erg6::D24/erg5::D7)菌株の場合は、アセテートの蓄積は少量あるが、主要な代謝副産物であるエタノールの蓄積は確認されなかったので、野生型と同じ様相を確認することができた。また、細胞生長量の分析結果、#19(erg5::D24/erg6::D7)菌株のOD600値の場合、約14.8と確認されたところ、野生型菌株(WT)および#S1(erg6::D24/erg5::D7)菌株それぞれのOD600値である約46.5および約57.3に比べて生長が阻害されることを確認することができた(表6)。
【0068】
【表6】
【0069】
実験例9:SCまたはYPD培地で#S1由来菌株とDHCR遺伝子コドン最適化菌株のコレステロールおよびコレステロール前駆体生産量分析
細胞生長量および副産物蓄積量の分析結果は、#19(erg5::D24/erg6::D7)菌株に比べて成長が良好であり、副産物蓄積が殆どない#S1(erg6::D24/erg5::D7)菌株が、産業的菌株としてさらに適合することを提示している。これにより、#S1由来の組換え菌株のコレステロールおよび前駆体生産量をSC培地とYPD培地で培養してHPLC−CAD基盤LCクロマトグラムを用いて詳細比較分析を行った(表7)。YPD培地で培養時には、SC培地を用いるときより細胞成長が高くて、総コレステロール生産量は高い反面、SC培地で培養された場合が、菌体当たり生産されたコレステロール量が高いことを確認することができた。
【0070】
【表7】
【0071】
また、
NTSD7/
NTSD24/#S1組換え菌株に対するHPLC分析結果、#S1菌株に比べて約1.7倍高い9.3ppmのコレステロール(cholesterol)生成ピークを確認することができた(
図12c、表8)。また、erg5::ccD24/erg6::ccD7(=#cc19)、ERG6::ccD24/erg5::ccD7(=#ccS1)に対してHPLC分析結果、30.1、29.4ppmのコレステロールと6.1、6.0ppmのジモステロールを生産することが確認され、これは、#S1菌株に比べてコレステロール生産量が約5倍以上増大した結果である(
図13e、表8)。
【0072】
【表8】
【0073】
また、HPLC分析結果、tHMG1/#cc19、tHMG1/#ccS1菌株が、#cc19、#ccS1菌株に比べて、スクアレン(squalene)、オキシドスクアレン(oxidosqualene)、ラノステロール (lanosterol)、ジモステロール(zymosterol)が全部蓄積されるパターンを示し、コレステロールの場合、#cc19、#ccS1菌株に比べてHPLCクロマトグラムピーク面積(peak area)の比較時に約1.3〜1.5倍程度生産量が増加する傾向を示した(
図14c)。